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1953/04/06 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第34号
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1953/04/06 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第34号

#1
第019回国会 法務委員会 第34号
昭和二十九年四月六日(火曜日)
    午前十一時五十九分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 花村 四郎君 理事 高橋 禎一君
   理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君
      庄司 一郎君    林  信雄君
      本多 市郎君    牧野 寛索君
      吉田  安君    猪俣 浩三君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 犬養  健君
 出席政府委員
        検     事
        (刑事局長)  井本 台吉君
 委員外の出席者
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
四月六日
 委員保利茂君辞任につき、その補欠として庄司
 一郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 法務行政に関する件
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから、これを許します。猪俣浩三君。
#3
○猪俣委員 抽象的な法律論を伺いましてから事実の問題について法務大臣の御所見を承りたいと思います。被疑者の逮捕請求権は一個の検事が裁判所に請求する権限があるのか、あるいは検事総長を通じ法務大臣を通じなければならぬのであるか、法理上の見解と、それから実務上どういうふうになされておるか、その点について承りたいと存じます。
#4
○犬養国務大臣 検事が請求し得ると考えております。なお何か御質問があれば……。
#5
○猪俣委員 そうすると、検事単独で請求することができるという御見解だと承ります。さようだろうと思います。法務大臣がこの逮捕請求につきまして関与される場合があるのですか。あるとするならばどういう法的根拠に基いて関与されるのでありますか、承ります。
#6
○犬養国務大臣 すでに御承知と存じますが、法務大臣は検事総長を通じてのみ指揮ができます。しかし私の場合は検事総長の報告に基きまして、できるだけーーできるだけではない、あらゆる場合においても不当な政治的圧迫ということは私の使命としていたさぬ、検事総長の報告が正しい場合はこれをその内容に即して判断をし、形の上では協議の上決定いたすことになつております。従つて指揮という言葉の内容と違いまして、話合いをして最後の決定をいたしております。
#7
○猪俣委員 そうする検事は単独で被疑者の逮捕請求権があるが、法務大臣は検察庁法に基く指揮権に基いて検事が逮捕請求しようと考えておる者に対して、逮捕請求はするなという指揮をすることができるという御見解でありますか。
#8
○犬養国務大臣 検事は逮捕請求もできますが、事実問題としましては検察庁法の十四条に基きまして、重要な案件につきましては上司の指揮を仰いでおります。従つてそれに基いて検事総長が私の元へ参りまして報告をし、文字通りに言えば私の指揮を仰いでおります。
#9
○猪俣委員 私が先ほどお尋ねいたしましたのは、法律上は検事単独で逮捕請求権があるのであるが、実際問題としてどういうふうに取扱つておられるか。たとえばいかなる被疑者に対しても一々法務大臣の耳まで達するようにしてあるのであるか、あるいはある被疑者についてさような取扱いをするのであるか、その間にもし甲乙の区別があるとするならば何か基準でもあるのか、そのときどきの検事なりあるいは法務大臣の考え方によつて、ある者は単独の請求を検事自身がやり、ある者については上司を通じ法務大臣の御意向を体してやるというように区別されておるのであるか、その実際上の取扱いについてお伺いいたします。
#10
○犬養国務大臣 重要案件につきましては、今申し上げましたように、検事はその上司の指揮を仰いでおります。実際の場合をお尋ねになりたいと存じますので、できるだけ詳細に申し上げたいと思います。重要なものについては検事総長は私の指揮を仰ぎますが、重要であるか重要でないかという水準でございますが、少くも国会議員については私に一々報告があり、むずかしい言葉で言えば指揮を仰いでおります。同時にこの関係書類は検察庁から移牒された上、刑事局長が詳細に読んで私を補佐いたしております。
#11
○猪俣委員 本日の新聞紙の伝うるところによりますと、この三日の日に検事総長を初めとする検察庁の首脳の間では岡田、關谷、なお加藤という参議院議員、この三名に逮捕請求をしたいという稟請が法務大臣になされたのであるが、その中の岡田、關谷両議員についてのみ逮捕請求することに相なつたということが伝えられておりますが、これは世間でも相当問題に相なつておりますので、もしさような事実があつたならば、その実情をお話願いたい。すなわち法務大臣を除きました検事総長その他いわゆる検察の首脳部では三名の逮捕を決定した。しかるに法務大臣はその中の一名だけを除いた他の二名に対して逮捕請求することを指揮した。まず第一にさような事実があつたのであるかなかつたのであるか、あつたとするならば、どういう理由でさような区別をなされたのであるか、それを承りたいと存じます。
#12
○犬養国務大臣 御指摘のように、今朝の新聞にそういう今お話のありましたような記事が出まして、私のみならず法務当局首脳部も実は驚いているわけでございます。土曜日の日に最高検で会議があつたことはお話の通りでございます。これは捜査の必要上極秘に属しておりますが、いろいろ記事が出まして、たしか大分大勢の名前も書いてあつたように存じております。昨日の午前中にそれまでに検察庁から関係書類がまわつて来たのを熟読いたしました刑事局長、それに私を補佐する次官と協議をいたしましたが、そのときに正式に取上げられた逮捕請求をすべき人は二人でございます。このことははつきり申し上げ得るのでございます。あとの御指摘の人については、御当人の名誉の問題もございますし、捜査の関係上まだ明瞭にここで御説明いたしかねることを私としてはむしろ残念なのでございまして、できるだけ申し上げたいのでございますが、そういうわけで申し上げにくいのでございます。ただ一つ申し上げたいのは、私が政治的な理由から、あるいは外部の圧迫から一人除いたということは絶対にございません。これは当時協議に携わりましたここにおります刑事局長もつぶさにそのことを証明してくれるものと思います。いずれこれは私が政治的な理由でやつたのじやないということが遠からず御了解できるのではないかと思います。この点は、私ははつきり自己の責任において申し上げ得るのでございます。
#13
○猪俣委員 今大臣の答弁をお聞きいたしますと、佐藤検事総長その他の検察庁で逮捕の請求をしたいという候補者は二人であつたのだ、いわゆる加藤なる人物はその中に含まれておらなかつたのだという御答弁でありますが、大臣もいろいろの責任ある地位におられるので、さような答弁におなりになるかと存じますが、そういたしますと、今朝の朝日、毎日、読売、ことに昨日の読売の夕刊にも出ておりましたが、これはことごとく虚構な事実を書いたということに相なるかと存じます。私も昨日各方面から電話で実情を聞きまして、ことにあなたが新聞記者の質問に対して、三人のうち一人だけのけた理由として、衆参両院へ同時に逮捕許諾を出すと、議院運営委員会で政府委員が説明する際にぶつかると困るから二、三日遅らせたのだという答弁をあなたがなされたということを、昨夜私はその答弁を開いた人からただちに聞いたのであります。今あなたの御答弁は、それをことごとく否認されておるのでありますが、そうすると、今の大臣の御答弁は、この新聞記事は結局虚構の事実である、検察庁が申請したのは二人にすぎないので、いま一人はそういう中に全然入つておらないのだ、こういう御答弁に相なりますか。
#14
○犬養国務大臣 これもはつきりお答えを申し上げて、御了解を得たいと存じます。
 第一に、私が新聞の人に運営委員云々で一人減つたというようなことは申したことございません。これはもういかにお調べくだすつてもけつこうと存じます。私が申しましたのは、土曜日の新聞の記事は必ずしも当つていない部分もある、これ以外に申したことはないのでございます。多く間違つているか、少く間違つているかという質問もありましたが、それにも答えなかつたわけであります。もつと実情を申し上げますと、同僚議員逮捕の件は、これは非常につらい問題なので、この件は事務当局に聞いてくれたまえというのが、私の根本の応待の態度であつたのであります。これは公としては批評の余地もありましようが、私の個人、人間としては非常につらいことでございますので、この質疑応答は実に身を切られるような思いをいたしますので、事務当局にこの問題だけは聞いてくれたまえということを言つております。従つて一人減つたのは議運の都合だということを申したことはございません。この点は御了解を得たいと思います。
 それからもう一度申し上げますが、最高検で会議をしました結果、法務省に関係書類がまわつて来まして、それを熟読した刑事局長が、次官を帯同しまして私に報告をするのでありまして、従つて書類を熟読いたしました刑事局長、並びに私を補佐する次官との間に逮捕請求すべき同僚議員はお二人であつたということで協議をいたしたのであります。この点は、神明に誓つて真実でございますから、御承知を願いたいと思います。
#15
○猪俣委員 実ははなはだ悲しむべき事実でありますけれども、われわれ同僚の中に被疑者が相当おつて、検察庁で逮捕状の請求を第二段、第三段としてするということが、実はどこからともなく伝わりまして、相当の人数の候補者の名前までわれわれは聞いているのであります。それが荒唐無稽でないことは、第一番には藤田義光氏であるということも、まさに藤田義光氏の逮捕請求の出るほとんど二週間、半月前に私どもは耳にいたしておりました。どういう筋からそれが出て来るのだかわかりませんが、それがちやんと実現している。そこでこの報道陣の伝えることがことごとく荒唐無稽というふうにわれわれにはとれないのでありまして、その多数の中からだんだん選定されて、四人に相なり、それが最後に三人に相なる、それが土曜日の検察庁の首脳部会議で決定した。しかるに法務大臣は、そのうちの一人を、これはこの次にしてもらいたいということで、二人だけに逮捕請求することに決定した。これだけずつと筋道の立つた報道が各新聞になされて来たのであります。それでありまするがゆえに、世人が異常の関心を持つように相なりました。三日に検察庁の最高首脳部が三人を逮捕請求しようじやないかということを決定したことは、私は真実ではないかと存ずるのでありますが、法務大臣は初めから二人であつたということであります。そこでなお念のためにお聞きいたしますが、三日なりあるいは五日なりに検察庁で大臣に――まあ大臣が指揮権を持つているためであろうと思いますが、大臣の意向を確かめたのは、二人でありますか、あるいはなお多数の人間なんでありますか。それをもう一度お聞きいたします。
#16
○犬養国務大臣 ちよつとお尋ねのことをもう一度お問い返して失礼でございますが、検察庁から私にそういう指示を仰いだという……。
#17
○猪俣委員 検察庁からあなたに対して逮捕請求をしたいがという、これは稟請といいますか、相談といいますか、承認を求めるといいますか、三日なり五日の日にあなたにさような稟請をして来たのは二人、被逮捕者は二人でありますか、あるいは数人であつたのでありますか。それをお聞きいたしております。三名ではなかつたという御答弁がありましたが、二人に限られておつたのか。あるいは三名以上、四名、五名、六名であつたのか。そこをお尋ねいたします。
#18
○犬養国務大臣 よくわかりました。お答えを申し上げます。検察庁から私に申して来たのは、詳しくは関係書類を刑事局長にまわしてあるから刑事局長のそれを熟読した上での報告によつて判断をして、さらに検察庁、詳しく言えば検事総長に指示してくれ、こういう内容でございます。従つて非常に精密に熟読された刑事局長、それに同行して参りました補佐役の次官が、正式に逮捕要求すべき案件の対象としての同僚議員は二名であるということになつたわけでございます。
#19
○猪俣委員 それでは刑事局長にお尋ねいたしますが、検察庁から今の大臣の説明のように大臣にはかつてもらいたいといつて、被逮捕者の記録その他をあなたのところへ出されたということですが、それは二名の被逮捕者だけであつたのか。あるいは数名あつたのか。それをお尋ねいたします。
#20
○井本政府委員 私記録を拝見いたしましていろいろ検討いたしました。そのうちで關谷、岡田両氏については逮捕許諾の請求をするのが相当であるという意見を具して大臣に上申いたしました。その以外の何人であつたかというような点につきましては、この捜査の秘密でございまして、ただいま発表する限りではないと存じます。
#21
○猪俣委員 そうすると、それではあなたにお聞きします。二名以上、以上の人の名前はあなたが捜査の段階だというからそれはよしとして、二名以上であつたことは事実ですか。
#22
○井本政府委員 何人について逮捕許諾をすべきかということを相談したかというお尋ねでございましても、私ども關谷、岡田両氏については確かに相談して逮捕許諾を請求するのが相当であるという結論を出しましたが、そのほかにつきましては、事務的に今お答えする限りではないと存じます。ことに名前をあげるがごときは、御当人の迷惑にも関係することでございましようし、ただいまではお答えできない次第でございます。
#23
○猪俣委員 そんな官僚式の答弁はどこにあるか。天下の新聞にみな出ていることではないか。そこでぼくは聞いている。これが何も世に知られざることならばあなた方に答弁を求めません。天下の大新聞にきのうからきようにかけて一斉に出ているじやないか。そんな形式的答弁はどこにあるか。世間の疑惑を解かなければならぬからあなたに質問している。あなたが一体そんな二名にするの、三名にするのという権限があるのか、どういう権限でさようなことをやるか。検事総長が数名の記録と逮捕請求をやつて来た際に、あなたがそのうち二名だけ大臣の目に通して許諾しかるべしとして、あとは押えてしまう、そういう権限が刑事局長にあるのか承りましよう。
#24
○井本政府委員 私は二人につきまして詳細検討いたしましてその結論を出しましたが、そのほかのものについて検討したかしないか、あるいはいかなる結論を出したか、そういうことについてはただいま捜査の秘密でございますから、御発表できません。
#25
○猪俣委員 ですから検察庁から被逮捕者として記録その他を出したのは二名以上であることはほぼわかる。そのうちの二名だけ逮捕しかるべしということで大臣にあなたが出した。あとの者はそれを大臣の耳に入れなかつたことは事実だとするならば、さような権限があるのかないのかを私は聞いている。それは捜査の秘密だからと言つたつて、人名を言えというのではない。どういう事実があるかということを言えというのではない。法律上のあなたの根拠を聞いている。たとえば五名、六名、その人数は聞きますまい。ただ二名だけじやなかつたことだけはあなたの答弁でわかります。それ以上のことは答弁できない。人名を言え、あるいは人数を言えという意味じやない。さような二名だけをしかるべしという答申をしてあとは押えてしまうという権限があなたにあるのかないのかを聞いている。捜査中だから答弁の限りでないというそんな答弁があるか。人数を聞くとか人名を開くとか事実はどうだということを聞いたならば、それは捜査に障害を来すかもしれません。あるいは人の名誉にかかわることかもしれませんから、私はあなたにそれをここで発表せいと言うのじやない。何人あつたか知らぬし、いかなる犯罪であるかも知らぬ。しかし二名だけを大臣の耳に入れて、あとは押えるという権限があなたにあるのかないのか。それを聞いている。それに対して答弁の限りでないと言う。何を言う。そういう法的根拠を聞いているのじやないか。それが何で捜査にさしつかえますか。そういう答弁をするものじやない。しかも天下の新聞にみな出ているじやないか。そんなあなたの答弁だから、官僚というものはいけないということになる。戦時中ならいいでしよう。民主国家の今日そんな答弁がどこにあるか。どういう権限がある。法理上の根拠と捜査と何の関係もありません。それをお答えなさい。
#26
○井本政府委員 天下の新聞紙は相当の取材能力がありますので、いろいろな意味においてかなり正確な情報をキヤツチすると私は存じます。しかしながら私どもから新聞の記事が正しいか正しくないかということを申し上げるのはある時期がありまして、その時期以外にはたとえば捜査中に相当の記事が書かれましてもそれを肯定するというようなことは私はできないと存じます。もちろん大臣の御下命があつた点について、私がかつてに御下命の一部分だけについて答申して、そのほかを省くというようなことはできません。ただお話の点につきまして加藤氏の点は別問題として、關谷、岡田両氏については確かに私がこれは逮捕を許諾して相当であるという結論を出して上申いたしましたが、そのほかの点についてはたしてどういう相談をしたかとか、どういう内容について話をしたかということは非常に機微な事情にありますので御発表申し上げかねるということを申し上げたのでございます。
#27
○猪俣委員 それでは私は実際この新聞記事の事件と関係ないことについてあなたに質問します。かりに検事総長なり検事が五人被逮捕者の候補をあげて、大臣にひとつ御承認願いたいと言うて出て来た場合に、刑事局長のあなたがそれを点検して、その中の二名だけはしかるべし、三名はせぬと言うことが実際上できるのかできないのか。そういう権限というものが刑事局長というものにあるのかないのか。あるとすればいかなる法律根拠に基いてやれるのか。実際問題としてそれをあなたにお尋ねします。一切のこの新聞の報道、具体的事実、加藤何がしという関係なしに、今後第一線の責任を持つている検事総長及び検事が、念のために法務大臣に相談――しないだつていいんです、法律上は。だから先ほど私はそれをお聞きした。彼らの固有の権利です。しかし法務大臣は指揮権があるがゆえに一応稟請し、その承諾を得るということが行われている。これはまた私は当然だと思う。それを言うているのではありません。そういう際に、検事総長あるいはその他の検事から法務省にまわつて来たその被逮捕要求者の中から、あなたが選択権があるのかどうか。大臣に出すまでの間に。それをお尋ねしておきたい。
#28
○井本政府委員 まわつて参りました書類につきましては、全部それを適当な意見をつけまして大臣の方に上げる、これはそうすべきものでございます。かような事件について申し上げるといろいろ誤解を生じますから、別の事件について申し上げますと、たとえば外事関係の事件などにつきましては、たびたび私どもの意見と最高検察庁の意見と違うこともございます。しかしながら私どもが、直接検察庁に対して指揮権を行使するということはあり得ないのでございまして、この事件はかようにすべきものであるという意見を大臣に上申いたしまして、大臣から直接検事総長に指揮をするということはないこともございません。ただ実際問題といたしましては、さような意見の違う問題でも事務的にはいろいろ折衝いたしますれば、それぞれおのずから結論が出まして、正面から対立したというような事例は今まではございません。
#29
○猪俣委員 そうすると実際の事務の取扱いとして――これもかりですが。五人の逮捕請求が検事から出て来た。そのうちあなたは二名だけに対してこれはしかるべし、あとは留保なりやめたがよかろうという意見をつける。これも補佐官として私どもは了解できると思うが、そうするとその五人の書類そのものは、あなたの意見を付したままで全部法務大臣の手元に差出すものであるか。つまり検事の要求したそのものを全部法務大臣に、意見はつけるでしようが、意見をつけたままで出すのであるか、あるいは五人のうち二人だけ意見をつけて出して、あとはあなたの手元に押えるというようなことをやつているか、これをお聞きしたい。
#30
○井本政府委員 重要事件につきましては全部大臣まで差上げます。しかし小事件というと恐縮ですが、書類などでも全部大臣の方へ差上げれば、それこそ何人大臣がおられてもやり切れぬほどの書類がありますから、適当に下で処理するというものもございます。但し重要な事件につきましては全部差上げます。
#31
○猪俣委員 なお一点聞きますが、私は書類そのものよりも、たとえば五人検事総長から逮捕請求をして来た。そのうち二人だけしかるべしとして、あとの三人はあなたの手元でそのまま押えるようなことをやるか。五人やつて来た、そうしてそれに相当する書類もつけて、そのうち二人だけはいいが、他の三人は考えものだとあなたの意見をつけることはよろしゆうございましよう。よろしゆうございましようが、五人の被請求者を全部意見をつけてそのまま大臣へ出すのか。その被請求者に関しまする人名あるいはそれに対する書類、そういうものをあなたの手元で取捨選択して大臣の目に触れない場合があるか。今のあなたの答弁のように、つまらぬ書類なんかはそれでいいが、少くとも逮捕請求の事実を書きました検事の調書というようなものは、五人分来たならば五人分そのまま法務大臣のところへ出すのか、あるいは逮捕をしかるべしとしたものだけ出すのであるか、それをお聞きするのです。
#32
○井本政府委員 いろいろの事件がございまして、一概に言いかねますが、外事事件などを例にとつて申し上げますと、一番簡単にわかりやすいと思います。外事事件につきましては、下の方から起訴すべきであるという稟請がありました書類は全部これは大臣に御決裁をいただきます。不起訴の関係の書類は私のところで全部始末しております。もちろん特に重要なものにつきましては大臣の御決裁をいただいております。起訴事件につきましては御決裁をいただいております。
#33
○猪俣委員 しからばなお具体的にお伺いします。これも仮定でありますが、国会議員の逮捕請求を五人検事総長がやつて来た。そのうち二人は適当であると思うが、三人はあなたの頭であまり適当じやない、そういう意見をつけた。その場合に二人だけの逮捕請求に関する調書をつけて大臣に出すのであるか。いやしくも五人検事が請求して来たならば、あなたの頭で適当であろうがなかろうが、五人分に関する逮捕請求のその事実を表わした調書は全部これを法務大臣まで提出するのであるか、事を国会議員に限りましてお尋ねいたします。
#34
○井本政府委員 だんだん具体的な事件に近づいて参りますが、私誤解を生ずると困るので、仮定の事件として特に御了承をいただきたいと存じます。非常に急いでいる場合には、書類がまわつて来ないでただ口頭だけで相談があるということもございます。書類がまわつて参りますれば、重大な事件につきましては、全部これは大臣の御決裁をいただきます。しかし大体において今まで最高検察庁と法務省の刑事局長で意見が違つたということはほとんどございません。論議の過程で違つておりましても、最後的には大体において常に一致しております。さような実情でございます。
#35
○猪俣委員 どうもあなたの答弁はわかつたようでわからぬ答弁だが、そうすると結局こう聞いていいのですか。事国会議員というような相当の地位にある者、しかも国会の許諾を必要とするような被逮捕者について、検事総長が稟請して来たものについては、その被逮捕の理由を明らかにした調書その他の書類は法務大臣に、適当であろうがなかろうが、これはお見せするように相なつている、こういう答弁でよろしゆうございますか。
#36
○井本政府委員 厖大な書類が多いのでありまして、私は大体においてその書類を読んで、その要点だけを申し上げるようにしております。また急いでいるような場合には、ほとんど書類としては参りません。かような点について起訴すべきであるとかあるいは逮捕状を請求すべきであるというような書類としてはまわつて参らないで、口頭でまわつて来る場合が多いのでございます。
#37
○猪俣委員 そうすると事院の許諾を得なければならぬような、国会議員の逮捕を請求した際においても、その被疑事実に関する記録のごときものは法務大臣に見せる場合もあるし、急ぐ場合は全然見せないでただ口頭で伝える場合もある、こういうことに相なるのですか。
#38
○井本政府委員 一般論として申し上げるので、いろいろな場合があるということを申し上げざるを得ないのでございますが、短時間のうちに早く結論を出さなければならぬというような場合には、口頭をもつて簡単に御報告いたすこともございますし、簡単な記録でお読みいただいた方がいいというような場合には、お読みいただくというようにいたしております。これはもちろん御指揮を受けつつやつているわけでございまして、私がかつてにやつているわけではございません。
#39
○猪俣委員 そうすると、なお念を押しますが、事を国会議員に限ります。国会議員に対して検事あるいは検事総長が五人逮捕請求をしたいということを稟請して来た、そうするとそのうちの二名は適当だと思うが、三名は適当じやないと思う場合でも、五人全部について記録あるいは急ぐ場合においてはその被疑事実についてあらましを口頭で大臣の耳に入れるということにしている、こう承つてよろしいか。
#40
○井本政府委員 今ちよつと聞き漏らしたのですが、大体……。
#41
○猪俣委員 ちよつともう一ぺん言う。検事総長が国会議員五名に対して簡裁に逮捕請求をしたいということを法務大臣に稟請して来た場合に、法務大臣がその書類を見る前に、あなたが補佐官として点検なさる、それはわかつています。あなたが見たところによれば、二人は適当だと思うが、三人はどうも適当じやないと思料した場合に、その場合においてもその適当だとあなたが意見をつけた者の名前も記録も、適当じやないと思つた者の名前も記録も、いやしくも検事総長が稟請したものは、記録あるいは記録が整わない場合においては、口頭でも、不適当とした人の被疑事実についても法務大臣の耳に入れるのか入れないのか、こういう意味です。
#42
○井本政府委員 きちんと正式に書類がまわつて来たり、何かあて名がついてまわつて来るようにお考えなので御理解がいただきにくいと存じますけれども、実際問題といたしましては、会議の席には、私の方からたとえば刑事課長とか私が出席いたしましたり、あるいは忙しいときには出ないこともございますけれども、何回も口頭で相談いたしまして、十分議がまとまりましてその上で御決裁いただくということが大部分でございます。従いまして何人かのうちでその半分は賛成で、半分は不賛成である、それで決裁するというふうな荒立つた御指揮を受けるということは一度もございません。またさような意見の違うような場合でも、多少日時をかしまして、それぞれ意見をお互いに述べ合えば、大体において帰するところは一致するのでありまして、どうしても意見が全然相反するというようなことはいまだかつてございません。
#43
○猪俣委員 私どもは法務大臣になつたことがありませんのでよくわからないのだが、それでお尋ねしておるのです。だからあなたもそのつもりで懇切丁寧に説明してもらいたいのだ。そうするとこういうことになるのですか、大体あなたは補佐官として検事総長その他の逮捕請求をしたいと思う人たちと十分話した上で、両者の意見が合致した上で合致した点だけを法務大臣の耳に入れ、なお書類を見せたり口頭で事実を告げたりして稟請して承認を得る、ですから実際問題としては検事総長が稟請したいと思つておつたのに、あなたが中へ入つて、法務大臣の耳に達しないというようなことはないので、最初五人といつてもあなたといろいろ折衝している間にそれでは二人にするかという大体の話合いがそこにできて、できた上で法務大臣に二人に対して稟請する、こういうふうな手続をやつておる、こう承つてよろしいのか。
#44
○井本政府委員 いろいろの場合がありまして一概に言いかねるのでございます。直接検事総長が法務大臣の部屋に参られまして、大臣と検事総長の間でじかにいろいろ御相談することもございます。あるいは次長検事が私どものところへ下相談に参りましてそこで相談することもございます。また会議の席でもつて、私どもが検察庁の首脳部会議に参りまして、そこでいろいろ相談した結果をそれぞれ上司に相談して、その相談の大体の結論に基いて検事総長が大臣のところに参られまして相談する、御指揮を受けるという場合もございますし、一概にはなかなか言いかねるのでございます。
#45
○猪俣委員 私の聞かんとするところは、法務省と検察庁との関係を聞きたいと思つて質問しているのです。その意見に不一致があるように新聞が伝えておる。そこであなたに今までの実際の取扱いを聞いておるのです。完全に意見が一致しておるなら問題はないけれども、そこに法務大臣が介在することによつて検察庁の希望するように運んでおらないところがある、あつたつていいですよ。検察庁法に指揮権があるのですから、法務大臣の権限として適当ではないと思えば指揮しても私は何ら違法ではないと思うが、実際あなたのような話を聞けばさような場合がないように聞える、聞えるが世間及び新聞はそうじやないように伝えておる。そこで質問しておる。ですからいろいろな場合がありましようが、結論として検事総長は三人逮捕したいと考えて稟請したけれども、法務大臣が中に入つて二人にしろ、一人はお預けだというような処置をとる場合があるかどうか、私はとつても必ずしもそれは不法だというわけじやありません。それに相当の理由があるならば、これは検察庁法第十四条に当然予期していることでありますから、ぼくはそういう処置をとつても違法だと思わぬのです。思わぬのでありますが、それには法務大臣が虫のせいやかんのせいでそういう処置をとるはずはない、何かここに根拠がなければならぬから、それでその根拠をお尋ねしたいと思つたのでありますが、初めから検察庁と法務大臣の間に何ら意見の相違がなかつた、検察庁は二人逮捕請求してくれといつて来たから二人を承認をしたまでだ、こうあなた方はおつしやる、しかしどうも新聞はそういうふうに伝えておりませんので質問したのです。そこで私があなたに聞くことは三人なり五人なりとして請求したいというものを法務大臣に稟請して来た場合には、その検察庁の考え方が、希望がそのまま法務大臣の前に展開されたものかどうか、その中にあなた方が入つて取捨選択するようなことがあるのかないのか、それはいろいろの方法はありましよう。次官が折衝に行くこともありましようし、あるいは検事正、検事総長が法務大臣のところにやつて来ることもありましよう、いろいろの方法をあなた方に聞いておるのじやないのです、実際問題と最後の結論とを聞いておる、検事総長が五人という場合、五人の検事総長の申請があるぞということを、それがそつくり法務大臣に知らされておるのか、あるいはそのうちまあ二人だけにしてあとはやめておけというようなことであなた方が握りつぶしておくようなことがあるのか、私が聞きたいのはそこなのです。方法を聞いておるのじやないのです。だから口頭でやろうが書面でやろうが、検事総長が五人と言つた場合に五人の名前がずらりと法務大臣の耳に入るような仕組みになつているのかいないのか、検事総長の請求が途中で五人が三人になり二人になつて、最後の二人が法務大臣の耳に入るだけで、あとの三人は法務大臣は全然知らぬということになるのか、そこを私はお尋ねしているのです。その意味でお答え願いたいのです。
#46
○井本政府委員 中の機構は非常に複雑でございましてなかなか御理解が願えないと思いますけれども、正式に検事総長から何人か人間が確実に指定されまして稟請があれば、当然これは全部法務大臣にお目にかける次第でございます。しかしながら実際問題といたしましては、正式な稟請を得る前に下相談が何回もございまして、そのときに大体において全部意見が一致する次第でございます。一致いたしますればその一致した分だけが大臣の方まで上つて行きまして御決裁を得るということになるのでありまして、最後まで検察庁と法務省側と意見が違つたということは、私が関係いたしましたーー在職期間わずかでございますけれども、いまだかつて一度もさようなことはございません。現在でもございません。
#47
○猪俣委員 きようの各新聞に出ておりますが、朝日新聞にも非常に詳細に書いてある。私どもはもちろん新聞に書いてあることはことごとく真実だと思いません。しかしかように具体的に書いてあることがまたことごとく虚構のことだということになるならば、新聞なんてほとんど必要はないことになる。その意味におきまして私どもは今検事総長、検察庁側は三人を被逮捕者として稟請して来た、しかるに犬養法務大臣は緒方副総理と相談の上で一人を削つて二人だけにした、そのいきさつを新聞記事を読んでみまして、私どもの直感でありますが、これは虚構のことを書いたとは思われません。虚構のことを書いたとは思われません。虚構のことを書いた場合におきましては、よく新聞を見ると大体わかります。こういう正確な時と所と人名とを書いてあるものが、ことごとく虚構だというようなことは私ども信じられない。しかしあなた方も、その事実を認められない立場々々が多少あるかもしれませんから私どもはこれ以上追究をいたしませんが、ただどこまでも私が聞こうとしたことは、検事総長が三人を被逮捕請求者として稟請して来たことに対して、法務大臣が二人だけにして他を留保したという事実、こういう検察庁と法務大臣との間に食い違いがあつたという事実、これについて私はお尋ねしているけれども、井本局長の答弁はどうも要領を得ない。ことさらに事を糊塗することに汲々としているような答弁――何もあなた、そういう指揮をやつたつていいじやありませんか。かえつて隠す方がおかしい。正直に、実はそういう三人を言うて来たけれども、いろいろの都合で一人はやめろ、二人だけにしろ、それは法務大臣の職権で当然できる。ロボツトじやあるまいし、法務大臣がそういう指揮をしたつて何も不都合じやないとぼくは思う。法律にちやんと規定がある。それをあなた方がどういう関係かーーぼくはそんなに意地の悪い質問をする気じやない。正直に言つてくだされ。そこを何か検察庁と被請求者とのあれが一致しているように見せかけようとするから、まことに妙ちきりんな、さつぱり要領を得ぬ答弁をやつている。それは答弁技術としては及第かもしれませんが、人の信用を得るわけに行きません。うそばかり言つておるという感じです。うそばかり言つておるという感じの答弁は上手な答弁じやない。もう少し真実そうな答弁をしないといけないと思うのです。だがこれ以上いくら追究してもお答えにならぬから私はこれでよしておきますが、要は検事が単独でできる職権であります。しかも検事総長まで通じて検察庁の首脳部が三名に逮捕が必要であるとして請求して来た場合に、法務大臣はこれに対しまして、あれだけをやつてこれは残せというような処置をなさるのは、よほどの理由がないと世の誤解を受けることに相なります。これは今後もあることである。さような取扱い方をなさることに対して私どもははなはだ遺憾の意を表します。なお巷間いろいろな説がありまして、かえつてさような処置をなさるために疑惑は疑惑を生むということになりまするので、もし三名の稟請があつたうち一人を残さなければならぬ事情があるなら、それはもうざつくばらんにおつしやつて、事情がないなら三名は、そのまま逮捕の許諾の方途を講ずるということが司法の明朗化のために、司法権が厳正に行われているということの保証のために、ことに政党大臣はなおさらそういうことに対しまして事こまかな神経をお使いになつて、いやしくも世の疑惑を招くようなことをしないように――巷間伝うるところによれば、今後相当大物が検察庁から逮捕請求が出て来る、その際に法務大臣が腕を振わなければならぬ、そこでまず予行演習というか実績をつくるというか、この事件でひとつ法務大臣の職権のあるところを天下に示しておいて、その大物に限つてやつているのじやないという印象を世人に与える、これは前哨戦だというようなまことにどうもうかつた話をする人もありますが、私は犬養大臣に限つてさような態度をおとりにならぬと思います。
 そこで最後に犬養大臣にお伺いいたします。もし検察庁が検事総長中心の最高首脳部会議まで開いて、そうして法務大臣に逮捕請求の稟請をして来た場合、それは非常な理由があるならばもちろんでありますけれども、それに対しまして法務大臣はむやみにその請求を取捨選択するような行為をなさらぬ方がいいと思うのでありますが、犬養大臣の御決心を承りたいと存ずるのであります。
#48
○犬養国務大臣 お話は重々ごもつともでございます。御指摘のように私は法務大臣でありますが、一方政党に属しておりますので、ことさら世間の疑惑を招くようなことは極力慎んでおります。今刑事局長から答弁を申し上げましておしかりも受けたのでございますが、ざつくばらんにひとつ申し上げますと、私がしろうとの関係であることもありましよう、全部の場合におきまして、検察庁と法務省がその中途の経過において意見不一致の場合もありますが、意見不一致の場合甲と乙の二つの意見を私のところに持つて来て、さあお前の判断で決裁しろといつたことは一度もかつてございません。私のところに持つて来る場合は双方の意見をまとめて持つて来るわけでございます。この一般論から今御心配になり、特に御忠告のあつた当面の問題について、ひとつ御推察を願いたいと思つております。
 それからこれは答弁を御要求になつておりませんので、あるいは失礼かとも思いますが、国会議員の逮捕請求の事案が起りました場合には、必ず議院運営委員会に議題としてかかる問題でございますし、かつ一方においては閣議においてこの問題を説明することになつておりますので、逮捕請求をしなければならない国会議員の案件が起りましたときには、総理大臣がおりますならば総理大臣に私は報告をいたす慣例になつております。御承知のように総理大臣はこの議会では御欠席の場合が多いので、その場合は総理代理たる副総理に報告をいたしております。ところがいつもは副総理は院内の大臣室におりますから、つまり何と言うか、俗に言えば目立たないわけです。昨日はどういうものですか永田町の総理官舎におられまして、何か報告があるならこつちへ御足労を願いたいと言うので行つたので、きのうだけが特に何か特殊な政治的行動に見えたことはまことに私の不徳のいたすところでございます。しかし実相を申し上げますと、副総理は、法務大臣の判断において逮捕請求しなければならぬと言うならば全面的に信用するといういつもの慣例でありまして、その場合かつて注文を微塵にもつけたことのない人であります。これは特に申し上げておきたいと存じます。もつと詳しく申し上げますと、昨日一ぺん行きましたら先客がおりまして、その前で申すべき筋合いでないと思いましたので、私は参議院の本会議の質疑に応答すべくそちらへ参りました。また参りましたら客がおりましたので、そこで――くだらないことでございますが詳細に申し上げれば、一時半なので弁当をごちそうになりました。その客がどいてから三、四分ですか四、五分ですか、こういうふうになつてあしたの閣議でこれは議題となりますから御了承ください、従つて総理にもあしたの閣議の議題になるという意味で御報告を願います。これだけのことでございますから御了承願いたいと思います。
 それから法務大臣としては、特に世間に対しても明朗な法務行政をしているというように努めなければならぬ、これは全然御同感でありまして、至らない者でございますが、極力御期待に沿い、また御注意に沿つて行動をいたしたいということをお約束申し上げておきます。
#49
○高橋(禎)委員 猪俣委員の質問に関連して二、三法務大臣に御質問いたしたいと思います。
 第一は、検察庁法によつて法務大臣が個々の事件についても検事総長に指揮なさる立場にあられるわけでありますが、そういう関係があるために、将来いろいろ問題が起つた際、指揮をされる便宜等を考えて、いわば準備的にある事件の報告が検察庁側からあるものかどうか。もつと具体的に申しますと、今世間の注目を浴びておりますところの財界、政界、官界等にまたがる重大な疑獄事件について、その捜査の模様を検事総長から法務大臣に報告がなされておるものであるかどうか、それをお尋ねいたします。
#50
○犬養国務大臣 お答え申し上げます。捜査の大局といいますか、大体の方向については、毎日ではございませんが、時折――時折というと非常に遠くなるようでありますが、何といいますか数日おきとかあるいは事もないときは一週間に一度なりということでございますが、時々報告がございます。またよく御質問がありますが、参考人を呼んだのになぜ発表しないかという御質問がありますが、単なる参考人の場合には事後報告もない場合もあります。もちろん事前報告はない場合が多い、事前報告というのはほとんどない、さよう御了承願いたい。
#51
○高橋(禎)委員 国会議員を被疑者として取調べをされる場合に、法務大臣に対してその指揮を受けて参るかどうか、その点はいかがですか。
#52
○犬養国務大臣 失礼でございますが、御趣旨を誤りお開きしたことになるといけませんが、勾留中あるいは捜査中の国会議員の捜査方針について、私の指揮を仰ぐ場合もあるか、こういうことですか。
#53
○高橋(禎)委員 もう一度申し上げますと、法務大臣が検事総長を通じて、個々の事件を指揮されるという場合に、国会議員を被疑者として取調べをせよ、するな、そういう問題について指揮を仰いで来たときに指揮されるか、あるいは指揮されるようなことがあるか、その点をお伺いしたい。
#54
○犬養国務大臣 まず順序としてお答え申し上げます。逮捕請求の事態が起りました場合には、関係書類を検察庁から刑事局長の手に移しまして、そこで法務省側として熟議することになつております。これに対して私の補佐役である次官も私の判断の補佐をいたします。但し猪俣委員に申し上げましたように、法務省はこういう意見だ、検察庁はこういう意見だ、あなたひとつこれを決裁してくれというようなことは、実際上一度もございません。私のところに持つて来るときには、中途の経過においてはこうだつたがこうまとまりましたのでひとつ決裁してくれ、こういう場合が全部でございます。これは御了解願えるのではないかと思います。それからその他の場合には報告はございますが、こういう国会議員についてどういう方針で捜査しようかということはございません。また私が呼んで、一向話がないが、この国会議員についてこういう捜査をしたらどうかということもまだございません。と申しますのは、猪俣委員に申し上げましたように、検察庁法に「指揮」となつておりますが、私は法務行政の重要性にかんがみまして、ほんとうに懇談をし合つて結論を出す、こういう形をとつておりますために、一方的な意思表示というものをかつてしたことがございません。ことごとく相手の意見を聞き、熟考し、自分の意見を言つて結論を出し合つてそこで懇談し合う、その判断の補佐として法務次官や刑事局長が出て、最後の決断をするときたは、事実上において法務省も検察庁も含めてみな意見が一致しておることをもつて私の最終の決断とする、こういうふうにいたしておるわけであります。
#55
○高橋(禎)委員 指揮の方法は懇談的でもいい場合もあるでしよう。そういうことをお尋ねしておるのではございません。率直に申しますと、ただいまは逮捕許諾の請求権を出すというような場合について主としてお話がございましたが、その逮捕状を出すとかいう段階に達しない。あるいは逮捕の必要がないような事件について、国会議員を犯罪の嫌疑者として取調べる場合に、逮捕状の場合を除いて、いわば逮捕しないで取調べをする場合に、法務大臣は検事総長に指揮をされるのですかされないのですか、またこれまではどういうふうにたさつたのですか、この点をお尋ねしておきます。
#56
○犬養国務大臣 事実問題として参考人として任意出願をお願いした結果、逮捕請求の段階に至らない場合には、これは至らなかつたという事後報告が出るのであります。従つて逮捕請求に至らない場合において、私の判断一つが最後にかかつておる場合は事実上ございませんでした。
#57
○高橋(禎)委員 これは伝え聞くところによりますと、逮捕されない国会議員が捜査官の取調べを受けて、しかも黙秘権の存在しておることなどを告げられて取調べをされた、これは被疑者を取調べをする、すなわち犯罪嫌疑者を取調べをする形式であると思うのでありますが、そういうふうな取調べをしておる場合に、すなわち逮捕請求が出るという段階に達する前に国会議員を被疑者として取調べをしたものについて、法務大臣は一々御指揮をなさつておられますか、全然御存じないのですか、その点をもう一度お伺いいたします。
#58
○犬養国務大臣 逮捕請求に至るべき被疑者というのですか、被疑者の段階に入りかけておる事件については一々報告がございます。しかし逮捕請求にいよいよ正式になるという場合は、正式の書類が刑事局にまわつて参りまして、刑事局長がこれを読みまして、その判断と万一意見が違つておりますならば、検察庁と事実上意見調整をして、調整なつたときに私の指揮を受けるように実際やつております。
#59
○高橋(禎)委員 そういたしますと、先ほど来猪俣委員が質問されました、検察庁側は三名の逮捕の許諾を得たい、こういうふうな形で指揮を仰いで来たものについて、法務大臣としてはそのうち二名だけを逮捕許諾請求をしようという意見でもつて指揮をされ、残る一名については未解決であるとか、あるいは逮捕許諾の請求をなすべきものでない、こういうふうな意見が出て、そういう指揮をなさつたことについては法務省には一々その関係書類はあるわけでございますか、その点お伺いいたします。
#60
○犬養国務大臣 お答え申し上げます。関係書類は写しが来ておるそうです。これは事実問題としてさつき猪俣委員にお答え申し上げましたように、厖大な書類でございますから、刑事局長の責任においてその要点を私に報告するわけでございます。そこで御質問のもう一つの点に触れるわけでありますが、検察庁はこう言うが、法務省はこう思う、そこであなたがひとつ判断してくれという場合は、実際上一つもございません。そういう場合は、中途経過の報告として、ことに外人犯罪において、私のところに、一時こういうふうに意見が違つていましたがということは、ときどきありますけれども、最終の指揮――むずかしく言えば指揮、やわらかく言えば私の判断を仰ぐ場合には、中途はこうでしたが、意見は一致しましたので、判断してくれ、こういう形になつております。
#61
○高橋(禎)委員 もう一度今の点をお尋ねいたします。簡単な書類でもあるいは厖大な書類でも、それは選ぶところではございませんが、ともかく検察庁側から指揮を受けて来たという事件について、そしてそれに対する法務大臣の指揮をなさる内容については、その書類は法務省にあるわけでございますね。その点をもう一度はつきり……。
#62
○井本政府委員 事務的な問題でありますから、私からお答えいたします。書面になつて正式に稟請して参りました書類は、全部とつてございます。しかし非常に急ぎます際には、正式な書面ではなくて、口頭で指揮を受けて来るという場合も、たびたびございます。従つてそういう場合には書類はございません。
#63
○高橋(禎)委員 国会議員の逮捕許諾を求めるための指揮を受ける場合においては、書類が常にあるものですか、あるいはそういうことでも口頭で指揮を受けて来ることがあるものですか。従つて言葉をかえますと、国会議員の逮捕許諾に関する指揮関係については、書類がすべてあるのですか、あるいはあるものもあり、ないものもあるわけですか、その点をお伺いいたします。
#64
○井本政府委員 外人関係の事件などほ多少日時がございますので、全部書類で正式に稟請して参りますが、国会議員の逮捕許諾のようなものは非常に急いでおりますので、大体正式の稟請書がないことが多うございます。
#65
○高橋(禎)委員 法務大臣にお尋ねをいたします。先ほどの御答弁によりますと、検事総長から、大体このたびのいわゆる疑獄事件については、時々その捜査の模様を報告しているというお話でございますが、法務大臣はその報告を受けられた資料内容に基いて、これを総理大臣なり、あるいは副総理なり、いわゆる政府側に対して報告をしておられるのですか、おられないのですか、その点をお伺いいたします。
#66
○犬養国務大臣 まだ中途の段階については報告しない部分が多うございます。しかし先ほど申し上げましたように、閣議の議題になるという問題については、必ず報告をいたしております。
#67
○高橋(禎)委員 今の御答弁でちよつと言葉がぼけておるところがあるのですが、もう一度お尋ねをいたします。そういたしますと、閣議で問題になるという段階に達したものは、これはもう実は私のお尋ねする中には入らないわけであります。これはお尋ねするまでもなく明らかなことであります。これはきわめて重要な問題でありますが、あなたが逮捕許諾請求のような、閣議で問題にするという段階に達しない現在の捜査の内容について、全然総理その他内閣側に対して報告はされないのですか、あるいはまた多少なさつたものがあるのか、その点をお伺いいたします。
#68
○犬養国務大臣 内閣には事柄の性質上いたしたことはありません。総理大臣が事件の外貌を聞かれます場合、将来の見通しということは、検事総長も私に説明しかねる部分が多うございます。従つてこれは臆測の程度でございますので、正式の報告にはいたしません。既往の事実については詳しく申しております。総理がさしつかえるときには、副総理をして通じていただくようにいたしております。
#69
○高橋(禎)委員 法務大臣の捜査指揮権というものは、きわめて重要な任務であると私は思います。しかもそれはいわゆる捜査が秘密の原則の上に立つております関係上、これが他に漏洩するというようなことがあつては絶対に相ならぬと思うのであります。ところがこのたびの汚職事件、疑獄事件のごときは、きわめて重要で、政治的にも大きな影響のあるものと考えますが、しかしこれを総理なり副総理なり党に、法務大臣が、まだ逮捕許諾請求という段階に達しないものを、すなわち海のものか山のものかわからない、結論の出ていないものを、あらかじめ報告をされるということは、一体法律上どういう根拠に基いてなさるものであるかということ、これが一点。
 次には、そういうふうに報告をなさつたことによつて、その秘密が漏洩し、少くとも政党内閣制を採用しております実情から見ますと、政府部内の人あるいはまた与党内の人には、いわば事前にこの捜査の模様がわかるという危険はないものであるかどうか、それらについて法務大臣の御所見を伺いたいと存じます。
#70
○犬養国務大臣 先ほどの御質疑は、私の不行届きでよく受取れませんで、今はつきりわかりました。なお進んでお答えをいたしたいと思います。もちろんこれから何々会社がどうとか、捜査の将来に関し、捜査の秘密に関することは、総理大臣といえども報告してございません。これははつきり御了解願いたいと思います。
 それから逮捕請求につきましても、たとえば総理大臣あるいは総理大臣代理たる副総理に報告しますときには、念を入れまして、刑事局長に既定の事実になつたかどうか、念を押してから、行くことにいたしております。もちろんこのたびも私の部屋において刑事局長の正式の手続をしました上で、初めて報告の行動に出ておる次第でござといます。
 それから御注意の点は、しごくごもつともでありまして、私もこの前警察法のことで、自由党の幹部室に入りまして誤解を招きまして以来、極力慎んでおります。この点は十分に法務大臣として職責を果せるように注意をいたしております。いやしくも一方にのみ事前に情報が漏れるというようなことがあつては、これは国民に相済まないことでございますから、厳格にこれを注意いたしておることを申し上げておきます。
#71
○高橋(禎)委員 ただいまの問題は非常に重要なことでありまして、先ほどの御答弁と後に御答弁になつた内容とに、私はいささか隔りがあるように感ずるわけであります。しかしこういう重大な問題について、ちよつとした法務大臣の不用意なと申しますか、あるいは誤解の上に立つての御答弁で、追究しようとは思いませんが、内閣総理大臣が一体事件の内容を知らないから、日本の現在の政局に処して行く道を知らないのだという国民の声が一部にあります。いま一部には、あまりにも内閣側に早く漏れるから、それが非常に捜査の妨害になるのだという声もあるわけであります。そのいずれであるかということをはつきりすることは、国会が国民の希望にこたえるゆえんであると思います。そこのところをはつきりさせたいためにお尋ねをするわけでありますが、逮捕許諾請求のごときいわば表面的な、もう捜査の秘密ということとはわくをはずれた、そういう段階に達したものについては内閣あるいはまた総理、副総理等に報告をするが、その段階に達しないものについては少しも報告しないものである、そういう考えでもつてそれを実行しておる、こういうふうにお答えになつたのですか、この問題について明確な御答弁をいただきたいと思うものであります。
#72
○犬養国務大臣 その通りでございます。私どもも捜査の進展いかんというようなことは総理大臣といえども申し上げておりません。しかし汚職というものの世間の見方、そういう政治問題については私も意見がございますが、捜査の内容については、いやしくも秘密を守るべきところは厳然として守らせていただいておりますし、特に申し上げておきたいのは、幸いに総理大臣はそれは非常に理解しておる方でありまして、かつて私に捜査についてどうなつておるかということを特に尋ねられたことはございません。一度ありましたのは、近ごろ新聞にいろいろ出るのはどういうわけで名前が出るかということのお尋ねがありましたので、私はそれについて当局で聞いていることを、いろいろ原因の推測でございますが、言つたことはございます。しかし私が、ことに確言として申し上げるのは、総理大臣は当該大臣の責任とかいうことを非常に重んじられる方でありまして、さしでがましく今後どういうふうになりますかという御質問はかつてございません。これは明確に申し上げておきたいと思います。
#73
○高橋(禎)委員 そういたしますと、やはり世間の一部の人が心配しておるように、総理大臣は現在起つておる事件の内容を知らないために、それとの関連において現在の政局を考えるとき、どうも認識不足で困るという、こういう考えが的中するように思えるのであります。と申しますのは、総理大臣は新聞に出ておること、あるいはうわさに聞くこと、そういうことしかこの疑獄事件については認識がないのであつて、正確にその筋から責任ある人の報告も受けていないのだから、ほんとうのことは吉田総理にはわかつておらないのだな、こういうふうに考えられるのでありますが、そのように受取つてよろしゆうございますか。
#74
○犬養国務大臣 せつかくの御質問でございますけれども、総理大臣が時局をいかに考えているかというようなことは、法務大臣として答弁申し上げることは不適当かと思います。総理大臣は総理大臣としての政治的な見地から全体をながめて大局を判断なさるのでありまして、法務大臣から捜査の将来、その発展性を聞かなければ判断がつかないという総理大臣ではないと私は思います。従つて総理大臣が判断が悪いのは、法務大臣が言わないからだというのは、少しどうも私の答弁申し上げる範囲でないと思いますので、これはひとつ御了承を願いたいと思います。
#75
○高橋(禎)委員 ただいまの御答弁は、私の質問をちよつと誤解されたのではないかと思いますが、私は今吉田内閣総理大臣の政治的見識を問題にしておるのではないのであります。しかしこの事件をいかに認識するかということによつて、日本の現在の政局に処すべき道はおのずから異なると思うのでありますが、その吉田内閣総理大臣は新聞で見たりあるいはうわさに聞いたりした程度の、この事件に対する認識しか持つておられないのですかどうですか。それともそうでなくして、こういうふうな事情があるから正確に認識しているはずだとか、事件の内容をいかに認識しておるかという、こういう問題でありますから、それについてお尋ねをする次第であります。
#76
○犬養国務大臣 これはどうも総理大臣からお答え願うのが適当だと思います。総理大臣が時局をどう見ているかということは、久しくお目にかかりませんし、私から申し上げることはちよつと不適当だと思うので、御了承願いたいと思います。
#77
○小林委員長 高橋君、庄司君から質疑がありますからできるだけ簡単に……。
#78
○高橋(禎)委員 はい。今度は多少方向のかわつた問題についてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、法務大臣が検事総長に個々の事件について御指揮をなさる場合には、これは申し上げるまでもなく、また先ほど来繰返して法務大臣の口から直接伺つたわけでございますが、この指揮権は実にたつとく、かつ任の重いものであると思うのであります。私は、検察庁側から指揮を仰いで来たものを、法務大臣がこれをすべてうのみにされるというようなことがあつたのでは、これはまた検察フアツシヨなどというような事態の起ることを国民は非常におそれるであろうと思うのであります。法務大臣の見識と責任においてこの指揮権を行使さるべきものであると思うのであります。ところがきわめて内容複雑であつて、これはよく法務大臣のお話になる超人間的なものでなければ果せないような大きな問題もあるかもしれません。そういうようなときに、自分一人の力ではどうにも判断がつかない。これを検察庁側に相談したのでは、検察庁側の意見と自分の意見が異なる場合には、これは問題を解決する道でないから、こういう問題について検察庁側から指揮を求めて来ておるが、自分一人の思案には負えない、解決がつかぬから、ひとつ緒方副総理にでも相談してみて、何か判断の材料でも得たいというような意味で御相談なさることがあるのですか、ないのですか。と申しますのは、昨日の緒方副総理にお会いになつた事態について先ほど猪俣委員からの質問がありまして、結局はつきりとした結論を得なかつたように私は思うのでありますが、この点についても、これは新聞の記載等を見ましても、またこれを読む者の一般世人の考えからいたしましても、何か臭いぞ、こういうように見るのですが、しかし私はそういう臭いぞという見方ではないのであります。法務大臣が指揮権を行使される場合に、総理なりあるいは副総理等に、これをどうしたらいいだろうか、自分ではちよつと判断に困るのだが、というような御相談をなさる場合があるのかないのか、それをお伺いしたいのであります。
#79
○犬養国務大臣 これは進んでお答え申し上げたいと思います。断じてありません。総理はそういうことを聞く性格を持つておられません。また副総理も同様でありまして、私もしろうとでありますが、副総理もしろうとなのでありまして、刑事問題について最終の判断を聞くお相手には不適当です。これははつきり申し上げてよろしゆうございます。
#80
○高橋(禎)委員 私どもは、捜査権の行使は憲法の精神、刑事訴訟法の精神がそつくりそのまま実現するように尊重されてなさるべきものであると考えますし、もちろん法務大臣もそのお考えであるということはしばしば伺つたところでございます。そこでこの捜査をなさる場合に、特にこのたびいろいろ重要な事件が生起いたしておりますが、これらの事件の処理にあたつての捜査は、いわゆる任意捜査と強制捜査、すなわち強制力を用いる捜査方法と、どちらを基本的、原則的なものにするという考えの上に立つて御指揮をなさつておられるか、この点をひとつお伺いいたしたい。
#81
○犬養国務大臣 もちろん、これは高橋さんに申し上げるのは、かえつて専門家に申し上げるようなことは失礼でございますが、刑事訴訟法の根本精神に基きまして、できるだけ強制力を用いないということが大切であると思います。ただしばしば刑事局長もこの席でも他の席でも申し上げますように、贈収賄事件というものは、どうも世界各国でも勾留する場合が多いのでありましてその点についてたびたび同僚議員からも御忠告もあり、御注意もありまして、その御注意も至当だと思いますが、長後に真にやむを得ない場合、ことに贈収賄のケースにつきましては、身柄の勾留をあたえてせざるを得ないという場合がときどき起りますことは、事の性質上まことにやむを得ないことであると存じております。
#82
○高橋(禎)委員 本日のある新聞に、「佐藤検事総長、疑獄を語る」という見出しで大きな記事が出ておりますが、これは前回の委員会において私は法務大臣にお尋ねをして、まだ解決のつかなかつた問題だと思うのであります。その記事によりますと、「できるだけ早く捜査を終るようにしたい。そう願つて大奮闘しているんですよ。」「まあ四月一ぱいはね。この間にヤマは見えるようにしたいと思いますが」というように、読んでみますと大体四月一ぱいでこの事件については捜査が山を越して、どういう結末になるのだということがほぼ一般にもわかるというところまで行くだろう、こういうふうな感じもするお話なんですが、私ども常識的に考えて、それからこの前の委員会の法務大臣の答弁の裏を考えれば、ほぼこういうところにあるのだと思うのですが、大体そういうようなお考えなんでございますか。
#83
○犬養国務大臣 お答え申し上げます。検事総長から、この事件の全般的解決に要する時間といいますか、月日といいますか、そういうことについて、報告があつたこともございます。何箇月も際限なく続くというものでもなし、その点について報告はありましたが、四月末日で打切つてあとはどうというような断定的なことはございませんが、ある期間でもつて山を越すという見通しは、検察当局も当然持つておるようでございます。それ以上何箇月でどうということは正確に聞いておりませんので、ちよつと責任を持つてお答えしかねるのでございます。
#84
○小林委員長 庄司一郎君。
#85
○庄司委員 時間も時間でございますので、簡単に三、四分間法務大臣にお伺いというよりは、むしろ私は御懇談を申し上げて、御善処を願いたいという問題であります。その問題は、きのうのある大新聞を見ますと、新日本海運株式会社取締役会長、古川何がしの逮捕か送検かの問題についての報道がございましたが、その表題は、「古川会長の前科暴露す」という題であります。古川という人が故意に自分の前科を隠蔽しておつたものがばれたというような意味であるかどうかはわかりませんが、私のお伺い申し上げたい信念は、刑法第三十四条ノ二の改正の精神をあまねく全国民の間に普及徹底されたいということであります。刑法第三十四条ノ二は、あらためて申し上げるまでもなく刑の消滅であります。俗な言葉で言うならば前科抹消法であります。この三十四条ノ二は、御承知の通り、刑の軽かつた者は五箇年後に、重刑の者は十箇年後に、その期間において再犯、累犯等のない場合は、原裁判所における判決による刑は消滅してその人間のいわゆる前科を一生涯許して行く、そうしてその人間を善良なる国民として更生させる、司法保護の立場から善良なる人間に立ち返らせて、職の上においても、あるいは子供の結婚の上においても、学校の入学の点においても、前科者という悲哀、社会の差別的待遇を除去してやる、そのあたたかい愛情のこもつておる改正法であり、愛の条項であると私は考えておるのであります。私は昭和十九年より約十箇年間、この改正をすみやかならしめんがために国会において努力して参りました。また地方においては約三十年いわゆる司法保護、釈放者の保護更生のために微力を注いで参りました。しかるにきのうあの新聞を見まして、まことに義憤を禁じ得ません。古川鉄男という人は、もとより私は一面識もなければ何らの交際もございません。私はこの古川という人のためにこのことを弁ずるものではございませんので、どうか誤解のないように願います。またこの委員会の委責各位は、ことごとく超党派的に御理解と御同情をちようだいすることができ得る方々であることを深く信じますが、この際法務大臣にお伺い申し上げ、結果においては御善処願いたいのは、せつかく刑法を改正して、元の古きずを許してやるその法律ができており、全国には約六万人のいわゆる司法保護委員を任命して、これまた相当の国費を使つておる。六万人の委員というものは、まつたく献身的に働いて再びあやまちなからしめんがために努力をされておることは、大臣よく御承知の通りであります。もちろん強盗とか窃盗とか、すりの常習犯であるとか、そういう者であるならば、警察においても検察庁においても、これは前科何犯であるというようなことを新聞関係の社会部記者諸君に教えることも、あるいは社会の警戒のためによいかもしれません。けれども、何十年前の古きずといいましようか、前科といいましようか、そういうあやまちのあつた人間が、その後更生してまじめに働いて、いやしくも何十億という資本の会社の取締役となり会長に選ばれたということは、少くとも最近においては、非常に更生された正しい生活をやつて来た人であると私は考えるのであります。今回の被疑事件の内容はもとより知りません。あるいは検事が起訴するかどうかということも承知しておりませんが、この立法の精神、改正刑法の精神が普及徹底しないで、いまだにきわめて簡単に――しかもきのうの某新聞のごときは、「古川会長の前科暴露す」というような、彼の過去の前科というものが何か恐ろしい社会的の警戒を要するかのごとき印象を与える新聞の表題である。私は新聞の諸君がプレス・コードを尊重され、新聞にもまた倫理、モラルというものがあると考えます。ただ人の過去の弱点を爬羅剔抉して、しこうしてその人の子供の入学、結婚あるいは就職その他に大きな影響を与えるであろうところのそういうことを、簡単に取上げる新聞の編集者の方々にも御考慮願いたいことは言うまでもありませんが、何らかの方法でこの刑法第三十四条ノ二の改正の趣旨を、たとえば検事長の会議であるとか、検事正の会合であるとか、あるいは司法警察官の会議であるとか、そうした御懇談の場合に、前科者を社会的にほんとうに保護してやるところの方途について、法務大臣に直接指揮監督権があるかどうか承知しておりませんけれども私は最近まで司法保護更生審議会の委員をやつておりましたので、特に法務大臣の御配慮によつて前科者が保護されて行くように、三十四条ノ二の立法の精神があまねく普及徹底して、一たび誤つて罪を犯しても、その後二十年、三十年たつてりつぱに改過遷善、よい人になつたものはあくまでも保護してやる。今日は、五年、十年後、あるいは平和回復、大赦、恩赦等によつて多くの人が許されております。昭和十四年当時わが国の前科者は四百六十万人ございました。その八割のものは三十四条ノ二によつて許され、また爾余の大部分のものは恩赦、大赦によつてその刑が消滅し、抹消されたのであります。しかるにかかわらず軽々に、司法警察官や理解のない検察事務官等が、新聞記者などにその人の過去の古きずを平気の平左エ門で教えるというような誤つたことが万々一あるとするならば、司法保護の努力はまつたく無にされて行くのであります。私のお伺いといいましようか、私の信念から出発したるところのこの御相談に、どうか法務大臣乗つていただきたい。これについてもし御感想なり御善処の方途があるならばお示しを願いたいと思うのであります。本日私は臨時に法務委員をお願い申し上げて、あえてこの問題をとらえてあなたに御懇談を願うゆえんのものは――この法の精神があまねく普及し、社会問題化さないように、ヒユーマニズムの上より、釈放者といえども、前科者といえどもこれを保護して行く建前のもとに、あくまでも法務省は陰に陽に、ひとつ御善処を願いたい、この信念の上からお伺い申し上げた次第であります。私の質問はこの一点で終ります。
#86
○犬養国務大臣 御趣旨は全然同感でございます。前科のある人を更生させ、社会の要員としてもう一度りつぱに働いていただくということは、立法もいたしておりますし、法務省の保護局の重要な仕事の一つでございます。御指摘の点は、裁判所等が公務に関して照会する場合には前科の記載がありますけれども、部外におけるあらゆる書類には、前科の有無ということは一切問題にいたしておりません。また裁判の判決の場合には、累犯加重という必要から前科のことが問題になりますが、それ以外は前科を全然問題にいたしておりません。従つて、これを要するに、外部の人と関係のあるような事案について前科の有無を当局が問題にするということは全然ございませんから、さよう御承知を願います。またかりに、おれは前科があるとかないとかいうことを外部の社会人に言う者があるといたしますならば、私の方針と違いますので、この次のよい機会に、各地方検察庁の係員の会同の場合に注意をいたしたいと存じます。
#87
○庄司委員 よろしゆうございます。
#88
○小林委員長 古屋委員。
#89
○古屋(貞)委員 蛇足のようでありますが、けじめがつきませんから法務大臣に伺いたいのであります。二点だけであります。
 第一点は、事件の報告を検事総長なりあるいは刑事局長から受けまする――先刻の御答弁によりますと、重要な案件については報告を受ける、かように伺いましたが、それについて何か要項のようなものがありまして、かような程度のものは報告をする義務があるというような基準があるかどうか、この点であります。なお何も基準はないのだけれども、検事総長並びに刑事局長あたりから報告を受けているにすぎないのだ、かようだといたしますならば、法務大臣の方から個々の事件の内容の報告をするように要求をしている事情があるかどうか、さような場合にはどの程度のものを要求されているか、その基準、大体の目安がございましたならばお尋ねしたいと思います。
#90
○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。最初に申し上げたいのは選挙違反のことでございます。たとえば選挙違反では、国会議員に関する限り必ず報告がございます。従つてこの水準をもつてでございましよう。国会議員の刑事犯罪の問題も必ず報告がございます。あとどのくらいの水準ということになりますと、たびたび申し上げますように、検事総長と私は絶えず懇談をいたしておりますので、検事総長は私に、報告すべき重要性を帯びているものは必ず報告をいたします。ただ例外のありますのは、たとえば古屋さんの党に関係のあることを、一つ地方的なことを申し上げますならば、ある県で某代議士がその地方のならず者といいますか、それに公衆の面前で殴打された事件があるのであります。これは参議院の法務委員会のある委員からお尋ねがありまして、報告がありませんので私から聞いて、事実あつた、そうして応分の処置のあつたことを承知しております。というふうで、例外もございます。しかし、それは一々報告すべき内容だと思つていなかつたかもしれません。そういう場合には私から問い合せることがごさいますが、検事総長が報告の必要があるという水準以上のもので、私から尋ねなければ報告がないという体験は今までございません。
#91
○古屋(貞)委員 ただいまは選挙違反の関係でございましたが、官公吏の犯罪につきましては何か基準がごさいましようか。たとえば官公吏の課長以上あるいは局長以上が犯罪の嫌疑をかけられて捜査している、かような問題につきまして基準等はございませんか。なお今回のような涜職事件の関係で、官公吏のある程度の地位の者については、捜査の中途におかれても報告をいたすことになつておるのかどうか、これもやはり検事総長の臨機の処置で御報告を申し上げればよいのか、この点はいかがでありますか。
#92
○犬養国務大臣 官公吏のどれから上の人でどういう事件以上のものは報告するとかしないとかいう水準はございませんが、御指摘のように、社会の注目を受けておりますいわゆる涜職事件につきましては、私の体験では課長級の報告がございました。
#93
○古屋(貞)委員 そういたしますと、選挙偉反で代議士に関係する以外のことにつきましては、検事総長が適宜の判断に基いて報告をしているのだ、かように承つておいてよろしゆうございますか。
#94
○犬養国務大臣 大体さようでございます。その認定におきまして、あるいは地方の検察庁におきまして、重要な事案だと認定いたしたものは報告を受けている、こういうことでございます。
#95
○古屋(貞)委員 いま一点でございます。捜査の指揮権を法務大臣がお持ちになつておるのですが、その責任を持つて指揮をいたします場合に、先刻の御答弁を拝聴いたしておりますと、代議士の逮捕許諾に関する問題は大体内容の記された書類が刑事局長の手元に届けられる、なお事件の内容に対する重要な点については書類が届けられるというように私は承つておつたのですが、私が承りたいのは、最後の指揮をされまする、決意をおきめになりまする場合に、勘でおやりになつておるのか、あるいは具体的な資料に基いておやりになつておるのか。資料があるとするならば、どれほどの資料でおやりになつておるかということを承りたいと思います。
#96
○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。これはだれそれの場合ということでなく、かりに逮捕請求というような場合のことでお尋ねと思いますが、検察庁でこの当該事件に関係ありという書類は全部刑事局長に届けて参ります。刑事局長は、先ほど御説明申し上げましたように、その要点を的確に把握いたしまして私に報告いたします。そして私はその判断をいたすのでありますが、事実問題として、検察庁と法務省が意見の相違のままひとつ大臣の判断を最後に仰ぎたいという場合は実際上は一度もございません。もちろん各官庁にもありますように、ある場合においては、中途の経過において意見の相違がある場合もありますが、意見の調整をした上持つて来て私の判断を仰いでおります。私は先ほど申し上げましたように、検察庁法の用語は指揮でございますが、実際は十分に互いの意見を吐露し合い、そうして懇談的に事を運んでおる次第であります。
#97
○古屋(貞)委員 そうしますと、大体法務大臣の最後の決をおとりになりまする、いわゆる決意を御発表になりまする資料というものは、大体部下の方たちの甲乙の意見を両方とも聞かれて、あるいはただいまの御答弁によりますと、大体検察庁と法務省との意見が合致したものであつた、かように御答弁がございましたが、みずから独自の立場から法務大臣が指揮をする、決意をするというようなことはございませんか。それともさような場合もございますか、その点を承りたいと思います。
#98
○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。検察庁法ではそれはあり得るのでありまして、猪俣委員も指揮してちつともかまわぬじやないかというようなお言葉もあつたのでありますが、実際の場合としましては、事の重要性にかんがみまして、私も自分の判断を持つこともあり、また報告に基いて不審を起す場合もございます。その場合には、そこで意見を吐露いたしまして、こういう考え方、こういう不審の持ち方を君たちはどう思うか、遠慮なく言つてもらいたいということで、さらに懇談をし、そうして円満な妥結を得た上で判断をいたしております。従つて強引にぼくはこう思うからこういうふうにしろという場合は、いまだ一度も起つておりません。また円満に妥協を処理するにはそうすべきでない、こういうふうに考えております。従つて私の判断に対して法務省なり検察庁なりが不平を持つたという場合は、まことに申し上げておこがましい次第でありますが、少くともこれまでには一つもございません。今後もないように努めたいと存じます。
#99
○古屋(貞)委員 そういたしますると、たとえば今回の造船の疑獄事件のごとき問題につきましては線が幾つもございますが、そうした線の大要については、あらかじめ法務大臣は検事総長並びに刑事局長の報告のもとに御存じである、判断をする前に捜査の内容については御存じであつたと承つておけばよろしゆうございましようか。
#100
○犬養国務大臣 これは一概に申し上げられませんで、たとえば某海運会社をほかの会社の関係において捜査を明朝するというような事務的な場合には報告がございません。あとからこうだという場合が多いわけでございます。ですから必ず事前に、明日は某会社のどこそこを家宅捜索するから了承してくれということはありません。
#101
○古屋(貞)委員 私が伺いましたのは、ただいま法務大臣のお答えのような具体的な問題ではないのであります。明日あるいは明後日捜査をする、あるいは逮捕状が何がしに出るだろうというようなことの問題でなくして、大体どこそごの船会社にこういうような嫌疑があり捜査が進められておる、あるいは捜査が進められるだろうという程度についての御報告は、受けておられるということに承つてもよろしゆうございましようか。
#102
○犬養国務大臣 これも私の法務大臣たる職務に重大関係がないと思う場合はあとからの報告になつております。その点の取捨選択は検察庁ことに検事総長が自分の判断でやつておる次第でございます。私の方であとから尋ねる場合もございます。
#103
○小林委員長 本日はこの程度にとどめておきまして、明日は午前十時三十分より委員会を開会することにいたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時五十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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