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1953/04/13 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第38号
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1953/04/13 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第38号

#1
第019回国会 法務委員会 第38号
昭和二十九年四月十三日(火曜日)
    午前十一時十六分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 田嶋 好文君 理事 花村 四郎君
   理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君
   理事 井伊 誠一君
      押谷 富三君    林  信雄君
      牧野 寛索君    猪俣 浩三君
      木下  郁君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 木村篤太郎君
 出席政府委員
        保安政務次官  前田 正男君
        保安庁局長
        (保安局長)  山田  誠君
        法務政務次官  三浦寅之助君
        外務事務官
        (条約局長)  下田 武三君
 委員外の出席者
        検     事
        (刑事局公安課
        長)      桃澤 全司君
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
四月十二日
 委員星島二郎君辞任につき、その補欠として高
 橋英吉君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
四月十日
 日本国における国際連合の軍隊の地位に関する
 協定の実施に伴う刑事特別法案(内閣提出第一
 四一号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 日本国における国際連合の軍隊の地位に関する
 協定の実施に伴う刑事特別法案(内閣提出第一
 四一号)
 法務行政に関する件
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の定施に伴う刑事特別法案を議題とし、政府よりその趣旨説明を聴取することといたします。三浦法務政務次官。
#3
○三浦政府委員 ただいま議題となりました日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法案につき提案の理由を御説明申し上げます。
 本法案は、去る二月十九日署名されました日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う国内手続についての規定を定めたものであります。
 日本国に駐留する国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使につきましては、すでに昨年十二月二十六日署名された日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の発効に伴い、その国内手続につき日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法が公布施行されているところでありますが、今回締結されました右の協定は、その第十六条におきまして右議定書とまつたく同様の規定を設けており、日本国との間にこの協定の効力が発生した国に属する国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使につきましては、爾後この協定によつて規律されることになつているのであります。そこでこの協定の発効に伴いまして、一九五〇年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の国際連合安全保障理事会決議並びに一九五一年二月一日の国際連合総会決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣したアメリカ合衆国以外の国で、日本国との間にこの協定の効力が発生した国が右の諸決議に従つて朝鮮に派遣した陸軍、海軍及び空軍の日本国にある間におけるものに関しましては、右協定の趣旨にのつとり、刑事上の手続法につきまして若干の特別規定を設ける必要が生じましたため、この法律案を提出することにいたしたものであります。
 申すまでもなく、これらの軍隊の構成員、軍属または家族に対しましても、わが国既存の法令は、原則としてその適用を見るのでありますが、右協定の刑事裁判権に関する条項によりまして刑事手続関係の法令につきましては若干の特別措置を必要といたしますので、その必要最小限度の規定をこの法律案に、取入れた次第であります。従いまして、この法律案に特別に規定していない事項につきましては、原則として既存の各法令が適用されることと相なるわけであります。
 この法律案は第一章総則、第二章刑事手続の一章十二箇条と附則からなつて奉るのでありますが、ここにこの法律案の主要点を申し上げます。
 まず、第一章総則の章は、一箇条でありましてこの法律において使用する語の定義を定めたのであります。この定義は、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定第一条に定められている定義にのつとつたものであります。
 次に、第二章刑事手続の章は十一箇条よりなり、国際連合の軍隊の構成員または軍属が国際連合の軍当局において裁判権を行使する第一次の権利を有する罪を犯した場合における同軍隊への身柄の引渡し、国際連合の軍隊がその権限に基いて警備している国際連合の軍隊の使用する施設内における施設内における逮捕その他人身を拘束する処分及び差押え、捜索等の処分の執行、同施設内等において逮捕された者に対する日本側の受領手続、派遣国の軍事裁判所または国際連合の軍隊の当局の刑事手続に対するわが国の当局側の協力及び派遣国の軍事裁判所または国際連合の軍隊による抑留または拘禁についての刑事、補償法の適用等いずれも刑事手続に関する現行の法令をもつてしては処置し得ない問題を取上げて特別の規定を置いたものであります。これを要するに、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法及び日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法の場合とほとんど同趣旨の刑事手続を規定したものであります。
 以上この法律案につきまして概略御説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
#4
○小林委員長 これにて趣旨説明は終りました。
 なお本案に対する質疑はこれを後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#5
○小林委員長 次に法務行政に関する件について調査を進めることといたします。
 本日は特に外務委員会と連合審査会を開会することになつておりました日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案に現われました特に法務行政に関連ある諸問題に重点を置いて調査を進めたいと存じますから、さようお含みの上御発言願いたいと思います。
 なお発言の通告がありますから順次これを許すことにいたしますが、通告者が相当多くありますから、本日の発言はなるべくこれらの点を御了承くださいまして、要点を簡潔になされるように特にお願い申し上げておきます。それでは順次発言を許します。高幡禎二君。
#6
○高橋(禎)委員 いわゆる秘密保護法の法案に関連して政府当局に二、三質問をいたしたいと考えます。まず私はこの秘密保護法の立案をされたいきさつについて一応の御説明を承りたいと考えます。
#7
○前田政府委員 この法律につきましては提案理由の説明において申し述べたと思うのでありますが、御承知の通り日本国とアメリカ合衆国との間で相互防衛援助協定が調印されまして、現在国会で審議をされておりますが、この協定の第三条第一項及び附属書Bにアメリカ合衆国から供与される「秘密の物件、役務又は情報についてその秘密の漏せつ又はその危険を防止するため、」必要な措置を講ずる必要があるというようなことがございまして、その他船舶貸借協定等の同様の協定を保護する必要がありますので、この際法律案をつくつたような次第でございます。
#8
○高橋(禎)委員 近ごろの政府提出の法律案を見ますと、立案の過程において慎重さが欠けていて、どうも私ども法律案を見て非常にあいまいな点がたくさんあるように感ずるわけでありますが、本法案を立案されるにあたつては、一体当局はたとえば法務省における法制審議会のような、いわゆる学識経験者、特に民間人の意向等を徴するような配慮がなされたものであるかどうか、その点についてお伺いをいたします。
#9
○前田政府委員 この点につきましてはこの法案をつくるにあたりましては、十分に法務省の方たちとも相談をいたしましてつくつたのでありますけれども、法務省においてはそういうふうな取扱いをしなかつたのではないかと思つておりますが、いずれにいたしましてもわれわれの方といたしましては十分に関係各省の意見を聞きまして、そうして立案をいたした次第であります。
#10
○高橋(禎)委員 この法律案は先ほど御説明がありましたように、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の第三条第一項及び附属書Bの規定に基いて立法を意図されたものであると考えますが、この相互防衛協定の第三条第一項及び附属書Bに規定してあるところの内容、すなわちこの協定に基いて日本国がいわゆる秘密保護の責任を負担しておるものと思いますが、その協定に基く秘密保護に関する責任の内容、限界というものはいかなるものであるか、それについて御説明を願いたいと思います。
#11
○山田政府委員 今のお尋ねの点につきましては、できるだけこの法案の立案にあたりましては、必要最小限度の規定を盛りたい、かように考えまして、いろいろ条約お明文を検討いたしまして、この法案をもちまして、十分にこれでまかない得る、かような確信のもとに立案いたしました。
#12
○高橋(禎)委員 この防衛援助協定の第三条によりますと、「各政府は、この協定に従つて他方の政府が供与する秘密の物件、役務又は情報についてその秘密の漏せつ又はその危険を防止するため、両政府の間で合意する秘密保持の措置を執るものとする。」こういうように規定しておりますが、この秘密保持の措置をとるということは、一体どういうことを意味するのであるか。この規定の内容から、当然に今政府が提出されておるような秘密保護法を立法しなければならない責任が日本国側にあるのであるかどうか、その点をいま少し明確に御答弁を願いたいと思います。
#13
○山田政府委員 お尋ねの点につきましては、実は外務省の関係御当局から御答弁を願うのが筋でありますが、外務省の方がおられませんので、かわつて私からお答えいたしたい、かように考えます。
 われわれ了承いたしおるところによりますると、この法案をつくる条約上の義務、責任というものはない、かように心得ております。しかしながら、この条約によりまして、両国政府が秘密の保持、あるいはその漏泄の危険を防止するために、相互に必要な措置をとる、かようなことが条約でうたわれておりまするので、各国の政府におきましては、それぞれ秘密保護に関する独自の法規を持つておりまして、それをもつてこの条約上の責任をまかなうことができるのでございまするが、日本といたしましては何らこの秘密保護に関する法律が現在ございませんので、この秘密保持の責任を遂行するために、日本政府の自主的な見地によつてかような法律を提案するに至つた、かように了承いたしております。
#14
○高橋(禎)委員 今の御答弁の中に、秘密保護法のごときものを制定する義務は、この相互防衛援助協定第三条の中からは出て来ないのだ、そういうふうに私は理解いたしましたのですが、その点は間違いありませんですか、どうですか。
#15
○山田政府委員 その通りでございます。
#16
○高橋(禎)委員 もしもこの相互防衛援助協定第三条第一項の規定から、今政府が提出しておられるような秘密保護法を制定する義務が日本国政府にないのだ、こういうことでありますと、秘密保持の措置として一体こういう秘密保護法を制定することが賢明な措置であるかどうか、妥当であるかどうかということがいろいろ問題になるものと考えるのでありますが、この秘密保護法案に規定してあるような方法以外でこの祕密の漏泄またはその危険を防止する措置というものは、政府の頭をもつてしては考えられないのであるかどうか、その点を御説明願いたい。
#17
○前田政府委員 その点につきましては、政府の関係職員等の行政的措置によつてやるということも考えられるのでありますけれども、しかしながらこの必要な措置といたしまして、秘密の保護をするためには、そのほか業務に関して一般に知得する人でありますとか、あるいはまた不当な方法でもつて秘密を探ろうとするものとか、いろいろと出て参りまして、必要な措置を講ずるにはこういうような立法をするよりほかに方法はない、こういうことで制定をしたような次第であります。
#18
○高橋(禎)委員 私は日本の最近の傾向が、どうも政況の貧困を補うと申しますか、それを糊塗するために、いたずらに刑罰法を制定して、刑罰をもつて国民に臨むことによつて、政治のまずいところを何とかささえて行こうという傾向が非常に強いと考えるのであります。たとえばこの秘密保護の問題にいたしましても、他の行政的な措置によつてこれは方法が考えられないことはないと思うのです。これを取扱う関係職員等の行政的な措置によつて、秘密が漏れることは相当防ぎ得ると思うのです。そのほかにも方法があると考えるのでありますが、そういうふうな刑罰で国民に臨むというのでなくして、主として関係部内における取扱いの方法、その他行政的な措置でもつてこの協定第三条第一項の百的を達成するように努力をして、しかしそれによつてもとうていその目的が達成し得ないのだ、刑罰をもつて臨まなければ、どうも秘密の保護ができないのだという、そういう段階に立ち至つて初めてこの種の刑罰法規が制定されてしるべきものであると考えるのでありますが、先ほど説明されましたように、この相互防衛援助協定の第三条第一項によつては、当然に日本国が秘密保護法を制定する責任がない、こう言うにもかかわらず、他の行政措置について何ら考慮するところなく、突然、最も国民にとりましてはきゆうくつな、高度な刑罰の威力をもつてその目的を速成しようとする、いわば最後の手段であるべきものを、最初の手段として打出されるという方法は、私はあまりにも行政というものから手を抜いて、安易に秘密保護の目的を達して行こうという、そういう姿がそこに看取されると思うのでありますが、この点について、この立案当時、あるいはこの協定成立後における今日までの過程において十分研究はされたものであるかどうか。またこういう刑罰法規を最初の手段として打出されることは決して賢明な措置でないと思うのですが、それについての所見を承りたいと思います。
#19
○前田政府委員 先ほども御説明いたしました通り、行政的な処置だけではなかなか不十分なところありまして、現状におきましても相当不当な方法をもつて、いろいろとわが国の案全を害するような目的をもつて行動しようとしておるようなものがあるやに聞いておるのでありまして、またその他現在の保安隊に対しましても、相当外部からいろいろな働きかけもあるように思つております。従いまして今度防衛秘密という、安全を害するような高度な秘密を今後MSA協定等によつて入手するということになりますならば、相当十分なる措置を講ずる必要があるのではないか。同時にまた今後これらの武器、装備品等を修理とか修復等のために民間の業者にもある程度ゆだねなければならない。そういうことによつて業務上またいろいろとこれを知る方もできて来るわけでありまして、そういうことに対してもある程度の防衛秘密を守るような処置を講じなければならぬというようなことから、単に行政的な方法だけでは不十分だというのでこのような立案をいたした次第であります。
#20
○高橋(禎)委員 この秘密保護法によつて秘密を保持しようという方法以外に、政府としては行政措置等でこの協定第三条の第一項の目的を速成しようとすることを考えておられるかどうか。もしお考えになつておるのであればその内容、すなわち行政措置等に関する具体的な内容をお示し願いたいと思うのであります。
#21
○前田政府委員 それは第二条で書いてございます通り行政機関の長といたしましては、防衛秘密の保護上必要な措置を講ずる義務がありまして、特にこの法律でもあります通り認識をしないとか犯意がなくて、あやまつて第三条の罪を犯されるということがないように十分な行政措置を講じますと同時に、関係の行政の職員に対しましてもこの点につきましては十分な指示をいたしたいと考えておる次第であります。
#22
○高橋(禎)委員 そこのところに非常に私は疑問があるわけです。第二条の規定というのは、一般人に秘密保護法を犯させないようにする、間違いを起させないようにする方法としてこれは規定されておるものであると考えるのです。この法案を離れて行政官庁が独立の立場に立つて行政措置によつて秘密を保持しようという具体的な方法が考えられておるかどうか。そういうことは全然考えないで、ただこの法案を提出して、これのみによつて秘密保持の措置とされるのであるか。すなわち協定第三条第一項の秘密保持の措置の唯一のものがこの秘密保護法であるかどうか、それをお伺いするわけです。もし行政措置でいろいろお考えになつておれば、どんなことをお考えになつておるか、その具体的な内容をお尋ねしておるわけであります。
#23
○山田政府委員 部内につきましては、部内の内部訓令をもちまして、厳重にその秘密の取扱いにつきまして注意を促しております。
#24
○高橋(禎)委員 そういたしますと部内の職員に対していろいろ措置を講ぜられる。一般の国民に対しては、たとえばこういう問題に対しての啓蒙と申しますか、秘密保持をしなければならないという趣旨を十分徹底させるとか、あるいはまた国民の一般の協力を求めて、この協定の第三条第一項の目的を速成しようとか、すなわち国民の側に対しては何らの方法をおとりにならないで、本法案一本で臨まれるのかどうか、この点をお伺いいたします。
#25
○前田政府委員 もちろんこの法律につきましては、国民の方にもよく十分に周知していただく必要があると思うのですが、同時にまたわれわれの側といたしましても、これが防衛秘密であるということをできるだけ標記いたしまして一般の方に知らす。なるべく過失でもつて、知らないでもつてこういう問題に触れることのないように極力行政的に、行政職員といたしましても、政府関係の職員といたしましても、十分にその方面の措置を講ずるように部内の命令等におきまして通達をいたしたいと考えております。
#26
○高橋(禎)委員 秘密保護法案に規定してあるところのものは、いわゆる自然犯的なものではないわけです。いわば行政犯的な取締り規定ということになると思うのでありますが、一体こういう行政取締り違反的なものに対する処罰というものは、行政そのものが十分に国民に徹底し行われておることを前提としていなければ、これは効果があるものではないと思うのです。いたずらに過酷な刑罰をもつて国民に臨むのだという非常に国恥に対して悪い印象を与える結果にだけなるのであつて、こういう自然犯にあらざるものの取締り法規というものは先ほども申し上げましたように最後の手段である。これに先行して部内の職員に対して、一般国民に対しても行政的な措置が講ぜられて、それをもつてしてはとうてい解決ができないという問題が発生した場合において、それに対応して適切な取締り法規が制定され、これが働くようにならなければならないと思うのです。その点について政府のお考えは私どもの考えとはむしろ逆に、部内の職員には秘密を守るように訓令でもする。国民に対しては何らの措置をおとりにならない、いわゆる行政手段によつてこの協定第三条の目的を速成して、日本国民に対して不安を与えないで、しかも品的を達成するような賢明な方法が講ぜられるような考えがない、非常に刑罰主義的な考え方があるように見受けられるのですが、本法案を提出された機会においてそういうことを十分御反省になつて、行政措置にむしろ重点を置くべきだというような考え方でもつて、ほかの方法を御考慮になるお考えはないかどうか、それをお伺いいたします。
#27
○前田政府委員 ただいまのお話はごもつともであります。なるべくわれわれの方も、十分に国民に周知徹底させるようにその方面の努力をしますとともに、また不用意でこの法律にひつかからないようにできるだけ手を尽しまして、これは防衛秘密であるということを十分に徹底するように必要な措置を講じたいと思います。しかしながら、先ほどもお話いたしました通り、故意にわが国の安全を害すべき意図をもつて、不当な方法でもつて防衛秘密を集めたり、あるいは漏らしたりするというような人間も絶無とは甘えませんで、そういうようなことも行われておるようにちよつと聞いております点もありますので、こういうことにつきましては、やはりわれわれといたしましては、法律をもつてこれを取締るということであると思うのであります。
#28
○高橋(禎)委員 時間の関係もありますので、それでは法案に規定してある具体的な事実についてお尋ねをいたしたいと思いますが、大体罪刑法定主義をとつておるわが国においては、いわゆる犯罪の内容というものが明確でなければならないと思うのであります。犯罪と犯罪にならないものとの限界が不明確であるというところに法律の濫用ということも行われ、時にはまた運用の不徹底ということもあると思うのであります。ところがこの秘密保護法案を見ますと、随所にあいまいな不明確な点があるのでありまして、そのおもなるもの二、三についてお尋ねいたしたいと考えるのでございます。
 順次この条文を追つて参りたいと思いますが、第一条の第二項の「その他の装備品及び資材」という規定でありますが、これは一体どういう内容のものであるか御説明願いたいと思います。
#29
○山田政府委員 「その他の装備品及び資材」とは、船舶、航空機、武器及び弾薬以外の、たとえば通信機材、光学機械、施設機材及びこれらの部品、交換用部品並びに、原材料等をさします。
#30
○高橋(禎)委員 次に第一条第三項の「公になつていないものをいう。」この点でありますが、「「防衛秘密」とは、左に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図書又は物件で、公になつていないものをいう。」これは一体どういうことをさすのですか。
#31
○山田政府委員 ここで公になつていないものとは、防衛秘密であるためには公になつていないものであることが必要とされる意味でございまして、すなわち公になつておりますものは、その公になつた事由、公にした人のいかんを問わす、すべてこれを秘密の範囲から除外する、かような意味でございます。公になつているとは、不特定多数の人に知られておる状態をさすのでございまして、政府機関が公表した場合はもちろん、新聞雑誌等の刊行物に掲載され、あるいはラジオによつて放送された場合も当然に含まれます。またこのような状態にありますことは国の内外を問わないのでありますから、わが国ではいまだ知られておらないが、アメリカの国会で公に論議され、もしくは政府機関によつて公表されたような事項や、あるいは軍事雑誌などに掲載された事項は言うに及ばず、その他の第三国で発表された事項なども、たといそれが秘密を暴露したものでありましても、公になつておるもの、かように考えております。
#32
○高橋(禎)委員 そういたしますと、法案第三条の第一項の第二号に規定してあります他人に漏らしたという違反行為があつて、この違反行為によつて世間に発表されたことによつて、不特定多数人がこれを知つているというような場合には、これはすでに公になつているのであつて、防衛秘密には入らない、含まないのだ、こういうことになると承つてさしつかえございませんか。
#33
○桃澤説明員 第三条の第一項第二号の場合でございますが、一例を申し上げますと、通常不当な方法によらなければ探知しまたは収集することができないようなものをある新聞がスクープいたしまして出した、そこまでは防衛秘密でありますが、これが掲載されて公になつた結果それを知つたものは、これはすでに公になつていないものというわけに行きませんので、第一条第三項の防衛秘密からはずれる、かようなことになると存じます。
#34
○高橋(禎)委員 そういたしますと、実際にこの法規運用の場合において、一体これが公になつているものであるかどうか、国民の側においても捜査官の側においても非常に不明瞭な場合が相当あると思うのでありますが、政府としては、この防衛秘密に属するものであるかどうか、公になつているものであるかどうかということを、世間あるいは取締り当局に明確にしておかれる意図があるのであるかどうか。そういう方法をとらないで、ただ、一つの違反事件を捜査されて、それが公であつたかなかつたかを判断されて事件を処理されるのであるかどうか、この点を伺つておきます。
#35
○桃澤説明員 確かに、高橋委員の仰せられますように、公になつているのかいないのかという判断をどこでするのかという御疑問があると存じます。しかしながら、私ども立案に関与いたしました者の考え方を申し上げますと、第一条の第三項のいわゆる防衛秘密、これは自然秘をさすつもりでございます。従つて、相当高度の秘密をここに予定したおるのでありまして、その面において、一般人がやたらに防衛秘密にタッチするということは実はわれわれ考えていないのであります。そういう性質のものでありましても、もしも公になつていた場合にはこれは防衛秘密としないという、そういう高度の自然秘である防衛秘密を、さらに別の面から、すなわち公になつていないという面からチエツクしてこれを狭める、こういうつもりなのでございます。従いまして貸与を受けた装備品等に対する防衛秘密がすでに外国の放送でもつて公になつている、こういうことが立証された場合には、日本ではそれを秘密にしているつもりでありましても、そういう関係が判明いたしましたら、これはもう防衛秘密として扱わない、かように取扱う点であると考えております。すなわちここに「公になつていないものをいう。」という規定をいたしましたのは、ちようど戦争中に、たとえばアメリカの放送ではすでに日本の軍機とされているものが放送されている、あるいはソ連の通信にそれが出ている、しかもなお日本国民だけがつんぼさじきに置かれている、そういうふうなことがないように、特にこれはアメリカから供与される情報で、装備品等に関する防衛秘密でございますから、日本人だけが知らないで、外国で公になつているにかかわらず処罰されるということがあつては困る、こういうつもりでこのチェックの規定を置いたのでございます。
#36
○高橋(禎)委員 公になつていないもののみを防衛秘密として保護するという気持はよくわかるわけです。私の非常に心配いたしますのは、こいうう法律ができますと、この事犯の予防のための警察活動、あるいは疑いの発生いたしましたときの捜査官の捜査活動、これが一歩誤られると、国民にとつてはたいへんなことになるのです。これは政府委員各位も十分御存じになつておるはずだと思うのですが、国民が苦しむのはこの点なんです。犯罪の予防に名をかりる不当な警察活動、犯罪の捜査によつて、国民の基本的人権が非常に蹂躪される、この面が非常に多いのです。裁判所へ行けば、それが公になつていないかいたかによつて判断されて、相当の裁判はあるでしようけれども、そこへ持つて行かれるまでの国民の不安とかいうものはたいへんなんでありまして、従つて私は第一条第三項の公になつているかいないかを、政府側においてその都度々々明確にして行く方法をとられたらいいのじやないかと思う。今の説明にありましたように、非常に高度の秘密を守つて行こうというような御趣旨ですが、法文にはそういうことは出ていませんけれども、そうなければならぬと思うのですが、それであれば数においても大したことはないわけですから、この点はもうすでに公になつたぞ、登録済みだぞ、こういうようなことを少くとも捜査当局あるいは警察当局に対しては明確にしておくことが、国民をこの法律の濫用から守るゆえんであると思うのです。その点が明確になつておりませんと、非常に国民は不安であるし、また悪意によらない警察官ないしは捜査官の行動によつて、知らず知らず国民の基本的人権が侵害されるということになると思うのですが、いわゆる公になつたかならないかを明確にする方法を確立されて、世にこれを公表しておくというくらいのお考えがあるかどうか。少くとも捜査の衝に当る人たちの間においてはそれを明確にされるだけのお考えがあるかどうか。それがはつきりいたしませんと、こういう法律は非常な危険なものであつて、うかうかと国会を通過さすべきでない、こういう感じがいたすのでありますが、それについての所見を承りたい。
#37
○山田政府委員 今仰せの通りこれが運用につきましては慎重を期さねばなりませんし、下手にこれを濫用いたしますれば、国民に不当な自由の拘束をするというような結果も招来いたされますので、われわれといたしましては、これが運用をせられる検察庁あるいは警察御当局の方に、十分にこの趣旨の御徹底を願いまして、さような行き過ぎのないようにお願いいたすつもりでございます。なおこれが秘密につきましては、日米相互共通の秘密事項でもございますので、アメリカの関係当局とも十分連絡をとりまして、アメリカ本国においてすでに公になつた事項はすみやかにこちらに連絡を受けるようにいたしますし、また外務省当局の御協力も得まして、外国の雑誌、ラジオ等において明らかになつた事項につきましても御連絡を願う、また国内的におきましては、通商産業省あるいは特許庁、法務省、国警等その他関係方面と密接な連絡をとりまして、少くとも何が現在防衛秘密として公になつていないものであるかというような実体をはつきりと把施しておきたい、かように考えております。
#38
○高橋(禎)委員 そこのところは今おつしやつたような言葉だけではわれわれどうも安心ができないのです。おもにこれは警察活動、検察官の捜査活動に関連するわけで、これは法務省側で主としてはつきりした態度をおとりになる必要があるかと思うのですが、桃澤君なんか頭がいいということで定評のある人ですが、こういう点はうんとひとつ考え、つまり外国の雑誌に出たり外国でラジオで放送されておつたりしてすでに公になつておる、そういうものであればなおさら、警察官や検察官がそういうことを知らないで、そうして罪にもならない者をいろいろ捜査をしたり何かするということでは、これはたいへんなことになるのでありまして、この点は過去において国民は痛切に感じておるところでありますから、公になつておるかおらないかということを、少くとも捜査に関係ある者には具体的に明瞭にしておく方法をとる、そういう方法を研究するというお考えがあるかどうか、それをひとつはつきりと承つておきたい。考えようによつては実にこれは危険なことになりますから、重ねてお尋ねをいたします。
#39
○桃澤説明員 この法律の第二条にも、政令で行政機関の長が防衛秘密の保護上必要な措置をすると規定されておりますが、これらに関連をいたしまして、私どもも保安庁その他とよく運絡し、ただいま御心配されておるような点を十分に尊重し、御趣旨に沿うようにいたしたいと前々から決意しておるものであります。
#40
○高橋(禎)委員 次にお尋ねいたしたいのは、この日米相互防衛援助協定に基きアメリカ合衆国政府から供与される装備品等について問題が起るわけですが、これの秘密を保護しなければならぬという法の趣旨でありますが、ここに今申し上げたアメリカ合衆国政府から供与された装備品、こういうことは第二条の標記を付してこれを明瞭にする、こういつておられるところによつて何か明確化する方法を考えておられるかどうか、この点をなお重ねてお尋ねをいたしておきます。
#41
○山田政府委員 ちよつとお尋ねの趣旨とあるいは答弁がそれるかもわかりませんが、現在保安隊なり警備隊が装備しております装備品は、車両関係でありますとかあるいは通信関係でありますとか一部若干のものを除きまして、ほとんど全部がアメリカからの供与にまつているような次第でございまして、将来とも大部分自衛隊の装備はアメリカの供与にまつこととなると思います。また他の面におきまして、日本政府が自分の予算、財政をもちまして装備したものにつきましては、この法律案の趣旨から考えまして、この法案の秘密保護の対象には入つて来ない、かように御了承を願いたいと思います。
#42
○高橋(禎)委員 私のお尋ねしたのとはちよつとそれたわけでありますが、アメリカ合衆国から供与された装備品等であるかどうかということ、アメリカ合衆国から供与された情報であるかどうかということ、これがはつきりしておらなければ、国民も一体防衛秘密の対象であるかどうかということが判断がつかないわけです。しかし判断つかなければその辺はしかるべく考えたらいいだろうなんというのでは、これこそいわゆる憲法の保障しているところの言論の自由ということに対して非常な制限になるわけであります。これを明確にしておいて、しかもそれが公共の福祉の線でもつて、憲法違反でないんだということがかりに確保できれば、そうでないものについては、これは防衛秘密の対象でないんだということを国民に明らかにする責任が私は政府にあると思います。こういう法律をつくるのですから。そこのところを装備品等の場合には標記するなり何なりして、これはあるいは比較的簡単にできるのかもしれませんけれども、情報等に至つてはそれが非常に困難な問題ではないかと思うのですが、それらについて政府はどういう措置を講じようとしておられるのであるか。特にこれに関連していわゆる「政令で定めるところにより、」というその政令は一体どういう内容のものをお考えになつているのであるか、これを承りたい。
#43
○山田政府委員 その本人にその認識がなければ本案の対象とはなりません。従いましてそれがアメリカから供与された装備品でありあるいは装備品に関する情報であり、それが防衛秘密であるという認識がなければならないと思います。
 第二の点で、本法案の第二条の標記その他のことにつきまして、政令としてどういうことを考えているかというお尋ねにつきましては、まず第一にこの防衛秘密に関する物件等の所在地に適当な掲示を行います。たとえば防御生産をやつている工場等におきまして、それが秘密に関するものを生産しているところには、関係者以外の者の立入りを遠慮してもらう、あるいはたまたま自衛隊の演習場におきましてさような秘密の兵器を使う演習をやつているような場合には、それに近寄ることを押えるというような適当な掲示をいたします。また次には防衛秘密にその内容の軽重に従いましてただいまのところ三段階程度の等級を付するように考えております。それはたとえば機密、極秘、秘というような三つの区分にこれをわけて考えたいというように目下考慮いたしております。また第三に、防衛秘密に属する事項のほかの取扱い等に関しましては、関係各省庁の長が定める部内規程の基準となるような事項を定めたい。かように大よそのことは考えておりますが、なお細部の点につきまして今後十分慎重に検討いたしたいと思います。
#44
○高橋(禎)委員 今お話の本人の認識がないから犯罪にはならないのだという考え方、これは犯罪予防とかあるいは犯罪捜査活動の間において、国民が非常に自由を束縛され基本的人権を侵害されることのあるということをよほど注意していただかなければならないのです。ただ犯罪にならなければいいじやないか、裁判所に行つて無罪になればそれでいいじやないか、それで国民の権利は侵害されないという考え方であつたら、この法律の場合はたいへんなことになるわけです。ですから私は防衛秘密の対象であるかどうかということを明確に捜査官にも知らせ、国民にも知らせる必要があると思う。そこにいささかも不明確なことがあつてはならぬ。明確になし得ないものであるならば、これは処罰の対象にはならないのだという考え方でなければならないのです。これが殺人とか放火というような自然犯的なものであればこれはいいでしよう。けれども特殊な目的を持つた行政的な意味を持つ取締り法規の場合においては、やはり行政が十全的に徹底しているのだという前提の上に立つてのみ、こういう法律が生きて来るわけです。そこのところを十分お考えにならなければならぬと思いますが、大体先ほどの答弁でもその点については十分考えるとおつしやるのですが、その考えよういかんがこの法案の運命を決するのだというくらいな考えをもつて、ひとつ本法案審議中に具体的にこういう方法をとるという点を私はお示しになる必要があると考える次第であります。
 そこで次に第三条に参りましてこの第一号に「わが国の安全を害すべき用途に供する日的をもつて」云々とこうありますが、これがまた私どもにはさつぱりわからない。「わが国の安全を害すべき用途に供する目的」というこの心理状態というものは一体どういうことをさしたのであるか。これをひとつ御説明願いたい。
#45
○桃澤説明員 わが国の安全と申しますのは、外国の武力行使を排して守られるわが国土あるいは国民の生命、身体もしくは財産または基本的政治組織の存続をいうものと解しております。外国の直接の武力侵略やまたは外国がわが国内に教唆干渉の手を延ばして引起す内乱あるいは大規模な騒擾に利益を与え、またはこれに対抗してわが国の安全を守るべき防衛力に不利益を与えることが、すなわちわが国の安全を害することと解しているのでございます。かような用途に供する目的をもつてと申しますのは、その防衛秘密を使用すれば、通常ただいま申し上げましたわが国の安全を毒する結果が発生することを予見しながらこれを認容して、そうしてその防衛秘密を使用する意図を持つておる、すなわち未必の故意ではこの目的に当らない、かように解しておるのであります。
#46
○高橋(禎)委員 今おつしやつたような趣旨であれば、わが国の安全を害すべきということをいま少し具体的にあるいは例示的にでも定めておかれないと、法律というのは一体国民がこれを見て国民が守るわけなんですから、ただ立法された政府当局が自分の方にわかつておるというのでは価値はないわけなんです。文理解釈からしてもわが国の安全を害すべき云々、こう言われたのでは、その安全とは一体どういうことをさすのであろうかということで非常に迷うと思う。これはやはり憲法の言論の自由に関連するわけですが、それならば控え目にしておけばいいじやないかという、そういう考えは私は憲法の精神に反すると思うのです。こういう法律はできるだけ局限さるべきものでなけらねばならない。国民の言論の自由をこの法律の存在自体によつて侵害するようなことがあつてはならぬというだけの心がけが必要なんです。ところがただぼんやりとした言葉をもつて国民にいたずらに不安な感じを持たせるということは、憲法の精神に反するのですから、もつと今おつしやつたような趣旨をここにあげて、わが国の安全というのはこういう内容のものだということを明確にしておく必要がある。これはひとり法律を守る側の国民だけでなく、それに違反したという疑いのある捜査活動あるいはまた犯罪予防の警察活動等においてやはり濫用される危険があると思う。私は本法案が非常に国民の不評を買つておるのは、こういうきわめて不明確な言葉を随所に発見するところにあると思うのであります。国会における政府当局の答弁通りになかなか実際の運用が行かない、そうしてそれによつて国民が苦しんだということは、もう日本国民は経験済みなんですからこれをいま少し明確にすることの方がいいのだというふうにお考えになるかどうか、お伺いします。
#47
○桃澤説明員 この防衛秘密に関する規定の仕方でございますが、各国の立法例等も参酌いたしましたし、また特に前のいわゆる刑事特別法の第六条の規定等も参酌いたしまして、この目的罪を規定いたしたのでございます。ただいまのような、わが国の安全を害すべき用途というのでは明確を欠くではないかという御心配もあろうかと存じますが、私どもといたしましては先ほど申し上げましたように外国の直接の武力侵略、これに役立たせるというのもこれに入ります。また国内に外国が干渉の手を伸ばしまして内乱を引起させる、これに役立たせるという場合も含みます。同時にわが国の安全を守るべき防衛力に不利益を与える。これもやはりわが国の安全を害すべき用途に供する目的になる、かように考えております。その間いたずらにこれが拡張解釈されて一般国民の基本的人権を害するという心配はないものと考えておる次第でございます。
#48
○高橋(禎)委員 それが私は非常に甘い考えだと思うのです。桃澤さんなんかよく御存じでしよう、警察のことなんかは……。外国の立法例をお話になるのですけれども、外国の全部とは言いませんけれども、文明先進国の警察制度、警察官の活動あるいは捜査官の行動というものと日本とは直接同一にこれを見ることはできないわけなんです。特に警察法の改正とか刑事訴訟法の規定等を総合してみますと、国民はまたまた警察国家になるのじやないかという不安を持つておるのです。取締り法規というものは、これは警察制度と密接な関係があるもので、警察制度をいかに打立てるかということは、取締り法規の性格を全面的に一変さすくらいな影響力を持つておるとさえ私は考えておるわけなんです。従いまして今の日本の警察官の教養の程度あるいは過去における歴史、実績等から見ましても、あいまいな言葉がいささかもあつてはならない。あいまいな言葉のあるところに、私は冒頭に申し上げましたように罪刑法定主義の精神が蹂躪される、こう思うのです。だから一面においてあいまいな言葉によつて国民の言論の自由が圧迫され、またあいまいな言葉によつて捜査活動あるいは犯罪予防活動等を通じて国民の自由が圧迫されるというようなことは、これこそまさに警察国家へのにおいのする制度であると思うのです。これまでの立法において同じような剛語が用いられたということは、これはまだ立法に対する能力が足りなかつたわけで、やはり時々進歩しつつある日本ということを思いますときに、私は従来の法律の用語にとらわれるところなく、これを明確化して行かなければならないと考えるのでありますが、政府はこういうふうなあいまいなる言葉をどこまでも強く支持される考えであるかどうか、もつと適切なものをくふうしてみられる用意があるのかどうか。この点を重ねてお伺いいたしておきます。
#49
○桃澤説明員 たとえば旧軍機保護法におきましては、探知収集罪は無条件で処罰せられておつたのでございます。この法案におきましては、かようなわが国の安全を害すべき用途に供する目的があるか、あるいは不当な方法でやつた場合だけが処罰される、いわゆるしぼりの規定でございまして、その点私どもは十分考えて立案に当つたつもり、でございます。
#50
○高橋(禎)委員 今不当の方法ということをあげられましたが、この不当の方法ということがまたわれわれには実に疑問の言葉だと思う。不当な方法で、防衛秘密を探知し、または収集するという不当な方法というのはどういうことを言うのですか。
#51
○桃澤説明員 ここに不当の方法と申しますのは、最も典型的なものは法令に違反するような方法ですることであると思います。その他社会通念に照しまして妥当とは認められないような方法ですることも入ります。たとえば立入り禁止の施設または区域に立ち入りまして、その防衛秘密を盗んだ場合、あるいは防衛秘密を持つておる者に対して、欺瞞手段を用いて、あるいは金品その他を提供して防衛秘密を持つておる者を誘惑して、その防衛秘密をとる、大いに酒を飲ませて酔つぱらつている者から秘密書類をとる、あるいは秘密事項を聞きとる、こういう場合もこれに該当すると考えます。そうでなくて一般人が偶然それを見れるというようなものは、これは不当な方法とは申せませんので、ここに言う不当な方法には該当しないということになります。
#52
○高橋(禎)委員 今お話の立入り禁止の場所に入つて収集したというようなのは不法な方法ではないかと私は思うのですが、そのほか例示されたことは不法な方法でという中に該当すると思えるのです。先ほど軍機保護法の欠点を是正するために相当しぼるように努力したと言われるのですが、こんな不当な方法でと言わないで、はつきりと不法な方法というところへしぼることによつて本法の目的が一体達成できないものであるかどうか、むしろそこが妥当な線ではないかと思えるのですが、それについての所見はいかがですか。
#53
○桃澤説明員 これも前例を申し上げて恐縮でございますが、いわゆる刑事特別法の規定している用語でございます。先ほど私の説明に申し上げました中でそれも不法な方法ではないかと仰せられましたが、必ずしもさようには考えられません。やはり不法であるか、不当であるかの限界点もございましよう。この第三条のしぼりといたしましては、不当な方法という程度でちようどよいのではないか、かように考えます。
#54
○高橋(禎)委員 次に業務により取得したものに対する規定がございますが、いわゆるこの秘密保持についての職務的な義務者でない国民と、防衛秘密を取扱うところの職務を持つておる人たちの取扱いとの区別をしておらないのが本法であります。一般の従来の刑法等においてはいわゆる業務者としからざるものとを刑罰の点において区別して、業務者を重く、そうでない一般国民を軽く処罰するという取扱いになつておるわけでありますが、本法においても業務者としからざるものとを区別することの方が立法としては賢明な措置であるように考えます。その点についてはどういうお考えですか。
#55
○桃澤説明員 仰せのような考え方も確かに有力に成り立ち得ると存じます。ただ第三条の第一項第二号におきましては「通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなもの」を漏らした場合でございます。この「通常不当な方法によらなければ」というのと、第三号の「業務により」とがちようどつり合うのではなかろうか、かように考えましてその刑も特にかえなかつた次第でございます。
#56
○高橋(禎)委員 大体こまかい点についてお尋ねをいたしたわけでありまして、その他の問題は大臣の出席を待つて質問いたしたいと思います。政府事務当局に要望いたしますところは、先ほど来質問によつて明らかにいたしましたごとく、罪刑法定主義の精神を貫くためには、刑罰法規はどこまでも明確でなければならぬということでありますから、その点に留意をされ、その不明確からして、憲法の保障しておる国民の言論の自由を尊重する態度をとられなければならぬということ、及び犯罪の予防活動及び捜査活動を通じて国民の基本的人権を侵害するようなことがいささかもあつてはならぬ、こういう根本の上に立つて、本法案の修正等についても十分お考えがあつてしかるべきものであるということを要望し、特に第二条規定の政令の内容等についてはいま少し具体的に用意をされて、委員会に提示されんことを要望いたしまして私の質問を終りたいと思います。
#57
○木下委員 今の答弁の中につきましてちよつと伺つておきたいと思うのは、立入り禁止区域にこつそり入つて行つてやるというのは不当な方法によりというようなことになつておる。今飛行機は自由です。昔は飛行機で上から写真をとるとかいうようなことは、旧軍人の仲間でたいへんやかましく言われておつた。今飛行機等で上からのぞいて見れば中にあるものはわかるし、こういうものは公になつておるものと思われる。その辺も何でもないように思うのですが、そういう上からとつた写真とかいうようなものは、これはやはり問題になりつこはないのでしようか。
#58
○山田政府委員 上からとりました写真程度のものは何ら秘密にはなりません。
#59
○木下委員 それからさつきのアメリカ合衆国政府から供与されたものということに関連して、日本の工場でつくるようなものに関するものもやはり防衛の秘密になるかのような答えがあつた。これは日本でつくるものなのです。金はアメリカから来たとかどこから借りて来たとかいうようなことで、これこそわかるのではないか。だからアメリカから供与されたというこの文句から言えば、やはりアメリカから太平洋を越えて持つて来たものだろうというふうにわれわれは常識的に解釈するのですが、アメリカから持つて来たものを日本の工場で修繕するときに、その中の機械のつくり方とかなんとかをかれこれする、これは何とか解釈の中で行くと思うのですけれども、今のお話の中に日本の軍需工場なりでつくるものが。即すぐ言つて来るかのごとき答弁がありましたが、これは条文の面からは、解釈上言つて来ないように普通に解釈せられる。この点はどうですか。
#60
○山田政府委員 その点は第一条の第三項の二号によりまして――二号は「日米相互防衛援助協定等に基き、アメリカ合衆国政府から供与される情報で、装備品等に関する前号イからハまでに掲げる事項に関するもの」、かような規定がここにございまして、たとえばアメリカから秘密の装備品の青写真をもらいまして、これが防衛生産によつて日本の工場で生産されるという場合にはこの保護の対象になる、かように考えております。
#61
○木下委員 アメリカから供与されるというのは、青写真が来た、その青写真自体を言うなら別ですけれども、こつちでつくつているようなものはなかなか区別がしにくいだろうと思う。その点はアメリカから供与されるというものの中には入つて来ないでしよう。部分品をずつと送つて来て、それを組み立てておるというなら、これはこの条文の中に入つて来ると思うのですが、日本で材料をつくつて、そこで日本人がつくつているものは、この条文の規定では入つて来ないように思う。やはり入るという御解釈ですか。
#62
○山田政府委員 日本が独自で、日本の金で独自の装備品をつくるという場合には、もちろんこの法の対象にはなりません。
#63
○木下委員 金が向うから来たというようなことで、同じものをつくつているものが、一つは罰せられる対象になり、一つはならぬというようなことになつても、これは大ごとだと思うのです。そういう点は、そういう御解釈であれば納得が行きません。もつと研究していただきたいと思う。
#64
○小林委員長 それでは午前の会議はこの程度にとどめておきます。
 午後一時三十分より再開することとし、それまで休憩いたします。
   午後零時四十二分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時五十六分開議
#65
○小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
 法務行政に関する件について調査を続けます。発言の通告がありますから、順次これを許します。井伊誠一君。
#66
○井伊委員 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を審議するにあたりまして、これを理解するために、どうしてもその前提となるところの日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の第三条というものの根本の趣旨を伺いたいと思うのであります。第三条の第一項は、「各政府は、この協定に従つて他方の政府が供与する秘密の物件、役務又は情報についてその秘密の漏せつ又はその危険を防止するため、両政府の間で合意する秘密保持の措置を執るものとする。」こう規定してあるわけであります。この第二項には、「この協定に基く活動について公衆に周知させるため、秘密保持と矛盾しない適当な措置を執るものとする。」こういうふうに規定してある。第一項の方は、すなわち秘密保持をするために適当な措置をとらなければならないことを義務づけておると思うのでありますが、まず第一にこの点から承りたい。本法は第三条によつて義務づけられてこれをつくるのであるか、それを承りたい。
#67
○木村国務大臣 お説の通りであります。日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定第三条には「各政府は、この協定に従つて他方の政府が供与する秘密の物件、役務、又は情報についてその秘密の漏せつ又はその危険を防止するため、両政府の間で合意する秘密保持の措置を執る」とあります。要するに両国間において互いに合意いたした秘密保持の処置をとる。必ずしも法律ということはうたつていないのであります。しかしこの相互防衛援助協定と同一の協定がアメリカ合衆国ともろもろの国との間にできているのであります。しこうしてそれらの国の大部分と申していいのでありますが、すべてそれらの国におきましては、もう既存の取締り法令がありまするから、これによつて秘密の漏泄または危険を防止する処置がとられているわけであります。しかるに日本におきましては、御承知の通りさような取締り法令というものはありませんから、ここにおいてこの協定に基いて今度新たに日米相互防衛援助協定に伴つて秘密保護法案というものを提出いたしまして、ただいま御審議を願つているわけであります。
#68
○井伊委員 法律を特に判定するということはこの条約の上からはそういう義務はつけられていない。この提出になるところの日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、これはわが国が自主的にこれを制定するものである、こういうふうにお聞きしてよろしいのですか。
#69
○木村国務大臣 さようでございます。この協定第三条に基いて処置をとるということになつております。この処置の方法といたしまして本法案を作成したわけであります。
#70
○井伊委員 今のように必ずしも第三条によつて義務づけられるというわけでなくても、この立法の趣旨はやはり第三条のここに出ているものではないかと思うのでありますが、この第一項と第二項、これは私の見るところでは、一項はこの秘密を防衛するところの措置をとらなければならない、こういうことであり、第二項においてはそれは秘密保持に矛盾しないようにして、そうしてこの協定に基く活動を公衆に周知させるために適当な措置を講るずということを要求していると思います。この二つのことというものは、私は相矛盾するものとは考えませんけれども調整をとつて、秘密は保持しなければならない。そして秘密保持に牴触しないように防衛援助協定の活動はこれを公衆に周知させなければならないということがあるとすると、ここに非常にむずかしい問題が起きる、私はかように考えているのであります。両者抵触しないようにするにはどうしてもそこに確固たる一つの基準というものがなければならない。この立法をするにあたつてはきわめてその点が大切であると思うのでありますが、政府においてはいかなる構想をもつてこの秘密保護法案に臨んだのであるか。それをお聞きしたい。
#71
○木村国務大臣 この相互防衛援助協定第三条二項の趣旨は、要するに秘密保持と矛盾牴触しない範囲内において、この協定に基く活動について公衆に周知せしめるような適当な処置をとるということになつているのであります。原文もまさにその通りになつております。そこで秘密保持はどこまでもそれは維持して行く。その秘密保持を保ちつつこの協定に基く活動――これは活動と翻訳していいかどうか疑問でありますけれども、要するにそういうような方法をとることを一つ約束したものであります。秘密保持はどこまでも秘密保持として相当の処置をとるということは第一項において明らかであります。
#72
○井伊委員 その精神によつて秘密を保持して行くということにするためには、必ずしも立法の処置を講ずる必要はないのでありますから、そうすればこれに対してはなお政府としてはこのほかに、行政的な措置によつて日米相互防衛援助協定に基く活動について公衆に周知せしめる、しかも秘密保持と矛盾しないというそういう対策を持つておられるのでありますか。法案としては今独自で出されましたけれども、まだこのほかにやはりこれを実現するための措置をとられるのでありますか。それをお聞きしたい。
#73
○木村国務大臣 それは一般の民衆に対して十分理解をしてもらわなくちやならぬ、そういう人に迷惑をかけることはわれわれは避けなくちやならぬということは当然であります。そこで秘密の対象物になるものをよくわかつてもらう。そうして一面において秘密の保持をしなければなりませんので、そこで今度御審議を願つております法案の第二条によりまして「防衛秘密を取り扱う国の行政機関の長は、政令で定めるところにより、防衛秘密について、標記を附し、関係者に通知する等防衛秘密の保護上必要な措置を講ずる」こういう規定を設けたのであります。要するに政令でもつて秘密の対象物であるものに対しては標記を付して、一般の人たちに秘密であることを明らかにいたし、また一面においてそういう秘密の装置等と修繕その他これらのものを取扱う者に対しては、これは秘密のものであるからというようなことを通知して、それらの人を一面において保護するという処置を講ずるわけであります。従いまして一般の人たちに秘密の防衛のために、これが秘密なものであるということを了知させる手段を講ずることになつておる次第であります。
#74
○井伊委員 第三条の第一項のところでは両政府で合意するところの措置、こういうことになつております。その内容というものは「この協定に従つて他方の政府が供与する秘密の物件、役務又は情報についてその秘密の漏せつ又はその危険を防止するため、」相互の政府において納得した、合意したところの措置を講ずる、こういうことになつておるのでありますが、今の御説明にありますところの秘密保護法案の中にも記されておる、秘密に属するものの表示をするというような措置、こういうようなものだけでなく、現に立法をしておるこの秘密保護法案というものの内容自体も、またこの条項によればアメリカ合衆国の了解するところのものでありましようか。
#75
○山田政府委員 これは外務省から伺いまして了承しておるところでございますが、第一条の第三項一号、二号、この二号につきまして、アメリカ大使館側と合意したというふうに聞いております。
#76
○井伊委員 この際なおお聞きしておきたいと思いますことは、「日米相互防衛援助協定等」とこうありますが、これは日米相互防衛援助協定及び日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定、こういう二つのものをさす、こう規定されておるのでありますか。この日米相互防衛援助協定というもの、あるいは日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定というこのものは、現在審議を続けられておるところの日米相互防衛援助協定と、それから過般承認を得たところの日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定、こういうものだけをさすものであるか、それともそう特定したものではなくして、これから後、同じ名日のこういう協定が出て来る場合、あるいは今審議を続けておる日本相互防衛援助協定ないしはすでに承認を得ておるところの船舶貸借協定というものに対して改訂が加えられるというような場合をもこのうちに含めているものであるかどうか、この点を伺いたい。
#77
○木村国務大臣 ただいま御審議を願つておりますところの、この法案においての対象は、現在また御審議を願つております日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定並びに先般制定されました日米船舶貸借協定この二つに基くものに限つておるのでありますから、あらためてやる場合には、また法律を制定する必要があろうかと思います。
#78
○井伊委員 次にこの秘密保護法案の対象となるところのいわゆるスパイ活動について伺いたと思います。
 これは秘密に属するものは秘密会で伺つてもよいと思いますが、一般的に公にできるところのどういうものが、この秘密保護法に牴触するスパイ活動の対象になるかということについてお聞きをしたいのであります。
 聞くところによりますと、東京都は各国のスパイの巣窟であると言われ、それらのスパイ自身の間においてだけでも、百数十名という者がスパイ活動をしておるという話であります。特にGHQがなくなつた直後からというものは、上海の方から、海上保安の手薄に乗じて、非常に多くの者が入国しておるということを言うのでありますが、今日軍の諜報活動ないし政治上の機密の情報活動をする、内外のこういうスパイ活動に当つておる者に対して、政府はいかなる対策をとつておるか、これをお聞きしたい。
#79
○木村国務大臣 この法案の目的とするところは今申しましたように両協定で供与された船舶その他航空機等一般武器、弾薬その他の装備品及び資材についての秘密を防衛しようとするものであります。今お話のような一般のスパイ行為はこの法案の対象にはならないのであります。さような一般的のスパイ行為についての取締り規定を設けるか設けないかということは、これは別個の問題であります。要するにこの法案の目的とするところは、アメリカから貸与を受けました今申し上げたもろもろのものについての秘密を守ろう、こういうことであります。
#80
○井伊委員 今のお話のこの法案で取扱つておる対象は、言うまでもなくこれは米国から貸与せられておるところの、供与を受けておるところの物件その他のものについての秘密を取締るものでありますが、しかし、こういうことは日本人だけがこの秘密を探ろうとするとか、そういうようなものではない。現にこれは国際的な問題でありますがゆえに、このスパイ活動の対象としては、私は通常のスパイ活動の対象というものよりも、むしろこの法案で扱つておるような対象の方が重要なねらいになるのではないかと思う。私はこの法案が取扱う範囲を知つてはおりますけれども、そうではなくて現にそういう活動が継続しつつある、現にこの日本へさまざまなものが日米相互防衛援助協定に基いて供与されて来る。ここからやはり諸外国のスパイが入つて、これを対象として活動をするということは現に始まつておるものと考えていいと思う。そういうふうに考えますがゆえに、これに対して政府はどういう対策を持つておるかということをお聞きしておるのであります。
#81
○木村国務大臣 お話の筋はわかりました。日本人以外の外国人でありましても、この法案によつて防衛せんといたしまする秘密についてスパイ活動を行つてこの法案に触れた者は、むろん処罰の対象になるわけであります。それらのものについても特にわれわれは十分警戒して秘密の漏洩を防がなければならぬ、こう考えております。
#82
○井伊委員 内閣審議室はどんな仕事をしておるのでありますか。この問題に対して、つまり諜報関係、そういうようなことについて……。
#83
○木村国務大臣 内閣審議室では、いろいろの点からいわゆる国際情報を収集したり国内情報を収集したりするのでありまして、今あなたの仰せになりましたようなスパイ活動の取締りについては活動してないと考えております。
#84
○井伊委員 このMSA協定に対して国民が最も不満を感じあるいは不安を感じておる点は、この装備品であるとかあるいは完成武器であるとかいう内容が明確でないという点にあるのであります。この法律は結局この点について装備品の定義であるとか、その内容というものを一応定めておるのでありますが、しかしこの明確を期するということが最も大切なところなのであります。たとえばこの装備品等の定義のごときも、これはきわめてはつきりしないところのものであると思うのであります。船舶とか、航空機、武器、弾薬、こういうふうに規定してあつて、一見明瞭なるかのごとくでありますけれども、たとえば船舶というような一つの名称にいたしましても、さきに船舶貸与法が通過しますときの審議の際に米国の軍艦であるところのものが……。
#85
○小林委員長 井伊君にちよつと申し上げますが、今予算の方で横路君が長官に対する質疑をすると言つておるそうです。簡単に済むということですから、その間に他の政府委員に対して質問をお願いします。
#86
○井伊委員 それではそういたしましよう。この船舶というような一つのものをとりましても、さきに船舶貸与法が通りますときに、米国の軍艦を日本においては船舶々々といつて、軍艦と船舶をことさらに区別をいたしまして、結局あれは船舶ということで通つたわけであります。そういうような実例を見て参りますと、この一見何でもないように見えるところのこれらの名称でさえも、米国と日本とでは定義が違うのではないか。皮肉なことのようでありますけれども、そういうことが考えられる。そうなつて来ますと、この船舶、航空機、武器、弾薬、こういつておつただけではたして秘密の対象とする範囲がはつきりしておるかどうかということも、私どもは非常に疑うのであります。ことに装備品等というのはどういうことかというと、装備品としてその中に例示をして、その次に資材としてあるのでありますから、結局装備品等というのは、装備品と資材だ、こう解釈するのでありますが、その船舶あるいは航空機、武器、弾薬その他の装備品というに至つては、一体その他のというものは何を意味するのか、こういうことであります。その他というものを書いておけば、あとはごくつまらないものを考えるようでありますけれども、一見つまらないように考える微細なものの中にこそ、実は最も秘密となるべきものがあるのではないか。ことにこれは文章としておかしいと思うのですが、その他の装備品では全般的な説明であつて、これではどうも何のことかわからない。装備品とは装備品である、こんなような表現の仕方ではなおさらわからないのであります。私はこういうのはただ一例だと思うのでありますけれども、こういう定義があるのであるかどうか。それは日本の定義とアメリカのこれらの定義は一致しておるのであるか、そういうところに食い違いがないのであるか、こういうことを私はお聞きしておきたい。
#87
○山田政府委員 大体この法案は、日米相互防衛援助協定並びに船舶貸措協定を受けて規定をいたしておりますので、つとめてアメリカ側の定義に近い定義をいたしたい、かように考えまして、立案いたしたのでございますが、アメリカの方の法律上の文言を見ましても、必ずしも明確なる定義がそれぞれの用語に下されておりませんので、われわれとしても努めてこれをはつきりいたしたいという努力はいたした次第であります。
#88
○井伊委員 私はまだ各条章に入るつもりはないのでありますが、たとえばそういうふうに「装備品等」といつておりますものでも、定義自体が、すでに政府がどういう解釈をとつておりますか、アメリカの定義となるべく近いものをとるといつてみたところで、そういうものが別にはつきりしておるわけでもありません。われわれは少くともそういうものがはつきりされなければ、こういうごく簡単な定義だけでなかなか承服しがたいのであります。これがどういうふうに現実的なものとして現われて来て、これが結局法に触れて来るか、触れないかということになりました場合に、これを判定するものは、言うまでもなく、これは裁判所であります。裁判所の解釈次第でありましようけれども、おそらくは、それはわからない。そのときに政府の解釈などを裁判所は待つてはいないのです。ここでどうしても立法をする際においては、こういう点は非常に明らかにしておかなければならぬと思う。MSAに基いて米国政府から供与された装備品等について、構造だとか、性能、製作、保管、修理に関するところの技術、使用の方法、品目、数量というようなことで、ごく簡単にわかるのは、品目や数量だけは、これはあまり議論はないかもしれないけれども、使用の方法であるとか、構造、性能なんというようなことに至るならば、こういう漠とした数多くある船舶、航空機、武器、弾薬という、それの構造や性能、ことに性能なんというようなものになつて来れば、一体これが秘密だというのでありますが、米国から日本が受継ぐときに、これが秘密であるという秘密の中核となるものを日本が理解しておるのかどうか。日本が米国からこれを受取るときに、理解をしておるものがあるのかどうかということが問題であります。私はこれは非常に重大な問題だと思うのです。国の法律の提案をする者が、秘密を防衛するという法律を提案しておきながら、その秘密自体を認識しているかどうかわからないのではないか いうことになつて来ると思う。盲が自分の見たこともないものに対して、国民に対してこれに触れてはならない、これを見てはならないというがごときことを提案することになる。それとも向うからMSA協定によつて日本がこれを受取るときに、その秘密の内容というものは日本においてほんとうに了解をし得るようになつておるのであるかどうか、その点をひとつ伺いたい。
#89
○山田政府委員 お尋ねの点につきましては、アメリカから供与を受ける際に、個々具体的にどこが秘密であるか、またその秘密の部分はどうかという通告を受けて承知いたしております。
#90
○井伊委員 ついでですからその点を聞きたいのですが、そう御説明になれば一応わかるようには見えますけれども、これこそ実に性能の秘密なんというようなものは、これが秘密の範囲だというようなことはわかるわけがないと私は考えます。ちようど機密、極秘、秘の三段階にわかつというようなものがアメリカから立てられたようなものです。こちらの方にそれをほんとうに理解をして、これが真に極秘に属するか、秘に属するかというような区別がはたしてできるかどうか。これは一つの地所の上にへいをめぐらして行くようなものではないと思うのです。これは今問題になつておりますところのつまり原子核の性能の問題、そういうような問題がだんだん兵器の中に取入れられて来るということになりますと、そういうようなものの理解というものは、私は外国からこちらの方へ何ぼ説明したつてなかなかわかるものではないと思うのです。そうすれば要するに、この範囲のことはという広いへいをめぐらして、何だかわからないけれどもこの中は秘密だよというくらいのことしか日本政府はわからないのではないかと思う。そんな国際的な懐疑のうちに属しておるほんとうの秘密というものをこの兵器――今の兵器がそうだというわけではないけれども、あるかもしれない。秘密なんですからわからない。あるかもしれない。そういうものが来たときに日本でそれをほんとうに理解するかどうか。そうすると日本も大体においては、秘密の秘密というものはわからないで、ただわくでもつて受取つて来るだけではないか、こういうふうに思うのですが、その点今の御説明ではまだ私は納得しかねるのです。それはほんとうに向うの秘密の中核たるものも日本に示して来るものであるかどうかということをもう一度お聞きしたい。
#91
○山田政府委員 原子核の研究等高度の秘密に属しますものは、アメリカでは原子力法その他の関係法律によりまして、いずれのMSA協定においても現在供与をいたしておりません。また現在保安庁におきましては、いまだ技術水準が非常に低いのは遺憾でございますが、将来鋭意技術研究、技術水準の向上に心がけまして、アメリカから将来高度の秘密の装備品を受けた際にも、それがいかなる程度に構造、性能について機密であるかとい点をはつきり理解のできる態勢を整えたい、かように考えております。
#92
○井伊委員 今の場合、まずこの法律をつくつて国民によらしむべきところの秘密となるべき対象を示すということになるけれども、今の段階ではまだ立案者の方の側でもほんとうの秘密が理解できるかどうかわからぬ、こういうふうにお考えのようである。将来はやはり貸与するところのアメリカの方の科学的水準まで行つてこれを理解し、真の秘密の中核をも理解してこれを受取るというように承るのである。そういうような段階でもあり、今のようなさまざまのものの名前でも、アメリカの定義となるべく近い理解をするように努めてこの貸与を受取ろうとしておるということで、確かにその間には違いがある。やはり向うのものの秘密の内容も理解しようと努めておるが、今のところはまだそのところまで行かないという状態である。そういう状態でこの法案の骨子ができておると私は思う。そしてこの結論はどうかというならば、これだけのものは防衛秘密である、こういうふうにしておる。これを犯した者は懲役という刑罰に処することになつておる。しからばこれを判断する裁判官が、一体どういうふうにしてこれが秘密だ、これが秘密でないということを知るかといえば、これによれば、ほんとうのへいをめぐらしたもの、その中をのぞいた者は、不法にやつた場合には罰する。こんな非常にしやくし定規に陥るよりほかしようがないと思う。国の中に落し穴をつくつて民をしてこれに陥らしめないようにと孟子は言つたのですが、刑罰というものは、大よそ基本的人権そのものを制限するものであるに相違ない。それでもどうしてもこの精神を破らないためには、罪刑法定主義が原則である。ところがこういうふうに非常に漠然と規定をされておるために、国民としては、一体どういうようなものが危険なのか、やつてはならないのかということのめどは、ほんとうにわかりません。そういうことはとんでもないことです。わが国の法律的な体系というものがまつたくくずれて行つてしまうと私は思う。これはどうしてもこういうような程度のものしかつくることができないのでしようか。行政的措置というようなものでは、それはいけないのでしようか。先ほどちよつと承つたところによれば、今のところはこういうものをつくるよりほかに方法がない、こういうふうに言つておられたのですが、行政的な他の措置によつてできないものかどうか、もう一度承りたい。
#93
○山田政府委員 先ほどの私の御説明がいささか言葉が足りなかつたかもしれませんが、現在貸与を受けておるもの、あるいは近き将来に貸与を受ける装側品等につきましては、いまだ具体的にははつきりいたしておりません。しかし少くとも日本政府で期待しておるようなものに関する秘密につきましては、現在の保安庁の技術者陣営をもつて十分その構造あるいは性能について秘密の知識を持ち得る、かように確信をいたしております。なお先ほどの行政上の措置で従来カバーして来たものをどうして今回立法措置をとるかという御質問につきましては、なるほど日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定を締結いたしました当時におきましては、これをただちに立法化するというような措置をとらず、なるべく官庁の機密保持という線を強く出しましてくふうをいたして参つたのでございます。しかしながらこの協定に基いて供与されましたPFあるいはLSSL等の船舶を一部ドツクに出したり、部品を修繕に出したりした際に、たまたまそれに機密に該当するような事項がございまして、アメリカ側から厳重な注意を受けました。これは単に官庁の行政上の機密保持というだけでは十分でないことがはつきりいたして参りましたので、今回この協定もこの法案の中に盛り込むようにいたしたのであります。なお今後MSA協定が締結せられたあかつきにおきましては――将来の姿はまだはつきりいたさないのでございますが、域外調達その他において、日本においてこれらの装備品を相当多数生産することに相なつて来るかと思われるのであります。さような際に、それが秘密に属する装備品でございましたならば、官庁の機密保持の励行ということだけではとうてい十分にまかない切れず、また先ほどからだんだんお話の出おりますように、わが国内におけるスパイ活動も今後相当熾烈になつて来ることが考えられますので、彼此勘案いたしまして――立法措置によるということが第一義ではございませんが、行政措置によつてできるだけこれらの秘密が部外に漏れないように努力いたしすとともに、一般国民に対しましてもかような立法措置によつて協力をお願いすることはやむを得ないのでなかろうか、かような見地から今回の立法に至つた次第であります。
#94
○井伊委員 この秘密の中核は、なかなかつかみ得ないとしても、それからあまり遠くない周囲の環境、それだけに触れないようにすれば、一応秘密が保たれる。こういうことになつて大まかな規定をこれはしてあるものと考えられますが、しかし何といつても秘密を保たせるためには、ほかのところは明確にしないようにするのが結局落ちであります。はつきりさせれば秘密ではなくなりそうだし、ぼやかしておくということが秘密を保たせる方法になるのではないか。そういたしますと、この法律の運用ができるようにするのには、結局秘密の点はぼやかしてしまつて、わらないようにする、国民一般にははつきりさせないということが方法になるのではないか。この法案の大要を見ますと、私はどうもそういうふうに見える。推理の結果やはりそうだなと思うように、ぼやけていると思うのです。そこでこのぼやけているという結果が秘密を保護する方法であるかもしれないが、同時に国民にとつては非常に危険なものになることがある。落し穴の広さがはつきりしているものであるならば、そこのところに竹矢来をしてあることによつて、国民はそこに陥らないけれども、なるべくそこに秘密があることをば隠したいということになれば、その落し穴の輪郭もはつきりしないということになつて行くような考え方がこの中に含まれている。これはやむを得ずそうなつているのではないかと思う。そこでどうしても国民がそのところに落ちて行く危険があるのであります。国民というのは何でもない庶民階級だけではないんです。裁判官も落ちて行くんだ。警察官も落ちて行くんだと思う。それはわからぬのです。そこでここのところに一番危険を感ずるのは何であるかというと、国の方針がそういうふうに協力を求めているんだということを理解するような者は、なるべくそれに近寄らないように努めるだろう。大部分の者はそうするであろうけれども、これは秘密である。ゆえにこれは保つて行かなければならないという検察官、捜査官の立場にありますと、どうもその点をわからないでいるくせに、それを自分の考えによつて、すなわちわくのうちへ来ているんじやないか、つまりそういう秘密の範囲を侵しているのではないかということを常に考えているから、その見解がはつきりせぬということで、予防の点において非常な心配をしている。これは高橋委員もさきに述べておられるところであります。この点がこの法律案を制定する上において、どうしても中心の問題にならなければならない。日常何でもなく生活をしているもののうちに、そして憲法に保障されている基本的人権がちやんとあるものに、あまり目に見えない、はつきりしない輪郭の落し穴があるような法の制定というものは国民をだましてやつているようなことだ。そう言うと言い過ぎですけれども、そう言うよりほかに方法がないじやないか。知能をしぼつてもこれよりほかにしようがないんじやないかというかもしれぬ。私はそうも考えないのですのですが……。やはり予定の考え方があるから、それよりほかにしようがない。結局国民の基本的人権に重点を置くか、それともアメリカの方から供与を受けて、義務づけられているものだから、それにこたえるためにはそれだけのことをしなければらぬ。そうではないと、先ほどもお話が出たようですけれども、向うから苦情が出る。それに合せるためにこれができている。結局そこに矛盾が出るのじやないか。最後に、これを決するのは何であるかというと、やはり自主的に日本が決するのであるからして、その点どう見たらいいかといえば、私たち国民は何にも罪がないものです。そういう点について、立法府においていつの間にかこんなあやふやなものをつくつて、それが法律になつている。しかしながら国民一般も知らないし、捜査官にもはつきりせぬ。しまいになつて裁判をする裁判官にもどうもはつきりせぬようなものを、われわれがここにつくらなければならないか。承認しなければならないか。私はそういうことはできないと思うのです。でありますが、この見解は、国の置かれた位置を考え、現在の国が国民の上に立つている国であるということを考えると、一体どつちに重点を置くべきであるか。今の日本の立場からいえば、これは非常に重要な問題だと思う。自主性を持つて行くか、それともそうは行かない、これだけのものを受けているからにはこうしなければならない。こういうものをどの点で線を引くかという問題だと思う。政府においてそこをどんなふうに考えているだろうか、お伺いしたい。
#95
○山田政府委員 ただいまのお話の点につきましては、われわれ立法に参画したものも、同じく最も苦心をいたしたところでございまして、あくまでもわれわれは国民の基本的な人権の尊重の線、また秘密保護の国家的な要請をどの線で調整し、マツチさせるかという点につきまして、いろいろ私どもは私どもなりに苦心をいたした点でございます。ただここで秘密になつておりますものは、相当程度の高い秘密に属するものでございまして、通常普通人では容易にその秘密に接するような機会があるとは考えられないような程度の高い秘密を保護しようと考えているものでございます。またこの罪を犯すには、それが高度の保護を受ける秘密であるというような認識――犯意が必要でありますので、たまたまうつかりこの秘密の事項に接して、何も知らずにそれを他人に話したというような場合には、何らこの法律に抵触いたすものではございませんので、無実のことによつて国民が迷惑を受けるということは、本法案では何ら予定をいたしておりません。われわれといたしましては、かような秘密の定義あるいは範囲を可能ある限り明確化し、可能なる限りこれを限定し、しぼりまして、国民に迷惑のかからないように努力を尽したのでございますが、一面先ほどのお話にもありました通り、かような秘密保護の法規の性質上、これを一々具体的に公示をいたすことは、かえつて秘密を暴露いたすことにも結果的になりますので、勢いこれが包括的な規定のやり方にならざるを得なかつたのでございまして、その点をカバーする意味におきまして、特に第二条においてこれらの物件等に対する標記、通知等のいろいろな行政的な措置を講じて、幾分なりともこれが救済をいたしたい、かように考えたのでございまして、われわれはあくまでも国民の基本的な人権の尊重ということを念頭に置きつつ、必要最小限度の規定としてこれが立案をいたしたものであります。
#96
○井伊委員 その点は一応何でありますが、一般の国民にはその秘密についてこれならば誤ることがないというような大まかな、最も安全な一つの標識のようなものを示す必要がある。しかしながら国民のうちにはその機密に比較的近くにおるところの職域があるわけです。しかしこれはおそらくごく少数の人に限られておる。けれどもそれからはその一つのわくの外へこれを広げる、さらにわくを広げて行くという段階をとるのだと思うのでありますが、こういう場合に国民に対する示し方は、たとえば警察官等に対してはこれがどの程度に示されるか、あるいは裁判所にはどのくらいに示されるかということがあり得ると思うが、そういうものを一般の国民と区別をして表示の措置を講ぜられるかという意味であります。全国民に対しては一様であつて――特に機密に携わつておる者は別で、それに対しては特別な措置があるわけですが、それ以外のものに対してもわくを別にして、そうして秘密を知らせるという方針をとられるわけですか。
#97
○山田政府委員 核心に当る答弁ではないかもしれませんが、このMSAの第三条の二項にもあります通りに、秘密保持にさしつかえない、矛盾しない範囲内におきましては、MSAの実施状況をできるだけ国民に周知徹底する措置を講ずるというような約束でございますし、また保安隊自衛隊は将来とも国民の保安隊自衛隊といたしまして、できるだけ国民と密接に接触をして参りたいというふうなことからいたしまして、この保安隊の装備なりあるいは訓繰の内容をできる限り一般に公開いたしまして、国民に理解と親しみを持つていただくようなふうにわれわれとしては努めて参りたい、かように考えております。
 またこれが運用に当ります一般の警察官等につきましては、十分に法務省と国警当局その他の関係の御当局がお打合せを願いまして、末端に周知徹底をいたすようにされると思いますし、かりにかような容疑がございまして事件に手をつけようというような場合には、必ずそれを中央に稟議をしてそれが秘密に該当するかいないかということを確かめてからやるというような慎重な措置がとられるものと期待いたしております。
#98
○井伊委員 今のところは大体了解をしたのでありますが、アメリカからこのMSA協定によつて供与を受けるものについて、そのものに秘密がある、その秘密の内容は、これは想像するに、ごく一小部分の人に限るのではないか。それも先ほど申し上げましたように、アメリカが秘密の中核を日本に知らすかどうかは私はむしろ疑つておる。それにわくをはめたものを日本の方へ与えるであろうと思う。そういうふうに想像するのでありますが、とにかくそれだけでもそれは日本の国民のうちにはごく少数の人しか知らない秘密であろうと思う。その秘密をーーなるべく国民にMSA協定の精神を理解せしめるために、保安隊なり警備隊なりの活動状況などを国民に理解を持たしめるように、国民と親近せしめるようにしたいとは言つておられますけれども、それは秘密に触れないようにということなんです。秘密がその中に出ておるか出ていないかなんですが、私は秘密というものがごく少数の人のみに知られておるというように思われているときに、検察庁の方にその秘密の内容というものが知らされるような広がりがありますかということをお尋ねしておるのであります。検察庁であるとか、さらにその次には警察官等に広げられるといいますか、そういう余地があるか、この点をお尋ねしておるのであります。
#99
○山田政府委員 これはごく限られた、特定の、仕事としてその秘密に直接タツチしておる者の範囲に限られると思います。
#100
○井伊委員 そうすると自然それはある一つのわくなのです。立札を立てて、このうち入るべからずといつたような遠まわしの一つのわくだけを示して、この中は秘密なのだぞ、のぞくなということだけを示すのであると思うのです。それでありますから、秘密の内容というものはわからないので、形式的なものになつてしまう。秘密の内容というものはのぞいてはいかぬということです。秘密であるかどうかということはわからない。それを国民に示す方法としては立札を立てる、へいをめぐらすというようなことで、この中は秘密なのだ、のぞくべからずというようなことにするだけではないか。秘密が何ものであるかということが国民にはわからないのじやないかと思う。それよりほかに方法はないと思う。そうするとこれは非常に形式的なものでありまして、国民には秘密が何であるかわからない。秘密を囲うておるところの大きなわくを示して、これの中は秘密なりといつて、ここに近寄るべからず、のぞくべからず、これだけのものを示そうとしている、それよりほかに方法がないのではないか。それとも秘密の中核をわかつておる者が数人ある、そうして秘密の中核はこれなんだということを、あるところでは外に漏らすことができるのかどうか、そういう方法があるのならば、さらにそれを拡大してまただんだん薄めて行く方法があるのか、それをお聞きしたい。
#101
○山田政府委員 今お示しのようなことはあり得るかと思いますが、そこまではこの法案では要求してないわけであります。
#102
○井伊委員 そこで結局これは、この秘密を保とうとすれば、日本の中でアメリカから直接その秘密を打明けられた人たちは別として、玉手箱の中に入れたものを受取るだけであつて、ほんとうのものはわからない。へいを越してこのうちはのぞいてはいかぬ、玉手箱のあることさえも見てはならぬということに結局なるのだ。国民に誤りなからしめるような方法としては、それよりほかにないと思う。私はそういうものになるから、警察などはわからなくて困つたものになると言うのです。要するにへいのところをのぞいたということになると、形式的にそれでもつて処罰されるのだと思う。ほんとうの秘密なものじやなくて見当違いのものをのぞいておつても、やはりへいをのぞいたということでやられるという形式的なものになつてしまうと思う。こういうことは一番誤りないようなものではあるけれども、実は非常な困つたことになると考えるのです。これはだれにもわからないのです。ひとりよがりの政府のある一部分の人たちが、ただこれは秘密なんだということがわかつておるだけで、あとは何もわからない。それとも裁判官にはこれを示すのですか。実質的に秘密そのものをのぞかなければならない、上の方から写真をとつた、そんなものは問題にならない、こういうふうに言うのですが、しかしとにかくこれはある一定の区域というものは撮影してはならぬということになれば、どこが撮影してはならないのかわからないけれども、とにかく広いところを半径何マイル以内のところは撮影してはならない、こういうふうになるでしよう。それがつまり秘密を犯す罪ということになるだろうと思うのですが、どうですか。
#103
○山田政府委員 この第一条の第三項第一号にも書いてあります通り、ここで秘密として保護しようとするものはイからニまでに掲げてある事項でありまして、かりに立入り禁止区域から単にのぞいたというだけでは、おそらくそのものの形でありますとか、あるいはせいぜいそれの名前でありますとか、さような程度のものしかわかり得ないであろうと考えます。さような名称であるとか形状というようなものは、今回の法案では秘密保護の対象から除外せられておりますので、さような程度で秘密が漏洩されるということはわれわれ考えていないのであります。もつと深く細密に立ち入つて、それの「構造又は性能」あるいは「製作、保管又は修理に関する技術」その他ここに列挙いたしましたような事項についての秘密を保護しようとするものであります。単にわくだけをきめて、一切の国民の目からはこれを封ずるというようには、私ども考えておらない次第でございます。
#104
○井伊委員 私の申し方がちよつと悪かつたのでございますが、しかし御説明のところは非常に参考になつたわけであります。私の申しましたのはそういう意味ではなくて、秘密というものにわくをかけるよりほかしようがない。たとえば地域的なことを私考えたわけじやないのですけれども、本法案における第一条第三項第一号イロハニといつたような、こういうものに関係することはわかつておりますが、こういう抽象的な一つの性能だとかあるいは構造だとかいうようなものをたとえてみますと、これはやはり性能ですから、場所とかそんなものじやないのですから、その性能に一つのわくをかけたものを示すほかないじやないか。性能がこれだけあるということはわからない。それだからあとになれば、この秘密の範囲というものは、取締りをする方面には示される可能性があるのか、それとも向こうから受継いだ秘密は、中身は何であるかわからないけれども、箱に入つたままにしてこれを秘密だと国民に言つておるのか。広げる余地はないのか。そうすれば秘密は保たれましよう。秘密は保たれるけれども、そのかわりこれは盲めつぽうであつて、国民は何が何やらわかりませんし、警察官なんか何もわかりませんし、裁判官もわかりません。そういう結果になると思う。それですから、結局のところある場合になれば、そこのところの内容を少しずつある人たちには示すのですか。そういうことをお聞きするために、今のようなことを申したのです。半径幾らというようなことを言つたのはそういうたとえでありますが、この点いかがですか。
#105
○山田政府委員 アメリカで秘密にしておる以上のことを日本側で秘密にいたしましても何ら実益がありませんので、われわれはいたずらに抽象的にそのわくを広げようという考え方は持つておりません。実質的にはアメリカの秘密としておることと日本の秘密としておることとはまつたく同一に考えております。ただわえわれは防衛上必要な見地から、自主的にアメリカ側と同様の秘密を保護いたそうという考えで、今回の立案をいたしておるのでございます。なおただいまお話のございましたわくという言葉でございますが、なかなかこのわくという言葉が抽象的で、われわれにもはつきりいたしかねる点もございます。たとえば照準器なら照準器というものを例にとつてみた場合、この照準器は何千メートルまでは有効だということが秘密になつておるといたしますと、単に照準器だけでは秘密ではなくて、その照準器の性能として何千メートルまでが有効であるということが具体的につけ加えられなければ、そのものの秘密の性能ということにならないと思います。また飛行機などにつきましても、たとえばジェット機を供与されるという例を仮想いたしてみますと、それが巡航速度においては何キロ出るとか、最高速度においては何キロ出るとかいうことが秘密の対象になろうかと考えております。従いまして具体的に事案が発生いたした場合には、その都度必要不可欠の限度において、それぞれの担当の警察当局なりあるいは裁判所なりの要求があるときには、その裁判官なりに具体的な秘密の内容につきまして御連絡をいたすことが可能と考えております。
#106
○井伊委員 その具体的な問題が起るときに、警察官なり裁判官の方に秘密の点を示すことは可能であるというのでありますが、アメリカとの協定に基いてできておると思われるこのものの上において、アメリカの了解なしにそういうことができますか。
#107
○山田政府委員 それは業務上の措置として可能と考えております。
#108
○井伊委員 業務上の措置としてならば、その範囲というものは別になくて、全範囲に向つて業務上の措置としては示すことができますか。
#109
○山田政府委員 その都度具体的に妥当と考える範囲におきまして通知をすることができると存じます。
#110
○井伊委員 妥当の範囲は、そのときの範囲を判定する人がやることですから、根拠としてはどうです。その入が判定をするだけでなくて、根拠はありますか。全範囲にわたつてこれを裁判官なり検察官なりに業務上の措置として示す可能性があるのですか。
#111
○桃澤説明員 事柄が具体的に関連しているように思われますので、大体私どもの取扱いの実情を申し上げますと、たとえば挙動不審者が秘密の文書のようなものを所持していた、それでその秘密の文書に、たとえば防衛秘密というものが入つておつたという場合があつたとします。これが防衛秘密に該当するかどうかということは、多くの場合、第一線の警察官から検察庁に対して相談があると思います。検察庁の方はその文書を見まして、あるいは保安庁の方と連絡をする。それではたしてこの条文に書いてある防衛秘密に該当するかどうかということを確かめまして、その処理をするということになると思います。もし起訴せられた場合には、これが防衛秘密であるかどうかということはやはり検察官の立証事項でございますから、当然いかなる範囲においていかなる内容においてそれが防衛秘密であるかということを立証しなければならないのでございます。その意味におきましては、先ほど井伊委員の仰せられましたような、単にそのわくだけを示すだけではもちろん不十分でございまして、それが何がゆえに防衛秘密であるかということを、裁判所に対して証拠をもつて十分立証しなければならないかと存ずるのであります。もちろんそれによりまして裁判所も防衛秘密の内容を具体的に調べるでありましようし、またそれを裁判所が知つた上で、しかもなおそれが日本の防御秘密に該当するかどうかという法的判断を下される、かような関係になつておると思います。
#112
○小林委員長 三時四十分ごろから本会議が開かれるそうですから、そのつもりでお願いいたします。
#113
○井伊委員 わが国には今のところ軍機保護法のようなものがない。今度これを新たにつくる必要に迫られて来たのでありますけれども、わが国が国民の人権が重んぜられなければならぬ建前におきまして、今言う秘密の範囲を国民に知らしめる方法がない、これが確立していないということでは、これは国家の中に特別なる、また国民の国家でない区域が広くなつて来るというわけでありますから、ことさらかようなこまかい点について政府のお考えをただしたわけですが、これは先に軍機保護法改正案が第七十一回帝国議会において審議されましたときなども、軍事上の機密の内容がわからない、不明確だというので、それに対しまして附帯決議がついております。「本法ニ於テ保護スル軍事上ノ秘密トハ不法ノ手段ニ依ルニ非サレハ之ヲ探知収集スルコトヲ得サル高度ノ秘密ナルヲ以テ政府ハ本法ノ運用ニ当リテハ須ク軍事上ノ秘密ナルコトヲ知リテ之ヲ侵害スル者ノミニ適用スヘシ」こういうような附帯決議が議会においてなされておるようなわけであります。取調べ官憲だけが内容がわかつておつて、国民一般においてはこれがわからないで、たとえば法律に違反があつたから重罰に処するというのでは、これはもう官僚の独善だと思われるのであります。今あげました附帯決議の根本精神は今もやはり同じだと私は思うのでありますが、政府の所見はいかがでありますか。これは大臣から承りたいと思います。
#114
○木村国務大臣 もとよりこの法案は国民の利害に重大な影響のあるものでありますので、濫用してはいけないのは当然であります。そこでこの法案作成にあたりましてわれわれが最も注意いたしたのは、できるだけしぼつたことであります。ことにこの法案で対象となるものは、繰返して申し上げましたように、アメリカから贈与を受ける物件についての構造またはその性能――これなんかも特にしぼつておるのであります。あるいはその保管、修繕等に関する技術、その他四つまであるのでありますが、その範囲を出でない。しかも国民に対して迷惑を及ぼさないという趣旨からいたしまして、これは秘密物件であるぞということを十分に了知せしめるような手段を政令でとるわけであります。すなわちそれらの物件については秘密であるということの標識を立てるとかあるいは記号を付すとかの手段を講じまして、国民に誤りなからしめるように注意を払つておる次第であります。しこうしてこの法案が幸い通過いたしましたあかつきにおきましても、この運用等についてはできるだけ慎重を期しまして、国民一般に迷惑を及ぼさないように執行いたしたい、こう考える次第でございます。
#115
○小林委員長 井伊君、外務省から条約局長も出ておられますから、そのつもりでお願いいたします。
#116
○井伊委員 今日わが国の言論機関であるとかあるいは出版関係者などはこの法案によつて思想言論あるいは出版というようなものの自由が封じられるのではないかということで非常にこれを憂いておるわけであります。それでこのMSAの秘密を知らせてはならぬという原則と、それから国民の基本的人権は侵害されてはならないという原則の調節のために、ただ防衛秘密について標記を設ける、それから関係者に通知をする、これだけの方法では何かたよりない気がするのでありますが、これよりほかにはもう方法はないのでありますか。
#117
○木村国務大臣 ただいまの御質問は、この法案によつて言論を抑圧される危険があるのじやないかということでありますが、私はさようなおそれはないと考えております。と申すのは、この法案において取扱つている対象は、今申し上げた通りアメリカから贈与を受ける武器についての装備その他性能あるいはこれに関する情報等でありまして、一般の言論等に取扱わるべき取材のわくにはおそらく入らないと思います。新聞社におきましても常識を持つて取材活動をする以上は、かような秘密にまで私はわたることはないと考えております。いわんやこの法案において最も御注意を願いたいのは、いかなる事由によつてもひとたび公になつているものはこれの対象にならぬということであります。たとえば日本では公になつていなくても、アメリカとかイギリス、フランスその他もろもろの国において何らかの事由によつて、あるいは雑誌とかラジオとかその他の一般公知の方法によつて明らかになつている。こういうものはたとい秘密のものであつても一たび公になつているものについてはこの対象にはなつていないのであります。その公になつている事由はいかなる原因であるとを問わないのであります。従いましてこの法案はきわめて制約的にできておりますから、普通の方法で取材活動をされる新聞紙等に、ごうも私は迷惑をかける懸念はないと考えております。
#118
○井伊委員 MSAの防衛秘密を故意に探知して、これを外国のスパイに売るというような行為をなす者は、これは重く処罰する必要があると思うのであります。ことに外国人に通謀をして常習的に秘密を売却するような手段に対しては、断固として処罰する必要があると思うのです。この意味では法律をもつて規定を置くということは国民の期待に沿うと思うのであります。しかるに防衛秘密の保護上必要な措置を行政機関の長によつて政令で定めるというのは不当ではないかと思うのでありますが、政府の見解はいかがでありますか。
#119
○木村国務大臣 この防衛秘密の公知方法として、すなわちそれについて標識を立てるとかあるいは関係者に通知するということは、これはきわめて必要なことであると同時に、これはそのものを実際において取扱いまする主務官庁においてやるべき事柄とわれわれは考えておるのであります。これが最も妥当なやり方である、こう考えております。
#120
○井伊委員 それではもう一つお聞きしたと思いますが、これが、秘密漏洩というようなことで裁判にかかる場合において、法廷でこの秘密の審理の際においてその秘密が現われて来る、そういうことが公開の裁判においては起きて来るわけであります。そこで自然これが非公開ということになるかと思うのであるが、これは法廷公開主義そのものに今度は反して来やしないか、こういうふうに思うのでおりますが、この点についてお聞きしたい。
#121
○桃澤説明員 憲法の第八十二条で、わが国におきましては裁判の公開の原則が規定せられておるのでございます。この原則は私どもあくまでも尊重いたすつもりでございます。ことにこの秘密保護法に規定するところの犯罪が、憲法第八十二条の第二項の但書、これに該当すると認められる場合には、かりに「裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合」でも、この但書の場合には非公開にはできないという規定になつておるのでございます。もちろん裁判所が専属的に公開、非公開を決定するところでございますが、私どももこの但書に該当するような事案は、裁判所において当然公開にせられるであろうかように確信いたしておる次第でございます。
#122
○井伊委員 裁判所の考えによつてこれは非公開になる。但し八十二条の但書の「政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。」という原則は、憲法上動かしがたいものであるから、これはたとい合議審で非公開に決してもだめだ、こういうことなのですな。ーー一般の場合においては、非公開にすべきかどうかというこの判断の基礎とするものが、やはり防衛秘密保護法そのものからいつて結果的に見ると、どうしても秘密内容そのものがわからなければ、非公開にしたらいいかどうかということもわからないことになると思うのです。そこで問題は、ある場合には判定の仕方によつては、秘密もあるいは公開裁判において出て来るかもしれない。もしそういうふうになりましたら、これはどうなんですか。法廷において調べられる場合においては、国民は事実を述べる権利があると思うから、自然その調べられたる範囲において陳述をすることは可能であるわけであります。公開の裁判審理の場合においてもこの秘密は保たなければならぬということになりますか。
#123
○桃澤説明員 裁判所におきまして、たとえば証人がどの点が秘密であるかということを述べるということは、本法案の条章にはもちろん該当しないのでありまして、当然これは述べるべきであると存じます。ただその場合に裁判所が、これから証人が秘密のことを述べるから、それは非公開にするということができるかどうかという問題になると思うのでございますが、私どもはその事件が八十二条の第二項の但書に該当するような事件であれば、これは当然あくまでも公開しなければならない、憲法の規定に従つて公開しなければならない性質のものであつて、非公開にはできないと考えます。ただこの但書に該当しないような事件であります場合に、裁判官の全員一致で公の秩序を害するおそれがあると考えて裁判所が非公開にするという可能性はあると存じます。その点はどこまでも裁判所が裁判所の独自の立場で決定する事項であつて、その運用につきましては私どもいささかも危惧いたしていない次第であります。
#124
○井伊委員 私は一応総括的な質問をいたしましたが、各条章についてはさらにこの次の機会に御質問いたしたいと思いますので、この程度にいたします。
#125
○木下委員 大体おもなるところは井伊委員から聞かれたのですが、「合意する秘密保持の措置」がこの法案なんです。これはアメリカと御相談なさつておるのですか、それともこれができ上つてからもう一ぺんお伺いを立てて相談して、それでいよいよきまるということになるのですか、またある範囲内では、こういう趣旨の法律をつくつてもらえればそれでいいのだという少しのゆとりがある、言いかえればこの法案が多少の修正をされてもそのままやはり第三条は問題にならんで済むような趣旨なんですか、この点を承つておきたい。
#126
○下田政府委員 第三条に「合意する秘密保持の措置」と書いてございまして、ここで申し上げる必要がございますのは、日米行政協定に同様の規定がございましたが、そのときにははつきり、立法を含むその他の措置と書いてあります。従いまして日米行政協定の場合には立法を行うことが日本側の義務になつておりました。今度の場合には立法という文字はございません。従いましてどういう措置をとるかということは日本側が自主的に判断いたしまして、特に立法の場合には、これは日本の法律でありますから、法案自体について米側と相談するということは必要でもございませんし、また事実なしておりません。ただこの法案の中の第一条の三項にイロハニと具体的なアイテムをあげてございますので、この点だけは、もしアイテムがアメリカの考えていることと食い違いましたら、これは今後協定の実施の上に困りますので、このアイテムだけを向うに知らせております。これに対して向うは賛意を表するという立場にないのですが、日本側のその通報に対して了承しております。この合意する措置というのは、主として協定が国会の御承認を得て発効いたしました後のことをねらつておるわけでありまして、具体的に援助でどういうものが来て、そして援助で来たもののどういう部分をいかなる等級の秘密として指定するか、協定の附属書にアメリカの秘密の等級と同等の秘密の保護を確保するということを約束しておりますので、どういうものがどういう等級の秘密とアメリカでしておるか、ということを確めまして日本側でそれに対応する保護を加えなければならない、合意する措置というのは、主として協定が実施されたあかつきにおきまして、そういう個々の秘密の保護の実際的の措置を相談するということを意味するものと了解いたしております。
#127
○木下委員 先ほど井伊委員の質問に答えて、桃澤説明員でしたか、そういうことがイロハニと書かれてあるということを伺つたのですが、ちよつとそれだけ伺つたのでは――この法律が国会を通つたとすれば、国内法としては有効な法律です。ところが合意の線から少しそれているというような問題が起つたのでは、はつきりせぬと思うてこの点を伺つたわけです。それからこれに出ておる供与という言葉ですが、その供与の中には、貸与の中には、貸与される品物とそれからただでくれる贈与、この二つを含むもので、それ以外のものはないと承知しておつてよろしゆうございますか。
#128
○下田政府委員 この協定の結果実際に参りますものは、大部分は日本に譲渡されるものと思いますが、しかしこの協定の建前としましては、それに限定しておるわけではございません。でありますからあるいは将来譲渡でないものも来るかもしれません。従いましてそういうものにつきましては、日本に所有権が移りませんでも、やはりそのものの秘密を保護するという措置を講ずることが必要になる場合があり得ると考えております。
#129
○木下委員 この供与というのが今のお話で私はくれるもの、所有権の移るものと貸与されるものとの二つがこれに含まれておる。これは解釈論からいつてしかるべきものだと思う。そこで先ほどの桃澤説明員からのお話の中に出たのですが、日本の兵器製造所でつくる場合、サンプルは向うかう来たかもしれぬけれども、こつちがつくるときはつくりそこないができる、つくりそこないができても、それは大体似たような品物ということも考えられる。それからまた一つ駐留軍がおります。われわれが常識的に考えれば、こつちに供与されるものは、アメリカ駐留軍の持つておる兵器よりも品物は悪いものだろうということが予想される。そうすると、駐留軍の方のものをしたやつはこれは取締りの対象には全然ならないわけですね。駐留軍の今持つておるものと性能等が同じような構造のものが日本に供与されたものがあるだろうということが予想されますが、しかし被害になつて取締られた男が知つたのは駐留軍の方から知つたのであつて、日本の方に供与されたものからではないということになると、その方は問題にならないというようにこの法律からいえば解釈してよろしいのですか。
#130
○桃澤説明員 ただいまのアメリカ軍の所有しおてります兵器についてはどうかという点についてお答え申し上げますと、一昨年国会を通過いたしましたいわゆる刑事特別法がございます。刑事特別法の第六条によりまして、やはり艦船、航空機、兵器、弾薬、その他の軍需品の構造または性能、こういうものはアメリカ合衆国軍隊の機密として保護せられておるのでありまして、もしもこれをある目的でまたは不当な方法で探知、収集した者、または通常不当な方法によらなければ探知し、または収集することができないようなものを漏洩した者、こういう者は処罰せられることになつております。
#131
○木下委員 私の伺つておるのは、それはこの法律では、この目的にはならないということに了承してよろしいかということです。
#132
○桃澤説明員 その点は本人の認識の内容になると思いますが、アメリカの軍隊が使つている兵器の秘密はかくかくであるということを漏らしたといたしますと、この場合には刑事特別法の違反が成立する。しかしそれが同時に日本に供与された装備品の秘密であるということを知つておりました場合には、やはり今度のこの法律の違反に該当し得る場合があると存じます。
#133
○木下委員 私の聞いておるのは、アメリカのそれをやつたときには、同じようなことなんだけれども、種がアメリカから出ておればこの法律で取締られる対象にはならぬというのは当然のことであると思う。この点を伺つたわけであります。
 少しく木村長官にお聞きしたいと思います。保安隊の隊規がたいへんゆるんでおるということが世間の相場になつております。いいことをしたのはほめる規則があるらしい。昔のような何か軍規を取締るために、特別にこの連中を気合いを入れるようなことをするというようなことをお考えになつておりますか。また現にそういう方法のことをやつておられるか、それを伺いたい。
#134
○木村国務大臣 一部に不届きな者のあることは遺憾ながら認めざるを得ない。これがために保安隊全部の隊規がゆるんでおることは、私はごうも認めておりません。一面において非常に昔の軍隊とかわつたよさを持つておるということを、私は率直に言わざるを得ない。きようも実は数氏の議員から、最近の保安隊が各所に災害派遣、土木工事などに行動してくれた、それについての規律の厳粛、また行動の機敏その他においては昔の軍隊に見られないよさがあるということで、私はおほめの言葉をちようだいしたのであります。しかし一部でもさような規律のゆるんだことがあるということは、まことに遺憾であります。それについてはわれわれは厳に慎まなければならぬと考えております。それに対する処置いかんというお尋ねでありましたが、それは時々訓練強化期間あるいは監察機関をして隊規の弛緩を戒めておるのであります。今後ともわれわれはこの方面について十分力を注いで、国民の期待にそむかざるようにいたしたい、こう考えております。
#135
○木下委員 今の憲法の建前からは、昔のような営倉に入れるとかなんとかいうことはできないだろうと思う。そういうことをやつておるようなことはありませんか、お尋ねしたい。
#136
○木村国務大臣 昔のようなやり方はやつおりません。われわれの方針としては、要するに自発的にものをやらせなければいかぬという方針から、努めて彼らの創意に基いてすべて処置をさせるという方針をとつて行つております。従いまして、各隊長も隊員の中に飛び込んで、一緒に訓練に励み、また楽しむべきは楽しむという方法をとつてやつておるのでありまして、上からしいて、強圧的な処置はとつておりません。そういう方面のことから、一部には昔のような上から押えるとかの方法の方が形式上非常にいいようなことを言う人もありますが、われわれはさように考えておりません。自発的に隊員におのおの規律の厳粛を育成させるような手段を講じておる次第であります。
#137
○木下委員 最後に一つだけ伺いたい。もうこれは去年から予算委員会その他において、戦力なき軍隊というあの問題で、ざつくばらんに申しますと、よくも同じようなことで根気よく質疑応答しているものだというふうにすら思えるほど繰返されております。戦力なき軍隊というようなとほうもない熟語は、あなたが創造されたか、法制局長官が創造されたか知りませんが、そういう点について繰返すこともばかばかしいから、今かれこれ言おうと思いませんけれども、ただ憲法の解釈についての点を一、二点伺つておきたいと思う。それは御承知の通り憲法の九条の第二項ですか、戦力という問題があるものだから、あそこをたいへんやられておるようですが、国際紛議を武力では解決せぬ、戦争もせぬと言つている。間接侵略を防ぐためにといえば国内の治安ということになりますので、それもこじつけだと思つたけれども、最近では直接侵略も防ぐのだというお話。ところが常識的に考えて、国際紛議の一番の見本みたようなものは、よそから侵略して来た、いんでくれというけれどもやめない。これほど明らかな国際紛議はない。そうしてそれをいんでくれといつてはねのけようとする、防衛することは戦争だ。宣戦の布告があるからそこで初めて戦争になるとか何とかいうことは、国際法上宣戦布告をしてやつて行くのが、国際法違反になるかならぬかの問題であつて、外からの直接侵略に対して平和的な方法でこれを解決することも考えられる。その最後の段階は力でいんでくれとはねのけるということになると、これはりつぱな戦争なんです。そうすると、九条の前段は明らかに戦争なんです。直接侵略を防衛隊が排除する意味でというところまで、ずつと目的と行動の範囲が広がつたように御説明を承つております。そうすると、これは憲法の九条第一項に抵触するものだ。改進党の諸君は、今の憲法を改正せぬでも、自衛の戦争ならいいんだという解釈をしているらしいのですが、これはとんでもない解釈であつて、改進党の諸君自身がその点については自信を持たないで、たいへんジレンマに陥つているということもお気づきと思います。われわれもそう思う。その点についてはかつてあつた鳩山自由党が言うことだけは私どもと同じ意見であります。私どもは再軍備反対をいたしておりますが、憲法の解釈論としては、やはり自衛の軍隊でも、持つときには憲法をまず改正すべきだということが一番筋が通つている。吉田首相を初め、あなたもやはり今までは憲法の解釈論としては、憲法九条は改進党とは違つた解釈をおとりになつている。解釈論としては私どもと大方同じ線じやないかと私は思つているわけなんですが、その直接侵略という外国の侵略を武力によつてはねのけるということになると、それは戦争ではないか。それを戦争とお考えにならないのかどうかという点。条約局長もお見えになつでいるようですが、宣戦布告があるとかないとかいうことは、それが実際の戦争であるかないかということとは別問題だと思う。さような意味で、間接侵略なり、直接侵略に対してともかく武力で排除するということ、言いかえれば自衛ということになると、私は戦争ではないかと思う。その点をひとつ伺いたいと思います。
#138
○木村国務大臣 お答えいたします。私は木下君とその点について意見を異にするものであります。憲法第九条第一項に何と書いてあるか。「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とあります。国際紛争とは何であるか。木下君は、今すぐ外国から侵入して来た、のいてくれと言つてものいてくれないときにかれこれ言つているのが国際紛争だ、こういうような考えだ。私は不当な武力をもつて日本に侵入して来たのは、国際紛争とは言わぬ。国際紛争とは何ぞやと言えば、結局お互いの当事者国が互いに主張し合う。その主張が一致せずして、自分の主張を武力でもつて貫徹しようとすることに基因していると考える。そこで直接侵略とは何ぞやという、また元にもどる。直接侵略とは、不当に外部から日本を侵しにかかつて来る。それを防ぐことは自衛権の発動である。私は戦争とは申しません。言葉で戦争と言つてもかまいませんが、いわゆる国際紛争解決の手段に武力を行使することじやないんです。そのときには個人のいわゆる正当防衛、国家においては自衛権発動なんだ。これについてはいささかも憲法に違反しない。一国の存在は一個人の存在と同じで、不当に外国から侵入されたときに自衛権を発動することは、毛頭も憲法に違反する行為ではないのであります。ただ往々にして自衛権の名のもとに侵略戦争のような愚を繰返すことが見受けられるのだが、さようなことであつてはならぬということで、第九条第二項において戦力を禁止した。戦力に至らざる程度において自衛力を持つことは、独立国家としての当然の事実であろうと私は思います。
#139
○木下委員 今はとんでもないことを伺いました。それでは前提として伺つておきます。日支事変で日本が出て満洲に入り、支那に上海、漢口まで行きましたが、あれは日本の侵略であつたとお考えになるかどうか。あれに対して当時の国民政府と日本との間の問題が国際紛議ではなかつたと御解釈になりますかどうか。最近の事例でありますから、それをまず伺つておきたい。
#140
○木村国務大臣 往々にしてあの当時にはいわゆる武力をもつて威嚇をした。これは憲法で国際紛争解決の手段としてはとらない。あの当時においてはいろいろお互いに主張し合つた。その主張が一致しない場合において武力の威嚇があつた。こういうことは憲法では許しておりません。
#141
○木下委員 国際紛争というものは、今の話では、侵略があつてそれを排除する、盛んにやるけれども話がつかないで、勝つか負けるかとことんまで行くというのは、国際紛争でない。憲法で言う国際紛争というのは、ただ口の上だけで折衝することであるとお考えになつても、これは戦力なき軍隊、早く言うならば、破壊力のない、たまの出ない大砲というようなものと同じような議論であると思う。われわれは憲法という国権の重大な基本法の解釈にあたつては、もう少し真剣な、まじめな態度で行かなければならぬと思います。今の内閣のやつている立場からいえば、さような三百をもつてもなお口にすることを恥ずるようなことを言わねばなりませんけれども、それはそれでなくやらなければならぬと私は考えます。今べルが鳴りましたので、心せわしくて、こういう問題を論じてもしかたがない。他日もう少し詳しく御意見、御見解を承りたいと思う次第であります。きようはこの程度にいたします。
#142
○小林委員長 猪俣君。
#143
○猪俣委員 ちよつと私お尋ねいたします。秘密保護法の質問で実は十二項目用意して参りましたが、時間がないようでありますから、ほかのことをお尋ねいたします。ただこれは私は質疑応答いたしません。私の十二項目の質問のうちの一項目でありまする本法の被害法益は何であるかということだけお尋ねして、それに対する私の一問一答は、後日に譲りたいと思います。被害法益は何であるか、犯罪の構成要件としての法益範囲その他について非常に疑問が多いつでありますが、まず第一に法益は何であるか、その御説明を願いたい。
#144
○桃澤説明員 いわゆる秘密保護法の被害法益と申しますか、これは第一条三項に規定しております「防衛秘密」が、被害法益になつていると考えます。「防衛秘密」は第三項の一号、二号に規定してございます。すなわち一号、三号に掲げる事項及びこれらの事項にかかる文書、図画または物件で、公になつていないものでありまして、私どもの考えておりますのは、いわゆる指定秘ではなくて自然秘秘、すなわち相当高度な秘密を意味する、かように考えておる次第であります。
#145
○猪俣委員 私のお尋ねしたのは、さような形式的なことじやないのです。そんなことは条文を見ればはつきり出ています。あなたから今説明してもらわぬでもよろしい。私の言うのは、被害法益の実質は一体何であるかということです。アメリカの防衛のためであるか、日本の防衛のためであるか、あるいはいわゆる兵力の機密のためであるか、国民の権利・義務保護のためであるか、そういう意味の法益なんです。われわれ民主国家の国民に対しましてのいかなる連関を持つ法益であるのかどうか、あなたの言うような軍の機密ということになるならば、今日本には軍隊がないのだから軍の機密もないはずです。旧軍機保護法の法益ははつきりしている。軍隊の機密なんです。その高度の法益概念は、国の防衛なんです。しかし一体これは何であるか、軍隊というものはないから軍の機密もなし、アメリカから借りた兵器だけについて言うならば、一体これはアメリカの便宜のために設けられたものであるか。兵器を安く売つてくれたり、貸してくれたりする恩義に報いるため、いわゆる防共協定を保護するための法益であるかということです。この法律のすべての源泉は協定にある。この協定に基き供与されたものだけを法益にしておるように見受けられるから、そこでお尋ねするのです。ひとつ考えてください。あなた方の法律の建前は、アメリカと日本国の協定に基いて供与される兵器だけに対し、艦船だけに対しての法案であるから、そこで疑問が出るのです。われわれ国民といかなる連関を持つ法益を保護せんとする法律であるか、アメリカの兵器の機密を保護する法律であるか、何か国民に関連があるのかどうか、その点をひとつよく法律構成をしていただきたい。
 それからいま一つ、この法案を見ますると、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法ということになる。だからこの法案の名前からも私の疑問が出て来る。そこでもう一点の疑問は、日米相互防衛援助協定というものを前提としての法案であるがゆえに、もし日米相互防衛援助協定というものが廃棄されましたらこの法案はどうなるのであるか。もし協定が廃棄された場合、この法律は自然廃棄されるというものであるならば、これは限時法であるか、恒久法であるか、この法律の性格はどうなんですか。この協定の存在を前提としてのこの法律は、この協定が廃棄される場合にはなくなるはずです。そうすると、限時法的性格を持つのじやないか、それはどういうことになるのですか。
#146
○山田政府委員 第一の御質問につきましてお答えいたしまして、第二の点につきましては外務省の方からお答えを願いたいと思います。
 ただいまお尋ねのこの被害法益は御質問のようにいろいろ御疑念もありますが、われわれ政府当局の考え方といたしましては、日米双方の秘密を保護するものでありまして、すなわちMSA協定などによりまして供与される装備品などは日本の自衛のためのものでありまして、その秘密を保護することは日本の自衛のために必要でありまして、その意味におきまして第一次的には日本の秘密と考えております。しかしながら他面これらの装備品等はアメリカの防衛のためにもその秘密を保護する必要がありますので、従いまして日米双方に共通の秘密である、かように私どもは考えております。
#147
○下田政府委員 第二の点につきましては、MSA協定の第十一条第二項にこの協定の廃棄の通告を受領した日の後一年を経過しますと、協定は失効することになつておりますが、但書におきまして、第三条の1、つまり供与された援助物品の秘密保護に関する義務は両政府が別段の合意をしない限りなお引続き効力を有することになつております。従いましてほつておきますならば、たといこの協定が廃棄されました後におきましても秘密保護の義務を有するということになつておるのです。
#148
○猪俣委員 そうすると、あなたの解釈は限時法じやないという解釈ですか。永久法であるという解釈ですか。
#149
○下田政府委員 限時法、永久法という専門的の言葉を私は申し上げる地位にございませんが、常識的に考えますと、この協定というものは安保条約の関連におきまして米軍が漸次日本を撤退し、これに伴つて日本は漸次自衛力を増す過渡期における援助の物品でありまして、日本は永久に自国を守るための武器を外国に仰ぐという考えはないわけでございますから、その意味では日本自体の防衛秘密を唯一の守るべき法律とした秘密保護の立法がやがていつかは、独立国の実を上げますときには必要になつて来る時期が参るのではないかと思います。その際におきましては日本ではこういうことをやつておりますが、英仏その他の国はその国独自の秘密保護法があるのでございますから、日本が、米軍撤退のあかつきにおきましては、やはり英仏と同じような独自の秘密保護法を持つ必要が来るのではないかと思います。そうしましたら、この臨時の立法はやはり独自の日本自体の秘密保護法に吸収せられまして、従つて今次法案はそれによつてとつてかわられる。その意味で私はやはり時において限りのある法律ではないか、そういうようにしろうととして思つております。
#150
○猪俣委員 しろうととしての答弁では困る。これは限時法としからざる法律とにおいては、効力において非常に違つて来る重大問題を含んでおるのです。大審院の判例でも悩みました問題を含んでおる。限時法である場合におきましては、その行為の時をとつて処罰するかどうかという問題にからんで、無罪になつた、有罪になつたという問題があるのです。それははつきりした答弁をしてもらはなければ困る。限時法であれば、限時法としての学者の意見も通説はほぼ統一されておる。それに従つての効力を発生して参ります。恒久法であるならば、しからざる事柄になるのであるから、それははつきりした答弁をしておいていただかぬと、後に裁判問題になつたときに困る。社会党内閣になればこんなものは廃止してしまいます。その際に限時法であるか、永久法であるかという問題が非常に影響がある。私どもは社会党内閣を予想いたしまして質問をしておる。
 それからこれはアメリカのためでもある、日本のためであるという答弁であるが、これもはなはだ奇怪な答弁である。日本の自衛のためでありますならば、この日米相互防衛援助協定に基いて供与されたものだけ取締るというりくつがわからぬ。日本の自衛のためであるならば、自衛を全うするために他にまだたくさんあるかもしれぬ。しかるに日米相互防衛援助協定だけに基いて供与された装備品だけに限るというところに、法益論として私どもは日本のためでもあるという議論が矛盾しておると思う。またアメリカの機密保持のためにあるとするならば、他国の機密保持のために一国の国民が処罰される、さようなことも今までの法益論からうなずけない。これはもつと両方統一した法益論が出て来なければならぬと思います。そうしないとわれわれはまつたく属国で法益論をとるか、あるいは自衛を全うすると称しながら、他国からもらつた兵器だけについてというような説明がつかないことが起る。これは根本的な問題でありまするがゆえにもう少し統一ある答弁をしていただきたいと思う。
 そのほかお尋ねしたいことは多々あるのでありますが、本会議も始まつておることでおりますし、お互いに初めからとことんまで一問一答しませんと中途半端で切ることができないので、私はきようはこの程度でやめておきたいと思いますが、ただちよつとこの法案と別な問題につきましてお尋ねしておきます。それは私のところに投書が参つておりまして、その内容は、保安大学の教授の人たちが教務部長その他の人たちと共謀の上、自分の住所を移転せざるにかかわらず、他へ移転したがごとく転出証明書を偽造して、赴任費と申しますか、移転費と申しますか、さようなものの支給を受けておる。そういう事実があつて、その支給を受けた教官の名前を全部連記して来ております。しかし教官の名前を読み上げることは私は情において忍びませんので申し上げませんが、小さいことでありましようが、厖大な国費を使つております保安隊、またさつき木村長官が言いましたような規律を厳にしなければならぬ保安隊なり自衛隊の大学の教官が、もしさようなことをしておるといたしますと、これは大いなる問題だと存ずるのであるが、この機密保護法の中のいわゆる業務による漏洩罪、この中には保安隊に関係するような人たちが多数含まれると思いますが、そういう点など考えあわせまして、もしかようなことがありますると、これは大いに心配しなければならぬ事案ではないか。そこでこれは当局者においてしかるべく御調査していただいて、秘密でよろしゆうございますからお知らせを願いたい。私は名前はここで公表いたしませんし、わずかな金に対して気の毒なことだと存じますけれども、しかしこれが氷山の一角であるといたしますれば容易ならざることである。国費の何割というものを占めておる保安隊が、かようなことをやつておるという疑惑があるといたしますと容易ならざることである。そこであえてこの調査を私は願いたいと思います。もし具体的事実がわからぬで調査ができないならば、私はひそかに申し上げてもよろしゆうございますが、公の席上では遠慮しておきます。私はきようはこれだけにしておきます。
#151
○小林委員長 本日はこの程度にとどめておきます。明日は午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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