くにさくロゴ
1953/04/20 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第42号
姉妹サイト
 
1953/04/20 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第42号

#1
第019回国会 法務委員会 第42号
昭和二十九年四月二十日(火曜日)
   午後二時二十三分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君
   理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君
   理事 井伊 誠一君
      押谷 富三君    花村 四郎君
      牧野 寛索君    猪俣 浩三君
      木下  郁君
 委員外の出席者
        検     事
        (刑事局総務課
        長)      津田  実君
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
四月二十日
 理事花村四郎君の補欠として林信雄君が理事に
 当選した。
    ―――――――――――――
四月十六日
 戦犯者釈放等に関する請願(牧野寛索君紹介)
 (第四四八〇号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 理事の互選
 日本国における国際連合の軍隊の地位に関する
 協定の実施に伴う刑事特別法案(内閣提出第一
 四一号)
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 本日の日程に入る前にお諮りいたします。理事の花村四郎君より理事を辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○小林委員長 御異議なしと認め、許可するに決します。
 花村君の理事辞任に伴う理事の補欠選任についてお諮りいたします。理事の補欠選任につきましては、先例に従い委員長において御指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○小林委員長 御異議ないものと認め、理事の補欠には林信雄君を御指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○小林委員長 日程に入ります。日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法案を議題とし質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。林信雄君。
#6
○林(信)委員 この際付議されております日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法案について若干のお尋ねをいたしておきます。
 その一つは、国際連合総会における決議によりまして、朝鮮に軍隊を派遣した諸国であつて、さきに板門店において休戦成立いたしたのでありますが、その後わが国になお軍隊をとどめている諸国は一体どことどこであることになつたのでありましようか。
 さらにいま一つ一緒にお尋ねしておきますが、休戦成立後これらの軍隊が撤退するのは何年何月であるといつたようなことがすでに予定されていますか、あるいは決定的なものでなくて予想せられるところがあるのでありましようか。この二点についてお伺いをいたします。
#7
○津田説明員 第一の点につきましては、本年の二月十五日現在の調査によりますると、朝鮮に軍隊を派遣しております国、すなわちただいま御指摘の国際連合の決議に基きまして朝鮮に軍隊を派遣しております国は、アメリカ合衆国、それからイギリス、カナダ、オーストラリア、ニユージーランド、ベルギー、ルクセンブルグ、コロンビア、エチオピア、フランス、ドイツ、ギリシヤ、イタリア、オランダ、ノールウェー、フイリピン、スエーデン、タイ、トルコ等の諸国でございます。しかしながら現在それらの軍隊が全部日本国内にあるのかどうかにつきましては、必ずしも全部あるとは申し上げられないのでありまして、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニユージーランドは確実に相当数現在駐もしております。その他の諸国におきましてはごく少数の場合もあり、あるいは全然いない場合もございます。また朝鮮に病院船のみを派遣しているような国がございまして、さような国は、その病院船が入港したときは、日本に駐留するというか、日本国内にあるという形になるのでございますが、病院船が本国に帰つておりますときは、全然おりませんというようなわけでございまして、ただいまあげましたイギリス関係の諸国を除きますれば、非常に少数だということは申し上げられるわけであります。
 それから第二の点につきましては、国際連合の軍隊が朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退するということが、本協定の二十四条に規定してございます。従いましてその日以後九十日以内には必ず撤退することに相なるわけでございますが、その日がいつになるかということはあらかじめここで申し上げかねる次第であります。
#8
○林(信)委員 たいへんたくさんな国の軍隊がおるがごとくしておらざるがごとくのようですが、その数字は伺えますか。あるいは国際間の機密を相互に守るといつたような点から支障がありますれば、それはしいて伺うわけではありませんが、この法律の対象になる数字でありますから、もしお答え願えれば一応承りたいと思うのであります。いかがでございましようか。
#9
○津田説明員 その点につきましては、もちろん兵力数につきましては、軍の機密に属しますので正確なことは申し上げにくいのでありますが、大体の数といたしましては、過去におきまして一番多いときで国連軍は一万程度ということを申し上げておきます。もちろん現在はもつとそれより数字が少く、数千というところだというふうに申し上げられるかと思います。それらのおります地区は主として、呉、広、それから東京のエビス・キヤンプ、大体この三地区であります。
#10
○林(信)委員 次に、あらためて申すまでもなく、さきに国会におきまして日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法が制定されまして、今また日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法案として提出せられております。比較いたしましてただちに明瞭でありますように、その名称もあまり違つておりません。一は刑事裁判権と言い、一は軍隊の地位に関するといつたような表現になつておる程度であります。なお内容に至りましては、ほとんどというよりまつたく違つていないように観察せられますが、かように同じ内容のものをなぜあらためて別の法律にしなければならないのか。一つの法律にできないならば、すなわち先の法律をこの場合準用するというか、適用するというか、何かさような立法技術で足るのではないか。ほとんど違わない二つの法律をかようにしてつくつて行かなければならないのはどういうところに起因するのでありましようか。もちろん事情があると存じますので、それを伺いたいと思います。
#11
○津田説明員 御指摘の点はまことにごもつともだと思う次第でございます。立案の過程におきましても、御指摘の点はいろいろ検討をいたしまして、法制局におきましてもいろいろ検討をいたした次第でございます。この昨年の議定書に伴う刑事特別法を改正して行くという考え方もむろん可能であつた次第でございます。しかしながら先般のこの議定書に伴う刑事特別法に署名いたしております諸国のうちで、はたして今度の国際連合の軍隊の地位に関する協定にただちに署名するかどうか不明だということが考えられるという国がございまして、たとえばフランスでありますとか、イタリアでありますとか、あるいはまだ批准はいたしておりませんが、オランダというような国、そういたしますると、今ただちに前の議定書に伴う刑事特別法を改正いたしますと、それらのものの地位に関してやはり別の立法的措置をしなければならないという問題が残るわけであります。もちろんそれは附則等において操作することも不可能ではないのでございますけれども、裁判所で適用いたす場合におきましても、当該署名あるいは加入した条約なり協定に基く刑事特別法が別個に存在する方が適用しやすいという利点がある。しかしながら同じような法律が二つ並立するという法制上の複雑化ということも考えなければなりませんけれども、その点につきましては将来もしその議定書に署名いたしている国が全部この協定の署名国あるいは加入国となりました場合には、当該法律は失効するように措置すれば一番よかろう。その失効するまでの間、すなわち議定書に署名した国で今回の協定に署名しない国がなくなるまでは、並立の形は暫定的といえどもやむを得ないということになります。その方が立法技術上も、運用技術上も非常に便宜であるというふうに議論が一決いたしましたので、かような立案になつた次第でございまして、将来前の議定書に伴う刑事特別法を失効せしめるということにつきましては、あらかじめこの法律の附則の第三項に措置をいたした次第でございます。それによりまして将来は国連軍が駐留いたします間のうちでも、もつと早い機会にこの二法律の並立をなくすということにいたした次第であります。それによりまして法令の複雑化というものを防げば一番よろしいのではないかというふうに考えまして、さような立案にいたしまして、別に刑事特別法を提案した次第でございます。
#12
○林(信)委員 正直に申しましてわれわれは専門家ではありませんから、条約関係のことについてはたいへん知識がないのでありますが、一応こういうふうに同じような法律を別につくるというのは、そのときどきの条約の相手国が違つておるために、新たな国との間に協定がなされた。それで法律を必要とし、つくるとなれば同じようなものができ上る。こんなふうに受取つておるのでございますが、そうでなくて御説明には大分むずかしいところがあるのですが、もう少し平明にしろうとにわかるように教えていただけないものでしようか。
#13
○津田説明員 昨年の議定書は刑事裁判権の行使に関する議定書でございまして、国際連合の軍隊の日本に駐もいたしまする万般の事柄を協定したものではないわけでございます。刑事裁判権のみ一番重要な問題として最初に妥結いたしました。しかしながらその当時といたしましては、まだ他の財政関係その他の事項については妥結いたしておりませんので、とりあえず刑事裁判権だけを切り離して昨年の議定書といたしたわけであります。それにつきましては諸国が署名をいたしまして現に発効をしておる国は、オーストラリア、カナダ、ニユージーランド、グレート・ブリテン、北アイルランド連合、すなわちイギリス、南阿連邦、フイリピン共和国、フランス、イタリア、それだけが署名をいたしまして、これは全部発効いたしました。それからオランダは署名をいたしておりますが、まだ本国が批准いたしておりませんので、発効いたさないのでありますが、そういうことに相なつておるわけでございます。従いましてそれらの諸国との間におきましては、現在はその議定書に基いて刑事裁判権を措置しておる、従いまして国内的手続といたしましては議定書に伴う刑事特別法、昨年十一月十二日に公布になりましたあの法律が適用されておるわけです。ところが本年の二月十九日に至りまして全部の協定ができ上つて、昨年の議定書の内容がそのまま今度の協定の中に取入れられたわけでございます。もとより昨年の議定書には、木協定ができる際はそれに統合されるということがあらかじめ合意されておりますから、それは当然の措置ということになります。ところが今度の議定書に署名いたしております国々はオーストラリア、カナダ、ニユージーランド、グレート・ブリテン及び北アイルランド、すなわちイギリスと、南アフリカ連邦及びフイリピンの六箇国で、フランス、イタリア、オランダはまだ署名いたしておりません。そういうふうになりまして、今度この協定が国会の承認を得て発効いたしますと、これらの諸国のうち、無条件で発効することになつておりますイギリス、オーストラリア、フイリピンにつきましては、日本について発効すると同時に発効いたします。そういたしますと前の議定書は、当該発効国との間に本協定発効と入れかわりに効力がなくなるわけであります。ところが今予定されておりますイギリス、オーストラリア、フィリピン以外の諸国につきましては、本協定が発効いたしませんので、依然として昨年の議定書が効力を有しておつて、本協定はまだ発効しないまま署名した状態のままで存続しておる、こういう形になります。そこでそれらの諸国との間につきましては議定書が効力を有するわけでありますから、従つて刑事特別法は議定書に伴う刑事特別法でなければならぬわけであります。ところがすでに署名して、無条件で発効いたすことになつておりなすイギリス、オーストラリア、フイリピンにつきましては、発効のあかつきは今度の議定書に伴う法律である必要がある。そういうふうに、まつたく内容は同じでございますけれども、根拠たる条約を異にするわけでございまして、従つて両方共通に一つの国内法を使うということが立法技術上困難な点もございまするのみならず、運用の面におきましてはいろいろごたごたいたしまして、たとえば裁判所で引用いたします場合等におきましてもめんどうがあるというような点が出て参るということが予想されます。そういう理由から別個の刑事特別法をつくりまして、順次この新しい協定に前の議定書署名国が乗り移るように、当該国との間にはその刑事特別法の効力をなくして行く。そして前の議定書の署名国が本協定の署名国となつて発効いたしました場合には前の議定書の効力をなくして、これを永久に抹殺してしまう、こういう技術をとつたわけでございます。
#14
○林(信)委員 そうしますと、議定書の実施に伴う刑事特別法の対象になる国の数の方が多いのか少いのか。比率はどつちでもいいようなわけですが、この法案の対象になる国の方が多いのでしようか少いのでしようか。
#15
○津田説明員 現在の状態におきましては、もとより議定書に署名している方が多いのでございます。しかし将来本協定に署名するごとに議定書の署名国から脱落して行く形になります。将来は逆になつて参ります。議定書につきましては、もう現在は署名を許さないことになつております。現在署名するとすれば、必ず本協定だということになつておりますから、全部の未署名国につきましては、将来とも本協定に署名して行くことになりますから、次第に本協定の署名国が多くなつて参るということになります。
#16
○林(信)委員 さようにいたして参りますると、まだ比較多数であります議定書の署名国が、順次本協定に移つて参りますと、今度のような法案がその都度なされなければならないと思うのですが、そうでありましようか。そうであるといたしますれば、やはりその都度こんな法案が同様な姿で現われて来ることになるようでありますが、その通りでございますか。
#17
○津田説明員 その点でございますが、今回御審議願つております刑事特別法の第一条におきまして「この法律において「協定」とは、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定をいう。」それから「派遣国」とは国際連合の諸決議によりまして「朝鮮に軍隊を派遣したアメリカ合衆国以外の国であつて、日本国との間に協定が効力を有している間におけるものをいう。」こういうふうに定義をいたしております。ですから協定に署名いたしまして、あるいは加入いたすにつきまして、もちろん日本の承認がいるわけでありまして、日本の承認を得てこの協定に署名し、あるいは加入した国で本国が批准いたしますか、あるいは無条件で署名した国につきましては、その批准あるいは無条件署名したときに、日本国との間にこの協定の効力が生じて来るわけであります。従いましてこの第一条の定義規定の関係からいいまして、効力が発効いたしますと、ただちに刑事特別法が当該諸国との間に動いて参りますから、もう今回一回だけ特別法をつくれば、あとは加入するごとにこの特別法に乗つて参る、こういうことになります。
#18
○林(信)委員 さようにいたしますと、今後は同様なことは起きて来ない、今回までだと考えられますが、それにいたしましても、内容的に同じようなものをつくつたという理由について、先刻の御説明では、実際に適用する場合の裁判官の便宜といつたようなことに帰着いたしたようでありますが、何かもつと根本的といいますか、外交関係よりしまする特殊な理由というものは全然ないのでございましようか。いわば従来の国際慣例というようなものでもあるのでありましようか。それは全然なくて、先刻来の御説明にとどまるのでありましようか。当初申し上げました立法技術関係について重ねてお伺いしたい。
#19
○津田説明員 いかなる形で国内法を立案いたしまするかにつきましては、もとより何ら合意と申しますか話合いはございませんし、国際的な先例もむろんないわけであります。従いまして前の議定書に伴う刑事特別法を改正して新しい内容を実現することももちろん可能でございまして、日本国がそういう態度をとれば一向さしつかえないということであるというふうに考えられる次第でございます。しかしながらこの本協定と申しますのは、少くとも昨年の議定書と違いまして、万般の国際連合の軍隊の在日関係を規定した協定でありまして、いわば当該軍隊が駐留いたします限りにおきましては、前の議定書は単に暫定的に本協定ができるまでの刑事裁判権のみの合意を規定したもの、こういうことになりますので、本質的に申せば、こちらの本協定に対してこそ本式の刑事特別法がいるということになるわけでございます。前のはいわば暫定的なものでございまして、従いまして考え方といたしましては、前の暫定的なものを一応先の期限を見越したものにしておいて、この本協定に伴う刑事特別法を比較的恒久的なものとして立法する方が、理論的には筋が通つているという考え方がもとより根本にございまして、そういう意味におきまして、むしろ今回の方を主とし、前の方は早晩なくなるという意味におきまして、仮のものという地位を今度は与えるというようなことを附則でいたしておる、こういう趣旨であります。ですから現在におきまして、もしこの法律案の御可決をいただきましたあかつきにおきましては、この法律が主になつて、あちらのものはいわば陰のものと申しますか、将来なくなる暫定的なものということになるかと思つております。
#20
○林(信)委員 御説明一応わかりますが、前のものは暫定的な、いわば特例的なものである、今度のものが原則的なものである、こういう観念的なものはよくわかるのですけれども、先刻私申しておりますように、何か国際間の特別な理由がないならば、国内的に考えますと、かりに例をとりまして、国内的な特別の臨時立法がなされた、それは非常に広範囲の事柄を規定したものでなかつたために、この臨時のものを恒久な一般法とするというような場合には、その内容をそのまま取入れて、その法律の内容をそのままその後の法律とするといつたような立法技術も、国内法にはいたしてもさしつかえないのじやないか。そうなりますと、わざわざ別の法律をつくらねばならないほどやつかいなものでもないでしようけれども、内容的に同じようなものを新たにつくらなくてもいいように思う。もつともそういう考え方もあると言われるのですから、この辺は意見の相違になつて来るかもしれませんが、先刻来御説明の、議定書に基きます刑事特別法と今回のものとはいくらか範疇を異にしているように言われるのでありますが、それは主たる点はどういうところにあるのでありましようか。やはり内容的に違うのでございますか。臨時立法であるということは一応わかるのですけれども、御説明によると、今度のものは万般のものを含んであるとおつしやられるのでありますが、万般のものを含んでおるという点、これは比較対照いたしてよく勉強すればわかるかと思いますが、便宜御説明を願いたい。
#21
○津田説明員 ただいまお尋ねの点でございますが、万般の点を含んでおると申し上げましたのは、日本における国際連合の軍隊の地位に関する協定、ただいま外務委員会で御審議をいただいておりますが、この協定には刑事裁判権に関する事項以外の二十数箇条でございまして、それが日本に駐留する国際連合の軍隊の地位についていろいろの内容をきめておる、それが万般の内容をきめておるという趣旨で申し上げた次第でございまして、刑事裁判権の内容につきましては議定書の場合と今回の本協定の場合と少しもかわりない、従いまして協定の形式そのものが万般を含んだ本格的のものになつた、こういうことを申し上げたのであります。従いましてこの協定に伴う特別措置につきましては、諸特別法あるいは特例法というものが、いろいろ国会に提出されておりますが、それは今日初めて提出されておる。刑事裁判権のみが昨年すでに抜き出して合意され効力を発生しておりますから、昨年刑事特別法になつた、かようになつておる次第であります。内容そのものはほとんど相違がございませんことは、ただいま御指摘の通りでございます。
#22
○林(信)委員 そうなりますと、世間で申します法律の民主化ですか、何か法律というものはかた苦しいものであつたり、場合によつては繁文褥礼的なものである場合があるというような攻撃を受ける、いわば一つの材料を提供するような感がなお去らないのでありますけれども、それが実際に裁判官の運営等においてたいへん便宜であるといたしますれば、なお相当非難があるといたしましてもこれまたやむを得ないことであります。どうもそれほどの便宜、言いかえますれば不便というものが裁判官にあろうようにも思われないのでありまして、むしろかような機会に、法律の民主化と言つても簡単過ぎる言葉ですが、何らか法律の立て方、取扱い方において何かしらまだほんとうに大衆のものになつていないというような面が云々せられますときに、一応これは考えられてよかつた問題のように存ずるのでありますが、実際の内容に関する議論ではないのでありますから、これはこの程度にとどめます。
 次いで、あらためて申し上げますまでもなく、すでに最初に成立しましたところの日米間の安全保障条約に基く行政協定実施に伴う刑事特別法と、次に成立いたしました国連軍の関係のもの、先刻来お述べにもなるし、私もあげておりまする暫定的た議定書の実施に伴う刑事特別法と、本則的になりますが今回の刑事特別法の両者、言いかえてみますれば、日米間のものと国連軍関係のものと内容上若干の差異があるようでありますが、まず便宜上この差異を御説明願いたいと思います。その差異のおもなものといたしまして私の今気づいておりまするものでは、日米間の刑事特別法には実体的な刑罰規定が包含せられておりまするのに、国連軍関係のものは形式的な刑事訴訟の手続法関係だけであつて、刑罰規定はないようであります。それはどういうことに基因するのでありましようか、この二点をあわせてお伺いしておきたい。
#23
○津田説明員 ただいま御指摘の通り、日米安全保障条約に基ずく行政協定に伴う刑事特別法――日米刑事特別法と略称いたしておりますが、日米刑事特別法におきましては、罪に関する実体規定を設けてあります。第二条から九条までございますが、先般の議定書に伴う刑事特別法及び今回の協定に伴う刑事特別法には、その規定をいたしておりません。これは御指摘の通りであります。それは行政協定と、今般署名になりました国際連合の軍隊の地位に関する協定における合意の内容が異なつております結果、かようになつた次第でございます。今回の協定におきましては、その第十七条にかような協定をいたしております。「この協定の当事者は、国際連合の軍隊、同軍隊の構成員、軍属及び家族並びにこれらのものの財産の安全を確保するため随時必要となるべき措置を執ることについて協力するものとする。日本国政府は、日本国の領域において国際連合の軍隊の工作物、備品、財産、記録及び公務上の情報の十分な安全及び保護を確保するため、並びに適用されるべき日本国の法令に基いて犯人を罰するため、日本国政府が必要と認めるところに応じ、立法を求め、及びその他の措置を執るものとする。」かように相なつております。日米行政協定の場合は、これと表現は似ておりますが、「必要な立法を求め、及び必要なその他の措置を執ることに同意する。」ということになつております。今回の協定は「日本国政府が必要と認めるところに応じ、」ということに相なつております。この点が日米行政協定の場合と今回の協定の場合と違うのでありまして、日米行政協定の場合は、安全保障条約に基いて日本国に駐留する軍隊と、今回の国際連合の軍隊と、この点について相違を示しておるところの行為がなされた次第であります。従いまして、日本国政府といたしましては、必要と認めるかどうかというところに応じて公務上の情報の保護とかあるいは備品、財産等の安全の保護ということをすればよろしいわけであります。ところが現在におきましては、かような犯人を処罰するための必要性は認められないという結論になりまして、日米の場合と異なりまして、罪に関する章は設けなかつた次第であります。
#24
○林(信)委員 この法案の内容につきまして、各条小さい点でまだ疑点がありますが、すでに慎重審議したものと同様なものでありますからこれを差控えたいと存じます。さような意味において、法案の具体的内容に入つてお尋ねするのはどうかと思いますが、一点だけ伺いたいのであります。それは第十二条の刑事補償に関するものであります。この法文の字義はこのままでよくわかるのでありますが、この規定によりますれば、抑留または拘禁によつて被害者となつた者は刑事補償が受け得ることになるのであります。さように相なりますれば、刑事補償をいたしますのは日本国家であるわけですが、さように受取つてよろしいのでありましようか。そうであるといたしまして、日本国家がその補償をいたしましたならば、これは別の定めによりまして、さらに派遣国の補償を受領し得るものになつておるのでありましようか、その点をお伺いしたい。
#25
○津田説明員 その点でございますが、日本国の裁判所が裁判権を行使しまして無罪になる、ところがそれに関する抑留あるいは拘禁は国際連合軍がいたしておつた、こういうことになるので、その軍隊の構成員がもし日本側において抑留されておりましたならば当然補償を受け縛るわけになるのであります。ところが日本側の裁判権のために国際連合の軍隊の中で拘禁されておつた、こういう場合には、これは主として日本の裁判のための拘禁であつたというわけになりますので、もし無罪になりましたあかつきには、日本側が補償してやるのが当然ではないかという考え方になるわけであります。たとえば日本国内で日本国の法令違反をしたことが国際連合の軍隊の警察当局にわかりました場合には、ただちに逮捕いたします。逮捕いたしまして、その者を逮捕したからということの犯罪内容を日本側に通知して参りまして、その場合には、この条約によりまして、起訴されるまでは当然向う側が拘禁を続けることになるわけであります。起訴されますと、日本側が令状請求によつてそれを受取ることになつております。ところが日本側の裁判によつてその事件が無罪になるというような場合は、前の拘禁は日本の裁判のために拘禁しておつたのであるから、これは日本側で補償してやるのが当然であるということになります。従いましてそれについてさらに向うから補償をとるのは、理論上いかがかと思います。その点は別に話合いはございません。
#26
○林(信)委員 御説明はよくわかりますが、そうだとこれはやはりこの法案に入れるべきものでなくて、刑事補償法の方に入れておくことが適当じやないかと思うのですが、そんなことはお考えになつたことはないのでございますか。その点をお伺いいたします。
#27
○津田説明員 この点は日米関係の刑事特別法にも同様の規定がございますが、その際に考慮いたした次第でございます。何と申しましても刑事補償法というのは日本国内における恒久法でございまして、かような臨時的に駐留するアメリカの軍隊あるいは国際連合の軍隊の処置を当該恒久法の中へはめ込むことは妥当でないと思われます。刑事関係の特例は、一応とりまとめてこの法律にした方が、体系的にもすつきりするし、駐留がなくなつた場合におきましては、ただちにこれのみを廃止すればよろしいということにもなりますので、さような立法上の技術をとつた次第でございます。
#28
○林(信)委員 私の質問はこれをもつて終ります。
#29
○木下委員 関連してちよつと伺つておきたいと思います。これはこの間外務大臣にも伺つたのですが、国連の軍隊ということについては長い間戦力論争が繰返されて、国民はもうあいてしまつておると思う。ああいう普通の常識とかけ離れた解釈が出て来ているが、これから先太平洋の同盟というようなものも、地域集団保障という意味で出て来やしないかとも考えられる。そういうときに、欧州の諸国では一次大戦から連合していくさをするという経験を持つているが、日本が将来、そんなことはないと思いますけれども、やはり国連の軍隊という名前で、言いかえれば今日本に実質的にある、戦力を持つているとかいないとかいうことを問題にしていない寅隊が一緒に出かけて行つて、さあそれが憲法違反じやないかという議論が起つた場合に、それは日本の軍隊じやないのだ、国連の軍隊であるという解釈が出て来やしないか、これはまつたくの杞憂でもないのじやないかという感じがするわけです。こういう法律の見出しに、国際連合の軍隊の地位に関してという、法律的にもこれを一つのまとまつたものかのようにして取扱つて来ておりますが、これにはイギリスの軍隊その他の国の軍隊がある。それを一つのまとまつた別なものとしている。その軍隊の最高の命令権が、いわゆる統帥権といいますか、それが国際連合軍の総大将、総司令官にあるからそういう性格を持つので、その構成分子である各国の軍隊は、その国の軍隊という考え方の中には入らぬのである。一段上に上つたか下つたかわかりませんが、違う種類のものになつたのだというような解釈が、こういう法律の表題が出たから自然と起つて来はしないかという感じがするわけであります。それでこの法律なんかで、日本に駐留する国連軍の軍隊といつておるのは、この刑罰法規の、あるいは裁判の目的になる人は、実質的にはその個人々々の兵隊の所属しておる国の軍隊の軍人だという意味か、それとももうそういう点は離れて、国連軍の所属の軍隊の構成員である兵隊個人かというような意味について、新しい事柄でありますから、まだあまりはつきりした、こうだという確固たる点はでき上つていないかもしれないと思いますけれども、国連軍の軍隊といえば連合軍の総司令官に指揮される部隊だといつて、別なもののように考えての取扱いですか。それともやはり国連軍の軍隊であるけれども、その軍隊の構成員である兵隊が持つておる国籍の軍隊に所属するものだというのか。そこをどういう比重で見ておるか。その点をひとつ伺つておきたいと思うわけであります。
#30
○津田説明員 御指摘の点でございますが、これはこの刑事特別法の定義規定にもございます。もちろん本協定の第一条にもありますが、同じことであります。まず定義規定の第一条の第三項によりますと、国際連合の軍隊というものの定義といたしまして、「派遣国が前項に規定する諸決議に従つて朝鮮に派遣した陸軍、海軍及び空軍であつて、日本国内にある間におけるものをいう。」こういう定義になつております。でございますから、個々の派遣国の軍隊であるということは当然でありますが、同時にここの第二項にあります国際連合安全保障理事会または総会の決議に従つて朝鮮に派遣した陸海空軍でなければならぬ。たとい派遣国――例で申しますと、カナダの軍隊でありましても、この決議に従つて朝鮮に派遣されるものでないもの、別の目的で日本へ来た――そういう例があるかどうかわかりませんが、かりに練習艦隊が日本を訪問したというような場合は、もちろんこの法律あるいはこの協定の律する範囲外であります。従いまして朝鮮に派遣する目的で、あるいは派遣した後、とにかく朝鮮派遣軍となつて来たものに限られるということになるわけであります。それらの各派遣国の軍隊がどのような指揮系統によつて指揮されるかということについては、もちろん日本側にとつて、少くともこの法律あるいは協定においては関知していないところであります。
#31
○木下委員 私はこの法文の解釈問題として伺つておるのではないのです。もつと将来のことがあるから伺つておるわけです。この法律案のさしておる国連軍の軍隊というのは、欧州にもありましよう。朝鮮に来ておるものもある。この法律では、朝鮮に来ておる人でなければならぬとしているから、欧州の国連軍の軍隊といつても、それは取締りの対象にはならない。これはわかりきつたことですが、私がそういうことを伺うのは、これは大分先の話かもしれぬけれども、将来世界連邦とかいうようなものが、もう少し国連が固まつて来てできて、そして小規模でも軍隊を持つておつて、どこかに平和を乱すような国があれば、そこへその都度相談して各国から出し合うというようなことになる時代がひよつとしたら来やしないかというふうに考えておる。やはりそういう線に向つての一つの動きではないか。日本の憲法の解釈論がさしあたり問題になつて来ると、現に戦力なき軍隊というような、社会常識とはぴつたり来ない言葉が、国会で一年も二年も繰返されておるというふうなんだから、また将来これは日本の軍隊じやないのだ、国連軍の軍隊なんだ、何となれば、最高の統帥権は日本になくて、日本の総理大臣にもなくて、国連軍の総司令官にあるのじやないかというようなことを言う議論も出て来るのではないかとも考えるわけです。外交の畑では、一体国連軍の軍隊というときには、ほんの寄合い世帯だという意味に軽く扱つておるのか、それとも一つのかたまりとして、今後独自の性格を持つた連合軍として取扱つておるものかどうか、外交界ではその一つの観念ができ上りつつあるかどうかということを伺つておきたいと思つたわけであります。そういう点はまだそれほどはつきりしたものがなければ、ない、少しはあるならば、あるということでも、何かその方面の論議の中に出ておるかどうか、それをちよつとついでに伺つておきたいと思うわけであります。
#32
○津田説明員 ただいま御質疑の点につきましては、はなはだ恐縮でございますが、私この本協定の立案に当りました過程におきましては、さような議論は全然聞いておりません。ただ、ただいまのところ私の承知いたしておる範囲におきましては、国際連合の軍隊といいましても、各派遣国の軍隊でありまして、それぞれの主権に基いて行動をいたしておる、その間にいろいろの協定等はございますが、むろん裁判権等につきましても、警察権につきましても、各独自にそれぞれやつておる、互いに協調は保つておりますが、独自にやつておるということは、私ども交渉の過程におきましてしばしば経験しておるところでありますので、おそらくさような機運というものはないのではないか、表面的には見受けられないというふうに考えております。
#33
○木下委員 これは特に研究したわけでもないが、常識的に考えて、欧州の第一次大戦のときからインド兵の部隊というようなものが出て来たり、それからアフリカから来たアフリカ兵部隊というものがある。インド人は大英帝国の国籍を持つているだろうと思うのですけれども、それを構成する人間は、人種的に言えばインド人である。だから、人種のところに重きを置くと、それはインドの兵隊だ、軍隊だというふうに考えられる。日本人も将来徴兵はなかなかできる相談でないけれども、やはりアメリカの軍隊に志願して加わつて行つたというような兵隊もあるし、現に朝鮮にいたのに、個人的に志願して行つて死んだというような連中もある。これなんかは、今まではちびりちびりだから問題にならぬけれども、日本人の志願者が一つの中隊なら中隊、百人なら百人そろつている、それは全体を見れば、まだアメリカの軍隊かもしれないけれども、その部隊は日本部隊である、日本人部隊であると言つているが、やがてそれがちよつと量が多くなると、日本の軍隊だというようなことにもなるから、国連軍ももう人種とかいうような、それを構成している人たちの国籍のいかんというようなことは問題にせぬような空気が新しぐ発生しているじやないか。またそこを憲法解釈論のときにうまく切り抜けるのにぐあいのいいようなこと、法理が立つようなことができはしないかというふうに思うから実は伺つたわけであります。しかしまた考え方によれば、たいへんりくつに走つたような事柄でありまして、まだ大きな国際的な問題にまではなつていないかもしれないけれども、こういう法律がたびたび出て来ると、それが一つの国連軍というまとまつた上の段階の軍隊というようなものが考えられて来るような時代が来やしないかというふうにも思つて伺つたわけです。
#34
○小林委員長 他に御質疑はありませんか。――なければ、本日はこの程度にとどめておきます。
 明日は午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することといたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト