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1953/04/24 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第44号
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1953/04/24 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第44号

#1
第019回国会 法務委員会 第44号
昭和二十九年四月二十四日(土曜日)
   午前十時十七分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君
   理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君
   理事 井伊 誠一君
      押谷 富三君    高橋 英吉君
      花村 四郎君    牧野 寛索君
      中村三之丞君    吉田  安君
      猪俣 浩三君    木原津與志君
      木下  郁君    佐竹 晴記君
      池田正之輔君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 緒方 竹虎君
        法 務 大 臣 加藤鐐五郎君
 出席政府委員
        法務政務次官  三浦寅之助君
        検     事
        (刑事局長)  井本 台吉君
 委員外の出席者
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 検察行政に関する件
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 検察行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから、順次これを許します。なお昨日も申し上げましたように、発言の通告者が大分たくさんありますから、発言は各委員一人十分くらいにお願いいたしたいと存じますので、さようお含みの上発言を願います。柳谷富三君。
#3
○押谷委員 加藤新法務大臣におかれましては、今回犬養前法務大臣御退任の跡を襲われまして、法務行政、検察行政の最高責任者の地位におつきに相なつたのでありますが、前法務大臣御退任前夜の状況をお考えになりましても、法務省はたいへんむずかしいところであり、複雑なところであり、しかもきわめて重大な問題が山積しておるところでありますから、そこへおいでになりました新法務大臣は、鬼門に向つて進まれたというような感じを深くするのでありまして、お祝いを申し上ぐるよりも、御苦労さまという言葉の方があるいは当つておるかもわからないと存ずるものでありますが、しかしこう言うて決しておどかしておるわけではないのでありまして、しつかりやつてもらいたいと思つておるのであります。どうかしつかりやつていただきたい。医者の不養生というような不摂生のないようにがんばつてもらいたいと心から念願をいたしております。
 さて先般犬養前法務大臣の手によつてなされました検察庁法第十四条に基く指揮権の発動であります。これは相当大きな波紋を投げかけておりますので、この大きな波紋を描いた検察庁法第十四条の指揮権発動に至りました経過を承りたいと思うのでありますが、加藤法務大臣は御就任早々でありますから、その間の経過の全部を御承知に相なつておられないかもしれませんし、事務引継ぎにも十分まだ時間の余裕もないと思いますので、今副総理がお見えになつておりますから、もし副総理でお漏らしいただくことができますならば、指揮権発動に至りましたその前後の事情、かようなことをお漏らしいただけたらたいへんけつこうだと存じます。
#4
○緒方国務大臣 お答えをいたします。検察庁法第十四条によりまして指揮権を犬養前法務大臣が発動いたしましたのは、これは犬養法務大臣が責任を負つてやつたことでありますだけに、詳細のことを私から申し上げる用意がございませんが、私の承知しておる限りで経過を申し述べますならば、佐藤幹事長の逮捕というようなことが、うわさに開いておりますとだんだん迫つて参りまして、御承知のように、今日の政党政治におきましては幹事長の位置、特に重要政務に当つておりまする、国務に当つておりまする政府与党の幹事長の位置というものは、政府の動向をきめる上からも、また国会の運営におきましても、非常なかけがえのない重要な位置でありますので、もしうわさせられるような事態が発生いたしますると、実際において国政の運営に非常な支障を来す、そういう意味から、検察の捜査あるいは処分というようなものの内容には立ち至らないが、できればその逮捕というような時期を延ばすことはできないか、現行犯でないのでありますから、時間的にそういう余裕をつくることはできないかということから、犬養大臣の独自の判断に基きまして、これは検察庁もまた行政部の一部であり、捜査の上に当然に政治的の考慮というものは加えるべきことではないか、それに政治的の考慮を加えるのは、すなわち内閣の一員である法務大臣が政治的考慮を加える、そういう意味で法務大臣の政治的考慮から、異例ではありまするが、指揮権を発動しまして、今日国際的にも国家的にも非常に重要な諸法案、しかもこの時期にぜひとも政府が国会を通過させたいと考えております諸法案、それを通過成立させたいという絶対的な必要から、あの処置に出たものと想像しております。
#5
○押谷委員 検察庁法第十四条に基く指揮権の、いかなる場合において、いかなる指揮がなされるかということにつきましては、今回の問題を契機として、いろいろ学者間にも、また実務家の間においても議論がなされておりますが、この指揮権の内容、あるいはいかなる場合にいかなる形で発動されるかということは、あげてその権利を行使せられる法務大臣の御意見、正しい良識と良心によつて判断をされてよいと思うのでありますが、ただいま副総理からお話のごとく、副総理はいろいろな機会にたびたび声明をいたされておりますように、今日の政党内閣における与党の幹事長の立場というものは、大臣よりもより以上大切であり、重要な立場である。この人が国会審議の途上において身柄を拘束される、それによつて生ずる大きな損害、審議の支障、国政運営に当つてのいろいろな支障、これから生ずる損害を考えるならば、これは法務大臣として政治的配慮をそこに用いられ、指揮権の発動にあたつてこれを考慮をせられるということは、私は正しいことであると信じております。また犬養法務大臣の退任にあたられての、あるいは指揮権発動にあたられての談話の形式による大臣の発表によりますと、やはり国際的あるいは国内的にいろいろ重要なる性格を持つている法律案が、国会において審議の途上にあり、もうしばらくするならばそれが成立するという今日の段階において、与党の幹事長を拘束するということは、この審議に重大な支障を来す、もちろん検察庁の捜査権の独立を尊重するということもきわめて重大なることであり、そうしてそれは大切なことでもありますが、この重要であり大切な捜査権の独立ということと、国会の審議に支障を来して重要法律案の成立に重大な悪影響を及ぼすようなこと自体との損害の比重というものを考えられたときに、法務大臣がこの処置に出られたということは、これは良識と良心に訴えてきわめて正しいことであつたと私は考えております。こういうことが今後にも起らないとはだれも保証することはできません。今回の法務大臣の処置は前例のない、異例の処置であると言われておりますけれども、これは見方によりましては、悪い前例とは言えません。将来に向つて示された一つの――今後あるべき形におけるこの指揮権の行使のあり方に、これが一つのよい前例をつくるのではないかと思いますが、しかし法務大臣といたされましては、前犬養法務大臣のとられました、こういう国家的な高い見地に立つて考えられた、この捜査権の独立と審議の支障という二つのものを比較対照せられた比重を考えられたこの考え方につきましては、原則的に正しいとお考えになつているか、これは支持せねばならぬとお考えになつているかどうかをお尋ねをいたしたいと思います。
#6
○加藤国務大臣 前段に私が今回法務大臣に就職いたしましたことにつきまして、いろいろ御注意を願いまして、まことに感謝にたえません。世間、ただいまの御発言にありましたごとく、鬼門であるとか、あるいは特攻隊のような気持で行くとか、あるいは決死の覚悟で行くとか、悲壮な考えで行くとかいうことが、よく他の委員会で質問がありましたけれども、私はさような気持で参らぬのでありまして、淡々たる気持で参りまして、そうして法務省における諸君にお目にかかりまして、春風駘蕩たる感じを受けたのであります。御心配はいろいろいただきますが、私の気持はそこにあるのでございますから、ひとつ御安心を願いたいと存ずる次第であります。
 なお犬養前法務大臣のとられたる処置はどう思うかということでございましたが、私は犬養前法務大臣が、異例なりといえども検察庁法十四条の指揮権を発動いたしましたのは、今国家重大のときに私は至当である、こう考えるのであります。ただいまの国家の情勢は非常に重大でありまして、国際間においても、内地あらゆる方面におきましても、重大な異例なときでございまするがゆえに、その場合に与党の幹事長に対してかような措置をとるということは、異例の時局を乗り切るために当然過ぎるほど当然なことであると私は考えまして、犬養君の措置を適当と考うるのでございます。
#7
○小林委員長 押谷君持時間が来ましたから質問の要旨をなるべく簡潔に述べて次に譲つてください。
#8
○押谷委員 それでは重要な点一点だけお尋ねさしてもらいます。質問としては入つたばかりなので、これから大事なところになるのですが、時間が制限されておりますから、要点だけ申し上げます。
 今回の指揮権発動の直後において最も重要な問題として考えられることは、検事総長の談話の形で発表された言葉の中に、今回の指揮権の行使によつて、今後の捜査の上に一大齟齬を来す。あるいは検察官の志気に重大な影響を及ぼすと、こういう言葉があつたのであります。ずいぶん長い間にわたつて検察官並びに検察事務官が、日夜寝食を忘れてこの問題に取組んで、非常に挺身せられた事実は明らかである。また大阪の高等検察庁の前田検事のごときは、病妻を大阪に残して、看病もすることもできず、死水もとることもできず、この指揮権発動の前日に奥さんがなくなられた。かような職務に挺身をした検察官といたされては、今回の指揮権発動には大きな不満もあつたと思います。またこれから生ずる志気の沮喪ということも考えられるが、検察官のこの重大な、大きな問題に取組んでいるこの真剣な態度に、あるいは志気に沮喪を来すとなれば、これはゆゆしきことであります。当該の所管大臣とし、これから検察官に対していろいろ折衝を遂げられる上において、検察陣容の志気に沮喪を来すようなことがあることはほうつておくことができません、これについて何らかの処置を講ぜられなければならぬと思いますが、新法務大臣としていかなる処置を講ぜられるかということ。
 それからついでにもう一つお尋ねしたいのは、ここに最も大きな問題は、犬養さんのこの指揮権の発動の内容は、しばらく待つた、こういうのです。しばらく待つたの、この待つたをはずず時期はいつかということが今後に残された問題です。いつ何日まで待てというのではなくて、しばらく待つたで、しばらく待つたの点をはずしたときに次の検察官の行動は起されるのでありますが、終止符が打たれてなくて、指揮権発動の内容は、しばらく待つたでありますから、そこで事務引継ぎにあたつては、しばらく待つたはいつまでかというようなことはたいへん重要なことでありますから、この点もあわせて伺いたいと思います。まだたくさん聞きたいことが残つておりますが、他の野党の諸君の持時間の関係もありますから、私は一応この程度で打切りまして、また時間が許されたらひとつ続いてお許しを願いたいと思います。
#9
○加藤国務大臣 ただいまの御質問中検察官が志気を沮喪せないかというような意味の御質問がございました。私は今度の汚職事件に関しまして検事諸君がとられたる熱意、正義感に燃えておられる点については深く敬意を表するのでございます。ことにただいまのお話のごとく、奥さんが死なれるのもかまわずに職務に邁進されたその熱意に対しましては、私は深く敬意を表し、今後志気の沮喪せないように、私といたしましては注意いたすつもりでございます。ことに犯罪摘発につきましては少しも遠慮することはないのでございます。私はその点において善処いたしたいと思つておると同時に、それらの諸君が真に正義のために努力せられることについては、今後そういう点において激励、奨励いたしたいと思つておる次第であります。
 それからいつまで延期するかということでございます。これは前法務大臣の声明なるものを見ましても、重要法案の通過の見通しを得るまで暫時逮捕請求を見合せてもらいたい、こういうことでありまして、重要法案が通過の見込みがつきますれば、これは私はすみやかに取消したいと思つておる次第でございます。しかしながら世間往々この十四条の指揮権発動をもつて捜査を停止するがごとき感を与えておるのでございますが、断じてしからずでありまして、この議員を逮捕するということだけをやめることでございまして、その他の捜査は検事諸君が熱心に努力されることと私は希望いたしておる次第でございます。
#10
○小林委員長 高橋禎一君。
#11
○高橋(禎)委員 私はまず第一に加藤新法務大臣に質問いたしたいと存じます。法務大臣の任務は御承知のごとくきわめて重大でありまして、法務大臣の法務行政に対する態度というもののいかんが、私は日本の国家の運命をも左右するものであると考えておるのであります。こまかくは申しませんが、足かけ七年に及ぶ吉田内閣の政治のやり方に幾多の欠点があつて、現在まのあたりごらんになるような国家の状態になつて参つたのであります。これに対して政府の最近とられる方針は、やたらに刑罰法規を制定して、国民を圧迫することによつて国内の統一をはかつて行こうというような方針に出でられるようにわれわれには見受けられるのであります。自分の失政の累積が現在のような国家の状態を導き出すことになつて、しかもその責任を省みるところなくして、国民に文句を言わせない、文句があればこれだぞと刑罰をもつてこれを威嚇して世の中を治めて行こうというようなやり方には、われわれは絶対に反対をいたす次第であります。しかも治安の状況から考えましても、まだこまかい点については法務大臣に事務当局からの報告がなされる時間的な余裕がなかつたので、あるいは十分事情を聴取に相なつておらないかとも思いますが、今度の国会は国民は疑獄国会と申しておるのであります。官紀の紊乱、政界、財界の腐敗堕落、それが国会を中心としていろいろの問題を起しまして、てんやわんやの大騒ぎという状態でございます。私はかかる現状を見まして、国家の将来のためにまことに憂慮にたえないものでございますが、新しい法務大臣は、こうした重大な時局に直面して、しかもこれを治めて行かなければならない国政の上での中心的な、いわば骨格をなすところのお仕事をなさらなければならない立場にお立ちになつたわけであります。私は加藤法務大臣の平素の人格を私なりによく承知いたしておりまするし、またきわめて教養の高い方でありますから、その人格と教養とをもつて、悪いことをしようなんという量見をお持ちにならなければ、私はこの大きな仕事も、事務当局の協力のもとに完遂されることができると思つておるのでありまして、そういう意味において、勇ましくも重大なる責任を負うて立たれた加藤法務大臣に対しては、敬意を表する次第であります。そこで、このような重責を負われた加藤法務大臣をして、私は国家のために失敗に終らすようなことのないように、その職責を果していただきたいと念願いたしまするあまりに、以下数点についてこの際お伺いをいたしておきたいのでございます。
 第一に、犬養法務大臣は、これまで憲法の改正の問題について、あるいは民法の改正、あるいは商法の改正、刑事訴訟法、民事訴訟法等 きわめて重大なる根本的な法律の改正について、国会でいろいろ意見を述べておられるのであります。それらの問題について、犬養法務大臣のお考えをそのまま踏襲される意思がおありであるかどうかということが第一点であります。
 次に、検察権の運用に関してでございますが、検察権の運用はまさに現在国民注視の的でございまして、しかも国内治安の維持という点から考えまして、きわめて重大であることは申し上げるまでもございません。そこで、これについてまず根本的の問題としてお尋ねいたします。一体加藤法務大臣は、検察権というものを単なる行政権というふうにお考えであるか、あるいは司法権の範疇に入るものであるというふうにお考えであるか、この点を伺つておきたいのであります。行政権というものには、その運用にあたつて非常な幅があるものであります。検察権の運用についても、刑事政策的な立場から考えますと、相当の幅のあることは認めるのでございますけれども、三権分立主義をとつておりますところの日本の憲法の精神からいたしますと、行政権の運用というものと、検察権の運用というものとの間においては、画然たる区別があるべきはずと私は考えるのでありますが、先ほど申し上げましたように、検察権というものを行政権としてお取扱いになるか、あるいは司法権という立場に立つてお考えになつてその運用をなされるか、その点についてまずお伺いをいたしたいと存じます。
#12
○加藤国務大臣 汚職問題が起きましたことは、高橋君のお説のごとく、わが国会政治の上においてまことに遺憾のことであると存じまして、この問題は徹底的にけりをつけたい、こう思つて、国民の信頼を国会につなぐことができますように、威信を高めるようにいたしたいと思つておる次第であります。
 次に、犬養前法務総裁が、民法、刑法その他の改正法律案についてここで説明をされたその趣旨をそのまま踏襲するかどうかという御質問でありますが、私まだ就任早々でありまして、どういう主張をされましたやら、それを調べてからお答えをいたしたい、こう存ずるのであります。
 しかして次に、検察権をもつて準行政権であると思うかどうかということでございまするが、私はそういう専門的のことはよく存じませんけれども、私の政治常識の上より申しますれば、これは司法権に準ずべきものとして、司法権ではもちろんないのでございまするが、司法権に付随するところの検察権というものは重要なるものであつて、純然たる他の行政機関とは趣を異にしておるものであると、私は政治常識上さようの心組みで今後法務大臣として就職いたしたいと思つております。
#13
○高橋(禎)委員 法務大臣の御答弁によりますと、検察権は通常行政権と言われているものとはその意味を異にして、準司法権の考え方で自分は検察権の運用をして行こう、こういう御意見のようでありまして、私は加藤法務大臣の政治常識から出て来るそのお考えは正しいと思うのであります。従いまして、三権分立主義に基いて、いわゆる裁判権というものは純粋の司法権であるけれども、検察権もまたその司法権に準ずる、三権分立主義という立場からいえば、検察権もやはり司法権として取扱うべきものであるという行き方が、ぜひとも実行されなければならぬと考えておるのであります。
 そこで、次にお尋ねをいたしたいと思いますることは、検察庁法第十四条の法務大臣の指揮権の行使に対する加藤法務大臣の考え方についてであります。検察庁法第十四条は、個々の事件については検事総長を指揮し、一般的には全検察官を指揮することができると相なつております。先般の犬養法務大臣が検察庁法策十四条によつて佐藤自由党幹事長の逮捕問題に関連して発せられたる指揮は、正当なものでない、世論を無視したものである、政府の圧迫によつてやむを得ずこういう態度に出られたようた印象を国民は受けているのであります。そしてまた一部では検察庁法第十四条による法務大臣の指揮権の発動というものは、きわめて消極的なものでなければならぬというような意見もあるようでございますけれども、私はそのようなものではないと考えているのであります。断じて検察当局を手放しにしておくということを奨励すべきものではないと私は思う。これは検察当局においても、もちろん長い間の経験と良心と、あるいは責任感において、できるだけ正しい検察を行おうと考えてやつておられるに違いないと思うのであります。しかしその間にさらに国家的な立場に立つて、もつと高度の政治判断からいたしますと、意見の相違があるようなこともあると思うのであります。従つて検察庁法第十四条というものが生れたゆえんもそこにあるわけでございまして、私は決してこれは消極的な態度で臨むべきものとは考えておらない、堂堂と一般的な指揮監督をなすべきであり、検事総長を通じて具体的な個々の事件についての指揮権も発動されていいと思う。ただ問題は、間違つたことをやつており、その内容が不当であつてはならぬということであります。加藤法務大臣の良心と、そしてまた博大なる見識と、そして徹底したところの責任感をもつて、この指揮権を行使されることを、むしろ国民は要望しているはずであります。間違つたことをやられてはたいへんだけれども、検察権を正しく育て、正しく発展さして行くという方向に向つて、堂々とこの指揮権を発動さるべきものだと私は思うのであります。今犬養法務大京のあのような措置に対して国民があまりにも反感を持ちましたために、学界においてもこれに対してはやや消極的な態度をとるべきものであるというような意見が出ておりますが、一体加藤法務大臣はこの検察庁法第十四条の指揮権発動に関して積極的に堂々とこれをなさるつもりであるか。あるいはこれを発動するということはなかなかめんどうなものであるから、できるだけ消極的な態度をとるというようなお考えであるか。それについてまずお伺いをいたす次第であります。
 次には検察庁法第十四条を発動されますためには、私はしろうとであるというようなことではこれはたいへんなことであります。昨日の法務委員会においてわれわれはこれらの問題について質問いたしたいと思いましたら、与党の議員の発言中法務大臣はいつの間にか姿を消されて、われわれは失望をいたしたわけでありますが、そして自分はしろうとであるからこれから研究をしてというようなお言葉もあつたということでありますが、この検察庁法筋十四条を一晩二晩研究して発動されたら、これまたたいへんなことになる。これをよくお考えにならなければならぬ。そう一夜づくりにこの検察庁法第十四条を発動されるようなそんなおそまつなものではないということを十分自覚されなければならないと思うのでございます。自分はしろうとであるから検察権運用に関してはしつかりとした意見は出ない、みんなとこれから相談をしてやつて行こう、こういうことであつたらこれはたいへんなことになるわけです。と申しますのは、検察当局から話を聞けば、それはそうかと思い、また総理大臣や今そこにいらつしやる副総理なんかから、これはこういうふうにすべきものであると言われれば、またそれもそうかと思うということになつて、いわゆる政府の大きな方針と検察事務当局との意見が異なつた場合には、法務大臣は右往左往、とるべき態度をはつきりしないで、あたかも犬養法務大臣が、先ほどとられたような結果に終るわけであります。そこのところが非常に重大でありまして、そのようなことがありましたならば、これまた国民が大いに失望するのでありましよう。検察権は正しく育て運用されなければならないものであるにもかかわらず、検察権がいつの間にやら迷路に入り込んで、そして直線で行かなければならないものがいたずらに複雑な曲線をたどらなければならないということになるわけであります。従つて私はこの検察庁法第十四条に関連する運用というものは、きわめて検察に関しての豊富なる知識見識を持つて行動されなければならぬと思うのでありますが、それについて一番問題になりますのは、いわゆる刑事政策の問題であります。検察当局の考えている刑事政策、法務大臣の考えられる刑事政策というものとそこに齟齬があるようなことがあつたならばたいへんであります。加藤法務大臣は新しく就任されるにあたつて、日本の検察権運用に関しての大きい刑事政策というものをどのように考えておいでになるか、その点について御答弁を願いたいと思います。
#14
○加藤国務大臣 昨日私がこの席へ出てしばらくしてほかへ参りましたのは、こそこそと逃げたわけではございません。参議院におきましてこういう決議案が出ましたから、参議院に敬意を表するために私は出たのであります。私は昨日どういう言葉を用いましたか知りませんが、私は法律上の知識はありませんが、ただむやみに知らぬがゆえに一夜づけに勉強するがためという言葉は少しもいたしておりません。私は就任早々で昨日ようやく事務の引継ぎをいたしたような次第でございまして、犬養前法務大臣がどういう声明を発表されたか、その内容もよくわからなかつたのでありまするがゆえに、その内容を聞きまして、また内容を見ましたその結果、ここで御答弁することが責任ある私の立場であると存じましたがゆえに、まだ見ておりませんとこう申した次第でございますので、その点は誤解なきよう希望いたしておきます。
 ただいま今回発動いたしました検察庁法第十四条は、ときどきこれを発動さしてもよいではないか、異例にせなくてもよいではないかというような御質問の御要旨でございましたが、私の信ずるところによりますれば、これはさよう常にいつでも個々の事件の取調べまたは処分について検事総長を指揮することは遠慮いたしたいと思います。重大なる場合においてこれを発動させたいと、私はかような気持でいるのでございます。私は一夜づけによつてあちらの話がこうである、こちらの話がこうであるといつて一々節をかえるようなことはいたさないつもりであります。不敏でございますが、国家の大局より見てこれをどうするかというところに立つて、私の政治的経験、また行き届きませんが私の独自の考えにおきまして、毅然として私はその処置をとりたいと考えているのであります。従つてあるときは政党より恨まれるときもあるでありましよう、あるときは検察当局より非難されることもあろうと思いますが、毅然たる態度で行きたい。要するに私はこういう汚職問題などを根絶するように行きたいと思う。ことに私は検察当局が熱心に正義感に燃えていることに対しては、これをかれこれ押えるなどというつもりはございません。ますますその職務に真剣に私はそれらの諸君が執務されることを熱望いたしている次第でございます。
#15
○小林委員長 高橋君、もう持時間を越えておりますから、簡単に願います。
#16
○高橋(禎)委員 私のお尋ねいたしました点について一部お答えがございましたけれども、その最後にお話のございました自分の独自の考えで毅然として、だれが何と言おうとも所信に向つてこの検察権を運用して行く、こういうお話ですが、その独自の考え、毅然とした態度でもつて実行されようとするそのことをお尋ねしている。すなわち日本の検察権運用に関して法務大臣はいわゆる刑事政策というものをどういうふうにお考えであるか。これがお尋ねした要点なんです。その独自のお考えをお尋ねいたしているわけであります。それにいま一点つけ加えてお尋ねをいたしたいのは、今このような汚職事件なんかを根絶しようというようなお説がございましたが、佐藤自由党幹事長あるいはその他国会議員で取調べを受けた者の起訴、不起訴のまだ決定しておらない者が多数あることば、これは御存じだと思うのであります。起訴、不起訴に関して加藤法務大臣は検察庁法第十四条の指揮権を発動されるお考えであるかどうか、それを承つておきます。
#17
○加藤国務大臣 私もお答えすることを忘れましたが、刑事政策をどうするかという、こういう御質問があつたのでありまするが、これは検察当局といたしましては、その仕事に熱中するあまり国家の大局より見ての判断を誤ることが、ときとしてはありはしないか、すなわち国家の大局より見てこれをどうするかという判断を、ときに私は毅然たる態度をもつて行きたいと思う。もちろんそういう場合にあらゆる知識、あらゆる説は聞きまして、最後の私の判断は私の気持で行きたい、こう思つておるのでございます。ことにただいま御質問がありました個々の一人一人の起訴をどうするかこうするかというような問題に対しましては、私はこれを一々さしずするつもりは持つておりません。
#18
○小林委員長 猪俣浩三君。
#19
○猪俣委員 緒方副総理に質問いたします。第一点、昨日参議院におきまして、法務大臣の検事総長に対する指揮権発動に関し内閣に警告するの決議案、これは私は衆議院の不信任案と同様のものと理解しますが、この中に、議員の逮捕許諾と法案審議の関係は国会の決すべき問題であるということが内容に書かれております。これに対するあなたの御意見を承りたい。
#20
○緒方国務大臣 逮捕許諾要求が出ました後におきましては、国会がこれの可否をきめるのでありまするが、しかしながら個々の犯罪の捜査または処分につきましては、法務大臣が検察庁法によりまして検事総長を指揮することができるということになつておりまして、先ほどどなたか申し上げましたような考え方から、法務大臣が独自の見識をもつて指揮権を行使いたしたと信じております。
#21
○猪俣委員 それはあなた方の声明と矛盾するじやないか、法案審議の関係上国家的見地に立つて指揮権を発動したと答弁した。個々の刑事事件に対する指揮権は検察庁法第十四条によつて発動したというのならわかる、そうじやない、法案審議の関係から指揮権を発動したというのであるから、私はこれを聞いているのです。この議員の逮捕許諾と法案審議のこの関係は、これは国会の問題であつて、政府の問題じやない。しかるに政府の問題のごとくして指揮権を発動したから、そこで質問しておるのだ。だからこれに対するあなたの御意見を聞いているのだ。しかるにあなたは、個々の問題に対しての刑事事件としての指揮権を発動したと言つている、それを聞いているのじやない。いわゆる重要法案審議のために指揮権を発動したというがゆえに、この参議院の決議案にある重要法案の審議のいかんは、国会の問題ではないかということをお尋ねしている。
#22
○緒方国務大臣 先ほど申し上げましたように、今の政党政治におきましては、幹事長の位置というものは非常に重大な位置でありまして、もし幹事長が逮捕拘束される等のことがありますれば、国政の運営上と申しますか、政府がこの国会にぜひ通過成立せしめようと思つておりまする重要法案の通過を期することができないようにたるおそれがありまするので、そこで法務大臣が政府一体の考えを刑事政策の上に発露いたしまして、今の指揮権を行使して逮捕の延期、これは現行法では、ありませんから、法務大臣の考えといたしましてこの延期を求めたのであります。今仰せられましたけれども、その指揮権を行使するに至りました順序はそういうことであります。
#23
○猪俣委員 あなた方は検察庁法第十四条を根本的に理解しておらない。だからそんなとほうもない解釈をする。重要法案の審議いかんということは国会にまかすべきものである。これはあなた方は旧時代の天皇親政説時分の政治というものを考えておるからだ。これは国会を無視した議論なんだ。いわゆる証拠隠滅の理由がない、人権蹂躙のおそれがあるというような場合に、検察庁法第十四条というものは発動できるものであります。これは原則からそうならなければならぬ。しかるに重要法案を審議するために十四条を発動するというようなことは、これは将来にわたつてゆゆしき問題であります。かようなことを歴代の内閣がやつたらどうなるか、こんなことは考えてみればすぐわかる。さようなことはまつたく国会を無視した議論だと思う。あなた方は多数を持つておる。国会に堂々と逮捕許諾を出して、国会が重要法案を通すために不利だと思うならば、国会が自主的に決定するでしよう。政府がそれに先だつてかような将来にわたつて司法権の独立を阻害するがごとき態度をとつたということは、実に遺憾千万だと私は思う。それに対するあなたの答弁はなつていない。
 それから第二点、政府今回の処置は、国民関心の的である被疑事実に対し、累次の言明に反して検査権の行使を制約し捜査を困難ならしめ、ひいては国民の疑惑を深め政治の信用を失墜せしめることとなるとある。累次の言明に反して検察権の行使を制約した、この事実は認めるか認めないか。捜査を困難ならしめ、ひいては国民の疑惑を深め政治の信用を失墜せしめ、この点を認めるか認めないか。それを御答弁願います。
#24
○緒方国務大臣 指揮権を法務大臣が行使しましたけれども、しかしながら、これは捜査あるいは処分の内容に干渉するものでなくて、重要法案の審議のために一時延期を申し出たのであります。従いまして、その内容に干渉しておるとかその内容を不可能ならしめるとか、あるいは困難にせしめるというふうに考えておりません。
#25
○猪俣委員 あなたはしろうとでしよう。検察当局は、きのうからきようの新聞を見てもおわかりでしようが、造船汚職の中心は押し流されてしまつて、捜査はほとんど遂行できない状態になつておる。これは検事総長が明らかに言つておるのです。しろうとのあなたが、かつてに捜査なんかに何にも妨害にならぬ、どういうわけでそういう認定をするのですか。そうすると検事総長の判定よりも、しろうとのあなたの判定の方が正しい。捜査にはちつとも妨害にならぬ。こういう認定をなさるのですが、いかなる根拠があつて捜査の妨害にならぬと認定をなさるのか。それをお聞きいたしましよう。
#26
○緒方国務大臣 捜査の内容に干渉しないと信じておるからであります。
#27
○猪俣委員 しかし、捜査の内容に妨害をしないということは、あなた方の主観的意思だけでは、立証になりません。検事総長は現に非常に捜査に妨害になつてしまつた、今後の見通しが立たぬ、全部やり直しをしなければならぬ状態になつたと堂々と言つておるじやありませんか。それに対して専門家でもなし、これに大してタツチもしないあなた方が、かつてに妨害にならぬとどうして言えるのでしようか。そんな根拠がどこにありますか。あなたは検事総長をやつたことがないでしよう。どういうわけでかつてにそんな断言をなさる。妨害にならぬという証拠をここに明らかにしてください。しからざれば国民の疑惑を深め政治の信用を失墜するということが当然来る。妨害にならぬという証明がなければ、国民の疑惑を深めます。それは当然の論理の帰結です。そこでかような指揮権の発動によつて逮捕権を停止せしめた、これが捜査の妨害にならぬという根拠をここに明らかにしてもらいたい。妨害する意思がないから妨害にならぬ、そんな答弁はだめです。妨害にならぬ根拠を明らかにしなさい。
#28
○緒方国務大臣 妨害にならぬと信じますが、検事総長が妨害になると言い、また事実妨害になることがもしあります場合は、その責任は法務大臣の指揮権の発動でありますから、政府は一体でありますから、政府が全責任に任ずるのであります。
#29
○猪俣委員 そうすると、検事総長を頂点といたします捜査陣が、この逮捕の不許可が妨害になると認定したら、内閣は責任を負うのでありますか。
#30
○緒方国務大臣 政治的にはすべて責任を負います。
#31
○小林委員長 猪俣君、もう時間が来ましたから……。
#32
○猪俣委員 それじや話にならぬ。私はこれは第一点だと思つておつた。それじや、いま一点だけ伺います。
 あなたは副総理という立場であるがゆえに、なお私は言います。それから、新しい法務大臣、この方もしろうとのようでありますから申し上げますが、司法権の独立というものは、どういう根拠でできておるか。多数党政治というものは、これは行政権と立法権を一手に握る政治であります。この多数党が合理主義を捨てて便宜主義に転化した際には、恐るべき害悪を国政に及ぼす。ですから、多数党政治を抑制する機関というものがなければならぬ。それが第一は少数党であります。野党であります。その次には新聞、ラジオであります。最後の、国家権力を持つてある程度の抑制機能を発揮できるものは司法権であります。現代民主政治の国家においての司法権の独立の意味はそこにある。行政権、立法権を握る多数党の横暴を抑制して、民主政治の有終の美をなさしめる、これが唯一絶対の方法であります。ゆえに司法権というものは、民主政治下においてはより重大に取扱わるべきことは明らかなことであり、憲法もその趣旨においてできておる。あなた方は司法権の根本性格を認識なさつておらない。単なる自由党内閣、うたかたのごとき自由党内閣や吉田内閣の運命と、この司法権の独立を守るということの重大とは、ほとんど比較になりません。しかるに国策のためとか国家のためとか称して、実際は自由党内閣の延命のため、自由党の一幹事長保護のために、かような司法権独立を蹂躙して、国家百年の大計を誤まつてしまつた、この責任は重大であります。それに対するいかなる覚悟があるか、二人からお答え願います。
#33
○緒方国務大臣 司法権の蹂躙と言われますが、犬養法務大臣が指揮権を行使いたしましたのは、検察庁法という法律に基いてやつたのであります。これは法律が認めております。もちろん異例なことではありますが、それは法務大臣が見識と責任を持つてやつたことであります。それによつて現われることに対しましては、政府一体の原則から政府が全面的にその責任を負う、それ以外にやり方はないと考えます。
#34
○加藤国務大臣 ただいま司法権を云云ということがございますが、司法権の独立は私ども尊重いたしております。また司法権は、われわれがかれこれいたしましても動くようなことは断じてないと私は信じておるのでございます。今度の検察権の問題は、御承知の通りこれは行政権の一つで、検察庁法にちやんと明記してあることでございます。これは猪俣君が私どもよりよく御承知の通り、適法の行為でありまして、この重大なる時局において、国家大局の上からかくのごとくすることが当然過ぎるほど当然であるという建前に立つていたしたのであります。司法権をかれこれしたということは断じてございません。
#35
○猪俣委員 今の答弁はとほうもない答弁であります。あなたはさつき犬養法務総裁なんて言いましたが、法務総裁という官制はないので、法務大臣と法務総裁は官制上非常に違うのです。それをもつと御研究なさつて、しかる後に今の質問に対する答弁もまた御研究願いたい。そんな答弁は成り立ちません。
 なお法務大臣に一点お聞きします。吉田総理大臣は昨日か一昨日か参議院におきまして、被疑者を逮捕して調べるがごときは、これは警察国家になる、かような答弁をされておる。一体被疑者を逮捕して調べることは警察国家になるのかどうか、それから、なお将来自由党の大物に対して的確なる犯罪被疑事実が出た場合に、あなたは同じようにこの十四条を発動する意思があるかないか、あらかじめお聞きします。
#36
○加藤国務大臣 私は法務大臣というのを法務総裁というように言葉を間違えたかもしれませんが、これは言葉の誤りでありまして、犬養法務大臣と言つたのでございます。さよう御承知を願います。
 それから逮捕の問題でございますが、私常識から考えましても、基本的人権を尊重する上よりいたしまして、できるならば捜査の上においてむやみに拘束するようなことはしない方がよいと思うのでございます。これは、疑いのある者をことごとくひつぱりますれば、捜査上一番都合がよかろうと常識的に考えるのでございますが、かくては警察国家をつくることになりますがゆえに、総理はどういう発言をされましたかわかりませんけれども、ただいまの御質問の要旨を伺つてみますれば、さような警察国家になるようなことは、これは注意すべきことであると思うのでございます。
#37
○猪俣委員 自由党の大物の確たる被疑事実を私どもの方に握つておるから、出しますよ。こういうものが出た場合に、あなたはやはり十四条を発動する意気込みかどうか、それについても御答弁願いたい。
#38
○加藤国務大臣 ただいまの御質問は、将来の問題でございますがゆえに、将来そういう場合がありといたしますれば、そのときその事項について私は考えたいと思います。
#39
○小林委員長 佐竹晴記君。
#40
○佐竹(晴)委員 わずかに十分でやれというのでありますから、一問一答の形ではすぐに時間が参ります。従いまして、質問の要点を全部申し上げますから、緒方副総理、加藤法務大臣御両人はメモをなさつておかれまして、各適当にお答えを願いたいと存じます。
 加藤法務大臣は、新任に際して検察陣と話し合津て行く、犬養のお父さんのおつしやつたように、話せばわかる、それで行くと語つた旨、二十三日の朝日新聞に載つております。政府と検察陣が深刻に対立して、ピストルを突きつけられた場面であることを、法務大臣も直感なさつておられるのであります。一体これをどうさばいて行かれる御決心であるのか、またどう腹をきめられて法務大臣をお引受けになつたのか、私はこの際これを承つておきたい。
 第二には、話せばわかると言うけれども、問題は誤解を解くとか、法の解釈の相違を調整するといつたような問題ではありません。佐藤を逮捕するかどうかという現実の問題であります。検察首脳部はいまだかつてない長い時間の間討議を重ねて、しかも前法務大臣の数次にわたる横やりにもかかわらず、逮捕のほかなしと検察陣においては一致決定をいたしておるのであります。この根本問題を解決しない限り治まるものではございません。この深刻なる対立下に、話せばわかるなどということをおつしやいますと、言下に問答無用とはねつけられてしまいはすまいか、はたして検察陣を納得せしむるだけの決心があるのか、またいかに納得せしめるような説得をするだけの用意がここにあるのか、これをまず第一点として承つておきます。
 第二点は、犬養法務大臣は検察庁法第十四条に基いて逮捕許諾請求の延期を指令なさいました。当委員会における法務大臣の答弁を聞いておりますと、これを踏襲する御決心であることがきわめて明白であります。しかしおよそこの検察庁法十四条というのは法務大臣の政務であります。正常に行われておる検察当局の公訴権の行使に、制肘を加えるために与えられた権利ではありません。法の解釈や、起訴すべき事案であるかどうか、犯罪構成事実を満たしておるかどうか、その捜査をどうするか、逮捕すべきであるかといつたことは、いずれもこれは事務的に決定すべき検察官の事務であります。その事務的監督の頂点が検事総長でございます。しこうしてこの検事総長の指揮監督のもとに一致の意見をもつて事務的に決定いたしましたことに対して、政務を扱うところの法務大臣がこれに容喙をするということは、公訴権の侵害ではないかと思うのであります。もちろん公訴権の行使についても、この十四条に定めるところによつて政治的考慮が払わるべきものであることは当然でありますが、それは基本的人権の侵害があつてはならない、また公共の福祉を守らなければならぬという大所高所に立つて、正規を逸脱した公訴権の行使を排除するために与えられた権利であります。一体今回の十四条の行使というものは、はたしてこれに該当しておるかといえば、断じてそうではありません。今回の件は何人が何と言おうとも、佐藤幹事長の逮捕が内閣の運命にかかわるということを心配いたしまして――これは犬養大臣の言葉のうちにも表われておる。その内閣の延命工作並びに新党工作に深い関係のあることは否定することのできない事実であります。この事由でもつて神聖なる公訴権の行使を左右するがごときは断じて許されないと考えますが、はたしていかがでありましよう。
 第三点は、犬養法相が逮捕許諾請求延期の指令を発したその理由は、事件の法律的性格と重要法案の審議にかんがみて国際的、国家的重要法案の通過の見通しのつくまで延期するというのでありますが、このような理由は正当なものと思えましようか。少くとも検察庁法第十四条の指令を発する根拠として正しいものと言えるでありましようか。
 まず第一に、事件の法律的性格にかんがみてとありますが、しかし第三者収賄論に関する法律問題に疑義を生じたからのようであります。しかし事件の法律的性格のために、延期しなければならぬという理由は毫末もございません。法律問題ならば、論議を尽せばすぐに結論が出ます。現に検察首脳会議においては、結論を出しておるのであります。しこうして逮捕請求をなすべしというのであります。重要なる法律案の通るまで得たねば結論が得られないというものではありません。法律的性格にかんがみて延期しようというのは、犬養前大臣の意見を踏襲する新大臣として、一体いかなる根拠をもつてこれを説明なさるのか。次いで法務大臣はしろうとであります。専門家の検察官会議で一致の決議によつて結論の得ておることを、しろうとの法務大臣の一存でもつて左右することができるということなれば、これはまつたく法相の独善独裁であります。かくのごときは断じて許さるべきことではないと思います。これに対する所見を承りたい。
 次いで第二に、重要法案の審議にかんがみて国際的、国家的重要法案の見通しのつくまで延期するようにというのでありますが、重要法案というのは一体何を指さしておるのか。犬養氏の言うところによるとMSA、保安庁法改正法案、教育二法案などの通過を指さしておるようでありますが、はたして新大臣もさようにお考えであるか。もしそうだとするならば、その法律案は一体通過の見通しがありますか。いつ通過するとお考えですか。最近はあたかも開店休業の状態ではありませんか。この委員会でも、今日に至るまで三日も四日もやつておる。昨日ちよつぴり五分ばかりおいでになつて、逃げるように帰つてしまつた。きようここでやつておると、われわれに十分間でやれ、あとはこれからほかの委員会に行かなければならぬとおつしやいます。総理も病気と称して一向出て来ない。まるきり政府は何も審議促進をしないでいて、そうして法案審議のために佐藤の逮捕はいけないのだ、政府としてこれは言われることですか。この状態下で佐藤を逮捕したとてしないとて、一体どうかわるのでありますか。佐藤を逮捕しなかつたならばそんなに無事に、そして早く通るというお見通しですか。一体ひつぱつたならばいつまで通らない、今度そのひつぱることを延期したためにいつごろまでに通るお見通しなのか、その比較をはつきりここに明示されたい。
 次いで四として申し上げたいのは、法案の通らないのは政治力が足りないからであります。佐藤幹事長がひつぱられたら通る、通らぬという問題ではありません。また佐藤氏が逮捕されてしまえば、自由党ではすぐ幹事長をおかえになつたらよろしい。何も国家に迷惑を及ぼすことはない。それだけの政治力すらも、自由党内における総理、副総理にはありませんか。犯罪容疑者を庇護し温存することによつて、国会の最高運営に当らす、あるいは新党工作に専念させるがために、その逮捕を延期しなければならぬというがごときことが、検察庁法第十四条の指揮権発動の根拠に一体なるとお考えですか。
 第五に申し上げたいことは、先ほど法務大臣は犯罪摘発には善処したい。十四条発動は逮捕を延期したというだけであつて、捜査は熱心に努力してもらう考えであると述べ、かつ副総理は捜査の内容や処分に干渉するものではないとおつしやつた。だがこれはしろうとのおつしやることだ、だだいまの猪俣君の質問にも現われております通り、これが関係ないとどうして言われましようか。関連をいたしておりまする数人の被疑者というものは、おのおの検察当局では計画を立てて、だれを調べたらだれを調べる、どういう証拠を抑えたならば、これをどういう証言に照し合わせると、順序と手順をもつてやつておるのです。しこうして十のものが九まで来ておるが、一がきまらぬために全部がどうすることもできぬという段階にある。龍を描いて目を欠くがごとく、十のものが九つまで調べ上げてあるが、佐藤幹事長を調べることによつてここで全き捜査というものができ上つて、起訴、不起訴が決定することができる段階に来ておる。そうして最後のその一点を政府の力によ津て阻止しようとしている。検事総長は何といつておるか。こんな状態では今までひつぱつておる者もみな放してしまわなければなりませんと言つておる、われわれの代表者が行つたときにはつきりとそのことを言つておる。こうなると今度の造船疑獄などの問題は、もうこれ以上どうにもなりません。あたかも打切りを命ぜられたにひとしい結果になることを検察当局は憂えている。国家百年の恐るべき事態というものが歴史の上に残されることになる。一体まじめに、法務大臣は十四条発動というものは、逮捕の延期をするだけであつて捜査に何にも干渉するものでないと、そんなことが平気で言われることですか。あるいはおつしやるかもわかりません、逮捕しないでも捜査はできるのだ、これは副総理も身をもつて御体験なすつたことであるし、加藤さんにおいてもよくその辺のことはわかるでありましよう。実際なかなか――この委員会その他においてこういうことがありませんかと言つても、私は犯罪を犯しておりましたとか、やつておりましたという者は一人もありません。百人中百人ありません。これは当然です。従つて刑法においても明確にこれが認められて、犯人及び親戚の者なんかが、かりに犯罪を隠秘しても、証拠を隠滅しても、その刑を免除することができることになつておるし、刑事訴訟法の上においては黙秘権を行使することができるということになつておる。法律までこれを認めている。犯人はうそを言うということが法律の上に明定されている。従つてあたりまえに不逮捕でもつて調べようとしても、本人が本音は吐かないということは天下に通るところの事理であります。従つてある程度他との交通を排除し、またこの者を調べたときに他の関係人と品を合せることがないようにして調べなければ、あの池田さんと西郷さんの問題のごとくに宙に消えてしまうおそれがあるから、捜査に……。
#41
○小林委員長 佐竹君、そろそろ時間になりましたから……。
#42
○佐竹(晴)委員 捜査に重大なる影響ありとして、ここに何としても逮捕の必要ありとして、検察当局がこれを認定して、しかしてこれを要求した。これに対してそれらの検察当局の捜査並びに処分に影響を及ぼすものでないとおつしやるがごとき、何の根拠をもつておつしやられるのか。その根拠を明らかにされたい。
#43
○加藤国務大臣 話せばわかるという私の言葉が新聞に出ておつたのであるが、何を話すかという御質疑でありますけれども、私がそう申しましたのは、検察陣と司法大臣とが、何だか対立抗争しておるようなことがあるがどうかという話でありましたがゆえに、それは話せばわかると言つたのでありまして、そのことに対しましては、別に大した意味はないのでございます。
 次に、犬養法相のやりましたことを踏襲するかどうかというお話でございますが、私は犬養法務大臣が職を賭してまで自分の信念を貫かんとするその態度に敬意を表しまして、私はそれを踏襲するつもりでございます。
 しろうとの法務大臣が云々とありましたけれども、私はあえて言葉じりを申すわけではございませんが、検察庁法第十四条は、法務大臣はいつでも個々の事件の取調べあるいは処分については検事総長のみを指揮することができるとあるのでありまして、法務大臣はしろうとであることもあり得る、私もしかり、ほかの法務大臣も歴代、専門家の方もあられたのでありますが、しろうとの者もおるのであります。ただ法務大臣は、先刻来お答えいたしましたごとく、国家の大所高所より見てどうするかという判断のもとに指揮権を行使するわけでございます。その場合しろうとたるとくろうとたるとを問う必要はないのでありまして、ただ国家の大所高所より見てという見識だけ持てばよかろう、こう思つておる次第でございます。
 それから重要法案というのは何であるかという御質問がございましたが、これは犬養法相が前に申しました通り、国家的の重要法案、これは私がかれこれ案件をあげなくても、御承知の通りであると思います。
 法案通過の見込みはいつであるかということでございますが、努力をすれば期限中に通過の見込みはつくものと私は思います。あえて言葉を返すわけではございませんが、皆様の熱心な御協賛を願いますれば、幾らでも早く通過すると信ずるのでございますが、これをただ延ばそう延ばそうとする一部のお方もあるのでありまして、そうすればなかなか容易にできるものでございませんが、皆様が期限中に通過させてやろうとお考えになれば、審議は一日でもすみやかに済んでしまうものとかように信じ、このことを皆様に熱望してやまない次第でございます。
 証拠隠滅になるではないかというお考えでございますが、そういうことも絶対になしとは申されませんけれども、こういう幹事長のような者を逮捕拘禁することが、国家の大局より見て、今の政治情勢より見て、いいか悪いかという判断が第一でございまして、そういう証拠隠滅だとか捜査の上に不便を来すという問題は、次の問題である、こう思つておるのでございます。
#44
○佐竹(晴)委員 時間がありませんから、ただほんの題目だけを並べて打切りますが、この問題は重大でありますから、さらにいま少しく掘り下げて検討を加えるところの時間の余裕をお与え願いたいと存じます。
#45
○小林委員長 池田正之輔君。
#46
○池田(正)委員 時間の制約がありますから、ただいま佐竹君の質問に対しての加藤法務大臣からのお答えの中で、犬養前法務大臣が職を賭して第十四条を発動したというお言葉があつたのでありますが、一体職を賭さなければならなかつた理由はどこにありますか、これをまずお尋ねいたしたい。
#47
○加藤国務大臣 これは私の想像でございますが、おそらくは、異例の発動をすることにつきましては、自分の信念に生きるために職を賭したことであろう、こう思つております。
#48
○池田(正)委員 異例の発動で、信念に生きるために……。何だかちつともわけがわからぬ。そうすると、犬養君は自分の信念に生きるためにやつたのか、それとも自分の職にかじりつきたいから、緒方副総理の命を受けて、それによつてやむを得ずやつたのか、ぼくは逆な解釈もできると思う。十四条はあくまでも例外規定でありまして、かような規定を発動すべきでないという信念のものに犬養君は立つておつたのじやないかというふうに私は考える。それだから、当時の事情を見ますと、緒方副総理のところへ一日三回も四回も往復して、それぞれ指揮を仰いでおる。それにはここにお見えの刑事局長や何かも帯同しておるはずです。従つてそれらの事情について私は今ここでこまかいことを申し上げようとは思いませんが、少くともその間には非常に不明朗な事実が出ておる。それでこのことはわれわれらち外者からそういうことを言うよりも、むしろ政府当局から当時のありのままの事情を一応はつきり聞いておかないと、これは将来に実例として残ることですから、もう一ぺん明確に――ただあなたの想像だけではいけません。もしあなたが御答弁ができないとするならば、緒方副総理から当時の事情を聞かしていただきたい。
#49
○緒方国務大臣 今お述べになりました中に、ちよつと私からお答えをしておく必要を感じたのでありますが、犬養法務大臣が検察庁法による指揮権を発動する前に私に相談をしたとか、私が命令ですか、どういう言葉でありましたか、私が何か強要したようなお言葉がありましたが、そういう事実は全然ございません。私はたびたび会つてその報告は聞きましたけれども、指揮権の発動につきましては、犬養法務大臣独自の見解と責任においてやつたのでありまして、私が強要したというようなことはないのであります。
#50
○池田(正)委員 これは要するに、先ほどの話にまたもどりますが、犬養君は職を賭して……。あなたは不用意にこの言葉が出たかもしれませんが、何かそこにある。もう一ぺんここのところをはつきりしていただきたい。
#51
○加藤国務大臣 私の承知いたしまするところによれば、この十四条の指揮権の発動ということは、いまだ多く類例がないと聞いておるのでありまして、犬養君はこういう発動をするについては、いずれ議論もあるであろうが、――私の想像でございますが、しかし犬養君は国家大局の上より見て、たとい異例であつても、これを発動することが自分の所信に忠実なるゆえんである、こう信じられてその発動をされたのだ、こう思うのであります。
#52
○池田(正)委員 これ以上加藤大臣に尋ねてもわからぬと思いますから、お尋ねいたしませんが、一体犬養君はあれだけの重大な例外規定を発動して、ただちにやめなければならぬ、これは政治的に非常に大きな意味を持つものです。一体犬養前法務大臣のやめた理由はどこにあるか、これを緒方副総理から承りたい。
#53
○緒方国務大臣 犬養法務大臣の辞表には、一身上の都合ということが書いてあります。但しその辞表を私が取次いだのでありますが、そのとき犬養法務大臣の私に話されたことは、今度の指揮権の発動は、これは検察庁法に基いてやつたことであつて、決して違法ではない。しかしながら、異例であることは間違いない。検察庁の性格から見て、その準司法部ともいうべき立場、その検察庁の権威と独立を保持する上から、こういうことは、よくよくの重大な場合でなければ、すべきことではない。その意味におきまして、みだりにこういうことが繰返されないように、自分は辞表を出した方がよいと思う。これは犬養法務大臣の独自の考えでありますが、そういうことをつけ加えて、辞表を私のところに提出されたことは事実であります。
#54
○池田(正)委員 権威と独立のためにとおつしやいますが、一体そうなつて来ると、ここにますます疑惑を持たされる。そういう重大な権限を発効した法務大臣であれば、その跡始末をして、そうして引下りたいなら引下るのが当然なんだ。ところが、それを行使しておいて、ただちにやめてしまう。国民にはちつともわけがわからぬ。緒方副総理も、理由書にはそう書いてあるというだけの御答弁である。ますますもつてこれは奇怪しごくなんです。これはおそらく国民の大多数は、こういうばかげた例外規定を発動すべきものでない――例外規定の問題は後ほど多少触れますが、そういうものを政府の強要によつて発動してしまつた。ところが検察庁なり法務省なりから反発を食らつて、おそらくあの気の弱い犬養君は居たたまれなくなつて出て行つたというふうに解釈せざるを得ない。
 これはこれ以上御答弁を求めても無理でありますから、申しませんが、一体十四条の規定は、これはあくまでも例外規定で、発動すべきものでない。特にその犯罪の内容なり性質というものによつて、さらにまたそれが国家的にどういう影響を持つかという場合、特殊な場合を考慮して、例外規定という但書をつけておる。これは読んでみればよくわかるのであります。従つてそういう性質のものであるから、この際は逮捕請求をすることは妥当である、また事件の捜査上請求せざるを得ないという検事当局の意見により、しかもそれは法務大臣に稟議されている。その稟議の際には 事務次官及び局長、課長が署名しているはずですが、一体その間の事情はどうなつておりますか、刑事局長から承りたい。
#55
○井本政府委員 稟議書の従来の慣行をちよつと申し上げませんと、おわかりにくいかと思いますので、簡単に申し上げます。
 正式の書面は、当該の事案を扱つております地方検察庁から出まして、それが高等検察庁を経まして最高検察庁に上つて来るわけでございます。最高検察庁から検事総長の名前をもちまして法務大臣に稟議をして来るわけでございます。ただ東京地方検察庁の事件につきましては、地元でございますので、書面がまわつて参りましてからとやかくの論議をいたしましても、時間的に非常にむだになりますから、あらかじめ稟議をすべき事件の打合せをするのでございます。これが会議でございまして、現に今回の事件でも四月十九日、二十日の二日にわたりまして、毎日朝十時過ぎから夜おそくまでやつたわけでございます。その会議で結論が出まして、あらかじめ法務大臣の御了承なり、御決裁がいただければ、ただちに手続が済むのでございますけれども、今回の事件におきましては、いろいろの意見が出まして、結局会議の結論としては最後的な結着に至りませんので、四月の二十日の夜おそく、書面でこの案件を逮捕請求することが相当であるかどうかということについて稟請書がまわつて来たわけでございます。最後の書類が検事総長から法務大臣にあててまわつて来たわけでございます。この稟請書につきましては、四月二十一日の午前中に法務大臣が御自身で指令の案を作成されまして、当日十二時二十分過ぎごろですか、法務大臣から直接検事総長にあてて指示がなされた次第でございます。その指示の内容は、先般の新聞紙に伝えられておるところとほぼ同様でございます。
 さような経過でありまして、事務的な問題といたしましては、私ども従来の観点から涜職罪におきましては、関係者の身柄を拘束いたしまして交通を遮断しなければ、普通の場合には調べが困難の場合が多い。ことに本件につきましては関係者がいずれも拘束されておりますので、身柄の拘束が必要である、従つて逮捕請求相当であるという結論に達したわけでありますけれども、政治的な立場につきましては、私どもの関知せざるところでありますから、検察庁法第十四条に基きまして、先般のような御指示が出たということになる次第でございます。
 以上簡単ながら経過を御報告申し上げた次第でございます。
#56
○池田(正)委員 今の局長のお話によりますと、前半においては何だかわけがわからない。最後に結論で許諾請求が妥当であるとの結論に達した、こういうふうに解釈していいのですか。
#57
○井本政府委員 法務大臣が検察庁法第十四条によつて指示をされたということを申し上げたのであります。
#58
○池田(正)委員 そこのところをもつと掘り下げたいのですけれども、きようは時間がありませんからあとにまわします。そこで大事なことは、検察当局の専門的だ立場からこれを逮捕請求すべしという結論に到達した。しかも最高首脳部が全部集まつて、法務省の事務当局まで集まつて会議に列席してそういう結論を得た。しかるにこれに対して単なる政治的理由によつて法務大臣が十四条を発動して許諾を拒否した、こういうことになると思います。そこでこれはもつぱら政治的な問題にまたもどつて来るのでありますが、その場合、先ほど緒方副総理は政治的には政府が責任をとると申されましたが、政府が責任をとるというその責任とは一体どこにあるのか。現に最高責任者であるところの検出総長が、そのために捜査の支障を来しておるということを明確に世間に発表しておる。これにまさかうそ偽りはなかろうと思いますので、これに対して一体政府はそれでいいのか、検事総長が言つておることに対して、捜査に支障を来しても一向さしつかえないという見解をとつておるのか、その点を明確にお答え願いたい。
#59
○加藤国務大臣 ただいまの池田君の御質問は、検察当局が一致して逮捕請求すべきものであると見ておつた、それを法務大臣がかれこれするのはどんなものであるか、こういう御質問であつたと思います。私はたとい検察当局の事務官の間で一致いたしたといたしましても、これは検察捜査上事務的立場よりいたしたものであつたのでありまして、政治的立場よりの考慮というものは、法務大臣が政治的刑事政策上の見地よりいたすべきものであると思います。この場合に検察当局の意見というものは大なる参考とはなるのでありますが、政治的取扱いとは別である、私はかように考えております。これすなわち第十四条に法務大臣の指揮権が明記してあるのでありまして、その責任は当然法務大臣が負うべきものである、こう思います。
#60
○池田(正)委員 これはどうも加藤法務大臣にははなはだお気の毒な質問になりますから、これからあとあなたを責めようとは思いません。しかし事務当局の案であるから参考としてというに至つてはこれはさたの限りで、そういう軽い気持でこういう大事なときに法務大臣をあなたがお引受けになつたとすれば、これは国家のためにきわめて不幸ではないかということをつけ加えて、これ以上あなたを責めることはやめます。
 ただ最後に一点お尋ねしておきたいことは、先ほど緒方副総理の御答弁の中にも、幹事長は重要な役割であるから政治的に及ぼす影響が大きいというような意味のお言葉があつたと思います。そこで私はお尋ねしたいのでありますが、一体われわれ議員の職責というものは、これは憲法の前に平等であります。また平等でなければなりません。しかるに幹事長であるからこれはいけないとか、平議員ならどんどん出せとか、一体そういうお考えですか、その点をはつきり承つておきます。
#61
○緒方国務大臣 それは一に政府の所見に基く重要法案、この重要法案をこの機会に何としても国会を通過成立させたい、政府といたしましてはこの重要法案に非常に重きを置いておりまして、そのためにはこれは十分御承知だろうと思いますが、今の国会の運営が非常に機微な点に参つておりますので、政府党の幹事長の地位は非常に重いのでございます。そういう点から政府の政治的な考慮で、異例ではありますが、法務大臣の指揮権を発動することを法務大臣が決意したことであると考えます。
#62
○小林委員長 池田君、もう時間が来ますから……。
#63
○池田(正)委員 幹事長の職は重要だ、一体そういうことをおつしやることが私はおかしいと思う。それから重要法案を通す、一体佐藤幹事長がいなければ重要法案が通らないとおつしやるのですか、そういうところが私はおかしいと思う。(「見解の相違だ」と呼ぶ者あり)これは見解の相違じやない。こんなことは子供の議論であつて、おとなの議論じやない。幹事長というものは、二百何十人いるのですから――この中にも四、五人おられますが、だれだつてできる。それを佐藤君の場合にはこれはいかぬ、それじや一体改進党の国会対策委員長をやつておる荒木君の場合はどうなんですか。与党の幹事長であるからいかぬ、野党であるからいい、一体そこにどういう区別をつけておるか、御解釈を承りたいと思います。
#64
○緒方国務大臣 その点は先ほど申し上げましたように、重要法案をぜひこの機会に通したいという考えが基礎になつております。
#65
○池田(正)委員 今の問題は、重要法案――これは緒方さんの御答弁とも私は承りかねるのです。それじや自由党だけで一体やつて行こうというのですか。最もたよりとしておる改進党の政策委員長がやられてもいい、改進党なんかどうでもいい、他の政党諸君は何でもいいのだというふうに、今のお言葉によると聞えるのです。そういうふうに私ども解釈して、今後のわれわれ議会行動をとつていいかどうか、これをはつきりさしていただきたい。
#66
○緒方国務大臣 これは私が法務大臣にさしずしたのではありませんので、法務大臣の考えによりまして、与党の佐藤幹事長の位置が、今の段階において非常に重要であると、法務大臣が考えたことであろうと私は想像いたしております。
#67
○池田(正)委員 これはいくら議論しても切りがありませんから私は打切りますが、この許諾というものは、最終的に国会が決定するのです。国会が許諾権を持つておる。国会の前に立つて、一法務大臣がこれを拒否するとかなんとかいうことは、かようなことはやるべきことではない。(発言する者あり)やるべきことではない。(「違うよ」と呼ぶ者あり)黙れ。それだから、私がさつきちよつと言つた十四条の但書、これをごらんになればわかる。例外規定である。あくまでも例外規定である。このことをあなたは御存じない。特殊の場合に――特殊の場合というのはどういうことをさすかということはまた議論になつて来ますが、きわめて特殊の場合のために設けられた規定なんです。一幹事長の地位の問題じやない。そういうことと、それから私は重ねてはつきり申しておきたいことは、憲法の前にわれわれ議員というものは平等なんだ。この観念をあなたはお忘れになつてはいけません。ましていわんや反対党の改進党の対策委員長、これには許諾を与える。そして自分の方の幹事長の場合はいけないのだ、かような建前をとつて行かれることは、日本の政界をますます混濁に導き、陥れて行く以外の何物でもない。この際特に賢明なる緒方副総理は大いにこの点についてお考えを願いたい。それから加藤新法務大臣はもう少し勉強してもらわなければ困る。いずれあなたが少し勉強したころに何かお尋ねしてみたいと思います。
#68
○加藤国務大臣 私が先刻申した言葉に、重要な参考と申しましたが、その点間違いでございまして、重要な資料として、こういう意味でございますから、言葉の誤りでございますから……。
#69
○小林委員長 それでは午後一時半から再開して調査を進めることとし、それまで休憩いたします。
   午後零時五分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時四十八分開議
#70
○小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
 検察行政に関する件についての調査は本日はこの程度にとどめておきます。
#71
○猪俣委員 検察行政に関しまして、この検察庁法第十四条の指揮権発動につきましては、その最高の責任者は吉田総理だと考えます。犬養法務大臣が非常に良心にとがめまして辞職したことを考えましても、その本意でないことは明らかであります。詳しい事情通に聞きましても、その責任は吉田総理大臣から出たものであることは、もう明らかな事実だ。またそうでないにいたしましても、さつき副総理が説明したように、もし本件が検察行政に妨害を与えるようになれば内閣の責任であることを言明しておりますがゆえに、その最高責任者である吉田総理大臣が今後検察権をどういうふうに運用する方針で政治をとられるか、これを明らかにしてもらわぬとこれは結末がつかぬと思う。これは佐藤検事総長も非常に憤激を持つていますがゆえに、総理大臣の明らかなる意思が公に発表されなければ今後の検察行政の運用に非常な支障を来すと思いますので、吉田総理大臣の出席を要求いたします。
#72
○小林委員長 それでは委員長からひとつ政府の方へよく交渉してみますから、しばらくおまかせを願います。
 次会は明後二十六日午前十時より委員会を開会いたし、刑法の一部を改正する法律案について参考人より意見を聴取することにいたします。なお委員長において交渉の結果、参考人としては東京地方裁判所判事栗本一夫君、東京大学名誉教授法学博士牧野英一君、法学博士弁護士小野清一郎君、最高検察庁検事安平政吉君、評論家中島健蔵君、以上五名の方より出席する旨の確答を得ておりますからさよう御承知願います。当日は午前十時より正刻に開会いたしたいと思いますから、皆さん奮つて御出席願います。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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