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1953/05/07 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第50号
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1953/05/07 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第50号

#1
第019回国会 法務委員会 第50号
昭和二十九年五月七日(金曜日)
   午前十一時十一分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君
   理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君
   理事 井伊 誠一君
      押谷 富三君    花村 四郎君
      牧野 寛索君    猪俣 浩三君
      佐竹 晴記君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 加藤鐐五郎君
 出席政府委員
        法務政務次官  三浦寅之助君
        検     事
        (大臣官房調査
        課長)     位野木益雄君
        検     事
        (民事局長)  村上 朝一君
        検     事
        (刑事局長)  井本 台吉君
 委員外の出席者
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 七九号)
 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出第八〇号)
 民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律案(
 内閣提出第一一六号)
 法務行政に関する件
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから順次これを許します。猪俣浩三君。
#3
○猪俣委員 これは法務大臣でも刑事局長でもよろしゆうございますが、例の前法務大臣犬養氏の検察庁法第十四条の発動であります。これは検察庁側では最高首脳部一致の意見として逮捕稟請を法務大臣にやつたことは、天下周知の事実であります。しからばいかなる嫌疑があるのであるか。時の犬養法務大臣は、その事件の特殊的事情というようなことも十四条発動の理由にしておるようでありますから、国民一般は、一体これがいかなる法律的な性格があるために十四条を発動しなければならぬということになつたのであるか、非常に疑義が多いのであります。私どもやはり諸方から聞かれましてもはつきりお答えができないような状態でありますので、この点について、どういうふうな内容の嫌疑があつて――それが十四条発動の理由の一つになつている意味を明らかにしていただきたい。これを第一点としてお尋ねいたします。
#4
○井本政府委員 佐藤榮作氏の嫌疑の内容につきましては、ただいまなお東京地方検察庁で捜査中でございまして、捜査密行という建前からその内容の発表はいましばらく御猶予願いたいと存ずる次第でございます。
#5
○猪俣委員 それはどうもちよつと私ども理解いたしかねるが、検察最高首脳部の一致の意見として逮捕稟請をやつて、あのとき十四条を発動しなければ、これは当然、佐藤榮作氏は国会議員なるがゆえに院の許諾を求めて来るはずであります。そうすれば、これは国会の問題としてその理由を明らかにしなければならぬはずなんです。ですから、検察庁側でこの逮捕の稟請を法務大臣に出したときには、そのことを覚悟の上で出したはずであるから、いまさら国会におきましてその発表ができないということはどういうことになりますか。
#6
○井本政府委員 裁判所に対しまして逮捕状発行の請求をいたします事実も、その内容も、これは捜査官といたしましては全部秘密にいたしております。実際上新聞紙その他に記事が掲載されまするが、これは探訪記事によるのでございまして、検察官といたしまして発表いたしたことはただの一回もございません。国会に参りますれば、これは院で審議いたすわけでございますから、その公表はやむを得ないと存じますが、捜査の建前はあくまでも密行でございますので、さよう御了承願いたいと存じます。
#7
○猪俣委員 そうすると、もしかりに佐藤榮作氏に対して何らかの嫌疑があり、検察庁首脳部一致の意見として逮捕しかるべしという結論に達したけれども、逮捕することができなかつたために証拠を隠滅せられて、この事件そのものが起訴できないという状態に相なると、永遠にこの事件は世の中にはわからぬことになりますか。しからばいつごろこれは発表されますか。起訴されればそれは起訴状に明らかになるでございましようが、このいわゆる逮捕を稟請した容疑というものそれ自体で起訴になるか、ほかのことで起訴になるか。われわれの聞くところによれば、佐藤榮作氏に対しては検察の首脳部は贈収賄罪の嫌疑ありとして逮捕稟請をしたと聞いておる。しかるに逮捕することができなかつた。その相棒である飯野海運の社長も釈放になつた。そうすると贈収賄の点はほとんどもう事実が明らかにでき得ない状態に陥るということを検察側では言つているやに聞いております。そうすると、あと政治資金規正法違反であることで起訴されるかもわかりませんけれども、本来逮捕稟請の容疑でありまして、しかも犬養法務大臣が事件そのものの性格から十四条を発動したとまで言つておる事件そのものは、永久に世の中に明らかにできないということに相なる。これくらい天下を騒がした大問題である。国民の前に真相がわからぬということは、ほとんど民主国家としては私どもはあり得ないと考えるのであるが、一体いつこれは明らかになりますか。十四条発動という、わが国の司法権発動について画期的なこの事件に対しまして、国民は何ら、国会議員すらも、法務委員会においてすらもこれが真相がわからぬという、こんなばかげた話はないと思う。いつごろこれは発表されますか。
#8
○井本政府委員 先ほど申し上げましたのは、なお捜査続行中でございますので、いましばらく公表は御猶予願いたい、かように申し上げたわけでございます。どの段階になりますると公表できるか、ただいまはちよつと明言できませんが、その時期もあるのではないかと考える次第でございます。
#9
○猪俣委員 法務大臣にお尋ねします。佐藤榮作氏に対する検察庁の逮捕稟請があつた容疑――起訴、不起訴の問題ではありません。あるいはその事件そのものは不起訴として葬られるかもしれないが、第十四条を発動するに際しましたる嫌疑というものに対しては、これだけ大きな政治問題になつた以上は、国民の前に明らかにしなければならぬ。なぜならば、法務大臣は、事件そのものの性格から十四条を発動するようになつたとして、十四条発動の理由の一つとして、二つのうちの一つにこれを発表になつている。しからばいかなる事件の嫌疑であつたかということは、少くとも当法務委員会などは知つておく必要があると思う。しからざれば、その法務大臣の行為が是であるか非であるかという政治批判ができないわけである。それは司法権の独立のため、将来にわたつて災いをなすと思う。かつてな理由で十四条を発動しておいて、その事実そのものは永遠永久に国民に知らせない、さようなことに相なりまするならば、いわゆる検察権の準司法権と称せられておりまするこの性格というものが、てんで蹂躙せられてしまうと私は考える。そこで法務大臣にお尋ねすることは、今刑事局長は捜査進行中であるからと申されるのであるが、捜査が打切られた際において、それが起訴、不起訴にかかわらず、十四条発動に対する捜査の嫌疑というものについては天下に公表なさるつもりであるかどうか、それを伺います。
#10
○加藤国務大臣 ただいま刑事局長から御答弁申し上げました通り、ただいま捜査中でございまするがゆえに、適当な機会において発表するときもあるであろうと私は思います。その内容につきましては、私どもといたしましてもただいまここで言明いたしかねるのでございます。
#11
○猪俣委員 そうすると捜査中であるから今発表しないが、捜査が終了した際には必ず発表なさるやいなや、それをお尋ねします。
#12
○加藤国務大臣 それは適当な時期において適当な方法をもつて発表し得ることだと思います。
#13
○猪俣委員 そうすると発表することは必ず発表するが、その時期は適当な時期と、こういうふうに承つてよろしいか。
#14
○加藤国務大臣 その通りでございます。
#15
○猪俣委員 その適当な時期と称するのは、いわゆる合理的に判断して発表せられる時期、すなわち捜査の終了した時期だと思うが、法務大臣はどう考えますか。
#16
○加藤国務大臣 お尋ねの通りでございます。
#17
○猪俣委員 そうすれば佐藤榮作の逮捕稟請にかかる容疑は、一体いつごろ捜査が終了する見込みでありますか。
#18
○井本政府委員 ただいま的確な、何月何日ごろという予測はつきかねますが、そう長い期間ではないということを申し上げます。
#19
○猪俣委員 この前の法務省側の答弁によれば、結局佐藤榮作の逮捕の稟請を拒否したのは、今国家的見地に立つて重要案件の通過をはからなければならないからという理由であつた。そうすれば少くともこの国会の終了後にはこれは天下に明らかにしてもさしつかえないのじやないか。その際にもし逮捕の必要があるならば、これはもう逮捕の稟請があつたらば必ず法務大臣は許諾するだろうと思うのでありますが、そうすればそれはもう天下に明らかにしなければならぬ時期だと思う。捜査の終了なんという時期じやなくて、この国会閉会の瞬間にもうその時期が来るのじやないかと私は思いますが、どうなりますか。
#20
○加藤国務大臣 国会終了後というその時期に波票するということは私はわからぬのでございまして、捜査中であれば、国会終了直後、まだそのときが捜査中でありますれば発表する時期でなかろう、こう思います。適当なときというのは、捜査が終了いたしました後適当な機会と、こういうふうに解しております。
#21
○猪俣委員 そうするともし国会終了後検察庁側がやはり佐藤榮作氏逮捕の嫌疑ありとして稟請があつた場合においては、法務大臣はこれを許可なさるやいなや、それをお尋ねします。
#22
○加藤国務大臣 その具体的の事実が示された場合に許可すべきものであるとすれば当然許可いたします。
#23
○猪俣委員 私のお尋ねすることは、もちろん具体的事実を見て許否を決するでございましようが、その具体的事実というのは、もうあなたは犬養前法務大臣から引継ぎなさつたから、われわれにはわからぬけれどもあなたはわかつているはずだと思う。そういう際に、同じような事案として稟請があつたときに、あなたは許可するかしないか、あなたは今からわかるはずです。その事実はあらためて出て来たというものじやない。つまり犬養前法務大臣時代に検察庁から稟請したと同じ容疑によつて国会の閉会後再ぴ稟請があつた際に、あなたは許可なさるやいなや。犬養前法務大臣の理由から言うならば許可しなければならぬはずである、不許可の理由はないわけであるが、あなたの覚悟を聞いているわけです。
#24
○加藤国務大臣 その具体的事実につきまして、私はそのときに適当な処置をとりたいと思います。
#25
○猪俣委員 具体的事実は、今私から言うてある。あなたは犬養さんから引継いだはずなんです。どういう事情で佐藤榮作逮捕の稟請があつたか、事案はあなたはもうわかつておるはずです。それと同じ事案を国会閉会後に再度稟請があつた場合にはどうするかということを聞いておるのです。
#26
○加藤国務大臣 ただいま捜査中でございますので、それが犬養君の当時のその通りなるやらならざるやら、今から私より予見できませんので、そのときに私はその事実に基いて私の判断を下したいと思います。
#27
○猪俣委員 それではいま一点お尋ねしましよう。犬養前法務大臣が拒否の理由としたところの国策の遂行上支障が上ずるということは、国会閉会後も存在しますかどうか。
#28
○加藤国務大臣 国会閉会後は、犬養君のこの指揮権発動の目的ははずれておると思います。すなわち重要法案の見通しがつくまで、重要法案が通過いたしますれば、これは別個の問題となつて来るのでございます。
#29
○猪俣委員 そうすると犬養前法務大臣の出した稟請拒否の理由は、国会が閉会すればなくなつて来る、こうあなたは認定なされると承つてよろしいか。
#30
○加藤国務大臣 その通りでございます。
#31
○猪俣委員 それではそれはこの程度にいたしまして、犬養前法務大臣が検察庁法第十四条の指揮権を行使したことについて検察庁内に相当動揺の色がある、志気阻喪する者、不満を持つ者、ここに相当の動きがあると私ども承るのでありますが、さような現状がありやいなや、それを承ります。
#32
○加藤国務大臣 私に……。
#33
○猪俣委員 法務大臣にです。なお法務大臣が実情が詳しくわからなかつたら刑事局長から補足してください。もう一ぺん繰返しましようか。
#34
○井本政府委員 いや、それでは私からお答え申し上げます。四月二十二日付の法務大臣の指示によりましてこの案件の犯罪捜査が技術的に非常に困難になつた点につきましては、直接捜査に当つております検察官はもちろんある程度の不満をもつたことは事実でございます。しかしながら検察庁の職員はいずれも法律家でありまして、法律を十分尊重いたすべき念はもちろんで御座います。従つて法律に許された範囲内で懸命の努力を続けまして、その犯罪捜査をできるだけ続行してある程度の結論に達したいということで、そのまま捜査を続けておる次第でございます。仕事を投げるというようなことは全然考えていないようでございます。
#35
○猪俣委員 これは、あなたは公の席上でそういう答弁をなされるよりしかたがないと思うのですが、私どもに入つた情報は必ずしもしからず、相当今後の検察陣の志気に影響を来しておるようであります。もしさようなことがかりにあるといたしますならば、法務大臣はそれに対していかなる対策をお持ちでありますか、法務大臣の御答弁を伺いたい。
#36
○加藤国務大臣 検察陣が直剣に捜査に努めておりましたときに第十四条の指揮権を発動いたしまして、これを拘束せずに取調べよと言いましたことは、これは若き検察官に対しては相当の刺激を与えたことであつたと思いますけれども、しかしながらこれはただいまも政府委員より申しましたごとく、法文によつてやつたことでございますがゆえに、やむを得ないことで、そういういろいろの不満もあつたであろうと思いますが、ただいまのところではすこぶる平穏に相なつて、他の方法において捜査に全力をあげておるような次第でございます。
#37
○猪俣委員 私の質問の答えになつておりませんが、それはいいです。そこで、これは法務大臣の御意見を承りたいのですが、今議会政治は相当の危機に瀕しておると思います。国会及び国会議員に対します国民の信用は非常に低下いたしておる。その最大の原因は汚職問題であります。そこで汚職問題につきましては、徹底的の検察陣の活動をわれわれは願いたいと思う。その意味におきまして、佐藤榮作氏の逮捕拒否のごときは、実に一大汚点を残したものだと私は考えますが、それはそれといたしまして、私が要望したいことは、国会議員で汽船会社あるいは造船会社から金銭の供与を受けた者――検察庁でわかつておるものです。これはあつせん収賄罪の規定がない今日、あるいは刑法の正式の贈収賄にならぬかもしれぬ、あるいは他のいろいろの言いのがれのために、犯罪として面接検挙することができない事情があつて、われわれからいうならば免れて恥なし、これがかりにありとした際、政界浄化のためにかような人たちの氏名並びに金額を公表してもらいたいと思いますが、公表の決意ありやいなや。なお同じ意味で国会議員にして保全経済会、日本殖産金庫その他から顧問料とかいろいろの献金をうけておるような人たち、さればといつてこれは犯罪ということにはならぬかもしれません――私はある程度共犯関係に立つと考えておりますが、検察庁はどう考えておるかわからぬが、かりに犯罪にならぬといたしましても、警察なり検察庁の調べによつてかような金額や人名がわかつている場合には、これも国会議員の浄化の意味において、私は天下に公表してもらいたいと思います。そうして社会の制裁を強化する、こうせざれば検察庁だけでは政界浄化はなかなか困難であります。なおまた、鉄道会館その他国有鉄道に関する事件で、何らかの金銭を受けて活動しておつたような国会議員、かような今陸運疑獄、海運疑獄と称せられておりますもの及び特殊金融機関の問題、汚職の問題として摘発されておりますこれらに関しまして、犯罪にはならぬが調べられて金銭の授受が明らかになつておる者の氏名及び金額、これを私は政界浄化のために公表していただきたいと思いますが、これに対する法務大臣のお考えを承りたい。
#38
○加藤国務大臣 検察庁が汚職の起訴をされたもの等については、あるいは発表が当然あることだろうと思いますけれども、それ以外の問題につきましては、法務大臣として検察庁をしてこれを発表させるということはいかがなことであろうかと思います。そういうことが政界浄化のために遺憾であるという御趣旨は私も同感でございますが、そういう犯罪にならざるものの内容を一々公表するということは、これは適当なほかの方法を考えるべきであつて、法務大臣として検察庁をして発表さすべきものでない、かように考えます。
#39
○猪俣委員 それならば当法務委員会がその公表を要求した際にはどうしますか。
#40
○加藤国務大臣 ただいまお答えいたしました通りでございまして、私の考うるところによりますれば、検察庁は犯罪事実について取調べ、捜査をし、その結果を発表すべきものでありまして、政界浄化というある一つの目的を持つてこういう摘発だとか何かはすべきものでない、かように私は政治常識上信じておるのでございます。
#41
○猪俣委員 あなた方はかつて気ままなことを言つている。いわゆる準司法権と称する司法権の発動については、政治問題から発動を阻止していながら、今度は政治問題からこれを公表せよという問題については、いやこれは犯罪でなければ公表しない建前だと言われる。ある場合においては司法権の発動を政治問題のために抑制し、ある場合においてはこれは司法権の問題であつて政治的目的のためには動くものじやないというような、かつて気ままな使いわけをあなた方はやつている。準司法権で、まつたく政治問題で動くものでないならば十四条なんか発動なさらぬがよろしい。重要法案の通過のためなんという理由であの十四条というものは発動が規定されておるのじやないのです。まつたくあれはとんでもない解釈から十四条を発動している。純然たる政治的考慮から発動しておる。そうすると、私は政治的考慮から、政界浄化という政治目的のためにこういうことを公表してもらいたいということを言うておるのですが、法務大臣は、法務委員会が国政調査権の発動として、検察庁で取調べられたこの献金を受けた人たち――それは犯罪にならぬとしても、そういう人たちの人名、金額等を調査したいということの決定になつたら、やはりそれを拒否いたしますか。
#42
○井本政府委員 国会議員などの個人が政治献金等の金員を受取つた事実につきましては、ただいま法務大臣から答弁がありました通り、贈収賄あるいは政治資金規正法、公職選挙法というような刑法犯罪として裁判に付されておるというような事実がありますれば、これは公表して一向さしつかえないと私は考えるのでございますが、裁判に関係のない、あるいは犯罪捜査に直接関係のない事実を公表するということは、その当事者の名誉の問題もございますし、一概に発表すべきものであるという結論には達しておらぬ次第でございます。
#43
○猪俣委員 なお一点お尋ねいたしますが、検察庁からかような発表をするという場合においては、法務大臣はいわゆる訴訟指揮権によつて発表を停止させますか。
#44
○加藤国務大臣 ただいま政府委員よりお答えいたしましたごとく、犯罪事実にあらざるものにつきましては、検察庁としては発表しないと言つておるのであります。
#45
○猪俣委員 それではその問題はそれでよろしゆうございます。
 次に、今広島県の弁護士池田埓吾君から、当法務委員会へ陳情が参つております。この事案は、広島県下におきます高坂家の、本家分家の相続にからんだ財産争いでありますが、この事件に広島地方検察庁の中田義正という検事が介在いたしまして、その争いの一方の本家側の高坂浪子という人、及びその代理弁護人でありました池田埓吾弁護士、これをいずれも逮捕留置いたしまして、池田弁護士は四十日ばかり留置されておりました。その間において、本家分家の相続争いについて示談を強要し、なおまた所有権の帰属が明らかにならず、民事訴訟で争つたにかかわらず、分家側に山林の伐採を許可して、これを数百万円に売却せしめた。なお広島銀行本店に、中田義正検事及び谷郷順治という副検事、この二人の名前で二百万円の銀行預金までしてある。ちようど本家側の弁護士や本人が留置されておる時期に、かような銀行預金がされておる。これには驚くべき職権の濫用があるのじやないか。この事実を法務省は御存じであるやいなや。私はある程度知つておるはずだと思う。なぜならば、中田検事は、おそらくこの事実に関してでしようが、広島地検から島根だか鳥取に左遷されているはずである。広島の検事正は少くとも事情をよく知つておるはずであります。検事正の面前で関係者が中田検事を頭から罵倒しておる。それがあつてからこれが転勤させられておる。これは法務省に報告が来ておるか、ないか。かような事実を御承知であるかどうか。もちろん預金しておるなどという事実は、私も最近わかつたことでありますから、法務省では御存じないかもしれませんが、この中田検事が広島地検から今の地検に移された理由はどういう理由であるか、及びさような相続争いの中に彼が関係して、相当世人の輿論化したほど、一方の味方をしてやつておる。どちらも告訴問題があるのでありますが、本家側から分家相手に告訴したのは十件、これはことごとく不起訴になりました。分家側から本家側に告訴したものはことごとく取上げられるというような、ほとんどへんぱな行動を中田検事がやつておつたことは広島県下の常識になつておる。かような問題について何らかの報告を検事正から受けられたかどうか、それをまずお伺いいたします。
#46
○井本政府委員 お尋ねの池田埓吾弁護士に関する事案につきましては、昨年の三月十一日付で当時の広島地方検察庁次席検事から法務大臣にあてて、犯罪事案について起訴したという意味の報告がございます。その報告によりますと、池田埓吾氏に対しましては封印破棄、詐欺罪といたしまして、昭和二十八年三月七日付で広島地方裁判所に公判請求がなされております。実は昨日私の局の津田総務課長から猪俣さんに電話で概略お尋ねいたしたものでありますから、私どもといたしましても、かような事案があればこれはとんでもないことであると存じまして、一応念のために今朝早く広島地方検察庁の米原検事正に電話をいたしまして、概略の事情を聞いたのであります。検事正の話では、池田弁護士は封印破棄、詐欺罪で起訴しておるような状況であるから、中田検事に涜職とか、さようなことは全然ないということでありました。但しこれは猪俣さんからのお話もございますし、私どもといたしましてはいま少しく調べたいと思う次第でございます。なお中田検事は本年の初めに広島地方検察庁から松江の次席検事に栄転しておるのであります。これは左遷ではないと私は考えております。それから金を二百万円広島銀行本店に預けておるというようなお話でございますが、検事正のお話ではさようなことはないと言うておつたのであります。私どもといたしましては、いやしくも正義を守るべき検察官が数百万円というような大金を収賄したということがもし事実でございますれば、これは刑事上の厳重な処分をいたさなければならぬ事案と考える次第でございます。それと同時に、もし間違つた事実を承知しながらかような事実を公表し、あるいは官に申告するというような事実があれば、これまたその責任は重大であると考えるのであります。いずれにいたしましてもこの事案につきましては、その真相を厳重に調べたいと考えておる次第でございます。
#47
○猪俣委員 これはひとつ法務省で十二分な調査をしていたたきたい。封印破棄というようなことも、きようあなたに差上げた書類を見ればよくわかるのですが、本人に言わせると、これ自身が陥穽、穴である。これはまたどういうわけだか、一度池田埓吾代理人の名義で本家側から仮処分をしておつたものを分家側からまた出て、同じ不動産に対して仮処分が二回になつております。これも裁判所の間違いではないかと思うが、二回目の仮処分は、こんなものは自分が仮処分をしておるのたから有効である道理がない。人がやつておるものをまたもう一ぺん別の人がやつて来たということで、そんなものは認めないという態度をとつたのではないかと思われますが、それがもう検察庁と十分な了解の上で仮処分手続がなされて、それにひつかけてすぐ逮捕したというような実情であるやに私は聞いておるのであります。今あなたのお手元に差上げたものは本人からの陳情書でありまするが、証拠も三十二号証まで写しを金部そこに添付してあるのでありますから、よく御検討になつていたたきたいと思います。私ども、せつかく検察陣が今汚職追究に一生懸命になつておられる際にあまり問題にしたくないが、私が聞きましてからも一箇月半、約二箇月近くたつております。なお念のために本人に全部書かせてよこしたので、非常におそきに失するような状態でありますけれども、そのかわりここに詳細を書いて参つております。なお広島検察庁に詳しい告訴状が出ておるが、どうしたものだかさつぱり進展をいたしません。これも控えがありますから、あなたの手元に差上げておきますから調査させていただきたいと思います。それではこれは御調査願うことにいたします。
 なお私は、検察官適格審査会のことについてお尋ねしたい。私は昨年の四月から検察官適格審査委員に国会側としてなつておる。しかるにこれは一ぺんも開かれたこともなし、顔つなぎをやつたこともない。われわれもさつぱりわけがわからぬのですが、これは一体どこに事務局があつて、どういうふうに運営しているのであるか、それから委員長というものはあるのかないのか、あるなら何人であるか、その委員がだれであるか、われわれは何の知らせも受けておらない。これは一体どこの所管か、法務省の所管なのか、総理府なのか、それもわからぬ、そこで検察官に対しまして問題があつたような場合、われわれはこの審査会の開会を要求したい。今の中田検事のごときも、初め私はその審査会へ出して調査してもらいたいと思つたのですが、さつぱりわからないのです。これをちよつと御説明願いたい。
#48
○井本政府委員 この検察官適格審査会は総理府の所管でございますが、法務省の関係の検察官の問題でございますので、庶務は法務省官房の人事課がやつております。この委員は検察庁法によりまして十一名おられます。衆議院から四名、参議院から二名……。
#49
○猪俣委員 ちよつとその人名も……。
#50
○井本政府委員 衆議院の検察官適格審査委員は大橋武夫氏、押谷富三氏、小山倉之助氏、猪俣さん、参議院は石原幹市郎氏、宮城タマヨ氏、それから検事総長の佐藤藤佐氏、法務事務次官の清原邦一氏、最高裁判所判事の斉藤悠輔氏、日本弁護士連合会会長の岩田宙造氏、日本学士院会員の牧野英一氏、これだけが委員でございます。委員長は牧野英一氏がなつておられます。この委員につきまして、各委員の予備員が十一名おられます。予備員は、衆議院議員といたしましては有田二郎氏。(笑声)渡邊良夫氏、池田清志氏、細迫兼光氏、参議院議員といたしましては仁田竹一氏、松永義雄氏、最高検察庁次長検事の岸本義広氏、法務省関係といたしましては、刑事局長の私がなつております。それから最高裁判所判事の島保氏、日本弁護士連合会副会長の津田勍氏、日本学士院会員信夫淳平氏、これが予備員であります。庶務は法務省人事課長の布施健氏がやつております。
 それから、御承知の通り三年に一度ずつ定時の審査をやつておるのでありまして、最近では昭和二十七年の十一月にやつております。それから数えますと、三十年の十一月にこの次の定時審査があるわけでございますが、ちようど猪俣さんは前の定時審査のあとに委員になられましたので、その機会にお当りにならなかつたと思います。
 それからこの検察官適格審査会は、懲戒処分になるような検察官につきましては、これはどんどん懲戒で片づけておりまするし、また検察官に適しないような者は勧奨いたしまして、本人が自発的にやめておるというようなことで、実際上この審査会で不適格であるというような結論を出したことはまだ一度もございません。一、二その議に上つたこともございますが、具体的な事例はございません。将来この審査会にかかり得る場合といたしましては、懲戒処分にはもちろんできないし、また本人も、やめろと言うてもやめない、しかも検察官としては不適格であるようなものにつきまして活用があるというように私は考えておる次第でございます。なお活動といたしましては、委員長が招集されますれば当然この審査会は開かれますし、また各委員の方の御発議で開かれることももちろんあり得るわけでございます。ただ定員の関係で定足数が九人になつておりますので、いずれもお忙しい方でなかなかお集まりにくいというような従来の経過であるということを聞いております。
#51
○猪俣委員 私どもは検察権は準司法権としてどこまでも厳正公平に発動してもらわなければならないと思う。ですから検察庁法十四条のごときはみだりに発動してはいけない。いわゆる政府与党あるいは政府を助けるために国策の名において、重要法案の名において十四条を発動するのはけしからぬ極点だと考えるのですが、もし検察ファツシヨとか、検事がその準司法権の保護に対して、みずからおのれを高うして人権蹂躪的な不法なことをやる場合においては、十分これを牽制しなければならぬ。その意味におきましてはこの委員会こそ活発に活動すべきものである。しかるに十四条の発動はあるけれども、委員会というものはほとんど開催されておらぬ。みんな何か大家みたいに名前だけ並べて、どこに事務所があるやら、だれが委員長であるやら委員の私どもも知らぬというような始末なんです。こんなばかげたことはやめたらどうです。あるならばお飾りにしないでもつと活発にやらなければならない。定期といわず、こういう検事の問題が起つたたびにこれを開いて――その開くことだけでも相当検事に対する牽制になると私は思うのです。そしてここに犯罪行為ありとするならば、何者も恐れず検事には十分腕を振つてもらう。そのかわり職権を濫用した場合にはお目付役があつてただちにこれを制裁する。両々相まつて初めて検察権が公平に何者も恐れず十二分に活動できると思う。一方検察庁法の十四条だけは発動して天下を震憾させながら、検察官適格審査会なるものはほとんど知つている者がない。委員の私がどこに書記局があるかわからない。こんなばかげたものはないと思うのです。これは委員長に言うべきかもしれぬが、あなた方事務当局としてお考えになつて、顔つなぎくらい一回やりなさい。一年たつてたれが委員だかわからない、そんなばかなことがありますか。そんな必要のないものならやめた方がいいと思います。至急顔つなぎくらい開くことをここに要求する。そして中田検事のごとき問題があるならば、あなた方内輪同士ですから、あなた方の調査たけを信用することはできない、やはりこういう委員会を活用して十二分に調査するなり、当法務委員会が調査していただくなり、そういうふうにして検察権の適切なる発動のために規制しなければならない。そのかわり検事には悪に対して強くぶつかつてもらいたい。どこまでもそれをわれわれは援助いたします。その意味においてわれわれはこの検察官適格察査会の活用について自由党諸君にも言いたいことがある。ただ十四条の発動ばかりを擁護なさらずに、こういう検察官適格審査会というものがせつかくある。もし検察フアツシヨというような心配があつて、それだから検事は押えなければならぬというような、有田二郎君の言うようなああいうひまがあつたならば、検察官適格審査会の活用を諸君は与党として事務当局にも要求していただきたい。機会がある。それをたな上げにして検事を同化するようなことばかりやつておつても、それは私は合理的ではないと思う。はなはだ八つ当りみたいなことになつて済みませんが、これを要望しておきます。私の質問はこれで終ります。
    ―――――――――――――
#52
○小林委員長 次に裁判所法の一部を改正する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律案の三案を一括して議題として質疑を行います。質疑の通告がありますからこれを許します。佐竹晴記君。
#53
○佐竹(晴)委員 この際法務大臣にお尋ねをいたします。新憲法下最高裁判所ができて以来、大審院時代に比して著しく事件が渋滞いたしておるのでありますが、その根拠はどこにあるとお考えでございましようか。
#54
○加藤国務大臣 最高裁判所に事件が何千とたまつておつて進捗をしないということは、最高裁判所の判事が数が少い。元来最高裁判所といたしましては憲法の解釈問題もしくは重要なる法令違反のごときを裁判するところであるにもかかわらず、いろいろの問題が錯綜いたしておりますがゆえに、河千件という案件がわずかの判事によつてこれを判決されるのでございますがゆえに、非常に渋滞いたしておることは御指摘の通りでございます。
#55
○佐竹(晴)委員 憲法の解釈問題、重要なる問題等、法律問題の解釈と、並びにいろいろの問題が錯綜して渋滞しておるとおつしやつたのでありますが、民事上告事件については民事上告事件審判の特例に関する法律というのがあつて、法律解釈の問題については著しく制限を加えていて、これがために渋滞を来しているものとは思わないのであります。一体どういつたようなことがそういう関係において渋滞せしめておる原因とおつしやるのでありましようか。またさらにいろいろの問題が錯綜しておるとおつしやるが、それは大体どういつたようなものでございましようか。
#56
○加藤国務大臣 元来最高裁判所はただいま申したような上告をすべきところであるにかかわらず、憲法違反もしくは判例違反等にかこつけましてと申すと言葉が悪うございますが、それに理由を付しまして多くの案件を上告いたしますがゆえに数が多くなつた、こう思うのでございます。
#57
○佐竹(晴)委員 民事上事件の審判に関する特例法が延期に延期を重ねて参りました。ところがいよいよこの間延期いたしました際にも、来る昭和二十九年の六月一日以降失効するということに定めまして、それから後はもう延期をしないということにいたしたのであります。その理由は、それまでにかように渋滞をするところの上告事件をいかにしてさばくかについて、根本的に司法制度を改革しよう、それまで猶予期間がほしいというのがそのときの理由であつたと思うのであります。しかるに今日大臣から提案されておりますものは、今回の民事訴訟法等の一部を改正する法律案だけであつて、その根本問題に触れておりません。司法制度改革問題に触れておらないのでありますが、一体何がゆえにこの猶予期間中に根本的に司法制度改革の問題をお取上げになり、この委員会へ御提案にならなかつたか、これを承りたい。
#58
○村上政府委員 政府といたしましても最高裁判所の機構問題につきましては重大な関心を持ちまして、昨年初め法制審議会にもこの問題を諮問して検討を続けて参つたのでございます。しかしながら御承知のように最高裁判所の機構の問題は、民事の上告制度の問題のみならず、刑事の上告制度の問題とも不可分の関係にございますし、何分にもわが国国家組織の基本に関する制度の問題でございますために、法制審議会におきましても約一年にわたりまして慎重な審議を続けたのでございますが、今日まだ終局的な結論を得るに至つておりません。従いまして政府といたしましては今後もなお法制審議会における審議を継続しなから妥当な結論を得るように努力を尋ねたいと考えておるのでありますが、このたび民事訴訟法の一部を改正する法律案を提案いたしましたのは、最高裁判所の機構問題に対する最終的な結論が得られない現在、一方におきまして、民事上告特例法は今月限りで失効いたしますので、それに伴う最高裁判所の事務の負担の調整を考える必要がある。最高裁判所に事件が渋滞いたしますことは裁判所内部の問題だけではないのでありまして、国民の権利の保護がそれだけ遅れることになるわけでありまして、このまま放置するわけには参りません。従いまして最高裁判所の負担を調整するという観点に立ちまして、民事訴訟法の改正を立案して御審議を願つておる次第であります。
#59
○佐竹(晴)委員 先ほど法務大臣のお答えによると、憲法違反、判例違反というものが上告の対象になるのだ、本来それをさばくための上告裁判所である、しかるにこれにかこつけていろいろな問題を上告しておるので、非常に渋滞するのだ、こう大臣はお答えになつたのであります。ところが今回提案されておりまする民事訴訟法中改正法律案によりますれば、これはすでに提案理由にも明らかにされております通り、憲法違反の問題はもちろん、さらに判例違反の問題はこれは当然といたしまして、法律違反の問題をも取上げて審判することができることになつておる。この問題が審判されるということになると、これは非常に多数の上告事件がまたふえて参らなければならぬ。渋滞しておるところの事件を整理するために今度の改正法によつてまた元へもどつて法令違反の問題を上告の理由とすることに御提案になつたというのは、これは矛盾ではなかろうか、この点はこれは根本問題でございますから、ひとつ大臣よりお答えを願つておきたい。
#60
○加藤国務大臣 政府委員から答弁いたします。
#61
○佐竹(晴)委員 それはなりません。この間私が、あなたはしろうとだ、わからない、従つてあなたはたとえていえばお医者の経営者みたいなものであつて、実際の学術についてはわからない、こういう見地に立つて私は寛大に聞いた。するとあなたはそのときに何と言つたか、おれは主治医だと言つた。この民事訴訟法についても同様である。あなたは主治医たるところの立場になければならぬ。主治医というものはその経験においても、技術においても、学術についてもほかのお医者よりまさつていて、いかなる専門的見地に立つても主治医たる立場にあつて一切采配するのだ、おれが上だ、あなたはそうおつしやつた。私はあなたをすべてこれから主治医といたしまして扱つて行く。従つてあなたの手の足りないところは、それはあとでいろいろ条文その他こまかい点についてあるいは判例等については意地悪くあなたから聞こうとは思わない。少くとも機構改革とかいつたような大きな問題等についてはあなたは主治医たる立場に立つて答弁できなければならぬ。できないのに引受けたとすれば、それはあなたの政治的責任である。あなたの政治責任においてお答え願いたい。
#62
○加藤国務大臣 今度の改正は佐竹君御承知のごとく、第一は上告手続の合理化をはかるということにあるのでありまして、第二は仮差押、仮処分事件等の上告を制限するということなのでございます。第三に仮執行宣言付判決に対する上告提起等の場合における執行停止の要件の加重等でございます。私はこの場合申し上げまするが、こういう専門的のことは私は大綱を見たいということを先般申したのでありまして、こういうことになりますと専門でございまするがゆえに、私は政府委員をして答弁さした方があなたの御質問の要旨に沿うことであろうと思う。私は全責任を政府委員の答弁に対しては持つのでございます。このことを申し添えておきます。
#63
○佐竹(晴)委員 それでは私はあなたに聞くが、上告制度というものは個々の事件の私権擁護を目標として制定されたものと思うか、それとも法全体の解釈の統一並びに法運営の公平を期する等の法の権威のためにそういう制度を設けたものであるか、あなたの基本観念を承つておかぬと、あなたはここへ司法制度の改革問題を取上げて来ておらぬ、なぜ取上げぬかという問題は、あなたの根本的態度において間違いがあるからではないかと思うから、あなたの根本的信念を聞いておるのです。
#64
○村上政府委員 上告制度の本質につきまして法令の解釈の統一をはかることが主たる目的である、具体的事件の正しい解決というものは付随的なものであるという考え方もあるのであります。私どもといたしましては、上告裁判所といえども地方裁判所の一つでありまする以上は、具体的事件の正しい解釈を通じて法の解釈の統一をはかるというところにその本質があると考えるのであります。従いまして、具体的事件の正しい解釈を離れての法の解釈統一の使命というふうには理解いたしておらないのであります。
#65
○佐竹(晴)委員 しからば、先ほど法務大臣は憲法違反と判例違反を審判するのが上告裁判所の本来の目的であると言つて、ただいまの具体的事件に関する法の解釈統一の問題は本来の目的でないかのごとくお答えになつたのでありますが、これはどうです。大臣としてはそれはやはり入つていないとお考えになるのですか、これは大臣が先ほどおつしやつた言葉でありますから、それをまず承つておきたい。
#66
○村上政府委員 民事上告特別法におきましては、憲法違反を理由とする上告、判例牴触を理由とする土言及び法律上の重要な主張を含む上告理由のみについて調査すればよろしいことになつておるのであります。この重要な主張というのはどういう意味であるかということにつきまして、いろいろ議論があるのであります。法の解釈の統一のために重要であるという意味に解する説もあるのでありますが、先ほど申しました通り、最高裁判所が司法裁判所として具体的事件の正しい解決を一つの重大な使命といたしております以上、この運用の実績を見ますと、いやしくも具体的事件について法律の適用を誤つたというような事案についてはこれを取上げて、本案についての裁判をしておるのであります。先ほど大臣が憲法違反及び判例抵触を裁判する上告裁判所であると申しましたのは、ただいま私が御説明申し上げた趣旨と私は了解するのであります。
#67
○佐竹(晴)委員 しからば、判例違反を通じて法令違背の問題を扱う場合にはこれは含まれているといたしまして、判例違反でないところの他の法令違背というものは、そもそも上告制度のもとにおいては審理すべき範囲以外のものであるという観点に立つておられるのでございますか。
  〔委員長退席、林(信)委員長代理着席〕
#68
○村上政府委員 現行民事訴訟法の三百九十四条は、申し上げるまでもなく判決が法令に違背したことを理由とするものであります限りは、いかなる法令違背でありましようとも、上告の理由としてできることになつておるのであります。この改正案におきまして、憲法違反及び判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違背に限るといたしました趣旨も、具体的事件の救済は上告審理の任務でないという立場から立案して来たのではないのであります。
#69
○佐竹(晴)委員 憲法違反、判例違反、これがこの特例法においては上告の理由として制限されておる。この制限下においてもなおかつあの通りの醜態です。今度さらにその特例法が廃止されて元の民訴に返つたときに。法令違背を中心とする上告事件は相当激増するものと言わなければならない。前に民事特例法を出して、そしてそれを延延期に延期を重ねて来月一月以降はもう失効するわけだが、それまでに司法制度の改革をやつて、それから先は醜態のないように行くんだという、それがために与えた猶予であつたと私ども思う。ところが、その根本的問題を取上げることをなさいませずに、今回民事訴訟法の改正法律案を出して、それが元の法令違背をも上告をすることができるという内容にまた立ち返つておるのであります。それでは一体この長い間猶予して参つた理由がいずこにあつたか、私どもはこれを解するに苦しむ。法務当局としてこれは怠慢ではありませんか。
#70
○村上政府委員 先ほど申し上げました通り、法務省といたしましても最高裁判所の機構の問題及び最高裁判所において取扱うべき民事及び刑事の上告の範囲の問題につきましては、熱心に研究を続けて参つたつもりでございます。また法制定議会においてもきわめて熱心な検討が行われたのでございますが、きわめて重大な問題でございますために、いまだ結論を得る段階になつていないのでございます。それから先ほど特例法が失効すれば民事の上告事件は激増するであろうというお言葉でございましたが、民事上告特例法は必ずしも上告理由そのものを制限しておるのではないのでありまして、現行民事訴訟法の三百九十四条による判決が法令に違背したことを理由とする場合には上告ができるわけです。ただある範囲のものにつきまして調査、判断しなくてもよろしいということなんであります。従来も、最高裁判所の実情等を聞いてみますと、特例法を適用して上告が棄却された事件が相当数に上つておるのでありますが、これらの事件は特例法があろうとなかろうと上告される事件であろうと思うのであります。従いまして、特例法がなくなつたからそれまで差控えておつた上告がにわかに激増するというふうには見ていないのであります。それから、特例法が失効して、この民事訴訟法の改正案を出したのでは、かえつて最高裁判所の事務の渋滞がはげしくなるのじやないかという御疑問があるようでございますが、なるほど上告理由を原判決の憲法違反及び判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違背に限りました点だけから見ますと、上告裁判所の負担の調整にはあるいは大した期待はかけられないかとも存じますが、このたびの改正案はそのほか不適法な上告を原審において却下する手続、その他仮処分事件の制限、仮執行宣言付判決に対する執行停止の要件の加重等を考えますと同時に、また一方におきまして、簡易裁判所の事物の管轄を引上げることによりまして、最高裁判所に対する上告事件の減少をはかるという、これらの点をすべて総合いたしますると、特例法のもとにおける最高裁判所の負担に比較いたしまして、この改正案のもとにおける最高裁判所の負担が著しく重くなるというふうには考えていないのでございます。
#71
○佐竹(晴)委員 法律があり制度があつて、事件ができるのではないのです。事件があつて、法の適用をしなければならぬし、制度ができて来るのです。ところが現制度のもとにおいては、その事件をさばくに十分でない。そのときにその制度の改革をしないで、事件をただ押えて、何とかこれを処理しようというのは、これは本末転倒ではございませんか。事件があれば、その事件を適当に処理し、民意に満足を与え、そうして私権を十分に擁護するということが必要であつて、その事態に対処するのには制度の改革以外にはなかろうと思う。いたずらに渋滞しておる事件を、これはいかにすれば減すことができるかといつたような、そういつたような面だけに心を用いるということは、本末転倒ではないかと思うのでありますが、いかがでございますか。
#72
○村上政府委員 佐竹委員の御意見の通りでございまして、現在の裁判所の機構をそのままにするということを前提としてのみ手続を考えるということは、本末転倒のきらいがあるのであります。従いまして政府といたしましては、現在の裁判所の機構を動かすべからざるものという前提をとつておるわけではないのでございます。ただそれではいかなる改革が必要であるかという点につきましてまだ結論を得ておりませんので、現状のもとにおきまして訴訟手続を考えます場合には、現在の機構のもとにおける手続として考慮せざるを得ない、こういうことになるわけであります。将来の機構問題につきましては、なお法制審議会における慎重な検討を経、また政府といたしましても十分研究いたしまして新しい機構のもとにおける新しい上告制度のあり方というものを考えたい、こう存じておる次第であります。
#73
○佐竹(晴)委員 大審院時代にはかなりうまく行つておつたようであります。ところが新憲法ができて最高裁判所ができた。とたんにうまく行かないのであります。これはどうしても機構の問題が根本に横たわつておると私ども見ておる。ただいまの局長のお答えによりましても、これを肯定されております。しからば一体どこに欠陥があるか、いかにこれを直せばこれが改革されると思われるのか、その大綱を承りたい。
#74
○村上政府委員 この点につきましては、法制審議会に現われました意見の大綱を前回小委員会において御説明申し上げたのでありますが、一方におきまして、現在の機構をそのまま維持するという強い主張がございます。他方におきまして、主としてこれは在野法曹側の委員の意見でございますが、民事、刑事の上告の範囲を拡張して、裁判官の数を増員すべきであるという意見でございます。その中間に、最高裁判所と高等裁判所との間に別の上告裁判所あるいは高等裁判所の上告部というようなものを設けて、ここで一般の法令違背を理由とする上告を取扱い、最高裁判所においては憲法問題あるいはそれにつけ加えて判例抵触その他重要な問題を含む上告事件を最高裁判所においてやる、その他は新たに設ける中間の上告部において審査すべきであるというような意見もあるわけでありまして、大別いたしましてこの三つの方法が考えられるわけであります。先ほど申し上げました通り、法制審議会におきましても目下慎重に研究中でございます。政府としては将来どういう方向に進むという方向はまだ定めておらない次第であります。
#75
○佐竹(晴)委員 これが半年一年の間ににわかにこういうことを私どもが追究するとすれば、それは私どもが無理でございましよう。しかし民事上告事件の審判の特例に関する法律については、相当長い間もうすでに延期して参つております。二十五年に制定されて、その後すでに五年になつておる。特例に関する法律というものは、文字通り特例に関する法律であります。特別の扱いであります。この間に本然の姿に帰らなければならぬ、またどこかに欠点があれば是正しなければならぬ。従つて相当長い期間置き、しかして前回延期の際においても、一度は延期をいたしますが、今度は延期いたしませんということをはつきりいたしまして延期をいたしておる。そういつた状況でございますから、今回出て来るものは何といつてもこれは根本の機構問題に触れた改革が成文化されたものでなければならぬと考えますが、この状態ではこれはいつ一体そういつた根本問題の改革ができるのか、私どもはもうほとんど法務当局の将来の方針には信頼を持つことができません。熱心に審議を続けて来たがまだ結論を得ていない、これは今日のこの会議においては言われないことではなかろうか。
  〔林(信)委員長代理退席、委員長着席〕一体それでは根本的に将来いかにして、たとえばいかなる機構をここに設け、あるいはいかなる機構によつて新しい司法制度の改革についてその具体案を練るか、そうして見通しはどうか、これらに対する少くとも法務当局として腹がなければならぬと考えますが、ひとつその腹を聞かせていただきたい。実は先ほど申し上げた通り、きようはこまかいことは聞く気はなかつたので、おれは主治医だといつて法務省へどかつとあぐらを組んでおすわりになつたのだから、きようはそういつたことはすべて法務大臣から承りたかつたのでありますが、せつかく局長がお答えになるということでありますから、大臣に限るというのも言いかねて今質問を続けたのでございますが、これは局長が何と言おうと、大臣として腹がなければできることではございません。きようお答えができなければ、もう少し部内においてもお考えになつて、こういつた問題についてどうするかという腹構えを持つていただきたいと思う。もしその腹構えをここでお答え願えるならばしていただきたい。
#76
○加藤国務大臣 機構改革が次々に延びて参りましたが、御承知のごとく、五月三十一日で失効に相なります。こういうただいまの状態におきましては、先刻申し上げました通りに、上告手続の合理化をはかりまして、最高裁判所本来の使命のさばきをいたしたい、こう思つております。今後の機構につきましては根本的に考えなければならぬことでございまして、今法制審議会に諮問をいたしておるのでございまするが、御承知のごとく、これは相当重大なる問題でありまするがゆえに、法制審議会としてもまだ結論が出ぬのでございます。いずれわれわれもなるべくすみやかなる機会に結論を得ますように請求いたし、その結論に基いて適当な機構改革に着手いたしたい、こう存じておるのでございます。
#77
○佐竹(晴)委員 この機構改革のためにしばらく猶予をくれろといつて、特例法によつて運営した今日、その根本問題に触れないで、あるいは簡易裁判所の管轄を拡大してみたり、仮差押え、仮処分に関する判決に対する上告を制限するなど、こういつたようなことでもつて機構改革にすりかえようなどということは、あまりに小手先のやり方であると思います。こういつた問題はもつと真剣にとつ組んで、もし法制審議会等において答申を得なければ得ないなりに、六月一日から特例法が廃止されるということならば、それに対処すべきもつと根本的な案が出て来なければならぬと考えます。今回の民事訴訟法等の一部改正法律案に至りましては、いかにも小手先のやり方であつて、私どもは満足することができません。ただいま法務大臣のお答えによると、法制審議会に諮問中であつて、結論を得ないということでありますが、これは局長からも前に御答弁になつておるのでありますが、一体法制審議会において結論を得ないところの原因はどこにあるか、あるいは、とたえば法務当局側の意見と最高裁判所側の意見とおのおの立場が違うために衝突をするのか、あるいは在野法曹の要求があまり強烈であるために、あるいは無理であるためにこうなつておるというのか、私は結論を得ないところの理由が必ずなければならぬと言えます。法制審議会における審議の状態等についてはその一部を仄聞いたしておりますが、その議論のわかれておる点が必ずしも、何と申しますか、ほんとうに合理的な、あるいは純理論的な立場においてわかれておるということでなしに、そこには相当深く根ざす別個の大きな原因があるのではないかというふうに考えるのでありますが、それはいかがなものでありましようか。
#78
○村上政府委員 法制審議会において現われました意見の大事は先ほど申し上げました通りでありますが、これらの意見はいずれも相当理由のあることでございまして、一概に、理論上どれが正しくてどれが間違つておるという判断もつけかねるのであります。私ども法制審議会の答申に期待しておりますのは、在朝在野及び学界の権威が集まつておるのでありますから、これらの方々に衆知を集めて一つの理想的な機構を考えていただくというところにあるわけでありますが、ただいままでの審議の経過から申しますと、在野法曹と在朝の裁判所側とかなり鋭く意見の対立があるのであります。今後さらに相互に理解を深め合うことによつて、衆知を集めた理想的な案が得られるものと期待しておるわけであります。その間何らか特殊な事情が介在するのではないかというような御疑問でございますが、その点につきまして、私ども別段気づいたことはございません。
#79
○佐竹(晴)委員 これは単なる臆測というよりも、現実がそうではないかと思うのであります。最高裁判所自体は機構の改革を望んでいないというのが事実ではないでしようか。
#80
○村上政府委員 法制審議会に現われました裁判所側の委員の御意見は、どちらかと申しますと、機構の問題につきましては現状維持説が多いのであります。しかしながら、最高裁判所としてこの問題についての意思を表示されたことはございませんので、最高裁判所がどういう意見を持つているかということにつきましては、私どもまだ承知いたしておりません。
#81
○佐竹(晴)委員 裁判所自体の機構の改革については、おそらく裁判所が自主的に決定すべきことではなかろうかと思うのでありますが、しかしここに法案となつて提案される場合には、おそらくこれは法務省の管轄であろうと思います。法務大臣の責任においてなさるべきことであろうと思いますが、その間の調整はうまく行くお見通しでございますか。
#82
○加藤国務大臣 今度提案をいたしました民事訴訟法等の一部を改正する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案のごときは、御承知のごとく法制審議会の意見を徴した結果でございまして、ただいま私どもとしては、法制審議会の答申というものに重大敬意を払つてこれを尊重いたしておりますがゆえに、今回の問題も法務省独自で出したわけではなくして、審議会の諮問を経た結果これを提出いたした次第でございます。
#83
○佐竹(晴)委員 私の承つているのは、ここへ出している民事訴訟法の改正案それ自体ではございません。機構改革について、もしこれを根本的にしようとするならば、最高裁判所が自主的になさるべきことではなかろうか。しかし法律案としてこれを提案する際には、これはおそらく法務省の管轄であり、法務大臣の責任においてせられなければならぬと思います。法務大臣がいかにこれをやろうといたしましても、最高裁判所がこれに反発をいたしまして、ただいま局長からお答えのごとく、どうも現状維持の意見が非常に濃厚であるといつたような場合においては、法務大臣といたしましても手のつけようがないといつた事態が起りはしないか、この点法務省と最高裁判所との間がスムーズにやつて行けるというお見通しがついたかどうか。その見通しなしには司法制度の改革は、私どもこれから必ずやりますといかに言明をなさいましても、それは単なるから念仏であると考えます。そこで大臣といたしまして、この法制審議会における審議の状況その他等を考え合せて、最高裁判所の機構の改革に手をつけて、はたして完全にやりおおせるという腹が一体きまり得るものであるかどうか、私はこれを聞きたいのであります。
#84
○加藤国務大臣 最高裁判所の機構の大改革をいたすにつきましては、責任はもちろん法務省が法務大臣として持つわけでございますが、かような大改革をいたすにつきましては、あらゆる衆知を集めなければならぬのでございますがゆえに、先刻来申し上げたごとく、法制審議会に諮問いたしておる次第であります。法制審議会といたしましても、先刻来説明を申し上げたごとく、在野法曹と学者その他の方と意見を異にいたしておる点もあるのでございまするがゆえに、この調整が適当な機会においてでき、結論が出ると思います。ことに最高裁判所の方の意見と法務省の意見が衝突するような場合があつたらどうかということでございますが、私どもは最高裁判所の意見というものももちろん尊重はいたしますけれども、いよいよ機構改革の法案を提出いたしますときには、その間の調節をできるだけスムーズにいたしまして、法務省の責任において改革案を適当な機会において提出いたしたいと思つておる次第であります。
#85
○佐竹(晴)委員 御自分の部下の検察庁当局に対してさえも検察庁法第十四条による強権を発動しなければならぬような状態のもとに、最高裁判所の機構改革をおれはやつてみると言つたつて、なかくそれは強権ではできるものではなかろうと思う。私はこれについては十分の検討と、理解を得なければなし得るものではないと考えます。私の聞くところによると、法制審議会における審議の状態から見ても、最高裁判所なら最高裁判所側から出て来るグループ、在野なら在野の方から出て来る者が一つのグループをなしており、また法務省には法務省の意見があつて、なかなかその調整がむずかしい。従つて先ほど局長からお答えのごとく、熱心にその討議を続けて来たが、いまだ結論を得ていない、こういう状態である。それならば、一体この状態は何年くらいやればその結論を得るお見通しでございますかと聞いても、おそらくこれは御答弁ができないだろうと思う。そういつたような見通しのつかぬことで、とてもこれはできないという考えが起るような状態のもとにおいては、今回出して来た民事訴訟法等の一部を改正する法律案等についても、その機構改革にかわるべきもつと根本的なものがなくてはならなかつたではあるまいかというように考えるのであります。法制審議会における審議の状態にかんがみて、一体近いうちに結論が得られるもの、また今日のごとき最高裁判所の事務の渋滞などがないように、スムーズにその機構の改革がなし遂げ得られるものというお見通しがつきますか。
#86
○加藤国務大臣 法制審議会がいつ結論を得られるかということは、あらかじめ期限は予断できないのでございます。われわれといたしましては、できるだけ各方面の方々が意見を交換されまして、すみやかなる機会に結論を得られることを望んでおるのでございますが、さればというて、一年とか半年とかの間にできるわけではございませんがゆえに、臨時にその間最高裁判所の事務を円滑にし、かつまた最高裁判所が本来の使命に集中することができますようにこういう法案を提出いたした次第でございまして、佐竹君のごとき有力なる方もひとつ御配慮を願いまして、すみやかなる結論に至りますよう熱望してやまない次第でございます。
#87
○佐竹(晴)委員 最高裁判所の判事の藤田八郎さんのジユリストの三月十五日号に載つた論文によりますと、今回の民事訴訟法の改正法律案なども、法制審議会にもかけずに出したもので、粗笨きわまるものであると最高裁判所内部からこれを論評している。こういつたようなことで、今大臣は、うまいぐあいに調整がとれておやりになつていると言われるけれども、判事自身がそうでないということを裏書きしている。こんなことでうまく行くかどうか。大臣どうでしよう。
#88
○村上政府委員 ジユリストに載りました藤田判事の論文につきましては、この立案の経過、法制審議会の審議の内容等につきまして、やや事実と通う点があるものと考えるのであります。最高裁判所の裁判官であります藤田八郎氏がこの法案に全面的に反対するという趣旨の論文をお書きになりましたわけで、実は私ども非常に意外に思つたのであります。と申しますのは、立案の経過として最初の逐条説明の冒頭に申し上げたのでありますが、この立案につきましては、終始最高裁判所事務総局とは連絡をとりながら立案して参つたのでありまして、最高裁判所の賛成を得た案であると了解しておつたのであります。ところが、提案になりました後にさような論文が出ましたので、あらためて法務大臣から最高裁判所長官にあてまして、最高裁判所としての意見を書面をもつて明確にしてもらいたい、この法案の成立を希望するのか、しないのか明確にしてもらいたいという照会を出したのであります。それに対しまして、最高裁判所におきましては、裁判官会議を経たのでございましよう、最高裁判所長官の名をもつて、この法案の成立を希望するという回答が来ているのでございます。そういう点から見まして、藤田判事の発表されました意見は、最高裁判所裁判官の中でも多数の意見とは異なるものと私どもは了解している次第でございます。
#89
○佐竹(晴)委員 最高裁判所からの御回答には何か理由が示してございましようか。もし理由等が示してございましたら、資料としてここに御提出を願いたいと存じますが、いかがでございましようか。
#90
○村上政府委員 理由は書いてございません。ただ結論として、この両法案の成立を希望するという回答があつたわけでございます。
#91
○佐竹(晴)委員 理由をほしいのでありますが、それがないといたしますならば、法務省から最高裁判所あての照会状と、それに対する回答――それは全面的にこの改正案を希望するというのかどうか、これを望むといつたような趣旨の返事でありますならば、その御回答をもし資料として御提出願えますれば、それをいただいておきたいと考えます。
 私はこの問題については、上告制度の性質等、根本問題を中心といたしましてさらにいろいろお尋ねをいたしたい点がございますが、私はそういつた理論的なものを避けて、しろうとの主治医でもわかるような、大臣においてお答えのできるような点をと考えて、御質問の題目だけをここに選んだのでありますが、これらについても大部分のお答えを得られなかつたのははなはだ遺憾であります。将来法務大臣としてこういつたような問題を担当して、責任をもつて切り抜けて参ろうという御決心ならば、こういつたようなものについても法案を出した以上は十分に腹構えをこしらえまして答弁にお臨み願いたいことを希望いたします。
 さらに、条文その他こまかい点についてはこれを省略いたしまして、ただ最後に一点、この民訴関係ではございませんが、ちようどおいでをいただいておるのでありますから、ついでに関連をいたしましてお聞きをいたしておきたいと思いますことは、例の総理大臣私邸へ大阪の青年が侵入して参つたことについていかにもこれを秘密に付するかのごとき状態でありますことがはなはだ遺憾に思うのであります。これはこの民訴の法案審議には直接関係ありませんけれども、もしお害えが願え得るならば、また委員長においてお許しを願え得ますならば、これに関連してこの点をひとつぜひお聞かせを願つておきたい。つまりその状況でございます。これは法務大臣といたしましては警察関係を担当しておらぬとおつしやるかもわかりませんけれども、しかし治安に関係することでありますので、ちようど刑事局長もお見えになつておることでありますから、何か報告が法務当局としては来ておるはずだと考えますし、ことにこれは単に個人的な暴行とか傷害とかいつたようなものでなしに、政権を持つておる総理大臣に対するその邸宅への侵入といつたような政治に関するまた治安に関することでありますので、こういつたような事項を、新聞に伝うるがごとく秘密に付しておるかのごとき印象を与えるというようなことはよくないのでありますから、その詳細な事実関係をここでひとつ明らかにいたしていただくようお願いいたしたいと存じます。
#92
○井本政府委員 突然のお尋ねでございますので、資料を手元に持つておりませんが、この事件につきましては小田原の支部長であります大沢検事が調べまして、ある程度の報告が参つております。結局五月の三日の夕方葛原法生という者が大磯の首相の私邸に参りまして、警戒の巡査と格闘いたしまして、警棒を取上げてその警棒を持つて家宅まで侵入したという事件でございます。この事案につきまして大沢検事からも新聞社にある程度発表いたしておりますが、現在現行犯手続で勾留取調べ中でございます。その罪名は住居侵入並びに殺人容疑と思つておりますが、とにかくさような罪名で取調べを続けておる状態でございます。詳細はただいま手元に資料がございませんので、この程度でひとつ御了承願います。
#93
○佐竹(晴)委員 それではこの点についてはもう少し資料を得まして、後日適当な機会にもう一度お尋ねいたします。
#94
○小林委員長 それではこの程度にいたしまして、午後二時から再開することとして、それまで休憩いたします。
   午後一時四分休憩
     ――――◇―――――
  〔休憩後は開会に至らなかつた。〕
ソース: 国立国会図書館
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