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1953/05/14 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第55号
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1953/05/14 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 法務委員会 第55号

#1
第019回国会 法務委員会 第55号
昭和二十九年五月十四日(金曜日)
   午後二時二十七分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君
   理事 高橋 禎一君 理事 井伊 誠一君
      柳谷 富三君    花村 四郎君
      本多 市郎君    牧野 寛索君
      猪俣 浩三君    木下  郁君
 出席政府委員
        検     事
        (民事局長)  村上 朝一君
 委員外の出席者
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局民事局
        長)      関根 小郷君
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
五月十三日
 委員木原津與志君及び西尾末廣君辞任につき、
 その補欠として楯兼次郎君及び木下郁君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
五月十三日
 売春等処罰法案(堤ツルヨ君外十一名提出、衆
 法第三四号)
の審査を本委員会に付託された。
同日
 刑事訴訟法第二百六十一条の改正等に関する陳
 情書(東京都墨田区東両国三丁目四番地藤田栄
 一)(第三〇七四号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 七九号)
 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出第八〇号)
 民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律案(
 内閣提出第一一六号)
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 民業訴訟法等の一部を改正する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案、民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の通告がありますからこれを許します。鍛冶良作君。
#3
○鍛冶委員 三百九十八条について一、二お伺いしたいのですが、「最高裁判所規則ノ定ムル期間内ニ上告理由書ヲ原裁判所ニ提出スルコトヲ要ス」というのですが、この規則に定むる期間は大体幾らくらいの御予定でございましようか。
#4
○関根最高裁判所説明員 今鍛冶委員の御質問の点は、現在の法律では三百九十八条に、上告理由書を提出する期間は、上告裁判所が当該事件の訴訟記録を受取つたときには、その受取つたことを当事者に通知するわけでありますが、その通知を受けた日から三十日以内に上告理由書を提出することになつておりますが、それを今度の改正案では三百九十八条で「最高裁判所規則ノ定ムル期間」となつております。これは実は今度の案では上告状が原審の裁判所を通じて提出になりますので、記録を上の裁判所に送るという手続がなくなるわけでございますので、結局もしこの改正案が通過いたしますれば、最高裁判所の規則で予定されますものは、結局上告状が原審裁判所へ出されますと、それを受取つたということを当事者に通知いたしまして、その通知を受けた日から三十日以内ということになろうかと思うのです。でありますので、実質におきましては現在の法律の三百九十八条とまつたく同様の結果になろうかと思います。
#5
○鍛冶委員 そこで少し疑問が出て来るのですが、上告書を受取つた日から三十日ということになりますと、ちよつと今までと違つて来る。要するに相手方へ送達された日から三十日ではないかと思われるのであります。従つて上告が受理されてから、本状到着の日から三十日以内に上告理由書を提出せよ、こういうことがほんとうではないかと思うのですが、その点を明瞭にしていただきたい。
#6
○関根最高裁判所説明員 今私の申し上げようがあるいは悪かつたかと思います。それは、上告状が原審裁判所に提出されますと、その提出されましたときから三十日ということを申し上げたわけでなくて、提出があつたということを当事者に通知いたしまして、その通知を受取つた日から三十日ということで、今お話の通りでございます。
#7
○鍛冶委員 もう一つ疑問を解きたいのは、上告理由書をつけて上告した場合にはどういうことになりましよう。一度読んだだけでは、「上告ノ理由ヲ記載セザルトキハ」とあるのですから、記載してある場合は通知もいらぬし、期間も守らぬでもいいように読まれるのですが、それでは非常に困ると思います。というのは、上告を依頼した弁護人から上告理由書を添えて出されたら、その次に弁護人が出て来たとするならば、その弁護人からはまた上告書を出し得るものとわれわれは考える。そうしてみると、通知があつて、その通知のときから三十日以内にさらに別の弁護人から出せる、こういうことでなくては理論が通らぬように思いますが、その点はいかがでございましよう。
#8
○関根最高裁判所説明員 今の鍛冶委員のお問いは、結局上告状自体に上告の理由を書いてある場合はどうかというお話でありますが、そのときでも、上管状に上告理由が響いてございましても、そのあとにまた追加的に上告理由を出し得る場合がございますので、結局上告状に上告の理由が書いてあります場合でも、上告状を受取つたことを当事者に通知いたしまして、それから三十日以内に追加して上告理由書を出し得ることがあり得ることをはつきりしたいと思います。
#9
○鍛冶委員 そうだろうと思うのですが、これを読んでみますと、「上告状ニ上告ノ理由ヲ記載セザルトキハ最高裁判所規則ノ定ムル期間内二上告理由書ヲ原裁判所ニ提出スルコトヲ要ス」これはもつと考えないでもいいかどうか、できればもう少し明瞭にしていただきたいと思います。
 もう一つ追加して聞きたいのは、上告理由は、この期間内であるならばさらに別個の理由書を、これは今言つた上告状につけてある場合であろうが、なくて出した場合であろうが、期間内であれば理由書は追加してさしつかえないものではないかと思いますが、この点はいかがな御見解ですか。
#10
○関根最高裁判所説明員 ただいまのお問いの点でありますが、第一点の、上告状に上告の理由を書いてある場合に、やはりこういう通知をするということは条文の上でおかしいのじやないかという疑問、その点は確かにありますが、通知をいたしまして三十日の期間内に上告状に上告の理由が書いてございます場合は、まず上告理由書を原裁判所に提出することを要すということにはならないのであつて、出し得るということの違いがあると思います。
 それから今の第二点の、一旦上告理由書をお出しになりましても、この三十日の期間内に追加してさらに上告理由書が出せるかというお問いでありますが、これは御説の通りでございます。
#11
○鍛冶委員 次に同条第二項でありますが、「上告ノ理由ハ最高裁判所規則ノ定ムル方式ニ依リ之ヲ記載スルコトヲ要ス」とあるが、これは今まで上告理由書には法律で定めたる方式はなかつたと思います。しかし常識上事件の表示をやるとか、当事者の表示をやるということは当然であるから必ずやつておりますが、しかるに今日この改正にあたつて、どうしてもこの方式を法定しなければならないという理由はどこから出たのですか。
#12
○関根最高裁判所説明員 このたびの三百九十八条に関します改正は、いわゆるスクリーニングと申しますか、下級裁判所におきまして上告状の適否、上告理由書の適否ということにつきましての判断をする、それによつて上告裁判所たる最高裁判所の負担を調整するという目的から出ておると思われます。現在の最高裁判所の裁判官は、大審院のときの裁判官の四十五人の三分の一の十四人にすぎないわけで、すべてそこから出発いたしまして、最高裁判所の裁判官の負担の調整をせざるを得ない。これはひいては当事者のためになることでありますが、そういうことからいたしまして、でき得る限り原審裁判所でできるものは原審裁判所においてふるいにかけてほしいというところから、この規定が生れたのだと思います。でありますので、従来は確かにお話のように、上告理由書の方式をルールで定めるということはございませんでした。しかしこの方式の程度を定めることを最高裁判所に譲つていただきまして、その限度のふるいをかけて、そうして最高裁判所の裁判官の負担の調整をはかるというところに目途があろうと思います。
#13
○鍛冶委員 今までない方式をきめられまして、その方式にはまらないからといつて、三百九十八条の第二項の後段でスクリーニングする意味であるということになると、非常に上告の権限が狭められるように思いますが、この点は国民の側から見ますと、たいへんな権利の縮小になると思うのでありますが、その点はどういうお考えでありますか。
#14
○関根最高裁判所説明員 確かに鍛冶委員のおつしやいますように、現在までにこの上告の理由につきまして方式を定めるという規定はございません。それに方式をつくりましてわくを定めるということは、確かに上告をいたす側からいたしますと、それだけかた苦しくなるということは申すまでもないと思いますが、そのわくが一体どういうわくかということいかんによりまして、当然のわくなら、しいてそれによりまして上告への権限をしぼるということはないと思います。それでただいまの趣旨から、この二百九十八条第二項の規則で予定いたします方式の内容を簡単に御説明いたしまして御了承を得たいと思います。
 その第一は、簡単に申し上げますと、上告状を出す場合におきまして、上告の理由を書き、あるいは上告状提出後に上告理由書を出す場合におきまする上告理由の記載は、御承知のように法律審でありまする上告裁判所に出すのでございますので、法令違反ということを言わざるを得ない。現在のままでありますると、原判決は憲法違反なり、あるいは原裁判には法令違背ありということで、どこに憲法違反があるのか、どこに法令違反があるのかさつぱりわからないような上告理由書が出て参る。それではいかに裁判官の側といたしましても、どこに不服があるのかわからない。それをはつきりするというわくをつくつたらどうか。それを言葉をかえて申し上げますと、無法その他の法令の違背があることを理由といたしまして上告する場合におきましての上告理由の記載方法は、どういう法令に違背する事由があつたかということを示してもらいたいというわくが一つであります。それからもう一つは、上告の理由のうちの絶対的上告理由、これは民事訴訟法三百九十五条に書いてございますが、たとえば原裁判が公開の法廷でなされなかつた、あるいはほんとうの裁判官が裁判をしなかつたというような顕著な場合におきまする上告理由はございますが、その場合におきまする上告理由としては、どういう絶対的の上告理由に当るのかということ、それからその具体的の事由を示してもらいたい。これなどは当然のことだと思いますけれども、現在の上告状につけて参ります上告理由書を見ますると、ただ公開の規定に反するということだけで、どこの裁判、いつの裁判にそういうことがあつたかということを書かない、そこを具体的にしてくれということでございます。それからもう一つは、法令違背の主張をいたします中に、従前の判例と抵触している、従前最高裁判所でいたしました判例と違つた判断をしているということを指摘いたしまして上告理由に書く場合がある。そのときには従前のどういつた判例に抵触するかということを示してくれ。これは当然のことばかりと思いますが、それをはつきりしてくれということ。それから最後に、上告理由書を出される場合には、その事件が一体どういう事件なのか。これを具体的に申し上げれば、たとえば昭和二十八年の一月十日に出した事件、それにつきまして番号がつきますが、その番号を記載する。昭和何年(ワ)第何号といつたような表示を記載してもらう。それから同時に、この上告理由書は相手方がおりまする関係上、相手方の数に応ずるだけの謄本をつけてもらいたい。以上のような非常に当然のわくをきめるわけでございますので、むしろ上告人の権利の保護をむなしくするよりも、相手方の被上告人の側のことを考えますると、かえつて非常に保護を厚くするといつたようなことが結果において出て来る、こういつた考えでございます。
#15
○鍛冶委員 これは一応弁護士が代理人となつてする場合はこんなことを言われぬでも当然わかるのでございまするが、普通の人がみずから上告するということになると、相当これにはまらぬ場合がありはせぬかと思われます。そういう場合には十分保護するような考え方を持つてもらいたいと思うのであります。そのうちで特に私疑問になるのは、第三に言われた判決に法令違背があることを上告の理由とするこの法令の範囲ですが、これは実験則に反する場合とか慣習法に反する場合という主張もあると思うのでありますが、そういうものはここにいう法令違背に入るのか入らないのか、またそれが入るとすればその場合どのような表示の仕方をすればよろしいのか、承りたいと思う。
#16
○関根最高裁判所説明員 ただいまの鍛冶委員のお問いは、法令と書いてございますので、御疑問があるのはごもつともだと思いますが、この中には今おつしやいますように慣習法、経験法則が入ると思います。結局これを条文化いたしますときには、もう少し表現を考えなければならぬかと思いますが、具体的に申し上げれば、経験法則は、こういつた場合にはこういうのが普通の条理である、そういつた意味の表現をなされればいいのじやないかと思います。それから慣習法も具体的の慣習法をおあげになればいい。ただ慣習法といい、条理といい、経験法則といい、これには条文の数がございませんので、具体的に表現していただくほかないと思います。
#17
○鍛冶委員 さらにひつくるめて申し上げたいのは、かようなことは常識に近いようなことで、それほど意にとめることはないとは思いまするけれども、この第四の場合のごとき、よくわれわれでも昭和何年何月何日というのを忘れて、あとで入れようと思つて括弧だけつけて、それを入れるのを忘れて出すことがある。それから提出の月日も、前に書いてありまするから、同月まで書いて幾日というのを入れないで出すことがちよいちよいあります。それから被上告人の数においても、これだけだと思つたが調べて来なかつたということで間違うことも往々あり得ることだと思います。そのたびごとに三百九十八条第二項に違反するものだといつて押えつけられるのははなはだどうもいかぬと思いますが、さような非常識なこともなさるまいとは思いますけれども、これを見ただけではそういう懸念が起りますから、それに対してはどういう思いやりをしておいでになりまするか。またルールの上に何かそういうことで現わそうとするお考えがあるかどうかということを承りたいと思います。
#18
○関根最高裁判所説明員 ただいまの鍛冶委員のお問い、これもごもつともな点でございまして、実はこの差上げた要綱案には書いてございませんが、今おつしやいましたように、上告理由書を出したが、その中に必要なことをうつかり落してしまつたということは、私が例として申し上げましたいずれの点につきましてもあり得るわけでございまして、そのときには、黙つておりますれば民事訴訟法の二百二十八条で補正命令を出すという条文が準用されるかと思いますが、その準用ということの解釈だけでは、もし反対の意見をとる裁判官がおりますると困りますので、このルールをつくりますときにはその点を明確にいたしまして、先ほど申し上げましたようなわく通りの記載がない場合には必ず直せという補正命令を出す。そしてそれになおかつ応じなかつたときに初めてこの改正条文の三百九十九条でこれを却下するという段階に入る手続にしたいと思つております。これはそういたしませんと、今鍛冶委員のおつしやつたような非常に非常識な解決ということになりますが、そういうことはあり得ないわけでありますが、その点を明確にしたいと思います。
 なおつけ加えまして、思いやりというお言葉がございましたので申し上げますが、この上告理由書を出せという場合には、先ほど申し上げましたように、上告状が裁判所に届いたという通知をいたしまして、その通告が当事者に到達いたしましてから三十日ということになることは先ほど申し上げた通りでありますが、その通知書に、上告理由書にはこういうわくがあるぞ、そのわくに従つて出してもらいたいということを、念のために注意書にして必ず書く、そういつた方式をとりたいと思つております。
#19
○鍛冶委員 これはいつでも出る問題ですが、裁判所で定める規則の筋囲です。いろいろ手続上においてなくてならぬものを定められることはまことに当然のことと思いまするが、国民の権利に制肘を加えるようなことは、でき得る限りルールでやるべきことじやないのじやないか。これはたびたび議論をいたしますので、いまさら何ですが、さような点から考えましても、国民の権利を狭めるようなものはルールでやつてもらいたくない。従つて、ルールでやられる以上はそういうことのないように、どこまでも気を配つてやられたい。さらにルールを出されるについては最高裁判所の権限で出されるのであろうけれども、われわれはこれだけ気にしてやつておるのでありますから、少くとも、非公式にでも、法務委員会と了解の上で出されるような手続をとつてもらいたいと思うのでありますが、この点に対して最高裁判所としての御意見はいかがでしようか。
#20
○関根最高裁判所説明員 今鍛冶委員からおつしやいました点は、ルールと法律との関係に触れます点で、非常に重要な問題でございます。先般こちらの委員会の参考人に田中和夫教授が来られまして、英国とアメリカのルール・メーキング・パワーのことを述べられましたが、これは、裁判所なりあるいは委員会で規則を制定することはできることになつているが、その後国会の承認を受ける手続になつている、一旦公布されましたルールといえども、国会の承認を得なければ効力を失うようなことになつている、ところが日本の憲法七十七条は、最高裁判所におきましてルールをつくることができるというだけのことになつている、それであるから、最高裁判所がルールをつくります際には慎重に事を運ぶべきだと、こういう御意見がございました。それで実は、前例を申し上げますと何でございますが、鍛冶委員が御提案になつたかと思いますが、民事調停法のときにおきましても、相当最高裁判所のルールに委譲されました。法律に基きまして、委譲の分野が広がつたわけでございますが、このときも、今お話がございましたように、こちらに事前に内容を示して意見を聞くようにというお話がございました。私どもも、ルールにまかせられた範囲が相当数ございましたので、それを承知いたしまして、お見せいたしました。なおわれわれの方のルール委員会にかけまして無事に通過したのであります。私は、英国やアメリカのように、必ず法制的に、最高裁判所のルールにつきまして国会の方で承認決議を要するということは、これは憲法の問題に触れますのでいかがかと思いますけれども、実際問題としては、今申し上げたような方法をとれば、お互いに尊重する――お互いにという言葉はちよつと口はばつたいですが、私の方で国会を尊重するという言葉で申し上げればいいかと思いますが、そういう意味では、むしろ教えていただいて、変なところはどんどん直して行くとい三行き力にいたしたいと思つております。今お問いのこのたびの最高裁判所の規則も確かにいろいろ御疑問があるところでございますし、新しいわくをきめることでございますので、できる限りそういたしまして、お教えいただきたいと思います。
#21
○鍛冶委員 もう一つ、この三百九十九条の第一項第二号ですが、「前条第一項ノ規定ニ違背シ上告理由書ヲ提出セズ」、ちよつと読んでみると、前条第二項の規定に違背した場合、上告理由書を提出しなかつた場合、または上告の理由の記載が同条第二項に違背したとき、こういうふうに読めるのですが、そうではないようです。要するに、前条第二項の規定に違背して上告理由書を提出しなかつたということではないかと思いますが、この点明瞭にしておいていただきたいことと、前条第一項の規定に違背して上告理由書を提出しなかつたということは、このルールに定めた期間内にやらなかつたということだけではないかと思う。もしそうだとするならば、前条第一項に定むる期間内に上告理由書を提出せず、それでいいのじやないかと思うのですが、これはどういう意味か明瞭にしておいていただきたいと思います。
#22
○関根最高裁判所説明員 便宜私の方から御説明いたします。この三百九十八条の第一項の場合でございますが、これは上告状に上告の理由を記載しないときだけでありまして、上告状に上告理由を記載しているときには、必ず上告理由書を出すという義務がないわけでございます。でございますので、上告状に上告の理由をすでに書いてある場合には三百九十九条の第一項第二号の前段に当る場合がないわけでございます。もし、今お問いがございましたように、前条第一項の定むる期間を徒過した場合といつた趣旨に書きますると、上告状に上告の理由を書いた場合も入つてしまう。一旦上告状に上告理由を書きましても、その上告状が出たという通知が当事者に参りましてから三十日間内にさらに上告理由書を出さないと却下されてしまう疑いが出るといかぬという思いやりと申しますか、そういう心配から、むしろこういうふうに書いた方がいい、こういうことで、確かに御疑問はあろうかと思いますけれども、結論においては鍛冶委員のお気持と同じわけなんです。
#23
○鍛冶委員 どうも表示があまり上手ではなかつたということですが、明瞭になればよろしゆうございます。
 次に、裁判所法の一部改正について聞きたいのですが、これはこの前も一ぺん聞いたかと思いますが、附則の第三であります。「当分の問、最高裁判所の規則で指定する簡易裁判所の民事訴訟に関する事務は、その所在地を管轄する地方裁判所又はその支部の所在地に設立された簡易裁判所で最高裁判所の規則で指定するものが取扱う。」この附則を入れなければならなかつた理由をいま一度あらためて承りたいと思います。
#24
○村上政府委員 裁判所法の一部を改正する法律案におきましては、簡易裁判所の事物の管轄は現在三万円以下となつておりますのを、二十万円を越えない請求ということに改めようとしておるわけであります。ただいま簡易裁判所に配置されております裁判官の中には、改正案において認められますような種類の、簡易裁判所を第一審とする民事訴訟法を処理するに必ずしも適当でないと思われる裁判官もあるというような非難もございますので、事物管轄の大幅な引上げに伴いまして、簡易裁判所のうち、特に最高裁判所の指定する簡易裁判所のみが民事訴訟を処理する道を開きまして、訴訟事件の処理に適する裁判官をしてその裁判に当らしめることが適当であるということで、この附則の第三項を設けたわけであります。附則にこの規定を置きまして、しかも「当分の間」ということにいたしておりますが、簡易裁判所判事の任用資格あるいは簡易裁判所の分布の状況、簡易裁判所にふさわしい訴訟手続等をどうすればいいかということにつきましては、いろいろ問題があるので、今後十分検討いたしたいと考えておるのであります。そこでその趣旨において、これを附則におきまして「当分の間」ということを定めた次第でございます。
#25
○鍛冶委員 そこでいろいろ疑問が出て来るのですが、「当分の間」とありまするか、この「当分の間」とは、どの程度を予想しているものか。それからその予想期間が済んだらどのようにしようというお考えをもつて本法案を出されたか、この二点を伺いたいと思います。
#26
○村上政府委員 先ほど申し上げましたように、簡易裁判所につきましてはいろいろの問題がございまして、政府におきましても、また裁判所当局におきましても研究を進めておるわけでありますが、法制審議会司法制度部会におきましても、ただいままでのところ最高裁判所の機構の問題を中心として審議しておりますが、これに諮問されました事柄は、裁判所の機構を改める必要があるかどうか。あるとすればどういうふうに改めるべきかということが、すべての裁判所を通じての諮問になつておる。次の段階におきましては、この簡易裁判所の問題も当然取上げられることと思うのでありますが、これは裁判所制度の問題の一環といたしまして、この簡易裁判所の制度に関する結論が出ますまでという趣旨で「当分の間」という文字を入れたわけであります。いつまでかという点につきましては、さような意味でいつまでと時期を限つて申し上げるわけには参らないのでありますが、ただそういう気持を表わすために「当分の間」という字を入れただけであります。この文字があるとないとによつて、実質的な差異はないわけであります。
#27
○鍛冶委員 私はこれは重大な問題だと思う。いやしくも裁判官という崇高なる職務にある公務員で、この裁判所におる裁判官にはこの裁判をさせたらあぶない。だから特にここに持つて行かなければならぬということは非常な考えものだと思うのであります。従つてわれわれはあの特任の判事を認めることに対してたいへんな疑問を持つたのでありまするが、さような疑問が今日現われまして、法務当局自身においても区別しなければならぬと考えられるようになつたということは、私は重大な時期に直面しておると思うのであります。従いまして裁判官の威信を保つという上から、かような裁判官を裁判官としておくということが重大問題だと思いまするが、この点に関して法務当局並びに裁判所の御意見を別々に伺いたいと思います。
#28
○村上政府委員 裁判官の任用資格にいろいろな差別が設けられておりますことが好ましくないと考えておりますことは、鍛冶委員の御意見と同様であります。先ほど申し上げました通り、簡易裁判所の制度の問題の一つとして、簡易裁判所判事の任用資格についても今後検討を進めたい、かように考えておるわけであります。ただ今般簡易裁判所の事物管轄が大幅に引上げられるに伴いまして、この程度の差別を設けますことはやむを得ないのではないか、かように考えておる次第でございます。
#29
○関根最高裁判所説明員 今鍛冶委員からお話の、簡易裁判所の裁判官、これも崇高な裁判官である。この点はおつしやる通りでございます。ただ簡易裁判所の裁判官の中にも――全国の数を申し上げますと、今六百名余りおられますが、そのうちいわゆる特任の方が半分、資格者たる、昔の司法試験を通つておる裁判官が約半分おりますが、結局今は同じ仕事をやつておるわけであります。ところが今度のこの附則で行きますと、あるいはこの二十万円まで行くという考えをとりますれば、なるべくならば資格者たる簡易裁判官にやつてもらう。これは今鍛冶委員のお話のように、そういうことは簡易裁判所の判事の特任によります任用資格をなくす方がいいのじやないか。重大な危機に来ておるのじやないかというお話でありましたが、しかしこれはわれわれの方ではそうは考えていないのであります。この簡易裁判所の出発当時は、今のような刑事訴訟法なり民事訴訟法なり、あのむずかしいレールのもとにおいて裁判をするということを考えておらなかつた。各警察署単位に令状を発付する手続を簡易にするというために非常に簡単な手続で裁判ができる裁判所を設ける。それなればこそ簡易という言葉を使つておる。でありますので簡易裁判所が出発するときには、簡易裁判所がこんなむずかしい刑事訴訟法なり民事訴訟法なりによりまして裁判をするということは予想もしなかつた。ところが現実におきましては、この簡易裁判所に適当な手続を定めるということが延びてしまいまして、現在まで来てしまつた。今後、もし、ただいま村上政府委員から説明がありましたように、将来の改革として昔の区裁判所のような性格を持つた裁判所が復活いたしますとすると、そのほかに、このレールによらない裁判所、たとえて申し上げれば刑事の方では非常に簡易な公判をやる裁判所、それから民事におきましては調停を血にして、調停がととのわなかつたときに、いわゆる調停にかわる裁判ができるといつたような、さらに言葉をかえて申し上げれば、いわゆる代官裁判、大岡裁判を小さくしたような裁判で行きたい、そういつた意味で残るのじやないかと思うのです。今度はそのはしりと申しますか、現在は簡易裁判所という名前のもとに、実質的に申し上げると、二つの種類の簡易裁判所ができる。その一つは元の区裁判所に行く、もう一つは今申し上げた簡易のままの裁判所に行く、そういつた方向に行くのじやないかと思う。現存の状態ではそこまできまつておりませんので、先ほど村上政府委員から御説明申し上げました通り「当分の間」という言葉が出て来たわけでありますが、ただこの二十万円の線で参りますれば、できるだけこの資格者たる裁判官にしていただきたい。
 それからもう一つは、簡易裁判所の任用資格の問題と離れまして、たとえば東京地方裁判所管内の簡易裁判所を考えますと、非常に簡易裁判所が多過ぎる。それはたとえば新宿の簡易裁判所に事件をお持ちになつておる弁護士さんが、同時に東京の本庁にあります簡易裁判所の事件を同じ日にやることはできない、交通事情等から申して、それを一つにまとめてもらいたいという要望が弁護士会からありまして、それはもつともだというので、この附則の意味がまた生きて来るわけでございます。でありますので、両方の意味からこの附則が考えられるわけであります。
#30
○鍛冶委員 弁護士会からこれに対して意見が出ております。というのは、「当分の間」というのをとつてくれという意見なんです。それはどう言う意味かと言えば、特任判事にこういう裁判をしてもらつては困るが、「当分の間、」というのがあつては、いつかまた特任判事をもつてやれることになるから、特任判事はやれぬものだ、という意味でとつてくれという意見なんです。しかし特任であろうが、何であろうが、国民から言えば、やはり裁判官なんです。この裁判官というものに、裁判してもらつては困る裁判官がおるということはゆゆしき問題だと思うから、それに対してはわれわれは首肯しがたいと思つておる。しかしそうは言うものの、実際にどうもあれに裁判されちやあぶないぞというような裁判官かおつたのでは、これはかなわないわけです。そうすると、これはいつかは解決しなければならぬ問題だと思うのです。そこで、今あなた方が言われるようなこともありましようけれども、少くとも裁判官というものはほかの公務員と違うのだ、特に国民から信頼を得るものなんだ。その信頼を得るということは、学識においても、徳望においても特別上位だということでなかつたら――これは普通の者なんだけれども、裁判官になつたから特別偉いのだといつたつて、これは通用しないわけです。この意味から言いまして、私は、いやしくも裁判官という以上は、あんな人に裁判されちや困るというような者に裁判官という名前をつけておつてはいかぬと思う。これはいつかは解決しなければならぬ問題だと思つております。私はかようなことから考えまして、一日も早く特任裁判官というものをなくして、そうしてりつぱな裁判官を、簡易裁判所であろうがどこであろうが、そろえるという方向に向つてもらえぬものかどうか。この機会に私は強く私の意見を申し上げて、当局の御意見を承つておきたいと思います。
#31
○関根最高裁判所説明員 今鍛冶委員のお話になつた点は、簡易裁判の動向といたしまして非常に重大な問題だと思います。私ただいま簡易裁判所として残る余地があるのじやないかと申し上げたのでありますが、これは民刑事にわたりまして非常に事件が多い、その事件の多いうちで非常にささいなものもありますので、そういつたものについては、いわゆる地方裁判所級の判事とは違つた意味の任用資格を持つた裁判官でいいのじやないかということを申し上げたのであります。しかしそのかわりレールに従わない裁判をやつてもらつて、そしてもしその裁判に不服があれば、今度は第二審というものが覆審的に最初からやり直すという制度をとつたらどうか、そういう考えで申し上げたのであります。しかし何と申しましても、裁判官の任用資格に関する重大な問題でございますので、今後最高裁判所の機構の問題と同時に、簡易裁判所の問題もあわせて御研究いただいてまたわれわれも大いに研究を要する問題だと思います。その研究のあかつきにどちらか一番いいものができ上るのじやないか。ただいまのところは確定的の意見を持つておりませんが、私どもの意見ではやはり残る余地があるのじやないか。これは外国の例をとりましてはなはだ恐縮でありますが、いわゆる治安判事、ア・ジヤスティス・オブ・ザ・ピース、JPという裁判官、これは非常にたくさんの、何万人というJPがおりますが、これが非常に簡単な事件をやつておる、それに文句がある場合には、普通の裁判官による一審的な裁判をやるという手続制度、それが簡単な手続でやつた場合に、全部不服で上の方へ行くかと申しますと、百件のうち二、三十件しか行かないで、七、八十件というものは、その任用資格の軽い意味の、しろうと裁判官と申してもいいその裁判官による裁判によつて納得されて終つておる。そういう実情が日本でも受入れられるといたしますれば、そういつた余地があるのじやないか、これは将来重大な問題でございますので、鍛冶委員にも教えていただきたいと思います。
#32
○鍛冶委員 そうなると、その裁判官というものの根本的な考え方なんですが、いかに簡易なことであろうが、手続が軽かろうが、裁判官でこれは特別下の裁判官だ、これがほんとうの裁判官だということがいいか悪いかという問題です。これ以上は議論になりますから、ひとつとくと御研究を願つておきたいと思います。
#33
○小林委員長 林信雄君。
#34
○林(信)委員 ただいま鍛冶委員から質問が行われました最後の部分、すなわち裁判所法の一部を改正する法律案の附則の三項に関連することですが、簡易裁判所の訴訟物の管轄がかりに二十万円に引上げられるという場合に、三万円までは従前通り管轄権があるのですか。それ以上のものをまわすという趣旨だと思いますが、さようでありますか。
#35
○関根最高裁判所説明員 今林委員の御疑問は確かにあろうかと思いますが、この附則第三項の趣旨は、言葉をかえて申し上げますと、今まではどこの簡易裁判所でも三万円以下の民事訴訟に関する事務はやれたわけです。ところがこの事項によりまして、最高裁判所の規則で指定いたしまする簡易裁判所の民事訴訟に関する事件は、指定が二つございまして、一つは民事訴訟ができなくなる簡易裁判所の指定、それからできなくなつた簡易裁判所の民事訴訟事務をかわつてやつて行く裁判所の指定、この二つでございます。それでその指定に伴いまして、両方の指定があつて初めて民事訴訟法によりまする民事訴訟事件がある簡易裁判所からほかの簡易裁判所へ移ると申しますか、その事務が一方の簡易裁判所ではできなくなり、他の簡易裁判所でできるということになりますが、その範囲は、この条文自体をよくお読みいただけばおわかりかと思いますが、三万円以下でも片方に移つてしまう。この言葉をごらんいただきますと、「簡易裁判所の民事訴訟に関する事務」とございますので、民事訴訟に関する事務を全部一括してやるという考え方でございます。
#36
○林(信)委員 しかしながら最高裁判所の規則で指定するのですから、その規則で内容的に従前の訴訟物価額のものを取扱わしめる規則をつくれば、やはりこの文字でそういうものも残り得るのじやないかと見ておつたのでありますが、予定せられておりますものは、今お話のように、関係の他の簡易裁判所に事件を持つて行くということになれば、従前の裁判所は民事訴訟はやらないということになるのですか。――それではその点はわかりました。
 続いて裁判所法の三十一条一項第一号に関するもの、これはひいては民事訴訟法の二十二条二項にも関係を持つ次第であります。改正案は三万円を二十万円にということでありますが、かりに二十万円まで引上げるその限度を十万円というところに線を引きましたならば、簡易裁判所と地方裁判所の事務の分量は大体どのような結果になるのでありましようか。正確な数字は、ことに事件数等は、従来のものは大体承知いたしておりまするので、その数字を承ろうとは存じませんが、比率におきましてどの程度の相違を見るのでありましようか。もし二十万円をかりに十五万円とするならば、この二様の場合を想定いたしまして、大体の比率を伺えれば承りたいと思います。
#37
○関根最高裁判所説明員 今のお問いは、説明の便宜上戦前の区裁判所と比較いたしまして、簡単に御説明いたしたいと思います。戦前の昭和七年から昭和十六年までの十年間の平均を申し上げますと、これは百件を単位といたしまして、地方裁判所が十五件、区裁判所が八十五件、一五%と八五%という割合になつておりました。ところが戦後簡易裁判所ができ上りまして、それがその後どういう状態かということを申し上げますと、最近の昭和二十八年度をとりますと、地方裁判所が百件のうち七十件、簡易裁判所が百件のうち三十件、七〇%と三〇%というふうに逆転して参りました。そういう関係から、地方裁判所は非常に事務が渋滞するという結果を来しまして、先般も朝日新聞に載つておりましたが、東京地方裁判所あたりでは期日の指定が非常に先へ延びまして、期日と期日の間が数箇月にわたるというような事態が出て参りました。
 それから今のお問いのうち、改正案の二十万円で行くとどういう割合になるか。それは今申し上げました昭和二十八年度とちようど逆になるようなことになりまして、百件のうち地方裁判所事件が三十件、簡易裁判所の事件が七十件というふうに逆転して参るわけでございます。
 それからもし十万円という線をとるといたしますれば、百件のうち四十件が地方裁判所、簡易裁判所が六十件、四〇%と六〇%ということになるわけでございます。以上は数字に基きましたはつきりした割合でございますが、さらにもし十五万円という中の線をとるといたしますると、実は計算してございません。十五万円の線で全国の裁判所から統計を集めることは、ただいますぐには間に合いませんので、今申し上げました二十万円と十万円の数字を標準として中をとれるわけでございますので、それを基準として申し上げれば、結局地方裁判所が百件のうち三十五件、簡易裁判所の事件が百件のうち六十五件、これは数学的にまん中をとればそうなるということを推定的に申し上げたわけでございます。
#38
○林(信)委員 三万円を二十万円に改めました場合の大体の比率は、以前に承つておつたのでありますが、なお一括して御説明願つたので、たいへん参考になつてよくわかつたのであります。従いましてその点は了承いたします。
 次に改正案のいわゆる調書及び判決の方式等の合理化といつた問題については、私の疑問といたしまするところは以前にお尋ねしたのでありますが、なお一点この問題に関連いたしましてお伺いしておきたい。それは直接この改正の問題には関係がないようでありますが、関連してお聞きするわけであります。それは口頭弁論調書の整備の最終責任者は一体だれなのか、こういうことであります。といいましても、それは関係の判事であるのか、または書記官であるのかということであります。これは明確にする必要があるのではないかと思うのであります。私より申し上げるまでもなく、その点は現行民事訴訟法においては直接の規定を欠いておると存じます。関連いたしますものとしましては、百四十二条に、裁判所書記は期日ごとに調書をつくらなければならない旨、あるいは百四十三条において、裁判長及び裁判所書記はそれに署名捺印しなければならない、という趣旨等のものはあるのでありまするが、責任関係を明らかにした法文はないと存じます。ただいま申しまするがごとく、今後実際上の必要が起つて来るのであります。たとえば長日にわたりまして弁論調書の作成を怠り、訴訟進行に非常に支障を来しておるというような例もすでにあつたと思うのであります。その原因がどこにあつたかは明確でないのでありますが、いろいろな場合が考えられます。将来特別な労働関係の事件等、いろいろと思想にからんで来たような、あるいは訴訟の内容が単なる財産的利害のみに関係しない複雑性があるような問題について、かようなことが関連して考えられる場合があるかと思うのですが、この点は現行法上どういうふうにお考えになつておるのでありましようか。またそれらの関係よりいたしまして、所要の改正を必要と考えられるのでしようか、全然その必要はないとお考えなんでありましようか、この点をお伺いしておきます。
#39
○関根最高裁判所説明員 今、林委員のお話の点は、非常にごもつともな点でございますが、どこに現在この調書をつくる者の責任を明確にしておる規定があるか、これは非常に抽象的ではございますが、裁判所法の六十条をごらんいただきますると、裁判所書記官の仕事の内容が書いてございます。これを簡単に読み上げますと、「裁判所書記官は、裁判所の事件に関する記録その他の書類の作成及び保管その他他の法律において定める事務を掌る。」そう書いてございますので、調書をつくる等の責任者は裁判所書記官であることは当然のことでございます。これは先ほどお読みになりました民事訴訟法の規定からも出て来ると思いますが、なおその上に裁判所書記官が調書をつくらずに放擲しておく、そういつた場合にほかにまだ責任者がいるかどうかというお問いになるかと思いますが、そのときはやはりこの裁判所法の六十条のその次の項のところに、「裁判所書記官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に従う。」ということになつておりますので、この裁判官というのは当該調書をつくらなければならないその事件を担当しておる裁判官ということになろうかと思います。それで書記官が調書をつくらないで放擲しておくということになりますと、裁判官の命令が行き届いていないということになり、責任は結局当該部の裁判官ということになろうかと思います。
#40
○林(信)委員 そういたしますと、一応責任者は当該裁判官ということに考えられますが、その当該裁判官が適当な命令をいたしましても、これに従わなかつた場合があり得ると思います。深刻な訴訟事件関係は、当然のことが当然にあり得ない場合が想定せられるわけであります。それをしもなお適当な命令をした裁判官が責任を負わなければならないものなんでありましようか。その点はいかがでございましようか。
#41
○関根最高裁判所説明員 ただいまの林委員のお問いは、裁判官の方は適当な命令をしている、それにもかかわらず書記官が調書の作成を放擲している、その場合にはその書記官自体の責任問題が出て来る、あるいは懲戒の問題が出て来るかと思います。それから自分は命令を出しておいたが、書記官は何もその命令に従わないで放擲しておる、その事態を裁判官がそのまま黙認していいかという問題が出て来ると思います。そのときには、裁判官としては結局司法行政監督機関たる裁判官会議にその旨を報告して、あるいは書記官をかえるということの措置に出る余地があるかと思います。でありますので、裁判官の方といえども、一旦命令を出したからそのまま放擲していいとは言えないと思います。結局はまた司法行政監督権の発動を促し得る余地が出て来るのじやないかと思います。
#42
○林(信)委員 御説明はよくわかるのですが、さようにいたしまして、不適当な書記官をかりに行政的な措置をしてその職を去らしめた、少くともその職にあらしめないということになりますと、なおさら調書はでき上らなくなつてしまいますが、その場合はやむを得ないのでありましようか、調書はどうなるのでありましようか。
#43
○関根最高裁判所説明員 非常に稀有な場合のお問いで実は困るのですが、おそらくそのときは書記官が立ち会いまして、その後ただちに卒倒してしまつたと同じで、できないということにならざるを得ないと思います。またやり直しということが実際出て来るかと思います。
#44
○林(信)委員 その問題はその程度にいたします。
 次に民事訴訟法等の一部を改正する法律案のうち、上告制度の改正案に関してお伺いいたします。その上告理由の三百九十四条は改正案の最重要なものであることは申し上げるまでもありません。従つてあらためて読み上げる必要もないと思います。その改正案文のうち、「明ナル法令ノ違背」という文字があるのですが、その「明ナル」とはいかなる概念をいうのでありましようか。正確に申しますならば、「判決ニ影響ヲ及ボスコト明ナル法令ノ違背」という文字の概念でありますが、願わくは実例をあげて御説明願えますれば、たいへん仕合せだと思います。
#45
○関根最高裁判所説明員 今林委員のお問いの点は、これは実は非常に明らかであるようで明らかでない一つの例かと思いますが、この法令違背を主張されて上告をされる場合に、いろいろな場合があるかと思います。それを分類して申し上げますと、法令違背を主張されましても、絶対的に裁判にその法令違背は影響のないというようなもの、これは思いも寄らないようなもの、こういうものは先ほど申しました三百九十九条の関係で原審で却下されるということが出て来るかと思います。これは御承知のように、不適法で間違いが直すことができないというような――まず第一に絶対的に影響のないものが入ろうかと思います。その次はあるいはこの法令違背が裁判の主文に影響があつたかもしれぬ、これはむずかしい言葉で申し上げれば可能性という問題になろうかと思います。これはこの法令違背がほんとうにあつたとすれば、あるいはひよつとすると主文に影響があるかもしれないというものでありまして、やわらかい言葉で申し上げれば、あつたかもしれない、あるやも知れずといつたような問題でございます。それからさらに進みまして、この法令違背があつて判決に影響を及ぼすことが明らかなるというのは、むずかしい言葉で申し上げればいわゆる蓋然性、これは政府委員の方からの御説明にあつたかと思いますが、あるいはごの法令違背があると、さもあつたらしい、さもありなんといつたような感じのする蓋然性ということになろうかと思います。
 それを具体的の例をあげろというお話でありますので一つ申し上げますと、たとえて申し上げますと、原審の高等裁判所におきましてある事実を認定する、たとえば金を貸したという事実を認定する、そのときに金を貸したという事実を認定する材料といたしまして証拠を三つとつて、証人を三人調べた、その証人のうち一人について宣誓の手続を忘れてしまつたというようなことになりますと、その三人の証人のうち一人の証人が違法の手続によつてなされたものでありまして、その証言を採用することは違法になる。だからその証言が入つた、三人の証言から認定した金を貸したという事実の認定は間違いである、だから金を返せという裁判はいかぬのだといつた主張があつた場合に、そのときに宣誓を忘れてしまつた証人以外のあとの二人の証人調べは適法に宣誓手続もなされておる、適法の証人調べのもとになされた。あとの二人の証言を合せれば結局金を貸したという事実は十分に認められるというようなときは、結局蓋然性の問題に入つて来るわけであります。結局蓋然性がないということになろうかと思います。でありますので、蓋然性のあるという場合は、結局のところは大部分の法令違背は主文に影響があるということになる。今申し上げました例はむしろ明らかでない例を申し上げたわけです。そのほかの場合が主文に影響があるということになろうかと思います。それからもう一つ、どんな法令違背でも、その主張をいたしますと、必ず破らなくちやいかぬ絶対的な上告理由、これは御承知の三百九十五条、そういつたぐあいに四段階にわかれるかと思います。大体四分類いたしますと、明らかだという概念がはつきりして来るかと思うのであります。
#46
○林(信)委員 それもその程度にしておきます。
 次に上告理由のうち最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律、通称申します特例法には判例抵触を上告理由として二号、三号に明瞭に掲げてあるのでありますが、この場合この改正案には除外せられているのはどういう理由に基かれたのでありますか。それを伺いたい。
#47
○関根最高裁判所説明員 これは実は現在の民事特例法には判例の抵触という観念がございまして、憲法違反と判例抵触と、それから法令の解釈で重要なもの、この三分類にわかれておりまして、いわゆる制限列挙主義でございます。ところが今度の三百九十九条はそれを広げまして、やわらかい言葉で申し上げれば、門を全面的に広げてしまつた。制限列挙主義を廃止してしまつたわけでございますので、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令違背という観念の中には判例の抵触は当然入つてしまう。これは言うまでもないことであると思います。それで先ほど私三百九十八条の上告理由のわくをきめる規則のところで申しましたように、そのわくのきめ方のところにやはりそのことを前提といたしまして、法令違背の主張がある場合に、その中に判例の抵触の主張が含まれる場合には、従前の判例を具体的にあげてもらいたいというわくをつくる。そういつたルールができますれば、そこから当然今の解釈が出て来るかと思います。
#48
○林(信)委員 判例違反が常に法令違反である、こう解釈し得るという解釈、これもあり得ると思うのでありますけれども、先刻申しておりまする特例法におきましては、第一項と申しますか、前文におきまして、最高裁判所は法令の解釈に関する重要な主張を含むと認めるものに基いては調査をなさなければならない。いわゆる法令の解釈に関する裁判をいたすのであります。その前段を置きながら、なお列挙いたしておりますることは、やはり別にあげることが本質的には正しいという考え方が特例法であつたように思うのでありますが、特例法の解釈はそうではないのでありましようか。
#49
○村上政府委員 現行民事訴訟法の三百九十四条におきましては「上告ハ判決方法令ニ違背シタルコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得」こうありまして、特例法ができます以前におきましては、少くとも判例抵触ということは、前に判例に示された法令の解釈は正しいものだ、原判決に示された法令の解釈が間違つているということなんでありますから、原判決が判例に抵触するということは、原判決に法令の違反があるということにほかならぬのであります。この三百九十四条に言つております判決が法令に違背したという中には、いわゆる判例抵触の場合を含むことには何ら疑いがなかつたわけであります。民事訴訟法の四百二条「上告裁判所ハ上告理由ニ基キ不服ノ申立アリタル限度ニ於テノミ調査ヲ為ス」という規定を置いております。上告の申立てのある限度におきましては上告のすべてにわたつて調査をするのが原則なのであります。ところが民事上告の特例法におきましては、民事訴訟法において上告理由とされております法令違反の中で憲法の解釈を誤つたもの、その他憲法に違背したもの及び判例抵触の場合、この場合には民事訴訟法の原則の通り必ず取上げて調査しなければならない、しかしその他のものにつきましては法令の解釈にかかわる重要な主張を含むものと認めるものだけについて調査をすれば十分である、その他の法令違反については必ずしも調査しないでもよろしいというのがこの特例法の規定なんであります。従いまして特例法ができたことによりまして、法令違反という言葉と判例抵触という言葉が別の意義を持つに至つたとは考えられないのであります。ことに特例法は今月一ぱいで失効いたしまして、本来の民事訴訟法の姿にもどるわけであります。改正案の三百九十四条に現行法の三百九十四条に幾らかしぼりをかけたということでありまして、法令の違背という言葉自体につきましては特例法ができます以前と少しもかわらないものであるわけであります。
#50
○林(信)委員 民事特例法の関係はしばらくおきましても、刑事訴訟法関係におきまして、これは民事特例と同様な見地に立つているとはいいながら、すなわち刑事訴訟法四百五条二号、三号はひとしく同様の趣旨の判例違反を掲げているのでありまして、これはなお厳乎として存在するわけなんです。かような関係もありますし、すでに申し上げますように判例違背はその内容においておそらく法令違背のものであると解釈もとり得ると思うのでありますが、間々法律はその解釈を明瞭にするために、あるいは経過的な関係よりいたしまして、なお論理のみにとらわれない規定の設けられることもしばしばであると存じます。従いましてこの改正案はさらに判例違反を適当なる文字をもつて別に加えるという御意思はないのでありますか。この際承りたいと思います。
#51
○村上政府委員 先ほど関根局長から御説明のありました改正案の三百九十八条の第二項において、上告理由書の方式を最高裁判所規則で定めることになつておりますが、この規則の内容といたしまして判例抵触の場合があげられるといたしますならば、この改正案三百九十四条にいう法令の違背という中には、いわゆる判例抵触を含むということが明らかになると考えるわけであります。この訴訟法の中にそのことを特に明らかにするまでもなく、疑いの余地を生じないで実施される、かように考えております。
#52
○林(信)委員 なお続いて同三百九十四条の関係についてお尋ねいたします。読み上げることを省略いたしますが、その前段であるいわゆる憲法違反の事柄は、後段である判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背に含まれるのではないかと思われるのであります。しかしながら他の意味においてただいま申し上げましたような、特に最高裁判所の性格等に関連いたしましてあげる必要ありといつたようなことでありますれば別でありますが、その他どういう理由がありましても、憲法違背のこの字句は必ずあらねばならないのであります。こういうふうに二つの範疇に分類せられておりますが、その理由を伺いたい。
#53
○村上政府委員 憲法の違背ももとより法令違背の一つの場合であろうと存じます。憲法の違背と法令の違背とを区別して掲げる趣旨ではないのであります。ただ憲法以外の法令の違背につきましては、逐条説明の際にも申し上げましたように、現行法におきましては原判決における法令の違背と原判決の結果との間に因果関係の可能性のある場合、つまりこの法令違背がなかつたならば原判決の結果は違つて来たかもしれないという場合に原判決を破棄するというのが現行法の三百九十四条の規定であります。それを「判決ニ影響ヲ及ボスコト明ナル法令ノ違背アルコトヲ理由トスルトキニ限リ」ということに改正案が改めました趣旨は、原判決の法令違背と原判決の結果との間の因果関係の蓋然性がある場合、言いかえますと、この法令違背がなかつたならばおそらく判決の結果が違つたものになつたであろうと考えられる場合だけ原判決を破棄する、この法令違背がなければ違つた結果になるであろうという因果関係の可能性があるけれども、そういうことになつたかもしれないけれども、おそらくそういうことはない、つまり可能性はあるが、因果関係はないという場合がこの明らかならざる場合として破棄の理由から除かれるわけであります。ところが法令違背のうち憲法の違背につきましては、なるべく最高裁判所の判断の機会を多くするために、因果関係の可能性のある場合でも、可能性にとどまる場合でも処分を留保することがよいのではないか、つまり現行法のままにしておくのがいいのではないかということから、憲法の違背だけにつきましては現行法の規定を維持しまして、憲法の違背以外の法令違背につきましていくらかしぼりをかけるという趣旨で二段にわけて書いたわけであります。
#54
○林(信)委員 そうしますと、判決に影響を及ぼさないけれども憲法違背ではある、そういうものは独立して上告理由にするのだ、そういう建前もいいかもしれませんが、実際におきましてはほとんど大部分のものが判決の結果には影響があると思うのですが、影響のないというものは具体的に言いますと判決の理由か何かに説明的にでも出ているものだということになるのでございますか。やはり憲法それ自体の規定が、権利義務に関係のある規定に関することだろうと思うのです。そうしますと、やはり判決に影響がないとは考えられないと思うのですが、どういう場合にあるのでございましようか、単なる説明というものだけでもないようでありますが、重ねてお伺いします。
#55
○村上政府委員 現行法の三百九十四条におきましては「判決方法令ニ違背シタルコトヲ理由トスルトキ」とありまして、影響の有無ということは言葉の表面には現われておらないのであります。しかしながらたとい法令違背がありましても、それが原判決に影響がまつたくないという場合、例をあげて申しますと、単なる訓示規定違背、たとえば判決の言い渡しが口頭弁論の終結の日から二週間以上たつているというような場合、あるいは数個の主張が予備的に主張されておりまして、そのいずれについても判断がしてある、いずれによつても原判決の結果が正当であるという場合に、その一つだけについて法令の違背があるというような、かような場合は判決の結果に影響がないわけであります。たといその法令違背をつかまえて原判決を破棄いたしましても再び同じ判決が下されるだけでありまして、判決に影響がないのでありますから、さようなものは三百九十四条の現行法の規定の解釈といたしましてこの上告の理由の中に含まれない、かように解釈されておるわけであります。従いまして改正案の三百九十四条の前段にありまする「憲法ノ違背アルコト」これも判決が憲法に違背した場合、すなわち影響を生ずべき場合、影響を及ぼす可能性がある場合という意味におきましては現行法とまつたく同じ意味であります。影響が全然ないという場合には原判決の破棄の理由とならない、かように考えております。
#56
○林(信)委員 どうもこの表示は、前段は前段だけにとどまりまして、後段は「又ハ」で連続されておりますので、判決に影響を及ぼす憲法違背の点とは受取れないのであります。やはり前段は、判決に影響はなくても憲法違背があればそれが上告理由になるのだ、こう受取れるのです。判決に影響のないそういうものがあり得るということは前提になくてはならぬと思う。そういうものはどういうものでありますかという意味です。もし今の御説のように、判決に全部影響がある、憲法違反は全部影響がある、あることの明らかないわゆる憲法違反だ、こう解釈しまするならば、法令の違背という字句の中に憲法も入れて、わざわざ前段を設ける必要はないのではないか。だから判決に影響のない憲法違反というものはどんなものですかと、こういうふうに私はお尋ねしたくなるのであります。どんなものでありましようか。
#57
○村上政府委員 この改正案の三百九十四条の前段は、憲法の違背、つまり判決に憲法の解釈に関する誤りあることその他憲法の違背があることでございますけれども、憲法の違背はすべて上告理由となる、破棄の理由となるという趣旨ではないのであります。現行法に判決が法令に違背したどきとございますけれども、これは先ほどあげましたような判決に影響のない法令違背は含まない、かように解釈されておるのでございまして、それと同じ趣旨におきまして、憲法の違背といえども、判決に影響を及ぼす可能性のあるものだけ破棄の理由とする、影響を及ぼす可能性のない場合はこれは破棄の理由としない、こういうことになるわけであります。
#58
○林(信)委員 現行法はすべての場合の法令違背を上告の理由としておつたのであります。改正案は、「判決ニ影響ヲ及ボスコト明ナル法令ノ違背」にとどめるのであります。しかるに、憲法の解釈を誤り、その他無法の違背あるものも判決に影響を及ぼす場合において上告理由として取上げられるというならば、後段において判決に影響を云々の言葉をあげられまするよりも、やはりその字句を前段においてあげるべきではないか。あるいは後段と兼ね合せまして、一連の言葉といたしまして、やはり判決に影響を及ぼす憲法関係の云々とこうしなければ、御説明のようなことが明瞭ではないのではないか。現行法のように何らの制限がなければ別ですけれども、特にこの後段においてこういう字句が加えられておりますから、前段も同様な趣旨だということになりますと、このままではどうかと思います。いかがでございますか。
#59
○村上政府委員 前段が後段と同様の趣旨という意味で申し上げたのではないのであります。前段につきましては現行法と同じ解釈になる、後段につきましては現行法よりもある程度しぼりがかけられる、つまり憲法の違背につきましては現行法と同じ、その他の法令違背については現行法よりもしぼりがかけられる、そういう趣旨で書きわけたわけであります。憲法違背の問題に関する具体的な例につきましては、関根局長からなお御説明申し上げたいと思います。
#60
○関根最高裁判所説明員 この民事事件におきまして、憲法の問題に触れる場合ということは非常にまれでございますが、想定いたしまするとたとえばこんな場合が考えられるのではないかと思います。現在御承知のように憲法上夫婦は同等であるという趣旨のことになつておりますが、夫婦の間のどつちに属するかわからないような財産、それを男性を尊重する趣旨から夫の所有に属するものと推定するといつたような規定がもしあつたといたしますと、その規定が憲法違反になるおそれがある。その規定を利用する――利用というと語弊がありますが、その規定を適用いたしまして、どつちの財産かわからないものを、夫と推定するという規定を適用して夫のものとして裁判をしたというときに、その法律が憲法違反だといつて上告されて来たときには、それがやはり主文に影響のある憲法違背ではないか、そういう場合にはやはり破棄せざるを得ないことになるのではないか、これは予想でございますが、そういつた場合が考えられる。今村上政府委員からお話がありましたが、確かに林委員がおつしやるように疑問はあります。なぜ前段の方には「判決ニ影響ヲ及ボスコト」という言葉を抜いてしまつたのか、確かにおつしやる通りだと思いますが、それを書きますと、あまりに煩雑的な条文になつてしまう。法令違背が主文に影響のあるということが必要であるということにつきましては、これはもう当然のことでございまして、単に法令違背をやつたからというだけで、主文に影響があるかないかということを調べないで破棄の理由とするということはあり得ないわけであります。でありますので、林委員の御心配はごもつともでありますけれども、それをあまりはつきり書きますことは、かえつて条文を煩雑化するというだけに帰着するのではないかということになろうかと思うのです。
#61
○林(信)委員 そこまでお考えになつておりまするならば、その必要なしとせられる理由に焦点は移るのでありますが、たいへん煩雑だと言われるのでありますけれども、ただ字句を置きかえれば済むようなぐあいにしか私は考えないのであります。たとえば上告は判決に影響を及ぼす憲法の解釈の誤りあること、その他憲法の違背あることまたは明らかなる法令の違背あることと字句を置きかえるだけで言葉もふやさないでいいのではないか、こう思うのであります。むしろそれの方が前段にあります「判決ニ」というその判決がどういう関係にあるかということが明瞭になりますし、その「判決ニ」という言葉が省略されるくらいで法文ができ上ると思うのでありますが、そういうことでは、政府のお考えになつておる解釈では、適当なる法文とはお考えにならないのでありましようか。むしろ簡単になるくらいで、煩雑に書かないでもわかると思うのですが……。
#62
○関根最高裁判所説明員 私から申し上げますが、確かに林委員のおつしやいますことは、判決に影響を及ぼす憲法の解釈の誤りあることその他憲法の違背あることというように書けばいいじやないかというお話かと思いますが、しかしこの判決自体が憲法に違反する場合もある。これは概念的に申し上げますと、判決の言い渡し自体に憲法違反がある。たとえばこれは三百九十五条の絶対的上告理由にも触れますが、公開をしないで判決を言い渡すということになりますと、判決自体に憲法の違反があるということになろうかと思います。
 それから先ほど私は非常に煩雑になるということを申し上げたのですが、それはもし後段の「判決ニ影響ヲ及ボスコト明ナル」という言葉がなければ、いずれも判決に影響を及ぼすということは書かなくてもわかることなのであります。でありますので、当然のことで、明らかにするまでもないのではないかということが根本的な考え方になるかと思うのです。大体当然なことかと思つております。
#63
○林(信)委員 どうもすつきりいたしません。ことに今お言葉のように判決自体というのですが、判決自体に憲法違背があるというと、やはり判決に影響があるという意味にとれると思うのであります。納得いたしかねますが、お述べにたりましたような趣旨から検討することにしまして、この程度にとどめておきます。
 次にこの改正点は現行法の三百九十四条そのままと対比するまでもなく、上告理由をこの範囲において制限せられる趣旨であるのでありますが、そうしますと高等裁判所に対する上告を制限する手段方法として、憲法違背の基準を掲げる根拠というものは、どういうふうにお考えになつておるのでありましようか。それから経過的にこれを見ましても、特例法に憲法違背を上告理由として取上げております明確な規定を置いておりますけれども、これは最高裁判所の上告理由である場合に限つておりますことは申し上げるまでもないのであります。しかるに今度の改正案は最高裁判所に限るのではなくて、高等裁判所たると最高裁判所たるとを問わないのであります。高等裁判所の上告理由にも適用があるのですから、これは自然事実上四百九条ノ二のいわゆる特別上告の規定にも関係を持つて来ると考えられるのであります。そういたしますと引続いてお伺いしますが、四百九条ノ二の規定はそのままの字句でよろしいのでありましようか。このままだといたしますと憲法違背関係におきましては、いわゆる形の上において四番的なものになつて来るのでありますが、その通りに解釈してよろしいのでありましようか。これらに関連します点をお伺いします。
#64
○村上政府委員 改正案の三百九十四条が、高等裁判所を上告裁判所とする場合にも適用がありますことは御指摘の通りであります。憲法違背を理由とする場合以外の法令違背に基く上告にある程度の制限をいたしますことも、最高裁判所を上告裁判所とする場合と全然同じであります。ただ四百九条ノ二との関係でございますが、これは高等裁判所を上告裁判所とする場合の上告審の判決につきましても、憲法の違背を理由とするときに限り、特別上告が従来も認められておるわけであります。その関係もまつたく従来と同様であります。ただ四百九条ノ二におきまして、現行法の字句をいくらか改めておりますのは、「判決ニ於テ法律、命令、規則又ハ処分が憲法ニ適合スルや否ニ付為シタル判断ノ不当ナルコトヲ理由トスルトキ」とあります表現は、特例法におきましてはかかる表現を用いず、判決に憲法の解釈の誤りあること、その他憲法の違背あることを理由とするときという表現になつてあります。三百九十四条におきましては、この特例法における表現を利用いたしました関係上、四百九条ノ二のいわゆる憲法違背ということを表わすための表現にも改正を加えまして、三百九十四条の規定との調和をはかつただけであります。
#65
○林(信)委員 そうなりますとむし返すようでありますが、最高裁判所が憲法違反の最終裁判所である関係において、上告審として高等裁判所が、先刻来お話のように判決に影響のある事柄ではありますが、憲法違反の関係について、とにもかくにも判断いたしましたものに、さらに最高裁判所に特別上告し得る、こう了解してよろしゆうございますか。
#66
○村上政府委員 御意見の通りであります。
#67
○林(信)委員 この上告のしぼり方の方法として、改正条文とは直接関係がないのでありますが、関連して伺つておきたいと思います。それは上告制限の方法の一策といたしまして、訴訟の金額によつて何らかの措置を考えてみる、これはどんなものかと思うのであります。お尋ねしながらすぐ思いつきますことは、反討論としまして民事訴訟のことは訴訟当覇者の訴訟によつて受ける利益は、さような金額の多寡によるべきではない、それは訴訟当事者以外の者の考えるいわゆる客観的な見解をもつてすることは適当でない、どうしても訴訟当事者それ自体、いわば主観的な相対的なものである、こういう意見があるということは、これは当然うなずけるのであります。しかし元来が上告制限をしようということは、数を離れまして、事柄で制限いたしますについても、その制限される事柄の限度におきましては、やはり訴訟関係者の意欲を少くとも抑圧しておるわけであります。せんじつめて参りますと、数でいたしましても、事柄でいたしましても、しぼりはしぼりなのです。いわゆる方法論にすぎないのであります。そうなつて参りますとやはり高いところからといいますか結局は客観論ですが、金額による制限、極端な立場からいいますと、非常に少額のものにつきましては上告を許さずという、ような、限度だけでも考えられると思う。これは私だけの、ほんとうに一顧だに値しないものなのでしようか。あるいは外国の立法例等においても、非常に少額のものについてはかような制度があるのでありましようか、等々の関係をもつて、政府がこの点に対してどういうお考えを持つておるか、あるいは現在お持ちになつておりますかを伺いたいと思います。
#68
○村上政府委員 日本の民事訴訟におきましては、従来金額によつて上告を制限するという方法をとつたことはないのであります。ただ金額によつて制限するということは、最も簡明な制限の仕方であるということは間違いないところでありまして、外国の立法例等におきましてさような方法をとつておるところもあるのであります。なるほど当事者にとりましては訴訟の勝敗は金銭にかえられないものがあるという場合もございますけれども、わずかな金額を争うためにそれに数倍する費用をかけて上告することが合理的であるかどうかという問題もあるわけであります。将来外国の制度等を参酌いたしまして研究いたしたい、かように考えております。
#69
○林(信)委員 次に三百九十九条に移りますが、いろいろな説明的なことを申し上げずに端的に伺います。問いが不明でありますればさらに反問を願いたい。一号、二号、三号と区別いたしまして、その具体的事件数は比率的におおよそどんなものでありましようか、数字自体でなくても、パーセントでおわかりでしたらお知らせ願います。
#70
○関根最高裁判所説明員 パーセンテージできわめて大略的なことを申し上げることになりますが、現在上告においての最高裁判所におきます事件の振り割りから推定せざるを得ないのでありますが、たとえて申し上げると、現在最高裁判所で百件判決をいたしますると、そのうち二十件、二〇%はいわゆる門前払いの事件、この三百九十九条の例で申し上げると、おおむね一号、二号に当るかと思います。一号、二号のうち先ほど鍛冶委員のお問いになりました上告理由のわくの問題は別でありますが、それを除きまして大体百件のうち二十件が一、二の前段に当るかと思います。それからなお現在の民事特例法の関係で行きますると、二十件の門前払いのあと中へ入つて参ります八十件のうち六十件というものは民事特例法で重要でないとして簡単に審理できる事件があるわけであります。最後に残りますのが二十件、これが重要なものとして十分な審理をして判決をするということになろうかと思います。それでありますので、結局三号の分が今申し上げました六十件のうちのあるパーセンテージのもの、これは数字が出ませんのではなはだ恐縮でありますが、六〇%のうちの何パーセントかがここへ入つて来るということになろうかと思います。
#71
○林(信)委員 その三号が何パーセントという言葉で表現されましたが、何パーセントといいますと、いわゆる一〇%に足らない何パーセントのように受取れるのでありますが、そうではなくて、やはり何十パーセントを含んだ何パーセントという表現なんでありましようか。その点を明確に願います。
#72
○関根最高裁判所説明員 一番広げれば六〇%になりますので、何パーセントと申し上げたのは十も含む意味で申し上げたのでございます。
#73
○林(信)委員 そう受取りまして、これはこれからの問題でありますから、具体的な数字あるいはパーセンテージはほんとうに予想的なものになろうかと思いますが、お見通しでどのくらいということがわかりましたらお知らせ願います。
#74
○関根最高裁判所説明員 非常にむずかしい見通しでございまして、際限は五〇%ぐらい行くかもしれませんが、大体半分程度かと思います。しかし半分と申しますと三〇%ぐらいで、これもほんとうの意味の見通しでございますが、法令違背を理由としないもの、それと判決に影響を及ぼさないということが明らかな法令違背、簡単に例を申し上げますと、いわゆる訓示規定の違背、判決の言い渡しが延びてしまつて、これは訴訟法規の違背だというような理由など、それからあるいは判決の写しの判決謄本に誤記があつた場合に、それが法令違背だといつて持つて来る、こういういろいろの例を申し上げると実に多い。でありますので今重要な法令の解釈以外のものとして、百件のうち六十件まで簡単に処理いたしております。その大部分のものは一々ごらんになればおわかりかと思いますが、非常に問題にならないような上告理由が多いわけなんです。でありますので、結局見通しといたしますれば、ある程度はスクリーニングと認められれば、今ございます上告特例法にかわつて作用をするのではないか、こういう考えでございます。
#75
○小林委員長 際限は六〇%ですか。
#76
○関根最高裁判所説明員 六〇%までには参らぬと思います。今の上告特例法と同じような線ではございませんで、この場合は非常にしぼつております関係から、六〇%までは行きませんけれども、それに非常に近い数字になるのではないかということが申し上げられると思います。
#77
○林(信)委員 御意見のように非常に困難な見通しの問題であろうと考えますので、承りました内容についても、その心持で私どもも受取つておきたいと思います。
 次いで同様この三百九十九条一号、二号、三号について別の観点より伺いますが、申すまでもなく一号、二号は適法要件と思われます。第三号は必ずしもそうではないと見ておるのでありますが、これはその通りに受取つてよろしいでございましようか。かりにそうといたしまして、なおあわせて伺いますが、できますればこの際にその差異といつたものについていま少しく例をあげて御説明願つておきますれば、さらに仕合せだと考えます。次いでと申しますのは、あらためて申し上げるまでもなく刑事訴訟法の三百七十五条、控訴権の消滅後の控訴申立て、これは上告に準用されていると思いますが、これに対比いたしましても、この五号の実質要件に関しまするもの、これをスクリーニングする内容にきめますことは、刑事訴訟と民事訴訟とは性格の異なるところもあるのでありますけれども、まずやはり一つの参考としても考えられます。これらに対比いたしまして、また訴訟手続の実際といたしまして、自己のなしたる判決に対しまして、その実質に触れるような事柄を、またみずからその是非を明らかにする、こういうことは何といいますか、言葉は適当ではないかもしれませんが、少くともこれは行き過ぎではないか、こういう感がするのであります。そのような点のお考えはどういうものでございましようか。
#78
○村上政府委員 三百九十九条の一号及び二号は、御指摘のように刑事訴訟法にも例のございますように、まつたくの形式的な要件の審査でございます。第三号はややこれと趣を異にしておるのでございまして、結局上告の理由がないということの判断をするわけでありますが、その意味におきましては実質的な審査ということになろうかとも存ずるのであります。ただこの三百九十九条の規定をごらんになりますとおわかりになりますように、これは上告が法令の違背を理由としていないという、つまりいわゆる上告の適法な理由を備えていないということが明白な場合、及びかりに法令違背の主張がありましても、またそういう法令違背がありましても判決に影響を及ぼさないことが明白な場合、つまりだれが見ても疑いを入れる余地がないほど明白な場合だけを原裁判所において審査の上却下するというのがこの原案の趣旨なのでございます。自分のやつた判決をまた同じ人が審査するということは行き過ぎではないかというお話でございましたが、これは原判決をやりました裁判官がその判決の当否自体を審査するわけではないのであります。もし自分のやつた判決の当否を同じ判事が重ねて審査するということでありますと、あたかも下級審の裁判官として判決に関与した裁判官が、その後上級裁判所に転じまして、同じ事件の上訴事件に関与するものと同じように、いわゆる予断の弊を伴うおそれがある。原審関与の場合でして、そのような場合は事件から除斥されることになつておるのであります。この場合におきましては自分のやつた判決の当否を審査するのではなくて、上告が法令違背を理由としているかどうかということの判断だけなのであります。また後段はかりに上告人の言うような法令違背があつたとすれば、判決の結果が違つて来ることが明瞭であるかどうかということだけの審査であります。さきに原判決においてその裁判官の示しました法令の解釈の当否を重ねて審査するわけではないのでありまして、その意味におきまして先ほど申し上げましたような予断の弊というようなことを心配する必要はない、かように考える次第でございます。
#79
○林(信)委員 三号がこの際重要である必要性ということについては、提案理由その他によつて御説明になつたところでありますから、そのことはわかるのでありますが、今御説明のように、これがだれが見ても前段及び後段のことが明らかな場合、それがだれが見ても、いわゆるだれかであればよろしいのですけれども、これはやはりおのれがやるのですから、どうもだれが見てもという通りにはなかなかならないと思うのです。及び訴訟手続の本質から参りまして、判決の内容に触れなければ、一号、二号のこの形式的な規定違反、期間の関係であるとか、あるいは上告理由書の形式とかいうものは、何といつてもお認めの通りに違うから、これは非常に重要な事柄であると思いますが、まずまずこれは意見の違いになろうかと思いますから、この程度にいたします。
 次に三百九十九条第二項は一項を受けまして、原裁判所のなした却下の決定に即時抗告をなすことができることになつておるのでありますが、この控訴審が地方裁判所である場合と、それが高等裁判所である場合とによつて違つて来る面があると思います。申すまでもなく抗告裁判所が違つて来るのであります。控訴審が地裁である場合は、これは問題ないと思いますけれども、高裁の場合は問題があると思うのです。第一これはその高裁の上告却下の即時抗告はできるのかどうか、こういう疑問があるのでありまして、この審級を異にしました場合の即時抗告についてこの改正案に関係のある事項をお示しを願いたい。
#80
○村上政府委員 第二項の即時抗告でありますが、控訴審が地方裁判所であり、上告審が高等裁判所であります場合には、文字通りに即時抗告ができることになるのであります。ところが高等裁判所が控訴審であり、最高裁判所が上告審である場合には、裁判所法第七条に最高裁判所の権限といたしまして「訴訟法において特に定める抗告」という規定がございます。この規定の解釈上、ただ抗告ができる、あるいは即時抗告ができるという言葉が法律に規定してあるだけでは、最高裁判所の裁判権の範囲には属しない。従つて最高裁判所に抗告の申立てをすることができないというのが最高裁判所の判例になつているわけであります。たとえば民事訴訟法の四百十九条ノ二には、いわゆる特別抗告の規定でありますが、「最高裁判所ニ特ニ抗告ヲ為スコトヲ得」というふうに書いてございます。こういうふうに書いてあるものは最高裁判所まで行ける。しかし「特ニ」と書いていないものは最高裁判所の裁判権がない、こういう解釈になつておりますので、高等裁判所が控訴審の場合におきまして、たとえば第一項の三号を適用いたしまして、上告却下の決定をいたしました場合、一般の即時抗告は許されない。ただ四百十九条ノ二の規定によつて特別抗告は許されるということになるわけであります。
#81
○林(信)委員 お話のようであることも、最高裁判所の性格等から行きまして、最高裁判所の方はそれでもいいかと思われますけれども、高等裁判所を中心に考えます場合は、何となく観念的な矛盾を感ずるような気がいたすのでありますが、どんなものでありましようか、と申しますのは、地方から同種の抗告が高等裁判所にやつて来れば、高等裁判所はその判断に当る、ところが自分が同趣旨の抗告をしようと思いますと、それは阻止せられる、できない、何だか方向が違つておる、受身に化しますような――違うのでありますけれども、同種のものが自分は取扱いあるいは取扱われない、高等裁判所の制度運用の不統一とでも申しますか、何かそういう感じがするのでありますが、これはそのままよりほかには構成上いかんともしがたいものなのでしようか、その点をお伺いしたい。
#82
○村上政府委員 御指摘のように同じ種類の裁判でありまして、地方裁判所でやつた決定に対しては高等裁判所に抗告の申立てができるが、高等裁判所でやつた結果に対しては、憲法違反を理由とする特別抗告以外に抗告中立ての方法がないという場合がほかにもたくさんあるわけであります。ただ多くはその解釈運用について、法令解釈上ほとんど疑義のない問題が多いために、最高裁判所まで持つて行つて法令解釈の統一をしなければならぬ、法令の解釈運用の不統一を来すということはあまり聞いておらぬのであります。この点の実情につきまして、関根局長からお答えいたします。
#83
○鍛冶委員 私もそれをさつき聞こうと思つて忘れたんですが、林さんが聞かれたので聞くのですが、今の御説明から行くと、この規定ははなはだ人を惑わすものだと思う。もしそういうことであるならば、前項の決定に対しては原裁判所が地方裁判所である場合に即時抗告をなすことを得と書くのがほんとうだろうと思う。ここを見たらだれが見たつてみな一般に即時抗告と見なすのがあたりまえなんです。それは法律を知つておればわかるとおつしやいますけれども、そう書くのがほんとうでなかろうかと思うがいかがです。
#84
○村上政府委員 ただいまの鍛冶委員の御意見まことにごもつともでありまして、どうかすると読み違えるおそれがあります。ところが現在の民事訴訟法には至るところに両極の規定があるのであります。たとえば証人に対する科料決定でありましても、それが地方裁判所でやつた科料決定ならば即時抗告ができます。憲法違反を理由としなくても抗告ができるわけです。ところが高等裁判所に呼び出された証人に科料の決定をいたしますと、憲法違反を理由とするときだけ即時抗告が許される、裁判所法の解釈上そういうことになる、こういう判例になつておるわけであります。あるいは民事訴訟法の全面的改正等の際にはかような点も十分整理しなければならぬ、かように考えておりますけれども、一小部分の改正でございましたために、ほかの部分との調和統一のためにかような表現を用いたわけであります。
#85
○鍛冶委員 もう一つここで承つておきたいのは、この一部改正は最高裁判所における民業上告事件の審判の特例に関する法律がこの六月一日をもつて廃止せられまするので、そのかわりに出されたものと考えるのであります。ところがこの特例を制定せられまする際、さらにその後二年間延長した際においても、われわれはかような特例をもつて弥縫するということは本質でないから、いま少しく根本的上告というもののあり方その他の民業訴訟法の根本的改正を急いでやつてもらうように注文しておつたはずであります。ところがその改正を、まあこれは改正だとおつしやるならばそれまででありますが、われわれはかような改正はまことに弥縫そのものであつて、在野法曹その他一般の主張を見ると実に相隔たることおびただしいものだと思うのであります。四年間もかかつて今日この根本的の改正を出さずして、かようなものを出さなければならなかつたほんとうの内幕はどうでございますか、ひとつお聞かせを願いたい。
#86
○村上政府委員 民事上告特例法制定の経過は、御承知の通り当初民事訴訟法の一部改正として提案されましたものが二年間の期限付の特例法として制定せられ、その後さらに二年間延長になつておるわけでありますが、その制定の際及び期間延長の際におきまして、民事訴訟法の全面的改正を考慮するということを当時の当局者から申し上げておるのであります。もとより民事訴訟法の改正にその間努力して参つたわけでありまして、法制審議会に民事訴訟法部会を設けまして、同部会におきまして根本的改正を考えて来たわけであります。ところが上告の問題になりますと、最高裁判所の機構をはたして今のままにしておいていいかどうかということが先決問題じやないかというところにぶつかつて来るのであります。一方御承知の通り昭和二十六年、七年にかけまして最高裁判所の未済事件が民刑合せて七千数百件に上るという状況にありました。特に二十七年の後半ごろからは最高裁判所の機構を改革する必要がある、ことに裁判官の数が足りなければこれを増員すべきじやないかという非常に強い意見が在野法曹から出まして、その他各種の意見が現われて参りましたので、二十八年の初めにさらに司法制度部会を法制審議会に設けまして、裁判所の機構の改革ということを中心として審議を続けて参つたのであります。昨年中に民事訴訟法部会の委員会は約八回、その間小委員会、幹事会等はしばしば開きまして検討をいたしたのでありますが、事は民事の上告だけの問題でなく、刑事の上告制度とも不可分の関係にある。また刑事の上告制度を問題にいたしますと、勢い刑事の控訴審の問題にも触れて参りまして、問題が非常に広汎であります。しかも申すまでもなく裁判所の機構は国の基本組織でございまして慎重な検討が必要であろう、かように考えておつたのであります。法制審議会の審議の経過は、当初逐条説明の際に大体申し上げました通り、現在の機構のままで行こう、そして上告の範囲は民事については上告特例法、刑事については現行刑事訴訟法の制限を維持して行こうということが一方において非常に強く主張されております。他方、裁判官の数が足りないために事務の渋滞を来しておるのであるというところから、裁判官の数を相当数増員して、この民事上告特例法なり刑事訴訟法における上告の制度をやめてしまうべきであるという意見が、これは主として在野側から非常に強く主張されました。その中間に、最高裁判所と高等裁判所との間に特別の上告裁判所をつくる、あるいは東京高等裁判所に特別の上告部をつくつて、上告のうち軽微なものはそこで処理し、重要なものを最高裁判所で処理するというふうな段階を設けるべきであるという意見、その他いろいろない件が出まして、大別いたしますと、ただいま申し上げました三つの意見にわかれるわけであります。これらの意見が鋭く対立したままの状態で今年に入つたわけであります。もとより採決によつて多数の意見をとりまして、これを法制審議会の答申として政府が法案に織り込んで提案することも考えられるのでありますけれども、事きわめて重大でございますし、その問題の重要性から申しまして、意見が対立したまま単に多数決によつて法制審議会の答申を出すことはどうであろうかということが、法制審議会自体の中で問題になりまして、ことにこの程度で採決をすべきかどうかということを司法制度部会の部会長から諮つたのでありますが、ただいま申しましたような趣旨で、最高裁判所の機構改革の問題はこの際採決をして打切るということでなく、なお続けて慎重に検討しようということになつた。一方特例法が六月一日で失効いたします。そうしますと、最高裁判所の事務の負担がふえまして、現在以上に事件の渋滞を生ずるおそれがある、それに対する手当をする必要があるということで、司法制度部会から具体的内容の審議を民事訴訟法部会に移されまして、民事訴訟法部会で多数をもつて定めた要綱に基きまして立案したのが、このたび御審議願つております民事訴訟法等の一部を改正する法律案であります。従いまして、最高裁判所の機構改革の問題につきましては、法制審議会司法制度部会におきましても、引続き検討を続けることになつておるのであります。本国会終了後におきまして、さらに司法制度部会の会議を開きましてやつて行きたい、かように考えておるわけであります。ただ、従来の実績に照しまして、ただ会議を繰返して、同じ委員が同じ意見を繰返し主張するというだけでは、結論を得ることは困難であります。私どもの期待いたしておりますのは、在朝在野の法曹並びに学界の方々、それぞれに衆知を集められて、一つのりつぱな案をまとめていただくということでありますけれども、遺憾ながら今までの経過はさようなことでございます。しかしながら、今後の法制審議会の運用といたしまして何とかまとめる方向に持つた行つていただくよう、さらに私どもの方としても努力いたしたい、かように考えておるわけであります。
#87
○鍛冶委員 この特例法は、この六月一日で、しかも一ぺん延ばして二度目の期日が来る。これが来るときには、もうこれは延ばすわけには行かぬ。これを延ばさぬということになれば、単に民事訴訟法だけでなく最高裁判所の基本のあり方もしくは上告事件の一般の上告の取扱い方に対する根本的の改革ということまで来なければならなかつたにもかかわらず、それをやらないでこれをお出しになつた。かりにこれをよく検討いたしまして、お出しになつた通りのものを実施したところが、やはりどこかで行き詰まりが来ると思う。そうしてみると、さらに進んで上告制度に対する根本改革を考えなければならない、こういうふうに差迫つておるにもかかわらず、いろいろ議論がわかれておるからできなかつたと言われるならば、これは少し早くやつていただきたい、やつていただきたいとこちらが言うておるだけでは、解決の道がつかぬのじやないかと思うのでありますが、それについて何かあなた方はよい方法はあるという見通しがありますか。また今まで通りに、いくらやつても議論はわかれる、多数決できめるわけには行かぬというのか、事重大大だ、重大だといつておつて、ますます事件がたまつて来るばかりでありますから、この点に対する根本観念があるならばお聞かせ願いたいと思います。
#88
○村上政府委員 ただいま考えておりますのは、まず法制審議会における司法制度部会の構成と申しますか、審議の対象についていくらか問題があつたのではないか、つまり最高裁判所の機構を論ずる際には必ず民事、刑事の上告制度をどうするかという関越に関連して来るわけでありますけれども、従来とかく民事の上告は民事訴訟法部会、刑事の上告は刑事訴訟法部会で検討してもらおうという気分が抜け切らなかつた傾向があるのです。法制審議会の今後の運営方法といたしましては、民事、刑事の上告に関する問題は司法制度部会にまとめまして、それぞれの権威者を司法制度部会の構成委員に加えて、なお先ほど申し上げましたような心構えをもつて審議していただくよう、私ども極力努力して行くつもりでございます。ただ国会におかれましても、最高裁判所の機構の問題につきまして、きわめて重大な関心をお持ちいただいておりますことは、かねがね承知いたしておるのでありますが、国会における御督励の趣旨も十分伝えまして、何とか進捗をはかりたい、かように考えております。
#89
○鍛冶委員 どうも今までの御説を聞きましても、なかなか容易にそちらではまとまらぬのじやないか、これは重大問題ですからごもつともでありますが、そうしてみると、われわれはこの法律を通すということよりも、一日も早き根本制度の確立ということが焦眉の急であろうと考えます。それについてここまで来た以上は、法務当局だけにまかしておいては容易でないと思いまするから、われわれにおいてもとくとでき得るだけのことをやらなければならぬのではないかと考えます。従いましてこの改正案に対する態度決定と同時に、重大なる決意をもつて法務当局並びに裁判所当局に対してお諮りしたいと思いますので、本日は私はこの程度にしておきますが、とくにひとつ御考慮を願つておきたいと思います。
#90
○林(信)委員 重ねて三百九十九条の第二項の即時抗告関係についていま一度伺いますが、現行法においては、高等裁判所の上告却下の決定に対する即時抗告は、最高裁判所では受理する道がない。従いまして第二項の規定は、その関係においては有名無実ということはわかりました。そうであるならば、地方裁判所が原審である場合という字句にしたらどうだという鍛冶委員のお話ももつともだと思います。しかしなお根本といたしまして、最高裁判所の判断を受け得るかいなかということは、訴訟関係者に非常に重大な利害関係がある。それが争いになります。その主張が通らないならば、その訴訟関係者は上訴は一回限り、二審にとどまる、何としてもこの関係は明瞭にしたいと考える場合があると思います。しかしながらそれはこの場合のみにとどまらず、その他の場合にも例があるんだと言われますが、少くとも軽重の差ははなはだしいものがある。例にあげられましたような科料の有無、これも一つの制裁として重要かもしれません。事の性質が異なるのでありまして、訴訟事件の、ことに多額であつたその訴訟関係者にとつて、きわめて重要な場合がある。比較し得ない場合がある。そうでありますれば、何とかこれはやはりその決定に対する不服の申立てはどうかしてやることが、法理論は別といたしまして、現行法の解釈は別といたしまして、これは実際に必要がある。先刻も申し上げましたように、最高裁判所の性格等よりいたしまして、どうにもならぬもの、民事訴訟法の一般的改正をいたしまする場合に、一緒にというようなことでなくて、現在何とかならないものでありましようかどうか。それがどうにもならぬといたしますならば、これを原審の他のもので、これは即時抗告の性格とはかわるかもしれませんが、別な方策において、いわば抗告の再度の考案というような性格を持つような形か何かで、他の部においてその問題だけを審理する、こういう方法か何かとらなければ、きわめて重要な問題であると思うのでありますが、必要性はおそらくお考えになると思うのですが、その方法論におきましては、全然ほかにかわるものとしても、これは考えられないものなのか、この点に対する御意見を承りたい。
#91
○小林委員長 私からも特にその点を申し上げたいと思いますが、今の一号、二号ですね。三号むろんそうですけれども、憲法違反の場合でなければ、控訴審が控訴裁判所の場合は、抗告ができぬかということは、まるでどうも切捨てごめんみたいに思うのですが、何かどこかへ一つそれを加えておく方法はありませんか。そうしたらまた何か弊害がありますか。その点ひとつ特に……。
#92
○関根最高裁判所説明員 今、林委員、小林委員長からお話の点は非常にごもつともな点であります。しかしながら最高裁判所の裁判官を十五人のままにしておいて、こういつた決定に対してさらに即時抗告を認めるということになりますと、全部即時抗告が来ると言つてもいいかと思います。それならば何を好んで原審の裁判所にこういう手続をやるかと申しますと、する必要はなくなつて来る。ただ一回よけいにするというだけになつてしまう。結局は十五人の裁判官のところに全部の事件が押し寄せて来ると言つてもいいかと思うのであります。でありますので、やはりこの問題も先ほど村上政府委員からお話がありましたように、結局は機構問題につながる問題だと思うのであります。でありますので、現在の裁判所法をごらんになりますと、裁判所法の第七条で、最高裁判所の裁判権のことを規定しておりますが、その中で抗告に関する問題については、「訴訟法において特に定める抗告」という規定を設けまして、一般の即時抗告はできないことを裁判所法自体で明らかにしておるわけであります。そういうことから行きますと、やはり最高裁判所の性格なり機構なりをはつきりいたさない限りは、こういつた問題についても特別の抗告だけが許されるという態度をとらなければ、結局最高裁判所は破産してしまう。それならばこのスクリーニングの制度は意味をなさないというところから出発しておる。いろいろ確かに御疑問があろうかと思いますけれども、そのかわりこのスクリーニングをする限度というものは非常に例外的なものだけにとどめた。いろいろ御趣旨の点はわかるのでありますけれども、さらに最高裁判所の判事が十五人しかいないという点にさかのぼつてお考えいただけば、やむを得ざる処置ということがおわかりになるかと思います。
#93
○小林委員長 ちよつと速記をやめて。
  〔速記中止〕
#94
○小林委員長 速記を始めてください。
#95
○林(信)委員 今の御説明で一応の趣旨はわかりますけれども、こういう民事訴訟法関係で三百九十九条の新しい制度を設けられまして、ことに第三号のごときは非常に問題だと考えられる。その際に地方裁判所が二審の場合、高等裁判所が二審の場合は、これは訴願においても相違はあるのでありますから、その比較からいたしましても、これはお困りになる状況もとにかくといたしまして、やはり何とかしなければならぬという感じがまだ払拭されません。実際問題が同じだということになりますと、地方裁判所関係だけのものも即時抗告を入れて同じだというようなことにもなるわけであります。確かに実際問題は、やはり全部が全部ということにはならない。あなたの御説明もほとんど同じようだといつたようなことであろうと思うのですが、これ以上は意見の相違ではないかと思いまするから質問はこの程度にとどめるのでありますが、三号の規定の運営その他と考え合せまして、この点も考えられる問題だと思つておるのであります。私の質問はこれで終ります。
#96
○小林委員長 それでは本日はこの程度にとどめ、明日は午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後、五時十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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