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1953/02/19 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 地方行政委員会 第14号
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1953/02/19 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 地方行政委員会 第14号

#1
第019回国会 地方行政委員会 第14号
昭和二十九年二月十九日(金曜日)
    午後二時五分開議
 出席委員
   委員長 中井 一夫君
   理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君
   理事 灘尾 弘吉君 理事 藤田 義光君
   理事 西村 力弥君 理事 門司  亮君
      尾関 義一君    河原田稼吉君
      木村 武雄君    鈴木 幹雄君
      橋本 清吉君    石村 英雄君
      北山 愛郎君    伊瀬幸太郎君
      大石ヨシエ君    大矢 省三君
      中井徳次郎君    松永  東君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 犬養  健君
 出席政府委員
        国家地方警察本
        部長官     斎藤  昇君
        国家地方警察本
        部次長     谷口  寛君
        国家地方警察本
        部警視長
        (総務部長)  柴田 達夫君
        国家地方警察本
        部警視長
        (警備部長)  山口 喜雄君
        自治政務次官  青木  正君
        自治庁次長   鈴木 俊一君
        総理府事務官
        (自治庁財政部
        長)      後藤  博君
        総理府事務官
        (自治庁税務部
        長)      奧野 誠亮君
 委員外の出席者
        専  門  員 有松  昇君
        専  門  員 長橋 茂男君
    ―――――――――――――
二月十九日
 委員前尾繁三郎君辞任につき、その補欠として
 大平正芳君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員大平正芳君辞任につき、その補欠として前
 尾繁三郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
二月十八日
 地方公共団体勤務の臨時職員の取扱に関する請
 願(大石ヨシエ君紹介)(第一八一七号)
 舞鶴市の特別交付金に関する請願(大石ヨシエ
 君紹介)(第一八二〇号)
 自動車税引上げ反対に関する請願(山崎猛君紹
 介)(第一八五〇号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 警察法案(内閣提出第三一号)
 警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法
 律案(内閣提出第三二号)
 警察に関する件
 地方税に関する件
    ―――――――――――――
#2
○中井委員長 これより会議を開きます。
 まず去る十六日本委員会に付託となりました警察法案及び警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案の両案を一括して議題といたします。まず政府よりその提案理由の説明を聴取いたします。犬養国務大臣。
#3
○犬養国務大臣 今回提出いたしました警察法案につきまして、提案の理由並びにその内容の概略を御説明いたします。
 現行の警察法は、戦後早々にして占領政策の一環として施行せられたものでありまして、戦前のわが警察制度を根本的に改革して民主警察の理想を高揚した点においては、確かに劃期的な意義を有してはおりますが、何分にも勿忙の間に当時の国際事情を反映しつつ制定せられましたため、わが国情に適しないところが多く、その運用の結果に徴しても非能率にして不経済の欠陥を免れず。しこうしてかかる欠陥を是正するために早晩抜本的な改正の肝要であることは、つとに世人の広く認めているところでありました。すなわち、現在の警察制度は国家地方警察と市町村自治体警察との二本建となつておりますが、町村を管轄する国家地方警察は国家的性格に過ぎて自治的要素を欠除し、都市を管轄する自治体警察は完全自治に過ぎて国家的性格に欠くるところがあり、これを要するに都市と町村において性格の異なる警察が存在するという結果になつているのであります。しこうしてこのことは元来国家的性格と地方的性格とを兼ね有すべき近代警察事務の運営にとつて適合せざるものを内蔵している結果となつているのであります。さらに市町村自治体警察は、治安の対象地域が近時とみに広くなりつつあるにかかわらず、おのおのの市町村単位において独立しているのでありまして、この細分化された警察組織のもとにおいては、警察運営の責任もまた多数に分割され、従つてその有機的活動は著しく阻害されているのであります。もちろん従来といえどもこれらの警察相互間においては、あるいは人事の交流によつて意思の疏通をはかり、あるいは援助の協定を行つて連絡調整を密にする等それぞれ努めて参つたのではありますが、何と申しても制度自体が内蔵する欠陥の前には、運用の妙にも限界がありまして、ために警察単位の分割より生ずる盲点の存在が警察の効率的運営をみずから傷つけて参つた次第であります。かつこの欠陥は国の治安に対する責任の不明確という点にも大きく影響しておりますことは、近年頻発する種々の事件に関連して国民の記憶の新たなところであると存じます。さらに一方、行財政改革の見地に立ちますならば、国家地方警察と市町村自治体警察との施設及び人員が互いに重複していることは、国民にとつてはいたずらに複雑、かつ不経済な負担となつているのでありましてこの面よりするも制度の根本的刷新の要は今や社会の輿論であると申しても過言ではありません。
 しかしながら現行制度における叙上の弊を改めるにあたり、警察の民主的な運営、言いかえれば国民の警察運営に対する干与はこれを依然として保障すべきはもちろんのことでありましてこの民主的な保障の基盤の上に、治安任務遂行の能率化と責任の明確化との二つの懸案の解決をはかつたものが、今般のこの法律案の骨子となつている次第であります。
 まずこの法律案の内容について主要な点を申し上げますならば、第一に公安委員会制度を存置したことであります。すなわち、警察の管理と運営の民主的保障を確保するため、中央、地方を通じて公安委員会制度を置き、警察を管理せしめることといたしたのであります。すなわち、中央においては、内閣総理大臣の所轄のもとに国家公安委員会を、また地方においては都通府県知事の所轄のもとに都道府県公安委員会を置き、それぞれ国民を代表する委員からなる会議体の機関によつて警察庁、または都道府県警察を管理せしめることといたし、もつて警察の民主的な管理運営を確保し、かつ警察の政治的中立性を維持することといたしたのであります。なおこの際公安委員に広く有為の人材を得るため、その資格の制限を大幅に緩和し、その制限は警察と検察の職業的前歴者のみに限ることといたしました。
 第二には、警察を府県警察に一本化したことであります。すなわち、警察の能率的運営を保持するため、現在の国家地方警察及び市町村自治体警察はともにこれを廃止して、新たに都道府県警察を置くこととしたのであります。この理由については冒頭に詳しく述べましたので省略することといたしますが、ここに一言申し加えたいのは大都市の警察についての処置であります。大都市警察につきましては従来から種々議論の存するところでありますが、結論においてこれを府県と並立させることは、大都市とその周辺地区とを遮断せしめ、このために警察対象としての両地区の一体性を阻害し、警察運営の有機的活動に著しき障害を来すのみならず、財政的にもきわめて不経済な結果となりますので、これを府県警察に一元化する必要を認めた次第であります。
 第三に府県警察の内容であります。すなわち、都道府県警察については、国家的要請に基く最小限の制約を除いて、あとう限りこれに自治体警察としての性格を具備せしめることとしたのであります。
 すなわち、都道府県警察の性格は申すまでもなく地方公共団体たる都道府県の機関としての警察であり、言いかえればこれは府県自治体警察でありまして、知事の所轄のもとにある都道府県公安委員会が全面的にこれを管理いたし、その管理のもとに警察本部長が職務を行うのであります。従つてその職員は原則として地方公務員の身分を有するものでありましてかつ、警察に要する経費については、一定の国家的警察活動に必要な経費を国が支弁するほかは、原則として府県の負担といたすのであります。また都道府県警察の諸般の組織や職員の人事管理その他の行政管理事項は、いずれも都道府県の条例で定めることといたし、これらの警察行政は都道府県議会における審議を通じて常に住民の公然たる批判の前に置かれ、しこうして住民の批判に制約せられる次第でありましてこの作用によつて自治体警察の特長と美点とを具備せしめたのであります。しこうしてこの精神に立脚しまして都道府県警察は国家的な警察事務に限つて中央の警察庁の指揮監督を受けるものといたし、その事項は法律に明記して警察の中央集権化の事なきよう十分の配慮をいたしたのであります。しこうしてこれがため警察本部長とごく少数の警視正以上の首脳職員は国家公務員といたし、これらは警察庁長官が国家公安委員会の意見を聞いて任免することとし、他面、この任免に対して管理者たる都道府県公安委員会は懲戒罷免に関する勧告権を行使し得ることといたし、もつて両者の権能につき均衡あらしめたものであります。なお、都の警視総監の任免は特にその地位の重要性にかんがみ、内閣総理大臣が国家公安委員会の意見を聞いて任命することとし、これに対する懲戒罷免の勧告権の所在は他の道府県の場合と同様にいたしたのであります。
 第四には、中央の警察機構のことであります。すなわち、中央の警察官理機関たる国家公安委員会の委員長は国務大臣をもつて充てることとし、国家公安委員会はその管理のもとに警察庁を置いて国の公安にかかる警察運営をつかさどり、警察の教養、通信、鑑識、統計及び装備に関する事項を統轄し、並びに警察行政に関する調整を行わしめることにいたしたのであります。さらに、国家公安委員会は、委員長及び五人の委員をもつて組織することとし、委員長は国務大臣をもつてこれに充てることといたしましたが、この委員長は会議に際して表決には加わらず、従つて国家公安委員会が政治的中立性を保つところの会議機関である現在の性格は今般の改正によつてもこれを一貫して堅持せしめているのであります。同時に委員長として新たに国務大臣が加わることにより、政府の治安に対する国家的な考え方が国家公安委員会の中正な判断によつて濾過せられた上警察運営の上に具現されるようにいたしました。かくのごとくにして政府の治安責任と警察の政治的中立性との調和をはかつたものであります。また警察庁は国家公安委員会の管理のもとに、きわめて特定の国家的な警察事務を所掌し、これに関しては都道府県警察を指揮監督することといたしましたが、その事務の範囲は上述のごとく最小限の列挙事項のみに限定したのであります。従つて個々の一般犯罪の捜査のごときはこれを中央の権限より除去いたしたのであります。なお、警察庁長官は政府の治安責任を明確にするため、内閣総理大臣が国家公安委員会の意見を聞いて、任免することといたしましたが、他面これに対しては国家公安委員会が、長官の懲戒罷免に関する勧告権を行使し得ることは、道府県公安委員会の権限の場合と同様であります。
 なお、この改正が実施せられまず場合は、機構の簡素化により警察職員の数において三万人、経費において約九十億円を減少し得る予定であります。またこの改正の実施に伴い国家地方警察職員も市町村自治体警察職員とともにその身分に変更を生ずる結果となりますが、この場合も努めて新機構べの受入れの円滑を期するため、職員の身分を保障するとともに俸給の減額となるものについては、その差額について調整の措置を講じ、かつ、恩給、退職手当についても従来の在職年政はすべて通算することといたし、これら誠実な職員の生活に不安を与えざるよう万全の配慮を払つております。しこうして従来の国家地方警察と自治体警察とがその用に供しておりました財産の移転につきましても、制度の切りかえに伴い支障を来すことのないよう、すべて国と都道府県、市町村との当事者相互間の協議により譲渡を行うものとし、特別の事情のあるものについては債務を承継しまたはこれを有償とする等の措置を講じ得ることといたしました。なお、本法案が幸いにして成立いたしました上は、これを来る七月一日に施行する所存であります。
 以上本法案提出の理由及びその内容の概要を申し上げた次第であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
 次に今般提案いたしました警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案の提案の理由を申し上げます。
 本法律案提案の理由は、今般提案いたしました警察法案と関連いたしまして関係法令の規定を整理し、これに伴い所要の経過措置を定める必要があるためであります。
 この整理の方針といたしましては、関係法令中の関係事項について、警察法案の規定上当然に整理改正を要するものを改めることといたしました。経過措置につきましては、警察法案の規定及び本法律案による整理に対応して必要な規定を設けることといたした次第であります。
 何とぞ御審議のほどをお願い申し上げます。
#4
○中井委員長 次に斎藤国警長官より補足して説明をしたいとの申出がありますからこれを許可いたします。斎藤国警長官。
#5
○斎藤(昇)政府委員 警察法案の内容につきまして、その条文の順序に従つて御説明をいたしたいと存じます。
 この法律案は、七章七十八箇条の本文及び附則二十八項から成つております。
 第一章は総則といたしまして、この法律の目的、警察の責務及び警察職員の服務の宣誓の内容について規定しております。すなわち、この法律の目的とは民主的理念を基調とする警察の管理と運営を保障しつつかつ能率的にその任務を遂行するに足る警察組織を定めることであります。次に警察の責務につきましては、現行の趣旨通り個人の生命身体及び財産の保護と犯罪の予防、鎮圧及び捜査等公共の安全と秩序の維持をもつてその範囲とし、あわせてその権限の濫用を戒める旨を規定するとともに、新たに不偏不党かつ公平中正を旨として責務を遂行すべきことを加え、警察のあるべき姿をさらに明らかにしたのであります。なお、この法律により警察の職務を行う者については、特に服務の宣誓の内容を定めて警察の責務遂行の公正を期したのであります。
 第二章は、国家公安委員会に関する事項を規定いたしております。国家公安委員会は、国の中央警察官理機関として内閣総理大臣の所轄のもとにこれを置き、現行通り両議院の同意を得て任命される五人の委員のほかに、新たに国務大臣をもつて充てる委員長を加えて組織することといたしました。五人の委員の任命方法や任期、政党に関する制限や身分保障についてはまつたく現行通りでありますが、広く適任者を求め得るようその資格制限を緩和し、その制限は警察と検察の職業的な前歴に限ることといたしました。国家公安委員会は国の公安にかかる警察運営をつかさどり、警察教養、警察通信、犯罪鑑識、犯罪統計及び警察装備に関する事項を統轄し、警察行政に関する調整をはかることを任務とするものであり、その権限についてはこの任務を遂行するに必要な範囲に限定することとしてこれを法律で明定し、その事務について警察庁を管理することとしております。委員の服務等につきましては、おおむね従前の通りとするほか、新たに委員会の会議についての規定を設けましたが、国務大臣たる委員長は、表決権を有することなく、可否同数の場合にのみ採決権を有することといたしました。なお国家公安委員会には法令の委任に基く規則制定権を認めることといたしました。
 第三章は、警察庁に関する事項を規定いたしております。警察庁は国家公安委員会の管理のもとに法定の権限を所掌する機関として置き、その長官の任免は内閣総理大臣が国家公安委員会の意見を聞いて行うことになつております。長官は、国家公安委員会の管理に服して職務を行うものとするほか、国家公安委員会は内閣総理大臣に対しその懲戒罷免に関し必要な勧告をなし得ることとして不当な職務執行の余地をなからしめているのであります。長官は、警察庁の庁務を統括するほか、その所掌事務について都道府県警察を指揮監督することといたしまして、国の治安に関する中央の責任を明確にしているのであります。警察庁に次長一人を置くほか、その内部部局としては、従来の総務部を改め長官官房とし、ほかに従来と同じ警務部、刑事部、警備部、通信部の四部を置くことといたしております。また附属機関としては警察大学校、科学捜査研究所及び皇宮警察本部を置くこととしておりますが、これらはいずれも現在あるものをそのまま明文化したものであります。地方機関としては、現在の警察管区本部にかわる管区警察局を置くこととしたのでありますが、北海道は北海道警察となりますので、管区警察局を設けず、ただ通信事務を所掌する道地方警察通信部を置くのみとし、その他は高等検察庁等他の治安関係機関との連絡を密にするため従来の五管区の管轄区域を七管区に変更し、新たに名古屋、高松にこれを置くことといたしましたほか、警視庁はその管轄から除外いたしました。しかして反面その機構を簡素化することとし、現在の五部制から三部制に縮小いたしました。管区警察局の分掌する事務は警察庁の所掌事務のうちの必要な範囲の事務に限定しておりますが、その分掌する事務についてのみ府県警察を指揮監督することができるのであります。なお管区警察局に管区警察学校が附置されることは現在通りであります。次は、警察庁の職員の規定で、警察庁の所要の職員のうち長官は警察官とするほか、次長、官房長、通信部長を除く部長、その他政令で定める職は警察官をもつて、皇宮警察本部長は皇宮護衛官をもつて充てることを規定したのであります。
 第四章は、都道府県警察に関する事項を規定しております。第一節は、総則といたしまして都道府県警察の設置及び責務並びに経費について規定しております。すなわち、現行制度の都道府県国家地方警察及び市町村自治体警察はともにこれを廃止して、新たに都道府県に都道府県警察を置き、この都道府県警察が都道府県の区域について警察全般の責に任ずることとしたのであります。都道府県警察に要する経費につきましては、原則として都道府県で負担するのでありますが、そのうち警察教養、通信、鑑識、警備装備に要する経費、警備警察や特殊の犯罪捜査に要する経費、国家公務員たる警視正以上の階級にある警察官の給与費等都道府県に負担させることが不適当と考えられる経費については政令の定める範囲で国が支弁することとするとともに、そのほかの都道府県の負担する経費についても国が政令で定めるところによつてその一部を補助することといたしました。
 第二節は、都道府県公安委員会について規定しております。都道府県公安委員会は、現行通り知事の所轄のもとにおのおのその都道府県議会の同意を得て任命せられる三人の委員から成り、都道府県民を代表して都道府県警察を管理するのでありますが、その権限は従来のごとく運営管理に局限せず行政管理をも含め都道府県警察を全面的に管理するものといたしました。都道府県公安委員会の委員の任命方法や任期その他身分保障や服務については現行通りでありますが、資格の制限は国家公安委員と同様に緩和することといたしました。また法令または条例の委任に基き公安委員会規則の制定権を認めることにいたしました。なお、北海道についてはその地域的特殊性にかんがみ五以内の方面ごとに方面本部を管理する方面公安委員会を置くことといたしました。
 第三節は、都道府県警察の組織について規定しております。都には警視庁を、道府県には道府県警察本部を置き、その内部組織は政令で定める基準に従つて条例で定めることとしております。都警察には警視総監を、道府県警察に警察本部長を置き、警視総監は内閣総理大臣が国家公安委員会の意見を聞いて任免することとし、警察本部長は、長官が国家公安委員会の意見を聞いて任免することといたしました。警視総監及び警察本部長は都道府県公安委員会の管理に服して職務を行うものとするほか、都道府県公安委員会はそれぞれ内閣総理大臣または長官に対し警視総監または警察本部長の懲戒罷免に関し必要な勧告をなし得ることとしたのであります。また北海道には道警察本部の下にその区域をわかつて五以内の方面本部を置き、方面本部長の身分等は、警察本部長に準ずることといたしました。なお警視庁及び道府県警察本部並びに方面本部にはそれぞれ警察学校を付置せしめるほか、警察署の名称、位置及び管轄区域は政令の基準に従つて条例で定めることになつております。都道府県警察の職員については国家的性格を有する警察事務の円滑な遂行をはかるため少数の警視正以上の警察官は国家公務員とし、その任命は長官が国家公安委員会の意見を聞いて行い、それ以外の大部分の警察職員はすべて地方公務員とし、その任免は警視総監また、は警察本部長が都道府県公安委員会の意見を聞いて行うことといたしましたが、いずれについても都道府県公安委員会は懲戒罷免の勧告権を有するのであります。なお地方公務員たる大部分の警察職員は地方公務員法の適用を受けることはもちろんでありますが、警察の職務の特質上任用、勤務条件、服務等に関しては国家公務員の例を基準として条例その他で定めるものとしたのであります。これら都道府県警察の職員の定員については、国家公務員については政令で、その他の警察官については政令で定める基準に従い条例で定めることといたしました。
 第四節は、都道府県警察相互間の関係について規定しております。まず、都道府県警察は、相互に協力する義務があるものと規定し、具体的には警察相互間の援助及び管轄区域外の権限行使について規定して警察相互間の協力態勢を強化し、警察事務の能率的運営を確保することとしたのであります。
 以上これを要するに都道府県警察は、地方公共団体たる都道府県の機関として置かれた自治体警察ではありますが、これに国家的性格を有する警察事務を担当するにもふさわしい特長をも具備せしめ、これによつて国家的な要請と地方自治との調和のとれた組織とすることとしたのであります。
 第五章は、警察職員に関する事項について規定しております。警察官の階級は長官を除き、警視総監以下九階級といたしました。次に警察官の職務を一般的に規定し、警察官の職権行使の区域についての規定をいたしました。警察官は元来その所属の都道府県警察の管轄区域内で職権を行使すべきことを原則としますが、さきに述べました援助派遣の場合及び管轄区域外の権限行使の場合のほか、例外として現行犯人の逮捕に関する場合及び移動警察の場合についてそれぞれ管轄区域外においても職権を行使し得るよう定めているのであります。また警察職務の遂行上必要な小型武器の所持、被服の支給、装備品の貸与その他警察職員の礼式、服制、表彰についてもこの際それぞれ法律に規定をいたし、また皇宮護衛官について所要の規定を準用いたしました。
 第六章は、緊急事態の特別措置に関して規定いたしております。緊急事態の規定は、現行法の国家非常事態の規定と同様主として警察組織の非常の指揮体制を特例として定めたものでありますが、現行法の国家非常事態の名称はその内容から見て適切を欠くものがあり、かたがた保安庁の非常事態の規定との均衡上からも誤解を生じやすい点もありますので、名称を緊急事態と改め、大規模な災害または騒乱その他の緊急事態に際し治安維持のため特に必要がある場合において内閣総理大臣が現行通りの方法によつて布告を発し得ることといたしました。次にその布告の効果についてはおおむね現行の通りでありますが、機構の改革に伴い一層内閣総理大臣の統制の内容を明確化し、その限界と指揮系統を明らかにするとともに、布告に対する国会の承認の手続についても保安庁の非常事態の場合における措置との均衡をはかつたのであります。
 第七章は雑則として、警察官と検察官との関係が刑事訴訟法の定めによるべきことのほか、恩給と国有財産等の無償使用等について規定いたしております。このうち特に恩給につきましては、今後都道府県の地方警察職員について恩給法の規定の準用を認めることとし、また今後相互の異動に際しても恩給については勤続期間を通算し人事交流を円滑ならしめる道を開きました。
 附則は、この法律の施行について必要な事項を定めているのでありますが、まずこの法律の施行期日は七月一日といたしております。もとより法律の公布後はできるだけ早期に施行することが望ましいのでありますが、都道府県における予算措置その他政令条例の制定等の準備機関も考慮に入れて七月一日としたものであります。次にこの法律の施行のため必要な公安委員の選任手続その他の準備行為は法律施行前にできることといたしました。なおこの法律の施行に伴い現在の国家公安委員会、都道府県公安委員会は廃止されることになりますが、第四項から第八項までは国家公安委員会と都道府県公安委員会の最初の委員の任命について主としてその任期を規定しております。第九項及び第十項は警察職員の身分の引継ぎについての経過規定であり、この場合現在の警察職員の身分は新らしい機構に当然引継がれることとして、現在の警察職員の身分を保障いたしました。第十一項から第十四項までは、警察用財産処理の経過規定で、現在の国家地方警察及び自治体警察の廃止に伴いこれらの警察の用に供されていた財産を新たにできる警察庁または都道府県警察の用に供するために財産の処理の方途を講ずる必要がありますので、これらの処理が円滑に行われるよう、警察用財産の譲渡または使用は、国と都道府県と市町村の間における相互の協議によつて行うことといたしました。しかしてこれらの譲渡または使用は無償を原則とはしますが、当該財産に伴う負債がある場合その他特別の事情がある場合は債務の承継または有償とする等の措置を講じ得ることとしたのであります。第十五項は給与に関する経過規定で現在の警察職員が都道府県警察の地方職員となつた場合において、もし俸給額が減額となつた場合においても、その差額の調整のため、政令の基準に従い条例によつて手当を支給することといたしたのであります。第十六項から第十九項までは、休職、特別待命、懲戒処分、不利益処分、公務災害補償についての経過規定であり、第二十項から第二十七項までは退職手当、恩給及び共済組合に関する経過規定であります。退職手当、恩給については、いずれも制度の切りかえを円滑にするためこの法律の施行に伴う職員の身分の変動にもかかわらず従前の在職期間を通算する等の措置を講ずるようにいたし、これらの規定を通じ制度の切りかえにあたつて職員ができ得る限り不利益を受けることがないように配意をいたした次第であります。
 以上本法律案の主要な点につきまして、その概略を御説明申し上げた次第であります。
#6
○中井委員長 施行の分でありますから、引続き説明を求めます。
#7
○斎藤(昇)政府委員 次に警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案の内容について、その概要を申し上げます。
 まず、第一条においては、警察法の施行に伴い、当然不要となります都道府県の所有に属する警察用財産等の処理に関する法律、市の警察維持の特例に関する法律及び町村の警察維持に関する責任転移の時期の特例に関する法律の廃止を規定しました。第二条以下においては、警察法の施行に伴つて当然改正を要する関係法令をその制定順に掲げ、必要な整理改正を加えております。
 第二条及び第三条では、民事訴訟法及び関税法中の「警察吏員」の語を整理いたしました。
 第四条では、遺失物法第十五条中の、交付を受ける者のない物件を、都道府県警察の設置に伴い、当該都道府県に帰属させるのが当然と存じ「国又は」を削りました。
 第五条から第八条までは、国税犯則取締法、狩猟法、公益質屋法及び死産の届出に関する規程の改正で、「警察吏員」の語を整理いたしました。
 第九条では、裁判所法中の警察官の派出要求について、第十条では、道路交通取締法中の公安委員会その他について警察法の施行に伴つて必要と認められる整理をするため、条文に所要の改正を加えました。
 第十一条から第十三条までは、最高裁判所裁判官国民審査法、消防組織法及び海上保安庁法についての改正で、当然必要な整理をいたしました。
 第十四条では、国家公務員共済組合法中従前の国家地方警察の職員等で一単位を組織しております組合の構成員がかわりますこと等の整理上の改正であります。
 第十五条では、風俗営業取締法中当然必要な読みかえ上の改正と手数料の規定を補つたものであります。
 第十六条では、刑事訴訟法の規定中当然必要な読みかえ上の改正を行いました。
 第十七条では、警察官等職務執行法を警察官職務執行法に改め、その他警察法の施行に伴い当然必要な改正を加えました。
 第十八条から第三十五条までの、へい獣処理場等に関する法律、検察審査会法、少年法、少年院法、消防法、郵政省設置法、古物営業法、たばこ専売法、総理府設置法、犯罪者予防更生法、大蔵省設置法、水防法、警察用電話等の処理に関する法律、漁業法、公職選挙法、精神衛生法、火薬類取締法、質屋営業法の改正は、いずれも公安委員会、警察吏員等に関する必要な整理のための改正であります。
 第三十六条の地方公務員法の改正は、任命権者が変更されますための規定の整理であります。
 第三十七条から第四十三条までの銃砲刀剣類等所持取締令、農業委員会法、高圧ガス取締法、出入国管理令、平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律、外国人登録法の破壊活動防止法の改正は、いずれも、警察庁、都道府県警一察の設置のため、または警察吏員に関する規定の整理のための改正であります。
 第四十四条の警察官等に協力援助した者の災害給付に関する法律の改正は、題名を変更し、あわせて必要な整理を行つたものであります。
 第四十五条から第五十二条までの法廷等の秩序維持に関する法律、麻薬取締法、海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関する法律、逃亡犯罪人引渡法、有線電気通信法、公衆電気通信法、武器等製造法、町村合併促進法の改正は、警察庁、都道府県警察の設置に伴い必要な改正その他用語上当然必要な整理であります。
 第五十三条の交通事件即決裁判手続法の改正は、今国会に提案の同法案の附則において道路交通取締法の一部改正を行うことにしておりますので、この改正条文中用語の整理を行つたのであります。
 次に附則でありますが、第一項では、この法律は、警察法の施行の日から、但し、第五十三条の規定は、交通事件即決裁判手続法の施行の日から施行することとし、第二項では、この法律の施行の際、都道府県公安委員会、市町村公安委員会または特別区公安委員会が行いました許可、免許等の処分で現に効力を有しますものを、引続いて改正後の相当規定による有効な処分とするために必要な経過規定を設け、第三項では、同じくこれらの公安委員会に対してなされた許可、免許等の処分の申請を改正後の相当規定によりなされたものとするために必要な経過規定を設けました。第四項では、道路交通取締法第二十六条第一項に基く道路における禁止行為に関する都道府県知事の定の効力について必要な経過規定を設けました。第五項及び第六項では、改正前の警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律に基き、この法律の施行前から引続いて行われている給付については、なお従前の例によるものとすること、及びこの法律の施行前に給付原因が発生し、この法律の施行の日以後において実施することとなるものについては、従前の負担区分により国、都または市町村が行うものとすることについて必要な経過規定を設けました。
  以上、この法律案につきまして概要を御説明申し上げました次第であります。
#8
○中井委員長 ただいま両法案について政府よりそれぞれ提案理由の説明を聴取いたしましたが、本日は両法案に対する質疑は、理事会の申合せによりまして行わないことといたします。
#9
○橋本(清)委員 議事進行について。警察法案七十八条の審議にあたりまして、私は本会議及び当委員会における政府の提案理由の説明並びにその質疑応答の内容等を、静かに検討いたしましたが、いささか明確を欠き、かつかくのごとき強度の国家権力を掌握するところの治安立法の責任者としての知性と信念と気魄とにおいて必ずしも満足をいたさぬように感ぜられますことは、まことに遺憾とする次第であります。申すまでもなくいわれなき国家権力の過度の集中は、ただちに民心の離反の基となるのであります。従つてかくのごとき権力を基礎づける立法にあたりましては、ほんとうに澄み渡りたる心境のもとに、もつと真剣にかつ謙虚にこれが立法の対象とする現下治安の情勢を直視いたしますとともに、はたして一時的、断片的な治安情勢の検討によつて誤れるところなきか。またこの敗戦の厳粛なる事案に、まだ目ざめざるいわゆる官僚根性を脱皮することができないで、いたずらに今日の占領法規の改革に名をかりまして、彼らの満足するところの中央集権主義に堕するところの官僚精神に誤れるところなきや、かような点につきまして誤りがないか、少くとも百年の大計であるところの日本警察法の根底とする民主化を根底より逆転するなきやを私は憂うるのであります。しこうして、かくのごとき立法にあたりましては、国民諸君の、従つてこれが代表議員各位の最も十分、なるほどと納得をしての心からの協力を基調としなければならぬと思う。私はこの意味におきまして本法の政府提出の最終責任者であるところの総理大臣がみずからこの席に出席せられまして、本法立法の対象たる治安の情勢に対する認識において、はたして誤れるところがないか、また本法第一条の根本理念といたしますところのいわゆる民主的保障の理念と、そうしてもう一つの目的といたしまするところの能率ある警察、この二つの根本理念をいかに考えておるかというような点につきまして、私は総理大臣みずから出席せられまして、国民の代表たるわれわれに、ほんとうに真剣なる気持を持つて説明せられることが当然であると思います。この意味におきまして私は本委員会に総理大臣の出席を要求いたしたいと思います。これが方法は委員長に一任いたしたいと思います。
#10
○中井委員長 ただいまの御発議は、本法案の重要性にかんがみまして、まことにごもつともなりと存じますから、本委員会といたしましては、総理大臣の出席を要求いたしたいと思います。さようにとりはからいます。
 次に門司亮君より、警察法案に対する質疑としてではなく、教員に対する思想調査に関する警察問題について、質疑をいたしたいという申出があります。この際これを許します。門司君。
#11
○門司委員 昨日の参議院の文部委員会で斎藤国警長官は、今新聞で伝えられております学校職員の思想調査を命じたことはないという答弁をされております。そのことが事実であるかどうかということについて私の聞きたいと思いますことは、今ちようど教員の政治活動を制限しようとする法律案が内閣において立案中であることは御存じの通りである。時たまたまこの調査の行われるということは、政府が教員の政治活動を抑制するための裏づけにしようとする意図ではないかという疑いを、国民全体に持たせておると思う。また私はこのことはある程度事実ではないかと思う。従つてひとつ斎藤国警長官は、そういう事実が全国にあつたかなかつたかということについて御答弁を願いたい。これはすでに斎藤国警長官も御存じのように、憲法の十九条には明らかに思想の自由を認めております。従つてその職責のいかんにかかわらず、いかなる思想を持つておりましようとも、これが破壊活動防止法その他に現われて出て来ない限りにおいては、今日の警察権において思想の調査はできないはずであると考える。しかし新聞紙では非常にたくさん伝えられている。われわれの同僚も現在埼玉県等においては、あるいはその他の府県におきましても、わざわざ警察をたずねて、これの抗議をしている事実がある。この事実に基いてどうか長官は率直にそういうことがあつたかなかつたかということについての御答弁を、この機会に願いたいと思う。
#12
○斎藤(昇)政府委員 お答え申し上げます。警察官に対しまして教職員の思想調査を命じた事実はまつたくございません。中央から命じた事実がないのみならず、府県の警察隊長から命じた事実も、今まで調査の上あがつておりません。その点は御了承をいただきたいと思うのであります。新聞その他にいろいろな事例が、ただいま御指摘されるように報道されておりますので、私どもといたしましては、できるだけその実相を明らかにいたしたいと思つて、ただいま調査をいたしております。そのうち静岡県のある署におきまして、先般静岡で開催された教育研究大会に出席をした教員の数とか、大体どんな顔ぶれであつたかということを、教員あるいは校長等に聞いた事例はあるのであります。これは私どもといたしましては、今日ただいま御指摘になりましたように、教員の教育中立性の確保の法律が云々されております際においては、適当な処置ではなかつた、かように考えておるのであります。しかしこれは中央からもまた静岡県本部からも指令をしたものではございません。他の諸府県あるいは諸都市において報ぜられております事件につきまして、できるだけ詳しくただいま調査をいたしておりますが、今日まで調べましたところによりますと、やはり警察官が職権を濫用して思想調査をしたというようなものは、まだ一つも報告を受けておりません。犯罪の捜査として当然に調査をした事項を、思想調査として報道されたといつたような事件、これはすでに三件ございます。一例をあげますと、衣類の窃盗がありまして、その被疑者らしい者の大体の見当はついたのでありますが、その行方がわからない。その人の子供が某所で教員をしておるということを聞いて、その学校の教員名簿を借りて調べてみたところが、はたしてそういう教員がいた、そこでその教員にあなたのお父さんがいるか、どこにいるかと聞いたところが、いるけれども行方不明であつたというような事件があつた。これを思想調査をしたといつて報道をされております。また教員のカバンをあけて思想調査をしたという件がございますが、これは遺失物として届けられましたカバンを、内容を見るためにあけて見ましたところが、ここにアカハタであるとか、あるいは共産党の機関紙であるとかいうようなものが入つておつた。それはある中学校の先生の持物であつたというので、それに返した。これをもつて思想調査をしたというように出ております。また隣り近所で非常に親しくしている。よく行つて一緒にお茶を飲んだり、御飯を一緒に食べるという仲の関係にある駐在の巡査と小学校の教員とのそういう間柄、あるいは親戚という間柄において、普通日常茶飯事なりとして、いろいろ世の中にうわさされていることを話し合う、それが思想調査をされたといつて報告されておる。ほとんどそういうことの報告を受けておるのであります。私どもといたしましては、昨年の夏あたりであつたと記憶いたしておりますが、日教組の中央本部から各府県の末端にまで、警察官が教員の思想調査をしている疑いがある、その事例は克明に中央に報告するようにという指令を出しておられるのを、当時私どもも知つておりました。従いましてわれわれ中央で何らの指令をいたしませんでも、警察官の普通の常識といたしまして、どこかに大きな会合があつた、何人くらい人が集まつたか、どんな話合いであつたかというようなことを、ただ普通の常識として聞いておこうというような感覚で、第一線の警察官がそれぞれいるわけであります。これは警察官としてできるだけ社会の情勢を知つておくという、何ら他意のない意味で私はやる場合があるだろうと思う。しかしながらそういう指令も出されていることでもあるから、特に気をつけて、そういう誤解を受けるおそれのないように、できるだけそういう誤解の起らないように気をつけるようにということをすらも、むしろ出しておるのであります。にもかかわらず、最近になつていろいろそういうように報道せられますということは、私どももし真実であるならば、これはまことにいけないことと思いますが、しかし中央からも府県本部からも、そういう指令は出すはずがないと思うのです。私らはそんな教員の思想を調査するという必要は認めません。個々の教員がどういう思想を持つておるか、どういう教科内容であるかということを知る必要がありませんので、そんなことをするはずがない、かように思つておるにもかかわらずかように伝えられるということは、私はこの真相を明らかにした方が、これは警察のためにも、あるいは教職員のためにもいいのじやないか、かように考えております。教職員の方だつて、どこで教員の思想調査があつたと、かように出れば、その感じは、おそらく第三者の知らない人から見れば、教職員は思想調査をされるような、そんな現状にあるのだろうかという誤解も生むだろう、このことは教職員にとつてはお気の毒だと思つております。また一面別の方面からすれば、警察は何のために思想調査をするのだと、ただいま御質問がありましたような意味で、警察に不審の念を抱く。これはどちらにとつても不幸なことだ、だから真相をはつきりするのがいいのではないか。そういう意味で調査をいたしておりますが、ただいままで受取りました報告では、ほとんど今申し上げましたような事例ばかりでありまして、むしろ私は何らかためにせんために、思想調査がここにもあつた、あそこにもあつたというようなことが取上げられておるのではないだろうか、しかしこれはかえつて、教職員組合にとつても不幸なことである、かように私は考えております。
#13
○門司委員 最後の発言は非常に重大な発言であります。何らかためにせんとするための宣伝ではないかというようなことは、さきにも申し上げましたように、たまたま日教組といいますか、教職員の政治活動を抑制しようとする法律案を出そうとしておる時期であります。言いかえるならば教育の中立性というもの、あるいは教育の自由というものに対する一つの制限を加えようとする法律案の出ておりまするときに、国警長官が時たまたまただいまのような発言がございまするならば、その対象に私はかなり大きな影響を持つと思う。長官はどうお考えになつておるか知らないが、今の答弁の中に、昨年の夏ごろ云々という言葉がございましたが、私個人の実例を申し上げておきたいと思います。それはたしか昨年の夏と思いますが、神奈川県において高速度道路ができる、いわゆる弾丸道路ができるということについて、農村の土地がたくさん取上げられる。同時にこの道路は専用道路でございまして、普通の者は歩くことができない。そうすると耕作に非常に不便を感ずる。従つて農民はこれの反対闘争を今展開いたしております。私神奈川県の日農の連合会長として、この反対期成同盟の会長といたしまして、厚木に農民大会を開いたことがある。しかるに厚木警察署の署長の集会許可条件の中に、警察官を立ち会わせるということが許可条件になつている。私はこのことは、大会の席上で、警察官が入つておりますので、一人の組合員が、警察官が入場していることはけしからぬ、会長はこれを一体どう考えるかという質問がありましたので、初めて知つたので、それまで知らなかつた。私のかわりに――私は会長でありますから、私の名義をもつて集会届が出ている。一体どういう集会届になつているかといえば、集会届を見てみますと、その中に一項目入つている。少くとも私を信用しないならこれは別です。あれがやつているのだから、何をやるかわからぬから、警察官の介入を十分にしなければ許可できないというなら、これは別であります。しかし公の場所で公の会議を開きますときに、警察官が中に入つて聞くということが条件になつている。その会議でどういうことが行われたかということを報告されることは、あるいはいいかもしれないが、しかしああいう質朴な会議になつて参りますと、農民は十分発言しない。なぜ発言しないかと聞いてみると、発言すると翌る日かその次の日あたりに駐在のおまわりさんが来て、お前さんはどうしてきのうああいうことを言つたかと聞かれる。これは明らかな一つの抑圧であります。そういう事実が現在ある。もし国警長官が、私の言つていることがうそだというなら、集会届を持つて来て見せます。今日警察官の思想介入はそこまで来ておるのであります。私はその事実を知つて――というよりもむしろ事実を体験してと言つた方がいいかもしれないが、そうして今日この教員の思想調査が行われているということを聞いて参りますと、なるほど符合する点があるのであります。従つてこれは、私は今の斎藤国警長官の御答弁の内容については、私もそういう事実のあつたということを聞かないわけではない、ことに第三点の問題はおそらく神奈川県の茅ケ崎の問題だと思う。そういうことがたまたまあつたことは私も聞いている。しかし事実上これが各地で行われている。そうして国警としては、それを指令した覚えはない、あるいはそのほかもそういう指令をするはずがない、これはその通りでありましよう。おそらく私は国警本部長官が教員の思想調査をしろというようなばかげたことを命ぜられるはずもなければ、また府県の隊長がそういうことをやるはずもないと思う。たまたまこういう議案が出るということになつて来ますと、警察官の中にはそういう行き過ぎの行為をする人が、私は善意に解釈してもあると思う。従つてこういう事件が今起つておりますときに、国警長官としてはこれらのあやまちのないように今の御答弁だけでなくして、ただそういう報告を集めているというだけでなくして、何らかの措置をおとりになつたことがあるかどうか。もしおとりになつたということがあるなら、事実をひとつ示しておいていただきたい。
#14
○斎藤(昇)政府委員 ただいまの門司委員御自身に関することは、この前の委員会でも伺いましたので、さつそくよく注意いたしておきましたが、先ほども申し上げましたように何ら他意なくやつておることでも、それが今おつしやるように何か威圧に思われることがあるから、そういうことのないように十分注意するようにということは、当時も言つておりますし、その後も同様そういつた場合は必ず繰返してやつておるのでございます。教員の思想調査ということも、むしろ注意をいたさぬでも、ああいうように新聞に出ますと、隊長は抗議を申込まれる、国会であれをされるというので、これは自然にそれぞれ注意するようになると思います。しかしそれにもかかわらず、われわれといたしましては、先ほど申しましたように、昨年の夏もそういう点に特に気をつけるように注意を発しましたし、また暮れの管区本部長会議あるいは地域警備部長会議でも、そのことを十分徹底させるようにいたしております。またごく近く開く警備課長会議におきましても、この点は特に留意するように注意をする予定で、ただいま招集をいたしております。何分、心にもなく警察官が聞くことが、たとえば道路で非常に親しくしておる小学校長さんと会つた。こんにちは、どこへお見えになつたんです。いや、きようは教研大会に行つて来たのだ。どんな様子でした、というような話になる。これも思想調査をしたと報告に出ておりますが、これらはおそらく駐在巡査が、何のことなしにあいさつがわりに聞いていることだと思うのです。しかしそれが他から見られるとそういうふうに感じられるので、この際――この際だけじやありません。警察官の言動というものが、どんなに影響するかということを、よく良識をもつて判断してくれと言つておるのであります。ただ地方の、ことに町村におりまする駐在巡査などは、政治的感覚といいますか、ことに中央における政治感覚がにぶいのは、これはやむを得ない。私ども常識的に考えてこの静岡のある署で調べたのは、一体なぜそんなばかなことをするんだろうという感じがいたすのでありますが、政治感覚が非常ににぶい。こんなことが悪いことだろうか、なんで問題にされるのだろう、こんな感覚でいるのであります。これは府県あるいは市町村の日常の管理をしていただいている公安委員さん方に、良識をもつて御指導をいただくのに最も必要なことじやないかと考えております。従いまして、今度こういつた思想調査をやつたというような問題が起りましたところには、特に公安委員さんの意見を聞いてそうして警察が何をやつたか、公安委員さんにも率直に判断してもらうように私は指導いたしております。どうぞその点は御了承いただきたいと思います。
#15
○門司委員 もう一つ聞いておきたいと思います。この思想調査の問題について、これは少し私の考え過ぎかもしれませんが、文部大臣はある程度報告を求めることができるようになつている。もし文部大臣が、いろいろな調査といいまするかについて、思想調査とまでは行かないと思うが、ある程度教員の活動その他についての報告を受けることになつているが、これはおそらく当該教育委員会から報告を受けることになるだろうと考えている。従つて今度こういう問題が起つておりますその一つの原因としてこれはさつきも申し上げましたように、少し私の思い過しかもしれないが、あるいは文部省から来る間合せといいまするか、そういうことのために、地方の教育委員会から何らかの連絡がありはしなかつたかという気がしないでもないのであります。もしこの点について当局でお気づきの点等があれば、この際ひとつ御発表願つておきたいと思います。
#16
○斎藤(昇)政府委員 参議院の文部委員会でもいろいろお尋ねがございましたが、文部省が各地方の教育委員会に対しまして、教育の中立性を害するような趣旨の教育の事例があるかないかという通牒を昨年の暮れに出されたそうでございます。実は私自身といたしましては、そういう通牒が出されたことさえも知らぬでおりました。この十四日の日曜日でしたか新聞記者の方が来られまして、茨城でこういう問題が起つている、お前知らぬか、そうですかというわけで、初めて私はそんな通牒が出たのかなあと思つた。本部のたれもそういうことは知らぬでおりました。また末端の府県におきましても、地方の教育委員会からそういうことを依頼されたことはないと私は思つております。従いまして、文部省の調査と警察官の調査とは全然関係がなかろう、こうただいまでは思つております。
#17
○門司委員 大体わかりました。国警長官としては非常に遺憾なことだというお考えのようでありますが、先ほども私申し上げましたように、ためにするための一つの宣伝だというような言葉は、ひとつこの際取消しておいてもらいたい。このことを長官に対して好意的に申し上げておくつもりであります。何も抗議的にやかましいことを言うのではございません。たまたまそういう問題が起つているときに、もし長官がそういうお考えだとするならば、それはいかにも教職員組合をさされてこれの反対運動をやつている者に対する一つの挑戦的な言辞だと考える。従つてもし長官からさきのようなお言葉があるとするならば、もう一つ念のために明いておきたい。もし思想調査をしたというような現実が現われて参りました場合、一体国警長官としてどういう御処置をとるか。この点をあわせてお聞きしておきたいと思います。
#18
○斎藤(昇)政府委員 私は、ためにせんためにしているものじやないかとさえも思えると申したかもしれません。言葉が足りなかつたら訂正をいたしますが、さように思われてもしようのないようなものじやないだろうか。これはだれがためにせんためにしているかわかりませんが、先ほどから申しておりますように、こういうことが出ますことは、教職員組合の方々に対しても、私はよいことじやないと思います。そう思うと、一体何でそんな――先ほど申しましたような事例を調査されたならば調査をされたといつているのだろうが、私は教職員の方々にも迷惑のかかることじやないか。警察も迷惑する。いずれにしても、どういう意味で一斉にそういうものが出て来ているかということは――われわれ調べた事例で、なるほど静岡のああいうようなものは、これはいらぬ不届きなことではないかといわれれば、あるいはそうだと思います。しかし先ほど申しました出会いがしらにあいさつをしてどこへ行つていらつしやいましたと聞いたところが、それが調査されたとか、カバンのなにがどうであつたとか――私が詳しく申し上げたのは茅ケ崎ではございません。これは鹿児島の事例ですが、調べてみると、ほとんどそういうものが取上げられているというのはまことにおかしい。私はおそらく純粋な意味における教職員の方々も、思想調査として取上げられたことは、かえつて自分たちとして迷惑だ、こう思つておられるのではないかと思うのであります。
 第二点としてもし思想調査をしておつたならばお前責任をどうするかというお尋ねでございますが、もしさような事例がありますれば、先ほど申しておりますような意味から、日ごろの警察官に対する教育が十分徹底しておらないで、まことに相済まないと存じます。積極的に私らの方でそういう事例を出している者があれは、これは処置をいたします。さようなことは絶対にない、こう思つております。
#19
○西村委員 関連して――長官のお話をお聞きしておりまして、それでは事実をもつて、はつきりと対決しなければならない。これ以外に道はないと思うのでございます。一端を申し上げれば、私の知つている事実ではつきりしていることは、警備警察を担当しておる人が校長の奥さんのところに行つて、その教員の読書あるいは発言、そういうものについてとくと聞きただし、そして最後に、あの教員は少し危険思想を持つているから注意するように校長さんに言つてください、こう言つて帰つたという実例をはつきり知つておる。しかも、このたび静岡で行われた教育研究大会の前及びあとで、組合の事務所に一斉に各警察署の人々が行つて、今回出席する人々の氏名を探ろうとして組合の幹部に迫つたという事例も私ははつきり知つておる。こういう点から言いまして、そう申されれば、われわれははつきりと事実を握つて、それでもつて長官と今後話合いをしなければならないことになるわけですが、いずれにしましても、末端の警察官が教養が足らぬ、だから行き過ぎをやるのだ、それは遺憾だと仰せられるけれども、ただ遺憾だと仰せられるだけでなく、もう一歩進んでいただく考えはないか。すなわち、直接に教員の思想調査あるいはそのほかの調査をやれと、こういう指令を出さないにしても、警備を担当する人々の勤務はかくあるべしというような大綱を示して、その解釈があようにまちまちになつて行く、あるいは行き過ぎになつて行くということについて反省を勧める、こういうぐあいに行かないかどうか。それで、あの指令なり訓示なりにそういう行き過ぎがあるとするならば、あの指令、訓示にこれだけの制限を新しくつけて指令しなければならぬというような積極的な考え方を持つていただきたい。そういう点に対する長官の見解をお聞きしたい。
 それからもう一点は、この前の国会で、岩屋炭鉱の問題について、この席に佐賀県の国警隊長に来てもらつたことがありますが、あの際の審議は、第一組合員の幹部を、不法住宅侵入ですか、そういうことで逮捕して警察で取調べた。ところがその取調べの際に、第二組合の幹部を同席させて、あたかも警察職員であるがごとく待遇して、発言させておつたというような事例がある。そこまで行つて休憩になつて、あと隊長は行方をくらましたために、それ以上追究できなかつたが、最後的には国警長官としてそういう行き過ぎに対しては何らかの勧告をすべきである、こういう結論になつたと記憶しておるのです。それに対して国警側としてはその後いかなる指導をなされたか、それについてお伺いしたい。
#20
○斎藤(昇)政府委員 第一点の調査の問題でありますが、これは私どもといたしましても、うやむやにしておくことは非常によろしくないと思つております。真相をはつきりさせて、改めさせるような点があるならば改めさせなければなりません。事実無根であるなら無根だ、あるいはこういう間違いが起つておるなら、こういう間違いが起つておるということをはつきりして、これを世間に明らかにする責任があろうと私は思つております。従いまして、ただいま西村委員のおつしやいましたこういう行為はやめさせたらよかろうということを言つたということは、私は今初めて伺いましたが、もしそういう事例がありましたら、これを具体的にお知らせいただきまして事実であれば、どういう状態のもとでやつたか、必要に応じた適当な処置をするように注意しなければならぬと思います。従いまして、どうか具体的にお知らせをいただきたいと思います。
 それから警備担当の警察官について、調査の仕方その他について改めさせるような点はないかというお尋ねでありますが、いろいろ新聞に出ておりますのは、警備担当の警察官じやございません。ほとんどみな、駐在巡査であるとか外勤の巡査であるとか、そういう警備の担当をしているものじやないのでございます。だからこそなおさらわれわれは、思想調査というようなそんなものはやるはずはないと思つておるのでございます。
 それから岩屋炭鉱の問題について第二組合の者と同席をさせて調べたという問題につきましては、その後私の方でもよく調べてみましたが、さような事実はございません。岩屋炭鉱その他の場合においても、あるいは労働委員会その他でもいろいろ御議論がございましたが、私は隊長に対して、日ごろから労働組合との間をもう少し緊密な状態にしておいたらどうだろうということを、会うたびに話をしておるのであります。これは私は労働組合側の方々にも申し上げております。そうであれば、ああいう事件が起ります際にでも、もつと円滑に行くのじやないか。労働組合側の方へ行つていろいろ話を聞くと、これは何か労働組合をスパイに来たのではないかと一方は警戒する。また行つてそういう目で見られては困るというので、全然組合の幹部の方々とも知合いがないというと、つまらぬところでつまらぬ誤解を起して、誤解のために、警察側がやらなくてもいいような実力行使をやらなければならぬような段階になつて来たりするので、日ごろからもう少し労働組合の幹部の方々と、密接に意思の連絡があればどちらにも幸福だろうということで、さように私は指導をいたしております。岩屋炭鉱の労働組合の方とは、以前からも全然絶縁状態にあつたのではないので、労働組合の第一組合、第二組合の両方の幹部の方々とも十分意思を疎通さしておつたと言つておりますが、私は、労働組合の方々も警察を毛ぎらいされないで、また警察の方も労働組合の方々に対してそう遠慮しないで、もう少しあからさまに話し合つて、通常な状態にあるということが一番望ましいのではないか、かように考えて指導をしておる次第であります。
#21
○大矢委員 私は、先ほど大臣が説明した警察法の審議にあたつての資料を要求したいと思います。第一に、自治体警察、国家警察になる以前の警察官の人数、府県の配置、これを両方ともぜひひとつ出してもらいたい。それから次に、二十四時間、つまり一昼夜以上警察に身柄を拘束されて、そうして起訴になつた人と、微罪不起訴の人と、それからまつたく関係なしに単なる嫌疑であつた、申訳ないといつて放免された人、この数が自治体警察並びに国家警察の両方でどのくらいあるか、その数をぜひ知らしてもらいたい。それから次に、警察官がピストルを持つたために、威嚇発砲あるいは不注意などによつてけがをした者の数、それからそのために処分を受けた警察官の数と、それからいま一つは、盗難にあつたか、あるいは新聞に見るように、警察が攻撃を受けてとられたピストルの数、非常にこまかいようでありますが、これがわかりましたら、ぜひひとつ出してもらいたい。
#22
○斎藤(昇)政府委員 ただいま御要求の資料の中で、第二番目に二十四時間とおつしやいましたが、これは四十八時間ではいかがでしようか。四十八時間で警察の持ち時間が切れまして検事がさらに勾留を続けるか、あるいはそのまま釈放するかという切れ目になりますから、四十八時間の調べをさしていただいた方が調べやすいと思います。他の資料につきましては、できるだけすみやかに、でき次第こちらにお出しをいたします。
#23
○大矢委員 拳銃によつていろいろ被害を受けている人がありますから、そういう犯人を逮捕するための威嚇発砲、その他群衆を整理するというときに発砲したとか、また不注意によつて、公務執行以外でうちで家族がけがした人もある、そういうことのいろいろな区別ができればなおけつこうですが、それをぜひひとつお願いします。以上であります。
#24
○中井委員長 資料の要求について政府御当局はわかりましたね。それではなるべく早く御提出を願います。
 なおこの際御報告をいたすべきことがございます。すなわち、二重橋事件に関しまして、去る一月三十日本委員会のなされた決議による警告は、同日これを委員長より警視総監、皇宮警察本部長、国警長官、宮内庁長官らにいたしておいたのでありますが、本月十一日付をもつて警視総監より委員長あて通報書が参りました。この通報書は本委員会の警告に反省して警視庁がなしたる処置と考えられますので、この際特にその内容を御報告をいたします。すなわち、「通報書
   二重橋事件に関する件
  二重橋事件についての貴委員会の御決議の趣旨に副い将来かかる悲惨事を再び繰返さないよう別添の通り、丸の内警察署長に対し指示しこれが万全を期することに致しましたので通報致します。
「別添書、命令甲第一一号、昭和二十九年二月十七日付、警備第一部長より丸の内警察署長あて
  参賀記張に際しての雑沓整理警戒取締について
  従来皇居における各種参賀記帳に際しての雑沓整理警戒取締については、皇宮警察部から協力方の要請に基き相互緊密なる連絡を計り警戒取締に当つてきた処であるが、偶々去る一月二日一般参賀に際し二重橋(石橋)上において不測の事故が発生し、多数の死傷者を出すに至つた事例にかんがみこの事故の原因の究明に努め、再びこのような悲惨事を繰返すことのないよう、今後における警戒に当つて部下一般に対し教養の徹底を図ると共に左記事項に留意し遺憾なきを期せられたい。
右命令する。
  なお二重橋事故に対する衆議院地方行政委員会の調査結果に基づく警視庁、皇宮警察本部(国家地方警察本部)及び宮内庁宛の警告文並びに東京地方検察庁の捜査結果に基づく検事正談百要旨の写を添付するから、その内容を検討し、具体的原因の究明に努め、今後の参考に資せられたい。」
 なお命令事百項といたしまして、第一より第五項に至るまで具体的に種々の指示をいたし、将来、再びあのような悲惨事のないことに努めていることが明らかにされております。第一項ないし五項の記載中項はこの際省略いたします。
 以上であります。
    ―――――――――――――
#25
○中井委員長 なお本日は警察関係両案につきましての政府の説明は終つたのでありますから、この際問題を別にいたしまして前回に引続き昭和二十九年度地方財政計画に対する質疑を続行いたしたいと思います。質疑の通告がありますから、順次これを許します。大石ヨシエ君。
 なお本日の政府委員としての出席者は、自治庁次長鈴木俊一君、財政部長後藤博君、税務部長奥野誠亮君であります。
#26
○大石委員 奥野さんに質問いたします。きのう私が入湯税をとるということに対して質問したときに、後藤さんは、この入湯税というのは当然とつてもよいとおつしやつておりましたが、病人から病人の中には金持もあり、貧乏人もある、それをとつてもよいとおつしやつた。後藤さん、私の言うことを聞いておりなさいよ。この間接税というのはとまつた宿屋がごまかすのです。あなた方は間接税というものをどういうふうに考えていらつしやいますか。現在日本が漸次フランスのごとくなつて、そして間接税が多くなつているが、この間接税で非常にごまかすことを多数の者が考えている。この間接税についてあなた方の見解を聞きたい。
#27
○奧野政府委員 入湯税その他の税についてお尋ねがございましたが、結局は国民全体が納税意欲を持つてもらわなければならないことだろうと思つています。また納税意欲を高めて参りますためには、課税上公正妥当な制度に持つて行くということも必要なことだと思うのでありまして、両々相まつて納税の成績を上げて行く、こういう方向に努力して参りたいと思つています。
#28
○大石委員 税がよく納まるようにするにはどういうふうにしたらよいですか、教えてちようだい。
#29
○奧野政府委員 それはむしろ大石さんに教えていただかなければ相なりませんが、私たちの考えておりますのは、町村税であります場合には、市町村の歳出がどのような方向に充てられているか、こういうことにつきまして、市町村住民によく承知していただく、またそういうことについて市町村住民が納得するような歳出の運営が行われていなければならないだろうと思います。それらの財源を税として徴収していただくわけでありますが、その場合に課税制度というものが公正なものでなければなりません。そういうような形において、納税の意義というものを十分理解してもらう、そういうことによつて漸次成績を高めて行きたい、かように考えていることを申し上げておきます。
#30
○大石委員 あなた方は遊興飲食税をおとりになつているけれども、料理屋やお茶屋はたいてい、ごまかして政府に納税しないんです。これはよく御存じでしよう、あなた方もよく飲みに行かれるからね。そこで病人が入湯したからといつてそれに対して入湯税をとることはあんまりではないか。
    〔委員長退席、佐藤(親)委員長代理着席〕
それから荷車税をとる。いくら日本が敗戦で貧乏になつても、荷車に税金をかける、これはひどいじやありませんか、どういうお考えですか。
#31
○鈴木(俊)政府委員 入湯税を病人からとる、あるいは荷車税をとる、このようなことはいかにも零細な税の対象をつかまえて課税することでありますから、適当でないという御見解のように承りましたが、地方団体がやつております仕事に必要な限度において税をとるわけでございますから、ただいまの情勢におきまして、どういう税の対象をつかまえて、その財源を得るかということにかかつて来るわけでございます。農村等におきましては、やはり他に目ぼしい税の対象というものが少いわけでございますので、荷車のようなやや零細なものではございますが、そういうものに対して年額二百円程度の税負担をしてもらうこともやむを得ないことではないか、将来もしもその辺の関係が、さようなものからとる必要がないような事態になりますれば、やはりかような種類の税は一番先にやめる方がいいだろうということは私も考えますけれども、現在の地方、ことに町村財政の実態から申しましてこの程度のことはやむを得ないのではないかと考えるのであります。
 それから入湯税の方でありますが、これも昨日申し上げましたように、病人等からとることは適当でない、あるいは非常に気の毒な事情にある者が、たまたま温泉に入るからといつて税をとるのは適当でないというお気持はよくわかるのであります。しかしこれも温泉に湯治に行くという際は、ある程度の担税力の出るときでありますし、また病人と申しましても一概に同じ窮境の事情にある者のみとは限らないわけでございますから、法律も一般の規定といたしましては、一日二十円ということで規定してあるわけでございますが、御指摘のような非常にお気の毒な事情があります者については、それぞれの町村等において適当に条例で減免の措置を講ずることも、地方税法上できるわけでございまして、一般法といたしましては、かような形の規定を置きますことも、現下の地方財政からしてやむを得ないのではないかというふうに考えておる次第であります。
#32
○大石委員 それでは一日二十円で温泉に入るでしよう、それで宿屋がごまかしたらどこに証明があるのでずか。これはどういうふうにしていらつしやるのですか。宿屋がごまかすじやありませんか。病人が払つても宿屋がごまかす。こういう、ごまかす税金をとる入湯税なんて、私はちやんちやらおかしいのです。これは一日入湯して二十円に対する受取証か何か持たすのですか、どういう方法で徴収なさるのですか、それをまず聞きましよう。
#33
○奧野政府委員 温泉、浴場における入浴客の員数は同時に遊興飲食税の課税対象といたしまして、宿泊等の行為もあるわけでございますので、やはり毎日何人くらい宿泊しているだろうかということについても調査して参らなければなりません。また同時にこのことはその旅館の所得を調査いたします場合にも、年間における売上額がどれくらいあるだろうかということもわからなければなりません。その売上額を知りますためには、やはり毎日の宿泊員数というものがわからなければならないわけであります。従いましてどの程度宿泊しているかという員数は、これらの関係資料としてそれぞれの機関に提出を求められていると思つております。また時期やあるいはまた他の旅館における員数を比較して参りますと、ある程度正当な員数がつかめるのじやないだろうかというふうに考えておりす。
#34
○大石委員 そういう甘い考え方を持つておるからだめなのです。これはみな病人が支払つても、納税する者はないのですよ。もつと適当な合理的な方法でとるのだつたらいいけれども、こんな病人が、しかも貧乏な者が入湯する、その税金をとる、けちな税金はやめてほしい。それからまた荷車税をとるなんてこれは今国会でぜひやめてほしい。
 それからきのうも申したように遊興と飲食とを別にする必要があります。われわれ宿屋に泊つても遊興飲食税をとられるのは困る。今後どういうふうにしてくださいますか、それを伺いたい。
#35
○鈴木(俊)政府委員 遊興という名前を普通の旅館に宿泊いたしました場合におきましても冠せられて、税をとられるということははなはだ実態に即しないし、不適当である、こういう御見解には私も深く興味を持つて拝聴いたしておるのでありますが、遊興飲食税という名前を、私どもは遊興または飲食税という意味に考えまして、普通の旅館に泊つた場合は、これは、「又は」の下の飲食税という意味において考えておるのであります。しかしそれはいかにもこじつけたりくつのように思います。また税は名前がどうであろうと、実際の負担の問題であろうかとも思いますけれども、しかし納税意欲を振起するという点から申しますと、実態に即しない、名前が不適当だということは確かに御指摘の点があろうと思うのであります。ただ相当長く遊興飲食税という名前が、すでに一般に慣熟して来ておる面もありますので、一応今回の地方税法の改正案として政府がただいま用意いたし、提案をいたそうとしております案におきましては、この点は今後の研究にまつことといたしまして、特に今改正をする案を用意いたしていないのであります。しかし御意見のほどは今後なおさらに研究させていただくことにいたす次第であります。
#36
○大石委員 御意見のほどはよく拝聴するとおつしやいましたが、やはり悪いことはただちに改めてほしいと思うのです。
 それから私ちよつと気がついたのですが、魚屋さんが出前を持つて行つているでしよう。あれは何百円も持つて行つておるのに、それには税金がかからぬ。また言いますけれども、私はすしが好きなのでよく食べるのですが、すし屋に遊興飲食税がつくということはちよつとおかしいですよ。それなら魚屋さんが出前を持つて行つておるのに対しては、どういうふうな税金をおとりになつておりますか。魚屋さんはかつてに出前を持つて行つておりましように、これに対しては税金はひとつもかかつておらぬ。脱税しておる。これは一体どうしてですか。あなた方は何でもよく御承知ですから、ちよつと知らしてください。
#37
○奧野政府委員 原則として飲食店における飲食をとらえて課税するのでありますが、それがおつしやいますような、料理屋へ行くのでなしにその他の場所において飲食される、その飲食の行為を把握して遊興飲食税を課することが困難だという場合はあり得るのでありまして、そういう場合は源泉で課税する、こういう考え方から持込み料理をつくつております場所を把握して課税する、こういうような方式を採用しているわけであります。
#38
○大石委員 それは源泉所得税でとる、そうすると人が死んでお通夜にすし屋がすしを持つて行くと、それに遊興飲食税がかかる、これはちよつとおかしいじやありませんか。これはあなた方どういうふうな見解をお持ちですか。
#39
○奧野政府委員 ただいまも申し上げましたように、料理屋の飲食において課税するのが原則であります。しかしながら、その他の集会場所等におきましても類似の行為が行われるものでありますので、たまたま行われたということで、ただちに遊興飲食税を課税して参りますことが事実上困難でございます。それで、そういう場合を中心にしまして持込み料理について課することができるという課税の権能を府県に与えているわけであります。従いまして府県がこの課税の権能を行使する場合には、若干その持込み料理をやつております実態に課税していないところもあろうかと思います。大石さんのおつしやいましたような場合も、中にはあろうかと思うのでありますけれども、たまたま例外的な事例として課税されているんじやないだろうか、そういうものを課税するのは本体ではないのであつて、私が先ほど申し上げましたような事情から、やむを得ず持込み料理についても課税の権能を与えている。その結果は例外として御指摘になりましたような場合も課税されて来ることがあり得る、かように考えていただきたいのであります。事情がかなり千差万別でありますので、やはり実地に即して運営されて行かなければならないだろうと思つております。そういう意味合いで法律上の課税の権能を与えるにとどまつておりましてこれは条例の定めるところによりまして、府県の実態に即した権能の行使をやつてもらおう、かように期待しておるわけであります。
#40
○大石委員 そうすると、少しこすつからいものは間接税をごまかす、ごまかしてもよいのはすなわち間接税である、大きな料理屋はそれをごまかす、そうして勤労大衆が酒を飲みに行く一ぱい屋には遊興飲食税として課税する。結論は、国民大衆はこの間接税をごまかしてよい、大きなところはみなごまかしておる、そういうふうに解釈してよろしゆうございますね。
#41
○奧野政府委員 そういう気持が国民の間に起きないように、税の制度の上においても整備して参らなければなりませんし、その運営についても、さらに一層努力を払つて行きたい、かように考えます。
#42
○大石委員 零細な荷車税とか入湯税とか、それからすし屋に税金をかける、めん類屋に税金をかける、勤労大衆が働いて帰る途中にしようちゆう一ぱい飲むのに税金をかける、そうして高級料理飲食店というようなところはごまかす。それでは、弱いものは税金をとられ、正しいものはいつも下積みに場なつておるのがこの遊興飲食税だ、間接税だということになる。しから、ばこれをただちに改めたらどうですか。私がこんなに熱心に言うておるのです。改めるのがあたりまえじやないですか。
#43
○奧野政府委員 お話のような気持を持たれている向きもかなりあるだろうと思つております。私たちは、これを解決するためには、高級料理店等におきます飲食に対する遊興飲食税の徴収を現状のままにほつておくのではないのであつて、法規通りに徴収して行きたい、こういうことにわれわれの努力の中心を置いて行きたい、そして漸次国民の気持にそぐわない面のあるような税務行政を是正して行きたい、かように考えておるわけであります。
#44
○大石委員 これはいくら言うたつて同じことですが、高級料理店は遊興飲食税をごまかす、小さいものは徴収される、そういう弱いものいじめの税金を、あなた方はそれでよいと思つていらつしやるか。この際にこれを改めて、何とか手を打つていただきたい、これを私は要求するのです。
#45
○奧野政府委員 お話のような点もないわけではありませんので、国会におきましても所得税等の結果に徴して、遊興飲食税額を更正することができるというような権能も挿入せられたわけなのでありまして、制度的にもこういう高級料理店における遊興飲食税の徴収をさらに厳格に履行させることができるように持つて行きたいと考えているわけであります。
#46
○大石委員 これはいつまでたつても、あなた方はとろうと言う、こつちはいけないと言う、これはひとつ相談しようじやありませんか、青木さん、どうですか。
#47
○青木(正)政府委員 ただいま大石委員のお話でありますが、地方税法の改正案が追つて提案されることになつておりますので、その機会に十分御検討をお願いいたしたいと存じます。
#48
○大石委員 宿屋にわれわれがとまつても、何も芸者をあげて散財するわけでもないのに遊興飲食税をとる、こんなばかな法律がありますか。この際に採決してちようだい。
#49
○佐藤(親)委員長代理 地方財政計画の質疑の通告が阿部五郎君、大矢省三君、西村力弥君、三人あるのであります。従つて採決はできませんから今日はこの程度で……。
#50
○灘尾委員 本日はこの程度にして散会せられんことを望みます。
#51
○佐藤(親)委員長代理 ただいまの動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
#52
○佐藤(親)委員長代理 それでは本日はこれにて散会いたします。
    午後四時散会
ソース: 国立国会図書館
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