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1953/04/14 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第34号
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1953/04/14 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第34号

#1
第019回国会 外務委員会 第34号
昭和二十九年四月十四日(水曜日)
   午前十時三十七分開議
 出席委員
   委員長 上塚  司君
   理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君
   理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君
   理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君
   理事 戸叶 里子君
      大橋 忠一君    北 れい吉君
      佐々木盛雄君    岡田 勢一君
      須磨彌吉郎君    上林與市郎君
      福田 昌子君    細迫 兼光君
      加藤 勘十君    河野  密君
      西尾 末廣君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 木村篤太郎君
 出席政府委員
        法務局長官   佐藤 達夫君
        検     事
        (法制局第二部
        長)      野木 新一君
        保安政務次官  前田 正男君
        保安庁次長   増原 惠吉君
        保安庁局長
        (保安局長)  山田  誠君
        外務政務次官  小滝  彬君
        外務事務官
        (アジア局長) 中川  融君
         外務事務官
        (条約局長)  下田 武三君
 委員外の出席者
        検     事
        (刑事局公安課
        長)      桃澤 全司君
        専  門  員 佐藤 敏人君
        専  門  員 村瀬 忠夫君
    ―――――――――――――
四月十四日
 委員中曽根康弘君辞任につき、その補欠として
 須磨彌吉郎君が議長の指名で委員に選任され
 た。
    ―――――――――――――
四月十日
 日本国における国際連合の軍隊の地位に関する
 協定の締結について承認を求めるの件(条約第
 一六号)
 日本国における合衆国軍隊及び国際連合の軍隊
 の共同の作為又は不作為から生ずる請求権に関
 する議定書の締結について承認を求めるの件
 (条約第一七号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 連合審査会開会に関する件
 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案
 (内閣提出第一一四号)
 日本国における国際連合の軍隊の地位に関する
 協定の締結について承認を求めるの件(条約第
 一六号)
 日本国における合衆国軍隊及び国際連合の軍隊
 の共同の作為又は不作為から生ずる請求権に関
 する議定書の締結について承認を求めるの件
 (条約第一七号)
    ―――――――――――――
#2
○上塚委員長 これより会議を開きます。
 まず連合審査会開会の件についてお諮りいたします。日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案について、法務委員会より連合審査会開会の申入れがありますので、これを受諾いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○上塚委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。
    ―――――――――――――
#4
○上塚委員長 日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の締結について承認を求めるの件並びに日本国における合衆国軍隊及び国際連合の軍隊の共同の作為又は不作為から生ずる請求権に関する議定書の締結について承認を求めるの件を一括議題といたします。政府側より提案理由の説明を求めます。小瀧外務政務次官。
#5
○小滝政府委員 ただいま議題となりました日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の締結について承認を求めるの件並びに日本国における合衆国軍隊及び国際連合の軍隊の共同の作為又は不作為から生ずる請求権に関する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 政府は、国連軍のわが国における地位及び同軍隊に与えられるべき待遇を規定する協定を締結するため一昨年七月関係国政府と交渉を開始いたしました。本交渉は、刑事裁判権及び若干の財政経済問題等について双方の主張が対立したため一時停頓するのやむなきに至りましたが、幸い昨年八月NATO協定の効力発生に伴つて日米行政協定の刑事裁判権条項がNATO方式に改訂されましたので、国連軍についてもわが方の主張通り方NATO式による刑事裁判権条項を合意し、昨年十月とりあえずこれに関する議定書を締結いたしました。
 よつて、残る財政経済問題について、すみやかに妥結をはかり国連軍に関する諸懸案を解決することは、わが国の国連支持の建前からも緊要と認められましたので、極力折衝に努めました結果、国連軍側においてもわが方の立場を了解いたしまして、呉、広地区における相当数の施設の返環、労働調達における間接雇用方式の採用を認める等の譲歩を行う意向を示して参りました。これにこたえて、わが方も大局的見地から米軍との均等待遇の方針をもつて財政経済関係諸懸案の解決をはかりました結果、交渉は、円滑に進捗し、一年半余にわたる本協定交渉も妥結いたしましたので、去る二月十九日にわが国と統一司令部としての米国政府並びに英連邦諸国及びフイリピン共和国政府との間でこの協定に署名を行つた次第であります。
 なおこの署名と同時に、日本国における合衆国軍隊及び国際連合の軍隊の共同の作為又は不作為から生ずる請求権に関する議定書の署名を行いました。これは、国連軍協定が在日米軍を規定の対象としておりませんので、民事上の請求権条項において二以上の派遣国が共同に責任を有する場合の請求権の処理について、その関係派遣国の一が米国である場合に対処するために、米国政府が統一司令部として行動するアメリカ合衆国政府としてではなく、アメリカ合衆国政府自身の資格において別個にとりきめられたものであります。
 右の協定及び議定書のいずれに対しましても、わが国は受諾を条件として署名いたしておりますので、すみやかにその受諾を行うことにより、この協定及び議定書を締結することといたしたい所存であります。つきましては、その締結について国会の御承認を求める次第であります。慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
#6
○上塚委員長 ただいまの両件に関する質疑は、審議の都合上後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#7
○上塚委員長 この際緊急質問を許します。戸叶里子君。
#8
○戸叶委員 けさほどの新聞にMSAで大麦、小麦を買いつけるというふうな記事が出ておりました。その中に「MSA協定の暫定措置に関する交換公文で協定批准前の輸入契約に対し」と「交換公文」という言葉が出ておりますが、この交換公文というものは別に国会にかけないでもいいものかどうか。これは国際的な、日本とアメリカとの関係のものでありますから、当然国会にかけるべきものではないかと思います。私どもこの内容を知りませんが、国会にかけないでいいものかどうか、外務省の方にお伺いいたします。
#9
○下田政府委員 MSAの小麦の買付協定を署名するにあたりまして、日米両国とも政府の権限内でできることは、ただちに実施しようという趣旨の交換公文を行つたのであります。そのねらいは、小麦でも米でも何でも買いつけることは政府の権限でできるわけなのでありまして、買いつけました結果いろいろな義務を生ずる点は、国会の御承認がなければ履行できないわけでありますが、物の買付という調達行為は、政府自身でできることでございますので、その政府自身でできることだけは先にやろうという趣旨の交換公文を行つたのであります。しかしながらこれは政府自身でできることをやろうということでありまして、国会の御承認を経るまでもなく政府の当然の権限でできることでありますから、これを国会にお出ししますことがかえつておかしなことになりますので、政府限りでやりました次第でございます。
#10
○戸叶委員 そうしますとこの種の交換公文というものは、いろいろな場合に国会の承認を経ずして出し得るというふうに了承していいわけですね。
 それから今度の小麦は、先に日本から立てかえてドルで買われたようですけれども、もしも批准されなかつた場合には、輸入契約は一般の商業取引に切りかえると書いてございます。そうすると日本からドルをそれだけ持ち出したことになると思いますが、そういうふうに了承していいわけですか。
#11
○下田政府委員 第一点に関しましては仰せの通りでございます。先ほど政務次官から提案理由の御説明のありました国連軍協定なども、調印の際に同時にその仮実施に関するプロトコルを署名いたしております。でありますから免税でありますとか、国有財産をただで貸す予算的措置、そういうようなことは国会の承認が得られまして初めてなし得ることであります。それ以外の便宜供与その他の政府の権限内でできることは、国連軍協定の御承認を経る前から仮実施の議定書によつて行える、それと同様の法律的関係であります。
 それから第二の点は、これも仰せのように協定がまだ発効いたさないのでありますから、他のアルゼンチンやカナダから買います小麦と同じように、一時手持ちのドルで立てかえて出すわけであります。そこで協定が御承認になりますと、そのドルが今度アメリカから返つて来るということになるわけでございます。
#12
○戸叶委員 そのことはわかつておるのですけれども、まだ参議院で審議中ですから、もし批准されなかつた場合には、ドルが返つて来るということは言えないと思うのですが、そう了承していいかどうか。もしそうだとすれば、けさの新聞にも出ておりますように、カナダなりほかから買つた場合よりも、運賃が高くついておるわけです。そこで私どもから言わせるならば、安い方から買うべきではないか、こういう点が第二点。もう一点は、MSAによるために、日本の船を使わないで、半分アメリカの船によつて買うのだと思いますが、批准されない場合にはアメリカの船でなくて、日本の船でいいはずだと思うのですが、その点についてお伺いいたします。
#13
○下田政府委員 もし不幸にして協定の御承認を得られません場合には、この立てかえたドルは返つて来ないことは当然でございます。まだ協定が承認されるかどうかわからないのに、ドルを立てかえて、高い小麦を、しかも半分はアメリカ船を使つて、その運賃をなぜ払わなければならないかという点でございますが、高いという点は、前に経済局長から御説明いたしましたように、決して高くございません。また運賃の点もアメリカのみならず、アルゼンチン、カナダ、すべて日本船だけではとても輸送しきれないので、どのみち外国船を使つてある程度の外貨は払つておるわけであります。しかしながらこれらのリスクは、協定の御承認を得ましたら、すべて円で購入になつてしまうわけでありますから、調達といたしましては当然御承認を得られるとの予想のもとに、これらのほとんどとるに足らないリスクを冒して立てかえて買うということは、むしろ当然の措置であろうと存ずる次第でございます。
#14
○戸叶委員 私も政府が批准を得られるだろうという想定のもとになさつたとは考えたのですけれども、この新聞の中に、わざわざ批准が行われないときは、輸入契約は一般の商業取引に切りかえるというふうなことをいわれておりますので、批准を予想してならば、何もこういうことを言わなくてもいいのじやないか、なぜこういうことを言われたかということです。
#15
○下田政府委員 これは言わずもがなのことでございますが、日米双方の当局におきまして、非常に几帳面にそういう場合のことを心配される向きがございましたので、万一の場合に備えて、処置に困るということがないための予防線を張つたわけなのでありますが、実際問題としては、その条項が適用を生ずることはないと私ども予想しております。
#16
○戸叶委員 私はこの問題を打切りますけれども、ただMSA協定の中にも、当然私もどが不審に思う挿入すべき言葉を挿入しないで、何にも役に立たないことを挿入してあります。またこの言葉を新聞で見ましたときに、何かしらそれでは政府はこういうことを予想して発表されたのかしらと思つたので、私は質問したわけなのであります。
 もう一点次にビキニの問題でお伺いしたいのです。やはりけさほどの新聞によりますと、今まで被害を受けた漁夫の方々の病状やその他についての発表をされておりましたのを、今度は大学の教授が発表することを禁じられたということが書いてありましたが、それはどういう理由で発表を禁じられたか、その点を承りたい。
#17
○小滝政府委員 私の承知しておりますところでは、けさの新聞の情報によりますと、その理由としては、患者が非常に心配するから、そういうことは患者にも悪い影響がある、一方的にこういう発表があつて悪い影響があつてはいけないから合同でやろうというふうに了解いたしておりますが、別段特別な理由があるとは私ども解しておりません。
#18
○戸叶委員 そうしますと、大学の教授がそれを発表しても、政府としてはどうということをおつしやらないわけであり、そしてまた発表してもいいというふうに了承なさるわけですか。
#19
○小滝政府委員 この発表はいろいろな意味で非常に大きな影響を与えます。不必要な心配を与えるような場合もあるし、またそのために、たとえば日米間の貿易、まぐろの輸出というようなことにも影響があつて、大きく発表してかえつて貿易に阻害を来すというような場合もありますので、お互いに慎重を期さなければならない、そういう悪い影響のないように十分注意をしなければならないということは、各省の打合会などでも言われておるところでございまして、絶対に発表してはならないというようなとりきめがあるわけではありません。相互に注意しようという申合せであるにすぎないのであります。
#20
○戸叶委員 そうしますと、発表する場合には、お互いに話し合つた上でなければ発表できないとこういうになつたわけですか。
#21
○小滝政府委員 そうではないと思いますが……。ちようど今厚生省の係官が来ておりませんから、次の機会になつたらお答えできると思います。
#22
○戸叶委員 この問題は非常に重大な問題だと思いますし、また秘密保護法の問題とも関係いたしますので、はつきりとした御答弁をなるべく早くいただきたい。外務省といたしましては、今小瀧政務次官がおつしやいましたように、これは重大な影響があることだから各省で話し合つた上発表した方がいい、こういうふうにお考えになつていられるわけですか。
#23
○小滝政府委員 先ほど申しましたように、発表してはならないというような決定は全然ございません。しかしあまりアラーミングなことを病院または学者によつて全然違つたような発表をいたしますと、日本の大衆にとつても非常に迷いを与えるというようなことになりますから、お互いに慎重にやろうという話合いが関係者の間に行われておるというのが私が先ほど申した点であります。
#24
○戸叶委員 そうしますと、やはりその学者なり何なりが見た上で、事実は事実として発表してもかまわない、政府はそれにタツチしない、こういうふうに了承してもいいわけですか。
#25
○小滝政府委員 外務省は指令も何にも出しておりません。しかしできるだけ正確な、そうしてまとまつた意見が発表せられることが望ましいという意見を持つております。
#26
○戸叶委員 それではあとから厚生省の方からはつきりした意見をお伺いしたいのです。これに関連しまして木村保安庁官に一点だけ伺いたいのですが、たとえば秘密保護法に関係して来るのですけれども、原子爆弾なり水素爆弾、そういつたものが日本にありませんから、その情報がアメリカから秘密として来るような場合はないと思いますが、日本の学者が今回の被害などを通していろいろなことを知り、また研究を通していろいろなことを知つた場合に、これを公表しますと、その公表がアメリカの好ましからざることとなり、あるいはアメリカの秘密を守つてもらいたいことであるかもしれない。そういつた場合に、アメリカからそれは困るから発表するなということを言われた場合に、やはりこの秘密保護法が適用されるかどうかということを承りたい。
#27
○上塚委員長 戸叶君に申し上げますが、今すぐ秘密保護法に関する質問を許すことになりますから、その際にゆつくりお聞きを願いたいと思います。
#28
○戸叶委員 それはビキニに関係していたものですから、一言だけ伺つたのです。あとはしません。
#29
○木村国務大臣 お答えいたします。この秘密保護法で対象になつているものは、アメリカから供与を受けるもののうちに限定されておるのであります。日本で研究したものはこのうちに包含されません。さような場合には適用はありません。
    ―――――――――――――
#30
○上塚委員長 次に日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題といたします。質疑を許します。並木芳雄君。
#31
○並木委員 私の方の党はMSAの協定に賛成しております関係上、この秘密保護法についても好意的に検討して参つたのであります。しかし今までのところどうも疑問が多いのでありまして、にわかに賛成できない節がございます。そこで私は率直にお尋ねをいたしたいのでありますが、第一に船舶協定のときに同じような措置をとるべきことを政府はアメリカと約束をしてあります。しかるに今日まで私どもの関知する限りでは、立法措置のとられたことを聞いておりませんが、船舶協定のときに、どういうような措置をもつて秘密の保持に当るように措置をし、今日まで来たものでありましようか、まずそれをお尋ねいたします。
#32
○木村国務大臣 船舶協定の場合におきましては、御承知の通りアメリカから借り受けましたフリゲートのごく小部分、いわゆるレーダー装置その他通信機等にアメリカで秘密になつておるものがあつたのであります。これは今申し上げました通り、フリゲートに搭載されておるきわめて局部的のものでありますから、内部的に乗組員に十分にその点を了解せしめて外部に漏れないような処置をとれば、いわゆる秘密保持の手段を講じ得られたので、内部の行政措置でまかなつていたわけであります。今度の法案の対象となつているものは、それよりかむしろ広範囲で、しかも船の一部に搭載されているものに限らないで広く用いられるものでありますから、外部的に影響を及ぼすものなので、法案として提出したわけであります。
#33
○並木委員 内部の行政措置でまかなうことができるならば、私はそれが一番いいのではないかと思います。その点をお尋ねしたかつたわけで、今度の場合に秘密保護法という法律をつくつてしまつて、一般国民にこの影響を及ぼすことは、時節柄私は非常に慎重に行うべき問題ではないかと考えます。そこで今度の場合にやはり内部的の行政措置でまかなえないものでしようか、そんなにたくさん秘密保持を要するような新鋭兵器が来るのでしようか、私どもは大体そこにも疑問を持つわけです。おそらくあんまり来ないのじやないかと思うのですが、いかがでしようか。
#34
○増原政府委員 フリゲート関係につきましては、現在まではまだいわゆる修理等に出す段階でなかつたわけでありますが、これからはだんだんと修理等にも出して外部の人にその秘密区分についての分解、結合、修理等をやらせる必要も出て来るわけであります。そういうことで、これはやはり、法的措置をとるがよろしい。しかしもともとはいわゆるMSA協定に基きましてこういう法律措置をすることが適当であるということに政府として考えましたので、一括して船舶貸借協定の分も、将来は外部の方に修繕等のことで秘密区分のものを取扱わせることになるということで、これを一緒に法的措置をすることがよろしいという判断をしたわけであります。
#35
○並木委員 そうすると、主としてこれは修理の場合に必要である、こういうふうに、答弁からはとられますけれども、修理の場合に秘密が漏れるおそれがあるというところに重点がある、こう解釈してよろしいでしようか。
#36
○増原政府委員 修得の場合に重点があるというと、少し語弊があるかもしれませんが、今ただちに予想されるのは、そういうことであります。
#37
○並木委員 そうすると、修理の場合は、いわゆる政府から委託を受けたというものに入つて来ないでしようか。このMSA協定の附属書Bに「日本政府の職員又は委託を受けた者以外の者にその秘密を漏らしてはならない。」とありますが、修理をする者はこの「委託を受けた者」という範疇に入つて来ないでしようか。
#38
○増原政府委員 「委託を受けた者」というものに入つて参ります。MSA協定によるものはそれで参りますが、MSA協定でなくてもらつた、いわゆる船舶貸借協定でもらつたものは、これをうたいませんと、そこに入つて来ないということであります。
#39
○並木委員 そうすると、内部の行政的措置で間に合うのではないでしようか。そういう疑問を持つわけです。一般国民大衆に影響を及ぼすような法的措置を講じないで、内部でもって、これは機密事項であるから注意をしてもらいたいという行政措置だけで少くとも当座は間に合うのではないでしようか。
#40
○増原政府委員 現在までのいわゆるフリゲートについていいますと、修理、修繕等に出さない段階のフリゲートの秘密区分でありますと、ほとんどいわゆる隊員がこれに関与するわけですから、内部措置でまずまず十分やれる、しかし外部に修理に出すということになりますと、やはり秘密の保全のためには法的措置をすることが適当であるという判断になるわけであります。
#41
○並木委員 それから私はこの協定から受ける点で一つ大きな疑問を持つているのです。ただいま引用しました附属書Bの「日本国政府が第三条1に従つて執ることに同意する秘密保持の措置においては、アメリカ合衆国において定められている秘密保護の等級と同等のものを確保するものとし、日本国が受領する秘密の物件、役務又は情報については、アメリカ合衆国政府の事前の同意を得ないで、日本国政府の職員又は委託を受けた者以外の者にその秘密を漏らしてはならない。」という書き方を読んでみますと、この義務を負つているのは、主体は日本国政府である、そう感ずるわけです。従つてこの協定から生ずる義務というものは日本国政府が、その秘密を政府の職員または委託を受けた者以外に漏らさないような措置をすればいいのであつて、それを漏らした者はどうするこうするということに対してまで、罰則まで設けてこれを取締れという趣旨ではないというふうにとれるのでありますけれども、この点についての見解はいかがでしようか。
#42
○増原政府委員 今お読みになりましたものは、「執ることに同意する秘密保持の措置においては、アメリカ合衆国において定められている秘密保護の等級と同等のものを確保するものとし、」という書き方をしてあるわけであります。もとより秘密保護法をつくりますことは、外務大臣からしばしば申し上げてあると思いますが、条約上の義務でありません。しかしそうした秘密保護を適切に行いますためには、たとえばMSA協定でいろいろ援助を受けている各国の例を見ても、これはその際に法律措置をとつたのではありませんが、いずれもこういう秘密保護の法律を持つているということでありまして、やはり法律措置をした方がよろしい。そういう秘密保護をする約束をしたのは、アメリカ合衆国と日本国政府で、もちろん日本国政府の責任であります。しかしその責任を適当に充足するためには法律措置をとつた方がいいというふうに政府は判断をした、こういうことであります。
#43
○並木委員 協定自体からは、先ほど私が申しましたような疑問が生ずると思うのですが、条約局長はこの点はいかがですか。私はなるべくこの協定に基く措置というものの範囲を狭めて、日本国民に影響を及ぼさないようにしたいという趣旨から質問しているのでございます。
#44
○下田政府委員 ただいま増原次長のおつしやいましたように、附属書Bに掲げられている二つの義務は、いずれも政府の義務でございます。
 第一点は、「秘密保護の等級と同等のものを確保するものとし、」とあります。なるほどこの秘密保護にあたりまして、物件にタツチいたします者は保安隊員であり、あるいは一般国民であるわけでございますが、それらの者をして秘密を漏らさしめないように確保するということは、これは政府の義務でありますし、それから後段の、日本国が受預する秘密の物件その他のものの秘密を漏らしてはならないということは、たとえば新聞記者からフリゲートにあるレーダー装置を見たいという申出に接した場合に、これをアメリカ側の同意を得ないで、日本政府当局限りで第三者に見せたりすることをしてはならないということも、これまたひとしく政府の義務でございます。それで確保する措置としまして、ただいま増原次長の申されましたように、何も立法義務を負つているわけではないのでありますが、並木さんの御意見通り、日本がすみやかに優秀なる装備、武器をもらうためには、もし確保をする措置が立法手段によつて十分に請ぜられておりません場合には、アメリカは不安心で、優秀なものはよこさぬということになると思います。でございますから、日本政府の独自の見解といたしましては、どうしても英仏その他の諸国並に立法措置を講ずることが、この協定の精神から見まして適当であると判断いたしたような次第でございます。
#45
○並木委員 アメリカの立法措置は、今度のこの秘密保護法と大体同じようなものですか。罰則なども、十年以下の懲役に処すというふうに足並はそろつておりますか。
#46
○山田政府委員 アメリカの罰則関係につきましては、お手元に参考資料(ニ)というのを御配付いたしてございますが、アメリカの法令は、罰則の点は平時においてはおよそ二十年以下ということで、罰則の量刑の点については、必ずしもアメリカ側と今回の日本側の法案との足並はそろつておりません。
#47
○並木委員 内容は……。
#48
○山田政府委員 内容は法体系が違つておりますので、軽量の比較ははつきりできませんけれども、アメリカの方の規定は大まかの規定のやり方になつております。
#49
○並木委員 秘密保護法というものでがつちりと固めておかないと、優秀な兵器が来ないかもしれないという答弁でありますけれども、この秘密保護法を成立させて、MSA関係の協定が成立しますと、先ほども私質問したのですが、秘密保護法を必要とするような優秀な兵器が相当来る見通しはあるのですか、ことに先般来交渉しております千五百トン以上の艦艇についてその後の交渉の経過はどうなつておりますか、こちらの申出通り先方は承諾して、早急に艦艇貸与の実現が期せられるのでありますかどうか、これらの点についてお聞きしたい。
#50
○増原政府委員 向うからMSAに基いて借受けますものにつきましては、先般来他の機会にお話をしたように思いますが、陸については大体三管区分ということで、三管区分の砲、戦車、機関銃、自動銃、小銃というふうなもので下相談を今やつておる段階であります。船の方は十七隻、二方七千トンばかり、これも先般来こまかく申し上げたと思いますが、航空機が百四十三、そうしてこれについてはまだ話合いが大いに進捗しておるという段階に行つておりません。陸の方はこまかい問題を含めます細目についての技術的な話合いは大いに進捗をしておりますが、しかしその中にどういういわゆる秘密区分のあるものをくれるかというふうなこともまだ明らかにはなつておりません。なお船についての御質問がありましたが、これもいろいろ法律手続においても考えなければならぬ点が若干あるようでございますが、まだわれわれの期待しておるものについてどの分は確かに差上げるが、どの分は差上げられないというふうなところまでは参つておりません。ある部分について相当これは大丈夫であろうという見通しを向うの係官が述べておるものが数隻あるという程度で、まだこの話合いはこれから進捗をさせるべき段階であります。
#51
○並木委員 その数隻はどれですか。
#52
○増原政府委員 まだ向うの係官が申しておる段階ですから、ここで申し上げることは差控えたいと思います。
#53
○並木委員 この交渉は割に簡単に行くと思つておつたのですけれども、案外難色があるようでございます。ただいまの答弁ではやや抽象的であつてわからないのですが、はかどらない原因をもう少し詳しく知らしてもらいたい。
#54
○増原政府委員 特に予期に反してはかどらないということでもありませんですが、交渉の途中であるという段階であります。
#55
○並木委員 見通しとしては大体その通り行きそうなのですが。
#56
○増原政府委員 われわれとしては、われわれの期写るものだけは、ぜひもらおうというつもりで、鋭意折衝を進めておるのであります。
#57
○並木委員 陸の方で使うものの中に砲、戦車というものがあげられましたけれども、砲と戦車の中に秘密部分を含むようなものがありますか。
#58
○増原政府委員 先ほど申したように、まだその点明確ではございません。そうしてこれは秘密区分があるものについて一応想像をしてみましても、たとえば全体が秘密区分になるというようなものではなくて、その撃発装置であるとかいうふうな一部分に、秘密区分があるというふうなことも考えられるわけであります。まだどういうものであるかは今のところ明らかになつておりません。
#59
○並木委員 秘密を要するものは航空機なんかに多いのじやないかと思うのです。航空機の方の交渉はどういうふうになつておりますか。そしてまたその交渉をしておる航空機の中に秘密部分を含むと思われるものがあるかどうか、そういう点をお聞きしたい。
#60
○増原政府委員 航空機につきましても、秘密区分があるかどうかということについてまだよくわかりません。もらいたいという飛行機は、大部分は練習機であります。想像しますのに、練習機にはおそらく秘密区分はないものと思います。もつともよく混同されることがありますが、パテントの分はたくさんありますので、製造業者がやたらにこれを見てまねるということはできないものが非常に多い。これはパテントであります。秘密区分のものについては、練習機等にはおそらくなかろうと思いますが、少数のジエツト機等も期待しておりますし、秘密区分のあるものがあるかもしれませんが、まだその点明らかではありません。
#61
○並木委員 ただいままでの答弁ですと、特に秘密保護法を設けなければならないという対象になる秘密については、政府としても的確なものを把握しておらないようでございます。そういたしますと、今までは行政措置で行けたけれども、今後はこれでは間に合いそうもないということは、まつたく政府としては臆測の域を出ないと思うのです。もう少し的確に、高度の秘密を要するものが相当来るという見通しが立つてから、こういう立法措置をしてもおそくはないのじやないですか。
#62
○増原政府委員 今まで申し上げたのは、どういう秘密区分のあるものが来るか明らかでないということを申し上げたので、今までたとえば保安隊が使つておりますようなものには秘密区分はないということは、また先般来申し上げてある通りであります。今まで使つておる保安隊のものについては秘密保護法はいらないわけであります。これからMSA協定に基いてもらうものに適用をしよう、そうして砲にしても、戦車にしても、秘密区分のあるものが米国にはあるわけでありますから、そうした秘密区分のあるような優秀な能力の高いものをわれわれとしてはもらう。数多くもらうといよりも、そういう優秀なものをもつて少数、精鋭といいますか、そういう方式をとりたいと考えておるわけでありますから、制度としてはこういう法律を整えまして、アメリカ側としてもそういうものを出しやすい態勢をとることが、日本国としても適当であろう、こういうふうに考えるわけであります。
#63
○並木委員 フリゲート艦の場合に、秘密保持の行政措置に触れて処罰をされたり、あるいはまた処分を受けたような者がありますかどうか。
#64
○増原政府委員 ないと記憶しております。
#65
○並木委員 アメリカでアメリカの秘密保護法に触れて処罰をされた者に対しての実情をこの際知つておきたいと思います。
#66
○下田政府委員 米国において米国の兵士なり一般市民が米軍のどういう武器、装備の秘密を漏らしたかという実情は、お答えする資料をただいま持ち合せておりません。
#67
○並木委員 それを私どもとしてはぜひ参考に知りたい。それは向うで裁判は公開でどういう処罰を受けたとか、実績がわかつておるはずです。なぜ私がそれを知りたいかというと、今後この秘密保護法の実施によつて処罰を受ける者がちよいちよい出て来るとたいへんなわけでありまして、アメリカでは実際どういうふうになつておるかということは参考になりますから、お尋ねしておるわけでありますが、わかつておりませんか。
#68
○下田政府委員 おそらく米国でも軍のそういう秘密が漏れたことを発表いたさないと思います。これは軍自体につきましても名誉なことでもございませんし、決して発表すべき性質のものでないと思います。それからまたこの漏れることがないようにする予防的効果がねらいなのでございまして、先ほど増原次長がフリゲート艦につきまして今までないとおつしやいましたが、なかつたことがけつこうなのでありまして、人を罰するのが目的でございません、予防的効果が目的であるという点を御了承願いたいと思います。
#69
○並木委員 現在日本にいる米軍の駐留の秘密保持に関する特別法がございます。あれに触れて処罰を受けたものがありますかどうか。
#70
○桃澤説明員 いわゆる刑事特別法の第六条に今回の法律と同様の罰則がございますが、一昨年公布施行いたしましてから、今日まで起訴した事件は一件もございません。内偵程度のものはございましたが、起訴した事件は一件もありません。
#71
○並木委員 内偵程度のものは何件くらいございましたか。
#72
○桃澤説明員 正確な統計は手元に持つておりませんが、たしか五、六件程度だと思います。
#73
○並木委員 報道関係でその中に含まれているものがありますか。
#74
○桃澤説明員 報道関係のものはございません。
#75
○並木委員 日本でつくられる兵器に対して適用される秘密保持の法規は、現在全然ないと思いますがいかがでしようか。法規ないし内部的な行政措置というものは全然ないと思いますけれども、その通りでございますか。
#76
○増原政府委員 この法律ができまして、これから日本でつくられるものに全然適用がないかといいますと、第一条の三項の二号、「日米相互防衛援助協定等に基き、アメリカ合衆国政府から供与される情報で、装備品等に関する前号イからハまでに掲げる事項」このうちには装備品そのものはもらつていないが、装備品等をつくり得る青写真、それによつてそのつくり方等を情報として供与されるというものがあり得るわけです。その情報に基いて日本で武器をつくることはあり得るわけであります。
#77
○並木委員 これは保安庁長官にお尋ねをするのでありますが、自衛隊の充実に伴つてだんだん日本で新しい兵器をつくつたり、また修理をする場合が出来て参ると思います。その場合に、長官としては将来秘密保護法のようなものをつくる御意思があるのかどうか。先般この秘密保護法を立案されるときにも、長官としては、一挙に保安隊の行動までも含めて大きくわくを一本にして立法をしようとされたやに聞いておりますが、その計画はどうしてこのたびは放棄されたのでございますか、将来そういう大きな行動をも律する立法措置をお考えになつておるのかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
#78
○木村国務大臣 私は、一国が独立国家として、将来日本の防衛の全きを期するためには、いわゆる国家機密を保持しなければならぬという信念は持つております。その国家機密をいかに防衛保護して行くかということは、十分検討を要する問題であります。従いましてそれは今後の十分なる検討にまたなければならぬ。さしあたりアメリカのMSA援助によつて受入れる装備のうち、秘密に属する部分については、わが方といたしましても国家防衛上これを保持する必要があると考えて、この法案を制定したものであります。今お尋ねの点については、将来十分検討を要すべきものだ、私はこう考えております。
#79
○並木委員 法案の中で二、三お尋ねをいたします。第三条の第一項の二号のところに「防衛秘密で、通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものを他人に漏らした者」ということについては、不当な方法によらなければ探知できないもの、あるいは収集できないようなものも、どこかから手に入れなければ他人に漏らすことはできないわけなのです。私いろいろな場合を考えてみたのですけれども、これはどういう場合でしようか。人から聞いてやつた場合でしようか。本で読むとか映画で見るとか、そういうことならばすでに公にされているものだし、不当な方法によらなければ探知し、または収集することのできないようなものであるかどうかをいわば第三者である者に判断させることは、ずいぶん無理じやないでしようか。つまり私がどういうルートでこれを入手するかということをまず第一にお尋ねするのです。かりに増原次長から私が聞いたとする。聞いた私は、増原さんともあろう者が話すのなら、これは不当な方法によらなければ探知したり収集することができないものではない。だれに話してもかまわないものであろうというので、善意、無過失で他人に漏らしたら、この二号でぽかつとやられる。これは少し範囲が広過ぎるし、酷だろうと思う。どういう場合にこれが適用されるか。酷ではないかという点についてはっきり答弁をいただきたいと思います。
#80
○桃澤説明員 ただいま御設例の増原次長から並木委員がお聞きになつた。保安庁次長から聞いたことなのだから、そういうふうなことは秘密でないだろうというふうにお考えになつて、他に話をされた。この場合には防衛機密であることの認識がないということで、第三条の第一項第二号には該当いたすまいと存じます。ただもしも保安庁の当該係官から、これはアメリカから供与された装備品であつて、この部分が、こういう点が機密なのだ、絶対によそに漏らすことができないものだという説明あつて、それをたまたま聞かれた。しかもその係官から聞いたから、御存じになつたのであつて、もしもその係官から聞かずにその秘密を探るという観点からこれを見ますと、ここに書いてあります通常不当な方法によらなければそういう機密はわかり得ないものだという認識がその聞かれた人にありながら、しかもこれを他に漏洩した場合には、やはりこの三条の第一項第二号の違反になる、かような関係になると思います。
#81
○並木委員 ただいまの答弁の前段は、三号の「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏らした者」というのでひつかかつて来ますから問題でないと思う。しかし後段の場合に、不当な方法によらなければ探知し収集することができるのか、できないのかという判断が普通一般の国民にはできない。そこで原則として、不当な方法によらねければ探知しまたは収集することができるか、できないかわからないという場合には、全部これに触れて来ないのかどうか、触れて来ねければ結果はずいぶん簡単になるわけです。しかしながら取調べられる側から見ると、これはまた別の問題でありますけれども、ずいぶんやつかいな問題が出て来ると思う。話を聞く方から見ると、これは一々不当な方法によらなければ探知することができないものかどうかという判断が、むずかしいのじやないですか、その点をどうお考えになりますか。
#82
○桃澤説明員 ただいまの御質問でございますが、私ども考えておりますのは、第一条で防衛秘密というものを相当限定しておるのでありまして、従いまして通常人が簡単にこの防衛秘密に触れるという性質のものはないのでございます。その多くの場合に、「通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなもの」に該当すると思いますが、そうでないものを今設例してみますと、たとえば第一条の第三項の第一号のうちの二、ここに「品目及び数量」というのがあります。ある種類の装備品がどれだけ日本に入つたか、これをたとえば埠頭で陸揚げされているるを見ていれば、数が勘定できるというふうな場合には、これは通常不当な方法によらなくてもできることでございます。そういうものを第三者から聞いた、あるいは係員から聞いたという場合にも、それはただちに不当な方法でなければ探知収集できないものには該当しないということになりまして、それを漏洩しても第三条の第二項第二号には該当しない、かような関係になるかと存じます。
#83
○並木委員 今までの説明でも、まだ少し私は納得が行かないのですけれども、ここまで範囲を広げて、第三者というものを神経質にさせる必要があるかどうかという問題と、そこまでやることは、いわゆる憲法の言論の自由あるいは思想の自由というところに、抵触して来るおそれもあるのじやないかと思うのでありますが、幸い法制局長官が見えておりますので、この点について私の率直な疑問を解いていただいたら仕合せだと思うのです。どうもこれは無理だと思う。不当な方法によらなければ探知し、または収集することができないようなものを、その人が他人に漏らしたような場合に、初めて発動さるべきものであつて、そういう見地から言いますと、その前の第一号の「不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者」それだけで罰することも、少し私は重過ぎやしないかと思うのです。収集した者が他人に漏らしたような場合に、その当事者だけが罰せられればいいので、その話を聞いた相手方、あるいは今のような埠頭で陸揚げをしている数量を読んだような場合、そういう場合にも適用するとなると、これは実際において相当の影響を及ぼすのじやないかと心配せられるのであります。
#84
○佐藤(達)政府委員 大ざつぱな頭でお答えするわけでありますが、要するにこの法律が恐れていることは何かということから考えて参りますと、防衛秘密というものを人に探られるということがこわい、また探られたもの、またはそういう機密そのものが、よそへ漏れるということがこわい。この二つがなぜこわいかということは、結局日本の防衛に大きな影響を来し、公共の福祉に侵害を生ずるということから、それを恐れて、その道をここで罰則をもつてとざそうというところであろうと思います。従いまして探知収集はもちろん、お話にも出ておりませんが、一号によつて厳罰に処せられることになつておる。そこで漏らす場合、これも恐れることでありますために、二号と三号にわけて、二つの形でこれを制限禁止しておるわけであります。そこで問題は「通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなもの」というようなややこしい表現をしておるというところに、話の手がかりが来ると思いますけれども、われわれは実は今のように何が恐ろしいかということを素朴に考えて行けば、昔の軍機保護法のように――御承知のように昔の軍機保護法では、偶然の事由によつて知つたことを漏らした場合、または業務によつて知つたことを漏らした場合と、簡単に二つにわけて書いてあります。今の二号に当るものは、偶然の事由で簡単にやつつけてしまつておるわけであります。ところが今のお話にもうかがえますように、今日においては法律の建前としては、できるだけこれを限定して行かなければならないという精神が出来てるのは、当然だろうと思うのです。そこで通常不当な方法によらなければ探知収集することができないようなものを漏らすことがいけないのであつて、よくよくのところをここでしぼつて入れたということをお考えいただかないと、われわれの趣旨が貫かれない、その気持でできておるということを御了解を願いたいと思います。
#85
○上塚委員長 並木君に申しますが、もう相当の時間を与えておりますから、次の質問者にお譲り願いたいと思います。
#86
○並木委員 あと五分間です。その点で私は一号に「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」とはつきり「目的」と書いた点はいいと思うのです。今度の取締りの対象になるものは、遺憾ながら目的がないのであります。機密保持という性格から、何のために罪を犯すのだというその目的がはつきり出ていないのも、無理からぬことであろうと思いますけれども、やはり何のために秘密を収集し、何のために漏洩するかという目的がはつきりした場合に、やはり処罰というものが発動さるべきものである、こういうふうに私は考える。その点では第一号の「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」、と書いてある点は、これはよろしゆうございます。しかし二号、三号にその点が全然触れてないのであります。まして三号の「業務により」というこの業務ということは、非常に漠然としておりまして、いかなる業務をさすのか、これはおそらく政府の職員またはその委託を受けた者というふうに、はつきり書きかえる必要があるのじやないかと思います。そうでなくて、この業務というものは、英語でビジネスと書いてあるのですか何ですか知りませんけれども、いかなる業務によるかということをはつきりしておかないと、問題を起す。それが一点。
 それから、第一号の「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」というのを、全部第二号、第三号にも入れたらどうか、こういうふうに思います。そうして第一号のところの「目的をもつて、」で切つちやつて「又は不当な方法で、」というのを省いたらいかがでしよう。「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、防衛秘密を探知し、又は収集した者」そういうふうにしぼつた方がその目的に沿つて来るのじやないか。「不当な方法」ということがまた非常な問題を起すと思うのです。これは不当であつたかどうかということは、もつぱら主観的な判断になりまして、これによつてこうむる国民の迷惑というものは、判決の結果においてはたとえ白となる場合があるにいたしましても、それまでの拘束を受ける犠牲は、今から考えますと、思い半ばに過ぎるものがあるのです。以上の点について政府の見解を明確にしていただきたいと思います。
#87
○佐藤(達)政府委員 一応私からお答えいたします。非常に緻密な御議論で敬服いたしますが、今のお尋ねの重点をなしております、「目的をもつて、」という言葉を一号だけにとどめずに、他にも及ぼすというお考えは、一応わかります。しかし翻つて事柄の実体を考えて、先ほど私の前提に申し上げました、何がこわいかということに結びつけて考えますと、一号の場合は、これは探知収集した者、すなわちその人のふところにただそれが入つてしまう、その段階までをとめておるわけであります。従いましてその場合には、その人が安全を害すべき用途に供する目的をもつてということで、これは悪性を持つておるということでしぼつて、一向さしつかえない、それはお話の通りであると思います。ところが二号の方は、これは他人に漏らす方であつて、こわいのは、それをさらに知つた他人というものがこわいわけであります。漏らす方の人がいかなる目的をもつて、あるいはかりに安全を害するような目的がないにしても、今度は漏らした相手方の利用関係はどうなるか。恐ろしいのはむしろその方であるわけでありますから、ここへ漏らす方の目的を書くということは、制度としては非常に底抜けになつてしまうというふうに私は考えるわけであります。
 業務の点は、これは詳しく書けばあるいは書けないこともないかもしれませんけれども、御承知のようにこの言葉はあらゆる法令において、ことに刑罰法令等においてはもう使われて、客観的に基準ができておる言葉でございますから、これはこのままでさしつかえはないというふうに考えます。
#88
○並木委員 これは保安庁関係になると思いますけれども、その業務の方はどの辺までを含めるつもりですか。修理工場とか、もう少し具体的に説明をしておいていただきませんと、たとえば報道関係なんかでも、それに関係のある報道に携わつている者がやりますと、ここにいういわゆる業務の中に入つて来るかどうか、そういう心配がこの言葉からは出て来るわけです。詳しくひとつ……。
#89
○増原政府委員 「業務により」というのは、ただいま法制局長官からも申されたように、判例その他で概念としては大体きまつておるのであります。この、業務により知得するというのは、たとえば保安庁の職員はそれじや全部かというと、そうではないのであります。保安庁の職員であつても、こういう機密を知る職務権限のある者がこの業務に該当するわけであります。今御設例になりました工場等で修理をするというふうなところはこの業務のうちに入りますが、その中でも修理をすることに職として当る者でありまして、それに関係ない工場の工員は、この業務によつて知得した者には入りませんので、そういう業務という言葉の解釈は現在までに定まつておると御承知を願いたいと思います。
#90
○並木委員 今の場合ですと、どちらかで挙証責任というか、ここまで入りますということを先に指定してやらないと非常に困るのではないでしようか。そういうふうに同じ保安庁の中でも、これに入つて来る者と入つて来ない者とがある。また修理工場や兵器の製造工場においても、入つて来る者と入つて来ない者とがある。一々の場合に、具体的にここまでは入るのだ、この業務にひつかかつて来るから御注意を願いたいというその注意がなければならないと思うのです。それをどういうふうに措置して行かれるか。ぽかんとほつておいて、善意の工場の職員がうつかりして漏らすような場合に、ちよつと来いで調べられる。こういう場合がなきにしもあらずでございますので、それを機密保持の責任当事者である政府がやるべきである。政府から特別にそういつた指定がなかつた場合はこの業務の中に入つて来ない、こういうふうに解釈をしておけば、国民は安心するわけなのです。注意がなかつたからその業務の中に入つて来ないのだ、だからそれによつて知得し、または領有した防衛秘密を他に漏らした者という中に入つて来ないのだということになるわけでありますが、それを今後どういうふうに措置されるか、実際の行政措置について伺いたい。
#91
○山田政府委員 この点につきましては、この法案の第二条に「防衛秘密を取り扱う国の行政機関の長は、政令で定めるところにより、防衛秘密について、標記を附し、関係者に通知する等防衛秘密の保護上必要な置審を講ずるものとする。」とありますので、かりにこれが保安庁でございますれば、保安庁長官から防衛秘密に関係する部、課、局その他に対しまして御注意がなされると思います。また一般の工場につきましては、防衛生産を所管する通商産業大臣から、その特定の工場に対しまして、これこれこういう品は防衛秘密に属するから、扱いを厳重にするようにという注意がなされ、なおその注意に基いて、その工場の責任者から直接その修理なり生産なりを相当する従事者にその旨が徹底されると思います。以上が、われわれが今日考えております行政措置でありますが、たまたまその秘密に関係ある生産に従事しておる従事員がその通告を受けておりませんでも、その仕事が防衛秘密に属するものであるという認識がありますれば、この通知が行政的に欠けておつたからといつて、その筋から阻却をされるということはない。要するにその者に認識があれば、秘密を犯すという挙に出る場合があろうかと思います。しかしながらその認識が通知がなかつたためになかつたという場合には、もちろんそこには認識、犯意がございませんので、その罪に触れるようなことはなかろうと考えております。
#92
○上塚委員長 加藤勘十君。
#93
○加藤(勘)委員 この秘密保護法が日米相互援助協定の第三条に基いたものであるということは言うまでもありませんけれども、単独立法として立案される場合においては、もはや防衛協定そのもののひもつきではなくして、国内法として単独に立法されるものであると思うのでありますが、もしもそうであるとするならば、この秘密保護法に規定する諸般の条項が、日本の憲法との関係においてどういう関係を持つておるかということが重要に考えられなければならぬと思うのであります。この条項の主要なる点である第二条、第三条等を見ますと、いずれも憲法に保障された国民の権利義務に関して重大なる制圧を加えることになるのでありますが、そういう点から見ますと、私どもは根掘り葉掘り、微に入り細をうがつて、将来この適用にあやまちなからしめんためにも、この点を明白にしておかなければならないと思うのであります。
 まず第一に国内法として立法される場合に、その主要なる点である、アメリカと日本との両国の合意による秘密保持の方法を講ずる防衛協定という第三条の規定と本法との関係はどうなるのか。その点を法制局長官にお伺いしたいと思います。
#94
○佐藤(達)政府委員 この法律の大きな目標は、要するに日本の防衛上漏れることの困るもの、その中で特に必要度の強いものを拾つたということに尽きると思います。そこでただいまお話の相互協定にいつておる箇条とこの法律はどうなるかということでありますが、これは表裏の関係に立つておると申し上げてよろしいと思います。
#95
○加藤(勘)委員 防衛協定の審議にあたりましては、主として軍事援助という点から、日本の憲法の第九条との関連において憲法違反の疑いがある、こういう点が質疑の焦点になつたのであります。ところが本法の審議にあたりましては、各条項に規定されたものと、日本の憲法の十条から四十条までに規定された権利義務との関係は重大だと思います。ことに憲法十九条、二十一条、二十三条等の規定とは切り離して考えることはできない点であると思いますが、そういう点についてどういう考慮が払われたか、この点をお伺いしたい。
#96
○佐藤(達)政府委員 お言葉にありますように、この法律の規定しておりますところは、憲法に掲げております基本的人権の保障に各種の関係を持つておると思います。それに対する一種の制約になつておるということは事実であろうと思います。そこで結局基本的人権そのものの問題でございますが、これはあらゆるその他の法制についても同じ共通の問題を持つておりますように、われわれとしては基本的人権といえどもいわゆる動物的の自由というようなものではないのであつて、おのずからなるそこに限界が憲法上予定されておる、言いかえれば公共の福祉というものが限界のもとにあるものであるということを申しておるわけであります。そこでこの法律のねらいから申し上げますと、このねらいは要するに日本の防衛のために漏れることがあぶないということを押えておるわけであります。これが漏れるということは、日本の防衛上に大きな障害を生ずる、防衛上に障害を生ずるということは、結局八千万国民の幸福追求に大きな影響を及ぼすという関連を持つておるわけであります。その角度からやむを得ざる制約を加えようということで出ておるわけであります。先ほど私が触れましたように、元の軍機保護法においてはもう少し手放しな、ずつと広い制約が加えられておつたわけであります。ただいまお話の出ましたような観点から、いろいろと必要最小限度の限界線を発見することに苦心をして、いろいろな言葉をつけ加えて制約しておる、その結論から申しますと、要するに一般の人々が良識をもつて行動せられる限りにおいては、大体御心配いらないというところに食いとめておるということでこの気持を御了承願いたいと存じます。
#97
○加藤(勘)委員 申し上げるまでもなく、公共の福祉のためには若干の制約を自分自身に受けなければならぬことは言うまでもありませんけれども、旧憲法によりますと、憲法十八条から三十条までの国民の権利義務を規定したものは、ほとんど例外なく一条々々に法の定める範囲内であるとか、あるいは法律の定めるところによりとかいうように、一々そういう法律が主になつて国民の権利義務が規定されておるわけであります。新憲法におきましては、十条から四十条に至るまでの間に「公共の福祉に反しない限り」という規定のしてありますのはわずかに十三条と二十二条、「法律の定めるところにより、」と規定してあるのは三十条の納税義務に関する点だけであります。ことに十二条のごときは、国民はあらゆる不断の努力によつてこの憲法に保障された国民の基本的自由、権利等は保持しなければならない。ただこの権利を濫用してはならぬということが定めてあるだけでありまして、法律は国民の基本的自由を主として憲法に規定するものを、むしろ助長するように定めることが新憲法の立法の精神でなければならぬと思います。そういう点から見ますと、旧憲法の概念をもつて立法される場合と、新憲法によつて立法される場合とは非常に内容において異なつて来なければならないと思うのであります。こういう点についてどのようにお考えになつておるか。
#98
○佐藤(達)政府委員 根本の精神はおつしやる通りに考えております。お話にも出ましたように、旧憲法時代はすべて法律の制約するところにまかしておる。言いかえれば、むしろ立法措置の問題にすべてを白紙委任したような形になつておつたわけであります。現在の憲法におきましては、さような形の部分は、お話に出ましたようにごく少部分であつて、その他の部分は絶対的保障の形をとつておる。そこで絶対的保障ということは一体どういうことかという問題になるわけでありますが、先ほども触れましたように、基本的人権というものはある行動をする人ばかりではなしに、その周囲におる人もまた基本的人権を持つておるわけであります。多数の国民はおのおの幸福追求の権利を持つておるのであります。たとえばこの防衛の問題でいいますと、防衛に大きな障害を及ぼすということは、多数の国民の基本的人権たる幸福追求の権利がそこで失われるという恐らしい場面をまた引起すわけであります。この防衛秘密をめぐつて行動しようとする個々の人々の基本的人権と、その行動によつて被害をこうむるべき多数の国民の幸福追求の権利というものとの調整をどこに求めるかということは、今のお言葉にも出て参りましたように、まさに憲法第十三条はその根本を述べておるというふうに考えます。このことはわが憲法ばかりでなしに、御承知のように世界人権宣言を見ましても、二十九条、三十条等におきましても、さような趣旨を明らかにしておるわけであります。そういう角度から個々の人の持つておる基本的人権というものは、おのずからなる限界、制約というものがある。そこでその制約を、あくまでも公共の福祉という制定に限定しつつ、そのやむを得ざる限度における立法措置を許されておるというのが、憲法の趣旨であろうと考えておるわけであります。
#99
○加藤(勘)委員 私どもは、どうも法制局長官の御説明では得心が行かないのですが、御承知の通り憲法十九条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」、二十一条によりますと、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」、二番目には、「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」、こういう規定があります。二十三条は「学問の自由は、これを保障する。」、そしてこれらの条項には公共の福祉に反しない限りという断り書きがつけられていないのであります。従つて今法制局長官がおつしやつたように、絶対に保障されておる、ただわれわれは総括的にはお互いの社会生活の安寧平和を維持する上から、お互いの自省によつてある程度の制約を受けるということはもとよりでありますけれども、このいやしくも十九条とか二十一条とか二十三条とかいうような純粋に基本的人権に関するものを制約するような立法は、狭い解釈から行けば、理由はどうあろうと、それは違憲立法である、こう言われても私はやむを得なかろうと思うのであります。従つて違憲立法と言われるような重大な性格を持つた立法をする場合においては、これが完全に他の面から保護される、違憲立法の名を削りとるほどの重要な保護が、一方において与えられるような立法措置が講じられなければならないと思うのでありますが、この点についてどのようにお考えですか。
#100
○佐藤(達)政府委員 先ほど触れましたように、要するにこれは基本的人権というものは、おのおのの国民が全部持つておるわけでありますから、共同体をなして生活をしておる以上は、基本的人権の相互間の限界線というものはどうしてもなければこれは成り立たぬのである。きわめて素朴にいえば、おのおのが動物的自由を発揮しては迷惑をする人がたくさん出て来る、隣の人がその人の動物的自由の発揮によつて迷惑を受ける、その人は基本的人権を侵害されるというような面が、必ず出て来る事柄であろうと本質的には考えられます。そういうことを根拠にして、素朴な考え方でありますけれども、積み立てて行きますと、やはり公共の福祉というものは一つの大きな基本的人権に対する限界線を引いておるということは、これは何としても考えざるを得ないことであつて、それを憲法は十三条において包括的に宣言しており、先ほど触れました世界人権宣言等においてそのことをうたつておるということであろうと思います。ところでただいまのお話に出ておりましたように、表現の自由、言論の自由、これらが職業選択の自由等と比べて違つた形をとつておるということはおつしやる通りだと思います。おつしやる通りではありますけれども、さてその言論の自由にしましたところで、今のような大きな角度からの限界というものは、これは理論上なければならないものであるはずであります。最高裁判所の累次の判例におきましても、言論の自由といえども公共の福祉のもとにおける制約はあるのだということを、たびたび判決に示しておるわけであります。これはまた当然のことであろうと思うのであります。ただその憲法のもとにおいてこういう立法をする際には、今のお話のような趣旨を心に深く体して、必要やむを得ざる限度にその線を引かなければならない。この点はまことにその通りであります。われわれもその趣旨に沿つて立案をしておるということでございます。
#101
○加藤(勘)委員 憲法十三条の規定する「公共の福祉に反しない限り」ということは、具体的には最高裁判所の判例等にまたなければならぬということになりましようが、これはこの憲法の趣旨からいうならば、法律によつて制約を加えるということでなくて、各人の良心の反省によつて各自が加えるべき趣旨が私はこの文字になつて表われておると思うのであります。そうでなければ公共の福祉に反しないという言葉のかわりに、旧憲法にあつたように法律の定めるところにより、こう書いても少しもさしつかえないわけであります。それを旧憲法の法律の定めるところによりということのかわりに、公共の福祉に反しない限りというように定めてあるということは、もつと非常に広い意味の、人権をむやみに法律で制約してならないという趣旨が織り込まれておると思うのであります。そのことは十二条の公共の福祉を守ななければならぬが、同時に自分の権利のために個人的に濫用してはいかぬけれども、国民が不断の努力によつてこの憲法で保障した権利、自由というものは保持されなければならぬ、こういうように規定してある、この十三条と十三条の規定から行きましても、私は基本的人権に制約を加えるような法律というものは、厳重な上にも厳重に、明確な上にも明確に定めて、いやしくも解釈上に疑義が生ずるような立法であつてはならぬと思います。そういう点からいつて本法のごときは解釈上に相当疑問が起つて来る余地があると思います。ことにこの種の立法というものはえてして一度法律になりますと、これを適用する行政官はややもすれば拡張解釈をする危険が十分あります。治安維持法等の解釈においても実にかつてな、でたらめな解釈のもとに――現に私もその被害者の一人であります。私は何も治安維持法に触れぬけれども、治安維持法によつて疑義があるというだけで二年も未決に入れられておる、私はもしこういうものが出て来て、悪意をもつて解釈すれば、解釈はどうにでも拡張解釈できると思います。従つていやしくも拡張解釈ができないように厳重な制約を法律の条文の上に明らかにしておくということが、私はこの種立法の重要な点であると思うのであります。この点についてどのようにお考えになりますか。
#102
○佐藤(達)政府委員 根本の御趣旨についてはまつたく同感でありまして、その趣旨のことを先ほど来申し上げておるわけであります。まさに立法の理想はただいまお述べになりましたようにきわめて具体的に、極端なことを申しますと、われわれとしては裁判所もいらない、あるいは弁護士さんもいらないというような法律があつたならば、これはほんとうに望むべき法律の姿であろうと思います。しかしそこにはわれわれ立法に携わる技術者としての、やはり技術上の制約というものがあるわけでありますから、裁判所もいらないというような極端な立法というものは望むべくもありませんけれども、そのくらいの意気込みをもつて、できるだけ正確なものをこしらえて行きたい、これはわれわれのふだん念願しておるところであります。
#103
○加藤(勘)委員 それでは一歩進めして、この法律でいう秘密というものの内容についてでありますが、内容の指定はどうやつてこれをきめるか、この条文によりますれば第一条三項の第一号のイからニまでの各号数が刻まれて、これに関するものだけのように限定してありますけれども、私は先ほども申しましたように、すでにこの法律が日本の国内法として立法されるのでありますから、一々外国のさしずを受ける必要はないと思います。先ほど法制局長官は防衛協定第三条の日米両国政府の合意により云々という言葉とかんがみて表裏をなすものである、こうおつしやいましたけれども、われわれはむしろこれは切り離されたものと見ることの方が妥当でないかと思います。なるほどそこに渕源は発しておりますけれども、すでに国内法として制定される以上は、外国の条約のひもつきであつてはならぬ、この防衛協定によりますれば、日本はアメリカに対してさまざまな義務を負つており、その義務の一つとして秘密を保持しなければならない、その秘密を保持するという義務から本法が生れたということは、これはもう明確な点でありますけれども、少くとも国内法として立法される場合においては、この条約とは切り離されて純粋に国内法としてやらなければならぬし、またこの法律の条文を見ましても、「わが国の安全を害すべき」云々というような言葉がありまして、わが国の安全であつて、条約上のいわゆる秘密の保持とは、私は性格が、この立法においてかわつて来ておると思います。この点は法制局長官はどのようにお考えになつておるでしようか。
#104
○佐藤(達)政府委員 条約との関係において表裏一体という言葉を使いましたが、それに近いような関係のあることはこれは率直に認めざるを得ません事実であろうと思います。ただ私どもがりくつで頭で考えておりますととろで、間違つておれば保安庁から訂正していただきますが、私どもが考えておりますのは、およそ日本の防衛のための秘密というものを広く考えてみた場合に、かりにアメリカも持たないような、あるいはよその国も持たないような日本独自の非常に高度な秘密兵器を持つておつたというような、国力がその程度のものであつて、非常にすばらしいものを持つておるというようなことであるならばいろいろまた考えるべきことは出て来るでありましよう。ところが今度のMSA関係の兵器をもらった場面においてそういう角度で見渡した場合に、それらの高度のものとはやはり、はなはだ残念なことでありますけれども、借りもののものが一番高度のものになつてしまうということになつてしまうということで、そこに表裏一体の関係が出て来る、そういうふうな気持で私は見ておつたわけであります。
#105
○加藤(勘)委員 今も申しますように、この法律の条文の中に、「わが国の安全を害すべき」云々、こういう言葉がはつきり書かれておるわけであります。とすれば当然わが国の安全でありますから、武器の内容はどうあろうとも――武器の点についてはアメリカの通報に従つてきめられるわけでありますけれども、わが国の安全という以上は、その秘密の内容というものは、当然わが国独自の意思によつて決定されなければならぬものであると思うのです。それが防衛協定との表裏一体をなす関連を持つておるとすれば、勢い今度はこの内容を決定をする場合においてもアメリカ側の意見を聞かなければならぬ、こういうことになると私どもは国内立法が外国の意思によつて、たとい参考程度にしろ動かされるということは、独立国として耐え得るべきことではないと思うのです。この点についてはどのようにお考えになりますか。
#106
○佐藤(達)政府委員 忌憚なくいえば、そもそも大事な兵器そのものをよその国からもらうということが、独立国としてどうだろうかという気持はこれはあると思います。あると思いますが、先ほど申しましたようにきわめて残念ではありますけれども、事態は、現実は現実としてわれわれは認めざるを得ないということであるわけです。そこでしかしその兵器は何のために使うかといえば、これは日本の防衛のために使うことは事実であります。防衛上の必要から、日本の独自の必要性からこれを保護しなければならぬということも、これもまた事実であるわけであります。そこで今の借りものとの関係が、その方の裏面において結びつくということもまた、これは論理からたどつて行きますと、当然のことでやむを得ないことでありますというふうに考えております。
#107
○加藤(勘)委員 なおその点にもどうも得心が行きませんが、先へ進みまして、防衛秘密の保健のために必要な措置を講ずる、こういうことになつております。それで必要な措置ということは、法文によりますれば、「標記を附し、関係者に通知する等」と「等」という言葉を使われておりますが、これだけではきわめてあいまいでありまして、とうていこのような種類の立法の条文としては得心が行かないのであります。もつとこれを具体的に、「必要な措置」ということを明記される必要があるのではないか、こう思いますが、この点は保安庁の方からお伺いしたいと思います。
#108
○山田政府委員 第二条についての御質問でございますが、本条は、国民が予期せずして罪に問われることがないように措置するほか、またあわせて防衛秘密の漏洩または漏洩の危険を防止するために、政令で定めるところによりまして、防衛秘密を取扱う国の行政機関の長が防衛秘密に属する文書、図画または物件にそれぞれ標記を付しまして、あるいは関係者に通知する等、秘密保護上必要な措置を講ずべきことを規定しておるのであります。ここで「防御秘密を取り扱う」とは、防衛庁、通商産業省、特許庁等の政府機関が、日本政府の機関として、防衛秘密に属する事項、文書、図画または物件を取扱うことを申します。「国の行政機関の長」とは、国家行政組織法第三条にいうところの行政機関の長でありまして、府、省、庁等の長を申します。従いまして防衛庁については防衛庁長官、通商産業省については通商産業大臣、特許庁においては特許庁長官を申します。ここで「標記を附し、」とは、具体的には防衛秘密に属する文書、図画、物件に、それが防衛秘密に属する旨の表示を一々行うことでございます。この表示する場合の大きさ、寸法などについては、この法律には規定がございませんが、これは政令の規定にゆだねられたものと解しております。また「関係者に通知する」とは、先ほども申し上げましたが、たとえば防衛秘密を取扱う民間業者、その他特に関係のある者に、文書または口頭などで、当該事項が防衛秘密である旨の告知をいたします。その場合に、単に情報を伝える場合には標記の手段がございませんので、これは防衛秘密何々に属するものだから、十分に注意をしてくれというように通知することになると思います。この「通知する等」とは、防衛秘密の保護上とるべき措置として、標記及び関係者に対する通知を例示したにとどまりまして、それ以外にも秘密保護上とるべき措置のあることを示すもので、本法律案はその他の種々な措置を包括いたしまして、秘密保護上必要な措置として、これを政令の規定にゆだねたのでございます。「防衛秘密の保護上必要な措置」とは、前記の標記及び通知を含めまして、広くその他秘密を保護するため客観的に必要とされる措置を言うのでございまして、具体的には政令で規定されることになつておりますが、現在予想されておりますのは、標記及び通知のほかに次のようなことを考えております。それはまず第一には、防衛秘密に属する物件の所在地に適当な掲示を行う。たとえば工場におきましてさようなものを修理、生産いたしておる場合には、そこに関係者以外の者の立入りを遠慮してもらう。あるいはその秘密兵器を使つて演習をしておるような場合には、警戒の者に部外者がそこに立ち入らないような措置をするというようなことを考えております。第二に、防衛秘密をその内容の軽重に従いまして、三段階程度の等級を付することを考えておりますれこれは機密、極秘、秘というような、大体三つの段階に区分をした等級を付したと考えております。第三には、防衛秘密に属する事項の保管取扱い等に関しまして、関係各省の長が定める部内規定の基準となるべき事項を定めるように考えております。なお従来防衛秘密でありましても、それが一たび公になつた場合には、その秘密の範囲から除外されることになりますので、すみやかに行政的措置もそれに順応いたしまして、秘密の標記その他のあれきを解除する措置をとりたいと考えております。以上大体申し上げましたようなことが、政令でうたわれる事項だと予想しております。
#109
○加藤(勘)委員 今のお答えは実に重要でありまして、ここに示された標記を付して通知するということのほかに、もろもろのことがあげられましたが、その「必要な措置」が私は一番問題だと思うのです。今お示しにはならなかつたけれども、われわれが予想し得られる一つの措置としては、今言われたような担当官吏と――外部にそれが漏れるかもしれない。先ほど並木委員は、たとえば増原さんから聞いたことを云々という例をお話になりましたが、そういう防衛関係の担当の官吏と、官吏以外の者との接触によつて、この秘密がもし偶然にかあるいは故意にか、漏れるようなことがあつてはならぬとして、警戒される措置をおとりになるのかどうか。
#110
○山田政府委員 もちろんこの場合には、行政的措置は優先的に尊重して考えますので、当該関係官吏が必要以上に部外の者に漏らさないように、十分に注意を励行したいと考えております。
#111
○加藤(勘)委員 その十分注意ということなのですが、現実の問題としては、今度の保安隊か自衛隊か知りませんが、その中には警務官というものが設けられておる。その警務官はこういう場合にどういう役割を勤めるわけですか。
#112
○増原政府委員 警務官は、新しい防衛庁法案なり隊法案によりまして、一口に申しますと、自衛隊員の犯した犯罪、自衛隊に対する犯罪について、一般警察と同様の捜査権を持つということであります。そうしてこの防衛秘密保護法によりまして、たとえば隊員が業務上の秘密を漏らしたというような場合は、この警務官がこれを捜査をいたします。たとえば不当な方法で防衛庁の建物に侵入して秘密を探つたというようなものは、いわゆる自衛隊に対する犯罪でありまして、法文上からは警務官がこれを所掌してもいい建前になります。但しこれは警務官の数、それに伴う能力といいますか、そういうものにもちろん限りがありますので、現在の法文上、いわゆる隊員の犯罪であり、隊内における犯罪でありましても、一般警察等と協定をいたしまして、どういうものは刑務官が最初に捜査をするが、どういうものは一般警察でやつてもらうという協定をいたしております。これを新しい法律では、基本的には政令をもつてその事項を定めるということになつておりまして、この秘密保護法に基く犯罪、外部の人、隊員以外の者が犯した秘密保護法違反の罪については、それは一般警察で捜査をしてもらうというふうに政令にうたうことに上長官の決定をしているわけであります。
#113
○加藤(勘)委員 自衛隊ですか、保安隊ですか、まだどつちともつかないのだが、この隊内における犯罪関係については警務官が当られるということ、もとよりそうでありましよう。しかしこういう問題は、隊内だけにおいて秘密漏洩が起るというよりは、部隊と部隊外と両者に関連して行われる率が一番多いと思うのです。そうすると、もし実際に検挙するというような場合に、警務官は隊内の者だけを調べ、片方の警察は隊外の者を調べる、こういうことはついおつくうになるから、二つのものがそれこそ二者不可分でありますから、一方を調べる者が他方も調べるということにならざるを得ない。旧憲法時代における軍隊においては、初めは憲兵隊は軍隊以外の者を取調べるとか検挙するとかいうことは決してなさらなかつた。ところがいつの間にやら憲兵隊は、軍人以外の者にまで捜査なりあるいは検挙なりの手を伸ばしている。これは現実にわれわれが経験している。ところが今度政令でそういう点を明確に定められるといわれますけれども、そういうものは政令でなくして法律で明記しておかなければいけないじやないか。政令というものは、行政府がかつてに自分の意図だけによつて、立法府の意思いかんにかかわらず行われるものなのです。そういうことで、行政府がかつてに政令によつてきめるべきものではない。むしろそういうものは立法措置によつて、法律として明確にしておくことが、この種立法の必要なる条件だと思うのであります。将来のことはもちろんわからぬにしましても、過去においてそういう危険の経験を日本国民は味わつております。味わつておるだけに、今おつしやるようなあいまいなきめ方、政令によつてきめるというような説明では、立法府としてはとうてい承知するわけに行かないのでありますから、この点について、ただ単に一片の政令できめるというようなことでなく、明確に立法手段によつて法律として規定される御意思はありませんかどうか。
#114
○増原政府委員 現在の保安隊、警備隊、法律を提出しておりまして、通れば自衛隊になりますが、こういう武力を持つた組織的な機構というものは、隊内の秩序維持のために一般警察と似たような――同様のといいますか、似たような捜査権を持つて隊内の秩序を維持するということがどうしても必要である。そういうことで現在の保安庁も御協賛を願つておるわけであります。ただそうした秩序維持の限実の限界というものは、単純な法律論できめる以外に、さらに多少こまかい点が出て参りますから、やはり現存は協定ということでやつております、これを政令という形で明確にしようというふうに法律的に一歩前進をするわけでありますが、抽象的に申しますと、やはり隊内の秩序維持という見地から、隊員の犯罪、隊内の犯罪については、一応警務官が捜査権を持つて――捜査権と申しましても、これは排除的なものではありません。一般警察の捜査権を排除してはおりません。そうしてもちろん検事その他の指揮を仰ぐ。通常刑事訴訟法の手続に基いて行われるものでありまして、かりそめにも昔の憲兵隊が行つたようなあやまちを犯すことは、現在の法律下においては、やろうと思つてもできないし、もとよりさようなことは厳に戒めてやる建前をとつておるのであります。
#115
○並木委員 関連でちよつと一言お伺いしておきたいのです。加藤委員から警務官についてのたいへんいい質問がありましたので、ちよつと今思い当りましたからお聞きします。かつての軍事裁判、これに相当するようなものが、また将来だんだんと、刑務官制度に伴つて自衛隊の中に出て来るようなことがあるのではないか、こういう心配がひよつと頭に浮んだわけであります。私は、よもや政府としてそういうことは考えておらないと思いますけれども、将来だんだん三軍――保安庁長官の言葉に従うと三部隊でありますが、三部隊が三軍となつて警備されて参りますと、ただいまの政府答弁の傾向から見ても、軍事裁判に相当するような自衛隊裁判というものが考えられて来るのじやないか。政府は考えるのじやないか、こういう心配があるのです。この点については、憲法に統帥権というものがありませんので、憲法違反の疑問も出て参ります。そこで政府として、将来司法裁判とは別の軍事的裁判というものをお考えになることがあり得るかどうか、どんな場合でも絶対ないかということと、憲法との関係、そうしてもし将来第四種の、三権分立でなく四権分立の統帥権というものが憲法改正に伴つてできた場合、この場合法律上不可能ではないかどうかという点につきましてお尋ねをいたします。
#116
○木村国務大臣 ただいま加藤委員から重大なる御発言がありました。続いて並木委員からも御質問がありましたので、私から答弁いたしたいと思います。まず並木委員の御質問に対して答弁いたします。政府は将来、昔のような軍事裁判を設置する意思ありやいなや、絶対にありません。またわが国の現憲法上においてさような特別裁判所を設けることはできぬのであります。憲法改正のあかつきはいざ知らず、現下においてはありません。また憲法が改正された後におきましても、さようなことがあつてはならぬと私は考えております。
 それから加藤委員のまことに御適切な御質問であります。このいわゆる将来の自衛軍のうちの警務官、それが昔の旧憲法のようなあり方であつてはいかぬじやないか、私もしごく同感であります。そこでただいま御審議を願つております自衛隊法において、その権限を明確にしておいたのであります。自衛隊法第九十六条におきましてそのことをはつきりうたつております。「自衛官並びに陸上幕僚監部、海上幕僚監部、航空幕僚監部及び部隊等に所属する自衛官以外の隊員並びに学生及び訓練招集に応じている予備自衛官」すなわち広く隊員であります。この「犯した犯罪又は職務に関し隊員以外の者の犯した犯罪」これに限定しておるのであります。なお「自衛隊の使用する船舶、庁舎、営舎その他の施設、内における犯罪」、外部の犯罪じやありません。「自衛隊の所有し、又は使用する施設又は物に対する犯罪」と、きわめて限定しておるのであります。従いまして警務官の、今仰せになりましたような秘密漏洩に関する罪の問題におきましても、自衛官すなわち隊員のかような行為に対しては、警務官がこれを捜査することはもちろんであります。事いやしくも秘密漏洩に関しては、部隊員以外の者に対しては何ら関与いたしません。また自衛官が犯した罪におきましても、今塩原次長から答弁がありましたように、これは一般司法警察官においても捜査することを決して拒んでおるわけではありません。われわれの考えといたしましては、警務官の職務権限の行使はきわめて限定したものであり、いわゆる昔の憲兵隊のようなあり方であつてはいかぬということに十分の考慮を払つて処置をしてるおわけであります。問題が起つた場合においては、むろん警務官と普通の司法警察官と双方相連合して捜査する場合もあり得ると考えております。しかし結局においてはこれは検察官において最後の処置をするのでありますから、昔の憲兵のようなあり方は断じてとつていないわけであります。さような御心配は私はないと考えております。
#117
○加藤(勘)委員 今長官から、将来憲兵化のおそれは断じてない、こういう力強い御答弁がございましたが、私どもはなおそれでもこういう点を心配します。たとえば隊内においての犯罪捜査の場合に、その被疑者として捜査される対象になつた隊員の身柄を拘束する場合にどうするか。現在の刑事訴訟法の規定によれば、当然検察官が判事に請求して勾留する権限を持つておるのでありますが、隊員の身柄拘束はどうするか、それからその期限、また身柄の拘束のままで一応捜査が行われて、それをただちに検察官に渡すのかどうか、そういう点についての疑義は、まだ今の御答弁からは解明されていないのであります。この点もはつきりしておいていただきたい。
#118
○増原政府委員 隊員の犯した犯罪について警務官がいわゆる第一線の捜査に当ります場合は、当初から検事の指揮を受けてやります。身柄の拘束は、もよりの警察に委託して身柄を拘束する。その間検事の指揮を受けてやることにしております。現在のところ保安庁内にそうした身柄拘束の設備を設けるということは考えておりません。一般警察に委託をして身柄を拘束する、そうして検事の指揮をまつて捜査を進行する、こういうことであります。
#119
○加藤(勘)委員 そうしますと、今の保安隊の中には旧軍隊当時の営倉というようなものはないのですね。
#120
○増原政府委員 現在ございませんし、つくる意図を持つておりません。
#121
○加藤(勘)委員 それではその点は一応現在の段階においてはきわめて明確であると思いますが、次にお尋ねしたいのは、条文によりますと、第一条の最後に「アメリカ合衆国政府から供与される情報」こういうことがあるのです。この情報ということは、私は、具体的な物質でなくて、いわゆる情報は情報だと思うのでありますが、この条文に掲げてあるイからニまでのそれぞれの事柄に関して、これを今度は行動でなくして言葉で表明される、たとえば具体的にいうならば、新聞、雑誌あるいはビラ等によつて表明されるような場合がこの演舞に触れるということに対しては、どういう警戒措置をおとりになるお考えでありますか。
#122
○山田政府委員 その第一条第三項第二号の情報でございますが、この情報はもちろん前号を受けまして、「構造又は性能」「製作、保管又は修理に関する技術」「使用の方法」このイ、ロ、ハ、に関する情報に限るものでございます。これが一たび新聞なり雑誌に公になれば、もちろんこの秘密の範囲から除外されることになりますが、現在まだ装備品がアメリカから供与されておらない。それが将来現場として来るか来ないかということはわかりませんが、とにかく現物は現在来ておらないが、情報だけをもらつておるというものについて規定しておるのであります。この点は極秘の情報であるということをアメリカ側から日本政府が通告を受けまして、まず第一次的には、行政措置によつてできるだけその秘密の保持をする、また第二次的には最小限度の関係業者に、これは極秘の情報であるという注意を添えて、これを渡すということになろうかと思います。
#123
○加藤(勘)委員 その点もまたきわめて重大だと思います。それが具体的な物質ならば、目で見ればわかるわけですけれども、情報であります。今おつしやるように、将来物質が来るか来ないかわからぬが、とにかく情報が供与された、その情報であります。これが秘密の情報であるということは担当係官は知つておられるけれども、それ以外の人は知らないわけであります。その場合にたまたま有能な新聞記者等がおつて、それをスクープして、一日も早く国民に知らせようという善意をもつて報道した。ところが結果からすると、それは秘密の情報であつたということから、この法律に触れるようなことがないとは言われないのであります。そういう場合においてもなおかつこの法律に触れるというように解釈なさいますかどうか。
#124
○増原政府委員 報道関係の者がスクープするという場合には、第三条の「防衛秘密で、通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなもの」を新聞に書いたときに、該当があるわけであります。従いまして通常不当な方法によらなければ探知できないということについての認識がいるわけであります。これは裁判所で判定をいたすわけでありますが、健全な常識のある者であれば、こういう種類の秘密であれば、通常不当な方法によらなければ探知できないであろうという判断をするわけであります。しかしこの情報と申しましても、これはイ、ロ、ハとありますが、「構造又は性能」「製作、保管又は修理に関する技術」「使用の方法」そうしてそれは現在保安隊でもらつておるものにはこういうものは一つもないという種類のものでありまして、一言二言言つてわかるような、そういうものではないわけであります。報道陣の方たがそれをこうとにらんでスクープするといつても、なかなか簡単にはすぐできるものではない。そういうものであるならば、普通の常識のある人であれば、通常不当な方法によらなければ、これは探知できないのだということがわかる種類のものである。そうでなくて、平穏な状態でわかるというのは、たとえば私が間違つてべらべらとそういうものをしやべるとか、あるいはそういう書類を報道関係に渡したというようなときでなければないので、それは私という業務上関係の者が処罰を受ける。健全な常識を持つ人であれば、たとい私が平穏にしやべつたとしても、通常不当な方法によらなければ探知できないものかどうかという判定はできると思うのであります。そういうふうに判定すべきかどうかは、最終的にはこれは裁判所で判定をされざるを得ない。しかしそこらにころがつておるようなもので、よくわからぬようなものを書いて、この法律に該当するというふうなことはとうてい考えられない。善意の第三者あるいは善意の報道人がひつかかるというようなことにはならないということをかたくわれわれは信じておるわけであります。
#125
○加藤(勘)委員 増原次長はそうおつしやいますけれども、新聞記者はやはり職業的競争意識もありますし、これが普通不当な方法でなければ手に入らぬかどうかというような判断をするよりも、まず記事として国民に知らしめるという新聞記者本来の職業意識によつて私は鋭敏に行動されることがあり得ると思うのですが、そういう場合にこれが不当な方法によらなければ入手できないものであるかどうかということは、今増原次長もおつしやいましたように、最終決定は裁判所がやるのでありますけれども、裁判の決定をまつまで、つまり検挙の端緒になる、行政措置の場合においてはそこで問題なのです。この法律の拡張解釈をなされれば、そのときに行政検察の衝に当る人はまず一応疑いがあるからひつぱる、こうなりますね。けれども結果は裁判の結果でなければわからぬ。こういう問題は裁判の最終決定を見るまでは相当年月を要するわけであります。その間、この人はそのために、自分は何ら故意なくして、きわめて善意をもつて国民に知らしめたいという意思でやつたにもかかわらず、行政検察当局はこれを犯罪容疑者として検挙する。そうして長い間不幸な生活をし、社会的な立場を失わなければならぬということになるから、私は問題は重要だと思います。そこでそういう事柄についてもきわめて明確にこれこれこれこれというふうに、こういうものは私は列挙主義によつてきわめて厳重に限界を定めておく必要があると思うのですが、ただいまおつしやるような最終決定は裁判所がやるのだということでは、私はこの立法措置としてはきわめて不適当であつて、決して国民に対して親切なゆえんであるとは思われないわけです。この点に対してはどのようにお考えになりましようか。
#126
○増原政府委員 御心配の点はごもつともな点が非常にあると考えますが、この一応論点になつております情報というものは、装備品に関する情報でありまして、これはいわゆる情報という感じで普通受けるような口で出るものではまずないと思います。おそらく書類になつておる、あるいは青写真になつておる、こういうものについては防衛秘密、いわゆる第二条による措置によりまして判こを押すということを必ずやるようになると思います。その判こを押してないというふうな場合に、そういうふうな報道関係がこれをとつてスクープをしたという場合には、これは相当に情状として、通常不当な方法によらなければ得られないものであるかどうかという判定の場合には、非常に有利になると思いますが、防衛秘密であるという標記あるものを見てやる場合には、やはり通常不当な方法によつて探知したというふうに判断をされるということになる。列挙をしろという御意見は非常にごもつともでありますが、これは秘密事項の性質上、いろいろと案を練つてみましたが、どういうものが秘密であるという列記が実は秘密保護法の本質と相矛盾するようなことで、実は列記は非常に困難であるので、こういうふうな法文の体裁になつたのであります。
#127
○加藤(勘)委員 先ほどの御説明の中に、秘密のものであつても標記に三段階を設ける。この三段階は、裁判所で罪の裁定をされるときの標準になる段階であるのか、秘密の重要度についての段階であるのか、この点はどちらですか。
#128
○増原政府委員 段階は秘密の重要度についての段階でありまして、たとえば最上のものを機密としますと、これは大体においてだれとだれとのみが知るものである、次の段階のものを極秘としますれば、これは関係の局長までが知る、秘であれば課長及び係員まで知るとかいう秘密の重要段階によつて、取扱いの範囲はきまるというふうな種類のものであります。
#129
○加藤(勘)委員 そうしますと、従つて係官が万一、これは神様でない、人間である以上はあやまちがないとは言われませんから、あやまちをして判こを押すのを忘れて標記をしなかつた。しかもそれが部外に流れ出た。こういうような場合にはどうなるのですか。
#130
○山田政府委員 そういう場合に部外者がたまたまそれを承知いたしまして、その文書が防衛秘密であるという認識がなければ、本条の罪には該当しないと思います。しかしながらその標記がなくてもたまたまこれは防衛秘密であるということを承知して、これを他に漏らしたような場合には第三条に該当するのであります。
#131
○加藤(勘)委員 一体標記のないものをどうしてこれが秘密のものとして認定することができるでしようか、そういう点を私はきわめて不明確だと思うのです。
#132
○山田政府委員 それはたまたま標記のない文書を手に入れた、またあれこれこういうようなことは秘密に属するものであるというようなことを、別個のルートから情報として入手するような場合には、そのものについて秘密であるというような認識が得られると思います。さようなごくまれな場合でありますが、そのまれな場合に、たとい標記はなくても防衛秘密であることの認識を得た場合には、第三条に該当するようなことが起り得ると思います。
#133
○加藤(勘)委員 私はこの立法にあたつてそういう説明ではとても承認することはできぬと思いますが、もしかりにそういうような場合があつて、これを探知した有能な新聞記者なり、雑誌記者なり、評論家なりというものが、どうもこれは怪しいのだと思つたときに、これは怪しいか怪しくないかをどこで調べるのですか。
#134
○山田政府委員 その有能な記者が、積極的にこれを何とかして載せてみたいから一応関係当局に照会してみようというようなことで、たまたま保安庁なりあるいは通産省なりに照会がありたというような場合には、それは機密に属する旨の御連絡ができようかと考えます。
#135
○加藤(勘)委員 その場合、これは言葉は検閲という言葉でないかもわかりませんが、検閲と同じ意図を持つているわけなのです。これを見せる方も検閲を受けるのだという意図であるし、これに対してこれは秘密文書であるということを言う方も、実際においては検閲というような潜在意識が強く働くと思うのです。そうすると、これは明らかに検閲ということになつて来るのでありますが、それでもよろしいかどうか。
#136
○増原政府委員 これはちよつと偶然な機会に入手したが、大分めんどうなことが書いてあるので防衛秘密ではないかという問合せがあつて、それをこつちでこれは防衛秘密であるということを言つた場合は、これは私は検閲には該当しないと思います。
#137
○加藤(勘)委員 それが偶然の場合、ただ単に何年間の間に一ぺんというようなことならそれは偶然と言われましようけれども、しかし日々を争つておる新聞記者としては、直接そのものが極秘であるか、機密であるかわからぬというようなことがたびたび起ると思うのです。これはわれわれが今日までずつといろいろな新聞を見ておりまして痛切に感ずることなのです。そういう場合これがたびたび起つて、たびたび同じようなことが行われるということになりますと、これは検閲という概念に当はてまつて来るのではないかと思います。
#138
○増原政府委員 防衛秘密保護法で規定をいたしておりますこの秘密というものは、私どもが現在想像しますところではそうえらいたくさんになるものとは思つておりません。そうしてこれを扱います第一次的なものは関係公務員なり、修繕その他をする製造会社であります。こういうものがそうざらざらとそこらに流れ出るようになりましたら、これはまるで問題にならぬのでありまして、さようなことには絶対に相ならぬと思います。出ますことがありましても、これはごくまれに、主として第一の原因は公務員、あるいはこれを取扱う会社等の過失なり疎漏なり不注意なりというようなことから出て来るわけであります。さようにいつもこういうものが出て、報道人の目に触れるなんということはあり得べからざることであります。そうして先ほど来申しておりますが、報道関係がこれは防衛秘密であるという認識を持たなければ、この法文には該当をいたさないことは繰返して申し上げた通りであります。
#139
○加藤(勘)委員 その点きわめてあいまいですから、そういうことを、そういうあいまいなままのものが政令に規定されるということは非常に困るのです。実際私は真剣にこれは考えてみなければいかぬと思うのです。こういうようなあいまいなことが政令で定められて――政令は要するに行政官が行政事務をとる上においての一つの基準にすぎないのでありまして、何も国民を規定する法律ではないわけなのです。ところがややもすればこの政令の方が重んじられて政令による処置の方が、法律よりも実際具体的な行動としては先行する場合がしばしばあるわけであります。そういう点からいつて、私はむしろ政令というような不安定なものでなくて、立法によつて明確に基準を設けるということが、当然考えられなければならぬと思うのであります。しかも今おつしやつたようなあいまいな点が、たとい一回にしろ二回にしろ、偶然の機会にしろあるということが当然予想し得られるわけであります。そうすると新聞なり雑誌なり、ことに最近は科学雑誌が非常に発展しておりまして、たとえば科学朝日なんかを見ますと、飛行機の構造、性能などが非常に詳しく出ておる。ことに最近はいろいろなものが、原子関係のものも発明される等で、だんだんそういうものが出て来ますが、原子の問題はここには規定されておりません。それからまた飛行機の問題もあるとかないとか、いろいろ議論もありましよう。しかし少くともアメリカから来る装備品等についてもいろいろな情報が出されておるわけでありますから、私はこういうととはめつたにないということでなくて、今後はことに日本の方において保安隊が自衛隊にでもなつてますます軍事活動が盛んになつて来れば、その兵器の構造とかあるいは性能とかあるいは使用の方法とか、品目とか、数量とかいうようなことが、だんだん知らず知らずの間に新聞記者諸君あるいは雑誌記者諸君の常識になつておつて、これは秘密であるか秘密でないかという判断よりも、そういう事柄から、日々の行動から受ける印象が常識になつてそれが報道される、そうするとそれがたまたま秘密であつた――秘密であつたということを知ることの方がたまたまであつて、むしろ音通常識化して来る、こういうことになりますと、危険の度合いは非常に大きくなる。そこでそういう危険から免れるために、新聞の編集者はあるいはこれを保安庁あたりで見てもらえば町違いがなかろうといつて持つて行つて見せる。つまり一種の事前検閲を受ける。大体日本の前の新聞紙法なり何なりは事後検閲でありまして、事後になつて検閲されていけないものはやめたのであります。占領中には事前検閲ということも司令部においてなされておつた。そういうような考え方が今の保安庁やその他の関係官庁の間に、ことにあなた方のような高級官吏の間には戦争前のそういうふうな意識が潜在しているのではないか、これは非常に危険なことでありますけれども、潜在しているのではないか。そういう潜在が知らず知らずこういう立法条文となつて現われて来ておるのではないか、こういうことを私どもは非常に恐れているのです。あなた方は十分新憲法の精神を体して公共の福祉のために尽そうというお考えであろうとは思いますけれども、しかし人のことですから、そういう古い意識が潜在していないとも限らない。そういう点から、新聞社から事前に見てくれ、こういつて持つて来られると、ああそうか、これは大丈夫だとか、これはいかぬとかいうふうな判断を下して返される。これは明らかに事前検閲となると思うのですけれども、その点はどうでしようか、これはひとつほんとうに腹を割つて答えてもらいたいと思います。
#140
○木村国務大臣 これは私からお答えいたします。今の加藤委員の御心配はごもつともだろうと思います。そこで私はこの法案を作成いたしますについて最大の考慮を払つたのであります。繰返して申すようでありますが、まず第一に秘密の対象をどこに置くかということであります。これはきわめて限定をしております。(「それは別問題ですよ、長官」と呼ぶ者あり)黙つていらつしやい。――それから第二条においてこの対象物を一般の人によく周知せしめる。何が防衛の秘密であるか、これを第二段に考えた。そこで第三条においては、いわゆるこの防衛の秘密をまず第一に考慮しなくちやならぬ。わが国の安全を害する意図をもつてこれを周知探索する、これは最も危険なことである。これに重点を置いているのであります。これは普通のいわゆる新聞記者なんかではあるべきはずはないのであります。わが国の安合を害する意図をもつさようなものを探索するということは、私は日本国民としてあり得ざることであると考えている。あつたらたいへんである。これをどうしてもわれわれが目的の対象にするのは当然であると考えております。第二には、普通の人間として防衛秘密だということの認識をもつて他に漏らすというようなことは、これまた非常に日本の安全を害するのであります。これも縛つて行かなければならない。これに重点を置いた。第三には、いわゆる装備品などについて、将来修繕なんかする取扱者がある。これから漏れてはたいへんだということに思いをいたした。われわれは限定的の意味でやつているわけであります。報道人として私は特に考えていただきたいのは、いかに報道の自由といつても、これは無制限のものではないと私は考えている。日本の安全を害するような報道をしてもらつては困るのである。お互いに日本人である。故意に日本の防衛秘密を漏洩して国民に知らせるという必要は私たちはないと思う。私はそういう新聞はないと思う。新聞が常識でもつてスクープしてやる。これはこの法案のどこにもかからない。報道人は自由に御活動になっていいのです。そういう意図をもつてやるという場合に危険がある。これは私は新聞人といえども慎んでいただきたいと思う。普通の手段でもつてスクープする場合は、どこから見てもこの法にかかることはないのであります。私はこの法案をつくるについて、昔のいわゆる行き過ぎが十分頭にこびりついておりますから、そういうことがあつてはならぬという最大の考慮からして、あらゆる点から限定いたしましてこれを作成したのであります。報道人の普通の活動において私は何ら不便を感じないということを確信しております。
#141
○上塚委員長 加藤君にちよつと申し上げますが、まだたくさん質問がありますか。
#142
○加藤(勘)委員 まだまだあります。
#143
○上塚委員長 それでは十分に質疑を尽したいと思いますから、午後二時半から再開してさらに続けていただきたいと思います。
#144
○加藤(勘)委員 今の一項だけ締めくくりをしておきたいと思います。
 ただいま長官からお答えがございましたが、これを要約すれば、要するにこの法律はスパイ活動を警戒するものである、この一語に尽きると思うのです。もちろんわれわれもスパイというような反国家的、反民族的な行動についてこれを許す気持はひとつもありません。しかしながらそのことがよほど厳格に、明確に規定されておらぬと、これが拡張解釈されて、スパイでない者がスパイの嫌疑を受ける。これは過去に、たとえば治安維持法のごときは、立法のときの政府当局の――私は当時の速記録をちやんと持つておりますけれども、当時の立法する意思、国会における立案者の政府当局の説明と、その後今度これが適用される場合の行政措置としての解釈とはまるで違うのです。非常に拡張解釈されてしまつておるのです。それは現実なのです。従つて立法者は非常に善良な意図をもつて立法に当られましても、解釈の点において拡張解釈をするような余地がある規定でありますと、その危険が出て来るわけなのです。スパイなどというものは一人もかけらもあつてはならぬ、その一人もかけらもあつてはならぬことを規定するために、そうでない多くの人がいろいろの場合において迷惑を受けております。治安維持法のごときにおいても、被疑者でない者がその治安維持法の被疑と称する名前によつて何万という人間が犠牲になつておることは御承知の通りであります。こういうことが、今のような善良な長官なり局長なりの衝に当つておられるときには間違いはないでありましようけれども、いつも一人の人が同じポストにおるわけではない、もし少しく意図の違つた人が出て来たときに、解釈はどうでもできるというようなことでは困るのです。そこで私はそういうものについてははつきりと疑義を残さないように、拡張解釈を許さないように明記するということが必要である、こういうように思うのでありますが、この点についてのお答えを得て、あとの条項はまだ五項目ばかりございますから、この点だけお伺いしておきたい。
#145
○木村国務大臣 私も昔の治安維持法がいかに国民に対して迷惑を及ぼしたかということはよく存じております。在野法曹としてわれわれはその点について苦心したのであります。そこでこの法案を作成するについてもさような愚を再び繰返すようなことがあつてはならぬということから、検討に検討を加えたのであります。そこで繰返して申すようでありますが、この秘密保護の対象となるものをきわめてしぼつております。はつきりこの項目をあげてしぼつておるのであります。これは拡張解釈のできぬようにしぼつておる、そうしてこれについても国民一般にわからせるように、また取扱者に周知せしめるように、これをどうしたらいいかということで、第二条に率いてこのことを規定を設け、しかもこれはどういう意図でもつて機密を収集し漏洩するかというようなことをはつきりさせる意味において第三条の規定を設けたのでありまして、私は拡張解釈をする余地がなかろうと考えております。いずれの人がその局につこうとも、これ以上にしぼり得るものはできない、従いまして今申し上げるように、いかなる当局者が来ようと、これを拡張解釈して一般国民に迷惑を及ぼし得るような余地はなかろう。私はこう考えておる次第であります。
#146
○上塚委員長 この際暫時休憩いたします。午後二時半より再開いたします。
   午後一時五分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時十四分開議
#147
○上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
 緊急質問の申出がありますのでこれを許します。並木芳雄君。
#148
○並木委員 私ただいま毎日新聞の夕刊をちよつと手にして見たのですけれども、その社会面のトツプに、捕鯨船団に放射能という見出しでまたまた戦慄するような記事が載つておるのです。その内容は読み上げませんけれども、要するに捕鯨船の母船である図南丸が今朝大阪に帰つて参りました。ところがその前に帰つて来たキヤツチヤー・ボートの興洋丸、第二興南丸、第三興南丸は、はしなくも放射能を持つておるということが発見されたのであります。これは先般ビキニの周辺で放射能を受けた第五福竜丸に次ぐ第二の大きな事件でございますので、政府としては一昨日の大阪入港のことでもありますし、今日まで当然この報告を受けておると思います。その間の事情をまずお尋ねいたしたいと思います。
#149
○中川(融)政府委員 ただいま御質問になりました捕鯨船のキヤツチヤー・ボートに放射能が発見されたという新聞記事は、実は私もきようの夕刊で初めて見たのであります。水産庁あるいは厚生省からはまだ連絡を受けておりませんが、その程度あるいは危険の度合いというようなことは、詳細な事情を聞いてみなければ判断できないと思うのであります。従来も第五福竜丸以後に三崎あるいは塩釜等に入りました船の中で、やはりある程度の放射能が検出された船があつたのでございます。これらはいずれも危険区域に近いところで操業をしておつた船でありますが、しかし検出の調査の結果は、放射能は若干ありますが、人体に危険を及ぼす程度ではないという判断によりまして、船体はそのまま自由になつておるのであります。ただ積んで参りました魚につきましては、危険なものを若干放棄処分にしたことがございます。しかし船体についてはそのままになつておるのでありまして、今回の新聞記事に出ておりますキヤツチヤー・ボートの放射能が、はたして従来程度の危険のないものであるかどうか、あるいは第五福竜丸に比すべき危険なものであるか、ここらは実は私まだその調査の結果を聞いておりませんので、何とも御返答できない次第でございます。
#150
○並木委員 これは至急手配していただきまして、現地の調査の結果を報告していただきたいと思います。それに今までのものでも無を放棄したいということでございますので、これはたいへんなことだと思うのです。ことに今度のような鯨の場合には、鯨を放棄しなければならぬということになりますと、相当数量の苦心した結果得た鯨を積んでおるのでございまして、これをむだにするようなことがあつたならば、漁業界にとつては一大打撃でございますから、この点は至急お調べを願いたいと思います。
 それから先ほどのお話の中の、危険水域の近くを通つて放射能を持つておつたということは、私どもとしてはやはり聞きのがせないない答弁でございます。今度の場合にも、新聞報道によりますと、あるいは六日の第三次水素爆弾の実験に遭遇したのではないかというふうに報ぜられておりますけれども、そういうことが考えられるわけですか。
#151
○中川(融)政府委員 今回の捕鯨船も、ただいまの新聞記事によりますと、南氷洋方面から日本に帰つて参りましたので、おそらく帰る途中で危険水域の近辺を通つて来たのではないかと思うのであります。従つてその際に原爆実験に関連する何らかの影響を受けまして、放射能を持つておるのじやないかと思います。詳細のことは、ただいま申した通り、私資料を持ち合せません。しかしただいま御指摘の通り、捕鯨船がもしも危険な状態にあるということであれば、これは非常に重大なことでございますので至急調査をいたしまして御報告いたしたいと存じます。
#152
○並木委員 局長の答弁でも、あるいは第三次実験に遭遇したのではないかということが予見されますので、これはよけい、かつ至急お調べ願いたいと思います。それにつけましても、先般来口がすつぱくなるほど国会から私どもは政府に要望して、次の実験のときには必ず事前通告をしてほしい、そのことをアメリカに申入れをしてくれと言つておいたのでございます。これはいつでしたか、先月の末ごろだつたと思います。正式に政府は二、三の点をあげてアメリカに申入れをしたはずでありますが、その回答はもう先方からございましたのですか。あつたとすればその内容はどういうことでございましようか。
#153
○中川(融)政府委員 米国政府がビキニ近辺におきまして危険水域を広げたことにつきましては、その結果これが日本の水産業に及ぼす影響が大であると考えられましたので、水産庁、海上保安庁等と連絡いたしまして、適当なこれに対する善後措置と申しますか、こういうふうにしてもらいたいという要望をアメリカ政府に提出いたしたのであります。これは三月の三十日であつたかと思いますが、数点を先方に要望いたしたのでありまして、それに対しまして先方からは十日に一応回答があつたのであります。その回答の結果につきましては、なお日本政府としては必ずしも満足でない点がございますので、さらに先方に対して再考を求めておるのでありまして、従つてこの交渉中で、まだ交渉結了を見ませんので、双方打合せの結果、しばらく内容は公表しないことといたしております。従つて、この席で詳細なことを御報告いたしかねるのでございますが、できるだけ日本の水産業界に影響少からしめようというふうに考えて善処いたしております。なお個々の実験に際しまして事前に通告してもらいたいということもわれわれとしては希望いたすのでありますが、この点につきましては、先方がわれわれのその要望は承知はしておるのでありますが、なお個々の実験というものはその後も繰返されておりますことは御承知の通りでございます。
#154
○並木委員 さらにアメリカに再考を求めておるとのことでありますが、それはその後文書によつて再考を求めたのですか、口頭よつてですか、どういう方法によつてアメリカに再考を交渉しておられますか。
#155
○中川(融)政府委員 四月十一日の回答がありました際に口頭をもつて再考を求めておるのでございます。
#156
○並木委員 そのとめ先方はどのようにそれを受けたのですか。
#157
○中川(融)政府委員 先方の回答がありました理由と申しますか、さようなものを先方は説明したのであります。それに対してこちらとしては、こちらの希望あるいは考え方ということをさらに申しまして、向うで考慮してもらうようにということを申し入れたのであります。先方も一応、それに対する結果はもちろんまだありませんが、さらに十分できるだけ日本側の希望を実現し得るように研究してみたいということを申しております。
#158
○並木委員 それならば、今度のこの鯨の事件も、調査が済んだら至急それにおつかけてさらにアメリカに申入れをしていただきたいと思います。ことに、まぐろに次いで鯨がだめということになりますと、われわれの食ぜんに上るすべての魚があぶなくなるのじやないかというふうに、当然これは恐怖を巻き起して参りますので、ぜひあの政府の最初に申入れをした通り、できれば実験を延期してもらいたいこと、それから事前に必ず通告をすること、なるべくその危験区域を狭くしてもらいたいということを実現するようにがんばつてもらいたいと思うのです。この鯨の調査が済み次第先方に、その結果によつてはさらにおつかけて申入れをする、あるいは抗議を申し込むということをこの際約束をしていただきたい。
#159
○中川(融)政府委員 第五福竜丸の事件が発生しました以後におきましても、先ほども御報告いたしましたが、若干放射能を持つた船が入つて来たのでありまして、その放射能の程度は人体に危険がないということで、何らの処置が船自体についてはとられなかつたのであります。そのような場合にも、逐一その事情は先方に通告しておるのであります。アメリカ側もまた、放射能を若干でも持つている船があれば逐一知らしてもらいたいということを希望いたしております。従つて、今回の捕鯨船の場合におきましても、もちろんこれは先方に通達をすることとなるわけでございます。なおその調査の結果が危険なものであるということになれば、さらに抗議その他の適当な措置をとるということにいたしたいと思います。
#160
○並木委員 もう一点、補償の問題でありますけれども、これは今までのアメリカとの交渉ではどういうふうになりましたでしようか。補償という名目であるか、あるいは見舞という名目ですか、いずれにしても何らかの具体的な話合いができたと思います。それからまた、直接損害のみならず、間接の損害に対しても補償してやらなければ気の毒な点が数々でございます。たとえばまぐろの刺身が売れなくなつた、従つて、俗に刺身のつまと言うのですけれども、あのつまに使うわさびが売れない。思わぬところに間接の被害が来たのでみなびつくりしている。三題話みたいになりますけれども、話しておるわれわれは笑つておれるかもしれぬけれども、当事者になつてみれば笑つてはおれない問題です。こういうような間接の被害というものを調べてみると、以外に大きいのではないかと思いますけれども、直接間接の被害に対してどういうふうに補償されるか。もしアメリカの方で十分な補償がなされなかつた場合には、日本の政府としてはどういうふうになされるおつもりであるか伺いたい。
#161
○中川(融)政府委員 第五福竜丸の事件が発生いたしましたあとにおいてアメリカ政府が声明した中におきまして、今回の事件に伴う医療費、それから災害を受けた方々の家族の生活費というものについては、アメリカ政府においてこれを支払う用意があるということを言つておるのでありますが、慰謝料その他いろいろな、ただいま御指摘のありましたような直接間接のその他の被害については、その声明では言及されておらないのであります。従つて、アメリカ政府で補償する範囲がどの程度に及ぶものであるかということにつきましては判然としない点があつたのでございます。それらの点につきましてアメリカ政府と話し合いまして、アメリカ側の考えておりますところをできるだけはつきりさせたいというふうに考えて、すでにその趣旨での交渉を目下開始しております。しかしながら、われわれの考えておりますことといたしましては、できるだけ災害を受けた方々に満足の行くような補償をいたすように折衝したいと思つておりますけれども、その折衝の方法につきましては、ただいまのところは、できるだけしかつめらしい形をとらないのがいいのじやないかと考えていたしております。なお、十分な補償がとれなかつた際にどうするかということにつきましては、ただいまのところ、補償ということをまず第一に折衝するということにいたしておりまして、それ以外の場合の措置につきましては、まだ政府としてはどのような措置をとるかということについての結論は出ておらない状況であります。
#162
○佐々木(盛)委員 私はアジア局長がたまたまお見えでございますから、ほかにも加藤さんの質疑があると思いますので簡単に緊急に御質問申し上げたいと思います。
 それは本日いよいよ日本とフイリピン間の賠償交渉がフイリツピンにおいて行われるという重大な日であります。局長は御承知かどうか知りませんが、先日日本から送り出しました村田省蔵氏を首席全権とするわが方の代表団が到着して、きようから交渉を始めるというときに、フイリツピン側におきまして、この村田首席全権に対して非常な不満の意を表明しておる、こういうことでありますが、もとより着席全権に対しては国際慣例上フイリツピン大統領の承認ということが必要であろうと思うのであります。フイリツピン側において非常な不満を示しておるということをフイリピツン政府当局は言明をいたしております。まだ最終的な大統領のイエス、ノーは決定をしていないのでありますが、そういうことについて何か御承知でございますか。
#163
○中川(融)政府委員 今度フイリツピンにおきまして賠償会議が開かれるという見通しはあるのでありますが、しかし実のところまだ賠償会議を開くということを両国政府で最終的にきめる段階にまで至つておりません。これは新聞の報道が実は少し先走つた感もあるわけであります。先般フイリツピンに駐在いたしております大野公使が東京へ帰りまして、大体の話をまとめまして、昨日フイリツピンに帰任いたしまして、本日フイリツピン政府とその最終的な点につきまして打合せをいたすことになつております。その打合せがきまりますれば、それで初めて賠償会議を開こうということがきまるわけでありまして、きまりますればそれに基いて日本側は全権と随員等を任命することになろうかと思います。村田省蔵氏が首席全権になるといういとがすでに新聞に既定事実として伝えられておるようでございますが、政府といたしましては実はまだ最終的にきまつてはいないのでございまして、従つてまだ日本側でどういう人を全権にするかということの最終決定はないのでございます。しかしながら村田省蔵氏が現在フイリピンにおきまして非常に人望のある人物であるということは、いろいろな情報でわれわれもそうであろうかと考えておるのであります。新聞等によりますと、多少村田氏についての反対があるという情報はあるのでありますが、一方フイリピンの外務次官が、村田氏が全権として来るという報道はきわめて歓迎すべきであるということを、昨日非公式でありましようが言つている報道が、これも同じく新聞報道として来ております。従つて村田省蔵氏が首席全権となるということが最終的に決定いたしました場合に、われわれとしてはさしてフイリピン側において支障はないのではないかと考えておるのであります。特定の人につきましては、ことにいろいろ人望がある人であればあるだけ、また他方に反対の人があろうかと思うのであります。ここらはさして心配する必要はないのではないかとわれわれとしては考えております。
#164
○佐々木(盛)委員 関連してもう一点だけ……。ずつと前に外務省の設置法ですか、これが審議されます場合におきましても、私はまたおのずから異なつた観点から申したこともあるのであります。それは外務省で出しますところの外交使臣つきましては、大使や全権というような者は国会の承認を得るようにしなければならぬということを、私は主張いたしたことを記憶いたしておるのであります。今日日本とフイリピン間の賠償というものは、日本人の生命に関する重大な問題であります。そのときにおきまして吉田総理も特にそうでありますが、今日まで特に東南アジアにおけるところの国民感情を終始懸念し続けて参つたわけであります。申すまでもないことでありますが、村田氏個人の人格については非常に尊敬するものでありますが、経歴から申しますと、戦争中フイリピンの大使をしておられた方で、フイリピン側から言わせますと、これは日本がフイリピンで行つた未曽有の虐殺事件、あの当時おられた。こういつたことでフイリピンの国民感情からして難色を示すということもまた一面の真理だと考えなければならぬ。村田省蔵氏の人格が高潔であり、フイリピン人から非常に慕われているということも、あなたは現地におられたから御承知でありましようが、同時にその反面そういういきさつを考慮しなければならぬ、私はかように考えるわけであります。従つてとの重大な交渉が始まろうというやさきにおいて、フイリピン側がこれに対して難色を示すということはたいへんな問題だと私は思う。喜んでフイリピン側が迎えるような人物を送つて、両国のために有利な交渉をすることが、一番必要なことでなかろうかと思つておるのであります。向う側がそういつた難色を示したということにつきましては、ただいまお認めのようでありますが、万一向う側におきましてそういつた難色を示しても、やはり依然として村田さんで押し切るというお考えをお持ちになつておるのですかどうですか。また村田氏をお選びになるにあたつては、すでに内交渉があつたと思うのですが、それは一体どういうお考えに立つて人選なさつたのでありますか。
#165
○中川(融)政府委員 フイリピンとの間に賠償交渉が開かれます際に、その全権としてどういう人を出すのが一番適当であろうか。これは先方の全権の構成ともある程度関連して来ると思いますが、それらのことは大野公使が本日フイリピン政府と打合せする手配になつております。従来大野公使がフイリピン政府と打合せました経緯その他からわれわれが推定いたしましたところでは、村田省蔵氏のような人に来てもらえば非常に好都合でなかろうかというような空気がフイリピン側に非常にある、むしろ強いということを聞いておるのであります。御指摘になりましたような新聞報道がはたしてどの程度事実を伝えるものか、それらは現地に行つて見ないとわからないので、それらのことにつきましては大野公使の報告を待ちまして、最終的に決定したいと考えております。
    ―――――――――――――
#166
○上塚委員長 それではこれより秘密保護法案について質疑を継続いたします。加藤勘十君。
#167
○加藤(勘)委員 私は午前中の質問におきまして、主として言論関係の報道についてその編集責任者が関係官庁に対して事前に、これはこの法律に触れるものか触れないものか、秘密の事項に属するものか属さないものかを問い合せた場合には、単にこれは秘密に触れるとか触れないという処置をするだけであつて、これは検閲ということとは違う、こういうことをおつしやつたのであります。なるほどそれが何年間に一ぺんというようなことであれば、そういうことも言われると思いますが、これが今後、ここに限定された範囲ではありますが、あげられた諸項目については、自衛隊というか保安隊というものの数がふえるに従つて、演習等の行われることも頻繁になるに従つて、私はそういう事態がひんぴんとして起つて来るのではないかと思うのであります。そういう場合に、制度として何も検閲制度というものが存在しておるわけではありませんけれども、そういうことがしばしば繰返されるならば、これは一個の検閲制度ではないか。これがたび重なつて自然に成文化されない検閲制度というものが発生して来るのではないか、こういうように思いますが、この点は当局の先ほどの御説明によつて、一応それをそのままにしまして、しからば今度事後において、報道された後において、これがこの秘密保護法に触れるといつて、その刊行物のどういう意味においてかの差押えが行われるとか、あるいは報道担当者、編集担当者を被疑者として検挙が行われるとかいうことになると、これはどういうことになるのでしようか、検閲ではないでしようか、この点ひとつ法制局長官からお伺いしたいと思います。
#168
○佐藤(達)政府委員 検閲という言葉に私どもは別に直接関係のないことと存じますが、たとえば午前中のお話についてもそうでありますが、ただいまのまた事後ということでありましても、とにかくこの法律できめておりますことは刑罰であり、いわゆる事柄が犯罪事件になる、これはもう明らかなわけであります。従いまして、犯罪事件になるという段階におきまして、捜査の活動として、刊事訴訟法の許す範囲のいろいろな活動ができる、これも当然のことであります。出版物の関係におきましても、猥褻刊行物という問題になるならば、やはり刑法違反の問題として捜査の対象になる。選挙違反の問題にしろ、あらゆる犯罪についてこれは共通の部面であろうと思うのであります。その限度において、これもまた一つの犯罪である以上は、当然のことであるということは申し上げ得るのでありまして、これだけに独特の何か事後検閲的な活動がなされるというようなことは、私は考えられないと思つておるわけであります。
#169
○加藤(勘)委員 問題はその点にあるのです。要するに問題はお互いに犯罪を未然に防止するということに立法の趣旨もあると思うのです。従つてそういう危険、不安を感ずるようなことがしばしば繰返されるということについて、これを食いとめるような適当な規定がなされなければならぬのではないか、こう思うのです。もしそういう規定がない場合には不安であるから、編集者の方から進んで検閲を求めるようになる。犯罪の嫌疑を自分で阻止するために、進んでこれを見てくれこれを見てくれと言つて来られる。われわれは検閣という文字にとらわれてはならぬと思のです。実体が検閲になるのではないか、こう言うのであります。
#170
○佐藤(達)政府委員 その御趣旨はまつたく同感で、私もその立場でお答えをいたしますが、たとえば今のお話に出ました午前中の事前の問題にしましたところで、筋をたどつて考えて行きますれば、ただいまお話に出た第三条の第二号の場合、本人は標記も何もなかつたためにわからないという場合にはどうなるかということからお話がスタートしたわけであります。その場合を考えてみますと、この罰則にかかります場合は、まず防衛秘密であるということを、本人が認識をしておらなければならぬという条件が一つ、それから通常不当の方法によらなければ探知できないものであるという認識がなければならない、この三つがそろわなければ処罰されないのでありますから、開きに行く必要も何も本来はないのであつて、それを知らなかつたという、認識がないことさえ明らかになつておれば当然無罪になる事柄なのであります。そこで先ほどの話に出ましたように、聞きに行くという場合は、これは抽象的に考えればあり得ると私は思います。先ほどもちよつと触れましたけれども、選挙の時期の前になりますと、議員候補者の方々が私のような者のところにさえ、こういうことをしたらどうだろうかということを聞きに参られます。そういうような意味では、今のこの秘密保護法ばかりでなく、選挙問題にせよ、あるいは税法の問題にせよ、一般にあるのでありまして、これは否定できないと思います。何かこれだけについて独特の事前の云々、あるいは事後の云々ということがあるかどうかという点について、これは私はあるはずがないというふうに考えておるわけであります。
#171
○加藤(勘)委員 私は具体的な法律の条文から離れてお伺いしたいと思いましたけれども、今具体的にお述べになつたから、慕い私も法律の条文の文句に触れるのでありますけれども、第三条一項一号の「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、又は不当な方法で」と二つ並べてあるわけです。そこで「用途に供する目的をもつて、」という、この「目的をもつて」ということが、犯罪を構成するかどうかという大きなわかれ道になると思います。同時に「不当な方法で」ということも、また犯罪を構成するかどうかという大きなわかれ道になるわけであります。その「目的をもつて」ということは一体何を基準として判断するのか。これは人の心理状態であります。具体的に客観的なもので立証できるならば別でありますが、その被疑を受けた人の心理状態によつて目的を持つておつたのかおらなかつたのかをきめなければならぬわけであります。しかも「又は不当な方法で」という、その不当という事柄も何を基準として不当というか。普通常識的には不当といえばあるいは暴力をもつて、あるいは相手に脅迫観念を起させて、恐怖の結果しやべらせるとか、そういうことが普通の常識では不当な方法ということが言われましようけれども、そこまで明確にならない、お互いの話合いの中に出て来るという場合もあり得るわけであります。しかもこの「不当な方法で」ということも、「目的をもつて」ということも結果論でありまして、裁判の結果、一切の審理を終つた後に、初めてそういう目的を特つたかどうかということが客観的に証明されるわけであります。ところが最初検挙の端緒になりますときには、そういう目的があつたかなかつたかわからない。問題はそこなのです。裁判されてしまつた結果から目的を持つたとされるならば、それは罪される人も得心するかもしれません。ところが最初は全然そういう意図なく、偶然にか、あるいは無知にか、あるいは善意にかであつたのが、一応被疑者としては「目的をもつて」か、あるいは「不当な方法で」というように認定され、それが検挙の端緒になる。こういうことになるわけでありますから、そこを明確にする必要があると私は思うのであります。これらの点について法制局長官はどのようにお考えになつておられるのでしようか。
#172
○佐藤(達)政府委員 御心配の点は、さきの刑事特別法の場合にもわれわれずいぶん苦労したのであります。それらの研究の結果、結局刑事特別法という法令が出ましたからそれによつておるわけでありますが、要するにただいまお話の通り、この「目的をもつて」というのが一つであつて、この「又は」以下はまた別の問題であるわけであります。順序で行きますと、この「目的をもつて」といういとは一応これは主観の問題であることは明らかであります。但しこれが犯罪事件として処罰されるかどうかという問題になりますと、御承知の通りに自白のみをもつて証拠とするわけにも行きませんし、事柄の実体から申しましても客観的にそれを裏づける証拠がなければ、ただその人が持つておる主観だけで処罰されるということは絶対にあり得ないわけであります。それから「不当な方法で」ということは、これはもう初めから主観的ではないのであつて、初めから客観的に認定されるべき事柄と考えております。従つて社会通念から見て、普通の場合には用いられないような方法ということで、今のお話にもたしかあつたと思いますが、普通には立入りの許されないようなところへ入つて行つてやるとか、あるいは酒をうんと飲まして心身の平衡を失せしめて事柄を探り出すというような場合、これは社会通念に照らして客観的に判断できる、かように考えておるわけであります。
#173
○加藤(勘)委員 さらにそれに関連して当然必要な条件は、「目的をもつて」にしてもあるいは「不当な方法で」ということにしても、直接業務を担当する人から知り得る場合のことをいうと思いますが、その第三号には、「業務により知得し、」云々ということがあります。この業務という範囲は、先ほどこまかく一々担当官の職掌をおあげになつたその範囲のことであるのか、あるいは広い意味のそれに直接間接に関連する業務という意味であるか、この点がこれだけでは不明確であると思います。もちろん政府の方ではこれがこういう種類の立法の場合の用語上の立法例となつておる。たとえば前の軍機保護法の場合でも、刑事特例の場合でもそうであるように、やはり軍機保護法の場合ならば、第三条に「業務ニ因リ軍事上の秘密」云々ということがあります。この「業務により」という、こういう不確定な、どうでもとれるような広汎な字句ではなくして、直接防衛担当ならば防衛担当の業務、こういうふうにされるならば、範囲はきわめて明確に限定されるのでありますけれども、立法者は、立法の意思は先ほどお示しになつたような直接防衛事務を担当する関係官を言うのでありましようけれども、これを今度は実際に行政運営をするときには、広汎な意味に解釈されても、それをどうすることもできないのであります。でありますから、こういうような業務に携わつておる直接関係のない人々も非常に不安を感ずるであろうし、あるいは一部で問題にされましたように、報道関係等に携わつておる人々でも、やはり報道という業務、これもその業務の中に含まれるのか、もし政府の意図が明確に、面接防衛業務に関係するものであるというならば、防衛関係なり、あるいは防衛の直接の担当者なりというように業務ということを明確に限定規定されたならばどうですか、その点は立法例であるからこういうような文字を使つておるということだけでは、なかなか一般は得心しないと思いますが、いかがでしようか。
#174
○佐藤(達)政府委員 これは砕いて書けることかどうかという問題が前提になるわけでありますが、ただいまのお言葉にありますように、防衛担当の者というようなことではまだこれは満足できないということであろうと思います。先ほどもお答えしておきましたと思いますが、防衛担当といいましても、また幅の広いことでありまして、特にこの秘密の兵器なら秘密の兵器というものを自分の職務として扱う、あるいは接触するという人を押えなければ、幅が広過ぎるわけであります。その階段というものは、今のたとえば民間工場にこれを修理させるという場合におきましても、その直接修理に当つておる者は、業務関係者でありましようけれども、同じ職場でありましても、その隣でほかの仕事をやつておる者は、これはもうおよそ兵器の修繕ではありましても、当該秘密兵器の修繕を扱つていない者であれば、これに当つておらないということになるわけでございます。そういうことは、先ほども触れましたように、「業務により」という言葉で今までも限定されておるものであるということは、私は確定をしているものだと思います。非常にこまかく砕いて精密を期し得るということであれば、これはまた別でありますけれども、午前中触れましたように、これはまた人間の力の限界ということでもあろうと考えておるわけであります。
#175
○加藤(勘)委員 どうもその点は明確でありませんが、私一人で質問を占めてはいかぬと思いますから、あとに譲つておきます。さらに進んで、この秘密保護という立場からですけれども、この法律は、要するに罪人をつくるのが目的ではなくして、秘密の漏洩を防ぐというのが目的だと思うのです。ところが不幸にして実際に悪意を持つた、この法律に触れるような人が裁判にかかる、問題はそこにあると思うのであります。憲法三十七条によりますれば、当然すみやかに公開の裁判を受ける権利を有する、こういうことになつております。これを秘密にして公開を禁止するというような事柄は、憲法の規定の中にはないわけであります。そこで、そう言うとあるいは猥褻罪であるとか、その他社会の安寧に害があるとか、公共性をそこなうとかいう場合にはやむを得ぬというお言葉があるかもしれませんけれども、少くとも憲法に規定する限りにおいては、公開裁判を受ける権利を持つておる。この矛盾をわれわれは先ほど申しましたように、新しい憲法の精神から行くならば、この憲法の規定をどうしたならば守つて行くことができるかというように立法する建前になつておると思います。従つてこういう点から行けば、公開裁判が行われるということになれば、秘密条項というものは煙のごとくに消え去つてしまいまして何も意味をなさぬことになる。のみならず刑事訴訟法の五十三条によりますれば、訴訟関係人は裁判書類の謄本もしくは抄本を自分の費用で請求することができる、こうも書いてあります。そうすればこの訴訟関係者は、公判に関する関係書類を、費用さえ出せばその謄本なりあるいは抄本なりを請求することができるわけであります。当然これは裁判部外にも持ち出される、こういうことになると秘密を保護しようとしたこの法律の規定というものは死んでしまいます。こういう関係が起つて来るが、これらの点に対して政府はどういうように考えておいでになりますか。
#176
○佐藤(達)政府委員 ごもつともな御疑念であると思います。これは実は例の第十三画国会に同じ刑事特別法を出しましたときに――そのときは国会ではあまり問題になりませんでしたけれども、私どもの仲間ではいろいろと研究いたしました問題でございます。それでその結論は、要するにこの憲法八十二条の場合というものは、これは一に最終的には裁判所がみずからの運営としてお責めになることでありますから、政府としてこうであるときめて、この場合には秘密でやつてもらいたいというような指令は出せる立場にないわけでありますから、われわれが言つたことが権威を持つかどうかは別といたしきて、われわれの結論といたしましては、要するにこの憲法八十二条があるからといつて、すべてこの法案で保護せんとしておる秘密事項は、かりに裁判が公開されたといたしましても、公開の結果がただちにもつて秘密事項の公表ということにもならないのではないか、たとえば卑近なことでございますけれども、この間私のある先輩が、チヤタレー事件の裁判の証人でありますか鑑定人に呼ばれて、これが猥褻に当るかどうかということを公開の法廷で聞かれた。そのときにいろいろ抽象的な意見を述べたそうです。そうしてそのときに、私が悪いと思うところをここで読みましようかと言つたところ、いやそれはよろしいと言つて、そこはうまく幕が納まつたという話を聞いたのでありますが、そういう面からも私は、裁判の運営の方の適当なる措置というものもあり得るのではないかというようなことで、こまかくこれはまたいろいろ議論があろうこととは思いますけれども、この法律で保護せんとする秘密が、今の裁判公開の原則からしてナンセンスであるという結論にはならないというふうに信じておるわけであります。
#177
○加藤(勘)委員 憲法八十二条の場合は、同じ憲法の規定であつても、この三十七条のまつたく特殊な例外だと私は思うのです。原則はやはり公開裁判が原則であつて、裁判官の総員の考え方で初めて八十二条の適用がなされると思うの、です。だから、もしあのチヤタレー事件の公判のような場合、もしくは単に猥褻罪等で公の公判をはばかるというような場合には、私は大した問題はないと思うのです。しかしいやしくもこういうようなスパイを目的として、そうしてこの法に触れることを意識して公判にかかつたというような場合に、それを一体どうやつて防ぐか、これは私は防ぎようがないと思います。たといどういう意味において公開は制限されましても、関係書類はこれを請求する権利を持つておると思う。そうすると、その書類がそれからそれへ伝わつて来れば何にもならぬではないか、こう思うのですが、この点はどういうお考えですか。
#178
○佐藤(達)政府委員 これは横に法務省の専門家がおりますから、こまかいことはその方からお答えできると思います。私どもの半分思い出話でございますけれども、研究をやりました段階においては、たとえば猥褻事件にしたところで、どこが悪いという理由がはつきり判決の理由書に出て来るだろう、それを今のお話のように、当該関係人はもらえるじやないか、それを今度はシヨー・ウインドーか何かに飾つてみたら、それは一体猥褻の文書の公示展覧というような罪に当るか当らぬかというようなところまで、多少は興味半分ではございましたけれども議論したのであります。しかしやはりその文書そのものの本来の使命と申しますか、意義というものがあるわけでありますから、たまたまその判決の理由書におもしろいところがあるからといつて、それをシヨー・ウインドーに飾る、そういうことになれば、これはそのときには判決文というものの性格を失つてしまつて、やはりその面においては猥褻文書になるのじやないかといういとまで、実は議論したことがあります。私ども学校出てからもうずいぶん長い間たつたものでありますから、半分は興味本位だつたと申し上げるのが率直だろうとは思いますけれども、そういうものじやあるまいかと私は考えておるわけであります。
#179
○加藤(勘)委員 今の法制局長官の論理で行きますと、裁判関係の書類を自分の費用で関係者が受取つて、今度またそれが何らの機会に他の人の目に触れる。たとえば具体的に言うならば、弁護士なら弁護士がその関係書類の謄本を持つておる。今度その弁護士が自分の書斎に公判記録としてそれを置いておいた。それをいつの間にやらだれかに持つて行かれた、そういうことになると、今の長官の論理から行くと、当然やはり秘密条項に触れるということになるわけでありますが、そこまでこの法律は一体人を規制する効力を持つておるのでしようか。
#180
○佐藤(達)政府委員 どうも私はつきり意識しておりませんけれども、最初に申し上げましたように裁判官の運用上の良識というものが一つあると思います。従いまして、今のお話のような、公判に供せられた文書そのものが、一体非常に精密に、秘密の内部までも書かなければならないものかどうか、私自身はその方の専門家はございませんけれども、それ自体に疑いを持つわけであります。それを書くか書かないかというような問題は、裁判官の良識、あるいは法廷の運用上の一つのやり方としての問題、そこに幅があるのじやないか。これは専門家が来ておりますから、その方からお確かめになつた方が、あるいは正確かもしれません。
#181
○加藤(勘)委員 それはとんでもない話なのです。いやしくも十年という刑期を規定する法律のもとに裁判をされる場合に当然微に入り細をうがつて、こまかく被告に対して追究されるのです。それでどんなこまかいことまでも公判記録には載つております。それこそ通俗な言葉でいえば、そこらで犬が小便したことまで載つているわけであります。具体的なことを言うならば、そば屋でそばを一ぱい食つたこともちやんと載るのです。それがいやしくも十年という刑期を持つた法律による公判の建前です。だれがあいまいな抽象的なことで罪せられて、その罪に服する者がありますか。具体的な事実を一々示されて、どうしても客観的条件がこうであるからといつて、初めて自分の自由とそれが一致する場合に、刑が確定するのです。ことにこの問題は、この点が罪になるかならぬかということは、ちやんと規定してある。この規定の事柄が公判記録に載らなければ罪にならない。従つてそういう場合において、その公判記録があるいはどういう関係からか、他の第三者なら第三者に伝達される、こういうことは当然予想し得ることです。もしこれを予想しないというならば、あまりにも私はうかつだと思います。私は二度も三度も裁判を受けた経験を持つておる。裁判は決してそんな甘いものではありません。それが記録に載らなければ、何も物的証拠がない。口で言うた言わぬだけになつてしまう。必ず文書に書かれる。従つてこういう規定があつても、そこから逃げて行くならば、これは何にもならぬじやないか、こういう感じを強く抱くのですが、どなたか知らぬが、専門家のお説をひとつ聞きたい。
#182
○桃澤説明員 ただいまの問題でございますが、もしもその事件が憲法第八十二条の二項但書に該当する事件として公開された場合、この場合は多くの場合、本法案第一条の第三項で公になつていないもの、これが要件になつておりますので、その場合には、公になつたものとして、その後の責任はなくなるのではないかと思います。その後会になつたものとして、そのあとの方は防衛秘密ではない、かような関係に相なると存じます。もしもこれが憲法第八十二条の第二項の但書に該当もないとして、裁判官の全員の一致をもちまして、公の秩序を害するおそれありとして非公開になつたという場合を考えますと、刑事訴訟法の第五十三条の第二項で、これらの記録は公開しない手続がとられることができるわけでございます。その場合には、いまだ公になつていないものとして、やはり秘密を保持しなければならない……。
#183
○並木委員 ちよつと関連して。非常に専門的な問答で、私もしろうとですから、その点はむずかしいのですけれども、今の答弁ですと、秘密の裁判の場合にはなおそれが秘密で残る、公開になつた場合にはその結果は公にされたものとなるというふうに私開いたのですが、もしそれがほんとうの答弁だつたら、裁判の形式によつて秘密が秘密でなくなるという矛盾した結果になるのじやないでしようか。私は秘密というものは、客観的なものであつて、裁判のいかんにかかわらず、秘密であるものならはやはり秘密として、一方において存続されて行くのじやないかと思うのです。そこでさつき法制局長官の非常に苦心した答弁になつたと思うのです。なおこれがアメリカ軍から供与された装備として秘密なんだということで継続する必要があるならば、その部分は巧みに裁判の中で公にならないように、うまくやつて行くのじやないかというようなことを含めての、法制局長官の答弁じやなかったかと思います。従つて御両人の御答弁に食い違いが認められます。その点をもう一度はつきりしておいていただきたいと思います。
#184
○桃澤説明員 私の申し上げましたことは、非常に抽象的になつたかと存じますけれども、たとえば新聞で防衛秘密が公になつた場合を考えてみますと、その場合には、新聞で公にしたところまでは防御秘密として取締られるのでございますが、その新聞を見て、それを第三者に告げた者、そういうものは第一条の第三項の防衛秘密に該当しないということで免責せられるのでございます。それと同様でございまして、もしも憲法八十二条の絶対公開の規定に該当する事件でございまして、その秘密が法廷において衆人の前にさらされた、あるいはその記録も、刑事訴訟法第五十三条の規定によりまして、請求があれば閲覧される状況にあるのでございますから、もしその記録に、先ほど法制局長官の仰せられましたように技術的に、あるいはその取扱い上、秘密そのものが出ていないような処置が講ぜられていた場合には別でございますが、そうでなくて、法廷で、たとえば証人の証言等によつて初めて機密の内容が十分明確にされたという場合には、この法律の適用の上から申しますと、やはり公になつているものということにならざるを得ないのではなかろうか、かように考えているのであります。
#185
○加藤(勘)委員 ただいま桃澤さんのせつかくの御説明でありますが、第一条第一項第三号にあります、「公になつていないものをいう。」という意味の半面解釈を御説明なさつたのです。ところがこの公判に付せられた事案そのものは、初めから「秘」なり、「極秘」なり、「機密」なり、そういつた標記のしてあるものに基いて公判されたのです。それで公判の途中においても、そのものは依然として「秘」なり「極秘」なりあるいは「機密」なりという標記がなされておるわけである。もし公判の途中においてそういう標記が抹消されるならばこの公判は当然無効であります。そうでしよう。従つてそういう秘密文書を中心として公判されてあるものが、たとい公判において公開されたからというても、秘密という本質そのものには依然としてかわりはないわけでしよう。それが外部に漏れるのですから、その漏れたものをどうするかということが当然問題になつて来る。それで一方においては秘密の標記をしておきながら、他の一方ではどんどん公判を通じて外部に漏れて行くということになれば、この秘密保護の目的は達せられない、こういうことになるのではないか、この点についていかがですか。
#186
○佐藤(達)政府委員 ちよつと頭を整理して出直してみたいと思いますが、今の公開裁判の問題について、まず先ほど桃澤君が触れましたように、裁判官の全員一致で秘密になればこれは御安心だろうと思います。そうでない場合のことであるわけであります。そこで、そうでない場合の問題としてわれわれの考えられますのは、たとえば選挙違反の事件であるような場合であれば、お茶か、お菓子の程度のものであつたか、あるいはどの程度のものであつたかという点が今度は問題になつてこまかく追究される。そういうことは場合によつてはあり得ると思います。今度の場合を考えてみますと、これが防衛秘密であるかどうかということが一つきまりさえすればそれでいいことである。それから先ほどの目的の問題、あるいは不当の方法でやつたかどうかという問題が証明されればいいことでありまして、今のお茶の程度であるかどうかというような角度からのこまかいせんさくということは、必然的にまず出て来ないであろうということが一つ。それからあとは裁判官の法廷の運用の問題ということとの二つが組み合されて、この法律が憲法八十二条によつて全然ナンセンスのものであるというふうには、どうしても言い切れないと考えます。
#187
○加藤(勘)委員 ただいまの法制局長官の言葉は、顧みて他を言うの類だと思うのです。あなたは裁判を受けられた経験をお持ちになつていない。私どもは治安維持法のもとにおいて裁判を受けた経験を持つているが、そんなことではありません。さつきも言つたように、それこそそば一ぱい食つたことが状況判断の資料として取入れられるのです。実に何といいますか、どこで何時何分たれと会つたという、今でいえば、予審というものはありませんけれども、その当時ならば予審制度のもとにおいて、治安維持法でいえば、重刑は最高死刑まである。そういうような重刑を科するような重罪でありますから、裁判官自身は恩怨は何もないのだから、従つて公正を期する意味において非常に微に入り細をうがつてやらなければならぬ。この秘密保護法の問題にしても、解釈があいまいであるから、行政措置としては、ときによれば拡大解釈をされる。全然そういう目的を持つていなくて、犯意のなかつたものが公判に付せられることがある。そのときに、ほんとうにこれが秘密かどうかということを根掘り葉掘り究明するのです、それは個人の人権を尊重する上からいつても、裁判の公正を期する上からいつても当然なことなのです。それが現実にやられているのです。そういう場合に、これが秘密であるということが一つわかればよいとか、あるいは犯意があつたかなかつたか一つわかればよいというような、そんな単純なものでは裁判の公正は期せられないのであります。従つて裁判の公正を期するという点からいえば、根掘り葉掘り追究されて、それがたれからも指弾されないようにして初めて最後の判決が下されるわけであります。そういうことがなされますから、その関係書類がその関係者によつて外部に次から次へと喧伝流布される――私は宣伝とは言いませんけれども、相次いで喧伝流布されて行く、これは免れることのできない事実だと思います。そうすると、今申しましたように、一方において秘密の標記がなされておつて、一方ではそれがどんどんと裁判を通じて筒抜けになつて行くおそれが確かにあると思います。今までのこういう種類の法律のもとに裁判を受けた者の実験からいいましても、私はあり得ると思うのです。しかもそれは合法的なのです。合法的に外部にだんだん伝わつて行く。そうなつたらこの秘密保護法というものはどうなるのですか、これについてはいかがでありますか。
#188
○佐藤(達)政府委員 次々とそれが喧伝されてどうということが、今度は正当性の問題がまたあると私は思います。先ほど猥褻文書の例でおしかりを受けましたけれども、その例でも同じことでありまして、かりに判決文の中に、あるいは理由書の中にこまかく猥褻事項が書いてあつたという場合に、それをその当事者が持つております分にはもちろん合法でありますけれども、それが店頭に陳列され、あるいは転々としてまわつて行くという場合にはまた別にチエツクされる。この法律によれば、不当な方法によらなければ通常は収集し得ないようなものといういとでありますからして、それを何ら正当の理由なくしてほかへまわすということは、そのこと自身問題になると思います。しかし、それにもかかわらずそれを犯して公にしてしまつた、公になつたことはこれは事実でありますから、それは今桃澤君が言われましたように、公になつてしまつたことは事実として、その方はその方としてやむを得ない、これは論理上さようなことであると思います。
#189
○加藤(勘)委員 それではこの点はひとつあなた方の間で整理して御答弁願いたいと思いますが、公判を通じて公になつたらその秘密の標記はただちに撤去されるのですか。公になつてはもう罪せられないというなら、それらの秘密の価値がなくなつたから、秘密の標記は撤去されなければ両方合致しないわけです。そのときはどうなりますか。
#190
○佐藤(達)政府委員 どうもこの問題は、むしろ前の方の、公になつていないものというのは何かということであつて、公になつた以上はもう第二条でありますか、一条ですか、この三号によつて秘密性がなくなるのであります。そこで公になつた原因が何にあるかといいますと、まだ裁判事件にならない前に公になる場合もありましよう。それによつても秘密性はなくなつているといつておるのであります。裁判事件の前であろうと後であろうと、およそ公になつたという事実があれば、これは秘密性はなくなるのでありまして、裁判の前後を問わない問題であります。桃澤君の言つたのはこの点を言つたわけでありまして、私はこれはもうあたりまえのことを言つているのだろうと思います。
#191
○加藤(勘)委員 その点腹の中は――法制局長官と桃澤さんの御答弁は明らかに違つておる。あとから速記録を見れば明白でありますが、食い違つておるといわなければならぬわけであります。この点について、かんじんの標記を一番中心に扱われる保安庁の御解釈はどうでしようか。
#192
○増原政府委員 私は承つておりまして今の法制局長官と桃澤課長との説明は食い違つていないと思います。そもそも防衛秘密というのは、何度も引例をされてごらんになつておりますように、今までの秘密保護法とは少し趣が違いまして、公になつていないという特別のものがあるわけです。これは今までいろいろ御説明しましたが、その公になつた原因が違法であつても、不当であつても、合法であつても、とにかく公になつたら、公になつた以後はもう防衛秘密ではないのであります。しかしその実体は公になろうが、実は秘密にしたいというものはあるわけです。あるわけであるが、しかし犯罪取締りの刑罰法規としては、公になつた以上はいわゆる秘密として扱わない。罰しないということにしたわけなのです。これはどちうがいいかといいますと、実体的には秘密なものは公になろうがあとあと秘密として扱いたいのですが、公になつたものを秘密として扱うことはできない。これは公にしたものが不法であれば公にした者を罰する。従いましてある者が不当な方法で防衛秘密をとつて来た、その人は明白にこれが防衛秘密であることを知り、不当な方法でこれをとつて来たものであるならば、その人はこの法律で罰せられる。しかしそれが絶対公開の公判であれば裁判にかかつたとたん公になる。それ以後は秘密ではありません。しかしその秘密を公にさせる原因をつくつたその犯罪者というものは、やはりこれによつて罰せられるのでありまして、その人の罪はなくなりません。
 標記との関係は、われわれの方では標記をみなつけますが、標記であつても公になつて実体がもう防御秘密でなくなつたものは、いかに標記がありましても、それを何かあまり事情を知らぬ人が見て、防衛秘密と書いてあるし、大事なものと思つて他人に漏らしましても、もともと防衛秘密でないのでありますから、いわゆる不能犯に属するもので、犯罪にならぬのであります。
#193
○加藤(勘)委員 佐藤法制局長官は猥褻の場合には、これを陳列されたり、人に見せられたりした場合においてはおのずから別個になる、こうおつしやつた。ところが今の説明を開いておると、それも公判で公開されたものであるならばもう問題でなくなつてしまうわけだ。それでなければ論理は一貫しない。それから桃澤課長のお答えは、裁判によつて公開された後は、もう秘密の標記があつてもこれは秘密でない、こうおつしやつたのですね。ところがそれならばもう秘密の標記というものは意味をなさぬから当然とられるべきであるし、おとりになるであろうと思うが、もしこれでそのまま秘密標記が付されておりますと、公判のあつたことを全部が全部知つておるわけではないわけですから、実際に行政の、検挙等を担任する司法警察官にしても、検事にしても、それはときによると――裁判でどうなるか知らぬけれども、その秘密の標記がある以上は、これを漏らした者は検挙に値するといつて――公判の結果は不能犯として無罪になるかもしれません、免訴になるかもわかりません、しかしながら公判に行くまではやはり検挙の対象になるのです。そこで公判において公にされた後は、その公にされたものについての秘密の標記は当然撤去されなければならぬわけでありますが、その点ひとつはつきりしておいていただきたい。
#194
○増原政府委員 もとより公になりましたものは防衛秘密でなくなるのでありますから、防衛秘密でないものに秘密の標記をつけてはなりません。これは行政措置としてそういうものについては防衛秘密の標記を撤去するように措置をいたします。
#195
○加藤(勘)委員 そうしますと、具体的にはこの秘密の標記のあるものはいつ幾日のどういう公判において公開されて、もうすでに明らかになつてしまつたから、かりに秘密の標記が付してあつてもそれは秘密ではないということを関係各庁に全部通達されるわけですね。
#196
○増原政府委員 その言い方はどういうようになりますか、趣旨はそういうことでありまして、防衛秘密と書いてある標記を抹殺するということになると思います。
#197
○加藤(勘)委員 次に移ります、そこで秘密の公判の問題でありますが、先ほど下田局長が並木委員からアメリカの軍隊の秘密保護法で罰せられた者の資料を要求された。これに対して下田局長はそれは自分の手元にはない、アメリカの軍隊も、軍隊の名誉のことでないから発表しないと思うということを答弁されておる。そうするとこれは発表しない裁判記録というならば秘密裁判ですね。そうするとこのアメリカと日本とが防衛協定をやつた義務としてこの法律が生れて来たものでありますから、従つてこういうアメリカにおける軍事秘密の秘密裁判の類似として、アメリカから日本にこれは秘密裁判にしようといつて、要求ということはないでしようけれども、少くとも希望が述べられたときに、日本の政府はこれをどういうようにお扱いになるか、政府は行政官であつて司法官と違うから、アメリカの希望は単に希望として聞いておくにすぎないと言われるのか、それとも一体両方の政府の合意により云々ということがある関係から、どうやつて合意をお互いに通達されるのか、その通知し合う機関はどういうように構成されようとするのか、その機関と、今のそういう場合の日本の裁判に対しての関係はどういうようになさろうとするのか、これらの点についてはつきりした御答弁を願いたい。
#198
○増原政府委員 MSA協定の条文そのものに書かぬでもいいことでありましたろうが、皆さんのいろいろなあれもありまして、念のためにそれぞれ憲法に従つてやるということがちやんと書いてあるわけであります。わが国の裁判は憲法その他法律に基いて行われるわけでありまして、その裁判についてとかくの申入れを受けるというようなことは考えておらないわけでございます。
#199
○加藤(勘)委員 それは防衛援助協定そのものの九条の中に、双方の国の憲法の規定の範囲内で、こういうことが規定されているからかまわぬ、こうおつしやる意味だろうと思うのですが、しかしながらわれわれは防衛援助協定の第八条の軍事的義務の点について疑義を持つているし、今第三条の秘密を保持するという義務、これはやはり第九条と独立の条文として存するわけです。だから第三条の解釈をするときには第三条の解釈・第九条の解釈は第九条の解釈という、そういうしやくし定規の解釈もしようとすればなし得ると思う。そこにわれわれが第八条に非常な疑義を持つたゆえんもあるわけです。第八条に対して疑義を持つたと同様に第三条に対しても疑惧を抱くわけなのです。そこで私どもはそういう点から何かアメリカとの――双方の政府の合意によつて秘密の内容を決定するということになつておる。従つてその場合にどうやつて双方の政府の合憲をはかろうとされるのか、この機密をどういうように構成されようとしておるのか、そのときの話合いで一つ一つきめられるのか、たとえば行政協定のためには日米合同委員会ができておる、そういうものをおつくりになる意思があるのかどうか、こういうことをお尋ねしたのです。
#200
○増原政府委員 私からお答えするのは少しよけいなことのようですが、九条の書き方は「この協定のいかなる規定も、」と書いてあるのでありまして、これはもとよりあつてもなくてもいい規定だと思いますが、規定の書き方にしても、この協定のいかなる規定も憲法に従うのでありまして、その意味において八条なり三条なりが別に解釈できるなどということは、私はどこからも出て来ないと思います。それは私の答弁すべき条項ではございません。「両政府の間で合意する秘密保持の措置」というのは、わが方で今提出しました秘密保護法案というものの御審議を願いまして、これによつて措置をするならばよろしいという建前でございます。
#201
○加藤(勘)委員 そうすると特別な機関はおつくりにならないのですね。日米両国の政府の合意によるということでありますが、その合意をするための特別の機関というものはおつくりにならぬで、日本の外務省とアメリカの大使館とが始終話し合つておきめになるわけですか。
#202
○増原政府委員 秘密保護の個々の具体的な問題について、こういう秘密事案が起きたからということでアメリカと一々連絡をとつてどうこうするというようなことは考えておりません。そういう事案が起つたときにこの防衛秘密保護法案に従つて憲法に基く裁判を行つて措置をする、それでいいという建前であります。
#203
○加藤(勘)委員 私の質問の要旨は、ちよつとお答えと食い違つているのです。つまりこの防衛協定の第三条によりましてこの法律が生れて来たわけなのです。この法律は、私は形式的には日本の国内立法として、防衛協定とは切り離して考えたいということを午前中にも申し上げたわけなのですけれども、実質的には防衛協定の第三条から生れて来たものであつて、法制局長官がお答えになるように、これは表裏をなすものである、これもはつきりしておるわけなのです。この三条に日米両政府の合意によつて云々ということがあるから、今この法律ができれば、合意よつてできたものである、こうは私は認めたくない。いやしくも独立国が外国との合意によつて国内立法をするなどということはそもそも間違つておる。そういう意味からそうではないと私は思いたい。そこで秘密事項の第一条の定義、秘密の範囲というものがきめられるのに、一ぺんこれをアメリカ側ときめたならば、もうそれ以上に何も話し合う必要はないのか、それとも話合いをするのか、これをお伺いしておる。
#204
○増原政府委員 お話の趣が大分微妙なところがあるようで、少しわかりかねるところもありますが、合意をするのがいやだというふうにおつしやいましたが、防衛協定というのは国会の承認を得るならば、これはもう協定としての成案になるわけです。そこで「両政府の間で合意する秘密保持の措置を執る」こういうておるのでありますから、いやだというても合意したものはやるよりしようがないのです。その合意をする措置というのを、法律でつくるということはこれでは約束しておりません。しかし日本政府としては、秘密保持の措置としてはこの防衛秘密保護法をつくることがよろしいと判断した。その判断に対してアメリカ側でもそれでよろしいということであつたわけであります。法律をつくることはこの協定においてはきめてありませんし、約束をしておりませんが、しかし措置として日本政府はこの秘密保護法をつくることがいいと判断した。そうしてこの措置によつて秘密を守ることでけつこうだというアメリカ側の合意がある、こういうことでございます。
#205
○加藤(勘)委員 だから特別な機関はつくらない、こういう趣旨なのですね。
#206
○増原政府委員 そういう趣旨でございます。
#207
○加藤(勘)委員 それからこれはこの前私は外務大臣にもちよつとお伺いしたのですが、そのときにも御答弁はきわめてあいまいでありましたけれども、この第一条第三項の一号にイからニまでの規定がある。これがいわゆる秘密の範囲に属すると思うのでありますが、この中でたとえば「構造又は性能」、これが中心でありますが、この構造は外形上の形式をいうのでしようか、それとも内部の組立て機構一切含めたものをいうのでしようか、どちらでしようか。
#208
○山田政府委員 ここで申しております構造とは、外形は含みません。内部の組立て方のみをさしております。
#209
○加藤(勘)委員 そこでたまたま学者が独自の立場において研究をしておつた、その研究の符合といいますか暗合といいますか、それの偶然の一致というものは世界の学者間にもしばしばあるわけです。そういう点で日本の学者が研究をしてたまたま性能あるいは機構において一致した点があるという場合に、それを学者が自分の研究成果として発表される、ところが何ぞ知らん、それは一方においては機密事項として標記がなされておつた。こういう場合に、これはもちろんこの法律でいうところの日本の安全を害するという目的を持つてもいなければ、あるいは不当な方法でということもないわけであります。その点明確なのだけれども、しかし発表されたものだけを見ると、秘密の標記がなされてあるものとたまたま一致しておつたというところから、これが検挙の対象になり得るおそれはあると思うのです。そういう場合に公判を待てば明白ですが、公判の最終決定を見るまでの間この人は被疑者として苦しまなければならぬ。こういうことも起り得るのですが、こういう点に対してはどういうようにお考えになつておるのでしようか。
#210
○山田政府委員 学者の研究でたまたま偶然に一致しえおつたという場合には、今度の対象にはなりません。
#211
○加藤(勘)委員 検挙されるということは明確なのですよ。あなた方はそういうことがないから何も関心を持つておいでにならぬけれども、ほんとうにこれが法律になつてごらんなさい。そういう事態が起れば必ず検挙される。それはもう疑いなく検挙される。検挙された結果は裁判は無罪にきまっておる。法の対象にならぬというだけでは逃げられぬ。だからそういう場合の保護規定がはつきりなければいかぬ。
#212
○増原政府委員 これは実際上の個々の具体的な問題についての難点であると思います。しかし防衛秘密になりますようなものは、この性能というようなものが一致をするというような場合ももちろんありましようが、いわゆる防衛秘密として書いてありますものは非常にこまかいことが書いてある。それと一字一句違わないようなものができるということは、およそ想像できぬと思います。ですからそういうまじめなる学者がやつておるという過去のいろいろな実績もありますし、そのでき上つたものを発表するような人であれば、経過的にもいろいろ発表してもおりましようし、これは刑事政策としても捜査面の慎重な考慮によつて、そういう人を被疑者として逮捕検挙するようなことのないようにすることは十分できるのではないか。防衛秘密というものはやたらにあるものとは違うのであります。先ほど来加藤委員の御疑念、御心配を聞いておりますと、防衛秘密というのはそこら中に非常にたくさんあるもののごとくにお考えのようでありますが、これは件数としても少く、一件について配付される文書というものもごく制限をされて、主として関係の公務員のそれぞれ担当をするごく少数の者、そうしてそれは鎖鑰のあるところに納めるというような厳重な収納方法も講じてありますし、また業者等にこういうものを修繕するときに渡しますときにも、限られたごく少数の部数のものをやつて、平素の保管は鎖鑰のあるところにちやんと持つて行き、使つたらただちにそれを収納する、そういう規定も政令以下には定めるわけであります。従つて善意の人がうつかりしていたら目につくようなところに行くという性質のものではない。そういうものが渡るときには、いわゆる悪質犯意あるスパイ等が活動をする。そうしてそのスパイなども、普通の善意の第三者が見てもよくわからないような人に漏らすのは一向目的でなくて、外国その他に漏らして国に害を与えるとか、自己の利をはかるということでありますので、やたらに方々に防衛秘密書類が出て来るというような前提は、この前提としてお考えになつていただかないことが事実として適当であろう、こう考えるのであります。
#213
○加藤(勘)委員 私は少くともこういう法律の立法の過程にあゆらる角度から疑義が究明されて、そうして実際にこれが適用される場合に、こういう点も、立法過程においてこういう議論があつた、だからこれは触れないのだ、そういうことが一つの行政執行の面においての大きな参考になると私は思うのです。だから私どもはこまかいほど根掘り葉掘りして追究しておいて、お互いが隔意なく、立法についてこういう意図を持つておつたのだということを明確にしておくことが必要だと思うのです。そういう意味において私は少しくどいようであるけれども――これはわれわれの過去の実際の経験から生み出した議論なのです。そういう点でくどいようでありますけれども、あくまでも追究しておきたいという気持が私をしてこのような――私はめつたにあまり法律論なんかやりたくないし、議論もしたくないのだが、一応は質問をしておくわけなのです。
 ただいま増原次長のお答えになりましたように、十分にあらゆる点において注意されて、できるだけ犯罪が成り立たないように努められるということはもつともでありますが、さらに使用の方法であるとか品目、数量というようなものは、ややもするとこれは外部に現われがちなのです。たとえばこれはよくこの委員会においても質問なさつたことと思いますが、演習の場合であるとかあるいはその他の場合において、あるいはわかり得る条件のもとにあるのではないかと思うのです。これは主として報道関係に属すると思います。この報道関係において、もし数量であるとかあるいは使用の目的なんかを、報道人がこれが機密のものであるということに気がつかないで報道されてしまつた。そうしたらあとから見るとそれは機密の標記がなされておる、機密事項に属するのだということがわかつた場合もあり得ると思います。こういうことはえてしてあり得ると思います。そういう場合にこの新聞報道はどうなるのか、やはり責任を問われる対象になるのか、全然悪意なく、いわゆる第三条に規定するところの不当な方法とか、あるいは日本の国の安全を害する目的を持つていなかつたとかいう理由によつて、初めから検挙の対象にならぬのか、その点はどうでしようか。
#214
○増原政府委員 通常参観をし得るような演習をやつておるところへ報道人も来られて、そうしてたまたまわれわれの方では防衛秘密に属する兵器を使つて、その使用方法等をやつておつた。それを見て報道人が書かれるという場合は、これはいわゆる防衛秘密としての意識がありません。犯意がないのでありますから、全然犯罪は成立いたしません。状況としましても、そういう一般の参観しておるところで書かれたようなものをあれした場合には、全然こちらの方で捜査とかなんとかいうことを行うということもいたしません。
#215
○加藤(勘)委員 その場合にその報道された新聞記事を見て、今度それが何か意識的な者に伝えられた。こういうときに、出所は直接の担当官でもなければ悪意のある者でも何でもない、善意の人が動機になつてこれが意識的なところへまわつて行つた。こういうこともあり得ると思うのです。そのときにその報道はどうなるか、これはどうでしようか。
#216
○増原政府委員 これはもう先ほども一応御議論がありましたが、新聞で一度公になつたものでありますから、あとはもういかように悪意を持つて動かされようがどうしようが、これは防衛秘密ではございません。
#217
○並木委員 関連して。私はさつきから聞いておりまして、秘密を保持しようという側に立つたときに非常に心細いということを感じたのです。それは裁判の問題で、裁判で公開になつて、その記録がつくられてみるとそのとたんにもはや秘密というものは公になる、そういう結論です。聞いていて、私は逆にそれでいいのですかと聞きたい。機密を保持しようという目的のための秘密保護法であるならば、そんななまやさしいものでいいのですか。そこで法制局長官にお尋ねしたいの、ですが、法制局長官の先ほどの答弁では、そこに期するところがあるようにも受取れたのです。たとえば秘密裁判の制度とかなんとかいう方法によつて、公にしないで済まされるような方法があるのかどうか。もしあるならばこの際明らかにしていただきたいと思います。
 それから公開の裁判になつたとたんに途中で公になつてしまうことも、大体さつきの答弁でうかがわれたのですけれども、途中で公になつてしまえばその事態が不能犯になるのではないが、ペンデイングになつている係争中の問題は、もはや犯罪の対象にならないのではないか。そこで常にぴつぱり出された嫌疑者は無罪釈放というような結論になつて来るのではないでしようか、そういう点について疑問がありますので、はつきりしておきたいと思います。
#218
○佐藤(達)政府委員 大前提として申し上げたいことは、第十三回国会において成立いたしました刑事特別法では、これよりももつと幅広い秘密を保護しているわけであります。それにもかかわらず、先ほど来の答弁にもありますように、今まで一件も起訴になつたことはないというぐらいに厳重に――これはおそらく当局者の努力であると思いますけれども、守られて来ているわけです。従つてその根元を押えております保安庁当局者なり、関係当局者がこれを厳重に管理している時分には、いろいろな御心配というものは実はないことだと思います。しかし理論は理論でございますから、お尋ねがあればこれはもちろんお答えをしなければなりません。そういう角度から申し上げますならば結局今のお尋ねはあまりにもたよりないという気持のようであります。これは率直にいえば、元の軍機保護法のようにすぱつとこうやつてしまえば頼もしいかもしれません。頼もしいかもしれませんが、また一面において加藤委員の先般来の御懸念のような、あるいはまた憲法の精神というようなものをかみ合せての最小限度の一線をどうしても引くべきであろう、引かねばならぬものであるという要請があるわけであります。そういう意味で今の一面のお感じが出て来るわけでありましようけれども、これはあらゆる総合的の観察の結果として、この辺の限界線が最小限の必要な限界線ということで、刑事特別法と同じような建前でこれをつくつて来ているわけであります。
 裁判の問題にしましても、先ほど来申し上げておりますように、とにかく裁判公開という道も憲法上あるわけでありますから、そこは裁判官の認定の問題になりますが、従つて裁判官が責任においてこれは公開にすべきもので非公開にすべきものではないときめれば、これは観念上そういうあ場合もありますから、その分についてまた心配が出て来るであろうと思いますが、その心配につきましても、裁判運営の状態から考えて見ますと、すなわち公開が必ずしも秘密の公開であるということにはならないのではないかと、私どもは刑事特別法のときから考えているわけであります。
 それからもう一つお尋ねがありました、公にしたという犯罪によつて起訴されている。ところが裁判所に行つたときにはもう公になつてしまつたのだからそれは罰しようがないのではないかとお話でありますけれども、この処罰の原則はその犯罪行為があつたときを現在として考えるわけでありますから、その現在において公になつていないものをその人がとつて来て、その人の手によつて公になる、それがすなわちこの罰しようという事件でありますから、その人のやつた行為そのものとしては、これは当然処罰されるべきものであることは間違いない。ただその人が犯して漏らした、あるいは公にしたことを、今度はほかの人がまたそれを他人に話したとかあるいは公にしたという場合には、そのときはすでにある犯罪者の行為によつて公になつてしまつたあとでありますから、その人の分については秘密性はなくなつてしまう。こういう筋のものと考えております。
#219
○加藤(勘)委員 それでは原さんに伺います。アメリカから供与された情報についてであります。これはこの法律の第一条第三項の二号に規定してあるわけでありますが、それはその前の第一号のイからニまでのものに限定されて、通報の状況が一体これらのただ形式だけを表示して来るのか、あるいは一々こまかい内容にまでわたつてアメリカから情報として提供されるのか、その点はどうでしようか。
#220
○増原政府委員 この二号の方は一号の全部でなくてイ、ロ、ハだけでありまして、ニの品目及び数量は抜けてあるわけであります。この情報というものの通常の形は、装備品等に関するものでありますから青写真、その使用法というふうなものがこの情報であります。インフオーメーシヨンというわけでありますけれども、普通情報々々という言葉の情報とは大分趣も違う。青写真と通常考えていただけばいいようなものであります。従つてそれは非常にこまかいものでありまして、それに従つてこちらの相当な技術者、工員であればたとえば優秀な大砲がつくれるとか、通信機がつくれるというふうなものであります。一号の方は現物をくれる、その現物についての秘密保護、二号の方は現物はくれないで情報をくれる。ですからその情報に暴いて、日本では新しい兵器をつくることがあり得るというふうな趣旨のものであります。
#221
○加藤(勘)委員 そうしますと、この情報というものはイからハまでの事柄についての詳細なもの、それから日本でこの情報に基いて生産される兵器の種類、構造等にも及ぶというわけなのですね。
#222
○増原政府委員 さように解釈しております。
#223
○佐々木(盛)委員 私は増原次長に特に指名をしてお聞きしておきますが、もう時間なので簡単に終りますからしばらくお願いします。
 このたびの秘密保護法というのは、アメリカから貸与される武器についての秘密の保護でありますが、保安隊並びに将来できる自衛隊には、日本独自の秘密というものが一体ないのですか。
#224
○増原政府委員 現在兵器関係は、保安隊にしろ、警備隊は船舶貸借協定で全部向うから借りておる。現在借りておるものについては、秘密保護はないとアメリカは言うておるのです。ひとつも秘密保護はない。われわれの方の希望としては、自分の方で鉄砲でも大砲でもだんだんつくれるようにしたいということは長官も常に言つておりますが、経費その他のことを考えますと、早急に自分でつくれるかどうかなかなかわからない。われわれが独特の秘密兵器をつくるということは、ここ当分の間はまずあるまいというふうに考えております。
#225
○佐々木(盛)委員 秘密兵器ばかりではなくして、もう少し広汎な軍機というものは――どこの国でも独立国には、国家機密というものは存在するものです。日本の場合においてはそういうものはないというお話ですか。
#226
○増原政府委員 ただいま提出しております防衛庁設置法案なり自衛隊法案なりが可決確定いたしますと自衛隊というものができまして、自衛隊が外部からの直接侵略に対処するということになるわけであります。通常の常識的概念に従つて考えてみましても、いわゆる防衛の計画というふうなものができる。いよいよ防衛出動を国会の承認に基いて総理大臣が命じたあと、その行動という言うなものは、これはあけつぴろげではいけないということは常識的に考えられるわけであります。そういうものについてどうするかということは、いろいろ論議を政府部内ではいたしましたが、さしあたりの問題として、さきの戦争で軍の機密保持という形において国民が非常に暗い思いというか、それ以上の思いをなまなましくさせられておる経験を持つている現在において、今ただちに必ずしも言わないでもいいそうした秘密を保護するための法案を出すことはどうか、これはさらに慎重に研究をして、慎重研究の結果の判断に基いてあらためて考えてよかろうという意味で、今回はこの限定した秘密保護法案を提出した次第であります。
#227
○佐々木(盛)委員 ただいまの御説明によりますと、もとよりそうあるべきでありますが、国家の機密というものがあるので、特にたとえば防衛出動のような場合におきましては、日本の防衛のために防衛上の機密が生れて来ることは私は当然のことだと思います。ところがこの法案そのものは、アメリカから貸与されるときだけに限つておる。むしろこれはアメリカの秘密保護法なのです。日本の秘密保護法ではなくして、アメリカの秘密保護を日本において実際行おうと考えておる。先ほどのあなたの言うように、日本の防衛上重大な秘密にしなければならぬことがあるのだということになれば、アメリカから貸与されるものはもとよりのことでありますが、日本独自の秘密保護法あるいは軍機保護法と申しましようか、これは今日一人前の独立国になれば――たとえばアメリカでも、イギリスでも、フランスでも、スイスのごとき永世中立国においてすらこれはあるわけなのであります。しかし政府においてもそういうことをお考えになつておつたように承るわけでありますが、それをひつ込めたという理由は、今のようなそういう簡単なことでありますかどういう事情でありますか。
#228
○増原政府委員 出したりひつ込めたりしたわけではありませんが、いろいろ研究はいたしております。しかしなおそういう点を法案にして提出するいめには一層慎重な研究をして、その結果に基いて判断をしようということで、この際はそういう意味の法案は提出しないということにしたのであります。
#229
○佐々木(盛)委員 そういう日本の防衛上の秘密を保持する必要がある、そのためには何らかの立法措置が必要であるという必要はお認めとなつておるのですか。
#230
○増原政府委員 必要があると認めておるか、政府側として申しますと、それは慎重研究の結果判断をしたい、こういうことであります。
#231
○佐々木(盛)委員 むしろそういうことは、ほんとうに必要だということを政府側から大いに強調をしてもらいたいと私は思う。しかし現段階においてはこういうことになったけれども、国家にも秘密があるのだということは、私は大いに政府の方面からもつと遠慮なく言つてもらいたいと思う。
 なおついでに承つておきますが、今のお話だと、防衛出動の場合におきましては、臨時立法によつて秘密を保持しようということをお考えになるのですか。
#232
○増原政府委員 まだそこまで別に考えておりませんで、なお勉強し、研究すべきものは問題としていろいろあります。研究をすべき事項の中にはそういうことも考えていいのじやないかと思います。
#233
○佐々木(盛)委員 この際私承つておきますが、先般も三重の保安隊におきまして、共産党の事件が起つたことは御承知だろうと思います。これは外部から保安隊の内部に対して共離党が働きかけをしておる、そしてその受入れ態勢が保安隊の中にあつた、Y工作とかなんとか、そういうこともあるわけであります。そのときに、たとえば今日共産党は、保安隊にどういう呼びかけ工作をやつておるかといいますと、保安隊員に対して反戦の空気を扇動するあるいは武器の持出しをさせようとする、あるいは反乱を起させようとする、そういうことをしきりにやつておるわけであります。たまたまそういうことをやつて隊内の秩序を乱したり、機密を漏洩したり、そういつた保安隊員は、今も処罰の対象になるでありましようし、またこれからこの秘密保護法ができますれば、これの対象になるかもわかりません。しかし外からそういつた反乱を起せ、あるいは武器を持ち出せとか、反戦気分をあぶれということをいくら扇動しても、これは取締りの対象にならないでありましようか、いかがですか。
#234
○増原政府委員 共産党のいろいろな工作についてお話がありましたが、これは警察予備隊として二十五年に発足以来、共産党関係としては相当に、継続的に熱意を持つて働きかけをしておるのは事実であります。これに対してわれわれの方としては、そうした働きかけを無力ならしめる措置を続けてとつて参つておるわけであります。いろいろな方法でやつて参つておりますが、概括的にいうならば、われわれの方の、これに対する措置がおおむね適当に行われておるということを申し上げ得ると思つております。それから外からいろいろやるものを処罰する手があるか。内部の者は、防衛秘密保護法がありませんでも、別に公務員としての服務紀律があり、それについてやはり公務上の秘密保持の規定がありまして、防衛秘密でなくても、職務上の秘密を漏らせば、刑罰にも該当する。そのほか服務紀律に基きまして、刑罰に該当しなくても、行政罰をこうむつたりすれば、不適当な者としてこれを免職する。いろいろ措置がある。外部から来ます者は、これは刑法等各刑罰法規によつて措置するほかは、保安隊、警備隊関係として特別にそういう法規は今ないわけであります。
#235
○佐々木(盛)委員 今日保安隊の中には共産党員がおりますか。
#236
○増原政府委員 共産党員と正式に名乗つておるのはおりません。疑いある者でいろいろ調書をしておる者は若干名あるのであります。
#237
○佐々木(盛)委員 それはあなたの方の調査がきわめて疎漏だから、そんなふうにのんきにお考えになつておるかもしれませんが、現に三重の事件は明らかに共産党員じやないですか。ついででありますが、三重事件のきわめて概略でけつこうでありますから、どういう性質のものであるか、ちよつと明らかにしていただきたい。次長がわからなければ、ほかの方でもいいです。
#238
○山田政府委員 ただいまお尋ねの三重の件につきましては、確かに外部から共産党あるいは朝鮮関係の働きかけがあるようであります。われわれの探知いたしましたのは、昨年の暮れあたりからでございます。所在の国警その他関係当局が目下厳重に捜査中でございますので、今ここで明らかに申し上げることはできないのであります。
#239
○佐々木(盛)委員 起つた事件は先般御承知でありましよう。この期に及んで捜査中であるというようなことで、まだわからないのですか。
#240
○山田政府委員 ある程度一部の者については判明いたしておりますが、その一部の者と連累を持つておる者を現在追究中でございまして、この間の消息が明らかになつてから処置をとりたい、かように考えております。
#241
○佐々木(盛)委員 それによりますと、一体共産党員なり、共産党のシンパサイザーである者がどのくらいおつたのですか。
#242
○山田政府委員 まだはつきりしたことは申し上げられませんし、また私どもにもわかつておりませんが、現在のところ約二十名前後ということになつております。
#243
○佐々木(盛)委員 ただいまの御説明は、私の国警の方から聞いたのによりますと大体そのようでありますが、まことにこれは重大なことであります。こうしてわれわれが一面においてはMSAによる軍機保護法をつくり、一面においては防衛庁設置法によつて自衛隊をつくる。そうして今日日本の防衛を託するものは自衛隊以外にないのであります。その自衛隊の内部の人が赤化しておるではありませんか。内部における赤化工作が三重において露呈しておる。こういうものにわれわれが安心して武器を託するということはできない。一体今日まで、私は特に非常な反共的な立場に立つておるのでありますが、共産主義というものに対する一般の政府の諸君たちの認識が、どうも不足しておるのじやないかと思うのであります。まだ正式党員である者はおりませんという話でありますが、たれも私が正式党員でありますということを、人の前で言つておるばかな共産党員がおりますか。だれでも共産党に関係がありませんといつて、成績はきわめて優秀で勤勉に働くでありましよう。しかし彼らに与えられておる使命というものが何であるかということは、おのずから明らかであります。従つて彼らが時期の来るのを待つて内部からどんな行動に出るか。今日世界共産党員に課せられておる至上命令というものは、それ以外にないじやありませんか。そうだといたしますと、先般来ここにたくさんの参考人の方が見えられましたが、その中の元参謀本部におられた参謀の法でも、まごまごしていて、スイツチの切りかえを間違えれば、自衛隊というものが赤化しないとだれが保証できるか、こういうことを言つた。私は傾聴に値するものだと思つて承つておつた。現にその芽ばえが三重事件となつて起つておる。私はこの事件というものはきわめて重要視してよいと思います。私はそういう意味におきまして特に長官の御出席を求めて承りたかつたのであります。あなたは専門にその方面を事務的に担当しておられるのでありますから、承るのでありますが、こんなことで一体安心ができますか。そこでなぜ、採用する場合には、もとより共産党員であるとか、それに疑わしい者、そういつた経歴のあつた者はこれは排除しないのでありますか。共産党員あるいは共産党員らしいという疑いのあつた者はこれを排除する。このような措置をとつておるかいないか。あれはどうも共産党員くさい、従つて万一の場合は鉄砲をどちらに向けるかわからぬぞということがわかつておつても、これを排除することができないということでは、われわれは安心して日本の防衛を託することはできないと思いますが、いかがですか。
#244
○増原政府委員 佐々木委員は共産党については御関心もあり、御知識もあろうと思いますが、私が正式の共産党員はないと言つておるのは、名乗つて出る者がないと言つたのじやありません。いわゆる正式党員というような者は、身分を秘匿して来ておる者にもないということでございます。共産党についてはわれわれは当初より最も重要な問題として重視しております。もとより関係の人間の整備なりその腕前なり知識なりがだんだんできておるわけですから、完全無欠に初めからやつているとは申し上げられません。だんだんとそうした方面でも当初よりは整備がされておる。そうしていわゆる誘引されたシンパというものがあります。こういう人たちの行動というものは、もとより巧妙に外部からの働きかけの際にすでにそういう秘匿の方法なり何なりを承知をさせられてやつておると思います。動きは非常に微妙であります。これは共産党くさいとかなんとかいうことはなかなかわからないのであります。この事情はよく御了承のことだと思います。そうしてまたそういう者が出て来ますときには、おおむね一人ではありません。いろいろと連絡をとつてだんだんといわゆる目をつくり、網を張りという、形になるのであります。そういう者の挙動を十分注意しておりましても、ある程度挙動不審を発見したときには、その一人の人をただちに剪除する方法をもつてしては、おおむね所期の目的を達しない。そうした一連の者の動きを国警その他の関係当局の援助を得て調べて、好ましくない者は一括してこれを排除する措置が必要であることは、私が今あらためて申し上げるまでもなく御承知のことと思います。そうしたことのため、昨年の暮れ一応の検討を尽しまして、内部的に国警その他と連絡をとりまして、その方面の特別な査察なり援助なりを得つつ、だんだんと事情を調べておるという事情になつておるわけであります。
#245
○佐々木(盛)委員 共産党員である、あるいは共産党のシンパサイザーであることによつてその隊員を排除する、つまりやめさせるということはただいま可能でありますか。
#246
○増原政府委員 共産党員たるの理由をもつては排除できません。保安隊員として不適当であるという理由でなければ排除できません。
#247
○佐々木(盛)委員 だから私は重大な問題があると思うのです。一体共産党員に課せられた使命というものは、要するに暴力をもつて国家を転覆させるのだという使命をもつて実はもぐり込んでおるわけです。機会来らば目的を果そうと思つて潜入をいたしておるのであります。これをその目的が明らかであるにもかかわらず、外部に排除することができないというところに、私は今日の自衛隊、保安隊というものの大きな欠陥があると思う。そこにわれわれの安心することのできない危険性性が潜在いたしておると私は考えるわけです。従つてどうしても共産党員である、あるいは共産党のシンパサイザーであるというととが明らかになつたときは、これをただちに部外へ排除する法律上何らかの措置をし得るようにしておかなければならぬということを私は符に痛感するわけでありますが、あなたはその必要性をお考えになりませんか。
#248
○増原政府委員 現在の保安庁法にも提出しました防衛庁設置法案、自衛隊法案にも、暴力をもつて政府を転覆しようという企図を持つ団体等に加入した者は当然排除されるといいますか、当然自衛隊員でなくなるという規定があります。ただ現在のところ政府としては共産党というものを、暴力をもつて政府を破壊する団体だとまだ見ていないわけであります。いわゆる非合法団体と見ていないということであります。
#249
○佐々木(盛)委員 共産党が暴力をもつて国家を破壊しようという団体であることはわかつておるが、実際はあなたのおつしやる通りです。社会通念はそういうように認めておるが、法律上は共産党は合法政党として認められておる。従つてあなたのおつしやつたように共産党員であるがゆえに部外に排除することができないことになつておるのですが、これは徴兵制度によつてすべての国民が徴兵の対象になるならば別ですが、保安隊に入つて来るのは一種の契約によつて入つて来るのですから、そのときに共産党員は採用しないということにして、ここに法律的措置をしたところが何の憲法違反ですか、それは憲法違反になるか、いかがですか。
#250
○増原政府委員 その点はちよつと今ここですぐにお答えができませんが、法律的に政府が合法団体と認めておる限りにおいて、共産党員であるものは当然採用しないという規定をつくることは、相当の疑義がありはしないかと思います。但し、行政措置として、保安隊員たるに好ましくないものをとらないことは長官の自由であります。われわれは共産党員とわかつておるもの、あるいはシンパとわかつておるものは絶対採用しておりません。また採用しないということを方針として宣明しております。しかし法律にそれを書きますことはどうか、ちよつと私、疑義があるように感じます。
#251
○佐々木(盛)委員 それでは調査課長はお見えになつておりませんか――あなたは三重の事件を詳しく御承知でありませんか。もし詳しく御承知であるならば、もう少し承りたいのですが、この三重事件の処分がおそらく問題になつて来ると思う。これは一体どういうものが処分の対象になるのですか。今のお話ですと、実際的な破壊行為、これはむしろ服務紀律といいますか、隊員であるものが守らなければならない機密であるとか、あるいは秩序を乱すものは処罰するということはあるでしよう。そういうことに直接触れなければ処分ができない。明らかに外部と連絡をしておるという形跡が歴然としてわかつておりましても、今のお説によりますと、具体的な暴力行為が起らなければ処罰できないということになると思うのですが、三重の事件はどういうふうにして処罰しようとしておられるのであるか、その点をもう少し承りたいと思います。
#252
○増原政府委員 三市の事件は私の方にも現在の段階まではわかつておりますが、先ほど保安局長が申しましたように捜査中のことに属しますので、ただいまここで経過を詳細申し上げることは差控えさせてもらいたい、こういう意味でございます。措置につきましては、それぞれにおいて適当に措置をしたいと思いますが、これは終局的には保安隊員とし、適当でないという判定に基いて措置をすることになろうと思います。何か刑罰法規に触れるような事犯がありますれば、そういうようなものによつて参りますが、普通の刑罰法規に触れるということはおそらくないのではないか。隊員として適格を欠くというところで措置をするということに、まずまずなるのではないかと一応見通しを持つております。これは全貌が明らかになりませんと、しかとしたことは申し上げられません。
#253
○佐々木(盛)委員 三重の事件ほどのあまり大がかりのものでなくても、共産党の問題でこういう事件を起したことが、過去において相当ありましたが。
#254
○山田政府委員 今までは幸いにしてございません。
#255
○佐々木(盛)委員 先ほどの増原次長のお話によりますと、共産党であるということだけによつてこれをやめさせることはできないというお話でありましたが、今まで何回かにわたつていわゆるレツド・パージが行われたことを記憶しております。このときはいかなる根拠によつておやりになつたのですか。
#256
○増原政府委員 保安隊ができまして、いわゆるレツド・パージというものはやつたことがないように思います。よけいなことかもしれませんが、私どもが知事をやつておりましたときにはレツド・パージがありました。そのときでも、いわゆる共産党員であるとか、シンパであるとかいう理由によつては、やめさせていないのが事実であります。
#257
○佐々木(盛)委員 私はこれで打切つておきますけれども、先日もここで私が問題にいたしたのでありますが、日本という国は、実際スパイ行為、国家機密の漏洩を取締るというようなことは、今のところ何らできないという、まことにスパイの都といつてもいいようなほどに法律上はなつており、現に実際上もそうなつておるのであります。率直に言つたならば、このたびアメリカからしいられてアメリカの機密を日本人が守らなければならないというのが、このMSA協定に基くところの防衛秘密保護法であると私は思います。しかし日本が少くとも独立国として今日存在する限りは、当然国家機密というものが存在するのだから、従つて国家機密というものは野放しにすべきものではない、これは当然守らなければならない、かように私は考えます。特にこのたびの防衛庁措置法によりまして、保安隊も従来とは非常に性格をかえて来て、外敵の侵略に対抗する新しい使命を持つて来ておる。われわれはこれによつてのみ国土の安全を保つことができると思う。国民の運命はただこの自衛隊にかけられておる、こういうときでありますから、このMSAによるもの以外に、日本独自の国家の機密というものを何らかの形によつて防衛しなければならぬ、かように私は考えるわけです。そういう見地から考えますと、今日のように日本が世界各国のスパイのるつぼになり、スパイが百鬼夜行するような状態になつておるということは、放置することはできないと私は考えます。
 同時にもう一つは、先刻来もお認めのように、共離党そのものに対する政府の認識について、従来の占領時代から植えつけられたような考え方でもって、言論、結社、思想は自由であるからというようなことによつて、共産党を野放しにするということは、今日の段階に及んでは、自己反省し考え直すべきときじやなかろうかと考えます。現にわれわれが運命を託しなければならぬところの自衛隊の中に共産党員がいることがかりにわかつても、これを部外に排除することができないというようなことでは、どうしてわれわれは安心して国家の運命を託することができますか。そういうような観点から考えますと、今申しますような日本独自の国家の秘密を保護するという必要上、それからまたもう一つは、共産党に対する考え方を直して再出発すべきだという点から、これに対する何らかの法的措置をとらなければならぬ段階に到達しておるのではないか、このことを私は特に強く痛感するのでありますが、最後にこれに対する御所見を承つておきたいと存じます。
#258
○増原政府委員 共産党というものを法的にどういうふうに扱うかということは、政府部内においても私どもの分野ではございませんので、他の関係方面においてそういうことについて研究しておることと考えております。ただ行政的の措置としては、私どももいろいろ共産党なり、共産党のシンパなりが保安隊、将来の自衛隊に入つて来ることは適当でないと考えますので、そういう者を入れないようにしよう、そういう者が出ましてもこれを排除する措置をとりたい、かように考えております。なお秘密保護の一般的な適用と申しますか、スパイの防止についての貴重な御意見を承りましたので、十分慎重に研究して参りたいと思います。
#259
○上塚委員長 本日はこれをもつて散会いたします。
   午後五時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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