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1953/04/21 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第38号
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1953/04/21 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第38号

#1
第019回国会 外務委員会 第38号
昭和二十九年四月二十一日(水曜日)
   午前十一時四分開議
 出席委員
   委員長 上塚  司君
   理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君
   理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君
   理事 並木 芳雄君 理事 戸叶 里子君
      北 れい吉君    増田甲子七君
      須磨彌吉郎君    上林與市郎君
      細迫 兼光君    河野  密君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 岡崎 勝男君
 出席政府委員
        外務事務官
        (条約局長)  下田 武三君
        外務事務官
        (経済局長心
        得)      永井三樹三君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
        専  門  員 村瀬 忠夫君
    ―――――――――――――
四月二十一日
 委員早稻田柳右エ門君辞任につき、その補欠と
 して須磨彌吉郎君が議長の指名で委員に選任さ
 れた。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 外交に関する件
    ―――――――――――――
#2
○上塚委員長 これより会議を開きます。
 日比間賠償問題について並木芳雄君より緊急質疑したいと申出があります。この際これを許します。並木芳雄君。
#3
○並木委員 私はこの際岡崎外務大臣に対して、フイリピンとの賠償協定に関しての緊急質問をいたしたいと思います。それと申しますのは、今度こそはフイリピンとの賠償も円滑に行くものと期待しておりました私どもにとつて、きのうきょうの報道は、まことに意外な暗黒さを与えておるためでございます。フイリピン方面からの報道によりますと、日本側から提案されたといわれるところの四億ドルの賠償、これに対して、俄然非常な反対が起つた模様でございます。われわれは協定の案というものを今まで政府に対して内密でもいいから示してもらいたいという要求をしたのでありますけれども、今日までそれが示されておりません。従つて内容についてははつきりしたことはわからないのでありますけれども、はしなくもフイリピンの方ではフイリピンの政府ですか、この協定案文を発表しております。これなどは私ども国会議員にとつては非常な片手落ちではないかと感ずるのであります。もし発表するのであるならば、両方の政府が同時に発表するという打合せができておつたと思うのでありますけれども、それがこちらでは発表されていない。向うでは発表されておる。従つて日本側で国会にさえ厳秘に付しておるところを見ると、これはよくよく日本の側にとつて有利な条件であり、フイリピンにとつて不利な条件である、こういうような印象を先方に与えておらないとも限らないのです。私どもから見れば四億ドルはおろか、三億ドルでもこの苦しい経済の最中において耐えがたいと思つておつたにもかかわらず、ふたを明けてみましたら四億ドルである。しかもそれは行く行く十億ドルの値打のある賠償額であるということを聞いては、まことにその額の大きな飛躍について驚かざるを得ないのでございます。そこで大臣にお愚ねしますけれども、どうしてこういう事態になつたのか、円滑に行くと思われておつた賠償の交渉が、どうしてこのデツトロツクにぶち当つたか、ということについて詳しく報告していただきたいと思います。
#4
○岡崎国務大臣 まずこの協定文が外へ出ましたことにつきましては、われわれもこれは非常に思いがけないことであります。これはフイリピン政府が発表したものではありませんで、議会方面から出たようであります。というのは昨日議会において秘密の会合がありまして、そこでこの協定文について政府側から説明をされたようでありますが、それが議会方面から出たものと見られるのでありますけれども、これはお話のように国際間の普通のやり方からいうと、はなはだ違つておる点がありまして、まだどういう意図であるかはつきりわかりませんが、少くともフイリピン政府が出したものでないことは明白のようであります。今後こういう点についてはさらに事態がはつきりしませんと、意見を軽々しく述べるわけに行きませんが、見るところによつては、どうも普通のやり方ではないように思われておるのであります。それから交渉が非常に難航になつておる。これにつきましては、私は、全体としてフイリピン側もなかなかむずかしい状況でありますが、事はやはり冷静に見守つておる必要があつて、またこちら側で非常に大騒ぎをするということになると、事態がさらにむずかしくなりはせぬかと思うので、しばらく事態を静観していたいと思つておりますが、われわれが全権を派遣するに至りましたことについては、これは相当の見込みがあるから派遣したのであつて、つまりフイリピン政府の代表たる外務大臣と日本政府の代表たる駐在公使との間には話合いがついたわけでありまして、フイリピン政府側のこれに対する同意も得ており、日本政府としても、駐在公使は急遽帰つて参りまして、政府の了解のもとに話合いを進めたのであります。つまり両国政府間では話合いができておる。国会方面の空気はもちろんいろいろむずかしい点もありましようが、政府としては国会と交渉するのでありませんから、フイリピン政府との間に話合いが完全につくならば、これは協定の成立の見込み十分ありと考えまして代表を派遣したのでありますが、国会側の空気が案外むずかしいようであります。しかし、ナシヨナリスタ党の領袖であるラウレル前大統領が首席全権を引受けられておるようでありますので、上院の方の事態も、楽観は許しますまいが、あるいは平静になるのじやないかという期待をもつて、この一両日を静観していよう、こうわれわれは考えております。
#5
○並木委員 政府対政府の間では了解ができているにもかかわらず、フイリピンの国会の方面において困難が生じて来ておる、その理由については大臣はおわかりでございましようか。ラウレル全権また日本の村田全権、ともに、私個人といたしましてもフイリピンにおつた関係上よく存じ上げておりますけれども、いずれも私はごりつぱな方であるということを信じております。そういう方々が先に立つてやられるのですから、どうやら成立の見込みは十分あるというただいまの大臣の言葉を私どもも信じたいと思うのです。しかし、それにもかかわらず、フイリピンの国会の方面において難色が出て来たのには、何か突発的な理由でもあるのでしようか。あるいは四億ドルという額に対しての不満でございましようか。これはわれわれとしては、幾らでもできれば賠償をしたいことは、気持の上ではあります。村田全権もその点は向うではつきりあいさつをしておる。その通りでありますけれども、われわれの側から見れば、経済上非常に苦しいのであつて、四億ドルでもむしろ重きに過ぎると考えておるのです。何か村田全権を派遣したことにからんで難色でも出て来たのでございましようか。もしそういうようなことがあるならば、この際全権に一度帰つて来てもらつて話を聞くなりして、あるいは別に全権を派遣するというようなことも必要になるのではないかと思うのですけれども、そういう点についての大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。
#6
○岡崎国務大臣 ちよつと新聞には戦争中にフイリピンにいた人はどうかというような言葉もありましたが、政府としても、そういう空気が前にあつたことは承知いたしておりますが、最近ではそういう点はほとんどないと思つております。ことに村田全権につきましては、これを派遣する前に先方にいわゆるアグレマンを求めまして、フイリピン政府でこれを承認いたしましたので、派遣いたしております。従つて、村田全権自身についての問題ではないと思つております。結局問題は四億ドルでは少いという議論のように――ほかにもいろいろ附帯的な問題はありましようが、一番重要な点はそこじやないかと思います。そこで、われわれの方の考え、あるいはフイリピン政府の考え方も今では同様でありますが、これは、懲罰の意味で日本から幾ら金をとつてやる、日本をどれだけ困らしてやる、こういう意味の賠償ではありません。要するに、フイリピンの戦争による被害をできるだけ軽減しようという意味の賠償であります。従つて、日本がどれだけ金を出すかということよりも、日本が賠償を行うことによつてフイリピンにどれだけの利益が来るか、経済上のどれだけの利益が来て、それがフイリピンの戦争被害をどの程度に軽減し得るかということが中心でなければなりません。これはフイリピン政府も同感とわれわれは信じております。従つて、四億ドルなら四億ドルで、たとえば最終的には十億ドルに相当する利益がフイリピン側に上るとなれば、これは要するに、日本がかりに二億ドル出して十億ドルの利益が上ろうと、八億ドル出して十億ドルの利益が上ろうと、フイリピンとしては、日本がどれだけ出すかということが問題ではなくて、どれだけの利益が上るかということが問題の焦点でありますから、必ずしも四億ドルでなければならぬとか、あるいは四億ドル以上でなければならぬという議論には同意ができないのでありまして、またフイリピン政府もそう考えております。従つてわれわれとしては、はつきりこれはいろいろ計算を立てまして、二十年間には必ずフイリピン側に十億ドルよりもつと大きな利益が上るという確信を持つております。またフイリピン側もこれを信じておりますので、その一点で話合いがまとまつたわけであります。今は、ただ四億ドルでは少いという議論でありましたけれども、今申したような理由から行きまして、ラウレル前大統領その他の人々の冷静なる判断によりまして、この問題は解決ができるのじやないか。つまり、上院側の申しておるのは十億ドルという点でありますが、それは、日本から十億ドルとつたところでフイリピンの利益が八億ドルであつたらば、かえつてつまらないことになりますから、この点は理解を得るものとは信じておりますが、しかし、御承知のような報道がたくさんありまして、必ずしも楽観をいたしておるわけではありません。なお、村田全権その他一行は、こういう問題について十分の知識を持つた方々が今行つておりますので、これらの人々の専門的な知識を利用しまして、実際の状況がさらに明らかになりまして、フイリピン側の理解が深まることをただいまは希望しておりまして、私からあまりいろいろ批評がましいことを申すのは、この際は差控えたいと思つておりますが、以上がわれわれの考えであります。
#7
○並木委員 それでは、この際村田全権を召喚するとか、あるいは全権を更迭するというお考えは全然ございませんか。
#8
○岡崎国務大臣 これは先ほど申しましたように、フイリピン政府の同意を得て任命した全権でありますから、更迭等のことは全然考慮いたしておりません。ただ、あまりこうやつて長くかかつて、いつまでも滞在しなければならぬということになりますと、いずれも忙しい用を控えた人でありますから、一時日本に帰つて来ていろいろの用を済まして、また時期を見て出かけるというようなことも最悪の事態にはあるかもしれません。しかしそういうことも今のところは何も予想しておりません。一両日たてば事態がだんだん平静に行くかもしれないという期待を全権側も持つておるようでありますし、われわれもそう考えて静観をいたしております。
#9
○並木委員 ただいまのお話ですと、場合によつては交渉が長引くかもしれないということでありますが、その長引くということは、調印までにという意味でございましようね。もし長引くようなことがあればというお言葉ですから私お尋ねするのですけれども、長引いて調印が意外に遅れるという場合が考えられる、こういうことでございますか。
#10
○岡崎国務大臣 これは、御質問でありますからほんの仮定の問題についてお答えをいたしたのでありますが、そういう予想を持つているわけではありません。従つて、ただりくつから言えば、非常に忙しい仕事を控えた人ばかり――たとえば日銀の副総裁が行つているとか、あるいは商工会議所の会頭が行つているとか、みな忙しい人でありますから、そう長く向うに滞在する予定で行つているわけではありません。実は、短期間にできると思いましたので、こちらの用を一時やめて行つて、すぐ帰つて来るという予想で出た人もあります。御承知のように、一日か二日以内で話をきめて出発されたような人ばかりでありますから、国内でも、これらの人々がいないので仕事にさしつかえている向きもありますから、そういう事態があまり長くなりますれば、一ぺん帰つ来て用を済ませるということも、やらざるを得ないというようなことがあり得るということを申し上げたのですが、そういうことは今全然予想しておりません。また私が場合によつたら一時全権を帰朝させるのだなんということが、ここにも新聞の諸君がいてしきりに書いておられますが、そういうことが新聞に出ますと、これはあらぬ疑惑を招いて、またフイリピンで非常な論議をかもすといけませんから、私の言葉はそういう意味でお聞取り願いたい。また委員長から新聞の諸君にも、これはほんの仮定の問題であつて、こういうことがすぐ大きく取上げられてフイリピンに打電でもされますと、予想外の波紋を描きますので、新聞の諸君に委員長からも協力を求められまして、この点は私が口をすべらした、こんなことは言わなかつた方がよかつたのですから、ひとつ記録にも速記に載つたことはやむを得ませんけれども、新聞等に出ないようにひとつお話願えればはなはだ幸いだと思います。
#11
○並木委員 一行の中には、調印が済んでからも向うへ残つて、なお賠償の問題について協議をして来る人々もおるのでしようか。
#12
○岡崎国務大臣 もちろん大野全権は駐在の公使でありますから残ります。その他の人々はどうでございますか、話が一応済みますれば、一度向うとよく話をしたものを持つてもどつて、さらに行くということはありましようが、そのまま居残るということはないかもしれません。
#13
○上塚委員長 この際一言新聞社の方方にお願いをいたしますが、ただいま外務大臣より要請せられました件につきましては、ぜひ御協力をお願いいたしたいと思います。
#14
○並木委員 フイリピンの国会側でこういうことが反映しておることはないでしようか。それは日本の政局の成行きです。非常に日本の政局が緊迫を告げておりますので、あるいは内閣がかわるかもしれない。私から言えば、あるいはじやなくて必然的にかわる、かわつた場合に賠償の交渉をし直せばフイリピンに有利になるのじやないか、こういうようなことが手伝つて事態をこじらしている、こういう節は見受けられないでしようか。
#15
○岡崎国務大臣 ただいまのところはいろいろの意見、いろいろの議論があるようでありまして、われわれも実はどこにほんとうのポイントがあるかということが、非常にはつきりしない場合もあり得るくらいに、各種の意見が出ておりますが、ただ日本の政局が不安定だからという理由で延ばそうとか、あるいはその他の意見が出ておることは、ただいまのところは一つも聞いておりません。
#16
○並木委員 それではもう一点だけ。大臣はとにかく成立の見込みは十分あるということでございますから、それでけつこうです。至急成立してもらいたいと私どもは念願しております。そこでその発表された協定の案に盛られておる条件の中で、何らか少しくらいの変更によれば成立する、このままではむずかしいけれども、いくらか条件をかえれば成立するというような場合には、大臣としてはこれを考慮して調印を急ぐように努力されますかどうか。多少の条件の変更ということは考えられるのではないかとも思うのです。もしそういう考慮の余地があるならば、この際お伺いしておきたいのです。これはやはりこの難局打開の一つの方途であろうと思います。そうして大臣としてはおそくもいつごろまでには調印をしてほしい、こういう一応の目途があると思いますから、そのおそくも何日までにはという予定とともに御答弁を願いたい。
#17
○岡崎国務大臣 実は先ほど並木君も一言われましたが、今度の交渉にあたりましては、私自身としては日本政府の財政状態からいえば、非常に困難で無理だと思う点が多々あるのです。ただそれにもかかわらず、幸いにして政府部内の関係各省の了承も得ましたので、これで進めるつもりでおりますが、これ以上の条件の緩和ということは、なかなか私はむずかしいと思います。しかし、そうかといつていろいろな問題がありましようから、何もこれでなければいかぬというりくつもありますまいが、全権の方で長く両者間で話したものを取上げておりますから、どうなりますか、全権の方の意見も徴さないとわかりませんけれども、結局私はリミツトに考えてはおりませんけれども、実は精一ぱい以上努力をしてここまで来たと考えております。
 それからその次に、幸いにして調印ができますればいつころということでありますが、これも実はいつまででなければならぬというりくつもないわけでありますが、フイリピンの国会は五月の二十日過ぎまでありますが、日本の方は御承知のように五月の八日で会期が切れますので、それから逆算して行きまして、両院の承認を得るためには、これは何といつても審議期間が非常に短かいのでありまして、外務委員等には両院とも非常に御迷惑をかけることになつて恐縮なのでありますが、最小限度外務委員会の審議の期間、これはどう見ても実は一週間はほしいところであります。従いましてそれを逆算してみまして、いつということは、むしろ並木君のような外務委員の重鎮である方の方が勘定がしやすいだろうと思いますが、要するに審議期間の問題だけであります。ぜひ日本の国会でこれを承認を得て、フイリピンの国会で承認を得ましたならば、ただちに実際の措置に入れるようにいたしたい、こういう希望からできるだけ早く調印を了さないと国会の審議に間に合わない、こういう点を考えておるわけであります。
#18
○並木委員 その点この前の沈船引揚げのときには、平和条納にフイリピンが批准をしておらなくても、暫定的の措置である、中間的のものであるからということで、われわれは承認したわけであります。今度の場合は本協定でありますので、フイリピンが対日平和条約に批准をしてから、われわれが国会で賠償の協定を批准するということが筋じやないでしようか。賠償の協定の調印自体もやはりその方が筋であるというふうに考えられるのですけれども、その点はどういうふうに理解していいのでありましようか。これは技術的の問題で、この際フイリピンとの友好関係を考えますと、私どもはそこまでつつ込みたくはありませんが、その点はどういうふうにお考えでしようか。
#19
○岡崎国務大臣 これは実はフイリピン側としましては、賠償の協定のフイリピンの国会における承認は、同時に平和条約の承認を伴うものであるということになつております。従いまして、日本側が先に承認を得ましても、フイリピン側で賠償協定だけ承認して、平和条約を承認しないということはないのであつて、賠償協定と講和条約と両方承認するのではないかと思いますから、その点はこちらが先に承認いたしましてもさしつかえないじやないかと考えます。
#20
○並木委員 わかりました。
#21
○上塚委員長 福田篤泰君。
#22
○福田(篤)委員 重大な賠償問題が近く調印を見るということは、まことに喜びにたえないところであります。ただ問題はかりに三億ドルにしろ四億ドルにしろ、邦貨に換算いたしまして一千億以上の厖大な金額であります。しかもこれを支払うものは、結局日本国民であります。日本の国民の血税によつてこの厖大な一千億以上のものがフイリピンに支払われる。従つて今問題になつておりますのは、賠償の支払い形式です。しかも内容が御承知のごとく農業あるいは工業その他各般の企業にわたつておる。従つてこれを直接業者同士の話合いで賠償支払いを完了して行くのか、あるいはこういう賠償支払いの性格から見て、国民に対してきわめて大きな責任がありますので、政府が一応厳重な監督機関を設けて、その統一のもとに業者にまかすいわゆる間接支払い方式でやられるのか、これは今後の重大な問題だと思います。しかもインドネシアその他各国の問題にも先例となりますし、日本の産業界でもこれを非常に問題にしておりますので、直接か間接か、支払い方式について政府の御意見を承りたい。
#23
○岡崎国務大臣 なるべくならばこれは直接にいたしたいと思うのでありますが、ただ種類によりましては直接にできないものがあります。つまり政府が何もそういう機関を持つていないために、たとえば沈船引揚げのごとき、政府でサルベージの要員とか、サルベージ船を持つておりませんので、これは請負にさせるよりいたし方がないわけであります。その場合には政府の監督官が乗り込んで行つて厳重な監督をいたしまして、すべてさしずをすることにいたします。たとえばこれはこうなるかどうかわかりませんが、鉄道の複線工事とか、あるいは水田の開発であるとか、こういう場合には、日本にも私鉄の会社がありますけれども、主として国有鉄道の方が専門家でありますから、こういう方面から技師を派遣してやる場合もありましようし、また干拓のような場合には、これも民間に事業家はありますけれども、農林省に専門の技師がおりますので、こういう専門家を煩わす場合もあまりしよう。要するに政府が直接やれなかつた場合にはできるだけ政府に近い、つまり公社的性格を持つたものにやらせたい、またそれも適当でない場合には、政府側が監督者を出しまして厳重なる監督のもとに、またそれを公平な競争入札にいたしまして、事業を請負わせるということにいたしたいと考えます。
#24
○福田(篤)委員 原則として、支払われるものは国民の血税であり、一千億以上にわたる建前から、当然政府の監督が必要だと思います。今の御答弁によりますと、大体原則は間接支払い方式、いわば政府の監督のもとにおける支払いと了承いたしますが、その場合に、関係官庁といいましても、外務省がもちろん中心になるでありましようが、通産省であるとかあるいは農林省、その他各般の所管事務を扱う官庁がずいぶんあります。これがばらばらにやつておりますと、おそらく手がつけられないようなルーズなものになりまして、フイリピンも迷惑でありますし、日本にとりましても今後いろいろ問題を起すおそれがありますので、私はこの際、外務省が中心になつて、各官庁の賠償支払い総合審査会とか、何らかの機関を設けて、各官庁の調整をはかつていただきたいと思う。そうしなけれな民間の方でも非常にやりにくくなりますから、何か中心を内閣に置くなりいたしまして統一する組織をお考えになつておりますかどうか、各官庁の所管にまかせてしまうのか、その点についてお考えを承りたいと思います。
#25
○岡崎国務大臣 これはまだただいま研究の段階でありますが、もうずつと前から賠償協議会をつくりまして、ただいまのところでは外務省が幹事役になりまして、関係各省を集めてやつております。いよいよこれが具体化して実際の仕事にとりかかるということになりますと、どうしてもおつしやるような機関が必要になるわけであります。私の考えでは、実際上の仕事は――外務省が幹事役になりますが、実質的には経済審議庁を中心にしまして、そこに関係各省を集めてやりたい。また実は役人だけでもどうかと思いまして、たとえば今般全権として向うに行かれました人等も有力なる方々であり、またその道の専門家でありますので、こういう方々もできれば入つていただいて、そうして手落ちのないようにいたすべきものだ、こう考えておりますが、まだ決定までは至つておりません。ただいまのところは外務省中心の賠償協議会で事を運んでおります。
#26
○戸叶委員 先ほどの岡崎外務大臣の御答弁を聞いておりましても、日本の政府とフイリピンの政府との間でまとまつた大体四億ドルの額というものは、日本にとりましても非常に困難なものらしいのであります。ところがフイリピンの国会の方でなかなかうんと言わない。もしかりに何らか条件をかえなければどうしても説き伏せることができないというような場合、政府としてはそれでもこの線を固執せざるを得ないのか、それとも考慮の余地があられるのか、もうちよつとはつきり承りたいと思います。
#27
○岡崎国務大臣 これは条件と内容によるのであります。私の申しますのは、これは実は日本の能力の限度を少し越えたくらいになつておるのでありまして、これ以上ということはむずかしいと思います。ただそれも、たとえばよくあることでありますが、私がそう申しまして、そう新聞に出る。そうすると、それを外電が伝える。日本政府は賠償について一歩も譲歩せずというようなことが出ると、上院でけしからぬということになりまして、非常にむずかしくなります。これはもう過去において再三経験があるのであります。従いまして、こういう問題についてはただいまマニラで、とにかく全権団が行つて交渉いたしておりますから、しばらくその事態を静観いたしたいと考えております。
#28
○戸叶委員 政府間でまとまりましても、国会が同意をしなければやはりするまでそれを推し進めて行かなければならないのであつて、政府間の同意だけではまとまらないと了承してよいわけですか。
#29
○岡崎国務大臣 これは日本の国会も同様でありまして、国会の承認を得なければ成立いたさないと同じことであります。
#30
○戸叶委員 先ほど並木委員の御質問に対して、日本とフイリピンとの間の平和条約と賠償協定の関係は、不可分であるというようなお答えでございました。これは当然のことと思います。そうしますと、この賠償協定が審議される場合には、これと並行して日本とフイリピンとの間の平和条約が審議されるという形をとるのでしようか、その点をお伺いしたい。
#31
○岡崎国務大臣 これは技術的にはフイリピンの国会がきめることでありまして、並行してやるか、前後してやるかこれはわかりませんけれども、いずれにしても賠償協定と平和条約の国会の承認は相伴つて行われると考えております。
#32
○戸叶委員 そうしますと、日本で審議する場合も両方一緒にされるのでしようか、それとも賠償協定だけ先にして、それからあとフイリピンとの間の平和条約の審議をするというような形になるのでしようか、その点を伺いたい。
#33
○岡崎国務大臣 ただいまフイリピンとの間で考えておりますのは、サンフランシスコの平和条約であります。従いまして、日本の方は済んでおります。フイリピンはこれに調印いたしておりますので、これを国会が承認すればそれで済むということになります。
#34
○須磨委員 私は原子力の問題につきまして、ことに三月一日のビキニにおける実験以来、日米間にややともすると誤解もしくは猜疑が起りつつあるような情報をいろいろ耳にするのでございますが、これはわが国の外交といたしましてはゆゆしき問題であります。これにつきましていろいろな方法があろうかと思いますが、一番先に伺いたいことは、この原子力全体の問題について、これからの国際問題もあるわけでありますから、内閣に統一いたしました機関を設けられて内閣に置かれるのもよいかもしれません、あるいは外務省に付属するのもよいかもしれませんが、さようなものを早く設けまして、こういう一般の原子力並びにこれに関連する問題を扱うことがよいと思われますが、さような御企画がありますか、伺いたいと思います。
#35
○岡崎国務大臣 これは予算もすでに認められておりますので、その関係もありまして、何らかの機関をつくることがしかるべきであるというふうに政府側では考えております。これは予算の配分の関係もありまして、文部省が中心となりまして、学者その他を集めまして、中心的な統一した適当な機関を設けるというふうになろうかと思つております。
#36
○須磨委員 先般四月一日に衆議院を通過いたしました決議は、先般の新聞報道によりますと、沢田国連大使から国連に申し出たようでございますが、それのその後の取扱い等について何らか情報がありましようか、お示しを願いたいと思います。
#37
○岡崎国務大臣 これは事務総長等で関係国と相談してきめることになるのでありましようが、まだ取扱いぶりについては決定したものは聞いておりません。ただ、大体時を同じゆうしましてインドのネール首相からも、同種類といえばちよつと語弊があるかもしれませんが、似たような提案がなされておりますので、これもいずれ審議しなければならぬわけだと思います。あるいはそういうものと一括して審議されるのじやないか、こういうようにも考えられるのであります。
#38
○須磨委員 いま一つ、同じような問題でございますが、今度余剰農産物輸入に関する協定等によりまして入つて参ります一千万ドルに相当する邦貨を日本の防衛その他に使うということになる。これは今、各関係の役所とか、そういうところでいろいろ協議中であるということは聞いてはおりますが、これはどうも防衛生産という大きな日本の題目と非常にひつかかる問題でありまして、従つて、今回の協定一つの問題ではないのであつて、これからまた来年もMSAが続くといたしますれば、さようなものもひつかかるわけでありますから、これについては、やはりりつぱな機関をどこかに設けられることが私は必要でないかと思うのであります。ただいま通商産業委員会に航空機生産に関する法律を改正する法律というようなものが出ておるようですが、それなどを見ましても、航空機生産等につきましても、通産省と保安庁あるいは外務省も関係するというように非常にばらばらになつておる様子でございますが、こういうことを統一をいたしますことが非常に必要じやないか。ちようど今回MSAの五百五十条によるあの協定ができた機会に、かような機関を、あるいは外務省でもいいかもしれませんが、いずれかのところに設けることは私は非常に適当でないかと思うのでありますが、そういうことについての御企画がおありでありましようか、伺いたいものであります。
#39
○岡崎国務大臣 これはまだ結論は得ておらないようでありますが、いよいよこの協定が承認され、動き出すようになりますれば、通産省が中心となつて何らかの協議機関を設けることを研究中のようであります。これもなかなか実際上むずかしい点がありまして、たとえばその業種の専門家を入れなければほんとうのことがわからない。ところがその業種の専門家を入れると、今度はとにかく一千万ドルという金があるので、それを自分の方へまわすという心配というか、邪推もあり得るというようなことで、いろいろむずかしい点があるようでありますが、通産省では研究いたしておるようであります。
#40
○須磨委員 いま一つお伺いいたしたいのは、今月の二十六日から開かれますジユネーヴにおきまするいわゆる極東会議と称せられますこの会議は、申すまでもなく、これからの外交上、世界の非常に大きな転機を来すべきことが議論されるかもしれない大きな会議であると思うのでございます。わけても朝鮮問題、インドシナ問題のごときわれわれとはきわめて近接する関係の問題が論議せられるわけでありまして、わが国といたしましては非常に関心の強いところであると思うのであります。ついては、わが国はこれに招請されているわけでもなければ何でもないのでございますが、この朝鮮問題やインドシナ問題等は、アメリカのダレス長官が先般も英国、フランスに行き、席の暖まるひまもなくまた今度出発した様子でございますけれども、どうしても東洋というものに非常な関係がある。そうすると、この東洋にありまする日本も非常な関係を持つことは申すまでもないことでありますから、オブザーヴアーというようなことはどうか知りませんが、単に新聞報道等によつて知るような情報のみならず、ほんとうの核心に触れましたような情報の通報を受け得るような道筋をつけておくことが、われわれとしては非常に望ましいことであると思います。また日本の地位からいたしましても、日米間の特殊な関係からいたしましても、さようなことを申し出ても決してこれは言い過ぎではないと思うのでありますが、さようなお手はずがとられているのでありましようか、あるいは、これからおとりになるような御計画があるのでありましようか、伺いたいと思います。
#41
○岡崎国務大臣 これについては、お話の通りにわれわれも考えております。すでに二、三の国につきましては、十分なる通報を受けること、及び、それについて日本側としても意見のある場合がありますので、これを申し入れることもあること等については話合いができております。またジユネーヴには、特別のこういう連絡の必要もあろうと考えまして、公使級の者を派遣いたそうと考えて、今それにとりかかつておりまして、すでに訓令等も出しております。これは一、二の国にだけでは十分でありませんで、ほかのいろいろの国の意見も開かなければなりませんから、各関係国に手配をいたしまして十分なる情報を入手し、また必要がある場合には日本側の意見もこれに反映できるような措置をとりたいと考えております。
#42
○並木委員 ただいまの須磨委員の質問に関連してお尋ねをいたします。それは、先般SEATOまたはPATOの問題が起つたときに私は木村保安庁長官に質問をしたのでございます。そういたしましたらば木村保安庁長官は、この極集団安全保障機構に対してはよく検討してみて、日本の利益になるようであるならば加入することも考えられるという答弁でございました。これは吉田首相が参議院で答えた点、あるいは岡崎外務大臣がわれわれに今まで答えている点と必ずしも食い違つておるとは私は思いません。ただ、一歩前進したという感じはいたしたのでございます。なぜかと申しますと、今までは吉田さんも、たとい参加を求められても日本としては断るよりほかにしかたがあるまいという答弁でした。それから岡崎外務大臣は、それは政府が独自の見解に立つてきめるべき問題であつて、そのときになつてみなければわからない、大体こういうような答弁だつたと思うのです。それに竿頭一歩を進めて木村長官は、もし日本の利益になるようであるならば加入してもいいという積極性を示したわけです。そこでいろいろこれを検討してみますと、仏印の事態に対する日本政府の認識はどうかということに帰着するようでございます。かつて岡崎外務大臣は、朝鮮の動乱を称して、釜山まで北鮮軍が来る形勢のあつたときに、日本としては身近に危険を感じた、であるから、朝鮮の動乱は即日本の危機であるというふうに確かに答弁しておられますが、それと同じようにこの仏印の危機というものをお感じになるかどうか、これを私どもは知りたいのです。その感じ方によつて、今後SEATOあるいはPATOの発展とともに、日本の政府のとるべき態度というものが、だんだんと固まつて行くのではないかと思いますが、それらの点についての大臣の所見を伺つておきたい。
#43
○岡崎国務大臣 これは、日本の自衛というような限られた視野から見ますと、朝鮮と仏印では事態が大分違うことは申すまでもありません。しかしながら世界の平和維持というような観点から見ますと、インドシナが万一妙な事態になり、これがタイに影響を及ぼす、あるいはビルマに影響を及ぼすということになりましたならば、東洋の平和に対しては非常なむずかしい事態が起つて来るであろう、この意味では、われわれは最も注意して、人のことじやない、自分らのおる東南アジアの平和に関連することで、すぐさま日本の方に侵略とかなんとかいう事態ではありますまいけれども、この点は十分にわれわれとして注視しなければならぬと考えております。
#44
○並木委員 そういたしますと、やはりSEATOまたはPATOの問題が起つたときには、日本政府としては頭からこれをはねのけないで、これを具体的に検討してみる、そして木村長官の言うように、もしそれが日本の利益であるならば、参加することも考慮の余地がある、こういうふうに了解できるのでありますが、今までの大臣の答弁を一歩前進せしめて、とにかく事態が具体的になつて来ておるのですから、この際そういうふうにわれわれ了解してよろしゆうございますか。
#45
○岡崎国務大臣 これはたびたび申す通り、まだ具体的になつておりませんから、どういう内容を持つものかということは実はわからないのであります。従つてこれに対して意見を述べようもないのであります。いつも総理なりいろいろの人が言つておりますのは、兵力提供という義務を負うような組織であつたならばという仮定のもとに、それは困難であろうということでありますが、条件にはいろいろの場合もありましようから、今ただちにこれは入つてもいいものだとか、入つちやいかぬものだとか、内容を知らずに議論をするわけにも行かぬと思います。
#46
○並木委員 具体的になつておらないというのは、その内容が具体的になつておらないだけの話で、アメリカの方としては、英国と相談して、将来ジユネーヴ会議が失敗した場合にはSEATOまたはPATOをつくるということに了解ができておるのです。従つてもしジユネーヴ会議が失敗いたしますならば、当然それが現実の問題として出て参るのでありまして、目下参議院にひつかかつておるMSAの論議なんかを通じて、再びまた海外派兵の問題なんかが取上げられておるのであります。そこで、政府として海外派兵という問題は、独自の見解できめるのだという今までの外務大臣の答弁でございますから、こういう具体的の事態になつても、かりに太平洋集団安全機構への参加を求められても、兵力提供ということについては、政府としては絶対に応じられない、しかしその他の点について何らかの貢献ができるものであるならば、お互いの利益である、すなわち日本の利益であるから、これに参加することは考えられる、こういうふうに言えるのではないかと思うのです。そこで私はお尋ねしているのでありますから、その点をはつきり答弁願いたいのであります。
#47
○岡崎国務大臣 ただいまの憲法その他から見て、兵力提供ということは不可能じやないかと私は思つております。その他の場合におきましては、これは協力することができる場合がいろいろあろうかとも思うのであります。しかしそれは何によるかというと、具体的なものがないから、これができる、あれができるというわけにも参りませんが、これはさらに具体的な内容がわかつてから考慮する以外に方法がないと思います。
#48
○上塚委員長 並木君、外務大臣は参議院の方から要請して来ておりますから、できるだけ集約して願います。
#49
○並木委員 よろしゆうございます。その具体的な内容がわかつて来れば考慮するということは、つまり私どもとしては、一歩前進したというふうにきようは了解いたします。
 そこで問題は、NATOの条約においても第五条で、他国に加えられた攻撃は自国に加えられた攻撃とみなすという規定があります。今度の場合もおそらくそれに準ずる規定が入つて来ると思いますけれども、その場合に、日本としては、他国に加えられた攻撃を日本に加えられた攻撃とみなすということを、そのままのみ得るかどうかという点でございます。具体的に申しますと、かりに仏印に加えられている攻撃というものはこれすなわち日本に対する攻撃である、こういうような内容を盛つた協定にそのまま入つてよろしいかどうか。但しそれに対して負うべき義務というものは、今大臣は、海外派兵は憲法上不可能と思うという答弁でございますから、それは政府はやらないでしようけども、その他の点において義務を果すことはできる、あたかも今度のMSAの場合における安保条約をもつて軍事的義務を果し得るのだというのと同じような形で加入し得るのではないかと思うのです。その加入する場合に、他国に対する攻撃を日本に対する攻撃とみなしていいかどうか、こういうことなのです。これは私は自衛権の範囲ということと関係して特に知つておきたいと思いますので、それをお尋ねいたします。
#50
○岡崎国務大臣 自衛権の方からいいますと、一般的によその国に加えられた攻撃が即日本に対する攻撃と同じだということは、少し拡張解釈になりはしないかと私は思つております。
#51
○並木委員 そうすると、もしNATOのように、他国に加えられた攻撃が自国に加えられた攻撃とみなすという条項が入つていると、日本としてはこれに応じられないということになりますか。
#52
○岡崎国務大臣 これは仮定の問題であつて、こうだ、ああだという議論も、まだできておりませんし、ちよつと問題だと思います。
#53
○並木委員 仏印の場合はどうですか。
#54
○岡崎国務大臣 いかなる場合でも、できていないのですから、これに対して日本が賛成であるとか、反対であるとかいうのはまだ早いと思います。
#55
○並木委員 まあいいでしょう。
#56
○上塚委員長 これにて緊急質問は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#57
○上塚委員長 次に本日の公報で公告いたしております通り、日カ通商協定の批准について承認を求めるの件につき審議を進めたいと思いますが、この際諸般の情勢を考慮いたしまして暫時休憩いたし、後刻再開することといたしたいと思います。しかし再題のいかんにかかわらず、明日は引続き同協定に関する質疑を続けまして、予定通り質疑を終了して、採決をいたしたいと考えますから、さよう御了承を願います。
 この際暫時休憩いたします。
   午前十一時五十八分休憩
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  〔休憩後は開会に至らなかつた〕
ソース: 国立国会図書館
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