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1953/05/06 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第45号
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1953/05/06 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第45号

#1
第019回国会 外務委員会 第45号
昭和二十九年五月六日(木曜日)
    午前十時四十九分開議
 出席委員
   委員長 上塚  司君
   理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君
   理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君
   理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君
      大橋 忠一君    北 れい吉君
      佐々木盛雄君    福井  明君
      上林與市郎君    福田 昌子君
      細迫 兼光君    河野  密君
      西尾 末廣君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 岡崎 勝男君
 出席政府委員
        外務政務次官  小滝  彬君
 委員外の出席者
        外務事務官
        (大臣官房総務
        課長)     近藤 晋一君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
五月六日
 委員井谷正吉君辞任につき、その補欠として上
 林與市郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
四月三十日
 外務省関係法律の整理に関する法律案(内閣提
 出第一六九号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 外務省関係法律の整理に関する法律案(内閣提
 出第一六九号)
 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案(
 内閣提出第一一四号)外交に関する件
    ―――――――――――――
#2
○福田(篤)委員長代理 ただいまより会議を開きます。
 外務省関係、法律の整理に関する法律案を議題といたします。政府側より提案理由の説明を求めます。
#3
○小滝政府委員 外務省関係法律の整理に関する法律案の提案理由について説明いたします。
 政府におきましては、既存法令のうち整理を要するものは、この際すみやかに整理をする方針をとつておりますが、外務省関係法令につきましては、清国及朝鮮国在留帝国臣民取締法(明治二十九年法律第八十号)及び居留民団法(明治三十八年法律第四十一号)の二つの法律を廃止する要があると認められるのであります。その理由といたしましては、これらの法律は、わが国と清国及び朝鮮国との間のいわゆる不平等条約に基くわが国の特権を前提としていたのでありますが、これらの不平等条約は、すでに一切無効となつているため、前記の二法律は、死文化しておりますので、この際廃止の措置を講じようとするのであります。
 右のような次第でありますから、何とぞすみやかに御審議の上御採択あられんことをおい願いたします。
#4
○福田(篤)委員長代理 これにて提案理由の説明は終りました。本案についての質疑は次会に譲ります。
#5
○福田(篤)委員長代理 次に一般外交問題について質疑の通告があります。これを許します。細迫兼光君。
#6
○細迫委員 私は、ガリオア、イロアについて、アメリカとこの十一日から何か交渉が始められるというような新聞記事などもありますので、次官にお尋ねいたしますが、御責任の持たれる範囲におきまして責任ある御答弁をいたしてもらいたいと思うのであります。ガリオア、イロアを債務と心得るという吉田総理の御宣言であるか、御声明であるか、何かそういうような性質のことが従来あつたということでありますが、その吉田総理の言葉は、政府の責任として相かわらず国際法上効力あるものと政府としては取扱つておられるのでしようか。
#7
○小滝政府委員 アメリカの日本に対する援助を債務と心得るということ甘、これまでもしばしば国会で声明いたしておるところでありまして、その方針によつて交渉を進めることになるはずであります。但し責務と心得ると申しましても、これは憲法八十五条にいう確定債務の意味ではなくして、すでに米国の方からもこの処理について交渉を開始したいという申入れが行われておるのでありまして、憲法上にいう債務というものは今後確定せられるもので、いわば道徳的な負担を感じておるという趣旨で、これまでこのような声明をしているものと了解しております。
#8
○細迫委員 その首相の声明の法律的な効力、価値、根拠などについて、もちろん私どもとしては了解ができないのでございますが、今日においても政府においてさような考えわ持つておられるとしますれば、とにかく何ぼかは払う、またやがてそれを国会にかけるというお考えのように受取れるのでありますが、この中で、ことにガリオア資金はまつたく占領地域における援助資金でありまして、占領者が当然占領政策から必要に基いて支出したものである。私どももちろん当時感謝決議までして感謝はいたしましたが、私としては実はそれはただでもらつたと思つて感謝決議に参加したつもりであるのであります。大方の意思もそこにあつたのじやないかと思うのであります。私どもは少くともガリオアを債務として取扱うには絶対反対して行きたいと思うのでありますが、この際ガリオアを受けました国々における従来の取扱いの先例がございましたら、事務当局の方からでもお知らせ願いたいと思うのであります。
#9
○小滝政府委員 当時日本では輸入の資金は全然なく、しかも民政上非常に必要な物資を米国から供給を受けたのでありまして、感謝決議などが行われたことは政府側もよく承知いたしております。しかしこれは日本が無償でそのままもらうのだという了解ができているのではなく、米国側もこれまでに、日本側に対する借款とか信用とかいうような種類のものについては、あくまでこれは債務として有効なものであるというふうな趣旨を述べて来ておるのでありまして、今御質問のように、外国との関係においてもそうした意味のとりきめが行われておるのであります。今まで債務として確定せられたものはドイツだけでありますが、ドイツの協定の内容は、援助総額のうち三分の一を確定債務とし、債務の支払い条件は利息を二分五厘、最初の五箇年間は半年ごとに利払いのみを行つて、それ以降は三十年にわたつて半年ごとに元利を支払うということになつておるのであります。なおその他で援助を受けました琉球とかトリエステとか、オーストリアについては、確定債務のとりきめというものはまだ行われておらないのであります。
#10
○細迫委員 これは外務省関係にお尋ねしてもよくわからないことかもしれませんが、ガリオア物資につきましては、当時こちらの注文、希望によつたものでありましようか、あちらから、悪くいえば押しつけども言われますが、こちらの意向を聞かずに、かつてにどんどん持ち込まれたような事情にあるものでございましようか、そこいらの事情がわかつておりますれば、承りたいと思います。
#11
○小滝政府委員 当時日本における行政の最高責任を持つておつたのは占領軍でありますから、最終的に決定いたしましたものは占領軍であります。しかしながらこの物資をいかにすべきか、いかなるものを選ぶかということにつきましては、日本の関係各省から資料を徴し、いろいろ協議して行われたものであります。
#12
○細迫委員 ガリオア、ことにイロアの資金はどういう方面に一体利用せられておつたであろうか、これも外務省ではおわかりにくいかもしれませんが、わかつておる程度においてお答えを願いたいのでありまして、やがてこのガリオア、イロアの問題も正式にわれわれの問題とせられると思いますから、その資金の利用方法、方面についての資料があれば、後日でもよろしいですから御提供を願いたいのであります。と申しますのは、ガリオア物資は当時たしか圏内には配給値段で分配せられたと思うのであります。それで国民個人々々といたしましては、ガリオア物資に対しましてはそれ相当の対価をもうすでに政府に対しましては払つておるのでありまして、これを債務と心得て何ぼかでも支払おうといたしますれば、それの受益者、資金の利用者が主として受益者負担とでもいうような性質において少くとも支払いの任に当るべきものであつて、一般国民負担の税金からこれを返して行くということは筋においても違うので、反対して行かなければならぬと思うのであります。
  〔幅出(篤)委員長代理退席、富田委員長代理着席〕
 その前提としてこの資金、ことにイロア資金などの利用方法、どういうところに一体利用せられ、どういうものがその恩恵をこうむつておるかということを知つておきたいと思うのであります。おわかりでありますればお答え願いたいのであります。
#13
○小滝政府委員 詳細については通産なり大蔵当局の人が参りましたときに御質問願いたいと思いますが、御指摘のように当時公定価格で配給しております。最初におきましては貿易資金特別会計の方へ入りましてこの貿易勘定に入つておつたわけでありますが、その後見返資金特別会計ができるようになりまして、それに対応する円というものが重要産業の融資に使われるということになりまして、この特別会計法によつてその資金が回収せられるという建前になつておるわけであります。しかし今度の交渉の結果がどうなるか、これにつきましては日本としても賠償の問題もありますし、外債もありますし、防衛力の増強とか、民生の安定、貿易の振興、経済自立、いろいろの問題が日本として存在し、また日本の外貨事情というようなものも現在必ずしも見通しはよくないというような事情もございますので、どれだけのものを負担して、話合いをして、皆様の御承認を仰ぐようになるか、現在のところはまつたくはつきりした見通しもないわけでありまして、こちらとしてはできるだけこれを少くしてもらいたいという希望を持つておりますから、その支払いについてどういう方法をとるかということは、今の段階においては何とも申し上げかねる次第であります。
#14
○細迫委員 一体このガリオア、イロアの債務と心得る金額というものは、ドルにおいてでもあるいは円においてでも、現在において確定しておるのでありましようか、いかがでしようか。
#15
○小滝政府委員 債務が確定いたしますのは今後交渉いたしまして、そうして議会の承認を受けて初めて確定するわけでありますから、現在は確定しておる次第ではございません。
#16
○細迫委員 私の言葉が足りなくて趣旨がとりそこねられておるのでありますが、もちろんやがて国の債務となるためには国会の承認も得なければならぬので、確定債務とはこの際言われないのはもちろんでありますが、交渉を始めるにあたりまして、どれくらいのガリオア、イロア資金が来ているということだけは、交渉の基礎といいますか、出発点として確定額が必要だと思うのでありますが、それを承りたい。
#17
○小滝政府委員 昭和二十四年にこの見返資金特別会計が設定されまして以後の援助は大体八億七千万ドルということになつております。但し終戦後から見返資金特別会計が設置されますまでの期間は、これは援助物資の輸入も商業勘定による輸入と同様に、先ほど申しましたように貿易資金特別会計法で取扱つて占領軍当局が管理をいたしておりましたので、日本側では実は正確な数字を把握することができない態勢にあつたわけであります。御参考までに申しますれば、当時の総司令部の経済科学局の統計によりますと、大体十一億八千四百万ドルということになつておるのであります。
#18
○細迫委員 私はやがて問題になるであろうガリオア、イロア問題につきまして前提として承りたいと思うことは、大略以上で尽きますが、最初に申し上げましたように、これはほんとうにただでもらつたと思つて誠心誠意、誠意を込めて感謝決議までいたしたのでありまして、いまさらこれを返せと言われては感謝決議もその誠意だけを抜き取りたいような気持であるのであります。おそらくは日本側の注文によらないで、かつてに物資がどんどん送られて来たというような事情であつたと思うのでありまして、そういうような事柄から、またガリオアの元来の意味から申しまして、これは債務と心得てひとつこれから何ぼか支払うように確定しようという行き方に、私どもは根本的に反対の考えを持つておるのであります。さような線に沿うて御交渉を始められるならしていただきたいと要望申し上げまして、一応私の質問を終ります。
#19
○河野(密)委員 関連して。今細迫君から質問をいたしました点について、日本側の債務として見返資金特別会計に積み立てられた金は八億七十万ドルということでございます。それは私たちも前々から聞いて知つておるのでありますが、アメリカ側で日本側に通告をして来ておりますガリオア、イロアの資金として日本に持つて来た物資のすべての額は一われわれ聞くところによると、二十一億一千五百万ドルとも伝えられ、二十億何千万ドルというようにも伝えられておりますが、アメリカ側からこちらに通告をして参りました大体の額は幾らになるのでありますか、これをまず承りたいのであります。
#20
○小滝政府委員 正式に日本へ通告をして来ているのではなくて、そういう交渉は今後に行われるのであります。しかしアメリカの商務省が発表いたしました一九四〇年から一九五一年までのずつと援助の行われ翻した期間における対外援助として日本にどれだけ援助したかという数字を見ますと、今河野さんの御指摘のように二十一億五百八十一万八千ドということになつております。
#21
○河野(密)委員 向うからは今二十一億五百八十万ドルですか、それだけ援助した、日本の正式の見返資金特別会計に積み立てられているものは八億七千万ドルしかない、この間における相違というものは相当大幅なものでありますが、この金額というものは一体どこに消えてなくなつたのか、これは私の最も重大な問題であり、占領治下の政治全体にも関係する重要な問題だと思いますが、政府側はこれをどういうふうに観測しておるのでありますか。貿易資金特別会計というものの経理は、これは当時のGHQの経理に属したというのでありますが、これに対する日本側としての調査方法あるいはそれに対する日本側としての資料というようなものは一体あるのかないのか、
 これはどういうふうにやつておりますか。
#22
○小滝政府委員 お答えいたします。この見返資金特別会計ができますまでは、貿易庁がスキャップのエージエンシイとなりまして、輸入物資については一九四九年までは向うからの援助を受けての輸入のものも、普通の貿易による輸入のものも、みな一緒になつて貿易勘定に入つたわけであります。でありますからその貿易勘定に入つたもの、すなわち当時における公定価格によつて換算した円貨というものはこの勘定に入つて、そうして輸出するものに対する輸出資金として支払われておりますから、決して消えてなくなつたわけではございません。当時の貿易というものはこれによつて行われて来たのであります。
#23
○河野(密)委員 それは輸出の差額補償というような形にある程度使われたということは私たちは認めますけれども、しかし金額に非常に開きがあるわけです。アメリカ側の二十一億ドルに対して、日本の正式の書類に載つておるものは八億七十万ドルしかない。(並木委員「占領費に使つたんじやないか」と呼ぶ)そうするとその間の差額というものは、十三億と申しますと、今日の為替相場に換算しても莫大な、五千億近くになる金でありますが、それらのものがどこへ消えてしまつたか。
  〔富田委員長代理退席、委員長着席〕
 その貿易の運営の過程において消えてしまつたというが、はたしてほんとうに貿易の運営の間に消えたものやら、あるいはその剛に大きなスキャンダルがあつたものやら、これは実際に調査する方法を日本政府は持つておるのですか、持つておらないのですか。
#24
○小滝政府委員 これは私が答弁すべき限りではないのでありますが、私当時貿易庁におりましたので便宜私からお答え申し上げます。当時公定価格というものが非常に低かつた、ところが輸出は差額があつて、あるいは五百円レートのものもあるし、百円のレートのものもありまして、換言すれば一つの輸出奨励と申しますか、一本為替レートでできておらなかつたのでありまして、それが相当輸出のために支払われた、そういう差がありましてその輸出の方の代金に使われたのであります。なお貿易資金特別会計というものはその後引継がれており事して、円貨に関する限りは、並木さんがささやかれましたように占領軍が使うというようなことではなしに、貿易庁にある貿易資金特別会計の運用にあたつて使われたものであつて、アメリカがとつたとか横に流れたというようなものではなしに、その特別会計に関する限りは、はつきりした帳簿が残つておりますから、御指摘のようなことでもあれば、そうした円の用途に関するものは十分取調べもできるわけであります。但しこうした点は、外務省でなしに通産省なり大蔵省の係官が参りましたときに御質問になれば、さらに詳細御答弁申し上げるものと存じます。
#25
○上塚委員長 河野君、まだ緊急質問の通告がありまして、外務大臣の時間が非常に短かいようですから……。よろしゆうございますか。
#26
○河野(密)委員 よろしゆうございます。
#27
○上塚委員長 それでは福田篤泰君。
#28
○福田(篤)委員 ただいまガリオア、イロア資金につきまして御質問がありましたが、これと関連してお伺いしたいことは、もともとこれは援助という内容を持つたものであつたことは国民も全部知つておるわけでありますが、これを正しく債務として日本が取扱わなければならないかどうか、この根拠についてまずお伺いし、それからドイツの方の例を、日本側と相違があるならばどういう点に相違があるか、また同じような点があればどういう点に類似点があるか、二点をお伺いしたいと思います。
#29
○岡崎国務大臣 ちよつと初めの点が質問がはつきりわからないのですが、債務になるという理由でございますか。
#30
○福田(篤)委員 政府側が債務と考えておるかどうか。
#31
○岡崎国務大臣 政府側はもちろん債務と心得ております。(「その法的根拠」と呼ぶ者あり)法的の根拠というものは、国会で承認を受けたときに債務となるのでありますから、それまで債務と心得ておるわけです。それでいかなる額が適当であるかどうかということは、今後交渉してみないとわかりません。それで政府としても妥当だと考えますときは、これは債務と認めてさしつかえないかどうかということを国会に提出してその承認を受けるわけであります。承認を受けた場合にはそれが正式に債務になるわけであります。
 それから、ドイツとの差とか同様のところはどうか、これはもちろんこちらのはまだ交渉もいたしておりませんから、どういう形になるかわかりませんので、ドイツと差があるかないかという点は今明確には申し上げられませんが、大体の筋はドイツの例にならうことになるのじやないか、こう考えております。またその意味でもちろん日本にとつてはできるだけ有利なような交渉をいたすつもりでありますが、大筋はドイツの例が非常な参考になる、こう考えております。
#32
○福田(篤)委員 ドイツの先例が大体日本の例に当ろうというお考えであります。今後の交渉について政府側もいろいろ御苦心もあろうと思いますが、問題ははりこれは債務と心得るという考え自体が、この交渉において非常な不利なことになるのじやないか、あくまで日本側としては援助を受けたのだと感謝の気持もあるし、また謝意を表しました。日本側も感謝の意を表し、要するにお礼をしたいという意味で幾分かの応分の気持を表わすことはちつともかまいませんが、何ら法的な根拠のないものを債務として交渉することはきわめて不利と思います。この場合政府としての見解を伺いたい。
#33
○岡崎国務大臣 当時私もごく短期間でありましたが、終戦連絡中央事務局の長官をいたしておりまして、終戦直後の状況は心得ており、まだ記憶しておりますが、今では非常に余裕を持つてながめられますから債務であるとかないとかいうことも考えられますが、あの当時はとにかく何かアメリカから持つて来てもらわなければ、国民が食えないという状況でありますから、そのためにはたといこれは人間が喰えないといつても、とにかく食うものであるならばよこしてもらいたいというくらいの状況であつたのであります。従つてこれは決してアメリカ側が向うでかつてによこしてくれたのでなくしてわれわれが強く希望いたしまして無理なことを要求してくれたものであります。またかりにそのときもしアメリカが援助をしなかつた場合には、それではほかの国が援助をよこしたかといいますと、私はおそらくそれはあの終戦後の状況では、どこの国もできなかつたろうと思います。従いまして対日援助を返すといたしましても、とにかくあのときに急場をしのげたということは非常なことであつて、これに対しては、ただもらいつぱなしという気持は私は正しくないと思うし、また日本の国民の誇りからいたしましても、そうこじきのようにもらつて来るということで得意になつているわけには行かぬと思います。返すべきものは当然返す、こういうつもりで国家の再建をはかるのが、私は当然じやないかと思います。ただわれわれの支払い能力も考えなければなりませんから、かりに返済するといたしましても、その額とか、支払い方法とかについては、いろいろの考慮を必要といたしましよう。また全部の額がすなわち日本の債務であると認めることも、困難な事情もあろうと思いますから、幸いドイツの例もありますから、これを根拠として十分研究して、日本に適当な結着を得たいと考えております。これはただもらつたものだというふうに考えて、人から何でももらえばもらうだけ得なんだという考え方は、私のとらないところであります。
#34
○福田(篤)委員 今のお気持はわかります。それからアメリカに対する大きな感謝の気持も、今でも決してわれわれ失わないのでありますが、私は今後外交交渉という冷静な立場から考えますと、大きな問題があると思うのであります。それはあくまで恐喝を助けてもらつたことは非常に感謝いたしますが、交渉となる場合には、別個の数字の問題が出て参りますので、日本の政府の立場が大きな問題になります。そこでぜひお伺いしたいことは、今もお話によりますと・、日本政府の方でも、何でもいいから、とにかくよこせとアメリカに要請したと承りましたが、その場合に、将来これを金で払うとか、あるいは何かそういうオブリゲーシヨンに近い言質を与えたか、あるいは何らかの交渉形式があつたか、この点を一点伺つておきたい。
#35
○岡崎国務大臣 別にそういう公約なり、あるいは書き物で約束したことは、その当時はありません。ありませんが、ないからして、これはもらつたものだという議論にもならないと思います。よこしたものは当然支払うべきものであるというのが原則であろうと思います。なおこれにつきましては国会で、たしか昭和二十四年にきまりました郵船会社の阿波丸事件、あの当時には、そういう点について、債務という問題がどういう範囲かというようなことは、一応の話合いが行われたと記憶しております。
#36
○北委員 関連して。実はこの問題は私は初めから注目いたしておりましたが、河野君が日本の債権について質問をしたのですが、その材料は実は私のところに持つて来たのです。私がやらずに河聾君が質問をして、当時爆弾質問といわれたのですが、これは根拠のないりくつでも何でもない。アメリカに四年間勤めておつた私の友人のむすこで、通産省の嘱託をしておつた。アメリカ人は次々に帰つたけれども、それは書類を一通こしらえておいて、アメリカへ返すべきものは返して、現に打つておる。そうしてその材料を私のところに持つて来たから、塚田君がそういうことは詳しいと思つて、塚田君はまかした。ところが、東条という大蔵省の為替局長ですか、それに預けておいたが、外務省から何も話がないというのでそのままにしておいた。それで河野雰が質問するというので私が取返して、質問した結果、外務当局も大蔵当局も、通産当局も、全然研究の資料がなくて非常にあわを食つた事実がある。この男はガリオアとイロアのことについての材料を自分の手元に持つておるのである。それで私に、どうしても正確になさなければならぬ債務というものは四億ドルしかない。それよりちよつと上くらいのものである。そう言つて、材料を全部私のところに持つて来たのです。私は返しましたが、皆様の御了解があるならば、その人をここに呼んで事実を調べて、材料にしてもらいたい。これは愛国者です。アメリカからとるべきものはとらなければならぬ。やるべきものはやらなければならぬという論で、非常に忙しい中から、四年間資料を蓄積した。これは政府にないのです。アメリカの官吏は始終帰つて、最後にマーケットの債権の承認を得た事実がある。材料を全部持つているから、一応ここに呼んでお調べになつて好意は好意として謝するけれども、債務は、これはやはり勘定の問題ですから、正確に明らかにする必要があると思います。皆様の御同意を得たならば、私は連れて参ります。(「異議なし」と呼ぶ者あり)いかがでございましようか。あるいはお困りになるならば、秘密会でもけつこうであります。私は政府の裏をかくとか、日米感情を害するとかいう意味ではなく、正確に事実をきわめたいと思う。どうですか、秘密会でもよろしいのです。またその人の事実が関連つておつたならば、間違いだということを指摘してくださつてもよろしい。本人は私から懇請すれば、必ず材料を持つて来ると思います。これを私は提案いたしておきます。
#37
○上塚委員長 北君のは、政府に意向を聞かれるのですか。参考人を呼ぶということを委員長に提案されるのですか。
#38
○北委員 委員長じやない。委員会に呼んで、皆さんが事実を明らかにしてもらいたい。本人はおそらく来てくれると思います。今は某大使館に勤めています。
 外務大臣はいかがでしようか。たんとお困りのようならば、秘密会でもけつこうです。
#39
○岡崎国務大臣 私の方は全然困りません。どうぞごかつてに……。
  〔「理事会々々々」と呼ぶ者あり〕
#40
○福田(篤)委員 今北君からも御発言がありました通り、これは国民の感情にぴつたり来ない取扱いになりましては困りますので、債務という言葉はあくまでも避けて、この点の取扱いについては、政府側の正式交渉の場合にはよほど慎重にお取扱いを願いたい。
 時間がないようでありますから、他の一点をちよつとお伺いいたします。
 文字通り決裂に入りました日比の賠償交渉の問題ですが、その後どういう見通しになつているか。また話によりますと、大町公使が十日ごろ日本に帰つて来て、やめるという話を承つておりますが、賠償交渉の今後の見通しを具体的にお伺いしたいと思います。
#41
○岡崎国務大臣 賠償交渉はフィリピン側の出方によるのであつて、われわれの方としては最大限度の譲歩をした提案をフィリピンとの岡に行政府間ではやつたわけです。これをどう扱うかというフィリピン側の出方を待つているわけです。それにつきましては、賠償視察団の報告もありましようし、先方でどういうふうに上院等をまとめるか、その期間等もありましよう。要するに先方の今後の出方を待つている。なお大野公使は、ただいまアジア大会等がありますから、全権団一行とともに帰つて来ることができなかつたのでありますが、これはやめるとか、やめないとかいう問題は別として、全権団一行の一人として現地の責任者でありますから、その意味で報告に帰つて来るのであります。
#42
○福田(篤)委員 フィリピンの国会の期間もすでにそろそろ切れそうでありますが、そうなりますと、この賠償問題はフイリピンのこの国会ではとても間に合わぬのじやないかという見通しが強くなつている。同町に平和条約についてもまた遅れるということも当然考えられますが、これについてのお考えはいかがですか。
#43
○岡崎国務大臣 これもどうもやむを得ないと思います。
#44
○福田(篤)委員 時間がありませんから、ごく簡単にもう一点伺いますが、大型艦艇の協定が近く円満妥結されるといううわさがありますが、これについての政府の御見解を承りたい。
#45
○岡崎国務大臣 まだ今日の朝までのところは、公報は入つておりません。新聞報道には伝えられております。MSAの協定も効力を発生いたしましたから、おそらくそういう順序になることと予想しておりまして、大体新聞報道の筋で行くのじやないかと思いますが、まだ正式な、正確な報道は入手しておりません。あるいはきよう、あすあたりには何か来るのじやないか、こう思つております。
#46
○上塚委員長 並木芳雄君。
#47
○並木委員 ガリオアの問題ですが、大臣の、先ほどの御説明によると、確かに心理状態において変化を来しておるということを認めたのです。最初確かに、これは債務ではない、大臣自身債務ではないというつもりで、そういう心理の上で向うから援助物資を受けておつたと私も認めたのですが、その通り認めてよろしいですか。
#48
○岡崎国務大臣 そのようなことは、私は考えておりません。
#49
○並木委員 そうおつしやらないとすると、憲法八十五条の「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。」この条文に明らかに違反することになるのです。いかがですか。
#50
○岡崎国務大臣 だから先ほど申したように、正確なる債務というものは国会の承認を得たときにきまる、こう考えております。
#51
○並木委員 しかし憲法八十五条というのは、事前に承認を求めるというふうにとるのですが、何か事後承認のように思われますけれども、その点大臣は確信がおありになるのですか。
#52
○岡崎国務大臣 国会の承認を得なければ確定いたさないのでありますから、その点は間違いありません。
#53
○並木委員 確定という言葉を使うからそういう説明が出るのですけれども、国が債務を負担するには、国会の議決に基いて負担するのだということになります。今の大臣の答弁を拡大しますと、何でもできるということになるのじやないですか。もしそれが国会で否決されたような場合にはたいへんなことになると思います。これは国際信義の上からいつても考えられないので、何でも行政府が先にやつておいて、あとから事後承認を求めればいいという建前は、憲法の精神とは違うと思うのですが、その点どうお考えになりますか。
#54
○岡崎国務大臣 これは普通の条約などと同じことであつて、調印をしたときに効力を発生しますものは、原則として国会の事前の承認を得てから調印をいたします。調印をするとすぐ効力を発生する、こういうことになりますし、国会の承認を条件とするものは、調印をいたして形をつくつて、両政府間でこれが適当なものであるときめたときに、これをおのおのの国会にかけて、あるいは国内手続――これはアメリカとあるいは違う場合もありますが、そうして国会の承認を得たときに効力を発生する、こうなります。これが私は憲法の規定であると信じております。
#55
○並木委員 それなら伺いますが、調印に相当するところはどこであつたのですか、この債務の場合、調印に相当する日米両方の合意がいつ成立しておるのですか。
#56
○岡崎国務大臣 これからやるのであります。
#57
○並木委員 それですと、政府としては非常に手落ちのあることをやつて来た。調印も申合せもしないで、要するに憲法にいう広い意味での条約というものの調印をしておかないで、成立を見ずして、これからその調印を取運ぶ、こういうことになるのですか。
#58
○岡崎国務大臣 その通りであります。
#59
○並木委員 もし国会が否決をしたらどうしますか。
#60
○岡崎国務大臣 否決すれば効力を発生しません。
#61
○並木委員 関連があるそうですから。
#62
○細迫委員 簡単なことですが、もう、一つの調印にも準ずべき発言を吉田総理はしたと思うのです。一体債務と心得るということを発言なさつた時期、折はいつ、機会はいつでありましたでしようか。多分サンフランシスコ会議のときではなかつたかと思う。そうだとすれば、平和条約との抱き合せというか、脅迫に基くといいますか、とにかく心理状態において、平和条約が何よりほしかつたときに乗ぜられての吉田総理の発言ではなかつたかと思うのです。これもやがてその発言の効力関係を考慮するについて重大な一つの要素になると思いますから、この発言の時期、形式を明らかにしていただきたい。それから債務と心得るといつて、一体オブリゲーシヨンと心得るというのは、どういう英語が使われておつたでしようか。
#63
○岡崎国務大臣 今手元に資料がありませんから、いつやつたかということはあとで調べてお答えします。債務と心得るという表現は、国会でやつたと私は思います。ほかでやつたのではなく、この国会で……。
#64
○細迫委員 それは違う。国会でやつたとおつしやいますが、それは違うと思います。私の記憶によれば、アメリカに対しましては、アメリカの政府のたれかに対しまして、債務と心得るという発言を吉田総理がなさつたと私は記憶しておるのですが、御記憶違いではありませんか。
#65
○岡崎国務大臣 記憶の剛違いかもしれません。調べてからお答えします。
#66
○並木委員 大臣のそういう答弁ですと、国会が感謝決議をしたときに、どうして政府ははつきり断らなかつたのですか。皆さんは感謝されるが、債務なんだから感謝する必要はない――と言わなくてもよいが、そのときに、明らかにわれわれは、無償で提供されたからこそ感謝決議をしたのであります。だから大臣は、そういう答弁をなさらずに、われわれの感情と同じように、最初これはもうもらつたものだと思つた、ただこれで助かつたから、日本もいくらか経済力が回復して来たから、今日少しでも御恩返しをしよう、こういう意味なんだというふうにおつしやつた方がいいのじやないですか。
#67
○岡崎国務大臣 私は、記憶がはつきりしておりませんが、国会で感謝決議をされたときに、そういう立場になかつたと思います。ですから私は、関係がその当時はなかつたのであります。
#68
○並木委員 しかしあのとき政府筋から、全然そういう、これは債務であるというような意向は出ておらなかつたのです。大臣はそれを是認されませんか、どうです。やはりあの感謝決議が出て来たときには、内閣といえども、これは債務ではないのだ、そういう前挺のものにあの感謝決議を受けられた、こう思いますけれども、そう言つてください。
#69
○岡崎国務大臣 私は当時の事情を知らない、ほんとうに。私は記憶がありませんが、おそらく私がそういうことに関係する立場になかつたときのことだと思います。従つて、その当時どういういきさつになつておつたかそれは承知しておりませんが、私は自分の感じでは、これは債務であるべきものと考えておりました。
#70
○並木委員 大臣のおつしやることをなるべく私も信用したいとは思うのですけれども、なかなかそれは信用できないのです。この前MSAによる小麦五千万ドルのうちの一千万ドル分、つまり三十六億円は日本政府が自由にこれを使うことができる、アメリカの了解を得る必要はないという大臣の答弁だつたのですけれども、今やはり政府は、アメリカと打合せてどういうふうに使うかということの計画を立てておるのです。これも明らかに大臣の考え方がかわつて来ていると思うのです。実際この三十六億というのは日本政府の自由にならないのですか、その使い道はどうなりますか。
#71
○岡崎国務大臣 これは当時の速記録をごらんくだされば、私の言つていることが間違いでないことがおわかりになると思います。これは贈与でありますから、日本政府の自由になる、しかしながら、これは域外買付に応ずる防衛産業を充実しようという計画であるから、そこで将来いかなるものに域外買付が集中されるか、どの程度継続されて、どういう種数のものが域外買付として発注されるか、こういうことは、アメリカ側の計画、意向等を確かめておかないと、むだな方に金が使われては困る、こういう意味でアメリカ側の意向を確かめる、こういうことを私は委員会でたびたび繰り返しておつて、記憶のいい並木君は覚えていらつしやると思います。その意味でアメリカ側と話しておる、これだけであります。
#72
○並木委員 用途はきまりましたか。
#73
○岡崎国務大臣 まだ決定はいたしておらないと了解いたしておりますが、これは通産省で主としてやつております。
#74
○並木委員 私の時間も少いですから、次の問題をお尋ねします。
 濠州のアラフラ海の真珠貝の採取問題なのですが、これはもう五月に入りまして出漁期に入つておると思います。あの例の暫定とりきめの点はうまく話合いがついたのですか、つかないのですか。
#75
○岡崎国務大臣 多分まだ話合い中だと思いますが、もう岡もなく暫定的な話合いができて、出漁ができるのではないかと私は期待しております。
#76
○並木委員 それならばその点はよろしゆうございます。
 フィリピンの賠償では村田特命全権大他の任務はそのままにしておくのですか、それとも一時これを解いて、またあらためて全権を派遣するようになるとか、その点はいかがでしようか。もし今後話合いをするとすれば、マニラでやるのか、あるいは東京でやるのか、どつちでやるというようなことについて……。
#77
○岡崎国務大臣 全権等はまだ今のところはそのままにしておりますが、これをどうするか、さらに研究してみたいと思います。フィリピン側でもまだ全権一行はそのままになつておるようでありますから、しばらく状態を見たいと思います。
 今後の交渉の場所は、これはフィリピン側の希望にまかせたいと思うのであります。マニラでやりたいといえばマニラに行くし、東京がいいといえば東京でもさしつかえない。一にフイリピン側の考え方にまかせようと思つております。
#78
○並木委員 第二の別の調査団を派遣したいという意向がフィリピン側の方にあるようでありますが、その点については、政府に何か報告がございましたか、またこれに対して政府はどういう態度をもつて迎えられるつもりでありますか。
#79
○岡崎国務大臣 これは何も報告がありません。新聞で何か上院側でそういう意向があるというように伝えられておりますが、おそらくそういうことはまだ何も日本側出先には言つて来ていないと思うし、こういうことができるものかどうか、まだ先のことでわかりませんので、しばらく意見は差控えたいと思います。
#80
○並木委員 もう一点だけお尋ねしておきます。それはビキニの被災の問題であります。災害を受けたことに対して、政府はアメリカに補償を請求しておきましたけれども、この補償問題はどういうふうに話合いがつきましたですか。
 それから岡崎大臣は、焼津でビキニの灰を探して、それを共産主義陣営に送る、そういうようなスパイがあるという報道を受けておるという答弁を外務委員会でやつておられます。しかしその後調査の結果、全然そういうことはなかつたということなのです。大臣が答弁したことが案外アメリカに反映して、向うの上院議員の何とかいう人のスパイ活動ではないかというような発言にもなつたのではないかと思いますが、この大臣の発言は軽率ではなかつたかと思います。この調査の結果はどうなつたか、この際お尋ねをしておきたいと思います。
 それともう一つ、ビキニの被災問題についての医療の問題ですけれども、これは日本側の意向と先方の意向とかなり食い違いがあつたようであります。日本側ではアメリカの医者をシヤツト・アウトしようとし、向うでは確かに好意をもつて医者を送ろうとしたのではないかと思いますが、もし誤解が解けたとするならば――向うがせつかく善意で医者を送るとするならば、これを受けてもいいじやないかと思うのですが、医療に対する態度をどういうふうにおきめになりましたか。それについて、アメリカでは病人の状態を非常に軽く見ているようですが、実際は重いということをアメリカ側の方へ政府は伝達してありますかどうか。それらの点について承りたい。
#81
○岡崎国務大臣 福竜丸その他の被害の算定は長くかかるものでありますから、一月々々くらいに区切つての算定は先方に提出しております。というのは、先方としては、原則として補償することに異存がないということを盲つておりますが、そのどれが一語正確であるかということについては、さらに話合いをいたす必要があると思つております。
 それからスパイ活動云々のことは、先方では福竜丸の船自体がほんとうに漁をしておつたかどうかというようなことであつて、福竜丸が入つて来たあとの灰だとかなんとかいうようなものについてのことは性質が違います。これは初めの先方の考え方はもちろん、誤解は当然解けたわけだと考えております。われわれの聞いたところでは、たとえば福竜丸の船員等の使つた着物だとかその他のもの、つまり何でもとにかく爆弾の性質がわかるようなものについては、左翼系の人が金を出して買うということを申し出た事実は確かにあるようであります。これに対しては、現地でそういうことをさしとめているようであります。従つてある程度これは事実であると思います。
 それから医療については、アメリカ側はもちろん好意的でもありましようが、同時に、自分の方の実験から受けた被害であるので、まことに済まないという意味で医者をよこしたわけであります。不幸にしてアメリカ側は十分なる診療ができませんから、アメリカ側の医師として受けたいろいろの材料に基いて判断するよりいたし方ないので、そういう結論が出たと思うのであります。もつと本式に診療したならば、あるいは違つた結論が出たかもしれない。要するに、患者を見ることができなかつたというために起つた差異がそこにできたかと思います。但しアメリカ側の医師は、もし日本側の考え方がかわつて、再びアメリカの医師の診療を受けてもよろしいということになれば、いつでもやつて来る、こういうことで、長く東京に待つているわけにも行かないから、一応帰るというので帰つておりますから、患者なり、日本側の医師なりの意向によつては、また再び来る場合も当然あり得ると思つております。政府としては、とにかく患者の健康が一番大事でありますから、あらゆる手を尽して医療に従事するのが当然であり、従つて役に立つ立たぬは、これは専門家でなければわかりますまいが、アメリカ側の医師が特別の知識を持つているかもしれないので、できるだけ広く医療の知識を集める意味では、なるべく患者を診療させたいと思つておるのでありますが、まだそこまで患者の気持なり、日本側の医師の気持なりが進んでいるとも思いませんので、しばらく様子を見ているということ以外にいたし方がないと考えております。
#82
○佐々木(盛)委員 関連して。先ほど対米債務の問題が出ましたので、二、三点だけ承つておきたいと思います。
 吉田総理、また岡崎外務大臣も、幾たびか国会を通して、ガリオア、イロアの援助物資は対米債務と心得る、こういうふうな答弁をなさつたように記憶いたしますが、私はこれは多分に政治的な含みがあつたものだと今日まで考えておつたのであります。おそらくはアメリカ当局におきましても、たとえば今日問題になつております賠償問題等がいよいよ現実の問題になつて来たときに、一応債務の形になつておる、これをそのときにおいて帳消しにする、ほかの賠償を請求する国々に対しましても、その賠償に優先してこれだけの債務を負つておるものだということによつて、そこに債務の問題が政治的に取扱われるのだ、私はこのように期待し、またアメリカ政府もそのようなつもり、あつたのではなかろうかと考えておつたのであります。おそらくトルーマン政権が長く続いたならばそんなことになつたのではなかろうかと思いますが、最近アイゼンハウアー政権に移つて参りまして、アメリカ政府の政策も大分かわつて来た、こういうふうに私たちは考えておるのですが、この点につきましては一体どのようにお考えになつておるかという点がまず一点と、それから債務。あるとお考えになるには何らかの根拠がなければならない。おそらく占領当時であると思いますが、アメリカからメモランダム等の形式を通して、これは債務であると心得なさい、こういつた通告があつたやに承つております。これらにつきましては関係事務当局はご承知であろうと思う。もしあつたとするならば、それがいつごろそういつたことを言つて来たかという点、これは大きな根拠になつておりますから、これもひとつ明らかにしていただきたいと思います。もう一点、われわれ国民の立場から考えますと、今の御説明によりますと、マル公で配給をいたした、そのときに国民は一度公定価格の支払いをいたしておるわけです。それをもう一度このたび圏が債務としてこれを承認し、それに応ずることになりますと、国民は税金を通じてもう一度代価を払わなければならぬ。つまり小麦なら小麦の代金として一回支払つたものを、また税金を通してもう一回払わなければならぬ。二重払いをしなければならぬ。こういうことにもなるわけでありますが、こらの点については一体どのようにお考えになつておるか。三つ一緒にしてひとつ御答弁を願います。
#83
○岡崎国務大臣 米国側の意向として今おつしやるようなことがありましたかどうか、そういうことはよく言われるのでありますが、私が外務大臣の地位にあつたときには、もちろんそういうことはありませんし、そういうときでなく、私の知らないときでも、そういう意向が日本政府のだれか当局者と話し合われたとは私は思わないのであります。おそらくそういうことはなかつたと思うのであります。従いましてそういうことは日本側の人々、あるいは日本に好意のある人々は、アメリカ側の人々でも、個人的には何かそういう意見もあつたかもしれませんが、公というか、正式というか、少くとも責任ある地位の者の間で、そういう話があつたとは私は想像できないのです。そういう資料も私の知る限りではありません。またこれはアイゼンハウアー政府になりましてから急に態度がかわつたということでなくして、前から、つまり前にも申しましたが、独立前におきましても、占領中もこの問題についてはどういう形になつておるかという、正確な数字等の把握をとにかく早く必要とするという意味の意向はあつたのであります。これはどれだけ債務になるかという点については別問題でありますけれども、とにかく数字があいまいになつておるのはおもしろくないということは、トルーマン大統領のもとにおいてもあつたのであります。
 それからこれも私は記憶しておりません。あるいは事務当局が知つておるかもしれませんが、アメリカ側からこれは債務である、アメリカの債権であるというような通告は来ていないのじやないかと思います。
 それから最後に、いろいろの食料等でありますが、これは二重払いというのは私は当らないと思うのであります。たとえば日本が米を輸入する――今でもやつておりますが、そういう場合には代価を払つて米を輸入する、それで一ぺん外国に支払います。その金はやはり日本の国民の税金等による金で支払われます。それから国内に配給をいたします場合には国民に公定価格で配給する、こういうことになる。それのつまり逆をやつておるということになろうかと考えております。
#84
○佐々木(盛)委員 最後の岡崎外務大臣の御答弁は、今度のアメリカ側からもらつた援助物資の代金を払う場合とは大分違うと思います。違いますが、今ここで論争しても始まりませんからやめておきます。
 ただ最初に私が申しましたメモランダム等が参りましたことはございませんか。これはたいへん重大な問題であります。占領当時にそういう根拠があつたかどうかということは、今日きわめて重大な問題であります。事務当局の方はどなたかおられませんか。――もしおられないようでしたならばひとつこの問題を調べて、次の機会に大臣からでも御答弁を願いたいと思います。
#85
○上塚委員長 それでは外務大臣に対する質問はこれで一応打切りまして、これから秘密保護法案の審議に入りますが、その前にちよつと理事会を開きたいと思います。速記をとめて。
  〔速記中止〕
#86
○上塚委員長 速記を始めてください。
    ―――――――――――――
#87
○上塚委員長 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題といたします。質疑を許します。
  〔「大臣を呼んで来い」「大臣が来てからだ」と呼び、その他発言する者多し〕
#88
○上塚委員長 大臣は内閣委員会におりますから……。
  〔「休憩々々」と呼ぶ者あり〕
#89
○上塚委員長 この際暫時休憩いたします。午後二時より再開いたします。
   午後零時二十二分休憩
     ――――◇―――――
  〔休憩後は開会に至らなかつた〕
ソース: 国立国会図書館
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