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1953/05/12 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第48号
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1953/05/12 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 外務委員会 第48号

#1
第019回国会 外務委員会 第48号
昭和二十九年五月十二日(水曜日)
    午前十一時三十三分開議
 出席委員
   委員長 上塚  司君
   理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君
   理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君
   理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君
      越智  茂君    大橋 忠一君
      金光 庸夫吾    北 れい吉君
      佐々木盛雄君    庄司 一郎君
      福井  勇君    増田甲子七君
      山中 貞則君    岡田 勢一君
      櫻内 義雄君    須磨彌吉郎君
      上林與市郎君    福田 昌子君
      細迫 兼光君    加藤 勘十君
      木下  郁君    河野  密君
      戸叶 里子君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 木村篤太郎君
 出席政府委員
        保安政務次官  前田 正男君
        保安庁長官官房
        長       上村健太郎君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
        専  門  員 村瀬 忠夫君
    ―――――――――――――
五月十一日
 委員西村榮一君辞任につき、その補欠として戸
 叶里子君が議長の指名で委員に選任された。
同月十二日
 委員麻生太賀吉君、福井勇君、宮原幸三郎君、
 喜多壯一郎君及び西尾末廣君辞任につき、その
 補欠として庄司一郎君、越智茂君、山中貞則君、
 櫻内義雄君及び木下郁君が議長の指名で委員に
 選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密
 保護法案(内閣提出第一一四号)
    ―――――――――――――
#2
○上塚委員長 これより会議を開きます。
 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題といたします。本案につきましては、すでに質疑を終了いたしておりますので、ただちに討論に入ります。討論の通告があります。順次これを許します。並木芳雄君。
#3
○並木委員 私は改進党を代表して、本法案に反対の討論をいたします。(拍手)
 わが改進党は、MSA協定に賛成しておりますので、その第三条で約束をした秘密保持のための何らかの措置をとることに異存はございません。従つて本法案についても建設的に慎重審議をしたのでありますが、遺憾ながら形式上及び内容上の二つの理由から反対せざるを得ないのであります。
 第一の反対理由は形式上の点についてであります。私の方の党といたしましては、本法案は日本の防衛体制整備に伴う一般的かつ基本的な機密保持に資し得るごとき法案に改むべしとの態度をとつておるのであります。言いかえれば、日本独自の秘密保護、すなわち自衛隊の秘密保護法案と申しますか、とにかく日本独自のものに衣がえをすべきであるという点であります。この法案は第一名前からしてMSA協定等に伴う秘密保護法案と称して、アメリカから供与される装備品等について、すなわちアメリカの船舶、航空機、武器、弾薬、その他の装備品及び資材についての防衛秘密を守ろうとしておるのであります。及びアメリカの情報について防衛秘密を保護しようとしておるのであります。従つて守らるべき法律上の利益はアメリカの秘密であつて、日本の秘密ではないのであります。しかも具体的にどれがいかなる程度の秘密であるかということについては、日本政府に決定権がございません。アメリカで定められている秘密保護の等級と同等のものを確保するものとMSA協定の附属書に規定されてあります。従つてアメリカ政府が決定する結果とたつて参りまして、しかもアメリカの事前の同意なくしては、これを日本国政府の職員または委託を受けた者以外の者に漏らしてはいけないという協定ができておるのであります。国権の最高機関たる国会議員に対してすら、アメリカの事前の同意がなくては、これを報告ができないというようなことは、まさに国会の国政調査権、審議権というものに介入をして来るおそれが小くともあるということを、われわれは心配しておるものであります。このような調子では日本に全然自主性がなく、アメリカの代行機関として日本政府がアメリカの秘密を守る番犬の役を勤めるにすぎないと言われてもしかたがないと思うのです。MSA等によつて供与される装備品等、または情報は、それが貸借であろうと譲渡でありましようと、一たび日本政府に渡された以上は日本のものとなることを主張いたします。軍艦にせよ、飛行機にせよ、一たび自衛隊に配属されれば、その瞬間からそれは日本の自衛隊自身のものになるわけであります。従つてその防衛秘密は自動的に日本の自衛隊の防衛秘密となるべきであります。最近自衛隊二法案の成立を見んとしておる折から、日本の防衛体制は画期的な段階に入るのでありまして、そこには当然一般的かつ基本的機密保護法が生れてしかるべきものであるとわれわれは信じておるのであります。これを放任しておいてアメリカのものだけについて秘密保護の法案をつくるということは、自主性を欠いております。片手落ちであります。これでは自衛隊は借りもの軍隊、下請軍隊、アメリカの雇い兵だと言われても返す言葉がないのではあるまいか、私どもはそう考えておるのであります。私はアメリカから供与されるものを自家薬籠中のものに消化して、日本の秘密であるから日本のために取締るのであるという基本的観念を、この際強く打出すべきものであるということをかたく信じて疑いません。しかしこれは決してかつての軍機保護法のような広汎かつ悪質なものをつくれという要請をしておるものではございません。数百万のたつとい人命の犠牲によつて闘い取つた民主主義はわれわれの死守するところでありまして、民主主義の鉄則であるところの言論、出版、集会結社などの表現の自由は、基本人権として確保しなければなりません。検閲制度の復活のごときはあくまで阻止せんとするものであります。われわれは万やむを得ざる最小限度の必要悪として秘密保護の立法をとるべきであるとは思いますけれども、それはあくまでもただいま申しましたように、日本の衣でなければいけない、日本のためのものでなければいけないどいうことを強く主張いたすのでございます。
 反対のもう一つは、その内容についてであります。すなわちその質についてであります。わが改進党は、改めらるべき法案は舞刑法定主義の原則に立つ明確かつ具体的な規定を内容とすべきものであるということを主張しております。この法案の内容を検討してみますと、不明確な点、抽象的な点が非常に多いのであります。特にたとえば防衛秘密の範囲が明確でなく、拡大解釈をされるおそれがある点や、「公になつていない」というのは一体何をさすのか、その分界点などもすこぶるあいまいでございます。また防衛秘密を不当な方法で探知しまたは収集した者は罰するということになつておりますけれども、この「不当な方法」とは何であるか、「不法な方法」であるというのであるならばまだしも、「不当な方法」とは何であるか、あまりに漠然としておりまして、これは取締る当局あるいは裁判所の裁量によつて主観的にきめられるおそれがありますから、たとえば報道に当る人々のごときは、すでに「不当な方法」というものの範疇に入れられるおそれがあるということで、戦々きようきようとしておる状況でございます。さらに例をあげますれば、通常不当な方法によらざれば探知しまたは収集できないようなものを他人に漏らした者は罰せられるということになつております。「他人」というのは不特定多数の大衆でございます。そういうものに漏らしただけで罰せられるということになりますと、これはあまりにも政府当局は日本国民を危険視しておる。極言すればスパイ視しておるという結果にもなるのでございまして、このような広汎な規定を設けることに対しましては、私どもは賛成ができないのでございます。もう一つだけ例をあげてみますれば、業務により知得しまたは領有した防御秘密を他人に漏らした者は罰するとございます。しかし「業務」という甘酸では、これまたあまりに範囲がぼやけて来ております。しかもこれは過失によつて漏らした場合でも罰せられることになつておるのでありまして、「業務」という解釈が取締り当局あるいは裁判所において今後どのように取扱われるか、それに対して多大の危快を抱かざるを得ないのだありますが、私どもはすべからく防衛上の業務に携わる者だけにこれを限定すべきである、こういう考えを持つておるのでございます。このほか、あげますれば数多くの疑問の点、不明確な点、抽象的な点があるのでありますが、時間の関係上これは省きたいと思います。
 このような不明確、抽象的な内容をそのままにしておいては、法の運用においていたずらに主観に基いて偏した取扱いが行われるおそれがあり、拡張解釈の下されるおそれがあり、勢いのおもむくところ基本人権を侵犯する結果となるおそれが出て来るのであります。過日佐藤幹事長逮捕許諾の請求を押えつけようとしたような吉田内閣のもとでは、この法案が通つたならば何をしでかすかわからない、そういう心配さえ生れて来るのであります。われわれはよろしく罪刑法定主義に基いて具体的に法文に表わし、法文に現われざるものについての処罰をせざること、拡張解釈をとらないこと等をこの際はつきり打出すべきであると思うのであります。以上の見地から、われわれはこの法案について反対するものでありますが、単に反対せんがための反対ではございません。私どもはMSA協定には賛成しておるのでありますから、政府に対し再三にわたり法案の撤回を求め、根本的に練り直して来るように申入れをしたのであります。しかしながら政府与党はわが改進党の申入れを聞かず、何ら反省の色を示さないために、われわれとしてはここに涙を振つて反対せざるを得ないという結果になつて参つたのであります。与党たる自由党は、このあとの討論で、改進党はMSAに賛成しておきながら、この秘密保護法案に反対するとはおかしいではないかと言うかもしれない。なるほど私どもはMSA三条で秘密保護の措置をとることは約束しております。しかし、それは必ずしも法律による必要はないのであります。それはすでにフリゲート艦には秘密があるといわれておるにもかかわらず、何らこれに対して立法措置をとつておらない、そのことをもつてしても立証されるのであります。要するに秘密を扱う防衛関係の政府職員またはその委託を受けた者が厳重に守ればよいのである、このような広汎なあいまいな法案を今急いで提出する必要は私どもはないとかたく信じておるのであります。従つて、たといこの際立法措置を講じないでも、装備品等の供与が遅れるようなことはないと信じております。
 また与党たる自由党はこう言うかもしれない、一昨年五月に制定された日米安保条約に基く行政協定に伴う法律第百三十八号刑事特別法には改進党は賛成しているではないか、それと大体内容を同じくする本法案に反対するのはおかしいではないか。これも、なるほどわれわれとしては同じような内容を持つておることは認めますけれども、あの刑事特別法は純粋にアメリカ軍の機密保持のための法律であります。日本の軍隊でもなければ日本の秘密でもないのであります。今度の場合は、なるほど借りて来たりもらつたりはするかもしれませんけれども、その引渡しの行われたとたんに、これは日本の自衛隊の所風になるのである。その意味においてはまるきり性格が違う、対象が違うのでありまして、それをとつてあの場合には賛成しておきながら、今度の場合には反対というのはおかしいということは、当らない議論であると思うのであります。
 最後に、自由党は、それならなぜ改新党は修正案を出さなかつたかと言うかもしれない。われわれ矯めから修正案を出そうと思つて考えて来ておつた。現に報道関係からは強い修正の要望が出ております。それを中心にして検討はして来たのでありますが、検討して行けば行くほど、この法案は自主性がない、日本のものでない、アメリカのためのものだという考えが強く出て参りまして、わが党主張の根本的精神と食い違つて参りましたので、これではいけないから振出しにもどつて立て直してもらおうということで、政府に好意的に建設的に申入れをして来たことは、ただいま申し上げた通りであります。われわれはそれに対して政府が聞いてくれてほしかつた、耳をかしてほしかつたと思うのでありますが、遂に厳として受入れず、ここにこの法案の討論採決を強行せんとするに至つたことは・はなはだ遺憾に存ずる次第であります。最近千五百トン以上の艦艇貸与についても調印が行われる模様であります。そういたしますと、たちまちこの法案の改正案を提出して来なければならぬと思うのです。千五百トン以上の艦艇についての秘密保持について、この法案には盛られておりません。一体政府はおつかけてこの法案が成立しないうちに改正法案を出すのかどうか、もし出さないなら、この国会が終つてしまつて、千五百トン以上の艦艇を借りるのに秘密保持をどうしてやるのか、法律によることはできません。その場合に行政措置でやるというならば、それならあえてこういう法律を今急いで出さなくてもいいのではないか、こういう自己矛盾に陥らざるを得ないと思います。ましてや千五百トンの駆逐艦艇は最も秘密の多かるべき重要艦艇であります。それからの点についてもわれわれは非常に疑問を持つのであつて、次から次に秘密が出るたびに改正法案を出すことは、それこそここに秘密ありということを、あなた方が心配しておるところの、政府が心配しておるところのスパイ網に対して公示するような愚かさを繰返すにすぎないということを最後に断じて、この法案に絶対反対をするものであります。(拍手)
#4
○上塚委員長 次は今村忠助君。
#5
○今村委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま上程されております日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案に対し、賛成の討論をいたすものであります。
 まず本案の必要性であります。この点につきましては、過日国会の承認を得て、五月一日より発効いたしております日米相互防衛援助協定第三条第一項及び附属書Bの規定に基き、アメリカ合衆国政府から供与される秘密の装備品等、または装備品等に関する情報についてその秘密の漏洩・または漏洩の危険を防止するため所要の措置を講ずる必要があります。かつまた過般締結いたしました日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定第七条により、アメリカ合衆国から貸与される船舶についても、同じくその秘密を保護する必要があるのであります。もつともMSA協定そのものは、御承知のごとく直接立法には触れておりません。しかしアメリカ合衆国とMSA協定を結んでおります他の諸外国は、いずれも既存の秘密保護法令を有しており、これによつて同協定に規定されており観す秘密保護の措置をとつているわけでありますが、かかる種の一般的取締り法令の現存しないわが国におきましては、たとい協定に規定がなくとも、条約を忠実に履行する上において、この種の秘密保護の立法を必要とすることは、また理の当然というべきであります。
 思いまするに、MSA協定の締結に伴い、アメリカ合衆国からわが国が必要とする援助を受けますことは、とりもなおさずわが国の防衛能力が一段と強化されることでありますから、それはまさしくわが国の独立と安全とをみずからの手によつて守らんとする全国民の要事の実現に向つて、具体的にその第一歩を進めたものと申さなければなりません。従いましてこの場合受けます援助は、わが国の防衛にとつて最も効果のあるもの、すなわち武器等であれば高度の性能を有するものでなければならぬのであります。かような高度の性能を有するものにつきましては、それが秘密の部分を含む場合の多いことも、容易に想像し得るわけでありますから、そのような秘密を保護する措置をわが方がとらざる限り、アメリカといたしましても、それらのものを供与することを躊躇いたすのは当然でありましよう。相手が漏らすことを承知の上で、他人に秘密を打明けるような愚かな名は、およそこの世の中に存在しないからであります。かようなことは単に個人と個人との関係だけでなく、国と国との関係におきましても、まつたく同様でありまして、もし本法案が成立いたさぬとすれば、せつかく結ばれたMSA協定も、その品的を速成することができないものといわなければなりません。以上のごとく、本法案は単に国際上の信義に関するのみでなく、ひいてはわが国の防衛力の強化という点にも、重大な影響を及ぼすものであります。しかもかような重要な意味を有するとともに、それは条約により直接義務づけられたものではなく、まつたくわが国独自の立場からの立法でありますから、一部論者が本法案をもつて屈辱的立法なりとなすがごときは、まつたく当らざるもはなはだしいこじつけと断言せざるを得ません。
 次に本法案の内容を見まするのに、概してこの種の法律におきましては、それが国民の権利に重大な影響を及ぼすおそれのあるところから、相当に苦心を払つている跡が見受けられるのであります。たとえば保護の対象となるべき秘密事項の範囲、内容をできる限り限定いたしておる点、犯罪の構成要件の定め方について合理的な配慮を開いている点、法定刑について最高限を十年の懲役にとどめ、かつその最低限について規定を設けておらぬ点等がこれらでありまして、現在の内外の諸情勢から見まして、おおむね当を得たものと考える次第であります。
 以上申し述べましたことく、本法案がMSA協定の締結に伴い、わが国の防衛力を強化いたす上において必要欠くべからざるものであり、しかもその内容も現状にあつてはおおむね妥当なものであることは、何人にも明々白々であるにかかわらず、これに対する反対論を伺つておりますと、多くは本法案の趣旨を故意に歪曲し、あるいは本法案に対する研究の不十分をみずから暴露しているにすぎないでありまして、この際私はこれらの反対論に対し、率直な批判を加えておきたいと思うものであります。まず第一に本法案は、憲法第九条及び第三章の規定に違反せざるやのいわゆる違憲論であります。まず前者でありますが、現行憲法が国の固有の権利として自衛権を認めております以上、自衛のため戦力に達せざる程度の防衛力を持つことは、独立国として当然であります。従いましてその防衛力を強化するために、アメリカ合衆国から武器等の供与を受け、その秘密を保護いたすことは、それが自衛権の範囲内である限り、わが国の防衛に有益でこそあれ、何ら憲法に違反するものでないと申さなければなりません。
 次に基本的人権の自由との関係につきましても同様であります。憲法に保障する基本的人権の自由は、これを十分尊重しなければならないことは申すまでもありませんが、まつたく無制限のものではございません。そこには公共の福祉という限界が存するのであります。この点は憲法第十二条及び第十三条に明らかに規定されております。従いまして公共の福祉に重大な障害を及ぼすがごとき権利自由の濫用は、国民としても厳にこれを慎まねばならないのでありますが、本法案にいうところの防衛秘密が漏洩して国の安全が害されるような場合こそは、まさに公共の福祉が危殆に瀕する典型的な例でありまして、かかる場合に、基本的人権の自由に最小限度の制約が加えられますことは、これまた無理からぬところであると申さなければなりません。また以上の点に関連いたしまして、本法案が基本的人権の自由のうちでも、特に言論出版の自由に重大な制限を加えるものではないかという所論でありますが、この点についても、本法案の内容を詳細に検討いたしまするときは、国民のうちでも最も良識ある報道関係の人々が、その良識をもつて行動する限り、本法の対象となるようなことは、まず起り得ないものと信ずるのであります。
 第二は、本法案の内容をなすところの秘密保護の措置は、行政的措置のみで十分であり、あえてかかる制限法令を必要とするものでないとの所論についてであります。この論は一見もつともらしく見えるのでありますが、実は現在わが国の置かれている内外諸情勢に対する重大な認識不足に麺くにほかならぬのであります。何となれば、本法案の主たるねらいは、防衛秘密を取扱う者がその秘密を漏洩するのを防止するとともに、積極的に秘密を探知収集するところの、いわゆるスパイ活動を取締ろうという二つの点にあるのでありまして、今かりに秘密保護を行政的措置にのみとどめるときは、前者はある程度まかなうことができるのでありますが、後者については、まつたくこれを放任せざるを得ぬことになるからであります。
 しかしながら、ひるがえつてわが国の現状を見まするに、米ソ両陣営の切点ともいうべき地位に存在するわが圏におきまして、特に共産主義陣営よりするところのスパイ活動は、過般の三橋事件や、関事件を見ましてもわかりますごとく、きわめて熾烈なるものがあるのであります。ただいま例にとりました事件のごときは単なる氷山の水面上の一角にすぎないのであります。また最近におきましては、国内共産党の保安隊、警備隊に対する工作もすこぶる活発でありまして、すでに三重県の久居あるいは北海道の幌別等にも事件の発生を見ており、その現状はわれわれといたしましても、まことに寒心にたえぬものがあるのであります。かような現状において、高度の性能を有する武器等が保安隊に供与されるならば、結果はどうなるか、それは火を見るよりも明らかでありましよう。私はこの点につき政府並びに保安庁当局に対し、慎重にして果敢な対策を一日も早く立てられることを強く要望いたすのでありますが、問題は決してそれに尽きるものではないのであります。すなわち部内の秘密保護の措置を厳重にいたすとともに、どうしてもスパイ活動そのものを取締るにあらざれば、抜本的な対策は望み得ないのであります。従いまして、秘密の保護を単に行政的措置のみをもつて足れりとなす諸君は、かかる事態に対する認識がまつたく不足しているか、あるいはまたわが国にはスパイなどは一人もおらぬと思い込んでいる、きわめてお人よしであるか、そのどちらかであるといわざるを得ないのでありますし、もし認識しているとすれば、それは共産主義陣常に奉仕するところの、ためにする議論であるとの非難を受けても、弁解の余地はないのではないかと考えるのであります。
 第三は、本法案における秘密の範囲と内容がきわめて不明確であるという点であります。この点につきましても、反対の論をなすものは、本法案に対する研究の不十分を自由している以外の何ものでもないのであります。すなわち本法案における防衛秘密とは、MSA協定によりアメリカ合衆国から供与を受ける装備品または情報等であつて、本法案第一条第三項の各号に掲げるものに限定され、しかもさらにその中で秘匿することを要するものに限られているのであります。このように限定されました秘密は、数から申しましてもそうたくさんはないのでありますから、それらのものが簡単にわれわれの近くにごろごろいたしておるとはまず考えられないのでありまして、善意の国民が知らずしてこれに触れ、不測の罪を問われるようなことは、ほとんどないかとも考えられるのであります。もちろん国民は知る権利を有するのであります。しかしそこには条理上おのずから一定の限界が存するのでありますし、またすでに申し述べましたことく、本法案によつて保護される秘密は、いずれも相当高度のものと考えられるのでありますから、それらのものを暴露いたすことにより、国の安全を害してまで秘密を知ろうとすることは、権利の濫用といわねばならぬのであります。
 次に本案の秘密につきましては、いまひとつ、公になつているものを除くという大きな制約があるのであります。この公になつているとは政府も説明いたしておりますごとく、公になつた事由、公になつた場所のいかんを問わぬ意味であります。すなわち公になつているのが、アメリカ合衆国はもちろんソ連であつても、極端にいえばアフリカであつてもいいわけでありますから、秘密の範囲としては一層しぼりがかかつていることになるのであります。およそ諸外国の立法例を見ましても、政府機関の公表したものを秘密事項から除いている例こそあれ、かような広汎な除外例を設けている例はないのでありまして、はたして秘密の保護を十二分になし得るやという危惧の念すら抱くほどでありますが、かかる立法をあえてしたところに、本法案がいかに国民の権利、自由の保障に意を注いでいるかがうかがわれるのであります。
 第四は、本法案における用語が不明確であるという非難であります。元来この主の立法といたしましては、秘密を守ることがその実体をなすわけでありますから、勢いその規定も包括的ならざるを得ぬことは容易に想像し得るのであります。しかし本法案はその点につき、できる限り具体的ならしめるよう配慮していることが見受けられるのでありまして、基本的人権の自由との調和という点にいたしましても、この限界点まで譲歩しているのであります。従いまして、本法案は秘密の保護に必要な最小限度ぎりぎり一ぱいの規定をいたしておりますので、委員会における審議の際、質疑の形式で出されました修正意見のごときも、もしこれを取入れるときは、本法案はまつたくの空文と化するおそれがあるのであります。たとえば本法案第三条第一項第一号より、「又は不当な方法で」を削除するという修正意見でありますが、これなども現実のスパイ組織あるいはスパイ活動の実態を知らざるものはなはだしい論でありまして、もしかように修正せんか、いわゆるスパイ網の末端が活動いたすような者に対しては、まつたく取締りを行い得ぬこととなるのであります。この点は第三条第二項第二号を目的罪にせよとの修正意見につきましても同様でありますが、さらに第三号の「業務」の上に、「防衛関係の」を付せよとの意見に至りましては、かえつて概念があいまいとなり、提案者の意図とはおよそ反対の結果を生ずることとなるのであります。また罰則における刑の軽車についても、若干問題とされたようでありますが、旧軍機保護法あるいは他の現行諸法令、なかんずく本法案に類似する唯一の法令であるところの、行政協定に伴う刑事特別法等と比較いたしてみましても、おおむね妥当ではないかと考えるのであります。およそ独立国である以上、国家あるいは国防上の秘密の漏洩を防止するため、何らかの刑罰規定を設けることは当然でありまして、さればこそ永世中立国であるスイスにいたしましても、わが国と同じく軍隊を有せざる西ドイツにいたしましても、それぞれ厳重な規定を設けて、国家ないし国防上の秘密を保護いたしているのであります。さらにソ連、中共等の共産主義諸国に至りましては、わが国の旧軍機保護法にもまさるような厳重な刑事法規を有しているのでありまして、これらの諸外国と比較いたしましても、本法案の内容が決して厳に失したものでないと言い得るでありましよう。以上のごとく本法案の内容に関しまして出された修正意見は、いずれも実態を無視した、単なる言葉の上の抽象論にすぎぬのでありまして、われわれのよくとり得るところではないのであります。
 最後に改進党の反対意見について申し述べてみたいと存じます。改進党の諸君は、すでにMSA協定自体には賛意を表しておられますので、本法案に対しましても当然賛成されるものと考えておりましたが、このたびの同党の態度はまつたくわれわれの意外といたすところであります。しかも今回の反対意見に先だつて、委員会において本法案をさらに限定するがごとき修正意見を述べられましたことは、いかにも首尾一貫せざる感を与えるものでありまして、反対のための反対であるがごとき印象を払拭いたすことができないのであります。もちろんわが党といたしましても、独立国である以上、わが国独自の秘密保護法の必要であることは十分感じているのでありますが、かかる立法こそ反対論者の言うごとく、国民の権利、義務に重大な影響を及ぼすものと思われますので、その内容、時期等につきましては、いやが上にも慎重に考慮いたすことを要し、軽々にこれを取上げることは戒めねばならぬのであります。従いましてこの点は将来の研究にまつことといたし、さしあたり現状におきましては、本法案程度で満足すべきであると考えるわけであります。さようなわけでありますから、改進党の諸君も現実の事態を率直に認識され、従来の行きがかりを捨て、大局的見地から本法案に対し、全面的に同調されるよう希望いたす次第であります。
 最後に私はこの際一言政府に申し述べておきます。本法案は現下の情勢に照し、おおむね妥当なものと信ずるのでありますが、しかしかかる種の法令は、いかに妥当なものでありましても、その運用を誤るときは、国民の権利に不測の侵害を与えるおそれまつたくなしとし得ぬものがあるのであります。よつて私は、一方において裁判所の公正な裁判に信頼いたすとともに、本法案成立のあかつきは、政府におかれても、でき得る限り慎重かつ適切な運用を行い、いやしくもその適用を誤ることによつて本法の信を失墜し、ひいてはせつかく独立の第一歩を踏み出したわが国の防衛体制に、思わざる蹉跌を来すことのないよう切に要望いたしまして、私の賛成討論を終ります。(拍手)
#6
○上塚委員長 次は福田昌子君。
#7
○福田(昌)委員 私は社会党を代表いたしまして、この秘密保護法案に反対の意を表明いたします。
 反対いたします最も大きな理由は、この法案それ自体が違憲立法であるということとともに、さらに進みまして考えてみますと、この法案そのものは、吉田内閣の大きな違憲政策、ことに憲法第九条の違反政策、詭弁政策を、秘密の名におきましてかばわんとする、いわば政府の大きな違憲政策の保護法になるからでございます。現行の憲法のもとにおきましては、いやしくも戦争に狂奔するような武力を持つことが許されないことは申すまでもないことでありますが、それにもかかわりませず、吉田内閣は詭弁をあえて弄しまして、憲法違反を敢行し、今や軍備に狂奔いたしております。そして国家の自主権を大いに侵害されるような、何ものにもかえがたい貴重な代償を払つてまでも、アメリカの中古兵器を借り受けまして、国民の安寧と福祉を大いに侵害いたしますような予算編成のもとにおきまして、国民の生活向上を無視いたしまして、米国の極東政策にあやつられておどろうといたしておるのであります。この日本の小さな細長い地形から児ますならば、今日の世界最高の武器をもつていたしますならば、たとえば例のビキニ環礁の水爆をもつていたすといたしますならば、わずかに三、四発をもちまして日本全土が片づくということが言われておるのでございます。こういう時期に、相もかわらず旧態依然たる軍備、武器の考え方をもちまして、アメリカの中古兵器でも国が守れるであろうなどとお考えになられる方々のその頭の古さは、まつたく時代錯誤もはなはだしい非科学的な頭脳といわなければならないのであります。
 よし百歩を譲りまして、この中古兵器でも日本が守れると仮定いたしましても、この兵器そのものを借りることによりまして生れまするところの秘密を保持するということにつきましては、現在の段階におきましては、現行法規を十分に活用いたしまして、その行政措置でも十分守れるはずでございます。それにもかかわりませず、この貸与兵器の秘密を守るために、アメリカの本国以上の、いわばアメリカの軍機保護法以上の幅におきまして、無辜の大衆に広く不安と恐怖を与えるような、そして直接、間接に国民の自由と権利を侵害するようなこういう法律をつくるということは、私どもその必要を認めないのであります。しかし政府自体におきましては、現行の憲法のもとにおいては、いかに詭弁を弄しましても、いささか良心もありましようから、どうも軍備はやりがたい、国民の声もうるさい、米国の意にこたえようといたしましても不便でありましよう。そこでMSAを協定いたしますとともに、これに便乗いたしまして、いち早く秘密保護法を制定いたし、そしてアメリカからそつくり借りものの自衛隊の装備、情報を秘密事項にいたしまして国民に知ることを許さず、あたかも秘密という政府にとりましてはまことに都合がよい名のもとにおきまして、国権の最高機関たる国会においてすらも、場合によりましてはその説明を拒み得るという形において、国民の軍備に対する眼をふさぎ、そして政府の意図いたします軍備増強を意のままに強行いたそうと考えたのでありましよう。この意味におきましてこの法案は、吉田内閣というところの武力なき軍隊なる珍無類の詭弁を保護するところの、好個の防波堤となるのでございます。しかもこの法案の基礎になつておりますMSA協定が、国会でまだ承認もされておりませんうちに、いち早くこの法案を提出いたしましたことは、ことにたとい承認されたといたしましても、先ほど申しましたように、あえて新しい法律をつくる必要を私どもは認めませんし、またMSA協定そのものからは、新しい法律をつくるような法的義務を負つていないにもかかわりませず、大急ぎでかような無辜の大衆に大幅の不安を与えるような秘密保護法を制定したということは、これはもう前述いたしましたように、吉田内閣自体の違憲政策を保護いたしますとともに、国民にはいわばこういうような取締り法規をつくつたぞというおどしをもちまして、何よりもまずアメリカ側に忠誠をぬきんでようとするところの、いわば従来吉田内閣がとつて参りました卑屈な外交政策の一つの現われでありまして、簡単に申し上げますと、アメリカ側に忠勤をぬきんでようとする、いわば御要望以上に日本国民は取締ることにいたしましたから、どうか武器を貸してくださいと言わんばかりの媚態卑屈外交の現われであるのでございます。
 さらにこの法案を個々的に検討いたしますと、第一に字句がきわめてあいまい模糊といたしておりまして、いかようにも拡大解釈がなされる危険を含んでおります。たとえば第一条におきましてはその第二項におきまして、この秘密保護法の適用を受ける「船舶、航空機、武器、弾薬その他の装備品及び資材」などという規定になつておりますが、この「装備品及び資材」の範囲がきわめて明確を欠いておるのでございます。またその三項におきましては「「防衛秘密」とは、左に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図書又は物件で、公になつていないものをいう。」とございますが、この「公になつていないもの」という項につきましては、委員会におきましても活発な論議がかわされましたが、最後までこの「公になつていないもの」の規定がはつきりいたさなかつたのでございます。しかもこの公になつているかいないかは、第二条の規定によりますと、関係行政機関の長が政令で定める、防衛秘密の範疇に入れるものにつきましては、標記を付して関係者に通知するということでございます。つまり秘密保護法の基準になるもの、秘密を要るす事項というものは、法律によるのではございませずして、行政行為に類するような規定によつてきめられ、これに反した者は罰に処せられるというわけでございます。しかも一般国民は何が秘密であるかも知る由がないのでありまして、これまた場合によりましては、それこそ何げなく町のうわさとして伝え、おしやべりしたようなことでも、取締られるというような不幸な事例が起つて来ないとも限らないのでございます。こういうことからいたしまして、国民はまた、おいおい戦前のような見ざる言わざる聞かざる、これが一番危険がないということからいたしまして、直接、間接に国民の人権というものが侵害されて参るのでございます。
 また第三条には、不当な方法による情報の収集云々という文句がございますが、この「不当な方法」という言葉もまつたく漠然としておりまして、たとえば職種により、あるいは個々人の、その人の科学的な知識によりまして、「不当な方法」という解釈というものは大いに限界が異なつて来るのでございますが、一体この限界をどこにどのように規定されるのか明確でございません。政府の御答弁によりますと、不当な方法を使う者はすべてスパイであると簡単に割切つておられますが、かように簡単に割切れるものであるかどうか、ことに非科学的な日本の行政官の手にかかりましては、外国では妥当な方法でも、日本では不当な方法として解釈されましようし、その基準がこのようにあいまい模糊といたしておりましては、この法案が活用されたあかつきにおきましては、まつたくどのような事態が起るか、実に不安なきを得ないのであります。
 また第五条二項の規定におきましては、教唆、扇動した者も罰するという規定がございます。これは破防法以来論議の中心になつたことでございますが、被教唆者、被百扇動者がない場合でも、教唆、扇動を独立の犯罪として処罰するということは、何といたしましても賛成できがたい点でございます。
 このようにこの法案そのものは、条文といたしましては短かいかもしれませんが、それにもかかわりませず、それぞれの各条におきまして、問題となりますあいまい模糊とした空気が流れておるのでございます。この法案それ自体は、いわば自衛隊員や政府職員や、あるいは委託された特定の人たちが、その範囲の法律においてそれらの人たちの違反を取締るべきであるものが、またアメリカ自体もその程度のことを要望いたしておりますはずでありますにもかかわらず、取締りという名におきまして、ことにスパイの取締りということに名をかりまして、その取締りの全般の対象を一般の大衆にまで広げたことが、いかに無理であるかということでございます。
 ところが一面この法律をよく考えてみますと、この法律の違反者を裁判いたします場合におきましては、これはこれまた憲法の規定によりまして公開裁判に付するということであります。これではこの裁判におきまして、かえつて秘密は大々的に漏洩発表されてしまうという矛盾を生じて来るのでございまして、このことから考えてみますと、政府自体がはたして秘密というものを徹底的に守り抜こうとしてこの法案をおつくりになつたのであるかどうか、その責任と意思があるかどうかということを疑わざるを得ないのであります。それにもかかわらず国民に対しましてはきわめてあいまいな字句のために、不必要な範囲にまで不安と恐怖心を巻き起しまして、直接、間接に国民の権利と自由を侵害するのでございます。こういう法案は秘密を守るごとく見せかけて、実はいわば国民に対するおどしの法案といわざるを得ないのであります。
 その上にこの法案を提出いたしました政府の考え方は、明らかに軍機保護法の性格を与えようとする意図がくみとられるのでございます。これは政府がいかに従来通りの強弁をいたして参つたといたしましても、自衛隊自体を明らかに戦力ある軍隊と認めておる証拠であるといわなければなりません。かような考え方は憲法違反であるばかりでなく、その取締りの結果から申しまして、さらにその徹底を期するために、漸進的に、必然的に戦時中のような検閲制度、特高制度、あるいはまた憲兵制度というものを生んで参ることは、想像にかたくないところでございます。このようにして憲法に保障されました言論の自由、研究の自由というものも漸次封鎖侵害されまして、国民はまたおいおいに戦時中と同じ、見ざる言わざる聞かざるの世界に追い込まれて参るのでございます。そのことによりまして、国民自体の権利と義務というものが大いに侵害される、その意味合いにおきましては、さきの破防法といい、教育二法案といい、この秘密保護法案といい、まさに同列のきわめて非民主的な逆コースもはなはだしい法案といわなければならないのでありまして、新憲法下わずかに十年をまたずして、早くもだんだんと反動的な法案が生れまして、国民の自由と権利が剥奪されるということは、何と申しましても遺憾しごくといわざるを得ません。このような意味において、私どもは平和と民主主義と自由と、また文化の向上のために、こういう法案には絶対に賛成するわけには参らないのでございます。
 以上をもちまして反対の理由といたします。(拍手)
#8
○上塚委員長 河野密君。
#9
○河野(密)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、現に議題となつておりますいわゆる秘密保護法案に対しまして、反対の意思をきわめて簡潔に表明せんとするものでございます。われわれ本法案に反対する第一の理由は、本法案がわが憲法に違反し、もしくはわが憲法の精神を蹂躙すると見られるからであります。われわれはさきに日米相互防衛援助協定に対して、それは明らかに憲法第九条の違反であるといたして反対いたしたのでありますが、本法に至つては憲法の精神を蹂躙し、憲法に違反することは一層明瞭であります。検閲を禁止した憲法第二十一条、裁判の公開を保障した第三十七条及び第八十二条、国会の権限を明記した第五十七条、特別裁判所を禁止した第七十六条等々、本法の目的を貫徹せんとすれば、当然にこれら憲法の条章は空文化されるのでありまして、もしこれらの憲法の条章を確守いたしますならば、本法のねらいは達成できないことに相なるのであります。元来再軍備を予想せざるのみか、再軍備に伴うて派生する一切の軍国的色彩を抹殺し、秘密なき国家を建設することを使命として制定された現行無法のもとにおいて、再軍備を強行するのみか、これに伴つて起る人権の制限、軍国的規律を合法化せんとすること自身が無理であるにかかわらず、政府はこれをもあえてせんとしておるのでありまして、再び憲法違反の重大なる罪悪を犯さんとしておるものであるとわれわれは考えるのであります。
 次にわれわれが本法案に反対する第二の理由は、本法律が外国によるわが内政に干渉する第一歩を開くものではないかとおそれられるからであります。本法は、日米相互援助協定に基いてアメリカ合衆国から日本に供与せられる武器等の秘密を保護することを目的とするもので、何が秘密であるかは、まつたくアメリカ側の決定するものであり、わが国の独自な判断はまつたく許されないのであります。しかのみならず、日本政府は、本法制定のほかに、アメリカの政府の事前の許可なくしては、その秘密を関係者に伝達することすらできない行政的の義務を負うておるのでありまして、武器の貸与を機会といたしまして、軍事に対する指導権はまつたくアメリカ側にゆだねられるのでございます。かくのごとく、防衛秘密を名として、重大なる指導権がアメリカ側に握られている以上は、これを通じて内政の干渉が行われることはきわめて明白でありまして、おそらく日本の従属関係は、一層その濃度を加える結果になるであろうと思うのであります。いかなる時代におきましても、軍を支配するものは政治を支配するのであつて、わが国の政治がアメリカの意向によつて重大なる制肘を受けるであろうことは、今日において予見するにかたくないのであります。しかもそのチャネルとして本法案が選ばれるであろうということも、私はここに断言してはばからないのであります。アメリカの内政干渉を合法化する道具に使われるがごとき本法案に対して、われわれはまつこうから反対いたさなければならないのであります。
 第三に私たちがこれに反対する理由は、本法律が基本的人権を侵害し、軍国時代の言論抑圧を再現するおそれがあると考えられるからであります。本法案における防衛秘密は、政府の説明によりますならば、自然秘であり、その範囲、限界はきわめて不明瞭であります。また本法のねらいはスパイ行為は取締るのだと称しておきながら、「不当なる行為」というあいまい模糊たる字句を用いておりまして、一般良民はもちろんのこと、言論機関、報道陣の活動に重大なる制肘を加えるおそれがあることはきわめて顕著であります。また過失によつて秘密を漏洩いたした者を取締るために、業務上秘密を知り得た者の範囲を無制限に拡大し、また秘密を漏らされたる州平方に対しましても、不特定なる他人とし、その範期はきわめて広汎であります。そもそも本法制定の業務を明記いたしました日米相互防衛援助協定第三条並びにその附属書Bによりましても、アメリカ以上に過重なる取締りをなすべき理由を見出すことはできないのであります。しかるにかかわらず、アメリカの同種の取締りよりもはるかに広汎にいたしておりますことは、まつたく矛盾であるといわなければなりません。この点について、私はしばしば政府に質問をいたしたのでありますが、遂に明確なる答弁を聞くことを得なかつたのであります。それは日本の眼で日本人を見ているのでなく、アメリカ側の眼をもつて日本の国民を以ているのであつて、植民地人あるいは他国人を警戒するがごとき跡、そのにおいが本法案の中にふんぷんとしていることを私は感ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 先ほど自由党の今村君は、本法案に対する検討が不足であるというがごとき御意見がありましたが、その宵葉自身は、私はあげて与党たる自由党、特価に政府の諸公に差上げたいと思うのであります。政府の諸公こそ本法案のすべての点についての検討がきわめて不十分であるといわざるを得ないのであります。ただそのねらいとするところのものは、アメリカに媚態を呈する以外の付ものでもない。私は、かくのごとき、アメリカに媚態を呈し、アメリカの強圧に屈したるがごとき跡顕著なるものに対しては、断じて容認することができないのであります。
 以上の理由によりまして、私たちは本法案に反対をいたすものであります。(拍手)
#10
○上塚委員長 これに対して討論は終局いたしました。
 採決いたします。日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#11
○上塚委員長 賛成十二名であります。念のため、反対の諸君の起立を求めます。
  〔反対者起立〕
#12
○上塚委員長 起立十二名であります。
 可否同数でありますので、国会法第五十条の規定により、委員長おいてこれを決します。
 委員長は本案に賛成いたします。よつて本案は可決いたしました(拍手)
 なお、本案に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○上塚委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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