くにさくロゴ
1953/04/03 第19回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第019回国会 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第8号
姉妹サイト
 
1953/04/03 第19回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第019回国会 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第8号

#1
第019回国会 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第8号
昭和二十九年四月三日(土曜日)
    午前十一時七分開議
 出席委員
   委員長 山下 春江君
   理事 青柳 一郎君 理事 庄司 一郎君
   理事 高橋  等君 理事 臼井 莊一君
   理事 受田 新吉君
      小平 久雄君    田中 龍夫君
      福田 喜東君    吉川 久衛君
      村瀬 宣親君    中井徳次郎君
      山口シヅエ君
 出席政府委員
        大蔵政務次官  植木庚子郎君
        厚生事務官
        (引揚援護局
        長)      田辺 繁雄君
 委員外の出席者
        外務事務官
        (アジア局第五
        課長)     鶴見 清彦君
        大蔵事務官
        (理財局外債課
        長)      上田 克郎君
        大蔵事務官
        (管財局閉鎖機
        関課長)    岩動 道行君
        大蔵事務官
        (銀行局銀行課
        長)      谷村  裕君
        厚生事務官
        (引揚援護局引
        揚課長)    木村 又雄君
        労働事務官
        (職業安定局雇
        用安定課長)  中村 文彦君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 在外資産に関する件
 引揚者定着援護に関する件
 南方諸地域における戦没同胞の遺骨収容に関す
 る件
    ―――――――――――――
#2
○山下委員長 これより会議を一開きます。
 まず初めに在外資産に関する件について議事を進めます。過般の委員会におきまして、旧日本銀行券の処理並びに未払い送金小切手、在外預金の処理について、その概要を政府当局より聴取したのでありますが、その後この問題について、金融機関再建整備法の一部を改正する法律案、旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の一部を改正する法律案及び閉鐵機関令の一部を改正する法律案の三法案が国会に提出され、大蔵委員会で審議されております。しかし、本委員会は、引揚者の債権に関する重要な問題でありますので、政府より在外資産処理のこの三法案の概要を聴取し、調査検討を行いたいと思います。では政府当局よりその概要について説明を聴取することにいたします。大蔵政務次官。
#3
○植木政府委員 在外財産の処理の問題につきましては、政府はかねて十二分に慎重な態度をもつて、しかもなるべく早い機会に引揚者の皆様方の御満足を得たいというつもりで懸命の努力を続けておる次第であります。昨年十一月に閣議決定をもちまして内閣に在外財産問題調査会というものをこしらえることに相なりました。爾来最近までに九回にわたつて熱心なる論議をかわされたのでございます。その結果、去る二月二十二日に内閣総理大臣あてに一つの答申案が出たのでございます。その大要は、在外債務の中で支払い停止になつております未払い送金為替及び在外預金を公正妥当な範囲内で支払うことが適当ではないかという趣旨の答申書であります。政府は、その答申に基きまして、今回、金融機関再建整備法の一部を改正する法律案、閉鎖機関令の一部を改正する法律案、旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の一部を改正する法律案、この三つの法律案を本国会に提案いたしまして、ただいま御審議を願つておる次第でございます。今その三法律案につきまして大要を申し上げます。
 まず、金融機関再建整備法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
 戦後金融機関は、金融機関経理応急措置法及び金融機関再建整備法に基いて、その旧勘定に属する資産及び負債の整理を行うこととなり、昭和二十三年、その大多数は資本及び第二封鎖預金等の切捨てを行い、さらに相当数のものは政府の補償を受けることにより旧勘定の最終処理を完了したのでありますが、その際、これらの金融機関は、旧勘定の整理に伴う事後調整のために新たに調整勘定を設け、前に旧勘定に属した資産・負債の処分その他によつて生じた損益をこの勘定で経理することと相なりました。その後、この調整勘定の利益金は予想以下に蓄積され、相当数の金融機関は、有利益金を政府補償の返済、旧預金者に対する分配等に充てて来たのでありますが、この際、有調整勘定の処理を一層促進するとともに、当初金融機関の再建整備にあたりその対象からはずされた在外店舗にかかる資産及び負債についても、可能な限りすみやかにその処理を促進するため、今般金融機関再建整備法の改正を行うこととした次第であります。
 次に、この法律案の主な内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず第一に、金融機関は、前に旧勘定に属した資産につき再評価を行つた後にこれを処分したときは、その処分益に新たに再評価差額をも含めてこれを調整勘定で経理することとし、この場合には再評価積立金をとりくずさなければならないことといたしました。
 第二に、金融機関は、前に旧勘定に属した資産及び負債について、その整理の促進をはかるため、新たに確定評価基準を設け得ることとし、これによる評価を行つた場合にも調整勘定を閉鎖することができるものといたしました。
 第三に、金融機関は、その調整勘定を閉鎖する際、同勘定に利益金の残額があるときは、確定損を負担した株主に対し、その負担額及び利息に相当する金額を分配することができることといたしました。但し、在外店舖を有した金融機関につきましては、この部分は後に申し上げます在外資産負債処理勘定にまず繰入れて、在外負債の支払い財源に充て、さらに、この在外勘定を閉鎖する際、同勘定に資産の残額があるときは、旧株主へ分配するということにいたしました。
 第四に、金融機関の在外資産・負債につきまして、さきに在外財産問題調査会が内閣総理大臣あて提出いたしました答申の趣旨にのつとり、いわゆる未払い送金為替や在外預金の支払いの道を開くことといたしました。すなわち、金融機関は新たに在外資産負債処理勘定を設けまして、当該金融機関への帰属が確定した在外資産、調整勘定利益金の残額等を同勘定の資産の部に計上し、これら資産の範囲内で、その金融機関が本邦内に住所を有する者、閉鎖機関または在外会社に対して負つている未払い送金為替及び外地預金等の在外債務を支払うことといたしました。しかしながら、当面、この在外資産負債処理勘定の資産の部に計上されるものは、一、二の銀行を除いては、きわめて僅少にとどまると存ぜられますので、特に未払い送金為替につきまして一件の金額五万円までの部分は優先的にこれを支払うこととし、その不足する支払い資金を調整勘定から借り入れることができることといたしました。
 なお、以上未払い送金為替、外地預金等の債務または債権のうち、現地通貨建ないし外貨建のものについては、その額の本邦通貨への換算につきまして別表の規定を設けました。
 以上要するに、今回の改正は、営業を続けながら整理を進めるという金融機関再建整備法の立法の趣旨を尊重しつつ、できるだけ関係者間の利害の調整をはかろうとするものであります。従つて、在外資産・負債の関係で調整勘定利益金の分配を今日まで認めなかつた銀行につきましても、ただいま申し述べました諸措置と並行して、旧預金者に対する分配を認める方向で考えております。
 次に、旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 旧日本占領地域に本店を有する会社、いわゆる在外会社の特殊整理につきましては、従来この政令の規定に従いその本邦内にある財産の特殊整理を実施して参りまして、当初指定されました千百七十五社のうち、本邦内に資産がないため指定を解除したものが六百三十社、整理を完結したものが五百八社で、現在未整理のものはわずかに三十七社を余すのみとなつております。この在外会社のうち、金融機関である在外会社につきましては、その在内残余財産がある場合にも、未払い送金為替及び在外預金にかかる債務等は在外の債務であるとして、従来この特殊整理の対象から除外されておりましたところ、今回、在外財産問題調査会から提出された内閣総理大臣に対する答申書の趣旨に従い、これらの債務を支払う道を開くとともに、在外会社の特殊整理を促進するために必要な措置を講ずることを目的として、この法案を提出いたしました次第であります。
 次に、この法律案のおもな内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず第一に、在外金融機関は、在外店舗にかかる債権・債務のうち、未払い送金為替、在外預金等にかかる債務を特殊整理の対象に組み入れ、本邦内に住所を有する個人、法人及びその他の閉鎖機関、在外会社に対して、現在残存している国内資産の範囲内で小額債務を優先して支払うこととし、その場合受領人に対して有する反対債権を相殺することができることといたしました。
 第二に、これらの債権・債務の中には、現地通背による表示のものもありますので、これらを本邦円貨額に換算するための所要の規定を設けることといたしました。
 第三に、在外会社は、金融機関から未払い送金為替または在外預金にかかる債権の支払いを受けることができることといたしました。
 最後に、閉鎖機関令の一部を改正する法律案の内容を御説明申し上げます。
 閉鎖機関の特殊清算につきましては、昭和二十年九月以来鋭意その処理を進めて参りまして、当初千八十八に上る閉鎖機関のうも、現在までに約千五機関が特殊清算の結了を見るに至りました。従来、閉鎖機関の清算は、その本邦内にある財産についてのみ行われ、在外店舗にかかる債権債務は清算の範囲外のものとせられて参りましたが、今般、在外財産問題調査会の答申を参酌し、これまで未処理のままとなつていた未払い送金為替及び外地預金等にかかる債権・債務を弁済する道を開くとともに、閉鎖機関の清算を促進するために必要な措置を講ずることを目的として、この法律案を提案いたした次第であります。
 次に、この法律の主な内容につきまして、その概要を御説明申上げます。
 まず第一に、閉鎖機関は、在外店舖にかかる債権・債務のうち、未払い送金為替、外地預金等については、本邦内に住所を有する個人、法人及びその他の閉鎖機関、在外会社に対して、現在残存している国内資産の限度内で支払いを行い得ることとし、その場合、受領人に対して有する反対債権を相殺できるようにいたしました。なお、これら債権・債務のうち、現地通貨建ないし外貨建のものについては、先ほども申し述べましたように、その額の本邦通貨額への換算につきまして所要の規定を設けたのであります。
 第二に、閉鎖機関の外地にある財産についても、特殊清算人は、大蔵大臣の承認を得て、管理・処分等の職務を行い得るものといたしました。
 第三に、閉鎖機関の債務のうち小額のものについて、これを信託または供託して弁済を免れ得ることとし、また、開鎖機関は、その発行した社債・営団債につき、銀行に償還の委託をすることにより、その債務を消滅せしめるものといたしました。
 以上が今回在外財産の処理関係のものとして政府が御審議を願つております三つの法律案の内容でございます。
 なお詳細にわたりまして必要な場合には、御質問に応じまして当該係員等から御説明申し上げたいと存じます。
#4
○山下委員長 なお、大蔵大臣より連絡がございまして、非常に疲労しておるので、来週月曜日以後の当委員会には必ず出席するからという連絡がありましたので、これを了承いたしましたので、本日は出席いたしません。
 本件に関する質疑を許します。村瀬宣親委員。
#5
○村瀬委員 大蔵大臣がお疲れで御出席がないようでありまするから、私は、在外資産の処理並びに補償の問題に対する政府の基本方針は来週大蔵大臣または緒方副総理の御出席のときにあらためてただしたいと存ずるのでありまするが、ただ、以下詳細な細部にわたつての質問をいたしまする関係上、簡単に政務次官にお尋ねをしておくのであります。
 現政府、吉田内閣は、在外資産の処理にあたりまして、憲法第二十九条第三項との関係をあいまいにしたままでお進めになつておると存ずるのであります。しかし、今回は在外財産問題調査会等の答申に基いていよいよ具体的に、在外財産の一部でありまする送金小切手、預貯金等の支払いの道をお開きになるのでありまするから、これは一応吉田内閣として在外資産をどの方向に向つて処理をするという基本線をおきめになつた上での処理と考えられるのでございまするが、この点に関する基本的な政府の御方針はどのように決定いたしておりましようか、お伺いいたしたいのであります。
#6
○植木政府委員 在外財産問題につきましては、その法律的性格についていろいろ専門家の意見等も必ずしも見解が一致していないように政府としては考えております。従いまして、先ほど申し述べましたような調査会を設けて、学識経験者の意見等も徴し、十二分に問題の真相をきわめて、その上で適切なる結論を得たいと考えて、目下鋭意検討中なのでございます。今回の部分につきましては、調査会の答申の趣旨もこれあり、従つて小額なる未払い送金為替及び在外預金等につきましての解決を部分的に始めた次第でございます。従つて、在外財産全体に対する基本的な法律的見解というものにつきましては、なお今後調査会の結論等をも参酌いたしました上で政府の態度を決定いたしたい、かように存じておる次第でございます。
#7
○村瀬委員 政務次官のただいまの御答弁を拝聴いたしましても、七百万引揚者はかえつて割切れない、歯にきぬ着せぬ言い方をいたしまするならば、一つの憤りを感ずる状態にあると思うのでございます。今回の三法律案によりまして支払われます部分は、あるいは五万円で一応打切るとか、そのほか金ができれば残りは按分して支払うとか、いろいろ規定がございますけれども、これはもともと自分のかねをようやくにして払つてもらうというのにすぎないのでありまして、在外資産の処理を政府が真剣に考えて、当然国家が引揚者に補償をしようという意味のものでは断じてありません。政府が国の予算を一円でも計上して、そうしてわずかでも引揚者に補償をして支払おうという実は一つも現われていないのであります。むしろ、自分たちが預けておつた金が、いわゆる国家という大きな権力によつて押えられておつた、そのじようごの口を少しあけてくれたというだけでありまして、わずかながら細々と自分たちの金が自分たちに返つて来るというだけにすぎないのであります。これらの点については、今から私は明らかにして参りたいと思うのでございますが、もう一度基本的に伺つておきたいと思いまするのは、この三つの法律案をお出しになるに至つた政府のお考えは、在外資産については当然引揚者に補償をせねばならないから、その観念に立つて、国の財政が許す限り何とかしてみようというお考えで出発したのであるか、在外資産は国はもう知らぬのである、何ら関知しないであるけれども、しかし社会問題やいろいろな引揚者の困つておる実情を見ておれないから恵んでやろうというような社会保障政策的なお考えから出発しておるのであるか、私はこの基本的な政府のお考えを一応伺つてから各論に及んで質問をいたしてみたいと思うのでありますが、どういう観点にお立ちになつておりましようか。
#8
○植木政府委員 ただいまの御指摘の点は、政府の基本的な方針といたしましては、在外財産の処理についてまだ結論を得ておらないのでございます。今回処理いたそうといたしまする未払い送金為替及び外地預金の問題は、仰せの通り、現在の金融機関等との間におきましては、債権・債務の関係中、政府が諸般の事情から処理を停止しておる、そういう部分につきまして、ある程度においては支払いその他の措置を講じさせてもさしつかえない程度に達したと考えましたので、調査会の答申をも参酌して、困つておられる引揚者の方々に少しでも早くその部分的な解決でもして差上けることが必要だ、こういう趣旨のもとに立案、御審議をお願いしておる次第でございます。
#9
○村瀬委員 在外資産補償の問題についての政府の基本方針はまだきまつていないとおつしやるのでございまするが、きまらないままでこの処理に触れて参りますると、最初わずかな距離も、到達線に達するときには非常な距離を生ずるのでありまして、これは一応基本線を定めてからこれらの処理に進まれるのが至当であると考えまするが、この根本問題につきましては他日政府の最高責任者に伺うことにいたしまして、私は本論に入つてお尋ねをしてみたいのでありまするが、大体各金融機関――今回は保険会社その他郵便貯金に触れておりませんが、少くとも政府の方で少しでも金を出さなければならないという点には全然触れられないで、ただ一般の金融機関、政府が一円の金も出さずに済む方面ばかりの関係法案を三つお出しになつて参つたのでありますが、それならば何も終戦後九年も十年も放任をしておく必要はなかつたと思うのであります。ほんとうに引揚者のあの苦しい生活の身になつて政府がお考えになるならば、これはもつと早く当然出すことができたと思うのでありますが、何ゆえにかように遅れたのであるか、また今ごろになつてようやくこういう法律をお出しになる真意はどこにあるのでしようか。
#10
○植木政府委員 政府といたしましては、もちろん引揚者の方々の非常にお困りになつておる状態は十分承知いたしておるつもりであります。従いまして、適切なる対策を立てることについては、鋭意研究をいたし、調査も進めておつたのでありまするが、何しろ、こうした金融機関関係の部分につきましても、当該資産・負債の内容等につきましての整理そのものが今日までまだ十分についておらなかつた。それが今回になりましてある程度見通しも得ましたので、その見通しのできた範囲内におきまして、当該債権・債務の処理の一部を今回果させよう、こうしたことにほかなりません。従いまして、今日まで非常に遅れておつたことにつきましては、引揚者の皆さんにほんとうにお気の毒に考えておる次第でございます。
#11
○村瀬委員 在外財産問題調査会の答申が二月の二十二日にありまして、それに基いてこの三つの法律案をお出しになつたというのでありまするが、この答申書には「小額債権の保護の建前をとり」といつたような言葉が使われてあるのであります。そこで、小額債権というこの在外財産問題調査会の答申は非常に私は幅の広い意味があると思います。政府はこの小額債権を五万円と一応限定をなさつておるのが、この法律案の内容にあるのでございまするが、物価指数の値上り、指数の異動等を勘案いたしまするときに、今日の五万円というものは、これは小額というよりも零細に入る部面であつて、この小額債権というものをどの程度に線を引くかということは、やはりこの引揚者の問題をどの程度に解決をするかという熱意によつて、いかようにもこの小額の範囲が決定できると思うのであります。われわれは、今日の社会情勢から考えまするならば、少くとも二十万円くらいまでは小額債権だと思うのでありまするが、何ゆえにこの答申案に小額債権とあるものを五万円と限定をなさつたのであるか、それについての御意向を承りたいと思います。
#12
○植木政府委員 五万円に限定いたしました趣旨につきまして、説明員をしてお答えさせていただきたいと存じます。
#13
○上田説明員 外償課長でございます。小額債権を優先して保護するということは御指摘の通りに答申案にございますので、三法案におきまして、そのものが表面に出ておりますものと、表面に出ていないで政令の段階できめるものとがございます。答申案の他の部分、それに先行する部分に書いてありますように、今回の整理は現在の金融機関がこの支払うための資金を現に内地に持つておる、たとえば閉鎖機関であるとか在外会社であるとかいうふうに現に資産を内地に持つておる、それから現に営業中の、金融機関再建整備法の適用を受けた金融機関に対しましては、たとえば調整勘定の利益を持つておる、そういうような資産がある範囲内において、それぞれの整理の特殊性に応じてこれをほどいて行く、そういうのが答申案のその前の部分に盛られておる趣旨でございます。従いまして、五万円といろ数字は、これが小額であるかあるいは零細であるかという問題はいろいろ表現の方法もございましようが、一応表面に出ております、たとえば在外会社の問題にいたしますと、五万円と一応区切りはいたしましたが、資産は十分ございますので、一応整理の都合上五万円という数字を出したたけでございまして、別に五万円にこだわつておるわけでもございません。資金があればこれは払うわけであります。同様な趣旨は、たとえば金融機関再建整備法にも五万円という数字が出ておりますが、これはあくまでも内地にそれを支払う資金、今言いました調整勘定利益金というものがありまして、それによつて、これも答申書に書いてございますが、送金為替を在外預金よりも優先して支払うという根本問題に忠実なやり方でございまして、現在の金融機関再建整備法によつて新しい秩序のもとに活動しております金融機関にとりましては、送金小切手を支払うほどの資金も調整勘定利益金等にない、そういうものもありますので、そういうような際に小額な人も大額の人も比例的に按分してもらうということは公平の観念から言つてどのようなものであろうか、答申書の趣旨で小額の人を優先するというような場合に、五万円程度がちようど調整勘定利益金等、資産の出せる、その出せるものの範囲内として、これくらいなら負担できるということになりましたので、それで五万円という数字が出ておるわけであります。それで、法案にもありますように、この五万円という数字は、本来の金融機関再建整備法の改正の建前から申しますと、在外財産をもつて在外負債を払うという建前からいたしますと、実は送金小切手を払うものにも足りないという金融機関が大部分であるようであります。そのような場合に送金小切手だけは優先させたいという答申書の趣旨に忠実に、そういつた本来ならば内地の切捨てられた債権者のためにわけることになつておる従来の法制のもとにありました調整勘定利益金の中から、その五万円に達するまでは借りて来てでも払う、そういう趣旨で五万円という金額が出ておるわけであります。閉鎖機関等につきましては、十分資産のある金融機関、たとえば鮮銀、台銀等につきましては、五万円という限度は形としては設けましても、在外会社同様にこれは一応の趣旨を書いただけで、実際問題としてはそれを超過する部分も十分払える、そういうこになつております。
#14
○村瀬委員 大体わかりましたが、もう一つ、この答申案の中に「金融機関であることの特殊性に鑑み、」という文句もあるのでありますが、これは政府はどのようにお考えになつたか知りませんけれども、私は非常に意味が深いと存ずるのであります。それは、銀行の再建整備のためには今日まで国家補償を多分に与えた事情もありまするし、また信用機関でありまするから、今までは幸いに引揚者はきわめておとなしく静かに忍苦の生活に耐えておつたのでありまするが、いよいよその忍従の限度に来ておる今日の情勢からいたしまして、あるいは銀行の門前でなぜ送金為替・預貯金を支払わないかというような大きな運動が渦巻いたときには、信用機関というものはいつどういう一角からどのような不測の事態を生ずるかもわからない事情があるのであります。そこに「金融機関であることの特殊性に鑑み、」と言つてあると私は考えるのでありまして、ただいまの御答弁によりますると、一応五万円というもので早く一律に支払つて、そうして残りは金さえあれば全額支払うのだという、こういう御答弁でありまするから、それはそれで一応筋道は通るのでありますけれども、しかし、あと、自分の送金した銀行、預けた銀行が年月を経て相当りつぱにやつておりまする今日、なお引揚者の金はこれ以上は支払えないというようなことを冷淡に言い切るということは、金融機関の将来にとつてもこれは信用を基本とするものでありまするから重大な結果を来さないともだれも保証できないのであります。たとえば、各銀行ごとについて申しまするならば、三菱銀行におきましてはそういうものが約十三億円ばかりあると聞いております。これはこれくらいは全部支払える能力があると考えております。三井銀行等は必ずしもそうでないかもわかりませんから、従つて、他の銀行に遠慮して、全額支払えるところでも、三菱銀行のようなところでも、政府が全額支払わぬでよいというのならば支払わぬでおこうか、こうなるのは、当事者としてそういう気持が起るのもやむを得ないと思いますが、しかし、特に答申案に「金融機関であることの特殊性に鑑み、」と言つた深い意味を考えまするときには、政府は少々足らないところは何らかの方法でこれを払わすようなとりはからいをして、そうして九年も十年もしんぼうしておつたこの引揚者たちに対する当然の債務、いわゆる預貯金、送金小切手等には全額支払いの道を講ずるのが、それが在外資産の処理の忠実な政府の行き方であると考えるのであります。ことに、たとえば三菱、富士銀行等は、旧三菱、旧安田とは同名異質であるというような大蔵省は見解を持つておるようでありますが、株主総会等の名称を調べてみましても、たとえば第六十五回定時株主総会を開くというようなことを言うておる。そうすると、旧銀行と同名異質ではなくて、ずつと同名同質であるわれわれは考えるのでありますが、大蔵省はこれらに対してどのようなお考えを持つておるか、つまり、少しでも引揚者に迷惑をかけない方法をとろうというお考えのもとにこれら三つの法律案を立案なさつたか、それとも、何らか、他のいろいろな戦時補償の打切りその他の例もあるから、何とかして銀行方面の肩を持つて引揚者はこらえさすような方法はないかという観点に立たれたものであるか、いずれであるかということを私は伺うのでありますから、お答えを願いたいのであります。
#15
○谷村説明員 ただいま村瀬委員の御指摘になりました御質問、大体において私が担当いたしておりまする金融機関再建整備法により現に営業中の金融機関に関する問題が多いと存じますので、私からお答え申し上げます。
 答申書にございます「金融機関であることの特殊性に鑑み、」という言葉は、ただいま村瀬委員がおつしやいましたように、ともかく預金者から絶大な信用を受けて、そうしてお金を預かつておる、その信頼にこたえて活動しておる、そういつた金融機関でありまするから、できるだけのことは預金者のためにしなければならない、そういう本質がございまして、これは通常の企業とは同じ債権・債務の関係でありましても違う、たとえば、かりにこちらの方のとるものはとれなくても、預金者にはできるだけのことを何とかしなければならない、こういう建前がございます。それは、その相手であります預金者が内地の方であろうと外地の方であろうと、ともに同じ意味で預金者に対して特別な関係にあるということでございましよう。そういう意味で預金者のためにいろいろなことをしなければならないわけでございますが、しかし、敗戦と申しますか、あの戦争によつて受けましたいろいろな損害、その後に伴ういろいろな整備ということから、これら預金者保護ということを絶大の目標にしております金融機関につきましても、やむを得ずこれを修正せざるを得なかつたわけであります。これは、内地におきましても、御承知の通り戦時補償打切り等によるその損害を預金者に相当名担させまして、そうして、たとえば第二封鎖の打切り、切捨てといつたようなことで、今御指摘になりました三井、三菱、富士といつたような大銀行においてすら、なおかつ今日まで切り捨てました内地の第二封鎖預金はそのままになつておるといつたようなかつこうで、まことに残念な話でございます。同様な意味におきまして、外地でお預かりいたしました金あるいは送金為替、これも支払えないままにあるという態勢は、やはり金融機関としてはよろしくない。できるだけのことをして払わなければならない。たとい外地に持つておつた債権がとれなくても、あるいは外地で持つておつた不動産が返らなくても、とにかく払えるだけのことは何とかできるだけの範囲でしなければならない。こういうことはおつしやる通りだと思います。そこで、問題は、内地あるいは今現に始まつておる新勘定、それから外地、こういつた三つの債権・債務の関係をどの程度に調整して参つたらば一番妥当な線に行くかということでございまして、金融機関におきましては、もちろん、今回のやり方といたしましては、在外資産と在外負債というものを見合いに立てまして、そうして在外資産の方にはかりに在外資産がなくても、ある程度内地で持つております調整勘定の残額でありますとかいろいろなものを繰入れて、できるだけ在外負債を払う態勢をとらせるという道をともかく開いたわけでございますが、現実の問題として、必ずしも全額払わぬでもよろしいと言つているわけではなくて、ただいま御指摘の各銀行のうちに、たとえば、お名前をあげてございませんが、銀行によつては、その資産の状況によつて、もちろん五万円というような小額に限らず、外地でお預かりした預金の全部を返せる銀行もございます。ところが、ある銀行は全額なかなか支払えない。これは、あたかも国内で第二封鎖の関係でも、たまたまある銀行に預けたらうんと打切られた、たまたまある銀行に預けたら打切られないで済んだ、あるいは打切られてもそれがすぐある程度返つて来た、あるいは返つて来ないといつたバランスの若干とれない面が、金融機関が私企業たる関係上出て来るのはやむを得ないのでございますが、できるだけどの金融機関も払える範囲においては全力をあげて払うようにするという形の態勢は少くとも法律の上ではできており、また実際のやり方としても、銀行によつて差はございますが、できるわけでございます。
 そこで、問題は、今御指摘になりました、現在たとえば富士、三菱といつたようなものが前と同じであるかどうか、現在隆々としてやつておるではないか、幾らか、わずかの金ならば今の勘定から払えぬことはないであろうという問題でございます。これは、大体先ほど政務次官が申し上げましたように、金融機関再建整備というあの一連の措置がどういう意味を持つておつたかということでございまして、あのとき戦時補償打切りといつたようなことに伴つて起きましたいろいろな損失をそのままにのみますならば、金融機関としてはあのときはすべて破産して整理の態勢に入らざるを得なかつたわけであります。それを、この法律によりまして、一方において旧債務の関係は整理をして行く、そして新しい秩序のもとに新しい経済の再建のコースに乗つて銀行は動き出して行く、そういう新しいスタートの切直しをさせたわけであります。この法律の持ちます意味は、同名異質というようなお言葉を先ほどおつしやいましたが、まさしく一つの人格のうちに過去のものは整理し新しいものは新しい方向で動いて行く、そういう形で出ておるわけでございますので、この新勘定と申しますか、新しい経済再建の秩序に沿つて動き出しておる勘定と申しますものは、そういう意味ではいわばそれ自体新しい一つの内容を持つたものというふうにしてわれわれは考えておるのです。これは、村瀬委員のおつしやいましたように別に銀行に肩を持つという考え方ではございません。銀行あるいは金融機関というものを中心といたしまして、一つの信用組織なり一つの秩序なりというものが立てられ、その秩序の上に新しい経済の動きが始まつたというふうに考えております。そこから出ておりますので、決して金融機関そのものを何とかしてやろうということではなしに、金融機関を通ずる一つの新しい秩序を維持し確保して行きたい、それが国民全体の信用の組織なり秩序なりを維持するゆえんである、こういうふうに考えておるわけなのでございます。
 大体御質問の趣旨にお答え申し上げたかと思います。
#16
○村瀬委員 この問題は、私はただいまの御答弁で必ずしも全幅的に承服はできませんけれども、もつと大事なところをお聞きしたいことがありますので、次に進みます。
 まず具体的に一つ一つ伺つて行きたいのでありますが、正金銀行、朝鮮銀行、台湾銀行、その中で正金銀行が一番大事なので、これはあとまわしにいたします。そこで、ここに資料も出ておるようでありますから、台湾銀行と朝鮮銀行について具体的にお尋ねをいたすのでありますが、前回の当委員会における御答弁によりますと、朝鮮銀行は国内資産として最初五十億見当の国債を内地に保留しておつた、それがいろいろりしその他清算の結果現在八十億見当になつておる、そのうち送金小切手、預貯金等で支払われるものが約十五億円見当で、六十五億円見当は残る予定だという御答弁があつたのであります。そこで、利息とかいろいろの問題が生じて参るのであります。といいますのは、五万円なら五万円と一応いたしましても、利息をどうやつて払うか。それで六十五億の金が残るならば、どうやつて利息を払うか。あるいは、物価指数に勘案して、――五万円とは名目であると思いますが、実質的にそれに倍率をかけるかどうかというような点も残つて参るわけであります。これは登録国債となつて日本銀行にたまたま入つておつたことが仕合せであつたわけでありますが、それというのも朝鮮銀行券、台湾銀行券発行の見返りとして日本銀行に預かつておつた。そのためにこういうたくさんの金が残つたということなのでありますが、それらについて、ここに資料がありますから、もつと詳細に数字をはつきりしていただきたい。
#17
○岩動説明員 朝鮮銀行と台湾銀行につきましては、この前のこの委員会におきまして概略の数字を申し上げましたが、その後多少集計ができましたので、現在朝鮮銀行、台湾銀行のそれぞれの清算事務所において調べておりますところの数字をさらに申し上げたいと思います。これは、今回の法律が通過いたしました後において、具体的にはそれぞれの債権者から申出があつて初めて確定する金額でございますので、ただいま申し上げますのは、それぞれの銀行が手持ちの資料等によつて調べた一応の数字というふうに御承知ください。
 それで、朝鮮銀行におきましては、送金為替は日本円に直しまして六億二千五百万円、それから外地預金につきましては七億一千百万円、合計十三億三千六百万円の所要資金を見込んでおります。その結果、朝鮮銀行といたしましては、ただいま国内の清算残余金として見積られるものは約八十億八千万円ございますので、差引六十七億四千三百万円ということに相なります。それから台湾銀行につきましては、送金為替の支払い見込みが五億一千万円、外地預金が一億一千七百万円、合計六億二千七百万円、国内の現在残余金が二十九億八百万円、差引二十二億八千万円であります。
#18
○受田委員 関連して。朝鮮銀行と台湾銀行に関して現地人の預金関係はどうなつており、これがどう処理されたか、この点ちよつとお尋ねしておきます。
#19
○岩動説明員 現地人に対する預金に関しましては、先方に接収された後において韓国銀行がそれの債権・債務を引継いで処理をいたしておるように伺つておりますので、おそらく現地人に対する預金は返還の要求があればそれに応じて支払われたものと考えます。台湾銀行も同様でございます。
#20
○村瀬委員 朝鮮銀行では全額支払つても六十七億四千三百万円、それに台湾銀行では送金小切手と預貯金を全額支払つても二十二億八千万円残るということを明らかにされたのでありますが、そういたしますと、この六十七億と二十二億はどのような処理をなさるおつもりでありますか。株主の所有であるには間違いないわけでありますが、そのままこれを第二会社その他新会社にすぐに配付をなさるつもりであるのか、それとも、これは発券銀行としての特殊性によつてこれだけ金が残つたのでありますから、何らかのお考えを他に持つておられるのか、この点をお伺いいたします。
#21
○岩動説明員 朝鮮銀行と台湾銀行にこのような外地預金あるいは送金為替を支払つた後においてもなお相当の国内資金が残ることについて、これを新会社にただちに全額渡すかどうか、あるいは何か特別の措置をとるかという点につきましては、非常にいろいろな問題を含んでおりますので、私どもにおきましてこれらの外地預金あるいは送金為替に関する数字を確定し、それぞれの銀行の在外資産・負債等の資料も十分に検討いたしました上で慎重にその処理については決定いたして参りたい、かように考えております。
#22
○村瀬委員 六十七億と二十二億については、別にまた一、二のお尋ねしたいことがあるのでありますが、これを保留して、今度は正金銀行、これは一番大事なことでありますから、正金銀行のことを伺います。
 横浜正金銀行から現在の東京銀行となりまする際のいろいろな処理についても、時間があればいくらでもお尋ねしたいことがあるのでありますが、それはともかくといたしまして、在外同胞は正金銀行を大半利用しておつたのでありますが、この前には、これは五五%くらいは支払いたいというような重要な御答弁があつたのでありますが、その後どういうふうになつておりますか。今言つた朝鮮銀行の八十億八千万円に相当する分が、前には二億円ばかりしかないというような御答弁もあつたのでありますが、正確にはどのくらい残つておりますか、そうしてどの程度支払える見込みでありますか。
#23
○岩動説明員 正金銀行につきましては、国内債務についてはただいま五五%の支払いを予定いたしております。そういたしますと、現在残ると見込まれる金額は二億九十三百万円ということになります。一方におきまして、正金銀行の未払い送金為替で今後この法律が通りました後において支払いを要すると見込まれる所要資金は二十億三千五百万円、外地預金におきまして九十三億二十三百万円ということになつております。そして、正金銀行につきましては国内資産はわずかに二億九千三百万円でございますので、この国内資金から今回の未払い送金為替あるいは外地預金を払うといたしますと、きわめてわずかのものしか払えない。しかも、答申によりまして、この支払いの順位を送金為替を先順位にいたしておりますので、外地預金に関しては今日のところは何ら手当をすることができない状態になつております。また、送金為替を支払うにいたしましても、これは二十億に対する約三億の金でございますから、ほんのわずかの部分しか払えないということになります。従いまして、正金銀行につきましては、現在国内の債権・債務を整理する、従つて国内の債務に対する弁済をまず第一に優先してやるという今日までの清算の方式をとつて参りますると、残りました三億も、五五%の支払いで打どめをするどころでなしに、むしろさらに二億九千万円を国内の債権者に支払つてしまうという方が、本来ならば順序であるということも考えられるわけであります。しかしながら、今回特にこのような法律を出しました趣旨にもかんがみまして、正金銀行におきましては、一応五五%のところで国内の債権者にはがまんをしてもらつて、さしあたり少しでも残つておる金を小額の未払い送金為替の部分にでも充ててみたらどうか、かように考えておるわけであります。ただ、小額債権の優先弁済をするということにつきましても、とうてい五万円というような金額では正金銀行では処理できないと思われます。これは、さらに具体的な申出を見まして、適当な小額の債権の保証ということを考えて処理いたしたいと思つておりますが、とうてい五万円という数字は出て来ないだろうと思われます。ただいま私どもが予想いたしておりますところでは、わずか千五百円前後ではないだろうか、その部分だけは一応小額の債権として保護できはしないか、かように考えるわけでございます。
#24
○村瀬委員 時間がないそうでありますから、もう二、三点で、あとは次回に譲ることにいたします。しかし、ただいまの御答弁は非常に重大であります。せつかく引揚者たちは、五万円、不満であるけれども、十年も待ちぼけを食つたのである、ともかくも五万円だけもらえば子供の入学準備あるいは家族の病気の薬代も払えると、こう思つて喜んで法案を見てみますと、一番大きな正金銀行については千五、六百円か二千円しかもらえないという、こんな残酷なことはないと思うのであります。ただ二億九千三百円万残つておるから、その範囲内でというのでは、せつかく法律をつくつた政府としても実に能のない話であります。これを何とかして、国内債務を五五%支払つておるのならば、五五%程度は支払うような方法をつけての法律案を出して来てこそ、政府に国民はたより、引揚者も現にたよつておるのでありますが、こういうことについては、この前も御答弁になつた通り、スイスその他の在外資産もいずれは返つて来るか、返つて来なければ政府が補償するのが当然であります。それはこの前の速記録に載つておる通りであります。
 そこで、私は政務次官にお尋ねをいたすのでありますが、正金銀行については在外資産、不動産というようなものが相当あつたわけであります。しかも、当時交戦国にあつたものはやむを得ないといたしましても、中立国にも相当の資産があつたはずであります。それらの処理は簡単には行かないかもしれませんが、しかし当然いつの日にかは返るべきものである。平和条約第十六条にはちやんと日本国はその選択によりと書いてあるのでありまして、中立国の資産をそのまま国際赤十字社ヘ出してもよろしい、また政府がそれに相当する分を別に出して、その中立国の資産を本人に返してやつてもいい、選択によりとはつきり書いてあるのでありますから、正金銀行に返してやつても、正金銀行の株主が食つてしまうのではないのであつて、正金銀行に返すことが、何十万、何百万の引揚者の生活資金に直接かわつて来るのでありますから、当然国際赤十字社へ出すべき分は政府が出すべきである。それに相当する金額は正金銀行に返してやつて、その返つた在外資産、ほんとうの中立国における正金銀行の資産によつて、五五%くらいは当然支払う措置を講ぜればならないわけでありますが、それについて大蔵省はどのようなとりはからいをなすつておるのでありますか。
#25
○植木政府委員 ただいまの御質問の、中立国等における正金銀行の財産の点から考えても、この際正金銀行の小額債務の支払いの問題について、もつと政府が善処すべきではないかという御趣旨と承りましだが、その点、ある意味におきまして私も個人的には同感の点がございます。しかしながら、今回の措置といたしましては、在外資産全体に対する政府の方針がまだ結論が出ておりませんので、この際に正金銀行について政府の何らかの負担によつて措置をするということは見合せておるのであります。なお、この問題は、今後どういうふうに進展さして行くかということにつきましては、外務省その他とも十分打合せの上で善処して参りたい、かように考える次第でございます。
#26
○村瀬委員 私は、そこで、先ほど保留しておつた朝鮮銀行、台湾銀行との関係と、正金銀行との関係を最後にお尋ねするのでありますが、朝鮮銀行で六十七億四千三百万円、全額支払つても残る、台湾銀行で二十二億八千万円、――この金額は株主のものであつたことは間違いありませんが、現在内地でわかつておる株券の総額よりも多いと思うのでありますが、どのくらい残りますか、そして、多いとすれば、厳格に言えば、株券が五十円であつても、五十円に対し百円渡してもいいわけでありますが、朝鮮銀行、台湾銀行の株主といえども、戦争によつて株券値上りの金をもうけようとは考えないでありましようし、むしろ焼けてなくなつた会社が多いのでありますから、そうすれは同病相あわれんで、同じ引揚者で同じ送金をして来たのに、隣の朝鮮銀行へ行つた人は全額支払われるが、そのお隣の正金銀行へ行つた人は千五百円しか支払われないというのでは、あまりに気の毎な状態でありますから、朝鮮銀行の六十七億と台湾銀行二十二億のうち、株主に十分の株券を支払つてなお残りがあるとすれば、これは国家の発券銀行としての立場からこういう金が残つた意味もあるのでありますから、こういう金をプールして、何ぼか正金銀行の送金小切手にも支払うという方法をお考えになる余地はないかどうか、その額金の点等をひとつ御説明を願いたいと思います。
#27
○岩動説明員 朝鮮銀行と台湾銀行の日本の国内にある株主の株券がどれくらいかという御質問であるかと思いますが、ただいま国内にある数字がどれくらいになつておりますか、ちよつと資料を持ち合せておりませんので、はつきり申し上げかねますが、その大部分は日本の国内にある、かようにお考えいただいてけつこうだと思います。株のあれは、朝鮮銀行におきまして公称資本金は八千万円でございまして、払込済みは五千万円になつております。台湾銀行におきましては、公称資本金六千万円で、払込済みは三千七百五一十万円になつております。
#28
○受田委員 議事進行について。村瀬委員からきわめて熱心な専門的な御質問がなされ、政府委員より詳細に答弁されておるのでありますが、この三つの法案は、この特別委員会としては、在外資産の補償の出発点としてもきわめて重要であり、また大蔵委員会においても、この三つの法案については引揚特別委員会の知恵も十分借りなければならぬと思うので、できるならば大蔵委員会と当委員会の連合審査によつてその審議を徹底せしめることが妥当ではないかと思うのでありますが、いかがでしようか。それを理事会でも諮つて、連合審査の申込みをする、そして両方の総知をしぼつて万遺憾なきを期することがいいと思いますけれども、一応委員長においてさようおとりはからいあらんことを切望するものであります。
#29
○山下委員長 ただいまの受田委員の御発言は、後ほど理車会を開きまして決定いたしたいと思います。
#30
○村瀬委員 私はこれで質問を打切りますが、最後に、ただいまの御答弁によりますると、朝鮮銀行ぱ五千万円見当の払込み、台湾銀行は三千七百五十万円の払込み、こういうことでして、むろん払込みだけでは株主は不服かもわかりませんが、それの十倍を渡しても、あるいは二十倍を渡しても、まだ相当の金が残る。そういたしますると、ほんとうに、最初申し上げました通り、この吉田内閣が、あの苦難と忍従に耐えて来ておる引揚者に何とかして支払つてやろうという意思があるならば、私は、今度の法律を出すときにも、ここらの点を朝鮮銀行の清算人、台湾銀行の清算人ともよく胸襟を開いて話をし合つて、同じ海外から送金をした者はまつたく同病相あわれむ意味から、何とか君の方も譲歩しないかという点を十分お話合いになるべきだと思う。朝鮮銀行も台湾銀行も、昨年の九月の閉鎖機関令の改正によつて新会社がすぐできることになつておるにもかかわらず、一向新会社をお許しにならない。三年も五年もほつておきますよりも、少々金が少くとも、もうすぐにこの金を第二会社、新会社の清算人に渡してもらう方が、朝鮮銀行や台湾銀行の株主も安心すると思うのであります。そういう点をきびきびと処理をなさつて、そうして六十七億のうち二十億残れば、その二十億は軌鮮銀行に対して一時借入れの形でもいいから、そういうことにでもして、せつかくこういう法律ができる以上は、その五五%というよりも、むしろそれをよそなみの程度に支払つてやりたいのであります。そうすると国内債権者がやかましいというならば、五五%でもやむを得ませんが、とにかく何とか支払つてやる方法はないかというお考えに立つて処理なさらないと、ただ言い訳的に、引揚者がやかましいから、何とか法律を出してやろう――五万円払つてやるというから、五万円かと思えば、千五百円だ…。それでは踏んだりけつたりという俚俗の言葉の通りでありまして、さようなことでは、いつこれから引揚者が爆発するかわからないと思う。ここに六十七億と二十二億朝鮮銀行と台湾銀行に残つておるのでありますから、これはひとつ可能な範囲でさつさと株主に払つて、株主に得心してもらつて、さらに発券銀行であるために残つたそれらの金を、流用なり利用なり何なり方法を講じて、これら正金銀行の引揚者にも支払つてやるということをお考えになるように、この次は大臣も御出席になるようですから、それまでに大蔵省内の意見をおまとめになつておいていただきたい。そうでなければ、日本の大蔵省というものは、ここに使える金があつても、引揚者にはびた一文出さない方針でこれらの処理に取組んでおる、かように私たちは考えざるを得ないことになるのであります。新しい道義国家をつくらんとしておるこの過渡期にあたつて、戦後処理の一番重大な在外財産の問題をかような状態で放任しておくようなことでは、いい国は決してできません。もしでき上つても、この処理の一角から、そういう国であつたならばまた崩壊してしまうのであります。さような重大な問題でありますから、この次までにその点大蔵省内の御意見をまとめておいていただいて、大蔵大臣からの御答弁を要求いたしたいと思います。
 なお、そのほか、支払いにあたつて利子はつけて払うのかどうか、――五分くらいの利子という御答弁がありましたが、複利にするかどうかという点もあります。さらに、簡易保険その他保険の問題、あるいは郵便貯金の問題、少くとも政府にかかわりのあることは一切これは除外しておる。かようことで、人には払つてやれ払つてやれと言つて、政府が払わなければならぬ分には全然口をぬぐつて知らぬ顔をしておるということでは、支払おうと思う他の金融会社の心証も害するわけでありますから、これらについてもこの次の委員会で十分責任のある答弁のできるように大蔵省の御意見をまとめておいていただきたいことを要求いたしまして、本日はこれをもつて質問を打切ります。
#31
○山下委員長 委員長からも、その点、省内の方針の御統一をお願いいたしておきます。
    ―――――――――――――
#32
○山下委員長 次に、ソ連地区引揚者の定着援護、特に就職に関する問題、及び南方諸地域における戦没同胞の遺骨収容に関する件について、政府当局よりその対策等の説明を求めることといたします。
 最初に、第一次に引揚げられましたソ連からの引揚者の就職問題について、労働省の御報告を願います。中村雇用安定課長。
#33
○中村説明員 ただいまの件でございますが、昨年の十二月一日ソ連から引揚げられました同胞の就職状況について簡単に御説明申し上げます。
 昨年十二月一日引揚げられました同胞は八百十一名でございます。そのうち就職したいという申込みをされました方々は男女合せまして三百四名でございます。しかしながら、そのうち、帰国されましてから家庭の状況その他等もあつたことと存じますが、五十九名の方がその就職の申込みを取消されております。従いまして、その三百四名から五十九名を差引きました二百四十五名というものを安定機関で受付けまして、この方たちの就職のあつせんに努めたわけでございます。今まで入りました県からの報告によりますと、この二百四十五名のうち百二十七名が現に就職した状況であります。その率は大体五一%でありまして、他の一般の就職希望者と比較しますと率は相当よいとわれわれは見ております。しかしながら、率が問題ではございませんので、実は個々の各人がいかにして就職するかということが大事な問題でありますので、われわれといたしましては、その後も依然としてこの問題については十分な覚悟をもつてとつ組むように府県にも指令いたしております。従いまして、できることならば、われわれといたしましては、これらの就職希望者につきましては全体が職につくようにしたいというような見通しといいますか希望を持ちまして、目下努力いたしておる次第であります。
 それから、第二次につきましては、去る三月二十日、四百二十名の帰国者があつたのでありますが、引揚げ後まだ間もないことでございますので、まだ十分な計数の把握ができておりません。このことはまことに遺憾で、申訳ないのでございますが、さような実情にございます。
 なお、申し残しましたが、第一次で引揚げましたうちで、今日までわれわれの方で判明いたしましたもので、みずから職を探しまして就職いたしました者が、ただいま申し上げました数字のほか八十八名あるという計数が出ております。御参考までに申し上げます。
#34
○山下委員長 引続いて引揚援護局長田辺繁雄さんに援護状態について御説明を願います。
#35
○田辺政府委員 就職状態についてはただいま労働省から御説明があつたのでありますが、自営者のための生業資金の貸付につきましては、昨年度におきまして二億円を国民金融公庫の予算に計上して、三万円ないし五万円のいわゆる固定資金の貸付を行つたのであります。これは昨年末までに千五百万円だけは中央に保留しておきまして、他を各都道府県に流しまして貸し付けたわけでございます。これはほとんど大部分が中共からの引揚者のために貸し付けられておるようでございます。なお、千五百万円につきましては、その後さつそく都道府県に流しまして、主としてソ連からの引揚者を対象として貸付をいたそうという考えでございます。
 次に、住宅の問題でございます。これは、昨年中共から三万人の引揚げがあるということを予定いたしまして、三千五百戸ばかりの住宅を各都道府県を通じて獲得するように指示をいたしたのであります。正確に申し上げますと、そのうち約五百戸は二十七年度の予算で、三千戸は二十八年度の予算で出したわけでございますが、実際の引揚者の数は中共からは二万六千人でございまして、約四千人だけ差があつたのでございます。そういうこともありましたので、ソ連からの引揚げの際には、そのわくの中で措置をするという方針で、最後に千戸ばかり都道府県に流した際には、この中に中共からの引揚者のほかにソ連の引揚者の住宅も入つておるから、実情に即して取扱うように指示をいたしたわけであります。その結果どういうふうになつておるか、まだ具体的な資料は出ておりませんが、一番問題であります東京都の状況を申し上げますと、東京都では昨年度において新しくつくりました住宅が五百十八戸ございます。それから既存の住宅を買い取りまして、それを引揚者の用に供しましたものが百二十世帯分でございます。合計六百三十八世帯分だけを新たにつくつたわけでございます。そして、中共から帰つた方々で一時寮に入つた方々をこちらの方にお入れいたしまして、世帯持ちである方々につきましてはほとんど大部分措置がついたわけであります。このほかに、従来東京都には引揚者の定着寮と申します寮がございまして、そこのあいている部分に中共、ソ連から帰られた方々をお入れしましたものが八十世帯分ございます。この中には、一旦都道府県に定着されて入つて、その中から東京に転入された方もございまして、こういつた方々も含めまして八十世帯分だけが、目下従来の定着寮でお世話いたしております。従つて、現在東京都の一時寮に入つておられる方々は、ソ連の引揚者が八世帯であります。これは全部単身者でございまして、八人でございます。中共からの引揚者は三十三世帯、三十三人であります。これはほとんど全部女子の独身者でございまして、現在特別の寮にまとめて入つていただいております。将来これを定着寮に変更するつもりで東京都はだんだん準備を進めているようであります。世帯持ちの方で一時寮に入つている方は六十九世帯ございます。そのうち六十五世帯は開拓団関係の方で、目下入植する場所を物色しておられる、あるいはすでに入植しておられて、男子だけが単身そちらにおもむいて、目下いろいろの基礎準備をしておられるので、その準備が完了いたしますと家族を引取りたいというので待つておられる方もございます。そういうわけで、百十世帯の百五十九人が現在一瞬寮に入つておられるわけであります。従いまして、家族持ちの方々で、ソ連から帰つた方、中共から帰つた方で現在寮に入つている方は、開拓団関係を除けばきわめてわずかでございます。大部分の方は昨年新設いたしました住宅あるいは転用いたしました住宅等にお世話申し上げているような状況でございます。
#36
○山下委員長 本件について御質疑があれば許します。受田委員。
#37
○受田委員 労働省からただいまソ連地区の引揚者の就職状況について御説明いただいたのでありますが、中共地区引揚げの方々はどういうふうな状況にあるか。ことにソ連から帰つた人は思想的にも穏健中正であるというので、中共から帰つた人よりも喜ばれて、就職状況も好調子だということも聞いておりましたが、この関係を第一点としてお尋ねしたいと思います。
 第二点としては、私自身のところへ寄せて来る引揚者のお便りなどを見ますと、職業安定所ヘ頼んでもなかなか早急に事が運ばない、府県の世話課に頼んでも思うように行かないということでありますが、何かもつと積極的に、――言うて来てからどうとかいうことでなくて、その人々に対して待ち受けてやるくらいの積極的就職あつせんということをなさる必要はないか。
 この二点を私はお尋ねしたいのであります。
#38
○中村説明員 ただいまの御質疑でございますが、まず中共引揚者の就職あつせん状況について御報告いたします。中共引揚げの方々は、大体一次から七次までで男女合計二万六千四十七名と覚えております。そのうち、全体を通じまして、昨年の十二月末でございますが、就職申込みがありましたのが九千三百四十三名でございます。そのうち自己就職したと思われますもので安定機関に申入れがありましたのが千四百三十三各、それから、みずから、――これは自己就職も兼ねたかもしれませんけれども、就職の申込みの取消しのあつたものが千九十五名でございます。従いまして、この二つを差引きました残数の六千八百十五名というのがわれわれの安定機関が就職のあつせんに努力したものでございます。そのうち、就職のあつせんができましたのが五千百三十二名、それから、御承知の職業補導所という施設がございますが、その方に入りました者が百四十二名でありまして、率から申しますと七七%の成績を上げておるのが現在の状況でございます。従いまして、先ほどちよつとソ連地区引揚げの方々の問題に触れましたときに申し上げたのでございますが、一般の国内職業のあつせん状況、成績から申しますれば格段の成績を上げておるとわれわれは考えておるのでございます。しかしながら、この問題につきましては、われわれはなお十分な満足をいたしておるわけではありませんので、今後とも十分引締めてせつかくやるように督励いたし、機会あるごとに指示しておるのであります。
 それから次に、先ほど、もつと積極的な考え方がないかという御質疑だと思いますが、この問題につきましては、実はわれわれも、先ほどちよつと触れました通り、率が一般に比して非常にいいというだけで満足いたすわけではございませんので、帰つて来た方々が皆が皆希望の職業にはつけぬまでも、ある程度の職にはつけるようにいたしたいという考え方でもちろんやつておるわけでございます。従いまして、引揚げられましたその時期をのがさず、積極的に安定機関がたずねるなりあるいはおいでを願うなりいたしまして、御本人それぞれの希望をよく聞きまして、いろいろやつておるわけでございます。しかしながら、今日までなおある程度の数は就職ができない状況にありまして、その点につきましては、もちろん先ほどのお考えのようなこともあわせ考えまして、私たちとしては今後とも積極的にやらせるようにいたしたいという考えを持つております。
#39
○受田委員 北海道の国鉄では、関係者の全職員が帰つて来たらそれぞれの現場に帰すように優先的に措置をして、安心して舞鶴から自分の勤務地へ直行できるという喜びに浸つたそうです。これはまことに国鉄当局としては慈愛深い措置をしてくれたのであつて、こういうふうにして、舞鶴へ上ると自分の職がきちつときまつておるということであつてほしい。向うで宣伝されたように、故国へ帰れば、仕事が十分ないので路頭に迷うのだとか、そういうようなところから、ナホトカまで出たがあとで引返した者もおるとか、また現地へ残つた方がいいだろうというような声も起つておるということをこの間第二次に引揚げた人も言つておりましたが、国へ帰つたらちやんと仕事が待つておるのだ、国をあげてあなた方を待つておるのだということで、人数もあまり多くないのであるから、その点においては一人々々適材適所主義で適職を見つけてやるという措置を国家としてとらなければならぬと私は思うのです。この点、北海道の国鉄の事例に徴しまして、厚生者、労働省が互いに協力して、それぞれの道を得させるように骨折つてもらいたい。そういうことを念願するのです。今の国鉄以外の人々で、仕事が十分なくて、今度帰つた人は別ですが、それ以前にもどつた人が、現に私のところに相当数、何かいい道はないかということやら、政治的に何とか骨を折つてくれないだろうかというふうな悲観的な情報を入れておるのです。これは現実の問題ですが、この点ひとつ御努力願いたい。
#40
○中村説明員 先ほど申しましたような心構えでわれわれはやつておりますが、何分にもソ連の引揚げの方々、――特に考えますことは、第一次につきましては、年齢が比較的高いということが一つの難点になつておるようであります。それから、先ほども御指摘がありましたように、気持の問題につきましては、むしろ心配しておつたと逆で、ソ連の方は非常にすなおで、あつせんを非常にやりいいということも聞いております。従いまして、ただいまのような具体的な話がありますれば、われわれとしましても、それぞれ出先に向つて指令をいたしまして、できるだけごめんどうを見るようにいたしたい、かように考えます。
#41
○受田委員 田辺さん、新しく局長になられておめでとうございます。最初の御感想をお聞かせ願いたい。今あなたがおつしやつた引揚者の住宅、生業資金等について一、二点お尋ねしたいのですが、二十七年度、八年度合せて三千五百戸の住宅を建てた、こうなりますと、去年、おととしはそれでいいけれども、二十九年度はどうなるか。つまり、今までできていなかつた住宅を新たに追加して、住宅に困つておる人がそれに入れるようにする、またこれから帰る人もそうしなければいかぬのですが、こういうことを考えて二十九年度はどういうふうにやるか。
 もう一つは、二十九年度には同胞引揚費はどういう基準で算定され、何人帰るという想定をもつて予算を組んだか、帰還手当その他の算定基準になつた数字はどれか、その数字は一体どこから出た数字かということをお尋ねしたいのであります。
#42
○田辺政府委員 お答えに先だちまして、長らく皆様方にお世話になつておりました引揚援護庁は、去る三月三十一日をもつて閉庁になりまして、四月一日から厚生省の内部部局の引揚援護局として新たに発足することになりましたので、今後とも従来同様御指導、御鞭撻をお願い申し上げます。
 ただいま御質問のありました住宅の問題でございますが、本年度は大蔵省と建設省と相談をいたしまして、本年度帰つて参ります引揚者の受入れの住宅は建設省の第二種住宅のわく内で処置をするという方針になつたのでございます。そこで、その戸数五百六十戸というものを特別のわくをつくりまして、各都道府県に流すということで話がついております。もちろん、そのほかに、北海道でやかましい集団住宅の疎開の問題がございまして、これはそれとは別に、本年度におきまして三百戸、これも特別のわくをつくつて処置をすることにいたしております。そこで、一応この建前は、本年度帰つて参ります引揚者に対する応急的な措置としての住宅――応急措置と申しますよりも、住宅そのものは、第二種公営住宅でございますから、恒久的住宅でございますが、新規引揚者受入れのたあの住宅ということに相なつております。昨年度の住宅三千五百戸というのは、過去における引揚者に対する住宅の措置から申しますと非常に率がよくなつております。ただいま申し上げましたように、東京都の場合は、特に中共からの引揚者は東京に集中する傾向があるのでございますが、東京都の土地の入手難あるいは財政事情、いろいろ困難はございましたけれども、極力勉強いたしまして、先ほど申し上げました通り、世帯持ちの方々に対しましてはほとんど処置が終つておるような状態でございます。北海道が多少心配でございますが、北海道の場合もほとんど定着すべき住宅があるように伺つておりますが、これもなおよくその方の事情を聞いた上で何らか実情に即した措置をとつて行かなければならぬと考えております。
 それから、本年度引揚げの見込み人員は、予算上は五千人と見込んでおります。内訳は、中共が三千人、ソ連が千五百人、南方その他が五百人で、五千人の引揚げを見込みまして、受入れのための予算を計上いたしてございます。それから、これを算定した基礎でございまするが、これは別段先方からこれだけ帰るという通知がありませんので、一応われわれの方で算定いたしまして、このくらいあれば一応いいじやないか、もちろんこれ以上帰つて参るということになりますれば、予備費より支出いたしまして処置する方針でございます。
#43
○受田委員 住宅対策については、北海道の集団住宅疎開の問題なども心に入れてもらつて、少額ではあるけれども数字が出ておるという点については御努力を認めます。ただ、五百六十戸を建設省にとられたということははなはだ残念です。これは、ほんとうは筋としては通らないのです。けれども、まあ五百六十戸くらいをということですから、これは必要によつてまたあとから補充の道も考えられておると思うのですが、これもひとつさらに今後追加する努力をしてもらいたいと思います。
 それから、もう一つ、二十九年度の引揚費の計算の対象になつた数は五千人だ、――昨年は一万人ということに聞いておりました。今度二十九年度は五千人に減つたわけです。これは、以前は在外同胞の総数が計算の基礎になつておりました。五十九万時代からずつと引揚げた数の残つたのが計算の基礎になつておつたのですが、去年あたりから急に、いいかげんに、およそこのくらいだろうという想像予定数でこの算定が行われております。この問題の五千人帰るという想定ということは、われわれとしてははなはだ遺憾なんです。まだ残つておる人がこれだと、日本の政府が今数字の上に表わしておるのだから、できればその数字に盛られた人を対象にして計算をしておいてもらつて、そうして、実際帰らなかつた場合には、これは不幸にして帰ることができなかつたのだ、こういうことに、この同胞引揚げの問題については考えを置く必要はないかどうか。およそこのくらいはもどるだろう、このくらい置いておけば何とかなるだろう、――去年も一万くらいでしたか、計算をしておつたところが、突然どどつと帰るようになつて、予算修正をしなければならぬようになつた。こういうこともあるので、予備費から出すというようなことではなくして、基本的な考え方として、まだ在外同胞がこれだけおるのだと政府が数字を発表しておる以上は、その数字の人が全員帰還してくれることを前提に置きまして予算の立て方をすることが、人道政策を盛り込んだ政治としても大事なことじやないか。およそ五千人くらいだろう、中共から三千人くらい、ソ連から千五百名、南方その他からも何人かもどる、――南方その他にはもうおらぬといろ数字になつておると思うのですが、南方その他までも計算に入れておるということになると、数字のないところにあなた方は架空の計算をするということになるわけですが、生きた英霊の数がこれに入るわけです。私この間本会議でも質問したように、フイリピンには千名に近い残留元日本軍人がおる、こういうことが言われている。こういうことについても、在外同胞が何人いるかという全員をその算定基礎に置くということが、人道政策を盛り込む意味の政治の要諦としては大事なことではないかと思います。この五千人という数字はまことにあいまいな数字であつて、厚生省がまあこのくらいだろうというので今この線を引いたとおつしやつたのですが、まあこのくらいだろうというような線よりは、はつきりとした数字があるのですから、過去の昭和二十二年、三年、四年と、あの同胞引揚費の計算の基礎は常に数字の上に表われた残留者を基本にしておつたのですが、これに切りかえる必要はなかつたか。過去の歴史上の同胞引揚費の算定基礎と、今日変更されたいいかげんの算定基礎との比較検討の上に立つて、新しく最後の引揚げ問題処理の重要使命を持つた田辺援護局長の御答弁を願いたいのであります。
#44
○田辺政府委員 ただいま受田委員から、過去における引揚げの問題に対する予算的措置の数字上の根拠について御質問でございますが、これは大事な問題であると思いますので、一応御説明申し上げておきます。日本政府が残留者に関する数字を発表すると申しますのは、これは、私どもはかねがね人道問題であるというだけに常に真実を基礎としてこの問題を取扱わなければならぬということを痛感いたしております。そこで、現在ソ連、中共に何名残つておるかということの確実なる基礎をつかむということは非常に困難でございます。これについて、ある程度あてずつぽうで、これくらいいるだろう、あるいはこれくらいいるはずだ、こういうことではいろいろ誤解を生じ、問題を紛糾させることになるわけでございます。私どもは、現実に私どもが向うに行つて調査するわけに参りません。いわばカーテンに映つた影の数字をもつて満足するほかはないわけでございます。こういつた立場から調査を進めて参りますると、現実をそのまま数字に表わすほか、しかたがないわけでございます。昭和二十三年に生存していてその後一向消息がわからなくなつたという人については、昭和二十三年度に生存資料があつたということを率直に発表しておるわけでございます。現在政府が発表しておりまする未帰還者の統計表というのは、よく読んでいただきますると、事実をありのままに表わしておるわけでございます。これは、現在その者が全部生存しておるということでもないし、その人がどうなつておるかということもわからない結果、二十一年度において最後の生存資料のあつた者がその程度のものであつた、そういうことで計上しておるわけでございまして、これが全部今日ソ連なり中共なりに生きて残つておるのだという確実な判断を下す根拠もないわけでございます。また、そういうふうな取扱いをするということ、またそれが全部生きておるのだということに指導するということは、留守家族に対してもどうかと思うわけであります。この点は非常に大事な点でございます。そうかといつて、全部死んでしまつたということをもちろん言うわけには参りません。その点はむずかしい問題でございます。現実にも、古い生存資料があつた中から帰つて来られた方もおるわけでございます。そういつた関係で、そこが未帰還者というものの考え方なり、未帰還者というものの数字の実態でございます。そこで、かつて何万という数字を計上してやつておつたという時代は、国内における調査が十分進捗しなかつた結果、一応計上したのでございますが、その後国内におけるいろいろな調査が進むに従いまして、いろいろな実情がわかつて来た。そこで、その統計上の数字その他諸般の情勢から判断いたしまして、一応この程度ということになつたのはやむを得ないと思うのでございます。これを全部計上するということになりまして、残留者が全部必ず生きておるというふうにお前たちは判断するか、こういうふうに御質問がありますれば、われわれはそれに対して確信ある答弁はできないわけでございます。今日のいろいろな事情から判断いたしまして、まあ一応の数字を計上したということはやむを得ないのじやないか、こう考えておるわけであります。御質問の要点は、政府が発表しておる数字は、残留者がこのくらいということだから、それを計上すべきじやないかというお話でございますが、残留者という考えはとつておりませんで、未帰還者という考えをとつておるわけでありまして、未帰還者というのは、今日そのすべての人が生きておるという確実な判断を下すだけの基礎がございませんので、これは中には相当多数の死亡者が含まれるのじやないか、終戦直後における生存資料があつただけであつて、その後杏として消息のない方につきましては、それが死亡したと考えられる公算も相当多いのではないか、これは種々の情勢から判断いたして常識でございますので、残留者総数幾ら、それに対して幾ら予算を計上するという考え方はとれなくなつた次第でございます。
#45
○受田委員 そうすると、中共には三千名というある程度確定的な数を盛られたわけです。それからソ連は千五百名。中共には政府自身は最初五万有余おつたとして、今度二万六千が二十六年、七年度に帰つたとして、まだ二万有余の残留者がおると政府は見ておるわけです。まだ残留者がどれだけおつたか、確実なる中共地区引揚者の談話を総合してみましても、確実なる情報に基く残留者は四千名から五千名はもう確実に数字の上に出ておるということを全協その他からの資料によつても私はこれを聞いておるのですが、この四千ないし七千という残留者がまだ中共におつて、こちらに帰つて来るのを待つておるのだ、こういうことになると、中共三千人ということは、これは三万人のうちで二万六千帰つたからもう四千人、そのうちの千人くらいは死んでいるか、または現地にとどまる者もあるだろうから、三千人、こういうふうないいかげんな線を引いておるのではないか。現に残留者ということになるならば、生存が確認されておる人の数字をきちつと出して、その人を算定基礎にする方が厚生省としては正しい見方じやないか。この点をひとつお伺いいたします。
#46
○田辺政府委員 昨年中共からの引揚げがあり、またその前から中共からは通信が来ております。これらを総合いたしますると、昭和二十五年以降生存しておる者は七千名ないし八千名くらいあつたと思います。われわれはこれを全部を対象とするということも一応は考えられるわけでございますが、その数字の中にはいろいろな方が含まれております。現地においてすでに結婚をされた方その他がございまして、これらが一挙に全部本年度において帰つて来るかどうかについては必ずしも確信が持てないわけでございます。いろいろな事情がございまして、われわれは三千名を計上したのでございまするが、もちろん、これだけ帰つて来ればあとはどうでもよろしいという考えを持つておるわけでは毛頭ございません。われわれは、今後も引揚げ促進運動なりあるいは日本赤十字社その他の方の御尽力によつてもつと大勢の方が帰つて来られれば、もちろんそれに越したことはありません。これは、先ほど申し上げました通り、一応これだけの数字を計上したということでありますので、これ以上の方々が残つてない、あるいはこれ以上の方々が帰る見込みはないという気持は毛頭ないのでございまして、この点よろしく御了承願います。
#47
○受田委員 田辺局長は、残留者を基礎にして考えてみたい、そうしてまた、留守家族の方の立場を考えても、行方不明などではつきりしない者が帰るというようなことなどの想定もなかなかむずかしいのだということになれば、はつきりと生存を確認されて、通信あるいは引揚者によつて生存が確認された、いわゆるはつきり現地に残つておることが認められた人は全員帰るという想定の予算を立てていただかなければ、私は筋が通らぬと思うのです。まあ七千、八千中共にはおると見られる、しかしこれは皆はとうてい――現地で結婚した者がおるだろうということは、これは留守家族の気持から言うとたいへんなことです。留守家族は現地結婚していてももどつてもらおうと思つている。その七千人という人は皆お帰りいただくという期待を持つておる。この期待を持つておる留守家族に対して、七千ないし八千人という数字をきちつと入れておけばよろしいのです。七千人なり八千人、あるいははつきりした数字があれば九千人でもよろしいし、多少余分をもつて中共一万人というような基準に置いておく。あるいはソ連は、戦犯だけで千四十七名、今度第一次に帰つている人によつて千四百三十何名かの生存確認者がある。これは戦犯を含められておるから、重複する点があるが、第二次を入れると、また千五百名をはるかに上まわる数字になつて来ておるのです。こういうことを考えると、ソ連における数字もできればはつきり残つていることの確認された数字を確保してもらいたい、こう思うのです。また、南方その他を数字に入れられたというのは、これは何を基礎にされたかははなはだ問題になるのでありますが、フイリピン等に残つているという者を基礎にするならば、これははつきりしてもらいたい。きようも和歌山県の海南市の小町田穂次郎という人から私に手紙が来ています。「謹啓ますます御健勝大賀に存じ上げます。私は南方ルバングに残存する旧軍人小野田寛郎の父でございます。いわゆる戦場の落穂の上に御心をかけられましたことに対して厚く御礼を申し上げます。」こういう意味のものが来ておるのであります。つまり、南方のフイリピンのルバングにその人が残存することが確認されておる、そのお父さんが私にたよりをくれておるのです。こういう確認されたものは、この人が帰ることを予算の上でちやんと想定に入れてもらわなければならぬ。この小野田という元軍人の帰還も想定に入れる、こういうふうにして残存者ははつきり数字の上に表わすというふうにしてもらいたかつたのです。この点について、厚生省として、何かこの数字を計算される際に大蔵省へは相当大きな要求をされた、しかし大蔵省から削られたというような経緯があるのか、あるいは初めから厚生省が五千人の予算で出されたのか。この五千人の予算を出されるときの算定基礎は今局長がおつしやつたようなことであるならば、なぜ基本的にはつきりと生存の資料のある人は全員帰つて来ることを予算の上に出してもらえなかつたか。私は国民的な人道主義の上に立つ厚生省の政策としてはまずかつたと思うのでありますが、この点について御所見を伺いたいのであります。
#48
○田辺政府委員 率直に申しますと、厚生省としてはもつと大きな数字を要求したのでございますが、いろいろの事情から、一応この程度で予算にしておいて、もつとたくさん帰る場合においては予備金その他によつてまかなうということでございましたので、一応こういう数字になつた次第でございます。
 それから、南方関係につきましては、実は現地復員というのがございまして、現地にとどまりたいと言つて残られた方が相当あるわけでございます。その気持がかわりまして内地へ帰つて来たいという場合におきましては、私どもの方で個別的に船運賃を負担いたしまして、お帰りいただくよういろいろお世話しております。中に現地の方と結婚されて帰りたいという人もあります。その場合におきましては、本来から申しますれば本人だけの船賃であるべきはずでございますが、現地の奥さんも連れて帰りたい、一緒でなければ帰らないという状況も考えまして、そういうふうな措置をとつておるわけでございます。そういう事情で南方の帰還者があるわけでございます。これは、南方の帰還者がいないということではございませんので、当時現地復員をした関係上、御自分の御希望によつて残つたような人は現在おられます。その中からぼつぼつお帰りになる方がおられますので、そういう方をお世話しております。それからまた、先ほど南方のルバング島のお話もございましたが、私の方ではルバング島に三名おられることを確認しております。これにつきましては、外務省を通じまして、ただいまお読み上げになりましたそういう家族の方に直接現地に行つていただきまして本人を説得したならば本人も了として折れて来るのではないかということで、フイリピン政府に対しましては、外務省を通じまして、こちらから家族ともども行つて説得工作をやりたいということを申し出ておりますが、いろいろな事情でまだ実現に至つていない状況であります。
#49
○山下委員長 この点に関して南方諸地域における残留者の状態及び戦没同胞の遺骨収容に関する件について外務省から概略御説明願います。鶴見アジア局第五課長。
#50
○鶴見説明員 南方諸地域のいわゆる残留者の方々の問題につきましては、ただいま田辺援護局長からお話がありましたように、大部分の方々が現地復員という形で現地に残られた、また現地の人と結婚をされた、あるいは子供をもうけて生業についておられるという方も相当多数ございまして、この方々が何らかの事情によつて内地へ帰つて来たいという場合には、ただいま援護局長のお話がありましたように、船運賃国庫負担の方法によりまして、できるだけ引揚援護局の仕事に協力して参つておるわけでございます。外務省といたしましては、南方で現地復員をされた、あるいは御本人の御希望によりましてそれぞれの諸地域に残つておられる方々を全部本人の御希望に反してまで内地に帰つていただくように説得するということは考えておりません。特に本人の御希望によつて残られる、また現地政府においても受入れられておるというときにおきましては、できるだけそのままそこで引続き残つていただくという考え方になつております。但し、もちろん御本人の希望で帰りたいという場合には、ただいまのような方法によつて外務省も協力して行くわけであります。
 それから、南方の遺骨の問題について委員長からお話がありましたので、簡単に申し上げますが、南方の遺骨につきましては、一昨年の第十三回国会だつたと思いますが、その際の決議に従いまして、原則としましては、南方で戦没されました方々の遺骨を内地に還送し、またできれば現地において慰霊をするという方針をとつておりまして、その方針の実現といたしまして、昨年初めには太平洋各島の遺骨の内地還送及び慰霊が行われましたし、また昨年夏には米領のアツツ島、アラスカのフオート・リチヤードソン等の遺骨内地還送及び慰霊が行われたわけであります。但し、南方の遺骨は相当に残つておりまして、特に英領地域、オーストラリア領地域、オランダ領地域というものに残つておりまして、それぞれ関係国政府には申入れをしております。イギリスの方からは、原則的に内地への還送あるいけ遺骨の慰霊というものについて同意が来ております。ただ、先方からの要求によりまして、具体的な計画というものを出してほしいというので、援護局の方からそういう計画を出していただきまして、現在イギリス側と折衝しております。オーストラリア地域につきましては、何分オーストラリアの政府及び国民が、新聞等で御承知のように現在対日感情が非常に鋭敏になつておりまして、たとえばニユーギニアの賠償問題というものが新聞に伝えられる、あるいは米軍によるニユーギニア付近の測量作業に日本人技師を使用する問題等がありまして、これがオーストラリア人の感情を非常に刺激しておる状況でありますので、そういう点を勘案しつつ濠州政府の方に申入れをするという態度で臨んでおります。オランダの方につきましては、一昨年末にすでに申入れをしておりますが、現在のところまだ何ら明確な返事がございません。
 大要以上で、南方に残留しておられる方々及び遺骨の還送についての外務省の方針というものについて御説明申し上げた次第であります。
#51
○田辺政府委員 補足的に御説明申し上げます。英国地区につきましては、昨年の十二月に好意ある回答が参つておりまして、これは向うでも了承してもらつておると思います。濠州地区につきましても、原則的には了解を得られるものだとわれわれ見ております。現在政府といたしましては、遺骨収集の時期、収集する場所、行程、気象、医療施設など、非常にこまかい調査をやつております。もちろん、その中には当該国に聞かなければわからない事柄もありますので、それはさらに細目をきめまして向うにいろいろ問合せをしたいと思つております。遺骨の収集をする場所は、日数等の制約もあるので、いわゆる玉砕地について行うようになるだろうと思つております。これは、今後の内部事務の進捗状況、あるいは当該国のこちらへの回答の到達見込みというように、いろいろなことを考えなければなりませんが、政府から派遣団を派遣することができる時期は、早くても今年の秋くらいになるのではないか、こういう見当であります。それを一応の目安といたしまして、いろいろこまかい準備を急いでおります。
#52
○受田委員 どうも、時間が長引いてたいへん申訳ないのですが、もう一点伺います。アジア局第五課長及び田辺局長によつて南方諸地域の残留者の問題について説明を聞いたわけですけれども、この間私本会議でお尋ねして、どうも釈然としなかつたことがあるのです。今田辺さんも、現地に宣撫班というような意味で留守家族を出すように交渉しているというお話があつたのです。しかし、フイリピンとは、条約こそはできていないが、平和的な、りつぱな交渉関係にある国なんです。その国が、いかに地域が厖大だとはいえ、そこにおる旧日本軍人に討伐命令を出して撃ち殺すというような、そういう命令が参謀総長から出されたということは、これはどう見ても納得できないのです。今の小野田寛郎さん、これは元少尉だつたらしいのですけれども、この人を中心に三名か四名かは、はつきり氏名がわかつておるとあなたもおつしやる。またAP通信は千名に近い同胞が残つておると伝えておる。それを外務省としてはなぜもつと積極的に交渉していただけないのでしようか。少くとも、アドバルーンを掲げるとか、ラジオで呼びかけるとか、あるいは留守家族を持つて行くとか、現地人によつてやるのではなく、日本人がこれをやるということで最善を尽すならば、山奥にひそんでおる人も、日本人の血が流れておる人であるならば投降しますよ。それが十分手が尽されていないと思うのです。もつと外交的に、フイリピンに人道的に呼びかけて、強くこの問題の処理をはかつてもらいたい。もう促進命令が出ておるのですから、いつ撃ち殺されるかわからないのです。討伐命令といえば、武力をもつて、弾丸を撃ち込むのですよ。撃ち殺された後では万事休すです。これはお互いのことです。われわれの同胞が弾丸を撃ち込まれるという、このフイリピン参謀総長の命令は、われわれにとつてはほんとうに胸迫るものがあるのですが、どうですか。外務省としては、あのとき岡崎さんは、今調査を命じておるとかなんとか言われたけれども、その後何か課長さんの方で情報を入手されておりませんか。あるいは田辺援護局長の方で、厚生省としての立場から何か入手しておられませんか。これは非常に火急な問題であつて、荏苒月目を費すべき問題ではないのですが、ひとつその間の渉外的事情の御報告を願いたいのであります。
#53
○鶴見説明員 先日二十三日のAP電報の記事に関しての受田委員の御質問と存ずるのでありますが、あの討伐命令が出たという話によりまして、フイリピンのマニラにおります公使は即座にその事実のいかんを尋ねておりますし、さらに、もし事実とすれば、討伐を実際に行う前に人道的考慮からあらゆる投降勧告の手段を講じてもらいたい旨申し入れる一方、そのために必要があるならば日本内地から投降勧告のために家族その他の人を派遣する用意があるかどうかということを外務省に聞いて来ております。それに従いまして、さつそく援護局長に話をいたしまして、そういう用意があるから、とにかく討伐する前に人道的な考慮からあらゆる投降勧告の手段をとつてもらいたい、また必要があれば日本から投降勧告の人も派遣するということをフイリピンに申し入れさせております。現在までのところ、その結果につきましては現地から報告は参つておりません。われわれとしては催促はいたしておりますが、現在のところ参つておりません。しかし、そういう態度で現地ではフイリピン政府に当るように、すでに訓令もいたしておりますし、追つてそれについての結果が明らかになつて来るものと思います。
#54
○山下委員長 本日はこれにて散会いたします。
    午後一時十分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト