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1953/12/02 第18回国会 参議院 参議院会議録情報 第018回国会 本会議 第3号
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1953/12/02 第18回国会 参議院

参議院会議録情報 第018回国会 本会議 第3号

#1
第018回国会 本会議 第3号
昭和二十八年十二月二日(水曜日)
   午前十時十九分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第三号
  昭和二十八年十二月二日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
 日程、第一、国務大臣の演説に関する件。(第三日)
 昨日に引続き、これより順次質疑を許します。深川タマヱ君。
   〔深川タマヱ君登壇、拍手〕
#4
○深川タマヱ君 九月九日成立する予定であつたというMSA交渉が、十二月の今日、未だに停頓いたしておる事実に対しまして、国民の間では、吉田総理が、安保条約以来、アメリカに対しては軍備をすると言つておきながら、国民に対しては、さも米国に抵抗するかのごとき印象を与えて、国民の歓心を買わんとしておる態度が、アメリカの感情を刺激して交渉が停頓しているのだと申します。外務大臣は、保安隊の計画が未だ十分立つていないので交渉が遅れているとも言われます。恐らく改進党との間で協調しようとしておる保安庁法の改正のことを言うのでありましよう。独立国には若干の防衛力の必要なことは当然でありましようが、又、今日の私の立場からはこの例の挙げ方は適当でないと存じますが、他に適当なものがございませんので、取りあえずこの例を引くのでありますが、要するに、言わんとするところは、真の民主主義は飽くまでその国の国民多数意思の納得する方法によつてすべてが、行われることでございまして、たとえ、そのことが地球の大所高所から眺めましたときに必要なことでありましても、国民の理解と納得、そうして自発的協力に基かず、他国から強いられて実行するようなことでは、それは、やはり形の変つた一種の指導者政治で、逆コースであると言わなければならないと考えます。昔から日本には「長いものには巻かれろ」という諺がありますが、今日の日本のごとく、金もなければ軍隊もない弱い国は、或いは強い他国の熱心なるてこ入れによりまして干渉されますならば、日本人の中にも名誉の欲しい人も金の欲しい人もたくさんいると思いますので、場合によりますと、長い目で見ますと外国のかいらい政権ができないとも限りません。金がないと言えば、お前の国の財政はここのところが持ちようが悪いと一々内政干渉されて思う壷に持つて行かれるのでは、曾つての大隈内閣のときの中国に対する二十一カ条問題のごとく、やはり見ている日本人には腑に落ちかねるものができるでありましよう。吉田総理大臣が、今日たとえ、米国よりMSA援助を受けるにしても、なまなましい軍事費の形をとらず、不作の年に贈与の小麦を国民に売つて、その金で自分でみずから日本の防衛隊を作ろうと装おおうとさえされるそのお心持は、私は一国の責任者の態度として苦心のほどを深く察しております。今日の吉田総理の立場は、やはり他日、次の総理大臣の早晩味わわなければならない問題でございましよう。ここ当分、弱い日本の首脳者の常に悩み続ける問題であろうかと存じますが、講和会議のとき日本は独立いたしたのでございます。一切のことは日本人の頭で考え、日本人の感情を活かし、日本人の一致結束いたした決断力によつて、悪いことを容赦なく退け、いいことを実行するという、日本のあるべき本然の姿を取返さなければならない時期だろうと考えます。欧州においても、昨日までの敵視国が急に国境と主権を超えた単一軍隊を作らされるということは、なかなかにして国民感情の納得いたしにくいところで、その国民を率いて行く首脳者の苦心も思いやられます。ヒステリツクに、神経質に、未だ成熟していない麦を引抜くような拙速な手段でなしに、その国その国の国民精神の成熟を待つて、すべてのことは国民と共に歩むという態度こそ大切だと存じます。日本の自主性のことにつきまして、折角吉田総理のこの上ながらの御健闘を祈る次第でございますが、これに対しまして何か御感想がありましたら承わりたいと存じます。
 なお、ニクソン副大統領が日本に来られました頃から、どこからともなく、米国は、日本が、近い将来、韓国並びに国府と防衛協定を結ぶことを望んでおるようでございますが、私は、恐れていましたものが余りにも早く来たような気がいたしまして、今日の世界の外交のテンポの早さに驚いております。作成いたしつつあります保安隊にさえも海外出兵は禁止する項目を入れたいと言つているとき、まさかこんなことが結ばれるとは思いませんけれども、韓国は三韓の昔より、日清、日露とアジアの戦いのいつも中心地をなした宿命的の地であります。且つ必ずしも強いと言えない。かかる戦争の多い国と共に守る条約などは、今日の日本、いや、近い将来の日本といたしましては敬遠いたさなければならない問題であろうと存じますが、如何でございましよう。
 更に東南アジアの賠償問題は、戦勝国と戦敗国同士でなく、而も戦後八カ年、やや復興いたした今日の時期におきまして決定いたしますことはまずいところがあると存じますので、米国に仲介を頼みまして安く決定してもらうようにして早く解決してもらい、そうして米国資本と日本の技術の合体によりまして早く開発して、貿易を急がなければならないと考えますが、如何でございましよう。
 なお、中共のことでございますが、英国は早くより中共貿易には関心が深く、米国でさえも近頃は日に月に中共に接近しつつあると開いております。日本に対しましても、韓国における政治会議が無事成立いたしましたならば、アジアで経済会議を開き、日本が中共貿易に積極的に出ることをむしろ米国は慫慂しておるようでございますが、私はできるだけ敵国に廻す国を少くいたしたいと存じますし、日本の経済自立のためには、やはり手遅れになつて、中共が英米の市場になつて、日本は手も足も出なくなるようなことにならないように、適当なる時期に経済外交のことも考えねばならないかと存じます。以上総理に対してお尋ねを申上げます。
 次は自立経済のことにつきまして諸大臣にお尋ねいたします。
 今日の日本政治の中心課題は独立の完成でございますが、而もその基礎をなすのは経済自立でございます。人口に比較いたしまして資源の少い日本は、当然貿易への依存度が高く、而も今日、輸出十二億、輸入が二十一億ドルという悲観的状態で、七、八億ドルの特需と米国の援助によつて辛うじて均衡を維持しておるという、誠に心細い状態でありますことは、国民ひとしく銘記いたさなければならないことだろうと存じます。速やかにその本源を正し、抜本塞源的に措置いたさないことには、経済自立は困難だろうと存じます。
 第一は、日本経済自立の基盤を形成すべき最も重要なる時期に、対日援助金初め貴重なる国民資本が、基礎産業とはゆかりのない不急不用の消費的支出に濫費されたということは、人間の理性を以てよく到達したと思われるまでに、マーシャル・プランに基く対独援助金を、明日の生産費の軽減のための基礎産業と合理化に振り向けたドイツとの間に大きな差を生ずるに至つたことは、返す返すも残念でございます。今からでも遅くはございません。今度こそは借款その他の融資を基礎産業のために最も合理的に使用しなければならないと考える次第でございます。今から申しても遅いこととは存じますが、朝鮮動乱による特需を天祐だと謳歌いたしておりましたときに、私どもでさえも、この席から、あれは臨時収入だから経常支出にいたしてはならない。今日以後の国民生活をより豊かにするための基礎産業の拡充に充てるべきだと主張いたしたことを今も覚えております。又ドツジ・ラインによる緊縮財政のとき、物価安定の処置として強制貯蓄の意味で必要以上に重税をかけたときも、その金を大蔵省の金庫で遊ばせてしまつたということは取返しの付かないことだろうと存じます。なお、講和会議のときに、日本の国内で留守をいたしておる者たちは、賠償その他の負担に耐えますために耐乏生活をしなければならないと決心いたしたにもかかわらず、ワシントンより帰られた外交使節の人たちは、口を揃えて減税だとのみ言われます。緊張いたしておりました国民心理は、むしろ拍子抜けがいたしたような気がいたして、一時、精神の弛緩を来たしたかと存じます。政治は国民の心理の洞察別大切であります。「鉄は熱しているうちに打て」という諺もございますように、国民と呼吸を合せて、消費節約、労働能率の増大、国民総蹶起運動でもしていたならば、今日のごとき軽佻浮薄の消費国とはならなかつただろうと考えるわけでございます。併しすべては時すでに遅うございます。
 更に資本の問題でございますが、今日は借款のことにつきまして、外国から五分の利息の多額の借款をいたしておりますが、一方におきまして、日本では手持外貨を持て余しまして、英米の三十カ所ばかりの銀行に一分六厘五毛という低利で預けておきまして、外国では盛んにその利鞘を稼いでいるということでございますが、ああいう外貨がありますならば、あれを使つて産業合理化のほうに注いでは悪いのだろうか、こういうことを大蔵大臣にお尋ねいたすわけであります。
 更に蔵相はインフレ克服が何より大切だと言われますが、それは全く私たちと考えを同じくいたすところでありますけれども、蔵相の今回の補正予算の態度を拝見いたしますと、その主張とは全く異なつた方向に進みつつあるのではないかということを心配いたすものでございます。まあ公務員のベース・アップは暫らくおくといたしましても、優に一千億以上の膨脹をこれで来たすほかに、蔵相は、補正予算は膨脹するけれども、来年度予算は緊縮すると言われるけれども、さような手品はなかなかいたしにくいことでございますし、政府は、鉄道運賃、郵便料金、専売品の価格の引上げ、更に来年は電気料金の引上げさえも考えられていると言われますけれども、インフレ撲滅という現下健全なる政党に課せられた使命の貫徹について如何なる御決心をされているか、承わりたいのでございます。
 更に、政府はこの予算で消費米価を現行十キロ六百八十円から七百六十五円に引上げんとされておりますが、米価を上げても家計へのはね返りは〇・〇一であると言われても、米価の値上りは心理的影響が大きく、家庭の安定感を脅かし、配給米価が上るとエンゲル係数の高い日本の勤労者の家計に影響を及ぼしては、労賃の引上げ要求は燎原の火のごとく燃えさかることは当然のことでございます。国内はインフレになりまして、輸出梗塞を来たすことは火を見るよりも明らかなところでございます。私たちはそれよりも、税制調査会の答申の通り減税を断行することによりまして、名目賃金は上らずとも、実質賃金の上昇によりまして、低額所得者の生活安定を保ちつつ、インフレも防止いたしたいと考えるものでございます。即ち、勤労所得者の基礎控除を六万円から八万円に引上げ、更に扶養家族の長子に二万五千円、次男以下二万円控除いたしますと、一カ月二万円以下の所得者は所得税を納めなくてもよいという計算になります。これはひとり公務員のみならず、百姓も工場労働者も一様にこの恩典に浴するわけでございます。
 ついでだから申上げますけれども、目下官公労組では、先日、中労委の裁定が行われたのに実施していない、公務員の裁定を割出させておいて、政府はそれに従わぬ、有名無実であると、連日国会に押しかけて騒いでいるようでございますが、政府は今後仲裁裁定というものを如何ようにお取扱いになられるのか。一般国民の聞きたいところだろうと思いますので附言いたします。
 次に、自立経済の達成のためには輸出の不振に対応して輸入の制限を図らなければなりません。輸入の王座を占めるものは何と言つても主食でございます。首相は今回粉食の奨励を調われていられますが、日本人は、小麦の作付よりも、むしろ今後は大麦を殖やしまして、慣れている押麦にいたしまして、それを米と混合いたし、完全配給をする上、「いも」類を主食に振向ける工夫が一段と大切だろうと考えます。私のうしろにおられます参議院の河井議長は「いも」の増産の名人でございますが、一反歩から二千貫の収穫は可能だと言われます。これが解決いたしますと、主食は自給自足ができると言われますが、保存、輸送の便利のためにも、農村の主婦の内職によつて小さく刻んで乾燥させて、あく抜きの操作をしまして、米と押麦と「いも」とを混合して配給いたしますならば、手もかからず、この国民運送をますますして下さいますならば、主婦は助かるばかりでなく、金持だけが米を食べるのでなく、これは国民一様に平均いたした自給自足の食生活ができるのではないかと考えるわけでございます。
 次に、不健全なる金融から来るところのインフレ防止のために、今後は内閣に投資計画委員会でも設立してもらつて、合理的運用を厳重に監視してもらいたいと考えるのでございます。最近、又々、開発銀行が無責任なる投資をしている事実を聞いております。国民共同の蓄積資本が個人の利益のために流れるということは、インフレ防止と共に極力警戒いたさなければならないことだろうと考えます。これと関連いたしまして、最近、保全経済会が多数の良民に深刻なる打撃を与えておりますが、これなども、零細なる国民の資本をかき集めておきながら、不要不急の方面に投資されるという意味におきましては、国家自立経済の立場から考えても又遺憾なことでございます。地主、家主が存在しにくい今日、国民は零細なる資本の増殖の途なく、遂に弱点につけこまれて、かようなワナにかかるわけでございまして、今後は国家が代つて、何かそれこそ相当有利な建設事業に投資させるよう、大蔵大臣の施策が必要かと考えます。又法務大臣は、たとえ巧妙に仕組まれて取締の方法がなかつたとは言え、早晩、良民が悲歎にくれる時があることがわかつておりながら、今日まで放置されていたということは、国民かち怠慢のそしりを免れないことだろうと考えます。今後これと同様の匿名組合などの危険なる金融機関から国民を守りますために如何なる御処置を考えられておるか、承わりたいところでございます。
 過般、吉田内閣は、施政五カ年の祝賀会を開催された由で、誠におめでたいことでございますけれども、吉田内閣の万歳の声が上野の山にこだまいたしましても、心から歓喜に満ちてこれに唱和することのできない国民の存在することも忘れてはならないことだろうと考えます。終戦後八年、未だに街頭には身売りする女性が絶えません。そうしてこの誘惑のために落伍して行く多くの前途ある青少年が絶えません。私ども衆参両院婦人議員は、このたび、これが救済のために何とか成功させたいと努力をいたしておりますが、一昨日も横須賀に視察に参りましたところ、一泊三千円の支払の山わけを受ける特飲街の主人は、一般遊興飲食税並みに、九人の婦人を擁していて、これは年に百万円の税金を県に納めているということでございますが、今日、日本の財政は、その地方財政をも含めて一見収支償う健全財政のごとく見えても、その財源はかかる厭うべき方面から流入いたすといたしますと、賭博と共に、収入の点におきまして極めて不健全財政と言わなければならないと考えます。売淫を法で取締ることに疑念を持つ人もございますが、さりとて現在の実情のままで放任しておけないことも又御異存のないことと考えます。私どもはできるだけ保護救済を主眼といたしまして、悪性なるもののみ法によつて取締る方針で、行き届いた保護観察制度、優先的就職斡旋、職業補導、保護者への引渡し、業者の罰則等々、目下協議中でございますが、総理初め、これが責任の地位にある文部大臣、法務大臣、労働大臣、厚生大臣は、果してこれに対して抜本塞源的な緊急対策をお考えか。今度こそは私どものよき指導者になられまして、国辱問題でもあり、多くの社会悪の原因を取除くために、格別なる御配慮を賜わりたいものでございます。
 時間の関係がございますので、最後に項目だけを並べます。戦犯釈放の交渉顛末につきまして法務大臣から、更に災害地の人身売買とその取締の現状につきまして厚生大臣と法務大臣から、更に冷災害地の欠食児童の救済状況を厚生大臣から、それぞれ御答弁を頂きたいと考えます。
 私の質問はこれで終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 外交の自主性について縷々お話がありましたが、御同感であります。敗戦後の日本として、とかく圧迫を受けはしないかとか、或いは政治が外国の指導によるのではないかというような臆測が随分行われて、そのために、あたかも、ここに具体的に申せば、アメリカの圧迫がありはしないか、アメリカによつてすべて内外の政治が指導されておるのではないかという話をよく開きますが、米国との関係は親善であります。圧迫を受けたり、圧迫によつて指導さるるほど、それほど日米の関係は疎遠ではないのであります。話合いにしても、圧迫というようなことは断じてないのでございますが、とかくそういう議論があつて、その臆測から外交を論ぜらるることは、米国としても日本としても甚だ迷惑千万であります。これは当局者として申上げますが、日米の間に圧迫とか、或いは圧迫を受けるというような形跡は、今日まで断じてないことを、私はここに断言いたします。(「あなたは本当のことを言つていない」と呼ぶ者あり)本当のことを言つておる。国民が私の議論を承知するか或いはしないかということは、国民の判断に待つ以外に方法はないのであります。戦犯問題については、飽くまでも政府としては関係国との間に懇談を尽しております。やがてその結果は現われる、又現われつつあるのであります。その他の問題は主管大臣からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(小笠原三九郎君) 深川さんにお答えいたしますが、十億ドルの外貨を持ちながら、一分六厘三毛で外国銀行に利鞘を儲けられて、何故五分の高金利で金を借りるんだというお話でございますが、実は御承知のごとくに、この十億ドルというのは、アメリカ側とのいろいろな援助その他の関係から起つて来ているのが大部分でございまして、而もこれが今日の状況では、長く持ち続け得るかどうかということに対しては、相当な今後努力を要する次第であります。特に本年のごとく貿易が弱小になつて来、更に又特需を加えても恐らく一億ドルくらいの赤字になろうと考えられておる。
   〔議長退席、副議長着席〕
 更に又、食糧の輸入その他等の問題もありまして、そういう際でございまするので、これぐらいの金を実は持つことが必要なのであります。更に、今の一分六厘五毛と言われるのでありますが、実は三ヵ月一分七厘三毛の定期で預けておるのでありますが、今度借入れる火力借款は御承知のごとく二十カ年であります。こういう長期のものは、これは当然借りておくことが日本に有利なのでやつております次第で、外貨の利用等については、私のほうでも十分に配慮いたしております。
 その次に、税制調査会の答申等に聞いて、年収二十四万円以下のものを無税とすべきではないかという御意見でございます。これにつきましては、私ども税制調査会が二十数回も会合を開かれて熱心に御研究下さつたことに対して、十分これを尊重する考えでおりますが、二十九年度予算編成に当つては、これをどの程度まで実行し得るか、その他のいわゆる歳出とも睨み合せまして、できるだけこの線を織り込みたいと考えております。更に保全経済会についてのお話でございましたが、これはまあいわば法の盲点に乗じて多数の者にああいう迷惑をかけた。これは金融機関でなく、一種の投資機関であることは申すまでもございません。従いまして、私どもは、今後こういう不特定多数の者から信用を受ける、受信行為をする者に対する取締は必要であろうと考えまして、目下法務省とも打合せをいたしておる次第でございます。
 なお、ペース・アツプ等で来年度は予算が膨脹するが、それではいわゆる均衡予算とか或いはインフレ阻止ということとは違うではないかというお話でございます。この点につきましては、それのみを御覧下さると、そういうことも申せないでもございませんが、私どもは、明年度予算の編成については、飽くまで総合的な均衡予算の方針を堅持しておるのでありまして、又ベース・アツプにつきましても、これは一方、行財政の整理を徹底的に行なつて、相当歳出を減少する方法をとりますると共に、既定経費その他のものにおいても相当大幅な削減を行なつて、極力財政規模の圧縮をする考えでございますから、さような懸念はないものと御了承願いたいと存じております。
 更に、鉄道運賃とか郵便料金とか米価の引上げ等が、結局自立経済に逆行するのではないかという意味のお尋ねでございましたが、これにつきましては、実は私どもも、特に米のごときものは、これはでき得る限り上げたくない考えであります。併しながら、今年の米は、昨日も申上げましたごとく、若しコスト計算をやると十キロ八百九十円につくのであります。それで、それが直ちに家計米価に響くことが非常に困りますので、先ず今の特別会計に三百四億円あるから、それで措置し得るものを一応措置して、あとについての分だけを国民消費者各位に負担を願う、こういうことが七百六十五円となつた元でございます。この点につきましては、私どもはまあ理窟的に言いますと、数字的に言えば〇一八七%ぐらいのことでございますから、そう大きな影響はないと存じますが、お話のごとく、できるならこれを上げたくないということを私どもは常に考えております。けれども、今申上げた通り、それではこれに代つて赤字公債を出したらどうなるのだ、こう申しますると、昨日も申しましたごとく、二千百万石の配給に対して赤字公債を出すことになれば、米価を据置くとすると一カ年に約二百五十億円の赤字公債を出さなければならんので、それでは全般的にインフレを招来するから、やはり個々のものを忍んで頂くほうが全般的に見てよろしいという考え方からやつた次第であります。
 更に、運賃或いは郵便料金等の問題は、来年度の問題でございますが、これにつきましても、私どもは、公社なり企業体なりで、でき得る限り最善の注意を払つてもらつて、まあ経営の合理化等を徹底的にやつてもらつて、そうして収入の増加或いは支出の減少、経費の節減等で以て、できるだけ最少限度にとどめてもらいたいという考え方でございます。併し、それをやめて若し一般会計から出したらどうかということでございますれば、一般会計から出すことはインフレをもたらすことになるので、これは避けたい、かように考えております。なお、健全財政、健全金融等々と反対の方向に進んでおるのではないかというような意味の御質問がございましたが、これは私どもは一貫してその線で貫いているのでございまして、今後ともそういうことについては、二十九年度予算等では最も厳重にこれを貫き、現下の日本といたしましては歳出規模を圧縮することによつてこれをやり遂げたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣山縣勝見君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(山縣勝見君) お答えを申上げます。
 売春問題につきましては、たびたびこの本会議においても問題になり、御答弁申上げておる問題でありますが、これは婦女子の人権の否定という基本的な問題にも触れておる問題でもあり、又当然に人身売買をも招来する問題でありますから、何とかしてこの社会悪は除去したいという努力は政府も払つて参つておるところであります。従つて、それに対する社会風紀の紊乱という点からも、何らかの措置をとらなくちやいかんということも、関係各省においても寄り寄り協議を進めおるのでありますが、なお厚生省といたしましては、その他に性病の予防という問題についても、御承知の通り予防或いは治療に対しては万全を期しておる次第であります。なお、この売春問題につきましては、さような見地から、特に低額所得の婦女子が或いは人身売買される或いは転落いたしますることを防ぎますために、更生指導或いは殊にこの啓蒙に関する問題、或いは又生活保護の徹底等によつて何とかして転落を防止するという点、或いは仮に転落しても、それを更生指導をするという点に対して、重点的ないろいろな施策を講じておる次第であります。
 なお、お尋ねの凶作地における児童、子供の人身売買の点でございまするが、この点につきましても、政府も頭を痛めておる次第でありまして、これには先ず以て、今回の凶作の性質から申しましても、例えば先般の国会におきましても、救農土木、或いは失業対策、或いは営農資金等を出して、それらの面において農家の経済を困難からできるだけ救う、それによつて人身売買を少しでも少くするという点に対して努力をいたしておりまするが、併し何と言つても、これは例えば地域的には観念的に人身売買を何とも思わないというような風習の面もありまするから、これに対しましては、青少年問題協議会等が中心になつて啓蒙に努力をいたし、或いは又その他のあらゆる機関を通じて、例えば民生委員或いは児童委員等が指導いたし、或いはいろいろ斡旋をいたして、里親或いは児童の就職等に努力をいたし、なおその他、特に悪質のブローカーに対しては、関係各省と連絡をとりまして、かような人身売買のないように、できるだけ努力をいたしたいと折角、策を講じておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣犬養健君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(犬養健君) 御質問の諸般の点についてお答えを申上げます。
 先ず第一に保全経済会の問題でございますが、只今大蔵大臣からも申されましたように、法の盲点を巧みに衝いている行為でございますが、法務省といたしましては、昨年の秋頃から、どうも月八分、しまいには二分四厘とかになりましたけれども、そういうこと自体にどうも無理がある。社会の経済状態がブーム気味であるときには何とか行けるけれども、一旦経済が下向いて来たときには必ず破綻が来るであろうという予想をいたしまして、全国の検事の会同、殊に経済係検事の会同におきましては、たびたびこのことについて相談をしておつたわけでございます。金融法規その他の法規違反も考えられますので、最高検が主となりまして内偵をいたしておりましたが、犯罪を構成すると疑うに足る明らかな事実というところまで参りませんので、いきなり保全経済会その他の類似金融の機関の帳簿を押し入つて調べるというようなことも、又社会上いろいろ問題が起りますので、非常に実は、やりにくかつたのございます。やりにくかつた意味において荏苒日を過ごしたというお叱りに対しては、法務大臣はこれを甘受いたしたいと思います。
 そこで今後の問題でございますが、これは匿名組合と称しておりますけれども、気心の知れた少人数が共同経営という形をやつているのとは違いまして、伊藤斗福という人を見たこともない人がおりまして、而も頭から利息を確定、約束しているような気味があるところから見ますると、我々の常識における匿名組合でないような疑いもある。これらの点から勘案いたしまして先ほど大蔵大臣が申されましたように、広く不正規な受信業務をやつている類似金融機関のようなすべてのものを、大きく網をかぶせるような取締法規を考えておりまして、これは金融関係の問題で、大蔵省の御意見を伺わなければなりませんので、折角、今、事を急いで大蔵省と折衝しておる最中でございます。只今までのことについて手落ちがあつたようなお叱りに対しましては、謙虚な気持を以てこれを受入れたいと思います。併し今後こういうことがあつてはなりませんので、鋭意私も個人的に特に督励いたしまして、取締法規の成立を急いでおります。いずれ御審議を願いたいと思います。
 それから戦犯問題でございますが、これは対外交渉ということになりますと、厳密に申せば外務省の範囲でございますが、法務省に関する限りのことについて御答弁をいたしたいと思います。深川さんも御承知のように、現在までに、赦免、減刑、仮出所の措置を認められた者は二百五十名足らず、厳密に申せば二百四十四名でございますが、併し御承知のように、未だ巣鴨に服役中の者は、濠洲、フイリピンからの帰還者を含めてまだ八百五十二名あるわけでございます。これに対しまして法務省の態度は、二つのことについて今全力を挙げている次第であります。一つは全面赦免の勧告でありまして、これは御承知のように昨年の八月と十二月の二回勧告を行なつたのでありますが、又その後も機会あるごとに人を出したりしまして、全面赦免についての空気を打診しておりますが、率直に申しまして、未だ一斉に釈放しようではないかという空気にはなつておりません、なお一段の努力を要すると思います。第二には、平和条約第十一条に基きまして、仮出所、減刑、赦免の勧告をやつております。これは只今、中央更生保護審議会の委員長が諸外国にこの問題で行つておりまして、率直に申上げますと、従来の個々のケースについての赦免、減刑の勧告の、何と言いますか、描写が、一律的で立体的でないから、もつと個人々々の特別の事情が浮彫りできるような一つ説明をしてくれという話が参つておりまして、土田委員長がその趣旨に基いて従来よりも一層立体的な説明を書いて持つて行つておりますが、その後、土田委員長からのたびたびの電報を見ておりますと、かなり、このことについては効果があつたように思われて、非常に私も喜んでおるわけであります。個々のケースの赦免、仮出所等の問題は、近いうちに一段と促進されるのではないかと思つております。なお土田委員長は、これと同時に全面赦免についての空気も熱心に打診しておるということを御報告申上げたいと思います。それから、その間、今巣鴨にいる人たちをどう扱うか、こういう問題であります。率直に申上げまして、巣鴨の中で今服役している人は、将来いずれの日か外へ出た場合に、非常に、何と言いますか、深刻になつている。現代社会に伍して生きて行けるだろうかという、本当に心の底からの不安を持つております。又それが国にいる家族にも映つているのでありまして、生活問題ということについて非常に深刻になつております。それで私どもとしては、これは尤もな点でございますので、巣鴨の中において職業指導のお手伝いをし、そのために専門の顧問一人と参与二人を最近委嘱いたしまして、これは巣鴨の中に殆んど住込み同様にして、職業その他について斡旋をしてもらつておるわけでございます。又、一部の人、特に職業指導によつて腕に覚えのできた人は、監督者付きで外部の社会に出まして、そうして、そこで働いて、又、夕方、巣鴨に監督者付きで帰るという方法もとつておりまして、これらの収入を留守家族に送るような措置を講じておる次第でございます。
 それから人身売買の問題でございますが、これはなかなか大問題でございまして、人身売買が結局今やかましくなつております売春のこれは母体になるわけでありまして、法務省としましても多大の関心を持つておる次第でございます。これは国警方面におきましても、大体どこの村の誰が人身売買のボスであり、いわゆる仲買人であるという、何といいますか、分布の地図みたいなものが、大体一年くらいかかつてでき上りましたので、検挙が非常にしやすくなつて来ております。その結果、昭和二十七年におきましては、全国検察庁で取上げました人身売買のケースが七千六百七十九人でありまして、そのうち起訴したものが二千五百六十八人、起訴率は三七七%になつております。二十八年の一月から九月までは、六千二百三十八人検挙いたしまして、そのうち二千十一人起訴いたしております。(「厳罰にしなければ駄目だよ」と呼ぶ者あり)その比率は四一・八%であります。こういうふうに殖えて参りましたのは、今申上げましたように、国警におきましてほうぼうの田舎の人身売買のことをやつているボスと仲買人の人名がだんだんはつきりして来たためなのでございます。ところが、厚生大臣が言われましたように、一方におきましては農村の空気というものが又我々の想像外のものがありまして、本人が華やかな都会に行つていい着物を着ることをなぜ邪魔するのだというような空気もあるのでございまして、こういう問題になつて来ますると、広い意味でのやはり農村の改革問題になつて参りまして、果してそういうことまで警察官が携わつていいかどうか、これは問題が残ると思います。そこで、この前の臨時国会の予算委員会で申上げたと存じますが、こういう、一歩、精神問題、農村改革問題に入りました先は、やはり私は、民間の人で、而も政府が委嘱して法律的根拠を持つたような委員が、やはり農村の問題として携わつて行くということがいいのじやないか。警官がそこまで入つていいかどうか、私は率直に申上げて疑問を持つておるのでありまして、この組織について今鋭意研究中でございます。
 以上お答え申上げます。(拍手)
   〔国務大臣大達茂雄君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(大達茂雄君) お答え申します。
 売春行為が横行するという事実が青少年の上に非常に悪い影響を与えておるということは、深川さんの御心配の通りでありまして、遺憾に堪えないことだと思います。文部省の立場といたしましては、いわゆる純潔教育、或いは道徳教育の徹底、或いは又、文教区域の設定というようなことで、いろいろ努力はしておるのでありますが、率直に申上げて、誠にまだるつこい、早急に効果を上げることは困難だと思つておるのであります。一体かような事実は、私、考えまするのに、戦後急激に襲い来たつた一般的な窮乏、或いは又敗戦による国民の、何と申しますか、自己否定的な気持、そういうことから原因して起つたところの一連の社会悪の一つでありまして、簡単にこれを根本的に直して行く、矯正して行くということは、急速には考えられないと思います。できるだけのことを関係の各省において努力をするという以上にはできないことと思うのであります。私の希望いたしますのは、一日も早く国民の良識が取り返されて、健全な社会が立ち戻つて来るということを希つておる次第であります。ただ、文部省の関係する範囲におきましては、鋭意できるだけ努力をしたいと考えておりまして、関係の各省とも折角相談を進めておる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(小坂善太郎君) 売春婦対策につきましては、現在、関係各省と連絡協議会を持つておりますが、近くこれを拡充強化する考えでおります。労働省といたしまして、特に売春婦に転落する慮れのある婦人の救済、売春婦の更生、売春防止思想の啓蒙に重点を置きまして、婦人少年室、職業安定所、職業補導所が互いに連絡をとりまして活動を続けておりますが、更に今回新たに婦人少年室協議委員を置くことにいたしまして、その積極的な活動に期待しておるのであります。将来、売春思想を防止するために、又売春防止を現実に可能ならしむる一つの手段といたしまして、就職資金の貸付の方途も検討いたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○副議長(重宗雄三君) 加瀬完君。
   〔加瀬完君登壇、拍手〕
#12
○加瀬完君 去る開院式における堤衆議院議長の式辞に、民生の安定と国力の伸展を期したいという言葉がありましたが、これは全く全議員の意思を代表した言葉であると信じます。然るに、このたび国会に提案されました補正予算及び一昨日の総理大臣並びに関係大臣の施政方針を承わりました限りにおきましては、政府の施政及び予算内容は、民生の不安定と国力の衰頽をもたらすものではないかと憂うるものであります。若しそうでないとおつしやられるなら、次の項目につきまして総理大臣及び関係大臣のお答えを頂きたいのであります。
 第一に民生安定について伺います。大蔵大臣は、合言葉のごとく、健全財政、健全経済、健全通貨と言われます。併し我々は、誰のために、又、何のためにと聞きたいのであります。といいますのは、大蔵大臣の健全財政のしわ寄せが国民生活を不安定にしておるといたしましたならば、全くその意義を失うからであります。
 その一つといたしまして食糧需給関係と米価の問題について伺います。本年は昭和九年に次ぐ凶作だと言われております。併し昭和九年の米穀需給関係を調べますと、産米こそ五千百八十四万石でありましたが、持越高一千六百四十三万石、移輸入米一千三百二万石を数え、繰越高の九百九十三万石等を除きましても、消費高は七千八十七万石となつて、人口六千九百万に対し平均一石二升七合という数字であります。これに対し、本年度産米は五千三百四十八万石と言われ、例年に比して政府確保量は遙かに低く、百六十万トンと言われる外米輸入を以ていたしましても、人口八千五百万の配給率に及ぼす凶作影響は、昭和九年どころの比ではなく、今までにない非常な不安があるのであります。若し頼みの綱の外米輸入に齟齬を来たしましたならば、一体、需給関係は如何なることになるのでございましようか。こういうとき、政府は絶対消費量確保のために、輸入外米の数量を減じ、その分に対する価格差補給金を豊凶係数の引上げ等に使いまして、生産米価の引上げをするか、或いは又、供米数量に見合う報奨肥料の特配等の手で内地米数量を確保する考えはないかどうかを先ず伺います。又、今日、「そば」や「うどん」は値上りをし、パンは小さくなり、バターは姿を消すといつたように、食糧不安は募る一方であります。こういうときに政府は突如消費米価の値上げを発表したのでありますが、これは一層需給関係をアンバランスにし、闇値の高騰に拍車をかけまして、国民の生活をますます危機に追い込むことは必然であります。このように、量の確保もなく、価格の安定もなく、これをしも政府は民主の安定と言い得るのでありましようか。
 その二は、公共企業及び公務員給与の改善について伺います。公共企業仲裁裁定の実施期日は八月一日であり、公務員給与勧告の計算基礎は三月の指数であり、その上昇率は一三九%であります。裁定並びに勧告の実施とは、施行期日と上昇率に基く給与額の実施であるはずであります。又この給与引上額は他の如何なる給与とも相殺さるべき筋合いのものではありません。然るにこのたびのベース・アツプは、衆参両院の人事委員会の決定及び申入れ、即ち、地域給の不合理是正、階段圧縮をしても、最低地において旧地域給の本俸並びに家族手当の実支給額を下廻らざること、ベース改訂期と地域給改訂期を同時にせないこと、これらは一顧だもされないで、地域給と更に定期昇給分をもベース・アツプにとけ込ませております。これでは裁定実施でもなければ勧告実施でもないのであります。政府は昨年八月と比べて本年九月のCPSが二七・七%もはね上つておるのをどう考えておられるのでありましようか。給与改善とは実質賃金の増額でなければなりません。物価の抑制もしなければ、社会保障もせず、更に一割整理などという犠牲におきまして若干の賃上げをいたしましても、実質賃金の低下は明らかであります。これでは給与改訂とは言われないと思うが、政府は如何考えるのでありますか。
 その三は、地方公務員の給与財源について伺います。地方自治体は、稀なる災害と凶作に加えまして、今や政府の財政規模の圧縮のしわ寄せを一手に引受けた形になつて、財源の枯渇は極限に来て、この打開を人件費の不当圧縮によりましてカバーしようとする傾向を生じております。昨年におきましても期末手当〇・二五を支給しない県が二、三あります。本年度も政府は地方公務員給与財源の一部を地方税の増収に求めておりまするが、府県は現在の赤字解消に精一ぱいで、増収分が無条件に給与費に廻るなどということはとてもできない相談であります。すると地方公務員の給与は一体どうなるのか。又大蔵省はどうしようと思うのか。この点を伺います。
 更に大蔵大臣に伺いますが、真にインフレ物価によりまして国民経済の確立を期するというのであるならば、現実におきまして外貨保有量はぐんぐんと減り、アメリカ対日軍事費三分の一の打切りによりまする特需の減少にもよりまして外貨収入の途はますます苦しくなつて来ております。こういう経済事情の中で、今、政府は如何なる輸出振興策によりまして外貨獲得をもくろんでおられるのでありましようか。国民翹望の日中貿易にいたしましても、外務大臣は中共貿易の振興と口ではおつしやられますが、例えば最近硫安輸出におきまして今回、中国通商視察団の業者が結んで参りました仮契約の実施を妨害をするために、政府は某国の策動によりまして、無理に朝鮮輸出を増加させるごとき方策を指示したと聞いておりまするが、こういうことでは日中貿易の振興とは断じて言われないと思うのであります。又、政府はインフレ抑制とかけ声をかげながら、その実は国民所得の途を鎖ざして、国民負担のみを増大させて、インフレ抑制の方向を、民生安定費、経済復興費の削減等、大衆犠牲に求めておりますが、インフレそのものの根源には少しも触れようとしてはおりません。そうして、このインフレ傾向によりまして国内価格の外国物価に対する割高が一層大幅に拡大されて行きますれば、出血輸出が更にひどくなつて、この犠牲は国民生活の引下げとなつて現われることは明らかであります。この方向に政府が無策であるといたしましたならば、政府の経済政策は何ら民生安定の要素がないと断ぜざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 第二は、吉田内閣は国力の伸展を期しておるのか。この点について伺います。
 その一つは、総理は、ニクソンの来訪は日米両国の親善を深める上に意義が深かつたと言つておりますが、ニクソンは、平和憲法をおやめなさい、憲法を変えなさい、再軍備をしなさい、こう言つたと聞くのであります。この言葉に意義深きを感じ親善を感じたといたしまするならば、首相の心境は、ここでは平和憲法を変えないとおつしやられまするけれども、我々は、戦力なき軍隊などとはもう言わない、憲法を変え、再軍備をするのだとしか了解できないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 そこで次の点についてお答えを頂きたいのであります。池田特使は、再軍備受入れの代償として経済援助をアメリカに要請に行つたが、完全に失敗したと言われておるが、何か成功したことがあるのか。MSA五百五十条による過剰小麦の買付に当りまして、国際小麦協定より高いものを買うということが何で日本の得になるのか。再軍備をしろとニクソンは言う。首相はこれに意義深きを感ずる、どこの国の再軍備を、どこの国の防衛をするのかを明らかにされたい。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)又、今回憲法改正を条件に鳩自の一部を抱きかかえたというが、それでは憲法改正の時期はいつか、又、改正内容として如何なるものを考えているのかをお答え頂きたいのであります。
 その二は、外務大臣に伺います。外務大臣は李承晩ライン問題を第三国に依頼すると言つたけれども、第三国というのはアメリカを指すのか。アメリカを指すとするならば、李承晩ラインには関係しないというアメリカに頼んでこの問題の解決が付くのか、又、漁業の保護も漁民の保障も何にもしておらないで、二月以降逮捕された者ですらもまだそのままである。我々のところにも逮捕者の家族からの陳情が跡を絶たない。その対策をどうするのか。又奄美大島の復帰について、十二月一日を目途に、少くもそれに近い目と言明しておりまするが、未だ未解決である。而も奄美問題については、アメリカの出方だけに戦々前々としておるのに比べて、対朝鮮とのことになりますると、蔑視観を以て臨んでおるような態度が見られます。政府の要人が、李承晩ラインの解決をしないで、対馬防衛に気焔を挙げるがごときに至りましては、一体、政府には外交があるかと疑わざるを得ないのであります。そこで我々は自主外交であるという点を明細に述べられたいのであります。
 最後に、総理は去る十七国会におきまする同僚議員の質問に答えて、「日本の防衛費は止むを得ない切詰めたものである。必要欠くべからざるものである。必要なものである故、たとえそれが如何なる影響があつても予算の中には入れねばならない。然らばインフレをどうするか。それはインフレにならない程度に災害費を生み出す以外に方法はない」。こう答えられております。そこで、止むを得ない点、切詰めたというが、どう切詰めたかの点、又、以上のお答えは防衛第一主義を謳つておるのでありますが、防衛第一優先を唱えなければならないこの理由、以上質問をいたします。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 民生の不安定、国力の衰頽の主なる原因は、そもそも何かと言えば、過去の経過に考えてみましてもインフレであります。このインフレ防止をすることが政府の施策方針であり、又予算編成の方針であります。故に、政府の施策及び予算の内容は、民生の不安定及び国力の衰頽を来たすものと私は断じて考えません。池田特使は、これはしばしば申す通り、米国政府との間において彼我の立場を説明し合うために行つたのであつて、交渉に行つたのではないのであります。従つて交渉は今後にあるのであつて、お話のように、再軍備を約束するために、再軍備を条件としてMSAの援助を依頼した、頼んだという事実はありません。又ニクソン副大統領が再軍備若しくは憲法改正を強要したという事実は私において存じません。(拍手)
   〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(小笠原三九郎君) 健全財政のしわ寄せが国民生活を不安定にしておるのではないかというような意味のお話でございましたが、政府は飽くまで健全財政の方針を立てておるのでありまして財政面からのインフレ要因を厳に排除し、財政の規模を日本の経済力に相応する限度にとどめることを基調として、すべての政策を立てておる次第でありまして、申すまでもなく全国民の生活安定を目標としておる次第でございます。なお、これについて、米の価格或いは裁定、給与等のお話が出ましたが、米のことは、昨日来申上げましたごとく、日本の今の米価をコスト主義でやると十キロ実に八百九十円にもつくのでありまして、それを食糧会計等でなし得る分だけをこれでなして、あとの分を国民の各位に負担して頂く、こういうことになつたのが七百六十五円となり、これを更に今据置くとすれば、さつき申しましたごとく約二百五十億円の赤字を出すことになつて、それこそ国民生活をおびやかすことになるので、さような措置をとらなかつた次第であることは御承知の通りであります。更に裁定、給与べースの改訂等の問題につきましては、昨日来繰返し申上げましたごとく、現在の財政において許す最大限度のことをいたした次第であるのであります。又、地方公務員の給与につきましては、勿論、地方の自然増収に待つものもありまするが、極く足らぬ分については地方財政平衡交付金によつておることは、お手許に差上げてありまする予算書で御覧を願つておることと思うのであります。
 更に外貨の獲得についてお話がございましたが、外貨の獲得は、私どもも、今日の特需等による一時的変態から速やかに脱却して、通常貿易によつてこれを獲得し得るように、万般の措置をとつておることは御了承の通りと存じます。
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(岡崎勝男君) 日韓関係につきましては今までたびたびお話をいたしましたが、なかなか解決はつかないので、若し公正な第三者がこれを斡旋するならば歓迎するという意味であつて、これが米国であれば結構でありますが、まだそこまで話が進んでおりません。
 なお日本の防衛は日本自体のなすことでありまして、朝鮮の問題とは何ら関係がありません。李承晩ライン附近において逮捕された者はたくさんありまするが、すでに四百何十名は帰つて来ております。又残りも間もなく帰ることと期待しております。
 奄美大島の返還につきましては、先般も申しました通り、十二月一日を目途していろいろ交渉いたしましたが、通貨を今度円に換えることになりまするし、又すでに裁判で刑の執行を受けたような者の取扱をどうするかとか、或いは奄美大島出身で沖縄等におる者の取扱いとか、いろいろ複雑な問題がありまして遅れておりまするが、先ほど申しました通り、年内には引渡しが完了するものと期待して只今交渉いたしております。(拍手)
    ―――――――――――――
#16
○副議長(重宗雄三君) 竹中勝男君。
   〔竹中勝男君登壇、拍手〕
#17
○竹中勝男君 日本社会党左派を代表して、外交関係問題を中心に質問をいたします。
 現政府の外交政策と、現下の国民経済の弱小化、国民生活の不安と窮迫化並びに国民思想の混乱との間には、直接且つ必然な不可分関係があると考えるものであります。この前提に立つて、私はこの関係を客観的に追求しつつ、次の諸点について質問をいたしたいと思つております。
 講和条約、安全保障条約によつて著しい制限を受けております日本外交は、明らかに今日その自主性を喪失し、国際社会に一人立ちができない半身不随に陥つております。今度の臨時国会の劈頭に、岡崎外相は極めて簡単な外交施政演説をされましたが、その中に、不調に終つた日韓会談を収拾する方策としてその解決のためには、今も申されましたが公平な第三国の斡旋を歓迎すると言い、又繁盛期に入つた漁業のために、その出漁船の保護警戒の措置を講ずると同時に、できれば、公平な第三国の韓旋を待つて双方に満足な解決策を図りたいと、二度まで第三国の斡旋を希望しておられるのでありますが、外務大臣にお尋ねしたいのです。一つは、外務大臣がその斡旋をこい願つておられる第三国とは一体何国を指さすのですか。第二の点は、外務大臣は、第三国の斡旋を頼りにせずに、国民の輿望とその盛り上つて来る真剣な輿論を背景として、この問題の解決に取り組む熱意はないのですか。今日なお韓国には抑留中の日本漁夫があります。今後も捕獲抑留される可能性がある現状におきまして、真に日本の独立と日韓の平和関係確立のために、直面しておるこの日韓問題の急速な解決に対して、自主的な外交を懸命に推進する自信が、外務大臣にはあるのですか、ないのですかということをお尋ねしたいのであります。
 外務大臣にはまだお尋ねしたい重要問題がありますが、それに先立ちまして吉田総理と大達文部大臣にお伺いいたします。
   〔副議長退席、議長着席〕
 吉田総理は前国会においてもたびたび池田特使を私の個人的特使であると言明されたのでありますが、その池田特使とロバートソン氏との会談が政府によつて確認され、これが東京会談の基礎として活かされようとしておるのであります。これは先に戦力のない軍隊という表現を用いられましたが、それの筆法で行くと、政府を代表する個人的特使とでもいうのでありますか、国民は、あなたのこれに似た表現をただユーモラスの表現として聞き流しておるのではありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)再軍備はしない、憲法は改正しないというあなたがその首班である日本政府の所在地、この首都東京の真中で、アメリカ副大統領が日本の再軍備と日本国民の運命にもかかわる憲法の改正のような重大問題について演説しました。これは無論岡崎さんの言われる第三国の斡旋ではないだろうと思いますが、あたかもこの演説に呼応するかのように憲法研究委員会ができたり、憲法改正を主張して来たところの分離派が自由党に復帰したりするのを見ますと、もはや正直な国民は総理の言葉を信頼してよいのかどうか甚だ迷わざるを得ないでおるのであります。更に、MSAが持つ条件の下に再軍備を急速に進行されようとしておる現在、再軍備はしない、憲法は改正しないと言明し続けて来たあなたの言葉の真実性は、もはやすでにその限界に来ておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そこで、この際、総理としてのあなたはこの言葉に少しでも忠実であり得るために、総理の位置を辞して他に譲られる御意思はありませんかとお尋ねしたいのであります。(拍手)
 大達文部大臣にお尋ねいたします。文部大臣は昨日もこの壇上で、松浦君の質問に答えられた中で、教育の政治的中立性を説かれ、日教組には色がついておると言われました。教育の中立性とはどのようなことですか。御説明を願いたいのです。又、日教組に色がついておると言われましたが、それはどのような色であるのかお示し願いたいのであります。教育の中立性を主張される文部大臣は、教育行政の中心におられるのでありますから、その中立性の権化、化身とも考えられるべきお方であります。その色から言えばまさに無色透明であられるはずであります。文相の教育行政家としての心掛け乃至その主観はまさにそうでございましよう。併し客観的にはそうであり得ないのです。その中立性を強調される文部大臣は、自由党の有力な党員であり、みずから意図するとせざるとにかかわらず、自由党の政策綱領の忠実な実行家であるのであります。政党は高い政治理想を持つておるはずであります、自由党といえども。(拍手)その政治理想を教育において実現することも又必ずしも否定されるべきものではないと考えます。併し、若し客観的にも教育において厳正中立でなければならないというならば、文部大臣はよろして党籍を離脱し、日本の教師は又政党に所属することはできないということになる矛盾を持つております。そこで、教育における政治的中立性ということは、何もこれは空間的物理的な中間性をいうのではなくして、教育上の判断や行動において公正であれという意味であろうと解釈しますが、併しその公正は主観的には決定できないのでありますから、どこまでも客観的、具体的、歴史的な現実に基いた判断によらなければならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)然るに日本の現実は、公正にこれを判断すればするほど不安であります。多くの能力ある青少年が上級の学校に進学もできないほど家庭収入は低いのであります。又、教育費は防衛費に比較して余りにも過少で、校舎は荒れて狭隘を告げ、教師は生活の不安におびやかされ、学術研究費は名目に過ぎず、研究や言論の自由まで制限を受け、京都においては過日秩序のある学生運動が警官の梶棒によつて傷つけられ、橋から踏み落されているのであります。(拍手)自治庁通達によつて全学生の選挙権まで現実に歪められようとしているのであります。
 この現実に並行して又軍事基地はいよいよ拡大され、日本を象徴する富士山の山麓までが演習地に変り、若しくは千年の日本文化の貯蔵地、奈良の都は、駐留軍と街娼婦の靴に汚されております。識者も青年も共にこの現実を公正に見て、日本の歴史の否定並びに民族文化の危機だと判断しておるのであります。
 私はこの夏ヨーロツパにありまして、同じ敗戦国ドイツの青年たちが、自信に満ち、民族的誇りを持つて、働き又学んでいる姿を見ました。それは、その政治指導者たちが国民的自負心と信念を以て、真実を国民に語り、対外問題を処理し、経済復興に努めておると共に、国民生活の経済的社会的保障制度を確立しているからであります。衣食足つて礼節を知るということは、何も唯物論の公式ではありません。日本の政治指導者が自主独立を重んじ、正直に勇気を持つて対外対内の問題に処し、黒を白というようなことをやめ、人間を尊重し、責任を重んじ、勤労階級の生活を守る財政経済政策を断行するならば、健全な民主主義教育はおのずから振興するのであります。日教組の政治的色彩を云々する前に、文部大臣は、日本の教育が現在どのような経済的政治的基盤の上に行われているかを十分に検討分析して、重要な教育的役割を担つておるところの日教祖の活動と、その要求するところに耳を傾けて頂きたいのであります。(拍手あえて文部大臣にお尋ねしますが、日教組の政治的色彩と文部大臣の政治的色彩とはどのように違うのでありますか。いま一点は、学生の選挙権に関する自治庁通達に対して文部省はどのように取扱うのですか。その通達を撤回せしめる考えはありませんか。次に再び岡崎外務大臣にお尋ね申します。日本の再軍備促進と軍事基地化は、内には日本経済を防衛生産中心に移行せしめ、対外的にはその通商貿易を制限し縮小せざるを得なくしておりますから、平和産業は圧縮され、日本の産業経済の拡大的な再生産は機構的に阻まれております。ここに労働者には低賃金が押付けられ、政府は仲裁裁定の賃金すらその実行を怠り、一千万に近い潜在顕在失業者の上に、更に労働者、公務員の首切りが敢行されようとしておるのであります。
 耕地が国土のうちその十六分の一よりない日本で、軍事基地に提供されておる土地面積は四国一島の面積に及ぼうとしております。戦後、日本は四つの島に八千万人と言われましたが、今日は三つの島に八千五百万が押込められておる実状であります。外務大臣は、このような実状のもとに、アメリカ及び国連軍に求められたならば、更にこれ以上軍事基地や演習地を提供する考えでおられますか、お尋ねしたいのであります。
 次にもう一度総理大臣に質問をいたします。国土計画と治水事業の長きに亘る放任は、風水害に対して、国土は著しくその抵抗力を弱め、敵機の空襲を受けずして国土の一部は廃墟に帰しております。その復旧費は、その巨大な被害に対して僅か千八百億円、そうして先の臨時国会で五百五十億円が決定したのにもかかわらず、今以てその政令は出揃つていないではありませんか。風水害、冷害に悩む国民のほかに、数百万人の生活困窮者があり、医療費の不足のためにその健康を破壊しつつある多くの国民があります。この十一月に給付が開始された厚生年金保険はすでに七百億円を労働者からも徴収していながら、その給付は年額一千二百円、月額百円が我が国労働者の唯一の養老年金であります。何と人を馬鹿にしたことではございませんか。我が国の社会保障費は、生活保護や各種社会保険や公衆衛生費まで含めて、国の予算の六分七厘に過ぎません。これに対して、戦力でないと言われる十一万の保安隊を中心とする防衛関係費は、国の予算の二割に近いのであります。西ドイツにおきましては、御存じの通りに防衛費と社会保障費が同額になつておるのであります。この上、MSAを受入れ、防衛隊が十八万か或いは三十五万とかに増加されるとすれば、労働者の賃金や農民の所得や国民の社会保障は一体どうなるのでありますか。日本経済の現状では、大砲に用いられる部分が大きくなればなるほど、それだけバターの部分は必然に小さくなるのでありますから、国民は非常な不安の念を以て、一体どの程度に防衛隊が増加されるかを、一日も早く、少しでも詳しく知りたいと願つておるのであります。総理大臣には、大体どの程度にそれが増加される見通しであるか、いつ頃それが国民に知らされるのであるかということを知らして頂く義務を持つておられると考えますので、首相のお考えを聞かして下さい。
 最後に、三たび外務大臣にお尋ねいたします。真の防衛力は安定した国民生活の中から盛り上る愛国的心情と行動とであると考えます。このように国民生活が不安と窮乏の中に置かれ、国土が荒廃に任され、その上に再軍備が進行するならば、外敵の侵入を待たずして、我が国は国民生活の内側から生活の防衛線が欠壊する危険があることを深く憂うるものであります。この意味におきまして、私は、日本を一外国の軍事基地化する外交政策を改めて、自主中立外交政策を確立し、国交の調整を隣邦中国を含む東南アジア諸国並びにソ連に及ぼし、その国交親善関係が一日も早く実現するよう積極的努力がなされることを希望してやまないのであります。昨日の衆議院本会議の答弁において、首相は、「善隣外交は主義如何にかかわらず重要視しているが、ソ連、新中国とは、講和条約に調印していないし、又、中ソ条約では日本を仮想敵国としておるので、外交の手を施す途がない。相手の国が政策を変えない限りいたし方がない」と申しておられるのであるが、外務大臣にお尋ねします。ソ連、中国には、今なお日本人の戦犯、捕虜、抑留者などが多数あつて、国民はひとしくそれについて、又その帰国方途について心を痛めております。又、日中貿易の開始は、日本経済の自立の上からもい今や決定的に国民の重大関心事となつております。こういうときに当つて、相手の国が政策を変えない限りいたし方がないとして、わずかに民間団体の力でこれと交渉関係を保つているようでは、もはや国民がこれを承知納得しないと考えます。岡崎外務大臣にはどのような積極的外交方途をこれに対して持つておられるかをお尋ねしたいのであります。即ち、外務大臣には、先の二点と後の二点、四つの点について御明答を頂きたいと存じます。以上。
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 憲法改正はいたしません、再軍備はいたしませんということは、私はしばしば申しております。
 防衛費については二十九年度予算案提出の場合において十分御研究を願いたいと思います。
 又、私は自分の言葉に忠実なるために、この際ますます政局担当の決意、責任を痛感いたしまして、ますますこの責任を果すために努力いたす考えであります。(拍手)
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(岡崎勝男君) お答えいたします。
 竹中君とはどうも根本的に考えが違つておるようでありますから、意見の相違になりましようが、(「真実を語れ」と呼ぶ者あり)平和条約、安保条約において私は日本の外交が制限されるとも思つておりませんし、自主性が失われるとも思つておりませんし、半身不随になつているとも考えておりません。
 なお、日韓関係について、なぜ第三国の斡旋を歓迎するかというお話でありますが、これは御承知のように、過去二年以上に亘りまして日韓の関係の調整を試みたのでありまするが、成功しなかつたのであります。従いましてこの際において若し公正なる第三国が斡旋をするならば、これを歓迎するのは常識であります。(「第三国はどこだ」と呼ぶ者あり)
 なお、駐留軍に要する施設及び区域等につきましては、必要なものは勿論提供しまするが、不必要なものはできるだけ返還せしむる方針でずつと来ております。
 なお、自主中立の政策をとる考えはないかというお話でありますが、自主的の政策をとることについては養成であります。中立政策は、前々国会の私の外交演説で申した通り、現実の事態がこれを許しません。
 戦犯、抑留者等がソ連や中共にあるから、この方面に努力しないか━これは勿論努力をいたします。併し戦犯者や抑留者を━にされて国の外交を曲げるようなことはいたしません。(拍手、「何をしようとしているのだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
   〔国務大臣大達茂雄君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(大達茂雄君) お答えいたします。
 先ず第一に、私の言う教育の中立性とは何を指しておるのか、こういうお尋ねであります。これは申上げるまでもないのでありまして、教育基本法の第八条第二項の規定に、「学校における教育は、片寄つた特定の政党の主張或いはその他片寄つた主張の下に行われてはならない」こういうことがはつきり規定してあるのであります。それを指して私は教育の中立性、こう申しておるのであります。(「それと政治活動と何の関係があるんだ」と呼ぶ者あり)それに関連して、それならば文部大臣が政党に所属して文部省の仕事をするということ自身が中立性に背反するではないか、こういうお言葉であります。これは失礼でありますが、私が言うのは教育そのものの中立性であります。教育行政或いは文教政策というものの中立性ということがあるかないか知りませんが、それはおのずから別個の問題であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)文教政策というものは、勿論これ言うまでもなく国政の一環であります。従つて、国政を担当しておる政党が、国家のために最もよろしい、かくあるべきであるということを、その政策を行うことは当然で、この場合、政治的な中立性ということは私は意味をなさないと思うのであります。(「フアツシヨだ」と呼ぶ者あり、拍手)これは教育基本法第八条第二項をよく御覧になれば極めて明瞭であります。
 それから、その次に、日教組が色がついておるということを私が昨日申した、それはどういう色がついておるかという質問であります。私は、日教組に色がついておるのか、おらんのか、これは見る人によつて意見があろうと思います。少くとも私は、昨日、日教組に色がついておるということは申したことはありません。これは速記録をよく御覧になれば極めて明瞭であります。それから、なおこれに関連して縷々御意見がありましたが、これは御意見として拝聴いたします。
 最後に、学生の選挙権に関する自治庁通達の問題でありますが、これは、この通達によつて学生に動揺を与え或いは衝動を与えたということは、私、極めて遺憾に存じます。ただ、これは現行選挙法の解釈に関する通牒でありまして、文部省としてそれに対して異議を羨む立場ではないのであります。ただ、これが学生に動揺を与えたことにつきましては、実は困つたものである、こう思いまして、その辺の事情は当時自治庁に申入れてあります。そうして自治庁の善処をお願いをしておるのであります。これは自治庁におきまして選挙制度調査会に諮問をして、そうしてこの解決を図つておる、これは御承知の通りと思います。(拍手、「自主性を持つてやれ」と呼ぶ者あり)
   〔竹中勝男君発言の許可を求む〕
#21
○議長(河井彌八君) 竹中勝男君。
   〔竹中勝男君登壇、拍手〕
#22
○竹中勝男君 岡崎外務大臣に御質問いたします。
 私は、この隣邦の新中国或いはソ連と国交を回復し、親善関係を結ぶために、十分の努力、積極的な努力をして頂きたいということを希望したのであります。その国にはなお同胞が残つておるということを、その事実を申上げ、国民がこれの日本に帰つて来られることを衷心願つておるということを私は申上げたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は未だ曾つて同胞をこにするというような、そういう外交政策を考えたこともないのであります。それは実に、人を、国民を馬鹿にしたことであつて、私の人格を馬鹿にした、私が、国民を━にして政治的な主張をしようというようなことは絶対にないのですから、どうぞ岡崎さんはこういう言葉を失言として取消して頂きたい、(「その通り」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#23
○国務大臣(岡崎勝男君) 私も、ソ連や中共にまだ残つておる人々の帰還についてはできるだけ努力をするということを申しております。なお、竹中君が国民を━にしてこうしろということを言つたと申しておるのじやなくて、私の外交政策は自主的に行うのであつて、これは帰還邦人のことも非常に大事であるけれども、そのために永遠の外交政策を曲げるわけには行かない、こういうことを申しておるのです。
   〔小笠原二三男君発言の許可を求む〕
#24
○議長(河井彌八君) 小笠原二三男君。
#25
○小笠原二三男君 只今の外務大臣の御答弁に関連しましてでございますが、先ほどの外務大臣の御答弁は、ソ連がこの抑留者の引揚問題を━として日本との関係を何か規制しようとしておるという意味での発言があつたわけでございます、従つてこの問題は、只今彼の国との間に引揚問題が一通り解決して、引揚第一船も参つておる状況のときに、わが国会において、外務大臣の責任にある者が、誤解を受けるような、そういう発言のあることは慎しむべきことであると考えます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 外務大臣が、只今積極的な失言取消の機会があるにもかかわらず、何ら取消すことをあえて肯んじないという状態であります以上は、参議院は、参議院の権威のために、又国際関係の是正のためにも、参議院議長において速記録をお取調べの上、不穏当であるという事実が明らかになりましたならば、これを削除し、或いは外務大臣に失言を正式に取消させるという態度に出べきであろうと思いますので、議長に対して、この取扱を御一任申上げたいということを、議事進行として申上げます。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
#26
○議長(河井彌八君) 小笠原君にお答えいたします。議長は、只今の点につきまして、速記録をよく取調ベました上に善処いたします。(「今のうちやつたほうがいいぞ」と呼ぶ者あり)
○議長(河井彌八君)加藤シヅエ君。
   〔加藤シヅエ君登壇、拍手〕
#27
○加藤シヅエ君 すでに同僚議員の各位から各方面に亘つての御質問があり、又御答弁がございましたので、私はここに最後に日本社会党第二控室を代表しまして、政府の所信に関する演説につきまして少し別の角度から、総理大臣、外務大臣に質問をいたしたいと思います。
 吉田総理大臣におかれましては、永年政権を担当されまして、誠に御苦労様に存じます。殊に昨今は、衆議院に多数を占められないために、野党攻勢に悩まされて、鳩山氏の一派との合同を策される等、御老体御心労のほどお察しするに余りあるものがございます。併し世間は、災害、凶作、物価高、貿易の不振、再軍備論等々、国民は政治の貧困と保障なき生活の不安におののいております今日、過日の総理大臣の御演説は、一国の宰相としての御演説としては余りにも真剣味を欠くものであつたことは、極めて遺憾であつたと存じます。吉田首相が総理大臣の激務を担当されることの御苦労につきまして、私情においてはおねぎらいを申上げたい気持でございますが、吉田首相よりも、もつと老齢の英国のチャーチル首相は、先日七十九回の誕生日を迎えられまして、闘志衰えることなく、自由世界の輿望を担つて、バーミユーダ会談に大国代表と会議のテーブルを囲むであろうことが外電に報じられているのを見ますときに、私ども国民として、首相がその責任ある座に坐つておられる以上は、老いてますます旺んなる心意気を示して、国民の信頼感の上に政治を運ばれるか、さもなければ、閑静なる老人の日を楽しまれるために御引退なされるか、その辺の御心境を承わりたいと思います。(拍手)
 次に、総理大臣はその御演説の中で、「政府は特にアジアにおける自由諸国との関係を緊密にすることの重要なることを感ずるものである。その意味から東南アジア諸国との間の賠償も積極的に解決することに努め」云々と申されましたが、これは誠に適切なことだと存じます。この東南アジア諸国との賠償問題解決の一歩としては、岡崎外相御自身が親善使節として先日各国を廻られましたことは、得るところ少くなかつたと存じますが、これらの国々と我が国との国交回復は、国情の相違や、相手国が独立してからまだ若い国であることなどから、旧来の外交とは又異なつた角度から互いの理解を増すことのための努力が必要であるかと考えます。その意味におきまして、今日の外交は、国民と国民との外交であり、発達した通信、交通の諸機関を利用いたしまして、お互いに相手国を訪ね合つて、その国情、民情をつぶさに知ることが行われなければならないと思います。こうした意味の親善関係の培養の上に立つてこそ初めて法律的技術的な外交上の取極が成功するところに、戦前と戦後の外交のあり方の相違が見られると私は考えます。この意味におきまして、私は先頃、これは賠償の相手国ではございませんでしたが、インドの婦人議員を日本に招待する案を総理大臣にお願いいたしておきましたところが、早速引受けて下さいましてこれを実現されました結果、スワミナンダ夫人を団長とする五名のインドの国会の婦人議員の来朝を見まして、官民の心からの歓迎と日本の実情視察によつて満足され、帰国後は、日本人の平和思想、日本人の勤勉性につきまして、インドの人々に報道、放送、これ努めているというような外電が報じられております。又これと前後いたしまして、政府の招待ではありませんでしたが、セイロンからも男女の上院議員の方々が来られまして、これ又民間の各方面で心のこもつたもてなし、御案内等をいたしましたところが、最近の外電によれば、セイロンの上院においては、日本の同国にある在外資産について日本に有利な処置をとるような法律を通過させたやに承わりました。こうしたことを見ますと、国全体が、そして国民全体が身を以て外交をしていることが如実に知られるのでございますが、このことをもう一歩深く考えますと、国の政治や国民の生活態度が清潔であり、正直であり、又誠意を以ていたされていなくては、国際的な信用を高めることはできないということを痛感するものでございます。このことにつきまして特に総理大臣にお伺いいたしたいのでございますが、先頃はインドネシアからはスダルソノ団長の一行が来られまして、フアクトフアインデイング・ミツシヨンとして各方面を視察をされたようでございましたが、私は同国代表団の招きに応じまして、この団長スダルソノ氏に面接をいたしました。一行は日本に対しまして相当程度の理解と好感を持たれたように見受けましたが、たまたま会話をいたしております途中、私と同行のいま一人の婦人議員に向つて、「日本の女性はキヤバレーその他赤い灯の下に駐留の外国兵と物狂わしげに踊り廻つて恥かしくないのか。自分の国ではこんなことをする者は石を投げるのです」と、赤線区域や青線区域の繁昌振りについて私どもの所見を求められたのでございました。私はこの率直な一撃をくらいまして、立法府にある者としての責任を痛感いたしましたが、賠償を支払う問題になりますと、この賠償を支払わなければならない国になつてみれば、その額の低いほど好ましいことであることは申すまでもございませんが、我が国が今賠償支払能力について秤に掛けられておるという、こういうときに、こうした今日の都会生活の浪費の面、殊に売春稼業が黙認されておるという現状は、外国から来た心ある人々の目に触れましたときに、これは決して日本の信用を高めるものではございません。(拍手)殊に、その国の女性の社会的地位の高い低いは、即ちその国の民主主義のバロメーターであるとも言われておるのでございます。(拍手)日本の国際的信用を高める意味におきましても、こうした日本の社会悪は一つ一つ徹底的に除去しなければならないと考えます。今、日本の全婦人団体も、又婦人議員全部も、声を揃えて売春禁止法を政府の手によつて国会に提出されることを望んでおるのでございます。こういう際に、同僚深川議員からもこの問題について所管大臣に対して質問されたのでございますが、その御答弁を伺つておりますと、厚生大臣は「防止対策をやつていて、人身売買を少しでも少くする。」少しでも少くするというのは、少しくらい人身売買があるのは止むを得ないというようなことなのでございますか。又、青少年問題審議会において、この問題は取扱うというような御答弁をなさり、又、犬養法務大臣のごときは、私どもは一番このかたに望みを嘱しておる。(拍手)このかたならば、この問題をきつとわかつて下さるだろうと考えまして一生懸命にお願いしておるのでございますが、どうも犬表法務大臣はあまり物事がわかり過ぎてしまつて、性格上に少しお弱いところがあるようでございますので、どうもこの売春禁止法ということになりますと、問題が各省に亘るものですから、犬養法務大臣だけが幾ら力を入れて下さいましても、私たちが幾ら犬養法務大臣の後押しをいたしましても、厚生大臣、文部大臣、労働大臣、こういうかたが皆、少しでも人身売買を少くするとか、悪い道徳の影響を少くするとか、こういうような、何でも少くするとか、矯正するために一生懸命にお役所を激励しておるとか、女の子がいい着物を着たがるような、こういうようなことを矯正するとか、そういうようなことにばかり力を入れていらしても、結局徹底的にこれをやめるということをどなたも言つて下さらないことは、(拍手)こういうようなことでは、日本の国際信用というものは決して高めることはできないと思います。どうかこの機会に総理大臣が、売春ということは悪であつて、日本の法律でこれを禁止しなければならないという、その御決意を一言お述べ頂きたいとお願いするものでございます。
 次に、外務大臣に、日本と韓国との関係につきまして承わりたいと思います。去る十月十六日に再開されました日韓会談は、漁業問題、財産請求権の問題等の具体的な討議に入らないまま、二十一日に決裂を見たことは、誠に遺憾であつたと思います。総理大臣は先日の御演説の中にも、相互に互譲の精神の上に立つて打開の途を講じなければいけないと言われ、外務大臣は、独立した韓国と正式の条約を締結する御用意があるようなことを申されましたが、その会談の再開の時期は一体いつなのでございましようか。漁業の問題は時期があります。この漁期を失してしまつては、全くこの漁業に当つておる者は困惑をいたすのでございます。どうかこの時期をはつきり示して頂きたい。又その進み方については、どのような具体策を考えておられますか。例えば韓国が主張しておるところの李ラインの設定から起る紛糾に対しては、公海の自由の原則を守り、我が国のかけ替えなき漁場を確保しなければならないので、問題は簡単ではないのでございます。一部の業者の希望は、この際、是非ともフリゲート艦或いは海上保安庁の巡視艇による護衛付き出漁をしたいというようなことを申しているようでございますが、私は、戦争中でもないのに護衛付きの漁業というようなことには疑問を抱くものでございますが、政府はこういうことに対してどうお考えでございますか。又そのようなことをして相手国との摩擦を起さないために、どんな御成案がありますか。更に又、漁業の問題の実現性ある解決策として、科学的な資料に基いて魚族資源保護の措置を考慮する、こういうようなことを外務当局は考えていらつしやるとも承わりましたが、これは又どういうような御用意ができているのか承わりたい。又、日韓双方の漁船隊の不均衡を是正するために、こちらから進んで韓国側に漁船と漁網を提供するような案があるというようなことも承わりましたが、そういうことも考えていらつしやいますのか。お差支えのない限り具体的に承わりたいと思うのであります。いずれにいたしましても、日本と韓国とは一番近い隣国であり、三十六年の長きに亘つて同胞としての間柄である。両国の外交関係が調整されないようなことがありますならば、日本に課せられましたところのアジアの平和を守る大きな使命は、その第一歩から崩れてしまうことになるのでございます。又日韓関係の調整ができないために、冷たい戦争に再び火をつける契機を与えるというようなことにもなるということを考えますときに、政府は何をさておいても、この隣邦との親善関係の確立に優先的な重要性を考えて頂きたいとお願いするものでございます。
 又、過日の日韓会談の失敗には複雑した事情も察知されますが、それにしても、このような会談にはもつと政治性豊かな首脳部がみずから当るべきではなかつたかと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり)長い間の日韓合併時代の歴史を我々日本人が回顧するのと、韓国人がこれを回顧するのとは、決して同じ感情ではあり得ないと思います。日本在住の或る韓国詩人の言葉に、「朝鮮総督の政治によるソロモンの栄華より、飢え渇えても真の自由がほしかつた。」こういう偽わらざる気持を表現しておりますが、この相手方の心情を韓国人の口から言われたときに、これをこちらの胸に包むだけの寛容な精神の持主でなかつたら、日韓会談の交渉の当事者としての資格はないだろうと思います。政府は、このたびの会談が再開されましたときに、どういうような考慮を以て、お人を、その人物を選ぶ用意があるか。これも聞かして頂きたいと思います。
 最後に、政府は、日韓交渉に当つて、韓国軍は日本を攻撃するための軍隊ではないのだから、アメリカの提供した武器や施設を韓国が日本及び日本近海の攻撃には用いない。又日本側においても同様、アメリカの武器によつて東洋人同士が牆に相鬩ぐというようなことの絶対にないよう、相互の誓約を交わすというようなお考えはないか。以上、外務大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。どうか日韓会談の成功するように、又早く開かれますように、アジア諸地域との親善関係にも政府がいよいよ積極的な努力をなされるように希望いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(吉田茂君) 政局担当の決意は先刻申述べた通りであります。又、国民外交の重要性については御同感であります。又、売春問題については、主管大臣の説明、即ちそれが政府の方針と御承知を頂きたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(岡崎勝男君) 韓国との話合いは成るべく早くやりたいと思つておりますが、相手があることでありますから、まだいつできるということは申上げる段階に至つておりません。ただこの会談におきまして、公海の自由ということの原則はできるだけ守つて行くつもりでおりまするが、同時に、魚族の保護或いは魚族資源の確保ということについては、できるだけ専門的な意見も聞いて、これを行いたいと思つております。要するに韓国との間には、今お話のように、韓国側の感情もあることでありますから、できるだけ忍耐を以て交渉いたし、日韓間は常に友好的であるように努力いたすつもりであります。
 なお、先ほどの竹中君の御質問に対して誤解を招くような表現が私の言葉の中にあつたようでありますが、私の趣旨とするところは、邦人の引揚につきましては、これはもとより国民の一人としても大いに感謝いたしておりますが、又そうして今後も引揚に努力をいたすつもりでありますが、これと全般的な日本の外交政策とは別問題である、こういう趣旨を申上げたつもりであつたのでありますから、ここに訂正をさして頂きたいと思います。(拍手、「ますます変だぞ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣犬養健君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(犬養健君) お答えを申上げます。
 売春問題につきまして、殊に先ほど御指摘の件につきましては、やはり私も趣く率直に申しまして植民地風景を思い起すような有様でございますから、これは絶滅させたいと思つております。少くしたいではなく、絶滅させたいと思つております。(「頑ばれ」と呼ぶ者あり)
 それから、これはただ取つかまえればいい、捕縛をさえすればいいというには、余りに社会問題が絡んでおりますので、労働省、厚生省その他と御一緒に一つ立案したいと思つております。(「それは約束だ」と呼ぶ者あり)その意味におきまして、今度は内閣に風紀問題の審議会といいますか、売春問題の審議会を作りまして、これは法律によると大分先になりますので、法律によらない審議会を取りあえず先に作りまして私の考えは委員長は民間のかたになつて頂きたいと思つております。ただ審議会と申しますと、とかく船頭が多くて議論が長くなるというようなことがありますが、これは法務省が原案を作りましてそのたびごとにお見せして、悪いところはその場で言つてもらつて、次の審議会のときまでに直して持つて行くということで、そういうことにして促進したいと思つております。それから問題は、警察官だけが売春問題の係になつていいかどうか。この問題は相当人権の問題にかかわりますので、すでにこの前の予算委員会で加藤さんに申し上げたと思いますが、やはり民間の人であつて而も政府から委嘱された、法律上の根拠を持つたこの問題の専門委員みたいなものを作つて、そうして、ただ縛つても、らちがあきませんから、その売春をしなければならないような生活上の事情に立ち至つた人に対する職業の安定とか、その他のことをやつて行かなければならないと思います。
 又人身売買問題にいたしましても、農村では簡単に娘でも売ればそれでいいじやないかというような、まだ非常に低い空気がありますので、(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)これをどうしても除去しなければならない。もとよりボスは厳罰に処さなければなりませんが、農村の気分がそういうふうになつておりますので、これに対してもやはり民間の委員を委嘱して、法律上根拠を持つた風紀委員会のようなものを作りたいと思つております。要するに、のんべんだらりとこれを回避するということは断じていたしませんから、さよう一つ御了承を願います。(拍手)
    ―――――――――――――
#31
○議長(河井彌八君) 須藤五郎君。
   〔須藤五郎君登壇、拍手〕
#32
○須藤五郎君 私は日本共産党を代表して数点の質問をいたしたいと思います。
 現在アメリカが必死になつて日本に押付けようとしている政策の重要なる点は、吉田政府の手により、一日も早く、而も公然と憲法を改正し、再軍備をなし、軍国主義への道を歩ませようとしていることであります。MSA協定は、まさにこの目的を以て、講和条約、安保条約と日米行政協定の内容を更に具体的に促進しようとするものにほかならないのであります。先にMSA協定に関し池田・ロバートソン会談をやつたが、これは国民並びに国会の意思を無視してやつたことであり、吉田内閣の買弁性を露骨に現わしたものと言うべきであります。吉田総理はニクソン副大統領の訪日をえらく有難がつておるようでありますが、生活に困る農村の二、三男坊は保安隊に入れなさいと暴言を吐き、識者から顰蹙されたに過ぎないではありませんか。そこで吉田総理に質問いたします。
 第一点、日本軍三十二万五千以上の兵隊を作ることを承認したと聞くが、その内容を明らかにされたい。
 第二点、憲法をも改正する約束をして来たと聞くが、その内容を明らかにされたい。
 第三点、中日貿易の制限を承認して来たが、何のために日本の平和的発展を妨げようとするのか、その目的を示されたい。インドネシアは建国四カ年の若い国であるが、アメリカの圧力に屈せず、戦略物資のゴムを中国に送る決定をしてアメリカをあわてさせているが、建国二千六百年と自負する日本がどうしてこのような卑屈な態度をとらねばならないのか。
 第四点、我々国会議員が中国に通商視察に参つた際、郭沫若副主席は、歓迎の席上、若し日本が平和と独立の国となれば、中国と日本の関係は発展するばかりでなく、不可侵条約を結ぶことも考えられると述べられたが、これに対する総理の所感を伺いたい。
 第五点、日中貿易は平等互恵の原則に立つものであるが、日米貿易は全くこの精神とは相反するものである。アメリカで持て余しておる小麦を国際価格より高い値で買うのだから、これでは逆に日本がアメリカを経済援助してやるようなことではないか。而もこの小麦には恐ろしい紐がつき、戦車や大砲がついて来るとのこと、アメリカの新聞や雑誌では小麦爆弾とか新兵器の食糧とか言われている。日本の新聞もうまいことを言つている。「小麦は、馬車に乗つてでなく、戦車に乗つて大砲を引つ張つて来る。歯を折らぬ用心が肝要である」と言つている。このようなことでどうして民生の安定が得られると思うのか。
 第六点、アメリカの余剰物資を援助の形で押付けた二十億ドルのガリオア等を債務として認めて来たかどうか。
 第七点、MSAは完成兵器の押付けであり、何ら我が国を益するものではないと我々は主張して来た。近間にも池田特使は、初めてこのことを知つたと言つておるが、どこが我が国にとつて利益になるのか。はつきりと示されたい。
 第八点、未だにつなぎ融資以外には水害復旧費三百億には手をつけていないようだが、政府は再軍備のために国民の災害を放つたらかし、更に国土の荒廃するのを見ているつもりであるか。速やかに復旧費を支出すべきである。
 以上述べたごとき政府の卑屈なる反民族的態度を、国民は断じて許すことができないのであります。これで最後でありますから、時間は十分ありますから、ゆつくりと丁寧に答弁されることを希望いたします。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(吉田茂君) 過日ニクソン米国副大統領からして、私に、保安隊の増強とか或いは憲法改正の要求があつたような話でございますが、かかる事実は全然ございません。(拍手)
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#34
○国務大臣(岡崎勝男君) 中国の副主席が、日本が平和と独立の国となれば、これといろいろ条約を結ぶ、こう言われたと言われますが、私の知るところでは、中国のほうでは、平和条約を廃棄し、安保条約を廃棄し、その他、自由主義諸国との繋がりを解いて来い、こういう意味のように聞いておりましてこれでは話にならないと私は考えております。アメリカの小麦を国際価格より高く買つてどうするんだとおつしやるが、アメリカの小麦を今度買うことになりますれば、これはドルで買うのじやなくて円で買うのであります。この意味において、ドルの不足である現状において非常に日本の経済に役に立つと考えておりますので、今、条件等を交渉中であります。
 MSAの援助が完成兵器であれば何らの利益がないようにおつしやるが、我々は日本の防衛のためには自衛力の漸増を必要とするのであつて、その限りにおいては、完成兵器であろうとも、援助を受ければそれだけ日本の役に立つのであります。なお、そのほかに域外買付の問題等もあろうと考えております。
 なお、ガリオア等の債務に関しては、我がほうとしてはこれは債務と心得ておりますけれども、その額や支払方法その他は何らきまつておりませんから、まだ債務となつておるわけではないのであります。今後話合いによりましてこれらの点を確定したいと考えております。(「国民はそう考えておらんぞ」「そんな借金があつてたまるか」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(小笠原三九郎君) 災害対策費のことでありますが、関係の政令も最近決定を見ましたので、目下予算の配賦を急いでおる次第でございます。(拍手)
#36
○議長(河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十八分散会
     ─────・─────
○本日の会議に付した事件
 一、国務大臣の演説に関する件(第三日)
ソース: 国立国会図書館
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