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1953/12/04 第18回国会 参議院 参議院会議録情報 第018回国会 法務委員会 第3号
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1953/12/04 第18回国会 参議院

参議院会議録情報 第018回国会 法務委員会 第3号

#1
第018回国会 法務委員会 第3号
昭和二十八年十二月四日(金曜日)
   午前十時四十一分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     郡  祐一君
   理事
           小野 義夫君
           亀田 得治君
   委員
           中山 福藏君
           三橋八次郎君
           赤松 常子君
           棚橋 小虎君
           一松 定吉君
  国務大臣
   法 務 大 臣 犬養  健君
  政府委員
   法務政務次官  三浦寅之助君
   運輸政務次官  西村 英一君
  説明員
   法務省刑事局長 井本 台吉君
   日本国有鉄道副
   総裁      天坊 裕彦君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○裁判官の報酬等に関する法律の一部
 を改正する法律案(内閣送付)
○検察官の俸給等に関する法律の一部
 を改正する法律案(内閣送付)
○検察官及び裁判の運営等に関する調
 査の件
 (日本国有鉄道の運行現状に伴う治
 安対策に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(郡祐一君) 只今より委員会を開きます。
 先ず裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、いずれも予備審査、これについて昨日に引続いて御質疑をお願いいたします。
 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#3
○委員長(郡祐一君) それでは速記をつけて下さい。
 両法案につきましては更に引続き質疑を行うことといたしますが、この際井本刑事局長から国鉄等の現在の鉄道運行の遅延等につき、法務省において調査され、又は法務省において対策として用意しておらるるところ等がございましたらば説明を願いたいと思います。
#4
○説明員(井本台吉君) 三公社五現業のストライキにつきましては、公労法の第十七条によりまして違法であることは当然と思うのであります。ただこれに対する刑事処分につきましては、各それぞれの企業体にその収拾を一応お任せしまして、暴力行為或いは業務妨害若しくは公務執行妨害にあたるような事案につきましては、これは厳重に取締らなければなりませんが、その方針で参つたのでございます。
 ところがこの鉄道関係だけにつきましても、各地に違法越軌にあたる行動があるやの報告がありまして、そのような場合におきましては、これは到底放任することができませんので、それぞれ処置をいたしております。現在まで報告が参つておりますのは、兵庫県の豊岡におきまして、先月の二十四日の午後六時過ぎに駅の構内で停車中の山陰本線京都行の列車に貼付してありました年末闘争のビラを、同駅の助役林田平太郎という人が列車が発車の際に取りはがしているのを発見いたしました組合員の一人の富山重一という人が憤激いたしまして、この助役に体当りをして、同人を転倒させたような暴行をいたしたのでございます。この被疑者につきましては、同月二十五日に逮捕をいたしまして目下取調べ中でございます。そのほか大阪梅田駅におきましては、何回か貨車の妨害事件がありまして、これにつきまして、場合によつては往来妨害の犯行があるのではないかというので取調べを進めております。その他各地に例えば機関車のハンドルを取外した事犯であるとか、信号を担当しておるところに多数で押しかけまして、直接暴行を加えておりませんが、信号手を外まで出してしまつたというような事案もありまして、かような不法越軌行動につきましては、それぞれ相当の処置をするようにいたしております。これらにつきましてはとくと最高検察庁におきましては、国警並びに鉄道公安官関係の方々とも連絡いたしまして、とにかく不法越軌にあたるような行動につきましては、厳重に処置をするというような状況でございます。幸い本日の新聞等によりますと、一応かような越軌行動は収まつたかのごとく見受けられるのでございますが、なお厳重な監視をしておるというような状況でございます。
#5
○中山福藏君 これその三公社、五現業九組合約九十万人になんなんとするこの組合員の闘争ということになつておりますが、これが公労法の第十七条に違反するかどうかということは別問題としまして、実質的には完全なストライキであると言われておるのですが、この点につきまして、中山中央労働委員会長でありますか、あの人がこれは確かにストライキであるけれども、これを取締るということはできない、いわゆる法の不備ということになりておるということを昨日でありましにか、はつきりと新聞紙上に自己の意見を発表しておるのです。ところでいわゆるその骨抜きの法律の裏をかいて、この争議が行われておるというよりに一般には解せられておるのであります。而して本件は要するに大衆が如何に迷惑をしておるかという問題なんであります。運輸省或いは法務省或いは労働省の関係と、労働組合員の関係だけに、これが相互に迷惑がかかるというならば、これは納得ができるのです。併し一般大衆に及ぼしまする影響等も如何に甚大であるかということは、私どもいわゆる運輸系統を利用しようと思いまする人々にとつて大変なこれは問題だと思うのです。ところが要するに出発点はどこかというと、お互いに安心して飯を食いたいと、こういうものです。胃袋というものが不足を告げて、或いは寒空にさらされる子供の顔を見ることができないというような、いわゆる衣食住にこれは起点を置いて、ここから一つの争議行為が出発しておるということは、これは否むことのできない事実であると私は思う。そこで憲法は健康にして最低の文化生活を営むということを国民に保障しておるのですね。ところが保障しておりながら、これはまあ最低の文化生活、最低の生活というものはどれくらいの程度のものかということは人によつてその見方は、これは違うでありましようけれども、大体衣食住に、満足して食えるようにしなければならんということを憲法が一応その明文で謳つておるのであります。だからこの憲法の規定があります以上、殊にこの憲法の第二十八条のいわゆる団体交渉権、争議権というようなものがありまする関係上、どうしてもこの問題というものをいろいろと組合員がこれを背景にして闘うということは、これは当然の私は帰結だと考えておるのでありますが先般公労法によつて一応公務員の政治闘争といいますか、こういうふうないわゆる労働争議というものができないようになつておりますけれども、要するに現在の有様におきましては、はつきりとこれは公労法というものはあつてもなくてもいいという事実になつておるのであります。そしてこれがずつと押して行きますと、憲法の二十五条とか二十八条というようなものから、これは生まれるのが当然じやないかという私どものこれは常識でもあり、或いは法律の面に携つておりまする人間から考えても、一応はこれは肯ける点が多々あるのじやないかと思う、こういうことになります。一般大衆ということ、いわゆる公共の福祉というものが一般大衆にかかつて生まれて来るわけでありまするが、公共の福祉と、こういうふうな各法律、憲法の関係等をどういうふうに調節して行くかということが非常に至難な問題だと思われるのですが、これは私は中山会長の言うことは、非常に筋が通つておると考えるのですが、この点についてこれは法務大臣から一応聞いてみたかつたのです。或いは労働大臣ですね。どうですか井本刑事局長、そういう点は労働大臣か法務大臣の意向をお聞きになつておりますかどうか、一つ承わつておきたいと思います。
#6
○委員長(郡祐一君) 中山委員に申し上げます。法務大臣今参りますから、今ちよつと……、それから只今西村運輸政務次官と天坊国鉄副総裁が参つておりますから、御質問があれば、運輸政務次官と国鉄の副総裁が参つております。
#7
○中山福藏君 ああそうですか。
#8
○説明員(井本台吉君) その問題について直接私はまだ確かめておりません。おりませんが、この公労法そのものでストライキを禁止しておりますが、かようなストライキは直接刑罰を以て論ずるべきものではないということが、昭和二十三年の立法当時の意向であつたやに聞いております。ただ公労法の十七条によりまして、公労法関係の企業体のものがストライキをやります場合には、これは違法行為でありますので、それについては懲戒その他の処分が待ち控えておるわけでございます。恐らくこの直接ストライキを指導した者に対しましては、かような行政処分によつても相当程度の懲戒が加えられるものと私は考える次第でございます。なお、この世論が相当かようなものに対しましては厳しいのでございまして、新聞等に参見いたしますものを見ましても、世論がどうであるかということについて、ストライキをやる人々も相当慎重に気を配つておるようでありまして、その点の処置につきましては刑事局長といたしましては、現在すぐにかようなものが刑罰として取締るが相当であるかどうかということについては、多少問題があると考えておる次第でございます。
#9
○中山福藏君 運輸政務次官は今おいでになつたのですから、私の質問はお聞きになつていないと思うのですが、私お尋ねするのは、労働大臣と法務大臣の意見というものが新聞に発表されて、労働大臣のほうでは公労法の十七条の違反であるというようなことをはつきり言つておられるのです。ところがこれに対して処分行為をどうするかというようなことまで研究しておるのですが、法務大臣のほうでは暴力行為等の規定によつて一応その疑いがあるものはこれを取締る。従つて公労法というものを発動させるということは現在の立場では考えていないという意見を発表しておられる。そういう点について運輸省のほうでは、やはり新聞通りのお気持でいらつしやるのでしようか、どうでしよう。
#10
○政府委員(西村英一君) 公労法の解釈につきましては、やはり主官庁の意見に従わなければならんと思いまするが、私たちのほうの関係ではやはり正常な運転を阻害するということになれば、やはりこれは国鉄法から行きましても、公労法から行きましても、業務の違反になる。かように考えておるのでありまして、公労法それ自身の解釈はやはり主管庁の労働省の解釈に委せなければならんと、かように思つておる次第であります。
#11
○中山福藏君 これはですね、処罰問題が起るときは争議が済んでおると思う。それが大衆のほうから申しますと、年の瀬を控えた今日、何とかこれをして頂かなければ大変な問題になつて来ると私は思う。これは或る意味から言うと政府と労働組合との合作によつて業務妨害というものを、一般の年の瀬を控えた商人に対してやつておるのではないかということすらも私は言い得ると思う。或る意味において私は反面から申しますと、職務怠慢ということも言い得る。例えば井本刑事局長がおつしやいましたように、これから研究する、運輸省のほうでは主管省の意見に従う、労働省と法務省は意見が対立して、これに対して如何なる手を下すかということは、まだ未決定だ、これからそろそろ研究してやるのだ、その間に争議が済んでしまう、そうしてたくさんの国民は被害をこうむる、こういうふうになつたら一体これはどうなるのですか。私どもは今月あるということはほぼ予想ができるわけなのです、この事態が醸される前に……。従つてこれに対して法律の研究家が万般の施策というものを一応整えておかなければならない。これは政府としては、例えば従業員が賜暇闘争に入つた場合においては、予備員というものを置いて、そうして運転に支障なからしむるために、その予備員というものを直ちにこれに補填してその作業に従事せしむるということは当然私は政府としてやるべき、とらなければならん処置だと思うのですがね。そういうことは少しも講ぜられていなくて、ただ意見の対立だとかこれからそろそろ研究するのだ、これで一体国民はどうなるのですか。そういう点を責任を持つてもう少しはつきりした理路整然たる一つ御答弁を頂きたい、こう思うのです。
#12
○政府委員(西村英一君) お話の通りでございまして、併し今まで政府といたしましても、手を決して拱いておつたわけではないのでありまして、又当局者の国有鉄道におきましても、たびたび組合のほうには注意を促しました。併し一旦そういうことが行動の上に起つて来ますと、それに対していろいろ勧告をし、注意は運輸大臣としていたしたのでありまするが、予備員等のお話もございましたが、広汎に亘ることでありますので、予備員等で直ちに救済できるものでものでもございません。併し又そういうような行為が起つた途中において、徒らに何と申しますか、干渉するということもますます悪化させるような状況になりますのでやはり手は全然打たんわけではございません。相当に国有鉄道といたしましても、運輸省といたしまして、手を打つておりまするが、併し徒らに干渉するということは、差し控えておるようなわけでございます。御趣旨のほどは御同感でございます。
#13
○中山福藏君 法務大臣がお出でになりましたから、ちよつと一つお尋ねしたいのですが、これは同じことを繰返すようでございますが、大体責任ある地位にあられる大臣に一つお聞きしたいと思います。只今お聞きした要点は、労働省と法務省の意見が対立しておる。この公労法の第十七条の解釈、その他について法務大臣のほうでは、暴行等の事実があればこれを調査する、従つてこれを処断するにやぶさかでないという意見を新聞に発表された。ところが労働省はすでに公労法違反としてこれを処断しなければならないという意見の対立がある。そういう点をあの新聞に現われたままこの争議が済むまで持続して行かれるつもりか、研究研究ということでその日を暮して行くつもりかということを今お聞きしているわけであります。
#14
○国務大臣(犬養健君) 御説明を申上げます。これは別に意見の対立はありませんで、御承知のように国鉄その他公共企業体の職員の争議行為は、公労法第十七条で禁止されておりますけれども、公労法には罰則がありませんで、専ら違反者に対しては内部の行政処分に待つているわけであります。そこでその限りにおいては、例えば一例を具体的に申上げますが、御理解を頂きたいと思います。例えば平和的、説得的なピケ、これは刑法上の問題にはなりませんが、公労法違反になるわけであります。違反になつた処分の仕方は行政処分になるわけであります。これは労働大臣が強調しておられるのでありまして、私も全然同感なんであります。ただ法務省の関係として刑法上の問題として取扱うには、例えば公務執行妨害とか、往来妨害とか、暴力沙汰とかいうときになつて刑法上の問題になる。従つて平和的説得的なピケであつても、公労法違反であつて、国鉄の処分の理由になるという点は全然意見が一致しておるのであります。言葉が足りないという責めは十分負うのでありますが、私の昨夜の声明はそれに解れてあるつもりでございます。ちよつと別々に出ておりますので、そういう誤解を招くこともあり得るかと存じます。
#15
○中山福藏君 大体法相の言わんと欲せられるところはよくわかる。ただ私が今申上げて運輸次官にお尋ねしておつた理由は、大ざつぱに言いますと、政府と労働組合の合作によるところの、年の瀬を控えたときに行われた国民全般に対する業務妨害であると私は今申上げた。それでこれからいろんな問題を研究して対処するのだということは、もう自己の職務を怠慢しておるのだということも私は附加えて今論じておるわけなんでございます。今運輸次官にもお尋ねした通りで、例えば九十万人というものが実質上ストライキに入つておる。それならなぜ九十万人なら九十万人に相当する大体目安を置いて、予備員というような工作をしておられなかつたか。そうして十二月に迫つてこのストライキをこれから研究だとか、これは法律違反になるとか、ならんとか、そういう研究というものはもう遅いというふうに私は思うのです。このストライキにいわゆる賜暇闘争があるということはすでにもう先月、その前からわかつておつたと私は考えておるのであります。それで日本の政治上の行き方を見ますと、いつも問題が起つてからこれから研究して法律の解釈から何からそろそろ、「いろは」から始める。いつもそれをやられて、それで人の噂も七十五日で、七十五日を過ぎると国民は皆忘れておるというような誠に呑気な状況が続いておる。併しそれではいかんと私は考えております。なぜ今日までこういう立場に入るということを見送つておつたか、その責任は一体これは誰が負うのだ、私はこういうことを申上げておるわけなんです。それで今運輸次官のお言葉でありますが、お聞きしておりまするというと、結論としてはどこをどうつかんでいいか、私には理解ができない。実際には私どもは今日ある前になぜ手を打たなかつたか、それをお尋ねしておるわけであります。
 それからもう一つついでにお尋ねしておきますが、憲法の第二十五条で文化的な最低の生活を保障するということが一応謳つてある。憲法第二十八条による争議権というものを一応認めておるわけですから、この三公社五現業或いは九組合というものが闘争に入つておる。而もその公労法の建前から申しますと、これは表向きに一応禁止されておるけれども、中山会長が言うように、実質的にはこの闘争がやれるのだ、こういうところについては何にも法というものは備わつていないということを、会長自身が言つておる。これは会長は斯界の権威者として相当私はやはり敬意を払つてその説を聞いても差支えないと思つておりますが、そういう点について少しも憲法の精神との調和がとれいないのじやないか。だから一方に争議権というものをそういうふうに認めておつて、一方に禁止してあるから、その調節をどうするかということは、一応政府においても普段からこれは考えておかなければならんことだと思う。そういう点が脱落しておるように考えられるのですが、そういう点についてはどういうお考えでおられるか、それを一つ承わりたい、こう質問しておるわけです。
#16
○国務大臣(犬養健君) 事を分けての御質問でございますし、又確かに立派な御意見だと思いますが、法務大臣がそのことについて答弁を申上げますと、労働大臣をさしおくようなことにもなりますので、併し国務大臣として他人事でございませんから、十分有力な御意見上して労働大臣にも直ちに今日の午餐のときに伝えたいと思います。その辺で一つ御勘弁を願いたいと思います。
#17
○一松定吉君 まあ法務大臣に向つて法律上の議論を吹つ掛けてやるというようなことはこれは私としてはできない。なぜかと言うと、法務大臣は法律家ではない。ただ法務大臣という地位におられることによつて平素修養せられたる常識によつてすべてのことを御判断して頂いてそれがためにこれはすべてのことがスムースに運営せられておるのでありますが、法律上の一字一句をとらえて、法律解釈につきまして我々専門家と意見を交換することはむずかしいと思いますが、ただ自分の考えを法務大臣に申上げておきたいことは、労働法の第十七条の違反は、つまり憲法の二十八条の「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」。ですからこれはそういう行動は憲法が保障している。だからしてそれはいわゆる禁止行為、ところがこの公労法の十七条の同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為は、これは禁じているのです。だからしてこういうようなことはいわゆる憲法において保護されておる行為でない。憲法において保護されておる行為でないことをやる。そうすると、これはこういうことをいたしたならばどうなるか。そうなつて来るとすぐそれは刑法の範囲内に入る。業務妨害の場合がありましようし、或いは暴行脅迫の場合がありましよう。でありまするから、今の罷業、この団体のやつておることがいわゆる交通を阻害して行く、汽車も出さない、旅客は駅に充満しておつて交通ができないというようなことを知つておいて、自分らがこういう行動をすればこういう結果になるということを知つておつてやるのですからして、これは明らかに交通妨害、或いはバリケートを取除こうとする人があると、それに対して取除かせまいとして暴力を用いて暴行脅迫をする。これは労働大臣の小坂君が一昨日でありましたか声明しておつたあの意見は、私はあのままでいいと思う。ただ問題は、然らばこれだけの何万人というこれらの従業者がやつておることを取締るには一体どうして取締るか。お前は刑法違反で交通妨害をやつておる、お前は暴行脅迫をやつておる、お前は官庁のものを持ち出してやつたんだからそれは横領だというようなことで解釈すればそれは解釈される。刑法上の問題だからというので、数十万人の人を捕まえてそういうことをやるということが一体できるものかどうか。そこで中山君の言う、いわゆる何か予備的な職員を置いておいて、そういうような緊急の事態に処すべき施設をして置かなればならんのじやないかということは、これはもう国民誰しも思う。私どもも思う。ああいうような連中が、自分が専門にやつておるんだから、自分らが行動をしなければ一切汽車は動かんのだ、だから自分らは行動せん。困るのは国民だ。国民が困るから、結局政府もそれで政治の貧困だとか、政府が国民から非難される。仕方ないからそれではお前がたの言う通り賃金を上げてやろう、そうすると俺の目的が達せられるのだということが常に繰返えされるのですね。それが一番困るのです。つまり彼らは一つの独特な手腕、力量を持つておる。その手腕、力量を自分ら以外にこれを運営することのできる予備隊というようなものがあれば、そうか、お前せんか、それではお前がた交代してやれということになるのだが、それができないから、つまり自分に代行するところの相手方が一人ちやんと予備的に備わつておらんから、こちらのものがやろうと思つてもやれない。或る店が品物を、国民の要するものを高く売つても、高いけれども買わなければならんのだ、仕方ないから高く買う。反対に安く売る店がそこにできれば、競争になるからもうそういうことはできん、この施設が必要だ。中山君の言うのは私もその通りだと思う。そこでこれは例の軍隊の予備隊、予備というか、現役を終えて、そうしてあと例えばやめてから五年間とか十年間とかいう予備隊或いは後備隊、予備兵、後備兵というものがあつて、現役が若しそこで何らかのことで障害が生ずる、或いは手が足らんということであれで、予備役或いは後備役を繰出すということになると、現役が横暴なことができないのじやないか。そういう制度を一つ考えて研究しなければならんと私は思つております。現在そういうことはできませんから、彼らの思う通りにやれるから、その点をどうしても一つ考えなければならん。今のような連中だと、俺が汽車を動かさなければ、ほかの者はできんということになつて、国民の交通は全く阻害されてしまう。お前は刑法上の交通妨害だから引括つてやるぞと言つても、何万、何十万人も引つ括ることもできないし、又引つ括ることも国家としては困るわけです。そこにつけ込んで彼らはやるのですから、本当にこれは困つたものだと私も考ております。そういうような準備が平素から研研されておれば、それじやお前がたやらないか、それなら予備隊を引張つて来い。それを徴発してやればできるということになれば、彼らもやらない。丁度この前放送局の連中がストライキをした。私が逓信大臣のときです。誰も放送ということができないし、ニユースだけは国民は聞きたいというのだが、ニユースも聞けない。非常に困つた結果、放送局の中の或る国を思う人々が、川口の放送の施設を使つて、そうして一つ特別に彼らのやらないことをやろうということで、命を賭けてやりまして、私が第一声を放つて放送した。我々が放送を阻止しておつて放送しないということになつておるのに逓信大臣が放送してしまつたので、これはもう駄目だなんということで俄かに彼らは腰が砕けて、ニユースはやりましようということになつてニユースを放送した。それからずつと順調に放送が回復した事実を私は今に覚えておる。丁度今中山君の言うようなそういう施設があれば、これはできないと思うから、これは今からでも遅くないから一つお考えになつて、将来そういうことの予備にこれはやるということが必要じやないかと私は思う。公労法の十七条に違反しておることは議論はありません。明らかに違反しておるけれども処罰ができない。処罰ができなければ本当に迷惑するのは国民だ。だから結局どの程度でか彼らの主張を容れてそれを解決するよりほかに方法がない。政治家としてもどの程度に解決するかの問題、今西村さんの言うように本当にこういうことをすることによつて国民がこの連中に対して愛想をつかす。丁度この前あつたときに、長野県で……長野県の半分は争議に加担し、半分は加担しなかつた。争議に加担しておるほうの人々に対しては長野県人が、お前がたには米も売らない、野菜も売らない。味噌や醤油も売らないと言つて彼らに生活品を売らなかつた。そこで家内がやかましく言つた。あなたがたがこういうことをして汽車を出さないから、私たちは米も味噌も買えないじやありませんか、何とかして下さいと言つて来たので、家の中から争議が壊れて、そうして解決した実例があります。国民が連帯してこういうようなことをする者について反感で、何か、これを困らせるような方法を国民がとれば、彼らもつまらないから、やはりやめようということになる。で何らかの方法でこれらの行為を阻害するような方法を一つお考えにならないと、ただ刑罰を以て臨むなどと口では言つておりますが、新聞にもそう書いてありますが、笑つておる、彼らは……。引つ括るなら引つ括つてみろ、併し到底引つ括ることはできないじやないか、この何十万人というものを……。日本の弱い秩序維持の保安隊みたようなもので引つ括つてどうするか、それはできない話じやないか。そういう点を今からでもお考えになつて、この争議を解決するようにしないと、一番困るのは我々国民です。我々が今日旅行しようと思つたけれども、旅行は見合せる。若し旅行をして予定の通り帰つて来れなかつた時分には職務の執行に困るからというので旅行を見合したというものは、我々一人や二人ではない。恐らく全国の人皆困つておると思います。どうかこういう点は本当に一つお考えになつて、予備とか後備とかいうものを今度こしらえて、いつでも危急存亡に応ずることができるようなことをなさる必要があると思う。これは御参考のために申上げておきます。
#18
○亀田得治君 中山委員と一松委員から御意見も含めての御質問があつたのですが、法規上の問題はいろいろな委員会なり、適当な場所で相当論議もやられておりますし、又簡単にここで議論しても解決するような問題ではなかろうと思う。ですからそういう点は触れませんが、政府のほうの考え方を一、二点お尋ねいたしたいのは、そういう細かい点ではなしに、何か今度の全体の動きに腑に落ちないものがあるのじやないか、割り切れないものがある。それは今争議といいますか、いろいろな交渉をやつておる諸君は、平素かう法規によつて仕事をしておる人たちが多い。知的にも非常に高い労働者です。こういう諸君がいろいろ法規を調べて、そうして法規に触れないように、そういう立場で動いておることは事実なんだ。これはどう判断するかということは別個の問題でありまして、なぜそういうことを実際しなきやならんのか、こういう点なんです。で、これは本委員会なりその他の関係委員会でやはりそういう点も触れておりますが、何といつても私はあの裁定が出ておる、それが実行されない、これがもう基本的な問題だと思うのです。そんな物のわからない労働者でないんですから、今度の問題の関係の人たちは……。だからどこの仲裁裁定にしたつて、仲裁裁定が出るまでは事業主と労働者が盛んにどこの国でも争いますが、ああいう判決的な裁定が出れば、無理をしてもそれを尊重して裁処理して行く、こういうふうな態度に出ているわけなんです。で、政府は成るほど予算上という立場から、それを完全に実施できないとは言つておるものの、実施できない場合においても、その組合の諸君に対する出方なり、ものの言い方なり、やはり態度があろうと思うのです。それは完全実施ができればいいんですが、できない場合においても態度があると思う。何かもう相手が違法行為だ、君らはもう憲法によつてそういう権利は、スト権なんかはなくなつているのだといつたような、一方的なきめ方をしたつて、人間の考え方は自由なんですから、憲法が制定されるときには決してそんなことは予想していないですから、あとからこれは考えた、法律の制定の順序から行つたら……。そういうふうに議論をお互いに交わせば公平な第三者が聞いておると、わかつたようなわからんようなことになつて来る。そういうところに問題があるわけですから、これはそういう法律論よりも、早くこういう事態を何とか処理する、もう政府が、金を出すほうは政府関係のほうなんだから、おれのほうがいやと言つたらもうそれに従え、こういうふうな行き方じやなしに、私は行き方はいろいろあろうと思う。まあそういう点について、それは組合でも恐らく具体的な最後のいろいろのやり方ということは考えておると思うのです。そういう角度からやはり処理して行くということが非常に大事だと思うのです。それは、成るほど恰好だけを見ておると、政府と組合がぐるになつて、何か国民に迷惑をかけている。こういうふうに見えるかも知れませんが、それはただ結果がそういうことになつて来ておるだけであつて、そんな意図でこれは政府にしたつて或いは組合にしたつて考えておるわけじやない。だからやはり根本のその裁定、これが実行されない、こういう点の無理があるわけですから、やはりこういう立場に立つていろいろな取扱い、例えば、あの公労法には少くとも違反しておるから、当然行政上或いはその企業内部の処分があるべだ、こんなことを言つてみたつて、そういう言い方をしておれば、だんだん物事が悪いほうに発展するだけだ、そんなことじやなしに、そういう内部的な処分の問題、或いは部分的には法務大臣がおつしやつているような具体的な刑法関係の事案というものも地方にはあるかも知れない。これはどうしたつて組合の本部で統一的に行動方針というものを出ましても、なかなかいろいろ動いておると下部ではその通りには行くもんじやないです。何十万という人間が動いておるのですから。これは必ずいろいろなものが起きて行く、派生的に……。だからそういう問題の扱いにいたしましても、ただそういうものが起きた場合には断固処分するとこういうことを言つただけでは……。それを断固処分しようと思えばできないことはないでしよう。併しそれは処分されたほうがそれで果して気持の上で十分納得するかどうか、納得しませんよ。どんな刑法だつて悪いことをすれば、やはり処分されれば大体においてやつぱり納得する。物を取つた、処分された、処分されるのはいやだから嘘をついたりいろいろしますけれども、それは別だ。やはり発覚して処分されれば納得する。それでやはり法律というものが尊重されて行くだろうと思うのでありす。何かこう割切れんような気持が、処分したほうにも、されるほうにも残るような法の使い方は、これはいかんと思う。勿論、私はそれじやいろいろな具体的な事件が起きても、それを放つて置け、そういう意味で私は申上げているんじやない。だから基本的な問題というものを踏み外さんようにして、法務関係でも、或いは国鉄の責任者のかたも来ておられますが、そういうことが非常に大切なんじやないか。相手は十分いろいろな理非曲直もわかつた人たちでもありまするし……。じや、どうも君の言うような状態で行くと、又この次に起るかも知れない……。どうもすつきりしない。それは、すつきりしないことはもう単にこれだけじやない。どこにだつてたくさんあるのですから、これはやはり全体の日本の社会の再建というものがすつきりして行くに従つてこれはやはり解決されて行くべき問題だと思う。私はそういう意味で、まあああいう新聞なんかの報道を見ておりますと、いらいらしたりして、何か右から左に処理する、そういうふうな方向が出ることを非常に恐れておるのですが、これは十分御注意を願いたいと思います。そういう意味で、そういう立場からも一つお考えを……。先ほどから大分何か強硬にやれというような意味の御意見、御質問もありましたが、逆のほうから私一言お聞きしておきたい。
#19
○国務大臣(犬養健君) 公労法の適用の扱い方は、これは労働大臣からお聞き願いたいと思いますが、少くも公労法の運用について、法務省から特に積極的に労働省に註文をつけるというようなことは今までも考えておりませんし、そういうことは考えもいたしません。
 第二に、亀田さんの御質問は、多分昨夜私のいたしました談話の真意、ニユアンスというようなことを考えるために聞いて置きたい、こういうようなお気持だろうと思うのでありますが、あれを発表しましたのは、丁度ここにお二人法務省の記者クラブの人が見えておりますが、これは警告の意味ととつてようございますかという質問がありました。私はさようだと申した。つまり、若い人でありますから、ころばぬ先の杖として、まあ第一線でわあわあやつておれば、血の気も多いし、この辺まではいいだろうというようなことで、つい侵すということもあり得るので、こういことは取締当局としてはやはり刑法上の問題にしますよ、一番お終いの文章をお読み下すつたと思いますが、公共企業体の職員の諸君の自重を望みます、こういうふうに書いてあるので、まあ若いからいろいろな足の踏みはずしもあるだろうが、こういうことになると問題にせざるを得ませんよ、こういう意味で注意を喚起したというのが一番の重点であります。それから事実問題としましては、私の手許に、方々から行き過ぎじやないかと思うような事案が七つか八つ参つております。そのうち捜査を開始しておりますのは一件であります。そのほかにどうも少しやり過ぎだなと思うものが一昨日よりは昨日の報告のほうが殖えておりますので、これはどうも一応注意しておこう。そうすれば、こういうことは必ず刑法上の問題になるということをあらかじめ言つておくということも親切な方法だと、こう考えてああいう談話をいたしたわけであります。
#20
○亀田得治君 私の主としてお聞きしたい点は、仲裁裁定が完全に実施されない。これはなんと言つても無理があると思います。これは政府側の人としてはそうだというようなことはこれは言えないと思いますけれども、まあ今まであれしかしようがないということをいろいろなところで言明されておりますから、私の質問に対して肯定することはできないと思いますが、併しこれはどこへ行つてでも私ども聞かされておることなんです。なんとしても腑に落ちない。これは忌憚なくと言つても、そう忌憚なくも言えないでしようが、そういう点についてはどういうふうにお考えでしようか。
#21
○国務大臣(犬養健君) これはだんだん法務大臣の枠から出て来ることでありますが、併し大事なことでありますので申し上げたいと思います。政府でも盛んに議論されるのでありまして、出せるものなら出そうじやないかという気分も大分あるのでありますが、御承知のように、災害で金を食いますし、大蔵大臣ともぎりぎりの計算なども何度も聞き合つたのでありますが、止むを得ないゆえんを一つ国民にも、公共企業体の諸君にも知つてもらおうじやないかということになつたわけであります。併しその知つてもらうやり方について、いやが上にも注意して心持を融和させる必要があるのじやないかという御議論は私は賛成いたします。又労働大臣なんかも、若くつてそういうことに理解の多い人でありますから、いろいろな努力をしているように私は話を受けております。なお、そういう点について、政府が同じできないことについても、十分勤労者に納得の行くような説明をすべきであるというお考えには原則的には私は賛成でございます。
#22
○亀田得治君 そういうふうなことの気持になつて来れば、例えば三公社五現業をとつてみても、一つ一つ経理内容も違いますし、この話の進め方というものは相当あると、私ども単なる見当だけじやなしに考えておるのです。だからどうもそういう点が、最後の非常に妙な恰好になるまで行くのが非常に残念だと思うのです。だからそういう意味で一つ慎重にやはり考えてもらいたいと思うのです。
 それからもう一つは、こういうストライキと輿論との問題なんです。これは私どもでも、或いは労働組合の諸君でも、ストライキの側に廻るものとしては一番これは気にしていることなんです。ところがどうも私最近の政府側の出方なり、いろいろな調子を見ておると、大衆が或る程度納得しておることに対しても、誇大に大衆が迷惑をこうむるのだ、輿論でないのに輿論であるかのごとく政府の人が、一人言いますと、これが非常に輿論であるかのごとく再生産されて行くのですね。これは非常に労働組合の諸君を一つは刺激している言辞ですよ。輿論と言つたつてなんだ、これだけたくさんの労働者がなんとかしてもらいたい、その妻や子供を入れれば随分のたくさんな人間ですよ。それを抜きにして一体誰の輿論だ、これは必ずこういう反撃が出て来ますよ。だから輿論なんというものは、これは政府や労働組合が我田引水的に引用すべきものでは私はないと思う、どちらにしても……。これは第三者自身が慎重に言うべきことなんで、そういうことが却つて妙に行き方をこじらす一つの問題であると思うのです。又労働組合にしても、我々にしたつて、大衆に迷惑をかけていいと思つておる人は一人もいない。併し、スト的な行為というものは、これは或る程度大衆に迷惑がかかる。こういう公共企業体でなくても、初めからそういう性質を持つておるものです。そんなこと私が別に改めて言わなくてもそういう性質のものなんです。それは特別な例とおつしやるかも知れませんが、フランスあたりのせんだつてのゼネストは数日間やりました。郵便がとまる。これは不便で仕方ないですよ。併しそういう場合でも、これはまあ郵便関係の労働者が、自分たちの賃金の関係で話がつかないからまあ認められた権利としてやつているのだからということで、割合のんびりした形で静かに見ておるというのですね。それは中には憤激したりなんかする人もおりますが、大勢はそういうことですよ。日本のように、ううつとこうなつて来るというところがないというわけです。従つて、労働組合のほうでも鉢巻をしたり、かかり火を焚いたり、そんなような傾向が非常に薄いというのです。私は本当に輿論が発達して行けばそういう事態になると思うのです。そういうふうに静かに見ておつて、それでも尚且つ無理をしているということならば、今度は本当の輿論が出て来るですね。輿論というものはぎりぎりのところに来ないうちに、何かを予想してさてみんな迷惑をこうむるから、一つ何か言え言えと言わんばかりのようなことでは、これは本当の輿論ではないと思う。これはもう戦時中の作製された輿論と一緒だと思う。この頃憲法問題がしよつちゆう国会で問題になる。そういうときに公共の福祉との関係で輿論というものが出て来ますがね。これは十分注意して使つてもらいませんと、日本のデモクラシーの発達にとつて非常に私マイナスだと思うのですよ。本当に私ども輿論の批判を受け場合には、これはいたし方ないです。だけれどもこれは当事者が口にすべきものじやない。私今回のストに対する批判なんかを見てみても、何かそういうものを自分の味方に引入れて来て、これで組合を抑えてやるというような点が見えるような気がするのですが、どういうふうにお考えでしようかね。
#23
○国務大臣(犬養健君) 政府側の身びいきかも知れませんが、割りにそういう泥臭いところが少いじやないか、政府のほうで……。それから毎朝実は閣僚が早起きして、関係閣僚が寄るのですが、そこへ長崎国鉄総裁も来ますが、私の想像よりももつとそういう何と言うか、押付けがましい態度をとつての談話がないので、団交は団交、又もつと胸襟を開いての話もしたいというようなふうで、私個人から言うと非常に感じがよかつた。大分日本も泥臭くなつて来たという感じをむしろ持つております。一方労働運動のほうも、終戦直後から見ると、今おつしやつたような鉢巻で血眼になるというような傾向が少くなつて来たので、両方だんだん大人になつて来るじやないかと思います。
 第二の問題で、法務省だけいい子になるということはよくないこでありますが、速記録をよくお暇があつてお調べになれば、長いあのごたごたした議会を通じての私の答弁で、輿論とかそういう言葉は恐らく使つていないじやないか。使つても恐らく五本の指の中に入るのじやないかと思います。その点は私も気を付けております。おつしやるように、輿論というものは、輿論を構成する第三者が言うのが一番よいのであつて、政府が輿論を作つて、サンプルを示すというようなことは、成るべくぎりぎりの必要の限度にとどむべきである、こういうように思つております。
#24
○亀田得治君 まあそうすれば、私も一つ最後に希望を申上げておきますが、やはりこういう大きな問題になつて、政府のほうで何か声明をされるというような場合には、先だつて法務大臣のああいう談話のほかに、やはり一般の人たちに対しても何とかこれをうまく早く解決するから、暫らく御迷惑かも知れませんが御辛抱願いたいと、むしろ鎮めるようななにを出してほしいのです。輿論を煽るようなことはしないとおつしやるかも知れませんが、むしろ積極的にこういうようなむずかしい問題は右から左に行かん場合もあるから、暫らく静かに一つ見守にて下さいというくらいの声明を出すのが私は本当じやないかと、こういうふうに思つているのですが、それはどうでしようか。
#25
○国務大臣(犬養健君) その問題も昨日の朝ですか、話合つたのです。で、長崎総裁のこれは直話なんですが、乗客が予想以外に非常に冷静だそうです。けしからんというような騒ぎは一回あつたそうですが、あとは非常に冷静で三十分なら三十分きちんと落ちついて待つているそうです。これは私なかなか輿論というものも水準が高くなつたなと思つております。ですから、組合のほうもまあレールに八十人横に寝るというような、余り目立つことをしないで、どうもそうなると刑法上の問題にせざるを得ませんから、できるだけ静かに生活の権利を主張すると、政府のほうも速成の輿論というものを一生懸命に作るということでなく、できるだけ解決点を冷静に見付けると、幸い乗客が今申上げたように、私は初め意外に思つたくらいなんですが、一回騒いだくらいで、待つべき時間をきちんと落ちついて待つているというふうになつて来ると、亀田さんの言われるような好ましい状態というものはやができて来る。とにかくストライキの経験者から言つても、少年時代ですから、又それを受ける当局者も余り経験がないから、これも経験者としては若い時代を過ごしているわけですから、だんだんよくなるのじやないかと、こう多少楽観的ですが、私は今度の争議の乗客の落ちつき方なんかを見てそう思つております。従つて特に声明を出す必要が緊急であるというような結論にならずに、実は別れたわけであります。
#26
○亀田得治君 結構です。
#27
○中山福藏君 私は法相を文化人として、これはまあ一つ今日は希望もあとから申上げたいと思いますが、結果から見まして今日のストライキはこれは亀田委員が故意に合作したものではないと言う、これはその通りでしよう。これは故意であつたら大変なことでありまして、結果として併し合作のようになつて現われて来て、国民大衆が非常にまあ迷惑をこうむつておると、これはもう事実です。私は事実以外に申上げていないつもりであります。輿論というものは迷惑をこうむつた人は全部不平を言つているだろと思われるのです。併しその局に、その場所にいなんだ者は如何にこれを批評するかどうかということは、新聞雑誌等によつて自分の感情を刺激されて、自分の意見として発表するでしようが、これはもうどうなるかわかりません。併し年の瀬を控えたストライキというものは、相当に私は輿論というものがどういうふうに向つて行くかということは、これはまあ常識上誰でも考えられるものです。で、ふだんの闘争と違つて、一月を控えたこれは闘争でありますから、私はまあできるだけ早くこれを御解決願いたいというので、希望やら質問やらを先ほど申上げておいたのです。で、只今長崎総裁のお言葉が非常に落ちついているということを申されたということで、法務大臣非常に、まあ感激と申しまするか、日本の労働争議もそこまで発達したかというおぼしめしだろうと思うのですが、これは長崎総裁の立場から言われたことである。私どもがそれを全面的に受入れるということはできない。これは客観的にこれを第三者がどう見るかということとは別の問題である。そういつたものを政府としてもお考えを願いたい。私は政府にも、労働組合のどちらにも不平を持つている一人であります。第三者として、そういう観点から私は自分の意見を開陳したわけでございますが、私はこういうことを一つそういう意味からお尋ねしておきたいのです。この仲裁裁定というものを一応政府が呑んだと世間は考えている。それと、その施行期日というものについての意見の相違からこれが一向捗らない、こう言つておる。仲裁裁定というものを政府の代表者がその場に臨んで、果してこれが世間に伝えられているように呑んで帰つたかどうか、確約をしたかどうか、これは問題であると思います。確約をしておれば、これは政府というものも、いわゆる独立国の政府として相当の責任が生じなければならん。併し確約じやなくて、仲裁裁定というものは、これは勝手にやつたものだから、若しこれを強行して政府に迫られるということになると、予算審議権とか、或いは編成権というものを脅すことになるのだから、そいつはどうも承知ができないというならば、これも聞こえる話です。併し一遍呑んだというのだというのだつたら、これは政府としても相当の責任をお持ちにならなければならんと考えますが、併しそれを呑みながら、できない理由は予算、日本の財政状態はこういうふうにあるということを国民全般に納得さして、成るほどそれは政府の言うことには理窟が立つておる。我々の税金でこれを払うのだから、我々は成るほど政府の言う通りに、これは労働組合のほうも辛抱してもらうのが当然じやないか、こういうふうに全部が理解してくれれば非常に私解決は早いと考えておるわけでございます。
 それから最後にもう一つ、犬養法相、特に文化人として敬意をはらつてお願いするわけですが、昨日も私はこの問題を言つた。日本は共通した理想がない、国民に今……。丁度まむしが非常に強い動物ですから、切つてみますというと、一寸づつ切られた分が生きておる。あつちでもこつちでも自分勝手な部分々々の考え方が全国に飛んで歩いておるわけなんです。現在は統一された思想というか、統一された教育、統一された道徳の方向というものが示されていない。実際はそこに私は日本の今日ああいう争議が起る理由の一つの要素をなしておると私は見ておる。この間、一昨日の晩でありましたか、舞鶴の引揚者の座談会を聞いておりますと、ロシアは国定教科書を作つて、統一された国の理想を教科書の上にとつているということを言つております。これは一利一害があるでございましよう。民主主義をとつている今日であるからあるでありましようが、やはり政治の衝に立つものは、国民に対して経済的な指導方針、或いは教育の指導方針、いろいろなものの指導的な立場にあるということは、これは政治というものが生まれた根源でると思います。政治というものには一つの理想がなければならん。その場その場、ケース・バイ・ケースの場当りのことをやつておられては大変であると思います。だから今日人口と食糧のアンバランスから、この争議なんというものが起るということは、よくわかるのでございますけれども、そういう立場にありまする日本の国としては、格別な方針というものが政府の識者によつて立てられなければならんと私は考えるのでございます。そういう点がちつとも今日本にないように思う。成るほど東條内閣時代に、今亀田委員も仰せられたような、作為的な輿論とかいろいろな指導方針とか出ましたけれども、あのくらい独断的な、人を弾圧するような東條内閣のやつたことは別にして、こういう点は一応一つお考えを願つても差支えのない時期に到達したと私は考えておる。これが日本の現在の悲しみだ、こう考えておる。そういう点を文化人である法相が私は一応一つお考えになることが肝要じやないかと思うのです。そういう意味において、私は犬養法相が閣僚になつておられるということを、私は非常に歓迎しておるわけです。どうか責任を持つてそういう点はお考えを願いたいと、こういうことを申上げたいと思うのですが、如何でしようか、こういう点のお考えは……。
#28
○国務大臣(犬養健君) だんだんの御意見について、できる限り誠意を以てお答え申上げたいと思います。長崎総裁が案外落ちついておると言われたのは、乗客のことなんでございます。労組は落ちついていない。若気の至りではみ出しておる部分がございますが、信号所で信号をしようとする者を降したり、暴力であるか、説得であるか、ボーダー・ラインのようなところもあり、俄かに刑法上の問題にすることは慎重に調べておりますけれども、非常に争議のことですから騒いでおります。それに比べて乗客には騒ぎがないという報告を私は非常に感じよく受取つたのであります。こういうことなんであります。労組のほうはまだ争議の歴史も短かいことでありますから、少しやり過ぎもあるわけであります。法務大臣としては刑法上の問題とするということも、ときには断乎としてすることも勿論職務でありますが、一方これ以上は刑法上の問題になると言つて若い人に注意をするということも大事なことでありますので、昨夜の談話はむしろそのほうに重点を置いたわけであります。
 それから仲裁裁定を呑みますと確約したことはないように思つております。裁定を尊重するが、かくかくの理由で財政上真に止むを得ない。こういう態度で出ておりまして、従つて予算措置を変えるということはないと私は見ておりますが、併し亀田さんの言われるようになぜできないかということに対して、勤労者の立場にある人に、懇切町寧を尽すということは、案に私は日本建設のために大切なことだと思つております。この点は十分閣僚の一人としても努力したいと思つております。まあ政府から見ますると、有力な国会の中の別の党が政府がまさかあそこまでベース・アツプを呑むとは思わなかつたので、作戦を誤つたという談話が出ておるところから見て、政府が非常に勤労者反対一点張の政策をとつたとは最低限度言えないと思います。併し年の瀬を控えて、勤労者階級から言えば、もつと多いほうがいいということになるだろうと思います。その辺の話合いは今後我々は十分に理解をし合うということが必要だと思います。
 最後に何といいますか、民族意識というか、統一された精神とかという問題でございますが、これは非常に大事でありますが、私は一概に統一した教育ではめていいかどうか、又統一をした教育をするだけの、真に教育家らしい教育者が日本にいるかどうか、教育者には甚だ失礼ですが、どうも疑問を持つております。ただ別の角度から見てよく外国人に接触する機会が私多いのでありますが、例えばアメリカ人は、あれはいいアメリカ人だ、グッド・アメリカンだ、そういう言い方で、つまりなんと言いますか、フロンテヤの精神だとか、非常な神に対して敬虔なピリツトがあるということを含めて簡単な言葉で言い得るだけの、一つの国民状態をもつておると思います。これは宗教的な理由で、アメリカへ移住した人が、最初の移住民であるというような、尊い伝統であるとか、ヨーロッパから移植されたキリスト教精神が、日常の生活に生きているとか、いろいろなことからできた立派な文化だと思いますけれども、日本にはそういうものがありません。あれはいい日本人だといつても、なんの意味かわからないというところに御指摘の点があると思います。敗戦後やはり虚脱状態になつておりまして、ようやくそれが生きかえつて来た。そうしてこれを変なただ愛国的にもつていつていいかどうか。世界人であつて、而も日本人たることを誇る両立した精神を作つて行くところに、私たちも非常に力瘤を入れたいと思つているのですが、どうもこれ、今のような過渡期に、すぐ統一的な教育方法をきめて、それで新式な日本人はこれでございというわけには、どうも教育者の顔ぶれからいつても、どうも危険じやないかと思つております。結局これは日本人のいいところを国民が意識して、いい日本人であるといえば、共通な観念が、どんな人の頭にも説明なく浮ぶというところまで、お互いの目の黒いうちになるかどうか知りませんが、全力を挙げて、そういういい日本人のタイプというものを作りたいという熱意においては、中山さんのあとに続いて、一生懸命やりたいと思つております。
#29
○亀田得治君 ちよつと私準備して来なかつたのですが、丁度又機会がないかも知れんと思うので、国鉄の責任者のかたがたにちよつとお伺いしておきたいのです。ピケラインの問題なんかが問題になつているようですが、あなた現場を少し御覧になつたでしようかしら。
#30
○説明員(天坊裕彦君) ピケでもみ合つているという現場は自分で見ておりません。
#31
○亀田得治君 現場でなくてもいいのですが、そのもみ合つている現場でなくてもいいのですが、ピケの規模とかそういつたような全貌ですね、これは実際に歩いて御覧になつたでしようか。
#32
○説明員(天坊裕彦君) 写真で数カ所のそういう状況を見ております。
#33
○亀田得治君 これはどうも私そのお返事であとの質問が少し又調子が変つて来るのですが、あれだけ世間で心配もし、実際に私ども労組側の立場に立つている者としても、いろいろ関心を持つている問題なんですから、これはやはり現場を国鉄の責任者のかたがたは全部やはり見ておいてもらいたい、今後……。こういうふうに一つお願いしておきます。これは実際写真なんかで見るのといろいろの違うのです。私はまあ昨日田町の機関庫の方面なり、私どもも十分これは写真とか噂だけではいかんと思つて見て廻つたのですが、ただそのとき入りました情報によりますと、当局者側が機関庫に入ることを拒否しておる労働者を無理に連れて行つて乗せた。そうして而も時間を言つておりましたが、何でも二十時間近くぶつ続けて運転手を使つた。私今日あなたお見えになるのであれば、具体的にその名前なんかを調べて来たかつたんですが、これはまあ恐らく当局としては一方で汽車を動かさんけりやいかん、そういう非常事態に備えて、どうしても人が足らんということで誰かをつかまえて乗せたのじやないかと思うのですが、これは一つこういうことは今労働者側に対する一つの不法行為といいますか、そういうことが盛んに言われており、労働者側からの違法行為ということが主として論議の対象になつておりますが、重大な問題だと思うのです。休暇を取る権利は誰にだつてあるのだから、働きたくないのだから、これは放つておけばよい。そのために起る支障は、これは重大なことはわかりますが、連れて行つて無理やりに使うと、而も使われた時間は労働基準法から言つても明らかにこれはもう違反しておる。私はそういう事案が全国調べたら、労働組合側の違法行為よりももつともつと多いのじやないか、それは刑法と労働基準法と違う、こうおつしやるかも知れんけれども、成るほど性格は違いますけれども、見ようによつては基準法のほうがもつと重大かも知れない。だからたとえそういう困つた事態がありましても、これは全く労働者を拉致するような恰好ですからね、言葉を換えて言えば……。もつとほかにやはり処理の仕方はあるはずだと思うけれども、いやそんなものはない、それしかないと、だからこれは当り前だ、こんな考え方では私はやはり問題があろうと思うのです。こういうのはあなた現場へ行かれると直接聞かれもしまするし、そういうことは聞いておりませんかね、第一、報告か何かで。
#34
○説明員(天坊裕彦君) まあ私自身で現場を直接廻らなかつたという点につきましては、私自身もできるだけ見て廻りたいという気持もあつたのでございますが、国会その他中央ですることもございまして、できなかつたことは残念であります。ただ今休暇を勝手に取つた、取ることは当り前じやないかというお話でございますが、あれだけ計画的に一つの争議行為というような恰好で休暇を取る、その休暇も私どもの建前として所属長の承認を受けるという建前になつておりますやつを、承認を受けないで休暇を無理に取る。そうして取りたくない者もいると見えまして、そうした者を入れないようにピケツトを引いておるというような姿に私どもは見ておるわけなんでありますが、一方地方の場所によりまして、組合のほうで乗務しております機関士、あるいは車掌というものを降ろす話も数件私の耳に入つております。そうして例えば東京から出ます機関車が東京の機関区の機関車、或いは沼津の機関区の機関車があるわけなんでありますが、それぞれ東京機関区におきましては東京の機関区を出るところでできるだけこれをとめて、沼津の機関区の機関車に乗る乗務員がとまつておりまするところにも、成るべくそれを阻止するような動きもありましたので、その沼津の職員がとまる場合はあつちこつち変えさした、若干超過勤務をさしたことはございますが、そういう二十時間ぶつ続けに勤務さしたことはないと考えております。
#35
○亀田得治君 この国鉄の労働組合から出しておる指令は、十分事態を説明して、そうして本人がそれじや休暇を取る、こういうことになつた人だけがやつてもらう。飽くまでもこの線を外さないでやつてもらう、それを越えたらこれはいろいろな問題に発展するということは十分研究してやつておる。それでもまだそのときの話の調子で声が大きくなつたりして、それが何か強制したような恰好になるのも、それは幾らか出ておると私も思います。思いますが、当局側のほうの今私が申上げたやつですね、これが私は実に重大だと思うのです、我々のほうで乗りたいという者を引ずり降ろす、これはいかんというのであれば、私は乗りたくないという者をお前乗せる、乗れ……、汽車ヘ乗せてしまえば、汽車へ乗せて運転始めれば、結局これは放つたらかすわけに行きませんよ。そういう点はそれしかないということじやなしに、労働者もそういう点を問題にするのであればこれはやつぱり大きな人権蹂躙ですよ。これは十分研究してもらいたいのです。そういう事案を、こつち側の事案ばかり拾つておられるようですが、一つ逆のほうの事案も拾つて、そういう場合にはどういうふうに対処するか、これは先ほど中山さんがおつしやつたように、いろいろな場合に研究をしておかれることが必要だと思うのです。あなたのほうで合法的に研究されて、うまい手段を出される場合には、私としていたし方ないのですからね。だけれども今私が申上げたようなことも少しあるかも知れないというような軽い扱い方ではなしに、これは真剣に考えて欲しい。
 それから田町の機関区での問題は、丁度こういうふうに話が発展しましたから、私国鉄の、はうに具体的に一つこれは申上げて、あなたのほうに交渉してもらうようにいたしますから、十分一つこれは今後そうないことかも知れませんが、御研究を願いたいと思います。
#36
○中山福藏君 副総裁おられますね。先ほどの休暇を取るというのは、今日までのしきたりは如何になつておりますか、休暇の申出をして、そうしてそれに承認を与えて初めて公式に休暇ということになるのですか、どういうふうにそこは取扱つておられますか。
#37
○説明員(天坊裕彦君) 大体普通は何日に休暇をもらいたいという話を持出しまして、それに承認を与えて取らせる建前になつております。
#38
○中山福藏君 承認を受けないで勝手に休んだものはどうなんですか、今までどういうふうに扱つておられますか。
#39
○説明員(天坊裕彦君) それは欠勤扱いでございます。普通の場合でございますと、休暇じやなくて欠勤になる。
#40
○中山福藏君 欠勤というだけで処罰も何もされずに、その補填策はどういうふうにしておられるのですか。
#41
○説明員(天坊裕彦君) 黙つて休みましたようなことが何回も重なれば処分にいたしております。
#42
○中山福藏君 処分する……、処分というのは行政処分ということになるのでしようが、首切りとか、減俸とか、或いは役の格下げというふうな措置をとつておられるのですか。
#43
○説明員(天坊裕彦君) その場合の情状にもよりますのですが、減俸の場合もございましようし、やめさせる場合もあります。
#44
○中山福藏君 そこでそういう予備的な立場にあるものの人数、いわゆる補充人員の数というものはどれくらい予定して準備しておられますか。
#45
○説明員(天坊裕彦君) 大体私ども普通に休暇をもらう総数に対しまして或る程度の予備員は持つておるわけなんでございます。計画的に休暇を与えて行きますれば、計画的に予側員を運用して、仕事が完全にやつて行けるという建前になつておるわけであります。ただ最近非常に仕事が殖えて参りまして貨物列車の数などが殖えて参つておりますので、全体として人手がやや不足ということになつておると思いますが、普通の建前で計画的に休暇を与えるだけの人数は持つております。
#46
○中山福藏君 今度のいわゆら賜暇闘争について直接事務に携わる、いわゆる運転に支障を来すというような人員は大体何名で、それに対して補充はどのくらいの人員を割いたのですか。
#47
○説明員(天坊裕彦君) 今回の休暇戦術につきましても、三割という建前で、組合の中央部ではそういう計画でやつておるのでございますが、三割と申しましても、現実にその日に出る人の三割という意味になつて参りますと、実際は非常に人手が足りなくなる、これは明らかなことでございます。そこで今御質問にございましたように、殊に乗務員につきましてはすでに経験を持つた者で、現在その職にいない者で、臨時にそれに乗せることができるという特別の措置を講じまして、前以てそういう人も使うという、それぞれ現場の実情に応じてやるように手配をいたしたのであります。
#48
○中山福藏君 今度の事態が起るということは何カ月前にお知りになつたのですか。又お知りになつた後どういう補充員についての準備をされたのですか、それを一つ承わりたい。
#49
○説明員(天坊裕彦君) 三割休暇を取るという話を、いよいよ戦術的に何月何日からやるという話は十一月になつてから私の耳に入つたわけであります。が、この三割休暇というものを現実にやるとすれば、非常に事態は憂慮すべき事態になるという建前で、私ども一方で先ほど申しました乗務員についてそういう手配を考えますと同時に、組合側に対する説得、交渉ということに、むしろそちらのほうに重点を置きましてその交渉をやつて参つたわけであります。
#50
○中山福藏君 どうもその点が少し明確を欠くように私考えるのですが、今度はこういう一つの体験をお互いに得たわけでありますから、十分将来は一つ善処されるようにお願いしておきます。そこで問題はこの汽車の運転遅延によつて大体国民、乗客のこうむつた損害の額はどのくらいと予想しておられますか、その点の見通しはどうですか。
#51
○説明員(天坊裕彦君) 只今その国民経済上の建前からどれだけの損害があつたかという推算を実はいたしておりませんが、旅客よりもむしろ貨物関係におきまして相当大きな損失があつたろうということは、例えば私どもで、これは噂でございまして実際はどうかわかりませんが、特に年末金融逼迫の折柄でございまして、荷物が着かないために金が取れない。そういうことで大阪方面の繊維製品の問屋さんで倒れそうになつておるという話も聞きました。東海、山陽線で貨物列車が大体三分の二くらい減らしたということになつておりますので、被害は非常に大きくなつておると思います。
#52
○中山福藏君 そういたしますと大体商取引におきましても契約のキヤンセルとか、いろいろなものが起つて来ると思います。それから実質上遅延損害というものが相当あると思います。そういう民事上の損害賠償の責に任ずるものは誰だと考えているか、その点を一つはつきり伺いたいと思います。
#53
○説明員(天坊裕彦君) 法律問題として相当むずかしいのでございますので私即答いたしかねますが、遅れた分につきましてと申しますか、ストライキの事由による損害ということにつきましてまして、天災と同じように見るかどうかという点につきまして、これは議論がいろいろあるわけでありまして、もう少し研究したいと思つております。
#54
○中山福藏君 この損害の責任についてはこれは議論が紛々としてあるわけなんですが、併しこれは運輸省としては、或いはあなたがたの立場においては、これは今日研究したいと思うじやいけないので、労働争議というものを許されております以上は、二年も三年も前に政府としては考えて、責任の奈辺にありやということは、これは或る例外の場合を除いて、原則としては、大体どこにあるということははつきりわかつておらなければならん。これから研究するなどということでは、その都度の状態において、例えば労働組合がこういうことをされたから止むを得ずこういうことになつたという説明だけでは私は足りないと思うのです。やはりそれは只今も申上げましたように、予備員とか後備員とかいうのをちやんと作つておくということもできるわけですから、こういう点において国民のこうむる損害というものは多大なものであると考えている。あなたがたが、損害を一先ず払われるという立場に立たれた場合には、間接にその被害を受けるのは国民です。国民に支払うということになつて来る。そういうわけでありますから、これから研究して責任の所在が奈辺にありやということをきめるというのでは、これは私は少し職務に忠実ではないと思いますが、その点はどうですか。
#55
○説明員(天坊裕彦君) 先ほど予備員のことでもう一言附加えておくのを忘れましたが、片方で予備員の補充を全うしておつたならばこういうことにならなかつたのではないかという御質問でございますが、当日の中央の三割という割合をきめての指令でございましたが、現実には三割足らんという問題ではなくて、殆んど出勤ができないというような恰好の姿で現われておつたのでございまして、従いまして予備員の数をたくさん抱えておつても、場合によれば乗せられなかつたかも知れなかつた、こういう姿があるのであります。
 それから私研究いたしますと申しまして、甚だうかつで、今ごろそんなことではうかつじやないかというようなお話でございます。今まで私どもとして賠償をお断りした事例も中にはあるわけでございまして、私個人の言い方から申しますれば、こういうものは鉄道で賠償すべきものはして、それを組合に請求するというのが本筋かと思いますが、そこのところはなかなかうまく行きませんので、今までの事例ではお断りした例もあるし、ものによつてお払いした例もある、そこら辺は事態に応じて考えて行きたい、こういう意味で申上げたのであります。
#56
○中山福藏君 私は鉄道会館事件以来、又実際私どもがこの日本全国と言つちや少し大き過ぎますが、日本の半分くらいを廻つてみて、内部関係というものが非常な複雑性を帯びているということをいつも痛感するわけです。実は先般衆議院の決算委員会で手を入れたということはこれは国民国家のために非常にいいことと私は考えている。そういうふうな事態で、何と申しますか、麻のように乱れた姿というものが内部的に包蔵されているのじやないかということを実は心配しておるのです。こういうことからも、これは今度たまたまこういう事件が起きて、私は只今の質問をしているわけでございますが、すべてを一つ条理の立つた姿に鉄道関係というものを置いて頂きたいと、国民の一員として私お願いするのです。でなければこの間鮎川義介氏が或る雑誌に革命を待つ心という筆をとつておるのです。これは口述したものを筆記したのか何かわかりませんが、ただ日本の上層部がそういうふうな気持に移りつつあるということが、内部の腐つた、腐敗したところに手を入れるということが、もうどうしてもできないのだという諦めの姿だと私は見ている。私どもはどうしても手を入れる確信を持つてこの刻下の政治問題に携つて行かなければならんという私は考えて、今日こうして実際議席を持つているわけなんですが、現在相当の識者はそういう気持になりつつある、これは大きな問題だと思う。だからこういうふうにもう乗客の始終出入りをしているところの鉄道の駅なんかで、いろいろなこの腐敗した状態というものが直接目に映るようなことは、これはその思い付きでなくて、そのときそのときに私は改正して行く必要があると思う。今日の問題もこれはまあストライキが起きて、賜暇闘争だと言つておりますが、こういうふうな問題が起きてから研究するとかいろいろなことをこの席で述べられるような時代じやないと思います。そういうときではないでしよう。革命を待つ心というものがあの鮎川義介氏の口によつてこの雑誌の上に著わされるというようなことは、これは単に一個人の意見として看過することのできない私は事柄だと見ております。そういうふうな意見を持つたものが相当にいる。御承知のごとくすでに倒れんするところの家を支えるということは誠にむずかしいことでありますが、この一つ一つが国家建設の私は基礎になると考えております。ですからこういうことは真剣に鉄道関係のほうも一つ検討して頂きたいということを特に私は申添えまして、私の質問を終りたいと思います。
#57
○亀田得治君 最後にお聞きしておきますが、今日から再び国鉄のほうは団交に入つておるようですが、まあ政府の最初に出したああいう線は一応そのままにしておいても、それと又別個な何らかのプラス・アルフアーという恰好で、労働組合と国鉄当局との間で何か処理できるような見通しなんかはどうでしようか。
#58
○説明員(天坊裕彦君) 只今の御質問でございますが、亀田さんよく御承知なんだと私存ずるのでありますが、いろいろ三公社、五現業、それぞれ企業内容において違つておりまして、比較的経理の楽なところと苦しいところとあるわけですが、国有鉄道は一番苦しい中の一つになつておるわけであります。殊に御承知の通り今年の水害を全面的に受けまして、水害の被害というものは九十億に及ぶというふうに大きな損害を受けておりまして、これをまあ自前でそれを直して行かなければならないというふうな問題もあるのであります。できるだけ私どもとして組合側も水害でとにかくよく働いてもくれたのですから、年末手当などにつきましてもできるだけ出したいとは思つておりますが、なかなか収入と睨み合せますと思うようにもできないのではないかという気もいたしております。
#59
○亀田得治君 そうしたら話はつきませんか、何とか、つきますか、結論はどうです、見通しは……。
#60
○説明員(天坊裕彦君) 交渉でありますから、まあ何とか結論を付けるようにしたいというふうに考えております。
#61
○委員長(郡祐一君) 次回は明五日午前十時から開会することにいたしまして、本日はこれを以て散会いたします。
   午後零時二十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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