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1953/12/08 第18回国会 参議院 参議院会議録情報 第018回国会 法務委員会 第6号
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1953/12/08 第18回国会 参議院

参議院会議録情報 第018回国会 法務委員会 第6号

#1
第018回国会 法務委員会 第6号
昭和二十八年十二月八日(火曜日)
   午後三時五十五分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     郡  祐一君
   理事
           小野 義夫君
           宮城タマヨ君
           亀田 得治君
   委員
           青木 一男君
           楠見 義男君
           中山 福藏君
           三橋八次郎君
           赤松 常子君
           棚橋 小虎君
           一松 定吉君
           木村篤太郎君
  衆議院議員
           小澤佐重喜君
  国務大臣
   文 部 大 臣 大達 茂雄君
  政府委員
   法務政務次官  三浦寅之助君
   法務大臣官房調
   査課長     位野木益雄君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
   常任委員会専門
   員       堀  真道君
  説明員
   労働省婦人少年
   局長      藤田 たき君
   最高裁判所長官
   代理者
   (事務総局総務
   局総務課長)  磯崎 良誉君
   最高裁判所長官
   代理者
   (事務総局人事
   局長)     鈴木 忠一君
   最高裁判所長官
   代理者
   (事務総局人事
   局給与課長)  守田  直君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○裁判官の報酬等に関する法律の一部
 を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
○検察官の俸給等に関する法律の一部
 を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
 (売春対策に関する件)
 (報告書に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(郡祐一君) 只今より本日の委員会を開会いたします。
 先ず、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、以上二案を便宜一括して議題に供します。なお検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に対しては、衆議院において修正送付されて参りましたので、衆議院側における提出者の趣旨の御説明を求めます。
#3
○衆議院議員(小澤佐重喜君) この修正の問題は、結局抽象的に申上げますと政府の提案理由と同じ意味であります。ところがざつくばらんに申上げますが、この政府原案に均衡をとるためにはやはり東京高等裁判所長官の欄の八万二千円を八万五千円にすることが適当であり、更に法制局長官、政務次官の欄の七万八千円を八万一千円にすることが適当であるという衆議院の法務委員会で一応修正があつたわけであります。
 こういうような結果になりましたので、いろいろ考えてみまするに、思うに今回のベース・アツプは認証官級には及ぼなさいで、下にその分を厚くしようという趣旨でやられておつたと思うのであります。従つてお互いの議員歳費のごときも従来は一般ベース・アツプの際には上げて来たんでありましたが、これは今のような趣旨でお互いに上げないという建前をとつて参つて来たわけであります。ところがこの際裁判官だけを特に今申上げましたように三千円ずつ上げるということは、今の根本の考え方に反するばかりではなく、更に従来の俸給令に対してでこぼこを繁しくする形になるという見解から、法務委員会の修正を何とかして撤回するということを考えたのであります。ところが修議院の法務委員会のほうでも、一旦決定したものであるから、若し政府原案を撤回するならば、即ちこの東京を除いた高等検察庁検事長、それから次長検事というものを原案の七万二千円にして置くならば、これを撤回してもいいが、これをやる以上はどうしても裁判官との均衡上困難であるという見解が出たのであります。そこでなぜ政府がこの原案を出したかといいますというと、特号というものが今回のベース・アツプで七万二千円になりまして、結局検事長の給料と同じ額になつてしまう。そこで検事長と今の特号とは同じ額であつては、却つて不公平であるという意味から政府原案が出て来たのだという理由でありました。ところでいろいろ法務委員会の考え方も一理あり、又政府原案にも一理ありまするので、この問題はやはり政府で考えた特号と検事長との差を幾分でも認めながら、而もこの裁判官と検察官の均衡を破らないという意味でこの法務委員会のほうは本会議で更に再修正をいたしまして、そうして政府原案を三千円上げる原案に対しまして一千円ということにして参つたわけであります。但しこの際話があつたことは、一般行政官吏は、例えば課長以上は管理手当とか何とかいう名目で二五%くらいのものが余分に給料以外に収入があるそうであります。検事並びに裁判官だけはこの恩典がないということは、これは不公平であるからこの問題については極力私どもは努力をする、即も来年度の予算審議、或いは予算の編成の際にそういう問題には骨を折ろう、これは研究費になるか何かわかりませんが、とにかくそういう問題はどうしても骨折つてやることが、むしろ行政官と司法官との均衡を維持するゆえんになるという意味で努力することにしましたが、今回のこの金額の上昇だけは、やはり今申上げました二つの理由からやらないほうがよろしいのではないか。同時にその考え方に一致させるために最小限度特号との差を一千円だけ認めましてそうしてやることが適当じやないかという結論を得まして、本会議でその通りの決定を見ましてこちらへ送付になつた次第であります。
 従つて私どもも今申した通り今後に残された問題は、先ず行政官と司法官等の待遇の均衡を維持するために、名前はここでどうこうと申しませんけれども、本俸以外に行政官がもらつておるならば、それに対応するようなものをもらうような措置を今後努力すること、それが一つと、それから認証官以上に対しては今申しました通り今度のベース・アツプがないのでありまするし、下のほうがこうやつて来まして非常にここに凸凹が出ておりますから、これに対する根本的な研究というものは今後適当な時期にやつてもらう。適当な時期にやつてもらう場合には、やはり検察官と裁判官というものは平等な立場において行くようにと、こういう二つの問題は残つておりますが、今後これに対しては努力することにして、一応この本法案だけは只今申しました通り二千円だけを削りまして七万三千円ということで修正をいたしたような次第であります。衆議院のほうは社会党の左派だけがこれに反対でございましたが、その他は全部賛成いたしましてこのような修正がなされた次第であります。
 どうぞ御審議の上できるだけ衆議院と同一の方向で進んで頂きまするよう特にお願いいたします。
#4
○委員長(郡祐一君) 御質疑のおありのかたは御発言を願います。
#5
○一松定吉君 ちよつと今あなたの発言のうちで、将来は裁判官と検察官を同等の立場において待遇を同じようにするということを言つたように聞えましたが、そうですか。
#6
○衆議院議員(小澤佐重喜君) 今の問題は私は二つ申上げておるのです。つまり行政官と司法官との待遇の差別があると言われておりますが、これを先ず一致することが一つ……。
#7
○一松定吉君 それをどうする。
#8
○衆議院議員(小澤佐重喜君) それが例えば管理手当というようなものが行政官の課長以上にはあるそうです。これはまあ私は知りませんが、委員の言うことを聞くと二五%くらいの手当があるそうです、行政官には……。併し裁判官にも検事にもないそうです。従つて実際上の本俸だけしかもらえないというのです。であるから、管理手当というものは適当であるかどうかはわからんけれども、若し裁判所の判事であれば研究費用も相当かかるだろうし、名前は何でも結構ですが、研究費とか何とかいうものでとにかく行政官と均衡をとるような措置を将来考える。もう一つの問題は、検察官と裁判官の均衡をとる問題ですが、これは今法務委員会で修正することになりますというと裁判官のほうが少しよくなるという考え方なんであります、裁判官だけが上りまして……。その問題は今修正をなくしまして再度の修正によつて現状通りにすることになりましたから、将来認証官以上の全部の俸給を考えるときには、均衡を保ちつつ適当な措置をとることと、こういう二つであります。
#9
○一松定吉君 その均衡をとるという言葉がどういう意味か知りませんが、私どもの考えでは裁判官と検察官とは均衡をとつちやいけない。裁判官のほうを検察官よりも一段と高いものにするということが裁判官の品位を高め、国民の信頼感を深めるということにおいていいのであつて、従つてこの俸給の改正のときにおいても最高裁判所の長官若しくは裁判官というものは検事よりも一段高くするという意味で特にやつて、検事総長一人だけは併し最高裁判所の判事と同じようにしようじやないか、あとは裁判官というものは常に検事よりも一段高い地位に置くということが、本当の裁判官の品位を高め、国民の信頼を強くするゆえんだということで差別を設けたのです。あなたの言うのはそういう差別のあることを基準として裁判官を上げるときには、又検事も上げるというような意味のいわゆる均衡をとるということならいいですけれども、待遇を同じにするということであると、基本的に我々と考えが間違つておりますから、そこを確めたのです。それはどうです。
#10
○衆議院議員(小澤佐重喜君) それは前の意味でありまして、現在なら現在の差があるならその均衡です。その上に立つた均衡です。
#11
○一松定吉君 それなら結構。そういう考えで一つやつてもらいたい。
#12
○委員長(郡祐一君) 他に御発言ございませんか。他に御発言がなければ質疑は終局したものと認めて直ちに討論採決に入ることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めて、両案を一括して討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。……別に御発言がなければ、討論は終局したものと認めて、直ちに採決に入ります。
 なお、念のため申上げますが、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案は、衆議院において修正されておりますが、この修正部分を含めたものが原案でございます。
 先ず、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案を議題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#14
○委員長(郡祐一君) 多数と認めます。よつて本案は多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 次に、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#15
○委員長(郡祐一君) 多数と認めます。よつて本案は多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 例によりまして委員長の本会議における口頭報告の内容等は便宜委員長に御一任願います
 両案に賛成の諸君は、それぞれ御署名を願います。
  多数意見者署名
    宮城タマヨ  木村篤太郎
    春木 一男  一松 定吉
    棚橋 小虎  赤松 常子
    中山 福藏  小野 義夫
#16
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をやめて。
   〔速記中止〕
#17
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。暫時休憩いたします。
   午後四時十三分休憩
   ―――――・―――――
   午後五時十四分開会
#18
○委員長(郡祐一君) 休憩前に引続き委員会を開きます。
 只今文部大臣が出席しておられまするので、御通告の宮城委員から先ず御質問願います。
#19
○宮城タマヨ君 連日で大変お疲れでいらつしやいます文部大臣にお出ましを願いまして、甚だ恐れ入つているのでございます。今日は売春対策の問題につきまして文教の第一責任者でいらつしやいます大臣に、二、三点質問いたしたいと存じております。実はこの売春問題につきましては、例の東大の矢内原先生が今年の春に卒業の訓示かなんかの中に、日本を一番破壊するものは原爆よりも売春婦であるということを卒業生に懇々とお諭しになつて、この問題を非常に重大視していらつしやることを教えられておるのでございますが、矢内原先生のお言葉を借りるまでもなく、これは純潔教育、道徳教育すべて文部関係の問題が基礎をなしておりますので、以前も大臣の御出席をお願い申上げたことがございましたけれども、お差支えでお目にかかる機会もございませんでした。今日は今までこの問題につきまして、文部省はこの教育面の根本問題につきましてどういう当局として措置をおとりになつておりますか。大臣に伺いたいと存じます。
#20
○国務大臣(大達茂雄君) これは戦後いろいろの点で、何と申しますか一連の社会悪と申しますか、誠に好ましからざる風潮が横行しておるように思います。これは無論殊に売春行為というようなものが青少年に非常に悪い影響を与えておりますことは御指摘の通りであるし、又これは非常に困つた問題であると思つておるのでありますが、これについて法律で取締るというような点については法務省でお考えになつておるけれども、これは昔からなかなかこれを禁止し、若しくは取締るというような規則ができたからといつて簡単になくなるものではないと思います。根本的に申上げますれば、申上げるまでもなくこれは一般の道義心が高まつたと申しますか、そこから直して行かなければならない。又生活環境がよくなつて、殊に一般の生活の安定と経済の安定ということがやはり根本の問題でありまして、甚だ困つた問題ではありまするけれども、さればといつてこれに即効的な適切な対策というものはなかなかないのでありまして、無論文部省といたしましては、いわゆる学校教育によつて、或いは道徳教育とか、純潔教育であるとか、又は社会教育の面におきましてもいろいろな機会をとらえまして、その面からかような社会悪が少しでもなくなるということに努力はいたしておりますけれども、何分非常な豊富な社会環境というものをバツクにして起つておる現象でありますので、努力はいたしましても、これがいわゆる隔靴掻痒と申しますか、急速な効果を上げがたい。まあこのことは戦後非常に一般に貧乏と申しますか、非常な窮乏をしておる。これが一つの大きな原因であり、又同時にこれは要らんことを申上げるようなことであるかも知らんが、今日はいわゆる基本的人権であるとか、個性の尊重であるとかいうようなことが、今までにないような工合に非常にやかましくこれが取上げられて、又主張もせられておるのであります。それにもかかわらず私は今日ほど日本人がいわゆる誇りを失い、個性の尊厳とか個我がどうとかいうようなことは、口で言うだけであつて、今日くらいこれが軽んぜられておるときはない。どうも民族としても或いは又個人としても自意識といいますか、自主的といいますか、そういう誇りというものがなくなつてしまつて、いわば戦争で敗けて非常に困る、まあ何といいますか、自己否定というか、個性の尊重どころでなしに自己否定というか、まあ自暴自棄と申しますか、そういうことが非常にあるのです。昔ならばこういうことをするのは、例えばそこらにあるものを、人のものを黙つて持つて行くということは、人が見ていなくても、日本人としてそういうことはできんとか、或いは気が誉めてとてもできないとか、これは結局やはり自分とい、ものの誇りを傷付けない、いわゆる民族としての誇りからそういうけちなことは江戸ツ子はできないとか、そういう意味の自主性といいますか、誇りというものがなくなつて来ておる、こういうことが非常な大きな原因ではないか。そこで破廉恥と言つては悪いけれども、いろいろなことが今日の社会に一時ほどのことはございませんけれども、追いはぎになつてみたり泥棒になつてみたりするようなこと、或いは人を殺してみたりするよなことを平気でやる。こういうような誠に困つた現象が至るところに現われておる。これは結局教育の面においてもやらなければならん、一生懸命やらなければならんのでありますが、日本の社会がもう少し安定した状態、もう少し本来の姿を取戻すということでなければ、容易に一連の社会悪というものが私どもの希望するように簡単になくなるものであるとは実は思つておりませんで、甚だ不徹底ではありますけれども、まあそういうむずかしい条件の下にできるだけの努力をして行かなければならないと、かように考えまして、教育の面におきましていろいろ手を尽して考えてやつておるわけであります。
 特に売春行為とい、ものに限定してのことでありますれば、これは又それぞれ関係する方面が非常に多いのでありますから、厚生省或いは法務省等々とこれはしばしば連絡した協議会等も設けまして、相談をしておるわけでございます。ただ、今申上げますように気持はそうでありますけれども、こういう方策を講じてこの問題に対して万全の措置を講じておるというようなはつきりしたことを申上げることができないということは、非常に遺憾に存じております。
#21
○宮城タマヨ君 御説誠に御尤もでございますし、又同感でございますが、特に純潔教育というようなことについて、文部省は今まで学校教育或いは社会教育の面におきまして、たしか手を打つて頂いておりますはずだと思つておりますが、その点大臣に伺うことは如何かと思つておりますけれども、大体のことでよろしうございますからお答え願いたいと思います。
#22
○国務大臣(大達茂雄君) これは具体的にどういうふうにやつておるかという細かい点は、実は私相済みませんけれども、よく存じません。学校教育におきましては、最近従来御承知のことでありますが、今までの教育教科の内容等につきましても、戦後非常に変つて参つておりまして、昔のように道徳教育というようなものも直接には実は影をひそめておるのであります。純潔教育という言葉は、これは道徳教育とはおのずから違うと思いますけれども、やはりこうしたことが今日ではなかなか文部省でこういうふうにやれ、ああいうふうにやれと、指図をして学校教育の内容に立入るということは、実は妙なことを申上げるようでありますが、非常に困難なことになつております。文部省としましては、これを学校の教育の指導要領というものがありますが、これは私は間違つておれば訂正いたしますが、私の知つておる限りでは、特に純潔教育というものを教育の指導要領の中に取上げておるというところまで行つていない。これは非常に遺憾のことでありますけれども、そういうわけで実は正直に申上げましてそれほど徹底して今日学校教育でそれが行われておるというふうには実は私は思つておりません。学校の教育につきましてこれ又文部省というものは実に何と申しますか、今日無力と申しますか、思つたことが通らんような実は状態でありまして誠に残念に思つておりますが、機会のありますごとにそういうことを強調して、そして学校の教職員のこのことに対する関心を促し、又社会教育の面におきましても機会のあるたびにそれをやつて行くという程度に今日はとどまつておると思います。甚だ行き届かない点が実際あると思います。これは言葉を飾つて申上げますれば如何ようにも言えるかと思いますが、実際はそこまで徹底していないと思つております。
#23
○宮城タマヨ君 大臣が余り率直に正直におつしやられるので、却つて恐縮いたしますけれども、そんなに文部省当局が教育に対しまして無力でございますというその根源はどこにあるのでございましようか。実はときどき当委員会でもそういうことについて触れたこともございますけれども、どんなに時代が変ろうとも内閣が代ろうが、私は日本の教育の根本方針に変りはあるべきじやないと思う。それを文部省でしつかりしたものがあり、それを指図することが今日やれない無力な文教の府だとおつしやいますると、それでは一体国民はどこにたよればいいか、そして今売春婦が横行して、日本がこの一角からも崩れようとしておりますこの重大な問題に対して、文部省は止むを得ん。そしてほかの生活安定はこれは厚生省のつまり厚生保護といつたような面で見るというようなことを言われておりまするが、私は甚だ遺憾に思います。実は私の伺いたいことは、今の文部省の教育の根本方針という点と、いま一つはこんなに日本国民の正しき男女、殊に子供を持つております母親は挙つてこの売春婦、又業者を何とかして征伐しなければ、子供の将来について大変な問題が起るということに非常に苦心しておりますときに、私は文部当局こそどうかしてこの立法措置をとつてくれなければ、文部省も文教に困るということを文部当局こそ私は強調して下さらなければならないというようにさえ思うのでございますが、その二点についてお答え願いたいと思います。
#24
○国務大臣(大達茂雄君) これは御承知の通り、今日はまあいろいろ出版物にいたしましても、映画にいたしましても、随分教育の面から申しますというと、これは実に困つたものだというものが市中に横行しておるのであります。これはまあ何と言いますか、出版の自由であるとか、何とかの自由であるとかいうことで、実はこれには殆んど一指も染められないという状態になつておる。結局一般の社会的な良識というものに待つて、そういう出版物であるとか、くだらん映画とか、くだらん演劇の種類だとか、そういうものが世の中から廃れて、とり合わんようなことにならなければ、これを法律とか、或いは官憲の手でそういうものを社会から放逐するとい、措置が今日では実はとり得ないのであります。例えば映画等につきましても、映画業者の自覚に待ちまして、余りひどいものは業者の自粛という意味で、まあ昔で申しますというと、昔の検閲制度の極く軽いようなものを作りまして、それでやつておつて、これは妙な映画を出さないということに成功しておると思います。そういうことでいろいろ業者のほうとも連絡をとりまして、いろいろやつておりますのですが、学校の教育につきましても、宮城先生の御趣旨御尤もでありますが、今日では教育というものは直接に文部大臣が、その運営について、学校の運営について指揮することはできない、命令をすることもできない、こういうことになつておる。無論これは、いわゆる一般選挙と申しますか、直接選挙によつて出て来たいわゆる教育委員というものによつて運営されておりますから、民衆から直接選挙によつて出て来た人をどつかの役人が、どつかの法でこれを指揮するということは、これは考えられない制度でございます。これは文部省と緊密な連絡をとつて、お互いに連絡をして行くということであれば、それでいいのでありますが、実は残念なことには、この連絡というのは極めて不十分なのが現状であります。まあ一例を申上げますというと、文部省から教育に関係するいろいろ通牒を出します。指導或いは勧告、拘束力というものは法律で認められておりませんけれども、指導とか勧告するとか、助言するとかいうようなことは、文部省としてまあできることになつております。或いは学校の教育の実情を知るためのいろいろ各般の報告を求めるということはできることになつております。ところが実際を申上げますと、甚だ残念なことには、通牒を出しましても、殆んどこれは顧みられない。一例を申上げますと、府県の教育委員会に宛てて通牒を出しまして、そうして市町村にこれが行き渡るように市町村のほうに伝達してもらう、これは今までの役所のやり方でありまして、知事のほうから言えば、知事から市町村に流す、そこで私どものほうでは県の教育委員会に通牒を出して、それが市町村のほうの教育委員会に流してもらうように希望して、そのことを書いて出す。ところがこの文部大臣の通牒というものが、府県の教育委員会限りで握りつぶされてしまうという事例が非常に多いのであります。それから各般の報告等につきましても、すぐその報告を出せば、予算関係で予算がもらえるとか何とかいう報告ならすぐ来るのであります。すぐ来るのでありますが、学校の教育の現状をどういうふうにそれをやつておるかというような意味の報告は、私らのほうも最近に極めて重大な必要がありまして、何度も地方にお願いをして報告を求めておるのであります。ところが驚いたことには、一つも報告が来ない、それに対して地方から、どこの県からも一つも報告がないという実に……普通私ども文部省に来て、その状態に実は驚いたのでありますが、本当にならないくらい妙なことになつておるのであります。これはただ文部省が怠慢であつたとか、或いは地方の教育委員会がけしからんというような問題ではなくして、もつと大きいところにその原因があると私は思つておりますので、これはただ報告してくれんのが腹が立つとか何とかいう問題ではなくして、これは日本の学校教育というものの実態に関連したものでありまして、その意味において是非何とかしなければ、日本の教育は基礎から崩れるのではないか、実はこう思つて、その点検討を進めており、先ずその検討するために必要な書類をもらいたくて報告を求めておる、その報告が来ない、こういう実は誠に情けない実情にあるのであります。従つて各般の教育内容の指示等につきましても、なかなか文部省で考えておることが簡単に、地方でその通り採用して教育委員会或いは学校等においてまあすなおに受取つてもらえないという実情にあるのであります。こういうことを申上げますと、宮城先生なんかそんな馬鹿なことがあるかと思われますが、実際私どもも文部省に来てみて驚いておるのであります。これは是非、一体どこに原因があるかということを突きとめて、どうしてもこれは今のうちにその原因のあるととろを突きとめて、これを排除するということが、これはひとりこういう純潔教育とか道徳教育という問題だけの問題ではなしに、まあ大きく言えば、日本の将来の運命を支配するほどの大きな問題である、こう思つて折角その方法を研究しておるわけでありますが、さようなわけでありまして、なかなか思うように行かないという実情があるのでございます。
#25
○宮城タマヨ君 どうも民主主義、自由主義のはき違いが多くて本当に弱つたものでございますけれども、これはつ文部当局でどういうふうにして救済するかの御研究を一層願いたいと存じております。過般ルーズベルト婦人がアメリカからおいで下さつたときに、私もこの売春問題についてお目にかかりましたときに、よく話合つたのでございます。実に残念なことは、こういうお話があつたのであります。それはルーズベルト夫人がほうぼうに行くというと、日本の婦人方が、誠にこの基地の問題なんかけしからん、アメリカの兵隊はけしからん、アメリカの兵隊の相手はアメリカの女を連れてくればいいじやないかと言つてお叱りを受けるけれども、私はそのときにこういうことを答えた。世界広しといえども戦地にまでついていつて売春をする女性は日本の女性以外にはありませんよと言いましたが、そうでないでしようかということを言われて、実際はそうでございました。日本の女性は実に勇敢にどの戦地にも、兵隊が行く前に送り出されて稼いでおります。そこで言葉はございませんでしたけれども、そのとき又夫人は言葉を重ねておつしやつた、どうか日本も早く立法措置をして下さい、アメリカの兵隊もアメリカではあの法律が厳しいのであんなことをしませんけれども、余り日本は野放しですから、無軌道にアメリカの若い青年が歩いて、そうして病気をもらつて困りますということをおつしやつたのじございますが、私はこれと同じような意味のことを曾ても外人から聞いたことがございますのですが、実際は満州の女に比べても、中国でも、朝鮮でも、実に日本の娘のような貞操観念のないものはない。実は進駐した当時に、日本婦人は命を以て貞操を守るものだ、それで皆長い針を持つていて、馬鹿なことをすると心臓にずつと突刺すから用心せいせいと言つて進駐して来たら、あにはからんや、どこの婦人よりももろかつた、もろいという言葉を使つておりました。これは生活苦から来ている点も大いにあると思つておりますが、そういう点にかけては、今日の政治の貧困というものについて、私どももその一端の責任があると非常に苦しんでいるものでございます。けれども同時に純潔に対する考え、そうして貞操を守るという考えについては、お話にならない私は稀薄なものを感じておりますので、一体こういう教育をどこですればいいものか、もう一遍再教育をしなければならないと思いますが、それは家庭の母に、或いは大幅に文教の府にお願いしなければならない問題でございましようが、私は重大な教育問題がここに提供されているというように考えておるのでございます。そこでその点についても、十分文部省に一つ方法をお考え願いたいと思つておるのでございます。
 そこで私が伺いたいのは、重大な問題だとさつき大臣も仰せになりましたが、地方の売春窟、つまり集娼窟、それから殊に基地周辺のパンパンの問題、それから散娼でございます。もう行きつくところにばら撒かれております散娼は、今日推定数五十万人と数えられております。そういうものについての文部省としての何か地方の実態調査は手をお付けになつておりますでございましようか、まだでございましようか。
#26
○国務大臣(大達茂雄君) 文部省といたしましては調査したものはないと思います。
#27
○宮城タマヨ君 それは甚だ遺憾なことでございますが、この間私ども北海道の千歳の例の有名な基地の調査に参りましたときに、あそこが丁度一万余りの人口が、基地の売春婦がだんだん殖えて参りましたと同時に、一足飛びに三倍の人口になつて、三万人余りの人口を擁しております。そうしてその人々は内地から来ている人が多いそうでございます。お金が欲しいから、お金を儲ける意味で千歳の売春街に集まりて来ておるのでございますが、ここで重大なことは、その内地からの移動した人々が皆子供を持つておりますので、学校問題がある。急に膨脹したものでございますから、子供を収容することができない。そこで小学校の子供、それから中学校、高等学校、もう実に教育問題は大変な問題が起つております。丁度一晩泊まりまして、諸般の事情を調査いたしました。それは法務委員会で以て実態調査に出かけたのでございますが、調査いたしまして、私はついででございますから、不良少年の収容されております少年院にちよつと立寄りました。そうしましたら、お母さんたちが五、六人、実にそれこそ町の人の眼を忍んでというような形で訪ねて参りました。そうして子供の学校の問題について、教育の問題について実に涙と共に語つて、もう一度帰つて小学校の状態を見てくれと言う。どういう状態だと聞きましたら、子供が皆納屋のようなところに分割して教育されておる。併し私どもは時間を持ちませんでございましたから、あと帰りをすることはできないで、非常に残念に思つたのでございます。で私は文部委員の帰人議員にその実情を申上げまして、是非一つ問題にして頂きたいということを申しましたら、なかなかお忙しいようで、まだそれは問題になつておらないようでございますけれども、一つのことを申しますというと、今文教関係で一つ実態調査をして頂きたいというような問題は、実は学生のアルバイトにポン引をやつております。その事実を大臣は御存じでございましようか。英語の少しできる学生が兵隊を案内いたしましてポン引をやつております。私は一番初めに佐世保の実態調査をいたしましたときに初めてそのことを知りまして驚いたのでございますが、実は所々方々に大なり小なりそういう問題が起つております。東京にも起つております。而も女の学生にもあるということをこの間聞きまして、実は驚いておるのでございます。どうかこういう点について、一つ文部当局は責任のあります調査を、一つ全国的に開始して頂いたら如何でございましようかとお願いしたいのでございます。どうか御意見を伺えれば伺いたいと思います。
#28
○国務大臣(大達茂雄君) 甚だ申訳ないことでございますが、アルバイトにポン引をするというようなことは、実は私も今初めて知つたようなわけでございます。まあ今日のように学生が非常に経済的に困つた関係であるということが結局主な原因であるとは思いますが、非常に何と申しますか、良心的な面がなくなつて、いわば何でもやるというようなことになつておるということは、私もこれは日々の新聞紙上によつてもよくわかることでありまして、想像はしておりましたけれども、実際の工合は今お託を伺つて実は驚いておるわけであります。実際基地等につきましては、従来いろいろ基地反対に関連をします風紀問題或いは騒音の問題というようなことで、そのときそのときに問題が起りますので、そういう問題につきましては、個々には文部省からも人を出して調査をするとかいうようなことはいたしておりますが、そういう学生或いは児童の全体的な傾向等につきましては調査したものはありません。これは是非調査しまして、今後の対策の上の資料にしたいと思います。
#29
○宮城タマヨ君 最後に私はもう一点御意見を伺つておきますが、実は私ども基地の調査の第一着手には、静岡県の御殿場に参りました。あの冨士山麓を調査いたしまして驚きましたのでありますが、実は性の本能説がどこにも立てられておりまして、性の本能の問題があるもので、これは根本問題だから、なかなか売春の立法のむずかしいことは、それは議員のかた自身もおつしやつておるわけでありますが、今は学説といたしましても性の本能説からだんだん環境説に移つて、これは世界的の学説だそうでございますが、その環境ということで私御殿場で驚きましたのですが、とにかくまだ幼稚園にもゆきませんような三つ、四つの子供で、性のほうの認識もまだないような子供ですが、併し必ず男の子と女の子とひどい模擬の遊びをいたしておるのでございますから、もう少し大きくなつて幼稚園程度から小学校、中学校という子供たちが、あの見せつけられる環境によりまして、どんな悪影響を受けているか、これは由々しい問題だと思つております。そしてそのために青少年の性の犯罪が非常に殖えています。それから又お金が欲しいために、いろいろ窃盗、強盗というもの、これはあえて御殿場ばかりの問題ではございません。全国的に悪影響を及ぼしておりますために憂えております。いま一つは、農村の貸座敷でございますが、パンパンのオンリーとか、バタフライとかいうような人たちが部屋を借りておりますために、非常な性においての悪影響を及ぼしておりますと同時に、畳一畳大抵高いところは千円、それから、七、八百円、そういう臨時収入、不労所得がございますために、農村の殊に青年男女の勤労意欲が非常に減退いたしまして、そうしてそういうところからも又いろいろな困つた犯罪事実が起つて来ておるというような問題があるのでございます。でございますから一つ文部当局といたしましては、どうか私どもの調査とは少し角度をお違えになつた調査をして頂きまして、そうしてこの間法務大臣の答弁によりますというと、内閣に売春問題につきましての審議会でございますか、協議会ができて、横の連絡をとるというようなお話を伺つたのでございますが、これにつきましては殊に文部省あたりは心ばしらになつて一つやつて頂きたいと思うのでございます。この審議会につきましては、大臣はどんな構想をお持ちなんでございますか。
#30
○国務大臣(大達茂雄君) 先ほど申上げましたように関係者がこの問題を中心として、実情、実態について、先ずその対策について協議をしておるのでございまして、大体主として法務省、文部省、それから厚生省、こういうところで協議会をやつておるのであります。審議会というような形式になつておりますかどうですか、実体は審議会と申しますか、そういう関係省の間の連合した協議会をつくりまして、そうしてこの問題を何とか対策を立てたい、こういうことであります。
#31
○宮城タマヨ君 藤田局長が見えておりますが、今大臣からお話を伺いました審議会ですか、協議会ですか、これについて若し御答弁願えましたらお願いいたしとうございます。
#32
○説明員(藤田たき君) 只今法務、文部、厚生、労働、国警、そういつたところが殆んど毎週寄り集まりまして、この売春問題についていろいろ協議をいたしておりますが、先頃犬養法務大臣も言われましたように、この連絡協議会からやがて売春問題対策協議会と申しますか、審議会と申しますか、それが生れようとしているように私は承知いたしております。でこの売春問題対策協議会というようなものができまして、それを内閣の中に置きまして、そうして売春問題につきましていろいろ案を立てまして、売春禁止法の立案にまで持つてゆくようによりより協議されておりますが、間もなくこれが次官会議にもかかるのじやないかというふうに私は承知いたしております。只今のととろは連絡協議会、各省がただ話合つているだけでございまして、内閣の中に置かれているのではございませんが……。
#33
○宮城タマヨ君 藤田局長に重ねてお伺いいたしたいのでございますが、その協議会か審議会かの構成メンバーはどういう御構想でございますか。
#34
○説明員(藤田たき君) この構想は法務省、文部省、厚生省、労働省、国警から提案となりまして、それに例えば建設省なども入つて頂くようになるのだと思つておりますが、これは犬養法務大臣も先だつて答弁されましたが、役人は勿論構成メンバーの中に重要なパートをとるわけでございますけれども、そうでなくて学識経験者のような関係行政官庁以外のかたがたも相当数入つて頂くような構想を持つていられるのでございます。
#35
○宮城タマヨ君 それには利益代表のかたはお入れでしようか。それからもう一つは、婦人のかたをお入れになる構想がございましようか。
#36
○説明員(藤田たき君) 私が承知いたしておりますところでは、この提案に持つてゆこうとして努力していられるかたがたは婦人のメンバーを相当たくさん、男性のかたがたと同数くらい入れたいというようなこと、それから又利益代表は入れないでおきたいというふうに聞いております。私は直接出ておりませんので、はつきりしたことを申上げられません。
#37
○宮城タマヨ君 実は今日、法務大臣と文部大臣とお揃いで御出席を願いましたのは、私は法務大臣には少し立法についての案を伺つてそれと連関して文部大臣に又伺いたい点がたくさんあつたのでございますが、御病気でお出ましがありませんので甚だ残念で、これで私の質問を打切りますのでございますが、ただ、今藤田局長から伺いますと、この審議会のメンバーに婦人のかたを入れるというような構想もあるらしうございますが、文部大臣ヘも私はお願いしておきますが、どうぞやはり正しき婦人を、そうして中には本当に子供をたくさん育てておりますお母さんも含めて頂きたいということをお願い申上げて私の質問をこれで終ります。
#38
○赤松常子君 文部大臣にひとことお伺いいたします。只今売春問題がいろいろな角度から社会の輿論に上つております。賛成あり反対あり、さまざまでございますが、それにつけましても私ども婦人議員が中心となりまして、こういう問題を取上げまして、一つの処罪法というものを作り上げようという動きをいたしております。それに相呼応されまして、今藤田局長の御報告のように各省の連絡協議会をお持もちになつておりますが、文部当局として、売春問題に関しこれが起りましてから何か御相談なさつて文部省の態度というものを根本的におきめになつたのでしようか、伺いたいのでございます。
#39
○国務大臣(大達茂雄君) これは只今申上げますように、各省の連絡の協議会を通じまして文部省のほうから関係の人も出て協議しておるのでございます。そうしてそれが只今藤田局長からお話のありましたように、審議会案ということにして、なかなかむずかしい問題であると思いますので、衆知を集めて対策をしつかり立てて、そしてこれを実行に移して行きたいということでありまして、今それでは文部省としてどういうことに着手する、どういう態度でこれに何するというところまでは参つておりませんので、協議会、更に進んで審議会というようなことによつて十分周到な検討を経た上でこの問題に対する根本的な対策を立てたい、こういうふうに考えております。
#40
○赤松常子君 先だつて同僚議員が本会議におきまして一般質問をいたしました際に、犬養法務大臣は非常に希望的な態度を御答弁下さいましたので、私ども非常に満足いたしております。殊に通常国会には必ず出すと言明をなさつていらつしやるのでございます。そこでどうぞ今宮城委員が縷々おつしやいましたように、より根本的な問題は協議会にかかつておることでございますので、文部当局もこういう売春問題に関し、その法制定に対しまして、はつきりした結論を早くお出し頂きますように切にお願いいたします。私これは大臣に誠に失礼であるかも知れませんが、文部当局がこの売春問題に関しては実に冷淡である。具体的に申しますと、こういうことを聞いております。赤線区域の存在は良家の子女を守る防波堤にすべきである。大多数の子女を守るために少数の者の犠牲は止むを得ないというような考えを文部省がお持ちになつておるという、これは噂でございます。併し火のない所に煙は立たないというわけで、そういうことが文部当局の意向であるやのごとく印象づけられておる。これは私非常に文部当局としても嘘であれば幸いだと思うのでございますが、非常にこの問題に対しましてはさわらないようになさつていらつしやるという噂がございますのですが、こういうことに対しましてちよつとお答え願いたいと思います。文部当局はそういう議論をお持ちなんでございましようか、どうでございましようか。文部省の名誉のためにどうぞ。
#41
○国務大臣(大達茂雄君) これはなかなかいろいろ場合によつては意見の分れる問題でもあります。でありますから文部省の中にはそういう意見を持つている人、或いは何かの機会にそういうことを述べた人があるかも知れません。この辺は私存じませんが、少くとも文部省としてそういう考え方でおるというわけではありません。
#42
○赤松常子君 それで私大変安心いたしました。どうぞその考え方を省内にお伝え下さいまして、各関係局を御督促下さいませ。で、これは文部省ではどういうところでお扱いになるおつもりなんでございましよう。こういう売春に対する教育上の問題は何局の何課でお扱いになつているのでございますか。
#43
○国務大臣(大達茂雄君) これは社会教育局でやつております。課はどこでやつておりますかちよつと……。
#44
○赤松常子君 それからこれに関連いたしましてちよつとお尋ねしたいのでございますが、二月ほど前に紙芝居、エロ、グロの紙芝居が横行いたしております。たまたまその現場に私どもの仲間が行き合いまして、これは大変だというので、紙芝居浄化運動を取上げております。これは都のことでございましたから都に参りましたけれども、紙芝居倫理綱領委員会でございますか、それがあるけれども、これは業者のみの委員であるということで何ら手は触れられなかつた。それから又これは四月くらい前でございましたか、愛知県の碧南市に少年の犯罪が起きました。殺人事件がございました。それが審理の結果映画の影響であつたということで、その碧南市の婦人団体が卒先いたしまして映画浄化の署名運動をやりました。それを二万ばかり集めましたものを、私持ちまして碧南市の婦人代表のかたと文部省にお伺いいたしました。で、その係のかたと数時間に亙りまして映画浄化の問題についていろいろ面談いたしたのでございますけれども、伺つてみますと、やはりこの審議会というものが業者を中心とした審議会であつて、社会の良識の代表者というものがそれに加つていないということがはつきりいたしました。尤も私どもは昔のように官僚統制、官僚の手によろ思想統制、文化統制を願うものではございませんけれども、社会の良識というものの判断に待つということが一番民主的だと思うのであります。こういう映画の問題、紙芝居の問題は、至る所のお母さん方が痛烈にその浄化を望んでおられるのでございますが、このことに対しまして文部省は、今申しましたような委員会に対しどういうふうに改組すべきかということをお考えになつているのでございましようか。こういうことに対する方針について伺いたいと思います。
#45
○国務大臣(大達茂雄君) これは先ほど申上げましたように業者の自粛ということでありませんと、仮にこういう映画は文教、或いは子供にうえる影響において面白くないと、こういう結論を出してみましても、それをとめる方法が実はないのでございまして、自然業者の自粛と申しますか、業者のほうでこういうことは、一つこの絵は控えようじやないか。みんなで業者の仲間で見て、こういう絵は、こういうものを出しては申訳ないからやめようと、こういう業者の自粛ということでありませんというと、これは本当を言うと社会の良識のある人に判断して頂くのが一番いいんでありますけれども、これはいけないと言つてみたところで、業者のほうでいやそれでもこれは市中に出すということになれば、これは先ほど申上げましたように、今日出版の自由とか何とかいうことであるというと、如何とも実は仕方がない関係になつておりますので、その点から申しますというと、映画そのものの教育上いいとか悪いとかいう点については非常に遺憾の点があろうと思いますけれども、それ以上はやりようがない、実効の上る方法がない、こういう関係があるのであります。文部省としてなし得るのは、そういうよくない絵をとめるということは、役所としてそういうことはできないのでありまして、こういう絵は教育上誠によろしい、非常に有益な絵であるからしてこれを子供にでも、学校でも見るようにされたらよかろう、こういうむしろ教育上有益な絵を推薦するとか何とかというような方向、若しくは文部省自身が教育映画というものを作製する、こういうようなことをやつておりますけれども、面白くない絵をとめるということが、今のところ制度上できないものですから、自然業者に自粛してもらつて、業者の判断においていけない絵は一つやめる、こういうことになつておるわけであります。
#46
○赤松常子君 私は誠に遺憾なんでございます。業者と申しますと、作つた以上、何千万円かかけたフイルムを無駄にするということは絶対にございません。だからといつて手を拱いていれらるというよりも、制度そのものに対して何か広く衆知を聞くということを文部省がなさつて頂く意思が欲しいのでございますけれども、非常にしようがないからということで、このただ流れに委せておるだけのことでございましようか。もう一度私お伺いいたしたい。
#47
○国務大臣(大達茂雄君) 教育の点から申しますというと、今赤松先生のおつしやつた通りでありますけれども、実はこれは出版、印刷その他いわゆる基本的人権ということになつておりますので、御承知の通り終戦前のような法律による検閲の制度は一切とめられております。又出版物についても検閲制度がとめられております。これはいわゆる憲法に保障されておる基本的人権の尊重、こういうことで、今すぐいわゆる新らしい考え方の下においてはこれを検閲するとか、悪いものをとめるとかいうことは実はできないのであります。これは非常に遺憾に私は思うのでありますが、どうも現状ではすぐこれを制度の上で検閲制度を復活するとかいうことはむずかしいのじやないかと、こう思います。
#48
○赤松常子君 まあこれは我々の問題でもあることでございましようし、又この問題についてもこのまま放つておくことなく、お互いに考えて行きたいと思つております。
 その次にもう一つお伺いいたしたいのは、婦人が売春に身を落します原因はいろいろございますが、一つの理由は、婦人が職業教育、それから技術教育が不徹底であるから、食べられないとすぐ身を売るという経路を迫る率も大変多いのであります。婦人のこういう職業教育、技術教育に関しまして文部当局の方針、あらましでよろしうございますが、特にどういう点をお考えでいらつしやいますか。特にどういうふうにそういう新らしい施設をなさつたとかいうようなことが今おわかりでございましたらお伺いいたしたいと思います。
#49
○国務大臣(大達茂雄君) これは婦人というよりも、むしろ一般的に職業教育をもう少し振興して、社会的の需要にも応じ、又学校を出ると今日は遊んでおる時期ではありませんから、少しでもこれを生活手段に役立つようにという声が非常に強いのでありますし、この戦後の教育制度というものは、御承知の通り、割合にこの面が閑却されておるというのが実際であります。戦前にありましたいろいろ各種実業学校でありますとか、或いは実業補習学校というような、極めて簡易な職業教育、そういうものも皆実は一応なくなつてしまつたのであります。高等学校、大学におきましても、何と言いますか、一般の教養度の高いいわゆる民主社会にふさわしい教養を持つた人間を作るのだと、これは非常に結構なのでありますが、そのために職業教育的な面が今日少くとも新教育制度においては比較的閑却されておるというのが実情であろうと思います。それは非常に実際の我が国の現状にもそぐわないことであるという見地から、御承知の産業教育の振興とかいうような声が非常にやかましくなりまして、最近では是非実業教育と申しますか、職業教育というものを進めて行きたい、こういう方向に来ております。更に進んで、もう少し高度のいわゆる科学技術の振興という意味で、そういう方面の教育に力を入れて行きたい。これはまあ大体そういう世論も必要から来ることでありますが、だんだんそういう方向に参つております。これは非常に結構なことであります。ただ、女性に特に限定した職業教育ということになりますと、これは各種の実際の社会的需要に基きましていわゆる各種学校と申しますか、そういう方面でいろいろ職業的な教育が行われることは別といたしまして、国の制度として考えておりますことは、男女という余り区別をしないでの、その意味においての職業教育は勿論ありますけれども、特に女性を対象にして、例えば薬剤師とか、医者とかということになれば、これはまあ仮に女の人が入られる学校でも、これはそういう意味の教育でありますが、特に女性を対象にして、例えば洋裁であるとか、その他の女性にふさわしい職業というものについて、国の制度としては余り考えておらんというのが実情であるのであります。これは戦後の、何と言いますか、男女同権と言つたり、或いは男女共学というようなことから、御承知のように今日高等学校では、戦前にあつた家政科と申しますか、料理、裁縫その他家事に関する教育が特に女性については女の高等学校の子供さんがたに必要じやないかという議論も一面非常にあると同時に、そういうことをしたらば、それだけ男の子供よりも余分な負担になつて、上の学校に入るときに学力の低下、上の学校に入る競争力も減退する。それはつまり男女共学、男女同権の精神に反すると、こういうような理窟も片一方にありまして、なかなか議論倒れになつてしまつて、今日の高等学校の教育課程審議会の議論も実はどつちにもきまらんというような実情にあるのでありまして、特に婦人のための特殊の教育という面が若し必要であるとすれば、この面は明かにここで必要でないというなら別でありますが、それが必要であるという見地に若し立つならばこの面は非常に閑却されておるというか未解決になつておるというふうに私は考えます。これはまあ専門の方々のいわゆる教育課程審議会というようなそれぞれ専門の人もおりますから、そのほうで審議を頂いております。私のように素人がやたらにそういうことに喙を容れるべきことでないと思いますけれども、併し一体私はそう男女共学といつたつて、男と女が違うのだから、又社会的の働きというものも自然そこに違いがあるのだから、そう画一的にいわゆる観念的に何でもかでも、男の子に小学校によるとお針を教えてみたり、そういうことはどうも私らは腑に落ちないのでありますが、併し私が承知しておる限りでは、今日の文部省内にある専門家を集めた教育課程審議会という方面では、やはりそういう議論が非常に強いのであります。従つてさようなわけで特に女性というものだけに限定するというか、対象とした特殊の職業教育という面は私は欠けておると思つております。これは全般の問題とも関連いたしますが、私だけの考えでは何とか考え直してもらわなけりれば困ると実は思つておる次第であります。
#50
○赤松常子君 最後に聞きますが、私只今の女子教育の方針にも関連いたしました大臣の御意思をもつと掘り下げてお話をし合いたいことがたくさんあるように感じますが、それはまあ後日に譲るといたしまして、婦人の女子教育について非常に閑却的であつたということで、今後の教育課程審議会などにもそういう点をどうぞ強調して頂きまして、今申しましたような売春婦などの多くなる点もそういう点に原因があるのであります。これから婦人も社会的に特技を何か持つておるということが家庭の経済的基礎を強めることにもなるのでありますから、どうかよろしくお願いいたします。それから先ほどから繰返しこの売春の原因が非常に貧しいからであるということも言われました。勿論貧しいということが身を売つている原因にもなるという現実は私もよく存じております。併し先ず貧乏を退治しなければならないという根本政策が必要であります。インドも大変貧乏でございます。日本よりももつともつと貧乏でありますけれども、売春婦が全然見当らないという実情を私は見て参りまして、私は仏教のよし悪しを申上げるのではありませんけれども、仏教の五戒ということが滲透しておる、一種の教育が滲透しておるということが売春を防いでおるという大きな力になつているということを私は伺つたのでございます。これは要するに教育の力というものと解していいと思うのでありまするから、ただ貧乏だからということに押付けないで、文部当局は教育の面をどうぞ強く取上げて頂きたいということを深く要望いたして私の質問を終ることにいたします。
#51
○委員長(郡祐一君) 他に御質疑はございませんか。
#52
○中山福藏君 如何でございましようか。文部大臣にちよつと承わつておきたいのですが、刑法の改正が或る一部に非常な、例えば妻の姦通を容認したのはこれは男女平等だという点から言えば当然なことですけれども、古来の伝統的な婦人というものの自覚、尊厳というものが自己を失つたということと、それから刑法の面に、成るほど一方から言えば侮辱したように考える人もあるでしようが、併し私どもは侮辱してああいう法律ができたとは思つていない。日本の男系の系統というものが如何に尊重せられたかという、いわゆる民族の誇りというものがそこに繋いでおつたのじやないかということすらも一面において私は考えておるのです。それからもう一つは、こういうことになつて来ておるのではないかと思うのでございます。優生学というもの、優生保護というものが、簡単に堕胎ができるということについてのいわゆる法律上の容認というものが或る方面に行われ、例えば肺結核で悪いとか経済上の非常な困窮の立場にあるというようなことからそれが止むを得ないときは、結局民生委員なんかの証明があればそれはやつてのけられる。こんなことは何でもないじやないかということで、朝は病院に行つて夕方平気で帰るというお嬢さんもあり、又普通の人があるらしいのです。私は子供が二人医者をしておるから始終そういうことを聞かされるのです。そういたしますと、こういうことからも、小遣銭が一カ月六千円ぐらいじや足りないから一つ儲けてやろうというので、この間私の家におりました女中が今ホテルで女中をしているのですが、どんな人が来るのだと言つたら、先だつても私の知つているお嬢さんが男と一緒に来てびつくりしたというのですね。そして六千円ぐらいではとてもいい着物が着れんから、着物を買うためには仕方がない、だからお母さんに言わんようにやつてくれとこう言つたというのです。結局こういう優生保護というものが或る一面においてはいいこともあり、或る一面においてはこういう弊害を及ぼしておるのではないかということも考えてみたのですがね。それからもう一つは、何といいますか、やはり教育の高度の発達というものが私は逆効果を来たしているのではないかということを考えているのです。それはどういうことかと言いますというと、人類というものをまあ哲学的に思索する。生理学上或いは生物学の観点から言つて、これは例えば神といいますか大自然といいますか、宇宙の法則と申しますか、生物の存続ということについての本能を神が与えるということを考える或る一部の人があるわけです。然らばこれをどういうふうに一つ持ち続けて行こうというようなことを考えているかと言えば、快楽至上主義というようなことも考えていて、或る一面には象牙の塔から脱出して面白おかしくこの世をちやらんぽらんで暮す、これが人世の快楽の極致だ、いわゆるこの世ながらの極楽だというような考えを持つた放埒な思想も一部には横行しているわけです。それから又、金を持つた連中は、事務員兼秘書、社長秘書というようなものがたくさんできまして、金に飽かして飛びまわつて、そして万一の場合には平気でこれを堕胎させるというような、いわゆる経済上の優者のおもちやになつて得々としていわゆる実質上の売春行為をやつておる人もあるように私は考えている。
 いずれの点から考えましても、それ相当の原因が多々あると思うのでございます。これは、先ほどから文相のお言葉を承わつておりますると、実際今日は文部省というもの監督権はを……、まあ学校教育の補助機関のようなお立場にあられるのじやないかというようなことを考えるのでございます。私は実は隣におられまする郡祐一委員長からあなたの処世術を聞いているのですが、あなたはよく、捨身に出てみずから浮かび上る戦法をとつていられるらしい。すぐ辞職願を出すということを聞いておる。これは政治家或いは文政の衝に当る人も内閣の衝に当る人も、自分の腹切り、いわゆる政治上の腹切りは辞職なんですが、それをやる人がたくさん出て来なければ、日本の政治は駄目だと思うのです。いつも大臣になりたいなりたい、委員長になりたい、自動車に乗りたいという、そういうけちくさい政治家がおつたのでは、この傾きつつあるところの日本の文政或いは政治、思想上の確立ということは私はどうしてもできないと思う。だから、捨身に出て、おれはこの一身を日本の教育のために捧げるのだというあなたの常套手段、と言つちや大変失礼でございますが、その気持を生かして頂きたい。そして万一の場合には俺は潔く腹を切るのだという覚悟をきめて頂いて、これは教育基本法とか、学校教育法とか、まあ大体学校の今日の教育の方針というものは、この二つの法律で私は運営されているように思うのですが、あれなんかで見れば、京都大学の空騒ぎなんというものは問題じやない。あの教育だけを生かしても、とめなければならない。殊に若し文部省に監督権があつたら、何とかなつて来ると私は考えるのですが、それがないのです。運営の補助機関のようなものになつて、大臣というものは惰性的な尊敬を払われているだけなんです。その結果は、結局問合せを出しても、一枚の葉書も手紙も返答が来ないというのがそれなんです。大臣は惰性的な尊敬を受けておるだけであつて、実質上の尊敬というものはないのです。私はいつもこの教育問題を最高のものとして、この議席を持つた以上は、文政というものの基礎付けをやるということが私の任務だと実は私自身考えておる。教育の根本が失われては、もう私は日本精神というものは失われるのじやないかということすらも考えておりますが、どうか一つお願いしておきます。これはまあ宮城先生もそれから赤松先生も婦人の立場から極力団体を組んで、仰せになる純潔を保つということは誠に結構なことだと思うのですが、これは教育上の大問題だと思うのです。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれという一種の保身術かも知れませんが、或る一方から言えば、これは政治家の腹切りなんです。どうかその気持を生かして頂きたいのですが、どうでしようか、やつて頂けましようか。
#53
○国務大臣(大達茂雄君) 先ほど赤松先生がおつしやいましたが、インドではそういうことはない。非常に少い。これはまあ私もさように聞いておりますし、明らかに宗教の関係であることはもう争うべからざるものだと思います。一体私はアメリカといろ国がどの程度に道義の昂揚された国か私は知りません。私はそれほどどうでもこうでもこれを先生に、手本にするというふうにまでは、私個人としては思つておりませんが、併しそれにしましてもヨーロッパ諸国、欧米諸国ではやはり子供のときからの道徳的の訓育というか、教育というか、やはりキリスト教、殊にやはり宗教というものが土台になつていると、これは私見でありますが、そう思つているのであります。日本で私は特に道徳教育が必要じやないかと思うのは、日本においては、少くとも現状においては宗教的な要素が教育の面から、これは何も学校の教育というわけじやありませんが、それが欠けて来ているので、戦争前にはいわゆる天皇を中心とした考え方というものが、これが宗教であるかどうかは別といたしますが、併しやはりこれは大きな道徳教育の基本になつておつた、これが失われてしまつた。そこでまあそういうものを一切投げ棄てて新らしい教育に入つて、それでアメリカじや成るほど社会教育的なことをやつて、道徳教育なんというようなものはやらんでも、これはキリスト教国一般にそういう道徳教育というものが実は宗教を通じてあると思うのであります。日本の場合にはそれがないものでありますから、而もアメリカ流の道徳というものが一足飛びに日本の社会に期待されても、それが将来熟していわゆる民主主義に立脚した道徳というものが完成ざれる時期が仮にあるとしても、それが今までの伝統的な道徳、そういうものが一挙に投げ棄てられて、少くとも制度の上からいうとそういうものは投げ棄てられて、学校では道徳教育というのはせんほうがいいというような、私から言うと無茶な考え方が行われておる。こうしてアメリカにどれだけのアメリカ人の道徳というものがあるか知らんけれども、あるとしても少くとも一足飛びにすぐアメリカの状態に、日本の国が同じようなレベルに、道徳的な観点から見て進むものだと、ああいう式の教育をやつておれば、民主主義国というものはすぐできるのだと、こういうふうに言うことは、私は若しそういうことを簡単に考えるとすればこれは非常に無理なことである。今、中山先生のお話でありましたが、どうもこれは何だか逆にそういう破廉恥と言つちや悪いが、そういう自由に自分勝手な振舞いをして、他の人がどんな迷惑をしてもかまわんというような、先ほど姦通云々のお話がありましたが、これは非常にこういうことも自由である、或いは犯罪にならんというだけでなしに、どうも近頃はそれを自慢にしている人があるのじやないかというふうにすら私は考えているのでありまして、これがいわゆる新時代のあり方であるというふうな勝手なことを考えている。若しこれが男女同権という見地からいけないのならば、男の姦通も罰すべきであり、人の迷惑になることを刑法から外してしまつて、そうしてそれが何か新らしい新時代の人間であるかのごとくこれを自慢にしているような風潮も見えるということは、甚だ私はおかしい話だと思う。こういう一般の社会慣習というものがあつて、それが大して家庭を傷つけたり、割合に平気でそういうことが大した悲劇というものを伴わないで行われるというような社会慣習というか、一般の気持がそうであるという社会ならば、まだいいかも知れんけれども、日本のように婦人の貞操というものを非常に重大に重く考えて、それから来る家庭その他の悲劇というものが非常に深刻であるような国柄において、アメリカ流に一挙にそういうものはかまわん。それを自慢にするというようなことを言つていては、私はひとり今の売春の問題だけではありませんが、あらゆる面において道徳的に混乱した時代だと私は実は思つているので、その点から言うとまあ今のままでの教育で一体いいものかどうかということに、私は多大の疑問と言うよりもはつきりいけないとこう思つているわけです。
 中山先生からもいろいろお話がありましたが、これは何か逆コースとか反動とか言つて一口にそういう言葉で以て言う。これは中身の問題を別にして、丁度昔のすぐ英米思想だとか、やれ自由主義だとか一口にきめつけてしまうという同じやり方が今日はやつておつて、内容の論議を待たずに、あいつは反動だとか、あいつは封建的だとか、これはまあ非常に勝手なことを申上げて相済まんのでありますけれども、私見を申上げると、今日反動とこう言う、これくらい悪いことはないということになつておる。そうかと思えば占領行政の行過ぎを是正すると、こういう言い方をすれば、これは誠に尤もであるということになつているようです。それを占領行政の行過ぎを是正して国情に合わせるということと反動とか逆コースということは内容は同じことである。つまり今こつちを向いているやつを少しこつちに舵を向け直すということでありまして、逆コースそのものは問題ではないのでありまして、その内容においていいか悪いかということが問題であるので、それを今の世の中で逆コースということで理も非もなくきめつけてしまう。これは極端な無茶を言うとお叱りを受けるかも知れませんが、地方分権ということを、近頃これくらいいいことはない、封建制度というとこれくらいひどく悪いものはないと、こういうようになつておるようでありますが、これもよく考えて見ますと大した違いはない。地方分権が強く行けばこれは封建制度ということだろうと思うのであります。そういうわけで、どうも言葉の魔術といろか、ものを吟味しないで何でもかでもアメリカ流と言うか、新時代のほうがいいのだ。そうでないやつは頭が古いというか、反動であるか、逆コースであるとか、場合によるとフアッシヨである。こう一口にやりつけてしまうということが今日の風潮であつて、何と言いますか、理も非もない状態である。もう少し極端なことを言うとみんな正気を取戻してもらわんと、正気を取戻してもらわんと、日本の社会というものは安定しないと実はこう思つている。これは国会の席でこういうことを放言すると又いろいろ問題になるかも知れんけれども私はそう思つている。これは私見を申上げますが、教育の面において早く正気を取戻すということはなかなか今日の時勢においてはむずかしいことだと思いますが、併し私が文部大臣をしている限りにおいては、決してえらそうなことを言うわけではありませんが、責任を持つ以上は、私はやはり何とかもう少し世の中が明るくなつて、そうしてみんな行儀もよくなつて、悪いことをすることを自慢にするような風潮だけは早くなくしたいものだとかように考えております。
#54
○委員長(郡祐一君) 他に御質疑がございませんければ、次に調査報告書の提出についてお諮りいたします。
 会期も終りになりますので、例により検察及び裁判の運営等に関する調査について審議未了の報告書を議長に提出いたさななければならないことになつておりますが、さよう取計うことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#55
○委員長(郡祐一君) 御異議ないものと認めましてさようにいたします。報告書の内容は便宜委員長に御一任願うということにして御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#56
○委員長(郡祐一君) 御異議ないものと認めます。
 報告書を提出することに賛成の諸君の御署名を願います。
  多数意見者署名
    一松 定吉  宮城タマヨ
    赤松 常子  中山 福藏
    棚橋 小虎  三橋八次郎
    亀田 得治  小野 義夫
    楠見 義男
#57
○委員長(郡祐一君) それではこれで散会いたします。
   午後六時三十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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