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1953/12/03 第18回国会 参議院 参議院会議録情報 第018回国会 運輸委員会 第2号
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1953/12/03 第18回国会 参議院

参議院会議録情報 第018回国会 運輸委員会 第2号

#1
第018回国会 運輸委員会 第2号
昭和二十八年十二月三日(木曜日)
   午後一時五十七分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     前田  穰君
   理事
           入交 太藏君
           重盛 壽治君
   委員
           植竹 春彦君
           岡田 信次君
           仁田 竹一君
           一松 政二君
           加賀山之雄君
           森田 義衞君
           大倉 精一君
           大和 与一君
           東   隆君
           木島 虎藏君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       古谷 善亮君
   常任委員会専門
   員       田倉 八郎君
  説明員
   運輸省鉄道監督
  局国有鉄道部長  細田 吉藏君
   公共企業体等仲
  裁委員会委員長  今井 一男君
  参考人
   日本国有鉄道労
   働組合書記長  横山 利秋君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○公共企業体等労働関係法第十六条第
 二項の規定に基き、国会の議決を求
 めるの件(日本国有鉄道)(内閣送
 付)(第十七回国会継続)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(前田穰君) これより運輸委員会を開会いたします。
 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件を議題といたします。本日は本件に関し参考人として国鉄労働組合書記長横山利秋君の出席を求めましたので、先ず今次国鉄裁定に対する組合側の御意見を伺いたいと存じますか、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(前田穰君) 御異議ないと認めます。それでは横山書記長。
#4
○参考人(横山利秋君) 国鉄の横山でございます。何はともあれ、先般本委員会におきまして国鉄裁定につきまして深甚の御考慮を煩わしまして、私どもに非常に好結果を与えました決議を頂きましたことを心からお礼を申上げます。国鉄労働者はあの決議によりましてどれだけ鼓舞され、或いは又私どもの主張が国会において認められたということを痛感をいたした者で、心からお礼を申上げたいと思います。
 本日は新聞で御承知の通りに、非常に私どもにとりましても重大な段階に立至つておるわけでありまして、国事御多忙の折柄時間をお割き下さいまして、我々の意見を聞いて頂くこういう機会をお与え下さいましたことを、併せてお礼を申上げる次第であります。
 前置きは抜きにいたしまして、どうして私どもがこれほど言葉によりましては執拗に、何と申しますか頑強に我我の主張をいたし行動をいたしておるかという点を端的に一つ申上げまして御理解を願いたいと思うわけであります。先ほどお手許へ配付をいたしました印刷物に要旨は申上げておるわけであります。
 第一は八月からと一月からとの相違であります。これはこの私どもの行動がここまで来ておるということは、やはり何と言いましても歴史的なものがございまして、四回に亘る仲裁乃至は調停案というものが、ただの一回も満足に履行されたことがない、こういうことがおのずから国鉄労働者に非常に根強い不満となり反擾となつていることは疑いを容れないところでありまして、今回風水害があり、いろいろと国費の使用につきましてもおのずからなる限界があるということは万々承知をいたしましても、やはりこれではならん、こういうふうな考えがいたすわけであります。
 第二番目は実際の銭勘定をいたして見まして、政府案なるものと私どもの考え方は銭勘定いたして見たところ第二番目に書いてございますように、余りにも昨年と比べて手取り額が少うございます。昨年は十一月、十二月の裁定のはね返りを見ますと平均二万円でございました。本年は一カ月分でございますから大体一万四千円にしかなりません。政府としても一割以上の物価の高騰があることを昨年以来認めておりますから、二万二十円支給されて初めて昨年と同額になります。そういたしますと、まさに八千円の相違が実質上昨年と今年とあるわけでありまして、この物価がいろいろ上つております今日、八千円の相違が昨年とあるということにはどうにも生活の年末年始のやりくりができないということを口口に国鉄労働者は訴えておるわけであります。
 第三番目には公務員と公共企業体との間に手当について予算の相違があるということであります。この点も各位御存じの通りに歴史的な因縁がございます。最初は一緒だつた、二十五年から違うようになつた、それで非常にこれはおかしい話だということで各位の御協力を頂きまして、本年二十八年度より手当の額については公務員と公共企業体が一緒に予算が組まれたわけであります。ところが今回の補正予算編成に際しまして〇・二五の相違でありますが、この私は〇・二五云々を申すのではなく、本質的に歴史的な因縁があつて、本年度より同一になつたものをなぜここに変えるのか、まさにそれは朝令暮改ではないかということを痛感いたすわけでありまして、この点が第一番目に国鉄労働者の最も不満とするところであります。
 四番目と五番目につきましては直接本裁定の問題とは関連はございませんが、併し生活苦の立場から申しますると、物価の引上げが不可避のような状況に政府の補正予算としはなつておるわけでありまして、政府の発表によりますと、生計費へのはね返りは〇・八七%、約二百円くらいと言つておられる模様でありますが、これは主としてマル公の米の問題が主であるようでありまして、どなたの家庭におきましても闇米の若干の購入或いはうどん等の購入につきましてはあり得ることであります。それを平たく計算いたしますと、五百円、大きい家族につきましては千円の圧迫になります。平均今回千円のベース・アップに比しましてはこれはベース・アップは無意味になろう、こういうように痛感されるのであります。
 第五番目はすでに政府として二十九年度の予算でやると、こういうふうに新聞で伝わつておりますが、首切りの話がございます。これらのことを考えまして国鉄労働者としては政府が先月の終り頃に、中旬でありましたか、一月から一カ月分ということにおきめ願つたことについて、なお且つ歴史的な立場から申しましても、手取りから申しましても、これではやつて行けない、仲裁裁定の完全履行ということを是非ともこの際再度政府にお考えを願う、こういうようなことを痛感いたしました。さりとて私どもは政府に対し或いは国会に対し闘争いたしておるわけでは毛頭ございません。常に団体交渉を通じ、公労法の示すところに従いまして、国鉄総裁に対しまして団体交渉をいたしておるわけであります。併しながらその団体交渉は少しも進展をいたしません。国鉄当局はこれが今予算の審議中であるということに籍口いたしておりまして、団体交渉の当事者たる能力を逃れようというふうな形になつておるわけであります。とにかく我々としてはやはり団体交渉の相手方は当局側でございますから、何回も何回も団体交渉で当局側が誠意のある具体的な数字を出すことを迫つておるわけでありますが、この際申上げたいことは、国鉄労働者の賃金の問題でございます。只今一万三千四百円ベースとなつておりますが、これが率直に申しまして国鉄労働者の労働の質と量に見合う賃金とは考えられないのであります。なぜならば端的に例を引きますと、仲裁裁定が理由書においてそのことを示しておるわけであります。本来国鉄労働者にはこれだけの賃金をやるべきではあるが、という前提を常につけておるわけでありまして、試みに昨年の裁定を繙いて見ますと、本来ならば八千五百円以上を妥当と認めながら、国鉄の支払能力を考慮してあえて八千二百円と裁定した、これが昨年度調停案の基礎となつたものである。而も今次裁定は、昨年の裁定は単に昨年度の賃金をそのまま本年度に引直したものに過ぎない、更に四月から実施するのであるけれども、これを財政上時期を遅らす、こういうふうに国鉄の賃金というものは財政的見地から、労働の質と量に見合わない賃金が常にきめられております。遡りますと二千九百二十九円、あの当時、重大問題となりました当時国鉄労働者の賃金は三千二百円でございました。一般と三百円相違があつたのでありまして、本来ならばこれが只今の賃金四倍とみなしましても一千二百円の賃金格差が労働の質と量に見合う賃金だと、当時の状況から見れば科学的に言い得られるのでありますが、今回の賃金は国鉄が一万三千四百円、電通の諸君が一万三千五百円、専売の諸君が一万三千一百円という実情にあります。而も勤続年数、家族構成或いは学歴或いは平均年齢ことごとく国鉄労働者が一番率が高いのでありまして、これを以てするならば、現在国鉄労働者の賃金は一番低い、こういうことが言い得られるかと思うのであります。昇給につきましても又同じであります。公務員諸君は年四回の大体において一〇〇%の昇給、国鉄労働者は年二回の約七〇%の昇給率になつておるわけであります。旅費について又然り、定額は公務員の定額旅費よりも国鉄労働者の旅費の定額は低いのであります。ことほどさように国鉄労働者の賃金というものは極めて低きに失しておると痛感せざるを得ません。然りとするならばなぜこのようになるのか、問題は仲裁理由書にもありますように、財政的見地、財源がない、こういうことに一言に尽きるのであります。この財源のあるないという点につきましてこれから私がお話をいたしますと、先輩の権威者の皆さんに対しましてはまさに釈迦に説法の嫌いを免れません。併しながらそれにおいてなお且つ国鉄労働者がこの問題に関してどう考えておるかという点につきましては、是非暫らく時間を頂きたいと思うのであります。
 国鉄労働者は例えば新線の開発につきましては非常に熱意を持ちまして地方のおかたと協力をしてこれを実施いたしております。御存じのように、二十八線区の新線開発が行われまして、本年建設公債を以て、一部他人資本を以て賄うにいたしましても、多くの費用を国鉄の自己資本から投入しなければなりませんし、且つは又営業、開業いたしまして十年乃至は二十年の間というものは赤字を伴うことは火を見るよりも明らかなところでございます。こういうふうな問題はことごとく国鉄のいわゆる独立採算制の範疇の中で犠牲を与え、国鉄の資金に更に赤字を加えるのは言うまでもないところであるわけであります。又飜つて本年度仲裁裁定で申しておりまするように、非採算線と申しますか、現在二百三十余の線区の中で採算のとれるものは一割に満たない、こう言つておるわけであります。過般国会を通過いたしました私鉄補助法を仮に国鉄に当てはめて見ると、百五十億くらいの補助が国鉄にされて然るべきだと、こういうことも理由書で申しておるところであります。又運賃の問題がございましよう。運賃は確かに安いことはこれは誰しも認めるところであります。問題は併しその運賃というものが国会で皆さんがおきめ下さいまして、妥当なるものとして今日社会政策的に或いは物価政策的にこれがきめられており、このことは新線開発等をも含んで公共企業としての、国家企業とし、ての骨格をなす本来のものとして認められておるところであろうと思うのであります。ただ問題は、この新線開発なり運賃というものは正しいという観点に国鉄労働者も立つておるわけでありますが、その正しいことが一体そのままに放置せられておりまするから、所詮その犠牲、しわ寄せというものは賃金の面にはね返つて来ることは論を待たないところであろうかに思うのであります。この点につきましては、我々としては当然西ドイツ等において行われておりますと聞いております公益命令制度というふうなものにおいて国家保障をさるべきではないか。ここのところが根本が解決をいたしませんと、毎年々々財源問題に国鉄は直面をいたし、問題の解決というものは毫も前進をしないということを痛感をいたすものであります。本年度は国鉄にも風水害が甚大な犠牲を与えまして、国鉄労働者が営々として働きましたこの予定収入目標を遥かに突破した額、或いは節約した額、こういうものも相当多額に亘つておるにもかかわらず、仲裁の理由書で言つておりまするような水害さえなかつたならば、国鉄の裁定はとにもかくにも曲りなりにもできた、こういうことを理由書で言つておるわけであります。一体水害という問題というものは、我々の努力の結果をまるつきり取つてしまう、こういう性格のものでありましようか。曾つて熊ノ平で事故が起りまして、山崩れで鉄道が不通になりました際に聞き及びましたところによりますと、山崩れの修理費用は一般の予算で、鉄道の被害は鉄道の費用で、こういうことになつておつたのでありますが、こういうことも我々としては理解しがたいところであろうかと思われるのであります。問はよく国会におきましても皆さんから御質問が出ることは、お前がたは働いておるのか、お前たちは働かずに当然の権利として主張すべきときばかり主張するのではないか、こういうふうな疑問でございます。この点につきましても、先生がたの御意見を十分に本年度は理解をいたしまして、一体自分たちがどういう働きを示したのかという点について科学的な分析を国鉄労働者として行なつたわけであります。これがいわゆる戦前復帰賃金要求という形になつて現われて参りました。私どもの推算いたしますところでは、戦前に比べて労働生産性が一二七に達した、で仮に基準法による労働時間、この緩和を計算に入れて一一〇と推算し、更に一一〇の実質賃金の要求はいろいろな事情もある、人口の増加もあろうから、せめて戦前と同様の一〇〇の賃金を要求する、これが私どもの要求の根幹となつたものであります。仲裁委員会におきましてはこれに判定をいたしまして、当局の主張をも併せ抽象的ではありますか、調停案の金額と同一にいたしました。終戦後私ども国鉄労働者に対しましては、社会的に或いは当局から或いは政府から或いは各政党から一時も早く国鉄の安全に、正確に、迅速に、という戦前の国鉄の状況を再現するようにという熾烈なる要望がございました。その点に鑑みまして我々もいろいろな御批判はございましようとも、多くの努力を自主的にいたしたつもりであります。それが今日私どもは戦前に復帰した。そうして公共企業体になりまして以来、働いたもりは必ず諸君のためになる、こういう公社当局の主張に対しまして、諒としし必ずや報いられるところあると確信をして今日まで来たものでありまするが、遺憾ながら賃金の実績は最も低く、常に財政問題について我々の主張は容れられない、こういう実情になつておるわけであります。もとより今回国会におきまして波瀾を起しました鉄道会館の問題を初め多くの問題につきまして、国鉄内部においているく考うべき経営上の問題があろうかと思います。この点につきましては我々としても多くの主張をいたすべき点を明らかにいたしておりまするが、併しそれが今日の国鉄の経営の財政的問題の根本的解決には、やはり私率直に申しまして根本的解決にはならないのではないかという点を考えるわけであります。こういう点から国鉄労働者としては今日極めて熾烈なる闘争を展開をいたしました。昨日の晩も国鉄当局といろいろ団体交渉をいたしておるわけでありますが、どうにも前進をいたしません。我々としては更にこの問題につきましては仲裁裁定の完全実施なり或いは一・五カ月分の年末要求のために全努力を挙げたいと思つておるわけであります。本委員会におきまして冒頭申上げました御決議はもとより、衆議院の公聴会におきまして各学識経験者が口を揃えて政府に裁定の実施を迫るべきだ、やるべきだと迫られたという点につきましても、私どもとしては心強き限りであると考えております。事態は極めて困難ではございますが、今日只今におきましても私は円満な解決というものが必ずや国会の皆さんがたの御努力によりましてあり得べきものと確信をいたします。又それでなくてはならんと確信をいたしておるわけであります。どうか御審議を願いまして、私どもの要望が達成せられるように格段の御配慮をお願いいたしまして、私の御報告を終る次第であります。
#5
○委員長(前田穰君) 今井仲裁委員長は間もなく見えると思います。御質疑のおありのかたはどうか順次御発言を願います。
#6
○一松政二君 ほかの問題もありますが、一応ちよつと伺いたいのは、戦前の三七、これはいろいろ計算の方法もありましようが、一応そういう標準が出た、それに勤務時間或いはいろいろの戦後の労働法規の改正によつてそういつた計算を一応割引をして、戦前の一割うんと働いておる、従つて一割働くことによつて戦前と同様の給与というか、生活水準を維持して然るべきじやないかという御説明のようでありましたが、戦前の一割うんと働いてそして戦前の生活が、日本の国民として維持できるでしようか、そういう理論的根拠を何かお考えになつたことがございますか。
#7
○参考人(横山利秋君) 我々としては先ほど申しましたように、一二七から一一〇に、更に国家の諸般の状況を考えて一〇〇といたしておるわけであります。それではどうしてその一一〇通りの数字を要求をしなかつたのか、なぜそれを一〇〇に戻したのかという点につきましてはいろいろ各般の人口とかいろんな国家の状況を参酌をしていたしたわけでございます。問題は然らば国家財政にそういう余裕があるかどうかという点になるわけでありますが、これはお差支えございませんでしたら私もまあお話をいたしたいと思いますが、何か非常に政治的な議論に陥る虞れがございますが、よろしうございましようか。
#8
○一松政二君 ちよつと発言中ですが、私の質問の趣旨を少し違つております。ということは、私は戦前の大体一割たくさん働いておることによつて、日本のいろいろ諸般の、敗けて貧乏になつたから一割だけをまけるのだと、そこで一割まけることに、つまり戦前十もらつておるが、今は戦前の十一働いておるから、日本は敗けたからいろんな困難があるから、十一働いて前の十と同じ生活を要求しておるというお話のように承わつたのですが、私は日本の戦前と戦後の経済力なり諸般の事情で一割多く働くことによつて戦前と同じ生活水準を日本国民が享受し得られるとお考えになる根拠を示して頂きたい。
#9
○参考人(横山利秋君) わかりました。これは政府の発表によりまして、経済白書におきましても農村関係につきましては消費水準が戦前水準を突破しておると、そういう数字も出ておるわけでございます。私ども国鉄労働者としてはそこまで、政府が発表しておる水準まで行つていない、なぜこういうことになるのかということが言いたいのであります。政府の発表によりますと、国民の相当の部分が戦前水準以上に生活をいたしておるそうでございます。
#10
○一松政二君 それはただいわゆる各種産業の生産品の統計を取つてそういうことを言つておるのであつて、これを人口割に頭数で割つて見て実質的に国民が戦前の生活水準に復帰しておる数字ではなかろうと私は思うのですが、あなたはさようにお考えになつておるのですか。
#11
○参考人(横山利秋君) 経済白書によりまする統計は実態生計費を基といたしましてそこから調査をされておるように私は読んでおるわけでございますが……。
#12
○一松政二君 委員長に伺いますが、そういう白書が若し簡単にお手許にどつかにあれば一応拝見したのですが、私はその点はちよつと見落しております。私自身としてはそういうことに非常に常に疑問を持つておる男ですが、それは承知していない。従つて政府がそういうことを政府と言つたつて政府の或る一機関でありましようが、まだ併し日本は実質的の生活水準は昨年度ておいて八割か、或いは八割が実質的には下廻つておるかも知れんというようなことが非常に論議されておることもあつたと思うのですが、その点は如何ですか。
#13
○参考人(横山利秋君) 私どももその点は実は多少の疑問なしとしないのでございます、率直に申しますと……。併し政府がそういう実質的経費を実態生計費から推算をして農村における消費水準は相当上廻つておる、都市においても九六か或いはそういうように達しておるというお話を承わつておりますので、それだつたら私どもはもう足らんということになるわけです。
#14
○一松政二君 私は仮にあえて誤つてと言いたいのですが、誤つてそういう数字上の仮説が生れた、或いは印刷物があるか存じませんが、日本の国民がこれは個々にはおのおの差がありますから……戦前よかつた者が非常に戦後悪くなり、それから悪かつた者がよくなつたという例はありますから、個々の問題は別問題として日本人の生活水準が戦前の水準に実質的に近い線が出て来ておると私は考えません。又そういうことはあり得べきことじやないと思うのですが、瞬間的にはあるかも知らんけれども、或る一定の持続した期間内においてそういう日本人の生活が今日の生活環境において或いは経済環境において許さるべきではない。それはこういうことはありますよ、国という一つの大きな組織でございますから一年や二年これを食い潰そうと思えば食い潰すだけの、お互いがお互いを食い潰し合うのですから何年かぐらいは食い潰すことはできると思う。それはつまりインフレになつたり経済上の破綻をもたらすゆえんになるから、一年や二年或いは二年か三年ぐらいはそういう生活の維持をやろうと思えばできないことはないかも知らんが、それはいずれ我々を破壊に導く根本になると考えるのです。そこで私は今の戦前より一割余計に働くことによつて少くとも戦前の生活水準が得らるべきでないかとお考えになつておるところに非常な何か割切れざる気持が起る原因になつておるのじやなかろうかと思つて質問しておるわけです。だけれども、これが正確な基礎の上に立つての議論であれば……私も今そういう書類を持たず、あなたも確固たる立場の上での議論でないように考えるから、余りそういう不確定な事項について質疑を重ねることはどうかと思うのですが、その点はもう一度説明を承わりたいと思います。
#15
○参考人(横山利秋君) ここに私経済白書を持つて参りませんでしたから見て頂くことが困雑なのは非常に残念でありますが、経済白書にはそういうふうに書いてあると私は見ております。問題はその理論の基礎となるものは、よく国会におきましても私ども御忠告を承わるわけであります。諸君は働いて要求しなさい、こういう忠告を受けるわけであります。私どもとしてはそれは万々承知いたしておりまして、且つ本年度の国鉄の状況というものは相当の実績を示しておるわけでございます。この点につきまして我々は実績もあり、且つそれを要求するそれこそ権利もあり、仮に一割働いたら一割を要求する権利もあろう、こういう立場についてはお認め願いたいわけでございます。
#16
○一松政二君 私は今の余計働いて余計取りなさいということは正しいと思う。従つて一割余計働いたら一割でないまでもその働いた部分だけは余計収入が欲しいということは当然の欲求として考えられます。考えられますが、その理論の根拠になるのは生活水準の問題で、これは日本国民の生活水準を一体どこに求められるかと言うて、これは今あなたと論争しておると問題が脇道に入ると思いますから、この問題は仲裁委員長に伺つて見たいと思います。あなたとの間には一応この程度にしておきます。
#17
○植竹春彦君 仲裁委員長と国鉄労組の横山書記長にお伺いいたしたいのですが、先ず今井仲裁委員長にお尋ねしたいと思います。
 今井委員長並びに仲裁委員のかたがたが肝胆を砕いて仲裁の任務に当られました事実に対しては、私は深く敬意を表する次第でありますが、私は仲裁制度がある以上は、政府が速かに、而もあらゆる工夫を凝らして裁定通り実施すべきものであると考えるのであります。併しこの重大なる待遇の問題の裁定の経過と結果に対しましては、若干の質疑応答によりまして、審議の参考にいたしたいと思います。それで、今井委員長にお伺いしたい第一は、今井委員長はこの裁定の完全実施が政府の予算上、資金上可能と考えて結論を出されましたかどうか、或いは予算上、資金上は別として、他の観点からのみ裁定せられたかどうかという点を先ずお伺いいたしたいのであります。
#18
○説明員(今井一男君) 私どもはこういつた問題を取扱います場合における基本的な態度は、一つの企業体におきましての労使紛争を解決するという立場でございます。従いまして専ら国鉄企業というものを観点に置きまして、その間における労使間の言い分というものをできるだけよく聞きまして、労働者側の言い分の中で筋の通つておらんものを是正する、当局側の言い分の中でも同じようなことをいたしまして、それで極力我々の独自の見解を入れる分を少くしようと、そういう形で調整をして参るのでございますが、その際の心組といたしましては、民間企業の場合とおおむね同じような考え方で参る。従いまして民間企業が常に支払能力によりまして、賃金がチェックされるという原則は、我々としても十分心得ておるつもりでございます。従いまして民間企業と国営企業の差がございますから、その辺細かに申しますというと、若干の差はございますけれども、大づかみに申しますならば若し労働委員会等がこの案件を扱いました場合に、この際ならば支払能力がありと認定するであろうという線を頭に置きまして、それで念査をする、勿論支払能力と申しますものも、決してそうかちつと何十何銭というものではございませんので、従つて賃金の甘さ辛さと申しますか、そういつたものによりまして多少の弾力性はあると心得えておりますけれども、そういつたことも加味いたしまして、少くともほかの労働委員会等で考える場合は、これは恐らく支払能力ありと皆さんがお考えになるだろうという線で物差を当てまして、一応この賃金が払われるか払われないかということを検討はいたしました。併しながら只今お言葉にもございましたが、予算上、資金上という観点は、現行の制度では年度当初の人件費だけを給与総額といたしまして、予算総則にお示ししてございますので、それを少しでもいじれば国会の御決議を頂かなければならんと、こういうことでは私ども出しましたものが全部予算上不可能と一応はそういうことに相成る仕組になつております。併し少くとも企業体で考えます場合には、支払能力ありと、かように考えて差支えない、又なお且つこの賃金額につきましては、国鉄当局のほうからもおおむね妥当の額であるということを事前に承わつた上で、公文書で頂きました上で出しました数字でございます。
#19
○植竹春彦君 それでは只今のお話をかいつまんで簡単にまとめますと、企業体としてはおおむね支払可能であると考えた、併し多少の弾力性は更に考えられて行くと、こういうふうに解釈してよろしうございますね。
#20
○説明員(今井一男君) 大体そういうことでよろしうございます。
#21
○植竹春彦君 そういたしますと、多少の弾力性といううちには、八月と一月の区別の点につきまして、どういうふうにお考えでありますか。
#22
○説明員(今井一男君) 若しこれを具体的にいま少し経理内容的に私どものさらいました部分を申上げますというと、国鉄には本年度予算にたしか三十数億円の予備費というものを盛つております。それから国鉄の、これは理論的な問題になるであろうと思いますが、国鉄には従来から災害の費用を全額その年度の運賃収入で賄うという建前をとつて来ておられます。これが例年でありますと、せいぜい十億乃至二十億の程度にとどまつております。今年はそれが不幸にいたしまして、異常な災難に会いまして、七十億四品を超えておるようであります。若しこれが自然増収がかなり五十億以上は見積られるようでありますので、若しも災害というものが例年のようになかつたならば、これは問題なしにもう全面的に可能である、普通の場合におきましたならば、こういつた企業、こういつた殊に国鉄のように国策的な運賃をきめられますような場合におきましたならば、恐らく何らかの借入金措置がとられるのが普通じやないか。災害復旧等の場合にこれを全額当年度の運賃収入で行うというふうな建前は、普通の場合はむしろおとりにならないのが順序であろうかと思います。そのほかにも国鉄のいろいろの財源的な面で考えられること多々あるのでありますけれども、一応その点だけをとりましても、これは少くとも今の民間で賃金問題を論ずる場合には考慮に入れているのもむしろ普通である、こういつたくらいの財源に相当する、こういうようなことをまあ経理能力の一端としては申上げてよいかと思います。
#23
○植竹春彦君 そうすると伺いたくなりますのは、政府は八月からの完全実施は不可能と言つておりますので、この裁定通りの予算を組んでも国民経済の上に大なる支障ありと政府は考えたことと思いますが、例えば賃金や運賃のはね上りが物価に影響することについて非常に関心が持たれて来たことは従来の例で御同感だろうと思いますが、従来どういうふうにこの賃金や運賃のはね上りが物価に影響したであろうか、御観察になつておられますか、お伺いしたいと思います。
#24
○説明員(今井一男君) 余り大きな問題につきましては私から余り大きな顔をしてお答え申上げるのも如何かと思いますが、私は極めて常識的にやはり賃金や運賃が上ればこれは相当にほかの方面に影響するということは頭から認めておるものであります。これを全然ないという式の解釈もございますが、それは私どもとしてはとつておりません。少くとも何らかの影響はある。その影響をどう見るか、これはむずかしい問題になるかと思います。上ればそういう結果が起るのは経済上普通だろうと思います。
#25
○植竹春彦君 そうすると今度の場合にはどういうふうな影響があるとお考えになりましたでしようか。
#26
○説明員(今井一男君) 今回の場合にも私どもはこの際運賃を全面的に上げなければならん問題かどうか非常に疑義がございますので、そういつたお話に入りますと……。
#27
○植竹春彦君 賃金だけです。
#28
○説明員(今井一男君) 賃金が上りますれば、又仮に実態がこれに追付いたというようなものに過ぎないといたしましても、それを理由にして又上げてくれということが民間の例でも恐らく出て来はしないか、そういつたことは考えられます。ただ私どもはこういう問題を処理します場合に常に置かれておる立場というものは一つの企業体におきましての労使紛争の問題であります。私も若し国民経済全体の立場におきまして賃金が如何にあるべきか、こういつた議論をさせられる場におきましたならば又意見も変つて来るかと思うのでありますけれども、仲裁委員会というのはそういう立場にございません。これは少くとも一つの企業体においての労使間の問題を解決するのが飽くまでその本務でございます。民間の賃金がおつしやる通り約一五考は一年間に上つております。物価も一〇%程度は上つております。殊に、甚だ余計なことで恐れ入りますが、公共事業に使います政府がおきめになつて、いるP・Wの職種別賃金等も、この十一月に一四・七%、政府みずからお引上げになつております。そういつたこととバランスいたしますると、これは害はありましても、止むを得ない。そういう仕組み。要するに今日本全体の賃金と物価というものはそれぞれ毎年少しずつ、いたちごつこかも知れませんが上りつつある。その一環の問題といたしまして、国鉄だけがそういつた際に、或いは公共企業体だけがそういつた際にそういう理由があるからということを以ちまして、特にそれによつて特別な手心を加えるということは非常にむずかしい。これは個別的に賃金紛争を解決するゆえんでない。もつと別な大きな手で私どもは打たれることは、これは日本全体から見て必要だと常々思つておるのでございます。この場合におきましては、私どもとしてはそういうことを認識いたしましても、やはりそういつたことを、このものを切離して処置するわけに行かない、かような考え方に立つております。
#29
○植竹春彦君 私としてはこの具体的な仲裁問題を解決されるに当られましても、委員長並びに委員はその本分がやはり国民経済全体を考え、その賃金のはね上りが物価に影響することは、即ち国民経済全体に大なる影響ありという観点に立たれまして裁定あらんことを強く要望するものでありますが、これはどこまでも私の要望であり、意見でありまするので、その問題はそれにとどめまして、次の一般論としてお伺いいたしますが、中小企業における勤労者に比較いたしまして、比較的高賃金である、或いは実質給与につきまして好条件であると思われる組織勤労者、例えば国鉄、電産等のその発言力の強い、闘争力の強い労組にありまして、賃金値上げを要求いたしました場合には、その要求通りには行かないまでも、或る程度の要求が仲裁裁定、或いは中労委等において裁定せられているというこの事実は、中小企業体の勤労者との比較差がますます拡大して行くことを考え合せますると、仲裁委員は仲裁するに当りまして、第一に仲裁制度そのものの妥当性について、又公正という立場、エクイタブルという観点からしてどういうふうにお考えになつておりまするか。参考に伺つておきたいと思います。
#30
○説明員(今井一男君) 冒頭に申上げましたように、私どもの立場はまあ抽象的に申上げますというと、労使の言い分が基礎でございます。仮に少しの極論を申上げまして、労使間が賃金をきめます場合に、若し大企業の民間賃金を基準にしてきめよう、そういう約束ができましたらそれはいかんと、こういうことを申すべき立場に私どもございません。ございませんが、併し今回の国鉄につきましては、実はそういうふうな議論があつたわけでございませんので、私どもといたしましては、民間賃金というものを十分に頭の中に入れて出したつもりでございます。ただ御承知のように、最近、今お言葉にもございましたけれども、中小企業と大企業とはかなり賃金の格差が開きつつございます。これはお示しの通りだと私は思います。私どもの立場といたしまして、労使間に特別に大企業だけを基準にしてしようというような、そういう約束でもない限り、そういう約束は幸いにしてと申しますか、現在までのところ見受けませんが、限りにおいては全体を作りまして、中小企業から大企業まで全部を作りまして、御承知のように毎月の勤労統計、或いは国鉄におきましては全国の私鉄の合計数字、その平均数字というようなものを中心に置きまして基準を作るという、これはまあこれ一本じやございませんが、そういつたものを頭に置きまして裁定をいたす際には検討を重ねておるつもりでございまして、率直に申しますというと、今回の数字は、恐らく東京とか大阪とかにおきましての大都市の大私鉄と比べますれば、国鉄のほうが著しく低い。それから又地方のお示しのような小さな私鉄、或いはバス会社と比べると、国鉄のほうが高い、そういつたことに、結果的には相成つておると思います。これは国鉄部内におきましての地域給の分配問題、これは又国鉄内部のいろいろな話合いで行くものでございまして、私ども直接触れておらない関係から起つておる現象であります。おおむねとしては大体バランスがとれております。そういつたことを目安にして出しておるつもりでございます。
#31
○植竹春彦君 委員長は多年に亘る、何回と繰返されましたこの仲裁裁定の御経験上、この加えて二で割る式の、と言つては余りに二という数字が妥当でないかと思いますが、わかりやすく言えば加えて二で割る式の、この仲裁案の内容並びにいつも仲裁問題については最後には政府と労組と衝突するような現在のこの仲裁制度というものに対しまして、従来の御経験から今後はどういうふうにして行つたらばいいかというようなお考えがおありでございますか。
#32
○説明員(今井一男君) 私は賃金問題にもう一つプラスいたしまして、国営企業乃至国営企業に準ずるものの能率増進というような角度と両方突つ込みましてそれで極く端的に申しますれば、即ち国鉄なら国鉄の事業計画というようなもの、一年に一億六千万トンなら一億六千万トンという形を、一トン幾らというような形で、国会の協賛を経る、その際条件として、例えば枕木を何木取替える、レールは百ポンドに何キロを取替える、そういつた形で事業計画として御協賛を得て、あとの細かい内訳は極力公社に任してしまう、それでその際におきまして国鉄当局が仮に物件費を多く使おうと、人件費を多く使おうと、或いは人件費の中で高い月給の人間をうんと雇う、或いは安い人間をうんと雇う、そういつたことを任せる、若しも事業計画というものが仮に超遂行される場合には、それだけにやはり原価というものは下る、こういつたような形で始末されて行くほうが結局において能率も上り、賃金問題等も組合というものは企業体との結び付きにおきまして自己の企業、又自分たちが当局と一緒になつて財源を捻出するような考え方にもなるのではないか、今では経営のほうは一切当局の責任であつて、全然組合のほうはそれを窺い知ることもできないという立場で又一つの弊害が起きておる、又一方におきまして、これはまあ折角のお言葉でございますから、余計なことでございますが一言申上げますと、今の官庁の予算制度をそのまま持つて来ておるところに非常な弊害があるのではないか。こういつたことを実は感ずるのであります。一例を申しますと、若しこれが民間の経営者でございますと、年度初めに仮に賃金要求をする、その賃金要求がございますと、これはどうしても何らか色をつけなければならん、こう経営者が考えましたならば、恐らく年度当初からいろいろ手を打ちまして、こういつた物件費はこう始末をする、こういう人件費の始末はこうするだろうと思うのです。例えば国鉄公社について、国鉄公社ばかりではございませんが、国営企業は一般に人件費の委任を与えられているものはとにかく使つてしまおう、そうして足りなくなつたものは極力料金なりその他の傾向へ持つて行こうということが相当顕著に見受けられます。それには一つの理由がございます。と申しますのは、仮に物件費を節約しますと、翌年度の物件費が削られてしまう、そうなるとそれだけの分を借入金から減らされる、そういつた問題が起りますので、当局のほうも無駄使い、無駄使いと言つちや悪いかも知れませんが、とにかく節約に努力しない、そういつた点を結局料金のほうに持つて行くということにどうしてもなりがちであります。そういつたような妙なこまかしで干渉があり過ぎるのではないかと、結局国民の望むところの事業分量、国民の望むようなサービス程度で、そうして一定の料金でやつてもらうように、成るべくそこは自由な手を与えまして、そこで一、二年苦労いたしましたならば、恐らくそこに立派な国営企業の能率とからまつて、賃金につきましても組合が当局と一緒になつて努力をするというあれもあるだろうと思う。今度の場合にはむしろ最初から、それじやこれだけやるから一つ何とか捻り出せ、仮にそういつた形で労使に任されたならば、私は相当なものが出せたと思うのです。ところがずつと遅れまして、而も一切合切料金のほうへということになりますと、いろいろとそこに問題が起つて参りまして、そういつたことも併せて御勘考頂くことが必要なので、公労法だけを形式的にいじるということは却つて国営企業の能率を害するのじなないかと観測しております。
#33
○植竹春彦君 そうすると今井委員長は労組の経営参加というような考え方を持つておいでになるのですか。
#34
○説明員(今井一男君) そうじやございません。私はそこまで言うのではありません。とにかく経営内容を組合に発表してよろしいのじやないか、今のような形で全然これは見せないというような形はいけないのじやないか、現にお前のほうでこれをこれだけ始末してくれないか、そうすれば、これをこつちに廻するかというような形、或いは収入につきましてもよく言われることでありますが、例えばいろいろな賃貸料、或いは広告収入などの面におきまして、努力すればまだ数十億の努力の余地は私は幾らもあると思うのです。そういつたようなこともこれは努力すれば、それが組合員にも反映いたしますし、組合も心から協力してくれると思う。ところが働いても働かなくても、人間を殖やしても減らしても大体同じ物差で測られますと、どうしたつてその点は、言葉が悪いですが、無責任な方向に行きやすい、今の行き方はそういつた方向に向いつつあるのではないか、だから私は経営参加は決して申しません。経営の責任は飽くまで公社総裁であります。併しそれに諮問すると申しますか、ぶちまけるということがいいのではないか、ぶちまけて一切協力を求める、ところが内容は一切お前ら触れるべからずと言つて示さない、そういつたことは行過ぎではないか、そういう考え方であります。
#35
○植竹春彦君 今井委員長に最後に伺いますが、先ほど横山労組書記長から、労働生産性が戦前に比較して一二七に向上したというふうに言われましたが、それで今井委員長はやはりその計算で今度の裁定に当られましたか。
#36
○説明員(今井一男君) 理由書にも書いておきましたのでございますが、私どもは戦前に対する一〇〇とは見ておりません。もつと少い……、ただ私としては、余計なことでございますが、今度生産性の問題が組合のほうから提起されて、当局がその生産性の問題に触れることを非常にいやがつたという態度は非常に遺憾である。これは当局のほうにも私はきつく御注意申上げておいたのでありますが、国鉄などで車両というような非常に簡単なところにおきましても、実は御承知の通り非常にむずかしい問題がありまして、一例を申上げますと、中央線で八台連結で三千人のお客を乗せて走つても、運転手は一人でよろしいのであります。これが仮に六台連結で千人乗せても、運転手は一人でいいのであります。その意味で三倍運んだから運転手の月給を三倍よこせとは言いません。併し一方におきまして、お客さんが殖えますと、それだけ出札も手間がかかれば、切符切りも手間がかかる、お客の事故も多いというようなことで、その辺の数字をどう調整するか非常にむずかしい問題でございまして、私ども不幸にして結論を出せなかつたのでありますが、又出すことは穏当でないと思つて控えたのでありますが、とにかく両者の言い分を克明に調べて見ますと、私どもとしては当局側は九六乃至一〇〇というのが最後の修正でありますが、私どもの感じとしては、それはそれよりも若干低いのじやないかというように……、併し当局がそういうふうにおつしやつておるのですから、私どもそれはいかんというようなことを申すべき筋ではございませんが、そういう感じは持ちました。
#37
○植竹春彦君 次に横山書記長に対して二つの質問をいたしたいと思います。
 第一は今回の仲裁裁定が完全に実施せられないという点については、労組に対して誠にお気の毒に考えることはすでに冒頭に申した通りでありますが、併し又労組の側におかれましても、違法性の疑いが極めて深い闘争方法がいわゆる三割賜暇戦術に伴つて行われたということは大変私たちは遺憾に考えます。それでこの遵法闘争は裁定実施がきまる前に組まれたスケジュールでありますと承知しております。だから政府が一月から実施するということは裁定通りではないけれども、大体において政府が裁定そのものに近いあれだけの大譲歩をして裁定を呑んだのに、その瑣末な点まで政府を追及されまして、政府が譲歩を発表しておるのに、すでに仕組んであつた遵法闘争というスケジュールをそのまま実行したということは、私は闘争に融通性がなくて、国鉄労組は闘争第一主義の組合というように思われます。これは国民生活全体を考えますときには、遵法闘争は国民全体への迷惑を及ぼすところが極めて大きかつた点に鑑みまして、国鉄労組はもつと国民の納得の行く、もつと弾力性のある闘争方法をとるべきであつたと私は考える。政府が折れようが折れまいが闘争は闘争だ、すでに計画されていた闘争を政府が折れているのに国民に迷惑をかけても闘争するのだといつたように私には感ぜられまして、大変遺憾に思いますが、この点につきまして、横山書記長はどういうふうにお考えになつておられますか。
#38
○参考人(横山利秋君) お話御尤もな点がございます。勿論私どもも政府が今年は一文も上げないというようなことが新聞その他を以て報ぜられましたときに、まさに激怒いたしたわけであります。その意味合におきまして、政府案が一月からという発表をされました際には熟慮をいたしまして、いろいろ検討をいたしたわけであります。併しながら先ほど冒頭にお話を申しましたように、この政府案ではとても我我としては納得ができないというふうな判断をいたさざるを得なかつたわけであります。私ども国鉄労働組合として、決して闘争第一主義というふうな観点をとつたこともございませんし、又とろうともいたしておりません。三十日のいよいよ明日遵法闘争に入る前におきましても、当局に対しまして、是非一つ妥結をするための当局側として具体的な提案を願いたい、こういうことを再三繰返したものでありまして、ただ当局の提案というものがその際極めて抽象的で、団体交渉を具体的にいたしまして妥結しようにも明確な金額の表示がないのでありまして、その点非常に残念だと思うわけでございます。
#39
○植竹春彦君 私はこの賃金水準の引上げというものは分配闘争だけでは解決できないのじやないか、どうしても生産力の向上と相待つて引上げらるべきであると私は考えますので、労働生産性のさつきの数字というものは相当食い違いのあるとは大変遺憾でありまして、その間についての資料は、これは専門員のほうで後にお取りまとめ願えれば甚だ仕合せだと思います。どうも公労法の精神から見まして、今回は生産力の向上と労働の生産性ということが十分考慮されていないのに、分配に走つたような感じを受けるのであります。現在までの闘争を考えて見ましても、やはり賃金上昇の闘争に終始しておつたように見受けられますのは、まだ組合が発足いたしましてから年月もそうだつておらないのであるから無理もないようではありますけれども、併し物価と賃金との相関関係というものはその点からよく考えて闘争をやつて行かなくちやいけないのじやないか。それでないと、いわゆるいたちごつこを頻繁に反復するのみで、本当の労組諸君の希望が立派に達成せられて行かないのじやないか。いつも同じようなことを繰返す只今の公労法乃至仲裁裁定制度に対しましては、これから我々は十分に改良、改訂を考えて行かなくちやならないと私は思いますが、これは私の意見であります。その意見に従いまして横山君におかれましては、賃金水準、その分配闘争と生産力の向上ということについての労組の態度、今後の精神を承わつて私の質問を終りたいと思います。
#40
○参考人(横山利秋君) 先ほどの私の意見と非常に食い違つて恐縮でござまますが、本来から申しますならば、私どもとしては雇用されておる立場において、食える賃金を要求する、こういうのが私どもの本来の立場でございます。労働基準法にございますように、人たるに値いする生活を営むに足る賃金、こういうものが常に確保されておるかどうかということが要求の基礎にやはりなるわけであります。ただ先ほど申しましたように、数年来いろいろと皆さんから御意見も寄せられまして、とにかく国鉄は早く戦前に復帰しろ、こう言われましたし、国鉄当局も又それを言い、且つそういうふうに働くことによつて必ず諸君の賃金を上げる、こういうふうに何回も言われて来たものであります。それでその立場を今度は一つ自分たちで、どういう働きを示して来たかということを検討をして見ようではないかという意見が内部から持上りまして、その意味において本年戦前復帰賃金要求、こういうことをとつたわけでございまして、昨年の賃金要求の基礎は勿論戦前の復帰ではございません。ただお話のように、労働生産性を上げつつ賃金を上げて行くべきだ、こういう点については私どもも十分考慮いたしておるわけでありますが、賃金要求のやはり基礎となりますものは基準法にいうところではないかというふうに判断をいたし、その結果を待つて賃金引上げをいたしたい、こう考えておるわけでございます。
#41
○大倉精一君 今井委員長にこの際参考のためにお伺いいたしたいのでありますが、仲裁裁定が出た場合に、その裁定の内容について、例えば高いとか安いとか、不当だとか、或いは労働生産性がどうだとかというようなことは、国会において審議の対象にはならないという工合に私は考えておるのですが、その通りでよろしうございますか。
#42
○説明員(今井一男君) 御案内の通り公労法という法律がかなりできそこないの法律でございまして、そのために私どもも迷惑しておりますが、皆様方にも非常な御迷惑をおかけしておりますと思います。仲裁制度そのものを中心にしてものを考えますと、本質的に申しまして、予算の有無ということは本来的に申せば何ら支払関係を拒む理由にならない。予算というものは単に部内におきましての、何といいますか、訓令にしか過ぎないということは明治以来の定則でございますので、例えば会社が国に何か物を売りまして、国が予算がないから払えないということが言えないのと同じでありますけれども、ただ公労法の場合には、そういうことをやつたのでは非常に問題が起つて妙なことになつてはいけないということで、十六条の規定ができたものとこう私どもは了解するのであります。そういたしますというと、お話の通り裁定というものをもう一度国会で審議して頂く、こういう趣旨でない、こういう趣旨にはどうも理解できない。何となれば若し予算上、資金上可能な場合には、裁定は全然国会にかからないのでありまするし、現にかからない例も幾らもあるのでございますからして、従つて若し仲裁裁定というものが信用ができないか、もう一度大事であるから審査するということになれば、如何なる仲裁裁定も全部国会へ持つて来なければおかしいことになります。又そういう中途半端なものでありますというと、調停案と選ぶところがなくなりまして、調停を二度重ねることも無駄であるというようなことからも、私どもは裁定そのものの御審議を二度願うという建前であの法律はできたものと解するのは正しい解釈と思わない、かように考えておるのであります。その点はお言葉の通りであります。併し公労法の文字では、いわばそこはできそこないと申しますか、裁定そのものを国会におかけするような形で文章がはつきりと、これはもう議論の余地のないように裁定そのものを国会に御提案申上げて決議頂くというふうに書いてございますので、そこで反対説というものも文字に関する限りは起つて参ります。併しそれは恐らく法の精神ではなかろう、かように存じてはおるのであります。併し御参考のためにやはり裁定の内容を御説明することは、これは我々の立場上当然でございますので、如何ような御質問にも私としては全部できるだけのお答えは申上げておる次第であります。
#43
○大倉精一君 そこで私はこの仲裁裁定というものの性格について若干お伺いしておきたいのですが、国鉄等の公共企業体においてはその事業の停止は非常に国民生活に大きな影響がある。従つて民間産業のようないわゆる労使間の直接解決ということでは、そこにストライキ等の紛争が起つて国家的にも工合が悪い。そこでやはりこういうふうな一つのいわゆる裁判のような性格を持つた仲裁制度というものを設けられて、そうして実質的にはここに争議が起らないようにする、そういう趣旨だと私は考えておるのです。従つてこの法律においては、実質的にはこれは組合のほうの争議権、ストライキ権というものを奪つて、そうしてその代りに仲裁裁定の制度によつて、公務員の職場の条件なり或いは賃金というものを確保して行くのだ、こういう工合に私は解釈しておるのですが、そこで今までの例をずつと見ておりますと、そういう趣旨にもかかわらず、仲裁裁定が出されるというと、これが却つて平和的な内容、性格ではなくして、これが常に争議を誘発するような結果になつて来ておる。でその原因を考えるというと、この仲裁裁定というものは、労働者のほうはこれは呑まなければならん、無条件でこれはOKしなければならん。ところがいろいろこの法律を都合のいい解釈をして、政府或いは当局のほうでは、場合によつてはこれはノーと言つてもいいのだ、こういりような恰好になつておるのですが、ノーと言つてもいいのだという当局並びに政府の解釈、これが強く出されておるがために、この仲裁裁定の制度というものがこの制定当時の本来の性格から大分変つて来ておる、性格というよりもむしろ役割から大分変つて来ておる、こういう工合に私は見なければならんと思うのです。そこで仲裁委員会においても、この仲裁にかけた場合には相当慎重に各般の事情なり、さつき申されたような支払能力なりというような点につきましても十分お考えになつて、そうして、この企業の労働者としてはかくあるべきだという公平な判決を下さなければならない。従つてこれは最終決定であつて、そこに必然的に債権債務というような性格のものが発生して来るのではないかという工合に考えておるのですが、そういう点について委員長の御意見を参考のために伺つておきたいと思います。
#44
○説明員(今井一男君) 御承知の公労法二十五条には今最後におつしやいましたような言葉がございます。予算というものの性格が私先ほど申上げましたような意味にしか解釈すべきでないと思われますので、又仲裁裁定というものが労働協約に代るものである、これは確かでございますが、契約は契約として成立しながら面もその契約が予算という本来から申して対外的な抗弁権と申しますか、そういつたものの本来から言えばないという制度だけによりまして、その協定なり裁定なりが効力を発生しないというふうに法律を読もうとするならば、それに応じたよほど明確な規定がなければならん。少くとも契約した以上はそこに債権債務の発生するのがこれは常識じやないか。民間の場合ならば仮に支払能力がなくともそれでおしまいであります。強制執行ができるのであります。国の場合にも何も規定がなかつたならば同じようなことになり得る性質のものだと思います。ただそれでは困るので、国会で予算をオーバーするという場合には特に御承認を頂くという規定がございますが、その規定と、即ち十六条の規定と三十五条の規定とどつちを重く見るかという見方でございますが、私は予算の本質論並びに仲裁裁定というものの常識的な効力、それをバランスにかけますというと、若し効力が絶対に発生しないというためならばもつと変つた書き方をしない限りは、これは条文解釈としてはむずかしいのではないか。従つて仲裁裁定なり労働協約等ができますというと、そこに当然債権債務が発生すると読むべきであつて、ただ国会の御承認がない、即ち予算をオーバーする場合においては当局は支払うことはできません。これは支払つてはならないという規定もございます。その意味におきまして法律上支払を拒むという正当な抗弁権を当局が得る、そういう解釈によつて十六条と三十五条の辻棲が合うのではないか。これを効力が発生しない、効力そのものを否定するという読み方は十六条に重きを置き過ぎまして予算そのものの法律上の効力というものを少し大きく見過ぎまして、そうして仲裁そのもの、契約そのものの本質論というものを軽く見過ぎた議論になりはしないか。そういつたようなことから御趣旨のようなこととおおむね同じ解釈のほうがとにかく出来の悪い法律ではございますが、あの辻棲を合せる解釈論を持つて来ますというと、まだそのほうがより辻棲が合うと、こういつたふうに解釈しております。
#45
○大倉精一君 そこで前回のこの委員会で運輸大臣の御意見をいろいろ伺つたのですが、一貫したところのものは、仲裁裁定は仲裁裁定だ、政府がそれを黙つてこういう裁定が出たらOKしなければならんというものではないのだ、従つて仲裁裁定というものを政府としては非常に軽く見て、今おつしやつた十六条のほうですか、予算上の問題云々という、そのほうに重点を置いて考えておられる、従つてこの仲裁裁定というものの役目というものがどうも逆の方向というか、はつきりした本来の役目を果していない、こういうことになつて来ると、仲裁委員長がいろいろ御苦心なすつて、そうしてこの制度の下に権威のある裁定を下されておるのですが、そういうような政府の見解なり態度なりというものに一貫されておるということになれば、仲裁裁定の権威というものは殆んど失われてしまう。従つてこの制度というものの権威も秩序も殆んど失われてしまつておる現状ではないかという工合に考えるのですが、この仲裁裁定というものの現実の、現在の状態についてそのようにお考えにならないかどうかということについてちよつと御意見を伺いたい。
#46
○説明員(今井一男君) 今回新聞等を通じまして伺つております政府の仲裁裁定に対する一月から実施するというような行き方というものは、少くとも仲裁裁定なり公労法の精神から見て面白くない形ではないか。勿論現在の憲法におきましては予算の提案権は国会にはございません、政府にございますからして、政府として予算の提案をすることはこれは必要でございますが、その際に公労法の趣旨から申せば、それでは何億殖やす、何十億だけ予算を殖やすことを認める、併しそれが団体交捗によつて仮に年末手当をふくらまそうと、仲裁裁定の金額に行こうと、その金額が少し動こうと、そういつたことは両当事者のほうに任せるという形のほうが少くも公労法の精神から望ましいのではないか。それを少くとも何円を何月からきめて行くというふうなあり方は仲裁裁定を政府がどうとかしようという筆法のように受取れますので、これは組合を刺激するようなことになる、少くとも国会に出せるという建前になつておりますので、予算をオーバーすることにつきまして一通りの議論が国会で交されることは当然であります。私どもその意味からいつて仲裁裁定が全部実行されない場合が起ることは、法律が予想しておることと思います。思いますが、これは飽くまでそういつたオーバーする部分を一体認めるか認めないかという立場でありまして、それをみんな何月から揃えてというような、そういう角度から御覧になるということは、少くとも仲裁裁定の法の精神に副うゆえんではなかろう、それより五十億殖やすことを認める、これは二十億認める、こういつた形でお出しになるという恰好が妥当なのではないか、さような感想を抱いております。
#47
○大倉精一君 そこでさつき植竹さんのお話の中で、政府は仲裁裁定を呑んだ、呑んだにもかかわらず組合が非常に戦いを継続しておるというようなお話があつたのですが、私は政府は仲裁裁定を今度呑んでいないのだ、これは呑んだというのは一応金額と形式の上でそういうような形で整えたのであつて、実質的には実施の時期のズレとかその他の問題から裁定は呑んでいないと考えるのでありますが、委員長は裁定を呑んだというふうにお考えになつておるかどうか。
#48
○説明員(今井一男君) まああの通りでございますからして、八分の三呑んだということになると思います。
#49
○大倉精一君 そうすれば私は仲裁裁定を呑んでいないと私も思い、委員長もそう思われるのですが、現在の国鉄の従業員諸君の戦いというものが本質的なものを含んでおるということはさつき横山書記長からいろいろ御説明があつたのですが、その中で私は最も今度の国鉄従業員の争議の重要なことは、仲裁裁定というものか従来一回も履行されたことがない、而もこの制度の始まつた当初に、当時の賀来さんでしたか、この仲裁裁定は双方を拘束するものである、ですからこの仲裁裁定が当局も組合もこれによつて平和解決をするものであるから安心してやつてくれという工合に国鉄従業員の諸君がずつと考え、そういう工合に納得させられておつたにもかかわらず、そういうものが実施されていない、従つて今度の国鉄の諸君が一生懸命やつておる一つの原因は、そういう本質的なものを含んでおる、仲裁裁定の履行という、そういう一つの政府の何といいますか、誠意といいますか、この法律を完全に守れ、こういう本質的なものを含んでおるように私は考えるが、今井委員長もそのようにお考えになつておるか、参考のために聞きたいと思います。
#50
○説明員(今井一男君) 組合の諸君がどう考えておるかはちよつと私から申上げかねることでございますが、とにかく今お話のように裁定というものを、政府は勿論政府としての責任なり立場なりあることは私どもよく了承するものでありますけれども、併しこの問題はすでに政治問題とか労働問題とかを離れて、私どもに言わせればむしろ法律問題になつておる、そういつた角度で、まあ例えて申しますと災害復旧等の法律がございまして、初年度に三割出すとなりましたならば、法律を変更しない限りにはほかに影響があつても一応三割出さなければならん、こういつたことと同じような立場で御解釈を頂くのが、仲裁裁定というものの制度があります以上はおとりになるべき態度ではなかろうか、それをそのほかに余計、余計と言つては悪いのですが、政府のお立場に違いはありませんか、法律以外の要素をお入れになるためにそこにいろいろな紛糾が起るのではないか、かようなのが要するに私なりの感想であります。
#51
○大倉精一君 これは委員長にお尋ねしても組合内部の問題ですから余り、深くお聞きすることもどうかと思うのですが、ただここで調停ということと仲裁という二重の制度を設けられておるというところに非常に又重大な意義があると思うのですが、この意義について今井委員長からどう考えられるか、或いは御解釈について一つ承わつておきたいと思います。
#52
○説明員(今井一男君) 私立法のときに全然参画いたしませんでしたので、立法の趣旨は直接に立法者に聞いておるわけではありませんが、私どもの、特に私の個人的な経験なりから想像いたしますというと、できればやはり民間の場合と同じように調停の段階におきまして労使の利益代表が参画した三者構成の委員会におきまして結論が出るということが妥当だ、望ましい。併しそれで片付かない場合にどうするか、調停の制度としてやはりイエス、ノーを言わせます以上は片付かない場合が相当できますので、そこで労使の利益代表を省きまして、建前として公益委員だけの特殊な委員会をこういつたような特殊な性質を持つております企業体でありますが故に、特別に設けられたものとして、その意味においてこういう日本の今の労働法規では極めて例外的な組織、組立てが少くとも観念的には意義があるように思います。併し実際の運用の面を見ますというと、いろいろそこに問題があるのでございますけれども、併し私としてこういつた席で現在の調停制度のあり方等を批判することも如何かと思いまするし、又特に仲裁委員の選出ということが、法文上は非常に結構なんでありますけれども、これは大倉委員なども御体験で非常によく御存じだと思いますが、公益委員の選出方法というのは観念的には労使双方の一致したということがあれば問題でありませんが、実際はそういう人がありませんので、そこで非常にむずかしい問題が実際問題としては起つて参りまして、常に政府の一方的な任命に終る、政府が作つた候補者の中で、その候補者を労使が一致しない、一致するときは絶対にありません。仲裁委員会の委員は今まで十数名変りましたが、今までに一致したのは末弘嚴太郎先生一人であります。そのあとはすべて政府が候補者を揃えまして、政府が一方的にやる、法律ですから不合理ではありませんけれども結果的には一方的に押付けた、そういつた公益委員の制度というものに対しましては、これはむずかしいことではありますが、基本的な問題がありはしないかと、こういつたことは常に頭の隅では思つております。
#53
○大倉精一君 最後に一言お伺いしておきたいのですが、さつきもちよつとお尋ねしたのですが、これは最終決定として一応判決と同様の意味があり、債権債務が発生するのだというふうに私は考えておるのですが、そこで仮に債権債務が発生して今度の予算でそれを下廻つたもので実際当る、ところが今度決算期において使い余つた金がある場合、これは当然不足分に充当して支払わなければならんという工合にも考えられる、そういう点は委員長どういうようなお考えかちよつと参考のために。
#54
○説明員(今井一男君) これは法律問題として学者の間にも一番見解の分れておるところのようでございますが、私は前に申しましたような意味合で、債権債務が発生いたしましてただ履行上の、不履行の正当な抗弁権を当局側が得るということに解釈するほうが辻褄が合うと思つておりますので、若しそういたしますと、お話のように金が残つた場合には債権債務が残つておりますから、従つてそれに対する法律上の非常に複雑な、まあ最終的には一つ最高裁の判決でももらわなければ片がつかないでしようが、そういつた問題が起る。併し若しそういうふうなことを考えませんというと、一つの権利というものを悪く申せば、悪くというのは変な言い分でありますが、いわゆる私有財産権というものを取上げたというような議論も法律上起り得る可能性がありまして、現に亡くなられた末弘先生はそういつた御見解であつたのであります。従つてこれは債権債務が発生するか発生しないかということは、甚だ法律上の遊戯のように見えて、あとあとへ尾を引くというような非常にむずかしい問題が起り得る、併し私はそういつた問題は労使間の関係が特殊な法律関係でありまして、一般の民法上商法上の債権債務のように一回限りで解決するという関係でなく、集団的にずつと永久的に続く債権債務関係に実はなつておりますからして、その間日本ではまだ制度的に確立しておりませんけれども、新らしい法律関係としてそういつたものに対して調整して行く途が何らかあり得るような気がしてならないのであります。不幸にいたしましてそういつた労使間という永久関係というような形に属する債権債務関係と、民法上の一回限りぽつりぽつり切れて行く債権債務関係とのけじめをきれいに調整したような法律論がまだ生れて来ておらないようであります。
#55
○大倉精一君 私の質問は一応これで終りますが、又後ほど必要があればやらせて頂きます。
#56
○加賀山之雄君 横山さんにちよつとこれは念のために伺いたいのですが今回の完全履行、不履行問題ですが、十二月から八月までの分を主として議論されておるようですが、一月以降のベース・アツプの分、これはいわゆる予算上でいうと給与単価ということになるのですが、この問題については御不満があるのかないのか、これは念のために伺いたい。
#57
○参考人(横山利秋君) 意味がちよつとわかりかねるのですが。
#58
○加賀山之雄君 ベース・アツプの率ですね。
#59
○参考人(横山利秋君) 今更申しても仕方がないと思つて黙つておつたわけでございますが、先般衆議院の公聴会におきましても実はこのベース・アツプというものは低きに失するということを率直に今井仲裁委員長の前で公述いたしたものであります。なぜならば、お考えになつてもわかりますように、一号が五千円でございます。五千円で仮に一割になりますと五百円しか上らないわけでございます。大体そういたしますと昨年から今年までの物価の値上り状況は各位御承知の通りであろうと思うのでありますが、この点から言うならば非常に低きに失する、私どもはそう痛感いたしております。
#60
○加賀山之雄君 今井委員長にお伺いしたいのですが、裁定から見たベース・アツプの率の問題としては、大体今度の補正予算に組まれたものとしては、仲裁委員会としてはどういうふうにお考えになつておりますか。
#61
○説明員(今井一男君) 私補正予算を内訳を詳細に見ておりませんので何とも申上げかねるのでありますが、やはり補正予算を詳細拝見しないと……、内訳を具体的にはつきりおつしやつて頂ければお答えできると思いますが……。
#62
○加賀山之雄君 この問題は先ほど委員長は八分の三だけ認められたのだと言われましたが、実際問題としては仲裁裁定はこの三月までで、給与は来年四月から変わる、下げられるというものものではないのですから、私はこれはやはり仲裁裁定の内容としては来年度、平年度ずつと続く問題のように考えられていいのじやないかというような気持で質問申上げた次第ですが、そこで来年度に続く問題となりますと、これは当然やはり節約だとか何とかいろいろ考えられて、これは委員長として非常によく調べられて、国鉄の問題については、いろいろ敬服いたしますが、問題はやはり来年度の問題にして置きますと、運賃の問題を考えざるを得ないように私どもはやはり考えなければならないのじやないかという気がいたしますが、その点について労働組合としてはどういうふうにお考えになつておりますか、これは横山さんにお伺いいたします。
#63
○参考人(横山利秋君) 組合としては、運賃値上げには賛成いたしかねるという態度を実はとつておるわけであります。これは勿論運賃の基本それ自体からして議論のあるところであろうかと思います。併し現実の問題としては私どもは先ほど申上げましたように、今日の政治情勢、経済情勢の下では、これが非常に生活費に直接響いて来る誘因となる、こういう立場から賛成いたしかねる。本質的な問題としてはこれは先ほど申しましたように、運賃が低いということは認めておるわけであります。中にはそういうことも認めておるわけでありますが、ただ経済情勢から言つて、又その政策から言つて、これは国家保障に待つべきであろう、こういうように私どもとしては考えております。
#64
○加賀山之雄君 又今度は今井委員長にお伺いしたいのですが、今度の裁定を見ますと、今年度の財政上の問題としては非常に財源の問題も非常に具体的に触れておつたのでありますが、来年度以降の問題となりますと、年々指摘しておることがまだ行われていないとか、或いは遠距離逓減の問題等が残つておると触れられておりますが、その肝腎の問題になりますと、これは仲裁委員会としては扱われない範囲の問題で御尤もかと思いますが、その問題についての御考察が少しあいまいのように考えるのですが、如何お考えですか。
#65
○説明員(今井一男君) これは加賀山さんのおつしやるように、御承知のように私どものほうの裁定は非常に時間的に限られておりますので、従つて支払能力につきましても民間の労組の調停等の場合にやれる程度のものはこれは是非やらなければならないという立場で、できるだけ触れて置くつもりで又触れたのでありますが、今おつしやいましたように、私が今然らば国鉄の経理はかく直すべきである、この経理はこうすべきであると申すことは、これは私の分に過ぎたことであるし、これは又私どもはその権威者でも何でもありません、ただ必要な範囲内の財源をどうしたら捻り出せるか、これにはこういうことも考えられる、ああいうことも考えられる、これはこうだ、あれはああだといろいろの角度から若干の考察を加え、それを総合勘案いたしました上で、これならば先ず民間企業の場合でも恐らくどなたでも触れるという意味で或る程度触れて置きました。私どもは運賃が他の物価に比べて確かに安いものと思つております。併しこれに対しましては、国民の大きな要望も私どもはこれを無視することができないということはよくわかつております。又併し一方におきまして国鉄の復興、復旧にどれだけ国民が声を上げておるかということも私どもの耳に入つております。併し又同時に余りに同年度の収入のみに依存し過ぎておることも、これも私どもは見逃し得ない点でありまして、これが若し民間企業でありますならば、必ずや後年度に繰延べて後年度の利用者がこれが国鉄の復旧、復興の御利益を一番受ける諸君でありますから、後年度に繰延べるということは勿論次の財政金融政策に関連するのでありましようが、国鉄の事業というものが国家的に極めて肝要な事業でありますならば、そう私は思いますが、今少しの配慮はあつて然るべきではないかというような点、その他いろいろ書き並べた次第でございまして、私どもとして若干の感想や意見はそれぞれにつきまして持合せておりますが、国会の、それこそ当運輸委員会等で一番御検討願わなければならん点でございまして、私どもがこれがこうでなければならんと、こういうような考え方はこれは持つております。ただいろいろひねくり合せまして今申上げましたような結論に達したのでございます。
#66
○加賀山之雄君 運賃は、これは低いほどいいことは当然なので、低きが上にも低くして、国民生活なり、産業、経済に貢献しなければならんのが、国鉄のこれは重要な、根本の使命だと思いますが、ただ印象として、国鉄にはまだうんと財源があるのだ、或いは節約がうんとできるのだと、これは横山さんに伺うのがいいかどうかわかりませんが、労働組合でも百億の節約は優にできるということを言つておりましたが、それは私は多少はございましようが、又収入を、雑収入等を殖やす面もございましようが、まあ来年度としても、百数十億というものはどうしてもベース・アップで来年度必要になつて来る、それだけの財源が果して間に合うかどうかということに疑問があります。それでこの問題は非常に今回の裁定としては重要な私はポイントにならなければならんというふうに考えておるものでありまして、ただ財源はどこからでも出て来る、運賃は値上げをしないでいいのだという、労働組合がそういう簡単なお気持でいるかどうか、これは再度よく伺つて見なければならんと思います。
#67
○参考人(横山利秋君) 私も実は加賀山さんがおつしやいました、労働組合の代表者の中に、百億国鉄にあるのだというふうな話をしたかのごとき噂を聞きましたが、誠に心外千万でおります。私どもといたしましても、国鉄労働組合は経営には参加いたしておりませんものの、国鉄の内容についてはおのずからなる洞察をしておるわけでありまして、今国鉄に百億の金があるということは常識では考えられないことであります。ただ仲裁委員会の御審議の際に、お前たち、とにかく経営に参加しないにしても、いろいろ経営に対する考えがあるであろう、それを出しなさい、こう言われましたときに、いろいろ智慧を絞りまして、相当項目を書きました。この項目の中には、或いは例えば鉄道公安官を廃止することによつて六、七億の金が浮くだろうというようなことも申したこともありますし、或いは又ガード下の地代を上げるということについての計算をいたしたこともございます。具体的にこれはやつておるわけであります。併しそれらの問題が今日の国鉄財政の根本を左右する問題ではないということは、私が先ほど申上げた通りでありまして、根本的な問題はやはり別な立場に立つてやるべきであつて、それらは当面乃至は来年乃至は再来年に亘つての経営合理化の方策として私どもが仲裁委員会に提出をいたしましたものであります。この点は誤解のないように御理解を頂きたいと思います。
#68
○加賀山之雄君 それで私は、その労働組合としてはこれは我々はまだ力が足りないから、大いにこういう点に重点を置いて考えて頂くようにしなければならんと思いますが、とにかく国鉄の予算、財政を見た場合に、人件費の、給与が非常に低いということは既定の事実だと思います。人が多いとか、何とかと言われている半面には、これはそうなれば当然人件費のウエイトが経営上うんと殖えなければならん。ところが人件費のウエイトはむしろ年々比率から言つたら下つているくらいじやないかと思われる。それは決して人を多く使い過ぎていない、或いはベースが低過ぎるということを一面意味するということになるように私どもは解しておるのですが、そういう点について労働組合としてはもつと重点を置いて論議をされ、そうしてまあこれも今回の国鉄法の改正で以ていわゆる禅力条項等については一部の前進はしましたけれども、とにかく働いてその能率に応じてもつと給与にそれを廻す。先ほど仲裁委員長も言われたが、国鉄の経営はそうでたらめにそうかといつて人件費にそう廻すようなことは考えないと思うので、国鉄に或る程度自主性を持たして、そうして働いて得たもので、貨物を一日四十二万トン送れるものがみんなの働きによつて四十三万トン送つて滞貨が一掃すると、こういう積極的な面で労働組合としてはもつと主張され努力されるというお気持がないか、そういう点についてもう一度お考えを聞きたいと思います。
#69
○参考人(横山利秋君) いろいろ問題があろうかと思いますが、確かに国鉄法改正が国鉄の自主性という面において、踏台の自主性と言つたほうがどうも適切なような気がいたしますが、前進をしたことは、各位の御努力によるものと感謝をいたしております。ただ賃金の問題につきましては、御存じのように給与総額制度が二十五年からでありますかあります。それによつて如何なる裁定を求めても、給与の総額の単価が年度初めにそのときの賃金なり或いは超過勤務の予算の算出基礎に四十四万を掛けて十二カ月を掛けただけでありまするから、余裕は少しもないのであります。従つて仲裁裁定を求めれば必ずそれが国会へかかる、こういうことでは国鉄当局と国鉄労働組合の交渉はいささかも燃焼いたさない。ここに国鉄労働組合の悩みがあり、又それは延いては国鉄当局につきましても私どもとしては多少の認めるところもあるわけでありまして、法律的にはそこのところが給与総額制度が改善をされなければ、四十四条の二項の言うところの弾力性云々につきましてもそれは問題があろうかと思います。殊に例えば今年当局発表におきましても五十七億の予定収入以上の増収がある。私は実はもう少し上廻ると思うのでありますが、この増収があつても、今年は水害だ、水害だから裁定はできんのだ、こういうことを初めの頃においては当局も或いは又政府も言われるのでありまして、これだつたら何の四十四条の二項ぞやという議論も又生れて参ります。仏造つて魂入れずというような今の給与総額制度では四十四条二項も中身がないというふうに私どもは感ぜざるを得ないわけであります。
#70
○加賀山之雄君 そこで横山さんにお伺いしたいのは、一つ労働組合で画期的な、まあ従来同じことが行われているのは制度も悪いと思うのです。国鉄総裁が場合によつては団体交渉力があるのかないのか疑われるような状態で組合と折衝しなけれれならない、こういつたところに随分組合のほうでもじりじりして焦躁にかられるというようなことが出て来る。そこへまあ仲裁裁定が出たけれども、国鉄としては如何とも仕方がないということで、総裁は出したくとも一般の予算財政の面からして制約を受けるというようなことがあつて、ますますいら立つたような気持が出てこの間からのような事態が行われるのじやないかと思うのですが、私どもとしてはまあ労働組合としても無理のない点があるかも知れないが、ここを一つふんばつて、そういうことを乗越えて、自分たちの力でもつと先ほど言つたように積極的に輸送にうんと馬力を出して、一つ上げて、或いはそのうちの何十%かを働いたものに還元してもらうという運動が積極的で非常に望ましい。又これは国民のためになり、国鉄のためになり、どこにも悪いことはないのですが、今行われていることはむしろ逆効果というか、国民にもいい感じを与えないし、国鉄はそれで送れるはずの貨物も送れないで減収とか、一つもいい点がないと思うのです。これは組合の立場だから仕方がないと言われればそれまでですが、そういうことについて横山新書記長に何か画期的な考え方があるかないかを伺いたい。
#71
○参考人(横山利秋君) 前半のお話については毫も否定をいたすものではございません。私も自信を以て申上げられることは、国鉄労働者は毫も怠けたことはないし、又その科学的基礎も今年は十分に検討して、我々の努力の成果、労働生産性というものについては特に念を入れてやつたつもりでございまして、今後におきましてもこの闘争の終結次第におきましては一日も早くこの輸送を正常に復し年末年始の輸送に尽力をいたしたいという気持については毫も変るところはないのであります。ただ当面こういう組合が仲裁裁定の完全実施についてどうしてああいう手段をとるのか、もつといい方法がないのかという御質問でございますが、誠にこれは若し名案があつたら曾つて総裁もしていらつしやいました加賀山さんのことでございますから、是非お教えを願いたいとこういうふうに考えるわけであります。実は今回のことにつきましても組合側としましてはできる限り旅客大衆に御迷惑のかからないように苦心いたしたものでございますが、ただ私どもが業務管理をいたしておるわけではないのでありまして、この点当局に対しても率直な話客に迷惑のかからない意味において何か話のしようはないかということを提案を実はいたしたのでありますが、それは経営参加だといつて断られてしまいまして、まあ今日の状況につきましては国民大衆の皆さんに対しましては御迷惑のかかつていることを非常に恐縮に存ずるわけでありますが、今日の歴史的な事情からいつて私どもの苦衷も察して頂きたいと考えるわけであります。
#72
○岡田信次君 今井委員長にことお尋ねいたしたいのですが、仲裁委員会が慎重に且つ心血を注いで下されたが裁定を事実においては蹂躙と申しますか、委員長のお言葉を以てすれば八分の三実施ということに相成つておるこの事書に対してどうお考えになつておるか。
#73
○説明員(今井一男君) 先ほどちよつと申上げましたが、私ども経理につきましてそれほどの何と申しますか、最終的な細かい掘下げはいたしておりませんので、決して、殊にこれはいずれにいたしましても恐らく国鉄の予算全体の枠、給与総額は申すまでもない、国鉄の予算全体の枠以上超えるものであろうということはこれは想像できるのでございます。従いまして決して私ども裁定自身そんな完全無欠なものとうぬぼれているわけではございませんし、殊に予算上の問題は私どもの一応触れたという程度でございますからして、それをそういつた角度から更に再検討されまして予算の角度におきましてその八が幾つかに切られる、こういつたことがありましても、これは私ども止むを得ないと思います。ただ今回の場合は国鉄だけを切離さずに全部が揃われておるという点において、而も一月実施というふうな形で出されておる点において、どれが何億どれが何億という形で出されておらないという意味におきまして私どもとしては公労法の精神上面白くないのじやないかと、こう考えておるだけの話でありますが、むしろ私どもがどう考えるかは大した問題ではないのでありまして、私どもとしてはできればかくかくの理由でこういう予算なら予算を幾らつけるところをこういう事情であるからこれだけつけられなかつた、こういつた事情を政府のほうから組合のほうによく或いは当局を通じてでもよろしゆうございますから、とつくりお話合い頂きまして、そうして組合員に納得して頂く。勿論公労法の建前からたしまして全部が全部予算の枠を超えた場合に実施できないことがあり得るのは私当然だと思います。公労法でそうなつておりますから。併しそういう場合は必ずそういう手段をとつて頂きたい。仲裁裁定としては一応場違いかどうか知りませんが、こういう数字を出した、これはかくかくの事情であつてこれだけしかできないということを組合側に納得さして頂きますならば、恐らく今回のようなごたごたも起らないのではないか、そういつたことを私どもの立場から申せば特にお願いをしたいようない心境でございます。
#74
○岡田信次君 只今委員長の御意見御尤もでありますが、そこで仲裁裁定が殆んど今まで完全に実施されなかつたということもこれ又事実だろうと思いますが、そういたしますと、今までなされた仲裁裁定にどつか無理があるんじやないかというようなことを、甚だ言い過ぎになるかも知れませんが、御反省になり、或いは御検討になつたことがあるか、又今回についても御検討になつておられるかどうか、この点について。
#75
○説明員(今井一男君) 細かい数字で幾らということは今ちよつと直ちに申上げかねるのでありますが、そこは国営企業と民間企業に対しまして私どもとしてはちよつと変つた見方を実はしておるのであります。と申しますのは、只今の経済機構におきましては事の善悪は別といたしまして、とにかく企業が払える限りにおきましてはどんな国民が羨むような高賃金を出しましても誰も第三者は文句を言つちやいけないという建前になつております。原則としては政府まその会社に御注意になるようなことはございません。併し国営企業におきまして仮にそういつた事態が起りましてもこれを野放図にするということは、これは許されるべきことじやないと思います。それはやはり或る程度の頭打と申しますか、限度がなければならん。併しこれが一本の物差できれいに測れるものであまりすなら、何も団体交渉とか調停仲裁という七面倒くさいことは要るまい。企業体ごとに特別会計で処理される以上は、やはり企業の経理というものと或る程度の動くという関係がこれはあるはずである、又あるからこそ団体交渉の意味もあるのだろう、併しその上のほうにはこれは幾らということはちよつと申上げかねますけれども、或る程度の幅以上のものは出ちや相成らんのじやないか。そこが国営企業の特殊な意義であつて、若しも余裕があればサービスの引上げなり料金の引下げになり引当てなければならない。同時に反対の場合、反対の場合も或る程度の底がなければならないのではないか。若しも民間の企業であればその際賃金を払わない、或いはとんでもない半分にしてしまうということが仮にありましても、国営企業というのはそこが国営企業でございまして、上のほうの限度はあるが、下のほうは底がない、こういうわけには行かないと思うのであります。併しそれにしても幅がある。その幅は何千円か申上げかねますが、応の幅がある。とにかく上の線があり、下の線がある。この線以内において適当な線を探すことが我々の使命じやないか、こういつた角度で国鉄に対しましても対処して参つたつもりでございますが、そういつた角度から眺めますと、国鉄は私どもとして、特に私は第一回から参加しておりますのでその点申上げやすいのでありますが、いずれかと申せば殊に第二次など明らかでありますが、はつきり理由書にも書いてありますが、とにかくこれは本当から言えばこれだけやりたい、これがむしろ普通の物差で引張つたらこうであろう、そいつをこのくらい、要するに五%何なり引下げる、こういつたような裁定を実は我々出して参つたのであります。それで相当にこの点はよそよりはいわば或る程度不利に持つて来たのでありまして、もう少し不利にできないかということもそれは見方としては考えられるわけでございますけれども、それだけの支払能力というものと関連性は持ちまして私どもはこの幅はいずれかと言えば民間企業と比べると遥かに狭いものであろうと思うのでありまして、全然余裕があるかないかにつきましては、それはないとも申上げかねますけれども、そういつた程度の反省なり検討はいたして参つたつもりでございますが、まあ不幸にいたしまして運賃政策その他の関係から大体今まで完全な実施を見たことはないことは甚だ遺憾でございますけれども、なお又私どもも引続き検討を加えたいと思つておりまして、私ども今回の分を決して理想であり、満点であるというようなうぬぼれは毛頭持つておるわけではありません。併し裁定そのものというものがとにかく三十日の間に慌てて出せと、こういうものでありますので、特に今回のように八つのものが一遍に参りまして、それを僅か三人の委員が片手間にちよつと八十日ばかりで片付けますと、これは行届かんことが随分あろうと思います。そこで私どもとしてはその点の反省は将来ともにやらなければならないと思つておりますが、併し労働問題というのは何としても早く片付けることが一番でございます。取りあえずのものであつても一応これでお通し願う、こういつた仕組にして行かんというと、今後の仲裁制度の運用はできにくいのではないかということを一方では思いながら一方では反省を加えて参りたいと、かように考えております。
#76
○岡田信次君 一つ横山書記長にお尋ねしたいのですが、さつき加賀山委員がおつしやつたのと同じことになるかも知れませんが、実は私ここ二月ばかり欧米を見て来たのですが、欧米の鉄道を見ますと、もう極めて閑散なんです。ところが日本に帰つて見ますと、駅頭には百万トン以上の貨物が滞貨しており、駅には多数の旅客が群集しておる。誠に日本の鉄道のために喜ばしく感じた次第なんでございますが、先ほど来加賀山委員が言つたように、この際国鉄従事員諸君が溜つておる貨物を運び、お客さんを運べば、物資の融通が円滑に行き、お客の旅行が楽になつて能率が上る、日本の経済には非常に益を与える、而も国鉄については収入が予定より上るというようなことに相成るわけで、従つて上つた収入に対するリターンは当然国鉄に返つて来るということに相成ると思うのですが、先ほど加賀山君も言つたことなんですが、是非一つそういうふうにして頂きたいと思うのですが、重ねて書記長の御意見を伺いたい。
#77
○参考人(横山利秋君) 私は欧米に参つたことがございませんので申上げかねますけれども、私もイギリスや或いは西ドイツやその他の労働事情については成るべく研究をいたすようにいたしておるわけでありますが、聞くところによりますと、欧米におきまして仲裁制度があり、且つそれがなされたときにはすべてこれが行われておる、こういうふうに聞き及んでおるわけでありまして、日本のように、殊に国鉄のように裁定が一回も完全に行われなかつた、一回も完全に行われたことがなたかつという例は、外国では実は私聞いておらないのであります。私どもは公労法が制定されました際に、ああそうか、この法律で行くなら仲裁裁定が出る前に闘争をして、裁定が出たらこれで闘争はおしまいだなと、こういうふうに法律を理解したものであります。現に又それでなくてはならんと思つておるわけであります。けれども、今日の事情は、恐縮な話でありますが、裁定が出たらそれ闘争だと、こういう状況になつているのは誠に遺憾に堪えないと思つておるわけでありまして、先ほどからいろいろ各位の裁定制度の御質問がありませんが、根本はそこにあるのではなかろうかというふうに私は考えるわけであります。今日の事情につきましては重ねて国民の皆さんに御迷惑をかけておることはお詫びをいたしますけれども、本質の解決ということが積年の私どもの不満がございますが故に余計に根強いものになつておるということを御了承を願いたいと思うわけであります。
#78
○一松政二君 私は今井仲裁委員長に極く概念的に伺いたいことがある。それは裁定に日本の統計なりいわゆる基準年度というものがありますが、この基準年度の物差それ自身が又一つの問題になりますが、一応あの当時には朝鮮もあり台湾もあり満洲もあり北支もあり或いは樺太、千島もあつた、そうして広大ないわゆる日本の経済的なバツクがあつたはずであり、今後人口は恐らく、あの当時なら五、六千万であつたろうと思うわけで、それが全然なくなつちやつて、そして賠償は支払つて行かなければならず、人間はますます殖えて、海外において出稼ぎしておつた人間まで家に帰つて来てしまつた、まあ一口に言えば非常な窮乏のどん底にあるところに持つて行つて、又親戚が流れ込んで来たというような家庭の実情であろうと思うわけであります。労働法規には、或いは日本の憲法には、人たるに値いする文化的な生活を保障しておると一応文字の上には書いてある。けれどもこれを保障しておるものは国民自身、我々自身でなければならない。これは誰も外国の人間で日本の生活を保障しておるものは一人もない。むしろ残酷を極めるくらい世界の生存競争は激しいのである。その中に立つて、我々日本国民の、或いは勤労階級の生活水準、例えばそれが昭和九年から十一年の基準、あれを一応の基準年度として、一体どの程度の生活を今の日本人の働き工合で、或いは日本人の今の生産力で、或いは日本人の今の輸出、輸入、まあ貿易関係から見て一体どの程度の生活を、まあこの一年、二年の起伏はあります、特需とか或いは朝鮮ブームとか、いろいろな問題がありますが、そういうものは一応抜きにして、大体大よそ戦前の各個人はどの程度の、その間に非常な差別は無論ありますが、概括して割算をして見て、一体どの程度の生活水準が営めるものであろうかとお考えになりますか。
#79
○説明員(今井一男君) 私どもそれは専門的に勉強はできませんので、経済審議庁あたりの数字を拾い読みするくらいでありますが、経済審議庁の数字、私正確なことは忘れましたが、それによりますれば、昭和九年―十一年度に対しまして都市生活は九〇或いはそれをちよつと切れるかというところを今お示しになつておるようであります。私もどうもそういつたことは常々頭の隅つこに入れております。それがちよつと今あいにく正確な数字が申上げられません。
#80
○一松政二君 私はこの経済審議庁は、ただ過去の或いは一両年の日本のいろいろな数次を集めてのものであり、且つまあ業種別によつては昭和九年乃至十一年の基準給それ自身が非常に低いものもあつたろうし、高いものもあつたろうからして、個々の問題はあるだろうと思うけれども、今仮に今井さんのおつしやられたように、九割の生活水準が維持できるとすれば、私は実に驚くほど日本の実力は低下していない。そういうことが果してできるのか。現にそういう消費過大の生活を営んでおるために、日本の前途は実に暗港たるものである。こんなことでは日本は亡国の淵に沈むのではないかとさえ我々は憂えております。インフレ必至である。又再びあの惨澹たる惨苦を嘗めるのじやないか。それはいわゆる分不相応な生活をするということが基準になるのじやないか。従つて戦前の、或いは基準年度の九割のおしなべての生活は現在としてはできない。それをやるために日本の前途が暗澹となつておるというふうにはお考えにはなりませんでしようか。
#81
○説明員(今井一男君) まあ九割の数字は甚だあやしいのでありますが、とにかくこれだけ自立するためには、日本の資本蓄積を一体どういうふうにやつて行くかということがむしろ一番大きな問題じやないかと思います。これは仲裁裁定の問題をちよつと離れますが、国民経済全体を、私も国民の一人として眺めますと、そういつたことにそれが如何なる方法で、如何なる政策によつて実現するかということこそ非常に根本的な問題だということは常々思つております。
#82
○一松政二君 そこで先ほどから伺つておりますように、仲裁裁定の任務としては、その企業の経営者及び従業員との間の紛争を調停する、或いはそれを裁定するというのが任務であるから、従つて限られたる視野にお立ちにならなければならんということも了解いたします。いたしますけれども、公共企業体であるということは、或る意味から言えば、つまり国のものをそういうふうなただ組織を変えただけでありますから、公共企業体の従業員即公務員或いは地方公務員に連なるから、政府としては非常な責任がある。従つて仲裁裁定はその企業内の視野においてなされるけれども、政府がそれを政治上責任をとらなければならん立場に立てば、そこでその仲裁裁定をそのまま実施し得ない事情が過去においてもう連続的に起つておるわけでありまして、私はそれがいわゆる三十五条と十六条との関係はそこをはつきり認識して、一応こういう組立てになつておるのではないかと考えるのであります。私も実は労働委員会におりまして、これが出されたときに、まあ初めての経験でもありまするし、司令部が殆んど直訳的にこれを持つて来た訳文そのままの法律案であつたわけでありますが、アメリカはよく政府と国会が常にお互いに牽制し合つておりますが、そういう考えがあつてこれを組んだのかどうか知りませんが、三十五条のほうでは当事者を厳しく縛つておるが、併しそれが今の予算上、資金上不可能なることに関すれば、こいつは十六条によるべしということが三十五条にはつきり書いてある。従つて予算上、資金上不可能なる裁定がなされたときには、これは十六条によつて規定するように法文が私はなつておると思うのです。又そうであつて私は初めていいと思うのです。先ほど委員長がおつしやられましたように、三人の委員で極く短期間に数多くのものを裁定されて、それが面も最終判決かのごとくに国民に至大の影響を及ぼす事項をその三人のかたがただけが責任をとつてやられるには私は裁定される責任が余りにも大き過ぎる、これが十六条にはね返つて来るところに、私はむしろこの法律のできがいいのじやなかろうかと思います。昨日も一昨日も私ここで申したことがありますが、これを幾たびかはつきりした形においてこれを書き直して見たいという労働委員会でしばしば企てがありましたけれども、なかなかそこまで踏み切れないで、委員会としては遂に昨年僅かに十六条の二項に「事由を附し、」という点に妥協ができ上つて修正を加えておりまして、従業員の側からすればこれは割切つたようなふうにやれば一番問題がないはずでありますが、責任のある政府の立場に立つた場合にはそれで責任だけが政府にかかつおるようなことにはなかなか承服し得ないのが当然であろうかと思う。そこで私は先ほども、常に従業員諸君、或いは労働組合の諸君が労働基準法なり或いは憲法を引用されて、そうして場合によつてはいわゆるアメリカ式のマーケツト・バスケツト式の賃金要求というようなことが問題になつておる場合もありますが、それが各企業体、或いは鉄道或いは専売その他にいたしましても、そういうものの賃金というものは、私は国民生活の水準というものが一応大きな基準になるのじやなかろうか。先ほど植竹氏の質問に対してもお答えになつておられましたが、上に行くのにも或る程度の規制があるし、下に行くのにも規制がある。国家のやつておる企業ですから倒れやしません。民間の企業なら倒れたらそれでしまいになりますが、国営企業であるだけに倒れるという心配はない。でありますから、今度は高いときに高く要求されてもその通りにやれないというのは私は当然あり得ると思うのです。で、今私がここで伺いたいのは人たるに値いする生活を営む賃金の要求というのが常に国民諸君から出されるわけですけれども、そういう点について、それもおのおのが、そういうふうな世界になることは誰しも願望なんであつて、できればそれに越したことはない。ところが貧乏親交であつて家が貧乏だから子供のせがむのに対しておもちやを買つてやれないという各小さな家庭に幾らもそういう例があるわけですが、日本の国情も私はそういう状態であろうと思うのです。そこで労働基準法なり憲法に示してある人たるに値いし、或いは文化的な生活を営むことを基準として賃金の要求が出ようかと思うのですが、そういう場合に国全体の生活水準ということをお考えになつてどういう点でこれを調節すべきであるとお考えになりますか。
#83
○説明員(今井一男君) 問題が大分いろいろ混み入つているようですから、私のお答えも混み入るかも知れませんが、お言葉にもございましたように、労働組合の諸君がとかく賃金を要求される場合に、国全体のいわゆる国民経済がどうなつておるかというような立場から言われる場合が非常に多いのであります。私はそれはおかしい、要するにその企業ごとの勝負をつけるものですから、従つてとにかくその企業におきましての事業の状況がどうなつておるかということが先ず先であつて、そこで初めて自分たちの分け前という問題が起つて来る、日本全体がこうなつておるというのをみんなそういうふうになれば上のものがそうですから、結局みんなそうなつてしまう。併し日本全体の賃金の分配が果していいかどうか。先ほど御議論があつたのですが、この問題とは別の場で、例えば今の国民経済会議とか何とかそういうところの場で一つとつくりと議論願つて、先ほどお触れになりましたようにこれだけの賃金は高過ぎるのだ、或いは資本蓄積はどうだということを論議を一度展開してもらいますと非常に労使一般に亘りまして放果、利益があるということを常に思つておるのですが、今回の裁定につきましては八つのうち四つは生産性を中心にした主張でございまして、そのうち国鉄と専売たけは最初から自分たちの事業における生産性を中心に挙げられましたけれども、あとの二つは、実は最初は国民全体の水準、それでは議論にならんと申しましたら慌てて、悪く言えば慌てて自分たちの生産性を計算して来られて、私もお相手をした次第でございますが、あとの四つの組合は、実を申しますと、今お触れになりましたように、国民の消費水準から来ました自分たちの最低生活を保障しろという議論で出して来られた、このマーケツト・バスケツトを。それに対しましては私どもの理由書の中に書いてございますが、私どもかなりな憎まれ口を、簡単に申せば叩いておるわけですが、それは、物価は、特別食糧費に織込みました物価そのものは非常に割安な物価を提供しておられます。これは国民全体の政府の統計でありますし、C・P・S等から見ましても確かに安い。併しその内容の組み方が国民消費水準より遥かに高い、率直に申しますというと。今都市生活者は大体必要なカロリーのうちの四分の三、七割五分を主食から得ておりまして、二割五分が副食から得ておるのが現状でございますけれども、それを主食からは六十とか六十五とか程度しかとらない、こうなると非常にその単価は、そこで一五%や一七%はすぐ上つてしまう。そういつたものが一切国民のレベルに直しまして、そうしてその上で標準生計費というものを一応想定して、そうして私どものやりましたやり方は、併しその標準生計費というものを、組合の要求は一万八千円にしましても一万九千円にしましても、その標準生計費を全部自分たちの基準賃金でよこせというのが主張でございます。それは私どもとしておかしい、それは勿論いいことに違いない。併し今の日本の国情から申せば、大体世帯主が勤め先からもらつて来る収入は生計費の大体九〇%というのがどこの生計費調査からも大体出る数字なんです。あとは家族が働くとか、或いはほかに内職、副業等の部分がある、その部分は頭から落さなければいけない、そうして更にその九〇%につきましても、その部分の中には超過勤務もあれば、その他もろもろの手当も入つておる。それを差引いた残りが基準賃金である。そういう物差で測らなければいけない、こういつた出し方をしておるのであります。その関係から組合の出しました数字が非常に下りまして、これはまあ組合からも大分怒られたのですが、併し私どもは、私どもの……少くとも国民の消費水準という議論から申せばそういうレベルにおいてバランスをとらなければいけない。そういつた立場におきまして論争を重ね、又そのラインで裁定もすべて出した次第であります。恐らく一松委員の仰せの、少くとも都市生活者の消費水準から見てそういう限りにおきまして、勿論その業種によりまして多少労働条件或いは支払関係は多少それより割のよいところ、割の悪いところが出ておるのは当然ですが、おおむねの物差はそういう物差で測つたというのが今回の裁定の共通した考え方であります。
#84
○一松政二君 委員長に伺いますが、国鉄の従業員が、他の専売その他の公社はこれはまあいわゆるパスなど或いは家族。パスなど持つていないと思うのです。国会議員か何か少数の人間以外は使用していないと思うのですが、国鉄の従業員の賃金を裁定する場合に、一家族或いは一人当りそういう交通費的の特権と申しまするか、特別の便宜はどういうふうにお考えになつて御計算になつておりますか。
#85
○説明員(今井一男君) そのことだけを切離した見方は過去におきましてもやつたことはございませんけれども、併しそういつたプラスの面の一方を見ますと同時に、御承知の通り国鉄には約五万人くらいは年中夜明しで働くというような関係、或いは年に百五十人も二百人も死ぬというようなものとつつくるみまして、そうして普通の賃金を持つて行く場合には、それからどれだけ削つたらよかろう、どれだけプラスしたらよかろう、こういうた議論は一応いつもいたすのは私どもの通例でございます。
#86
○一松政二君 先ほど都会と田舎との区別もございましたが、私は私自身に頗る割切れないものが一つある。国鉄の従業員の、私はその比率がよくわかりませんのですけれども、田舎の出身のかたで、そうして一時間か一時間半くらいある所から、家庭を持つている者は、通つている者はかなりたくさんある。そうして家の人は田舎にいる限りにおいて家もあれば或いは野菜も作る、或いは田地を所有し、且つ耕作している家庭も随分たくさんあると思う。そういう人が何パーセントあるか知りませんが、それと都会の真中で何にもそういうことのなくして生活されている人とが、どうしても地域給くらいな程度じやない。私は地域給くらいなところでそいつはなかなかアジヤストできないんですが、そういう問題にいつて何かお考えになつたことがございますか。
#87
○説明員(今井一男君) まあそこが実を申しますと、率直に申して今の組合運動の賃金の要求の仕方と、又私どもが個人的に考えておる賃金の要求仕方を衝かれておると思いますが、私どもは実は賃金は飽くまで労働の報酬、だから労働条件というものを先ず第一にきめるということでスタートして、勿論それが具体的にどれだけの生活を約するかということはあると思いますけれども、それでもやるのはおかしい。ところが組合運動というと、どうもそれが逆さになりやすい。そうしますと特にお話のように、田舎の連中はうんと安くして都会の連中はうんと高くするという議論にもなりますが、ところが又これは公務員にもございますが、今の地域給が伝統的に生計費の物価差という、この物価差というだけでは実は私に言わせれば適切ではないのでありまして、例えば東京などのように、非常に広い地域に人間が共同生活を営んでおりますと同じ比率の交通費でも東京では月に千円かかる。田舎へ出るというとそれが五十円で済む。生計費も物価そのものは変らないのですが、併し必要な生計費というものはあり得る。そういつたものを無視する議論になるのです。併しこの辺の分配問題は私どもとしてはよく議論をするのでありますが、結局におきまして労使の間で話をして、若しきまらなかつたら我々も口を出そう、とにかくまとまるということが第一であります。又御承知の通りに賃金というものは急激な変化は特にむずかしいものでありますから、我々としては腹の底には随分違つた考えを持ちながら只今そういつたその地域給でカバーされないという矛盾を実はそのままに見逃されて、結果的に申しますと見逃されて来ておる。そういつたふうにお答えできるんじやないかと思います。
#88
○一松政二君 私は横山書記長に伺いたいと思いますが、私の意見になるかとも存じますが、一応伺いたいのは、国鉄がなぜああいう鉄道会館などという問題が国民感情的に受入れられるかということは、国鉄の仮に従業員としましても、今私が申上げましたように、田舎で家族の一員が国鉄に勤めておるとか或いは主人が駅長をしているとか助役をしている、或いは子供が国鉄に出ているという家族は裕福なんです。非常にそれが百姓だけをしたり、或いは商売だけをして、誰もそういう人が国鉄などに出ていない家族とは格段の違いがある。従つて国鉄に出ている人はかなり羨まれる状態におるわけです。今でもそれが年々ベース・アツプなり或いは裁定なりで、まあそういう農家から見れば豊凶の差がある以外に収入の途はないのだ、ところが勤人をしておれば年々収入が増して行くわけです。それに対しては相当羨望の感情を持つておるのです。それが今度は組合のあえてまあ力といいますか、力によつてそういう賃金を獲得されて行く。先ほど植竹君が言つたように、中小企業の問題、或いは失業者の問題、或いはその他不遇な国民生活を送つておる者の目からは、従業員諸員は、そこまではお考えになつている人となつていない人があるかも知れませんが、自分たちは不満だ不満だとお考えになつていて、更に又一段下の、下と言えば語弊があるかも知れませんが、恵まれざる階級が日本には幾千万いるわけです。それらの目から見ればかなり羨ましい条件もあるわけです。そこへ持つて来て、いわゆる闘争という言葉を先ほどからも伺いますが、国鉄のごとき企業団体が闘争をする、そうして実力を発動するというて機関車を出すのを出さなかつたり、或いは貨車を動かさずにやることがいわゆる実力闘争であろうと思う。こういうことは従業員諸君が国家の機関を我が物顔に扱い、国の所有であり国家国営企業の財産を、つまり自分たちがそれを動かさずに、そうして国民大衆に迷惑をかける、これがただ単に労使の争いであつて第三者に迷惑のかかることの少ない企業であるならば、国民は別段大した問題を起さないと思う。甲のところに罷業があつても乙のところがやつておればそれは何にも国民はまあ大したことはないのですが、こういう国全体の広域に亘り、たつた一つの企業、まあ私鉄の場合でも或る地域的に同じ勘定になりましようが、国民としてはそれに対して非常に不愉快な感じと、鉄道が横暴であるという考え方を持つておるのです。それが自然私は国民の声となつて鉄道問題、或いは鉄道がときどき非難の的になるのは、これは私はそれに連なる職員諸君も大いにこれは警戒しなければならん。そうして実力行使をするということは国鉄の経営者に向つてし、或いは政府を権力者と一応みなして、それを権力者に向つてすることであるかも知れないが、被害を受けるのは国民なんです。そこで昔のいわゆる労使の紛争というのとは全然趣きを異にしておる、これは公共企業体の特徴ですが、実力を行使することによつて迷惑をするのは経営者にあらずして国民なんです。そこで国民を犠牲にして、そうして自分たちの主張を貫くというやり方に対して、これがいわゆる職員諸君或いは組合諸君に許されたる当然の仕方、自分たちの要求を貫くためにはこれ以外に途がないからやるのだ、これをやつても当然なんだ、これは我々に与えられた、憲法上保障されたる行為であるから構わないというふうにお考えになるのでありましようか、その点を念のために伺つておきたいと思います。
#89
○参考人(横山利秋君) いろいろの面からの御質問でございますが、先ず最初に国鉄労働者が裕福だというふうな御所見のようでございますが、これは事実と相違をいたしておるというふうに私は考えます。
#90
○一松政二君 私は全部が裕福だとは申しません。田舎におつてそういう家にいる人はということをちやんと条件を付けて、限定しております。
#91
○参考人(横山利秋君) 勿論そういうふうに伺つてなお且つ田舎におる国鉄職員は裕福だという点につきましては事実と相違をいたしておると私は考えております。問題は、少し発展して恐縮でございますが、賃金のあり方について先ほどからの御質問に二つの議論の建て方がございます。一つは私がさつき言つたように、賃金というものはそもそも雇つておる人に対して食えるようにしてもらいたいという立場でありまして、今一松先生は食えるじやないかというお話であるわけであります。併し又別の角度で見ますると、先ほどは食える食えんよりも働いてそうしてその働きに応じた、労働の質と量に応じた賃金をもらう、こういう議論の建て方もあるわけであります。私は今井先生が先ほどおつしやいましたが、食えるから賃金は安くしてもいい、こういう議論にもいささか所見を異にいたします。例えば生活費はこれだけある、この中で女房が働いているのだから本人の給料はもつと安くつてもいい、田畑があるから本人の給料は安くてもいい、こういう議論は、雇つておる者の、十人雇つておる中で同じく働いておつて、一人は百姓をやつているから安い、一人は百姓をやつていないから高い、こういうことはあろうはずがないと思うのであります。そういう意味合におきまして、先ず第一に国鉄労働者、又田舎におります国鉄労働者が裕福である……、中にはそれはいないとは申しません。裕福なところから通つている者もあるにはあることは認められるわけですが、総体的に田舎から通つている国鉄労働者が裕福であるというふうに断定をなさることは、いささか私どもとしては心外に存ずるところであります。それから国鉄の今回のまあ闘争という言葉がどうも工合が悪いというお話でございますが、私どもいつも使い馴れておりますので、一つ御了承願いたいと思います。それが国民に迷惑をかけるということについてどう思うかという御質問であります。先ほどからも国民の皆さんに御迷惑をかけた点について、一応歴史的な事情も述べて御諒察を願いたいと申上げたところでございますが、一体どうしてこういうふうになるかというところへの発展がございませんと、なかなか理解が困難であろうかと思うのであります。私どもといたしましては、飽くまでやはり国鉄の経営者との団体交渉によつて解決をいたしたいという基本線は毫も変るところではございません。今日も又そういたしておるわけであります。併し国鉄経営者は、給与総額によつて、或いは又予算によつてそれこそ実体的なその責任を回避をいたしております。然らば法律的にそれができないかというと、できないことではないのであります。例えば今問題になつております年末手当にとりましても、これが公労法の十六条によりまして、予算上、資金上、仮に不可能なことであつても、協定に応じ得る権能を持つておるわけでありますから、これだけのものは出さなければならんというふうに考えますれば、即座に調停はし得るわけでありまして、そのような重大な事態になりましてもなお且つ具体的な金額の明示もいたさないというところに問題もあろうかと、こういうふうに考えておるわけであります。又直接的には経営者でありますが、間接的には政府のあり方にいたしましても、私どもといたしましては一言あるところでありまして、今日の事態として、今日中山伊知郎博士が毎日新聞で申せられておるわけでございますが、「政府は完全履行できない理由について組合に十分説明する努力を欠いているが、裸になつて進んで組合に説得するチャンスを作るべきだ。」ということを中山さんは言つておられるのであります。組合が会いに参りましても、通告書一片出して、これで話はしまい、十分でさようなら、こういうことでは私どもとしても事態の理解なり、或いは又情勢の展望なりという点につきましてもなかなか困難なところでありまして、これらがどうしてこういうことになるかという根本の問題について是非御諒察を願いたい、こう考えておる次第でございます。
#92
○一松政二君 これはなかなかちよつと答えにくいことであり、又聞くべからざることであろうと思うけれども、一応我々が考えておることは、闘争をして、実力行使をして、そうして或いは汽車をとめる、汽車をとめたからそれでは困るから、どこまで出そう、或いはここまでならいいというような交渉の仕方ができればよし、できなくてもうこれ以上はどうしても出せんのだと、政府はまあしばしば言てつおるようでありますが、それをまあそれでは不満足だとして、闘争が起つておるわけですが、その闘争を続けて行く、波状的に続けて行くというのが今の段階じやないかと、こう考えるのですが、そうして結局得るところがなかつたということがなきにしもあらず、又必ず妥協点が出て来て、そうして主張の全部ではないままでも、一部分が通るということもありましようが、ただ闘争をやることによつて解決は私はむずかしいと思います。闘争をやることは先ほども言つたように、結局国民に迷惑をかけることである。であるから先ほど岡田さん或いは加賀山さんから言われたように、もつと国民を納得せしめるわけには行きませんか。私は地方における国鉄の従業員が裕福であるという言葉は使いません。私はただそれより以下の国民が何千万といて、それを羨ましがつている階級がたくさんいるということ申上げたので、すべてが裕福であるとは申しません。その点は誤解のないように願つておきたいと思います。少くとも国民は恐らく今の国鉄の従業員諸君が、汽車をとめたり遅延さしたり、或いは発車を拒んだりしておることに対しては言い知れざる不満を持つておると思う。労働問題の解決は、国民の納得が行かなければ私は解決しないと思う。何といいましてもいわゆる世論だと、革命は別問題です、革命をするつもりでなければ世論のバツクが必要であります。世論がこれを諒とする闘争でなければ最終的な勝利は得られないだろうと思う。これはもう私が申上げなくても釈迦に説法だと思いますが、もう時間もだんだんたちましたが、私はこれ以上議論しようとは思いませんが、あの赤旗を打振つて、そうしてピケラインを布いて、私は昨日横浜に友人を迎えに参りましたが、品川ですか、あの様を見て私はあれに同情の目を以て見る国民は労働組合関係の人はいざ知らず、それに関係のない国民は実に私は嫌悪の情を以て見ておると思います。どうか国民をバツクにした、それから国鉄の従業員も国鉄の経営者も、国民が今日国鉄に対して別段いい感じを持つておりません。赤裸々に申しますと或いは独占企業であるが故にそういう形で出て来ると思いますけれども、それは従業員にも責任であるわけです。どうか国民を味方につけた、そうしてそれは尤もだというような私は団体交渉をやつてもらいたい。そうでなければ一時的に自分の主張が一部分通りましても、それは又他日はね返つて国鉄というものを国民からますます離す結果となるので、今運賃を上げることは、国民は納得しません。又組合も納得しないというんですが、運賃を上げずに二の問題の解決が私はつきかねるであろうと思いますが、これもすべてが国民にはね返えるのですから、この争議を一日も早く国民をうしろに、味方にするという方向に持つて行つて、どうか従業員諸君が国鉄を愛し、それから日本の経済というものもお考えに入れて、この年末の異常な滞貨もあるときに、更に滞貨を増すような、忙しいときに更に人の気をいらだたして、そうして所用も足せずに非常に国民多数が迷惑をしているわけですから、そういう方法でなしに、交渉によるように私は希望しているのですが、私の横山さんに対する質問は私は打切りたいと思います。
 それからもう一つ、私は今井さんにたつた一つだけお伺いしたいのは、先ほども申上げましたように、私自身も実は迷つておつて、生活給与であるのか、能力給与であるか、或いは一人で…日本のまあ今の一番の悩みは、この賃金形態がきまつていないところにあるのだろうと思う。これは当然本人の能力による給与でなければならんのですが、食えないということが大抵賃金要求の基礎になつておるように思うのです、今日の日本の行き方は……。親交が一人働いて、五人家族であろうと、七人家族であろうと、或いはたつた一人でおる人間は結構食えても家族持ちは食えんのは当り前なんですが、食えないということがいつも何か賃金要求の根本にあるように思います。で、今度の国鉄の場合でも、田舎の者と都会の者、或いは一人者と家族持ち、長年勤務した者と、家族の状態によつてさまざまな問題があろうと思うのですが、やつぱり食えないからどうかしてもらいたい。で、私どもが、まあ私自身のことを申上げてもどうかと思いますが、私が接しているやつぱり労働者でも、多くの場合にそれじや食えんという話をよく聞きます。ところが先ほど今井さんのおつしやられましたように、大体九〇%くらいのものしかない。主人が働くにしても、九〇%くらいしか大体生活費の支えにはならないのだと、一〇%は女房なり、ほかの者なりによつて支えられているのが実情だと、ところが、それを支え得られない人があるわけです。そういう者が一番困るし、不平を言う直接の原因になるだろうと思うのです。そういうこの裁定をなさるときに、やはりまあ結局最大公約数的に中間を行くんだろうと思いますけれども、これでは食えないというのが今度のやつぱり賃金要求になつておるのじやないかと思うのですが、その点は如何でしよう。
#93
○説明員(今井一男君) 国鉄に対しましては、今回の要求は、そういつた要素は全部と申しては言い過ぎですが、極めて微弱です。結局におきまして主張の根拠は、昭和九――十一年に対して自分たちは物量的にこれだけの貢献をしておる。従つて、それに対する。ペイをよこせ、これが主張の一番中心点になつております。それを裏返すとこうだというようなもの、多少の裏返しの部分はついていますが、根拠は今までと変りありません。自分たちの働きに対する要するに反対給付ということが全部であります。
#94
○一松政二君 もう一点だけ……そうすると、さつき横山書記長がおつしやいましたように、一〇%その水準よりも多く働いた結果を示しておる、従つて、一割だけはまけても戦前の水準をよこせという御要求であると思うのですが、それに対して裁定をされた結果は一体基準年度の何%くらいになつておるお見込ですか。
#95
○説明員(今井一男君) これは理由書の中に書いてございますが、いわゆるこの復帰の物差をラスパイレス方式によると九三という指数になります。戦前を一〇〇とする場合に九三の要するに実質賃金ということで、これは実質賃金でありますから、昔は税金がないのが今日はかかつて来る。それで恐らくそれよりも生活水準は一〇%ぐらい低い八一、二という数字であります。
#96
○一松政二君 もう時間もありませんから一応その程度で私は打切つておきます。
#97
○委員長(前田穰君) ちよつと政府に私からお伺いしたいと思うのですが、横山書記長のお話の第三項の公務員と公共企業体との間に手当について予算上の差があることは不満だ。こういう点ですが、私は大蔵省の主計局長から公でない席でちよつと聞いたのだがよく理解できなかつたのですが、運輸省はこれをどういうふうに理解しておられるのですか。
#98
○説明員(細田吉藏君) 私どももこの公務員は〇・五がプラスになりまして一・二五になり、公共企業体は〇・二五プラスの合せて一・〇ということになりましたのは、実は決定になりましてから聞いたようなわけでありまして、そう深く相談いたしたとかどうとかということはございませんで、最高方針としてきまりましてから伺つたようなわけでありますが、私どもの大臣から、或いは大蔵省から聞いております点を申上げますと、いろいろな理由があるわけでございますが、人事院勧告がやはり一つの理由になつております。人事院勧告が一方でございまするし、一方仲裁裁定の問題という形式的なことが理由の一つに挙げられております。それから更に実質的な点でございますが、これが私詳細な計算につきましてはよく伺つておらないのでございますが、公務員のほうが基本的な給与が低い、従つてこの程度の差のあることが公平と申しますか、釣合いがとれているのだ、こういう大蔵省の説明でございます。なお更に私のほうの大臣が昨日申上げましたことを附加えて申しますならば、公務員につきましてはいわゆる弾力条項といつたようなものもないのに対して、公共企業体或いは現業庁につきましてはそういつた面もあるというようなことも考えの中に入れているのだ、このような話になつております。
#99
○委員長(前田穰君) 大体大蔵省の説明もそういつたふうだつたと思いますが、私の理解できなかつた点は、基本の給与は一般公務員のほうが低いということは国有鉄道については認められるかも知れないが、三公社、五現業を比較して見た場合には中には一般の公務員の水準よりも数字的には低いものがある、これは年齢構成とか、或いはその他のことで違うのは、むしろ低いのが当り前かも知れないと思うが、ちよつとそういう点があつたので、どういうふうに運輸省は考えておられるかを伺つて見たわけであります。
#100
○説明員(細田吉藏君) 実は公務員の新給与は人事院勧告の額そのままを今回の補正予算案では呑んだわけであります。一万五千四百八十円になつておりまして、今回の公務員給与は絶対額におきましても国有鉄道の職員の一万五千三百七十円よりも高くなつております。これはいわゆる五現業が一応別になりましたので、公務員のベースそのものが変つて参りましたので、と申しますことはこの五現業以外の一般公務員のほうが給与の平均が高い年齢層、経歴、いろいろな関係で高くなつているのでございます。この絶対額だけでは只今委員長のおつしやいましたように構成が違つておりますので、その点も詳細に検討しないと何とも言えない、かように考えております。
#101
○大倉精一君 時間も遅いようですが、ちよつと一つ、二つこの機会に今井委員長にお伺いしたいと思います。お答えにくいかも知れませんが、お考えを一つ率直に伺いたいと思います。
 先ほど来国鉄の争議について一松議員からいろいろ御発言があつたのですが、確かに国民に迷惑をかけているということは考えます。同時に企業体も迷惑しているだろうと考えます。ところで大体争議というものは、或いは国民なり企業体なりに迷惑を及ぼすというのが原則でありまして、それがために争議というものが成立して行くのだ、闘争というものが成立して行くのだと考えるのですが、ここで私は一つ疑問といいますか、その一体責任はどこにあるのだということについていろいろ考えておりますが、これはこの責任は一体国鉄の当局にあるのか、或いは仲裁委員会、仲裁委員長に責任があるのか、或いは国会に責任があるのか、政府に責任があるのか、組合に責任があるのか、といういろいろな問題が考えられるわけであります。今度の争議自体が先ほどからいろいろ御質問或いは応答の中にあるようにこの仲裁裁定が出て、そうして組合のほうは不満ではあるが、これを是非実施をしてもらいたい、片一方は実施しないというところにその大きな原因があります。又今まで一度も実施されていないというこの仲裁制度というものが有名無実になつておつて、これで従業員が自分たちの生活の擁護或いは自分たちを防衛する手段がない、そこでどうしてもこの仲裁制度、仲裁裁定というものを実施をしてもらわなければならんのだという基本的な問題と取組んでおるのだと思います。そうして組合の諸君は、やはりこれ以外に方法がないのだというまじめな考え方で以て、法律の枠内において行動をしておるのだと私は解釈をするのですが、特に輿論というものが大切だというお話もありましたが、輿論とか、或いは社会通念という言葉も労働大臣は、往々使われておりまするが、こういうものが果して普遍的なものであるかないかということについては、これは私は非常に疑問に思つております。現在の社会においてこれは利害が完全に一致したものばかりない、やはり当面利害の相対立したところの階層といいますか、そういうものが国民の中にある。こういう中で片一方はこれに賛成する、片一方はこれに反対するというような現象が出て来ておると私は思う。従つてこの闘争については国民は非常なる反感を持つておる、納得していない、こういうふうに断定されるのですが、同情を持ち理解を持つた国民もたくさんある。そうして理解を持たない国民もあるかも知れません。こういう中において無論組合としても輿論の獲得というようなことについては全力を挙げて努力をしておられると思うのですが、現在のこの組合の闘争というものはこれ以外に手段がない、先ほども書記長の答弁がありましたが、何かはかにいい方法がありましたら教えてくれという一つの苦しい答弁をしておられますが、確かに国鉄自体としても組合自体としても非常にこれは何といいますか、これ以外に手がないという非常に切実なるものが中にあると思うのです。そこでこういうような事態に追込んで行つたというものは、私は組合としてはこれは止むを得ないものではないかということを考え、又そのように理解しておる国民がたくさんあると思います。そこで私はこういうような事態に追込んで行つた責任というものは、これはやはりこの仲裁裁定というものを初めから実施しないときめてかかつて、いつもいつもこの仲裁裁定というものを無視してかかつて行く、特に今日もさつき書記長がおつしやいましたが、中山先生も大体仲裁裁定を政府が呑んでおきながら裁定とは期日も値上率も違うものを実施するというのであるから、この点では政府が悪いというふうな工合に断定しておられます。こういうふうな考え方が国民にもたくさんあります。そこでこういうように追込んだ責任は仲裁委員長の責任でもない、組合の責任でもない、私は政府の責任であるという工合に考えておるのですが、仲裁委員長としてそのような点について答弁はしにくいかも知れませんが、若し何らかお考えがあつたらお聞かせ願したいと思います
#102
○説明員(今井一男君) 根本は私はこの仲裁という制度そのものが日本で今度初めて行われた、それが面も不自然な、不自然なと申しますか非常にまずい法文で書かれたというところに問題の混乱した癌があるんじやないか、若しもこれが外国等でありますれば、もう仲裁というものはともかくも原則としてはもうその通りいいも悪いも批判しないと、こういう立場であるものが、先ほども申上げた三十五条と十六条がそういう議論の余地を残しておるということにあるのではないかと思うのでありますが、勿論全部完全に実施できない、即ち国会の予算審議権とぶつかる場合が私はあり得ると思います。その点は先ほども申上げた通りであります。ただその中に賃金対物価のインフレ論、これは私はその通りだと思うのであります。そういう議論をその中にぶち込むためにはほかのいろいろの賃金物価についてもそれ相当の手がやはり打たれなければいけないじやないか。まあ一例を挙げますと、今度五現業庁につきましても一般会計との関係で非常に問題を生ずるというような議論も聞いたのでありますが、それは生ずるところも私はあると思いますけれども、然らば一例を挙げますというと、例えば日本銀行なら日本銀行といつたものがこれが若しベース・アツプをしますというと、忽ち一般会計への国庫納付金の百億、百五十億というものが響くのであります。こういつたものが何ら問題なしに行われる。又国鉄や専売、電通等の公社は完全国有法人であると、確かにその通りでありますが、そういたしますならば日本輸出入銀行、開発銀行等も皆完全国有法人であります。その他NHKなどの問題もあります。すべてそういつたものをそれぞれに応じて私はお扱いになれば又組合員の諸君のこの問題に対する感触も違うんじやないか。ところが公労法関係も仲裁裁定に行きますものだけが、勿論これは実質的な影響は多少違うかも知れませんけれども、特に差をつけておるというところに、要するに問題の点があるような気がしてならないのでありまして、それでまあ繰返しますが、完全実施のできない場合があることは私どもは当然……組合の諸君のように常に完全実施をせよということであるならば、これは十六条の条文がないに等しいので、私はあり得ると思うのであります。その場合に事柄の性質上本来裁定というものは全部実施すべきであるけれども、かくかくの理由でこういう財政条件が整わないからしてできないということを是非噛んで含めるように納得さして欲しい。そうすれば少くともここへ横山君を前にしてお話するのはどうかと思いますけれども、決して国鉄の諸君もそういうことのわからない人間ではないと思います。甚だお答えにならんかも知れませんけれども……。
#103
○大倉精一君 これ以上お伺いすることは差控えますが、今日は実は運輸大臣並びに労働大臣がお見えになるということであるので、そういう点についても徹底的に一つ所信を聞きたいと思つておりましたが、今度の委員会には是非運輸大臣、それから労働大臣に一つおいで願つて、そして十分に時間をとつて頂くよう是非ともお願いをいたしておきます。
#104
○委員長(前田穰君) それでは本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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