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1953/12/05 第18回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第018回国会 労働委員会 第5号
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1953/12/05 第18回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第018回国会 労働委員会 第5号

#1
第018回国会 労働委員会 第5号
昭和二十八年十二月五日(土曜日)
    午後九時四十二分開議
 出席委員
   委員長 赤松  勇君
   理事 鈴木 正文君 理事 丹羽喬四郎君
   理事 持永 義夫君 理事 山花 秀雄君
   理事 矢尾喜三郎君 理事 山村新治郎君
      池田  清君    岡本 忠雄君
      篠田 弘作君    田中 龍夫君
      田渕 光一君    永田 良吉君
      長谷川 峻君    吉武 惠市君
      川崎 秀二君    佐藤 芳男君
      黒澤 幸一君    多賀谷真稔君
      井堀 繁雄君    竹谷源太郎君
      中村 高一君    松田竹千代君
      中原 健次君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 小坂善太郎君
 出席政府委員
        労働政務次官  安井  謙君
        労働事務官
        (労政局長)  中西  實君
 委員外の出席者
        専  門  員 浜口金一郎君
    ―――――――――――――
十二月五日
 委員安藤正純君、保利茂君、田中伊三次君、大
 西正道書及び山村新治郎君辞任につき、その補
 欠として田中龍夫君、吉武惠市君、岡本忠雄君、
 長正路君及び松田竹千代君が議長の指名で委員
 に選任された。
同日
 委員長正路君辞任につき、その補欠として大西
 正道君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員大西正道君辞任につき、その補欠として中
 村高一君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
十二月四日
 日雇労務者の越年要求に関する請願(山花秀雄
 君紹介)(第一三七号)
同月五日
 失業対策事業就労労務者に年末手当支給に関す
 る請願(佐々木更三君紹介)(第三六二号)
の審査を本委員会に付託された。
同月五日
 印刷事業に関する仲裁裁定実施の陳情書(全印
 刷局労働組合中央執行委員長島田和三郎外三
 名)(第五三号)
 国有鉄道に関する仲裁裁定実施の陳情書(国鉄
 労働組合旭川地方本部執行委員長小菅新一)(
 第五四号)
 郵政事業に関する仲裁裁定実施の陳情書(全逓
 信従業員組合沼津郵便局支部長鈴木千秋)(第
 五五号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定
 に基き、国会の議決を求めるの件(印刷事業に
 関する件)(内閣提出、第十七回国会議決第一
 号)
 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定
 に基き、国会の議決を求めるの件(専売公社に
 関する件)(内閣提出、第十七回国会議決第二
 号)
 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定
 に基き、国会の議決を求めるの件(造幣事業に
 関する件)(内閣提出、第十七回国会議決第三
 号)
 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定
 に基き、国会の議決を求めるの件(国有林野事
 業に関する件)(内閣提出、第十七回国会議決
 第四号)
 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定
 に基き、国会の議決を求めるの件(アルコール
 専売事業に関する件)(内閣提出、第十七回国
 会議決第五号)
 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定
 に基き、国会の議決を求めるの件(国有鉄道に
 関する件)(内閣提出、第十七回国会議決第六
 号)
 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定
 に基き、国会の議決を求めるの件(郵政事業に
 関する件)(内閣提出、第十七回国会議決第七
 号)
 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定
 に基き、国会の議決を求めるの件(電信電話公
 社に関する件)(内閣提出、第十七回国会議決
 第八号)
    ―――――――――――――
#2
○赤松委員長 これより会議を開きます。
 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(印刷事業に関する件)(内閣提出、第十七国会議決第一号)外七件を一括議題といたします。
#3
○持永委員 ただいまの案件につきましては、質疑を終了されまして進行されんことを動議として提出いたします。
#4
○赤松委員長 ただいまの持永君の質疑終局の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ず者あり〕
#5
○赤松委員長 御異議なしと認めてさよう決定いたします。
 この際各件の議決につきまして、自由党の持永義夫君、社会党の山花秀雄君より、いずれも発言を求められております。順次その発言を許します。まず自由党の持永義夫君。
#6
○持永委員 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件、内閣提出、議決第一号につきましては、次のような議決案を動議として提出いたします。すなわち
  本件は、公共企業体等仲裁委員会
 裁定中第一項は、昭和二十九年一月
 以降実施するものとして、これを承
 認する。
 次に、同じく内閣提出、議決第二号につきまして、次のような議決案を動議として提出いたします。すなわち
  本件は、公共企業体等仲裁委員会
 裁定中第一項は、昭和二十九年一月
 以降実施するものとして、これを承
 認する。
 次に、同じく内閣提出、議決第三号につきましては、次のような議決案を動議として提出いたします。すなわち
  本件は、公共企業体等仲裁委員会
 裁定中第一項は、昭和二十九年一月
 以降実施するものとして、これを承
 認する。
 次に、同じく議決第四号につきましては、次のような議決案を動議として提出いたします。すなわち、
  本件は、公共企業体等仲裁委員会
 裁定中第一項、第三項及び第五項
 は、昭和二十九年一月以降実施する
 ものとして、これを承認する。
 次に、同じく議決第五号につきましては、次のような議決案を動議として提出いたします。すなわち
  本件は、公共企業体等仲裁委員会
 裁定中第一項は、昭和二十九年一月
 以降実施するものとして、これを承
 認する。
 次に、同じく議決第六号につきましては、次のような議決案を動議として提出いたします。すなわち
  本件は、公共企業体等仲裁委員会
 裁定中第一項は、昭和二十九年一月
 以降実施するものとして、これを承
 認する。
 次に、同じく議決第七号につきましては、次のような議決案を動議として提出いたします。すなわち
  本件は、公共企業体等仲裁委員会
 裁定中筋一項は、昭和二十九年一月
 以降実施するものとして、これを承
 認する。
 次に、同じく議決第八号につきましては、次のような議決案を動議として提出いたします。すなわち
  本件は、公共企業体等仲裁委員会
 裁定中第一項は、昭和二十九年一月
 以降実施するものとして、これを承
 認する。
 以上であります。
#7
○赤松委員長 次に社会党山花秀雄君。
#8
○山花委員 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件、内閣提出、議決第一号ないし第八号につきまして、次のごとき議決案を動議として提出いたします。
   議決案
  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件、議決第一号乃至第八号は、公共企業体等仲裁委員会の裁定、仲裁裁定第十一号乃至第十八号のとおり、これを承認する。
 以上でありますが、この際一言申し上げます。仲裁裁定の結論は、公企労法下の職員諸君としては、与えられた人権である罷業権の代償として得ました唯一の救済規定であります。私どもは法を守る精神からして、この仲裁委員会の裁定通りこれを実行することに、協力をして行きたいと考えておるのでございます。本趣旨に関しましては、しばしば本委員会において申し述べた通りでございます。何とぞ公労法の精神を守る意味から、政府も各委員においても、この動議に賛成されんことを希望いたしまして、動議の説明を終ります。
#9
○赤松委員長 ただいまの持永君及び山花秀雄事より提出されました動議につきまして、これを一括して討論に付します。討論は通告順にこれを許します。丹刑喬四郎君。
#10
○丹羽委員 私は自由党を代表いたしまして、三公社五現業の仲裁裁定に対する持永義夫君提出の八つの議決案に賛成し、山花秀雄君提出の議決案に対し反対の討論をいたすものであります。
 本件につきましては、すでに当委員会におきまして、前国会より数次にわたり慎重審議をいたして参たのであります。もとより、公労法の趣旨から申しますと、裁定通り八月以降そのまま実施することが当然でありまするし、また現業職員諸君の生活の実情より見ましても、できますならば、その完全実施が最も望ましいところであります。しかしながら、現下日本の財政経済の実情は逼迫をきわめ、特に本年は、稀有の冷水害のために多大の出費を余儀なくされる等、これが財源措置がきわめて困難なることが明らかになたのであります。すなわち、国家経済の全体の見地からいたしますならば、裁定を八月からさかのぼつて実施することは財源の点より見てきわめて困難でありまして、もししいてこれを強行いたしますならば、国家財政の破綻を招き、インフレーションを招来し、特に現業職員諸君におきまして、結局においてせつかく得たるところの賃金引上げが、実質的にマイナスになることは明らかであると思うのであります。かかる状況を勘案いたしまして、やむを得ず、不完全ではありますが、昭和二十九年一月より実施するもやむを得ないと考える次第でございます。かかる状況よりいたしまして、自由党といたしましては、持永義夫君提出の一月以降実施の限定の議決案に賛成し、山花秀雄君提出の完全実施の議決案に反対をするものであります。
 なお、最後に特に強く希望いたしておきたいことは、右決議の実施にあたつて、鉄道運賃、郵便料金等に対するはね返りを、インフレ防止の見地より労使双方協力して極力回避するよう、特に政府並びに三公社五現業の職員に対して強く要望する次第であります。
#11
○赤松委員長 黒澤幸一君。
#12
○黒澤委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいまの三公社五現業の仲裁裁定に対し、持永義夫君提出の議決案に反対いたし、山花秀雄君提出の議決案に対して全面的に賛成の意を表すものであります。
 三公社五現業の労働者の諸君は、公共の福祉を阻害するという理由のもとに、憲法二十八条に保障せられておりますすな労働者の基本的権利であります団体行動権を、公共企業体等労働関係法の制定によつて剥奪されたのであります。しかし、公共企業体等労働関係法は、その代償として仲裁裁定制度を設けたのであります。争議権な奪われた公共企業体の労働者の諸君は、この仲裁裁定制度に全幅の望みを託して、法の前に涙をのんで服従して参つたのであります。
 公共企業体等労働関係法第三十五条には「仲裁委員会の裁定に対しては、当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。」と規定してあります。すなわち仲裁裁定は、当事者双方を拘束し、政府はこれを完全に履行する義務と責任とを負うものとされているといわなければならないのであります。なるほど、公共企業体等労働関係法第十六条におきましては「公共企業体等の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。」と規定してありまするけれども、これは仲裁裁定を履行しなくてもよいということではなく、また仲裁裁定の完全履行のため資金上不可能ということもあり得ないことは、仲裁裁定の理由の明示するところであります。すなわち政府は、仲裁裁定に対しましては、これが完全履行のため予算化し、もつて国会の承認を求むる措置を講ずることが、公共企業体等労働関係法制定の経緯にかんがみましても、また法そのものの精神から考えましても、当然なりと確信して疑わないのであります。換言すれば、仲裁裁定は、裁判所の判決のごとく、あるいは労働委員会の仲裁と同様な効力を有するものといわなけれればならないのであります。されば、公共企業体関係の労働組合の諸君は、その要求といかにかけ離れた、不満に満ち満ちた仲裁裁定でありましても、これに全面的に服従することが法治国民の当然の道なりと信じ、これに同意して参つたのであります。
 そのことは、今日まで十回に及ぶ仲裁裁定に対しまして、一回たりとも服従しないことはなかつたという実情を考えましても、また今回の仲裁裁定の経過を見ましても明瞭な事実であります。すなわち三公社五現業の労働組合は、各関係当局にベース・アップを要求し、団体交渉を幾度か持たれておるのでありますが、一つとして解決を見なかつたのであります。このことは、何といいましても、当局の団体交渉に対する不誠意と怠慢を責めなければならないのであります。すなわち団体交渉におきましては、一方が要求案を持ち出しますならば、相手方もまたこれに対して案を提示し、しかして誠意あるねばり強い交渉が続けられ、この団体交渉によつて解決の道を極力求めることが、公共企業体等労働関係法の基本的な立場であるばかりでなくて、あらゆる労使間の問題を解決する正常な道でなければならないのであります。しかるに、団交において、関係当局は何ら具体的な案を示さず、不可能の一点ばりで遂に決裂いたし、調停委員会に持ち込まれたのでありますが、調停案は、各組合の要求案に対し、非常に低額なベース・アップであり、労使双方とも受諾せず、仲裁委員会の手に移つたのであります。仲裁裁定のベース・アップは、調停案と同額でありまするが、実施期において調停案が四月であるものを八月にずらしたのであります。すなわち仲裁裁定は、調定案よりも不利な条件でありながら組合はこの仲裁裁定に服したのであります。
 この仲裁裁定につきましては、三公社五現業の責任者は妥当であることを明確に述べておるのであります。しかるに政府におきましては、仲裁裁定を完全に実施することは予算上不可能だと申され、国会の議決を求めたのであります。しかし国鉄、郵政を除きました残余の公社現業におきましては、仲裁裁定を完全に履行するのに、資金上財源しまつたくさしつかえないのであります。しかるに、政府は完全履行を拒んでおるのであります。公社現業の経理状況を知悉しております労働組合は、この政府の処置に対し、どうして納得することができるでありましようか。しかも仲裁裁定を完全に履行し得る財源は、決して天から降つて来たものでもなければ、地からわいて来たものでもなく、実にこれら関係労働者の汗とあぶらの結晶に負うところ非常に大きいものであることを考えますときに、法の求める仲裁裁定完全履行の財源として望むことに、何の無理と不合理があるでありましようか。あまりにも当然過ぎるほど当然といわなければならないのであります。
 政府は国民に厳として遵法を求めておるのでありますが、政府におきましても率先して遵法の範を示さなければなりません。しかるに政府は、公共企業体等労働関係法の根本精神でありまする仲裁裁定の完全実施を拒否し、蹂躪しておるのであります。しかも大きな矛盾を犯しておる。すなわち政府は、第十七国会におきまして、仲裁裁定に関し予算上不可能の理由をもつて国会の議決を求めて来たのであります。そうしてそれが継続審議中、今第十八国会には、明年一月から裁定の一部履行の補正予算を提出して参つたのであります。政府は仲裁裁定について、さきには予算上不可能だと言い、今度は予算上一部が可能だと言うのであります。何という確信のない場当り的な言動であるか、国会を愚弄するもはなはだしいといわなければならないのであります。
 仲裁裁定は、紛争のピリオドであり、いわゆる終結を意味するものでなければならないのであります。しかるに、仲裁裁定が国会に提案されるや、院外においては関係労働組合の強力なる闘争が展開され、再び団体交渉が持たれておるのであります。これは、一に政府の仲裁裁定の不完全実施によるものであつて、その責任のすべては政府にあるといわなければならないのであります。政府が真に国民の遵法精神を高揚せんとし、また政府関係企業の能率の増進を望むならば、はたまた日本の健全なる労働運動の発展をこいねがいますならば、まずもつて今回の仲裁裁定を全面的に実施すべきであると信ずるのであります。
 今や公共企業体の労働組合の諸君は、この政府の不当、不誠意なる措置に憤激し、仲裁裁定の完全実施を求めて蹶起いたし、政府の善処を強く要求しでおるのであります。事態はまさに重大化しております。政府は、この事態を何と見るでありましようか。政府が何らの反省をなさず放任するならば、重大な結果な招来するでありましよう。本来政府は、仲裁裁定の完全実施を声明いたし、歳末の不安を一掃しなければならないのであります。しかるに、これに反して弾圧をもつて臨むならば、情勢は激化し不測の重大事態を惹起するおそれがあるのであります。今日の状態を続けることによつて、国家的に国民的に、その損失は仲裁裁定を完全履行する数倍に達することを、政府は認識しなければならないのであります。政府は、提案しました予算にとらわれることなく、大担率直に仲裁裁定を完全に実施し、法を守り公共企業体関係労働者の生活を擁護し、年の瀬の社会不安を一刻も早く除かれんことを切望してやまないのであります。
 以上をもちまして由花秀雄君提出の議決案に賛成し、持永義夫君提出の議法案に反対の討論を終る次第であります。
#13
○赤松委員長 井堀繁雄君。
#14
○井堀委員 私は日本社会党を代表いたしまして、持永委員の提出されておりまする自由党案に反対いたし、山花委員の提案いたしておりまする社会党案に賛成いたすものであります。その理由を申し上げます。
 政府は労使関係の安定をはかることは、きわめて重大な責任であるといわなければならないのでありますが、今回公企労法によりまして仲裁裁定が下されましたが、この仲裁裁定は、公労法の精神に基いて当然実施されなければならないことは申すまでもありません。この法律で定められた手続に関係するものは、経済的紛争をまずもつて防止し、かつ主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を尽さなければならないと、法律は厳重に規定いたしておるのであります。さらに、本法第三十五条は、仲裁裁定には当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならないと厳に定められているのであります。しかるに持永案は、この法律の定めるところに従つて仲裁裁定委員会が慎重検討を加え、三社五現業の経済的紛争についてそれぞれ裁定が行われたのでありますのに、これを昭和二十八年の八月にさかのぼつて実施するというきわめて重要な決定事項を無視して、昭和二十九年の一月からこれを実施せんとすることは、この法律の精神をまつたく没却し蹂躪したものといわなければならないのであります。
 第二は、三社五現庁の経済紛争は、昭和二十八年の三月ないし四月ごろから、団体交渉の形において両者が協議されておつたきわめて長い期間の前提になつておるものであります。ことに中央調停委員会が、三社五現庁に対しましてそれぞれ調停案を提示いたしておるのであります。この調停案に対しまして、それぞれの現業庁のうち、すなわち八つのうち五現庁までは、そのベース・アップに対する経済的な諸条件、その金額等については、おおむね妥当である旨を明示いたして、その調停案をのむの用意が表現されておるのであります。従つて、この調停案の精神を理解する政府でありますならば、調停案の通り八月から実施されましても、すでに三月、四月当時の問題を解決するにあたりましては、労働者が忍ぶに忍び得ない事態が調停案ないし仲裁裁定案の中に認められるのであります。かかる問題を政府が理解いたしますならば、当然今回のごとき仲裁裁定は、無条件承認さるべきものであると断ぜざるを得ないのであります。
 第三は、三社五現庁のごとく政府の責任において経営する事業における労使関係は、本法がその精神に規定してありますように、平和的にして、かつ合現的な解決を望んでおるのでありまして、もし政府にしてこの精神に反するがごとき労使関係な生じ、かつ団体交渉、調停等の手続においてすら解決が困難で、最終段階である仲裁裁定に対してまでも異を立てるような態度をいたしますならば、今後労使関係の平和というものは何によつて秩序を維持するかということが、きわめて大きな問題になるのであります。ことに、官公庁のかかる労使関係は、ただちに民間に影響することは申すまでもありません。かかる労使関係が、法律の精神が無視され、その法律の運営の上にあたつて政府みずからがこれを軽視するがごとき態度をもつて労使関係を処するならば、今後の労使関係は、いたずらに実力と実力とによる解決に帰さざるを得なくなるのでありますから、そこには産業平和はいたずらに破られて来るという傾向を見出すことができるのであります。かような意味からいたしまして、現在の日本の置かれております姿は、一日も早く経済の復興をはかり、戦争と敗戦によつて破砕されておりますところの日本産業の復興こそが、民生の安定であり、日本民族の文化向上の唯一の道であることは何人も否定されないはずであります。かような意味からいたしまして、政府は何ものを犠牲にいたしましても経済復興のために、その生産のにない手である労働者の生活の安定をはかり、労働者の真摯なる自発的な意志に訴えて、日本の資源と設備を失つております現状の中において、労働者の高度の技術と態率こそが、日本経済復興の原動力となることは申すまでもないのであります。その労働者が忍びがたきを忍んで団体交渉に耐え、さらに調停委員会の提示に対し、さらに仲裁裁定という約八箇月から九箇月の長期にわたる平和的な交渉が行われて、なおかつその結論が見出せなかたということは、まことに遺憾であると同時に、その責任は労使双方にあると申しましても、おおむね雇い主側の責任に帰するものが、従来の経過に徴して明らかであります。ことに仲裁裁定のごとき最後的段階にあたりましても、とかくの理由を設けてこれを排除するがごときは、今後日本の経済復興の上に重大なる汚点を残すものであると思うのであります。
 次に、今日の政府の物価政策、産業政策、経済政策、あらゆるものが今日物価騰貴となり、労働者の生活はいたずらに実質賃金の低下によつて苦しんでおりまする現状からいたしましても、今回の仲裁裁定は、あまりにも低きに失するとすら思うのでありますが、この実施を遷延するということは断じて許なれない態度であるといわなければなりません。
 以上のような趣旨からいたしまして、ぜひ最小限度の、最終段階において、労使関係の平和を維持しようとする公企労法の精神をわれわれは生かして、政府みずからが多少の犠牲を払つても、その実施を縦し進めるべきであることを念願しておりましたわれわれとしては、今日自由党の持永案は、その趣旨を没却したものとして、残念ながら絶対反対の意思表示をせざるを得ないのであります。従つて山花委員の裁定を完全実施するという、最小限度の案ではありますけれども、これをこの際満場一致をもつて議決されるよう要望いたしまして、私の意見を終ります。
#15
○赤松委員長 中原健次君。
#16
○中原委員 ただいま議題となつております三公社五現業の仲裁裁定の実施の問題に関しまして、持永義夫君提出の議決案には絶対反対であります。山花秀雄君提出の議決案につきましては賛成であります。この両者賛成、反対の論拠につきましては、ただいま黒澤、井堀両委員から詳細な御意見を述べられましたが、大要私も両氏の見解に賛成であります。ただこの場合一、二点だげ私の見解をつけ加えまして、意思表示をいたしたいと考えます。
 この委員会におきまして、連日質疑の形を通して論議がかわされましたように、この仲裁裁定は、公共企業体等労働関係法の規定するところに従いまして、いわめる一種の最高判決とも見なさるべき最後的な裁定の権威が、あくまで保障されなければなりません。しかるに政府は、この最高の判決ともいうべき権威ある仲裁裁定に対しまして、この仲裁裁定の実施を拒む態勢をとり続けて参りました。
 申すまでもなく、政府が国会に付議いたしました第十六条第二項に関しましても、これはこのような形で付議すべき性質のものではございません。少くとも課せられた政府の当然の義務といたしましては、これに対して予算的な措置を講じて、仲裁裁定の命ずる通りに、八月以降のその指示に従いまして、これを完全に実施するための内容を内容とした予算措置を講じて、その事由を付して国会に承認な求めて、そのことを通して予算の修正をして行くということが本来の手続でなければなりません。しかるに、そのようなことにはてんで考慮するところなしに、この仲裁裁定を否定する立場をとつて参りましたことは、みずから法律を守ることを常に労働者に要求しながら、政府自身が法律をまさに蹂躪をいたした最も明確なる例証であることを、私は指摘せざるを得ないのであります。
 ことに、この持永委員の説明によりましても、すなわちこの案件は政府の原案通りに、すなわち二十九年一月以降実施するものという表現によつて、もつともらしく説明がなされておりますけれども、かかる意味から一月以降これ苗実施するということは、その言葉自体が適切でございません。これは仲裁裁定の実施ではないのでありまして、たまたま政府があらゆる諸情勢を考慮されてか、一月以降何ほどかのベース・アップを行うというにすぎないのでありまして、これは八月以降実施すべしという仲裁裁定の精神を取入れたものではございません。従いまして、この関係労働者はもとより、すべての労働階級が、あげてこのような政府の不誠意な態度に対しましては、決定的に反対の意思表示をいたしております。私どももこの公企労法が、このような形で蹂躪されて行くとしますならば、すなわち第十六条が示しておりまするこの法の解釈についても、政府がかなり無責任な答弁を続けておりまするが、このようなことでは、いわゆる遵法の線に従つて団体交渉の慣行を確立する。この公企労法が規定いたしております団体交渉のよき慣行を確立するということは、とうてい期待することができません。労働階級がせつかくのただ一つのよりどころとして、三十五条の仲裁裁定の権威に期待いたしておりましたものに対して、その期待がこのように蹂躙されて行くといたしますれば、いずれにか労働階級がこの法に信頼を持つことができましよう。
 この法に対しまして、もとより労働階級はその初めから反対むいたしておりますけれども、一応この法律が施行されておりますからには、せめてこの法律の権威を期待いたしておつたのであります。しかるに、政府みずからがその権威を蹂躪いたしまして、このような措置に出たということは、どのように、政府が団体交渉のよき慣行を確立することを期待しましようとも、その期待にこたえるようなことができようはずはございません。なおかつ労働階級がそのままこれに従つて、服従して参るといたしますならば、一体労働階級は何によつてみずからの生活権を守ることができましよう。この労働階級に、憲法第二十八条が与えました労働三権というものは、労働階級が健康で文化的な生活を営む権利を有する。その権利を、みずからの団体を結集するの権利、団体で交渉するの権利、団体で行動するの権利の三つの権利を行使することによつて、健康で文化的な生活を営むのその状態を闘い取れと憲法は命じたはずなのであります。しかるにその第二十八条の団体行動の権利が否定されたこの五現業三公社の関係労働者諸君は、一体何によつてみずからの要求を満たし、力を求めたらいいのでありましよう。
 私はこのような関係に追い込まれておる現在の三公社五現業の関係労働者諸君の立場に、異常な同情と同感を寄せます。おそらくこの関係労働者諸君は、このような措置によつて公共企業体等労働関係法に羈縛されるといたしますならば、みずからの力をもつてこの法律をおそらく改廃しなければやまないでありましよう。いや、また改廃せしめなければ、いや、むしろ廃止せしめなければ、これらの関係労働者は、みずからの生活権をみずからの力によつて確保することができなくなるからであります。
 かかる意味から、私は政府が当然の権利、当然の義務を行わないで、このような措置に出て参りましたこの政府原案を承認する内容を持つた持永委員の決議に対しましては、断じて賛成することができないのであります。同時に、山花秀雄君が提出いたしました仲裁裁定通りこれを完全実施すべしというこの動議に対しまして、賛成の意思表示をいたすものであります。労働階級は、おそらくみずからの力によつて、みずからの生活権を守るよりほかに道のないことを、明らかに教えらたであろうと思います。そして日本国民すべても、そのことをよく理解することが、この実情を通してなされ得たであろうことを私は信ずるものであります。
 以上をもちまして、私の討論を終ります。
#17
○赤松委員長 これにて討論は終局いたしました。
 これより採決に入ります。採決は各件ごとに順次採決いたします。
 まず議決第一号、印刷事業に関する件について採決いたします。本件に関する持永君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#18
○赤松委員長 起立多数。よつて本件については、持永君の動議のごとく決しました。
 ただいまの議決の結果、山花君提出の本件に対する動議は、議決不要となりました。
 次に、議決第三号、専売公社に関する件について採決をいたします。本件に関する持永君の動議に賛成の諸君の起立を求ぬます。
    〔賛成者起立〕
#19
○赤松委員長 起立多数。よつて本件については、持永君の動議のごとく決しました。
 ただいまの議決の結果、山花君提出の本件に対する動議は、議決不要となりました。
 次に、議決第三号、造幣事業に関する件について採決いたします。本件に関する持永君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#20
○赤松委員長 起立多数。よつて本件については、持永君の動議のごとく決しました。
 ただいまの議決の結果、山花君提出の本件に対する動議は、議決不要となりました。
 次に、議決第四号、国有林野事業に関する件について採決をいたします。本件に関する持永君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#21
○赤松委員長 起立多数。よつて本件については、持永君の動議のごとく決しました。
 ただいまの議決の結果、山花君提出の本件に対する動議は議決不要となりました。
 次に、議決第五号、アルコール専売事業に関する件について採決いたします。本件に関する持永君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#22
○赤松委員長 起立多数。よつて本件については、持永君の動議のごとく決しました。
 ただいまの議決の結果、山花君提出の本件に対する動議は議決不要となりました。
 次に、議決第六号、国有鉄道に関する件について採決いたします。本件に関する持永君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#23
○赤松委員長 起立多数。よつて本件については、持永君の動議のごとく決しました。
 ただいまの議決の結果、山花君提出の本件に対する動議は、議決不要となりました。
 次に、議決第七号、郵政事業に関する件について採決いたします。本件に関する持永君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#24
○赤松委員長 起立多数。よつて本件につては、持永君の動議のごとく決しました。
 ただいまの議決の結果、山花君提出の本件に関する動議は議決不要となりました。
 最後に、議決第八号、電信電話公社に関する件について採決いたします。本件に関する持永君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#25
○赤松委員長 起立多数。よつて本件については、持永君の動議のごとく決しました。
 ただいまの議決の結果、山花君提出の本件に対する動議は、議決不要となりました。
 なお、各件に関する委員会の報告書についてお諮りいたします。これは委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議がありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○赤松委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#27
○赤松委員長 なお裁定八件の議了にあたりまして、この際特に三公社五現業の職員の年末手当について、本委員会において決議をいたしたいと存じます。今その決議の案文を朗読いたします。
   決議
  三公社五現業の職員の年末に際して支給せられる手当等については、その企業の内部において協力して業績を挙げ原資を確保することに努め、一般公務員の手当に劣らざるように努むると共に、団体交渉により適宜の処置を講ずること。
  右要望する。
以上であります。この委員長の発議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔総員起立〕
#28
○赤松委員長 起立総員。よつて本決議は全会一致をもつて決定いたしました。
 次会は明後七日午前十時に開会いたします。本日はこれにて散会いたします。
    午後十時二十七分散会

ソース: 国立国会図書館
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