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1953/12/04 第18回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第018回国会 法務委員会 第3号
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1953/12/04 第18回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第018回国会 法務委員会 第3号

#1
第018回国会 法務委員会 第3号
昭和二十八年十二月四日(金曜日)
    午後二時六分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 田嶋 好文君 理事 花村 四郎君
   理事 吉田  安君 理事 井伊 誠一君
      林  信雄君    野田 卯一君
      牧野 寛索君    鈴木 幹雄君
      飛鳥田一雄君    猪俣 浩三君
      木原津與志君    佐竹 晴記君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 犬養  健君
 出席政府委員
        運輸政務次官  西村 英一君
 委員外の出席者
        検     事
        (刑事局長)  井本 台吉君
        検     事
        (刑事局公安課
        長)      桃沢 全司君
        日本国有鉄道副
        総裁      天坊 裕彦君
        日本国有鉄道
        (法務課長)  鵜沢 勝義君
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 証人出頭要求の件
 法務行政に関する件
    ―――――――――――――
#2
○小林委員長 これより会議を開きます。
 法務行政に関する件について調査を進めます。ただいま出席しておられる政府の皆さんは犬養法務大臣、井本刑事局長、運輸省の西村政務次官、国鉄の天坊副総裁、鵜沢法務課長であります。発言の通告がありますから順次これを許します花村四郎君。
#3
○花村委員 ただいま問題に相なつておりまする官公労の争議、すなわち三社五現業の争議行為が各方面で盛んに行われておるようでありまするが、この争議行為のいかなるものであるかという、その大体の全貌について御説明を願いたいと思うのですが、これはその所管官庁の諸君から大体をお話願いたいと思います。
#4
○天坊説明員 お答え申し上げます。私どもの職員の賃金ベースが今年四月以来問題になつておりまして、それに対しましてさきに調停が出されましたが、その調停に対しまして組合側も当局側もこれを受けられないということで問題が仲裁裁定に移りまして、その仲裁の裁定がこの九月の末に下されたのでございます。それによりますと、職員の平均賃金が一万五千三百七十円という線が出まして、この裁定には私どもといたしまして、組合も当局もこれに従う義務がございますので、予算上資金上実施ができかねるということで予算をつくりまして提出したわけであります。その案がこの前の国会のときから継続審議になつておりまして、この国会で補正予算として御審議願うことになつておるわけでございます。これに対しまして、国鉄の労働組合といたしましては、早く裁定を実施するようにしてもらいたい、あるいは年末手当についても補正予算に盛られた額について不満であるということで数次団体交渉等をいたしましたが、それに圧力をかけるというような意味で、片方で十一月末を期しまして遵法闘争、超過勤務拒否、こういうような攻勢を続けて参つたのでありますが、さらに本月の一日以降三日間にわたりまして、三割賜暇をやるという戦術を用いまして、一日、二日、三日とその間列車の運行等に相当な支障を来して参つたわけであります。なおただいまでも一方では団体交渉をいたしておりますが、問題の答があなかなか出ませんで、御承知の通り、提出されました予算の内容は申し上げるまでもありませんが、政府としては裁定については一月から実施する、年末手当については国鉄として〇・三五を加えて一箇月出すというような線が出ておるわけであります。
#5
○花村委員 聞くところによりますと、組合関係の方では、政府が仲裁裁定をのまない限りは、組合の方に争議権があるという解釈をして、そうしてその解釈にのつとつて、ただいまの争議をやつておるということを聞いておるのでありまするが、この点に対する政府の御見解はいかがですか。
#6
○西村(英)政府委員 仲裁裁定は、公労法の定めるところで両者を制約するものではありますが、しかしこれはまた同法で明らかなように、政府を拘束するものでもないことははつきりいたしておるのであります。従いまして、仲裁裁定によつてそれがどうなろうとも、争議権が組合側にあるという解釈は、政府はとつておらないのであります。
#7
○花村委員 もちろん明文にははつきりはいたしておりませんけれども、しかし公務員から争議権を――剥奪というのは言葉が悪いのでありますが、争議権を取上げるということにいたしました結果として、これはGHQのさしずにもよつて、この仲裁裁定という、一つの争いを、つまり双方の意見を聞いて争いをなくすという法途を講ずることに相なつた。こういう立法の趣旨、精神から言えば、一面において争議行為ができないという意味においても、仲裁裁定によつて決するということにしたことは、まさに争議権を認めたものである、こういうことを組合側の方では強調いたしておるのでありますが、われわれもこういう解釈がはたして安当なりやいなやという点については、おそらくそういう議論はどこからも出て来ないのではないかとは考えまするけれども、こういう主張をいたしておりますが、政府の所見ははたしていかがですか。
#8
○西村(英)政府委員 確かに仲裁裁定によつて両者が制約されまするから、この仲裁裁定を尊重することはもちろんでありまするけれども、また一方その裁定が国家の財政上その他の理由によつて、これがどうしても実行ができないというような場合も、また国家財政の消長によつて起り得るものであります。そのために、そういう場合が起つたならば、最終的にこれを国会に出して、最終の決を国会の承認に求めるというふうになつておるのではなかろうかと思うのであります。公労法の精神は、あくまで争議権は剥奪されましたけれども、一方においてまたきわめて公共性のある事業でございますから、公共の福祉を擁護するということもあるのでございまして、その点争議権もまた認められておらない、かように解釈をいたしておるのであります。
#9
○花村委員 そうしますると、結局政府の考え方としては、争議権を持たぬという結論であると信じますが、しかるにただいま副総裁からの御報告によりますると、あらゆる方両において争議行為が盛んに行われておると申し上げてよろしいと思うのであります。この各方面に行われておる、新聞等で報道されておる行為は、争議行為と認めないのであるか認めるのであるか、それを次にお尋ねいたします。
#10
○西村(英)政府委員 非常にいろいろなる解釈をも下されるのでありますが、大体われわれは、現在のあの程度であれば、もうすでに行き過ぎである、かように考えておるものであります。
#11
○花村委員 行き過ぎであるという意味はどういう意味ですか、争議行為であることは当然であるが、争議行為も逸脱した法に触れる行為とも認められる、こういう意味になりますか。
#12
○西村(英)政府委員 簡単に言えば、争議行為であると思われます。
#13
○花村委員 そうしますると、争議行為であり、かつ違法行為であるというこの種行為に対して、政府としてはいかなる処置を今日までとられて来たか、また今後これらの行為に対していかに善処しようとするのであるか、それをひとつお尋ねいたしたい。これは法務総裁にお尋ねいたします。
#14
○犬養国務大臣 これは二段にわけてお答え申し上げたいと存じます。ただいま輝輸政務次官も申されましたが、国鉄その他の公共企業体の職員が争議行為を禁止されておることは御承知の通りでありまして、これは公労法第十七条によつて禁止されているのでございます。禁止されておりますが、この違反者に対しては、御承知のように公労法は罰則がありません。違反者に対してはもつぱら内部の行政処分にまつているわけであります。そこでただいま行われております賜暇戦術も、賜暇を得たいという権利はありますけれども、これは所属長の承諾を得ることになつておりますので、承諾を得ない賜暇は、公労法あるいは国鉄内部の規約において、その限りにおいて違法でございます。また平和的な説得的なピケを張るということも争議行為そのものが、公共企業体の職員にはとめられておりますので、たとい平和的、説得的であつてもピケを張るということもこれまた違法になるわけでございます。これらの程度の違法行為は、公労法によつて内部の行政処分によつて処罰されるわけでございます。
 そこで次に来りますものは、法務省として刑事上の問題として扱うということはどういう水準から発足するか、こういう次の問題になるのでございます。これはやはり衆力行為が伴うとかあるいは往来妨害が伴うとか、その他公務執行妨害が伴つたという嫌疑が明らかになつたときに刑法上の問題として扱うわけでございます。ただいままでどうもちよつと行き過ぎじやないか、刑法上の問題として扱えば扱うが慎重を期して研究をしているという事案が、私の手もとだけでも十二件ほどございます。そのうち捜査を開始しましたのは一件で、あとは慎重に研究しておりますのは、今申し上げましたように公労法の罰則の建前が、もつぱら内部処分によるという建前になつております精神で、あまり早く取締り当局が飛び出すということは慎重を期していたわけでございます。ところがこの十二件その他各地でだんだん刑法上の問題に一足入れそうな争議行為がありますので、一応こういうことは嫌疑が明らかになれば、刑法上の問題として扱わざるを得ないということを最初に警告しておいた方が、とにかく年の若い、血の気の多い人のことでありますから政府として親切であろうというので、昨夜私名義をもつて、あるいはお読みくださつたかもしれませんが、今申し上げたような趣旨を警告いたしたわけであります。その主たる点は、もちろん暴力行為、往来妨害、その他にわたつた嫌疑が明らかになれば、刑法上の問題にするが、しかしあらかじめこういうことは問題になるぞと警告して、君たちの自重を望むのだというわけで、若い人たちに対して何と申しますか、ころばぬ先のつえといいますか、そういう注意を与えたわけでございます。従つて具体的に今捜査を開始しておる件は、一件しかございません。私どもはそのように二段構えの考えでこの問題を扱つておる次第でございます。
#15
○花村委員 なるほど公労法第十七条に対しまする罰則規定はありませんけれども、しかし国家公務員法の九十八条を見ますと、やはり公労法第十七条とほとんどその内容を同じくする行為禁止の規定でありまして、従つて国家公務員法第九十八条によつても、これは罰し得るんじやなかろうかと思うのでありまするが、この規定によつてどうして処罰をなさらぬのであるか、あるいはこの法律の適用をなすべきものでないという御見解であるか、これを承つておきたいのであります。
#16
○犬養国務大臣 具体的に申し上げますと御了解を得ると思いますが、たとえばピケでございます。ピケは従来他の争議におきましては、平和的であり、説得的である。こう組んでにらんでいて、向うが自発的にこれはいかぬといつて引返したというようなことは、判例もありまして、これは不起訴になつておる。またそうでございますから刑法上の問題としては、私どもは問題にしておりませんけれども、しかし公労法によりますと、争議行為そのものが十七条によつて禁止されておりますので、平和的、説得的なピケであつても、公労法に関する限りこれは違法である、こういうふうに二段構えに扱つている次第でございます。
#17
○花村委員 公労法の第十七条に違反する行為でありますることは、ほとんどこれは疑う余地はないと思いまするが、公労法第十七条に匹敵する規定が国家公務員法にもありまして、国家公務員及びその組合員の同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻書するところの一切の行為を禁じられておる。従つて禁じられておる規定に違反した場合においては、国家公務員法の百十条によつて三年以下の懲役もしくは十万円以下の罰金に処するという罰則規定がある。従いましてこの国家公務員法の規定に該当することは、ほとんど私は疑う余地はないと申し上げているので、なるほど公労法にはそういう罰則規定がありませんから、公労法によつては処罰もできぬという法務大臣の見解は、これはそれでいいでありましよう。いいでありましようけれどもしかし国家公務員法から申しますならば、当然にこれは処罰をなすべきものであり、またしてもよいと私は信じておりまするが、この規定によつて処分ができないというのはどういう理由に基くか、それを伺いたい。
#18
○犬養国務大臣 詳しくはここに課長がおりますから御説明申し上げますが、今まで私どもの解釈しておりましたのは、公共企業体の職員兼国家公務員という二重人格を認めておりません。公労法の適用を受けておるものは国家公務員法第九十八条の適用を受けない、こういうように解釈しておる次第でございます。
#19
○西村(英)政府委員 ただいま法務大臣からもお答えがありましたが、国鉄の職員は公労法だけでございまして、国家公務員法の適用がないのでございます。但し今のような場合で国鉄法の違反ともなることは、国鉄法に明記してあることで、業務の怠業をすれば国鉄法によつてやはり違反になるのでございます。
#20
○花村委員 法務大臣の犯罪予防の面からする勧告等に関する処置は、これはまことに機宜に適したもので、私どももけつこうだと思うのでありまするが、しかし事刑法に触れる犯罪行為のあつた場合においては、これは何ら仮借するところなく、その所定法規に基いて手続を進めて行くことは当然であろうと思います。従いましてそこに何らの勧告も忠告もいるる余地もありませんことも、これまた申し上げるまでもございません。そこでこれは争議行為の一部を見たのでありまするが、列車が発車する前に現業員の諸君がレールの上寝て、そうして発車をせしめない行動をとつた。そうしてまた列車の発車に対して大なる故障を与えたというような事柄は、明らかに犯罪行為でありますことは言うまでもない。レールの上に小さい石を一つか二つ置いたということですらも、これは列車に対する妨害行為として検挙されて、しかも重い刑をもつて処断をされておるというのが常なのであります。われわれはその事情を聞いてまことに気の毒だと思うような犯行を往々にして見たり聞いたりするのです。酒に酢つぱらつてじようだん半分にレールの上に小さい石を二つばかり乗せておいたところが、それがついに発見されて懲役何年かの重い刑を受けておる。そういうことで列車の妨害等に対する犯行は、これは犯罪の一般予防の面から見て何ら仮借するところなくこれを検挙し、しかも一般予防の方面から重く処罰する、従つてこの犯行に対する事情等はどちらかといえば考慮の中に入れられぬというようなことで今日まで処置されて来ておつたことはきわめて明瞭であります。しかるに列車が今や発車せんとする前に、しかも集団的にその列車の前に寝ころんで、そうして汽車の発車を如害するというようなことは、これはもう犯罪でありますことはきわめて明瞭であつて、何ら疑う余地はない。ことにまた助役を寄つてたかつてみんなで毆打するというがごとき行為も、これまた公務執行の妨告であるとも言い得る。こういう少くとも犯罪の圏内へ一歩でも踏み込んだ場合においては、やはり法律の尊厳の前にはたたちに相当の処断をするという厳正であり、公正な処断が望まれなければならないと思うのでありますが、こういう犯行に対して新聞紙上で見ますと、これは検事総長の言でしたか、慎重に考慮をして、そうして犯罪と認められるものは仮借なく処分するのだというような新聞談もあり、そうして労働大臣は、かくのごとき行為は犯罪であることは明瞭だから、これはただちに厳重に処分すべきものであるというような意見も新聞紙上に載つておつたようでありますが、しかし少くとも犯罪行為と認められるこの種行為に対しては、ただちに法律的の処断をしてしかるべしと思うのでありますが、これらの行為に対していかなる処置を今日までとられておるか。
#21
○犬養国務大臣 御指摘の二つの事件でございますが、最初の助役を突き飛ばしてなぐつたという事件は豊岡に起きました。これはすでに正式に捜査を開始しております。なお具体的にこまかい事情を電報で照会中であります。もう一つは新潟県の新津に起つた事件を御指摘くだすつたのだと思います。御指摘のように情報によりますと、八十人近くがレールの上に寝たというのですから偶然ではないのでございまして、刑法の百二十五条の往来妨害の嫌疑濃厚でございますが、入手した情報がやや粗雑でございますので、これをもつと詳しく報告するように照会中でございます。
 そこで一括して申し上げれば、こういうような程度まで行きました問題は、明らかに刑法上の問題として厳重に扱いたいと思つております。
 そこでお話の中にありましたが、私が昨日警告を発しましたのは、このくらいのことはいいんだと思い込んでおる若い勤労者あるいは年上の指導者が、公労法というものはこういうものだから刑法には引つかからないんだという話をもししている者がありまして、また年の若い者がそれを本気にしておつて、刑法上の罪になつたときにびつくりするというようなことがあつては、政府としてもやはり打つべき手が落ちていたというそしりも免れないと思いますので、あらかじめ刑法上の対象にもなりますよという警告を発した次第でございます。検事総長の談話か労働大臣と食い違つているような感じがありまして、私も夕刊を読んで実は驚いたのでありますが、問い合せてみますと、新聞の人に会つた覚えがない、そこで私はすぐ一時間あとに、花村さんお読みくださつたと思いますが、私の談話を発表したようなわけであります。
#22
○花村委員 ただいま申し上げた行為は、刑法に触るる行為であることは間違いないと申し上げてよろしいと思うのでありまするが、なお鉄道営業法の第二十五条によると、「鉄道係員職務上ノ義務二違背シ又ハ職務ヲ怠り旅客若ハ公衆ニ危害ヲ醸スノ虞アル所為アリタルトキハ三月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金二処ス」こういう規定もあるので、公衆に危害をかもすのおそれのある、現実に危害をかもしたというところまで至りませんでも、かもすであろうというおそれのある場合においては、この鉄道営業法第二十五条の規定によつて処分ができるようになつ
 ている。でありまするから、この種行為は各方面において行われておるようですが、この鉄道営業法によつて今まで各方面で行われておりましたるところの鉄道係員の行為に対して処罰をされたかどうか、これをお尋ねいたしたいと思います。
#23
○桃沢説明員 ただいま花村委員の仰せられましたように、鉄道営業法第二十五条に、「鉄道係員職務上ノ義務二違背シ又ハ職務ヲ怠り旅客若ハ公衆二危害ヲ醸スノ虞アル所為アリタルトキハ三月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金二処ス」という条文がございます。ただまい私どものところに参つております情報は、非常に不正確な面も多いのでございまして、はたしてこの第二十五条に該当するかどうかはつきり見きわめのついている事案が今のところ少いのでございます。しかしおいおい明確になるに従いまして、第二十五条違反ということで捜査を開始するものも次第にふえて参るかと存じます。
#24
○花村委員 私はその情報など聞いているわけじやない。もうこういう違法行為のあつたことは――われわれはもちろん新聞紙上で知り得たにすぎないのでありますけれども、新聞の報道によつても、もう各方面に幾多起きておりますることはほとんど疑う余地がないのであります。こういう行為に対してただちに法規を発動して処分をしたかどうかということを聞いている。こういう行為があるのに処分をせずに腕を組んでおるから、次々と出て来る。こういうりつぱな規定をせつかく設けてあるのに、この規定を適用しないというのは、つまり適用の任に当つておる人もこれは業務上の怠慢であるといつてもいいと思う。やはりただちにこの法規を発動して、その法律の趣旨にのつとつて処罰を次から次へとどんどんやつて行くべきものだ。情報ばかり集めて考えておつたのでは、これは一向法律の趣旨に沿わないじやないか、こう私は申すのであります。
#25
○桃沢説明員 情報と申し上げましたか、これは現地からの責任ある報告でございまして、その現地で十分事態を把握してない面もございます。それからこの三十五条に完全に該当すると思われるものもあるのでございますが、犯人かはつきりしないという点で、まだ検挙いたしてないという面もございます。決してなおざりにしているという意味ではございませんから、その点は御了承願いたいと思います。
#26
○花村委員 どうも行為を把握できないとか何とか言うのですが、これはもう新聞紙の報道の方が検察庁よりも確実な情報を把握して、むしろ法律適用の任に当る検察庁の方が遅れておるということは、まことに遺憾だと思います。新聞の記事を見れば、ほとんどこれは違法行為にあらざるはなしと申し上げてよろしいと思います。これだけの違法行為が各方面で起きておるのにもかかわりませず、情報が把握できるとかできないとか、また地方で処分するについての対象が明確でないとかいうような、そんな怠慢なことで法律の適用、犯罪の検挙ができましようか。むしろこれらの行為は現行犯として、ただちにその場で鉄道公安官なりあるいは警察官が行つてどんどんやつたらはいいじやありませんですか。違法と認められる行為を腕を組んで看過しておるから、次から次にこういう問題が起きて来るのであります。次から次にこういう問題が起きて来るということは、むしろその犯罪をつくるようなものなんです。罪のない人までも罪に陥れるような情勢を取締りの任に当る人がつくつて行くようなことになる。そういうことではこの犯罪検挙に対してきわめて怠慢であると申し上げてよろしいと思う。少くとも争議行為から犯罪行為の傾城に入つたものに対しては、どんどんその要定法規に基いて処断をして行くという厳正なる態度をとるところに、次の犯罪が防止せられるのではないかと私は考えるのでありまするが、当局の怠慢が次々と幾多の犯罪を犯して行くという点において、その責任をどうとられるかという点をむしろ私は聞きたいくらいなんです。そういう問題に対する当局のお考えはいかがでしようか。
#27
○犬養国務大臣 御心配の点十分了といたしますので、事情を申し上げます。私どもも欠点が多いことでございますから、おしかりは謙虚な気持で受けたいと思いますが、現に私なぞもごらん願いたいのですが、自分のぺンでもつて聞いた事案を書いて、これがどうなつているか、日に大体三、四度ずつ聞いているようなわけでございます。たとえ豊岡の助役をなぐつた件でも、国鉄の相当の方が、実はなぐつたのじやなくて、本人がころんだのだという説もあるということになりますと、新聞がいくら明瞭になぐつたと書いても、法務当局としてはやはり慎重な態度をとらざるを得ない。なぐつたのかころんだのか至急知らせという電報をまた打たなければならない。こういうことになりまして、新聞記事というのはなかなか明快でおもしろいですけれども、当局はそういうように簡単に参りません。しかしこれは荏苒日を送るということでは責任重大でございますから、今申し上げましたように、私などは大体日に四度くらいずつ催促しているわけでございます。
 もう一つ、実は何でも打明けて申し上げるのですが、八十人レールの上に寝て機関車を動かさなかつた、こういう新聞記事が出れは、即刻やれるはずなんでございますが、公安課としましては、その機関車がすぐ二、三分あとに本式の列車になつて動く機関車であつたか、それとも出動する時間は大分あとなんたが、予備行為としてA点からB点に移るときに寝ころばれたのか、こういうことも問い合せなければならないわけで、そういう話を聞きますと、私も、待てよ、それじやもう一度電報を打とうということになつているのが当局の実情でございます。外部からごらんになると、さぞかし花村さんのようなおしかりも多いことと思いますが、私としましては、むしろおしかりを受けても、慎重に事案の真相をきわめるということも、やはり人権を扱つている者として一方に看過できない。その両方の大事な点を両立させようとして苦心をしておりますので、まだるつこいような点がありましたら、また率直な御忠告を願いたいと思います。
#28
○花村委員 私はこれで質問を打切りますが、なるほど犬養法務大臣の御苦心のほどはお察し申し上げまするし、大いに敬意を表します。しかし一々中央へ報告を求めて、犯罪検挙に関する中央の指揮と相まつて、検挙に関する仕事を推進して行くというような手ぬるい方法であつてはならないと思いまするから、少くとも刑法なりあるいは鉄道営業法なりあるいはその他の法規に触れて、しかもそれか処罰されなければならない行為であると認められるものに対しましては、その行為の起きたところの取締り官憲が適当なる処置をただちに講ずる、ほとんど間髪を入れずに犯罪の検挙に当るということで、その発動に対してはあくまでも厳格であり、あくまでも敏速であつてこそ、初めて犯罪予防の成果があげられるのでありますから、もう少しその地方地方の取締り官憲に対して、やはりある程度の指導を、あらかじめ犯罪の起きる前に与えて、そうして起きた場合に対処する心構えを、やはり徹底さしておく必要があろうと私は思う。でありますから、そういう意味において、やはり犯罪検挙に対してはほとんど猶予することなく、きわめて敏速しかも厳格にこれを行つて行くということでありますならば、次々起つて参ります各地の忌むべき行為は、必ずや私は続いて起きて来るよりなことはなかろうと申し上げてよいと思うのであります。でありますから、こういう点も十分考慮のうちに入れられて、そうして情報を集められて、犯罪検挙に対する中央から指令を出すというようなことでなく、もちろんそれも慎重だと言えば慎重でありますけれども、しかしあまり慎重が程度を越えると、かえつてこれは法の威信を失墜するような結果にも相なりますので、その辺はひとつ緩急よろしきを得て、かくのごとき公の福祉を害するがごとき行為、しかも進んでは刑法に触るるがごとき、ことに重い犯罪行為に対しては、厳重に敏速にこれを検挙するように扱われんことを切離して、私の質問を終ります。
#29
○犬養国務大臣 いろいろ御注意ありがとうございました。ただ刑法違反については、最高検から地方の責任でやれという指令を出してありますが、労組の諸君のやり方というのは、なかなか経験を積んでおりまして、ボーダー・ラインが多いのであります。このボーダー・ラインに対しては、私どもは最高検の意見を聞くようにということになつておりますので、大体九割九分がボーダー・ラインのようなものが持ち込まれて来ておるのです。御指摘のように、中央と地方との電報のやりとりなども、もつと考えたいと思う点もございますから、これを機会にさらに十分研究して、なお改善の道があれば即刻やりたいと思つております。
#30
○小林委員長 佐瀬昌三君。
#31
○佐瀬委員 私も本問題について若干補足的に質疑を申し上げたいと思います。
 まず第一にお伺いしておきたいのは、法務当局に対してでありますが、いわゆる休暇戦術が公労法第十七条に違反した、いわば禁止された争議行為であるという政府の有権的な断定がある以上は、それ以後の争議行為の発展過程において、あるいは刑法犯あるいは鉄道営業法違反等として捜査の対象にされるのは当然でありますか、その前に、国民の感情から見ましても、かかる公共の福祉に重大な関連があり、国民の事業、生活に対して非常な不安を与える事態に対しましては、すべからく予防的見地に立つて、これから先は刑法犯になる、あるいは鉄道営業法違反になるというような一定の基準を、行政的解釈でもけつこうでありますから統一されて、これを国鉄労組の幹部なり指導者に提示して、その行動の慎重を期するというような措置も、この際きわめて必要ではなかろうか。かように考えるのでありますが、これは法務当局並びに警察当局に対するわれわれの要望として、これに対する御意見をまずもつて承つておきたいと思います。
#32
○犬養国務大臣 まことにごもつともでございます。そこで内輪話を申し上げますと、昨夜私が出しました談話も、ただ刑法上の問題になることがあるから気をつけてくださいと言うのがあつさりしていいという意見もありましたが、私もまつたく今おつしやつた通りの趣旨で、具体的に啓蒙的にあげて、しろうとわかりのするようにあげた方がかえつて予防的な意味を持つのではなかろうかというので、少しくどかつたのですが、いろおろ並べて話したわけです。しかし事態によつては、あなたのおつしやるように、さらにこまかく、こうやれはこうなるというようなものを発表するということも、私まつたく気がつきませんでしたが、伺つてみればたいへんいいことだと思いますので、もし必要の事態に面しましたら、そういうことも十分考究してみたいと思います。
#33
○佐瀬委員 ぜひさような御措置をお願い申し上げます。
 それから次に御意見を承りたい点は、大体刑法犯とか鉄道営業法違反と申しましても、刑法は明治四十年に制定された法律であり、鉄道営業法に至つては、明治三十三年の制定であります。こういう新事態に対処するのには、あまりにも陳腐な立法であります。ことにかような公共企業関係のストライキ等に至りましては、その影響するところまことに甚大であつて、場合によつては国家の治安にも関連する。そういう新しい様相を持つた影響力のある事態に対しましては、すべからく新しい立法をもつて対処するというのが常道である。ことに私どもがここで考えなければならぬのは、労働者一般が祖国と考えておるソ連においては、この種の怠業はすべて一種の反革命犯罪であるというふうに、政治的に非常にこれを重く取扱う。従つて、時には死刑に処するというような厳重な刑罰立法をもつて臨んでおります。私どもはいたずらに、日本の労働組合運動に対して、弾圧の古い思想をもつて臨むべきではなくして、やはりそこに近代の法治国家としての態度は堅持しなければなりませんけれども、この種の、政府がお認めになつているような違法な争議行為に対しては、やはり法治国民らしい義務を要望しなければ、従つてこれに対しても国家としては、やはり厳正な法律をもつて臨まなければならぬ、こう考えるのであります。従つて刑法なりあるいは古い鉄道営業法なりにおいては、今日まかなえないという観点に立つて、これらに対するいかなる立法的措置をお考えになつておるか。これは今後の問題として、この際政府の所信を伺つてみたいと思うのであります。
#34
○犬養国務大臣 一々ごもつともと御返事することになるのでありますが、実は最近の動機は火炎びんでありまして、どうも火炎びんは爆発物でないということになりますと、放火予備、軽犯罪法、どれもまことに不適当なんでありまして、やはり法律が古くできて犯罪が非常に近代的に進んだ場合のことを痛感させられたのでありますが、このたびもいろいろな問題で同じような感想を抱くべき問題がございますので、ごく最近の研究をやつておる次第でございます。
#35
○佐瀬委員 今後十分御検討を願いたいと思いますが、さらに一点国鉄及び運輸省の当局に承つておきたいのでありますが、今回の国鉄賜暇鬪争が違法である、公労法十七条に正面から違反する行為であるということになり、しかもこれに対しては刑罰規定はないから、部内の秩序罰として行政的処分が規定されておるという建前に立ちまして、今回の賜暇鬪争の責任者に対して国鉄あるいは運輸省としてはその行政処分をおとりになる決意を持つておられるかどうか、あるいはまたすでにそういう措置がとられたものであるかどうか、この点について承つておきたいと思います。
#36
○西村(英)政府委員 さいぜんも申し上げました通り、公労法の違反であり、また国有鉄道法の違反である。しかしながら事件は途中でありまして、また調査その他というとおしかりをこうむるかもしれませんか、やはりこれにもおのずから調査がいると思うのであります。またいたずらにこれを途中において拡大するというようなことも、実際問題としてはとらざるところでありますか、調査をいたしておりまして、明らかになりますれば、われわれとしてもむろんそれぞれ応じまして、懲戒の方法をとらなければならない、かように考えております。
#37
○天坊説明員 国鉄といたしましても、今回の公労法違反の問題につきましては、十分責任をはつきりさせなければならないと思つております。
#38
○小林委員長 猪俣浩三君。
#39
○猪俣委員 実は私は花村君なんかの自由党の委員諸君に質問したいことはたくさんあるのだが、委員同士は委員会でやらぬことになつておる。どうも政府や、鉄道公社よりも自由党場委員諸君に多大に質問したい。質問の内容に含まれる諸君の考え方に対して、たくさん質問したいのだが、これは許されないからやめます。やめますが、選挙違反に対する取締りについては非常に勇猛果敢に人権蹂躙論を振りまわされる諸君が、今回こういうことになると、なぜもつと締まらぬか、締まらぬかとおやりになるところに、どうも不公平なる考え方があるように考えられる。しかしそれはそれといたしまして、法務大臣にお尋ねいたしますが、先ほどの御説明に、まあころばぬ先のつえという意味で、何か警告を発せられる文書を出したというお話でありましたが、どの方面にどの程度の発信をされたのであるか、お尋ねいたします。
#40
○犬養国務大臣 私の言葉が不十分であつたかもしれませんが、これは新聞発表でありまして、形式は法務省所属の記者クラブに法務大臣の談話を発表したわけでございます。御承知のように、労組の中央の方の人は、刑法違反というようなことは心得えている向きか、私の認定では相当多いように思います。末端のことに元気のいい人のところに行くと、それにはみ出る、またはまつたく違反でないと思つている人も、炭鉱のときに経験しましたので、やつぱりこういうふうなことになると、刑法上の問題になる、だから自重してくたさい。こういう意味の御注意を新聞記者発表の形でいたしたわけでございます。
#41
○猪俣委員 天坊副総裁にお尋ねいたしますが、今回のことがもし公共の安寧に非常に害がある不祥なことだといたしますならば、その原因は一体どこにあるのであるか。花村委員の質問のように片つぱしから検挙すればこれは防げるのだという御見解もありました。われわれはこれはいわゆる仲裁裁定という彼我ともに服しなければならぬというような、ここに一つの裁定行為かある。これを国会の審議に名をかりてこの仲裁裁定を実施しない。もちろんそれは政府じやない、国会だといいましても、今の日本の現状は議会政治であります。多数党政治であります。そうして内閣総理大臣は多数党の総裁である。されば国会と称しましても、政府といいましても、政治責任は同じであります。あの吉田リンマンが一たび決意すればできない道理はない、自由党の多数なんぞみなそれに盲従しておるのでありますから、この仲裁裁定は国会を通してもらわなければならぬということになれば、通らぬ道理はない、ですから結局政府当局は、この裁判所の確定判決と同じ効力ある仲裁裁定を蹂躙しておる。それが原因でかような不稔な状態が出るのだと思うのでありますが、一体国鉄の副総裁の地位にある天坊さんは、この仲裁裁定を実施してもらつた方がいいと考えられるか、あなたはどういうふうなお考えを持つておるか、それをお尋ねします。
#42
○天坊説明員 仲裁裁定につきましては、私どもそれに従うべき義務を課せられておるのであります。それを今ここで批評を申し上げることはできないと思います。
#43
○猪俣委員 しかしあなたは国鉄側の責任者として国会にこの裁定をのんでもらいたいと思うのか、拒否してもらいたいと思うのか、御意見があるでしよう。どういうお考えですか。
#44
○天坊説明員 私どもといたしましては、仲裁裁定に服する建前で予算の要求をいたしました。それが大蔵省その他政府の御方針によつて、先ほど申し上げましたように、一月から裁定を実施するというような、完全履行ができない姿になつて補正予算が今国会で審議されておるのであります。
#45
○猪俣委員 そうすると、あなたも仲裁裁定は実施したいと考えておられるのか。いろいろの都合でこれが実施されないことに対しては遺憾である、そういうお心持であるとすると、あなた方はいつも国鉄は国鉄一家と称し、家族的な団体であるがごときことを言つていらつしやる。そうすると今あなた方の願望する仲裁裁定が実施せられざるために、それが原因として今日のごとき、組合員といえども好ましからざる賜暇戦術などというものを編み出してやつておる。それに対して相当の同情がなければならぬ。あなたは今自由党の諸君にはつばをかけられて、いわゆる鉄道営業法違反だとか、あるいは鉄道法の違反だとか、あるいは公労法の違反だとかいうてどんどん整理をなさる意思を持つておるのであるか、こういう公労法違反なりと認定して整理をするような決意を持つておるのであるかどうか、お聞かせ願いたい。
#46
○天坊説明員 私ども組合の諸君につきましては、やはり鉄道の一緒の仲間でございまして、できるだけ諸君の生活向上ということについては、私ども十分考えて参りたいと考えております。ただこの数年間仲裁裁定がございましても、一度も裁定通り実施されなかつたということもございまして、今回組合員諸君の非常な強い決心で立ち上つて参つたその事情は、私どもよくわかつておりますが、しかしながら組合と私どもの間のそうした問題についての解決の具体的なルールというものは、やはり守つて行かなければならない。公労法にきめられた幅の中で十分交渉をする余地もあるわけでありまして、その幅を出た問題については、先ほどもお話がございましたように、刑法の犯罪の部類に属するものはやむを得ないものでございましようし、また公労法違反の問題については、やはり相当責任を明らかにすることが、私は組合員を思うために必要であろうと思うわけであります。
#47
○猪俣委員 法務大臣にお尋ねしますが、今自由党の佐瀬委員から、自由党の諸君が最もきらつておるソ連の実例を引いて、ソ連の刑法にはこの通りある、大いに弾圧の法律をつくつたらどうだというような扇動があつたように思うのであります。法務大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。かような鉄道営業法二十五条なんか廃して、なお厳罰に処する。今佐獺君の説明によると、ソ連では死刑にまでするようになつているが、何ぐずぐずしているかというふうに言われるのですが、さような厳罰に処するお考えがあるかどうか、お尋ねいたします。
#48
○犬養国務大臣 弾圧的な法律というような感じを頭から持つような法律はつくりたくございません。ただ公共性にかんがみて、大勢の人が迷惑する行為に対しては、どの刑法でも問題とせざるを得ませんので、そういう時宜に適した法律をつくる方法があれば考えてみたいと思います。しかしこれはまだ研究中でございまして、そうするときめたものではございません。申し上げましたように事の起りは火炎びんでありまして、火炎びんが爆発物でないととなると、火炎びんをやたらに持たれては実は困るのでありますから、そうかといつて軽犯罪法でも一千円以下の罰金であるし、放火予備も本人が違うと言えばそれつきりだというので、それに適した何か新しい措置が必要だ、こう火炎びんの際に考えて、今考究中であります。こういう戦術についても、適宜に弾圧的ではないが、社会がもつともだと思う措置があれば考えてみたい、こういう程度でございます。
#49
○猪俣委員 一体公共企業体の職員諸君の争議権を剥奪した――剥奪したという言葉は穏やかでないと花村君は言いますが、まさに剥奪したのであります。その代償といたしまして仲裁裁定に絶大なる効力を持たした。これは労使双方が絶対服従しなければならぬ、いわゆる最高裁判所の確定判決と同じような効力を持たして、そこにおいて一般公務員や公共企業体の職員の争議権を剥奪したのであります。これは代償であることは申すまでもない。実にたびたび人事院勧告があり、仲裁裁定があつたにかかわらず、吉田政府は今日までほとんどそれを採用したことがない。仲裁裁定なんということを有名無実たらしめている。それに対する労働組合員諸君の憤激が現われて来ておる。そういう社会のある階層のやり場のない憤激は救いようがないのです。この仲裁裁定が実施されたにかかわらず、なおストライキをやるというようなことになるならば、今自由党の諸君が攻撃したような点が出て来ると思うのです。しかしこの仲裁裁定を全然実施せずして、やり場のない憤懣が賜暇戦術になつたりいろいろになつて出て来る。これをただ弾圧すればよろしいというように、いわゆる権力を持つている法務大臣にはつばをかけるということは、まことに私ども議員としては慎むべきことではないかと考えるのでありますが、これは人生観が違うのだからしかたがない。しかたがないのでありますが、これを政府当局としてはある程度、先ほど申しましたように、国会というようなカムフラージュをしておりますけれども、これは吉田政権の責任であります。この責任を深く自覚せられまして、ただこれを取締る百取締るという方向に動かれぬように、幸いに犬養法務大臣は相当理解ある態度を持つて臨んでおられるようでありますので、自由党諸君の扇動にあまりお乗りにならぬように、私は特にお願いするのであります。今日の労働組合の自覚と決意をもつてすれば、そんな弾圧をしたからこれが押えられるというものじや決してありません。合理的な解決をしなければ押えられません。ゆえに政府の一員でありまする犬養さんは、どうか深く考えられて、合理的解決の方に進めてもらいたい。
 いま一つお尋ねすることは、国鉄五十万は単一組織の組合となつておるのであります。そして組合の中央の執行委員会において決定せられた方針に基いて下部が活動している。ここに一般の個人犯罪と、もし犯罪ありとしても非常に異なるところが出て来るのであります。それですから、何か新聞記事に書いてあつたということで、すぐこれを犯罪なりとして捜査活動するということが困難であることは申すまでもない。レールの上に石二つ並べたと同じような個人犯罪とお考えになつているところに、私は労働組合運動を理解せざる点があると思うのでありまして、これは一種の組織活動としてやつておる。そこで一体末端の若造だけを処罰していいかどうかという問題もある。はたして彼らがかかる行動をする、すなわち本部の指令に違反したことをやる期待可能性があるかどうかという期待可能性の議論も出て来ます。あるいは丁部が上部の命令によつてただ動いたという面も出て来ます。生きた労働運動というものは、いわゆる市民法である在来の刑法、民法では律することはできない。生きた労働者という実体的な人間を中心にして、労働組合法なりその他ができて来ておる。ただ人とか市民とか、抽象人間によつて規定せられました商法とか民法とか刑法とかいうものと労働組合法の違うゆえんのものは、実際の労働者というものの運動を規律しているものでありまして、されば労働組合法の精神にのつとりましたる取締りをやるべきもので、ただいたずらに刑法を持つて来る、あるいはその他の処罰法、市民法である個人の処罰法規をこの際いたずらにかつぎ出すということは、事態を紛糾せしめるばかりでありまして、解決にはなりません。法務大臣としてはどうぞその点もよくお考えになつて、私ども労働組合員諸君がはなはだ乱に及ぶことを好むものではありませんが、政府に重大な責任があるのであるから、この組合の賜暇戦術その他の労働組合の活動に対しましても、謙虚なる心持ですぐ刑法を持ち出す、鉄道営業法を持ち出す、かような現住の労働組合運動の発生せざりし時分のこけのはえたような法律をすぐ頭に抱くという、そのこと自体大いに反省していただきたい。私どもは慎重なる御態度で臨むことを切に要望いたします。
 それからこれは今どなたの発言であつたか、自由党諸君の質問の中であつたかもしれないが、鉄道公安官をすぐ差向けて検挙したらどうだというような発言があつた。そこでこれは天坊さんにお尋ねします。あるいは関連しては法務大臣の所管になるかもしれませんが、一体鉄道公安官というものは、この労働争議のようなことに対して、これを極挙したり取締つたりする立場のものであるかどうか、天坊さんの御見解を承りたい。
#50
○天坊説明員 鉄道公安官も、御承知の通り鉄道の職員で、組合の諸君とも仲よく横の連絡をとりながらやつておることでございますから、なるべくならば、こういう場合にその取締りとかいうことに直接に当らせないように指導したいと考えます。ただやむを得ないような場合に、慎重に考えておりますけれども、警察官の方か来ていただくような場合には、やはり公安官もそうした職務を持つこともあろうかと思うわけであります。
#51
○猪俣委員 これはこの前の国会で、私は公安局長にも質問したのでありますが、きようはその上の責任者であるあなたが来ておられますから念を押しますけれども、どうも鉄道公安官なるものが労働争議に関与する――鉄道公安官の職権というものは、当委員会で法律を制定したものであつて、そのとき慎重審議いたしましたが、その権限からいたしましても、労働争議なんかに公安官かタッチするということは、まつたくわれわれの立法当時の目的に反する。それは便利なんです。あなた方鉄道の上位にあるものは、自分の手兵であるから使うには便利であるが、便利であるものは非常に注意しなければいかぬ。どうも近ごろそれを使いたがる。そうなると、これは私どもとしてもまつたく自分たちの立法の精神に違反したことになるのであります。ですから今あなたのお考えを聞いて私も安心しましたが、ほとんど百パーセント鉄道公安官を労働争議に使わないようにしていただきたい。そうしますと、本来の目的であります鉄道犯罪の検挙に際しましても、労働組合と鉄道公安官が反目いたしておりますと、これはもうほんとうに機能的な活動はできないのです。鉄道の職員の中から警察権を持つものが出るというところに鉄道公安官の存在価値がある。そうでなければ何もそんなものは特別につくらぬでもいいのです。一般の警察官にまかしてよいのであるが、鉄道の同じ職員の中から鉄道のことに精通しているこの人たちが、鉄迫に関する犯罪検挙に活動するというところに特色かあるということに相なつた。それは一般の職員の応援を得て、外部から来る一般の警察官よりも内部のこういう人たちか、犯罪の検挙には特別に便利な地位にあるということが大きな理由である。しかるに一般の職員と鉄道の公安官が対立するような状態に相なりましたならば、鉄道公安官をつくつた趣旨というものは大半失われるのでございますがゆえに、これはどうぞ憎まれ役を鉄道公安官に持たさないで、一般の警察の自由にやらした方が私はいいと考える。この意味において鉄道公安官を労働争議の取締りに出すということは、これば非常に御注意願いたいということを希望として申し上げておきます。
#52
○飛鳥田委員 鉄道公安官の問題に関連して、現にそういう事実がたくさん行われております。一つだけ具体的な事実を申し上げておきますが、横浜の高島町においては、鉄道公安官がトラツクに乗つて、しかもマイクロフオンをつけて、争議で組合の人が集まつておりますものについて、即時解散しろ、職場につけというようなことを、わざわざどなりまわつている。しかもそれだけではなく、そういうことを阻止しようといたしました横浜の労働組合の副組合長である古海君をトラツクの上から突き落して、全治十日くらいの傷を負わしている、こういう事実があります。その他もお調べいただけば出て来ると思います。こういう点についても厳重に取締つていただくように、今猪俣先生から申し上げましたような趣旨で、このようなことが今後ありませんようにやつていただきたい、こういうふうに考えます。ひとつ御意見を承らせていただきましよう。
#53
○天坊説明員 猪俣先生は、鉄道公安官につきましては非常な御理解をいただいておるわけであります。鉄道公安官がこうした争議関係の仕事に関係いたします場合には、慎重に考えて参りたいと思つております。ただいまお話のございました高島の件でございますが、これは鉄道公安官が説得に行つたというのではございませんで、局の総務部長、あるいは総務部の課長連中が、高島のピケットを張つて争議をやつております組合の方に、出勤する者を通すようにという、そうした意味での話合いに参つたわけでありますが、それに公安官が一名か二名ついておつたわけであります。公安官自身がそうした制止をしたというようなことは聞いておりません。ただその場合に、それをやめさせようとして、組合の支部長でありましたかが、このトラツクに飛び乗つて来た、それが落ちてけがをしたというように聞いております。公安官の使用については、十分慎重にやつて参りたいと思います。
#54
○飛鳥田委員 ただついて行つたという御表現は少しおかしいと思います。私が現に現場で見ておつたのですが、二人の方がトラックの上にちやんと乗つておられた。しかも落ちてというお話もおかしい。現に私がこの目で見た。私の目にして誤りなくんは、少くとも手で突き落したということは事実であります。こういうことももう一度調査の上御善処を願います。これで打切ります。
#55
○小林委員長 木原津與志君。
#56
○木原委員 仲裁裁定に端を発して今回の国鉄の状態を提出したことは、これは私ども非常に遺憾に存じておるのであります。問題は仲裁裁定の完全実施の要求に対して、政府がこれに応じなかつたということに端を発しておる
 ことは事実でございます。そこで副総裁にお尋ねいたしますが、これまで国鉄と従業員との間の紛争についての仲裁裁定というのは、今度の場合を合せて大体何回くらいありましたか。
#57
○天坊説明員 たしか四回と思います。
#58
○木原委員 四回の仲裁裁定があつたとのことですが、何回完全に仲裁裁定のあつた通りに政府で実施されておりましようか。
#59
○天坊説明員 やや正確でないのでありますが、大体今まで完全に裁定通り履行されたことはなかつたように記憶しております。
#60
○木原委員 そうすると四回の仲裁裁定について完全にその実施をされた事実がないと申されましたが、それはいずれも現在の吉田内閣のときだけでございますか。
#61
○天坊説明員 その点は私今資料がございませんので申し上げられません。
#62
○木原委員 犬養法務大臣にお尋ねいたします。法務大臣は政府の見解として今度の国鉄の三割賜暇の闘争について述べておられますが、この三割賜暇闘争を争議行為たと御認定になつておられるのでございましようか。
#63
○犬養国務大臣 私の承知しておる限りにおきましては、賜暇はかつてにできないので、所属長の受諾を得ることになつております。その受諾を得ないと、国鉄の内部の法規によつて逮反行為になるのでございます。そうなると国鉄の経営者と意思の合致せざる行動ということになりますから、争議行為もしくは争議に類似した――個々の場合を見ないとわかりませんけれども、大体争議行為に類似したことになりやすいと思つております。しかし、蛇足でございますが、私の声明にもありますように、そういうことは国鉄内部の問題にとどまる限り、取締り当局は特に干渉するような態度は、慎重を期して参つておるわけであります。
#64
○木原委員 法律解釈の問題は、これは終局において裁判所が決定することでございまするか、今日までの経験をもつてすれば、大体政府の法律解釈というのは裁判所で通らないのが常のようでございます。たとえば昨年の八月のあの吉田内閣の抜打ち解散につきましても、当時政府ではこれは合法であつて憲法違反ではないということをしばしば声明されました。ところがこの解散の効力につきまして、法務大臣も御承知と思いますが、改進党の苫米地義三氏から、憲法違反に連なる問題で裁判所に審理を求めておつたのが、先月でございますか、東京地方裁判所で、明らかにあの解散は憲法違反であつて違法であるという趣旨の判決があつたように私ども承知しております。それは一つの例でございますが、政府の行政解釈というやつか、裁判所によつて認められる、裁判所の法律解釈と合致するということは必ずしもないのであります。過去の例からしますと、評しろ政府が法の解釈を誤つて、わがままかつてな、ひとりよがりの権力解釈をやつて、横を通しておるという筋道すら私どもは考えておるような次第でございます。でありまするから、この三割賜暇闘争につきましても、これが公労法の違反であり、争議行為であろかどうかという点につきましては、政府の見解がはたして裁判所において終局的に通るかどうか疑問がある。私どもはこれは明らかに争議行為ではないという主張をいたしておりますが、その点政府とまつこうから見解の対立を示しておるのでございます。さようなわけで、いつも裁判所に通らない法律解釈をやつておる政府でございますから、この取扱につきましては、慎重なしかも謙虚な態度をとつていただかないと、これを検挙したあるいは首を切つた、そうしてあとで裁判所に提訴した結果、合法であると解釈されることになれば、事態は非常に重大なことになり、無用の犠牲を従業者にしいた結果にもなるのでございますが、先ほど自由党の委員の方から、これに対して強硬な態度で臨めという御発言があつたようでございます。その点につきましては、政府といたしましても十分考慮せられまして、はたして政府の見解が常に正しいものではない、どうなるかわからないという謙虚な立場に立たれて、本件紛争の円満な収拾方をお願いする次第でございます。
 いま一点法務大臣にお尋ねしておきたいことは、仲裁裁定を政府は財政上予算上実施することかできないということになりますと、その責任は一体だれにあるとお考えになつておられますか。この点御見解を聞いておきたいと思います。
#65
○犬養国務大臣 これは法制意見局が今の法制局に打つてしまいましたから、政府の代表のような顔をして法務大臣がその問題を申し上げることは差控えたいと思います。しかし政治論として、政府だけがかつてな解釈をして、まつかに興奮して、国民は冷靜でこれを批判的だという状態は生ぜさぜないだけの努力をしたいと思つております。
#66
○木原委員 財政上この仲裁裁定を実施することができないということは、政府の責任に帰着するのじやないかと考えておりますが、いかがな御見解を持つておられますか。
#67
○犬養国務大臣 仲裁裁定はでき得る限り尊重しなければなりませんが、一から十まで全部それに従わなければならないという解釈を政府はしておらないのであります。従いまして仲裁裁定がどの角度から見ても真であつて、政府はできるのにできないと言つたという政治責任は、結局国民の輿論、国民の批判にまつよりしようがないと思つております。
#68
○木原委員 財政上予算上それを措置することができないという場合には、この措置できない責任は政府にあるのではないかと思いますが、いま一応その点を伺いたい。
#69
○犬養国務大臣 政府が政治責任を持つて財政上予算上できないと認定した政治責任は、国民の推測を喜んで進んで受けることと思います。しかしできなかつたことが余部政府の欠陥であるという解釈はとつておりません。ことにこのたびの財政上困難だという理由の重要なる一つが風水害、冷害でありまして、これはいかんともすべからず、そういう問題から勘案してみますると、できない責任は全部政府の欠陥であるという解釈は、少し早まるのではないか。お互い政治上の意見になるのでございますが、私どもそういうふうに解釈いたします。
    ―――――――――――――
#70
○小林委員長 この際証人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。すなわち法務行政に関連する保全経済会等特殊利殖機関に関する調査のため、来る七日月曜日十前十時に西本願寺連枝の大谷昭乗君、西本願寺総長佐々木正照君及び保全経済会理事証券部長牧原四郎君、以上三君に証人として出頭を求めるために、衆議院規則第五十三条の規定に基き、その手続を進めたいと存じますが御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#71
○小林委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
 明員午後一時から委員会を聞くこととし、本日はこれにて散会いたします。
    午後三時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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