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1947/08/07 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第22号
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1947/08/07 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第22号

#1
第001回国会 本会議 第22号
昭和二十二年八月七日(木曜日)
    午後二時三十五分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十一号
  昭和二十二年八月七日(木曜日)
    午後一時開議
 第一 ソ連領からの復員促進に関する請願(第九号)
 第二 ソ連軍占領地よりの復員促進に関する請願(第五十六号)
 第三 海運組合法を廃止する法律案(内閣提出、参議院送付)
 第四 國家賠償法案(内閣提出)
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
   ――――――◇―――――――
   第一 ソ連領から復員促進に関する請願(第九号)
   第二 ソ連軍占領地より復員促進に関する請願(第五十六号)
#3
○議長(松岡駒吉君) 日程第一、ソ連領からの復員促進に関する請願、日程第二、ソ連軍占領地よりの復員促進に関する請願、右両請願は同一の委員会に付記された請願でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長安東義良君。
  [安東義良君登壇]
#4
○安東義良君 ただいま上程に相なりました二つの請願につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果に関し御報告をいたします。
 去る八月四日、本請願を議題といたしまして委員会を開きましたところ、紹介議員小川原政信君より、一家の柱石をなしている多くの未復員者を、一日も速やかに帰還でき得るよう努力することは、現下社会不安増大の折、喫緊の要務なりと認め、留守家族の衷情を察し、本請願を紹介した旨の説明があり、坂東幸太郎君よりは、人道主義を標榜するソ連のことゆえ、人道主義に訴えて復員促進に努力せられたいとの説明があつたのであります。
 これに対し政府委員より、政府は連合軍に対し復員の一日も速やかならんことをしばしば懇願いたしており、その結果、昨年の暮米ソ間に成立した協定に基き、ソ連地区から毎月五万人平均で引揚げが実行されております、なお、シベリヤ方面の残留者は八十五万と推定されますが、今後の復員促進につきましては、連合國の誠意に信頼して可なりと認める旨の説明があつたのであります。右に関連し、抑留者と留守家族間の文通の円滑化等に関し質疑應答が行われましたが、それらの詳細につきましては会議録に讓りたいと存じます。
 かくして、外務委員会といたしましては、この請願の趣旨を達成するため政府当局の今後の一層の努力を要望するとともに、今般成立せる海外同胞引揚に関する特別委員会に連絡協力し最善を盡すこととして、本請願を採択すべしと議決いたしたのであります。なおこの請願は、本院において採択いたしました上は、これを内閣に送付すべきものと認めた次第であります。この段御報告いたします。
#5
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。両件は委員長報告の通り採択するに異議ありませんか。
  [「異議なし」と呼ぶ者あり]
#6
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて両件は委員長報告の通り採択するに決しました。(拍手)
   ――――――◇―――――――
   第三 海員組合法を廃止する法律案(内閣提出、参議院送付)
#7
○議長(松岡駒吉君) 日程第三、海員組合法を廃止する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸及び交通委員長正木清君。
  [正木清君登壇]
#8
○正木清君 ただいま議題となりました海運組合法を廃止する法律案につきまして、運輸及び交通委員会の審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 本案は、七月二十五日に本委員会に付託されまして、七月二十八日、三十日の二日間にわたり愼重なる審議をいたしました。ここに本案の趣旨を簡單に説明いたしますと、海運組合法は昭和十四年に制定されました法律でありまして、海運事業の統制を目的とする同業組合的な特殊法人である海運組合の組織と事業等について規定しているものであります。この法律は、組合の強制設立及び組合員並びにアウトサイダーの組合統制への強制服從等について規定しておりまして、本法に基く海運組合は、輸送統制や資材の割当、その他配給に関する諸機能を有しておるのであります。從つてこのことは、先般施行されました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の精神に鑑みまして、これらの統制團体を存置しておくことは、この際適当ではないと考へられるのであります。以上の理由によりまして、このような團体を解散させるために、その根拠法である海運組合法を廃止しようとするのがその趣旨の大要であります。
 委員会においては、運輸大臣より提案理由の説明を聽きました後、委員と政府側との間に熱心なる質疑應答が続けられましたが、その概要を申し上げますれば、第一に、海運組合法の廃止は單に私的独占禁止法の精神に触れるといふのか、あるいは具体的に法文に抵触するためなのか、その点について質疑がありましたが、これに対し政府委員より、独占禁止法第五條に該当することが明確であるのみならず、全体的に同法の精神に抵触する旨の答弁がありました。
 次に海運組合の廃止と船舶運営会との関係については、政府より、海運組合は主として機帆船の輸送統制が目的であつて、汽船の輸送統制を目的としている船舶運営会とは直接の関係はないとの答弁がありました。
 次に、海運組合法の廃止に関連して任意組合の設立を勧めるというが、この新しい組合の性格如何、またこの組合設立について政府は何らかの干渉を行うのか、さらに組合に加入しない者の資材の配給は如何との諸点につき質疑が行われ、この点につき政府側より、新しい組合は民法上のいわゆる任意組合であつて、設立は言ふまでもなく自由であり、政府は何らの干渉もしない、ただ政府としては、設立の弊に陷らないよう適当数の組合が設立されることが好ましいので、この点十分設立発起人と懇談していきたい、また任意組合は從來の海運組合とは異なり、輸送の統制、資材の割当配給等は一切行わず、これらはすべて政府がその責任において自ら行うことになる、ただこの場合、組合の意見も十分尊重していく、殊に政府が直接統制を行うに際しては、官民よりなる輸送協議会を設置して、輸送実績に基き、民主的に公平かつ適切なる割当を行つていくよう十分留意したい、さらに組合に加入しない者に対しても資材を配給することはもちろんであるとの答弁がありました。
 以上のほか、私的独占禁止法と戦時の國家統制に伴つて発展した独占企業との関係その他について熱心なる質疑がありましたが、詳細については会議録に讓ることにいたします。
 以上をもつて質疑を終了、討論に入りましたが、社会党より高瀬傳君、民主党より矢野政男君、自由党より前田郁君、國民協同党より木下榮君が、それぞれ党を代表せられ、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の精神に鑑み、これを廃止するは当然であり、任意組合の民主的発展を望み賛成する旨をそれぞれ述べられまして、直ちに採決に入り、全会一致をもつて原案の通り可決いたしました。右御報告いたします。(拍手)
#9
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
  [「異議なし」と呼ぶ者あり]
#10
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
   ――――――◇―――――――
   第四 國家賠償法案(内閣提出)
#11
○議長(松岡駒吉君) 日程第四、國家賠償法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。司法委員長松永義雄君。
  [松永義雄君登壇]

#12
○松永義雄君 ただいま議題と相なりました國家賠償法案について、委員会における審議の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
 まず政府原案の要旨について、御説明申し上げます。日本國憲法は、その第十七條において、「何人も、公務員の不法行爲により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、國又は公共團体に、その賠償を求めることができる。」と規定いたしております。しかるに、從來現行民法の解釈として、民法の不法行爲に関する規定は、國または公共團体の公権力の行使による損害には適用がないものとされていましたので、戸籍法、不動産登記法等、特別法に特に規定してある場合のほかは、被害者はその救済を求める途がないのであります。そこでこの法律案では、まずこの点に関する國または公共團体の損害賠償責任を明らかにするため、その第一條において、國または公共團体の公権力の行使にあたる公務員がその職務を行うについて、故意または過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、國または公共團体がこれを賠償する責に任ずることを規定してあります。なおこの場合に、故意または重大な過失のあつた公務員に対しては、國または公共團体から求償できることを規定して、当該公務員の責任を明らかにしてあります。
 次に道路、河川その他公営物のように、その設置または管理が公の行政作用に基く場合に、その設置または管理に瑕疵があつたため他人に損害を生じたときは、國または公共團体に賠償責任があるか否かは法律上明らかではなく、学説判例も区々でありますから、今回この法律案の第二條において、かような場合には、國または公共團体に賠償責任のあることを明らかにいたしてあります。なお、以上のように國または公共團体が損審賠償の責に任ずる場合に、たとえば道路・河川のように、その行政作用の主体は國でありながら、その費用は公共團体が負担するようなときは、費用負担者の方に損害賠償の義務を負わせるのを適当として、第三條においてその点を明示しております。
 以上に述べたほか、鉄道営業等のように、從來から國または公共團体に損害賠償責任のあることが解釈上明らかであつたものは從來の通りであり、また損害賠償の責任について、郵便法のように他の法律に別段の定めがあるときは、その定めによることとしてあります。法律案の第四條及び第五条の規定がこれに当ります。なお、國または公共團体の賠償責任につきましては、國により立法例が必ずしも一樣でありません理由から、外國人が被害者である場合には、第六條により相互の保証があるときに限りこの法律を適用することとなつております。
 なおこの法律の制定に伴い、他の法律の規定中公務員の損害賠償責任を規定したもので、この法律によることを適当とするものについて、本法案の附則において、それらの旧規定を削除いたしてあります。以上が政府原案の要旨であります。
 この法律案は、大体において民法の法律構成を踏襲した、わずか数箇條の規定にすぎないのでありますが、國民個人の基本的人権を不法権力より擁護すべきその内容の重要性に鑑み、委員会における審議の状態は愼重熱心をきわめたものでありまして、七月九日政府当局より提案理由の説明を聽取した後、ただちに質疑に入り、回を重ねること都合九日、その間井伊誠一君、安田幹太君、中村俊夫君、花村四郎君、北浦圭太郎君、佐瀬昌三君、荊木一久君、岡井藤志郎君、鍛冶良作君、明禮輝三郎君及び酒井俊雄君等の各委員と政府当局との間に、盛んな論議が展開せられたのであります。ここに質疑の要点をかいつまんで御紹介申し上げます。
 まず第一に論議の中心となつた点は、責任主義の原則についてでありまして、第一條において過失責任主義をとる限り、被害者側に過失の有無についての困難な立証責任を負担せしめることとなり、現実に國民に損害賠償請求権の行使を保障することはできないのではないか、憲法第十七條にいうところの不法行爲は、いわゆる客観的違法行爲により被害者の権利を侵害する行爲をも含むものであると考える、また近時学説・判例の傾向に鑑み、無過失責任主義をとるか、あるいは訴訟上の実情に照らして、その故意・過失ありや否やは、被害者の積極的立証を待たずに、いやしくも損害の事実が立証せられれば足るに止め、その挙証責任を國または公共團体に転嫁せしめるのが、憲法第十七條の要請に從うゆえんではないかとの質疑があつたのであります。これは主として岡井委員、佐瀬委員、花村委員、鍛冶委員及び酒井委員の諸君の質疑せられたところであります。これに対し、憲法第十七條は明らかに不法行爲を予定しているのであつて、現行民法一般の過失主義の建前を踏襲するのが妥当と考えたのである、無過失責任主義への方向は、責任保險制度の確立及び法制全般の改正と相まつて行わるべきであり、國または公共團体に挙証責任を轉嫁するとなれば、無過失の立証はきわめて困難であるから、結局支拂を余儀なくせしめられ、國家財政全体への影響も無視できない、また公務員の職務執行を臆病ならしめることや、濫訴の弊を伴いやすい欠点がある、その他一般不法行爲の損害賠償責任において原告側に立証責任を負わせているのと平仄が合わぬとの政府委員の答弁でございました。
 次に酒井委員、岡井委員および明禮委員等の諸君より、憲法第十七條には、すべて公務員の不法行爲により損害を受けたときは、國民に賠償請求権のあることをうたつているにもかかわらず、本法案においては、いかなる理由から公権力行使の場合に範囲を限定したか、將來行政機構の改革と相まつて、國または公共團体の活動範囲が非権力的な分野に及び、また法規上嚴格な意味の公務員以外の行動の範囲が拡大されることが予想されるから、せつかく今回統一的立法の際、賠償責任発生の要件としての不法行爲の範囲主体を拡張されてはどうかとの質疑がなされたのであります。これに対し政府当局より、從來國または公共團体の公権力の行使による不法行爲に基く損害については、從來救済規定がなかつたので、公務員の公権力の行使と不可分の行爲についてのみ國または公共團体の賠償責任を規定したのである、公務員の公権力の行使による不法行爲によるもの以外の國または公共團体の賠償に関する問題、及びその他公務員個人に対する賠償責任の問題は、現行民法及び他の特別法に規定する賠償責任の規定及びその解釈に任せることによつて十分憲法第十七條の要請にこたえ得ると考える、具体的に公務員の職権濫用あるいは職務逸脱行爲に基く損害も適用を受け、公務員が公権力の行使にあたつて詐術を用い、暴行を行つたような場合も該当すると考える旨の答弁がございました。
 さらに佐瀬委員、鍛冶委員及び中村俊夫委員等より、現行制度上、公権力の行使に当る公務員の概念、公務員の個人的責任及び公務員選任監督の責任如何との質疑がさなれましたが、これに対し、公権力の行使とは、警察権や司法権、あるいはたとえば税の賦課徴收のごとき財政権等の行使をいうのであつて、公務員の概念は、刑法のように限定規定がないから、大体解釈によつてきまるのであるが、廣く解釈し得るものと考える、公務員の個人的責任については解釈に任せる、本法案は、民法七百十五條のような選任監督に怠りなき場合責を免れる方式をとつていないから、選任監督の責任は問うところでない旨の答弁でございました。
 なお、次に岡井委員及び鍛冶委員より、第一條第一項の求償権の要件は、過失の輕重を問う必要がないではないかとの質疑がなられたのに対し、現行戸籍法、公証人法及び不動産登記法等の特別法も、重大なる過失を要件としている、重大な過失がなくとも國または公共團体は賠償の責に任ずるのであるが、これをそのまますべて求償するのは苛酷であり、公務員の職務執行を臆病ならしめるから、重大な過失のあるときに求償するのが妥当と考えたのである旨の答弁でありました。
 次に花村委員より、本法案第二條は民法第七百十七條と同樣の趣旨と考えるが、ことさらに法文の体裁上差異を設けた理由いかんとの間に対し、本條の道路、河川は顯者なものの例示であり、これら道路、河川その他の公営物については、公行政の面で取扱うもので、民法第七百十七條は適用せられないから新たに本法案において規定したもので、その他の公の営造物の中には、土地、耕作物、施設等がおもなものである、なお民法七百十七條の「保存」と同樣の意味で、行政法上の用語としての「管理」を用いている旨の答弁でありました。
 次に同條第二項の「他に損害に任ずるべき者」の責任原則いかんとの、佐瀬、岡井両委員の質疑に対し、故意または過失による債務不履行、契約不履行等に基く損害の原因について、その責に任ずるのであつて、すなわち、具体的には公営造物の設置または管理に瑕疵があれば、國または公共團体が賠償責任を負担するが、その請負人等に過失のあつた場合、その請負人に対して求償権を有する旨の趣旨であるとの答弁でありました。
 次に第三條について、第三條は費用を負担するものに対し、過失なきに責任を負わしめるものであり、法原理に反する、これはむしろ被害者保護のため、管理者と費用負担者の双方に賠償責任をもたせる二本建をとり、被害者はその双方のうち、いずれか一方を選択して賠償請求権の行使ができるようにするのが妥当ではないかとの質疑が、佐瀬君、鍛冶君、北浦君及び明禮君等の各委員よりなされたのであります。これに対し政府当局より、從來損害賠償請求の際いずれに請求すべきか不明瞭であつたのを明確にする必要と、損害賠償もまた費用支出の一部分と考えられるので、費用負担者が直接賠償責任を負担するも差支へなく、損害賠償の責に任じたものが再び費用負担者に求償する行政上の手続を省くため、このように規定したのである旨の答弁でありました。
 次に第四條について、前三條の規定によるのほか民法のいかなる規定によるかとの花村委員の問いに対し、たとえば民法中時効、過失相殺制度等の規定である旨の答弁がありました。
 次に、第六條について佐瀬委員より、国際法上、一面國家主義的色彩のある相互主義を清算して独自の責任原則を樹立することが、將來わが國の進むべき方向に合致するのではないかとの質疑がなされたのに対し、政府においては相互主義が現在妥当であるとの見解であつたのであります。
 附則については、公証人法第六條、民事訴訟法第五百三十二條削除の理由について鍛冶君、佐瀬君及び中村君等の各委員より質疑がなされたのでありますが、これに対する政府の答弁は、同樣に公務員でありながら、一部に特別の責任を負わせることは公平を失するものであり、これらの特別法の規定を削除しても、被害者はより強力な國によつてその損害を救済せられるのである、公務員個人の責任については一般民法の規定の解釈に委ねるのが適当と考え、公務員自体の責任を平均化するため、当該規定を削除した旨の答弁でありました。
 次に佐瀬君より、本法案施行前の行爲に基き施行後に発生した損害に対する処置いかんとの質疑がなされたのに対し、國または公共團体に賠償責任なしとの政府の答弁でありました。
 次にさらに佐瀬委員及び花村委員は、本法案施行と予算編成上の処置との関係について政府の見解を質したところ、本法案のごとく確定的数字を予測し得ない法律案の施行に対処するためには、大体名目的予算を編上しておき、不足分については予備費をもつてこれに充てる旨答弁せられたのであります。
 次に佐瀬委員より、本法案と自治体の立法権との関係について、近時自治体は廣い自治権を認められ、活動のための立法権すら附興せられている、從つて自治的な立法や個別的な契約をもつて本法案の適用を回避する懸念がある、政府のこれに対する見解いかんとの質疑に対し、本法案の適用を排除するためあらかじめ法律をつくつたとしても、憲法違反の法律として無効である、しかしすでに生じている債権の放棄までも阻害するものではないとの答弁でありました。
 その他本法案の審議に直接関係はございませんが、世耕氏の発言に関する新聞記事問題、やみ取締りに関する問題、その他諸般の部面について活発な論議が交されたのであります。以上、質疑應答の概要について御紹介申し上げました。
 次に佐瀬昌三君より、第一條及び第三條について修正案が提出せられました。その内容は、被害者側において過失の有無を立証することはきわめて困難である、しかのみならず、この訴訟の起る場合は、被告は常に國または公共團体であつて、一私人に対し公権力をもつて対抗してくるものであるから、特に原告を保護せなければ、本法制定の目的が達せられない、單に飾り物になるおそれがある、ゆえに過失の立証責任を被害者側に負担せしめている原案第一條をもつてしては、被害者保護の趣旨を貫徹し得ない、よろしく推定過失主義をとり、立証責任を國または公共團体に負担せしめなければならない、立法者は國家財政を願慮するのあまり、悠久の基盤に立つことを忘れてはならない、この修正は責任主義の秩序を乱すものではなく、法体系の進化に導くものである、また第三條においては、單なる内部的理由によつて、本法案が國と國民との関係を規定する原則をまげているのは妥当でないから、第三條において、國・公共團体も費用負担者とともに賠償責任をもつべきものであるという点にあるのであります。修正案を朗読します。
 國家賠償法案中一部修正案
 國家賠償法案中の一部を次のように修正する。
 第一條中「故意又は過失によつて」を削る。
 第一條第一項に次の但書を加える。但し、公務員に故意及び過失のないことを立証するときはこの限りでない。
 第三條中「費用を負担する者が」を「費用を負担する者も」に改める。
これに対し、荊木委員が民主党を代表して、修正案は現行法制の体系上妥当ではない、國あるいは公共團体の財政も考慮せねばならないし、またかかる基本的原則を設けるにあたつては諸外国の立法例をも參考とすることが必要である、第一條修正の要点たる、損害のあるところただちに過失を推定するごとき飛躍は、法律進化の道行きとして適当ではない、また本案の趣旨は、要は被害者に完全なる賠償を得しめるにあるのであるから、第三條についても特に修正する理由に乏しいとして、修正案に反対、原案支持の意見を述べられました。
 次いで、石川委員が社会党を代表して、裁判官が國民の裁判官であり、すでに裁判上釈明権が許され、立証責任の交流も行われているのであるから、修正案提出の理由にあるような懸念はないのみならず、必要以上に公務員の執行を精神的圧迫により束縛するのは、國民みずから享受する公共の利益を損うものである、第三條についても、訴訟経済と便宜の二点から原案を支持する旨の発言があつたのであります。
 次に花村委員より、原案のごとくせば法文は有名無実なりとして、佐瀬委員と同樣の趣旨を述べ、修正案に賛成せられたのであります。
 國民協同党を代表して大島委員より、濫訴の弊を慮り、法理論の一貫性を保持するため、修正案に反対し原案に賛成の旨の発言があつたのであります。さらに明禮委員、荊木委員が論議を重ねられた後、討論は終局致しました。
 次いで採決の結果、佐瀬昌三君提出の修正案は少数をもつて否決せられ、本案は多数をもつて原案の通り可決いたしました。以上御報告申し上げます。(拍手)
#13
○議長(松岡駒吉君) 討論の通告があります。これを許します。林百郎君。
  [林百郎君登壇]
#14
○林百郎君 國家賠償法案につきまして、日本共産党は、次の三点の希望を申しまして賛成をする次第であります。
 その希望の條件としましては、第一條におきまして、國または公共團体の公権力の行使に当る公務員という制限が一つ、違法に他人に損害を加えたとき、この二つの條件があるのであります。從つてこの二つの條件をもし嚴格に適用することになりますと、本案の具体的な適用の場合は非常に狭められるという危險が多分にあるのであります。從つて第一條の行使につきましては、この二つの制限を極力狭めること、これを濫用せざることという希望が一つ。
 第二点としましては、民法の七百十五條の免責の事由を適用させないということ、すなわち國または公共團体は、その公務員の選任及び監督について相当の注意をなしたということを理由にして、本賠償の責任を免れるようなことをなからしむること。これは民法七百十五條は、個人関係の間の法律関係でありますから、われわれの解釈としましては、國家権力行使の本案の場合には、当然適用がないと解釈しておるのであります。從つて具体的な本案の適用の場合においては、民法七百十五條の免責の事由を行使しないということを希望しておきます。
 その次に第三條の点についてでありますが、第三條は、國家並びに公共團体が、その賠償責任を免れて、賠償能力のない、経済的に無力な実際の費用負担者に、この賠償責任を轉嫁させる危險が多分にあるのであります。從つて本案第三條の適用については、かかる國並びに公共團体の賠償責任を、実際負担力のないところの費用負担者に轉嫁させないように十分注意することという希望をもつておるのであります。
 なお聞くところによると、本法案は將來さらに拡充改正されるということでありますが、もし將來そういう機会がありましたならば、むしろ第三條は抹消すべきものという希望をもつておるのであります。
 その次に、なお念のために本法施行についての実際上の手続について、三点ほど希望を述べたいと思うのであります。第一には、國または公共團体に対する損害賠償の請求訴訟は原則として無料とすること、かくして人民の國家に対する賠償請求権を実際的に行使する範囲を廣めておくこと、第二としましては、國または公共團体が被告として敗訴した場合においては、法律の違法を主張する上告は許すけれども、控訴は許さない、この訴訟がいたずらに長くなつて、実際に人民に対する賠償責任が消えてしまうことのないように、訴訟手続はなるべく簡素にすること、以上要約しまして、本法施行の実際手続は極力簡素化すること、この希望を附しておきたいと思うのであります。
 もし、以上の希望が実際に適用されない場合には、本法案は実は画に描いたもちにひとしい結果になる危險が多分にあると思うのであります。かくすれば、憲法十七條のわれわれ人民に與えられたる権利も、実に本案の画餅によりまして実際の効力を享受することができないという危險が多分にあると思うのであります。どうか本案が実施せれるについて、人民に憲法によつて與えられた権力が実際行使されるように、実際的な効力が発揮せられるように、以上述べました希望條件が極力実施されんことを希望して、日本共産党は本法案に賛成する次第であります。終り。
#15
○議長(松岡駒吉君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
   ――――――◇―――――――
   労働省設置法案(内閣提出)
#17
○土井直作君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、労働省設置法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進めらんことを望みます。
#18
○議長(松岡駒吉君) 土井君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 労働省設置法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。労働委員長加藤勘十君。
    [加藤勘十君登壇]
#20
○加藤勘十君 ただいま議題となりました政府提出にかかる労働省設置法案の、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本法案は、わが國現下の労働問題の重要性に鑑み、労働行政機構を整備強化して、諸般の労働政策を強力に実施、推進するために、労働行政を專管する一省を新設せんとするものであります。本案はすでに幣原内閣以來懸案事項となつておりまして、さきに労働関係調整法案及び労働基準法案の審議の際にも、労働省設置の必要が強く要望せられたのであります。しかしながら、諸般の都合により今日まで遅延しておつたのでありまするが、今回片山内閣によつて提出せられ、労働委員会に付託されたのであります。
 しかしながら本法案は、新たに労働省を設置せんとするもので、現在の行政機構に重大なる改革を加うるものでありますがゆえに、行政機構を所管する決算委員会にも重大な関係がありますので、衆議院規則第六十條により、同委員会との連合審査会を開くことに決したのであります。
 かくして七月二十八日より七月三十一日に至りまするまでに、四回にわたつて連合審査会を開き、さらにその後労働委員会は八月一日より七日まで二回開催をいたしまして、愼重に審議をいたした次第でございます。政府からは米窪國務大臣、一松厚生大臣、齋藤國務大臣を初め、その他の政府委員が出席されて、眞摯なる答弁、説明があつたのであります。以下、その主要なる点を申し上げます。
 第一に、労働省の設置は諸般の客観情勢より見てその必要は認められるが、ことは行政機構上きわめて重要なるものであり、目下懸念の行政機構全般の改革問題との関連において考慮せられなければならないと思うが、この点について政府はどのように思うかという質問があつたのであります。これに対し政府からは、行政機構全般の改革問題は当面の重要問題であり、政府は行政調査部を中心としてこれが具体案を調査審議中であるが、ことはきわめて廣汎にして、かつ複雜困難なる問題を含み、急速に結論を出すことが困難であるのと、一方労働省設置は早急にこれを実施する必要があるので、本件は行政機構全般の改革問題とは切り離して実施することにいたした旨の答弁があつたのであります。
 第二に、最近における諸官廳の増設と官吏の増員の傾向は、敗戰後におけるわが國の行政簡素化と逆行するものであるが、労働省の設置そのものはやむを得ないと思うけれども、これが設置、運営にあたつては、できるだけ予算、人員を節約し、少数の人員をもつて能率をあげ、行政上の浪費をなくするように十分考慮されたい旨の質問がありました。これに対し政府からは、行政の民主化、簡素化は現内閣の基本政策の一つであるので、労働省の設置にあたつても、この点には最も細心の注意を拂つており、すなわち労政局、労働基準局及び職業安定局の三局は、現在厚生省にある三局をそのまま引継ぐことにしており、新たに設けられるものは、大臣官房と婦人少年局及び労働統計調査局の二局に限定し、これの定員も必要の最小限度に止める旨の答弁があつたのであります。
 第三に、労働省設置の眼目は、從來各省に分属していた労働行政を一元的に統合し、もつて総合的かつ強力なる労働政策を実施することにあると思われるが、この点において本法案はなお不十分である、殊に船員労働行政を從來通り運輸省に残すことは、陸上労働と海上労働の行政を二分するものであり、労働行政一元化の見地より見るときは、はなはだ遺憾である、労働省出発の当初より、その政治力、行政力を弱体化するものであると思われるが、政府はこの点についてどのように思われるか、こういう質問に対しまして政府は、労働行政の一元化はもとより理想であつて、本法案においてもできるだけこれが実現に努めたのであるが、船員労働については、從來の沿革と船員労働の特殊性、すなわち船舶の航行安全、規律と船員労働とは一体不可分であり、海運行政全般を所管する運輸省において所管することが、少くとも過渡的には適当であるという観点から、これを一元化することはとらなかつた、但し船員労働行政も労働行政の一環であり、両者は一貫した理念をもつて運営され、その間にいささかの矛盾があつてはならないので、この間の連絡調整をはかるために、労働省に連絡協議会を設けて遺憾のないようにする旨の答弁があつたのであります。
 第四に、労働者災害補償保險を初め、健康保險、厚生年金保險等の労働者に関する保險は労働省に統合すべきものである、この点に関し厚生省との間に意見の相違があるように思われるが、これに対して政府はどう思うか、こういう質問がありました。これに対し政府からは、各種保險はそれぞれの特異性をもつが、その実施運営においては、保險技術を通して共通の性格を有し、特にその手続の間において一本に統合せられることが便宜であり、かつ國民生活の保障ないし衛生行政との関連もあるので、厚生年金保險及び健康保險はこれを從來通り厚生省の所管とし、ただ労働者災害保障保險は、労働基準法と表裏一体の関係にあるので、これを労働省に移管することに決定した旨の答弁がありました。
 第五に、労働省の地方行政機構に関して、都道府県の労働部その他労働行政主管部と、労働省直轄の行政機関とが分離併置せられることは、行政の多元化、煩雜化となり、行政の簡素化に反し、これより受ける國民の不便もはなはだしいのであるが、これをできるだけ早い機会にいずれかに統合されたいとの要望に対し、政府は同じ意見であり、その線に沿つて善処する旨の答弁がありました。
 第六に、労働省内に独立の婦人局を設置し、各省行政にわたる婦人関係事務に対して参画するような委員会のごときものを設けて、婦人行政の強化を期せられたいという希望に対しましては、將來はその方向に向かうべき必要がある旨の答弁がありました。
 第七に、現在のわが國の労働組合の現状より見て、労働教育はきわめて重要であり、今後はこれは最も重点をおくべきであると思うが、これに対する政府の所信はいかんという質問に対しましては、政府は労働教育の重要性についてはまつたく同意である、このために労政局内に労働教育課を設け、強力活発に実施するが、この運営に関しては、あくまでも労働組合の自主性を尊重し、その自主的活動に期待することとし、政府はこれに便宜を與え、促進する方向に重点をおき、上からの官製的教育のごとき嚴にこれを愼しむ方針であるとの答弁があつたのであります。
 最後に、本案に関連いたした重要問題としまして、まず第一に、労働統計調査は現在のところ権威あるものが整備されず、各種施策の基本となる重要資料が得られないのを遺憾とするが、労働省の発足にあたり、政府の所信はどうであるかという質疑に対しまして、政府としては現在の各局課におけるそれぞれ分割せられておる統計事務を一元化し、新たに労働統計調査局の一局を設けることとしておる旨の答弁があり、その趣旨によつて生じたものがすなわち労働統計調査局である、こういう答弁がありました。
 次に失業対策について、企業整備、流通秩序の確立等による失業者に対する失業対策の具体的方策が質されたのであります。政府はこれに対して、公共事業の実施により、極力就業の機会を興うるとともに、失業保險制度、失業手当制度の実施を予定しており、失業保險、失業手当両法案は、近く本國会に提案の運びとなる旨の答弁がありました。
 次に、賃金については相当論議が集中せられたのであります。その要点は、政府は実質賃金の確保を期することを経済緊急対策において示しているが、これが実施は賃金決定と同時には行われがたいので、実質賃金が確保せられるるまでの期間は、いわゆるずれが生ずるが、このずれに対し、この間賃金をいかにして経済情勢に即應せしむるものであるか、こういう質問に対しまして政府は、新物價体系を堅持して、物價と賃金との惡循環を断つ方針であるが、これが困難で、生活費に容易ならぬ影響を及ぼすようであれば、補給金等による國家補償も考慮される旨を答えられたのであります。以上が、大体本法案に関するおもなる質疑應答の概要であります。
 かくいたしまして、本法案に対する質疑は八月五日終了をいたしまして、本日午前討論に入りましたところ、自由党の三浦寅之助君より意見を述べられ、各派一致の附帶決議を附して原案に対する賛成の意見が述べられました、その附帶決議は、
 一、労働省の新設に伴い、中央並に地方労働行政機構を可及的速かに一元的に整備するように努めること。特に地方における労働行政の窓口も一元化し、事務の簡素化を図ること。
 二、労働の生産性、労働能率の向上及び労働者教育の徹底に関し、政府は速かに善処すること。
 三、労働委員会の拡充強化を図り、中央労働委員会の運営に関しては、國会の労働委員会と有機的連繋を図るようにすること。
 四、労働省設置に際しては、配置轉換等による官吏総数の増加を極力避けること。
以上の四項であります。これに対し、社会党の辻井民之助君並びに民主党の小林運美君より、それぞれ附帶決議賛成の意見が述べられ、かくしていずれも原案に賛成された次第であります。以上簡略ながら委員会の審議並びに結果の情勢を御報告申し上げます。(拍手)
#21
○議長(松岡駒吉君) 討論の通告があります。順次これを許します。小林運美君。
    〔小林運美君登壇〕
#22
○小林運美君 私は、民主党を代表いたしまして、労働省設置法案に対し賛意を表するものでございます。
 労働省の設置は、諸外國を例にとつて考えてみましても、文化國家としての体面上からも、遅きに失したものでありまして、第一回國会において本法案の上程をみるに至つたことは、まことに意義あるものと思はれるのであります。
 本法第一條に、労働省は労働者の福祉と職業の確保とをはかつて、わが國経済の興隆と國民生活の安定に寄與するとあります。これは、どこまでもその目的とするところは、労働者を中心としてのものでありまして、戰後逼迫せる國家財政から巨額の予算を使いまして、いたずらに大臣を製造したり役人を増加するのが目的ではないのであります。
 先般政府が発表いたしました経済実相報告書にも明らかな通りでありまして、わが國の生産力の根源であります労働力は、戰前の三分の一程度に下りました。失業者は、潜在失業者を加えまして一千万人に達する状況にあるのであります。これらの失業者は、現在のインフレの波にかくれてはおりますが、この狭い國土に失業者が右往左往いたしまして、容易ならざる事態に立ち至ることは、火を見るよりも明らかなる事実であります。政府は各種の保險制度、労働者の保護に関する施策を行わんとしておりますが、今までのような官僚独善的なペーパープランでは、この重大問題は解決できないのでありまして、勤労者多年の要望でありました労働省が生れ、労働運動の実践者をもつて任ずる米窪國務大臣が、初代の労働大臣としてこの重責を担つて立つておられます。委員会におきましても大臣は、労働省はサービスをモットーとするお役所であるということをしばしば言明されておりますが、もう一歩前進いたしまして、大臣みずから労働者とともにこの非常時局を乘り切る覚悟をもつて当つてもらいたいと思うのであります。
 次に、本法案によつてできます労働省は、その氣持の上からも、また條文の点からも、労働者に対する教育の徹底ということに欠けておる点が多々あるのでありまして、この点につきましては、委員会においても各委員より強調されまして、附帶決議といたしまして強く要望されました。佛をつくつて魂のはいらないものであつては何にもならない。働く者に眞に働く意義をもたせ、快く仕事を樂しみつつ働くように、極端なる労働運動のごとき、かえつて神聖なる生産を阻害するものであることを、納得のいくまで正当なる労働教育をいたさなければならないのであります。
 特に婦人の労働教育に関しましては、その指導方針におきまして、またその取扱いの方法におきまして、特に注意をしておきたいと思います。この問題に関しましては、先般委員会におきまして國務大臣に特に念を押しておきましたが、大臣は、新憲法による男女同権を、この省においては大臣みずから他省の範となるよう実行すると約束をされております。なおこの法案によりますると、婦人少年局となつておりまして、婦人と子供ー從來弱い者は女と子供だというように簡單に片づけておりますが、さような考えでは、ただいま申し上げました男女同権の問題も、昔と何ら変りはなにのではないかと思われます。婦人労働の問題に関しましては、たとえば労働賃金において、仕事によつてはとうてい男子が及ばないような仕事があります。ただ女なるがゆえに安いという考えで賃金をきめておる場合が多々あるのでありまして、これらは、從來の因習にとらわれず、眞に労働の価値判断を誤らないように、公正なる立場から決定せなければならぬと思うのであります。労働基準法にあります寄宿舎の問題であるとか、女子の生理休暇の問題であるとか、法の規定以外にも実質的に解決すべき問題が多々あるのであります。
 次に私は、労働能率の向上について申し上げたいと思います。先ほども申しましたように、経済白書によりますると、昭和八年の石炭労務者の一人当りの出炭量は、十八・九トンとなつておりますが、昭和二十二年の本年は、約五・五トンでありまして、三分の一以下となつております。また國有鉄道の從業員を見ますると、昭和十一年と昭和二十一年では、運転キロ数は同じでございますが、從業員数は、二十二万八千人が五十七万三千人となりまして、約二倍半になつております。これらは食糧の問題であるとか、資材とか、その他の関係によりまして、全部が労働者の責任に帰することは早計でありまして、機械設備の不足を人をもつて補つておるとかいうような場合が多いのでありますが、とにかく労働力の低下と申しましようか、能率が非常に落ちておりますことは事実であります。
 われわれは、汽車に乘つてみましても、あるいは電話一つかけてみましても、思い当ることが多いと思います。労働者の正当なる要求は十分に了解せねばなりませんが、知らず知らずにサポタージュに似たものが、不健全なる労働運動によつて労働能率の低下を來しているのではないかと思われるのでございます。(拍手)これらに関しましては、経営者の側にも一端の責任があるのではないかと思われます。労働攻勢の前にへたへたとなつてしまつて、当然なすべきこと、言うべきことを言わない。経営者も自暴自棄になつて、大切な國家再建のための生産能力を落しておるのではないかと思われます。これらは、労働省といたしましても重大なる問題でありまして、労働者も経営者もともに大いに自粛自戒せねばならぬことであります。
 なお、労務者に対する必需物資の特配に関しましても、生産増強のため、少い物資を國民の節約によつて特に配給するものである以上、労務者もその氣持で、生産のための特配であることを認識して働いてもらいたいのであります。一面、これらの貴重なる特配物資を経営者側で横流しをするような事例があるようでありますが、これらに対しては、國民としてまた政府としても、特に嚴重なる取締りを要求しなければならぬものであります。
 現在の失業者は、完全失業者百五十万、不完全失業者二百五十万、潜在失業者が数百万ございまして、合計一千万と称されております。これは單に一労働省としての問題ではなくて、政府といたしまして、一大決意をもつて対策を講じていかなければならないのでありまして、從來のようなお座なりの職業補導所等に任せておく問題ではないのであります。國有林の拂下げであるとか、画期的なる大規模の公共事業を計画いたしまして、將來移民等が許されるまでは、重点的に政府の施策を要するものと信ずるものであります。
 労働省の設置は、先ほども申しましたように、諸外國の例をとつて考えても、今日のわが國の情勢から考えましても、必要欠くべからざるものでありまして、当然のことと思われますが、現在のような官吏制度、官尊民卑の思想で、役人は國民の上にあるのだというような態度では、相変らずの國民生活と離れたお役所ができ上るのではないかと思うのであります。新しい憲法が、第一回國会によつて生れました。しかも労働者にサービスするという氣持でいくこの労働省は、役人の頭の入れかえをせねばならないと思うのであります。同時にこれらの仕事は、今までの厚生省の大部分のものが配置轉換されるのであります。この苦しい國家財政から経費を出してやるのでありますから、役所の体面とか、または不要不急の人や物をとりそろえるというような必要はないのであります。附帶決議にもありますごとく、官吏の総数増加を來さぬよう、特に注意を申し上げる次第でございます。
 最後に、労働省の設立は三党連立片山内閣において成立をみるものでありますが、決してこれは一党一派によつてできたものではないのであります。この点を強調したいものであります。官吏も労働者も資本家も一体となつて、この難局を打開しまして、文化國家再建の原動力となることを希望し、特に附帶決議を完全に実行されることを望み、本案に賛成するものであります。(拍手)
#23
○議長(松岡駒吉君) 原侑君。
    〔原侑君登壇〕
#24
○原侑君 私は、日本自由党を代表いたしまして、本日上程になりました労働省設置法案に対しましては、若干の希望を申し述べるとともに、賛意を表したいと思うのであります。
 本労働省の設置に対しましては、二十一年五月吉田内閣が成立いたしますと同時に、労働省設置に対する研究に着手いたしましたが、当時勤労者階級にいたしましても、この労働省設置問題に対し、いわゆる労働問題に対する脚光を浴びるごとき欲求をいたしたのであります。その後、御存知の通りに片山内閣が成立いたしまして、この法案の踏襲をいたしたと私は思うのであります。本労働省設置に対するところの希望は、御存知の通りに八十九議会において社会党より提案せられました。しかも吉田内閣と通しまして、本片山内閣によつて具体化され、労働省が設置に至るということに対しましては、原因結果の上から見まして、まことに因縁深きものがあると私は思うのであります。
 しかしながら諸君、この急速に設置いたしますところの労働省に対しまして、設立は先月一日にこれを閣議に提案せられたようであります。しかるに、一松厚相と米窪國務相との間におきまして――一松厚相は、委員会におきまして信念の違いだと言つているのでありますが、信念の違いか、あるいは政策の違いかわかりませんが、いずれにいたしましても、一松厚相と米窪國務相との間に意見の相違を來しまして、六日に至つて、片山、芦田両氏の裁断にこれを任せたのであります。しかるに、この裁断でも裁断できずいたしまして、結局たれが裁断いたしたかと言いますと、資本家代表六人と労働者代表六人が出まして、結局労働者災害補償保險法に対して、労働省にこれを主管せしめるものであるという所轄問題を決定いたしたのであります。
 ここに諸君、重大なるこの労働省設置に対しまして、本内閣が地方の資本化と労働者に聽かなければ、これが決定できなかつたという弱体を暴露いたしたものと私は考えるのであります。(拍手)この点に対しましては、おそらく三党連立に対する内部的弱体が、皆さんの中にははつきり認識せられておると思うのであります。諸君、この労働省設置に対しましては、早急にこれをやるということに対しては、だれもがこれを欲求いたしておつたのである。しかも官房長官西尾氏は、まことに不手際で相済まぬということをはつきり紙上に述べております。まことに遺憾とせざるを得ないと思うのである。
 第一に皆さんに申し上げたいのは、附帶條件の第一でありまするが、この労働省設置に対しまして、労働基準法における労働基準監督署ができるのであります。これは御存知の通り三百三十六できるのでありますが、この地方分権をわれわれは支持いたす。地方における自治分権に対しましては、自由党の今日最も主張いたすところである。しかるに労働省における基準局は、監督署が三百三十六箇所できまして、地方における勤労課その他との連繋がいかになるかということに対しまして、非常に私は憂えるものである。いわゆる中央機構が地方分権に対するところの両者の関係、この関係に対しまして、一元化いたすことはまことに好ましいことでありますが、地方分権におけるこの反撥を受けて、はたして円滿にこれが遂行できるものかどうかということに対しまして、私は憂えざるを得ないと思うのであります。この基準局たるや、眞に民生的に、その地方地方における民主的な人物を選びまして、地方分権に対しましても権威あるものをつくらなければ、私とうては地方分権における勤労課その他に対して、これに指導を與えることは望むことができないと思うのであります。この点につきまして、第一にこれを一元化いたし、円滿にこれを遂行いたそうという條件を加えたのである。
 第二には、御存知の通りに保護政策は多々あるのであります。しかしながら、生産能率面における局課というものが非常に少い。同時に教育は各組合の自治に任してこれをやらしめると、こういうのであります。自治制を尊重いたしますことは、もちろん民主主義の上に対しまして、社会党のイデオロギーとしての当然これはそうあるべきが至当であると思う。しかしながら諸君、晝働いて夜勉強しなければならない労働者というものの教育を、いかにいたそうというのでありましようか。あるいは婦人の問題にいたしましても、婦人の啓蒙問題に対して、いかなる教育を施そうとするのでありますか。
 今日労働省としての教育方針といたしましては、一つのパンフレツトによつてこれを補い、あるいは講演会によつてこれを補おうというがごとく、まことに小なる教育方針を立てておるのである。私は、労働者のみならず、資本家も教育いたさなければならぬと思うのである。企業者も教育いたさなければならぬと思うのである。私は、今日の日本の労働教育、あるいは労働運動に対しましても、揺籃期であるような氣持をいたしておるのであります。この教育の問題これは、新日本建設のためにも、民主政治確立のためにも、最も、重大なことであろうと私は思うのであります。願わくは、いわゆる企業者や労働者や、すべての少年、婦人に対しての根本的教育方針を立てていただきたいということを希望いたすのであります。同時に、文部省におけるいわゆる少年教育、社会教育、青年教育に相対しまして、労働者青年教育に対するところの根本的方針を確立いたしてほしいと思うのである。
 第三は、中央労働委員会の構成及び地方におけるところの労働委員会に対しまして、希望を申し述べてみたいと思うのである。それは大体中央労働委員会にいたしましても、地方労働委員会にいたしましても、その職務の状態、その制度、こういうものに対しまして、まだ認識がはつきりいたしていないということである。第二は、いわゆる地方委員会におきましては、官僚がいたしておつて、縣廳の一部分、勤労課のすみにわずかの机を置いて地方労働委員会を進めておるというような、労働委員会に対する確たる権限がはつきりわかつていない点があると思うのである。これがために、御存じの通り爭議がたくさん起るけれども、結局労働委員会で扱うところの爭議件数というものは、二%か三%に過ぎぬというような状態である。各縣におきましても、あるいは労働会館を建てて、そうして地方労働委員会の眞実な働きをなしておるところの縣があり、縣廳の片すみにおつて、そうしてその所さえないような実情にあるところの地方委員会があるのである。こういうものに対しましては、やはり地方分権制度における地方廳というものも、十分これを活用すると同時に、地方における有力者もこれに入れまして、そうして眞実な地方委員会というものを確立いたさなければならぬと思うのである。
 中央労働委員会におきましては、御存じの通りの機構でありまするが、この機構に対しましても、國会の意思を尊重してもらわなければならぬと思うのである。われわれ國会におきまして労働委員会が設立された以上は、中央労働委員会における人選に対しましては、あらかじめ國会の意思を尊重いたしまして、われわれの労働委員会にこれを付議していただきたいということを希望いたすのである。これであつてこそ、初めて民主議会が構成せられ、民主政治が構成せられるものであると私は思うのである。
 第四におきましては、御存じのように現在労働攻勢がとられております。いわゆる資本攻勢ではない、すでに労働攻勢がとられておるのでありまするが、この労働攻勢に対しまして、はたして政府はしつかりいたした対策が立つておるかどうか。失業保險制度に対しましても、その統計さえまだはつきりいたしておらない。まだまだその成案ができていないというがごときは、まことに片山内閣といたしまして、その性格の上から残念に思わざるを得ないのである。
 諸君、この一大経済危機に際しまして、失業者の救済なんかできていない。突然起りました飲食店及び料理屋組合におけるところの失業問題に対しましても、ただ紹介所を通して何とかいたそうというだけであつて、何らの具体案がなく、國会にも付議いたさずして、ただ法によつて、内閣によつてこれを施したというがごときは、まことに計画なく暴挙をあえてしたと言わざるを得ないのであります。
 諸君御承知の通りに、労働基準法ができますれば、結局八時間制度を彼らは要求いたすでありましよう。今日東宝がこれを要求いたして、ストをやつております。食糧問題、生活問題に対しましては、もちろんこれはストの原因であろう。食糧問題を基礎にいたしまして、五つの印刷会社が御存じの通りにストをやつておるのである。最近はようやく三木逓相が解決したようでありますが、半ドンである。(笑声)かくのごときは、まことに子供くさくて、議場においても話にもならぬようなことをやつておるのである。(笑声)いわゆる十一年の閣令なるものをもつてこれに対抗して、閣議でこれを決定した。古くさいやつで――そうして逓信省その他において、勝手に指令を出してストを決行いたしたのであります。半ドンを決行いたしておるのであります。これは半ストかもわからぬと思います。(笑声)
 かくのごとき欠陷は、諸君どこにあるかということである。私は政府の労働攻勢に対する一つの油断であるということを断定せざるを得ないのである。今回は、御存じの通りに劃期的なるところの重大なる労働省が確立せられまするからして、第一條に明記せられた通りに、労働者の福祉、職業の斡旋――確実に職業を與え、経済の興隆に寄與し、國民の生活を安定すると書いてあるのでありまするが、はたしてこの第一條が米窪大臣によつて完成せられるかどうか。米窪國務相は、やがては労働大臣になるでありましよう。はたして完全に労働省の大臣として國民の生活を安定せられ、國家経済の興隆に寄與せられることができるかどうか。まことに私は疑問とせざるを得ないのであります。(笑声)まことに簡單でありましたが、希望を述べまして、本労働省設置法案に対しまして賛意を表する次第であります。(拍手)
#25
○議長(松岡駒吉君) 相馬助治君。
    〔相馬助治君登壇〕
#26
○相馬助治君 思うに、労働省設置法案の法案内容がどれほど進歩的でありましても、またどれだけ民主的でありましても、そのことがすぐに労働省の福祉を意味するものでないこと、また生産性が十分に発揮されることが意味されるものではないということは、われわれが知るところでございます。そこで、政府がこの労働省設置に対してどれだけの決意をもつておるかということと、関係大臣以下閣員各位がどれだけ良識と努力をもつてこれに当るかということが問題でありまして、この人によつて生命が與えられ、性格づけられるということを考えますがゆえに、私は條件附きで賛成するものであります。ただ手放しで賛成するわけには絶対にまいらないのでございます。
 今まで委員会等におきましても、各委員、それから米窪國務相並びに政府筋から、私どもはたびたび健全なる組合主義であるとか、健全なる組合運動という言葉を聞いたのでございますけれども、從來ともすると健全なる労働組合というのが、とんだ化物みたいな御用組合であつてみたり、あるいは非常に意味のない、そうしてくだらないことに、この健全という美しい言葉がかぶせられていたことを思いますと、私どもは、この健全な労働組合というものは、労働組合それ自身が自主的にきめるものであるからして、あまり政府筋ではおせつかいをしてもらいたくない、こういうことを申さざるを得ないのでございます。
 疲弊のどん底にある日本の現実において、経済の再建、祖國の復興の中においてのみ、はじめてわれわれ勤労大衆の幸福がある。こういうことは、今ひとしく労働者が常識をもつて自ら知つておるところでございます。こういうことを考えますと、いわゆる労働者の階級的利害というものは、あくまでも國民的利害の上に築かれなくてはならないということは、あまりにも当然であります。けれども、國民的利害というこの立派な言葉の中に、多分に資本家の利害というものが露骨に露呈されておることを、われわれはたびたび見せつけられてまいつたのであります。
 何が健全なものであるかということは、労働者及び労働組合が、その良心をもつて自主的に決定すべき段階が來つつありますし、またわれわれはその責任をもつものであると同時に、政府はこれらが自主的に良心をもつて決定することができるように、あらゆる便宜をはかり、これを誘導していかなければならないと私は思うのであります。角を矯めて牛を殺すといつたようなことをやつてほしくない。こういうことが私の言わんとするところでございまして、先ほど原侑さんが、國では労働者教育の根本方針を決定して、もつと積極的にやれ、こういう意味のことをおつしやいました。委員会にもこのことが出ました。このことに対して米窪國務相は、その精神はわかるが、ことはあくまでも組合の自主性にまちたいと立派なことをおつしやいました。私はこの國務大臣の言葉を多とするものでございます。
 そういうような意味合いにおきまして、この設置法案の第五條の労政局の管掌事務の中に、労働に関する啓蒙宣傳に関する事項、こういうのがございますが、これはあくまで労働に関する啓蒙宣傳に関して、労働組合とか、あるいは使用者團体とか、こういうものに対して便宜を與えるの権である。こういう内容において私は賛成を表するものであります。
 次に第九條の労働統計調査局の問題でありますが、労働行政を眞に一元化し、危殆に瀕しているところのこの日本の経済を救うためには、まずその先決問題として、科学的な立派ないろいろの統計が成り立たなければだめだと思います。そういう意味合におきまして、この統計局においては、ただ單に当てずつぽの推定調査をしてみたり、あるいはわずかの区域に限つて抜き出し的の調査をしてみたり、こういうことのないように、ひとつぜひ労働者にとつても、資本家にとつても、良心的な調査を嚴密になさることを私は希望するものであります。
 なお船員労働については、先ほど加藤委員長の説明の通り、これは運輸省に任されたのでありますけれども――陸と海との労働行政は違うと言えば、それまででありますけれども、この劃期的な労働省の出発にあたつて、労働行政を真に一元化するためには、現実に妥協して、この船員労働を運輸省に任せたことは、まことに残念なことに思えるのであります。しかしながら米窪國務相は、これは過渡期的の現象であるとおつしやておりますがゆえに、私はその言葉を信用し、行く行くはこれを一元化するように努力あらんことをお願いすると同時に、さしあたつては運輸省との連絡について、精力的に、しかも有効にこれを運ばれるように、一層の努力を切望するものであります。
 次に婦人少年局の問題でありますが、これは加藤シヅエ氏が、女子供というようなことで一つかみにして、こういうことにしておるのはけしからぬとおつしやいましたが、まことにその通りであると思います。婦人解放の問題は、女の方のごきげんをとるためにやることや、それからまた婦人のための問題だけでなくて、日本民主化の基本的な要件であります。封建的な桎梏のもとに永くつながれてきた婦人の解放なしには、断じて日本の民主化はないという線から考えましても、ゆくゆくは労働省だけでなくて、あの厚生省に、あるいは文部省に任せられているこれらのことをみんな一つに集めて、そうして婦人労働行政、また廣くは婦人問題について、もつと一まとめにして、有効にこれをやるところの用意がなければならない。從つて機構の上では、單独の婦人局を設置するの用意があつてしかるべきものではないかということを申したいのであります。
 最後に私は、労働省新設に伴う官公吏の問題について、一言触れておきたいと思います。今日わが國が深刻なる経済危機にあることは、何人も認めるところでありまして、こういう段階において私考えてみますのに、理窟なしに國民の税金で養われている人間をなるべく減らすということ、國民の税金で養われてるお人たちをフルに使うといふこと、このことがなさなければならないと思うのでございます。こういうことを考えてみますと、われわれは、この労働省の問題についても、労政局であるとか、その他の局がそのまま厚生省から労働省に移管されて、人数は殖えない、こういうことを聞いただけで安心するわけにはまいらないのであります。厚生省から労働省に仕事が移つて、労働省に新しい役人ができてくる、これは当然であります。ところが仕事の減つた厚生省が、案外に役人が減らない。こういうことが今までのあり來りの例でありますがゆえに、われわれは、これに対して十分監視する用意があることを言わざるを得ないのでございます。
 かつまた地方の労働基準局においては、どのようなかつこうにおいて將來出張所長となるもの、將來監督官となるものが採用されておるかということを、皆さん御存じでありますか。かつて退職したような古手の吏員なんかをひつぱつてきて、いろいろ人を集めて、今地方の労働基準局の役職員が構成されつつあります。このような人に、眞実に労働基準局の番人である資格がないということを指摘するとともに、これらの官吏が、どんどん地方においては、縣廳の下にある労政課とけんかをしながら殖えつつある。こういうことを私は言わざるを得ないのであつて、これではまるで労働者の福祉のための労働省ではなくて、官吏の福祉のための労働省だというような惡口も、將來成り立つのではないかと懸念するものであります。こういうことを考えますと、もう少し口の惡いことを率直に言わせてもらうならば、労働省というものをつくる経費をやめにして、さしあたりわれわれ勤労大衆の勤労所得税を撤廃してくれ、こういうことを申し上げなければならないと思うのでございます。
 とにかく今日新物價体系と賃金のこの時間的のずれ、それから食糧問題その他いろいろな問題で、勤労大衆は耐乏の限界点にすでに達しました。労働攻勢もまたイデオロギーに支配されるのではなくて、食えないという現実の前に熾烈なるものが起ることは予想されるのでありまして、こういう際に、労働省においてはこの点を十分考えられて、最も進歩的に、そうして労働省が他の省に先がけて最も民主的に運営されるように、努力を願いたいと思うのであります。
 以上のことを申し述べまして、私は小会派を代表いたしまして、賛成演説を申し上げた次第であります。(拍手)
#27
○議長(松岡駒吉君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
  [「異議なし」と呼ぶ者あり]
#28
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
 次会の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
    午後四時十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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