くにさくロゴ
1953/08/06 第16回国会 参議院 参議院会議録情報 第016回国会 厚生委員会 第29号
姉妹サイト
 
1953/08/06 第16回国会 参議院

参議院会議録情報 第016回国会 厚生委員会 第29号

#1
第016回国会 厚生委員会 第29号
昭和二十八年八月六日(木曜日)
   午前十時十六分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     堂森 芳夫君
   理事
           大谷 瑩潤君
           常岡 一郎君
           藤原 道子君
   委員
           榊原  亨君
           高野 一夫君
           中山 壽彦君
           西岡 ハル君
           横山 フク君
           林   了君
           湯山  勇君
           山下 義信君
           有馬 英二君
  衆議院議員    青柳 一郎君
  政府委員
   厚生省社会局長 安田  巖君
   厚生省保険局長 久下 勝次君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       草間 弘司君
   常任委員会専門
   員       多田 仁己君
  説明員
   労働省労働基準
   局監督課長   和田 勝美君
   労働省職業安定
  局失業対策課長  澁谷 直藏君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○日雇労働者健康保険法案(内閣提
 出、衆議院送付)
○社会福祉事業振興会法案(衆議院提
 出)
○社会保険審査官及び社会保険審査会
 法案(内閣提出、衆議院送付)
○報告書に関する件
○継続調査要求の件
○議員派遣要求の件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(堂森芳夫君) 只今より厚生委員会を開会いたします。先づ日雇労働者健康保険法案を議題といたします。御質疑を願います。
#3
○山下義信君 昨日質疑の途中でありましたのですが、私は受給要件が苛酷ではないか、全二カ月間に通算して二十八日分以上の保険料の納付ということの要件というものは苛酷ではないかということの質疑をいたして、その途中であつたのでありますが、これは政府もこの資格要件については必ずしもこれで十分でないと考えていられるようでありますから、この点は暫らくそこまでにいたしておきまして、私は本日伺いたいと思うのは、国保との関係ですね、国保との関係をどう考えていられるか、つまり言い換えると局長の御説明では国保の布かれている地域においては、この日雇保険に入ることを必ずしも強制しない、任意にさせてあるのですが、国保との関係を一体どういうふうに考えておるのかということを承わりたい。大だたいなことを言うようですが、一体この日雇労務者にとりますと、国保に入るほうが利益なのか、この日雇保険に入るほうが利益なのか、或いは全く同等なのか、政府はどう考えておるか、こういう質問をするのです。
#4
○政府委員(久下勝次君) 国保に入ることと、日雇健康保険に入りますこととの利害得失につきましては、実は一概に申上げかねるのでございます。と申しますのは、国民健康保険は、各保険者毎に給付の内容に差がございまして、従つて単純に比較するわけには参らんのでありますが、一般的に申上げますと、一面におきまして、国民健康保険の場合は、被保険者、ここで言う被保険者本人につきましても、原則的に二分の一の自己負担がございます。この点はむしろその点だけで比較すれば、この保険のほうが利益にならうかと思います。併しながら又半面におきまして、この保険では申上げましたように給付制限がございます。これは国保には給付制限があるところとないところがありますので、一概には比較はできませんけれども、給付制限の面では場合によると国保にはいるほうがいいというようなことがあると思うのでございます。少くとも現在のこの法律の建前から申しまするとその程度の関係でございまするので、私どもといたしましてはこの辺は具体的な被保険者の事情によりまして事柄を判断をいたしたいと考えておるところでざいます。これは具体的には法律は第七条の規定を設けておりまして、第七条には具体的には書いてございませんが、「その他特別の事由があるときは、」という言葉が使つてございますが、これは第一には国保の被保険者を考えておるのでございまして、国保の被保険者が只今お尋ねのようなことで具体的に自分の居住しておる土地の国民健康保険のほうがこの保険より有利であるというふうに判断をいたします場合には、ここに掲げた特別の事由として厚生大臣の承認を得てこの保険の適用を免かれ得るというような規定を設けてあるのでございます。暫く私どもとしてはそういうような運用によりまして国保との調整をいたして参りたいと思つておるのでございます。
#5
○山下義信君 それでは私の間に対しては結局要領を得ない。私は国保とこの日雇保険とどちらに入つてもいいようにしてあるそのわけがわからん。どういうわけでどちらでもいいようにしてあるのかということがわからん。それでまあ理窟は私言わんのですが、日雇保険の制度を立てるならば制度の立つようにやらせにや、その対象者に逃げてくれてもかまわんということを言うのには何かわけがなけらにやならん。それで昨日からも言うように、やはりこの制度を立てるということになれば、言うまでもなく対象者というものをおよそ五十万とか七十万とか押えて、そしてものの計画を立てて行くので、すべてがそれから割出されてある。その対象者が元来日雇労働者ですから把握しにくいので、当局も非常に今日まで立案に苦労されたのであるけれども、その対象者が他の保険へ逃げてもいいんだということにしてあるわけがわからん。他の保険と大体において共通点というならば、彼此融通してもいいということも成り立つのですけれども、一体ほかの保険へ逃げてもいいということが言うてあることの理由というものが、どうしてそういうことを認めることにしたか、つまり適用の除外ということを考えたかということですね。これはどういうわけなんですかということが私にわからん。それで国保と日雇保険と比べてみて、被保険者はどつちが得かということを考えて得のほうへ行けと、今局長がそういう意味のことを言うたが、そういうことを言うならば、どちらが得かということはその個々の場合によつて被保険者が判断をして得につくほうに行くということになるのですが、大体そういうことを考えたのはどういうわけなんですかね。
#6
○政府委員(久下勝次君) どういう理由と申しますのは、実はお言葉の中にあつた通りの、それ以上の意味はないのでございまして、私どもはこうして日雇健康保険制度を作つて、日雇労働者は強制的にこの保険の適用を受けるということに先ず原則的にいたしたのであります。そこで具体的には受給要件の問題がございます。更に又健康保険、国民健康保険という既存の制度においてすでに被保険者となつております人々の問題があります。それらの方が従来他の社会保険の適用を受けておりますものであります場合に、それでもなおこの保険は強制適用だからこちらへ来るのだということを言い切つてしまうのは、被保険者の利益の点から申しまして無理ではないだろうかということを考えたのでございます。そこで今国保の問題のお尋ねでございますが、私どもの考えました点は、或いはお答えにならんかも知れませんが、結局は個々の国保の実情によりまして給付の内容、保険料等に差がございますので、一概にそのことが書けませんものですから、被保険者の判断、並びにそれは当然承認の制度になつておりまするので、承認を与えます際にもよく一つ公平に実情を説明をしたりいたしまして、なお国民健康保険のほうに被保険者として続けたいというような希望のありまする人はここで除けるようにした。もつぱら被保険者の立場を考え、その利害得失を考慮いたしましてこういう規定を設けたのでございます。
   〔委員長退席、理事常岡一郎君着席〕
#7
○山下義信君 大体国保の布かれている地域の日雇労働者とそれから国保の行われていない地域の日雇労働者との大体の振分けはわかつていましようか。
#8
○政府委員(久下勝次君) その点が実は日雇労働者個人々々の住所別がわかりませんものでございますから、それでちよつと抑え難いのでございます。
#9
○山下義信君 大体都市には余り国保はないから、市部のほうが国保に入つていない日雇労働者が多いかもしれませんね。併しこれは私は被保険者が迷うだろうと思いますから、将来一つ考える必要があるのじやないかと思いますね。それでこういうことにしてあると、いろいろ世間の口がうるさくて、これは国保で行くように、大体は国保にかかるように当局でも希望しておるのじやなかろうかということを言う者もなきにしもあらずですから、将来この適用除外につきましては考えなきやならん。それから又国保とこの日雇保険との利益というようなことにつきましても、この段階においては被保険者の考えに任すといいましても、これは何か当局の指導の上にでも、被保険者が迷わないようにいろいろ私は指導の上にも考慮の必要があるのじやないかと思いますが、局長の御所見如何でしようか。
#10
○政府委員(久下勝次君) この点はおつしやる通りでございまして、私ども具体的にいろいろな事例を考えまして、被保険者の指導に遺憾なきを期するようにいたしたいと考えております。
#11
○山下義信君 次は生活保護法における医療扶助の関係とこの日雇保険との関係ですね。言い換えますというと、この日雇保険を施行されることによつて、従来医療扶助を受けておりましたものは一体どうなるかということですね。それがその当人にとつての利害がどうなるか。とりもなおさず一方は保険料を納めることになつて、そうして而も給付の期間が三カ月に限られる、片一方の医療扶助ならばそういう制約も受けないで保険料も要らない。そういう対象者が日雇労働者においては非常に多いことは自他周知なんです。政府の提出された資料を見ても、殆んど四割近いものはこの医療扶助を受けておる。そういうものが非常に不利益な状態に置かれることになりはしませんか。そういうことに対してどういう措置が考えられているかということなんです。
#12
○政府委員(久下勝次君) お話のように従来の日雇労働者が病気になりました場合には、生活保護法の医療扶助を受けておつたのであります。これは実はこの制度を作ります場合の根本的な問題でございまして、日雇労働者自身からも、私どものほうに対して、従来非常に長い間に亘つて生活保護の制度というのはあるけれども、やはり我々としては社会保険制度を我々のために作つてもらいたい、そうしてみずからの保険料によつて相互扶助の精神で医療を受けるようにしたいという要望がかねてあつたのでございます。私どもとしてはその要望に応えましてこの制度を作りましたのでございまするから、その意味におきましては生活保護法に比較して不利益とかというような意味のことは実は考えませんので、そうした要望もありまするし、又確かに自力で保険料を納める、その結果保険の制度で医療の給付を受けるというような建前に持つて行くほうがいいという考え方でやつたものでございます。ただ結果におきまして、そういうことをいたしますと、生活保護法で従来やつておつたものがこの制度に移つて来るものはなかろうと思います。いずれにいたしましても、考え方としてはさような考えでございまするので、一部の日雇労働者は、我々は依然として保険料の要らない生活保護による医療扶助を受けたほうがいいといいことを言われている人も最近私耳にいたしておりまするが、全体としての多数の意見は、やはりみずからの保険料によつて医療を受けるような制度を望んでいるという理解をしておるものでございます。
#13
○山下義信君 あれは、局長の前段の御答弁は私も同感です。が、医療扶助を受けるよりはこういう保険制度を以て、みずからの力によつてみずからその自己を保障して行こうという、こういう制度を要望するということは、日雇関係者の人がそういう要望で、本案の生まれ出ずるに至つた理由、又そうあるべきであるということは私は同感です。併し要望はこういうものを要望したのじやないのです。ですから、日雇労働者の健康保険というものがあつて、その保険によつて医療扶助を受けなくても、自分たちの力によつてやろうじやないか、それによつてこういうふうにするのだということになれば、医療扶助とこちらと代つても、肩替りをしても保険料の負担だけだということならば聞こえておるのです。ところが療養の給付の内容が医療扶助より劣つておつたのでは、保険料を取つた上に又更にその給付内容が劣つておつたのでは、医療扶助を肩替りするということは誠にずるいやり方で、金のかかる医療扶助はやめてしもうて、そうして労働者の料金で国がなすべき医療扶助を肩替りさせようという、非常に狡猾な、ずるい考え方と言われても弁解の辞があるまいかと思われる。で、そういう医療扶助を受けなければならんような対象者というものは言うまでもなく生活困窮の階層ですからね。被保護世帯でない限りは少くとも要保護世帝なんです。生活困窮者が対象なんです。そういうような非常に生活困窮の医療扶助でも受けなければならんというような階層に対して本法は何らの考慮も払つていない。これは一体被保険者になつた……、今のような医療扶助を受けなければならんような対象は、すべてこの被保険者になつた者は生活保護法の医療扶助は打切るのですか。この被保険者になつておつても医療扶助をしてやりますか。全部打切つてしまいますか。
#14
○政府委員(久下勝次君) 本法が成立いたしました場合の被保険者が全面的に医療扶助を打切られるということにはならないと思つております。併しながら本法が適用されて本法による医療の給付が受けられまする限りにおいては、生活保護法の医療扶助を与える事由がないということで、そのほうが行われないということになるだけでありまして、確かにお話のように給付の制限がございますので、給付の制限なり或いは受給要件が規定されておりますから、受給要件に満たない者、給付の制限を超えておるような場合には、その人の生活状態によつて再び医療扶助の問題になるこういうふうに考えておるのであります。
#15
○山下義信君 この保険で療養をしてもらつてそうして期間が切れたり或いは又この給付の状態では十分でないといつたようなそれ以上の医療扶助の必要のある場合には、これは当然医療扶助に引継ぐでしようね。或いは又この上にこの給付で不十分な者への、その上に加えるべき医療扶助は当然あるでしよう。そういうふうな引継ぎといいましようか、繋いで行く繋ぎの連絡というようなものは円滑に行くようになつておりますか。
#16
○政府委員(久下勝次君) その点につきましてはまだ細部の点まで社会局の生活保護の方面と打合せができておりませんけれども、私どもの考えとしては、おつしやるようなふうにその間問題なく生活保護のほうに原則として受継がれるようにいたさなければならないと思つております。具体的にどういうふうにその辺の連絡をするかということは、むしろ本省の問題よりも出先の問題になると思つておりますので、その辺のやり方につきましては、更に担当の局と連絡をして御趣旨のようにいたすつもりでおります。
#17
○山下義信君 これは私は政府で十分に一つ御準備を願わんと、現に医療扶助を受けておる者があるのですね。医療扶助を受けておる者がなくて先にこの日雇健康が適用されてのちに医療扶助を受ける場合においても、連絡のほうに相当な混雑を来すと思いますが、現に医療扶助を受けておる者がある、それがこの被保険者になつた場合の措置といいますか、手続等に徒らに対象者をして心配をさせないよう、不安の思いをさせないように私は十分な事務上の措置、手続上の御準備を願いたい。
 次は日雇労働者健康保険法の施行に伴いまして、何か福祉の施設とか保健の施設とかというものをやりますが、どういうことが考えられておりますか。
#18
○政府委員(久下勝次君) とりあえず本年度として予定しておりまするもので一番大きなものは、三千二百万円ほどをかけまして日雇労働者の多数集まります場所に診療所を三カ所作りたい予定でございます。場所等はまだ決定いたしておりませんけれども、只今申したような方針で選定をいたしております。
#19
○山下義信君 大体大都市からやるのですか。
#20
○政府委員(久下勝次君) そういうことになると思います。特に職業安定所のようなところで多数の日雇労働者の集合いたしますような場所、そういうようなところを先ず選定の基準にしたいと思つておるのでございます。
#21
○山下義信君 一カ所三千二百万円ですか。
#22
○政府委員(久下勝次君) 三カ所で三千二百万円です。それから約六百万円ほどかけまして健康診断を保健福祉施設といたしてやりたい所存でございます。合計しまして保健福祉施設三千八百万円ございますが、これは他の保険と違いまして全部国の一般会計からの繰入れによつて賄うことになつております。
#23
○山下義信君 次に伺いますのは、この法律に現われていないようですが、ありますかね。事業主の負担いたしまする保険料に対して国が補助しておりますね。
#24
○政府委員(久下勝次君) はあ。
#25
○山下義信君 これは法律ではどこに書いてありますか。
#26
○政府委員(久下勝次君) この法律には現われておりませんです。国が補助をしております分は例の失業対策事業でございまして、労働省のほうの所管の予算に計上されております。
#27
○山下義信君 どこかで見たと思いましたが、労働省の関係予算ですがね。この日雇労働者健康保険の事業主負担の保険料について国が三分の二の補助を出すのですが、どういうわけで出すのです、三分の二は。どういう趣旨なんです。
#28
○説明員(澁谷直藏君) 御承知のように、失業対策事業は緊急失業対策法に基きまして国庫の補助によつて府県、市町村等の自治体が実施しておる事業でございます。それでこの事業を実施いたすために、その工事の設計とか、企画或いはその事業の監督或いはそれに関する通信とか連絡といつたような諸経費が必要でございまするので、政府といたしましてはこれらの経費を一括いたしまして事務費という名称の下に必要額の三分の二を国庫補助いたしておるのでございます。それで現在日雇失業保険を実施しておるわけでございまするが、これの保険料につきましてもすでに三分の二を事務費の中に含めまして国庫補助をいたしておるのでございますが、今般日雇労働者健康保険法案が実施されることになりますれば、失業保険と同様でございますので、失業対策事業を実施するために必要な事務費である、こういう考えに立ちましてそれの保険料の三分の二を国が補助いたす、こういうことになつておるのであります。
#29
○山下義信君 保険料というのは事務費と見ているのですか。
#30
○説明員(澁谷直藏君) さようでございます。
#31
○山下義信君 私どもの概念としては、保険事務費と保険料というものとは別のものと思うのですが、まあ労働省は保険料というものは保険事務費と、こうまあ見ておるというのですが、そうすると、労働省はこの日雇労働者健康保険というものは失業対策の一環じやと見ておりますか。
#32
○説明員(澁谷直藏君) 労働省といたしましては失業対策の一環だというふうには考えておりません。
#33
○山下義信君 それじや、なんで失業対策関係でそういう補助を出すのですか。
#34
○説明員(澁谷直藏君) 失業対策事業はこれは言うまでもなく失業者の生活の安定を目的として実施しておるわけでございますが、この失業対策事業を実施いたしますると、日雇失業保険の場合を申上げますると、当然これは法律の適用がございますので、府県なり自治体の事業主体は当然にこの失業対策事業を実施するために必然的に保険料を支払わなくちやならん。こういうことになるわけでございます。そこで労働省といたしましては、失業対策事業を実施するためにそれだけの経費が必要になつて来るわけでございますので、これも失業対策事業を実施するために必要なその他の事務費と同じように考えまして事務費の中で補助をいたしておるわけでございます。
#35
○山下義信君 そうすると、今の労働省関係で出している事務用費の、今の保険料の三分の二の補助というのはその市町村が失業対策関係で使用する日雇労働者についての負担の分だけ補助する。こういう考え方ですね。
#36
○説明員(澁谷直藏君) さようでございます。
#37
○山下義信君 私どもはそういう極く小さい部面から考えて、そして国の費用をそういう観点から使うということは、労働省失業対策関係のそういう局部的な考えから行けば今の答弁も肯けるのですけれども、全体の国費の使い方、或いは健康保険の制度への国の金の入れ方というものから見ると、私どもはそのことは余りこの保険制度そのものへは意味をなさん。市町村へとつては多少意味があるかもわからん。失業対策関係への費用へ幾らか流れて来る、市町村の負担を軽くして。この日雇健康保険の何も育成強化にはなりやせん、市町村への費用の幾らかを助けてやるだけだ。この健康保険制度への強化育成には何もならん。被保険者の利益にも何もなりやせんのであるから、保険制度への金の出し方ではなくして、極く狭い考え方からの失業保険事務を取扱うという意味で、これもその事務の一つと見て労働省が予算をとつたということになる。労働省がそういう意味で予算をとつておるのですが、厚生省は何も、よう予算をとらなかつた、国の費用は。
#38
○政府委員(久下勝次君) この制度をやりますためにもつと国の予算をとるべきであるということにつきましては私どもも責任を感じておるものであります。ただ併しながら健康保険と違いまする点は、先ず第一に先ほど申上げました保険福祉施設、これは他の保険の何で申しますると、当然これは保険料を以つて支弁をするというような建前になつておるものであります。この保険につきましては初年度三千八百万円を全額一般会計からの補助をもらうことにいたしてございます。もう一つは前回法律の説明で申上げましたように、郵便局に対して保険料の印紙の販売を委託することになつておりますが、これも理論的に申しますと、他の保険の関係から言いますと、保険給付に関する費用というふうに実は解釈されるのでございまして、事務費とは解釈されておらないのであります。併しながらこれも本制度におきましては特に全額一般会計の負担というふうにして、初年度は一千九百万円の予算が計上されておるわけでございます。そういう場合におきまして、他の保険とは違いました若干の項目につきまして、特別な予算が取れてはおるのでございます。勿論私どもとしては、厚生省の者としてはこれを以て満足しておるものではございません。今後逐次この制度の内容の充実のために努力をする所存でございます。
#39
○山下義信君 私はこれは質疑をすると際限がない。際限がないというよりは、私はこういうような議案に対して質疑をして行くことの馬鹿々々しさを感ずる。それでこれはもう事になりません。それで質議をするのはよします。非常に不完全なもので、これはまあ言うまでもないことで、こういうものを問題にして質疑をすることがむしろ無駄であるか、馬鹿々々しいような感じがするのです。どういうわけでこういう不完全な、ものにならんようなものを、健康保険法なんというような名前をつけて出す気になつたのか、その気持が私にはわからん。それでこれは厚生省も、最初から局長も説明されるように、完全なものと思つていられないということで、将来に亘つてお考えがあるのだろうと思うのですが、ともかくも、こういうものでも何がしかの役に立つと思つておるのだろうと思うのですが、そうでなければ出すわけはない。若しこれが百害あつて一利なしということになつたらば出さんでありましようけれども、幾らかこれでも役に立つと思つておるのだろうと思う。厚生省は将来どういう考えを持つておられますか。
#40
○政府委員(久下勝次君) 現在提案しておりまする制度に対する考え方は、大体お話のようなふうに考えておりまして、私どもといたしましては、将来はこれで決して厚生省としては満足しておるものではございません。私どもはこの制度をあえて御提案申上げておりますので提案申上げておりまする趣旨は、ともかくも制度が出発しておりますということによつて将来これが完全なものになつて行く基礎になり得ると考えまして、提案いたした次第でありますが、そういう気持は今日もなお続けておりますのです。少くとも来年の予算にはできるだけのことをして、給付の内容の向上を図るということに決心をいたしておるような次第でございます。
#41
○山下義信君 私の質疑はこの程度にしておきます。
#42
○林了君 この諮問の第六条の厚生大臣は、というところをですね、そしてこの企画及び実施の大綱に関しては、あらかじめ社会保険審議会に諮問するものとする、社会保険審議会というものはどういう構成になつておるか、ちよつと私それ、簡単でようございますから、伺いたいと思うのですが。
#43
○理事(常岡一郎君) ちよつとお諮りいたしますが、委員長報告が始まつたそうでございますから、これでちよつと休憩いたします。
   午前十時五十四分休憩
   ―――――・―――――
   午前十一時四十二分開会
#44
○委員長(堂森芳夫君) 厚生委員会を再開いたします。
#45
○政府委員(久下勝次君) 先ほど林さんから社会保険審議会の構成のお尋ねがございましたからお答え申上げます。社会保険審議会の構成は社会保険審議会、社会保険医療協議会、社会保険審査官及び社会保険審査会の設置に関する法律がございまして、その第一章の三条の規定がございます。先ず最初に「政府の管掌する健康保険並びに船員保険及び厚生年金保険の被保険者の利益を代表する委員」が各保険毎に三名、合計九名でございます。それから第二は同じように各三保険につきまして「事業主及び船舶所有者の利益を代表する委員」が九名でありまして、これも各保険毎に三名の構成になつております。最後に「公益を代表する委員」が九名になつております。これも原則的には各保険を担当するような仕組みにはなつておりまするが、一口に公益代表になつております。なおこれにつきましては同条第二項に規定がございまして、公益を代表する委員九名の中には「医療関係の経験者を含むものとする。」こういうことになつておりまして、この中に九名の中に医療関係者が入つて頂いておるのであります。
#46
○林了君 只今保険局長の御答弁の中で、医療関係者を含むということでありまするけれども、この中に、医師及び歯科医師及び薬剤師のかたが何名おられるか、ちよつと伺いたいと思うのですが。
#47
○政府委員(久下勝次君) 現在は九名のうちの三分の一が医療関係者でございまして……、失礼しました、四名が医療関係者でございます。医師が二名、歯科医師が一名、薬剤師が一名。
#48
○林了君 歯科医師が一名入つておりまするか。
#49
○政府委員(久下勝次君) 大変失礼をいたしました。私申上げましたのは医療協議会のことと取り違えて申上げましたので、前言は取り消さして頂きます。お話のようは歯科医師は入つておりません。現在名簿が手許にございませんので、正確に申上げかねますが、医療関係者が社会保険審議会のほうは非常に少うございまして、たしか医師一名であつたかと思います。
#50
○林了君 只今局長の御答弁で医師が一名だということでありました。この日雇労務者関係の保険の問題ばかりでなく、社会保険審議会というものは政府の管掌する健康保険なり、船員保険、厚生年金の運用に関していろいろ厚生大臣の諮問機関になつておりますのでありまするが、この日雇労務者の問題に関しましても、あらかじめこの社会保険審議会に諮問をするというふうな大事なこの法律をきめる前に、医療関係者、医療担当者の僅か医師代表として一名しか入つていない。そのような不完全な組織における審議会に諮問されて果して正しい結論が出るかどうかということを私はこれについて厚生省はどういうふうにお考えになつておりますか。或いは将来これに対してどういうふうなお考えを以て社会保険審議会というものをやつて行かなければならないかということについての御所感を一つ伺いたいと思います。
#51
○政府委員(久下勝次君) お話の点は御尤もな点がございます。私ども実は従来の考え方は社会保険の医療に関する事項につきましては、別に社会保険協議会というものが中央、地方に置れております。医療問題は主としてそのほうで御審議を頂けるという考え方の下に、それから又社会保険審議会のほうは法律的な問題が多いものでございますから、さような点を考えても、今まではさように扱つておつたのでありますが、併しこれはお話を承わりますると御尤もでございまするので、将来の問題として御趣旨に副うように検討いたしたいと思つております。ただ現在すでにさような関係で委員が任命され、それぞれ任期を持つておりますので、任期の参りました際にできるだけ御趣旨に副うようになるように検討いたすつもりでございます。
#52
○林了君 只今の御答弁によりますると社会保険審議会の機構については不備な点をお認めになりましたので、将来これについては改正をする御意思があるというふうに私は受取りましたが、さよう心得てよろしうございますか。
#53
○政府委員(久下勝次君) そういう線で研究をするというふうに御了承願いたいと思います。今直ちに私一存で確答を申上げるのは如何と存じますので、上司にも相談いたさなければなりません。私としては御趣旨に副うような線で考えるつもりでございます。
#54
○林了君 只今の御回答で局長としては趣旨に副うように努力をするというお答えでありましたので、一応この問題はさように厚生省のほうでお取計い頂きまして、将来改正をして頂きたいということを更にお願いをする次第であります。
 次に給付のところでありまするが、第十条の第三号に歯科医師は「補てつを除く」ということがございますが、これはどういうわけでこういうふうになさいましたか、それを一つお伺いしたいとこう思いますが。
#55
○政府委員(久下勝次君) 他の委員のかたがたからも指摘がございましたように、この制度はこの法案の考え方で参りますると全般的に給付が不十分にならざるを得ないのでございます。そこで少くとも最小限度の医療が行われる限度きり期待ができませんのでありますから、そこで歯科につきましては「補てつを除く」というふうにいたさざるを得なかつたのであります。
#56
○林了君 この第一条を御覧頂きますると、第一条には、日雇労務者の生活の安定を図るためにこの法律を作るんだとこう書いてあります。で我々歯科領域におきましてはこの補てつとそれから保存という専門語がございますが、補てつというのは義歯だとか、或いはクラウンと言いますか、金冠なり或いは代用金属でかぶせたり、或いはそういうことをするのが補てつということになつております。これは現在国民保険制度でも国民保険の経済が赤字だということから、これはとり上げてある地区ととり上げてない組合とがあるのであります。で、この大きなフアクターをなす補てつの点を除いて一体日雇労務者の生活安定に資することができるかどうか。特に労働者の私は労働力拡充ということは食物を強く噛みしめ、そうしてこれを体内に吸収することにあるという最も大事な点がここに除かれておる点に関しては私はいささか法の立法精神に疑問を持つのでありますが、これについて厚生省の御所感を伺いたいと思うのであります。
#57
○政府委員(久下勝次君) 第一条との関係におきましては確かにお話のようなことが出て来るかと思いますが、ただ第一条は「生活の安定に寄与する」というような表現になつておるのでございます。私どもとしてはこの第一条の目的に副うようにできるだけ給付の内容をよくするということに努力をいたしたつもりでございます。ただ何分にも他の委員のかたがたの御質問に再三お答え申上げておりまするように財源の問題の解決ができませんものでございましたので、こういうような給付の制限をいたさざるを得なかつた次第でございます。併しながら補てつを除いても今おつしやるような保存のものが全面的にやられまするので、そういう意味ではやはりこの制度は幾分でも生活の安定に寄与することになるこういうふうに解釈をしておるものでございます。
#58
○林了君 そういたしますると、この歯科の患者の場合に被保険者の日雇労務者が歯科医の医院を訪れて殆んど程度、即ち入歯を入れるとか、或いはかぶせるとかいうようなことができない、その先のことは自己負担でやるという形になるわけですね。
#59
○政府委員(久下勝次君) おつしやる通りでございます。
#60
○林了君 保険制度というものがさようなものではないということを私は大体了解しておるんですが、それについてはほかの健康保険の制度と、それからこの日雇労務者の健康保険の内容とが経済問題、或いはその他の事情によつて違うかも知れませんけれども、そういうことに対して差別を付けられたということは、一体根本の理念と言いまするか、根本の原因はどこにおありになるのか、これを一つ伺いたいと思います。
#61
○政府委員(久下勝次君) お話のように私どもとしても健康保険という銘を打ちます以上、歯科の補てつを除くということが正しいと思つておるものではございません。これは入れたいのはやまやまでございますけれども、先ほど申上げましたように結局これは根本的には財政と言いますか、この保険経済の上からそこまで、歯科の補てつまで給付をするということはできませんのでございます。止むを得ざる処置として除外をいたしたのでございます。
#62
○林了君 只今の御答弁では保険経済の財政の面が許されないからこういうことをしたとおつしやいましたが、それはさよう心得てよろしうございますね。
#63
○政府委員(久下勝次君) そういうふうに御了解を願つてよろしいと思います。
#64
○林了君 歯科の医療が従来ややもするとこの問題が国民一般の間でも、如何にも私のこれは専門的の立場から申上げましてもおろそかにされていたような気がいたしますので、こういう点が特に日雇労務者のような、まあその日その日の賃金によつてやつて行かなければならんというかたがたに対しては、少くとも私はこの費用のかかる補てつの面は、経済という問題を何とか政府でお考えになつて与えてやるこそ私は日雇労務者に対する保険の制度が有意義になつて来るのじやないかと私は考えておるのであります。現在の健康保険制度の中にもいろいろと歯科の関連にいたしましては疑義が相当にございまするし、これは又他の機会に申上げたいと思いますが、こういう点に関して政府は今一層歯科の医療の内容が特殊性があるということに対して御認識を頂いておると思いますが、これに対してどういうふうにお考えになつておるか、これを一つ伺いたいと思います。
#65
○政府委員(久下勝次君) 私どもといたしましては先ほど山下先生の御質問にもお答え申上げた中に私は含めたつもりでございますが、こういうような給付制限をしますことは決してこの制度の、私どもの少くとも本意ではないのでございます。私どもとしては将来を期してこういう給付制限をなくするように努力をする所存であるということを申上げたのであります。その点はこの今御質問の点にもそのまま当て嵌めて考えておるものでございます。歯科の治療の特殊性ということにつきましても私どもも及ばずながら認識はいたしておるつもりでございます。
#66
○林了君 時間も……、その他審議事項もたくさいございますから、私は一応これで打切りたいと思いますが、又改めましてこれに関連して時間がありましたら質問さして頂きたいと、こう思いまして、一応これで打切りたいと思います。
#67
○委員長(堂森芳夫君) ちよつと速記をやめて下さい。
   〔速記中止〕
#68
○委員長(堂森芳夫君) 速記を始めて下さい。
 暫時休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
   ―――――・―――――
   午後二時五分開会
#69
○委員長(堂森芳夫君) 休憩前に引続き委員会を再会いたします。質疑を願います。
#70
○湯山勇君 私最初労働省のほうへお尋ね申上げたいのですが、先般予算委員会等におきまして、今回企業の合理化その他によりまして、相当多量の整理が行われる。更に又官庁方面におきましても、同様に行政機構の整備その他によつて、かなり整理が行われるのではないかというような気配があるわけですが、現に炭労等におきましては、今回の設備の改善によつて三万乃至七万の失業者が出るということを申しておるわけです。で、労働大臣はこれに対して、そういうふうにして出た失業者は、今回政府が企図しているところの大きい土木事業、つまり道路建設とか、或いは堤防建設とか、そういうところへ収容するから、労務の失業者というものは余り出ないだろうというようなことを申しております。そういうことを端的にお尋ねするのではなくて、それと関連して、この日雇健康保険の問題をお尋ねしたいわけなんですが、今のような措置が取られました場合には、当然この健康保険の給付対象の人員が減つて参りまして、そういう事業に従事する人は、多くは日雇のかたであると思うのです。そこでこの日雇の健康保険の対象者が非常に増加して来るということが考えられると思うわけです。ところがその場合に日雇健康保険と一般の健康保険との給付内容、条件が同じであれば、これは大して問題にならないと思うのですけれども、これだけ多数の人が、配置転換というよりも、むしろ失業して転業しなければならない、そういう状態において、健康保険の取扱が、日雇と一般健康保険で非常に差がある、こういうことになりますと、むしろこのことは、仮りに政府が考えている、そういう配置転換をすること自体を非常に困難にするのではないか。又このような日雇健康保険が、先ほどから出ておりましたように不完全なものが出れば、これに対する労働者の抵抗があると思うのです。つまり不利な健康保険に加入させられるということが、この政府の企図しておる合理化をも阻止する。更に又昨日スト規制法が通りましたけれども、こういうものも更に実際に実行することを困難にし、そして政府がよく言うところの、労働組合の争議というものは政治闘争であつてはならないと言いながら、このような法案が出ることによつて、むしろ政治闘争を誘発するというような懸念が多分にあるのではないかということを思うわけですが、これについて労働省ではどのように考えておられるか、御説明を願いたいと思います。
#71
○説明員(澁谷直藏君) 只今の御質問がございました炭坑等を中心とするところの職場の転換と申しますが、配置転換によつて、どの程度失業者が出るかという問題につきましては、先般この予算委員会等におきまして、労働大臣が答弁した通りでございます。率直に申しまして、私どものほうでも、これらの動向につきましては深甚な関心を持ちまして、関係各省とも連絡をとりまして、常に相談をいたしております、併しながら、只今のところは単なる情報、或いは見通しでございまして、現実の問題として、果してどの程度の失業者が出て来るかということにつきましては、今のところ、はつきりした数字を以て申上げる段階ではないのでございます。只今の御質問によりますると、そういつた配置転換が日雇健康保険法案の内容が貧弱であるためにどうかという御質問の趣旨のようでございますが、日雇健康保険法案の内容につきましてはこれは厚生省の所管でございますので、これは厚生省のほうから一つ答弁をして頂きたいと思います。
#72
○湯山勇君 私は厚生省の見解を尋ねているのではなくて、このような貧弱な日雇健康保険法案が実施された場合には、今あなたがおつしやつたように配置転換も困難になつて来るし、更に又そのことが政治闘争はいけないとか或いはスト規制といつたようなことをやつていますけれども、そういうようなことを困難にするし、むしろ政治闘争を誘発する要素になるのではないかということを労働省としてどう思うかということをお尋ねしておるので、労働省の御見解が明らかになつて、そういう状態ならば今度は厚生省のほうではどうだというような質問は別にいたしますから、労働省としての見解を明確にお述べを頂きたいと思うのです。
#73
○説明員(澁谷直藏君) 御質問のスト規制法が成立したことによつて労働組合の動きも政治闘争の方向に追いやられるのではないかという御質問でございますが、これにつきましては私職業安定局の一課長でありまして、その問題につきましては所管局のほうから答弁を願つたほうが結構かと存じまして、私からは答弁を差控えたいと思います。
#74
○湯山勇君 お尋ねいたしますが、健康保険におきましても或いは日雇にいたしましても旅館とかそのほかのサービス業、それから興行ですね、映画とか演劇とか、そういう興行関係が常に除外されておるわけです。で、厚生省のほうでお尋ねいたしますと、そういう職種は結局賃金が確定していない、サービス、チップなどで生活しているから、こういう人たちの賃金算定ができない、そういうところから保険対象になりにくいんだというお話があつたわけです。ところが明らかに憲法第二十七条によりまして賃金については法律できめなくちやならないということになつておるのですが、こういう人たちの賃金はきまらないという状態で置いておられるのか、現在それだとすれば、これは憲法との関係をどうお考えになつておられるかその点を一つ明確にして頂きたいと思います。
#75
○説明員(和田勝美君) お答えいたします。現在の基準法でございますと、最低賃金制が定まりますれば賃金を具体的に法律の力によつて最低を押えるということになつておりますが、それ以上の賃金、個々の企業における賃金をどうするかという、こういう問題は現在の基準法では全然触れておらずに労資双方の合意によつてやる、そういう考え方を持つておるわけであります。憲法の二十七条にございます労働条件を法律によつてきめるということも、個々の企業における賃金を具体的にきめなければならない、そういう要請では私どもとしては一応なかろうという立場に立つておるわけでございます。
#76
○湯山勇君 そこで勿論その最初賃金ではないんですけれども、賃金というものを相互の間で、使用者と被使用者との間できめるということはしなくちやならないわけでしよう。
#77
○説明員(和田勝美君) 私どものほうでは確かに旅館、興行それから料理店、そういう所では賃金の計算が非常に困難である面があろうかと思いますが、私どものほうの立場からいたしますと、ケースケースについては判定ができるというように私どもは考えておりますが、健康保険法で考えておられるような考え方の点はどうか私も存じませんが、それ以外の点ではでき得るんじやないか、非常に困難は伴うかも知れない、そう思つております。
#78
○湯山勇君 つまりチップというのは賃金じやないわけです。明らかにですね、これはお客さんのほうから渡すわけですから。で、使用者が雇つているわけなんですから、その雇つたときに賃金を支払わないというようなことで雇つたというようなことがあつた場合に、基準局はどうなさるのですか。
#79
○説明員(和田勝美君) 私どものほうの考え方について従来解釈例規を出しておりますので、恐縮でございますが、それをちよつと読上げてみたいと思います。質問で、旅館、料理店等において客より受けるチップのみで生活している女中、仲居等に対しても本法の適用があるかとの問に対しまして、私どものほうで、労働の対象として一定の営業設備の使用が認められておればこれも又賃金である、その評価額については労働協約による、こう言つておりますのは、一定の営業設備が使用されることが、それが間接的には賃金をきめていることになるという考え方をとつているわけでございます。まあ使用料に対する、一つの賃金に変つて使用料という形がいわゆる賃金であるという考え方であります。
#80
○湯山勇君 だから使用料であるにしても、賃金というものはあるのだということは言えるわけです。
#81
○説明員(和田勝美君) はあ。
#82
○湯山勇君 引続いて、そこで今度は局長のほうへお尋ねしたいのですが、局長は先般の健康保険の場合にも、これは賃金というものがきまつてないのだ、こういうような御答弁であつたわけです。併し今基準局のお話のように、直接にもしろ、間接にもしろ、そういう賃金というものはあるのだ。ただ間接の場合はむしろ評価がしやすいのじやないかと思うのです。そういう点から考えますと、これは前に御答弁になつたのと少し違つて来るわけなので、こういう人たちは殊にこの健康保険のほうではいろいろ問題があるにしても、少なくとも日雇の対象には当然すべきではないかということが今の御答弁からも出て来ると思うのですが、これについて局長どうお考えでしようか。
#83
○政府委員(久下勝次君) 日雇の対象にされるようなかたがたが対象になるかどうかという問題は、これはこの法案が規定しております日雇労働者の定義に嵌つているかどうかということになると思うのです。前にも御説明の際申上げましたようにこの法律の対象としております日雇労働者の定義は、健康保険法の適用を除外されております者をそつくりそれが対象としてとつているわけでありまして、一口に申しますれば、日々雇い入れられる者、或いは臨時的、季節的な仕事に従事する者というような者を対象としているわけでありまして、今御引例のサービス業に従事している者が雇入れの形式上日々雇入れられる者ということであり、或いはニカ月以内の期間を定めて雇入れられるものであればその対象になり得ると思います。その基本にもう一つ健康保険の適用のある事業所に働く者ということになりますからそういう意味では、健康保険の場合で申上げるよりほかないと思います。健康保険の場合でサービス業が挙げられていないということは、前回も申上げたのでありますが、私どもの考え方のうちには、賃金の把握が非常に困難であるということを前回申上げました。これは確かに労働省のお話のように施設の利用、こういうものを金に換算してやるということは、健康保険法の中にもその規定がありまして、各都道府県知事の定める基準によつて金に換算してきめるというものはございます。従いまして、そういうものが賃金として取上げられるものであれば、その問題はそれで解消するのではないか。問題はそうしたものが一体どの程度に金額に換算できるであろうかという問題でございますが、実際にその人たちはチップをとることによつて実際は相当な収入を毎月々々得ておるというにもかかわらず、実際に賃金として考えられるものが千円とか五百円とかいうような非常に低いものでございますと、全体の、現に適用を受けておりまする被保険者に対する影響を考えなければならんのでございまして、そういうことが私どもは健康保険の適用事業場としてとり上げるかどうかという、この問題を考慮する場合の一つの何と言いますか、拠りどころになるわけでございまして、実は日雇労働者を現行の健康保険制度の中にとり入れませんでした理由は、最初にも申上げた通りでございまして、それと同じような事情がこの種類の人々に考えられなければならんと思います。そういう意味合いにおきまして私どもとしては今直ちにこのサービス業に従事しておられまする極く僅かな賃金と見られるのでありましようが、そういう人を全面的に健康保険の中にとり入れるということにいたしますと、恐らくは全体の平均収入はずつと下つて参ります。そうなりますると保険財政の面に影響が来て、それは国が財源措置を講じなければ具体的な運用ができないような事情に立ち至りますので、ただ単に賃金の把握が困難であるということのみでなく、それが全体の現在の被保険者に及ぼす影響と申しますか、もつと率直に申上げれば保険財政に関係を及ぼすところあたりも考慮に入れつつこの問題は判断しておるつもりであります。
#84
○湯山勇君 まあ局長の御答弁は最初はこの法の規定している業種に入るか入らないかというようなことをおつしやいましたけれども、これは今から我々きめる問題なのであつて、私がお尋ねいたしたいのは、今のようにこの賃金というものはとにかく間接的にでも計算できるのだ、計算された賃金が安い、高いはこれは別なんです。安い、高いを言うのではなくて、入れたいけれども財政上できない、予算の都合でできないとおつしやるのか、やはりこれは入れることが不適当だと、こうお考えになるのか、この点が私は非常に重要だと思います。ので、その点を原則的にどうお考えになるかお伺いしたいと思います。
#85
○政府委員(久下勝次君) 先ほど具体的に御引例になりましたサービス業の従業者とそれから興行場等の従業者とは実は私どもが現在健康保険法にとり入れません理由は実は違つておるのであります。今先ほど私が申上げましたのは、サービス業の関係について申上げたのであります。それから興行場につきましては確かに一流の劇場とか映画劇場とかというようなところに勤務しておりますものはそれは問題ないのでありますが、併し全体に興行場と言いますと固定した場所を持たずに転々として地方を巡業して歩くようなものも包括されます。そういうふうなものにつきましては実際に従業者の把握が困難であります。又台帳をどこに保存しておくかということも問題になります。そういうようなことはもつぱらこれは保険行政事務上の関係から今日の段階においてまだとり上げるところまで決心がついていないという事情でございます。前のほうの関係は、私どもの考え方は確かにチップは賃金でないと法律的には言えると思いますが、実際にはこれは賃金の役割をして、そしてその人々の生計の資になつておるわけでありますから、保険を適用して行く場合には何とかこの問題が若し的確に把握できるものであれば標準報酬計算の基礎としては考えて行きたいという気持もあります。ただその辺の問題が今労働省からの答弁もありましたような関係もありまして、なかなかむずかしい問題でありますから、単に保険財政の問題ということのみでなくして、今申上げたような賃金と実質的な賃金に匹敵するものとの関係をどういうふうに考えて行くかというようなことが必ずしもはつきりしておりませんものでありますから、それで取上げることがまだ決心がついていないという事情でございます。
#86
○湯山勇君 同じ対象になつておる業種でも、例えば通信なら通信という業種であつても事業場の規模等はよつて入ろうというものと入らないものとがあるわけです。ところが今の局長の御答弁では、とにかくいいのもあるけれども悪いのがあるから、全体として取上げない。こういうように聞こえるわけなんでこれは法の中で何らかの条件を付ければ取上げていいものは取上げるということが私は保険行政の当然の態度ではないか。こう思うわけです。積極的に厚生省のほうでそういうものを取上げるのだという態度で以て指導して行けば、私は今あいまいになつているものからも随分たくさん明確になつて来るものがあると思いますし、賃金等におきましても大体とにかく一人の人間が食つて生きているのですから、そうすれば大体それらに対する標準というものが立つて行く。こういう努力をなされる意図があるかないかで、今やるちよつと意思はないというように言われるのは、少しもこれらに対して誠意を持たないというふうにもとりようによればとれるのだと思うのです。もつと言えば、最初は賃金がわからない。今度は賃金というものがわかつて来ると財政。財政がわかつて来れば又別の理由というようなふうになつて来るので、私局長が本当にこれを保険の対象にしようとする誠意があるかないかを端的に御表明願いたい。
#87
○政府委員(久下勝次君) 私が今まで繧々申しましたのは実は先般御審議を頂きました健康保険法の一部改正に取上げてありませんでした実情について御説明申上げたのであります。私どもの考え方は決してこの問題は今後とも取上げないという意味で申上げているのでは全然ありません。事情は許す限り何とか事務的にも把握ができ、賃金の押え方にも何か合理的な基準が、標準報酬の押え方にも何か合理的な基準がないかということで問題を一歩でも進めるという気持でやつております。従いまして今御引例の興行とサービス業なりに従事する人にいたしましても、私どもとしては何とかして健康保険を拡充して行くというような方向で考えておるわけであります。
#88
○湯山勇君 次に又基準局のほうへお尋ねいたします。先に判定の例のお示しがあつたのですがそういう程度でやはり正常な雇用関係にある興行とかサービス業、こういうものをそういう関係においていいとお考えになつていらつしやるのですか。これらについてはやはりもつと明確な、場合によつては最低賃金なり或いはその最低賃金ができれば一番いいわけですけれども、そうでないにしても、ただ畳を使用するとかお膳を使用するとか茶碗を使用する、そういうことを間接にその人の賃金だというようなことは実際は納得できない問題で、これについて何か早急に解決するというような御意図を持つているのか、いないのか。
#89
○説明員(和田勝美君) 私どものほうの基準法を施行しておりますものの考え方としましては、一応基準法に定められておるものを正確に行われているようにして行きたいという考え方が根幹をなしているわけでございます。そういたしますと、その立場から考えますと、御説のような点にまで及ぶことについては若干問題があろうかと思いますが、ただ私どもはそういう基準法を護つて行くという立場だけでなくて、もう少し労働者の保護のために或いは労働者の生活を高めて行くために必要な範囲内において指導行政の面にも出ているわけでございます。その指導行政の面では賃金研究会とかそういうようなものを作りまして、賃金制度の合理化、近代化という問題に今努力を尽しております。それが今直ちに旅館、料理店に及ぶということは直ちには申上げられませんが、根幹的な業務から始めまして、漸次それをば今お話のような業種にも及ぼしたい、そういうような考え方でやつておるわけでございます。
#90
○湯山勇君 今の御答弁は一応そういうことで承わります。更にお尋ねを申上げたいのは五人未満の作業場がこれの対象になつていないのです。これは健康保険も同じなんですが、監督局の立場において五人未満の作業場が五人以上の作業場よりも健実でないというような判定をすることができるかどうか、この点を一つ伺いたい。
#91
○説明員(和田勝美君) 基準法では実は人員を切つておりませんので、一人でも労働者が働いておれば基準法適用ということになるわけです。健康保険法の五人という数字をお切りになつておりますのは、いろいろと問題があつてそういうふうになつていると思いますが、私どものほうで御意見を申上げることは差控えたぼうがいいのじやないかと思います。
#92
○湯山勇君 そういうことを聞いているのじやなくて、とにかく作業場の、今のように基準局の実際を見て、賃金の支払い状況とか労務管理の状況とか、そういつたものが五人以上と以下とで劃然と区別ができるような状態にあるか。一般的に五人以下でもいいのもあるし悪いのもあるけれども、ただ監督局の立場として五人以下はやはり駄目だというような判定が下せるかどうか、そういうことをお聞きしているのです。
#93
○説明員(和田勝美君) 五人という数字ではつきりと切つて、五人以下が悪くて六人以上がいいのだということは、実は私どもの立場から申しまして、そうはつきりと申しにくいのが多うございますが、そういうように五人、六人ということを離れまして、小企業が大企業に比べて労務管理がうまく行つているかという点を考えますと、小企業のほうが一般的にはやはり大企業に比べまして労務管理が不十分な点が多いのではないかというふうに私どもは考えております。
#94
○湯山勇君 今の話はよくわかりますが、五人、六人、十人というのは小の小なんです。その小の小の中をさらに五人以下と五人目上、こういう区別をする必要が監督局の立場においてあるかどうか、こういうことをお聞きしているのです。
#95
○説明員(和田勝美君) これは基準法を施行する立場だけから申すわけでございますが、私申上げるのはもつぱらそういう立場で申上げているのでありますが、そういう立場と健康保険法を施行されております立場とはおのずから差違があろうと思います。私どものほうの立場から見ますると、五人未満のものでも基準法に掲げていることは一応守つて行かなければならないという考え方でございまして、別の立場からこれを見まするとどういうことになるかということは、どうも私としては申上げにくいのであります。
#96
○湯山勇君 そこで今度は局長にお尋ね申上げたいのですが、健康保険の場合は作業場、つまり雇用関係等も非常に明確なんですが、日雇というのはその性格上どこへでも行かなくちやならない、どういうところへでも仕事のあるところでは働かなくちやならないというのが大体この日雇労務者の特質だと思うのです。そうしますと雇うほうを大して選ぶ権利はないわけです。而も五人で切るというようなことをされますと、これは雇うほうも五人雇えばこれが適用されるのだがら四人で辛抱しようというようなこともできて来る虞れがあると思いますし、日雇の特質から考えて必ずしも健康保険と同じように五人という線で切る必要はないのではないか。むしろ切らないことのほうが日雇労働者の実態に即するのではないかということを考えるのですが、この点についてはどうお考えですか。
#97
○政府委員(久下勝次君) 五人未満のものの事業所に働きました場合は、被保険者支給資格を発生しないようにいたしております。その理由はいろいろあるのでございますが、一つは現在の失業保険も同じように五人以上でやつております。それから前にも申しましたように、健康保険は勿論五人以上のところだけに考えている。そこでこの法律案がそうなつているからではございますが、もともと私どもとしては健康保険の実際に適用を受けてやつております事業所でありますれば、健康保険に対する理解も深いわけでございまして、こういう新らしい制度を施行いたしまして、そうして日々恐らくは人が変つて勤務するような日雇の人を相手にして保険料を的確に押えて行くというようなことで、或いは給付に関しても相談に乗つてやるというようなことをやつて行きますためには、従来健康保険において経験のある健康保険の適用事業所を押えたほうがいいというふうに考えたのでございます。それから五人未満までやつてもいいのじやないかということになりますと、その問題は健康保険制度に関連があるわけでございまして、健康保険を五人未満までやらないというのは、一番主な理由は事務的に把握が非常に困難であるということでございます。つまり一定の職員を以ていたしましては能率的にとても間に合いませんので、五人以下のものにまで延ばしますためには事務的に相当に負担力が重くなるというのが第一の理由でございます。
 第二のほうの理由は、恐らくは五人未満の事業所におきましては、平均標準報酬は相当低いのではないかということが予想せられるわけであります。大体さような事由から健康保険については五人未満まで拡げるということについて私どもとしてもまだ踏み切るまで至つていないわけでございます。さようないろいろな事柄がございますので、最初に申上げた日雇労働者の失業保険のことも同様にやられておりますのでそれの関係もあつて今回の法案としては五人以上に押えた……。
#98
○湯山勇君 ちよつと質問が遡りますけれども、失業保険はサービス業に入つているんですね。そのもらつた資料の六十八頁、やつておりますね。そこでまあ今の問題、事業所と、業種との関連もなんですが、失業保険には入つているのです。そういうことを考えますと、私まあ御答弁甚だまあ先のことにしてもあとの問題にしても納得いたしかねるのですが、その辺一つはつきりして頂きたいと思います。
#99
○政府委員(久下勝次君) 私どもとしては先ほど申上げましたように、将来の問題といたしましては、サービス業、興行場等、現在健康保険の適用からはずされております事業所につきましては、先ほど御要望のございましたように事情の許す限り取入れたいという方針でやつているわけでございます。従いまして現在までのこの今度の一部改正の法律案を出しますまでには、まだそこまで決心がつきかねているという事情で申上げているのでありますから、今後の問題として極力御要望に副うようにいたします。そういうことで御了承願いたいと思います。
#100
○湯山勇君 そこで五人未満の場合もこれは失業保険との関連もあるからということをおつしやいましたが、すでに失業保険と健康保険とはそういうふうな違いもあるわけでございますから、是非日雇保険の特徴を活かしたようなふうに速かに改正されたいと思います。
 なお引続いてお尋ね申上げたいのですが、それはすでに御質問あつたかと思いますが、療養給付がないということは、折角この医療給付があるにいたしましても、これがなければ結局無理をして行つて、そして保険の財政的な破綻を来すというような結果を招いて、実は折角やつたことが無駄になるばかりでなく、この制度を却つて阻害するというようなことになるのではないかということを心配するのですが、これはどのようにお考えでしようか。
#101
○政府委員(久下勝次君) お話の通り、実は私どもも厚生省として当初の案を作ります際には、同じような考え方でやつたのであります。結局併しながら最後的に政府の態度として決定されましたものが、国庫負担がこの制度のために多くを期待できないことになりましたので、そこで給付の内容をどういうふうに押えるかというようなところでいろいろ苦心をしてみたわけであります。私どもの考え方では、療養の給付を三カ月以内に切るということは、これはおよそ意味がないことであろうというふうに考えまして、先ずそれを三カ月程度まではやろうということにきめてかかりました。その他のことを考えますと、結局今のお話は傷病手当金の問題だと思いますが、傷病手当金はどうせ出すとすれば、一カ月なり二カ月なり、相当な期間を出さなければ意味がないものでありますから、そういうことをやりますと、到底財源的な措置が考えられませんでしたので、この問題はこの法案としては落ちているのでありますが、私どもの厚生省としての考え方を率直に申上げまして、これは将来の問題としてはすぐ取入れるようにいたさなければならないと思つている次第であります。
#102
○湯山勇君 もう一つお尋ねいたしますが、二カ月に二十八日というのは、これは先ほど労働省のほうにもお尋ね申上げたように、相当失業者が出て来る状態におきましては、かなり確保が、都会は別といたしまして、或いは今のように大きい土木事業のあるところは別といたしましても一般の地方においてはかなり困難な状態になつて来るのではないかと思うのです。で、これについて長いはいろいろの説明もつくかも知れないけれども、政府の政策が今のような政策をとつている以上、これが非常に困難になるという見通しがあるわけですが、これについては改正の御意図はございませんか。
#103
○政府委員(久下勝次君) 只今のところとしては、この点を改正をするというところまではまだ考えておりません。と言つて、又この受給要件を将来永久に保ち続けなければならないほどの理由はないと思つているわけであります。私どもとしては、実はこういうふうに日雇労働者として日々就労するというような特殊な勤労条件にある人々でありますから、常用の健康保険の対象者と同じように受給条件を撤廃するというわけには参らないと思います。問題は、どの程度の受給要件をつけるかということにあると思いますが、たまたま日雇労働者の失業保険につきましてどういうふうな条件でやつているか、ということから、まあその辺のところで取りあえずこの制度で出発してみたいというふうにやつたのであります。ただこれを変更いたしますると、直ちにこのことはこの保険の財政に響いて参りますものでありますから、どこまでの点で保険料に響かせるか、給付の内容に響かせるかという問題にも関連して参りますから、取りあえず私どもとしては総体的な関連において、受給要件との関係もありまして、もう少し経過を見まして、又失業保険とは違つた要件を付けていいというような事情になりますれば、そのときに改めて検討いたしたいと思います。
#104
○湯山勇君 大体御趣旨はわかりましたので細かい点一、二お聞きしたいと思います。それはさつき山下委員から御質問のあつた点に関連してですが、国保とこれとは、先ほど局長のお話でははつきりこれが実施された場合は国保にこれが優先するのだという断定した御答弁がなかつたわけですがこの点は非常に重要ですから明確にして頂きたいと思うのですが、結局国保よりもこのほうが優先するかどうか。そうでなければこれは被保険者の自由選択によるというふうに解釈してもいいか、この点如何でしようか。
#105
○政府委員(久下勝次君) 法律の建前から言いますれば、この保険は日雇労働者に対する強制適用の保険でありますので、国民健康保険よりも制度的には優先をいたします。被保険者が、現在自分が国民健康保険の被保険者であるからといつても、勝手に抜けられるのではないのでありまして、第七条の規定により厚生大臣の承認を得て被保険者とならないことができるということになつておるのであります。制度的には国民健康保険よりもこの制度が優先するということになつておるわけであります。ただ山下先生のお話にお答えを申上げたように、国民健康保険の実情が、必ずしも各保険者毎に一様でございませんものですから、実際問題として被保険者がどうしても自分はこちらのほうを選びたいという意思がありまするような場合には、これを頭から押えてしまうというのも如何かというような気持で、承認を得て被保険者とならないようになる余地を作つているに過ぎないのであります。
#106
○湯山勇君 次にお尋ねいたしたいのは、現在職安あたりに毎朝たくさん並びましても、その日仕事がなくて帰つて来る人も相当ある実情にあります。このような、昨日からいろいろお尋ねがあつたように、この保険料はかなり税率が高いわけなんです。こういう高い税率を掛けておりますと、仕事のない実情から考えまして、雇う人と雇われるものとの間に黙契が交わされまして、これは一つ切手のほうは出さないことにして、どうせお前も八円出さなくちやならないし俺も八円出さなくちやならないのだから、十六円儲けることにして、この保険のほうは一つ勘弁しないかというような取引がかなり行われるのではないかということを実際に働いている人たちの間で心配しております。この点はどのようにお考えでしようか。或いは又それを取締る方法或いはそういうこともなくする方法、それについてどのようにお考えでしようか。
#107
○政府委員(久下勝次君) その問題につきましては、実際問題としてそういうことを懸念をしないでもありませんけれども、併しながら制度としては政府に対して保険料を納める義務を負いますのは、その日雇労働者を使つた事業主でございます。事業主が直接保険料を納める義務を負うことにしてございます。それを納めません場合には、強制徴収の規定が、一般の国税の場合と同様の規定がこの中に設けられております。従いまして又納めない場合には延滞金をとるというような規定もございます。そういう関係上、私どもとしては若しも事業主がそういうようなことを仮りにやつたといたしますれば、事業主に対して十分な制裁がありますので、心配はないと思います。
#108
○湯山勇君 私は直接日雇の人から聞いたわけなんですが、例えば五人使いたいと思つていても四人にしてこういう掛金を掛けないようにしようというようなことはすぐ考えられる。それを二十人使う場合にい名義を変更して四人ずつの五組というようなふうにすればやはりできるというのです。雇主が仮名義を作つて、同じ仕事は二十人を五つの組に分けてやれば四人ずつの五組なんだから、雇用関係は四人雇つたのが五組来て働いている。こういう形になればこれは結局対象にならない。そういうことをして行つたならば、結局これは全般的に言えば、働くものの不利になるけれども、雇う側のほうから言えば有利なわけなんで、そういうことがどんどん行われて来るならば、これはやはり目の先のことが一般日雇労働者の特徴として重く見られる傾向にあるものですから、ついそういうことに知らず知らず応じてしまうというようなことになる虞れが多分にあるわけなので、こういうことに関しては、仮りに罰則があるにしても合法的な脱法なので、どうにもならないのじやないかということを心配しておる向きがあるわけです。そういうことに関してどういうふうな指導をなさるか。
#109
○政府委員(久下勝次君) 只今具体的なことを挙げてのお尋ねでございますが、若しも二十人のものを四組なり五組にして、同一名義で雇つたということにいたしますれば、これは結局被保険者にとつては、それぞれ被保険者ごとにあらかじめ被保険者手帳は渡してありまするので、そういうような同じような名義で雇うとすれば、結局は同一人の手帳に対して印紙が貼られ、消印が押されるというようなことになりますので、私はそういうふうにお聞きしたのでありますが、そういう場合、従つて被保険者にとつてはもう明らかに受給要件を満たすことかできないようなことが出て参ります。これは双方の面からその辺を抑えられるのではないかと思います。被保険者にとつても受給要件の問題がありまして、日雇労働者の就労の実情から申しまして将来の就労の可能性を確実に予測することが困難な事情があるわけでございます。従つて例えば今月十四日就労したからといつて、翌月必ず十四日就労できるとは限りませんので、今月の保険料の納付を十五日以後は怠るということは、被保険者自身にとつても不利であります。又事業主が馴れ合いでこういうことをすれば私どもとしてはこれは行政上の措置として実地調査などもしよつちゆう励行して抑えて行かなければならんと思つております。いずれにいたしましてもそういうようなことで確かに心配は全然ないとは申しませんけれども、私どもとしては極力そういう点抑えて参る。又そういうことは事業主の勝手から被保険者に不利益が起らないように厳重に注意して参りたいと思つております。
#110
○湯山勇君 今申しましたのは、結局労務過重の現状におきましては雇主のほうがそういう手段をとるという懸念が多分にありまして、労務者のほうがそういうことをやろうというのじやなくても、ついそうさせられるということを心配しておるわけなんですから、十分お取締り頂きたいと思うのです。
 なお先ほど林委員からお尋ねがありましたが、歯の治療についてはこれは局長も御存じのようにイギリスのベヴアン労働大臣は眼鏡と義歯を無償で給与することを政府が拒否したために、労働大臣の席を蹴つたというような例もあるわけです。これはどなたも年を取れば眼鏡が要るし、日雇のかただつて眼鏡が要るし、勿論歯も悪くなるわけでありますが、こういう誰でもが要るようなものが特にこういう保険から除外されておるのは一体どういうわけでしようか。
#111
○政府委員(久下勝次君) このまあ理由といたしましては結局どういう点で給付制限をして行くかということなんであります。傷病手当金を入れなければならん、又給付期間ももつと延長したい。歯科においては補てつも入れたいというようにいろいろ給付内容をよくしたいという考え方があるわけであります。それらの点につきましてどれを除いて行くかということに一つの問題があるわけであります。補てつを除きましたのは、これはまあ甚だ言い方としては酷であつて、私自身が心から納得して申しているのではないのでありますけれども、ただ歯科の場合、歯が痛む、そうしてその痛む歯を治療をして治しておくというような程度であつて、歯が欠けた場合に入れ歯をして完全なものにできれば勿論いいのでありまするけれども、その辺のところは今の案の保険財政の面からではちよつとそこまで行きかねるというような他の釣合い等も考えました措置であるのでございます。
#112
○湯山勇君 只今までお尋ね申上げたことは、みんなお尋ねした内容は局長よくおわかりになつておりながら、大体予算財政の関係からできない。端的に言えばそういうことになつていると思うのです。これは労働省のかたがたにもお願い申上げたいと思うのですが、結局そういう労働者の生活が圧迫されているのは、一に政府が労働者をどれだけ尊重するかということにかかつているのであつて、こういう保険給付の内容をするほか、昨日からの御質問で随分たくさんありましたが、改善するということは単に孤立して厚生省だけでやつたのではなかなか困難である。どうも支給に当つていらつしやるかたも、そして労働条件の監督に当つていらつしやるかたも、やはり力を合わしてやつて頂かない限り、今お尋ねしたすべてのものは解決しないということを一つ御把握頂きまして、御協力を願いたいと思います。
 なお引続いて、これは純粋にお尋ねしたいのですが、二十条に、「被保険者が、闘争、でい酔又は著しい不行跡によつて」云々とあります。この泥酔とか著しい不行跡によつて給付事由を生じたときは、これは該当しないのだということはわかりますけれども、「闘争」というのは一体どういうことを指しているか、そして又「闘争」ということがなぜ給付から除外される条件になるか、これは一つ明確にお示し願いたいと思います。
#113
○政府委員(久下勝次君) この給与の規定は、実は現行の健康保険法にも同じ規定がありまするので、それをとりました。その根本的な考え方は或いはこの言葉では少し不足しておるかも知れませんが、要するに俗にいう喧嘩でございます。みずからの責任に帰せらるべきような喧嘩をした場合に、それによつて怪我をするとかいうようなことがあつた場合には給付を行わないことができるという考え方でございます。従いまして、これが解釈としては当然被保険者自身の責に帰すべき事由によつてみずから事故を生ぜしめたと、こういうふうに解釈いたしております。
#114
○湯山勇君 私はこれは非常に重要な言葉だからなお念を押したいと思うのです。日雇の人たち或いは一般の健康保険の該当者にいたしましてもですが、憲法で保障されている団体行動の権利、これの発動によつて起るいわゆる闘争ですね、いわゆる闘争です。今局長のおつしやつたのは喧嘩とおつしやいましたが、個人的な喧嘩ではなくて、本当に賃金要求なり何なりを掲げて、そうして使用者と対決する闘争、そういうものがこの適用から除外されるというようだと、これは大変なことだと思いますので、その点をもう一度明確に……、つまりいわゆる俗にいう喧嘩が闘争であつて、憲法でいつている団体行動、この団体行動はここでいう闘争ではないのだと、こういうことなのかどうなのか。
#115
○政府委員(久下勝次君) 只今お尋ねの通りでございまして、従来解釈上もさようにいたしております。従つて、憲法又は法律によつて許されておるような行動によつてこれが仮りに文字の上では闘争に当るといたしましても、そういうものは当然入らないと解釈いたしております。
#116
○湯山勇君 一応これで終ります。
#117
○委員長(堂森芳夫君) 他に御質疑ございませんか。私ちよつと聞きますが、この資料の七十頁ですか、府県別の日雇労働者の就労状況調査と言いますと、あの日雇労働者の就労日数は大体月平均二十一日ですね、そういたしますと、この最低十四日の就職を以て保険の資格にしておると、そういうことになつておりますが、こういうことは、この失業対策の枠を縮めて行くというような方向に追いやるという傾向はございませんですか。
#118
○説明員(和田勝美君) その点は御質問のようなことは絶対にございません。労働省といたしましては一日でも多く就労日数を殖やすように極力努力をいたしておるものでございます。
#119
○委員長(堂森芳夫君) それからこの日雇労働者というものは、いわば政府がやはり救済しておると思うのです。この救済しておる人から、僅かな賃金から保険料を取つて行くということい、何か矛盾がございませんでか、如何ですか、労働省のかた、どう思われますか。
#120
○説明員(和田勝美君) この点につきましては、日雇健康保険がやはり一種の社会保険として実施される以上、賃金から保険料を支払うということは止むを得ないのではないかというふうに考えます。
#121
○委員長(堂森芳夫君) 併し、それは止むを得ないと言いましても、それは理窟ですよ。併し食えなくて一年中働けない人たち、十四日から二十日くらい働いて漸く飯を食つておる、食うか食わずだと思うのです。そういう人から保険料を取るということは本当に矛盾はありませんか。おかしな表面的な返事じやなしに……、救つておるのでしよう、救つておる人から金を取つて行くということはおかしいのじやないですか、どうですか。論理の矛盾はないでしようか。それは保険だから保険料を取ると言つたらそれつきりですが、如何でしようか。
#122
○説明員(和田勝美君) その点は先ほどお答え申上げた通りで止むを得ないのではないかというふうに考えます。
#123
○委員長(堂森芳夫君) それはどうも質疑応答にならないからいいようなものだけれども……、まあようございます。
 労働省の労働局長が衆議院の労働委員会に出ておりまして、席を離せないそうでございますが、御了承願えますか。
 ちよつと速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
#124
○委員長(堂森芳夫君) 速記を始めて下さい。前回の委員会で保険局長から答弁がございませんでしたので、この際答弁を求めます。
#125
○政府委員(久下勝次君) 前回榊原先生からお話がありまして、私はこの問題を法律上の措置として考える場合のみに限定してお答え申上げたのでありますが、もう少し広い立場でお答えを申上げますると、私どもといたしましても、医療担当者に無用な御迷惑をおかけしてこの制度が行われるということは適当でないと考えておるものでありまするので、行政上の措置といたしましては、榊原先生のおつしやつたようなことを十分事業主等に徹底をいたしまして、協力をしてもらうように措置をいたしたいと思つております。
#126
○榊原亨君 私の申上げましたのは、法令上の処置としてではなしに、たとえて申しますると、窓口で診療担当者が徴収をいたすべき額と診療費の額におきまして、現実の面において未収ができました場合には、事業主においてもその徴収に協力をして頂くようにお願いをするということが一つと、又被服その他につきまして、入院をいたしましたような場合に、現実の面において着ている着物がないという場合に、これは関係の市町村において速かに何らかの処置を講じて頂くように一つ御手配を願うということであつたのでありますが、只今のお話でよろしくお願いいたします。
#127
○委員長(堂森芳夫君) 別に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#128
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。
 それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは、それぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。
#129
○山下義信君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、本案に反対の意を表するものであります。
 実は、昨日来質疑をいたしまして明瞭に相成りましたように、又本日の質疑に私申上げましたように、こういう案はもう我々が審議する対象にならない。質疑をすること自体が馬鹿々々しいようなものだと思う。やや保険制度の体裁を成しておるならばこれは質疑をする価値もありまするが、余りにその粗雑さと言いますか、むちやくちやと言いますか私はこういうものを厚生省が保険法であるといつて出したその気持を疑うということを申上げたいのでありまして、一応大だたいなところは、この法案の欠陥と言いますか、そういう問題点を指摘しておきましたが、細かいことを申上げたらもう切りがない。それほど不完全なものでありますることは、もう自他周知であります。私はこういう日雇労働者の健康保険制度、即ち、久しく関係者の各位が望んでおりました健康保険制度はこういうものでないことはもう言うまでもないのであります。こういう日雇労働者に対して、果して特別の保険制度を布くということがいいか悪いかということも問題なんです。本来言うたならば、健康保険法に入れてしまえばわけはない。現在の健康保険法の中にはこの種の対象がわざわざ法律の中に排除してある。そこだけ削り取つてしまえば皆対象者としてカバーができる。これをわざわざ外へ出して別仕立にするということは、元来これは我々が社会保障制度を確立して行こうという上においては、どつちかと言えば邪道なんです。先般も私立学校の教職員の共済組合法案という別仕立ができたことについて、我々が異議を唱えたのもやはりそうなんです。我々の目標はどこまでも社会保障制度への確立、社会保障制度の整備、拡充という一点に向つて目標を誤またず進んで行かなければならん。大体こういう別仕立の健康保険制度を作ること自体が我々は問題であると思う。併しながら、現下現実の状態においては、いろいろ諸手続の上においてこれを健康保険法の中に取入れるということになれば、非常にその条文の取扱いの諸規定というものが複雑多岐になるという関係から、むしろ健康保険法を改正する、健康保険法の中に取入れるということよりは、外に出して別の制度、別の法律を作つたほうが煩雑でなくてよろしいという以外には別仕立にする理由がない。強いて必要があるとするならば、この種の人たちの収入に鑑みて、料率を特別扱いにするかどうかという点にあると思うのでありますが、或いは又その他の諸条件につきまして、特別な計らいをするという以外には別仕立にするという理由がない。やるならばそれはやらなければならん。先ほどから質疑の中に湯山委員が述べられたように、その適用の範囲を拡大するということなんです。これは日雇労働者保険というものを政府が考案をしておるというようなことが伝えられたときに、厚生省の当局は、当時牛丸君であるか、新聞に出ておつたと私は記憶するが、将来は、家庭に出入りする手伝いの大工さんのような人も、或いは女中さんのような人にも、一人々々に適用して行く考えだと、こういうことなんだ。それが当り前なんだ。そういうものを作るならば如何にも対象の範囲の拡大の上においても意義がある。今回はそういうこともしてない。そうして料率も安くない。この点は私が指摘いたしましたように、詳しいことは避けまするけれども、こういう料率ならば、現在の健康保険の標準報酬を大体同じものに比べてみると、健康保険の料率の七割四分四厘に当る。そうして給付の内容程度を比較するというと、給付の程度というものは健康保険のもう半分以下の程度なんです。料金は七割五分近くも健康保険に比較して取つておいて、そうして健康保険の給付内容の半分以下の利益も与えないというようなことはひどいのでありまして、又運用の手続等も今日の状態から推算をすると実に煩雑であるということが予想されるのです。支給資格の要件等につきましても、本員が指摘いたしましたように、苛酷であるというようなことにつきまして、又この部分が私どもの考えでは粗雑であるということのほかはないのであります。殊にこの給付内容のことを言うと、きりがありませんが、今質疑の中で湯山君は傷病手当金のことを言われましたが、これもまあ当然のことでありますが、私どもが一番気のつくことは、いわゆる分娩給付というもののないことなんです。これは著しい欠点なんです。日雇労働者の少からん数が女子なんです。女子に必要なるところの給付というものが考えられていないということも、一々言つてれば、きりがないのでありまして、私どもといたしましては非常に本案の不完全なることに驚くのであります。殊に日雇労働者の療養、治療を受けました者の、政府の資料によつてその支払い状況を見るというと、その三割九分二厘というものが生活保護法によるところの医療扶助なんです。結局政府の日雇労働者健康保険というものは、全額負担するところの医療扶助を、八割が国庫で二割が地方といつてみたところで、結局政府若しくは公共団体で負担しているところの医療扶助の最近の統計で言うと、四億を擁しておるというが、その医療扶助を結局労働者の自前に切替えるそれだけのことでこの日雇労働者健康保険法というものを出したと言つても、弁解の余地がない。そうして医療扶助とこの保険の被保険者になつたものとの関係というようなものについても極めてあいまいなんです。国保に対しては先般私質疑の間に述べまして、湯山君が重ねて質疑されましたが、或る意味においては全く国保扶助の関係も不明確なんです。衆議院でもこの点が論議されてあるようでありまするが、わざと国保から程度を下げ、むしろ国保のほうに入つたらどうだと言わんばかりの勢いが見えるということも言い得られる。殊に本案について一大欠点といたしまするところは、言うまでもなく国庫の補助がないということなんです。他の労働関係の保険におきましては国庫の補助をいたしておる。然るに同じく労働者の対象とするこの案に対しては国庫の補助がない。それならいつそ金を出さんのかと言えば、何とか失業関係事務管理というような名前でその三分の二を国が補助を出す。使用者のほうにはこういう半額の保険料の負担は気の毒だからと言つて出して、使用者のほうというのは皆公共団体、そういう市町村に補助を出さなくても、この保険全体に補助を出せばいいのに、保険制度には国の費用を一文も出さない。そんな心配をしなくてもいいような市町村には、この保険料を引受けた三分の二は出そうという、力瘤の入れどころが大変私は間違つておると思う。弱い者のほうへ応援をして行かなければならんのに、弱いところの被保険者はそのままにしておきまして、そういうことをやるというようなことを一々指摘いたしますると、私は殆んどこの法案は審議の対象にならないと思う。併し、これは厚生省当局でもこの案を以てこれがいいとは考えていないということは、もう昨日来からよくわかるのでありまして、厚生省が当初考えた案は、我々両社会党が衆議院に提出いたして、未だ審議を受けておりませんが、それに近いものが厚生省は考えたということ、その予算は二十九億近くを擁する案が考えられたということなんだ、これが当り前なんです。私は本当を言つたならば、こういう法案は出さんほうがいい。こういう案は初めから出さんほうがいい。日本国中風が悪いばかりじやない、外国に聞こえても風が悪い。日本の社会保障関係の政府はこういう案を出したと、今頃世界中にこれを見せたらとんでもない物笑いになると思う。恐らくこれはまあ大蔵省が聞かなかつたとか聞いたとかは別問題として、こういうものを出したのはないよりもましだろう、むしろこういうことから始めて、そのうちにだんだんだんだん、一歩々々ということを先ほどからも漏らして言つておるのでありますが、そうやつてみて、悪いところを大蔵当局にも見せ、だんだんとこれは直して行かなければならんという実績を白日の下に曝して、それから悪いところを見てもらつて、だんだん手直しをして行くという考え方が、今日の社会保障制度の漸進のこの段階において、もろもろの保険制度が未熟な非常な不完全から出発をして、漸次それが補強せられた、ああいうコースを今頃辿つて行くという考え方それ自体が果して私はどうかと思う。むしろこの際にはこれは出さずに、そうして改めてしつかりした制度を考え、内容を備えて出直すべきが私は至当ではないかと思う。殊に指摘しておきたいことは、関係の社会保障制度審議会、社会保険審議会等が、この案の私が申上げたような諸点或いはその他についても十分不満の意を表しておる、それをも押切つてこの不完全なものを出すということは、真意が奈辺にあるかと私は了解に苦しむ。それで、当局は質疑応答の中に十分将来は一つ考えて、直すところは直すのだということでありますから、一日も早くそういう方向へ持つて行つてもらいたいと思うのですが、私はこういう不完全なものを出す考え方の裏には、労働省とどこまで相談して、労働省がどこまでこの案を出すことに賛成したかどうか、内面のことは知らんが、労働省にも関係がある。厚生省当局がこの程度のものでも出そうという考え方の裏には、一体日雇労働者健康保険というこの制度は、どういう性格のものと考えて出しておるのかということなんです。恐らく日雇労働者というものは憐れむべきものである。生活困難な低額所得の階級で、保護を要する気の毒な階層なんです。幾らか何とかして上げないよりはましだ、少しでもこうしておいたらという憐憫の情を以て、同情を以てこういう制度を考えたというようなことが若しあるとするならば、私はそういう考え方があることを言つたのではないから、はつきりとは申しかねるが、そういう考え方が潜んでおるなら、私は非常な誤りだと思う。私はこの法案が不完全だいいうよりは、こういうものを出すその背後に潜む思想が、この種の日雇労働者は気の毒なんだから、こういう制度を布いて少しでもあの人たちのためになるというような考え方、同情的な、恩恵的な考え方、私はこれは寸毫もあつてはならないと思う。社会保障は慈善事業じやない、社会保険は社会事業じやない。我々はこの種の保険制度を社会政策的に考えられたその時代を一日も早く通過して、私どもは本当の社会保障制度の理念に立つた保険制度を考えて行きたいと念願をいたしておる。これは政府が金を投ずるのじやない。これは少額所得者の労働者のその乏しき中から保険料を出させ、その人たちの自前によつて、その人たちのものとして政府が法律によつてそれを保障して行こう、それを確認して行こう、この運営には、その給付内容すべてのものは保険料を出したものがみずから運営し、みずから考えて行く権利がある。政府のお陰で療養給付してもらうのではない、これは自主的なものなんです。日雇労働者が自主的に持つことができる保険制度なんです。社会事業でもなければ、恩恵でもなければ、恩典でも何でもない。ただこれらの制度の運用上保険者は政府みずからが当ることが適当だから、今日は保険者が政府という案が立てられてある。これはいつそのこと法律がこの種の日雇労働者保険者は日雇労働者組合みずから当る、そうして諸君の保険料を徴収して、諸君がみずからこの保険の内容を考え、その運営も諸君みずからやれと言つて、これはあの人たちに与えてもよろしい。そうしてその必要なる費用を国が補助して行くということが本筋なんです。最近著しく我々の耳目を餐動ずるのは、国保に対する補助費の増額である。然るにこの種の健康保険の創設に対しては政府が未だに一顧だにその給付に対して補助をいたそうといたしておりません。私どもはこの本案の考え方の上におきまして一抹割切れないものがある。その法案の内容その他に至りましては、先ほど申上げましたように、殆んど審議の対象にならん。社会保障制度においては諸外国に比してさほど遜色のないと言われておる日本において今頃こういう程度のものが考えられ、理由は何であろうと、これが白日の下に国会に姿を出したということは、私どもは非常に悲しまざるを得ない。その意味におきまして我が党は別に両社会党が共同提案しておりまするしつかりした案も持つておる関係もございまして、政府提出案は非常に不完全なるものでありまして、百害あつて一利なしと考えますが故に、私は本案に反対の意を表するものでございます。
#130
○林了君 本案はなお研究すべき点は多々ありまするが、政府当局もこれについては将来なお改善をしなければならんということも認めておりますので、私は一応そういう精神を酌みまして、本案に賛成をいたします。
#131
○湯山勇君 私は社会党第四控室を代表いたしまして本案に反対をいたします。
 すでに本案の持つておる弱体性と申しますか、そういう点については質問並びに只今までの討を通じて明らかにいたされたところでありますが、この点に関しましては一言にして申せば、先に社会保障制度審議会がその答申におきまして今日かかる内容の制度を実施することは将来社会保障制度を確立するに当つて却つてその妨げになるやの懸念さえもないではない、こう申しておることからも明らかであると思うわけです。つまりもう少し具体的に申上げるならば、この法案は少しも労働者のためになつていない。料率の問題にいたしましても傷病手当の問題にいたしましても、或いは給付の範囲、適用条件、それらのすべてが少しも日雇労働者のためにならないということが一つ。第二は、日雇労働者の健康保険である以上日雇労働というものの特徴が活かされてなければならないと思うんです。然るに対象にいたしましても、或いは期関にいたしましても或いは傷病手当を抜いたことにいたしましても、更に又五人未満の事業所に適用されないといつたようなことにいたしましても、何ら日雇労働者の特徴を活かしていない。こういう点については全く意味をなさない法案であるということが言えると思うわけです。更に次に指摘いたしたいことは、この法案は他の関係法案との関係が極めて不明確である。健康保険との関係においてはいろいろ不利な日を見ているだけであつて、これによつていろいろな点が制限されておりますし、又国保との関連におきましてはその損得が明確でなくて、これを一体誰がどうするという事業で、どう判断するというようなことも極めて困難である。更に又生活保護法との関係或いは失業保険との関係、これらの関係が極めて不明瞭であり、又関連する部分においてはすべて損をしておる、こういうことが言えるわけです。例えて申せば全く日雇労働者健康保険法というのは、例えて言うならば、丁度まあ残飯を食べさしたような法案である、こういうことが言えるのではないか。残飯でも腹が肥るからいいじやないかと言われるけれども、そうじやなくて、むしろそのことによつて被保険者が中毒を起したり、或いは崇つたとすると、生命にもかかわるというような事態が起るのではないかという心配があるわけです。社会保障制度審議会の答申に、将来社会保障制度全体に対して妨げになるかも知れないという指摘があつたのも以上のような点であると思うわけです。これらの諸点に関して厚生省が本案作成までに努力をしたこと、更に今後において努力しようとしていることは認めますけれども、併しながらその努力は今日までの実績から見ましても、単にそのためだけの努力だけでは決して現実しない。根本的に遡つて考えるならば、これは政府の全労働政策の一環として、又政府の社会保障制度全般の政策の一環として考えない限り、こういう部分部分の解決のみによつて一切は解決して来ないわけです。そういう意味合いにおきましてこの制度自体を通して政府の労働政策並びに社会保障制度の政策に反省をしてもらうという意味合いにおきましても私は本法案に反対をいたします。
#132
○委員長(堂森芳夫君) 他に御発言ございませんか。
#133
○大谷瑩潤君 私は自由党を代表いたしまして本法案に賛成をいたすものであります。その内容におきましては十分とは申されないのでありまするが、日雇労働者の健康保険という点につきましては先ず最初の法案としてこれの実施を待つて、そうして日雇労働者の健康保険に洩れておつた人たちがこれによつて救われるということになりますれば、誠に結構だと存ずるのであります。併しながら法案の内容そのものにつきましては十分とは申されない点が多々あると思われまするが、厚生省のほうにおきましても将来これを訂正して他の委員の各位が申されておりまする通り完全なものにいたして参りたいという熱意を持つておられることを我々は認めまして、この法案に賛成を表するものでございます。
#134
○委員長(堂森芳夫君) 他に御発言はございませんか。他に御意見もないようでございますが、討論は終結したものと認めて差支えございませんか。御異議ないものと認めます。
 それではこれより採決に入ります。日雇労働者健康保険法案を衆議院送付案の通り可決することに賛成のかたは挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#135
○委員長(堂森芳夫君) 多数でございます。よつて本案は衆議院送付案の通り可決すべきものと決定いたしました、
#136
○大谷瑩潤君 只今採決されました本案に対し、別紙のような附帯決議を付せられんことの動議を提出いたします。附帯決議を読み上げます。
   附帯決議案
  本法による給付の内容充実と、他の保険給付との均衡を計り、更に被保険者の範囲を拡大し、以て全労働者の福祉と生活安定を期するめ、国庫負担の実現を希望する。
#137
○榊原亨君 只今の大谷委員の案に賛成であります。
#138
○委員長(堂森芳夫君) 大谷君提出の附帯決議の動議は成立いたしました。只今の大谷君提出の附常決議を採決いたします。
 大谷君提出の通り附帯決議を付することに賛成のかたは挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#139
○委員長(堂森芳夫君) 全会一致でございます。よつて大谷君提出の通り附帯決議を付することに決定いたしました。
 先ほど可決になりました法案の、委員長が議院に提出する報告書には多数意見者の署名を付することになつておりまするから、本案を可とされたかたは順次御署名を願います。
 多数意見者署名
    大谷 瑩潤  西岡 ハル
    横山 フク  常岡 一郎
    榊原  亨  中山 壽彦
#140
○委員長(堂森芳夫君) 署名洩れはございませんか。署名洩れはないものと認めます。
 なお本会議における委員長の口頭報告につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#141
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。
  ―――――――――――――
#142
○委員長(堂森芳夫君) 社会福祉事業振興会法案を議題といたします。御質疑願います。
#143
○山下義信君 本案につきましては、私はこの法律の制定によりまして民間社会福祉事業関係に必要な資金が貸与せられて当面の各施設の財政難が緩和せられるということの利益、そのことが重大でありますると共に、この種の方法によりまして民間社会福祉事業の資金問題の解決方策として考えられて行くということ、そのことも私は非常に重大であると考えるのであります。民間社会事業、略して社会事業と申しますが、民間社会事業に対しての国の考え方或いはその社会の考え方というようなものにつきましての各国の事例等につきましては今ここに私は喋々申上げません。我が国の民間社会事業が各国と比較いたしまして如何なる現状にあるか、又我が国の特殊性に鑑みまして民間社会事業の力に待たなければならんものがどれだけあるかというようなことにつきましては識者の夙に承知しておるところであります。然るにその民間社会事業の必要なる資金につきましては、今日におきましては、大ざつぱに申上げますると政府の事業委託によりまする委託費、又終戦後実施されました共同募金によりまするところの若干の配分とかいうことによつて行われておりまする現段階でございまするが、ここに新たに民間社会事業に対しまして資金の貸付方法というものが考えられた本法案の実現に対しましては私どもといたしましては、この方法に対しまする我々の考え方、関係者の考え方というものにつきまして私は明確にいたしておく必要があるのではないかと存ずるのでございます。
 今日まで私の知り得まする範囲内におきましては、民間社会事業に対しまする資金の提供は、一には寄付金により、一には政府の補助金によるということが甚しく要請されて参つておつたように記憶いたすのでございます。寄付金のことは別といたしまして、政府から民間社会事業に対するところの補助金の獲得と申しまするか、補助金を支出いたしまする途を開くことにつきさしては関係者が一方ならず心を痛めて参つたことなのであります。新憲法によつてその途が塞がれ、如何にして塞がれた途を排除するかということについて官民が腐心して参つたところでございます。そういう現状にありまして、ここに政府提案によりまする社会福祉事業振興会法案が提案されまして、我が国の民間社会事業の必要なる資金に対しましては政府がその資金を投資いたしまして、貸与いたしまして、更にこの機関によりまして必要なる施設に貸付が行われるということに相成るのでございます。さような方法が考えられたのであります。私は寡聞にいたしまして先進諸国の例を熟知いたしておりませんが、承知いたしておりませんが、私は民間社会事業なるものに必要なる資金を貸付けて、そうして他日その償還を求めるというような考え方が果して欧米諸国、先進諸国等にその点実例があるかないかということを承知いたしていないのでございます。根本的には私は社会事業には金を与えるべきものである、出すべきものである。又社会事業家も惜しみなくその金を使い果すべきものである、これを手許に溜め置くものでもなければ、又社会事業に投じたる資金というものは他日返還をしなければならん性質のものでもないのであつて、これは必要なる資金は、公けの金が出ようと、私の金が出ようと、これは惜しみなく与えて、そうして十分に使い果してよろしいのではないかと私どもも考え、恐らく社会通念としてもさように考えられておるのではないかと思う。然るに我が国におきましては、ここに民間社会事業の資金供給の方法として、政府が金をこの種の仲介機関に貸付ける又この種の仲介機関は又それぞれ末端の施設に必要な資金を貸付ける、そうして社会事業家はその金を借りて、これが無利子であるのか、利子があるのかということはあとの質疑で承わらなければなりませんけれども、要するところ、その金は返すのであるということの行き方につきまして若干の疑問を持つものであります。従いましてそういう観点から提案者に対しまして若干の質疑をいたしたいと存ずるのであります。
 先ず第一点は、この振興会法案の立案に当りまして民間社会事業のあるべき姿につきましてはどのように提案者は考えておられるかという点を承わりたいと思います。
#144
○衆議院議員(青柳一郎君) お答えいたします。只今お話の中にもございましたように、現在日本の、と申しまするか、これは世界各国を通じての原則であるとも考えられますが、社会福祉については公的な国家的の責任があるものであると私ども存じております。現在日本の法制におきましてもそれが明確化せられましたので、国家は公的施設の拡充強化に努めなければならないことは勿論であると存ずるのでございまするが、現在各般の事情は急速にこれを実現することが困難であります。民間施設に委託せざるを得ない実情であります。又更に今までの日本の民間社会事業のあの熱心な有様、あの尊い体験を積まれた有様を考えまするとき、なおこの民間社会事業を育成せしめて行くことが必要であると存ずるのでございまして、この民間社会事業の育成を図る必要があると先ず考えられる次第でございます。
#145
○山下義信君 只今私が前提に申述べましたように、民間社会事業の資金につきまして寄付金、補助金、こう二種類ある。こういたしまして元来民間社会事業の資金といたしましては、寄付金によるべきものか補助金によるべきであるか、どうお考えになつておられますか。
#146
○衆議院議員(青柳一郎君) 民間の社会事業が自主的な活動に重点を置くとしますれば、自己資金又は寄付金によるべきものと考えられるのでございます。併し現在の民間社会事業にこのことを期待することはいささか困難かとも思われるのでございます。公的責任遂行に当り民間施設に対しましてその設備の拡張充実などの費用につきましては、補助金を支出すべきことは理論上是認せられるところでありまして、又現行法上御存じのように極めて限られた範囲ではありまするが、それが認められておるわけでございまするが、これにつきましては民間社会施設側の一部の自己負担がやはり残ること並びに大多数の施設には補助金を支出する途が事実上現在鎖されておるということを考えなければならん、で、差当りのところ資金融通の途を是非とも考えなければならんと考える次第でございます。
#147
○山下義信君 私は現在のいわゆる民間社会事業というものの今日の状態、この状態が一体正しい姿であるかどうかという点なんです。それでこれは我々参議院におきましても数年前にこの点を指摘いたしまして、我々の見解を表明いたしておつたわけですが、いわゆる民間社会事業というものの本質はやはりその人の熱意又その人の創意によつて自由潤達なる事業の創設、運営というものがあつて初めて民間社会事というものの価値が非常に発揮せられるんだ、然るに終戦後すでに八カ年間経過いたしました今日の状態を見ると、現今の民間社会事業の在り方は一概に申上げますると、戦前の社会事業の在り方とはよほどその趣きを異にいたして、又私どもが考えるところの民間社会事業の在り方とは相当距つた実情にあるのではないかということが考えられる、言い換えかすと、今日の民間社会事業は、ことごとく政府の委託を受けて、児童福祉法或いは生活保護法或いはその他の社会福祉立法によりまするところの政府の事業の委託を受けて、そうして何と申しまするか、その委託事業を主として管理するといいますか、扱つておるといいますか、そういう形の状態に今日相成つておるのであります。それぞれその事業の歴史或いはその事業の創設者等によりまする特色は、もとよりこれが壊滅に帰したとは私は言いません。併しながら少くとも只今申しましたそれぞれの民間社会事業の一般社会が要請するその独自の創意、その事業経営者の熱意によつて十分意義ある存在を期待するということには私は非常に距離がある状態に置かれておるのではあるまいかということを考えるのであります。言い換えますると、今日の民間社会事業と、仮りに市町村或いは県庁というような地方の公共団体の経営しておるところの社会福祉事業、それらの施設というものと比較いたしまして、どれだけの違いがあるかということを考えますというと、その間の差違というものが非常に小さくなつている、殆んど差違を認められないというような状態、私は果してこういう状態でよろしいのかどうか、日本の民間社会事業というものをこういう形体でずつとこれからも行くのか、政府はみずからの責任においてなすべき社会福祉の諸施設を拡張することを怠り、その経費を惜しみ、その責任を民間社会事業に転嫁して、そうしてそれらの人たちの事業そのサービスというものをいわゆる委託費と称して不当に安い金で以てそれを買上げて、そうして自分の責任を逃避しておるという現状、又民間社会事業家は自分の思うような事業の経営とか、自分の思うような事業の発展、在り方というものを、困難であるか、或いはそれが不可能であるか、政府の委託事業を喜んで受けて、そうしてその委託費によつて全部の経営を賄うて行くのか。政府の与えようとする委託費は必要なる程度よりは遥かに低い。遥かに低いところの委託費で以て全部の経営をやつて行こうとする。少々の共同募金をそれに差込んだからといつて不足な状態は明らかである。こういうような公私の区別の殆んど付かないような民間社会事業の在り方、先ほどからそういう言葉を使いたくなくて避けようかと思いましたけれども、併しながら私は言わざるを得ない。民間社会事業の大半は概ね今日の実情は政府のいわゆる社会福祉の仕事の請負をしておるという状態、私はこの状態で果していいかどうか、従つて政府のこの種の事業に対しまする制肘も相当きびしいものがあると考えるのでありますが、提案者は日本の民間社会事業のあるべき姿につきましてどういうふうに考えておられまするか、御所見を承わりたいと思川います。
#148
○衆議院議員(青柳一郎君) 私も山下先生と憂いを同じくするものでございます。勿論社会事業の公共性からいたしまして公的責任の一翼を担う場合におきましては一定の監督の行われることは当然考えられることでございまするが、その行過ぎなどに厳にそれを戒めること、又戒める必要がある、こう存ずるのであります。只今お話のように民間の社会事業家は尊い経験と非常な熱意を持つておられます。この経験と熱意を活かして、その創意を本当に現実のものとし、民間社会事業の持ち味を持ち続けて行くことを私も期待いたしております。
#149
○山下義信君 私は今多くの民間社会事業の経営いたしておりまするその事業種目ですね、例えば養老院でありますとか或いは孤児院でありますとか或いは宿泊の提供でありますとかいつたようなそういう極端な最低の境遇の階層に対しまする社会祉福の仕事は、これは私は分けの責任である、そう思う。社会福祉立法は皆それを要請しておる、生活保護法でも国の責任ということが明白にしてある、児童福祉法でも国若しくは地方公共団体の責任であるということを明白にしておる。今日の近代国家社会は私が言うまでもなくそれらに対して国の責任、公共団体、分けの責任としてやつておる。私は国の施策がそこに及ばない間は、民間の篤志家が出て、いわゆる慈善家が現われて、そうしてその気の毒な階層に対しての社会事業を行なつて行くということもあり得ることは当然でありまするが、今日の時代におきましては殆んど、大きく言えば、全世界各国ともそれらの点につきましては公けの責任を以て着々としてその責任の所在を明確にしつつある。日本のようにいつまでも民間社会事業に孤児院をやらせたり、政府がなすべきところのそれらの保護施設をやらしているというようなことは、私は非常に時代遅れだと思う。民間社会事業家はこれを政府の責任に譲つて、公けの、公共団体の責任にこの種の仕事は譲つて、私は民間社会事業の大いに力を尽してもらわなければならん分野は、この最近の経済困難なる日本の社会情勢等から行きましても、私はもつともつと期待すべ分野があるのではないかという考えを持つのであります。私はこれらの今回の資金貸与というようなことを行われますにつきましても、民間社会事業のあるべき姿、進むべき道というような点につきましては政府も又提案者におかれましても十分に御考慮下さつて、私はその道を誤らないようにしておく必要があると考えるわけであります。先ほどの御答弁で、私はこれらの民間社会事業が画一的に或いは公的施設に準ずるようなことになつて、その創意も工夫も熱意も漸次影が薄くなつて行くという姿は妥当でないという提案者の御答弁でありますから、それで了承いたしておくわけでありますが十分政府当局におきましても御考慮を願いたいと考えるのであります。
 次に伺いたいと思いますのは、この振興会の性格でありますが、これは法人組織でされるということでありますが、どういう法人格になるのでございましようか、その点を承わりたいと存じます。
#150
○衆議院議員(青柳一郎君) 私の考えといたしましては、この振興会は社会福祉法人よりも、もつと公的な色彩の多いといいますか、いわゆる特殊法人である、こう考えております。
#151
○山下義信君 それでは社会福祉事業法の支配は受けないのでございますか。
#152
○衆議院議員(青柳一郎君) 受けないのでございます。
#153
○山下義信君 結局この振興会の構想をみますと、これは今の御答弁にありますように、殆んどこれは、まあ公的機関といつてもいいような構想になつておるわけでありますが、そのことは又あとで聞くといたしまして、今回政府が出資されまする十億の金が予定されておるようであります。この金はですね、私はまあ端的に伺いますが、こういう形にして貸付金としてお出しになるのでありますが、これは振興会のほうから言いますれば、返さなければならぬのでありましようか。政府のほうから申しますると、償還をさせるという考えでありましようか。どういうことになつておるのでございましようか。
#154
○衆議院議員(青柳一郎君) 大体この原案を作りまする際には、一応年間十億の出資を政府から五カ年間に亘つて出してもらうことに一応希望をしておつたのが、我々の気持でございます。ところがいろいろな律的な解釈もあり、又各種の事情から、金額の点は予算の定むるところによつて出すということに相成つた次第でございます。その点は条文にも明らかであると存じますが、十億とはまだはつきりはきまつておりません。ただ併し数カ年に亘つて毎年々々出して行かるべきものであるということは、私どももはつきりとしておるのでございます。ところで只今のお尋ねは、振興会に対する政府の出資は、政府に返還するのかどうかというお尋ねであつたと思うのでありますが、これは政府が全額を出資することにいたしておりまして、振興会の存続中はこれを政府に返還する必要はございません。目的を終り或いはその他の事情で解散のときの処置につきまして、法律を以てその際の処置をきめるということにいたしておるのでございます。
#155
○山下義信君 そういたしますと、本年度の予算にはないわけなので、又本法の施行も明年四月からということに、四月から施行ということになつておる。ただ振興会の設立の事務だけは、この公布の日からすぐやるということですが、そうすると明年度の予算等に対する見通しは如何ですか。私はもうすでに十億という金がきまつておつたと思つておつたのですが、只今御答弁のようにきまつていないんで、質問が少し自分の勝手な忖度にすぎなかつたのでありますが、この政府の貸与いたしまするこの資金の額等についてのお見通しと言いますか、政府のお話合い等はどういうようなことになつておりましようか。
#156
○衆議院議員(青柳一郎君) 先ほども申上げましたように、毎年十億円、五カ年継続出資ということにいたしておつたのでございますが、いろいろと検討をいたしますると、例えば現在共同募金の際に各種の社会施設からどの程度の臨時費の要望があるかということを検討して見ますると、年間七、八億円の程度でございます。これらの程度の金額とも睨み合せまして、只今御指摘の通りに来年度から出資が始まる次第でございまして、来年度から出資をいたしまする点につきましては、政府も肚をきめておりまするが、その金額についてはまだ確然たるものはないのが実情でございます。
#157
○山下義信君 私はですね、これは何のために貸付けるのかと言えばですね、民間社会事業の育成のためなんですね、それで民間社会事業の育成は、今日の段階においては政府の仕事を請合つて、請合うという言葉が悪ければ委託をして、そうしてその公的性格というものが非常に強くなつておることに鑑みても、政府は育成の責任がある。それでそういう立場から言えば、当然補助金を出していい。国家も育成する、国保に出した金はこれは補助金、これは一例を申上げますれば、提案者がよく御承知の通り。それでこの種の民間社会事業に対しても政府が育成の責任を感じれば補助金を出すことは必要だ。又政府も又提案者も先ほどの御答弁ではそのことにお触れになつておる。然るにその金の出し方がいろいろな関係で困難であるということで、この貸付の方法を取る。それで借るほうは、又一般社会は、ああは言つて貸付という形をとつたのだけれども、あれは実は政府が出す補助金の代りのようなもので、あの貸付金というのはまあ政府の補助金みたいなものだというように考え易いと思うのです。又そう考えるのも無理からんことであると思うのです。従つてこの貸付金は、そういう観点から補助金のような性格を以て、そういう考えを以て貸されるのではあるまいかというような感じがするのでありますが、その点は、提案者はどういうふうに考えておられるのでございましようか。
#158
○衆議院議員(青柳一郎君) 只今もお触れになりましたように、この振興会の制度は、育成のための貸付を行うものであります。従つて条件を有利にして貸付けるのであります。従つて返還せしめることを目的としているものでありまするから、補助とはその性格が全く異なつているものと私は存じております。
#159
○山下義信君 私は前提に申上げましたように、社会事業は金が入つたら入つただけ、もう使い切りにすべき性質のものです。言い換えれば民間社会事業家は、その資金を得るためにはベツガーになつてもいいという諺もあるくらいで、使い切りのものだと考えている。で、金を借りることは了承いたしまして、一体その借りた金は一体何によつて返そうということになるのでございましようか。で、社会事業に与えられる金というのは、必要な資金が与えられて、不必要な資金が与えられようはない。委託費というものも、ぎりぎり切り詰めた委託費というものが支出されるのでありまして、金を借るときは、それでよろしいといたしましても、返すということにつきまして、営利事業でもなけらねば、他に収入の途のない社会事業といたしまして、償還についての考え方というものはどういうふうに考えておられるでございましようか。
#160
○衆議院議員(青柳一郎君) 理論的に申上げますると、委託費の中の事務費の中に、建物の償却費に相当するものを計上いたしまして、これを償還財源とすることが最も合理的であると考えられるのであります。私ども衆議院におきましても、その点に助力を重ねたいということも申合せしました次第でありますが、現在の事務費の中におきましても、僅かではありまするが、施設管理費も認められておりますので、これに充てることも可能であると存じます。又共同募金の配分金、現在しきりに行われまする後援会などからの寄附金等を以てこれに充てさせようといたしている次第でございます。
#161
○山下義信君 この振興会の組織のことでありますが、これは本当にこういうものを作るという考え方なんでしようか、或いは又名前だけ一つのこういうトンネルと言うと言葉が悪いのですけれども、取扱うところの機関を形だけ作つておいて、実際の仕事は他の団体に委託させてやらせるとかいうようなことが考えられているのでありましようか、やつぱりきちんとこれだけの機構を持つたこれだけの機関を作るという考え方でありますか。又地方の仕事は、一体これは振興会はどういうふうな地方機構を持つという考え方でありますか。その点をお示しを願いたいと思います。
#162
○衆議院議員(青柳一郎君) これは飽くまで本当のものを作ろうとするのでございます。只今も申上げましたように、特殊法人でありますし、政府からも多額の資金を取扱いますので、飽くまでも独立のものといたそうとするものでございます。併し地方におきましては、地方の社会福祉協議会などの機構を、資金の貸付などに当りましての施設の調査に利用することも考えておる次第でございます。
#163
○山下義信君 この点は十分一つ提案者においても、もとよりのことでありますが、厚生省当局におきましても私は十分考慮して頂きたいと思いますことは、これらの民間社会事業を廻つての組織ですね、いろんなことが考えられるその中で、最近の顕著なものといたしましては、社会福祉協議会、これは社会福祉事業法の中にもその一部を出しまして、今日全国に社会福祉協議会というものが持たれてある。この連絡機関といいますか、共同組織体といいますか、この種の組織、これは民間社会事業のあらゆる問題についてのまあ全責任を負うと申しますか、民間社会事業のセンターとしてその発達のためにこの協会が持たれている。私どもは民間社会事業の資金の問題につきまして、資金造成の機関、民間社会事業の資金を心配いたしまする機関というものがこの社会福祉協議会の一部局であるのが至当であるか、いわゆる資金局というものが社会福祉協議会の一つの大きな仕事としてその中にあるべきが至当であるか、或いはこの社会福祉協議会とは離れて別にあるのが至当であるか、或いは共同募金委員会、共同募金委員会というのは社会福祉協議会の中に資金局のような形であるべきが運営上一番よろしいか、いや社会福祉協議会であるから外に出して別個の機関として置くほうが弊害がなくてよろしいかというような点につきましては、参議院の厚生委員会におきましては先年非常にこの点に慎重な検討を試みたのであります。現在はこれが別個の建て前になつて存在しておるのであります。今回、既存のそれらの組織とは、又機関とは別に、貸付機関として公法人的性格のこの種の新らしい機関が作られるということになりますると、私は民間社会事業というものが、自由に活機に伸びて行くべきものである、いろいろな煩わし事なくしまして伸びて行くべきものであるというその行き方の上に、種々なる一つの権限と申しますか、一つの或る種の力を持つ団体が、機関が、その民間社会事業を取り巻いて行く姿というものが果して民間社会事業の発達の上にどういう影響を来すかということにつきましては、私は非常に心配をいたすものであります。従つてこの振興会が設置せられまするならば、私は今日組織されてありまするが、社会福祉協議会、或いは共同募金委員会というがごときそれらの組織との間の関係というものにあらゆる検討を加えまして、民間会社の事業のために便利と利益とを提供せんとすることの折角の企図が、そういう機関を煩わしく設立いたしまして、数個の機関が二重にも三重にも、なおそれには地方公共団体の職員所管の部局が存在をしておるというような状態の枠の中におきまするということの影響がどうであろうかということを非常に心配をしたすのでございます。その点につきまして、提案者はどういうふうにお考えでございましようか、承わりたいと思います。
#164
○衆議院議員(青柳一郎君) 只今のお話のように、民間社会事業施設の運営を巡りまして、各種の団体がこれを取り巻いて、その発達の上に阻害を来す、或いは只今先生が申されたように民間社会事業の充実発展のために便利と利益を提供せんとする企図に反するような意図になることを心配すると言われたのでありますが、その点に関しましても十分実際の運営につきまして社会福祉協議会関係並びに中央共同募金委員会などとの間の連絡はこれを緊密にいたしまして、実際にかなつて、この法律が目指しておりまするように、民間社会事業の充実発展のためにこの振興会をして民間社会事業施設を煩わすことなくしてこの目的を達成いたしたいと存じております。それらの機関との連絡につきましては十分なる留意をいたそうと思います。
#165
○山下義信君 私は端的に申しますと、社会福祉協議会もいわゆるボス的存在になつちやいかん、共同募金委員会も中央、地方を問わずボス的存在になつちやいかん、今度の振興会も又資金を以て、貸付というところの一つの威力を以て、又いつの間にかこの機関がいわゆるボス的な存在になつては私はいかんと思う。そうしてそういう団体が、機関が、一つでもボス的の存在になると、これは実に恐るべき害毒を流す。共同募金委員会がボス的の存在なら、そうしてその社会から集めた浄財をあたかも自己のポケットから取出して自己の思いのままにそれが使用できるかのごとき錯覚に陥つて、その首脳部が配分について越権的行為をするということになつて来ると、その害毒を流しますることは言語道断なるものがある。私どもは、この民間社会事業という弱い対象者の発達助成のそれらの機関が、私は微塵もボス的な存在に陥つてはならんと考えるのであつて、従いまして、既存のそういう機関と新らしい振興会の機関との間の関係とか、重複とか、或いは調節とか、連絡とかいうようなことにつきましては、運営の上につきましては十二分に考慮を加えなければならんと考えるのであります。意見は省略いたしますが、関連いたしまして。この振興会の事務費や運営費はどういうふうに考えておるのでございましようか。
#166
○衆議院議員(青柳一郎君) 事務費、運営費につきましては、貸付金の利子の範囲内で行う計画であります。できるだけ最小限度のものにとどめたいと存じております。
#167
○山下義信君 これは振興会が、これが社会福祉法人でなければ、社会福祉法人であつても或いは途が開かれるかもわからんが、こういつたような特殊法人格を与えて行きまするならば、いわゆる官庁機関の身代りのような形になつて行けば、この種の機関の運営関係の経費というものは私は利息の利鞘から、利鞘というと語弊がありますが、利息の収入から事務費を賄つて行くということは、私はこれは本筋ではないというような気がするのです。社会事業に対する貸付金に利息が付けられるということも、これも珍無類であると私は思うのでありますが、更にその利息によつてこの振興会が、政府からは無利子で以て資金を出させて、そうしてその資金を今度は民間社会事業家には何分何厘かで貸付けて、その利子によつてこれらの事務費を賄つて行く。言い換えれば、恐らくこの機関の役員たる者も一定の報酬を取るでしよう。これは非常勤とならないのでありますから、相当な俸給も取るでしよう。これは私は一考を要すると思うのです。若しでき得れば、これらの必要なる経費は、政府がその事務費を負担し、例えば健康保険の連合団体等に事務費の補助を出すと同じように、私はこういうような事業の機関に対しては政府の補助金を以て賄うべきではないかと考えますが、提案者は如何にお考えでございましようか。
#168
○衆議院議員(青柳一郎君) 御尤もなお話であります。ただこの振興会法を考えました際には、御存じの私学振興会の形式に倣つて考えたのであります。私学振興会のほうにおきましては利子で賄つておる関係から、こういたしたのであります。只今御指摘のように、事務費は国から出得るという途が開けまするならば、それに越したことはないのであります。私どもといたしましても今後努力をして行さたいと、こう存じます。
#169
○山下義信君 この貸付は第一条を見ますと、社会福祉法人に貸付けられるようでありますが、又附則のほうにおきましては他の社会福祉事業にも貸されるようでありますが、一体この貸付の相手方というものはどういうところに重点をおいでおいでになりまするか、承わりたいと思います。
#170
○衆議院議員(青柳一郎君) 只今御指摘のように、社会福祉法人に貸付けることを原則といたしておるのでありますが、現在の社会福祉事業の実情からいたしまして、児童福祉施設、身体障害者更生援護施設並びに更生緊急保護法、いわゆる免囚保護でございます。この法律によりまして施設の経営をしておりまするそれらの民法上の公益人をも対象とすることにいたしております。
#171
○山下義信君 これは業務方法書ですか、法律で言えば政令に代るようなもの、施行細則に代るようなもの、業務方法書というものの構想を承わつてみないとわかりませんが、資料としてそれが出ていないようでありますからわかりませんが、これは貸付に限度があるのでございましようか、およそ限度をどういうふうに考えておられますか、限度等はないのでしようか。若し施設から貸付の希望がずつと出たとしますと、どこから貸して行くという順序でもあるのでございましようか。例えば、同じことを申すことになりますが、優先的に取上げるとか、重点的に貸すとかいうような、何かここに貸付についての一定の方針というようなものがあるのでございましようか。若し借入れの希望が持つておりまする貸付資金よりは少額であれば全部に貸して済むわけでありますが、借入れの希望が貸付資金よりはオーバーしたというときには、どういうような方針でその取捨撰択、査定とか選考とかいうものをなされようとするお考えでございましようか、基本的な大筋だけ承わつておきたいと思います。
#172
○衆議院議員(青柳一郎君) 大体私どもの考えでは、長期と短期とに分けまして、施設の修理などにつきましては相当大きなものもございましよう。そういうものは長期で、大体長期におきましては最高二百万円程度を二十年間に三分五厘の利子で貸そうと、こういうことを考えております。又短期、これは国から金が参ります間の繋ぎでございます。それにつきましては、二カ年間二十万円を限度として貸そうとするのが我々の考えでございます。勿論毎年々々国から出資は仰ぎまするが、一度に全部の施設からの要望に応ずることはできません。従いまして山下先生御指摘のように、順位を作らなければならんと存ずるのでございまするが、その順位につきましては、概括的に国の必要とする重要度の高いものから貸付けるようにいたしたいと存じております。その基準などにつきましては、業務方法書の裁定の際に詳しく考慮いたしたいと、こう存じておる次第でございます。
#173
○山下義信君 私の質疑は大体終りに近付いたのでありますが、私が心配いたしまのは、たびたび申上げまように、民間社会事業の資金というものは、今日では主たるものは委託費を除きますと、共同募金に依存しておるのであります。それでこの共同募金の在り方ということにつきましても、私どもとしては非常に心配をするのでありますが、どういう状態になつておるか。最近の状況は承わりませんが、年々その募集額の目標というものが……、これがもう一定の目標だけは自然にちやんと入つて来るというようなアメリカのような、殆んどまあ何と言いますか、税金に近いほどもう確定収入として安心して行けるような共同募金の募集方法と言いますか、払込方法というものがちやんと確立されてある。日本の共同募金は、年々浮き草のように、そのときどきわあわあ大騒ぎをやつて、蓋をあけてみないとわからんというような不安定な状態になつておる。十億というような程度の金は、雨が降つても雪が降つても、もう狂いはないのか。そういうことが私どもにはわからんが、この共同募金が十億、今のととろは十数億になつておるのでありましようが、仮りに今度の貸付資金が、提案者の考えでは一応明年は十億くらい大体事前の御了解もついておるようでありますが、国家の財政から見るというと非常に少額で、こういう金で心配するようでは本当はいけないのでありますが、これは一方十億の貸付の途が開かれても、一方十億の共同募金がこのことによつて影響を受けたりいたしますると、私は非常にそれを心配をするわけであります。共同募金と貸付方法との間のその関係についてどういうことが一体心配されてあるか、或いはどういうことが考えられてあるかということを承わりたいのであります。例えば配分等についても、共同募金の配分については、しばしばこれが変つて来たという歴史もありますが、或いは経常費の赤字を配分するのだという年もあるし、或いは経常費の赤字ではなくて、施設の新設、拡張、修理ということだけしか認めないのだといつたような年もあつたりして、共同募金の配分の上にも私は影響が来るのじやないか、共同募金自体の上に何らかの影響が予想されるかどうか、社会の感情がどういうふうになつて来るかということを心配する。又配分の上においてもこれは当然影響があるのじやあるまいかと考えられる。そういうことは貸付のほうは貸付のほうで、もう借りたものは借りたもので、そんなことはお構いなしに共同募金は共同募金で別の尺度から、別の基準から、別の観点から、共同募金の配分等はやつていかれるか、この貸付という資金の供与と供給と、共同募金によるところの民間社会事業への資金の供給と、その間の調節というものについてどういうことが考えられてあるかということをお示しを願いたい。
#174
○衆議院議員(青柳一郎君) この振興会によつて民間社会事業に金を貸すということになると、共同募金の募金運動のほうに影響を来たしはしないかという山下先生の御心配が一点だと思います。この点につきましてもいろいろ話合いがあつたのであります。併し国からそういう団体に金を貸して、その団体から金を貸すということのほうが将来我々が目指しておりまする、補助金によつて国から直接、相当額施設に金をやるということよりも募金に影響する部分は少いのではなかろうか。何分にもこれは返す金であるという点もありまして、そう影響はないのではなかろうかというのが我々の結論でございます。
 もう一点のお尋ねは、共同募金の配分と、この貸付先に振興会が割当てること、それとの関連でございます。一方はただで上げる、一方は貸すのであります。従いましてこの間にその金の性格が違うのでありまして、貸すということになりますれば、できるだけ余り苦労せずして返し得るところでなければならない、こう存じます。どうしても返し得ないことがはつきりしたととろには共同募金で差上げるという考えでなければならんと、こう存じます。大体の考えはそういうところに観点を置きまして調節をいたしていきたいと存じます。私の申しますことが或いは事務的にむずかしいというふうなお考えでございますならば、一応政府当局の考えを聞かれるのもよかろう、こう存じます。
#175
○山下義信君 この法案の附則で社会福祉事業法の一部が改正されてあるのですが、この改正の狙いは何を狙つておいでになるかということを承つておさだいのですが、又若し社会福祉事業法の第五十六条第一項をこういうふうに改正することによつて何らかの途を開くというお考えでありますかどうか、法律改正の御趣旨を承つておさたいと思います。
#176
○衆議院議員(青柳一郎君) 御指摘のように社会福祉事業法におきまして五十六条において補助金を支出する条件をきめまして、その条件といたしまして、災害によつて施設が破損した場合においてこれを復旧する必要があると認めるときにのみ補助金を出すということになつておりましたのを、この際その部分を削りまして、全般的に補助金を出し得る途をここに新たに開く、この機会を利用してそういうことをいたそうと、こう存ずる次第であります。
#177
○山下義信君 私はこの法案の価値は或る意味におきましては幾何かの金を資金として社会事業家に貸与するということよりは、この法案の最後の一番最後に附加えられました、社会福祉事業法の一部の改正が私はこれは非常に重大であると考えておる。それで私はこの際政府にお尋ねいたしますが、政府は社会福祉関係の民間社会事業への委託について、「或いは事業費、事務費等のそういうような委託費について、今の委託費の基準で以つて足りると考えておりますかどうか、将来十分この経営の成り立つような委託費の増額について努力する考えがあるかないか。関連いたしまして只今私がお尋ねしました社会福祉事業法の第五十六条第一項がかくのごとく改正せられました結果として政府は如何なる措置がとり得られるかどうかということについて政府の御見解を承つて置きたいと思います。
#178
○政府委員(安田巖君) お尋ねの民間の社会事業施設に対する委託費でございますけれども、これは只今いろいろお話がありましたように、どちうかと申しますというと不足がちでございます。低いという話もたびたび承つておるわけでございまして、私どもも予算の上でこれを成るべく引上げたいと努力をいたしております。二十八年度の予算におきましては若干の引上げをいたしたのでございますが、今後ともそういう点につきましては努力をいたしたいと存じます。
 それから第二点の社会福祉事業法の改正の点でございますが、これは先ほど提案者の青柳議員からお話がありました通りでございまして、従来は災害の場合に緊急に必要とするときだけ社会福祉事業に対しまして国から補助をする途が開かれておる。それを一般的に必要な場合に補助が与えられるようにというふうな途が開かれたわけでございますので、そういうふうな御改正がありますならば、私どもといたしましても民間社会事業の補助ということにつきまして更に積極的に熱意を示さなければいかんと、こういうふうに考えておる次第であります。
#179
○山下義信君 私の質義は終りますが、私は結局事業に金を貸すという考え方は、考え方自体が私どもとしては納得しかねる、それで社会事業には貸すのでなくして与えると言つたらば語弊がございますが、もう使い切りに、金を、遠慮なく使える金を委託費であろうと補助費であろうと私は支出するのが当然であつて、今日の民間社会事業の荷うておりまするところのその責任又その偉大なるところの功績と申しますか、寄与しておりまするその仕事に対しても、どうして十億か二十億の金を補助することを政府は惜しむのであるかと私どもは非常に不審に堪えない。ただそれが憲法の八十九条によつてそれが支障がある。併しながらこれは表は、憲法の八十九条で言います公の支配ということの解釈によつて我々がその途の打通に努力して来たのです。今度ここで以つてはつきりと社会福祉事業法の中で補助の途が、法律によつてはつきりとついて来た以上は、このほうが本道なんです。このほうが本街道なんです。返さなければならん金を借りるということよりは、返さなくてもいい、気持のいい金を、これを受取つて行くということのほうが実は本筋なんです。従いまして私は、当面の民間の社会事業の資金のために、焦眉の急に応ずるためにこの種のことが考えられるということも一応肯けまするが、飽くまでもこれがやはり本筋じやない。日本の社会事業は金を借りてやるんだそうだ、日本の政府は金を与えるこさとを惜しんで、貸すんだそうだ、というような考え方、そういう考え方で、政府もそれでよしとし、又国会もそうだと、そこで決定し、民間社会事業家もそれでよろしいんだと、異議を言わないというようなことは、私はどうしてもそれでよろしいとは考えられない。私は民間社会事業の資金というものは、貸すなんという考え方、又借りるんだ、社会事業家が借りるんだ、まあ必要な資金は使つて、それは返すんだというような、借りた金で社会事業をやるんだというような考え方というものは、私は社会事業の理念というものと、果してどれだけの関係があるかということが……、そういう考え方、そういう理念の裏付で果してよろしいかどうかということについて非常な疑問を持つんです。で、これは私は焦眉の急に応じまするために、かかる変則的なことも或る時期におきましては、或る段階におきましては万止むを得ざる措置だということについては容認しますが、併しながらこれを恒久的に、これが日本の民間社会事業に対するところの育成のあり方だというような考え方だというような考え方で一貫されるということになりますと、又それを民間社会事業家もそうだ、そういう考え方でよろしいんだということになりますと、日本の国民の社会事業というものに対する考え方というものも、非常に大きな変化を私は生じて来ることを恐れるのであります。それで以上の点を明確にして頂くために質疑をいたしたのでございますが、今意見を申述べる段階ではございませんので、一応私の質疑は以上に止めておきたいと思います。
#180
○常岡一郎君 先ほど私学振興会の例によつて倣つたというお話がありしたが、私学振興会は、これは厚生福祉と言いますか、相当PTA、或いは本人自体も多少豊かなほうでありまして、これは拡張すればするほど又収入もあるわけであります。ところがこの社会福祉施設の対象になつた人々は、そういう能力は殆んどなく大きくすればするほど利益が上らないという場合もあり得ると思います。殊に先ほど山下委員からも御質疑がありましたが、実際において経営者はその経営だけに追われておりまして、殆んど裕りがないのでありますから、私学振興会の場合と非常に内容において違うものがあるんじやないか、従つてこれはやはり、この借りるのは割合にやすいのですが、返すときには非常に困難がある。ところがその返すのに困難のあるものを非常に内容が違う私学振興会と同じような考え方から出発されたところに非常に心配せざるを得ないものがあると思います。殊にその利子から職員が生活の俸給を得て行くというようなことになりますと、そこが非常に不安定でありますために、又不平というものが起つて、いろいろ本当に貸してやらねばならない人が借りられないで、それほど必要でないものが借りるというような、言わば、そういうことが起るんじやないか、こういうことも心配されるのでありますが、そういう心配はよくお考えになつておるでしようか、ちよつと伺いたいと思います。
#181
○衆議院議員(青柳一郎君) 只今常岡先生からの御質問は如何にも御尤もと思います。私学振興会の関係の学校はその大部分が社会事業に比べまして収益が相当あるわけです。そういうことは私どもも考えておるのであります。従いましてこういう方式によりましても、私学振興会のほうは割合楽に行くと思うのであります。ただ先般も申上げましたが、ただ最初に出たのは金庫法で出て来たのであります。金庫を作りますと非常に組織が大きくなります。例えば総裁を置き、副総裁を置き、或いは自動車を使うというふうなことは、社会事業については殊に只今も御指摘がありましたように、金が出て来る宛てが余りないのでございますから、そういうことは考えないで行こうというふうな案で行こうということで、一応私学振興会の形式によつたのであります。そういうような方式によりますると、更に御心配のように金を返す方法がつくか否かという点になつて来るのであります。その点につきましても現状特に考えますると、社会福祉事業を営むかたがたはその施設を修理したり、或いは少しでもよくするためにほうぼうに飛び廻りまして、高利の金に追われておつて、自分の尊い経験を生かす暇もないというのが実情でございます。従いまして政府の金を頂いて是非これを救済するという関係で出て来たわけであります。勿論本質的に考えて参りました場合には、先ほど山下先生の御指摘のように、補助金の増額或いは委託費の充実によりまして、社会事業が或る程度の施設をいたしましても成立つて行くということを望んでいるのであります。そういうことができますれば私学振興会はそのとき解散する時期である、こういうように考えております。只今のところ非常に高利の金を借りてそれを返すのに追われているという、実情の見るに忍び難いものがありますので暫らくこの方式で以て行つて見たいというのが私どもの存念でございます。
#182
○常岡一郎君 それはこの貸付の対象となりますものは、これから施設をするというもののみならず、今までの借金に対してそれを対象として貸す、こういうことが出て来るわけでありますか。
#183
○衆議院議員(青柳一郎君) 前の御質問に対して私はお答えするのを忘れておつた点がございます。それからお答えいたします。十億ということを一応打出しましたが、十億程度の金で以てそのときの民間社会事業家の需要を充たし得ないことはこれは当然でございます。従いましてここに先ほども山下先生にお答えいたしましたように、需要度に応じて順位をつけて逐次貸して行くというような方法をとらなければならんと、こう存じているのであります。只今の御質問は今まで借金しておつたのを、これに振替えるか、こういうお話しでございますか。
#184
○常岡一郎君 そうです。
#185
○衆議院議員(青柳一郎君) 大体今まで借りております金が短期でございます。短期の金ばかり借りているのであります。殆んど長期の金はないと言つてもいいくらいであります。従つてこれは四月から始めるのでありまして、現在借りている金をこれに振替えるということはないというように存じております。
#186
○常岡一郎君 もう一度。
#187
○衆議院議員(青柳一郎君) 現在社会福祉事業を経営している人が借りている金がある。それでこの振興会から借りる長期のものに振替えることができるかという御質問だつたと思いますが。
#188
○常岡一郎君 そうです。
#189
○衆議院議員(青柳一郎君) 今まで借りておりまする金が短期の金であります。最近社会事業に対して長期の金を貸すということは殆んど行われておりません。短期であります。従つてこの法律は来年の四月から出発でございまするから、現在借りておる金については、それまでにもうすつかり解決がついて新たにこの長期の金を借りる、そういうふうになるというふうに考えております。
#190
○常岡一郎君 いや四月までに返せるという甘い見方もあるかも知れませんが、現在金を高利で借りなければならないという人が、何も四月までぐらいに返せるようになるとは私は考えられないのです。やり繰りばかりしてもつと殖えておるのじやないかと、こう思いますが、そうは思いませんですか。
#191
○衆議院議員(青柳一郎君) 短期々々で切替えて行つておる実情でございます。そういうものにつきましても必要なものにつきましては考えられ得ると、こう存じております。
#192
○常岡一郎君 併しそれがここには、第二十三の一にはそれが盛つていないのですから、そういうことで本当に苦しんでいる人が、すでに実際に実行しておる人が救われないという結果になるのじやないでしようか、二十三条の第一項……。
#193
○衆議院議員(青柳一郎君) 二十三条は「施設の修理、改造、拡張、整備若しくは災害復旧に要する資金又は社会福祉事業施設の経営に必要なその他の資金を貸し付けること。」
#194
○常岡一郎君 その「経営」のそれですか。
#195
○衆議院議員(青柳一郎君) 解釈のしようによつて入ると、こう存ずるのでありますが。
#196
○常岡一郎君 一番救済をしなきやならないような人が洩れるようになるのじやないか、今さつきこれを必要とした、この振興会を作るのに必要であつたという最大要件の意味でおつしやつた意味と違いやしないか。
#197
○衆議院議員(青柳一郎君) 現状では借りておる金はそう多額のものは借りておりません。多額のものを借りられないのが現状でございます。極く少額のものしか借りておりません。従いましてそれは大体期限にしましても何カ年とかいうものが相当あると思います。又それを目標にして返すことに一生懸命になつておるのが社会事業家の常でございます。大体返し得る目途を持つて現在やつておるのでございます。従いまして先生の御指摘のような場合は稀な場合だと思うのでございます。稀な場合でも、どうしても必要な場合でも貸し得ないのではないというふうに御了承を願いたいと、こう存じます。
#198
○常岡一郎君 それからもう一つお尋ねいたしますが、例えば経営をして参ります上に、例えば牧畜とか、農園とかを経営しながら、それによつて社会事業を豊かな内容にして行きたい、例えば養護施設など、そういう場合が若しありました場合に、その事業に対する貸金というようなこともあるのでございますか。
#199
○衆議院議員(青柳一郎君) そういう社会福祉事業は非常にうらやましいものでございますが、現在ではその程度まで行つておる社会事業福祉施設は非常に少いと思つております。もつと力の弱いものに力を加えるということが先ず第一着手ではなかろうかと思つております。現在はまだそういうことは考えておりません。
#200
○常岡一郎君 私の質問はこれで終ります。
#201
○藤原道子君 私お伺いしたいことが大体もう今までの質疑で尽きておるのでございますけれども、なおお伺いしたいのは社会事業は非常に困つておると、これはどうしても必要とする、そこまで困つておるのに対して政府は今日までどういう考えを持つて来られたか、何が原因で社会事業がそこまで困つておるかという点について政府に……。(「政府はおらん」と呼ぶ者あり)
#202
○湯山勇君 先ほどから問題になつておりました貸付の償還ですね、これは今のようなこの実態の資料を頂いておるのですが、これなどから考えましても、ひよつとすると貸倒れになるのじやないかという心配が多分にあるわけです。償還できない場合はどうなさるわけでしようか、民間社会福祉事業施設の財政状況という資料を見ますと、相当困難な模様です。
#203
○衆議院議員(青柳一郎君) 償還できない場合には強制執行でもして取るかというようなことは考えておりません。すべて社会事業家の誠実を私どもは期待しておる次第でございます。現在九府県において行なつております。九府県におきましては殆んどそういう弊害はないというのが実情でございます。
#204
○湯山勇君 私どもも実はこの社会事業の性質から考えまして、こういう質問は実はしたくないのですけれども、実際に全国の農業協同組合の共済ですね、これが当初はそういうふうな同じ信頼を持つて発足したはずなんです。ところが殆んど全国のどの農業共済も、まあ中にはスキャンダル等もありますけれども、とにかくどれもこれも皆赤字で弱つておると、それで動機は決して悪くないし、当然信頼されるべきものであつたとしても、こういう金銭に関しての貸借の法律を作る場合に、まあ相手を信用して貸倒れになるということはないだろうと言われますけれども、実はこういう法案が必要であつたのはその貸倒れになるか、今の短期で高利で借りておる、これで行つたら到底持たない、潰れるという実態に立つて作つて。従つてまあこれで仮りに融資しても融資が今おつしやつたように十分できないわけです。希望だけはなくてそれを査定しなくちやならない、或いは順位をつけると、順位をつけてからやつたほうがいいとしても残つたほうは倒れるかも知れないし、又借りたところにしたところで十分な額は借りられない、やはり赤字の累積から遂に返すこともできないというような事態を一応想定に入れておかないと、事態が起つたときに困ると思います。そこでそういう場合はもうそのまま眼をつぶるおつもりなのか、どうでしようか。一応。
#205
○衆議院議員(青柳一郎君) 例えばその二百万円借りたといたしますと、大体三年目か四年目においては二十二万円、五年目は十五万円、これがだんだん減つて参りまして、大体十二、三万円を毎年返せばいい、大体そういう実情でございます。そうして只今でも論議がございましたように委託費の問題などにつきまして、これはまあ先生がたのお力を借りまして建物の償却費についても見てもらうという御努力を先生がたにもして頂きまして、その間において回収し得るような途も講じて行くということを実は考えておるのでございます。この振興会で以て金を貸すだけで以て事成れりじやございませんので、やはり委託費の方面の増額などにつきましてもなお努力を払いたいと、こう思つております。で、返さない場合には返さんで済むかと、こう言われますが、これはやはり社会事業家に対するものでもありますし、社会事業家の大部分はまじめなかたでありますから、何とか返させよう、こう思つております。それでも返せないときはどうかと、こういうふうに押されますると、私も実は困つてしまうのでありますが、これは返させるという方針で飽くまでも行かなくちやならん、こういうふうにお答えするよりほかないと、こう思つております。
#206
○湯山勇君 そういう場合にそれでは或るところは社会的な環境なり何なりによつて、そういう事態が起るかも知れない、併し社会事業団体は随分たくさんあるわけです。そうしてそれらの団体が同じような恩恵を受けるわけですから、ただ単にまあ返せなくなつたのがいろいろその不当な理事あるというような場合は別として、誠心誠意努力して行つて、そういう状態になつたときには共済といいますか、何といいますか、お互いがこういう法律によつて恩恵を受けた以上はお互いがこれを助けて行くというような考え方は、私はまあ社会福祉事業の性質上必要じやないかということを考えるのですが、そういう点はお考えになつていらつしやいませんか。
#207
○衆議院議員(青柳一郎君) まじめに経営して、まじめに償還にいそしんでおつても、どうしても返せないという場合、そういう場合につきましては、これは余り申上げたくないことですが、共同募金の方法もあるのでございまして、そこらあたりは実際に即して解決できるのではないかと、こう実は考えておるのでございます。
#208
○湯山勇君 それでは今の点は一応わかりましたので、まあそのときの責任ですね、それはどこが負うわけですか。この会が持つわけですか、借りた個人が持つわけですか。
#209
○衆議院議員(青柳一郎君) これは借りた人が持つわけでございます。
#210
○湯山勇君 会のほうで査定しますね、だから貸した側には責任がないわけですか。つまり金は政府の金ですね。その政府の金を預つておるわけでしよう。預つたものを貸したわけです。それで最終的に借りた人は一応責任がある。中間で勝手に誰に貸すということをきめたのは、中間だから、中間の人は責任がないかということをお尋ねしておるのです。
#211
○衆議院議員(青柳一郎君) お答えは非常にむずかしいのですが、責任はあるのです。いろいろな責任があるために、ほかの法人に比べまして、国家の監督を十分にいたしております。責任はあるわけなんです。ただ併しその金を返す責任があるかと言いますと、その金を返す責任については、何も規定しておりません。従いまして毎年々々業務報告書も出ましようし、その線に沿つて業務が行われました場合には、国の監督の問題になるかと、こう存じます。貸した振興会について、金銭上の責任は規定しておりません。
#212
○湯山勇君 じやこの当初十億で、だんだん多くなつて五十億なら五十億になつたと、この金が極端に言つて半分なら半分がどうしても返らない。今日の経済状態というものは恐らくそういう状態ではないかと思うのです。どうしてもどうにもならないという場合には、これは一体どこが責任を持つか。
#213
○衆議院議員(青柳一郎君) その点については考えておらないのでございまして、それはそのときにおいて考えなくてはならん問題じやないかと思つております。
#214
○榊原亨君 議事進行。御承知のように法案がまだたくさんございますので、成るべく一つ簡潔にお願いするように、委員長からまお願いしたいと思います。
#215
○湯山勇君 承知しました。今の問題はそれじやそれで打切ります。
 次にですね、たくさんあるのですが、この法案で見ますと、結局会長も大臣が任命します。それから評議員も大臣が任命します。更にこれは今お尋ねしたのはこれと関連があるのですが、これの会計を監査する監事さえも大臣が任命する。そうするとこの法案自体が全く厚生大臣がオール・マイテイということになるわけです。そうしますと、私はこういう民主的な会としては非常に問題だと思うのですが、その点どうお感じでしようか。そういう点がさつき申した責任問題とも関連を持つて来ると思いますので。
#216
○衆議院議員(青柳一郎君) これは他の特殊法人と同じような規定と考えております。
#217
○湯山勇君 特殊法人と同じとおつしやいますが、これは今のように金を貸すと、而もこの金を返す対象が、特殊な対象であると、こういうことから考えますと、成るほど形式的には同じであるにしても質問には相当違いがあると思うのです。そこでまあ普通上の例から言えば監事はでまね、もつと第三者が適正に監査をすると、一応政府だつて、会計監査院という別な機関で監査をしておる。こういうような制度をとつておかないと、私はかなり今のように返せないという状態がかなり大きく予想される事態におきましては、問題があるのじやないかと思うのですが、その点如何でしようか。
#218
○衆議院議員(青柳一郎君) 監事についてのお尋ねでございますが、監事は適当な人を大臣が任命する。それが第三者であるべきであるという点でございます。その点につきましては、又法執行の際に十分考えらるべき点であろう。こう存じております。私どもといたしましては、第三者も入れたらよろしかろうと思います。又実際に社会事業を行なつている人も入れたらよかろうと、こう存じております。別に私は社会事業を行なつている人でなければ監事になり得んではない。こう考えております。
#219
○湯山勇君 第三者という言い方は悪かつたかも知れませんが、つまり会長も大臣が任命するし、監事も大臣が任命をし、評議員も大臣が任命する。こういうふうになつているわけです。それじや大臣の息のかかつてないのは、ここの役員には一人もないということになるわけです。大臣が自分が勝手に潰そうと思えば勝手に潰せますし、大臣が勝手に特定の社会事業団体だけを助成しようと思えばそれもできる。特定のものに融資しようと思えばそういうことも可能である。従つて公平に運営されるためには、このようなシステムは問題ではないか。こういうことをお尋ねしているわけです。
#220
○衆議院議員(青柳一郎君) 大臣が勝手に潰せるというお話でございますが、これは大臣が勝手には潰せないと思う(笑声)ということになつているのは当然でございまして。
#221
○湯山勇君 勝手に潰せるという言葉にかかわつているようですが、そういうことじやない。私のお尋ねしているのは、大臣の思う通りになるのじやないか。こういうことです。それを潰せるという言葉で言つただけで、大臣が、勝手に思う通りにやれるのじやないか、この体制は。そういうことです。
#222
○衆議院議員(青柳一郎君) どうも、私は、大臣がむちやな人を任命するとは絶対思えないのでして、それは世の中が見ているから、世の中が見ても、適当な人を大臣が任命する。これをむちやくちやに解任することはできない。法律の限定がございますが、そういう場合のみしか解任することはできない。こうなつておりますから、余り御心配はないかと思います。
#223
○湯山勇君 大臣の中にもいろいろな人がございまして(笑声)国会の答弁でも御承知の通り。そこで私は心配しているんです。選挙違反なんかするような人が(笑声)自分の選挙に有利なように運営しようと思えば、それも不可能じやない。こういうことは今の政府の機構、政党内閣の機構においては、政党の大臣がオールマイテイであるという機構においては、私は何党が政府を作つたにしても問題があるのじやないかということをお尋ねしているわけです。
#224
○衆議院議員(青柳一郎君) どんな人が大臣に出て、どんな無理をするかわからないという御質問でございますが、我々としては、そういうことを根本的に考えての案ではございませんので、そういう心配は私どもはしておらないのでございます。
#225
○高野一夫君 今の湯山さんのお話に関連します。私は衆議院の青柳議員に伺いたいのですが、むしろこれは特殊法人なんだから、やはり役員というのは大臣が任命することに特色があるので、それで若しもこれが大臣が任命しないような役員というような形をとるならば、財団法人とか社団法人とか何とかいうことになつて来る。そうするというと、それに対する監督官庁が、徹底的に監督を発動することはできない、そういうこともいろいろ考え併せますと、これはとにかくいろいろな話も出ようかと思われるので、やはりどうも会長、幹事まで任命するということもおかしいようなものですけれども、十分業務を監督するという立場から行けば、やはりこれでないといけないのじやないかと私は考えるのですが、又悪い大臣があつてこれをいろいろなことに悪用するというような懸念も考えられないでもないかも知らんけれども、併しながら一定の官庁がそれぞれの機関、局課があつてそれぞれの責任を以て十分吟味してやるということになるわけですから、たつた一人がやるわけでもないから、まあやはり普通の場合よりは、比較的公平な人事ができはしないかと私は考えまして、やはりこの場合は私は大臣任命の役員でないといけないのではないかと私は思うのですが、如何ですか。
#226
○衆議院議員(青柳一郎君) これは国民からお預りした金を多額に出すのでありますから、従いまして特別な法律といたしております。そういう趣旨と同じ意味におきまして、これらの役員については大臣の任命権を相当強く置いておいたほうがよかろう、こういう考えで出ているのは今高野先生が御指摘の通りであります。
#227
○藤原道子君 私は政府にお伺いしたいのですが、社会事業は今日非常に困窮しておられるということは私どもよく知つている。ですからこの法律に反対という意味じやない、けれども憲法に規定しておりますように、すべて国民はというところで、政府の責任においてすべてのものをやらなければならないということになつているはずです。ところが今日こういうふうな状態にしなければならないほど社会事業が苦境に陥つているということの主たる原因、これを政府はどう考え、それをどういうふうに対処しておいでになつたかということについて一つお伺いしたい。
#228
○政府委員(安田巖君) 社会事業施設と申しましてもいろいろございまして、先ほどからお話がありましたように政府がやるべき仕事を民間に委託したというのが、保護施設或いは児童施設もそうでありまして、これにつきましてはとにかくいろいろ御意見はありましようけれども、多額の事務費が流れておりますし、或いはいろいろ補助金をももらつておりますから、不自由ではございましようけれども、戰前から比べれば、まあ幾らかいいのじやないかというようなことも私は考えているわけです。それからそのほか、そういう施設でなくて出ておりますのは、これは純然たる民間の施設として御経営になつているわけでございます。これに対しましては先ほどから御議論がありましたようにいろいろ制限がございまして、それに対して国から特別補助が出せないというような状況になつているわけでありまして、前者に対しましては私ども、先ほど山下委員にお話申上げましたように、本法律案におきましても努力をいたしたいと思つております。社会事業金庫につきましても、数年来実は社会事業大会等においては決議事項になつておつたのでありますが、いろいろな事情で含まで陽の目を見るまでに至つてなかつたのであります。今日これが成立いたしましたならば、私は社会事業施設は非常に喜ぶだろうと思います。
#229
○藤原道子君 私は施設が喜ぶとか喜ばないということをお伺いしているのじやなくて、そこまで困窮するまでに政府はどういうふうな措置をせられ、どういうふうな考えをもつてこれに対処して来られたかということをお聞きしているのです。ですから、むろん金庫法ができることは、社会事業大会において毎年々々このことが決議され要望されていることは私も承知しているので、これは非常に結構なことだと思います。けれども今の委託費とかその他の問題について、今の限度でよろしいと政府はお考えになつておいでですか。
#230
○政府委員(安田巖君) 委託事務費につきましては二十八年度においても若干引上げ得たのでございますけれども、今後も一つできるだけ引上げるように努力をいたしたいと思います。
#231
○藤原道子君 私はこういう法律ができると政府が社会事業に対してまあ少し責任逃れのようになつてしまつて、その点非常に困るじやないかという気もするのです。そういうことのないように十分、社会事業は当然政府がやるべき仕事をこういう人たちに委託し、そうして御苦労をかけているのでございますから、これは十分に政府も熱意を入れてもらわなければ困ると思います。このことは切に要望しておきます。
 それから今一つは社会福祉事業の団体の面において、先ほど山下さんが非常に心配していられました通りにいろいろな団体があるのですね。この間の調整というようなものがこれで本当にスムースに行くのか、私その点は余ほど考えて行かなければ、却つて問題が起るのじやないかというふうに非常に心配しております。そこでこれは発議者にお伺いしたいのでございますが、この法案を作りますまでにいろいろと打合せ等もできているのでございましようかということが一つと、今一つはこれは又会長とかなんとかいうものになりますが、これに対しては先ほど山下さんもお聞きになつたそうでございますけれども、今一度お伺いしたいのでございますが、どういう人を予定せられているのでございましようか。私はこの頃どうもいろいろな古手がいろいろなところへ頑張るような法律がたくさん出るので心配なんでございます。如何なる法律も如何なる施設も人が運用するわけでございますから、これは適当な人を得なければ却つて問題が起るのじやないか、こう考えております。併し大臣に聞かなければわからんという声もございますけれども、併しこれはこの法律を作ろうとされたのはあなたのほうでございますから、どういうふうに予定しておいでになるということを今一応お伺いしておきたいこれによつて相当性格が変つて来ると思います。
#232
○衆議院議員(青柳一郎君) 会長以下の役員の人事につきましては私は全然白紙でございます。この振興会の性格をよく厚生当局で認識して頂きまして、大臣の良識によつて判断を願いたい、こう存じております。
 それから社会福祉事業、社会福祉協議会並びに共同募金等の関係は、先ほど山下先生からも御心配ございましたが、その点は十分に実際面において留意をしなければならない点でございまして、今から我々も勿論心配しておりますが、当局者におきましてもいろいろと苦慮を巡らしていることと固く私は信じております。
#233
○中山壽彦君 質疑も大体終つたようでございますから、討論を省略して直ちに採決される動議を提出いたします。
#234
○榊原亨君 今の中山委員の動議に賛成します。
#235
○委員長(堂森芳夫君) 只今の中山君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#236
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。それでは質疑を打切り、討論を省略して採決いたします。社会福祉事業振興会法案を衆議院送付案の通り可決することに賛成のかたは挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#237
○委員長(堂森芳夫君) 全会一致でございます。よつて本法案は衆議院送付案の通り可決すべきものと決定をいたしました。それから委員長が議院に提出する報告書には多数意見者の署名を付することになつておりますから、本法案を可とされたかたは順次御署名を願います。
 多数意見者署名
    山下 義信  藤原 道子
    湯山  勇  大谷 瑩潤
    西岡 ハル  中山 壽彦
    横山 フク  常岡  一郎
    高野 一夫  榊原  亨
    有馬 英二
#238
○委員長(堂森芳夫君) 署名洩れはございませんか。署名洩れはないものと認めます。なお本会議における委員長の口頭報告については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#239
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。
 暫時休憩いたします。
   午後五時二十一分休憩
   ―――――・―――――
   午後七時十八分開会
#240
○委員長(堂森芳夫君) 委員会を再開いたします。
 社会保険審査官及び社会保険審査会法案を議題といたします。質疑を願います。
#241
○湯山勇君 すでに本法案につきましては前国会において衆議院では審査をされておりまして、局長におかれてもすでに問題点がどういうところにあるということは十分御承知のことだと思うわけです。ただ私どもが心配しておるのは、これこそ全く本末顛倒の法律であるというような点において問題があるわけなので、そこで最初にお尋ねしたいのは一体なぜこの法律を作つたか、審議が遅延するとか、委員の集まりが悪いということは、これは言い換えれば極端な言い方をすれば事務の怠慢であるというような言い方もできるし、或いはもつと言えば委員の人選が悪かつたとも言えるし、或いは委員に誠意がないというような言い方もできると思うのですが、これに対して今日までどういう方法をとつて来たか、或いは審査官を推薦する場合にどういう条件をつけたか、それから事務的にこれをどう処理して行つたか、こういうふうな、こういうふうな、こういうふうなことをやつて来たけれども、どうしてもこれはこうだということがあれば、そういう点を一つ詳細に御説明頂きたいと思います。
#242
○政府委員(久下勝次君) 御質問の点は結局何故にこういう制度の改正を企図したかということになると思うのでございますが、いろいろ事情はあるのでございますが、先ず第一に今お話の中にございました、審査の能率と言いますか、そういう点でございます。御案内のように現在の社会保険に関する審査制度は、各府県に一名ずつの独任制の審査官を置きまして、厚生省に三者構成の社会保険審査会というものがあつたのでございます。この地方の独任制の審査官につきましては、今日までのところ別段に問題はなかつたと思い、又十分に目的を達しておると考えるのでございます。近い将来におきましても、このほうには多くの問題はないように理解をいたしておるのであります。問題になりましたのは、結局中央の社会保険審査会の問題でございます。これは御説明の際にも申上げましたように、現在健康保険、厚生年金保険、船員保険、この三つの保険を私どものほうで担当しておりまするが、各保険につきまして労使及び中立からそれぞれ二名ずつの非常勤の委員をお願いして、全部で十八名の委員の構成になつておるのでございます。この委員につきましては、先ず労使双方の代表の委員につきましては、それぞれの団体に対しましてこの制度の性質を御説明申上げ、それに適当と認めるかたを御推薦を願いまして、御推薦に基いて厚生大臣から任命をいたしておつたのであります。中立委員につきましては、厚生大臣が直接選考して任命するというような仕組でやつて参つたのでございます。併し何分にも、申すまでもなく非常動の委員であります関係上、それぞれ他に本務を持つておられますので、実際問題としてはなかなか本務の関係もありまして、回数を多く、時間を長くこのためにお割きを願うことが困難な事情にあつたのでございます。殊にこの社会保険審査の問題につきましては、各種保険それぞれ御承知のように関連性がございまして、一つの保険の事業というものは、同時に又他の保険の事案の解決に重要な関連がございますので、それから不服申立のほうは随時出て参りまして、且つ各種保険に関する申立がそれぞれ混在して、次々と申立が出て来るというような実情でございます。そこで社会保険審査会の運用といたしまして、私どもとしては少くとも各保険について一名の、二名ずつある労使、中立のかたのうち、少くとも一名が御出席を頂くということを目途にいたし、又このことは審査会の運営上、審査会委員のかたがたにも御了解を願いまして、私どもの事務のほうにおきまして、常に予定の日をきめまして、各委員の御都合を伺つて、大体御都合のいいときに開くというようなことにしておつたのであります。ところがこれはなかなか大変な仕事でございまして、それぞれ本務を持つておられます関係上、いついろは都合が悪いというようなかたが出て参る。そのために最小限九名の審査会成立に必要な人員が満たされないということがしばしばございます。折角予定したものが又流れたりするような事態も生じて参りまして、なかなか思うように開催ができなかつたのでございます。最近はそういう実情でありましたので、委員のかたの御了解を得て、毎月二回ずつ定例日をきめましてお集まりを頂くようにしておりました。ここ一、二カ月のところは大体その申合せのように一応順調に参つておるのでありますが、これも長い間にはどうなるか問題だと思うのであります。而も一方におきまして、資料を差上げてございまするように、社会保険に関する不服申立の件数は年々激増の傾向にございまして、昭和二十五年度が三十九件でございましたのが、二十六年度には八十件に、二倍半ぐらいになりました。昭和二十七年度は一躍百八十三件というような、逐年激増の途を辿つておるのでございます。それは現状のままで、その通りでございまするが、本日委員会で御可決頂きました月雇労働者の健康保険制度が又新らしくできまして、これも不服申立の制度が新らしくできて参る。更に又私どもとしては、この審査会法で改正をお願いしておるのでありますが、実は現在は保険給付に対する不服申立だけが、被保険者としてはものが言えるのであつたのでありますが、その前提となる被保険者資格でありますとか、或いは標準報酬の決定につきましては、只今の制度では不服申立ができない、具体査的に給付の問題が発生して、それに絡んでのことでありませんと、不服があつても、現在は申立ができないようなことになつております。これは厚生年金保険のように長期保険の場合には、十年も十五年も遡つて、資格があつたかどうか、標準報酬がどうであつたかというような調査をいたさなければなりませんので、大変実は片手落になつておるのでございます。そこで取りあえずこの制度の改正の案の中にございまするように、標準報酬の問題については、今日この法律の改正と同時に、不服申立の途を関くように考えております。被保険者資格の問題は、近い将来に年金制度の改正を考えておりますので、その際一括して改正をお願いするようなつもりでおるのでございます。なおそのほかにもまだいろいろ検討をしなければならない、つまり不服申立の範囲を拡げて行くほうが、被保険者の利益のために適当であると考えられるような事項もございます。こういうことを考えて参りまするときには、この審査申立の件数というのは、現状を以てとどまるところでなくて、ますますこれは増加して参ることが予想せられるわけでございます。ところが先ほど申上げたような状況でございまして、今日現状を申上げますると、本年の三月末現在で百五十一件の未処理件数があるのでございます。これは現状で、かような状態で、丁度一年前の審査申立が今日初めて審査会で審査をされ、採決なされておるというような現状でございます。これは今申上げたような申立範囲の拡張、或いは新らしい制度の新設等によりまして、ますますこの傾向は激しくなるだろう、こういうことが考えられるわけでございます。そこで私どもとしては、勿論現在の制度の下において能率を上げまするように、随分事務的には先ほど申上げたようなことで、表に現われません努力をして参つたつもりでございまするが、何分にもかような現状でございますので、これはやはり裁判と同じように、専任の審査官がかかりきりでこの問題の処理に当つて頂くほうが、能率の上から、又被保険者利益の保護の上から妥当であろうというような考え方になりました次第であります。これが審査会の改組をしようというようなことになりました根本的な理由でございます。同時に又今日審査会委員のかたがたには非常にお骨折りを頂いておるのでございまするが、それにいたしましても、現在の審査制度につきましては、手続規定が必ずしも完全ではございませんので、証人の喚問或いは鑑定人の尋問等、いろいろな点につきましても、しつかりした根拠のないような状態であります。裁判の制度に倣いまして、審査手続につきましても、はつきりした規定を設け、公平な審理ができるような基礎を与えるということも必要だと考えまして、そういうような意味も含めまして、制度の改正をいたそうと考えたものでございます。三者構成である現在の制度を改組いたしますのに、今申しただけのことでは勿論不十分でございますので、この点につきましては、社会保険審議の際の御意見も私どもとしては取入れまして、実質的には三者構成の形が残るように、労使双方のかたに、この法律では利益代表という言葉で呼んでおりまするが、そういう従来と同じような自主的な委員を設けまして、各団体の推薦によつて厚生大臣にお願いをするというような制度を設けまして、そのかたがたに被保険者又は事業主のそれぞれの利益を代表し、それを弁護するような機能を果して頂き、そういうことによつて、従来の三者構成の実質的な目的をできるだけこの制度の上に織込もうというふうにいたしたものでございます。少し御質問と外れた点までも触れましたけれども、以上が大体この制度を私どもが考えるに至りました事情でございます。
#243
○湯山勇君 私が次に聞こうとしていましたことをお答え頂いたので、非常に有難かつたと思います。御答弁頂きましたことから、蔭で非常に御苦心なさつておる、努力なさつておるということは、私どもにもよくわかりますし、本当にお困りだろうと思うのです。併しながらいろいろ聞いてみますと、この委員会が月に一回だけしか開かれない、一日の審査の時間が非常に短い、一日大体一時間半ぐらい乃至二時間ぐらい、そういうくらいな運営しかされていないということを承わつておるのですが、これは地方において、性質は違いますけれども、労働委員会にいたしましても、或いは共済組合などの理事会と申しますか、評議員会と申しますか、それらにいたしましても、こういう委員会も非常に忙がしいときもあれば、非常に閑なときもある。で労働委員の人々にいたしましても、かなり忙がしい中を、それぞれ本務を持つていながら、どこそこに争議があるといえば、直ちにとにかくそれを放棄して行く。こういう責任を持つて承諾しておるのですから、私はこの制度の改正でなくて、今までも御苦心なさつておられるし、その御苦心が一応功を奏して、ここ一、二カ月は順調に会が持たれているというような、そういうことをも併せ考えれば、運用によつて審査の能率を上げて行くということは可能ではないかということを感じるのですが、これは如何でしようか。
#244
○政府委員(久下勝次君) 実はそれらの点につきましても、私どもとしては十分考えたつもりでございます。従来確かに或る月は全然開催がされなかつたという月がときにございましたし、或いは又一回だけ開催されたような事情がございました。これは併しもつぱら私どもとしては、従来からずつと月二回は開きたいという方針で御連絡申上げながら、委員のかたがたの御都合が合わなくて、或いは散会になり、或いは最初から開催がされないということのためにこういう結果になつておるようでございます。もう一つは、実はそういうことでお集まり頂きます委員のかたがたに、今お話もございましたが、一時間とか二時間ではございませんで、大体もう半日はこのことのために費して頂いておる実情でございます。併し非常に熱心におやりを願つておるのでありまするけれども、何分時折出て来られるような関係もございまして、実は実質的な書類審理等のことにつきましては、私どものほうの事務当局のものは相当なお手伝いを実際にはせざるを得ないようなことでございます。これは私どもの考え方といたしましては、公正な審査に当り、採決をいたします人が公正な判断をいたしますためには、やはり自分から調書を調べ、証人を喚問し、或いは場合によつては現場に出て行つていろいろ調査をするというようなところまで行きまして、初めて裁判所と同じような公正な審査ができるのではないかと思つておりますが、何分にも本務を持つておられますかたがたもあります関係上、それらの点にまでお願いをするところに相当な無理もございます。私どもは専任の審査官を設けたいというような考え方は、一つには実はそういう点も考えておるのでございます。能率の点のみではございません。能率を上げつつ、而も内容的にできるだけ公正に、本当に採決に当ります審査員が責任を以て、自信を以て採決ができるようにというようなことも、実は期待をいたしまして、そのためには結局これはそのことにかかりきりの専任のかたをお願いする以外には途がないであろうというようなところまで考えまして、かような制度を作つたものでございます。
#245
○湯山勇君 それは事務処理の問題でございますから、この点につきましては、私いろいろこうしたらどうか、ああしたらどうかという意見がございます。併しそれは非常にこまかくなりますから、先に大きい問題だけをお聞きしておいて、あとからなおこまかい問題についてお聞きしたいと思うのですが、結局結論的に申しまして、今のように委員の集まりがよくて、そうして審議時間も十分にやれるということになれば、この法律は作らなくてもいい、こういうことになるわけでございますか。
#246
○政府委員(久下勝次君) 簡単にいえばそういうことだと思いますが、私どもが従来長い間この制度を運用して参りまして、到達いたしました結論は、先ほど来申上げておりまするようないろいろな要素も含めまして、ただ単に能率の問題だけでなしに、審査手続等いろいろな点から考え合せましてこういう制度に変えることはこのほうがより適当であらうと考えておるものでございます。現在の制度で私どもの考え方では、これ以上に能率を上げて頂くことは全然不可能とは申しません。おのずからこれは限度があることではないかというふうに制断をしておるのでございます。
#247
○湯山勇君 現在の委員会で、その一回の会で大体どれくらいの件数の処理ができておりますか。
#248
○政府委員(久下勝次君) 処理件数につきましては、二十五年の四月から本年の三月末までの資料をずつとお手許に差上げてございまするから、正確にはこれを御覧を頂けばいいと思いまするが、これは実は非常に差がございまするのは、不服申立の事件が、極めて面倒な問題と、比較的簡易なものとありまするので、ちよつと簡単に申上げにくいのでありますけれども、大体最近の傾向といたしましては、特に被保険者の給付に対する不服申立が大体主なものでございますが、それで普通の案件でございますると、半日みつちりやりまして四件乃至五件程度でございます。
#249
○湯山勇君 大体私のほうで調べましたのも、一回に大体五件程度というような値いが出ておるわけです。そこで問題は今おつしやつたようなことともつと別にあつて、保険の内容が極めて複雑である、ここに挙げられておりまする健康保険、それから日雇労働者の健康保険、本日上りましたが、船員保険或いは厚生年金保険、これらの内容がすべて違つている。そして而も健康保険にいたしましても、今度又変わることが予想されるわけです。日雇の健康保険にいたしましても、本日附帯決議がなされまして、これも当然変わる運命にある。船員保険はそういう附帯決議がなかつたから、今のまま行くといたしましても、厚生年金保険はもうすでに近く変わるということが確実視されている、こういう保険が今のような発達段階にありましては、次々から変つて行くことは、これはいたし方ないといたしましても、余りにも法の立て方がまちまちなので、これは委員の人だつて一々の法を腹に入れることはむずかしいと思うのです。そういう人がこういう審査に当るということには、これはなかなかむずかしい問題があつて、解決のしにくい問題があるのは当然であると思います。又同時に法がこういうふうにぐるぐる変つて行きますから、異議の申立ても果して本当の異議かどうか、例えば今私は実際の例を持合せておりませんけれども、日雇労働者の人が健康保険ではああいう給付をもらつているから、これももらえるだろうと思つて申請するとか、或いは健康保険の人が、日雇の人はもらえないから、それを見て、これはもらえないだろうといつたことで放つているとか、そういうことから随分異議申請の中には法案の趣旨が不徹底なために起つて来るものも相当たくさんあると思うのです。ですから、法の趣旨の徹底を図ること、これは何といつても先決問題だと思います。
 第二は、審査に当る人たちにその法案の内容をよく理解してもらうということが必要であると思うのです。そうするためには以前から随分問題になつておりますように、これらの保険の内容を、健康保険はこことここはこうで、これはどうだ、併し日雇はこう違つておる、船員保険では又違つておる、こういうような法律の立て方を一度整理いたしまして、どの法律ももつと単純に、そうしてもつと簡素にすることがなされない限り、私はこの制度をどんなに変えても、変えて行つて専門家がこれの審査に当るというようになつてしまつた場合には、それはもはやこういう審査会としての役目をするものではなくて、例えば厚生省の役人のかたに、これはどうですかと言つて聞いて来たときに、それはこうだというような単なる事務的な処理しかできない、そういう苦情の処理とか、不当な扱いに対する処理ではなくて、単に事務的な処理しかできないものになつてしまうのではないか、そうなりました場合には、折角民主的に考えられた三者構成というものの精神が全く壊れてしまつて、一度そこでぽんとやられたら、やられた人は取りつく島がない、どこでも慎重審議してもらうという裕りがなくなつてしまう。更に又そういう点について先ほど局長は、これには事業主の代表や、それから被保険者の代表が来て参加することができるということにはなつておりますけれども、この人たちだつて専門家ではありませんから、結局事実について審議するというよりも、法的な解釈がどうであるということを専門的に審査官から聞くだけであつて、結局本当の審議というものはできなくなつてしまうのじやないか。ましてこの制度で行きますと、どうも被保険者の代表や事業主の代表は単に意見を述べるだけであつて、審査の決定には参加できないようになつておるのではないかというようなことを思うのです。意見を述べるだけであれば、折角総理大臣が法を以て作つた社会保障制度審議会のあの権威ある意見でさえも現在は全く無視されておる。どの保険にいたしましても、或いはこの法案自体についても、あれほど権威を持つた社会保障制度審議会の答申さえも無視してこのような法律が出て来ておる、こういう今日までの実態から考えますと、今局長は三者構成の趣旨は残しておくとおつしやいましたけれども、それはただ文章の上で、法の上で残つておるだけであつて、その精神というものは全く壊れてしまつておる、実質的には全くそうでないという状態に置かれるのではないか、こういうことを心配するわけです。つまり私が申上げましたことは、その責任は、むしろそういうふうに審議が遅れておるということの責任は政府側にあるし、或いは法案の不統一な状態にある、それから三者構成というけれども、そのことについては全く信頼がおけないのじやないかということを心配しておるわけですが、それらの点について御説明を頂きたいと思います。
#250
○政府委員(久下勝次君) 最初に先ずいろいろ法律によつて内容が違う、給付の内容が違う、その他内容が違うというふうに言われましたが、確かにその通りであります。併しその程度の問題につきましては、実は地方の各府県におりまする社会保険審査官がその辺の問題についての説明なり或いは相談なりには十分その機能を果しておるわけでございます。地方の審査官は中央審査官と違いまして、又これに十数倍の件数の審査をいたしておるのでございますが、これもお手許に資料で差上げてございまするが、それにまだ数倍する相談を受けておるのでございます。そういう際に十分被保険者に対たしまして現在の制度の実態を御説明をいたしまして、いろいろ御服のありました場合にも説明によつて正式な不服申立まで至らないで御納得を頂いた場合も多々あるのでございます。それでもなお不服を申立てて参りますものは、お手許に差上げてある地方の各審査官の審査件数でございます。従いまして今直接問題になつております中央の審査会に出て参りますものは、一度地方の審査官の手を経たものでありますので、比較的最初に御懸念のような思想の不徹底というような問題は、直接の問題は私はないように思うのでございます。この点につきましてはなお今後とも地方の審査官制度というもの、或いは出先の審査官のみならず、社会保険の担当官に対しましては、こういう点につきまして十分親切に被保険者のかたがたを指導し、或いは御相談に応ずるようにするつもりでございます。
 後段お話のございました三者構成の目的が達せられないのじやないかというようなお話でございますが、この点につきましては実はこういう事情を申上げておきたいと思います。それは私が最初申上げた利益代表者、つまり労使双方からの代表の委員のかたがたが、被保険者及び事業主のかた、それぞれの弁護的な機能を果して来、必要があれば証人の喚問を要求をし、或いは鑑定人の審問を要求するというようないろいろな権能を与えられておりまするので、私はそれのみでも十分従来実質的には三者構成の機能を果し得ると考えておるものでありまするが、その上に更に申し加えたいと思いまするのは、衆議院の厚生委員会におきまして本法が可決されましたときに、附帯決議がございました。その内容は三人の審査委員を任命いたします場合には、労使双方の委員の意見を徴するようにせよ、こういうような附帯決議がございます。この点は実は私どもとしてはすでに社会保険審議会で本制度が審議せられます際に、厚生省の立場におきましてそういうお約束を委員のかたがたにしているのでございます。これは結局審査委員に任命されまするかたは事前に労使双方の意見を聞き、その意見を十分加味されたかたに任命されるということにります。而も任命されましたあとは実質的には現在の審査会と同様に、労使双方の代表のかたににおいでを願つて一緒になつて審議をして行くわけでございまするから、任命の際にそういうような道徳的な精神的な何と申しますか、制約と申しますかはあると同時に、又そういうことのために日常仕事をして参りまする上におきましても私は十分にその辺の利益代表の意見を尊重せざるを得ないというような立場において、公正な裁決が私は行われるものと期待しております。従いまして私は結果的に申上げれば、そういうような条件もございまするので、審査委員が利益代表として出ておられるかたがたの意見を無視して、それと正反対な裁決をするというようなことは余ほどのことがなければできないというふうに考えておるのでございます。
#251
○湯山勇君 地方の審査官について今御説明がありましたけれども、地方の審査官も十分に各法案の内容を理解はしていないと思うのです。というのは私が手がけた一、二の例でございますけれども、地方の審査官から却下される、ところがその却下された理由がよくわからない、更に又そういうことがわからないために泣き寝入りになりまして、私どもが気がついてそれはやつたらいいというときにはすでに六十日の期限が切れているというような例もあつたわけです。私が知つている例が幾つかありますから全国的には相当たくさんのそういう例があるのじやないかということも考えられます。そういう状態ですから、やはり問題は法案が余りにも複雑多岐であるというところに、一つの大きい要素があるのではないかということが考えられるわけでございますが、更に又今の御説明では、三者構成ということは尊重しなくちやならないということはおつしやつておられるのですから、むしろ三者構成ということを主にして、その主なものの上に立つて崩壊性を行なつて、能率が上るような方法というような考え方のほうがいいのではないか、つまり三者構成を崩して能率の上る方法を先に考えて、それへ三者構成を加味するというよりも、むしろ三者構成という原則は崩さないで、そしてその三者構成の原則の上に立つて、能率の上る方法というものを考えて行かれるのが妥当ではないかというように考えられますが、これらの点についてはどのようにお考えでしようか。
#252
○政府委員(久下勝次君) 最初の、前段のお話につきましては確かに審査官も万能でもございませんし、又まだまだ私どもも指導を要するものがあると思いますから、御注意の点につきましては、毎年講習会を開いておりまするけれども、十分教育を徹底して参りたいと思います。一方又被保険者に対して保険に対する理解を深め、泣き寝入りにならないように指導するということも必要でございまして、こういう点につきましても、別途の方法で漸次これは指導の徹底を期するようにしておるつもりでございます。
 それからあとのほうのお話でございますが、これは或いは見解の相違になるのかも知れませんけれども、私どものほうといたしましては、現在の制度をそのまま残しておくということでありましては、先ほど来くだくだ申上げてあるような意味で、保険者の利益、権利保護ということに結局副い得ない憾みがある、こういうことを考えたのであります。結局三者構成と、そういうような被保険者の権利保護、迅速に公正に被保険者の要求に応えて差上げるというような目的を達しますというような点、その言葉を換えれば能率の点でございます。そういうような点と考え合せまして、結局両者を調和いたしました考え方が、私どもとしては現在のこの御審議をお願い申上げてある法案の内容であると、こういうふうに理解をしておるものでございます。
#253
○湯山勇君 今のことは丁度私が申上げたことの逆のお話があつたわけなんです。つまり現行制度ではいけないということは、これは今のように考えられていいと思うのです。ただその現行制度を改めて行く場合に、いずれの保険にいたしましても、大部分は事業主と被保険者の結局保険料によつて運営されている。で、これはもう保険である以上、そういう性格は基底をなす性格だと思うのです。そこでその性格を変えないで、現行法は今おつしやるように不備だから、そうして本当に被保険者のためにならないから、三者構成の原則は崩さない原則の上に立つて法を敏正して行くということならば、私は或いはその内容によつては賛成できると思うのです。併し現行法でいかないからというので、その責任を全部三者構成に持つて行く、三者構成を崩すというところに問題があるわけなんですから、もう一度今の点、制度を改正してはならないということを申上げているのじやなくて、改正する場合に三者構成ということを原則的に入れて、その上に立つて改正するということは考えられないかということをお答え頂きたいと思うのです。
#254
○政府委員(久下勝次君) 先ほど申上げました意味は、実は只今の御質問にお答えしたつもりでございましたが、結局三者構成という現在の制度と審査の能率と申しますか、こういう点とは、この問題とは二つは実は窮極のところ相反する要請だと思うのであります。私どもにはそう考えられるのであります。結局その両者を従つて調整をして行くというのが結局改正の案となつて現われたものでありまして私どもといたしましても、ここに至りますまでには決して三者構成の理念というものを無視しようとして、かかつたものではないのであります。結局は両者の調和の上に立ちせんんと、窮極の目的を達することができないというふうに考え、その検討をいたしました結果が、かような結論になつたわけであります。その間にいろいろ途があるのじやないかというお話のようでございますが、私どもの検討いたしましたところでは、どうもこれ以上にいい考えも浮ばないのです。
#255
○湯山勇君 もう時間が余りございませんから、私大変急いで結論的なことからお願いいたしたいと思います。三者構成と、能率を上げて行くということが相反するということを結論的に指摘されましたが、若しそういう立場でお考えになつたとすれば、私は非常に問題だと思うのです。つまり局長のおつしやることは三者構成だとそれぞれ被保険者の代表は被保険者の立場を強調するし、使用者側の代表は使用者側の意見を強調する、そこでなかなか両方の意見がまとまりにくい、だから能率が上らない、能率を上げるということと三者構成とは相反する、こういう結論をお出しになつたのだろうと思います。若しそうだとすれば、私はこれは非常に問題が大きいと思う。審査会はこの被保険者の異議申立に対してそれぞれの立場からそれぞれの立場を保護するための討論が十分に行われて、時間がかかるということよりも、つまりですね、能率が上がるということよりも、それぞれの立場においてそれぞれの立場を保護して、そうして第三者という中立の委員のかたがいずれが妥当であるかということを慎重に決定するところにこの審査会の使命があるわけです。ただ単に能率を上げるということだけから三者構成を崩すということになれば、一体誰が本当にそれぞれの立場を擁護して行くか、そういうところが問題になつて来る。で、ただ単に能率を上げるために三者構成を崩す、この両方相反するものである、相反するが故に三者構成を崩して別な方法をとるということは、若しそうだとすれば、全くこれは納得ができない説明だと思うのですが、如何がでございましようか。
#256
○政府参員(久下勝次君) 私は実はさようには決して申したつもりはないのであります。三者構成であろうと、今度の制度でありましても、それぞれ労働者或いは事業主を代表するかたがそれぞれの利益を擁護するために主張をされると、これは現行制度でも、新らしい制度に変わらないと思います。私はそのために能率が落ちることを問題にするのではない、問題にしましたのは先ほど来申しましたように、現在お願いしておりまする委員のかたがたはそれぞれ他に本務を持つておられる非常勤の委員であるというところに問題をおいておるのであります。これが専任の審査員になりますれば、この点につきましては、そういう非常勤と常動というようなことにおいて能率の問題を考えたつもりでございます。
#257
○榊原亨君 先ほど来御両者のお話を承わつおりますといろいろ御議論もあるようですが、結局御意見が違うようでありますが、湯山先生は何かこういう方法ならば三者構成を崩さないで、そうして能率を上げることができるという具体的方法をお考えならば、そういう方法を考えておるのだ、君はどう思うかというようにお話をして頂いたほうが、早く進むんじやないかと思うのですが。
#258
○委員長(堂森芳夫君) ちよつと速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
#259
○委員長(堂森芳夫君) 速記を始めて下さい。
 次に社会保障制度に関する調査についてお諮りいたします。この調査は、議長の承認を得て調査を進行中でございますが、今期国会開会中には調査が完了いたしませんので、未了報告書を提出することとし、その手続などは委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#260
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。なおこの報告書には多数意見者の署名を付することになつておりますので、御異議のないかたは順次御署名を願います。
 多数意見者署名
    湯山  勇  中山 壽彦
    大谷 瑩潤  西岡 ハル
    常岡 一郎  榊原  亨
    横山 フク  高野 一夫
#261
○委員長(堂森芳夫君) 署名漏れはございませんか。
 署名漏れはないものと認めます。
  ―――――――――――――
#262
○委員長(堂森芳夫君) 次に社会保障制度に関する調査は、今期国会閉会後も継続調査を必要といたしますので、議長宛て継続調査要求書を提出いたしたいと存じます。その文案、手続等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#263
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。
  ―――――――――――――
#264
○委員長(堂森芳夫君) 次に今期国会閉会中において、厚生行政施策の実施状況を視察するため、議員派遣要求書を議長宛て提出いたしたいと存じます。視察地、期日、派遣議員の人選及び手続等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#265
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。
 これにて散会いたします。
   午後八時五分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト