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1953/07/09 第16回国会 参議院 参議院会議録情報 第016回国会 法務委員会 第9号
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1953/07/09 第16回国会 参議院

参議院会議録情報 第016回国会 法務委員会 第9号

#1
第016回国会 法務委員会 第9号
昭和二十八年七月九日(木曜日)
   午前十時三十一分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     郡  祐一君
   理事
           宮城タマヨ君
           亀田 得治君
   委員
           小野 義夫君
           楠見 義男君
           中山 福藏君
           赤松 常子君
           棚橋 小虎君
           一松 定吉君
  政府委員
   法務政務次官  三浦寅之助君
   法務大臣官房調
   査課長     位野木益雄君
   運輸省航空局監
   理部長     粟沢 一男君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
   常任委員人専門
   員       堀  真道君
  説明員
   法務事務官
   (法務省民事局
   付)      村岡 二郎君
   運輸大臣官房文
   書課長     谷  伍平君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○司法試験法の一部を改正する法律案
 (内閣提出・衆議院送付)
○航空機抵当法案(内閣提出・衆議院
 送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(郡祐一君) 只今から本日の委員会を開きます。
 先ず司法試験法の一部を改正する法律案についてさきに政府の提案理由を聞きましたが、御質疑のあるかたから順次御質疑を願います。
#3
○楠見義男君 ちよつと参考のために伺いたいのですが、今度手数料が第二次試験において五百円が千円になりますね。提案理由を拝見しますと、ほかのほうの試験が物価事情等に対応して五百円乃至千円となつている、こういうふうに書いてあるのですが、具体的にどの試験が五百円、どの試験が千円というお調べがあつたらお知らせ頂きたいのですが……。
#4
○政府委員(位野木益雄君) これはお手許に多分参つていると思いますが、法律案の参考資料がございますが、それの九ページにあると思います。これを御覧願えば主なことはおわかり願えると思います。念のために申上げますと、公認会計士試験、これが五百円と千円、弁理士試験五百円、税理士五百円、医師国家試験三百円、四百五十円、八百円、それから歯科医師国家試験これが四百五十円、それから三百円、これは特別の場合です、二千五百円の三つの種類があります。試験の種類によつて違うわけです。薬剤師試験これが五百円と千円というふうになつております。
#5
○楠見義男君 これは例えば歯科医師試験とか、それから或いは薬剤師試験とか、こういうようなものは試験に供するいろいろの材料だとか、そういう特別の国のほうの出費がかかるので、従つてそういうような事柄を考えて、多少ほかの試験に比べて手数料を高くするということはこれはあり得ると思うのです。根本の考え方は、国家試験は、できるだけひやかしの受験者の整理という意味もありましようが、併し根本的にはできるだけ手数料というものを安くするのが受験者のためにはとるべき方法であろうと思う。そこで今申上げるように、特別に実地試験とか或いは試験のために特別の出費が多く要るというような場合には、これは考慮していいと思うのですが、それでなければ、特にそういうものがなければできるだけ下げたほうがいいと思うのですが、試験について何か特別会計式にそれで以て償うとか、そういうことは私は恐らくないと思うのですが、もう少し深い値上の理由がありましようか。
#6
○政府委員(位野木益雄君) 誠に御尤もなことだと思います。できるだけ受験者の負担を軽くするということは我我としても非常に希望いたしておるところであります。ただ費用は、これは今申上げましたように特別の設備というほどのものは勿論要らないのでありますが、それにも十分匹敵し得る程度の費用がほかの点でかかるのであります。それは御承知のように司法試験は非常に綿密な試験をいたしますので、筆記試験が御承知のように一週間続けて行われます。それから口述試験が約十日間行われるわけです。この筆記試験のほうでありますが、受験者が二次試験に例をとりますと、約六千人あるわけです。これの答案を見るのに、仮に一日に三百通試験委員が見るといたしましても、二十日間はかかるというかうなわけであります。それから口述試験の場合も、その間は試験委員は連日丸一日を費して頂かなければならないのであります。而もこの試験委員は御承知の通り一流の学者或いは専門家のかたで、それだけの労力を煩わしておきながら、報酬は予算の関係もありまして極く僅かです。昨年の例をとりますと、一番多く差上げたかたで五万円ということになつている。而も現在の手数料はその試験に要する実費の半額程度しか及ばないのであります。手数料による収入は……。そういうような関係から非常にこの試験が経費を要するにもかかわらず、手数料が安かつたということが言えるのであります。
#7
○楠見義男君 それから今度の附則の四項の改正で、行政科試験に通つた者は司法試験を受ける場合の試験科目として四科目ありますね。五項のほうの従来の高等科司法試験に通つた者についてはこの法律による司法試験に合格した者とみなすという規定は変らない。従つてすでに一つの科目について合格した者は、改正法による試験でも合格したものとみなされるのに、同じ高等試験で行政科のほうは、例えば憲法なら憲法というようなものを受けて、それで合格しておる者が、今度は改めて又四科目受け直すというのはどういう理由なんでしようか。
#8
○政府委員(位野木益雄君) その点は、この司法試験が制定される場合に問題になつたのですが、従前の高等試験の行政科に合格した人に対する取扱をどういうふうにするかということについては、いろいろ議論があつたのでありますが、その中で今御指摘のような従前すでに憲法を受験しておるものは、そういうものは、今度の場合も免除するというようなことにしたらどうかという議論も出たのであります。併しながらまあこの新憲法後は、法律も変つておりますしするので、これはやはりもう一度最小限度、まあ附則に掲げた程度のものは、受験させることにすべきじやないかということで、こういうふうになつたと承知しております。というのはこれはこの附則は国会の修正で入れられたものであります。その趣旨はそういうふうな趣旨ではないかと思います。
#9
○楠見義男君 いや私の申すのは、それと同時に、現在の附則で、例えば憲法、並びに民法及び刑法のうち一科目と、こうなつておりまして、憲法、それから民法と刑法のうちの例えば民法ですね……、こういうものはその試験を免除される、これは一遍試験を受けておるからだろうと思うのですが、今度はその民法及び刑法は、商法が入りまして、そのうちの一つは必らず受けなければならん。従つて前は刑法を受けなくてもいいものが、今度は必ず刑法を受けなければならんので、負担が重くなるわけですね。同じ国家試験を受けておつた人間で、合格した人間がその負担がこの経過規定によつて重くなるのですが、その理由はどういう理由かと、こういうのです。
#10
○政府委員(位野木益雄君) これは今までの附則の四項の科目の問題でありますが、まあ今までその科目を受けておつたから、この程度でいいということも或る程度あるかと思いますが、この受けてないものも勿論入つておるわけであります。例えば刑法なんかは受けない人が多いかと思いますが、今まで行政科は必須ではないわけでありますが、併しそれは受けなくても、民法を受けられればそれでいいというふうなことになつておりまして、必ずしもそれのみによつたものとも考えられないのであります。で最小限度併しこの程度のものが必要である、改めてなお受けさせてみる必要があるのじやないかというふうな考え方でできたのではないかと思うのであります。で負担がこれによつて行政科のために重くなる、行政科受験、この合格者に多くなる、こういう点でありますが、この点は昨日……、一昨日でありましたか、衆議院のほうでは、むしろ逆の御質問があつたのでありまして、行政科の合格者が余りに負担が軽過ぎやしないかというふうな御質問があつたのでありまして、そういう見方もできるのであります。結局今まで高等試験の司法科試験に合格した人は合格者とみなすというふうな点との比較になりますが、これはやはり従前の司法科試験に代るものであるとしてできた以上は、これについて改めて受けさせるということまでやることはどうかというふうに考えられますので、それを比較いたしますと、そういう感じも受けられるかも知れませんが、それを離れて考えますと、必ずしもそのために、今度の改正によつて行政科の合格者に対する負担が従前より多くなつた、余りに負担が重過ぎやしないかという見方は、必ずしもそういうふうにも参らないではないかというふうに、考えをいたすのであります。で、この高等試験の時代には、たしか行政科に合格した者は、行政科について合格した科目について免除するというふうになつておつたと思いまするが、そういう立て方には必ずしもよつていないという考えもあつたかと思います。
#11
○楠見義男君 これは私意見に亘りますからこれ以上申しませんが、要するに司法科試験と行政科試験の試験が狙うところ、例えば訴訟法とか、そういうもの、或いは従来行政科では選択科目であつたけれども、司法科では必須科目として是非履修して行かなければならない。そういうようなものについての試験、これは特別に性格が違うのですから、試験の目的が違うのですから、それは受けて然るべきだと思うのですが、併しそうでないものについては、行政科試験も国家試験なんだから、従つて一つの行政科のほうの試験に合格したものは、その科目は、当然他の国家試験と同じ科目のものは免除するというのが、国家試験というものの性格からいつて、私は当然じやないかと思うのですが、併しこれは意見に亙りますから、これで打切ります。、
#12
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#13
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
#14
○一松定吉君 司法試験の司法試験管理委員会の委員というのは三人だ。そうしてその三人のうちの二人は法務事務次官と、最高裁判所事務総長、いま一人は法務大臣が弁護士連合会のうちから推薦された者を任命する。これが司法試験管理委員会の委員三人であるが、この司法試験の直接衝に当る司法試験官、これは何名でどういう人を任命するわけですか。
#15
○政府委員(位野木益雄君) その直接試験に当る委員は、司法試験考査委員と申しまして、この法律の第十五条に規定してございます。試験ごとに法務大臣が司法試験管理委員会の推薦に基いて任命するものでありまして、試験科目一科目につき四人以内ということになつております。四人全部普通科目について任命することになつておりますので、この憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、商法これにつきましては、四人ずつ二十四人、そのほかの選択科目につきましては四人乃至二人ということになつておりまして、三十人程度の委員で二次試験のほうは試験を行うことになつております。一次試験のほうはこれはやや試験のやり方が変つておりますので、十数名ということになつております。
#16
○一松定吉君 そうすると十五条によつて司法試験管理委員会の推薦に基いて法務大臣が試験考査委員を命ずるということになつておるのですが、そうすると司法試験管理委員会の推薦した人に対して不適任者があつたというようなときには、法務大臣はそれは採用せんでもいいんですか。
#17
○政府委員(位野木益雄君) これは十五条の法文の解釈問題になつて参りますが、「司法試験管理委員会の推薦に基き、」とありますから、これは推薦がなければいけない……。
#18
○一松定吉君 なければいけないが、その推薦した人に不適任者がある。例えば試験考査委員が十五人なら十五人推薦して来た。そのうち三人は不適任者があるというときには、この三人は不適任だからもう一遍三人を推薦し直せということができるのかどうか。その三人を推薦し直して来たときに、又二人不適任者があればこれをし直せということができるのかどうかということと、法務大臣はそれは不適任者であるからと言うて行なつたにかかわらず、司法試験管理委員会が法務大臣の命に従わずして、ほかの者を推薦しなかつたというときにはどうなるか、そういうことを聞きたい。
#19
○政府委員(位野木益雄君) その点でありますが、まだ従前そういうふうな事態が起つたことはございませんので、確定的な見解というものは今までできておりませんですが、ここで私見を申上げますと、推薦が不適任であればこれは任命する必要はなかろうかと思います。
#20
○一松定吉君 そのときに推薦が不適任だからといつて法務大臣がその推薦通りしないときには、これこれの人は不適任だから推薦し直せということの意思表示をして、それでし直せばいいが、し直さなかつたときはどうするのか、又そういうことを、不適任だからといつてその推薦した者を拒否することができるか。拒否したならば、その拒否に応じて新たに推薦しなければならんが、推薦しなかつたときはどうするか、こういうことを伺つているのです。
#21
○政府委員(位野木益雄君) 推薦がない者は任命できないのであります。
#22
○一松定吉君 ここで言つているのは、推薦して来た者の中に不適任者があつたときに、これは不適任だから、適任者を更に推薦して来なさいといつたときに、そういうことを法務大臣が試験委員に命ずることかできるかということが一つ。それはできん、然らばそのときに推薦に応じなかつたらどうするかということが一つ。そういうときの取扱い方がこの十五条だけでは充実していないから聞くのだ。そこをどうするかということ、それは必ずしもないとは限りませんよ。次官と事務総長と、それと弁護士連合会から推薦した人の三人でこの管理委員会をこしらえる。その三人で、司法試験管理委員会が今度試験の考査委員を推薦して来る。この推薦して来た人のうちに不適任者かあるというときに、これは不適任だから、更にこれこれの人間だけは一つ推薦を取消して新たにしてくれということを命ずることができるか。できるならばその命じたときに管理委員会がその命に従つて推薦してくれれば問題がないが、推薦して来ないときはどうするか。そのときはその司法試験管理委員会のうちの三人が言うことを聞かないならしようがないと、そういうときはどうするか、こういう問題だ。この法文にないから、その欠陥をどう補うのかというのです。
#23
○政府委員(位野木益雄君) これはいたし方ないというふうに考えます。ですからその点は法律的に若しそういう心配も起り得るということが相当予想されるならば、何らかの手当をいたしたいと思います。
#24
○一松定吉君 それで仕方がないからということになつて来ると、結局法務大臣は不適任だとして推薦をやり直せと命令することができるのですか。
#25
○政府委員(位野木益雄君) それはできると思います。
#26
○一松定吉君 できる……。できたときに管理委員会が、よろしうございますと承服してくれればよろしいが、推薦しなかつたときは仕方がありませんじや、二進も三進も行けないが、それはどうするのですか、何かここにそういうときのことを法律に書いておかなければならん。これが抜けておるから聞く。
#27
○政府委員(位野木益雄君) 今そういうふうに考えておりますが、なおこの点については研究さして頂きまして……。
#28
○一松定吉君 それを一つあなたのほうで更に御相談の上で、それが必要だということになると、この法文のどこかに、そういうときに処すべき法をこさえて来なければいかんから……。質問はこの程度にとどめておきましよう、更にお考えを願いたい。
#29
○楠見義男君 今の一松さんの御質問に関連しているのですが、推薦する場合に、例えば刑法なら刑法で、三人なら三人の試験考査委員を法務大臣が任命しようとする場合に、三人だけ推薦させるんですか。それとも五名とか、その定数以上の人を推薦させるんですか、その点はどうなんでしようか。
#30
○政府委員(位野木益雄君) これは非常にこの間の仕事がスムースに参つておりますので、四人の場合は四人そのまま推薦して、そのまま任命するということにやつて行きます。
#31
○楠見義男君 それは速記にとどめるほどの問題じやないんですから……。
#32
○委員長(郡祐一君) ではとめましよう。速記をとめて……。
   〔速記中止〕
#33
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。
 司法試験法の一部を改正する法律案については、なお一、二の質疑が残つておりますが、都合によつて航空機抵当法案の質疑に入ることにいたします。御質疑のあるかたの御発言を願います。
 なお前回の航空機抵当法についての質疑中にありました資料を運輸省から提出いたして参りましたので、これについて運輸省側に説明することがありましたらこの際に御説明を願います。
#34
○政府委員(粟沢一男君) 先日航空機の償却耐用年限につきまして御質問がございましたので、調べて参りましたことを申上げたいと思います。
 お手許にお配りいたしました一枚紙のほうが耐用年数の表でございます。御覧になりますようにDC四型は七年の耐用年数といたしております。DC六につきましては恐らく八年以上というふうに考えます。大体航空機の大小によりまして差をつけております。従いまして、例えばその次のビーチクラフト、これは大体六人ぐらい乗込むもので四年になつております。又デハビランドダブ、これは十人乗ぐらいになりますが、六年、最近東京の上空で宣伝飛行などいたしておりますセスナ級になりますと三年という程度に耐用年数をいたしております。
#35
○説明員(谷伍平君) 前回の御質問によりまして、法律によりまして最高裁判所規則に譲つておりますところの競売の手続の大体の要旨を示せというお話がございましたので、かねて研究いたしておりましたところのアウト・ラインをまとめまして、お手許に航空機競売手続要領という題名の書類がお配りしてございますが、これにつきまして簡単に御説明申上げたいと存じます。なおこの法案の附則によりまして改正されます航空法によりまして、最高裁判所の規則に譲りますものは競売規則のほかに強制執行についても譲つておりますので、強制執行についてももう一つ規則が別個に制定されることになるわけでありますが、これにつきましては大体同内容でありますので、一先ず競売手続要領のみをお手許にお配りしたわけでございます。強制執行の規則の大体内容と予想されますものにつきましては、明日印刷をいたしましてお配りできると思いますが、大体この内容と似通よつておりますので、これによつて申上げたいと思います。
 第一番に競売の管轄裁判所はどこか。これは法律によりまして地方裁判所がやるということが規定されておりますが、土地管轄はどういうふうになるかということが一つでございます。これは船舶の競売の場合と同様に差押の当時に停留する場所、つまり現在地を以て現在地を管轄する地方裁判所を以て管轄裁判所としたわけでございます。自動車におきましては軽快な機動性を有します点から登録地主義を採用いたしておりますが、船舶同様の程度に目的物の捕捉が可能であるという考え方を以ちまして、現在地主義をとつたわけでございます。
 第二に、競売手続の開始決定の規定について、規定を設ける必要があるのでございますが、競売手続につきましては裁判所が債権者のために航空機を差押える旨を宣言いたしまして、なお且つ航空機を債権者の委任した執行吏に製品を引渡すべき旨を命ずる、この二つのつまり観念的な命令行為とそれから製品を実際に執行吏が確保する、こういう二つの手続を以て競売の開始決定が行われる。その差押の効力は、開始決定を債務者に送達したときに効力が生ずるわけでございまして、開始決定があつたということは、登録原簿上にこれを表示して公示する必要がありますので、その第三項に書いてありますように手続の開始決定があつたときは、競売の申立てがあつた旨を登録原簿に記入することを運輸大臣に嘱託するわけでございます。この嘱託を受けました運輸大臣はこれは政令に規定するわけでございますが、嘱託を受けた場合の登記の方法は政令で規定いたしまして、原簿に表示するわけでございます。
 第三に監守保存処分、ここに書いてございますが、これは競売の申立があつてから開始決定を行うまでに若干の時間がありますので、その間に航空機について早くその現在の状態を確保したいという必要があつたときには、債権者の申立によりまして、裁判所は監守保存のために必要な処分をすることができる規定の必要があるわけでございます。これは開始決定の送達前であつても差押の効力を生じまして、債務者の自由な処分を禁ずるわけでございます。この場合におきましても、第二に規定したような開始決定前ではありますけれども、登録原簿に表示して第三者に広く公示する必要がありますので、同じく嘱託登記の規定を設ける必要があるわけでございます。
 それから第四を御覧頂きたいのでありますが、執行吏がこの債務者から航空機の引渡を受けるわけでありますが、これは引続いて執行吏がこれを占有する、占有の方法はいろいろ考えられると思いますが、占有をするということによりまして目的物を執行が確実に行われるように占有をするわけでございます。併しながらこの航空機の債務者が非常に確実な債務者であり、且つ航空機をいろいろ公益上の必要からなお運行させるという必要がある場合もありますので、その点についての規定を置く必要があるわけであります。それは今申上げたのは第四の第三項の規定でございますが、それからなお第二項をちよつと落しましたので、執行吏は自分が占有するのが原則でありますが、債務者その他のものに目的物の確保ができるという確信がある場合には、その他の者に保管させることができる規定を設けて、実情に副つた目的物の確保の仕方を規定する必要があるわけでございます。
 第五は競売期日の公告でございますが、裁判所が競売期日を公告するわけであります。これは裁判所の掲示に標示するだけでなく、三項に書いてありますように、日刊新聞に掲載して広く周知させることが適当であると認めた場合には、その方法をとることができるわけでございます。
 最後に、以上は極く概略でございまして、このほかにもなお細密の規定を設ける必要がありますのでありますが、大体の考え方としましては、規定上競売法の不動産の競売に関する規定のところにいろいろございますが、それらの規定を準用して洩れのないようにして行く必要があると考えるのでございます。
 強制執行の手続の要領につきましては、大体用語は競売と異りますが、やり方としましては大体これと同様でありまして、先ほど申上げましたようにこれにつきましては明日お配り申上げるつもりでおるわけでございます。以上を以ちまして簡単でございますが、資料の説明を終らせて頂きます。
#36
○中山福藏君 お話はよくわかりました。大体こういうものであろうと私も想像しておつたのです。ところがこの飛行機の場合考えて頂かなければならんことは、例えば動産の差押の場合にはいろいろの問題が起きて、一つの制裁規定が設けられて不法行為というものを禁ずるようになつておりますが、これは競売の申立をする、その申立書を提出する前に債務者がそれを、その申立があるということをさとつて自分の飛行機を外地に飛ばしたときには、執達吏の占有保管ということはできんことになるのですね。これは私が一番お尋ねしたい要点なんです。成るほど公簿上これは申立があつて、それが記録された、そうして債権者は自己の債権の保全というものか即担保された債権が、その債権の対象となるべきものによつて、自分の執行の目的物というものを完全に執達吏が占有管理しておるであろうと思つておつても、これは事実上先に飛んで行つて、占有保管に移されないときには執行できないのです。そこで私はこの場合に限つてこれはやはり一つの制裁規定というものを単行法で臨時措置的に制定する必要があるのではないか、これは特殊の場合です。動産とか日本にある不動産の場合にはこれはあなたがたのいわゆる債権保全というものは担保物件を競売することによつて、債権者は満足を得るのですけれども、この場合は満足できないのです。いわゆる机上作戦を練つておるだけということになるのではないでしようか。競売の申立の登録はされた、執達吏が行つて占有保管する、この占有保管ができんときはどうなるか。悪意に飛行機を途方もないところへ飛ばしたという場合にはどうするかということも、一応考えなければならんと思うのです。船の場合よりかもう少しむずかしいのじやないかと思うのですがね。そういうことを私はお聞きしたいので、この資料を提供なさるように御請求申上げたのでありますが、そういう点についてはどういう処置をとられるお考えでしようか。これは一番大事なところだと思うのですね。
#37
○説明員(谷伍平君) 今お話のような事例が絶無であるということを申上げるわけには行かないと思いますが、航空機につきましては前回もお話申上げましたように、これを単に債権の抵当権の執行を免れる目的を以つて飛行機を国外に持出すということにつきましては、そこにいろいろの障害が考えられるわけでございます。先ず日本の航空機として日の丸をつけた、つまり日本の国籍を取得した航空機でございますので、それを外国に持つて行きました場合に、外国の登録を受けられるというわけには参りませんので、相変らず日本の国籍を持つたままである。外国の国籍を持つた飛行機の運行につきましては、各国とも民間航空条約によりまして非常に限定された運行のみしかできないことにきめられておりますので、これを何か経済目的に使うということは殆んど不可能なわけでございます。のみならず乗員もこれは旅券の問題その他ございますから、単に執行を免れる目的だけでどこかの国へ移したということは一時的にはやれましても、そういう航空機のような高価な財産を外国においてみだりに使用できないので寝かすという結果になりますので、普通のケースにおいては殆んど考えられないところではないかと考える次第でございます。
 なお話が相当技術的になつて参りまして、私ども運輸省の役人ではいささか正鵠を欠く答弁を申上げても如何かと思いますので、委員長のお許しがございましたら民事局のほうから村岡事務官がここへ来ておられますので、答弁して頂いたらどうでしよう、よろしうございますか。
#38
○中山福藏君 私は民事局のかたが答弁なさる前にちよつと言つておきたいのです。只今おつしやつたのは航空条約、或いは国家相互間の場合を想定しての御議論であつたと考えられます。それで航空条約の締結されていない国がたくさんあるということを頭に入れておかなければならない。而も喉から手が出るように航空機を欲しがつておる国もあるわけなんです。それで法律制定の目的から行けばあなたのおつしやることはよくわかる、私も又よくわかるわけです。併し今日の世界情勢はそういう簡単な考えではいかんのじやないか。やはり債務者のやる行動を規制できる一つの措置をこの場合に限つては、考えておかなければならん問題じやないかと実は思いまして、念を押しておるわけなんです。例えば破産の場合にも詐欺破産のような問題があるように、これはまあ余り役には立つておりませんけれども、併しないよりもましなんです。詐欺破産という問題があるということはそういうような按配で一つの何かここに不当不法な行為をやる債務者の立場を規制する一つの規定というものが必要になつて来るのじやないかという点をお尋ねしておるわけです。それで航空条約のあるところでは、あなたの今おつしやつた通りで、比較的にこれで満足もできるでしようが、今はそういうわけには行かんのです。例えば中共やソ連の領内に飛行機が飛んで行くという場合には、先方は喜んでこれを購入するのじやないかと思う。例えば日の丸がついておつても樺太とか何とか近いところは相当ありますからそんな航空した場合においては殆んど手のつけようがないのです。だからこの法律で債務者のふらちな行為を、或る方法で制限しておく必要があるのじやないかとお尋ねしておるわけです。
#39
○委員長(郡祐一君) 民事局の村岡事務官に説明させますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#40
○説明員(村岡二郎君) 只今動産の場合と比較してお話があつたのでございますが、つまり要領にも記載してありますように、競売手続開始決定の申立がありますと、決定前におきましても監守保存のために必要な処分をすることができるとなつておりますので、この規定によりまして執行吏が飛行機に差押の標示封印等をすることはできるのであります。従つてそれを例えば昇降口の扉等に差押の標示をいたします。それを外した場合には刑法の九十六条の規定によりまして処罰される。この点は動産の差押の場合と同様であると解しております。ただこういう実際に執行吏等によりまして、目的物を把握する前に執行を免れるために逃げたというふうなときには、これはどうも抵当権の制度といたしましては止むを得ないのではないか、質権と違いまして債務者の占有利用ということを許しつつ担保に供するという制度を認めます以上は、それは制度といたしましては止むを得ないものではないかというふうに考えております。
#41
○中山福藏君 止むを得ないということで片付けられれば、これはもう質疑応答をする余地はございません。これ以上何も申上げることはない。
#42
○説明員(谷伍平君) いささか司法上の問題と離れる答弁になるかとも思いますが、今の御説示のような例におきまして、まあ日本の日の丸をつけた飛行機が外国へ前触れなしに飛んで行くということになりますと、これは申すまでもなく不法入国になるわけでございます。その際も債権、抵当権の実行は非常に至難な恰好になるわけでございますが、併しこれは不法入国して飛んで行きました飛行機につきまして、外交上の手段によつてこれを返還する、請求の交渉をするというようなこともできないわけではないと思いますし、それから国籍を持たない飛行機がその国に前触れなしに飛んで行くということになりますと、相当これは航空機自体の保安上極めて危険な状態で飛んで行くわけでございます。又乗員につきましてもその生命財産の保障がないというようなことからしまして、まあ丁度そういうふうなことが全然ないかということの御質問に対してはないと言い切れませんが、非常に稀有な状態でありますので、それを前提におきまして何かこの法律で措置をするということは非常に困難じやないかというふうに考える次第でございます。でございますから普通の近代的な金融機関に、こういう航空機を使用する事業なり、或いは団体なりというものをよく事前に調査をいたしまして融資をするわけでございますので、その点は先ず当事者間の融資契約が結ばれる過程の、その基礎になる調査というようなものを信頼して、この法律を制定するほかはないのじやなかろうかと、まあそう考える次第でございます。その程度で一つ御勘弁を頂きたいと思います。
#43
○中山福藏君 ちよつと一言附加えておきますが、あなたは私の年の半分しかないから、世の中の実情というものを余り御存じない。法律研究の面では私よりえらいかも知れませんが、世の中の生きた動きというものを御存じないと私は見ております。なかなか世の中はそう甘いものじやないのですよ、今は……。相手方の不法入国とか何とかおつしやいますけれども、これもあなたがたの書物を読んでお考えになる事柄なんです。そんな甘いものじやないのですから、私のような年寄りの言うことは一応よくお考えになつて吟味されないと困るのですがね。まあ併しそれだけ私は申上げておきます。
#44
○小野義夫君 今中山委員の言われておるのは、つまり抵当権というものはいわゆる債権者を保護するという法律的措置であつて、普通の金銭貸借及び信用経済の面から少し法的になつておる。従つて法の欠缺というものはこれは法で以て補うよりほかないのであるから、例えば破産法の中の一条に入れるとか、どこかに制裁規定を、かかることをやつた場合にはかような措置があるということを書き加えることは、法律の完璧を期する上から言つて、法理の観念の意味において、そういう我我が考えても当然抜け穴があるというような、さようなことは事実上は今のようなどんな法律を作つても空を飛んで行く場合は仕方がないが、これに何らの制裁がないというのが、この抵当権を設定する意呼が若し果して今までの御答弁のように信用でやるのならば、もともと信用があるならば、お互いさまで、これを抵当に取るということは、一に信用のないことから起る、信用があるのに何で抵当権が要りますか。失礼ながら……。金銭貸借のときは信用ある者は抵当をあえて出さなくてもよろしい。信用がないから抵当を取る。その抵当権を行使するということが抵当権なんです。その行使の上に障害があるというならば、どこかに法律に穴があるのだから、その穴を塞ぐというのが当然な理論的なこれは御要求でないかと、私は中山委員の発言に対して、同じような考えを持つのであるが、御当局はさような穴を知つて塞ぐ意思はないのかどうか、一つ御答弁を願いたい。
#45
○説明員(谷伍平君) 今ちよつと私の申上げようが悪つたので、まるで抵当が要らないような議論に若し聞こえましたら申訳ないと存じますが、これは罰則につきましては、一つ法務省の刑事局の意見もお伺いしたいと思うのでありますが、なかなか技術的に非常に困難ではないかというふうに考えるわけであります。又船舶につきましては、すでに現行法の体系が大体そういう罰則がなくて実行を確保しているような状態でありますので、まあスピードの差は勿論ございますけれども、移動の難易という点から言いますと、私どもは船舶と航空機と比べて見て、それほど航空機が機動性がこの法律的な意味において大きいというふうに考えておりませんので、大体船舶についても同様な疑念があると、而も現行の状態を見ますと、船が中共の港へ、これは船と申しましても、やはり中共なり、韓国なり、北鮮なりは欲しがつているものでございますが、そういう事例も余りございませんので、大体船と同様に考えて立法したわけでございまして、まあ船とは違う。もう少し研究しろというお話でございましたら、なお法務省の意見をも聞きまして又御返事申上げたいと思います。
#46
○小野義夫君 いや、それはね、あなたが研究して、できるだけその点を補うという言葉ならいいんですけれども、今申されるような理窟を言うと船舶と飛行機は非常に違うんです。船舶は海を離れて陸の不定のところへ行くということはできないのです。これは短時間に如何なるところでも、降りられるところでありさえすれば相当不明のところへ行けるという点が非常に違うんです。それから迅速の点からも……。それから抵当権の目的を阻害するような行為に対して、何か格段な飛行機抵当に関連してやる意思はないかどうかということをお伺いしているので、よく一つ上司とも御研究の上、その点だけをこの委員会に明らかにして頂ければいいのであつて、今いろいろここで御説明を承わつても大分違うと思うんです。船舶はこうであるから飛行機はそれと同じだというようなことは、これは機動力その他についても同様に考えられない。
#47
○楠見義男君 ちよつとそれに関連しまして、日本よりもむしろ外国のほうが、そういう今小野さんや、中山さんの言われた心配の事例は余計あると思うんですがね。外国の立法例はどうなつていますか。
#48
○説明員(谷伍平君) 今の立法例はあれでございますか。抵当権についての……。
#49
○楠見義男君 航空機抵当ですね。
#50
○説明員(谷伍平君) 抵当法の立法例については、はつきりと航空機プロパーの抵当権について規定しておりますのは私どもの調べましたところでは、フランスの航空法が唯一のものであるように、今までの調べではそうなつております。フランスの航空法の抵当権の規定は非常に簡単な条文でございまして、全部船舶抵当権を準用しているわけでございます。フランスの航空法の十四条に「航空機は抵当権の目的とすることができる。抵当権は登録簿に記載するものとする。船舶登録及び船舶抵当に関する法律は航空機の抵当に準用する。」、御承知の通り、大陸法系は、抵当権につきまして制限物権の形態をとつておりますので、まあ大体内容的に我が国の抵当権と根本的にはそれほど違わないというふうに考えております。まあこれだけの簡単な言葉でフランスでは抵当制度をやつているわけでございまして、なお英米法につきましては、御承知のように、モーゲージの形態でありますが、これは我が国で申せば譲渡担保、つまり権利移転の形式をとつているようでございまして、航空機だけについてのモーゲージの規定は特に見当りませんが、ただアメリカの民間航空法の五百三条、五百四条に、五百三条は抵当権登録の記録制度を規定しておりまして、五百四条は名義上の所有者、ネーム・オーナー、名義上の所有者は航空機による損害賠償の責任を負わない。オペレーテイング・オーナーが即ち実際本当の所有者であつて、航空機を運用している者がいろいろな損害賠償の責任を負うのだと思います。そんな簡単な規定だけでございまして、抵当権の実体につきましては、内容その他につきましては、州法等で規定している州もございますし、そういうものはなくて一般的にモーゲージで行つているようでございます。
#51
○中山福藏君 一つ私は特にお願いするのですがね。例えば不動産の抵当権を実行せられる場合に当りまして、今日あの競売手続でも穴があるのです。例えば紀尾井町の一番地上に立つておる建物に対して、競売の申立てをする場合に、債務者がどういうふうにするかというと、紀尾井町の一番地に家を建てて後に、地番一を一番地の一、二というふうに公簿上分筆すれば、その上に建つたものが二つあることになる。そうするとこの家はおれの物だ、これはおれのものだと言つて、甲というものと乙というものと同一建物を争うために、今所有権確認の訴えが頻々として全国至るところに起つておる。これはあなたのほうの論法から言えば、そういう実例はないのですがね。そういうふうにちやんと法律ができ上つているのですから、債務者というものが、一番地というものを二つに分けて来ると、どつちに建つておるかわからん。一つの建物でさえそういう抜け道があつて、金を貸した人は非常に弱つておるのです。これは一つの実例です。だから今まで抵当権実行の方法なんかから考えてみて、航空機の場合は、なお更至難の問題が起きて来るのじやないかと思うのですね。そういう事態でありまするから、やはりこういう航空機のようなものに抵当権を付けるということにつきましては、やはり完璧を期するということが何よりも必要ではないか。そうしないと空飛ぶ鳥を、距離の遠いのを、幾ら鉄砲で打つても届かんということになつてしまうと実は考えますから、あなたがたの名誉のために特にこれは意見として申上げ、もう少しその点を御研究になつておかないと、飛んでもないことになるのじやないかと思いますがね。僅か九台のヘリコプターだけでも十九億幾らというふうに、大変値段の高いものですし、殊に飛行機はそれより高価なものと見ておる。そんな大きな問題でありますから、やはりこれは十分に慎重に御検討願いたいと思います。
#52
○説明員(谷伍平君) 今のいろいろ先刻からのお話の趣旨よくわかりましたので、一応帰りまして法務省と打合せをしたいと思うのであります。こういうふうに考えております。
#53
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
#54
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。本日はこの程度を以て散会いたします。次回は明十日午後一時から開会いたします。
   午前十一時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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