くにさくロゴ
1953/07/10 第16回国会 参議院 参議院会議録情報 第016回国会 法務委員会 第10号
姉妹サイト
 
1953/07/10 第16回国会 参議院

参議院会議録情報 第016回国会 法務委員会 第10号

#1
第016回国会 法務委員会 第10号
昭和二十八年七月十日(金曜日)
   午後一時五十七分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     郡  祐一君
   理事      亀田 得治君
   委員
           小野 義夫君
           楠見 義男君
           中山 福藏君
           赤松 常子君
           棚橋 小虎君
           一松 定吉君
  政府委員
   法務政務次官  三浦寅之助君
   法務大臣官房調
   査課長     位野木益雄君
   運輸省航空局監
   理部長     粟澤 一男君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
   常任委員会専門
   員       堀  眞道君
  説明員
   運輸省航空局技
   術部長     市川 清美君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○航空機抵当法案(内閣提出衆議院送
 付)
○司法試験法の一部を改正する法律案
 (内閣提出衆議院送付)
○参考人の出頭に関する件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(郡祐一君) 只今より委員会を開きます。
 航空機抵当法案について質疑を続行いたします。先ず市川航空局技術部長より説明を求めます。
#3
○説明員(市川清美君) 御質問がございました航空事故の防止につきましてお答えをいたします。
#4
○一松定吉君 航空機事故の防止じやない。航空機事故の原因だ。どうして近来航空機に対する悲惨なああいう被害が続々出るのか、その原因について当局の知つておるだけのことを一つ発表して頂きたい。それによつて或いはいろいろな質問が附随して起きることはありましようが、今私の要求しておるのは、飛行機の悲惨なる事故が近来起る、この間アメリカの航空機が墜落して全員が死亡したというような、ああいうことの原因ですね、その原因について詳細に承わりたいと、こういうことなんだ。
#5
○説明員(市川清美君) 御質問の事故の原因のうち軍に関連することは私のほうで実はよくわからないのであります、昭和二十七年四月以降我が国の民間航空におきまして起りました事故の内容ということについて御説明申上げたいと思います。現在までに起きておりまする事故は八件ございます。で、そのうちで最も大きい事故は日本航空株式会社所属のもく星号事件、これで三十七名の死亡者を出しております。これが一番大きな事故でありますが、そのほかに只今申しましたように七件ありまして、その合計の死者が日航機を含めまして四十名でございます。負傷者が三名でございます。で、これらの事故の原因であります、原因の七五%が乗務員、操縦士の過失と思われる事故であります。残りの二五%が航空機の発動機の故障による事故であります。で、操縦士の過失の大部分のものにつきましては、戦後の新らしい航空機に対する取扱いの不十分な点並びに航空交通管制と申します、空の交通規則であります、規則に対しまする誤解というものがこの原因を占めておるわけでございます。
#6
○一松定吉君 操縦士の過失と、それから機関の故障ですか、二つは……。
#7
○説明員(市川清美君) さようでございます。
#8
○一松定吉君 日本の航空機の墜落が八回あつた、そのうちの一番主なものは三十四人死亡してそうして二人が負傷をした、その墜落の主な原因は航空士の過失或いは機関の故障、操縦士の過失は取扱が不十分であるとか、航空規則に対する誤解だとか、こういうことですが、そういうようなことについて監督官庁はどういうような措置をとり、若しくはとらんとするのですか。
#9
○説明員(市川清美君) 只今の数字を少し御訂正いたしたいと思いますが、死者は合計四十名でございます。負傷者が三名でございます。事故回数は八回でございます。事故の最大原因でありまする操縦士の過失という問題に対しましては、操縦士の再訓練というのが最も重要に上げられる問題であります。その理由といたしましては、戦前に相当優秀な操縦士がおつたのでありますが、戦後の新らしい器材の取扱並びに航空交通管制に対する認識を深めるという二つの点に関しまして従来の操縦士に再訓練を加える必要があるのであります。そのために昨年度におきましては三千万円の乗員訓練補助の予算を頂きまして十八名の操縦士の再訓練を実施いたしたのであります。本年度、二十八年度予算におきましては更に五千万円の補助金をお願いいたしまして御審議を頂いている次第であります。これらの金額を補助いたしまして操縦士の訓練というものに重点を注いで考えておる次第であります。
#10
○一松定吉君 取扱が不十分である、それはいわゆる操縦士の訓練が足りないのである。故に操縦士の訓練をするために昨年度は三千万円の補助を受けて十八名の訓練をした。本年度は更に五千万円の補助を受けて、それで訓練をするつもりだと、こういうことですが、訓練ということはどういうことをするのですか。
#11
○説明員(市川清美君) 訓練の対象は、実地に飛行する訓練費の補助金であります。この訓練の内容は、只今申上げましたように、新らしい器材の取扱の訓練費並びに航空交通管制の実施をするためには飛行をしなければならないそれらの飛行に対する補助金でありまして、これらの実地訓練に対しまして航空局といたしましてはそれぞれ試験官なり指導員なりを派遣いたしましてこれらの訓練をいたしておる次第であります。
#12
○一松定吉君 機械の操縦等についての訓練はよくわかりますがね。多くこういうようなものが過失で飛行機を墜落し得るようなことになるのは、例えば酒を飲んで酔つ払つておつた、或いは前の晩女を買うて睡眠不足で寝ぼけておつた、何か物事を考えておつてうつかりしておつたとかいうようなことが多いのじやないかと私思う。機械の操縦なんかというものはいやしくも飛行機の操縦士の資格を得れば相当なことはあるであろうが、そういう精神方面の弛緩、ゆるみというようなことがこういうことをなすに至らしめるのじやないかと私は非常に心配しておるのですが、そういうことに対する訓練だとか指導とかということはどうなつていますか。
#13
○説明員(市川清美君) 操縦士の精神的面特に今御指摘がございましたような飲酒というような問題につきましては、航空法で固く禁じている条項であります。このために一応飛行機に乗る前には必ず、医学的な鑑定じやありませんけれども、一度操縦士にその点を確かめて乗せておる次第であります。訓練といいます段階におきましては、一種の道徳的な、まあ注意を与えるという程度にしか現在至つておりません。
#14
○一松定吉君 そういうことは、飛行士を養成するときに、人物試験ですね、或いは思想の試験だとか、或いはそういう酒色に対する彼の態度とかいうようなことがよほど重きをなすのじやないかと私は思うのですが、ただ飛行機に乗るときに検査した、飛行機に乗るときにブランデーを持つて入つて操縦室でブランデーを飲んでいたら、或いは前夜睡眠が不足であつたというようなことは飛行機に乗る直前に検査したからといつてすぐわかるものではない。そういうようなことは平素の精神上の訓練その他素行の監視とかいうような点に重きを置かなければならんじやないかと私は思うのですが、そういう点にそれじや余り力を用いていないのだね。
#15
○説明員(市川清美君) 勿論御指摘の通りに、操縦士は単なる運転手じやありません。人命を預かつて飛んでおる責任者であります。が故に、今の道徳的な点は当然強調して訓練しておるわけであります。特に国際航空機が出入りしておりまするわが国におきましては、この道徳的な教養と申しますか、というものが必要なことは申すまでもないことであります。
#16
○一松定吉君 そういうことはわかつています。そういうことを、訓練を実施して厳重に指導監督をしておりますかと実際聞くんだよ。
#17
○説明員(市川清美君) 仰せの通りにいたしております。
#18
○一松定吉君 誰がしている、そういうことは……。
#19
○説明員(市川清美君) 今の技術訓練のための学科訓練をいたしておるのでありますが、その際に併せて今の教養的な面を講習その他でいたしておるわけであります。
#20
○一松定吉君 これは幾らここで議論したつて、実際に当つてそういうようなことが本当に完全に行われているかどうかが問題であるから、私の言うことはそういう点に常に注意を払つてそうして誤りなからしめるように操縦の任につかして頂きたいということを要望するだけですから、それ以上のことをここで議論したつて仕方ないから、どうぞ一層の御注意をお願いします。それだけでよろしうございます。
#21
○中山福藏君 ちよつと伺いますが、この頃思想的な背景を持つた人が飛行機を墜落せしむるという目的を以て、飛行機が飛び出す前、即ち事前にその飛行機が空中で解体するような行為をやるという危険は少しもないですか。又こういう点についての警戒はどういうふうにしてふだんから飛行機を監視しておられるか。そういう点もちよつと聞いておきたいと思います。
#22
○説明員(市川清美君) 飛行前の点検と申しますか、飛行前の点検につきましてはそれぞれ現場に監督官がおりまして一応点検をいたすわけであります。操縦士が点検をいたします報告と別個に検査官がいたしております。
#23
○中山福藏君 飛行機が飛び出す前に一応滑走いたしまして、それから一応そこにとまつてエンジンの試験をしておりますね。ところがナット、捻子ですね、捻子が、これは何分飛行機が飛びますれば緩むというような、その道の経験者がその飛行機の捻子なんかを一応ちよつと手を入れて、これが空中では何分飛んだら解体するというふうな目標をつけていたずらする人はないかとこういうことをお尋ねしておるのです。そういうことはあり得るということも考えられるし、又そんな馬鹿げたことはないという想像もつくのですが、併し今日の世界の情勢を見てみますと、こういうことについても注意をしなければならんのじやないかと実は考えるのです。ですから、そういう点についての注意を怠らないようにどういうふうな処置をとつておられるかと、こういうことも一応聞いておくわけなんですが……。
#24
○説明員(市川清美君) 私どもとしましては、わざわざ飛行機を解体するような措置をとるということはちよつと常識では考えられないのでありますが、一応警戒の手段といたしましては飛行機の停留する場合には普通人を入れないようにしております。警戒員をそれぞれ配置いたしまして、或いは警戒員がいないところはその会社自身で警戒の任に当らしております。
#25
○中山福藏君 これはエンジニヤと結託すれば相当なことはできるわけですよ、本当は……。実はこの間乗つていた飛行機がそれをやつたのですね、右側のプロペラがとまつた……、それで私はやめたのですが、どうもいろいろ乗つておつて考えてみると非常なことなんですよ。日本の航空機というものは人命を託するに足るかどうかという疑問を持つたわけです。それでこういうお尋ねをするわけです。ところがそれをあなたのほうで十分注意してそういう点までも細かい注意をやつておるとおつしやりやそれでいいのですが、こういう点も考えて頂かなければいかんと思いましてお尋ねしておるわけです。
#26
○説明員(市川清美君) 只今の御質問の中にありますことは悪意ではないと思うのでありますが、ただ整備員の技術が未熟であるというために起ることがときにはあるわけであります。そのために整備をいたしまする人間は必ず自分でどこの場所を扱つたというサインをとつて責任をとらしております。従つてそれがその男が扱つた部分について故障ができるという場合がたびたび重なればその男を解任するというような措置を講じておるわけであります。
#27
○一松定吉君 機関士につまり一等航空士、二等航空士というように等級が分れておりますね。その等級の分れておることは技術の巧拙によるのでしようか。いやしくも人命を扱つておる大切な任務に従事しておるのですからして、この一等とか二等とか三等とかというように技術に甲乙があるときには本当に最上の技術の持主を乗せて操縦させるということでなければ、二等航空士或いは三等航空士とかいうようなものによつて航空さした結果故障が続発するというようなことがあつてはならんと思うのですが、そういう点についてのお心がまえはどうなつておるのですか。
#28
○説明員(市川清美君) 一等、二等、三等を分けました大きな理由はその飛行機が持つておりまする機械の内容によつて分けたのであります。例えて申上げますれば、一番大きな飛行機の機械の中には油圧系統、電気系統、或いは空気系統のもの、非常にたくさんの機械が入つておるわけであります。ところが小型機になりますと、小さい飛行機になりますと、只今のうちから例えば空気系統の設備がなくなり、或いは電気系統の一部がなくなるということになりますので、必ずしも一等を持たなくてもそれらの飛行機は完全に操縦できる。こういうふうに考えましたためにそこに或る差別をつけたのであります。
#29
○一松定吉君 そうすると技術の差別じやなくて航空機そのものの差別であつて、その航空機に乗る人が技術的にこの人は非常な巧者な人である、この人はまだ、最高の技能まで行かんのであるというような意味で一等とか二等とか三等とかつけたのじやないのだね。
#30
○説明員(市川清美君) その通りでございます。
#31
○一松定吉君 そういうことなんですか。飛行士というのを一つの飛行機にただ一人だけ乗せるのですか。或いは一人、二人、三人と補助的な人を乗せて完全を期するというような方法をとつておるのですか。その辺はどうですか。
#32
○説明員(市川清美君) 操縦士を二人以上乗せなければならないという航空機は法律に規定しておりますが、旅客を運送している飛行機、それからもう一つは操縦席の構造上どうしても二人以上の操縦士が必要なる航空機、それから旅客運送をいたしまする飛行機で、計器飛行という天気の悪いときに飛ぶ航空機には必ず二人以上乗せなければならないということを規定いたしております。
#33
○一松定吉君 今のあなたのお話から見れば、成るほど航空ということそれ自体には欠陥はないようであるが、その欠陥のない通りに行われておれば故障は少いわけだね、それが理窟はそうであるが、実際にはそうではなくて二人乗せなければならんところに一人乗せた、或いは睡眠不足の者が乗つておつたとか、或いは酒癖の悪い者が乗つておつたというようなことがありはせんだろうかと思うのです。特に我々がこういう質問をするのは、我々国民が安心して飛行機を利用することができるようにということなんです、私の希望は……。私ども洋行して大分向うでも飛行機に乗せられましたが、日本の飛行機にはまだ乗る気持がないのだな。で、どうだろうか乗つてこれが最期ではなかろうかなんかということで家を出るときに家族と水盃をして出るように……。本当に飛行機の利用ということは完全でないのだが、もう日本の飛行機は絶対に安全だというような考えを持たせるようにこれをやつてもらいたいというので、今私が、中山君の御質問もそうだろうと思うのですが、私の質問もそういう意味ですから……、一層そういう方面に力を用いられて、日本の飛行機は断じて安全だというふうに一つ向上発展することに御尽力を賜りたいということをお願いして質問を終ります。
#34
○楠見義男君 今の一松さんの問題に関連なんですが、私は一松さんとは全く逆で、外国の飛行機よりも日本の飛行機のほうが劣つておるとは思わない。特に私は飛行機は日常愛用しているものなんですが、被害率で、これは外国と統計的にみれば科学的によくわかると思うのですが、外国における被害率と日本との比較、それから日本の自動車事故とかそういうものと、それから汽車なんかとか電車の、そういうものと飛行機の被害率、そういうもののお調べはありませんか。この被害率によつて私も一松さんに賛成しなきやならん、今後改めなければならんと思うけれども……。
#35
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて……。
   〔速記中止〕
#36
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて……。楠見委員の要求については成るべく速かに運輸当局から資料を提供いたす趣きでございますから、さよう御承知おき願います。他に御質疑はございませんか……。御質疑がないようでありますから質疑は終局したものと認めてこれより討論採決に入りたいと存じますが御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#37
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。これより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
#38
○赤松常子君 私は本案には賛成いたしたいと思つておりますが、折角こういう金融の据置を講ずる便宜が与えられる法律ができて参つたのでございますから、どうぞ民間会社においても民間航空の発達のために考えてもらいたいし、又当局に、これを所管なさいまする当局におきましても、昨日ちよつと拝見しただけではございますけれども、まだ技術の面で国際的水準に達しないからあちらの技師が必要だというようなこと、それからパイロットもまだまだ日本の飛行士が養成されていないから向うの人をやむなく使つている関係から、サラリーの面でも非常に高額を払つているというようなアンバランスがございますようですから、まあ早くそういう点の無駄をなくして、この金融が本当に日本の技術を高め、民間飛行の発達に資するように当局の御留意を願いたいと思いまして、以上意見を申述べて賛成いたします。
#39
○委員長(郡祐一君) 他に御発言もないようでありますから、討論は終局したものと認めて直ちに採決に入ります。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#40
○委員長(郡祐一君) 全会一致と認めます。よつて本案は全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 なお、例によりまして委員長の本会議における口頭報告の内容その他は便宜委員長に御一任願います。本案に賛成の諸君の御署名を願います。
  多数意見者署名
    一松 定吉  赤松 常子
    楠見 義男  棚橋 小虎
    中山 福藏  亀田 得治
    小野 義夫
  ―――――――――――――
#41
○委員長(郡祐一君) 次に司法試験法の一部を改正する法律案について質疑を継続いたします。ちよつと速記をとめて……。
   〔速記中止〕
#42
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて……。
#43
○一松定吉君 昨日の質問に続いて政府当局にお尋ねいたしますが、昨日私がお尋ねいたしましたのは、司法試験法の第十五条、即ち司法試験管理委員会の推薦に基いて試験ごとに司法試験考査委員を選ぶ、その考査委員の選び方が不適任であるということのために法務大臣が司法試験管理委員会にその推薦変えを要求したときに、司法試験管理委員がその法務大臣の要求に応じないようなときがあつたときにはどうするか。そのときには法務大臣か司法試験管理委員会がその申込みに応じないどいうことを理由として、法務大臣自身が専権によつてこの司法試験考査委員を選ぶことができるのか、できないのか。又司法試験管理委員会は法務大臣からその推薦に変更を要求されたときにはその要求に絶対に応じなければならんのか、応ぜんでもいいのかということについて政府委員にお尋ねしておいたのですが、それに対する政府委員の的確なる御答弁をまだ得ておりませんから、この点についての御意見をお述べを願いたいのであります。
#44
○政府委員(位野木益雄君) 只今の御指摘のありました問題は、昨日申上げました通りの見解を持つておるのであります。即ち司法試験管理委員会が推薦した委員が不適任であるという場合には、これについて推薦変えを命じるということは、これは可能であるというふうに考えております。その推薦変えに応じないで推薦をして来ないという場合には、法務大臣が専権でその推薦を得ないで考査委員を任命できるかという問題でありますが、これは考査委員の任命を占法試験管理委員会の推薦に基かしめておる法律の精神から申しまして許されないものと考えております。
#45
○一松定吉君 そうするとこの管理委員会の推薦をした者に法務大臣が不適任だとして推薦変えを要求したときに応じないという時分には、法務大臣は自分の意思に反して司法試験管理委員会の推薦に拘束されるのですか。
#46
○政府委員(位野木益雄君) 司法試験管理委員会の推薦した者は法務大臣が必ず任命しなければならないということはないのであります。
#47
○一松定吉君 もう一遍……。
#48
○政府委員(位野木益雄君) 拘束されることはない……。
#49
○一松定吉君 拘束されないとすると、結局法務大臣はその試験管理委員の推薦した者は採用しない、それから管理委員会は法務大臣の言うことを聞かないという時分には二進も三進も行けないんだが、そうするとその年の司法試験というものは行われんことになるのですか。
#50
○政府委員(位野木益雄君) 御指摘のような場合は観念的には考えられ得るところかと思います。併しながら国家機関がその職務を行うということは当然のことでありまして、法律といたしましてはそれが職務を行わないということは予想いたしておらないのであります。委員の構成から申しましても法務事務次官及び最高裁判所事務総長、これは職務上当然委員になるわけでありますが、なお弁護士会の推薦によつで法務大臣が任命した弁護士、この三人で構成せられておるのでありますが、この委員の構成から申しましても、又従前のこの制度運用の実績から申しましても、常に委員会の全員一致の推薦に基いて任命しておるのでありまして、そのような事態が起るということは殆んど事実上想像することができないというふうに考えております。
#51
○一松定吉君 それは以てのほかのことだ。人間ですからしてあなたの言うような神様であつて、必ずそういうことがないということのあなた保証ができますか。
#52
○政府委員(三浦寅之助君) 只今の御質問の点は多々考えられる点でありまして、御意見の通り今まではそういうような支障も来さなかつたようでありまするし、又今年度においてもそういう支障はないのでありますが、ただ将来の問題といたしまして、若し只今の御質問の通り推薦をしなかつたというような場合があるとするならば、それは法務大臣が任命ができない。できなければ試験に支障を来すということは十分に考えられるのであります。その点につきましては十分今後の問題として研究いたししたいと思いますから、御了解いたしたいと思います。
#53
○政府委員(位野木益雄君) ちよつと私の言葉が足りなかつたので、なお続けて申上げますと、そういう事態が絶対に起り得ないということは、これは観念的には少くとも考えられまするしいたしますので、恐らく起らないだろうということを想定はいたしておりますが、絶対に起らないということは、これは断言できないということのあることは、これはもう仰せの通りでありますので、そのような場合にはどういうふうな規定を設けるかと考えますと、その場合に法務大臣が管理委員会の推薦に基かないで委員を任命することはできるというふうにいたすことになると思いますが、併しそういうふうな規定を設けますことは、この司法試験法が、司法試験管理委員会というものを設けまして、裁判所、法務省、弁護士三者の意見を適当に反映さして運営して行こうという理想に反する結果になりますので、そういうふうな規定は成るべく設けたくないというふうな点があるわけであります。
 それからなお一般的に申しまして、推薦による委員任命の例は、御承知のように他にも少くないのでありますが、極めて特別の場合を除きまして、推薦を拒否した場合を予想した規定を設けていないのが通例のようであります。これは先ほども申げしましたような、国家機関がその義務を果すことは当然のこととして考えられておるからではないかと考えておるのであります。併しながら御指摘のような点が確かにございますので、将来十分研究さして頂きたいというふうに考えます。
#54
○一松定吉君 今あなたの御意見はただ理窟ですわ、それは……。実際そういうことがないということは言えないのみならず、今のように公務員が上司の意見を聞かずして、そうして自分の顔を通そうという実例はあなた、日に日に我々の見聞するところでありまして、例えば裁判所の書記官あたりでも、自分の待遇を改善して、給与を上げてもらいたいということのために、監督官の部屋に入り込んで行つて、そうしてそこにあぐらをかいて要求をして、室内から退去を命ぜられても応じないということがあるじやありませんか。殊に文教の府にある文部省あたりでもすでにそういうことがある。あらゆるこの権利義務を主張するような裁判所とか検察庁とかいうようなところには常にそういうことが現に行われつつある。ですからしてこの委員が、法務大臣の、これは不適任だなと思うような人間を推薦して来ないということは言えない。故意にそういうものを推薦しないとしても、推薦して来たうちで、これはどうも不適任だなと思つたときには、不適任だと思つても、その推薦に拘束されるならばこれは異論はない。法務大臣からその推薦を取替えてくれんかということはできないことになるのだが……。それは十五条の法文から見て直ちに推薦に拘束されると思わないからして、この考査委員は不適任だからと言うて推薦を変えてもらう。よろしうございますといつてすぐ変えれば問題はないが、いや、あなたの言うことには応じませんと言うて推薦者を変えない。そうして変えないで法務大臣はそれに拘束されるということであれば、法務大臣の意思は尊重されないし、推薦は変えないということになると、そこで両方とも三すくみになれば、司法試験は行われないということになる。当然あり得べきことですよ。あなたの言うようにこれは慎重に、こういう人選をしたのだから云々とおつしやるけれども、それはいわゆる旧憲法の天皇制のときならば官吏は上司の命令に従わなければならんとか、従わなかつたらそれを懲戒に付するとかいうようなことがどんどん行われるけれども、今日はそれが行われないのだから、そこでこれを法文に設けてそういうような弊害を除去するように完全にしておく必要がないかということを心配して私は質問したのですが、併し今政務次官の御答弁なり、あなたの御答弁によつて、今私のような心配をしていることもあり得べきことであるから、更に適当な時期まで考慮するということであれば、これ以上私は質問を継続いたしませんから、希望として述べておきますが、どうぞ成るべく急速に、もう今年はすでに完全にその人が任命されてその試験の準備にかかつておるようですから今年は問題はないが、来年、再来年の将来の問題が心配になりますから、成るべく早く適当な機会においてこの欠点を補正するような方法を講ぜられんことを特に要求いたしまして質問を打切ります。
#55
○赤松常子君 私はこの受験料の点についてちよつと申上げたいのですが、第一次試験の二百円を五百円と倍額以上に上げることになり、第二次試験は五百円を千円になるというわけなんでございますが、非常にこういう試験を受けるかたは苦学生が多いし、苦学力行の士が多いのですが、そういう点の御考慮も払われたでしようか如何でしようか。
#56
○政府委員(位野木益雄君) その点は誠に御尤もでございまして、我々もこの立案をいたすにつきまして、できるだけそういうふうな値上げをできたらいたしたくない。仮にいたすにつきましても最小限度にとどめたいということを常に考えたのであります。併しながら現在の司法試験の予算これが約六百万円余りでございますが、これで試験をいたしましても非常に窮屈なんです。一例を申上げますと、司法試験の筆記試験の答案の審査、こういうものが一科目につきまして六千通というものがございますが、それの採点のためにどれだけの日数を要するかと言いますと、一日三百通やりましても二十日間はたつぷりかかるのであります。それから口述試験にも十日間はかかるというふうなわけでありまして、非常に試験委員の負担が重いのでありますが、その報酬が一番多い人で僅か五万円というのが昨年の実績であります。これでは如何にも気の毒であるということを我々は常常に痛感いたしておるのでありますが、如何せん予算が乏しいのであります。そうしてこの問題の手数料の額はその予算の半分に満たないのであります。而もほかの国家試験の例をみましても、いずれも相当司法試験よりも高いのでありまして、例えば公認会計士試験、これは第一次試験が五百円、第二次試験が一千円ということになつておりまして、今度の値上げによつて司法試験の場合と同額であります。これはもうすでに先年値上げになつておるのであります。そういうふうな点から止むを得ず最小限度の値上げを考えたのが今回の法案であります。
#57
○赤松常子君 会計士のかたがたなどはすぐに試験が通れば、その日から開業なさつて収入がございますわけですから、まあそれで適当だと思いますが、他の国家試験の例をみましても、医師の国家試験などは四百円が四百五十円の値上げになつて五百円よりは安いわけですし、第二次ですかが八百円でありまして、一千円より安い。お医者様になつてすぐに収入のあるかたでもこういう安い受験料なんですが、この司法試験をお受けになつてすぐに収入があるわけではないと思うのですが、それをみましてもこのバランスがとれないと思うのでございます。その辺はどういうふうにお考えでございましよう。
#58
○政府委員(位野木益雄君) 御指摘の点でございますが、仰せのように司法試験に合格しても直ちには一人前の法律家としては活動できない司法修習生としての修習を了えた後に初めて一人前の収入を得られることができるのであります。併しながらこれは必ずしも司法試験に限つたことでないのでありまして、公認会計士の場合におきましても、御承知のように第二次試験を受けるには千円の受験料が要るのでありますが、その試験にうかつた後やはり或る一定の期間修習を要するのであります。その修習を了えてから更に第三次の試験を受けなければならない。そうしてそのために又千円を納めるというふうなことになつておるのであります。医師の場合にも必ずしも直ちに収入を得るということは実際上困難な状態であります。幸いなことには司法修習生の場合には乏しうはございますが、或る程度の給与を国家から支給されるということになつておりますので、その点比較的恵まれているというふうにも考えられると思つております。
#59
○赤松常子君 只今試験をする場合の予算がかかるからとおつしやつたのでございますが、ほかの医師の国家試験や公認会計士の試験の場合の予算はどのくらいかかつておりますか。それはこれで賄われているのですか。
#60
○政府委員(位野木益雄君) 今手許に的確なる数字を持合せてございませんが、恐らくこれで賄つているということは考えられないと思つております。併しながらこれは国家試験の一般に共通する問題でありまして、大蔵省等におきましても常に平均をとつて考えておると信じております。それで私のほうの今度の値上りにいたしましても、関係官庁とも十分相談いたしましてこのように決定いたしたのであります。
#61
○赤松常子君 これは来年の一月から実施なさいます法律でございますし、私今の点でもう少し今おつしやる資料なども頂きたいと思いますし、少しちよつと考えさして頂きたいと思いますので、他の国家試験の予算と、それからこの収入との割合などの資料をお出し願いたいと思います。
#62
○委員長(郡祐一君) 現在出せませんか。
#63
○政府委員(位野木益雄君) 至急に調べて出したいと思います。
#64
○中山福藏君 ちよつとお尋ねいたしますが、これは商法を試験科目の一に加えるということになつておりますが、これは現在経済界が非常に不況で、手形、小切手、有価証券というものが、非常に何といいますか、商法に関する知識を持つた法律が少いから、こういうものを処理するのに非常に不便だからというので、これをお加えになるのですか、客観情勢の変化によつて試験科目の増減があるというように窺われるのですが、この試験をやる時分に大体経済界が安定して、この商法というものには、まあ試験してもしないでもよかつたというくらいのところに落ちついたら、これは必須科目からお省きになる所存ですか、そのときの情勢で試験科目を増減なさるんですか、どういうようなことなのですか。
#65
○政府委員(位野木益雄君) 勿論、その社会情勢が非常に変化いたしました場合には、商法もそれほど必要でないということになることが予想されないでもないと思いますが、併し社会情勢の如何にかかわらず、商法の重要性というものは揺がないものを持つている部面が、相当多いというように考えております。これはお手許にお配りいたしました資料の八ページに従前の司法試験の必須科目の変遷が載つておりますが、商法を必須科目に加えておつた時代が多いのであります。又全国の地方裁判所の民事事件を調べて行きましても、相当の割合の事件が商事事件だ、而もそれ以外の民事事件におきましても、商法の問題が取扱われておるという問題が非常に多いということがこれはもう御説明申上げるまでもないと思うのであります。それで恐らく商法の重要性が薄らいで、必須科目から更に外される時代が来るとは、少くとも近い将来においては余り想像ができないのであります。
#66
○中山福藏君 私は、大体試験というものはですね、いわゆる徹底した法理的な頭脳を作るというところに目標を置かなければならんと思うのです。殊に只今おつしやつたように、試験に関する費用が六百万円要る。その半分にも、試験料を取つても達せないというようなときにですよ、これは五、六千人の試験を受ける人があるかと私は考えております。そうすると商法を担任せられる試験官の費用は、あなたがたは仮にどのくらいのものとお考えになつておりますか。何人くらいお使いになるのですか。商法専門の試験官、何人くらいお使いになつて、どれくらい費用をお使いになるのですか。
#67
○政府委員(位野木益雄君) 試験委員の数は一科目の中で四人以内ということになつておりまして、必須科目については受験人員が多うございますから、四時全部を有しまして、四人全員で採点をいたすのであります。その報酬でありますが、大体全部でなければいけませんので、今までの例ですと四五万円ということに相成ろうと存じます、一人当り……。
#68
○中山福藏君 私はこの自分の体験上ですね、私は自分のことを言つちやおかしいんですがね、実は代数の因数分解が私の得意だつたんです。今子供が因数分解の問題が非常に難解であり、自分に尋ねて来るが、私はいつもわからん。自分の一番得意としておつたんだが、併しものを理解し、ものを分折する頭脳というものがあれば、これは相当な時間さえあればすぐわかると思う。私どもは、試験の科目に何を選ぶかをいうところに、ここが一番大事なところじやないかと思う。単にたくさんの科目を並べて、そして試験したところが、一時それがわかつておつても忘れる時期が来ると思うのです。弁護士でも、法律を忘れたときでないと一人前の弁護士でないと言われるくらいです。それでもすぐ法律書を播けばすぐわかるという基礎を与える。この基礎があるかどうかということを試験をすることが本当の試験だと見ている。ですからこういうふうに民法さえ十分に理解し、又民法の骨髄というものを頭に備えておれば、大体商法というものを読んで見りや大体私はわかると思う。殊に今赤松さんがおつしやつたように、この試験の費用というものが相当かかつて、貧乏な学生というものは受ける人がたくさんある。試験費用というものは相当高いのじやないかという議論も出るとすれば、私はただ単に試験科目を余計に揃えて、学生を苦しましめて、そして一つ採点をしようかというような、姑息な、姑息と言つちや大変失礼な言葉かも知れませんが、けちな考えでそういうことをおやりになるのじやないかということを考えて見たんです。私はそういう点について、もう少し試験とはどんなものかということを第一にお考えになることが必要じやないかと思うのですがね。只今客観情勢で増減というものがあるかどうかということをお尋ねしたのはそこなんです。これは、この試験を来年からやつて……、来年輸出入の関係で相当の経済界の安定が来れば、或いは商法というものはさほど重要ではないんではないか。それをここに表が出ておりますのを見てみますと、商法というのは、選択科目になつたり、再び必須科目になつたり、いろいろ年次によつて違つておりますけれども、現在のところは、これを加える必要がさほどまであるのかどうかということを実は考えているんですが、どんなものでしようそれは……。
#69
○政府委員(位野木益雄君) その点は誠に御尤もな点が多いと思いますが、商法を加えるに至りました理由の経過をちよつと御説明申上げますと、司法試験法ができます前までは、商法は民事訴訟法、刑事訴訟法及び商法のうち二科目が選択的に必須になつているというふうな取扱になつておつたのでありますが、司法試験法の立案の際に、いろいろ各方面のかたに集つて頂きまして相談をいたしました結果、余りに心須科目を多くすることも考えものじやないかということから、商法を、まあ行政法と選択的に……、全般的に必須科目が多くなつたのでありますが、商法は、行政法と選択的に必須にしようということになつて、現行法のようになつたのでありますが、この実施状況を見ますると、昭和二十四年度におきましては、商法と行政法とを受験いたしたものの数は接近いたしておつたのでありますが、ところが昭和二十五年度以降は、商法を受験する者の数が非常に減少いたしまして、行政法の受験者の約半数になつたのであります。それがずつと現在に至つているのであります。ところが司法試験に合格した後、司法修習生を経て、裁判官、弁護士というものになつた場合に、非常に商事事件の数が多いにかかわらず、商法の知識が欠けるので困つているものが非常に多くできて来た。そうして同僚の弁護士さんがたからも、この頃の修習生は非常に商法ができないというふうなことが言われるようになりまして、その結果昨年の十二月二十四日、日本弁護士連合会のほうから、法務省に対しまして商法を必須科目にしてもらいたいというふうな建議書が出されたのであります。それで司法試験管理委員会でもこれを取上げまして研究いたしました結果、なお最高裁判所の意見も徴しましたところ、最高裁判所でも非常に積極的にこれを希望いたしまして、是非商法を必須科目にしてもらいたいということでありましたので、受験者には若干の負担過重というふうになると思いますが、これを必須科目というふうにいたしたいと考えた次第でございます。
#70
○中山福藏君 私はこれ以上は議論になりますから、これは立場を違えた上の観察ですから、もうこれ以上申しません。只今ので結構です。
#71
○赤松常子君 只今国家公務員の試験の場合は、これを受験料は取つているのでございましようか。いないのでございましようか。
#72
○政府委員(三浦寅之助君) 昇任の場合には、いわゆるすでに任官しておる者が上に上がる場合には勿論手数料を取つておらないと考えます。任用の場合にもこれは取つていなかつたと思いますが、仮に取つておるといたしましても非常に名目的なものであると思つております。
#73
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をやめて。
   〔速記中止〕
#74
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。司法試験法の一部を改正する法律案については次回に質疑を続行いたすことにいたします。
  ―――――――――――――
#75
○委員長(郡祐一君) なお前回委員長及び理事に御一任願いました刑事訴訟法の一部を改正する法律案についての参考人から意見を聴取いたします期日は、十七日に打合せの結果きめましたので、さようお含みを願いたいと思います。ちよつと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#76
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて……。本日はこれを以て散会いたします。
   午後三時十五分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト