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1947/08/14 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第24号
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1947/08/14 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第24号

#1
第001回国会 本会議 第24号
昭和二十二年八月十四日(木曜日)
    午後二時四十七分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十三号
  昭和二十二年八月十四日(木曜日)
    午後一時開議
 第一 皇室経済法施行法案(内閣提出)の審査を付託するため特別委員会設置の件
 第二 日本國憲法第八條の規定による議決案(内閣提出)の審査を付託するため特別委員会設置の件
 第三 石炭増産感謝決議案(淺沼稻次郎君外十三名提出)(委員会審査省略要求事件)
 第四 海外同胞の引揚に対する感謝並びにその帰還促進に関する決議案(淺沼稻次郎君外十三名提出)(委員会審査省略要求事件)
 第五 貿易再開許可に関し連合國最高司令官に対する感謝決議案(喜多楢治郎君外十二名提出)(委員会審査省略要求事件)
    ―――――――――――――
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
   連合國に対する特別感謝報告の件についての片山國務大臣の演説
#3
○議長(松岡駒吉君) 内閣総理大臣より、連合國に対する特別感謝報告の件について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣片山哲君。
    〔國務大臣片山哲君登壇〕
#4
○國務大臣(片山哲君) 私は、ただいま諸君に向いまして、クレジツト問題に関する朗報を御報告いたしたいと思うのであります。
 数日前の極東委員会の指令に基きまして、今回連合國総司令部の発表によりますれば、金その他の流動資産を担保といたしまして、特別の貿易基金が設定せらるることになりまして、これを基いとして資金を借り得る総額は五億ドルにのぼるということであります。これは、元來賠償の対象となつておるところのものを、しばらくの間動かして、日本の平時経済回復の誘い水にしようという、まつたく破格の好意に基くものであります。(拍手)
 さきに司令部より輸入食糧の追加放出を許可せられまして、食糧難にあえぐ主要消費地域が、今月中まつたく欠配なしでやれるという朗報をお傳えしたのでありまして、今また旬日を出でずして、ここに終戰以來の快報をもたらし得ましたることは、私の望外の喜びとするところでございます。(拍手)
 私は、まず國民諸君とともに、わが國に寄せられておりまする連合國の深い同情と援助の熱意に対しまして、心より感謝をささげたいのであります。殊にこのためになみなみならぬ努力を重ねられたる連合國総司令官マツカーサー元帥に対しては、國民あげて絶大の謝意を表す次第であります。(拍手)
 さきに経済実相報告書をもつて明らかにいたしました通り、戰爭によつて國土を荒廃させ、基礎的な生産力は疲弊いたしまして、あまつさえ敗戰とともに健全な経済秩序をも混乱せしめたわが國にとりましては、経済をその直面する破局から救い、これを再建の方向に導くためには、民主的な経済秩序を立て直すとともに、まず輸出を促進いたしまして、これによつて食糧と枯渇した復興資材等とを外國から輸入する以外に途はないのでありまして、終戰以來この問題につきましては、連合軍総司令部の絶えざる御支援のもとに、官民こぞつて努力してまいつたのでありまするが、何分にも占領下の管理貿易という方式による多くの制約に加えて、資源の貧弱と経済の不安定とに禍いされ、正常の貿易へと回復するには、まだはるかに遠い実情にあつたのであります。
 すなわち、終戰以來正常な生産物のほか、過去の蓄積や原材料、素材まで手当り次第に輸出に向けてきたにかかわらず、今日までのところ、輸入は輸出の三倍に近い状態でありまして、國内生産の不振と輸出の不振という惡循環は、このままではどうしても急速な解決を見出すことができない状態におかれてあつたのであります。從つて、明日を期しまして、貿易使節團の來朝によりまして、民間貿易再開の第一歩が踏み出されんとする際に、はからずも今回これと時期を相前後いたしまして、輸出の原材料輸入のための資金の途が開かれましたることは、再建の苦難にあえぐわれわれ日本國民にとりましては、まことに旱天に慈雨を得た感をいたすものであります。(拍手)
 由來勤勉をもつて世界に認められておりまするわれわれ日本國民は、必ずやこの快報に奮起いたしまして、この好意に感激いたし、まず貿易の振興をみずからはかり、もつて生産の増強とインフレの克服とに邁進するでありましよう。実にわが國は、終戰以來滿二ヶ年にして、ここに初めて経済再建の曙光を見るに至つたのであります。
 しかしながらわれわれは、ここで今回の基金のもつ意味を冷靜に考えてみなければならないと考えるのであります。第一に、それは決して無償でもらつたものではありません。経済再建のための呼び水、誘い水として、定まつた期間一時融通してもらつているものであります。從つて、與えられた金額と期間とをいかにわれわれが活用するかによりまして、初めてそれが再建に奇與する程度の大小がきめられるのであります。第二に、それは何でも欲しい物を購入することができるというものではなくして、輸出品を製造するのに必要なる原材料・資材を購入するために與えられているものであり、定まつた期間のうちにこれを製造輸出いたしまして、その代金から返済するという形で回轉いたすものであります。從つて、輸出の相手方を滿足させることのできるように、りつぱな品質をもつた品物が急速に生産され、それが確実に輸出されなければならないわけであります。
 このことは、今回の基金がわれわれにとつて大きな喜びをもたらすのみでなく、また同時に眞劍な反省と決意とを促がすものであることを意味すると考えておるのであります。すなわち、この基金を活用いたしまして、経済再建を速やかならしめ、ひいては米國民の同情と厚意にこたえるためには、われわれは合理的な貿易計画を立てまして、これに從つて輸出産業に対する重点集中をさらに強化いたしまして、輸出品の品質向上をはかり、その價格を引下げるために、企画経営の合理化を速やかに断行いたしまして、また價格水準の安定を期するために、経済安定の総合施策を一層推進せなければならないわけであります。これらの政策を実行に移す場合には、いろいろの面で少なからざる摩擦も覚悟しなければならないと思います。しかし、これを踏み超えて前進するために、政府はあらゆる努力を惜しまぬ決心であります。
 今回の基金が設定せられましたことも、あるいは経済再建に対するわれわれ日本國民一致の懸命の努力が國際的に認められるに至つた結果であるということを、私は深く信ずるものであります。(拍手)私はこの機会におきまして、國民諸君とともに、天はみずから助くるものを助くるの信念のもとに、ますます不退轉の決意を新たにいたしまして、もつて連合國から寄せられましたる限りなき厚意と期待とをわれわれは十分に実績あらしめ、これにこたえることを固く誓いたいということを考えまして、ここにこの報告を終わりたいと思う次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
   第五 貿易再開許可に関し連合國最高司令官に対する感謝決議案(喜多滿治郎君外十二名提出)
   (委員会審査省略要求事件)
#5
○土井直作君 日程第五は、委員会の審査を省略することとし、この際日程の順序を変更して上程せられんことを望みます。
#6
○議長(松岡駒吉君) 土井君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は変更されました。
 日程第五、貿易再開許可に関し連合國最高司令官に対する感謝決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。喜多楢治郎君。
    〔喜多楢治郎君登壇〕
#8
○喜多楢治郎君 ただいま貿易再開許可に関し連合國最高司令官に対する感謝決議案が上程されましたので、提案者を代表いたしまして、提案の理由並びに趣旨を弁明いたしたいと存じます。
 まづ決議文を朗読いたします。
   貿易再開許可に関し連合國最高司令官に対する感謝決議
  連合國最高司令官の同情ある措置により、八月十五日を期して日本との民間國際商業関係の再開を許可されるに至り、多数の貿易使節の來朝せられることは、縮小再生産に惱むわが國として起死回生の朗報であり、國民と共にその厚意に対し感謝の念を禁じえない次第である。
  日本経済は終戰と共に狹小なる國土の上に乏しき資源と限られたる食糧とを以て國民の生存を維持しなければならないのであるから、海外貿易の発展により輸出を振い興し、必要なる食糧及び工業原料を輸入することが平和國家建設上最大の基礎條件である。
  固より輸出振興には幾多の困難なる障害はあるが、連合國最高司令官の厚意に應えるため、関係者は眞に渾身の努力を傾注しなければならない、と決意してゐる。
  ここに衆議院は特に院議を以つて連合國最高司令官に対し深甚なる感謝の意を表するものである。
  右決議する。
 私は、以上朗読いたしました決議案の趣旨を弁明するに先だちまして、ただいま片山首相から御報告がありました総額五億ドルに上る貿易借入金を許可されましたことは、旱天に慈雨を仰ぐような心持をもつて、ここに諸君とともに全國民を代表して深く感謝の意を表する次第であります。(拍手)連合國最高司令官が、わが國の経済危機について常に深甚なる同情を寄せられまして、次々と適切なる措置をとられつつありますことは、哀心より感激にたえないところであります。
 このたび、明八月十五日を期してわが國に対して貿易の再開を許可されましたことは、日本経済再建の基盤をなすものでありまして、また唯一の活路でもあるのであります。申すまでもなく、貿易再開とはいえ、商品及び労働の自由移動が許されたわけでもなく、かつまた爲替レートの決定が認められたわけでもありませんから、いわゆる自由貿易の再開ではないのであります。しかし、終戰後の管理貿易が、明八月十五日より自由貿易に一歩前進したことを意味するのであります。特に指摘いたさねばなりませんのは、遠路はるばる來朝されます貿易使節團と、直接に日本輸出工業関係の製造業者と接觸を許され、御指導、助言をいただくことができることであります。
 翻つて考えまするに、わが國は久しきにわたる無謀なる戰爭により、世界市場より完全にシヤツト・アウトされて、井の中の蛙のごとく、世界市場がいかなる商品を需要してゐるか、またいかなる品質のものが世界的規格であるか、あるいはまた世界市場におきまする相場がいかなる状態であるか、まつたく認識を欠くに至つた次第であります。たとえば、ナイロンの出現により需要の減退した生糸のごときは、その最も顯著な一例であります。われわれは、今こそ虚心坦懷に経済上の先進國の援助と指導とを得まして、世界の市場に乘り出さねばならぬのであります。この意味において、明八月十五日より始まる貿易再開の措置は、日本経済再建の成否を賭する重大なる機会と信ずるものであります。
 御承知のごとく日本経済は、敗戰の結果、荒廃したる狹少なる國土に溢れる人口を擁し、あまつさえ海外よりの引揚者、あるいは復員者等を加えまして、食糧の自給は絶望的であり、また各種産業復興用の原料資材も、長期の戰爭にしより消粍し盡され、かつ元來天然資源に乏しきため、まさに破滅的な危機に直面しておる実情であります。しかしながら、最高司令官の絶大なる御支援によりまして、海外食糧の大量輸入を仰ぎ、國民は餓死を免れ、また産業復興用その他緊要な原料資材をも輸入していただき、暗黒の前途に一縷の光明を見出したわけであります。
 これらの輸入を賄うものは当然輸出でありますが、遺憾ながら戰禍により各種の平和産業施設は徹底的な打撃をこうむり、現状のままの生産量をもつてしては、とうてい輸入を賄えず、現在までに約二億ドルのマイナスが残つておるのであります。國民の食糧を年年歳歳借金でやつていくことは、永続するものではありません。輸入したものは、当然輸出で支拂うべきであります。地理的、自然的條件が、食糧及び工業用各種原料資材を緊急にまた絶対的に必要とすればするほど、輸出工業振興のため、政府國民一團となつて努力を盡さなければなりません。
 輸出産業の不振には、幾多の原因があります。特に資材難がその最大なるものでありますが、われわれは貿易使節團によくこの実情を視察していただき、われの至らざるところ、われの及ばざるところに、百年の知己の情をもつて、温かき助言と懇切なる御指導、鞭撻を與えられんことを衷心冀求してやまない次第であります。
 申すまでもなく、平和的民主國家として再生する日本は、経済的には世界経済の一環として出発すべきであります。今回の貿易の再開によりまして、輸出振興が始まり、必要なる輸入ができまするならば、インフレ阻止に大きな役割が演ぜられ、未解決の爲替レートの問題も次第に解決されることと思ひます。かくして経済が安定し、講和條約締結の暁には、ブレトン・ウツズ協定に參加することも可能となるのでありまして、ここに日本は名実ともに世界國家の一員として認められることと相なります。
 しかしながら、それに到達するまでには幾多の難関が山積しておりまして、しかもそのいずれもが見透しのつかぬ障害に阻まれ、しかも、その解決のためには國民全体の努力の結集を必要とするのでありまして、決して拱手傍観を許さないのであります。敗戰國民として分に過ぎたる恩惠をいただきましたわれわれは、今この機会に一層新たなる奮起をもつて、國際平和と信義のため、ひいては日本再建のため、力の限りを盡し、着実に、たゆみなき忍耐と勤労とをもつて現下の難局を切り抜けねばなりません。道は開かれたのであります。ただ一筋にこの道を正しく強く進んでいくべきであります。
 ここに衆議院は、全國民を代表して、院議をもつて貿易再開を契機として民主的平和日本再建の固き決意を表明いたしますとともに、連合國最高司令官に対して深甚なる感謝の意を表し、今後とも一層の御援助と御同情をお願いして、本決議をいたそうと存ずる次第であります。何とぞ趣旨をおくみとりの上、滿場の御賛成をお願ひいたしたい次第であります。(拍手)
#9
○議長(松岡駒吉君) これより討論に入ります。林大作君。
    〔林大作君登壇〕
#10
○林大作君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題と相なりました民間貿易再開に関する決議案に賛成の意を表し、併せてこの際政府特に商工大臣に対しまして、國民の熱烈なる希望を申し上げ、有効適切なる処置を望むものであります。
 連合軍総司令部は、明八月十五日を期して、日本との民間國際産業関係の再開を許可せられまして、またただいま片山総理大臣の御発表に相なりましたことく、総額五億ドルに上る貿易借入金を許されました。また昨日の新聞紙上に報ずるところによりますと、日本の保有する金・銀・貴金属を外資借入金の担保に活用することを認められたのであります。これらの処置は、日本の経済封鎖を一部解除せられたる上に、ただいま仮死状態にありますところの、日本産業、特に輸出向産業に対しまして、再活動のスイッチを入れられたものでございまして、單に貿易関係業者のみならず、全國民に希望と幸福とをもたらすものでございまして、まことに感謝にたえない次第でございます。
 日本は、御承知のごとく國内資源がきわめて少く、國際貿易によらなければ飢餓に陷るほかはないのであります。この民族興亡の大問題に對しまして、今回の措置は緩和的のものにはすぎないのでございますが、將來平和條約締結の後、通常の径路による貿易が完全に回復するまでにおける最大最善の手段として、日本再建のための第一階梯を與えられましたことを、心より喜ぶものでございます。政府はこの際、この與えられたる絶好の機会を利用いたしまして、國民の完全雇傭実現の端緒をおつかみ願いたいと思うのであります。またどんどん低下して、その底を知らざるところの生活水準を、なるべく早い機会に防止すべく、あらゆる努力を拂うべきであると思うのであります。まことに日本の民族的危機は、まさにこの貿易以外には解消する途がないことをわれわれは銘記すべきであります。
 現今日本の物資状況ををもつていたしましては、たとい飢餓輸出を決行いたしましても、輸出貿易の振興はとうてい望みがたいものがあるのでございます。このときにあたりまして、今回與えられましたところの借入金の制度により、特に輸出向上生産品に必要なる原料物資の多種多量なる輸入を許可せられ、とにかく半休止状態にありますところの輸出向生産工場の再活動に始動を與え、もつて貿易再開の効果をして大ならしむるよう、政府は十分なる計画と熱意とをもつて実行に当られんことを望むものであります。この呼び水的な原材料の輸入が行われますと、次にはそれが輸出の原動力となります。その輸出がまた輸入を促進いたしまして、漸次正常なる國際貿易関係に近づき得ることを信ずるものであります。
 この絶好の機会を活用いたしまして、國内経済体制の再整備を強行し、通貨体制の確立をはかり、かつ管理貿易下の諸條件を滿たしつつ、わが國の産業を漸次拡大再生産の状態にもたらさなければならないと思うのであります。そうして將來ブレトン・ウツズ協定における國際通貸基金制度への加入、復興開発銀行よりの融資を仰ぐ等、世界経済の一環として世界貿易の環内へ参加しなければ、眞の日本経済の回復はできないのであります。政府はあらゆる努力を拂つてこれが準備をなし、目的実現に邁進せられんことを望むものであります。
 そもそも日本の貿易は、戰前にありましてはいわゆる財閥貿易でありまして、財閥及び財閥たらんとする商業資本家の独占場といたしまして、盛んに貿易を壟断いたしておつたのでございます。敗戰後におきましては、誤られたる自由経済の思想に禍いされまして、自由貿易が盛んに論議をされ、その結果として、御承知の通り大小八十余の輸出入貿易代行機関が簇出したのでございます。しかもこれらの代行機関、すなわち組合の首脳者の半数以上というものは、財閥もしくは間接に財閥に関係あるものでございまして、いわゆる実績主義によつて貿易量の割当を獲得いたさんとしておつたのであります。
 この輸出入組合の乱立と財閥化とにたまりかねてできましたものが、前議会を通過いたしました貿易公團法による貿易四公團の設立でありますが、せつかく新生いたしましたところのこの貿易の四つの公團の人的構成は、大体におきましては、前申し上げました八十余の組合を離合集散いたしまして、こね合わして同じものをつくつたのでございます。新しい袋に古い酒を盛つたものでございます。新しい組織には、その組織を生かし得るような人的構成を必要といたします。この際政府は、貿易再開に関する正しい國民的関心を振い起しまして、ただいま述べましたようないわゆる財閥貿易の弊を一擲して、國民貿易の眞義を発揮されんことを望むものであります。
 次に、日本國民生活の最低限度の輸入品を賄わんがためには、いかなる犠牲を拂つても、それに値するものを輸出し、その輸出の代價をもつて支拂わなければならないのであります。この最小限度の目的達成のためにも、國内の生産を助長し、生産物の國内消費をできるだけ抑制して、もつて余剩を出し、これを輸出に振り向けるところの眞心がなければならないのであります。これこそ、日本が現在直面いたしておりまするところの冷嚴なる現実でございます。しかるに、ややもすれば戰爭前に華やかであつたところの貿易業者や、いわゆる最近の貿易一旗組の連中が、この貿易再開を機会に、もとのごとく貿易による利益を独占せんとする傾向の見らるるのは、はなはだ遺憾とするところであります。(拍手)
 今回再開さるべき貿易におきましては、生産が販賣よりも重要であるということを申し上げたいのであります。政府といたしましては、生産利潤を商業利潤よりも大きく與えていかなければならないと思います。そうしてその生産の実績をあげるためには、生産に対する資材と資金の配分計画、及びその数量等について十分なる計画を立てると同時に、これが実際的実現化のために、あらゆる努力を傾到しなければならないと思うのであります。
 とにかく、現在までのいわゆる政府の貿易計画なるものは、計画の立て放しでございました。ところが今度は、その立て放しの計画だけでは、物資不足という現実の面の反映によりまして、とうていほんとうの成績はあがらないと思うのであります。終戰前の独善、命令的な貿易行政では、今後はとてもやつていかれないと思うのであります。
 これをたとえば、今度の仕組というものは、政府が中心となつて、日本という一つの生産工場を経営するのでございまして、資金と資材とを連合國に仰ぎつつ、合理的な経営をやらなければならない立場に立至つておると思います。從來のような無責任な貿易行政をもつていたしましては、労働者、経営者、資本家を一体とするところの生産関係者は、決して安心して生産にいそしむことはできないと思います。殊に國際貿易に必要なる先物契約に至りましては、とうてい今までのような状態をもつてしては契約の締結は不可能でございます。
 次に、貿易品の生産技術について申し上げたいと思います。戰前におきまして、世界市場における日本の商品の声價というものは、安かろう惡かろうという惡い評判をとつておりました。ところが、今度の再出発にあたりましては、この評判を取返して、今度の生れ変つた日本の貿易品というものは、世界の友邦の人々によい日用品を供給し、文明に貢献し得るような機械や、化学製品などを提供するところの、世界の進運に寄與し得る堅実なる國際商品をつくり出さなければならないと思います。戰爭中における技術の退歩も、なるべく早くこれを取返しまして、今度の日本の新しい商品はなるほどよいという評判をとることが、絶対に必要であります。こういう生れ変りをすることができて、初めて日本が敗戰をしたところの効果が現われまして、そこから世界の信用をかち得るに至ると思うのであります。戰前におきましても品質をけなされておりました日本商品が、戰爭中に退歩した今日、はたして世界の顧客にこたえ得るような商品が出るか否かについて、私は多分に疑問を懷き、この点、政府の格別の御努力を願いたいと思うのであります。
 また御承知の通り、今回の貿易運営の方式におきましては、貿易廳の支拂うところの輸出品の代價は、原則といたしまして日本公定價格であります。海外の市場とは一應無関係でございます。從つて、公定價格によつて國内産品の支拂いが行われる以上は、商賣上の掛引によるところの利潤の大小を左右する範囲はきわめて限られたものでございます。なおかつ原料のまま輸出する場合におきましては、日本にとりましてマージンが非常に少うございます。どうしても今後の貿易は、原料品よりも半製品に、半製品よりも完成品の輸出に全力を注ぎまして、日本にとつてのマージンを拡大することに全力を注がなければならないのであります。その意味において、今後の貿易は、商賣本位よりも技術の進歩に重点をおいていただきたいと思うのであります。
 以上の諸政策を実行するためには、関係官廳、特に貿易公團の徹底的民主化をおはかり願いたいと思うのであります。特に貿易の実施をやる場合には、貿易という実務官廳及び貿易公團のごときものは、行政というよりも、むしろビジネスそのものが仕事の実体でございます。そのために、ビジネスのできる新しい経済人を、これらの要所に活用されまして、仕事をてきぱきと方づけていくということが絶対に必要であると思うのであります。
 貿易の実務において、二十四時間主義がアメリカにおいて実行されておるようでありますが、この仕事のスピードを要するときに、相変らず何でも抱えこんで、なかなか即断をしないところの官僚の通弊を発揮するようなことに相なりましたならば、ビジネスの停滯はもちろん、ひいては官僚腐敗の根本原因ともなるのでございまして、この、ビジネスライクな新しい経済人の登庸こそは、今度の貿易再開に実を結ばしむるか否かのかぎであると思うのであります。
 しかるに、政府のこの方面に対する今日までの処置は緩慢にして、はたして貿易再開という大責任を果すべき態勢を推進すべき状態にありとは断じがたいと思うのであります。政府はよろしく國民の創意とくふうとを結集せもられ、せつかく與えられました貿易再開という連合軍総司令部の好意を日本國民のため結実せしむべく、構想を新たにしたる改革と、これが実現のためには、この際惜しまざる努力を傾倒されんことを熱望してやまない次第であります。
#11
○議長(松岡駒吉君) これにて、討論は終結いたしました。
 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
 この際商工大臣より発言を求められております。これを許します。商工大臣水谷長三郎君。
    〔國務大臣水谷長三郎君登壇〕
#13
○國務大臣(水谷長三郎君) ポツダム宣言受諾滿二箇年目の今日にあたりまして、この第一回國会におきまして、明日を期して許可せられることになりました民間貿易再開に関する連合軍最高司令官の好意に対しまして感謝の決議をせられましたことは、貿易を主管いたしまする商工大臣といたしましても、まことに感激おく能わざるものがございます。この機会におきまして、いささか貿易再開についての所信を申し述べたいと存じます。
 元來わが國の経済事情は、高度の貿易依存性を示しておりますが、終戰後は一層貿易に依存する度合を増してまいりまして、今日までの滿二箇年間におきましては、たびたび政府の発表いたしました統計等ですでに御承知の通り、たとえば食糧につきましても、米國よりの輸入食糧によつて、昨年もその危機を切抜け、本年の食糧危機も解決されようとしておるほどであります。その他綿花等の輸出品原材料の輸入から、さらに本年にはいりましては、銑鉄、製鋼用重油等の生産再開用基礎資材の輸入も始まつておる次第でありまして、このような輸入物資の種類と数量の増大に関しての連合軍総司令部の好意ある取扱いには、われわれ國民として哀心より感謝にたえない次第であります。
 しかるに、この輸入の見返りである輸出はどうかと申し上げまするに、戰前における輸出の大宗でありました生糸の賣行きがまことにはかばかしくなく、國産輸出品である茶も、今年度は必ずしも好調とは申せない状態であります。本年に入りましては、米綿による製品が三十数箇國へ輸出される状態で、今後の発展を期待しておる次第でありまするが、なおかつ今日までに相当額の入超を示しており、殊に米國よりの入超額が多いという状態であります。一方國内の事情といたしましては、一日も早く生産を振興せねばならず、そのための資材の輸入もまた急を要するものがあります。從つてわが國といたしましては、相当内需を切り詰めても輸出に努めまして、必要物資の早急な輸入を実現せねばならぬところであります。
 日本品の輸出振興につきましては、從來とも司令部におかれては種々盡力せられておりまするが、貿易というものは、やはり賣手と買手とが直接意思の疏通をはかることが必要でございまして、ましてわが國のように長年海外市場から隔離されており、最近の世界における需給状態や、流行の変遷等がまつたくわからなくなつておる場合には、このことが特に必要なのでございます。
 司令部におかれても、この点をよく認識されまして、本年一月二日、商業通信の制限を一部解除され、さらに今般諸外國から四百人の貿易代表團を迎えまして、直接商談を行うことを許可されましたことは、まことに喜ばしいことでございまして、この結果わが國輸出関係者といたしましては、外國市場の状況、流行、意匠の変遷等がはつきりわかりまして、何をどのようにつくり、どこへ向ければ一番よく賣れるかという見当がつくわけでございまして、從つてこれを機会に相当の輸出増加を期待することができると存じております。政府といたしましても、先般発表の経済緊急対策に引続きまして、輸出振興対策の具体化に努力しておりまするが、経済界全般におかれましても、この際特に生産諸條件を整え、價格体系のでこぼこを是正して、爲替相場の決定と、眞の意味の世界貿易参加への準備期間たらしめるように努められたいのでございます。
 さらに貿易関係業者の方々に対しましては、今般の貿易再開が日本人及び日本商品の眞價を世界に拡める絶好の機会であることを十分認識せられまして、海外貿易代表團を迎えるにあたりましては、いたずらに競爭し合うことなく、品位と誠意をもつて接し、良質かつ誠実のこもつた輸出品を提供して、この際わが國商品の高い声價を示す礎を築いていただきたいのでございます。以上、簡單に御挨拶申し上げます。
    〔拍手〕
     ――――◇―――――
   第一 皇室経済施行法案(内閣提出)の審査に付託するため特別委員会設置の件
#14
○議長(松岡駒吉君) 日程第一、皇室経済法施行法案の審査を付託するため特別委員会設置の件を議題といたします。
#15
○土井直作君 本案の審査については特別委員会を設置することとし、その員数は二十名とされんことを望みます。
#16
○議長(松岡駒吉君) 土井君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 委員は追つて公報をもつて指名いたします。
     ――――◇―――――
   第二 日本國憲法第八條の規定による議決案(内閣提出)の審査を付託するため特別委員会設置の件
#18
○議長(松岡駒吉君) 日程第二、日本國憲法八條の規定による議決案の審査を付託するため特脚委員会設置の件を議題といたします。
#19
○土井直作君 本案は前の内閣提出、皇室経済法施行法案特別委員会に併せ付託されんことを望みます。
#20
○議長(松岡駒吉君) 土井君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
     ――――◇―――――
   第三 石炭増産感謝決議案(浅沼稻次郎君外十三名提出)
   (委員会審査省略要求事件)
#22
○議長(松岡駒吉君) 日程第三は、提出者より委員会の審査省略の申出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#23
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。
 日程第三、石炭増産感謝決議案を議題といたします、提出者の趣旨弁明を許します。長尾達生君。
    〔長尾達生君登壇〕
#24
○長尾達生君 ただいま議題となりました各派共同提案にかかる石炭増産感謝決議案の趣旨弁明を簡単にいたします。
 昭和二十二年度最低絶対必要量といたしまして、三千万トンの石炭生産を確保することは、わが國経済再建の成否を決するかぎであつて、これが達成こそは全國民のひとしく熱望するところであります。炭鉱経営者及び炭鉱労務者によつて組織されておる石炭復興会議では、右の事情を自認せられ、去る六月二十一日の本会議において、われわれこそは日本経済再建の母たらんと深く期せられるところあり、政府または諸團体の援助をまたず、自主的に七月―九月の三箇月間にわたる救國増産運動の展開を決議せられておるのであります。
 爾來労資一体の奮迅の努力を傾倒せられて、着々石炭増産の成案をあげられ、去る七月中には、年間三千万トン出炭を基準といたしまする月間予定量、すなわち二百二十一万トンに対し、六月下旬における北海道の大火災並びに九州の水害にもかかわらず、実に二百二十二万八百トン、すなわち予定の百パーセントより以上の出炭の好成績を收められましたことは、困難なる経済の途上に第一礎石を打ち建てられたものとして、邦家のためにまことに感謝おく能はざるところであります。
 ここに本院は、日夜精進を続けられつつある炭鉱労働者並びに経営者に深甚の謝意を表するとともに、今後予想せられるべきあらゆる困難を克服し、わが國経済再建の基礎を確立されんことを祈る次第であります。以上。(拍手)
#25
○議長(松岡駒吉君) これより討論に入ります。岡田春夫君。
    〔岡田春夫君登壇〕
#26
○岡田春夫君 ただいま民主党の長尾君から御提案がございました決議案に対しまして、社会党を代表いたしまして賛成を申し上げたいと思います。
 日本の再建に與えられました現在唯一の機会といたしまして、三千万トンの石炭の生産というものは、日本経済再建の最低の要件であると同時に、絶対的に確保しなければならない條件であります。敗戰以來未だかつて生産の目標を突破いたしたことがないこのときにおきまして、例年減産の時期でありまする七月において、驚異的なる一〇〇・五%の増産を達成いたしましたことは、傾斜生産によつて國民があらゆる犠牲を忍びまして、そうしてこの石炭の増産に期待をいたしておりますときであるだけに、荒れはてた坑内におきまして全力をあげて働いておられまする労務者諸君を初めといたしまして、現場の從業者諸君の血みどろの努力の結果である、かように感じまして、私は哀心より感謝いたす次第であります。(拍手)
 過去十数年におきまして、この戰爭のもとにおきましては、まつたく坑内の坑道、切羽は荒廃の極に達しております。機械はすでに運轉し得るものはほとんどない状態であり、また炭車の修理を要するものは、その大半を占むるという状態であります。このもとにおいて、ただいま申し上げたように、労働者の諸君はぼろぼろの作業服を着て、機械の代り、みずからの手とみずからの力をもつて、全力をあげて闘つておるのであります。
 從來新聞紙上におきましては、とかく炭鉱の労働者の諸君が働かないということを盛んに傳えられておる。巷間においても、かような言辞をわれわれ聞くのでありますが、この実例といたしまして、北海道の炭鉱労働者は、大体拘束八時間のうちで実働わずかに五時間である。かようなことをわれわれ聞くのであります。このことにつきまして、われわれ見まするならば、かような実働時間五時間ということは、一面を見て全体を見ざるところの言であるとわれわれは考えておる。
 札幌地方商工局の調査によりますれば、本年の三月において、実働時間は確かに五時間十三分である。しかるに、拘束八時間のうちで二時間半というものがいかに浪費されておるかということを、もと具体的に調べてみまするならば、この二時間数十分の浪費されましたところの時間というものは、ほとんど坑内の機械が修理困難なるために、時間が空費されておるという実情である。第一に、人車が壞れて坑内の現場まで歩いて往復しなければならないために、一時間の時間を使つておる。機械が故障のために、三十一分の時開を使つておる。このような一つ一つの例を見ましても、これは單に労働者諸君が働かないために五時間十三分の実働時間であるのではなく、これは坑内の機械が整備されておらないという結果であります。(拍手)
 かくのごとき惡條件のもとにおいて、去る七月におきましては、一人当り生産量五・二トンの増産をいたし、また稼働日数におきましても、八八%という戰爭以來まれに見る好成績をあげているのであります。この間におきまして、皆樣新聞で御承知の通りに、北海道のあの上砂川においては、スタハノフ突撃隊をみずから編成して増産運動をやりました労務者の諸君がいる。このスタハノフ突撃運動を編成しました諸君は、從來の労務者の生産能率の九倍七分の生産をあげ、六月二十七日におきましては、驚くなかれ日産八十トンの増産をいたしております。これは一九三五年の六月にソヴイエトのスタハノフが増産をいたしました百二トンには達しませんが、それに近いところの八十トンの増産をいたしておるのであります。
 この事例をごらんになりましても、あるいはまた九州の西戸崎において、水没のために月産一万トンの山がわずかに三分の一の減産になつたとき、この水没箇所の修復のために労働組合自身がまず起ち上つて、二千五百万円の資金の調達を受けるという、みずから闘いとつた実例もある。あるいはまた北海道の井華奔別鉱業所におきましては、不幸五月十六日に大火災を起しまして、鉱業所の大半は火災のために燒失いたしたのでありますが、この大火災にあたりまして、労資一対となりまして、奔別鉱業所においては、來年春出炭をいたすべき予定を切り詰めまして、本年の十一月から出炭するところの計画というものが、すでに着々進んでおるという実情をお考え願いましたときに、いかに惡條件のもとにおいて、現場の労務者を初めとするところの現場の関係者が眞劍に日本の再建を思つて起ち上つておるかということを、皆樣お考えを願いたいと思うのであります。(拍手)
 しかし、かような努力に対しても、先ほどから申し上げておりまする通りに、あらゆる惡條件のもとにおいて行われております。從いまして、この惡條件のもとにおいて行われておる努力が、数々の災害の勃発となり、犠牲者の発生となつて現われておることは、きわめて遺憾な事実であります。一例をあげて申しまするならば、終戰の昭和二十年、日本全國で一万六千二百回の災害を起しておりまするが、昭和二十一年、昨年の上期だけで、二万九千百回に災害の回数は殖えております。あるいはまた、この災害によつて負傷あるいは死亡いたしました哀れなる犠牲者は、百万トン当りの実数を申し上げますならば、昭和二十年の上期において六百九十五名、下期において七百七十名、かような実数でありましたが、昭和二十一年の上期に至りますると、その四倍に達しまする三千百名に達しておるのであります。かかる実例を見ましても、いかにこの増産の陰には氣の毒なる犠牲者というものがあるかという事実がわかるのである。われわれ民族の復興のために、生産の目標が突破せられたことに対して滿腔の感謝の意を捧ぐるとともに、この増産のために犠牲となられたところのこれらの人々に対して、深甚なる敬意を拂わなければならないと思うのであります。(拍手)
 現在の段階において、この増産というものは、私の考えをもつてするならば、これは一種の竹やり運動であります。かつてわれわれは、新鋭空の要塞のもとにおきまして、竹やりと突破器をもつて防衛することを強制されました。現在炭鉱においては、生産に急なるのあまり、機械ではなくて人力で、炭車ではなくて馬力の運搬によつて、作業衣もなく、地下足袋もない、裸の増産運動が行われておるのであります。現在の増産は一種の竹やりであつて、これは最高の限度である。これ以外に、恒久的に増産するには、何らかの徹底的な態度、政策というものが行われなければならない。坑内の機械を整備するとともに、あらゆる増産態勢というものを、政府が思いきつた方策をもつて行わなければならないのであります。
 特にこの際私は商工大臣にお願いしたいと思いますが、過般――七月の十五日であります。閣議の了解事項として――先ほど長尾君から御提案の説明の中にありました、自主的な増産運動に應じまして、政府は七月十五日に炭鉱労働者災害補償特別措置というものを、閣議の了解事項として決定をされております。これは労災法実施まで、この増産運動の期間において、労災法に代つてこの特別措置を行おうというのであります。ところが、この了解事項が未だ具体的な措置として決定をされておりません。商工大臣が閣議の了解事項として一應お話になつたのだそうでありますが、事務当局においては、その予算化に行き詰まつて、未だに正式な決定を得ておらないのであります。六千万円のこの金額が、先ほどから申し上げておりまする、血みどろに働く人々に対しての費用として、それほどむずかしいものであらうかどうか。この点は、徹底的に迅速に官僚当局を鞭撻いたしまして、早く行われんことを切にお願いを申し上げます。(拍手)
 それからもう一つは、勤労所得税の抜本的な解決であります。この問題につきましても、現在現場で一番危険な作業をやつておるのは採炭夫でありまあす。この採炭夫は、本年の春の基準で申しまするならば、最高八千円から三千円までの收入を得ております。ところがこの採炭夫に対しまして、平均五千円の收入を得た場合においては、現在の勤労所得税によりまするならば、課税の対象として、その半額を税金として納付しなければならないということであります。これがいかに勤労意欲を阻害しておるかということは、過般常磐あるいは北海道に親しく現地を見られましたところの商工大臣は、十分御承知のはずであります。この点につきましても、率直果敢に徹底的なる改革を願われたいと思うのであります。
 要するにわれわれは、この画期的なる増産に対して、一片の感謝決議やあるいは一片の拍手をもつて感謝の意を現わすということだけでは満足するものではない。(拍手)この感謝に対するに、政府のあらゆる施策を断行することによつて、そうして労働者に対して生活の安定と、働く人々の増産意欲の高揚を期することを切にお願い申し上げまして、賛成の言葉に代える次第であります。(拍手)
#27
○議長(松岡駒吉君) 淵上房太郎君。
    〔淵上房太郎君登壇〕
#28
○淵上房太郎君 本年度石炭三千万トンの出炭を確保いたしますことが、日本経済再建の欠くべからざる要件であることは、いまさら申し上げるまでもないのでありまするが、炭鉱は戰時中の濫掘のために、なお今日荒廃しております。そのほか資金、資材、食糧、労務、輸送、いろいろの面におきまして、生産上の隘路があるのであります。しかして本年度にはいりましても、四月から六月までは、なかなか目標の通りに出炭ができなかつた。
 しかるに、先ほどもお話がありましたように、石炭復興会議におきましては、去る六月二十一日に自主的に増産の決議をされたのでありまして、七月にはいりましてからは、眞に救國増産の旺盛なる熱意を結集したる一大増産運動を展開されたのであります。しかして第一月の七月は、まことに成績がよく、初めて目標を突破したのであります。第二月目の本月にはいりましても、上旬の十日間の成績は、山口地区におきましては一〇六・七%、九州地区におきましては、実に一〇八・五%という優秀な成績をあげつつあるのでありまして、私は、現在石炭生産上に幾多の惡條件があるにもかかわらず、この惡條件下におきまして、炭鉱從事者諸君がきわめて救國的の熱意を傾倒して奮闘せられたるこの労苦、熱誠に対しましては、まことに感謝にたえないところであります。
 ただいま上程せられております感謝決議案に対しまして、私は日本自由党を代表いたしまして心から賛意を表しますとともに、炭鉱從事者の諸君がこの後ますます國家のために健闘せられんことをお祈りしてやまないのであります。(拍手)
#29
○議長(松岡駒吉君) 谷口武雄君。
    〔谷口武雄君登壇〕
#30
○谷口武雄君 私は、ただいま上程になりました石炭増産感謝決議案に対し、國民協同党を代表いたしまして賛意を表したいと思います。
 終戰後極度に萎縮疲弊いたしました産業生産をいかにして復興するかは、わが國経済の直面せる焦眉の重大問題であります。しかして石炭の増産こそは、実にこれが前提條件をなすものでありまして、現下の経済施策の中心をなしているものであります。申すまでもなく、石炭の増産なくして、肥料の増産も、鉄鋼の増産も、繊維製品の増産も、あるいはまた輸送の増強も、電力の増強も、はかることができないのであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 御承知の通り、昨年の出炭量は二千二百四十六万トンでありましたが、今年度はぜひとも三千万トンの出炭を確保するにあらざれば、重要産業を復興し、惡性インフレを克服し、もつて経済の惡循環を断ち切ることができないのであります。從つて、これが達成こそは全國民ひとしく熱望するところであり、全國民の期待はかかつて炭鉱人諸君の上に向けられているのでありますが、このときにあたりまして、炭鉱労務者並びに炭鉱経営者諸君によつて組織されました石炭復興会議において、自主的に七月より九月までの三ヶ月間にわたり救國増産運動なるものが展開せられまして、俄然七月の出炭量は、その予定量の二百二十一万トンに対し二百二十二万八百トン、すなわち一〇〇・五%の好成績をあげられたのでありまして、この好結果ををわれわれは知りまして、低迷せる暗雲が一時に晴れたような喜びを禁じ得ないのであります。ここに炭鉱労務者並びに炭鉱経営者諸君に対しまして、衷心より感謝の意を表する次第でございます。
 だが、かかる好成績をあげられました炭鉱人諸君の御努力に対しまして、われわれはただ一片の感謝であつてはならないと思うのであります。私は鉱工業常任委員の一人として、さきに北海道の炭鉱を視察してまいりました。東幌内炭鉱を振出しに、三菱美唄以下本別、三井砂川、三井芦別等の炭鉱を見てまいつたのでありますが、炭鉱には幾多の隘路がありまして、増産を阻んでおるのであります。すなわち資金難、資材難、食糧特に副食物の不足、保安設備の不備、機械の老朽化等によつて、この増産を阻んでおるのであります。これはひとり北海道の炭鉱のみではありません。常磐地区、山口、九州地区の炭鉱も同樣であります。
 このような惡條件のもとにおいて、炭鉱労務者、炭鉱経営者打つて一丸となつて、今年度の出炭予定量の三千万トンは何が何でも出炭しなければならないと、固い決意のもとに、これらの幾多の惡條件を踏み越えて、救國の努力を続けられておるものでありまして、その労苦たるや、まことになみなみならぬものがあるのであります。この労苦に報いるために、われわれは國会を通じて、この隘路打開のために積極的に協力しなければならないと存ずる次第であります。かようにして、初めてわれわれの感謝の心が炭鉱人の諸君に通じまして、さらに一段と増産に励んでいただくことができると信ずるのでございます。
 終りに、一言希望を附け加えたいと思います。それは、量の増産はもちろんでありますが、これと同時に質の増産をはからなければならないということであります(炭質の良し惡しによる、すなわちカロリーの大小による石炭消費量の結果はどのようなことになるか。一例を申し上げてみますならば、かつて運輸省が水戸、土浦間の列車運轉において実験されたところによると、五千八百カロリーの石炭を使用した場合には、その消費量は一トン二百キロでよかつたものが、この石炭より千五百カロリー少い四千三百カロリーの石炭を使用したところ、その消費量は二・六倍の三トン百キロという多量の石炭を要したということであります。この一例より見ましても、いかに質の増産が必要であるかがうかがわれるのであります。從いまして私は、量と質と相伴つた増産をせられますよう希望いたしまして、本決議案に賛成するものでございます。(拍手)
#31
○副議長(田中萬逸君) 林百郎君。
    〔林百郎君登壇〕
#32
○林百郎君 私は本日上程の石炭増産決議案に対しまして、小会派を代表し、日本共産党の立場から賛意を表したいと思うのであります。
 まず日本共産党としましては、この感謝が單に言葉の上のみの感謝であつてはならないということであります。すなわち、感謝するばかりが能ではなくて、本院の名誉にかけても、たまには感謝されるような具体的ないい政策を決定して、この感謝を裏づけるような努力をしなければならないと思うのであります。
 そこで、まず第一に何をなすべきかと申しますと、炭鉱労働者に対する労働條件の改善により、生産力の根本である労働力の確保に努力するということであります。最近の炭鉱労務者の生活の実情は、すなわち平均賃金手取り、坑内で千九百六十六円、坑外で千三百三十九円の低賃金であります。しかも、食糧は主食が二十日から五十日にわたる遅配、欠配のために、ほとんど生死の境を彷徨しておるのであります。このままの状態では、とうていこの増産が維持継続されるということは不可能だと思うのであります。
 この主食不足の埋合せのために、炭鉱労務者がどういうことをいたしておるかと申しますと、家庭菜園の開墾等に努力しておるのでありますが、これがまた夜間の八時ごろまで畑に出て働かなければならないのであります。從つて、この肉体的な負担の加重は、ますます増産の隘路になつておるのであります。一方、この家庭の婦女子はどうするかというと、これは足尾銅山の例でありますが、三里も五里もの山奥に山草を求めさ迷い、ときには霧に巻かれて死んでしまつたという例すらあるのであります。炭鉱は実情の調査によれば、蛋白質の食糧は極度に不足しており、極端な草食のために、胃腸病とか、蛔虫患者が激増しておるのであります。家の中の質ぐさはすでに出し盡されており、身にまとう衣類は実に見るにたえない惨状なのであります。
 しかも、かかる炭鉱労働者が七年も八年も坑内に労働を続けておりますと待ち受けておる運命は何かというと、肺臓内に吸收された炭紛のために肺病患による死か、あるいは坑内設備の腐朽や落盤のために、あるいは爆破作業のための廃疾者の運命なのであります。
 こうした炭鉱労務者の状態に比べて、一方経営者の側について見ますと、表面はとにかく生産價格の赤字を強調するのでありますが、あるいはやみ賣りにより厖大な利益を得る場合もあるし、あるいは價格差補給金や、新物價体系により三倍に近い公定價格の値上げによつて、十分の利潤を受けておることは間違いないのであります。しかも石炭業の八〇%は、三井、三菱、住友その他合計十に足らなや大資本家の独占に属しておるのであります。だから、こうした鉱夫の決死の労苦の賜というものは、多くはこれらの大資本家のふところにはいることは明らかであります。もし企業が全然成り立たない、経営者の言うがごとく赤字の継続であるというならば、このたびの微温的な石炭國家管理法案に対してすら、あのような想像もつかないところの厖大な費用を費して必死の反対をするはずは断じてないと思うのであります。
 すなわち、われわれが感謝し、具体的に保護政策をもつて報いなければならないのは、一部独占資本家に対してではなくして、一切の自己の肉体を犠牲にして、死の運命にすら甘んじ、またわずかに持てる家財道具をすら賣り拂つて、奴隷的な労働状態を強いられておるところの、石炭増産の基礎である炭鉱労務者に対してこそなさるべきであるということは、言うまでもないと思うのであります。
 次にわれわれが考えたいことは、この石炭の増産を單に線香花火的な結果に終らせないように、さらにわれわれは國家の要請に基いて、三千万トン以上の生産をあげるために、次のような政策をただちに断行することを政府に要求するのであります。
 すなわち第一には、労務者に対する生活を保証する最低賃金制の確立と、生活必需品の公定價格による完全の配給、第二には、坑内設備の徹底的な改善と鉱区の徹底的な整理統合、第三には、資金と資材、輸送、配給の隘路の徹底的な打開、第四には、炭鉱行政の官僚統制の排除、第五には、独占的炭鉱資本家の生産サボタージユの排除と、石炭のやみ流しを嚴罰にすること、最後に、石炭財閥の利潤に対する嚴重な制限、こうした諸政策の強力な実行を必要とするのであります。
 しこうして、この政策を強力に実行するためには、生産力の発展を阻害して、むしろこれを破壞すらしておるところの利潤の追求を目的とする石炭業の資本主義的な、私的な経営を排除して、石炭業の國有を前提とする社会主義的な國営人民管理以外には絶対にないということを断言することができるのであります。すなわち炭鉱労務者、炭鉱経営技術者、関連産業のそれらを加えた民主的な代表者によつて運営される國営人民管理なくしては、この荒廃した石炭業の復興は断じて行えないと思うのであります。
 本決議案の中に、石炭増産が石炭復興会議によつて、政府または諸團体の援助をまたずして自主的になされたという字句があるのであります。私はこの趣旨が何を意味するかということについて、特に注意しなければならないと思うのであります。すなわち、政府または諸團体の援助がなくしても計画量は生産できるのだから、あえて國管は必要でないというような政治的な意味をもつとすれば、これはゆゆしい事柄だと思うのであります。われわれは、この一時的な増産が、結局國管という声におびえたところの業者の一時的な努力であるとも思われるし、場合によつては、政府または諸團体の援助があれば、なお一層の増産ができたということを意味しておると思うのであります。すなわちわれわれは、あくまで石炭業の國営人民管理を主張して、石炭労務者に対する、生命を賭しての超人的な努力に対する深甚なる謝意を表する意味においてのみ、本石炭増産決議案に対して賛意を表するものであります。
#33
○副議長(田中萬逸君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#34
○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
 この際商工大臣より発言を求められております。これを許します。商工大臣水谷長三郎君。
    〔國務大臣水谷長三郎君登壇〕
#35
○國務大臣(水谷長三郎君) ただいま、七月の全國石炭の生産実績が、本年にはいつて初めて計画量を突破いたしましたことに対しまして、衆議院の院議をもつて感謝の決議をせられましたことは、政府といたしましてまことに感激にたえない次第であります。
 本年度三千万トンの石炭を確保いたしますことは、わが國産業再建のかぎであり、いかにしてもこれを実現せねばならない今日の最重要時であります。しかるに、四月以降の出炭の成績は、各月予定に達せず、四月、五月、六月の間に約四十万トンの計画割れを來しまして、前途まことに憂慮にたえない状況にあつたのでありますが、炭鉱経営者、從業員各位は、この事実に直面されて奮起一番、七月、八月、九月の間にこれを回復するように増産運動を決議されまして、実行にはいられ、その結果、七月においてみごとに計画目標を達成せられたのであります。暑熱きびしく、かつ農繁期に直面いたしまして、生産條件の思わしからざる時期におきまして、この成績を示されましたことは、関係者各位の御努力の結果にほかならないのでありまして、政府といたしましても、まことに感謝にたえないところでございます。
 三千万トン達成の途は、月を追うて困難を加えることと存じますし、石炭の生産に関係せられる各位の御苦労は、またこれに伴うて増大するものと存じますが、石炭増産の重要なる意義を十分理解されまして、労資一体となつて、まず七月、八月、九月の計画を突破するとともに、是が非でも三千万トン計画の完全なる遂行を希望してやまない次第でございまするが、他方政府といたしましても、また一般國民におかれましても、炭鉱関係者のこの熱意にこたえるために、いかに苦しかろうとも、資材、資金、生活物資等炭鉱の要望するものを、できる限り多量にかつ迅速に送つて、この面からして、せつかく軌道に乘つてきた増産が再び阻害されることのないように、また國家再建の基礎が一日も早く成就するように、十分に努力をいたしたいと存ずる次第であります。
 終りに、岡田春夫君が指摘されました二点につきまして、勤労所得税の問題に関しましては、私より具体的にお答えしない方がいいのでございますが、政府がさきに千八百円ベースを発表いたしましたときに、七百五十円のはね返しは、配給物資の確保と勤労所得税の軽減によつてこれを賄つていくということを声明いたしましたことは、すでに御承知の通りであろうと思います。さらにまたもう一つ、特に七月、八月、九月の増産期間において一番大きな問題でありますところの七月十五日の閣議了解事項、これは私の記憶にして誤りなければ、決定事項であると信じておるのでございまするが、これは今岡田君が指摘されました通り、政府といたしましても鋭意結論を急いでおりまして、つい最近におきまして、この問題に関する具体的な結論をば天下に発表することができる、さよう御了承願いたいと存じます。(拍手)
     ――――◇―――――
   水害頻発に鑑み治山治水に関する緊急質問(井出一太郎君提出)
#36
○土井直作君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、井出一太郎君提出、水害頻発に鑑み治山治水に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
#37
○副議長(田中萬逸君) 土井君の動議に御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#38
○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 水害頻発に鑑み治山治水に関する緊急質問を許可いたします。提出者井出一太郎君。
    〔井出一太郎君登壇〕
#39
○井出一太郎君 私は、國民協同党を代表いたしまして、最近各地に頻発いたしまする水害に鑑みまして、治山治水の問題について関係各大臣に緊急質問をいたしたいと存ずるものでございます。総理に対しても質問の通告をいたしておきましたが、お差支えがございますそうで、主として内務大臣、大藏大臣並びに農林大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。
 わが國の國土が、いわゆる東亞のモンスーン地帶に位しており、多分の雨量を伴つた季節風に絶えずさらされております上に、地勢が高峻でありますから、水害が年々頻発いたしますことは、申すまでもないのでございます。しかしながら、最近の事例を見ますのに、降水量の割合に非常に出水の量が多い。しかも、その速度が速い。この現象は、戰爭中におけるところの山林の濫伐、過伐に基くことが重大原因であろうかと思うのでございますが、過般東北地方並びに近畿地方に起りました水害において、東北方面を視察せられました本院の代表派遣の方々の御報告に徴しましても、同樣のことが指摘せられておるのでございます。颱風の時期は、これから後に本格的に相なつてまいりますので、今にして抜本塞源的なる対策を講じませんと、その災害の結果は非常に憂慮すべきものがあろうかと思うのであります。先頃発表せられました経済白書の中にも、この点はすでに指摘をせられておるのでありますが、いわゆる國土荒廃、國破れて山河ありという言葉が、かえつて山河破れて國危うし、こういうような段階になるやを私は非常に憂慮いたしております。
 さような意味合から、まず最初内務大臣にお尋ねをいたしたいことは、今回東北並びに近畿諸地方に起りました水害の被害の輪郭をお示しを願いたい。去る十二日に、これが救済対策の閣議決定があつたようでありますが、この対策を打ち立てます以上、すでに主管内務省におかれましては相当の資料がお揃いになつておろうかと思うのであります。
 またその被害にあたりましては、今われわれに十分関心を持たせております食糧の問題に対しまして、この水害によるマイナス面がおおよそどれくらいあつたか、これを平野農林大臣からお示しをいただきたいと思うのであります。
 かくいたしまして、この損害の実相、そういつたものは、あるいは追つて数字その他は書面をもつてお示しをいただけるものと思いますが、ともかくこの輪郭をお示し願つた上に、これに対する対策を同時にお示しを願いたいのであります。これにつきましては、今罹災地におきましては、天を仰いで長大息しておる罹災民各位が、非常な熱願をもつて政府に期待しておるのでありますから、本來ならば総理大臣のお口から力強い激励の言葉を今日いただきたいのでありまえすが、何とぞ主管大臣の木村内務大臣から願いたいと思うのであります。
 また去る閣議決定において、緊急対策につきまして特別融資が二億三千六百万円でありますか計上されたようであります。この融資は、一体いかなる機関を経て、いかなる條件のもとに貸出されるのか。ことは非常に緊急を要すると思うのでありますが、これに対しまして大藏大臣の御意見を伺いたい。またさらにこの問題を、かような融資というふうなものだけに止めずして、もつと竿頭一歩を進めて、國家の財政支出をこれに繰出す御意思をもつておるかどうか。いたずらに政府の財政を――これは健全財政というお立場は、その御苦心のほどはわかるのでありますけれども、政府財政を引締めたからと申しまして、これはやがては地方の財政へ響いていく、かような意味合いから、國民経済の循環性を考えますときに、これはやはり政府の支出というものを、この際相当にしていただきまして、中途半端な災害の復旧でなく、根本的にこれをいたしたい。何となれば、たとえば砂防工事にいたしましても、護岸工事にいたしましても、あるいは河床の引下げ工事にいたしましても、これを中途半端なものに放置しておきましたのでは、やがてこれは災害を再生産することに相なります。それはちようど賽の河原に石を積む愚を冒すにひとしいことになるのでありまして、この際大藏省は思い切つてこの方面へ支出をお願いしたいと思います。
 さらにお伺いすることを一点落しましたが、それは内務省の廃止がもはや既定の事実になつておるのでありますが、この災害というふうな問題を、今後一体主務省としてどこが主管するのか。國土局というふうなものになるのか。建設院というふうなものになるのか。こういうふうな点、大臣といたしましては後顧の憂いのないように、この際明確にしておいていただきたい。
 さらに進んで農林大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、この出水の原因が植伐のアンバランスにある、伐採する林木の量が、成長する林木の量より一層多い、こういうところに問題があろうと思うのであります。われわれは、戰爭中に引続いて今後といえども、たとえば復興建設資材、あるいは賠償梱包資材、枕木、坑木、パルプ資材、薪炭材等々、幾多の木材需要がわれわれの上に被さつておることを知らねばならぬと思うのであります。從いまして、これに対して造林の方ははたしてどうであるか。殊に戰爭中濫過伐のはなはだしかつた民有林においては、ほとんど造林意欲が減退しきつておる。この現状では、前途が私は非常に憂慮にたえないのであります。
 そこで、この民有林の造林意欲が減退しておるその一つの理由として、これはいろいろありましようけれども、巷間流布されておる、たとえば山林は國有になるのである、國家管理になるのである、あるいは農地改革のアイデアをさらに進めて、山林にも土地開放が傳えられるのである。こういうようなことになつておるのでありますが、そのために山林業者は、三十年、五十年先の收穫のための植林については、目前の不安に驅られて、いささかも関心を示さない。これに対する農林大臣の御所見を伺いたい。
 また今回の現地調査の各位から報告されている中に、政府が開墾計画をきわめて無計画に実施いたした。こういう点が指摘されておる。なるほど百五十万町歩の開墾計画は、目下の食糧事情のもとにおいて、まことに喫緊な要務でありましよう。しかし、開墾適地の決定に対して、ただ官僚諸君が机の上で、地図に向つて面積をはかり、傾斜度をはかり、これで決定する。こういうことでは相成らぬのでありまして、御承知のように、林地には、林野には、相対的林地と絶対的林地があるはずであります。そういう点を十分勘案いたしまして、開墾計画に対してもつと是正する御意思はないかどうか。たとえば民間の專門家を加えることによつて、権威のある民主的な委員会にかけるということはいかがでありましようか。こういう点を農林大臣から伺いたいと思います。
 あるいはまた近頃、木材を強制伐採するということが巷間傳えられて、これが薪炭、坑木という喫緊の需要に向けることもありましようが、そういう面から、林野をもつておつても強制伐採をされるのだ、そうして幼齢林もかまわず未だ成長期に達しない幼齢林を、むざむざ伐つてしまうということが相当あるようでありますが、こういう点に対して、農林大臣の御見解を伺いたいのであります。
 最後にもう一つ、農林省としては緊急造林対策をおもちのはずであります。すなわち、昭和二十一年度から五箇年間に二百七十二万町歩を植林する計画が立つておられるはずであります。そうして、第一年度である昭和二十一年度の成績はどうであるかと見るに、四十七万町歩の目標に対して、二十二万町歩しか植林ができておらない。このはなはだしい不成績は、一体どこにその原因があるか。かようなことでは、とうてい山林の緑化はでき得ない。また農林省が多年の懸案でありましたところの林政の統一が、最近できたはずであります。すなわち、帝室のもつておられた御料林並びに北海道の國有林などを一手に掌握いたしまして、農林省多年の懸案がここに実現いたしました。從いまして、昭和二十一年に立てました五箇年計画は、さらに大きな規模において、ここで修正されなければならぬものと考えますが、こういう点について新たなる植林計画をおもちであるか、これも併せて伺いたいのであります。
 序でにもう一つ、いまの民有林が、ただ民間のみに委せて、はたして緑化できるかどうか、私はこの点大いに疑問をもつております。いわゆる官行造林とでも申しましようか、官の手によつて――もちろん、これには多大なる予算を伴わなければならぬのでありますが、そういう官、國の力においてさらに造林を進行させる御意志はないものであるか、この点も併せて伺いたいのであります。
 聞くところによりますと、本院においては水害対策特別委員会が設けられるということに相なつておるそうでありまするが、これは私は非常に意を強うしている次第でありまして、この委員会に絶大なる敬意を表し、これが適切に運営せられますことを願いまして、私の質問を打切る次第であります。(拍手)
    〔國務大臣木村小左衞門君登壇〕
#40
○國務大臣(木村小左衞門君) 井出君にお答えをいたしまする前に、一言お断りを申し上げておきます。新憲法が実施せられまして、地方制度の改革がこれに伴つて行われましてからは、内務省の権限は大幅に縮小されております。從つて、内務省のただいま所管をいたしておりまする水害対策に関する部門は、ただ國土局におけるところの土木復旧の面だけが内務省の所管に属しております。山でありますとか、治水でありますとか、耕地でありますとかいうような最も大きな面は、農林大臣の所管に属します。從つて、ただいまの政府に対する御質問、並びに閣議の決定事項に対します御質問のごときは、これは農林大臣より御答弁がありますることが私は至当であると考えますので、ただ私といたしましては、ただいまの御質問に対しまして、災害に対する土木関係の應急処置をお答え申し上げておきたいと思います。
 昭和二十二年の公共土木施設の災害復旧費は、総額が三十八億余万円でございます。その中で、東北六縣下の復旧費は二十七億余万円であります。これはこの春の雪解け災害から、今度の七月二十八日より八月三日にわたりまする災害、これを全部今年度内に含めたものでございます。東北地方の今次の水害は、現在までの総被害の大半をを占めておるのでありますが、その他の地方におきましても、高知縣でありますとか、和歌山縣、兵庫縣等、局地的に被害が甚大な地方が存しておるのであります。政府といたしましては、ただちに緊急復旧の途を講じまするとともに、財政的の援助についても、とりあえず二億円を即刻支出する方針であります。これは先ほども申しましたように、土木復旧費であります。これが支出につきましては、單に東北のみに止まらず、全國的に対策を樹立いたします方針であります。なお和歌山縣及び兵庫縣に対しましても、東北地方同樣、民生の安定、生産の増強等には特別の留意を拂いまして、迅速なる復旧に努める方針でございます。
 さらに一言附け加えて申し上げておきたいことは、内務省といたしましては、今次水害の状況に鑑みまして、治水の恒久対策、緊急対策樹立の必要を痛感いたしまして、先般來五箇年計画を策定いたしまして、目下その内容を審議中であります。これはまだ閣議の承認を得ておりませんが、來年度からこれが実施に移りたい方針でございます。
 なお、内務省解体後における、こういう水害対策についてはどうなるかという最後の御質問に対しましては、内務省は解体されましても、現在の土木関係の災害対策を一手に掌握しておりますところのただいまの國土局は、そのまま建設院の一局として設置される見込みでありますから、土木に関しまする限り、水害の対策はここに一元化されることと考えられます。これをもつて御答弁といたします。
    〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#41
○國務大臣(栗栖赳夫君) ただいまの御質問に対し、大藏省所管の点を簡単に御答弁いたします。
 復旧應急工事につきましては、ただちに政府は閣議決定をいたしまして、それに基きまして、農林中金、地銀その他の適当なる金融機関を動員いたしまして、そうして東北地方につきましては、さしあたり二億三千六百万円ばかりの資金を融通いたすことにきめ、その手配をいたしている次第であります。なお、これは本來公共事業費の中から支弁することになりますので、損害賠償等がはつきりいたしますれば、公共事業費の中から支出をいたしまして、そうしてこの金融の資金をも返済いたすようにいたしたいと思うのであります。
 なお、これがためには、この種の資金の用途に充てるためにも、近くここに追加予算を編成いたしまして、各位の御審議を経ることになつておりますが、その中におきましても、公共事業費はやはり追加計上いたしまして、こういう種類の需要にはできるだけ應じたいと考えている次第であります。なお、融資の條件等につきましては、まだ相談中でありますけれども、能う限り低利の條件をもつて融通を迅速にいたしたいと考えている次第であります。
 なお、農機具の損耗に対してこれを補充する資金とか、あるいは秋作の肥料資金その他につきましての所要資金は、これはやはり農林中央金庫、地方銀行、その他適当の機関を通じて迅速に融通をいたしたい、こう存じまして手配中であります。
 なお、和歌山その他近畿地方の水害に対しても、必要に應じ同樣の措置を講じている次第であります。(拍手)
    〔國務大臣平野力三君登壇〕
#42
○國務大臣(平野力三君) 今回東北を中心といたしまして、各地に起りました水害に関しましては、まことにその地方の人々に対しまして、深くお氣の毒にたえないとともに、現在の國の情勢におきまして、まことに遺憾に存ずる次第であります。この際御質問によりまして、その被害の概況と、これに対する対策を申し上げたいと思います。
 七月二十二から二十三日までと、八月二日、三日のこの二回にわたりますところの豪雨によつて、東北の青森縣、岩手縣、宮城縣、秋田縣、山形懸のこの五縣において、流失、埋没いたしましたる面積は、一万二百六十八町歩であります。被害面積といたしまして、水田十一万二千九百九十五町歩、畑五万九十八町歩、合計十六万三千九十三町歩、これが東北におきまする大体の被害の今日まで到達いたしておる面積の概況であります。
 和歌山縣、兵庫縣その他の縣から報告されております被害の総額を発表いたしたいと思います。和歌山縣におきます水害の被害は一億八千二百万円、兵庫一億七千三百万円、廣島一億一千万円、新潟八千五百五万円、熊本四千三百三十四万円、富山三千百二十五万円、鹿兒島二千八百九十八万円、山口二千三百五十五万円、宮崎二千万円、愛媛千六百万円、高知五千四百万円、大体以上申し上げましたのが、今日まで政府に到達いたしておりまするところの大体の被害面積及び金額であります。
 政府におきましては、まずこの被害地の中において、最も廣大なる面積にわたつて、しかもきわめて重大でありまするところの東北、和歌山及び兵庫に対する救済方法といたしまして、八月十二日の閣議において、左の通り救済対策を決定いたしたのであります。
 その第一点は、災害地の金融逼迫の現状に鑑みまして、まずこの東北五縣に対しましては、耕地林野の災害復旧の應急に必要なる資金といたしまして二億三千六百万円、肥料その他農家の緊要必要なるところの物資の購入費用といたしまして一億二千五百万円、この合計三億六千百万円が八月十二日の閣議において決定せられ、先刻大藏大臣より御説明のありました通り、この金額だけは、今日において即時東北五縣に融通するの途を講じていただいたのであります。
 次に、最も緊急なる適切な方法といたしまして、まず政府におきましては、東北五縣に対するところの農機具として、その大農機具、すなわち、すきでありまするとか碎土機というような機具を、三千三百個應急送りました。なおゴム・ホース三千尺、ゴム・ベルト六千六百尺も併せてすぐ送つたのであります。肥料といたしましては、代作用の硫酸アンモニア九百トンを早急手配をいたしました。なお災害地に必要でありますところの農業用薬剤といたしまして、銅製剤十トン、砒酸鉛三トン、除虫菊乳剤二トン、生石灰五十トン、これもすぐ手配をいたしまして、手配済みであります。現在電氣資材、木材機具、これらの資材に関しまして目下手配中であることを御了承願いたいと思うのであります。なお、調査が進むに從いまして、順次これらの被害地におきまするところの適当なる方法を講じまして、万遺憾なきを期したいと存じておる次第であります。次に申し上げたいことは、ただいま井出君の御質問によりまして、これらの重大なる被害の原因が、御指摘の通り過去におきまする森林の過伐、濫伐にあるという点でありますが、この点に関しましては、政府におきましても、まつたくその通り考えておるのであります。戰時中におきまして、約百六十万町歩と推定せられまするところの森林を過伐いたしましたることが、今日かような事態を招來いたしましたる原因なりと断ずるにはばからないのであります。現在、政府といたしましては、さらにこれに加うるに、これより木を植えなければならないところの耕地面積を二百七十万町歩と推定いたしまして、繋急造林五箇年計画の案を立てまして、森林の緑化と治山治水の点に関しまして、鋭意盡力をいたしておる次第でありますので、この点御了承を願いたいと思うのであります。もとより御指摘のように、現在立てておりますところの五箇年計画が、必ずしもその通りまいつておりませんので、私といたしましては、今回の東北の水害に鑑みまして、現在立てておりまするところの五箇年計画に、今回の水害の原因をさらに檢討いたしまして、新たに森林の治山治水に関する根本対策を立てたいと考えておりますので、その点併せて御了承願いたいと思います。
 なお、御質問といたしまして御指摘になりました、現在山林の所有者が恐怖いたしておるところの種々なる点といたしまして、山林を農地と同じように所有権を制限したり、あるいは強制伐採をするのではないかというような点でありますが、現在政府といたしましては、山林と農地とはその性質を異にいたしておるのでありますから、今ただちに山林の國有とか、國家管理とか、あるいは所有権の制限等をするような意思はないのであります。強制伐採の点に関しましては、もとより不当に山林を賣り惜しむというようなことによつて、公共上害ある場合におきましては、政府には強制伐採の法的基礎はあるのでありますが、しかし、いたずらに森林所有者を恐怖せしむるような強制伐採を考えておるものではないのであります。われわれといたしましては、今回の水害に鑑みまして、この水害から受けましたところの地方各位の至大なるところの困難に対しまして、深甚なる御同情を申し上ぐると同時に、政府といたしましては、今後これらの施設に対しましては、各関係閣僚と大いに協議をいたしまして、万遺憾なき態度をとりたいと思います。以上お答いたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#43
○土井直作君 特別委員会設置の動議を提出いたします。水害地対策樹立のため四十五名よりなる特別委員会を設置されんことを望みます。
#44
○副議長(田中萬逸君) 土井君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#45
○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 委員は追つて公報をもつて指名いたします。
     ――――◇―――――
#46
○土井直作君 特別委員数増加の動議を提出いたします。隠退藏物資等に関する特別委員会の委員数を十名増加せられんことを望みます。
#47
○副議長(田中萬逸君) 土井君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#48
○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 増加せられました委員は追つて公報をもつて指名いたします。
    ―――――――――――――
#49
○土井直作君 残余の日程は延期し、明十五日は定刻より本会議を開くこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#50
○副議長(田中萬逸君) 土井君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#51
○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
    午後四時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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