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1947/08/15 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第25号
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1947/08/15 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第25号

#1
第001回国会 本会議 第25号
昭和二十二年八月十五日(金曜日)
    午後二時五十九分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程  第二十四号
  昭和二十二年八月十五日(金曜日)
    午後一時開議
 第一 海外同胞の引揚に対する感謝並びにその帰還促進に関する決議案(淺沼稻次郎君外十三名提出)
     (委員会審査省略要求事件)
    ―――――――――――――
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
    ―――――――――――――
 第一 海外同胞の引揚に対する感謝並びにその帰還促進に関する決議案(淺沼稻次郎君外十三名提出)
#3
○議長(松岡駒吉君) 日程第一は、提出者より委員会の審査省略の申出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。
    〔「定足数を欠いておる」「議事は開けぬ」と呼び、その他発言する者あり〕
#5
○議長(松岡駒吉君) 登院しておる人は百九十名余になつておりまして、定足数を欠いておるとは思いません。
 日程第一、海外同胞引揚に対する感謝並びにその帰還促進に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。天野久君。
    〔天野久君登壇〕
    〔「議長の宣告は間違つております。登院数が多いからといつて、議場内の出席者としてそれを計算するということは間違つております」「定足数に足りません、それだけははつきり言つておく」「議長の宣告は誤まつております」と呼び、その他発言する者あり〕
#6
○議長(松岡駒吉君) 正式に定足数が欠けておるということで御議論がございますならば、この際暫時休憩いたします。
    午後三時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時十五分開議
#7
○議長(松岡駒吉君) 休憩前に引続き会議を開きます。
 天野久君の発言を許します。
    〔天野久君登壇〕
#8
○天野久君 ただいま議題となりましたる、各党共同提案にかかる海外同胞の引揚に対する感謝並びにその帰還促進に関する決議案の趣旨を弁明いたします。まずその全文を朗読いたします。
  海外同胞の引揚に対する感謝並びにその帰還促進に関する決議
  衆議院は、連合軍総司令部が海外同胞の引揚に関し、多大の盡力を傾倒せられあるに対し、ここに感謝の意を表すると共に、終戰後満二箇年を経た今日なお、各地に残留する約九十万同胞の急速なる帰還の実現を期する。
  政府またこれにつき全幅の努力を傾注すべきである。
  右決議する。
 御承知の通り、海外残留同胞の帰還につきましては、昨昭和二十一年六月二十八日以來数回にわたり本院において決議せられ、その都度帰還の促進が、全国民の声として内外に向つて強く叫ばれてまいつたのであります。連合國側、殊に総司令部におかれても、この國民の要望にこたえ、絶大な努力をいたされました結果、終戰時六百数十万を算えた在外同胞も、終戰後満二箇年を経た今日では、米軍地域はもちろん、中國地域、蘭軍、濠軍管轄地域からの集團帰還復員は大体終了いたし、ただソ連地域、中共地区及び英軍地域のみに合計約九十万の同胞が残留するという状況と相なつているのであります。ここに至るまで連合軍総司令部の関係各國との折衝、その他船舶の増強等なみなみならぬ各般の御努力に対し、われわれ國民として衷心よりの謝意を表明するものであります。
 しかし、ただいまも申しましたる通り、残留同胞の数はなお約九十万を算えております。しかも、残留がいよいよ長びくに伴つて現われてまいりしました惨状は、まつたく想像外のものがあります。元の軍人軍属の大部分が、作業隊として、最低限の生活條件下に、最高度の労働に服し酷熱嚴寒の地に骨身を削り、労苦の上に労苦を重ねているのであります。一般居留民も、また極度の生活困窮に直面していると傳えられております。しかも、現在のごとき帰還の状況をもつてしては、明後昭の和二十四年秋に至らなければ、引揚帰還が終了いたさないのであります。
 かような状況におきまして、從來から起つておりましたところの帰還促進に関する民論は、現在の不安な世情を反映し、これまでとはまつたく樣相を異にし、ますます痛烈になつてまいりました。留守宅家族の人々の悲痛な心情と悲惨な生活とは、時の経過とともにいよいよ筆舌に盡せぬ深刻さを加えてきました現実の状態は、人道的見地においても、とうてい默視することができないので、各方面に熾烈な引揚促進の國民運動が擡頭するに至りましたことは、まことに当然すぎることと言わなければなりません。
 衆議院におきましても、殊に昨年以來、引揚帰還の促進に、また帰還後の定着安定に、國民の要望に副い、あらゆる方面にいろいろと盡力をいたしてまいりましたことは、諸君御記憶の通りであります。新憲法のもと、新たに國家最高機関としての國会が成立いたしました今日、われわれといたしましては、さらにここに決意を新たにし、この問題に処する要ありと確信いたすものであります。
 引揚問題の解決は、人類普遍の道徳及び正義の当然の要請であります。なお、日本國憲法が理想とする世界平和実現のために、各國民の間に永く恨みを残してならないことは申すまでもないところであります。さらにポツダム宣言第九條により、旧軍人軍属は速やかにその家庭に復帰せしめられることと相なつております。われわれは、今日ことにあらためて廣く世界の人道を愛する公論に訴え、特に関係諸國に対し、さらに衷情を披瀝して、在外残留同胞急速帰還の実現を懇請いたさなければならぬと信ずるものであります。
 現に南方英軍管下の残留者の実情は、ここ一、二箇月以内、すなわち秋に入る前にこれを全部帰還せしめなければならぬ必要に迫られております。また北方ソ連管下からも、今後さらに二冬を過すというがごとき事態の発生せぬよう、帰還速度を極力早め、遅くも本年内に全員帰還を見るように努力いたさなければならないのであります。
 政府においても、去る七月一日片山総理の施設方針演説で述べられましたごとく、残留同胞の急速帰還の実現に努力することを決意せられております。事態は遷延を許しません。われわれはこの際、あらためて残留同胞全員が、さきに申しましたごとく、可能の限り迅速に故郷に帰還し得るよう、あらゆる効果的手段を講ぜられんことを強く要望いたすものであります。
 以上申し述べましたごとく、われわれはここに決意を新たにいたし、残留同胞約九十万の急速帰還の実現を期して万全の努力をなすことを誓いますとともに、政府に対し最善の努力をいたさせますることが本決議案の趣旨であります。
 何とぞ新憲法下の新しい衆議院として、本問題の根本的解決を促進しますため、本決議に対し全員こぞつて御賛成くださるよう念願しつつ、趣旨の弁明を終る次第であります。(拍手)
#9
○議長(松岡駒吉君) これより討論に入ります。松尾トシ君。
    〔松尾トシ君登壇〕
#10
○松尾トシ君 私は、ただいま提案されました海外同胞の引揚に対する感謝並びにその帰還促進に関する決議案に対し、社会党を代表して簡單に賛成の意を申し述べたいと思います。
 終戰後満二箇年を顧みますれば、海外に残された数百万の同胞は、連合國の絶大なる御好意により、無謀なる戰争より解放されて無事帰還し、種々なる問題は残されているとはいいながら、さしたる混乱もなく民主的な平和國家建設に協力しつつありますことは、まことに喜ばしく、ここに連合國に深く深く感謝の意を表する次第であります。
 しかしながら、シベリア、樺太、千島、満州、北鮮、マライ、ビルマ、タイ、スマトラ、これら各地に未だ残留せる同胞は、なお約九十万に及んでおります。南方においては酷暑の中を、またシベリアにおいては酷寒の中を、それぞれ鉱山、道路工事等の重労働に服し、食糧は支給されるとはいいながら、実際にはなかなか困難であると聞いております。從つて、特に北方においては、労働と嚴寒に耐え得ず、その何割かは倒れていくということを聞くにつけても、今のうち全幅の努力を拂いまして、一日も早く帰還できるよう希望しておるのであります。
 これらの未帰還者は、ほとんど軍人にして、その出発に際しては、歓呼の声に送られて、戰勝を夢みつつ、生きては再び帰らじとはいいながらも、愛する妻子との再会を約しつつ、戰争の何たるかを知らずして、勇躍出征した人々であり、從つてこの無謀な戰争には責任はなく、單なる氣の毒な戰争犠牲者であります。それにもかかわらず、満二箇年を経過し、貿易も再開され、平和会議も近く開かれようとしている今日、なお抑留の身で悲惨な生活をしていることは、國民全体のひとしく憂うるところでありますとともに、これらの人々の家族を見るにつけ、涙なくてはいられないのであります。
 特にシベリアにおきましては、その生死さえ不明にして、生活に追われながらも、子供をつれた妻もろともに関係官署を訪ずれ、安否を氣ずかう樣は、まことに悲劇そのものではありませんか。老いたる母親は、自分の命を縮めても息子を帰してほしいと願い、幼い子供は、とうちやんに会ひたいと叫び、また現地よりの便りを見ますれば、皆さんのご好意と努力は感謝しているが、おれたちはまだ残されている、故郷へ帰りたい、帰してくれ、船を早くまわしてくれ、このまま死しておれは異國の肥料となりたくない、これらの実に悲壯な、血のにじむような叫びを聞くにつけても、胸が詰まり、涙を禁じ得ないのであります。一日も捨てておかれない、一日も早く帰還させなければならない。これは私たち故國にある國民の義務であり、責任であると私は固く信ずるのであります。
 この上は、連合國に懇請するとともに、私たちは全力をあげて帰還促進に邁進することを誓い、この決議案の賛成の言葉といたす次第であります。(拍手)
#11
○議長(松岡駒吉君) 若松虎雄君。
    〔若松虎雄君登壇〕
#12
○若松虎雄君 私は、日本自由党を代表いたしまして、ただいま議題になりました海外同胞引揚に対する感謝並びにその帰還促進に関する決議案に賛意を表するものであります。
 海外同胞引揚の問題は、諸君ご承知の通り、日本の大きな社会問題の一つであります。殊に引揚が長引きますれば長引きますほど、國民の関心はいやが上にも盛り上つて、社会不安を釀す種となるような危險もあるのであります。そもそも海外同胞引揚に関する事務というものは、皆さんも御承知でありましようが、これは連合國司令部の嚴格なる指令のもとにとり行われておるのでありまして、その間同司令部の積極的な御援助と便宜供與によりまして、非常に順調に運んでおる。先ほど天野議員からお話になりましたように、終戰当時六百数十万の海外のわが同胞が、すでに九十万に激減しておる。こういう順調な進捗の陰には連合國司令部としてなみなみならぬ御好意と御援助をいただいておるわけなのであります。
 そのおもなるものといたしましては、この複雜なる國際情勢のもとに、連合國司令部の方では、関係國と熱心なる御折衝をいただきまして、残留在留邦人を続々と帰してもらつておる。また御承知の通り、わが國は戰後非常な船舶不足を告げておる。そこで大量の輸送ができない。これがために連合國では、艦船等の貸與をしてくださつたのであります。昨年の最盛期では、リバーテイタイプの輸送船が百隻、またL・S・T・の上陸用舟艇が八十五隻も貸し下げられたような次第であります。なおこのほか、乘船あるいは船中、並びに上陸というこの間に、いろいろ衛生、保健等のための医藥の欠乏を來しておりますので、医療品等の大幅の放出もお願いしておるのであります。さらに私の非常に感じますことは、傳染病の予防なのであります。おおむね引揚地というのは傳染病指定地でありまするが、これも嚴格なる監督のもとに、また嚴格なる指令のもとに、日本政府がこれを実行しておりますので、今日まで傳染病に襲われるという危險が非常に少いのであります。
 こういう数々の御援助や御配慮に対しては、身をもつて体驗した引揚者はもちろんでありますが、われわれ國民としては、ほんとうに心の底から厚く感謝の意を表したいのであります。
 しかしながら、今もお話になつたように、まだ九十万の方々が残留しておられるのであります。これらの方々は、嚴寒、酷暑、瘴癘の地で、ただいま松尾議員からお話がありましたように、まことに氣の毒な生活を続けておる。涙なくしては聞かれないような、みじめな生活もあるように思うのであります。われわれは正義人道の立場からも、どうしても彼ら残留しておられる方々を苦痛から解放してやらなくてはならぬ義務があると存ずるのであります。なお、われわれが忠実に実行しておりますポツダム宣言の第九項には、「日本國軍隊は、完全に武裝を解除されたる後各自の家庭に復帰し、平和かつ生産的の生活を営むの機会を得せしめらるべし」という規定が明記してあるのであります。この点からいたしましても、われわれは関係諸國に対して、一日も早くわが同胞を帰していただきたいと懇請し得る根拠をもつておると思うのであります。
 昨年から今年にかけまして、私は佐世保の引揚援護局を数回訪問いたしたのであります。そうして、各地から引揚げられた方々に親しくその現状のお話を承り、またいろいろの御希望も伺つたのであります。彼らの欲するところは、異口同音に、われわれはまことに有難い運で今帰つてきましたが、どうかあとに残つておる方々を一日も早く帰してくれ、これが唯一の念願である、というようなことを聽いたのであります。
 残留の方々の御心痛も私は大いに察しますが、他面その残留者の方々の留守宅の家族のことを考えますときに、なお一層私は心を打たれるものがあるのであります。夫であり、弟であり、兄である、この家庭の生活の中心である方々を失つて、あすの糧にも窮しておる人もあるということを聞くのであります。この悲惨なる事情、また悲壯なる生活が、今日の窮迫した経済下ではますます深刻化するおそれがあるのであります。どうか私は一日も早くこの全員が帰還せらるることを希望するのであります。
 先般片山総理は、この壇上から施政方針に関する演説をなされたのでありますが、同胞引揚に関しましては急速実現するように努力するというような決意を示されたのであります。私どもは大いに総理の言に期待をしておるのであります。しかし、この引揚問題というものはきわめて重要な問題であります。また、いたずらに遷延をいたしますると、はなばな憂慮すべき事能を釀すようなことをおそれておるのであります。つきましては、今申し上げました趣旨によりまして、残留せるわが同胞全員が、きわめて速やかに日本本土の土を踏むように、有効適切な措置を講じられたいということを重ねてお願いするわけでありますが、なおこれと同時に、ただいま申し上げましたような留守宅家族の人々に対して、また引揚げてこられた方に対して、温かみのある御援助と御支援をお願いいたしたいのであります。
 引揚問題に関して主動的立場にあられる連合國司令部に対しましては、ここに重ねて私はお礼を申し上げますと同時に、一日も早く帰還ができますように、なおこの上とも一層の御配慮を懇請する次第であります。
 以上申し上げました趣旨で、私はこの決議案に賛成いたすものでありますが、決議案の趣旨はきわめて簡單でありますが、この決議案の裏には、われわれ國民の血と涙の裏書があるということを十分お考えくださいまして、單なるおざなりにあらず、必ず実現のできますように私は重ねて要望いたす次第であります。(拍手)
#13
○議長(松岡駒吉君) 吉川久衛君。
    〔吉川久衛君登壇)
#14
○吉川久衛君 連合軍総司令部が、海外同胞の引揚に関し、きわめて困難なる事情にもかかわらず、多大の同情と非常なる好意と努力とを示されていることは、全國民とともに感謝にたえないところであります。しかしながら、終戰後満二ヶ年を経た今日、なお百万に近い同胞が各地に残留していることは、眞に悲しむべきことと申さねばなりません。
 在外同胞帰還促進問題は、留守家族の衷情より発する念願であると同時に、日本民族の念願でなければなりません。このことは、國内的の問題といたしましては、敗戰日本が民主主義新日本として発足するにあたり、全民族一人漏れなく救國運動に参加せしむべきであり、從つて未帰還同胞のみがこの運動より除外されていることは、戰争犠牲の公平なる負担の原則に反し、救國民族戰線の一大欠陷と言わなければなりません。國際問題としては、ポツダム宣言がより早く履行されることであり、世界平和への大きな促進の要素となるといふことであります。なぜなれば、海外同胞とその家族は、理由のいかんを問はず、人間的感情によつて、帰還遅延に耐えられない悲哀と不満をもつからであります。引揚促進は、各種事情の円満なる解決によつて実現する問題であつて、その家族及び日本國民の感情的訴願によつてのみ解決されないことについては、政府は万全の措置をとらなければなりません。
 残留同胞が、ひたすら祖國のため日本民族の繁栄を念じて遠く海外に出で行きたる國家の犠牲者である以上、たとい敗戰國として種々制約されておる事柄はありましようけれども、全國民の連帶責任において速やかに無事帰還せしめ、家庭人としてともに乏しきをわかち合ひ、相助相愛、協同の精神をもつて平和日本の再建に奮起せしむべきであります。
 実際人間は希望を失つたとき、その食欲は衰え、活動は鈍り、遂には生きぬく力を失うものであります。敗戰という精神的痛手は、國内にあつて父母、兄弟、友人に取囲まれていた人々でも相当なものであつたことは、各位が経驗されているところであります。しかるに、遠く異國にあつて敗戰という冷嚴なる事実を身をもつて経驗し、その後二箇年、灼熱のもと、酷寒の中、慣れない地域に、不十分なる食糧と、みじめな宿舎、衣料等のきわめて惡い條件のもとに、過激な労働と惡疫の流行によつて生命を死にさらし、しかも、いつ救われるとも見透しのつかない絶望的な生活をしていられる人々の感懷はいかばかりでありませう。私ども本國にある者は、深い同情と、何をおいても捨ておくことのできない、いても立つてもおられない、一刻も早く救い出したい焦燥にかられるのであります。現下國内の生活も決して不安なしとは申しません。しかしながら、外地に戰爭の犠牲となつて故國の空を見詰め、救い出の日をきようかあすかと待たるる人々の心境を思うとき、それは比較にならない問題であります。
 なおまた復員の長期化に伴う留守宅の保護、傷病者並びに終戰後の死歿者に対する取扱い、復員者に対する日本再建への補導問題等は、きわゆて重大なる社会問題であります。しかるに、昨年來関係者の叫び続け來つた血涙の嘆願も、陳情も、むなしく未だ実現に至つておりません。数百万の留守家族は、失望落胆、生活苦のために生地獄そのままの有樣を続けています。政府は今回新日本建設の國民運動を展開せられましたことは、まことに結構でありますが、願わくは政府みずから率先して、これら戰爭犠牲者に同胞愛の温かき手を差伸べ、家の主柱――親ばしらを失い、飢餓線上にあえぐ留守家族の援護にも完璧を期せられんことを要望いたします。
 ここに私は、國民協同党を代表して、海外同胞引揚に対する感謝並びにその帰還促進に関する決議案に対し、満腔の賛意を表するものであります。(拍手)
#15
○議長(松岡駒吉君) 受田新吉君。
    〔受田新吉君登壇〕
#16
○受田新吉君 私は、本日上程せられましたところの海外同胞引揚感謝並びにその促進に関する決議案に対し、小会派を代表して全幅の賛意を表する次第であります。
 あたかも本日は終戰満二周年記念日であります。この歴史的な、われわれの終世忘れがたい記念日にあたりまして、百万になんなんとするわれらの同胞が今なお海外に残留している。これらの方々に対し、速やかにその帰還を促進する決議をなすに至りますることは、まことに感激にたえないところでありまして、國会の一員として、ここに國民の選良として選び出されましたる私どもは、まことに欣快至極に存ずる次第であります。
 私は、今や永遠の戰爭を放棄して、しかも永遠の平和を希求するところのわが日本が、これから取り守るものはただ一筋、文化國家、平和國家として成長する以外に何ものもない、この段階において、眞に涙と愛情の満ち溢れた政治が行われることを、心から祈つてやまないものであります。
 皆樣、平和の鐘は今や全國津々浦々に鳴り響いております。このときに、私たちの脳裡に深く深くおおい被さつて離れがたいものは何でありましようか。すなわち、われわれの親愛なる同胞が、あの酷熱の地に、あの酷寒の地に、今なお深い深い憂愁に包まれつつ深刻なる労役に服し、故國を去る幾千里、萬里波濤の地において血涙を搾つておる現状であります。政府は、國民は、今やあげてこれら同胞を速やかに帰還せしむることに手を打つておられます。占領軍当局の甚大なる御同情と御努力によりまして、すでに過去二箇年において五百五十万を算うるところの復員を完了せしめてくださいました。まことに感謝にたえない次第であります。しかしながら、最も困難なる段階にあるのは、残る百万になんなんとする痛ましい同胞の姿であります。
 私はさらに方面を変えまして、これら同胞を待たるるところの悲壯なる家庭の姿を思わざるを得ません。愛する夫、わが父を、わが子を、沓として消息のないままに本日まで茫然と待望しておるこれら家族の姿を思うとき、万斛の涙を禁じ得ません。先般西下の車窓において、沿線に近い幾軒かの民家の軒先に、戸袋に、また電信柱に、私のお父樣を帰してください、私のお兄樣を早く帰してください、お母樣はいつ帰るのでしよう、かかるいたいけな子供の悲痛なる書出しがしてありましたが、車窓によつてこの無心な子供の氣持を思うとき、私の胸はほんとうに迫るものがありました。よし、おれは民衆の代表として、眞に國民代表の政治家として、政治の力において、選良の諸君とともに、君たちの要望に速やかにこたえてやるぞ、この誓いを新たにして下つたのであります。
 また、先般復員局を訪れましたところ、七十に余る老人が、首をうなだれて、相談所の係員より、あなたのお子樣は生死不明であります、これ以上はつきり申し上げることができませんという言葉を聽いて、悄然として立ち去つた姿が目のあたりに浮びます。数百万に余る同胞は、生死不明のまましかもいかに苦痛をなめつつあるかをはるかに想像しつつ、これら愛する肉身を待つておるのであります。
 私はこの機会において、常に人類普遍の正義と、そして國境を越え、勝敗を超越した高い高い人類愛に燃えておられる占領軍当局並びに関係当事國に対し、これ以上さらに一層の御慈愛をいただいて、末端にまでその占領政策が徹底し、速やかに、少くとも本年のうちに、残る百万人になんなんとする同胞が帰還の喜びを招き得ることを懇請してやまないものであります。
 私はさらに、帰還するこれら同胞を受け入れる態勢がよくできておるか、反省せざるを得ないと思います。先般復員してきた勇士が、故國の土を踏んで、自分たちが想像していた以上に故國の風景はうるわしい、人情はゆたかである、占領軍はやさしい、こう述べております。この美しい態勢がもつと徹底しなくてはならない。それに復員したそれらの人たちに対して、速やかに職業補導をされることが必要である。また、けがした者に対してば傷病年金その他によつて救恤する責任がある。また長く未帰還者となつていた者が、悲しくも英靈となつて帰つたその際においては、死歿者救恤の途において、その処遇を誤らざることが必要である。あらゆる観点に立つて、政府はこの際徹底的に、この決議案の決定とともに、眞に涙のあふるる施策を講ずべきであると信じます。
 同時に私は、議員各位とともに、眞に國民の選良としての本分を発揮すべく、民主政治の本髄に徹し、しかして起ち上る新たなる文化國家の本質を誤らざるべく、國民のためにこの身命を賭して政治に邁進することを誓い、しかして今もなお、この瞬間においても、あの極寒の地、南方酷熱の地において、血涙を搾つて労役に服しつつあるわれらの親愛なる同胞に対して、ここでわれわれがかくも眞劍に審議するこの声が、電波を通じ、あるいは心の波を通じて、速やかに感受せられ、そして明るい希望をもつていただき、併せて早く帰還せらるるであろうその日まで、何とぞ健やかにやつてほしい、御健康であつていただきたい、そうしてあなた方の御家族はわれわれが断じてお守り申し上げておりますと、固く固くお祈りせざるを得ないものであります。
 ここに、あまりにも悲壯なる姿をもつて海外になお残留しつつある同胞に対し、心からなる親愛の情をささげ、惻隠切々たる情をお送りして、同時に過般政府が発表せられましたるところの新日本建設國民運動が、この際速やかに実踐に移されまして、精神的復興の面においても、互いに相寄り相助け、貧しくとも、乏しくとも、互いに力を協せてこの敗戰苦の中に痛ましくも苦難を続けつつある百万になんなんとする同胞の上に、眞に惠まれたる將來の日本建設の一翼たらしめるところの強い強い決意を與えさせていただきたいものであります。
 以上、簡單でございまするが、切々の情を述べ、在外同胞の健康を祈り、われわれはそれら同胞に対する期待を裏切らざることを固く誓うものであります。(拍手)
#17
○議長(松岡駒吉君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。(拍手)
 この際内閣総理大臣より発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣片山哲君。
    〔國務大臣片山哲君登壇〕
#19
○國務大臣(片山哲君) ただいま満場一致をもつて可決せられましたる海外同胞の引揚に対する感謝並びにその帰還促進に関する決議案につきましては、政府は全然この決議案に諸君と御同樣賛成であります。また熱心に述べられましたる演説の内容についても同感であります。連合軍が海外同胞引揚げについて非常に親切に、深い同情をもつて今日まで促進せられましたることにつきましては、諸君とともに厚く感謝の意を表しておるのであります。しかし、なお百万近い同胞が残つて労苦を重ねられておることにつきましては、われわれは常に胸を打たるるのであります。何とかしてこの同胞の引揚げ促進を早くいたしたいということを念じておるのでありまするが、いろいろむつかしい問題がありまして、なかなか急速に運ばれないことを憾みといたしておるのであります。これは戰爭の災害を受けた最も期間の長い方として、深く同情を表しておるのであります。殊にその家族に対しましては、先ほどの御演説にもありましたる通り、われわれは涙なくして伺うことのできない幾多のお話を聞くのであります。政府は諸君の決議されましたる意を体して、懸命の努力を拂つてこの促進に邁進いたしたいと考えておるものであります。ただこれは政府だけの力ではいけないと思うのでありまして、一に國民大衆諸君の、特に指導者である諸君の温かき同情と、深い理解と、溢るる熱情によつて、國民運動としてこれが達成せられるものであるということを私は感ずるのであります。
 政府は懸命の努力を拂います。切に諸君の絶大なる御支援によつて、目的達成、決議の趣旨を十分に効果あらしめたいということを考えておるのでありまして、この決議に際しまして政府の所信を明らにいたしまして、諸君の意に副いたいと思う次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 昭和二十二年度一般会計予算補正(第一号)

#20
○土井直作君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、昭和二十二年度一般会計予算補正を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#21
○議長(松岡駒吉君) 土井君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加されました。
 昭和二十二年度一般会計予算補正を議題といたします。委員長の報告を求めます。予算委員会理事小島徹三君。
    〔小島徹三君登壇〕
#23
○小島徹三君 ただいま議題となりました昭和二十二年度一般会計予算補正第一号に関する委員会の審議の経過並びに結果につきまして御報告申し上げます。
 本案は八月八日予算委員会に付託されたものでありまして、十三日、十四日、十五日の三日間にわたり審議いたしまして、本委員会といたしましては、十五日、後に述べまするところの附帶決議を附して可決いたしたのであります。
 御承知のように、今度新しく厚生省から労働関係の行政事務をわけまして、労働省を設けることになりましたので、それに必要なる経費を支出するために、この補正予算案第一号が提出された次第であります。從いまして、本予算案につきましては、次の諸点が注意さるべきものであります。第一に、この予算は労働省新設について生じた本年度予算の変更だけを取扱つておるものであります。これは出來るだけ早く労働省の仕事を開始したいため、今度提出されるはずの一般会計、特別会計全般にわたつての追加予算と切り離して、第一号として提出されたのであります。第二の点につきましては、とりあえず労働省の設置だけについては剩余金で間に合いますので、この点からも、この予算案だけを切り離して先に出したものと考えられます。
 さて、次に本案の内容でありますが、新設労働省の本年度予算総額は、六億四千四百十一万円九千円であります。このうち労働省災害補償保險特別会計の二億六千八百五十四万九千円を控除した三億七千五百五十七万円が、労働省の一般会計予算額になるのであります。この労働省の一般会計予算額三億七千五百五十七万円の内訳を見ますと、昭和二十二年度一般会計本予算の実行上の措置によつて、厚生省所管から労働省所管に移しかえられました予算額が、二億六千六百二十一万円であります。これを前述の一般会計予算額から控除した残額の一億九百三十五万八千円が、今回昭和二十二年度一般会計予算補正第一号として計上せられておるのであります。これは從來の厚生省所管事務の一部が労働省に移管されるに伴つて、修正増額の上、労働省所管に計上された五千九百三十五万八千円と、新規に労働省予算として追加要求された五千万円との合計額であります。このように今度提出された労働省関係の補正第一号予算そのものは、同省の一般会計予算総額の約三分の一強を占めまして、かつ事務移管に伴う修正増加額を除けば、新規要求額は五千万円にすぎないのであります。
 他方におきまして、厚生省の所管事務が労働者に移管されるに伴いまして、厚生省の既定経費が修正減額された金額は、五千九百三千五万八千円、厚生省所管において不用となつた経費の減少額は、千三百五十九万一千円であります。この厚生省所管経費の減少額合計七千二百九十四万九千円を、前述の労働者の補正予算額一億九百三十五万円余より差引いた三千六百四十万九千円が、補正第一号予算の純増加額に当たつておるのであります。
 次に、右の三千六百四十万円余の歳出増加分は、昭和二十一年度剩余金の受入れによつて賄うことになつておるのであります。
 次に、予算委員会の審議の経過について簡單に御説明申し上げます。本予算案の内容につきましては、大体承認されたのでありますが、それよりも、今度提出されました補正予算の全体について、一番問題となるのは人件費であります。これに関しましては、新物價体系と賃金千八百円基準の上に補正予算が成立し得るかどうかということについて論議が出たのでありまして、この点につきましては、あらゆる角度から、各委員と政府当局との間に熱心な質疑應答が繰返されたのでありますが、その詳細は会議録によつて御承知おき願いたいと思うのであります。
 本提案につきましては、前述のように、第一に労働行政の革新強化のため至急に本予算案を承認する必要があること、第二に右補正予算の財源を新しく求める必要がなく、とりあえず前年度剩余金で間に合うこととの二つの理由から、これを可決いたした次第であります。
 なお、本案可決に際しまして、共産党の野坂委員より、全予算が提出されず、一部労働省の予算だけを提出したのは正しくない、提出された労働省の予算は、大要だけで細目が不明のために十分これを審議することができなかつたという理由で、これを本日上程することについては反対意見が述べられたのであります。
 なお、審議の中途で問題となりました新物價体系と國民生活、特にその給與賃金との関係、並びに地方労働基準局、同基準監督署等各種の政府機関を設けることは、地方行政一元化の趣旨に背くおそれもあり、またこれがために地方において寄附金を募集する等の財政的の負担を地方に與えるおそれがございますので、これらの点につきましては、次のごとき社会党、民主党、自由党並びに國民協同党四党の共同提案によりますところの附帶決議を可決いたしました次第であります。今その附帶決議を読み上げます。
    附帶決議
  健全財政を堅持し経済再建の基礎を確立するため、補正予算編成に当つて政府当局は、左記の三党に関し適当な措置を講ずること。
 一、勤労者の主食配給を確保すること。
 一、酒類、煙草類等勤労者の生活に重大な関係をもつものの値上げについては、國会の愼重な審議を経た後これを行うこと。
 一、政府は地方労働基準局及び地方労働基準監督署の設置に際しては、地方行政一元化の精神に則り充分な考慮を拂うと共に、これが設置については地方的負担を來すことのないように注意すること。
 以上、簡單でございますが、委員会の審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。(拍手)
#24
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#25
○議長(松岡駒吉君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
 次会の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
    午後四時十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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