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1953/07/21 第16回国会 参議院 参議院会議録情報 第016回国会 外務委員会 第14号
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1953/07/21 第16回国会 参議院

参議院会議録情報 第016回国会 外務委員会 第14号

#1
第016回国会 外務委員会 第14号
昭和二十八年七月二十一日(火曜日)
   午後二時十一分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     佐藤 尚武君
   理事
           佐多 忠隆君
           加藤シヅエ君
   委員
           小滝  彬君
           高良 とみ君
           中田 吉雄君
           羽生 三七君
           杉原 荒太君
  国務大臣
   外 務 大 臣 岡崎 勝男君
  政府委員
   外務政務次官  小滝  彬君
   外務省参事官
   (外務大臣官房
   審議室付)   大野 勝巳君
   外務省経済局長 黄田多喜夫君
   外務省條約局長 下田 武三君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       神田襄太郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○本委員会の運営に関する件
○日本国とアメリカ合衆国との間の友
 好通商航海條約の批准について承認
 を求めるの件(内閣送付)
○日本国とフイリツピン共和国との間
 の沈没船舶引揚に関する中間賠償協
 定の締結について承認を求めるの件
 (内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(佐藤尚武君) それでは只今より外務委員会を開きます。
 昨日経済安定委員会と連合委員会を開くことを決定したのでありますが、本日経済安定委員会より、都合により連合委員会を開けない旨連絡して参りました。従いまして連合委員会を開かないことになりますので御報告いたします。
 次に先日の理事会で申合せたことを簡単に御報告いたします。
 一つ、原則として連日開くこと。二つ、連合委員会のこと。三、MSAに関して参考人より意見を聞くこと等であります。
 右のうち、参考人の意見を聞くことに関しましては、会期との関係からやるならば早急にやる必要がありますが、本件については理事会の申合せ通り行うことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(佐藤尚武君) それでは御異議ないと認めてさよう決定いたします。つきましては参考人の人選等については委員長と理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(佐藤尚武君) それではさよう決定いたします。
  ―――――――――――――
#5
○委員長(佐藤尚武君) 次に日米友好通商航海條約を議題といたします。先ず政府の説明を求めます。
#6
○政府委員(黄田多喜夫君) 日米友好通商航海條約に関しまして簡単に御説明いたしたいと思います。
 日米両国間に古い條約が存在いたしておりましたのは明治四十四年に締結されましたものでございますが、その條約は昭和十五年の一月に失効いたしたのでございます。それ以来十二年余りというものは両国間には無條約の状態が存続いたしまして、サンフランシスコの平和條約の発劾後、同條約の第十二條によりまして、両国の通商関係は律せられていたのでございますが、同條約十二條におきましては、相手が与えた限度において、こちらもこの種の待遇を与えなければならないということが規定いたしてございまして、如何なるものが与えられるかということは、連合国側の一方的意思によつてきめられるというふうな極めて不安定な状態でございましたので、両国間に何か新らしい條約を作りたいという希望はあつたのでございます。ところでアメリカより古い條約を復活する意思はないということを明らかにいたし参りました。従いまして新らしい事態に対応するような新らしい條約を作ろうじやないかという提議がございました。一昨年の十二月くらいから極めて非公式な話合を始めておりまして、約一カ年有余経過いたしまして、本年の四月の上旬に調印いたしたのでございます。
 本條約は前文と、本文が二十五條と、それに本文と同等な効力を有するところの、不可分の一体をなしますところの十五項目が議定書に規定されておりまして、その三つからなつております。
 前文におきましては、條約を締結する目的といたしまして、両国間の平和及び友好関係を強化する、両国の国民の間の緊密な経済的及び文化的関係の促進、それから相互に有利な通商関係の助長をすること及び相互に有利な投資の促進を目的とするということの四つの目的を掲げまして、そのために無條件に最恵国待遇及び内国民待遇を与えるという原則を前文として謳つております。
 本文は二十五條からなつておりまして、第一條は入国、居住及び滞在の條件を規定いたしております。いわゆる條約商人或いは條約投資家の入国及び滞在の保障ということを第一項において謳いまして、この以外の者の入国及び滞在は当事国の関係法規の定めるところに従うということを謳つております。
 第二項におきましては、入国後の居住、移転その他の自由な権利ということを保障する一方、第三項におきまして、入国及び入国後の取扱について、公共目的のために制限を課し得るという当事国の権利を留保いたしております。
 第二條は身体の保護及び保障に関する基本的規定でございます。第二條の第一項におきまして待遇については国際法の要求する標準による保護を与えるということを明らかにいたしまして、第二項において、身体の拘束を受けた場合にどういうふうにするかという場合の措置を規定いたしております。
 第三條は、社会保障制度に関する内国民待遇ということを規定いたしておりまするが、これは旧條約になかつた新らしい規定でございます。まだほかにも旧條約になかつたような新らしい規定が出て参りますが、第三條なんかもその新らしいものの一つでございまして、第一項と第二項とございますが、業務上の災害補償に関する問題、強制的な社会保障制度に関する問題というものを取扱つております。
 第四條は、出訴権及び商事仲裁に関する規定でございまして、第一項で出訴権に関する内国民待遇、最恵国待遇ということを保障いたしております。第二項が商事判断の執行に関する規定でございます。この商事仲裁の件というのも、恐らく、或いは第二項に書いてございます仲裁判断の執行の件というものも古い條約にはなかつた新しい規定でございます。
 第五條は、資本、技術、技能等の交流を促進するための規定でございます。相手国の国民又は会社が取得した権益を不当に妨げることがないように、相手国がその経済的対策のために必要とする資本、技術等を取得することを不当に制限しないというようなことを規定いたしております。
 第六條は、財産の保護に関する基本的待遇を規定しております條文でありますが、その第一項におきまして、一方の締約国の国民及び会社の財産は、相手国の領域内で不断の保護及び保障を受けるという原則を明らかにいたしまして、第二項におきましては、住居、事務所などの建造物等に対する保護ということを規定いたして、不当なる侵入及び妨害を受けないということを規定いたしております。第三項におきまして、公共のためにこれらの財産が収用されるというような場合にどういう補償を与えるかということを詳細に規定いたしております。
 第七條、これは本條約におきまして最も論点となりましたところの條文の一つでございます。事業活動に関する待遇の問題でございまして、第一項におきまして原則を謳つております。その原則は、営利活動に関する内国民待遇の原則並びに営利活動遂行に必要な施設の維持、会社の設立、会社に関する財産及び利益の取得、企業の支配、経営及び事業活動の遂行一般に関する内国民待遇ということを規定いたしております。ただ通貨準備の保護のために必要な制限を行い得るという例外規定が議定書の第六項に掲げられ、又事業活動をやつて財産取得をしても、取得することは内国民待遇であるのだけれども、議定書の第十五項におきまして、旧株の取得について三年間はこれを制限し得るということを規定いたしておるのであります。第一項が一般に内国民待遇且つ最恵国民待遇の原則を明かにしておるのでありますが、第二項に参りまして例外規定を規定しておるのであります。公益事業、造船、航空運送、水上運送、銀行業務若しくは土地その他の天然資源の開発を行う企業等に関しまして制限を置き得るということを規定いたしております。議定書の第三におきまして、ここに書いてありますところの公益事業とは何を言うかということを明かにしておるのでございますが、それは第七條第二項において「公益事業を行う企業」とは、公共のため通信事業、水道事業、バス、トラック、軌道若しくは鉄道による運送事業又はガス若しくは電気の製造若しくは供給に関する事業を行う企業を言うのだということにいたしまして、制限業種の範囲を相当広汎にここで規定いたしております。つまり第七條と申しますのがいわば日米通商航海條約におきまして最も範囲の広い規定でございます。一方においては内国民待遇を与え、或いは最恵国待遇を与えるということの原則を承認しつつ、且又それが外資の導入を促進する上におけるなくてはならない不可欠の條件であるということを容認いたしつつも、而も締約国の一般の特殊事情というものを考慮いたしまして、その二つの要請を如何に調整せしめるかという問題が第七條にまさに出ておるのであります。つまり原則は自由にいたしたい。併し一方に内在するところの事由がある、その事由をどうするかということが、ここに制限業種の範囲が非常に広いということによつて現わされ、但し原則は飽くまでも自由だということで、第七條第一項に現わされておるという関係に相成つておるのであります。この制限業種の種類は、アメリカが戦後数個の国と結びました條約におきましてもこれだけの広い制限業種を認めておるという例はないようであります。これが日米通商航海條約における一つの特長をなしておると考えておるのでございます。
 第八條は、雇用、自由職業、非営利活動等に関する規定であります。第一項は、一方の締約国の国民及び会社が、相手国で必要とする資格の如何を問わず、技術者、専門家を雇用する権利があり、自己のために行う場合は相手国で必要とする資格要件の如何を問わず雇い得る、自分のためにやるだけのことなんで、相手方には何らの迷惑をかける次第でもないのだからということでこういうものを作つて頂きたいということが書いてございます。第二項には外国人も内国民と同様の要件に従うということを條件といたしまして、自由職業に従事することができるということを定めておるのであります。
 第九條は、財産権の取得処分に関する待遇の規定でございます。第一項は、不動産に関する権利のうち土地及び建物等の賃借、占有及び使用について第八條に述べましたところの営利活動、自由職業及び非営利活動の遂行及び居住のために内国民待遇が保障されました。第二項によつてすべての種類の動産の取得、所有及び占有に関する原則として内国民待遇及び最恵国待遇を保障するということを規定いたしました。但し制限業種の株式の取得は無論例外ということが書いてある次第であります。それから第三項におきましては、遺産取得に関してこれは極めて例外的なことであるとは存じますけれども、遺産取得に関して内国民待遇が与えられないというような場合にどうするかという救済規定を設けております。
 第十條は、工業所有権に関する規定でありまして、随所において然るがごとく本條においても内国民待遇及び最恵国待遇の保障を与えるということを規定いたしております。
 第十一條は、内国課税についての基本的待遇ということを規定いたしております。第一項におきましては、居住者及び当該国で営利、非営利を問わず事業を行う者に対する課税上の内国民待遇というものを規定いたしました。第二項におきましては、非居住者又は営利活動に従事しない者及び一般に営利活動を行わない会社に対し、内国民待遇の原則を適用するという目的を明かにし、第三項におきましては課税に関する最恵国待遇というものを規定いたしております。
 第十二條は、為替の管理に関する規定でございます。これも第七條と並びまして非常に本條約におきまして重要なる條文でございます。第一項は、海外送金に関する内国民待遇及び最恵国待遇の原則を掲げております。これは原則でございます。つまりそういう差別待遇とか或いは為替の管理は相成るべく自由にするということが望ましい状態であるということは、これは議論のないことでございます。従つて、第一項におきましては、原則を掲げました。但し、その理想と現実とが相隔たることが遠いという現実の事態に鑑がみまして、第二項におきましては、為替管理を行い得るという原則に対し例外を認めております。それで、その行う場合は成るべく限定いたしたいという趣旨でございます。通貨準備の合理的水準を維持するために必要な場合に限るということは語つておりますけれども、とにかくこれは原則に対する非常に大きな例外なのでありまして、且つ又これは現実の事態に即応してまさに必要とせられるところを規定いたしておる次第でございます。そこで為替管理はやり得るのだと、やり得る場合には併しこういうふうな手段をとつた後において初めて両国ともやろうということが第三項に規定いたしてある次第でございます。どういうことをやるかということは、この第三項に規定してございますように、自国民の保健及び福祉に欠くことができない貨物及び役務のための外国為替の利用を確保するため必要なすべての準備をした後、第六條3に掲げる補償として支払われた額、それから給与、利子、配当金、手数料、権利の使用料、その他の額並びに借入金の返済云々というふうなものをちやんと確保した後に初めてやるのだということの詳細なることが第三項に書いてある次第でございます。
 第十三條は、これは商業旅行者に関する最恵国待遇の保証であります。
 第十四條は、関税事項及び輸出入の禁止制限に関する規定でありまして、第一項は関税事項に関する最恵国待遇、第二項は輸出入禁止制限について無差別的な適用を保障し、且つ第三項において輸出入制限の具体的適用形態であるところの量的制限を行う場合の準則を定めてあります。この第三項も今までの條約にはございません新らしい條文でございますが、成るべく貿易というものは突然の起伏がないように、極めてなめらかにやりたいという理想からいたしまして、若し輸入制限をやるとかいうふうな場合にも、何らの正当付けられる理由なしに、例えば今まで百万トン買つていたものを急に十万トンに減らすというようなことはお互いに避けようというふうな趣旨のことが第三項に規定いたしておるのであります。
 第十五條は、税関行政に関する規定でございまして、これも恣意的なる行政措置等によりまして、貿易の通常なる遂行が阻害されないようにということを規定いたしております。
 第十六條は、輸入貨物の取扱に関する規定でございまして、前條と同様な目的を有するものでございます。ただここで申上げておきたいことがございますが、それはこの第十六條にも、第七條におけると同様に、締約国の一方、この場合においては我が国の特殊事情を考慮に入れまして例外規定を設けております。つまり入手困難な工業原料或いは食糧というものに関しまして、原則は輸入品も国産品も同等なる待遇をいたさなければならないというのが原則でございますけれども、今申上げました工業原料或いは食糧に関しましては、日本は国内産品と異なる扱いをなし得ると。只今でも一定の工業原料或いは食糧等に関しましては異なつた取扱いをいたしておるのでありますけれども、而もそれは十分なる必要があつてやつておる次第でございますけれども、それを容認いたしまして、これらのものに関して原則を離れて例外的な取扱をなし得るということを規定いたしておるのであります。
 第十七條は、国家貿易或いは国家商業をやる場合の規定でございますが、これは平和條約におきましても、若し国家貿易とか、或いは国家による商業というものをやる場合には、商業的考慮によつてのみ行わるべきものであつて、これがほかの要因を含んではならないというようなことを規定いたしておるのでありますけれども、その原則が第十七條に現わされておる次第でございます。
 第十八條、競争制限的商慣習の排除に関する規定でございまして、一口で申しますと、競手を制限するようなそういう商慣習は自由なる貿易或いは商業活動というものに対して障害をなすことがあり得ると、そういうことがありました場合には、両国は相寄つてそれらの障害を除去し、或いは弊害があつた場合にはその弊害を除去するということに関し相協議をいたそうということを規定いたしておるのであります。
 第十九條は、船舶、海運及び航海に関する基本的な待遇保障の規定でございます。
 第二十條は、人及び物が相手国の領域を通過することの自由ということを規定いたしております。
 第三十一條は、これは今までずつと申上げましたことは、全部、しかあるべしという原則なのでございますけれども、その原則に対して、但しこれだけは例外だということを規定いたしております。例えば物の出入りは自由だというけれども金銀等に関する輸出とか或いは輸入とかいうことは制限するということとか、或いは核分裂性物資、これは原子爆弾その他のことでございますけれども、そういうものに関する例外とか、或いは武器弾薬等に対する例外とかいうふうなもの、それからアメリカが地理的近接のために特別な待遇を与えておりますところのキユーバとか、或いは政治的理由によりまして特別な待遇を与えておりますところのフィリピンとかいうふうな、そういう待遇は例外であるというふうなこと、これも二十一條に規定いたしております。それから日本は只今まだガツトの一員になつておりませんで、従いまして法律上の権利といたしまして、ガツト税率を与えられるということは法律的にはないのでございます。この二十一條の三項におきまして、締約国の一方がその意思に基かずしてガツトに入らない場合には、他の締約国はガツトの一員で相手がないにもかかわらず、ガツトの税率をやるということを規定いたしております。この二十一條の三項は、第十四條の原則と睨み合せ、日本はアメリカに関する限り、ガツトの税率を享有することができるということを規定いたしました。本條約における特色であると申すことができると考えるのでございます。
 二十二條は全般に亘つて定義をいたしております。内国民待遇とはどういうことか、最恵国待遇とはどういうことか、そういうことを規定しております。
 二十三條におきましては、條約の適用を受ける領域というものに関します原則を掲げ、且つ例外を示しております。
 第二十四條は協議條項でございます。他方の締約国の條約の実施に関する事項について申入れを行なつた場合には、好意的な考慮を払う、或いは協議のため適当な機会を与えるということを規定いたし、解釈又は適用に関して悶着が起つた場合にはどうするかということを規定いたしております。
 二十五條は批准及び効力のことを書いてあります。
 以上が大体本文二十五條の説明でございます。そのほかにも議定書が十五項目ございまして、條約と不可分一体として取りきめられておる次第であります。その内容に関しましては、只今御説明申上げました際にも随時触れた次第でございます。さようなものに関しましては今まで触れたところで大体包含せられておると考えます。
#7
○委員長(佐藤尚武君) 本件に対して質疑に入りまするが、まず総括的な点について質疑を行いたいと存じます。質疑のある方は順次御発言を願います。実は外務大臣は三時から始まる衆議院本会議に條約が六件ありますので、そちらに出席されなければならんそうでありますので、時間炉極めて制限されておりますから。
#8
○羽生三七君 内容についてはあとに承わることにして、最初一般的なことでちよつとお尋ねしたいのですが、この條約は平等互恵のものであるということになつておるのですが、実際上日本とアメリカとの政治的経済的な実力の差というものは非常に大きなものがあると思うのですが、そういう実施上の差は條約の條文の上でどういう差になるか、それが出てくるわけではないのですが、結果的に相当不用意なものと思われるような筋があると思うのですが、どういうふうにお考えになりますか。
#9
○国務大臣(岡崎勝男君) おつしやる通りで、條約の文面には本来そういうものは出なくても、実際の運用に実力の違いで困難をする場合があり得るわけであります。この條約につきましても、例えばアメリカ側の保有する円で以て株をとる問題だとか、その他制限業種というような問題、或いは外国資本を投下する場合には、スクリーンといいますかこういうようなもので日本の現状を見て、できるだけ国内の産業等に対する圧迫が少いように配慮した点はあります。
#10
○羽生三七君 この内容に立ち至るわけではないのですが十四條の二項に「いずれの一方の締約国も、他方の締約国の産品の輸入又は他方の締約国の領域への産品の輸出について制限又は禁止をしてはならない。」これはよくわかるのですが、この場合バトル法との関係はどうなるのですか。
#11
○国務大臣(岡崎勝男君) それはどこの点をおつしやるのか、十四條の……
#12
○羽生三七君 二項にある自由な輸入又は輸出を制限又は禁止してはならんというのですね。
#13
○国務大臣(岡崎勝男君) バトル法との適用……。
#14
○羽生三七君 私の申す意味は、そういう制限又は禁止をしてはならないというのですが、日本では実施上、輸出或いは輸入の制限或いは禁止を受けることが、バトル法にあるわけなんですが、そうするとこの條約とバトル法との関係はどうなんです。
#15
○国務大臣(岡崎勝男君) おつしやることよくわかりませんが、第十四條の二項は締約国間のことを言つております。
#16
○羽生三七君 そうするとこれは締約国間だけのことで、他の国との特別な物資の輸入又は輸出については何も関係ないということですか。
#17
○国務大臣(岡崎勝男君) そのあとの但書が一つあります。「但し、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に制限され、又は禁止される場合は、この限りでない。」こういう但書がありますが、第十四條の二項は、お互いの間のことであります。
#18
○羽生三七君 わかりました。この十七日のアメリカの上院外交委員会では、日本との條約のほかにデンマークとか、イタリア、西独等敵方国との通商航海條約を承認したようでありますが、日本の本條約と比較して何らかの相違というものはあるのでしようか。若し御検討になつておらなければ別ですが、わかつておつたら一つ。
#19
○政府委員(黄田多喜夫君) アメリカの上院外交委員会が通過いたしましたのは、日本を含む他の数ヵ国全部同様に通過いたしております。
#20
○羽生三七君 私の言うのは内容的なもので、そのアメリカと他の数カ国との間に結ばれた通商航海條約と、我が国とアメリカとの間に結ばれた通商航海條約との間に、他国と我が国とのそれを比較して見て、條件なんかの有利不利というものは存するかどうか。現在の段階でまだわかつておらなければ別ですが、わかつておつたらお述べを願いたい。
#21
○政府委員(下田武三君) 大体この條約はアメリカが戦後締結いたしましたコロンビヤその他の條約とそう大した違いはございません。むしろ差異がございますとすれば先ほど大臣から申されましたような現実の日本の経済的事情から申しまして、日本のほうがむしろ制限的措置を多くしたという点でほかの国より違うところがあればあるというくらいなものでございます。なお後日御参考までに、できる限りそのテキストをそろえてお目にかけたい、その際に又細かい差異等を御説明申上げたいと思います。
#22
○羽生三七君 これはまあどなたからお答え下すつてもいいのですが、先ほどお話のあつた戦前の條約と比較して今度の條約は有利であるか、或いは不利であるか、それらについて御答弁を承りたいと思うのですが、先ほど御説明の中に、アメリカは戦前の條約をそのまま踏襲する意思はないということを言つたと言われますが、それは客観情勢がもう時代的に随分変つているのですからそういう意味をいうのか、戦前と今度の條約との間に何らかの相違があつたのでということだつたのかその辺をちよつと御説明願いたい。
#23
○政府委員(黄田多喜夫君) 戦前の條約を復活する意思がないと向うが申しましたのは、新時代と共に非常に複雑になつておりますので、旧條約ではカバーし得ないような分野が相当出て来ております。例えば先ほど私が申上げましたように、商事救済の規定であるとか、或いは為替管理の規定であるとかというようなものは旧條約では律し得なかつたようなものなんでございますが、そういうものが相当多い。従つて古いものを復活させるよりも新しい新時代に適応したものを作つたほうがよりよいということから、向うが新しいものを作ろうということを申出た次第でございます。これは誠に尤もだと我が方においても認めましてこの條約を結んだ次第でございます。
 さて旧條約と新條約がどういうふうに違いがあるかと申しますと、主要な相違点は次のようなものでございます。
 第一は最恵国待遇の規定でございますけれども、これは古い條約におきましては、一方の当事国が或る條件付きで第三国に特権又は利益を与えたというような場合には、他方の当事国は右と同一或いは同等の條件を充たさない限り、その特権に均霑し得なかつたということになつておつたのでございますけれども、それが新しい條約におきましては無條件に均霑するということになつております。それは條の前文におきましても、或いは本文におきましても随所にそういうことをいたしておりますけれども、そういうことは書いてございますけれども、その点が非常に大きな差異の一つでございます。
 第二の特色といたしましては、民間外資の導入の促進とその保護ということが非常に大きくとり上げられております。これは外資の導入という観点からそういうことになつたのでございますけれども、外資の導入の促進とその保護ということが非常に大きな問題になつております。
 それに関連いたしましては技術の交流とか或いは収用された場合の保護というようなことを先ほど六條及び五條に関連いたして申上げましたけれども、これも特色の一つでございます。
 第三に、旧條約になかつたようなことが相当盛られておるということを申上げましたが、その例といたしましては先ほど申上げました所以外にも相当ございます。例えば税関行政とかこれは十五條で規定いたしております。それから国家貿易をやる場合には商業的観念にのみ立つてやれるというような十七條の規定、それから第十八條で競争制限するような商慣習の排除ということが規定いたしてございますけれども、そういうこと、こういうようなものもこれも新しい條約の特徴でございます。
#24
○羽生三七君 第七條のところに重要産業、公益事業、造船、航空運送、水上運送、銀行業務或いは土地その他の天然資源の開発を行う企業というように或る程度重要産業については制限の範囲を列挙してありますが、これ以外にも日本は相当重要産業と思われるものが勿論あるわけですが、そういうものを将来拡大される場合も予想されますが、又現在の條約等の中にもその限度を定めることができる等とあるが、その場合には当然この制限の規定について国内法を別個に必要とすると思うがその点は如何ですか。
#25
○政府委員(黄田多喜夫君) 第七條の二項に関連いたしまして制限業種を如何に広くするかということに関しましては、これは関係官庁とも協議いたしました結果ここにあるものがそのマキシマムだということで、そのマキシマムをここに入れた次第でございます。先ほど申上げましたようにこれを広くすれば広くするだけ外資の導入ということは入る分野が非常に少くなつて来る。これを少くすればそれだけ危いこの産業、危い産業と申しますか、入つてもらつたら困るものに入つて来る分野が非常に広くなるということで、その妥協点をどこにするかということが非常に議論の対象になつたのでございます。その結果、これだけ列挙すればこれで十分であろうということでこういうことになつたわけでございます。
 そのほかにも考えられますものは例えば製鉄業、或いは石油の精製業、或いは自動車工業というふうなものも考えられるのでございますけれども、これらにつきましてはもう基幹産業として十分発達しており、心配はないという考え、それから設備、経営改善の面で民間外資と提携協力し得るような余地を残しておくことが却つて必要であるというふうな点から、これらのものは入れなかつたという事情でございます。
#26
○羽生三七君 どうも細かい所へ入りますので、一般的な御質問のかたがあつたら私はあとにいたします。
#27
○委員長(佐藤尚武君) 一般的な質問はありませんか。
#28
○杉原荒太君 先ずこの條約の内容に入る前にお尋ねしたいと思いますことは、アメリカの関税政策を含む通商政策ですね、殊に、余り過去のことを言うと私答えてもらわなくてもいいのですが、今後殊に近い将来、今或いは問題点になつておるような、そういうような点を睨みながらアメリカのとつておる通商政策の問題について御説明願いたいと思います。
#29
○政府委員(黄田多喜夫君) これは非常に大きな問題でございますが、御承知の通り各国とも今ドル不足で悩んでおる。それでドル不足を解消する問題といたしましては、どうしても各国ともアメリカに低関税政策をとつてもらいまして、それで各国の物資がアメリカに流れる。それによつてドル不足しております所のドルをかせぎたいというのが各国の共通した熱望でございます。
 さてそこで然らばアメリカは、それに対してどういうふうな反応を示しておるのかと申しますと、現政権は関税政策に関しては、一年間将来とるべき方策に関して十分検討を加えたいというので、各界の代表を任命いたしまして、十何人かであつたと考えておりますけれども、それが一年間にとつくりと研究して、そして将来アメリカ炉とるべき通商政策、関税政策等に関して答申をいたしまして、それに基いて大統領が将来アメリカのとるべきそれらの政策をきめたいということをきめまして、その線に進みまして、只今アメリカは一年間考えるということをやつておるわけであります。
 日本に関しましてどういう問題があつたかと言いますると、最近では三つばかり事件がございまして、一つはまぐろの関税を上げようとする件でございますが、これに関しましては、まぐろのアメリカに対する日本の重要産品たるに鑑がみて、そういうことをやつてもらつては困るということを申入れておりました。又アメリカの大きなポリシイといたしましても、各国とも低関税政策ということを言つておる際でもございますし、向うにおいてもそれを考慮した結果でございましよう。それをブロークンいたしたい。それから同様の分は木ねじ、それはまぐろなんかに比べましては大したことではございませんでしたけれども、同様な事件がありましたときにこれをブロークンいたしました。それから極めて最近では絹スカーフが先刻非常に急カーブでアメリカに行く産品として非常に重要度を占めていたのでありますが、これも向うで税率を倍にするということを関税委員会が大統領にリコメンドしたのでございますけれども、これも日本からの重要輸出品たるに鑑がみまして、わが方からも申入れましたし、大統領もそういうことを考えれ結果でありましようが、これももう一遍リコメンドいたしたという事件がございますが、これらは一、二の具体例ではございますけれども、アメリカの政府がどういう方向に向つて進もうとしているかということを示唆する二、三の例ではないかと考えております。
#30
○杉原荒太君 アメリカは対外通商政策の一つの憲法ともいうべき、例の互恵通商法を一年間延長するということがこの間きまつたようでありますが、その法律を一年間延長されてもあれに基く実際の交渉などを、実際に対外的に働かせるようなふうなことに今一体動いておるのかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
#31
○政府委員(黄田多喜夫君) アメリカの互恵通商法は六月の中旬ぐらいで失効いたしたのでございます。従いましてこれを今度もう少し幅のあるものにしてやつたらどうかということが問題であつたのであります。と申しますのはガツトの問題に関連いたしまして、只今のアメリカが譲許いたしておりますところの関税率というものは、今までの互恵通商法に基いて譲許税率というものをきわめているのでありますが、この譲許税率は、今年の暮を以て失効をいたすのであります。そういたしましてガツトがそもそもできております理由と申しますのは、先ほど申しましたような理由から各国ともアメリカの税率を下げさして、そして自分もそれに従つて下げるのであるけれども、それによつてアメリカに対する輸出を多くいたしまして、ドルかせぎをしようというのが狙いでございます。それが今年の暮で今まで相互に与えておりますところのガツトの税率の譲許というものは失効するのであります。失効いたしますとアメリカといたしましては互恵通商法に基きますところの譲許の幅をもう少し広くしなければ、相手方とネゴシエイトいたしまして譲許を更にやるということはできないわけであります。ところが先ほども申しましたような理由からアメリカといたしましては、互恵通商法を単純に現在のあるがままの姿で一年間延長する。そしてその間に将来あるべき通商政策なり関税政策なりというものを考えようということになりましたために、今まで各国が狙つておりましたところのアメリカの互恵通商法を幅のあるものにいたしまして、それによつて更に次に来るべき譲許を考えようという意図は、これはみのらないということになつた次第でございまして、従いましてガツトのほうにおきましても今まで通りの譲許で行つて暫らく進行して行くということにするより仕方がないという、おそらくそういうことになるだろうと只今のところでは考えられている次第であります。
#32
○杉原荒太君 つまり今までよりも互恵通商法がいわゆる幅をもう少し広くという意味は、どういうことになりますかね。これは大統領の税率を上げ下げする、その幅が広いという意味ですか。そうしてそれの実際の運用は、アメリカの大体の今までの方向では、つまりもう少し高い水準において、今までよりも高い水準のところに持つて行こうというのが、相当有力に働いている結果そうなつているのですか。
#33
○政府委員(黄田多喜夫君) もう一遍お願いします。
#34
○杉原荒太君 つまりですね、今まで互恵通商法に基いて、その国と結んだのが余りに低いところの税率の水準にきめられたのに対する国内の不満が相当高くなつた結果、そうなつて来るように観測されるのかどうか。
#35
○政府委員(黄田多喜夫君) はつきりしたパーセンテージを私今おぼえておりませんけれども、現在の互恵通商法におきましては、大統領が譲許し得るところの幅というものがこれ以上は譲許してはいけないという幅が互恵通商法できめられているのであります。それに基きましてアメリカのほうは各国と関税交渉いたしまして、なし得る最大のところまで譲許いたして……。
#36
○杉原荒太君 それはもう少し具体的に言つたほうがいい。つまり今までの互恵関税通商法ではどれだけでしたかね、その範囲はそれで今度新しいのがどれだけになつたか。
#37
○政府委員(黄田多喜夫君) 今の幅は五〇%であります。
#38
○杉原荒太君 今までのは、つまりあなたの言われるところは今あれはなんでしよう、この六月末に失効するというのは六月末で期限が来て更に延長のできる税率でしよう……。
#39
○政府委員(黄田多喜夫君) まだ成立しておりません。恐らくするであろうという見通しであります。
#40
○杉原荒太君 ああそうか。今一年延長の法案が出ているだけですね。その新らしい法案のほうでの内容はどうですつて。従来のは五〇%で今度のは……。
#41
○政府委員(黄田多喜夫君) 今度のやつはもとのやつをそのまま延長しようというのでもとのやつと同じであります。
#42
○杉原荒太君 私は大体想像しておつたのだが、あなたが幅が広くなつたと言われるからわからなくなつた……。
#43
○政府委員(黄田多喜夫君) 幅を広くしなければガツトの交渉をやる場合におきましてもほかの国はアメリカと交渉する意思がない。従つてもう少し幅を広くしてもらわなければガツトの今の新らしい譲許は据置くよりしようがない。こういうことであります。
#44
○杉原荒太君 それはよその国の要望だね……。それから今のガツトの問題ですが、今きめられている附属の関税率というものが今年の暮で期限が来るのですか。そうして今大体の見通しはどうなんです。その切れたのちあなたの言われるようにそのままの据置で更に継続して行くような見通しになつていますか。
#45
○政府委員(黄田多喜夫君) その点はアメリカのほうで只今の互恵通商法を単純に一年延長いたしました場合には、恐らく重要なる関税交渉というものはできないことになるだろうと思うのであります。そういたしますと、各国ともアメリカとの関税交渉ができない限りほかの国同士で関税交渉をやるということは意味をなさない。恐らく今のままの譲許税率で暫くの間アメリカの見通しがつくまでは行こう、ついた場合に改めて関税交渉をしようじやないかという方向に行くだろうと推測されます。
#46
○杉原荒太君 それだからアメリカとして、各国のほうじやないですよ、アメリカのガツト税率に対する大体の取扱のことを考えてみると、現在のガツト税率のやつを大体余り長くはそのままにしておきたくない、せいぜい一年ぐらいのところというふうに考えているのだろうと推測できるわけですか。
#47
○政府委員(黄田多喜夫君) さようでございます。
#48
○杉原荒太君 そうしてその辺のところが、私の聞いているところでは日本のガツト加入について最初はイギリスあたりで非常に困難があつたけれども、この頃アメリカ側に相当困難があるやに聞いているがその辺のところはどうなんですか。
#49
○政府委員(黄田多喜夫君) アメリカがこの一年間通商政策、或いは関税政策というものを研究するまでは、大きな関税交渉というものはできないということに決定いたしましたとするならば、そういうところから今まで通りの方式によるところの日本のガツト加入というものは或いは頭打ちだということが考えられるのでございますけれども、又その場合にはそうでないような方法によつて日本の加入を認めしめろというようなことも道がなきにしもあらずと考えております。
#50
○杉原荒太君 これは非常に大事な点ですが、今の黄田君の説明ではちよつと、なんですが、何かアメリカ側の事情でガツト加入を妨げる大きな障害があるということはどうなんです。
#51
○政府委員(黄田多喜夫君) つまりガツトに加入いたします場合には各国とも自分が譲許すべき関税率……。
#52
○杉原荒太君 いやそれはわかつているからもつと直接的に答えで下さい。
#53
○政府委員(黄田多喜夫君) 交渉する場合、それが若しアメリカで今の政策の結果といたしまして関税の交渉みたいなことは一年間はできないのだということにきまつたといたしますれば、日本が加入するに際しまして通常ならば必要とするであろうところの関税交渉ができないということになるわけであります。従いましてそういう点からはアメリカの政策によつて今までの方法によるところの日本の加入ということは延長されるということになる。このことはあり得るわけであります。
#54
○杉原荒太君 このガツトに加入するという場合ですね、加入する意思というものは日本の国としての意思はいつ確定するのですか。
#55
○政府委員(下田武三君) 御質問の意味がはつきりいたしませんのですが、今まで……。
#56
○杉原荒太君 加入するかしないかという、日本の国家としての意思はいつ確定するのです。
#57
○政府委員(下田武三君) これは今までの方式ですと、加入したいという希望を表明しておつたわけであります。但し、その希望が達成されるかどうかということは当事国の会議できめられる問題でありますので、国家の確定的意思としましては日本の希望が達成されるという見込がついたのでございます。
#58
○杉原荒太君 ついたのちのいつです。どういう要件を備えたときですか。これは非常に大事な点です。
#59
○政府委員(下田武三君) これは今まで日本は会期間委員会で加入するという手段を考えておりました。ところが只今の情勢ですとその会期間委員会で加入するという方式が随分むずかしくなつたのではないかと思われます。従いまして先ほどの通商局長が言いましたように、いきなり加入するという手段に訴えますならばやはりその前に国会の御承認を経て加入を申込まなければならない、そういうことになると思います。
#60
○杉原荒太君 だんだんと近付いて来ているのですけれども、もう一つ明確に答えてもらいたいのは加入するかしないかという、その国家としての意思はいつ決定するのですか。いつ確定するのですか。
#61
○委員長(佐藤尚武君) ちよつとお待ち下さい。大臣は衆議院の本会議に呼ばれておりますからして、これで大臣は退席されますからして、そのおつもりで……。
#62
○政府委員(下田武三君) 只今政府として最後的に、先ほど黄田局長が言つた方式で行くかどうかということは、実は未定なんです。これも公算なくしてそういう手段をとつても無駄でございますので、今少し研究してみたいと思います。併し公算ありという見通しの下に、いきなり、いろいろな事前工作の結果見通しが立つということで加入をいたしまする意思をきめますならばその前に国会の御承認を得たいと思つております。いつということは、もつぱらその公算が成り立つや否やということによつて成り立つと思います。
#63
○杉原荒太君 或いは私の質問している、知りたいと思うことが、よく私の言つておることが通じないからそういうことになるのじやないかと思うのだが、これはなぜ私が質問するかというと、つまり先ほどの経済局長の説明では、今度の條約によつて、日本はガツトの利益を均霑できることになるのだと、こういうのです。そうしてそれの根拠としてあの條項を援用される、その中にその意思によつて加入しない国に対しはガツト税率を適用しないことができると、アメリカのほうではそういうふうに書いておる。これは法律問題とすれば大事な点で、條約問題としては大事な点だ。それだから聞いておる。そういう質問だから、それに対する答になるような答をしてもらいたい。
#64
○政府委員(下田武三君) よくわかりました。この日米通商條約でやるといたします加入の場合の意思というのは、実は加入の希望という意味だろうと思うのです。希望を有するにもかかわらず、その国の責任でない原因によりまして加入が実現を阻まれておるというのがこの條約で問題にする点でありまして、従いまして、先ほど私が御説明を申上げておりました意味とは違うというふうに考えます。
#65
○杉原荒太君 それはもう少し実際に即して考えますと、その段階のものを以て、あの場合の意思というのは少し私は無理じやないかと思います。なぜかというと、極めて実際問題と結びつけて考えてみると、日本のガツト加入が認められるためには、その前に一つの條件を課せられる。その條件が日本として到底受諾し得ないような條件を課せられることが法律上あり得る。又実際問題としてもあり得ないということは断言できない。従つて日本が本当に加入の意思決定をするのは、その後でなければ私はならんと思う。その前に日本が加入する意思決定はできないはずだと思う。まだどういう條件を課せられるかも知れん。その内容が決定しない前に、日本は加入の意思ありということを対外的に発表できるはずがない。そういう意思決定をできるはず炉ない。それだからさつきの論点の結論から言うと、私は外務大臣もすでにこれは本会議でも言われたけれども、この條約によつて直ちにガツト利益の均霑を受けるのだ、そういう権利が発生するのだといわれるのは、少し言い過ぎだと私は思う。まだこれは一つの條件附なんです。若し外務大臣が言われるように、この條約によつて日本はガツト利益に均霑できるのであります、ということを国民に報告されるならば、なぜあの項目を削除しないのだ。あの條項がなかつたら、大原則に帰つて最恵国條款の利益が働いて来るから、それだからガツト利益も均霑もできますということも言える。現にそれをアメリカがコロンビヤとか、エチオピヤと結んだ條約の中にはああいうものは入れてないはずだ。それだからこそ、すぐあれによつてあの通商條約それ自体がすぐガツト利益に均霑する権利がすぐ発生する。これは少し内容に立ち入るけれども、私案はガツトの利益が均霑できるかどうかという問題は、この通商條約そのものよりも、どうかすると大事な重大問題だから私は法理論的にお尋ねするわけだ。
#66
○政府委員(黄田多喜夫君) ガツトに加入いたしますには、一番初めに申上げましたように、関税交渉以後日本のほうはガツトに入りたいということを希望いたしまして、それがこの二月の会期委員会で、條件とタイミングをどうするかということが議せられたのであります。従つて日本もガツトに入る意思があるのだということはこれは明らかなんであります。而もこの関税交渉をやろうとすれば、先ほど申上げましたような理由でできないかも知れない。そうすれば、その理由は日本以外のところに存在する理由なんであつて日本の意思と無関係であります。従いまして、そういたしますと、この二十一條の第三項の後段というものは、そこに生きて来ると思うのであります。而もこの十四條の第一項におきましては、すべての種類の関税等に関しては最恵国待遇を与えるということがありますので、日本が二十一條三項の後段、及び十四條の一項というものを合せ考えますならば、アメリカが日本にガツトの税率を与える義務は、この両方から生じて来ると思うのであります。
#67
○杉原荒太君 私はさつき言つた理由によつて、あなたのそれは納得できない。そうしてこのガツト利益の均霑できる権利が発生するのだというならば、あの條項を削除したらいいじやないですか。ああいうのをわざわざなぜ設けたのか。削除するというよりも、むしろ設けなければその権利は直ちに発生しますよ。
#68
○政府委員(黄田多喜夫君) ガツト税率が最恵国待遇の中に入るかどうかということに関しましては、これは非常な論争のあるところであります。例えば或る国のごときは、ガツト税率というものは最恵国待遇の上にあるものであつて、最恵国待遇というのはガツト税率を含まないのだという解釈をしている向きもあるのであります。従いましてこの二十一條三項の後段がありましたところで、このガツト税率をもちやんとそれにさすのだ、最恵国待遇によつてそれをさすのだということが、改めて議論の余地を残すということになるかも知れません。従いまして、これを挿入することによりまして、ガツト税率の利益にも均霑するということが、更に一層明確になる、こういうことになると考えます。
#69
○杉原荒太君 それであるならば、ああいう條件付の権利にしないで、直ちに日本に対してはガツト税率の利益を与えるのだと書けばよろしい。それならそうなる。
#70
○政府委員(黄田多喜夫君) 杉原委員のおつしやるようにいたしますと、尚更このガツト税率というものが、最恵国の内にあるのか、外にあるのかということに関しましては、なお議論を残すということになりますので、二十一條三項後段によつて、それを議論の余地のないところにしたということになるのであります。
#71
○杉原荒太君 今言われるのは、ちよつとわからないが……。
#72
○政府委員(下田武三君) 経済局長の言われた意味はこういうことだろうと思うのでありまするが、普通の一般的関税上の最恵国條款がガツト税率にも適用するかどうかということは、先ほど黄田局長が申されましたように非常に議論があるところであるが、若し二十一條で取立ててガツト税率にも関税上の、最恵国待遇の日本に対してガツト税率に均霑させるという規定の仕方をいたしますと、これは別の問題だから特にそういう規定したのだ、従つてガツト税率は一般的最恵国待遇には均霑しないのだという一つの先例になる。それがいやだから甚だ遠廻しな裏からの書き方であるが、こういう規定にしたのだ、こういう点はそういう意味であると私は思います。
#73
○杉原荒太君 私そんなことを言つているのじやないですよ。つまりそれが念のために明かにする趣旨というならばそこの書き方はいろいろありますよ。書き方はいろいろあるけれども、ガツト税率の利益に日本は均霑し得るのだという積極的の書き方をするのも一つの方法だし、又この大原則の最恵国條款の適用からは除外しないのだ、いわば消極的の規定の仕方でもそれは実は非常に技術的なことであつて、私の言わんとしている点は要するにもつとこんな書き方をしないで、これは一種の條件付ですよ。條件付のものですよ。それから無條件に日本が直ちにこれにつよてガツト利益に均霑するのだという趣旨の規定を設ければいいじやないかというのです。
#74
○政府委員(下田武三君) 米国としてはガツトの当事国といたしまして他の当事国に対して、やはり一種のガツトの利益というものはガツト当事国間の独占的なと申しますか、仲間同士の利益だという気持がありますので、アメリカがその当事国の気持に反して日本との間に日本に非常な利益を与えるような規定の仕方をはばかるというような点もあると思うのであります。
#75
○杉原荒太君 これはアメリカのガツト税率に対する通商條約上のこれらの均霑を認めるか認めんかについては、はつきりと正面からガツト利益だけは除外するというふうな規定をしている御承知のようにギリシャとかデンマルクとかウルガイ、イタリア、中国なんかはそうなつておつたと思う。もう一つリベリアとかエチオピアは除外しない、つまり均霑し得るという規定になると思う。日本は中間の書き方なんだ。一種の條件付ですよ。
#76
○政府委員(黄田多喜夫君) 実はこれを交渉いたしました際にガツトと日本との関係はどうなるか、ガツトと申しますよりはアメリカが持つておるガツト税率と、それから日本がそれを享有し得るかどうかということについて疑問が当然起るというので、こういう日本がその意思があるにもかかわらず入れないのだというふうなことについては、これを向うから当然くれるべきものと期待するということから、これを我が方から言つて挿入いたしたのであります。従いましてそれが入つているということは非常に條件付だとかなんとかいう問題は少くとも起り得ないので、日本の意思で入り得ない場合にはアメリカは日本にガツト税率をくれるということ、これが入つているという本来の趣旨であります。従つて向うが言い出してこれが入つているという場合には、少しくらい疑問の余地が起るかも知れませんが、これはそうではないのでありまして、これは反対でありまして、従いましてこの條文の十四條ニ項というものを考えますれば、その点に関して私は問題は起り得ないと思います。
#77
○杉原荒太君 その日本側のガツト税率の関係には、政府がアメリカ側にとり次がんとされた考え方というものはそれ自体は非常に結構なことで、その日本側の考え方を條約文として書き表し方がこういうふうになつておるから、なぜもつと直接的にしないか、日本も直接利益を均霑できるのだ、そういうふうな條文の書き方になつていないから私の言うような問題が起つて来るのですよ。
#78
○委員長(佐藤尚武君) 日本の意思のままにガツト加入というものができるならばこれは別問題ですけれども、日本の意思のままにならないということは、現に日本がガツト加入を要請したにかかわらず今そのことに反対されて、こういつた事実があるから現在のような條文の書き表し方にせざるを得なかつたのじやないのでしようか、私はよくわからないのですけれども。
#79
○杉原荒太君 これはよその国に対する権利のことは何も規定していないので、ただアメリカがガツト税率で、アメリカがこの適用するということをきめているその内容のものを日本側に均霑させるということだけですよ。今の日本の加入問題とは別だと思うのですね。
#80
○政府委員(黄田多喜夫君) 杉原委員からさつきおつしやいました他国の條約におきましてはこういう規定がない、従つて当然ガツトの利益を享受することができるのだとおつしやましたけれども、この点は私の調べましたところによりますと、ガツトの利益というものは与えられないのだということが明白に害いてあるのであります。従いましてこういう今問題となつておりまするようなことがありませんと、ガツトの利益は均霑させないのだというふうに行くのであります。従いましてこういうことを挿入することによりましてそうでない方法に持つて行く、こういうことになります。
#81
○杉原荒太君 それはあなたはもう少し調べて御覧なさい、そういうことも書いてあるということを私は言つておるのです。
#82
○政府委員(下田武三君) もう一つのこういう規定の仕方になりました理由は、日本がガツトの当事国になることを希望もしていないのに、又当事国になる努力もしていないのにアメリカとしては日本にガツトの税率を均霑させるということは、如何にアメリカが好意がありましても言えないところだろうと思うのであります。そこで意思と日本語ではなつておりまするが、英語ではチヨイス、選択ということでございましてこれはやはり日本語は日本語として成文でございまするけれども、どちらかと言いますと選択、日本がやはり入りたいというにもかかわらず、その意思に反して当事国になれないという事情をくんで、そして何とかして税率に均霑さしてやろうというアメリカの好意からせいぜいのところでこういう表現になつたんだろうと思うのであります。日本がガツトの当事国になりたいかなりたくないかを問わず、又なるべく努力もしているかしていないかも問わず、ノー文句にガツトの当事国でない日本にガツト税率を均霑させるというところまではアメリカとしても書けないところではないかと思うのであります。
#83
○杉原荒太君 その点だけ余り突いてもどうかと思うのだけれどもああいう日本語も成文になつておるわけだからこういう書き方をすると。もう一つ問題がさつき私が一番初めに言つておつたその日本国の意思というものは、いつ一体確定するのかという問題が起きてくる。どういう要件を備えたときその意思が確定することになるかという問題があるのです。そしていわんやさつき私が言つたようにガツトに加入するに当つては一定の條件をガツトの條約国から課せられるでしようが、それが日本としては到底受入れがたいというような場合には入らないという意思決定もあり得る。
#84
○政府委員(下田武三君) 仰せの通りだろうと思います。アメリカから見て、又何人が見ても日本がその條件さえのめばこれは決して日本にとつて過酷な條件じやない。だからそれをのみさえすれば日本が当事国になれるのにその過酷でもない條件を日本がのまないで当事国になれない。それは日本が悪いのでありましてその場合にはこれは日本が入る意思がないという場合に該当することになると思うのです。
#85
○杉原荒太君 今條約局長の答弁されたので私よくわかります。それだから確定的に日本がガツト利益に均霑する確定的の権利がこれによつて直ちに発生するのだというのは言い過ぎだ。私はそれを言うのです。勿論ここまで努力されたことは私はよくわかるけれども。
#86
○政府委員(下田武三君) 抽象的には仰せの通りでございまするが、実際問題といたしましては先般のガツトの会議できまりました日本の條件、これは日本以外の国も過酷と認めておりませんし、又日本も過酷と認めておりませんので、その條件をのむつもりでおることもアメリカ側が知つておりますし、現実の問題としてはアメリカ側もすでに日本がガツトの当事国になる意思を有するということは知つておりますので、理論的には御指摘の問題がありまするが、現実の問題といたしましてはその間疑念がないわけでございます。
#87
○羽生三七君 ちよつとお尋ねしたいのは、日本制の陶磁器とかまぐろ罐詰にしんというようなものに対するアメリカの税率引上げなどについてはいろいろ言われて来たのですが、それとこの條約とはどういう関係になるのですか。この條約が発効すればそういうことはアメリカですら勿論行えないことだと思うのですが、この点はどうですか。
#88
○政府委員(黄田多喜夫君) この條約が発効いたしましても向うがまぐろの罐詰を引上げることはできない、そういうわけではございません。この條約では最恵国待遇というものを規定いたしておりますけれども、現在の関税率を引上げることはできないということは規定はしていないのでございます。それから具体的にまぐろの関税率というものは、アメリカが結んでおりますところのガツトの譲許税率でもございませんので、従つてその方面からもまぐろに関する限り税率を引上げないという保障ということはないのです。
#89
○羽生三七君 そういう保障はどこにもそういう規定はないでしようが、何かこの條約の締結される趣旨からいつて、何かどうも非常に僕らとしてはふに落ちないものを感ずるわけですね。何か余りに一方的で、先方の御都合では好きなことができるというような印象を受ける。それは條約上の規定は向うの御自由でしようが、何か非常に一方的な感じがする。
#90
○政府委員(黄田多喜夫君) まぐろに関しましては、先ほども申上げましたようにすでに問題が起りまして、まぐろの関税を引上げろ、或いは関税を課すようにしろという要望が非常に強かつたのでありますけれども、それは行政府で、大統領のほうで取上げるこをいたしませんでやりませんでした。ただ條約上にはまぐろの罐詰を引上げることはできないというふうなことは何も善いてございません、ただ日本に対してのみ差別的にやるということはできないということになつております。ただ日本がガツトに加入いたしますような場合に、まぐろというふうなものは、恐らく日米両国間の関税の譲許の対象になるということになるだろうと思うのであります。そういたしました場合には一方的に上げるということは、これは特別の場合を除いてはできない。こういうことになりまして、恐らくそれらの特殊なものに関しましては、日本がガツト加入時における二国間の交渉品目の対象になるだろうと思うのであります。
#91
○佐多忠隆君 先ほど杉原委員もお尋ねがあつたのですが、もう少し角度を変えてアメリカの最近の通商政策、対外投資に対する態度或いは対外援助において経済的な投資の問題と、そうでなくて類似的な援助の問題と、そういうものに対するところの最近のアメリカの態度、今後の方向というようなものをどういうふうに考えて見通しておられるかという点、一応御説明願いたいと思います。
 特にそれをお尋ねするのは、御承知のように二、三年前までは通商政策によつてドル不足が相当出てきて、各国のドル不足を緩和するために経済援助の形で対外投資を積極的にやつてそれで緩和をしてやつていた。然るに最近はその対外援助が経済投資の形ではなくて武器援助に変つてしまつた。而もイギリスあたりでは援助よりも貿易をということを非常に希望をし、その点もイギリスからイーデン外務大臣が渡米したときには、その問題を専ら交渉したにかかわらず、この問題は殆んど成果を得ないで空しく帰つたのじやないかと思う。そういう問題と関連してこれらの近況及び将来の方向の見通しをどういうふうにお考えになつているか、一応御説明願いたい。
#92
○政府委員(黄田多喜夫君) 佐多委員の御指摘の通り、只今各国が悩んでおりますところのドル不足、これをどういうふうに解決するかという問題は世界的の大問題でございまして、殊にアメリカが経済援助というものは一応の目標を達成したということから、二、三年前から経済援助から軍事的援助に転換したということ。それから各国とも援助よりも貿易ということをモツトーといたしましてやつております際に、果してアメリカが如何なる通商政策或いは関税政策をとるであろうかということは世界注視の的でございまして各国とも見守つているところであります。
 ただこれは非常に議論の余地のある問題でございますので、私が個人的なことを申上げても余り重きをなさないとは存ずるのでありますけれども、例えばアメリカの関税が零になつたときに果して世界のドル不足が解消するのであろうかという問題が提起せられまして議せられたのでございますけれども、アメリカの関税率が全部零になつたということを仮定いたしましても、世界のドル不足を緩和する効果はさほど重大ではないということをイギリスあたりでは言つておつたようでありまして、なかなかこれはコンヴインシブルな議論であつたと私は見ておるのであります。いずれにいたしましてもアメリカではそういう風潮に鑑がみまして、将来貿易政策をいかにすべきかということに関しまして、一年の間にその政策を樹立いたしたい。その一年の間には余り早急にいかなる通商政策をとるべきかということをきめないで、一年間の間とつくりと考えて将来の方向をきめたいということで、十数人かの委員を選定いたしまして研究いたさせておるというような状況であります。
 ただ先ほども佐多委員のお見えになります前に私は三つばかりの例を挙げまして恐らく保護関税政策、産業保護政策というような方向には向わないであろう、そういうことに向いますことは却つて世界の他の自由諸国家に過大なる負担を課すということから、そういうふうな方向には進まないだろうということを申上げたのでありますが、その例を別にいたしましても、最近では域外買付とか、バイ・アメリカン・アクトの訂正を考えたらいいじやないかというふうな風潮もございますし、又デトロイト商工会議所、その他全米商業評議会等におきましても、イギリスその他の声に呼応いたしまして、援助よりも貿易ということを案現せしめるように努力しなければならんということを盛んに言つておりますので、恐らくそういう方向に向つてアメリカは進んで行くのではなかろうかというふうに観測いたしております。
#93
○佐多忠隆君 そうすると援助より貿易へという方向なり主張は、イギリス側の要求も、アメリカの受ける態度も方針なり方向としては意見の相違はなかつたのだ、ただ関税政策その他を決定するのに一年間の猶予期間がほしいという意味で、あれは成果を挙げなかつたのだといういうに見るべきだ、見ておられるということになるのですか。
#94
○政府委員(黄田多喜夫君) 私は大体そういうふうに観測いたしております。
#95
○高良とみ君 先ほどの二十一條のガツトの説明でありますが、さつき御説明になつたときには、ガツトの税率については日本はその恩恵を受けるのであるというふうな御説明を伺つておきまして本文を読み、或いは原文を読みますと、そういうふうにはどうにも書いてないように思うのです。つまり同協定に基いて取りきめた利益を与えなくてもよいということなんであつて、これが日本には与えるということの保障はどこに害いてあるのですか。つまりその意思によつて協定の当事国となつていない国で入りたくないという国に対しては与えなくてよいということは書いてあるのでありますが、入りたい国には皆与えるということがどこに書いてあるのでしようか、或いは内約でありましようか。
#96
○政府委員(黄田多喜夫君) 十四條の第一項を御覧下さいますと、すべての種類の関税及び課徴金その他に関して最恵国の待遇を得えるという原則がここに書いてあります。それから二十一條はいろいろ書いてありますることの例外ということが書いてあるのでありまして、二十一條三項の前段にはガツトのはちよつと例外だというようなことが書いてありますけれども、又この後段に行きまして、自分の意思で入らない国、入つていない国に対しては与えないということが書いてあるわけであります。
#97
○高良とみ君 それは十四條はそういう一般原則を盛つたのであり、二十一條は一般的な例外を挙げているのだという御説明があつたのですが、そうしますと、先ほど言われました関税に関する最恵国待遇を与え、そのほかにガツト税率にも日本を含むということは、この二十一條の三項の裏を常に読んで行けばそうであるかも知れないと考えられますが、併しそのことは明らかには謳つていないわけです。これは例外で取除いてあるが故にガツトの税率を日本に適用するというふうに了承して間違いないのでありますか。只今の御説明では原則と例外とは了承いたしましたが、ガツトに関するものは日本に適用されるのだということが明らかにこの三項で以て規定されるのでありますが、その点をもう一度御説明頂きたいと思います。
#98
○政府委員(下田武三君) 御指摘のように二十一條三項の後段の規定は厳密に法律上の意味におきまして保障されておるということは言えないと思います。これはやはりおつしやいますように裏を規定しておるのでありまして、その意思によつてガツトの当事国となつていない国に対してはというのですから、日本はこれに該当しないわけであります。若し日本にぴつたり該当させるために書こうといたしますと、その意思によつても当事国となされない国と申しますか、或いはその意思によらずして、或いはその希望に反して当事国となれない国に対しては、同協定に基いて取りきめた利益を与えてもよいというのがその裏だと思います。その与えてもよいという裏の意味と十四條一項の最恵国待遇の原則とを組合せますと、先ず与えてくれることは万間違いないでありましようが、厳密な法律的の意味においてガツトの利益に均霑することが保障されておるとまでは法律的には言えないと思います。
#99
○高良とみ君 それならばこれは何にもこのガツトに加盟しておるほかの国に関係のあるものはないのでありますから、日米間の通商協定になぜそういうふうに直すようにはつきり行けるように規定なさらなかつたかということを伺いたいのです。
 もう一つは、ガツトに加盟するということの見通しはどういうふうに考えておられるか伺いたい。
#100
○委員長(佐藤尚武君) 今の高良委員の御質問は先ほどの杉原委員の御質問と同じような点であろうと思いますが、政府当局からどうぞ簡明に御説明を願います。
#101
○政府委員(黄田多喜夫君) ガツトの加盟の見通しに関しましては、先ほど杉原委員のお話に対しまして、どういう状況になつておつてその渉外状況がどういうものであるか、それに関しては日本としてはどういうふうに考えておるかということを申上げたのでございますが、アメリカの互恵通商の単純一年延長ということによりまして、新しい関税交渉というものが非常にできにくくなりました。従いまして普通ならばガツトに加入いたしますためには、関税交渉を各国とやつてその上で入るというのが通常の道でございますけれども、それが恐らく非常に困難ではないかという見通しに立至つておるのでございます。従いましてそれを打ちかつてなお且つガツトに加入いたしますためにはどういうふうにしたらいいかということで盛んに目下考究もいたしておりまするし、或る種の方法は考えついてそれでやりたいということで目下内々準備を進めておる状況でございます。
#102
○高良とみ君 了承をいたしました。併しそうすると先ほど下田局長の言われたように、この利益を日本のような意思を表出してある国に対しては与えてもいいというようにすることのできなかつた点から行きますと、この二十一條の三項というのは非常に蓋然性の少い空手形だというような感じを受けるのです。そういう点でも日米通商協定が非常に不平等であるというような感を与えるのでありますが、巷間そういう批判も強いのでありますが、なぜ、これを与えてもいいという、素直に一年後であつてもそういう道を開く努力をなさらなかつたかということを承りたい。
#103
○政府委員(黄田多喜夫君) 二十一條三項後段をそういうふうにお読みになるということは実は甚だ心外でございまして、これは与えてくれない蓋然性が非常に多いどころではございませんで、これによりまして、十四條と合せ読みまして、アメリカは日本に与えるということをここに書き現わしているつもりでございます。又私自身はこれで十分それが盛られていると考えているのであります。
#104
○高良とみ君 そのあとのことはガットに加盟して通商協定、関税協定等はいろいろ今後の困難もありましようから、それは見解の相違かも知れません。併し今の黄田局長のように、これで素直に与えてくれる一つの約束のあるように読めとおつしやつても、その裏から裏へと読んで行かなければならないのでありまして、どうもそういう点で私どもは国民がこれを全く平等の立場でやつているというふうには思えないというのも無理もないと考えますが、これは私の意見でありますが、そういう点で今後の成り行きを監視することにいたしましよう。
#105
○政府委員(下田武三君) 只今平等でないとおつしやいましたが、若し不平等がありとしますれば、この通商條約から来るのでございませんで、日本が不幸にしてガットの当局になつてないという、この協定と関係のない事柄から来る不平等でございまして、その点は決してこの通商條約自体の罪ではございませんから御了承願いたいと思います。
#106
○杉原荒太君 ガットのついでですから、少し内容に立ち入つて恐縮ですけれども、この條約とガットとの関係を規定した今のこの二十一條の第三項の前段によると、この通商條約できめた貨物に対する待遇に関することをきめておるのだが、それと、一方ガットで以て締約国がとることを特に要求され、又は許されているそういう措置、こう二つ並べてみて、あとのガットによる措置というものが、実質的にはこの通商條約に貨物の待遇に関してきめたその規定と反する場合でも、そのあとの措置はとつても差支えないのだと、こういう規定になつておる。そじで具体的にはこれは非常に大事な点なのです。どれだけがこの通商條約の適用範囲外になるかという問題で非常に大事な点だが、従つてその内容というものを極めて明確にする必要があると思う。
 そこで私がここでお願いしたいのは、これは具体的に言うと、ガットの第何條のいかなる措置であるかといふことを一々例挙したものを、今すぐここでの御説明でなくてもいいから、書き物にしてこの委員会に配付してもらうということをお願いしておきます。
 第一この書き方というものは、非常に條約の書き方としては、私率直に言うと、まずい書き方だと思う。これは先ほどから経済局長も言われるように、この二十一條全体が、通商條約の一般の規定に対する例外規定になる。例外というものは厳格に制限的に解釈しなくちやならんというのがこれは原則だ。そういう場合に、ここにはガットの第何條第何項による措置だというように具体的に書かないと非常にこの解釈の仕方が拡大される虞れがある。通商條約に阻害されろ場合が非常に多くなると思う。これだけじや非常にわかりにくいのです。どれを指しているかわけがわからないのです。想像して読まなければならんようになつている。これを具体的に一つ挙げてもらいたい。
#107
○政府委員(黄田多喜夫君) 二十一條三項の前段に害いてありますガットに関して、その締約国が同協定でどの程度の措置をとり得るというふうなことに関しましては、これは直ちに日本とアメリカとの間に関しましては考え得るものはございません。只今のところございませんが、例えばガットで特に許されております措置というものの中には、アメリカは人造ゴムの混合、加工或いは使用に対する内容の数量的規則を実施しております。これは米国産の人造ゴムの一定割合の使用を要求しているものでありますけれども、この一般的の原則、本條約に関しましては十六條第一項にそういう規定がございますけれども、これに大体抵触するようなものでございますけれども、そういうものをやり得るということを二十一條第三項の前段に謳つておる次第であります。
#108
○杉原荒太君 ないものなら書く必要はない。これに洩れたものがあるかも知れない。第一、二十一條の三項でも、ガットでも特にとることを許される措置が書いてある、実質的には、併しまだ洩れたものがあるかも知れないというのでこれを設けたのでしよう。第一、要求される措置とか、特に許される措置とかいうものは具体的に指示しないと非常に解釈によつてわからないものになつてしまうのです。
#109
○政府委員(下田武三君) 仰せのように、一つはガットの個々の規定につきまして検討したものを文書にいたしましてお出ししたいと思います。
#110
○佐多忠隆君 先ほどの議論ですが、これはどうもイギリスのアメリカに対する援助よりも貿易という要求が通らなかつたことについての御意見。ただ単に時期の問題だし、技術的の問題であるという御意見でしたが、この点については、もつと根本的な両国の政策に対する相違の問題が横たわつておると思いますが、従つてこれらの点をもう少し究明しなければならないと思いますけれども、これは意見にも亘りますので他の機会に留保いたしておきまして、この條約の問題自身についてお尋ねしますが、一つはこの條約を通覧すると、この條約は何といいますか、経済的な国際主義というか、そういうインターナシヨナリズムの立場から非常に開放的な性格の、何でもかでも窓を開けてしまうという性格の條約であるように拝見をするのです。これはまあ内国民待遇なり或いは最恵国待遇を原則としてとるということであるから、形式的にはそういうことになると思うのですが、併しそれは形式的に平等であり互恵であることが、同時に併し経済力の実力の相違によつて先ほども質問があり答弁があつたように、日本に対してはかなり実質的には不平等になつておる点があると思うのです。そこでそういうことを勘案されて、形式的には互恵主義であり平等主義であるが、対質的なそういう日本の弱さを補うために制限的な措置といいますか何といいますか、そういうものが相当考えられなければならないと思うのですが、それらの考慮はこの條約のどの部門になされておるのか、具体的に詳細に一つ御説明願いたい。先ほどちよつと大臣が一、二例示的にお挙げになりましたが、それをもつとまとめて具体的に御説明願いたい。
#111
○政府委員(黄田多喜夫君) 冒頭に私が申上げました点でございますが、本條約でそういうことを最もよく現わしておりますのは七條が第一であります。七條におきましては、事業活動というものを内国民待遇を与え、最恵国待遇を与えるということを規定いたしておりますけれども、七條の第二項におきまして、制限業種というものを規定いたしまして、それらの業種に関しては制限を課すことができるというふうにいたしております。而もその業種はアメリカがほかの国と結んでおります通商航海條約におけるよりも相当広範囲でありまして、七條の二項にも公共事業とか或いは造船、航空運送、水上運送、銀行業務、又は土地その他の天然資源の開発を行う業務というふうなことを規定いたしまして、且つこの議定書の中におきまして公共事業の種類を又書きまして、それはガス事業とか水道事業とか、或いは電力の製造若しくは供給に関する事業というふうなことからバス、トラツクに至りますまで制限業種ということにいたしておるのが第一点であります。
 それから第二点といいたしましては、事業活動は自由であり、投資も自由であるけれども、日業の旧株の取得に関しては、三年間を限つてこれを制限し得るということを議定書の第十五項で言つております。これが第二点。
 それから外資が入つて参ります場合に、その外資が日本の経済の健全なる発達に寄与し得るかどうかについて、これを審査するということを規定しておりますのは議定書の第六項で、「いずれの一方の締約国も、外資の導入について、第十二條2で定める通貨準備の保護のため必要な制限をすることができる。」ということでありまして、外資が入つて参ります際に取捨選沢をする、スクリーンをする権利を留保しておるというのが第三点であります。これは議定書の第六でございますが、なお為替管理を行うに際しまして通貨別の考慮を払うことができるというのが十二條三項、四項及び議定書の第十一項にございます。
 それから我が国の現在の経済力の観点からいたしまして、只今申上げました制限業種を相当広くしておるということ、関税上の最恵国待遇における規定において、我が国はまだ加入を認められていないガツト税率を完全に享受することができるということが一つと、それから工業原料或いは基本食糧の入手が困難であるというこの期間中におきましては、これらの輸入品に対しまして国内産品と異なる取扱をすることができるということを、これは議定書の第八項にそういうことが規定してございますが、これも他の例であります。
#112
○佐多忠隆君 その日本の経済力の弱さに対して特別な考慮を払わなければならない諸点は、今いろいろお挙げになつたのですが、その一つ一つについているく問題がありますが、それは次の機会に譲りまして、そのうちで一番重要な外資導入の問題、これについて一体外資導入に関する規定がいろいろあちらこちらに散在しておるように思いますので、一遍外資の交流に関して、資本の交流に関してはどういうふうな規定がどこに定められておるか、それを一遍まとめて御説明願いたい。
#113
○政府委員(黄田多喜夫君) 関連した條文を申し上げますと、第五條、これが技術、資本の交流に関して規定しております。これも関連いたします。それから第六條の財産の保譲ということも関係ございます。それから一番大きな條文はどういたしましても第七條でございます。これが一番大きな規定でありまして、それから第九條が財産権の取得ということを規定しておりまして、これがイヴエストいたしましたところの金で日本でどういう財産権を取得し得るかという規定が第九條でございます。それから活動いたしますのに課税の問題が起ります。これが第十一條でございます。それから第十二條、これも七條に次ぐ関連條文だと存じますけれども、為替管理、これによつて利子配当等の送金をする場合には第十二條、これが関連して参ります。大体関係條文は以上が外資に関連いたします條文でございます。
#114
○佐多忠隆君 それから今のことに関連しまして議定書の6ですか、「いずれの一方の締約国も、外資の導入について、第十二條2で定める通貨準備の保護のため必要な制限をすることができる。」というのがありますが、これは内容的にはどういうことを意味しているのですか。
#115
○政府委員(黄田多喜夫君) つまり十二條の為替の問題に関します條文の大原則は、お互いに為替の制限はやるまい、自由にしようというのがこれが一番の狙いでありまして、それがいわば理想であります。ところが現実の各国の状況はなかなかそう行かない、アメリカは為替の制限をやつておりませんけれども、アメリカ、スイスその他の一、二の国を除きましては、厳重なる為替制限をやらなければやつて行かれないというのが今の状態であります。従いましてその原則に対しまして第二項で制限をやつてもいいのだということを規定いたしております。それから第三項では制限をやる場合にはこうこうのあれを満したのちにやれということを書いてあります。その十二條の二項の為替制限をやり得るという場合にどういうことをやるのか。それは通貨準備の保護をするのだ、つまりドルが不足だからドルが余り出られちや困る、従つてドルが入つて来る場合におきましても、その利子の配当とか何とかいうものをどうせ外資が入つて来るためにはそういうものを送ろうというのが目的でありますから、それを送ろうという場合にも、日本の経済の健全な発達というふうなことを頭に入れてスクリーンをなし得るのだということが議定書の第六項の狙いであります。
#116
○佐多忠隆君 そうするとその通貨準備の保護のためというのは、元本なり、或いは利益、それら全部を送金するというようなことは要求しないという場合にだけ入れるとか何とかいうような具体的なことも考えられているのですか。
#117
○政府委員(黄田多喜夫君) 只今外資法でやつておりますことはこれで認められる、従つて送金も何もしないのだ、ただ日本でインヴエストするだけなんだというのでありますれば、このスクリーンの対象にはなりませんが、そうでない限り必らずスクリーンの対象になし得るということであります。
#118
○委員長(佐藤尚武君) 如何でしよう。本日は通商條約に関する限り質疑はこの程度にとどめておいては如何でございましようか。
#119
○高良とみ君 私資料を頂きたいのですが、経済局ならおありになると思うのですけれども、最近までのアメリカとの貿易の品目とその数量及びそれのドル収支についての統計を頂きたいのです。それから、従つて現在行われています各品目の関税率、どういう率になつておりますか、それについての資料を頂きたい。
#120
○政府委員(黄田多喜夫君) 代表的のものでよろしうございますか。
#121
○高良とみ君 代表的なもので結構でございます。主も立つたもの、雑貨は幾らなんというそういう統計を。
#122
○杉原荒太君 私も資料をほしいのです。それはガツトの税率の適用を均霑し得ることになる、品目のほうから見て、日本が特にアメリカに輸出しておるもの、つまり私の知りたいと思うことは、あのガツト税率の均霑によつて具体的に一体どういう利益があるかということを知りたい。先ほどの説明のようにまぐろ関税のごときはあの中に含まれていないというのだから、ガツト税率の適用を実際受けないことになる。あれの均霑できるのは税率が低いだけじやなく、それで一定期間は据置かなければならんという義務が生ずるのであつて、それが一つのガツトの大きな利益でしよう。そういうものを私知りたいのです。
#123
○佐多忠隆君 それじや私も資料の要求ですが、資本の交流の原則を立てられたわけですから、それは具体的に内容的にどういうことになるかということを検討付けたいのですが、両国のお互いに相手国に対する投資の現況です。日本からアメリカに行つている投資状況、アメリカから来ている投資状況、それの資料を一つ頂きたい。
 それからそれだけでなく商業、工業、金融業その他事業活動をアメリカが日本において行なつている状況内容、それから日本からアメリカに行つて行なつている大要、そういうもののわかる資料を御提出願いたい。
 それからもう一つ。第八條の三項に学術、教育、宗教、慈善に関する活動を相互に便利を与えるというような條項があると思うのですが、この両方の活動の現況とその団体、それを一つ頂きたいと思います。
#124
○政府委員(小滝彬君) できるだけ取りそろえまして皆様に御配付することにいたします。
#125
○委員長(佐藤尚武君) それでは通商條約の質疑はこの程度で本日はとどめておきます。
  ―――――――――――――
#126
○委員長(佐藤尚武君) 次に日本国とフィリピン共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。質疑の方は順次御発言をお願いします。
#127
○佐多忠隆君 この中間賠償協定自体について質問すゑ則に、一般的にフイリピンとの間の賠償交渉は最近までどういうことになつていますか、一応概要御説明願いたいと思います。
#128
○政府委員(大野勝巳君) 佐多委員の御質問にお答え申上げまして、極く概略日比間の賠償交渉の最近までの状況を御報告申上げます。
 フイリピンはサンフランシスコ平和條約に調印をした国でありまするが、まだこれを批准いたしておりません。従いまして日本とフイリピンとの間には法律上の正式な平和関係が回復していない次第でございます。政府といたしましては、成るべく早く日比間のノーマルな国交関係を樹立いたしたいと念願いたしまして、いろいろな点につきまして考慮して来たのでありまするが、先方におきましては、平和條約十四條のつまり賠償に関する條項が気に入らないという点も、又サンフランシスコ平和條約を批准することを渋つている一つの原因であるかのようであります。中には賠償がなければ平和條約の批准をしないということをスローガンにしている政治家もかなりあるというふうな状況でございまして、サンフランシスコ平和條約の成立した過程に対する若干の不満もありまするが、同時にあの中に含まれている十四條の賠償條項というものに不満を持つているという点が重大な一つのトラブルの種となつておつたわけであります。政府は昨年の一月に津島壽一さんを団長とする賠償使節団をマニラに送りまして、日比間の賠償に関する話合を始めたのであります。その際先方は損害額の積算をいたしまして、日本に対して百六十億ペソ、ドルにいたしますとほぼ八十億ドルであります、そういう額に達する賠償請求額を提出いたしまして、日本側の考慮を求めたのであります。これに対しまして津島さんの代表団は仔細に日本側の立場を述べまして、ともかくこの数字が出されたところ又これに関連した幾つかの提案がフイリピン側から出されたということをテーク・ノートいたしまして、本国へ持つて帰つたということでその使命を終つたのであります。
 自来さしたる進捗もなかつたのでありまするが、昨年の十月に日本政府の在外事務所がマニラに設けられましたのをきつかけといたしまして在外事務所長とフィリピンの政府との間に次第に賠償の問題の話合が開始されたのであります。特に先ほど申しましたように、サンフランシスコ平和條約の批准を見ておりまするといたしますならば直ちにサンフランシスコ平和條約の第十四條の賠償規定をそのまま適用いたしましてその基礎の上に賠償問題が交渉され得たのでありますが、事実はそうではなかつたためにその辺に非常に両国にとりまして複雑な事態を生じておろわけであります。即ち日本といたしましては、平和條約に基く賠償の法律上の義務はフイリピンに対してはまだ発生していないというわけでありますが、併し政治問題といたしましてはその辺を相当解きほごして行かないと平和條約の批准そのものも遅れる。そういうふうな困難な状況でありましたために、極力平和條約の批准を急いでもらうという措置は従来何度かとつておるのでありますが、それと並行いたしまして、平和條約の十四條に明記してある賠償に関する大要と申しますか、賠償の仕方に関しましては、できるものから一つ着手して行くという方法も考慮の価値があるのではないかという点におきまして、双方意見の一致を見たのであります。その結果平和條約十四條に掲げてありますように、日本人の役務を以て賠償を支払つて行くというものの中に、沈没した船の引揚という役務で賠償を支払うという一つの項目がございまするので、取あえずこの問題から入ろうじやないかということにおいて双方異議がなかつたわけでありまして、その結果、昨年の晩秋の頃から今年の初めにかけまして、フイリピンの領海に沈んでおります船舶の引揚をするためのサービスを先方に提供するということを中心とした中間的な、つまり賠償の交渉が行われまして、その結果、三月の初めに至りまして妥結をみましたのがここに御審議を願つておりまする沈没船引揚に関する日比間の中間賠償協定であります。
 この間フイリピン政府といたしましては沈船引揚以外の問題、即ち平和條約の十四條に規定してあります原料、材料を先方から提供してもらつて、それを製造加工いたしまして、完成品にして返すという形における役務の提供の問題につきましても、日本政府との間に交渉があつたのであります。これは沈船の引揚の交渉と並行いたしまして、政府といたしましては、鋭意この方面で話をまとめるために努力をいたして参つたのであります。昨年暮から今年の初めにかけまして、外務省のアジア局長が東南アジアを旅行した際にマニラに立寄りまして、或る種のサゼツシヨンを行なつたのでありますが、そのサゼツシヨンは要するに、日本側として先方の希望に応じてどういうものを製造加工役務として提供することができるかということに関する極く簡単を提案でありましたが、そういう提案をいたして先方の考慮を促したのでありますが、その日本側の意思表示を受取りまして、フイリツピンの政府は十九人委員会と俗に称しております賠償諮問委員会を設定したのであります。この委員会は大統領の諮問機関でありまして、対日賠償に関する最高の諮問機関であるとみなされております。その構成は上院、下院の有力議員と関係閣僚並びに学界或いは経験者等から成つておりまして、朝野両党を網羅しております。従つて政治的には超党派的に対日賠償問題を扱い得ることを目途とした委員会でありまして、対日賠償問題というものが超党派的な形で扱われ得る一つの端緒を開いたものといたしまして注目の要があつた次第であります。
 この十九人委員会に対しまして日本側が沈船引揚以外になし得る、即ち製造加工、役務の対象になるものはどういうものかという日本側の提案を国会に付議いたしまして暫らくこれを研究したのであります。その研究ができ上るのを待ちまして、日本側といたしましてはできれば東京で両国の専門家から成る製造加工に関する予備会議、賠償の予備会議を実は開催いたしたいと考えまして、その旨を先方に申入れたのであります。先方又大体これに同意いたしまして、今年の二月末くらいまでには或いは東京で専門家の予備会議が開かれる運びとなるのじやないかと、かように予想されて、我が政府といたしましてはそれに対する万般の準備を整えましてその開催を待つたのであります。併しながら、十九人委員会のその後の成行きは必ずしも我々の期待していたような方向をたどらなかつたのでありまして、それにはいろいろな理由があると思いますが、やはりフイリピンの内政事情がからまつているかに聞いております。その結果、今年の三月の末から四月にかけまして、賠償に関する専門家の予備会議を開催するためには、その前に一体日本が総額幾らフィリピンに支払えるのか。それを何年以内に完済できるか。そうしてその賠償の支払を役務(サービス)以外に如何なる項目で支払うつもりがあるか、又サービスで支払う場合においては日比双方の経費の負担区分を如何に考えておるか、この四つの点に関して明確なる回答をもらうのでないと、予定されているこの賠償に関する予備会談というものを開きにくいという意思表示を先方からいたして参りました。それが四月の六日のことであります。
 政府は五月に入りましてからこれに対して或る種の回答をいたしました。その回答は、実はフイリピン側の考え方もわからないことはないのだけれども、総額というふうなことを初めから取りかかるということになりますと、先ほど申しましたように津島ミツシヨンが昨年の一月に先方に参りまして八十億ドルという巨額な額を提示されましたために非常な困難をいたしました経験もございまして、総額ということで初めからもむということは話を円滑にまとめるのに果して資するかどうかという点に疑点ありというふうな考えに基きまして、できればそういうことは予備会談を開いて一つ一つ生産加工役務その他の役務の内容を具体的に項目別に両国の専門家の間で予備会談の席上で協議をして行く、討議をして行く過程において自然大体の輪廓ができて来るものではないか。総額は幾らというふうにはつきり冒頭からきめてかからなくても、その内容をなすところの役務の各項目別に討議を進めて行くその過程において或る程度まで輪廓が明らかになり得るのではないか。従つて、この際は日本側の誠意も一つ汲んでもらつて、いつでも最も早い機会において両国間の予備会談を開催いたしたい。その用意はいつでも我が方において存するものであるという趣旨の回答をいたしたのであります。
 で、その後フイリピンからは二、三の議会方面の要人が日本を訪れております。このかたがたはいずれもフイリピンの政界では非常に影響力の多い、かたでありまするが、併しながら政府を代表して日本政府と懸案の賠償問題を交渉する正式の権限をもつて来られたのではないようであります。従いまして、半公式と申しますか、私的と申しますか、政治的には相当のかなりの意義あることは認めるのでありますが、正式に両政府間の交渉というものがこれらの方々と日本当局或いはその他の方面と行われたのではないのでありまして、大体各方面の意見の打診、或いはその他の意見を徴するというふうな点に主眼がおかれているようであります。従つて、今日までのところは沈船引揚協定が三月にできまして以来目立つた進捗はしておりません。併しながら政府といたしましては、フィリピンの政治情勢その他をにらみ合せまして日々目に見えない実は工作だけはいたしておるわけであります。
 で、只今議題になつておりまする沈船引揚に関する中間賠償協定というものが幸いにして御承認を得て実施に移されるといたしまするならば、これは平和條約と法律上直接の関係はございませんけれども、平和條約の十四條と何ら矛盾、扞格を来す趣旨のものではないのでありまして、その意味におきましては少しも心配のないものでありますると同時に、この協定が実施されて日本側のフイリピンに対する誠意というものが如実に先方に反映いたしまするならば、先方の平和條約批准の促進に役立つことは莫大なものがあろうというふうに政府は観測いたしておる次第であります。
#129
○杉原荒太君 この協定の実施としてという厳格な意味じやなくても、この協定で予想しておる実際の沈船引揚の作業というものは、すでに或る程度実行に移されつつありますか。
#130
○政府委員(大野勝巳君) お答えいたします。この中間協定そのものの実施は非常に厳密な意味では実施されていないと思うのですけれども、ただこの協定を実施に移すために或いはこの協定の成立を可能にするために是非ともやつておかなければならなかつたというような調査その他に関する打合せ、その他は或る程度まで実施の一部……広い意味から申しますならば実施の不可欠の前提要件でありますから、或いはその一部と解釈しても間違いないかも知れませんが、そういう意味の調査的な事柄はすでに行われております。
#131
○杉原荒太君 私はこういうところから問題を解決して行くということは非常に結構だと思うのです。それだからこういうことは一日も早く実行に移されることが必要だと思うのです。そうして必ずしも協定によるというのじやなくても実際上できないことはないわけだと思うから、そういうことは私もつと早く進めたほうがいいことだと思う。
 それから更にこれが三月十二日に署名されておるのに、これの承認が遅れておるというのも実は私成るたけ早くこういうものは進めたほうがいいことだと思うのだが、こはどうしてこんなに遅れるのですか。
#132
○政府委員(大野勝巳君) 只今の杉原さんの御意見拝承いたしまして非常に有難く思うのでありますが、前段の御意見でありましたが、沈船の引揚に直接関連した沈んだ船の、船別調査ということは、実はそれを引揚げないまでの話で、一つ一つ潜水太が海の底へ潜つて参りまして所在を確かめ、どのくらいの破損の程度暦あるかということも確かめ、どういうふうにしたら揚げやすいかといつたようなことまで非常に精密な調査をするのでありまするが、その調査はすでに全部完了いたしております。ただ地域的に一番たくさん船舶が沈んでおりまするマニラ湾とそれからセブの港、マニラ湾は五十二隻、セブの港では十二隻でありますが、両方合せて六十四隻分につきましては一船別の精密な調査が完了いたしまして、調査書がすでにできておるのであります。それに基きまして先方と実施のための細目的な事項を打合せをいたしておるような段階でございます。
 それから第二の点でありまするが、実はこの協定が結ばれました二日後に衆議院に承認を求めるために提出したのでありまするが、残念ながらその日に解散になりまして、自来何事もなすことができなかつたのであります。
#133
○杉原荒太君 もう一つ事実をお尋ねしておきたいのだが、この協定について予想している沈船引揚の数ですね、今のこの六十四隻以外も予想しているのか、これによるつまり計画でどれくらいの、何というか、その賠償される量を知りたいわけですが、それがどういうふうになつておりますか。
#134
○政府委員(大野勝巳君) お答え申上げますが、これは実際に調査をして見なければはつきりしたことを申上げられないのでありますが、先ほど申上げましたセブの港とマニラ湾分だけにつきましては六十四隻と申上げましたが、それ以外に数カ所フィリピンの領海内に点在した箇所がございます。若干の船がそこに沈んでおるわけであります。これにつきましても先方は引揚をしてほしいという要望をいたして来ておるのでありまするが、このマニラ、セブ以外の地点に関しましてはまだ精密調査に着手いたしておりません。従つてマニラ、セブ以外の所につきましては大体どのくらい揚げ得るか、我々が考えている條件に合致してどのくらい揚げ得るかということにつきましては、正確なことは調査後でないと何とも申上げかねるのでありますが、ほぼ全部合せまして百八十隻以上、二百隻どまりではないかというふうに今のところ予想いたしてております。
#135
○杉原荒太君 それからこれは少し細かいことのようだけれども、この四條を見ると「この協定は、各政府によつて、それぞれの憲法上の手続に従つて承認される、」、そうしてこの協定は初め日本国政府とフイリピン政府が協定した、そうしてそれを今度又政府が承認することになつているが、こういう例というものは私は寡聞にして非常に珍らしいと、私はこれを読んで奇異な感じがしたのでありますが、條約局あたりでは、ただこれを法律的にいかんということではないけれども、非常に私はこれは珍妙な規定だと思つて読んだが、若しここを批准するとか確認するというような、又はそれはそれとしてわかるけれども、自分が結んだものを自分が承認しますと書いてありますが、恐らくこれは條約の例としては余りないことじやないかと思いますが、少し文字に亘つて恐縮だけれども、こういう例はあるのですか。
#136
○政府委員(下田武三君) 実はこれは終戦後できました形式でございまして、一番初めの例は昨年締結いたしまして日米間の航空協定でございます。その後航空協定関係は非常にこの形式が多うございますが、なぜこういうことにいたしましたかと申しますと、まあ日本は憲法慣習が確立いたしておりませんので、政府としては條約は国会の承認を経ることになつておりまするが、成るべく多数の條約を国会に提出いたしまして承認を得るという方針にいたしておりまするが、そこで各国の憲法慣習と非常な相違を来たしまして、航空協定もそうでございますが、この沈船協定も相手国では政府限りで締結できるということになつております。ところが日本ではこれもやはり憲法第七十三條にいう條約と見なしまして、国会の御承認を得た後でなければ締結できないわけでございます。そこで双方の国が立法府の承認を得る場合でございましたら、従来からこうしておりまする通り批准條項を認けまして両当事国の批准交換を待つてから発効するということにできるわけでありまするが、戦後の協定は日本だけが国会の承認を経て、相手国は政府限りでやるという例が相当多くなりましたので、その場合に日本は批准という言葉を使いたいんですが、相手国は、いや、自分のほうの憲法から言うと批准ということは言えないということを申しますので、それでは承認ということにしよう、その代りその承認というのはそれぞれの国の憲法上の意味であつて、つまり日本のように政府限りで締結しない限りは憲法上の手続、即ち国会の承認を経た上で改めて政府は承認する、そういう考え方よりましてこういう例を終戦後作つて参つた次第でございます。
#137
○杉原荒太君 御答弁によつてそういう問題はわかりましたし、余りそういうことは細かく言いたくないんですけれども、これはやはり確認です。批准という言葉を使わないということは今の御答弁でわかるのでありまするが、確認という言葉を使つたほうが私はいいと思います。非常に我々としては奇異に感ずる。
#138
○高良とみ君 一応フイリピンとの交渉の経過を伺つたのでありますが、その後に賠償額についてフィリピンの上院議員オシアス氏など、八十億ドルよりもつと下廻つたことについてフィリピンにおいて発言しております炉報道されておりますが、何かそういう根拠をお与えになつたのでしようか。
#139
○政府委員(大野勝巳君) 只今の御質問にお答えいたしますが、新聞報道その他ではいろいろな数字がいろいろな人によつて唱えられておることが報道されておりますが、日比双方の政府間の交渉の今日までの過程におきましては、先ほど言及いたしました八十億ドルの問題以外には別な確定的な数字が交渉の議題に正式になつたことは今日までまだございません。オシアスさんがやはり大統領選挙戦に備えるための国民投票の野党の候補に立つた際、その前後のことだと思いますが、その際にやはり新聞などに或る種の数字を言つておるようでありますが、これは別にフィリピン政府と話合の上でもないように聞いておりまするし、正式の提案ではないというふうに考えております。
#140
○高良とみ君 今度のこの日本人の役務による沈船引揚は、大体の引揚役務の費用その他を計算しておられるでありましようか。この中間賠償の額は大体どのくらいな額に上るものと了承してよろしいでしようか。
#141
○政府委員(大野勝巳君) お答えいたしますが、先ほど申上げましたように、この中間賠償協定が幸いは御承認を得て実行に移されるときに、早速とりかかるのは、すでに精密調査を完了いたしました地域であるマニラ湾とセブ港が一番大きい部分でありますが、その方面に関連いたしまして申上げますが、大体四十億円くらいの経費が必要であると考えております。
#142
○高良とみ君 この沈船しましたスクラツプは勿論フイリピンの所有に帰するものと思うのでありますが、それ以上の話合は何にもしていないのでしようか。それを使つてとかそれに対して向う側で買上げるということはどうでしようか。
#143
○政府委員(大野勝巳君) お答え申上げます。沈船を引揚げました結果生じまする屑鉄をどういうふうにフイリピン政府が全般として処理するかということにつきましては、今日までのところまだ公式に意見が表明されていないのであります。どういうふうにフイリピンが処理いたしますかは単なる推測に過ぎないのでございますが、先ほど日比間の賠償交渉の経過を御報告申上げました際に言及いたしましたように、沈没船の引揚役務以外に原料を提供してもらつて製造加工して完成品を先方に給付するという役務につきましても、今度の中間協定のように、そういう間に幸いにして将来話合が妥結するといたしますならば、その場合に屑鉄は有力な先方提供の原料に充てられるのではないかと推測いたしております。
#144
○佐多忠隆君 よくわからないのですが、沈船の所有権というのは今どつちにあるのですか。これは普通の国際取極の場合と、それから平和條約によつて何らかそれの規定が明確になつているのかどうか、その点はどうか。
#145
○政府委員(下田武三君) 沈船と申しましてもこの協定の引揚の対象になつております沈船は、これは敵対行為の結果沈められました船でございますが、大部分は日本の艦船或いは日本が連合国側の船を捕獲して日本が使つておつた艦船でございまするから、これは国際法の多数説から申しますと、敵対行為の結果捕獲又は破壊された艦船兵器は、それが敵の圏内に失つた場合には俗にいう戦利品として敵国に没収され、従つて敵側が自由に処分し得る財産になるわけでございます。従いまして平和條約の第四條に請求という言葉が使つてありまするが、日本がフイリピンの領海にある沈没艦船に対して請求権を持つという関係は、戦時国際法によりまして断ち切れておる、そういう関係にあると思います。
#146
○佐多忠隆君 そうすると、やはりフィリピンに所有権はあると見なければならない。
#147
○政府委員(下田武三君) 国際法の多数説によりますとそういうことであります。
#148
○佐多忠隆君 そうすると、今の四十億の経費というのは六十四隻をこれから引揚げるための経費で、今までの調査費も含んでおるのですか、今後四十億要るというのですか。
#149
○政府委員(大野勝巳君) お答えいたします。今後四十億円見当いるということでございます。それで事前に行いました沈船の船別調査は外交遂行上必要な一種の行政費として大した額ではございませんが、調査費として支出するようにいたしております。
#150
○佐多忠隆君 それから今後四十億の経費をかけてやる場合に、作業用小需品の調達その他については便宜を与えるというのですが、それは単にフイリピンのほうは便宜を与えるだけで買うのはこつちの金で買うわけですか。従つてドルの支出を必要とするのか。
#151
○政府委員(大野勝巳君) お答え申上げますが、第二條の普通の作業用小需品というのは、大体木材であるとか酸素であるとかそういうふうなものでございますが、それらに関しましては、今までの話がついておる限度におきましては、先方が一応前渡しするという形になつておりまして、それの代金の清算につきましては、将来全般的な賠償問題を解決する際に更に討議をした上で双方合意に達したところにおいてきめる、かようになつております。
#152
○佐多忠隆君 そうすると、先ほど向うが十九人委員会で質問して来たというサービスの負担部分の問題と同じようなことで今後きめるということですか。
#153
○政府委員(大野勝巳君) その通りでございます。
#154
○佐多忠隆君 所有権が向うにあると金額はどれくらいになるか、見積つても日本とは関係はないと思いますが、念のために聞いておきますが、六十四隻の船が若し揚げられたとすれば時価にしてどれくらいになるというお見込ですか。
#155
○政府委員(大野勝巳君) お答え申上げますが、実は六十四隻だけに限定して申上げますと、トン数はマニラ湾の分が二十二万トン、セブ港のものが一万トンでありまして、これから生じまする屑鉄の量は七、八万トンではないかと思います。従つてそのまま七、八万トンの屑鉄として換価する場合と、それ以外の方法で換価する場合とによつて価値が違つて来るのじやないかというふうに思われますが、今まで一船別調査をした結果に徴しまするに、引揚げまして再び普通の船舶に再生し得るものは極めて少い。殆んど全部がスクラツプ化の余儀ない状態にあるということだけを申上げておきたいと思います。
#156
○佐多忠隆君 スクラツプにすると七、八万トンというと、おおよそどれくらいという見当ですか。
#157
○政府委員(大野勝巳君) お答え申上げます。今のマニラ湾とセブ港に沈没している分だけについて極く腰だめ的な計算をしますと、屑鉄のFOB価格の如何にもよるのでありますが、仮に三十五ドル乃至四十ドルと計算いたしますると、十億円内外というふうに考えられるのであります。併しながら佐多さんも恐らく屑鉄として揚げられて、換算されてFOB価格だけでお考えになつていらつしやるんじやないと思いますが、我々もそうではないのでありまして、一つの沈船から上げられる経済価値でございますが、それ以外に集はマニラ湾とかセブ港とか最も海上の交通の要所に当つておる所に、多数の、数十隻の船が沈んでおるのでありますからして、航行に非常に不便を来たしておる。従つて船の航路を開いて行く、安全性を確保するという観点から見ますと、ここに非常に金に代えられない大きな価値がございますし、又船がそこに碇泊する場合に、下にいかりをおろすときに、船が沈んでおりましたり船のかけらがございますと、これは非常に危いことになるわけでございますが、そういう観点からいたしましても、その底をさらつて船の破損部分を全部引揚げるということも又公安上その他の観点からいたしまして、抽象的ではございまするが、莫大な私は効果なり価値があるというふうに考えておる次第でございます。
#158
○佐多忠隆君 この引揚の作業はいつから始まるのですか。
#159
○政府委員(大野勝巳君) お答え申上げます。本件が国会の御承認を得まして政府がこれに所要の承認を与えまして効力を発生いたしますると、直ちに実は行わなければならないことに相成るわけであります。と申しまするのは、フイリピンの方はフイリピンの大統領がこれに承認を与えればそれで効力を発生することになつております。七種の行政協定みたいなことになつておるわけであります。ところが直ぐにも行ないたいのでありますけれども、ただ現地へ起重機を積みました船を回航いたしたりなどいたします必要がございまして、そのためには今丁度時期が悪いわけでございます。丁度モンスーンの時期におつておりまするので、マニラ湾まで起重機船の重いのを曳航いたします途中でモンスーンに襲われたりなどする場合が極めて考えられるのでありまして、その意味におきましては、大体今年の十月ぐらいまで待ちますとモンスーンの時期が済みますから、それ以後におきましては安全に所要の物件を先方に持つて参りまして、これを使つて引揚をすることができる、こう考えております。ただこういう起重機船とか曳船とかいうものを曳航しないで現場でやり得る仕事につきましては、この協定が効力を発生いたしましたならば直ぐにでもできるわけでございます。
#160
○佐多忠隆君 そうするとその四十億の経費の予算的な措置はどういうふうになつておるのですか。
#161
○政府委員(大野勝巳君) 平和回復善後処理費の中から支弁いたしたいと考えております。
#162
○佐多忠隆君 それは四十億は今年中に要るんですか。二、三年に亘つてという意味ですか。従つて今年中にはどれくらい使おれる予定なんですか。
#163
○政府委員(大野勝巳君) 今後一、二年に亘ることがあり得ると思います。従つて只今この席では本会計年度中にどのくらい要るかということにつきまして、正確な見通しをつけることができないのを残念に思います。
#164
○佐多忠隆君 それから引揚作業に従事する日本国民の生命及び財産を保護するための適切な措置というのは、具体的にはどういうことを考えておられますか。
#165
○政府委員(大野勝巳君) これは実は日本人であるが故に、フイリピンに作業員が参りまして迫害を加えられたり、被害を加えられたりするようなことをなからしめるという趣旨でございまして、例えば引揚のために潜水夫が海に潜る際に、業務上生じた損害であるとかそういうようなことではございません。例えば潜水の際にふかがやつて参りまして潜水夫を食べたといたしますと、これは本件における生命財産の保障ではなくて、それ以外のことでございます。つまり通常作業に附随する危険というものはこの中に入つていないわけでございます。
#166
○佐多忠隆君 そういう特別にこういうことを規定しなければならないような危険がまだ感ぜられる今のフイリピンの状況から、という意味なんですか。ただ念のために、そういうことは実情としてはないのだけれども、念のために取付けておくというような意味なんですか。どうですか。
#167
○政府委員(大野勝巳君) お答えいたします。もうそういう危険なことは殆んどないと思いますし、対日感情も幸いにして好転しておるようでありますのでその懸念はないと思いますが、念のために規定してある欠第でございます。
#168
○高良とみ君 フイリツピンとの中間賠償協定ができたのには、やはり何かアメリカの特別な政治的考慮の中に入つておるフイリうピンでありますから、アメリカの助力とか助言もあつたのでありますか。それともじかに講和調印前にこういうことを独立的にやつたのでありますか、交渉はまだ講和発効以前の昨年行われたと思うのですが、その点どうなんですか。
#169
○政府委員(大野勝巳君) 高良さんの御質問にお答えいたしますが、本件の交渉に関しましては別にアメリカ側のお手伝いをしてもらつておりません。日本独自の立場で独自の考えで交渉を進めて参り又妥結に到達した次第であります。
#170
○高良とみ君 講和発効前であつた昨年中、こういう努力をされたということは非常に各国の平和條約の推進にいいことだと思うのでありますが、こういう中間賠償協定をほかのビルマ、インドネシア等に対してもなさる自由は持つておれれるか、その点伺ひます。
#171
○政府委員(大野勝巳君) 高良さんにお答え申上げますが、ビルマ、インドネシアとの間にはまだ残念ながら具体的な沈船引揚の交渉はございません。併し近い将来にこれら両国からもこういう線で話合を求めて来る場合におきましては、日本側といたしましてはこれに応じて差支えないというふうに考えております。
#172
○高良とみ君 その求めて来る場合というお話があつたのでありますが、このフイリツピンの場合も多少両方からイニシアチヴをとられたわけだと思いますので、向うから求めて来るよりもこちらからイニシアチヴをとつて、そういう国と賠償なり乃至は講和促進の努力をする意思をお持ちになつておるがどうか、その点伺いたいと思います。
#173
○政府委員(小滝彬君) 外務省といたしましてはできるだけ早くこの問題を解決いたしたい。そうしなければ経済協力ということもできないと考えまして、昨年の末から正月にかけても関係の局長を派遣したような次第でございます。ただビルマとインドネシアのほうは政情も安定いたさないので、今日も実はインドネシアのほうから総理大臣に指名されておつた人が辞退するというようなことも来ておるような状態で、落ちついて話ができないのを遺憾に存じます。併しながらインドシナとの間にはすでにこの交渉を開始いたしておるような次第でございますので、漸次これを各地域に及ぼしたいという方針でおります。
#174
○委員長(佐藤尚武君) 速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
#175
○委員長(佐藤尚武君) 速記を始めて下さ。
#176
○佐多忠隆君 その沈船引揚は、今のお話ではインドシナとは現にやつておるということですが、それ以外に交渉しておる所がありますか。
#177
○政府委員(大野勝巳君) 佐多さんにお答え申上げますが、それ以外の所では進んでおる所はございません。
 只今御答弁申上げましたが、補足いたしますと、インドネシアに関しましては、二隻だけに関しまして、すでにコマーシャル・ベーシスで引揚についての私契約が成立しておるのがございます。それは併し政府間のものじやございません。従つて賠償の問題ではございません。
#178
○佐多忠隆君 台湾なんかにはないのですか。
#179
○政府委員(大野勝巳君) 台湾は賠償を放棄いたしておりますから自然問題が起らないわけでございます。
#180
○佐多忠隆君 沈船はあることはあるのですか。
#181
○政府委員(大野勝巳君) どうも今日まで余り聞いておりませんが、次回までにもう少し運輸省あたりに当りまして調べて参ります。
#182
○委員長(佐藤尚武君) 本日は沈船に関する質疑をこの程度でとどめておきたいと思いまするが御了承を願います。
 ちよつと速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
#183
○委員長(佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。
 それではこれで本日は散会いたします。
   午後五時二十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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