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1953/07/10 第16回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第016回国会 経済安定委員会公聴会 第1号
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1953/07/10 第16回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第016回国会 経済安定委員会公聴会 第1号

#1
第016回国会 経済安定委員会公聴会 第1号
昭和二十八年七月十日(金曜日)
    午前十時四十三分開議
 出席委員
   委員長 佐伯 宗義君
   理事 小笠 公韶君 理事 武田信之助君
   理事 栗田 英男君 理事 阿部 五郎君
   理事 菊川 忠雄君 理事 加藤常太郎君
      秋山 利恭君    岸  信介君
      迫水 久常君    西村 久之君
      楠美 省吾君    飛鳥田一雄君
      石村 英雄君    小林  進君
      杉村沖治郎君    中村 時雄君
      山本 勝市君
 出席公述人
        全日本中小工業
        協議会副委員長 中島 英信君
        経済団体連合会
        常任理事    福島 正雄君
        日本鋼管株式会
        社鶴見造船所勤
        労部長     武藤 忠敏君
        小間物化粧品小
        売組合全国連盟
        理事長     小宮山泰三君
        全日本労働組合
        総同盟中央執行
        委員      重枝 琢巳君
        日本鉄鋼連盟会
        長       渡辺 義介君
        北海道大学教授 今村 成和君
 委員外の出席者
        専  門  員 円地与四松君
        専  門  員 菅田清治郎君
    ―――――――――――――
本日の公聴会で意見を聞いた事件
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
 律の一部を改正する法律案について
    ―――――――――――――
#2
○佐伯委員長 これより経済安定委員会公聴会を開会いたします。
 本日の問題は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案についてであります。
 この際、本日御出席の公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。御承知の通り、ただいま本委員会におきまして審査中の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案は、経済憲法とも言われる重要法案であります。よつて本委員会といたしましては、広く各界の利害関係者及び学識経験者各位の御意見を聴取いたし、本案審査を一層慎重に取扱いたいと思います。各位の豊富なる御意見を承ることができますれば、本委員会の今後の審査に多大の参考となるものと期待いたす次第であります。公述人各位におかれましては、その立場立場より忌憚なき御意見の御開陳をお願いいたします。本日は御多忙のところ貴重なる時間をおさきになり、御出席くださいまして、委員長といたしまして厚くお礼申し上げます。
 なお、議事の順序を申し上げますと、本日御意見を述べていただく方々のお名前は、お手元に配付してあります印刷物の通りでありまして、発言の順位等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。公述人各位の御意見を述べられる時間は、大体二十分見当にお願いいたしまして、御一名ずつ順次御意見の開陳及びその質疑を済まして行くことにいたしたいと思います。
 なお、念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることになつております。また発言の内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならないことになつております。なお、委員は公述人に質疑をすることができますが、公述人は委員に対して質疑をすることはできないことになつておりますから、さよう御了承願います。
 それでは中島英信君より御意見をお聞きすることにいたします。中島英信君。
#3
○中島公述人 私全日本中小工業協議会の中島であります。本日の問題になつております私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の改正に関する意見を申し述べたいと思います。
 これにつきましては、部分的には賛成いたす点もございます。しかし主要なる点については反対の意見を持つておるものであります。部分的にと申しますのは、たとえば事業者団体法を廃止して、これを独占禁止法に吸収するというようなことは、この法案の性格、内容から見て、これは当然のことではないかと考えております。なお再販売価格維持契約を認めるというのがございます。これには若干問題もあるかと思いますが、大体この問題は主として連関するところが中小企業の分野に属する問題であります。従つてこれは特定の製品につきまして、その製造業者も比較的中小の企業であり、かつこれを販売し、また特に末端においてこの小売を行つておる者が零細な企業である場合においては、これらの企業の経営を著しく困難に陥れないために、適当な措置がとられなければならない場合がしばしばあるのでありまして、たとえば化粧品雑貨のようなもの、あるいは薬品等のようなものについて、こういうものを見ることができると思うのであります。ただこれにつきましては、本日後ほどこの問題について、最も利害関係の深い小間物化粧品小売組合全国連盟の小宮山さんから御意見があると思いますから、私はこれについては深く申し上げません。しかしこれらは、ことにこれらの特殊の品物の末端の販売業者は、中小企業というよりも、場合によつては零細企業ともいうべき非常に極小の規模のものが多数ありまして、これらがはなはだしい濫立競争の中に置かれる場合には、結局その経営の破綻を生じ、同時にこれはその生活にも影響する問題であるという意味において、普通の場合と異なる意味を持つておるものでありますから、これらについては改正もまたやむを得ないかと考えておる次第であります。
 なお主要な問題と申し上げましたのは、たとえば今度の改正案によりますと、不況カルテルを認める、あるいは合理化カルテルを認める、その他金融会社その他による持株の保有を認める、役員の兼任を認める、あるいは不当なる較差を持つている企業に対する制限等に対しても、これを廃止しようとするというようなことになつております。これらは現在の日本の経済状況から見まして、また特にこの独占禁止法の本来の精神から見て非常な問題があるとわれわれは考えている次第であります。一面において賛成する点もあり、一面において反対する点もあると申し上げましたが、そういうわけで主要な問題については、反対の意見を持つておるものであります。
 その根本の趣旨は、言うまでもなく、この独占禁止法の根本精神というものを、依然として一貫して貫ぬいて行かなければならないというふうに私らは考えておるのであります。改正の提案理由の中にも「もとより、国民経済の民主的で健全な発達を促進するため、私企業による市場独占のもたらす諸弊害を除去し、公正かつ自由な競争を促進しようとする独占禁止法の根本精神はあくまで尊重すべきものであります」ということが唱われております。この点は当然こうなければならないと考える次第であります。ただこれが、現在の実態に即して若干改正しなければならぬというような趣旨であるようですけれども、この場合の改正といわれておるものは、実際には非常に大きな改正であつて、これによつて独占禁止法というものは骨抜きになる危険性があるのではないかというふうに考えるわけであります。独占禁止法が現行法のままである場合においても、実際において、最近は独占の傾向が非常に強くなつて来ております。従つて、もしもこの法律の根本精神をあくまで尊重するということであるならば、緩和するよりも、むしろ強化しなければならないと考えられるのであります。それは今申し上げましたように、現在事実においてこの独占禁止法の適用については、その実際的な効果において、かなり問題があると思うのであります。独占禁止法の本場であるアメリカにおいても、その法律の効果というものは、実際において必ずしもねらつておるほどのものは上げていないようでありますけれども、わが国においても、この点は同様であるかと見るのであります。たとえば昨年紡績の操短問題などが起りまして、これは実際上やはり一種のカルテル行為が行われたのであつて、ただ形式が行政官庁の勧告という形式をとつておつた。こういつたような形をとつて、実際上においてはこの独占禁止法の精神に反するような行為が行われておる。これは必ずしも紡績だけに限らず、巨大な企業が中心となつておるところの産業部門においては、しばしば見るところであるといつてよいと思うのであります。すなわち非常に大きな力を持つているところの産業部門あるいは企業というものは、経済力が強いと同時に、また政治的な力も強い、従つてそういう行政官庁その他との接触を通じて、実質的に同じような効果を上げるためのいろいろな活動をすることが実際上できるし、また行われているというふうに見られるのであります。それであるならば、むしろこれを廃止したらいいかというと、そういうわけにいかぬことは先ほど申し上げた通りでありますので、この際こういう実態から見て、緩和するというよりも、むしろこの点について逆の方向に考えなければならぬときである、かように私は思つているわけであります。
 独占の弊害というものについては、特に私がここで申し上げるまでもなく、委員の各位は十分に御承知のことであると思いますので、これについて多く言葉を費やす必要はないと思うのでありますが、現在の日本の経済状況から見まして、企業の合理化、それから国際的に割高になつておる物価の引下げ、それから中小企業の安定をはかるということ、これらは非常に重要な問題であると考えております。こういう状況において、もしもカルテルを認めることになりますと、実際においては第一番には合理化の努力がかえつてはばまれる、つまりカルテルによつて価格が維持され、かつ場合によつてはこれが引上げられるというように、きわめて安易な方法によつて行われ、その結果は現在非常に必要としているところの個々の企業における合理化というものが、かえつてこのために阻止される傾向を生ずると思うのであります。同時にこれは、物価の引下げを必要としている現在の日本の情勢において、逆にこれを引上げて行くような役割も果すことになつて参ります。従つて現在の日本の経済にとつて非常に重要な輸出の振興という問題においても、こういう物価高の面から、この輸出の振興がはばまれるという問題も出て来る。こういう点から見まして、日本の現在の経済情勢から見た場合においても、決してこういうようなカルテル行為を認容すべき状況にはないと考える次第であります。
 第二番目に、これによりまして中小企業への、あるいはその他関連産業への、また一般国民の消費生活への圧迫が非常に強くなるという事態を生ずるわけであります。この場合一番問題になりますのは、原料を大企業を主としたところの産業部門が供給しておつてこれを使う方が中小企業を主とする産業部門である、こういうような場合には、この二つの産業間において非常な力の差を生じて来る、そうして中小企業の方は非常に高い原料を買わされる、しかも不況カルテルをつくらなければならぬということが言われるような状況のもとにおいては、一般に購買力が減少しておるときである。従つて小売価格の面においては、その面の圧迫を非常に受けるわけであります。従つて一方から言うと、これはできるだけ安く売らなければならぬというような立場に迫られておる反面において、原料の面において非常に高いものを買わされることになる。これは中小企業の経営を圧迫することになるわけであります。御承知のように、中小企業が日本の経済に占めておる比重は非常に高いのでありまして、その企業数において九九%に及んでおり、その生産額においても六〇%以上に及んでおるわけであります。こういつた中小企業に対する影響が非常に大きいということは、単に中小企業だけの利益という立場からではなしに、日本の国民経済の全体的な安定という立場から見ても、そういつたような状況を引き起すことは望ましくない、かように考えるわけであります。
 さらに根本的に考えますならば、現在の日本の経済の構造というものは、非常に敢行的な形になつて来ております。たとえば賃金などを見ましても、大企業の平均賃金に対して中小企業の平均賃金というものは半分以下である、こういうような状況である。こういうふうに非常に大きな差を生じて来ておる。つまりある特殊の部門において産業はますます大きく発展し、ますます高い利潤を上げて行く一方において、その経営がますます困難なつて行くところの産業部門がある、こういう関係になつておる。こういつたような不均衡な状況を生ずることを、実際においては是正するような経済政策をとらなければならないと、かように考えるわけであります。この独占禁止法の根本の精神は、おそらくこういうような較差のはなはだしい、均衡のとれないような経済状況を生じないために、自由で公正な、ほんとうに均衡のとれた経済関係をつくり上げて行くということが、この法律の根本の精神であると思います。その精神に照して、当然にそれを危険に陥れるような行為を認めるべきではないということになると、私は考える次第であります。そのような傾向をもしも続けて行きますと――現在そういう傾向にあると見ていいのでありますが、もしもこの独占禁止法が緩和されるということになりますならば、その傾向にますます拍車をかけて行くということになつて来るわけであります。そうなれば、当然に日本の経済はますますその欠陥を大きく表へ現わして来ることになると思います。
 最近世界的に問題を起しました東独その他ソ連衛星国における暴動の問題がありますが、あれにはいろいろ原因があると思いますけれども、非常に性急な重工業政策、またあの場合には私的独占ではないかもしれませんけれども、企業の集中独占を非常に強化して行く、そうして中小企業を非常に圧迫した。こういうことにおいて、労働者その他の反抗が非常に増大したという点を見ることができると思うのであります。そういう意味においても、単にそういつた共産主義諸国のみならず、その他の諸国においても、私は事態は同様であると思うのであります。いたずらに重要産業第一主義、そして企業の集中、独占をどこまでも助長して行く、そして中小企業の没落をむしろ促進して行こうとするような傾向をとることは、決して国民生活の安定をもたらすものではないと考えるわけであります。
 こういう観点から、私は基本的に、今日の経済の根本的な方向という点から見ましても、われわれはその方向をもつと安定的な、もつと平和的な、もつと均衡のとれた構造に持つて行かなければならない。こういう方向において初めて、中小企業も安定した企業経営を行うことができると考えるわけであります。以上のような観点から、私はこの改正には賛成いたしかねるのであります。ことに、この私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の改正と関連して、輸出取引法の改正も今度の国会に上程されるようであります。これは一面において輸出の促進ということを自的にされておりますけれども、同時に関連して、輸出業者以外の取扱い業者、場合によつたらメーカーのカルテル行為も認められようとしておる。当然輸出の割当というような問題は、国内に対する割当も伴つて来るわけである。従つて一方において輸出振興といつた美名のもとにおいて、国内向けの生産及び販売等の面においても、特殊の新しい問題を生じて来るわけであります。こういう関連した行き方によつて、日本経済がむしろ望ましくない方向に向うことになるのではないかと考えるわけであります。以上のようなわけでありますので、カルテルを認める――不況カルテル及び合理化カルテルに限定されてはおりますけれども、こうしたカルテルを認めようとすることには反対であります。
 特に品種制限の協定なども認められるようでありますけれども、こういうことをすれば、当然鉄鋼業が――きようは鉄鋼業関係の方もおいでになるようでありますから、あとで反対の意見もあると思いますけれども、おそらくそれぞれの部門の中において独占が確立されて来ることにならざるを得ないと思うのであります。
 その他金融会社の持株の制限も緩和されることになつておりますが、これなども当然現在問題になつておりますように、いろいろな産業会社に対する金融機関の力というものをさらに強大にして行く。ある程度避けがたい場合があるかもしれませんけれども、はたしてそういう傾向に向わして行くことがよいかどうか、これも非常な問題であります。
 なおトラストの予防のために、役員の兼任禁止その他の規定がありますけれども、これを省いてしまうことによつて、カルテルの後にはトラストの形成を助長して行こうとする意図が、この中に現われているという点についても問題であります。
 さらに不当な事業能力の較差を持つた企業の制限に対する項目は、今度廃止されようとしておりますけれども、先ほど申し上げましたように、はなはだしく経済力の違つたものを、その差をますますはげしくして行こうとすることは、決して望ましいことではないと考えるわけであります。
 以上申し上げましたような点から見て、私は逆にこの際むしろ、強化が必要であるくらいに考えるのでありまして、そのためには現在の独占禁止法の中において、たとえば公正取引委員会の権限をさらに強化するとか、あるいはその他の方法をもつて、むしろ現在やや有名無実――とまでは申しませんけれども、非常に効果が疑われておるようなこの法律を、もう少し適正に、もう少し強力に実施される方向に持つて行かなければならないと考える次第であります。
 簡単でありますが、私の意見をこれで終りたいと思います。
#4
○佐伯委員長 以上で中島君の御発言は終りました。これに対する御資問はございませんか。――御質問はないようでありますから、次に福島正雄君。
#5
○福島公述人 私、経済団体連合会の福島であります。この独禁法の改正をめぐりましては、私どもはいろいろと意見の開陳をして参つたのでありますが、総論的なことは省きまして、今日法律改正原案が出ましたので、原案につきまして私の意見を申し上げたいと思います。
 第一は、解説資料を拝見いたしますと、私どもが心配しておりましたことが出ておるのであります。法文の内容からこれを申し述べるならば、私どもは共同行為は届出主義でよかろうということをかねがね主張して参つたのでありますが、改正原案は認可主義になつております。これは御心配の点も多多あろうと思うのですが、その根本はやはり共同行為というものには必ず弊害が伴うという前提であろうかと思います。この解説資料の十一ページに「戦前の日本経済は他国にその類例をみない程独占集中が進んでいたといわれながらも、またその半面、常に苛烈な競争が行われていたことも事実である。すなわち零細過多の中小企業相互間においては、経済的合理性を無視した生存闘争的競争が行われ、また一方、財閥企業相互の間においても、一般国民の福祉をかえりみない、政治的利権をめぐる激しい競争や中小企業を犠牲にした不当な競争が闘わされていた。「公正かつ自由な競争」の理想とはほど遠い、このような不公正かつ不健全な競争や取引のもたらす弊害は、戦後とくに最近の不況下においても随所に看取せられる」こういう御見解が出ておるのでありますが、共同行為に弊害なしとは思いません。しかしこれは、バランスの問題であつて、自由競争にはやはり当然弊害が伴う、その弊害と、共同行為によつて起る弊害と、現在の経済状況においてどちらが忍ぶべきかということから始まつて来ると思うのであります。御承知の通り、戦前においては手放しで共同行為が許されておつたのですが、そのときの弊害、それから戦後日本が非常な広い勢力範囲を失つて、内地において非常にめんどうな仕事の逃げ場、企業の逃げ場を全然失つてしまつた今日、そして戦後企業許可令が撤廃されまして、自由自在にいかなる工業も、いかなる企業も、いかなる商業も、当時の物資寡少という状況からして、無計画にでき上つたそのしつぽを受けておる今日、随所にいろいろな自由競争が不正競争にまで発展した事実がかなりたくさんある。そのためにやはり生存的な闘争、いわゆる血で血を洗うような競争が随所に行われておる。その結果がやはり最近の不渡り手形の続出というようなこと、また不正金融にたよらざるを得ないというような状況になつてここに現われて来ておるのであります。それで独占禁止法の施行がありましたので、極端な企業集中あるいは独占ということが行われておりませんが、それがゆるめば多少それが形に現われて、弊害がふえるということは理論上は認められますが、その弊害と、今日の状況において生産設備が非常に多い。業者の数が非常に多い。市場が非常に狭くなつたという状況において、どちらの弊害が多かろうかということを私どもは必配するのであります。さようなことでありますので、現在の企業形態の非常に弱化したことを、もう少し力をつけるという意味で、共同行為を少し広く認容したらどうであろうか。そのためには認可制度よりも届出制度がよかろう、こういう主張をして参つたのであります。また共同行為を主張する基本的条件は、やはりこの買手市場の場合、つまり供給過多で需要が少いという場合に、何か談合しようじやないかということが起るのです。売手市場の場合は、何も相談して売らなくても、何ぼでも独占的利益らしきものが得られるのだから、共同行為には行く条件がない。供給過多であつてお互いに安売り競争が始まつて、これではどうにも立ちて行かないから、みんなで相談して、何とかここで生産制限というふうなこともやらざあなるまい。そうしてまず損失しないようにしようじやないか。できれば多少利息ぐらい払えるようにしようじやないかということから始まるのが、現在の共同行為の大きな素因であります。そういうふうな状況において、認可という非常に慎重な条件で共同行為が許される手段は、商機を逸するという点が私は非常にあると思う。そういうことよりも、弊害が起れば、この法律原案にもありますように、主務官庁にしろ、公正取引委員会にしろ、その弊害を除去するために共同行為を排除するということが当然できるのでありますから、ぜひともこれは今日、この独禁法が緩和されようということが、大体の空気であり、社会通念の大部分であるとするならば、むしろそこまで行つて、弊害が起つたらこれはとめる。起るであろうから初めから非常にきびしくするということは、現在の状況からして順序が誤つているのじやないか。私、業界において約三十数年の経験からいたしまして、戦前において共同行為が無条件に許されましたときでも、なかなかこの共同行為というものがうまく行かない、相談して販売協定、価格協定をしても、すぐそのうしろからその値くずし、あるいは下をまわつて自分だけ先に物を売ろうというふうな気分が非常に強い。これはどうも日本人の非常に勉強し過ぎるという根本的な国民性によるのかもしれませんが、さような事態を自分みずから親しく体験して来たのであります。戦後においては共同行為が非常に制限されておりますので、そういう事態をあからさまな事実として私どもは見ることができませんけれども、なかなかこの点は、よしんば一部で御心配になるように、共同行為の制限がゆるんだ場合に、非常にこの効果がただちに出て、そうして独占価格に類するような状況が露呈されるとは私考えないのであります。先ほど申し上げましたように、業者が非常に多い、生産設備が大体過剰であるという現状においては、そういうことはなかなか起らないと思う。今日の経済状況、生産状況から考えてみて、ただ抽象的な議論からいたしますと、共同行為というものがあるいはそういうふうな弊害をのみ伴うかもしれないが、現在の日本の産業構造から見て、そういう心配が非常に少い。むしろ自由競争が不正競争にまで至るであろう。そしてそういう事態がたくさんあるために起るお互いの血みどろの競争から起る弊害の方が多いのであろう、こういうふうに思うのであります。ただ原案がここまで進行て参りましたから、まず私どもとしては、第一歩という考えから、認可ということにおいてまず進んでいただきたい、こう思うのであります。その認可につきましても、先ほど申し上げましたように、不況カルテルの場合が大体共同行為としては多かろうと思いますが、やはりタイミング々見て、早く時宜に適した活動を必要とする関係上、二十四条の三におきましても二十四条の四におきましても、公正取引委員会の認定という問題がついております。かようかような状況に合つておるか合わないかを公正取引委員会が見て、そしてこれをきめるということになるのでございます。それはおそらく、私が心配しまする経済事情に即応するという手段を非常におそめる効果がある、こう考えます。従つてこの認定の条項はとつていただきたい、かように主張したいのであります。ということは業界あるいは企業の実体というものは、主務官庁が毎日取組んで、そしていろいろな行政措置もされるし、行政指導もされるし、またそれらの輸入原材料についての為替の割当とかというふうなことも、毎日親しくこの企業について見ておられるのであります。従つてさような共同行為が一般にどういう影響があるか、消費者の関係がどうなるか、あるいは行き過ぎはしないかというふうなことは、当然主務官庁ではつきり御認識ができるはずであります。しかもそういうカルテル、共同行為をなすべき必要性からいつて、即応の措置をしていただきたいという見地から、この二重チェック制度を一重にしていただきたい。しかも事業活動に密接な関係があり、かつ当然の責任がある主務官庁においてこれを認可していただきたい、こう主張しるのでございます。
 あとは不況カルテル、二十四条の三及び合理化に関しまする二十四条の四、これの条文の内容を拝見いたしますと、相当詳しく出ておりますが、これを実際に適用なさる場合に、この字句にうまく当てはまるかどうかということが、多少不安心であります。私どもはこの不況共同行為というあるいは合理化共同行為というようなものに、うまくその事態が当てはまるかどうか。またそれに当てはまらぬで、やはり共同行為を必要とする事態が起りはしないかということを非常に心配するのでありまして、それが広く届出制度にしたらよかろうという論拠の一つでありますが、せつかくここまでこまかく気を使つていただきまして、この前の国会に出べきであつた原案から見ますと、今度の改正案がさらに多少修正され、拡大されておりますので、一応これでひとつやつてみようじやないかという考えを持つておるのであります。
 それから共同行為の内容でありますが、以上のような理由からしまして、企業の安定性ということを考えまする場合には、主要原材料あるいは燃料等の共同購入というふうな問題あるいは主要原料の共同輸入というような問題が当然考えられて来るのであります。そうして戦前におけるこの輸出入は、内地において失うことがなくて、外部に対して利点を主張することができる唯一の方法であろうと私は確信しておるのであります。私は昭和八年から五、六年の間共同販売会社の支配人をいたしておりましたが、輸出の共同については非常に国益になることを確信しておる。現在米の輸入あるいはその他の物資の輸入について、非常にまずい状況があることは御承知の通りであります。これは現在戦後の商社の海外における組織が、講和条約ができないとか、通商航海条約ができないという点からしまして、活動が非常に制限されておることは事実でありますが、それにしてもあまりにまずすぎる。それはやはりこういうふうな共同行為が輸入の面についてうまくできていない。それは内外において得るところがあるし私は確信しておるのであります。輸出においてもやはり同じようなこと言えるので、くどくどしく申し上げませんが、できますならば原案のうちにかような解釈のできまするよう、あるいは積極的に輸出入に関する共同行為ができるように願いたいと思う。但しこれは輸出組合法が、おそらく輸出入組合法となつて不日上程されるのではないかと思つておりまするので、多分その面においてこの私の心配が、この私の希望が入れられることと信じおりまするが、万一その法案がその目的を達するのに不十分でありましたならば、たいへん遺憾と思うのであります。そういう御準備がこの独禁法において御考慮願いたいと思う。現在の法案においてはただ、くず、発品等についての共同行為が許されておりますが、どうか主材料の共同輸入に関しまする共同行為等に拡張されることを希望してやまないのでございます。
 その次は国際カルテルの問題でありますが、これは日本の置かれておりまする国際的地位が弱いので、大体諸外国の都合のいいことを日本に押しつけられる心配が非常にございますので、国際カルテルに入つてはいかぬという独禁法にありますることが、おそらく大部分の場合いい口実になるであろうと私は存じまするが、しかしそういう悪い面ばかり考えておるわけに行かない。だんだんに通商航海条約ができます。また世界的な朝鮮ブームによります買いあさり傾向が鎮静しましたとき、やはり世界の商況が非常に下向きになつている。海上運賃なんかがその最も顕著な例でありますが、そういうときに、やはり場合によつては国際カルテルに入ることが日本の経済に有利であるという状況が起らぬとも限りません。従つて事後三十日以内に届け出ろという条文になつておりますが、やはり事前に相談をして認可を得て入ることがどこかに許されるということを希望しておるのでございます。
 最後に再販売価格維持制度について一言したいと思うのでございます。再販売価格を維持するということの必要性はごもつともであります。ことに法案に出ておりまするような業態において、この必要が非常にあるということは私も同感でございます。従つてこの面について、この原案が配慮を払われなさつたということは非常にけつこうなことであります。ただ私が多少疑問に思いますことは「第一項又は前項に規定する販売の相手方たる事業者には、左に掲げる法律の規定に基いて設立された団体を含まないものとする。」こういうことが書いてあります。そして公務員以下十一の、法律に基きまする組合がありますが、これはこの規定に入らないのだ。これも一応ごもつともであります。こういうふうな一種の国家公務員関係が組合員として組成しておりまする購買組合――平たく申せば購買組合が、集団的に日用品を買い入れる。売る方は販売経費が少くなるのだから安く売る、これは当然のことだ。それで安く買うのも当然だと思う。ただそれを購買組合において安く買つた。仕入れに当然の組合経費を加えて安い値段で売るということが、組合員内だけでありますならば、その周辺にありまする小売商に対する影響はまあないと一応言つてよろしいかと思いますが、もしもその購買組合がなければ、その購買組合の組合員というものは、その辺にある小売商から物を買うのであろうと思います。従つて購買組合ができれば、従来期待しておつた顧客を小売商が失うということは当然なことであります。ただこういう組合員が、そういう組織におきまして安いものを買うということは、一応認容されるのでありますが、法文におきまして多少疑問もあるのですが、以上のような購買組合が町の小売商と同じような営利を目的とする事業者であるかどうかということを、私は多少疑問を持ちます。そういうこまかいことは申し上げるまでもないのでありますが、できればその際に、各購買組合が市価と同じ値段で一応販売して組合員にわけてそうして年に一回、二回決算をしたときに、配当金として組合員にもどすという制度にしていただいたなら、じかに周囲の小売商に対する悪影響がなくて済むのではないかと思います。もつと厳格に見ますれば、なぜそういうことが起るかというと、購買組合の事業所に購買組合員だけ入れる。そういうところもありますが、少し大きな組織になりますと、りつぱな店舗を持つて商品を扱つておる。中にはそういう多量仕入れによる安値で仕入れるということもできない商品もありましようが、組合員以外の人がそこに買いに入るという場合もまま見かけるのであります。それが結局周囲の事業者に対しての悪影響があるので、この辺から反対が起つておるのであります。でありますから、かような特段の措置がされるという理由は私はよくわかりますが、同時に他の周辺の小売商に対する犠牲においてそれがなされるということは、何とかこれを制禦をしていただきたい。そういう考慮を法律の上で払うという必要まであるかどうかは私ここで申しませんが、この実施にあたりまして、さような考慮が払われることにおいて除外例が認容されたのであろうと存ずるのであります。
 その他にわたりまして多少申し上げたいこともありまするが、かねて私どもはいろいろな方面に意見を出しておりますので、冗長にわたりますことを避けて、以上の点で私の見解の公述を終ります。
#6
○佐伯委員長 以上で福島君の御発言は終りました。これに対する御質問はありませんか。
#7
○中村(時)委員 非常にりつぱな御意見だと見る人が見れば想像できるのですが、通産大臣でもいらつしやつたら、小おどりして喜ぶだろうというような御意見ですが、まず第一番目にお聞きしたいと思いますことは、今の認可権、認定権の問題です。
 あなたのおつしやるお話では、認可権を通産省に持つてもらうことがよろしい。すなわち通産大臣が認可権を持つことが最もよいというお考えのようであります。ところがもしその通産大臣が認可権を持ちますと、一般の、特にあなた方の経済団体などは非常に通産省との関連が多いので伺うが、おかげさまをもちまして、通産省は各省において最も大きな涜職事件を起しておる、そういうふうなりつぱな通産省にこの認可権を与えるということが、ほんとうに正しいかどうか。またもう一つは、通産省に認可権を与えますと、その行政機構と関連いたしまして、今度は、もしかりに公正取引委員会においていろいろな相反する問題が起つた場合において、これを取締り、あるいはこれに何かの方法を講ずるだけの権力もなければ、何もないのであります。だから通産省の思い通りになると私は考えるのですが、このことに関して、あなた方はどういうふうにお考えになつていらつしやるか、これが第一点。
#8
○福島公述人 今の御質問は、経済団体連合会が通産省と非常に密接な関係があるということと、通産省に涜職事件がたくさん出たということと何か因果関係があるように――私の耳の違いかもしれませんが、さように聞えたのでございますが、それはなかろうと私は信じております。
 それから通産大臣だけが認可権を持つておりますと、弊害が起りそうなときに、それを見込んで通産大臣が認可してしまうのではないかという御心配のように聞えたのですが、その見解は、私が先ほど申しましたように、共同行為というものは、形はできましてもその効果を現わすことが非常にむずかしいような現在の経済機構であるがゆえに、私はむしろ進んで認可したらよかろう、こういうのであります。そして公取の監査権といいますか、監督権といいますか、それは当然この法律の中に書いてある、それを抹消しようというのではございません。スタートするときにまず始めさしたらいいじやないか。そうしてことに共同行為は不況時に必ず起りますので、それに即応の措置をしないと、結局いつまでもぐずぐずしていれば、傷がだんだん深くなり、せつかくの親心がむだになるということなのでありまして、弊害が起つても知らぬ顔をしておるということではございません。公取は当然の権眠を持つてその弊害を除去することは、この原案に書いてある。そういう意味で、私は認可にあたつては一方的でいいじやないか、こういうことを申し上げたのです。
#9
○中村(時)委員 あなたのお考えによれば、昔はそういうことがあつたかもしれませんが、今言つた二十四条のあなたのお話の、たとえば合理化カルテルにいたしましても、あるいはその他の生産カルテル全部を含めまして、一つの価格の維持――要するにカルテルの定義というものは、コストを引下げるという意味ではないので、価格を維持することであり、もう一つつ込んで言えば、価格をつり上げることで、これは事実操短の上において出て来ている。そうしますと、何も認可権が通産省になくても、事実操短をやつている。十大メーカーを中心にして新紡、新々紡をアウトサイダーにして、これをやらなければ原綿の割当をお前たちにやらぬと言つている。認可権がなくても事実の上においてはこれほど行政機構は強いのです。だから、あなたのおつしやるように、法案では幾らでもできる、口では幾らでもできるが、公正取引委員会が事実やつたためしがあるかというと、ほとんどありはしない。これが事実です。そうしますと、今言つたように、この合理化カルテルで、あなたのおつしやつたような考え方と現実との食い違いが非常に起つて来る、これが第一点。その一つの証拠としまして、たとえば砂糖においてもそうです。消費量を昭和九年、十年、十一年と現在と比較してみますと、現在十キロだ。これはその当時の消費量を現在に当てはめてみますと、わずか七〇%ちよつとしかないのです。実際にそうかと思つて、それなら砂糖はどんどん輸入せんければならぬと思うと、そうじやない。輸入の制限をしてくれと、農林省に、あるいは通産省のわくの問題もありますが、そうやつて一生懸命に陳情しているのです。それじや実際に少くなつているかといえば、そうじやない。昨年度が八十七万トンで、今年度は通産省のわくと昨年度の繰越しを入れて、大体同様なところぐらいまでとれるにもかかわらず、価格だけ上つて行く、これはどういうところに原因があるのか聞きたい。特にあなた方エキスパートはよく知つていらつしやると思うから、この点をお聞きしたい。
#10
○福島公述人 今原綿の割当という問題についてのお話がありましたが、これは通産省が割当権を持つておられて、それを指導されておる、これは独占禁止法の共同行為に基く行為ではないと思います。不況カルテルは、この原案にありますように、非常に売れ行きが悪くなつて、需給の関係が悪化し、経済が持てなくなつて来たという場合に、生産制限、設備制限、価格協定をしてよろしいということなんです。これはいかに通産大臣といえども、この字を読みかえることはなさるまいと思う。その場合に、どういう実態にそれが当るかということは、これは判断でありますから、今あなたがおつしやつたような事実がこういう事態に当つているかどうかは、私がここでお答えすることはできないと思います。そういう事態が起るであろう、また所在に起つている、それが心配だから、この共同行為をここまで広げようじやないかということが原案だと思うのであります。私どもはこれではまだなまぬるいと思いますが、とにかく原案の意味は、私はそう読んだのであります。
 今御指摘の砂糖の問題あるいは新々紡の問題ですが、砂糖は一時非常に高いものが入つて来たということを私ちらつと聞いております。それは必ずしも業者が無理に高く買つたわけでもなかろうし、その買入れについてまずい点もあつたかと思いますが、これは国際価格によつて左右されることであります。それから昭和八年ごろの供給量と今日の供給量について、今数字的なお話がありましたが、私はその数字を今ここでかれこれ申し上げる資料を持つておりませんので、何ともお答えいたしかねます。それは原価が必ずしも売値に因果関係を持たぬと言われるかもしれませんが、それは商売の力関係といいますか、自由経済でやつておりますから、それが独占的であるならどうもいたし方ないと思いますが、その点は私ちよつと答弁に窮しますけれども、不況カルテルの事態というものはどうしてもそこから来ている、原価を切つて売らざるを得なくなる。あるいは得なかつたという状況から発足していることは、どうしても認容しなければならぬと思うのであります。その辺でおわかりかと思います。
#11
○中村(時)委員 今のお話を聞いておつても、砂糖のことなんか何にもわかつていないけれども、一つお聞きしたい。台湾製糖はやはり経団連に入つておりますか。
#12
○福島公述人 入つていると思います。
#13
○中村(時)委員 それでは砂糖のことをお聞きしてわかりますか。
#14
○福島公述人 私にですか。――私は今ここに知識を持つておりません。
#15
○中村(時)委員 これは、砂糖は甘いけれども、あなたの考えているような甘いものじやありません。だから、そこまで御発表なさるなら、もう少し辛いところをよく調査しておいていただきたい。
 次に、そういうふうなカルテルが結ばれた場合、要するに今言つたように、維持をするということが中心になる。そうすると、国際価格と国内価格とが非常に違つて来る。今幸いに紡績の問題を取上げましたが、たとえばその価格は、現在御承知のように、国内においては、あの操短をやつたおかげで十万円前後になり、国外は七万円前後、そういたしますと、これは特にドル資金の必要があるというような仮定に立つた場合には、どうしてもこれに対する二重価格制度のようなかつこうになる。ちようど肥料もそうですが、そういたしますと、次に来るのは、ドルを無理にかせがなければならぬから、そこにおいてまた昔のダンピングのようなかつこうが出て来る憂えがあるのではないかと思うが、経団連はそれらに対してどういうふうにお考えになつておりますか。
#16
○福島公述人 今のは紡績関係の国内価格と輸出価格との関係についての御質問と思いますが、不幸にして原綿の割当といいますか、その点があるので、多少自由でありませんものですから、話が少し固くなると思いますが、現在では国内市況というものは大体国内の購買力に応じて行つております。これは御質問からはずれるかもしれませんが、ビールにしろ、絹織物にしろ、内地の購買力が割合旺盛でありますから、当然輸出に出るべきものが出ていない。むろん輸出価格が国内価格より安いという点があります。しかしそれはあまり出ておりません。それと同じような状況が紡績にもありますが、それはある程度従来の大きな流れといいますか、市場といいますか、それを維持するために、今都合が悪いから輸出をとめる。さあ今度は引合つて来たからすぐ出そうといつても、海外市場というものはそう日本のかつてになるものでありませんので、やはり売りつないで行かなければなりません。そういう意味合いで、海外市況と内地の市況とは当然の因果関係はないと私は考えます。その輸出をどうしたら海外相場に合うかということは、内地のコストを安くするということが一番大切なことであります。
#17
○佐伯委員長 ちよつと御注意を申し上げますが、公述人に対する御質疑の内容は、この独禁法自体の解釈にすぎないのでありますが、ただいまの御質問は、担当者に対する御質問のような内容になつておりますから……。
#18
○中村(時)委員 今言つたように、いろいろ研究もされ、提案もされ、そのおかげで自由党が出してくれているのです。そうでしよう。そうすれば、その実態をよく知つてもらわなければいかぬ。知つてもらつた上でそれを締めくくつて、それがいいか悪いかの判断をつけなければならぬ。そうしてこれが悪いと思つたら、運動してもらわないようにしなければいかぬ。そういうことをあなたが運動したとおつしやつているのです。今まであつちこつちで研究し、それをどこへ持つて行つたか知らぬが、うちの方には来なかつたから、おそらく自由党なり官庁に持つて行つて運動されたのだと思うのです。それがいけないならいけないという結論がつければ、やめてもらわなければならぬ。だからそういう質問をしているのです。
 それで最後に一つお聞きしたいのですが、再販売価格の問題、たとえば労働組合あるいは消費組合は一応これから除外される、それに対していろいろの疑義があるというお話ですが、事実はそういうふうにしなくてはならぬほど――労働組合なり消費者というものは、特に不況に陥つた場合にはなおさら生活が苦しくなる。それほど実は妥当なる賃金をもらつてないということが言える。しかも消費組合なり、あるいは労働組合のそういつた団体は、それだけの価格で生活ができる。またそれを小売商に仮定いたしましたら、その中の人たちは、そのわずかな薄利でもつて生活ができる。だからほんとう言えば、これがコストになつてもらいたいということがわれわれの考え方です。そうして一般の市場価格もそれに相並行するようにしてもらいたいことが第一点。第二点といたしましては、そのような無理なカルテル、このことは、合理化によりまして、そのためにたとえば非常に大きな企業の首切りが起るとか、あるいは中小企業に非常に圧迫が来るとか、時間がありませんからやめますが、幾らでもそういう実例があるわけであります。そういたしますと、かりにそういう無理なカルテルが、しまいにはトラストとか、あるいはコンツエルンのようなかつこうになつて、昔の資本閥の系統のようなものが復活するのではないかと疑われる。とにもかくにもそのような形態から考えた場合に、電気料を下げるとか、あるいは資材を下げるとかしてコストを安くする。こういうような法案を抜きにして、その方向に努力して行く別の角度の方がより重大でないかと私は思うのです。それはなぜそのように思うかといいますと、先ほどあなたのおつしやつたように、このカルテルを結んだために価格が維持され、ある企業が助かるウエートと、犠牲になつて行くウエートとどつちが大きいかによつて、このカルテルを結んだがいいか悪いかがきまつて来る。そこにおいて今言つたように、下部における犠牲が私どもは大きいと見ている。だからそういうものをのけて、特にあなた方団体においてはこういうことに反対をしてもらつて、そのかわりに電気料金を下げるとか、そういう方向により強力に、ほんとうの日本の再建のために働いていただきたいと念ずる次第です。
#19
○佐伯委員長 制限の時間がございますので、次に移ります。
 次に武藤忠敏君。
#20
○武藤公述人 私は日本鋼管株式会社鶴見造船所の勤労部長をやつております武藤であります。私は今度の改正の第五の点、すなわち第二十四条の二といたしまして、再販売価格の維持契約を結ぶことを認めるという点につきまして、事業場の労務管理者の立場から、これについての意見を述べさしていただきます。
 いまさら申し上げるまでもなく、わが国は資源が乏しく人口が多い、それから労働の生産性が低い、資本の蓄積が少いというようないろいろな理由から、国民の所得が少くて、しかも物価が高いという特徴を示しておりまして、これがために一般の大衆の生活は非常に苦しい立場に置かれております。こういう関係から、わが国におきましては、物価を引下げるということが、輸出の振興のためにも何よりも必要なことであるというふうに考えられますが、独禁法もそういう点に立ちまして、第一条の目的をうたつているのでありますが、これに反しまして、第二十四条の二に再販売価格維持契約を認めるということは、こういつた物価をつり上げることになるのではないかということにつきまして、反対をせざるを得ないのであります。これにつきまして以下いろいろの理由を申し上げます。
 第一に、今度の改正の趣旨、目的が、第二十四条の二に関する限り非常に不明確であります。一応不当廉売だとか、おとり販売の弊害を除去して小売商の利益を守るようにうたわれて、表面は非常にきれいになつておりますが、実はこういつた弊害がはたして問題になるほどあるのかどうかということについては、まつたく疑いなきを得ません。またそれの対策といたしまして、かかる条文をつくる必要がどうしても認められない。もしもこういう条文をつくるならば、特定の業者に、いわゆる独占的利潤を占めるような価格設定工作の余地を与えるということになりまして、角をためて牛を殺す結果になるのではないかということを非常に憂えるのであります。
 それから第二番目に、今度指定されるものが日常使用される商品であるために、販売あるいは購買方法の合理化を妨げまして、物価をつり上げる結果となつて、一般労働者階級に及ぼす被害はたいへんなものになるであろうというふうに考えられます。それからこの指定される商品は、その品質が一様であることを容易に識別することができるもの、商品が一般消費者により日常使用されるものであること、当該商品について自由な競争が行われていること、こういうことを前提といたしておりますが、これについて、一体どういうものがその対象になるのか非常に不分明でありまして、どうにでも解釈できる。しかもその認可にあたりまして、生産者の価格というものをどういうふうにきめて行くのか、そのきめる方法についても非常に不分明でありまして、消費者は生産者の定めた一方的価格を強制され、不利益をこうむらなければならないのではないかというふうに考えられます。
 それから第四番目に、但書に福利厚生施設を含んでおりません。このために、福利厚生施設も再販売価格維持契約を強制される立場に置かれまして、長年労使関係の円満なる運営の上におきまして潤滑油的立場を持つておりました福利厚生施設が、存在の意義を失つて、労務者の実質賃金の低下を招いて、労働対策上ゆゆしき問題になるというふうに考えます。
 第五番目に消費者生活協同組合等は除外されることになつておりますが、こういうものと実質的にほとんど同じでありまして、同一あるいはそれ以上の機能を発揮しておる福利厚生施設を除外するということは、まつたく考え方が形式的でありまして、了解に苦しむ次第であります。
 結論といたしまして、以上のような理由から、こういう再販売価格維持契約は、大衆の利益を阻害し、また労資関係の円満なる運営を阻害して、わが国の労働不安を招来するものであるということから、労務管理者の立場からこれには反対せざるを得ないのであります。また最小限度こういつた除外例の中に福利厚生施設というものを除くということについては、労務管理者、特に福利厚生施設を担当するものの立場から、反対せざるを得ないのであります。
 以上をもちまして私の意見を終ります。
#21
○佐伯委員長 以上で武藤君の御発言を終りました。
#22
○石村委員 武藤さんにお伺いしますが、ただいまのお話の御趣旨はよくわかりました。再販売価格にいろいろ問題があるということは、よくわれわれも承知いたしておりますが、日本鋼管の勤労部長、使用者側の立場の方としておいでになつて、さつきの経団連の福島さんがおつしやつたことと非常に矛盾しておるのじやないか。ただいま武藤さんは再販売価格維持契約は大衆に迷惑をかけるものとおつしやいましたが、この迷惑のかかる大衆のうちに、やはり中小企業者が入つておる。大資本家の方が、自分たちのカルテルはやつてよろしい、これはさつきの経団連の方の御主張であります。ところが、問題はあるにしても、小さな連中のやることはいけないという御意見はどうも納得しかねるのです。経団連と、それから同じ経団連の有力な会員である日本銅管の方からこうした矛盾した御意見が出ることを非常にふしぎに思うわけでありますが、この点お伺いいたします。
#23
○武藤公述人 ただいまの御質問は、非常に表面的な形式的なお考えではないかと思います。私がここで申し上げたことは、最初にお断りしましたように、労務管理者の立場から申し上げておるのでありまして、労務管理者の立場と、生産販売している立場のものとの矛盾というものは、これは当然ある程度ありましても、形式的には矛盾しているかもしれないけれども、実質的には何ら矛盾していない、こういうふうに考えます。
#24
○石村委員 矛盾していないということは、結局日本鋼管というような大会社がカルテルをつくつてやつて行くことは、その立場においてはさしつかえない、こういうことなのですね。
#25
○武藤公述人 私は不況カルテルとか、合理化カルテルについての意見は差控えます。
#26
○迫水委員 今のお話を伺つていまして、再販売価格の維持契約を結ぶことになると、物価をつり上げて来る、そういうお話がありました。私は物価をつり上げるということ、つまりある一定の現在のレベルからつり上げて来ることはあまりないのじやないか。下るものを維持するということで再販売価格の維持契約ということが出ておるわけです。そうするとあなたのおつしやるのは、これ以上物価をもつと下げる傾向を阻止して来るのだということだと思うのです。ところが、それじやどういうわけで再販売価格維持契約を結ばないと下るかというと、大体不当廉売とか何とか、ほかの周辺の同業者その他に迷惑を及ぼすような、ある意味において不当なやり方によつて下るのじやないか。そういうことがこの再販売価格維持契約によつてなくなるということが、あなたのお言葉では、勤労大衆の生活を脅かすというようなことがありましたが、どうもお話を聞いていると、その間に論理が非常に飛躍しているような感じがするのですが、もう少しその間の筋道を詳しく説明していただいたら、納得ができると思います。社会党の諸君の言うことを聞いておると、再販売価格維持契約をやると物価をつり上げる傾向があつて、それは労働大衆の生活のためによろしくない、よくこう言われるのだが、何か私はちよつとわかるような気がするのですが、筋道をずつと追つて行くと、どういう原因でつり上げて行くのか。もしそれを放置しておいて、つり上げないでもつとどんどん下げて行くのがいいんだとすれば、それによつて周辺の同業者が迷惑をしたり、あるいはそれをつくるメーカーがつぶれて来たり、いろいろして大衆が迷惑をする。その大衆の中には労働者も入つているでしようが、どうもきわめて形式的なお話のようで、もうちよつと掘り下げて分析して、間に連絡をつけて話をしていただいたら、了解ができるのではないかと思います。
#27
○武藤公述人 それは先ほど申し上げましたように、今度の規定の趣旨、目的が非常に不明確なのです。不明確だということは、結局不当廉売とか、おとり販売といつたものの弊害のために小売業者の利益が阻害される、あるいは中小メーカーの利益まで阻害されるといつたようなことがどうしても見当らない。そういうときになぜ再販売価格維持契約を結ばなければならないかという、その理由がはつきりしないので、そこで再販売価格維持契約を結べば、かえつてこれは物価をつり上げる結果になるのじやないか。そういつたことが一般に予測されるわけです。もしも不当廉売とか、おとり販売の弊害が非常にはげしいならば、それは別途の方法をもつて講ずればいいのに、こういつた再版売価格維持契約を結ばせるというような改正を行うということは、そういう所期の目的を達するのではなくして、そういつた趣旨の通りになるのじやなくて思いもよらぬところに脱線をして行つて、再販売価格維持契約が物価をつり上げる方向へ持つて行かれるのじやないかと私は考える。どういつた立法技術をすればいいかということについては、これは私の申し上げるところでないので、その点は皆さんの方でよく御研究になればいいのだと思うのですけれども、ともかくそういつた趣旨、目的に、今指摘されているような弊害は、ほかの方法をもつて講ずればいいのであつて、再販売価格維持契約を結ぶということは、これは角をためて牛を殺す結果になる。それで大衆の利益に非常な影響があるというふうに考える。
#28
○迫水委員 大体御趣旨はわかりました。要するにあたなの言われることは、再販売価格維持契約を許すということは、私がさつき言いましたように、価格が不当に引下つて行くことをとめる目的に使われるならそれはいいが、そうでなしに、おそらく副作用として、逆に価格をつり上げる効果が起るのではなかろうか、そう思われる。その副作用があると思われるような、またあなたのお考えでは、おそらくその副作用ばかりが出て来るだろう、こう考えておられるらしいのだが、そういうような副作用の多い方法でなしに、もつと副作用のない方法を使つたらよかろう、こういうお話ですね。そうするとあなたがその副作用が非常に多い、思いもよらない一つの逆な効果が出て来る可能性が非常に多いと考えられる理由を、一ぺん説明してください。再販売価格維持契約は、あなたの言われる思いもよらぬ方向に、つまりこの法律の一応考えているところの価格維持というのでなしに、逆に価格を引上げて行く結果になる、思いもよらぬ方向に逆効果が出て来る、こうあなたが考えられて判断しておられるらしいが、その逆効果が出て来るであろうと判断される基礎を、ひとつ説明していただきたい。
#29
○武藤公述人 ただいまの点につきましては、先ほど申しましたように、今度の商品の範囲というものが一応、その品質が一様であることを容易に識別することができるもの、それから日常生活必需品であるということ、それからもう一つは競争が自由に行われているのだということ、こういうことにつきまして公取委が指定するものだということになつておりますが、実際にはこの範囲が、こういう抽象的な文句ではどの程度になるのか、非常に不分明だ。それからもう一つは、この届け出られた価格を指定されるようになつておるのですが、大体日本の――これはお断りしておきますが、私が申し上げておるのは先ほども質問がありまして日本鋼管の立場で言つておるのかというお話でしたが、日本鋼管の立場で言つているのではない。私は厚生施設を擁護する立場で、厚生施設擁護期成同盟というものの代表で私は出ておるので、決して個人の会社の立場で出ておるのではありません。それで、話が途中になり冒したが、そういつたことで、生産者の支持価格を検討する明確な規定がない。大体日本におきましては、価格の合理的な設定というものが今までなされていない。戦時中、戦後におけるいわゆる公定価格の問題でも、いろいろ問題が起きておるのじやないか。もしもこういう価格設定の合理的な基礎がないような日本の現状におきまして、こういつた一般大衆の消費財の価格をきめるということになれば、それは一応やはり価格をつり上げの方にどうしても向わざるを得ないということが考えられる、そういうわけであります。
#30
○迫水委員 大体御趣旨はわかりました。非常に皮肉なものの言い方をして恐縮ですけれども、あなたのお立場は勤労者の厚生施設をやる方です。ですからなるべく安いもの、できるだけ安くなるということ、理由のいかんにかかわらず……。それでほかの者が迷惑しようと、全体の経済を混乱しようと何しようとかまわず、極端に言えば、安いものを労働者に売れば労働者が喜ぶから、なるべく安くならないようなものは困る、こういうお立場だと私は一応理解して、私の質問を終ります。
#31
○中村(時)委員 ちよつとお尋ねしたいのですが、あなたはこのカルテルと再販売価格と、この二つが不可分のものであると思いますか、可分なものであると思つておりますか。別にわけられて再販売価格だけを取上げられていらつしやつたか。再販売価格とカルテルとは可分のものですか、不可分のものですか。
#32
○武藤公述人 それは可分と考えられます。私は可分と考えます。
#33
○中村(時)委員 不況カルテルというのは、不況のときにその価格を云々することになつて来るわけですが、どういう理由でこれが可分のものとして別にわけてしまうわけですか。その理由を伺いたい。
#34
○武藤公述人 再販売価格維持契約ということで、不況であるとか何とかということは全然うたつてないのです。ただ価格を維持しようとする契約を結ぶということなんです。それだから……。
#35
○中村(時)委員 価格を維持するという意味は、やはり一つのカルテルの方式の中から価格の維持ということも関連して出て来るのとは違うのですか。
#36
○武藤公述人 私がさつきから申しておりますように、この問題が、私の申し述べておる意見と離れておるように思うのですが……。実は私がここに申し述べておるのは、厚生施設が再販売価格維持契約のごとき制度によつてその存在の意義を失つておる。そして労使関係に悪影響を及ぼすということの立場から反対しておるのであつて、そういう立場と全然離れておる御質問については、私はお答えすることはできません。
#37
○佐伯委員長 もう一問に制限いたします。
#38
○中村(時)委員 あなたの考え方としては、要するに労働者、これは消費者と称してもいいのですが、そういうところに舞台の中心を置いて、再販売価格というものを打出しているのですね。そうすれば不況カルテルというものの本質は、やはり労働者並びに消費者を対象にしたものの考え方になつており、そこに帰一される点が出て来るわけです。その点に関しては話しにくいということですから、これ以上お尋ねしませんが、もう一つお尋ねしたいのは、あなた方の会社において、たとえばここには平均生産費というのが出ておる。実に都合のいい言葉使いなのですが、生産費というものの出し方はたくさんあるのですが、それに対してどのような考え方を持つておるか、ちよつとお聞きしたい。それはこの中の非常に大きな内容になるわけですから、何かその生産費を出して行く場合、いろいろありますが、それに対して、どういう商品に対する生産費の出し方をしていらつしやるか、お尋ねしたい。
#39
○武藤公述人 それについてはこれと直接関係がないのでお答えできません。
#40
○佐伯委員 長次に小宮山泰三君。
#41
○小宮山公述人 私はただいま御指名にあずかりました小宮山泰三であります。再販売価格維持契約の問題につきまして、これに関連する小売業者の立場から申し上げたいと存じます。
 私的独占禁止法の改正法案に関しまして、私ども中小商工業者の育成血化と生活安定のため最も必要とされるものは、この改正法案中の二十四条二の再販売価格維持契約の条項であります。我が国の経済機構において中小商業者の占める地位はきわめて重要であり、その従業員及び家族を含めた職業別人口割は非常に多く、これが育成強化をはかることはわが国経済再建のためにぜひ必要であると思います。特に私ども小売業者の多くは小額の資本と過重労働、すなわち軌は八時から夜は十二時まで働き続け、ようやくその生活を立てつつその業務に従事しているものでありまして、勤労度においてはわが国民中一番過重の立場にありながら、労働者、農民がそれぞれ法規によつてその経済的地位を保護されているにもかかわらず、私どもは何ら法的の庇護を受けておりません。正当の利益の確保によつてこれが経営を健全化し、生活の安定をはかることを心より叫ぶものであります。このたびの再販売価格維持契約事項が独禁法改正法案中に盛られたことは、この意味から私ども全国にわたる零細業者のきわめて多とするところであります。
 次に再販売価格維持契約はいかに必要であるか、これはこの法案にあります通り、品質が一様であることが容易に認識することができるもの、換言すれば容器、容量、品質、包装、価格が全国一様であるいわゆる商標品は、製造及び販売価格が常に変動している他の商品とは異なり、不当廉売の具に供せられやすいのであります。この商品を販売する業者は、競争が激烈になつて来ますと、仕入れ価格が大体同一であるにもかかわらず、廉売競争の結果原価または原価以下まで争う状態に陥りやすいのであります。これによつて生ずる業者自身、及び一般消費者に及ぼす影響はどのようなことになるかと申しますと、一、小売店間においては正当な利益の放棄によつて不健全な経営となり、遂には倒産する者も出て来るのであります。二、化粧品のごとき商標商品は客寄せのおとりに利用されておりまして、このような場合はこの不当廉売によつてまじめな販売業者の顧客を不当に奪い、他の商品より得る不当の利益によつて穴埋めをして消費者を欺瞞している状態であります。三、前述一のごとく小売店の経営が不健全になれば、勢い支払いが困難になり、遂には卸、本舗にこれが波及し、良品の製造は不能となり、業界全体の衰微を招来することは必至であります。かくなれば良品を望む消費大衆の迷惑は甚大なるものがありまして、ここに舶来品の進出の余地が増大するものであります。いわんや国産品の海外輸出などは噴飯ものでありましよう。このことはわが国の経済についてどのような影響があるか深くお考え願いたいのであります。なお皆様の一番の関心事であろうと存じますが、再販売価格維持契約によつて一般消費者に与える不利益は次の理由によつて皆無であることを確信しております。化粧品、医薬品のごときものは、本舗が最終消費者にまでその商品の保証をし、また多数の製造業者が自由かつ公然のはげしい競争をしておりますので、それらが指示する再販売価格、すなわち小売価格は消費者に不利なものが決定されるはずは絶対にありません。またたとい価格のつり上げを策す本舗がありとしても、この商品は消費者に嫌悪され、消費者の好まないものは当然小売店も敬遠し、結局他の競争者に駆逐される運命に陥ることは自明の理であります。
 次に再販売価格維持契約が実施されることはむしろ消費者に対しては利益がもたらされると信じます。その理由は、一、小売業者は正当な最低の利潤確保が可能になるため、消費者に対して真の良品を推奨することができます。二、小売業者がおとり販売の必要性が皆無になるため、商標品以外の商品はその商店の経営技術により極力廉価販売が可能になります。三、化粧品、薬品等の専門業者の営業が可能になり、また兼業者もその商品への関心が深まるため、消費者はそれらの商品知識の豊富な商店で自由に良品を得ることができるようになります。四、小売業者の経営が健全になれば、卸並びに本舗の資金回収が円滑になり、従つて本舗の健全経営によつて同一価格の製品がさらに優良な内容を持ち、また再販売価格の引下げも可能になる必然性があります。これは結果的には消費者の利益でなくて何でありましよう。
 以上述べたごとく、私ども零細業者並びに消費者にとつて再販売価格維持契約は不可欠のことでありますが、改正法案中消費生活協同組合以下十数団体に対する適用除外は法案の効果をはなはだしく減殺する結果になります。その理由はむしろ、これらの団体による割引販売がわれわれ小売業者の廉売を誘発する事例がはなはだ多いだめであります。これらの団体もわれわれ小売業者と同じく再販売価格維持契約をすることにより定価販売を励行し、それによる利益は後刻団体構成員に対して還元することにより、各団体の意図するところは達成する事ができると存じます。英国初め欧米諸国はすでにかくのごとき方法により本問題を解決し、小売業者との摩擦は皆無であります。
 以上私の述べました真意を御賢察くださいまして、零細業者に対する唯一の保護立法として最良の改正を御考慮くださいますよう、全国の業者を代表して心よりお願い申し上げます。
#42
○佐伯委員長 以上で小宮山君の発言は終りました。これに対する御質問はありませんか。
#43
○栗田委員 お尋ねをいたしますが、戦前戦後を通じまして、特にあなたが小売業者として濫売に直接遭遇をいたしまして非常に困つたというような御体験がありまするならば、この際お聞かせを願いたいと思うのであります。
#44
○小宮山公述人 戦前の不当廉売と戦後の不当廉売とにわけますと、戦前はすべてが自由でありましたので、協定もできるはずではありましたが、しかし前から申し述べておりました公述の方々もおつしやいました通り、実際は不可能でありました。そこで戦前におきましての私どものこれに対する体験を申し上げますと、私は昭和八年に杉並区阿佐ヶ谷に小間物、化粧品の専門店を開業いたしました。これは中央線といわず、全都内といわず、日本全国それが同じ状態であつたと思いますが、昭和八年というと不景気の一番どん底からちよつとよくなりかけた時代で、薬、荒物、小間物、化粧品というものの濫売競争が最もはげしいまつただ中でありました。私はこの時分に阿佐ヶ谷へ開業いたしましたが、一応同地の同業者の実情、販売しておる価格を全部調査し、また近隣の高円寺、中野、荻窪、吉祥寺あたりまで調査して、大体においてこれくらいの値段で売つたら当然ではないかと思つて始めたのでありますが、よその店と同じ値段で出したのでは、古い店の方が信用がありますから、新しい店には客が来ない。安く出せば、古い店は資本力においても何においても長い間の経験がありますので、もつと安い値段で出せる。当時は原価を二銭切るか二銭切るかということで争つた時代でありましたから、化粧品店を開業するにあたつては、まず三年間は石の上、火の中という立場でした。それで三年間を通り過ぎて五年たつたときに、やれやれやつと一人前の小売り業者になれたかというほどの立場でした。これはよく私どもの先輩から聞かされたことでありましたが、百人化粧品店を始めて、五人残ればたいしたもんだ、その五人の中へお前入れるかどうかというようなことをよく言われました。しかし今日残つておりますから、幸いにその五人の中に入つたのかもしれません。大阪地方などはもつとはげしかつたということを聞いております。何とかしてこれに対して価格の協定をしようではないかというような話も相当あつたそうですが、これはやはり法的に認められるものがないがためにというか、どうしてもうまく行かなかつたということを聞いておりますが、私どもはただ無我夢中によそと競争して争つている時代でした。しかし当時は生活費が低く、店員を一人使つていても七円五十銭か八円で足りた。税金も六万円くらいの売上なら年額としては幾らでもなかつた。現在の売上げと税金、当時の売上げと税金を比較してみますと、問題にならないくらい当時は安かつた。ですからかりに化粧品全体を犠牲にしても、ピンとか頭の物、石けんなどで、何とかかんとか苦しい中でも生活ができたものが、百人のうち五人になつて、あとの九十五人の人たちは、どんどんつぶれて行つたという状態だつたのであります。戦争中は公定価格という問題もあり、また物資がなかつたという状況から、この競争はございませんでした。また戦後は、公定価格で縛られ、良品が出なくて困るという嘆きがありましたが、二、三年前からの公定価格は撤廃され、自由競争に入つて来ました。但し税金の高いのと生活費にかかるということから推して見て、あまりひどい乱売の競争には入らないだろうという考えも一応持つたのでありますが、同業者がふえるために、また諸会社の購買会等の割引販売等が影響しまして、やはり小売業界でもこの競争に入つております。化粧品の平均の利益を二割とすれば、多いもので二割五分、二割八分のものがかりにあつても、三割引の競争をしますと、まさに原価を切つております。それで原価以下の販売競争をして売つている者自体が困つて、何とかしてくれという状態であります。しかしこれをとめようか何とかいつても、これはなかなかむずかしい問題でして、今まさに戦前のあのはげしい時代へかえらんとしている状態であります。何とかこれをとめたいということは、乱売している者自体が叫んでおるのであります。
 以上に申し上げたようなぐあいでありますが、おわかりになりません点はなお申し上げたいと存じます。
#45
○佐伯委員長 迫水久常君。
#46
○迫水委員 私は前の公述人の武藤さんに対しては、少し意地の悪いことを言つたのですが、あなたにお伺いしたいのは、今お述べになりましたことは、いかにももつともだと思うのですけれども、赤字を出さない限界――この印刷物に書いてあることは、再販売価格をやらないと、こういうものを認めないと、みな赤字を出して不当廉売をやるからということが前提になつているようです。つまり不当廉売をやつてみな倒れてしまつたらどうなるかということが前提になつているのですが、赤字を出さない限界内で、つまり不当廉売とか何とかいうことでなく、それが違法であるとか不道徳とかいうようなことでない限界で、しかも当然下つていいものを再販売価格維持契約で下らないようにしてしまう場合があり得るのではないか。さつき武藤さんはそのことを言われたと思いますが、そういうことがあり得るのではないかと思う。そうすると武藤さんの言うことは、一応りくつが通つて来るわけです。ところが実際今までに経験されたことで、実際再販売価格維持契約をやつた場合には、すれすれのところできまるのか、あるいはほんとうならもう少し下げてもちやんとやつて行けるのだけれども、たまたまこういう契約をやる権能があるからというので、ある意味において不当なところでその価格を維持しようということに、あなた方がお使いになる懸念がありはしないか。あるいは消費者がよく知つていてそういうことをしたら、結局売れなくなるかもしれないが、これは具体的に商売上の御経験ではどういうところできまつて来ると思いますか。
#47
○小宮山公述人 ただいまの迫水先生の御懸念はもつともでございますが、私どもの体験から申しますと、化粧品、歯みがきのようなものは、小売業者が価格をきめるということは絶対にございません。これは本舗が指示する価格でありまして、今度の法律ではそれを契約しろということになると思います。それで本舗が小売価格まできめて来る場合には、本舗の経営が成り立つ最低線の本舗価格があるはずです。それから卸屋が経営上成り立つ最低の利益というものがある。それから小売屋がこのくらいならば税金を払つて生活ができるであろう、こういう製造家、小売業者、卸売という面でいろいろと検討した――これは検討し合つたのではない、お互いの立場において検討して、ここらが至当であるというところが大体今まできまつております。それが出て来て初めてその価格の維持契約をきめるという形になるのですが、それならば価格がどの本舗も同じような契約で来るかというと、日本には三百、四百あるいは五百近い本舗があるはずですが、本舗同士はちつとも直談をしない、非常に激烈な競争をしております、よそでもつてかりに植物性のポマードを五十グラムで百円で販売をする、おれの方はもつと採算をとつて六十グラム百円にしよう、あるところは四十グラム八十円で出して来る、こういうように各自がみな別々に、何とかして消費者に喜ばれる商品を、喜ばれる価格、喜ばれる内容で出す、こういうことになります。私どもの方へは、これはかりに何割もうかるか、今の大体の常識でマージンというものがきまつております、それを当てはめてきめて来ますから、小売業者の方で、これは無理だからもつと上げろとか、これはもつと下げるべきだというようなことは絶対にございません。小売業者は、お客さんからの意見を本舗に言うことに非常に注意を払つております。消費者は決してこの品物は安いとか、よ過ぎるということは言わない、必ず、悪いからもつといいのはないか、いいけれどももつとよくはならないか、実際安いがもつと安ければなおさらけつこうだ、こう言うのであつて、高くしろとか悪くしろということは絶対にない。そういうことをお客さんから聞けば、私どもは本舗に向つて、これは少し高いじやないか、少し安くしたらどうか、あるいはこれはこういうような面で悪いそうだから、こういうようによくしたらどうか、あるいはこれはもう少し大きくしたらお客さんに喜ばれやしないか、こういうようなことを始終言つているのでございます。ですから価格を上げるようなことは夢想だにしておりません。
#48
○迫水委員 逆に伺つてみたいのですが、あなた方の方でお互いに再販売価格を維持する契約をする力がある場合には、逆に本舗に対して、もつと値を下げて来いということを言う、そういう圧力になり得る場合がありますか。
#49
○小宮山公述人 維持契約は本舗と小売店と個人々々の契約で、団体と本舗との契約ではありませんから、団体で圧力を加えるというようなことは、思いもよらないことであります。個人個人の立場から、外交さんが来たときに、高いじやないか、もつと安くしたらどうだというようなことは当然あり得ると思います。
#50
○迫水委員 本舗とあなた方が契約を結ぶ場合、もつと下げろという力を使い得る場合がありますかと聞いている。つまり実際上の問題として、本舗のおつしやる通りにするのか、あるいはその価格をきめるのに、あなた方の方から発言権があるわけですか。
#51
○小宮山公述人 今まで法的措置に基いて契約をしたという経験はありませんから、実際はここで言明することはむずかしいのでありますが、ただ私どもの立場といたしましては、一定のマージンというものがあれば、二割あるいは二割五分でもつて、これは大体常識において足りるというときに、それ以上五割もの利益をお前たちにやる、うんと利益があるから一生県命売ればいいじやないかと言う本舗がかりにあつても、私どもははねつける覚悟でございます。またよそは二割あるいは二割五分の利益で出しておるのに、四割も五割もの利益だといつて、不当な高い価格をつけて来ても、そのものは売れません。利益があつてもストツクしておいたのでは結局損ですから、私ども商人としては綿密にそろばんをはじいてやるつもりでございます。
#52
○菊川委員 今の迫水君の質問の要点、私はこう聞いたのです、小宮山さんが関係しておられる小間物化粧品小売組合全国連盟として、そういうメーカーがきめた再販売価格の個人々々に対する維持契約について不当と思われる場合は、従来はどうか知りませんが、今後共同してその再販売価格維持契約の改訂を要求し、運動されるというようなこともお考えになつておるかどうか、こういうことでしようね。
#53
○小宮山公述人 いわゆる連盟とかあるいは協同組合とかいう一つの団体組織で、これはお互い相当自重してかからなければならぬと思うのでありますが、但し本舗に対して要求はどうかと思います。あくまで批判で行くのだろうと思います。そうすると批判で行つたときに、そこに本舗が反省して安い維持価格を提案する、こういうことになりはしないかと思います。これは今後発生する問題ですが、相当むずかしくなると思います。私どもの業者間としては、そういう小売業者が団結して本舗をいじめるようなこともやれないのです、本舗自体もそう大きくはないのです、中に属するような本舗ばかりで、あまりいじめたのではつぶれると思います。商品を積んでおいてつぶれられては困ります。
#54
○菊川委員 再販売価格維持契約に賛成しておられるということについて、今度は一般国民大衆、購買者の立場に立つと、個人々々の小売業者が、あるいはメーカーの言いなりほうだいにされるところの結果も出て来るのではないか。そうすれば先ほども公述者の方の御意見もあつたように、維持契約がかえつてつり上げ契約にならないか、そうすると大衆から言うと、それを買わなければよいようなものですが、しかしある商品によつては、それをほしいというような場合において、結局小売業者がその値段でメーカーからもらわなければ自分の手に入らないということで、やはりメーカーの一種の独占のために、小売業者もまた実際は消費者へのサービスにおいて不自由になるのではないか、そういうことが考えられる場合、従来は今お話のような立場にあつたでしようが、この法案がかりにこのまま再販売価格維持契約を認めたいという後においては、当然その法案に対処して、今後そういう同業組合が、その仕事の内容に一つの社会的責任といいますか、そういうものを感じなければならぬと思うのです。従来はこういう同業組合がそういう仕事を主としてやつてないというふうに承知いたしておりますが、そういうことができるものかどうかということをお尋ねするわけなんです。
#55
○小宮山公述人 たいへん御注意のように承りまして、ありがとうございました。協同組合でも、本舗に対して、消費者の不利益になるならば、それは確かにやつて行かなければならぬということを感じるのです。但し団体をもつて、本舗に対して、本舗が不当な価格を出すのに小売組合が気がついて不当だという前に、この法律で見ますと、公正取引委員会で不当なものは許可しないようにできておるのだと思いますが、この点は公正取引委員会の役員さんも、これは本舗が少し高いことを言つておるがどういうものかというふうに、よく相談して――何しろ私の方はお客さんが大事なんです。その観点から、あらゆる面で進めたいと思いますから……。
#56
○菊川委員 ついでに簡単でございますから一、二点お尋ねいたしますが、当面この再販売価格の維持について、適用を切実に希望しておられる業種は、ここにありまするが、小間物、化粧品、医療薬品、それくらいのものですか。なおほかにございますか。
#57
○小宮山公述人 なお商業品という面からこれに関連して申し上げますと、しようゆもあると思います。それから電球のような電気器具、それから文房具の中にも、インキなどでもライトインキというようなもの、それからバターなどにも雪印バターとか、キャラメルとか、そういうものがあると思います。
#58
○菊川委員 私のお尋ねしているものは、そういういろいろなものが将来は出るだろうとは思いますが、さしあたつてこれを切実に望んでおられる業者の団体はそのくらいかとお尋ねしているわけです。
#59
○小宮山公述人 これを切実に感じているのは、実際濫売で困つている業者でして、実際化粧品とか医薬品の部類が非常に多いのでございます。それからキャラメルなどは、いかに濫売になつても、あれは全体に影響しないのです。
#60
○菊川委員 ついでにお尋ねしますが、今お述べになつた中に、消費生活協同組合について、組合員にその利益を後日還元するというふうな条件つきで承認されておるというふうに解釈していいかどうかという点と、それから中小商業と消費生活協同組合との関係というものは、私ども多年この調整には非常に苦心をしておる点ですが、一体小宮山さんのお考えでは、消費生活協同組合というものが、直接消費者自身によつて、職域あるいは地域にどんどん発展をするというふうな傾向については、これはやむを得ないというふうにお考えなんですか。あるいはこれもまた必要であるというふうにお考えなのか。こういうものがどんどんできると、結局商人のお得意がなくなるから、こういうものは好ましくないというふうなお考えなのでありますか。
#61
○小宮山公述人 たしか片山内閣のときにこの法案が通つたと思いますが、私どもあのときの観念から言いますと、小売商人と全然別個の立場において事業を継続されるならば、私どもの立場からはこれを否定するものではございませんが、従業員とか構成員以外に販売するというような逸脱行為をやるならば、その必要性というか、生れない方がいい、直感ですが、そこへ行くと思います。どこまでも法規にのつとつてやつて行つてもらいたいと思います。
#62
○菊川委員 条件つき賛成と見ていいわけですね。
#63
○小宮山公述人 この再販売価格の維持契約にひつかかるような商品は、あくまで同じ値段で売つてもらいたいと思います。そうしてあとでいろいろのものに還元するなり、福利厚生の事業に使うなり、何かに使つていただきたい。ほかの一般の商品は、お互いの腕前で安くすることは、これはやむを得ないと思います。消費生活協同組合あるいは会社の福利厚生の購買会とかが全面的にいけないということは申し上げませんが、あくまで法律に基いた本分のもとにやつていただけばけつこうと思います。
#64
○佐伯委員長 以上で小宮山君に対する質問は終りました。
 それでは午後一時三十分まで休憩いたします。
    午後零時四十六分休憩
    ―――――――――――――
    午後二時十七分開議
#65
○佐伯委員長 午前に引続き公聴会を再開いたします。
 本日の問題は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案についてであります。
 この際公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。公述人各位には、御多忙中にもかかわらず御出席をいただき本席より厚く御礼を申し上げます。御承知の通り、本案は重要なる議案でありますので、各位の貴重な御意見を十分参考といたし、慎重に審議をいたしたいと存じております。何とぞ忌憚ない御意見を御開陳くださいますよう、お願い申し上げておきます。
 この際議事の順序につきまして、一言申し上げます。公述人各位の御意見を述べられる時間は、大体二十分程度にお願いいたしまして、御一名ずつ、順次御意見の御開陳及び質疑を済ませて行くことにいたしたいと存じております。
 なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることになつております。また発言の内容は、意見を聞こうとする本案の範囲を越えてはならぬことになつております。なお委員は公述人に質疑をすることができますが、公述人は委員に対して質疑をすることはできないことになつておりますから、さよう御了承願います。
 それではまず重枝琢巳君より御意見をお伺いすることにいたします。重枝琢巳君。
#66
○重枝公述人 私日本労働組合総同盟の中央執行委員をいたしております重枝でございます。私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案についての私の意見を述べるわけでございますが、私はこのような独禁法の緩和の方向をとる改正に対しましては、根本的に反対の立場に立つて意見を申し述ベたいと思うわけでございます。
 まず総括的に申し上げますならば、独占禁止法の目的といたしますところは、その第一条に規定してあります通りに、「私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。こういうふうにきわめて詳細にうたつてございます。本来経済の民主化ということをうたつておりますこの法律を、日本の経済の危機を克服するためであるというようなことを申しまして、これを大幅に緩和をするということになりますならば、この法律の本来の目的でありますところの、ただいま読み上げましたことを根本的に達成することが不可能であるような形にしてしまう、こういうふうに思うわけでございます。本来の資本主義は自由平等の競争によりまして、その競争の結果が協和と繁栄をもたらす、こういうことで進んで来たわけでございますけれども、それは実際の経験に徴するところによると、実は逆でありまして、少数者の支配独占という結果を来して、そうして非常な生産力の増大あるいは増大する可能性があるのに、国民全体の生活というものはなかなか豊かにならない。こういう非常に矛盾をした悲惨な状態を来したわけでございます。こういうような資本主義の根本的な矛盾を解決するためには、経済の計画化ということが当然必要であると思いますけれども、しかし、そういう根本的な対策でなくして、対症療法的なことを考えるとするならば、独占禁止法というものもその一つとして考えられたわけでございまして、それを日本においても現在まで施行さして来ておつたわけでございます。しかし、日本の現在の経済の状況が、非常に困難な情勢にあることは事実でございますけれども、これを解決するのは、そういう独占禁止法を緩和するというような小手先の細工で解決すべき問題ではなかろうと思うわけでございます。これには、当然根本的な各経済の分野にわたる施策が行われ、それの総合的な効果によつて、初めて日本の経済の危機は切り抜けられ、経済の安定、生活の安定というものができると考えられるわけでございます。この法律を緩和することによつて、危機が切り抜けられるのではなくて、むしろこれはこういうような緩和をいたしますならば、カルテル、トラスト、コンツェルン、こういうようなものの復活を促進いたしまして過去の日本において経験いたしましたような資本主義の弊害を再現するという結果が現われるだけであろうと思います。その結果は農民、中小企業あるいは労働者の生活を破壊することになる。経済の民主化というものは根本的にくつがえされるという結果になることは必然でございますので、私はこの法律の緩和のための改正に対しては反対をするものでございます。
 今度の改正案の中には、幾つか重要な点がございますが、その第一は、カルテルを広汎に容認をしておることだろうと思います。それは法の第四条、第五条を削除いたしますとともに、第二条における不公正取引というものの範囲をいろいろ限定する、こういうようなことでまず第一にカルテル化への道を開いておるわけでございます。そうしてこれに基いて第六条を改正いたしまして貿易カルテルとでもいよ、ものを容認する態度をとつております。政府あるいは資本家の団体の中でいろいろ意見が出ておりますが、貿易の振興ということを非常に近視眼的に考えているのではないかと思います。その結果、とにかく輸出をすればよろしいということで、あるいはダンピング、出血輸出というようなことを簡単にやつて、かえつて国内にいろいろな問題を引起して、国内だけでなくて、外国からのいろいろな指弾もそれによつて受けておる事実があります。こういうようなことはもうすでに過去何回もわれわれが経験をしたことでございまして、単にこういうような貿易カルテ刀というようなもので、貿易の振興ができるものではございません。これは総括的な中で申し上げましたように、政府みずからの根本的な施策によつてこそ、貿易の振興というものは達成されるものであろうと思います。このような形で、もしカルテルをつくりますならば、それは当然にそれらの犠牲が国内の各層の消費者に転嫁されて来ることは事実でございます。これは肥料の問題一つをとつて見ましても明らかなところであろうと思います。
 その次に、不況カルテルの容認をいたしております。これは二十四条の三によつて認めておるのであります。本来需要と供給あるいはそのものの価格というものは、それぞれ相関関係にあるものでありまして、需要と供給の均衡が破れる場合にはいろいろな理由があるわけであります。しかし、通常の場合、供給が上まわつて価格が下るという場合には、その利益は当然に消費者が享受しなければならないものであろうと思います。非常に供給が少くて価格が上つた場合の利潤は、一方的に経営者の側に集中されて来る。逆に、今度は供給がオーバーして価格の低落ということがある場合には、カルテルを結んで価格協定をして、供給がオーバーした場合の利益を消費者が受けることを抑圧するということは、本来この法律の基本的な目的からいつて間違つておることではなかろうかと思うわけであります。それから特にその場合に不況というものの認定が非常に問題となつて来ると思いますが、法には平均的な生産費を下まわる場合というようなことを言つておりますけれども、今日はたして平均的な生産費をどのような方法で、どういう機関でつかむことができるかという点を考えますならば、この規定はきわめてあいまいでございまして、結局は若干値下り傾向になつて来るとカルテルを結んで価格を維持し、つり上げる、こういうようなことを容認する結果になると思うのでございます。また政府が言つておりますように、日本経済が重大な危機に直面しておる。そこでそういう場合には自由競争による自動的な調節作用では何ともできないというようなことを言つておりますけれども、そのような場合には私はこのような単なる不況カルテルというようなもので本来それを克服し得るものではない。その場合には当然国家の施策によつて解決すべきであつて、カルテルによる価値の維持、つり上げによつて消費者にそういう犠牲をさらにしいて来るということは適当ではないのではないかと思います。
 次に合理化のカルテルを二十四条の四で認めております。その目的といたしますところは「技術の向上、品質の改善、原価の引下、能率の増進その他企業の合理化を遂行するため」というふうになつております。しかし資本主義の原則から申しますならば、こういうようなことは自由競争によつて本来可能であるという建前をとつておるわけでございます。しかも利潤の追求ということをその本来の目的としておりますところの各企業が、こういうような目的のために技術、品種の制限、あるいは原材料、製品の保管、運送、副産物、くず物の利用、購入にかかる共同行動、こういうようなことで、真に共同的にその目的を追求するということは、これは事実に徴してもあり得ないことでありまして、むしろそういうようなことでカルテルが結ばれますならば、それは必然的に利益の増大をはかるということのための足がかりにしかならないことは明白であろうと思います。結局この問題につきましても国家的な施策というものによつてそういうような目的が達成されるような方法を講ぜられなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。結局カルテルというものは、その本質からいたしまして、当初はいろいろ善意の形から出て来る場合があると思いますけれども、不況の場合の対策あるいは技術の向上、そういうことを名目にいたしましても、一旦それが結ばれますると、当然そこに生産価格というものに対する制限が出て参りまして、それが固定化して来る。その上に利潤の最大の増加をはかるというのが、経済的な本質であろうと思います。でありますから、そういうものができましたあとは、今度はそのカルテルという態勢の上にあぐらをかいて利潤の増大をはかり、結局消費者に対して非常な迷惑をかけるということになるのは理の当然であろうと思います。さらに一つの段階にカルテルが結成されますと、それは当然その上下に対する圧迫となつて参りまして、ての下の方で非常に弱い場合にはそれがカルテルの犠牲に供せられる。あるいは抵抗力がある場合には、当然さらに新しいカルテルというものをつくつて対抗して行かなければならない、こういう結果になつて来ると思われます。これが進んで行きまするならば、根本的に経済の民主化という立場を放棄せざるを得ないことになつて参ると思います。またこのカルテルの認可の問題でございますが、これが公正取引委員会の認定のもとに所管大臣の認可を求めるということになつております。これは非常に屋上屋を架するようなことでございまして、これは当然公正取引委員会の一本の認定、認可によつてそういう問題の処理がなされるべきであらうと思います。と申しますのは、公成正取引委員会の構成と行政官庁の構成を考えてみますと、各業者団体の圧力とでも申しますものが、それぞれの行政機関に相当加わりまして、従来いろいろな悪弊も流しておる実情でございますので、そういう点は行政官庁の認可ということでなくて、公正取引委員会の認可ということでこの法律全体の運営がなされて行くという基本線を通すべきであろうと思います。もちろん公正取引委員会の運営自体につきましてはいろいろ問題がありますので、それは後ほど述べることにいたしたいと思います。
 次にカルテルと並んで重要な問題は、トラストヘの道を開いておる問題であろうと思います。それは株式の取得、役員の兼任、こういうものの制限を緩和をいたしております。それはいろいろの条文に関連をいたしておりますが、重要な点は第九条の改正によつて持株会社というものの定義を非常に緩和をしておる。それから第十条による会社の株式取得の制限の緩和、第十一条の金融業の株式取得の緩和、第十三条の役員の兼任の制限の緩和、第十四条の個人の株式取得の制限の緩和、こういうことが競争を実質的に制限するということがない限りはよろしいというような基本的な考えのもとに、非常に緩和をされております。会社の株式取得の場合、百分の五が百分の十になつております。私は単独の会社の場合を考えてみまするならば大した問題はないと思いますけれども、会社、個人、そういうものが幾つか組み合さつた形で、もしこの一連の緩和規定が利用されますならば、おのずからそこにはトラストあるいは特定のグループの支配ということによつて財閥の再現というようなものを来す危険が非常に多い。現にそういうような動きは各方面に相当活発に行われておるということはすでに周知の事実であろうと思います。そういう意味でこの緩和に対しましてはわれわれとしてはどうしても納得ができないことでございます。
 それから次に再販売価格維持の問題でございます。これは前回の法案のときから比較いたしますならば、非常に各方面の意見を取入れられて、特定の法律に基いて設立される団体の場合は除外をされております。これは私たちは非常な進歩であつたと思つております。ただしかしながら一般の小売業者に対してはそれが除外されております。このことは小売業者に対する生産業者の一方的な支配と利益の固定化というものをもたらすことになるので、消費者の意思が小売価格を通して生産者へ反映をして行く、こういうような点が閉ざされるのではないかということで非常に必配をいたしております。
 なおこの問題につきましては、会社が従業員のために行つておりますところのいろいろな廉売施設、こういうようなものが除外をされますので、このことが問題になつておるように聞いております。しかしながら根本的に申しますならば、会社が直営の形でそういう従業員のために福利厚生の名のもとに廉売あるいは売店、配給所というようなものを持つことは、日本の資本主義制度の古い悪い面がいまだ残つておる、こういうふうに考えております。そこでこういうようなものは、当然労働組合または生活協同組合の手によつて労働者の日常の生活の安定を確保するような方向に進んで行かなければならないと思つております。そういう意味において、生活協同組合の活動への転化が促進されるということになりますならばけつこうであろうと私は思います。実情から申しまして、非常に公正な運営をされておる会社の廉売施設もございますが、いろいろ問題を含んでおる労務行政の一環としての廉売制度というものが行われておるところも相当ございますので、そういう点については私たちは賛成をいたすわけでございます。しかしそういたしますならば、新しい生活協同組合的な制度に切りかえるための若干の過渡的な処置が必要ではないかというふうに考えております。
 それから公正取引委員会の運用の問題、これは先ほどカルテルのところで若干申し上げましたが、本来この独占禁止法の守り神でありますところの公正取引委員会でございますから、その法の目的を達成するために、きわめて民主的に運営されなければならないと思うのでありますけれども、従来の運営を見まするならば、大資本、大企業におけるいろいろな問題については非常に何か手かげんが加えられておるようにわれわれは考えざるを得ないのであります。どうも小さいところにだけ非常に圧力が加わつて来ておる。こういうことはやはり適切に処理をしてもらわなければ、この独禁法自体を守つて行き、その目的を達成することにならないと思います。そういう意味で、公正取引委員会の民主的な運営を希望するものでございますが、そのためにも、消費者の代表、中小企業の代表、農民の代表等を入れました公正取引審議会とでも言うべきものを設置していただきまして、そこで経済的な弱者の意見が十分反映をされて来るようにぜひとも処置をする方法を講じていただきたいと私は思うわけでございます。
 以上が大体の中心的な大きな問題点であろうと思いますが、結論といたしまして、この法律の緩和は、トラスト、カルテルあるいはコンツエルンヘの道を開き、大企業の利益聾断ということを許すことになつて、その犠牲が中小企業者あるいは農民あるいは労働者の肩の上に押しかぶさつて来る、こういうようなことでありますので、本来われわれが意図しておりますところの日本経済の再建自立、あるいは貿易の振興、国民生活の安定というようなものに対しては、逆コースをたどることになるわけでございまして、この法律が制定されました第一条の目的に反する改正を考えますので、この緩和について、議員各位が独占禁止法の本来的な目的というものに立ち返つて御検討を願いますことを切にお願いをする次第でございます。
#67
○佐伯委員長 以上で重枝君の御発言は終りました。これに対する御質問はありませんか。
#68
○阿部委員 お話は承りましたが、少し立場を違えてお考えになつておつしやるのではないかという気がするのであります。というのは、重枝さんに御出席を願いましたのは、われわれとしましては、別に国民経済の指導上における専門家としてのお立場から御出席を願つたのではないのでありまして、労働組合の役員としてのお立場にあられるから、そこで労働者の立場から見た現在の企業経営の状態から、その状態を根拠に置いてこの独占禁止法緩和が行われた場合の労働者に対する影響、こういうふうな方面において専門的な知識があられるものと思いまして承つたのでありますが、お話は大体一般的なお話であつて、そういう専門のお立場からのお話が少かつたように思うのでございます。そういう労働者としての職域なり、利益代表というような立場からのお話がもう少しあろうかと思いますが、いかがでありましようか。
#69
○重枝公述人 非常に意外なことをお伺いするわけですが、私は労働組合の代表として参りました。労働組合の代表であるから、一企業に局蹐して働いていればよろしいというような労働組合の御認識であれば、私は非常に遺憾に思うわけでございます。われわれは全国的な労働組合の組織といたしまして、日本経済の再建をになう大きな役目を持つております。これは十分御存じのことであろうと思うわけであります。そういう意味におきまして、私たちは独占禁止法がどういうふうに緩和されるかということについては労働組合乏して重大な関心を持つているわけであります。そこで私は当然全般的な問題について意見を述べたわけでございます。そういうわけでございますから、本来労働組合の代表として私がそういうことを述べるのは当然であろうし、また議員の皆様はどうか十分お聞き願つて、もしとるところがあればとつていただきたい、こういうふうに思うわけであります。特に労働組合というのは、生産に携わると同時に、消費者という立場でございますので、私は生産の面についてもいろいろ申し述べましたし、消費者の両では、特に再販売価格の問題等についてはかなり具体的に申し上げました。なおその他について具体的な問題で御質問がございますれば、いろいろ申し述べたいと思います。
#70
○阿部委員 一応ごもつともでありますが、日本経済の再建をになわなければならぬのは、あえて労働組合ばかりでなく、社会の諸般の地位の者おのおのさような任務をになつておるうか患いますし、われわれ議員も同様でございますが、特にお越しを願いましたのは、労働組合の役員として、労働者の立場から専門的なお話が伺えるかと思つたのでありまして、たとえばあなたが先ほどちよつと言及せられましたところの平均生産費というような問題につきましても、現在の企業においていろいろな生産費によつて原価が構成されておりますけれども、その中には、近ごろ問題になつているような、いわゆる社用族の濫費というものも原価の一部に入つていると思います。そういうふうなことについて、各企業の実情を労働者の立場から御観察になつたならば、われわれもこの問題を考える上において大いに参考になろうかと思いますし、その他諸般の労働者の立場から、たとえばカルテルにいたしましても、カルテルができた場合に、それの労働者に対する特別の利害関係というものがあるはずであります。たとえばカルテルができて、価格が維持せられて、そこで労働賃金の支払いの余地ができた場合に、労働者に対する利益としての部面も確かにあることは間違いないのでありまして、それと全般的な労働者の階級的な立場との関連において、労働者としての立場からの御観察があろうかと思つて、専門的なことを伺いたいと思うのであります。
#71
○重枝公述人 そういう点で質問していただけばいろいろ申し上げたいことはありますが、しかしそれは全体的な独占禁止法の緩和という問題とはかなり離れる点もあろうかと思つて、そういう点には触れなかつたのであります。もちろん今申されましたような社用族によるところのいろいろな濫費というようなものが、生産費の中に大きくかぶさつて来ておることは、これは皆さんの御承知の通りでございます。幸いにして経済同友会あたりでも、それについて大いに自粛をしなければならぬというようなことは言つておられるようでございます。ただ一般的に平均的な生産費というものがつかめないと申しましたのは、御承知のように、会社の経営をしておりまして、労働組合との交渉をいたしまして、原価につきまして信憑性のある資料を提出する会社というものは、これは皆無と言つていいくらいでございます。そこには特定の時期に提出されました原価計算あるいは経理の内容等について私たちがこれを観察した場合には、なかなかそれの間違つている点が指摘しにくいわけでございますけれども、これを長期的にとらえて参りまして、数回提示されましたものをつづり合せまして、一般的に出ておりますところの関係の産業の諸統計というものと対比いたして参りますと、大体の趨勢というものがわかつて来てつかまれます。私鉱山に関係いたしておりますので、その例をとつて参りますと、たとえば坑木の使用量、こういうようなものは、その購入あるいは保管というようなものが大ざつぱにできておつて、なかなかつかみにくい。こういう点で相当大きな水増しをしてあるのが往々にしてございます。その他につきましても、組合側に出されるものは相当大幅な水増しでございます。それからもしカルテルが形成されまして、独占利潤が出て参りました場合に、それによつて労働組合も潤うではないかというようなことでございますけれども、今日カルテルを結成をいたしまして、それによつてみずからの利潤を増大しようというような資本家の中で、独占利潤ができたからそれを労働組合にもその幾分かをわけてやろう――よくかつて言われましたししのわけ前をもらう、簡単にわけてやるような資本家、これまた皆無でございます。もしそういうような独占利潤というものがあるとわれわれが判断します場合には、これに対しては非常に強力な闘争をしなければならない。たとえば石炭の場合を考えてみましても、あの異常な石炭ブームによつて非常な利潤を獲得した。これに対して賃上げを申し出たところが、それに対して今まで非常に不況であつたからとか、あるいは新しい設備をしなければならぬということで、これらの利潤のわけ前を与えることを強く拒否したわけであります。そういうところから昨年のああいうような非常に大きな争議も起つたと思います。しかしその争議の方法につきましては、私たちの労働組合総同盟といたしましては批判をいたしておりますけれども、この長期的な争議が起きたという根本的な原因は、私はそこにあるというふうに考えております。そういうふうに、これは一例でございますが、独占利潤が出て来たから、それをある程度労働組合側にも潤うようにしようというようなことは、日本の経営者の場合にはあり得ないし、もしそれをやろうとすれば、非常な摩擦が起き、その結果逆の而から今度は労働組合が高手小手に縛られるというような情勢になりつつあるのが現在でございます。しかもそういう利潤はなかなか追加賃金としてもらえないと同時に、今度は先ほど申しましたような一般的な経済的な関係におけるカルテルその他の悪い面が、消費者としての労働者に全体的におつかぶさつて来る、こういうような実情になつております。そこで私たちはこの緩和に対して反対をしておるわけであります。
#72
○栗田委員 ちよつとお尋ねいたしますが、そうするとあなたの方の組合といたしましては、いわゆる旧法に対しましては賛成でございますか。
#73
○重枝公述人 旧法に対して賛成かどうかということですが、われわれが旧法はよろしいということならばこの緩和をやめてもらうということならば、非常にわれわれもよろしいわけであります。そういう意味において、これはなきにまさるという意味で私たちはいいと思つております。しかしこれが私たちの基本的な考えに合致するものであるというふうには考えておりません。
#74
○栗田委員 あなたのお話では、要するに公取の方が運用上ぐあいがいいという、これはおそらく認可の問題にも関係するのでしようが、あるいは間違いかもしれませんが、私はそういうように聞いておつたのです。そうなると、今の主務大臣の認可を公取一本に修正するということは、労働組合としては別に反対をするわけじやないのですね。
#75
○重枝公述人 その御質問は、主務大臣から公取一本の認定になれば、カルテルというものの存在を認めるのか、こういうことも含まれての御質問でございますならば、カルテルを容認するということに基本的に反対でございますから、そういうふうにお答えしたいと思います。
#76
○佐伯委員長 以上で重枝君の御発言は終りました。
 次に渡辺義介君。
#77
○渡辺公述人 私は製鉄業に従事いたしておるものといたしまして、製鉄業の立場からこの独禁法の改正に対する私どもの考え方を申し述べてみたいと存ずる次第であります。
 もう皆様方御承知の通りの状況でございまして、終戦後わが国の製鉄業というものは非常に徹底的な解体を受けまして、一たびはみな賠償指定工場にまでなつたというような悲惨な状況にもなりましたし、また企業自体の経営内容も徹底的な衰微をこうむつたわけでございますが、幸いにいたしまして、賠償の指定からも免れ、ようやく朝鮮動乱の景気というようなものによつて比較的再起の時期は早められたとは申しますものの、まだその企業自体の基本条件は一向完備されておらないというような時代を経まして、一昨年来の国際情勢の緊迫化から参ります諸般の悪条件のもとに、だんだん市況も内外ともに悪くなりますし、ことに国内の金融の圧迫その他から起つて参りまする業界自体の自己崩壊の方向への情勢が次第に悪化して参つたような次第でございます。これらの点から考えまして、鉄鍋業というもの自体の本来の使命であります国内の基幹産業であるという立場と、また国際的に見まして、国際市場はあくまでも確保して、競争して参らねばならぬというような立場から、業界人自体の手で尽さねばならない努力は、ずいぶん各企業ともに設備の改善その他にいたしておる次第でございますが、個別的の各企業の経営だけではとうていその難関を切り抜け得ないような場面に幾度か逢着しているような次第でありまして、たとえば原料面の獲得にいたしましても、投売りその他の自己崩壊的な現象から、自分たちをどういうふうに保存して参らなければならぬかというようないろいろな場面に直面して参つた次第でございます。そこで、前国会で御審議になりましたこの独禁法の改正案におきましても、公取委自体で、現行法はわが国の現状に即しない。カルテル行為も相当緩和する必要があるというような御見解からの改正案の御提出ではございましたけれども、その後いろいろまた業界の実情等をも想察いたされまして、今回の改正案は前回よりもまた一歩前進されて来ておるということは、私どもにとりまして非常に喜ばしい案であると考えておる次第でございます。従いまして、たといそれがわれわれ業界人にとりまして十分なものでないといたしましても、直面いたしておりまするこの難局に対処して参りまするものといたしましては、いつときも早く少しでもいい方向へ前進し得るという意味におきまして、本改正案が御審議願えて、いつときも早く通過することを要望いたしておる次第でございます。ただ今回の改正案において認められた点等に触れまして、多少私どもの考えておりまする点を卒直に申し上げまして、御審議を願いたいと思う次第でございます。
 今回の改正案におきましては、不況カルテルの中に、いわゆる価格協定のカルテルも御承認になるようなところまで進んで参つております。しかしこれは不況を前提といたしまして、生産制限の協定をやつた上で、なおかつ不況の防止が不可能であるというような際に、初めて価格協定をやつてもよろしいというような制限のもとに、価格協定カルテルが認められておるような次第でございますが、実は私どもの方の業界から見ますと、不況という事実の認識には、いろいろな条件やいろいろなこともございましようけれども、不況に直面して非常にそれが深刻なものになつて来ておるという場合には、ただ単に生産制限の協定だけでもつてその不況が安定し得るとはとうてい考えられないのでございまして、生産制限即市価の安定というようなところと直結して参りませんと、不況対策としての協力行為が効果を上げるということは、相当期間を経なければ現われて来ないというようなまどろしさがあると思われる次第でございまして、あるいは私の法文の読み方が悪いのかもしれませんが、生産制限の協定をやつた後、しばらく推移を見てから、なおかつ不況が深刻化して行くようでなければ、価格協定は認めないというのでは、少しどうも段階が遠過ぎやしないかというような感じを受けておる次第でございます。
 それからまた合理化カルテルの中に、今度は生産分野の協定を前提とする協力行為をお認め願つておる次第でございまするが、これも私どもの業界の実際の動きから見ますると、生産分野の協定をお認めになつたことは、すこぶる実際に近くなつて参つたと考えております。つまり生産の制限をやつて全体の需給の調整をはかると申しましても、たとえば棒鋼なら棒鋼というものが売れないから、何割に減産するというようなことをやつてみましたところで、なかなか各メーカーの持つておりまする圧延機の経済能力単位というものが相当なものになつておる次第でございますから、おのおのが三割も四割も各寸法のものことごとくを制約して参るということにいたしましたのでは、コストはかえつて割高なものにつきまして、むしろ需要家に対する不安定さを増長して行くというような傾向になつて参ると思うのでございまして、同じように制約しなくちやならない状態になりましたならば、おのおのがおのおのの寸法のものを各別にみな三割ずつ減らして参るということよりも、おのおのの寸法のものをお互いが持ち合いまして、たとえば九ミリのものはAに集約する、十二ミリのものはBに集約するというようなことで、総生産量は減りましても、各寸法別のものにつきましては制約しながらも、比較的大量生産が可能であるというような態勢に持つて行くことが、メーカーにとりましても、需要家にとりましても、都合のいいことになるのじやないかと思われる次第でございまして、生産分野の協定をお認め願つたことはまことにけつこうであると存じております。
 それから先ほどからも問題になつておりまする、カルテルをお取扱いになる官庁の最後の認定を、公取委の認定を前提といたしまして、主務官庁が認可をされるという二重建のようなことになつておる次第でございますが、すでにいろいろな制限的な条件のもとに、協力行為をお認めになるということであるならば、これは経済活動上から言えばきわめて機敏を要する仕事になる次第でございますから、これをダブル・システムの認定、認可という方向でお取扱いになることは、せつかく協力行為を認めようという前提が、実効を現わすことにおいて、非常に遠ざかつて行くような御処置になるのではないかと思われる次第でございます。前回この点についてお尋ねをこうむりましたときも、私どもから申せば、これはむしろ届出主義ぐらいに扱つておいていただいて、その推移によつて、行き過ぎがあつたならば、ただちにある操作を加えられるというような簡易な方法でお取扱い願いたいということを申し上げておつた次第でございまするが、これはひとり製鉄業の立場からのみ申し上げた次第でありまするので、全産業についてのことを包括される独禁法の建前として、そういうこともあるいは軽卒に過ぎるきらいがあるというようなこしんしやくから、こういう制度が生れたのかもしれませんが、そういたしましても、最後の認可権はやはり主務官庁でお取扱いになることが、供給者、需要者双方の面を国民経済的に見られて慎重にお扱いになるべき筋だと思いますから、むしろ主務官庁の認可に御集約願う方が至当ではないか、かように存ずる次第であります。また今回の改正案におきまして、認可をやられることに伴う報告徴収権を主務大臣にお認めになつておりますが、これは認可を前提とせられる限り、認可に必要な御処置としての報告を御徴収になるということは、ある意味においては非常に妥当なことであると存じますけれども、もしもこれがいろいろな意味において濫用されますると、かえつてまたそれに伴う諸般の迷惑も出て来はせぬかという懸念もございまするので、この辺はひとつ運用の上で十分ごしんしやくにあずかりたいと存ずる次第でございます。
 また前回申しましたので省略いたしましたけれども、われわれ鉄鋼業の立場から申しますると、くず鉄の共同購入とかいうことについての協力行為を、むしろ独禁法の適用から除外されて自由な取扱いにしていただいたということは、私ども業界にとりまして非常に大きな影響のある点でございまして、これはまことに機宜に適した処暑と、かように存じておる次第でございます。その他役員の兼任、持株の緩和というような点についても多少緩和が行われておるような次第でございまして、これらもまた以前よりはだんだん進んで参つた、かように感じておる次第でございます。ともかくも業界が当面しておりまする難局の実情を十分ごしんしやくいただいて、少しも早く御審議の上、早く独禁法の改正案が成立いたしますることを私は衷心よりお願いする次第でございます。
#78
○佐伯委員長 以上で渡辺君の御発言は終りました。これに対する御質問心ありませんか。――阿部五郎君。
#79
○阿部委員 まず、過日来の公取委員長のお話によると、この改正法律ができても、これは他日に備えるための用意であるから、ただちにこれを適用してカルテルをつくり、あるいはトラストを認めるというようなことにはならないであろうというようなお話であり、一方通産次官においては、そのうちでまず合理化カルテルだけは最近のうちにあるいは適用することがあるかもしれないというような、はなはだ緩慢なお話であつたのであるが、今あなたのお話を聞くと、少くとも鉄鋼業界においては、この法律が通過すればただちにこれを実行してカルテルをつくる。しかもそのカルテルたるや、単に生産制限くらいのものでなくて、いきなり価格カルテルにも入りたいような御意思を持つておられるようにもとれるのでありますが、はたしてあなた方の業界の実情がそれを必要やむを得ざるものたらしめておるようなものであるならば、その実情をもう少し詳細に承りたいと思います。
 それからもう一つ――そう何べんも聞くわけには議事進行上していかぬことになつておりますので、一ぺんにお尋ねいたします。あなた方業界の方々においては、その生産費という観念をいかに考えておられるか。いかなる費用を含めて生産費とお考えになつておるか。これはおそらく一製品、一単位当りの生産費というものが問題になると思うが、それを一体どう考えておられるのであるか。ことにそのうち平均生産費という観念になつて来ると、これははなはだむずかしいことになるのでありますが、平均生産費を割るとか割らないということは、一体どのようにして御認定なさるおつもりなのでありますか。
#80
○渡辺公述人 ただいまの御質問にお答えいたしますが、第一の鉄鋼業界は本法の改正案が通過すれば、ただちに価格カルテルその他のものに突入する見当なのかどうかというお尋ねのようでございます。私どもは昨年この改正案が出されておりまする当時と今とは同じ状態だとは考えておりませんけれども、また再び昨年と同じような状態がいつ発生して来ないとも限らぬという不安は十分に持つておる次第でございます。昨今でも御承知の通りいろいろな不渡り手形問題とか、いろいろな点でもつてまた財界に不安が発生するじやないかというような危惧が大きく構えておる次第でございまして、その波紋がわれわれに協力行為を必要とすると考えられるような線まで押し寄せて来ますならば、それはただちにまた協力行為に移りたい、かように考えておる次第でございます。
 それからまた一番先に私どもが実行に入りたいと思いますのは、本法の成立をまちまして、まずスクラップに対する協力行為、これはともかくも一刻も早く実現したい、かように考えておる次第でございます。
 それから第二のお尋ねの、たとえば、不況なら不況というようなことを勘案する際に、一体コストを割るか、割らぬかという標準になる平均生産費というものに対して、どういう考えを持つておるかというお尋ねじやないかと思うのでありますが、これはお話のように実際はなかなかむずかしい問題であろうと思います。それはしかしその主務官庁は各大きなメーカー等の総合的な単価を推定いたしまして、それでもつて一応の基準に見られるというようなことになるのじやないか、私はかように考えておる次第でございます。
#81
○阿部委員 お話はちよつとあいまいに受取れたのでありますが、要するに現在をもつてあなた方の業界においては少くとも不況であつてカルテルを要する。合理化カルテル、不況カルテル、双方を要する、そういうふうに最初に承つたのでありますが、二回目のお答えにおいては必ずしもそうでないように聞えたのであります。その点はつきりしていただきたい。
 それともう一つ、あなたは鉄鋼業界のお方でありますけれども、連盟会長であらせられますからお尋ねしてもよいかと思うのでありますが、鉄鋼業界がかりに現在不況であるといたしましても、日本の事業界全体についていかにお考えになつておりますか。カルテルを必要とするような現在不況にある。すなわち言いかえれば、この改正法律が通過すれば、続々としてカルテルの申請が行われるであろうとお考えになりますか。それともここしばらくまあそんなことはあるまいと御観察になつておりましようか。その点承りたいと思います。
 それといま一つ私たちが疑問に思うのは、特に鉄鋼業などという関係においては、これは固定資産が非常に多いので、生産のうちで何といいますか、不変資本といいますか、原料でなしに設備としての部分が非常に重きを占めるので、そこでもしカルテルをやられて生産の制限などをやられましたならば、それが一部死物になつてしまう。そうしたらその割合に応じて莫大なる企業設備が死物に化するのである。それがただちに一生産単位当りの原価に影響して参り、生産費に影響して参つて生産費はかえつてかさむという結果になる。これは鉄鋼業界においては特にはなはだしいのではないかと思います。そこでそういうふうなカルテルをやることが、決して生産費を下げて事業の勃興を促すというようなふうにはならないのである。すなわち不況の場合にカルテルをやることは、不況を固定化さすにすぎないのであつて、世界的な経済界の動向に影響される場合は別として、国内だけを考えましたならば、かえつて不況を固定化させ継続させ、景気の転換を促すことにはならないのではないかと思うのであります。いかにお考えになつておられましようか
 さらにまた品種の制限のごときに至りましては、これは特に企業設備を多く要する部門におきましては、新たに品種の制限をする場合において、またその制限を解く場合においても、一々機械をとりかえなければならぬし、設備も改めなければならないし、熟練工に至つてもまたこれをかえなければならぬというような必要が起つて来るのであつて、これは企業の発達の上に非常な支障を来すゆえんのものではなかろうかと思うのであります。それらの点、いかがでございましようか。
#82
○渡辺公述人 ただいまのお尋ねにお答えいたします。鉄鋼業界以外の業界の現状から見て、この改正法案がパスしたならば他の企業面からも続々このカルテルの申請が起ると思うかどうかというお尋ねのようでありますが、これは私は不敏にしてどうもほかの業界の事情がどういうカルテルを要望しておられて、すぐに発生して来るかどうかというようなことは、私の口からはちよつと口幅つたようなことになりますので、直接のお答えは差控えたいと思いますが、やはり各企業方面にもこの企業協力行為を要望しておられる向きが相当あるのではないかと存ずる次第であります。
 それからまた鉄鋼業の現状についての説明が何だか、すぐ当面カルテルが必要であるだろうとか、あるいは間があるかのごとく、答えがあいまいじやないかというようなお尋ねのようでありますが、われわれはやはりほんとうの不況につつ込んで、そして企業自体がどうしてもこのままであつたのでは、自己崩壊的な方向に参るというような事態になつたならば、いろいろな手を打つてカルテルを申請したい、かように存じておる次第でありまして、ただいたずらに平時にカルテルを要請して、そして資本主義的にカルテルの上にあぐらをかいて、消費者の利益を無視して参るというような運営を、この独禁法改正によつて期待しようとは毛頭存じておらぬ次第であります。
 それから生産制限、品種制限のカルテルが企業設備を睡眠状態に置いて、ますますコストが高くなるのではないかというお尋ねのようでございましたが、実際そういうことが起り得る事態が、業界の市況の変遷によつてしばしば起つて来るわけでございます。たとえば厚板の工場とか、いろいろな工場を持つておるわけでございますが、厚板の不況のときには厚板の生産を制限しなければならぬ。そうすると遊休者ができる。それを解雇することなくして、ほかの方に配置転換いたしまして、できるだけ次の事業の再開に備えて行く運営をしようというようなことは、各企業の内部におきましてもしばしば起つて来るところでございます。しかも日本のような鉄鋼製品に対するマーケットが比較的少くて、量においては小さくて、そうして品種についての要望は各品種ごとにある。つまり単種多産をすることができないような小さなマーケットをかかえて、品種のバラエティでマーケットに応じて行かなければならぬというようなことを前提として、各企業メーカーにそういうような重圧が加わつて来る。そのことはお考えの通りであります。しかしてカルテルをやつたために不況が永久化して、コストがますます高くなつて、かえつて企業自体が衰微の状態に入るのではないかという御懸念からのお尋ねであつたように思うのでありますが、しかし不況カルテルに備えて価格協定までもやるということは、一応安定帯物価に近いところへ市況を安定させて、事業家に不安のないようにして需給が調整できるようなところへ持つて行きたいということを念願して行われるわけでありますから、そのためますます不況が深刻化して参つて、コストがますます高くなるというふうには私は考えておりません。
#83
○栗田委員 今の不況カルテルについてのあなたの御希望意見は、不況の場合に生産数量の制限を十分やつてから価格まで持つて行かなければならぬのだが、そういうことではまどろつこしいというようなお考えのようですが、結局生産制限をしてもなお不況が克服できないということは、その生産制限というものに業者が熱意がないか、あるいは生産制限の量が少いということが非常に多いんじやないか、これが一つの大きな原因だと私らは考えておるので、やはり生産制限を徹底して、それでもできないというのは、価格でもつてはとてもなおらない。すなわち不況がより深刻だということなので、私は、かりにこの原案が通つたとしても、容易に価格協定などというものは許すべきものではない、こういうふうに考えておる。これはあとでお答えを願いたい。
 それからあなたは、生産分野の協定が認められたということは非常に喜ばしいことであるということを言つておりますが、これは東京の経団連の方と関西の経団連の方とは非常に違つて見ておる方もあるのです。生産分野の協定が認められるということになると、なるほど非常に能率の高い工場にある製品が集中をするかもしれませんけれども、私はこれによつて値段が下るということは必ずしも保証できないと思うのです。それからこのようにある工場に同一品種のものの生産が集中されても、ある時期においては非常に合理化が促進されたけれども、それがマンネリズムになつてしまつて、なお一層合理化をはかるということがなくなる。また次にはどういうようなことがあるかというと、新製品をどんどん業者同士がつくつて競争をしないということになると、技術的にもそういう面から非常に遅れて来るのじやないか、私はこういうような不安を持つておるわけだが、この点もお尋ねいたしたい。
 それからまた認可認定の問題ですが、あなたは通産大臣の方が認可をして、できれば強制調査権などというものは発動してくれない方がいいということですが、これはあまり虫のいい話で、あなた方の考え方としては、認定認可などということはやめてしまつてやりたいときには公取に届出をすればそれでよろしいということにしてやることが一番いいのだろうと思いますが、これも少し考え方が関西の方と東京の方と違つておるのです。経営者同士でも違つておる。東京は特に通産省と近い関係かどうか私はわかりませんが、この通産大臣の認可の方がよろしい、こういうふうに言つております。これはこの原案が通つた場合のことですよ。それから関西経団連あたりの話を聞いてみると、いずれにしてもこれは二重行政だ。二重行政であつて、通産大臣の認可というものはどうもよろしくない。また独禁法自体の法体系も非常にくずしてしまうので、やはりこの法案の性質から言うと、関西の、公取一本の方がいいという意見は東京の経営者よりも、話を聞いてみると非常に視野が広いように見える。この点に対して、どういうお考えですか、ちよつと参考までに伺いたいと思います。
#84
○渡辺公述人 第一の、不況カルテルの際に、生産制限の協定をやつた後間隔を置いてから、価格協定をやる必要があるかないかの推移を見てやる方が妥当なのであつて、価格協定をやるということ自体非常に重要な問題であるから、そう軽率に、不況になつたらすぐやるというようなことは慎重を欠くじやないかというお尋ねと、それから生産制限のカルテルというものができて、それがほんとうに徹底して、需給をミートさせる限度まで最初から生産制限を協力してみんなが一律に実施するとすれば、これが価格協定の線まで行かなくても価格の安定が期待し得るではないか、こういう御意見のように承つたのでありますが、そういう見方も一応はあるかもしれません。大体カルテルの方法で生産制限に入るとか、もしくは価格協定に入るとかいうような事態になるのはこれは非常な軽易な歩み方で、通産大臣にすぐ認可を申請して、不況になりましたから生産制限のカルテルを認めていただきたいとか、価格協定のカルテルを認めていただきたいというような申出は、やつても簡易にお取扱いになるべきものではないというように実は存じておる次第でありまして、不況というものが非常に深刻化して来て、業界自体がほとんど自己崩壊的な危険にまで突入するようなおそれがあるというような際に初めてこのカルテルの力で生産制限もやはり価格協定もやつて、それをどうキープするかということになつて初めて問題になるのではないかということを前提として考えている次第でございます。要するに生産制限ということは、直面している不況を価格安定の線に持つて行く方法でございますから、やはり同時に価格協定を目標とした生産制限を並立さして考えていただいてもそう大きな弊害はこれに伴なわないじやないか、かように考えている次第であります。もしそれが安易な考え方で、すぐ申請して行つて、一時的な不況でしかないものを、いかにも深刻な不況であるがごとくカムフラージユしてやると、それは一挙にしてけ飛ばされても当然ではないか、かように信じている次第であります。
 それから認定と認可の問題について、関東側と関西側との間に非常に見解の相違があるようだがどうかというお尋ねでありますが、これは私自身の考え方でなしに、鉄鋼連盟の運営委員会等でも話したわけでありますけれども、鉄鋼連盟の運営委員会等の見解におきましても、やはりこれは産業を所管される主務大臣が、国民経済的な立場で供給者と需要者というような双方の面を総合的に勘案しまして、そこで認可の可否を決定されるということが妥当ではないか、かように信じております。
#85
○石村委員 われわれの立場は渡辺さんの立場と違うので、そうした立場から渡辺さんにお伺いしても、結局並行線で意味をなさないと思うので、努めて渡辺さんの立場に立つてこの問題を考えてみて、疑問と思うところをお聞きしたい。
 鉄鋼業界に例をとりましても、不況カルテルというものは、価格カルテルというところまで進まなくても、結局価格の維持あるいは値上げを目的としていると思いますが、この不況というものは、単に日本の鉄鋼業界のみの、こく特殊な不況というものは考えられないのであつて、やはり一般の不況、その他関連産業の不況、あるいは国際的に鉄鋼業が不況であるというところから来る不況の方が多いのではないか。それのみではないが、ただ単に日本の鉄鋼業だけを切り離して、関連産業の不況はない、あるいは国際的な不況はないということは、ほとんど考えられないと思うのですが、そうした一般的の不況の場合に、鉄鋼業界でカルテルをおやりになつて、価格の維持あるいは引上げをおやりになるということは、結局ほかの関連産業がどうにもならなくなつて来るということになるのではないかと思いますが、いかがでございましようか。
#86
○渡辺公述人 お尋ねの要旨は、鉄鋼業界とは言うけれども、鉄鋼業界が不況カルテルを要請するという根底は、ひとり鉄鋼業界の不況だけではなく、一般の関連産業界等から起つて来る不況は、やはり鉄鋼の方に集約されて起つて来るのではないか。そうすれば、その価格を維持して行くというような処置をすることは、関連産業に対して迷惑を及ぼすことになつて、決して健全な鉄鋼業界の再建に役立つことにならないのではないかという趣旨だと思いますが、お説のように、不況は鉄鋼業界独自の立場においてのみ起つて来るとは、私も独断いたしてはおりません。たとえば昨年起つて参りました例について申し上げますと、業界から申しますれば、線材、薄板というようなものについて、非常な投売りというか、どろ沼に足をつつ込むような崩壞が起つて来たわけですが、これは要するに、くぎ、針金というような非常に大衆向きの大きな需要を対象にしておるものが、輸出面において非常な行き詰まりを生じまして、それが内地に対する投売りとか、また金融の圧迫から来る投売りというものに移行して来たために、非常な不況を招来して来たというような次第でありまして、これは結局民生品の需要の面から起つて来た不況でありますから、鉄鋼業界独特の不況とは言えぬので、やはり関連産業から起つて来る不況だと申し上げてもさしつかえないと思うのであります。しかし実際は、輸出にいたしましても、国内の相場にいたしましても、どこまで下るかわからないというような状況になつて参りますと、下つただけ需要家の方に非常に都合がいいように一見見えますけれども、かえつて需要の不振を来しまして、一体どこまで下るかわからないから買い控える。これは国際市場においてもそうでございますし、内地においても需要家を非常な不安の地位に陥れて行くということになる次第でございまして、安易にあぐらをかいて高価なところへ市価をつり上げるためのカルテルならいざ知らず、出そうではなしに、需要家の立場をも考慮した適当な市況にこれを安定させて行き、そうした需給面が安定して、日本に対する需要もわいて来るというようなところに持つて行くことが、私はこのカルテルをやつて安定策を考える場合の基本の考え方ではないか、かように存じておる次第であります。
#87
○石村委員 ちよつと簡単にお尋ねいたします。現在日本の品が国際的に非常に割高であるから、これを下げなければ貿易がやれない、こういうふうに政府もおつしやつておいでになるわけですが、こうしたときに、鉄鋼のような基幹産業においてのカルテルは、鉄鋼の価格を下げることにはならないと思うのですが、そうしたカルテルはやはり現在考えられますか。
#88
○渡辺公述人 今のお尋ねの趣旨を私ちよつとよくつかめないのでありますが、国際市場の市況が非常に悪化しておる際に、国内でカルテルをこしらえることがですか。
#89
○石村委員 そうです。まあ日本のカルテルですね。
#90
○渡辺公述人 どういうことになるですかね。国内でカルテルをこしらえる範囲は、今度の改正法で認められている不況を対象にするとかいうことでなければできないわけで、国際市場におけるいろいろな変遷に応ずるには、別に御審議になつておる輸出入取引法とかその他のもので許された範囲の共同行為しかできないわけです。ただこういうことにおいて関連がある。輸出向きにいろいろの生産を計画して参つておつたものが、にわかに輸出市場が狭隘になつて参りましたために品物が出ない。そうするとその品物が内地の市場に流れて来るということで、需給がミートしませんために非常に不況を誘発して来る。そこでやはり生産制限とかその他のものをやらなければ、それに対処はできないじやないかという現象を伴つて来ることは、私はあると思うのであります。そういうことのカルテルをやるとしても、やはり改正法の建前で制約されておる目標の範囲内においてしかカルテルができないのでありますから、さしつかえないのではないかと思うのです。
#91
○佐伯委員長 以上で渡辺君の御発言を終りました。次に今村成和君。
#92
○今村公述人 私、法律を平素専門にやつておりまして、その中でも独占禁止法というようなものについては、かねてからいろいろ関心を持つておつたわけでございます。そういういわば法律を専門にやつております者の立場から、今度の改正案をどういうふうに考えるかという点を申し上げまして、皆様の御参考になります点があればと存ずる次第でございます。それについても二、三初めにお断りいたしておきたいのでございますが、法律を専門とすると申しましても、問題はこういう経済政策に関連する法律でございますから、独占禁止法の根底をなすいわゆる反独占政策というものが、現在の日本経済においてどういう意味を持つておるのかということを考えなければならないわけでございます。それは単純な法律家としての立場を多少越えて来ることになるわけでございます。従つてそういう点について私がここで喋々する必要もないし、またそれだけの力もないわけでございますが、何かしらそれについて一つの考えを持つていなければ問題を取上げることはできないわけでございます。そういう点につきまては、私は今日の日本の経済というものを前提といたしましても、あくまでも反独占政策は維持しなければならないと考えるわけでございます。そういうふうに考えますと、反独占政策を維持するための法律は、その政策を実効あらしめるためのものでなければならない、そういうことになるわけでございます。従つて今度の改正案に対する私の根本的な立場は、今度の改正案は反独占政策を実効あらしむる上において適当な改正であるかどうかという点に尽きるわけでございます。そしてそういう観点から見まして、今度の改正案が実際に法律になりますならば、遺憾ながらわが国の反独占政策というものは、いわば骨抜きというようなことになつてしまうのではないか、そういう点を非常におそれておるのでございます。それが第一に申し上げたいことでございますが、第二に今度の改正案は、この前の国会に提出されました改正案をほとんどそのまま――多少部分的な修正はございますが、ほとんどそのまま再提出されたような形でございます。ところでこの前の改正案につきましては、ジユリストという法律雑誌に一応私の見解を述べたことがございます。ただいま申し上げましたように、今度の改正案が前の改正案とほとんど大差ないということになりますと、私の申し上げますことも前にその雑誌で発表いたしました考えと別段かわつていない、同じことをかなりの程度に繰返すようになるのでございますが、その点あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 反独占政策を実施するための独占禁止法というものは、大きくわけますとトラストの禁止に関する部分、それからカルテルの禁止に関する部分、それから最後に不公正な競争方法――今度の改正案によりますと、不公正な取引方法というように名目が改められておりますが、その不公正な取引方法の禁止、この三つの部分にわけられるわけでございます。そうして今度の改正案はこの三つの部分について、それぞれ重要な改正を試みております。そしてその三つの部分の改正案というものは、原則としていずれの点におきましても私は適切ではないといふうに考えておる次第でございます。
 順を追つてトラス禁止の緩和、カルテル禁止の緩和、それから不公正な取引方法についての改正、この三点について申し上げて行きたいと存じます。
 最初のトラストの禁止緩和でございますが、このトラストの禁止に関する基本的な規定は、私的独占の禁止でございます。ところで私的独占の禁止というのは第二条第三項の定義規定にもございますように、他の事業者の事業活動を排除し、また支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること、いわゆる事業支配力の集中によりまして市場支配を実現することでございます。従つて法律の目的はこれを抑圧することにあるわけでございますが、こういうふうにトラストによる市場支配がすでに実現したのでなければ、このトラストは取締ることができないというのであれば、反独占政策というものは非常に実効の薄いものになつてしまうわけでございます。そういう実効の薄いものであつたのでは何にもならないということから、いわゆる予防規定というものが独占禁止法の中には置かれておるわけなのでございます。従つて予防規定の本来の趣旨は、市場支配力を有するトラストというものが実現する前に、その一つ前の段階でこれを取締るという趣旨でございまして、こういう規定がなければ反独占政策というものは決して実効を上げることができないということは断定できるわけでございます。それに対応する独占禁止法の規定はどういうものかと申しますと、大きくわけて二つあるわけでございます。
 一つは不当な事業能力の較差の排除の規定でございます。それからもう一つは第四章に規定されておりますところの株式の保有、役員の兼任、会社の合併に関する規定でございます。ところで今度の改正案は、最初の不当な事業能力の較差の排除に関する規定は、これを削除いたしております。この規定は本来経済的な合理性のない独占力の存在を否認するという趣旨の規定でございます。従つてこういう規定が反独占政策を建前とする以上、あつてならないということはないわけでございまして、これを削除しなければならない積極的な理由は見出せないわけでございます。ただ実際問題といたしましては、この規定は実際には発動したことはない、また非常に発動しにくい規定であるという意味からして、実効のない規定であつた。そういう意味から、これは削除しても実際問題としては大した問題はないということは言えると思います。
 次に、第四章の改正でございますが、この点は、これまでの独占禁止法のトラストの形成に対する最も重要な予防規定の部分だつたわけでありますが、今度の改正によりまして、これを完全に骨抜きのものにしてしまうことになるという感じがするのでございます。この点において特に問題となりますのは、株式保有の制限の緩和、第二は役員兼任の制限の緩和、この二点でございます。元来現行の独占禁止法におきましては、株式保有の制限は、株式を取得する会社と取得される会社の、あるいは取得される会社相互間の競争を実質的に制限することとなる場合、それから一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合、それから不公正な競争方法を手段とする場合、そういう場合においては株式を取得しまたは所有してはならない、これが十条一項にございます。それから十条二項には、競争関係にある会社間の株式保有は全面的に禁止されております。金融機関については、多少違つた規定の仕方でございますが、趣旨においては大体これに準じておるところが今度の改正によりますと、会社は他の会社の株式を取得しまたは所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合、そういう場合についてのみ株式取得の禁止を規定しております。ところが他の会社の株式を取得しまたは所有することによつて、一定の取引分野における競争を実質的に制限するということは、株式支配を手段とする私的独占にほかならないのであります。従つてこれは言いかえれば、株式取得の方法によつて私的独占をしてはならないというにすぎないのでございまして、こういう規定を現在の三条の私的独占の禁止という規定のほかにわざわざ置くという理由は、実質的にはほとんどなくなつてしまうということになつてしまうわけでございます。従つてこういうような改正は、予防規定をまつたく骨抜きにするものである。
 次に、役員兼任の制限でございますが、これも同じように役員の兼任の結果、一定の取引分野における競争を実質的に制限することになる場合にのみ、そういう兼任をしてはならないように改めたわけでございます。これにつきましても、結局それは役員の兼任によつて私的独占をしてはならないということに帰着するので、ございまして、予防規定としての意味は全然なくなつてしまうわけでございます。そればかりではなく、株式の取得というような場合におきましては、それぞれの会社の事業能力は客観的に一応わかつておる、それから一会社が他会社の株式をどの程度まで取得すれば、その会社を支配することができるかということも、一応判断ができる。従つて他会社の株式を取得しまたは所有することによつて、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合というのは、判定が困難なことではございません。ところが役員の兼任によりまして一定の取引分野における競争を実質的に制限するというようなことは、これは少くとも実際の審判手続というような、証拠をもつてある事実を認定するというような制度のもとにおいて、そういう事実を法律的に違反事実として認識するということは、ほとんど不可能なことでございます。たとえば、具体的な例をあげますと、去年でしたか、公正取引委員会が取上げました事件に、剛宝。スバル事件というのがございます。これは株式会社東宝がスバル興業株式会社の営業を賃借いたしまして、そのことが独占禁止法の十六条違反になるということで、その営業の賃借は認められないという審決が下りまして、東京高裁でもその公取の審決を支持する判決が下りました。これはなぜいけないかと申しますと、東宝がスバルの営業を賃借することによつて、一定の取引分野における競争を実質的に制限することになるからだというわけでございます。ところがかりに東宝の社長がスバルの社長を兼任したという形を考へてみます。この場合におきましては、東宝の社長がスバルの社長を兼任したというたけで、東宝がスバルをその支配下に置いたということを簡単に認定できるかどうか、非常に問題でございます。社長同士の兼任でさえそだうと思います。ましてや、社長以下のもつと微力な役員の兼任というような形で、いわばかえ玉を使つて役員を兼任するというふうなことになつて参りますと、もうほとんど役員の兼任によつてトラストを形成するということを防止することはできないという結果に陥るわけでございます。そういうような意味におきまして、第四章の改正は、このトラストの形成に対する予防規定たるの実質を完全に失わしめるものであるというふうにいわなければならないと思います。
 次にカルテル禁止の緩和でございますが、これについては、今度不況カルテルや合理化カルテルを認めるということについて最も論議が集中されておりますが、その前に、第四条を削つて不当な取引制限の禁止一本にしてしまつたということに、まず第一にこのカルテル禁止の緩和が現われております。第四条の規定が、不当な取引制限の禁止のほかにわざわざ規定されておるということは、少くともカルテルというものは、この法律の目的に照らせば、それ自体存在理由のないものであるということをはつきりさせるための規定であり、不当な取引制限に至らない段階においても、一定の取引分野における競争に対する影響が軽微でない場合にはこれを禁止するという趣旨を表わしておる規定でございます。従つてそれを削除してしまうということになりますと、これまた、第四章のトラスト形成に対する予防規定を骨抜きにしたと同様に、カルテルについても完全な市場支配が行われるまでは、これを取締ることができないという結果になるわけでございます。従つて第四条の削除ということは誤つているというふうに私は考えます。
 その次に第五条の削除というのがございますが、私は別に意見はございません。また事業者団体法を廃止して独占禁止法に繰入れるということは、これは事業者団体法自体が非常な行き過ぎた法律だつたわけでございますし、独立の法規としての存在理由がございません。従つて今度の改正案のような形において独占禁止法に繰入れることは非常に適切であると思います。
 その次に問題のカルテルの認可制の採用でございます。これにつきましても、根本的には私は反対でございます。なぜかと申しますと、このカルテルの取締りということは、現在の独占禁止法の規定によりましてさえ非常にむずかしいことでございます。ことに最近の状態は、独占禁止法あつてなきがごとき状況に至つておるわけでございます。従つて今度大ぴらにこういう形で認可を認めるということになりますと、結局全産業のカルテル化ということの橋頭堡が築かれたと言つても過言ではないと思います。しかしこの点もやはり経済政策の問題に関連いたしますので、私は深くは論じません。
 ただここで問題となりますことはやはりこの手続規定でございまして、通産大臣に認可権を与えたという点でございます。なぜ通産大臣に認可権を与えなければならないか。通産大臣が産業の主務官庁であるからというふうなことを申されますけれども、そういうことであるならば、公正取引委員会も反独占の政策を通じて産業に対する一つの主管官庁なわけでございます。従つて通産大臣が産業行政を担当する官庁であるからという理由ならば、公正取引委員会の認可権を解消するという理由は全然ない。むしろ産業政策の中で、独占禁止政策というものが、日本の国策として国会の制定した法律によつてきまつておるというならば、それは産業政策の中でも特殊の性格を持つておるものでありますから、そういうものに対する適用除外を認めるという場合は、これは公正取引委員会がやるのがあたりまえでございまして、通産大臣が認可権を持たなければならないという積極的な理由はどこにもないと私は思つております。そればかりではないのでございまして、通産大臣がこのカルテルの認可権を持つということによりまして、独占禁止法全体の構造がくずれてしまうのでございます。それは独占禁止法は、反独占禁止政策の特殊性にかんがみまして、特に公正取引委員会という行政委員会を設置いたしまして、そこで特に慎重な手続をもつて、いわば反独占行政というものを運用して行くということを意図しておるわけでございます。そういう意図の現われが審判手続による審決という形でもつて規定されておる。そうしてその審決に対して、特に不服のある者は、一般の行政訴訟の例と異なつて、直接東京高裁に持つて行く、そういう形がとられておるわけであります。しかもその東京高裁における裁判というものは、これは公正取引委員会における審判手続を信頼いたしまして、事実の調ベというようなものは、原則として公正取引委員会にまかせる。ただその公正取引委員会の事実の認定が、証拠に照らして不合理であるかどうかという点を再検討するというだけの立場に置かれておるわけでございます。ところがせつかくのこの法律の構想というものが、通産大臣が認可権を持つことになりますと、第一認可の拒否処分を行う場合において、もはや審判手続とか、あるいは審決というふうな慎重な手続というものは全然とられない。単なる普通の行政処分として拒否されるにすぎない。従つてそれに対する訴訟は東京地方裁判所に持つて行く。これは当該官庁所在地の管轄裁判所ですから、当然に東京地裁になるのだというふうに考えるのでございます。東京地裁に持つて行く、東京地裁に持つて行きますと、これは普通の行政処分と同じように、行政庁のすでに行いました調査とかいろいろなものは、これは裁判上は全然意味を持ちません。あらためて裁判所において相互に証拠を提出して裁判所の審査を求めるということになるわけでございます。そうしますと、こういう特殊の産業行政については、特殊の専門的な行政委員会を設けて、そこの判断を信頼するという法律の建前が全然くずれまして、最もしろうとであるところの裁判所の判事が、独占禁止法の運用について主体的な判断の当事者の地位に置かれるわけでございます。これは独占禁止法が本来全然意図していなかつたところのものでございまして、制度として非常な後退であると考えざるを得ません。なお同じようなこまかい点はいろいろあるのでございますが、時間もございませんので、省略いたします。
 次に、簡単に不公正取引の方法について申し上げます。不公正な競争方法を不公正な取引方法という名称に改めるということは私もよいことだと思います。またこの列挙をいろいろ整理したということも、内容的に見て、大体穏当であると考えるのでございますが、しかし公正取引委員会が指定したものでなければ、法の適用がないということは、非常におかしな改正であるというふうに考える次第であります。これはなぜかと申しますと、もともと不公正な取引方法というものは、これは望ましからざる競争手段であるという見地から、法律にわざわざ書き上げられたわけでございます。従つてその行為をさらに公正取引委員会が指定しなければならないということにしたのは、全然意味のないことでございまして、なぜこういう修正をしたのか、私にはとうてい理解ができないのでございます。これは現行法によりますと、具体的な違反行為の類型が上つておつて、そのほか公正取引委員会の指定するものというふうになつております。これは非常によい規定の仕方でありまして、不公正取引を禁止すると、どういうことが出て来るかわからないという業界の不安を除くという意味において非常によろしいのでありますが、今度は規定で一つ一つ列挙しておる。一応この規定を読めば大体何がいけないのかということはわかる。そこまで持つて来ながら、これをさらに公正取引委員会が指定しなければ発動しないということは、これは法律的にも全然根拠のないことだ、極端に申しますと、立法あるいは司法の職権を侵す行政機関の越権行為とさえ言えないわけではないと思う次第でございます。この不公正の取引方法に関連いたしまして、再販売価格維持契約を認めるという問題もあります。これも主として実情に関する問題で、法律論ではございませんので、深くは私論じませんが、私の感じといたしましては、わざわざこんなものを今入れなければならない必要がどこにあるだろうかということを相当疑問を抱いておるということだけ申し上げたいと思います。
 一応これで終ります。
#93
○佐伯委員長 以上で今村公述人の御発言は終りました。
 これに対する御質問はございませんか。――御質問がなければ本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。
    午後四時四分散会
ソース: 国立国会図書館
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