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1953/07/09 第16回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第016回国会 農林委員会農業共済制度に関する小委員会 第4号
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1953/07/09 第16回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第016回国会 農林委員会農業共済制度に関する小委員会 第4号

#1
第016回国会 農林委員会農業共済制度に関する小委員会 第4号
昭和二十八年七月九日(木曜日)
    午後一時五十二分開議
 出席小委員
   小委員長 足鹿  覺君
      足立 篤郎君    綱島 正興君
      佐藤洋之助君    吉川 久衛君
      稲富 稜人君    安藤  覺君
 出席政府委員
        農林事務官
        (農林経済局
        長)      小倉 武一君
 小委員外の出席者
        農林委員長   井出一太郎君
        議     員 金子與重郎君
        農林事務官
        (農林経済局農
        業保険課長)  久宗  高君
        参  考  人
        (全国指導農業
        協同組合連合会
        農業経営部)  稲葉 次郎君
        参  考  人
        (獣医師会開業
        医)      小林 国平君
        参  考  人
        (全国農業共済
        協会常務理事) 下山 一二君
        参  考  人
        (埼玉県農業共
        済組合高麗川家
        畜診療所運営委
        員長)     長沢泉一郎君
        参  考  人
        (全国畜産農業
        協同組合連合会
        常務理事)   永松 陽一君
        専  門  員 難波 理平君
        専  門  員 岩隈  博君
    ―――――――――――――
七月八日
 稲富稜人君が委員長の指名で小委員に補欠選任
 された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 農業災害補償法に基く家畜共済の臨時特例に関
 する法律案(内閣提出第一〇〇号)
    ―――――――――――――
#2
○足鹿委員長 それではこれより農業共済制度に関する小委員会を開きさす。
 本日は前会に引続き農業災害補償法に基く家畜共済の臨時特例に関する法律案の審査を進めます。あらかじめ御相談を申し上げておきましたように、本日は参考人の各位から御意見を聞くことにいたしたいと存じます。参考人の皆さんには、暑いところたいへん御苦労様でございました。
 それでは最初に埼玉県入間郡高麗川診療所運営委員長、長沢泉一郎君の御意見を聞くことにいたします。どうぞ。
#3
○長沢参考人 私は一農民としてきようここへ参りました。農民であるがために、農業災害補償法、あるいは本日いろいろお聞き取りくださるところの臨時特例法案、そういつたふうなものの細部についてはわからない者でありますけれども、今までこれに付随して高麗川家畜診療所の運営委員長を五年間やつておりまして、臨時特例についても大体の要旨をお聞きしましたので、それに賛成するものであります。なぜそれに賛成するかということを、法そのものについて申し上げるだけの力はないのでありますが、むしろ高麗川の診療所そのもののおい立ちから今日に至るまでの経過を申し上げることによつて、農民がいかに農業災害補償法にたよつて、今日進んでいるかということの御参考にお願いしたいと思うのであります。
 私のおりますところの高麗川村というのは、埼玉県入間郡の山間部にまさにならんとするような僻地ではありますけれども、そこを中心として約八箇村には獣医師というものがおらなかつたのであります。私が当時今の協同組合の前身の農業会におりましたときに、戦後の農業そのものについてのいろいろな行き方が論議されましたが、いずれにしろ家畜を取入れたところの多角的な農業でなければ、今後容易じやないのではないかというふうなことから、畜産振興をはかりました。しかしながら単に牛を飼え、馬を飼え、豚を飼えと言つてみたところで、百姓にはそれを飼うだけの経験というものもなければ、また非常に多額な家畜を導入するということについて、非常に不安を持つわけであります。この不安を除去する一つの手段として、獣医師を農業会の職員として入れることが一番いいだろうというふうに考えておつた。そのときに県の方から、今度農業災害補償法ができて、家畜診療所というものを建てられるというふうなお話を聞いて、いろいろ御相談を申し上げましたところ、幸いにしてその適格地であるところの無獣医村であるから、われわれの力でわずかな給料に当るものを出して獣医師を置くよりかも、こういつたふうな制度にたよつて獣医師を置いていただくことの方が、より効果的であるというふうに考えたので、それを進めて参つて、昭和二十三年の十月に高麗川家畜診療所というものを建てたのであります。そのとき、共済組合関係で建てるのだから、自分の一箇村だけでこれを押し進めるのでなくて、近村の無獣医村に呼びかけなければならないというので、その御相談に乗つていただいたのが、私の村を中心とするところの一町八箇村でありました。この一町八箇村は全部無獣医町村でありました。その後診療所を中心として、われわれは運営委員会というものをつくつたのであります。この運営委員会をつくつたもともとの趣旨というのは、私たちは家畜が病気に冐されたときに、その診療所をたよるんだということも、もちろん目的の一つではありますけれども、この診療所に来られる獣医師さんを主体として、事故防止といいますか、家畜をどうして飼育したらいいかという、要するにその飼育管理についていろいろと御指示をいただきたいというふうな考えが多分にあつたわけなのであります。ですから、その後いろいろな関係で獣医さんもかわられましたけれども、来る人、来る獣医さんに対して、いつもわれわれ運営委員会としましては、そういつたふうな事故防止について一生懸命やつてもらいたい。農民は、家畜が病気になつて飛んで行くのに安心だからよかつたという考えよりかも、そこに来た獣医さんのいろいろなお話によつて、そういつた事故を起さないように努力するお話をいろいろ聞き得ることの方が、将来のためにいいんだというふうに考えておつたのであります。また共済組合そのものも、われわれの目から見るとやや官僚的に流れる筋合いもありはしないか、そういつた面について、各村から出ておるところの運営委員さんで相談することによつて、ほんとうにわれわれの診療所であるというふうな考え方に進んで行つてもらえるんじやないかと考えたわけであります。この運営委員会の構成は、各町村の共済組合の組合長さんと、私の地方の家畜団体の長、あるいは特に家畜に熱意を持つておられるような方々十五人をもつて構成したのであります。その後、こういつた災害補償制度というものは、りくつの点から見るとわれわれも非常にいいと思うのですが、不幸にして、われわれ知識のない人間は、われわれの掛金をもつて日本中の農民の方々がお互いに手を握り合い、災害に対して補償してもらうのだというように大きな目で見るよりも、むしろ自分の目先のことにばかりに走りたがるのでありまして、そういつたふうなことから、診療所そのものの運営についても、なかなか最初の出発通りには進まなかつたのであります。その間いろいろと功績はあつたのですけれども、この付近の方に、ほんとうに診療所を建ててよかつたとつくずく感じていただいたのは、昭和二十五年の牛の流感のときだつたと思うのであります。
 なお診療所の事業としては、法できまつた仕事以外に、豚コレラの予防だとか、やぎの予防注射だとか、そういつた面についても各村々で計画を立てて、薬を共同購入し、獣医さんを主体とし、その他いろいろ応援をしていただいて、そういつた予防方法もとつたのであります。なお夏期講習あるいは特に希望された所には獣医さんに行つていただいて、いろいろと講話なり講演をしていただいたりして、今日まで進んで来たのであります。われわれの共済組合の家畜診療所に対する見方は、医術を主としてやつておられる獣医さんとはまた違つたつながりをもつて今日に及んでおります。
 そこで今日臨時特例法によつてAとBの二つの行き方をとつておりますが、そのAの方を共済組合の行き方とするならば、その中には六〇%の人件費をあらかじめ確保しておくといつたふうなお話も聞いたのであります。それも私たちは非常にけつこうだと思います。やはり安定した経済状態のうちに置いて、獣医さんが本腰を入れてわれわれ農民のために、そういつた指導部面まで当つていただけるといつたふうな構想であつたならば、非常にけつこうでありまして、私賛成するわけであります。同時に今度の特例によりまして、今まで死亡と疾病と二つにわかれておつたものを一本化して行くということは、われわれその衝に当つていない者から見ると、二つにわかれておつたことがそもそも不自然だつたと思います。あの保険に加入すれば、全部やつてもらえるのだとなることが当然なことではないかと思います。今までそういつた行き方をとられてなかつたということが、むしろふかしぎな話で、今日そういう行き方をとるということについては、まあよかつた、あまり手数のかからない一つの行き方ができてよかつたと思うのであります。その衝に当つている方々は、補償法とか臨時特例法とか、いろいろそういつた法律に対して綿密な計画をもつて当られるでしようが、末端のわれわれ農民は、法の細部についてよりも、その法がわれわれ農民に何を示しているかが一番問題なんでありまして、一つの保険に入れば、簡単にみなやつていただけるというものを望むわけであります。
 なお今度の臨時特例法についても、まだわれわれとすると物足りない点があるのであります。われわれ農民の現況からして、農村に家畜を導入することが必要だと叫ばれている今日において、ほんとうに政府がわれわれ農民のために家畜導入を考えてくれるならば、もつと本腰を入れて、ほんとうにお前たちが安んじて家畜を飼えるようにしてやろうと、いろいろこういつたむずかしい方法でなく、もつと簡単にわれわれのやつていることを御援助していただけるようにお願いしたいと思うのであります。うわさに聞きますと、今度のこの法律の行き方によつては、開業獣医師の方々の行く一つの道と、共済組合を主体とする診療所の行き方の道と、二つに行き方がわかれているように聞くのであります。しかしわれわれ農民とすれば、いかなる方法になつているかはよく存じませんが、いずれにしても、ほんとうにわれわれの家畜を一生懸命見てくださるという制度にしていただきたいと思うのであります。特に先ほど申し上げたところの牛の流感のときのように、ああいう猛烈な流行をするようなときには、診療所も獣医さんも一体となつて、一刻も早く家畜を守つてもらいたいと思うのであります。不幸にしてあのときは必ずしもそうでなかつたというふうに感じられるのであります。今後どういうふうな行き方になつて行くか、細部についてはわかりませんけれども、ああいう突発的な、猛威を振うような病気が流行した場合には、その技能を持つておられる方々が渾然一体となつて、一刻も早く、それを防ぐべく努力を傾注していただきたいと思うのであります。
 私の方の診療所も、最初の出発のときには一町八箇村でありましたけれども、その後われわれのとつている行き方に賛同してくださる村もふえまして、今日では三町十一箇村の町村が、この家畜診療所を主体としています。なおつけ加えるようですけれども、診療所そのものよりかも、家畜診療所の獣医さんを主体として、百姓の財産であるところ家畜の飼育管理について万全を期せられるように、時折会合をしているわけであります。そういつた面から追つて行つて、共済組合の家畜診療所そのものは、ただ単にこの共済の法律に基いて、疾病、傷害が起つたときにそれを見るんだという以外に、われわれ家畜を飼つている者の指導者として、いろいろな面について応援してくださつていることに対して感謝していると同時に、今後もこれらの獣医さんが安んじてその仕事に精魂を打込んで、われわれをひつぱつて行つてもらうことのできるような法律にしていただきたいと思うわけであります。
 なお開業獣医さんにおかせられましても、そういつた面に御協力くださいまして、家畜がほんとうに少い消耗ですくすく育つて行くように、何かと御指導していただきたいと思うのであります。
 二つの行き方そのものについてはよく存じませんが、共済組合も獣医師さんもお互いに手と手を握つて、農家のためにわれわれも一はだ脱ごうじやないかという気分でやつてくださるならば、おのずからその道は開けて来ると思うわけであります。法律の細部についてのことはわかりませんので申し上げませんけれども、そういつた家畜診療所そのもののおい立ちから今日までを申し上げまして、この法律に対して賛成いたす者でございます。
 なお最初無獣医村ということを主体にしたので、一町九箇村でありましたけれども、その後飯能町、越生町という二つの町が加わりましたし、その二つの町には、おのおの開業獣医さんもおられますので、その獣医さん方には時折応援していただいているというふうなことを聞きます。少くとも私の見ている範囲では、開業獣医さんたちがお互いに手を握つて進んでおるのでありますが、なお今後一層そういつた面についての御協力をお願いでき得るような法律であつてほしいと思います。なお家畜についての指導機関が一郡に一つということではなかなか末端まで徹底することは困難でありますし、従つて私の郡でいいますれば、藤沢とかそつち方面の、今まで家畜の先進地といいますか、もう長らくやつて相当の効果を上げて、しかも非常に家畜を飼つておられるような村に対して、非常に重点を置かれている。――と言つてはおかしいですけれども、自然にそういうかつごうになるでしようが、遅ればせながら一生懸命にやり出した村に対しては、なかなか行き届かないようにも思われるのであります。そういつたことをわれわれは家畜診療所によつて補つてやつていただきたいという考えで今日に至つておるわけであります。日簡単でありますが……。
#4
○足鹿委員長 ありがとうございました。
 それでは今の御意見について御質問がありましたら……。
#5
○吉川(久)委員 長沢さんにお伺いいたしますが、あなたのところで管轄をしておいでになるのは、一町九箇村でありますか。
#6
○長沢参考人 最初出発したときは一町八箇村で出発しましたが、その村にはほとんど獣医がおりません。それまでは川越とか、越生とか飯能、そういう都会地に住んでおられるところの獣医さんに来て見ていただいたわけであります。しかしながら川越に四里、越生に二里半、飯能にも二里という状況の場所でありますし、ちよつと補足が長くなりますけれども、私が考えておるのは、人間の病気だつたらば自分でどこが痛いとか、痛くなりそうだということが自然にわかるのでありますけれども、家畜の病気というものは、われわれの目で見てもわかるというときに初めて気がつくので、相当病気が進行しておるときが多いのであります。そういつたとき三里も四里もかけつける、しかも在宅ですぐに来てくださればいいのですけれども、夜分であるとか、あるいはほかへ行つておられるときには、なかなか来ていただけないので、何としても農業会で獣医さんを頼もうということになり、その後の進め方として家畜診療所を建てたわけであります。そういう状態であります。
#7
○吉川(久)委員 あなたのところの診療所には、何人の獣医師がおいでになるか、それからあなたの高麗川診療所の管轄内に開業獣医師が何名くらいおりますか。
#8
○長沢参考人 今の運営委員会の範囲でございますか。
#9
○吉川委員 ええ。
#10
○長沢参考人 今の運営委員会の範囲には、後に入つた越生町、飯能町におられるわけであります。それから獣医師は、最初二名で出発したのでありますけれども、最初にも申し上げました通り、その後非常に経営がむずかしいし、なかなかそれが浸透しなかつたので、その後一名にしたのであります。しかしながら二年ほど前から、委員会が開かれるごとに、とにかく一名じやどうしようもないし、共済組合長さんに言わせると、診療所にも電話をかけて来てくれといつても、獣医さんがいないときには、非常に共済組合員が困つてしまう。何としても早く二人にしてくれということを、もう二年くらい前から言われておつたので、再々本部の方にもお願いをしたのでありますが、本部の方では開業獣医師さんとの軋轢がどうとか、こうとかいうふうな、そんな消極的な行き方ばかりとつておつて、なかなかまわしてくれなかつたのでありますけれども、本年の五月に入つて、やつと二人にしていただいたようなわけです。
#11
○吉川(久)委員 開業獣医師さんは人でございますね。
#12
○長沢参考人 そうです。
#13
○吉川(久)委員 あなたの管轄範囲内で、二名の診療所の獣医師ではおそらく手がまわりかねると思うのでございますし、今のあなたのお話によつてもうなずけるのでございますが、どのくらいの人数があつたならば十分手が届くのか。それからあなたの管轄内の、家畜頭数はどのくらいおりますか。それから一診療所で独立採算と申しますか、経営の赤字を出さないで成り立つ家畜の頭数というものはどのくらいかということをお考えになつていますか。
#14
○長沢参考人 家畜頭数については、その全般的な統計は獣医さんにおまかせしてありますので、私はここでちよつと申し上げかねますけれども、一例を申し上げますと、高麗川村が乳牛が、家畜診療所のできた当時は三十何頭かであつたわけでありますけれども、昨年百頭を越えておるような状態であります。
 それから獣医師は多ければ多いほどいいのですが、限度もあると思います。要するに診療ばかりでなく、ひまを見て、指導の面について大いに働いていただきたい。一例を申し上げるならば、各村を定期的にでもまわつて健康診断をやり、われわれの目ではわからない家畜の状態を知らしていただくというふうなことまでやつていただければ、非常に幸いだと思うのであります。現在のところでは病気にも波がありまして、非常に忙しいときとひまなときがありますから、ひまなときを選んで、そういつたふうな面もできるだけやつていただいているのではありますけれども、本格的にそういつたことまでやつていただくとすれば、四、五人おられればけつこうじやないかと思つております。
#15
○吉川(久)委員 乳牛が百頭とおつしやいましたが、その他の家畜がよほどいないと、それだけでは四、五名どころではない、二名でもこれはなかなか経営が困難だろうと思うのでございますが、いかがですか。
#16
○長沢参考人 それは協力町村全部を申し上げたのではなく、私の村だけを申し上げましたので、全部の村のはつきりしたことはわかりませんけれども、乳牛だけでも五、六百頭はおると思うのでございます。これははつきりした数字ではございません。私の村から推して行つて、そのくらいいるんじやなかろうかと想像する頭数であります。
#17
○吉川(久)委員 もう一つ、これは長沢さんに伺うことが適当であるかどうかはわかりませんが、手の足りないところは開業獣医師の応援を期待しておいでになるようなお話でございました。なかなかその協力が十分でないから、もつと積極的な協力を望んでおいでになるようなお話でございましたが、どうでしようか、開業獣医師と診療所の獣医師との間に、診療に臨んでの家畜の取扱いに対して、何か違つた取扱い方がおありになると思いますか。この二つの立場の獣医師が家畜を取扱う場合の取扱い方に、二様な取扱い方はないとお認めになりますか。何かその辺にお感じになつたことがあつたらお聞かせ願いたいと思います。
#18
○長沢参考人 人間の医者でも、おのおのその得意があると同じように、やはり獣医師さんにもおのおの得意があるのじやないかというふうに私は見受けるわけであります。診療所の獣医さんは、私のところへ来た今までの方々を見ると、非常に活気があります。広い範囲にまたがつて飛んで歩くのですから、活気も必要とするわけです。そういうようなことも一つの条件になつて来ておるものですから、若い方が多いわけであります。自然と学校で学んだ――要するに学問的には非常に知識があられる方が多いのでありますけれども、さて実地ということになると、あらゆる面にたけておるとは考えられないのであります。そういつた面の要するに技術といいますか、そういうことでは、地方におられる獣医さんでもなかなか達者な方がおられるのであります。そういつたことは家畜を飼つておる方がよく知つておりまして、どうもこういうふうな調子のものはこの人に頼んだらとか、あるいは一度診療所に行つて見てもらつたけれども、どうもそういうふうな病気であればこういつた人に見ていただいたらということも起つているわけであります。
 それから運営委員会を組織して、三町十一箇村が協力町村としてやつているとはいいながら、必ずしも診療所だけで全部を見ているとは言えません。もちろん現在の人数ではできもしませんし、頭数も多いのでありますから、近くの獣医さんの腕の達者の方に相当たよつて、見てもらつているということであります。またお尋ねの、違つた点という面については、開業獣医さんの方はそれで生計を立てているのでありますから、自然とそれに付随した考え方で行つておるというふうに見受けられるわけであります。片方は給料取りですから一点数その他についてもありのままということであります。結局ややもすると診療所の獣医さんというのは熱意が欠けやすいと思われるし、そのようなことでは困るので、そういつた面から、来ていただく方には、ほんとうに熱意のある方でなければ、私どもの診療所に来ていただいては困るというふうに、今までもお願いして、来ていただいているわけであります。
#19
○吉川(久)委員 私の尋ね方が非常にまずかつたのですが、具体的に申しますと、経済動物主義――そういう表現があるかどうかわかりませんが、そういう扱い方を診療所でするようなことはないか。人間の場合と同じように生命を守る、できるだけ助けて行くというような考え方で取扱つているか。それとも経済動物主義で、これは生命を守らなくても、一思れにやつてしまつて片をつけるならば、保険金もとれるし、肉にすれば幾ばくかになるから損はないじやないか、だからこれはあつさりやつてしまつた方がいいというような取扱い方はないかということです。
#20
○長沢参考人 そういつた点があつては困るというのでできたのが、この運営委員会であつたわけであります。各村から寄つて、どんな状況であるかということを相談することによつて、獣医さんのこういう点が欠けているといえば運営委員会によつてそれを補整して行きたいというのが主眼であります。現在まで獣医さんが三回かわられ、現在の方は四人目でありますけれども、前の三人の方も非常に熱心にやられた。ことにこの前おられた方も非常に熱心にやられておつて、われわれとしては非常にもつたいなかつたんでありますけれども、家庭の事情でやむなくやめられるということが起つたのであります。私の診療所はそういうふうな状態でありますけれども、各診療所ともそういうふうに行つてるかどうかという点はわかりません。しかしながらそういうことがもしあつたとしても、運営委員会でいろいろ相談して、そういうことのないように運んで行きたいという考えで、この運営委員会をつくつておるわけであります。
#21
○吉川(久)委員 ありがとうございました。
#22
○足立委員 私も長沢さんに一、二伺つてみたいのですが、あなた自身、ただいまのお話で、開業獣医師との関係をうまくやるようにしたい、また法案についてもそう考えてほしいというお話がございまして、私どももまつたく同感でございます。あなたに現地の診療所の運営委員長としての今までの御体験で、どうしたら一番いいかということについて、何かお考えがあれば伺いたいと思うのであります。ただ精神的に提携してやるにつきましても、これはなかなかむずかしいと思うのでありまして、そこに何らか有機的な連絡がなければならない。かように考えるわけでありますが、あなたが現地の責任者として、特に日ごろお考えになつている点がございましたら、特に疾病傷害の一元化という問題とかみ合わせて、お考えがありますれば伺つておきたいと思います。
#23
○長沢参考人 われわれのお願いとしては、どこのお医者さんにかかつても一生懸命やつてくれるということを一番期待しているわけであります。その点で、たといどこへかかつても一生懸命やつてくださるというふうな状態にしても、現在のままでは違うところが起きて来ると思います。というのは、開業獣医師の方々は、事故防止という点については、自分のひまをさいてわれわれを指導してくれるという人が少いと思うのです。そういうふうな面は、共済組合はある程度までやつていただけるという点があるのでございます。開業獣医師の方々もおのおの特技を持つておられるんですから、ひまな農閑期でも見て、いろいろな講演会でも開いて、われわれを指導してくださればいいと思うんですが、そういつた場合には――これは思いつきで話してどうかと思うんですけれども、そういうことをやることによつて獣医師さんの生計が苦しいとすれば、国で見ていただければ、何とかカバーできるんじやないかと考えます。
#24
○足立委員 今お話の、農家畜主がどの獣医師にかかつても一生懸命でやつてもらえることは一番理想に違いありませんが、問題はこの疾病傷害共済と死亡廃用を一元化して、組合がその指定を受ければ、総会の申合せによつて義務加入になる。死亡廃用に入れば当然疾病傷害にも入ることになりますと、全頭加入の考え方から行きますれば、ほとんど家畜診療所の運営委員会の管轄内の家畜は、死亡廃用、疾病傷害の一元化された共済に入つてしまう。そうなりますと開業獣医師との問題がここで初めて表面化して来るわけであります。開業獣医師にかけこんでも、この共済の方で支払つてもらえないということになりますればこれはちよつと問題になるわけでございます。そこであなたに具体的に伺いたいと思いますのは、診療所に農家がかかつた場合と開業獣医師にかかつた場合と、掛金の率のやり方をかえて行きました場合に、あらかじめこの選択権を農家にまかせるわけでありますから、非常に民主的のように見えますけれども、そこではたして農家が自分の好むところへ向つて進めるかどうか。つまり診療所に日ごろお世話になつておるのに、開業獣医師たちの方にあえて自分が登録をするというふうな形になるわけでありますが、これがはたして公平に、農家の意思通りに行われるかどうかということについて、運営委員長を現在なすつておられる長沢さんの御所見を伺いたいと思います。
#25
○長沢参考人 そういつたような機構も、要するに共済組合というものが一つのバツクを持つてやつておるのですから、ちよつと考えた場合にはそういうふうになりがちだとは考えられますけれども、しかしわれわれが病気になつたとき、あすこの家は安いから下手でも行くというふうなことはおそらくないのでございます。やつぱり自分が信頼できるところへ行つて診療してもらうし、それから自然と近くをたよるということも起つて来ると思うし、機構の上ではそうであつても、事実に入つた場合には、農民がそれほど天くだり的にすべてを処理するとは考えておりません。
 なお現在開業獣医師さんがおられるのはほとんど都会地におられるのでありまして、われわれの方としましても、川越、飯能、越生というふうに、ほとんど町場におるのでございます。これは以前、家畜頭数の少い時分にはそれでもよかつたと思いますけれども、今日みたいに家畜が相当ふえて来た場合、われわれとすれば、百姓がごやつかいになるには、町場に住んでないで、村に広がつていていただければ、なおけつこうだと思います。
#26
○稲富委員 要点だけを簡単に二、三お尋ねしたいと思います。あなたの方は診療所は任意加入でございますか。今あなたの方の診療所の関係の人たちは、任意に加入しておられるわけでございましようか。
#27
○長沢参考人 これは共済組合が建てておる診療所でございまして、ただその運営を円滑にするために運営委員会というものをわれわれがつくつているわけでございます。
#28
○稲富委員 そうすると区域内の牛馬の頭数は、先刻聞き漏らしたんでございますが、どのくらいおりますか、家畜の頭数ですね。
#29
○長沢参考人 先ほどちよつと申し上げたと思うのですが、はつきりした頭数は私データを持つておりませんでわかりませんですけれども、私の村から推して行つて六、七百はおるんじやないかと考えられるわけであります。これは必ずしも合つてるかどうかはわかりませんですけれども、私の村から判断して行つて、三町十一箇村ですから、おそらくそのくらいはあるだろう。こういうふうに考えられます。
#30
○稲富委員 そうすると、診療を受ける人の掛金は幾らなんですか。費用はどういうふうになつていますか。
#31
○長沢参考人 そういつたことは各村の共済組合が扱つておるのでございまして、死亡廃用のときには一万から十万というようにわかれております。大体今乳牛一頭当りの金は六、七万から十万程度です。特に優秀なものはそれ以上でありますけれども、共済保険制度が扱つておるような程度になるわけであります。
#32
○稲富委員 そうすると、診療所のその費用というものは、共済組合が負担するわけですか。
#33
○長沢参考人 その点については、詳しいことは下山さんが担当でありますので、下山さんの方が詳しいと思うのでありますが、私たちの方は死亡廃用が一万から十万までありまして、それに対して掛金をするわけであります。今までは死んだ場合には掛金だけいただけたわけであります。それは大家畜だけについてでありますが、疾病傷害については任意加入で……。
#34
○稲富委員 私の聞きたいのは、診療所の経営面を聞きたいのですが。
#35
○長沢参考人 経営は私たちがやつておるのじやなくて、運営を私たちがやつておるのであります。経営は県の共済組合がやつておりますので、その内容についてははつきり数字的にはわかりませんですけど、最初設立の二、三年ぐらいは赤字だつたと聞いております。しかしながらこの二年ばかりは自立して行けるという程度になつておるという話を聞いております。
#36
○稲富委員 そうすると、獣医さんが非常にかわられておるそうでございますが、その獣医さんがかわられておるのは、どういうわけでかわられておるのですか。
#37
○長沢参考人 初代の方は、本部の方から、あちこち診療所ができて、獣医師の免状を持つておられる方で本部をやつていただく方が少かつたので、何とか本部の方へどうだろうという話を受けた。そのかわりに必ずしつかりした方をよこすからというわけでしたので、私どもも最初設立当時非常に骨を折つていただいた方ですから、栄転されて本部におるならば、何かとわれわれも便宜だというようなことがあつて、初代の人はそういうふうになりました。二代目の方はわれわれの期待にはずれて、あんまり優秀な方じやなかつたので、ほかに診療所ができたときに、どうもこつちの空気が悪いからかわつていただきたいというので、二代目はかわりました。三代目は非常にいい獣医さんでありましたけれども、これは国が奥州でありまして、縁組の関係で婿さんに行きました。そういつたふうな関係で、今は四代目です。
#38
○稲富委員 待遇関係じやないですか。待遇が悪いからというわけじやないですね。最後に一点だけお尋ねします。かつて流感がはやつた場合に、診療所と獣医師が一体となるという理想に合わなかつたというようなお話があつたのでありますが、その獣医というのは、診療所関係の獣医でありますか、それとも一般開業関係の獣医でありますか。その点、さつきお話があつたのはどういうような点が合わなかつたかということをひとつ承りたい。
#39
○長沢参考人 あのときは、およそ想像もつかないようなてんやわんやの状態だつた。それで家畜を飼つておられる農家の方が、獣医のあとについておつて、こつちが終えたら私のところへ来てくれといつたような状態であつた。診療所の獣医さんもほとんど二日、三日というもの眠らずおつたという状態であります。そんなふうなくらいですから、獣医さんがいたらひつぱつて来て注射を打つていただいたわけです。そうなると、これは人間ですから、別に弱味につけ込むというわけじやないのですけれども、必要以上に注射を打つということも起りましようし、遠くからほかへ行くのをひつぱつてまで来たんだから、出張旅費も幾分なりとも見てもらいたいというふうなことも起つたと思います。必ずしも獣医さんが全部そうだというわけじやないけれども、そういうことが見受けられた点もあつたわけであります。私がさつき申し上げたのは、そういうふうなことよりも、ああいう流感で一刻を争うようなときは、開業獣医であろうと共済組合の獣医であろうと、全部の人がかかつて、一刻も早くそれをなおしていただきたいということをお願いしておるわけであります。
#40
○稲富委員 私の伺いたいのは、どうも私要領を得ないのですが、診療所の御意思と獣医の行動が一体とならなかつたというような御説明が先刻ありましたので、その点を伺つておるわけなんです。患家の方から無理を言うから、獣医が乱調子になつたということはやむを得ないことですが、診療所の意思に反した行為がやられた、一体とならなかつたという点が、どういうことがあつたかということを伺つているのです。
#41
○長沢参考人 今までは、私の近辺ではございませんでした。ただ突発的な流行感冒みたいな一刻を争うときには、ぜひ一丸となつてやつていただきたいということを申し上げましたが、今までは開業獣医師さんとの軋轢ということは私の診療所ではございませんでした。それから先ほど来二回ほどお聞きになられました頭数ですけれども、私の考えておるよりはるかに多いのでありまして、牛が千七百頭、馬が二百頭、やぎが七百、めん羊が三百、豚が推定で約三百頭であります。
#42
○安藤(覺)委員 あなたは運営委員長をなさつていられますが、常勤でいらつしやいますか。
#43
○長沢参考人 常勤ではございませんです。運営委員会そのものは、別に診療所を経営しているのではありませんで、診療所そのものが効果あるようにやつていただきたいというために運営委員会というものをつくりまして、そうしていろいろ御相談を願つて、われわれの意に沿うように診療所がやつて行くことを考えて、必要に応じて開いております。私は常勤ではありませんし、運営委員会も多い年で四、五回、その他講習会というものがありますけれども、その程度であります。
#44
○安藤(覺)委員 あなたの組合では定款か何かで、組合員は組合の診療所を使うことにせなければいかぬというような定款その他申合せ等がおありになりますか。それともそれは組合員の自由意思にまかしてございますか。
#45
○長沢参考人 そういうふうな定款はございません。事実必ずしも全部が全部診療所でやつているとは言えません。医者ですからすきぶすきもあります。そういつた面もあつて、強制的な申合せはございません。
#46
○安藤(覺)委員 先ほど運営のところで、経営の方でないからわからぬというお話でしたが、頭数もうしろから正確なものを届けていただいたようですが、もし随伴して来た方で、最近におけるあなたの診療所の経営について、赤字、黒字の姿がお示しになれませんかしら。おわかりになりませんか。今お仕事をなさつておる方は、そういう方面は知識を持たない方でしようか。
#47
○足鹿委員長 安藤君に申し上げますが、いろいろ資料等の御要求もあるようですが、今度十二日に現地調査に参りますのは、この高麗川診療所が目的地になつておりますから、それまでに御用意を願つておいて、お求めにこたえていただきたいと思います。
#48
○吉川(久)委員 この問題に関連して委員長にお願いがありますが、全国に千六百箇所ですか設置されておりますそれぞれの診療所の所管区域内における家畜頭数というものは、農林省の方でわかつているはずだと思いますので、その資料をひとつ次会までに委員会に提出していただくようにおとりはからいをお願いします。
#49
○足鹿委員長 資料はあるそうですから、次会までにととのえてもらうようにはからいます。
 なおこの際、私も一点だけ長沢さんにお伺いしたいのですが、今度の一元化実験における負担関係等、制度の概要については御存じでありますか。
#50
○長沢参考人 概略は聞いておりますけれども、たとえば共済掛金率の算出方法とか、そういつたようなこまかい点については存じておりません。ただ今までの共済金とほとんどかわりない額でやつていただければ、その内容についてはわれわれには直接関係のないことです。その内容をもつて、共済組合の獣医さんや共済組合そのものが不安なく職務を一生懸命やつて行けるのではないかと考えております。
#51
○足鹿委員長 それから大体農林省の原案のわれわれが今審議をしております負担関係でありますが、A、B1、B2の二段階にわかつておる。Aの場合は特別賦課金が百五十円、農家の共済掛金が千二百三十九円、Bの場合は千二百八十九円、B2の場合は千三百三十九円、こういう三つの負担関係を一応原案として、この委員会で御説明を聞いておりますが、そういう点についてはすでに御存じでありますか、御存じとすればそれについての御感想はどうでしようか。
#52
○長沢参考人 三つあるというお話を聞いたときに、おそらくその三つをわれわれの前に出されて、そのどつちをとるかという行き方で行くのじやないか、それでは困るというふうに感じましたが、少くとも二つくらいでやつていただきたいと思います。たとえば私の村みたいに、村自体に診療所がある所は、ほとんどがそれを利用しておりますので、もちろん任意ですけれども、おそらくAで行くことになるのではないかと想像されます。その場合でも、今までも幾度も申し上げましたように、結局自分の信頼する獣医さんに対しては、たといそういう保険がかかつていないからだめだというような場合でも行かれる方もあると思います。そういつた点について、この法案でも、たとえばその獣医がいないときとか、あるいは特別の場合には他の獣医さんにかかつても、同じにやつていただけるというふうな話を聞きましたが、ただその特別の場合といつた面を、非常にゆるやかに取扱つていただきたいというふうに考えるのです。
#53
○足鹿委員長 大体長沢さんのお話はこの程度で打切りまして、次に獣医師会開業医であります小林国平君のお話を承ることにします。
#54
○小林参考人 簡単に現地の御説明をしたいと思います。下手な地図ですけれども持つて参りましたから、これについて簡単に現地の御説明をいたします。私は川越に開業しております一開業獣医師でありますが、これが埼玉県の入間郡であります。この郡は現在においては五十四、五箇町村しかないのでありますが、以前は六十二箇町村という、全国でも第二位の大きな郡だつたのです。東部一帯のこの辺が水田地帯で、南部のこの辺が畑地帯であります。西部のこの辺が山間部であります。家畜は従来東北部から東南部に多くおつて、山間部には割合に数が少かつたのであります。そういうような地点で、開業獣医師も以前はきわめて少く、六十二箇町村に五人か六人しかいなかつたのであります。現在はこの丸が打つてある所に開業獣医師がおり、数もふえて参つておるのであります。二重丸は診療所の位置を示したものであります。これが小手指の診療所でありまして、こちらが今お話がありました高麗川の診療所の位置であります。ただいまもお話がありましたように、高麗川の診療所の協力町村の区域にはまつたく獣医はいなかつたのであります。現在もなおいないのであります。この地帯はまつたく無獣医地帯と言えるのであります。それから南部は元は家畜の頭数はきわめて少かつたのですが、最近酪農が発達して参りまして、乳牛の数がふえて参りました。ここが所沢なのでありますが、所沢の中の小手指に診療所があるのであります。それからこれが川越でありますが、そのそばの南古谷に診療所があります。この区域に七人の獣医師がおるのであります。この中にぽつんと診療所ができたわけであります。それから西部は無獣医地帯でありますが、ここが飯能であります。この飯能に接近したまわりにはずつと獣医師がおるのであります。これが現在の入間郡の家畜診療所土開業獣医師との関係でございます。
 大体現況は今申し上げたような状態でありますが、元のように一般に開業獣医師が少かつた時代と、現在のようにふえて来た場合とにおきましては、家畜の頭数がふえたとはいえ、仕事の量にはもちろん差が生じて来たのであります。これは敗戦後外地におつた獣医師が内地に帰つて参つてふえたのですから、まことにやむを得ないことだと思います。診療所ができても、私たち開業獣医としては、あえてこれに反対するものではない。診療所をつくられては困るとか何とかいうような考えは持つてはおらない。ただ私たちが始終考えておるのは、こういうたくさん獣医師がおるところに診療所ができ、そのために相当な打撃があるということは、この開業獣医師の方が寄つたときに大体聞いており、相当の打撃だということだけはわかつておるのであります。しかしそれは時の流れと申しますか、やむを得ないことでありまして、当然共済の方とすれば診療所もつくらなければならないだろうとは考えております。ただ獣医師はそうした考えで進んでおりますし、ことに埼玉県のごときは割合に共済と連繋がよくとれておりまして、開業獣医師の方でも家畜の引受け検査にも無料で奉仕しておりますし、そのほか健康診断をやる場合にも出かけて参つておりますから、そうたくさんなトラブルは起つておらないのでございますが、これを全般的に見ましたときに、今度改正されるところの法案が、Aの場合は特別賦課金を設ける。Bの場合はもちろん特別賦課金というものはありませんが、そこで診療所に特別賦課金を支払つた組合員は、診療所の診療を受けねばならぬ。もちろん但書に特別の場合とか、やむを得ない場合はいいというようなことがあるのですが、そうしたことをつけることはどうかと思う。現在でも制度は任意加入でございますし、どこへかかつてもいいことだし、今度改正されるのもそういうように説明を聞いておりますから問題はないようにも感じられるのですが、すでに地方によつては、たとえばある村の牛が悪い、農共へ行つたらどうだろう。牛が悪いんだが、それじやここの診療所へ行け、電話をかけてやろうというようなことで、農民はほかに頼みつけの獣医師があつたときでも、ほかへ行くというようなことも聞いております。そういうことが地方にある。現在すでに今の高麗川の地区あたりでも、すぐ坂戸の端の大家というのが区域に入つておりますが、坂戸と大家の境へ始終行つていたのがほとんど行かなくなつたということもございます。これはもちろん診療所ができたからということばかりで行くのだとは言えないかもしれません。開業獣医自身にも欠陥があるかもしれませんが、とにかく減つて来たということだけは事実でございます。この減つて来たというのが、診療所ができたために減つたのか、あるいは全般的に減つたのか、その開業獣医師が技術の面で、あるいは人格の面で減つて来たのかということはなかなか判断ができませんが、とにかく仕事は減つて参つたというようなことになつておるのでございます。そういうようにすでにこのままでも減つておるのです。ことにここに改正法案のような特別賦課金をつけ、その診療所の協力町村の者は、それを任意に選んだのであるから、そこの何に行かなければいけないというようなことでなしに、どこへ行つてもいいんだ、どこへ行つても、条件も同じに治療が受けられるんだというようにならなければ、私は公平でないと思います。治療費のごときも、現在私たちの方でも共済の点数とまつたく同じようであります。それを別に高くするようにすれば、そうでなくても来ないのに、さらに客が減るというような考えで、共済とまつたく同じに、あるいは時によつてはそれより安いというような場合が相当あるのです。この間もある人が私のところに見えまして、診療した。これは金まで申し上げてはどうかと思いますけれども、この際はつきり申し上げると、五百円実はもらつたのであります。そしてあとで畜主が来て、実は先生、うちでは疾病傷害に入つているんで、あれを点数で計算してみたら、七百五十円になつたとかいうような話を聞いたのでございます。そのように開業獣医師も決して高くはとつておらぬのです。むしろ安い場合がある。時によつてはあるいは診療所よりも高いことがあるかもしれませんが、これには私はそれ相応の理由があるのだと思うのであります。どつちにしても、われわれの面から考えれば、この賦課金を取ることをやめ、一本にして、どこまでも人間の健康保険のようにしていただきたい。町村の保険組合が診療所を持つておつて、それが別に賦課金を取つたという話も聞いておりませんし、どこの人たちが行つても簡単にできる。また診療所のある町村の健康保険組合員が、どこの医者へ行つても同じに診療を受けられる。ひとり家畜のみがそれができないということが、私はふしぎに思うのです。どうかそういうことでなしに、人間の健康保険と同じように、AをやめてB一本にする。あるいはAにしても賦課金を取らないようにすることがいいんじやないか、こういうように思います。そのほか今度の改正について、二箇年間試験をなさるというようなお話なんですが、この試験の範囲も百万頭を目標にしておられるようでございます。しかし試験とすれば百万頭はあまりに大きいんじやないかと思います。七十五万頭が疾病傷害に入つておるのですから、それ以下でも試験なら十分見当がつくんじやないか。そしてまた二年という長い試験期間を置かぬでも、一年試験をして、さらに一年は各方面でいろいろの権威者が寄つて、検討を加えていただくのもいいのじやないか。政治評論家もずいぶんおりますし、農政の面でもそうした人がずいぶんおりましようし、あらゆる角度からこれを検討していただくことがいいのじやないか、こういうふうに考えております。
 それから最後は専門委員会でございますが、これは昨年この問題が起きた時分から問題になつております。農林省の御説明によりますと、立法技術か何かの関係で、専門委員会は諮問機関にした方がいいというようなお話だつたのであります。この専門委員会には、今度の規定でも開業獣医師が入ることになつておるようでございますが、当然これに入れていただきたい。しかしそれがただ審査会の諮問機関であつて、せつかくこういう案がいいのじやないか、ああいうのがいいじやないかといつてあげたものが、審査会の意向一つによつて、いいと思つたものがだめになる。もちろん審査会が悪いと判断した場合にはやむを得ないし、それは見解の相違と申しますか、そういうことで違うことはやむを得ないのだが、そこを何とかして、もう少し力がつくようなものにしていただいたらどうか、こういうように考えております。
 大体私の申し上げた今度の一元化の問題を要約してみますれば、共済の種類を一つにしてもらう、単一にしてもらう。そうして特別賦課金というものをとつてもらう。現在の国民健康保険と同じように、だれがいつどこでかかつても、同じように受けられるというふうにお願いを申し上げたいと思う次第であります。以上であります。
#55
○足鹿委員長 何か質疑がありますか。
#56
○安藤(覺)委員 先ほど点数において診療所の費用と開業医の費用とかわりはないというお話でありました。あるいはまた、場合によつては安い場合もあるのだということもありましたが、この点数というのは薬価でございますね。
#57
○小林参考人 そうです。
#58
○安藤(覺)委員 診察費はこれは別ですね。
#59
○小林参考人 それも点数になります。診察料が何点、薬が何点、注射が何点というふうになるのです。
#60
○安藤(覺)委員 診察料も点数の中に入つておりますか、そうですが。
#61
○足鹿委員長 ほかに御質疑はありませんか。――ないようでしたら、進行いたします。
 次に、全国畜産農業協同組合連合会常務理事、永松陽一君にお願いします。
#62
○永松参考人 この法律改正の問題につきましては、私が畜産関係の団体におります関係上、畜産という方面から、すべてこの問題を実は観察しておるのであります。それでこの法案自体について、最初に私の方の賛否を申し上げますと、われわれ畜産の団体といたしましては、大いに賛成であります。ぜひこの法案の成立を希望しております。その理由といたしましては、なるほど家畜保険の死亡廃用ということも、農家の損害の填補ということから申しますと、まことに大事なことでありましよう。次の家畜を買うときの財源として、まことに大事なことでありましよう。しかしながら畜産自体から申しますと、家畜自体を失わないということが、ある意味においてはそれよりももつと先決問題と言いますか、重要な問題だと思います。大動物であります馬のごときは、どうしても四年くらいたたぬとほんとうの役に立ちません。それが死んだといたしますと、それから先の寿命、人間に対する奉仕というものは、それでなくなつてしまうのであります。同じようなものをつくるには、また三年か四年かかる、こういうことになりますので、この家畜自体の損耗防止ということが、畜産方面から申しますと、一番大事とでも申しますか――もちろん農家の損失填補も大事でありますが、畜産自体から申しますと、一番大事なことである、こういうふうに思つております。従来これも御承知のように、任意的に疾病傷害の共済というようなことが行われておりますが、これが制度といたしまして一層普及いたしますという事柄、また一方国庫の助成金がある程度加わりまして、農家の負担の軽減もできて、しかもこれが普及して行くということは、最初に申し上げましたように、家畜自体の損耗防止という方面から申しましてまことに必要であり、またこの制度が早く、また大きく成立せんことをわれわれは希望いたしております。
 なおこの問題につきまして、ある方面では、従来任意の疾病傷害の共済であつたのが、ある程度の強制になつて来るという点につきまして、農家の負担が増加するのではないかということを心配する向きもあるようであります。なるほど形式上、そこだけを見ますと、増加ということも考えられないのではありませんけれども、共済と申しますか、保険と申しますか、いわゆる対数の法則から申しますと、事故が減少いたしますれば、農家の負担が全体的に減少して行くことは当然のことであると思います。ごく近視眼的に申しますと、貧農家あるいは事故のなかつた農家は、なるほど負担が多くなるかもしれませんけれども、日本の畜産として見た場合には、やはり農家の負担は減少すると見ておりますので、この論に対しても、私は本案の成立を希望している次第であります。今まで私が承つたうちで、本案に対する一番大きな反対――と言うと語弊があるかもしれませんが、障害と言つた方がいいかもしれませんが――は、開業獣医師さんと診療施設との間の問題であると思います。私より前にお二人の方のお話があり、私のすぐ前に小林さんからお話がありましたが、本制度自体に絶対反対するものではない、開業獣医師との間の調整を心配するのであるというような意味のことがありました。私はもちろんこの制度を入れるからには、全体の国民としての考えからその問題を考えねばならぬ、こういうふうに思つております。しかしまた一方から申しますと、今までも、本委員会ではありませんが、その前に聞いた問題で、開業獣医師の方々にも私は言つております。本日はざつくばらんに申し上げますが、開業獣医師の方が、自分の営業のことだけ考えるということはおもしろくないでしよう。やはり広い畜産ということ、及びそれと共存するという意味において問題を考えていただかなければ、開業獣医師さんの方の主張もおそらく通りますというようなことを、私は前から申しております。しかし一方、この制度を入れる方も、この点はやはりお考えを願わねばならぬ。こういうふうなことを私は保険課の方に申しておりました。しからば私の方の考えはどうであるかと申しますと、これはすでに小林さんの言葉中にもあつたと思いますが、一番問題になるのは、Aの場合で、診療施設で診療を受けるという場合に、通常Aに入ればそこに行かなければならぬ。そこの診療を受けなければならぬというような、強制という言葉は悪いかもしれませんが、まあそういうふうな形になつておる。そこに行かねばそれよりも不利な形になりますので、ある種の強制になる。こういうわけでありますが、そういう形になつておることが開業獣医師さんの方の営業を圧迫するという点でありまして、それならばどちらに行くことも自由である。診療所に行くことが得だと思う農家は診療所に行く。それから開業獣医師さんの方が得であると思うならば、開業獣医師さんの方に行けるというような、広い意味の開放をやつてみたらどうでありますかというふうに、私は今まで実は話しておるのであります。この開放と申しましても、簡単に健康保険医の場合のように開放する、すなわち診療券でもわたして、どこにでも行けるというような開放の方法もあります。あるいはまた開業獣医師さんを、できるだけ多く診療所の嘱託というような形にでもいたしまして、従つて一定の身分がありますから、薬価、診療費、つまり診察費のようなものを、かつてにとるのではありませんが、診療所の一定の規制のもとにおいて、開業獣医師さんが薬価もとり、診察費もとるというような、そういう嘱託というものをできるだけ広くいたしまして、必ずしも診療所という場所に行かなくてもよろしいというような形において開放するというような方法もあるかと思います。この問題は単に開業獣医師さんの方の主張ばかりではないのでありまして、私は、これをまた畜産の立場から、実はそれの方がいいのじやないか、こういうふうに考えております。と申しますのは、診療所のお医者さんが一番いいか、一番悪いか、そういうことは今批評をいたしませんが、悪いこともあり、いいこともあるであろうと思います。私ら畜産のものといたしましては、なるべくいいお医者さんにかかつて、りつぱな薬で、完全に、すみやかになおしていただくということを希望するのであります。やはり診療所のお医者さんにも、得手、不得手もありましようし、また時期によつて、いいのが来たり、悪いのが来たりすることもありましよう。従いまして、いいと思うところに行つて診療を受けるということが、一番畜産のためになるではなかろうか、こういうふうに思うものでありますから、その点も開放の方がいいのではなかろうか、また診療所の獣医師さんも、何と申しますか、親切に、本気にやらねば他の方に行かれてしまうということにもなるので、これは診療所自体の診療施設の値打を上げて行くと申しますか、農家が親切ないい診療を受け得るということについても、そういうふうなどこにでも行けるという形の方が、診療所が親切になるではなかろうか、こういうふうに考えられるのであります。
 第三には、Aに入つておつても自由に行けるということは、農家から申しますというと、まずAに入つておこう、おそらく制度としてはAに入つた方が共済自体の方向から言つても有利であると思いますが、農家の方もAに入つておこう、そのかわりAの診療所ではいかぬと思つたならばBの――Bとはおかしいのですが、一定の金をもらつて他の方にでも行けるというようになりますから、おそらくBよりAに対する加入が、こういうふうに自由にした方が大きくなるのではなかろうかと、こういうふうに私は思うのであります。開業獣医師さんの方にも私は言うのでありますが、反対されてみたところで、腕くらべならばどうも問題にならぬだろう。診療所の方がお医者さんがよくつてみんなで行くならば、へたの方に行かないのはしかたがない。診療所の方もあまりへたなお医者さんを入れて、人が来なくなつたということは自業自得であつて、これもいたし方ないではなかろうか、われわれ畜産というものを考えましたときに、あえて診療所のためとか、獣医師さんのためということのみは考えておられないので、いわゆる腕くらべでやつていただくということが農家のために一番いいのではないか、畜産のためにいいではなかろうかというふうに私は考えまして、実は今日までそういうふうに話をして来ておるのであります。
 そういたしますと、ここにまた診療所自体の経営問題、逃げられるというと診療所自体が経営困難になつてしまいはしないか、こういうふうな問題が提起されておるのであります。もちろん診療所というものが健全に発達するということはけつこうなことでありますが、さつきも私の言つたような意味で、診療所がつぶれてしまうということは、これはいたし方がないのでありますが、そういう極端な議論は避けるといたしましても、私は一体この法案が、いわゆる薬価と消耗品のところだけが国庫補助になつて、あとの人件費に当る分、診療代に当る部分が何らの補助もない、準純なる特別負担になつておるというところに、非常に疑問を持つておるのであります。何ゆえに政府はその部分をそういうふうに遠慮されておるのか。もつとも今回は試験でありますから、あるいは試験中だと言われればそれまででありますが、その前に、本案をほんとうの恒久施設として聞いた場合も、同じような説明を実は聞いたのでありますが、私はそういう遠慮はいらぬのじやなかろうか、こういうふうな、いわゆる診察代に当る、人件費に当る方面も国庫補助をやるということによつて、さつき経営問題について政府当局の御心配になつておる部分も非常に消えて行くではなかろうか、かくすることによつて、さつき私の言つたように、農家は一番いい診療を受け得る、どこででも受け得るということになり、農家の負担も減つて来るというようになるのではないかと、こういうふうに思うのであります。
 ここまで言うことは民間人としては、はなはだ言い過ぎかもしれませんが、ちよつと経過的のことがありますので、言わしていただきますならば、皆様よく御承知でありますけれど、現在死亡廃用共済の一部に国庫補助があつたのは、実は当時例の競馬の金の三分の一を畜産に使うという法律改正がありましたときに、大蔵省がいろいろ言つて、たとえば畜産局の事務費に使つているというようなことで、一文も使わない算段をしたのでありますが、それでは法律改正の意味をなさぬじやないかというようなことで、ああいうふうな補助になつておることは、これはもちろんよく御承知のことであります。まだまだ競馬の金の収益の三分の一という金は、現在の畜産に使つておる、つまり畜産局の経費ではありません。事務費ではありません。これに比べたら、もつと残りがあると思います。この方面に何億か使いましたけれども、なお残りがあると思います。このように、過去のわれわれの経験から申しますれば、競馬の金の一部を、この人件費に当るところのこういう方面にも出してもらえるというふうにいたしましたならば、さつき私が申しましたように、農家の負担は軽減し、そうして獣医師さんとの間もこれは明朗に――競争はしかたがありませんが、特別の法の保護なしに、自由競争で、一番いい診療をやつて行く、それから診療所でも法律の保護による、何と申しますか、なまけるというようなこともなくて、農家にサービスができるというようになるのではなかろうかというようなことを、実は考えておるのであります。以上。
#63
○足鹿委員長 何か御質問がありますか。
#64
○吉川(久)委員 永松さんに一点だけお伺いをいたします。ただいまの政府原案の三本建をどういうようにごらんになりますか。
#65
○永松参考人 私はそれは二本建でいいと思つております。あまりにBをワン、ツーにわけることは必要がなかろうと思います。それから少し余分なことを申してはなはだ済みませんが、AとBはいるのじやなかろうか、こう思うのであります。
#66
○足鹿委員長 ほかに御質疑はありませんか。――ないようでありますから、それではこの程度で終りまして、次に全国指導農業協同組合連合会農業経営部の稲葉次郎君お願いします。
#67
○稲葉参考人 私の考えております点を、一、二簡単に申し上げたいと思います。
 第一の点は、今度臨時特例を設けようとする家畜共済の一元化につきまして、私は結論的に申し上げて賛成でございます。その理由は、私の場合にはきわめて簡単でございます。病気にかかる前に、病気にかからないように、あらかじめ平素心がけておかなければならぬ。また病気にかかればすみやかに医者に見てもらつて手当をする、こういうことでありまして、これは家畜の場合におきましても同様であると思うのであります。予防衛生を徹底して参りたい、また早期診断、早期治療を十分やつて行きたい、こういうことで従来私どもは終始して参つておるのであります。そういう意味合いからいたしまして、今度の一元化の問題は早期診断、早期治療、予防衛生を徹底させて参ります場合の一つの手段として、きわめて適切な措置であると考えるのであります。こういう意味で私は大賛成を申し上げたいのであります。
 農林省からかつて発表されております数字を拾つて申し上げますと、家畜が発病いたしましてから初診を受けるまでに、八千八百八十五頭のうち、平均してみますと、大体二・七日、大体において三日くらいかかつてから初診を受けておる、こういう実態なのであります。しかも全体の数から見て参りますると、死んでからあとに診断を受けるという農家が相当に多いのであります。八千八百八十五頭のうち一八・一%、約二割の家畜が死んでから診断を受けるといつたような実情が、数字的にも見られるのであります。こういう実情でありますから、今度の家畜共済の一元化が実現いたしますれば、相当程度こういう点が修正されて行くだろうと思うのであります。北海道のように家畜がかなり進んでおります地帯では、内地側と違つて相当早くに初診を受けておりますし、診療の回数等についても、かなり多い数字がはつきり示されておるのであります。時間がかかりますから、こまかい数字的なことは申し上げませんが、少くともそういう数字がはつきりいたしております。
 また一九五二年の北海道共済連が出しております農災法五箇年の記念事業にやられたものだろうと思いますが、農協連事業要覧というのがございます。これを見て参りますると、予防衛生が徹底するに従つて、家畜の事故率が漸次減少しておるという数字も出ております。試みに乳牛で申し上げますと、事故率が昭和二十三年には五・二三%、二十四年には五・二〇、二十五年には五・〇三、二十六年には三・八一%、こういう漸減の傾向を見ております。この陰になつております基盤を調べてみますと、疾病傷害に加入しております率は、二十三年には一二・八%、二十四年には三五・一%、二十五年には五六・二%、二十六年には八一・二%というようなぐあいに、逆に加入率は相当高まつて参つております。八割以上のものが二十六年には加入をし、相当予防衛生が徹底をし、早期診断、早期治療が行われたものと解釈をしてよかろうかと思うのであります。かような意味合いから私は賛成をいたしたいのでありますが、この早期診断であるとか、あるいは予防衛生であるとかいうようなことは、なかなか口では簡単に申し上げられるのでありますけれども、現実に農村に出て参りましてこれをやります場合には、非常な努力と熱意とをもつてやらなければなりませんし、またかすに時日をもつてしなければならないことは申し上げるまでもないわけであります。でありますけれども、特にこの際、この家畜共済の一元化と関連いたしまして大事な点は、家畜衛生全般の問題についてもう少し検討を加えて、全体として体系のある家畜衛生対策というものが実施されるような方向でなければならぬかと、私はかように考えるのであります。いろいろ畜産局におかれましては検討を加えておられることだろうと思うのでありますけれども、家畜の衛生につきましては現在獣医師法、あるいは家畜伝染病予防法であるとかいうようなものが大体軸になつて、家畜衛生が行われておるようであります。最近家畜保健衛生所法といつたような、保健所の設置規程のようなものが設けられまして、大体三本建ぐらいで家畜衛生の行政が行われておるようでありますが、何か本末転倒の感じがいたすのであります。こういう点が全体として体系をつけられますならば、私がただいま申し上げておりますところの予防衛生を徹底する、早期診断を完全に実行に移して行くということが可能になつて来るだろう、こういうふうに考えるのであります。
 次に第二の点は、今回の家畜共済の一元化を実施して参りますこの具体的な方法論についてでございます。この点につきましては、各方面いろいろ御意見があるようでございますが、少くとも現在の農業災害補償法を貫いております思想を基調にして考えて参りますならば、政府から提案になつておりますようなことが、一応の構想として出て参ることだろうと私も考えております。しかし考えてみますと、今回試験的に実施をしようとして政府が考えております案は、どちらかというと実はあいまいな案だろうと思います。しかし私は、不満足ではありますけれども一応賛成をいたしております。特にこの際私が強調をいたしたい点は、農業の協同化を推進しなければならないし、また推進する、こういう点についてであります。申し上げるまでもなく、資本主義の経済が今日のような段階に進んで参り、また今後も相当強力に推し進められるであろうという見通しのもとにおきましては、資本の構成から見ますと、実際話にならないような小さい農家が、お互いの利益を守つて行きますために協同化を考えますのは当然の方向であろうと思うのであります。その際協同化が実現いたしますれば、あるいは獣医師も雇うでございましようし、あるいは診療所もつくるようになるだろうと思うのであります。またそういう施設が百パーセントに活用されるような方向へ、あらゆる知能をしぼつて参りますことは当然であろうと思います。従つて今回の政府の原案――A案、B案いろいろあるようでありますが、それらの問題を考えます場合におきましても、この点が一つの基本になつて考えられなければならぬのではないかと思うのであります。また診療所の設置につきまして必要な経費の一部を、農民といたしましては国からもらうような措置をお願いしたいし、また現実においてもそうやつて参つたのでありますが、補助金をもらつたからといつて、現状の程度におきましては、決して農民の自主性は失われないと私は考えます。従つて補助金を国からもらつて診療所を立てたからといつて、民業の圧迫を招来するものであるとは考えられないと思つております。もしこういう点で診療所が問題であるといたしますならば、むしろその前に議論されなければならない問題があろうかと思うのであります。それは御承知の家畜保健衛生所であります。これは農林省が大体において半額助成をして、地方庁が半分負担をする。いわば国と県との金で全部設置されている。これは五箇年計画で、全国に五百箇所設置するという線で進められておるようであります。この施設は、元来予防衛生を普及徹底させようという前提に立つて設置されて参つたのでありますが、現実には相当診療が行われておるという面もありまするので、共済組合が設置する診療所が問題となるといたしまするならば、この家畜保健衛生所の方が先に議論されなければならないんじやないか、こういうふうに考えるのであります。しかし農村の立場に立つて考えてみますと、診療所もきわめて大事な施設でありますし、また家畜保健衛生所もまことにけつこうな施設でありますので、この際あまりむだな議論はしたくないと考えております。こうした議論が出て参りますのは、開業獣医の諸君と組合がとつて参ります基本的な考え方の間に、相当ずれがあるという点が問題であろうと私は考えるのであります。申し上げるまでもなく、私ども協同組合におきましてもそうでありますから、共済組合におきましてもおそらく同様であろうと思いますが、先ほどから申し上げております予防衛生を徹底する、早期診断、早期治療を励行する、こういう点を根本といたしまして、第一線の指導が完全に行われますように日常のサービスを実行いたしたい、こういうことで指導をやつて参つておるのであります。従つてこういう考え方を推し進めて参りますれば、村の中には患畜が一頭もいなくなる、ゼロになつてしまう、こういうことが目標であり、またそういうことを念願して進めておるわけでありまして、この点、大分組合と開業獣医師の皆さんとの間には本質的な開きが出て来るのではなかろうか、こういう基本的な問題、立場の相違がいろいろな議論を起すきつかけになつておるのではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。従いまして私どもは、農民が組合をつくつて、この組合を維持し、経営して参りますためには、相当の経費もかかることでありますから、診療所の施設を利用するかどうか、あらかじめ農民がはつきり意思表示をしておく、こういう態勢が必要であろうと思うのであります。
 それからいま一つの点は、国民健康保険のように自由な形で選べる態勢をとつたらいいじやないかという御議論があるのでございますが、これは国民の健康を保持増進して行くという場合と、農家が家畜を飼うという経済行為の間には、相当違つた面があるように私は考えるのであります。従つて家畜を処理して参ります場合には、農家の生産なりあるいは経済なりという観点から問題を処理すべきであつて、これを国民の健康保険というような形と同一の扱いをして行くという点については、若干の疑義を持つておるのであります。
 私の申し上げたい点は以上の二点でございますが、政府なり国会なりのおかげによりまして、有畜農家の創設維持事業がようやく昨年来から実施されて、農業経営改善の方向がやつと緒について参つたのであります。このときにあたつてこういう施設がすみやかに実現できますように、特段のおとりはからいをお願いしたいということを申し上げて、私の意見を終りたいと思います。
#68
○金子與重郎君 稲葉さんにお伺いいたしますが、最後の結論に出た、人間の健康の問題と家畜の健康の問題の取扱いについて考え方を一致すべきでないというふうな結論が出ておるようですが、もちろん人間は診療費の多寡によつて、命と金額とはとりかえることができない。家畜の場合には、要するに五万円の家畜に十万円の診療費はかけ過ぎるという、その点はわかるのでありますが、その診療を制度の上においてかえた方がいいという、その基本的な考え方はどこにあるわけですか。
#69
○稲葉参考人 私の考えております点は、農家が家畜を飼うということは、これはいわゆる農家にとりましては経済行為で、それから国民健康保険の場合について考えて参りますと、これは一人々々が完全に健康を保持して行く、あるいは増進して行くという最低基本線の問題であります。そういう性格的な違いがあるわけです。こういうふうに考えるのであります。
#70
○金子與重郎君 これは、私は前提として、価額の問題ととりかえつこできない、その違いは認めるが、それは診療の制度とは関係ないはずです。だから診療のシステムとして別に考える方がいいという理由はどこにあるのですか。
#71
○稲葉参考人 そういう性格的な違いがありますから、国民健康保険と同じようなシステムにして行くということには私はならないと思うのです。
#72
○金子與重郎君 あなたは私の言う質問がわからないようですから、やめておきます。
#73
○吉川(久)委員 稲葉さんにお伺いいたしますが、ただいまの診療所の施設は、現状において十分だとお認めになりますか。
#74
○稲葉参考人 私は現在の診療所の施設をもつて十分だとは考えておりません。もつとひとつ徹底的に診療所を設置すべきではないか。しかしこれは上から押しつけてつくるべきものでなくて、やはり地元が盛り上つて初めてでき上るものだと思います。しかし特に注意をしなければならない点は、あえて開業獣医師の諸君と事を構えるような態勢でつくつて行くということだついては、あまり賛成はできない。私先ほど申し落したわけでありますが、開業獣医師の諸君と診療所との間に若干の嘱託費を出して、嘱託の関係を結んで非常にうまくやつておるという事例が、全国の数府県で見られます。特に福島県などにおきましては、共済組合の診療所が開業獣医師の諸君を全面的に嘱託をしまして、なかなかうまく、なごやかにやつておるという話を伺つております。新潟県あたりにもそういう例があるやに聞いておるのでありますが、そういう施策も考えられますので、そういう方向をとりますと、非常にうまく進んで行くんじやないか、こういうふうに考えております。
#75
○吉川(久)委員 今のお答えで私のお尋ねしようと思う点が明らかになりましたが、一診療所の獣医師が手薄ではないかということをお考えになつたことはございませんか。
#76
○稲葉参考人 私は共済組合の診療所につきまして詳しいデータを実は持つておりませんが、私が伺つております範囲ですと、大体一診療所の獣医師の数というのは二名前後であると伺つております。ところが先ほど長沢さんからもお話がありましたように、三町十一箇村といつたふうな広い地域になつて参りますと、二名の獣医師では実際は手不足だと思つております。それからまた診療所は単なる診療業務だけをやつて行くというシステムでは、これはきわめてまずいんじやないかと思つております。最近では人工授精なども相当普及して参りましたので、診療業務をやると同時に、人工授精施設なども併設をいたしまして、総合的な家畜診療所として運営される、改良上の面にまで乗り出して行くくらいな施設を積極的に持つて行くべきではないだろうか、こういうふうに考えております。そういう点からいたしますと、現在畜産局でやつております家畜衛生保健所におきましては、大体そういうシステムをとつているので、これが大体模範的なモデルと考えてよいのじやないか、私はこういうふうに考えております。
#77
○吉川(久)委員 稲葉さんは早期診断、早期治療、すなわち予防衛生の立場から本制度に賛成だとおつしやいました。その理由として、技術が事業に付随した場合に効率を発揮するが、事業から独立をしている技術指導は非能率であるというような意味合いだろうと私は理解するのです。そうすると、現状においてはこの診療所は手薄である、そう見られるときに、開業医を事業に結びつける方法としては嘱託のような制度がいいとおつしやつたわけでございますが、診療所の数は現状においては非常に不足している。これを拡張することにおいて、あるいはまた現在の診療所を拡充することにおいて、嘱託にするということよりは、その面において開業医を吸収して行く、それによつて摩擦が解消できるんだというようにお考えになりませんか。
#78
○稲葉参考人 まつたく吉川先生がおつしやつた通りでありまして、これは私にはよくわかりませんが、現在獣医師の諸君は非常に問題が多いようであります。これはひとり獣医師に限つたことではなくて、非常に困つたことではあるが、完全雇用と申しましようか、これは非常に困難な見通しにあるわけでありますから、従つて私はかねてから獣医師の指導、監督の立場にあります畜産局の御当局に対しましては、獣医師の完全雇用と申しましようか、生業拡張と申しましようか、そういう点について一層積極的な態勢をとつて、ひとつ御指導願いたいということを、実はかねかねお願い申し上げて参つておるのでありますが、診療所をつくりましても、完全に現在の獣医師各位をお迎えするだけの数量にはならないと思いますけれども、幾分でもそういう線で緩和ができるなら、あるいはこれは非常にけつこうなことだ、こういうふうに考えます。
#79
○足立委員 永松さんにお尋ねいたしますが、ただいまのお話で、開業獣医師との調整をはかるためには嘱託にする制度がいいという御意見で、これは今までの制度であれば当然に考えられることでございますが、疾病傷害が死亡廃用と一元化されまして、従つてほとんどの大家畜が義務加入制度になつて、そうして疾病の場合に手当を受ければ、あるいは薬を使えば、共済金としてもらえるという、現在の健康保険と同じような制度になりました場合に、ただ診療所の嘱託にしただけではほとんど意味がないと私は思うのであります。同時に、これは先ほど永松さんからもお話がございましたが、農林省が今考えておりますAあるいはBというような掛金率の立て方、あの中に包容して、開業獣医師に頼んだ場合にも、同様に共済金がもらえるという扱いが確立されなければ、機会均等という原則は確立されないと思うのであります。そこで私お伺いしたいのですが、稲葉さんでも、永松さんでも、どちらでもけつこうでございますが、これを何とかうまく解決する方法はないか、私自身も今まで考えて来たのであります。たとえばあの特別賦課金というものを特にとると、ひもつきになるから困るという、小林さんの御意見もありましたけれども、ただいま稲葉さんが指摘されました家畜衛生対策という面の一般的な経費を、特別の賦課金でとるということについては、理論上も、実際上も、まあ異論がないのじやないかと私は思うわけであります。診療費、薬価、これは人件費も含むわけでありますが、こういつたものを共済金で支払いをするということにいたしまして、これが診療所にかかつた場合にも、開業獣医師にかかつた場合にも、公平に支給がされるということになりますれば、その取扱いが、診療所を通じて行われることに、結果としてはなると思いますが、それであつても、私は一応公平な原則がここに確立されるのじやないかという気持がいたすのでありますが、この点につきまして、おのおの団体の責任ある立場にいらつしやいます御両氏でございますので、しかも今までいろいろとこの間にあつせんの労もとられたように聞いておりますので、相当つつ込んで御研究も相なつておると思います。私のただいま申し上げた点につきまして、率直な御意見をお聞かせ願えれば、非常に幸いだと思うのであります。
#80
○永松参考人 稲葉さんと私と、回答が違うかもわかりませんが、私だけの考えをお話いたします。
 その問題について、私さつきもちよつと触れたつもりでありますが、実は、開業獣医師さんと診療施設との衝突を防ぐということのために、私は先ほどの診療所に行こうが、開業獣医師さんに行こうが、自由にする。開業獣医師さんの方に行く場合には、診療券をやつてもいいし、あるいはまた開業獣医師さんを相当多数嘱託するという方法で、これは診療所の一種の職員でありますから、その統制のもとに、診察、治療、薬価、消耗品代を、診療所から払つて行くというような方法で、この緩和をやつたらよかろう。そのことが簡単に農林省の方で受入れられないおもな原因としては、農林省の御心配は、そういつたふうにすることによつて診療所の財政的基礎が危うくなりはしないか。相当の診療所を立てても、診療所に診療に行く人がなければ困るということになる。つまり、極端な言葉で言いますけれども、開業獣医師さんの方にどんどん払い出すから、診療所の手残りというものがなくなつて、診療所の獣医師さんの費用もなくなつてしまうということによつて、せつかくの制度がだめになつてしまうということが、一番の御心配のもとであるように聞いておるのであります。そこで問題の解決は、その農林省の御心配の点を解決する策があればいいじやないか、こういうふうに私はさつき考えて、それには国庫補助の範囲を、Aの原案、ここに出ております法案の原案では、薬価、消耗品の部分についてのみ国庫補助のことがうたつてありますが、何もそれに限らぬでいいのではないか。
    〔委員長退席、吉川委員長代理着席〕
それで今の特別の負担に当る分までも国庫補助の対象にすればいいじやないか。国庫補助が非常に十分出ると考えるのは無理かもしれませんが、かりに非常に十分出たといたしましたならば、あまり診療所に人が来なくても、診療所が立つということもあり得る。それはもつともいけません、極端なことを申しますと、そういう診療所はない方がいいのでありますが、国庫補助がかりに十分出るとすれば、診療所というものは、人が来なくても立つだけは立ち得る、形だけはあるということも考え得るのであります。もちろん私は、そういうことはいいことだとは思いません。従いまして診療所の部分についても、国庫補助を出すということについて、もう一歩進めて問題の解決をはかられたならば、さつき申し上げましたように、診療所の方に来ようが、あるいは開業獣医師さんの方に行つて、診療所の負担すべき金に当るものを、開業獣医師さんの方に、薬価、消耗品代、診察治療代に払つてあげるというようなことも、まあ自由になるのじやなかろうか。それによつて農家は、診療所のお医者さんが上手ならそつちに行く、開業のお医者さんが上手ならそつちに行くということになつて、いつも一番いい診療を一番安い値段で受けられ、そうして予防ができて行く。こういうことになりはしないか、こういうふうに実は考えておるのであります。また国庫補助金を出す理由は、大いにあると思います。なぜかと申しますと、政府は各種の公益的のことについて経費を使つておりますが、この家畜の予防施設をできるだけ完全にする、さつき家畜保健所の話も出ましたが、これも一つでありましよう。要するに、家畜の予防衛生あるいは診療衛生を非常によくいたしまして、家畜個体の損耗がなくなつて行くということは、国家としてなすべきことであつて、私は一般の租税からする経費をもつて補助してもらつていいと思いますが、これは私の愚案でありまして、さつきちよつと申し上げましたように、競馬法に予定されておる競馬収入の、畜産に対する使い方にまだ余剰があると思いますから、こういうふうな金でも診療所の方におまわしくださつたならば、この問題は割合にたやすく解決するのではないか、実はこういうふうに思つております。
#81
○吉川委員長代理 それでは稲葉さんに対する質疑を終りまして、次に全国農業共済協会常務理事の下山さんにお願いいたします。
#82
○下山参考人 家畜共済の臨時特例に関する意見を述べるようにというわけでございますが、すでに実際経験しておられる開業獣医師さんの方とか、運営に当つておる人とか、あるいはその他各団体の公述人がお話になりましたので、私が考えておりますことのほとんどが、先にそういうような方々からの御意見として出ましたので、格別申し上げることはないのでございますが、ただ簡単に申し上げますと、これは私の希望意見になるかもしれませんがれ家畜に限りませず、農家の各種の災害を、できるだけ共済の事故として取入れて、相互的にカバーして行くという考え方は、私必要なことだと思つております。家畜につきましても、農家の持つている家畜が、いろいろな事故で病気になるとか、不幸にしてこれが死亡するとか廃用になるというような場合に、その原因をできるだけ多くこれに取入れて、共済制度を拡充するということは、最も必要なことだと考えております。
 御承知のように、歴史的のことになつて失礼でございますが、家畜保険というのは、すでに昭和三年以来行われておるのでございます。すでに二十四、五年の歴史、経験を持つております。農林省のそれに携わつておる人々も、その当時からの人が二、三人おられるというようなことで、経験的に見ても、この共済制度の内容がだんだん完備して来ておると、私は側面から見ましてさように考えておるわけでございます。そこで、初めはやはり家畜の関係も、死亡廃用だけで、疾病とか、そういうような事故をも取入れたいという希望があつたのでございますが、できなくて、だんだん経験して、実験して、これを取上げるというような形へ持つて来て、現在におきましては、生産共済、疾病傷害共済、死亡廃用共済というような、相当なものを取入れた制度になつておるのでございます。これは申し上げるまでもないことであります。
 本日も二、三の人から御意見がございましたように、農業の共済の事業は、特に家畜共済について見ましても、ほかの農作、蚕繭についても同様でございますが、もうここまで来れば、事故が発生してからこれをカバーする、損害を補填するというだけでなくして、積極的の防除ということが必要になる。農作関係におきましては、御承知のように植物防疫法の通過を見まして、二、三年以来積極的の防災ということをやつておられるわけであります。これが農作、蚕繭の共済におきましては、非常に大きなウエイトを持つて来て、今進んでおるわけであります。家畜の共済につきましても、いろいろと御意見がありましたように、早期診断とか、あるいは予防衛生等の健康検査等をよく実施して、そして共済事故を少くする。ひいては死亡廃用というような、一番の大きい打撃を受ける事故を少くするという方に持つて行くということで進んで来ておるのでございまして、これはこの共済制度が、だんだん内容的に、あるいは経験的に、農家の要望にこたえて進歩して来たのだ、かように考えるわけであります。ところがその結果、今度またいろいろな問題が起つて来ておる。一例を申し上げますと、これもすでにいろいろな機会に皆様方のお耳に入つておると思うのでありますが、予防関係、あるいは健康診断等の形で、だんだん診療衛生施設を完備するので、家畜の死亡率は非常に減つておるのでございます。その非常に減つておりますのが、ひいて共済事業の農家の負担金とか、そういうようなものがだんだん軽くなつて来ることは、これは統計的に必要なのでございますが、これを診療所にとつてみた場合に、今までの行き方は、共済の掛金の中に、県の連合会あるいは政府の再保険料として入つて行くものの中にも、末端の診療所の中の診療費の一部、薬価はもちろんでございますが、そういうものが含まれておつたので、これが災害のあるなしにかかわらず、農家にかかつて、共済掛金のそれが全部右にならつて行くというような形があつて、これが今申し上げまするような、災害がだんだん未然に防止されて事故が少くなつて来たような場合には、診療所は経済的に非常にやりにくくなつて来るというようなことが、事実たくさん現われて来たようでございます。これは私農林省から聞いたのでありますが、そうなつておる。従つてそうすれば、診療所をやつておる者は、私、へんな言葉を使つておしかりを受けるかもしれませんが、ある程度事故がないと診療所はやつて行けない。あまり予防とか衛生とか健康診断などをやつて、事故が少くなるということになれば、今までは、事故の比率によつて診療所の経費が上からおりて来るということになつておつたので、そこに今まで方針としてとつて来た予防衛生とか、早期診断というようなものと矛盾する結果が、診療所の経理の上において起つて来たということを私聞いておるのでございます。その点をまず一番に解決せねばいけないというのが、今回の診療所についてのA案、B案というようなことの根本的の理由になつておるということを聞いておつたのであります。ところがたまたまそうなつて来ますと、別途の問題として、側面からの問題といたしまして、開業獣医師との関係というものが起つて来たのであります。協会といたしましては、できるだけ共済団体あるいは共済事業の内容をよく調べ、意見を聞いて、正しい方向に持つて行きたいというので、何回かに及んでブロック会議あるいは全国会議を開きまして、意見を闘わし、農家の意見を聞いておつたのであります。中央におきましても、獣医師協会とか、あるいはここに見えておる永松さんの団体、稲葉さんの団体、その他協会、農林省畜産局等も集まりまして数回、この獣医師関係との問題は打合せをして来ておるのでございます。とにかくいろいろな問題はあるのだが、制度だけは、純粋に考えてみた場合には、今申し述べましたようにだんだん漸進的に制度の内容を改善して来ておる方向に向つておることは事実だと、私は思うのでありまして、それについては、それではその方針がいいじやないかというような、われわれ団体としての結論も出ております。それからいろいろな各団体の集まつたときも、そういう結論が出たのであります。しかし、これには今申し上げましたような獣医師協会とか、いろいろな関係の別途の――これを阻害すると言つてはおかしいのでありますが、いろいろな問題があるので、これはやはり一ぺんにこれを実施するというよりは、実験的にこれをやつてみたらどうかということがこの前の結論になつておりまして、私らも、これを実験的にやるんだから、われわれいいと思つておりますが、なお実験的に二年間なら二年間やつてみて、そこで最後にこれを結論づけたらいいじやないか、かように私は考えて賛成しておるのでございます。
 なお、実情を申し上げますと、私ども実際の調査に入つておりませんから、実情と申し上げましても、人から聞いたこととか、あるいは北海道とか、そういうような数県問題になつておる所は、私も歩いてみまして経験しておりますが、診療所に対する農家の要望は非常に熾烈でございます。つくりたいというところが非常に多くあります。
 もう一つは、今全指連の稲葉さんからも話がありましたように、農林省が、各県の地方事務所単位くらいに家畜の保健所というようなものをつくつて、保健衛生に力を注ぐというような刺激もありますし、それから純粋に考えた場合に、農作、蚕繭の共済については非常に問題がありますが、家畜共済については、農家がたいへん喜ぶ。これをやつてもらうと助かるということが非常に多いので、その面からも進んで来て農家の要望が多いのでございます。現在千六百程度の家畜診療所ができておるようでありますが、これらも国から、あるいは団体などから、つくれつくれというて強制的とか半強制的にこれを誘導したのではなくて、農家の希望によつてできたのが非常に多いという空気でございます。その現状は、私はここで申し上げて別にはばからない、かように考えるわけであります。それで経過的のことを申し上げて、貴重な時間を失礼でございますが、私は、現在農林省が出しておられる案については、そういうような意味から申しまして、純粋な面から見て、これは賛成しておるわけでございます。ぜひこれは通したいと思います。ただ一、二今まで意見がございましたように、A案とか、B案とかいうことをあまりはつきりしますと、ここに獣医師関係とのいろいろな問題が出る。これはある程度りくつでは解決つかぬようなことがあるんじやないかと私は考えております。従つて、でき得ることなら、永松さんがさつき御意見で言つておられたように、できるだけA案とB案の開きを少くする。その差は何らかの形で国がひとつ考えたらいいじやないかということを、私は希望しておくのであります。特別賦課金というものは、これは共済掛金の一部ということを農林省は言つておられますが、そういうような何か形のものが、特定のAの方に行つて、Bの方に行かないということは、そこに何か共済団体と他の獣医師との関係をさくというような感じにとられやすいんじやないかということを心配するので、これは全部の農家の人に徹底すればいいが、おそらくこの制度は、非常にむずかしいので、A案、B案、C案にしても、これは農家でなくてもあるいは為政者の方でも、だれが見てもわかりやすいような内容に単純化して来ぬとこれが頭に来て、非常に複雑だ、そこに何かやりくりやからくりがあるのではないかという誤解を受けるということが、この共済制度の非常にじやまになつて来るのでないか、かように考えるので、私は内容はまだどうしたらいいか考えておりませんが、でき得るならA案、B案の開きをもう少し小さくしてもらうということを希望するわけでございます。
 それからもう一つは、この共済の診療所をめぐつてのいろいろな問題も、こればかりの原因じやないと考えております。今稲葉さんが指摘いたしましたような、健康保健所をめぐつての問題、あるいは診療所の問題も、もちろん出ております。あるいは共済制度とその他の問題というものが、相当程度までここに込み合つて、この問題にいろいろな拍車をかけておるのではないかと考えるのであります。それで診療所の設置については、私は、これは主体がどこということを考えない場合には、これは非常にけつこうだと思います。獣医のない所に何とか設置する。そうして診療を受けるチヤンスがないような家畜を、どこまでもそれでカバーするということは、これは必要なことでございますから、この制度をできるだけ何とか国がもう少し応援して、設置すべきじやないか。ついてはそれにからまるいろいろな他の問題は、これは農林省の保険課とか、経済局だけが考えちやいかぬことであつて、特に同じ農林省の畜産局あたりは、もつとほかの面を顔を立てる、獣医師の顔も立てるような制度をもつと考えたらいいじやないかと思う。これは私が聞いております一、二の例でございますが、よく獣医をひとつ世話してくれというようなことを、新潟の長岡の方からも頼まれるし、いろいろなところから獣医の世話を頼まれます。去年も、ことしも、獣医は余つているのではないかといつて……。それでも不便な所には来てくれぬというようなことで、絶対量においては多いかどうか知らぬが、地域的に偏在しておる。だれしもいい所を望んでおる。これはいかぬ。しかしそれは国が何とか設備して、それが僻陬地の手当とかいうようなことを考えて、せつかくりつぱな技術を持つた獣医さんを、国家的に活用せなきやうそだと思う。ただ狭き門に押かけることに問題があるから、そのような点は、もつと広い畜産行政、農業政策の面で解決つけなくては、この問題は、一つまでたつても解決しないのではないか、かように考えておるわけであります。
 それから最後は、今かりに現在の農林省の出しております案を推進していただくとしても、これはさつき獣医の小林さんからも御意見がありましたように、都道府県に審査会がありまして、その審査会の中には開業獣医の方も入つて、審査に立ち会うという規定があるのだが、これが有名無実となつておるということでございますが、こういうような点は、国からも、あるいは各関係団体も、そこに十分意見を取入れ、開業獣医さんの意見も取入れるような方向に持つて行つて、何とかこの点は円満に解決する、そういうふうに考えて、私はそういうような方面を何とか逆にお願いして、私のこれに対する賛成の意見を述べたわけであります。
#83
○吉川委員長代理 下山さんに対する御質疑はございませんか。――では私から二、三点伺いたいと思います。ただいまのところでは、この制度で大分赤字が出ているようですが、こういう赤字の出る最大の原因について、どういうようにごらんになつておいでになりますか。
 それから第二点といたしまして、今度の政府案によるところのこの制度で、これで農家負担というものについて、もつと考慮する余地があるのか、それともこの程度が妥当であるとお考えになりますか。
 それから共済制度に対しては、下山さんは非常に古くからの権威者なんですが、あなたのごらんになるところでは、この農業共済制度のうちで畜産共済と一般の農産物共済との分離をすべきであるというような考え方を持つている人があるようでございますが、これは根本的な問題になるかもしれませんが、そういうことについての御所見がございましたら、この際伺つておきたいと思います。
#84
○下山参考人 お答えします。ただいま吉川委員長代理の御質問がございましたが、この家畜診療所についての赤字が出ておるのが相当あるように見るがどうか、その原因は何かというような御質問だつたと思います。私はこの具体的なことについては、そう詳しくは存じておらないのでございますが、私の聞いておるところによりますと、これは人件費の関係もだんだん増高して来ているということと、予定よりやはり掛金が今まで少し安過ぎる。これは事故に比例してですから、どつちが高くて、どつちが安いということは言えませんが、結論的に、掛金が実際いるものより少いという関係が一つと、もう一つは、先刻申し上げましたが、だんだん衛生関係、早期診療とか、健康診断が進みまして、相当死亡共済というような関係の事故率が減つて来ておる。従つてそれが今まで再保険という形で上へ上つて行くので、その関係で、手持ちの診療費というようなものが上からおりて来ない。そういうような原因が一緒になつて診療所に赤字が出ておるんじやないか、かように私は考えておるわけでございます。あるいはこれがもし違つておれば、農林省からあとでお聞き願いたいと思います。
 二番目の、農家負担の軽減の余地があるかどうかという御質問でありますが、これは私が率直に申し上げますと、それはもつと負担を軽減してもらえれば、なおけつこうなことじやないか。今申し上げたような、この制度の一元化の問題で、事故が非常に少くなつて来れば、おのずから――これは今度の三十年ですか、今後の改正においては、これが影響して、絶対額の共済掛金は減ると思います。ただ現在におきまして、統計的に出ておる農林省の掛金料率を、農家の負担と、国の負担をどう見るか、農家の負担をもう少し軽減する方法はないかということになりますれば、これはひとつ吉川先生あたりにお願いして、国からもう少し出してもらう二とを考えるとか、さつき永松さんがおつしやつたような、別途の競馬の益金というようなものをまわしていただくということにいたしていただきたいのでありますが、これはもう少し軽減していただければ、私はけつこうだと考えるわけであります。これは御質問に対する答えになつたかどうかわかりませんが、そういう希望を持つております。
 それから第三の問題は、非常にでつかい質問で、ちよつと答弁に困るのでありますが、これは私見として申しますれば、家畜共済とか、あるいは農作、蚕繭等の分離論は、私は非常に簡単過ぎる意見だと思います。一番初めに申し上げましたように、農家の災害は、農作物、蚕繭、家畜に限らず、できるだけ農家が自然的災害で受ける打撃をカバーするという制度に持つて行く、いわゆる総合農業共済にまで進まなければならぬ、かような持論を私は持つております。その面から見ても、農家が総合的にやることはぜひ必要である。農家が総合的にやるものを、その事業主体を、家畜とか、蚕繭とか、農作、蚕繭とにわけるということは、個々の農家の場合には、別の団体に入るのだからかまわぬかもしれませんが、現状を見ますと、私らの岡山県でもあるいは鳥取でもそうであり、私の聞き及んでいる県でもそうでございますが、蚕繭共済では非常に人気が悪いところがあるのです。ところが、家畜共済がいいから、一本だから入る。これは農業共済全体でやつて行かなければならないというような意見の所もある。これと逆なところもあるわけであります。農作、蚕繭は非常にいいが、家畜共済はどうもよくない。事故も比較的少いからというように、逆なところもある。これは抱き合せといつてはおかしいのでありますが、やはり農家に総合的に制度を一本化して持つて行かなくては、分離すれば、事業主体も弱体化しますし、人件費その他も非常にかかりますし、いろいろな意味からして、私は筋をはずれた線に行くのではないか、かように考えて、私は分離論に反対するわけであります。
 それからもう一つ落しておりましたが、一番初めの赤字が出る原因には、御承知のように、予定せざる流感とか、例の伝貧という事故が急にふえて、これが大きな結果を来しておると思います。今年は、皆さん御承知のように大風水害で、九州地方に大きな事故がありまして、これも予期せざる自然的災害、あるいは病害と申しますか、事故があつたので、今ではそうなつておるのではないかと考えます。
    〔吉川委員長代理退席、委員長着席〕
#85
○足鹿委員長 ほかに御質疑はございませんか。――御質疑もないようですから、大分時間も過ぎましたし、この程度で本田の参考人の皆さんからの御意見を承ることを終りたいと存じます。
 参考人の皆さんには、暑さのみぎり、長時間御苦労でございました。厚く御礼を申し上げます。
 本日はこの程度で散会をいたしまして、来る十二日埼玉県の小手指の診療所並びに高麗川の診療所の現地調査を行うことを、この間御了解を願いましたが、いずれまた日程、時百寺につきましては御連絡申し上げます。
 本日はこの程度で散会いたします。
    午後四時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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