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1953/07/20 第16回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第016回国会 厚生委員会海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会連合審査会 第1号
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1953/07/20 第16回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第016回国会 厚生委員会海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会連合審査会 第1号

#1
第016回国会 厚生委員会海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会連合審査会 第1号
昭和二十八年七月二十日(月曜日)
    午前十一時九分開議
 出席委員
 厚生委員
   委員長 小島 徹三君
   理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君
   理事 長谷川 保君 理事 中川 俊思君
      越智  茂君    助川 良平君
      山口六郎次君    中野 四郎君
      山下 春江君    萩元たけ子君
      杉山元治郎君    堤 ツルヨ君
      有田 八郎君
   海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査
   特別委員委員長      山下 春江君
   理事 青柳 一郎君 理事 臼井 莊一君
      佐藤洋之助君    田中 龍夫君
      中川源一郎君    福田 喜東君
      白浜 仁吉君    田中 稔男君
      帆足  計君    受田 新吉君
      辻  文雄君    有田 八郎君
 出席政府委員
        大蔵事務官
        (主計局給与課
        長)      岸本  普君
        厚生政務次官  中山 マサ君
        厚生事務官
        (引揚援護庁次
        長)      田邊 繁雄君
 委員外の出席者
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
        専  門  員 山本 正世君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する
 法律案(内閣提出第一一八号)
 未帰還者留守家族等援護法案(内閣提出第一一
 九号)
    ―――――――――――――
#2
○小島委員長 これより厚生委員会海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会連合審査会を開会いたします。協議の結果私が委員長の職を勤めます。
 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案及び未帰還者留守家族等援護法案の両案を一括して議題とし、質疑の通告がございますので順次これを許します。杉山元治郎君。
#3
○杉山委員 私は未帰還者留守家族等援護法案の第二条の二項の条文についてちよつとお伺いしたいと思います。この条文を読みますと、「日本国との平和条約第十一条に掲げる裁判により拘禁されている者及び同条に掲げる裁判により本邦以外の地域において拘禁されていた者であつて、その拘禁を解かれまだ帰還していないものは、この法律の適用については、未帰還者とみなす。」こう書いてあるのですが、法律を学ばないしろうとには非常にわかりにくいので、ちよつとお伺いしたいと思うのでありますが、「その拘禁を解かれまだ帰還していないものは、」、こう書いてありますが、大体外地で拘禁されていた者で拘禁を解かれたら、すぐに帰つておるのじやございませんでしようか。私のしろうと考えではそういうふうに考えておるのですが、拘禁されておつて、まだ帰還しない者というのはどういうケースか。また巣鴨の中におる方のごときもその中に含まれるのか、その点をちよつとお伺いしたいと思います。
#4
○田邊政府委員 実は厳密に申しますると、この法律では、拘禁を解かれたときが、帰還したときとみなされておるわけでございます。従つて、マヌス島なりフイリピンにおいて拘禁を解かれた日、その日においてすでに帰還したものとみなされますと、現実に帰つて来る間に若干の日にちがございますから、その間は法律の適用から除外されるということになつてはお気の毒でございますので、現実にお帰りになるまでの間、未帰還者とみなして、その家族を援護しようという、こまかい配慮から、こういう規定を置いたわけであります。
#5
○杉山委員 それでは、普通なら帰るはずだけれども、途中の間を未帰還者とみなして援護をする、こういうわけでございますか。
#6
○田邊政府委員 そうでございます。
#7
○杉山委員 わかりました。どうもありがとうございました。
#8
○中野委員 ちよつと関連して、承つておきたいのですが、マヌス島の引揚げについて、オーストラリアとの交渉過程とか、引揚げ状況――こういうことについて御存じの点を御説明願いたいと思うのです。
#9
○田邊政府委員 マヌス島の戦犯者の釈放の問題につきましては濠州の方と外務省とで、こちらに引取ることについてこまかい折衝を遂げまして、話合いがまとまり、船が向うに行くことにきまりまして、船も白龍丸と決定したわけであります。これは終身刑が二十二名、有期刑が百四十三名、合計百六十五名と相なつておりますが、これは、そのまま全部巣鴨の方に移管されることになりますので、主として、法務省が中心となりまして、これを引取る仕事を担当することに相なつております。予算的な措置その他も、法務省の方で全部なさることに相なつております。配船につきましては、中共からの帰還船の問題とも関連するので、慎重な考慮をいたしたのでありますが、この前閣議で決定いたしましたように、白龍丸を向うにまわすということに決定しまして、日にちは、たしか二十八日でございましたか、向うに着くようにということで準備を進めておると記憶しております。詳細は今ちよつと覚えておりませんが、大体私の今記憶しておるところは、そんなところであります。
#10
○中野委員 そうしますと、ソ連、中国を除いての戦犯というものは、これで大体全部内地に引揚げたという結果になるのでありましようか。もし残留している者があるならば、これを明らかにしていただきたいし、それからこの際戦犯としてソ連に現在抑留されている者の数、それから中国に戦犯として抑留されている者の数は、明らかになつておると思いますが、これについては現在どういう段階にあるか、その数と過程についての御説明を願いたい。
#11
○田邊政府委員 マヌス島からの戦犯者の内地帰還が終りますれば、平和条約によつて拘禁されておる戦犯というものは、巣鴨にある者だけでありまして、海外にはないことになるわけであります。それからソ連及び中共における戦犯者でございますが、これはこの法律の第二条第二項のいわゆる未帰還者ではございません。その数につきましては、ソ連及び中共当局から正式の通報がございませんので、何人だれが戦犯として向うに抑留されているかということは私の方で承知しておらないわけでございます。ソ連に残留している者の数は、外務省の発表によりますれば、一万幾らということになつておりますが、これは現在その者がそのまま今日生きているという意味ではございませんので、入ソ以来一度でも生存しておつたという情報があり、しかも死亡したという情報のない者は、一応生存者として考えているわけであります。この点につきましては、ソ連から正式の通報は一ぺんもございませんが、タス通信の発表によりますと、千四百数十名の者がいるに過ぎないということをいつております。それがどういう者であるかということは、一度も発表されておらないのであります。それから中共に引渡しました戦犯が九百数十名いるということを言つておりますが、これもだれであるか明らかにされておりません。通知もございません。また中共当局において、いわゆる犯罪者として抑留しておりますところの数及びその氏名も場所も向うから通報はございませんので、こちらの方ではこれを明らかにいたしておらないのであります。
#12
○中野委員 この際特に重要な点について伺つておきたいのですが、モンテンルパにおける戦犯の方々はキリノ大統領の御好意によつて死刑の方々を無期として内地における服務を許してくれて、しかもその際伝え聞くところによれば、これらの人々も本年中にはおそらく釈放されるであろうと伝えられていることは、国民ひとしく大きな希望を持つておるところであります。しかしマヌス島の問題については、ただマヌス島から本国の巣鴨刑務所において服役をするというだけであつて、これがはたしてモンテンルパにおけるところの終身刑になられた人々同様に、本年中に釈放になるかならなぬかということは、これらの留守家族の人並びに一般国民の重大な関心を払うところでありますが、濠州とのこの交渉にあたつて、政府側におかれては。マヌスから本国へ帰つて来られて、そうして巣鴨に服役される人々は、フイリツピンの態度と同じように、本年中に釈放される過程にあるのか、あるいはその点についての相談とか話合いというものはまるきりしていなのか、この点について特にこの際田辺次長から説明を伺つておきたいと思うのです。
#13
○田邊政府委員 この問題はもつぱら外務当局におきまして濠州側と話合いをいたしておるわけでありますが、今の話合いの要点は先ほど申し上げました通り、日本側に引取ることについての配船その他の問題について話合いをやつておるようでありまして、今後における釈放という点についてまで話合いをしているということは、ただいままでのところ実は伺つておらないのでございます。詳細は外務当局においてお聞きいただきたいと思います。
#14
○中野委員 先日もちよつと、モンテンルパの方々が釈放され、あるいは本国へ引揚げるについての点について御質問したときにも感じたことですが、どうも外務省と厚生省の間に緊密な連絡を欠いておるおそれが多分にあると思う。どうも外務省は秘密主義を守つて、なるべく厚生省の方々に漏らさないような傾向が見えておる。このことは、先日何という局長さんでしたか説明しましたように、もうモンテンルパにおける人々の釈放あるいは本国帰還ということは十二分にわかつておつたのだけれども、このことの一般に漏れるのをおそれて、厚生省に連絡をとらなかつたという一事によつても明らかであります。従つて私は引揚げ援護に万全を尽さるべきところの厚生省、特に援護庁におかれましては、濠州関係の人々の釈放の時期というものは非常に国民が関心を払つておるのでありますからどうか外務省と緊密な連絡をとつて、もし外務省の連中においてそういうような怠けた点があるならば、遠慮することはないから、びしびしひとつ援護庁の方から要求して、すみやかに濠州関係の人々も本国において本年中に釈放されて、そうしてお互いに祖国再建のための協力にいそしめるような態勢をつくるようにひとつ御尽力を願いたいと思うのであります。
#15
○山下(春)委員 今のモンテンルパの話でありますが、外務省と緊密な連絡がとれないようだという中野委員の御指摘は、私はその通りだと思うのでありまして、外務省はむしろ手をつけていないというのがほんとうであつて、前もつて知つておつたというのは外務省の面子上言うのであつて、あるいは知らなかつたのだろうと思うのであります。今度のマヌス島の場合は特にそうであつて、過日英国女王の戴冠式にあたつて、日本に帰してもらいたいという女王にあてての請願を私がいたしましたときに、外務省へ連絡に行きましたところが――マヌス島の監獄にある島は、本名はロス・ネグロス島というのであります。外務省ではロス・ネグロス島というような島はないというので、外務省は字引をひつぱり出しましていろいろ大騒ぎをして、やつとなるほどそうであつたというようなことを確認しておるような状態であつて、ほとんど手をつけておらないというのが事実のように私には思われたのでありますが、こういうようなことに対してはなはだ誠意がないということは、言つてさしつかえないことのようであります。
 それはそれといたしまして、田邊次長にちよつとお伺いいたしたいのでありますが、白龍丸をマヌスの戦犯者の帰還について配船していただたそのいろいろお手続をなすつていただいたことについてはまことに感謝いたしますが、白龍丸というのは非常に足がのろいのでありまして、これをああいう非常な遠方におまわしになるということは、船をチヤーターする費用から言つても大変なことだと思うのであります。これは足の早い船よりか四日も五日もよけいかかると思うのでありますが、行きがけはいいといたしましても、帰りには一日千秋の思いを持つて祖国の土を踏みたいと思う人に、のろのろ帰つて来る白龍丸を配給しないで、もつと温情のある方法をもつて他の――もつとも今の日本の船は非常に不自由であることは了承はいたしておりますが、最善の道を講じて、もう少し足の早い船をおまわりになることが経済上から言つても非常に助かるのではないかと思いますが、それよりも何よりもあの酷暑と八年間闘つて苦しんで来た人々を一刻も早く本国に連れて帰るという温情から、何とか配船をもう一ぺん考慮し直す必要はないでしようか、その点についてお伺いいたします。
#16
○田邊政府委員 マヌス島に対する配船につきましては、できるだけ一刻も早く実現するようにということで、私の方からも外務省及び運輸省に対しまして強く申入れたのでございます。ただ今日中共からの帰還という大事業が進行中でございますので、これに支障を生じないように、しかも今日日本側で持つております非常にきゆうくつな船舶状況を考えまして、結局白山丸か白龍丸しか都合がつかないということに相なつたわけでございます。それで運輸当局におきまして、いろいろな点を考慮せられまして、結局白龍丸ということに御決定になつたわけでございます。確かに興安丸等に比べますれば、白龍丸は船足が若干おそいようでありますが、しかし一方中共からの帰還ということで第五次配船ということもいつあるかもわからないという状況でございますので、一番小さな船である白龍丸が適当であろう。白龍丸は定員五百名でありまして、興安丸になると二千名でございますので、白龍丸をまわすようにいたしたのであります。なお向うに配船いたしまして帰るまでの間のスピードにつきましては、できるだけスピードを上げまして一刻も早く内地へ御帰還できるように、重ねて運輸当局にはわれわれの方から強く要塁いたしたいと思います。
#17
○山下(春)委員 船の非常に不自由のときでございますから、万一やむを得ないと了承できないこともないのでございますが、何しろ八年間苦しんでおつた人のことでございますから、こつちの都合ばかり考えないで、中共の引揚げの場合は、あるいは船がおそくても道のりも短かいことでございますから、できれば興安丸のごとき少しでも船足の早いものを使つていただくように、これは帰つて来る人及び長い間待つておつた留守家族の心を代表して切にお願いをしておきます。
 なおもう一つお尋ねをいたしておきたいことは、モンテンルパからもう近々に到着いたすはずでございますが、それが釈放の手続をとるには、日本へ帰りましてからどのくらいかかりましようか、どういう方法の手続で帰れますか、その手続の方法及びそれに所要の時間をちよつと知らしていただきたいと思います。
#18
○田邊政府委員 モンテンルパから釈放になつてお帰りになる方につきましては、外務省及び引揚げ援護庁で責任は持つておりますので、できるだけ船内で所要の手続を済ませまして、上陸いたしましたならば最小限度の必要な業務だけにとどめておきたい、たとえばお金を差上げるようなこととか、物資を差上げるような程度にとどめたい、かように考えております。おそらくどんなに長くても三十分ないしは一時間――一時間はかかることはあるまいと思つておりますが、できるだけ早く家族の方とお会いできるように、一刻も早く御郷里にお帰りになれるようにいろいろくふうをいたしております。
#19
○山下(春)委員 検疫機関の規定がございますが、それは今回はそれを適用しないで、ただちにそれらの諸手続が済めばすぐにそれぞれの留任宅へ帰つて行けることを了承してさしつかえございませんか。検疫期間二週間というのは、今回には適用されないのでございますか。
#20
○田邊政府委員 おそらく検疫は船の中で済まして参りますので、上陸いたしますれば引揚げに伴ういろいろの手続、物資の交付であるとか、お金の支給であるとかそんな程度でございまして、あとはただいまのところの計画では県と市で何か家族の方と一緒にお招きして若干の時間をとるようでございますが、それが済みますれば、それぞれ御郷里にお帰りになれるように段取りを進めております。
#21
○中野委員 田邊さん、それはちよつとたよりないのですが、従来外地から引揚げて来る者、これに対しては向うでもちろん注射をして参りますけれども、内地へ着いてから検疫期間がたしか二週間きめられておるはずなんだが、それは全然今度は適用せずに、モンテンルパから帰つて来た人たちは、ただちに所要の手続が終つて自宅に帰れるようになつておりますか。そう了承してよろしいのですか。
#22
○田邊政府委員 従来からも外地からお帰りになる方は、そういうようなやり方で手続を済ましております。
#23
○中川(源)委員 ちよつと一点お聞きいたします。けさの新聞でしたか、私うつかりしてはつきり覚えていないのですが、朝鮮引揚げについて相当国会に陳情があつたというようなお話があるのですが、先ほど中野委員の御質問に対する御答弁を聞いておりますと、中共、ソ連におる者は大体人数がきまつておる、ほかには引揚げをするような者はないというのですが、朝鮮には、陳情があつたように相当まだ朝鮮に戦犯として収容されておる者が現在おるのでございましようか。どうですか。
#24
○田邊政府委員 南鮮にはいわゆる戦犯と称する者が残留していることを承知しておりません。ただ北鮮はいわゆる中共地域、ソ連、中共地域という中に考えておりますので、そこに残留していると認められる方は、この法律の未帰還者の対象になつているのでございます。
#25
○中川(源)委員 北鮮におる人数は大体どのくらいかわかりませんか。
#26
○田邊政府委員 外務省の発表いたしました引揚げ白書によりますと、北鮮に生存しておつたという資料のあるものが二千四百八名と相なつております。
#27
○堤(ツ)委員 ちよつと田邊さんにお伺いしたいのでございますが、私けさ急いでおりましたので、新聞を詳しくは読んで参りませんでしたけれども、たしかどの新聞かに、インドネシアにおられるところの五百人の同胞が、内地引揚促進反対運動をやつておるという記事があるように思います。帰還促進反対運動云々は別といたしまして、今度出されておりますところの未帰還者留守家族等援護法案によりますと、本人の意思によつて帰らない者はその留守家族に対しても援護の対象としないということになつております。インドネシアの人々五百人が自分たちの意思で帰ることに反対するのだというようなことを打出されますと、残つておる家族が非常にお気の毒であります。それで今までインドネシアに残つておる在外同胞は、政府の方へ何人くらい登録があつて、そして何人くらいに対して手当を差上げておられたか、その登録の内容とか、こういう事態が起つて、本人の意思が帰らないのだということがはつきりしましてから後、この留守家族をどう扱つて行くおつもりであるか。私が考えますのには、留守家族の身になつてみれば、主人なら主人、兄弟なら兄弟、父なら父が今日インドネシアで海外同胞として残るに至つた原因は、またあげて国家にあるのである。個人の意思によつてかつてに行つたのじやない、その人たちが今日になつてみずからの意思で帰りたくないということを表現されておると、これは留守家族にとつてみれば、踏んだりけつたりだと思うのです。でありまするから、こうした方法にはまどわされることなく、縛られることなく、私たちは留守家族を対象として援護をしてもらいたいという気持を持ちますので、こういう質問をするのでございます。
#28
○田邊政府委員 今日インドネシアに残留しておられる人の数でございますが、ただいま資料を持ち合せておりませんので、後ほどお答えいたしますが、実は南方諸地域におりまする残留邦人は、御承知の通り内地へ帰るチヤンスがずいぶん与えられておつたのでございます。今日も帰ろうと思うならいつでも帰れる状態にあるわけであります。元軍人軍属につきましては、南方地区で戦争中に死亡したと思われるが、死亡したという的確な資料がないので、今日未復員者として南方地域におる者がございます。しかしいやしくも今日南方におるという方ならば、特別の理由がない限りにおいて、内地へ帰還できる態勢にあるわけであります。従つて生きているということがはつきりしている方々に対しましては、すでに終戦後のいろいろの事情か自発的にお残りになつたのでございますので、未復員者という対象から落しておるわけであります。従つて今日こういう方々には留守家族としての処遇と申しますか、手当は差上げてございません。今度の法律は、ごらんになりますとわかるように、ソ連、中共地区の夫帰還者だけを対象として取上げております。元軍人軍属でも大部分ソ連中共地域でありますが、南方地域その他において戦争中戦死されたと思われるが、資料が不十分であるためにまだ戦死の確認をしてない方が相当数ございます。あとは南方に残つておられる方は、終戦直後自分自身で現地にお残りになつたという方でございますので、終戦後の適当な時期において復員という手続を終つておるわけでございます。
#29
○堤(ツ)委員 なるほど法律とかりくつとかはそうでありますけれども、留守家族の身になつてみれば、これはソ連中共地区であろうと南方であろうと、国家がひつぱつて行つた結果こうなつたのでありまするから、私はやはり何とかひとつこの留守家族の援護ということについては、援護庁の方で考えていただかないと非常に困ると思う。本人ということを中心にして考えることは別として、国家の意思によつてなしたこういう留守家族というものを中心に考えて、何とか処置をしなければならないとお考えになつたことはないか。もうこれは未復員でないから全然対象とはしないといつてすつかり捨てておしまいになるか。私は帰つて来ない本人は別として、留守家族の側からいえば大いに異議があると思います。
#30
○田邊政府委員 未帰還者留守家族等援護法を考えました際に、一定の地域が前提となることは当然やむを得ないことと思います。ただ元軍人につきましては、国家が権力をもつて動員した方々であるから、こういう方は特別に考える必要があるのじやないか、こういう御意見だと思います。これはこの法律の第二条を、こらんになると書いてあります通り、地域は限定しておらないのであります。
#31
○堤(ツ)委員 次にお尋ねいたしたいのは、この間から私質問しておりまして、あなたから御答弁をいただいておりますが、昭和二十七年度の、戦傷病者戦没者遺族等援護法の対象になつて、今日まだ裁定が困難である、資料が不十分である、処置がついておらないものがたくさんある。従つてこういう事情から勘案するときに、援護庁に書類が届いておるのはまだいい方で、書類を市町村長の手元や府県の世話課などで受付けてもらえないで、泣寝入りをしておる公務員による戦傷病者戦没者の遺族がある。これに対しては一括して別に扱つて処理し、何とか法の対象のわく内に入れる努力をしなければならぬのではないか、こういう質問を私は続けて来たわけでありますが、政府の方におかれましては、何とかこれについてしなければならないという親心をお持ちのようでありますけれども、そういたしますと、実際に苦情処理機関のようなものを設けて処置するといたしますと、これは相当の数でございますし、個々のケースについてはなかなか困難なものもございますので、実際にお取扱いになるとすれば、機構については予算的な関係も考えなければなりませんし、規模などもそんなに弱小なものではいけないとも考えるのでありますが、そういう点について、国家公務のために倒れたけれども、援護法の対象にもしてもらえない、あるいはまた恩給権を持つておるけれども、恩給法の中にも入れてもらえないというものが出たときに、それらを苦情処理機関の中でおまとめになるのに、どのくらいの機構をお考えになつておるか。またどういう方法をお考えになつておるか。もしありましたら少し詳しく御説明願いたい。
#32
○田邊政府委員 先般来非常に熱心に御質問になつて、その際われわれの一生懸命やつておる状況をお答えしておつたのでありますが、実はお話の通り、非公務死亡者は現実に相当あるわけであります。公務であるか非公務であるかという判定にいろいろ苦労するものもありますが、これは今度の戦争の特殊性に即応して、われわれは実情に即した取扱いをいたしたい、かように考えて目下努力しておりますが、非公務の戦没者に対する援護法の取扱いにつきましては、現在のところ何らの処遇がなされておらないのであります。従つて公務に裁定されたものは年金と弔慰金がいただける、非公務になつた以上何もいただけない、こういうことになつておるわけであります。昔は非公務の死亡者でありましても、在隊期間中に死亡された方々に対しましては、何らかの処遇がなされておつたように伺つておるのでありまして、この点は裁定をいたしておりますものの気持といたしまして、何とかしてあげたいという気持が働いておるわけであります。従つて今後の問題として、非公務死没者の遺族に対する処遇につきまして、法律の改正も要し、予算も伴いますので、十分研究し善処いたしたいと考えております。
#33
○堤(ツ)委員 何とかしたいし、研究中であるというお言葉でございますので、政府の誠意のほどをそのお言葉でくんでおきますが、政府も二十七年度の戦傷病者戦没者遺族等援護法の実施にあたつて非常に痛感なさつたことと思いますが、私がしばしば申し上げましたように、実際に町や村へ行けば、あの方は確かにどこの戦線で死んだのであつて、公務死として村で扱つて村葬をしておる、またどういう事情で戦傷者になつたとか、どういう事情で今日遺族がこういう状態になつておるとかいうことは、ここ十四、五年ほどの間については、その地元が一番よく知つておるわけです。地元で、だれが常識で見てもこれは国家公務死であり、非公務死であつても、国が何とかしなければ、死んだ人、傷ついた人、遺族の心がいやされない、そういうものをその対象としてぜひ取上げられたいというところの気持がしばしば輿論としてあげられておる。でありますから、こういう実態にかんがみて、もつと政府は市町村長の具申というものに権威を持たせ、それからごまかしでないと思われるものは知事に権限を持たせて、必ずしもこれを援護庁まで正式の書類が来なければ査定、決裁の事務を終了しないのだというような形をおとりにならないで、今日以後、査定に困難なもの、ことに資料が不十分なものにつきましては、こうした親心、常識を働かせて、府県庁なり市町村なりに二十七年度よりはさらに権限を持たせて、もつと地方で片をつけるような方法の方が、国家の財政面からいつても賢明な方法であると私は考えるのでありますが、こうした点について改正をお考えになつておられないでありましようか。たとえば今私が賀問いたしましたように、苦情処理の機関にいたしましても、中央ですつたもんだ申しておりましても、あなたの方にこういう参考資料があつたら写しでも送つてくれということになりますと、この大事なものが援護庁へ届かないといけないと思つて、遺族の身になれば、戦傷病者の身になれば、留守家族の身になれば、これらを書留で送つたり速達で送つたりして、やむにやまれないものでありますから、金を使う。こうしたことを再三繰返して、時間ばかりいたずらにとつて、あげくのはてに証拠不十分ではねられた。しかし町や村へ帰つてみれば、だれが見たつて国家公務またはそれに準ずるものとみなした処遇をしなければ納得が行かないというようなケースがたくさんあるのであります。従つて当然これは改善せらるべきであり、それの方が、援護庁も今日のように不眠不休でおやりになつても、片づかないというようなことは起らないと思うのでありますが、それは法律的にいつて、いたずらに国費を濫費し、それを対象のわくの中に入れてだらだらと抱き込むことになるからいけないというような頭を持つてお考えになるとするならば、私は苦情は絶えないと思うのでありますが、これに対して改革をお考えになつているかどうか。
#34
○田邊政府委員 戦没者遺族援護法というものは、恩給法が復活するまでの暫定措置として施行されたことは、堤委員よく御存じの通りだと思います。従つて第一条に、公務によるということが書いております。今度軍人恩給が復活いたしますれば、これらの方々はすべて恩給法に包含するということになるのであります。恩給というものは御承知の通り、一定の法律条件を備えたものにつきまして、公務として認定をして、権利を永久的に裁定確認して行くということであります。われわれといたしましては、そこを非常に注意していたしておるのでありまして、われわれの方で公務として認定したものが、将来恩給局の方で非公務だ――恩給局には従来から一定のしきたりというものがありまして、やたらにこれをやつておりません。なかなか厳重でございます。しかし今度は戦争の特殊性ということもありますから、恩給局もおそらく従来のようなかたい裁定はなさらないであろうとわれわれは考えております。またそういう要望もいたしたいと思つております。しかし今のところ恩給局もわれわれの方も非常に忙しいので、どの辺まで公務扶助の範囲を拡大するかということはなかなか困難であります。われわれの責任においてある程度の考えを立てましてやつておるわけであります。従つてあまり乱雑にやつてはいけませんが、そうかといつてあまり厳重になつてもいけない、その辺のかね合いはやはり中央において調整してやることによつて全国的に統一がとれるわけであります。これを市町村、府県にまかせたのではとうてい均衡、バランスはとれないだろうと思います。お話の通り問題は、非公務というものをどう取扱うかということが問題なのであつて、非公務のものを全部公務にしろ、それなら法律を改正いたしまして、在隊期間中に死んだものは全部この中に入れて行くということにかえなければなりません。従つてこの点は、さつき申し上げた点ともにらみ合せて善処しなければならない問題ではないか、かように思います。
#35
○中野委員 今のお話の中でちよつと伺つておきたいのですが、遺家族援護法によつて援護される者のうち、恩給法によつて恩給をとることになる者の残りの遺族数はどのくらいになるですか、正確な数を伺いたい。
#36
○田邊政府委員 二十八年度の予算におきましては、その数を総数十万と見ております。戦没者の数であります。
#37
○中野委員 重ねて伺つておきたいのでありますが、巣鴨の刑務所におる者はいわゆる未帰還者というふうに扱つておるのですかどうですか、判決と同時に復員手続をとつておるように私は聞いておりまするが、この点についてどういう取扱いをしておるか、この際伺つておきたい。
#38
○田邊政府委員 第二条第二項におきまして未帰還者の取扱いをいたすのであります。
#39
○山下(春)委員 大蔵省にお尋ねいたします。恩給法の方で、これはまだ未知数でありますが、七項症はもとはちやんと増加恩給の中に入つております。それから一款症から四款症までを年金にするということがやや決定したかに漏れ聞いておりますが、それが決定したといたしますれば、それをまかないますのに四月一日にさかのぼつてまかなうといたしますれば、七項症の方で幾ら、一款症から四款症の方で幾らということの予算的なものをお考えになつているのであれば、その概略の数字をお教え願いたい。
#40
○岸本政府委員 恩給法につきまして、現在国会方面において増加恩給七項症、傷病年金の一款症ないし四款症を政府原案のような一時金でなく、年金にしようという動きがあることをわれわれ承知いたしておるのでありますが、それはどういう金額にきまるか、つまり七項症に対してはどのくらいの金額、款症については年金幾らというような金額が具体的に決定いたしませんと、これに対してどのくらいの予算があつたら足りるかということはわからないわけでございます。その金額につきましては、まだ恩給局と国会の方におきまして折衝中であると問いおります。最後案はまだわれわれ承知いたしていないのであります。
#41
○山下(春)委員 これまでの六項症までの傷痍年金は、大体政府原案のような率ですでに払いつつあつたのでございますが、そのお払いになつた金額はどういう率でこれまでお払いになつているのでありますか。
#42
○岸本政府委員 六項症までの増加恩給の分は、最近までは御承知の通り恩給法の臨時特例というものがございまして、低い金額に押えちれているのでございまして、その低い金額で支払つているわけでございます。一時金であります。
#43
○山下(春)委員 そういたしますと、今まだ恩給法は審議中でございますから、その特例法で本年度もお支払いになりましたかどうか。
#44
○岸本政府委員 実は本年度に入りましての新規の裁定があつたかどうか、不勉強で承知いたしておりません。
#45
○山下(春)委員 援護庁次長にお尋ねいたしますが、二十八年度の恩給法に残る約十万の人に対する援護に要する費用でありますが、これをかりに今回会で言われておりますごとく兵長に直すといたしますと、それに要します援護局側の費用はどのくらいと推定しておりますか。
#46
○田邊政府委員 援護法の遺族年金額を月二千三百円、現在二千百円でございますが、二千三百円に増額いたしますと、所要増加額が年金で二億四千四百万円、本年度はその十一箇月分でございますので、二億二千百二十五万六千円の所要額増となるのでございます。
#47
○山下(春)委員 ついでに伺つておきますが、未帰還者留守家族についての、今の問題についての増加額というのが別個に出ておりますれば簡単でけつこうですが。
#48
○田邊政府委員 未帰還者援護法の基本給を二千三百円に増額いたしますと、八月分以降といたしまして四千八百四十万円、約四千八百五十万円所要増と相なるわけであります。
#49
○堤(ツ)委員 質問が中途で横に行きましたので、次長に申し上げておきますが、これは国会議員の、この委員会の方々の御意見も相当強いものがありますが、府県庁に権限を移行されるということは、あなたが御心配のように――先ほどの御答弁を聞いていますと、各府県てんでんばらばらにやると、ある府県では非常にやさしく、ある政県では非常にきびしくなるというようなことがあつて、均衡が失われる心配があるという御趣旨だろうと思います。もちろんその御趣旨は私はおおむね了承することができますけれども、しかしそうした危険を冒さない程度において、もう少し府県知事へ仕事をまかせるということがあつた方が、ほんとうに遺族や戦傷病者や、戦死者に対してはありがたいと思われる節がたくさんありますので、もう少し御研究願いたい。
 それからちようど政務次官が御出席でございますから、同時にあわせてお尋ねいたしますが、西日本の水害罹災者の中に非常に遺族が多いことは、これは申し上げるまでもなく、政府の方に名簿がございますからよく御存じだと思いますが、この西日本の水害、それから昨日はまたはなはだ不幸なことには、和歌山の中の有田川の流域の二つの村がすつかり流されておるというような、非常に悲しい事態が起つておりますが、この中にも相当な遺族がいるのでございましよう。この場合に御存よのじうに、弔慰金としてもらわれたところの国債は換金されないまま証書で持つておられる、そうしてもうあぶないというので証書を持つて逃げられた、またどうしても証書を持つて逃けられないで失つてしまつたという事態も起つて来ると思うのであります。これは西日本の九州、山口県あたりから和歌山を含めましたら相当な遺族の数になると思うのでありますが、この罹災した水害者の弔慰国債に対して、失つたものはどうするか。それからしるしがなくても、罹災の結果この証書がなくなつてしまつても、持つて逃げられなくて失われたのであるから、換金しておらないで証書を持つておつたのだという証明がつくのだつたらどうしようとか、また御存じの通り昨年度の換金は二十億でございまして、私がこの間も御質問申し上げた通りでありまして、もつぱら生活保護の対象に限られておりまして、日雇いの戦争未亡人にさえも、これが対象に伸びないで、日雇い戦争未亡人からも血の出るような陳述を受けておるから、二十八年度の際には換金の額を広げてもらいたいというところの質問を政府に申し上げたわけでありますが、そのときに、ことしは三十億になつておるから、少々手が伸びると思うというお答えでございましたが、私はさらにそれにつけ加えるに、西日本水害罹災者の遺族に対しまして弔慰国債の換金を即時してあげられるような処置が、特別に当然政府においてなされなければならないと思うのでありますが、何か処置をおとりになりましたでありましようか。私たちがかく申し上げるまでもなく、何か即刻に処置をおとりくださつておれば非常に幸いだと思うのですが、この点について……。
#50
○中山政府委員 私も九州それから和歌山県、きのうは堤委員もお聞きになりたと思いますが、多分和歌山県に接しておる所でありましようが、奈良県も、また非常な水害をこうむつておるというラジオの報道を聞きまして、非常に憂慮しておる一人でございますが、九州の災害が起りましたときに、すでに堤委員がただいま陳述されましたようなことを私もみずから考えまして、これは何とかして行がなければならぬということを考えたのであります。それでいわゆる戦地から帰つて来た人たちの中にもいろいろ医師の免許証なども失つたり、あるいはとられたりしておるような場合もあつたことを私は思い起しまして、この際また命一つ持つて逃げることが最大の努力であつたということも聞きますと、これは何とかしなければならぬということはだれしも考えることであろうと思うのであります。それでただいま大蔵省といろいろ折衝をいたしまして、何とかこの問題を早急に解決して、こういう気の毒な人たちを天災から救わなければならぬという努力を今厚生省としてはいたしております。
#51
○田邊政府委員 今政務次官からお話がございましたように、すでに大蔵省と折衝いたしまして、二十八年度の三十億の予算がまだ成立しておりませんけれども、とりあえず九州地方に対しまして、今度の水害の状況を考慮してやりくりしていただきまして、三億円だけ弔慰金の換金の金を割当てたわけであります。その中で今度は一億は、生活保護法に該当しない方であつても、水害による罹災がひどくて生活に困つておられる人たちには特別な換金措置をいたしたい、こう思つております。
#52
○堤(ツ)委員 そうするとただいまのお答えは、政府の親心まことにけつこうでありまして、御努力中ということですから、私はこれ以上申し上げませんが、とりあえず三十億の一部の三億をまわして、その中の一部を九州の水害にまわしたということですが、さらに引続き次から次へと起つておる罹災地に特別な措置を講ぜられたい。福岡、熊本、大分、佐賀、山口などの遺族会長がわざわざ東京に来られまして、この件については政府自体にも非常な御陳情があつたと思いますけれども、非常に切なる叫びを上げておられますので、どうぞあまり遅くならないうちにこれを実際に上げていただけるように、たとえば二十八年度予算にいたしましても、ただいま参議院で難行中でございますけれども、これが通過いたしましたならば、他の区域とは別にして、その弔慰の国債の即時換金を水害の罹災者遺族に対して行われるように前もつて手配をされておかれまして、日がたてばたつほどこの方々は困られるのですから、どうぞ特別な措置をお願いいたしまして、ただいまの政府の御答弁を了承いたしたいと存じます。
 そこでもう一つお願いしておきたいのは、そういうふうにして思わざる災害のために弔慰国債を即時換金して行かなければならない対象がふえて参りますれば、これは別にまた予備金の中からでも支出をして、厚生省としては他の遺族の換金にこれが影響しないようにしてあげていたたきたい。なぜかと申しますと、去年の二十億はまことに微々たるものでありまして、生活保護法の対象者の中にもこれが換金されないで、あとまわしにされておる方があるのでありますから、これを入れ、生活保護法の対象にならないボーダーラインの方々、それから生活保護法の対象になつておらないけれども、子供を抱えて未亡人がニヨコンになつて働いておるというようなことを考えますときに、三十億というもののわくは決して多いのではないのでございます。十億をふやされたから多いというのではない。でありますから、どうぞひとつ、この三十億の中から一億を水害対策にまわしたということではなしに、さらに三十億プラス何がしを厚生省としては大蔵省と御交渉なされまして、政務次官の腕でふやしていただきたいということをつけ加えておきたいと存じます。
    〔委員長退席、中川(源)委員長代
  理着席〕
#53
○長谷川(保)委員 未帰還者留守家族のことで。帰つて来られた方が結核にかかつているので、そのまま療養所に入つた、こういうような方は帰つて来たときに港で未帰還者でなくなるのか。
#54
○田邊政府委員 未帰還者が舞鶴なら舞鶴へお着きになりまして、帰還の手続をいたしますれば、未帰還者という取扱いをいたさないことに相なつております。
#55
○長谷川(保)委員 すると療養の給付は本人は受けられるが、家族はこの法律では何の援護もないわけでございますか。
#56
○田邊政府委員 お話の通りであります。
#57
○長谷川(保)委員 留守家族の手当の二千百円及び四百円の数字、この数字はどういう根拠のもとにきめられたのでありますか。
#58
○田邊政府委員 遺族援護の問題を厚生省で取上げまして研究した当時は、実は軍人恩給の問題がまだ問題にならなかつたときでありますが、その当時どの程度年金なり手当をもらつたらよろしいかという点につきましては、最小限度年金なり手当を差上げるならば、生活扶助にかかつている方が生活扶助を脱却できる程度まで差上げたいというのがわれわれの希望だつたわけであります。もちろん生活保護法の適用を受けておられる方は収入のある者もありますし、全然収入のない方もおありになると思いますが、大部分の方が収入を持つておられますので、その大部分のところを見まして、年金とその得られております収入とをプラスいたした場合に、生活保護法からお世話にならずに独立してやつて行けるような程度を目標にいたしまして、実は努力をいたしたのでございます。ところが昨年度はああいつたぐあいで、予算の総わくという点から一万円、五千円ということにきめられ、また本年度におきましても、軍人恩給の四百五十億を入れまして、遺族援護、未帰還者留守家族等の援護費として、総額五十億というわく内でわれわれにおいて操作しなければならぬということに相なつたわけであります。この際われわれとしてはできるだけ手当なり年金の額を増額したいということでいろいろ努力いたしたのでありますが、軍人恩給の金額の関係もあり、結局二千百円ということに最後の折衝の結果おちついたわけであります。そのおちついた金額は、おおむね一等兵の公務扶助料の別わくに見合うということに相なつたわけであります。もちろん最初から一等兵のそれに歩調をとるということでスタートしたわけではありません。スタートは先ほど申し上げた通りでありますが、国家財政の現状等から二千百円ということにおちついた、これが実情であります。
#59
○長谷川(保)委員 そうすると遺族援護法の方でもあるいはこちらも留守家族の援護法の方でも、ただ財政上の見地、予算上の見地からだけで一等兵並みにする、こういうことでございますか。
#60
○田邊政府委員 りくつを申しますと、遺族年金の金額をどの程度にしたらよろしいかという問題は、一つは恩給による公務扶助料との均衡、という問題があります。もう一つは各種共済組合による遺族年金に相当する金額との均衡という問もあるわけであります。共済組合との関係については、これは退職時の俸給を基本にいたしておりますので、これとの歩調ということは困難でございます。各人ごとに死亡した場合の最後の俸給というものを基準にして遺族年金を算定いたしております。そこで自然恩給と公務扶助料というものが、バランスを考える場合に相当重要な要素となつて来るわけでございます。一般の雇用人と軍人の戦死した場合の公務扶助の金額については、若干差があつてもいいではないか、こういう議論が相当あるわけであります。他方は軍人として戦闘に参加して死亡したものである。片方の雇用人たる軍属については、危険性の度が多少薄いのではないかという議論から、軍人より少し低くてもいいではないか、こういう議論があるわけであります。しかし厚生省といたしましては、やはり援護の面がございますので、先ほど申し上げました生活程度ということを考えました場合に、生活保護法から脱却できる程度ということを目標にしたわけでございますが、それが先ほど申し上げたような国家財政の事情によつて二千百円ということにおちついたわけであります。
#61
○長谷川(保)委員 ただいま共済組合の方でございますと、どのくらいの月給に該当するのですか。
#62
○田邊政府委員 昔の旧陸海軍の共済組合からのついております年金、いわゆる殉職年金と申しておりますが、これの平均は年額約三万五千円程度になつていると承知いたしております。もちろんこれは援護法による遺族年金と違つていろいろ条件がついおりまして、扶養手当の加算がないとか、あるいは支給を受ける場合にもいろいろな限定される条件がついておりますが、その現在出ております年金の平均は年額約三万五千円程度と承知いたしております。
#63
○長谷川(保)委員 いろいろ国家財政という点もございましようけれども、先ほど山下委員からの質問で伺つたところによりましても、どうもこれを兵長のところまで上げましても幾らの違いでもないようであります。一等兵と申しますと、何にしても旧軍人の階級では一番下級と言つてよろしいわけで、ちよつと軍隊に参りまして最初は二等兵でも、じきに一等兵になるわけでありますから、いかにも下だというように考えられる。せめて兵長ぐらいには上げるべしというのがどなたでも考えられる点だと思いますが、この点そこまで上げる御意思はないか、御考慮する余地はないか、次官にお伺いいたします。
#64
○中山政府委員 御意思のほどはごもつともと思うのでございますけれども、これは予算とからみ合つて参りますので、将来に残された問題ではなかろうかと思つております。
    〔中川(源)委員長代理退席、委員長着席〕
#65
○中野(四)委員 関連して。中山政務次官には、引揚げあるいは御遺族の方に対しては非常な御努力と御心配をいただいて、いわゆる官につかざるうちは、全国の遺族の方々があなたに期待するところが大であつた。従つてわれわれも非常に敬意を表しておつたのですが、今日幸いに厚生省の政務次官に御就任になつた。われわれはこの絶好のチヤンスを逸すべからずと、心から期待をしておるわけであります。 (拍手)今長谷川委員の御質問の点でありまするが、恩給法においてかりに兵長で妥協がついても、援護法において跛行的な状態にあるのでは、長い間の御努力に対しても、ちよつとどうかと思える。言いかえれば、百の説法よりも一の事実をもつて、遺族の方々の気持に報いていただきたいと私は念願しておるのですが、あなたくらいの政治力を持ち、ちようどいい場所を持ち、しかも非常に大きい御努力をしておられるという三位一体の立場において、金額からいえばわずか三億円くらいの額なんですから、いわゆる政府の人々の予算的操作と申しますか、御努力いかんによつては、私はこの人々が大いに報われると思うのです。なるほどぺ一パー・プランの上においては、いろいろと簡単に解釈もできますけれども、私もわずかではあるが召集されて、これでも応召軍人の一人でありまして、一番下級の二等兵であります。この二等兵、一等兵というものは、いわゆる上級軍人よりも非常に苦しみの多いものでありまして、特にこういう人の身を思つてやつてこそ、私は初めて今日までの御努力は報いられると思つておるのであります。だから今の御答弁で、単なる、御趣旨を十二分に伺つておきましよう、善処しましようというのではなく、ちようど今のあなたの立場がすばらしいよいところにおいでになるのだから、かねての御意見を実現なさるのに最もよい時期なのですから、どうかあなたの御努力によつて、わずか三億円くらいの予算的操作によつて、これらの人々が同じように浮かばれるように、ひとつ御努力願いたいと思いますがどうでしよう。
#66
○中山政府委員 たいへんにおほめをいただきまして、痛しかゆしの立場に立たされておるのでございますが、私も、過去の軍隊のございました当時、極道息子、親不孝の息子を軍隊に入れれば、一年おつたら必ず親孝行息子になつて帰つて来る、それほど軍隊というところはつらいところだということを聞かされておりまするので、下に厚くということは、私がいかなる立場におりましても忘れないことでございます。それで家族の立場も考えまして、何とかして上げたいということが腹一ぱいでございます。あなたはこういう立場にあるからやれということをおつしやいますけれども、これも一つの手かせ足かせをかけられたような立場に立たされておるのであります。努力は一生懸命いたします。しかし中野委員は改進党の委員さんでございまして、提案された予算も、非常なる御努力によりまして、削減をされたりあるいはつけ加えられたりしておりますので、政務次官の私の立場よりも、まだ改進党さんの方がこの点では御有力ではないかと考えております。これは脱線でございますが、ひとつそういう問題は別といたしまして、お互いにこの委員会と私どもの立場にあります者が努力して、これならば納得の行くというものにするのが私は一番いいのではないか。私も厚生省におりまして努力をさせていただきますし、また先生方もひとつ……。気の毒な、早く言えば一番苦しい人たちに、何とかしてやりたいという気持は、さらに私はかわつておらないことをここにお答え申し上げます。
#67
○中野委員 仰せのように、これは社会党の方を目の前に置いて悪いのですけれども、予算修正等の場合においては、当然その責任は、修正を要求いたしました改進党にもあると思うのです。連帯責任を負うべきだと、私個人は考えているのです。従つて党もその方針に従つて行つていただければ、これに越したことはないと思いますが、それはとにかくとして、内閣委員会において、恩給法の改正をいたしますについて、かりにそういうような妥協点がきまりましても、私はこの厚生委員会あるいは引揚委員会において、長い間この問題を懸案として心配しているのであります。従つて内閣委員会できまつたから、厚生委員会の方はこれについて行かなければならぬというりくつは一つもない。私は、われわれは大いに政党政派を超越して、この大問題を解決するために、場合によれば相当強い意思表示をしてもよいと考えております。従つて中山さんとして、従来の御努力に対して実を結ぶのはこのときだと私は思う。絶好のチヤンスだと思う。足かせ手かせにびくびくすることは少しもないと思います。あなたの政治力とあなたの熱意を持つて、ひとつ政府与党を鞭撻しこれを修正して、すみやかにこの三億円の予算操作のできるように、御尽力をお願いいたしたいと存ずるのであります。(拍手)
#68
○長谷川(保)委員 ただいま中野委員のお話の通り、すでに予算が衆議院を通過しておりますけれども、実を言うとわれわれは兵長まででも承知まかりならぬと思うのでありますけれども、すでに予算の通つたあとでありますから、せめてこれは御遺族に対しまする精神的な一つお慰めということでも、私はぜひ一等兵――あるいは一等兵と二等兵の間という話も聞きますけれども、その程度ではあまりに気の毒だ、あまりにひどいということを考えざるを得ないのでありまして、どうか中山次官の御尽力をひたすら望む次第であります。
 そこで次に進みますが、障害年金も同様の一等兵、二等兵のところでございますか。
#69
○田邊政府委員 恩給法では、増加恩給の金額は兵は一本でございまして、一等兵、二等兵の区分はございません。
#70
○長谷川(保)委員 いやこの額が、一等兵か二等兵か、つまりそこの水準にあるのですか。
#71
○田邊政府委員 援護法による障害年金の今回の改正額は、今回国会に提案されております恩給法の中で、兵に対する増加恩給額と見合うように算定いたしたのでございます。
#72
○長谷川(保)委員 結核で入院しております者で、たとえば胸郭成形術をしておりますようなたぐいは、何項症に該当するわけですか。
#73
○田邊政府委員 これは専門家の意見によつて、機能喪失の程度を見まして、たとえばお話の成形手術をした人の場合でございますれば、成形手術をした結果、その手術の結果によるいろいろの身体の機能の症状が固定したところを見まして、それがどの程度であるかということを見定めた上で、恩給の裁定をいたすわけでございます。結核でございますれば、従来は、人によつて違いますけれども、重いところで六項症が一番多いのではないか、こう思つております。
#74
○長谷川(保)委員 結核で国立療養所に入院しております者で、障害年金を受ける者は、障害年金から実費の一部を徴収することができるというように伺つておりますけれども、そうすると、この病状が固定いたしまして、今申しましたように、たとえば第六項症ということになりましても、そのまま入院して療養することができるのでありますか。
#75
○田邊政府委員 これは外傷患者の場合と内疾患の場合とで違うと思うのであります。外傷患者の場合でございますれば、手術の結果等によつて症状が固定するということになりますれば、その後におきましては、おそらく原則として療養の必要はなかろうと思います。恩給の場合におきましては、ある程度身体に故障があるから恩給の裁定の対象になるわけであります。治療の必要がないということになりますれば、恩給の対象にもならないのではないかと思われるわけであります。ただいずれにいたしましても、現在の法律の建前では、恩給法によつて増加恩給の裁定がありました際は、未復員者給与法等による療養は打切られることに相なつておるわけであります。今度の援護法におきましても、旧来の建前をそのまま一応継承いたしておりますので、療養中は原則として増加恩給の対象にならない。また増加恩給の裁定を受けた者は、療養の対象にはならないと解釈しておるわけであります。
#76
○長谷川(保)委員 たびたびその点を伺つておるのですけれども、これは非常に全国から問題が出ておるものですから伺うのですが、先ほど申しましたように、成形手術をいたしまして、一応病状は固定をしておつて、第六項症なら第六項症ということになる。ところがなお排菌者で、うちにも帰れない、なお病院におる。そういたしますと、こういう人は、この戦傷病者援護法では療養は給付されないことになりますか。
#77
○田邊政府委員 現在の法律では、増加恩給ないしは障害年金というものと、療養の給付というものとは併給されないという建前になつておるわけであります。この点が問題となつておることも、十分われわれは承知いたしております。この点はわれわれも制度上考慮を要する問題であると考えております。全国の相当多数の方々から陳情も受けておりまするし、現在ことに増加恩給を受けながら療養をしておられる方もあるわけであります。これは例外的な取扱いでございまするが、現在療養を受けつつなお増加恩給をもらつておるという方がおるわけであります。それが増加恩給が今度増額になりますので、その結果、その他の療養所で療養を受けておる方との不均衡ということが必ず問題になりますから、この点はわれわれとしても十分考慮しなければならぬ、かように考えております。
#78
○長谷川(保)委員 次の問題に移りまして、今回の遺家族援護法におきまして、船舶運営会の運航いたしました船舶に乗り組んでおつたいわゆるC船員が対象とざれたことは、私どもこれを喜ぶものでありますが、まだまだ多数の総動員法によつて動員されました各種の人々がおるのでございます。それらの人々には、たとえば爆死をしたというようなこともありますが、従来弔慰金だけしか行つておりません。今回改正によりまして、このC船員だけがわくが広げられたその理由を承りたい。
#79
○田邊政府委員 これはたびたび申し上げのでございますが、船舶運営会というのは、国家総動員法に基いて設立されました機関でございまして、国家が使用権を設定した船舶の運航を担当しておつたのでございます。従いまして、これは一種の国家機関たる性格を持つものであると解釈してさしつかえなかろうと思うのであります。しかもこの船舶運営会の乗組船員はすべて徴用でございまして、従つて船舶運営会といわゆるC船員との間には国家権力による使用従属関係が強制的に設定されたということに相なるわけであります。この点におきまして、C船員は他の船員と同じように、国家との間に強制的な権力による使用従属関係が設定されたと同じような立場にあつたものと法律的には考えられるのであります。しかも勤務の内容は、当時の苛烈な戦局のもとにおきまして、兵員ないしは軍需物資の輸送に当つておりまして、その危険の程度は一般の軍人またはそれ以上と考えられたのであります。現にその戦犯の率が相当高率に上つておることは、この事実を物語るものであると考えられるのであります。こういつた点を総合的に考えてみまして、この際C船員は他の船員と同じように、援護法の対象にすることが妥当であろうという結論に到達したわけであります。ことに同一船員が、乗り組む船によつて乙船員になりあるいはC船員になるという関係におりましたので、たまたま自分の乗り組んだ船が、国家が直接雇い上げた船であつたがゆえに、乙船員となつてこの法律の対象になり、たまたま自分が乗り組んだ船が船舶運営会の運航する船であつたために、C船員となつて援護法の対象とならないということも、きわめて常識的に見ますとおかしなことでございますので、先ほど申し上げました理由を総合的に考えまして、この際C船員を援護法の対象といたすことにいたしたのであります。
#80
○長谷川(保)委員 内地において国家総動員法によつて動員されました者でも、たとえば私のおりました所など参は、三十六回の空襲と、最後には艦砲射撃も受けたのであります。こういうような中で、国家総動員法によつて動員され徴用されました者たちが、軍需工場あるいはその他のところで最後まで奮闘して、そのために爆撃を受けまして、四散して、どこへ行つてしまつたかわからぬというような人もあつたわけです。相当頻繁にそういう非常な危険にさらされた者もあるわけでありますが、これもまた国家総動員法で、行かなければ罰則になるということで、国家権力で動員されたわけでありますが、こういう者をなぜ除外するのでありますか。
#81
○田邊政府委員 援護法の対象をどの程度まで広げ、どの程度で打切るかという問題は、この法律の研究に着手いたしました当初から、この法律が国会を通過いたします最後まで、実は非常に論議せられたのであります。現在のこの法律の建前は、主たる対象は軍人ということに相なつております。これは恩給法によつて当然死歿者に対し扶助料が支給されるべきはずであるのに、占領下にありましたために恩給が中止になつております。その結果恩給の扶助料がもらえないという方々であるので、恩給が復活するまでの間暫定的な措置として援護法でこれを取上げたわけであります。それから一般の雇用人たる軍属につきましては、これはたびたび申し上げますように、内地における雇用人たる軍属は、当時の陸海軍の共済組合によつてすでに救済されておつたのでありますが、戦地に連れ出されました一般の雇用人たる軍属につきましては、当然なさるべくしてそういう援護の措置がなされなかつたわけであります。これは当時の陸海軍の事務担当者に伺いましても、準備を進めておるうちに終戦になつたというような事情も明らかにされておるような事情もございますが、当然当時さような援護の措置をなすべきであつたということでございます。そこでかような方々を本来ならば陸軍共済組合なり海軍共済組合なりのかつての対象であつた人々と同じ法令の系統において措置することが一番適切ではないかと思われたのでありますが、諸種の関係から、これも援護法に取上げることになりまして、共済組合法の対象に取上げないことに政府部内で決定されたわけであります。もちろんお話の通り、一般の戦争犠牲者にまでこの援護法の対象を伸ばすことは、国家財政が許しますならばこれも決して不当であるとは考えません、むしろ適当であると思いますが、その場合にこういつた年金という形においてやるのが適当であるか、あるいは一時金としてやるのが適当であろうか、これは問題であろうと思います。ことに援護法の対象であります方々には、年金というものとの関係上、やはりいろいろの資料というものが必要でございます。現在でさえも軍人軍属の身分、死亡原因等の調査に相当困難性を感じておるところでございますが、一般の方々に対して一定の限度を置いてかような援護をするということになりますと、事務的に見ますればきわめて困難な情勢下にあるわけであります。また一方当時の徴用であるとか、あるいは学徒動員という方方、これは冷酷な議論をしますと、当時の社会通念ないしはそれに基く国家の所遇といたしましては、徴用援護会であるとか、あるいは学徒動員の援護会であるとかによつて措置せられ、また一般の工場法その他による事業主の所遇がなされておつたわけでございますので、これはしいて申しますれば、一応軍人軍属ないしは戦地における雇用人たる軍属とは一線を画することができるのではないか、かように考えまして、そこに線を引いたわけであります。もし徴用学徒その他対象を広めてみますれば、広がるところすべてが戦争の犠牲者に及ぶということになり、そうなりますれば一般の財産の損害の補償という問題にも関係し、非常に広範囲な複離な問題になる、国家財政の現状からそこまではとうてい手が伸ばせないのではないかということで、先ほど申し上げました一応理論的な基準の設定できる線でこの援護法の対象を限定したような次第でございます。
#82
○長谷川(保)委員 国家総動員法によつて動員されている学徒にしろ、女子にしろ、あるいはまたその他いわゆる平和産業についておりましたけれども、戦局の危急化するに従いまして、それをやめさせられまして動員せられ、徴用せられて働いておつたところの、いまの軍属以外のそういう人々がたくさんありますが、そういう人々で死んだ人、あるいは負傷した人、そういう人は数は少いし、そうして国内が爆撃されて参りまして遂に終戦に至つた。あの戦争の最後の段階におきましては、そういう人々はただ死に損になつた、けがのし損になつている。たかが弔慰金三万円でおしまいということで、何も扱われおらぬというのが現状であります。国家の法律でもつて動員せられて行つた結果がそうなつたのに、それに対してほとんど何らの年金も遺族援護もやらない。しかるに一方恩給の復活におきましては、軍人の遺族なるがゆえに普通恩給がある、あるいは普通扶助料がある、一時扶助料が与えられる。先ほどの質問応答を見ましても、このC船の諸君に対しましても、あるいはその留守家族、遺家族どちらに対しましても、この援護法によつて対象となるのを。そのものの中には軍隊の一等兵、二等兵というようなたぐいではなくて、素養の高かつた人がたくさんあつたろうと思う。その人々には一等兵、二等兵の額、あるいはてんで何もしないということにしておいて、旧軍人なるがゆえに先ほど申し上げたような普通扶助料、普通恩給、一時扶助料を与えられるというところに、私は大きな国民の不満の原因があると思う。さればといつて私は、老齢軍人の諸君に普通恩給を与えるべきじやないと必ずしも言うものではありません。ただもしそうするならば、何ゆえ一般の国民の老齢者に老齢年金を、一般の母子もしくは遺児の人々に母子年金、遺児年金を、軍人の遺族である人々と同様に与えないか、そのことを私は考えるのであります。そこに国民の大きな不満が出て来る。すでに幾らも私どものところに、うちの主人は徴用されて死んだけれども、爆死したけれども、何もしてくれないというように言つて来る人々がある。そういう不満が自然そういうふうな軍人なるがゆえに別扱いをして、一般国民を今日あるような非常に低いところに援護の手を置いて、それが単に財政上の問題、予算の問題だと片づけている。その予算をつくり財政を運営するのは一体だれがやる、政府がやり国会がやるのであります。それを予算がないという結果から持つて来て、逆の論法をもつてそういうように言つてはならないと私どもは思うのであります。もし軍人に対しましてある程度のことをするというのならば、同じ程度のものを一般国民にもしないのか、こう私らにはどうしても思えるのでありますが、これに対しまする政務次官のお答えを願いたい。
#83
○中山政府委員 ただいまの御発言に対しましては、私もある程度同感でございます。私ども子供たちを、いわゆるあの徴用時代に送り出しましたときに、この子は今晩生きて帰つて来るかどうかという疑いを毎朝持つて送り出したのでございますから、不幸にしてそういう死を遂げた人たちに対してのその親の気持というものは、私は御説の通りであろうと思うのであります。そこにやはり社会保障的考え方を持つて行かなければならないというお考えは、私も同感でございます。しかしそういう問題は今この法律の対象外に置かれておりまするので、ここで取上げられていないのでございまして、まことにそういう犠牲者に対しましては深甚なる弔意を表わしているものでございますが、今この問題はここで取上げ得るというところまでにはなつていないと私は思うのでございます。まことに国の財政の貧しさから、社会保障制度というところまで行かず、軍人であるからといつて、色わけをしなければならぬということが不満だということ、でございますが、そういう家族の人になつたら、確かにそのような御不満はあろうかと思うのでございますけれども、前に当局より申しましたように、いろいろな調査も行き届いておりませんことでございますし、なかなかこの問題は困難であろうかと思つております。
#84
○長谷川(保)委員 調査が行き届かないとお二人からお話がありましたが、調査か行き届かないというのは非常に変な話でありまして、弔慰金を出したのでありますから、調査はすればいくらでもできる。問題は結局予算がないということでありましようが、貧乏なら貧乏でいい、貧乏なら貧乏でいいから、全国民を平等に扱わなければならぬ。これは憲法の精神からいつてあたりまえです。それを軍人なるがゆえにということと、そうでない留守家族あるいは未帰還者、あるいは徴用者、あるいは遺族、一般国民なるがゆえにということで差別をつけるところに、私どもの納得できないものがある。貧乏なら貧乏でいいから、平等にわければいい。それを差別をつけるということはどういうことであるか、また私は差別だと思うけれども、差別とお思いにならないか、その点について次官の御意見を承りたい。
#85
○中山政府委員 この問題は、結局国家がその人たちを直接に使つたかどうかというところに、この差別待遇があるのではなかろうか、そういうふうに動員して行かれた人たちは、その工場の人の関係であるというところに困難があるのではなかろうかと思つております。
#86
○長谷川(保)委員 けれどもそれは国家総動員法で動員されたのであつて、何も工場主によつて動員されたわけじやない。直接国家が使つていようと、あるいはある工場に使われていようと、国家総動員法によつて動員されたのでありますから、私は当然国家が責任を負うべきだと思うのであります。いかがでありましよう。
#87
○田邊政府委員 当時国家といたしましては、総動員法によつて徴用せられた方々に対しては一定の扶助規則を設けまして、弔慰金等の支給をいたしたのでございます。従つて当時の社会通念におきましては、こういう方々については、些少ではございまするが、何らかの国の弔慰金が一応給せられたと考えております。また学徒につきましては、法律的なことになりまするが、これは徴用と違いまして――一般の法律による協力ではございまするが、一人々々に対する徴用命令とは違いまして、学校に一定人数の協力方をお願いして、その人数が出たということになります。しかし結果におきましては、これは徴用とあまりかわりはないと考えられます。そこでわれわれの考え方は、要するに当時の法律改正において、また社会通念において、当然国家においてなすべきであつたというものを、この際とまつておつたものを復活してやるのだ、こういう考え方に立つているわけでございます。もちろん考え方によりましては、お話の通り広く戦争犠牲者を取上げまして、これを援護するという考え方もあろうかと思います。ただこれは国が使用主として、公務員に対する国の責任という考え方から、この問題が取上げられておる関係上、その対象を勢い国と身分関係にあつた方々に一応限定するという方針で進んでおるわけであります。
#88
○長谷川(保)委員 私はきよう恩給法のことを聞いておるのではありません。この援護法を改正する機会でありますから、このときに今申しましたような諸君に手を伸ばすことが必要である。また援護法の援護の程度が低い。それではいかぬじやないか。恩給法の方では、国家が使つておつたんだから国家が責任を負う、けつこうであります。ところが同時にこの援助の手を延べるこの人々も、国民なんです。しかもみずからの意思によらず徴用されて、攻撃せられあるいは先ほど申しましたように死傷するということになつたのであります。今この二つの援護法の改正をするのでありますから、これをもつと高い程度にしなければいけないじやないか、これに不平等が行われたのでは、これは人道の見地からいたしましても、憲法の立場からいたしましても、いけないじやないかという点を私は伺つておるわけでありまして、ただいまの御答弁は非常に不満でありますけれども、一応私の質問をこれで終ります。
#89
○小島委員長 中川源一郎君。
#90
○中川(源)委員 田邊次長にお尋ねしたのでございますけれども、どうも私には満足ができませんので、政務次官にお尋ねしたいのでございます。未亡人が、非常に喜んでおる者もありますが、まちまちでございまして、中にはいろいろだまされて正式結婚をする場合がございます。子供を養えないものですから、子供を連れて結婚いたしましたところ、最初から話が違つておつたというので、ただちに結婚を解消いたしましたという者に対しまして、一日籍を入れますと弔慰金、年金はもらえないということになつておるのでございますが、子供には何の罪もない。親に手続をされておる通りのことで、何にも知らずに子供は籍を移されておる、そういう養子縁組の解消いたしました者に対して弔慰金、年金を支給されないということは、これはまことにかわいそうな事情がございます。この点はそういう形式的なものだけで、現に結婚解消して、そうしてまじめにやつておる者に対しましては、何とかこれを支給する方法がないものだろうかと思うのでございます。それと、中にはまた結婚をいたしまして、正式の結婚をして手続をした、ところが朝鮮人であるがゆえに籍が入らない、そうしてその朝鮮人との間に何人も子供ができておる、そうして毎日同居して夫婦生活をずつとしておる、ところが前の子供は老父母にまかせきりで、その老父母に対しては年金の五千円は渡りますけれども、子供に対して、あるいは結婚をすでにしており、次の子供がどんどんできておる者に対しましての弔慰金、年金を受取つて平気でおる、それに今後も恩給が入つて来る、その老父母は非常に苦しんで前の戦死いたしました者の子供を育てておるという事情があるわけでございます。こういうふうな矛盾した問題が幾多ございますので、そういう場合には、何とかして現場におります遺族会の会長があつせんをいたしまして、弔慰金、年金の支給を年寄りにもしてあげなければ済まぬじやないかというふうな調停でもするようにしたいと思うのでございますが、そういう権限が何らないのであります。厚生省の方では、やはり朝鮮人と結婚して次の子供もできておる未亡人に年金、弔慰金が支給されておるわけでございますが、こういう矛盾した。社会通念から見てあれはおかしいじやないかと言われるようなことのないようにするくふうについて、お考えを願えぬものか、こういうふうに思うのでございます。
#91
○中山政府委員 まことに法律というものは冷たいものでございまして、今お話の通りに、正式に結婚をして、子供を連れて行かれないので、解消した人にはもう渡らない、一度結婚した人には渡らないというものがあるかと思えば、また入籍していないために、その者には渡つておる。この間北海道から来たお父さんの例でも、まことに気の毒なのがありました。それはお父さんが、一人の息子を、自分の先妻が死んでからまま親に育てさせるのはかわいそうだというので、一人前に育てたが、その子が出征して戦死した。もう男一人でだんだん年をとつて行くのでやつて行けないからというので結婚をしたのであります。ところが法律は、結婚をした人には与えない、六十歳以上の人であつても、その人が結婚をするのであれば、生活能力があるという一つの考えから、きまつた法律でございますので、これには与えないということが決定になつております。それでその方がわざわざ北海道から来て、まことに不当ではないかとおつしやつた。私も非常にお気の毒に思つたのであります。しかしこの法律の矛盾というものは、法律を改正いたしませんことにはどうにもならない線ではなかろうかと私は思つております。今のところでは、こういうケースはどうにもならないのでありまして、いろいろとお気の毒なことを私も始終開きまして、何とかならないかしらんと思つておりますが、法律の改正せられない限りにおいては、何ともこの矛盾を是正することができないという残念な立場に立つております。
#92
○中川(源)委員 どうかひとつこの点について、実情に照して法律の改正がなされますように、政務次官におかれては格別の御心配にあずかりたいと思うのでございます。
 それから病気の種類とか、あるいは内地、外地ということについて、内地、外地を問わず、実情に即してこれを改正をしてもらわなければならぬ点があるのでございます。
#93
○小島委員長 厚生委員の方はまた後日機会がありますし、引揚委員会の方に質問される方が残つておりますから、そちらにお譲りしたらどうでしようか。
#94
○中川(源)委員 ひとつ法律の改正にお考えをいただきたい、こういうことを強く要望いたしまして私の質問は一応打切ることにいたします。
#95
○小島委員長 受田新吉君。
#96
○受田委員 弔慰金の規定につきまして、この法律には配偶者とか子とか兄弟とかいう関係の面以外には支給しないことになつておりますが、一人の尊い人命をささげたという立場から、その祭祀をつかさどるおじとかおばとか、あるいは非常に身近にお世話して来た者とか、そういう人にも、五万円の弔慰金が無理であるならば幾らでも差上げて、なくなられた霊をまつつてあげる、この精神はきわめて重大であると思うのであります。ところが法律に規定したもの以外にはこれを支給しないことになりますので、おじ、おばのごとく、子のように世話をしておつた人も、その霊をまつる費用がないという現実が起つて来るのであります。昨年このことについて私厚生大臣に質問したところ、当時の吉武厚生大臣は、そういう人にも出したいのであるが、予算の都合によつて支給されないのだ、弔慰金の精神は了とするが、実際はなかなかむずかしいのだという答弁があつたのです。この点、政府としては、一人の霊をまつる人に、せめて幾らでも弔慰金を出すような規定を設ける必要はないか。これは弔慰金の精神からいつて非常に重要な問題であると思うのでありますが、次長の御答弁をいただきたいと思います。
#97
○田邊政府委員 昨年援護法が当委員会において審議された際の政府の原案においては、祖父母というような線までで実は切つてあつたわけでありまして、名前も一時金と相なつておりましたのを、弔慰金というふうに、その範囲を兄弟姉妹にまで及ぼしたのであります。慎重に御審議になつた結果そういうふうに御修正になつたわけであります。その際阿波丸の死歿者に対する見舞金の支給の際も兄弟姉妹ということに限定されておるから、これと歩調をとつて、この辺が妥当ではないかということも伺つたのでありますが、弔意を表する場合に、だれに弔意を表するか、何も限定する必要はないという議論もお説の通りだと思います。おじ、おばその他事実上葬祭を行つておる方に弔慰金を差上げるという建前でありますれば、その通りだと思いますが、現在の法律では必ずしも事実葬祭を行つておる方に弔慰金が行くということになつておりませんので、たとえばおじ、おばがおりましても、兄弟姉妹がおる場合においては、そのおじ、おばでなしに兄弟姉妹の方に弔慰金を差上げることに相なつておるわけであります。単なる葬祭料とも違うものでありますのて、お説の点はごもつともだと思いますが、弔慰金の性格から見て、必ずしも他の者にまで全部及ぼさなければならぬ筋合いのものでもなかろう、一応こういうふうにも考えられるのでございます。葬祭を行うものにまで範囲を拡大してはどうかという御意見の点につきましては、今後ともよく研究いたしたいと思います。
#98
○受田委員 これは遺族年金をもらつてない人であるし、弔意を表わすという精神でそうした範囲を拡大する、その金額はここにあげてある順序の人々よりは低額であつてもよい、とにかく国家としてこの精神をくむべきであるという意味で、御研究を要望して次に移ります。
 未復員者給与法及び特別未帰還者給与法がなくなつて、新しい援護法が生れるわけでありますが、この法律案にひとつ私として疑義を抱いておる点を指摘して御回答を求めたいと思います。
 第一はこの法の第十一条において、未帰還者が帰還したときはこの留守家族手当の支給を打切ることになつておるのでありますが、本人が病気でありあるいは家族が非常に貧困で、留守家族として給与を受けていたものをただちに打切ると困るというような場合には、これを半年ぐらい延長して支給することのできるような規定を設ける必要はないか、これをお伺いしたいのであります。
#99
○田邊政府委員 ごもつともな御質問でございますが、この援護法の根本の建前は、ソ連、中共地域に抑留ないしは残留しておられる方々の特殊な状態を考慮いたしまして、生活保護法とは別個にかような援護法という応急の立法をしたのであります。この根本は、やはり帰つて来ない、未帰還の状態にあるという実情に立脚いたしてすべて法の建前が組み立てられておるのでございます。たとえば留守家族手当の支給というところをごらんいただきますれば、「未帰還者の留守家族には、留守家族手当を支給する。」となつておりまして、お帰りになりますれば未帰還者ではないわけでございますので、それは未帰還者留守家族手当はないわけでございます。もつとも、ただいまの点は、未帰還者が帰つた後においても留守家族手当に相当する額を継続支給してはどうかという御意見であろうと思いまするが、この点につきましては、むしろ帰つて来た人自身の援護の問題になるのではないか、帰つて来た人自身及びその人が扶養すべき家族の問題になると思うのでございます。この点につきましては、一般の生活保護法という法律がありまする今日、それとの関係をどういうふうに考えて行くかという新しい問題でもございまするし、かたがた、帰つて来た人自身及びその人が扶養すべき家族ということを考えての、御本人が引揚げて来た後の援護の問題ではなかろうかと考えるわけでございます。実情につきましては私も十分御同情申し上げるわけでありまするが、形式論を申し上げますると、お帰りになりました以上は、やはりそれは一般の生活保護の対象の問題として考慮すべき問題ではなかろうか。もししからずとすれば、帰つて来た人自身の援護の問題として、特殊性を考えて考慮すべき問題ではなかろうか。かように考えております。
#100
○受田委員 この帰つた人が病気のような場合には、これは療養給付の規定もあるのでありますので、そういうところで本人は救われる。しかしそのような事情が発生したのは未帰還という現実がそういう病気を起さしたのであつて、その留守家族援護の立場から言うならば、未帰還の事情が続いたために、本人が帰つてもすぐ家族の生計を営ませ得るような力がなかつたのだから、従つてその留守家族に対しては、その事情のある程度安定する半年ぐらいまでは、当然留守家族としての援護を継続すべきである。こう私は思うのでありまして、これは筋が通ると思うのであります。帰つたらもう留守家族でなくなるからという意味でなくして、帰つた人でも療養給付の規定がちやんと残つておるのは、まだ帰らざる前に、かの地においてそういう公務に従事して病気が起つたからであつて、当然留守家族に対しても、その本人が帰つて家族を養うことができないような状態でもつて帰されるような人間にしてしまつたのだから、その援護は、長く継続するのは困難でありましようが、特殊な事情がある限り、半年間ぐらいはこれを継続支給することができるようにすべきものであると思います。これは特殊な場合に限るとしても、社会通念からいつても、当然これは、留守家族の援護の規定を半年ぐらいは継続支給すべきであるということが確認された場合に限り、支給するということぐらい規定すべきじやないかと思いますが、これをお尋ねしておきたい。
#101
○田邊政府委員 この問題を取上げまするというと、病気中の帰還者の家族の援護の問題も当然問題になつて参ります。その場合、半年に限るということはなかなか困難ではないか。ことに現在未帰還者として療養中の者がおよそ五千人ほどございますが、こういう方々の問題もこの中に問題にすべきではないかと思うのであります。またその家族の安定するまでというお話でありますが、未帰還者が死亡した場合におきましてもやはり同様の問題が生ずるのではないかと考えられるのであります。従いましてこれは、未帰還者の留守家族の手当ではないが、帰つて来た場合の本人及びその家族の生活が気の毒ではないか、こういうような問題として考えるべきではないかと思うのであります。この点につきましては、先ほど申し上げましたように、単に帰つて来られた方々の問題だけでなしに、その他のたとえば病気中の未復員者の問題も同時にあわせ考慮すべき問題であり、また関連するところが幾らもあろうと思いますので、それらともにらみ合せまして慎重に考慮を要する問題ではないかと思います。お話の点は私もお気持はよくわかりますので、他の問題とも関連させましてよく考慮したいと思つております。
#102
○受田委員 私の気持がよくわかるというお言葉でありますが、今のお話の中にあつた、死亡して帰つたという場合にはどうなるかというのと関連があるということでありましたが、死亡した場合には、また新しい立場から、家族が新しいスタートに立つ道も開けることだし、公務によつて死亡したものとしての公務扶助料等の支給の道もあるが、非常に重い病気で帰つた場合、その人の力によつてささえられるべき家計がくずれて行くというようなことを私は言うているのであります。これはひとつ研究していただくことにいたします。
 もう一つ、第十三条の規定の中に、この留守家族手当の支給をすることをやめる場合のことが書いてあるのです。「この法律の施行後三年を経過した日以後においては、過去七年以内に生存していたと認めるに足りる資料がない未帰還者の留守家族には、留守家族手当を支給しない。」となつておるのでありますが、これはどういうことでこういうふうになるのか、これはたいへん大事な問題であるので当局のお考えをお伺いしたいと思います。
#103
○田邊政府委員 第十三条の規定の趣旨につきましては、この法律案の提案の際に、厚生大臣から提案理由の中にお述べになつているところでございます。今回の改正によりまして、未帰還者の範囲は相当広範囲に広げられたわけでございまして、終戦当時、もつと厳密に申しますれば、敗戦当時において生存の資料があつたという方でありますならば、その後死亡したと認められない限り、すべてこの留守家族等援護法における未帰還者として取扱われるわけでございます。従いまして、この未帰還者の範囲には、終戦直後当時の混乱によつて行方不明となり、あるいは死亡したのではないかと考えられるような方々も相当数含まれておるわけでございます。これは今日その死亡の資料が確認せられない結果、未帰還者としての取扱いをいたしておるのでございますが、かような方々全部に対しまして永久にいつまでも未帰還者として留守家族手当を支給するという体制が、はたして適当であるかどうかという問題につきましては相当疑問がございまするので、適当な機会に別な形でそれは処理すべきではないか、こういう考え方をもちまして、三年と七年というふうに期間を限定したわけでございます。従いまして、この法律施行後三年間は、もうお帰りになつたという場合、あるいは死亡したということが確認される場合を除きましては、広くすべての方々に対しましてこの未帰還者留守家族手当を支給することになるわけであります。そのかわり、一方、調査究明の点につきましては、この法律の中に新たに規定されておりますように、国として、その状況不明の方々の調査に万全を期しまして、全力を尽して状況を明らかにするようにいたしたいと考えておるわけでございます。そういたしましてなお、状況不明の期間が七年も続く場合におきましては、失綜宣告の例をもにらみ合せまして、この留守家族手当を一応打切るという建前にいたしたわけであります。もちろんこの制度は今後の調査究明の成果とも十分にらみ合せて考慮しなければならぬ問題だとは思いますが、われわれの方の目下の考えでは、今後三年間の間調査究明に全力を注ぎますならば、おそらくは未帰還者と考えられておる方々の生存を明らかにすることができるのではないかと考えておるわけであります。現に今度お帰りになりました方々の中で、相当数の今日まで状況不明ないしは生死不明となつておる方々、あるいは死亡したと認められる方々がお帰りになつております。こういう方々の事実が、今日までなぜわれわれにわからなかつたかという点については、われわれ詳しく調べてみたいと思いますが、中には全然内地への通知の道も知らなかつたという方もごく少数あつたようでありますが、大部分伺いますと、内地に家族を持つておられない方が多い。ことに父母、妻子をお持ちになつていない方が多いように伺つておるのであります。今度三万人の方がお帰りになりますれば、相当の情報ないし資料をお持ち帰りになることでございますので、これらの方々につきまして十分調査も進めたいと思つております。なお現地との連絡も、帰つた方々によつて相当可能ではないかと考えられるわけでございます。従つて三年間の間われわれとしましては本気にこの調査究明を促進いたしまして、一方留守家族の方々に対しまして未帰還者の情報をお知らせするように、万全の措置を講じて行きたい、かような考えをもちまして、十三項の規定を設けた次第であります。
#104
○受田委員 この七年ということは、結局民法で言う失踪の宣告をする期間にも関係して来ると思うのでありますが、過去七年たつて生存が確認されないということなんですが、ソ連などにおける戦犯というようなものは、ソ連が戦犯者の氏名を発表しないので、戦犯でとられているというのがはつきりしておりながら、氏名が発表されないので、家族が非常に憂慮しておるのですから、事実はこのソ連とか中共とか、わが国と正常外交がとられていない国々が、正常外交を回復して後に状況不明となつた場合に、初めてこの留守家族手当を出さぬというような規定にしておく必要はないか、この点今申し上げたような事例があるのでありますので、そういう規定を特に掲げる必要はないか、再考を促したいと思います。
#105
○田邊政府委員 実は留守家族の方々の中に、死亡したと認められる資料がないために、従つて死亡公報が出ないために、身分が確定しない結果、留守家族になつておる方も相当数おありだと思います。かようなことを考えますれば、実はこういう規定をする前に、死亡なり身分的な処理を促進することの方が先であろうと思います。この点につきましては、今日のごときまだそこまで調査の手が伸びておりませんし、また政府の方で確信を持つてそういう問題に対して手を下すだけの態勢になつておらないのであります。われわれといたしましては、できますれば今後三年間に十分な調査究明を遂げまして、生死に関する点は、実は何らかの措置をすることができればというふうに考えておるわけでございます。これば非常に重要な問題でありますので、簡単にそういつたことに手をつける道はない、かように考えております。ただわれわれ考えますところは、相当通信ということが許されている今日でございますので、また帰還者も相当ありまするので、三年間の間にいろいろの方法をもつてこの問題を促進いたしますならば、この状況不明の方々の消息を明らかにすることができるであろうと、われわれは考えおるわけであります。もちろんお話の通りの事態も十分想像できることでございます。この場合におきましては、三年たつた後におきまして、調査究明等の結果ともにらみ合せまして、十分考慮しなければならぬ問題であろうと考えております。
#106
○受田委員 この法の精神から行くと、三年たつた後に生存が確認されないということになると、その人は未帰還者としての権利を喪失するということになると思います。手当を支給しないということは、結局未帰還者であることを認めないのでありますから、権利を喪失する、そうするとその家族は未帰還者の家族でなくなるという法的根拠が発生すると思いますが、その場合に民法上の失踪とか、あるいは何かそれに類するような規定でも政府がつくつて、その状況不明の人の家族の新しい婚姻等に支障がないようにさせるというような含みがあるかどうか、この点もお伺いしておきたいと思います。
#107
○田邊政府委員 この問題はたいへん用要な問題でありますので、今後三年の間に、いろいろそういつた問題に関連する問題を十分検討してみたい。また政府部内だけでなしに、国会の皆様方のいわゆる良知を教えていただきまして、最も妥当な制度をつくるように努めたい、かような気持でおる次第であります。
#108
○受田委員 この場合三年生で手当を支給しなくなつた場合に、その家族はどうして援護するのでありますか。
#109
○田邊政府委員 われわれの考えでは、三年間の間に十分調査究明を遂げまして、その間に生存の資料が上らない、またその生存の資料が上らない期間が少くとも過去において七年間継続しておつたという方々は、率直に申し上げますと、死亡の疑いの相当強い方方でございます。こういつた方々をいつまでもそのままにしておいてよろしいかという問題になるわけでございます。未帰還者の留守家族は、永久に未帰還者として留守家族手当を支給することも当を失しておりますので、その間何らかの調整をなすべきであるという考え方に出発しているのであります。そこでわれわれは三年を経過した後におきましては、先ほどから申し上げますように、調査究明の結果ともにらみ合せまして、慎重な考慮を加えたい、かように考えておるのであります。
#110
○受田委員 これは留守家族にとつては非常に不安な規定であり、それから先はどうなるかということになつて憂慮を与える問題だと思うのであります。また今一部には、あるいは家族の身分が妻であるような場合に、この規定によつて失踪の宣告等の規定と何か関連するような規定でも設けて、新しい家族生活に入るような場合も考えられる人もあろうと思うが、それはだからそういうことを考える人によつて違うのであつて、国の法律としては何かそこへ十分に念を入れるという規定にしておかないと、それは非常に不親切なことになるので、この点手当を支給しないとすつぼりと言い切つて、それから先は野放しにするという印象を与えますので、この点は何らかひとつそれから先の保護についての用意が必要じやないかと思います。これは意見でありますから、その点の質問は一応打切ります。
 もう一つ、未復員公務員の場合でありますが、恩給法の附則にも、未復員公務員に対して八月から十七年に達した者には普通恩給を支給するという規定があります。そういうことになつておりまするが、この援護法の中にもこれと関連した規定が掲げてありますので、こういう場合はどうなりますか。未復員公務員が普通恩給を受けるようになつた場合、四十五歳未満で若年停止の規定に該当するような場合、そういう場合の給与がどうなるか。もう一つはこのいずれを選択するかという問題にも関係するのですが、現在未復員公務員はこの法律にある公務員給与法の附則第三項によりまして、未復員職員の給与の取扱いについては、この法律の規定にかかわらずなお従前の例によるということになつて、従来の給与は三七ベース当時に格づけされておる。非常に安い給与で公務員の給与が押えられているのです。この押えられている公務員の給与――おそらく今三万円から四万円の給料をもらう課長、局長あたりになるべき未復員公務員の政府職員がある場合には、おそらく五、六千円柱度の給与しかもらつておらない。それに普通恩給を給するようになつたら二千五、六百円、それが若年停止になつたら七、八百円ということになるのです。これはせつかく恩給法にこういうことが掲げてあるが、その給与は、一般職の職員の給与に関する法律の附則第三項によるようなことにしておつたら、普通恩給は非常に低い線で決定します。ところが普通恩給はどの線に置くようにしているのか。現にその職にある者とするならば、何年勤務であつて、現行の給与の同じ範囲の最低の線までは引上げた恩給額をつけるようにするというような規定が設けてあるのかどうか。これは非常に重大な問題であつて、公務員に差別待遇を来すおそれがあるので、政府の意図を伺つておきたいと思います。
#111
○田邊政府委員 御質問の趣旨がよくわからなかつたのでありますが、実は今度の恩給法の中での未帰還公務員に対する取扱いというのは、われわれの方からいろいろ注文を出しまして恩給法の中に規定を設けていただいたのであります。と申しますのは、未帰還者留守家族等援護法の制定によつて、留守家族には手当が行くわけでありますが、未帰還者の中にはすでに恩給年限に到達した方が大分おられるわけであります。しかもその恩給たるや、今度復活する恩給法によつて計算いたしましても、相当高額の恩給になる方がおられるわけであります。こういう方々に対しましていつまでもその恩給をとめておくことはどうであろうか。御承知の通り恩給は原則として本人の請求によつて御本人に渡すというのが建前であります。しかしながらソ連に抑留されているというような特殊事態のために、当然いただける恩給がその家族にまで及ばないということはまことにお気の毒でございますので、そういう場合におきましては恩給法上一応退職したものと見なしまして、しかも家族がかわつてそれを請求することができるように、こういう制度をつくつてもらつたわけであります。かようにいたしますれば、留守家族の手当というような援護を受けることなしに、家族の方々がりつぱに普通恩給によつて生計を立てることができるわけでありますので、さような制度を設けていただいたわけであります。しかも恩給年限に到達しない方でありますならば、到達するまでの間はこの援護法の対象にもちろんなりまするが、到達した場合においては当然この普通恩給がつくようにいたそう。もちろんこの場合に恩給法による普通恩給と援護法による留守家族手当との併給は避けるようにいたしておりますが、結論から申しますとやはり高い方を支給するという建前にいたしております。しかしながら一旦退職された未帰還の公務員であつても、その後において自己の責めに帰すべからざる事由によつて傷痍規定にひつかかつた場合におきましては、これは恩給法上の在職期間と同じように考えて処置をしていただきたい、そのような無理を申しまして、全部それを恩給法では快く入れていただいたわけであります。ただその場合、普通恩給を給する場合のベースがどのくらいであるかという問題は、軍人につきましては、この際復活する軍人恩給法の仮定俸給額に基礎を置いて計算されるわけであります。未帰還公務員の場合は今私詳細に記憶しておりませんけれども、御承知の通りに未帰還公務員の俸給というものは、内地に扶養親族を持つておる場合と持つていない場合とで違つております。扶養親族を持つておる場合にはベース・アツプしておりますし、扶養親族のない人につきましては非常に低いところにくぎづけになつております。この点は今度未帰還公務員に対して恩給年限に到達した人に普通恩給を支給するということになりますと、一定の俸給というものを当然想定しなければならぬことになります。その金額が今幾らになつておるか、後ほど恩給局と連絡をとりましてお答えすることにいたしたいと思いますが、高い低いという問題は調整をとつておるはずでございます。
#112
○受田委員 これは公務員のベース・アツプが押えられて格づけされておるのでありますから、これをどういうふうにするか、新しい規定を用意してからこの未復員公務員を恩給法の中に入れなければならないのであつて、そういうものを今から研究して入れるのではいかぬのです。この間恩給局長に質問しても、その額は今きまつておらぬという。額がきまつておらぬというようなものを恩給法にきめておるということは、これは非常に不用意だと思います。だから格づけされておる低い線でとめられておる未復員公務員の、恩給年限に達した場合の算定基礎額は幾らとするのだということをはつきりうたつて、未復員でない政府職員としての立場で計算するというような基準でもこれに設けておかぬと、一般職の職員の給与に関する法律附則第三項の「従前の例による。」ということでは、この法律案の条文は非常に不用意だと思うのです。この点新しいベースをどういうふうにきめるのか、たとえば一例をあげますれば、十七年に達した公務員で、大学を出て本省の課長、局長くらいに当る三、四万程度まで行くべき人が、現にはつきり申し上げますが、七、八千円どまりです。こういう低い給与です。それから私何回かベース・アツプの都度これを叫んで来ておりますが、政府は全然手をつけないで今日に至つておる。この人たちに普通恩給を支給するというときにどこに給与の根本を置くのか、恩給金額の算定基礎をどこに置くのか、これは実に漠然としておるのであつて、恩給局長もわからぬという。これは未復員公務員、未帰還者の担当省である厚生省としても当然考えて行かなくてはならぬことであつて、この点この法律案が通過するまでに未復員公務員の数がどれだけあるか、そして今ベース・アツプがどのようになつておるか、三七ベースのときに改訂したばかりでその後改訂していないが、何号俸の者が何人おる、外地関係の未帰還公務員、国内の政府職員である未帰還公務員というふうに類別にしてひとつあげていただき、今度新しい給与ではこれをどこへ持つて行こうとするか、こういうところも全部当局の意図をはつきりわれわれに示していただいて、この法案の最後決定に行くべきだと思いますので、あすぐらいまでにわれわれ委員に資料を御提出あらんことをお願いいたしたい。そして政府が意図する恩給金額の算定基礎は幾らにするか、またこれに伴う予算は幾らいるかということをはつきり示していただきたい。そうしないと予算の上にもこれは影響するのです。ずつと格づけされて低い線で行けば今安くて済んでおるのだが、これを今度新しい恩給金額で支給することになると五倍にも六倍にもなつて、そこに少くとも一、二億ぐらいの予算がいることになります。その恩給を支給するための予算をどういうふうに用意するか、この点についてひとつ当局の資料を御提出願いたいと思います。
 それからもう一つ、これは戦傷病者戦没者遺族等援護法の方に関係するのですが、遺族に支給するところの遺族年金、これはもし本人が生存して帰つて来た場合には、その月までに払つた分はこれを認める、返さなくてもいいという規定がありますね。遺族年金の方ではそうなつておりますが、弔慰金の方ではこの点どういうことになるか。五万円の弔慰金を払つた、払つた後に本人が生きて帰つて来た、ところがその弔慰金をもらつた人はそれを一ぺんに政府に買い上げてもらつてもう使つてしまつておる、返すことはできぬというようなときにはどうなるかということをお伺いしたいと思います。
#113
○田邊政府委員 お話の点は今度の改正案の三十八条の二の中に規定を設けております。
#114
○受田委員 いや弔慰金ですよ。
#115
○田邊政府委員 今まで遺族年金に関する規定はありましたけれども、今度新たに弔慰金の場合につきましてもそれに準ずる取扱いをしたいということで改正案が出ておる次第でございます。
#116
○受田委員 その場合に弔慰金がもう一時買上げで政府に買い上げてもらつて金がなくなつたという場合です。返す金がないのだという場合です。
#117
○田邊政府委員 そういう場合には、すでに支払つた元利金につきましてはお返しいただかなくてもよろしいということになつておりますが、他の部分については一応お返しいただくことになつております。但しこれは実際問題として残るわけでございまして、すでに支払つた元利金につきましては返さなくてもいいという規定に相なつております。
#118
○受田委員 そうすると、一時買上げしてもらつたものはもう返さなくてもいいということになるのですか。
#119
○田邊政府委員 買上げをした場合につきましても同様の考えを持つております。
#120
○受田委員 そうすると買上げしてもらつた場合の人々は非常に有利であり、そうでない人は不利であるということになるのですね。これは特別の場合だけれども……。
#121
○田邊政府委員 さような場合に、そういう不公平が出たらどうするかというお話でございますが、これはやむを得ないと思つております。すでに買い上げた分につきましては、返還を命じないということにいたしたいと思つております。
#122
○受田委員 以前未復員の人々が死亡しておつたために、未復員手当をもらつた人が手当の返還を命ぜられたことがあつた。これは本人たちは非常に不幸な運命にあつておつたのですが、あの一ぺん支給しておる金の返還を迫られた問題の処理は、その後政府として調査したところによれば、各府県とも解決しておりましようかどうでしよう。
#123
○田邊政府委員 これは返還させないことができるという規定になつておりまして、家庭の実情に応じて措置いたしておるわけであります。ただいまのお話のように戦死したというふうな認定があつた方が生きてお帰りになつた場合に、これは弔着金の裁定は取消すというのが、常識的に見て当然であろうと思います。その際にすでに支給してあるものにつきましては、これまで取返すということは個々の家庭にとつて非常にお気の毒でございますので、すでに支給した部分についてまで遡及して取返すということは、実情に即しませんので、その点は免除するということにいたしておるわけでございます。まだ支給していない部分につきましては、これは支給をさしとめるのが当然の処置ではないかと思つております。
#124
○受田委員 ずつと以前に、一度支給したものをまた返せというので、役場などからとりに来て、本人はもう使つしてまつてたいへん困つた時代があつた。そういう時代は過去のことであるとはいつても、今日もその請求権が残されたままになつていないのか。ずつと過去にさかのぼつて、そういうものをこの際全部処置するように通牒を出すようにされるのか。そのときに黙つて返した人は損をし、きようまでがんばつておつた者は得するということに、またなるのですが、そういう事例か幾つもあるのです。未復員者が死亡しておつたために、手当を前へさかのぼつて返せと請求されたような場合、そういう過去の事例を調査せられて、そういうものは全部今度返さないでいいように通牒を出すようにされるのかどうか。この法律施行後において事情の発生したものに対してか、それ以前のものも含むのかどうか、これをひとつ……。
#125
○田邊政府委員 これは従来の取扱いがどういうふうになつておりますか、あまり無理なことはしておらぬと思います。個々の家庭の実情に即応しまして返していただけるものは返していただくという取扱いをしておると思いますが、御心配になるような取扱いはいたしておらないと思います。
#126
○臼井委員 先ほど受田委員から御質問がありましたことについて一点お伺いしたいのですが、未帰還者が帰つて来ると手当がなくなる、これは当然のようでありますが、しかし現在の帰還着の状態を見ますと、第四次の帰還者が十三項目の要求を出しまして、その第一項目に、現在の帰還手当の一万円を三万円に増額の要求があるのでございます。その理由としては、やはり受田委員の御質問のように、帰つて来てもすぐ仕事がない。また精神的にも肉体的にも非常に疲れている。これを回復するのには少くとも二、三箇月、また内地の状況に精神的になじむ上においても少くとも半年くらいはまごまごしていればたつてしまう。あいさつにもまわらなければならぬ。それがために月額五千円くらいで半年で三万円くらいになる。そういう要求の理由なのでありまして、もとよりこれに対してそういう意味を含めて一万円というものを現在支給しておるのでありますが、しかし御説明のように、就職もできない、生活に困るという者は生活保護法があるじやないか、こういう点になるのでありますが、こういう点が急速には了解できないのと、また手続等で、それが実際取扱い上簡単に行かないようなことがあるらしいのであります。それがこういう要求の出ておる一つの理由であります。これに対して、これが正当であるとかどうとかいうことは、にわかに断定はできないにしても、確かに理由というものは一応あるようにも感ぜられるのです。これに対して第四次の人たちが――その前にもしておつたようでありますが、援護庁の方と交渉がありまして、どういうようなことになつておりますか、その点を一点お伺いいたします。
#127
○田邊政府委員 帰還手当の金額が少いから増額してほしいという御希望があつたことは、これは事実でございまして、われわれも直接舞鶴において伺つたわけであります。ただ帰還手当が多いか少いかという問題は、これは一律に論ずるわけに行きませんので、人によつて違うと思います。たとえば百数十万の金を持ち帰つたような人と、そうでない人と違いますし、またたとえば舞鶴にすでに就職される会社の方がお迎えに来ているという人と身寄りのない人とは非常に違うと思います。従つて一律に多いとか少いとかいうことを言うわけに行かないと思います。またこの制度をつくりました根本は、やはりそういつたお帰りになつてからのいろいろの生活ということもありますが、やはりその前に長い間外地に抑留されて、あるいは自分の意思によらずして帰れなかつたという方々に対する国の一つの気持を表わすその金でございます。金額は確かに多いに越したことはないのでありまして、三万円でも五万円でも、国家の財政が許せば、われわれはその金を差上げて、立上りの資金にしていただきたい気持はございますが、いろいろ他との均衡の問題、ないしは財政上の問題等がございまして、結局一万円、五千円におちついたわけでございます。これは厚生省の他のこういつた制度と比べてみます場合に、なかなかそのりくつがむずかしいのでございます。帰つたあと生活保護法があるではないか、生活保護法を適用すれば、それでいいではないか、生活保護法を適用することにすれば生活の不安がないではないか、これが日本に帰つた以上一般国民の建前ではないか、こういう議論も有力に立つわけであります。こういう説に対しまして、われわれは引揚者及び引揚援護の特殊性ということを力説いたしまして、過去における引揚者の方々に対する国の処遇の一環といたしまして、金額はわずかであるけれども、われわれの気持を表わす上において、帰還手当というものを行政上の制度としてつくつたわけでございます。従つてこれでいつまでも生活ができるというわけでないことはもちろんでございます。要は早く就職していただく。早く住宅なり生活の安定をしていただく。そのためには結局就職でございます。就職を早くしてあげるということが根本でございますので、政府では労働省とも緊密な連絡をとつて努力をいたしております。一般の場合におきましては、就職の率は二〇%以内でございますが、引揚者の場合につきましては、すでに五〇%近くに就職の率が向上しております。今後も一〇〇%就職を目標として努力しなければならぬと考えております。お話の通り、未帰還という状態の結果いろいろな問題が生じたということは、確かにその通りだと思いますが、しかし一方から申しますと、法律の理念と、それから内地における一般の生活援護の態勢というものとにらみ合せましたときに、慎重に考慮しなければならぬので、にわかにこれを継続支給ということになるかどうか、もう少し考える必要があるのではないかと考えるのであります。
#128
○臼井委員 大体われわれとしては、そういう理由をやはり説明するのでありますが、未帰還者にするというと、帰国者としては、今まで国家として放置せられていたというふうに感じている面もあるし、また一応中共なら中共におつては、その人たちに言わせるというと、相当生活は安定していたということを言つております。せつかく母国に帰つて来てやれうれしやと思つたとたんに食えなくなるということになると、非常にお気の毒であるし、またこれが非常に思想上に影響するところが大きいのであります。従つてできるだけすみやかに、これは引揚援護庁の方のやり方等につきましてもわれわれ意見があるので、あらためて申し上げたいと思いまするけれども、何とか生活ができる、こういう生活の援護法があるんだ、保護法があるんだということを徹底させるとともに、各省において特別にこれを進んででも扱うようにしていただかないと、どうも民生委員の方を通じて生活保護を受けるということを非常に卑屈に感じて、何か一部には侮蔑的なふうに見られやしないかという誤解もあるように聞いておりますので、そういうふうなことがないということを了解させて、特に帰還者には進んで便宜をはかるというように――これはもとより生活能力ある家族があるものとか、いろいろ事情は違いますので、できない者にはひとつやるようにして、始終ああいう騒ぎを繰返さないような方法を講ずる必要があろうと思います。よく御研究いただきたいと思います。
#129
○小島委員長 これをもつて厚生委員会海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会連合審査会を終了し、本日はこれをもつて散会いたします。
    午後一時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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