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1947/08/19 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第26号
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1947/08/19 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第26号

#1
第001回国会 本会議 第26号
昭和二十二年八月十九日(火曜日)
    午後二時五十二分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十五号
  昭和二十二年八月十九日(火曜日)
    午後一時開議
 第一 食糧危機突破に関する決議案(淺沼稻次郎君外五十五名提出)
    (委員会審査省略要求事件)
 第二 船員保險法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第三 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(松岡駒吉君) 連合國対日理事会議長アチソン大使、ラッセル大佐、ラー大佐、ボヤー大尉等の一行が、去る十七日の夜、ハワイ近海において飛行機事故によつて遭難せられたる報に接し、まことに痛惜哀悼の至りにたえません。つきましては本院は、弔意を表するため、次の弔詞を贈呈いたしたいと存じます。ここにその案文を朗読いたします。
 連合國対日理事会議長ジョージ・アチソン大使は、今般帰國の途次飛行機の事故により逝去せられたとのことであります。
 大使は、民主主義の偉大な代表者として、高邁な理想の現実に努力せられ、世界平和史に燦なる功績を遺されました。
 然るに今や突如として大使及びその一行の訃報に接したことは、我國民の挙げて痛惜哀悼に堪えない所であります。
 衆議院は、茲に米國及び大使その他遭難者の遺族に対し深厚な弔意を表します。
この案文に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて弔詞は決定いたしました。弔詞の取扱い方は議長に御一任を願います。
     ――――◇―――――
 第一 食糧危機突破に関する決議案(淺沼稻次郎君外五十五名提出)(委員会審査省略請求事件)
#5
○議長(松岡駒吉君) 日程第一は、提出者により委員会の審査省略の申出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。
 日程第一、食糧危機突破に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。山花秀雄君
    〔山花秀雄君登壇〕
#7
○山花秀雄君 食糧危機突破に関する決議案の朗読をいたしまして、以下若干趣旨の弁明をいたす次第であります。
 衆議院は、政府が左の諸点を特に留意し、食糧危機突破のための、強力なる対策を速かに断行することを、政府に対し強く要請する。
    記
 一、政府は当面する麦、馬鈴薯の買上げを初め、國内食糧の綜合的活用につき積極果断なる措置を採り、食糧の供給確保に万全を期すること
 一、政府は輸入食糧の輸送、加工、利用の各方面について更に一段と改善を加え、輸入食糧の効率的使用に万遺憾なきを期し、以て連合國の好意に報ゆること
 一、政府は食糧配給操作の改善につとめ、遅配欠配の速かなる解消を本則となし、いやしくも遅配に依る國民の負担については絶対にその公平を期すること
 以上が本決議案の内容であります。私は本決議案の提案者の一人といたしまして、ここにその趣旨を明らかにし、諸君の御賛成を得たいと存ずるものでございます。
 当面するわが國経済危機の実体は、たれがどのように説明いたしてましても、食糧の絶対量の不足、鉱工業の過小生産がその最大の原因であります。食糧不足は、まれに見る大豊作といわれておる本米穀年度においても、現行配給量を確保するためには、なお約一千三百万石の不足を叫ばれておるのであります。この絶対的不足が、國民の生計費中に占める食物費の割合を異常に増加せしめ、國民の多数は現在のように遅配・欠配が常態となり、完全配給がいつの日に來るやのありさまでは、たちまち家計が破綻するという不安に常時さらされておるのであります。現に行き詰まつておる國民も相当あることは、諸君も御承知の通りであります。
 かかる不安状態が除かれない限り、いかに賃金と物價の惡循環的騰貴を断ち切ろうといたしましても、絶対に不可能であります。現状のままでは、いきおい賃金及び給料の引上運動の持続となり、これはひいてはわが國経済復興の基盤を根底よりゆすぶり、考うるだに恐るべき結果を想定せざるを得ぬ状況であります。しかも端境期に突入いたしました現在、何よりも現実の世相が最も雄弁に物語つており、もはや一刻も猶予ならぬ段階に達しておるのであります。
 現在の食糧危機は、敗戰による領土の喪失と、海外引揚による人口の急激なる増加に加えて戰時中の掠奪農業による生産力の破壊とが、絶対量不足の動かすべからざる原因となつておるのでございますが、しかし、これを緩和すべくとられた終戰以來の政治の貧困もその原因であることは、疑う余地のないところでございます。(拍手)経済的裏づけを持たない一方的供出を強要したり、食糧の増産意欲を枯渇するような結果を招いたりしたことは、われわれのなすべき最善の努力が足りなかつたものとして、これは政府もわれわれも心すべきことであります。
 われわれは、政府が從來とり來つた食糧対策を冷靜にしさいに批判檢討し、將來に対する的確なる判断と見透しとを得なければなりませんが、現在当面するこの食糧危機は、その余裕なきほどにまで逼迫しているのでありまして、政府が当初計画いたしましたる輸入食糧の二百万トンの放出、二十一年度産米の一一〇%の供出、新麦、新芋の平年作の予想という三大基本数量は、いずれも重大なる齟齬を來し、端境期前すでに百数十万石、全國平均十二日の遅配を生じ、さらに七月より十月までの端境期には、輸入食糧の順調なる放出と、二十一年度産麦・馬鈴薯の一〇〇%の供出完納を前提といたしましても、なお二百数十万石、全國平均十六日の遅配がこれに加わるという悲惨な状態を呈するに至りました。
 ここにおいて、とりあえず應急的な緊急対策を断行することは、われわれに課せられた絶対的な要請なのであります。現政府も、組閣以來経済緊急対策の一環といたしまして、食糧緊急対策を数次にわたり声明し、十月までに二十日間の計画遅配により、不足分のうち百五十万石を補い、残りの二百余万石は、縁故米、救援米及び超非常時緊急対策等により、國内食糧の総ざらいを断行せんとしておりますが、現在のところ、その効果はまことに遺憾ながら徴々たるものであります。そうして十月までの食糧需給の見透しは、きわめて憂慮すべき状態でありますのが、今日の実情であります。
 しかして、端境期のただ中に当面せる現在の危機突破には、何よりも國内食糧を一物も余さざるよう総ざらいを断行しなければなりませんが、政府がさきに公表した全國平均二十日の計画遅配を実行しましても、なおかつ不足する二百余万石は、是が非でも確保しなければなりません。今日すでに米作地帶の供出力が限界点に達しており、全國一率に一一〇%完遂を望むことはおそらく不可能であり、しかも目標完遂が不可避とされております以上、割当量のいかんにかかわらず、供出余力のあるところあげて供出を促すべく、ここに合理的な総合対策の急速なる実施が、否應なしになされなくてはならないのであります。
 まことに当面の食糧危機を救い得るか否かは、農民の自覚による供出いかんにかかつているのであります。われわれは、その一層の努力を心から期待するものでありますが、それには、これに対処する経済的政治的な裏づけがなされなくてはならないのであります。たとえば、農業生産費を補償し、農業の拡大再生産を可能ならしめる限度における農産物價格の設定であるとか、再生産用資材の配給とか、あるいはまた供出制度の民主的再檢討、供出報奬物資の確保とか、要するに合理的な経済的政治的措置を余すところなく講じ、食糧品が自動的に正常配給ルートに乘つてくるようにし、いやしくも現在見られるごとき、物交によらなければ入手できないというような状態を、速やかに解消せしめることが絶對に必要であります。このように盡すべき一切の手段を講じた上で、わが國の食糧危機の実態とか、消費者の実情なりを農村に向つて公表し、農民の救國的精神に訴え、物心両面により國内食糧の総合的供給がなされるようにしなければならないと存ずる次第であります。
 かくして、一粒でも多くの食糧を供出することに全力を傾注して、初めてわれわれは連合國の好意ある輸入食糧の放出を懇請することができるのであります。これはさきに連合軍当局において発せられました、輸入食糧の放出への期待は、まず國内生産物の最大限の利産を前提とするとの言明をまつまでもございません。まことに当然なことであります。
 しかして、絶対量の不足のわが國といたしましては、ぜひとも輸入食糧に頼らなければなりませんが、世界の食糧事情は必ずしも良好とは言い得ないのであります。よつて、われわれの期待する分量の輸入はなかなかむずかしのであります。いわんや輸入食糧の放出は、大都市の餓死・疫病の防止という國民の最低水準維持のために行わるべきであるという建前からいたしましても、その効率的消費に万遺憾なきを期さなければなりませんが、現今見られるがごとく、せつかく輸入食糧の放出が許可されましても、港湾荷役などの輸送力と製粉加工能力の弱体不備によつて、とかくその現物化が遅れ、結局遅配を増大せしめる点などに鑑みまして、これらの速やかなる改善をはかり、民心のいたずらなる不安を安定せしめることが、連合國の好意に報いる唯一の途と存ずる次第でございます。これらのことについては、設備の足らぬところは非常手段をもつて極力充実をはかり、社会不安の根源たる遅配・欠配を緩和することに全力を集中すべきであります。
 次に政府は、國民の異常なる努力によつて供給された食糧につき、その配給操作の改善に努め、あくまでも遅配・欠配の解消を本則とすることはもちろんでありますが、いやしくも遅配による國民の負担については、地域的に甲乙のないように、絶対にその公平を期さなくてはなりません。全國民あげて耐乏生活に心から協力を得るためにも、わが國の各人が乏しきを平等にわかつという精神的連帶観の裏づけとなり得るような、公正な、信頼され得る政治を行わなくてはなりません。
 片山首相は、常に國民に大なる耐乏生活ないし犠牲生活を説かれるのであります。私どもも、それなくてはわが國再建もあり得ずと考えておるものでございますが、耐乏も犠牲も一定の限度があることを知らなくてはなりません。國民生活が限度以上に追いこまれるようであつたならば、再建が破壊になり、興國が亡國になることは、世界各國の実際が雄弁にこれを教えておるものであります。結局これらのことを十分政府は心しなくてはなりません。
 政府は過般経済実相報告書なるものを発表いたしました。報告によりますと、一千万人に近い失業者が予想されております。國民大衆の前途は、ますます窮乏の一路をたどるばかりであります。ここに、この端境期における食糧危機突破が現下の最も緊要なる問題として取上げられなければならない理由があります。遅配・欠配を速やかに緩和し、正規配給量を確保することは、國民の家計を安定せしめ、やみをおのずから減少させ、鉱工業生産の復興の直接の原動力となり、從つて経済緊急対策の確固たる出発点となるものであります。この際政府は特に勇猛心と積極果敢なる実行力をもつて、速やかに食糧危機突破に当られんことを強力に要請するものであります。
 以上、簡單でありますが、本決議案の趣旨内容を述べ、各位の御賛同を得たいと存ずる次第でございます。(拍手)
#8
○議長(松岡駒吉君) これより討論に入ります。千賀康治君。
    〔千賀康治君登壇〕
#9
○千賀康治君 私は、民主党を代表いたしまして、ただいま上程になりました淺沼稻次郎君ほか五十五議員の諸君が提出せられましたこの議案につきまして、若干の意見を加えて賛成の意を表示したいと思うものでございます。
 麦、馬鈴薯、こうしたものの供出が、われわれの当面いたしまするこの食糧危機突破に際しまして、いかに重要であるかということは、われわれがここで喋々する要はないのでございます。ただ、この供出がほんとうにできるかできないか、農民がわれわれの意思をほんとうにくんでくれて、最後のふごに残る一粒までも出してくれるかどうか、この点が問題でございます。現在の状況におきましては、この供出の運動もどうやらひとつの作文にすぎぬのではないか、かような危惧が農民諸君の間には相当に澎湃として起りつつあるのでございます。
 農民諸君はなぜ供出を喜ばないのか。なぜ供出をなるべく免れようとしつつあるのか。これは言う要もないかもしれませんが、價格問題でございます。農民の満足するに足る價格が農民に與えられない。農民が増産のために要しまする農具あるいは繊維製品であるとか、どうしても増産をするために買わなければならないものは、まことに高いのでございます。ほんとうに血の出るような値段で買いながら、供出は、第三次の供出といえども、まだ農民の要求する價格にははるかに遠いのでございます。もしもこのままで、この價格以内で全部を供出いたしたとしますれば、耕作農民はおそらく生活は成り立たない。のみならず、彼らの生存さえも全うすることができない不合理さがここにあるのでございます。
 この点に関しまして、ほんとうにもつとこれを満たしてやる、農民を満足さしてやるという決意が政府にないならば、この供出運動というものも、やはり空論に堕してしまうのでございます。私ども耕作農民の立場にある者といたしまして、ほんとうにこの点に関しましては、もつとよく農民と腹を割つて語り合うことができないものか。この点に関しましては、実に深刻な氣持になつておるのでございます。かような点に対しましても、十分政府当局は理解をもつていただきたいのでございます。
 また今日の説明にもありましたが、輸入食糧、このカロリーをことごく國民の生活、生存のために利用するということは、もちろん大事なことであります。せつかく連合國の皆さんが、われわれ民族のために貴重な食糧、しかも世界においてどこの民族も欲しておるこの食糧を、百万トン、二百万トンと固めて日本に入れてくださることには、相当に日本の深刻な立場を弁えて入れてくださることはもちろんでございまするが、この食糧の利用を最高限度にわれわれの科学を結集いたしましてやらなければ、ほんとうに連合國に申訳がない。またわれわれ民族のほんとうに生存を遂げようという目的に対しましても、遺憾な点があるのでございます。
 現在の社会におきまして、はたしてあのわれわれの胃の腑では消化に困難であるポーミーであるとか、たかきびであるとか、こうしたものが、ほんとうにわれわれの血となり、肉となるようにくふうして國民に配給をされておるかどうか。粗粉のままで配給されまして、そのままうつかり食つたら胃腸障害を起すようなものがどんどんと配給をされております。これではりつぱな食糧でありながら、その効果からいえば、木くず、草のくずを配給せられたと同じ結果になるので、この点に関しましては、政府は今一段と強い周到な努力とくふうが拂われなければ、ほんとうに國民のすみずみまで理解され、これがわが民族の生存の糧であるということになしがたいのであります。この点に関しましても、特に政府の注意を喚起いたしたいと存じます。
 また食糧の遅配・欠配の点でありますが、最近政府が談話を発表せられました、今年の十一月までの間に遅配・欠配を解消してみせるというお話、実に國民は双手をあげて賛成をいたしております。ほんとうに國民がその談話にどんなに希望をつないだか。われわれは会う人ごとに、あれはほんとうに政府が実行してくれるかどうかと聽かれます。
 また最近通信委員会が電話局、電信局等を視察いたしまして、その職場の代表者たちに、諸君は何を欲するのか、給料の値上げを欲しているのかというような談話をした際に、彼らは一樣に、もう俺たちは金には希望がないのだ、どうか食糧を現物をもつて配給してくれろ、職場にある者の唯一の望みは現物支給以外にないのだと、ほんとうに血の出るような叫びをわれわれに聽かしてくれました。おそらく、これは單に通信從業員だけの氣持ではありますまい。鉄道におきましてもある、いは世の中全体の人々の氣持は、もはやここまできていると思うのでございます。
 國民諸君は、この食糧そのものの配給について、どんなに深い関心をもち、どんなに強い希望もつてやつているか、この点を考えますと、われわれは一刻もじつといたしていることができません。われわれの國内に、もしも遊休しております主食糧があるならば、どこをどうしてもこれを國民諸君の用に供さなくてはならない。私はかような決議案が議員の間から出てくることは、いかに政府がまだのんびりしておられるか、その反証のような氣もいたしまして、まことに私は焦燥の感に打たれているのでございます。
 最後に私は、特に政府の注意を喚起いたしたいことは、この決議案におきまして、食糧を消費する部面についての関係が特に説かれておりますけれども、われわれ耕作農民、食糧を生産する者のために、あまり言葉が用いられておらないことでございます。連合國の補給食糧は、まことにわれわれは感謝をもつて迎えますけれども、その五倍、六倍の主食糧は、実にわれわれ同胞の手によつて、この狭い國土において生産せられつつあるのでございます。これが一割、二割の増産ができるということになりますれば、われわれの民族は、ほんとうにわれわれの民族の手で救われるという結果になるのでございます。
 何よりもこの食糧危機突破で一番大事なことは、まず増産でなくてはならないのでございます。この増産に対しまして、私はもつともつと政府が強い熱意を示していただきたい。他日私は特に増産のために皆樣に訴えることころが再びあることを期待しておりますけれども、この食糧危機突破対策にたいしまして、増産こそはほんとうにわが同胞の四割を占めまする農民諸君に訴えまして、この食糧危機突破をするということが何よりも必須なことであるということを高調し、政府の所信に訴えまして、私はこの案に賛成をいたしたいと思うのでございます。終り。(拍手)
#10
○議長(松岡駒吉君) 小川原政信君。
    〔小川原政信君登壇〕
#11
○小川原政信君 私は日本自由党を代表いたしまして、ただいま上程いたされました決議案に対して、ごく簡單に賛成を述べたいと存ずる次第であります。
 四百万戸の農民諸君、三百万戸の漁民諸君、二百万になんなんとする畜産家の各位が、三者一体になりまして、そうして食糧生産に邁進をいたしております。古い標語といたしまして、働かざる者は食うべからずと言いますが、まことにこれは野卑な、消極的な、暗い標語であります。しかし、われわれの信頼する所の方々は、働かざる者にも食わせて生産を増強しようという、心の中からまことに積極的なわれわれ同胞に対しての働きこの一千万戸になんなんとする方々が、汗水流して生産をいたしておることに対しましては、この國会を通じまして哀心から感謝の意を表するものであります。
 また終戰後わが國内の秩序が乱れておりまして、生産もその意のままになく、日一日と失業者ができておりますし、また殊に二十年という年は凶作であつたのであります。食糧の輸入も絶えまして、昨年は同胞が餓死せんといたしました。あるいは草を粉にして食べました。しかるに、マツカーサー元帥の好意という英断とによりまして、食糧の輸入が許されたのであります。またその後におきましても、数度にわたつて食糧の輸入が許されまして、この危機突破をすることができたのであります。今年もまた食糧危機が目の前に迫つておるのでありますが、それに新聞をもつて見ますると、マツカーサー司令部はもとよりのこと、アメリカ國民の大多数の人の、しかも宗教的で、しかも人道的な博愛心の結晶であるこの現われが、われわれ八千万同胞の心胆に徹したのでありまして、この温情に対して、議会を通じまして、哀心から感謝をいたす次第であります。
 これまで私は、平野君は社会党にその人ありと信じておつたのであります。この平野君が在野党時代に書かれました書物や、あるいは雜誌や新聞で演説の論評を見まして、まことに私は好意をもつて迎えておつたのであります、さいわいに同君が農相に就任されましたので、これは必ずや農村に明るいところの幸が傳えられてくるであらう、國民大衆は大いに満足するであろう、こう思つておつたのであります。しかるに農相になられましてから約四箇月、一年の三分の一という長い時間を経過いたしましたが、この食糧危機に瀕しておるのというのに、食糧に対してまだ何らの対策もなくて、その日暮しの小策をもつてされるということは、私はまことに限りなき悲しみを感ずるのであります。(拍手)
 この二月、日本農民組合の全国大会におけるときに、農相は中央大学の講堂で三合配給の決議をなされたということであります。そのときある人が立つて、何をもつてかく言明さるるか、こう反問されたのに対して、二十年間の政治感覚と農林統計とによつてかく断ずるのであるという答弁によりまして、その質問者は納得したのであるというのです。今日あなたは、その二十年間の政治感覚によつて、農林統計によつて、何ゆえに三合配給をなされないか、議会を通じて民衆に声明せられたいのであります。二合配給でもいいから、数十日の欠配なく配給せられたいのであります。
 平野農相御承知の通り、二十米穀年度というものは、二十一米穀年度よりは凶作であつた。それでも昨年は、米國の好意によりまして、わが國の國民の理解と各位の協力とによりまして、数十日という長い欠配はなくして危機突破をいたしたのでありますが、それに本年は何ゆえに六十日、七十日という長期の欠配を続けておるのでありましようか。農相はこの現象をなんと見られるのでありましょうか。またこの端境期におきまして、いかようにしてこれを突破するというのでありましようか。また國民に対しまして、どういう責任を負うのでありましようか。それを承りたいのであります。
 政府は経済白書におきまして、六千百万石の收穫をした、こうおつしやいます。そうであつたかもしれませんが、私が新聞を見ると――これは見ようが惡いかもしれませんが、七千百万石ある、これはある筋の発表であると、こう書いてあります。米國の好意によつて輸入せられました石数が約五百万石あつて、合わせて七千五、六百万石となるのであります。日本の人口は八千万と申しますけれども、今日の人口は大体において七千五、六百万人であります。日本の人口とこの石数とがつり合うのでありまして、一人一石という食糧があるということになるのであります。その上に麦が約数百万石、あるいは甘藷が二十億万貫、あるいは十億万貫に近いところの馬鈴薯、その他幾多の雜穀、その上に莫大なる水産物と野菜等を收穫しておるのであります。いかなる理由によつて六十日、七十日という、特にわが北海道のごときは七十数日というものが欠配しておるのであります。これはまつたく政治力の無能を暴露したものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)私は過去の非を言うものではありません。追求するものでもありません。將來の対策を問わんとするものであります。
 政府は、この際新鮮な食料品を統制のわくよりはずして、自由販賣として生産者の生産意欲を高揚し、消費者の利便をはかるような政策をとられるお考えではありませうか。ないとするならば、われわれはお獎めしたいのであります。
 先日も農相は、今度は主食物を緩和するように、完全に供出済み農家の余剩米を小包で送るようにしたから、今後は食糧は緩和するであろうと、こう御発表になりました。事実はいかがでありましようか。東京、名古屋、大阪、福岡合わせまして、わずかに一斗七升だと述懐されております。いかに天下の名案でも、これでは子供のままごとよりも惡いと思うのであります。私はこの食糧問題は、絶対的に超党派的観念をもつて取扱わねばならぬと大いに自戒自覚いたし、あるいは愼重なる態度をもちまして、政爭の具には供したくない、こう確信するものであります。しかしながら、事実を事実として論ずることは、國家國民のためによりよき政策を希望し、はたまた、これより大いなるところの協力はないと私は深く信ずるからであります。殊に國民の健全なる在野党として、歯に衣をかけないで、率直に良策は良策なり、愚策は愚策なり、無力は無力なりと申し上げることこそが、眞の勇者の行動であつて、これより大いなる協力はないと私は信じて疑わないのであります。
 先般來よりしばしば懇談を重ねました二十二米穀年度供出問題にしましても、八月の二十日が明日に來るというのに、未だこの予想割当ができない。実に遅きに失しておるのではないか。供出の根本問題は地力である。その地力に対して何らの勘案もなければ、また耕種、肥培管理にわたりまして、何一つ整備したところの施策がないのには、失望落担ぜざるを得ないのであります。
 私は適地適作主義でありまして、豊かなる生産あつて初めて供出ができるので、供出のための生産では絶対ないと信ずるものであります。ゆえにその地力を根本といたしまして勘案し、いかにして地力を維持せんか、その方法としてあるいは縁肥あり、あるいは堆肥あり、あるいは化学肥料を考え、畜産を獎励し、また深耕を考え、客土を行う等、ありとあらゆる手段方法を考え、多角的な農業経営こそが初めて生産が増強するゆえんであると、かように考えるのでありますが、肥料は少しもなくて行届いておらない。家畜の政策にしても萎靡退嬰のみが続いており、一向に振興政策はない。その他農具にしても、資材にしても、衣料品にしても、何一つとして根本的施策がないということは、政治感覚の無爲無能を暴露したものとして断行してはばからぬのであります。殊に供出に対し強権の発動というよりも、数旬の長きにわたつて欠配を続行しておきながら、二升や三升のその日暮しの買出米を取上げるなどという不法行爲を敢行するがごときは、政府の威信を失墜せしむることをもつとも遺憾と考えるのであります。(拍手)
 最後に一言附加したいと存じます。いつまでもこういうように米國の好意にのみすがり、農民の精励にばかりまつのはなくして、最も科学的な対策と、合理的な適正手段とに訴えまして、一刻も早く食糧の綜合的根本方策を樹立せられることが最善の良策であると申し述べまして、決議案に対する賛成の理由とする次第であります。
#12
○議長(松岡駒吉君) 的場金衛門君。
    〔的場金右衞門君登壇〕
#13
○的場金右衞門君 私は、國民協同党を代表いたしまして、ただいま上程せられました決議案に対し、賛成の意を表するものであります。
わが國の食糧問題解決の根本的方策は、今日をどうするかということではなしに、根本的な諸問題を愼重に檢討し、恆久的な方策を樹立実行し、もつてその実効をあげるようにせねばならぬのであります。しかるに今日の食糧危機は、今日の國民をどうして養うかということであつて、明日のことをのんびりと檢討し、論ずる余裕さえもないのであります。ゆえに私どもは、当面の緊急非常の措置として、本決議に示された方策の断行を政府に強く要請せざるを得えないのであります。
 がしかし、それはわが國食糧問題に対する根本方針の上に樹立される非常緊急の措置でなければなりません。すなわち、当面する麦・馬鈴薯の買上げを初め、國内の食糧の総合的活用につき、積極果断なる措置をとることはよいけれども、一歩を誤ると、農業者が次の生産に対し、生産意欲を阻害し、あるいはまた供出について惡い感情をもつ結果になるおそれがありまするから、かようなことにならぬように十分注意をせなければならぬのであります。
 すなわち、今日の危機を突破するために、苦しまぎれに百姓をいじめ、苦しめるようなことがあつてはなりません。同時にこの急場の供出だけにあまりあせり過ぎて、優遇し過ぎ、次の供出の場合に惡い影響を與えるようなことがあつても、これまたいけないのであります。今日とります非常緊急の措置が、次の生産あるいは供出にきわめて敏感に影響するということを、特に念頭におかなければならぬのであります。正直なる農家が、國家の食糧危機を憂慮して、これを理解することによつて、おのれの不足する保有米を犠牲的精神をもつてさらに供出したために、次の年度から供出の割当が増加され、年々苦しめられておるというような実例があるのであります。かくのごときことのないように十分注意せなければなりません。
 次に、食糧政策上基本的に考えなければならない二、三の点を上げて、政府の御一考を煩わしたいと思います。その第一は、都市と農村と常に相反目する対立的な感情をなくしなければなりません。農村の者は常に都市の食糧を十分に認識し、これに同情し、都市の者は農民の労話を十分に認識し、かれら百姓たちが、みずから芋や雜穀を食して米や麦を供出する心情、また雨や風の日、霜や雪の日、あるいはまた炎熱焼くがごとき熱砂の中、煮え返る泥田の中で働く農民たちの努力労苦を、都市の人が認識いたしまして、衷心感謝をするのでなければならぬのであります。この感謝と情の結ばれによつて供出と配給が行われるようにすることを第一としなければなりません。
 第二には、政府が百姓をだまさぬようにしなければならない。從來政府はしばしば農業者をだまし、ごまかして、事を有利に解決しようとしたのであります。言いかえれば、農民をばかにして、配給するといいながら配給しなかつたり、報獎物資をくれると発表しながらこれをくれなかつたりして地方農村では、政府官吏というものは農民をだますものであり、常に百姓に損をさせるものであると考えるようになつたのであります。この不信用を解決せないと、いかなる政策も実効をあげることはできません。政府みずからがいま少し農村をよく知り、ほんとうに農業を理解し、同情ある政治、農業を尊重する政治、農業者に信頼される政治を行うことに努力しなければならぬと思います。
 第三には、供出制度を徹底的に民主化する。この方法については、他日の機会に檢討いたしたいと思います。
 第四に、農産物の價格を是正する。これは先ほどの民主党の御意見に全面的に賛成をするものであります。他の物資、特に農業生産必需物資と均衡を得せしめる價格でなければなりません。しかるに、價格はべらぼうに安くしておいて、法律や規則をつくつて圧迫的に生産や供出を強いようとするのでありますが、生き物を生産します農業においては、さように圧迫や規則でこれを簡單にでかすことのできないものであります。農産物だけが常にほかのものに比較して低廉であることが、今日の食糧問題解決の一大支障になつておるということを、われわれは反省しなければならないのであります。食糧農産物の價格を適正に是正することなしに食糧問題の解決は絶対にあり得ないのであります。
 第五に、生産資材の供給、肥料、農機具、作業衣など、生産に必要なる資材を確保し、公正なる價格をもつて配給する。農業者より搾り上げる前に、農業者からいかにして搾りとるかということをくふうし努力する前に、まず農業者に與えることに眞劒にまじめに努力しなければなりません。この眞劒なる努力が続けられて、農業者の必要とする生産資材が豊富に潤沢に與えられますならば、むずかしいことを考えなくても自然と増産ができ、食糧問題の根本的解決ができるのであります。まず搾りとる前に與えることにくふうをし、努力をしなければならぬのであります。
 第六には、まず今できておりますりつぱな穀倉である美田を護れということであります。治山、治水に意を用いず、美田を日々荒廃せしめつつある一方において開墾、開拓というのは、何という愚かなことでございましよう。こんなばかげたことはありません。まず、今米がみのり、麦がみのるりつぱなたんぼを護ることにくふうをし、努力をしなければならぬ。開墾・開拓と称して山を荒らし、美田を壊しつつ、ろくに作物のできないたんぼや畑を開いても、國家全体としては利益にならないということを、われわれは考えざる得ないのであります。開拓法によつて山林の濫伐を助長したり、山林所有を認めないというデマ放送をしたり、あるいは山林は國有にするというデマ放送をしたりして、山林所有者に不安を與え、造林熱をなくする。一方には濫伐が続き、過伐が続き、山は荒廃し、川は荒廃し、美田が年々すたれていくこの日本の國土を、われわれはもう少ししつかりと見詰めなければ、日本のこの狭い國土は日に日に荒廃していくのであります。
 かようにして、輸入食糧の効率的な使用に万遺憾なきを期し、連合國の好意にこたえ、遅配・欠配の即時解消をなすとともに、以上申し上げましたような観点に立つて、私たちは恆久的なる食糧対策の確立をしなければならぬと思います。以上、簡單に所見を申し述べまして、本決議案に賛成するものであります。(拍手)
#14
○議長(松岡駒吉君) 中村寅太君。
    〔中村寅太君登壇〕
#15
○中村寅太君 私は、小会派を代表いたしまして、本案に賛成を表したいと思うものであります。
 食糧問題の解決は、現下の経済危機を突破しまして日本を再建する第一の要件であります。石炭の増産は、あらゆる生産増強のかぎであるといわれておりまするが、これとても食糧の確保が前提となり裏ずけとならなければ、断じて実現はできないのであります。今日、國民食糧の絶対不足量は連合軍の援助にまたなければなりませんが、これとても日本の全農民が生産に努力をし、供出の責任を完遂して後にのみ懇請されるものであり、また許可もなされるものであります。しかるに現下の食糧危機に当面し、これに対して農民の協力足らずとして、しばしばその責任を問われておりますことは、連合軍によつてなされるたびたびの警告にも現れておるところでありまして、われわれは最も遺憾とするのであります。
 私どもが、ここにおいて靜かに考え、深く檢討してみなければなりませんことは、食糧の供出に対して農民の態度が日に日に非協力的となつておるという事実であります。政府がいかなる手を打つて見ましても、その成果はあがらず、農民はむしろ政府の打ちますところのあの手この手を、白い眼をもつて見送る傾向にあるという嘆かわしい現実の姿であります。今日同胞の飢餓を見て、何ら氣の毒とも考えず、何ら同情の念をも起さないほどに農民の精神がすさんでいるのか、それとも同情にたえない氣持はもちながら、これをなし得ない事情にあるのかということを、國会といたしましてはよく檢討してみなければならぬと思うのであります。もしも前者でありまするならば、われわれは議員といたしまして、あくまでも全農民の反省を促し、その態度を改めしることに全力を注がなければならないと思うのであります。もしもその原因が、後者でありますれば、その隘路を打開し、農民が喜んで供出をなし得るような方策を講ぜなければならない政府に対し、その責任を追究し、今日の食糧危機の現象が政府の施策の拙劣さより來るものであるということを、どこまでも追究いたしたいと思うものであります。
 皆樣には今日の農民生活の実情はよくおわかりにならないかとも思いますが、農民は新円に埋まつているとか、あるいは百円札を積んで、その高くなるのを樂しんでいるとか、いろいろ無責任な、実情を知らない新聞の報道などを信じて、農家の生活が安定せりなどと考えておられる方もあろうと思います。あるいは今日の農民の態度を恨んでおる人もあろうかと存じますが、私は、眞に農民生活の困難なる実情をよく把握していただきたいと思うのであります。すなわち、今日農民が、非道とののしられ、惡農とむちうたれながら、農民道義頽廃せりと憎まれながらも、なお農作物の供出を回避し、これをやみ賣りせなければならないという悲壯な原因がどこにあるかということを考えてみなければならぬと思うのであります。
 今日の農民の生活は、一部特殊農家を除きましては、まじめに供出に應じておりましたのでは、その再生産はおろか、生活すらでき得ない事情にあるのであります。これを考えまするとき、私は農政の貧困が農民の生活を困窮のふちに追いこみ、ひいては、消費者の食生活困難ならしめておるのであるということを断言してはばからないのであります。今日の食糧危機の原因は、その責任は農民にあるものでなくして、実に政府にあるものであるということを、私は強く主張いたしたいと思うのであります。
 しかしながら今日は、ただその責任の所在を云々することをもつて許されないところの状態まで危機は迫つておるのであります。これを考えますとき、われわれは全力を傾けて、農民に対しあらゆる角度から食糧供出の一〇〇%完遂を懇請慫慂し、併せて万難を排して、眞に大勇を振つて、農民をして納得せしめ、勇躍供出に應じ得るような積極的な政策を立案し、これを政府をしてただちに実施させ、供出に應ずる農家をして、その再生産を保障し、その生活を安定せしめることが、國会のなすべき最も重要な急務であると私は信ずるのであります。これがまた食糧危機突破の絶対的手段であるということを指摘し、これを前提といたしまして、私は本案に賛意を表するものであります。(拍手)
#16
○議長(松岡駒吉君) これにて討論は終局いたしました。
  採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
 第二 船員保險法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#18
○議長(松岡駒吉君) 日程第二、船員保險法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸及び交通委員長正木清君。
    〔正木清君登壇〕
#19
○正木清君 ただいま議題となりました船員保險法の一部を改正する法律案につきまして、運輸及び交通委員会の審議の経過並びに結果について、御報告申し上げます。
 本案は八月一日に本委員会に付託され、愼重な審議にはいりました。ここに本案の趣旨を簡單に説明いたしますと、船員保險法は、海上労務者たる船員に対し、その疾病、負傷、廢疾、老齢、死亡等の事故に際し、その生活を保護する趣旨をもつて制定せられたものでありまして、この法律と密接な関係にある船員法は、去る第九十二議会において、終戰後の新情勢に対処すべく改正され、そのその中には、保險制度で裏づけすることを必要とする船員保護の基準の確保という面も含まれておるのです。この船員法の改正に應じ、船員保險法を改正し、船舶所有者の災害補償の責任義務を確立するとともに、船員保險法を一部改正せんとするのが本案趣旨の大要であります。
 委員会においては、八月六日厚生大臣より提案理由の説明を聽取後、委員と政府側との間に質疑應答がありましたが、前にも申し述べましたように、本案は船員労働の保護を期する点から、その内容についても適正な改正であると認められ、別に問題ともなりませんでしたので、次に改正の内容の大要について御説明いたしまして、質疑にかえたいと存じます。
 第一に、船員保險委員会の設置であります。船員保險は政府の手により運営されておるのでありますが、新たに船舶所有者、被保險者、公益代表者をもつて組織する船員保險委員会を設け、事業運営に関する重要事項は、これに付議しようとする点であります。
 第二に、船員法の適用範囲の拡張に伴つて、被保險者の範囲の拡張しようとする点であります。
 第三に、給付内容の充実であります。この点につきましては、改正船員法に規定されました船舶所有者の補償責任を本保險においてカヴアーする建前のもとに、所要の改正を加えようとするものであり、すなわち一、傷病手当金の支給額を、職務上の事由による疾病または負傷の場合には、四箇月間は報酬日額の全額とするほか、療養の給付を受ける期間経過後においても職務に服し得ない場合には、一箇月の範囲内において報酬日額の百分の六十の傷害手当金を支給すること。二、自宅以外の場所における療養に必要な宿泊及び食事料の給付をすること。三、療養の給付や傷病手当金の支給は、本法施行地外でもこれをなすこと。四、傷害年金または傷害手当金の支給条件でありますが、これは、職務外の場合でありますと、三年以上被保險者であることが必要でありましたが、これを六箇月以上に改めること。五、傷害年金、傷害手当金並びに職務上の事由による遺族年金、遺族一時金の額は最終三箇月間の平均報酬額を基準にすること。六、養老年金、傷害年金を受ける権利のある者にも、職務上の事由で傷害手当金を支給する程度の廃疾の状態であれば、これを併給すること等の諸点のほか、養老年金については、被保險者であつた期間が十五年以上にして、被保險者の資格を喪失した者に対しましては、五十歳に達しなくても、その際養老年金証書を交付してその権利の確保をはかるとか、また脱退手当金については、受給資格期間を六箇月以上と改めるとともに、一年の待期を廃止しようとするほか、本法の適用範囲の拡張に伴いまして、船舶所有者の團体に対しても本保險施行に必要な事務を行わせることができるようにするとともに、保險給付の決定に不服ある場合の審査機関として保險審査官を設けまして、迅速適正な審査決定をはかるようにいたそうとし、また罰則規定、時効規定について、新情勢に應する改正を行うのほか、新憲法、地方自治法の施行、外地の喪失に伴う所要の改廃を加えようとする等であります。以上が改正の諸点の大要であります。
 委員会においては、八月十一日をもつて本案に対する質疑を終了いたしまして、十三日討論にはいりましたが、社会党より高瀬傳君、民主党より原彪君、自由党より高橋秀吉君、國民協同党より飯田義茂君が、おのおの党を代表せられ、原案に賛成の旨をそれぞれ述べられ、ただちに採決にはいり、全会一致をもつて原案の通り可決いたした次第であります。右御報告いたします。(拍手)
#20
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)

  ――――――――――――◇――――――――――――――
 第三 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
#22
○議長(松岡駒吉君) 日程第三、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。鉱工業委員長伊藤卯四郎君。
    〔伊藤卯四郎君登壇〕
#23
○伊藤卯四郎君 ただいま議題となりました特許法等の一部を改正する法律案に関し、鉱工業委員会における審査の経過並びにその結果について簡單に御報告申し上げます。
 本案は、從來特許と発明に関して多大の貢献をいたしてまいりました特許法等につきまして、現下の諸情勢に適應した改正を加え、一層本法の積極的活用をはからんとするもので、改正の要点は次の二点であります。第一は、最近の社会情勢に即應して特許料、登録料を相当程度に引上げようとするものであります。第二は、他の法令中の処罰規定との均衡をはかるために罰金額を五倍ないし十倍程度に引上げるように規定したものであります。
 委員会おける審査の大要を申し上げますならば、本案は八月十二日本委員会に付託せられ、きわめて短時日ではありましたが、委員諸賢と政府との間に熱心なる質疑應答が交されました。その詳細は会議録によつて御承知を願うことといたしまして、ここにはその二、三を御紹介いたします。
 まず委員から、從來特許法のがんであつた祕密特許について、何ゆえに今回これを削除せなかつたかという質疑がありました。これに対して政府は、当局はもちろんこれに十分意を拂つておるが、何にしろこの問題は非常に微妙な問題を含んでおり、近いうちに追加提出するつもりであるとの答弁がありました。
 さらに委員より、今回の改正による收入の増加額とその使途についての質疑がありました。これに対して政府より、改正前の收入は年間約三百万円程度であるが、本支出は現在約千五百万円程度である、改正による料金の値上げは大体一千万円程度の増收を見込んでおる。これにより年間收入は約千三百万円程度となり、收入は特許局の一切の経費を賄うこととなる、今回の改正は收入の均衡をはかるがために行つたものであるとの答弁がありました。
 次に、本法は大正十年の制定であり、本改正案は他の國家料金に比べて著しく低いと思う、当局の説明によれば收支のバランスに重点をおいているようであるが、特許局の收支に黒字が出ては惡いのかとの質疑がありました。これに対して政府は、たしかに低過ぎると思う、しかし一面発明者の保護ということを考慮に入れて行つたものである、今回は一應この程度にして、遠からず再び値上げをするつもりであるとの應答がありました。
 さらに委員より、ただいまの政府委員の答弁により了承したが、そもそも特許というものは相当の権威をもたしてあるのであるから、まだ料金を高くしてもよろしいと思う、そうしてこれにより出た黒字をもつて、さらに積極的に発明者を保護奨励すればよいではないかという質疑がありました。これに対しまして政府は、委員の意見を十分尊重し、意に副うように努力するとの答弁がありました。
 さらに委員より、特許法第百三十三條の、特許局職員が祕密を漏洩または窃用したる際の刑があまりにも軽過ぎはしないかとの質疑ありました。これに対して政府は、これは他の刑法とにらみ合わせて作成したものであるとの應答がありましたが、委員は、この件は重要問題であるだけに、政府はこのままに押し切るつもりであるかどうかと、重ねて質疑を続行いたしました。これに対して政府は、この点については、全面的に司法省にお願いをして作成したものであり、今まで各官廳とも懲罰はあまり明確に書いてなかつたが、特許局はこの点特に明記しておいたのである、この問題はもつと嚴重にと思つたが、他よりの意見もあり、今回はこの程度にしておいたとの答弁がありました。
 最後に委員より、年次による課税率が異なるのはよくわかるが、わが國の現在は敗戰したのであるから、改正料金中、年次の終りの方はもつと高く上げてもよいと思う、今後また國情が回復した際値下げをすればよいではないか、敗戰した現在、累年加算率をもつと高くしてはどうかという質疑がありました。これに対して政府は、料金の値上げについては、世界各國の状態をも考慮して、これと比較をして作成したものである、また弁理士、発明團体等に原案を示して、彼らの意見をも酌量して行つたものである、もしあまりにも料金の値上げをすると、かえつて大きな反響を呼ぶのではないかと思うとの答弁がありました。
 かくして、委員会は去る十八日討論にはいりました。まず松本七郎君が日本社会党を代表して、特許法等の改正は現下の諸情勢より見て一部分に限られておるが、近いうちに全面的に改正の要がある、政府もこれを認めていることと思う、発明者の利益に堕することなく、國家経済上、國民全般の福祉のために愼重に使用せられんことを望むとの意見を述べて、原案に賛成せられました。次に、民主党を代表して庄忠人君より現下の経済情勢と照らし合わせて、特許法等の改正案は妥当な処置であるとの意見が述べられ、原案に賛成せられました。さらに、日本自由党を代表して有田二郎君は、特許局職員に対する懲罰の嚴正なこと、年次による課税率を時局の推移に即應せしめること等の希望を述べられ、原案に賛成せられました。最後に、高倉定助君は日本農民党をを代表して、本改正案は現下の諸情勢とにらみ合わせて、きわめて適当な処置であるとの意見を述べられ、原案に賛成せられました。引続き採決に入り、全会一致をもつて可決した次第であります。
 まことに簡單でございますが、この段御報告申し上げる次第でございます。(拍手)
#24
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
 次会の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
    午後四時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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