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1953/10/16 第16回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第016回国会 農林委員会 第36号
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1953/10/16 第16回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第016回国会 農林委員会 第36号

#1
第016回国会 農林委員会 第36号
昭和二十八年十月十六日(金曜日)
    午前十時四十七分開議
 出席委員
   委員長 井出一太郎君
   理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君
   理事 平野 三郎君 理事 金子與重郎君
   理事 足鹿  覺君 理事 安藤  覺君
      小枝 一雄君    佐々木盛雄君
      佐藤善一郎君    佐藤洋之助君
      福田 喜東君    松岡 俊三君
      松山 義雄君    山本 友一君
      加藤 高藏君    吉川 久衛君
      井谷 正吉君    芳賀  貢君
      原   茂君    川俣 清音君
      中澤 茂一君    日野 吉夫君
      久保田 豊君
 委員外の出席者
        農林事務官
        (大臣官房長) 渡部 伍良君
        農林事務官
        (農林経済局
        長)      小倉 武一君
        農林事務官
        (農業改良局
        長)      塩見友之助君
        農林事務官
        (畜産局長)  大坪 藤市君
        食糧庁長官   前谷 重夫君
        林野庁長官   柴田  栄君
        通商産業事務官
        (軽工業局アル
        コール第二課
        長)      渡辺 五六君
        専  門  員 難波 理平君
        専  門  員 岩隈  博君
        専  門  員 藤井  信君
    ―――――――――――――
十月五日
 委員西村力弥君辞任につき、その補欠として原
 茂君が議長の指名で委員に選任された。
同月八日
 委員小川豊明君辞任につき、その補欠として井
 谷正吉君が議長の指名で委員に選任された。
同月十六日
 委員松野頼三君辞任につき、その補欠として山
 本友一君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 参考人招致に関する件
 冷害等による農作物被害状況に関し派遣委員よ
 り報告聴取
    ―――――――――――――
#2
○井出委員長 これより会議を開きます。
 本日はまず冷害等による農業災害対策の万全を期するため、議長の承認を得て委員を派遣して、各地の事情を調査せしめて参りましたが、この際その報告を求めます。まず中部近畿班として平野三郎君。
#3
○平野(三)委員 私どもは長野、岐阜、三重、愛知及び静岡の五県下にわたり、冷害及び十三号台風による農作物並びに農業施設の災害状況を調査して参りました。その概要及び現地の要望事項について御報告いたします。
 調査班は私と原委員であります。それに岩隈専門員が同行し、別に農林省より林野庁の田中技官、食糧庁の中隈技官、農地局の若尾技官、和田事務官が参加し、本調査に協力いたしました。
 まず調査班の行動の概要並びに被害の概況を簡単に申し上げます。
 八日の夜東京発、九日早朝長野県の沓掛に到着し、さつそく浅間山麓、北佐久方面を調査しました。この地方はいもちの大発生に加え、ひどい冷害に襲われております。北佐久郡には海抜八百メートル以上の水田が約一千町歩ありますが、これらは八月二十五日から三十一日に至る間、摂氏十五度以下の気温に見舞われております。特に土十六日、二十八日には十二度八分を記録し、あたかも出穂開花期にあたり、典型的な障害型冷害を示しております。水稲の平年作約十三万石、農家の保有量九万三千石に対し、本年度の生産は五万石程度、大体四分作ないし五分作と見られます。本郡は国有林が多いので、特にその協力が望まれているのであります。
 次いでわれわれは諏訪方面に参りました。御承知のごとくこの地方は反当り収量の高いことにおきましては全国屈指の地方であります。それがおそらく三分作にも達しないでありましよう。地方事務所の数字によれば、減収率は七五%といいます。各地において凶作対策のための各種協議会が持たれ、まことにあわただしい空気が漂つておりました。ここで知事に面会しましたが、知事以下必死の活動を続けております。
 私どもは諏訪市内四賀地区の事務所に参りました。この地区では完全保有農家は約半数であつたのが、八五%以上は転落農家になる見込みといわれます。対策としては山林を伐採して五百万円を調達し、二百五十戸に対し二万円ずつの現金を配分し、食糧、肥料、公租公課、医療に要する諸経費の支出に充て、また二十キロないし六十キロの麦を無償配付する等、自主的に機宜の措置を講じておりました。
 次いで八ツ嶽山麓泉野村を訪れました。本村は九百メートルないし千メートルの地点に位置し、水田二百五十町歩があるのでありますが、穂ぞろい期が八月二十日ごろであつて、九月二日に八度五分の低温を迎え、降霜を見ております。徹底的な冷害の打撃を受け、収穫皆無田が百三十八町歩、十一月以降転落する農家は百数十戸に及ぶと見られております。諏訪郡下において海抜九百メートル以上の耕地は約二千五百町歩といわれますが、至るところ泉野村と同様の惨状を呈しております。ために人心は極度に動揺しております。
 次いで長洲村に参りました。本村は全国一の反収を誇り、平均反当八俵を供出したといいます。しかるに今年は穂首いもちの大発生により、坪刈り八十八箇所の平均収穫高は三俵半であつたといいます。夏秋蚕も一般に違作を伝えられ、現金収入の道はまつたくとざされてしまつたようであります。救農土木が強く要請されました。
 私どもはさらに強行軍を続けまして松本市に至りました。松本平一市四駅の代表者の説明を総合いたしますと、いもちの大発生と四百メートル以上の高地の冷害により、おおむね佐久平と同程度の大被害を見ているようであります。すでに数名の発狂者が出ていると聞かされました。
 翌十日、東筑摩郡神林村及び波田村を視察いたしました。松筑地方事務所の数字によれば水稲の減収率は五八%ということであります。神林村において私どもが敬服しましたのは、本年度収穫標準量の作成に完璧を期しておる指導者の態度であります。その方法は、まず検見を行い、次いで四千筆について粒数計算を行い、さらに一町二反ごとに一箇所の坪刈りを行つて、検見、粒数計算による結果と、坪刈りによる結果との誤差を計算し、個人別収穫量を計算して、今後の凶作対策に備えて万全を期しておるのであります。調査結果は十三日に出るということでありましたが、その科学的な態度は、もつて他の模範となすに足るものと感じたのであります。
 ここよりわれわれはアルプスを横断いたしまして、岐阜県に入りました。大野郡の丹生川村に立ち寄り、高山市に到着いたしました。高山市、大野郡、吉城郡の一市二郡の代表より飛騨方面の実情を聞くところによれば、気象条件が東北六県または長野県方面と同一であり、また高山市が海抜五百六十五メートルのところにあるごとく、一般に高冷地農業を営んでおりますために、冷害及びいもちによる災害の程度は、おおむね長野県と同様であるようであります。
 次いで益田郡萩原町において同郡下の状況を聞きました。本郡もまた山国でありまして、元来零細農多く、八〇%が転落農家といわれますが、その転落の時期が早まると同時に、完全保有農家の転落数も増加するものと見られ、高山方面と同様の食糧危機が強く叫ばれておりました。
 翌十一日、岐阜市に至り、県庁におきまして各界代表と懇談いたしました。その要望はあとで一括申し上げることにいたします。
 それより岐阜市外西郷、本巣郡一色村、安八郡神戸村におもむき、農家の圃場におきまして脱穀の現場を調査しましたところ、県内の穀倉地帯といわれるこの地方が、中生、晩生において穂首いもちにやられ、品質はいずれも等外米程度である現実に接して、まさに呆然といたした次第であります。
 さらに車を走らせて養老郡牧田村におもむきましたが、ここは十三号台風により堤防は決壊し、百町歩に及ぶ農地はまつたく土砂による埋没の惨状々呈しておりました。
 ここを過ぎるころ、すでに日もとつぷり暮れておりましたが、日程を強行することとし、三重県に入り、まず桑名郡の七取村を訪れることにいたしました。ここも同様に十三号台風に上り、二十六日午前三時揖斐川の満潮による逆流水により多度川が二箇所に九十メートルにわたつて決壊し、一週間冠水、土砂の流入により耕地は埋没し、農地は百四十町歩にわたつて瓦礫地と化したのであります。
 次に三重郡楠町に行きました。海岸堤七キロ半のうち二十一箇所、千九百四十メートルにわたつて決壊、海水が侵入して養鰻場、水産加工場多数の流失を見たほか、耕地三百三十町歩のうち八十町歩は収穫皆無田となつております。護岸堤の状況を見まするに、大正七、八年ごろに改修した後、今日まで何ら補修を行つていないところへ持つて来て、気圧の最も下つた時間に高潮が襲つたために、かような大被害を招いたものと思われます。
 引続いて鈴鹿市に参りましたが、ここも耕地三千五百町歩のうち、海水の侵入による皆無田は五百町歩に及んでおります。但し応急締切り工事はでき上つておるようでありました。
 翌十二日、津市におきまして県側より、十三号台風の概況並びに対策を聞いたのであります。三重県における今次災害の特徴は、台風の通過時と高潮とが時間的に完全にマッチし、中南部海岸は台風の中心が通過したために、風浪により随所に堤防が決壊し、北部海岸は地盤の沈下により護岸堤のいたみがあつたのを高潮によつて徹底的に破壊されたということであります。また伊賀地方におきましては、随所に大規模の山地崩壊を起しております。農林関係の損害のみでも百億円以上に及び、特に農地、公共施設の被害では岐阜、愛知、三重の三県中最大であります。対策についての要望事項等は後に申し上げます。
 引続いて現地視察に出かけました。津市の郊外雲出並びに一色郡天白村を見たのであります。天白では十七箇所、千三百五十メートルに及んで護岸堤が破れたのでありますが、仮締切りが今なお五箇所に残つておりますために、海水は自由に侵入し、耕地面積四百町歩のうち六割は目下冠水中でありまして、われわれは水田上を船をもつて見学するという言語に絶する惨状でありました。晩稲は乳熟期に当り、皆無作であることは言うまでもありません。本県においては指導者の機宜の処置により死傷者数の少かつたことは不幸中の幸というべきであります。
 われわれは三重県をあとにして愛知県に向いました。十三号台風による本県の被害は六百十億に上り、うち農林関係被害は八十億に達する見込みといわれます。知多、渥美半島における堤防の決壊箇所は六百九十二箇所に及び、死傷者、行方不明千八百六十二名、全壊、半壊家屋十三万五千戸、水田の被害九万町歩を上まわつておるという有様であります。しかも資材なかんずく石材の不足と干拓堤防の復旧工事が技術的に困難であるということにより、朝夕二回海水の侵入があり、今なお四千町歩にわたつて冠水を見ておるのであります。
 以上の状況を見ますためにわれわれはまず知多半島東岸半田市におもむきました。市内において十四箇所の決壊、現在潮止め工事のできておるのは二箇所にすぎず、浸水区域は耕地の三分の二に及び、今なお常時三百三十町歩が冠水しております。
 海岸線に沿ういわゆる新田地域はことごとく災害を受け、かつこの地方は用水が不足し、ため池灌漑が行われておりますために、潮止め工事の完成後においても塩害の除去のために穿井を行う等、特別の措置が望まれておるのであります。
 半田市でわれわれが会見しました知多郡町村長代表の説明によれば、本郡下の水稲、早生玉ねぎ、秋まき蔬菜、柑橘の損害は九億に達し、今なお一千町歩の水田が冠水中ということであります。
 翌十三日、引続いて郡下の調査を進め、知多半島東海岸東浦町において堤防の決壊、水稲の塩害の状況を視察しました。知多郡下の農林関係の損害は十四億に上つております。次に碧海郡に参りました。碧南市においては、蜆川の河口の決壊による前浜新田の冠水状況を見、次いで矢作川の堤防上より平坂町の新田の冠水を見、それよりこの地方の最大の被害地幡豆郡の一色町に参つたのであります。幡豆郡下の農林関係の損害はおよそ三十億に達するといわれますが、本町では五十一箇所の決壊により、死傷者七百九十四名、二千二百戸、千六百町歩の浸水被害を受け、目下第二線堤塘の潮止め工事に必死の作業を続けておりまして、第一線堤にはとうていまだ着手できないありさまでありました。いまなお海中に孤立している世帯が八百に上つておるのであります。
 西尾町において県開発事務所の説明によると、復旧工事にはおよそ二つの問題があるようでありました。すなわち第一点は、災害復旧工事の所管問題であります。すなわち第一線堤は、県土木部所管として建設予算で実施し、第二線堤は町村管理として農林予算でまかなうかどうかということであります。第二点は除塩施設であります。矢作川の水を引いてかけ流しによる除塩をするが、そのためには排水ポンプの新設を必要とするということであります。
 幡豆郡を去り、一路豊橋市神野新田に参りました。ここは御存じのごとく六十二年前にできた有名な干拓田でありまして、一万八千俵の米を供出する農業地帯でありますが、目下一千町歩にわたり冠水しており、一千二百町歩は潮風害を受け、大減収を来しております。復旧工事は一箇月以内に完成の予定といわれておりますが、後の除塩施設が問題でありまして、豊川から用水のとれる所はよいとして、ため池がかりの所は穿井によることが一応考えられておるようであります。もちろん冬作は完全放棄でありましようが、来年の水稲の植付に間に合うよう工事が急がれておるわけであります。
 以上をもつて愛知県下の調査を終り、静岡県に向うことといたしました。浜名郡新居町及び新町におきまして、冠水による水稲被害を見ました後、浜松市に入りました。ここで静岡県下の状況を聞いたのであります。
 静岡県の十三号台風による災害は、大きくわけますと、二通りにわかれております。すなわちその一つは、浜名湖畔を中心とする護岸堤並びに干拓堤塘の破壊並びに海岸線一帯の海岸砂地造林の破壊による農地、農作物の被害であり、他は台風がもたらした水稲の被害であります。これは台風が本県西北方の山丘地帯を通過しましたために、特に南寄りの暴風雨が遠州灘、駿河湾一帯に左巻の高潮を吹き上げ、海岸沿いの平野を総なめにした潮風の害と、夜半から明け方にかけての台風後の下降気流により、湿度が急激に低下し、一方において温度が上昇したいわゆるフエーン現象により、開花期ないしは乳熟期の晩稲及び中稲に大被害を与えたいわゆる白穂化の害とがあるのであります。本県の九月十五日現在の農林省発表作況指数は九五%でありましたが、ただいまのところはどこまで低下するかまつたく不明である、しかも粒数計算だけでは絶対に判明しないという前途暗澹たるありさまでありました。従つて本県は、海岸地帯ほど災害の度合いはひどく、農作物の総被害額は七十五億といわれております。おそらく北海道、東北、長野方面にまさるとも劣らない損害を示すものと思われます。平年生産高百三十万石でありますが、百万石を大幅に割ることは必至でありましよう。
 われわれは海岸線に沿うて、各地の調査を行いました。まず磐田郡の長野村、引続いて小笠郡の平田村、池新田町を見ることにしました。いずれも穀倉地帯であります。特に平田村では被害米を展示しておりましたもののうち、若干の標本を持参しましたのをお手元に回覧に供しておりますが、晩稲はもちろん一〇〇%被害、中稲においてもほとんど収穫皆無に近い九五%被害というありさまであります。この付近は湿田単作地帯でありますし、かつ早生の植付率はごく僅少でありますので、農家経済に与える影響は深刻をきわめております。池新田においては、種もみがまつたくないのは言うまでもなく、食糧も八千人の人口をわずか二箇月ささえるにすぎないありさまであり、かついも作、落花生においても半作以下というのであります。
 榛原郡川崎村において、海岸砂地地帯の防災林がずたずたに破砕されておる状態を見ました。防災林は海岸線の総延長五百二十キロのうち百七十キロ、四市三十八箇町村にわたつて大被害を受けております。
 続いて米麦作地帯の志太郡吉永村を調査し、静岡市南郊地帯の農村を見ましたが、静岡市を中心とする一帯の白穂は特別に激甚であります。この地方における白穂の見本、または写真をごらんに入れますので、その状況を御想像願うことにいたします。
 以上をもちまして、五県下にわたります調査を終つたわけでありますが、その被害状況については、一々数字をあげますことの煩を避けましたが、要するにその惨状は、各地とも聞きしにまさるものがあり、まさにゆゆしき事態と申すほかはないのであります。
 今回の調査にあたり、今次災害の対策として現地の官民より受けた熱烈な要望あるいはわれわれ自身の感じました点を、次に申し上げてみたいと思うのであります。
 第一は、本年度の供出割当についてでありますが、冷害並びに台風の被害の進行状況を全力をあげて調査確認することが必要でありまして、その結果の判明をまつて、無理のない措置を講ずる必要があります。
 第二は、食糧検査であります。今年度は大量の等外米の発生が予想されます。今年は特に規格を緩和し、五等米、等外米であつても、これを供出及び奨励金の対象とする等、特に親切な取扱いをする必要があります。
 第三は、農家の飯米確保及び家畜飼料対策であります。これは人心の安定策として最も急を要します。転落農家に対しては、政府保有の米麦及び家畜飼料の貸付または買入れ基本価格に上る売渡し及び代金延納並びに加配の措置を講ずる必要を認めます。
 第四には、明年度種もみの確保につき遺憾なき措置を講じ、農家に対しては要求に応じ無償貸付を行うことであります。
 第五としては、農業手形及び農林漁業長期資金の借りかえまたは返済期限の延長並びに利子補給を行うこと。
 第六としましては、営農資金の確保対策であります。肥料、農薬、農機具等営農資金については、立法措置により農協または金融機関を通じ、低利資金貸付、利子補給及び損失補給の方途を講ずることは言うまでもありません。その条件は凍霜害の場合より大幅に有利とすること、その融資額は農家の需要に応じ無制限に貸し付けることが必要であります。
 第七としましては、自作農維持または家畜維持のため、融資わくの拡大または新規融資の道を開くことが必要であります。
 第八には、農業災害保険金については、仮払い及び概算払いを速急に実施し、かつ本措置の対象となる損害の限度を大幅に引下げることであります。それがためには損害の評価を急ぐ要があります。各地において非常に差があるように見受けました。
 第九には、国有林野の薪炭原木の払下げ、炭がまの設置等山村副業の振興のため特別の措置をとり、また国有林野特別会計は施業案を変更し、事業の繰上げ実施をとり、不足額を生じた場合は補正予算に計上すべきであります。山村では特に国有林の協力が望まれております。
 第十には温冷床苗しろの助成復活、保温折衷苗しろの助成強化、その他耕種改善施設の拡大強化をはかることであります。
 第十一には温水ため池、客土等水温上昇施設の強化拡充をはかることであります。
 第十二には農業に関する試験研究機関並びに農業気象観測機構の充実強化をはかり、明年度冷害の継続性を検討するとともに、農作物災害を未然に防止するため、災害発生予察事業、改良普及事業、植物防疫事業等との有効適切な連繋方式を再検討する必要があります。
 第十三には冷害及び第十三号台風被害対策の強力なる一環として、積雪寒冷単作地帯振興法、湿単法、急傾斜法その他特殊法の活用により、土地改良その他公共事業の補助対象面積の大幅引下げ、補助率の引上げ、予算並びに融資わくの拡大、総合助成施設対象市町村数の増加、農機具融資額の増大等を行うことであります。
 第十四には、本年度病害虫防除対策費として、さらに大幅増額し、薬剤費等において救済の措置を講ずべきであります。
 第十五には海岸堤防の復旧工事であります。それがためには海岸堤防決壊の復旧は、災害の拡大を防止するため、来年度までに一気に行うとともに、単に原形復旧にとどまらず改良工事を認めること、応急復旧費に対しても助成すること、補強工事を進めることが必要であります。
 第十六には塩害を受けた地域に対し、穿井、排水ポンプ、用排水路等、除塩施設に対する助成を行うことが必要であります。
 以上をもちまして私の報告を終ります。
#4
○井出委員長 次に北関東班吉川久衛君。
#5
○吉川(久)委員 去る十月九日より十一日まで三日間にわたり栃木、群馬の両県下における稲作の冷害状況を調査して参りましたので、その概要を御報告申し上げます。
 調査団は金子、吉川両委員をもつて編成し、工藤調査主事が同行いたしました。
 一行はまず十月九日宇都宮市の栃木県庁に集合し、小平県知事初め県当局並びに農業団体代表とともに、冷害対策に関する懇談会を開きまして、営農資金の確保、被害農家の消費食糧及び種もみの確保、また病虫害の防除対策及び有畜営農の確立等々緊急対策、恒久対策の両面に関しての要望を聞くとともに、対策の検討を行つたのであります。その内容等につきましては後に一括して述べることといたします。
 会議を終えるや、われわれはただちに現地に向い、まず河内郡絹島村に参りました。ここは稲の成育不良、軟弱徒長のため病虫害ははなはだしく、関東地方の冷害の典型というべき状態であります。次に塩谷郡大宮村及び箒根村を視察し、さらに那須郡に入つて狩野村及び大田原町を調査して宇都宮市にもどつたのでありますが、この両郡下の稲作は、苗しろ期より天候不順で成育の遅れがはなはだしく、出穂期に至つて平年より十日ないし十四日の遅れを見た状態でありまして、不稔粒きわめて多く、加うるに苗いもち、葉いもち、穂首いもちの続発を見たため、減収は現在において六〇%以上と目されております。
 宇都宮市を通過したわれわれは県南地方に向い、下都賀郡永代村を視察して足利市に到着、地元代表者と懇談の後、翌十日の早朝には足利郡筑波村及び久野村の現地を視察したのでありますが、この地方においても夏季における連日の降雨と日照不足により、いもち、二化めい虫及び従来見られなかつたうんかのために大被害を受け、特に晩生種水稲は出穂不能、稔実不良のためほとんど全滅の状態であります。
 以上、栃木県下の各地方について見聞しましたところを総合しますと、次のごとくであります。すなわち、本年は早春以来降水量少く、播種期は三日ないし七日の遅延を見、発芽成育も低温のため一般に遅れるとともに、二毛作田用のものについては、天候不良による前作麦及び菜種の刈り遅れから苗しろ日数に過剰を来し、かつ多雨寡照のため軟弱徒長の傾向にありました。
 田植え後は、初期の例年にない長期梅雨等に災いされ、成育は著しく遅れつつあつたのでありますが、この悪条件に乗じて葉いもち病が発生し、また二化めい虫が早期かつ広範囲に発生したので、県及び市町村においてかつてない多量の農薬を散布し、発生面積は、いもち病四万町歩、二化めい虫二万六千町歩にとどめることができたのであります。
 分蘗期においては、昭和の大凶作と言われた九年よりもさらに低温に経属しましたため、最高分葉期が七日ないし十日の遅延を見た結果、早中晩生種を通じて有効茎数は平年に比し一割ないし一割五分の減少を来したのであります。
 水稲作付面積の五六%を占める中生種は、八月下旬の出穂期が異常の低温に経過したため、低温障害による不受精穂、不稔粒が多数生じて、きわめて不良の状態にあります。また三六%の面積を占める晩生種は、九月以降の降雨と日照不足のため、各地において青立ち状態となり、苗しろ跡地、二毛作田等には穂首いもち病の発生激甚をきわめ、いまだかつてない大減収が予想されております。かくのごとく本年の稲作は悪条件の連続のため大打撃を受け、農家の経済その他物心両面に及ぼす悪影響は、はかり知れないものがあるのであります。
 さて栃木県を十日に出発して群馬県に向つたわれわれは、桐生市を経て勢多郡黒保根村に参り、主として字下田沢を視察しましたが、この村は標高二百五十メートルないし六百メートルに耕地が分布し、山間部の農民は、本年の冷害によつて供出米はおろか飯米にも事欠くありさまでありました。
 これより前橋市の群馬県庁におもむき、県当局及び農民代表等より、冷害対策に関する要望を聞き、かつ懇談を行い、休む間もなく現地に向いましたが、さつそく市内の水田に車をとめたところ、半作そこそこの惨状でありまして、平坦部の美田ですらこのありさまに驚かされた次第であります。
 続いて利根郡に入り、沼田町の水田を視察して後、利根地方事務所に参りました。この事務所からは町内の耕地が一望のもとに見えるのでありますが、黄金波打つ例年の光景は見られず、灰褐色のいもち病田と緑色の青立ち田の二種類のみがはつきりと認められました。また同郡池田村の山間部を視察したところ、ここは収穫皆無田が随所にある状態でありました。この利根郡、特に片品村、水上町等は異例の低温続きでありまして、平年作に必要な二十度以上の平均気温に七・八・九月を通じて達せず、郡下の減収は約六五%に達すると見られるのであります。
 翌十一日には吾妻郡嬬恋村に行き、特に干俣の高地を視察したのでありますが、ここは標高実に一千メートル以上でありまして、群馬県下とはいえ、東北地方以上の青立ち状態であります。吾妻郡は一般に山間地帯でありまして、はなはだしい冷害を受け、いもち病その他の病虫害を誘発するとともに、台風第十三号による稲の倒伏に続く穂首いもち病の蔓延により、収穫皆無田多く、皆無換算面積九百余町、約六二%の減収となつたのであります。
 以上、群馬県下の冷害状況を総合いたしますと次のごとくであります。すなわち、栃木県の場合と同じく、早春以来の異常天候は稲の成育の遅延を来し、六月以降は日照時間平年の半分以下という極度の日照不足及び低温によつて、平坦部においてすら相当面積の青立ち稲を生じ、これに加うるにいもち病の大発生によつて大減収を見るに至つたのであります。さらに八月下旬以降の異例な気温低下によつて分蘗不足、出穂不能、不稔等のものが特に山間部において多く、これに九月二十五日の第十三号台風による被害が累加されて、本年の不作は今春の大凍霜害とともに、農民に深刻な打撃を与えております。これらの被害を原因号に見まするならば、病虫害は被害面積約二万三千町歩、うち減収七〇%以上のもの一万八千五百町歩、冷害は面積約一万四千四百町歩、うち減収七〇%以上のものが一万五百町歩、第十三号台風による被害は、面積八千町歩、うち減収七〇%以上のものが七千三百町歩となつております。
 なお雑穀、果樹、蔬菜類についても、さきに述べました諸悪条件に災いされ、その収穫はいずれもきわめて悲観すべき状態にありまして、春の凍霜害によつて大打撃を受けた養蚕及び麦作とともに、農家の現金収入の道はまつたくとざされ、農民の苦悩は筆舌に尽しがたいものがあります。また余談のようでありますが、凶作の年は熊が出ると言われており、本年は熊がしきりに民家附近に出没しておりまして、利根郡下で六十余頭、吾妻部下で二十余頭がすでに射とめられ、例年は県下全体で十数頭であることより見て、いかに本年は野も山も大凶作の様相を呈しているかがうかがわれるのであります。
 以上栃木、群馬両県下における冷害調査の概要を述べたのでありますが、今回の大災害に対して、いかなる対策が望まれているか、以下申し上げたいと存じます。
 まず緊急対策としましては、
 一、本年産米供出については、凍霜害、冷害、病虫害、風水害等の的確なる実情調査に基き適正なる割当を行うこと。
 二、営農及び生活資金の長期低利融資を行うこと。
 三、被害のはなはだしい農家に対する政府所有食糧の売渡し及び代金の延納。
 四、病虫害の異常発生により農民及び地方公共団体が支出した莫大な農薬、防除器具購入費に対し国庫助成を行うこと。
 五、農業手形、農林漁業資金の償還期間の延長並びに利子補給を行うこと。
 六、実質的に検査規格を緩和するよう検査標準品を設定すること。
 七、農業共済保険金の仮払い並びにいもち病の最高被害限度の引上げを行うこと。
 八、救済公共土木事業、土地改良事業等を新規または繰上げ実施すること。
 九、優良種もみの無償交付または購入費助成を行うこと。
 十、地方税の減免及びこれに伴う平衡交付金の増額。
 十一、早期供出奨励金の交付期別延長とともに等外米の無制限買入れを行うこと。
 十二、薪炭林の払下げ並びに炭焼きがまの設置助成を行うこと。
 その他、中部、東海地区の調査班から出ました要望事項と同様なものがございますが、以上でありまして、その詳しい説明はこの際省略いたしますが、二及び三の項は何より農民の生活上の要件でありまして、その他の各問題につきましても、急速に研究し、財政的、金融的の具体策を実施する必要があり、農林省等において対策があるようでありますが、これらを早急に実施に移すとともに、法的措置を要するものにつきましては、すみやかに立法化をはかるべきものと考えます。
 次に恒久対策として、一、保温折衷苗しろなど冷害対策として効果ある耕種改善施設の強化並びに試験研究施設の整備を行うこと、二、家畜の導入、三、牧草及び飼料作物の栽培強化、四、果樹、特用樹木等の導入等があり、これも説明は要しないと存じますが、恒久対策の一に関連しまして、たとえば栃木県においては、全作付面積中、中生種稲が半分以上でありまして、早生種はわずか水稲八%、陸稲七%であります。群馬県においても、山間部においてすら県下の他地方と早中晩別面積の割合は大差なく、これが今回の大冷害を増加せしめる原因となつたことは疑いないのでありまして、今後の強力な指導を必要とすると痛感したのであります。また二以下は開拓地において特に要望された点であります。
 以上が今回の視察の概要でありますが、各県及び市町村におきましても、本年の重なる災害の対策については全努力を傾倒しており、今後法的、財政的に特別な措置を講じて、農民の再生産意欲を高めることが望ましいのであります。
 以上をもつて御報告を終ります。
#6
○井出委員長 次に東北班加藤高藏君。
#7
○加藤(高)委員 私ども第二班は、佐藤洋之助愚、佐藤善一郎君、川俣清音君、日野吉夫君の四委員に私、それに藤井専門員を加えた六名をもつて編成、茨城、福島、宮城、岩手及び青森の五県の冷害を調査いたしました。わずか五日間という限定された短期間に、できる限りの時間を利用いたし、五県を調査いたして参りましたので、ここに概略を御報告申し上げます。
 本年における気象状況を見まするに、各県とも春以来低温が続き、夏期に入りましてからも低温、寡照、多雨に終始したのであります。ただ、七月下旬ごろ若干好転いたしましたとはいえ、再び悪化し、特に八月下旬には異常低温が襲来いたし、昭和十一年以来の最低気温となり、青森県においては最低七・七度を示し、十度以下が三日にも及んだのであります。ために稲の発育は抑制され、軟弱短程、多蘗型のいわゆる凶作型発育の様相を示したのでありますが、特に中稲並びに晩稲の幼穂形成期、出穂開花期、登熟期の主要時期に低温、寡照及び多雨等の悪天候により、出穂遅延、開花受精の障害、穂総級数の減少、不稔粒の多発をもたらし、またこの不良天候はいもち病、二化めい虫等の病虫害を誘発せしめることとなり、今次の大凶作をもたらすこととなりました。なお本年は四、五月のころに凍霜害を受けて、養蚕、果樹、タバコ、茶等に多大の損害をこうむり、さらに冷害により水稲のみならず畑作にも非常な悪影響を与えておりますので、これらを総計した被害総額は驚くべき巨額に達するものと考えられ、農家経済に及ぼした影響はすこぶる深刻なるものがあります。
 次に各県の作況について申し上げますと、農林省農林経済局統計調査部の資料による九月十五日現在の水稲作況指数は、茨城県八六、福島県八二、宮城県八二、岩手県七七、青森県七二となつておりますが、私どもが現地において各県当局より聞きましたところでは、作況はこの指数よりずつと悪く、茨城県は六分作、福島県は五分作、宮城県は六・五分作、岩手県六・七四分作、青森県六・二五分作と申しておりました。もちろんこれは大体の概況でありますが、少くとも九月十五日現在の農林省の調査指数よりははるかに悪いものであると考えられました。
 今般の冷害は、特に八月下旬の異常低温による影響が著しいのでありまして、稲作も中晩稲が著しく被害を受け、なかんずく晩稲が特に著しく、私どもが見ました地帯は、どこでも押しなべて晩稲がひどい被害を受けております。また、この低温をもたらした直接の原因は、太平洋から吹きつけるいわゆるやませと称する冷風でありまして、岩手、青森の両県下は、八月二十二日以降数回にわたり水霜がおりる等の現象も見られたのであります。かような気象状況でありますために、被害は地域と品種とにより著しい差異を生じております。一般に海岸寄りの地域、山間部高嶺地帯に著しく、また品種から申しますと、晩生種、中でも多収穫性晩稲のものほど被害が大きくなつております。これを私どもが調査しました各県について見ますると、まず茨城県はこの五十年来ほとんど冷害の経験がありませんため、冷害に弱い晩稲の植付が多かつたため、その被害は予想以上に激甚をきわめておりました。中でも県北の東西両茨城、那珂、久慈、多賀等は八州千本、農林八号等の多収穫晩稲の作付歩合が七割ないし八割にも及び、至るところに数町あるいは十数町にわたり青立ちしている状況が見られたのでありまして、本県未曽有の凶作と称せられております。
 福島県も石城、双葉、相馬の三郡が著しく、ここでも農林一〇号、農林二九号、農林三〇号等の晩稲がやられております。宮城県も同様でありますが、本県は特に県南において著しく、かつまた私どもが見ましたところでは、同じ品種でも、同一場所で被害の著しいものと少いものとが混淆している状態でありました。県側の説明によりますと、植付時期の相違から来たもので、早く植付けたものは被害が軽く、遅れたものほど被害が大きくなつているとのことでありました。
 岩手県は沿岸地帯三・八七分作、北上山麓地帯五・二二分作、北部平坦地帯五・四一分作、奥羽山麓地帯五・九七分作、中南部平坦地帯七・四七分作となつており、ここでも沿岸及び北上山麓地帯が特に激甚であります。
 青森県におきましても上北郡、下北郡の太平洋海岸が特に激烈で、県の調査による作況指数は二四・六及び二九・七となり、これに次いで三戸郡は四九・四となつております。
 今般の冷害は青森、岩手の両県においては、大正二年のそれに匹敵するものと称せられ、また福島、茨城等では明治三十八、九年以降、五十年ぶりの冷害であると称せられるほどの激甚をきわめたものといわれておりますが、青森、岩手等では四、五年に一回は、規模こそ違え冷害を受けておりますので、品種につきましても耐冷性の強い藤坂一、二、三、四、五号あるいは陸羽一三二号または同一七二号等が普及しておりましたため、これほどの冷害をも、先ほど申し上げましたように青森六二・九、岩手六七・四という平年作対指数の程度に食いとめることができたものと考えられるのであります。本年は晩春から初夏にかけての気象状況から見まして、すでに冷害の危険が予想せられましたので、県当局及び試験場等では、内々その準備をいたしておりましたようであります。はたして八月下旬になりますと、異常低温が現われましたので、これに対する指導を講じました。青森、岩手両県のごときはすでに七月中に警告を発し、関係技術者会議を開き、改良普及員等を通じて冷害に対する技術指導を行つております。すなわち除草を早目に行うこと、ひえを抜きとること、低温の場合はなるべく水田に入らぬようにすること、水を落して登熟を早めるようにすること及び窒素肥料の追肥を控えること等保温に留意し、茎葉の軟弱化を防ぎ、登熟を促進することを目的とした指導をいたしたのであります。これとやや似通つた指導は茨城及び宮城でも行つておりましたが、特に茨城県では、冷害は随伴して誘発せられるいもち病の激発を重視して、これが防除をも強調しておりました。
 今般の冷害は青森、岩手等のいわゆる冷害常襲地帯においても昭和九年以来の激烈さで、大正二年のそれに比較すべきものとしており、福島、茨城県地方では、先ほど申し上げましたように五十年ふりの冷害であるといつており、近年まれに見る激甚さを持つたものであることは、今般の視察を通じて十分にうなずけるところでありました。特に福島県相馬郡原町東方海岸沿いでは、約千五百町歩の水田は、大部分が晩稲の銀坊主でありますが、これら千五百町歩がほとんど収穫皆無に近い状態であり、ここの農民諸君はただぼう然自失まさになすところを知らないという有様でありました。しこうして今次苛酷な冷害の襲来を通じて、日本農業の技術の輝かしい成果を明らかにされ、今後における冷害克服への曙光を示していることは、われわれを勇気づけるものであります。
 今青森県における凶年年次別収穫高を見ますと、次のごとくであります。すなわち大正二年作付面積六万四十七町、総収穫高十八万三千八百九十二石、反当収量三斗六合、昭和六年作付面積六万九千四百二十八町、総収穫高六十六万四千三百八十九石、反当収量九斗五升七合、昭和九年作付面積六万八千七百三町、総収穫高五十九万八千四百十三石、反当収量八斗七升一合、昭和十年作付面積、六万八千九百八十七町、総収穫高五十三万八千五百九十三石、反当収量七斗八升一合、昭和十六年作付面積七万一千五百四十六町、総収穫高七十一万一千百六十四石、反当収量九斗四升四合、昭和二十年作付面積六万四千七百六十八町、総収穫高五十二万五千九百四十七石、反当収量八斗一升二合、昭和二十八年作付面積七万三百四十六町、総収穫高九十六万四千八十五石、反当収量一石三斗七升でありまして、反当数量を指標として見ますと、大正二年に比肩するといわれる本年の冷害において、反収は大正二年の三斗から本年はその四倍以上の一石三斗七升に当つているのであります。また昭和六年は大正二年のそれに比して三倍以上に当り、さらに近年における冷害大凶作として知られている昭和九、十年の両年もそれぞれ八斗七升一合、七斗八升一合となり、大正二年に比して約二倍半の反収をあげていることは、昭和初頭から冷害に対する技術的対策が著しく効果を発揮し始めたことを示していると思います。この対策は二つの技術的支柱によつて構成されていると思います。すなわち一つは耐冷性新品種の育成固定とその普及でありますも耐冷性品種としては、先ほど申し上げました陸羽一三二号、同一七二号、藤坂一号、二号、三号、四号、五号等が岩手、青森両県には広く普及しており、その耐冷性の強い性質により冷害を相当程度食いとめております。また他の一つは保温折衷苗しろの普及によりまして、健苗を育成するとともに早期植付を可能にし、従つて収穫期が従前に比して二週間ないし三週間程度早くなり、これによつて八月下旬または九月上旬襲来する異常低温からのがれて収穫を確保することができるのであります。現在冷害に対する技術的対策といたしましては、この二点を中心といたし、その他の保温対策、病虫害対策等は補助的役割を果すにすぎませんが、おそらく今後におきましても冷害克服の技術的対策といたしましては、この二点を中心として一段と強力に促進することが最も重要であろうと存じます。
 私どもは藤坂一号から五号までの新品種を育成した青森県藤坂農業試験地をも視察いたしましたが、昨昭和二十七年には藤坂五号をもしのぐ新品種八甲田を青森県の奨励品種に指定いたしております。八甲田は耐冷性、耐病性が強く、かつ多肥栽培にも適し、晩植栽培における優良品種であります。
 次に今次冷害に対し、県当局のとつている対策について申し上げますと、まず第一に各県とも被害の実態把握に努めておりますが、部分的な坪刈り、脱穀調製等の結果は予想以上に作況は不良であると申しておりました。茨城県北相馬郡北文間村は県南で、被害は比較的軽微の方でありますが、農林上九号について刈取りの上脱穀調製いたしてみました結果は、反収八斗であり、かつしいな、青米等を多量に含み、品質もすこぶる不良であります。ここに持参いたしてございますので、後ほどごらんを願いたいと存じます。また被害の程度につきましては、県当局の調査と農林省統計調査部との間には相当の開きがありまして、物議をかもしている実情にあり、一日も早く正確な調査を完了して、実態を把握いたし、実情に即した供出割当をいたすことが最も肝要であろうと存じます。また各県ともこの冷害を契機として、食生活改善を真剣に考え始めたことは、特に注目に価すると思います。茨城県西郷村のごときは、全村一丸となつて押麦及び粉食の奨励をはかり、また学校給食は全部パン食による完全給食にする等の緊急措置を講じ、さらに全村一致して犬を飼うことをやめ、家畜飼料にはできる限り穀類を用いないようにすること等により、少くとも今後一千石程度の節米を期し、もしそれによつて余裕を生ずるならば供出にも応ずる等、真剣な努力が払われておりました。また岩手県上閉伊郡の上郷村のごときは、この冷害を村自体の力によつて切り抜けようと、異常な努力を払つており、たまたま視察に来られた知事から、なぜ早く県に相談をしないのか、県としてもできる限りの援助を行うからとしかられたというほど、はでではありませんが、東北農民特有の質朴な自力更生の自奮心に燃えているところも見られ、私どもを非常に感激せしめたのであります。
 これは一、二の事例にすぎませんが、至るところで、できる限り自力を尽すから、その力の及ばないところについては、ぜひ国の援助の手を差延べてほしいと申し、この冷害を契機として、食生活の改善はもとより、進んで営農の改善、生活の改善等に及ぼそうとする気構えが各所に見受けられたのであります。
 次に各県当局及び現地農民各位から寄せられたる要望は、農業再生産の確保に関することはもちろん、農民生活全般にわたり広範囲のものでありますが、それらにつき重要なる事項について御紹介申し上げたいと思います。
 一、営農資金の確保であります。特に短期資金については、さしあたり秋まき麦用肥料資金の確保を重点的に考慮すべきこと。利率償還期間等については九州水害に準ずること。
 二、農業手形及び開拓者資金償還の特別措置を講じ、農業手形及び開拓者資金の償還を一年程度延期するとともに利子の減免を行うこと。
 三、農林漁業金融公庫から融通を受けた資金の償還について、この際とりあえず一年の延期を行うとともに、同公庫の融資わくの拡大をはかるべきこと。
 四、伐採調査資金わくの拡大を講ずること。
 五、自作農創設維持資金の増額と反当り単価の引上げを行うこと。
 六、農業共済金の仮払いを速急に行うこと。
 七、家畜導入資金の償還については、この際少くとも一年間延期をはかるとともに、被害農家で保有家畜を手放すことのないよう資金対策を講ずること。
 八、農家食糧の確保、自家用飯米の自給不可能の被害農家に対しては、飯米の配給、政府買入れ麦類の低廉な価格による払下げ、または貸与を行うこと。
 九、土地改良及び林道事業を実施して、被害農家の現金収入の道を講ずること。
 十、明年度水稲種もみについては、特に耐冷性品種の確保をはかり、被害農家に無償配布する等強力な推量を講ずること。
 その他税の減免、平衡交付金の増額等、各般の事項について要望がございましたが、これら要望につきましては、当農林委員会にもしばしば陳情されておりますので、詳細は省略いたしたいと存じます。
 なお宮城県におきましては、矢本飛行場の防風林伐採による冷害の影響について調査してほしいとの要望がございましたが、時間の都合上割安いたしました。
 最後に今般の調査にあたり、私どもが痛感いたしました点を申し上げて、御参考に供したいと存じます。
 一、今般の冷害は、地方、地勢、品種、挿秩の時期等によりまして、同一場所においても被害に著しい差が認められますので、供出割当については正確な調査が必要であり、可能な限り一筆ごとに作況調査を行つて、実情に即した割当を行う必要があります。
 二、供出促進の対策として、この際に迅速に実施すべき措置として、政府買入れ麦類を被害農家に対し特別価格で払い下げるか、または明年収穫期まで無利子で貸与し、希望に応じ現物償還を認める等の便宜的手段を講ずる必要があります。
 三、再生産に必要な営農資金の確保をはかるべきことは当然でありますが、特に今秋の麦作用資金の融通を速急に行い、麦類の生産増強を強力に行うこと。なおこの種の営農資金は一戸当り一万円程度を必要とするものと推測されます。
 四、国民食生活の安定のため、特に麦類の輸入を促進して、国民に安心感を与えるとともに、わが国の食糧生産事情から見て、米食にのみ依存することはとうてい不可能でありますから、この際食生活改善につき、総合的かつ長期的計画を立て、これを現在農村に盛り上りつつある食生活改善と結びつけて、全国民運動として展開するようにすること。
 五、冷害克服のための技術的改善につき、今後一層これが系統的促進を期すべきで、特に耐冷性の強い多収穫品種の育成固定とその普及、並びに保温折衷苗しろの普及に一段と力をいたすべきものと考えます。また青森、岩手両県のごとく、常に冷害の危険にさらされている地帯は別として、宮城、福島、茨城等のごとき冷害の危険の少い地帯では、どうしても冷害に弱いが収穫の多い晩稲を多く植えつける傾向にあるをもつて、これらの地帯についてる早生及び中生、なかんずく早生の植付歩合をもつと多くするよう指導する必要があります。
 簡単でありますが、以上をもちまして私の報告を終ります。
#8
○井出委員長 最後に北海道班安藤覺君。
#9
○安藤(覺)委員 北海道班は井出委員長を初めとし、足立、中澤、芳賀、安藤等各党を網羅する五委員が参加いたしました。十月九日早暁空路札幌に飛び、待ち受けた農業団体代表者、続いて道庁において道庁当局より状況の説明並びに要望を聴取し、四時半ころより近郊の手稲、琴似両村の稲作を薄暮に至るまで視察し、札幌に投宿、翌十日は午前八時半旅装を整え、穀倉地帯たる石狩支庁管内の恵庭、千歳、空知支庁管内の長沼、岩見沢、雨龍、妹背牛等の各町村を歴訪、沿道を視察陳情を受けました。当管内には相当広漠たる泥炭地が芦荻の茂るにまかせて放置されておりますが、将来幹線水路、暗渠排水、客土等により良好なる耕地となし得る由であります。
 日没ころ旭川市に入り上川地区関係者より陳情に接し、同市に一夜を過しまして翌十一日八時半行動を開始し、まず永山に道立農事試験場支場を訪れ、耐寒性優良品種として固定化試験実施中の風連坊と農林三四号交配概況を視察、場長に参考人として近日上京方を依頼、比布において福島の林業大会に急ぐ委員長及び足立委員とたもとをわかち、一路北進、和寒、剣渕、士別、名寄等を順次視察、至るところ切切たる訴えを受け、予定時間を経過いたしました。和寒付近はばれいしよの生産多く、人造米の奨励と澱粉価格の引上げを望んでおりました。小閑を利用し付近のビート工場の視察を行い、同工場は目下原料の搬入が行われておりますが、この地方のビートの歴史は、畑作地帯の同地方が往年の冷害の苦き経験にかんがみ、ドイツより種を導入して奨励し、今日に至つたとのことであります。
 次いで鉄道によりオホーツク海沿岸の網走地区の興部に到着、夜ふくるまでもより町村代表者の陳情を聴取いたしました。同地方の冷害は、耕地の大半が重粕土かつ傾斜地が多い低位生産地で、多雨による排水不良にも原因いたしまして、まことにはなはだしいもりがあります。また同地方は十三号台風にも大被害をこうむりたるにもかかわらず、陲辺の地とて世上に喧伝せられることもなく、災害復旧の緊急なる処置が、特に心土耕耘、傾斜地の土壌流亡防止、暗渠排水、客土等の土地改良事業及び集約酪農地区に指定等が強く要望されました。
 十二日は八時トラツクにて出発、南下沿道の水害、冷害を視察、紋別より汽車に乗りかえ、遠軽に下車、付近町州代表者と懇談、林野整備臨時措置法り延期、牧野改良、郷倉制度の復活等の要請を聞き、再び自動車をかり、留辺蘂、相内を経て網走地区の中心都市北見に到着いたしました。市役所にて市当局より陳情聴取、続いて北見統計調査事務所を訪れ、二二%という驚くべき作況報告を聴取、それより刈取中の近村の水田に農民を慰問し、かつ農民指導層の人々と懇談後、夜行にて札幌に向け出発、十三日朝札幌到着、小憩後農業団体代表者の陳情を聴取、さらに酪農関係者の意見をも聴取いたしました。わが国食糧問題解決のために酪農振興がいかに重大なる役割を演ずるかを痛感いたしました。すなわち同事業の振興により、生乳及び乳製品を一層安価に供給することができ、食習慣を改みることにより、国民体位の向上を期し得られるのであります。乳牛増殖上最大の問題は飼料であつて、従来成功しがたいと称せられた水田酪農においても、飼料作物の輪作栽培を行い、二箇年間飼料として採取、翌年はすき込むという方法により、著しく地方を増進し、本年の異常気象下においても平年作をあげている者があるとのことでありまして、この現象は今春の凍霜害被害地区にても見受けられたことであります。この方法によりますると、漸次小面積の耕作反別にて能率が増進され、同量の米の収穫をあげ得られるのでありまして、総合的食糧増産の見地より興味あることであります。
 以上をもつてようやく予定の全行程を踏破し、すでに数度の降霜に、山野は至るところ紅葉美しく装えども、稀有の天災に人々の面上ただ暗沮、これが要望に答うべく心を砕きつつ、空路帰京した次第であります。
 今回の調査により特に施策として痛感いたしました点を申し述べますれば、一、種もみ確保の方途を講ずること。凶作のため明年度再生産すべき種もみを欠き、また経営の改善安定のため早生種への切りかえを志しても、希望種子の入手に悩んでいるので、すみやかに種もみ値段を決定し、また必要な購入資金融通の措置を講ずべきであります。しかして価格としては生産者、消費者とも一俵三千円を当該地方の経済的事情にかんがみまして要求しておりますことはけだし妥当と存じます。なおこれに関連し郷倉制度の復活が要望されております。これは昭和の初めごろ、凶作対策として道内の米作地付に奨励普及し、常に二箇年分ぐらいの種もみを備蓄貯蓄したものであり、食糧統制とともに自然消滅したものであります。完備せる倉庫が各地に現存しておりますので、今後の生産確保のため何らか復活活用の方途を講ずべきであります。
 二、飯米確保の措置を急速に実施すること。三分作以下の飯米なき農民には特に急速に、またこれに次ぐ不足農家に対しても低廉なる払下げと代金延納の措置を講ずべきである。
 三、土地改良を中心とする救農土木事業を実施すること。罹災農民に対し現金収入の道を与え、あわせて再生産の増進のため、救農土木事業を興すべきでありますが、同地は降雪が近く積雪が深くなりましては作業もできないので、特に降雪期までに実施し得るよう暗渠排水、農道客土等の土地改良事業を行うこと。なお従来は二十町歩以上の団地を対象としているが、一層小団地の五町歩以上のものにも補助の道を開くべきであります。また国有林に隣接せる畑作地帯には間伐あるいは林道に対し、治山の目的をかねて救農事業を行うべきでありまして、これが最も眼目として考えておかなければなりませんことは、こうした事業がすべて罹災農民の直接の手において行い得る事業であることを必要といたします。
 四、営農資金融通の道を講ずること。北海道における農業手形発行額は八十一億四千八百万円であつて、寒冷地帯として特に依存度が高く、全国の約三分の一を占めている。そのうち借りかえ額は三十億円、営農資金所要額は二百六十六億円、内容は融資額八十二億円、内訳は、農手借りかえ、資金四十億円、農協運営資金四十四億円、ばれいしよ及び雑穀に対し農手わくの拡大を希望するもの八億円で、これが利子率としては六、七月水害の特別措置法の特別指定地区の利率を望んでおり、また凶作による創痍の回復には相当の期間を要するので、特に長期資金の融通を要すべく、この場合少くも五箇年償還とし、利子補給をなすべきであります。また農林漁業資金償還(本年償還分は約一億円)延期の措置も必要で、これに対しては、年賦償還なるゆえ、凶作期の一年延期を望んでおるのであります。なお単協は農村経済の中核体であつて、再建整備促進法によりようやく立ち直りをしつつある際、冷害に遭遇し、貯金払いもどしの増大、貸付金の回収困難、掛売金の増大等により、はなはだしく運営資金の枯渇を来しているので、急速に運営資金の確保が望まれるのであります。しこうして冷害対策に対する資金の運営は、すべて農協を中心とすべきであります。
 五、畑作の冷害を閑却してはならない。北海道は、全耕地七十四万町歩中、水田十四万町歩、畑六十万町歩であつて、畑作の占める割合はすこぶる高い。今回視察せる上川及び網走両支庁管内における本年の異例な現象といたしまして、春以来凍霜害、ひよう害、六、七月の水害、多雨、冷害等の連続により、播種、発芽の遅延、発育不良、交配不完全、病虫害の多発、成熟不十分等を来し、耐寒性のばれいしよ、豆類、ビート等も五分ないし七分作の減収を示しておるのであります。これらはいずれも共済の対象外であるので、特に水稲の冷害に準ずる取扱いをなすべきであります。またこの地帯は米作の限界地で、多くを期待することができない。従つて、すでに畜産に経験と施設基盤を有する当地方を、逐次集約酪農地帯に指定し、立地条件に適応せる農業経営の確立をはかることが最も適切であると存じます。
 六、試験機関の整備拡充。終戦後、機構改革により試験機関が著しく弱体化したが、道民の試験機関に対する信頼感はすこぶる強いものがあるのでありまして、急速にこれが整備拡充が望ましいのであります。
 次に、参考のため旭川統計調査事務所支所にて調査いたしました本年度産米の作柄の状況を申し述べますと、次の通りであります。すなわち本調査は、北海道で最上位に位する同支所管内旭川市、東旭川村、永山村、東川村、神居村の一市四箇村の水稲耕作反別九千六百五十一町歩、サンプル調査箇所百六箇所につき調査をいたしましたところ、平年基準反収一石九斗七升に対し、本年は六六%、昨年に比し五八%であります。また品質については、七反歩より十俵、すなわち反当六斗を収穫せる東鷹栖村藤木忠平氏産のものを七段ふるいにかけたところ、合格米が約五割、反当三斗という結果が出たのでありまして、くず米が著しく多いことがうかがわれます。
 なお道庁、議会、農業団体、町村等より幾多の要請がありましたが、そのうち主要なものを摘録すれば、次の通りであります。
 一、水稲温冷床並びに保温折衷苗しろ設置の補助を復活増額すること。これらの効果は本年の冷害において最も顕著に立証されておるのでありまして、今後ぜひとも継続奨励せられることを熱望してやみません。
 二、供出割当は実績に即し、適正なる割当を行われたい。本道は地域が広いので、統計収集に時日を要し、なるべく最新のものでないと正確を期しがたいのであります。
 三、天候のため収納調製作業が遅れているので、早場米供出期限を一期分を二期分まで延期せられたい。
 四、農業共済金の早期概算払いをせられたい。
 五、自作農転落防止のため、維持資金融資のわくを拡大するとともに、償還延期並びに利子の免除をせられたい。
 六、病虫害防除薬剤及び防除諸経費については、全額国庫負担の措置を講ぜられたい。
 七、自給肥料、飼料確保のため、国有未開地、国有林のささ竹、雑草の無償払下げを即時実施するとともに、各季間のため、濃厚飼料の購入費の融資並びに利子補給をせられたい。
 八、国有林の原木を薪炭林として無償または廉価で至急払い下げられたい。
 九、被害農家に対する税の減免措置を講ぜられたい。
  1 所得税必要経費の繰越し控除について。記帳能力を持たざる罹災農家の白色申告に対し、収支計算書を添付することにより、青色申告と同様の取扱いにせられたい。2 地方税に対する特別措置について。本道は寒冷かつ住民稀薄で、羅災農家は担税能力を欠き、地方税法による固定資産税及び住民税の均等割は過重であるので、減免の措置を講ぜられたい。
 十、河川堤塘地使用料の減免措置を講ぜられたい。
 十一、羅災農家の農業生産資材並びに羅災者用救恤品に対し、鉄道運賃を減免せられたい。
 十二、農業協同組合の経営特別指導に対し助成せられたい。
 十三、土地改良事業資金融資わくを拡大せられたい。
 十四、小規模灌漑、暗渠排水、馬そり客土、農道、温水ため池事業等の推進と土地改良事業に対する補助率を引上げられたい。
 十五、牧野改良事業に対して助成せられたい。
 十六、開墾作業補助金並びに補助率の増加、代行開墾建設工事費の増額、開墾建設付帯工事並びに小団地工事費の増額及び事業費の拡大をせられたい。
 十七、土地改良事業及び耕土改良事業の強化、有畜農業の促進、てん菜糖業の振興、耕地防風林の造成等により、農業経営の改善をはかられたい。
 十八、積寒法に基く総合助成町村の増加、農業改良普及員の充実強化、試験調査機関及び農業気象観測機関の拡充強化により、農業技術の向上と農業の安定をはかられたい。
 十九、農業協同組合に対し、農畜産技術員並びに土地改良技術員設置費の助成をせられたい。
 二十、凶作に伴う市町村財政の窮乏を補うため、平衡交付金、起債の増額等の措置を講ぜられたい。
 二十一、農業災害補償制度の強化。
 二十二、肥料価格の引下げ。
 二十三、開拓者営農資金の償還猶予並びに利子免除。ことに開拓者におきましては、経済基盤まことに脆弱の折から、この災害にあいまして再び立ち上り得ない状況にあることを付言いたしもおきます。
 二十四、開拓者営農資金の特別再融資の実施。
 二十五、開拓者営農振興資金(開拓融資基金)借りかえ融資並びに利子補給。
 二十六、伐採調整資金の融資わくを拡大し、幼齢林の濫伐を未然に防止すること。
 以上いずれも急速かつ具体的なる予算を伴う実行が待望せられるのであります。由来北海道におきましては、四、五年おきに今回のごとき冷害凶作に襲われる傾向があります。その都度品種及び耕作技術の改善進歩を見ておりますが、昭和二十年来順調なる豊作が続いておりましたため、多くの農民はやや油断した傾きがあり、一面供出制度に伴い営農方針を安全主義より多収穫主義に置き、精農はこのたびはかえつて大きな被害を受けたという事例が見受けられるのであります。さりながらこれら不毛の原野にいばらを切り開いて祖業を受け継ぐ人々の中には、あらゆる苦難を克服して、雄々しく再生産に立ち上らんとする烈々たる開拓精神、気魄の発露を随所に見受けますることはまことに心強きことでありまして、中央の施策これと相まつてよろしきを得ますならば、一層各般に考慮改善を加え、しこうしてやがてのさらに多くの増産の倉といたすことができようと存ずるのであります。
 なお詳細なる資料は、専門委員室に整備いたしてございますので、御高覧を願えますれば仕合せと存じます。
 以上をもつて御報告といたします。
#10
○井出委員長 ただいまの各班の調査報告に関して発言があれば、これを許します。
#11
○松岡委員 私はただいま各委員の御報告をつぶさに承りまして、実に感激いたしたものでございます。あるいは私の聞き漏らしかもしれませんが、内陸方面における御報告の中に、今回の冷害について最も深刻な打撃を受けておる者は開拓者であります。ただいま安藤君の御報告の中に、北海道のことが述べられておりますけれども、内陸方面における開拓者の実情をつぶさにごらんいただいたのかどうか。まことに短い期間の御調査でありますから、容易なことでないことは私はよく了承しておりますが、この点について、私は別個に、われわれ党員として、部長である山崎猛君と私は、開拓者の実情をつぶさに見たのであります。私は山形県を見ました。山崎猛君は長野県を見たのであります。開拓者の実情は収穫皆無であります。ようやく立ち上らんとするものがここにぺしやんこになつたことに対しては、実に同情すべきものがあるのでございます。この開拓者の実情をつぶさにごらんになつておられましたならば、その点をお聞き申し上げたいと思うのでございます。ただいまの安藤君の御報告の中に、北海道のことはありましたけれども、内陸方面における開拓者の苦心はこれに決して劣るものではありません。開拓者が、奥地において悪条件のもとにおいて奮闘して、ようやく何とかなろうとするときにおいてぺしやんこになつたことに対して、政府は開拓者をいかに救うか、これは重要な問題であります。この点について、あるいは私の聞き漏らしかもしれませんが、非常に短い期間の御調査でありましたが、開拓者の生活そのものを現実にごらんになつていただいた委員の方がおありでございましたならば、私に知らせていただきたいと思うのであります。このことを私はあえて開拓者のためにお願い申し上げる次第でありますから、この点あしからず御了承いただきたいと思います。
#12
○平野(三)委員 ただいま松岡君から開拓地の窮状についてのお尋ねでありまするので、私の見ました範囲においてお答えを申し上げます。
 先ほどの報告の中にも、開拓地の状況についても若干触れたつもりでありまするが、何分にも視察は今回はわずか五日間に五府県も見るというようなわけで、特に開拓地について視察をしたということはございませんが、これは先ほどの報告の中にもあります通り、今回の冷害は特に高冷地がはなはだしいのでありまして、開拓地に限らず、大体七百メートル以上の地帯は、ほとんど収穫皆無である。これはただいま北海道の御報告にもありました通り、全国的に共通した状態であると存じます。従つてそれ以上の高冷地に多い開拓地としては、まつたく悲惨な状態でありまして、特に開拓地が深刻な打撃を受けたということは、松岡君のお話の通りでありまして、われわれの報告の中に、当然これは包含されておるのであります。なおまた低地におきましても、特に台風十三号の地帯においての開拓地は何分開拓民の住家が堅牢でありませんために、屋根が吹き飛んだり、あるいはほとんど倒壊しておるというような次第でありまして、特にこれらの点についての開拓民の被害が激甚であつたわけでございます。これの対策につきましての要望は、これまた各委員の御報告と大体同一でありますが、しかしながら特に開拓民については、これらの要望の条件を緩和する必要があるということは当然でありまして、先般の凍霜害に対する対策を本委員会でおつくりになりましたときにも、この中でも営農資金については六分五厘でありましたが、開拓民については五分五厘、あるいは償還期限も二年でありますけれども、開拓民に対しては三年にするというふうに、特別の措置をとつておるわけでありまして、今回各委員の要望を加えました報告についても、開拓民についてはいずれも、それぞれ条件を緩和する必要があると存じます。特に国有林の払下げであるとか、あるいは開拓地の建設工事、附帯工事、また開拓道路の建設というようなものについては、特に政府に対する要望が強くあり、またこれは当然行うべきであると思うわけでありまして、近く水害対策委員会においてつくられます立法についても、あるいは本委員会でこれからいろいろ御研究があろうと思いまするが、こうした立法につきましても、開拓民については特別の条件を出すべきであるということを、私としては感じておりまするし、各委員の御報告もそういう点が含まれておるわけでありまするので、御了承いただきたいと思います。
#13
○井出委員長 他に御発言もなければ、井谷君よりかんしよの問題について発言の要求がありますのでこれを許します。簡単に願います。
#14
○井谷委員 前十六国会におきまして、農産物価格安定法が制定され、これに伴いまして近くかんしよ基準価格、切りぼしかんしよ、澱粉の価格が決定されることになりますが、この価格の決定いかんは、いも作農家の死活問題でありますから、すでに収穫を前にいたしまして、九州、四国のいも作農家の代表は、先般福岡県に集合いたしまして、九州、四国かんしよ対策協議会を結成して、大要次の決議をいたしたのであります。
 一 昨年産かんしよ生切干及びでん粉の滞荷を本年産かんしよ及びかんしよ生切干の価格に悪影響を及ぼさないよう早急適切な方法をもつて、処理されたいこと。
 二 かんしよ類の消費を阻害する糖蜜、トーモロコシ、タピオカ等の輸入を抑制又は禁止せられたいこと。
 三 原料基準価格及び買入基準価格の設定に当つては、左記の生産費を下廻らないよう決定のこと。かんしよ、生切干――貫当り、一四六円(長崎県一四九円九一銭、愛媛県一四二円八二銭の平均とす)生かんしよ――貫当り、三六円(長崎県三五円七四銭、愛媛県三六円二二銭の平均とす)
 四 法第二条の買入数量については市価が常に買入基準価格を下廻らないよう決定のこと。
 五 国営酒精工場においては必ずかんしよ又はかんしよ生切干を原料とし、その買入価格は一般市価を下廻らぬこと。
 しこうしてこの九州、四国かんしよ対策協議会の代表者は、数日来関係各省を訪問して、この決議の内容を説明陳情いたしておりますから、政府においては御承知のことと存じますが、ただいま私があらためて本委員会の御了解と御善処を得たいといたしまするゆえんのものは、これらいも作地帯の農家は、若干の麦作とこのいも作によつて生活しておるのでありますことにこれらの土地は、先年制定されました急傾斜地農業振興臨時措置法の適用を受ける地域、いわゆる耕して天に至る、これ貧なるかなと称されておりまする地帯であります。その若干の麦は、本年の第二台風と長雨によつてほとんど腐敗させてしまいましたから、命と頼むのはこのいものほかはないのでありますが、そのいもが昨今伝えられておりますような安値であつては、これら農民はこれからいかにして生きるのであるかという大きな問題に当面をしておるのであります。私は決してこのことを針小棒大に誇張して申し上げておるのではありません。これはまつたく事実であるのであります。かつて政府は戦時中また戦後においても、あの食糧飢餓を切り抜けまするために、みかん畑や桑畑は不必要である、食糧増産の確保こそが急務であるという国策のもとに、これらの農家のみかんを切り桑株を掘り起して、すべてがいわゆる滅私奉公のまことをもつていもづくりに献身努力をした行為こそは、まことに頭の下るところでありましたが、それが今日やや食糧事情が窮迫を脱しておるからといつて、切捨てごめんの態度をもつて政府が臨まれるということは、われわれ納得できないのであります。政府の反省を求めなければならないのでありますが、そこで私の申入れたいことは、農産物価格安定法にはその買入れ価格は農林大臣がおきめになるようになつておりまするが、すでにその時期が切迫しておる今日、政府は本年産のかんしよと、かんしよ生切りぼしを幾らに買上げるお考えであるか、九州、四国かんしよ対策協議会の要望するほどの買入れ価格をお認めになるかどうか。昨年政府が買上げましたかんしよの生切りぼしがそのまま各地の倉庫に死蔵されておりますが、これらの処置をどうするか、これが本年度の農家のかんしよ及びかんしよ切りぼしを圧迫して、買上げ数量及びその価格に影響することはないか、また家畜の飼料用として輸入されておるとうもろこしが、アルコール用として工場に横流れしておる事実がありますが、この事実に対しまする対策はどう立てられるのであるか、次に国営酒精工場において、糖蜜をもつてアルコールを製造されております。これはかんしよをもつて製造するよりも安価であると聞いておりますが、これは私の前述いたしました食糧増産のため、国が農家に多くの犠牲を強要したこれまでの過程を考慮して、仁政に立脚して糖蜜の輸入を禁止し、かんしよ及びかんしよ生切りぼしをもつてアルコールをつくることを原則とする建前をとることはできないのであるか。糖蜜の輸入をとめますならば、かんしよ生切りぼし七百万貫の消化ができると聞いておるのでありますが、これに対する通産省の考え方を承りたいということと、なお黄変米の払下げによる酒精の製造、これも中止していただきたい。そのような要望を持つておるものであります。大臣その他関係の御答弁者がおられないことでありましたならば、御答弁は待ちますから、後刻において責任ある御解明を得たいと思います。それとともに本委員会において、農産物価格安定法がこれが低価格安定法にならないように、御配慮くださるようにお願いいたします。以上であります。
#15
○井出委員長 ただいまの井谷君の質疑に対しまする食糧庁長官の答弁は午後に留保いたしまして、この際通産省から渡辺アルコール第二課長が見えておりますので、その点に関する限りの御答弁を願います。
#16
○渡辺説明員 通産省が現在工業用のアルコールを製造しておるわけでありますが、現在の工業用のアルコールの価格というものが、海外のアルコールの価格に比しまして非常に割高であります。約倍以上の価格になつておりますが、アルコール専売会計としましては、化学工業の重要原材料である工業アルコールの価格を極力下げるように日夜努力しておるわけでございます。また工業アルコールの製造原価中、原料費というものは相当のウエイトを占めておりますので、アルコールの価格を安くしようとする際には、どうしても安い原料で製造して行くという措置をとらざるを得ないわけでございます。またそういう立場にある反面、アルコール専売法制定の当時も、いわゆる農村振興対策というものがアルコール専売法の制定の一つの目的でもあつた関係もありまして、また政府工場が大部分かんしよ畑のまん中にあるという立地条件から見まして、わが国におきまして、工業アルコールはやはりかんしよと切つても切れない縁があるというような関係がありまして、生いもの時期におきましては、全数量を生いもで製造しているわけでございますが、現在の生いもの価格が若干、アルコール・ベースから見た場合に高いというような関係で、生いもの時期以外には安い糖密でアルコールをつくりまして、その生いもによる割高の工業アルコールを安い糖密の工業アルコールでならして、プールして工業アルコールの価格をきめておるわけでございます。さような関係で工業アルコールとしましては、極力その価格を引下げるという強い要請がありますので、その調整を生いもと糖密というような関係で調整をしているわけでございます。ただ工業アルコールの価格を上げますと、競争品といいますか、溶剤関係あるいは食醋関係というような面におきましては、競争品に駆逐される、そして工業アルコールの生産量も減るというような関係もありまして、われわれとしては、極力工業アルコールの価格を引下げて、需要を喚起し、生産量を増して、原料たる生いも等も極力たくさんこなして行くというような措置をとつて参りたい、こういうような考えでおります。また昨年産の切りぼしかんしよにつきましては、目下農林省といろいろ買上げにつきまして折衝中でございます。
#17
○井谷委員 そうすると、通産省の方ではアルコールの製造の単価さえ安くなればいい、国内の農産業はどうなつてもいい、こういう切り離したお考えなのですね。
#18
○渡辺説明員 先ほども申しましたように、工業用アルコールの価格というものは極力下げるべきだ。これはアルコールを使用する化学工業の国際競争力を培養するという面から行きましても、そういう非常に強い要請がある反面、またわが国におきましては、アルコールとかんしよとの関係は非常に密接なものがありますので、糖密が安いからといつて全量を精密でやるというような措置はとれませんので、生いもの時期には生いもを使い、その割高なアルコールの価格引下げのために、それ以外の時期には安い原料でアルコールをつくつて行きたい、こういうように考えておる次第でございます。
#19
○井谷委員 私どもの方の地方におきましては、生いもからとりましたアルコールは、酒屋さんへまわして、お互いに飲んでおると考えておるのですが、工業用と酒屋さんにまわすものとの比率はどういうふうになつているのですか。
#20
○渡辺説明員 今年度の専売アルコールから酒用に流れるアルコールの数量は、まだ国税庁との折衝段階中で、明確にきまつていませんが、昨年度におきましては工業用アルコールの総販売量は約二方三千キロでありまして、そのうち酒用にまわつたのが四千百キロ程度だと思いますが、四千キロ強という数字であります。
#21
○井谷委員 食糧庁と御交渉になつておるという昨年の切りぼしの使い方は、どういうふうにお使いになるのですか。
#22
○渡辺説明員 これは一般の工業用アルコールの製造に使うわけでございます。酒用に当てるという考えは持つておりません。
#23
○井谷委員 昨年の滞貨を工業用にお使いになるということは、昨年のは今度そういうふうに使えばなくなるんだから、今度また買い上げていただくものをそういうふうにたらいまわしにやつていただけば、この問題は解決がつくと思うのです。そこまでの腹はきまらぬのですか。昨年度だけのお考えですか。
#24
○渡辺説明員 本年度の生産計画に対する原料の割当は一応きまつておりまして、資金的な面、あるいはそういう原料をたくさん使うことによつて一般会計に納付する金額が減るというような点がありまして、今後昨年産の切りぼし対策の方につきましては、いろいろ関係省に折衝を経なくてはならないと思いますが、現在の食糧庁の手持ちといいますか、一応七百万貫程度と聞いておりますが、それを全量買入れいたしますと、工業用アルコールに換算いたしますと、一万キロでありまし、て、その全量を買入れるか、あるいは今年度中にそれを全部買入れるかどうかというような点は、今後さらに検討をいたしたい、目下その数量の点や価格の点等につきまして、農林省と打合せ中でございます。
#25
○井出委員長 残余の質疑は午後にまわすことにいたします。
 本日は一道十五県からなります冷害凶作対策道県協議会を初めといたしまして、各府県あるいは開拓団体等からの陳情がございます。しばらくの間それを聴取することにいたします。政府側もそのままおいでを願います。
 暫時休憩いたします
    午後零時三十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時四十七分開議
#26
○井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
 この際参考人の件についてお諮りいたします。今年の冷害凶作が、まことに容易ならぬものであることは御承知の通りでありますが、けさほどの派遣委員の調査報告にも触れられておりました今年の気象状況や、これが長期予測の問題、異常天候に対処する農作物の品種改良等農業技術の問題、これらの点につきまして、気象関係者や、試験研究機関の当路者、学識者より、参考意見を聴取して、冷害に対する今後の施策推進に資したいと思いますが、この参考人より意見聴取の件に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#27
○井出委員長 御異議なしと認めます。なお参考人の選定につきましては委員長に御一任願うことにいたしまして、明日午前中にこの意見を聞くことにいたしたいと思つておりますので、御了承願いたいと思います。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後五時五十分散会
ソース: 国立国会図書館
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