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1947/08/23 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第28号
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1947/08/23 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第28号

#1
第001回国会 本会議 第28号
昭和二十二年八月二十三日(土曜日)
    午後二時三十五分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十七号
  昭和二十二年八月二十三日(土曜日)
    午後一時開議
 第一 裁判官彈劾法案(議院運営委員長提出)
 第二 自由討議(前会の続)
    ―――――――――――――
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 第一 裁判官彈劾法案(議院運営委員長提出)
#3
○議長(松岡駒吉君) 日程第一は、委員長提出の法律案でありますから、委員会の審議を省略するに御異議ありませんか。〕
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり。〕
#4
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。
 日程第一、裁判官彈劾法案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。議院運営委員長淺沼稻次郎君。
    〔淺沼稻次郎君登場〕
#5
○淺沼稻次郎君 ただいま議題となりました裁判官彈劾法案について、議院運営委員会を代表して提案の理由並びに法案の趣旨を御説明申し上げます。
 日本國憲法は、裁判官に対する國民彈劾の制度を設けるとともに、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するために國会に彈劾裁判所を設ける規定をおいたのでありますが、議院運営委員会におきましては、彈劾裁判所に関する事項が、その所管に属しております点に鑑み、また國民の手による裁判官彈劾の制度を早急に法制化することはまさに議員自身の任務であつて、法案の政府提出をまつべき性質のものにあらずとの考えから、彈劾裁判所に関する調査と、裁判官彈劾法案の起草に当ることにいたしまして、去る七月九日、彈劾裁判所に関する調査について議長の承認を得たのであります。
 爾來今日まで約五十日の間、回を重ねること十七回、あるいは小委員会を設けて原案起草に当り、また司法委員会との連合審査を行うこと四回に及び、しかもその間におきまして、各方面の意見を参酌し、諸外國のいわゆるインピーチメントの制度を比較研究し、かつ関係方面の意見等をも十分檢討いたしまして、昨八月二十二日の委員会において、日本社会党を代表して安平鹿一君、民主党を代表して後藤悦治君、自由党を代表して大石倫治君、國民協同党を代表して石田一松君、共産党を代表して林百郎君が最後的討論を行い、委員会全会一致をもつて、ここに委員会の成案を得て提出の運びとなつた次第であります。
 まず本案の起草及び提出の趣意について申し上げます。由來裁判官の地位は、司法権独立の原則に基いて憲法によつて保障されており、明治憲法も第五十八條において、「裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒處分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラル、コトナシ」と規定しておりました。日本國憲法も第七十八條において、「裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾によらなければ、罷免されない。」と規定し、同じく第六十四條において、「國会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する彈劾裁判所を設ける。」と規定して、裁判官の罷免が、原則として國会に設けられる彈劾裁判所の裁判によつてのみ行われるべきことを定めております。
 この彈劾の制度は、日本國憲法により新たに認められた制度でありますが、國会に設けられる彈劾裁判所にその権限を属させている点において、きわめて注目すべきものがあります。すなわち、從來の判事懲戒法によれば、免官の処分は判事みずから組織する懲戒裁判所によつて行う同僚裁判でありましたが、本法制定の曉においては、裁判官といえども廣く國民監視のもとにおかれることとなり、國民の代表たる両議院の議員の中から選ばれた彈劾裁判所の裁判員によつて罷免せられることとなるため、司法権の正しい運営が期待され、いわゆる主権在民の大原則と、公務員の罷免を國民固有の権利であるとする精神に基く新しい民主主義的制度が確立されるものと考へられるのであります。この憲法の規定に基き、裁判官に対する彈劾の制度を憲法附属法の重要な一つとして定めようとするのが本案提出の趣旨であります。
 なお、本法案起草にあたつて、裁判官彈劾制度に関する考え方の基調といたしました点は、公務員を罷免するは國民固有の権利であるとする趣旨と裁判官の地位の安定とをいかに調和するかの点でありました。日本國憲法によれば、すべて裁判官はその良心に從い独立してその職権を行い、憲法及び法律にのみ拘束されるものとされているのでありまして、裁判官が公正に良心に從つて裁判するためには、一應その地位の安定をはからねばならないこともまた当然であります。その故に憲法第七十八條は、「裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾によらなければ、罷免されない。」ものとしているのでありまして、この彈劾の制度をいかに規定するかは、司法権の独立にも関係する重要な問題であります。從つて、單に彈劾のための彈劾に堕し、裁判官をいたずらに不安定な地位におくことは、裁判官の公正な裁判を期待するゆえんでもなく、また決して憲法の認めた彈劾制度の本旨でもないと思うのであります。かかるがゆえに、本委員会はこの点に特に意を用い、司法権独立の原則に從つて裁判官の地位を尊重しつつ、公務員を罷免するは國民固有の権利であるとする主権在民の憲法の原則とをよく調和せしめ、もつて裁判官彈劾制度の適正妥当なる運用を期そうとした次第であります。
 次に、本案の要旨を御説明申上げます。第一に、彈劾により裁判官を罷免する事由としては、一、職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき、二、その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたときの二つをあげております。
 第二に、彈劾裁判所及び訴追委員会は、いずれも國会に設けられるものでありますが、國会とは別個に独立して職務を行うものである点から、國会の会期と関係なく、閉会中もその職務を行うことができるものとしております。
 第三に、訴追委員会の組織は國会法に定められているので、その員数を二十人、その予備員の員数を十人といたしましたほか、訴追委員及びその予備員の選挙の時期、補欠、任期、辞職等に関する規定及び委員長その他の職員についての規定をおいております。
 第四に、訴追委員会は独立してその職権を行うものとし、その職責の重大性に鑑み、訴追委員会は十五人をもつて定足数とし、罷免の訴追の議決は、出席訴追委員の三分の二以上の多数の意見によるべきものとしております。
 第五に、訴追の手続については、訴追委員会は彈劾による罷免の事由をみずから調査し、または官公署にその調査を嘱託することができるものとし、その調査に関しては、証人の出頭等を要求することができるものとしております。
 第六に、罷免の事由ある場合においても、特に情状によつて訴追の必要がないと認めるときは、罷免の訴追を猶予することができるものとして、時宜に應じて適当な処置をとり得る余地を認め、しかして訴追の猶予は、罷免の訴追と同樣、出席訴追委員の三分の二以上の多数の意見によるものとしているのであります。
 第七に、何人でも訴追委員会に対して罷免の訴追をすべきことを求めることができることとして、彈劾が眞に國民のために認められた制度であるということを明らかにしております。
 第八に、彈劾裁判所については、各議院においてその議員の中から選挙された同数の裁判員でこれを組織することは國会法で定められておりますので、本案では、訴追委員会におけると同樣、裁判員及びその予備員の員数、選挙の時期、補欠、任期、辞職等に関する規定及びその他の職員に関する規定を設けているのでありますが、特に裁判員の員数は、衆議院議員及び参議院議員たる裁判員各七人、合計十四人とし、審理及び裁判を行うには、各議院の議員たる裁判員それぞれ五人以上の出席を要するものとしております。
 第九に、審理及び裁判については、その公正な運用を期待して、裁判員は独立して職権を行うものとするとともに、彈劾裁判所の対審及び裁判の宣告は、すべて公開の法廷でこれを行うものとしているのであります。
 第十に、裁判員に対する除斥、忌避及び回避、法廷における審理、証人等については、刑事訴訟法の規定を準用することとしているのでありますが、この法律に特別の規定のない限りは、審理及び裁判の手続については、彈劾裁判所がみずから必要な規則を定め得ることとしてあります。
 第十一に、罷免の裁判については、特にこの手続を愼重ならしめるため若干の規定を設け、殊に罷免の裁判をするには、特に審理に関與した裁判員の三分の二以上の多数の意見によるべきものとしておるのであります。
 第十二に、罷免によつて裁判官または檢察官となる資格を失つた者は、特定の場合には、彈劾裁判所の裁判によりその資格を回復することを得させることを規定しております。
 第十三に、訴追された裁判官が辞職して罷免の裁判を免れんとすることを防ぐ意味において、罷免の訴追をうけた裁判官は、本人が免官を願い出た場合でも、彈劾裁判所の終局裁判があるまでは免官し得ないものといたしましたほか、訴追された裁判官の職務の停止、彈劾と刑事訴訟との関係についての必要な規定を設けました。
 最後に、虚僞の申告者に対する罰則、及び正当の理由なくして証人として召喚に應じない者に対する過料の制裁をおいております。
 次に、本案起草の過程におきまして特に論議の対象となりました二、三の点を拾つて御紹介いたします。
 第一は、第二條の罷免の事由については、本法案の最も重要な規定でありますが、この範囲については、涜職行爲のあつたとき等を加えよとの意見も相当強かつたのでありますが、一方において、いたずらに罷免の事由の項目を拡大することは適当でないのみならず、他方、これ等の点も運用により第二條の規定をもつて処理し得るものとされまして、罷免の事由は、裁判官として職務上適格でない場合及び司法権の尊嚴を毀損するような行爲に限定し、たれから見ても彈劾するのが適当と思われる事由を第二條のごとく規定するのが妥当であるとの結論に達しました。
 第二は、第二條と関連して、第十三條の訴追の猶予の規定を必要とするか否かの点であります。これについては最も議論のわかれた点でありまして、第二條には「著しく」または「甚だしく」とあつて、その範囲がかなり狭いのであるから、さらにこれに対して訴追の猶予を認める必要はなく、また一度罷免の事由ありと認めたときは、訴追委員会の性格上必ず訴追すべきものであつて、情状酌量すべき性質のものではない、かつかかる訴追の猶予の規定を存置することは、彈劾裁判所の権限を弱体化するおそれがあり、從つて訴追委員会としては行き過ぎであるという意見がありましたが、罷免の事由があつても、種々の事情によつて必ずしも訴追の必要のないような場合も起り得るであらうし、かつこの猶予の規定のないときは、たとえば、裁判官として職務をとることに支障がないと思わるる裁判官でも、三年前になした行爲によつてこれを訴追しなければならない結果となるから、猶予の規定を存置して、時宜に應じて適当な処置をとり得る余地を残した方がよいとの結論になつたのであります。
 第三に、罷免された裁判官について、恩給権の剥奪、他の文官の任用に対する制限、弁護士となることの可否等が問題とされましたが、これらのことは本案に規定すべき性質でないとの考えから、恩給法の改正及び今後制定されるべき公務員法、弁護士法に委ねることにいたしました。
 第四に、証人等の召喚、証拠調等について、彈劾裁判所及び訴追委員会に対して廣範囲の強制権を認むべしとの意見がありましたが、司法権の範囲でない点より考えて、過料による間接的強制に止めるを妥当としたのであります。その他幾多の論議が活発に展開されましたが、会議録によつて御承知いただきたいと存じます。
 以上、本案提出の趣旨及び内容について御説明申し上げました。
 本案は、裁判官彈劾のため彈劾裁判所及び訴追委員会の活動に必要な大網を定めたものでありますが、法の運用はこれを運用する人にあることは勿論であります。しかして、本案を運用して裁判官を彈劾する裁判員も、これを訴追する訴追委員も、本案実施により両議院の議員の中から選ばれるものであります。私は本案の速やかなる実施を希望するとともに、裁判員及び訴追委員となられる議員諸君が、彈劾制度の本質と本案の趣旨を十分体得されて、裁判官彈劾制度の適切にして妥当なる運用をはかられんことを切望する次第であります。
 なお本案は、國会法及び新衆議院規則のもとにおいて取扱われました委員会提出法律案の嚆矢でありますことは、提出者たる本委員会の深き喜びとするところであります。私は、國会の自主的活動の強く要望される今日、國会運営の中心となりました委員会の活発な活動の結果、委員会提出法律案のますます多からんことを期待しつつ、炎熱の候委員各位の御熱心と御努力、並びに條文整理に当られた議院事務当局に感謝申し上げ、私の説明を終ります。何とぞ満場一致御賛成あらんことを希望する次第であります。(拍手)
#6
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
 第二 自由討議   (前会の続)
#8
○議長(松岡駒吉君) これより前会に引続き自由討議の会議を開きます。提出されております問題は、地方自治と行政改革についてであります。
 森三樹二君、発言者を指名願います。
#9
○森三樹二君 社会党は、門司亮君を指名いたします。
#10
○議長(松岡駒吉君) 発言を許します。
#11
○門司亮君 前会の自由討議において私は、地方制度の改革並びに行政の改正につきましては、殊に農村と大都市というような、きわめて利害関係と申しまするか諸條件の異つております地区に対しましては、現在のごとき一行政区画のもとにこれを行うの不合理を指摘いたしておつたのであります。なお、それについて補足的意見を申し上げておきたいと思うのであります。
 申すまでもなく、わが國の文化、政治、経済の現状と、申しまするものは、ことごとく大都市を中心として今日これが行われ、しかいたしまして、その発展はおのずから日本國家の発展にきわめて重大なる貢献をなし得たものだと考えているものであります。しかるに、現在のごときわが國の画期的改革を行わなければなりません現状において、依然として五十万あるいは百万を越える大都市と地方農村とが、同一行政区画の上において同じ地方自地法のもとにこれが取締りを受けることは、きわめて矛盾もはなはだしきものが幾多あるのであります。
 その一、二を申し上げますならば、たとえば大都市の予算等におきましては、一行政区画の監督の地位にあります府縣の財政よりもはるかに大きく、また事業の内容におきましても、これよりはるかに大きな事業内容をもつものがその府縣の監督を受けているというような事実、各方面から見ますときに、二重行政の弊害――本日詳細に申し上げまする時間をもち合わしておりませんが、それらの二重行政の廃止、さらに地方行政の面におきまして、監督の面においては著しい弊害を來しているのであります。地方の自治團体が、いわゆる大都市が行わんといたしておりまするものを、さらにその上に府縣の監督を受けなければならぬということ、これらの二重行政あるいは二重監督の弊害を受けている大都市が、自由潤達に將來の日本を背負つて立つべき文化・経済・政治の発展をみますことは、わが國再建における最も重要なる要素でなければならぬと考えているのであります。
 その理由は、今日わが國の將來にかけられまするものは、一面において食糧の確保と、さらに一面におきましては商工業の発達であります。しかしてその食糧の確保のためには、農村行政が最も円滑に行われなければならないのであります。しかるに、現在のわが國における、殊に五大都市を含む府縣の行政というようなものは、その政治の中心がややともいたしますならば大都市に集中され、往々にして農村行政が忘れられる形にあるということは、私が申し上げるまでもなく皆さんの十分御承知のことだと考えておるのであります。でありまするので、われわれは農村行政を全からしめて食糧確保に努めるためには、大都市行政と農村行政とが画然と区画のわかれたうちにおいて行われなければならないと考えるのであります。
 かく考えますならば、飜つて都市行政におきましても、都市におきましては商工業を中心とする、殊に貿易再開の今日におきましては、軽工業あるいは商業の発展というものは、わが國の將來における大なる期待をもち得るものだと考えるのであります。從つて私どもは、ここに大都市制度の実現を一日も速やかに見ることを念願するものであります。
 提案者もその点に触れられたと考えておるが、かくのごとき見地よりして、去る九十二議会において、さいわいにして地方自治法が制定せられまする際に、この点が強く取上げられまして、特別市制の一章が設けられ、しかもそれの実施にあたりましては、次の議会に五大都市を特別市として指定するの法律案を提出するということが、その附帶決議に附されておつたことは、同僚諸君の十分御承知の通りであります。從いましてわれわれは、今、日本のもつとも要求する國民文化あるいは日本再建のために必要なるところの経済の発達伸張のためには、少くとも本議会は、前議会の議決に基き、名誉にかけても、あるいはわれわれの責務としても、この五大都市の特別市制の制定を見なければならぬと考えておるのであります。
 以上、ごく簡單に申し上げまして、私ども今日日本における地方行政の中において、地方行政と大都市制度との行政区画の問題について一言触れておきたいと考えておる次第であります。(拍手)
#12
○議長(松岡駒吉君) 川野芳滿君、発言者を指名願います。
#13
○川野芳滿君 國民協同党は、酒井俊雄君を指名いたします。
#14
○議長(松岡駒吉君) 酒井俊雄君、発言を許します。
#15
○酒井俊雄君 わが國におきましては、長い封建的官僚的統治の傳統の結果、わが國民は治められることを知つて治めることを知らないという言葉すらあるほどであります。前の九十二議会におきまして、地方自治法が新しく制定をいたされましたが、由來中央の権力が地方へはなはだ力強く及んでおります。これは單なる偶然な事実ではないのでありまして、中央政府が常に官僚的、特権的政治を行う手段として、地方制度をこれに包合せしめたからであると思います。
 この前の政府の提出原案を見ましても、知事は官吏であるという案を出しておりましたし、府縣の官吏の人事権は中央においてこれを掌握するという、はなはだ意の強い案が出ておりました。なお知事の原案執行権を存続せしめようという意思も盛りこまれておりました。由來保守的政党の内閣におきまして、この自治制度の運営というものは、はなはだしく阻害されてまいつたのであります。さいわいにして、これらの点は委員会の活動によりまして民主的に改正をいたされ、決議をいたされたのはまことに結構でありまするが、地方自治法はできましたけれども、これをもつて私どもは完璧というわけにはまいらないと思うのであります。なお將來に多くの問題を残しておると思います。
 第一番に、地方團体の最も大きなものでありまする府縣についてどう考えたらいいか、どう進んだらいいかという問題があります。この府縣区域の問題は、從來よりたびたび論ぜられた問題でありまして、今新しくこれが再檢討されるというわけのものではありませんけれども、その地方制度が非常に強く自主的に変革されました今日、新しいまなこをもつてこの府縣区域を考えてみなければならないと思います。
 今の府縣区域は、御承知の通り明治四年廃藩置縣の際定められたまま、七十有余年の間そのまま据え置かれておるのであります。しかも、その区域の定められる基礎は、行政区画として定められたものでありまして、自主的なる地方自治ということの基準は、この中にはほとんど含まれていなかつたのであります。かりに行政区画として定められたその基準を踏襲いたすといたしましても、産業、交通、文化、その他社会万般の発達によりまして、非常に地方の状態はその実質を異にしておるのであります。從つて、これらの産業、交通、文化、その他社会万般の発達に即するようにこの府縣の地域が改められる必要があると思うのでありまするが、なお特に府縣というものが自治團体として区別される意味が非常に大きくなりました。府縣の区別は、ほとんど自治團体の対象としての区別、こういう意味に塗りかえられました今日におきましては、この自治に適するように、自主に適するように、地方自治ということを主眼として、この府縣の区域が改編される必要があると思うのであります。この点につきまして、現在政府におかれまして何らか御考慮があるかどうかということを私は承りたいと思います。
 なお、前から問題になつておりました道州という問題がございますが、この道州の問題は、官治行政の一つの駒といたしまして、官治行政の目的のもとに各縣の行政を統一するために連絡するために道州が必要じやないかということが、從來しばしば論ぜられてまいりましたが、私はそういう意味でなしに、各府縣というものがほんとうに自治的に自主的に出発をいたしました今日におきましては、お互い近隣自治團体が相連繋し、連絡し、その間の行政の調和をはかるというような意味におきまして、下からつくり上げられるところの自主的なものがブロックの形をとる必要があると思うのであります。その名前を道州とつけるかどうかは別でありますが、とにかくこのような連絡機関、調査機関というものがぜひとも必要じやないかと考えております。
 次に、特別團体のことについて少しく申したいのでありますが、自治團体と申しますれば、皆さん御存じの通り府縣、市町村、ただちにこれを思い出すのでありますが、このほかに特別團体たる自治團体があるということすら、私どもは今日まで考えなかつたのでありますが、事実地方の政治が自主的に自治的に行われますに連れましては、各團体々々の特色を生かしまして、相通ずる特色をもつている團体を自治團体の対象としてつくつていく必要があると思うのであります。今まで自治團体が府縣、市町村というようなものに限られておりましたのは、ほとんどその自治ということに政治の主眼をおかずに、中央集権、官僚政治上の方から圧迫的にくる政治が政治の全部であるとまで考えられたこの官僚政治、中央集権政治を行うためには、命令を一樣に画一的に出す必要がありますので、その自治團体たる対象の團体も、府縣、市町村というような画一的な團体のみをつくつておいたのでありまして、特殊な團体をこれに認めなかつた。そこに原因があると私は思うのでありますが、今こそ政治の中心が自主、地方自治、ここへ移行いたしました今日、特に各種特色ある團体のその存在を大きく認めなければならぬと思います。
 例を取上げて申しますならば、たとえば遊覧都市は、他の府縣、それらと別な自治團体として、それに即する自治政治を行う必要があるでありましようし、そのほか商業都市、工業都市、おのおの特色があれば、それを一つの自治團体といたしまして、それに適する政治を行うことは、地方自治制度の当然なる帰結だと思うのであります。こういう意味におきまして、今問題になつておりまする五大都市の特別市制を認めるかどうかという問題、それもこういう意味から発足をしてまいると思うのであります。
 私、この特別都制には特に皆樣の御批判を仰ぎたいと思う一事があるのは、農村と違いました特色をもつこの大都市を、農村と一樣に政治をせられること、これが矛盾であるということを私は認めるのであります。ただ、この五大都市特別市制の問題につきましては、時期の考慮が非常に必要だと考えるのであります。産業にいたしましても、教育にいたしましても、その他の種々なる設備施設、これらにつきまして戰災をこうむりました今日の大都市は、昔の形そのままで考えることができないのでありまして、実質上に大きな変革を來しておるこの都市の現状におきましては、十分その時期を考慮する必要があると思うのであります。
 私は愛知縣から出ておる者でありまして、名古屋市方面については、いささか具体的なる事実を承知しておるものでありまするが、たとえば過去におきましては、縣の財政、縣の税金、こういうものは、都市がその大部分と申しまするか、六割も、七割も、八割も税金で出しまして、郡部の方えこれを補助しておつたというような姿でありましたけれども、現在の名古屋市などにおきまする実例では、名古屋市からあがりまする收入は、名古屋市の支出を償つて一ぱい一ぱいという形になつておる。産業はどうであるかと申しますれば、愛知縣の非常にたくさんの分量の産業が戰災以前の名古屋市で行われておりましたが、現在におきましては、群部に一歩を讓らなければならないような状態になつておる。
 で私どもは、かかる大都市の特殊性は認めまするけれども、現在これを特別市制といたしまして、郡部から独立して、一つの縣のごとく、一つの自治團体の主体としてこれを実施するということになりますと、産業の方面、あるいは衛生関係の方面、あるいは教育関係の方面、わけても食糧、薪炭の方面などにつきまして、その操作が非常に困難なるものが生じてくると思うのであります。主食の配給などは、皆樣御存じの通り國家が統一的になされておるのでありますから、表面から見れば、五大都市が独立しても別に食糧配給は困らないという声がありまするが、事実はいかがでありましようか。事実は郡部と都市との間に非常な苦心をして、縣当局は食糧・薪炭その他のものの操作をして、辛うじて命をつないでおる状態であります。今この際かかる操作の綱を断ち切つたならば、都市の食糧事情、薪炭事情はどうなるか、かかる大きな問題も生じてまいります。その他いろいろな施設の点につきましても、有機的、一体的にできておりまして、これを独立し、あるいは合して使うというような手段、いろいろあるでありましようが、今は時期にあらずと私どもは考えております。
 次に、國内行政機構の改革問題について少し申し述べてみたいと思います。法案は、地方の自治を非常に尊重し、これを盛り上げてつくられました。しかしながら実質におきましては、なお中央集権的、官僚的なる政治が地方自治の方面の浸透しておるのでありまして、一例をあげてみますれば、この間からも討論にもたくさん出ました出先官憲の問題であります。ますますこの出先官憲はその数を殖やし、その実権を拡げていくかの感があるのであります。
 由來地方政治の内容には、皆樣御存じの通り地方自治権固有なるものと、國家行政を地方自治團体が委任を受けてなしておつた二つの部面があるのであります。それも事実公正に國家行政を全部委任の形で地方團体になさしめ、地方自治本來の権限を有するものは本來の権限なりとして政治がなされておつたのならば異議はないのでありまするが、皆樣御存じの通り、むしろ本來地方自治に属する権限、地方團体の権限であるべき本質をもつておるものが、國家の行政権、國家の権利の中に含まれまして、そうしてこれが委任の形で行われておりました。今日この多くの出先官権の問題―詳らかにこれを檢討いたしまするならば、國家の権力に属すべきものでなくして、地方團体の権限に本質的に属すべきものが、國家の権限なりとして國家の出先官憲によつて地方政治の中に浸透されておる。官僚政治、中央集権的な権利がこれに入りこんでおるということは、いなめないと思うのであります。
 この際この限界をはつきりいたしまして、あくまで地方自治本來の権限に属するものは全部地方自治團体に移す。國家の元來なすべき権能、すなわち全般的計画を樹立するに必要なる政治政策、あるいは全國的基礎の上に立つ全國的統一ある政策、あるいはその他の施設、かかる目的を有する政治、その他地方團体からの連絡調整に関するような政治、こういうものは、國家の政治力として、國家の権力として政治を行わるべきものと思うのでありまするが、地方そのもので本質的になさるべきものは、全部地方團体にその権限を委讓すべきものだと考えています。
 なお最後に、地方行政の任に当りまする吏員のことについて一言申し述べたいと思いまするが、知事は公吏となり、その他の縣廳のお役人も公吏となりましたものは随分あります。形の上では官吏が公吏となり、地方團体の役員となつたという形式はとつておりまするが、公正に冷靜に考えてみまして、はたして実質の上にかかる変革があつたかどうかという問題であります。実質の点に至りましては、まつたくあの官僚政治そのままの政治が地方に行われておるのであります。この点におきまして、大いにこの吏員制度というものが修正を見られねばならないし、本質的に吏員そのものの心からの改造が必要であろうと思うのであります。理窟といたしましては、地方吏員は地方住民の公僕であると口に唱えておりますが、その実は、頭から地方住民に対して権力をもつて臨むというような形で政治を行つておる事実はいなめないのであります。この人事の……
#16
○議長(松岡駒吉君) 酒井君、時間でありますから結論を述べてください。
#17
○酒井俊雄君(続) 以上四、五の意見を述べまして皆さんの御批判を仰ぎたいと思いますし、なお政府当局のこれに関する何か御用意その他準備でもあれば、御答弁を願いたいと思います。(拍手)
#18
○議長(松岡駒吉君) 林百郎君、発言者を指名願います。
#19
○林百郎君 木村榮君を指名いたします。
#20
○議長(松岡駒吉君) 木村榮君、発言を許します。
#21
○木村榮君 地方制度が、官僚主義の原則に則つて、昔の山縣有朋やドイツ人顧問のモツセらによつて立案されたということは、かつて封建時代においては、武士がその上にあつて一切の人民の政治をとつておつたに対して、今度は官僚によつて農民の支配を確立しようということであつたという点については、何人も今日認めるところだと思います。
 そこで、現在の日本の民主化という問題は、地方のいろいろな問題が徹底的に民主化されなければ達成できないということが問題になるわけでございます。この問題を考えますと、大体外からと内からと両方の面から取上げて批判する必要があるのではないかと思います。
 内からの問題としますと、たとえば全逓、國鉄を除きますと、現在の官公吏というものは大体百十四万五千人だと報告されておりますが、そのうち特権官僚、いわゆる高文をパスしたとか、官立大学を出たとかいう特権をもつておる官僚が、百十四万五千人の中でわずかに四千六百名。この四千六百名が大体日本の現在の官僚的機構の最も大きな勢力を占めて、われわれの上にのしかかつておるということを、われわれは認めなければならないと思うのでございます。そこで、この内からの民主化の問題としましては、現在の官公労働組合といつたふうなものが、ほんとうに自主的に、一般の國民とあらゆる面に結合しまして、内から民主的にどんどん改革をやつていくということも無論必要だと思います。
 それと同時に、外からの問題は、いろいろな角度から今までの発言者の方がたくさん論ぜられたのでありますが、当面最も問題になりますのは、内務省の解体と警察制度の問題だと思います。今までの警察がどんな役割を果したかということは、大体だれも納得しておるわけでありますが、たとえば特高警察といつたふうなものが、内務省を本拠といたしまして、全國に綱の目のごとくその機構を整えまして、一般の人民の抑圧機関であつたという点でも、いかに人権を擁護すべき警察機関が人権蹂躪の総本家であつたかということがわかると思うのであります。
 そこで、内務省が今度廃止になりますが――これは形式的に一應廃止になると思いますが、しかしながら警察制度においては、依然として過去の強力な官僚的と申しましようか、彈圧的警察制度をまだ維持できるような機構になつておる。ここでもつと一般の者に対して、警察というものがほんとうに人民の公僕であるという点を認識さすために、警察権の大幅の地方委讓ということをわれわれは認めなければならないと思います。そのことによつて、大体地方の議会を尊重しまして、あるいは警察署長、あるいは重要なポストを占めまするところのそういつた係りは、その管轄内の一般人民の投票によつてこれを選び出す。それと同時に、その解職罷免あるいは彈劾といつたふうなことも、人民に権利を與えなければならない。
 特に今日の状況で問題になりますのは、警察の監視制度―盛んに毎日の新聞なんかでは、警察官がたくさんいろいろなことをやつておる。警察に警察がつかなければいけないようなことが現在あらゆる面に現れておりますが、こういつたことに対しましては、今の段階としましては、一般市民團体、あるいは労働組合、あるいは農民組合、その他政党といつたふうな團体から、警察監視委員といつたようなものを選び出しまして、警察を監視し、徹底的に内部からの民主化に協力しなければならないというふうに思います。
 それからこれは非常に問題だと思いますが、ほんとうに政治が民主化しまして、生活の不安がなくなつて、一般がその日その日の生活に困らなくなれば、大体犯罪というものは加速度的に少くなつていくということは当然だと思います。米國のオランダー地方警察調査班の報告によつても、平和國家、民主的國家においては、人口三千人に対して警察官一人の割合でいいというような報告をされておりますが、こういうことを考えますと、日本がほんとうに民主的な國家になつたならば、大体將來日本は、警察官が三万人ぐらいおれば治安が保たれていくということになると思うのであります。
 從つてこれがためには、現在の段階においては、相当大きなやみとインフレの根を断ち切つて、この社会不安を釀し出さないような態勢に急速に整備せられること。このことは、特に社会主義的な建設を強調なさつておるところの社会党内閣において御考究になれば、簡單にではありません、相当困難なことでありますが、精力的にやればできることだとわれわれは考えておる次第であります。
 そうすると、警察官を二十万人に増加といつたふうな問題も、前回中曽根議員の方から言われたのでございますが、こういつたことを考えますと、これは大体昨年度会議において、時の大村内相によつて相当論議されております。從つてこの現在の段階においては、專制的な官僚制度を打破するというための一つの條件としまして、警察権の地方委讓、並びに署長、高級人事の公選といつたふうなことが方向づけられなければならないと思うのでございます。
 その次に申し上げたいことは、司法省の問題でございますが、地方議会というものは、國家権力における地方においての最高機関であるならば、司法機関と執行機関というものを別箇の角度から論じていくといたしますと、司法省は專制的な國家の國家的擁護機関としての存在任務はあるかと思いますが、そうでないならば、民主主義的な政治体制下においては、不必要になつてくるのではないかと思うのでございます。裁判所、檢察廳といつたふうなものの権限を地方化しまして、地方議会にこの監視の監督権というものを與え、裁判官、警察官というものを、それぞれの管轄内の地方議会が推薦しまして、その結果は人民の信任投票ということによつてこれを認め、罷免、彈劾権というものを地方議会並びに人民に與えるならば、今の司法ファッショの総本家であると言われます司法省というものの必要はなくなつてくるのではないかということを申し上げたいと思うのでございます。
 それから、これは非常に重大なる問題だと思いますが、地方制度の問題にしましても、いろいろなものがたくさんあるわけでございますが、当面最も大切な問題は、戰犯者、いわゆる公職追放の徹底化ということが、最も重要な段階ではないかと考えるのであります。現在はその点において、中央においても地方においても、比較的このことが徹底的になされていない。ある程度ごまかされていくような傾向も認めざるを得ませんが、これを徹底的にやれば、ほんとうの地方民主化、地方的ボスの排除ということになつて、地方の民主化ということが急速に進むと思います。
 ところで、特に申し上げたい点は、いわゆる公職追放者をただ單に追放しつぱなしということでは、きわめて片手落ちな方法である。これは追放者といえども教育あるいは就職、監視といつたようなことをやりまして、追放者をして再びフアツシヨ的な方向に向わせないで、日本の人民の一人として、日本國の民主化に寄與するような方向に導くのが、やはり追放した者の責任であるとわれわれは考える次第であります。
#22
○議長(松岡駒吉君) 木村君、時間になりました。結論を…
#23
○木村榮君(続) 以上、きわめて簡單に申し上げまして、まだたくさんございますが、その中で特に申し上げたい点は、地方の今の府縣と都市の問題は、大体社会党の門司議員の御意見にある程度賛成でございます。地方制度は修正すべき点があると思いますが、大体において賛成したいと思います。以上、簡單に申し上げておきます。
#24
○議長(松岡駒吉君) 森三樹二君、発言者を指名願います。
#25
○森三樹二君 社会党は、片島港君を指名いたします。
#26
○議長(松岡駒吉君) 片島港君、発言を許します。
#27
○片島港君 私は一昨日、民主政治確立の基礎條件であるところの官僚の政治独占禁止法案ともいうべき官吏制度の根本的な改革について所見を申し述べたのでありまするが、本日は國民一般の関心事である官吏制度の具体的な問題について意見を申し述べて、各位の御批判を仰ぎたいと思うのであります。
 まず第一には、官吏の教育についてであります。官吏の教育機関は、警察、逓信、鉄道、税務など多数あるのでありまするが、その教育方法について考えまするとき、ほとんど戰時中と変つておらないということであります。教育の内容がそうであるばかりでなく、採用の條件などをみましても、採用の資格條件として、必ず思想良好なる者という一項があるのでありまするが、思想がよいということは、一体何を標準とするか。またその思想判定はどういう人が行うか。私は深く疑いをもつておるものであります。
 教育の内容に至つては、國民の公僕性を強調していない。法規一点張りでありまして、思想、文化、社会問題などについて、民主主義的な要素の取入れ方がきわめて不徹底であるのであります。今日はこのような世の中であるが、いつかは逆戻りするかもしれないというような、新時代にきわめて臆病な教育を施しておる。過去の專制政治支配体制への復帰を心待ちしているかのように配慮しつつ教育しておるかのように考えられるのであります。
 その結果はどうであるか。私が選挙の後友人の運轉手とともに、ささやかなるあの招待の場に出席いたしましたところ、私がその運轉手を皆に紹介しましたら、出席していた警察官が、いきなり態度をかえて、おまえはあまり見ぬようだが、名は何か、どこかというふうに詰問したのであります。この際政府は、官吏の教育機関に対して思い切つた民主主義的教育を断行さるべきであります。
 次は、追放がきわめて不公平であるという点であります。戰時中の市町村長及び助役までが追放されているのでありますが、戰時中の警察署長はそのままである。中央官廳で勅任官の局長をしておつたものも、そのまま残されておる。政府は追放のわくをあまり形式的にのみ考えないで、実質的に徹底して断行すべきであると考えるのであります。(拍手)
 次は、官公吏の待遇の問題であります。下層官吏は給與増額の強い要求を出しております。私は、上層官吏は宴会、饗應、地方官廳よりのみやげ物などで、あるいは比較的カロリーの摂取量に不足を來していないかもしれないのでありますが、下層官吏の犯罪について、ときどき新聞で大きく取扱われておるのをみますと、そのほとんどが生活苦からきているということ、なお、俸給の最も菲薄なる警察官が、半ば公然と役得を利用している実例などを見聞いたしまして、今後の官吏道確立の上にゆゆしい問題であると存ずるのであります。最近官吏道の確立、官廳の民主化について官公廳労働が運動を展開しておるのでありますが、政府はこの好機をつかんで、官廳の不合理な非民主的な部分を断乎として切つて捨てられるように切望してやまないのである。
 最後に、私は議員の一員として、官吏制度の改革は、政府の機構いじりのみによつて徹底できるものでなく、國民の頭から官尊民卑の考え方を拂拭し、國民自体が官吏機構の民主化に努力すべきであると存ずるのであります。その理由は、そもそも官僚主義は必ずしも單に官廳機構の中にだけあるのではなくて、廣く国民自体の封建的な性格並びに心理の中に深く根ざしておるのであります。諸種の営團あるいは農業会、いろいろな組合に至るまで、いやしくも権力のはしくれのあるところ、滔々たる官僚化の勢いが強いのである。先日片山首相が、國会議員も國民もともに官僚政治の抑圧のために勉強を要すると言われましたのは、決して官吏におもねるとか、あるいは職員をばかにしたとかいう問題でなく、官僚が政治の面に強く進出しておる事実わ事実として認め、制度の改革を行うとともに、議員も國民自体もともに官僚より政治の実権を奪い返すべきであるということを警告をせられておるものと私は考えるのであります。(拍手)各位とともに、民主政治の徹底に全力を盡したいと存ずるのであります。
 以上、簡單でありますが、具体的の問題について私の所見を発表した次第であります。
#28
○議長(松岡駒吉君) 後藤悦治君、発言者を指名願います。
#29
○後藤悦治君 民主党は、中曽根康弘君を指名いたします。
#30
○議長(松岡駒吉君) 中曽根康弘君発言を許します。
    〔中曽根康弘君登壇〕
    〔「議席からやれ」、「交渉済みだ」と呼び、その他発言する者多し〕
#31
○議長(松岡駒吉君) 議場の交渉が不徹底であつたらしいけれども、せつかく登壇されたのでありますから、このままこの機会だけお認めを願います。
    〔「議長、前例としてよいか」と呼ぶ者あり〕
#32
○議長(松岡駒吉君) 前例といたしません。
#33
○中曽根康弘君 二日にわたりまする各議員の熱心なる御討論を拜聽いたしまして、政府においてももちろん、われわれも非常なる示唆と感銘とを得た次第であります。各党派ないしは議員によりまして発言の表現は違うようでありますが、私は次のような点において大体において思想の一致があるように見受けた次第であります。
 まず第一は、地方分権をもう少し実質的に断行し、拡充しろという意見であります。この意見は、権限の地方に対する大幅な委讓をやれ、あるいは出先機関を徹底的に整理して、地方のことは地方で收まりがつくようにやれ、あるいは煩瑣なる統制手続はこの際撤廃して、もつと物と人が有効に迅速に動くような措置をやれ、こういうような意見が大体において一致したと感ぜられます。但し、警察制度と特別市制の問題に関しましては、なかなか事態が複雜でありまして、特に警察に関しては、國家治安の根本に関する問題であり、軽々にやることはできない、一旦間違つたならばやり返すことができない、相当愼重を要する問題でありますので、これは軽々なる処置はできない。しかしながら、一面においては大幅なる地方分権を断行すると同時に、國家意思を最終的に保障するだけの権力的な機構が保持されていなければならない、こういうような結論を私は妥当であると信じます。それから特別市制の問題に関しましては、これは住民の利害休戚に関することすこぶる多大であつて、過早なる結論はつけられません。もう少し愼重審議を要する問題であると考えております。
 第二の問題は、任用制度を改革して人材登用の道を開けという結論であります。御承知のように高等文官試驗であるとか、その他の嚴重なる官吏の資格審査、資格の制限がありますので、これらのものは大幅に開放するように、こういう意見が圧倒的であつたと思うのであります。もう一つは、官吏の教養をもう少し徹底して、新憲法にふさわしいような官吏の質的改良をやれ、こういう妥当なる意見を拜廳した次第であります。
 第三は、現在の財政状況その他を見て、もう少し行政整理というか、官廳における配置轉換を合理的に断行せよ、官吏の数はますます殖えるばかりであつて、この状態が蔓延していくならば、國民はその租税負担に耐えられない、そういう事態を前にいたしまして、特に現在の貧困なる日本の財政状態を反省して、大幅なる行政整理ないしは配置轉換を断行すべき時期であると確信する次第であります。
 以上の、大体において共通した結論のほかに、私は中央並びに地方の管理機構及び地方自治の問題に関して、次のような意見を附言いたしたいと思います。
 まず第一は、経済安定本部の組織に関する問題であります。経済安定本部は、日本の経済を再建するまでの期間の暫定的処置として設置せられたのでありますが、設置以來権限はますます強化せられ、あたかも日本國民生活における怪獸のような存在になりつつある。この傾向が助長される場合には、決して日本國民の幸福というものは確保されない、こういう趨勢にあると感じます。
 もう一つは、日本経済の今までの統制方式というものは、自給自足経済というものを根本思想においておつた。貧弱な日本の資源を、自給自足的にどういうようにしてバランスをとつて使うかということがその課題であつたのでありますが、最近制限的な貿易の再開のもとにおいて、ある程度廣域経済というか、コストを比較してみて安い物を入れて、能率的に國民経済を開放的に運営していく、こういう方向に日本國民経済の統制方式は徐々に変らなければならないと信じます。そういう観点から見て、安定本部の内部における実質的な改革及び形式的な縮減ということが要望されているのではないかと信じます。
 第二は、中央官廳の問題でありまするが、大藏省の主計局というものの存在であります。この主計局というものは、予算の査定ということを通じて、各官廳間に王國のような形を呈しておりますが、行政の能率的な統合という面から見ると、アメリカにおける予算局のように、当然これは内閣総理廳辺に吸收されるべきものである。そして行政調査部と合体して、物の面と行政機構の人事の面を大観的に俯瞰しながら、日本の行政機構というものを妥当に運営していく機関でなければならないと考えます。もう一つは法制局の存在でありますが、現在の法制局は非常に大きな権限をもつて、中央官廳の各部に対して君臨するような姿を呈しておりますが、これは当然國会に吸收さるべきものではないか、もちろん政府における法案審査という機能があるのでありますから、法制局は存在しなければならないと思いますが、その大部分の機能というものは、むしろ國会の法規委員会に直属すべきものではないか、こういうふうに考えております。この点に関して、私は政府の善処をお願いしたいと思う次第であります。
 第三は、最近次第々々に殖えているところの公團的統制方式に対する反省であります。公團は準國家機関的な性質をもつているのでありますが、これが蔓延していくと、先ほど申し上げましたように官僚機構の一環をなしているのであつて、財政負担に耐えられないし、煩瑣な統制方式というものは、ますます拡充せられるという結果になります。もちろん、日本の現在の苦しい経済を脱却するためには、ある程度の統制が必要である。三月二十五日マツカーサー元帥の吉田総理大臣あての手紙にもあるように、あの線に沿つてやるためには、自由経済などということは夢物語であると私は思うのであります。從つて、ある程度の統制方式というものは必要でありまするが、たとえば日常の消費物資まであまり嚴格にやる必要はないではないか。日本経済の根幹をなす重要基礎産業に関するものは、ある程度の公團的なものも必要であるかもしれない。特に独占禁止ということを考えると必要であるかもしれないけれども、これを消費物資面まで無限大に拡大するということは、深甚なる考慮をしなければならないと存じます。
#34
○議長(松岡駒吉君) 中曽根君、もう時間がまいります。
#35
○中曽根康弘君(続) 最後は、この行政機構の改革も、あるいは地方自治の拡充というものも、根本は人間の精神革命にある。人間の精神、つまり國民の政治思想がもう少し淘治されて、そして香りの高い政治道徳が実踐されるようにならなければ、日本の民主主義の発達というものは期せられるものではありません。この意味において、最近発足いたしまする民主政治教育連盟、こういうものに関しては…
#36
○議長(松岡駒吉君) 時間がまいりました。
#37
○中曽根康弘君(続) 官民ともに絶大なる援助協力をなさなければならないと信じます。
 もう一つは、全國にある青年文化運動というものは民主主義の芽でありまするが、この青年文化運動というものは、ぜひとも政府及び民間がこれを拡充する必要があると思う次第であります。(拍手)
#38
○議長(松岡駒吉君) これにて自由討議は終了いたしました。
 次会の議事日程は公報をもつて通知いたします。
    〔「政府の答弁がある」と呼ぶ者あり〕
#39
○議長(松岡駒吉君) 答弁の申込みはございません。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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