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1953/07/04 第16回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第016回国会 厚生委員会 第13号
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1953/07/04 第16回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第016回国会 厚生委員会 第13号

#1
第016回国会 厚生委員会 第13号
昭和二十八年七月四日(土曜日)
    午前十時四十七分開議
 出席委員
   委員長 小島 徹三君
   理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君
   理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君
   理事 堤 ツルヨ君
      越智  茂君    田中  元君
      寺島隆太郎君    降旗 徳弥君
      安井 大吉君    山口六郎次君
      中野 四郎君    山下 春江君
      萩元たけ子君    柳田 秀一君
      岡  良一君    杉山元治郎君
      亘  四郎君    有田 八郎君
 出席政府委員
        厚 生 技 官
        (公衆衛生局
        長)      山口 正義君
        厚 生 技 官
        (医務局長)  曽田 長宗君
 委員外の出席者
        検     事
        (刑事局刑事課
        長)      長戸 寛美君
        検     事 石井 春水君
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
        専  門  員 山本 正世君
    ―――――――――――――
七月三日
 委員中村高一君辞任につき、その補欠として岡
 良一君が議長の指名で委員に選任された。
同月四日
 委員滝井義高君辞任につき、その補欠として萩
 元たけ子君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 らい予防法案(内閣提出第一三四号)
    ―――――――――――――
#2
○小島委員長 これより会議を開きます。
 まずらい予防法案を議題とし、審査を進めます。
 本案の審査のため、委員会を秘密会にしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○小島委員長 御異議なしと認め、委員会を秘密会にいたします。傍聴の方の御退席を願います。
     ――――◇―――――
    〔午前十時四十八分秘密会に入る〕
#4
○小島委員長 それでは、本案についての質疑の通告がありますので、前会に引続いてこれを許します。長谷川保君。
#5
○長谷川(保)委員 まず五条及び六条についてでございますが、この六条等につきましては、当局におかれましても相当親切にお考えになつてこの条文をつくられておることを多とするものでありますが、今日患者が強制検診、強制収容等の条項を削ることをあくまでも要求しておりますことについては、私ども常人としては考え得ないほどの実情のあることを、ここに深く考えなければならないのであります。私は先ごろこのらい予防法のできますことについて、長年癩患者の収容に当つておりまするある有能な公吏と懇談する時を持つたのでありますが、そのときに彼がこういうように申しておりました。癩家族は周囲の非常な白眼視、迫害の中で、彼らはその家族であります患者を中心にいたしまして、家族全体がかたく固まつてそうして生きておる、その生きるありさまというものは、迫害され、白眼視され、村八分されて参りまするのに対して、いわば患者を中心といたしましての反逆心、反抗心と申しますか、患者への深き愛情、憐憫の情というもので固く結ばれてしまつておる。いわばこの反抗心、そこに大きな重点を持ちながら、患者への愛情を唯一の力にして生きておる。つまり一つの反抗心が大きな力になつて生きているということであります。でありますから、その家族の団結の中心から中心人物でありますところの患者を抜いて行くということは、彼らにとりましてはまつたく力尽き果てるという結果になつて来る。これは常人では想像し得ないところであるけれども、そこに患者を強制収容するということになれば、一家が長年の間社会の迫害と白眼視との中に闘い抜いて来た力が尽き果てて、そうして一家心中をするのであります。こういう点はわれわれの常識では思いも寄らない点である、こういうように申されておつたのであります。私もこの話を聞いて、しみじみと癩家族の不幸と、またわれわれが想像し得ない、彼らが強制検診、強制収容に対して反抗を持ちますることの一つの秘密を知つたように思つたのであります。こういうことからいたしまして、予防上の措置、公衆衛生という立場では抜きがたい、また患者としても納得しがたいところのものかそこにあるのであります。ここに私どもは、この六条等について相当法律といたしましては十分なお考えをいただいておるのでありますが、なおこれについて一段のくふうがいるのではないか、さらに一段の親切をもつてこの六条の字句を訂正し、あるいは五条の強制検診の点におきましても、これを六条同様に三段階ぐらいにしてあげる。つまりわれわれの常識を越えたほどの親切をもつて、強制検診、強制収容の点をお考えになるべきだと思いますが、この六条についてそういうような配慮をさらになさる御意思はないか。また五条につきましても、六条とほぼ同様の三段階をもつて行うというような意思はありませんか。この点をお伺いいたしたいのであります。
#6
○山口(正)政府委員 ただいま長谷川先生から御指摘になりましたように、患者が、世間の癩というものに対する偏見に対して、いろいろ反抗心を持つておる、またその秘密保持のために特にいろいろ気を使つているということは実際にあることなのでございます。私どもそういうことを十分承知いたしておりまして、患者の陳情も聞き、また実際に話を聞き、いろいろ御注意を受けておりますので、特にこの六条につきましては、従来ただ入所せしむべしという一条項でございましたのを三段階にわけまして1従来も条文は一条文でございましたけれども、実施の方法といたしましては、まず勧奨する、そうして勧奨に応じないときには命令を出す、そういうふうな措置を講じておつたのでございますけれども、それをさらにはつきりと法文にうたつたわけでございまして、この法がもし御可決になりまして、これに基いて患者の収容をやつて参るというようなときには、患者の気持というものをそれぞれの担当の者が十分認識して、その仕事に当りますように、格段の指導をやつて参りたい、そういうふうに存じている次第でございます。またこの診察の問題につきましても、第五条の指定医の診察は、医者から疑いの届出のあつた者、あるいはみずから申し出た者、あるいはその他の状況から十分患者と疑うに足るような相当の理由のある者に対して診察をするということになつておりますので、その際にも十分患者の気持というものをそんたくして、そうしてその衝に当るようにへこれも御可決いただきましたならば、実施の面においてそういう指導をして参りたい、そういうふうに存じておりますので、ただいまのところその案をさらに手を加えてそういうふうにするということでなしに、実施の面において今までよりもさらに一段とそういう点を注意をさせて実施に当らしめるというふうにやつて参りたい、そういう所存でございます。
#7
○長谷川(保)委員 その第五条の診察の点でございます。再度伺いたいと思うのでありますが、ただいま実際におきましては、診察に参りますのに、夜行つてくださるというようなふうに、できるだけ配慮をしてくださつておるということでありますか、そういうことは厚生省の方から指令が出てやつているのでありましようか。
#8
○山口(正)政府委員 患者の秘密をできるだけ保持できますように、実施に当つて万全の注意をするようにという指令をこちらから出しております。
#9
○長谷川(保)委員 条を追つて御質問申し上げるので、こまかい点に入りますが、第八条の第二項の一番下のところに「当該職員に事務所を消毒させることができる。」と書いてございますが、これは間違いではありませんか。
#10
○山口(正)政府委員 まことに申訳ございません。ミス・プリントでございまして、訂正をお願いしております。まだその手続が済んでおりませんが、それは「当該職員にその場所を消毒させることができる。」ということに訂正いたします。
#11
○長谷川(保)委員 第十五条の「外出の制限」のところでございますが、これはいろいろむずかしい点もございますけれども、感染のおそれのない患者も相当におることはすでに衆知の事実であります。理論から言えば、感染のおそれのなくなつた者は療養所をすでに退所さしてもよいということになるのでありましようが、そこが癩行政の非常にむずかしい点であろうと思うのであります。しかしこの第十五条でございますと、この条文を読んで参りますと、癩療養所に入所しております者は、ここに書いてある特別の場合を除きましては、ほとんど療養所から出ることができない、こういうように読みとられるのであります。しかし今日もすでに一時帰省という制度を実際におきましては各療養所におきましては行つておるのであり、その外出のできるという方面をむしろ積極的にここに書くべきではないか、これを読んで参りますと、いかにも外出は全部できないのだ、ただ親族の危篤とか、罹災とか、法令による場合とか、そういつた万やむを得ざるときに特別な処置をして出ることができるというような例外規定のようなものがそこに書かれているけれども、逆に患者の気持をそんたくいたしまして、感染するおそれのない者は外出させることができるというような積極的な条文を掲ぐべきだと思いますが、いかにもこの点が取締り法規というふうな感じを与えると思います。その点について、当局はそういうふうに修正するような御意思はないか、この点を伺いたいのであります。
#12
○曽田政府委員 昨日も御質問のあつた点でございますが、この条項は、最もむずかしいと申しますか、微妙な問題を含んでおります箇条でありまして、その表現については政府部内としましてもいろいろと研究を裏ました次第でありますが、その内容につきましては、すでに昨日も御答弁申し上げましたので御了解くださつておると思うのであります。今日実際問題といたしまして、というか、今日の医学の状況といたしまして、感染のおそれがあるかないかということを客観的にきめます基準というようなものが今日まだ確立しておらない。非常に意見が区々であるというような事態があること、それから治療方法が非常に進んでは参りましたけれども、今日においてはまだ多数の治癒者を見るに至つていないというようなこと、たびたび申し上げますように、今日でも若干の実際的治癒と認められるような者も出ておりますし、それから従来の状況から考えまするならば、この方面に非常に明るい見通しが出て来たということは認められますけれども、どの程度にこの治癒者が出て来るかという見通しも、十分に近い将来としてはつきりせず、そして今日においてはまだそれが多数には及んでおらないというような状況でございますので、将来こういうような面については当然考えなければならぬというふうに考えておりますが、今日の状況としては、それをここにうたい込むことも困難であるというふうに考えておるわけでありまして、その許可ということも、表現の問題でございますけれども、一応所長が許可した場合には外出ができるということが現われておりますので、まずこういうような表現が今日としては適当なのではないかという結論に至つたわけであります。
#13
○長谷川(保)委員 その点が先ほど申し上げましたように、非常に不幸な点だと思うのでありますが、聞くところによりますと、欧米ではすでにここまでは感染する、ここまでは感染しないという線をきつぱりつけたようにも伺つているのでありますが、今日事実において、多摩全生園の所長の言うところを聞きましても、唾液、鼻汁等に菌の認められなくなつた者、こういう者は感染のおそれのない者として外出等の処置を許す、こういうように言われておるのでありますが、そういうような線で、ともかくも各療養所それぞれの基準は違うにいたしましても、一応外出を許可しておる。昨日申しました自由という人間の基本人権を保障するという意味で、そういう点をここに明確にお書きになれば、事実行われておりますことでありますから、自由の保障という意味で、ある意味での患者への深い慰めとなり、また励ましとなると思うのでありまして、私はやはり積極的にそれを書くべきだと思うのであります。その基準はそれぞれの国立療養所長にまかせるといたしましても、当然書くべきだと思います。こういう点はいかにも消極的で、患者の気持をそこなうと思うのでありますが、もつと積極的にお書きになつたらどうかという点について、重ねて局長の御意見を伺いたいのであります。
#14
○山口(正)政府委員 ただいま医務局長から御答弁申し上げました通りでございますが、もちろん先ほど長谷川先生もおつしやいましたように、症状が軽快して、もう隔離療養の必要がないと所長が認めた者は当然退所できるのでございます。しかしそうでなくして、入所しておる者が一時帰省をするというようなことも今現実に認められているのでございますが、それはその町長の判断によりまして、――昨日も申し上げましたように、感染の危険性というものは相対的な問題でございますので、所長の判断によりまして、一時帰省をいたします場合には、この特別の事情があるということを拡張解釈いたしまして、そうして所長の方において所持品の消毒とか、あるいはその他注意をいたしまして、一時帰省を許すというようにいたしておりますので、私どもは、この案の表現によりまして、そういう運営をやつて参りたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
#15
○長谷川(保)委員 第十六条の「戒告」「謹慎」ということにつきまして、どうも患者は誤解しているように思われるのであります。つまりこれを厚生省の方で考えておられるような意味ではなく、もつと厳格なるものと考えておる。たとえば三項にありまする「所長が指定した室で静居しなければならない。」ということを、さも監禁であるかのごとく考えておるようであります。さらにまた第五項にございまする弁明の機会を与えるということにつきましても、昨日私どもが患者諸君と話し合つたところによりますと、つまり刑法上の犯罪に対しまして弁護士をつける、その憲法におきまする権利、それを侵害されて、弁護士をつけさせられない、そのかわりにこういうものがあるんだ、というようなふうに誤解しているようであります。こういうような誤解につきましても、今日の大騒動、ことに昨日陳情に参りました諸君が、国会の外で居すわりをして、私は八時ごろちようど前を通りましたので、すみやかに帰るようにということを極力勧めたのでありますが、雨が降る中に、なお彼らはがんとして居すわりまして、園長も職員も非常に心配をして、一応婦人や重症者、内臓的に弱い方は帰られたようでありますが、しかし夜明けになりますと、そのときには全部を入れても五十名足らずでありましたものが、すでに百四十名にふえている、こういう状態であります。このような点がこういう誤解にも基いているとすれば、きわめて残念なことであります。こういうような誤解をしていることを当局は知つておられるかどうか、知つておられるとするならば、それに対してどのような手をとられて誤解を解くようになさつたか、その点を承りたいのであります。
#16
○曽田政府委員 この点につきましては、患者から非常に強い反対意見が述べられているわけでありますが、御承知のように癩療養所におきましては、そのうちの大部分の人たちは入所の義務がある人たちでありますから、所内において秩序を乱した者があるということになりました場合に、この秩序を維持して行くために、他の施設でございますならば退院、退所というような措置がとれるのでございますけれども、この癩療養所のような特殊なところでは、さような措置がとれないのでありまして、所長が規律を維持して行きますために、ある程度の権限を持たなければならぬのではないか、しかしながらこれが度を越えてはならぬのでありまして、ある程度の所内秩序のための処罰権というものはやむを得ないものと考えたのであります。そこで最高が三十日の謹慎ということでございます。この謹慎それ自身がすでに苛酷であるというような意見が患者からも言われておるのであります。また謹慎といつても、極端な言葉を言いますれば、ぶた小屋かとり小屋のようなところに入れて、そこでもつて静居しておれ、そして外からかぎをかけるというようなことがあるのではないかというふうな心配をしておつたようでありますけれども、かぎをかけるとか、あるいは強力を用いて一定の部屋に入れるとかいうようなことは全然いたさないのであります。また部屋にいたしましても、それは部屋によつて幾分きれい、きたないはあるかもしれませんけれども、当然普通の患者の居室と同じ程度のものをこの居住すべき部屋に選ぶのでありまして、決して特別なとり小屋とかぶた小屋とかいうようなことは考えておらない次第でございます。最後に弁明という問題でございますが、これは必ずしも弁護士をつけないというような意味を含ませているわけではないのであります。この所長の処分に対しましていろいろ弁明をし、またそれにもかかわらずその処分が不当であつたというようなことに対しましては、厚生大臣つまり監督者に対しましていろいろと訴える道があり、あるいは極端な場合を考えますと、人権擁護委員会なりさような方面に訴えて出られまして、ここでもつてはつきりと事情を詮議していただくというような方法によつて、不当な処分などが起らないように極力努めたいと考えておる次第であります。
#17
○長谷川(保)委員 もう一度今の点を伺うのでありますが、所長が指定した部屋でこの条文に申しまする静居をしなければならないというのは、大体においてその病人の部屋ということでありますか。
#18
○曽田政府委員 特別な事情がございませんければ、その患者のおります部屋というふうに私どもは考えております。
#19
○長谷川(保)委員 今の弁明の機会ということでございますが、これは法文によつて明らかに十六条二項の第二号、すなわち謹慎についてのことでありまして、それを行う前に弁明の機会を与えるということでございます。これはもちろん先ほど申しましたようないかめしい問題ではなくて、そのことについて罰則を適用いたします所長に対しまして十分弁明の機会を与える、こういう意味でありましようか。
#20
○曽田政府委員 さように解釈しております。
#21
○長谷川(保)委員 今の十六条の第二項の第二号の三十日という期限はどういうところから定めましたかお伺いしたい。
#22
○曽田政府委員 これは三十日と限つた確たる根拠というものもございませんが、あまり過重になつては困るという意味で三十日というふうに定めましたので、私どもはもちろんできるだけ短期間ということを望んでおる次第であります。
#23
○長谷川(保)委員 この点私はある園長といろいろ話をしてみたのですが、園長も三十日はと言つて顔をしかめておりました。おそらくこの、謹慎、静居ということの意味は、一面におきましては外へ出ますその自由を拘束する、人間の一番ほしい自由を拘束することによつて、本人の反省を促すということと、いま一つは、これによつて今日行われておりまする作業に就労いたしまして、与えられる報酬が得られなくなるということをねらつておると思いますが、そういう意味でございますと、私は三十日は長過ぎる、これをせめて七日ぐらいにすべきであると思う。先に申しましたように、私はこれは取締法というような面をできるだけ弱くして、患者に対する感じをそういう方面に対してはやわらかくして行くことが少くとも必要であると思います。七日ぐらいで十分その趣旨を貫徹できると思うのでありますが、この点もつと短かくする意思はないか、伺いたいと思います。
#24
○曽田政府委員 私どもとしましては、決して苛酷な処分をいたすことを望んでおるわけではございませんので、なるべく短期間でその効果が現われるような措置をとらせたいというふうに考えております。ことに初回のこの処分を受けるという場合には、絶対にこのように長い期間を定めない、お話のように一週間あるいはそれ以内のきわめて短かい期間で処分を行いまして、ただこれが繰返されたような場合に、これを幾分ずつ延ばして行くというふうにする必要が、時によつては不幸にして生ずるのではないかというふうに考えておる次第であります。
#25
○長谷川(保)委員 第二十一条の親族の福祉の点でございますが、この点患者側は、生活保護法を適用されるということについて、秘密が保持できないということを非常に恐れております。生活保護法を適用いたしますためには、当局におきましても相当な御配慮があるとういように伺つておるのでありますが、どういうような御配慮を持つていらつしやいますか、伺いたい。
#26
○山口(正)政府委員 お尋ねの点は、私どもも今までしばしば各方面から陳情も聞き、注意も受けておつた点でございまして、患者がその家族の秘密を保持したい、癩患者の家族であるということを隠したいという一心で、生活に困窮しておりながら、生活保護法の適用を受けますと福祉事務所の人が出入りしたり、あるいは市町村でいろいろ調べられたりするというので、その保護を受けていないという実例もあるということを聞かされております。私どもといたしましては、患者の家族の福祉をはかるという点から、どうしてもそれを何とか打開しなければならないということを考えまして、今回の起案にあたりましては、第二十一条にございますように、当該国立療養所の職員、これは国立療養所に医療社会事業担当の職員を置きまして、それが親族を訪問して家族とその患者との連絡に当つてやる。患者の家族の方でも、療養所の職員が来てくれることには別に異議をとなえないのでございまして、その際にも、できるだけ秘密を保持するような訪問の仕方をいたさせるつもりでございます。そういうふうにいたしまして、もし患者が生活に困つているというような場合には、県の衛生部の方に連絡いたしまして――これは厚生省の社会局の方と話合い済みでございますが、衛生部の職員と民生部の職員に併任しておきまして、そうして衛生部の職員が生活保護に関するいろいろな手続をやつてやる。言葉をかえて申しますと、検診をしたり、あるいは入所勧奨をしたその職員が、また生活の援護の仕事に携わつてやる。患者の家にいろいろな方面の人が出入りすることをできるだけ防いでやる。そうし患者並びにその家族が非常にきらつておりますところの、癩患者の家族であるということをいろいろな人に知られたくないという気持をくんで、そういうふうな措置をとるようにしたい、そういうふうに考えている次第でございます。
#27
○長谷川(保)委員 その御配慮に対し心しでは、私はこれを多とするものであります。しかしながら、この生活保護法の適用という点は、患者がまた非常に強く他の方法をとることを要望している点であります。その点については、たとえばあの社会保障制度審議会の勧告の中にありますような廃失年金というような制度を近い将来においてつくりまして、その廃失年金という形で、療養所の所長を通しまして、本人に、家族のための生活の資に要しまするものを渡し、患者本人からその家族に送るというようなことになりますれば、秘密の保持が相当可能ではないかと思うのでありますが、近い将来そういうような方針を立ててこれを改正して参るというような御意思はありませんか。
#28
○山口(正)政府委員 ただいま御指摘の廃失年金の点も検討しなければならないと存じておりますが、とりあえずこの生活保護法について、ただいま申し上げましたような方法によつて、患者の秘密を保持するという点に私どもは万全の努力を払いまして、廃失年金の問題は今後検討さしていただきたいというふうに考えております。
#29
○堤(ツ)委員 左派の長谷川委員と政府当局との質疑応答を昨日から拝聴したわけでありますが、なるべく重複しないように政府に質問をいたしたいと存じます。
 政府は、癩療養所におけるところの患者の就業の問題についてどういうふうに現在やつておられるか、もう少し詳細に承りたいのです。就業を放棄してこの予防法に反対しておちれる患者の実態を聞きますると、たとえば食事の問題であるとか、いろいろな雑用であるとか、園内の秩序をみずから保持するために、お互いに自主的に生活を養えるために、いろいろと就業しおられるように解釈しておるのでございますけれども、しかし私たちが外部から見ますると、必要以上の就業を厚生省が患者にしいておるような節もあるやに思われます。たとえば軽い患者の方々が重い患者の方々の看護に当つているというような点などは、われわれの目から見ればいかがかと思われるのでございますが、目下、一万二千の収容患者のうち、重症患者がどれだけあつて、その重症患者の看護に当つているところの軽患者が何人くらいあるか。もし統計があつたらそれをお示しになり、そうして、それに対する政府の今後の見解と、また、費用の点でああであるとかこうであるとかいうような点がありましたならば、その点を少し詳しく御説明を願いたいと思います。
#30
○曽田政府委員 ただいまの御質問に対しましては、的確な数字というものを申し上げかねる点もございますが、その点は後刻資料として差上げたいと存じます。大体の状況をお話申し上げますれば、この患者の作業のうちには、院内としても、患者の力に頼らなければならないというようなかなり実質的な仕事をしてもらつている部分も確かにございますし、また相当な部分は、院内の農耕でございますとか、あるいは曇だとか、あるいはいろいろな清掃だとかいうようなもので――清掃はちよつと違うかもしれませんが、ある程度軽症患者が自分のためにやれるもの、あるいはまたそれをやりますことが、ある程度の慰安と申しますか、作業療法的な意味合いも多少持つておるというような種類のものと、いろいろな性格のものがございます。そうして、その作業の種目等につきましては、きわめて多岐にわたつておりますが、総数といたしましては、ほとんど半数の者が何らかの形で作業をいたしておるわけであります。もちろんその作業の時間も長短いろいろでございますが、大部分のものはあまり長くはないのでありまして、おおむね半日以内ということになつております。お話のように、仕事の中で一番きつい仕事であり、これを引続き作業させることは適当でないと考えられますものは、私どもが考えましてもやはり重症患者の看護でございます。こういうような点につきましては、やはりこれは今日のままでは置けない状態であると考えておりまして、本年度の予算にはこの人員の増加ということが極力押えられましたために、この点の改善ということが実現できないのでありますが、二十九年度予算におきましては相当多数の職員の増加をはかりまして、この患者の作業として適当でないものはなるベく除いて参りたいというふうに考えておる次第でございます。
 なお患者の作業に対します謝金と申しますものが、以前におきましてはこれを患者の労力に対するきわめて単純な感謝の意味というくらいに考えておりましたために、きわめてわずかでありました。もちろん先ほど申し上げましたように、一日のうちの作業時間というものにも長短があり、概して短いものでありますから、また病人のことゆえはげしい労働もできないというので、させておらないというようなこともありますので、そういう事情はございますが、今日におきましては軽、中、重の三段階にわけておりまして、患者作業として重いものには二十円、中が十五円、軽いものには十円、一日と申しますか、一回と申しますか、そういうように組んでございます。これはあまりにも寡小でございまして、これは増額していただかなければならぬというふうに考えておる次第であります。
#31
○堤(ツ)委員 私たちが一昨日患者の方々と面会いたしました場合の空気からはかりましても、この方々は政府に自分たちの人権を尊重し、そして医学的な研究をどんどん進めてもらつて、われわれを社会保障の立場から守れという声が非常に強い反面、みずから楽園たらしめるの気概があるということははつきりとうかがわれたのでございます。でありますから、私たちは今日の患者のあの気持を考えますときに、政府から出されておりますところのこの法案が、全面的に見ます場合にやはり取締りであり、罰則であり、過去の浮浪者のみを収容した旧態依然たる観念にとらわれたものの域を脱しておらないということは、これは長谷川委員の御指摘の通り否定することができないと思うのでございます。しかしみずから楽園たらしむるために療養中の気分転換などの面からいろいろとこの方方が就業されました場合に、職員を置いても相当の給料がいり、政府としては人件費がいるのでございますから、重は二十円、中は十五円、軽いものは十円といつたような、まつたく人間扱いでないような料金を支払つて、この人たちに就業してもらつておられるということ自体が、すでに頭の持ち方自体に大きな誤りがあると思うのであります。でありますから今年は予算が組めないとおつしやいますけれども、もちろん重症患者に対する看護に軽症患者が当つておることは、これは医学的な見地から廃止さるべきでありますし、同時に予算にももつとはつきりしたものをお組みになつて、この方の改正案をお出しになるのが良心的なやり方であると思うのでございます。ことしは実現できなかつたということは、私はこの法案をお出しになる以上許されない弁解であると思うのでございます。それから半数が何らかの作業をしておられます。この中におきまして、私たちはこの方々がもらわれる給料などを考えますときに、これがこの方々のいわば一箇月の小ずかい銭になるという見方をしてもよいのでございましようか。そうして長谷川委員が御指摘になりました、三十日以下の静居とか、蟄居を命ずる訓戒を与えて、処刑に等しいものをするというこの十六条でございましたかの点、静居を命ぜられました方々は、作業をやつて小ずかいに等しいものを稼いでおつたけれども、稼げないというような状態が生れて来るのでございましようか、その辺を少し御説明を願いたい。
#32
○曽田政府委員 ただいま私お話申し上げましたように、今日患者に頼んでおります作業の中に、かなり無理なものがあり、またその報酬としましても、きわめてさ少であるということを申し上げたのでありますが、先ほど申し上げましたのは、大体一人年平均といたしまして申し上げたのでありまして、またその作業の質によりまして若干そこに幅を持たせてございます。その数字の通りではなく、またある療養所におきましては、患者等の意見も取入れまして、その配分は考えておるというようなこともいたしておるのであります。いずれにしましても非常にわずかのものでございまして、このままでは放置することができないというふうに考えておるのでありますが、本年もいろいろ努力いたしましたけれども、遂にこの予算の中に組み入れかねたのでございます。なるべくこのような事態を急速に解消いたしたいというふうに考えておる次第でございます。それからさらにもう一つのお尋ねの件でございますが、これが小づかいになるであろうかという御質問に対しましては、そのほかに患者一人について四百円ずつの慰安金というものを支給いたしております。
#33
○長谷川(保)委員 先ほどの堤委員の御質問で、軽、中、重ですか、十円、十五円、二十円というような作業の賃金を与えられるということを伺いましたが、これが慰めになつておる労働のうちはよろしいけれども、今日それを取上げられたり、その作業をする患者がいなくなれば、療養所が動かない、こういうようになつていることは非常に重大な問題だと思いまして、ことにそこに今日の混乱の一つの大きな原因があると思います。そこで先ほど職員を増員する意図であるというお話がありましたが、これは定員法を改正する必要はないかどうか。それから職員を増員するといたしまして、今日の職員の給与ではだめだと思うのでありますが、聞くところによりますと、人事院はかつてのこの癩療養所の勤務員に対しましては、調整給を一〇〇%つけるというように勧告がしてあるということを聞きましたけれども、今日のこの給与の状況はどうなつておるのか、またことにそれが事務職員には何ら調整給はついておらないというこでありますけれども、そんなことでは増員はできないと思うのであります。従つて今の患者の作業は強制的なものにすでになりかかつておる。それをやめていわゆる慰めとして働くというようにすることはできないものかと思うのでありますけれども、その点伺いたい。
#34
○曽田政府委員 患者の作業につきましては、先ほども申し上げたのでありますが、本来はこの患者の作業なるものは慰め的なもの、あるいは作業療法的なものというものであるべきだと思うのであります。初めこの制度がスタートしましたときには、おそらくそういう趣旨で始められたものと理解しているのでありますが、いろいろ人員の不足とか、あるいは経費の関係とかいうようなところから、こういう事態がだんだんと積り積つて来たもの思うのでありまして、何とかできるだけ早くこのような事情を解消しなければならぬというふうに思つております。ただ今申し上げましたように、また御指摘もありましたように、長い間療養所内に滞在しておる患者でございますから、こういうような人たちにある程度の仕事を見つけて、それをやつていただくということは、患者の方でも、よく話をして参りますれば納得してくれることであり、また患者も現にそういうふうにも申しておるわけでありますが、ただそのやり方及び限度というものを十分に考慮して行かなければならぬと私ども考えております。定員の問題につきましては、もちろん増員いたすためには改正をしていただかなければならぬものと考えるのでありまして、一方予算の増額と同時に、この定員法の改正をはかる必要があるというふうに考えております。また給与につきましては何パーセントというのではなしに、例の何給何号となつております。大体六号俸、おおむね一級あまりくらいになつているだろうと思います。ここに数字がございますので申し上げますと、勤務の種類によりまして二号俸ないし六号俸加給がついております。
#35
○堤(ツ)委員 こういうふうに言つて参りますと、この法律を、予防取締りが主であつて、患者の方々が要求される福祉がつけ足しになつているような政府案のようなものにしないためには、福祉の問題については後ほどまた質問いたしますが、費用の点がやはり問題になつて来るのであります。これは政府にひとつ頭を改めていただきたい。われわれの家族に不幸にして患者が出たとした場合、われわれはどうなるだろうかということを、立場を転倒して考えたときに、私は、絶望的な病にがかつた人々が、今日このらい予防法の反対をめぐつて国会に押しかけ、いろいろと叫びをあげられる気持はよくわかると思うのであります。この人たちの心情をくみますときに、死刑の宣告にもひとしい病にかかつたこの人たちを、私たちが遇するに、できるだけの誠意とできるだけの経済的な保護を加えなければならないという結論になると思うのでございます。政府には金がないと言つてしまえばそれまでかもしれませんけれども、法律の改正にあたつて何ら予算的裏づけのない法律案を出して来て、古色蒼然たるものを改めてあげたとかいうことで弁明なさろうとするでありましようけれども、私はこれは本末転倒であると思うのでございます。医務局長や公衆衛生局長がいかに御弁明になりましても、あの患者たちはいやされないものがある。試みに私は政府にお尋ねいたしますが、貞明皇后のお志でいわゆる二億の金を救癩事業にいただいておりますが、これのごときはどういうふうに使つておられるか。私は救癩事業にいただいたものであるならば、政府の所管になり、救癩専門のために国家予算の中に組まれて使われるのが当然であると思うのでございますが、仄聞するところによれば、宮内庁の所管にたつておつて、厚生省が救癩の施策にこれを使えないような仕組みになつておるということも聞いて、はなはだふかしぎに存じ、貞明皇后の志で救癩事業にいただいたものならば、これが即刻療養の中に生きておると国民は思つておりますけれども、あにはからんや、これが生きておらないように仄聞しておりますが、こういううかつな施策を政府はやつておるのでありましようか。費用の問題はなかなか難関のようでありますが、貞明皇后のお出しになつた金の取扱いについて納得の行く御説明をいただきたいと思います。
#36
○山口(正)政府委員 癩対策に関しまして、公衆衛生局、医務局ともに今後予算増額ということにつきましてはできるだけの努力をして参るつもりでおります。ただいまお話の貞明皇后の御遺金を元といたしまして、一昨年から昨年にかけて募金をいたしまして、目標額二億円であつたのが二億二千万円余り募金をされました。これは国民の皆様方の癩に対する深い御同情、御認識のたまものであるというふうに、その衝に当りましたものとしては感謝しておるのでございます。その集まつた金が、ただいま堤先生のお尋ねでは、宮内庁の所管になつておつて、厚生省でそれを癩対策に使えないということを聞いておるがほんとうかどうかということでございますが、募金委員会で集めました金は全部元の癩予防協会――癩予防協会自体は厚生省の役人がいろいろ役員をしておつたのでありますが、こういう癩対策をやつていただくのには純然たる民間団体の方がいいというので、昨年の四月に組織を改正いたしまして、現在藤楓協会としてその仕事をやつておりますが、募金されました二億二千万円の金は全部藤楓協会に寄付されまして、そして藤楓協会の責任において、政府のやつております癩対策に呼応して、政府の金ではなかなか実施できないような部面を援護していただくということに使うようにいたしておるわけであります。それは藤楓協会の理事会においてその方針を決定して、そしていわゆる法外援護と申しますか、政府のやる仕事以外の、たとえば患者の慰問とか思想の普及とか家族の慰安とかいうことをやつてもらうということになつております。
#37
○堤(ツ)委員 藤楓協会というものがあるということは私たちもよく存じております。いつか藤楓協会でおつくりになつた癩療養所の映画を貞明皇后の記念日に私たちも見ましたが、私は藤楓協会というものがすでに宮内庁のひもつきではないかというにおいがしておると思うのでありますが、藤楓協会が今日までどういうふうに金を使い、どういうふうにやつておられ、どういう機構になつておるか、運営、内容、機構の面について、委員長のおとりはからいで厚生委員会にも一度正式な報告をされたいということを、一つ要望しておきます。二億二千万の金があるならば一万二千名にわたる癩患者に相当の恩典があるはずであります。案外つまらないところに使つて、患者の福祉の上にこれが生きておらないのではないかという見方をしておりますので、その観点から伺つておるのでありまして、そのメンバーなり機構の内容、運営の面における正式な御報告ということを、質問に加えてお願いいたしておきたいと思います。
 そこでわが党といたしましては、はつきり申し上げておきますが、申訳的に福祉をつけたようなこの法案には賛成できないのでございますが、この福祉の面で私たちが強調いたしたいのは、もちろん入所の義務、その場合の強制検診、それから園内の秩序を保たなければならないということ、留守家族の方々に対する生活保護の問題など、いろいろ論じて参りますと、すべて今日の患者側の要求を聞いておられないということがはつきりいたしております。しかしいかに叫んでみたところで、宿命的な病に冒された人々が、おれたちは救われないという、暗い気持ちの中から、なおかつ光を求めて今日の叫びを叫んでおられるのは、一にかかつてその浮ばれない境涯の中から、何とかしてできるだけ幸福な人生を全うしたいという、私たちの気持と同じ気持であろうと思うのであります。そう考えて参りますときに、当然この法律が改正されるならば、この方方にもつと福利厚生施設が園内になければならないわけでありまして、今日私たちもところどころ拝見いたしておりますけれども、もつともつと方法があるということを痛感いたします。たとえば患者にも重い患者、中ぐらいの患者、軽い患者とがおいでになりますが、あの方々を雑居させ、同じ生活をしておつてもらうということは、医学的にもいかがと存ずるのです。しろうとですから、こういうことを論ずるのはいかがと思いますけれども、しかし重い患者と軽い患者と中ぐらいの患者と、現在はあの中においてわけられないような設備しかないということは、私などは日ごろからはなはだ遺憾に存じております。それこそ重、中、軽ぐらいにわけて、あの方々が楽園として生活を楽しまれるような様式にするよう、もつともつとくふうの仕方があると思う。たとえば家族と絶縁されておるのでございますから、この方々に何がしかの予算をかけて、旅館、ホテルまがいのものをあの中につくつていただいて、月のうち何日かは家族と楽しまれるような機会を持たれる方法もありますし、また軽症患者で、二十円ぐらいもらつて園内の仕事をやつておるのはかなわぬという人々には、希望に応じて職業補導をする方法もありますし、また男女の性別を考えますときに、もはや重患で望みのないプロミン以前の患者と、またわれわれが見おつてもわかるかわからないぐらいの患者とは、当然処遇に差がなければならない。ところがこれがごちやくにされ薫るというような点を見ましたときに、依然として政府の頭が改善されておらない姿を、実質に見るのであります。若い、希望を持つた軽い青年層の方々、若い未婚の娘さん、むすこさんたちもあの中におられる。はなはだしきは十八歳未満の、児童福祉法で守られなければならない年少の不幸な方々もおいでになる。こういう方々はこれをわけてするようにして、もつともつと教育の施設、保護施設がなされなければならない。こういう点において何ら政府のお考えがないということが、この法律の第四章の申訳的な福祉の中に私はうかがうことができると思うのであります。この福祉の面を、絶望やみがたい中からなお光を求められるこの方々に光を与えるために、この法律をもつと幅を広げて今日の医学の立場から、また社会八千五百万の大衆利益擁護の立場から、隔離して入所はしてもらうけれども、それだけの申開きにわれわれはこの人たちをこういう立場からかくのごとく守るのであるという建前が打立てられなければ、私は憲法に沿つた法律であるということが言えないと思う。政府はこの点法律をお出しになるにあたつてお考えにならなかつたのか、またある程度お考えになつたけれども、それが予算上許されなかつたのか、また大蔵省とも御相談になつたとか、若い方、老年層、男女の性別を考えてどういうふうに考えてみたとかいうような進歩的なお考えがあつたかどうか、その点を一応承つておきたいと思うのであります。
#38
○曽田政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、あるいは不十分であるかもしれませんが、私どもといたしましてもいろいろと考えた点でありました。いろいろ長谷川先生に対する御答弁の中にも申し上げたのでありますが、患者の中にはいろいろな種類のがおりまして、ただ病気の進んでいる、進んでいないということだけでなしに、体の不自由なもの、どうにか自分の用に足りるものというようなものもありますし、年齢の差があり、男女の差があるということは御指摘の通りでございますが、ある程度はさような点を考えていろいろ所内の管理もいたしているのであります。たとえば小さい子供、児童の患者というようなものであるとか、あるいは夫婦者あるいは男の病棟と女の病棟というように、いろいろある程度の差別はしているのでありますが、これがまだ十分にささいな点にまで至るという段階には至つておりません。この管理の方法とまた施設の設備とに応じまして、逐次患者の種類別の処遇というものを考えて行かなければならぬと思つております。また患者の全般的な福利増進というようなことにつきましては、特に所内に入所いたしました者に対しては十二条、十三条、あるいは十四条というようなところにうたつてあるわけでございます。ただいまそれを具体的にこの法文の中に書き現わすというのはまだ少し早いのではないかというようなところから、こういう表現になつているわけであります。しかしそのうち具体的に言えます教育関係というようなものは、ここにはつきりうたつてございます。他のたとえば厚生指導というようなものは十三条に一応方針と申しますか、いろいろな措置が講じ得るように、厚生指導の施設というものが今後逐次設置して行けるような条文を入れていただきたいというふうに考えている次第なのであります。今日におきましてもある程度の厚生福利施設が所内に設けてはあるわけであります。ごらんになりましたようにいろいろ公会堂とかまた授産所とまでは申せるかどうかわかりませんが、いろいろな作業の指導をいたしますものとか、あるいは教会堂、あるいは映画演劇などいろいろな文芸活動に対する援助というようなことをある程度は始めているわけでありますが、こういうようなものをさらに今後もだんだんと強化して参りたいということであります。ただいま堤先生から御指摘になりましたような点、また長谷川先生からも申されたのでありますが、こういう面はこの法律に基きまして十分具体的に将来伸ばして参りたいものだというふうに考ております。
#39
○堤(ツ)委員 私がただいま申した点が一番大事な点でありまして、藤楓会の二億二千万円というお金などは即刻こういう面に生きるべきである。ですから私は藤楓会があるいは金を寝させていらつしやるのではないかと思いますか、どういうふうにお使いになつたかということを要求するわけでありまして、いかに明治時代の古色蒼然たるものを、新しく患者の要求によつて改めたといいましても、その精神が少しもかわらず、その扱い方がほんとうに憲法第二十五条に認められたところの基本的人権を尊重して最低生活を保障し、その文化生活を保障するという建前に立つた頭でつくられなければ、これは改正したということができないのであります。従つて私は福利厚生施設の面からいたしまして、もつともつと具体的に――当局は早いとおつしやいますけれども、何が早いのか、それは政府の頭の中で、予算がないから早くうたつては困るという意味で、早いとおつしやるのではないかと思いますが、当然今期の改正にうたわれてしかるべきであるということを一言したいのであります。
 この点はこのくらいにいたしまして、現在の外出の状況でございますが、外出は先ほどの公衆衛生局長の御答弁ではあまりはつきりしないのでございますが、私などが仄聞するところによれば、患者は相当数外出を許されて、ときにはパチンコなどもおやりに行つてらつしやるということも聞いておるのであります。これは何かの理由で外出を許された人がパチンコなどをおやりになるのかもしれませんけれども、西武電車などはしよつちゆう村山全生園の方がお乗りになつておつて、一般の人がこれを知れば、電車に乗る客がなくなるだろうということを言つているのを聞いたことがある。たとえば昨日、また昨々日から陳情においでになつている患者の方々は、始終外出許可をもらつて、外出ばかりしでいらつしやる方々がほとんどであるというようなことを聞いております。しかも局長の説明を聞いておりますれば、今日の医学の限界においては、どの患者が伝染をし、どの患者が伝染をしないということは証明できないとおつしやつた。たとえば外からしろうとが見た場合に、癩患者であるということが非常にはつきりわかつておるから、それが伝染性を持つておる、外から見た場合に、癩患者か普通の方かわからないくらいに軽いから、それが伝染性を持たないというような医学的な、科学的な証明はできないとおつしやつておる。そういう根拠を持ちながら、なぜ世間に巷間伝えられるような外出をやらせ、電車にたくさんの患者が自由にお乗りになつたり、パチンコをなさるようなことをやつておるのか。現に陳情においでになつておる方々に対しましても、相当鋭い批判があるようでありまして、私たちはこの法律を通じて患者の方々に同情をいたしておりますので、こいねがわくばあなた方はどうぞ園にお帰りになつてくださいということを要求いたしておりますけれども、まだお帰りにならない。しかも一旦逃亡なり自由外出なりにあつたときには、警察官さえもこれに手を加えないという現状にあることを考えますときに、私は政府は医学的根拠がないからもつと自信ある態度をおとりにならなければいけないと思うのでございます。この辺はなはだうやむやでございまして、昨日からの処置を私が横から拝見いたしておりましても、また緒方大臣にも私は強力な申入れをいたしておきましたけれども、政府には自信のある御処置なり御答弁がない。この点をはつきり承りたい。私たちは絶望的な病に襲われたこの方々に満腔の同情を表し、できるだけの処置をとり、できるだけの保障をし、できるだけ人権を尊重いたしたいと思いますけれども、残る八千数百万の大衆の利益擁護もしなければならないのでございまして、この点は感情的にならず、理性的に、科学的に、合理的に検討されなければならないことと存じますので、はなはだ煮え切らない政府の態度に対しまして、私は不満を持ちまするが故に、この質問をあえてするのでございます。外出の点についてもう少しはつきりした答弁を願いたいと存じます。
#40
○曽田政府委員 外出の点につきましては、現在の法規によりましては特別の定めがないのでありますが、病気の経過が良好であり、また軽症でありまして、そうして十分な予防措置を講じますれば、他に感染のおそれが絶無とは申せないまでも、きわめて少いというふうに認定されます者については、特別やむを得ざる事情がございまして、どうしても外出しなければ他に方法がないという場合には、その外出を許可するという建前になつておる次第であります。
 今日感染のおそれある者とない者との区別が非常に困難だということを申し上げましたが、たとえてみますれば、鼻汁とかそういういろいろな分泌物の中に菌があるかないかという菌の有無だけはわかりますけれども、それが生きているか死んでいるかというような区別がつかない。また今日菌が発見されないにしても、またしばらくして出て来るというようなこともございます。こういうようなこと等によりまして、たとえば短い期間に十分予防措置を存じております人たちにお会いに行く、あるいはそういう措置のとれるところに出かけて行くというような場合には、それがどうしても他に方法のないやむを得ない事情と考えますれば、それを許可しているというのが現状でございます。従つて外出の許可を得ます者も、その期間を限り、行き先地を定め、大体その申請しまとた目的によつてこれを許可しているような次第であります。しかしその者が外出のついでにパチンコ屋に寄るとかいうようなことも実際問題としては起るわけでありましてなるべくさようなことのないようにと申しておりますが、そういう事態が起る。この辺のところは所のいろいろ具体的な運用の問題、この方針の活用の問題になつて来るわけでありまして、この辺の判断は所長にある程度まかしてあるようなことでございます。いろいろ世の中の事情と申しますか、みなの考え方というものによつてそれが多少ゆるきに流れましたり、きびしきに流れますようなおそれは確かにございます。なるべく適正に外出の許可をする。このことは将来におきましても、許可を与える場合には十分注意して行かなければならぬと考えております。
#41
○堤(ツ)委員 そうすると、今度の十五条の入院患者の外出についての条項は、現在行われている外出許可の条項そのままがここに盛られたものと解釈してよろしゆうございますか。大体そうなると思います。現在外出をお許しになつている程度のものをここに法文化されたという解釈をしてよろしゆうございますか。
#42
○曽田政府委員 私どもといたしましてはおおむねさように考えておりますが、しかしながらいろいろと学問が進んで参りますと、それに応じてこの範囲と申しますか、そういうものが幾分ずつ、むしろ自由の度は増して行くと私ども将来を見越しております。
#43
○堤(ツ)委員 私はどうもこの外出の件につきましては、政府は一つの見解を持ちながら、そこに何らかあいまいなところがあるように思われまして、割切れないのでございますが、医学的な見地から立証ができないならば、外出については、患者の方々にはまことにお気の毒ではございますけれども、やはり御自重願うとともに、法律の面においてもこれは極力お考えにならなければならぬ。具体的に言えば、患者の方々がパチンコをまわりのものと同じようにやりたいという娯楽面の要求があるでしよう。そうした場合に、たとえば先ほど申し上げましたように、福利厚生施設の上から、中に娯楽施設を設けてあげれば、あながち何かにかこつけて外出してパチンコをするということもなくなつて参りまして、これもやはり政府の施策が悪いから、無理な外出を願うことになつて、まんじどもえになつて悪い結果を生むことになるのでございまして、どうかこういう点はひとつお考えになつて善処していただきたい。
 最後にもう一つ御質問申し上げたいのは、患者にとつて秘密の保持は一番大切な問題であります。たとえばあの癩養所の中へ行きましても、私はいろいろとたくさんの例を聞いておりますが、二十年、三十年に忽然と国元を家族にも言わず出たまま行方不明になつて、自分はどこかで死んでしまつたものとなつておるけれども、この癩療養所にいるというような患者がほとんどであります。秘密の保持ということは、この方々にとつては絶対的なものでございます。従つて秘密を保持してあげるということに対して、われわれが絶対的な協力をしなければならないことは言をまたない。しかし入院患者を強制的に入所させるとか、消毒の場合だとか、生活保護法の適用の場合にやはり秘密が漏洩する。これはどういうところから漏れるかといえば、県を通すその係官の不心得から漏れるというようなことがしばしば伝えられておるのでございまして、なぜもう少し何とか秘密保持に関する積極的な手がこの法文の中に打てなかつたかと思うのでございます。たとえば生活保護法の適用のごとき、あすこの御主人が入所しなければならないから、生活保護法にこの家族はかかつておるのだというようなことは、すぐに世間に知れてしまうという例がございますが、これなども、今日のような生活保護法のやり方でなしに、癩患者の方々に対する特別な方法を講ずれば、もつと秘密保持を願う患者の要望にこたえられるのではないかと思うのでございますが、こういう点に対してはいかがでございますか。
#44
○山口(正)政府委員 ただいま堤先生御指摘の秘密保持の点は、私どもも十分考えて、先ほどから御説明申し上げました検診あるいは収容の際についての注意、あるいは患者の生活の保護というような点につきまして、いろいろくふうをいたしているわけでございますが、そのほかに、これはほかの公衆衛生立法でございますと、医師からの届出は一々保健所を経由して都道府県に届け出ることになつておりますのを、今回の法律にあつては、保健所を経由せずに直接届け出るというようなことを考えております。また消毒を実施いたします場合に、府県の職員が直接に参らずに、家族に資材を与えて、消毒を自分でやつてもらうというようなことの方法も規定いたしております。それからこの前の法案のときに考えましたところの、入退所に際しまして所長から都道府県知事に通告するというようなことも、患者がこれを好みませんので、今回はそういうことを素案の中に盛らないということもいたしましたし、また、所内における戒告謹慎を命じます場合に、規律審査会を設けるというようなことをこの前も考えたのでございますが、そういうことをいろいろな人に知れたくないという患者の希望もございますので、そういう点も今回は考えないということにして、いろいろとくふうをいたしております。今後といえども、ただいま堤先生の御指摘のように、この点につきまして府県の職員が一段と注意をいたしますように指導し、またこの法案の中におきましても、秘密漏洩の違反の罰則を特に強化してございますので、そういう指導と罰則の両面からその点は特に注意して参りたい、そういうふうに考えております。
#45
○寺島委員 長く病気で休みました上に、こういう医務局長のお忙しい際に質問を申し上げますことは、私としてはまことに恐縮でございまするから、きわめて要点だけをしぼつてお尋ねをいたしたいのであります。
 医務局長さんにお尋ねいたしたいのは二点。この二点の御質問は、すらりとお答え願えれば一分間で済むことでございます。医務局長さんにお尋ねいたしたい第一点はプリンシプルの問題でございますが、あなたはお役人といたしまして、すなわち、前任者が国会において明白な公約をいたされた問題に対して、後任者といたしまして、これを立法もしくは予算措置におやりになるという官吏当然のお考えを踏襲するというプリンシプルを明白にお持ちになつておられますかという点、この点をまことに恐縮でありますがお尋ねいたします。
#46
○曽田政府委員 プリンシプルとしては、私は当然その責任があると存じております。
#47
○寺島委員 さようなプリンシプルであるということを承りましてまことにありがたいと存ずるのでありますが、さればここで、本法を執行いたすに際しましてのお尋ねを申し上げたいのであります。
 本法以前の行政措置に対しましては、ただいまお見えの山口公衆衛生局長の前任者である三木氏が、あるいは山口氏が、きわめて真摯な努力を傾倒せられたことを当時私は記憶いたしておるのでありますが、私はかつて厚生委員長のときに、委員長の席をおりまして、時の東医務局長にお尋ねを申し上げておるのであります。東医務局長並びに時の大蔵省の局長にもあわせてお尋ねをいたしておるのでありますが、特に医務局長にお願いをいたしておきました問題といたしましては、全国の癩患者の切実なる希望の反映を立法のかなめに具現化いたしまする方法といたしまして――実際私どもは各大学の皮膚科もしくはその他を歴訪いたしてお尋ねを申し上げておるのでありますが、実は、癩患者に接到いたす数は、かなりの大学において一年に一人ないし二人である。あるいは全然ない大学が多い。かかる背景をもつていたしましては、ただいま切々として堤同僚委員がお尋ねになりましたところの、まことに癩患者なるや、しかもその癩患者が、軽症癩患者なるや、重症癩患者なるやの診断を遂げるということは、きわめて困難である。これも後に法務省の方々にごく簡単にお尋ねを申し上げますが、かかる困難であるという事態を背景といたしまして、人権を拘束いたすということは、決して私はりくつを申し上げているのではありませんが、困難ではなかろうか。かかる事態を当時において私が考えまして、第一点といたしまして、国家はきわめて近い将来に癩に関する相当な研究機構を整備せらるべきではないかという質問をいたしましたところ、この質問に対しまして、時の東医務局長から、確かにこれはいたしますという明確なる御答弁をちようだいいたしたのであります。これが第一点であります。さらに、町医者に対して、ポピユラーに癩の診断ができるように、癩の知識を得せしめる具体的方法といたしまして、癩病院に、インターンをぜひとも必修科目として行かれるような措置をとられてはどうであるかと、これはまあ議論でありますが、かかる御質問を申し上げましたところが、インターン審議会なるものに明白にこれをかけて御期待に沿うようにいたすという御答弁でありました。これは当時の速記録を見れば明白におわかりでございます。残余のたくさんの質問を当時いたしたのでありますが、決してこれをむし返そうというのではございませんが、どうも当時仄聞いたしますと、東さんの御長男が、時たまたまインターンの実習中であつて、自分のむすこのやつておるときは、インターンにそういう強制制度はやりたくはないというような笑い話も伺つたのであります。前任者の公約は、後任者すなわちこれを明確に行うものであるという、まことにありがたき局長のプリンシプルによつて、本法の立法をなされるに際しまして、いかような配慮をなされましたかいなや、私は、あるいは前質問者がすでに触れておる問題であろうかと思いますが、そういう場合には、委員長におわびを申し上げるのでありますが、まことに恐縮でありますが、お教えを願いたいと思うのであります。
#48
○曽田政府委員 癩研究所の設立につきましては、前任者以来の懸案でございまして、これを実現することに努めておりまして、今年度予算に一千万円の予算を組んでいただいたのであります。これは遺憾ながら研究所の設立という形にはなりませんで、研究費として、一千万円組んでいただきました。これを一箇所に設けるのがいいか、あるいは分散して設けるのがいいかという問題もあり、どうしてもこれは分散せざるを得ないというようなところから出たことでございます。なお、一つの研究所の看板をかけるということについては、今後とも努力をいたしたいと考えております。
 なお、インターンの問題につきましては、これは数の限られました養療所に、数の多いインターンをすべて療養所に勤務させるということも、なかなか実行が困難でございます。このインターンの期間に、きわめて短かい期間の実習あるいは見学をする、またインターンに至らなくても、医学生時代にもその機会を持たせていただくというような努力は払つております。
#49
○寺島委員 ちよつと一言、ただいまのあなたの御答弁は、すでにその程度のことは前任者との間に、もう少し掘り下げた質問がなされておりますので、ここでどうのこうの申し上げませんが、こういう問題でありますから、ぜひとも希望をかなえさせてもらうようにお願いをいたしたいと思います。
#50
○小島委員長 杉山元治郎君。
#51
○杉山委員 私はまず第一に、前に同僚委員がお聞きになつているかもし心ないが、ちよつと留守をいたした点もございますので、お伺いしたいのですが、今療養所外に癩患者と認められるような人がどれくらいいる予想でございますか。
#52
○山口(正)政府委員 推定約五千名というふうに考えております。
#53
○杉山委員 今それらの人たちを全部収容するようなつもりで療養所を拡張いたしておるのですが、あるいは今年の拡張の計画は千床だつたと思うのですが、どういうふうになつておりますか。
#54
○山口(正)政府委員 ただちにあと五千人全部一時に入れ得るという施設というものは、まだ整備されておりませんけれども、ここ一両年の間にそれだけ整備するという計画で進んでおります。「
#55
○杉山委員 次にお伺いいたしたいのは、先ほどから同僚議員によつていろいろ繰返されておりましたが、六条以下に書いてございます「らいを伝染させるおそれがある患者」、これは七条、八条、九条というように、すべての条項に入つている重要な問題で、この法案のキー・ポイントだと思うのであります。ところがこの点がはつきりしない、これは伝染させるか伝染させないかというような線は、どこで引くかわからない、こういうお答えであつたように聞き及んでいるのですが、そういうことだと、今残つている五千名というものは、伝染させるおそれがないということで置いているのか、あるいはこれは多々あるという予測だが、わからないからという意味でのけているのか、その点もひとつ伺いたいと思つております。
#56
○山口(正)政府委員 癩は伝染させるおそれがあるかないか、おそれがないという診定を下すことは、なかなかむずかしい問題であるということは、先ほど医務局長からもお答え申し上げた通りでございますが、あと残つております約五千名と推定せられております者の中で、収容しなければならぬと考え、しかも、いろいろ勧奨しておりますが、なかなか勧奨に応じない、重ねて続けていろいろ努力しているという患者は、約千六百名ございます。そのほかにほぼ確実だと思われる者が千八百名、あと不確実なものが千五百名ございます。現在残つている者が感染の危険がないという意味で収容されていないというのではございませんので、この中には私ども感染の危険があると思うので、いろいろ努力をしてできるだけ早く入所させたいと考えております者は相当数ございます。
#57
○杉山委員 そういう患者の分布は都市でございますか、農村地帯でありますか。
#58
○山口(正)政府委員 未収容患者の地理的分布は、全国で申し上げますと、九州地方に割合多いのでございますが、都市と農村との区別は、比較的農村の方に多いのでございます。
#59
○杉山委員 そこで伺いたいのですが、先ほど来秘密保持の問題でいろいろお話があり、当局においてもできるだけそういう点について注意をするというお話でございましたが、患者の所在地が農村に多い、大部分が農村だ、こういうことになりますと、これはよほど問題だと思うのであります。御承知のように農村というところは、珍しい人、かわつた人が参りますと、すぐそれは村中に知れ渡るのであります。かわつた人が参りますと、これはきつといろいろな話題生んで来る。しかもその人が入所させられておらなくなつたというような問題がわかつて参りますと、癩療養所に入つたということがはつきりわからなくても、おらなくなつたということによつて、また多少患者といいますか、病人の症状等をも思い合せて、あるいはそうではなかつたか、こういう疑いをかけて参りますと、よほど注意をしておつても、このことが村中に知れ渡つて行つて、残る家族にも非常に迷惑を与えるのではないか、こういうような意味合いにおいて、今特別なる措置が考えられておるのでありますけれども、農村地帯には特にその点について注意を要すると思うので、私はその点についてどういう考えを持つておるかということを、なお一応伺いたい。
#60
○山口(正)政府委員 杉山先生の御指摘の通り、農村では特にいろいろの因習がございますので一そういう点が強いと思われるのでございます。従いまして私どもは健康診断をいたします場合にも、先ほど申し上げますように、夜間診療をする。あるいは夜間診察に行くというようなことが、かえつてそういうことを刺激するというように考えられます場合には、結核その他のいろいろな集団検診がございますので、その集団検診に際して、係官にそういう旨を含めておいて、ほかと一緒にやる、ほかの集団検診をやります場合に一緒にやるというようなことをさせるようにいたしております。それからそういう患者がおりまして、どうしても伝染させるというようなおそれがありまする場合に、やはりこれは公衆衛生の立場から善処してもらわなければならないと思うのでありますが、そういう人たちがいなくなつた場合に、農村の人たちがそれと気づくだろうというような御意見ごもつともな点でございまして、これはなかなかむずかしい問題と思うのであります。長日月を要することかと存じますけれども、やはり一般の人たちのこの病気に対する偏見を是正して行くということに、私どもとしてできるだけのいろいろな手を尽して努力して行かなければならない、そういうふうに考えております。
#61
○杉山委員 今申し上げたような点で、農村は特に秘密保持が困難だ、こう思いまするので、特別な考慮を払わなければ、せつかく今言うような点を御指摘になつておつても、同じ結果を生むのじやないか、こういうことをおそれるのであります。そういうような意味合いにおいて、消毒薬を渡すというような場合も特別な注意が払われなければならないのじやないか、こういうように考えております。特に農村地帯に多いということを伺いまするので、この点についての一層の御配慮が願われたい、こう考えます。
 なお先ほどから堤委員が伺つておりました問題でありまするが、軽症患者に作業をさしておるということは、いわゆる何と申しますか、作業することによつて病気をよくする、あるいは気をまぎらわすとかいう、そういう方面の作業ならばけつこうだと思いますけれども、しかたなしに作業に従事させられている、こういう者も多数あるということを伺いましたが、そのやらされる点は、いわゆる費用が足らないということのためにそういうことになつておるのが、その点をまず第一に聞きたい。
#62
○山口(正)政府委員 ただいま御指摘の所内の作業の点は、先ほどから医務局長がいろいろお答え申し上げましたことでございまして、患者のあまり希望しないような作業はできるだけやめさして行かなければならないというふうに、所管をいたしております医務局の方でも考えているわけでございます。ただいま御質問の点、費用が足らないからそういうふうにしているのかどうかという点でございますが、これは従来からそういう仕事を、初めは患者の希望するものが、だんだん慣習的になつて来て、現在のような状態になつて来ておると承知しておりますので、不適当だと思われます点はこの際早急に改善をしなければならないというように考えております。
#63
○杉山委員 費用が足らないなら、これは大いに政府に要求して拡大するように、またわれわれも厚生委員としてこの点に協力するにやぶさかでない、こう考えるのですが、やはり癩療養所をたずねて患者の意見を伺いますときに、自分たちの療養所内の生活と申しますか、給付と申しますか、それが結核療養者に比較して非常に悪い、こういうことをよく聞くのですが、結核療養所と癩療養所と比較してそういう差がございますかどうですか。
#64
○山口(正)政府委員 特に結核療養所と比較して悪いということはございません。結核療養所と食事なども同様だと存じております。癩療養所におきましては、結核療養所と違いまして農耕地をたくさん持つておりますので、実際の食事の点などはそういう点から相当潤沢にとれるというふうに承知いたしております。
#65
○杉山委員 私の聞いたのでは、その一日の金額が非常に少いという話ですか……。
#66
○山口(正)政府委員 所管の局長がただいま席をはずしましたので、私から的確なお答えを申し上げることができませんので、まことに申訳ございませんが、実質において患者の摂取いたします食糧、あるいは熱量、あるいはその構成等において差異のないように、当局としては考えてやつているつもりでございます。
#67
○小島委員長 岡良一君。
#68
○岡委員 簡単に時間がありませんので、はしよつてお尋ねしたいのですが、一体政府の方では癩という病気に対して、これは伝染病である、しかも今日の進歩した医学的な分野ではかなり治療の道もある、こういう病気であるという認識でかかつておられるのかどうかという点をお伺いしたい。
#69
○山口(正)政府委員 癩は伝染性疾患であり、かつ最近の医学の進歩によりまして、治療が非常に進歩して参りましたので、相当これは――全然菌をなくし得るかどうか、全治ということにつきましては異論もございますが一非常に軽快にさせ得るものであるという立場に立つてこれを取扱つております。
#70
○岡委員 最近プロミン以後においても抗菌性のいろいろな新しい医薬が発見をされておるのであります。今日癩療養所の中で行われておる近代的な積極的な癩治療法、そしてそれによる治癒率等について簡単でよろしいですから、結論を伺いたい。
#71
○山口(正)政府委員 現在わが国の癩療養所におきまして使用しておりますのはプロミンの注射、それから錠剤といたしましてプロミゾール、こういうものを使用いたしております。そうしましてその治癒率と申しますか、症状の軽快率、これは症状によりまして差のあることはもちろんでございますが、プロミンの注射によりますと、結節、浸潤などは、効果は治療開始後一箇月前後から現われて参りまして、六箇月前後で非常に軽快いたします。鼻汁の中の菌は治療開始後、早い者は一箇月ぐらいで消失し始めます。ただ消失し始めますが、鼻粘膜の中の菌は大箇月ぐらいたたないとなかなか消失しないというような状況であります。完全に治癒したかどうかというその治癒率の問題になりますと、いろいろまだ議論があると思うのでございます。これは昨日も医務局長からお答え申し上げましたが、昨年度全国の癩療養所を退院してさしつかえがない、療養の必要がないと認定されて退所いたしました者が全国で三十五名ございます。
#72
○岡委員 それでは現在国立癩療養所に収容せられている患者のうち、プロミン施行中の者の軽快率は、大体大ざつぱにこれまでどのくらいあるか。パーセンデージでわかつておりますか。
#73
○山口(正)政府委員 ただいまここに正確なパーセンテージの数字を持合せておりません。ただいま申し上げました昨年度の退所者は三十五名、二十五年度は六十九名ございます。大部分のものが、七、八割がプロミン系統の薬剤を使用いたしておりまして、プロミンによりまして副作用の出ます者につきましては、従前から使つておりました大風子を使用して治療しております。ほとんど全体のものが現在そういうふうな治療を受けております。
#74
○岡委員 それではたとえば癩療養所内の秩序を乱す者あるいはそのおそれある者については、何らかの制裁的な処置が所長の権限で行われるのであるが、刑法上の被疑者が出た場合にはどう取扱われますか。
#75
○山口(正)政府委員 刑法上の被害者が出ました場合には、裁判所から出張いたしまして裁判をいたしまして、そして刑が決定いたしましたならば、熊本に法務省所管の癩刑務所がございますので、そちらに送ることになつております。
#76
○岡委員 この前楽泉園で問題が起つて、私ども現地調査に行つたのでそういう措置が講ぜられることは知つております。しかし先ほど来杉山委員も御指摘のように、問題は癩病というものが昔天刑病といわれたような、そういうもはや絶望的ないわば業病ではない、遺伝病ではない、伝染的な病気である。従つて近代医学というものは今後ますます十分に軽快の率を上げ得るような治療法を発見しつつあるのだということをはつきりと国民に示し、またらい予防法案を審議するものも、そういう観点から病気をながめて対策をするということが必要ではないかと思うのです。それがないために、患者の側に立つての公衆衛生という観点を忘れての論議も行われるだろうし、特に秘密保持ということを強調されるのも、やはり国民一般にはまだ癩病というものが天刑病だ、伝染病ではなくてこれは遺伝病であり、子々孫々までもたたるものだという非常に間違つた封建的な考え方から出て来ている。だから癩患者に対し、あるいは癩患者を擁す家族に対して、その福祉をはかろうとするならば、旧来のこうした癩に対する非科学的な間違つた考えを徹底的に払拭するという国民への啓発運動というものが非常に必要だろうと思う。多少なされておるようではあるが、これはもつと積極的にやらなくては、ほんとうに癩患者に対する社会的な処遇というものの改善の本質的な解決にならぬと思うのだが、そういう点について厚生省の方では何らか特別な積極的な方法を講ぜられる御意思があるか、あるとすれば具体的にどういう御用意を持つておられるか。
#77
○山口(正)政府委員 ただいま岡先生の御指摘の点お説の通りでございまして、癩に対する偏見を是正するという点は、この癩予防対策を円滑に実施して参ります上に最も大切なことだと存ずるのでございます。従いまして今回御審議願つております法案の第二条におきましても、癩に関する正しい知識の普及に努めるということを、国及び地方公共団体の義務といたしまして、これを今後強力に実施して行かなければならないというふうに考えております。具体的にはどうするかというお話でございますが、先ほど堤先生からも御指摘のございました貞明皇后の記念救癩募金によつて集められました二億円の金を、藤楓協会で使用いたしまする場合て特にそういう啓蒙運動というようなことに力を入れて使つてほしいということを、私どもの方で藤楓協会の当事者と話し合つて、そういうふうに進めて参りたいと考えております。
#78
○岡委員 ひとつ格段な御努力をお願いいたしまして、私の質問はこれで終ります。
#79
○中野委員 ちよつと関連して。今の御説明の中に、熊本に癩刑務所があると承りましたが、これは現在収容されておる人員がどのくらいあるのか、その収容されておる人員と、犯罪のあらましでけつこうですから、ちよつと聞かせて置いていただきたい。
#80
○山口(正)政府委員 現在の収容定員は五十名でございまして、そのうち十二名現在収容いたしております。その刑の内容につきましてはただいま資料を持ち合せておりませんので、後刻申し上げたいと存じます。
#81
○中野委員 刑務所中においてはどのような作業を行つておるのですか。あるいはただ隔離をするのが目的ですか。
#82
○山口(正)政府委員 労役に服し得る者につきましては、一般刑務所と同様に作業に従事させております。
#83
○寺島委員 時間も経過いたしておりますので、ごく簡単に要点だけお尋ねいたしたいと思います。刑事局長の岡原さんを要求いたしておつたのでありますが……。
#84
○小島委員長 局長は出張中です。
#85
○寺島委員 それではごく簡単にお尋ねします。今回のらい予防法に対して患者側から叫ばれておりまする反対論の多くは、罰則規定にあるやに承つておるのでございます。もちろんそれに違いないのでございますが一実際問題といたしまして癩患者の、外におる癩患者、すなわちいまだ隔離せられざる以前の癩患者と、隔離せられてからの癩患者とに対しまする刑法の取扱いは、おのずから違うと私は存ずるのでありますが、時間がございませんので、この両者を含めて伺つてみたいと思うのでございます。
 これは余談になりますが、ごく短かく申し上げますと、かつて大蔵省の主計局という鉄の格子のような感じを持つておられる役所でも、局長の家に明日癩患者を一箇連隊バスへ乗せて陳情に行くがというと、もう来てもらわいでもけつこうだというので、一千万円の予算が一挙に六千万円にふえたという事実があるのでございます。そこで法務省刑事局の皆さんにお尋ねいたしてみたいと思うのでありますが、この癩患者が犯罪を犯した場合には、あんた方はなかなか勇猛果敢で、そもそも刑事政策には二つの考え方があつて、石井さんは若い検事ですから、おそらく若いセオリーに立つておられるのだろうと思うのですが、ロートル検事の一員は、依然として国警に逮捕権を与えることをしないで、検事みずからが逮捕権を与えて、国警の上に君臨をいたそうという考え方が、刑事訴訟法一部改正法律案として近く国会に上程せられるように承つておる。これはそのときにゆつくりお手合せをいたしますが、それを勘案いたしまして、われわれ百円の税金を納めて、そのうち二十円はどろぼう、窃盗、そういうようなものに使われておる。このような国家は世界の国で日本だけである。これを換言いたしますと、実に日本の国は警察フアツシヨの国家である。私は終戦以来代議士をいたしておりますが、その傾向の顕著なこと今日より大なるはない。そこで実際問題として癩病患者をふん縛るという方法は、私はなかなかお取扱いにくい問題であろうと思うのであります。実は食糧管理法の案を見ましても、これはなかなかやりにくい、取扱いにくい法律条項である。現に法務省検察庁の食堂で、外食券がなくて堂々と食事が売られておる。こういう一事を見ましても、食糧管理法というものがなかなか困難であることがわかる。選挙法もまたこういう問題の一つであるかと思います。らい予防法もこのような問題の一つであるのではなかろうかという私の考えでございますが、百円も納付いたしまして、実に二十円も警察、検察の費用にお使いになられるところの現在の検察御当局の勇断に対しまして私が申し上げるのは、検察庁の建物が実にりつぱにできて、その運用に対しまして無事の民があつてはならないという考えから質問したいのでありますが、癩病というものが、その初期においては実に診断が困難であるという点、現に相当の皮膚科の医師をもつていたしましても、初期の段階においてはなかなか発見することが困難である。かかる不安定脆弱なる上に、こういう罰則規定をお載せになることに対しましては、慎重なるお取扱いをお願いしたいというのが私の考えでございますが、その上に立つて、いかようなるお取扱いにするか、これに対するあなたの抱負を伺いたい。この点は患者一同の熾烈な要求でありますので、あるいは蛇足にわたるかとも存ずるのでありますが、一言お尋ねを申し上げます。
#86
○長戸説明員 らい予防法案の第二十八条の外出制限の問題につきましては、この扱いは憲法との関連もありまするし、罰則としましても最小限度にとどめた次第でありますが、しかし今御質問のありましたように、その罰則を適用いたしますにつきましては、最も慎重なる態度をもつて臨まなければならないというふうに考えております。なお一般の刑法犯の問題でございますが、ただいま委員のお説のように、いろいろ問題がございますが、ただ癩患者の方々に対する社会の観念か、これは先ほどのお話にもございましたように、一般がまだ伝染病である、決して天刑病的なものではないということの認識を十分に持ち合せていない。ことに農村などの因襲の深いところにおきましては、非常に冷たい目で見るだろうと思います。そういうふうな事柄から発しまして犯罪を犯すという者もございますわけで、そういうような者につきましては、やはり単に犯罪があるからといつて、それだけできつく罰するということが能ではない。むしろその原因たる病気の治療ということの方が先決である。こういうふうにわれわれは考えております。ただ非常に悪質な犯罪が行われた場合には、やむなく処罰しなければならぬ場合もございましよう。そのために先ほどお話の出ましたように、熊本に癩刑務所などを設けておるわけであります。
#87
○寺島委員 実は本問題に対しましては犯罪構成の根本についてあるいは分析して伺つてみたいと思いますが、もうすでに相当時間もたつておりますので、その運用の上にぜひとも御考慮をお願いいたしまして、質問を打切らせていただきたいと思います。
#88
○亘委員 本案に対する質疑もおおむね終了したと考えられるのでありますが、この際質疑を打切つて討論採決されんことを望みます。
#89
○堤(ツ)委員 ただいま質疑打切りの動議が出ましたが、ここに皆さんにお考え願わなければならぬのは、非常に大切な癩予防法の改正に当つて大臣が御不在であるということです。医学的に研究をしなければならない問題、福利厚生施設の問題、いろいろな問題がたくさん盲点を残したままこの法案の質疑を打切るということは私は残念でありまして、一応大臣に質疑をするのが妥当な行き方ではないかと思うのであります。私の方の党といたしましては、やはり大臣質問というものを一応持ちたいという意向を持つているのでありますが、一度お諮りになつて、あえて他の党の方々が必要ないとおつしやるならば、また数の問題もございますから妥協いたしますけれども、私の方の党といたしましては、大臣に一応の質問をしてこの法案に対する態度をきめたい、かように存じているわけであります。
#90
○小島委員長 堤さんに申し上げます。大臣はやむを得ない用で九州に行つた次第でありますし、かたがた大臣に対しましては一般行政につきまして質問する機会が今後あることになつておりますから、その際にまた聞いていただくことにいたしまして、本日はただちに亘君の動議について賛否を聞いてみたいと思います。
 ただいまの亘四郎君の動議の通り本案の質疑を打切ることに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#91
○小島委員長 御異議なしと認めます。よつて本案の質疑は打切ることに決しました。これにて秘密会を終ります。
    〔午後零時五十八分秘密会を終る〕
     ――――◇―――――
#92
○小島委員長 次に本案について討論を行います。青柳一郎君。
#93
○青柳委員 私は自由党を代表いたしまして強い希望条件を付して本案に賛成せんとするものであります。
 この法案の審議に際しまして癩療養所に入所している方々がいろいろな主張をなさいました。これらの主張はわれわれが考察するところによりますと、強制的な規定を各所に規定することは自由なる行動を害する、人権を害するものであるとする憤激と、癩患者であることが他人に知られることによつて一家の破滅を招来するという危惧、この憤激と危惧とを根本といたしまして、患者の主張といたしましては、癩の本質、本体、療養所の実態を世間に知らしめ、自分たちに知らしめることによつて、進んで癩者は入所をいたし、治療に専念をいたすものである。癩について、またさらに療養所について社会を啓蒙せよということと、癩であることが世間にわかることに上つて、一家の生活を脅かされ、一家が路頭に迷うものである、生活保護法を適用せんとすれば、その家族が癩者の家族であるということがわかる。かくして生活の脅威にいつもさらされておる。しかも子供を入学させんとし、また家族を就職せしめんとするときにも至難なことが起るのである。この生活問題と社会の啓蒙、この二つがりつぱに行き届いたときには、命令して各種の強制的な措置をとる必要なしというのが、主張の根本であると考える次第であります。しかしながら振り返つて、この法案を検討いたします際、各種の強制的規定におきましては、現行の癩予防法に比しますれば相当緩和的な規定が行われておるということも、われわれとしては是認せざるを得ません。さらにこの法案におきましては第四章に福祉の規定を設け、さらに十二条、十三条、十四条におきましても、福祉の規定を設けておる点などを考え、ますれば、現行の癩予防法に比しまして、このらい予防法は相当進歩的な、しかも相当癩者に対しての改善を加えておるものと認めざるを得ないのでございます。
 私どもはここに五つの条件を付する次第でございます。その五つと申しますのは、まず第一には、本法による指定医の診察、国立療養所への入所及び汚染場所の消毒並びに生活保護の実施等に関し、患者及びその家族の心情を思い、極力秘密を保持することに努めらるべきこと。第二といたしましては、国立療養所入所者につき、重症者と軽症者を区別すべく、要すれば軽症者についてそのアフター・ケア的施設を設くべきこと。これについては先ほど堤委員から御質問がございましたので、別に説明を加える必要はございますまい。第三といたしましては、国立療養所の職員を増員し、入所患者の作業の負担を軽減すべきこと。第四といたしまして、入所患者のための福祉厚生施設の拡充整備に努力せらるべきこと。さらに第五といたしましては、本法案の総則を見ましても、患者の福祉のために、さらに社会の福祉のために各種のりつぱな規定があるのでございます。これら主として社会の啓蒙のための規定を十分に生かされんことが第五でございます。これらの五つの事項につきまして、実際上の本法案の運営につき、さらにまた予算の計上につき、あるいは本法案を近い機会において改正せられまして、この希望条件を達成せしめられんことを強く政府に要望いたしまして、われわれは本法案に賛成をする次第でございます。
#94
○小島委員長 古屋菊男君。
#95
○古屋(菊)委員 私は改進党を代表して、特に強い希望条件を付して本案に賛成の意を表します。本法案の提出をめぐつて社会的反響が非常に大きかつたのでありまするが、癩は伝染病であるので、社会、公衆に与える影響を考え、冷静にかつ客観的に、観察するときに、本法案に盛られた程度の予防措置は社会的に必要であると思うのでありまして、患者及び関係者諸氏の冷静なる判断をまちたいと思うのであります。特に本法案の特色は、患者及び家族の福祉増進の道をはかつておるのでありまして、いずれにしても現行法は現状に適しませんので、新時代に即応する予防法を制定して予防するとともに、その福祉を十分にはかり、患者の医療を行い、あわせて場合によつてはアフター・ケアの施設をなし、患者の希望を満たす等、今後とも福祉に対しては絶対なる努力を政府当局にお願いしておきたいと思います。
#96
○小島委員長 長谷川保君。
#97
○長谷川(保)委員 私は日本社会党を代表いたしまして本法案に反対せんとするものであります。もとよりわが党といたしましても癩が伝染病でありまする以上、これに対しまして予防あるいは取締りの措置が講ぜられ、最後的段階におきましては強制収容、強制検診あるいは消毒等がなされなければならないことは認むるにやぶさかでありません。しかしながらみずからの責任にあらずいたしましてこの不幸なる病に侵されましたる人々を、社会公衆全般のためにという理由をもつて、国立療養所に収容し、これを監禁するというに至りましては、その患者の基本的人権を侵害する点に対して、一般社会はそれに報いる十二分なる償いをしなければなりません。しかるに本法案を見ますると、この法案は遺憾ながら、非常な御苦心の跡は見えまするけれども、なお予防取締りという点に重点が置かれまして、その患者の基本的人権を侵害いたしまするものに対しましての十分なる社会の償い、すなわち患者の福祉を十二分に至るところにおいて考えてあげるという点が不十分でありますことは、きわめて遺憾とするところでございます。もし本案に対しまして、この気の毒なる諸君への深き愛情と、また十二分の親切と同情と、そう、してそれに対しまする適当なる配慮を加えるといたしまするならば、本法案に書かれました以上に、たとえば五条、六条におきまする強制検診や強制収容の問題、あるいは十五条の外出制限の問題あるいは処罰の問題、あるいは二十一条におきまする生活保護の問題、あるいは第四章全体にありまする福祉の問題等々について、なお十分なる配慮と、その配慮を実現いたしますための修正がなさるべきであると思うのでございます。ことにはこの癩が伝染病であるという広報活動等につきましてもなお十分なる規定を設くべきである。しかるに広報活動等につきましてはほとんど何らの規定がございません。あるいはまたさらに先ほども論ぜられましたように、貞明皇后の癩予防の基金のごとき、この不幸なる同胞に対しましてなお幾多の福祉施設をつくるべき、福祉の道を講ずべき基金の制度等も、他に幾らも考えらるべきである。しかるに貞明皇后のあの癩予防の基金のごときは、宮内庁がこれを占有して管理いたしまして、きわめて消極的なる費途のほかは使われておらない、こういうような点につきましてもなおなお十分に改正せらるべき点があると思う。少くともそういうような制度につきましても、この法文の中に、福祉の基金の問題等も加えてもよかろうと思うのでございます。もしさらに一章を新たに設けまして、回復者のコロニーもしくは後保護施設等につきまして、これをつくるべき条文を入れ、ここにおいて外出の自由あるいはまた患者と家族との宿泊の施設あるいはまた職業教育、あるいはまた場合によりましては、患者の希望によつては終身十分なる生活の保障をして、そこにとどまることを得せしめるというような幾多の道におきまして、十二分なる福祉施設をつくるということを考えて、そういう条文をここに入れるとしまするならば、この法文全体がどんなにか患者の今日の希望を満たし、熱望をやわらげるところのものとなるであろうと思うのでありますけれども、これはそれらのものが盛られておりません。
 さらにまた今日の患者の労働の問題でありまするけれども、これらにつきましても、今日癩患者の労働によらなければ療養所の運営ができない、こういう状態になりましたのは、さきの人員整理におきまして、かつては結核療養所と同数の定員を持ちました癩療養所が、きわめてわずかの職員をもつて経営しなければならないということになつているところにできて来たのでありまして、今回の混乱の一つの大きな原因をなしているのでありますが、この予防法の改正をいたしましたならば、当然この点に留意いたしまして、職員の定員法の改正、また職員の待遇改善の道をさらに十分に尽すべきであります。それらの法を並行的に改正せずしてこの法律を出されたことにつきましてはきわめて不条理であると思うのであります。ことに今日本法案に対して大きな誤解のありますとき心、こういうものを十分に納得の行くまで説くことを、当然それができるのにせずいたしまして、この法律を通過させんとすることをきわめて遺憾とするものであります。
 私どもはかかる観点に立ちましてこの法案が本来福祉立法を主体とし、それに加えるに取締り、予防、医療というような法律であるべきが、患者の福祉に対してきわめて不十分なままに本法案が提出されたことを遺憾とし、本法案に対しましては遺憾ながら反対せざるを得ないのでございます。
#98
○小島委員長 堤君。
#99
○堤(ツ)委員 私はわが党を代表いたしまして、らい予防法の改正案に残念ながら反対の意を表せざるを得ないのであります。
 現行の癩予防法は、御承知の通り明治四十年に勅令第二八四号をもつて公布され、同じく四十二年の四月一日から施行されました。当時はもつぱら浮浪患者を強制的に隔離することを目的としたものでございまして、癩行政及び療養所の運営を規定したものでありますが、以来五十年近くを経て医学が非常に進歩いたし、癩予防療養所の本質的性格もかわつておりますのに、法律のみは、十年一日という言葉もありますが、五十年一日何ら改革を加えることなく、今日まで旧法が施行されて来たのであります。当然私は時代の流れに沿つてこれら古い癩予防法が漸次改められつつ今日に及ばなければならなかつたと存ずるのでございます。この点はなはだ遺憾に存ずるものでございます。すなわち漸次改正されたものでないがゆえに、今回の五十年ぶりのらい予防法案を見ましても、政府の頭は今日の事態に即応したものに切りかえられておらないのでございます。法案全体に対しまして、取締法であり、また罰則規定が大部分を占めているということを申して、癩患者の諸子は猛烈なる反対運動を続けておいでになりますが、むべなるかな、福祉の面はほんの刺身のつま程度でございまして、ほとんどがやはり依然として浮浪患者を強制隔離した当時の頭にのつとつて今日もなお改正がなされているという点をはなはだ遺憾に存ずるのでございます。
 このらい予防法の逐条審議にあたりまして、各委員からも発言があり、その要望がなされましたと同時に、養成の与党の青柳委員、改進党の賛成委員の御意見を承りましても、私たちが質疑応答の中においてはつきりいたしました面を御指摘になつて、むしろこの点は早急に何とかさらに改正をされなければならないということを御強調になつておりますのを見てもわかります通りに、私たちは入所の義務を患者に要求して、それから検診を法に規定し、さらにいろいろな罰則を盛りますからには、それを償うにあまりあるところの保護、福利施設というものが、当然近代的な感覚をもつてこの中に盛られなければならないと存ずるのでございます。ところが政府の意図たるやまことに不誠意きわまるものであつて、法文上の技巧的な労苦はなされておりますけれども、その根底となるべき財政裏づけというものがほとんどなされておらず、今日はなはだ根拠の薄いところの医学的見解も、もう一段と研究しなければいけない段階に来ているのでありまして、これをかつて約束されているにもかかわらず、なお予算には十分な額が組まれず、また福祉更生の面につきましても、るる質疑応答の際において申し述べましたが、軽患者、重症患者を区別することなく、画一的にこの中に収容させるといつたような施設は、まつたく犠牲をしいるところの患者に対して私たち申訳ないものと言わざるを得ないのでございます。さらでだに感情的になりやすい癩患者の方々が、気分転換をはかり、できるだけ治療なさつて、愉快な人生をせめてこの園の中で送つてもらおうとするならば、私たちはこの方々に対するところの社会保障的な見地からの保護がなされなければならないと思うのでございます。職業補導にいたしましても、また家族との連絡の問題につきましても、さらにいろいろな娯楽面につきましても、大よそわれわれがわれわれの社会において望むものは、この人たちに十分に保障されなければならないのでございまして、こうした面において国の予算がないどころか、むしろ貞明皇后の御遺志であるところの藤楓会の持つ二億二千万円の金さえも、今日においてもなお手の行き届いた処置がとられておらないということを考えますときには、まことに患者諸氏にかわつて私は憤懣禁じ得ないものがあるということを申し上げたいのでございます。できるならば私たちはこの癩患者の方方に対しまして、超党派的な委員会の意見をまとめて政府の意向に反省を求め、できるだけ私たちの保障の面を強調いたしたいと存じたのでございますが、この審議を急がれる政党もあり、歩調がそろわず、まことに残念でございまして、附帯決議さえも同一歩調を持ち得ないということははなはだ残念でございます。わが党といたしましては、この現在の法文に加うるに、第四章の福祉更生施設の面がより以上に強調されて具体的に盛られなければ、癩患者のためにこれに私たちは同調できないと思うのでございます。同時に癩患者の方々に対しましては、十分な代弁をいたしますけれども、しかしわれわれが検討するにあたりまして、感情的にならずに理性的でなければなりません。科学的、医学的でなければなりません。一万二千人の患者の方々のために八千五百万の人々が無視されてはならないのでありまして、この点から考えまして、一にも二にもあげて癩医学の研究ということについては、もつともつとこの委員会の意志を強く表示しておかなければならないと存ずるのであります。医学的な見地から研究される費用、さらにつつ込んだ世界水準をはるかに抜いた文献などができなければ、国際的な恥辱であるところの癩患者の数は、日本から消えることはないと存ずるのでございまして、民族あげてこの癩と闘うの気慨をもつて、私たちは国家予算の中に研究のための費用を盛られなければならないと存ずるのでございます。この面につきましても政府は確たる意見と、そして十分なる費用を組まずして、この法案の改正を叫んでいるのでございます。私はこの予防法案が片手落ちのものであるということを強調いたしますと同時に、今日病に呻吟されます方々と同じ愚を繰返すことなく、後代の人々が何とかこの病魔から救われますような、明日の希望あるところの国策を切望するものでありますがゆえに、この未完成な法案に対しましては反対をいたし、本院においてははなはだ数の上において微力でございますので、その目的を達しませんが、さらにその闘争を参議院に移すということを申し上げて、討論を終りたいと存じます。
#100
○小島委員長 亘四郎君。
#101
○亘委員 私は自由党を代表いたしまして、本案に賛成の意を表するものであります。
 この厚生委員会におきまして、わが国からいまわしい癩病を根絶する目的をもつて、前国会において特に小委員会を設け、これが理想達成のために各委員の方々が非常な努力をされたのでありますが、今回そうした運動に対応いたしまして、政府が予防法案を出されたわけであります。今この予防法案の採決をいたす段階におきまして、私どもの心を痛めますものは、申すまでもなく、多くの癩療養所入所の患者の方々がこれに対して強い反対をされておる現状であります。これらの反対されておる方々の心情は、私どももまつたく同情にたえないのでありまして、法案を表面通り解釈いたしまするならば、言われる通りまことに取締法的なにおいが強過ぎて、そこに社会としてこれら不幸な人に対する償い、その福祉的な方面がまことに少く取入れられておるという点に大きな不安を持つておる。強制的な検診、隔離、あるいはまたこれらの人たちの家族の生活不安の問題、あるいは秘密保持の問題、こうしたいろいろな面に対して、なお不十分のそしりは免れないのでございます。しかしながらこの病気は伝染性の疾患であつて、これを処理いたしまする場合におきましては、隔離以外に方法がないということは、これまたひとりわが国のみがとつている処置でなく、諸外国もみなそうした形においてこの癩患者の収容をいたしておる次第なのでございますから、そういう観点に立ちますときに、いろいろまだ不十分な点もありますけれども、今改正の段階におきまして、政府から提案されました予防法は、一応これを認めて行かなければならないのであつて、これを認めることは適当であろうかと考えられるのであります。患者の方々の恐れられておる点、むしろ非常に強い恐怖心を持たれておるように見受けられるのでありますが、そのよつて来るところの原因を静かに考えてみまするに、これは旧来からの療養所内における取扱いの上において、これらの方々に対して親切を欠き、良心を欠いておつた取扱いが多くあつたのが原因の大きなものではなかろうか、かように考えられるのであります。
 そういう意味からいたしまして、私はこの法案の施行にあたりまして、特に政府の方に注意していただきたいことは、まず第一番目には、この病気は、先ほど岡委員からも強く指摘されましたように、伝染病であつて、決して遺伝病ではない。そうして今日癩病に対して一般社会の持つておる偏見を積極的にただして行くという処置をとられることが、第一番目に必要なことであります。
 第二といたしましては、これらの入所患者の方々に対して、そこに勤めておられるところの職員の方々の日日の接触において、思いやりをもつて、そうしてほんとうに精神的の奉仕をするという気持をもつて当つていただきたい。慈母が愛児に対する態度をもつてこれに接してもらいたい。そのためには、そこに働いておられる職員の方々に対しても、この方々はこうした難局に当られ、人の好まないところに勤められるのでありますから、十分な処置を講じ、そうして待遇の改善あるいはまた増員、増俸という点について留意していただかなければならないのであります。そうしたことが一応完成されまするならば、本法案の施行されます場合に、この法律の精神も生き、また有終の美を全うするであろうということを確信いたしまして、本法案に賛成いたすものであります。
#102
○小島委員長 以上で討論は終局いたしました。これより採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#103
○小島委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたされました。
 次に本案に関する委員会の報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#104
○小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
 本日はこれにて散会し、明後月曜日午前十時より開会いたします。
    午後一時二十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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