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1947/08/26 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第29号
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1947/08/26 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第29号

#1
第001回国会 本会議 第29号
昭和二十二年八月二十六日(火曜日)
    午後三時十四分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第二十八号
  昭和二十二年八月二十六日(火曜日)
    午後一時開議
 第一 生命保險中央会及び損害保險中央会の保險業務に関する権利義務の承継等に関する法律案(内閣提出)
 第二 金融機関再建整備法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第三 労働者災害補償保險特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 第一 生命保險中央会及び損害保險中央会の保險業務に関する権利義務の承継等に関する法律案(内閣提出)
 第二 金融機関再建整備法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第三 労働者災害補償保險特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#3
○議長(松岡駒吉君) 日程第一、生命保險中央会及び損害保險中央会の保險業務に関する権利義務の承継等に関する法律案、日程第二、金融機関再建整備法の一部を改正する法律案、日程第三、労働者災害補償保險特別会計法の一部を改正する法律案、右三案は同一の委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。財政及び金融委員長北村徳太郎君。
    〔北村徳太郎君登壇〕
#4
○北村徳太郎君 ただいま議題となりました生命保險中央会及び損害保險中央会の保險業務に関する権利義務の承継等に関する法律案、金融機関再建整備法の一部を改正する法律案及び労働者災害補償保險特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、財務及び金融委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず生命保險中央会は、昭和二十年四月一日、生命保險中央会法に基いて設立された法人でございまして、戰爭危險の再保險業務、戰爭死亡傷害保險業務および普通生命保險業務を行つてきたのであります。また傷害保險中央会は、同じく昭和二十年四月一日、損害保險中央会法の基いて設立されました法人でございまして、戰爭保險、地震保險の業務、普通損害保險の再保險業務及び普通損害保險業務を行つてきたのであります。しこうして、これらの両中央会は、戰時國民生活の安定に資してきたのでありますが、終戰に伴い今後存続せしめる必要もなく、また関係方面の意向もありまして、生命保險中央会及び損害保險中央会の保險業務に関する権利義務を、それぞれ協栄生命保險株式会社及び東亞火災海上保險株式会社に承継せしめることにいたしたのであります。從つて、協栄生命保險株式会社が生命保險中央会から、承継した権利義務に係る業務によつて損失を受けましたときには、政府はこれを補償し、また利益を得たときには、その利益を政府に納付しなければならないこととしたのであります。また東亞火災海上保險会社の場合も同様であります。
 右のような規定がありますから、協栄生命保險株式会社及び東亞火災海上保險株式会社は、右に述べました業務に基く收入を、他の收支と区分経理しなければならないことにいたしてあるのであります。なお、協栄生命保險株式会社については、前に外國保險会社を保險者としていた保險契約に関する財産及び収支を区分整理しなければならないことにいたしてありますが、これは同社が承継することになつているカナダサン及びマニユフアクチユラス両生命保險会社の保險契約者の利益を保護するためであります。
 協栄生命保險株式会社及び東亞火災海上保險株式会社が、両中央会から承継する業務に関する税法上の特例は、從來の生命保險中央会法及び損害保險中央会法の規定と同樣であります。本法の規定によりまして、保險業務に関する権利義務をそれぞれの会社に移轉した後、両中央会は主務大臣の指定する日に解散することにし、生命保險中央会法及び損害保險中央会法は廃止することになつておるのであります。
 次に、当委員会における審査の概況を申し上げたいと思います。本改正案は、去る七月十日本委員会に付託になつたものでありまして、その後数回にわたつて委員会を開き、政府と委員諸君との間に熱心なる質疑應答が交されました。今簡単に簡單にその大要を申し上げます。
 まず委員より、協栄生命保險及び生命保險中央会の今後の動きについて質問があつたのでございますが、政府より、協栄生命保險は昭和十年に設立を見て、生命保險の再保險業務と弱体保險を取扱つていたが、生命保險中央会がその業務を吸收合併することになつたので、協栄生命保險会社は解散した、しかし終戰に伴い中央会の存在理由がなくなり、再び協栄生命が発足し、先ごろ創立されたのである、そこで、生命保險中央会が担当していた國家関係の事務及び旧協栄生命系統の仕事は、再出発した協栄生命に引継がせるのが妥当であるというので、これを承継人に定めたわけである、生命保險中央会は、今後もつぱら清算の事務に当ることになる、もつとも清算といつても、保險関係の事務は協栄生命に資産、負債とも引継ぐので、整理債務というものはきわめてノミナルなものであると思う、中央会の基金並びに基金に準ずる勘定だけであつて、実質上は大体終了する予定であるとの答弁がありました。
 次に、当局として第二会社の設立はすべてこれを許すのか、あるいは取捨選択するのか、選択するとすれば、その範囲はどうであるかという質疑に対し、政府は、インフレ高進の現況では、保險会社の立行きはむづかしいけれども、安定を待てば、相当堅実な出発を期待できるというものに対してはこれを復活させるが、どうしてもそれが困難なものは許可しない、ただちに合併あるいは解散の措置をとりたいと考えているとの答弁がありました。
 さらに、現在は保險会社の整理に最も適当な時期だと考えるが、これを整理あるいは監督するのに、生命保險協会とか、あるいは別途の民主的な機関をつくつてはどうかとの質問に対し、政府は、ただいま生命保險に関しては保險復興会議という民主的な機関を設けることにしているので、この活用によつて、そうした趣旨のごときものを十分取入れていきたいとの答弁がありました。
 次に委員より、近く貿易が再開されると、外国商社が日本に進出し、保險業務を取扱う会社も相当出てくると思うが、わが國のように保險業と銀行業とを別々に分離していたのでは、その維持経営形態などが相当苦しくなつてくるのではないかと思うがいかんとの質問に対し、政府より、われわれとしては金融機関再建整備法を著々実行し、不良な資産をすべて洗つて、すつきりした形の金融機関を再建し、金融機関のコストを極力切り詰め、コストの安い営業を成立せしめるように指導する方針である、また外國商社に対しては、極力日本の物件を対象としない保險を考えてもろうよう懇請している次第であるとの答弁がありました。
 次に討論に入り、社会党の中崎委員より、各派共同提案の修正案について、次のような説明並びに意見が述べられました。
 第一に、原案では生命保險中央会法及び損害保險中央会法の廃止の期日は政令で定めることになつていたが、法律を廃止する期日は法律で規定するのが適当であると考えられ、またこれについては連合國最高司令部も同樣の意見であるので、生命保險中央会法及び損害保險中央会法は、本法第九條第一項の規定により主務大臣の指定する日、すなわち生命保險中央会及び損害保險中央会が解散する日に廃止すると規定したこと。
 第二條に、生命保險中央会及び損害保險中央会が解散する日において、生命保險中央会法及び損害保險中央会法が廃止されると、生命保險中央会及び損害保險中央会の存立の基礎法が廃止されることになつて、法人格のない中央会が清算をしなければならないことになる、よつて法律上不能に陷るので、第九條第二項に民法第七十三條に準じた規定を置いたほか、生命保險中央会法及び損壊保險中央会法の廃止後もなおその効力を有すると規定したこと。
 第三に、右のほか生命保險中央会法及び損害保險中央会法の廃止前になした行爲に対する罰則の適用についても、生命保險中央会法及び損害保險中央会法は、その廃止後も効力を有すると規定したこと、以上三点の修正であります。
 次に採決に入り、右の各派共同提案の修正案は、全会一致をもつて可決され、修正部分を除いた原案についても、全会一致をもつて可決されまして、本案は修正議決されました。
 次に、労働者災害補償保險特別会計法の一部を改正する法律案について簡單に申し上げます。
 まず改正の第一点は、管理大臣の変更に関する改正でありまして、労働者災害補償保險特別会計は厚生大臣の管理におかれているのでありますが、近く労働省の設置に伴い、これを労働大臣の管理に変更するため所要の改正を行なわんとするものであります。
 第二点は、労働者災害扶助責任保険事業に関する歳入歳出を、労働者災害補償特別会計において経理することについて、所要の改正を行はんとするものでありまして、從來の労働者災害扶助責任保險特別会計法は、六月三十日限り廃止せられたのでありますが、これは七月一日から労働者災害補償保險法が施行されることを前提としてとられた措置でありました。しかし、同法は労働基準法との関係からその施行日が延期せられた関係上、労働者災害扶助責任保險法もその廃止の時期が延期せられましたため、七月一日から同法が廃止されるまでの期間における労働者災害扶助責任保險事業経営に関する歳入歳出を、便宜上労働者災害補償特別会計に含めて経理することにいたさんとするものであります。
 本案はさして問題もないようでありますので、適正妥当のものと認め、原案通り全会一致をもつて可決されました。
 最後に、金融機関再建整備法の一部を改正する法律案につきまして、当委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 本改正案は、さきに企業について、企業再建整備法の改正によつて新勘定における増資を認めたように、金融機関についても同樣の途を開くこととし、所要の法的措置を講じようとするものであります。すなわち銀行その他の金融機関が、金融機関経理應急措置法により主務大臣の認可を受けて新勘定において増資をした場合、その出資をなした株主等は、当該出資に関して確定損失を負担しないこととするとともに、その金融機関は、株主等が指定時における資本の金額に相当する金額の確定損を負担しなければならないときにおいても、解散することなく、そのまま存続し得る途を開こうとするものであります。なお、右の増資をした金融機関が組合組織の金融機関である場合、その会員または組合員が、最終処理により指定時における資本の金額に相当する金額の確定損失を負担することとなり、旧勘定に関する資金がなくなる結果、会員または組合員である資格を失つた場合でも、当該金融機関の新勘定及び旧勘定の区分の消滅後六箇月を限り、從來通り資金の貸付施設の利用その他その金融機関の会員または組合員であると同樣の利益を受けることができることとし、もつて会員または組合員の便宜をはかることとしようとするものであります。
 次に、当委員会における審査の概況を述べてみたいと思います。本改正案は、去る七月二十二日本委員会に付託され、委員会を開くこと五回、政府と委員諸君との間に熱心な質疑が交されました。いまその大要を簡單に申し上げます。
 まず委員から、金融機関再建整備の現況いかんとの質問があり、政府から、金融緊急措置令の改正、金融機関経理應急措置法、金融機関再建整備法、この三つの法制の上に立ち、現在進行の過程にあつて、大体中間処理と最終処理の二段階にわけることができる、中間処理とは、金融機関の暫定評價基準というものをつくつて、金融機関の旧勘定を整理した結果、第二封鎖預金をどれだけ支拂えるかという見透しをつけて、その支拂い得る額を第一封鎖預金とするという措置がこれである、立法当時は、昨年中にこれを行なう予定であつたが、評價基準の決定が遅れ、最近ようやく決定をみたが、経済再建整備委員会において大綱を決定し、それに基いて金融機関で整理している、その期日は大体七月一日に遡及するのである、一方これと関連のある企業の再建整備は、六月一日を評價基準として目下進行中で、これにより企業の方の支拂いうる額をそれぞれ金融機関に通知している金融機関側は、それを受けて整備を急ぎ、八月中には完了し得るようにする、そうなれば、九月には大体第二封鎖預金の支拂いをなし得る見込がつき、第一封鎖預金の方に移すというふうに考へている、なお、その過程において金融機関の整理状況を内容的に見ると、特殊銀行においては、大体二つぐらいの銀行が資本金を全部損失に充てるようである、普通銀行では、二、三の銀行が資本金が全部なくなり、保險会社では、損害保險会社にあつては、大部分のものが資本金がなくなる、また信用組合、市街地信用組合、農業会、無盡会社等においては、半分以上のものが大体資本金がなくなる見込である、さうなれば、結局解散か合併、または第二会社をつくるより方法がない、特に人事の関係は非常にごたごたして、金融機関の公的任務が遂行できなくなるという心配があるので、危險を未然に防止することにおいて、資本金のなくなるものは増資をし、預金者の混乱を防止するというのが法案の趣旨である、さらに最終処理の方は、中間処理を待つてこの上進めるわけで、ただいまのところ、いつになるかは申し上げにくい、もう一つ企業及び金融機関の再建整備に関連して、第一資本勘定における第一封鎖預金を支拂う財源としての不足額、これは國家において補償することになつてをり、百億円を限度としているとの答弁がありました。
 次に、金融機関整備の結果、國家補償の増額程度及び第一封鎖に繰込み得する第二封鎖金額はどのくらいかとの質問がありました。これに対し、國家補償に関しては企業の方の金融機関に対して支拂い得る限度を見る必要がある、ただいまの評價基準から推して、大体五十億及至七十億といふ程度である、また第一封鎖に繰込み得る第二封鎖金額は、各金融機関ごとにその割合を決定するので一律には言えないが、大体打切率は六〇%から七〇%と考えているとのことでありました。
 次に、それではそれらの金融機関で出される資金の範囲はどうかとの質問があり、政府より、市中金融機関については的確なことは捕捉しがたいが、復興金融金庫から出しているものは、今までのところ、大体件数にして貸出しの約半分は中小商工業、金額にして七%ぐらいになつているとの答弁がありました。その他の質疑については速記録により御了承を願うことにいたしたいと思います。
 次に討論に入り、各党代表者より、金融機関再建整備法は、日本の金融機関の再建、ひいては企業の再建に重大な問題を藏している大きな法律である、この法律に対して、このたびその運営上の不備な点を修正されるということは、まことに結構だと思うが、問題は法案の修正そのものよりもその運用にあり、この新しい改正案が早急に実施せられ、いろいろな弊害、副作用を除去いたしまして、その目的を十分達せられるよう希望するとの賛成意見が述べられ、本案も全会一致可決を見た次第であります。右、簡單ながら御報告申し上げます。(拍手)
#5
○議長(松岡駒吉君) 日程第一及び第二の両案を一括して採決いたします。日程第一の委員長報告は修正でありまして、日程第二の委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#6
○議長(松岡駒吉君) 起立多数。よつて両案とも委員長報告の通り決しました。
 次に、日程第三につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程第三は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 鉄鋼百万瓲生産達成に関する緊急質問(生悦住貞太郎君提出)
#8
○叶凸君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、生悦住貞太郎君提出、鉄鋼百万瓲生産達成に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
#9
○議長(松岡駒吉君) 叶君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 鉄鋼百万瓲生産達成に関する緊急質問を許可いたします。提出者生悦住貞太郎君。
    〔生悦住貞太郎君登壇〕
#11
○生悦住貞太郎君 わが國民経済を破局への轉落より救うために、國をあげて生産再建に邁進いたさねばならぬときにあたつて、私は今日鉄鋼の過少生産が全産業と國民経済に及ぼす重大性について意見を申し上げ、これが増産達成に対する政府所信を質したいと思うのであります。
 鉄鋼と石炭の生産が両々相まつて初めて産業の復興が可能であるという根本原則と、わが國産業の根幹たる鉄鋼の重要性とに対し、政府ははたして現実に透徹せる認識と理解とに欠くる点なきや、少なからざる不安を禁じ得ないのであります。そこで、まず政府の本年度鉄鋼生産計画の成否について檢討を必要とするのでありますが、普通鋼鋼材七十万トン生産達成は、まことに遺憾ながら至難であると言わなければならないのであります。
 すなわちこの生産計画には、原料炭二十八万トン、重油十五万六千キロリットル、銑鉄四万九千トンの輸入、並びに電極八千トン及び電力十五億キロワット・アワーの確保を必須前提條件としておるのであります。原料炭の輸入については、現在の種々なる情勢より推して、開らん炭にこれを期待するのは困難でありまして、その補充として、多少目的を異にしておりますが、当局は樺太炭の輸入に最善を盡されつつあります。しかし、これも一部輸入の実現を見たのみで、現在は頓挫の状態にあるのであります。銑鉄もまた予定量の三分の一以上の輸入は困難と予測され、電極に至つてはその所要量確保の見通しはきわめて悲観的で、特殊物件はすでに底を拂い、ピッチ・コークスの在庫使用も政府は三千トンとみておるが、二千トン程度と見ねばならず、天然電極も政府は國内及び輸入を合して七千六百トン確保を予定しておりますが、五千トン内外と推定されるのであります。電力事情また悲観的で、この配電計画を一層重点的に改善せなければなりません。以上のほか、良質鉱石の確保についても全く不安なしとは言えないのであります。石炭の入荷状態が今後も改善されない場合は、事態はますます惡化を免れず、さらに労務者の食糧及び住宅問題、特に最近著しき金融枯渇に伴う経営難等についても、一層英断的施策を要するものと思われるのであります。
 かくのごとき事情を総合するに、適切なる臨機の対策を講じないで事態の推移に委する場合は、本年度七十万トンの普通鋼鋼材の生産はとうてい至難でありまして、わずかに五十六万トン見當を予想せざるを得ない実情なのであります。これが打開の方法といたしましては、積極的かつ効果的処置を講じ、万難を排してその生産に邁進すべきであります。
 すなわち、具体的方策として第一に、銑鉄輸入不足量は國内電氣炉銑の増産及びくず銑の収集によつてこれを補充し、次に、電力については深夜電力その他降雨地区、時期的余剰電力の徹底的活用を策し、電極に対しては極力消費を規正し、不足量は急速に輸入を懇請し、さらに海南島鉄鉱石七十二万トンのうち本年度三十万トン並びに開らん炭及びせつかくルートのついた樺太炭の輸入も、また所期の計画を促進貫徹し、予定通り七十万トンをひとまず確保することが目下の急務であります。
 次に、鉄鋼需給の面についての問題でありますが、政府計画の生産が百パーセント達成されるものとして、本年度普通鋼鋼材供給は、在庫を合わせて七十二万トンであります。しかるに、昨年度においてさえ鉄鋼の実際消費量は約百二十万トンであつて、もとより本年度は昨年度に比べて一段と各部門の生産状態を改善いたさねばならぬのであります。本年度における各部門の要求する鉄鋼の総量は、普通鋼鋼材百九十六万八千トン、鑄物用銑鉄五十五万三千トン、銑鋼二次製品三十万四千トン、合計二百八十二万五千トンでありまして、目下最も緊要なる戰災復興用、補修復旧用並びに進駐軍用をしばらくわく外に置くといたしましても、將來安定期における最低限民生安定維持産業に必要とする鉄鋼量は、一箇年三百万トンであつて、この数字は今や國民の常識となつております。
 極東委員会は、この必需数量を二百七十五万トンと計算いたしました。この二百七十五万トンに、本年度総供給量七十二万トンを比較すれば、わずかに二六%の供給率となりまして、この七十二万トンをもつて、二百七十五トンの場合の配当量をそのまま充当すると仮定いたしますと、石炭、電力、肥料、陸運、船舶の五つの部門への配当に足るのみでありまして、他の鉄鋼、鉱業、繊維、石油、化学藥品、ガス、製塩、蚕糸、特定機械、医藥衞生、農機具、土建等の大部分の産業部門並びに通信、生活用品、官需、輸出材料には全然配当不能となるのであります。
 また、これをかりに一律按分して配当量を圧縮するとすれば、鉄道は現在の交通地獄よりの脱却はおろか、その一部の運轉休止をさえ予想され、石炭三千万トンの出炭はもちろん不能となり、海運、小運送は最低限能力の三分の一前後に低下し、化学肥料の増産頓挫は主食の不足を一層深刻化し、輸出品生産も極度の不振となりまして、從つて食糧、原綿、石炭、重油その他必須輸入物資の輸入を阻み、その他一切の産業は萎微し、通信、治水等すべての公共施設の復旧を停頓せしめ、さらに各産業部門の相互関連に因由する累加的事態の惡化は、まつたく日本再建に絶望的な影響を予想せざるを得ないのであります。
 昨年度は、普通鋼鋼材の生産はわずかに三十二万五千トンでありましたが、特殊物件及び工場在庫が九十万トンもあつたので、普通鋼総供給量百二十万トンを得て、ようやくこの需要に應じ得たのであります。この百二十万トンは、なお民生安定維持最低量の二分の一弱にしかすぎません。しかるに、さらにそのまた二分の一強にしかあたらない普通鋼鋼材七十二万トン内外の総供給量をもつて本年度を乗り切らんとすることは、過日商工省で発表した鉄鋼需給実相報告の中にもありました通り、現在わが國の人口八千万として、一人当り消費量はわずかに九キロとなるのでありまして、明治三十九年の一人当り消費量に相当し、まさに四十年の退化を招来することになるのであります。それは、ほとんど交通機関もなく、燈油ランプ、ガス・ランプを使用した時代に逆行するの結果を生ぜしめ、政府計画はおよそ無謀に近く、需給関係とその結果に無関心なものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 ここにおいて、私は第一の質問を提出いたします。鉄鋼需給関係につきまして、政府はわが國産業を絶望的過少生産に陷らしめんとする現状打開の方策を講じつつありや。講じつつありとすれば、その方法いかん。右の質問に対し、安本長官和田博雄君の明確なる御答弁をお願いいたします。
 これについては、借款成立による輸入鋼材をもつて現状を救うという途もありますが、これは最後の方策であつて、國内資源によりわれわれの盡すべきを盡さずして、安易に輸入に走ることは、借款を與えた連合國の深甚なる好意にことうるゆえんでは決してないと思うのであります。ここにおいて私は、前途に希望を捨てず、光明を目ざして現状を打開する方途を講じ、全能力を発揮し、増産達成に邁進いたさねばならぬ時であり、本年度普通鋼鋼材をさらに三十万トン増産し、七十万トン計画と合わせて最低限百トン生産を完遂すべきであると信ずるものであります。
 しからば、その方策いかん。私は政府の生産計画を批判し、併せて私の日頃抱懐する対策をここに述べることといたします。まず溶鉱炉を主体とする銑鋼一貫作業でありますが、何ゆえこの方式を固執する必要があるのでしようか。わが國のこの生産方式は、高度國防國家とくず鉄輸入禁止による対策として、どろなわ式に企画されたものであつて、日本鉄鋼業の自然的発展として成立したものではありません。しかして戰時中においてすら、米英諸國のそれのごとく高能率に達することはできなかつたではありませんか。すでに今日は平和國家として、軍艦旗も連隊旗も廃棄した日本にとつて、この生産方式はその第一義を失墜しておるのであります。また戰前のごとく日本の資本が海外に伸びて、原燃料を確保するということは、当分望みがたいのであります。
 もちろん、現下の銑鉄飢饉と銑鉄輸入の見込薄を考えれば、にわかに溶鉱炉の存在價値を全面否定するわけにはまいりませんが、目下の深刻なる石炭不足を脱却するため、この厖大な石炭を消費する銑鋼一貫方式は必要最小限度に止めるべきであると断言いたします。一貫作業の利点とするものは副産物であるが、われわれのめざすところは鉄鋼の絶対量であつて、副産物は二の次の問題であります。副産物は、鉄鋼以外にも肥料、ガス、コークス等よりの供給源もあるのでありまして、銑鉄の輸入により節約される原料炭を他部門に振り当て、その生産をはかることも可能なのであります。また長い眼でながめても、わが國の一貫作業が、やがては過剰生産に轉ずる米英諸國の鉄鋼業と太刀打ができるものではないと深く案ずるものであります。
 次に、景氣変動にもつとも敏感な鉄鋼業が、日本のごとき資源力、資本力の乏しい國において、この伸縮容易ならざる一貫方式を守り抜くことができ得るであろうか。また現在及び近き將來における貧弱なるわが國の海運力及び高運賃で、一貫作業が円滑に行ない得るでありましようか。
#12
○議長(松岡駒吉君) なるべく簡單に願います。
#13
○生悦住貞太郎君(続) 靜かにわが國の國力を省みるとき、短期的にも長期的にも、この一貫方式は、鶏を割くに牛刀を揮うの感なきを得ないのであります。この観点より、私は極力銑鉄及び鋼片、半製品の輸入を促進し、平炉及び電氣炉、または圧延を中心とする伸縮容易にして世界市場の変動に應じ得る生産方式に改めることこそ、現下の危機を救い、わが國將來の鉄鋼政策を確立する一石二鳥の方策なりと信ずるものであります。
 さらにまた品質の点よりも見て、外國銑鉄は製鋼・圧延に決定的な効果をもつ点に鑑み、これによる内外銑の價値の開きは、とうていその比とするところではありません。かくのごとき種種なる弱点を有する一貫作業は、断じてわが國鉄鋼業の本筋として認めるべきでなく、補助的部門としての役割に置くべきものと思惟する次第であります。現下の危機を打開し、將來の飛躍の礎石を築かんために、われわれはかかる迂路をたどることなく、さらに直接かつ確実なる生産方式によるべきであると提言いたします。
 しからば、その方式いかん。現在日本の鉄鋼資源中唯一とも言うべきは、三百余万トンに及ぶくず鉄、及び少くとも二十万トンは予期されるくず銑、五十万トンは見込み得る不用鋼材、これであります。これを活用することこそ、危機打開の非常手段として、また將來の銑鉄、くず鉄の輸入に対する連綴機として残された最後の切札であります。さいわいにして戰災を免れた平炉、電氣炉、圧延機、剪断機は、現在使用の数倍のものが遊休のまま放置されております。設備に不足はない。またかつては、かかるくず鉄処理の製鋼技術には、日本の鉄鋼業は多年の経驗をもつておるのであります。從つてこの生産方式を増強することについては、特別に設備資金も技術育成も必要としない。あすからでも、その態勢にはいり得るのであります。
#14
○議長(松岡駒吉君) なるべく簡明に願います。
#15
○生悦住貞太郎君(続) まだまだ申し上げたいことがありますが、以上述べました諸施策によつて全きを得るならば、三十万トンの増産になり、基本の七十万トン計画と合計すれば百万トンの生産となり、日本経済を崩壊の直前においてこれを支えることができるのであります。(「ヒヤヒヤ」)しこうして、もし今まで述べた施策が時期的に遅延、もしくは予期せざる障害に遭う場合といえども、私は決して百万トン案を放棄するものではないのであります。(拍手)だから、石炭供給については一二%の配当量を鉄鋼に向かつて一段と傾斜することを強く要望するものであります。いたずらに過小生産の深淵を前に拱手傍観、海外の援助をから頼みするがごとき態度や、数年後の鉄鋼の隆盛を夢みて、現下の危機打開を等閑に附するがごときは、日本再建の責を追うわれわれとして、断じて許さるべきではありません。(拍手)
 私がここに提示いたしました施策も、決して達成容易とは申しがたいのでありますが、しかし、これ以外に現在血路はないと信ずるものであります。しこうして、この血路打開に全力を傾倒してなお不足あるときこそ、輸入懇請の名分が立つのであり、また連合國においても、われわれが最後の勢力を盡さざる限り、快く援助の手を差伸べることはないであろうと思います。ここにおいて政府も奮起一番、百万トン計画に邁進せんことを強く要望するものであります。
 私の提唱する百万トン生産達成案に対し、いかなる見解を有せらるるや、商工大臣水谷長三郎君並びに安本長官和田博雄君に、この第二の質問に対し御答弁をお願いいたしまして、降壇いたします。(拍手)
    〔國務大臣和田博雄君登壇〕
#16
○國務大臣(和田博雄君) ただいまわが國の鉄鋼の実情とその対策につきまして、はなはだ示唆に富んだ御意見を拝聽いたしました。ただいま日本の経済で一番縮小再生産に悩んでおりまするのは、お話のように鉄鋼であります。鋼材の関係であります。これは政府としましては、鉄鋼の生産に関しましては、お話のように年次計画といたしまして、七十二万トンの計画を立てたのであります。しかし、それにはお話のように前提がありまして、北支炭を二十八万トン、重油を十五万キロリットル輸入するという前提があつたわけでありますが、それらの前提につきましては、これの実施がなかなか困難でありまして、從いましてわれわれといたしましては、普通鋼鋼材の生産等につきましても、ここに計画通りの生産をあげることがなかなか困難な実情になつてきておりますことも、ご意見の通りであります。
 これに対しまして、われわれといたしましては、ただいまお話の中にありましたように、あるいはくず鉄の利用であるとか、またその他の種々の方策を講じておるのでありますが、何としましても、計画を立てましたときの前提条件を充足するということに、政府としましては懸命の努力を拂つておるわけであります。殊にお話の中にありました伸鉄計画、あるいは再圧延等につきましては、第三四半期以降は約五〇%ほどの増加を見込みまして、計画の中に織りこんで、われわれといたしましては、最初の七十万トンの計画の実現に努力をいたしておるわけであります。しかしながら、これらのものにはあまりに多くを期待することもできませんので、さしあたつて、差迫つておる問題の解決といたしましては、製品の輸入を司令部側に懇請いたしておる次第であります。
 また將來の日本の鉄鋼業のあり方について、一貫作業かあるいは單純の平炉によるものであるかという点につきましては、われわれといたしましては、やはりこれは両方の方法を並行してやつていくのが適当ではないかと、かように考えております。その他の点につきましては、商工大臣からお答えいたすことと思います。
    〔國務大臣水谷長三郎君登壇〕
#17
○國務大臣(水谷長三郎君) ただいま非常に示唆に富む御質問をいただき、得るところ多大なることを感謝いたします。目下商工省といたしましても、鉄鋼の生産隘路の打開に必死になつておりまするが、何分鉄鉱石、銑鉄、燃料等の輸入が、ただいま和田君の申されましたように、当初の予定通りまいりませんので、現在のところ、打開策といたしましては、ただいまの御質問者の御計画と同様な方向に沿つて極力善処する以外に方途はないと思われる次第でございます。
 御質問の点に関しまして、具体的にお答え申し上げますならば、第一点といたしまして、銑鋼一貫作業の可否でございまするが、これを可とする場合も、否とする場合も、いずれも輸入にまたなくてはならぬことはいうまでもございません。前者の場合におきましては、鉄鉱石、原料炭の輸入を、後者の場合におきましては、銑鉄、半製品の輸入を海外より期待せねばなりませんのでありますが、鉱石、石炭は、その輸入先は主として支那大陸でございまして、銑鉄、半製品はインドもしくは米國を輸入先といたしておる次第でございます。さしあたりといたしましては、銑鉄が不足しておりますので、苦しい石炭を溶鉱炉に向け、高炉作業による銑鉄生産を行いますとともに、電氣銑の生産を併行いたしまして、銑鉄の供給をはかつておるのでありまするが、銑鉄の輸入を申請により、現下の需給の逼迫を極力緩和したいと考えておる次第でございます。この場合、いづれの輸入がより早く実現するか。われわれといたしましては、焦眉の急を救わんためには、輸入実現の容易なる方向に重点を向けるのが至当と思われるのでありまするが、ただこの方面の情報が未だ明確でなく、銑鋼一貫作業の可否を決定して実行に移すということについての自由は、著しく束縛せられざるを得ないような状態でございます。われわれといたしましては、輸入関係の明確になるまで、二本建で行くよりしかたがないと思われる次第でございます。
 次にくず銑の活用でございますが、これは極力活用するよう努力中でございまして、またこれと並行してくず銑の処理、在庫の調査等を進めておりまするが、目下の見当では、新銑に対し二割ないし三割のくず銑混入が在庫状況及び技術的に見て可能なりと見越しておる次第であります。電氣銑は目下質の改良に努力を拂つておるような次第でございます。不用鋼材、上物くず鉄のいわゆる再圧延、リロールは着々実施いたしまして、第一、第二四半期におきましては、伸鉄業と合わせますると約三万トン強の生産を計画しておる次第でございます。後半期におきましても、さらに強化の予定でありまして、目下の見通しでは、本年中この種方式による生産数量は約十万トンぐらいと考えておる次第でございます。くず銑、くず鉄は最近まで指定生産資材でなかつた関係上、調査が遅れておりまして、目下鋭意資料蒐集中でございます。くず鉄回収の作業も速やかに計画化して行うよう努力いたすつもりであります。
 特殊鋼塊の処理は、技術委員会を開き、相当活発なる研究をしておりまするが、技術的の面から、ただちに大幅に活用することは見込薄の現状でございます。電炉鋼塊の増産は、電力の予想以上の不足の見透しのため、本年度計画以上の増産を行なうことは無理の状況でございまするが、電炉の活用ということは、本年度計画におきましてもきわめて重要な事項として取上げ、少くとも豊水期間は、電極の続く限り最大限度の利用を計画しておる次第でございます。
 粗惡炭、亞炭の活用も非常に必要のことと思われますが、目下のところ、これがための設備の改良等が自由に行いがたい事情でございますので、十分の活用がはかれないのがきわめて残念でございます。
 以上の諸点より見まして、御質問にある各種の方策はみな有効適切なる方策と存ずる次第でございまするが、時期の問題等のため、お申出の数字は達しがたいのではないかと思われます。御趣旨である七十万トン以上への飛躍は、輸入事情が思わざる好轉を示さない限り望みがたいように思われる次第でございます。
 御質問中の各種方策につきましては、経済安定本部と協力いたしまして、積極的に実行に移すとともに、鋭意調査研究を行なう所存でございます。以上簡單に御答弁申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
#18
○議長(松岡駒吉君) 去る二十三日の会議における酒井俊雄君の質疑に対し、内務政務次官より発言を求められております。これを許します。内務政務次官長野長廣君。
    〔政府委員長野長廣君登壇〕
#19
○政府委員(長野長廣君) 先般の自由討議におきまして、酒井俊雄議員より御質問に相なりました地方制度に関する問題等について、簡單にお答えをいたしたいと存じます。
 府縣の区域を統合すべきものと思うが、いかがであるか、これに対する考慮があるかないか、こういう御質問であります。府縣の現在の区域が、経済、交通等の変遷によつて不適当なものになつておる部面のあることは、事実であると思います。從つて行政区画ということは、府縣民の社会生活と経済生活の両面において一致せしめるように努力いたさなければならない次第でありまして、府縣区画の変更論はきわめて妥当であると存じます。ただ実際問題といたしましては、それぞれの府縣には、その府縣の歴史があり、傳統があるのであります。しかして、これらをもつて社会協同体として活動をいたしております。また廃合の及ぼす行政上の混乱についても考慮を拂わなければなりません。かような意味からいたしまして、十分愼重に調査研究を続けまして、きわめて民主的に行なうべきものであると存じておる次第であります。
 第二に、遊覧都市等特別の施設をもつておる都市にふさわしい制度を設ける必要があるのではないかという御質問であります。都市がそれぞれの特性に應じて、あるいは遊覧都市であるとか、あるいは工業都市であるとかいうふうに発達をすることは、きわめて望ましいことであります。しかしながら、都市の政治組織の基礎は同一の法律によつて決められておるのであります。從いまして、実際の運営上において、その利益の上において、それぞれの特質に基いて運用いたしまして、この運用の上から現れるところの特色を出すということが最も望ましいことであると存ずる次第であります。
 第三に、同種單位の連絡調整機関の必要についてのお尋ねでありますが、まことに御同感でございます。地方自治法においても、これを予想いたしまして、第二百九十八條以下に、地方公共團体の協議会に関する規定を設けてあります。府縣と府縣の間、市町村と市町村の間にそれぞれのブロツク別の協議体をつくつて、公共團体の事務の連絡調整をはかることになつておるのであります。今後大いにこの制度の自主的活用を期待いたしておる次第であります。
 第四に、固有事務と委任事務との限界はいかがであるかという御質問であります。御承知の通り、地方自治法におきましては、本来一般的に地方公共團体の事務とされておるものが固有事務であり、本来國の仕事ではあるが、その性質上個々の特別法によつて、個別的に地方團体に委任されて行われる事務が委任事務であるのであります。以上の区別は、法律上の区別でありまするが、事柄の実体からわけて申しますれば、縣営自動車事業のごときは固有事務であり、小学校の設置のごときは委任事務でありまするが、その間に、運営上はほとんど何らの違いはないのであります。從いまして、固有事務が豊富になることはもとより望ましいことであり、委任事務の豊富になることも、住民の便利を増す意味からいたしまして、結論としてまことに喜ぶべきことであると思うのであります。もし委任事務を排斥するということがあつたならば、かえつて特別の國家行政機関の濫設を招く次第でありますから、これは差控えるべきものではないかと思います。固有事務と委任事務とは、御所論のごとくよく本質を考えてそれぞれ処理しなければなりません。両者のうるわしい調和に努めまして、相まつて地方自治の完全な発達に努めたいと存じておる次第であります。
 第五に、地方の公使は、府縣廰では從來官吏であつたものが公吏になつたものが多い。特に新憲法におきましても、地方自治法施行後は、その精神に則つて府縣民の公僕として奉仕努力をしなければならぬことは、お話の通りでございます。政府といたしましても、一般官吏に関する公務員法の施行と相まちまして、地方公吏についても、そのきわめて根本的な制度の樹立をはかり、詳細の決定実施は当該自治体の自主的活動にまつてやるような方向で、目下鋭意研究を進めておる次第であります。
 第六に、特別市の設置をいかんに考えておるかということであります。特別市の設置は、府縣の区域より市を独立させ、府縣と同格にせんとするものであります。特別市の設置は、実際上府縣の分割のごときものでありますから、市と残存郡部との間の事務上の問題、財産の問題、施設等の問題、これらを分割するという複雑な事柄がつきまとつておるのであります。さらにまた特別市の設置に伴い、府縣單位の行政機関であるとか、あるいは裁判所であるとか、各種の團体であるとかいうものを分割するかどうかという問題も生じてくるのであります。政府といたしましては、前申し述べました財産、施設等の問題、各種機関の分割のような問題、府縣側と市の側との利害の相反する問題について、目下鋭意調査を進めておるのであります。そうして、適切な調整案が得られましたならば、鋭意これによつてこの事業を進めてみたいと考えておるのであります。しかして、この特別市制をいつからどこに施行するかという具体的問題につきましては、國家最高の意思決定機関たる國会の最善の判断に待つことが最も緊要なことと考えておる次第であります。
 最後に、これは特に附添えて申し上げまするが、警察官の員数についての御質問がありました。これはただいま関係方面と愼重交渉を進めておる次第でありまするから、員数においては、ここに差控えたいと存ずる次第であります。御了承を願います。
 また警察官署長等の公選問題でございまするが、このこと自体はきわめて画期的なものであります。大いに傾聽すべき御議論であつたと存じますけれども、しかしながら、十分なる考慮研究を要するものがあると存じますから、御説を大いに尊重いたしまして研究を進めたいと思います。
 また警察官の教養問題につきましては、從來大いに努力いたしておりましたが、今やわが國の國民生活及び世態人情一切に向かつて変革を生ずべき時期に到達しておる次第で、警察官についても大いに素質の改善をはからねばならぬと思いますから、今後はさらにこの方面に創意工夫を重ねまして、國民の期待に副い得るようにいたしたいと考えておる次第であります。これをもつてお答えといたします。(拍手)
#20
○議長(松岡駒吉君) 次会の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
    午後四時十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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