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1953/07/25 第16回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第016回国会 法務委員会 第23号
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1953/07/25 第16回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第016回国会 法務委員会 第23号

#1
第016回国会 法務委員会 第23号
昭和二十八年七月二十五日(土曜日)
    午前十一時六分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君
   理事 井伊 誠一君 理事 花村 四郎君
      大橋 武夫君    押谷 富三君
      林  信雄君    鈴木 幹雄君
      高橋 禎一君    中村三之丞君
      猪俣 浩三君    細迫 兼光君
      木下  郁君    佐竹 晴記君
      木村 武雄君    岡田 春夫君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 犬養  健君
 出席政府委員
        国家地方警察本
        部長官     斎藤  昇君
        法務政務次官  三浦寅之助君
        検     事
        (刑事局長)  岡原 昌男君
        法務事務官
        (保護局長)  斎藤 三郎君
 委員外の出席者
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小林 貞一君
    ―――――――――――――
七月二十五日
 委員加藤宗平君辞任につき、その補欠として牧
 野寛索君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
七月二十四日
 戦犯者の釈放に関する陳情書(高知県議会議長
 横山徳郎)(第一二六四号)
 高知地方検察庁並びに家庭裁判所庁舎建築に関
 する陳情書(高知県議会議長横山徳郎)(第一
 二六六号)
 戦犯者の釈放に関する陳情書(兵庫県佐用郡民
 生委員連絡会会長見村稚生)(第一二九三号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九
 〇号)
 刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第一四六号)
    ―――――――――――――
#2
○田嶋委員長代理 これより会議を開きます。
 委員長が見えるまで、理事である私が委員長の職務を行います。
 刑法等の一部を改正する法律案を議題として、質疑を行います。質疑の通告がありますから、順次これを許します。鍛冶良作君。
#3
○鍛冶委員 この刑法等の一部を改正する法律案のねらいは、近時世界の大勢となつておりまする保護観察1こういう言葉はいいか悪いか知りませんが、ただちに受刑せしむるよりも、執行猶予を広くして、その猶予中の者を保護することにして、前科者をできるだけつくらぬという方針に基いたものと心得まして、われわれも趣旨はたいへんけつこうだと存ずるのであります。ところが本改正案を見ますると、第二十五条ノ二の終りに「保護観察ニ付テハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム」とあります。ところがこうなつておるにもかかわらず、この法律のうちに、ただちに第三条として、この保護観察の制度は、犯罪者予防更正法の保護観察の制度にゆだねるということになつております。ところがこの犯罪者予防更正法のねらいは、不良少年の感化並びに仮出獄中の者を保護することが建前であります。せつかくこのようにして執行猶予中の者を保護せんとせられるのに、保護の制度において、不良少年並びに仮出獄の者と同一の取扱いをせられるということは、私は根本的に異なるものと心得るのでありますが、この点は、大臣はどうお考えになつておりますか。
#4
○犬養国務大臣 ただいま鍛冶さんよりお話がありました、御審議を願つておりますプロベーシヨンのやり方、つまり刑務所にあまり長く置かないで、外へ出して、そうして再びりつぱな社会人になつてもらうことをこいねがうという趣旨そのものについては、幸いに御賛成を得たのであります。その手段として、別に法律をもつて定むと書いてあるにもかかわらず、仮出獄者と執行猶予者とを一緒の対象として、一つの法律に入れたということについての御疑問は、私はごもつともだと思うのです。私どもとしては、このプロベーシヨンの制度そのものは、できるだけ早く国会の御容認を得て、この制度に一日も早く日本の社会として着手しにい、こう思つておるのでありますが、その手段として仮出獄者と執行猶予者と一緒にしたという点についてはごもつともと存じますので、政府においては、早急に改めたいと思います。よく政府は早急といつてだんだん遅れるここもございますので、でき得る限り私はそれに間違いがないつもりで計画を進めますが、次の通常国会までに別の法律にいたしまして、皆さんに御可決を願いたい、まことに政府の都合を申して相済まないような次第でありますが、それまでは一応この形式において、この精神を御容認くださる御主張をもう少し御援用いただきまして、暫時の間この形式で本精神を御容認願いたい、こう思うのでございます。何とぞよろしくお願いいたします。
#5
○鍛冶委員 そうおつしやればくどく申しませんが、われわれ一番関心を持つておるのは選挙違反です。選挙違反は多く執行猶予になつております。ところが選挙違反の執行猶予者は、仮出獄の方の保護観察と同様の観察をせられてはたいへんだし、また観察すべきものではありません。しかしこの改正法から見ますると、そういうものでも第一回は「付スルコトヲ得」となつております。これは「付スルコトヲ得」となつておると、たいていはつけられるようになると思う。その次第二回目の執行猶予になりますと、これはどうあつてもつけなければならぬことになつておる。せつかく第二回目も執行猶予にしてもらつて喜んでおるのに、とんでもない当てはむべからざる保護観察を当てはめられるという不条理が生ずることになりますから、私はこの点非常に考えまして、これを通すというならば、できるだけそういうわくを狭くしなければならぬという議論が多数であります。そうなるとせつかくこの新しいことを考えて来られたのが消えることになります。そこでどうも両立しない、そこで考えまするのは、別に法律をもつて定めるとありますから、この改正案はこのまま通しておいて、この点だけひとつ至急あなたの方で考えを新たにしましてやつてもらいたい。そうしてそれができたときにこれを施行することにすれば、一番円満に行くと思つて、大臣の御意向を伺いたいと思つておるのでありますが、この点いかがですか。
#6
○犬養国務大臣 ただいまのお話もこれまたしごくごもつともであります。この法律を御可決願いましても、実際上の運用によつて極力御趣旨に沿うようにいたすことをここで公式に言明いたします。
#7
○鍛冶委員 もう一つこの機会に申し上げておかなければならぬのは、今の保護観察制度に対して保護司の待遇が非常に悪いという切々たる上申書がわれわれのところに来ておる。その一部を読んでみますと、私らもよく知らなかつたが、こういうことを言つて来ております。保護司に対する慰労金は年額五百円、但しこれは県連合保護司会の会費として全部寄付しております。それから保護観察一名について月額四十円支給されておる。ところがこれは更生保護という雑誌が出ておるので、その代金に充てられておる。しこうしてパトロールに関する調査事務費は全然支給されておらない、刑務所からときどき呼出しがあつて行くが、この旅費も一文ももらつていない、全部ただで、厚生省の母子相談員のごときは年額七千五百円の支給があるのに、どういうわけで厚生省と法務省とがこんなに違いがあるのでしよう、こういう上申が来ておる。これが事実とすればまことに憂うべきことである。そこで私はそういう不十分なところにこういうものをはめるという考えよりは、ここで新しい制度をつくられたのですから、新しい制度は新しい保護によつてやる。いわゆる新しい酒は新しい皮袋に盛られる考えをもつて、もう少しゆたかな予算をとられて新しい制度をつくられることが最も時宜を得たものである、こう考えますが、この点とくと御考慮願いたい。
#8
○斎藤(三)政府委員 便宜私から申し上げます。保護司の謝金は年額五百円ということになつております。そうして事件を担当された場合に、補導に要する実費を国から差上げる、こういうことになつておりまして、その補導諸費は昭和二十四年一件当り二十四円程度でございましたが、漸次ふえて参りまして、大蔵省の単価では保護司の方一人月百三十円というのが二十八年度の予算になつております。ところが事件を担当せられる方と、事件を担当しておられない方とございまして、観察所から補導諸費を差上げる場合に、やはり事件の負担状況によつて厚薄があると思いますので、さようなことに相なつております。いずれにいたしましても、御指摘の通りに、保護司さん方の活動の費用を差上げるのが不十分でございまして、この点については今後十分努力いたしたいと存じております。なお本年度の予算におきましては、この保護制度によつて事件が若干ふえるだろう、こういうことを考えまして、この補導に要する費用を昨二十七年度よりも若干増額いたしております。
#9
○田嶋委員長代理 ちよつと速記をとめて。
    〔速記中止〕
#10
○田嶋委員長代理 速記を始めて。
 それでは委員会はしばらく休憩いたします。
    午前十一時二十分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時七分開議
#11
○小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
 刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。鈴木幹雄君。
#12
○鈴木(幹)委員 簡単に二、三点だけお伺いいたしたいと思います。
 第一点は改正法百五十三条の二の問題でありますが、この条項のうちに「一時最寄の警察署その他の適当な場所にこれを留置することができる。」とありますが、この一時という字句はどれくらいの期間をさすのでありましようか。事の性質上長期にわたるとは考えられませんが、大体の解釈を承つておきたいと思います。
#13
○岡原政府委員 昨日鍛冶さんからも御質問がございましてお答えいたしました通り、勾引状の執行でございますからおのずから限度があり、大体長くてその晩というくらいになると思います。
#14
○鈴木(幹)委員 次に二百九十一条の二の改正案についてお伺いをいたしたいのであります。この簡易公判百手続による場合におきまして、原案によりますと、「裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、」となつております。私どもはこの問題を考えまして、検察官の意見を聞かれるのは当然でありますが、「被告人又は弁護人」と相なつておりまして、どちらか一方の意見を聞きまして、簡易裁判手続によることができるとなつておるように書いてありますが、これは被告の権利を擁護する意味から申しまして、また被告人が留置をされており、被疑者となつておるという心理的動揺を考えますと、被告人だけの同意にあらずして、弁護人がついております場合には必ず弁護人の意見を聞くという趣旨に書き直した方が妥当ではないか、かように考えるのでありますが、この点に関する御見解を承りたいと思います。
#15
○岡原政府委員 運用上は、この条文でも必ず弁護人の意見を聞くというふうなことになろうかと思つておつたのでございますが、疑義がございますれば、その点は若干直すのも一方法かと思います。
#16
○鈴木(幹)委員 私が申し上げましたように、「被告人又は」とありますのを「被告人及び」弁護人というような趣旨に直しても異議はない、賛成だというような御趣旨に解釈をいたしたいと思います。
 最後に三百六十条の二の上訴の放棄でありますが、この改正規定中には、死刑の判決だけが載つております。これまた私は被告人の立場を考え、その人権を尊重するという意味合いにおきまして、死刑の判決のみならず、無期の懲役、もしくは禁錮というような判決を受けた者に対しましても、これを広げた方が、その立場を擁護する上において全きを得るものであると考えるのでありますが、御見解はいかがでありますか。
#17
○岡原政府委員 そのような見解も成り立ち得ると存じます。
#18
○鈴木(幹)委員 これで終ります。
#19
○大橋(武)委員 私前回の質疑をいたしました際に、法務当局に対しまして資料の提出を要求しておきましたが、これにつきましては、いまだに資料の提出がないことは、まことに残念であります。しかしながら、他の同僚諸君に対しまする当局のお答え等をだんだん伺つておりまして、資料をいただかなくても、大体のお考えもわかつて参りましたので、あの資料の要求は、この際とりやめにいたしたいと思います。なお、資料を見た上でいろいろ質疑を申し上げるということにいたしてありましたが、これも他の同僚各位の質疑によりまして、およそ御回答も想像がつきますので、これもとりやめにいたします。
#20
○小林委員長 他に御質疑はありませんか。――他に御質疑がなければ、本案に対する質疑はこれをもつて終局いたします。
 この際小会派クラブを除く各派より、共同提案として修正案が提出されておりますから、その趣旨説明を聴取いたします。鍛冶良作君。
#21
○鍛冶委員 まず修正案の案文を朗読いたします。
   刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案
  刑事訴訟法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
  第六十条第二項の改正規定を次のように改める。
  第六十条第二項但書中「第八十九条第一号又は第三号乃至第五号」を「第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号」に改める。
  第八十四条第二項の改正規定を次のように改める。
  第八十四条第二項を次のように改める。
   検察官又は被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者は、意見を述べることができる。但し裁判長は、相当と認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を差し出すべきことを命ずることができる。
  第八十九条の改正規定に関する部分を次のように改める。
  第八十九条第一号中「無期の懲役」を「無期若しくは短期一年以上の懲役」に改め、同条第五号中「氏名及び住居」を「氏名又は住居」に改め、同号を同条第六号とし、同条第四号の次に次の一号を加える。
  五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる充分な理由があるとき。
  第百九十八条第二項の改正規定を次のように改める。
  第百九十八条第二項中「供述を拒むことができる旨」を「自己の意思に反して供述をする必要がない旨」に改める。
  第百九十九条の改正規定に関する部分を次のように改める。
  第百九十九条第二項を次のように改める。
  裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官又は警察吏員たる司法警察員については、国家公安委員会、都道府県公安委員会、市町村公安委員会又は特別区公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
  第二百八条の二の改正規定を次のように改める。
 第二百八条の二 裁判官は、刑法第二編第二章乃至第四章又は第八章の罪にあたる事件については、検察官の請求により、前条第二項の規定により延長された期間を更に延長することができる。この期間の延長は、通じて五日を超えることができない。
  第二百十九条の二の改正規定に関する部分を削る。
  第二百九十一条の二の改正規定中「検察官及び被告人又は弁護人」を「検察官、被告人及び弁護人」に改める。
  第三百六十条の二の改正規定中「死刑の判決」を「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処する判決」に改める。
 この刑事訴訟法の一部を改正する法律案の提案せられました真の理由は、いわゆる占領治下における改正立法として、新しい欧米の法律制度をわが国に輸入せられたものでありますが、遺憾ながら国情に合わないもの、その他実際に適しないものがあるので、それを国情に合い、または実際に照して不都合のないように改める御趣旨のものと考えておるのであります。われわれもかねて考えておつた改正の点を取上げられたことを、喜んでおつたのであります。ところがこの内容を見ますと、その趣旨も盛られておりまするが、どうも検察事務の遂行にあたつて便宜なようにだけ考えられまして、われわれが考えておりまする人権の尊重、並びに捜査や審理に関する民主的改革という点には、はなはだ遠いところがあるように考えられるのであります。むしろ職権主義に基いて、旧刑法時代にもどさんとする考え方でなかろうかとまで疑われるものがあることは、われわれもはなはだ遺憾とするところであります。さらにもう一つは、取扱い上はなはだ不便なところのあつたことは、われわれも認められまするが、それらの点は、特殊の場合、特殊の思想を持つてやつておる一部の者のやることであつて、そのやつておることは不都合に違いないけれども、その不都合を矯正しようとして、一般国民全体の権利を短縮しようというような傾向のありますることは、まことにわれわれは遺憾だと思います。その意味において、この修正を提出した次第でございます。
 まず第八十四条の改正でありまするが、改正案を修正いたしまして、現在の刑訴訟法八十四条に但書をつけることにいたしました。これは、但し裁判長が相当と認めるときには、意見の陳述は書面をもつて出すべきことを命ずることができるとしたのであります。政府原案によりますると、原則として、書面でやらせて、一般の供述権をなくしようというお考えのようであります。立法上の問題から考えますと、いろいろ議論はありますが、いずれにいたしましても、現行において供述でき得る権利があるにもかかわらず、特殊の事件の特殊の人々がこれを妨害するからといつて、一般国民の供述権をなくすることは、われわれは首肯できないと考えまして、特にやらなければならぬ必要がある場合は、そのときに限つて、裁判長においてこれを用いたらよろしいという意味で、この修正案を提出した次第であります。
 第二は、八十九条の四号を削りまして、これに伴う六十条の条文の整理をいたした次第であります。これはいわゆる新刑事訴訟法において、最も特長的とせられました権利保釈の権利を狭めようとする改正でございます。この改正には、たくさんの改正点がありまして、いろいろ議論はありましたが、特にここに削除いたしました第四号は、「被告人が多衆共同して罪を犯したものであるとき。」という表現になつておりまして、この多衆という文字に対しても、旧来いろいろ議論があつたものでございますし、これの運用いかんによりましては、たいへん広い範囲にわたる危険性もあると考えますから、かようなことで国民に与えられたる権利保釈の権利を狭めることは、最も申訳ないと考えまして、この四号を削除することにいたしました。その他の点についても、相当議論もあり、また考慮すべき点もあるとは心得ますが、一応この改正をやつてもらつて、その実情をながめた上で検討すべきものでなかろうかと考えまして、この程度の修正にとどめたわけでございます。
 第三は、百九十八条第二項の修正であります。原案では、いわゆる世上拒否権と言われる権利でありますが、原案では被疑者に対し「あらかじめ自己に不利益な供述を強要されることがない旨を告げなければならない」とありましたが、自己に不利益であるか利益であるかということはいかにもどうも法律的にはあいまいな言葉でありまするし、またいろいろ議論しておりますときに不利益なことは供述しないが、これはお前のために利益だと思うから、お前に言わしておるのになぜ言わないのかと言われたときに、たいへんあいまいなことになります。こういうことでこれは議員総体がずいぶん頭を悩ました結果、何人にも最も明瞭にわかるようにというので、「自己の意思に反して供述をする必要がない旨を」というふうに改めた次第であります。
 第四は、百九十九条第二項の修正でありますが、この点も最も議論のあつたところでありまして、要するに政府の答弁を承りますと、本条の修正のねらいは逮捕状の濫発の非難がある。これにこたえての修正であると言われております。そこでわれわれの考えますところは、もちろんわれわれも過去において濫発ありとし、何とかこれを改正しなければならぬと考えておつたのでありますが、この濫発を防ぐ、国民の最も信頼する方法は、逮捕状は裁判所において発するものだ。――これはいろいろ議論があります。逮捕状は裁判所で発するのではない、裁判所は捜査官に逮捕権限を付与するのだという今までの考え方もありましたが、裁判所がなるほどこれは犯罪の嫌疑があり、さらにまた逮捕の必要があるということを認定いたしまして、その結果発せられるということになれば、国民の最も信頼し、安心し得るものだと考えましたので、この点を修正案において根本的に改正いたしまして、裁判所が「明らかに逮捕の必要がないと認めるときは」これは発しないでもよろしいのだというふうに改めました。従つてこれが十分徹底して行きますならば、逮捕状の濫発ということは十分防げると考えましたので、あえて検察官に同意を求むるの必要はなかろう、こういうことでこの点は現行刑事訴訟法の通りといたしたのであります。ただ一つ異なりましたのは今までの警察における逮捕状の要求権はいわゆる百九十九条によります司法警察員がやられるということで、その警察員なるものの内容はところによつて異なり、警部補はもちろん巡査部長までも要求できるというふうなことでありましたので、これはよほど重大なことでありますから、相当法律知識もあり、社会常識も円熟したる人に取扱つてもらわなければならぬと考えまして、これを公安委員会の定むるところによつて指定するのであつて、警部以上の者にするということ、かように修正いたしたわけであります。このほか検察官の意見を求めることが必要であるかないかという議論もありましたが、これらは裁判所においてそれを認定する上においての実際問題でありますので、いずれこれに対し裁判所において十分適切なようにしてもらつてよろしい、かように考えまして、この点に対する修正はいたしませんでした。これは判事の良識に期待いたした次第であります。次は二百八条の二の修正であります。これはいわゆる検事勾留の期間を十日間とし、さらに事情やむを得ぬ場合はもう十日間延ばせる、こうなつておるにもかかわらず、さらにその上また特殊の場合には五日間延長できるという改正なのであります。いろいろ法制審議会等で議論のあつたことも聞いておりますが、おそらく在野法曹はもちろん、国民の輿論の大多数はこれに賛成するものはないと考えます。この意味においてわれわれもこれには賛成いたしたくない。また今までの実情を見ておりますと、十日間が原則であつて、あとの十日は特殊の場合でなかつたらやれないものだと心得ておりますが、ほとんど検察庁においてはあとの十日も当然やれるような取扱いをされているので、さらにこの五日も当然やれるのだ、めんどうな事件ではたいがい二十五日やれるという頭になりましてはたいへんだと思いまして、これには賛成しなかつたのでありますが、特殊の犯罪については、なるほどこれがなくてはいかぬだろうと思われるものもありましたので、この意味において犯種を特定いたしまして、この五日間だけ延長したことを認めた修正であります。その犯種といたしましては内乱、外患、国交、騒擾の四つを掲げまして、この犯罪に対してだけやれるということにいたしました。しかしわれわれはこの犯罪の場合はやれると修正いたしたのでありますが、この犯罪の場合には何でも二十五日やれるのだという頭をもつてやつてもらつたのでは、われわれの修正の考え方とはたいへん違うのでありまして、この犯罪であつて、しかもやらなければならない、やむを得ない事情のある場合に限るものと十分御注意を申し上げておきたいのであります。
 次は二百十九条の二、これは削除いたしました。本法を改正しようとせられます御趣旨は十分われわれもわかります。またかようなことも必要であろうかと首肯できる点もないではありませんが、何よりもこの規定でおそれることは、現に捜査に行つた司法警察員みずからの専断の認定によつて確かにここにあると認める、これは「その物の所在する場所が明らかとなつたとき」となつておりますが、明らかとはどういうことか、行つた人の主観で明らかであるというのです。しかしてまたこれを看守するというのでありますが、これはそのもののところで二日でも三日でも看守せられておつたのでは、現実に家宅捜索よりもえらいことになる。家宅捜索は令状を持つて行つて執行すれば終りなんだが、二日でも三日でも看守されたら二日間、三日間続いて家宅捜索に来られたようなもので、かような規定は人身保護の上に最も危険であると思いましたので、これを削除することに決定いたしたわけであります。
 次は二百九十一条の二でありますが、この点につきましてもずいぶん考えなければならぬ点が多々あると思う。ことに現在における捜査の実情から見まして、単に被告人が自白したからといつて簡易な手続でよろしいのだという考え方は相当注意を要するものと心得ますが、これも新しい制度の決定でもありますし、またアメリカ等においてもこれに似たる手続もありますので、なるべくその弊害のないことを希望いたしまして、一応試みにやつてみたらよかろうというのでこれを是認することにいたしましたが、そのかわりここに「裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、」とありましたのを「検察官、被告人及び弁護人」の意見を聞く、かように訂正して原案を認めたわけであります。一体原案で「被告人又は」として被告人だけでやつて弁護人に聞かぬでもいいということははなはだ了解に苦しむものがありましたので、それをかように修正いたしますならば、もし弊害ありとしても、幾分なりともこれを矯正できるであろうと考えて、かように修正したわけでございます。
 次に、三百六十条の二に「死刑」のみを規定してありましたのに「又は無期の懲役若しくは禁錮」と加えたのであります。この上訴権の放棄につきましても、これは今までのわれわれの実情から見ておりまして、いかにも放棄をしいられるような傾向のある場合も認められますので、これもいかがなものであろうと心得えております。そこへ持つて来て、死刑は除かれたからいいようなものの、無期というような重刑に対しても放棄が簡単にできるというようなことにしては、たいへん危険を感ぜられますので、せめて無期懲役及び禁錮をも放棄できないものとすることがよろしい、かように考えてこれに付加いたしたわけであります。
 以上、修正の諸点に対しまして、簡単ながら説明といたします。
#22
○小林委員長 本修正案に対し質疑の通告があります。これを許します。岡田春夫君。なるべく簡単にお願いします。
#23
○岡田(春)委員 簡単にという御希望でありましたので、できるだけ簡単にやりたいと思いますが、御答弁が明確な御答弁であるならば、当然簡単にやれるわけであります。そういう意味において、ただいま修正案を御説明になりました鍛冶君の方でも、その点を十分考慮されまして、委員会の運営の全きを期していただきたいと思います。まず第一に、ただいま修正についての御説明を伺つたのでございますが、その冒頭におきまして、政府の提出をされましたる改正案が国情に合わないもの、実情に沿わないような点があつたので、そしてまた、その結果、改正案のままにするならば、民主的改革の点にはほど遠いもので、旧刑訴法の職権主義に帰る感のあるものがあつたというような御趣旨の御説明があつたように私は承ります。従つて、今度の修正をなさるのにあたりまして、政府の提出いたしました改正案は、ただいま御説明のあつたように、現行刑訴法を改悪するような部分が多分にあつたというようにお考えになつたものと考えますが、改正ではなくして改悪するものであつたというように私はあなたの御説明を判断したのでございますが、この点についてはいかにお考えになりますか。
#24
○鍛冶委員 私は、申し上げました通り、もちろん実情及び国情に合うように改正せられた点もあるやに考えます。またそうでなくして、かようなことを改正せられては、かえつて逆もどりせないであろうかと、これは私が感じたことを述べたので、さように感じたものもございますから、それゆえに修正いたしたのであります。
#25
○岡田(春)委員 ただいまことさらに私は感じたというお話でございましたが、しかしただいまの御発言は、鍛冶君個人の御発言ではなくて、修正案を提案された人の代表の意見として私は承つておりまするし、速記録に残つていると考えております。そういう意味においては、単なる個人的な見解とは私は考えません。少くとも修正案を提出されるための基本的な態度として私は考えますが、この点はいかがでございますか。
#26
○鍛冶委員 私は説明をゆだねられたのでありますから、それはそういうことになるかもしれませんが、私は皆さんとそこまで打合せて答弁したわけではありませんから、答弁するのには主観的な考えもあることをお含みおき願いたいと思います。
#27
○岡田(春)委員 あまりこだわるといけないから、逐次進めて行きます。
 そうすると、この修正案を私拝見いたしますと、何か今度の修正案には首尾一貫せざるうらみを感じております。具体的な点を申し上げますと、修正案が準備されます以前の、各党の委員諸君の質疑等を見ますと、相当程度において具体的な問題を通じて質問がございました。質問の重点になりましたような点も、改正文の各所においてあるのであります。例をあげて申し上げますと、権利保釈の除外理由の拡大の中で、八十九条の四号の分は一応今度は削除されておりますが、六号のいわゆるお礼まわりの問題、特にお礼まわりの条文上の文言等については相当問題があるということは、自由党の委員諸君からも発言があつたのであります。ところがこういう点についてはなぜか触れられないで、今度の修正箇所については、ごく小部分における修正のみしか行われておりません。その他の点についても、例をあげて参りまするならば、たくさんございます。鑑定留置の問題につきましても、改正案によりますと、勾留期間のうちから鑑定留置の場合は、場合によると除外するというような改正案文になつておりますが、こういうような点等についても十分な考慮が払われておらないし、幾多例をあげて参りまするならば、数限りがなくあるのでございますが、ただいま私が質問を申し上げておりますのは、修正案に対する総括的な質問でございますので、多くの例はあげません。しかしながら、このように首尾一貫せざる修正を行うということは、私はきわめて理解に苦しむのであります。従つてこの修正を行われるにあたつて、いかなる観点からこの修正をお行いになつたか、この点について具体的な御答弁を願いたいと思うのであります。
#28
○鍛冶委員 今御指摘になつた点は、決して看過したわけではありません。十分おのおの考え薫る点でありまして、研究に研究を重ねましたが、四派ですか五派の総意といたしましては、これだけにしておこうということに結論がなつたわけであります。その意味で、あなたから見れば、あるいは不満の点があるかもしれませんが、これはお互いの考え方ですから、これでみな完全なる修正とは私も認めておりませんが、一応お互いの意思を一致させる上においては、ここらでなかつたら一致できないものですから、その意味でまとまつたところがこのようになつた、かように申し上げるほかありません。
#29
○岡田(春)委員 それでは続いて伺いますが、今度の改正案だけを見ますると、憲法上違反する疑いのある部面が相当あつたように私は考えております。質疑の間においても、私のみならず、各党の委員諸君からそういう御質疑があつたようでございますが、鍛冶君によつて代表されまする修正によつて、今度の改正案に対する修正を通じまして、これは完全に合憲的になつたと御判断になりますか。憲法上疑義のある点は、完全に払拭し一掃されたものとお考えになりますかどうかつこの点について伺いたいと思う。
#30
○鍛冶委員 どの点をおつしやるのか、おそらく八十四条じやなかろうかと思われるのですが、それは十分研究いたしまして、原案よりもこの修正の方は憲法違反の問題が少くなつた。その意味おいて、私はもともとこれを入れたからといつて憲法違反とは思いませんが、大事をとつてこのような修正にしたわけであります。従つて憲法違反という非難はなかろうと私は信じております。
#31
○岡田(春)委員 合憲的でない面、違憲の疑いのある点については後ほど私は具体的に指摘をいたしたいと思いますが、ただいま御答弁を伺つておりますると、八十四条についてのみ合憲的であるか違憲であるかということについての御判断が加えられたようにも私は承わるわけでございます。しかしながら、そのような八十四条のみにおける修正でその他残余の点についてはすべて合憲的であるように御判断になつて修正したとするならば、これまたまことに重大な問題であります。大原則である憲法との関連においてこの点ぱ重大でございますので、私はあとで個個の問題として伺つて参りたいと思います。しかし少くとも今の答弁から承つたところによりますと、八十四条のみについては考慮したのであつて、その他の点については、憲法上抵触する疑いはないと判断をしたからお出しになつたのであろうと思うのであります。そこで、憲法上の疑いがあるのにその点について修正を行わないで、そうしてそのまま修正案を出したというのであつたら、これはあまりにもずさんな修正案であるといわなければならないのでございまするから、こういう点についてもう一度だけ明確な御答弁を願つておきたいと思います。
#32
○鍛冶委員 疑いがあつたものをそのまま出したと言われるとはなはだ迷惑ですが、議論のあることはわれわれは知つております。その議論を十分くんで、これならば憲法違反にあらずと判断すればこそ修正案を出したのであつて、これはどうも憲法違反であるかもしらぬと思いながら出したと思われてはたいへんな迷惑であります。さようなことはありません。
#33
○小林委員長 岡田君、なるべく要点に触れて簡潔にやつてください。
#34
○岡田(春)委員 それでは要点に触れて行きます。そこで要点に触れるために、今度の修正案について政府はいかにお考えになるか。特にこの点については、修正案を提出されました代表者である鍛冶君は、鍛冶君個人の御意見であるとは言われたものの、少くとも提案趣旨の説明の中において説明されましたる文言というものは、明らかにこれは個人の発言ではないのであります。従いまして、その発言それ自体を伺いますと、今度の改正案は、むしろ逆行するものであつて、改悪の部分が多かつたかのごとく御答弁があつたのであります。その場合政府自身としては……。
#35
○小林委員長 岡田君にちよつと御注意しますが、修正案は五派から出ておるのです。政府が出したものではないのです。あなたに対しては修正案に対する質問に限つたわけですから……。
#36
○岡田(春)委員 もちろんそうです。しかし修正案に対して政府はどういうように考えるか聞いておるのに何も問題はないでしよう。
#37
○小林委員長 政府がどういうふうに考えるかという意味ですか。そういう意味ならけつこうです。ちよつと速記をとめて。
    〔速記中止〕
#38
○小林委員長 速記を始めて。
#39
○岡田(春)委員 それでは答弁してください。
#40
○犬養国務大臣 岡田委員にお答え申し上げます。今度の刑事訴訟法改正案を提出いたしまして御審議を願います根本の趣旨は、当局として、新刑事訴訟法施行せられて以来四年有半、いろいろ運用の妙を尽そうと努力いたしましたが、運用の妙をもつてしてはいかんともすべからざる点について応急の修繕工事を意図いたしたわけであります。それも政府だけの都合で国民の人権を束縛するというようなことがありましては第一問題でございますので、さればこそ学者、自由法曹団その他の衆知を集めまして法制審議会に諮問をいたしました。その結果、この出ました改正のわくの中ならば違憲の疑いはないということでありました。政府ももともとさように感じおりましたので、ここに提出いたしまして、連日のまことに御苦労な御審議を願つたわけであります。従つて、政府といたしましては、違憲の疑いがあるとか逆コースとかいうことは毛頭意図しておりませんので、これはまあ御意見として他山の石として慎んで承つておきます。
#41
○小林委員長 岡田君にちよつと注意します。今本会議が始まつておりますから、あなたにはあと十分だけ許します。まとめて質問をやつてください。
#42
○岡田(春)委員 それでは十分間を越えたら打切つてください。私は修正案が明らかにならなければ質問を終るわけに行かないから、打切られるまで伺います。
 そこで、これはまず鍛冶委員に伺いたいのでありますが、この間の質疑応答を通じて相当問題になつている点で、あなたも十分御承知だろうと思いますが、弁護人の接見、こういうことについては、条文上当然これは共同修正案の中に修正点として入れるべきであつたと私は思います。それなのに、何がゆえにこれを落しているのか、落しているのはいかなる理由であるか、この点についてのお伺いをいたしたいと思います。
#43
○鍛冶委員 当然入れるべきであつたかどうかは、その人々の判断ですが、議論のあつたことは間違いございません。しかしいろいろ議論しました結果、これは条文の改正より、現在の条文で十分やれるのだ、運用の任に当る者が間違つたやり方をするのだから、この点を改めさせればよかろうという議論で、提出いたさなかつたのであります。
#44
○岡田(春)委員 今度の修正は、改正案が運用の点を中心にした改正であり、それに基く修正であるから、運用上必要のあることは修正意見として取上げるのは当然であると私は思うのであります。にもかかわらず、主観的におれは入れなかつたのだと、こういうお話でございますが、この点も、十分とただいま制限をされましたのであまり深く御質問をすることをよしまして、むしろ憲法違反の点について触れて行つた方がいいのじやないかと思います。
 まず第一に八十四条の但書の問題であります。これは修正点でありますが、憲法の三十四条によると、「何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」とある。この憲法の趣旨は、まず大前提として、いかなる国民も理由がなくしては拘禁をされない。そうして、もしこの理由があつた場合には拘禁をされるということが出ている。この理由があつて拘禁をされた場合には、要求があるならば、公開の法廷において、その理由が示されなければならないと規定されておるのであります。もちろんこの憲法の規定の趣旨から言うならば、その理由の開示というものは、要求をするところの本人、弁護人に対してわかるものでなければならない、これは当然のことであると思います。この憲法の規定に従いまして、現行刑訴法の八十四条においては、第一項、第二項において規定が行われております。八十四条の規定の第一項によると、「法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければならない。」、そうして第二項として、「被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者は、意見を述べることができる。検察官も同様である。」と、かように規定しております。従つて、この憲法の、示すということの趣旨というものは、先日の政府側の答弁、特に岸説明員の答弁によると、何か、裁判所の開示公判において裁判長が理由を告げればそれで用が足りるかのごとき答弁をされておりましたが、これは明らかに誤りであると私は考えております。そうではなくて、開示をするということは、告げると同時に、これについて意見を述べるということの二つが入つていると考えるのでございます。これが憲法の趣旨から考えて正当の解釈であり、しかも八十四条の第一項の冒頭にあります「法廷においては、」ということは、当然これは第一項のみを規定するものではなくて、第二項をも規定するものであると解釈しなければならないと考えるのであります。ところが今度の修正案において、但書において、相当の必要を認める場合においては、書面をもつて意見の陳述をさせるという意味にかえられておるのであります。このようにかえて参りますと、書面の意見陳述というものは、この前の質疑応答を通じましてわれわれの聞き得ましたことは、公判の手続を終了して閉廷後において、書面の意見の陳述を許すということになつておるかのように承つております。そうなつて参りますと、たとえば但書でございましても、この点が中心になつて、憲法の趣旨と相反することになつて参ると私は考えるのでございます。いわゆる公判の手続において、憲法の趣旨に反すると私は考える。特にこれは運用上の問題から考えますと、今後の運用の例としては、但書が但書にならないで、これがむしろ開示公判における本則であるかの、ごとき運用の弊害を生ずることを、私は今から予見するにかたくないのであります。こういう意味において、この但書をつけましたことは、明らかに憲法に、少くとも合憲的なものとも考えられないのでございますが、この点についてはいかにお考えになりますか。
#45
○鍛冶委員 今ここで法律論の討論をやつておつてもしようがありませんが、岡田さんのような議論もあることは、私も知つております。そうしてあなたの議論は傾聴に値することは認めますが、われわれはあなたと同一の考えでなかつた。これだけを申し上げておきます。
#46
○岡田(春)委員 次に八十九条の権利保釈について伺います。八十九条の第四号を削除されたことについても、実は言いたいのでございますが、しかし第六号については、これは私はここで名前はあげませんが、自由党の委員の諸君の中でも、これは削除すべきであるということの御意見を、私は直接耳にしたものでございまして、当然自由党としても削除にきまつておるのだと言つておられました。にもかかわらず、第六号を削除しなかつたという点について、きわめて不審であります。この点についてお伺いいたしたい。
#47
○鍛冶委員 どうも一々内容を申し上げられませんが、そういう議論をした人も確かにあつたのでありますが、結論において、これは残しておいてよかろうということになつたのであります。
#48
○岡田(春)委員 その次は八十九条の七号であります。これは百九十八条の供述拒否権と関連をいたして参ります。供述拒否権の場合には、修正案によりまして、「自己の意思に反して供述をする必要がない。」というふうに、不利益以外のことについて、供述を強要されないための保障が明確になされたわけであります。この点については同感なんでございますが、その具体的な例として、権利保釈の除外の対象の中に、第七号の問題が出て参ります。この前も質疑応答の中で一番問題になりましたのは、住居、氏名が不利益であるかどうかの判断の問題について、相当政府との間に質疑応答が行われて参つたのであります。そうしてその判断としては、住居、氏名を言うことは、必ずしも利益なものとは言えないという一般的な規定が行われたと私は考えておりますが、今度はこの権利保釈の除外理由拡大の中に、第七号において、住居か氏名かをどつちか言わない場合には、やはり権利保釈の対象にならないことに改悪が行われております。この点に触れなかつたということは、黙秘権を実質上において制限する効果を与えられておると思うのであります。この点については、なぜ修正案においてお触れにならなかつたか。百九十八条のみ触れて、八十九条の第七号を修正しなかつたのは、明らかに私は片手落ちであると考えるのであります。この点についてはいかがでありますか。
#49
○鍛冶委員 片手落ちのおしかりを受けてもやむを得ません。それをぜひ修正しなければならぬという議論が少なかつたのであります。
#50
○小林委員長 岡田君、ちようど十分になりました。他の方が御質疑がなければ、これにて修正案に対する質疑は終了いたしました。
 次に原案及び修正案を一括討論に付します。討論の通告があります。これを許します。田嶋好文君。
#51
○田嶋委員 私は自由党を代表いたしまして、本案につき修正部分を含めまして、賛成の意思を表したいと思います。
 本案につきましては、政府提案に対しまして、われわれ委員会といたしましても、人権の立場からながめまして、相当これを制限するおそれがあるという立場から、十分なる質疑を重ねたつもりでございます。幸いにいたしまして、これらの点に対して、政府提案の趣旨も明確になり、またそうした非難にこたえるために、政府も虚心坦懐、そうした疑いのある部分の修正に対しましては、のむ態度も明らかになつて参りまして、今日の修正案をもつていたしますならば、人権の立場からこの程度においてはやむを得ないであろうという結論を出すに至りました。人権の面に対しても十分な考慮を払われたものというある程度の見通しを持ちます今日、われわれはこの案に賛成をいたしたものでございます。
 なお委員会の審議等を通じて、もちろん委員長のおとりはからいの結果だとも思い、政府の虚心坦懐なる質疑に対する応答の結果でもあると存ずるのでございますが、これが非常に慎重に審議せられ、予算委員会の日数以上の日数が本案のみに費されたという事実からいたしましても、私たちはこれに満足を感ずるものであります。
 なお修正案等に対しましては、自由党のみの考えではなく、社会党両派の考え、改進党の考え、鳩山自由党の考え等も、ほんとうに気持いい立場において一致したわけであります。委員会運営の仕方といたしましては、私は例を見ざる運営であり結果であると今日満足を感じながらおるような次第であります。かかる意味からいたしまして、なお今後注意しなければならない幾多の面はあるのでありますが、それらの面を監視しながらここに賛意を表するものであります。
 最後に私は申し上げますが、犬養法務大臣から、今回の刑事訴訟法の修正案は、占領下における刑事訴訟法の行き過ぎを是正する意味において万やむを得ざる最小限度の修正であるというお言葉をいただきまして、これを信じている次第でございまして、行き過ぎの点に対して、民権、人事擁護の立場から十分考慮された理想的な刑事訴訟法の修正案が、今後やがて本委員会に出されることを御期待申し上げまして、私の討論を終る次第でございます。(拍手)
#52
○小林委員長 鈴木幹雄君。
#53
○鈴木(幹)委員 改進党を代表いたしまして修正案並びにその部分を除く改正案に賛成の意見を申し上げたいと存じます。
 刑事訴訟法が公訴の提起、公訴の維持を目的といたしまして、その便宜のために、あるいはまた全然別の角度から人権を擁護するという立場から、今回の改正案が提示されたのであります。その内容につきましては、先ほど鍛冶委員から修正案の提案につきまして詳細の理由の開示がありましたので、私は差控えたいと思うのでありますが、そのうち人権の擁護の点におきましては、ある意味から申しまするならば、公訴の提起並びに維持のためにこの人権が犠牲に供せられておる点が散見をせられるのであります。これを私どもは修正案によりまして修正いたしたいというのが、今回提案いたしました趣旨でありまして、その趣旨によつて参りますならば、私どもは新しい刑事訴訟法のもとにおいて人権を擁護して、しかも公訴の提起に、その維持に完璧に近いものがなし得るという自信のもとに提案いたした次第であります。
 なおこの改正案におきまして論議の中心になりました、いわゆる検察、警察の権限の問題でありますが、過去の問題はさておきまして、現実の問題として、捜査当局の間において何らの問題もなくして、円滑に協力関係が成り立つておる現状でありまするが、私は今回の改正案並びにその修正案の趣旨を十分におくみとり願いまして、この上とも円満なる協力と連繋のもとに捜査の完璧を期していただきたい。そうしおのおの権限を守りまして、その適正なる捜査と公訴の提起というものをはつきりと立てていただきたいということを念願いたすものであります。
 最後に私は、刑事訴訟法の精神が、先ほども触れられましたが、あるいは弁護権の行使という問題につきましても、幾多の実例から申しまするならば、これが歪曲をされておるうらみがあるのでありますが、この点を十分に留意をせられまして、この刑事訴訟法の精神を貫き、これを守つていただくことを当局に要望いたしまして、私の意見の開示を終りたいと思います。(拍手)
#54
○小林委員長 猪俣浩三君。
#55
○猪俣委員 社会党を代表いたしまして意見を申し上げます。
 私どもの党といたしましては、今回の改正案につきましては、全面的に反対をする決意を固めておつたのであります。これは今回のみならず、政府の提案いたしまするこの種の改正法律案が、国民の人権擁護という立場からの改正案というものはめつたにない。大体警察とか検察とか、取締ろうとする方の、刑罰権を行使しようとする人たちの、あるいは裁判官の便宜の上に立脚いたしまして立案し、それが修正となつて出る傾向がある。今回におきましても、犬養法務大臣が率直に認められておる通り、そういうわれわれの人権擁護の立場から、ほんとうの真実発見の立場から改正を要すると思いまする点につきましては、何の提案も凝りません。刑事訴訟法には、四年半の実績によりまして相当の改正を要すべき点があることは、政府の説明をまつまでもなく、ここに委員として列席されておる方は大半弁護士であつて、前線に活動いたしておられまする法曹家でありまするがゆえに、みな痛感せられているはずであります。しかしわれわれが痛感いたしまする改正の要点は、今政府が提案せられたようなものじやない。先般も申しましたように、裁判審理の状況から言うならば、裁判の審理を集中的に、継続的に、口頭弁論主義を貫いて、真実を発見するにはいかにしたらいいか。一つの裁判があると、一箇月、二箇月たつてから裁判が行われ、ほとんど書面審理になつてしまう。こういうことを是正して、なまなましい口頭弁論の、そのまだ影響の消え去らぬうちに判決をするにはどうした方がよかろうかというような問題については、どうもさつぱり原案に盛られておらない。あるいは証拠法の三百二十二条、被告人に不利益な供述のみを証拠として認めるというような、幾多の問題があるのであります。こういう証拠法なんかに対しましても、何らの考慮が払われておらぬ。あるいは起訴状一本主義につきましても、これは本法制定当時から問題があつた。そういうことには何ら触れておられません。そうして政府側で最も力を入れられた点は、捜査権限、捜査請求権を検察庁である程度握るか、警察が独立してできるかというようなことで、非常な御熱意を持つて、この暑いのに甲論乙駁、それにまた影響せられまして、委員の中にも甲派、乙派、ばかげ切つた話だと思う。事いやしくもなわ張り問題になりますと、警察法の改正のときもそうだ。あのときは警察内部、自治体警察、国家警察、これが醜態の限りを尽して争つた。今度は検察庁と警察になると、警察が一本になつて検察庁とやる、こういうことにばかり血道をあげておつて、国民の一体人権擁護なんということはどこに行つてしまつたのかわけがわからぬ。かような根本態度に対しまして私どもは多大の疑惑を持ち、さればこの案に対しましては全面的に反対をいたしまする態度をきめておりました。いろいろ審議を尽しまして、各党の諸君からも意見の調整が出され、私どもは涙をのんで同意をせざるを得ないようになつた。それは最も不可解なる二百十九条の二差押え令状を持つて甲の家へ行つたところがそこになければ今度乙の家を監視するというような実に場合によりましては重大なる人権蹂躙を引起す、こういう規定をひそかにこの案の中に織り込んだこと、新聞もあまり書き立てない、みなうつかりして警察と検察庁のなわ張り争いの方にばかり目を転じておる。そのうちにちよつとこういうものを入れるという巧妙なやり方でありますから、この重大な改正が含まれておつて、これが通過いたしますれば、実にゆゆしき問題を起す。そこで私どもは何としてもこれを取除かなければならぬというところに力を入れまして、そうして忍びがたきを忍びという言葉がありますが、ある程度やはりこれを消してしまうためには、わが党のみでやつておるのではありませんので、ほかの党の多少のごきげんもとらなければならぬ、なおまた二百八条の二、五日間の拘留延長のごときはすでに自由党と改進党の諸君は了解ができておる。そうするとこれが多数になるのでこれがこのまま通られますると、われわれはまつたく自分たちの働きというものが何ら効果を現わさぬことになりまするので、これも何とか少しでもわれわれの考えに近づけるように修正しなければならぬと考えられまして、多少譲つた点も出て来たのであります。もちろん政治は妥協でありまするがゆえに、ある程度の妥協を必要といたしまするが、さように苦心をいたして参りました。ところが日々の審議にあずかつておらぬ党の幹部その他国会対策委員におきましては、了解いたしかねる態度でありました。本日実はこの修正案を基本として説明いたしましたところが、国会対策委員会においてはそれを否決いたしまして、全面的に反対せよというような決議に相なりました。そこで私は非常に驚きまして、それでは私どもは辞職しなければならぬ。左右の社会党ともよく話をし、各党とも話をして修正案までつくつた際に、これに反対するということになれば自分はやめなければならぬという説を持ち出して、ようやくにしてやむを得ないということで了承を得たようなまことに悲劇を起したのであります。そこで何ゆえにかような私のことをるる申し上げるかと申しますと、この案を生むにつきましては政府当局も相当の御不満があるだろうと思う。ことになわ張り争いをやつておりました警察と検察は、どちらにしても何か多少御不満があるかとも存じますけれども、私どもといたしましては今申し上げましたような、ほとんど自分の地位をかけたような問題まで追い込まれた改正案、それをやるについて皆さんのお顔も立てなければならず、ここに修正案を出すことに同意いたしました。その経過をよくお含みくださいまして、われわれの今ここに言う時間のない、われわれの心中の苦悶を十分に御体得くださいまして、これは今後のこの法案を生かす上について、また将来の精神なり改正案を出す点につきまして、今日の私どものこの状態をよくおくみとりくださいまして、われわれの気に入るような、にこにこして御賛成申し上げることのできるような案を今から準備をしていただきたい。さようにしてせつかく皆さんに御協力いたして参りましたわれわれの立場がなくなるようなことのないように、これは警察の方々に、あるいは検察の方々にくどく申し上げるのであります。なお警察と検察の問題につきましては、私どもは大体において権力は集中すべきものではないという党の方針に従つて、あまりこの問題については実は深入りいたしませんでしたから、どちらがどうなりましてもわれわれをあまり恨まぬようにしていただきたい。しかしこれは警察側の面子は相当立つたと考えますけれども、私どもが警察側に要望いたしたいことは、いつも申し上げますように、たとえば破防法に関する検察側の訓令が……。
#56
○小林委員長 猪俣君に申し上げます。約束の時間を大分過ぎておりますので結論を急いでください。
#57
○猪俣委員 これは破防法に関する検察側の指示に対しまして警察の側は相当の不満のようでございますけれども、私たちの破防法を審議いたしましたその当時における法務大臣の立場を考えますと、無理からぬ点があるのであります。これは徹底的に人権蹂躙になる、言論圧迫になる、自由を束縛するものであるということをもう徹底的にやられまして、その当時法務大臣は絶対にそんなことをしないと再三再四国会において言明された。委員会においてしかり、本会議においてもしかり、そういたします際に、もし警察側がそれがわからぬで破防法なんかにつきまして無理な逮捕をいたす、逮捕するということは新聞に出ますし、たいへんなこれは人権の問題なんであります。四十八時間だからいいというわけに行かぬのであります。その検察庁ともし何ら連絡なしにどんどん警察側が逮捕していいということになりますならば、法務大臣の立場というものはどうしようもないと思う。国会に対しては責任を負うておる、ところが国会に対して何らの責任のない公安委員会などが運営をやつております自治体警察、国家警察が、捜査官の何らの指示もなしにどんどん破防法をもつて怪しいと思えば片つぱしからやつつけるということになりましたならば、責められるものは法務大臣、やるものは警察官、警察は独断でやり得るということになります。国会がこれを問題にしようと思つたつて、公安委員長をここに呼び出して責任を追究するわけにも行きません、さような事情でありまするがゆえに、この大犯罪、あるいは破防法というような思想犯罪、その他全国共通の犯罪のようなものにつきましては、私はイギリスの警察と検察のやり方のごとく、犯罪の種類によつて検事にある犯罪については集中的に権限を持たせるようにしたらいいんじやないかと思つておりますが、そこは将来の研究問題でありましようけれども、とにかくこれは検察側と緊密な連絡をとりましておやり願いたい。私たちとしては警察の解釈に対してはなはだ疑問の点が多々ある。鹿地亘の逮捕問題だつてそうであります。電波法第四条の幇助罪くらいのものを何ゆえに逮捕しなければならぬか、検察側は逮捕する理由はないというにかかわらず、警察側は逮捕しなければならぬ、逮捕しなければならぬと無理やりにやつておる。そういう場合に法律の経験と知識のある検事がある程度まで常識的に考えましても適正な判断ができるし、警察は感情問題になる。鹿地問題なんてまつたく感情問題だ、これは齋藤さんにあとでお聞きしてみたいと思う。まつたく感情問題でこういうことをやつて、きようの読売新聞にまだ記事が出ておる。
#58
○小林委員長 猪俣君、結論をお急ぎ願います。大分時間が過ぎております。
#59
○猪俣委員 まあ、さような次第でありますが、これは十二分に御協力願つて、そして円満なる捜査権の発動をするようにしていただきたいと存じます。どうぞなお警察と検察と相協力いたされまして、そこに政府、法務省一般に協力されまして、真に民主的な人権擁護に即しましたる、そして審判を適正ならしむべき方途につきまして、十二分なる御検討くださらんことを切にお願いいたしまして、万やむを得ず、涙ながらに賛成する次第であります。(拍手)
#60
○小林委員長 井伊誠一君。
#61
○井伊委員 私は日本社会党を代表いたしまして、各派共同の修正案、そのほか政府原案に賛成の意を表したいと思うのであります。
 今度提出せられましたところの刑事訴訟法の一部改正は、相当広範囲にわたつてこの改正が行われることになつておるのであります。しかしこれを大体に見まするならば、すでに先に実施しておる現行法そのものが、その運営において実験上支障を来すので、円滑にこれを持つて行くということのために、これが困難なる面をまずもつて修正しようとするところにあると思うのであります。こういうことでありまして、そのところには、おのずから国民の権利伸張を制限しなければならぬような面が随所に出て来るということは、これもこの法案全体の著しい特徴であると思う。このところに現われておりますところの権利保釈の除外事由の拡張であるとか、あるいは勾留期間更新制限の除外事由の拡張のごときことは、これはもとより捜査において必要を感じて出て来ておるところのものではあるけれども、しかしこのことは、すなわち捜査面における便宜のために、国民の自由なる権利というものをだんだん狭めて行くところの一つの例であります。われわれはこういうことについては、この今度の改正案は、憲法上から見て、この刑事訴訟法の行き過ぎになつておる点を根本的には感じておりながら、その点には全然触れないという趣意で今度のが提案されておるけれども、実はその点に触れないでおいて、そうして小出しにその点を演繹しつつあるということを見るのであります。この点についてわれわれは非常に憂慮いたしておるのであります。またそれのみではない、その検察官の勾留事由の開示後におけるところの意見の陳述のごときは、必ずしも憲法三十四条そのものに抵触するというものとは解しないけれども、しかしその憲法の……。(発言する者あり)
#62
○小林委員長 静粛に願います。
#63
○井伊委員 刑事訴訟法が特に与えておるところの国民の権利なのである。これを創設した当時の事情と、それから憲法につながる国民の権利を保護する関係から見るならば、今日といえども、法理論は別として、特に切り離してしまわなければならないということは考えられない。しかし、これに対して特にこれを書面審理によつてかえて行くというようなことをしなければならない事情については、これは説明によつてわかつてもいるのであるけれども、しかし政府原案が、端的に公判廷において口頭でその理由を陳述するところの国民の権利を制限して、書面によつてこれをやらせるというふうにすることは、これは著しい変更になると思うのであります。私はこの点などについても、今度の修正によつてまず免れて、その点を著しく侵害しなかつたということにおちついたと思うのであるけれども、しかし政府の提出された意図そのものについては、必ずしもこれは賛成はできない。こういうようなことがあると、その運営が円滑に行くかというならば、むしろこの問題のごときは、書面によつて他の場合において意見を述べることができるという、そのやむを得ない立場に置かれるところの被告人は、これをあるいはむしろ別な方法によつて争つて行くという道を開くのではないかと思います。
#64
○小林委員長 井伊君に申し上げます。結論をお急ぎ願います。
#65
○井伊委員 そういうようなことであつて、一つの道を便宜のためにふさぐということは、完全なる方法ではない。私は、ただ当面のわずかの実験において出て来たところのものを、その捜査あるいは審理に都合の悪いというためにのみ急速にこの法律改正をして行くということに、非常に警戒すべきものがあると考えるのであります。時間がありませんから申し上げませんが、この新しい意図を取入れられますところの簡易裁判の制度も開始されたのでありますけれども、この制度につきましては、たれしもまだやつていたいのでありますから、多くの批判はできませんけれども、このことの憂えられる点は何であるかといえば、修正によりましては、検察官もあるいは被疑者も、その弁護人も、意見を述べることのできるように修正はできたのでありますけれども、そもそもそれらの三者が、被告人みずからが認めておるというものを、どうして一体そうでないという意見が立ち得るであろうかということで、事実問題としてはそれはできないのであります。その段階においてただちに解決に入るというような制度が、やがてその制度に移つてから後に、これは疑わしいということになれば、もう一ぺんもどつて来なければならぬというようなことになるのではないかという疑いを持ちます。こういうようなことでありまして、その意図せられるところは非常にいいと思いますけれども、ために、むしろ多くの時間を要するようなことになり、むしろ手数を要するのではないかということを考えるのであります。あわせてこれが実は風をなしてやすきにつくということの危険を私は案ずる。それでなくとも裁判所においては多くの問題を控えて渋滞を来しておるという場合に、この制度が設けられるのは、さだめしそれによつて手を省こうという意図だと思うのでありますが、それがために真実の発見が簡略にせられるという危険が十分にあると思うのであります。こういうような点については、なおいろいろ意見がありますけれども、しかしながら今日は根本的な修正をしようというわけではなく、さしあたつての問題を修正して、その適当な処置によつて誤りなからしめるための改正でありますので、われわれは大体においてこれに賛成するというふうにいたした次第であります。修正案はすなわちその趣意に基いてできておる。われわれもこれは賛成するところなのであります。
#66
○小林委員長 木村武雄君。
#67
○木村(武)委員 私は自由党を代表して、改正案並びに五派の共同提案になつております修正案に賛成の意を表するものであります。
 民主政治の基調は人権の尊重にありますが、現行刑事訴訟法をこのままにしておつては、真の人権尊重は行い得ないということは輿論になつております。かるがゆえに根本的な修正は輿論となつておりますが、自分の都合のためにはえてかつてに憲法を解釈してみたりすることの平気な吉田内閣のもとでは、根本的な改正はとうてい行えないのであります。こう判断いたしましたために、やむを得ず修正案でがまんして賛成の意を表したものであります。
#68
○小林委員長 岡田春夫君。
#69
○岡田(春)委員 私はこの改正案並びに修正案に対して反対をいたします。
 先ほど質疑をいたしておりまして、特に重要な問題について触れたいと思いましたが、この点に入ります前に委員長から突如力をもつて質疑を差押えられました。しかもこの点についてはあとで述べてもらいたいというお話でございましたので、私は一応黙つておつたわけですが、ただいま私の番が参りましたので、その点について触れてみたいと思います。
 まず第一点として、今度の改正案並びに修正案については、先ほど猪俣委員の発言がありましたが、さすがに猪俣委員は長い間法曹界で活躍せられた方でありまして、前半においてはきわめて傾聴すべき御意見があつたのでございます。ところが遺憾ながら後半において賛成をするというようなことにになりまして、私は非常に残念でございます。今度の修正案においてもきわめて首尾一貫せざる面がたくさんございます。従いまして、今度の改正案において練られた点が修正されずにそのままになつております。その一例として特に憲法違反が明確に考えられるものについて触れて参りたいと思いますが、それは二百八十六条の二であります。この点については、遺憾ながら質疑の段階においても私以外の方からはあまり触れていただくことができなかつたのであります。二百八十六条の二というのは「被告人が、正当なる理由がなくて出頭を拒否し、監獄官吏による引致を著しく困難にしたときには、裁判所は、公判手続を行うことができる。」すなわち被告人が出廷をしない場合においても、裁判所は公判を続ける、ことができるということにこの条章においてはなつております。ところが憲法の三十七条によりますと「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」ということを明文化しております。従つて公平な裁判所の公開の法廷における裁判というのが根本であります。そういう権利があるのに、本人が出ないからといつて欠席裁判をやるのは明らかに秘密裁判である。しかも出廷しないという判断をやるのはだれかというと、この条文上から出て参りますのは、その被告人を拘束いたしております拘置所の監獄官吏が判断することになつておる。拘置所というものは本来第三者がその内容について知ることができない。このような内容を知ることのできない中において、しかも被告人と相対する当事者ともいうべきものの判断において不出廷のままに欠席裁判を行うようなことは、旧刑訴法にもそのような事例はない。旧刑訴法においては、なるほど拘束されざる被告人、たとえば保釈になつた被告人が出廷しない場合の公判の手続等はあつたやに記憶しておりますけれども、拘束された被告人が出廷しないのに公判手続を行うようなことはないのであります。しかも憲法において公正公平なる裁判所において公開裁判を受ける権利を有するという明文上の最低の保障があるのにかかわらず、修正案においてもあえてこの点に全然触れておらないというのは、これは明らかに憲法違反であるといわなければならない。しかも先ほど質問のときにも申し上げましたが、勾留理由開示の裁判の場合においても、意見の陳述は当然憲法の上において保障されているものと解釈すべきなのであります。しかし混乱を来すという理由のもとに但書をもつて書面による意見の陳述をさせるがごときは、これまた私は憲法違反のそしりを免れないと思うのであります。先ほど百九十八条の供述拒否権についての修正が行われでおりますが、片手落ちにも八十九条の第七号においては、実質的に黙秘権を制限するかのごとき、住所か氏名がわからなければ権利保釈の対象にならないという点については何らかの修正が行われておらない。こういう点を考えてみても、今度の修正案というものが片手落ちであるということが明確になつておるのであります。われわれはその意味においてもこのような修正案について賛成することはできません。しかも、先ほど猪俣委員あるいは右社会党の井伊君からもお話のありましたように、運用上現実に改正をしなければならない諸般の点があるのであります。この点は先ほど私の質問においても申したのでありますが、弁護士の接見、交通の問題についても三十九条のこの点の明文化が必要であつたのであります。この点についても何らの修正が行われておりません。こういう点を見ても修正案というものがいかに不当であるかということは明らかであり、憲法に違反し、また人権を蹂躙するものであると言わなければならぬ。しかも今度の改正案、修正案を通じて見られますことは、捜査の期間においては極力改正をいたしまして、反面において被告人あるいは弁護人――被疑者に対する立場については極力不利な地位に置こうとしておるのであります。これは新刑訴法の建前である当事者主義の原則というものを事実上において否定しようとしておるものと言わなければならないのであります。しかも拘置所の問題にいたしましても、昨日私は緊急質問をいたしたのでありますが、小菅の刑務所においては、すでにいろいろなわれわれとしては考えられない事態が起つております。タバコ一本が百五十円、マツチが一本十円、こういうような事態まで起つておるときに、この二百八十六条で監獄官吏の手によつて出廷をしないという判断をして、欠席裁判を行うというようなことは、明らかに民主主義の逆行である。これは明らかにフアシズムヘの第一歩の足がかりを拡げたものと言わなければなりません。私はこのような改悪を行おうという政府の魂胆は、すでに民主主義というものについての運営の自信を失つているからこそ、検察当局に権限を与えて力をもつて弾圧しようという考え方である。しかもこの改悪のねらいが、奇妙にもスト規制法と軌を一にして今国会において審議をされておるということは何を意味するか。これはスト規制法を実施する後において、これを刑事訴訟の手続において受入れて行こうという魂胆が明らかであるからであります。しかもまた破防法の問題についても、この法律の手続を通じて破防法を実施しようとする魂胆にほかならない。これは岡つ引き制度の再現をはかつて行くものと言わなければなりません。私はこの意味においてあくまでも反対をいたします。今度の衆議院においては反対する者が遺憾ながら少数であろう。おそらく本会議においても五人か六人の少数であろうと思います。残りの諸君は賛成をするであろうと思います。しかしわれわれは何人賛成しようとも、日本の民主主義を守るために、このような違憲の改悪案についてはあくまでも反対をいたします。今賛成をすることにより、笑つている諸君たちに私は言わなければなりません。笑つておつてもいずれ君たちの周辺におる国民がこの改悪法案によつて泣きつらをかかなければならなくなり、そこで今笑つている諸君が今度は泣きつらをかく番であるということなんだ。われわれはこういう点をはつきり申し上げておきます日本の民主主義を守るためにも、われわれはこのような改悪の不法な弾圧的な欠席裁判の秘密裁判について、あくまでも反対をする。以上申し上げます。
#70
○小林委員長 これにて討論は終局いたしました。これより本案の採決に入ります。まず小会派クラブを除く各派共同提案にかかる修正案について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
 ○小林委員長 起立多数。よつて修正案は可決されました。
 次にただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。賛成の諸君起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#71
○小林委員長 起立多数。よつて修正部分を除く原案は可決されました。従いまして刑事訴訟法の一部を改正する法律案は修正議決されました。
 この際本案に関する附帯決議案が提出されておりますから、その趣旨説明を聴取いたします。吉田安君。
#72
○吉田(安)委員 きわめて簡単に申し上げます。
 私はこの際次のごとき附帯決議を提出いたします。今その附帯決議の案文を朗読いたしまして賛成を得たいと存じます。
   附帯決議(案)
 検察官の定める一般的指示を行う場合には検察と警察とがあらかじめ緊密に連絡し相互に協力することを政府は建前とせられたい。
 右の一般的指示により個々の事件の捜査を直接指揮しないよう留意されたい。
 右決議する
 なおこれが趣旨につきましては、委員各位におかれましてすでに十分御了承のことでありまするから、これを省略いたしたいと存じます。(拍手)
#73
○小林委員長 これにて提案の趣旨説明は終りました。
 この際本決議案について発言の通告があります。これを許します。佐竹晴記君。
#74
○佐竹(晴)委員 ただいま議題になりました附帯決議案に関連いたしまして、法務大臣の御意向を伺つておきたいと存じます。この附帯決議は百九十三条に関するものでございますことは申し上げるまでもございません。この百九十三条の改正案は、現行条文が旧来の解釈上異論がありまして、運営上遺憾な点がありましたために、政府はその趣旨を明確にするために提案をしたものであつて、検察側の権力を強化しようとする意図のもとに出されたものではないと説明を繰返されて参りますと同時に、特に法務大臣は次の二点を明らかにされました。
 その第一は、百九十三条の一般的指示は、個々の事件を目的とし、または犯罪の種類を特定し、これについて直接捜査を指揮する趣旨のものではない。
 その第二は、この一般的指示は準則を定めることによつて行うものであるが、それには検察側と警察側とがあらかじめ緊密なる連絡をとつて、相互に協力の上に行う趣旨のことを言明せられて参つたのでありますが、この精神に基いて本案成立の上においては運営せられますお考えでありますかどうか。また本日の附帯決議は、私どもは右旧来法務大臣が言明せられて参りました趣旨を明らかにするために、ここに附帯決議といたしたのであります。法務大臣はさように了承せられ、御異存ないものであるかどうか、この点も伺つておきたいと考えます。
#75
○犬養国務大臣 佐竹委員にお答え申し上げます。
 ただいま数々のお尋ねの点は、御承知のようにかねて本委員会におきましてしばしば私が速記録に残して言明をしたところでございまして、ただいま承りました通り、吉田委員より朗読になりました附帯決議案は、たまたま私がしばしば繰返しここで政府の意のあるところを申し上げたのと合致いたします。かつただいまの佐竹委員の篤なる御注意の意も体しまして、決議案に賛成いたすところでございます。どうかさよう御了承願います。
#76
○小林委員長 他に御発言がなければお諮りいたします。ただいま提案されました通り、附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#77
○小林委員長 起立多数。よつて、ただいまの御提案の通り附帯決議を付するに決しました。
 なお、お諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#78
○小林委員長 御異議ないものと認め、さように決定いたします。
 次会は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後三時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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