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1953/08/05 第16回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第016回国会 決算委員会 第27号
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1953/08/05 第16回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第016回国会 決算委員会 第27号

#1
第016回国会 決算委員会 第27号
昭和二十八年八月五日(水曜日)
    午後二時五分開議
 出席委員
   委員長 田中 彰治君
   理事 天野 公義君 理事 安井 大吉君
   理事 町村 金五君 理事 柴田 義男君
   理事 吉田 賢一君
      藤田 義光君    細迫 兼光君
      山田 長司君    大矢 省三君
      熊本 虎三君    杉村沖治郎君
 出席政府委員
        外務事務官
        (経済局長)  黄田多喜夫君
        外務事務官
        (条約局長)  下田 武三君
        通商産業事務官
        (企業局長)  中野 哲夫君
 委員外の出席者
        専  門  員 大久保忠文君
        専  門  員 岡林 清英君
    ―――――――――――――
八月五日
 委員山本勝市君辞任につき、その補欠として山
 本正一君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 朝鮮向輸出物資に対する対米債権に関する件
    ―――――――――――――
#2
○柴田委員長代理 これより決算委員会を開会いたします。
 本日は委員長が同僚議員の葬儀のため出席が遅れますので、理事の私が委員長の委嘱を受けまして、その職務を代行いたしますから、御了承願います。
 本日はかねて審議未了となつております対米債権に関する問題を議題とし、その調査を続行いたします。それでは質疑を願います。吉田委員。
#3
○吉田(賢)委員 私は通産省当局に伺うことにいたします。前回の委員会におきまして若干触れておつたのですが、終戦後、特に二十四年三月末に至りますまでの貿易の関係につきまして、貿易資金特別会計を中心に、各般の関連しまする数字の関係、その性格等を明らかにしておきたいと思うのであります。
 それでまず最初に、終戦後、平和条約の発効に至りまするまでの貿易資金特別会計及び貿易特別会計の帳じりともいうべき輸出入の勘定の概況だけでいいと思いますから、御説明願いたいと思います。
#4
○中野政府委員 終戦後、昭和二十七年度末までの貿易特別会計の收入、支出の関係は、各年累計におきまして、收入が七千六百七十九億九千九百万円余に相なつております。支出の方は七千四百九十五億一千八百万円余でございます。従つて差引黒字が百八十四億八千万円余に相なつております。
#5
○吉田(賢)委員 そこでそのうちの昭和二十四年三月まで、すなわち例のガリオア、イロア勘定の基金のあるときでありますが、その現在における受払い勘定について概況を御説明願いたい。
#6
○中野政府委員 昭和二十四年三月三十一日までの輸入物資の国内における売払い額、つまり收入の方は、一千四百九十五億四千百万円余でございます。それから同期間中の、輸出するために国内で買い上げました金額、これが九百六十一億九千六百万円余に相なつております。
#7
○吉田(賢)委員 そこで受入れの方の千四百九十五億円につきましての内訳、並びに支払いの九百六十一億円につきましての村沢を、項目だけでいいから、これも明らかにしていただきたいと思います。――今すぐわからないようでしたら、計算しておいてください。
 そこでさつきの御説明によりまして、その間の輸出と輸入の総計は出たと了承していいわけですか。
#8
○中野政府委員 ただいまお答え申し上げました輸入物資の売払い額と輸出物資の買上げ額は、会計検査院の検査も受け、当時の国会において御承認を受けた金額でございます。
#9
○吉田(賢)委員 そこで伺いたいのですが、そうしますると、今の輸入物資の総量も輸出物資の総量も、いずれもこれは円によつて勘定されておるわけでありますから、はるかに輸入物資が量、額におきまして大きいようであります。差引いたしますと、売りの代金と買いの代金の差額は、五百二十三億円になつております。りくつから申しますならば、かように非常に輸入の額か多いときには、当然にその差引の円勘定におきまして、資金の余剰が出て来なければならぬものと推測されるのですが、その点はいかがでございましよう。
#10
○中野政府委員 お示しの通りに、円資金の剰余が生ずべきものでございまして、輸入物資の売払い額と輸出物資の買上げの差額は、五百三十三億四千五百万円余に相なつておるわけでございます。
#11
○吉田(賢)委員 その余剰の円資金が当然あるはずだと思うのですが、現実におきましては、日本銀行から相当借入れもあるかのように推測するのであります。この貿易資金受払い計算書の、商工省所管二十一年から三年度までの、二百二十八ページによりますると、受けの方の借入金といたしまして合計四百三十五億円借り入れております。こういうように多額の借入金――これは日銀の借入金だろうと思いますが、当然余剰の円資金がなければならぬと思うのに、かほど莫大な金額か借り出されておる勘定になりますので、これはどういうわけでありましようか。
#12
○中野政府委員 ただいま御説明申し上げました五百二十一億と申しますのは、二十四年三月三十一日の計算がそういうことになるわけで、ございまし、それの事由と内訳といたしましては、その当時の売掛金、在庫品というような資産勘定に相なつておるものもございますし、また日本に参つておりましたアメリカの占領軍、その用に便じますために円を出したもの、つまりそういう意味での貿易外支出のものもございます。二十三年度末現在の売掛金及び在庫品の資産は、三百九十億七十八百万円余に相なつております。それからただいま申し上げました貿易外支出は、四十三億四百万円余でございます。それから輸入いたしましたものについて、船からの積みおろしその他の輸入諸掛り及び公団における経費等を入れますと、これが九十九億六千百万円余に相なつておるのでございます、それでお話の借入金は、貿易資金は御承知の通り絶えず回転して使用されておりますので、時期的に見まして今お示しのような借入金の必要を生じたものでございます。
#13
○吉田(賢)委員 そこでさらに伺つてみたいのですが、本来ならばそんなに大きな資金の借入れをしなくてもいいはずであると思うのですけれども、そんなに円資金の不足を来しました原因について、ひとつ探究して御答弁を願いたいと思うのです。当委員会におきましてもしばしば御答弁になつており、質問があつたわけでありますが、国内におきまして輸入物資を払い下げまするのはかなり安い値段で払い下げておる。つまり非常に円高になつておる。それから出しますものにつきましては円貨の勘定もするためでありますか、かなり高い値段で買つて、アメリカへドルの時価相場で売り払つておるという関係もあるので、その辺は高い値段で買い取り、安い値段で売り払つたという現実の事実がさようにしたものではないのであろうか。普通ならば相当の余剰がなければならぬと思うのですが、そういうことになつたのではないかとも思うのですが、その点はいかがでございましようか。
#14
○中野政府委員 前回の委員会におきまして、先ほどお話のように、輸入品の売払代と輸出品の買上代の差額が相当多くなつておるものでございまするが、これを当時の一本レートを想定いたして考えますとき、一千億余の事実上隠れたる輸入補給金に該当するような金額がこの援助資金によつてまかなわれたんだという御説明を申し上げたのでございます。そこでそれに関連してのただいまの御質問でございまするが、綿花等もございます。また食糧とか塩というような品物もございますが、これは当時のマル公で払い下げたのでございます。かりに当時一本レートがありといたしますならば、割安に売つたのでございますが、同時に食糧等は別といたしまして、工業用の原料につきましてはやはり当時のマル公制度がございます。内閣の物価庁を中心として関係各省が集まりまして、原価計算をいたしまして原価計算に基いてマル公をきめ、そのマル公の金額で買い上げた、かようなぐあいになつておりますので、鉄鉱石にせよ綿花にせよ、燐鉱石にせよ、これは直接消費者に渡しても使えないものでございますので、それの償却とか金利とか加工賃及び売り出した安い原料価格、そのマル公をやはり原価計算の際に計算いたしまして、輸出品の買上げ金額もきめられておつたような事情でございます。
#15
○吉田(賢)委員 そういう御説明もあるいはわかるような気がするのでありますけれども、もう少し類別してお尋ねしますると、二十四年の三月に経済安定本部で出しております「経済現況の分析」、この経済白書によりますると、輸入につきましては繊維原料、つまり綿花の一ドルに対する円価値の問題でありますが、このレートが綿花については八十円、それから銑鉄が六十七円、その他化学薬品が二百円くらい、重油が二百八十四円というのがありますけれども、概して鉱産物あるいは燃料、食糧、繊維原料、木材、肥料、銑鉄、ボーキサイト、砂糖等に至りますまで、いずれも百七十円以下であります。ところで輸出品の方を見ますると、普通の輸出のものでは生糸、綿糸あるいは絹織物などはレート二百五十円から四百二十円くらいまで、こういうのが普通でありまして、特別に農産物などのみかん、カン詰類についてはレート三百円、三百四十円というのがありますけれども、これは収買する問屋の資力等から来る買いたたきであろうかと思います。概して輸出はこういう独占的のものに非常に高くなつておりますること、それから輸入につきましては基本産業の原材料のごときものが非常に安くなつておる、こういうことに見られるのであります。そこで今御説明になりました、この円勘定にいたしまして、当然円資金に余剰を生じなければなるまいと思われるこれが千億円ほどの物資にかわりまして、これらの輸出品、輸入品の価格の補給に入つておる。こういう点が今の御説明だと思うのでありますが、しかしこうやつて類別して見てみますと、基幹産業の面に対する価格補給的性質のものが多分にあると思います。それとここに食糧というのがありますので、食糧につきましても小麦の百六十五円というのがちよつと目立つのでありますが、この食糧につきましては、前会の御答弁では八、九割あるだろうとおつしやいましたが、これは間違いであろうと思いますので、適当に御訂正を願いたいと思います。食糧はさることながら、他の物資につきましては相当基幹産業的な、独占産業的なものへ多くの補給金的性格をもつて千億円が流れて行つておる。こういうふうに結論づけられるのではないかと思うのですが、その点についてのお考えはいかがでございましようか。
#16
○中野政府委員 前会の御質問に対しまして昭和二十三年度末までの食糧が大半だということを申し上げたのでございますが、精査いたしてみますると、食糧が五割くらいになつておりますので、その点一部訂正をさしていただきたいと思います。
 そこでただいまの御質問でございまするが、補給金剰余額は輸入補給金に使われたのでございまするが、買上げ輸出品につきまして特に加工を要する工業用原料というものについて輸出補給金に使われたんではないか、こういうふうな御質問の御趣意と思いまするが、私どもはそうではなく、当時のマル公の計算におきまして、各種の賃金とか、あるいは機械器具の値段とか、あるいはそれの償却とか、金利とか、各般のものを調べまして、これを原価として見る。もちろん適正利潤というものも見たのでございまするが、そういう原価計算の上に立つてこれを買い上げたのでございまして、吉田委員の御記憶にもお残りだと思いますが、あのインフレ時代における原価を見ますると、今御指摘のありましたように、円、ドルのレートがものによつて千差万別でございまするが、二百円、三百円、四百円、高いものは五百円台を占めるという品物もあつたのでございます。
#17
○柴田委員長代理 ちよつとお諮りいたしますが、外務省の黄田経済局長、下田条約局長のお二人がお見えになつておりますが、時間がありませんので、外務省当局に御質問がございましたならば、これを先に御質問を願い、さらに御継続願いたいと思います。
#18
○杉村委員 この間四千七百万ドルのアメリカに対して請求したことについて、どういう御回答があつたかということを私が尋ねましたときに、どうもそのことはここで発表しかねるというこの間の話であつたので、決算委員会としては、大臣に出てもらいたいと思つたのですが、なかなか来られないようでありますが、その後これに対する発表を今日してもらえますかどうですか、それをひとつ伺いたい。
#19
○黄田政府委員 この間の御発言に対しまして向うの方でもいろいろ何と申しますか、言い分があるということを申し上げたのでありますけれども、つまり向うの方といたしましても、いわゆるガリオアでありますとか、そういうものに対しまして未解決の問題がございますので、それと一緒にして考慮したい。なるべく早く本件を解決したい、こういうふうに申しておりますが、まだその問題を取り上げないと進展をしにくいというふうな状態であります。
#20
○杉村委員 そうすると、あの二百億の請求をしたところが、アメリカ側では、ガリオアの問題があるから、それの解決のときにしたいというだけの返事でございますか。
#21
○黄田政府委員 ガリオアの問題があるので、それと一緒に考えて、早く本件を解決したい、そういうことでございます。
#22
○杉村委員 そういたしますと、その回答はさることながら、この間大蔵大臣にも、副総理にもガリオアの問題を尋ねたのです。私どもは総理にはつきりした答えをしてもらいたいと思つておるのですが、遂に総理が今日に至る間出られないのですが、大蔵大玉はこれは法律上の債務ではないということをはつきりこの間答えられたのです。道義上からはそれは債務であるということは言い得るであろうが、いわゆる法律上の債務ではない、こういうことを述べられた。緒方副総理も大体においてそういうような答えをここでされたんですが、外務省としてはその点についてどういう御見解を持つておりますか。やはりガリオアを法律上の債務とお考えになるのですか。その点の御見解はいかがですか。
#23
○黄田政府委員 債務にならぬのか、債務であるのかという問題を離れまして、とにかく例の見返り資金というものを積み立て始めてからでも、とにかく八億ドルとか、九億ドルとかの金額がございますので、そういう問題は、いずれ本件が議せられなければならない問題であろうと存じますが、とにかくこつちとしては、こつちの言い分はこういうような四千七百万ドルのものがあるということをいいまして、向うの方はそれはあるのだけれども、向うの方としてもそういう問題があるので、それで本件はその両者の関連においてやりたいということを申しております。それをどういうふうに持つて行くか、とにかく今までの交渉ではそこでまだ停滞いたしまして、進展を見ていないという状態であります。
#24
○杉村委員 そうすると、向うではガリオアの点について全部ではなくて、今言われる八億幾らという分は、やはり日本に対する債権というふうに見ておるようでございますが、その点はいかがですか。
#25
○黄田政府委員 この八億幾らというのは、向うが言つておるわけではございません。今までもドイツの例がございまして、たしかドイツは三七・五月というふうに解決いたしまして――あるいは三三%くらいであつたかもしれませんが、私は三七・五%と記憶いたしております。とにかくそういうふうに話合いをやりまして解決つけたというふうになつておりますので、いずれ日本との間においても、そういう問題が議せられるに違いない。それでその問題を議するときに同時に関連して考えるよりしかたがない。こういうわけでございます。
#26
○杉村委員 アメリカの方でそういうように考えておることはどうしようもない向うの考えですから。
 さてそこで、アメリカはアメリカの考えですが、日本としてガリオア、イロアのうちに、あるいは法律上の債務として認むべきものがあるのですか、ないのですか、その点についてひとつ御所見を伺いたい。
#27
○黄田政府委員 これはただいまも申し上げましたように、ガリオアとかその他戦後いろいろなものがこつちに来ております。それを債務として認めるか認めないかという問題、これはドイツの場合等においても結局交渉によつてきめなければならない問題であろうと存じます。
#28
○杉村委員 どうもあなたにあまり聞いても、何だか大臣でなくてはもの足りないのだが、同じ政府の中で、大蔵大臣も、緒方副総理も法律上の債務とは認めてないと言つておるにもかかわらず、あなたは外務省の経済局長であつて、今おつしやられるようなことを言つておるのは債務というふうにお考えになるのですか。その点を伺いたいのですよ。私どもは債務でないというふうに聞いておりますから、アメリカが幾ら貸したと言つたつて、こつちは借りてないものは借りてない。しかしながら外交交渉の結果どういうことになるか、それは別問題ですが、まずガリオアが債務か、債務ないかということについての御所見はいかがなんですか。
#29
○黄田政府委員 それはほかの大臣も法律上の債務であるかどうかということはだまはつきりしないけれども、とにかく払うべきものだというふうに思つているというふうにおつしやつていると思うのでありまして、従つてそういうことがどういうふうになるかということは、やはり今後向うと交渉をしなければならない問題だろうと思います。
#30
○杉村委員 今あなたは、ほかの大臣も、法律上の債務となるかならないかということはわからないけれども、払うべきものであるということを言つているということを言われたが、それは大臣のうちでだれでありますか。
#31
○黄田政府委員 この間の予算委員会で、総理もそういうふうにおつしやつていると私記憶しております。
#32
○杉村委員 それは間違いございませんか。総理もガリオアは支払うベきものである、こういう答えなんでありますか。それをさらに念を押して伺つておきますが、同じ総理のもとにある閣僚が二人までもここへ来ては、法律上の債務とは認めないと言つているのであつて、今初めてそういうことを聞くのですが、それは間違いないですか。
#33
○黄田政府委員 それは速記録を持つて来なければ私もはつきりこういうふうにおつしやつているということを言い切ることはできませんけれども、総理もたしか、借りたものは返さなければならぬからというつもりでやつているというふうにおつしやつていると私は記憶しております。
#34
○杉村委員 速記録を持つて来なければはつきりわからないようなことを言われることは、決算委員会としてもまことに迷惑しごくのことであつて、われわれはどこまでもああいうものは債務などとは考えておらないのです。しかしあなたは、総理が借りたものだから返さなければならぬと言われたということをさらに重ねて言われたが、総理は借りたということを言つておるのですか。その点いま一度念を押しておきます。
#35
○黄田政府委員 今ここでどういうふりにおつしやつたかということを確かに申し上げる自信はございませんので、そういうふうに、返したいというふうに総理はおつしやつていると私は記憶いたしているのであります。
#36
○杉村委員 それであつたらそういうことを答えてもらいたくない。はつきりしたことが言えぬのなら……。これは非常に重大問題である。国会における政府委員の答弁が、借りたものであつたなら返さなければならぬ、あるいは債務であるがごときことをあなた方が軽々にここで、しかもはつきりしたことは言えないようなことだつたら答えられない方がよい。この席に通産大臣も、大蔵大臣も、緒方副総理も来て、はつきり債務だなどということを答えられておらないのです。それをあなたは、総理は、借りたものであるから返さなければならぬ、借りたものだということは非常に重要な言葉だと思うのです。たとえもらつたものでも、そのもらつたものの返礼をしたいというのであればこれはまた別の話であるが、借りたものであるということになると法律上債務がはつきりしたものになるのですが、あなたははつきりしていないなら、はつきりしていないという答えが願いたい。いい加減なことでない答えをしていただきたい。はつきり総理が言つたと断言して間違いないのですか。
#37
○黄田政府委員 その点は、そうおつのやられますと断言はできません。借りたものは、とおつしやつたということを申し上げたとしたならば、それは私の言い過ぎでございます。
#38
○吉田(賢)委員 あなたは事務当局でありますからお尋ねしてもどうかと思います。けれども、事務を進める上におきましてぜひとも考慮すべきでないかと思う一点があるのです。それは、ダレス国務長官が朝鮮へ行つたとか、あるいはもう行つているじやないかと思いますが、日本へ寄るという機会もしくは会う機会、もしそういう機会があるならば、そういうチャンスも適当に利用してこの問題の解決へ進むべきではないか――こういうこともわれわれは考えるのですが、そんなことは省内で具体的に問題になつておらぬのですか。
#39
○黄田政府委員 ダレス国務長官が東京にお寄りになるかどうか、それは私まだ存じません。従いまして、そのあとのことも私からはお答え申し上げられません。
#40
○山田(長)委員 新木大使がワシントンでこれらの交渉について何か進めているというような話があれば、それを知つている範囲で話していただきいい。
#41
○黄田政府委員 本問題に関しましては、ワシントンの方で一応サウンドしてみたのでありますけれども、結局要領を得ませんし、それから本件は東京で一番よく事情がわかつておりますので、ワシントンの方は交渉の深入りと申しますか、交渉を進展させることはいたしませんで、東京でやつております。
#42
○山田(長)委員 経済局長がアメリカの大使館と交渉しているということが言われておりますが、この点はどうなんですか。
#43
○黄田政府委員 さようでございます。私がやつております。
#44
○吉田(賢)委員 条約局長にちよつと伺いますが、平和条約十四条のこの(b)、この占領の直接軍事に関する連合国権をの請求権を放棄するということと、それからガリオア援助物資との関連はどういうふうに御解釈になるのでしようか。ガリオア物資というものは直接だとか間接だとかという形式的な問題よりも、事実上におきまして日本の社会不安を除いて占領軍の占領政策の重要な役割を果し、あるいはまた、その他経済復興等につきまして、日本の経済復興の促進をはかるということは、同時に占領軍の占領政策遂行上の必須の要件である、こう思いますので、かかる経費に使われた大部分のガリオア、イロア勘定というものは、この十四条(b)の後段から、当然アメリカとして日本への請求権のない筋合いになるべき解釈ができるのではないかとも思うのですが、この点いかがですか。
#45
○下田政府委員 御指摘の平和条約第十四条(b)の直接の占領費、直接の軍事費に関する連合国の請求権を放棄するという規定の意味でございますが、これは文言解釈といたしましては、英語にもデイレクト・ミリタリー・コスツ・オブ・オキユペーシヨンとなつております。なぜこういう規定が入りましたかという原因から考えて行きませんと意味がはつきりいたしません。従来の国際法、また従来の先例によりますと、占領軍というものは占領のために要したすべての費用を被占領国に課するというのが原則でございます。それですべて課せられても敗戦国としては、被占領国としてはいたしかたがない、文句が言えないというのが従来の観念でございます。ところが連合国側が請求権を放棄するのは、直接の軍事費ということは、国際法上の観念から申しますとミリタリー・コスツでございますから、兵隊の給料でありますとかあるいは軍隊の行動、移動、給与、その他軍隊の存立維持のために必要な経費、それは日本からはもう取立てない、そういう意味だろうと私どもは思つております。
#46
○吉田(賢)委員 そうしますと、今の御解釈、御説明によりますと、当然ガリオア勘定はこの末段の条項に該当しない、こういうふうに御解釈になつていると了承してよいのですか。
#47
○下田政府委員 あまりはつきり申しますとこれは日本国の利益にならないことで、いかに法律的な意見とは申しましても、日本国の利益にならない結果を来すような発言をいたすのは避けたいと思うのでありますが、大体御質問の趣旨のように解しております。
#48
○吉田(賢)委員 私どもはやはり条文の解釈につきましても広く解釈して、当時から今日まで至つておる。このガリオア物資に対する勘定それから当時の実情、受けたころの関係者の言葉――こういつたものも各国におきまして全部放棄されておる実例、たとえば朝鮮とかあるいはオーストリーとかイタリアもそうだつたと思いますが、こういうふうに全部放棄されておる実例もあるわけでありますから、従つて私どもとしましては、各般の事情、状況、条件を社会的に、政治的に、国際的にいろいろな面から検討いたしまして、かような援助物資についての解決をはかることが外交じやないかと思いますので、私どもは格別に広げて解釈するとかいう意味よりも、そういう各般の観点から解釈して行くという行き方こそ、将来に禍根を残さない道であろう思いますから、そういう点につきましては手抜かりないことと思いますけれども、国民感情のあるところを率直にお認めになつて、交渉の資料にする、こういうような心構えをする必要があるだろうと思います。こういう意味において私は質疑したのであります。それについて何か伺いたい。
 もう一点、私は問題になるかどうかにつきましても問題と思うのでありますけれども、例の終戦処理費との関係であります。これは今日資料によりますと、すでに五千億円以上事実上において支出いたしております。あれは当時の一九四六年の二月の指令第二号でありましたか、あれに基いているものだろうと思いますけれども、しかしこれとてもやはりずいぶんと大きな犠牲を払つて行つておるのでありますから、この関連も相当考慮してほしいと思います。こういう問題につきましては、できるだけ大局から率直にお述べ願いまして、もしあなたの方におきまして終戦処理費との関連において何か御意見を伺つておければたいへんいいと思うのですが、いかがでございましよう。
#49
○下田政府委員 まことにごもつともで、私ども御同感に存ずる点が多々ございます。朝鮮、イタリアの例をお引きになりましたが、朝鮮はアメリカと戦争して負けて、占領されたのでないので、日米間の関係と多少違いますし、またイタリアも初めは枢軸側でありましたが、後寝返りまして、しまいには連合国側の共同交戦国となつてしまいましたので、これも多少日米間の占領、被占領の関係においては違うように存ずるのであります。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、交渉の際にアメリカ側が言つたらしようがないが、自分から損なような意見を自発的にお述べするのは実は非常にいやなのでございます。その点をお含み願いたいと思います。終戦処理費の問題も実は占領費なりとして、従来の国際慣例でしたら取立てられてもしようがないのじやないか、それを取立てられないで日本政府の負担として初めから自分で直接出しておつたのでありますから、これを先方に対する請求権として請求し得るかどうかという点については、国際法上やはり多分に疑問だろうと存ずるのであります。
#50
○杉村委員 ちよつと条約局長に所見を聞きたいのですが、従来の戦争の結果から行けばというお話なんで、従来のいわゆる国際法に基いて戦争をやつた場合の結果から行けば、あなたのような御所見であるのだけれども、私はこのたびの大東亜戦争というものは従来のような国際法が完全に守られておらないと思うのです。たとえばアメリカが広島を原子爆弾で爆撃したり、長崎を爆撃したり、ああいうふうなことは国際法上許されておらないことです。ですから従来の国際法というものはほとんど無視されて今度の戦争が遂行されたことは明らかなんで、国際関係というものが従来の常道じやなかつたと思うのです。それでアメリカが日本を復興さしてやるとか何とかいろいろ日本をかわいがるようなことを言つて、日本民族を島の中にとじ込めたも同じです。そうして占領しておつたのだから、人道上から言つたならば、これを養うのが当然です。ですからあなたは従来の国際法というが、従来の国際法は実際に全部破壊されたと言つてもいい状態ですが、あなた方は今でも従来の国際的関係においてそういうふうなお考えでおられるのでありますか、いかがでありますか。
#51
○下田政府委員 まことにごもつともな御見解でして、国際法というものは国内法と違いまして、すべてが成文法になつておりません。そして時代の変遷に応じまして非常にかわりやすいものであります。でございますから既存国際法というものを仮定して、それにかじりつくことがわが国の利益でありましたならばともかくでございますが、不利益である場合に国際法だ、国際法だとこつちから言う必要はないという点はまつたく私同感であります。あまり良心的な法律家の意見として申し上げることは非常にいやなのでありますが、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
#52
○吉田(賢)委員 さきの中野政府委員の御答弁によりますと、結局日本からアメリカへ出したものとアメリカから入つたものとの差額が千億円、こういうような見当らしいのでありますが、大蔵省が出しております財政金融統計によりますると、二十一年、二年、三年のESAの統計と思いますが、二十一年には二億二百ドル余り、二十二年が四億四千四百ドル余り、それから二十三年が三億四千六百ドル余り合計九億九千二百ドル、これは大体の数字でありますが、結局入つたものが多い、輸入超過勘定ということになつております。もちろん円建とドル建の関係がお互いに何ら関知しない関係にある貿易機構でありますので、はつきりとはできないといたしましても、さきにお述べになりました千億円という物資と、それからこの九億九千二百ドルという輸入超過関係と、これが相見合う関係になる、こういうふうに了承していいのでしようかいかがでしようか。
#53
○中野政府委員 大体ただいま吉田委員からお話の通りに私どもも了承いたしておる次第でございます。
#54
○吉田(賢)委員 そういたしますと、結局アメリカから二十一年、二年、三年三箇年間に千億円に該当する物資がよけいに入つて参りました。この物資がそれぞれ価格補給的性格を持つた使い道によつて、半分は食糧、食糧以外は主として基幹産業らしく私ども考えられるのであります。そういたしますると、食糧となればこれはかなり問題があると思いまするけれども、大体国民が、食糧飢饉時代でありましたので、たとえば食えぬようなものであつたといたしましても、飢餓を免れたということで感謝しなくちやならぬと思いまするけれども、しかし他面におきまして、基幹産業的なものへの価格補給的性格を持つた物資の流れあるいは買上げについての代金の支払い、こういつたようなものにつきましては、たとえば具体的に申しましたならば、輸入品といたしまして百七十円以下で売つております鉄その他の基幹産業の原材料、あるいは肥料、輸出の方におきましては、綿糸、綿布、人絹、苛性ソーダあるいは棒鉄など、あるいはずつと高いレート、四百円を越えておりまするような生糸といつたようなもの、こういうような部門におきましては、国民全体が公平に均一にその価格補給的なる補給を受けたというのではないのでありますから、千億円のうちの半分は、五百億円はそういつた重要産業の保護育成、そういつたことに投じられた、こう見てよいのじやないか。この点はさきには中野局長はそう考えない、マル公で買うてマル公で売つた、こういうふうにおつしやる。しかしマル公というのは、それは偶然でありまして、マル公を立てて、そうして利潤を確保してやり、また再生産の資本の蓄積もしてやり、設備の改良もしてやり、かくしてまたたとえば肥料で申しますならば、今日の硫安のごとき、肥料協会のごとき十一社のそれの企業というものは、この時代におきまして、国家の五百億円の金をもつてどれだけ根本の育成をされたかわからぬのであります。あるいは十大紡績にしてもそうであります。紡績にいたしましても、八十円で買入れまして、そうして二百円ないし三百五十円というレートで輸出をいたしておるのであります。だからマル公で買うて、マル公で売つたんだからというだけでは、私は政府の政治的説明にはならぬと思います。やはりそれは実質的にこの半分の五百億円は、こういう基幹産業の資本の蓄積のために与えてやつた、こういうような結果を来しておると見るのが妥当な見解でないかと思うのであります。こういう点については、いかがお考えになりますか。
#55
○中野政府委員 御質問の御趣旨につきましては、私どもも多分にごもつともな点があると存ずるのでありまするが、私自身通産省の役人といたしまして、当時の状況を振り返つてみますると、戦争直後におきましては、国民全体に共通の衣食住の問題について、ほとんどあの敗戦の打撃によりまして、われわれの記憶になまなましいような状態でございました。それで衣の問題につきましても――ただいま食糧について、私どもの申し上げましたことがわかるような気がするという御理解のある御質問でございましたが、食の問題のみならず、衣の問題あるいは住宅の問題、あるいはさらに日本の産業がああいう壊滅的な破壊に陥つたのでございます。当時とすれば引揚者もおり、帰還軍人もあり、あるいは戦争中の軍需工業の壊滅によつて失業者も多い、この失業人口を吸收しなければならぬ、産業も興さなければならぬ、こういうようなことからいたしまして、当時の物価体系が、今日から見ますると、昭和二十二年ごろ、一年、二年、三年、非常なインフレ時代で、日本経済が非常に因つたわけでございまして、二十四年以降、このインフレをとめるために、強いドツジ・ラインがしかれて今日に至つておるのでございまするが、当時といたしましては、そういうようなインフレのもとにおいて、今申し上げましたような衣食住あるいは輸出の根幹になる基礎産業を育成しなければならぬということで、ああいう物価政策、物価体系と申しますか、産業政策が当時の政府によつてとられたわけでございまして、その点はおそらくよく御了解が願えると思うのでございます。それで見方によりますれば、今吉田委員の仰せになりましたような見方も、当時の経済情勢と申しますか、それの分析の一つの見方としては、私りつぱな見方として成り立つと存ずるのでございます。ただ私どもといたしましては、理論の形というものを、骨だけを申し上げますると、当時の輸入品の販売価格と輸出品の買上げ値段につきましては、事務的な点を申し上げますれば、先般御答弁いたしたようなことに相なると思います。
#56
○吉田(賢)委員 これもあなたは事務的なお立場からの御説明だから、あなたと問答してもしようがないのですが、やはり事務は事務といたしまして、今だんだんあなたの御説明になりましたその資料によりましても、国民はただもらつたのじやないのです。たとえば食糧の五割にいたしましても、輸入物資の中の五割、五百億円と仮定いたしましても、ただもらつておらすに、当時の実情から見まして精一ぱいの金を払つておる。それから一方半分の五百億円は基幹産業の維持育成のために費やしておる。それはどんどん大きくなつて行くのです。それを今日ガリオア勘定の全体が債務かいなやというような問題を国民に投げ与えようとするのです。国民としましては、ただもらつたのならそれはともかく、金を払つておるのです。払つておるのにさらに基幹産業が五百億円をもつて大いに起死回生の薬をもらつたごとき、そういう潤いを受けたのと同列において、国民全体が負担するかいなやという問題を投げられて行くのでありまするから、この観点からいたしまして、もつと良心的にこの問題は政府として取上げなければいかぬのじやないかと思うのです。思うのですけれども、これは大臣にお聞きせぬと、あなたにこのことを伺うことは無理でありますか、数字はただいまの御説明によりまして大体の見当はつきましたので、数子の行方、あるいは物資の行方、価格補給の行つた先、経路、そういうものは大体これで判明いたしましたので、私どもはやはり今申しましたような観点から問題の観察をして行かぬと、いたずらに国民に負担をかけるかのような考えをもつて扱うことは、こういう数字の経緯から考えますと非常に不当なことだと考えております。これはたつて御答弁を求めなくてもいいと思いますけれども、一応申し上げておいて質問を打切りたいと思います。
#57
○中野政府委員 一言だけ答弁させていただきます。通産省といたしましては、この援助物資が当時のマル公にせよ代価をとつて国民に売つたのでございますさような観点からいたしまして、前回申し上げましたように、一千六十九億の輸入補給金で国民全体に安く売つた、かように考えておりますことをもう一度お答え申し上げておきます。
#58
○柴田委員長代理 お諮りいたします。委員長ももう間もなく見えると思いますし、このままで休憩をいたしたいと思います。
 暫時休憩いたします。
    午後三時十四分休憩
     ――――◇―――――
    〔休憩後は開会に至らなかつた〕
ソース: 国立国会図書館
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