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1947/09/30 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第38号
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1947/09/30 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第38号

#1
第001回国会 本会議 第38号
昭和二十二年九月三十日(火曜日)
    午後一時五十八分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第三十七号
  昭和二十二年九月三十日(火曜日)
    午後一時開議
 第一 鉄道営業法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 自由討議
    ―――――――――――――
 一、自由討議の問題
 臨時石炭鉱業管理法案(内閣提出)について
 二、討議者の数及び討議時間
 1、各党派の割当時間
 社会党、民主党、自由党各五十分、國民協同党二十五分、第一議員倶樂部、農民党、共産党各十分。
 2、各党派は、右割当時間の範囲内において、討議者の数を決定すること。
    ―――――――――――――
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 第一 鉄道営業法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#3
○議長(松岡駒吉君) 日程第一、鉄道営業法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸及び交通委員長正木清君。
    〔正木清君登壇〕
#4
○正木清君 ただいま議題となりました鉄道営業法の一部を改正する法律案について、運輸及び交通委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、八月十一日本委員会に付託され、八月二十八日提案理由の説明を聽取し、以來四回にわたり審議をいたしたのであります。
 本案の趣旨を簡單に説明申し上げますと、鉄道営業法第三条には、鉄道運賃その他の運送条件を加重する場合には、その実施前一箇月以上公告をしなければならないことになつております。ところが、去る七月新物價体系の一環として鉄道運賃を改正したときは、一箇月間の公告をするいとまがなかつたので、昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く政令を制定して、その規定の適用を排除する措置をとつたのでありますが、この点について、経済情勢の変轉極まりないわが國の現状に鑑み、法律を改正し、緊急やむを得ないときは、公告期間を、そのときの実情に應じて、最短七日まで短縮することのできる途を開いておこうとするものであります。
 次に、委員会における質疑の概略を申し上げますと、まず財政法と今後における國有鉄道運賃の改正との関係について質疑がありました。これに対しまして、財政法第三条は早急に実施せられねばならぬものであり、その実施をみた上は、國有鉄道運賃の改正については國会の議決を経ることとなるから、運賃改正の実施時期についても國会で審議せらるべきものである旨の政府の答弁がありました。
 次に、國有鉄道の運賃改正については、今後は國会の議決を要することとなり、その実施時期についても國会で審議せられるものとすれば、公告期間を政令を持つて定める必要はない。「政令ヲ以テ」の字句は削除すべきではないかとの質疑に対しまして、私鉄の運賃改正については、公告期間を定めるのに政令をもつてすることが最も適当の方法であり、國有鉄道の運賃改正の場合には、実施期間についても國会の審議を受けるのであるから、政令で定めるとしても、決して國会を拘束することにはならない旨の答弁がありました。
 そのほか、本改正法案の提案されたのは、近くまた國有鉄道運賃引上げの意向があるからではないか、との質疑に対しましては、新物價体系を堅持する現状においては、最近の機会に鉄道運賃を引上げる意思はないとの答弁がありました。その他種々なる質疑が展開されたのでありますが、詳細については会議録に讓りたいと存じます。
 かくて討論に入りましたが、社会党井谷正吉君、民主党原彪君、自由党前田郁君、國民協同党木下榮君が、それぞれ原案に賛成する旨を述べられ、ただちに採決に入り、全会一致をもつて原案の通り可決した次第であります。
 なお、この機会に一言御報告申し上げておきたいと存じます。すなわち、九月二十七日本委員会において、運輸大臣より特に発言を求められ、船舶運営会の存続に関し、これを政令により処理しなければならなくなつたいきさつについて詳細報告がありました。すなわち船舶運営会は、総動員法に基く海運管理令によつて設立せられておるのでありますが、総動員法は、昨年九月、運営会関係を除いておおむね失効したのでありますが、船舶運営会は、諸般の関係上どうしても存続の必要があり、その後二回にわたつて、ポツダム宣言受諾に基く勅令によつて六ヶ月ずつその効力を延長し、今九月末日をもつてその存続期間が終了することになつておるのであります。
 運輸大臣におきましては、船舶運営会が戰時組織でもあり、またその基礎法規の関係におきましても、右に申し述べましたような関係にありますので、これが改組について確たる方針を立てるべく考究中でありましたが、まことに遺憾ながら、期日の切迫と、やむを得ない諸般の情勢より、今回再び政令をもつて海運管理令の効力を延長しなければならなくなつたのであります。
 本委員会といたしましては、法律と政令との関係等より見て、きわめて愼重にこれについて檢討を加えたのでありますが、今般の措置については、わが國現下の各般の諸情勢に鑑み、事情やむを得ないものとの結論に達して、一應これを了解することにいたしたのであります。この点一言附加して、御報告いたしました次第であります。(拍手)
#5
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
 第二 自由討議
#7
○議長(松岡駒吉君) これより臨時石炭鉱業管理法案について自由討議の会議を開きます。
    ―――――――――――――
#8
○叶凸君 ただいま自由討議の問題となつております臨時石炭鉱業管理法案について、商工大臣の提案理由の説明を求むるの動議を提出いたします。
#9
○議長(松岡駒吉君) 叶君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 この際商工大臣より、臨時石炭鉱業管理法案について提案理由の説明を求めます。商工大臣水谷長三郎君。
    〔國務大臣水谷長三郎君登壇〕
#11
○國務大臣(水谷長三郎君) 衆議院の求めにより、臨時石炭鉱業管理法案提案の理由を申し上げます。
 政府は、先般來炭鉱國家管理について鋭意愼重なる檢討を進めてきたのでございますが、ただいま、ようやくその成案を得ましたので、ここに臨時石炭鉱業管理法案を國会に提出して、御審議を仰ぐ次第でございます。
 申すまでもないことでございまするが、石炭は産業にとつての食糧にも比すべきものでございまして、その増産は、産業の復興及び民生安定のかぎであると申しても、断じて言い過ぎではないと思う次第でございます。從いまして政府におきましては、從來から乏しい國力を割いて最も優先的に炭鉱の必要といたしまする資材、資金及び労務者用品等を供給してきたのでございまするが、既往の実情と近き將來の見透しとに鑑みるときは、遺憾ながら、その効果は必ずしも十分なものと申すことができないのであります。一方、インフレの前途は容易ならぬものがありまして、このまま放置するならば、わが國経済の前途は重大なる事態に立至るおそれがあるのでございます。しかして経済安定の手がかりといたしまして、石炭の増産をおいて他なしと信ずるものであります。このゆえに、石炭増産のために格段の措置を講ずることが必要となつたのであります。すなわち、現状におきましては十分でない政府の現場把握を強化いたしまして、増産第一主義の障碍となる事情を除き、増産の推進力でありますところの経営者及び從業者の生産意欲を増大するということが、絶対に必要であると考えておる次第であります。炭鉱の國家管理は、このような実際の必要を滿足させるために、緊急の措置として考えられたものでありまして、世上往々にしてとりざたされまするように、何らか特定のイデオロギーを押し付けようとするものでは断じてないのでありまして、このことを、初めにはつきりと申し上げておきたいと存ずる次第でございます。(拍手)
 從いまして、今般提案いたしました臨時石炭鉱業管理法案の目的といたしまするところは、第一は、石炭の増産に対する各般の施策を、石炭の生産に関與する者に十分に浸透徹底せしめることでございます。すなわち、政府はみずから生産現場の実情を迅速的確に把握いたしまして、國の責任におきまして事業運営に関する計画及び実施を十分に指導援助いたし、かつ増産を制約してまいりました諸条件の拘束を取除いて、増産体制を確立いたしまするとともに、國家の要請を現場の末端にまで浸透せしめ得ることといたした次第でございます。
 第二は、行政と経営と労働の三社が渾然一体となつて、増産第一主義を実行し得る民主的体制を整備することであります。すなわち、事業運営に関する重要事項に關しましては、すべて経営者の発案権を十分尊重いたしますとともに、政府意思の決定にあたりましては、当事者並びに各方面の経驗者が直接間接にこれに参画することといたしまして、さらに現場の労働者も、また事案の決定実施につきまして、みずから関與することといたしまして、かくして決定された計画は、現場の責任者を中心として、経営者も労務者も相率いて一体となつて、これが完遂に邁進するようにいたしたいのであります。
 第三に、資材・資金等の生産諸要素の最も効率的な活用をはかることであります。政府は、從來より石炭超重点主義を採用いたしまして、乏しい國力の中から、他産業及び一般國民生活に相当の犠牲を強いつつ、最大限度の生産諸要素を投入してまいつたのであります。從つて、政府及び石炭生産の関係者は、一般國民に対しましては、これらが石炭の緊急増産に対し最大の効果をあぐるように十分な措置を講ずる責務を負うておるのであります。もちろん、今後もまた窮迫した國力の中から、この上なお多大の資材、資金等を必要とするものでありまして、この見地よりいたしましても、これらの有効なる活用をはかることは絶対的な要請であるのでございます。
 以下、法案の概要を申し上げます。炭鉱の管理の内容は、低度の管理と高度の管理の二種にわかれております。まず一般の炭鉱に対しましては、低度の管理でありまして、主としていわゆる監査というべきものであります。この場合事業主は、その事業計画を政府に提出いたしまして、その監督のもとに生産の遂行に当り、政府はその状況を監査いたしまして、増産上必要な指導を行うのであります。
 この程度の監査を超えまして、一層綿密なる管理を行う必要のある炭鉱につきましては、政府はその都度全國炭鉱管理委員に諮りまして、これを指定いたします。指定炭鉱の範囲は、増産の見地からこれを決定することといたしまして、これに管理機構の整備の状況をも勘案して、具体的に炭鉱を指定してまいりたいと考えております。すなわち、現在石炭生産の大半を占める大炭鉱より逐次管理の範囲を拡充してまいりたいと考えておりますが、この法律施行にあたりましては、全國炭鉱管理委員会に、指定の方針及び具体的の指定につきまして十分審議を願つた上で、最後的に決定いたしたいと存じます。この指定炭鉱の管理は、法案の中核をなすものでありまして、事業の運営に関する計画の作成及び実施、計画の実施を担当する責任者の選任及び権限、從業者の協力を確保する現場組織の構成及び運用等につきまして、詳細な規定が設けられております。
 第一に、計画の問題でございまするが、この場合におきましては、指定炭鉱の事業主は、政府の全般的な方針に基きまして、炭鉱業務の諸計画案を作成して政府に提出し、政府はその責任において、その業務計画を決定指示するほか、その実施上必要と認める場合には、適切な指導をなしうることとなつております。この場合、諸計画の策定にあたつては、一々炭鉱の生産協議会の議を経るのでありまして、これによつて計画の作成についての現場も意見が十分織りこまれ、いわゆる全山一致の体制が確保されると思うのであります。また政府の指導は、地方炭鉱管理委員会に諮つて行われるのでありまして、これによりまして、いわゆる官僚独善の弊を防止し得ると考えるのであります。
 第二に、実施責任者の問題であります。炭鉱の日常業務の運営は、前に申した業務計画によつて行われるのでありますが、この実施を担当するものとして、炭鉱管理者が選任せられます。事業主が企業全体の責任者であることは、この場合におきましても、何ら変更されるものではないのでありますが、生産現場に一切の努力を集中して、彈力性のある運用を行いますために、特別の責任者が必要となるのであります。しかして、この炭鉱管理者は從業員の支持を受け得るものを持つて充てるごとくいたしております。
 第三に、現場組織の問題であります。指定炭鉱につきましては、労資同数の委員によりなる生産協議会が設けられ、業務計画実施上の必要事項について議することになつております。この協議会は、実質上從來の経営協議会の機能を継承するものでありまするが、從來のものと違いまして、主として生産面から各般の問題を取上げ、経営者及び從業者のおのおのの立場を十分に活かしながら、増産に寄與しようとするものであります。労働者の経営参画は、これによつて法的に確認されるのでありまして、石炭生産の最も大きな要素である勤労意欲の格段の増大と、その責任の明確化とが期待され得ると考えておる次第であります。(拍手)
 次に、法案におきましては、協力命令の章が設けられております。石炭の増産のためには、炭鉱の設備の補修が急速に行われ、所要資材の供給が適切になされ、所要物資の輸送等が円滑に営まれることは、不可欠の条件でありまして、このため、石炭の生産に密接なる関連ある事業に対して必要なる命令を発動し得ることといたしまして、炭鉱國家管理の効果を確保する上に万全の体制を整えたわけであります。
 炭鉱國家管理の政府機構は石炭局でありまして、國家管理の運営を民主的にする機関は炭鉱管理委員会であります。石炭局は主要な石炭生産地帯に設けられる商工省の地方機構でございまして、炭鉱に密着して、その実態の把握と適切なる指導とを任務とするものでありまして、委員会は全國及び地方委員会にわかれ、國家管理に関する重要事項を調査審議するものでございまして、行政官廳と二位一体の形で運用さるべきものと考えております。管理が成るか成らないかは、これらの機構にまつところがきわめて大でありますので、その人的構成につきましては、民間各方面にわたるエキスパートの動員と、労資双方の公平なる代表を確保するために、特に必要な規定が設けられておる次第であります。これにより、官廳組織及び運営の民主化と、行政面と経営面との合理的な調整一元化がなされ得ると期待いたしております。
 以上、法案の大まかなる骨組を申し述べたのでありまするが、法案は本來増産のための組織法とも言うべきものでありまして、その実施は具体的な増産手段によつて肉づけをされなければなりません。すなわち、石炭の生産を画期的に増大せしめますためには、政府の責任と支援のもとに、從來の企業によつて経営の困難なる事業、たとえて申しまするならば新坑の開発であるとか、坑道の掘進であるとか、設備の整備拡張というような事業を行い、あるいは労務者の福利施設の充実をはかるため病院・託兒所等の建設を行い、さらに炭鉱所要資材の委託による調達及び供給を行うことが必要となるのでございまして、政府は從來、このような事業を営む政府機関といたしまして、炭業公團というものを考えていたのでありまするが、諸般の事情よりその実現が困難となりましたので、新鉱調査の事務は政府みずからこれを行い、新鉱の建設の関係につきましては、産業復興公團の機能を活用いたし、資材の関係につきましては、政府みずからこれが斡旋を行うという方向において、代案を準備しておる次第でございます。この点、あらかじめお含みおきを願いたいと存ずる次第であります。
 以上申し述べました通り、法案は、これに関連する措置とともに、石炭増産の緊急なる要請にこたえるものでありまして、國家の経済危機を打開するための政府施策の重要なる一環をなすものにほかなりません。なおこの法案自体は、作案の経過におきまして、各方面から受けました御意見と御批評とを廣く吸收包攝したものでございまして、この法案の一日でも早い実施によりまして、相應の効果あるべきことを確信するものでございます。なにとぞ政府の意の存するところを諒とせられ、大局的見地より御審議、御協賛あらんことを切望する次第でございます。(拍手)
#12
○議長(松岡駒吉君) 安平鹿一君、発言者を指名願います。
#13
○安平鹿一君 日本社会党におきましては、菊川忠雄君を指名いたします。
#14
○議長(松岡駒吉君) 菊川忠雄君、発言を許します。
    〔菊川忠雄君登壇〕
#15
○菊川忠雄君 私は、ただいま説明のありました法案に対して、石炭國家管理が今日の日本産業再建のためには必要なる手段であるという立場からいたしまして、その法案の若干修正をする必要のあることは認めまするが、大体において、これに賛成をいたすものであります。(拍手)
 今日、敗戰後の日本において、戰時五千万トン以上の出炭記録をもつておりますところの日本の炭鉱、しかも、さいわいにして戰災の被害を免れ、これをもつて日本産業再建の基礎といたしますためには、もとより資金、資材その他多くの解決すべき難問題をもつておることを認めるのであります。しかしながら、資金といい、資材といい、おのずから今日の現状においては限度の存することを認めなければならないのである。かかる状態において、当面急速に石炭増産を確保するためには、炭鉱に働くすべての勤労階級の労働能率に訴え、今日一人當り三トン、五トン半前後を往復いたしておりますところの出炭量を、いかにして六トン以上に高めるかという点に、問題の中心があると私は考えるのであります。
 しかるに、今日炭鉱の現状を見ます場合において、口にはいかに國家再建のための救國増産が叫ばれましようとも、その現場の生産態勢が、はたして救國増産の態勢をとつておるかどうかという点については、大なる疑問をもたざるを得ないのであります。今日の炭鉱労働者は、戰前、さらにその以前における日本の炭鉱労務管理に特有なる制度としてありましたところの飯場制度その他の封建的な制度のもとに使役されたところの労働者とは、本質を異にしてまいつております。今日の炭鉱労働者は、一般産業における労働階級と同じく、さらにその中における多くの青年労務者の諸君は、戰争においては、國家のためにという一念をもつて命をささげて戰い、復員の後には、新しき平和國家再建のためならば炭鉱において命を投げ出すというつもりで働いておるところの青年労働者がきわめて多いのであります。(拍手)從つて、今日の炭鉱において眞に労働階級の勤労意欲を増進いたそうといたしますならば、その態勢たるや、從來のごとき、ただ炭鉱が一資本家の、一営利会社の営利の対象として生産を行われるがごとき態勢でありますならば、いかに救國増産を叫びましようとも、断じて勤労階級の愛國の熱意は起らないということを言わなければならないのであります。(拍手)
 われわれが、かかることを考えながら今日の炭鉱を見ます場合において、昭和二十一年度の上半期、下半期、さらに二十二年度の上半期を通じて、今日日本の炭鉱が受けておるところの赤字融資は、設備資金、運轉資金、赤字金融、すべて百十一億余の中において、その六割に近い六十二億円を赤字融資として受けておるのであります。おそらく、三千万トン達成のためには、勧銀の調査について見ましても、七十二億円の融資を必要とするといわれております。いわんや資材においては、鉄鋼だけにおいても八万トン以上が必要であるといつておる。いわゆる傾斜生産のもとにおいて、他の産業はしばらくおき、超重点的に資金と資材を注ぎこみ、さらにその資金たるや國家國民の負担において注ぎこまれ、賄われておる炭鉱において、はたして、それらの資金が本社を通じて現場に流される場合において、眞に有効適切にその効率をあげておるや否やは、大なる疑問をもたざるを得ないのであります。(拍手)私は、現にわれわれの関係のあるところの労働組合を通じての調査の事実をもつております。炭鉱それぞれに対して融資をされる資金が、途中において、しばしば本社を通じて横流れをして、國民の負担による資金が断じて炭鉱に直結して使われないという事実は、枚挙にいとまがないということを断言して差支えないのであります。(拍手)
 かかる事実を前にして、どうして今日の目覚めたる炭鉱労働者が――過去の封建的、專制的な企業経営というものに対して批判的の目をもつところの労働階級が、眞にあの地下において犠牲を拂つて、國家産業のために働くところの熱意がわくでありませうか。われわれが、かかることを見ます場合に、今日の炭鉱において、一人当り六トン以上の能率を上げる、しかも今日の日本の炭鉱のごとく、設備に乏しく、今なお大部分が勤労階級の技術とくふうと勤労によらなければならないところのこの炭鉱におきまして、眞に勤労階級に協力を求める態勢をとることが、今日三千万トン達成の基本的な条件でなければならないと私は考えるのであります。(「それならばなぜ社会主義を捨てた」と呼ぶ者あり)
 われわれが、かかることを見まする場合において、今回の法案――もちろんいろいろの情勢からいたしましてわれわれの考えるところの本来の國家管理とは相当に遠いものであるということを、われわれは遺憾といたします。しかしながら、今日國家管理は、諸外國の例において見ましても、決してこれを一日に完成することは不可能であります。英國の炭鉱業におけるがごとく、十年以上の調査期間をもつて実現しておるところの例もあります。ただ日本の現状は、今日この際急速にかかる施策を断行いたさなければならないということを考えます場合においては、われわれは、これを國家管理断行の当面第一歩の方針として承認することにやぶさかではないのであります。
 世間ややもすれば、この法案について社会主義あるいは資本主義の議論をしておる諸君がある。私は、資本主義の立場からこの法案に対して反対をする諸君に借間したい。今日日本の炭鉱が、はたして炭鉱業者の資金によつて運轉をされておるかどうか。今日の炭鉱がみずから出炭をする石炭が、そのカロリーにおいて同じカロリーであろうとも、あるカロリーの炭鉱においては千二百円の生産費をもち、他の炭鉱においては八百円である。もしも眞に自由主義のもとに、資本主義のもとに経営をされておる炭鉱であるとすれば、どうして常磐炭田における石炭と北海道の高カロリーの石炭と値段が同じであるかということを、われわれは借間しなければならないのであります。これはとりもなおさず、今日の國家産業再建のためには、資本主義的な採算を一應たな上げにして、ここに國家國民の負担において産業が経営されていくことを物語るのであります。
 われわれが、かかることを見る場合において、今日の日本の問題は、現に炭鉱そのものが、もはや資本家諸君の資本によつて経営されていないという事実、國民の手によつて経営をされておる、運用されなければならぬところの事実、これは社会主義か、資本主義か、資本主義と言いたい人は資本主義でよろしい。これこそ社会主義への第一歩の傾向であると、われわれは思うのであります。
    〔発言する者多し〕
#16
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に。
#17
○菊川忠雄君(続) われわれは、今日かかる見地におきまして、この案は、わが党本来の立場から考えますならば、幾多の不備なるものがあります。しかしながら、將来眞に石炭増産の態勢を完備するその第一歩として、本案を今日急速に実現することは必要なことであると、われわれは認める次第であります。
 これを要するに、われわれの本案に対するところの基本的な点といたしましては今回の案に対しては、ただいま申しましたような趣旨からいたしまして、まず第一に、全炭鉱を管理の範囲といたすことを、どこまでもわれわれは主張をするのであります。第二には、本社と現場、これを切り離して、直接に現場を管理の対象としなければならないと考えるのであります。(拍手)第三には、生産協議会は決議機関とすることをわれわれは必要と認めることはもちろんでありまするが、さらに地方並びに中央における管理委員会も、同時にこれを決議機関としなければならないと考えるのであります。かくすることによつて、初めて從來の官営あるいは官僚統制を絶対に排撃することができると考えるのであります。第四に、現場においては、先ほど申しましたるところの特別なる理由をもつて、労働組合の意見を確保し、生産協議会をもつて経営の主体とすることが必要であると私は考えるのであります。
 われわれは、以上の基本の点をもちまして、この法案に対しては賛成をいたすものでありますが、個々の修正点といたしましては、たとえば業務計画を変更する発言権においては、これを現場にも認めなければならぬ、あるいはまた炭鉱管理者の代理人はあらかじめ定めるのでありますけれども、これまた生産協議会または從業者の議を経なければならない。さらに第三といたしましては、事業主が炭鉱管理者の代理権を制限をするときには、生産協議会の議を経なければならない。第四には、生産協議会の権限についてでありまするが、この中に、資金、資材、設備に関するところの事項を加える必要があると考えるのであります。その他管理委員会につきましては、あるいは関連産業の代表を加え、あるいはまた労働保障関連産業委員の專門部会を設ける。その他二、三の問題があるわけでありますが、これらの点につきましては、われわれは十分に常任委員会において討議をいたしたいと思うのであります。
 私は最後に、炭鉱労働者から來ているところの一つの手紙を皆樣に公表したい。それは長崎の港外における伊王島の青年労働者の手紙であります。別に本案をどうこうということがないのでありますから、どうか安心してお聽取りを願いたいのであります。この伊王島の炭鉱労働者の青年は、戰爭から帰りまして……
    〔発言する者多し〕
#18
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#19
○菊川忠雄君(続) 復員の身をもつて、いかにして……
    〔発言する者多し〕
#20
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に。
#21
○菊川忠雄君(続) 今日の國家に御奉公すべきであるかを考えて、炭鉱に身を投じたのであります。しかるに、炭鉱にはいつてみたが、その炭鉱においては、旧態依然たるところの生産が行われておる。労働者に対しては、大いに國家のために増産をせよというのであるけれども、炭鉱の労働者の諸君は、なに、だまされてはならないという言葉を発しておるのであります。今日まで、しばしば資本主義体制をそのままにしたために、いかに炭鉱において労働者が欺瞞されておるか。われわれは、今日かかることを考える場合において、この労働者に対しても、われわれが今ここで炭鉱國家管理を鬪つておるのである、これを申すことは、青年労働者に対しても眞の熱意を與えるゆえんであると私は考えるのであります。私は、どうか皆さんが、かかる労働階級の熱情をいかに振起するかという建前から、本案に対して愼重なるところの審議を與えられんことをお願いしてやまない次第であります。これをもつて私の賛成の演説を終ります。(拍手)
#22
○議長(松岡駒吉君) 坪川信三君、発言者を指名願います。
#23
○坪川信三君 民主党といたしましては、根本龍太郎君を指名いたします。
#24
○議長(松岡駒吉君) 根本龍太郎君、発言を許します。
    〔根本龍太郎君登壇〕
#25
○根本龍太郎君 わが國は、敗戰以來経済的な破局に面しまして、刻々とわが國の運命を危うくしておるのであります。しかして、ごく最近まで、あるいは三月危機、五月危機といわれておつたのでありまするが、その危機は、ますますその深刻の度を加えつつあるのであります。恐るべきインフレ、しかもこのインフレは、ただ單に財政異常に基くところのインフレではなくして、まさしく生産縮小に基くところの生産減形態のインフレなのであります。(拍手)しかも、このインフレの防止は、單なる財政措置をもつてしては止まることなく、生産の増強を期することなくしては、絶対にこれが防止は不可能なのであります。
 この意味におきまして、わが國の産業の根幹をなす、あらゆる産業の動力をなすところの石炭が、わが國産業建設の基本であるのみならず、わが民族興亡の岐路を決定するところの重大な問題といわざるを得ないのであります。(拍手)かかる見地に立ちまして、この石炭の緊急増産こそは、わが國にとつて最も重大なる問題でありまして、本日臨時石炭鉱業管理法案に関するところの政府の説明も、その線に沿うて立法されたことをるる述べておるのであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 しかるに、この政府案が作成並びに上程せらるるまでの過程を考えてみまするに、社会党をその中心勢力として成立した片山内閣は、この案の作成の過程において、社会党が総選挙において公約したるところの社会主義政策を実現すべく、政治道義を実現すべく、極力これが社会主義政策の色彩をカムフラージュしつつ、これが実現に当つたことは、おおうべくもなき事実なのであります。(拍手)
 これに対しまして、わが民主党は、根本的な態度といたしまして、石炭の増産こそは、わが國再建の基本条件でありまするがゆえに、戰時中におけるがごとき、官憲的軍閥政権によつて一時的に強権的な掠略奪増産をしたこととはまつたくその意味を異にして、恒久的増産の基礎を確保するために、その条件のもとにおいて、もし必要があるならば國家管理また辞せざるという態度をとつてきたのであります。しかもこの態度たるや、今もつて変らず、この案の作成の過程において、わが党は、さきに安本案あるいは商工省案、社会党案に対して嚴密なる批判檢討を加え、その努力の結果、本日提案されたる政府案は著しくその社会主義政策が是正されてきたことは事実であります。(拍手)
 皆樣も御承知のごとく、わが國の産業開発の基本条件がこの石炭にあるという見地に立ちましたと考えられるのでありまするが、新聞に発表されましたごとくに、二十五日、マッカーサー元帥が片山首相に與えられたところの書翰が発表されております。これはまことに重大なる意思表示であると、われわれは解釈するものであります。すなわち、その中において、從來私企業に属していた責任を政府が暫定的に負わんとするこの緊急措置を國会が採択したならば、政府は、さきに決定した生産目標を改訂して、この法律によつて新たに附加せられたる能力に相應する水準にまでこれを引上げねばならぬ、けだし、かかる能力の造成のみが責任の所在の変更を肯定するものであると言つておるのであります。政府がこの案によつてこれを貫かんとするならば、從來政府が公表しておるところの三千万トンの生産目標をはるかに超えて、しかもそれが論理的にも、また現実的にも実行可能であり、確実にこの目的を達成するものであるとの具体的証拠を持つて提案に臨まなかつたならば、その態度は愼重を欠くといわざるを得ないのであります。(拍手)ただ單に提案理由のみをもつて、かくのごとき重大なる法案を提出するというのは、いま少しく良心的に考えていただかねばならぬことと思うのであります。(拍手)
 しかも、この書翰におきまして、さらに重大なることが言はれております。戰前及び戰時中の石炭生産は五千万トンを超えていたが、從來の石炭業の基本的条件は、何ら実質的に変化はない、これに要するすべての資材は日本國内において入手し得るものであり、また労働力も十分である、從つて、現在より大なる生産が達成できないということは、全く事実に即しないものと思われる、こう指摘しております。しからば、これを率直に公明な態度をもつて解釈するならば、もし政府は私企業の企業権を國家の責任においてなすという、かくのごとき重大なる措置を講ずる場合においては、少くとも五千万トンに近いところの増産を確保し得るとの確信とその証拠を示さなければいけないということを指摘されたと解釈するものであります。(拍手)
 しかして、この書翰によりますれば、その責任は、ただ単に政府にあるのでなく、これを採択することの自由な國会にあるのであります。從つて國会は、われわれがこの問題をただ単に政党の面子とか、あるいは政権の爭奪のための具にするような輕卒なことは、断じて許されないのであります。(拍手)ここにわれわれは、日本の運命を託せられたるところのこの嚴粛なる議場において、眞剣に、冷靜に、あらゆる資材とあらゆる資料を檢討の上、この法案がはたして実現できるか否かについて、眞剣なる討議をするところの義務を負うものであるということを切言したいのであります。(拍手)この見地において、私は與えられた時間がはなはだ少いのでありますから、最も重要なる二、三の点について問題を指摘し、政府案に対して重大なる修正を加えるのでなければ、本法案提出の目的を達成し得ないということを強調したいものであります。
 まず第一に、該法案における管理権の所在の問題についてでございます。本來企業の管理権は、当然その企業の業主またはその代理人にあるのであります。しかるに、國家管理に移すというときは、すなわち憲法並びに民法において保障せられておるところの私企業権の一部または全部を、暫定的にその責務を國家が負うということなのであります。しからば、管理権の内容をなすものは何かというならば、それは事業主に対する計画権と、その計画に基くところの業務執行に対する指揮並びに指示権と、私は解釈するものであります。
 しかるに、この法案における第十八條を見まするに、指定炭鉱の炭鉱管理者は、業務計画の案の原案を作成し、指定炭鉱の事業主は、当該原案を基礎として業務計画を作成しなければならないということを規定しております。しかも、その次に、炭鉱管理者は、前項の原案を作成する場合には生産協議会の議を経なければならないと規定しております。さらにその次に、再びもどりまして、事業主は、炭鉱管理者が作成した原案を基礎として業務計画をつくらなければならない、さらにこれを提出する場合においては、再び生産協議会の議を経なければならないという規定があるのであります。しからば、この案の文面通りに読むならば、これは事業計画権の実質的なる権限は、生産協議会に委ねられておることになるのであります。しからば、本來私企業権において認められたものを、國家にその責を負わすということが、実質上は國家の名において生産協議会にその実権を委ねる結果になるといわざるを得ないのであります。
 しからば、生産協議会の内容はいかんと申しますると、生産協議会は、すなわち炭鉱管理者と委員によつてこれが組織されています。委員は、さらに業務委員と労務委員によつて、しかもほぼ同数によつてこれを構成することになつておるのであります。しかも、業務委員については管理者が指定するのであるが、それは事業主の利益を代表するものを含まないということが規定されております。労働委員については、これは労働組合の推薦を條件とし、また労働組合がないときには、從業者の過半数をもつて賛成を経なければいけないということが規定されております。
 してみますれば、この生産協議会の性格において、政府は極力否定しているのでありますけれども、労働支配的な観念が潜在していると言わざるを得ないのであります。かく観じきますれば、この生産協議会の性格について重大なる問題が含まれていると考えなければならないのであります。私は生産協議会の必要は大いに認めます。しかしながら、業務全体に対するところの発言権を許すということは、これは管理法案の目的から逸脱したものでないかということを考えるものであります。
 生産協議会は、法文の三十八条の規定にありまするがごとくに、その二号以下五号まで、すなわち労働能率の向上または作業条件の合理化、労働条件の適正化に関する事項、労働力の保全に関する事項、安全保持に関する事項については、十分にその権限の発揮すべきであると存じます。しかしながら、経営全体に対するかくのごとき発言権を許すということは重大なる問題を包藏しまするがゆえに、愼重なる態度をもつて臨まなければならぬということを主張するものであります。
 次に私は、ここに重大なる問題といたしまして、政府が協力命令として規定している事実について触れたいと思います。協力命令というものは、その方針が、結局するところ、石炭増産の隘路となつているものを打開するための協力命令なのであります。しからば、現在におけるところの石炭増産の隘路をなしているものは何かと申しますならば、すなわち、資金面・資材面におけるところの必要なる額が、適当なる時期に供給されていないということが、まず第一であります。その次には、労働生産性の向上、すなわち労働不安と労働生産の低下、これが一つの隘路をなしていることも事実であります。その次に問題は、統制規則その他これに類するところの官廳の規則が複雜多岐にわたり、しかもこれが運営の任に当るところの官僚の非能率的な措置に基くところの業務執行の妨害であります。この四点が排除されない場合においては、断じて増産の目的を達成するとは言えないのであります。
 しかるに、この協力命令の中には、わずかに関連業者の協力を規定したのみでありまして、金融に関するところの協力規定がありません。次には、労働者の生産の低下、労働者の協力に関する規定も欠いておるのであります。さらに官僚におけるところの協力態勢、さらに法規の統合に基いて、一括この法案に規定することによつて官僚の非能率化を防ぐ規定がないということであります。この規定が盛りこまれない限り、増産の目的を達成し得ないと思うのであります。
 第三番目に、政府が緊急増産のために、一時緊急措置として、私企業の経営権までその権限に拘束を與えるというところの重大なる措置を講じておるとき、現在石炭増産の最も大きな不安をなしておるのは労働不安であります。しからば、この企業家に対して制約を與えるならば、何ゆえに政府は、労働者の至上権力であるところのストライキ並びにサボタージュを禁止するところの法案を規定しないかということであります。(拍手)
 私は、現在の状況において、わが國再建のためには、あらゆる人々が階級を超え、ほんとうに一致團結して、その再建のために起ち上らなければならぬと思います。この法案の提出の理由も、そこにあると思います。しからばわれわれは、いかに國土が荒れ果てたりといえども、いかに人心荒廃せりといえども、限りなく祖國を愛し、限りなく同胞を愛するのであります。この見地において、私はこの壇上より全國の労働者の諸君に訴えたい。企業化がかくのごとき態度をもつて臨めば、労働者の諸君もこれに協力して、みずからストライキをやめ、サボタージュをやめて、この増産のために協力するという態度を要求するのであります。(拍手)
#26
○副議長(田中萬逸君) 山口喜久一郎君、発言者を指名願います。
#27
○山口喜久一郎君 日本自由党は、植原悦二郎君を指名いたします。
#28
○副議長(田中萬逸君) 植原悦二郎君、発言を許します。
    〔植原悦二郎君登壇〕
#29
○植原悦二郎君 本日ここに炭鉱問題がきびしく論議されるに至りましたことは、わが國の産業復興の現状に照らして、何といたしても少くとも三千万トンの石炭が必要であるということでございます。この石炭を、政府の提案しておるところの國家管理案によつて増産できるか、あるいは他にその方法ありやということが、國民が知らんとするものであると思います。私どもは議員として、最も愼重に、いかなる方法をもつて三千万トンの石炭が確保できるかということを論議して示すことが、議員そのものの任務なりと信ずるものであります。(拍手)
 申すまでもなく炭鉱事業は、わが國の最も重要な基礎的産業中その第一を占むるものである。わが國産業界の現段階において、年産三千万トンの石炭は、産業復興、経済安定のキーノートであつて、國家再建の必須条件である。このことについては、天下周知の事実で、何人といえども異議はなかろうと思われる。
 そこで、それだけ必要な三千万トンの石炭がなぜ確保できないか、なぜそれ以上の増産が望まれぬか。昭和十五年には五千七百万トンの出炭が示されておる。十六年、十七年、十八年には五千万トンが確保できた。十九年においては四千九百万トンが出炭された。しかるに終戰後、二十年、二十一年には二千二百万トンに激減した。何ゆえであるか。
 戰時中、いわゆる官僚統制によつて、あらゆる炭鉱は極度に濫掘された。彼ら軍閥・官僚は、
    〔副議長退席、議長着席〕
さらに炭鉱の將來を考慮することなく、もつぱら一時の出炭を目途として、極度に濫掘したのである。切羽の増強は企てられず、あえて新掘進も行われず、坑道の修理さえも、ほとんど顧みられるところがなかつた。かかる荒廃のもと、俄然終戰に逢着し、各炭鉱は一時混乱に陷つたのである。企業家は將來の帰趨に迷うた。中國、朝鮮等の労働者は、にわかに帰國した。國内労働力は、解放によつてその労働意欲を弛緩せしめた。
 しかるに、今やすでに一般國民は、みじめな敗戰事実を痛感し、國家再建に邁進せんと努めておる。炭鉱経営者もすでに起ち上つている。近ごろ労働組合も労働者も、徐々にではあるが、自己の権利と同時に義務をも自覚し、増産に協力するようになつたと傳えられている。そうして、すでに九州地方の諸炭鉱においては、七月、八月は、年産三千万トンの割当をやや上まわつている出炭量を示し得たとさえ言われている。
 それゆえに、われわれ自由党は、わが炭鉱事業の現状に徴して、年産三千万トンを確保し得る最も安全なる方途は、左に述ぶところの諸点以外に良策なしと信ずるものである。
 一、経営者、技術者、労働者の自由な創意と個人的責任感とを躍動せしめ、勤労意欲を増し、生産に精進せしむる方途を講ずること。
 二、三箇月に一回くらい適正な炭價を決定し、その前渡し制を設くること。
 三、労働者に対しては基本給のほかに能率給を定め、各採炭量について適正なる支拂いを行い、その精励に報ゆる方途を講ずること。
 四、食糧及び資材の配給の合理化及び適正化を期するとともに、これを遅滯なからしむること。
 五、労務者住宅の建設を助成し、速やかにその増設を実現すること。
 六、労働基準法によつて拘束八時間制をただちに改訂し能はずとすれば、すべての労働者をして、まともにこれを実行せしむること。
 七、実働時間を増すために、切羽に至る往復時間を短縮せしむる方途を立てしむること。
 八、現在の二交代制を三交代制に改むること。
 九、坑内夫の増強を画し、かつ先山を養成すべき方策を立つること。
 十、さらに、もしでき得るなれば基準法を改正し、拘束八時間制を実働八時間制に改むること。
 われわれは、現下の場合、以上延べたる諸点、諸政策を忠実に実行するよりほか、年産三千万トン出炭確保の途なしと確信するものである。この場合、イデオロギーにとらわれた機構いじりや、党略本位の國管案のごときは、必ずや増産を不可能ならしむるのみか、むしろ減産を招來するものなりと信ずるのである。偶然ではあるが、われわれの以上の主張は、去る十八日マッカーサー元帥の片山首相に宛てられたという書翰中において、石炭増産につき示唆された諸点と、まつたくその符節を一にするものであることは、われわれ自由党の喜びとするよりは、むしろ全國民の喜びとすべきであると思うのであります。
 私は、政府がこのたび議会に提案された臨時石炭鉱業管理法案なるものに対しては、幾多の疑義を抱くものである。ここにこれを指摘して、諸君の御考慮を煩わしたいのである。この法案は、炭鉱の國管による炭鉱業の民主化などと吹聽されておりますが、実質的には、何というても炭鉱の官僚管理であり、官僚統制であることについては、一点の疑問がありません。この法案が強行されれば、炭鉱の経営は事業主のところを離れて、主として官僚の手に帰します。この機構の変化により、たとい一時にせよ、動揺・混乱は免れません。事務もすこぶる繁雜化する。責任の所在も不明確になる。これが生産能率を低下せしめぬという理由があるならば、その理由を承りたいのであります。
 わが國の官僚機構中には、なお非現実性や、画一主義や、形式主義が残存していることは、爭うべからざる事実である。必ずこれが炭鉱管理に対しても芽を出すに違いない。元來、わが國の炭鉱の多くは、有機的な人的結合によつて、総合的能力の発揮を特徴として経営されていたのでありますが、これが官僚式画一的、一元的統制によつて、はたしてその生産能率を低下せしめぬと、だれが保障し得るのでありましようか。ここにも減産のおそれが多分に含まれておるのであります。
 私はこれまで、わが國の國家管理や官僚統制事業で、民間経営よりもその経営が強化され、経済化され、能率が向上せしめられた事例を見ることができません。発送電や配電会社の経営は、はたしていかようでありますか。鉄道や電信電話の経営の放漫、非能率は、ほとんど言語に絶するものがあると思われます。(拍手)炭鉱経営のみは、これらと異なり、その経営が國管案によつて強化せられ、能率化せられるという理由は、いずこから生ずるのでありましようか。事理を盡して説明を願いたいものであります。(拍手)
 國鉄志免炭鉱の低能率は、炭鉱界周知の事実であります。また日本製鉄直轄の炭鉱の成績も、その他の純民営炭鉱に比して決して良好なりとは言うことはできません。これでも政府は、この國管案によつて石炭増産確実なりと断言し得るのでありましようか。政府は、一部の労組幹部を生産協議会や炭鉱管理委員中に参加せしめ、これをもつて炭鉱業の民主化成れりと主張し、労働者側の意を迎え、これによつて、すべての労働者の生産意欲を技巧的に増強せしめ得るように臆断されておりますが、はたしてこれが可能なりや否や、すこぶる疑問であります。むしろ官僚統制下において、すべての労務者の能率は著しく低下するのが世の常識であります。
 元來、炭鉱の生産現場は、他のいかなる事業の生産現場よりも一層複雜多岐である。從つて、この管理法が実施されたとすれば、労務者の闘爭相手は経営者から政府に移ることになる。ゆえに、國管が実施されたからということで、労務者と経営者との闘爭が減じて、これが増産に資するという理由は成立ちません。わが鉄道経営についても、逓信事業に徹しても、この事実は明らかに表示されております。
 もし政府が、該法案によつて年産三千万トンの出炭が可能なりとの確信を有するのならば、なぜ、これを二年や三年の試みとする臨時法案といたしたのでありましようか。(拍手)この法案の規定に示す方策よりほかに石炭増産のよりよき途なしとの確信を政府が有するなれば、政府は断固として、これを恒久的施策となすべきでなかつたのでしようか。しかるに、これを臨時施策となせしは、政府が明らかにこれによつて増産の確信なきをみずから物語るもの、論より証拠、これはまさに、この法案のいかに杜撰なるかを表明するものであります。政府を御支持なさる社会党等の方からさえ、この法案は修正しなければならないと、ただいま発言されたことは、諸君御承知でありましよう。政府が提案したものを、その與党が劈頭において修正しなければならないという無定見は、何ゆえでありましようか。諸君のお答えを聽きたいものであります。(拍手)
 すでに述べられたるごとく、石炭鉱業はわが産業の最も重要なる基礎産業である。その経営を、ニ、三年間に根本的に、確信なく右にし、左にし、変革せんとするがごときは、無責任きわまるものと言われても、おそらく弁解の辞はないでありましよう。もし政府が、石炭増産につきはつきりとした見解、しかも誤りなき透徹せる計画を有するもとすれば、その施策は必ず一貫せるものであり、その計画は、ただ一途たるべきはずであるのであります。しかるに政府は過去二、三ヶ月間において、該法案編成につき幾度かこれを改訂し、変改し、しかも政府と民主党一部の者との間において苟合妥協、ようやくその成案を得しものであることは、世間周知の事実であります。これによつて見るも、政府の本案に対する無定見は明らかに表明されるのであります。
 もちろん私は、この苟合妥協を、あえて非難せんとするものではありません、元來、議会政治は妥協政治である。しかし、石炭三千万トン確保の対策については、断じて妥協は許されません。(拍手)年産三千万トン、否、それ以上の石炭は、わが産業復興、國家再建のため絶対必要なのであります。その増産確保の施策については、一あつて他あるべきはずはありません。われわれは、産業復興、経済安定、國家再建のために三千万トンの石炭を要するのであります。これは絶対的のことである。これに妥協苟合を許容すべき余裕はないのであります。これに対してイデオロギーや党利党略を加味せしむるがごときは、断じて許さるべきではありません。
 しかるに、過去二、三ヶ月間における、これに対する政府の態度、はたしていかがであります。私は政府に対して、イデオロギーや党利党略本位で成案された臨時石炭鉱業管理法案を撤回せよなどと、残酷なことを申すものではありません。
    〔発言する者多し〕
#30
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#31
○植原悦二郎君(続) 私は政府に対して、産業復興、國家再建のために、よろしく三顧反省すべきことも忠告いたしたいのであります。(拍手)
#32
○議長(松岡駒吉君) 安平鹿一君、発言者の指名を願います。
#33
○安平鹿一君 日本社会党といたしましては、岡田春夫君を指名いたします。
#34
○議長(松岡駒吉君) 岡田春夫君に発言を許します。
    〔岡田春夫君登壇〕
#35
○岡田春夫君 ただいま、議会の先輩であります植原さんから、きわめて傾聽すべき御意見がありました。私は、先ほど自由党の増産対策としていくつか述べられました主要な点は、増産のためにまことに必要な政策であると考えます。そこで私は、この政策を断行するためにも、どうしてもこの際炭鉱を國家管理をやらなければならないという事由にしなければならないと考えます。(拍手)
 まず私は、この炭鉱國管の、政府が提出されました法案につきまして、われわれ社会党の立場におきましては、若干の点において修正を要すべきものがあると考えておりますが、原則的に炭鉱を國家管理にすることについては、絶対に賛成いたしているものであります。そこで、われわれが國家管理をやらなければならないという事由について、私の考えていることを二、三申し上げてみたいと思います。
 まず、われわれが國管を必要とする第一の理由は、現在の段階において、これは言うまでもなく日本の経済の再建のために、石炭を中心とする傾斜生産が行われなければならないということであります。そこで、この傾斜生産を続行いたしてまいりまするためには、現在のごとくきわめて不足であります資金・資材を、石炭企業に重点的に配当いたすものでありますから、当然半面に、他産業あるいは他の國民生活に対して多大の犠牲を與えるわけであります。そこで、このように國民生活と他の産業に犠牲を與えながらも日本の経済の再建のために石炭に重点的に生産の諸要素を配当する限りにおいて、この貴重なる資金、資材を、石炭企業は最も高率に使つてもらわなければならない。
 そこで、これは國民や他の産業に犠牲を強要する限りにおいて、政府はこの石炭に重点配給する責任と義務とを國民に対して負わなければならないのであります。(拍手)今もし、國管案反対派の言われるがごとく、資金・資材を重点的に石炭企業に投下いたしまして、石炭の企業を今まで通りの私企業で存続させんとすることを要求されるといたしますならば、國民に対して多大の犠牲を強要して、石炭企業のみは甘い利潤追求の利益を貪らんとするものである。これであります。この点であります。この点が、まず何よりも私企業を國家管理に移さなければならない第一の理由であります。
 第二の点は、現在の生産の不振の根本の原因は、私の考えをもつてしますならば、戰爭中の盗賊的な濫掘の結果によりまして、坑内の機械設備というものが徹底的に荒廃をいたしているということが、第一の原因であろうと考えます。それで、この坑内の機械設備の荒廃、これは御承知の通り戰爭終了直前からすでに行われております。昭和十九年でありますか、当時の鈴木貞一――現在戰犯の鈴木貞一氏が國務大臣のときに、明日の十トンよりも今日の一トンを掘り出せと言つて、あらゆる生産諸要素を集中いたしまして、あらゆる重点政策を石炭に投下いたしまして、しかもなお昭和十九年度の生産の実績は、御承知の通り昭和十八年の五千五百万トンに比較して、四千九百万トンと、五千万トンを割つておるのであります。この戰爭中以降におきますところの坑内の機械設備の荒廃に対して、戰後においても、言葉を変えて申しますならば、資本の蓄積の度が漸次後退を続けておる、すでに限界に達しつつあるというこのことが、國管をやらなければならない第二の理由であります。
 もう少々具体的に申し上げますが、坑内の荒廃の結果によりまして、炭鉱の故障の発生は、昭和十五年を一〇〇といたしますと、昭和十九年は六〇五になつております。六倍になつておる。また災害の発生を見ましても、戰爭終了直前の昭和二十年度の上期において、百万トン当りの発生が六百五十八回でありましたが、これが戰爭終了の直後、下期においては九百四十二回になり、昭和二十一年の上期になりますと、三倍半の二千九百七十五回に達しております。これは一体何を意味するかというと、帝國主義的の戰爭によつて、極度の荒廃いたしました炭坑内において、裸の労働力の酷使によつて、血みどろの働く労働者の手によつて増産が行われておるという結果であります。(拍手)これに対して、今後の恒久的なる増産を行いまするためには、労働力の酷使によるところの増産の態勢を確立するのではなく、資本の蓄積によつて、機械化の促進をはかる以外には方法がないのであります。
 そこで、現在三千万トン達成に必要であります坑内の機械あるいは設備の補修費は、一体どれだけになるかというと、鉄鋼関係の修復に要する経費を中心にいたしまして、三千万トン達成に必要な経費は、興業銀行の調査によると、最小限度二十七億円であります。ところが、これに対しまして、それぞれの石炭企業において保有しております機械設備を更新するために、ぜひとも必要である自己資本は――この自己資本は、御承知のように減價償却に現わされるのでありますが、この減價償却は一体どれだけになるかというと、これまた興業銀行の調査でありますが、トン当りわずかに三円六十銭であります。三千万トンとしても、一億円しかないのであります。ここにすなわち、現実に機械の設備を改めて、増産の体制を改めるためには、少くとも現在の石炭企業の自己の資本をもつてしては、その機械設備を改め得ないという段階に到達しておる。(拍手)問題はここにあると思うのであります。いわゆる現在の資本の蓄積をもつてしては、今後の恒久的な増産というものは断じてはかり得ない。ここにおいてのみ、初めて國家管理をやらなければならないという第二の理由があるのであります。(拍手)
 もつと具体的な例をあげて申しましよう。現実に資本の蓄積を、現在の私企業をもつてしては行い得ないという、簡單な実例を二、三申し上げまするならば、本年の四月において、北海道の石炭鉱業会では、炭鉱の労働者にぜひ必要である地下たび十六万三千足が買えなかつた実例がある。あるいはまた今後の増産のために、坑木の必要性は言うまでもないのですが、北海道炭鉱汽船において、本年の六月、支拂い未済の代金が一億数千万円に到達いたしましたがために、炭鉱に一日も欠くべからざる坑木を買うことができなくなり、あと四日か五日しか坑木の手持がなくなつてしまつたことがある。すなわち、この一つ一つが、現在の私企業による資本の蓄積をもつてしては、今後の恒久的なる増産が行い得ないという現実の証拠である。
 その具体的な理由として、いわゆる炭鉱経営者、資本家側自体がこのことを認めておることは、あまりにも皮肉であります。なぜか。ここに資料はもつてまいりませんが、石炭鉱業会が、國家管理の反対の理由の中において、採算の合わない新坑開発、あるいはその他の新しい開発の場合において、國営をもつて行うべきであるということを、國管に反対する資本家の口から述べておりますことは、ほかならぬ資本家自身が、みずからの資本の限界を自覚したものであると、明らかにうたつて間違いないと思います。(拍手)
 次に、國管を行わなければならない第三の問題は、先ほど商工大臣も提案の趣旨を説明された通りに、炭鉱企業の中で労働者の占むる地位・役割というものは、きわめて大きいわけであります。そこで、この働く人々の勤労意欲を増大させるためには、労働条件の改善によつてのみ初めて勤労意欲の増大が果し得る。これこそが経営の民主化の根本的なる理由でなければならない。経営の民主化には、申し上げるまでもなく労働者の経営の参加の方式が確立されなければならない。
 私は、この点について重ねて事例を上げて申し上げたいと思いますが、石炭鉱業連盟の、われわれから申しまするならば、いわゆる資本家側の雜誌の中において、経営の民主化のために、鉱業連盟の早川勝氏は、経営の新方式として、労働者と経営者双方が、互角対等の立場に立つて合理的な妥協点を見出すことが、経営の民主化であるということを言つておられます。それから第二の問題として、資本と経営の分離について、資本家自身も、資本と経営の分離の必要を、同じく鉱業連盟の調査資料によつて発表いたしておるのであります。こうなつてまいりますと、当然われわれは、この國管を通じて労働者の発言権を経営に確立することでなければならない、これ以外に増産の途は果し得ないと思うのであります。
 これらの三つの点から考えてみまして、今後の恒久的なる増産のためには、ただいま申し上げた三つの点の体制が確立されることによつてのみ、初めて恒久的なる増産の対策は確立され、ほんとうに底から盛り上がつてくる労働條件の改善によるところの勤労意欲の振起・高揚というものが確立されるのであります。
 われわれは、この法案を見ました場合において、二、三の点について私自身は不備を感じます。どういう点かと言うと、あなた方の意見とは違うかもしれませんが、私自身の意見といたしましては、國管を断行するためには、管理の範囲は全炭鉱でなければならぬ。その次は、計画生産を実行して、政府が現場を把握するためには、現場に直結しなければならない。第三は、炭鉱管理委員会の性格が、諮問機関ではなくて、決議機関にならなければならない。第四は、國家が管理する限りにおいて、企業の利潤を制限しなければならないということであります。これらの諸点について私は申し上げたいのでありますが、あまり時間がありませんので、最後に結論として申し上げますが……
    〔発言する者多し〕
#36
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#37
○岡田春夫君(続) 自由党は國家管理に反対されておるにもかかわらず、今年の春の議会において、当時の星島商工大臣が増産のためには國家管理をあえて否定するものではないといつているのであります。(拍手)
 大体英國の保守党が、御承知の通りに昨年ブラックプールにおきまして大会をもちました。このブラックプールの大会の機会において、保守党が産業政策委員会を設けまして、本年の五月に保守党の産業憲章を発表いたしたのであります。このときにおいて、英國の保守党は、英國の労働党のやつた炭鉱の國有化については、原則的に反対をいたしておりません。その方法については、これを改める必要があるが、英國の炭鉱國有化それ自体を反対するものではないと言つております。私はこの機会において、自由党自身の成長によつて、少くとも英國の保守党の水準にまで上つてもらいたいことを期待してやみません。(拍手)
 最後に、植原さんの先ほどの御意見があつたのでありますが、國家管理が官僚統制と同じであるという考え方は、これはあまりにも幼稚なる考え方であります。先ほど植原さんがお話になりましたが、九州の志免炭鉱は國営炭鉱であるのに、勝田民営炭鉱の方が能率がよいではないか、かように言われておりますが、われわれ社会党の考えております國家管理は、鉄道省の経営する、いわゆる官僚統制の方式によるところの國営を考えているのではない。われわれの考えている國家管理は、あくまでも経営の民主化という点に重点があるのであります。しかも、これのみではない。この間の委員会の節に、志免、勝田の両鉱業所長が出てまいりまして、志免國営炭鉱の能率と、勝田民営炭鉱の能率の比較において、勝田炭鉱所長、いわゆる資本家側の能率が上がつていると言う民営炭鉱の所長の口それみずから、志免と勝田において能率の差がないということを明らかに言つております。(拍手)この実例を見ましても、いかに自由党自身の國家管理反対の論拠が薄弱であるかということを申し上げて、終りといたします。(拍手)
#38
○議長(松岡駒吉君) 坪川信三君、発言者を指名願います。
#39
○坪川信三君 民主党は、次に後藤悦治君を指名いたします。
#40
○議長(松岡駒吉君) 後藤悦治君、発言を許します。
    〔後藤悦治君登壇〕
#41
○後藤悦治君 私は、この機会におきまして、わが民主党が、今回提出されておりまするところの臨時石炭増産國家管理法案に対して、(「國家というのはなかつたぞ」と呼ぶ者あり)抱懷いたしておりますところの基本態度を明らかにいたしますとともに、反対論に対しまして、その論拠に檢討を加えまするとともに、政府の提出いたしておりまする法案につきましても、忌憚なき批判を加えてみたいと存ずるのであります。
 ただいま社会党の岡田議員より、若干、反対の議論に対しましては、反駁を試みられたのでございますが、私も大体は同感でございます。(拍手)すなわち、全國民の犠牲と負担の上に立つて、最重点的に注入される貴重なる資金と資材に対しましては、これがいかに正しく、かつ効率的に使用されるかということを、最後まで見届け得まする方途を講じますることは、当然國家が全國民に対して負うべき責務であると存ずるのであります。(拍手)また今日の物價高騰期におきまして、商業資本の利潤の蓄積をもつて再生産設備が行えるだけの價格と利潤が、今日の経済事情から與え得ないということも、私どもは肯定せざるを得ないのであります。さらに労働関係から申しましても、何といたしましても、私どもは今日の進歩的勤労階級の心からなる支持を得る方途を講ずることも、また法案の上についてこれを肯定せざるを得ないのであります。(拍手)この三点のみを取上げてみましても、私どもは、いかに今日石炭に対する管理を行わんとすることが、最も適切なる措置であるかということを知ることができると存ずるのであります。(拍手)すなわち、以上の理由によりまして、私は今日の現状維持論には断固反対でございます。
 次に私は、しからば現政府提出案がはたして最も妥当なるものなりやという点について、いささか論及を試みてみたいと思うのであります。本管理案の審議にあたりまして、最も戒心を要することは、管理という機構の改革が、ただちに石炭増産を來すがごとき誤謬にとらわれてはならないことであります。いわんや、本問題に対し商工大臣の称するがごとく、あるいは外ぼりを埋める底のイデオロギーにとらわれたり、機構改革や経済秩序変更の具に供せんための管理案であつてはならないことでありまして、万一かような経済的意図があつたといたしまするなら、まことに重大問題でありまして、今日の日本の経済的重大危局を誤るもまたはなはだしいといわざるを得ないのであります。(拍手)從つて石炭増産管理案は、どこまでも増産対策一本の目的の上にこれを成立せしめねばならないものでありまして、この見地からいたしまして、私どもがここに一考を要する点を見落としては相成らないのであります。
 それは、この政府原案に対しまして、全國の炭鉱業者がかなり廣範囲に、根強く反対の意思表示をいたしておることでありまして、この事実に深く考慮を拂う必要があるのであります。石炭増産のためには、まじめなる勤労者の意思と納得の上に立たねばならぬことは、前に申し述べたとおりでありますが、さりとて、現在の段階におきましては、未だ勤労者支配であつてはならないのでありまして、どこまでも労資協調の線で進まねばならぬのであります。(拍手)從つて、勤労者の立場を尊重いたしますとともに、事業者もまた安んじて全幅の協力をいたすことのでき得る管理案たらしめねばならぬと存ずるのであります。
 次に私は、いささか政府案の内容について申し述べてみたいと思うのでありますが、今日のわが國石炭の現状を直視いたしまするとき、政府原案に反対的立場の人々といえども、おそらく新坑開発、特殊炭鉱維持等は、少くとも國家の責任と力においてなさるべきであるとする指定炭鉱に対する考え方には、御賛成であろうと存ずるのであります。(拍手)しからば、問題は圧縮されてまいりまして、一般炭鉱に対する本法案の管理の適否だけが主題となつて残されて來るのであります。政府案が、この指定、一般兩炭鉱の区別に明確な基準の一線を引いておらないことは、何といたしましても本法案の重大な欠陷でありまして、これがために、いたずらに議論の余地を多くし、業界に多大の不安を與えているものであると断言することができるのであります。(拍手)
 この指定基準の不明確のほかにも、政府案にはなお十数項にわたり、たとえば事業主と別個の存在を確認された現場管理者偏重の問題、事業計画における生産協議会の最優先性、これのもつ議決機関たる性格と、経理内容の報告要求権、目標を明示せざる臨檢制と、行政処分にあらざる刑罰の問題、商工大臣、石炭局長等の戰時の亞流にもひとしき官僚の命令権等、幾多私どもが指摘し得るところの欠陷条項を有しておるのでありまして、これら欠陷条項のために生じてまいります弊害、すなわち官僚管理の迂遠、不円滑性等の増産障害は、極力排除いたさねばならないことはもちろん、同時にイデオロギー的管理色も、あくまでこれを拂拭してまいらねば相ならぬのであります。從つて私どもは、石炭國管の必要性は認めましても、以上申し述べてまいりました点に現われておるような欠陷条項に対しましては、極力これを正してまいらねば相ならぬとするものであります。
 私どもの主張いたします管理方式は、どこまでも企業権尊重の基礎の上に立つ、企業全体を対象とした管理構想でありまして、同時にその運営要領については、きわめて民主的かつ機動的ならしめ、業者をして安んじてその創意とくふうと情熱を傾けしめ、競爭的に採掘能力を上げしむる民営の長所を取上げ、かつこれを活かしたるものたらしむることにあるのであります。言葉をかえて申しますならば、一般炭鉱に関しまする限り、その企業と運営はもつぱら民間の旺盛な活動にまつ方途を講じ、國家は計画及び統制と監査以上に管理の線を出てはならないということでありまして、その他資金・資材の提供、賃金の査定、工員の生活設備、報奬金の設定等の援助機関、すなわち炭業公團に代るべきものを政府に設けさせんとするものでありまして、これなくしていたしましては、管理案に生命を吹き込んだ、生き生きとした増産は期待できないのでありまして、この点は、わが民主党が特に重視し、政府に緊急提出を要望してやまないゆえんのものなのであります。
 以上、まことに簡單ながら、私は管理の必要性ならびに政府案に対する批判と民主党の抱懷の一端を申し述べたのでありますが、最後に一言附加いたしたいことは、マッカーサー元帥の書簡の示しますごとく、本案の実施は、政府が異常なる責任と努力とをみずから進んで負わんとするものでありまして、実に重大なる政治的決意を要するところのものであるということであります。從つて私は、政府與党が、本案の完璧を期するためおのおの最善の協力を盡し、もつて日本再建のキー・ポイントたるべき石炭問題の解決をはかり、國民の輿望と國家の要請、負託にこたえるべきである点を強調いたしまして、私の小論を終る次第であります。
#42
○議長(松岡駒吉君) 山口喜久一郎君、発言者を御指名願います。
#43
○山口喜久一郎君 日本自由党は、周東英雄君を指名いたします。
#44
○議長(松岡駒吉君) 周東英雄君、発言を許します。
    〔周東英雄君登壇〕
#45
○周東英雄君 わが自由党は、ただいま問題になつておりまする臨時石炭鉱業管理法案、すなわち、いわゆる炭鉱の國家管理案に対しまして、反対をいたすものであります。今その結論に対しまして、順次論旨を進めて、反対の理由を申し上げたいと思います。
 今日石炭の増産ということが、窮乏経済の切抜けないし日本産業経済の復興の基礎をなすということについては、いまさら喋々を要しません。わが自由党におきましても、つとにその必要を力説いたしまして、三千万トン増産に対して協力を進めてきたのであります。しかるに、このたび片山現内閣におきまして、増産の手段として新しく臨時石炭鉱業管理法案を提出いたされたのでありますが、われわれの見るところをもつてすれば、この國家管理ということを実行いたしまして、はたして石炭の増産ができるかどうかということを疑うものであります。私どもは政府の今までの御説明を伺つても、石炭が増産されるということの論拠は、はなはだ薄弱でありまするし、また実際問題といたしまして、増産は不可能であると断ぜざるを得ないのであります。
 すなわち問題は、まず反対の第一点として、政府が増産対策として出されておりながら、実際問題として、石炭増産を阻む從來の諸原因というものに対して、診断を誤つておられるということであります。また政府が炭鉱業という特殊な業態に対する実態について十分把握しないで、本法案の施行によつては、そこに能率の低下その他あらゆる摩擦を生じ、実際問題として増産を阻む結果になることをおそれるものであります。
 さらにまた本法案の内容を逐次調べてみますると、増産計画、事業計画その他の設定から、その内容にあるところの増産責任者が一体だれであるか。業者であるようでもあるし、炭鉱管理者であるがごとくでもあるし、また生産協議会によつて炭鉱管理者と労働者との共同責任であるがごとくでもあります。こういう責任の所在がはつきりしないために、問題が生じたときに、早急の処置が取りにくいということは、火を見るよりも明らかであります。こういう諸点を考えますときに、増産は不可能であると私は考えるものであります。
 私は増産を阻む諸原因の診断を誤つておると申し上げたのでありますが、これは今日まで石炭の増産を阻んでおつた原因は、企業の体制、すなわち資本家あるいは業主というものが私企業をもつて経営しておるから減産いたしたのではなくて、今日まで資材・労力・食糧・資金という面において非常に不円滑であり、実際供給の面において不足を生じておつたことは事実である。戰爭中において、あるいはそれ以前において、十二年以後昨年、一昨年、終戰前の十九年までにおいての石炭増産の実際は、先ほど話がありましたように、最高五千七百万トンの生産をあげておつた。しかも、戰爭終結後急激に出炭が減じたのは、先ほどからお話がありましたように、企業経営者の面よりも、炭鉱が荒らされた、あるいはその面に関連いたしまして、炭鉱に必要なる資金・資材・労力が急激に減じたためであります。殊にインフレーションの高進とともに、労働者の生産意欲の阻害、労働者の不足ということが非常に多かつたことは事実であります。
 その後におきまして、次第に立直りまして、資金・資材・労力等の供給がややよくなつて、殊に今日におきましても、政府は資金・資材・労力について、それぞれ優先的な割当供給をなしておることは、現在すでに御承知の通りであります。その結果、次第にその面においての立直りはできておりますけれども、今日の日本の現状として、これらの資材・資金等における不足ということは、絶対的の事実であります。こういう現実の事実を間違えまして、ただ單に生産責任者である企業全体の変更をなすことによつて増産ができると考えることは、早計であると考えるものであります。
 先ほどから社会党の諸君は、英國の労働党の例を引かれました。しかし、その英國の労働党の行つた炭鉱管理に対しましては、未だ未知数であります。なぜあなた方は、今日のドイツの炭鉱民主化の例をお引きになりませんか。日本の現在の事情は、大体欧州戰後において社会民主党の実行した炭鉱社会化という問題に、経済事情なり、國情が非常によく似ております。しかも、その際に実行した炭鉱社会化の問題は、あとで申し上げます理由によつて失敗しておる事実があるではありませんか。
 問題は、ある一つの業態がいかなる産業体制でなければならぬかは、國とその國の経済力、國民性その他で決めらるべきことであつて、頭から公式論的に、ある業態は常に社会化という形でいくべきものではない。英國においては、あるいは今後の將來においてうまくいくかもしれない。しかし英國においては、鉄鋼についてはすでに反撃を受けて、できあがらないではないか。また綿業においてしかりであります。從つて、ドイツ、英國の例を見ましても、はたして日本において炭鉱社会化という問題が適しておるか否かということは、日本の國情によつて判断すべきであつて、公式論的に決めらるべきでないと私は考えるものであります。
 水谷君は、先ほどこの席上で、本案は石炭の増産ということを主にしておるのであつて、決してイデオロギーを主張しておるものではないということを、再三お述べになつておる。私は、なぜそんなばかなことを言う必要があるかと思う。もし、社会党が眞に英國の労働者のごとく――片山総理が兄事せられる労働党のごとく、眞に炭鉱社会化をやるにあらずんば今日石炭の増産はできないという自信があつたならば、堂々と社会民主化の線において主張すればいい。それをこの案をただ通したいばかりに、連立内閣の弱味から、なんとしても通さなければならぬということで、社会化という問題は取りやめようというようなことを天下に向つて言うことは、公党である社会党のために私はとらぬことであると考えます。(拍手)
 しかも、別個のところにおいて水谷君は、しかしこれは不滿ではあらうけれども、炭鉱社会化にいたる、産業社会化にいたる一線を画することであつて、橋頭堡を築くものであると言つておられる。何事でありますか。これは國民を二重に欺くものであつて、公党としてとらざる、惜しむべきことであると私は考えます。(拍手)
 また本案の実行にあたりましては、内容を見ますると、業務の計画につきましては、大体政府が直接計画基準を定めて、炭鉱管理者及び事業主に指示する。炭鉱管理者が原案の原案をつくつて、業主にこれを示す。業主はその原案の原案を基礎として原案をつくり、それを政府が許可する。許可をするには、生産協議会の協議によつて許可をする。こういうしちめんどくさい段階を経て、そうすればはじめて、先ほど言われるように資金・資材が公平にいくと考えられるところに、繁文縟礼に困つた戰爭時代の過去の痛みを忘れておられる。あなた方の健忘症があると私は考える。(拍手)
 こういうふうな炭鉱というものは、日本の炭鉱の特殊性に則つて、それぞれの山々についての事情をよく知悉しておるところの專門家が、おのれの身を捨て、山の経営にあたるというところにおいて実行ができる。素人を連れてきて、そうして今のような繁文縟礼の計画をもつて、机上においてプランを立て、そのプランの実行にあたつては、だれがやるかというと、炭鉱管理者がやる。その炭鉱管理者は、生産協議会または労働者の承認を得て、業者が推薦をする。こういうしちめんどくさい段階において、はたして眞の経営者が出て、石炭の増産ができるかということについて、私は疑いをもつものであります。
 また先ほども社会党の方が言われるように、それが民主化だと言われる。民主化だとあなた方が言われる生産協議会の内容は、常に労働者諸君の数が多くて、経営者側の人間のおらないことが民主化だと考えられる。そういうことは、あなた方、公平な立場において、民主化思想がわからぬのです。この生産協議会の内容は何であるか。大体業主の代表はこれを入れぬことにし、労務從業員、職員と労働者を入れて、そうして炭鉱管理者は、生産協議会の推薦承認というようなことで選ばれなければならぬということになつておつて、これがはたして民主主義と言われるのか。私は民主主義の定義を疑うのであります。(拍手)
 かくのごとき法案の内容を包藏し、原因の探究に誤診があり、あたかも肺病患者に向つて腹痛止めの薬を飲ませるようであつて、これでは決して石炭の増産の効果があがらないと、私は断言するものであります。これが反対の第一点であります。
 第二点は、今日のごとく政府資金あるいは財政支出の極端なる膨張を余儀なくされるような状態におかれて、一朝その処置を誤るならば、政府の堅持せられるところの新物價体系も、また賃金基準も、一朝にして崩壞し去つて、インフレーションが奔騰し、高進するというおそれはたくさんある。こういうときにおいて、政府はインフレーションの防止に対して万全の処置をとられることが必要である。現在の産業生産の阻害というものは、インフレーションの惡化が非常にその影響を大にしておる。今日インフレーションの高進ということによつて、資材の高騰、やみ、あるいは労働者諸君の勤労意欲の減退、こういうふうな事柄からして、非常に生産が影響を受けておる。このインフレーションの防止に対して、政府は全力をあげて処置すべき段階にあると考えます。こういうときにおいて、たとい、この法案がかりに通つたとしても、これは現状ではなく、來年の三月以降に施行されるという、問題は今日から來年の三月ごろまでの、この半年の期間における日本の産業状態をいかにするかということが問題なんである。(「その通りだ」拍手)
 すなわち、過日提出されましたところのマッカーサー元帥のお手紙、これは非常にその示唆を與えているものと思います。炭鉱の國家管理というものに対して審議することは、國会に任せる。しかしながら、そういうことをやつているよりも、現在すでに問題を包含しておるインフレーションに対処して、すべて手を打つべき――あるいは労働時間の延長、あるいは交替制による二十四時間労働制、あるいは資金、資材についての考慮、技術の総合及び指導、あるいは食糧の面、資材の面、これに対して適当の手を打つことによつて、今後起ることあるべき事態に應ぜよということを言われているのだと思います。政府は、これに対して汗顔、冷汗三斗の思いがあると私は思うのであります。(拍手)
 本年五月議会が召集されて以來、政府が六月成立以來、今日まですでに四箇月経つております。これはいろいろ苦心の点もあると存じますが、しかし、今日まで追加予算の提出が遅れておることは何を意味しますか。(発言する者多し)矢野大藏大臣は、就任早々、とにかく実行予算をつくると言われた。それから旬日を経ずして、五百億の追加予等をつくると言われた。ところが今日におきましては、休会に休会を続けて、なおかつ予算が出ず、予算面におきましては、約千億前後の金が出ようとしている。この結果どういうことが起るか。
 これらに対しまして、今後における状況は、財政の膨張に伴つてインフレーションの激化は明らかである。同時に、これらの実行に伴うて、物資のかさんだ使用が行われることも明らかである。物資の使用ということも明らかに出てくる。これに対して処置をせずして、石炭の國家管理、しかも、その内容においては石炭の増産を結果しないような――その内容を今日議論されている。そしてこれを來年になつて施行されようとしている。そういう場合において、現場における石炭の増産ができるかできないか。これに対して、私は深き反省をしていただきたいと思うのであります。(拍手、「具体案を示せ」と呼び、その他発言する者多し)
 第三の反対の理由は、大体國民生活の安定と産業再建に必要なるために、現政府の唱えられるごとく、健全財政、健全金融ということが最も必要であることは明らかであります。しかるに、もし國管案を実行されますと、石炭についての金融措置は、すべてこれを國においてお引受けになると考えます。從來事業主が民間経営をやつている場合においては、政府の補助によつて受けるところの金融というものは、今日比較的少い。殊に炭鉱問題が改善された今日におきましては、石炭金融の負うところは少いのであります。その場合におきまして、今後は民間における金融というものは引きつけない。
    〔発言する者多し〕
#46
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#47
○周東英雄君(続) 政府は、これを全部負わなくちやならぬ問題になります。
 また先ほど社会党の諸君の言われるように、新坑の開発は復興営團においてこれをやらせる。また拡張の工事に対しても、復興営團においてこれをやらせると言われておる。その場合において、その建設資金並びに運轉資金というものは、一体だれが負担するのか。これを民間一般に公募することは不可能になりましよう。今日のごとく民間の株主の権利は制約されて、直接政府が、社会党の諸君の言われるごとく、現場に直結するというような形において、だれが民間募債に應ずるものがありましよう。この場合において、新規企業の拡張、新坑の開発等をやるとおつしやるが、そういう場合における資金の面は、すべて政府がこれを負担される覚悟であろうと思う。この場合において、全部政府の財政負担になるか、しからずんば不換紙幣の増発よりほかないのでありまして、これは健全財政、健全金融の主義にもとるものと私は考える。(拍手)
 こういう危險な分子を含んでおるところの國家管理、しこうして國家管理によつては、増産の実をただちにあげ得ないようなものを、今日ゆつくりと審議しておるひまはないはずであります。これはよろしく撤回なさつてしかるべきと考えるのであります。
 私は、以上述べた論点によつて一應これに反対するものでありますが、今日あなた方のお考えが、資本主義の形態というものは常に生産を阻害する、あるいは社会主義の形態は常に生産を増進するというお考えに、根本的な誤りがあると考えるものであります。私どもは、経済の自然の現象において、どこまでも自然経済の自然の形を尊重し、このものが生産の増強をするということにおいては、経済の常識上も明瞭なことであります。
 ただ社会党の諸君が言われる、かつて資本主義華やかな各國において、その生産利潤においての分配は不公平であるということからして、資本主義経済の打倒を説かれ、これを否認されることはわかります。しかし、資本主義経済を否認し、これを修正したところで、このことがただちに生産の増強にはならないのであります。生産の増強には別個の手段を講ずる必要があるのであつて、資本主義経済においても、あるいは國有経済におきましても、それらに対する資金、資本、原料、各種のものが潤沢に供給せられる態勢をとらなければ、実際生産はあがらないのであります。
 政府の示されたところの経済白書には、今日の日本の生産の増強せざるゆえんというものは、大体設備が不足なのでもなく、労働力が不足なのでもない、大体原料・資材・電力・石炭等の不足にあるのだというのであります。第二の原因は、インフレーションの原因によるということが、政府の経済白書に書いてある。從つて、これらの問題に対する処置が適正につくならば、その経営形態は、私企業であろうと、國家企業であろうと、生産増強については変りはないのであります。これらの点について、私は深甚なる反省を要求するものであります。(拍手)
 殊にあなた方は、國家管理、社会化というものについて、生産が殖えるというお考えは、殷艦遠からず、電力においてその非なることを示すこと十分であります。すでに昭和十二年に電力國家管理案が通過したのでありますが、その以前に、大正十二年から昭和十二年までにおける電力の増加というものは、年々二十万トン以上の増加を認めた。ところが、昭和十三年以降昭和二十年までの電力の増加力というものは、わずかに四割にすぎない。しかも、その増加したところの実際は、すべて民間経営自体に施設せられたものが、その効果を発生したにすぎないのでありまして、國有になつてから、あるいは國管になつてから増加というものは、一つもないということを見ましても、國管が必ずしも生産の増強をなすものにあらざることを示すものであります。(拍手)從つて私は、かくのごとき理由のもとに本法案に反対するものであります。
 しからば、いかにしてこれを切り抜けるかということに対しましては、大体先ほど植原君からお話がありました。ただ私は、この際どこまでも企業の自主性を認めて、産業平和の確立をするということが問題であります。今日、先ほど社会党の方がお話になりましたように、生産に対して労働者というものが非常にウエートをもつておるということはお話の通りであります。その労働者に対して、現内閣こそ労働者の味方と言い、労働者に理解あると、こう仰せられるのでありますから、片山首相を初め幹部は、懇々と現在の日本経済の事情を話されて、協力を求められ、國家管理であろうとなかろうと、その生産に協力を求められることこそ、私はあなた方の務めであると思うのであります。現在において國家管理にして、國家管理の威力を駆つて、そういう要求をなされるよりは、現在の民間人に任せて、國家の現状を示して協力を求める。それが大体あなた方のとるべき途であると考えるのであります。(拍手)
 從つて、企業の必要性を認め、産業平和の確立をし、労働者に協力を求める以上、労働者に対しましても、私どもは徹底したる福利施設の増加と、資本家に対しましても、企業利潤の分配の適正、分配の制度を法文化することも必要でありましよう。なおかつ、先ほど岡田君の言われるように、あなた方に現在でも資材そのものについての割当というものに対して実行しておるのだから、それに対して資金・資材の割当を効率的にしようということが、はたしてできておるかいないかということが心配であるからして、資金・資材の配分、その効率的配分がどうなつておるかということに対する徹底した監査制度をつくることによつて、その欠陷は補われるのであります。あなた方は、官吏に委せて・・・・(発言する者多し)あなたがたは、國家に委せて、國家がやられるならば、その資金・資材の効率的行方というものがはつきりわかるとお考えになるところに、私は非常に早計な点があると確信するものであります。
 以上、私は私の所見を述べまして、本法案に反対するものであります。(拍手)
#48
○議長(松岡駒吉君) 坪川信三君、発言者を指名願います。
#49
○坪川信三君 民主党は、北村徳太郎君を指名いたします。
#50
○議長(松岡駒吉君) 北村徳太郎君、発言を許します。

    〔北村徳太郎君登壇〕
#51
○北村徳太郎君 石炭國管問題は、すでに論議がほとんど盡されたと思うほど、実はしつこく論ぜられておるのであります。殊に今まで同僚諸君からお話が十分出ましたから、私は一切重複を避けて、皆さんのおつしやらない方面について、簡單に所感を述べたいと思うのであります。
 政治はおよそ現実の問題でありまして、この理論体系たる、簡單に資本主義か社会主義かといつたようなものと、生きた現実の政治の事実とは違うのでありまして、先ほど來かような言葉がたびたび用いられましたけれども、私はその言葉を返上したいと思うのであります。
 なお、最初に社会党の菊川君のおつしやつた言葉の中に、私が承服できない点が相当ありましたけれども、時間の関係上これを略します。次いで、植原翁いろいろとお話になつたのでありますが、まずもつて今の時代に、何よりもわれわれは連合國の占領下にあるという現実を無視してはならない。これに眼をおうて、いたずらに‥‥(発言する者多し)いたずらに自由経済えの無条件復帰を夢みるような、こういう考えではだめであります。
    〔発言する者多し〕
#52
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#53
○北村徳太郎君(続) 國管という言葉に感情的な興奮を挾み、これに反抗をもつようでは、事実この問題はだめである。われわれは、いやしくも政治にあずかる者は、政治感覚がなければならぬ。政治感覚というものは、同時に時代感覚であり、同時に歴史的感覚であらねばならぬ。
 私は、過日來石炭國管問題に対して、しばしば業者の陳情というものを聽いたのでありますが、われわれの最も尊敬する植原翁の、この議場においてのただいまのお話を承りながら、私は再び業者の陳情を聽くような感がしたのであります。(拍手)筋書を御朗読になりましたが、その筋書には、具体的な実行方法が伴つていない。また石炭の臨時増産手段であるところのこの法案が、わずかに三年となつておるのはどういうわけであるか、石炭増産が非常に重大であるにもかかわらず、三年をもつて期限としたのはどういうわけであるかというようなお話が出ておりました。
 しかし私どもは、前に申しましたように、ただいまの占領下にある日本、殊に経済混乱期の現下の実情というものを把握しなければならないのであります。しかもまた、かつて星島商工大臣の時代に、石炭は二千三百万トンしか出なかつた。これは決して星島氏の責任ではございません。当時の事情、つまり戰時中の乱暴な掠奪生産の結果である。すなわち明日を忘れた、ただいまだけの事情によつて、あとのことを考えずに掠奪生産をやつたということが、星島氏の努力をもつてしても、自由党の諸君の全努力を傾けられても、石炭は二千三百万トンしか掘れなかつたのである。(拍手)
 その上に、石炭は今の現状をもつて、これを私企業のままに放置いたしますならば、石炭の増産を期することはできない。どうしてもこれは恒久的なる対策を背景として、順次対策を考えなければならない。すなわち今回の法案は、三年を期限としたところの臨時措置であるけれども、その背景には、恒久的な石炭対策というものをバツクにもたなければならないのであります。(拍手)もしそれでないならば、これは戰時の掠奪生産を再び繰返すことになるのでありまして、われわれは、これを私企業に任すわけにはいかない。ゆえに、國家の力によつて新しい鉱脈を発見し、また新坑の開発をやらなければならないのであります。ここに石炭國管の一つの基礎があるのであります。
 だんだんお話がありましたけれども、先ほど來植原翁のおつしやつたことは、これは残念ながら國有國営と國家管理とを混同されておる。志免炭鉱は國家管理ではありません。國鉄には國家管理ではありません。これは一升ますとメートル尺とをお間違えになつた感があるのであります。(拍手)労働基準法にも言及されましたが、労働基準法は、いつの時代に、いかなる内閣の手によつて生まれたかということも、反省する必要があるのであろうと思うのであります。(拍手)
 周東君の御意見では、はたして増産できるか。これはまことに重大な問題であります。きわめて重大な問題であります。これの原因に対する診断をなすつた。憾むらくは、その診断のうちに誤診がある。資金、資材あるいは労力さえ注入すれば、石炭は出るのである、こういうような簡單な御診断のようでありますけれども、しかも、それがうまくいかなかつたことが減産の原因であるとも言われた。ここには矛盾があるのでありまして、それだから國家資金の導入を必要とし、國家があえて傾斜生産方式をとつて國家の資材を注入しなければならない。それほどに石炭の増産が必要であつて、ここに一つの石炭の國家管理の必要の根拠があるのであります。(拍手)
 イギリスの例などもお出しになりました。これはよく出る例でありますけれども、イギリスは御承知の通り資本主義の先進國である。從つて、炭鉱設備が世界において最も古い。最近ろばを二万八千頭やめて、ようやくコンベアーにしたというような、非常に遅れた設備をもつておつた。從つて、今回切替のために減産になりましたことは当然であります。殊にイギリス特有の地主と炭鉱との関係その他複雜にして、イギリス独特の事情があるために切替に時を要したということは、もちろんである。しかも、イギリスでやつたのは國家管理でありません。國有國営であります。
 わたしは、ただいまいろいろの問題をもつておりますけれども、要するに日本においては、炭鉱といわず、一切の経済の重要なる設備を失つている。この際われわれが頼みとするものは何であるか。これは実に人間の力――労働力であります。これこそ、残されたる富である。これをいかに生産化するかという問題こそは、現下の最大の問題でありまして、労働力の生産化、このことをねらわなければならない。石炭の増産にいたしましても、それが重大問題である。
 労働者諸君が今どういう氣持でおるか。石炭の國家管理問題に対する感情的な反対……。
    〔発言する者多し〕
#54
○議長(松岡駒吉君) お靜かに願います。
#55
○北村徳太郎君(続) 石炭の國家管理案に対する感情的なる反感等が相当にあることによつて、彼らを少からず離反せしめんとする傾向がある。これでは、いかに石炭の増産を叫んでも、できないのであります。日本においては、七割五分が石炭労働者の手によらなければならぬ。機械化は二割五分である。三十七万人餘の炭鉱労働者が増産意欲をもつかもたないかというところに、増産のかぎがかかつている。(拍手)しかるに、これを完全なる私企業形態に任して、何ら國家意思が介入しない。國家資金を入れるけれども、國家の監査をさえさせない。國家意思が全然はいらないという形態では、石炭の増産は望むべくもないのであります。(拍手)從つて、労働者諸君が満足する――單に企業家が満足するばかりではない、労働者がその氣になつて、眞に救國的な意欲をもつて石炭を増産するというためには、当然これに國家意思がはいる。國家資材が導入せられるところの石炭鉱業に対して、國家意思が介入するということは当然である。
 石炭増産に対するマッカーサー元帥のあの書簡に現れた六項目、これを自由党の諸君はどう実現されようとするのであるか。あのうたわれている六項目は、いずれも國家意思、國家資金あるいは國家の計画というものを抜きにしては実現が不可能である。そういうことに対して、今なお古い時代の自由主義経済への復帰を夢見るような考え方では、どうしても労働者は満足しないのであります。(拍手)
 戰時電力の問題が出ましたけれども、戰時電力は、軍閥のもとに行われた官僚統制の代表的なものであります。かようなことが成績をあげなかつたということをもつて今日を律することは誤りである。これも誤算である。今の日本の段階において、傾斜生産方式をとり、炭鉱労働者に働いてもらわなければならぬから、國民はがまんをして六合の配給をしている。家族にも三合の配給をしている。かような事実は、労働者のみならず、少くとも國民全体がこれに同意をして、そうして石炭の重要性のためには、單に経営者、労働者のタイ・アップばかりではない、いずれもこれに参加して、協力体制をもつてするということでなければならないのであります。(拍手)從つて、これに対して國家が適正なる監査を行い、適正なる國家意思の導入を見るということが、けだし当然であります。
 私は、先ほどから周東君あるいは植原君、お二人の御演説を拜聽し、また最近の石炭國管問題をめぐる自由党諸君のものの考え方に対して、まことに遺憾の意を表するものである。これは言いかえれば、石炭というものは利潤がかなりあつて、企業家と資本家が満足なる状態であるならば増産ができるという考え方であります。これでは石炭の増産はまことに不可能である。(拍手)從つて、かような考え方は――私は自由党が野党になられたということには、まことに敬意を拂うけれども、少くともこういう考え方は、自由党が階級政党に堕せられたのではないかということを疑うのである。(拍手)
 石炭の國管は、今や歴史の流れであります。これは歴史の必然である。かつて新選組の近藤勇が名刀虎徹を抜いて、この虎徹をもつて人を切つたけれども、時代の流れは切ることができなかつた。今の國管には時代の流れがある。これに対して、いたずらに反対をなさることは、これは現下のまことに重大なる石炭増産問題に対して、忌むべきものであるといわなければならぬのでありまして、多数の労働者が、殊に石炭復興会議を離脱せんとするのは何ゆえであるか。労働者諸君が、石炭復興会議から離脱せんとしておる。かような傾向は、まことに悲しむべき状況でありまして、何としても私どもは、この石炭の現在行われようとしておる非官僚的な、民主的な、しかも先ほどお話になりましたけれども経営形態を毫もかえないところの、このような國家管理というものが、現下の実情に即した最も適当なる増産手段であり、かつその裏に新しい坑を國家の手においてやるという、大きな増産計画をバツクとしてもつところのこの國管案こそは――もちろん細部にわたつては修正を要する点はあります。けれども、結論を申しますと、これを通すことによつて増産意欲を増し、國民全体の協力に訴えるということが、現下の最も必要な態勢であると信ずるのであります。(拍手)
#56
○議長(松岡駒吉君) 山口喜久一郎君、発言者を指名願います。
#57
○山口喜久一郎君 自由党はありません。
#58
○議長(松岡駒吉君) 石田一松君、発言者を指名願います。
#59
○石田一松君 國民協同党は、早川崇君を指名いたします。
#60
○議長(松岡駒吉君) 早川崇君、発言を許します。
    〔早川崇君登壇〕
#61
○早川崇君 私は國民協同党の石炭関係を担当しておるものといたしまして、目下議題になつておりまするところの臨時石炭鉱業管理法案につきまして、若干の所見を申し述べまして、大体におきまして、この法案に対しまして賛意を表するものであります。(拍手)
 諸君、現在の日本の経済状況は、きわめて惡質なる縮小再生産と惡性インフレの循環でありまして、この惡性インフレーションの循環を断ち切るものは何か、これがわれわれの最大の関心事であります。われわれは、石炭の三千万トン、否、三千五百万トンの完全確保という一点に問題の焦点を見出しておるものであります。しからば、この日本の経済が拡張再生産に轉ずるか否かというかぎでありますところの石炭の生産事業というものは、われわれをして言わしむれば、もはや全國民に影響力をもつ公共的事業であると断定せざるを得ないのであります。(拍手)從つて、これに対しまして、國民の代表である國家が何らかの意味で関與いたしまして、これを管理するという点に関しましては、何ら反対する理論的根拠も、また実際的理由もないと私は信ずるのであります。(拍手)
 いかに頑迷なる自由党の自由主義者の方におきましても、もし石炭國家管理に反対するというのであれば、公共的事業である鉄道にいたしましても、通信事業にいたしましても、すべてを個人の企業にこれを解体して、資本主義経営をやるというところまで徹底しなければ、この論旨は一貫しないと私は思うのであります。アメリカにおきましても、すでにルイスの罷業が盛んに蔓延しておりましたときにおきまして、あの資本主義の國におきましても、この石炭事業の國家管理を断固として断行したではないかということを、自由党の諸君は思い出していただきたいのであります。
 以上によりまして、原則的にわれわれは國管賛成の立場を表明するのでありますが、以下、自由党の諸君なり、あるいは公式的な自由主義者あるいは資本主義者の言います國管反対討論に対しまして、私は若干反問を試みてみたいのであります。(拍手)いかに頑迷なる資本主義者なり自由主義者でありましても、現在の石炭事業におきまして、事業家のイニシアティーヴなり、專業家の利潤追求の余地がどれだけあるか、現実の姿を見ていただきたいと私は思うのである。炭價の決定にいたしましても、あるいはまた資金、資材、労務、厚生、食糧、あらゆる面におきまして、これはすでに政府において、官僚において、実質的に運営されているという事実をわれわれは見出すのであります。言葉をかえて言いますれば、実質的にはすでに國管に近い状態が日本の石炭業において実現されておるということである。ただ惡いことは、このようにほとんど國管に近い状況にまで來ておるにもかかわらず、もし國管を実施しない場合も予想いたしますれば、政府の役人よりも、統制をやるものは、責任のない國管をやつているという姿になつているのであります。
 事業主は、石炭の生産が三千万トンできないという理由といたしまして、政府なり役人なりが十分資材をよこさない、資金をよこさないから、石炭は出ないのだという。一方政府のほうに意見を聽くと、國民の血税を搾り、さらにはまた國民のなき資材をはたいて、この石炭事業に思い切つて資材なり資金なりを投下したいのだが、遺憾ながら石炭事業家は一体これをどういうものに使つているかわからないから、彼らの言う通り十分これを導入することができないのだと言う、まことに責任のなすり合いで、これによつて最も被害をこうむるのは、八千万國民、民族全体であるということを、われわれは言わざるを得ないのであります。これも自由党の完全なる自由主義経済でやれればよろしい。実質的に國管に近い姿であるものを、そのままにしておいた結果が、自由党内閣の遺した、あのみじめな石炭事業の遺産である。われわれはそのために苦しんでおるのであります。(拍手)
 かかる事態を直視いたしまして、このたび政府が、この責任の所在の曖昧さを克服するために、みずから進んで石炭國管をやろうと決意し、みずから責任を負い、これを國会、否、國民全体のために責任をもつて、事業家と政府が石炭三千万トン達成のために共同責任をとるというのがこの法案であつて、その意氣たるや、まことに私は壯であると思うのであります。(拍手)
 しかし私は、この業者プラス政府の責任生産態勢には賛意を表するものであるが、ただ願わくは、從來の國鉄あるいは全逓事業のように、國会なる國民の代表が、この運賃を値上げしたり、いろいろなことをやる場合に、少しも発言権がないようでは、非常にわれわれは困るので、でき得べくんば、この管理法案を國会において嚴重に監視し、あるいは監察する委員会をこの規定に設けていただきたいというのが私の意見である。
 さて第三点に、私は國管というもの、國家管理、公共管理というものが、双刄の劍であるということを皆さんに申し上げたいのであります。第一点は、消極的な面でございます。御承知のように、すでに政府の提出理由にもありますように、資金にいたしましても、資材にいたしましても、その実態を把握して、適時適所に流れるようにこれを監査していく、調べていく、こういうことは、第一の消極的な部面でございまして、現在鋼材の生産の一五%を石炭に注ぎ込み、産業資金の四二%を石炭の生産に使つている現状から申しまして、少くともこれは、國民全体のためにどうしてもやらなければならない管理の一つの必要理由でございまして、これは國民大衆に対して公正――少くとも公正であると私は申したいのであります。從つて私は、國家管理の必要性に関しまして、公正である、これだけをもつていたしましては、私は、これはまだ國管を肯定する理由にはならないと思う。なぜならば、いろいろなことを調べていくことが、しゆうとが嫁をいじめるようなことになりましては、かえつて石炭の増産ができないからであります。
 そこで、この石炭國管に対しまして、第二の積極的な面を私は主張し、法案に対して若干の改正を主張するものであります。現在の石炭生産におきまする大きい隘路は、常に言い古されておりますように、資金、資材、食糧、労務、輸送、全般における隘路であります。このあらゆる隘路というものを、さらに深く突込んで調べてみまするならば、これは各官省が、その所管が違つておるということである。言いかえれば、石炭廳等の微弱な行政力あるいは政治力よりもたないような官廳では、とうていこの資材・資金の需要を充足できないということになるのであります。從つて私は、管理の主体が、現在の石炭廳のような微弱な行政力あるいは政治力で國管をやりましても、少くとも公正ではあるが、画期的増産は達成できないという意見であります。
 そこで、マッカーサー元帥の方からの書簡にもありますように、この責任の主体をかえる機会に、思い切つて増産しなければならないということであれば、私はこの管理主体は、政府全体がその管理主体になるということを提唱したいのであります。すなわち、資金においては大藏大臣、資材においては安本長官、さらに食糧においては農林大臣、すべての統括者――私は、全國の炭鉱管理委員会の議長たるべきものは総理大臣になる程度の、眞に挙國的な行政体制を整えなくては、少くともあのマッカーサー元帥の書簡に言うような画期的な石炭の増産はできないと思う。
 ここでわれわれは、そうすることによりまして、日本が縮小再生産から拡大生産に移るために、何としてもやらなけばならない石炭三千万トンあるいは三千五百万トン達成のためには、單に國民大衆に管理をやらせて、その使途がはつきりして、公正であるという要求のみならず、日本の行政力、日本の國力というものが、余すところなくこの石炭の生産に動員されるような行政体制をこの際整えなければ、この一片の臨時炭鉱管理法案というものでは、眞に石炭の超重点的の飛躍的な増産を期することができないというのが、私の一つの修正意見であるのであります。
 さて、次に一、二点だけ申し述べまして、結論に到達したいと思うのであります。われわれは、石炭の画期的増産に関しまする絶対的必要條件といたしまして、労働生産制の向上という点を取上げなければならないと思うのであります。特に諸君、この石炭事業におきましては、この労働力依存の度合というものは、他産業に比べまして飛躍的に重大であります。しからば、この労働の生産性を極度に発揮するために、われわれは、旧來の私企業の利潤追求、すなわち能率的運営という観念によつて、はたしてこの労働生産性を向上できるかといいますと、これがまたノーであります。現在の自覚せる從業員なり勤労者の場合におきましては、何らかの形態におきまして從業員が経営に参加し、経営の状況を知るというところから眞の労働意欲の振起があるということは、これはまつたく私は同感であります。われわれは、全從業員が何らかの形で経営に参加していつて、みずからの事業として石炭鉱業を考える体制を、この法案に織りこみたいというのが、われわれの主張である。
 しかしながら私は、この本社といわゆる現場の分離という点に関しましては、遺憾ながら社会党の諸君の言うのには同意できないのであります。なぜならば、われわれはマルクス、レーニン主義による階級対立理論ももちません。ただわれわれは、経営の技能者というものを、廣義の精神的労働者であるということの観点に立つくらい、われわれは物事を客観的に見、物事をおうように見るだけの度量をもつておるのであります。しからば、ここにいわゆる本社というものは、あたかも船における船長のごとき役割を果すものであり、さらにまた軍隊におきましては、経営技能者は士官であり、経営技能者なり技術者なき肉体労働というものは、士官なき下士官・兵ということになるおそれがあるのです。從つてわれわれは、この法案におきまして、あくまで経営技能者を含め、技術者も含め、勤労者も含めた、全從業員による運営ということをこの法案に織りこみたいというのが主張であり、その主張が通つた次第であります。
 さらにもう一点、われわれはこの機会に主張したいのでありますが、経営と資本の分離ということであります。すでに現在の炭鉱事業のような大企業におきましては、経営と資本が完全に分離せられつつあるのでありますから、百尺竿頭一歩を進めまして、この法案において経営と資本の分離を明確にうたいまして、ここに國家の行政力と経営の技能者と肉体労働者が三位一体になりまして、民族危機を突破しようというのが、われわれ國民協同党の日ごろからの主張であり、今後もその主張の正しさを確信する次第であります。(拍手)
 さらにわれわれは、この國家管理法案につきまして、労働生産性の向上が期し得られると信ずるゆえんは、いわゆる炭鉱の住宅問題にいたしましても、福利制度にいたしましても、これを強力に実施するためには、どうしても採算第一主義ではいけないということであります。御承知のように石炭事業というものは、たくさん掘つて増産すれば石炭の單價は安くなり、財産價値は減耗していくということになるのでありますから、どうしても、ここにいろいろな福利施設なり、あるいはまた住宅計画を立つる場合におきましては、採算第一主義の限界を突破するのであります。かかる意味におきまして、この國管法案におきまして、十分なる國家の保障を通じて、思い切つて、この石炭の増産のために住宅を建て、厚生施設を強化するということになるのでございまして、かかる意味におきまして、何としても労働生産性の向上ということをわれわれが考えるならば、少くとも國家の一つの権力なり國家の行政力というものを、この事業に織りこんでいかなければならないという結論に達するかと私は思うのであります。
 そのほか、新坑開発、鉱区整理その他に関しまして、國有國営が有利であることは申すまでもないのでございまするが、すでに前述者がこれに触れましたので、省略いたしたいと思います。
 最後に私は、結論的に申したいことが若干あるので、これを附加して私の所見を終りたい。先ほど申しましたように、國家管理をすれば減産になるというのは、石炭業者なり自由党の頑冥な人たちの意見である。ところが、九月三日のアメリカの雜誌のタイムは、アメリカにおける國家管理の状況をかくのごとく述べておるということを、私は報告したいのであります。タイムの雜誌によりますと、一九四六年における炭鉱管理は、その四ヶ月目に入りまして、二千八百の炭鉱を國家が接收して管理したのであります。ところが、この管理に対しまして、労働炭坑夫は、もとの経営主に対して、政府の方がはるかにリベラルなボスであるとみなしており、また多くの経営主は、政府管理によつてものすごく出炭が上昇しておる事実に欣々たるものでありまして、かかる上昇しつつある生産状況の現状を、滿足して傍観しておる状況にあると述べております。
 國有、國営を前提とするという國家管理が社会主義的イデオロギーであるといつて排斥される。これと同じことは、春秋の筆法をもつていたしますれば、國管案は減産する、國管案は赤である、これまた、まことにイデオロギー論にとらわれた考え方でございまして、世界全体の國管の実情を知らざるもはなはだしいものと言わなければならないのであります。われわれは、國有、國営を前提とする國管というものには賛成しない。しかしながら、現在の日本を再建していく現実的な理想というものは、何といいましても自由主義あるいは資本主義のいいところ、すなわち自己責任においてイニシアチーヴをとつていくという利点と、社会主義の利点でございますところの、できるだけ平等の原則を認め、虐げられた勤労者を引上げていくという、この自由と平等の二つというものを調和していくというような日本の経済体制をつくつていくということが、最も現実的な、われわれの理想でなければならないのであります。
 かかる観点に立ちまして、われわれは眞に資本主義的立場を離れ、さらにまたそれと階級的に対立いたしますところの肉体労働主体の階級――資本主義にも與せず、眞に民族全体というものの観点に立ちまして、行政力の必要なところに対しまして、責任をもつて國家管理をして行政力を注入していく。経営技能者を活用すべきところには、経営技能者を十分活用する余地を與え、勤労者の働く部面に対しましては、十分なるその領域を與えるという、いわゆる三位一体による民族危機の突破というものを、協同主義の理念のもとに、われわれは主張するのであります。これこそは、現在占領下におかれておる日本の敗戰経済において、石炭事業を眞に振起する唯一の妥当なる途だということを信じて疑わないのであります。
 最後に、しかしながら私は、この石炭鉱業管理法案の通過ということとともに、ただひとつ研究課題として政府諸公に申し上げたいことがある。すなわち、國有、國営にいたしましても、國家管理にいたしましても、ややもすれば官僚統制の惡弊がはいつてまいりまして、どうしても個人のイニシアチーヴなり努力なり、あるいは創意というものが、侵される危險があるということは、率直に認めなければならないのであります。これが減殺策といたしまして、私は、この臨時炭鉱管理法案の成立とともに、次の二点を研究問題として考えていただきたいと思う。
 それはいかなることであるかと申しますると、三千万トン、三千五百万トンという絶対必要なる石炭生産をやる場合に、各炭鉱ごとに割当が実施せられる。その割当が、たとえば百万トンといたしました場合に、経営技能者と勤労者が相協力して、百二十万トンの増産になつたと仮定する。しからばわれわれは、その努力に対しまして、百万トンを超える二十万トンというものは、その経営技能者なり、あるいはまたそれに從事する從業員なりの福利施設あるいは食糧その他のために、何らかの意味でこれを自由処分するなり、あるいはまたマル炭という制度を創設いたしまして、資材とこれを物々交換するような、何かこれは官僚惡統制に陷らないところの障壁を考えるということが必要ではないか。
 第二点は、思いきつてこの炭鉱労務者に能率給制度を採用するということであります。徹底した、眞に能率本位の賃金制度を完成するということが、労働者のひとつの意欲を振起し、彼らの利己心を少くとも活用して、民族全体としては、かえつてこの経済再建に役立つのではないかと私は思うのであります。すなわち、あくまで官僚の完全なる統制という一元的な考え方から、できるだけ利己心をも滿足し、自由の要求を少しは滿足させながら、眞に石炭増産に邁進する態勢が整えば、私は三千万トン、三千五百万トンの達成は必ずしも不可能ではない。私はこの完遂を信じて疑わないのであります。今後の石炭問題の帰趨といたしましては、要は國管制ではなくして、國管の運営、これを、できるだけ現実のわれわれ日本人の人間性というものを斟酌して、推進していくというところに、最後のかぎがあると信じて疑わないのであります。
 以上、國管問題に対して、國民協同党の一員として所見の一端を述べまして、原則としては、この法案に賛意を表する次第であります。
#62
○議長(松岡駒吉君) 外崎千代吉君、発言者を指名願います。
#63
○外崎千代吉君 第一議員倶樂部は、前田正男君を指名いたします。
#64
○議長(松岡駒吉君) 前田正男君、発言を許します。
    〔前田正男君登壇〕
#65
○前田正男君 私は、これから第一議員倶樂部を代表いたしまして、討論するものであります。
 國管に対しまして、いろいろと論議する点があるのでありますが、まず第一に考えなければならないことは、先ほど商工大臣が提案理由で述べられましたように、イデオロギーを離れまして、増産できるかできないか、こういう観点から國家的に考慮すべきものであると思うのであります。すなわち、私の考えますところでは、増産に対して必要なることは、経営権の移動であるとか、官僚統制の強化であるとか、こういうことではなくして、具体的な増産対策をどういうふうにして実施しなければならないか、こういうことであると私は思うのであります。すなわち、労働時間の延長であるとか、あるいはまた二十四時間制の確立等、幾多考慮すべきことはございますが、特にこの際考えなければならないことは、住宅であるとか、食糧であるとか、こういうものが非常に不足しております折柄、坑内夫と坑外夫との比率において、坑内夫が増大いたすように、ぜひとも努力しなければならぬと、まず第一に考えます。
 次に考えますことは、毎日出勤しておれば給料がもらえる、こういうような給料制度では、私はほんとうの増産はできないと思います。働いたならば働いただけ余計もらえるという、出來高拂制がぜひとも必要ではないかと思います。まして私は、この法案で考えておりますような、何通にもわたるようなこみ入つた書類を書いてみたり、あるいは報告書を作成したり、会議をやつたり、打合会をやつたりしても、決して増産はできないと思います。この点については、政府自身においても、最近において緊急増産対策を考えておられるようでありますが、まずこの際、これを実施することが第一に必要ではないかと思うのであります。國家管理法のような経営権の移動であるとか、書類や会議が殖えるとか、そういうことは、ずつとあとでいいのであります。すなわち、労働組合法により労働協約が結ばれ、経営協議会がある以上は、これで民主的な経営は十分はかられるはずであつて、新たに本法案をつくつて生産協議会等を設ける必要は私はないと思うのであります。まして、この法案に書いておりますように、場合によれば事業主に対して、その権利の讓渡または貸與を命じたり、別に炭鉱の管理者を任命する、こういうようなことは、生産を増強するという観点から見れば、無用の議論であると私は思うのであります。
 すなわち、生産の指揮命令系統が実質的に実施されるためには、私は第一に必要なることは、同一事業場に働くものとして、利害を同じくする人的なつながりが絶対必要であると思います。このことは、戰爭中に軍需工場で一技術者として働きました経驗から見ても、明言できることであります。また、皆さんが戰爭中の軍の管理工場等において、管理者であるとか生産責任者とかいうものをつくりましたけれども、一向に増産しなかつたという事実を見ても、おわかりになると思います。(拍手)すなわち、新たに本法案をつくつたり、書類を出してみたり、会議をしたりしたところで、何も増産にはならないと私は信ずるものであります。
 要は、どうして具体的な対策を、だれが実行するかということであります。すなわち、実際に実行するものは、同じ事業場の働くものとして利害を同じくするものが、自己の利害と國家の利害と一致させて働くものであります。これは人情からして当然のことであると思います。すなわち、実際の業務に関係の薄い議論は、人間性というものを無視して、実効の少いものであります。経営権の移管等の問題は、当面としては必要ない。私は政府が考えておられるような緊急対策をまず実行して、それから後に、こういう法案についてお考えになるのが当然ではないかと思います。(拍手)
 しかし、このことは、すでに現在政府自身においても、よく認められておることでありまして、現在緊急対策をいろいろと計画しておられることで、この点は明らかであります。要は生産でありまして、議論ではないのであります。ましてイデオロギーではありません。私はこういうふうに信ずるものであります。
 なお私は、ごく簡單にこの法案についてお話させてもらいたいと思います。この法案において、経営権の実体を、その経営に專念してきたところの経驗者から取上げまして、あまり経営の経驗が少い委員もまじつておられるところの生産協議会に、その実権を移す、決定権が移されるということは、私は大いに考えなければならないことであると思います。すなわち、一刻でも早く、一トンでも多く増産しなければならぬときである以上は、おのおのは、自分の経驗によるところの能力を最も能率的に、最も合理的に使用さるべきでありまして、このことは、労働者の人たちの立場というものは、十分経営協議会で述べられるはずでありますから、非能率的な、非專門的な協議会に経営の決定権を與えることは、これは非常に間違いであると私は思うのであります。まして、現在におきましては、いろいろと困難なる状況がございまして、表面的の計画だけでは、運営はできない場合も多々あります。殊に時宜に適したところの多少の無理もしなければなりません。緊急の措置もやらなければなりません。ところが、本法案でそういうことを縛られましたならば、実際の運営上に多大の支障を來すのではないかと私は思うのであります。
 最後に私は、本案によりまして、從來私企業として炭鉱を発展させてきたところの先人の努力、歴史というものは、一時的にも停止されまして、將來の炭鉱の発展過程に重大なる影響を與える以上は、当然政府の責任において、さらに生産目標を引上げるべきであるということは、当然のことでありまして、これこそ経営権の移動の理由があるのであると私は思います。從いまして、本法案実施にあたつては、生産目標の引上げは、ぜひともやらなければならないと思うのでありますが、私は、この法案では、生産目標の引上げどころか、三千万トンの生産もおぼつかないのではないかと思うのであります。私は、こういう法案だけではなしに、先ほど來述べておりますような、緊急増産対策の方を先に実行するということが、絶対必要であるのではないかと思います。
 私は、以上の論点から、この法案が現下の緊急重大なるときに取上げられまして、いたずらな議論と混乱を起しておるということは、絶対に避けなければならぬと思います。私たちは、もつと皆と一体協力いたしまして、この緊急対策をどしどし実行することに、われわれ國会も皆樣も協力していただきまして、こういうような議論倒れをするときではないと、私は固く信ずるものであります。
 以上のように、声明をいたしまして、私の話を終りたいと思います。
#66
○議長(松岡駒吉君) 北二郎君、発言者を指名願います。
#67
○北二郎君 日本農民党は、高倉定助君を指名いたします。
#68
○議長(松岡駒吉君) 高倉定助君、発言を許します。
    〔高倉定助君登壇〕
#69
○高倉定助君 わが農民党は本法案に反対であることを前提といたしまして、若干の意見を述べさしていただきます。(拍手)
 炭鉱の國家管理が問題になりましてから、すでに百余日を経過した今日、ようやく第二次三党首会議とかが終りまして、妥協点を見出したとかでありまして、去る二十七日に國会に提案になり、本日鉱工業の委員会に付議されて、愼重審議されることと思うのであります。
 一体この法案の提案の理由は、石炭の増産を達成して、わが國の産業復興と経済の安定を期するにある云々、と言われておるのでありますが、はたして、この法案の実施によつて石炭の増産をはかり、殊に至上命令ともう言うべき本年度生産目標三千万トンを中心といたしまして、今後年次増産の実をあげることができるかどうかについて、論点があると思うのであります。政府は、この法案の実施によりまして、確実に増産を期し得ることをはつきりと國民に確約することができるかどうか、問題であります。
 終戰後、わが國の石炭は年々減産の一途をたどつておることは、いまさら申し上げるまでもないのでありまして、これが減産の原因はいろいろありましようが、私は第一に、この原因は、炭鉱労務者の生産意欲の減退であり、また資材・資金難であると思うのであります。特に労務者の生産意欲の減退は、大きな原因であります。これをいかに向上せしめるかにつきましては、いろいろ意見があつたようであります。労働意欲の高揚はもとよりでありますが、食糧問題を通じての稼働能力の向上であり、この八時間労働制を撤廃しなければならぬと私は思う。
 終戰後わが國は、一日も早く経済の危機を突破いたしまして、産業を復興せしめなければならない。この重大なるときにあたつて、國民全体が、八時間はおろか十時間でも十二時間でも、お互い力のある限り働いて、生産増強に努めなければならないのであります。すなわち、あらゆる職域を通じまして、この働くという氣持を、戰時中のそれ以上にとりもどすことが第一でなければなりません。殊に石炭があらゆる産業の基盤であるならば、國民はこれに協力すべきであると考えるのであります。
 しかし、いかに働けと言いましても、生活の裏づけがなければ、これが達成は至難であるとともに、いかに能率をあげてもあげなくても、その收入が一定であつては、働きたくとも働く氣持になれないのは当然でありまして、働けば働くだけ賃金が上昇することによつて生産意欲が増加し、従つて増産することができるのであります。そこでわが党は、賃金制度の基本を能率賃金におきまして、補足的に生活保障制を採用することを主張するのであります。
 第二に、資材の問題でありますが、これにつきましては、資材の入手困難だつたのは、むろん資金難に基くことは当然でありまするけれども、何よりも基礎資材そのものの絶対的不足に原因しておるのでありまして、それが早急に克服されなければならないのでありまするが、國管になりましたならば、はたして、これが解決することができるか否かに問題があると思うのであります。
 水谷商工大臣、否、社会党の水谷さんが、過般北海道においでになりまして、上砂川炭鉱で労資の懇談会をやられたときに、鉱連の一代表者から、國管になつたら資金や資材が重点的に集中されるかどうか、これが根本問題だが、今の無力な政府にそれを期待することはできない、(拍手)今日までの実情を見るならば、はつきりそれが証明されておる、現実の問題として、國管になつても、これが保証されぬ限りは意味をなさないと質問したそうでありますが、百の論議よりも、この一言が一番政府の痛いところを衝いておると思うのであります。これは鉱連側ばかりでなく、一般の炭鉱人がともに懷いておる危惧でありまして、今まで幾多の苦杯をなめさせられてきた現実面から来ておるのでありますが、政府は國管によつて、これに対して確信があるか否か、私は大きな疑問を懷くのであります。
 現在各炭鉱におきましては、増産達成に必要な施策の実施が著しく遅れた惡條件下にありまして、なお労資相携えて、三千万トン確保のために全力を傾注いたしまして、政府の指示目標突破の成果を收めつつある今日、この現実の成績より見まして、何を好んで國管を断行せなければならないのか。考えてみますと、ただそれは、まさに産業社会化というイデオロギーにとらわれるものでありまして、かえつて今日の企業経営に混乱をひき起し、減産を招来することは避くべからざることであると思うのであります。(拍手)
 さらに國管の場合、いわゆる官僚独善に陷り、ひいてはこれが各産業面に浸透いたしまして、やがては恐るべき事態になることは当然であると思うのであります。あの運輸省が現在やつております、九州の志免炭鉱の例に徹しましても、官僚独善の弊に陷り、能率低下を來し、石炭業そのものの不健全化を来すことはもちろんでありますが、わが党の最もおそれておりますのは、國民経済の大動脈ともいうべき石炭業が非能率になる結果、諸産業の動力が割高となり、製品の高價格を出現いたしまして、國際貿易場裡において、わが商品は販路を失うようになることであります。もし、かようなことになりましたならば、食糧の輸入はもちろんできなくなり、文化國家の建設等は思いもよらぬことでありますとともに、他産業に波及いたしまして、恐るべき事態に到達することを考えますときに、わが党は、この法案に対しては断固として排撃せざるを得ないのであります。以上であります。(拍手)
#70
○議長(松岡駒吉君) 林百郎君、発言者を指名願います。
#71
○林百郎君 共産党は、徳田球一君を指名いたします。
#72
○議長(松岡駒吉君) 徳田球一君、発言を願います。
    〔徳田球一君登壇〕
#73
○徳田球一君 この石炭が、終戰後だんだん減産し、今でもわずかに三千万トンという、こんなはしつぱな、こういうものさえも、まだふうふう言つて生産できないというのは、一体どこに原因があるか。アメリカにおいては、わずかに五十五万人をもちまして、一ヵ年六億三千万トンを産出しておる。英國においては、わずかに七十万人をもちまして、二億一千百万トンを産出しておるのである。日本は、四十万人の労働者をもつて、わずかに三千万トンが出ないという哀れな状態である。
 これは何だ、これは資本家がサボタージュしておるからだ。資本家がすべてやみとインフレの冒險によつて、どろぼうしようという根性があるからだ。全施設を崩壞し、あらゆる労働者の待遇を破壞しておる。
 現在といえども、これを生産しようと思えば、五千万トンはたちまち生産せられるのである。実際上、現在切羽におきます労働は、わずかに四時間内外である。坑口における三交替といたしまして二十四時間でありますが、この坑口から切羽まで行きますのに、二時間もかかる。あるいは一時間のところもあるけれども、二時間かかる。そうすると、往復四時間でありまして、切羽における労働は四時間でありますから、三交替においても、わずかに十二時間である。これでは、やはり半分は寢かしておるのである。これは結局するところ、炭鉱の施設が崩壞し、これに対する資本家の投資が行われないからである。
 人間を増すことに対しまして、家屋の必要云々を申しますけれども、一昨年私は北海道に行きましたときに、朝鮮人の労働者や、あるいは中國の捕虜諸君の働いておりました小屋全部があいておる。腐らかしておる。現在とても、そうである。なぜ、これに労働者諸君を入れないのか。そうして、切羽において四時間交替といたしますれば、これはたちまち五千万トンはできる。四時間六交替制、これこそ、現在この問題を解決する根本的な施設である。これができなければだめだ。
 しかるに、これをやりますためには、かなりのやはり投資を必要とする。現在におきましては、投資をもつて利潤をあげるということは、まず不可能である。しかしながら、こればかりではない。これまでの官僚統制の補給制度というものは、なるべく惡い所、惡い所と掘れば掘るほど有利である。何と恐ろしいことだ。これは戰時におきましても同樣である。
 あの軍閥のわからずやのばか者どもが、ただ掘れ掘れ、何でもかまわぬ掘れというものだから、資本家はずるい、よろしい、掘ります、掘るけれども、金は要るだけ全部くれなければいかぬ、すなわち、生産價格は全部補償しなければいかぬ、よろしい、それでは補償するから掘れ、よろしい。そこで何を掘る。なるべく薄いところ、なるべく困難なところ、戰爭後は掘つても間に合わないところ、こればかり掘る。これは北海道でも九州でも同樣である。それで炭が出るなら理窟が合うが、炭はますます出なくなることはあたりまえである。
 事実こういう状態で國管にはいりますれば、何を引起すか。これまで三千万トンも出さなかつたことは、資本家にとりましては、金もうけの唯一のゆすりの種である。こうもり安の秘術は、ここに潜んでいるのである。三千万トン出ようものなら、補助金はもらえない。三千万トンは出ないぞ出ないぞ、三千万トン出ないなら金をくれる。補給金をくれる。あれをくれる。これをくれる。御馳走までくれる。何でもくれる。それで三千万トンはいかにしても出ない。この國管によりましても、水谷君が最も注意しなければならぬことは、ここである。
 三千万トンが、國管だから出るというわけにはいかぬ。國家で金をくれる。資材をくれる。三千万トンが出ればくれないのだ。だから、三千万トンはなるべく出さぬようにする。それはきまつておる。三千万トン出しさえしなければ、原料もくれるから、今現に注文しておる資材、今現に彼らがもつておる資材、これは堂々大仕掛けでやみに流されつつある。九州においても、北海道においても、そうである。
 私は最近九州に行きましたが、これは公然の秘密である。なぜか。國管になれば、政府からどんどんくる。雨が降るようにくる。何を持つているばか者があるか。闇に流した方がよい。
 さて、これが三年間と限つている点において、厖大な欠陷がある。なぜなら、三年間ごまかしておいて、資金をとる、資材をとりさえすれば、これでオー・ケー。あとはたらふくもうかる算段である。だから、できるだけこの三千万トンは出さずに、この三年間にうんと資金と資材を腹の中に納めることばかりを考えているのである。それでは國管も何もあつたものではない。三千万トン増産なんか、あつたものではない。こういう考え方ではだめだ。またこういう國管ではだめだ。(「そういう見方がいかぬ」と呼ぶ者あり)見方がいかぬのではない。事実である。(笑声)この事実を諸君が承知しないならば、九州に一緒に行きましよう。いつでもお目にかける。
 しかして、労働者諸君に対しまして、八時間実労働で切羽で働かそうと、今企てている。そうすれば、大体多くは十二時間以上、少くとも八時間は働かなければならぬ。坑口から下まで行くのは、これは労働だ。これを労働だと認めないのは、てんで労働者の立場を考えていないからだ。
 こういう強行をいたしまして、それでどんどん炭を掘ると仮定する。ところが、労働者諸君の收入は五千円を突破いたしますれば、いかなる現象が起るか。これは莫大なる累進課税を課せられるのである。從つて、五千円かせぐよりは四千九百九十九円までかせぐ方がよろしい。もうこの一円を飛び越えたら、おそろしい逆効果を生ずる。越せば、すべてこれは税金で取上げられる。これは税だ。だからして、九州でも北海道でも、もう五千円のそこまでいけば皆休む。家え帰つて寢る。現場に行かなければ増配はくれないから、現場には出て行く。出ていくけれども、十八日分を一ヶ月に延ばして働くのである。ちやんと延びるようにされている。これは労働者が惡いのではない。政府が惡いのだ。政府のかかる所得税の設定では、いかにしてもこれはだめだ。
 しかもわれわれは、五千円をもつてしても、今は子供を二人、三人もつておれば、食えないのだ。現にこの事実は、九州においては、こういうふうに現われている。昨年は、まだ労働者諸君は、村え行つて買い出すことができた。今度はもうその金がなくなつている。だから農村から物をもつてきて、やみに賣つているのである。しかるに、これさえも金がなくなりつつある。だから、この北海道の炭鉱をめぐる各農村におきましては、昨年よりも農産物價は三分の一に下落している。農村が恐慌を來しているのである。こういうことが起るのである。
 從つて、現在の制度というものは、ただに労働者諸君のみが惡いのではない。損をするのではない。これは実際農民も損をする。こういうやり方をすると、中小商工業者は全滅する。電力はなくなる。燃料はなくなる。資材はなくなる。一体どうしてやれるか。この年末までに、中小商工業者は全部崩壞すると言つてもよろしい。ですから、これは全人民にとつて、かかる制度というものは徹底的に破壞しなければならぬ惡いものだ。(「イデオロギーが惡い。」と呼ぶ者あり)そこでイデオロギーが悪いというのがいかぬ。イデオロギーはよい。イデオロギーがなければいかぬ。イデオロギーがなければ骨抜きだ。水谷君、君はイデオロギーを云々するのではないと言うけれども、イデオロギーのない人間は骨抜きだ。イデオロギーのない人間は、くらげみたいなものである。イデオロギーがあつて骨がある。イデオロギーがあつて鬪われる。
#74
○議長(松岡駒吉君) 徳田君、結論を述べてください。
#75
○徳田球一君(続) はい。諸君だつて、イデオロギーはもつておる。資本家的イデオロギーをもつておるのだ。從つてわれわれは、イデオロギーを攻撃するのではなくして、どのイデオロギーがこの國難を救い得るかを、われわれは考えなければならぬのである。すなわち、國営人民管理をもつて初めてこれは成功するのである。すなわちこれは、國営を前提とするところの國営人民管理をやらなければならぬ。
 社会党の諸君、社会党の自説をもつて目標とせらるるならば、われわれと、この点においてまさに一致する。それゆえ、諸君がこの政府を頼る、政府にかじりつくのではなくして、われわれと手を握つて、われわれ労働者、中小商工業者の全体が手を握つて、いつでもわれわれがこの議会に過半数を有して、堂々イデオロギーを先頭として鬪うところの態勢にまで諸君が大奮鬪をせらるることが、この石炭増産の秘訣であるということを私は申し上げたいのである。(拍手)
#76
○議長(松岡駒吉君) これにて自由討議は終了いたしました。
 次会の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
    午後五時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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