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1947/10/14 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第45号
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1947/10/14 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第45号

#1
第001回国会 本会議 第45号
昭和二十二年十月十四日(火曜日)
    午後二時五十三分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第四十四号
  昭和二十二年十月十四日(火曜日)
    午後一時開議
 第一 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
 第二 自由討議
一、自由討議の問題
  経済力集中排除法案(内閣提出)について
二、討議者の数及び討議時間
1、各党派の割当時間
社会党、民主党、自由党各四十分、國民協同党二十分、第一議員倶樂部、農民党及び共産党を通じて二十分。
2、各党派は、右割当時間の範囲内において、討議者の数を決定すること。
    ―――――――――――――
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 第一 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
#3
○議長(松岡駒吉君) 日程第一、刑法の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#4
○議長(松岡駒吉君) ただちに採決いたします。本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#5
○議長(松岡駒吉君) 起立二名。少数であります。(拍手)よつて参議院の修正に同意せざることに決しました。
     ――――◇―――――
  刑法の一部を改正する法律案(本院議決案)
#6
○叶凸君 憲法第五十九條第二項により再議決をなすために、刑法の一部を改正する法律案の本院議決案を議題とせられんことを望みます。
#7
○議長(松岡駒吉君) 叶君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて刑法の一部を改正する法律案の本院議決案を議題といたします。
 ただちに採決いたします。本案はさきに本院において議決の通り可決するに御賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#9
○議長(松岡駒吉君) 二名を除き、起立総員。よつて本案は、さきに議決の通り、出席議員三分の二以上の多数をもつて可決せられしました。(拍手)
     ――――◇―――――
 第二 自由討議
#10
○議長(松岡駒吉君) これより経済力集中排除法案について自由討議の会議を開きます。
 森三樹二君、発言者を指名願います。
#11
○森三樹二君 社会党といたしましては、安平鹿一君を指名いたします。
#12
○議長(松岡駒吉君) 安平鹿一君、発言を許します。
    〔安平鹿一君登壇〕
#13
○安平鹿一君 私は、日本社会党より指名いたされまして自由討議に参加し、自討由議の題目でありまする経済力集中排除法案につきまして、私の意見を述べたいと存ずるのでございます。
 本経済力集中排除法案は、その第一條におきまして、平和にしてかつ民主的な國家を建設するといい、また憲法第九條に明記されておりまする、日本は永久に戰爭を放棄するという規定の具体化、実践化の第一であるという見地から、原則に賛成いたす次第でございます。しかしながら、御承知のように日本の現在の経済は、敗戰とインフレによりまして、その根底が破壞されておるのでございます。わが國経済の建直しは、至極簡單なわけにはまいらないのであります。從いまして、本法を施行いたしまするにあたりましては、次の諸点を十分に考慮に入れなければならないと信ずるのでございます。
 まず第一に、企業経済の民主化及び社会化をはかりまして、財閥的経済集中を大衆的経済集中に肩代りをいたしまして、本法第一條の目的でありまするところの目的を達成しなければならないのであります。諸君も御承知のごとく、わが國はきわめて貧弱な資源・資材を保有しておるのに過ぎないのでございます。たださえ資源・資材に乏しいわが國は、敗戰によりまして朝鮮・台湾・樺太を失つて、國内にある乏しい原料・資材では、今日このままの企業を存続いたしましたにしましても、再建をはかることは、なかなか困難なことであるのであります。この乏しい原料・資材を外國から輸入しなければ、日本の経済力が増強され得ないことは、理の当然であるのであります。從つて、この乏しい原料・資材を外國から求め、輸入した原料・資材によりましてこれを加工いたし、再輸出に振り向け、貿易を通じまして日本の産業を振興しなければならないことは、御存じの通りであるのであります。
 このためには、國際的経済の基準、いわゆる國際経済の規模を前提としなければならないのでございます。すなわち、輸出先であるところの諸外國の経済的基準、規模、すなわち生産規模に対するわが國の生産規模がもしも下まわつている場合におきましては、当然に生産コストが上まわつてまいる結果となるのであります。輸出産業の不振となることが当然なわけでありまして、せつかくアメリカの御好意によりましてクレジツトが設定されたといたしましても、産業の振興において、企業がもしも分散解体せられたならば、貿易國諸國の生産規模と比べまして、わが國の生産規模がよりはなはだしく縮小されることは、理の当然となるのであります。從つてこの結果、わが國輸出産業が不振となり、貿易においてその競爭に勝てないということは、自明の道理であるのであります。特に現在のごとく保護関税の許されておらないわが國におきましては、なおさら國際的経済基準の規模が絶対條件とならざるを得ないのであります。試みにアメリカの製鋼業部門における状態をみましても、一熔鉱炉に八百トンが投入される場合、わが國はわずかに二百五十トンであります。その他機械企業におきましても、その規模ははなはだしく劣つているのが、わが國の現状であるのでございます。
 以上の点を檢討いたしてみましても、わが國の生産規模をそのままといたしたといたしましても、國際的生産基準がいかに劣つているかを知ることができるのであります。この点、特に考慮を要する点でありますので、私は、この集中排除法案を運営する上におきまして、過度の集中にあらざる経済の集中は、できるだけ経営の民主化及び社会化をはかりまして、第一條の目的達成をはかることにせなければならぬと存するのであります。
 具体的に申し上げますならば、このためには、できるだけ株を廣く國民大衆にもたせるということが必要であると思います。特に経済力集中排除法の適用される八千に近い会社の從業員を対象にいたしまして、労働者にできるだけその株をもたせるように努力せなければならないのであります。このためには、政府はできる限りの便宜をはかることに考慮を拂われなければならないと思うのであります。政府はなるだけ多くの労働者に持株せしめるためには、特別な機関をこのために設置いたしまして、從業員に対しては特に金融の便をはからなければなりません。今日の労働者は金がないから、ただちにこれを買えない。だからわれわれは、大衆保險金の運用、あるいは復興金融の引当、あるいはこれを利用する等の便宜が労働者にもはかられなければならないということを申し上げたいのであります。
 かようにして民主化をはかり、過度にあらざるものはできる限り存続せしめるようにいたしまして、しかも、ただいま申し上げましたように、その株はなるべく多くの大衆に持たせるということによつて、本法案の第一條の目的を達成することができると存ずるのであります。これが第一点。
 第二点は、公益事業で特定の人の利益を対象としない事業、これは國営化、社会化をはからなければならないということでございます。たとえば、鉱山業のごときそれであります。鉱山業は、採鉱と精錬とを切り離すことによつて致命的になるのでございます。御承知のように鉱山業におきましては、今日必要な金、銅及び硫化鉱を生産しておりますので、この見地から考えてみますのに、國家的にもぜひ必要な物資であるのであります。かような性質をもつている公益事業に対しましては、ぜひとも國有社会化の政策をとり、本法の目的を達するよう留意しなければならないと存ずるのであります。
 第三に、労働者に直接生活の脅威を與えないように考慮が拂われなければならぬのでございます。すなわち今日の企業は、御承知のように多種多樣な企業があるのでございます。たとえば東芝の例にいたしましても、また冨士産業の例にいたしましても、あるいは電球をつくり、あるいはモーターをつくつているのでございます。その他の企業にいたしましても、廣範囲な地域にわたり、廣範囲な職種の企業が営まれているのでございます。ところが、本法を施行するにあたりましては、えてして資本家は本法の適用に便乘いたしまして、いわゆる資本家的な産業の合理化を強行せんとする意図に出ることは、火を見るより明らかなのでございます。このために労働者の首切り、賃下げは容易に想像することができるのであります。
 たとえば、具体的に申し上げますならば、原料工場と加工工場の二つが一つの傘下にあるといたしますならば、原料工場が赤字であり、加工工場が黒字であります場合におきまして、この両者が同一企業であるときには、赤字工場と黒字工場は、金融面に起きましても相互に援助し、その他の関係におきましても相互援助が行われて、その二つの工場の相互的な関係の上に企業が成り立つておるのでありまするが、もしも、これを本案によりまして分散いたしまするとするならば、赤字工場に働いておりますところの労働者は、たちまち生活の脅威を受けなければならない。すなわち、首切り、賃下げによる労働條件の低下が行われることは、当然であるのであります。
 このように本法案に便乘いたしました資本家の利潤追求、資本家的な合理化を防ぐための方策といたしまして、政府は十分な勘案をしなければならないのであります。政府は、この赤字経営の工場に対しては、立ち入つてその赤字のくる原因を究明しなければならないと考えるのであります。赤字原因の究明に対しまして、政府は、かりに私は名前をつけるのでございまするが、國営による試驗工場、これは私がかりに名前をつけたのでございまするけれども、かような赤字工場を、國営による試驗工場に指定して、その赤字の原因を究明しなければならない。しかして政府は、この赤字企業を黒字企業に轉ぜしめるために、專門的な立場から究明し、あるいは金融財政方面からこれの援助をいたしまして、赤字工場が黒字になるようにはからなければならないのであります。
 むろんこのためには、今日の日本の窮迫した財政の中から捻出することは、はなはだ困難に考えるのでございまするが、これらの点は、赤字工場に対するに、黒字工場に何らかの形によつて課税をし、その財源によつて賄うことが必要と存ずるのであります。これは赤字工場が直接にその負担を労働者に背負わさないように考慮し、直接労働者の生活を脅威せしめないようにしなければならないという点が、第三点であるのであります。
 次に第四点といたしまして、持株会社整理委員会にできるだけ多くの労働者代表を参加せしめるよう考慮せなければならないのであります。本法案におきまする持株会社整理委員会の権限は、まことに強大なるものであるのであります。第三條におきましては、企業の範囲その他の決定権が認められ、第七條におきましては、原則、計画、手続等を定め、諸般の情報を集め、または情報を提出せしめ、さらに帳簿書類その他の所有者に対して、当該物件の提出を命ずる等、あるいは同條第三項におきましては、参考人の出頭を自由に求め、また同條第五項におきましては、財産讓渡もしくは引渡しを命ずる等、その他團体企業に対しまして解散権を有しておるがごとく、その職権はまことに強大なるものがあるのでございます。
 今日の構成を見ますると、金融代表者及び資本家その他学識経驗者をもつて構成されておるのでございます。なるほど人物的にはりつぱな方々でございまするが、この運営推進にあたりましては、まことに重大な関係をもたれておるのでございまするから、十分な注意と考慮が拂われなければならないのでございます。
 さきに、労働組合法及び労働関係調整法におきましては、労働者と経営者はいすれも対等の地位が法律的に公然と認められておるのであります。われわれ労働者が、今日の敗戰日本の再建のために、否、再建を双肩に担つているという誇りと矜恃をもつて、生産復興のために邁進しておるのでございます。本法第一條に明記されておりまする目的におきまして、明らかに平和的かつ民主的な國家再建をはかるための方策の一環として、また民主的で健全な國民経済再建の基礎をつくることを目的としておることが明瞭にされておるのでございます。今日平和的なる國家の再建は、その本質において平和を愛する労働者、戰爭によつてもうからない労働者階級の協力なしには、平和國家の再建は絶対に望み得ないのであります。(拍手)また民主的で健全なる國民経済の再建も、働く労働者の同意、納得のできる方法以外には絶対に不可能であるのであります。このことは、働く者が働く以外に生産の増強は絶対にあり得ないからであります。生産増強の伴わないところに、國民経済の再建は断じてあり得ないことを断言いたす次第であります。
 この見地に立ちまして、本法の生命でありまするところの持株会社整理委員会及び監査委員会に、労働者代表をできるだけ多く参加せしめることが、本経済力集中排除法案の目的を達成する唯一の方法なりと確信するものであります。
 最後に、経済力集中排除法案に最も重要な利害関係をもつておるところの労働者に対しまして、持株会社整理委員会の指令に対する利害関係人に労働者を含むことを明記するよう要求いたしまして、私の意見を終る次第であります。(拍手)
#14
○議長(松岡駒吉君) 坪川信三君、発言者を指名願います。
#15
○坪川信三君 民主党といたしましては、梅林時雄君を指名いたします。
#16
○議長(松岡駒吉君) 梅林時雄君、発言を許します。
    〔梅林時雄君登壇〕
#17
○梅林時雄君 私は、政府が本國会に提出されました経済力集中排除法案につきまして、民主党を代表して、いささか所見を述べたいと思います。
 敗戰日本の今後の運命を決定づける重大法案と言われるだけに、この法案をめぐる空氣ほどはげしい緊迫感を日本経済界全般に與えたものは、最近なかつたのであります。すなわち、株式は大幅に低落し、金融界はひどく警戒氣分になつて、異常な金融梗塞状態を呈し、一般産業界また前途に対する深刻な不安に襲われまして、仕事も手につかず、まさに一種の心理的恐慌状態を現出いたしたのであります。
 このような混乱と不安状態を引起した原因は、直接的には、この法案がはなはだしく抽象的であり、その運用の基準が具体的に少しもはつきり示されていないところに、この第一の原因があると私は思うのであります。さらに、この問題を考察するにあたり、敗戰という絶対的事実に対する國民の考え方において、あまりにも非合理的なものが依然として強く支配しているところに、問題の深い第二の原因がひそんでいると思うのであります。
 今さら申し上げるまでもないことでありますが、この法案のよつてきたる根拠はポツダム宣言に由來し、さらに具体的には、終戰直後の昭和二十年十一月六日、日本政府に対し示達されましたところの米國の対日管理方針覚書の中に、はつきりと指示されているのであります。すなわちわれらは、眞に平和的にして民主的な新秩序の再建を誓いました今日、連合軍にしりをたたかれ、叱咤されるまでもなく、自主的にこれを推進し、一日も早く日本経済の民主的再建の基礎を自力でつくるべきであつたと思うのであります。何となれば、これが一日も早ければ早いだけ、日本経済の立ち直りがはかどり、國民経済の安定もまた速やかに実現できるわけであります。逆にこれが遅れれば遅れるだけ、國民が受ける塗炭の苦しみは長引きまして、ついにはインフレーシヨンの破局的進行、再生産の縮小による國民経済の破滅、國民生活の破綻というような悲惨な事態に立ち至つてしまうからであります。
 終戰から今春四月に至るまでの約二十余箇月間は、日本再建の基礎を打立てるに決定的に重要な時期であつたのであります。しかるに、この重要期間を何ら有効に役立て得なかつたということにつきましては、その後國内的にも、あるいは國際的にも、手きびしい批判が行なわれておるのでありますが、公平な立場から見まして、われわれもまたこれを認めざるを得ないのを、まことに遺憾と思う次第であります。もし、この経済民主化のような重大案件を事実見送つたとすれば、今から顧みまして、まことに返す返すも残念にたえないところであります。これこそ正しく、去る四月の対日理事会の席上、連合軍最高司令部から日本経済の現状に関する報告がなされた際、英國代表の発言した通りであります。
 すなわち英國代表は、敗戰日本経済を復興し、これを破滅から救うために講ぜらるべき有効なる政治的措置を、一年有半にわたつて失敗し続けてきた、おそるべき失敗の連続であつたと指摘しておるのであります。日本人は武力による戰爭に負けた上に、終戰後、さらに民主化の闘いにおいて再び負けたのであります。敗北に敗北を重ねたと、諸外國から笑われるのは、まさにこの事実を指しておるのではないかと思うのであります。これすなわち朝野に、現実に対する冷嚴な自己批判がなく、眞実の平和的民主主義として自己を脱皮しようという眞劍な氣魄がなきため、ひいては消極的経済政策となり、ここに二度失敗したという最大の原因があるのであります。
 すでに二度負けてしまつた今日、断じてわれらは同じ失敗を繰返してはならないのであります。ここにわれらは重大決意と勇氣を固めまして、本國会において経済力集中排除法案審議に万全を期し、國民経済の合理的再編成の基礎をつくり、ここに大國民としての襟度と氣魄と志向を、正しい行動をもつてはつきりと全世界に示し、もつて國際的信用をかち得なければならぬと信ずるのであります。(拍手)
 この法律案は、同じく日本経済民主化の画期的方策としてすでに実施中の独占禁止法、企業再建整備法の二つの法律と共通の目的をもつておることは、すでに皆樣御承知の通りであります。この新法案の特色は、これらのものよりも、もつと突き進んだ強力なものであるという考え方にあるのであります。換言すれば、独占禁止法と企業再建整備法のごとき経済立法が、今後円滑にその目的を遂行できるようにするための先駆的、すなわち日本経済民主化への一大先駆を、経済力集中排除なる非常手段によつて一挙に切り開こうというのであります。強力無比な性格をもつだけに、その運用いかんが実に重要であると断ぜざるを得ないのであります。
 本法案そのものは、あくまで抽象的であり、経済力集中排除の原則を規定いたしました基本法でありまして、排除の基準の決定その他運用の一切は、あげてこの法律の実施機関である持株会社整理委員会の手中に握られておるのであります。從いまして、この法律案は、いわばこの委員会に運用を白紙で一任する、全権委任的なものでありまして、その運用においてもし一歩を誤りますならば、時にまつたく收拾のつかぬ状態に日本経済を陷らしむるの危險性を多分に含んでおるのであります。ゆえに、これが実施に当る当局は、日本経済の実態を全面的に把握して、あくまでも愼重なる檢討を行い、経済力排除の基準を合理的に定め、これが賢明なる適用をし、國民経済の合理的再編成を達成するよう、特に政府に対し要望いたしたいのであります。
 日華事変、太平洋戰爭の期間を通じまして、過度の企業集中をなし、経済能率が著しく惡化しておる事業体等におきましては、分割は当然必要でありましようが、敗戰によつてまつたく生産の危機に直面しておるわが國の多くの産業は、もしも実情を無視して極端な企業の分割を行うならば、企業の合理的経営を阻むことになりまして、その採算性を破壞するとともに、ひいて生産を全面的に低下させ、その結果は、企業にあける雇傭量の低下となり、國民経済全般の人口扶養率を弱小化することに相なるのであります。かくして惡性インフレーシヨンと、巨大な失業と、極度の窮乏を激成いたしまして、深刻な社会不安を起し、日本経済を破壞に導くおそれが十分にあることを、われらはここに銘記しなければならぬと思うのであります。(拍手)かくのごとき事態の発生は、万難を排してこれを未然に防がなくてはなりません。
 経済力集中排除の基準は、同時にまた日本経済再建の基準となるものでありまして、いわば車の両輪のごとき関係にあると思うのであります。一方の車だけが極端に小さいといたしますならば、その車自体は車としての機能をまつたく失つてしまうことに相なるのであります。かかる点に深甚なる考慮を拂いましてこれが実施に当られんことを、強く私は当局に要望する次第であります。
 企業の民主化は、何も極端なる企業の分割をやらなければできないというものでは、絶対にないと私は思うのであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
正常なる資本主義のもとでは、資本の効率をあげる一方、國民全体としての人口を扶養し、その生活を安定して、一般社会の福祉を増進することのできる程度まで高度の経済力の存在を許さなければならない場合もあると信ずるのであります。從つて、この法律案の運営にあたりましては、それが機械的、一律的にならざるよう、あくまで高度の彈力性をもつて望むことが絶対不可欠の要件であると信ずるものであります。もし、このようにせられないとするならば、日本経済の今後の発展はまつたく期待できないのみならず、日本人が平和的にして生産的な、独立できる生活を続け、國民経済を自立し維持していくことの基礎が、まつたく崩壞してしまうのであります。
 由來日本の経済は、御承知の通り資源に乏しく、資金の蓄積が貧困であるため、その基礎がきわめて弱体であります。すなわち、原料資源を海外に依存せざるを得ないのが日本経済の宿命であります。從つて、経営者及び労働者の勤労力を十二分に発揚いたして、海外との競爭力を保持し、貿易に重点をおいて、全体としての國民経済の再生産を確保していかなければならないと思うのであります。
 今日、連合國最高司令部の好意によりまして、民間貿易の再開が許される一方、輸出入回轉基金の設定による一種のクレジツトの供與もありまして、われわれは終戰後初めてようやくにして國民経済の前途に一脈の光明を見出しかけたのであります。今こそ日本國民は、終戰後の縮小再生産から拡大再生産への轉機をつかもうとしている重大かつ貴重なときに際会しているのであります。かかる二度とない機会を絶対に逃さざるためにも、各方面との関係を深く考慮し、本法の運用には愼重の上にも愼重を期せられたいのであります。
 重ねて力説いたしたいことは、経済力集中排除の基準は、すなわち日本経済再建の物さしであり、ひいては日本経済の今後のあり方を根本的に決定するものとなるのであります。端的に申しますならば、われわれ日本國民の運命は、この経済力集中排除法の運用いかんによつて決定されると申しても、決して過言ではないのであります。從つて、あくまでも集中した経済力の排除のための排除では絶対にあつてはならぬとともに、基準の一律的、機械的設定は、あくまで回避しなければならぬと信ずるものであります。
 そこで、最後に申したいことは、持株会社整理委員会の機構であり、その民主化という点であります。國家百年の運命を託すと言つてもよいこの法律の実施担当機関であります持株会社整理委員会が演ずる役割と、その活動こそは、今や全國民がひとしく最大の関心を拂い、大いに注目しておるところであります。從つてこの委員会は、天降り的のものとせず、あくまで民主的なものでなければなりません。その委員には、國会の代表を初め、労資の代表、学識経驗者、すなわち産業経済界の権威を集めまして、机上案でなく、経済の実情を正確につかんで愼重に審議する、眞に民主的機関となすべきことを特に強調いたしまして、私の所見を終ることといたします。(拍手)
#18
○副議長(田中萬逸君) 小澤佐喜重君、発言者の指名を願います。
#19
○小澤佐喜重君 日本自由党では、まず石山賢吉君を御指名申し上げます。
#20
○副議長(田中萬逸君) 石山賢吉君、発言を許します。
    〔石山賢吉君登壇〕
#21
○石山賢吉君 自由党といたしまして、本案に対する意見を申し述べます。
 私は、本案には原則的には賛成であります。戰時以來誤まられた統制経済が行われました結果、知らず知らすのうちに日本の経済は独占的となり、支配的となりまして、自由経済の機能を沒却することがはなはだ多くなつたのであります。本法案は、経済力の集中を排除し、自由経済の基盤に立ち帰らして、経済活動を盛んにするものでありますから、自由経済に立脚いたしまする自由党といたしましては、これに賛成するのであります。企業集中を高度化することを常に心がけて、國営國管を手始めに、すべての産業を國有國営にもつていこうとしておる社会党の内閣が本法案を提出されましたということは、何という皮肉の現象でありましようか。(拍手)私は、はなはだこれについてはお氣の毒に感ずるのであります。
 先刻社会党の安平君が、日本の産業規模は小さい、外國に比較すれば小さい、それであるから、この小さい日本産業の規模をさらに経済力集中排除法案によつて細分するならば、外國との競爭力がそがれる、それであるから、本法案には賛成するが、運営にあたつては、できるだけその規模を大きくするように手心をせよというお説でありました。何だか私には、どういうのか、賛成されるのか、反対されるのか、一向わかりません。
 私どもが考えまする場合には、工場経営というものは、單なる規模のいかんによるものではありませんで、これはその事業の性質に應じまして、それぞれ経済單位というものが定まつておるのであります。しかして工場の建設は、ことごとく工場の経済單位を基礎として建設するものでありまして、大会社でありましても、必ずその工場は大規模とは限らぬのであります。たとえば、ここに百万錘を有する紡績工場があります。その工場は、百万錘をもつて一工場としておるのではありません。それぞれ経済單位に應じまして、工場をいくつかにしておるのでありますから、これを分割いたしましても、決して生産力を下げるものでもなければ、國際競爭力を削減するものでもありません。その点において、單なる会社の規模を見て生産力のいかんを云々されることは誤りだと思うのであります。私は、この経済力集中排除法案によりまして、工場、会社の單位を経済單位に復帰せしめて、そうしておのおのの企業を同一にして経済活動を盛んにならしめることこそ、日本経済再建に最も有益だと信ずるのであります。
 さらにまた社会党の安平君は、原料工場が赤字であつて、製品工場が黒字の場合において、これを分割するには困るのではないかとおつしやいましたが、この法案は、関連性のある生産は分割するものではありません。関連性のないもののみ分割するのでありますから、何とぞ御安心願いたい。その点、御心配御無用と存ずるのであります。(拍手)ただ問題となりますのは、同じ工場を十なら十経営しておる会社があります。その工場に生産力の優劣のある場合におきまして、これを分割していくつかの会社にいたしますると、弱体工場の生産が困るではないかというので、この法案に対する反対説があるのであります。これはすなわち全体経済主義の思想から出たものでありまして、弱体工場というものは生産費の高い工場、生産費の高い工場は、すなわち資材・労力を濫費するものでありますから、こういう工場は、むしろその生産を休止いたしまして、優秀工場にその生産を讓つた方が國のためにもなりますれば、消費者のためにもなる。しかしてまた外國貿易に対する競爭力も増すのでありますから、私は、その点から考えましても、この経済力集中排除法案に賛成するものであります。原則的には賛成いたしまするが、本法案の内容を檢討いたしますると、われわれの遺憾とする点が多々あるのであります。
 その第一は、第三條であります。第三條は、排除すべき集中経済を規定したものでありますが、それは五項目から成り立つております。ところが、このうちの四項目は、独占禁止法、企業再建整備法、持株会社整理委員会、すなわち財閥解体法等と重複するものでありまして、新しく経済力集中排除を必要とするものは、ただ第二号に過ぎません。第二号に、「関連性のない二以上の事業分野において活動している企業」とありまするが、この一項が必要だけでありまして、他はことごとく既発の法律と重複するものでありますから、本法案は法制技術から見まして、はなはだ拙劣であることを遺憾とするのであります。(拍手)
 第二は、六條でありまして、これは排除の基準を示したものでありますけれども、この法文の内容を見ますると、生産割合とか、能力の対照とか、工場の数とか、関連性の有無とか、こういつたような名目をあげてあるだけでありまして、生産割合をいかにするか、関連性はいかなるものをもつて認めるかというようなことに対しましては、少しも具体的な記述がないのであります。しかして、この決定は持株会社整理委員会に一任してあるのでありまして、その委任があまりに廣汎でありまして、もし、この決定者が適当の能力を欠く者でありますれば、はなはだ危險なる運用となるものでありまするから、包括的授権法規のはなはだしいものとして、私はこの点をもつと明確に法律をもつて規定されんことを望むのであります。(拍手)
 と申しましても、私はこの基準を例の官僚式の一律一体、すなわち惡平等をもつてせよというものではありません。坊間傳えられるところによりますと、産業の支配力は二〇%であるとか、あるいはまた銀行を除外するとかしないとか、いろいろの説が傳えられておりまするが、もし生産の分量を一律一体に二〇%と規定するごときことがありましては、特殊の製作に從事している生産者がはなはだ困ることになるのであります。たとえば、鉄道の機関車でありまするとか、自動電話交換機でありまするとか、鉄道自動信号機でありまするとか、精密計測器でありまするとか、こういうものは、特殊の技能を有する特殊の設備をもつ工場でなければ、その製作が不可能であります。かようなものの生産比率は、それに應じて適当にきめる必要があるのでありまするから、私は、法律をもつて大体の基準を定め、しかしてその運用について万全を盡されんことを希望するものであります。最後に申し上げたいことは、第十七條に、國、地方公共團体、公團、労働組合は第三條の規定から除外するとあるのであります。すなわちこれらのものは、いかに経済力を集中してあろうとも排除しないという規定でありまするが、労働力のごとき最も大きな経済力を、いかに集中しても構わぬということは、この法文とは矛盾するものでありまして、今日は労働力が強くなつて、企業が弱体化しておる。この場合におきまして、労働力がいかに廣く強く團結しても構わぬ、生産は各別に分割すると言いましたならば、彼我の均衡を失しまして、生産増加にはなはだしき障害を及ぼすものと考えるのであります。さらに公團につきましても、これを無制限にやることはいかがでありましようか。公團のごときは、その濫用を愼しむべきものでありまして、これは既存の公團に止めまして、それ以上に拡張せぬというようなことにすることが必要だと思うのであります。
 以上は、私の本案に対する意見でありまして、これをもつて私の意見を終ります。
#22
○副議長(田中萬逸君) 森三樹二君、発言者を指名願います。
#23
○森三樹二君 日本社会党といたしましては、中崎敏君を指名いたします。
#24
○副議長(田中萬逸君) 中崎敏君、発言者を許します。
    〔中崎敏君登壇〕
#25
○中崎敏君 私は、日本社会党の指名によりまして、経済力集中排除法案に対する二、三の意見を申し述べたいと思うのであります。
 本法案の提出さるるに至りました理由につきましては、わが党の安平君からすでに説明があつたのでありますので、重複を避けることといたしまして、ただ本法案が提出されなければならぬという理由について一言申し上げたいと思うのであります。すなわち、自由主義の手放しなる放任によりまして、ここに経済の上において大きなる是正をしなければならぬ理由が生じたわけであります。すなわち、弱肉強食なる自由党の主張する自由主義政策なるものには、大なる欠陷がありまして、これを排除することによつてのみ、初めて民主的なる國民経済の確立ができるということが明らかになつたわけであります。過般通過いたしましたところの独占禁止法につきましても、さらにまた本法案につきましても、同じように、この自由主義に対するところの重大なる訂正を加えなければならぬ理由が現在存するということを御承認願いたいと思うわけであります。
 星島氏は商工大臣の時代におきまして、企業再建整備法案が本会議に提出されます際に、あらゆる惡材料は出盡してしまつて、これでもう一切惡材料はなくなつたのだということを、るる説明されたわけでありますが、現在こうした独占禁止法案あるいは経済力集中排除法案、こういうものが再びこの國会に提案されなければならぬということは、何たる時勢の皮肉であるかということを考えなければならぬと思うわけであります。
 私は、民主的で健全なる國民経済再建のために提案されましたところの本法律案に対しては、賛成を表するものであります。すなわち、わが社会党の立場におきましては、民主的で健全なる國民経済の樹立の上に、さらにまた本法案の上におきましては、國、公共團体、公團及び労働組合は、本法の適用から除外されておるわけでありますので、いわば事業の社会化、民主化の意味におきまして、この法案というものが、わが社会党の政策と大体において相容れるものであるということを表明せざるを得ないのであります。しかしながら、この法案の全体に対しまして、無批判にこれを是認せんとするのでないわけであります。
 すなわち、平和的かつ民主的な國家を再建するための方策の一環として本法案が提案されたわけでありますけれども、わが國の何人としても、あえて戰爭を企図するものはないばかりでなく、憲法の條章においても、すでに戰爭の放棄を明らかにしておるわけでありまして、今後わが國が再び戰爭に進んでいくというふうな意図の毛頭ないということは明らかでありまして、この意味はむしろなくてよいのじやないかというふうに考えるわけであります。
 さらにわれわれは、平和的生活を営むがためには、万民そのところを得るという意味において、わが國の資源、資材の貧弱なる現在の実情において、その実情に照らして、日本経済の再建の上に万全を盡すべき点も考えるわけでありまして、この意味におきまして私は本法案に対するいささかの疑義をさしはさむものであります。
 まず、本法案の適用に対しましては、わが経済力の上において大きな変革をもたらすものなるがゆえに、その適用に際しましては、過度の経済力の集中を排除するというふうな意味に解釈いたします。これはドイツの実例においても見られるところでありまして、ただ單に経済力の集中を排除するという意味でなく、過度の経済力の集中を排除するというふうに局限された規定に変更さるべきものではないかと思うのであります。
 さらに独占的性質を帶びる事業の中におきましても、たとえば銀行のごとく信用をもつて立つところの組織にありましては、その組織の大きいということが、経済の上において一つの大きなる威力となり、力となるわけでありますので、こういうふうなものに対しましては、むしろ除外例を設けるべきではないか。さらにまた軌道のごとき、あるいは電氣のごとき、本來の性質がむしろ独占的なものに対しましては、例外的な規定を設けて本法案の適用より除外すべきものではないかと思うわけであります。
 さらに本法案は、全権委任立法的な性質をもつておりまして、ちようど戰時中における國家総動員法のごとく、あるいはまた臨時物資需給調整法のごとく、きわめて廣汎なる権限が持株会社整理委員会に一任されておるわけでありますが、この点につきましては、今後十分の檢討を加へる必要があると思うわけであります。(「それは反対か」と呼ぶ者あり)反対ではありません。むしろ、これに対して私の修正すべき意見を述べております。
    〔発言する者あり〕
#26
○副議長(田中萬逸君) 靜粛に願います。
#27
○中崎敏君(続) まず本法案によりますところの規定を見ますと、首相の権限というものは、きわめて限られた範囲に規定してあるにすぎないわけであります。すなわち、特株会社整理委員会の決定が事実に反するというふうな場合において、利害関係人が不服申立をした場合においてのみ初めてこれを裁決するというふうな、ごく限られたる範囲に限定されておるわけでありますけれども、かくのごとき廣汎な権限をもつたところの國家的重要職権を行う委員会に対しましては、むしろ政府の監督権をより強化して、さらにまた國会に対しても責任をもち得るというふうな規定に改むべきではないかと私は存じます。
 さらにまた持株会社整理委員会は、経済力の集中に該当するところの具体的基準の明示をみずからなすことになつておるわけであります。すなわち、具体的の基準は持株会社整理委員会が單独にその基準を決定して、これを公告することになつておるわけでありますが、國民経済全般に対する重大なる関係をもち、さらにまた企業関係者に対しても大きなる利害関係を有するかくのごとき重大なる問題を、持株会社整理委員会に一任さるるというふうなことは、きわめてこれは重大な問題でありまして、むしろかくのごとき事項は、この法律において直接、あるいはまた政令の形において、その規定をなすべきものと考えておるわけであります。
 さらにまた施行規則につきましても、さらに聽聞会の場合におきましても、ことごとくこれは持株会社整理委員会が單独にそれらの手続を規定することになつておるわけでありますけれども、むしろ、かくのごとき場合におきましても、直接法律その他の命令の形において、さらにまた政府の直接指示のもとに、これらをなすべきものではないかと考えておるわけであります。
 さらにまた関連性のないところの事業分野は、本法律によつて除外排除されることになるわけでもありますけれども、從來わが國の企業は、多く関連性のない事業におきましても、いわゆる多角経営ということが、事業の経営を堅実にする意味において、さらにまた経営の合理化の意味において、盛んに行われておつた実情にあるわけでありますが、かくのごときものに対しましても、何らの例外なくこれを排除するということは、それでなくとも企業採算の不如意の現在の状態において、さらにまた物資の不足のときにおいて、一つでも多くのものを生産する必要があるというふうな場合において、この企業に対して致命的打撃を與えるのではないかということをおそれるわけであります。でありまするがゆえに、かくのごとき事業が、いやしくもコンツエルンのごとき強大なる企業体となつて現われたときにこれを排除すべきであつて、ことのいかんにかかわらず、関連性のない事業をことごとく排除するということについては、いささか行過ぎではないかと思うのであります。
 さらにまた、かくのごとき法案の実施によりまして各企業が排除さるる場合においては、國家経済としましては重大なる影響を受けるものでありまするから、まず大所高所から総合的計画によつて、一つの企業を排除することによつて全國の生産力にいかなる影響を及ぼすか、さらにまた國民経済にいかなる影響を及ぼすかということについて、総合的に樹立した計画の見地から個々の事業の排除の適用を考えるべきものと考えるわけであります。
 さらにまた本法案の期日が、昭和二十三年九月三十日となつておるわけでありまするが、各企業は、その指定されることについて、実に戰々兢々としておるわけであります。自分の事業がはたしてどういうふうになるかということを案じ、さらにこれが生産の上においても、大きなる影響を及ぼすものでありますがゆえに、この期間はできるだけ短縮する必要があると思うのであります。こういう意味におきまして、むしろこの指定期間を一箇年の長きにするよりも、あるいは六箇月程度に短縮される方が、日本経済全般から見て明らかに利益であるというふうに考えるわけであります。以上、簡單ながら私の所見を申し述べたわけであります。(拍手)
#28
○副議長(田中萬逸君) 坪川信三君、発言者を指名願います。
#29
○坪川信三君 民主党は喜多楢治郎君を指名いたします。
#30
○副議長(田中萬逸君) 喜多楢治郎君に発言を許します。
    〔喜多楢治郎君登壇〕
#31
○喜多楢治郎君 本日自由討議の議題となつております経済力集中排除法案は、ポツダム宣言の原則に則つて、平和的かつ民主的國家を再建するための方策の一環とする、対日占領政策の基本原則を背景として行われるものでありますることは、容易に想像せられるところであります。從つて、占領下である日本の現実を冷静に批判し、偏狹なる独善的、利己的見解に支配せられることなく、占領政策の根底は再び日本が戰爭を誘発する原因を除去するにあることを、まずもつて念頭に置く必要があることは十分承知いたしておるところであります。
 申すまでもなく、この経済力集中排除法の適用を受けるわが國経済の現状は、無條件にその適用を許すほどの、なまやさしいものではないのであります。まさにテンポの早いインフレに悩み、正常なる企業はほとんどすべてと言つてよいほど原料、資材及び資金の不足に苦しみ、不断の努力を続けつつも、残念ながら縮小再生産の過程をたどり、連合軍の援助により辛うじてその存立を維持し、生産及び流通の過程を継続しておるのであります。
 財閥等の独占企業、それは大部分大企業を表現するものでありますが、経済力集中排除法の制定をまつまでもなく、すでにポツダム宣言の基本原則に基き、制限会社令、証券保有制限令、持株会社整理委員会令、私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律、企業再建整備法等により、解体、整備、制限を加えられ、非常なる束縛を受けつつも、一應は経済民主化の線に沿つて、徐々に各種の措置が講ぜられつつあるのであります。
 かかる現象は、個人の富の不当なる集中による多数企業の支配を表現すると言われます。財閥等という点を抜きにいたしまして、大企業の解体という面から考えまするならば、企業の國内的競爭の促進という見地よりいたしますれば是認せられるものでありますが、飜つて眼を國際的競爭という点に轉じますならば、先刻社会党安平君、自由党石山君よりもるる申し述べられました通り、巨大なる外國企業に対比いたしまして、日本の競爭能力の弱化とも考えられるのでありまして、この点、特に日本が將來貿易によつて生存を維持していかなければならないということを考慮に入れます場合に、十分に愼重なる檢討を加えなければならないのでありまして、わが國経済の將來を決する最も重要なる問題であります。もしこれらの法律のほかに、なお経済力集中排除法という強大なる法律が附け加えられることありとすれば、まさに、このことが日本経済の破局への前奏曲とならずと、はたしてだれが軽々に断言し得られるでありましようか。(拍手)破壞せられましたものの建設がいかに困難であるか、われわれは身をもつて体驗したばかりではありませんか。いたずらに外形にとらわれ、本質を忘却することなきよう、特にこの際注意を喚起いたしたいのであります。
 次に中小企業におきましても、官僚的統制の欠陷によりまして、原料・資材・資金の隘路に最も苦しみ悩んでおり、そのために、やむを得ず協同組合的結合組織を活用し、資金・資材の獲得をはかり、かつそのむだを排除しつつある現況であります。経済力集中排除法の排除対象に、企業結合なる言葉がありますが、まさか、かくのごとき中小企業の苦しみを免れるために生れましたる結合に対し適用するとは夢だに考えられませんが、最近の政府の施策を見ますれば、中小企業育成に何らの対策も用意していないのではありませんか。のみならず、最近はこの種の中小企業協同組織と考えられますものにまで閉鎖機関令を適用し、閉鎖機関に指定し、その数は実に数百に及んでおる実情であります。そのために、産業界殊に中小企業界は非常なる混乱を來しておるのでありまして、彼らは、いかにして進むべきか、迷いに迷い切つておる状態であります。
 以上、排除の対象となる日本経済界の実情を申し述べてきたのでありますが、もちろん、私は決して現状のままで妥当であるとは申しません。現在の経済界において、未だに封建的要素を含んだ残滓があり、戰爭により不当に富を集中し、戰後の日本経済界を独占せんと企てる分子が皆無とは言えず、あるいはまた戰爭誘発の温床とも言うべき軍國主義的機構を持続せんとする企業が存することを認めるものであります。これらに対しまして、排除する面もないことは言えぬのであります。
 しかしながら、その排除対象の日本経済全般は、前述のごとく実質的に弱体化せられて、排除の対象となるにはあまりに貧弱であります。しかも、かくのごとき状態にある産業界の実情をわきまえず、從來のごとき官僚の行い來つた一方的一片の法律によつて排除せられるとすれば、わが國経済の將來にとつて、暗澹たる感を抱かせるのであります。(拍手)國民全体が眞劍になつて日本経済の現実を把握し、國民経済の將來の桎梏となる企業なり結合なりを発見して解体分離し、將來の日本経済の発展の素地をつくるべきであつて、かかる廣範かつ深遠なる大事業は、一行政官聽、一委員会、あるいは從來のごとき独善的官僚のなすべきところでもなく、またなし得るところでもないと存ずる次第であります。
 さて、國会に提出になつている経済力集中排除法案の内容を、ここに若干劍討してみたいと思うのであります。まず第一に、この法案と諸法律との関係が問題となると思うのであります。終戰後つくられた数々の立法、殊に財閥解体等を目的とする制限会社令、持株会社整理委員会令、証券保有制限令、アメリカのアンチ・トラスト・ローに範をとつたと言われる私的独占禁止法との関係が、きわめて不明確であると考えるものであります。特に私的独占の禁止法及び公正取引確保に関する法律によれば、本経済力集中排除法の目的は十分達せられると考えられる点が少くないのであります。從つて、このりつぱなる独占禁止法に屋上屋を架するごとき法案をつくることは、いかなる意味か了解に苦しむものであります。
 第二に、いうまでもなく本法案の適用範囲の対象は、國営、公営を除いた私企業にのみ適用せられると考えておりますが、独占禁止法制定に際しても問題になつたごとく、独占の権利の上に寢る厖大なる國営、公営の独占的企業にも、本法案の趣旨を準用して集中を排除し、これを私的企業に開放し、新しい自由競爭に乘り出すことも必要かと考えるものであります。
 第三に、いかなる企業を集中排除の対象にするか、きわめて明確に定めていない点であります。またいかなる分割方法をとるか、何ら法案に明示せられていない点であります。経済力集中排除法が制定せられると傳えられてから、生産は上らず、取引を阻害している実情でありまして、排除指定終了までは、日本経済に大きなマイナスを與えるに相違ないのであります。そのため巷間には、一千万円以上の企業が対象となり、あるいはその生産能力が全國生産能力の一〇%以上であると傳えられる等、そのために、それらを免れる行爲に專念し、何ら生産の実態に寄與しておらないような有樣であります。これらの根本的欠陷を是正するためには、この集中排除の具体的指定基準を法律においてなるべく明文化し、國民の納得し得るような方法をとることが最も適当と考えるのであります。
 もちろん立案者が答弁すれば、かかる具体的基準を固定した法律に書くことはなかなか困難であり、同じ経済力の集中でも業態によりて異なり、あるいは資本金額が対象の基準となることもあろうし、またいかに経済力が集中しても、日本特有産業で、集中を認めなければらぬ企業もあり、簡單に法文化し得ないのであつて、從つて、持株会社整理委員会に強力なる権限を與え、彈力性ある運用を行う方法が、日本経済の実態に合致するものであるとお答えになられると思います。それが、われわれには納得できぬ点であります。新憲法において、國会が國民の最高決議機関と言われておりながら、國会の知らぬ間に、この大法案の施行が行われ、一夜のうちに日本経済の全貌が変つているということは、われわれの承認するすることのできぬ最も重大な理由であります。(拍手)
 第四に、本法案において絶大なる権限を行う持株会社整理委員会に対する監督規定が、全然欠如している点であります。ただいま申し述べましたごとく、具体的基準がないために、結局持株会社整理委員会が裁量の余地ある権限をもつことになりますが、右の委員会は官廳でないので、責任関係が相当不明確であり、これに対する監督をだれが行うか、問題とする点であります。聞くところによれば、持株会社整理委員会令の改正によりこの欠陷を補うとか言われているが、むしろ、この経済力集中排除法案にこそ監督規定を挿入するのが最も必要と考えるところであります。その監督も、この法案の重要性に鑑み、單に行政官廳の監督のみでは不十分であり、この國会において監督すべきであり、しかも、常時に継続して監視するためには、國会の特別委員会等の制度を設けるのが最も妥当であつて、この法案の趣旨を貫くのに適切な措置と考える。この点、残念ながら本法案には全然触れられていないのであります。
 以上、本法案は趣旨において諒とすべき点をもちながら、根本的欠陷を数多くもつたものであると考えるものであります。すなわちこの法律は、ポツダム宣言の原則に則つて、民主的、平和的國家を再建するための方策の一環とする、対日占領政策の基本的原則を背景として行われるものであると考え、さらにまた日本経済機構に残存する各種の独占的要素、封建的残滓を除去し、日本経済の基礎をつくろうと考える時には、この法案の制定はやむを得ないものと存ずる次第であります。しかも、日本経済が直面するこのきびしい現実を思うとき、この法案の目的を達成するためには、どうしても國民の代表たる國会において不断の監視を行うにあらざれば、その効果を完全に発揮し得ないものと痛感するものであります。
 以上私は、ここに申し述べました欠陷、これらの重大なる欠陷を除いてこそ、初めて本法案を成立せしむべきであると信ずる次第であります。(拍手)
#32
○副議長(田中萬逸君) 小澤佐重喜君、発言者を指名願います。
#33
○小澤佐重喜君 日本自由党では、次ぎに塚田十一郎君を指名いたします。
#34
○副議長(田中萬逸君) 塚田十一郎君に発言を許します。
    〔塚田十一郎君登壇〕
#35
○塚田十一郎君 日本自由党の立場からいたしまして、経済力集中排除法案に対しての意見を若干申し述べます。
 この法律の意図しておりますところは、法案第一條に明記しておるところであり、それによりますれば、國民経済を合理的に再編成することによつて民主的で健全な國民経済再建の基礎をつくるにあるというのであります。しかも、これこそ平和的かつ民主的な國家を再建するための方策の一環であるとするものであります。
 資本主義自由経済が、その弊害の極まるところ各種の独占形態を生じ、ここに本來人間に從であるべきところの経済が、人間を隷属せしめるに至り、営利のために人類の幸福を犠牲に供するに至つたことは、われわれのひとしくこれを認めているところであります。しからば、それが集中せられるときに初めて働きをなすものでありますが、しかも、その集中が度を越す場合には、常に弊害を伴うこともまた事実であります。経済力の集中において、またしかりであります。
 この意味におきまして、國民の幸福を念願とする國の政策が、過度なる経済力の集中を排除せんとする考え方は、その本旨において、われわれも必ずしもこれに反対するものではないのであります。殊に今日のわが國経済におきましての集中が、太平洋戰爭を通じてわが國の経済界に生じたものであり、從つて、その集中の過程は、経済自然の発展に從わず、ある別個の目的のために人爲的に発生したものが非常に多いことを考え合わせますときに、これをこの際解体整理して、経済をその本來の基盤に再編成しようとするこの考え方は、これは当然に日本の再建の上に出てきてしかるべきものであると私どもも考えるのであります。
 このような見地に立つて本法案を見ているわが党といたしましても、やはりこの法案についてなお幾多の点に非常に危惧の念を禁じ得ない点があることを申し上げなければなりません。その第一点は、先刻も申し上げましたように、この法案が平和的かつ民主的な國家を再建するために絶対に必要なものであるとせられている、この考え方に対してであります。わが憲法におきまして、日本民族は永久に兵力を放棄して、平和民族として新しく出発することを規定いたしております。私たちがあの憲法審議の際に、その問題についての率直な氣持を申し上げますならば、われわれは民族の將來の行き方として、平和的であることについては必ずしも不賛成ではない、しかし、このような行き方が世界の全民族と共にとられないときに、われわれ民族のみが不当なる圧迫を受けることは、必ずしも避け得られないのではないかという氣持をもつたのであります。この法案につきましても、これとまた同樣な氣持をもつて、われわれはこれに対処せざるを得ないのであります。すなわち、経済力の細分せられるということは、その國におきましては、その國力が弱まつてくるということで、これは申すまでもありません。しかし、もしもわが國の経済力のみが弱まつて、それによつて日本の産業が將來世界の産業の中に伍して正当なる競爭をなし得ないようになるという場合には、これは民族の將來としても相当に重大なる問題であるということを、私率直に感ぜざるを得ないのであります。
 第二の点は、先刻も申し上げましたように、経済は、すべて私の考え方からいたしますならば、これは廣い意味におきましての消費者の立場というものを第一に置いて考うべきものであると考えるのであります。從つて、その経済の規模、大きさ、機構なりが、この消費者の立場に不利を來すような形になります場合には、いかにすることによつて、それが消費者の立場に最も利益をもたらすかと言うことを基準といたして、再編成せらるべきであると考えるのであります。この意味におきまして産業を見ますときに、私は、そこにおのずから各種の産業に適正規模というものが当然起つてくる、こういうように考えられるのであります。從つて、経済力の集中を排除せんとする政府が、政策を実際に移されます場合には、どの範囲の集中を排除し、どの範囲以上はこれをそのまま存置するかというような問題は、すべて個々の企業について、どの範囲が最も適正なる規模であるかどうかということを、まずその判断の根本に置かれることを絶対に必要とすると考えるのであります。
 この観点からいたしまする場合に、本法案が持株会社整理委員会に附與いたしましたところの権限は、きわめて重要なる意義をもつものであると申さなければなりません。はたして、法案の規定しておるような委員会の構成をもつて、あらゆる種類の企業に対して、この適正なる規模の判断を誤ることなく、眞に本法案の意図するような國民全般の幸福が成就できるかどうかということに、非常なる疑問を懐かざるを得ないのであります。
 殊にこの持株会社整理委員会におきまして、次に非常に疑問をもちますのは、この持株会社整理委員会が本法案によつて附與せられますところの権限は、これは一種の行政権であります。しかも、非常に包括的な行政的な権限がこのような委員会に附與せられますことによつて、この持株会社整理委員会が、万一その権限の運用を誤りました場合には、いかなる責を國民に対して負うかということが、本法案に明示せられておらぬのであります。この点について、何らかここに規定を加えるのでなければ、この法案の持株会社整理委員会に與えたる権限の重大性と均衡を失すると言わざるを得ないと考えるのであります。(拍手)
 次に本法案は、この適用の除外といたしまして、公團その他のものを規定いたしております。われわれの立場といたしましては、公團がいろいろの種類の企業に次々と数多く現われることを非常に反対をいたしておるのでありまして、政府がいろいろの事業にこの公團を多く殖やして、そうして、それによつてこの法案の脱法行爲をせられることを警戒しなければならないと考えております。
 最後に、先ほど社会党の中崎議員からの御意見の中に、銀行に対してはこの法案の適用は除外すべきであるという御意見がありましたけれども、私どもの考えからいたしますならば、銀行も当然にその適用の除外を受くべきではないように考えるのであります。その理由といたしましては、今日銀行は、地方の中小都市の銀行に至るまで、大銀行の支店が進出いたしまして、從つて、地方より吸收せられましたところの資金が、ほとんど中央の大都市に集まりまして、その大都市の大企業の利用するところとなり、絶えず農業及び中小企業が不当なる圧迫をうけておる。こういうような現象をなくいたしますためには、ぜひとも今後銀行も本法を適用されましては、地方的に分散せられた小銀行が、それぞれの土地、それぞれの地方の利益を第一において、資金の運用その他銀行経営の衝に当ることを、私どもは希望する次第であります。
 以上、私の本法案に対する意見を申し述べました。(拍手)
#36
○副議長(田中萬逸君) 石田一松君、発言者を指名願います。
#37
○石田一松君 國民協同党は、井出一太郎君を指名いたします。
#38
○副議長(田中萬逸君) 井出一太郎君、発言を許します。
    〔井出一太郎君登壇〕
#39
○井出一太郎君 本法第一條に明記いたしまするごとく、平和的かつ民主的な國家を再建するために終戰後幾多の施策がとられてまいつたことは、一々指摘するまでもないところであります。來るべき講和会議を前にして、われわれは今や日本の國内諸体制ををこの一点に集中して、もろもろの整備にこれ努めているわけであります。ただいま議題となつておりまする経済力集中排除法も、またその一環として考えられるのでありまして、財閥解体、補償打切り、さらに私的独占の禁止等のあとを受けて、日本経済再編成のための最後の仕上げを企図いたしておるものであると私は理解するものであります。
 本法は、当初企業再建基準法という仮称のもとに構想せられ、企業再建整備法が経理面を担当するのに対し、本法はむしろ組織法であるかのごとく傳えられたのであります。しかしその後は、むしろ独占禁止法と彼此相補うところの性格をもつものとして、産業界に大きな衝撃を與えるに至つたのであります。しかも、一時は強力措置が傳えられたり、昨年夏の補償打切りに伴う一連の立法や、去る三月末の独占禁止法のごとく、議会人としてはまことに不本意な方式で扱われるやを憂慮したのでありますが、三ヶ月に及ぶ紆余曲折の末、本法が今や國会において十分論議でき得るということは、顧みてすこぶる感にたえないものがあるのであります。
 戰爭を通じて膨張してまいつた日本の資本主義が、今までの形をそのまま温存でき得ないことは、もとより当然であります。しからば、いかなる方向をたどらしむべきかという問題は、われわれの前に投げかけられた重大なる課題であります。資本主義経済の発展法則を分析してみまするときに、自由競爭は、アダム・スミスのいわゆる見えざる御手に導かれているうちはともかくとして、その発展の段階の中に、社会的生産における無計画性が恐慌を生み出し、さらにその恐慌を媒介として、独占が発生することは、歴史がこれを証明しているところであります。
 わが國の資本主義は、もともとその内面に深く後進性を包藏いたしまする上に、戰爭と結びつくことによつて、独占の過程は拡大再生産せられ、米英において経驗したごときテイピカルな資本主義発展に比べまして、一種奇型兒的構造を示していると考えらるるのであります。ここにおいて、日本資本主義が自己修正をする場合、一は経済民主化の要請となつて現われ、他は社会化の声となつて現われてくると考えるのでございます。すなわち、無血革命と呼ばれつつある今日の段階を考えるならば、われわれは一方に民主革命を実践しつつ、他方に社会革命を推進しているという、世界史上かつてなかつた複雜なコースをたどつているのであります。
 かく考えまするときに、一つには、独占を解体して経済外的な支配を脱却した完全競爭を確保し、もう一度新たなる資本蓄積から出直したいとする行き方があるでありましよう。他方には、私的所有をアウフヘーベンしたところの、むしろ社会的所有としての独占を合理化しよう、こういう方向をとらんとする要求が出てまいるのであります。先ほど來伺つておりまして、たとえば社会党の諸君と自由党の諸君との間の御意見の尖鋭的な対立というようなものも、かような現状を表現したものと私は理解いたすのであります。
 もつと具体的に言えば、独占禁止法や経済力集中排除法は前者を意味するものであり、公團方式、國管方式は後者を企図するものであると言えるのであります。ただわれわれは、日本資本主義を規定している諸條件を吟味するとき米英のモデルをそつくりわが國にあてはめるわけにはまいらず、また資本主義の爛熟が必然的に社会主義に至るという、素朴なる公式論にもにわかにくみしがたいのであります。日本経済を再編成すべき二つの座標として、民主化と社会化という問題が取上げられるのでありますが、問題は、経済力集中排除法がその中においていかなる位置を占めるかを檢討しながら、本法案に対する批判を開陳してみたいと思うのであります。
 すでに同僚各位によつてあらゆる角度から論及せられました関係もございまして、私の申し上げることは、それと若干重複する懸念もあるのでございますけれども、一には政府当局に対して進言し、警告をいたしたいという見地から、以下、しばらく申し上げてみたいと思います。
 第一点は、すでにしばしば御論議のありましたように、本法の施行によつておそれられている生産性の低下であります。今日のわが國は過小生産に悩んでおり、傾斜生産方式といい、超重点といい、いずれもこれが克服策であるときにあたつて、少しでも生産が停滯し減少したならば、それこそゆゆしき大事であります。企業を分割することによつて、一貫作業による長所を失うような場合も生じましようし、または管理費ばかりいたずらに増大して、生産コストを高める結果と相なることも考えられます。しかし、持株会社整理委員長である笹山忠夫氏も言うように、この法案の目的は、企業のいたずらなる細分化にあらずして、それの平準化をねらつておるのだ、この考えは、私は正しいと思います。財界、産業界が、細分化による生産低下を実際以上に強調して、外ぼりだけで、内ぼりえ手をつけさせまい、こういうような態度であるのは、はなはだ遺憾でありまして、この際大悟一番すべきときであろうと考えるのであります。今こそ進歩的企業家たるもの、身をもつて日本産業の新しき経営適正規模をつくり出すべきであろうと思うのであります。
 戰爭に便乘して不自然に膨脹した日本資本主義は、巨大なる擬制資本を抱いて全身不随となつております。過去において技術的に眞に高度化することにおいて怠慢ではなかつたか、眞の意味の生産力の増大、すなわち雇用の量を殖やし、國民所得を増大せしめるという方向において達成されておつたかどうか、かように問われるときに、わが國の資本は大いに反省を要するところがあろうと思うのでございます。從つて、財界、産業界が無痛なるままに手術を施そうといたしましても、それはあまりにうま過ぎるのであつて、若干の出血は覚悟しつつも、それによつて起る生産力の低下を未然に防ぐことが、全産業人の祖國に対する義務であると感じて立つてほしいと思うのであります。
 企業の新しい適正單位が創設せらるべきであると同時に、企業のあるいは経営の合理化と生産コストの引下げが何よりも肝要となつてまいります。しかし、本法に便乘して機械化が停滯したり、労働の強化となつて現われたり、賃下げ、首切り等が行われたのでは、生産の低下は必至になるでありましよう。産業資本家は新しきモーラルのもとに立たなければならぬとともに、この要求は、勤労階層の側においても私は同樣であると思うのであります。勤労者各個が、その努力によつて社会的総生産の増大をはかり、そうしてこれが実質的賃上げになる、こういうような協力を私は期待してやまないのであります。
 第二点といたしまして、持株会社整理委員会の問題、これはすでに先ほども詳しく論ぜられたのでありますが、ごく簡單に申し上げます。本法を実際運営するのはこの委員会でございまして、この点からして、全権委任的な非常立法であると呼ばれる理由が出てまいるのでございます。本來この委員会は、総司令部覚書に基く財閥解体にあたりまして、主としてその証券の処理を任務として出発したものであります。從つて、今回集中排除法によつて、これだけの重要にしてかつ廣汎なる任務を附與せられます以上は、当然この委員会令も改正せられて、同時にわれわれに示されてほしかつたのであります。こうした重大措置を官廳にもあらざるこの持株会社整理委員会の性格は、一私法人にすぎないと私は思うのでありますが、これに任せるというのは、政府の責任回避であると批評されてもしかたがないと思うのであります。あるいはまた國会との関係におきましても、直接性がないのである。この点は、独占禁止法における公正取引委員会は、その委員の任命にあたつては衆議院の同意を必要としている。またその施行の状態は、國会にこれを報告する義務を負うております。こういうふうな措置が講ぜられねばならぬものである、こういうふうに思うのであります。
 いずれにいたしましても、持株会社整理委員会の実情を見るのに、構成メンバーは金融界、証券界に偏在をしており、実際生産面あるいは労働面のエキスパートというようなものは出ておらぬのであります。從來は、これでもあるいはよかつたかもしれないが、今この集中排除法を一手に引受けましたこの持株会社整理委員会は、相当に思い切つた改組が必要であろうと思うのであります。また責任の所在にいたしましても、政府との関連をもつとはつきりさすべきであり、先ほど民主党の喜多君が指摘せられましたように、特に國会議員をもつて構成することと相なつている持株会社整理監査委員会というようなものがあるはずでございまして、この官制は、たしか昨年九月発表に相なつたかと思うのでありますが、これが現在はたしてどういうふうに運営されているか、私は寡聞にしてまだその結果を知らないのであります。
 これを要しますに、持株会社整理委員会は、今ではこの名称さえもあまり適切ではないと思うのでありますが、本委員会の一挙一投足は、日本経済民主化のかぎを握つているのであり、その運用は、わが産業に生殺與奪の権を揮つているのでございます。われわれは、これが構成、機能、運営に対しまして、絶大の関心を拂うているのであります。
 第三点といたしまして、本法と独占禁止法、さらに企業再建整備法との関係を伺いたいのでありますが、これもすでに先ほどどなたかが指摘せられたところでございます。そこで、私はただ一点申し上げてみたいのは、独占禁止法におきましては、例の公正取引委員会の機能において、本法と混淆摩擦を生ずるおそれがあるのでございます。たとえば、公正取引委員会が持株会社整理委員会の下風につく、こういうようなことに相なりましては、運用がはたして公正を期待し得られるかどうか、かような点に多分の懸念があると思うのであります。
 第四といたしまして、金融機関の問題、これも先ほど出たと思います。あるいは公共事業の問題、これも同樣であります。これらが排除の指定を受けるものとなつておりますが、この金融機関あるいは公共事業、これらに対しまして、その公共性から愼重なる考慮が拂われまして、それほど無茶なことが行われまい、こう私は期待いたしておるのでございます。但し、今までの諸君からもいろいろ心配をせられたのでありますが、社会的信用を基礎として成り立つております金融業が、本法のために基礎を震撼せしめられて、預者の心理にも動揺を及ぼすというふうな点は、これはどこまでも防止されなければならぬと思うのであります。
 しかし、今や日本の金融機関は、再建整備法のごやつかいにならずして立ち行けるものは、ほとんどないという状態であります。金融業が國家に依存している度合は、非常に強くなつてまいつております。かような点よりすれば、金融は他の産業に比べて、社会化、國有化の基礎がより進捗しているということも言えるのでございます。從いまして、信用の点において動揺があり、取付けをこうむるというような場合には、日銀の操作あるいは國家の挺入れで解決がつくというところにまできているのでございます。從つて、それよりはむしろ通貨の安定であるとか、貯蓄の増強であるとかいう一般問題が重要であるのでございまして、本法によつて個々の金融機関が大打撃をこうむるというふうな点については、私は比較的樂觀をしているものでございます。本法によつて、企業の地域性を含めた地方分権化が行われるとしますならば、金融機関も、それと同じでないまでも適正配置を考えるべきである、こう思うのであります。
 第五に問題といたしたいことは、いかなる規格において排除をするか、その基準を示せ、この御意見もすでに出てまいつているのでございまして、この点は省略をいたしたいと思います。
 以上、いささか細目にわたりまして論じましたが、最後に指摘いたしておきたい点は、日本経済修正の方向であります。民主化及び社会化のこの二つの要請をいかにして満たすかという問題でございます。生産が社会的性質を有するにもかかわらず、生産手段は個人的な占有のもとにおかれている。この矛盾を解決しない限り、民主的で健全なる國民経済再建の基礎というものは、にわかには確立しがたいと思うのでございます。このためには、わが党の主張いたします協同組合組織の拡充によつて、資本主義方式を脱却した新しい生産樣式を打立てる必要をわれわれは強く感ずるのでございます。すでに從來の資本主義経済においても、資本と経営の分離が叫ばれ、資本の優位性は漸次後退しつつあつたのであります。
 協同組合の方式は、利潤を企業活動の原動力とするものではなくして、剩余金は社会的蓄積の意味をもちつつ、その資本構成の中に合理的に集中せられてまいります。組合総会による平等の票決権は、資本に拘束されずして、人材を経営面に押し出すことが可能でありまして、最も民主的な組織であります。独占が禁止せられ、過度の資本集中が排除せられんとしている今日において、協同組合組織の推進こそが、日本経済再建の近道であつて、民主化と社会化の両要請を満たすものであると信ずるのであります。この意味からいたしまして、独占禁止法が協同組合一般を適用除外においているのは、まさしく当然でありまして、本法におきましても、実際上の扱いにおいては、協同組合が排除の対象から除かれるであろうことを期待してやまないものでございます。
 以上、いささか本法に対しまして希望を述べ、注文をつけた次第でありまして、わが國民協同党といたしましては、持株会社整理委員会の民主的な拡充その他を條件として、本法案に賛成をいたすものでございます。私の意見の中において、政府の所信を問うている部分もあるのでありまするが、あえて本日と言わざるまでも、しかるべき機会において明らかにされたいと思います。
#40
○副議長(田中萬逸君) 中村元治郎君、発言者を指名願います。
#41
○中村元治郎君 第一議員倶樂部では、石原登君を指名いたします。
#42
○副議長(田中萬逸君) 石原登君、発言を許します。
    〔石原登君登壇〕
#43
○石原登君 日本経済の民主化は、敗戰日本の当然果すべき大きな責務であります。この点には、私どもはまつたく同意でございまするが、しかしながら、その手段といたしまして、本法の制定によるということには、私は多大の疑問をもつのであります。
 政府は、経済白書によるまでもなく、これまで機会あるたびに日本経済の危機を絶叫せられたのであります。その内容は、申すまでもなく日本の生産形態が今次戰爭を通じて徹底的に破壞せられた。さらに今次戰爭を通じまして、國内資源は徹底的に消滅をいたしたのであります。これがために、新しく生産の復興を研究し、ないしは努力をいたしておりますところの産業人、並びにこれに協力をいたしておりますところの非常なる多数の労働者の苦労は、実になみなみならぬものがあることを、われわれは存じておるのであります。さらにかてて加えまして、戰後新しく起つてまいりましたところの労働問題の混乱、さらに敗戰國として当然予想し、またなさなくてはならないところの賠償撤去の指定決定の遅延も、非常に経済界に思わざる動揺と不安を與えまして、今日に至つてまだ生産の安定性が確保されていないのであります。
 こういう時期におきまして、しかも日本の生産界が非常に困窮しておるという事実を認めるところの片山内閣におきまして、さらに根底からこの生産の現状をゆすぶるような本法案が提出されるということに対して、私は非常に遺憾に存ずるものであります。私は、今日眞に困り切つておりまするところのこの日本の経済が、このような大旋風がまき起され、大旋風の中にまきこまれて、ほんとうにこれにたえ得るだけの力をもつだろうかどうかということに、多大の疑念をもつておるものであります。私は、こういうような観点から、以下二、三簡單に意見書を申してみたいと存じます。
 今回のこの法案の中に盛られた中で、事業の多角経営を大きく否定しておる面があるように見受けられます。しかしながら、文明が発達し、科学が高度化されてまいりますると、その生産の手段がいきおい複生産的ないしは多角経営的に移行いたしまして、これによつて経営の合理化を行おうとするのは、これはひとり日本ばかりでなく、世界中いずれの経済人も採用する方式である、かように私は考えております。このような経済の必然性を無視しました企業の細分化を、本法案の実施によつて行いますならば、効果的生産ができるどころではなくて、非常な混乱に私は逢着すると思うのであります。この間の問題、さらにこの整備の間の問題を、政府はどのように調節されようとするのであるか、この点についてこの法案に明示がないのであります。
 さらにまた私が恐れますことの中に、労働爭議の問題がございます。現在集中形態をとつておりますところの事業には、黒字あるいは赤字の部門が包含されておるのでありまして、これが損得総合されまして、どうにか今日の経営が成り立つておるというような実情でございます。これを別々に切り離しますならば、当然といたしまして、この赤字経営の部門の経営は成り立ちません。從つて、われわれが非常に恐れておりまするところの新たなる失業問題が発生をいたしてまいるのでありまして、この問題については、すでに各方面の労働組合においても頭痛の種になつておるようであります。この問題に対して、はたして政府側において十二分の考慮がなされておるのであろうか。今日においても多数の失業者を抱えておりまするところの日本の現在、さらにほとんど失業保險を実際に会社の経営において賄つておるような今日の状態において、日本の経済が新たなるこの失業者をいかに救済し得るだろうか、こういう面についても、私は非常なる危惧の念をもつておるのであります。しかも、見落してならないことは、こういうような赤字において経営されておるところの企業の中にこそ、ほんとうに社会生活的緊要性をもつた事業が多いというこの事実なのであります。
 さらに私は、本法案の内容について簡單に申し上げたいと思うのであります。これは各同僚諸君からたびたび意見が申されてあるのでありまするが、一番重要な問題は、本法の実施が全面的に持株会社整理委員会に委ねられておるというこの事実であります。しかも、この持株会社整理委員会は、これは特殊法人ではありまするが、純然たる民間團体であります。この民間團体に対して行政権を全面的に附與するということは、これははたして可能であるかどうか。憲法の第六十六條を見てみましても、行政権の行使に対しましては、政府が國会に対して連帶責任を負うべきことが明記されている。しかしながら本法案には、この持株会社整理委員会のいわゆる行爲の責任に対して、その逸脱に対して、何らの規制もないのであります。
 私の聞くところによりますと、政府は当初、本案は法律案によらないで政令によるべく準備されたということを聞いたのでありますが、それが國会を尊重する、かような意味で法律案として提出された。しかしながら、この法案のどこを見ましても、國会を尊重するという意思が盛られていないのに私は驚くのであります。私は、この矛盾を発見いたしますることにおいて、本案の將來の実施にあたつては相当な警戒を要すると、かように存じております。
 時間の都合で、詳しいことはいずれ委員会において申したいと思うのでありますが、私ども第一議員倶樂部の立場におきまして、國家経済を危殆に導くようなかかる法案の制定に対しては、はなはだ遺憾ながら反対の意思を表示いたしたいと存ずるものであります。(拍手)
    〔副議長退席、議長着席〕
#44
○議長(松岡駒吉君) 木村榮君、発言者を指名願います。
#45
○木村榮君 野坂參三君を指名いたします。
#46
○議長(松岡駒吉君) 野坂參三君、発言を許します。
    〔野坂參三君登壇〕
#47
○野坂參三君 すでに第一回國会の初めから、いろいろな法案がここに出され、またいろいろの討論も行われましたが、今日の討論ほど奇怪な討論はないように思うのです。というのは、出てこられる討論者が、一体賛成しておるのか反対しておるのか、どちらか、よくわかりません。率直に言えば、腹の中では反対だが、口では賛成を唱える、こうとしかとれない。皆さんも言われたように、この法案は、日本の経済の將來にとつて、あるいは日本の民族の將來にとつても、非常に重大な関係がある。この場合において、われわれは賛成なら賛成、反対なら反対と、はつきり言うべきではないか。私は日本共産党を代表しまして、この法案には絶対に反対する。こういう立場をとり、これに対して、時間がありませんので簡單に理由を申し述べたいと思います。四つの点について申し上げたいと思います。
 まず第一は、この法案には平和的かつ民主的な國家を再建するために、こういう経済力集中排除法案を出した、こういうふうにうたつてあつて、いかにも経済力集中それ自体が何か犯罪でもあるかのように、また平和と民主主義に反するような書き方がしてありますが、これは明らかに経済政治の理論と実際に反するものである。ずいぶん思い切つて、ばかなことを言つたものだと私は思う。
 御存じのように、経済力の集中というものは、これは何かと言えば、結局資本主義の必然的な産物である。それから、これ自体がすなわち生産力の発展である。またわれわれの立場からいけば、それはすなわち、社会主義に対する物質的な基礎をつくるものである。從つてこれは、今日の経済全体の必然的な、自然的な発展だと思う。ところが、自由党の石山君は、自由主義の立場からこれに賛成されました。これはおかしな議論だと思う。この経済力集中自体は、これはすなわち自然的な発展であり、これが自然的な、自由的な発展、これすなわち経済力の集中である。これを否定されることは、すなわち自由主義の否定じやないかと思う。
 私は日本の將來を考える場合において、せつかく過去半世紀にわたつて、粒々辛苦築き上げたこの経済の集中というもの、これを今ちようど牛肉のこまぎれのように切り離してしまう、その結果がどうなるかと言えば、結局日本の生産力低下以外にはない。またここでもしばしば申されましたように、貿易の不振が結果として現われざるを得ない。また今日御存じのごとく、企業はいろいろの兼業をしなければやつていけないものが多い日本の状況です。これを切り離せばどうです。結局破産してしまう。その結果はどうかと言えば、結局労働者の首切りが始まる。こういうことを考えますと、この日本の経済の発展、生産力の発展を逆轉させるものである。從つて結論としては、結局これは日本の再建を妨害する法案としか言えないと思う。
 ところが、政府はよく申されます。この経済力を弱体化させないためには、政府はいろいろな手段をとると申されますが、もし政府がこの法案を通しながら、この法案に向かつて何か行動をやる場合において、経済力の弱体化を來さないようにするならば、すなわち、この法案に反対しなければならない。この法案をサボらなければ実はできないことです。また私たちの立場から言いますならば、社会主義に対するこれは非常な妨害になつてくる。遺憾ながら、社会党の総理大臣の方からこういう法案を出されることに対して、私は非常に遺憾を感じておる。これは石山君も指摘されましたが、社会主義、國家管理、こういう方向には、これは全然逆轉するものです。これにどうして社会党の諸君が賛成されるのか。
 しかしながら、一昨日鉱工業委員会で片山総理がこう申された。もはや疲弊その極に達している日本では、社会主義は実行出來ない、こう言われていますが、疲弊している今日の日本をよみがえらせるのは、すなわち社会主義だと思う。これを放棄して、どこに一体社会主義があるのか。ここにおいて、こういうことを申されたこの片山総理が、こういう法案を出されることは、すなわち社会主義を放棄されたから出される、こうとしか、われわれはとることはできないと思うのです。われわれの立場からは、今日の疲弊した日本民族の危機を打開するためには、結局社会主義の方向へ行かなければやれない。これがわれわれの主張であり、社会党も、かつてはこれを主張されたと思うのです。なぜ今これをやらないのか。これが第一の私の反対の理由であります。
 第二には、この法案は自由的な日本経済の再建を困難にする。この法案によつて経済が弱体化するということは、今日のここのすべての討論者が大体認められているところです。この経済が弱体化されること、これはすなわち日本民族の独立の物質的基礎が破壞されることだとわれわれは理解します。從つて、日本が弱い國になる。乞食の國家になる。外國にすべて頼らなければならない。こういう國家になりはしないだろうか。
 私はこの際皆さんに想起していただきたいのは、ポツダム宣言の第十條にこう書いてあります。われら、すなわち連合國は、日本人を民族として奴隷化せんとし、または國民として滅亡せしめんとする意図を有するものにあらず、こう書いてあります。私たちは、あくまでも日本の民族の独立と繁栄のためには、生産力が低下ではなくて、これが増進するようにしなければならない。ところが、この法案はこれを遮断している。これが私たちの第二の反対の理由であります。
 第三には、これはここでもすでに申されましたが、労働者に対する影響として、このようにして企業をばらばらにやつてしまう結果どうなるかと言えば、結局採算がとれないところもある。大量的な馘首ができる。しかも今日の労働者は、巷に出されればもう餓死するより方法がない。それでない企業においては、すなわち労働強化とか、あるいは低賃金、この方向によつて企業を何とか活かすより方法がない。もう一つ重大なことは、こうして企業がばらばらにされる。新聞に発表された報道によりましても、たとえば、いろいろな紡績会社――鐘紡とか大日本その他は、三つか四つにばらばらにしてしまう。その他の企業においても、ばらばらにされる。その結果どうなるかと言えば、労働組合の團結がまたばらばらにされる。労働者の團結の力がこれによつて弱められる。これを私たちは考えなければならない。またこのようにして、企業が集中排除される工場と、されない工場と、ここにまた区別が出てくる。片方はある。片方は出ていかなければならない。こういうことで、労働者の中でも境遇、待遇上においてまたばらばらが出てくる。すなわち、ここでも労働者の統一を破壞する。こういうことを導いて來はしないか。これが私たちの第三の反対の理由であります。
 第四には、これはしばしば指摘されましたが、持株会社整理委員会、あれが全権をもつていること、白紙委任状をもつていること、これは何を示すかと言えば、結局國会の権威を無視するものである。この点については、私時間がありませんから詳しくは述べません。これがすなわち第四の反対の理由であります。
 さて、最後に結論を申し上げたいのでありますが、この法案の最初にうたつている平和的、民主的な國家の再建、これには一体どうしたらいいかと言えば、まず第一に、企業の集中が戰爭と反動政治を生むという、こういう精神のもとにこれは書かれているが、これは誤りである。戰爭と反動を生むのは、企業の集中、生産力の集中が生むのでない。機械が生むのでない。工場が戰爭を起すのではなく、工場を握る人がやることなんである。すなわち、集中された経済力が少数の大資本家の私的独占となり、利潤追求のために運用されるところに、すなはち戰爭と反動政治を起す原因があると思います。ですから、この弊害を除くためには、生産力の発展を維持しつつ――生産力を低下するのではなく、発展を維持しつつ私的独占を排撃する、こういう方法をわれわれはとらなければならなぬ。これは何かと言えば、すなわち社会主義的な方向だと思うのです。われわれが参議院に今提出した重要産業及び金融の國営人民管理というこの方向が、すなわち生産力の発展をしながら私的独占の弊害をため得る唯一の方向ではないか。これが私の第一の結論。
 第二の結論としては、平和的、民主的な國家を再建するには、政治経済の上から、軍國主義的な、反民主的な要素を根絶すること――企業集中をばらばらにするのではなくて、政治と経済の上に民主主義を徹底させること。それには、たとえば戰爭犯罪人の追究を徹底的にやるとか、あるいは反動團体が今いろいろ策動をやつておりますが、これを封鎖しなければいけない。あるいはまた憲法に残つておるところのいろいろな反民主的な要素、これも改正する必要がある。言論の自由、これも徹底させてもらわなければならぬ。また農地の改革も徹底しなければいけない。経済面では、私的独占というものは排除しなければならない。この方向に向つての努力のみが、ほんとうに平和的、民主的な國家を再建する途だと、われわれは確信しておるのであります。時間が來ましたので、これで終ります。
#48
○議長(松岡駒吉君) これにて自由討議は終了いたしました。
 先刻の塚田君の発言中、不穏当と思われる言葉があつたように承知いたしました。速記録を調査の上、議長において適当の措置をとることにいたします。
 明十五日は定刻より本会議を開きます。議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
    午後五時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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