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1947/06/29 第2回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第002回国会 司法委員会 第45号
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1947/06/29 第2回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第002回国会 司法委員会 第45号

#1
第002回国会 司法委員会 第45号
昭和二十三年六月二十九日(火曜日)
    午後二時三十五分開議
 出席委員
   委員長 井伊 誠一君
   理事 鍛冶 良作君
      佐瀬 昌三君    花村 四郎君
      松木  宏君    池谷 信一君
      石井 繁丸君    猪俣 浩三君
      榊原 千代君    中村 俊夫君
      中村 又一君    吉田  安君
      佐竹 晴記君
 出席國務大臣
        内閣総理大臣  芦田  均君
        運 輸 大 臣 岡田 勢一君
 出席政府委員
        檢 務 長 官 木内 曾益君
        法務廳事務官  野木 新一君
        法務廳事務官  宮下 明義君
 委員外の出席者
        議     員 門司  亮君
        專門調査員   村  教三君
        專門調査員   小木 貞一君
    ―――――――――――――
六月二十八日
 人身保護法案(参議院提出)(参法第二号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 刑事訴訟法を改正する法律案(内閣提出)(第
 六九号)
    ―――――――――――――
    〔筆 記〕
#2
○佐瀬委員長代理 会議を開きます。
 刑事訴訟法を改正する法律案の質疑を続行する。花村君。
#3
○花村委員 私は刑事訴訟法に関連して、鉄道保安について総理大臣及び運輸大臣にお伺いします。私は鉄道運輸の被害者の一人であります。長崎縣から、私の東京の住所宛に送つた貨物が紛失して以來、すでに六箇月経過しましたが、未だ行方がわかりません。被害者は私一人に止まらないでしようが、被害者代表の声として聽いてもらいたい。かような事態に立ち至つたのは、帰するところ、鉄道の保安がよろしきを得ないためである。そこで私は鉄道の保安について少しく調査してみた。
 現行刑事訴訟法第二百五十一條によると、森林、鉄道その他特別の事項につき司法警察官吏の職務を行うべき者は、勅令をもつて定められ、その勅令には、鉄道次官、助役、警備係、自動車区長などが指定されている、その以外の者には司法警察官吏の権限を與えられていない。しかるに勅令で指定された者も、それぞれその本來の職務に忙殺されて、司法警察の仕事をするいとまがない。名ばかりで、実際これを行使できない。それで鉄道公安官一千五百名を養成して鉄道の公安維持をはかつている。しかし運輸省の公安維持は、國民の期待に副わない。たとえば、鉄道事故中、最も悪質の荷物の不着を調べてみると、昭和十年を百とすると、荷物盗難が二十二年度、一万六千五件に及び、このうち不着が二千百六十件、紛失が一千九百十件となつている。此の不着紛失事件数は、表向き届出られた事件数だけであつて、実際事件は莫大な数に達すると思う。
 こんな事情であるから、鉄道保安に対し、國民は不安の念を抱き、鉄道頼むに足らず、荷物を送ればなくなると思つている。敗戰後わが國はイタリーの鉄道事故と変らない。このようなことは、新刑事訴訟法の制定の場合にも、よく考えねばならぬ。また経済統制もこれにより影響を受ける。政府は現行刑事訴訟法第二百五十一條に相当する條文において、用意周到の考えをもつて起草されたものかどうか。この際政府の所見をお伺いしたい。
#4
○芦田國務大臣 花村君の御指摘になられた点は、まことにごもつともで、われわれ一同の遺憾とするところであります。一國文化は交通機関の状態で判断できるといわれるくらいに、わが民族の持性と、文化程度とが、鉄道運輸によつて判断される次第であります。敗戰後の道義頽廃振りは、わが大和民族がかほどまでに堕落したかと思えば残念な次第です。これを解決するには、どうすればよいか。これには花村君指摘される通り、刑事訴訟法に詳細な規定を設けるのもよい方法でしよう。しかしそれだけで救済できるかというと、そうではない。各方面にわたつて複雜な事柄を考えなければならない。
 鉄道公安については、鉄道公安官を設けて犯罪を搜査し、列車治安を維持させる案は、関係方面の承諾を得ている。從前の勅令第五百二十八号に代るべき司法警察職員の指定の中に、鉄道職員を加えて、鉄道公安官に代るべき職員の設置計画も目下考慮中であります。もつともこれだけで貨物の盗難紛失その他の事故をなくするに十分とは言えません。しかし今日の日本に、警察官に員数制限があり、政府の所期するように運ばない事情もある。花村君お話の点、私どもの共鳴するところで、政府も鋭意事態改善に処したいと思う。
#5
○花村委員 総理大臣の答弁によると、私の質問に対して、総理大臣は準備しておられないようであるが、いまさら準備時代でない。少くとも終戰後の鉄道公安の紊乱しているのは、周知の事実で、最近はますます苛烈で、列車すりや強盗が横行し、集團強盗もあつて、まことに恐るべき事態が生ずる。列車内の事故は言うに及ばず、われわれの平和なるべき旅行中の列車内で、恐るべき犯罪が繰返されており、われわれ友人中に被害者が多い。この犯罪に対し、急速に解決する方針がなくてはならぬ。
 また現内閣でも、経済査察廳法案を出し、経済統制違反に対し、重き処罰を科しているが、経済統制を紊す、列車、殊に東北本線、常盤線、信越線、北陸本線などの列車内には、悪質のブローカーが乘りこんできている。これらは集團的無人の境を行くがごとく、ほとんど手を加えられない。この種の集團犯罪に対いては、別途の処置を必要とし、刑事訴訟法第二百五十條にみるような司法警察官の職務だけで足りない、鉄道公安員千五百人を増加しても、兇悪犯が徒党を組み、機動性を発揮して、その行動が敏活であるときは、停車場の構内といふ特殊物件の存置場所であるから、容易でない。すべからくこの方面に堪能で、知識経驗のある者を鉄道保安に当らせ、鉄道公安官だけでなく、上下一体の組織をつくつて、犯罪防衞にあたる方法が至急必要である。総理大臣の所見を御伺いしたい。
#6
○芦田國務大臣 列車内暴行脅迫を防ぐには、武器を携帶しなければならない。また列車中の職務執行中に犯人を逮捕することもむづかしい。また國家警察と列車警察との連絡もよくとれていない。各駅の警察官が犯人を逮捕するにはその数が十分でない。結局列車内無秩序は、あまねく知らるる通りである。これが対策としては、さしあたり、國家警察の一部を列車内に移動警察隊として入りこませることが有効と思われる。新しく生れる列車内公安員の制度が、次第に完成に向いつつあることには自信をもつている。なお今後とも極力改善して行きたい。
#7
○花村委員 総理がこの問題に注意しておられることはわかつた。経済査察官のごとき現地出先官吏に七億五千万円の金をかけるよりも、鉄道保安のため適当な機構を考えた方がよい。私のごとき被害者があれば、運輸省の特別会計に影響がある。今回の刑事訴訟法の改正を機会にして、鉄道保安を是正すべき時期は來たと思う。なお総理が特別の方法と言われるのは何のことか。
#8
○芦田國務大臣 先刻花村君に言つた通り、鉄道職員の中から、警察職員の勅令による手続を経て、これに鉄道公安員と同じ権限を與へる件を考慮中である。鉄道公安員にも拳銃くらいをもたせないと、兇悪犯の逮捕はできぬし、その数も相当ないと、多数の者の騒擾のときに治安が保てない。
#9
○花村委員 某方面に交渉中のものとは何か。御差障りがなければ、運輸大臣から概略をお話願いたい。
#10
○岡田國務大臣 目下鉄道保安官設置法を考慮し、各方面と協議中である。その員数は一万三千人とし、列車不安の線に配置し、これには必要な武器をもたせる計画である。詳細はいましばらく待つていただきたい。
#11
○花村委員 大体のところはわかつた。國民が安心するように、政府は早急に列車治安につき、具体策を実施してもらいたい。これで鉄道保安に関する私の質問を終ります。
#12
○佐瀬委員長代理 この際お諮りします。治安及び地方制度委員会から門司亮君が見えて、委員外発言を求めておられます。これを許すに異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○佐瀬委員長代理 発言を許します。
#14
○門司亮君 警察は國民の生命、身体、財産の保護にあたり、犯罪の搜査や被疑者の逮捕や、公安の維持にあたることを目的とし、警察を運営する機関として、國家公安委員会、都道府縣公安委員会、市町村公安委員会がある。警察官はそれぞれ公安委員会の下にその命を受けて警察の責務を遂行している。しかるに刑事訴訟法によると、檢事は警察官が正当の理由がなくして檢察官の指示または指揮に從わない場合においては、それぞれの公安委員会に対して、その警察官の懲戒または罷免の訴追をすることができることになつている。また檢察官は犯罪搜査に関し、一般的指示を為したる場合には、警察官はこの指示または指揮に從わなければならぬことになつている。これらの規定は新警察法の精神と矛盾するように思はれる。國家警察官でも、自治警察官でも、民主的雰囲氣の中で育ち、國民環視の中で、その職務を行うのである。この点において、警察官の指揮系統は、民主的な構成になる公安委員会一本となつている。しかるに突如として刑事訴訟法により、檢察官より一般的指示や指揮に從はねばならぬとなると、警察官指揮系統が二本にわかれる。これは警察の民主的運営に悪影響があると思う。この点について、政府の所見を聽きたい。
#15
○木内政府委員 犯罪搜査に檢察官もこれをするし、警察官もこれをする。しかして犯罪搜査権は、國家に專属する権限であつて、國家刑罰権を実施するには、必要にして欠くことのできぬ権限である。この國家に專属している犯罪搜査権を、國家警察や自治体警察に委讓しているのである。從來司法警察官は、檢事の補佐官であつたが、新刑事訴訟法によつて、司法警察官は檢事より独立して搜査することができるようになつた。司法警察官に犯罪搜査を一任しても、その権限が國家に專属する点において変りない。それで刑事訴訟法第百九十三條、百九十四條等は、警察法と抵触しないと思う。
#16
○門司亮君 ただいまの説明によつて、大体わかつた。しかし警察官の指揮命令が二本建であるから、運営上もその執務においても不便であろうと思われる。殊に刑事訴訟法第百九十二條、第百九十三條、第百九十四條と矛盾抵触してくるのでないか。何となれば、第百九十二條において、犯罪搜査につき、檢察官も司法警察官も、相ともに協力すべきものと定められている。これに反し第百九十三條、第百九十四條により、檢察官が警察官に一般的指示権を行使したり、罷免の訴訟権を行使したりするのは、前後條文間に抵触するところがあるし、かつ新しい警察法の精神に合わないと思う。この点説明を承りたい。
#17
○木内政府委員 犯罪搜査権は國家に專属し、檢察官これを担当する。國家公安委員会に属する警察官も、地方自治公安委員会に属する警察官も、犯罪搜査権の一部を委讓されて、これを担当しているわけであるから、公安委員会としても、犯罪搜査に関する限り、檢察官と努力するが当然であると思う。健全な常識による限り、公安委員会と檢察廳とが抵触することはないと思う。
 次に百九十二條と百九十四條とは矛盾しないかという意見でありますが、後者の條文の趣旨は、警察官が正当の理由なくして、檢察官の命に從わない場合に、懲戒または免官することができるというので、司法警察官が檢察官の命令に服しないからとて、ただちに懲戒免官できるのではない。他方、公安委員会は、独立に判断して懲戒または罷免するか否かを定めるわけである。
#18
○門司亮君 警察法によると、それぞれ公安委員会は、自己の行為につき責任を負い、自己の責任をもつて警察官を任命し、一定事由があれば、これを罷免することもできる。これをもつて公安委員の警察職員に対する指揮監督の身分上の根拠ができるのである。しかるに刑事訴訟法によつて、檢察官が警察官の罷免の訴追ができるとなると、警察官に彈圧を感じ、これに盲從して非違を犯すおそれも出ると思う。去年神奈川縣下に起きた拷問事件のごときは、その発端は檢事見込違いから起きたものであり、当時の警察官は檢事に盲從したからであり、結果において無罪であつた。
#19
○木内政府委員 いろいろ御心配あると思う。この刑事訴訟では、檢事が警察官の罷免権をもつのをなくして、公安委員会に対して罷免の訴追をするだけであり、訴追を受ける場合に、公安委員会は独自の見解と責任とによつて、その警察官を罷免すべきや否やを決定すればよい。檢事が訴追権を有するだけで、司法警察官がその残務上彈圧を受けたり、あるいは公安委員会が檢事の起訴に影響を受け、その判断が拘束されたりすることはないと思う。またあつてはならない次第です。
 先年の神奈川縣下の拷問事件は、よく知らぬが、むしろ過去の実例を見ると、警察官の方で拷問事件を起し、檢察官はこれがために迷惑をこうむつたことが少くなかつた。檢察官の指揮によつて、警察官が拷問事件を起したといふ事例は、自分の寡聞にして未だ知らざるところである。
#20
○佐瀬委員長代理 本会議において決選投票があるから出席するようにとの議事課からの通知がありましたから、休憩いたします。
    午後三時四十分休憩
     ━━━━◇━━━━━
    〔休憩後は開会に至らなかつた。〕
ソース: 国立国会図書館
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