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1951/03/28 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会戦争犯罪人に対する法的処置に関する小委員会 第3号
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1951/03/28 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会戦争犯罪人に対する法的処置に関する小委員会 第3号

#1
第013回国会 法務委員会戦争犯罪人に対する法的処置に関する小委員会 第3号
昭和二十七年三月二十八日(金曜日)
   午後一時五十七分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
十二月十五日委員棚橋小虎君、中山福
藏君及び須藤五郎君が辞任した。
二月十三日法務委員長において吉田法
晴君を委員に指名した。
  委員長の補欠
三月二十七日鬼丸義齊君委員長辞任に
つき、その補欠として岡部常君を委員
長に互選した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     岡部  常君
   委員
           長谷山行毅君
           宮城タマヨ君
           吉田 法晴君
           伊藤  修君
           一松 定吉君
           羽仁 五郎君
  政府委員
   刑 政 長 官 清原 邦一君
   法務府矯正保護
   局長      古橋浦四郎君
   中央更生保護委
   員会事務局長  斎藤 三郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       長谷川 宏君
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○平和条約第十一条による刑の執行及
 び赦免等に関する法律案(内閣送
 付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(岡部常君) これより戦犯に関する小委員会を開会いたします。
 午前中の委員会に引続きまして、審査を委託されましたところの平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律案を議題にいたします。本案につきましては、これより政府委員の詳細なる御説明を聴取いたすことにいたします。
#3
○政府委員(古橋浦四郎君) 御説明申上げます。この法案は第一章から第六章まで、それと附則によつてでき上つておりまして、第一章におきまして、全般に通ずる総則を第一条乃至第四条で定めております。第二章につきましては、刑の執行に関する事項を規定いたしております。第三章は仮出所、第四章は一時出所、第五章赦免及び刑の軽減、第六章は雑則、それと附則におきまして、法務府設置法その他の必要な改正事項を規定しようといたしております。
 第一章の総則につきまして御説明申上げます。第一条でこの法律の目的を明らかにいたしております。即ち「平和条約第十一条による極東国際軍事裁判所及びその他の連合国戦争犯罪法廷が科した刑の執行並びに刑を科せられた者に対する赦免、刑の軽減及び仮出所が適正に行われること」を目的として、この法案が草案せられたということを明らかにしておるのでございます。ここで特に御説明申上げたいことは、戦争裁判が国内裁判と異なるものであるという建前の下に、その用語におきまして多少国内法の場合と違つた用語を用いておるのでございます。例えば条約文では赦免、減刑及び仮出獄と規定しておりますが、本案のほうでは「赦免、刑の軽減及び仮出所」としております。このことは他面関係国とも協定する赦免、刑の軽減及び仮出所が我が国の既成観念と一致しなくてもよいということにもなりますし、運用に弾力性を持たせて、それらのいろいろな恩典制度が円滑に処理せられますように準備をいたしたつもりでございます。次に第二条におきましてこの法案において用いまする用語の意義を定めております。一号、平和条約、二号刑、三号、刑期、四号、刑務所、五号在所者、六号、委員会、七号、関係国という工合に、それぞれ本法案の中において用いられまする用語につきまして意義をここに明らかにしておるのでございます。第三条におきましては、この法案の執行に当りまする行政機関を定めました。それは刑の執行につきましては法務総裁が管理する、赦免、刑の軽減、仮出所及び一時出所に関しましては委員会が管理する、この委員会は先に用語のところで申上げました法務府の外局でございます中央更生保護委員会を言うのであります。第四条では刑期の計算方法を定めておりまするが、これは刑法第二十二条と全く同様の規定をここへ持つて来たのでございまするが、その趣旨は、只今巣鴨プリズンにおいて用いておられまする刑期の計算方法が多少確実だと思われまするので、これを国内刑法の場合と同一に規定いたしたいという趣旨でございます。
 第二章は刑の執行でございまして、第五条は準拠法例を明らかにしております。戦犯裁判は国内法上の刑ではございませんけれども、刑罰の性質上監獄法を準用することが妥当であろうと考えます。又従いまして、この法案に特別の規定がない場合には監獄法を準用するということにいたしておるのでございまして、これによりまして、法案の簡略化を図つておるのでございます。なお戦犯者に対する刑の執行及び処遇につきましては、その国際性を考慮しなければならんと考えまして、従来最高司令官の下に国際的にも承認されて実行して参りましたところの刑の執行方法並びに処遇の方法をここに尊重することに定めたのでございます。なおこの法案中におきましても、巣鴨プリズンの慣行の中で、例えば病院移送、善行特典制度、一時出所等はそのままのものを法制化して条文として取入れておるのでございます。
 次に第六条におきまして、刑務所の意義を明らかにしておるのでございまするが、ここで、「別に法律で定める」と申しますのは、法務府設置法で定めることを申しておるのでございます。第七条におきましては、戦争犯罪人の収容をする手続を定めたものでございます。条約によつて日本国が執行するのは連合国の管理下にありましたものの残刑を引継ぐものでありまするから、新らしい刑の確定者を執行する場合と違つて、監獄法第十二条のような厳格な入監手続はとらずに、一応執行に着手するように規定したものでございます。なお関係国から将来直接に巣鴨刑務所に引継がれたというものの収容につきましても同様に考えておるのでございます。その二項は、引継の際の刑の執行に関する調査及び本人の同一性の判定が必ず正式の書類によるべきであることを規定したものでありまして、現在巣鴨プリズンに拘禁されている者の引渡しについては連合国最高司令官からの引継文書により、又将来関係国から直接引渡される者につきましては当該関係国からの引継文書による趣旨を明らかにしておるのでございます。第三項は収容文書を調査して、当然に残刑の終了しておることが明瞭だというような場合には刑務所の長が単独にこれを釈放することができる、本項はこうした場合ではなくて、執行する残刑があるかないか明らかでない場合を規定しておるものでございます。かような場合には関係国に照会の手続をとつて、その回答を待つて、なお残刑が存することが明らかになつた場合にはその刑を執行することにし、そうでない場合は釈放することにいたしまするその趣旨の規定でございます。人違いであるかどうかに、氏名、年齢、指紋、写真等によれば間違いを生ずる虞れは非常に少いのでありますが、やはり疑義のあります場合には関係国に照会する手続をとるべきだというふうに解したいと思つておるのでございます。第八条は刑の執行の終了及び釈放に関する規定でございます。一項の「特に出所を許される場合」と規定いたしまするものは、仮出所、一時出所及び病院移送、この場合を言うのでありまして、赦免とか、善行特典又は刑の軽減によつて刑期の満了する場合は、すべて満期釈放であるという工合に書いておるのであります。第二項は監獄法の六十八条に対する例外規定を定めたものでございます。普通の場合におきましては、刑期満了の翌日の午後六時までに釈放することになつておるのでございますが、巣鴨ブリズンの慣行に従いまして、その釈放は指定せられた日の午後六時までに、つまり刑期が満了する日の午後六時までに行うということを規定いたしたものでございます。第九条におきましては、未決拘禁の日数の算入について特別の規定をしたものでございます。その一項は単に俘虜として抑留せられた期間はこの場合の対象にはならない。戦争犯罪の嫌疑によつて抑留され、又は勾留された未決監については勾留状が発せられていなくても、又その一部について推定通算がなされたものでも、その残余について全部通算されるということになると解しておるのでございます。尤もこの条文につきましては、第二十九条におきましては、特に例外規定を設けておるのでございます。それは関係国の同意を必要とすることを申すのでございます。第二項につきましては、この本項は刑の執行に関係がございますので、又第七条にも関係ができて参ります。ただ未決日数についてはつきりこれをさせる必要がありますので、この関係国に照会する手続をとらなければならないということを特に規定したものでございます。第十条は、これは病院移送を規定いたしておるのでございます。監獄法の第四十三条にも同様な規定がございます。併し第八条におきまして、特に出所についての厳格な規定が置かれておりますので、この条文を明らかにする必要がございまして、本条文を設けたいと考えておるのでございます。現在かような場合には聖路加病院が指定されておりまして、そこに病院移送をせられておるのでございますが、将来も病院移送につきましては、その必要がございます。従つて本条項を設ける必要があると考えておるのでございます。病院移送に際しましては、条件の一つとして病院が恐らく指定されることになろうと思うのでありまするが、又期間につきましては、その病状によりまして、又再び移送ということが考えられるという工合に解しておるのでございます。病院移送者の処遇につきましては、第一項の条件で定められた制限を受けるのでございますが、監獄法の準用はないのでありますけれども、刑期が進行することや、逃亡の場合に強制的に復所させられるということなどは、監獄法によりまする病院移送者の場合と同じものと解しておるのでございます。逃亡いたしました場合には、あとに申上げまする第十二条によりまして、善行特典制度を剥奪されることになると考えておるのでございます。第十一条は、これは善行特典制度を定めておるものでございます。この善行特典制度は、現在巣鴨プリズンにおいて行われておりますものをそのまま踏襲したものでございまして、この制度は英米の行刑にも広く認められておるところでございますが、在所者が刑務所の規則をよく守つて忠実に服役しておる場合には、一定の割合で刑期満了の日が自動的に繰上げられるのでございます。アメリカの一般刑務所と違います点は、原則として在所者全部のものに適用されるということに本法案がなつておる点でございます。この点は在所者にとつて有利な点であると考えるのであります。善行特典制度の適用による刑期満了の日の繰上げは満期釈放と同一の効果を持ちますから、保護監督はその日までで終了します。仮出所の取消しもそのものにはできないことになると考えておるのでございます。但し言渡刑期そのものの変更にはなりませんので、従つて仮出所の適格性の条件である刑期の三分の一という場合の刑期は、言渡刑期、又は刑の軽減により減刑された刑期を言うのでありまして、善行特典制度の適用による繰上げはこれとは関係がございません。この善行特典制度の適用につきましても、先に未決拘禁の場合に申上げました通り、あとに申上げまする第三十九条によりまする制限がございます。これは関係国の同意が必要であるということになつておるのでございます。その第二項はその繰上げいたしまする日の定めでございまして、これが一から五号までそれぞれ異なつた計算方法になつておるのでございます。その善行特典制度は有期の刑についてございますもので、無期刑にはございません。そうして有期の刑につきましては、刑期が六月以上一年未満の者、刑期が一年以上三年未満の者、刑期が三年以上五年未満の者、刑期が五年以上十年未満の者、刑期が十年以上の者、十年以上の有期懲役の者等につきまして、それぞれ一カ月について何日を繰上げするかという点で差等があるのでございます。これはすべて現在巣鴨プリズンにおいて行われておるそのままの計算方法でございます。第三項におきまして、その期間の計算方法を規定いたしておるのでございます。第四項は端数になりました場合等の、三十日以上にその繰上げ日がなつた場合には、三十日を以て一月として計算するということを明らかにしておりますが、これは只今巣鴨でこの通りの方法をとつておるので、これを明らかにしたのでございます。第五項におきましては、二刑以上ある場合におきまして、その執行の方法と期間の計算方法をここで定めておるのでございます。つまり二つの刑が継続して執行する場合と、並行して執行する場合、それぞれに分けてここでこれが定められておるのでございます。第六項におきましては、これは未決拘禁の期間並びに連合国軍最高司令官か、或いは各関係国の手許で刑を執行せられておりました期間等のすでに経過いたしましたその期間につきましても、この善行特典制度が適用せられるということをここに規定しておるのでございます。又仮出所後の期間につきましても、これが適用せられます。それから刑の軽減によりまして有期の刑に変更せられた場合、その変更前の拘禁又は刑の執行の期間というものについても同様に善行特典により刑期の短縮がなされるということを規定いたしておるのでございます。第七項におきましては、刑の執行の途中におきまして、刑期が変更せられた場合に、その刑期の計算をするのに、先に申上げました五つの種類の基準のうち、どれを適用するかについて定めておるのでございます。それは変更後の刑期を土台にして、その刑期に当る計算方法を以てこれを計算するということになつておるのでございます。以上、第十一条は善行特典の意味とその計算の方法等を一条にまとめて規定したものでございます。第十二条におきましては、この善行特典を剥奪する場合、或いは回復し得る場合を規定いたしておるのでございます。剥奪し得るのは刑務所の規則に違反した場合でございまして、それはすでに出られることになつておりました「期間の全部又は一部をはく奪することができる。」ということにいたしております。又その後の状況によりまして、剥奪した期間につきまして全部又は一部を回復することができることも必要であろうと考えまして、それを第二項に規定いたしておるのでございます。これはいずれも現在巣鴨プリズンにおいて行われております制度を規定いたしておるのでございます。第十三条におきまして、執行に関する疑義を問い質す途を認めようといたしておるのでございますが、戦争犯罪の判決は未決日数の通算とか、或いはその計算方法が非常に複雑でございまする点、善行特典制度の適用があつて刑期満了の日が繰上げになるというようないろいろな複雑なことがございますので、特に法務総裁に対して、その刑の執行に対するいろいろな疑義を問い質すことを特別に認める必要があろうと考えまして、本条文を設けたいと考えておるのでございます。第十四条は、在所者の逃亡に関する規定を置いておるのでございます。第十五条も、これに関する収容状を規定いたしておるのでございます。在所者が逃亡いたしました場合に、特別に逃走罪は構成するものとはいたしておりませんけれども、これを復監いたしまするために、勿論日本の監獄法による原状回復の意味の逮捕はできまするし、同時にそれ以後におきましても、収容状を発してこれを再び収監する必要がございまするので、その収容状を発し得ることと、それにその取扱いにつきましての関係条文をここに明らかにしたのでございます。
 以上で大体総則と刑の執行につきましての逐条説明を申上げた次第であります。
 ちよつと先ほど第七条のところで説明申上げました中で監獄法第十二条と申上げましたが、これは十一条の間違いであります。訂正いたします。
#4
○政府委員(斎藤三郎君) それでは私から、仮出所以下のことにつきまして逐条概略を御説明申上げます。
 第三章は条約十一条によりまして、条約発効後一定の条件の下で行うことができることになりますパロールにつきましての手続の規定をいたしております。パロールと言いまするのは、丁度国内法で言いますると、刑法二十八条以下の仮出獄の規定と、これに関連して設けられておりまする犯罪者予防更生法の保護観察に関する規定とが、丁度合せまするとパロールに実際に即応する、こういうことでございまして、さような意味合いでこの章が構成されております。
 第十六条は、在所者についてパロールを許され得る、在所者がパロールを許されることのできる資格と言いますか、適格性を規定しております。国内法におきましては刑期三分の一、無期については十年の執行を終つて、改悛の状あるものと、こうなつておりますが、この章の十六条におきましては、刑期四十五年未満の者についてはその三分の一、四十五年以上の者或いは無期の終身に亘る者については十五年を経過して、且つ刑務所の規則を守つておると、こういう人が仮出所の適格性を持つと、こういうふうに相成つております。日本では二十年以上というのはないのでございまするが、少し古い統計でありますが、四十年という人が二十一人、四十一年以上の人が四人もあるというようなことで、かような規定にはなつておりまするが、又この十五年というのも現在巣鴨プリズンにおいて行われておるパロールの条件と同一でございます。第二項は二つ以上の刑のある場合に継続執行の場合にはそれを合算する。同時執行の場合には長い刑期によるのだと、こういう規定を引用いたしてございます。第十七条は、パロールの申出と言いますか、適格性を有する在所者が審理を受けようとする手続でございます。この申請は刑務所の長を経由して中央更生保護委員会に対して申請をする、こういうことに相成つております。これには文書を以て申請することにいたして、その文書の記載事項といたしましては、一は、パロールになつたのち帰つて行くべき予定地、帰住地の同居者、その者との関係、その者の健康、職業及び経済状態、将来無事にパロールの期間を終るかどうかということを判断いたす資料でございます。二が、戦争犯罪に問われた事実、共犯者との関係並びに酌量すべき情状、こういうことを書いてもらう。それから三は、拘禁を受けた期間及び施設の名称、所在地、四はその他参考となるべき事項、こういうものを書面にして刑務所の長を経由して委員会に申出てもらう、こういうことにいたしております。なおパロールということが、要するに自分がパロールを許されれば守るべき遵守事項を守つてやりますという一つの誓約を以てなされるという関係でございまするので、本人が申請をしないというものに対してパロールをするということは無意味に近いのでありまして、この十七条の申請によつて審理が開始される、こういう考え方に相成つております。三項は在所者が心身の故障によつてこの書面を作ることができないという場合には、刑務所の職員が代書することができることにいたしております。第四項は、在所者から申請書を受取つた刑務所長は、速かにこれに対して意見を附して、その者にかかる判決書の写及び在所中の成績その他刑の執行の経過の概要を記載した報告書を添えて、委員会に進達する、こういう手続にいたしております。第十八条は、在所者の親族、知人その他の関係者は委員会に対して文書を以てその者のパロールをやつてほしいという願出をすることができる、こういうことにいたしております。これはあと、この願出があつたときには必ず委員会が審理を開始するということにはならないのでありますが、その場合には、本人が見込みがあるという場合に、若し本人から申請のない場合には適切な処置をとることもできまするし、又外におる人の気持も考えまして、かような規定があるわけでございます。この願出書は委員会に対して出すべきことになつておりまするが、仮に若しこれが刑務所に出された場合には、刑務所長はすぐにこれを委員会に進達しなければならないということが二項でございます。第十九条は、かようにして委員会が仮出所の申請書を受理いたしますると、先ずこの申請書の書類を調査いたしまして、第十六条に言つておる適格性のあるなしを判別する。そうしてまだ刑期三分の一に達していないというような場合には、決定を以て内容の審理に至らないで却下をする。適格性のあると認めたときには内容に亘つて審理を開始する。これが第二項でございます。第三項はその審理方法でございますが、その審理に当りましては申請書或いは家族、知人等の願出書、刑務所の報告書その他委員会に提出された資料を十分検討することは当然でございまするが、それでもわからないという場合には補充して調査も行い、又特に必要がある場合には外国に照会をしてその判断の適正を期す、こういう趣旨でございます。このパロールの審理につきましては、単に書類点検だけでは不十分でございまして、面接をするというのが現在も司令部のパロール、ボードによつて行われているところであり、今後もこの審理に当つてはさような具体的な手続が行われることと考えております。第四項は、かように委員会が審理をいたしました結果、条約第十一条に定めるところによりましてパロールの勧告をするということが相当であるかどうかということを委員会は会議を以て決定する。そうして第五項におきまして、その会議の結果、勧告が相当であるという場合には、法務総裁にその旨を報告して、これが日本国として外国に勧告するという手続に参るわけでございます。この第十九条から二十条の間までは法律ではこれを政令に譲つておりまして、国内のさような勧告の手続については、この法案の第三十五条におきまして政令を以てこれを決する、こういうことにいたしておりまするが、これは国としていたしまする関係、又渉外関係でありますることから、閣議に諮り、そうして外務省を通じてそれぞれ関係国に勧告をする、折衝するということになると思います。第二十条は、さような勧告の結果又十分なる折衝の結果、委員会がその渉外関係から平和条約十一条に定める関係国の決定があつた、そうして日本国の勧告に副つた決定があつた、そうして仮出所は許すことができる、こういうことになつた場合には、実際上の仮出所の指定の期日やら、或いはその人が出てから守るべき特別な遵守事項をここで必要がある場合にはきめて、これを巣鴨刑務所のほうに連絡をする、こういうことに相成るその根拠規定でございます。 二十一条は、さような刑務所に対する通知によりまして、巣鴨からパロールになつた人が、その残刑期が満了するまで委員会の監督の下で保護監督に付せられる。この保護監督は国内法で言いますると、犯罪者予防更生法の普通の仮出獄者に対しまする保護観察と大体似たことに相成ります。ただ国内法上何ら犯罪者ではないのでありまするから、保護監督という別個の名前を用いまして、そうしてその方式等は犯罪者予防更生法の必要な条文を準用いたしてございます。なお刑期の満了につきましては、先ほど古橋局長から御説明を申上げました通りに善行特典が設されることになります。具体的に、甚だラフな計算でございまするが、刑期十年の人は三年数カ月で仮出所が許され得る、そうして許されれば残り三年数カ月だけ保護監督に服して、事故なければ残りの三年数カ月は、丁度年の三分の一でございまするが、それは善行特典によつて残刑期の数量が繰上がる。結局そういつたことで全部無事に済めば、それで終る。こういうことになるものと考えております。第二十二条は、パロールを許されて仮出所中のものが仮出所の期間中に逃亡したり、或いは遵守すべき事項を遵守しなかつた場合に取消すことができるということに相成つております。これは必ず取消さなければならないというものではなくして、情状によつて取消すこともできるということに相成つております。その後段は遵守事項を守らなかつたというような情状が重大である、或いは虚偽の陳述によつて仮出所が許されたということが明らかになつた場合には、当然取消さなければならないというのが二十二条でございます。日本の仮出獄においても再犯を犯したり、或いは遵守事項を守らなかつたという場合には取消すことができるという規定に相成つております。第二項はその取消処分の審理でございまして、これはやはり「委員会が審理し、決定をもつて行う。」ということになつておるのであります。三項におきまして、取消の審理につきましては仮出所中の者が逃亡した場合を除いて、その者に十分弁解の機会を与えなければならないという規定でございます。第四項は、さような審理の結果「仮出所の処分が取り消されたときは、その者は、善行特典の日数の全部を失うものとし、且つ、仮出所中の日数は刑期に算入しない。」、これもほぼ仮出獄の取消になつた場合に、取消前の仮出獄中の期間が刑期に算入されないのと即応しておる点でございます。勿論この善行特典の日数の全部を失うということになりまするが、その再収容後の情状によつては、又それを回復することができる規定は十二条にございまして、その後の情状によつては又一遍失つた善行特典の日数を回復することができることに相成つております。第五項は「委員会は、仮出所の処分を取り消したときは、直ちに、その旨を刑務所の長に通知しなければならない。」そうして第六項は、その通知を受けた刑務所の長は、必要がある場合には収容状を発する、これが二十二条の処分取消の関係の規定でございます。二十三条は、これは処分取消をするかどうかという場合に審理をしなければならない、その審理中の必要な規定でございまして、仮出所中のものが逃亡或いは遵守事項を守らなかつた、或いは虚偽の陳述によつて仮出所を許された、こういうことを疑うに足る十分な理由があるときには、仮に仮出所の処分を取消して、そうして仮収容状を出すことができる。それは、その第二項におきまして「前項の仮収容状は、委員会の委員の指揮により、保護、観察官又は法務府事務官が執行する。」、そうして第三項におきまして「警察官又は警察吏員は、委員会の依頼により、仮収容状の執行をすることができる。」、第四項におきまして、「仮収容状の執行を受けた者は、監獄その他適当な施設に収容することができる。但し、その期間は、十日をこえてはならない。」、そうして第五項におきまして、その十日の「期間中であつても、収容の必要がないと認めるときは、直ちに、本人を釈放しなければならない。」、第六項におきまして、仮収容の期間は仮にその審理の結果取消されたという場合においても、これは身柄の拘束を受けておるのでありますから、刑期に算入する、こういうことにいたしてございます。
 第四章は現在巣鴨プリズンにおきまして、緊急一時仮出所という名前で行なつている制度を、これは在所者にとつて利益の制度でございますので、これを採用したい、こういう考えでございます。これは国内法の執行停止というものに考え方が類似しておりまするが、その原因とか、或いはその効力において相当違いがございます。この巣鴨プリズンにおきまして現在実施しておりまする緊急一時仮出所は、現在巣鴨プリズンで行われておりまする。パロールの基礎になつておりまする同章にはない規定でございますが、人道上当然であるという見地からであろうと思いますが、同章でなくて実施されているものでございます。そういう利益の制度でありまするので採用しております。二十四条はその一時出所ができる理由といたしまして、第一には「在所者の父母、配偶者又は子が死亡したとき、又は危篤であるとき。」という場合でございます。第二は、在所者の子供、而も未成年の小さな子供が現在世話になつておる、或いは監護されているその人が、在所者の小さな子供の面倒を見ている人が死んだとか、或いは死にそうだという場合には非常に気の毒でありますので、これも第二として事由にいたしております。第三は、震災であるとか、風水害、火災或いはこれらに類する災害、実例といたしましては、先年福岡の近くで連合軍の飛行機が墜落をいたしまして、丁度巣鴨に入つている人の家ですか、親戚の家ですか、その上に落ちまして、七、八人の人が亡くなつたという場合に、やはりこれもこの事由によりまして緊急一時仮出所を許しております。こういつた不測の災害の場合であつて、在所者又はその近親の住居、家財が破壊され、或いは滅失し、本人が出向かなければ跡始末に困るというような場合、この三つの場合には委員会の許可によつて在所者の一時出所ができる、こういうことにいたしております。但しこの父母、配偶者又は子供がなくなり、或いは死にそうだとか、或いは在所者の子供さんの面倒を見ておる人が死んだとか、死にそうだとかという場合には、その危篤のたびということでは甚だ濫用に陷る虞れもありますから、六カ月以内に同一人の死亡又は危篤を理由としては二度はできないというのが但し書でございます。そうして第二項はその期間でございます。この期間は現在は余り長くないのでありまするが、日本の交通の事情等もございまするので、この法案におきましては、「目的地までの往復の日数を除き、五日をこえてはならない。」、こういうことにいたしてございます。第二十五条はその手続でございまして、この一時出所は在所者又はその親族、知人、知友その他の関係者が委員会に対してその規則の定める法式によつて文書を以て願い出る、こういうことにいたしております。その添付書類といたしましては、亡くなつたとか、或いは危篤の場合には、その状況を記載した医師の診断書、検案書又は死亡証書、こういうものを付ける。それから天災等の場合には、その状況を明らかにして、そうしてそれについての市町村長或いはその代理者の証明書を添付してこれを願い出れば仮出所を許される、こういうのが二十五条の規定でございます。二十六条は一時出所を許された場合には、委員会はその人が一時出所中の守るべき事項を定めて誓約させ、且つ観察官であるとか、或いは法務府事務官のうちから監督に適当な人を選んで同伴をさせ、監督上必要な措置をとることにいたしております。第二十七条は、この一時出所中の人が逃亡したり、或いは守るべきことを誓約した事項を守らなかつたという場合には、委員会は決定を以て善行特典の日数の全部又は一部を剥奪することができる。二項は前項の決定をした場合、委員会はその旨を刑務所の長に通知しなければならない、こういうふうにいたしまして、第三項におきまして、それらに必要な遵守事項を守らなかつたという場合、その情状が重いとき、或いは嘘をついて一時出所したという場合には必らず取消さなければならないというのが二十二条の第一項でございますが、第二項は、委員会が審理をして初めて決定する、第五項は刑務所の長への通知の規定、第六項は逃走した場合には収容状の必要も考えられますので、その規定を準用してございます。それから第四項には一時出所の処分が取消された場合の効果でございますが、一時出所中の日数は刑期に算入されない、こういう規定にいたしております。結局この半面におきまして、国内法の執行停止は刑期に算入されないのでありまするが、この法案の制度に対しては一時出所中の日数は当然算入される、ただ取消された場合に算入されない、こういう趣旨でございます。それから第五項が、この一時出所の場合に同伴に当る者は、観察官或いは法務府の事務官は本人が逃亡を企てたり、或いは守るべき誓約事項を守らないというような十分な理由がある場合には、直ちにその者を刑務所に取戻すことができることを規定したものでございます。なお四章の一時出所というものは関係国の決定なしで、日本側だけで行うことができるという建前でございます。
 第五章は赦免及び刑の軽減でございます。この赦免、軽減ということは国内法で言いますると特赦とか、執行の免除とか、刑の軽減は、まあ減刑ということに近いことであると存じますが、国内法上の犯罪ではございませんので、別個の名称を用いてございます。二十八条は在所者及び仮出所中の者はこの赦免及び刑の軽減の適格性を全部持つておる、仮出所のように一定の年限の執行の経過ということを条件とせず、事案によつて誰でも事案が相当ならば赦免なり、軽減の審理を受けることができると、こういうことにいたしております。二十九条はその手続きでございまするが、在所者或いは仮出所パロール中の者が赦免又は刑の軽減の審理を受けたいという場合には、在所者は刑務所の長を経由して、仮出所中の者は直接委員会に対して文書を以て申請することにいたしております。第二項は、在所者又は仮出所中の者の親族、知友その他の関係者は委員会に対して文書を以て赦免又は軽減の願出をすることができるということにいたしております。そうして第三項において、その場合の記載の事項であるとか、又本人が在所者であつて、本人が書けない場合は刑務所の職員が代つて代書することもできる。委員会に出すべき書類を刑務所へ出した場合には、刑務所が委員会に進達するというような必要な仮出所についての条文を、この赦免、軽減の申請願出に準用いたしております。第三十条は、それらの審理でございまして、委員会は赦免又は刑の軽減の申請書、本人からの申請書、或いは関係者からの願出書を受理したときには審理を開始しなければならん。そうして刑務所長も文書を以て申出ができますので、その申出があつた場合にはやはり委員会は審理を開始する。更に第二項におきましては、委員会は本人からの申請なり、関係者からの、知人、親族、家族等の願出、或いは刑務所の長の申出がない場合でも事案相当である、そうして必要ありと認めた場合には職権で審理を開始することができる。こういう建前をとつております。第三項は、かように窓口を幾つも持つておりますので、その願出、申請願出、申出が重なつて二つ以上あるという場合に、成るべくそれを併合して審理するという建前をとつております。第四項におきましては、赦免又は刑の軽減の審理に当つては、委員会は刑務所に照会を発して、判決書の写しやら、在所中の成績その他刑の執行の経過の概要を記載した報告書を取寄せるほか、刑務所の長の意見も徴し、又本人以外から願出た場合には本人の意向も確める、こういうことにいたしております。第五項は、その審理に当つて、十九条にございまする書面だけでは足りない場合に、関係者において直接調査をして補充調査をするとか、或いは関係国に照会を発する、こういうような規定、そうして審理をすれば、勧告するかしないかを決定しなければならない。そうして勧告を相当とする場合には法務総裁に委員会は報告をする、そうしてそれが閣議を経て外務省を通じて関係国に参る。この規定を五項といたして置きました。その国内の勧告の手続につきましては、あとに出まする第三十五条におきまして、政令において定めることにいたしております。それから三十一条は、かようにいたしまして、条約十一条に定める勧告と、そして関係国の同趣旨の決定があつたという場合に、委員会は赦免なり、刑の軽減ができる、赦すことができることに相成りますので、速かにその実施の手続をするという根拠規定を置いております。
 以下第六章は雑則でございまして、三十二条は、委員会はこの法律によつてその権限に属せしめられた事項の調査について刑務所その他の公務所に対して書類の提出を求める。それから三十三条が関係国に対する連絡通報を敏速且つ円滑に行うために、刑の執行に関する書類は法務総裁において、委員会においては赦免とか、刑の軽減であるとか、仮出所、及び一時出所に関する書類を常に整備して置く。それから二項におきまして、勧告の手続をとるに当つては、委員会は、関係国に提出すべき書類として、左に掲げる書類で当該事案に関するものを、それぞれの事案ごとに整備しておく。申請書の写或いは家族等の願出或いは刑務所長の申入書の写、或いはその要旨を記載した書類、それから在所中の成績、行状刑務所長のそれらについての報告書、それから意見書或いはその要旨、それから仮出所中の成績を明らかにした書類、遵守事項とか、医師の診断書、それらの関係書類を提出する。それから第三項におきましては、入所、出所、病院への移送及び病院からの復所、死亡、逃亡、こういうことを一月ごとに取りまとめて、翌月の初めに関係国に通報する。委員会は赦免をしたとか、刑の軽減をしたとか、仮出所をしたとか、或いはそれらの取消、一時出所、刑期の満了、死亡、逃亡ということを同様に整備して、翌月初めに関係国に通報する。それらのほか関係国からの要求がある場合にはそれらの事項を通報する。六項におきましては、刑務所長は委員会に関係のある入所、出所、病院移送その他の事項があつた場合には、委員会に報告する。それから第三十四条におきましては、刑務所長が関係国から申出のあつたときには刑の執行の状況の視察或いは在所者に対する面接を許さなければならない。第三十五条におきましては、先ほど申し上げましたように、法務総裁に報告して、それから関係国に参りまするまでの手続、それから関係国から外務省を通じて内閣に参る。内閣から委員会に参りまするまでのいろいろな手続は政令で定める。三十六条につきましては、それらのほかに第二章の執行に関する面におきましては、その必要な事項細則的なものは法務府令で定める。第二項につきまして、刑務所長は処遇細則を定めることということ、それには法務総裁の認可を必要とする。それから三十七条におきましては、この法律及び三十五条の渉外関係の政令のほか、委員会の権限事項に関する事項細則は委員会で定めるということに相成つております。
#5
○政府委員(古橋浦四郎君) 附則第三十八条、施行期日でございますが、この法律は御承知のように平和条約の効力発生の最初の日から実施が必要となりますので、その日を施行日にいたしたいと考えております。次に三十九条の、この法律の適用につきまして、特に規定しておりますのは、この法律の施行後におきまして、関係国から残刑の執行のために日本に管理を移されて参りまする戦争犯罪人につきましても、この法案の適用があるという建前をとつていることを明らかにしているのでございます。第二項は、これは先に申上げましたように、未決勾留日数の通算及び善行特典制度の適用につきまして、関係国の用意が必要であるということを明らかに規定しているのでございます。その同意がない場合には適用されない。これは裁判に対する実質的な変更であります。恩典制度にも等しいのでありますので、必要があろうと存じた次第でございます。第三項は、仮出所及び一時出所に関する規定は、先に連合国最高司令官又は関係国によつてすでになされた者につきましても同様に適用がある旨を定めてあるのでございます。
 なおこの法律施行後、関係国から仮出所によつて保護監督の実施のために移されたものにつきましても同様でございます。第四十条は、法務府設置法の一部を改正する必要を認めまして、この条文を設けたのでございまして、第一条におきまして、法務総裁の権限事項に、「平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律の規定による刑の執行及び赦免等に関する事項」を加える必要がございます。第七条におきまして、この法律により第六号を加える必要がございまして入れたのでございます。次に第十三条でございます。六号といたしまして、巣鴨刑務所の設置を規定いたしております。なお十七条は、今回の規定の関係上、条文の整理のため改正を必要とするものでございます。
#6
○委員長(岡部常君) 速記止めて……。
   〔速記中止〕
#7
○委員長(岡部常君) 速記を始めて……。今日はこの程度で又改めて開くことにいたします。本日はこれで散会いたします。
   午後三時八分散会
ソース: 国立国会図書館
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