くにさくロゴ
1951/04/18 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会戦争犯罪人に対する法的処置に関する小委員会 第8号
姉妹サイト
 
1951/04/18 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会戦争犯罪人に対する法的処置に関する小委員会 第8号

#1
第013回国会 法務委員会戦争犯罪人に対する法的処置に関する小委員会 第8号
昭和二十七年四月十八日(金曜日)
   午後零時五分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     岡部  常君
   委員
           加藤 武徳君
           長谷山行毅君
           宮城タマヨ君
           一松 定吉君
           羽仁 五郎君
  政府委員
   法務府矯正保護
   局長      古橋浦四郎君
   中央更生保護委
   員会事務局長  斎藤 三郎君
  事務局側
   常任委員会專門
   員       長谷川 宏君
   常任委員会專門
   員       西村 高兄君
  参考人
   元西部軍管区司
   令部法務少尉  大西  保君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○平和條約第十一條による刑の執行及
 び赦免等に関する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(岡部常君) 只今より小委員会を開きます。
 平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案を議題に供します。本日は昨日に引続きまして参考人の意見を聴取いたしますが、大西保君より御意見を承わりたいと思います。大西君。
#3
○参考人(大西保君) 本日御多忙のところを貴重なる時間を私の意見を徴するためにこの小委員会をお開き頂きましたことを衷心より感謝いたします。この気持を現在なお巣鴨におりますところの一千名の、あの不幸な人々たちに伝えまして、共に喜びを分ちたいと思います。私もお呼び頂きまして、特に何か御参考になる点がおありになると御期待になるかも知れませんけれども、すでに本法案に関しましては、盡すべきところは盡されておる感がありまして、今更申上げることも余りないのでありますけれども、且つ又、私は最近巣鴨を出ましたばかりで、謹愼すべき地位にあるのでありまして私の十分に発言をいたすことができないのを残念に思うのであります。
 先ず、私は本法案が如何なる経過を辿つてできて来たものであるかということについて、詳しくはわかりませんけれども、私が一月ばかり前に巣鴨におりました際に、アメリカの係の将校から、我々フロア・リーダーをいたしておりましたが、これは巣鴨の中の自治体の長でありますフロア・リーダーを呼び出しまして、四月一日から日本側にお前たちの管理は移管される、併しながら従来と同じような管理の法律が目下作られつつあるからしてお前たちの処遇については何ら変るところがないということを聞きましたので、恐らく本法案ができるにつきましては、その背後に何ものかがあるということは私の了解し得るところであります。従つてここに本法案につきまして我々の希望なり、或いはお願いなりを申上げましても、それが実現できるかどうかということは疑問でありますけれども、我が日本国は旬日にして独立国家となるのであります。従いまして、独立国家となりました曉におきまして関係の皆様方が我々戰犯者のために、この法案の改正なり、或いは修正なりをして頂きますならば、そのために私はここでそれを期待しつつ意見を申述べさして頂きたいと思うのであります。
 先ず私は、この法案がよつて立ちますところの講和條約の第十一條は、我が国の憲法の第三十二條に違反するものであつて、従つて無効であると解釈いたしたいのであります。憲法三十一條によりますと「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定しております。講和條約の第十一條は外国が裁判しましたところの刑の執行を日本国が受諾したのであります。刑の執行とは国民の特定の者を監獄という所に入れて自由を拘禁するところの行為であります。人間は豚や鶏とは違います。そういうような人権を侵害するような重要な行為が、單なる一片の條約によつてきめられますかどうか。私はこの点について甚だ疑問に堪えないのであります。従いましてこの講和條約第十一條によつて立ちますところの本法案は、又憲法に違反するものであると私は考えます。いやしくも国会というところは憲法上の機関であります、憲法に基くところの機関であるものが憲法に反するところの法律を制定するということについては十分なる御考慮を拂つて頂きたいのであります。即ち憲法第二十二條の自由を奪う行為について本法案は規定しておるのであります。私は本法案が憲法の第三十二條に牴触するものであつて、即ち憲法上無効であると解釈いたします。我々国民は敗戦の現実におきまして如何なる法律と雖も人民の為めならざるところの法律を制定するということについては異議を申述べざるを得ないのであります。私たちが戦犯になりましたのも、上官の行為に対する無批判的な盲従でございました。我々が敗戰の辛苦をなめましたのも東條軍閥に対するところの国民の盲従でありました。我々は現実の十分の行為について反省をもつて進んで行かなければならないと考えるのであります。只今この法案が憲法違反であるということを申述べましたけれども、仮にこの法案が憲法上有効であるといたしましても、以下の点につきまして私は意見を述べさして頂きたいのであります。
 月並な意見でありますけれども、第六條の規定に巣鴨刑務所というところの名前を使用しております。御承知の通り巣鴨刑務所という名称は今から三、三十年前におきましては、累犯を犯したところの悪質の囚人を收容したところの刑務所であります。その巣鴨刑務所の名前を戦争によつて裁かれたところの犠牲者、国家の犠牲者であると私は信じます、その人たちが入れてある所に巣鴨刑務所という名前を附せられることは甚だ遺憾に堪えないのであります。この点につきましては、将来何らかの方法において善処されんことを要望いたします。
 次に第七條第二項の、「刑の執行に関する文書」云々というところの文字がありますけれども、この刑の執行に関するところの現在巣鴨にあります文書は、特に外国関係の文書におきまして、甚だ不明確なものがあるのであります。私が集鴨におります際に頼まれましていろいろ世話した場合におきましても、実際に逮捕された年月日が明らかでない、従つてその逮捕された人は裁判の判決日を以てその刑の執行が始まるというふうに取扱われている人がありまして、そういうような場合におきましては、本人の申請と巣鴨の外におるところの証人二人の証言を求めまして、文書を提出いたしましたならば、その本人の申請を大体において承諾してくれておつた。こういうようないい加減と申しますか、そういうような状態があつたのでありまして、将来この点について本法案は相手国に照会してそうして決めるというふうになつておりますけれども、相手の国に照会いたしましたならば、結局入つた日がはつきりしないで、裁判した日になつてしまう。そうしたならば未決が長い人は三年にもなんなんとするものがございます。一年以上の未決の者が現在集鴨におりますもので二百六十六名、そういうような状況でありますからして、この問題については将来十分の御考慮を拂つて頂きたいのであります。
 次に第九條、第十一條は未決通算と善時制というものについて規定しております。未決通算については第三十九條の第二項において相手国の同意を得なければならない旨が規定してあります。アメリカの場合におきましては同意を得ることは簡単でありますけれども、オランダ、イギリス等の場合におきまして、同意を得ることは甚だ困難であると考えます。この点につきましても、現在巣鴨におります人たちは非常に心配いたしております。なおこの二つの未決通算と善時制の特典に関連いたしまして、今より約三年前に私がアメリカの将校から聞きましたところによりますと、現在グッドタイムシステムと、パロールと、ワーク・デー・オフ、ウエイジ・コミユーテーシヨンという四つの恩典が総司令部に折衝中である。パロールは仮釈放であります。グッド・タイム・システムというのは善時制であります。ワークデー・オフというのは働いた日数だけを刑期から引いてくれる制度、ウエイジ・コミユーテーシヨンというのは働いた日数に対して賃金を支拂うことにして、その賃金を今度は刑期の日数に換算して、結局刑期を短縮するというような制度だそうであります。この四つのものを総司令部に折衝中であるというふうに聞いておりました。それから間もなくパロールとグッド・タイム・システム、即ち仮釈放と善時制というものが実施されたのであります。私たちはアメリカが将来長く巣鴨を管理したならば、そのようなワーク・デー・オフの制度とか或いはウエイジ・コミユーテーシヨンのような恩典が附與せられるものであると期待しておりました。本法案につきましてはそういうものは全然ありません。そういうようなものにつきまして、この法案の立案者が当局に対し折衝されましたかどうか。アメリカの将校ですら、これは東條以下の首をつつたところの将校であります。その者ですら我々のためにかくのごとき恩典の附與のために努力してくれたのであります。我々は日本の当局者のかたがたがそういうような制度の実現のために努力して頂くように切にお願いいたす次第であります。
 次に、刑事訴訟法第四百八十二條におきましては、老齢者であるとか、或いは病気が非常に重くて回復の見込みがないというような場合におきましては、刑の執行を停止して自宅に帰すような制度が規定してあります。ところが本法案におきましては、そういうような制度すらない。国内の秩序を撹乱し、破廉恥なる犯罪を犯したところの一般囚人に対してすらそういうような制度があるにもかかわらず、戦犯に対してはそういうものはない。こういうような点につきましても、将来御考慮をお願いしたいのであります。
 次に第十六條の仮釈放の問題に関しまして、終身刑又は四十五年以上の刑は十五年にして初めて宣誓仮釈放の申請の資格ができるようになつております。日本の刑法第二十八條によりますと、無期刑の者は十年で仮釈放の申請の資格が発生いたします。又イギリスの刑務所におきましては、無期刑を二十一年と仮定しまして、その三分の二、即ち十四年勤めましたら無條件で釈放されるようになつておるそうであります。ところがシンガポールから巣鴨に邊られて帰つて来ると、十五年しなければ仮釈放の資格がなくなる。巣鴨に帰つて来たために一年間損をするというようなことをシンガポールから帰つて来た無期囚人の人々は言つておりました。本法案におきましては、日本の刑法の規定よりも五年も重い。イギリスの制度よりも一年重い。私は何が故にかくのごとき苛酷なる規定を置かなければならんかの解釈に苦しむのであります。従来、考えてみまするに、アメリカ人は日本人よりも平均壽命が大体十年ぐらいは長いと聞いております。従いまして、アメリカ人の十五年と日本人の十年ぐらいは丁度釣合うのじやないかというふうに考えまするので、若しアメリカの制度が十五年となつておりましたならば、日本流に十年になるように御努力を願いたいのであります。なお戦争犯罪の裁判におけるところの判決自体は御承知の通りと思いますが、非常に水ぶくれをしております。この水ぶくれしたところの刑期を何らかの方法においてだんだんと圧縮してもらわなければならんと考えております。現在巣鴨に約一千人の人がおりますが、その中の三分の一以上は無期刑であり、残つた人も十五年以上の人が殆んどであります。有期刑におきましても五十年というような刑期もあるのでありまして、そういうようなむしろ天文学的な刑期を言い渡すことによつて、順々と下のほうの軽い責任の者も重いような判決を言い渡されるということになつておるものと私は考えております。そこでこの刑期の短縮ということについては十分の御努力をお願いしたいのであります。
 次に第二十九條の個別審理の問題でありますが、この点につきましてはすでに相当言い盡されておると思います。ただ私は切に希望いたしたいことは、戦犯に関して日本国がその一般的なる恩赦の勧告を裁判国にすることは当然の義務として本法案の中に規定し、将来如何なる政党が政権を担当さるるに至りましても、戦犯のために恩典の勧告をなさるような義務を本法案に掲上して頂きたいといことを申上げておきます。なお御参考までに申上げますと、戦争裁判の実相及び戦犯家族の実情に関しまして、巣鴨におりますところの戦犯の中の法務関係の者が調査いたしました資料によりますと、戦犯の裁判に関しまして拷問を受けたる者百三十六名、有罪の判決を受くるに際し本人が人違いであつた者百三十八名、その行為が命令に基くものである者六百十六名、なおその家族の現在の状況は貧困の極度に達しておるのでありまして、生活保護法の適用を受けておる者百三十八名、極度の困窮に陷つておる者四百十二名、来年に至れば保ち得ぬと思う者が四百六名、従つて外地から引揚げて来ても一日の面会すらない者が九十名、これは大体千人中の数字であります。のような状況になつておるのであります。又巣鴨の中の戦犯の状況に関しましては、すでに本委員会のかたがたが巣鴨においでになつた際に詳細御覧になつたことと信じますが、中の日常生活はすべて自治的に運営いたしております。併しながら今までその自治の制度がうまく行きましたのは、講和が発効したならば何らかの恩典があるであろうということを期待いたしまして、それを目標に、唯一の希望として皆はおとなしくやつて来たのであります。講和発効に際しても何らの恩典もなかつたならば、彼らは希望を失い、暗い気持に陷つて行くだろうと私は考えて誠に憂欝に思うのであります。
 なお私はこの際、戦犯に対して地方の人がどういうようなお考えを持つておるかについて巣鴨から最近釈放されまして、その釈放された人が私が巣鴨におります際に帰つたときの模様を私に報告して寄越したところの手紙をお読みいたします。これは和歌山県の出身で元憲兵大尉であります。「家の近くの駅に着くとたくさんの八に迎えられ、誰も彼も涙を流し十分の挨拶もできずただ頭を下げるだけで、私も又涙が出て出て仕方なく黙々と頭を下げただけで、駅から家までは余り遠くないが、出迎えの人で続き、又次々と出迎えに来る人で行列でした。家に帰ると、田舎のことで一杯飲む準備ができ」ており、手伝人もたくさん来ており、大騒ぎである。今以て戦犯であるからお祭り騒ぎは禁止しておいたのでありますけれども……、」それからちよつと飛びまして、「米も一石ももらい、金、酒、ウイスキー、魚、鶏卵等、その他山海の珍味をたくさん頂きましたが、私の本籍地でもなく、二十年以上も離れており、妻の生地というだけであるのに、このような盛大なお祝いを受けたのも戦犯を理解するためかと思われ、又留守中愚妻の努力も大いに手伝つておることは事実であります。」このような手紙が参つております。その他、これは一例でありまして、地方に帰つて参りましたならば、地方の有力者のかたがたが駅に出迎えられまして慰めの言葉を頂いておるというような現状でございます。私は先に本法案が憲法上違反であるということを申述べました。併しながら本法案を作るに際しましては、政府並びに関係当局におきましては、相当努力を携われたものであると信じております。私たちは日本再建のためにこの法案がどうしても必要であるというものでありましたならば、如何ようなる犠牲を嘗めましようとも、欣然としてこの法案に賛成し、日本国家の興隆のために最善の努力を盡したいと思うのであります。
 以上甚だ簡単でありますけれども、私の説明を終ります。
#4
○委員長(岡部常君) どなたか御発言のかたありますか。
#5
○一松定吉君 連合国がいわゆる戦犯に対して言渡した判決は無効だとあなたはおつしやつた。條約に違反しておると……。
#6
○参考人(大西保君) 私は講和條約第十一條が効力がないということを申上げたのです。
#7
○一松定吉君 講和條約十一條は條約の一部でしよう。
#8
○参考人(大西保君) そうです。
#9
○一松定吉君 條約は憲法で認めておるでしよう。
#10
○参考人(大西保君) 憲法には條約はこれを忠実に遵守するという規定はあります。ありますけれども、その第一項において憲法は国の最高法規であるということを規定し、又第三十二條において法律によらなければ……。
#11
○一松定吉君 それはわかつております。いわゆる憲法の九十八條に憲法は国の最高法規で云々という條項がありまして、二項には日本国が締結した條約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする、とございますね。この二項も憲法だね。
#12
○参考人(大西保君) そうです。
#13
○一松定吉君 そうすると、憲法で條約は遵守しなければならんという規定があるのだから、これを無効だということは言えないでしよう。
#14
○参考人(大西保君) 解釈の問題だと思います。
#15
○一松定吉君 あなたも弁護士だが、私も弁護士である。それを憲法の解釈で、殊にあなたのように専門家であるかたがこの條約を無効とおつしやると、国会はこの條約を承認しておるのだから、国会が無効の條約を承認したということになり、我々の責任になるわけで、それはあなたのそういう御意見として言うならばいいけれども、その御意見が憲法からよつて生じた御意見であれば、九十八條の二項にこういう規定があるのに、この條約無効だと初めから否認してかかるわけには行かないのではないかね。あなたも弁護士、私も弁護士である。法律で生活しておるお互いが憲法の解釈について、憲法の九十八條の二項から、無効だというようなことを言うのはそれはどうだね。
#16
○参考人(大西保君) それは国際法学者によつて……。
#17
○一松定吉君 私はあなたと議論するのでなく、日本の憲法を基にしてのあなたの御議論で、あなたが強調されるから言うので、その点について将来もう少し御研究願わなければならんと思うから私は申上げるのです。
#18
○参考人(大西保君) それはよく研究しておきます。
#19
○委員長(岡部常君) それではその点は……。
#20
○一松定吉君 大西さんの意見はこれが無効だから戦犯に対して云々というように、これが前提となつておる。
#21
○委員長(岡部常君) それは又委員会として態度をきめるとして……。
#22
○一松定吉君 それはそうです。その点は御研究願うということにして追及はいたしません。
 それから大赦、特赦というのは当然今度の大赦令の中に含むというふうに政府も考えておるようですから、その点は私は余り心配しないでいいと思うのです。ただ私どもは戦犯というのは日本の国内法における犯罪者でない。こういうことはあなたと意見が全く一致しております。ただこういう戦争によつて負けた者が戰勝国によつて戦犯として処分されたのである。内国人としてこれを犯罪人とこう見ることは今の戦犯者と言われる人に対してお気の毒である。これは私もあなたと同じ考えを持つております。ただ意見の違うのは無効だとおつしやることだけです。
#23
○長谷山行毅君 先ほど巣鴨刑務所という名称は妥当でないというような御意見がありましたですが、これは今一松先生のおつしやるように、戦犯は国内法による犯罪でないということから考えましても、この巣鴨刑務所という名称は我々は妥当でないように思うのですが、何かあなたがたのほうで適当な名称のお考えがありますならば伺つておきます。
#24
○参考人(大西保君) 我々としましては巣鴨拘置所或いは巣鴨プリズン、大体皆そういう名称がいいだろうというように思います。二つですね。
#25
○長谷山行毅君 そうですが。巣鴨收容所というようなことは考えておられないのですか。
#26
○参考人(大西保君) ああそれもありました。巣鴨収容所ですね。
#27
○委員長(岡部常君) そのほかございませんければ……。
#28
○羽仁五郎君 今参考人の御意見を伺い、又委員からも御発言があつたのですが、参考人の御意見として今一応伺つておきたいと思いますのは、この戦争犯罪というものが国内法による犯罪であるかどうかという点は別として、それから又さつきお述べになりましたように、或いは人違い、又それとは意味を少し異にしますけれども、命令によるようなその他の点においてこの戦争犯罪人として取扱いを受けておられるかたがたに対する同情という点においては、私も決して人後に落ちるものではないのですが、最後の御意見として、こうした法律案或いはこうした法律が、今後の日本の平和にして民主的な再建に必要であるならば、喜んでこれに服するものだという御意見がありましたが、その最後の御意見の意味をもう少し詳しく述べて頂けませんか。恐らく御意見の御趣旨は、この現在戦争犯罪として追及され、そしてその戦争犯罪人としての処分を受けているということについての苦痛、或いはそれに対する不満、或いはそれに対するさまざまのお考えというものはあるけれども、それとは別に、将来戰争の悲惨或いは平和の破壊とか、或いは戦争に関するさまざまの公正な法規を踏みにじる、或いは人道に対する悲しむべき行為をする、そういうものを根絶する意味においてこの法律が役立つならば、即ちもつと本質的には、この戦争犯罪というものが国際的に確立せられたものであると、従つて日本国民としてもこれを明確に認識するということが将来戦争の悲惨というものを防止する上に、又なかんずくこの戦争犯罪人として指定されておる大多数のかたは、その範疇には入らないのだけれども、その首脳部にある人が或いは再び戦争を計画したり、又は人道に反するような命令を下したり、そういうことを防止する上に役立つならば、その意味においてこれに服するという御意見でありましようか。
#29
○参考人(大西保君) 我々の考えは羽仁先生の御意見とは全く違います。我々は戦争裁判というものは結局は将来の戦争を防止する何らの役にも立たなかつたというふうに考えております。又一例を申上げますと、イギリスの今名前は忘れましたが、某卿は、戦争裁判政策は失敗であつたということを新聞で発表しております。現に朝鮮におきましても、当然戦争裁判に付せられるべきような残虐行為があるように聞いております。折角ああいうふうに大げさに宣伝しまして、戦争裁判をいたしましたけれども、結局においては人類の闘争がある以上は、又残虐なる行為も単なる戦争裁判のごときものによつては防止することができないものであると考えております。ただ併し、私がここで最後に申上げましたところの趣旨は、日本国が独立するに際しまして、あらゆる重要なるまだ外国と折衝しなければならない問題が、残つておる。そういうような問題があるのに、戦犯のことでいざこざ言つて、外国の感情を害し、その重要なる折衝がうまく行かなかつたならば誠に申訳ない。そういう意味でこの法案に対して賛成であるというふうなことを申上げたのであります。終ります。
#30
○羽仁五郎君 今お述べになりました御意見は、最近までおいでになりましたその巣鴨におられる大多数のかたの御意見を内容的に、形式的に別に伺つているわけじやないのですが、大多数のかたがたが今お述べになりましたようにお考えなんでしようか。
#31
○参考人(大西保君) それは大多数の人から聞いたことがありませんので、大多数の意見だということは申上げることはできません。併し少くとも巣鴨におるまあ有識の人であると私が見る人は、私の意見と大体同じような考えじやないかと私は思います。
#32
○羽仁五郎君 只今の御意見は御意見として伺つておくのですが、そして私は今あなたに向つてやはり議論をしようと思うんじやないのですけれども、今お述べになつたような意味で、外交上とか或いはその独立に関するさまざまの問題で、それでこの戦争犯罪人と呼ばれておる人々が犠牲になるということは、私は本質的には客観的に承認せられるべき論拠にはならないと思う。で、日本が独立し、国際間に対等の地位を獲得するということについて、一人の人をも犠牲にすべきものではない。又そういうようにして何人かを犠牲にして独立を獲得し、対等の地位を獲得するというような独立、対等では、到底真の独立でもなければ対等でもない。ですから、御意見の御趣旨はよくわかりますが、併し私はやはり若しこの法律というものを強制せられるのではなくて、自発的に承認するということがあり得るとすれば、即ち将来の戰争を防止するということに寄與し、勿論この法律そのものによつて将来の戦争を防止することはできない。又戦争裁判それだけで将来の戦争を防止することはできないということは御意見の通り私もそう思いますが、併し戦争は戰争裁判、又戦争犯罪人を引続きその刑務所或いは収容所に収容しておるということによつてのみそれだけによつて将来の戦争を防止することはできない。今現に朝鮮は今あなたが述べられた通りですが、そういう方向に向つて併し何とかして戦争を防止して行くという面に決して少なからん寄與があるだろう。現になかんずく国家の枢要の地位にある人々が或いは戦争を計画し、又その戦争を途行ずる上に人道を無視するような命令を下すということに対して、未だ曽つて俊嚴な裁きというものがなされたことがない、それが今回初めてそういう裁きがなされ、そうしてそういうかたがたは今日それを救済することもできない絞首刑なり何なりの措置を受けられておるのでありますし、そういう意味において勿論戦争犯罪だけで戦争を防止できない、又一介の戦争裁判だけで戦争を防止できないということは御意見の通りですけれども、併しそれらの点において将来国家を指導する人々が軽々しく、軽々しくというのはどうかと思いますけれども、併し自分の独断を以て戦争を計画したり、それを開始したり、又その途中において、單に勝利を得るという目的を以て人道を無視するような命令を下したりすることに対して躊躇を、少くとも躊躇、或いは猛省、反省するという上に役立つという意味はないのでしようか、如何でしようか。
#33
○参考人(大西保君) 戦争裁判が本当に公平に、例えばスイスのような中立国によつて勝者も敗者も平等の立場において裁判されるものでありましたならば、或いは本当にその裁判が正しかつたというふうに何人も認めるでありましよう。併しながら勝者のほうは何ら裁判がなくして、敗者のほうだけについて過酷な刑が科せられるというような戰争裁判、現実の問題として……におきましては、そういうような効果はないんじやないか。併しながら私の意見といたしましては、およそ人類の間の闘争は残虐なるところの死を伴うような兵器によることなくして、この文化的な社会においてはすべからく裁判機構のようなものを通じてお互いに裁判によつて紛争を解決して行つたならば、人類のそういうような紛争は防止することができるんじやないか、こういうふうに私は考えております。
#34
○委員長(岡部常君) それでは、ございませんければ、今日はこの程度で散会いたします。
   午後零時五十三分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト