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1951/06/13 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 労働委員会 第18号
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1951/06/13 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 労働委員会 第18号

#1
第013回国会 労働委員会 第18号
昭和二十七年六月十三日(金曜日)
   午後二時三十二分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     中村 正雄君
   理事
           安井  謙君
           波多野林一君
           村尾 重雄君
   委員
           上原 正吉君
           木村 守江君
           九鬼紋十郎君
           一松 政二君
           早川 愼一君
           菊川 孝夫君
           重盛 壽治君
           堀木 鎌三君
           堀  眞琴君
  国務大臣
   内閣総理大臣  吉田  茂君
   労 働 大 臣
   厚 生 大 臣 吉武 惠市君
  政府委員
   労働政務次官  溝口 三郎君
   労働省労政局長 賀来才二郎君
   労働省労働基準
   局長      亀井  光君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       磯部  巖君
   常任委員会専門
   員       高戸義太郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○連合委員会開会の件
○労働関係調整法等の一部を改正する
 法律案
○労働基準法の一部を改正する法律案
○地方公営企業労働関係法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(中村正雄君) これより委員会を開会いたします。
 午前中地方行政、人事との連合委員会におきましては、政府委員の出席がなかつたために午前中の連合委員会が散会いたしております。従いまして明日午前十時から地方行政、人事連合委員会を開きまして、主として地方行政の委員からの質問を行う予定になつております。なお人事委員の質問に割当てております。連合委員会は、十六日以降適当なる日におきまして両委員長で協議して決定いたしますからさよう御了承願いたいと思います。
 なお本日の労働委員会におきましては、先般のお約束通り内閣総理大臣が出席いたしまして質疑することになつておりますが、先般打合せました総理大臣の出席時間が三時間となつておりますが、本日内閣より四時までに終えてもらいたいという、こういう通告がございました。一応報告いたしておきます。なお質問につきましては、各委員から通告がありますので、通告に従つて発言を許しますが、今までの政府委員との質問と違つて、一応最初に全部の質問をお願いいたしまして、それに対する答弁を願い、なお時間によりまして再質問すると、こういうふうな方向で進みたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
 只今内閣総理大臣並びに労働大臣が出席いたしましたので、通告順に従いまして質疑の発言を許します。なお先ほど報告いたしましたように、本日総理大臣の出席は午後四時までと、こういう通告がありますが、或る程度の時間は余裕があると思いますので、割当いたしました三十分は不可能と思いますから、大体お一人二十分程度で質疑を終るように御努力願いたいと思います。通告順に従いまして発言を許します。
#3
○重盛壽治君 総理大臣に対して私がお聞きしようということは、すでにもうわかりきつたことであり、いわゆるしやかに説法ということであろうと思いますし、又そうなることを望んでおるのであります。今回の労働法規の改正及び制定は、ただ労働法規の制定を法文によつて改めて行くということではなくて、この国会で問題になつておりますところの破防法と共に、この労働法規を制定されることによつて、日本の将来の歩み方、言い換えますならば、国家全体の思想の上に重大なる変革を来たす虞れがある。更には労使間の対立となり、或いは全産業に及ぼす影響の極めて大なるものがあると存ずるのでございます。そこでこの法案を審議する前に、非常に多忙な首相にお出で願つて御意見をお伺いしようということになつたのであります。
 言うまでもなく独立国となつた日本が、名実ともに兼ね備えた独立国としての内容を持つことのためには、何と申しましても経済自立が先決問題であるということは、すでに総理大臣、大蔵大臣等の言われるところであり我々も又同感であります。併しこの経済自立の方法はいろいろあるでありましようけれども、何がその根幹となるかと言いますならば、言うまでもなく国内あらゆる産業の振興であります。そしてこの産業の振興を図る基本条件は、労働行政を如何に円滑にせしむるかということにかかつておると思うのでございます。総理大臣は御承知のように、このたびの労働法規の改正に当りましては、全労働者が反対をいたしております。そして又更に実力行使によつてもこれを阻止しようとして険悪なる状態さえ出て来ておるのでございますが、こういうときに何故にこの国会において強硬にこれを改正なさろうとするのか、先ず第一点をお伺いしたいのであります。このような問題は、今まで関係大臣にもお聞きしたのでありまするけれども、関係大臣の答弁等によりますならば、従来の法律を以てしては講和が発効した現段階におきましては、事務的にも産業の発展のためにも支障を来すから改正をするのだということを言われておりますけれども、私はここで一つお伺いしておきたいことは、総理大臣が労働者と資本家、言い換えますならば資本と労働力とをどのように評価せられておるか、どんなふうにお感じになつておるか、労働者というものは資本家の隷属物であつて、不逞の輩である、そういうふうな考えであるのか。それとも労使平等な立場において日本の産業を再建せしめなければならんというお考えであるのか。ここに先ず基本があるのであつて、言い換えますならば、今回のような地方に起きておりますところの、国内全般に起きておりますところの労働争議というようなものは、この法律反対のための争議というものが、総理のお考え如何によつては円満に解決できるところの性格を持つておるというように私は考えるのであります。従つていろいろ事務的な弊害はありましようとも、取りあえずはあの政令二百一号が出ました以前の状態に返して、講和後の産業のあり方と労働運動の進展を見て、日本の再建のために支障を来すというような状態が生れましたならば、そのときに初めて現実に即して労働組合法を改正いたしましても決して遅くないのであります。首相のお考えは、私の言い過ぎかも知れませんけれども、国民を御心配になつておらないのではないか。特に勤労階級というものを信頼しておらんように私は考えますけれども、もう少し国民全体を信頼されていいと思う。法務委員会でも私はこのことを申上げましたけれども、日本の国民性は私が今更申上げるまでもなく、いわゆる叩けば反撥して来る、特に労働者にはそういう気持ちが非常に強いのであります。併し一方又変えて温情を以て協力を要請し、而もそのことが日本民族八千万の結集力によつて日本国家の再建をしなければならんところの重要な段階だというような大義名分の大方針の下には、私は命をかけて協力をして行くところの国民性を持つておる。この性格を総理大臣も今こそはつきりおつかみになつて、言い換えるならば労働組合法規の改正の中に緊急調整がございますが、今こそ首相が決然とせられまして緊急調整を労働省と法務府のほうになされまして、そうしてこういう厄介な法案を今日この段階で上程することなく一応考慮したらどうかということの一言によつて、いわゆる鶴の一言によつて社会不安を一掃できるというところに来ておりますので、どうか首相のこの点の考え方をお聞かせを願いたいと思うのであります。
 占領中の我が国の労働政策は私が申上げるまでもなく司令部の政策で大体履行せられた、言い換えますならばフーバー政策というようなものが講じられておりました。これに対しては総理大臣御自身としても必らずしも全部が満足であつたとは私どもも考えません、これはフーバー政策に反対しているというようなことではなくていわゆる日本の現状を十分に把握してもらえなかつたことが一点と、更に米国の一貫した一つの政策があつたと、かように考えるのであります。併し講和発効になりまして今日の段階になりましたならばこのフーバー政策からは完全に抜出しておるのでございまするので、憲法二十八条に規定するところの労働者に与えられたところの一切の権限はこの際すべての労働者に与えて行く、そういう方針を先ず政府がお立てになるべきではないか。私が申上げるまでもなく労働組合法がこの法律で常に労働者を拘束して、そうして縛つてものをやらせるというのではなくて、労使間の紛争がたまたま起きましたときに、いわゆる不測の事態が生じましたときにこの法律によつて処理して行く、飽くまで民主化の基盤となる労働組合を育成助長せしむるという保護的規定でなければならんというように私は考えるのでございますが、首相のお考えはどのようでありますか、この点をお伺いいたしておきたいと思います。
 今度の労働法改正に当つて電通、郵政を初めとして現業に団交権を与えられましたことは総理のお考えに私は大賛成でありまして一歩前進でございます。併しまだまだこの種の方法を講じなければならんところの現業官庁が非常に多く、一貫性を欠いておるように考える。例えば建設事業でありますとか、港湾関係でありますとか、なおその他たくさんあります、国立病院の療養所に働いておるところの医者であるとか看護婦であるとか、こういうような現業に従事しておる者に対しては当然労働法の改正をいたしまして国家公務員から除外して行かなければならんというように考えるのでございまして、この点一層の英断を私はお願いすると同時に、こういうことをやつて頂ける御意思があるかどうかをお伺いしたいのであります。
 更に米軍が占領後日本に来て日本の多くの労働者を使う、いわゆる過去の進駐軍労務者でありますが、独立した現在は今申上げますような形の上から申しましても、当然こういう人たちには日本の労働法規によつてすべてを処理して行くというふうに私は考えるのでございますが、これでいいのかどうか、首相のお考えをお聞きしておきたいのであります。
 これは少し細かいことになりますが、従来各種の問題で公聴会を開催いたしておりますし、労働委員会としましても冒頭私が申上げましたように、単なる労働法規の改正ということでなくて、これが実施されますならば日本の将来の思想の上に変革を来たすという建前から、あらゆる関係者にお出でを願つて公聴会を開いておるのでございますが、これはややもすれば聞き放しという形であつてこれが本当の法律を作り上げる上に用いられておらんのでありますが、これらは首相みずからが折角意見を聞いたのであるから、その有用な意見は十分とり上げて法律を活かして行くという形にやつて頂きたいのでありまして、この点のお考えはどのようにお考えになつておられるのか、一つお聞きをしておきたいのであります。
 更に全般的な労働問題でありますが、先ほど申上げましたように、何といつても今一番日本の国で大切なのと、運用のよろしきを得なければならんのは私は労働問題だと考えております。その労働問題が政府のおやりになつておる労働政策といいますか、これは何か孤立したような形である。政府自身としては全般的な総合政策の中に入つておるのだとおつしやるかも知れませんけれども、より強力なる総合政策の形の中に常に労働問題は織込まれて行かなければならんのではないか。特に金融政策とか治安対策というようなものとは密接に織込んで行かなければならん。現在の吉武労働大臣が非常な私は有能な労相でありまして、決してこのことを発言できないようなかたではないと存じますけれども、従来私どもが見ておつた姿をそのまま率直に申上げますと、何かしら労働大臣は伴食大臣のような形で、直ぐ予算の面で大蔵大臣に押えられましたり、地方自治の問題で或いは法令の問題で法務総裁に押えられておるというようなことで、本当に労働者にはこうしてやらなければならんということを考えつつも、労働省自身の力ではどうにもできないというようなものがたくさんあつたのではないか。一つの小さな例ではありますが、国鉄、専売等が一つの裁定を下されて当然この労働にこの程度の給与をやれというようなことがありましても、予算上、資金上というようなことで大蔵省の力のウエイトが多くて遂に実現できないというようなことがございますので、こういう点に対しましては今日只今より首相がもう少し決意を以て私の申上げる労働行政が本当に大切だという段階に至りまするならばお考えを願いたいということを、この点に対しまして将来どのようにお考えになつておるかということをお聞きしたいのであります。
 最後に、日本の労働運動の実態を一体国際的にどのような程度に求めようとするのか、これはいろいろ方法はありましようけれども、例えばILOの国際条約をいま少し多く批准をして国際的な信用を得なければならんというように私どもは考えておりますけれども、現在世界の平均批准は一七%で我が国は一四%で平均批准に達しておらんというような状態でありまして、併し我が国の法律を今少しずつ直せば直ちに残つておるうちの半数ぐらいは批准ができるという状態まで進んでおるのであります。これをいま一息首相のお考えによつてお進めを願いますならば国際水準は非常に上つて、日本の労働運動のまじめな在り方がはつきり世界的に打出されて行くというふうに私は考えますが、この点に関しましてもどのようにお考えになつておるか承りたい。
 最後に私はこれは悪口を言うようなことになるかも知れませんが、この際総理大臣の講和発効後の日本の再建に対して、総理御自身の考え方、或いは自由党の方針というようなものは常に発表して頂いておるのでありまするけれども、より広く全国民に対して日本の産業再建のためにはかくあるべきだという一大協力を要請なさつて、そうしていわゆる側近の方のみの進言によつて政治を行われることなく、あらゆる方面の代表とじかにあなた自身がお会いになつて、特に労働者の代表などに対しては米国においても炭労のルイス君に会つてあのストライキはどうだというようなところまでやる、この気魄といいますか、幅といいますか、民主的感覚といいますか、そういうものをお出しになつて、本当に実情をそれぞれの代表者に訴えて協力を要請するという形をとつて頂けますならば、私は日本の労働問題などはたちどころに解決がつくと考えているものであります。終りに首相に対する希望の一端を申上げて私の質問を終りたいと思います。
#4
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。お話を伺つていると、このたびの労働法規は如何にも労働運動を圧迫し若しくは一種の弾圧法のような性質を帯びているかのようにお感じでありますが、政府の考えは全然これに反対しているのであります。主要なものを述べれば、あなたがお述べになつた意見と同調している気持でいるのであります。即ち労働運動の健全なる発達を希望し、労使の協調も希望し、又同時に全体の日本の経済が一層発展するように、労働階級の協力を望むという趣意においては決して政府もあなたのお考え以外にあるのではないのであります。併しながら現在の状態から申して、こういう法規は必要である、或いは占領治下における労働法規は、或いは行き過ぎ若しくは足らざるものがあつたかも知れませんが、現在の日本の経済状況或いは又産業の発達その他から考えてみ、この程度の法規は必要と考えるのであります。あえて弾圧をするとか或いは又資本家だけに利益であるとか、或いは政府にだけ都合がいいということを目的として考えているのではないので、この法規が制定せられるまでには審議会の議を経て政府が長くかかつて研究いたした結晶がこの労働法規になつたのであります。この点についてはよく政府の考えているところをおくみ取りを願いたいと思います。
 又参議院において或いはその他の方面において、あたかもこの法規が弾圧を目的としているかのごとく受取られた結果は海外における影響は決してよくないのであります。これは一種の誤解を与えるのであつて、日本の将来にとつて、或いは又日本が外国との関係において、決して好ましい結果を生じておらないのであります。独立後の日本として国家は決して容易でないのであります。政府としてはあくまでも民主主義に則つて、又労働階級の幸福又は公共の福祉等も考えに入れて、十分に練りに練つた結果がこの労働法規であるのであります。これに対して欠点がある、不満があるということは、この機会において十分国会方面から、参議院若しくは衆議院、その方面からして意見を汲んで、意見を承知してこれによつて考えるべきことは考えますが、あえて弾圧一本のつもりでやつているのではないということを御承知を願いたいと思います。
 又只今労働大臣は伴食のようなお話でありましたが、これは断じてそういうことはございません。労働大臣としてその主管事務については主張すべきことは十分主張し、又意見として他の閣僚の意見としてくみ入れ得るものはくみ入れてこの法規になつたのであります。決して労働大臣が伴食であるがためにこの法規が弾圧法規になつたというようなお感じであれば、これは誤解であります。細かいことは労働大臣からお答えいたします。
#5
○国務大臣(吉武惠市君) 只今総理大臣からお答えがございました点で洩れた点を一、二私からお答え申上げたいと思いますが、労働条約の批准の点につきましては、終戦後における日本の労働法規は相当国際水準に達しているものもございまして、批准し得るものもあるわけでございまするから、できるだけ早い機会に批准し得るものは批准する処置をとりたいと考えております。
#6
○委員長(中村正雄君) 続いて村尾重雄君。
#7
○村尾重雄君 私は総理大臣が今日の労働組合をどう見ておられるかについてお考え方をお聞きしたいのであります。即ち日本の総理大臣として労働組合を基本的にどう考えているかということをばお尋ねいたしたいのであります。実は時間の制約から一度に続けて質問してもらいたいという議事進行のつ行き方でありますので、非常に不満でありますが、時間の関係上承認を得てそれに基いて二、三続けてお尋ねしたいと思います。
 私が以上わかり切つたようなことをばあなたにお尋ねいたすのでありまするが、甚だ失礼な言葉とおとりになるか知れませんが、このわかり切つたことをばあなたにお尋ねしなければならないほどに現吉田内閣の労働行政といいますか、特に今回の労働法規の取扱方について、日本の組織労働者は非常な大きな疑惑をもつているのであります。只今国会での、特に参議院での批判が大きければ大きいほど却つて組合等の識者に疑惑を持たれるような悪影響になるから、何だか慎んで頂きたいというようなお言葉のようにとれたのでありますが、もとは政府にあるのであります。こうした政府のこの法案の取扱方に対して非常に今日の組織労働者が、又は識者が疑惑を持つているということはおおうことのできない事実なんであります。そこで私は大体三つの点について総理の御意見を伺い、この問題を明確にいたしたいと思うのであります。
 先ず一つは今度の法規の取扱方をば、現在政府が国会末に出しておられるところの例えば破防法並びに集団デモ等取締法、警察法の改正、自治法の改正等の一連の治安対策法案、言い換えれば吉田内閣の反動政策の一連としてこの労働法規の改正の取扱をなさつておられるのではないかという疑いを我々は持つのであります。なぜならば、我々がこういう疑いを持つことが無理であるかないかはこの一点であります。政府においては労働法規の改正について昨年リツジウエイ氏の声明に基いて政令諮問委員会、又中山伊知郎氏の労働法改正の要綱等の答申に基き、中央労働基準審議会等を設けて、半年に亙つて非常に熱心にこの改正案についての意見をまとめられたことに対しては、我々非常に敬意を払つておるところであります。ところがこれらの最後の決が十分にとれなくて、国会に提案されるものだと思つておつたのに、国会に当然期間を与えて提案することなく、五月過ぎて会期が末となり一カ月延期になつて、而も重要なその転機というのがメーデーにおけるところの皇居前広場におけるところの極左一部分子のあの騒擾事件を契機として政府が労働法規を国会に提案されたことなんであります。即ち五月七日の閣議において破防法の無修正国会通過に決意を重ねられると共に、これらの一連の治安対策法規を出されたのであります。それと同じに労働法規というものをば閣議で決定、国会に提案されるに至つたのであります。我々は騒擾事件を契機としてこれを律して、これに口実を求めて政府が出したこの労働法規の出し方に私は非常に、若し政府がそうした考え方、治安対策と同じ考え方を持たないことを本当とするならば、非常に時宜を得なかつたということであり、又こうした一連の治安対策法を出されたということに対しては、我々はこの法案に対して非常な疑惑を持つのであります。その点についての総理の明快なお考え方を承わりたいと思うのであります。
 次にお尋ねしたいのは、同じ五月七日の閣議の問題、決定の条項でありまするが、当日問題になつたこの労働法規の最後の仕上げの問題になつたのは、この原案から首相の争議停止権のこの条項を削除なされたことであります。いま一つは、ゼネストのごとき非常事態に対しては治安保持の問題として別個の便法を考慮するという立場からこれらを外して労働法規を出されたのであります。その労働法規を出すときに重大な争議の最終的なこの解決というか、これらの手段として緊急調整というものをば出されたのでありまするが、ここで私はお尋ねいたしたいのは、この別個に治安対策としてゼネスト禁止法を考ている、而もしばしば国会での論議の最中においても、当時の責任者木村氏にしても、又吉武さんにしてもこれを出さないとは言わない、今日の労働組合の動き方と照合してこれを十分考慮した上において我々はなお一層の、これを出すか出さないかについて考慮して行くという立場をとつておられるのであります。これは一面この法案の審議如何においては又第一波、第二波、第三波と行われている労闘のストの如何においては、ゼネ禁をも出すのだと言わんばかりの一つの威圧を以て、言外の上にそうした一つの威圧を以て労働法審議に当られるという遺憾な態度であります。そこで私は率直にあなたに禁止法についてあなたは今日どうお考えになつておるかということについてお伺いすると共に、この法規を出すときに、首相の争議停止権という条項が削除されたが、それに代つて労働省から重大な争議の一つの処理方法として緊急調整の制度を出されておるのでありまするが、この緊急調整の制度が、このまま政府原案が若し原案通過したとした場合において、又この原案において大体ゼネスト禁止法というものを出さなくても、争議というものが或る程度抑制、それをとめることができるのだというお考え方をばあなたは持つておられるかどうかということをお伺いしたいと思うのであります。以上で一応残してお答え願います。
#8
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。労働法規の提案その他の取扱方について遺憾があるという御意見でありますが、このお考えはお考えといたして、政府としては労働法規は長く如何に改正するかについては研究に研究を重ねて来たのであります。而してこの議会においてでき得れば法律になる成案を得たいと考えており、又国会においてもこれが法律として協賛を得るようにいたしたいというだけの話であります。その出し方とかその他について大いに術策を設けたように、施したようにお考えでありますが、これは政府の考えておるところではないのであります。又治安対策と関連をしておる……関連もいたしておりますが、治安対策は、これは現在の状況から考えてみてその制定を必要といたしたから提案いたし、又制定せんといたしておるのであります。
 ゼネストについては、これは結局状態がどうなるか、ゼネストを禁止せざるを得ないような状態と見れば、これを政府は提出せざるを得ないのでありますが、今日それだけの必要があるかどうか、又これをなすことが公共の福祉に合するかどうか、これは政府は慎重に考慮いたしております。その他は労働大臣からお答えいたします。
#9
○村尾重雄君 もう一点お尋ねいたしたいことがあるのであります。それは労働法規の改正についてでありまするが、すでに法規が制定されてから六年経過しております。六年間の実際上の運営と又経験に基きまして、我々この労働法規を改正することに決して我々は反対ではないのであります。我々はその運営と経験に基いて改正されなければならない点を多々あることを十分にこれを認めるものであります。ただ問題は、一言お尋ね申上げたいのは、労働法規の取扱方について、又法規そのものについて、これは保護法として取扱うべきものか、又あなたは取締法としての立場に重点をおいておられるかということをお聞きいたしたいのであります。それは御承知のように、二十年の暮に労働組合法が制定されました。そのときの政府の提案説明にも明確にありましたように、憲法二十八条における労働者の団結権並びに団体交渉権及び団体行動を保障されておるこの目的を達するために、保護法として労働法というものが制定されたのであります。それは二十四年だと思いまするが、第五回国会において、やはり吉田さんの内閣の手においてこれが大きな改正を見たのであります。この改正の提案説明に、政府は労働組合の民主化を徹底さすのだ、又その責任性を明らかにするのだとおつしやつて、これらの提案理由というものは我々も認めるのでありますが、その実は相当労働組合に政府、言い換えれば官僚の介入といいまするか、組合に対する動きの抑制にかかつたということは見逃せない事実であつたのであります。このたび改正を又三度吉田内閣の手において見るに至つたのでありますが、このたびの私は改正は、成るほどいろいろと言を盡して弁明されまするが、明らかにこのたびの改正は自由党の性格といいますか、いわゆる経営者の意向というものが相当ウエイトを持つて改正に臨まれておると見ざるを得ないのであります。これは一々例証を挙げてやる時間を持ちませんが、只今又爾来衆議院においても問題となりました緊急調整の取扱についても、又調停申請却下の問題にいたしましても、個人処罰の問題にいたしましても、非常に、労使間の問題としての、経営者と労働組合と自主的な場において相当これがいろいろと処理さるべき問題であるのに、より以上に今日の政府、言い換えますと、官僚の人たちがこれらの労働組合の内部へ干渉するきらいが多く見出されるのであります。又基本権であるべきところの争議に対して、団交に対して、非常に抑制的な考えというものが今度の改正を通じて随所に我々には感知されるのであります。そこで吉田総理に、労働組合法というもの、又労働組合法規というものの取扱が、やはりあくまで勤労者の団結及び団体交渉権、団体行動に対しての保護法的性格、当時の考え方を持つておられるのか、取締法的の何を、労働者は放つておくと何をするかわからない、前の考え方によつて、干渉的な考え方を持つておるのか、その点を一点お伺いして問題を打切りたいと思います。
#10
○国務大臣(吉田茂君) 御質問のこの法規は取締法的であるとか、悪い言葉を申せば弾圧という意味になるかも知れませんが、そういう気分でないということはしばしば申した通り、今日もこれまで先ほども申した通りでありまして、詳細は労働大臣からお答えいたします。
#11
○国務大臣(吉田茂君) 只今総理からお話がございましたごとく今回の改正の趣旨は労働者の権利保護という点と一方公共の福祉という点を考えて立案をしたものでございます。
#12
○委員長(中村正雄君) 続いて堀木鎌三君。
#13
○堀木鎌三君 私どうも先ほどからの質疑応答を伺つておつたのですが、なお確めたいとこう思うことがあるわけであります。
 今度の労働法の改正、労働関係法規の改正はこれはもう総理大臣自身がよく御承知の通りに昨年の五月のリツジウエイ声明に基きまして、占領下の諸法令の改廃という観点に立つて総理自身が信頼されるところの政令諮問委員会の答申、それに基いて始まつて参つたものであります。その当時の何と申しますか、その政府の支配される政令諮問委員会自身を支配しておつた空気は、労使の問題は法令で規制して実際の集信を無視するときには却つて社会秩序を混乱に陥れるものだ、従つて労働法規の改正は他の法規の改正とよほど趣きを異にして、労使双方の自主的な納得とその解決に対する努力、責任の成果とを負つて行くべきだ、こういうふうな事柄が支配的であつて、ただその争議行為が社会の秩序と公益の維持とに対して甚だしく支障を与えて、そうして治安立法の対象となるような事態になつたときに労働法規とは関係なしに治安問題として解決しようというのが大筋であつたはずであります。ところが実は今度は今もお話にあるようなゼネストについては未解決なままに労働大臣の御説明によりますと、本国会も残り幾らもありませんから本国会中はお出しにならないようだ、併しやはり治安省としてはその問題を考えているのだ、そして今度の労働関係法の改正が出て参りました。
 で率直に申上げますが、今度の改正法規は昨年の暮から労働関係の法令審議会で、これは確かに労働省も御努力なすつたと思いますが、本年の四月頃までおかかりになつたという関係から出て参つた改正案ですが、率直に申してここでいろいろな公述人が出て参りましたところを見ますと、この法令に関係した者でもでき上つた結果に満足していない。その一例を挙げますと、総理大臣が一番こういう方面では御信頼のあると思われる中山伊知郎氏、この答申を書きましたといわれておる中山伊知郎氏すらあえて今回の改正を必要としない、それから労働者は無論改正をする必要がない、経営者のほうはこういう改正ではどうも困るのだと実は全く未熟なままに出て参つた。と同時に緊急調整なるものは公益委員の吾妻委員の案をとつたとこういうふうに言われながら、実はこれは労働省はそういう御説明をなさるが労使双方ともそれはうそだと、大事なところは抜いてあつてそれは労働大臣が勝手におきめになつたと、事実そうなんです。そういうものが出て参つておるのです。
 で私はここで従いまして総理大臣の御出席を得て、ここで一番もとの政令諮問委員会に対して総理大臣はどういうふうなお考えで諮問を出されましたか。そうしてその答申に関してどういうお考えで労働大臣にお命じになつたのか。その点を二点だけ先ず御質問申上げたいと思います。
#14
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたしますが、只今の御意見であるとこの労働法に対してはすべてのあらゆる方面が反対をしておるように言つておられますが、そうでない部分も我々は承知いたしておるのであります。これは人の聞き方或いは聞いた方向の相違であるかも知れませんが、賛成しておる人もある。又只今お話のように政府諮問委員会その他り各方面の意見を政府としては成るべく広く集めて研究をいたした結果がここに至つたのであります。若しこれが各方面ともことごとく反対であるということであるならば政府はあえて提案することは躊躇いたしたはずであります。併しながら政府としてはこれだけの法規を現在において必要と考えまして提出いたしたのであります。一々誰が何を申上げたということはここで申しませんが、政府としては相当方面この法案の必要性を認められたが故に提案したということをここではつきり申述べます。
#15
○堀木鎌三君 私は総理大臣の善意を曲解するつもりはございません。だから恐らく総理大臣自身はそういう認識に立つて法案をお出しになつておりますが、併しながら私の申上げましたことは決して事実に基かないで申上げておるのでない。先ほど例を挙げましたようにたくさんのこれを反証する事例に立つて申げておるのでありますから、総理大臣として今まではそうお思いになつておつたかも知れませんが、私がここで申上げましたことも十分に御考慮願うだけの価値のある裏付けの事実があるということを申上げまして次の問題に移りたいと思います。
 先ず第一に伺いたいことは総理大臣は最近の労働運動が終戦後の混乱時を過ぎましてだんだんそれが軌道に乗つて来ておる状態だと、六年間の過去を振返つてみますと終戦直後の混乱期からみれば遥かに軌道に乗つて来ておる、こういうふうにお考えになりませんでしようか、どうでありましようか、その一点をお聞きいたします。
#16
○委員長(中村正雄君) 堀木君に御注意申上げますが、できれば時間の関係がありますので一括して御質問を願いたいと思います。
#17
○堀木鎌三君 それでは質疑になりませんけれども、委員長の特に御希望がありますからそれに伴つて申上げたいと思います。
 第二段は私ども終戦直後から労働問題に関係しておる者からみますと、実は遥かに健実ないいほうを歩んでおる。にもかかわりませず最近労働組合の運動として伝えられるところは主として労使双方の争いプロパーの事柄でなしに、率直に申しますればいろいろな政策、それは何だと申しますると占領政策がなくなつて独立した、ところが日本の官僚の間には占領軍の権威がなくなつたときに何とかこれに代るところの権威がほしいということからのむしろ末梢的なものが法律としてだんだん現われて来ておる。而も国民大衆はまだ占領軍のほうが或る種の制限をしましてもこれを民主的な限界から逸脱することのないような思慮と分別も或る程度加えたが、日本の官僚がそうでなくなつてやる場合には相当その範囲を逸脱するんじやないか。過去のいろいろな事例からそういう心配をして反対している向きが多いのであります。そういうようなことを考えられますと、併せてそのほかに考えられますことは、やはり占領が六年も続きましもから或る程度の社会的レジスタンスが反動として起るということは考えられますが、全体としてはいい方向に向つている。そのときに健全な労働組合を知つて過激なほうに追いやるような政策はおとりになるべきではなかろうじやないか。又国民が非常に濫用を恐れるような事柄は政府として慎むべきことでなかろうか。こういうふうに考えられるのでありますが、以上二点だけ御質問いたしまして時間がないようですから私の質問はこれで終ります。
#18
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。私が先ほど申した政府が提案いたしておる労働法律に対しては賛成の向があると申したのであつて、あなたのお話が根拠のない事実であると申したのではないのであります。賛成の方面もある、反対の方面も無論あるでしようけれども、賛成者もあるということをここに述べただけであります。
 又次に現在の或いは占領七年後の労働運動がだんだんいい方向に向つておると考えないかというお話、これは私は向つていると思います。誠に結構なことであると思います。併しながらこれも未だ尽さざるものがあり、一層健全な方向に向わしめることを私は希望せざるを得ないのであります。そのために今後取締或いは労働運動に対する政府の措置が、占領当時よりも一層り良識を欠くといいますか、取締、制限という方向に向きはしないか、或いは法規を濫用しやしないかという御懸くのようでありますが、これは当局において十分慎みまして御懸念のないようなほうに向わせるつもりでありますが、併しながら時々刻々起る問題に対して、当局の処置方について或いは行過ぎたり、足らなかつたりすることがありましようから、これは各位において十分御監督になつてその欠点若しくは誤れる点は是正せられることにあなたがたのほうからも御注意願いたいと思います。
#19
○委員長(中村正雄君) 堀木君に申しますが、まだあと持時間五分残つておりますから、その制限内で発言を許可いたします。
#20
○堀木鎌三君 いいです。
#21
○委員長(中村正雄君) では続いて堀眞琴君。
#22
○堀眞琴君 私は先ず世論の関係について総理大臣はどのように考えらるかということについて質問いたしたいのであります。
 只今総理大臣の答弁によりますると、今度の労働法規の改正に対しましては賛成している人もある、だからして全部の世論がこれに反対しておるとは言うことができないということを論拠としてお話になつているのでありますが、併しながら労働組合は勿論でありまするが、その他の人々もこの法案に対しましては反対を表明いたしております。私ども地方の公聴会並びに東京での公聴会におきまして各公述人からの陳述を聞いたのでありまするが、労働者側の公述人の陳述は勿論でありのまするが、学識経験を持つた人々の陳述におきましてもやはりこの法案にはつきましてはそれぞれ或いは治安立法的な性格を持ち込んだものであるとか、お或いは又個人罰を採用することは労働法規の建前から適当ではないというような意見が述べられておるのであります。単に国内の世論ばかりではありません。外国の新聞などの論調等を見ましてもこの労働法規の改正並びに治安立法につきましてはひとしくこれに対して懐疑的な批判的な意見を述べているものが多いのであります。例えばフランスのル・モンドであるとか、或いはイギリスのロンドン・タイムスであるとか、或いはアメリカにおきましても各種の新聞が同様に治安立法、労働法規の改正に対しまして、日本の反動化を非常に心配し、日本はともすれば、フアシズムヘの道を行くのではないだろうかというようなことを懸念しておるのであります。こういうような点につきまして総理大臣はどのように考えられるか。総理大臣はかねがねの御意見では、世論はこれは自分の関知するところではない、外国の新聞がどう書こうと自分はそれにはかかわりはないのだ、或いは日本の国内の世論がどうあろうともそれは関知するところではないという御意見をしばしば発表されております。私は今日の民主政治は世論を反映した政治だと思うのです。世論を無視して民主政治というものが果してあり得るだろうか、こういう観点から申しまして、首相のこの点に関するお答えを先ず承わりたいと思うのであります。
 それから労働組合の問題でありまするが、今度の法規の改正に対しまして労働組合側では非常な強い反対をいたしておることは御承知の通りであります。ところでこの反対に対しまして政府では政治ストである、労働組合は経済的な条件の改善のために闘争を起すのは労働法上これを保護することができる、併し労働法規の改正というような問題に対して反対することは政治ストであるからしてこれを認めるわけには行かない、こう答えられておるようであります。勿論労働組合が例えば政治ストを純粋の形において行うという場合においては、或いは労働組合の反省を求めなければならんと思います。併しながら労働法規の改正にしましても、或いは一連の治安立法にいたしましても、労働組合のあり方に非常に重大な影響を持つものでありまして従つてその点から労働組合がこれに反対するのは当然じやないかと思うのであります。それから又民主政治の運営に当りまして労働組合というようないわゆるプレシュア・グループの存在ということが非常に重要な意義を持つておると思うのでありますが、この点に関しまして総理大臣はどのようにお考えになつておるか、それをお尋ねいたしたいのであります。
 次に第三点といたしまして今度の労働法規の改正は、総じて基本的な権利の無視を行なつているのだ、基本的権利というのは言うまでもなく憲法の二十八条に規定されておりますところのあの労働上の権利でありまするが、ところが今度の労働法規を見ますると、例えば緊急調整により或いは調停申請の却下により、或いはその他本来ならば労使の自主的な解決によつてこれを解決しなければならんのに、この法規によりますると不当に政府がこれに介入し、そうして基本的な権利を無視し乃至はこれを剥奪しようとするところの傾向が非常に強いということを私どもは見てとらざるを得んのであります。でありまするからして例えば国際自由労連においても吉田首相に対する書簡において、日本のこれらの一連の労働法規に対して注意を喚起しているというような事実も私どもは非常に重要視しなければならんと思うのです。言うまでもなく基本的な権利はこれは国民の不可侵の権利であります。永久の権利である。人類が長い自由闘争の間に獲得したところの権利でありまして、国民は不断にこれを伸張するために努力をしなければならん権利であります。その権利を無視することがよしんばそれが治安という名目であろうと、それを無視することが果して適当であるかどうか、而も治安法規的な性格を今度の労働法規の中に盛り上げたということは、とりも直さずこの労働組合法即ち自主的な解決を促進するために労働者を保護するという建前において設けられたところの労働法規をして、基本的な権利を無視せしめる結果になつているのだということを私どもは心配しておるのでありますが、これに対しまして総理大臣の御意見を伺いたいと思います。これだけ先ず最初に。
#23
○国務大臣(吉田茂君) 先ほど申した通り、この労働法に対しては反対の向きもあれば、賛成の向きもあると私は申すのであります。反対ばかりであるならばこれは世論尊重の上からいつても提出すべからざるものでありますが、私の承知いたしておるところでは、国民の大多数はこれに対して賛意を表していると考えて政府は提案いたしたわけであります。又世論を無視ということは私は言つたことはないのでありまして、併しながら、或る新聞がこうこう言つたがこの新聞に対してはどう返事をするか、どういうふうな説明を与えるかというような場合においては、一々の新聞に対して一々の説明或いは弁解はいたしにくいと申しておるのであつて、民主政治において世論を無視する色盲的な考えは毛頭持つておりません。
 それから又政府としては労働の基本人権は無論尊重いたすが故にこの法規を出したのでありましてその労働法によつて労働の基本人権までも阻止する、或いは無視する、或いは蹂躙するという考えは毛頭ないことは、政府各主管大臣その他からよくしばしば申したところであります。
#24
○堀眞琴君 只今の首相の答弁は私には納得が行かんのであります。例えば世論を無視しておらん、国民の大多数はこれに賛成しているというお話です。併上ながら私は公聴会において各公述人からの陳述によりまして、大半の公述人がこれに反対しておるという事実を私は見て知つておるのであります。それから又国民の多数を占めるところの勤労者の階級が、これに対しまして全面的に反対を表明いたしておるのであります。吉田首相の言われる国民の多数は賛成であるという具体的な例証を私は重ねて示して頂きたいと思うのです。
 それから又新聞について、吉田首相は、只今一々の新聞がこういう論評をやつた、それに対して政府としては別にこれに反駁を加えるとか乃至はその他の手段を講ずることはないというお話であります。成るほど新聞の一々の論評に対して吉田首相がこれに反駁を加える、或いはこれを批判するということはないかも知れません。併し私が挙げましたところの例えばロンドン・タイムスであるとか或いはル・モンドであるとか、或いはニューヨーク・ヘラルド・トリビユーンというような各新聞紙は、アメリカにおきましてもイギリスにおきましてもフランスにおきましても代表的な新聞であります。これらの新聞に載せられたところの論評は決してこれを無視することはできないのであります。恐らくニューヨーク・ヘラルド・トリビューンの論評はアメリカ人の多くによつて支持されているところの論評であると思うのです。或いは又ル・モンドにいたしましてもフランスの多くの人が支持していると見て差支えないと思うのです。こういうような新聞の論評を一々取上げることができないということは私は民主政治家としてのあり方ではないと思うのであります。この点に関しまして重ねてお尋ねを申上げたいと思います。
 それから更に続いてもう一点お尋ねいたしたいのでありますが、政府におきましては、先ほど申しましたように、今後の労働法規に対して治安立法的な性格を持たせている、政府が不当に介入しているという点であります。この点につきましては只今総理大臣から何ら御答弁がないのでありますが、併し例えば緊急調整にいたしましても労働大臣の決定によりまして労働者の権利が一時停止されるのであります。それどころか五十日間の期間はスト権を禁止されると申上げても過言ではないと思うのでありますが、ところが今までの総理大臣の説明によりますると、弾圧法規ではないというだけをお話になつておるのでありまして、例えば緊急調整によつて果して基本的な権利を無視しないか、或いは又政府の不当たる介入がないかということについての重ねての御答弁を具体的にお願いいたしたいと思うのであります。以上をもつて私の質問を終ります。
#25
○国務大臣(吉田茂君) 今回の労働法規が世界の有力な新聞の批評を受け、若しくは反対を受けたというようなことでありますが、私はこれらの新聞の論評についてはまだ承知しておりませんが、併しながら、この労働法規の内容その他一切がわかりましたならばこれらの新聞も論評を改めるであろうと私は確信いたします。又労働調整等についての性質については労働主管大臣からお答えいたします。
#26
○国務大臣(吉田茂君) 緊急調整に関する事項が治安立法という御意見でございますが、これは私がしばしば申し上げましたように治安立法というとでなくして、大きい争議があつて而もそれを放つておいたならば公共の福祉に重大な支障を来たすときに、これを公正なる労働委員会の手によつて解決を図ろうという公共の福祉を考えての立法でございますので、この点誤解のないように御了承願いたいと思います。
#27
○委員長(中村正雄君) 続いて菊川孝夫君。
#28
○菊川孝夫君 私は、今回政府が提案されました労働関係調整法等の一部を改正する法律案以下の労働諸立法と重大な関連がございますので、総理大臣に特に第一に独立後の労働政策に関する基本方針をお伺いいたしたいと思うのであります。と申しますのは、占領期間中は何と申しましても、労働問題が非常に深刻且つ重大なる段階になつた場合には、常に占領軍の介入によつて解決と申しますか処置せられたということが、これは事実でありますが、併しながら、独立の結果一応そういうことがなくなりました以上は、日本人みずからの手によつて解決しなければならんことは申すまでもございません。そこでその解決をいたすに当りまして、敗戦の結果何と申しましても日本がもうほかの資源が殆んどなくなつたんでありまするから、一番大事なものは人間の働く力、それから持つておる技術、これが一番日本にとつて貴重な財源だと申しますか、資源だと言つても過言ではないと思うのであります。従いまして、この資源を十分活用して行くのは、何と言つても政治家にとつて一番大事な問題だと思うのでありますが、だからと言つて戦前のように力で抑えつけてこれをこき使おうとしたつてなかなか困難あり、且つそれは危険なことでありますからして、どうしても協力させる、喜んで協力させるという政治のあり方でなければならんと思います。この点については総理も御異存がないと思うのでありますが、さてその協力をさせる方向をどうして協力させるかということは、一番大事な問題だと思うのでありますが、この点について、総理はどういうふうにして協力させようか、どういうふうに協力させんとするか、政府の政策について協力させんとするかと考えておられるか。特に今回出されました労働法の改正は、むしろ私をして言わしむれば、占領中には労働問題が深刻な段階になつたときに二・一ゼネスト当時に発せられたマッカーサー元帥の命令を常に援用して、そうして占領軍の指令が出されたのでありますが、ところがそれがなくなつたのでこれに代るようなものをこしらえようとして、今回緊急調整という労働大臣の権限によつて処置しよう、こういう意図の下に即ち強力な権力を発動して抑えつけよう、こういう意図の下に今回の改正がなされた。勿論そういうふうな危惧の念を労働階級に与えたということはいなめない重実だと思うのであります。従いましていたずらにこの際猜疑心を起こさして摩擦を起こさせるようなこういう法案を出されましたことは時宜を先ず第一番に得ていない。それから十分に説明してそうして皆が納得しないような、或いはどうしても現行法によつて解決できないという事態が、今我々想像して近くはそういうものは起りつこない。又現行法によつても解決できると思うにかかわらず、この際こういう改正案を出されたということは、むしろ刺激をしてしまつて協力をさせるというよりもむしろ離反をさせるという結果になりはしないか。このことを最も恐れるのでありますが、この点について総理に一つ明確な御答弁を願いたいと思います。
 第二点といたしまして、人口問題、失業問題、これは何といつても一番大事な、日本民族にとつて一番大事な問題だと思います。従つてこの人口問題、失業問題を解決しない限りにおきましては、思想問題も解決できない。これが横たわつております以上いくら総理大臣が国会におきまして共産党の議席を睨んでそうして強硬な答弁をされても、むしろ共産党にとつていわゆる基盤というものはだんだん拡大されて来るのだ、むしろそういう基盤ができて来るのではないか。私はそう考えられるのでありますが、これが解決に当つてどういうふうに解決して行こうと考えておられるか、この点を第二点としてお伺いしたいのであります。
 第三点といたしまして、協力を求めるには信頼感ある政治でなければならぬと思うのでありますが、最近の官吏の汚職、高級公務員の汚職事件が連日これはもう労働争議の新聞記事よりも多いのであります。而もあとを絶たない。なお又国会には往々にして違憲法案が出て参りまして、それも批判の対象になつている。なお又選挙を前に控えまして選挙見通しから盛んに地方におきましてこの選挙の問題と関連いたしましていろいろ金がばらまかれている、こういううわさも事実飛んでいるのであります。そういたしますと、その金の出どころはどこから出ているかということになりますと、非常に労働者にとつてはやはり疑惑の念を持つであろうと思うのでありますが、これらのものが国民が納得するように解決されなければならぬと思うのでありますが、これについて総理はこれらの粛正又は解決をどういうふうにされようとするか、この点についてお伺いしたいと思います。
 第四点に労働運動の国際性、これはどうしても労働運動はもう国際性を持つているということはいなめない事実だと思います。従つて国際自由労連から過般総理大臣あてに寄せられました書簡、これに対して今度国際自由労連があの書簡には一向手紙を出したけれどもその返事も来なかつた、今度は一LOの大会で政府の代表と十分論議を一つしようじやないかという申入をして来ているのでありますが、日本の労働組合からもアメリカの大統領にこういういろいろの日本の実情を説明する書簡を出しましたところ、アメリカの大統領名ではなかつたけれども国務次官補の名を似て丁重なる回答が寄せられているのでありますが、それにもかかわらず、国際自由労連に総理が直接お出しになることができなければ、労働大臣名或いは外務次官名等を以て回答を出されるのは礼儀であろうと思うのでありますが、国際自由労連との関係をどういうふうに調整して行くというふうにお考えになつているか。
 それからもう一つ。今朝の新聞を見ますと、今後の日本の労働組合並びに民主主義勢力が弾圧を受けるような民主的な活動を制限されるというような傾向にあることに対しては、我々は重大な関心を持つているということを英国労働党の執行委員会が決定して、これは世界の新聞にそれぞれ報道をされております。国際自由労連からのこの手紙、英国労働党の発表も狙つているところは、私は今回の労働法の改正並びに破壞活動防止法案がむしろ刺激するようなことであつて外国までも私は刺激しているのではないか。かように考えるのでありますが、これらに対して十分やはり説明をし理解を求めるような措置は必要だと思うのでありますが、この点について総理の御答弁をお願いしたいと思います。
#29
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。今日日本の労働力が日大の国力の一部であるということはお説の通りであり、又私もそう考えます。故に又この労働力の、或いは労使協調といいますか、労働者が日本の経済発達に協力をするということの大切なるとも御同感であります。然らば如何にしてこの協力を求むるか、私は若しこの労働法規なるものが、これは一に労働者の意欲を阻害するとか或いは又これを取締るとか制圧するとかいうような精神ではなくして、労働者の協力を求めてともにともに日本の経済の調整なり発達なりを求むる趣意に出でたるものであるという精神がわかるならば、労働階級においても又協力を惜まないものと私は確信いたします。
 只今人口問題云々のお話がありましたが、結局人口問題はこれは日本の経済、産業の発達によつて労働力を吸収するということによつて解決をいたすほかないと考えるのであります。
 国際自由労連その他についての御質問については主管大臣からお答えいたします。
#30
○国務大臣(吉田茂君) 国際自由労連とは日本は相提携をして行くべきだと私はかように存じております。従いまして先般もお答えいたしましたが国際自由労連から日本に寄せられました書簡につきましても二月に回答いたしませんでしたことは、当時まだ法案の内容が決定しておりませんのでのびのびになりましたが、過日再び書簡が参りましたので、これに対しましては直ちに電報で回答いたしました。目下国際労働会議に政府代表が出席しておりまするので、政府代表から親しく向うのかたがたともお合いをして懇談をするように指示してある次第でございます。
#31
○菊川孝夫君 総理は労働者に日本経済再建に協力を求めることに我々と考えは同じである。そこでその方法でありますが、直ちにこれが理解をさせることが第一だと言つているのでありますが、実際に現在総理がとられつつある態度は、必ずしも私は理解させるよりもむしろ反撥を誘発するような結果になつているのではないかと思うのでありますが。と申しますのはそれは総理はお忙がしいことはよくわかつておりますし、何も一々労働者の代表に会つて説明をせよというようなことは私は申上げるのではないのでございますが、年に一ぺんや二回くらいはやはり定期的に日本の労働組合の代表者に会つて、重要国策について総理の本当の腹の中を打割つて、こういうふうな方向へ行くのだから協力せよ、或いは又労働組合側のこういう問題あるのであるから一つ総理も重要国策をとるに当つては各大臣並びに政府の公務員に対してこういう指示は与えてもらいたい。実際過去にはこういう問題があるのだ、総理は御存じないかも知れないけれどもあるのだといつたようなことを極く僅かな時間でもいいと思うのでありますが、特にこれに協力を求めようとする際に私はそれくらいな襟度をお持ちになつてもいいのじやないかと思います。過去において総理が初めて総理に御就任になつた当時とは日本の組合も相当成長いたしまして、過去においてとつたような例えば日本の総理大臣に向つて失礼に当るというような態度は私はもうとらないと思う。二・一斗争のときに総理大臣は労働者に向つて不遑の輩と言われたのでありますが、もうあの当時とは大分変つておりますので、この際は一年に一ぺんや二へんくらいはむしろ労働組合側からの要求もあつたら又総理から進んで面会を求めてそして会談をするというくらいなお気持は今おありかどうか。それとも二・一斗争のときのようにまだまだあんな者に会わんというようなお気持かどうか、その点を一つ率直にお答え願いたいと思います。
#32
○国務大臣(吉田茂君) 私の態度についてはこの際ここで弁明はいたしませんが、併しながら特に面会を避けたことはないのみならず、私の承知しておる人、若しくは適当な紹介のある人に対しては会つております。併しながら何時、何日誰に会つたということを申すだけの何はありませんが、努めて政府の真意の徹底には努めているわけであります。且つ今後又機会があれば従来の態度を改めることは勿論であります、若し悪いとするならば。併し協力は決して惜しまないつもりであります。
#33
○菊川孝夫君 二分あるそうですからもう一言だけ。総理が今非常ににこやかな態度で以て従来の態度が悪かつたら改めよう、又積極的に必要があつたら、又申入もあつたら決して面会したりすることにやぶさかではない、非常にこれは私としてはいい御発言だと思います。必ず又実行に移すように、お忙しいのですから毎日々々会つたり、一月に一ぺんといつたような極端なことを言うのではありませんけれども、重大な段階に向つたときは、労働組合は経済問題でいいのだといつておりますが、日本のような経済の底の浅い国におきましてはどうしても政治問題と関連を持つのであります。そこで最高政策として一つ御指示願いましてできることはできる、できないことはできないと率直にお答え願えば結構だと思います。そして理解を求めるように進められんことを私はこの際特に要望いたします。今後我々が紹介しました場合は喜んで一つ会つて頂きたい。私も曾つて組合運動の指導者の末席を汚した際にたびたびこの段階に来たら一ぺんぐらい総理の一つ真の肚を割つてお答え願つて今の政府の状態、方針等について御説明願いたいと思つたときも、どうも趣旨の徹底ができなくて遂にその機会を得なかつたのでありますが、今後はできるだけお忙しい中でございましようけれども割いてそれだけの襟度をお示し願いたい。そうすることが自然に融和され喜んで協力することになる。私はこれが一番大事だと思う。総理大臣が法律の細かい説明をされんでも、本当に大所高所から皆に話すことが一番私は大事だと思う。大政治家は常に民衆に接するという態度をとられるのでありまして、総理大臣もこの襟度をお示しならんことをお願いいたしまして私の質問を終りたいと思います。
#34
○委員長(中村正雄君) 以上によりまして本日の日程としての総理大臣に対する質問は終了いたしました。明日は午前十時から地方行政、人事の連合委員会を開きます。本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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