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1947/10/18 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第47号
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1947/10/18 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第47号

#1
第001回国会 本会議 第47号
昭和二十二年十月十八日(土曜日)
    午後二時二十二分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第四十六号
  昭和二十二年十月十八日(土曜日)
   午後一時開議
 第一 会期延長の件
 第二 農業協同組合法案(内閣提出)
 第三 農業協同組合法の制定に伴う農業團体の整理等に関する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○議長(松岡駒吉君) 諸般の報告をいたさせます。
    〔参事朗読〕
 去る十六日委員会に付託された議案は次の通りであります。
 内閣提出、参議院送付、財團法人理化学研究所に関する措置に関する法律案
                            商業委員会に付託
    ―――――――――――――
#3
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 第一 会期延長の件
#4
○議長(松岡駒吉君) 日程第一、会期延長の件についてお諮りいたします。今回の会期は明後二十日をもつて終了することになつておりますが、各常任委員長の意見を聽き、議院運営委員会にも諮つた上、参議院議長と協議の結果、來る二十一日より十一月二十九日まで四十日間会期を延長したいと思います。この議長の発議に対し、発言の通告があります。これを許します。西村久之君。  
    〔西村久之君登壇〕
#5
○西村久之君 私は、この機会におきまして、日本自由党を代表いたしまして、政府の提案措置に対し警告を発しますとともに、ただいま議長の発議になる会期延長の件に対し、討論をいたさんとするものでございます。
 政府はさきに内務省及び内務省の機構に関する勅令等を廃止する法律案ほか二案を議会に提出し、議長はこれを八月十二日常任委員会に付託して審査を求められたのでありますが、九月二十七日に至り、政府はこの三法律案を撤回いたし、國会法に基いて本院の承諾を求められましたことは、御承知の通りであります。ところが、日ならず九月十九日に至りまして、さらに本年度一般会計予算補正第二号議案を議会に提出、議長は審議の促進をはかるため、即日該案を予算委員会に付託して審査を求められたのでありますが、これまた撤回する運命に迫られ、ここに重ねて撤回の意思表示をなすに至つたのであります。
 そもそも、新憲法第七十二條に内閣総理大臣に提案権を認め、及び第七十三條に内閣に予算編成、予算の提出権を認めてありまするゆえんのものを詳らかに考慮いたしますならば、その提出にあたつて、いかに愼重を期せなければならぬか、その重要性はおのずから明確であるのであります。いずれの政府を問いませず、議案及び予算案の提出を國会になすにあたりましては万全を期すべきであり、一旦提出の曉には、軽々にこれを撤回、修正等すべき筋合いではなく、確固不動の信念のもとに、提出案件の通過成立に対して死守すべきが提案者たる政府の重大責任でなければならぬと信ずるものであります。(拍手)さにもかかわりませず、九月二十七日には内務省関係の三法律案を撤回し、今またここに重ねて補正第二号議案を臆面もなく撤回したのであります。その厚顔無恥に驚かざるを得ないのみか、國会を軽視するもまたはなはだしいと申さなければなりますまい。
 ここにおいて私は、片山総理大臣に対して、提案当時の氣持及び撤回に至れる経緯と信念を質し、同時に内務、大藏大臣の軽率を戒め、もつて会期延長に対する討論をなすがために、ここに登壇いたした次第でございます。
 今回政府が撤回を声明されましたところの補正第二号議案につきましては、九月三十日の予算委員会におきまして、審査の迅速をはかりますがために、ただちに付議すべく提議をいたしたのでありますが、大藏政務次官は、本件は内務省解体に伴う予算であり、ただいま審議されぬゆえ、後日修正をして審議を願う旨の答弁がありましたまま、その後何のさたもなく、あたかも予算委員会に付託したまま放任し、正当なる案件を委員会が怠慢で審査を進めざるかのような形式で放置されたその処置というものは、不可解千万と申さなければならぬのであります。(拍手)内務省解体に伴う案件でありまするならば、三法律案の撤回、すなわち九月二十七日に一緒に撤回されてしかるべきものなることを私は信じて疑いません。(「その通り」)かるがゆえに、十月十日の予算委員会で、補正第二号議案の責任の所在を追究いたしたのでありますが、抗するすべなく、遂に撤回することに閣議決定の旨を大藏大臣より声明されたのであります。從いまして、この議案にかかる責任は、予算委員会になくして、全部政府にあることを明らかにされたのであります。何という醜態ぶりでありましよう。
 右申しました通り、現政府は法制技術において、編成技術において拙劣性があるのでありますることを知るわが自由党は、国会の権威を保持し、かくのごとき失策がないようにいたしますために、八月三十日、第二回の会期延長の件が議長より提議いたされました際に、一應八月一ぱいで國会を閉じ、各種法律案及び追加案等諸般の整備ができた上で改めて国会を召集し、もつて万遺漏なきを期したいがために、小澤君より微に入り細をうがつての注意を喚起いたしたのでありますが、政府與党の諸君は、今日のごとき失策、醜態の暴露するとは露知らず、わが党の注意を排撃いたしまして、無理押しに横車を押し切つて、五十日間の大幅会期の延長を議決されたのであります。そうして、今日なお追加予算は提出することができず、出した案件は撤回するという醜態ぶりを繰返す現政府にほかならぬのであります。この責任はもちろん政府にあるのでありますが、前回むりに会期を延長し、その間粗製粗雜な案を提出せしめた、すなわち整備期間を政府に與えなかつた與党諸君にも、また一部の責任なしとはしないのであります。この汚名は、自縄自縛の結果とは申しながら、第一回國会史の一ページを汚辱するもまたはなはだしく、政府並びに與党諸君は深く心に銘記すべきものだと信じます。
 八月三十日の会期延長の提議討論に際して、細川君は延期賛成の理由として、議員の審議権の重要性を説かれたのであります。もちろん、議員の審議権の重要性は同感でありますが、同樣に提案者の提案権の重要性を知らなければならぬと存ずるのであります。しかるに、現政府の提案のごとく、議題となるに足らざる粗案を濫発し、日ならずしてこれを撤回するがごときは、國会の権威を傷つけ、提案権の濫用となり、國会をもてあそぶもまたはなはだしいと申さなければなりません。かるがゆえに、議案編成技術並びに予算編成技術に拙劣性を有する現政府に対しましては、特に相当の編成余裕期間を與え、今後提出を予見される追加予算案のごとき重要案件につきましては、万遺憾なきを期する必要があり、そのためには一應会議を閉じて、その間十分檢討の日時を與え、次の会に完備した案を提出せしめることを妥当と考えるものであります。
 これをこのままにして通しますれば、前轍を履むおそれが多分にあるのみならず、國会の威信擁護のためにも、今もつて提出されない案の提出を待つような大幅会期延期には、何といたしましても同意いたしにくいのでありますが、一應これを認めることといたしましても、本来ならば、現在審査中の諸案の審査終了のために会期延長の必要ありといたしまするならば、短期延長をすれば事足りるのであります。私は、だらしない現政府の処置に追從することは、國会としてとるべき処置でなく、逆に政府に対して促進方の警告決議でもなすのが本体でなければならぬと信じます。
 五月二十日国会が召集されまして以來、まる五箇月間を経過する今日、なお國民経済安定のかぎを握る、否、國家再建に重大役割をもつ追加予算案は今日提出に相ならないのであります。國民大衆は、社会党の諸君が在野時代に公約された勤労所得税の撤廃が、今期追加予算にあるいは法案として出てくるのであろうと、一日千秋の思いで待ちぼけておるのに相違ないのであります。從つて、國民大衆に轉課税となるべき増税方針はとられぬであろう、そのために予算編成に苦心しておるから、提出が遅れておるであろうと、善意に解釈しておる者もあるやに見受けられるのであります。万一これを裏切り、殺人的負担加重予算でも、提案することと相なりますれば、大衆は失望落胆して、現政府にあいそを尽かすに相違ないのであります。この点からいたしましても、一旦閉会をして、おもむろに案の内容を整理させ、大衆負担の軽減案提出の日時を與え、國民の期待に反せざる提案をなさしめることこそ、與党諸君の責任ではないかと思うのであります。しからざれば、政府の千八百円ベースの堤防も、刻々に迫ります負担加重の洪水のために決壊するおそれなしとしないのであります。まことに重大と申さなければなりません。よつて、追加予算編成に遺憾なきを期し、國民経済の安寧確立を期せしめるために一旦閉会をして、在野時代の公約実現案を編成するに要する日時をかし、完成の上改めて國会を召集するのを妥当と信じまするが、すでに百五十日間の余裕を與えた今日でありまするがゆえに、それぞれ案の内容も整備したものとして、ここに大政党の雅量を示し、不本意ながら賛成をいたす次第であります。(拍手)
#6
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。十月二十一日より十一月二十九日まで四十日間会期を延長するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて会期は十一月二十九日まで四十日間延長するに決しました。
 ――――◇―――――
 第二 農業協同組合法案(内閣提出)
 第三 農業協同組合法の制定に伴う農業團体の整理等に関する法律案(内閣提出)
#8
○松岡駒吉君 日程第二、農業協同組合法案、日程第三、農業協同組合法の制定に伴う農業團体の整理等に関する法律案、右両案は同一委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員長野溝勝君。

  ―――――――――――――
 〔野溝勝君登壇〕

#9
○野溝勝君 ただいま議題になりました農業協同組合法案及び農業協同組合法の制定に伴う農業團体の整理等に関する法律案に関し、報告をいたしたいと思います。農林委員会に付託になりました農業協同組合法案及び農業協同組合法の制定に伴う農業團体の整理等に関する法律案に関し、一括その審議経過及び結果の概要を報告いたします。
 まず第一に、政府提案の理由を説明いたします。政府は、わが國の農業生産力の発展を制約していたところの農地制度に重要な改革を加え、もつて耕作農民の解放に着手したのでありますが、この際さらにこれを推進する目的をもつて、現行農業團体制度を根本的に刷新し、農民の自主的なる協同組織の確立助長をはかる必要を認めるに至つたのであります。すなわち、わが國農業経営の特徴とされる経営規模の零細性からもたらされる諸般の不利益を補うため、農民の協同組織によつて経営の合理化、生産性の向上をはかることが必要であります。殊に農産物價の國際的変動から免れないわが國農業経営の今後に対処するの必要を認めるものであります。以上の理由に基いて、農村の生産、流通、信用等の各面において根本的な刷新改善をはかり、進んでは農民の努力により新生面を開き、もつて國民経済の確立を期さんとするのが、本法案提出の主要な理由であります。
 以下、両法案の内容及び特色の概要について説明申し上げます。本法案は九章より成り、附則を除きまして全文百二箇條より成つております。
 まず第一章総則において、農業協同組合法案の本質を規定し、組合は、その行う事業によつてその組合員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的として事業を行つてはならないことを明らかにし、冒頭において組合の非営利性を強調しているのであります。從つて、農業協同組合は所得税、法人税または営業税の免除特典を與えられるのでありますが、この精神は本法案の全編を貫いているわけであります。次に、本法が規定する農業とは、耕作、養畜または養蚕並びに薪炭の業務等であります。
 第二章においては、農業協同組合の行い得る事業をあげ、信用、購買、販賣、利用、生産、農村文化等諸般の項目にわたることを明記しているのであります。なかんずく、農業協同組合が農業生産協同体である趣旨に鑑み、特に生産に関する事業を協力に遂行することを強調し、土地の開発、水利の管理、農作業の共同化に関する施設、農村工業等の事業対象を具体的に掲げている点は、從來の農業團体法と著しく異なる点であります。
 次に第三章において、農業協同組合は農民の團体であることを明白にし、組合における農民の主導権の確立をはかると同時に、加入脱退について自由の原則を打立てているのであります。すなわち、総則第九條第一項において、「みずから農業を営み、または農業に從事する個人」をもつて農民とすることが規定されており、從來の農村において、非農民的要素が指導的勢力を把握し、農業の生産過程における共同化を閑却せしめていた原因を排除している点は、本法案の重要な特徴であります。但し、農村の現状と、組合事業が農村の消費生活の分野をもおおうている点に鑑み、准組合員の資格において非農民の加入をも認めているのでありますが、これらの准組合員に対しては、議決権及び選挙権はこれを認めておらないのであります。なお、組合員の議決権及び役員の選挙権については、その出資口数の多少にかかわらず、常に一箇であることを掲げ、協同組合の人格的基礎を明らかにしております。
 次に第四章においては、定款、規約、役職員、総会、総代会、剩余金の処分等が規定せられております。本章における重要規定について説明いたしますと、決議機関及び執行機関の民主的原則が明らかにされていることであります。なかんずく理事については、その定数の四分の三以上は農民たるべきことが定められており、役員の任期は原則として一年であります。但し、総組合員の五分の一以上の請求により、任期中でも改選されるのであります。剩余金の処分については一定の制限が行われ、年五分を超えない範囲で拂込出資額に応じて配当が行われ、なお剩余あるときは、組合員の事業の利用分量に應じ配当されることになつておるのであります。
 次に、農業協同組合の設立に関しては、その自主性尊重の建前であります。行政廳の許可は、これを形式的審査に止められて、いやしくも法規に適合し、正規の手続きを経て結成したものについては、すべてこれを認可しなければならぬとしておるのであります。設立の地域は、農業協同組合においては市町村單位に一箇、同連合会にあつては道府縣に一箇を理想とせられますが、必ずしもこれらの行政区域に限定せられるものではなく、部落單位の組合、市町村單位の連合会も考えられるのであり、要は地域事情、地方産業の得失に基づいてきめられるわけであります。
 以上、農業協同組合法の概要について説明申し上げましたが、次に、農業協同組合法の制定に伴う農業團体の整理等に関する法律案の大要を説明いたします。
 本法案は、農業協同組合法の施行に伴い、從來の農業会、農業実行組合、養蚕実行組合等の解体を行うに必要な手続きを定めたものでありまして、附則を除き全文四十箇條より成つております。その要点は、まず第一に、從來の農業団体等は協同組合法施行後八箇月以内に解散しなければならないのであります。第二に、農業團体は行政廳の許可なしに勝手にその資産を処分することが禁ぜられると同時に、所定の手続を経て、これを新しい協同組合に引継がねばならないのであります。
 両法案の主要なる内容は以上の通りでありますが、さて農業協同組合法の実施が、わが國農業経営の改革に決定的影響を与える事実に鑑み、農林委員会は、八月九日本法案が付託せられた後、前後七回にわたる委員会、四回にわたる理事会を開催し、愼重審議を遂げたのであります。とりわけ原案第九條第三項の、農民が行う薪炭生産の業務は、この法律適用については、これを農業とみなす、この件について委員の論議が活發に行われ、また原案に対する賛否相半ばする請願及び陳情を受理したのであります。以下、本案との関連事項並びに細部の点に関し、政府委員との間に行われた質疑應答のおもなるものを御紹介申し上げたいとも思います。
 委員の質疑の第一点として、政府は本法律案と至大の関係をもつ第三次農地改革を断行する意思ありや否や、ありとすればその時期いかん。これに対する政府側答弁は、第三次農地改革はぜひ断行したい、但し、そし時期は第二次農地改革の終了次第着手したい。
 質疑第二として、農地改革に対する政府今後の農政の方向いかん。これに対する政府側の答弁は、当面全小作地を開放し、完全なる自作農創設をねらいとし、土地國有を考慮していない。
 質疑の第三として、政府は農民の基本的人権法ともいうべき農民組合法を制定する意思ありや否や。これに対する政府側の答弁は、將來法律として出したい。
 質疑の第四として、農業協同組合の役員は公職とみなすや否や、かつ非民主的役員の就任が行われた場合の処置いかん。これに対し政府の答弁は、刑法上意味する公職ではないが、農業協同組合法制定の趣旨に鑑み、公職に準ずるものと解釈する、從つて農業協同組合の趣旨に反する役員の就任は自粛されたい。
 質疑の第五といたしまして、農業協同組合連合会に金融事業を分離した理由いかん。これに対し政府の答弁は、生産を行わぬ連合会に金融を行わしむることは、各種の弊害を起すのでこれを禁止した、金融は生産と直結する建前をとつたものである。
 質疑第六といたしまして、農業協同組合が全國的に統一された場合、私的独占禁止法に抵触のおそれなきや否や。右に対する答弁は、農業協同組合が一部の者の利益に壟断されない限り抵触しない。
 質疑第七といたしまして、農業会解散に伴い、その所有する各種公債等の欠損に対し、政府はこれを補償する意思ありや否や。これに対する答弁として、政府は、これを再建整備法により新旧勘定にわけ、國庫において補償すると言明せられました。
 次に質疑第八といたしまして、農業協同組合設立運用にあたり、資金面を政府はいかに考えているか、これに対し政府の答弁は、農村全般にわたる金融については、中金を改組して大きな金融機関を設けるつもりである。
 質疑第九といたしまして、農業協同組合法が成立した場合、開発営團の関係いかん。これに対し政府は、開発営團の関係も、農業協同組合を組織してやるように指導していきたい。
 質疑の第十といたしまして、農業協同組合の事業として、農村工業を初め澱粉加工場等すべて自由に行い得るや否や。これに対し政府は、農村工業は組合事業として自由に行い得る、但し食糧管理法、酪農調整令等に関連あるものは許可認可を要する。
 質疑の第十一として、農業会その他の経営による澱粉加工場等は、農業協同組合の事業に承継されるや否や。これに対する政府の答弁は、農業会で経営する澱粉加工場は当然承継される、但し、業者の経営するものなどは、能率等を考えて処置したいが、可及的にこれを農業協同組合に承継していきたい。質疑の第十二といたしまして、農業協同組合法の成立によつて末端の実行組合等は解消するが、下部組織の運用いかん。これに対する政府の答弁は、農業協同組合の下部組織により運営していきたいと思う。
 質疑第十三として、農業協同組合は肥料取扱指定人として農業会の業務を引継げるかどうか。その手数料はどうなるか。また衣料登録の指定も受けられるかどうか。これに対する政府の答弁は、農業会業務として行う肥料取扱指定は承継される。手数料については、組合が免税されているので考慮の余地がある。衣料登録の指定は特殊の扱いとしてこれを認めたい。
 質疑第十四として、農業会解散に伴う人員整理、財産処分をどうするか。右に対し、農業会解散に伴う人員については、可及的にこれを食糧調整委員会、作物報告事務所等に吸收したい。財産処分の根據については、原則として帳簿價格を建前とする。但し、帳簿にないものは時價をとることになる。
 質疑第十五として、農業会解散にあたり、不当なる資産処分が行われる危檢があり、これを防止するため、二十一年八月一日現在に遡及する意思ありや否や。政府の答弁は、八月一日附省令で財産処分に禁止を加えたが、不当事実があれば、断乎これを取締る方針である。
 質疑の第十六として、本法によれば組合設立にあたり認可を必要としているが、本法制定の趣旨に鑑み、届出主義を妥当とするがいかん。これに対し、大体認可する程度でいきたいと言明しました。
 質疑の第十七として、第九條によれば薪炭生産を農業とみなしているが、林政の総合対策遂行にあたり、当然除くべきが至当と思われるが、この点いかん。政府の答弁は、農民の行う薪炭は、今日の農家経済よりして、当然農業のうちに含まれるという答弁がありました。
 質疑の第十八として、協同組合に農業と附した理由いかん。右に対して政府は、常識できめたものであると答弁。
 質疑の第十九として、農業協同組合設立と重大なる関連を有する日本の農政いかん。且つ農業恐慌対策いかんという質問に対し、政府の答弁は、主食を第一とし、これに関連する蛋白、脂肪等の総合食糧政策をねらいとし、農業統計を基礎とし、五箇年計画を樹立し、生産に全力を傾倒したい。農業恐慌については、二、三年後には到來しない。
 以上、質疑應答のおもなるものをあげたのであります。
 かくて本委員会は、十月十三日、両法案を一括議題として討論採決に入つたのであります。
 まず社会党を代表して大島義晴委員より、両法案は農民の協同組織の発達を促進し、もつて農業生産力の増進と農民の経済的、社会的地位の向上をはかり、併せて國民経済の発展を期する点において進歩的意義を有し、時宜に適するものと認めるが、本法をして單なる作文に終らしめず、かつその運用において農民の期待に副うべく万遺漏なきを期するため、かつまた附則における施行期日制定上の不備を是正するため、各党各派の意見を勘案して作成した附帶決議を附してこれを修正可決すべき旨が提案せられたのであります。
 次いで、民主党を代表して八木一郎委員より、本法が提出される段階に至つたことはまことに喜びにたえない、われわれはその成立に双手をあげて賛成するものである。しかしながら、本法案そのものからただちに農業の近代化が生れるものではない、要はその運用にあり、從つてわれわれは、本法の円満なる運営を期待するため附帶決議を附するものである、なお本法は上より與えられたるものであり、從つて、その発達には深甚の注意を必要とする、と賛成意見が述べられたのであります。
 次に、國民協同党を代表し萩原壽雄委員より、本案は農村の民主化、農業の再建にとつてきわめて重大であり、協同組合主義の観点より、その成立に賛意を表するものである、しかしながら、十数項目にわたる附帶決議に対しては十分に留意し、農業協同組合の健全なる発達に万遺憾なきを期するよう特に政府に強く希望するものである、と賛成されたのであります。
 次に、自由党を代表し小川原政信委員より、次のごとき修正意見が提出されたのであります。すなわち、第九條第三項を「みずから前項に掲げたる業務を営み、又はこれに從事する者が副業として薪炭を生産する場合は、その業務(これに附随する業務を含む)については、この法律を適用することができる。」と修正すること。右修正案に対し賛否を諮いましたところ、少数をもつて否決されたのであります。
 次に日本農民党は、農業協同組合法案第一條に、農民の團結権を保障する條項を挿入すること、第十條第五項、農業協同組合連合会における金融事業分離を定める條項を削除すること、第五十九條、農業協同組合設立に対する許可主義を届出主義に修正すること、及び第九十三條における組合事業に対する國家の監督を排除すること等について、修正意見を提出されたのでありますが、少数意見として否決されるに至つたのであります。
 かくして、各派共同提案の附帶決議案、附則に関する修正案は、満場一致をもつて可決せられましたが、両法案附則修正に関し、関係方面の考慮を要することとなり、十月十六日開会の農林委員会において、これを再審議の上、可決いたした次第であります。
 なお本法案に対して、日本共産党より、公職追放者及び戰時中農業團体の役員たりし者の徹底的追放、並びに解体農業会が農業協同組合運動を行うことを抑制するための行政的措置等七項目にわたり意見の発表を求むる通告がありました。そこで、この取扱いについて委員会に諮りたるところ、委員長において要点のみを朗読されたいということで、これを朗読いたしました。
 最後に、両法案に対する農林委員会決定の附帶決議並びに修正個所について朗読いたします。
  附帶決議
 一、農業協同組合事業に関連ある食糧管理法、酪農業調整法、馬匹法その他許可認可を要する関係法は、農業協同組合事業の発展助長のため速やかにこれを改発すること。
 二、農業協同組合事業の達成を図るため、金融の自主的確立に関し充分なる措置を講ずること。
 三、農業協同組合事業の達成を図るため、技術員制度を確立し、併せて研究機関を設立すること。
 四、森林組合、漁業組合等農山漁村に対する協同組合組織の確立に関し速やかに法的措置を講ずること。
 五、政府は養蚕、畜産等農業の各業種の健全なる発展を図るため、本法施行に当り特に育成の措置を講ずること。
 六、同一地区内に二つ以上の同種組合が設立される場合は、組合員の二重加入を認めざる措置を講ずること。
 七、農業会資産処分禁止については、厳重監督をなし、遺憾なきを期すること。
 八、農業団体解散に当り、その資産の分譲については、組合員の意志を尊重し、合理的且つ能率本位にその処分の途を講ずること。
 九、農業会解散に伴う農業会職員の処置に関し、適当なる措置を講ずべきこと。
 十、公職追放令該当者たりし者は、農業協同組合の役員に就任しないよう措置を講ずること。
 十一、議決権を行使する代理人は組合員たるべきこと。
 十二、政府は農業協同組合の設立育成に関し積極的な援助を行うこと。
 十三、農業協同組合法の運営上、加工場の新設、運搬業の開始等ほか官庁の許可を要する事項が多いから、主官庁は本法運営上支障を來さないよう責任を負うこと。
 十四、非出資組合に対しても出資組合と同様に課税しないこと。
 十五、第四十条第一項の総会は、准組合員を除く総組合員の半数以上が出席しなければこれを開けぬよう措置を講ずること。
   修正案
 一、「農業協同組合法」の附則は次のごとく改める。
  「この法律施行の期日は、政令でこれを定める。」
  とあるを、「この法律施行の期日は、公布の日から一箇月以内に政令でこれを定める。」に修正。
 二、「農業協同組合法の制定に伴う農業團体の整理等に関する法律案」の附則は、次の如く改める。
  「この法律施行の期日は、政令でこれを定める。但し、第二條の規定は、公布の日から、これを施行す
  る。」とあるを、「この法律施行の期日は、公布の日から一箇月以内に政令でこれを定める。但し、第二
  条の規定は、公布の日から、これを施行する。」に修正。
 以上をもつて、両法案に関する経過の概要の御報告を終る次第でございます。(拍手)
#10
○議長(松岡駒吉君) 討論の通告があります。順次これを許します。北二郎君
    〔北二郎君登壇〕
#11
○北二郎君 私は、日本農民党を代表いたしまして、本法案に反対の意見を申し上げる次第でございます。さきに農林委員会におきまして本法案審議中、二、三点について修正案を提出いたしましたが、不幸にしてこれを否決されたのであります。從つて吾人は、この根本問題が解決するにあらずんば、残念ながら本法案に反対するものであります。御承知のごとく農林委員会の中には、社会、民主、國協、自由、各政党の大多数の農民の代表と称する人々がおられるようでありますが、わが党の修正案に対し賛成する委員ただの一人もなかつたということは、はなはだ吾人の遺憾とするところであります。
 農民党といたしましては、本案をつくることには党をあげて賛成するものでありまして、農村民主化のために、一日も早く協同組合ができねばならぬと願つておるような次第で、実は政府よりも早く農漁業協同組合法案の名において提出してあるのであります。またこれと同時に、生活協同組合法案も提出しておるようなわけでありますが、未だ一向にこれが審議されないのであります。民主憲法の建前から言いましても、当然審議すべきものであると思いますが、これまた、まことに遺憾にたえざる次第であります。
 かようなわけで、農民党立党の趣旨の上からも、協同組合法案をつくる上におきましても、心より賛意を表する次第であります。だがしかし、本法案の内容におきまして、以下申し上げる各点が修正されない以上は、断じてこの法案に承服しがたいものであります。
 まず第一條でありますが、原案を「この法律は、農民の協同組織の発達を促進し、以て農業生産力の増進と農民の経済的社会的地位の向上を図り、並びに農民の生産物の賣買、生産基準に関し農民が團結する権利及び團体交渉権その他團体行動をする権利を保障し、併せて國民経済の発展を期することを目的とする。」と修正をするのであります。
 その理由といたしましては、憲法第二十八條におきましては、勤労者の團結権、團体交渉並びに團体行動権が保障せられておるのであります。法律で定められた機関以外で一時的集団の行動が頻発する場合、社会的不安を惹起するおそれがあることと、あらかじめ國家機関が交渉する相手方がないから、この法律が協同組合を農民の團結の機関として確認するならば、常に政府または行政機関はこれと交渉して、諸問題を事前に解決することが容易であり、幾多の農民團体も、諸種の複雑多岐な折衝の必要がなく、農業協同組合一本の交渉で解決するのでありますから、本法案に絶対に明文化することが必要であります。
 かつまた、從來のごとき封建的農奴にひとしき官僚独裁の農民政策を改変して、民主的に農民を解放するには、農民の團結権行使の機関が絶対に必要であります。もしまた農業協同組合を農民の團結権行使の機関として法文に明らかにしないでも、農民が協同の組織で團結権の行使、團体行動をなしても、これを抑圧することは憲法が絶対に許さない。ゆえに、農業協同組合が團結権行使の機関であることを明らかにしておくことが、複雑化を防ぎ、社会不安を除き、農民の前途に光明を與えるものであるから、ぜひ憲法、第二十八條の勤労者の團体機関であることを明文化しなければならない。
 たとえば、すなわち農産物にいたしましても、公正な價格で生産物を出荷させ、物交を必要としない配給機関を生産者の組織体に取扱わすならば、百パーセントとか、割当とか、強権とか言わずとも、きれいさつぱりと出荷されるのであります。官僚や、これと行動を共にする政治家によりまして、農民は奴隷のごとくたたきつければよいとの考え方から、今の未曾有の食糧飢餓があると言つても決して過言ではないのであります。國民の四分の一の眞に働く農民が、万事をなげうつて強度の労役に從いつつも、なおかつ國民の食糧が十分できないのであります。また一人で三人分の食糧すらもできないのであります。働く二千万の農民、その家族は、教養の時間もなく、新しい文化にも接し得ないでは、増産の研究も、合理的な農法も、考える余裕が出るものではないのであります。徳川三百年の封建時代の武士に代るに官僚どもにむち打たれ、酷使されつつある農奴的農業政策では、いつまで経つても反当り二石、しかも、さらにこれが減じていくのであります。眞に解放された農民の農業となれば、思わぬほどの増收が確実にできるのであります。三石、四石の生産ができ得る革新農業となるのは何でもない。しかれども萎縮した農民ではできないのであります。
 加うるに、農産物の正当なる價格の決定は、政府の力のみをもつては容易に行われがたく、その決定をして充分眞実ならしめんがためには、どうしても生産者たるものの團結により、その團体の協同の働きとして、生産者の内部からも行わなければならないのであります。しかして、その決定に関しましては、生産者の間に十分なる道徳上の力と、またこれを統制実行する有効なる組織の力との備わることを、必要の條件としなければならない。これ日本農業並びに農村民主化の第一條件である。以上の観点から、第一條の修正は当然過ぎるほど当然なのであります。
    〔発言する者多し〕
#12
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#13
○北二郎君(続) すでに労働組合その他の團体におきましては、團体交渉権は確立しておるのでありますが、農民だけは確立していないのであります。
 次に、第十條の第五項の削除であります。第十條の第五項は、重大なる協同組合連合会の金融事業の分離でありまして、絶対に反対すべきであります。金融事業を連合会よりとつて、連合会の資金の途を止めて、連合会が運営のできぬようにする重大魂胆があるのであります。すなわち、金融財閥、金融業者及び官僚による中央金庫に金融面を掌握せしめ、農民の協同組合による事業を金融によつて活殺自在にさせるものでありまして、わが國農村民主化を根本から破壊するものであります。
 次に、第五十九条の許可主義でありますが、これは届出主義に根本的に修正を要するのであります。届出主義において何ら弊害なきは、労働組合におはて実際に見るところにして、許可主義は官僚の勝手となり、あるいは政党所属の地方長官等において、御便宜主義、党勢拡張の材料に惡用される憂いが多いのであります。あるいは許可期限の制限とか、あるいは不許可の場合の裁判など、全く無用なことである。これ官僚の人員増加の手段に過ぎない。殊に経済行爲をなす團体でありますから、組合員がみずから十分愼重に考究するので、許可主義のごときは官僚が組合員大衆を軽蔑するものであり、断じて許可主義に反対するものである。ゆえに、本法案の第六十條、第六十一條、第六十二條はまつたく不要であるから、削除を必要とするのであります。
 一例をあげて説明いたしますならば、過般北海道において行われた繊維製品登録資格に関し、農民組織の購買会か拡充し、実施要綱、登録業者の資格ある者、すなわち規則(ロ)の第三條三項のいわゆる新規業者、Bの消費者の組織する購買事業を行う組合に該当していることにより、これを正規の手続きによつて町村長の承認を求め、選挙戦に臨まんとしていたのでありますが、何ら具体的理由なく、しかも道廳の一商務課長が、この選挙の前夜になり、農民組織の購買会の立候補の資格を、たつた電報一本でなくせしめ、農村を大混乱に陷れておる事実があるのであります。これ一官吏が少数営利業者を助けんがため、これと結託して、農民大衆の自主的活動をまつたく阻害しておるのであります。官僚に権限を與えるならば、かのような惡辣なことを平気でやるのであります。この例から見ましても本法案はきわめて自由自主的のものであるという農林大臣の御説明にまつたく反し、農村民主化に大逆行するものであります。
 最後に、第九十三條の組合の監督でありますが、これは監事が行うべきでありまして、監事は組合員の事務、業務、財産状況をいつでも檢査し、不正の疑いあるときは、監事は総会を招集して報告すればよいのでありまして、監督のごときは、組合員が自主的にやるべきであります。行政廳にやらせることは、農民がまつたく官僚に隷属することとなるものでありまして、日本の農村民主化をまつたく害するものであります。
 以上の通りでありまして、私は協同組合主義原理による大幅な修正を必要とすると思うのであります。これをもちまして、私の討論を終える次第であります。
#14
○議長(松岡駒吉君) 大島義晴君。
    〔大島義晴君登壇〕
#15
○大島義晴君 私は、ただいま上程せられておりまする農業協同組合法案及び農業協同組合法施行による農業團体の整理に関する件、この二つの法案に対しましては、委員長の報告に賛成するものであります。以下、いささか社会党を代表いたしまして、この賛成の理由を申し述べたいのであります。
 農業協同組合法の制定は、農村解放の指令の線に沿いまして、土地の解放の裏付けといたしまして、併行せねばならぬ絶対的なものであります。その第一條に示すごとく、農業協同組合組織の発達を促進し、もつて農業生産物の増産と農民の経済的地位の向上を図り、併せて國民経済の発展を期することをもつて目的とする、かようにありまするように、農業生産の近代的発展と農業経営の合理化をはかり、勤労農民の轉落を防止するためには、金融、商業両資本の農村支配を排除いたしまして、生産、流通両面の事業の総合的効果をあげ、農民生活の確立を期さねばならぬのであります。同僚の議員諸君よりも、農業協同組合は官僚の支配下に置かれてはならない、また政党に利用されてはならないとの御意見もありましたが、まつたくその通りでありまして、農村の大衆的な組織でなければ、農業協同組合の効果はないのであります。
 かかる見地よりいたしまして、本案の内容を檢討いたしまして、さらにその完璧を期するために、各派協同提案の、先ほど委員長報告の通りの附帶決議をいたしておるのですが、この附帶決議の内容につきまして、私は一、二注釈を加えてみたいと思うのであります。
 附帶決議の第一には、農業協同組合事業に関連ある食糧管理法、酪農業調整法及び馬匹法その他許可認可を必要とする関係法は、農業協同組合事業の発展助長のため速やかにこれを改廃すること。これが第一項の附帶決議でありますが、こういう風な農業協同組合をつくつてまいります上に、これらの法の関係が、必ずしも農業協同組合の発展を助長するとは考えられないのであります。あるいは、これにブレーキをかけるという感なきあたわざるものがあるので、かような附帶決議を附しまして、政府に速やかにこれらの関係法令の改正を要求しておるものであります。
 第二点は、農業協同組合事業の達成を図るため、金融の自主的確立に関し十分な処置を講ずること。これは先ほど北君も申されたようでありますが、農業協同組合の連合会が、一方において事業を行うものは金融ができない、金融を行うものは事業ができないというような分離されておる傾向にあることは、この内容にはつきり盛られておるのであります。しかし、これはやはり一應こういう形態をとつて、この連絡の密度によつて、この運営は少しも差支えなく運用されると考えておりますので、これを附帶決議に盛り上げたようなわけであります。
 第三番は、農業協同組合事業の達成をはかるため技術員制度を確立し、併せて研究機関を設置すること。こういう点を入れておりますが、これは今の農業協同組合におきましては、技術員の制度というものは認めておりません。また、これが研究機関を設置するということも認めておりませんので、今の技術員をそのまま採用するという意味ではありませんけれども、この農業協同組合の内部にも、やはり技術的な指導を必要といたしますので、附帶決議に挿入いたしたような次第であります。
 第四番目は、森林組合、漁業組合等農山漁村に対する協同組合の組織の確立に関し、速やかに法的措置を講ずること。こういうことがあるのでありますが、これは森林組合にいたしましても、漁業組合にいたしましても、まだまだ法的の基礎が欠けているのであります。從つて、農業協同組合の円満なる発達を期するためには、これらの法的措置を講ずることが必要であるからであります。
 第五番目は、政府は養蚕、畜産等、農業の各種の健全なる発達をはかるため、本法施行にあたり特に育成の措置を講ずること。かようなことを入れているのでありますが、これは先ほどの委員長の報告にも、薪炭業務を営むものを分離すべきである、あるいはまた畜産の業務を営むものを分離すべきであるというような御意見があつたのでありますけれども、今後の日本農村が、多角的の経営と集約的の経営をいたさねばならぬ今日におきましては、こういうものを分離することは、決して農村の利益とは相ならぬのであります。しかしながら、北海道の一部においては、もつぱら薪炭の業務を営むものもあります。あるいは畜産の業務を営むものもあるのでありますが、かような例外的なものに対してこの法の修正をするということは、農業協同組合発達の上において、はなはだしく効果に疑いがありますので、本法案はそのままといたしまして、附帶決議において、かような意味合いを十分に取入れているのであります。
 第六番目は、同一地域内に二つ以上の組合ができたときに、この双方に加入できないよう、いわゆる二重加入を阻止する方法でありますので、これはいまさら説明を申し上げる要もないと思うのであります。
 第七番目は、農業会資産処分禁止については、嚴重監督をなし、遺憾なきを期すること。これらに関しましては、八月一日に遡及して、この資産の処分を嚴重に監視すべしということを私どもは考えておったのでありますが、各派のいろいろな意見を総合いたしまして、かような案に決定を見たのであります。
 第八番目は、農業團体解散にあたり、その資産の分裂については組合員の意志を尊重し、合理的かつ能率本位にその処分の途を講ずること。かような條件であるますが、これは同一町内に一つの農業協同組合でありますならば、議論はないのでありますけれども、もし、いくつかの協同組合ができ上つた場合に、これに対する資産の分譲をどうするか、また縣連合会にいたしましても、その連合会が二つ以上できた場合におけるこれらの処置については、なかなか今後に問題が残されておりますので、この点については、少くとも組合員の意思を十分に尊重して、能率的に解決するようにということを申しているのであります。
 第九番目は、農業会の解散に伴う農業会職員の処置に関し、適当なる措置を講ずること。これは現在各農業会におりまする職員の諸君を、何とか失業せしめないで、これを使う途はないか、何とかこれに善処すべきであるという考え方をこの中に盛つたわけであります。
 第十番目は、公職追放令該当者たりし者は、農業協同組合の役員に就任させないよう処置を講ずること。こういうことでありますが、これはいまさら申し上げるまでもなく、公職追放令の該当者は、あらかた戰爭推進者であつたのでありまして、こういう者を、新たにできる日本の民主的組織である農業協同組合の役員にすることは、かえつて民主化を妨害するものでありますので、こういう人々が農業協同組合の役員に就職することは嚴に禁止すべきである、かような意見から、こういう附帶決議をつけたわけであります。
 第十一番目は、議決権を行使する代理人は組合員たるべきこと。これは説明の要もなく、この通りであります。
 第十二は、政府は農業協同組合の設立育成に関し積極的な援助を行うこと。こういう條項を入れているのでありますが、これはかつて農地の開放が行われますときに、農地の開放を中心としましたいろいろな機関が育成されているのであります。農地開放推進協議会、こういう機関が設立されましたように、今回も、農業協同組合を徹底せしめるためには、農業協同組合推進機関を政府において設立し、これに要する予算等もありましようが、できるだけ政府において設立し、これに要する予算等もありましようが、できるだけ政府はこれに助力を與え、円満なる発展を期せしめるように、かような条項を入れておいたのであります。
 第十三は、農業協同組合法の運営上、加工場の新設、運搬業の開始等他官廳の許可を要する事項が多いから、主官廳は本法運営上支障を來さないよう責任を負うこと。こういうことでありますが、これは一つの例をあげてみますならば、できましたる農業協同組合が一台の自動車を買つて、その農業生産物を運搬するといたしましても、その自動車で運搬するにあたりましては、まず運輸省の許可を得なければならない。さらにまた地方長官の許可を得なければならないというふうに、二重、三重の監督がいつもおおいかぶさつておりますので、これらの円満なる運用をいたしますためには、監督官廳は一本となつて、できるだけ農村民主化の線に沿うて、これを簡易化してやるべきだということを盛り上げているのであります。
 第十四番目は、非出資組合に対しても、出資組合と同樣に課税しないということを規定しているのでありますが、これは協同組合法の第四條に、出資組合に課税しないということは明文化しておりますけれども、非出資組合に関しましては、税務署はかえつて課税するということを申しておるのであります。これは先ほど委員長の報告にもあります通り、委員会においても論議がありまして、政府は当然課税しないものと心得て、これを條文に入れなかつたということを申しておりますけれども、條文の上にこういう文字が使われております以上は、地方の税務署長の主張しております通り、非出資組合に対しましては、課税されても何らこれに抗弁する余地はないのであります。從いまして、第十四の附帶決議にこの点を入れて、これを阻止するようにわれわれは考えているのであります。
 第十五番目は、第四十條第一項の総会は、准組合員を除く総組合員の半数以上が出席しなければこれを開けぬよう措置を講ずること。これは先ほど委員長の報告いたしました通りの、リコール制に関するいろいろな関連をもつておりますので、こういう規定をいたしたのであります。
 以上の通りでありますが、これが運営に当りましては、政府の指導はこの線を逸脱せぬように、十分なる注意と細心の心組をもつて、万誤りなきよう運用せられんことを希望いたしまして、本案に賛成するものであります。(拍手)
#16
○議長(松岡駒吉君) 八木一郎君。
    〔八木一郎君登壇〕
#17
○八木一郎君 民主党といたしましては、ただいま一括議題となつております二つのこの法律案に対しまして、委員長の報告の通り、附帶事項十五項につきましては、われわれの主張を盛り込んであります内容でございまして、委員長の報告並びにただいま大島議員のお述べになりました点に全面的に賛成をいたしまして、きわめて速やかなる機会において成立実施されんことを切望するものであります。(拍手)
 この法律は、農民の協同組織の発達を促進し、これによつて農業の生産力を増進して、農民の経済的、社会的地位の向上をはかり、國民経済の発展に寄与することを目的としていることは、法文にも明記しておりますし、前者が繰返し述べられた点で明瞭でございますが、日本の農村は、今敗戰日本再建のために、農地改革の基盤の上に立ちまして、農民解放と農村民主化の大道を切り開こうといたしまして、終戰の年の十二月九日、連合軍から日本政府に寄せられましたいわゆる農民解放令以後今日まで、一年半歳有余を経てまいつておるのであります。この法律は、いわば一年半余にわたりますかかる努力への一つの重要な組織をなさんとする動きでありまして、私は、この農民解放の大きな歴史の流れによつて、われわれの農村が大きく新しく脱皮する時期に際会しているという自覚のもとに、今日この際、この法律を一日も早く実施することに意を盡さなければならないと思うものでございます。
 今日までの一年半という長い間に、有力なるその筋から詳細にわたる指導を受けてまいつた内外の情勢をも私はここに率直に認めまして、農民の自由なる意思で、働く農民を主体とした自主的の農業協同組合の設立を期待いたしまして、本案に賛成をいたすものでございます。
 しかし、この協同組合そのものから、ただちに日本農業の近代化、農業経営の合理的刷新が生れてくるものでないことは言うまでもありませんので、われわれは、この組織を日本農業発展のために何とかして役立たせたい、運用よろしきを得て、一日も早くこの組合の実施にはいりたいという点から、委員会におきましては、るる委員長より報告され、大島議員より述べられたごとき点に触れまして、曲りなりにも運用よろしきを得ることによつてこの目的を達成し得るものと信じて賛成いたしたのであります。
 古くから言われておりますことでありますが、わが國の農業というものは、世界に例のない特色がある。きわめて過小農である、あるいは米麦主体の水田農業であるとか、あるいは三千年來、すき、くわ農業でずつと今日まできているとかいう状態についての特色を云々されておりますが、海と結びついて発達した日本の農業は、水産によつて國民の栄養がとられ、水産によつて農作物の肥料がつくられているということに反して、外國は畜産により、有畜農によつて國民栄養の蛋白もとられ、作物の肥料も堆肥によつていると言われておりますが、この法律の施行を機会にいたしまして、わが國の農業が畜力・機械力を使う方面に発展していくことを、この際希望をもつて述べたいのでございます。
 わが國の農家の一人当りの人口負担力が、まことにおはずかしいながら、一人でわずか一人九分六厘しか負担しておらない。アメリカが三十四人、イギリスが十六人、デンマークが二十八人、ソ連においては三人分六分という負担力を農民諸君がもつておらるるのに対して、いかにも情けない事態であります。
 この農業の事態を機械化、畜力化の線に沿いまして、どうしても伸ばしていかなければならないということを考えますると、アメリカが一八〇〇年当時、九七%の國民が農に直接從事しておられたものが、今日わずかに二五%でもつて、なお全國民を養つて、食糧を余しておるという事実に思い至りますると、この際われわれは、自由なる農民の意思によるくふう、創意の加えられるところの組織をまつや久しかつたと言うても差支えないと思うのでありまして、わが國の農村人口があり余つておつて、耕地が細分化されておるから、そういうことは空念佛だ、抽象論だといつたようなことをやめまして、ほんとうに地についたところの農業経営の多角化組織を、この組合を通してー零細な個人経営内の多角化でなく、組合の中において、適地適作、技術・経営を渾然一つにしたところの、農業組織を多角化していく方向に発展することも、私どもは期待いたしたいのであります。
 この法律の施行を前にして期待したい事項は、述べきたればたくさんございますが、特に私のこの際要請をいたしております点について、しさいに本組織を檢討し、運営によつて目的を達するならば、この組織に対してさらに期する点は、委員長の報告にもございましたように、國際情勢の大きな変化が参り、世界農業の大きな変轉が参りまして、食糧事情の一大変轉を來したときを、言いかえれば、やがて來るであろう農業恐慌のときを思い合わせますと、今日の日本の再建が成るかどうかは、このあすの農業恐慌への、農業危機への恒久対策をも今日にらみ合わせながら、急場の間に合わせるようにして参りたいと考へますので、農民党側よりの、本質的には賛成であるが、この組織は要らないという点は、どうしても同調できないのでございます。(拍手)われわれは、今日のこの急場を見て、組織は要らない、氣に入る組織でなければという主張に対しては、どう考えましても賛成できません。
 最後に特に附言いたしたいことは、本農民組織制度が、下から盛り上がるやむにやまれざる力を盛り上げて進んだのでなくして、実はいわゆる農民解放令が点火線となり、農民解放令によつて端を発して一年半胎動し、うごめきつつ今日に参つておるというこの事実を率直に認めますと、外部から與えられた組織は、民衆の意識が伴つていない場合に、それは進歩的役割を果し得ないということは、歴史が教えているのでございまして、かの一八九八年に、アメリカの領有に帰しましたフィリピンが、土民解放の線に沿うたきわめて良心的な立法があつたにかかわらず、長い間のスペイン時代に築き上げられました封建的性格を脱却することなくして今日に至つているという事実は、この法律施行を急ぐ私としては、他山の石であるということを一言いたしたいのでございます。
 われわれは、この新組織を前にいたしまして、わが農村人が、内は農村内部の対立を排し、外は政党政派を超越いたしまして、強い團結のもとに、地位をも望まず、名誉も欲せず、職をも追わず、ひたすらに、この人生は勤労である、勤労は人生であるという、あの貴い、農人でなくては味わえない勤労観に徹しておる農家、農民諸君がーすき、くわをとつて働くあの農家の諸君が、われわれの國の糧を賄う母として、眞に働く耕作農民諸君がほんとうに主体となつて、りつぱな農業協同組合の結成をされんことを期待しつつ、民主党を代表いたしまして、本法律案賛成するものであります。
#18
○議長(松岡駒吉君) 的場金右衞門君。
    〔的場金右衞門君登壇〕
#19
○的場金右衞門君 私は、ただいま上程されました農業協同組合法案に対し、國民協同党を代表いたしまして賛成の意見を申し述べます。
 私ども國民協同党は、多年協同主義を主張し、協同組合法案の制定に協力を続けてまいつたのでありますが、本日ここに本法案が上程され、今まさに協同組合法が成立せんとするは、わが党として、協同組合主義の徹底であり、まことに感慨深いものがあるのであります。第一條の目的を達することにより、わが國農業の発展を期待し、また農村農業者の生活の向上を望み得るものと信じます。
 從來わが國では、農会及び産業組合が、長い間農業者の権益を擁護し、農業技術の指導、資金の調達等に努力してまいつたのでありますが、戰爭中政府の代行機関としての農業会に強制的になさしめられたことから、種々問題もあつたと思います。しかるに、わが國の農業をここまで向上せしめたものは、軍閥でもなければ、官僚でもなかつたのであります。明治初年以來、藩閥と闘い、官僚と闘いながら、なお最善の努力を続けた民間人、特に玉利喜造博士その他先輩諸賢の鉄のごとき意思と、血の出るごときの努力とによつて農会が組織され、産業組合が結成され、この農会、産業組合の多年の活動によつて、ようやく日本農業をここまで発展せしめ、向上せしめ得たのであります。(拍手)明治以來のこの功績を残されたる先輩に敬意を表し、これらの團体の恩恵を受けたる農業者として、これらの團体に感謝をいたすものであります。
 新たなる民主的な協同組合の活動による新日本農業の発達に多大なる期待をもつて、本法運営にあたりましての二、三の所見を申し述べたい思います。
 第一、政府におきましては、委員長の報告されました附帶決議については、十分これを尊重されるるはもちろんでありますが、特に農業協同組合設立にあたりましては、積極的に十分好意なる援助をなし、誤りなき指導を加えなければなりません。せつかく生まれ出ずる農業協同組合が、一部の野心家に利用されたり、政党の手先になつたりして、眞に耕作農民のものでなく、ためにせんとする者に利用される結果とならぬように十分注意をいたしまして、全村一体となつて活動すべきであると思います。
 次に、農協協同組合事業達成をはかるためには、金融の自主的確立に関して十分なる処置を講ずることが必要であります。
 日本農業の使命は、狭い國土で八千万の國民を養わんとするのであるとするならば、科学的技術を農業の中に取入れ、最高の能率を上げなければなりません。そのためには、技術員制度を確立し、これが待遇を改善し、安んじて農業指導に專念できるようにせなければなりません。さらに研究機関を整備いたしまして、新しき進歩せる科学技術の研究ができ、これが農業経営の中に導入されるようにせなければなりません。
 以上の三点につき簡單に所見を申し述べまして、私どもは、この民主的な農業協同組合の誕生を喜びつつ賛成の意を表するものであります。(拍手)
#20
○議長(松岡駒吉君) これにて討論は終局いたしました。
 両案を一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも修正であります。両案を委員長の報告の通り決するに御賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#21
○議長(松岡駒吉君) 起立多数。よつて両案とも委員長報告の通り決しました。(拍手)
   ―――――――――――――
 住宅問題に関する緊急質問(田口助太郎君提出)
#22
○叶凸君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、田口助太郎君提出、住宅問題に関する緊急質問、米田吉盛君提出、教育問題に関する緊急質問を逐次許可せられんことを望みます。
#23
○議長(松岡駒吉君) 叶君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 住宅問題に関する緊急質問を許可いたします。田口助太郎君。
    〔田口助太郎君登壇〕
#25
○田口助太郎君 戰災並びに水害によつて生じた住宅の復興対策について、二、三政府の御所信を承りたいと思います。
 まず第一にお伺いしたい点は、過日政府の発表いたしました経済白書によりますと、戰爭による住宅の不足は四百万戸であります。從いまして、もし一戸当り平均五人の家族を收容するものといたしますならば、二千万人の國民が現在住宅難に苦しんでいることになるのであります。なおこのほかに、これら住宅のなき者に対して住宅の一部を提供している者も、また間接に住宅難に苦しんでいるものと見なければならないのであります。從いまして、住宅難のために苦しんでいる者は、都市、農村を通ずる國民の大多数でありますことは、言うをまたないのであります。
 人間生活に必要欠くことのできないものは衣食住の三つであることは、申すまでもありません。しかるに、衣料の配給は皆無であります。食糧の配給は遅配続きであり、その上住むに家がないので、いかにりつぱな民主憲法が制定されまして、その第二十五條に、「すべての國民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」旨の規定がありましても、それは價値なき空文に過ぎないのであります。
 もちろん、敗戰國民としてある程度の苦痛は忍ばなければならないことは当然であります。しかし、不衛生な壕舎や、窓一つない焼トタンの仮小屋で、あてもなく、希望もなく、見るにたえない悲惨な生活を続けている者が、現在六十二万人あると言われております。またあらゆる苦難と闘つて、ようやく祖國にたどり着いてみたものの、住むに家なく、毎日家を求めてさ迷つている引揚者が、三百二十五万人の多きに達していると言われております。この四百万に上る壕舎生活者と引揚者は、冬を間近に控えて、身を切る思いで悩み苦しんでおるのであります。しかも、先日政府の発表したすずめの涙ほどの薪炭で、どうしてこの冬を越すことができるでありましようか。敗戰國民とは言いながら、あまりにも悲惨と言わなければなりません。
 なおこのほかに、一日の労働を終え、あの交通地獄を突破し、ようやく家に帰つても、満足に手足も伸ばせず、声も立てられない寄合世帶に勤労者や、あるいはまた疎開地から帰ることができず、親子がわかれわかれに生活して、二重にも三重にも生活費を拂わねばならない不合理な生活をしておる勤労者が、一千六百万人もあるのであります。この上、今次の大水害によつて流失または大破損をした住宅の数も、数万個に上ると言われておるのであります。
 これら二千万人以上の同胞が、雨露をしのぐに足る最小限度の住宅を與えよと要求することは、敗戰國民として不当の要求でありましようか。私は、これら同胞に一日も早く住宅を與えることは、政府に課せられた憲法上の最大の義務であると考えるものであります。(拍手)
 しかるに政府は、この深刻なる住宅問題には実に消極的であり、冷淡であると言わなければならないのであります。現在住宅は、火災により、あるいは水害により、あるいは自然の腐朽によつて、年々十万戸ずつ減つております。また人口の自然増加によつて、十万戸ずつの家を必要としております、都合、年々恒常的に必要とする住宅は二十万戸であります。ところが、現在政府のもつている計画では、この恒常的に必要とする住宅をようように賄う程度でありまして、戰災者の住宅、あるいは水害者の住宅を解決する日は、あるいは六十年と言われておるのでありまして、実に寒心にたえない状態であります。これでは、住宅難に苦しむ多数の國民の思想は動揺し、惡化し、あるいは激発するおそれがなしとは言えないのであります。
 政府は、この住宅地獄を一日も早く解決せしめ、住宅地獄から発生する生産意欲の減退と家庭悲劇の激発を防止する強力なる施策を断行する必要があると思うのでありますが、これに対しいかなる考えをもつておられるかを、まず第一にお伺いしたいと思います。
 次にお尋ねいたしたいことは、戰前の都市住宅は、自己住宅が二割で、貸家が八割であつたのであります。この比率を、現在必要としております住宅にあてはめてみますならば、自己資金で復興の可能と思われる住宅は、八十万戸であり、貸家によらなければならないものが三百二十万戸になるのであります。從つて、住宅復興対策を立てる場合には、自己住宅と貸家とにわけて考える必要があると思います。私の質問も、この二つにわけてお伺いしたいと思います。
 まず、建築資金をもつておる者の住宅対策からお伺いいたしますが、資金をもつておる者から見た住宅復興の隘路は、建築規制と統制機構の欠陷であり、また官僚のセクショナリズムと非能率であると思うのであります。臨時建築等制限規則は、不急不要の建築を制限し、その資材を緊要なる部門に振り向けるためにできた規則であると思うのであります。しかるに、この規則を運用する官僚の多くは、法の精神をはき違え、法の末節にとらわれて、緊要なる戰災住宅の復興までも著しく阻害しておるのであります。十坪、十五坪の小住宅を建てるにも、複雜なる手続が要り、專門家でなければ書くことのできない書類を要求しておるのであります。この書類をつくるだけでも、千円、二千円の莫大なる代書料がかかるのであります。その上、建築許可は早くとも半年、長いのになると一年以上もかかり、その間に資材は暴騰する、資金は不足するで、せつかく許可があつたときには建築ができなくなつてしまつたという例が、枚挙にいとまのないほどあるのであります。
 しかる一方におきましては、大臣の自動車の車庫や喫茶店のような不急不要の建物は、相当建築されておるのであります。(拍手)現在建築されつつある建物の多くは、一部の顔役と官僚との結託によつて許可されておる不正建築が、多数を占めておると言われておるのであります。眞に住宅難になく者の建築は、ほとんど許可されていないのであります。建築規則は一部顔役と官僚のための利益のためにつくられておる規則であるとさえ言われておるのであります。この不合理、この矛盾を是正するために、この際建築規則を全面的に改廃して、一定の坪数の小住宅は、個人の創意と工夫とによつて自由に建築せしむべきであると思うのでありますが、この点に関する政府の所信を承りたいと思います。
 なお、自己住宅の復興を促進するためには、長期低利の資金を貸し付けて、年賦で償還する途を講ずる必要があると思うのであります。今日の情勢では、一般金融機関から長期で低利に借り入れることは不可能であります。また復興金融金庫から借り入れることも期待でき得ない状態であります。從つて、この際早急に住宅復興金庫というような住宅金融専門の金融機関をつくつて、資金面から來る住宅復興の障害を排除する必要があると思うのでありますが、政府にその意思があるかどうかを承りたいと思います。
 次にお伺いしたいことは、自己資金ではもちろん、金融機関からも借りることのでき得ない庶民階級の住宅問題についてであります。この人たちの住宅は、大体三百二十万戸必要とするのでありますが、これはどうしても貸家によらなければならないのであります。しかしながら、今日の経済情勢下においては、戰前のように民間の貸家企業に期待することは絶対に不可能であります。從つて、庶民階級の住宅問題を解決するには、どうしても國家企業による、國営によるアパートなり貸家なりを大量に建築しなければならないと思うのであります。
 現政府は、産業の社会化、産業の國営化を標榜する社会主義政党を中心とし、また今次の総選挙に際しては、國営による庶民住宅の大量建築を公約して第一等を勝ち得たる社会党中心の内閣であります。從つて私は、内閣の性格からいつても、また公党の面目からいつても、組閣と同時に、國有國営による庶民住宅の建設を強力に断行するのであろうと期待しておつたのであります。(拍手)しかるに、未だにその挙に出ないのは、了解に苦しむのであります。
 社会主義なり社会政策なりの長所は、民間の私企業では成り立たないもの、あるいは成り立つとしても、私企業でやることは公共の目的に反し、あるいは大衆の利益に反するものを、國営で行うところにあると思うのであります。從つて、庶民住宅の復興のごときは、私企業では絶対は成り立たないものであり、しかも、産業再建の前提をなすものであり、また民生安定のかぎをなすものでありますから、政府は最初に庶民住宅の國営問題を取上げなければならないと思うのであります。
 しかるに現政府は、私企業の形態でも成り立つておる炭坑の國管問題などを最初に取上げ、政府の運命を賭し、全精力を集中しておるごときは、國家施策の緩急順序を誤つておるといわなければならないと思うのであります。(拍手)政府は、炭鉱の國管に全精力を集中することなく、國民大衆の熱望しておる庶民住宅の國営に全精力を打込み、あらゆる困難を乘り越えて断行すべきであると思うのでありますが、政府にその意思があるかどうかを承りたいと思います。
 次にお尋ねいたしたいことは、今次の大水害によつて数万戸の住宅が流失し、または大破したのでありますが、このうち、自己の資金あるいは資材で復興でき得るものと、でき得ないものとがあるのでありますが、自己資金、自己資材ででき得ないものの数も、数万戸に上るのであります。聞くところによりますと、政府は、今次の大水害によつて國庫が助成して建てる建物は、三千戸で打切つたと聞いておるのでありますが、これは事実であるかどうかを承りたいと思うのであります。もし事実であるとするならば、この大水害によつて、國家負担による住宅が三千戸ぐらいでは、この災害を復旧することは断じてでき得ないと思うのであります。
 次にお尋ねいたしたいことは、住宅の復興には莫大なる木材を必要とすることは言うまでもありません。これを内地の資源だけに依存することは、治山治水から見るも非常に困難であると思うのでありますが、政府は木材を海外から輸入する計畫をもつておるか、もしありとすれば、計畫の内容及び輸入の見透し等について承りたいと思います。
 次にお伺いしたいことは、住宅復興の一大障害となつておる官僚のセクショナリズムを打破し、住宅政策を円滑に強力に推進するためにも、建設省の設置はこの際絶対に必要であると考えるのでありますが、この点について政府の御所信を承りたいと思うのであります。
 最後にお伺いいたしたいことは、終戰直後、國家は厖大なる緊急土木事業を行つたのでありますが、その際いわゆる突貫工事と称されて、企業者と政府との間に、完全な請負契約あるいは單價等の未決定の部分が相当あつたと聞いておるのであります。それを最近政府は、総請負金額から二割あるいは三割を一率に打切るというようなことを聞いておるのでありますが、事実であるかどうか。また打切るとするならば、総体的にやるか、それとも個々の事業について、合理的観点に立つて個々に打切るかを承りたいと思うのであります。
 以上七つの点について、政府の誠意ある御答弁をお願いいたします。(拍手)
    〔國務大臣片山哲君登壇〕
#26
○國務大臣(片山哲君) ただいま田口君より、住宅政策につきまして御抱負、御意見を述べられました。御趣旨については同感であります。私どもも、戰後の國民生活の向上をはかるためには、住宅問題に重点を入れまして、諸君と同樣、何とか復興を一日も早くいたしたいと考えているのであります。特に毎日戰災の後を見まして、氣の毒な方々に対しましては、安んじて家庭生活の安定を得られるように努力いたしているのであります。何分にも現在の財政状態では、思う通りの施策を十分行うことができないということは、はなはだ遺憾でありまして、この問題については、田口君自身も十分に御了承のことと思うのであります。目下、戰後の財政を立て直して、ほんとうに産業復興ができるような素地を一日も早くつくりたいと考えているのであります。大体のめやすがつきましたならば、積極的に國民生活に関する部面に向つて乗り出したいと思つております。
 勤労大衆の住宅問題、特に労働街における衛生あるいは道義問題等を考えまして、大衆の公営住宅問題には積極的な政策を樹立いたしまして、諸君に御協議、御審議を願いたいと考えておるのであります。國営住宅問題につきましても、私どもは多年考えておるところでありまして、個々に借家業を営ます人々にこれを任しておくよりも、國家がこれを取上げまして、住宅の公営政策を積極的に行いたいということを考えておるのであります。この点におきまして田口君が、國営住宅問題―國家が國民の住宅を積極的に取上げて、その改善をはかりたいという御意見を述べられたことに対しましては、深く感謝いたしたいと思います。どうか今後におきましても、眞に国民の生活を幸福ならしめるために、國民の利益の向上せしめるために、國家が仕事をしなければならないという点についても、同樣の思いをいたされんことを希つております。
 何分にも産業の復興が目下一番大切であります。インフレの防止も、食糧の増産も重要であるが、今日最も力を入れなければならないことは、産業の復興でありますから、目下政府といたしましては、産業の復興のために全力を傾倒いたしまして、國民の協力を求めたいと考えて、いろいろの点において諸君にお諮りをいたしておるような次第でありまして、その一環といたしまして、まずお諮りいたしましたのが、石炭に関する國家管理案であるということを御了承願いたいのであります。
 なお、建設省を設置する意思ありやという点についての御質問がございましたが、これはこの前にもお答えいたしたことでありますが、大体の見当といたしましては、各省に建設関係がまたがつておりまして、一時これを省にまとめるということは、事務上はなはだ困難を感じておるのであります。從つて、今日における段階といたしましては、まず建設院で進みたいと考えております。しかし、事務の取扱い、能率の増進については万遺憾なきを期し、建設省と同樣の働きをこれによつていたしたいと考えておるような次第であります。以上、お答えに代えたと存じます。
    〔政府委員阿部美樹志君登壇〕
#27
○政府委員(阿部美樹志君) お答えいたします。ただいまいろいろ御質問がございました。またいろいろの点にお触れになりまして、一應ごもつともの点が多いのであります。私から、やや詳細にわたりまして御答弁申したいと思います。
 第一、今日まで御説のように、戰災地の復興住宅はなかなか進みませんでした。過去二年間におきまして建設されました戸数が約七十一万戸でありまして、そのうち五十九万戸が住宅であります。從つて過去におきましては、平均約三十万戸程度年々できておつたことになるのであります。これに対しまして、戰災のために焼失その他滅失いたしました家、及び戰時中抑制されてまいりました家屋の数が、御承知の通り、現在建設になりました数を除きましても、四百万戸ほど残つておるのであります。先ほど御指摘になりました自然増加あるいは恒常的需要の家屋が御説のように約二十万戸に上ります。從つて、これを十年計画をもつて進むとしますれば、年々六十万戸の建設が必要となるのでありますが、六十万戸の建設に対しましては、資材等に木材が不足しておるのであります。この上住宅の方面に木材を振り向けることは、現在の伐採量から申しますと、きわめて窮屈であります。また資金の点から申しましても、かりに六十万戸、十坪にいたしましても六百万坪、これが坪五千円とふみましても、三百五十億ないし四百五十億円ほどの資金が要るのであります。この資金と資材の面から今日十分な復興ができないという点を、何とぞ御了承願いたいと思います。
 將來の計画といたしましては、來年度三十五万戸、翌二十四年度には三十七万五千戸、四十万戸、四十二万戸、四十四万戸というぐあいに年々増加いたしまして、五年間に約二百万戸、次の十年間に約四百六十万戸ほどになりますが、合計十五年間に約六百八十万戸ほどの建設をいたしたいと存ずるのであります。先ほど申し上げましたように、初年度におきましては、木材、資金の関係上、十分なる復興建設ができないことは、きわめて遺憾でございます。
 次に、臨時建築規則の御意見でありますが、これにつきましては目下研究中でありまして、できる限り簡易にかつ迅速に許可認可ができるように処置いたしたいと思うております。殊に手持資材を認められないという点がありまして、非常に建設戸数が制限されてまいりましたが、これは一應認めることにいたしましたがために、相当量建設し得ることができるような措置を現にとつております。
 住宅復興金融金庫の問題はきわめて重要でありまして、私ども、これにつきましては極力研究もし、調査もし、また財務当局者とも協議をしております。できる限りそういう措置をとりたいと考えておる次第であります。
 それから木材輸入のことが御質問の中にありましたが、これは昨年以來いろいろ研究もし、また努力もいたしておるのであります。大体木材を海外から得ようとしますならば、米國がその対象になるのでありますが、米國自体が住宅難に非常に悩まされておる関係上、米國からの輸入はきわめて困難であろうという見透しであります。なおしかし、これにつきましては努力をいたしまして、できるだけの処置をしたいと考えております。また最近こちらに進駐しております人々が帰りまして、ぜひレディ・メード・ハウスというものを輸入したいということを申し出ておるのが二、三あります。これは非常にいい機会でありますから、もしこれができますならば、ぜひともそういうものは、輸入の可能なる範囲において実現したいと考えておる次第であります。
 それから最後に、契約関係におきまして三割を天引するのではないかというような御質問でありましたが、ただいま復興院の関係しております工事に対して、極力調査をいたしております。しかし、千篇一律に三割とか、あるいは二割五分とかいうようなカツティングをやろうという考えはもつていないのであります。きわめて合理的なペースの上に立つて、資材費、労賃その他を研究いたしまして、合理的な節約をはかろうとしておるのであります。これは最初の契約が概算契約でありました関係上、そういう措置をとらなければならぬような実情にあるのであります。
 以上、簡單でありますが、お答えいたします。(拍手)
    〔政府委員小坂善太郎君登壇〕
#28
○政府委員(小坂善太郎君) 御質問中、大藏当局に関する事件についてお答え申し上げます。すでに財務当局に関する問題に関して、復興院総裁からも述べられたことが多いのでありまするから、私は簡單に趣旨をお答え申し上げます。
 第一点は、住宅復興金庫というものを早急につくり必要がありはしないか、これについては財務当局はどう考えておるかという御質問でありましたが、私どもは、これが緊急に必要であるということは認めます。しかしながら、これと同時に、庶民金庫あるいは恩給金庫といつたようなものを包含いたしまして、さらに大きな構想のもとに一つの立法をいたしたいというような考えで、目下研究をいたしております。
 第二点は、緊急土木費の單価切下げの問題でありまするが、これは御存じのように、昨年御協賛を願いました法律第六十号によりまして、大藏省といたしましても、これを査定するということになつているのであります。これは、ただいまもお話がございましたように、一應概算拂いの契約でありまするために、いろいろとその後に精算をいたしてみまするとまだ減額し得る余地があると認められる契約がかなり多いのであります。そこでこれを、復興院総裁も言われましたが、合理的な基礎に基いて改訂するというような措置をとつている向きもございます。しかしながら、これを何も一率に天引きして、頭から二割とつてしまうというような考えでおるわけではないのであります。以上をもちましてお答えといたします。
     ――――◇―――――
 教育問題に関する緊急質問(米田吉盛君提出)
#29
○議長(松岡駒吉君) 教育問題に関する緊急質問を許可いたします。
 米田吉盛君。
    〔米田吉盛君登壇〕
#30
○米田吉盛君 ただいまから文教問題について質問をいたしたいと思つています。詳細な点は委員会に讓りまして、特に重大と思われる問題について、総理大臣、文部大臣、その他関係の大臣に質問をしたいと思うのであります。
 わが國は、今や文化國家としてすでにその出発を始めたのであります。このことは、言うはやすく、これを実行し、これに成功いたしますことは、まことに容易ならぬ大事業なのであります。それゆえに、前もつてよほどの覚悟と用意とが要るのであります。このために、画期的学制の大改革が断行せられまして、その出発にあたり、第九十議会におきましては、文教再建に関する決議案が上程せられまして、教育の尊重と教育の独立、政治における教育の優先が議決せられたのでありました。かくして議会の覚悟と決意のほどが高らかに示されたのであります。
 従來文教は、かかる決議を必要とするほど軽んぜられていたのであります。この決議は、口に文教の尊重を叫びながら、現実には文教を軽視して科学に敗れた日本人が、悲惨なる敗戰の中から肺腑をついて出たうめきであり、文化國家としての門出にあたつて嚴粛な反省であろうと存ずるのであります。(拍手)さればこそ、現内閣の組閣にあたりましても、四党政策協定中に文教の刷新が取上げられているのであります。
 しかるに、組閣以來半年、文教問題について幾多の努力が拂われたのでありましたけれども、未だ見るべき解決に達しておらないのであります。ために、教育界はかつて見たことのない大混乱に陷つておるのであります。六・三制にいたしましても、初年度百億近く大体要るであろうといわれておつた予算が、わずか八億で、しかも何らの準備なくして、いわば非教育的態度で強行せられましたために、この無理が今日全國民の上に悩みとなつて現われておるのであります。父兄は寄附の割当に、町村は財政の不安に、生徒は校舎や教科書に悩み抜いておるのであります。
 しかしながら、この無理も、眞理と眞実とを尊重し、平和と人道とに徹せる國家の成員たるべき、世界市民的日本人育成ということにあるのでありまして、その画期的大英断であると認めますときに、この無理を是認し、これに深い意義のあることを肯定するものであります。政府としては、当初から無理であるということを承知の上で実施をしたのでありまするから、この無理に基く混乱と苦悩をいち早く收拾し、進んでは学制改革断行の趣旨を貫徹して、学制改革に魂を入れなければならぬ重大なる責任があると存ずるのであります。(拍手)國会といたしましても、学制改革が議会の同意を得てなされました関係上、さらに國権の最高機関たる地位から申しましても、國会にもまた重大なる責任を認むるものであります。
 今回文部大臣は、最初四十九億円とお考えになつておつたところを、十四億円前後をもちまして、ようやく関係筋との了解も得たとか、そうして追加予算の通る見込みがついたとか、あるいはまた本日あたり聞きますと、それがぐらついたとか、こういうことを聞くのでありまするが、御奮闘のほどは多といたしますけれども、一体これがどういうふうになつておるのであるかということをお尋ねするのであります。
 六・三制の実施という大事業を、大体八億や十四億くらいで始めるということであつては、そもそも私は教育の認識いかんと尋ねたいのであります。(拍手)こんなことで、國民はまじめに文化國家になれるであろうとは受けとれないのであります。何となれば、新制中学校の生徒の数は、第一学年生だけでも百四十四万人であります。これが完成いたしますれば、その三倍の五百二十二万人に達する厖大な人数であります。高等小学校の校舎もありましようけれども、これだけの人数の校舎や設備や校地や、また教員俸給の負担を思いますときに、さらにこれに関連いたしまして、新制高等学校であるとか大学の整理、殊に二百有余の官立專門学校の大半が大学昇格を考えますときに、学制改革は少く見積つても数百億を要する大事業なのであります。このほかに私立学校の復興であるとか、新制度に伴うところの生徒を加えますれば、莫大なる資材と費用が要ることは明らかであります。
 しかも一面においては、インフレ下におきまして健全財政を余儀なくされておるところであります。この健全財政のところへ、あとからあとからとおびただしい文教費が出ますれば、これが原因となりまして、インフレはだんだん昂進するということが実情なのであります。ゆえに、かような莫大な予算を伴う大事業は、実施に先立つて、國政の総合的見地からも、資材・資金各方面にわたつて、確たる年次計画を立て断行すべきであると私は思うのであります。そうではなく、今年は八億で、追加予算は十四億だ、その時の風まかせで滑り出るというようなことは、あまりに無謀であつて、非科学的であると私は考えるのであります。(拍手)
 この無謀が、政府部内におきましては、資材予算の裏づけがないことにある。その波紋は、ひいて全國民の悩みに拡大していくのであります。六・三制を実施するということになりますれば、魂を入れてやれる方法で実施すべきであると私は思います。明年度の予算も、この程度であるとかりにいたしますれば、眞の教育は開店休業でありまして、現場の当事者は進退に窮する。このことを、この際改めて警告しておくものであります。
 でありますから、今からでも遅くはない。関係官廳へ折衝せられまして、確実なる年次計画を立て、合理的にこれを進められたいのであります。万一、明年度も適当な予算が得られないというときには、誠に残念ではあるけれども、一時臨時措置でも講じまして、中止をせなければならないのではないかと私は思います。(「ヒヤヒヤ」「その通り」)もとより、かかることが國の内外に及ぼす影響を考えましたときに、にわかに賛成するものではないのでありまするが、地方の実情はそこまでもう來つつあるということを、これまた警告するものであります。総理大臣は常に文化國家を口になさる。私は、この点に関して特に総理大臣の御所見も承りたいのであります。(拍手)
 文部大臣は、またしばしば生徒や教員に対して、敗戰日本の現状に徹し、乏しきを忍び、難きを行い教育せよという意味のことを仰せになつておる。教育の現状では、学用品もない、校舎もない、教科書もなかなか來ない。しかも、教育費の予算がこういう状態で、どこに彼らは光明を求めるでありましよう。戰争の末期に、東條総理大臣は、國民に竹槍戰術を説かれました。文部大臣のこの乏しきを忍ぶ教育論も、時代は変りまするが、私は竹槍戰術であると断ずるのであります。(拍手)萬人を納得せしめ、これを率いるゆえんではありませんか。当局は自己の無力を生徒や教員に轉嫁するものであると思われても、いたし方がないのでありまして、文化國家の出発にあたり、一大損失であると私は考えるのであります。
 今日わが國は、過剩人口のために、特にこれが消費人口として困つておるのであります。しかし人間は、口で消費するだけのものを、手で生産いたしますれば、生活は安定するのであります。さらに消費する以上のものを生産すれば、生活は向上するのでありますから、わが國の人口は、消費の主体としてのみ考えず、生産の主体としてこれを活用せなければならぬことは明瞭であります。(拍手)單一民族として世界第三位にあるわが人口こそ、戰後に残されたる唯一最大の希望であります。
 食糧難に今日直面しております。食糧の増産が叫ばれるのは当然であります。それだからというて、多数國民が農民に轉じ、山の頂きまで開墾し耕作するということは、農業技術としては可能でありましよう。しかし、かかる惡条件下の生産は、コストがかさんで、農民自身にとつても、國家にとつても不経済きわまる話であつて、笑うべき国力の濫費であります。ゆえに日本の基本國策は、適正人口を農村に留め余剩人口はあげて工業に就かしめ、日本人のもつ器用さを活かすべきであります。このことは、日本と同樣な小さい島国で、人口の多いイギリスの例に徴するも、また明らかであります。
 かくいたすにつきましても、日本人一人当りの生産力は、ドイツ人一人に対して六分の一だそうであります。アメリカ人の十分の一だということであります。それほど劣つている生産力であります。この國民に、生産の主体として十分なる能力を與え、科学と技術を授けなければならなぬのでありまするが、その方途も一に教育によるのであります。また國民の教養いかんによつては、無責任と分裂解体と弊を包藏するといわるる民主主義をして眞に成功せしむるのもまた教育にあるのであります。しかもこのことたる、心だにあらば。われらが自力によつて実現し得る問題であります。
 ややもいたしますれば、食糧問題、インフレ問題等、衣食住の問題は、常に先に考えられ、文教の問題は目に見えないものであるから、あとに忘れられがちでもあります。そうして、一見迂遠な第二義的問題のように考えがちでありますけれども、文教問題こそ生産政策なのであります。この過去の態度が、今日無用にわれわれを苦しめておる。それは過去のかかる原因が一半の原因であると考えるのであります。
 マツクス・ウエーバーの言を借りるまでもなく、勤労者の賃金値上げは、文化の高い國民ほど責任感が増してきて、能率が上るということであります。文化の低い國民は、賃金が上がりますると安心して、三十日働くところは二十日しか働かない。次第に能率が低下するということであります。(拍手)しからば、石炭を出すのも、米麦を作るのも、教育を等閑して求めることが誤りであるということが明らかになるのであります。(拍手)
 しかもこの教育は、今必要になつたからといつて、思いついてこれをやりましても、間に合わぬのであります。不断に努力の継続をいたしますることが必要なことは、いまさら多くを語る必要がないのであります。だからと申しまして、私は一國の財政を無視してまで文教一点ばりの主張をするのではありません。しかし、ないから出さない、健全財政だからやらない、こういうことは、イージー・ゴーイングであります。賢明な政治ではありません。余裕ができてからやつて良いものと、何が何でも最小限度今やらなければならぬものとを混淆することは、この際許されないのであります。
 日本はすでに新理想に向かつて出発したのであります。このときの爲政者は、小乘的でなく、財政をくふうし、もつて少くとも最小限度の費用を捻出をなし遂げ得る熱と手腕が期待せられると私は思うのであります。基本國策でありますところの文化國家建設と健全財政の調和点は、今日の場合、單なる事務的立場から決すべきではありません。
 片山総理は、本国会の劈頭におきまして、その施政演説をなされ、銀行問題に論及せられ、金融が産業の主人公になつてはならぬ、金融は産業に從属すべきものであると言われた。國政においても、財政が國策の主人公となつてはならぬということは、けだし同樣であると思うのであります。今まで文教費を惜しんだために幾多の損失を招いて、その対策に、惜しんだ以上の國費を使つているのであります。生産不振の素因も、犯罪増加の原因も、教育にあるのであります。從つて、増産に要する経費も、犯罪のための警察や刑務所や裁判所等の経費も、文教費との間に深い関連をもつておるのであります。
 病氣なつて苦しんだあげく費用を使う人と、病氣にならぬ前に予防のために費用を使う人があります。凡夫はえて前者を履むのであります。
 口に教育を認める者は多いのでありますが、しかし、文教の價値を正しく判断することは、人によつて違うのであります。文教の責任者は、この誤りないことを私は特に希望するのであります。
 次は新制高等学校でありますが、中等学校を原則として高等学校に移行するということは、これは教育の普及民主化のために、結構と存ずるのであります。それから定時制の高等学校、これは青年学校を充てるということでありますが、その青年学校の多くは、すでに新制中学校に轉用せられたものもあるのであります。また青年学校の性格と設備と高等学校のそれとは、大いに異なるのであります。明年度に実施せられる高等学校が、明年度ただちにこれが一年から三年まで完成するのであります。そのときにあたりまして、すでにどの程度の用意ができておるか。その点を具体的に伺いたいのであります。
 次は新制の大学の問題でありますが、四年制度の大学一本建でいくのか、三年制の大学をも認めるのか、二本建でいくのか。文部省の一部には、三年制も認めたい御意向のあるように承るのでありますが、さようなことが関係筋の了解を得ることができるのでありましようか。大学は二十四年度に実施するというので、のんきに構えておられるのであるかも知れませんが、大学の本質に鑑みまして、その準備は一年や半年ではだめなのであります。新制大学が横滑りの制度でもとる場合には、実施と同時に完成いたしまするから、早く御決定にならないと、六・三制の二の舞を履むと同樣になると私は思うのであります。この点について、いつ頃およそこの問題を御決定になるか、早急に御発表を願いたいと思うのであります。
 また、專門学校は二十四年度から廃止になる。その多くのものは大学たらんとして、官私を問わず、同級生その他に呼びかけて、寄附の募集を盛んにしております。これに対し文部省は、無理な寄附はまかりならぬとの達しを出しておられます。もともと学校側は、無理と知りつつ、好まぬ寄附に着手しているのであります。文部省に頼つていたのでは不安だからこそ、官立学校までがやつておるのであります。また專門学校が理想的な大学になるためには、その寄附の全金額も相当無理な高額にならざるを得ません。この際無理な寄附募集はやめて、文部省のおつしやる通りにしておつて、大学になれる方法がありましようか。もし大学になれなかつた場合には、文部省はどういう責任をとるお考えでありましようか。
 私立学校の場合を考えますれば、外部からの援助が一切期待できません。卒業生の愛校心に訴える以外に、その寄附以外に残されたる途はないのであります。無理はもともと文部省がお始めになつたわけでありまして、私立学校その他の学校は、これに苦しめられておる状態であります。現在大学の数は七十六校あります。これに比較して、專門学校は三百六十一であります。その生徒の数も、大学の六倍を專門学校が收容しておるのであります。從つて、專門学校が廃止の暁は、自然今までの大学のみにては学生の收容がしきれない。多数の大学を必要とすることは明らかであります。專門学校が大学たらんとして努力しつつあるということは、まさに社会の要請にこたえんためであります。
 次に教員養成の問題でありますが、教育が教員にあることは、いまさら申すまでもありません。新制度の発足に伴い、教員養成の発足は当然前者に先行すべき問題であります。それにもかかわらず、この問題は旧のままに放置されております。学芸大学という、師範学校に代るべきものをおつくりなるか、それも各府縣におつくりになるのか、数府縣に一校をおつくりになるのか、あるいは一般の大学の卒業生を採用せられるのか、これらについて関係筋との話し合いの解決はどういうふうになつているのでありましようか。これがきまらぬために、各地方の師範学校からは、学芸大学への昇格運動として國会に請願が殺到しておるのであります。
 次には、私学振興に関する問題をお伺いしたいと思います。思想の本山でありますところの文部省は、官廳の中でも殊に率先して民主化の制度を取上げなければならぬ。まず学校関係で、從來官私の不平等の扱いをされておつた、卒業生なんかの資格に不平等の扱いが、あつたこういうような点は、終戰後どの程度改善せられたか、これを具体的に承りたいと思うのであります。もし未だの点がありますなら、速急に、これは改善を願いたいのであります。
 元來私立の学校というものは、日本では、アメリカのごとく財力豊富、自由、民主の思想の制度の中で発展してきたのではないのであります。官尊民卑の思想と制度の中で、独特の教育理念をもつて今日までようやく成長してきたのであります。戰時中は私学の整理統合に脅かされ、戰後はその前拂いであるところの授業料の收入の預金を、第二封鎖として一般資本家同樣に取扱われた。その解除が許されたものは、わずかに六つの私立大学のみであります。私学唯一の財源であります寄附の募集については、嚴重なる官廳の許可制を受けておるのでありまして、官学に対しては寄附をしても税金をとりませんが、私立に寄附をした場合に、その寄附者に対して税金を課せられるということになつておるのであります。
 かように意識的か無意識的かわかりませんが、八方にわたつて私学の発展は阻害せられてきた冠があるのであります。(拍手)このために、わが國の私学の多くは財力において官学に劣つているのであります。加うるに、戰災による焼失は五十万坪に達し、戰後におけるインフレと相まつて、今や私学の存立は危ぶまれるに至つておるのであります。教育の民主化と機会均等が叫ばれるこの重大なる今日、國家教育の半ばを担いまする私学の振興こそは、新しき國家目的実現の大前提でなければなりません。國家が財政難であればあるほど、私学の活用にまつことが大であります。
 この場合、衆参両院の議員諸君の御賛成になつた教育金庫法案が、健全財政のあらましのもとに提出不能になつたことは、民主國家出発にあたつて一大痛恨事でありまして、関係者の一人として慚愧にたえないところであります。しかし、法案の提出は不能になりましても、私学救済の必要性は寸毫も緩和消滅したのではございません。文部大臣、大藏大臣は、これに対していかなる対策を用意せられておるのでありましようか。それとも何らの対策なくして、私学を見殺しにせられるお考えでありましようか。聞くところによりますと。預金部で融資をする、こういう一説もあるのでありますが、はたしてそれが相当額において可能でありましようか、もし可能であるとすれば、どういう手続をとるべきか、大体のことをお示し願いたいのであります。
 以上、文教の國政上における地位は、依然として現実に軽んぜられておる。文教の政策の緩漫、教育界を混迷ならしめておることを力説いたしまして、総理大臣、文部大臣、大藏大臣等の明確なる御答弁によつて、本議場を通し、廣く國民の苦悩を解決したい所存であります。(拍手)
    〔國務大臣片山哲君登壇〕
#31
○國務大臣(片山哲君) ただいまお述べになりました教育の尊重、文教の刷新、財政上の面において文教費の増大を計画しなければならない、こういう御意見については、ごもつともと存じます。私どもといたしましても、文化國家建設のために教育に力をおきまして、眞に次代の國民を文化的に育て上げていかなければならないという点については、米田君と同樣であります。しかし問題は、その根本観念よりも、今日において実際政治の上にどれだけこれを実現するか、事務的の問題も伴つてまいりますし、施設の問題も伴つてまいりますし、財政上の面において、どれだけの施設が文教のために割かれるか、こういうような具体的な問題になつてくると思うのであります。目下政府といたしましては、予算の審議中でありまして、近く諸君に追加予算を御協議し、御審議をお願いすることになると思いますので、その時に、十分数字の上において御審議を願い得ることと存じます。
 できるだけ財政を工面いたして、文教方面に費用を出したいと考えておりますが、二つのやり方が出ると思います。米田さんが申されましたように、十分できるだけ待つて、あるいは十分用意があつたときに一時に相当備わつた施設をいたしまして、文教尊重を政治の上に、また実際問題に現わしていくという一つのやり方と、はなはだ苦しい財政をやりくりいたしまして、いくらでもできる面からやつていくという、小出しでありますが、斬新主義のやり方と二つあると思います。目下わが國は、御承知の通りの財政窮乏状態でありまして、財政上の面から考えて見まするならば、一時に相当備わつた、完備した施設を、六・三制なら六・三制といたしましてもやることは、はなはだ困難であります。それでありますから、財政のやりくりをいたし、工面いたしまして、できるだけの数額をその方へまわして、いくらかでもできる面からやつていくという、斬新的なやり方をとらざるを得ない状態になつておるのであります。それでありますから、予算の数字を照らして見ますれば、よく御了承願えると存じます。
 問題は、一部の問題に片寄らないで、全般の問題を考えていかなければならないのでありまして、たとえてみますならば、千八百円のベースの問題につきましても、また米價の問題につきましても、農民の立場、消費者大衆の立場、國家財政の立場、全般の問題をにらみ合わせていかないことには、祖國再建はできないのでありますから、政府としましては、眞劍に、何らかの虚飾なく、率直な心持ちをもちまして、これだけの財政で、これだけの仕事をやつていくより今日はやむを得ないのである、こういうことを國会にも説明をいたし、國民大衆にもよく知つてもらいまして、心持ちははやつておるのでありますけれども、遺憾ながらこの状態であるということを十分御了承願いたいと存じておるのであります。
 なお私が施政方針で、金融の産業に対する先行はいけないということを申したのを例にとられまして、財政が教育の先行をすることはおもしろくないという御意見でありましたが、これは少し例にならないと思うのであります。財政は、國家全般の施設なり事業なり、各方面の問題を十分に考慮に入れまして、そしてそのバランスをとりつつ、産業、金融あるいは経済、國家財政全般ににらみ合わせて、國家が健全に立ち直ることを念願しつつ進むのでありますから、どうかその点は、実際政治の上において最も苦慮しなければならない点であるということを十分御了承願いたいと存じます。
 政府といたしましては、文化政策に最も力を入れております。文化國家建設のために教育問題を重要に考えておるのであります。食糧問題さえ解決すればそれでいい、こういう風に具体的な食糧問題だけを解決しようというふうに、偏頗的に考えてはおりません。総合的に全般の問題を考慮いたしておるのでありますから、何とぞその点は十分に御理解賜わりたいということを、切にお願いする次第であります。これをもつて答弁にかえたいと存じます。(拍手)
    〔國務大臣森戸辰男君登壇〕
#32
○國務大臣(森戸辰男君) 米田君の御質問に答えます。文教政治の重要性についての御意見並びに御激励、まことに同感であります。教育制度の刷新は、新しい日本を建設する基本的な政策でありまして、六・三制は、この学制改革の急所であります。それでありますから政府は、いろいろな困難がありますけれども、この新しい新制中学を困難の中にも盛り立てていきたいという覚悟をもつて、追加予算の審議にあたりまして、三十一億の中央・地方の予算を含めたものを、実は内定いたしたのであります。これはしかし、そのときどきの行き当りばつたりではなく、年次計画に基きましたその一端の最小限度が現れておるのであると御了承を願いたいのであります。ところが、過般の思わざる水害が起りましたし、その他の理由で、資材等に重要の増加がありました。かような事情から、追加予算の問題を再檢討いたしつつあるのであります。しかしながら、新しい学制の問題、殊に六・三制の問題につきましては、國会において両院、殊に本院においての皆さんの強い御支持もあり、また地方團体、父兄方、先生、生徒、輿論の強い支持もあるのでございまして、私どもは最善を盡して、この学制改革の急所が完全に行われるようにと努めていきたいと存じております。
 第二の御質問は、高等学校並びに大学に関するものでありまするが、高等学校は來年度から行うことになつておりまして、高等学校の設置基準もできておるのであります。ただ、これがあまり完全な基準でありますと、学校を急速につくつていく上にいろいろの障害も起るおそれがありまするので、これを暫定基準といたしました。これによりますると、今日ありまする中学校、女学校等、特別に惡いものを除いては高等学校になり得るであろうと思われるのであります。この全日制の高等学校と並んで、勤労青年に対して、働きながら勉強できるいわゆる定時制の高等学校のことを、米田君が御質問になつたように、私どもは重点を置いて考えておるのであります。ただ、この定時制高等学校につきましては、御注意のあつたように設備が完全いたしておりませんので、ある点國庫の補助も必要であると存ぜらるるのであります。私どもの希望いたしておりまするところは、一時に完全なものを各地方につくるということはできませんけれども、まず発足点としては、本校が千、分校が三千ぐらいできればよい、かようにして、漸次発足していきたいと存じております。
 大学は二十四年度からできる予定になつておりまするが、その設立基準は大体できておるのであります。これには大学設置委員会というものをこしらえまして、それに諮問しまして、その判定によつて認可するということになるのであります。しかし、これは実は急に高い基準の大学を一時につくるということについては、無理も起るという心配から、私どもは三年制の大学ということを考えまして、目下関係方面とも相談をいたしておる次第であります。いずれ一定の結果を得ましたら、できるだけ早い機会に御報告いたしたいと存じております。
 なお專門学校につきましても、昇格のために無理な寄附があるということも、ときには承つておりまするが、無理な寄附はまことに遺憾であると存じております。できるだけ、そういうことでなく昇格が行われるように、從つて大学におきましても、高い基準を二十四年度から直接に課するということでなく、暫定的なものも考え、なお二十四年度からすべての專門学校が一時に大学に昇格するということでなく、漸次準備の整うたものから進んでいくように、さらに場合によつては、先ほど申しました三年制というものも、経過的には認めるような方策をもちたいと存じておる次第であります。
 教員の養成の問題につきましては、これは新しい学校の制度におきましては、制度と施設とともに、よい先生ができないでは、その効果をあげることができないのであります。そこで、教員の養成ということにつきましては、特別の注意が拂われなければならぬのであります。教員養成につきましては、教育刷新委員会の答申に基きまして、三つの方法が実をあげておるのであります。第一は、教員養成を主とする学芸大学を卒業したものであります。第二は、普通の大学の卒業者で、教職的の課程を終えた人々であります。第三は、独学者でありましても、これらの人々に道を開いて、檢定制度を設けるといふことになつておるのでありまして、將來こういう形で中小学の教師にも大学卒業という高い教養をもつた人をあてたいという考えでおるのであります。これらの学芸大学その他に、それではどういうものが昇格するのであるかと言いますと、問題となりますのは、師範学校と青年師範学校であります。師範学校につきましては、全部ではありませんが、数地区の有数なものを4年生の大学に昇格していく、そして、他は経過的に三年制の大学とするといふうに、私どもはただいま考えておるのであります。青年師範につきましては、学芸大学または單科大学の一部としてこれを併設して、充実していこうというふうに考えておるのであります。しかしながら、まだこれは確定的なものでないことを御承知願いたいと思うのであります。
 私学についての御意見につきましても、まことにごもつともでありまして、私どもは、民主主義の教育のもとにおいては、官私平等の立場で教育が行われることを心から望んでおりますし、施設的にも、かようにいたしたいと存じておるのであります。こういう点から、私学に対しましても、將來の監督を廃して十分な自由を與えてあるのであります。ただ、かような自由が與えられましたと同時に、残念なことには、御指摘のように戰爭の惨害とインフレのために、私学が経済的に非常に困難な状況になつておるということであります。本來私学は自由な立場で教育を行うのでありますから、國家、公共団体から補助を受けるというのは変則であります。しかしながら、先ほど申しましたように戰爭という、自己の責任でない損害によりインフレも、また学校が起したものではないのであります。かような國家的な損害のために学校の経営が困難になつておるという事情は、私どもは單に原則のみに拘泥せず考える余地も存すると思うのであります。かような意味におきまして、いろいろな点で私学が健全に育つような基礎が、國家の補助とは別に、他の方法で積極的に考えられることが、目下の施策としては一番適切なのであります。私ども、私学の経営をなすつておる方々とともに、この問題を考えていきたいと思つております。さしあたり、御指摘になつた学校寄付金の免税等の方法も一つでありますが、その他、今日の内外の事態から許されるところの方法によつて私学が振興していくことを、私ども教育の民主化の上から、心から念願しておる次第であります。
 かようにして、多くの問題に当面しておるのでありますけれども、日本國民は、この危機の内に力を協せて新しい日本が立つていく根本の道が教育であるという認識のもとに、あらゆる努力をいたしておるのでありまして、どうかこの努力がよき実を結ぶようにと、私、文教の責任の地位に立つて、あるものとして、心から念願しておる次第であります。以上、お答えいたします。(拍手)
#33
○議長(松岡駒吉君) 次会の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。(拍手)
    午后五時十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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