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1951/04/18 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 水産委員会 第28号
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1951/04/18 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 水産委員会 第28号

#1
第013回国会 水産委員会 第28号
昭和二十七年四月十八日(金曜日)
   午前十時四十六分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     木下 辰雄君
   理事
           松浦 清一君
           千田  正君
   委員
           秋山俊一郎君
           玉柳  實君
  事務局側
   常任委員会專門
   員       岡  尊信君
   常任委員会專門
   員       林  達磨君
  説明員
   農林事務官
   (水産庁生産部
   漁港課勤務)  大泉 幸作君
  参考人
   中央漁港審議会
   委員      鮫島  茂君
   神奈川県鰤定置
   漁業協同組合理
   事       山田 又市君
   小田原漁業協同
   組合長     石黒 平三君
   小田原市早川漁
   業協同組合長  加藤愛之助君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○水産物増産対策に関する調査の件
 (小田原漁港に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(木下辰雄君) 只今から委員会を開会いたします。
 公報に掲載いたしておきました通り小田原漁港に関する件を議題に供します。先般公務を以て秋山委員と私が靜岡、神奈川両県の漁港調査に参りましたところ、たまたま小田原の漁港の計画並びに実施状況を視察いたしたのであります。その際漁港修築事務所長から計画並びに実施の状態につきまして説明を聞きまして、それから地元漁民がその後において陳情されたのであります。その陳情の要旨は先般秋山委員から詳しく御報告もありましたが、要するに簡單に申しますると、この漁港は防波堤が少し東に向き過ぎている、これでは波をよけるという効力が非常に薄いというように古い経験のある漁師の諸君が異口同音に陳情されたのであります。それで本日この前の委員会で決定いたしました通り、参考人として漁港修築に関係されておりまする鮫島茂君、それから神奈川県鰤定置漁業協同組合の理事の山田又市君、小田原漁業協同組合長の石黒平三君、小田原市早川漁業協同組合長の加藤愛之助君、この四人のかたに参考人として御出頭願つたのであります。これから参考人の御意見をお伺いしたいと思います。成るべく要領よく簡單に御説明願いたいと思います。先ず漁港計画に関係されております鮫島君から御意見をお願いしたいと思います。
#3
○参考人(鮫島茂君) それでは私から考えておることを一つ申上げます。
 実はこの話を申します前提に小田原漁港の成立について私の関係しました範囲のことを大体筋道を立てて申上げますことが事後の問題に対する前提としておわかりやすいと思います。私の聞いておりますところでは、小田原漁港の計画は随分古くから立てられたのであります。併しながら何らの天惠のない平坦な海であるし、殊に相当の漂砂と申しますか、海岸を伝わつて歩く礫、砂のことを言うのでありますが、それの量のおびただしいものがある。かような天然の條件が極めて悪いという所でありまするが故に、多年当局者はこれの着手を躊躇されておつたような様子であります。やや似た條件の下にありまする靜岡県の燒津、これが相当に難航を重ねましてここ二、三年来やつと軌道に乗つたような形になりまして今日ほぼ成功の域に達しておると思うのでありますが、それに力を得て小田原漁港の計画がやれるものだろうかどうだろうかというふうな御質問が実は農林省当局から私にあつたんでありますが、私現地をつぶさに拜見いたしまして、何しろ前提の條件が非常に悪いので且ついろいろな関係から築港をする地点がすでに他の條件できまつておるのであります。そこにできるか、こういうふうな一つの前提のある質問であります。その前提の下に私つぶさに現地を視察したんであります。それでここにやるならば掘込み、つまり普通の港とは少しセンスの変つた波が荒く、漂砂のある所でありまするからして、陸地を掘込んで水面を作るという港ならば成立つ見込はある。併しながらこれは狹い水面しか得られない。それでとても贅沢な注文はこれはできそうにはない。併しながらやつと船を入れる程度のもの、つまり小田原が現在必要としておる船の要求、要求と申しますと少しなんですが、小田原が目下最も困つておる点をさばく程度の港ならば可能である。可能であるということは、経済圏内といいますかとにかく今日の常識で以てその範囲内の費用を以てやり得る途はあるという私は結論を立てたんであります。それで農林省及び県の当局に私の意見を参考にまで伝えておいたんでありまするが、その後調査費を農林省のほうでお考えになりまして、県が主として調査をやるということになつたんであります。その頃に私神奈川県のほうから神奈川県の顧問として、嘱託として小田原の技術的なサゼツシヨンをしてもらいたいということがありまして、私関係することになつたんであります。今申しまするように、小田原の漁港は天然の條件が非常に悪い。それでいわゆる今日行われておる程度の経済圏内の事業としては船を囲うという程度のことである。それで大きな水面を持たせるということは到底この港にはできない。併しながら平時の運営につきましては、極めて新らしき感覚、いろいろな経験を元にして最も能率的な港を作るのが適当であろうということで、私二、三県当局及び農林省のほうにアドヴアイスいたしまして今の計画が成立つたものだと想像いたしておるのであります。前提がそういうふうに普通の港とは違う、條件が非常に悪いということでありまするので、どういうふうな御苦情があつたかは存じませんが、私ども相当にあの港に頭を悩まして最善の努力をしたつもりであります。特に頭を悩ましましたのは水面積が狹いからして僅かの波でも侵入する、中へ入つている船に大きな損害を与える。殊に波の程度が強いことが予想されるのでありまするからして、港内を極めて安全に如何なるしけでもあの中に入つておる船の保護に耐えるだけのことをしたい。私小田原の性格として消費地が近いというような関係がありますので、水揚げの便宜或いは鉄道等の連絡というような点に重点をおいて計画を立ててあるのであります。防波堤の位置がやや偏している、そういう見方もあるかも知れません。併しながらこれはこういうことを考えて頂きたいのであります。大体元から掘込み港でなければならないというふうな想定で位置が選定されたのでありますが、人家が多い所を掘込むということは事実においてできない。ただ早川の右岸に相当の土地を予定している、それを使つてということでありますので、この位置はそういう條件の下にきまつて来るのであります。大体今の委員長のお話になりました点につきましては、これで御了解願えるかと思うのでありますが、なお御質問がありましたらこれに対しましてお答え申上げます。
#4
○委員長(木下辰雄君) 質問は全部の参考人の口述を終つてからお願いしたいと思います。次に山田又市君。
#5
○参考人(山田又市君) 只今鮫島先生からいろいろ有意義なお話を承りましたが、その地元の苦情云々というようなお話がございましたが、私どもは非常に御盡力下さつている先生に対して苦情なんかというふうな意味はございませんでございますが、ただ今までの経験上港の入口の向きが南東に向いているということは、本当に台風の中心が小田原附近を通過する場合に一番困難なときはどうかというと、南東の風なんです。これはこちらの委員会の方方がこの南風が一番猛烈に当るということはすでに御承知のことと存じます。小田原としては南のほうに真鶴平島が出ておりますので、根府川、早川の地点では南のほうの風は或いは南西の風はかなり弱まつて当てる所でありますので、港に対しては南東の風が一番猛烈に当り波もそのときが一番荒いのであります。従いまして今お話の通り、港の中というのは非常に小さいのでありまして、大体港の中は二百平方メートルくらいで、外港は約百平方メートルくらいではないかと思います。それからその途中が五十メートル平方近所ではないかと思うのでありますが、そういうふうな所でありまするから、南東から波を送られますと一気にこの波が港の中へそのまま割込んで来て狹い港は非常に波立つてしまつて、避難している船は非常に困難を感ずるだろう。これはもつと南のほうに口を振り向けているならばこの風は相当よけられるのではないか。波もよけられるのではないか。防波堤自体としては非常に困難になるかも知れませんでございますけれども、それが一番いいんではないかというふうに考えております。まあ我々そういう点について非常に心配をしておりますので、できるならばそういうふうにお願いしたほうがいいんではあるまいか、こういうふうに考えておりますので、大体の要領だけ申上げておきます。細かいことは又御質問があればお話を申上げたいと思います。
#6
○委員長(木下辰雄君) 次に石黒平三君。
#7
○参考人(石黒平三君) このたびの小田原の漁港修築に当りまして、小田原の漁民を代表しまして、各先生がたや関係者のかたのお骨折りということに深く感謝しておるものであります。只今山田さんのおつしやつた通り、私もこの港内に何ら異存はないのでありますが、長年の経験から行きますと、やはり東口より南口のほうが、いいんじやないか。というのは今山田さんのおつしやつた通り、南向きにいたしますれば、真鶴岬或いは片浦の山を背負つて、最も小田原地方に時化の多い南時化や何かに避難するのに容易であるという條件と、そしてこの「いなさ」の台風になりますと、皆様の御存じの通りもう雨量も相当の雨量になるのでありまして、そして箱根山のあれから落ちる急流ですね、台風が来てものの二十分とたたないうちに急流が出てしまう、それで波と鬪つてしまうのですね、丁度この東港内の二百メーターか三百メーターぐらいの全面で波と鬪つちやう。そこでアイオン台風、キテイ台風の経験から行きましても高潮は西へ西へと流れるのでありまして、非常にこの港口が何と言いましようか二日と見られないような状況に波がなつてしまう。それでその波が東口から入つて行つた場合にはですね、こんな小さい港では、港に入つて折角避難した船に相当の破損があるんじやないか、こうも考えられるのであります。のみならず我々地方の漁船はですね、無線もなければラジオの設備もない船でありまして、一番この南時化というのは時化が早いのでありまして、そして時化に入る場合には南時化のときのほうが多いんじやないかと思うのであります。南時化のときに入るのにはどうしても南のほうの口があいていたほうが便利じやないか。かように考えるのでありまして、まあ南向きを主張したいのでありますが、でき得ますれば南向きに変更して頂ければ誠に仕合せだ、かように考えております。
#8
○委員長(木下辰雄君) 次は加藤愛之助君。
#9
○参考人(加藤愛之助君) 私は、今現在の築港をやつておる地元の一人でありますが、今までの時化の経験した結果は南時化ならば防波堤を壊すようなことは余り見ませんでした。東風のときには防波堤すべてを壊されたことがありますので、それと同時に今石黒さんの話した通りに、早川としては、この港にすぐ早川が接しております、そして非常な雨量が出ますので、そうした場合にはどういう結果を生ずるか、我々素人の考えでありますがもう少し南の防波堤を短かくして、そうして東の防波堤なるものを長くしたらどうかというように考えるのであります。
#10
○委員長(木下辰雄君) 参考人の御意見もありましたが、何か御質問ありませんか。
#11
○秋山俊一郎君 先ほど委員長からお話がありましたように、先月委員長と共に小田原の漁港修築の状況を拜見いたしました。只今地方のかたがたからお述べになりましたように、丁度私ども参りました際に、この防波堤と申しますか港の入口の向きについて非常に地元の人たちが心配をしておられたのであります。それは只今お述べになつたと同じ理由であり同じ事柄なのであります。私どもはいきなりあそこに参りまして、経験を持つたものでもありませんしただお話を聞いて判断するはかなかつたのでありますが、この港の修築、そのもとの計画をされました鮫島博士はその道の権威者でありまして、かような港を初めて造るわけでも勿論ありませんし、長年の経験によつてこの設計はできておるものと承知いたしております。併しながら又地元の人たちは相先から住みついておりまして、その土地に起つた風水害、或いは波の損害といつたようなものは実際体験をしておる人たちであります。そうして一方、科学的に、或いは物理的にいろいろ研究されて設計されたことと、それから長年その土地で接して体験せられた実際とが、そこにどうも食い違いがあるということによつて私どもちよつと判断に苦しんだのであります。組合その他市場の幹部のかたがたのお話は今お話の通りでありましたが、更に長年あそこで船を扱つております本当の漁師の人も来て頂きまして、そうしてそれらのかたの意見も聞いたのであります。いずれも異口同音に東に向いた口は台風時において困るのである、一番の被害の多いのは、台風時であるので、そのときにこの港の安全が期せられないということになると、この港は非常に不安の中に始終さらされて来る。これを南のほうに口を向けるならば、平時の多少の風波は数は多いかも知れないけれども、大きな被害をもたらすような時化にはならないからして、何とかして出入口の方向を変えることはできないだろうか、こういうふうな御意見があつたのであります。
 そこで我々といたしましては、先ほど申しましたように実際の見方と又その道の権威者の考え方と食い違いがあるべきはずのものではない、そういう実際に一つの事柄が必ず二通りも三通りもあるものじやない、一つなんですが、一体どつちにすればいいか、こういう点から今後一つそれは十分関係者の御意見も伺つて研究してみようじやないかということから、本日皆さんのお集まりを願つたわけでありますが、ここで鮫島博士に私がお伺いしたいのは、この設計図にございますように、風向、風力等についての調査もございますが、これを拜見しますと余り長い間の調査ではないかのように思います。即ち昭和二十二年の一月から二十四年の六月までの二年五カ月間の実態をここに表わしておるのであります。今私が申上げましたこと及び地元のかたがたの申されましたことにつきまして、鮫島博士は前以てそういうことを十分御考慮に入れて調査設計されたのであるか、又そういう意見に対してはあえて皆の心配しておるほどの懸念がない、その理由がどうであるかといつたようなことを一つお話を願いたいと思います。
#12
○参考人(鮫島茂君) 所信を述べます。実はこの港の入口の波の強いことは当初から予想しておるところであります。それで大しけのときにこの港に出入りをする、つまり避難港としての性質を帶びさせることになりますと相当に大掛りな計画で始めなければならん、それは小田原の天然の素質が全く向かないところである。小田原にかかりましたときの條件はあれだけの漁獲高でありながら何らの船溜も持たない、目下の急務を救いたいということでかかつたのであります。それでそのくらいならばいわゆる経済圏内でやれるということでスタートしたわけでございます。将来小田原がますます繁栄をして漁獲高も大きくなり、且つその経済力ができた曉におきましていわゆる避難港的な性質をあとで添加するということはそれは可能でありましよう。併し今のいろいろな情勢から言つて、大しけのときにまで出入りしなければならんということを考えるのは余ほど無理じやなかろうかという私は考えを持つのであります。幸いに附近に真鶴という天然のいわゆる避難港的の港もあります。現に今日でもいわゆるこういうときには真鶴あたりに逃げ込んでおられると思うのでありますが、それで口は別に東に向いておるという次第じやないのでありまして、先刻も申しましたように懐が非常に狹いのですから、一重の囲いじや到底あの大波は受け切れない、相当に船に被害を及ぼすので、口を二段に絞つておるわけでございます。どちらの方向から入つてもよろしいが先ずいわゆる外港といいますか海の中の第一段の港で相当波の勢力を殺いで、そこで船の舵を少し取直して奧の狹い口から奧に入つてもらう。そういうふうに考えるのでありましてこれも今非常に言われましたような非常に台風のときにまでそれで入れるということは私は申しません。それは又初めからそういうことは考えておらないのであります。そういうときには真鶴かどこかの附近のもつと入りいい港に入るべきである、そのときまでこの狹い小田原の漁港に避難をしなければならんというのは、少々今の段階で無理じやないかという考えを持つのであります。
#13
○秋山俊一郎君 今一度お尋ねいたしますが、私どもの憂えておりますのはそういう台風のとき船が出入りをするという意味ではなくて、この港の口は東から南へ振つておるように思います。東南とまでは行かんと思いますが少し南に振つておるのですが、中の防波堤に波を受けると申しますか、或いは、内港の防波堤にしましてもやはりこの現在計画されております入口から打込んで来るところの波は、やつぱり中の港の口にも入るような恰好に見えるのであります。従つて勿論小さい港でありますし、しけになればここに出入りすることは私どもも困難だ、併しながら中に入つている船が大きな港で広い範囲に錨を打つておるというのではなくて、一ぱい岸壁にくつ着いておる状態を想像いたしましたときに、従来の各地に起つた災害が、港の中でめちやめちやに船がぶつかつて壊れるという例は非常に多いのであります。そういうところからこの船の出入りということでなしに中におる船がその波のために大きな波が丁度入口から打込んで来るために中が非常に荒れる、こういうことを憂えておるわけであります。勿論この附近は何らの天然的湾形をなしておるわけでないので素人が見ましてもここいらに港を造るということは如何に困難かということはよく想像されるのでありますが、折角ここに港を造つてやれやれと思つて船がここに入つておると、しけのときに入つておりましても非常な不安のうちに一体入つておつてどうすればいいかといつたようなことでは折角の港の効果が非常に薄いのでございます。こういうことを我々心配してお尋ねするわけでありまして、これがしけのときに沖に出ている船が入ろうとするときは恐らく口が変つておつても困難じやないか、そういう場合には適当の港に避難する。ただしけが来そうだということで前以て港へ入れる場合が多いのです。今お話のように船も何もないと言われたけれども、その船が沖にある場合は又沖で三崎なり或いは真鶴なりといつたところへ入る方法もありましようが、どうも模様が悪いからというのでこの頃では気象通報も相当前以てありますから船は成るべく早く帰つて来て中に入つているというときにこのしけで以てがちやがちややられたのでは立つ瀬がないということで、そこで皆さんも御心配になつておるので、口を変へて来ればその大きな波がじかに入つて来ることだけは避けられるのじやないか。今までの各地に起りました被害は、多少のいわゆるしけと申しまする程度のものであればそう大した被害はない。ただ名前のついた台風の場合に非常に烈しい損害が起りまして地元のかたがたとしては勿論のこと国家的にも非常な損害をこうむるのでありますので、そういうところを思い合せまして折角ここにかような港ができるということになれば、そういう点もあらかじめ慎重に考えて対策を立てた上でこれを進める必要があるのじやないか、私はかように考えるわけであります。
 それでこの今お話のように港は小さいのでありますが、この漁獲物の集散の地の利は非常にいい所でありますので、これが安全だということになれば相当ここに出入りする船も多くなるだろうと想像されます。そういう意味合いから私どももあえてこの問題を取上げまして、これはどつちかというと国会の扱うほどの問題じや私はないと思いますけれども、この辺の土地の多年の要望であつて、そうしてここに今始めたときに地元の人たちが非常な不安を持つておるということから特にこれは大いに研究して、台風のときにそういうことのないようにすることの必要があるということからいろいろお尋ねをしておるわけでありますが、この地元の人の言われますのはまあ極く平易に申しますと、三崎のほうから吹いて来る風、従つて三崎のほうから来るところの波が一番激しいのだ、この辺で以て台風の場合には殆んどその風になつちまう、その風はこれでは受けられんこういう御意見なんです。その点についてもう一つ伺いたい。
#14
○参考人(鮫島茂君) お答え申上げます。只今の御質問の趣旨は誠に私どもの平生考えておりますのと全く一致することであります。港で船を割る実例も他に各地に多いのでありまして、私は港の素質の改善ということに極めて熱心に微力を注いでおるところであります。その小田原港のいわゆる台風性につきましてはこれは私は最強度のものであると自分では思つております。十二分に考えた上であります。私は関係しましたものでありまするからして、これは場合によれば他の專門家の意見も徴されまして一つ御検討を頂ければなお結構だと思うのであります。それ故に港の入口の外に、南或いは南東を向いた防波堤で囲わんとするのでありまして、一旦入つた船が靜かな水面で舵を取り直して更に第二の関門に入ると、第二の関門はそれは防波堤で庇護したものであつて、大きな廻り波が第二の関門には入らない。浸入した少しの波は第二の関門の周囲及び奥におきましても波を消す考案を加えてあるのでありまして、最も意を、港内における船の安全に関しましては一番頭を費やした点であります。恐らく安全性におきましては他の港と隔絶した大きなものだと私は思うのであります。
 それから南から入るというお話でありましたが、それは南から今……いやちよつと今のその構造が防波堤がたまたま南のほうから着手しておりますので、如何にも北或いは東から入るかのごとき錯覚に陷つておられるのじやないかと私思うのであります。北側の突堤も勿論やるのでありまして、北側の防波堤をやる場合においては南から入ろうと東から入ろうとこれは随意であります。どこからも入れるのであります。舵の取り方はどちらでもいいのであります。で北のほうのいわゆる早川寄りの防波堤ができたときにおきましては、そのことが明瞭になると思うのでありますが、たまたま今やつておるのが南のほうから出しておるから、如何にも南だけ、南を囲つて東から入るというような感じがすると思うのでありまするが、そういう点一つ地元のかたにもお考えを願いたいと思うのであります。
#15
○委員長(木下辰雄君) 私からちよつとお伺いしますが、地元の非常に古い経験のある業者が言うには、この図において北側の防波堤をもう少し余計出して、南側の防波堤を少し引込めたらどうかというような御意見があつたと思います。先に鮫島博士も非常な台風の場合にはこれではとても凌げないと、こうおつしやいましたが、ここに入つておる船がどのくらいの台風が来るかということは入つておつてはちよつとわかりかねる場合もあると思います。その場合にここから出て廻り路をして行くということは困難だろうと思います。だから私どもは港を作る以上は、港に繋留している船は成るべく安全に繋留し得るという構造が絶対に必要ではないかと、かように考えます。
 それで鮫島博士にお尋ねしますが、北の防波堤をもう少し出して、南の防波堤をこれほど出さずにおいた場合にはどういうふうになりますか。
#16
○参考人(鮫島茂君) それは差支はございません。北を出すことは差支はございませんが、この防波堤というものは非常な費用がかかるので、殊に北からの風が来るという事態ではないのであります。北のほうの防波堤はできるだけその工費節約の面から節約をしたいのであります。南のほうは右から出ておるものは絶対必要なこれは波の防護でありまするが、北からのものは一つの何と申しますか、澪筋を現わすというような軽い意味のものでありまして、北側のほうから相当ひどい波が来るものではありませんので、これに大金を投ずるのは少々勿体ないという考えで北のほうを節約しておるのでありまして、これは出したつていいでしようがつまり工費に対する効果は薄いものである。まあ出してもいい、けれども出さんだつてこれは船の舵の取り方如何で南から入ろうと、東南から入ろうとこれだけの口の広さがあるのですから自由に入れるはずだと私は思うのであります。
#17
○委員長(木下辰雄君) 私が申すのは船の出入りでなくて、大きな波をよけるために北をもう少し出すというのが地元の要求だと思うのであります。それで南のほうは大きな波が来ないからしてこれほど出さなくてもいいのだというふうな指示を受けたのであります。
#18
○参考人(鮫島茂君) それは逆ではないかと思います。北からはそう大きな波が来るということもないと思います。南からは相当の大きな波が来るということは真鶴の被害の例等から考えましても十分想像されることであります。
#19
○委員長(木下辰雄君) 山田君、今の御意見に対してどういう考えですか。
#20
○参考人(山田又市君) 只今防波堤の方角についていろいろお話があつたようであります。それで先ほど私が申上げましたのは、港の入り口が南東を向いておるように思われる、こういうことを申上げましたので、鮫島先生のお話では東若くは北のほうから、北のほうに向いておるようにお話がありましたようでございますが、私はさように考えておりませんのでございます。大体港口が南東に向いておる、こういうふうに私は考えておりますので。それから只今お話中の北側の堤防とおつしやられましたが、これはつまり本当の方位的に言う北という意味合ではなくて、北のほうから出ておる突堤というふうに私は言つて結構だと思うのであります。そういたしますと、台風時におきまして、或いは港へ入るには、それは成ほど東南の場内ですから、南東のほうに口があいておるほうが送り波になりますから入りやすいことはそれは入りやすいと思います。いわゆるこの東南の吹いております時分にこの附近におります小さい船は到底その辺には一そうもいないのであります。それでありますから大きな時化の場合にこの港に入るということについての心配は私はしなくてもよろしいのだと思うのであります。それで一番心配なのは、これはキテイ台風のときにおきましても私のほうでは波が小田原は少し東向きになつておりますが、それでも波が真直ぐに打つておりません。もうひどいときは皆んな波が東南のほうに来てぐつとこういうふうな力で打つて来ておるのです。ですから家がこわれましても真直ぐに陸地のほうに行くのではなくして、こわれた家が皆んな西北のほうへ流れてしまう。そういうふうでありますから若し港の口が南東に向いておりますと、真直ぐにその波がずつと一直線に入つて参ります。それで港の中が非常に掻き廻わされてしまう。要するに、私どもの心配しておりますのは、皆さんの御心配の通り、又鮫島先生のお話の通り港の中にいる船が非常に心配なんです。大体そういう東南時になります前に大体漁師は見当を付けますから、その前に入るものは附近の船は大抵港中に入つてしまう。又網船は揚げてしまうでございましようが、要するに南東の風で真直ぐに送り波で来れば、面積の小さい港でありますから、真直ぐに来た波がもう殆んどたらいの中を掻き廻わされるようになるのじやないか。若しこれがそうではなくて南東のほうの防波堤があるという場合は、一旦ここへ来る波が防波堤にはこたえるのです。その代り港の中は靜かなのじやないか。それですから西南のほうは短かくても南東のほうは成るへく防波堤を長くしたい、こういうふうに私どもは考える。それですから鮫島先生のお話の通り南東のほうを延ばすということは費用は勿論余計かかるのではないかと思うのでございますけれども、とにかくその一番激しい波を受けるほうを防いで頂いたほうがいいのじやなかろうか。南のほうは真鶴半島がずつと出ておりますからよほど波を受けるのに楽なんです。ですから小田原で港がしけのときなどは船を上げて早川の隅に持つて来て皆昔から上げておりますようなわけであります。波なんかも三分の一くらいに小さくなつております。そういう実情だと思います。
#21
○委員長(木下辰雄君) 地元の漁業協同組合長の加藤さんの御意見は如何ですか。
#22
○参考人(加藤愛之助君) 今の北の突堤のほうを私は長く出してもらいたいという意見は、それは早川は非常に水が出ます、その水が出たときは東から来る風であすこで競り合つてしまいます。競り合つた場合には東の要するに口の突堤のほうが十分出ていない場合はいやでも応でも港の中に水が入つて行つてしまう、港の中で揉んでしまうというような考えを私は持つておりますので、是非とも先生の言うように北側の突堤を十分出してもらつて南側のほうを短くするということを考えてもらいたいと思います。
#23
○松浦清一君 鮫島先生からこういうような説明を承わらなかつたのですが、私はこの図面によつて想像するのですが、この南東に向いておる防波堤の入口から入つて来る波は大きいかも知れない、これは私の想像ですから大きいかも知れないと思うのですが、併しこの入口を南に向けますと真正面にぶつかりますね、波は小さいかも知れないけれども南から入つて来る風というものが真正面にぶつかつて来て全体に対する風の影響というものは非常に大きい。南東のほうに向けて入口を作る場合には入つて来る風は非常に大きいかも知れないけれども、中の掘割に対する影響というものは非常に軽い。こういう意味でこういう設計をされたものじやなかろうかと思うのですが、その点如何ですか。
#24
○参考人(鮫島茂君) 今御質問の通りです。この口を保護するのがその外の防波堤の目的であります。そして南は今仕事をしております点において或いは多少の語解をされておる点があるのじやないかと思うのでありまするが、この港は波を防がなければならんと同時に、先刻申しました漂砂を防がなければならんのであります。漂砂がおびただしいものがあるのであります。それがためにこれは南のほうを只今やつておりまして海岸の岸壁にまで取付けているのはそのためであります。漂砂を防ぐためであります。あれをやらなければ港の中に忽ち波と共に躍り込んで来る砂利、或いは砂のために埋沒する懸念が十二分にあるのであります。この点は燒津の漁港と極めて似た條件であります。それから先刻話がいろいろ出ましたが、この港のいわゆる外港におきましてはこれは到底船が風波を凌ぐことができません、この外港の目標はむしろ安全に内港に入るための一つの前提的のものであります。もつぱらいわゆる経済的機能及び船の保護は内部に掘割つた船溜りの中にあるのであります。この一番奥のほうにある小型の船に対して考えておるのでありまして、これぐらい波に対して安全程度の高い港はむしろ少いのではないかと私は自分で思つておるくらいであります。由来防波堤で囲つた海の港は台風の際に非常に弱いのであります。それは台風のとき口は海面が相当に高くなります。異常の潮位になります。波の影響は防波堤で囲つても決して安全とは言えない。上を躍り越えて来る波のために往往にして防波堤で囲つた港の中で船を割るのであります。そういう意味におきましてこの港はいわゆる陸地で以て囲つておるのであります。如何なる波もいわゆるこの入口を通じなければ奥のほうに侵入し得ないのであります。それで入口の防備を二段にして、又その奥のほうにおきまして更に波を受ける装置をいたしまして一番奥のほうには殆んど影響のないような條件を与えておるわけであります。
#25
○松浦清一君 現地のかたがたがおつしやつておりますように防波堤で波を防ぐという意味から考えるというと、今おつしやつたようにいろいろな條件で南東に向いておるより南に向いておるほうがいいと思います。併し南に向けるというとこの堀割りの設計まで全部変えなければならんと思いますが、如何がでしようか。
#26
○参考人(鮫島茂君) その通りであります。この中の口とこの防波堤の位置とは相連関するものであります。それで南東から入りましてもどの方向から船が入りましてもいいのであります。靜かな所で舵を転じまして港の中に入つてもらうという考えであります。
#27
○参考人(山田又市君) 私はこの図面を前から拜見しておりますので、それで私は先ほどのように自分の考えを申上げさして頂いたのでありますが、若し南東である場合は先ほども申上げましたように内港の入口は殆んど一直線になつておるから波が余計に入つて来るのではないでしようか。そして殊に港かもつと非常に大きいものであれば、これは大しけになつたら非常に安全のように思いますけれども、何としても港というには恥かしいように小さいのでありますから、それで南東から一直線に入つて来ると波は揉まれるのではないか。南から入るとか入らないとかいうことはそれほど重きをなさないので、船は舵のとり方次第でどちらでも行けるから差支えないのでございますけれども、要するに入口が南のほうに向いておりますと、丁度内側の防波堤から内に入つて来る路がこういうふうになつております。南東から来る波は真直ぐに入ります。若し南のほうから来ると折曲つて入るから私はいいのではないだろうか。こういうふうに考えておりますので、私どもは却つてそのほうが港の中が靜かになるのではないか、これは現地を踏んで見なければわからないのであります。この図面の上で拜見したところではこういうふうに考えられる。
#28
○委員長(木下辰雄君) ちよつとお尋ねします。一番大しけの場合風はどちらから入りますか。
#29
○参考人(山田又市君) 南東です。どうしても一番細いのど首の所から波が入つて来るのでございますから、勿論鮫島先生のおつしやいますように大きいしけになればこの高さくらいはどんどん越す所が出て来るだろうと思うのです。ですからそれは若しこの程度で持たない場合にはもう少し高くして頂くようなことがどうしてもできるんではないかと思いますが、勿論こういうふうにないよりはあるほうがいいということに当然なることになると思います。
#30
○参考人(石黒平三君) 先ほど鮫島先生のおつしやつた言葉を誠に反駁するようでありますが、どういう御経験をなさつたか、或いはどういう人たちからお聞きになつたか知りませんが、むしろ波は南から来る波が大きいというお言葉でありましたが、私はさように記憶しておりません。南から来る波はやはりこの港で十分避難ができると確信しております。というのはそう波が高くないのであります。小田原の現在ある市場の下あたりで船が避難できなくて、もう気のみ休みといつて早川の西の隅へ行けば一息つくのです。そうして艪の時分にですね、江の浦の所に行けば命は助かるというような実例が多くあつたのであります。そうして一昨年ですか、あのキテイ台風に真鶴の港がやはり北東を向いておる、あそこは、そうしてあの波が行つたために民家に打上げておるのです。そのときに二十トン、三十トンの船が皆波のためにひつくり返つたのです。或いは家の屋根の上までのし上つた実例があるのです。だから私なんかの考えで行きますと波を間口へ抜けて内港で防ぐとはいいながら、こういう狹い口ではなお水道になつて行きはしないか。かように考えるのでありまして、何回も申上げますようですが、南口にして頂ければその波がよけられるのじやないか。かように思うのでありまして、もうしけの最中にはそれはもうああいう所では出入りができないのでありますから、ただ波を防ぐために、我々漁師で言いますとよたですね、ひどいよたがありはしないか、そのよたのために船が潰されるという懸念があるので、我我長年の経験から行きますれば、できますれば南口にして頂きたい、ただこれだけであります。
#31
○委員長(木下辰雄君) 如何でしよう、懇談会に移しましたら……、暫く懇談会に移ります。速記をとめて下さい。
   午前十一時四十四分速記中止
   ―――――・―――――
   午後零時十三分速記開始
#32
○委員長(木下辰雄君) 速記を始めて下さい。委員会を再開いたします。
 詳細に参考人からの御意見の御発表がありましたが、今の御意見の御発表に対して大泉次長の御意見を一つ求めます。
#33
○説明員(大泉幸作君) 小田原漁港は、神奈川県営の第二種漁港としまして、今回の工事は昭和二十四年に着手しましで、大体の見込としましては三十年までに全体の工事費が約三億五千万円という見込みでございます。工事計画につきましては、鮫島博士からいろいろ御説明がありましたように非常に地理的條件が悪いのでございます。果してここに漁港が完成するものかどうか。相当古い計画はあつたのでございますが、厖大な工事費を要するということから延引になつておりましたが、神奈川県としても非常に重要な漁業地であり、京浜地帶に対する近海漁類の供給地であるという点から、どうしても漁港をやらなければならんという気運になりまして、公共事業費を要求したのでありますが、地理的條件が悪い関係で計画は相当愼重に考えなければならんということから、昭和二十四年度には四百万という大体これは調査費を計上いたしたのでございます。その経費を以ちまして神奈川県におきまして実地的の調査をしたのでございます。その結論に基きまして現在の計画ができておるわけでございます。特にこの地理的條件のうちでも海岸の海底の傾斜が非常に急なんでございます。これは富山湾にも藍瓶とかいう急傾斜の所がありますが、日本でもほかに類例を見ないほどの急傾斜の所でございます。従いまして防波堤を外へ出すということは厖大な経費を要するということで、それは到底経済計画が立たないのでございます。どうしても小さい女がらも内へ掘込んだ港を作らなければならんという結論に達しております。なおそういうことで外港は極力出入りするに差支えない小さい面積のもの、防波堤を極く最小限にとどめるという関係から、そういう方法によつて考えたわけでございまして、従いまして港口から内港の口までの距離が非常に短いのでございます。そこに入つて来る波を小さく風を少くするのには、どうしても一番強い波を防がなければならんという考え方から、或る程度漁船の出入というほうは犠牲にしましても波を最も小さいものにするということが第一の点でありまして、そういう思想から実地的調査に基きまして南がかつたほうの波が一番強いという結論に達しまして、そのほうを防ぐために現在の港口ができているわけでございます。現在の計画は、そういう経過をたどつて結論に達したのでございますが、勿論今後の工事を進めると同時に、今後の調査に待つて多少の考慮をしたいということは考えております。
#34
○委員長(木下辰雄君) 私ども委員会といたしましては、漁港問題ということについては最大の関心を払つております。幸い年々経費も予算も殖やしまして、本年度においてはすでに二十四億くらいの全部の作業の予算がとれた。併し年々の工事額によりまして、港内においてたくさんの船が沈沒と申しますか、破壊をする、折角港を作つたために却つて被害が多いというような場所もある。折角我々が予算を協賛して最も関心の多い漁村に対して最大の努力を払つていることについての効果が薄いという結果にも相成つているようなことがあるのであります。で、今回私ども漁港調査に行きました場合に、たまたまこの小田原漁港について設計者と地元漁民との意思が非常に齟齬しているということを感じまして、本委員会に参考人をお呼出しまして今意見を聞いたのでありまするが、只今農林省からの御説明では、調査の結果南の風が一番強いという結論に達してこういうようにしたというようなお話があつたのであります。どういう調査をされたか知りませんけれども、私どもが地元から聞いたのによると南の風は強くない、むしろもう少し北がかつたほうが強いのだというお話を聞いたのであります。それで今日の参考人の御意見を十分一つ御参酌下さいまして、小田原漁港の万全を期するために愼重なる考慮をこの委員会としてはお願いいたしたいと思います。
 参考人に申上げますが、悪天候に際して遠路御来京下さいましたことを厚く御礼を申上げます。
 本日の委員会はこれを以て散会いたします。
   午後零時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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