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1947/10/28 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第50号
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1947/10/28 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第50号

#1
第001回国会 本会議 第50号
昭和二十二年十月二十八日(火曜日)
    午後二時二分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第四十九号
  昭和二十二年十月二十八日(火曜日)
    午後一時開議
 第一 自由討議
    ―――――――――――――
一、自由討議の問題
 臨時農業生産調整法案(内閣提出)について
二、討議者の数及び討議時間
 1、各党派の割当時間
   社会党、民主党、自由党各四十分、國民協同党二十分、第一議員倶楽部、農民党及び共産党を通じて二十分。
 2、各党派は、右割当時間の範囲内において、討議者の数を決定すること。
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松岡駒吉君) 諸般の報告をいたさせます。
    〔参事朗読〕
 昨二十七日委員会に付託された議案は次の通りであります。
 昭和二十二年度一般会計予算補正(第五号)
 昭和二十二年度特別会計予算補正(特第二号)
   以上二件 予算委員会に付託
(内閣提出)補助貨幣損傷等取締法案
(内閣提出)すき入紙製造取締法案
   以上二件 財政及び金融委員会に付託
(内閣提出)罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案
   司法委員会に付託
    ―――――――――――――
#3
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 第一 自由討議

#4
○議長(松岡駒吉君) 臨時農業生産調整案について自由討議の会議を開きます。
    ―――――――――――――
#5
○叶凸君 ただいま自由討議の問題となつております臨時農業生産調整法案について、農林大臣の提案理由の説明を求むるの動議を提出いたします。
#6
○議長(松岡駒吉君) 叶君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 この際農林大臣より、臨時農業生産調整法案について提案理由の説明を求めます。農林大臣平野力三君。
    〔國務大臣平野力三君登壇〕
#8
○國務大臣(平野力三君) 臨時農業生産調整法に関しましては、すでに委員会におきましてその大綱の説明をいたしておるのでありますが、本日特に自由討議の議題となりましたこの際におきまして、若干臨時農業生産調整法に関して從來理解を願つておらない点及び特に強調をいたすべき点等を申し上げまして、本日自由討議に関する御参考に願いたいと思うのであります。
 現下の食糧事情がきわめて重大であり、かつこの食糧問題の解決のためには、輸入食糧懇請のためより、日本の國内における供出制度に対して多大なる関心を拂わなければならないことは、私が申し上げるまでもないのであります。この臨時農業生産調整法は、まずこの点におきまして、供出制度に関する一つの改革を断行せんとするものであります。具体的に申し上げますると、從來の割当制度が、收獲が終つてから割り当てる制度でありましたのを、まず事前割当を断行する。次には、割当をいたしまする上において、農家が増産すればするほど割当が多くかかるというこの弊を改め、責任供出制度というものを実行いたすことにいたしましたのが、本案のまず第一のねらいであります。
 すなわち、若干の御説明をいたしますならば、從來の供出制度のもとにおいては、正確なる基礎数字に基いて合理的な割当を行いまするということは相当困難であります。これを改善いたしますためには、政府は統計調査組織の準備を行つておりまするけれども、これのみをもつていたしましては、とうてい完全を期するはできないのであります。むしろさかのぼつて、農家の耕地面積、地力、作付反別等の実績等に基きまして、あらかじめ生産及び供出の割当を行つておきますると同時に、他面においては、供出割当の正確公正を期することをはかりまするのが、大体本案のねらいであります。
 第二には、從來のいわゆる実收量制が、農家の生産意欲を低調ならしめておるということは、おおうことのできない事実でありますので、これを改めて、作付前に生産計画と供出数量を定めて、農家の供出に対する責任を明確にすると同時に、その努力によつて増産をいたしました部分については、農家の自由処分を認め、もつて生産意欲の高揚を期せんとするのでございます。すなわち、実收高が生産予定数量を超えましても、あらかじめ定められた供出数量を供出してしまえば、あとその処分は農家の自由であります。政府は追加割当をいたさないことにいたしておるのであります。
 もつとも、ここに明確に申し上げたいと思いますることは、自由処分とは申しても、賣却をいたしまするその相手方は政府に限るのであります。これは從來の供出制度に関しまして、今回の臨時農業生産調整法が、農家の希望を十分満足することはできないといえども、一方農家の生産意欲を増大する点については、相当に考慮の拂われておる点として御了解を願いたいのであります。その超過賣渡の部分については、報奬金あるいは報奬物資等によつて、特別の扱いをするところの制度を設けておるのであります。この点に関しましては、本案の逐條的なる内容に関しましてよく御檢討を願いたいと思うのであります。
 次にこの制度は、農業生産の重点を主要食糧において、これを確保せんとするのであります。戰時中ややもいたしますると、食糧といえば何でもかんでもこれを混淆いたしまして、その限界がはなはだ不明瞭であつたのでありますが、今回のこの生産調整法におきましては、これらの点を明確にいたしまして、適地適作の原則に則り、地力の回復をはかる方向において食糧生産の一歩々々の増大を企図いたしておるのであります。
 以上申し述べました根本方針に基いて新たなる制度を実施いたすにあたりましては、ただかような制度を漫然制度としておくということでありましては、いろいろ誤解を受け、またこれが運用上におきまして十分を期することができないのでありまして、今回特にこれを法律をもつて制定することとなし、その名称を臨時農業生産調整法といたした次第でありますので、この点、御了解を願いたいと思います。
 以下、本法案の内容につきまして、その重要な点を簡單に御説明いたします。
 まず第一に、先ほど申しましたように、農業生産の割当制を実施し、同時に事前に供出の割当をするのであります。すなわち、米・麦・甘藷・馬鈴薯等について、あらかじめこれらの作付面積、生産予定数量、供出数量及び肥料の配給量を割り当てるのであります。これを農業計画と呼んでおりますが、この割当の方法は、農林大臣が中央農業調整委員会の意見を聽き、とくと知事と協議いたしまして、都道府縣別に計画を定めて、これを知事に指示するのであります。知事はその指示に從いまして、市町村別に農業計画を定めます。しかして市町村長は、知事の指示に從つて農家別に農業計画を定めて指示するのであります。しかして、知事が市町村別計画を定める場合におきましては、あらかじめ都道府縣農業調整委員会の議決を経ることを要すると規定いたしておるのであります。市町村長が農家に指示いたしまするのには、あらかじめ市町村農業調整委員会の議決を経ることを必要といたしておるのであります。かくのごとき組織と方法によりまして、割当は各府縣間に、市町村間に、並びに各農家の間に公正と明朗を期することができると思います。農家別の農業計画はこれを公表し、農家に異議の申立の機会を與えておるのでありまして、この点におきましては、農家の納得のいく供出を行つていくことができると信じております。
 第二に、以上のようにいたしまして、あらかじめ生産と供出との責任数量を明確にするのでありますから、肥料はその生産の計画と結びつけて割当を行うことにいたしております。肥料以外の農業用資材につきましても、可及的に生産計画を斟酌して配給することといたしておるのであります。
 第三に、農家において計画以上の増産をあげ得た場合には自由処分を認めることは先刻申し上げましたが、反対に、災害その他やむを得ない理由で減産を來しました場合におきましては、農家は供出数量の減少方を市町村長に対して請求することができることになつておるのであります。
 以上の事柄のほか、重要農産物の生産を確保するために特に必要がありますならば、ある種の不急作物、たとえば、さとうきびのごときものの作付を制限するために、知事はその作付について市町村農業調整委員会の承認を受けさせることができることになつております。また市町村農業調整委員会は、必要があれば病虫害の駆除、予防、水利の調整、農業施設の共同利用等について、農家に対し必要な指示をなし得るところの規定を設けておるのであります。
 さて、右の農業計画その他の指示に関しましては罰則の規定が設けられておるのでありますが、このことは、かなり農家にとつて問題ではありましようが、しかし、これは計画の指示に從わない農家があつて、眞にその農家がはなはだしく統制を乱す場合においてのみ適用するのであつて、農業生産調整委員会の申請がなければ、これは発動しないことになつておるのであります。從いまして、特に惡質であるという場合においてのみ適用されるのでありまして、この点に関しましては、特に御了解を得たいと思います。
 最後に、以上のような趣意に基くものでありまして、その実施機関が民主的な、農民自身のものでなければ、農民の責任においてするところの眞の効果をあげることは困難でありますから、市町村及び都道府縣に農業調整委員会を設置し、その委員は農民の間から公選することといたしまして、いわゆる選挙によつておるのであります。また学識経驗者等を若干参加させるところの制度をとつておりますることも御了解願いたいと思います。
 以上のごとく、この制度は、責任供出制の確立によつて農家の食糧増産に対する努力に期待するとともに、現在の國家の必要とする供出に対しては、農家に明朗なる氣分をもつて協力をいたしてもらいたいと考えておるのであります。現に多量の食糧不足を輸入の懇請に仰ぎまする点におきましては幾多の困難があるのでありまするが、現在の日本の農民諸君といたしましては、この程度の農業生産調整法の規定に從つてその責任供出制を断行してもらうことこそ、輸入食糧の懇請に成功し、日本民族の食糧を賄うものなりと確信するのであります。この制度は、農民のこの良識をよく利用いたしまして、政府は一般國民とともに、農民のこの負担に対して報ゆるだけの農家必需物資等の供給をいたしますることは当然でありまするが、まず現段階におきまして、かような制度をもつことによつて食糧と供出の問題を片づけんとするのが、現在の臨時農業生産調整法であります。
 なおこの法案は、上に臨時と加えておりまするような次第でありまして、昭和二十四年三月までを本法案の有効期間として、もしこの期間に到達いたしましたならば、あらためて本法案は國会において御審議を願い、これを存続するか否かということを決定することになつております。時下の食糧問題の重要性に鑑みまして、本法案に対して十分な自由討議が行われんことを懇望する次第であります。以上であります。
#9
○議長(松岡駒吉君) 安平鹿一君、発言者の指名を願います。
#10
○安平鹿一君 日本社会党といたしましては、八百板正君を指名いたします。
#11
○議長(松岡駒吉君) 八百板正君、発言を許します。
    〔八百板正君登壇〕
#12
○八百板正君 私は、ここに臨時農業生産調整法について、所見の一端を申し述べたいと存ずるものであります。
 この法律は、その第一條、第二條において、ただいま大臣よりも述べられましたごとく、目的及びその内容を述べてあるのであります。すなわち第一條に、「この法律は、重要な農産物の生産及び供出を確保するため、公正且つ計画的に農業生産の調整を行うことを目的とする。」と定めてあるのであります。これによれば、本法のねらいとするところは、重要農産物――米・麦・芋・大豆などの計画生産と主食供出の確保にあることは明らかであります。
 この法律案がなぜ提出される必要が生じたかといえば、それは從来の無計画な農業生産の弊害及び供出制度のもつ多くの欠陷を、これによつて取除きたいという点にあとことは明らかであります。実際米麦の生産がどれほど今日必要であるといたしましても、現実に公定値で供出させられては引合わないと農民が考え、それよりももつと率のよい、この五層倍も十層倍も高く賣れる、收入の多い、たとえば果物とか、すいかとか、野菜をつくつた方が得だということになりまするならば、農民はこれにはしり、せつかくの肥料やその他重要資材が、この不急作物の方に流れていくというようなことが、現に事実において起つておるのであります。このような無計画から來る弊害、主食の生産低下が、この法律の施行によつて除去せらるることは期待せられるところであります。すなわち第二條では、この農業の計画生産の内容を示して、「この法律において、農業計画とは、農産物の作付面積、生産数量若しくは供出数量又はその生産に必要な肥料その他の資材で命令で定めるものの配給数量について行政廳の定める計画をいう。」とあるのであります。すなわち計画的な供出をさせるために農民に生産割当命令を出して責任をもたせる一方、この生産に必要なる農業用資材、すなわち肥料その他の配給計画を政府が立て、併せて実行するというのであります。
 私は、今日農業の計画的生産が必要であるという意味において、本法のめざした方針の大体を機宜を得たるものといたして、是認いたしたいと存ずるものであります。しかしながら私は、さればこそ、またここに特に本法案のもつきわめて重大なる欠陷を率直に指摘しなければならないと存ずるのであります。
 第一、從來の供出制度のもつ大きな欠陷といわれたところの杜撰なる面積統計、隠れ反別などに対する基本的な解決なくして、すなわち、耕作面積の確定、地形、地力等々の実態調査なくして、一体何を基礎にして科学的生産計画を樹立しようとするのであるか、幽霊人口、幽霊土地を放任したまま、一体いかにして言うところの公正かつ計画的なる農業生産の調整を期し得るのであるか。
 第二に、この農業計画の内容をなすものは、食糧の計画生産に裏づけをなすところの農機具、肥料等の配給計画であるのでありまするが、実際問題として、肥料がはたして計画のごとくまわつておるか、また計画に乘せられるところの肥料が、現実に必要なる時期に農家の庭先に届けられておるかどうか、疑問なきを得ないのであります。本日の新聞報道は、すでに計画肥料の不足を報じておるのであります。また今農機具のために必要なる鉄は三万トンを要するといわれておるのでありまするが、現に二千トンもあぶないという実情でありまして、先ほど大臣がこれらの点について可及的という言葉をもちいられたことは、このことを示すものではなかろうかと思うのであります。はたしてこの裏づけの計画は、農民に対してこの農業生産の遂行を求めるがごとく、政府の責任において遂行可能であるかどうかということを見なければならないと思うのであります。
 さらに第三点といたしまして、本法案には農家保有米に対する確保の規定がないのであります。保有米こそは、農業再生産上必須の要件でなければなりません。これらを不明のままに残すということは、米を出させるという面にのみとらわれた、一方的な考え方といわなければならないと思うのであります。
 次に問題となることは、農業調整委員会の委員の選任方式に関する点であります。選挙による委員のほかに、委員の定数の四分の一を市町村長が選任することができると規定したのでありますが、一体これはいかなる結果を招くものでありましようか。農村民主化の基本的処置として、さきに農地調整法が布かれ、現にこの農地改革が進行中であることは、われわれのひとしく承知いたしておるところであります。そうしてこの農地改革は、選挙せられた小作人五、自作者二、地主三の各層代表農地委員と、町村長推薦のおおむね三名の中立委員によつて構成されるところの農地委員会の運営に任せられるのでありまするが、この町村長推薦の中立委員が反動勢力と結合し、いかに農地改革を阻む要素となつているかということは、一たび足を農村に踏み入れる者のひとしく感ずるところの事実であります。從來供出制度は、末端割当においてゆがめられ、村の顔役、部落の顔役の左右するところとなり、不公平が行われてきたのであるが、本法案の農業調整委員定数の四分の一の町村長推薦いう條項は、この反動的傾向に輪をかける危險ありといわなければならないのであります。さらにまた、行政官應の立てる計画の天降り、機械的傾向の危惧があるのであります。しかも、農業調整委員会の性格が諮問機関であるという点に思いをいたしまするとき、はたして実情に即した適地適作生産割当が行われるや否や、まことに疑問なきを得ないのであります。
 さらに重大なことは、罰則の適用が農民にだけ加えられておるという点であります。しかも、罰則を考えるだけで、責任生産を上まわる増産の精農の努力と結果については、これに報いる途が、先ほどの大臣の御説明によつては不十分といわなければならないのであります。さきにも述べました通り、第二條に定められた農業計画の内容は、農民に対する作付命令であり、供出命令であるのでありまするが、これと同時に、必要なる肥料、農機具等農業資材の計画配給であります。この農業用資材として、たとえば、今次米價決定の際に政府の取上げたところのパリテイ計算方式の基礎七十余品目のうち、いくばくの指定をせられるのであるか、私はこれを知る由もないのでありまするが、しかし、この農民に対する生産と供出の割当命令を決定したとき、同時に農業資材を確実に、しかも遅滯なく計画的に配給する義務を政府が負うものであります。すなわち、このとき農民は生産と供出の責任を負い、政府は資材のマル公による計画配給の責任を負うものであり、これは双方の相関的義務であり、國家連帶性責任の発生といわなければならないのであります。しかるに、この責任の不履行に対しては、法案第二十七條において、ひとり農民に厳しく、三年以下の懲役、一万円以下の罰金をもつて臨むということを規定しながら、一方資材配給不履行に対しては、何らこの責任を追究する規定を用意してはいないのであります。(「その通り」拍手)資材の計画的配給に遅滯ある場合、その責任は追究せられないでよろしいのでありましようか。私はこの考え方の中に、封建時代百姓に対して斬捨御免的態度をもつて臨んだ惡代官的思想がなお尾を引いてかすかに流れているのではないかということを思うのであります。
 農民は、今日の日本の産業の生産と食糧の事態がわれわれ農民に何を要求しておるのかを十分知つておるのであります。農民はその責任を果したいと考えておるのであります。だが百姓は、自分でつくつた米を動かせば食糧管理法違反で処罰せられる。肥料も農具ももらえないで、指先をすりへらしてやつとつくつた米は、今まではただ値のような安値で供出させられておつた。怠れば強権発動で縛られる。今またこの法律は、下手をすれば戰時作付統制令の焼直しとなり、あれをつくれ、これを出せと命令され、違反すれば三年の懲役だとおどかされようとしているのであります。一体日本の産業の中で、つくらなければ縛られる、つくつたものを動かせば縛られる、つくつたものを出さぬと縛られるというような、三重の罰則で強要されるという体裁をとつた産業がほかにあるでありましようか。
 この農業生産調整法こそは、日本産業の上に重大な一石を投げんとするものであります。すなわち、生産責任制の樹立を提唱採用したものと考えたいのであります。私はしばらくこれを是認したい。しかし、生産の責任制はひとり農民にのみ課せられてよいのであるか。國民は法のもとに平等であつて、差別されてはならないという憲法十四條の條章は、法もまた特定の農民にのみ特定の法律が制定されてはならないことを定めたものと私は思うのであります。農民に生産の責任が公のものとして課せられるならば、全産業の労働者もその責任をとらなければならない。全日本の勤労者、全日本の企業家、資本家のひとしく背負うべき日本再建の責務であろうと思うのであります。(拍手)役人もまた、その責任を果さなかつた責をまつ先にとらなければならない。(拍手)それは農民とともに負うものでなければならないと信ずるのであります。
    〔「その通り」と呼び、その他発言する者あり〕
#13
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#14
○八百板正君(続) はたしてこの構想のもとに、責任生産体制確立の一環として取上げられたものであるかどうか。私はこれを怪しむものである。
 最後に、本法は臨時的のものであるとして、附則に昭和二十四年三月三十一日にその効力を失うと定めてあります。いかに臨時とは申せ、これではたつた一年ではないか。農業計画がたつた一年で軌道に乗り、効果をあげ得ると思う人があつたら、私は農業を知らないにもほどがあると申し上げたいのであります。なるほど、作物は植え付けて一年のうちに実るかもしれない。しかし、いかに無計画な百姓であつても、その年の農業をやるのには、すでにその前の年に耕地や種子、肥料の段取りをしなければできないぐらいのことは、だれにもおわかりと思うのであります。麦まきの肥料がまきつけの間際に來るようでは、満足な百姓はできないのであります。化学肥料は前年分から計画され、予定された堆肥やその他自給肥料とにらみ合わせ、按分して使われるというのが農家の実情であります。百姓の生産は、少くも二年にまたがり、結果を見て次の計画に織りこむためには、最低三年を見なければならないものであります。私は、本法の目的たる重要農産物の生産及び供出の確保のための農業計画の実をあげるためには、一年をもつては断じて達成できないことを強調いたしたいと思うのであります。
 以上、本案の目的達成のため併せて考慮されるべき重要なる数点を指摘した次第であります。(拍手)
#15
○議長(松岡駒吉君) 坪川信三君、発言者を指名願います。
#16
○坪川信三君 民主党は、ます村瀬宣親君を指名いたします。
#17
○議長(松岡駒吉君) 村瀬宣親君、発言を許します。
    〔村瀬宣親君登壇〕
#18
○村瀬宣親君 ただいま、臨時農業生産調整法に対する平野農林大臣からの提案理由の説明を承りますると、農業生産と供出とを計画的に連繋せしめ、もつて主要食糧の供出制度を改善するために立案されたというのでありまするが、本法案は一言にしてこれを評するならば、孟子のいわゆる「民を罔する」の方策にひとしいと断ぜざるを得ないのであります。(「その通り」拍手)何となれば、産業全般にわたる総合的、有機的な計画をもたずして、單に農業生産及び供出に関してのみこれを法律化し、これをもつて農民を律せんとするがごときは、まさに陷し穴を設けて農民を陷しこまんとするものであります。(拍手)
 私は、供出の事前割当に対しましては賛成をするものでありまするけれども、まず、この二十九條よりなる本法案の各條項を檢討するに先だち、かかる法律をつくつて耕作農民を律せんとする根本理念につき、深く掘り下げて檢討する必要をまず痛感いたすのであります。
 本法案の底を流れる農民観ともいうべき思想を檢討するに最もよき事例は、最近の米價決定に対してとつた当局の態度であります。政府は、農民團体の意見にさらに耳をかさざりしのみならず、國会の意見をも徴することなく、パリテイ・システムを金科玉條として千七百円を決定いたしました。これに対し去る二十三日、農林常任委員会において、和田経済安定本部長官と各委員との間に次のごとき質疑應答が交されたのであります。
 すなわち、今回政府が決定した六十二倍半という指数をかりに承認するとしても、農民は年にただ一度の米の販賣によつて翌年度の米の再生産と生計を営んでいかねばならないのであるが、もし來年の十一月までに物價が上つて農業再生産が困難になつたとき、政府は農民に對しいかなる償いをなさんとするのであるかとの質問に對し、和田長官は、米の供出は一年間ずるずる続くものではなく、二月までに全部完了してもらうことになつているから、その後は政府が買い入れた米を消費者價格で売つていくだけである、すべて物價は過去にさかのぼつてひつくり返していくことは、どんな場合にもできないと、きわめて冷淡な答弁をしているのであります。
 しかしながらわが國の農民は、昔から二月までに米を全部賣らねばならぬというおきては未だかつてなかつたのであります。事実健全なる農民は、久しきにわたつて米の平均賣をしてきたのであります。しかるに和田長官は、農民は一年中ずるずる供出するのではなくて、二月までに供出は全部終るのであるから、その後農業用必需物資が値上りしても、過去にさかのぼつて價格を改訂することはできないと、うそぶいているのでありますが、一年中ずるずる供出して差支えないものならば、百姓はそうするのであります。みずから強権を振りかざして、二月までに米を農民の手から取り上げておきながら、それを盾にとつて、供出完了以後のことは知らないと放言してはばからぬ和田長官の心中には、今なお農民を農奴のごとく考えているとしか思えないのであります。かくのごとき農民観を有する和田博雄君が経済安定本部に蟠居する限り、本法の実施はいたずらに無慈悲なる苛斂誅求と搾取とに法的根拠を與え、善良なる農民は格子なき牢獄につながるることと相なるのであります。
 片山総理大臣は、二十三日の新聞紙上において、新米價の決定にあたり政府が特に苦心した点は、農業経営に必要な物資の價格の値上りと同じ比率の値上りを新米價に見込むとともに、農業の再生産に必要な費用を確保するに努めたと声明しておりますが、少くとも片山首相のこの言葉が誤りでないためには、來年の米をつくり上げてしまうまで、パリテイ計算の基礎となつた諸物資は、その計算に用いた價格で必要数量が適当なる時期に農民の手にはいることを前提としなければなりません。
 すなわち、タバコはきんし十本二円五十銭、醤油は一升十九円三十銭、作業服三百三十九円、地下たび六十九円五十銭、煮干百匁二十一円八十三銭というような数字の基礎に立つて今回のパリテイ計算がなされたのでありまするから、今後一年間、農民はこの價格で少くとも七十一品目は所要量を入手できる場合に限り千七百円という米價は承認せられるのであります。しかしながら、たとえばタバコでも、煮干でも、この價格ではやがて入手できなくなることは、諸君御承知の通りであります。
 政府の採用したパリテイ算定についての矛盾は、なおいろいろ指摘することができます。たとえば今春の麦・馬鈴薯の價格決定の際には、肥料としての石灰の基準價格はトン当り十九円九十五銭となつておりまするが、今回の米價決定の際には、これを二十三円七十八銭としているのであります。いずれも昭和九年、十年、十一年の平均價格でありながら、かくも金額の異なるのは、米と麦と二つのうち、いずれかは誤つた基礎の上に計算せられたこととなるのであります。またウエートのとり方についても、麦と米の場合において、一定の根拠が定まつていないのであります。殊に麦・馬鈴薯の場合は、パリテイ計算の指数を四十八倍と決定し、これによつてすでに代金も決済済みでありまするが、來年の麦・馬鈴薯は、現在六十二倍半に騰貴した諸材料を使つてこれから生産しなければならないのであります。少くとも麦・馬鈴薯の價格は、今となつては、片山首相の言明された再生産に必要な費用を確保したことにはならなかつたのであります。これは來年の米を生産するにも再びこれと同じ結果にならないと、だれが保証できましようか。
 政府は農民に対し、口を開けば公價配給を呼号し、あたかも特殊の慈悲や恩恵を農民に施すがごとき口吻をもつて、配給を盾に供出の完遂を強要するのでありまするが、元來全國民の生命をつなぐ主要食糧の生産には、國をあげて所要物資のすべてを注ぎこまねばならぬことは当然であります。しかるに、政府の農民に対する配給物資の取扱いぶりを見ますると、ちようど昔支那の書物に、猿の群に栗の実を與えんとして、朝に三箇、夕に四箇やろうと言うと、猿公は騒然として騒ぎ立てたが、それでは朝に四箇、夕に三箇やろうと言うと、猿公は喜々として承服した、これを朝三暮四と言うとありますが、まさに政府の農民に約束せんとする配給物資は、この朝三暮四と一脈相通ずるものがあると存ずるのであります。現代の政治家が、今日の農民を御するの途は、いまなお支那の猿公を懐柔するがごときものと考えているならば、やがて農民の恨みを買うに至るのみならず、政治と國民とはここより遊離し、農村民主化の不幸これより大なるはなしと存ずるのであります。
 およそ農業は、天を相手とし、悠久なる天地の間にわれを沒入して行うものであります。農作物を見ることわが子を育てるがごとく、労働基準法の実施にもかかわりなく、朝露をかきわけて草を刈り、星をいただいて家に帰り、ただ勤労を生涯の使命として死ぬるまで働き続けるのであります。これは工場内の機械工業や都市商業形態とは根本的に趣きを異にするのであります。土地と家と農民との融合によつて独特の農業形態を形づくつてきたわが國では、ソ連式農村監督制度やドイツ式官僚統制組織で農民を制御せんとすれば、農民の生命とする自由と自尊心を奪い去ることとなり、自由の田園は束縛と荒廃の中に枯れ果ててしまうでありましよう。もし臨時農業生産調整法がこのまま実施せられるといたしまするならば、ようやく地主から解放せられた農民の前に、突如として官僚という恐ろしい地主が立ち現われ、七公三民のおきてに苦しんだ徳川時代の農民が再び現出するでありましよう。生きた農民の國家管理案ともいうべきこの法案には、農民の名において反対せざるを得ないのであります。(拍手)
 さてしからば、農業生産を増強し、供出制度を改善するには、いかにすればよいかと言いますれば、まず本法実施の場合に要する経費と言われておりまする十億円のうち、五億円をもつて廣く農業技術員を優遇向上せしめ、残りの五億円をもつて法律によらざる民主的事前割当を行うことであります。但し事前割当は、徳川時代からの古き歴史を有する日本の田畑のいわゆる年貢米の高を超えてはならないと存ずるのであります。
 以上をもつて、自由討議としての私の所論を終わりますが、最後に強く論じておきたいことは、およそ四百六十余名のわれわれ議員を納得せしめ得ずして、いかでか四千万耕作農民を納得せしめることができましようか。(拍手)われわれは、國力充実の一日も早からんことを念願するのあまり、今年の米の供出もまた速やかに完了してもらうよう全國農民に呼びかけたいと思うのでありまするが、それにつけても、米價決定の基礎と経過とは農民の前に最も明確にしなければなりません。このゆえに、さき私が指摘いたしましたパリテイ計算に対する疑義と、この計算の基礎となつた諸物資の騰貴のため及び必需物資が需要量に足らないために農業再生産に支障を來すに至つた場合農民に対し政府のとらんとする施策を明確にせられるよう、なるべく早き機会に和田経済安定本部長官、片山内閣総理大臣その他関係当局の御所見を承りたいと存ずるのであります。(拍手)
#19
○議長(松岡駒吉君) 小澤佐重喜君、発言者を指名願います。
#20
○小澤佐重喜君 日本自由党では、まず岩本信行君を指名いたします。
#21
○議長(松岡駒吉君) 岩本信行君、発言を許します。
    〔岩本信行君登壇〕
#22
○岩本信行君 今期國会に提案になつておりますところの数多くの法案中におきまして最も重要でありますところの臨時農業生産調整法が、あらゆる角度から檢討せられまして、法案の目的でありますところの生産の増強、供出の確保ということが、はたしてこの法案実施によつて得られるかどうかということを見きわめ合いますことは、まことに意義深いことであると存ずるのであります。
 私は冒頭にはつきりと賛否を明らかにいたしておきます。わが日本自由党といたしましては、この法案には断じて反対であるということをはつきり申し上げます。(拍手)いかんとなれば、この法案によりましては所期の目的を期することはとうてい不可能でありまして、農民の生産意欲を喪失せしめる。しかして、必然の結果として生産の減退を生じ、供出の確保は期し得ないと考えるからであります。
 しかして、本案の内容とするところは、言葉はたいへんうまく上から下へ指示するということでありますが、その本質は指示ではなくして命令であります。私は一口にこれを申しまするならば、農業生産の國家管理、特に惡質なる國家管理であると断定せざるを得ないのであります。なぜそう申し上げるか。すなわち、およそ産業の國家管理をいたします場合においては、裏づけとなりますところの資金、資材、あるいは勤労者の衣食住、あるいは厚生施設まで政府が責任を負うというのが原則でなければなりません。しかるに本法におきましては、上から下へ金縛り的に、弾圧的にただ單に命令を下して、しかも、生産量、供出量ということについて農民に責任を負わしておきながら、その裏づけとなるところの物資はほとんど考慮されておりません。
 先ほど肥料を云々とありましたが、肥料が配給量の半分そこそこであることは、これは何人も否めない事実であり、特にここ数日來の報道によりますれば、昭和電工のごときは、今日の電力危機によつてその生産が三分の一に減つたと、きのうの新聞報道は傳えております。こういう実情のもとにおいて、一番大切な肥料が半分に達しない。いわんや、農機具、作業衣、地下たび、牛馬の飼料、こうしたような裏づけ物資は、大臣がここで白状する通り可及的配給―――この可及的というのは完全に不可及の意味であります。必需量の何十分の一であることは、先日の農林委員会において提示せられましたるその内訳表を見ても、はつきりうかがい知ることができるのであります。こういうような裏づけ物資に対して政府無責任の姿において生産割当、供出責任量、しかも、これを破つた者に対しては、とてつもない三年以下の懲役、一万円以下の罰金を科するというこの法案を、惡質なる國家管理と言わずして何ぞやであると私は考えるのであります。(拍手)
 ただいま、法案の内容について大臣より説明がありましたが、農林大臣が府縣知事に指示して、府縣知事が町村長に指示して、町村長が農家の戸ごとに指示即命令するといういき方であるのに対し擬装民主的――すなわち大臣の言うところによれば、そういうことにはするが、農民は一週間以内に異議の申立ができる制度だ、從つてこれは民主的であると言わるるけれども、農民は断じてこれを納得いたしません。なぜだ。なるほど、本法によつて一週間以内に異議の申立はできるけれども、それを承認するかしないかということは、その元締が農林大臣である以上、絶対に納得するわけはないのであります。(「―――――――」と呼ぶ者あり)
    〔「懲罰々々」「これを不問に付すると議会の侮辱になるぞ」と呼び、その他発言する者、離席する者あり〕
#23
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#24
○岩本信行君(続) しかも、農業経営の実態というものは。先ほどもお話があとましたけれども、まつたくそんななまやさしいものではありません。第一私は、この計画を統制経済のイデオロギー、計画経済のイデオロギーであると考えられているところに無理があると存じます。(拍手)なぜかならば、農業生産に関する限り、豊作か凶作かを一番左右いたしますところの太陽、天候、台風というようなものは、いかなる手を使つても統制はできません。計画の中にははいりません。しかるに、そういう実情であるものを、これを統制のわくにはめて計画的に生産させるというのでありますから、そこに根本の無理があると私は考えております。(拍手)
 いわんや、これを御承知の各位はわかるように、農業経営の実態は戸ごと戸ごとに違つております。たとえば、一町歩の畑をつくるにも男手が三人である、女が三人だという場合は完全に違うし、あるいはまた耕作地の遠い近い、これによつても違う。あるいはまた牛馬の頭数、こういうようなことで百人百樣であるときに、上から勝手にこれをきめていくということは、とうていその実態に即せざるばかりでなく、御承知のように、農家はまきづけ時において――ただいま麥のまきづけをいたしておりますが、このまきづけの直前において、今年は日照り年か、あるいはおく霜があるか、こういうようなことまで、寒暑旱魃まで見当をつけて、旱魃年だと見れば、陸稻をよして、さつま芋を植えるという、これまで苦労するのでありまして、その勘案の苦心というものは並大抵でないわけであります。こういう実情にあるものを、町村長が理想的に、合法的に戸ごとに割付け得るなどということは、断じて望み得ません。そういう実情にあるものを、これを官僚輩が机上の空論で割出しをするというようなことに至りましては、絶対農民の納得せざるところであります。
 しかして私は、ただ單に反対するのでなく、この場合に生産増強の方策、供出確保の方策について申し上げますならば、こうした方法でなく、何といたしましても生産を増強するということは、これは裏づけ物資を適量適期に配給するということが随一であるときに、裏づけ物資は先ほど申し上げましたような困難な事情にある。しからば、その次は何だといえば、適正なる農産物價格ということになりますが、この間米價の決定をいたしましたものを見ますと、農民は全部反対である。なぜ反対である。すなわち、農林委員会で明らかになりましたように、パリテイ計算の基礎が、十二品目かが、しかも重要なる品目が、卸賣によつて計算せられておるというこの不合理であります。農民は卸賣によつて入手できる品物などは断じてありません。それが卸賣によつて計算せられておるというこの事実は、私どもは生産費とにらみ合わすことを希望するのでありますが、これによつて決定せられたる米の價格、こういうようなことで生産の増強は断じて期し得ない。
 特にこの問題については、農林大臣の平野君はちよつとお耳が痛いと存じますけれども、在野当時どういうように言われた。これをひとつ御紹介することは、これはこの法案を納得させるかさせないか重要なる問題でありますがゆえに、私は在野当時平野君の言われたことを一、二紹介せざるを得ない。
 社会党を代表して、昨年の十二月六日、九十一議会の予算総会において何と言われた。私はここを読めば、おそらく責任政治家であるならば、節を重んずる政治家であるならば、平野君はこの壇上におることは、おれはしまいと思う。(拍手)断じてそう思います。しかも、社会党代表と三回も名乘つて申されておるのでありますが、……(「言つてみろ」と呼び、その他発言する者あり)ひとつお聽きなさい(発言する者あり)たまげますからお聽きなさい。よくお聽きなさい。〔「議長注意しろ」と呼び、その他発言する者あり〕
#25
○議長(松岡駒吉君) ときどき注意しております。
#26
○岩本信行君(続) 昨年の十二月……
    〔発言する者多し〕
#27
○議長(松岡駒吉君) そちらが少しやかまし過ぎますから、注意してください。
#28
○岩本信行君(続) 昨年の十二月十六日の予算総会において何と言われたか。その一節を御紹介いたします。「五百五十万戸の農家、しかもその人達は非常に多い零細農家なのです。きわめて零細なる―――そういう言葉を使つては惡いが、とにかく生活が非常に貧困でもあり、またとにかくその知識の水準も相当高くない所の沢山の農民諸君の中に、肥料がやみであるならば米もやみにならなければならぬという思想があるということはあたりまえなのです。現に私は昨日も、日曜でありますが、千葉縣に行つて肥料につきまして農民に聽いた。あなた方はやみなら買えるかと言うと、やみならあります。ほんとか、やみならば一俵千円なら今ここにあります。これはなんたる事実ですか。もし私が言うことが違うならば、閣僚諸公はこれからでもいい、農村に行つて聽いてごらんなさい。やみならあると言う。これはどういうことなのであるか。結局どこかにやみの肥料があるということは、政府の配給ルートの横から流れて行つていくらでもある。農民が肥料が欲しいということは、消費者が欲しいのとほとんど変らぬほど深刻に肥料が欲しいのであるから、そういうような横流れの統制をやつておいて、農村においては七割までは金で出すが、三割は物交でなければならぬ、この体制があるからといつて、農民は思想的に惡い、農民は欲が深い、農民は徳がないというような思想でもつて日本の食糧政策をやろうというのでは、必ずや三月、六月の危機において供出は完全にいかないということは私は当然であると考える。」こう言つております。今どうお思いになつておりますか。これはよく聽いていただいて、この問題に対する研究の材料にしたいと思います。
 しからば、今やみならこの通りある。この通りだ。(「それをどうしようかというのが問題なんだ」と呼ぶ者あり)こういう考えでおるものを……。(「それは山ねこ戰術じやないか」と呼ぶ者あり)だまつてお聽きなさい。たいへんお氣の毒であるが、今一箇所要点を讀みます。
    〔発言する者多し〕
#29
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#30
○岩本信行君(続) 「二千八百万石の食糧の供出をするということについては、これは実に重大なる問題であります。そこで私どもの研究によりますと、現在の米價の上において流れてくるところの米というものは、大体七〇%――七割で、あと三割の農家の保有米というものを何というても物交でいこう、物々交換でいこう、おそらくこの態勢は、あるいは私がここでこういう演説をやれば、農民を煽動するとか、あるいは先ほど御答弁があつたように、だれかそういうことを言つて、農村の方の供出を阻害するというような御趣意に解釈せられる閣僚もあるかもしれませんが、実際はそうではありません。それは実際御研究なさい。現在の五百五十円の米價というもので、二千八百万石の米が完全に政府のルートに乘つてくるなんということを考えて政治をやつておる人があれば、これは甘い。それはできない相談です。」と仰せられておるのであります。(拍手)在野当時はこういう御主張、閣僚になるとただいまのような無慈悲な提案をなさる。(拍手)
 私どもがだれが考えても、あるいは昨年言つた平野君の言葉が当つておるのであろうと思う。私どもも予算委員として当時聞いたのであるが、感心したと考えたのであるけれども、それが一朝朝に立つと、この法案のような極惡非道の法案を提案する。(拍手)まことにおそれ入つたものであります。そういうことでは、私どもは決して生産の増強は期し得ない。從いまして、これを適正にきめる。
 しかしてまた、このほかに大切なことは、農民の創意工夫というものを尊重するのでなければならぬと存ずるのであります。(拍手)そういうことが踏みにじられては、生産者の増強は期し得ようがない。供出確保についてもそうであります。もちろん供出の確保については、先ほども他の方からも話があつたのでありますけれども、これは裏づけ物資とにらみ合わしたところの、しかも生産費を大体に基準におくところの意味でなければ、これは供出を確保することはとうていできない。いわんや、供出後の自由処分の問題でありますが、先ほど大臣は得々として自由処分を認めると言うが、あとの取消し文よつて政府対の自由であると言うに至りましては、これは不自由主義以外の何ものでもないと私は申さざるを得ないのであります。(拍手)
 これを要しまするのに、本法案は上から下へ順々に命令を下すところの惡質なる國管方式でありまして、農家は他人の定められたるところの計画によつて、しかも生産量と供出量の責任を負わさるるのであり、これに対して一週間以内の異議ということを民主的であると言われるけれども、こんなことが民主的であるならば、日本の納得政治、民主政治というものは、一日で成り上ると言わざるを得ないのであります。(拍手)そんななまやさしいものではございません。私は、そういう意味合において、そういう考えにおいてただいまの増強策をも申し上げましたが、そういうことによるならば、こんな法案は断じて必要がないと考えます。
 特に社会党の諸君に一言申し上げたいことは、各位はついこの間まで納得供出ということを呼号せられた。天降り割当に反対をせられた。いわんや、昨年の食糧緊急措置令の委員会において、強権発動に反対せられた。ところが、強権発動というのは罰則ではありません。ただ強権で供出をさせるだけであります。ところが本法におきましては、先ほど來論じておられますように、三年以下の懲役、一万円以下の罰金だ。去年強権発動に反対せられた諸君は、私はこの法案には必ずや反対せらるることを確信するのである。(拍手)
 しかも、一昨年一箇月もみましたあの時の影の指導者が現農林大臣の平野君であつたということも、爭われぬ事実であります。私どもは、要するにこの重大問題を解決するために、かような悖徳的政治家が……
    〔「何が悖徳だ」と呼ぶ者あり〕
#31
○岩本信行君(続) 農業の悖徳です――。生産の供出の元締になるということでは、この国家の危急は救い得ないと考えますがために、私はこの際、大臣にとくと善処せられんことを強く要求いたします。(拍手) 
 時間がありませんから、最後に申し上げますが、要するにこの法案は、所期の目的をぶち破り、農民の生産意欲を抹殺するほかの何ものでもない。その結果は、ひとり農民が不幸であるばかりでなく、全國民の重大事でありますがゆえに、政府に向つて私は、この法案に関する限り、國家のために勇敢に撤回せられんことを要求いたします。(拍手)しかいたしませんときに、何をもつて連合國の好意におわびをするか、このままにおきまするならば、諸君の好きな計画餓死を起さざるを得ないと、かようにさえ考えるのであります。(拍手)
 どうかそういう意味合において國家のために善処撤回せられんことを要求いたしまして、私の意見といたします。(拍手)
#32
○議長(松岡駒吉君) 先ほど岩本君の発言中、叶君より不規則な発言がありましたが、議員の発言に対するいわゆるやじにつきましての発言のその言辞につきましては、十分御注意を願いたいと思います。
    〔「議事進行、議事進行」と呼ぶ者あり〕
     ――――◇―――――
#33
○議長(松岡駒吉君) 石田博英君より、議事進行の発言の要求があります。これを許します。石田博英君。
  〔石田博英君登壇〕
#34
○石田博英君 ただいま諸君がお聽きの通り、わが党岩本君の対論中、社会党の叶凸君から、生産物割当に対する責任は農林大臣にありという岩本君の発言に対して―――――――であるという発言をせられた。諸君がお聽きの通りであります。この発言は、本員はきわめて不穏当なものと認定いたしまするし、また諸君においても同樣であろうと私は確信するものであります。(拍手)しこうしてこの発言に対しまして、ただいま議長より注意があつたのでありまするが、発言の内容については何ら触れるところがなく、ただ一時を彌縫せんとするところの、きわめて不公平なる意図に出たものと断定せざるを得ないのであります。(拍手)從つて、この不穏当かつ議場の権威を失墜せしめる叶君の発言に対しまして、議場調整の責任にある議長はいかなる見解を有しておられるか、またいかなる措置をとられんとするかという点について、さらに具体的なる見解を承りたいのであります。(拍手)
#35
○議長(松岡駒吉君) 議長は、議員に対し正式の発言を許可いたしました際、その議員の発言中、議場におられる諸君のうちから、ときどきいわゆるやじの出ますることを、はなはだ遺憾とするものでありますが、これまたやむを得ない点もあると思います。しかし、議会の品位の上からも、その突発的な言辞については、十分の御注意を願いたいと存ずるのであります。從いまして、ただいま岩本君の発言中に起りましたる不規則なる発言に対しましては、岩本君の発言を終りますと同時に御注意をいたした次第であります。
  〔「それでは済まぬ」「発言の種類が違う」と呼び、その他発言する者あり〕
     ――――◇―――――
#36
○議長(松岡駒吉君) 安平鹿一君、発言者を指名願います。
#37
○安平鹿一君 日本社会党は、水野実郎君を指名いたします。
#38
○議長(松岡駒吉君) 水野実郎君、発言を許します。
  〔水野実郎君登壇〕
#39
○水野實郎君 臨時農業生産調整法案の自由討議に際しまして、本法に対する所信の一端を申し上げてみたいと存ずるのであります。
    〔「退場々々」と呼び、離席する者多し〕
#40
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#41
○水野實郎君(続) ただいま自由党の岩本君より、本案は天降り式の惡法であると論ぜられましたが、われわれは本法の内容を檢討いたしまするに、さようなものでは断じてないという見解をもつておるのであります。
 戰時中から戰後にわたつて、主要食糧の作付面積の推移を見まするならば、米は太平洋戰爭の勃発以後漸減の途をたどりまして、すなわち、昭和十六年の三百十八万町歩から、昭和二十一年は二百八十万町歩になつたのであります。麦類、芋類は、戰爭中の特別の増産政策の結果として一時的には増加いたしましたけれども、麦は戰爭末期より減少への傾向がはなはだしくなつておるのであります。すなわち、昭和十六年は百六十五万町歩、十九年は百七十七万町歩になりまして、二十一年度は百四十五万町歩となつておるのであります。
 このように主要食糧の作付面が減少した反面には、当然他の作物の作付面積の増加があるべきことが考えられるのでありまするけれども、予期に反しまして、他の作物の作付面積も減少の傾向を示しているのであります。この事実は結局耕地面積の減少を意味するものでなければならないのであります。わが國の一切の耕地面積を見ましても、すなわち、これまた急激に減少の傾向を示し、昭和十六年には六百四万町歩であつたものが、二十年に至つては五百万町歩になり、現在においては四百九十八万町歩となつておるのであります。
 しこうして、統計に顯著に現われたこの減少傾向が、いかなる程度において――戰時中の農業労働力の不足であるとか、あるいは他作物の作付への轉換及び農業用生産資材の不足、軍用地、工場敷地等のための土地收用に基く耕作面積の実際上の減少でありまして、いかなる程度において自縣、自村の供出の負担を軽からしめようとするために行われる意識的な過小報告に基く統計面上の減少であるかは判断し得ないのでありまするけれども、いずれにいたしましても、その基本的原因は軍用地、工場敷地等のための土地收用による部分を別とするならば、農業再生産の諸條件の欠如と、かかる條件下における不合理なる供出制度の強行に存するものであることは明瞭であります。
 すなわち、太平洋戰爭勃発以來今日にかけて、遍迫せる需給事情の要請に迫られて、農業政策の重点は、その年年の食糧をいかに確保するかという供出面にのみおかれてきたのでありまして、その間價格についても、肥料・農機具等の農業用資材及び地下たびであるとか、衣料等の農家必需品の供給についても、農家を納得せしめるに足る農業再生産の諸條件の整備に遺憾の点が多く認められましたるために、農民の農業生産に対する‥‥。
#42
○議長(松岡駒吉君) 水野君、ちよつとお待ちください。
 この際、暫時休憩いたします。
    午後三時二十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後七時八分開議
#43
○議長(松岡駒吉君) 休憩前に引続き会議を開きます。
 明二十九日は定刻より本会議を開きます。本日はこれにて散会いたします。
    午後七時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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