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1951/06/07 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 内閣・地方行政連合委員会 第9号
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1951/06/07 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 内閣・地方行政連合委員会 第9号

#1
第013回国会 内閣・地方行政連合委員会 第9号
昭和二十七年六月七日(土曜日)
   午後二時八分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
  内閣委員
   委員長     河井 彌八君
   理事
           中川 幸平君
   委員
           楠見 義男君
           竹下 豐次君
           上條 愛一君
           栗栖 赳夫君
           松原 一彦君
           三好  始君
  地方行政委員
   委員長     西郷吉之助君
   理事
           堀  末治君
   委員
           石村 幸作君
           岡本 愛祐君
           館  哲二君
           原  虎一君
           吉川末次郎君
  国務大臣
   外 務 大 臣 岡崎 勝男君
   国 務 大 臣 大橋 武夫君
  政府委員
   警察予備隊本部
   次長      江口見登留君
   警察予備隊本部
   長官官房文書課
   長       麻生  茂君
   警察予備隊本部
   装備局長    中村  卓君
   行政管理庁次長 大野木克彦君
   行政管理庁管理
   部長      中川  融君
   法務府法制意見
   第一局長    高辻 正己君
   外務参事官
   (外務大臣官房
   審議室勤務)  三宅喜二郎君
   海上保安庁長官 柳沢 米吉君
   海上保安庁次長 三田 一也君
   海上保安庁総務
   部長      西田 豊彦君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       杉田正三郎君
   常任委員会専門
   員       藤田 友作君
   常任委員会専門
   員       福永与一郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○保安庁法案(内閣提出・衆議院送
 付)
○海上公安局法案(内閣提出・衆議院
 送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(河井彌八君) これより内閣、地方行政両委員の連合委員会を開会いたします。保安庁法案、海上公安局法案を議題といたします。通告順によつて御発言を願います。三好始君。
#3
○三好始君 昨日の内閣委員会におきまして、大橋国務大臣に質疑を試みたのでありますが、その答弁中、今までにはつきりしなかつた問題で注目すべき問題が二つ出て参つたと思うのであります。一つは戦力の問題で、政府の立場に従来と違つたものが一つ附加されたような印象を受けたのであります。それは陸軍又は海軍のみでも憲法第九条第二項の禁じている戦力である、こういう御説明があつたと思うのでありますが、この考え方は軍と名の付くものであると、これは外敵に対抗するという意図がはつきりしておる、こういう外敵に対抗する意図がはつきりしておる場合には、第九条の禁止する戦力だ、こういうふうに考えている、こういうふうに思つたのでありますが、それで政府の考え方は間違いなく理解されておると考えてよろしうございますか。
#4
○国務大臣(大橋武夫君) 外敵に抵抗するすべてが戦力であるかどうか、これはいろいろ疑問があると思いますが、主として外敵に抵抗し、或いは外国軍隊と交戦する目的を以て作られたものはいわゆる軍でありまして、これは戦力であると、こう考えておる次第であります。
#5
○三好始君 私が了承したことと結局同じことをやはり確認されたものと考えるのでありますが、これは従来政府が説明して参りました近代戦を有効適切になし得る編成装備を持つたものが戦力である、こういう考え方、いわば戦力の相対性と客観性の主張の上に、新たに外敵に対抗する意図が主として考えられているものであればそれは第九条によつて禁止されている戦力である、こういう主観性がそこへ加えられた、こういうふうに考えられるのでありますが、それでよろしうございますか。
#6
○国務大臣(大橋武夫君) 私の昨日申上げたところは、大体そういう趣旨でございます。
#7
○三好始君 政府のそういう考え方は、近代戦を有効適切に遂行し得る能力に達しなくとも、外敵に対抗することを主として意図して設けられたものであればそれは戦力である、こういう考え方になると思うのですが、それでよろしうございますか。
#8
○国務大臣(大橋武夫君) 実際問題といたしましてこれは大体同一に帰着するとは存じますが、強いて理論上分けて申上げれば、大体只今おつしやつたような事柄で差支えなかろうと存じます。
#9
○三好始君 近代戦を有効適切に行い得ない部隊が単に自衛のみを意図している場合にもこれは禁ぜられる、こういうことになりますか。
#10
○国務大臣(大橋武夫君) 国内におきまして治安の確保をして参るという目的でできたものはこれは戦力とは考えられませんが、専ら外敵を撃退する、或いは外国軍隊と交戦するということを主たる目的として編成された場合にはこれは軍であり戦力である、こう理解すべきものと存じます。
#11
○三好始君 今御説明になりましたような意図の下に設けられたものであれば、近代戦を有効適切に遂行し得る能力を持つておらなくても第九条の禁止している戦力である、こういう御答弁と了解するのでありますが、外敵に対抗することを主として意図している場合と、それが主たる目的ではなくして、いわば従たる目的として、従として意図している場合には、憲法第九条との関係がどういうことになりますか。
#12
○国務大臣(大橋武夫君) 私の申上げましたのは、申上げた限りにおいて主張をいたしているのでございまして、御質問のごとく他の目的のために編成せられたものが外敵の侵入に際して固有の目的に基いて便宜活動いたすという場合には、これは軍と認めるべきではないというのが私の考えでございます。
#13
○三好始君 主として外敵に対抗することを意図しているか、或いは本来の目的は別なところにあつて、たまたま外敵侵入に際してこれに対抗するといういわば従として外敵に対抗する程度に過ぎないかと、こういうような判定は誰が下すのであるか。単にこれが政府の一方的主張に基いて認定され得るものであるか、或いはそういうものは客観的に判定さるべきものであるか。その意図の主観性と客観性の問題について政府のお考えを質したいのであります。
#14
○国務大臣(大橋武夫君) 或る国家組織が軍であるか軍でないか、こういう問題はその認定の権限と申しますか、それが別に限定されたということはないわけでございまして、必要な国の機関はその権限となつておりまする事柄の処理の上に必要な判断をなし得ると存じます。例えば国会は法案の審議に際してそれが軍であるかどうか、憲法違反であるかどうかということは当然審議し得るわけでありまするし、裁判所も又裁判上の必要がある場合にはそういう判断をなし得る、行政府も又その権限内において判断し得るものと、こう考えております。
#15
○三好始君 その外敵に対抗する意図が主たる目的になつている部隊であるか、或いは本来の目的は国内治安の確保にあつて、外敵に対抗することは主たる目的になつておらないかというような認定の問題について政府の主張が事実を曲げているのではなかろうか、本来の意図は外敵に対抗することを目指しているのではなかろうか、こういうような世論の動向が非常に強くて、その認定の問題で政府の主張との間に非常な食い違いがある、こういう事態が若し起つて来れば、こういう場合にはむしろ私は国論を統一すると申しますか、国民の意思に問うという意味で衆議院解散の必要が起つて来るような事態になりはしないだろうか、こういう気持が起るのでありますが、政府の主張と世論の動向に食い違いがあつた場合にはどういう措置が講ぜられますか。
#16
○国務大臣(大橋武夫君) 政府の主張と世論が食い違うということは、これは主観的な判断であろうと存じまするので、或る法案が国会の審議を経て成立いたしました場合に、国民の間に個人的な見解として反対意見があるということは、これはいろいろな場合にあり得ることでございまして、その場合に国会がとつた行動が世論に適合するや、或いは世論に背馳するや、それはその後における総選挙等において事実上解決するという以外に別段特定の方法、手段というものはないのじやないかと思います。
#17
○三好始君 この問題で最後に一点はつきりしておきたいのでありますが、外敵が侵入して来た場合に、政府が考えている本来の目的としては国内治安を維持するために設けられた部隊であるけれども、一旦外敵が侵入して来た場合にはこれに対して武力を以て対抗するのはこれは当然なことだとお考えになつているものと考えて差支えありませんか。
#18
○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊は国内治安確保のために実力を行使するということが使命になつているのでございまして、外敵の侵入の場合におきましても、その本来の使命の発動を要請するような事態がありましたならば、その事態に対処いたしまして行動するということは当然のことであると考えている次第でございます。
#19
○三好始君 昨日の質疑応答を通じて明らかになつたもう一つの問題がありますので、その問題に移りますが、政府は外敵侵入に際して国の総力を挙げて守るのは当然であるということをしばしば言明いたしております。これは論理的には当然に自衛戦争を肯定する考えだと私は思うのでありますが、政府は自衛戦争でないという立場をとられております。その主張の根拠は、外敵と事実上交戦しても、駐留軍に協力するというような形で、いわば主体的にではなくして、交戦することは日本みずからの戦争ではなくして、第九条第二項後段に禁止しておるところの、国の交戦権はこれを認めないという規定には抵触しないのだと、こういう考え方のように昨日承わつたのでありますが、そういうふうに了解してよろしうございますか。
#20
○国務大臣(大橋武夫君) その通りでございます。
#21
○三好始君 主体的に戦争をなす能力がないために、集団安全保障機構に日本が参加する、そうして交戦状態が発生した場合、集団安全保障機構参加国と協力して外敵を鎮圧する行動をとる、こういう場合は憲法第九条第二項後段の禁止するところであるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
#22
○国務大臣(大橋武夫君) 憲法の第九条第二項後段と申しまするというと、これは「国の交戦権はこれを認めない。」というこの条項を指しておられるかと存ずるのでございますが、交戦権を認めないというのは、国際法上交戦者としての権利を認めないということであり、従つて交戦国たる国際法上の資格、特権をみずから要求し或いは主張するということはない、こういう意味でございまして、国内におきまして、治安確保のために行動することを何ら制限した条項であるとは考えておらないわけでございます。
#23
○三好始君 交戦権を主張しなければそれでいいのであつて、事実上の交戦をする、即ち国家機関としての警察予備隊なり或いは保安庁法案に規定されておる保安隊、警備隊などが事実上の交戦をするということは、交戦権を主張しなければそれで差支えないというお考えでございますか。
#24
○国務大臣(大橋武夫君) 無論警察予備隊が軽装備の武装をいたしておりまするし、国内治安確保のためにその武器を行使するということはあり得る場合でございまして、これを行使いたしましたからといつて交戦権を主張したとか、或いは交戦者たる地位を持つたとか観念すべきものとは考えておりません。
#25
○三好始君 そういう場合に事実上の交戦に伴つて起つて来る法律関係は、戦時国際法の適用は受けないということなんですか。
#26
○国務大臣(大橋武夫君) この場合におきましては、国内法によつて処理されるものであり、又不法なる侵略行為として相手方が侵入いたして参りました場合において、我がほうといたしさしては、国内治安確保という趣旨で行動した場合においても、相手国はこれを一つの交戦状態と認めることはあり得るでありましようし、その場合に、例えば相手国の軍隊に属するものを我がほうが逮捕をいたしたというような場合におきましては、これに俘虜としての待遇を与えなければならんということも十分に想像できるわけでございまして、国際法上、戦時国際公法の適用下に処理しなければならんというような事態も多少はあり得ることと考えます。
#27
○三好始君 政府は外敵侵入に際して、日本のとるところの行動を国内治安維持のための警察行動だということにして合理化しようとせられております。こうなつて参りますというと、警察行動と軍事行動、警察と軍隊は本質的にどう違うかという、こういう問題に発展せざるを得ないのでありまして、保安庁法案に盛られておるところの保安隊、警備隊の本質的な性格の問題にも触れて参るわけであります。この点に関して警察と軍隊がどう違うかという問題に関して一点お尋ねいたしたいと思うのであります。私の考え方では、軍隊は国際法秩序が破られることから起つて来る自国の地位の保護を本来の目的として設けられるものであるのに対して、警察は国内法秩序維持の目的で設けられるものと考えておるのでありますが、この点についての政府のお考えを先ず承わつておきたいのです。
#28
○国務大臣(大橋武夫君) 非常に抽象的な表現でありますが、併し大体御趣旨のような定義付けも可能であろうかと思います。
#29
○三好始君 そういたしますというと、外国から侵略を受けたものを排除する国の行為は、国内法秩序の問題であるか、国際法秩序の問題であるか、こういうことにもなつて来るのでありますが、どんなに考えて見ましても、外国から侵略を受けるということによつて起る法律関係は、国際法秩序の問題だと考えざるを得ません。これに対抗する行動は、国内法秩序の問題としての警察行動であるというふうにきめてしまうことは、非常にこじつけだと考えられるのであります。やはり国際法秩序の問題としての軍事行動であると言わざるを得ないのじやなかろうか。たとえ警察官がこれに実際上当るといたしましても、それは警察官がやるから警察行動だというのではなくして、警察官の行う軍事行動である、こういうふうに言わざるを得ないと思うのでありますがこの点を明らかにして頂きたいと思います。
#30
○国務大臣(大橋武夫君) 一体この森羅万象を二つに分けまして、この事柄については国際公法が適用になる、この事柄は国内法上の問題である、こういうふうに区別することは、実際上の問題としては適当でないような気持がいたすのでございます。即ち事実はすべて単なる事実でございまして、これを国際法上の視野から見ました場合には、そこに一つの国際公法上の法律関係が成立いたすのでありまするし、同一の事実を国内法上の視野から見ました場合においては、そこに国内法上の一つの法律関係というものが成立して来る、こういうふうに法律関係を理解すべきものであると私は考えておるわけでございます。従いまして、外国軍隊の侵略というような一つの国際的事実でありましても、侵略された国の側から見まするというと、これに対して一つの国内法上の視野からする観察ということは当然可能であるわけでございまして、かように見た場合において、これに対処するその国の行動が一つの軍事行動にあらずして警察行動である、こういうふうに見るべきものである、又そういう場合もある、こう私は考えているわけでございます。
#31
○三好始君 時間がかかりますから、まだ相当この問題についてお尋ねしたい問題があるのでありますが、地方行政委員のかたの質疑も予定されておりますのでこれだけにしておきます。たた最後の問題について私はこういうことを申上げざるを得ないのです。政府は外敵侵入に対して侵入軍の行動を国内法によつて律しようとせられている、侵入軍の行動を日本国内法の騒擾罪や殺人罪を適用されようとしているように受取れるのでありますが、これは常識的に言つて果して第三者の納得を得られる論理であるかどうかということには甚だ疑問があるだろうということを最後に申上げておく次第であります。
#32
○委員長(河井彌八君) 三好君に伺いますが、外務大臣の出席を要求しておいでになつたのですが、如何ですか。
#33
○三好始君 それでは今から……。昨日お尋ねいたした問題の中で、外務大臣に関係のある問題が一つありましてその点を留保しておりましたので、この際お尋ねいたしたいと思うわけであります。それはアメリカのヴアンデンバーグ決議と日米安全保障条約、或いは保安隊、警備隊との関係の問題でありますが、御承知のようにアメリカ上院のヴァソデンバーグ決議というのが一九四八年の七月十一日に行われておりますが、その第三項によりますというと、こういうふうに規定されております。「継続的且つ効果的な自助と相互援助に基礎を置き、且つ合衆国の安全に影響を与える地域的及び集団的取極に合衆国が憲法上の手続に従つて加入すること」こういうことになつているのでありますが、このヴアンデンバーグ決議は完全に行われるものといたしますというと、日米安全保障条約はこの決議との関係でどうなつて来るのか、日米安全保障条約の性格の問題に触れて来るものであるし、又現在審議中の保安庁法案に規定されている保安隊や警備隊に対してこれがどういう関係を持つて来るかということも問題になるのであります。吉田首相は三月十日の予算委員会においてこういう答弁をされております。速記録のままを読んで見ますというと、「アメリカがヨーロツパの安全保障についても終始申しておるように、その国が、ヨーロツパみずからがみずから助けるという、自衛をするという決心がない限りは、アメリカも助けないということを言つております。同じように日本国がみずから自分で安全を守る決心がないという以上は、日米安全保障条約の実行もむずかしくなるのであります。」こういう答弁をせられているわけであります。この御答弁はヴァンデンハーグ決議に示された原則を言つたものと考えられるのでありますが、この原則は守られねばならない以上日本はみずから守るということと同時に相互援助の原則に立つてアメリカに対しても貢献をするという一つの条件がそこに考えられるわけであります。この意味においてヴァンデンバーグ決議と安全保障条約との関係を外務大臣から一応御説明を頂きたいのであります。
#34
○国務大臣(岡崎勝男君) これはヴアンデンハーグ決議についてもいろいろ法律的の解釈の意見はあると思います。が、要するに日米安全保障条約は当時御説明しました通り、一種の暫定的の協定でありまして、一方においては日本の自衛力の漸増ということを期待するということが書かれてありますが、又他方においては第四条においてこれこれの場合は条約は効力を失うと、これこれの場合というのは要するに「国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため十分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じた」ときと、こういうことになつております。従つてこれは一種の暫定的の取極であるとも言えるのであります。で、将来いつのことか、まあこれは国民の輿論にも問うべきであるし、又日本の経済力にも関係があろうし、国民一般の考えにも関係がありましようけれども、即ち自衛力漸増という問題もあるし、又個別的、集団的安全保障措置というようなものも将来問題としては残るのでありますが、それができるまでは日米安全保障条約は効力を持つておることに原則的にはなつておるわけでございます。で、そういう意味でヴアンデンバーグ決議に対してもその他の問題にしても、これは一般的の原則を謳つておるので、これはそれまでに至る特殊の事情に対する日米間の保障条約というものでありますので、矛盾とは考えていないのであります。こう考えております。
#35
○三好始君 只今の問題は日本政府が説明し、主張しておることと、アメリカ政府が了解しておることとの間に或いは食い違いがあるのではなかろうかと、こういう疑いがないでもないんでありますが、そういうことは政府のほうとしては勿論全然食い違い等はないとおつしやるだろうとは思うのでありますが、完全に只今御説明になつたようなふうにアメリカ側としても了承しておる、こういうことですか。
#36
○国務大臣(岡崎勝男君) 無論さようでございます。
#37
○三好始君 それではもう一点お尋ねいたしますが、ヴァンデンバーグ決議の原則が行われますというと、外国に対する武器の援助等につきましてもそれはアメリカの一方的、恩恵的な武器の貸与は許されないと、こういうことになつて来るのではないかと思うのでありますが、これは現在の予備隊が貸与を受けておる武器の問題と関連いたしますのでこの点をお伺いいたしたいと思います。
#38
○国務大臣(岡崎勝男君) 私はヴアンデンバーグの決議は今申した通りアメリカの基本方針をきめておるものと考えております。又ヴアンデンバーグ決議等に盛られておりますものは日本のような非常に変態的な……立派な独立国でありますけれども、軍隊がないというような特殊な場合を考えて決議を作つておるわけではないのであります。普通の場合の相手国に軍隊があつてこれに対する軍事援助等をするという場合を想定しておると私は考えております。で、日米間の安全保障条約にしましても、予備隊等に対する武器の貸与にしましても、これは一般原則から見ると暫定的ではありましようけれども、その一般原則の適用ができないような特殊の場合でありますので、特殊の取極をいたす、こういうわけと考えております。
#39
○委員長(河井彌八君) それでは次の通告者は吉川君、吉川君の発言を求めます。吉川君。
#40
○吉川末次郎君 先ず議事の進行について委員長に二言御質問申上げもし、又お願いもいたしたいのでありますが、今付議せられております二つの法案は、日本の国民生活上現下極めて重要視すべき法案であると考えるのでありますが、従つてこれが審議につきましては、この法案の審議の付託を議院運営委員会から受けられましたる内閣委員会におきまして、特にこうした合同委員会をお開き下すつたと同様の重要性を痛感するという観点からいたしまして、審議の慎重を期するということのためにこれは当然参議院において公聴会を開いて、広く世間の世論及び識者の意見、或いは専門家の見解等をも質して頂くべき問題じやないか。我我は議員の一員といたしまして特にその必要を感ずるのでありますが、内閣委員会においてそうしたことをお感じになつているかどうか。又公聴会の開催等について御考慮になつているのかどうかというようなことにつきまして、先ず委員長から御答弁を得たいと思います。
#41
○委員長(河井彌八君) 吉川君にお答えいたします。本案の重要性につきましては吉川君の御説明を待つまでもなく、内閣委員会といたしましては非常に大切なものと考えております。従いましできるだけいろいろな意見を集めて内閣委員会の審議の参考に資したい、かように考えております。その一つといたしまして連合委員会を開くということもそれであります。又外部の意見を聞くということにつきましては、先般公聴会等を開いてはどうかということもありましたので、内閣委員会におきましてはその点について検討をいたしました結果、参考人の意見を聞くということに決定をいたしまして、来る十一日に七名の参考人の御出頭を願つているのであります。それだけのことはいたすことになつております。それだけお答えをいたします。
#42
○吉川末次郎君 それでは本法案の内容につきまして政府当局から二三の事項につきまして御答弁を得たいのであります。御答弁を願うかたといたしましては大橋国務相、外務大臣及び法務総裁等が御管掌になつているお仕事に関連性がそれぞれあると思うのでありますが、適当に御答弁を政府を代表してお願いいたしたいと思うのであります。
 先ずこの二つの法案の対象になつておりますところの治安の問題についてでありますが、政府当局は現下の日本の治安状況というものをばどのように考えていられるのであるかということについての御答弁を得たいと思うのであります。このようなことをお尋ねいたしまするのは、その最も顕著なる具体的な憂うべき私は実例といたしまして、先月の一日のかのメーデーの騒擾事件であります。これにつきましては本院におきましても、本会議において数名の議員のかたから、それぞれ所属党派を代表しての緊急質問等をも行われたのでありまするが、私は十分に当時における政府の御答弁に満足しておらないから、更に重ねて御答弁を促す次第なのでありますが、私見を申述べますることをお許し願いますならば、私は現下の日本の治安の対象になる諸種の状態というものは、すでに国内戦争の段階に入つているものであるというように私は実は考えるのでありますが、即ち内乱、或いはシビル・ウオーの段階に入つている、その表現は、具体的に表現されたものはメーデーの騒擾事件であると考えます。メーデーの騒擾事件につきましては国民今日周知の事実でありまするし、又先に地方の同様な事件につきましては、我々地方行政委員会の委員といたしまして、本院の議決に基いて京都のメーデーの騒擾事件をもつぶさに視察いたしたのでありますが、私はその結論といたしまして、日本はすでに国内戦争の段階に入つていると実は考えておるのであります。ああした騒擾事件は主として共産党の指導下に、共産党員と朝鮮人と、それから一部の学生と、それから主体としては共産党の指導によつて行われたものであることは周知の事実でありますが、同様のああした国内騒擾事件は今日までも、或いは米騒動であるとか、同様のことはたびたび明治以来私はあつたと思うのであります。又今国内戦争という言葉を使いましたが、そういうものの顕著な実例といたしましては、明治十年の西南戦争というのも挙げることができると思うのであります。西南戦争はもとよりメーデー事件に比べまするならば、何と言いますか戦争的な形態におきまして、或いは極めて軽いものであるということが言えるかも知れませんけれども、併しながら西南事件或いは騒擾事件としての米騒動その他の事件のごときものは、単に日本国内だけに発生したところの騒擾事件であります。或いは国内戦争でありまするけれども、メーデー事件はこれは国際的な関連性において、いわゆる国際的なインター・ナショナルな階級闘争の一環として、日本の土地の上に行われているという意味におきまして、或いは考え方によつて極めてスケールの大きいものである、私は確かに、そういう考え方を実は持つている次第でありますが、こうした私の考え方について、政府当局はどのようにお考えになつているかということを、先ず一つ承わりたいと思うのであります。
#43
○国務大臣(大橋武夫君) 吉川委員のお考え方は極めて示唆に富む御見解であると存じます。即ち最近におきまして、共産党を背景といたしましたる、国内において各種の騒擾事件、起つておるのでございまするが、これは共産主義対民主主義、自由主義というこのいわゆる二つの世界の間に戦われておりますところの冷い戦争が、舞台を我が国土のうちに求めて起つた一つの現われでして、これがああした事態となつた、こういうように考えておるわけでございます。かような意味合いにおきまして、これは一つの国際的な背景を持つたものでもありまするし、そうした意味において単純なる西南事変、米騒動といつたようなものから見まするというとスケールが大きいということも十分に言い得ると思うのであります。而してこれに対処する政府の施策というものも、又この事態を正して認識いたし、その認識の上に立つて、単に個々の事態を収拾するというばかりでなくして、国の政策全体の上にこの冷い戦争というものを克服するような努力が払われて行かなければならん、こういうように考えておる次第でございます。
#44
○吉川末次郎君 外務大臣がお急ぎのようでありますから今の質問に関連いたしまして、なおお尋ねいたしたいことは後ほど更にお伺いすることにして、岡崎さんに専らお尋ねしたいことを抜きまして、先にお尋ねすることにいたしたいと思います。
 そこで私は、メーデー事件は、この重大なる日本の国内が、すでに国内戦争の段階に入つているという考え方に基きまして、あの事件を見まするというと、あの事件のみならず同様の、最近における国内の諸種の騒擾事件は、その主要なるところの、指導的な構成分子といたしまして朝鮮人が入つておるということは御承知のごとくであります。国内におけるところの朝鮮人の数は或いは五十万と言い、六十万と言い、或いは八十万と政府当局等から言われておるのでありますが、大体におきまして、その五十万乃至八十万の朝鮮人の八〇%乃至九〇%ぐらいまではことごとく北鮮系の共産政府の系統のものであるということも、これ又そうした事実が我々に、政府より言われておるわけであります。で、或いはあのメーデーの事件におきましても、アメ公を追い返せとか、或いはアメリカ人の自動車に放火したり、米兵に投石したり、又警官等に対するところの対峙的な態度におきましても、文書等によりますると常に敵という言葉を使い、又軍事行動委員会等というような、戦争ということの内容を現わした言語をも使用して、いわゆるそうした言葉に副うような行動をいたしておるのでありますが、そういうように考えますると、これは見方によりましては階級闘争であると同時に、日本人の大部分が、そうしたこの共産主義に対しては反対的な態度をとつておるものであるといたしますならば、これは民族闘争、或いは国家と国家との間の闘争が、日本の土地の上において行われておるものであるというようにも考えなければならないと思うのであります。そういう観点に基きまして、それとの関連において外務大臣に特にお伺いいたしたいと思いますることは、朝鮮事変の見通し、朝鮮における目下進行渋滞中の停戦協定というものが成立するというところの見通しの上に立つておいでになるかどうかということ、或いはこれは一部に伝えられているように共産党の一つの外交的なタクテイックスであり、朝鮮協定は成立するところの見込がないものであるというふうにお考えになつているかどうかということについての御答弁が得たいということが第一点、以下私の申上げる点をまとめて御答弁頂きたいと思います。それからこれは本会議におきまして私は吉田外務大臣に御答弁を促したのでありまするが、明確なる御答弁がなかつたのであります。新らしく外相に就任されたのでありますから、でき得る限り具体的に一つ答えられる範囲内において御答弁を願いたいと思うのでありますが、私は御答弁でき得ますところの糸口を作りますために、当時曾つて中国における蒋介石政府の軍事顧問であり、又駐留米軍の参謀長であると聞いておりますウエデマイヤー将軍が、私がアメリカを旅行中に米国の有力雑誌の一つであります、ユーエス・ニュース・エンド・ウォールド・リポートの中に非常に長いアジア問題についてのインタービユー、その雑誌記者の書いたものが日本の社会に当時非常に読みものになつたと思うのでありますが、それを読みますと、朝鮮協定は、それは昨年の秋のことでありますが、朝鮮協定が成立するかも知れない、併しながらたとえその朝鮮協定が成立しても最後のものではない。コーリヤン・トリユース・ウイル・ノツト・ラストという見出しがついているのでありりますがこれで決定するものでない。共産党の常套的な戦術であつて、支那においてもしばしば共産党と国民党との間に停戦協定のようなものがたびたび今日までに作られたけれども、すべてそれは勝手に共産党によつて破られている、そのようなものを作つたところで永続性のある確固なものでないし、信用できるものでもないというようにウエデマイヤー氏は答えておるのでありますが、仮に、第一に私がお尋ねしました第一問にお答え、停戦協定が成立するというお考えをお持ち下さる御答弁があればあるものといたしまして、このウエデマイヤー氏が言つておりますように、それは又約束が直ちに破棄されてしまうというようなものに過ぎないのであるかどうかというようなことについての御答弁をこの次に一つして頂きたいと思います。それから又当時私はそのインタービユーの論説文を引用したのでありますが、ウエデマイヤー氏の言うところによりますと、朝鮮人はもうすでに数百万人の家を失つたところの測り知れない人や或いは死傷者ができて、皆このクレムリンに対して同情を持つている共産党側のものに南鮮の者もなつているというようにウエデマイヤー氏が言つていらのでをります。そういうウエデマイヤー氏が言つておりますような南鮮をも皆共産党になつてしまつている。これは私は推察でありまするけれども、非常に有力な考え方ではないかと考えたのであります。最近におけるところの李承晩政府の動揺などにもそういうことが現われているかとも思われますが、そういうことについて外務大臣はどのようにお考えになつておるのかということを第三番目に御答弁を得たいと思います。
 それから第四番目に外務大臣の御答弁と朝鮮の問題に関連して得たいと思いますることは、又そのとき私はウエデマイヤー氏の議論を引用して吉田外務大臣にお尋ねいたしたのでありますが、ウエデマイヤー氏は朝鮮事変はアメリカは適当の時期においてアメリカの威厳を損じないようにして撤兵すべきである、そうして支那及びコリアの、アジアの問題はアジア人の手に任すべきものであるというようなことを言つておるのであります。これも私は非常に有力なるアメリカ人の常識的な見解であるかと思うのであります。よく今国会におきましてもレフチストの諸君から、アメリカのいろいろな新聞や雑誌の所説等が引用されますときには、米国の社会力にはなつていないところの極めて少数の評論家やレフチストと私には考えられる人の意見をいろいろ引かれて政府の答弁を促されるのでありますが、私はああいう質問の仕方には実は賛成しない。ウエデマイヤー氏の言つておりますのを私がなぜ引用したかと言いますと、私の独断といえば独断かも知れませんが、非常にウエデマイヤーという人のオフイシヤルなポジシヨンからしましても、殆んど常識的なアメリカ人の大部分が考えているだろうと思われるような答弁をいたしておりますから、特に私は引用いたしたのでありますが、私は今引用いたしました、ウエデマイヤー氏が言つております、朝鮮の事変はアメリカの威厳を損じないような形において、適当の時期にアメリカは撤兵すべきであら、これは私はアメリカ人の大多数が考えている本当の常識的な見解だと思うのでありますが、それについて第四番目にどのようにお考えになつておるかということを、ちよつと御答弁には非常にデリケートな点もあるかと思いますけれども答えられる範囲内において一つお答え願いたいと思います。
#45
○国務大臣(岡崎勝男君) 特に衆議院の本会議の時間をお計り願つてまとめての御質問甚だ恐縮であります。今のお話私もお答えできないというよりも、むしろわからない点も随分あるとり思います。が、まあ自分の知つている限りのことを申上げて見ますると、第一に休戦会談に関しまする見通しでは、私の知る限りでは国連側と言いますか、アメリカ側、イギリス側その他のほうは休戦を是非実現したいというまじめな希望でやつておるようであります。しばしば相手方のいろいろのやり方によりまして、何と言いますか堪忍袋の緒が切れるような状況に来たことがあるようでありますが、自分のほうから休戦会談をやめるようにするという責任を負わされることは最も好まないという態度で、隠忍して今日まで話合いを続けて来ておるようであります。結局問題は先方の出方で、共産側のほうが休戦会談を真に望んでおるのかどうか、望んでおるなら必ずできる、こういうことに結論がなつて来るのでありますが、先方がどう考えておるかということについては私は勿論わかりませんが、恐らく国連側のその直接関係している人たちも非常にこの点は把握するのにむずかしい、むしろわからないで困つておるという状況じやないかと思います。従つて休戦会談の見通しは共産側がこれに非常に乗気のようであるときは大変よく報道され、又冷淡になると非常に絶望的に言われておりますが、一にかかつて先方の出方にあり、先方の出方は今のところどうも直接の当事者にもなかなかわからないで困つておる、こういうことじやないかと思います。
 それから一体こういう休戦が仮に成立したとして続くかどうか、これも甚だ常識的な答えで申訳ないのでありますが、結論からいえばわからないというより仕方がありません。これはもう国際問題の研究者と言いますか、こういう方面の人々の常識的な煮見として共産主義国家といえども一つの大きな理想を持つて、少くとも表面には進んでおる。自由主義国家のほうも同じことである。どこが違うのかと申しますと、これは殆んど全部の人の意見が一致していると思いますが、民主主義国家のほうはそれを実現する手段に合法的なものを選ぶ。ところが共産主義国家のほうは目的が正しければ手段は選ばない、如何なる嘘をつこうとも如何なる破約をいたそうとも、或いは如何なる卑怯な行動をいたそうとも自分の目的を達するためには差支えないのだ、こういう手段において非常な隔りがあるというのが常識的な解釈のようであります。従いまして休戦等におきましても、一方は約束は守る、これはもう国際道義と考えておりましようけれども、相手方は果してこれが一種の手段であるとすれば、この手段を適当でないと認める場合には破棄することもあえて辞するところではないというふうに思うのじやないかと私は考えております。例えばこれは事情は非常に違い、理窟はいろいろありましようけれども、日ソ中立条約というものも最後まで日本はこれを信じておりましたが、ソ連側ではもうこれは敝履のごとく捨て去つたという事実もあるのでありますが、こういう事態は敗戦中も非常にたくさん起つたのでありまして、従つて先方が道義的な責任を感じていないと仮にしますれば、休戦も仮にできてもその利益が続かないようになれば破棄されるかもわからない、こう見ざるを得ないと私は思つております。
 それから南鮮にも共産化というものが非常に進んでおりはしないかという御意見でありますが、これは南鮮における統治の仕方等について南鮮の人々の間にもいろいろ不備のあることはこれは私もいろいろの材料から知つております。併し全体的に見て南鮮の人々が共産化されつつあるかと申しますと事実はここは私は違うと思つております。現にいろいろの材料を見ましてもこの点は非常にむしろ違つて、どちらかというと国家主義と言いますかそちらのほうにむしろ国民の気持が傾いておるようにも見受けられるのであります。又現に南鮮のみならず北鮮側からも北鮮の共産化を嫌つて逃亡する人は三十八度線を越えて今なおあとを絶たないという事実もございまするし、又有名な最近問題になりましたコジエ・アイランドと言いますか、巨済島の捕虜収容所におきましても、これは私は確かにはつきり承知しておりますが、北鮮に送り還えされたくないと純真に考えておる捕虜の連中も相当多くある。これがどうも休戦会談の一つの躓きになつておるわけでありますが、いやがるものを無理に北鮮に送り還すことはないじやないかという議論が非常にあるのは事実国際連合軍のほうで見て、手を合せんばかりに南鮮に置いておいてくれというのが非常にあることは事実のようであります。従つて私は北鮮も共産化されたという、これは無論表面はそうでありますが随分事実はこれを好まないでおるものがあるくらいでありますので南鮮では今その当時のやり方について不満であることはこれは無論たくさんあるでしようけれども、それじや共産主義のほうがいいのかということになつたら恐らくもう圧到的大多数が共産主義に反対であるということは少くとも考えられるのであります。
 それから最後のアメリカが早く手を引いたほうがいいということ、これは私はアメリカ人としてはやはり一般的な考えだろうと思います。それでありまするから、この朝鮮事変の前にも国際連合の監視委員に任せて、アメリカの軍隊は朝鮮から速かに撤退したようなわけでありまするし、今でも名誉とか、威厳とかいろいろの形に言い方はありましようけれども、心配がなければむしろ早く撤退したい。そうしてアジアのことはアジアに任せたい。これはもうアメリカ人の一般的な気持だろうと思います。ただ朝鮮事変以来の情勢の変化、元来これはアメリカの政府の方針としては朝鮮までがこの本当のアリユーシヤンから来ている防禦線に入つておつたものかどうか。これは中国白書というものを見ましても、朝鮮はその当時入つておらなかつたように書いてあります。それが時代の変化に伴いまして、これはどうしても朝鮮の三十八度線は少くとも守らなくてはならんという非常な決心で出て来たのでありまして、政府としては将来の心配の種、つまり再び北鮮側が南鮮に南下して来る、そうして共産主義化するというような、こういう心配がない限りにおいてはむしろ速かに撤退ということは考えておりましよう。又今でもあんなところで戦をしていることを好まないのは人情の然らしむるところと思います。けれども、政府の方針としてはいやでも仕方ない。これは世界の全体のバランスの大きな狂いになる問題にならないとも限らないという見地から飽くまでも所期の方針は貫徹するということで政府としては進んでいると確信しております。又この趣旨のことはトルーマン大統領も言明されておりまするし、アチソン国務長官も言明されているのでありまして、気持はそうであろうとも、政府の方針はやはり三十八度線は少くともはつきり守るということで貫いており、従つて如何にして士気を維持し、そうして所期の目的を達成するかということに大いに考慮を払つている。こう私は考えます。
#46
○吉川末次郎君 外務大臣に更にいろいろ堀り下げて関連したことをお尋ねして御答弁を得たいのでありまするが、本法案の審議から余りに遠ざかることは本意でもありませんし、外務大臣お急ぎのようでありますから、外務大臣に対する質問は一応これで中止いたしておきます。それで今まで当局から御答弁のありましたことに関連したことでありますが、次に御答弁を得たいと思いますることは、対馬の治安の状況が現在どうなつているかということであります。これは大橋さんか、或いは海上保安庁の代表者のかたから御答弁を願うほうが適当であるかと思いますが、いずれにしても満足する御答弁を得たいと思うのであります。一昨年でありましたか、対馬へ実は治安の調査に参つたのでありますが、当時参りましたときには極めて平穏でありまして、又同島に居住いたしております朝鮮人の動静等につきましても対馬における警察或いは島庁等の諸君から極めて安心すべきものであるようないろんな話を聞いて帰つたのであります。ところがその帰りの汽車の中で朝鮮事変が突発したというところの新聞の二ユースを手にして驚き入つたような次第なのでありますが、この朝鮮との関係においていろんな点から対馬の現在の治安の状態というものは一応国民の知つておかなければならないことであるかと思いますので、具体的にその現在の状態を、及び朝鮮事変発生後の状況と現在の状態を一つ御答弁を願いたい。
#47
○政府委員(柳沢米吉君) 対馬の状況でございますが、全般的な問題ということに相成りますと、担当が違いますので詳しく御答弁申上げかねるのであります。海上保安庁で関係しております方向から見ました御答弁をいたす、かように御了承願います。大体対馬におきまする状態は、朝鮮事変以前におきましては相当の密出入国者が入つて、朝鮮事変が勃発いたしましてから暫らくの間は、事変のためによる朝鮮沿岸の警戒というものが相当強化されてあつたためか、非常にその数が少くなつたのですが、その後におきまして又相当にこのルートによりまする密出入国者が殖えて参つております。朝鮮から渡りますルートといたしましては一番便利なルートでございます。この方面を辿つて来る密出入国者というものは、一番便利なところであります。従いまして海上保安庁といたしましては、ここに特別な模範的な保安部を厳原に設置いたしまして、ここに船舶その他を相当に増強いたしました。これによつて国警その他と緊密な連絡をとりまして、これらの密出入国その他に対して備えているのであります。以前におきましては、御承知の通りこの対馬の沿岸の或るものには非常に海岸が出没しておりまして、非常に、いわゆる船着の便利な場所が割合に多く、而もこれらを、津々浦々に対して船を配置するということは非常に困難でありまして、併しながら現在におきましてはこの基地を三ヵ所ばかり増加いたしまして、ここに割合小さな船を配置いたしまして、常にそこに配置しておきまして、その附近を警戒するとかいうようなことに対しましてはこの船を利用してやつているというわけでございます。
#48
○吉川末次郎君 海上保安庁から主として海上の保安の問題についてのみ御答弁があつたようでありますが、島内の状況はどうなつているか、島内におけるところの朝鮮人の数、或いはそれと朝鮮内地の北鮮系朝鮮人との政治的関連性というようなものについてのインフオーメイシヨンを一つ我々にして頂きたいと思います。あなたでなければほかのかたでも結構でございます。とにかく政府を代表して……。
#49
○国務大臣(大橋武夫君) 御質疑の点につきましては他の機会におきまして、国家地労警察その他関係官庁と連絡いたしまして、十分に調査してお答えしたいと思います。
#50
○吉川末次郎君 すぐ御答弁を得られなかつたことは非常に残念でありますが、それでもう一つ、実は先ほどのメーデーの問題に返えるのでありますが、あのメーデーの事件を通じまして、私は一番国家のために憂いといたしておりますることは、ああしたメデー事件を起すに至りまするところの共産党の考え方というものについての十分な御理解が、吉田首相初め現内閣の閣僚諸君がお持ちになつておらんということから、いろいろな反共ということをば内閣の一枚看板にしておられまするけれども、相手方がどういう理論体系の上に立つて、どういう世界観の上に立つて、どういう経済学的な学説の上に立つて、どういう政治学説の上に立つて、どういう国家学説の上に立つて、どういうその哲学的な、或いは認識論的な見解の上に立つてああいうことをやつておるのであるかということの、私は十分な御理解が総理大臣その他の閣僚諸君にないということから、その反共対策が常に的を外れておるということが非常に大きな現政治、現段階における日本の政治の欠陥であるということをまあたびたび申して、憎まれ口のようなことを言つて来たのでありますが、そのことにつきましては見解は変りませんが、くどく重ねて申すことはいたしませんが、ところが総理大臣である人もこれはわからんのでありまするから、その日その日を筋肉労働しておりまするところの労働者大衆の諸君がわからないのは、これは当然であります。従つて共産党の持つておりまするところの政治理論体系の一つの現われとして、当然にいわゆるマルクス主義、或いはマルクス・レーニン主義、或いはマルクス・レーニン・スターリン主義から或いは起つて来るのであるけれども、そのことがよくわからない。
 そうして共産党は共産党的な常套的戦術によつて、目的のために手段を選ばないのでありまするから、町角ごとに張つてありまするポスターは、これは嘘八百を絶えず言つておることが多いのであります。彼らの理想のために手段を選ばずして、主義の見地から、その主義実現のために、時と場合に応じて千変万化するところのいろいろな戦術をとつておるのでありまするが、それに対するところの十分なる判別力がない。それがこの間のメーデーにもやはり現われておるのであります。で、マルクス主義の革命理論の立場からいたしまするならば、第一の対象においておりまするものは、言うまでもなくそれは労働者の団体であります。即ち近代プロレタリアの労働組合であります。労働組合の団結力を通じて、そうして共産主義革命を実現するということを戦術の中心目標においておるのでありまするが、その労働組合が戦前におけるがごとく、組織化されたる労働者の数が十万にも満たないというような微弱なときにありましては、その労働組合がどのようなことをやつておりましたところで、それは私は大した問題にはならんと思います。ところが今日の組織化されたる労働者の数は、或いは曰く五百万、或いは曰く六百万というような横断的な、一たび労働組合が団結して蹶起するならば何事か成らざらんというような、大きな社会的な実力を持つようになつておりまするときに、その組織労働者の殆んど大部分というものは、嘘八百を、目的のために手段を選ばない立場からポスターに書いたり、絶えず宣伝したり、演説したりしておりまするところの、この共産主義の革命戦術に対する十分な批判力を内閣総理大臣と同じように持たんのであります。で、この間も京都に行きまするというと、京都では、東京ではともかくもあのメーデーの騒擾事件というものは、メーデーの大会をやつた示威行列の大部分の主体的な組織労働者の勢力から離れて、散会後別動隊が八千或いは一万というようなものが、いわゆる宮城前広場へ、或いは彼らの言う人民広場へ集まりまして、ああいう国内戦争的な、内乱的なことをやつたのでありますが、京都に行きますというと、京都に集まつたメーデーの労働者の数は三万と言われておるのでありますが、あのような分れないで、そうして二条の離宮に集まつたところの労働者が行列して一市中を練り歩きまして、そうしてその示威行列の途中々々において、或いは交番を破壊したり、或いは市役所の戸口を破壊したり、いろいろな騒擾をやつておるようなわけなのであります。でそれは集まりました労働者の一割ほかないのです。それをやつた者は、即ちその主体的勢力は朝鮮人と共産主義者と共産学生であります。あとの九割はただそれを傍観しておるのであります。彼らが傍観しておるというところのインデイフアレントな態度をとつておるということこそが、私は現下におけるところの日本の最も大きな政治問題であり、これを治安の対象として考えましたときにも最も大きな問題であるというように私は考えるのであります。そういうことについて政府当局はどういうふうに考えておられるかという御答弁を私は得たいのでありますが、その例といたしましては、私は名は申しませんけれども、有力なるところの労働組合の代表として国会へ選出されておるところの議員諸君がある、その議員の人が、あのメーデーの騒擾事件というものは、当局が人民広場即ち宮城前広場を会場に許さなかつたからして起つたのだ。京都に行きますと、京都ではやはり御所を、初め蜷川知事も御所がよいということを言つておられた。ところがそれを当局が許さないで二条離宮前でやれということにいたしましたから、やはり私たち調査団の前に来たところの総評の代表者等はやはりそれを唯一の理由にいたしておるのであります。私は曾つて宮城前広場をやはりメーデーの会場にすべきであるということを委員会でも言つたのでありますが、私はそうさすべきであると今でも考えております。併しながらあの会場の変更を命じたからあの内乱的な暴動が起つたのであるというような考え方は、これは現実から全く遊離したところの共産主義者が言うところの一つの言いがかりであります。それは共産主義者が言うておるならばよいのであります。ところが若し共産主義者でないと自分で思つており、又共産主義者でないということを標榜しておるところの人がその通り考えておりますならば、これは由々しき私は日本の政治の空白である。非常なるところの無智である。日本の労働組合の恥ずべきところの行為であると私は考えておるのでありますが、私のそういう考え方に対して当局ほどのように考えておるか一つ御答弁を願いたいと思うのであります。
#51
○国務大臣(大橋武夫君) 吉川委員の仰せにつきましては一々肯綮に当るところがございまして、メーデーにおきまする騒擾事件というようなものは、これは全く労働者の祭典でありまするところのメーデーを学生、朝鮮人又自由労務者、こうした一部の共産主義者が暴力によつて破壊をしたというような行動でありまして、これは政府に対し、或いは駐留軍に対する行動であると同時にそれ自体が労働者全体に対する裏切的な行為である、こう言わざるを得ないと存ずるのであります。京都におきまする事件ついては私詳細を承知いたしておりませんが、只今承わつたところではやはり同様なものであると思います。併しながらかような事態が決して全国的に同様な傾向を持つて進められたとは限らないようでありまして、東北の或る炭鉱の中心都市におきましては健全なる労働者諸君が実力を以てメーデーを守るのだ、一部の者が暴動或いは暴力的手段、こういうものによつてメーデーの秩序を破壊しようというような行動があつたならば、実力を以てしてもこれを叩きつぶすという固い決意を以て無事平穏裡にこの労働祭典を終つたという事実についても聞知をいたしておる次第でございます。かくのごときは案外遅れておると見られておりますところの東北の都市における労働者諸君がむしろ正しい労働運動の理解力のあるということを示すものであると、こう存ずるのでございまするが、恐らくこうした健全な傾向が漸次労働者諸君の間において支配的になるであろうということを期待をし、又確信もいたしておるような次第でございます。
#52
○吉川末次郎君 極めてイージー・ゴーインジな安価な見方の御答弁を得まして、ますます私は日本の将来のために現吉田内閣では駄目だということを痛感せざるを得ないのであります。この恐るべき五百万、六百万の組織労働者が共産党の戦術に乗ぜられて、いわゆる共産主義者でないということを標榜しながら結果においては共産主義に同調する結果を来たしておる。即ち容共主義の結果を来たすようなことをしているというようなことについて政府当局又みずから十分な御知識がないためにそのような安価な答弁に現われてるような御見解しかお持ちにならないということを非常に私は遺憾とするものでありますが、これ以上はあえて申しませんが、最後にそれではこれは法文に関したことでありますが、第六十八条に武器のことが書いてあつたと思われるのであります。六十八条に「保安隊及び警備隊は、その任務の遂行に必要な武器を保有することができる。保安官及び警備官は、その任務の遂行に必要な武器を所持することができる。」と、こういうことが書いてありますが、その必要な保有又は所持することができるところの武器の具体的な内容を一つ、今まで多少お話がその他の機会にあつたかと思いますが、一つ御明示を願いたいと思うのであります。或いは私たちの合同委員会から離れて内閣委員会だけに御明示があつたかとも思いますが、毎日新聞及び朝日新聞等の数日来の新聞が報道いたしておりまする例えばアメリカから軍艦を天十隻借りる、フリゲート艦十隻、巡視艦五十隻を借りるというようなことが書いてあります。そうして連合艦隊を組織する、そうした今お尋ねいたしましたような武器については参議院の内閣委員会に資料として提出するということを……これは朝日も書いておるのでありますが、これはすでに資料として参議院の内閣委員会へ御提出になつたのかどうか、なつておりまするならば我々にも頂きたいのでありますが、まだ御提出になつておらない、こういうならばその提出されるところの資料の内容をこの機会に明示して頂ければ大変結構だと思います。出ておりますか。
#53
○委員長(河井彌八君) それは差上げます。
#54
○吉川末次郎君 そうですか、それではこれは口頭を以ての御答弁は省略さして、もうお聞きしないでも結構であります。
 それでは最後にこの衆議院から廻つて来ました修正議決についてでありますが、第十六条の第六項に「長官、次長、官房長、局長及び課長は、旧正規陸海軍将校又は三等保安士以上の保安官若しくは三等警備士以上の警備官の経歴のない者のうちから任用するものとする。」と、これはこういう将校の経歴のない者に限られるわけなんですか。それについてちよつともう一度御答弁願いたいと思います。
 それら衆議院の修正理由のようなものを一つ御明示を願いたい。
#55
○国務大臣(大橋武夫君) 第十六条の第六項におきましては政府原案におきましては『旧正規陸海軍将校又は三等保安士以上の保安官(以下「幹部保安官」という)』こう言つておりますが、これらは制服職員でございます。制服職員の幹部たる経歴を持つておりまする者は長官官房及び内局におきまする幹部の地位につくことを制限するというのがこの趣旨なのでございます。而して衆議院におきましてはこのうち「旧正規陸海軍将校又は」という字句を削除しておられまするが、これは旧正規陸海軍将校のうち一部の人々は保安官又は警備官として採用せられつつあるわけでございます。これらの採用せられた者は当然三等保安士、三等警備士以上に相成りましたならば内局の局課長には就任できない、こういうことになるわけでございまするが、この規定のできておりまする趣旨は何分にも軍隊に類似をいたしておりまする実力部隊の官吏でございまするから、これはややもすると実力を持つているということによりまして政治政策を支配するというような弊害に陥りやすい、これを民主主義を守りまするために予防しようという趣旨の規定であるわけでございます。従いましてそうした意味において旧正規陸海軍将校がかような地位につくということはすでに保安官、警備官について制限のありまする以上は実際上さようなことは行わないという趣旨であることは解釈の上からも当然である、こう考えられるわけでございましてかたがたはつきり旧正規陸海軍将校というものをここに現わしまするというと、旧時代におきまする一つの経歴というものを理由といたしまして殊更に差別待遇をなすがごとき感じを与えるということは今日の政治段階から見まして適切でない、実行によつて効果を挙げれば、必ずしも法的に制限する必要はなかろう、こういう趣旨で削除されたものなのでございます。
#56
○吉川末次郎君 私の先ほど申しました質問の言葉が多少読み違いをしておりましたので、間違つておつたかと思うのでありますが、結局我々の手許に廻されておりまするところの修正案によりましては、左のほうに黒線が引いてありまする「旧正規陸海軍将校又は」という言葉は、これは削除されたわけなんですね。だからして只今の御答弁によれば、旧陸海軍正規の将校も長官、次長、官房長、局長及び課長になれるということに原案より変つたわけですね。
#57
○国務大臣(大橋武夫君) これは原案の趣旨を否認するという意味で変つたのではなくして、その方針は結構であるけれども、法律上これを明示することは差別待遇の感じを与えるから適当でなかろう、実行によつてさような趣旨を全うすればよろしかろう、こういう意味で削除されたように考えております。
#58
○吉川末次郎君 これはどこかの最近の新聞であつたと思いますが、非常に大きく取上げて記事を書いておつたのでありますが、私も全く只今の大橋さんの御答弁の如何にかかわらず、文面よりいたしまして、極めて重大なる政治的事実を包蔵しておるものであると考えるのであります。只今の御答弁によりまするというと、原案によるがごとく、昔の軍人はこの保安庁の長官や次長や官房長、局長、課長等の重要幹部にはしないものであるけれども、はつきり法律の中へ書くということは差別待遇をするようであるから除かれたのであるというような御答弁でありますが、これは私は現実的に甚だ肯けないところの御答弁ではないかと思います。又言論機関等も言つておりまするように、そうした私は御答弁が実際の事実に符合したものではないと失礼ながら私は考えるのであります。むしろ端的に申しまするならば、この保安庁の幹部には大いに昔の軍人をば用いようという腹で私はこの修正が行われたものであり、又政府が同意せられたものである。衆議院で修正と言いましても、衆議院の修正して来るということは、即ち絶対過半数を占めているところの与党は自由党なんでありまするから、政府との意思関連性においてそういうことが行われたことは、私は明白であると思います。又大橋さんの個人的な問題等も、新聞はゴシツプ等を書いておりまするが、そういうことは私は大橋さんの人格を信頼するから申上げませんが、併しとにかく昔の軍人をここに大いに用いようとしておるということは、これは実際だと思うのであります。これは大きな問題であります。これは言うまでもなく、民主主義の諸国家におきましては、日本の憲法のようなものを採用しておらんところの軍を持つておりまする国においても、陸海軍の大臣、軍部大臣というようなもの、長官は、本当の軍のいろいろな仕事は職業的な軍人にさしても、これを政治的にリードするところの陸海軍大臣というものは、シビリアンで、文官で以てさしておるというのが、これが民主主義国の例であると思うのであります。いわんや平和主義を建前とし軍を放棄したところの憲法を世界に率先してとつておりまするところの日本が、ここに明らかに、政府がどのように御答弁になりましようとも、これは私たちは必ずしも共産党の諸君が言うような警察予備隊や保安庁に対する見解と軌を等しくいたしておりません。私は必ずしも警察予備隊は絶対不必要であるというような見解に我が党は立つものではありませんが、併しながら、この委員会においてもたびたび問題になりましたように、これが解し方によりましたならば、昔の陸海軍に当るところの機能を持つたものである、或いは新らしい陸海軍であるということも確かに言えるのであります。これは実態であります。ところが民主主義の諸国家においては陸海軍大臣といえども文官を以て必ず当てるということをいたしておるにもかかわらず、軍備を放棄したところの日本の国がこういうような馬鹿げたところの修正をいたしまして、そうしてわざわざ旧軍人をここに復活さして、実際上の終戦後における日本の陸海軍を昔のああいう軍人にリードさす、再び指導さす、統率さすというようなことを考えておるということは、私は由々しき大きな問題であると考えるのでありまして、全参議院議員、特にこの審議に当られるところの内閣委員の諸君がこの点を非常に重視して、私は特に御研究を願いたいと思うのでありまするが、私はこの修正に対しては絶対に反対しなければならんと考えております。これは旧軍人の復活をいたしたものである、そうして又民主国家においては陸海軍があるところでもこれは文官で当てるべきものであるという見解と同様の意味において、殊にこの日本の新憲法下においては、こうしたところの規定をここに置くということは非常な弊害を醸すものであるという見解に対する政府当局の御見解をもう一度一つ承わりたいと思うのであります。
#59
○国務大臣(大橋武夫君) 言葉は非常に適切ではないかも知れませんが、類似の組織でありまするところの軍隊というものを頭に入れた場合におけるいわゆる軍部大臣文官制というものは、これは民主主義国家における常識でございまして、現内閣といたしましては、この組織における一つの鉄則であると、こう考えておるわけでございます。この見解は私の個人的意見として表明いたしたものではなくして、閣議において相談をいたした結果を政府を代表してお答えをいたしておるものと御了承を願います。
#60
○吉川末次郎君 すでにこの問題について、旧軍人のいろいろ復活が名を挙げて新聞等には伝えられておるのであります。政府を代表しての御答弁であるということでありまするが、明らかに私は詭弁であると思います。今のような御答弁は……。それで私はもう一度御質問いたしたいと思いまするが、然らば今日まで警察予備隊を、増原君が長官になり、林君が次長でありますか、何か重要な職に就き、今この海上保安庁のほうは誰がなつておられますか、失礼ですが今私名をちよつと失念いたしましたが、前に大久保君がやつておりましたが、ああいうシビリアンの人が現在のようにやつておるということによつて、そこに弊害がある、或いは欠陥がある、こういう不便があつたというようなことがお考えになつておることがあるならば一つ言つて頂きたいと思います。
#61
○国務大臣(大橋武夫君) 御質問の趣旨がよくわからないのでございまするが、この保安庁の機構は、長官、次長、官房長、局長及び課長、即ち内局の幹部というものは制服職員を任命しない、こういう趣旨なのでございます。で旧正規陸海軍将校というものも、自然その趣旨から言つて、ここへ任命するということは適当ではないと思いまするが、併しながらそれは他の理由でございまして、この六項において警備官、保安官の幹部であつたものを任命しないというのは、この内局というものの使命は、これらの幹部によつて統率されまするところの部隊を管理するという使命を持つておるわけでございます。従いまして管理される部隊の幹部が、管理をする内局の幹部になるということは、いろいろな弊害があろうという趣旨でこの規定を設けたわけなのでございます。従いましてこれは現在及び将来における保安隊、警備隊というものを基礎にいたしまして、それを管理する機構というものを考えた場合に、意味があるわけでございまして、その人の前職が何であつたかというようなことはおのずから意味が違うと思います。で、私が旧正規陸海軍将校をこれらのポストに就けるべきじやないというのは、それらの人々のうちには新らしい民主主義的な警備隊、保安隊を管理する適当な人が得がたかろうという前提の下に申しておるのでございましてこれは適任者がないという意味において、旧正規陸海軍将校はこれらの仕事に就くのが適当でない、こういうことになるのだろうと思います。これに反しまして保安隊、警備隊の幹部たる経歴を持つておるものは、管理をされるところのその部隊の幹部が、管理をする側の重要な幹部になるということになるわけでございまするから、これは資格上……本質上資格を制限するというのがいわゆる民主主義的なシビリアン・コントロールの趣旨であると思うのであります。そういう趣旨でこの修正に同意をいたしたのでございます。
#62
○吉川末次郎君 ちよつと私頭が悪いのだろうと思うのだけれども、わかりにくいのですが、あなたのその御答弁が……。結局この修正で軍人が長官や次長や官房長や局長、課長になれることになつたのでしよう。
#63
○国務大臣(大橋武夫君) 法律的にはなれることになつております。併しながら……。
#64
○吉川末次郎君 政府の意見ではそうじやない……。
#65
○国務大臣(大橋武夫君) 政府の意思は、今直ちにやれという考えにはならないし、将来そうしようという考えでやつておるわけではないのであります。併しそれは法律上の資格として制限をすべきであるという意味で、陸海軍正規将校を内局の局長、課長にしないというのではなく、これらの人の経歴から見まして、適任者はなかろうという前提の下に不適任であろうという意味でしない、こういう考え方であります。これに反して保安官、警備官の場合におきましては、適任であるとないとにかかわらず、理論上すべきじやない、こういう意味であります。
#66
○吉川末次郎君 そうすると、私が質問のうちに言つておりまするようにですね、シビリアン・コントロールでなければいかんという原則は政府も考えていらつしやるわけなんですね。それならば何もそういう修正に同意する意思表示を政府がおしになる必要はないじやありませんか。やはりシビリアン・コントロールでなければならんという原則を貫かれたらどうです。
#67
○国務大臣(大橋武夫君) 誠に御尤な御質問でございますが、これは私もいろいろ考えているのですが、シビリアン・コントロールの原則というものは、これは実力を持つた部隊というものは飽くまでも政治の下に支配されるべきである、従つてそういう政治が部隊から独立して、これを支配する側に立つということを完全に保障いたしまするためにシビリアン・コントロールという制度ができておるわけでございます。然るに旧軍人というものは、保安隊、警備隊とは理論上関係ないものでございます。旧陸海軍は一度消滅いたしたものでございまして、これはすでに歴史上の事実となつており、今日存在する警備隊、保安隊というものとは何ら関係のないものでございまするから、この陸海軍の正規将校というものは、保安隊、警備隊と同様に政治に支配されるとか、政治を支配するとか、そういつた問題を生じないわけであります。そこでここでは現実に支配服従の関係を要請されるところの保安隊、警備隊というものだけを眼目において、シビリアン・コントロールということを規定すればよろしかろう、法律の規定としては、これによつて十分に保障される、こう考えておるわけであります。であとは旧軍人を局長、課長にすることが適当であるかどうかという一つの政策上の問題として残つて来るわけでございます。これはさような経歴から見まして、多くの場合適任者を得がたいであろう、そういう人を持つて来ることは適当なものでない、こういう問題であります。一つは法律構成の問題でありますし、一つは政策の問題でございまして、その二つを原案においては正確に区分せずして、一緒に規定しておるということは明らかに理論上の誤まりでございまするから、従いまして政策の問題は政策の問題、法律上の問題は法律上の問題と、ここには法律上の資格条件だけを限つて規定するという意味で、この修正に同意をいたした次第でございます。
#68
○吉川末次郎君 それはどうも詭弁を非常に弄していらつしやると思うのですが、法律の文面だけでは、それは私が問題にしていることは現実的に私把握してもらうことは困難だと思うのです。なぜシビリアン・コントロールが必要であるか、陸海軍といえども、これを支配するところのものは軍人であつてはならないということは、それで国家権力を代表しているものは、まあこのマルクス主義者たちの言を以てすれば、即ち警察と軍隊、この軍隊は警察に比べれば更に優越するところの権力機関であります。又現在の警察予備隊でも、或いはこの保安庁によるところのいろいろなものでも、これは警察力で内乱等をば抑えることができなかつたときの予備軍として、リザーヴとしてこれはあるのでありますから勿論警察よりも優越したところの内容を持つていたり、或いは権限を持つていたりするわけであります。で法律の上でどうだと言いましようとも、シビリアン・コントロールでなければならんということの原則は、権力の、最大の権力を持つているところのものが、即ち世の中を、国家を支配するようになつてはならん。即ち武力を持つているものが、その政治を支配してはならんし、社会を支配させてはならんということの見解からそのシビリアン・コントロールの原則というものは深く保持しなければならんという建前が生れて来るのでありますから、あなたのおつしやつていることは、私が今問題にしていることに符合しないこと当然であると考えます。だからどうしてもこれは飽くまでもシビリアンで長官や次長や官房長、局長があるべきものであつて、旧軍人のようなものにこの陸海軍に当るところの保安庁や海上保安局の幹部としてその指導力を与えるというようなことは、私はやはり絶対にいけないのじやないか。これはまあその点になりますると、意見の相違になるかも知れませんが、なおお述べ願うところの御答弁がありましたならば、述べて頂きたいし、これ以上は意見の相違として、これでも結構だと思います。ただ併し断固としてこれには絶対反対であるということを申上げます。
#69
○国務大臣(大橋武夫君) これは意見の相違ではなくして、私の説明が十分でないという(吉川末次郎君「いや、あなたの肚はわかつているよ」と述ぶ)ところから生ずるのじやないかと存じます。それは私の考えといたしましては、今日の日本において、シビリアン・コンートロールという意味を、シビリアンというというものを如何に理解すべきかということが先ず根本になるわけなんでございます。で私の見解を以ていたしまするならば、陸海軍が全く消滅した今日においては、すべての国民はシビリアンである。
#70
○吉川末次郎君 そうです、法律的には皆シビリアンです。
#71
○国務大臣(大橋武夫君) そうです。
#72
○吉川末次郎君 実質的に考えて頂きたい。
#73
○国務大臣(大橋武夫君) そこで法律の要請としてのシビリアン・コントロールということは、一つには法律的な面でございます。法律上はこの法律的な視野から規定するということが先ず普通の行き方だろうと思います。そこで今日旧軍人といえどもシビリアンになつてしまつているという場合において、この保安庁の機構を前提としてシビリアン・コントロールというものを考えまするというと、これは保安官及び警備官、即ち部隊の制服職員をシビリアンにあらざるものと、こう見るのが純理だろうと思います。そこでこの保安庁法は永久に続くべき法規でございますからして、そういう先々のものを考えまして一応シビリアン・コントロールという場合には、制服職員に対する観念として、シビリアンという観念を打出したものが修正した条文でございますると同時に、吉川委員の仰せられました、旧陸海軍正規将校というものは、これは法律上はシビリアンであるかも知れんが、併しこれを新らしい意味におけるシビリアン・コントロールのその組織の幹部とするのに適当であるかどうかという問題は又別途にあり得るとも考えたわけでございます。
#74
○吉川末次郎君 実際上の職業的な軍人だという見解です。私はこれらはプロフエツシヨナル……。
#75
○国務大臣(大橋武夫君) この点は実質的な問題であつて、法律的な問題ではないと存じます。従つてかような実質的な問題は、即ち法律改正の問題にあらずして、一つの政策的な問題であるということが言えると思うのでありますが、その政策を強行する方法といたしまして、確固たる政府の方針だけで満足するならば更に一歩を進めまして法律上禁止するかという二つの考え方があり得ると思います。で、我々といたしましては、法律上禁止するということも、決して理論上不適当であるとは考えません。重要なる政策ならば、その政策それ自体を法律として国民の前に約束しておくということは、これは適当な方法である場合もあるからなのでございます。併しながら今日の段階において政府はシビリアン・コントロールを守るという趣旨から行きまして、旧陸海正規将校というものを任用することは適当でないということについては強い決意を持つているのでございまして、これは如何なる障害に対してもこれを守り続けるべきである、と同時に一面旧正規将校というものが、今日社会のいろいろな面におきまして、ややもすれば差別待遇をされているかのごとき感じを与えているということも事実なのでございまして、今日国内治安の面から考えましても、国際情勢の上から考えましても、国民の間に融和一致を図るということが最も必要なことではないか、こういう見地からいたしますると、政府の決意だに固ければ実行できるものを、政府がその決意について自信を欠いたということのために、殊更法律を以て差別待遇をしなければならんということになりますると、これは政府の責任にもなるわけでございまして、政府はこのシビリアン・コントロールを守りつつ、同時に国民の差別待遇という観念をできるだけ払拭いたしまして、この非常のときに当りまして、国民がお互いに一致して新らしい日本を建設する、こういう上から申しましても、この字句を外すということが政治的に賢明な措置であると同時に、他面において考えられますところのシビリアン・コントロールを守るという固い政策は、これは政府自身の責任においてどこまでもしつかり守り続けるというその決心があれば、両々弊害もなく又必要なことは政府の熱意によつて守られる、こういう状態を作り出すわけでありまして、正規陸海軍将校という字句を削除いたしましたことは、むしろ政府がこの政策を法律の保障なくして守り得るという固き決意あればこそこれに同意をいたしたのであります。こういう次第なのでございます。従いまして私の見解といたしまして、吉川委員の御見解と意見が相違するというのではなくして、むしろ全く意見が一致をしている、而してその意見の中に盛られた政策をどこまでも法律の力を借りずとも政府みずからの熱意によつて守り得るという自信を持つている。こういうふうに申上げるべきだと存ずる次第でございます。
#76
○吉川末次郎君 私は御答弁の趣旨には反対であります。従つて衆議院のこうした修正は非常な恐るべき改悪と考えております。これ以上は意見の相違になりますからこれで一応私の質問は終ります。なおほかに細かい点でいろいろ質問したい点もありますけれども、内閣委員のかたの良識に委ねまして、私の質問は一応これで打切ります。
#77
○栗栖赳夫君 今の点をもう少しこう長官に言つて頂くと又差点が出て来るのじやないですか、ちよつと申上げたい、長官の御意向をこういうように聞いていいかということですね。結局この旧正規陸海軍人というものは、憲法の前では皆シビリアンですから、差別待遇をするということは憲法上の問題が如何かという問題が起る。できるかどうかということはいろいろ問題を考えて見なければならん。で、そういう問題を抜きにして、政治の力でこのシビリアン・コントロールというものは実現しようというお考えであるか、吉川委員のほうはそれを更に法制の上に現わさんといかん、この点において差があると、こう解釈すべきじやないかと思うのですが、これは後に我々のほうの問題にもなるのですから一度お尋ねしておきたいと思います。
#78
○国務大臣(大橋武夫君) 私のお答え申上げたいと存じました点は、丁度御指摘のような趣旨でございます。
#79
○松原一彦君 私もよくわかりませんから念のために伺つておきますが、憲法で「内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、文民でなければならない。」と、こうある。この文民の定義が今の御意見によるというと旧陸海軍人も又文民である。やはり将来内閣総理大臣その他の国務大臣も旧陸海軍人の前歴のある人から出ることは予想せられますが、そういうふうに御解釈なさいますか。
#80
○国務大臣(大橋武夫君) 私はこの保安庁法の規定の趣旨から申上げたのでございまして、只今の憲法上の問題につきましては、法務府と打合せの上で別個の機会に申上げたいと思います。
#81
○松原一彦君 一体日本に文民以外の軍人はないはずです。文民に対するものはこれは軍人でありますが、大橋国務大臣は保安隊、警備隊……、或いは保安隊も入つておりますか、これは皆文民でない、文民でないとすればこれはなんなんでございましようか。その性格はどうおとりになるのですか。
#82
○国務大臣(大橋武夫君) 保安官、警備官ですか。
#83
○松原一彦君 そうです。
#84
○国務大臣(大橋武夫君) シビリアン・コントロールという言葉を申しましたのは、これは厳密に法律的な意味で私が申しているのではないのでございまして、保安庁法にはシビリアンという言葉は書いてございません。保安官、警備官以外の者、こう書いてあるだけでございます。従いまして先ほどは御質問に関連いたしまして御理解を得やすい方法としてシビリアンという言葉を使つたわけでございますが、私が法律的な意味で正確にあの言葉を書き改めさして頂きまするならば、保安官、警備官以外の者、こういうことだと思うのでございます。で、憲法上の文民というものと、先ほど私の申しましたシビリアンという言葉とは従いまして全く別の考え、観念でございます。
#85
○松原一彦君 大分その辺が混乱しているようでありますが、さつきからの御説明を聞いているというと、この保安隊、それから警備隊は文民でない一つの特殊のものという印象を受ける。で、併し昨日来の御意見でも、保安隊も警備隊も共にこれは軍隊ではない、即ち警察隊である、こういう御説明であつたのでありますが、そうするというと警視庁に勤務したものも同格だと私は思う。警視庁に勤務したる警察官も又そういう意味から申せば、何もここに挙げられたる三等保安士以上、三等警備士以上の者と変ることはないわけなのだ、本質的には。何が故にこれを文民でないところのものと区別して、長官、次長、官房長等には採用しないのであるか、そうなりまするというと、警視庁で警視総監を勤めておつた者も又その意味から申せば同格でありますから将来長官、次長官房長にはなられないのでありますが、さように解釈してよろしうございますか。
#86
○国務大臣(大橋武夫君) 私の申上げましたのは保安庁法第六条に関する限りのことを申上げておつたわけでございまして、保安庁法第六条で三等保安士以上の保安官、或いは警備官の経歴のない者、これを便宜シビリアンとこう言つて先ほどは説明いたしたのでございますから、これは憲法上の文民という言葉とは全然無関係な、ただ十六条を御理解願うための便宜の用語として御了承願いたいのでございます。もとより憲法上の意味におきましては文民であることは当然でございまして、保安官の経歴のある者が憲法上文民でない者として扱われるということは絶対にあり得ないことと思うのでございます。ただ少くとも十六条に関する限りにおきましては十六条のこの内局の幹部というものは実力部隊のコントロールをしますところの、管理するところの機関でございますから、これは直接には政府を代まする国務大臣でありまする長官の補助機関でございまして、実力部隊の代表者ではない、そういう意味ではつきりここで区別をする、これが民主的な運営を可能ならしめ、民主主義政治を守る上から言つて必要であろう、こういう趣旨であるわけであります。併しこれは憲法上の文民である点とかかわりないことであります。
#87
○松原一彦君 それでまあ自然ここに落込んで来るのですね。これが軍隊なんですね、本当は。本質は軍隊なんですよ。問うに落ちずして答えるに落ちて、これは軍隊であるからシビリアン論が出て来て、これは別個のものに取扱わざるを得ないことになつてしまつたのです。警察は警察であつて、これはシビリアン、ここにお挙げになつたのは軍隊、陸海軍であるから、その将校は将校以上にあつた者、つまり少尉でしようが、少尉以上にあつた者はその支配者にはすることでがきないという近代民主国家の例をとらざる得をなくなつてしまつている。私は軍隊を置くことが悪いともいいとも言うのじやないのです。無理にこじつけて、皆さんがたはまあ法律の大家ですから法理的に言うてそういうふうなことになるのかどうか私は実はいぶかつておるのでありますが、こじつけて軍隊でないと言い通しておられましても、事実はこういうふうに現われて来るのであります。そうなりますとさつき吉川氏の質問に対して今日元軍人はシビリアンである、政治的にはそれが適任であるものがなかろうと思うというお話で、適任であるものがあつた場合においては採用するものと心得てよろしうございますか。
#88
○国務大臣(大橋武夫君) 採用するほどの適任はないという考えでございます。(笑声)
#89
○松原一彦君 それから先は水掛論になりますが、すでに採用するお心組があつてのことだと吉川君は解釈いたしておるのです。一般国民も又さように解釈をし、新聞も又さように伝えておる。陸海軍がない今日において過去の経歴によつて差別することは不適当であるという誠によい口実を見出して、その下に適任者をお求めになつておるかのごとくに新聞は報じておりますが、今のお話ではないとあなたが言い切つていらつしやるが、少くともあなたの御在任中においては旧陸海軍人の経歴あるものは御採用になりませんでございましようか、それをお尋ねいたしたい。
#90
○国務大臣(大橋武夫君) ここに規定してあるものに、旧正規陸海軍将校の採用は断じていたしません。
#91
○三好始君 只今交されておる質疑応答を拝聴しておりますというと、この問題は結局政府の立場には全く理論がないということにならざるを得ないのであります。原案にも理論がありませんし、修正された結果においてもそこに何も理論がないということに尽きるような感じがするのであります。大橋国務大臣は旧軍人といえどもシビリアンであるという一つの原則を打て建て、その原則と憲法六十六条との関連の問題を聞かれて答弁を留保されておる。旧軍人に関する部分において理論的に一つの行き詰りと申しますか、そういうものが現に起つておる。そうしまして旧正規陸海軍将校を除く三等保安士以上の保安官、或いは三等警備士以上の警備官については理論があるのかと申しますと、これも非常に薄弱だと思うのであります。大橋国務大臣はこの点に関する限りは非常に理論的な立場を遂行しているのだと、これを先ほど来繰返して申しておりました。その理論的立場というのは何かと申しますと、管理されるものの立場にあるものが管理する立場に立つのは適当でない、これは極めて理論的だとこういう御説明なんですけれども、これもよく考えて見ると非常におかしいことになりはしないかと思うのです。例のとり方が或いは適当でないかもわかりませんが、確かに行政機関の職員と立法機関としての議会の議員とが同時に兼ねられない。これは当然であります。ところが行政機関の職員たりしものが議会の議員になることは法的にも禁ぜられておりませんし、常識的にもそういうことを禁止する必要もないだろうと思います。管理されるものと管理するものとを同時に兼ねる場合にはおかしいことになりますけれども、同時に兼ねないで、曾つてそういう経歴のあつたものが他の職に就くということは、これは理論的に禁止されなければならないというのは少しおかしくなつて来るのではなかろうか。行政機関と議会との関係の例を今とつたわけでありますが、仮に行政部内だけで考えて見まして、指揮監督を受けるいわば部下の立場にあつたものは課長や局長の地位に就き得ないかどうか、そういう途を開くというと、その課やその局は曾つて部下たりしものによつて支配され壟断されるようなことが考えられるだろうかどうか、こういうことにもなつて来るわけであります。私は管理されるものと管理するものとが同時にその職に就くというようなことであればともかくとして、そうでない場合にこれは理論的に禁止されなければならないのだというほどの問題ではないように思うのですが、その辺どういうふうにお考えになりますか、もう一度お答えを頂きたいのです。
#92
○国務大臣(大橋武夫君) 無論これは永久不変の道理ではないわけでございまして、曾つての日本の陸軍、海軍におきましては管理するものと管理されるものとの間にこうした関係を打建てておらなかつたわけであります。併し実力部隊である、実力行動を使命とするところの部隊である、而もその部隊は上部からの命令によつて一糸乱れざる統制を必要とする、こういうような点から考える場合に、この内局の事務と部隊の事務というものとの間にはおのずから厳格な限界があるわけでございます。これを守るということが民主主義の要請でありまする以上は、私は保安官の幹部が内局の幹部になれないという原則は一般的には必要であると、こう確信をいたしております。
#93
○三好始君 何回伺つて見ても理論がないという私の印象は決して消えないのでありますが、これは松原委員も指摘されましたように、本来本質的に軍隊であるべき保安隊や警備隊を警察であるというふうに言い逃れをしておるところからすべての矛盾が生れて来るのではなかろうか。本来軍隊としての性格を持つた部隊にシビリアン・コントロールの原則を確立しようとせられたのがこの案であると思うのでありますが、それを国内治安を維持するための警察なんだと、こういうふうに説明せざるを得ないところから矛盾が各方面に波及して行かざるを得ない。その矛盾の現われの一つが第十六条の六項の規定なんではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。これ以上質疑しても同じだろうと思いますから、この問題については本日はこれ以上触れません。
#94
○委員長(河井彌八君) 他に御発言ありませんか。
#95
○三好始君 今日はもう土曜日ですから、如何でしよう、これくらいでやめておいたら……。
#96
○委員長(河井彌八君) お諮りをいたします。地方行政委員との連合会はこれを以て打切りたいと思います。御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#97
○委員長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。それではさように決します。今日はこれを以て散会いたします。
   午後四時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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