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1951/01/25 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第6号
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1951/01/25 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第6号

#1
第013回国会 本会議 第6号
昭和二十七年一月二十五日(金曜日)
   午前十時十五分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第五号
  昭和二十七年一月二十五日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件。(第二日)
 一昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。羽生三七君。
   〔羽生三七君登壇、拍手〕
#4
○羽生三七君 私は日本社会党第四控室を代表して、一昨日の吉田首相の施政方針演説並びに池田大蔵、周東安本両大臣の財政経済演説に対する我々の疑点を質したいと思います。
 その第は、先ず外交方針についてであります。首相は先にダレス大使に送つた書簡において、一昨日又その演説において、中国とは平和條約に示された諸原則に従つて国民政府との間に正常な関係を再開する條約を締結する用意があることを明らかにしました。なお吉田首相書簡においては、中共政権についてはこれと條約を締結する意思を持たないとも言つております。この際この問題に関する首相の真意を確かめたく思います。即ち国民政府と條約を締結し、これを承認するということは、中国の主権が国民政府即ち蒋介石政権にありとみなすのか、それとも單に台湾という地域に限定ざれた国民政府を、現実に対応する手段として承認するというのか、そのいずれであるかを明らかにせられたいのであります。若し首相の真実の意図が中国の主権者として台湾の国民政府を承認するにありとするならば、このことは、日本がアジアの平和を破壊し、アジアにおける紛争を激化せしめる素因をみずから作ることとなり、危険極まる外交政策と言わなければなりません。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり、拍手)すでに周知のごとく、中共政権については、世界のうち、イギリス、インド等を初め二十六ヵ国がこれを承認しており、而もこのうち十四ヵ国がいわゆる自由国家群に属することは特に注目しなければなりません。我々が今日中共政権について言うのは、そのイデオロギーとは全く無関係のことであります。否、むしろ我々はその立場を全く異にしております。問題の所在はイデオロギーではなく、今日中国四億の民衆の実質的な指導がいずれの側によつて行われているかという現実の事態に即しての判断なのであります。中には、今日第二次世界大戰の際のフランスのド・ゴール亡命政権を引用して、これと同一に論ずる向きもありますが、あの際のフランスは、外国軍隊即ちナチス・ヒトラーの侵略によつてド・ゴールは亡命を余儀なくされたものであります。併し今日の中国問題はそれとは全く異なつた條件の上に立つておるのであつて、即ち今日中国は外国軍隊によつて占領されておるわけではなく、中国本土と台湾との関係は中国人民自身の問題であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)従つて台湾の国民政府が中国本土にあつて民衆の支援を受けているならば、我々はそれを中国の主権者とみなしてもよいのでありますし、又中共政権が台湾におるとするならば、これは問題にならないのであります。このような事実に即して中国問題に関する首相の態度を見るとき、外交に堪能と言われる吉田首相としては随分不手際なことをされたもののように思われるのであります。而もこの問題に関する外国の輿論を見るに、先ず英国筋では、「吉田書簡は米国政府の圧力を反映しており、昨夏英国政府に與えられた保証と相反するものである」と言つております。又中立筋の意見によれば、「中共への絶縁状は中共をますますソ連側に追い込むこととなり、中共との妥協によつて和平維持を願つている東南アジア諸国を失望させるであろう」と言い、更に又、「大陸との貿易回復は一層困難となり、日本貿易の南進が積極化されるであろうが、英国はこれを歓迎せず、日本の経済的立場は苦しくなろう」とも言つております。いずれにしても、吉田書簡が好ましからざる印象を諸外国に與えたことは事実であります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)先にも触れたように、このことは、アジアの中和を破壊し、又日本を紛争の渦中に介入せしめ、東南アジア諸国との親善協力に影響を及ぼすものと思うが、首相はどのように考えられておりますか。所見を伺いたく思います。
 更に我々としてお尋ねしたいことは、国民政府との條約締結という首相の方針が、首相みずからの信念に基くものであるのか、それとも他の外部的圧力によるものであるかという点であります。英国外務省スポークスマンは、十七日の記者会見で、「英国としては米国が日本の国府承認について圧力を加えたことを遺憾とする」と述べているが、この間の事情を率直に承わりたいのであります。(「秘密外交」と呼ぶ者あり)このことは極めて重要であつて、講和條約が締結され、まだその効力は実質的には発効していないにしても、我が国の国会における批准も終つた今日、なお、この種の問題に至るまで一々制約を受けているならば、我が民族の独立いずこにありやと言わなければなりません。(拍手)なお又、年末から休会に入つたとは言え、国会は招集されておる際であるにもかかわらず、必ずしも一日を争う急な問題とは思えないこの種の重要な外交問題を、首相の独断で決定されるということは、新らしい憲法の精神に反する、非民主的、独善的な態度と断ぜざるを得ないのであります。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)
 次にお尋ねしたい点は、講和條約未締結国家との国交回復具体策についてであります。これに対する政府の熱意如何は、実に今後の我が国の平和と安全に、且つ経済再建に重大な関係を有するからであります。これについて政府の具体策をでき得る限り詳細にお答え願いたいと思います。
 次にお尋ねしたい点は、昭和二十七年度予算案並びにこれと関連性を有する重要な二、三の問題についてであります。二十七年度予算案はその規模において我が国の財政史上初めてという巨額なものであり、又予算の性質が戰後初めての新らしい性格のものであるという点で、種々なる角度から検討を要するものであります。予算の規模は暫らく別として、この予算案の特質は、我が国が再軍備への第一歩をこの予算を通じて明らかにしたということであります。即ち、総額八千五百二十七億円に上る予算のうち、いわゆる防衛関係費は一千八百三十億円を計上する本予算案の本質は、先に締結されました講和條約の肉付けであり、講和、安保両條約を骨とする、我が国の政治的、経済的、軍事的再編成の、即ち端的に言うならば再軍備の予算案であると言うことができるのであります。而もまだいま一つの特質があります。それはこの予算案の非自主性であります。これは單なる批評ではありません。それは、この予算案の重要なる部分を構成する防衛分担金についてはその細目が全く不明であり、五百六十億円に上る安全保障費というものが全く正体のわからぬものであるという点を指摘するだけで十分であろうと思います。(拍手)一昨日の首相及び池田、周東両大臣の演説においては、政治的にも経済的にも最も重要なこの問題について殆んど詳細に触れることなく、顧みて他を言うの感を深からしめたことは、我々の最も遺憾とするところであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
 さて、防衛分担金の六百五十億円は安保條約から当然生れる性質のものであるにいたしましても、行政協定の細目が今以て明らかにされないのはなぜでありましようか。而も去る二十一日のアメリカの上院外交委員会の聴聞会においては、すでにこの行政協定について論議されているのであります。この行政協定の細目について政府はでき得る限り詳細に報告する義務があると思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)明日にもラスク特使がこの問題について来朝されるという際なのでありますから、これはなお更のことであります。次に、安全保障諸費とは、具体的には何を指し、どのように使用されるのでありますか。これについては特に首相並びに蔵相の明確な答弁を希望するものであります。五百六十億円に上る巨額の経費が内容不明のまま国会で審議され得るとは、まさか政府もお考えになつておらないと思います。
 次に警察予備隊についてお尋ねいたします。本年度三百十億円のこの経費は二十七年度において五百四十億円に増額され、二十七年度中に現在の人員七万五千名から十一万名に増加することとなり、更に二十八年度においては三十一万名に増加されると言われているようであります。新聞によると、大橋国務相は二十三日の記者会見で、單に人員増加に触れたばかりでなく、その装備について、大砲、高射砲類の重裝備も近く配置され、現在の四管区隊は五倍の二十管区隊となり、その初年度費用だけでも二千億に上ることが予想されると語つております。この警察予備隊についてお尋ねしたい点はその性格及び裝備についてであります。警察予備隊は、本来国内の治安の維持を目標として創設されたものであることは言うまでもありませんが、この国内治安維持という警察予備隊の性格は今以て変つていないのかどうか。この点を首相並びに担当大臣から明確にお答え願いたいのであります。なお大橋国務相からは、予備隊の装備の現状及び言うところの漸増計画を御説明願います。若し警察予備隊の性格規定に変化がなければ、このように多額の予算を計上してのその強化は、それだけ国内治安が不安になつたという前提條件が出て来ることになると思うのでありますが、これをどうお考えになつているのでありますか。私どもは現在の国内治安の状況が警察予備隊を創設した当時よりも悪化したとは思えないし、又憂えられる間接侵略に対する防衛は、国民生活の安定を通じての確固たる恒久政策に基いて排除されるものと確信するものであります。(拍手)このように考えて来ると、警察予備隊の性格は、国内の治安維持という当初の建前と違つて、漸次軍隊的性格に移行しつつあることは今や明瞭なる事実であります。(「軍隊そのものだ」「憲法違反だ」と呼ぶ者あり)これについてお答え願うと共に、併せてお答え願いたいことは、若しこの性格が軍隊的なものに移行したといたしまするならば、このような方向が現行憲法の精神に反しないとお考えになつておられるかどうかということであります。(「憲法を蹂躪しているのだよ」と呼ぶ者あり)この点は特に明確に御答弁を願います。又吉田首相にお尋ねしたいことは、首相は再軍備反対を今日までこの議場で幾たびか繰返されましたが、この首相の信念は今以て変りないかどうかという点も併せてお答えを願いたいのであります。(「圧力で変つたよ」「ゆつくりやれ」と呼ぶ者あり)
 次に、この予算案の歳入の点を検討して見ますると、歳入の内訳は、税收の六千三百八十一億円、專売益金の一千二百五億円その他でありますが、税收は昨年度より七百七十三億円増加計上されております。この税收は改正税法によるものでありますから、実質的には前年度よりも相当の増加となつているのであります。政府はこの予算の積算の基礎を、国民所得の増加ということで説明されております。即ち、二十六年度四兆五千億円の国民所得が、二十七年度において五兆三百億円を見込み得るという推定に基いて策定されていることは言うまでもございません。二、三日前まで、安本の作業として各新聞紙上に発表されていた二十七年度国民所得四兆九千億円というものが、一足飛びに五兆三百億円に跳ね土つたのも変な話でありますが、それはそれといたしまして、この国民所得の推定がどれだけ客観的に基礎付けられたものであるかは、にわかに判断しがたいものと思われます。即ち、今日、中小企業の倒産、生産テンポの停滯、賃金の遅配等々の諸現象を見るときに、このような日本経済の現状で、国民所得の増大という建前から、前年度より七百七十三億円の税收増加が実質的に期待できるかどうか、我々の大いに疑問とするところであります。而も、防衛関係諸経費は、再生産には直接役立たない、非生産的、消耗的性質の費目であり、これが、国民の生活水準向上ということと、どういう関連を持つか。この辺も我々の大いに警戒しなければならぬところであります。(拍手)
 次に歳出の点を見たいと思いますが、いわゆる防衛関係費には先ほど触れましたから、内政費についてこれを検討してみることにいたします。
 二十七年度の内政費は、防衛関係諸費に相当食われて相当圧迫をこうむつたことは言うまでもありません。このことは、戰争犠牲者の援護費をめぐつて橋本厚生大臣が辞任した経緯が端的にこれを物語つております。(拍手)実際にこの程度の経費で援護の実効は期待できないし、又かかる経費は、当然生活保護的立場から、社会保障費一般として予算に計上さるべきもので、講和関係費としてこれを計上した理由をお聞かせ願いたいのであります。(拍手)なお、政府は、この援護対策費を公正な社会保障的見地から更に増加計上することはできないでありましようか。予算全体を通じてこれを見まするに、なかなか巧妙に組み立てられております。個々の費目では、昨年度より減額されているものは、若干部分を除いて余り目立たぬことになつております。然し予算総額の膨脹、物価の値上りや、中小企業の倒産、夥しい顯在潜在失業者を見るときに、中小企業、失業対策等の諸経費が、この程度で実際に問題の解決に役立つとは、蔵相自身もお考えになつておられぬことと思うのであります。農林関係については、食糧増産費等を中心に、若干苦心のあとは見られますが、米の統制を撤廃すれば、年間三百七八十万トン、四億数千万ドルの外国食糧の輸入を見込まねばならぬ現状においてこの程度を以て満足することは許されぬことと思います。今次予算中における防衛費と内政費との関係は、その費目の取扱い方如何で、若干数字上の差が起りますから、細かいことは申しません。即ちその取扱い方如何で、内政費が二十六年度に比べて四百億円程度食われたとも言い得るのでありますが、併し又逆に、講和関係諸経費のうち、戰争犠牲者の援護費等を内政費に数えれば、又異なつた数字が出て来るからであります。併し実際には予算総額が相当膨脹しましたし、且つ講和の成立によつて終戰処理費等が近く当然内政費に充当し得る段階において、新たに別個の事情から防衛費等が生れて来たのでありますから、その意味で内政費が圧迫を受けているということは歴然たる事実であります。而も、これら防衛費は本年度予算において初めて頭を出したに過ぎませんが、大橋国務相の談話のように、警察予備隊費が将来二千億に上ろうというようなことになつた場合には、この関係は一層深刻なものになろうと思います。このことは必然的に国民生活水準の低下を招来するでありましようし、一方、財政面における講和インフレ的な要因は一層その危險を感ぜしむるものがあります。非生産的な再軍備関係諸経費は、講和インフレ的な要因とこそなれ、平和的な産業構造の基盤をいささかでも拡大させるものではないのみならず、軍事的な産業の保護育成のために、平和産業は却つて資金難に悩み、又インフレ抑圧の手段として、日銀は平和産業に対する資金の融通を一層圧迫せざるを得ない結果となるでありましよう。而もかかる傾向は、先にも述べましたように、年と共に一層加重されるものと考えざるを得ないのであります。その結果は、平和的な中小産業の危機を招来し、又一方増税ともなり、社会不安は一層激化することになると思いますが、それに対して、政府は、労働諸法規の改惡や、治安立法の制定、警察力の増強等を行わざるを得ない結果となるでありましよう。政府は、政府自身が最も恐れる社会不安をみずから拡大、再生産して行くという際限のない矛盾に陷ることとなるのであります。(拍手)再軍備の是非は別としましても、只今述べましたように、防衛費関係の増加は当然内政費を圧迫します。今後、内政費と国防費との関係は、我が国民生活の前途に、延いては日本の自立の上に、重大な影響を與えるものであることは、今や論を待ちません。この辺の問題について、政府は、首相初め深く触れることなく、全く問題の核心をそらして專ら楽観的な立場に立たれたことは、立場の相違は別といたしましても、政治責任上誠に遺憾とせざるを得ません。
 この際、試みに世界各国の予算総額中に占める軍事費のウエートを見るならば、歳出八百五十四億ドルのうち軍事費五百四十五億ドルを計上した一九五三会計年度のアメリカのそれは別といたしまして、フランスが二六・一%、ベルギーが一六%、イタリアが二八%となつております。これはいずれも一九五一年のそれであります。日本のそれは大よそ二一・二%程度で、先ずフランス、イタリアに近いものであります。而も言うまでもなく、戰前に比して我が国土は著しく狭小となり、従つて又、その資源を失い、この狭小な国土の中に、八千三百万人に近い人口が生存しなければならぬという極めて困難な條件下に置かれているのであります。このとき、而もこの條件の中で、西欧のフランス、イタリアに近く、而してベルギーよりも重い経費の負担が今後実際に堪え得られるでありましようか。而も、問題の賠償支拂が今後どのように解決されるかも未定であり、外債の支拂も残されている今日、将来について全く深憂を禁じ得ないものがあります。
 今やバターか大砲かの問題は、遠い外国の話ではなく、実際に日本国民にとつても現実の問題となつて来たのであります。而も更に又、ここに重要な問題がいま一つございます。先にも触れましたように、警察予備隊の目的が国内治安の維持にありとするならば、最近の裝備はいささか的外れであるし、若しその目的が再軍備的なものであるとするならば、これが実際にどういう役割を果し得るのでありましようか。あえて軍事評論家の説を待つまでもなく、第三次戰争の性格は、原子爆彈、ジエツト戰鬪機等、その他まだ表面に現われない新らしい兵器の戰いでありましよう。このとき、使い古しや、お借り物の裝備で、一体何ができるとお考えになつているのでありますか。(拍手)太平洋戰争の際におけるB二九と竹槍の勝負の問題も今は昔話となりましたが、今、又、この昔話が現実の問題となつて来たことは、庭史の惡戯にしろ看過し得ざる問題であります。(「うまいぞ」と呼ぶ者あり、拍手)これ、について政府はどのようにお考えにな一つておりますか。
 次にお伺いしたいことは賠償問題についてであります。今回の予算案中、連合国財産仮環補償費は、言うまでもなく本来の賠償資とは全く異なる性質のものでありますから、本来の賠償費はまだ今後に残された問題でありますが、これについて私は次のように考えでおります。即ち、我が国が平和憲法に示された理想を今日もなお堅持し、アジア諸国家に対して誠意ある態度を以て臨み、而して日本の経済力の限度、限界を正しく立証すれば、相手国も必ずその誠意を認めて、この問題は正しい解決の方向を見出し得るものと確信するのであります。その意味で、相手国を刺戟するような防衛費優先の予算編成方針は、却つて問題の正常なる解決を阻害するものと考えざるを得ません。これに対する政府の所見をお尋ねいたします。(拍手)
 次にお尋ねしたい点は、我が国の経済自立の問題についてであります。一昨日の演説で、首相も、池田、周東両大臣も、わが国経済の底の浅さを認めて、それぞれ一応の希望的観測に基く計画を示されました。特に周東長官は東南アジアの開発について第一に言及されておりますが、東南アジアよりも更に近接しだ地域にある中共との貿易については、吉田外交はその可能性を一層遠くに追いやり、どこまで可能性があるのか全く不明な東南アジア開発に我が国経済自立の希望をかけておるようでありますが、この東南アジア開発計画とは具体的にはどのようなものであり、又その計画がどの程度に進んでおるのか、詳細にお答え願いたいのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)若しそれが單に一片のペーパー・プランに過ぎず、又それが可能であるにいたしましても、そり実現が遠い将来の問題であるとするならば、日本経済の今日只今当面している困難なる現状の下における計画といたしましては、極めて無責任というそしりを免れないものと思うのであります。又政府も言うこの底の浅い我が国経済の現状において、近い地域から安価に入手し得るところの鉄鉱石或いは石炭があるにもかかわらず、あえてこれとの貿易の道を閉ざし、アメリカその他遠隔の地域から、高いコストで、又多額の船賃を支拂つて入手する原料による製品を以て、政府の言うところの貿易の発展や国際価格への接近が実際に期待できるとお考えになつておるのでありますか。(「できやしないよ」と呼ぶ者あり)又自立経済の基礎を達成する方策として、産業の合理化、施設の改善、電力源の開発、外航船舶の増強等を挙げられておりますが、例えば電力源の開発をとつてみましても、政府が先に発表しました見返資金、運用部資金などの計画を見ると、政府直接の建設資は誇示するほどの金額とは思えません。恐らくこれについては外資や民間資金を期待しているものと思われます。海運についても同様のことが言えましよう。これらの資金手当について、いま少しく明確な御発表を願いたいのであります。
 又周東長官は、二十七年度の見通しとして、輸出は特需を含めて十九億ドル、輸入は二十一億ドル程度となり、貿易外收支を合せると、国際收支の受取は約二十四億ドル、支拂は二十三億ドル、差引一億ドル程度の受取超過となる見込と言い、更に鉱工業生産は二十六年度に比べて約一〇%近くの上昇が期待されるということから、国民所得五兆三百億の数字を割出されたようでありますが、今後の国際情勢の動き如何ではその実現は極めて危いと思われるのであります。即ち、たとえ国外で軍拡インフレが進んで輸出採算が一時有利になつたといたしましても、原料の七八%を国外から輸入しているため、原料高で悩む日本では、昨年度と同じように日本の物価が先高となつて輸出不振となる虞れが大きいのであります。この辺の見通しについて周東長官から更に詳細お聞きしたいのであります。
 いま一つ首相にお尋ねしたい点は、今回の防衛費関係の処置を見るに、曾つての臨時軍事費の取扱と同様のコースを辿り、予算の国会における審議よりも事実がこれに先行するという非立憲的な事態を再現するように思われますが、これに対する首相の所見をお尋ねしたいと思います。(「総理よく聞け」と呼ぶ者あり)
 結論をいたしたいと思いますが、外交上においては却つてアジアの紛争を激化せしめ、我が国の孤立化を招来し、経済的には中国との貿易の道を閉ざし、国内的には巨大な防衛費の圧迫から国民生活水準の低下を余儀なからしめんとするのが政府の方針であり、今回の予算案であると言わなければなりません。而してこの予算案は、根本的には過ぐる講和條約に端を発し、今日のこの苦難なる道を歩まざるを得なくなつたものであることは、我々の深く銘記しなければならぬところであります。(拍手)我々はいわゆる直接侵略の問題に関しては、むしろ確固たる中立政策とアジア諸国家との協力による第三次世界大戰の防止によつて、又正常なる国交回復と貿易の再開を通じて、これを排除し得ると確信いたします。又更に、言うところのいわゆる間接侵略の問題については、先にも触れましたように、国民生活の安定と正常なる民主主義運動を通じまして、極端なる破壊主義者に活動の余地なからしむることによつて、その目的を達成し得るものと確信をいたすのであります。この意味において、平和憲法のなお嚴として存する今日、巨額な防衛費を通じて再軍備に国民を駆り立て、更に国民生活水準の低下を必至ならしむる政府当面の諸方針が、決して我が国の防衛と経済再建に役立たないのみか、むしろ我が国の前途に重大な影響を、暗影を投ずるものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)政府に援護を要求する戰争犠牲者のあの声は、單に金の問題ではございません。我々政治に携わる者の深慮と反省を意味しておるものではないかと思うのであります。(拍手)政府はむしろ国際的には平和の立場を堅持し、国内的には国力を挙げて経済再建に結集し、かかる処置を通じて講和後の国際社会の一員としての任務を果すべきものであると確信をいたします。政府の誠意ある答弁を期待いたしまして、私の質問を終ることにいたします。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
   〔「名答弁をしろ」と呼ぶ者あり〕
#5
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 ダレス大使宛の私の書簡についていろいろ御質問がありましたが、中国との関係は、これは従来の関係或いは現在の関係もそうでありますが、両国の間の関係は、歴史においても、現在においても、誠に密接な関係があり、この密接なる関係を土台として、その間に善隣関係に入ることができれば誠に結構であります。併しながら現在北京政府は、ただにイデオロギーにおいて、或いは政策において違つておるのみならず、又その結果、日本の治安がしばしば中国北京政府の……(「政府が惡いからだよ」と呼ぶ者あり)聞き給え。政府の結果、治安が脅かされておるというような現在の事実であります。(「何だ何だ」と呼ぶ者あり)モスコーにおいてこしらえられた中ソ友好條約或いは又相互互惠條約において、実際上、この條約は、(「はつきり言えないだろう」「黙つて聞け」と呼ぶ者あり)ソヴイエトと中国北京政府との間にできたこの條約は、実際上日本に向けられた軍事同盟條約であります。かかる條約を前にいたして中国北京政府と何らの交渉に入ることはできにくいのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)又日本は国際連合と協力することを方針といたし、これを約束いたしておるのであります。現に国際連合が北京政府を相手にして━━━━━━━今日において、日本政府だけが中国北京政府とかかる平和交渉に入るということは、事実できないのであります。(拍手)一方において、台湾国民政府は国際連合に入つており、又国際連合の多数の国がこれを承認いたしておるのみならず、(「多数じやないよ」と呼ぶ者あり)日本との間においては、地理上近接しておることは勿論のこと、日本には各種の交渉があり、又従つて日歩政府は台湾に在外事務所をすでに設けておるような状態であるのであります。これと或る関係に入ることは当然のことであり、この台湾政府はすでに或る領域において統治権を実行いたしておるのであります。事実上の政府がすでに打ち樹てられておるのであります。事実において……。この列国との間の承認の関係においても嚴然たる一つの政府ができておるのであります。この政府に対して或る交渉に入るということは当然過ぎるほど当然であるのであります。この理窟がわからなければ外交は論ぜられないのであります。又更に、交戰団体といえども、この交渉に入ることができるのでありまするから、現に統治を行なつておる政府と或る交渉に入り、或いは平和関係に入る、これは日本政府の善隣外交の趣意から言つても当然であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)それに対して米国政府は当然日本政府の政策を了解いたすのみならず、私がこの意見をダレス氏に述べたところが、手紙に書いてくれないか、これは、そうすることによつて米国国会における批准を速かならしめることに効果があるという話でありますので、書面にしたためたのであります。若し圧迫を受けたとするならば……、これだけで、書面を書いてくれという希望に応じただけである。これをなぜ圧迫というのか、私にはわかりません。(拍手)イギリス政府がこれに対して云々という話がありますが、英国政府においても、この書面に対する私の意味合いはよく了解されたと信ずべきことであるのでありまして、少くとも日本政府は、イギリス政府から何らの抗議を受けておらないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)又この書面を書く、これは政府の責任においていたしたのであつて、一々議会に報告しなければならぬことはないのであります。その結果如何なることが起つたか、如何なる事実が起つたか、これは諸君がこの国会において政府を批判せられるのは御自由であるが、一々書くことをいたす、いたさぬということを、国会の承認を経べき義務はないのである。
 その他の問題については主管大臣から説明をいたしますが、最後に申しますが、私は今なお再軍備はいたさないということを更にはつきり申す。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。
 先ず御質問の第一点に、財政の規模が未だ曾つてない大きさになつたというお話でございます。八千五百二十七億円、お話の通り村政の規模は昨年よりも一昨年よりも殖えて参りましたが、併し国民経済から申しまして、国力の発展、産業の復興があれば、予算の枠も殖えることも当然であるのであります。(拍手)決して心配は要りません。ただ問題は、国民所得に対しまして予算の規模が、割合が多過ぎるのが困るのであります。従いまして吉田内閣は累年国民所得に対します予算の枠を縮めております。それは財政演説で申上げた通りであります。而して問題は、八千五百二十七億円の中で、治安並びに国際関係費が多過ぎやしないか、内政費を圧迫しやしないか、こういう問題でございます。御承知の通り内政費から申しますると、昨年の七千九百数十億円のうち、内政費は、即ち治安並びに国際関係費を除きました金額は六千三百四十億円でありましたが、来年度におきましては六千四百九十余億、こういうふうに百五十億円も殖やしております。総体から申しましてこの程度殖やしておるのでありますが、(「物価は上つているぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)お静かにお聞きにならんと、質問者がお困りになります。(「黙つて聞け」と呼ぶ者あり)内政費のほうは六千三百四十億円が六千一四百九十余億円と百五十余億円殖えております。総体において……。而も又この内容におきましては、(「援助費はどうした」と呼ぶ者あり)外国為替特別会計へ入れた八百億円の内政費が三百五十億円になつておりますので、実質的には内政費が相当殖えているのであります。(「燈明代をどうする」と呼ぶ者あり)具体的に申しますと、社会保險或いは労働関係は九百五十一億円を計上いたしまして、社会労働関係におきましては二百四十六億円殖えております。又農林水産におきましても七百九十二億円計上いたしまして、百四十億円農林水産で殖えている。又治山治水にお官ましても、治山治水の事業でも六百十七億を計上いたしました。昨年に対して百十一億円を殖やしているのであります。仔細にお考えになれば、内政費は治安並びに講和関係費が殖えましても未だ曾つてないような殖やし方をいたしておりまするから、(拍手)内容をよく御検討願いたいと思います。
 なお又、治安並びに国際関係費は、御承知の通り今年度のは終戰処理費の千億余りと三百十億円の警察予備隊で、而も又国際通貨基金の加入の二百億円を入れまして、大体千六百億円であつたのが、今回は二千三十三億円になつているのであります。この殖えるのは、これは独立国家として賠償或いは連合国財産の補償をするなり或いは治安確保を図る上において止むを得ないのであります。そこで、あなたが今国際的に見て治安並びに国際関係費、殊に治安費が各国に比べて非常に多いとおつしやいまするが、治安関係、国防関係は、アメリカは別といたし、フランス、イギリスは国民所得に対しまして一〇%六、七を負担いたしております。西ドイツも占領費は国民所得に対して七%余りを負担いたしております。独立した日本が国民所得に対して賠償やその他を入れまして三・五、六%負担するのは当然のことであります。(「わかつたか」と呼ぶ者あり、拍手)
 で、内政費と講和関係費と大体の分け方はそういうふうになりますが、御質問の、今度治安並びに国際関係費の二千三十億円の内容について、今の進駐軍に代りまして日本に駐留する米軍との負担区分でございまするが、これは防衛分担金と普通に言われておりまするが、米軍の駐留に関する経費は六百五十億円を入れましたのは、これは詳細に委員会で申上げまするが、大体米軍の駐留する場合におきまして、米国の負担分と駐留しておりまする国の負担分につきましてはいろいろな方法があります。イギリスと米国の間の問題、フィリピンと米国の間における丸抱えの問題、或いは又北大西洋條約に加入しております国々につきましても、その個々の国によつて負担は(「日本はどうするのだ」と呼ぶ者あり)違つておるのであります。そこで我々はどの程度の負担でいいかということを考えますると、先ず第一に、予算の説明で申上げましたように、米軍の給料とか被服とか食費とか裝備、これは全部アメリカに持つてもらう。(「それは当り前じやないか」と呼ぶ者あり)当り前ということはあなたがたのお考えですが、何もこれは我々が進駐を……(「当り前だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#7
○議長(佐藤尚武君) お静かに願います。
#8
○国務大臣(池田勇人君) (続) 進駐をお願いして、進駐を我々が承諾して行く場合において、そんなものは当り前だと言うのは、ひとりよがりの議論だ、それは私は、そういうものはアメリカにおいて負担して下さい、併し日本において、米軍の駐留によつて日本で調達するもの、日本で使うものにつきましては、これは大体半々という考えをしております。それで六百五十億円を計上しております。ただ問題の不動産の賃借料は、不動産の料金につきましては各国とも原則としてその国が負担することになつております。これで百数十億円を負担しまして、残りを半々ということにいたしております。米軍の日本駐留に関する総体の経費は相当厖大なものでありますが、この程度にいたしておるのであります。(「手柄話を言うのか」と呼ぶ者あり)
 次に治安関係の、警察予備隊の分につきましては大橋国務大臣からお話すると思いますが、(「わからんぞ」「安全保障費は」と呼ぶ者あり)大体十一万人の警察予備隊を予定いたしております。(「しつかりやれ」と呼ぶ者あり)従来の七万五千人の裝備の強化に三百億円余り要り、三万五千人殖えた分につきまして今年度二百億円余り要るのであります。こういう計算であります。
 それから安全保障諸費の問題でございまするが、安全保障諸費につきましては、財政演説で申上げましたように、安全保障條約に基きまして結ばれる行政協定の内容がまだはつきり最後的にきまつておりません。(「仮定の問題」と呼ぶ者あり)従いまして私としては、行政協定の内容を想像いたしまして、大体こういうものが要る、こういう事柄、営舎の建築とか或いは通信、道路、港湾施設の整備、或いは巡視船の裝備、監視、こういうものを予定して五百六十億円を計上いたしておるのであります。行政協定の内容がはつきりいたしましたならば、予算書にも書いてございますように、これを適切に使つて行く予定でおるのであります。(「想像の内容を言え」「アメリカの国会でやれ」と呼ぶ者あり)それは財政演説で申しておりますからお読み願います。
 次に税收入の問題でありまするが、(「想像にお任せいたします」と呼ぶ者あり)税收入の問題について非常に御懸念のようでありますが、吉田内閣は今まで三年間、税收入の水増しをしたこともありませんし、むちやくちやに大きい税收入を見込んだこともありません。(拍手)どちらかと言えば税收入の見込み方が常に少な過ぎたいという非難は受けるかもわかりませんが、(「何を言う」と呼ぶ者あり、笑声、拍手)多過ぎたということは非難を受ける理由も実績もないのであります。(拍手)従いまして昭和二十七年度の租税收入につきまして、来年度の(発言する者多し)
#9
○議長(佐藤尚武君) お静かに願います。
#10
○国務大臣(池田勇人君) (続) 物価の状況、大体物価は横這いと考えておりまするが、生産の増加、雇用の増加或いは賃金の上昇……或る程度の上昇を見込みまして、国民所得は五兆三百億と計算し、先般の改正税法を恒久化しました税制によりまして六千三百八十一億円を計上いたしたのであります。(「日本人じやないよ」と呼ぶ者あり)これは各税目につきましてはいずれ他の機会に申上げますが、決して水増しではございません。御安心願つて差支えない收入でございます。(拍手)これ又十分確保ができるのであります。(「でたらめじやないか」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
   〔「しつかりやれ、しつかりやれ」「しつかり答えろ」と呼ぶ者あり〕
#11
○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊は、警察予備隊令の示すごとくに「わが国の平和と秩序を維持と、公共の福祉を保障する」ために設けられたものでございまして、その使命は我が国内の治安を確保するにあります。従つて一般警察の警察力を補うために必要な機構と観念せられておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)而して国内治安とは何であるかと申しますと、国民の権利と自由が正しく守られておるということでございまして、(「はつきりしろ」と呼ぶ者あり)国内の通常の犯罪は国民の権利と自由に対する妨害の一原因でありますが、外国の干渉又は煽動による(「どこの国だ」と呼ぶ者あり)大規模な騒擾、内乱等、外国勢力の不法侵略は、国民の権利及び自由に対する最も根本的な破壊原因でありまするから、これに対処する措置を講じますることは、国内治安保持のため欠くべからざるところでございまして、警察予備隊はかかる場合に備えて設けられたものであり、(「共産党だ」と呼ぶ者あり)飽くまでも国内治安のための機構であるというその性格は何ら変更せられてはおらないのであります。(「軍隊じやないか」と呼ぶ者あり、拍手)
 次に予備隊の将来の増加の計画についての御質問でございますが、以上述べましたる観点から見ますると、現在の国力の許す範囲内で警察予備隊を強化し、その裝備及び訓練を拡充強化いたしたいと考えておる次第でありまするが、差当りの計画といたしましては、来年度において(「良心的に言え」と呼ぶ者あり)三万五千名を増加いたし、十一万にいたすことといたしたのであります。(「次の三十一万は」と呼ぶ者あり)これ以上の増加、即ち二十八年度以後の増加につきましては、将来内外の情勢を考慮して決定すべきものと考えておりますから、現在のところでは未だ計画を持つておらない次第でございます。(「三十一万はどうした」と呼ぶ者あり)三十八年度において三十一万にするという計画は全然ございません。(「そうそうその通り」「いつもそういうことを言つている」と呼ぶ者あり)記者団会見においての話といたしまして、三十一万ということになりますると、(「いつでもそうなんだよ」と呼ぶ者あり)初年度において二千億の経費を要しまするから、現在の見通しとしては財政的にも困難であろうということを申したことはございます。又その節二十八年度の計画は現在未だないということは申したことはございまするが、それ以上将来の計画につきまして何ら談話を発表した事実はございませんから、この機会に明らかにさせて頂きたいと存じます。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 次に裝備の内容といたしましては、現在ライフル銃、機関銃、バズーカ等の訓練をいたしておりますが、これ以上の裝備は現在持つておりません。将来の裝備といたしましてはいま少し高度のものに引上げたいと存じまして、目下研究をいたしておりまするが、未だ具体的に申上げる段階に至つておらない次第でございますから御了承をお願いいたします。(「議長、注意しろ」「部隊編成」「やかましいぞ」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(周東英雄君) お答えします。羽生君は講和発効後における国民負担の増加に伴つて国民生活が圧迫されないかということが第一の御質問のようでありました。この点につきましては、政府も非常に苦心をいたしておるのでありまして、只今大蔵大臣から申しましたように、日本の来年度における国民所得の見通しに対しまして、財政関係を去年度程度の一七%程度にとどめたゆえんもそこにあるのでありまして、その点一つから見ましても、国民生活に対する圧迫をなさないようにすべての計画をしていると申上げてよろしいであろうと存じます。
 次に、只今のお話によりまして、然らば、五兆三百億円はいささか過大ではないかという御質問でありますが、これにつきましても、私どもは、現在における産業経済の状況、物価、賃金等の状況を基礎に、将来に対する賃金、物価、生産、貿易の状況を勘案し、愼重な推定の下に立てたのでありまして、この間には何らの作為もなければ、非常に堅実な見通しの上に立つて五兆三百億を計上しておることを申上げたいのであります。
 次に、羽生さんは、御尤もな御心配でありますが、然らば、この五兆三百億を基礎に置いて輸入或いは生産の基礎を政府は考えておるようだが、それでは原材料或いは電気の問題について不足はしないかという次のお尋ねであります。私どもも、この点については一番意を用いている点でありまして、日本の現在における生産設備の未稼働のもの及び豊富な労働力を用いれば、生産そのものに対する向上は期して待つべきものでありますが、御心配のこれに與うる原材料と動力の問題であります。この点につきましては、一昨日施政方針演説でも申しましたように、一つの方向としては、はつきりと米国その他の友邦諸国との間に経済協力を強く推進いたしまして、一つは、その地方における開発によつて、その国民の福祉増進を図ると共に、日本に対しては必要な原材料資金の獲得を考えておるのであります。同時に、電気につきましては、お話のように御心配でありますが、只今のところ、来年度の計画に基く鉱工業生産指数を大体一四〇と見ております。産業全体の指数は大体一四六でありますが、これに関する限り、豊水であれば、大体とんとんに行くかと思います。併し昨年のようなこともありますので、これに対して急速に電源開発を行うと共に、時期的には、一昨日申しましたように、火力に対する拡充と自家発電の動員、更に重油の転換を大きく取上げて参りつつ、電力の開発を進めたいと思つております。而して電力開発につきましては、詳しくは委員会等で申上げたいと思いますが、大体今後の計画、四カ年第一次計画として六百十二万キロワツトの開発をいたす所存であります。これに対して七千二百億円程度、来年度、初年度で千二百億円程度でありますが、うち六百億円前後を政府資金によつて賄おうといたしております。而してこれに対しまして、従来の電気事業者に対しては、自己資金或いは需用者負担、それに見返資金、資金運用部資金をこれに充てております。又地方公共団体に対しては、資金運用部の資金、又自家発電等に対しましては、開発銀行と資金運用部資金ということの計画を考えております。
 更に最後に、然らば経済協力において東南アジアのほうはどうかということでありますが、これも詳しくは委員会等で申上げたいのですが、御承知のように、マレー、インド、ゴア、フイリピン等における鉄鉱石とか、或いはパラオにおけるボーキサイトというようなものは、一番開発の早いものであります。現にゴア等における鉄鉱石については、我が国との間に具体的の計画を進めつつある。何といたしましても、私どもは、南方におけるこれら地下資源並びに熱帶性の工業原料作物等における開発獲得ということが一番問題であります。同時に、この間インドシナの代表もおいでになりましたように、賠償と並んで、むしろ積極的に経済協力を要請されております。これらに対して、私どもは具体的に案を進め、樹立する考えでありますので、そう私どもの考えは水増しでもなく、堅実にやり得る見込を立てておる次第であります。(「具体的に示せ」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#13
○国務大臣(岡崎勝男君) 講和條約未調印国との国交回復に対する具体案如何という御質問でありますが、いわゆる自由国家群との間には、すでに話合いを進めておるものもあり、近く話合いを開始する予定のものもあります。中国国民政府との間は、先ほど総理大臣から御答弁がありました通りでありますが、(「わからん」と呼ぶ者あり)その他、インド、或いはイタリア、ローマ法王庁、ビルマ等各国との間に、或いは話合いを相当進め、若しくは進めんといたしておりますので、近くこれらの国々とも国交回復の実現を見るものと期待しております。
 第二は、賠償の問題につきまして、多額の防衛費を計上することは相手国を刺戟すると思うがどうかという御質問でありますが、先ほどお話の通り、我々は誠意を以て日本の実情を話し、熱意を以てこれが解決に当れば、相手国も十分了解してくれると考えておる点については、全く御同感であります。(「甘い甘い」と呼ぶ者あり)ただ自衛力の漸増ということは、條約中にもありまするし、又独立国としては当然のことでありまするから、これに要する経費を計上することが相手国を刺戟するとは思いませんし、(「してるじやないか」と呼ぶ者あり)又誤解されるとも考えておりません。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(佐藤尚武君) 一松政二君。
   〔一松政二君登壇、拍手〕
#15
○一松政二君 私は自由党を代表いたしまして、総理の施政方針演説並びに昭和二十七年度予算案と関連いたしまして、平和條約発効後において当然要求せられますところの幾つかの政策につきまして、吉田総理大臣並びに関係各大臣に質疑をいたしたいと存じます。
 終戰後六年、我が国民が待望しておりましたところの平和條約は、近く列国の批准を終えて、その効力を発生し、我が国は新生国家として国際間に復帰せんとするに至りまして、国民の将来に明るい希望がもたらされたことは、誠に欣快至極に存ずる次第であります。併しながら敗戰による我が国力の減退は、一朝一夕に癒えるものではございません。経済基盤は脆弱そのものと言つてもいいようなのが今日の現状であることは否定し得ないところであります。かかる不安定なる経済基盤において、たとえ独立を回復いたしましたとしても、自立、自主性の確保は極めて困難であり、ここに、今後にその解決を残された幾多の重大問題があるのであります。よつて、私はこれらの問題に関し、次の諸点について政府の基本的方針を承わりたいと存ずるのであります。
 第一点は行政協定に関する問題であります。現在国民最大の関心事は行政協定に関する問題であり、すでにラスタ氏が全権として来日せられております。国民はいささか不安を拭い得ないものがありはしないかと思うのであります。(「その通り」「いいこと言うぞ」と呼ぶ者あり)即ちこの行政協定問題は、完全に主権を回復せる独立国家とその独立国家を防衛する駐留軍との間において、主権の運営が国民の期待通りできるかどうかという(「できないできない」と呼ぶ者あり)ことにあると思うのであります。現在伝えられる報道によりますれば、アメリカにおいてすら、国防、国務両省の間に意見の相違があり、(「その通り」と呼ぶ者あり)この調整のためにラスク氏が来日すると伝えられたこともあるのでありまするが、私はこの点はどうか誤報であつて欲しいと思うのであります。(「その参通り」と呼ぶ者あり)日本防衛と言いましても自由国家群の防衛の一部であり、この点からすれば、日本の国防を援助するというよりは、むしろ自国防衛の一部であると考えて頂きたいと思うのであります。故にその具体的取極をなす行政協定については、独立を翹喫する日本国民はその点相当敏感であり、総理がしばしば言われる完全なる独立の達成ということは、平和條約にも嚴として謳われているところであります。我々は單に外国軍隊の駐留を以て独立を害するものであるとするが、ごときいわゆる観念論者ではございません。行政協定がここ二、三週間内に取極められるやに報ぜられておる際、総理はこの国民感情を傷つけないように、名実共に主権国家にふさわしい協定を結ばれたいのであります。若しその間にいささかなりとも割切れぬ感情が残つたとしたら、(「感情じやない、事実が残る」と呼ぶ者あり)現に反米的な共産主義者や観念的中立論者もいる現在、その間隙を縫つてますます日米両者の感情を疎隔するように持つて行かれる虞れなしとしないのであります。(「虞れなし」と呼ぶ者あり)総理は、ここにおいて、国民に名実共に主権国家にふさわしい協定を結ばれる覚悟であることを言明して頂きたいのであります。(「そんなことはできないよ」と呼ぶ者あり)
 質問の第二点は外資導入の問題であります。終戰後今日まで、我が国経済力もかなり回復して参りまして、国民生活もやや安定せる段階に到達いたしましたことは、過去三ヵ年に亘る吉田内閣の政策に対し国民がこれに協力して来たことによるものでありまするが(「協力しないま」と呼ぶ者あり)総理も言われるように、明治以来幾十年の国富の蓄積は、敗戰によつて一挙にして消し飛んでしまつたのであります。我が国の経済力は極めて底が浅い現状にあるのであります。総理は、この経済を充実し、国民生活を安定させるために、いろいろ申されておりまするが、その中に外資導入を一つの條件としておるようにお述べになつておられるのでありまするが、今日のアメリカ経済と、あの引続く増税により、アメリカの民間資本が日本の経済復興に資するに足るほど導入されるかどうかについて、国民は多大の疑問を持つておるのであります。この点に関し総理は何か具体的に政府資金でも期待しておられるのかどうか、お伺いいたしたいのであります。三年前我々はマツカーサー元帥から経済九原則を示され、我我はその線に沿うて努力して参つたのであります。併しながらその根本は、結局、天はみずから助くるものを助くという一語に盡きるのであると考えるのであります。八千余万の人口を擁して、殆んど明治の初期の領土に押込められて、資源も資本もなくなつた我々が、これも回復して国民生活を安定させるためには、他人の援助を期待する精神は捨てなければなりません。みずからの力で石にかじりついても回復せんとする強い意思が必要であります。(「兵隊が来るんだぜ、向うの兵隊が」と呼ぶ者あり)総理は、国民に対し、率直に今後の我が国経済のその容易ならざるゆえんを訴えて、孜々営々として働いて、みずからこれを回復する気魄を国民に起させるように努力して頂きたいのであります。
 現在日本人の間には、日本の経済復興について、ややもすればこれに楽観的であり過ぎる傾向がありはしないかと思うのであります。その楽観材料とするところは、みずからの力ではなくして、アメリカの軍備拡張計画とか、外資による東南アジアの開発計画とか、(「それは政府の方針だよ」と呼ぶ者あり)すべて他力本願が材料になつていないかと心配するものであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)英国の首相チヤーチル氏が先に長い間の労働党の政権のあとを取りまするや、彼は、今や英国は未曾有の経済危機に立つておると率直に国民に対して警告を発しておるのであります。徒らに非観する必要はございませんが、楽観することも又誤まりであると思うのであります。国民の一人々々がその重大さを自覚することによつて、真剣に事態を考え、一大勇猛心を奮い起させるところに、復興があると信ずるものであります。燃えるがごとき国民の復興精神が漲つたときにこそ、期待せられる外資もその安定性につれておのずから集まると確信するものであります。要は一人々々の覚悟如何にあると思いますが、総理が国情の安定や政局の安定を外資導入の條件にお述べになりましたことも、恐らくこの国民一人々々の覚悟如何を問題にされたことと信ずるのでありまするが、この点に対し総理の御所見を承わりたいのであります。
 第三は行政簡素化と綱紀粛正の問題であります。占領以来の政策をつぶさに検討しますれば、敗戰により打ちひしがれた無一文の貧乏国家と、それにふさわしからざる諸般の行政機構が続出して、中央でも地方でもかなり行政費の嵩むやり方をとつて来たように思われるのであります。勿論我々は国力の許す限り福祉国家を希わないものではございません。併しながらそれにはおのずから限度があると思うのであります。富強世界に冠たる米国の行政機構をかなり模倣したような法律規則が制定せられ、機構は複雑化し、多数の冗員を擁し、行政費はとみに増加して来ているのが現状であると考えるのであります。率直に申しまして、日本の国力が昭和七年頃の国力に回復しておると考える人は一人もございますまい。然るに公務員数と役所の数と事務の分量は恐らく倍加し、或いはそれ以上にもなつたかと思われるのであります。この際、行政機構のみを簡素化せんとするならば、又元に戻ることは明らかであり、結局人件費の節約に資するところは極めて少くなると思うのであります。(「先ず予備隊節約だ」と呼ぶ者あり)この際思い切つてこれらの法律制度を再検討し、国力相応に縮減したその上で人員の整理を行い、一人当りの事務分量を増大してそうして公務員の待遇をもつと改善すべきであると思うのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)徒らに冗員を擁し、複雑な事務に従事せしめて、万人に薄給を與えることは、私の最もとらざるところであります。(拍手)行政整理に反対する或る政党のごときは、政府が若し行政整理を断行すれば、(「働かないで食つている者をしろ」、と呼ぶ者あり)被整理者は、政府の失業対策、又生活保護法による保護費を與えなければならないので、結局多くの人員を擁し、給料を上げず、そのまま使つて行きたいというようなことを言うものがありますが、私は企業にも、国家或いは地方自治団体においても、冗員は絶対に置くべからざるものであると考えるものであります。(「先ず予備隊からだ」と呼ぶ者あり)政府が十分なる給與を與え、少灘精鋭主義によつて行政を運営してこそ、初めて綱紀の粛正も達成せられると思うのであります。この点に関する総理の御所見を伺いたいのであります。(「二重煙突ばかりじやないぞ」と呼ぶ者あり)
 次に大蔵大臣にお伺いいたしたいのであります。産業活動を促し、国民経済を潤おして、財政の基礎を強固にするも、その根本をなすものは資本であります。その資本が敗戰によつて殆んど全部を喪失したのでありまするから、これが蓄積を最も重要として、税負担の公平という点からは多少は問題があるとしても、あえて意とせず、これを推し進めんとする当局の態度には、私は心から敬意を表するものであります。税制の改革については、先年の改革が余りに理想に走り、その後数次の改正を見ましたが、まだ我が国情と富の程度に副い得ないものがあると思うのであります。米国においてさえ、税に関する贈收賄が大問題となつて騒がれておる実情でありまするから、我が国においてもこれを他山の石として大いに鑑みる必要があろうと思うのであります。税に関する限り、その理想が、嚴罰と体刑を以てだけ、それだけで税の理想を達成し得ないところに人情の弱点があると信ずるものであります。政府においては、国税、地方税を通じ、我が国の国情と富の程度を参酌し、税の種目と税率につき更に改善を企図しておられることと思うのでありますが、その構想について大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。
 なお健全財政とインフレの抑制とを堅持しなければならぬことろは当然であります。でありまするが、国民個々のふところ工合は頗る貧弱でありまして、ひとり国家財政だけが健全であるというのが今日の実情ではないかと思うのであります。企業はおおむね金融難に喘いでおりまして、金融政策に対する種々の批判が起つておることは当局も承知せられるとこるであろうと考えるのであります。蓄積資本が貧弱であつて、而も我々は八千四百万人の生活を支える経済活動をするためには、健全金融も去ることながら、今日の金融機構から見てオーバー・ローンは止むを得ざる情勢であろうと考えるのであります。そこで、ただ一つここで伺つておきたいことがあります。それは、昨年の二月以降の日本の輸出入貿易によりまして起りましたる損失を、一体大蔵当局はその金額を大よそ幾ばくとお考えになつておられまするか。又これをそのままにしておいて、金融機関とその関係業者のみで近き将来に完全に癒し得るとお考えになつておらるるかどうか。問題は頗るデリケートでございますから、数字の明示は必ずしも求めなくてもよろしうございますが、過去の経験からすれば、いわゆる特別融資によつて低利長期の貸付として別途扱いにしてこれが回收を図つたことも、しばしば我々の経験するところであります。この莫大な損失がそれだけ金融を圧迫しておる事実は否めません。オーバー・ローンの中にはこの部分がかなりの金額に上つており、たださえ逼迫しておる金融を更に圧迫しておるのが今日の現状であろうと考えるものであります。これを單に業者の思惑として放任せられることは、当時輸入を極力奬励した当局としては甚だ無責任ではないかという非難をする向きが少くないのであります。(「それだ」「その通り」と呼ぶ者あり)この点に対する大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。
 最後に治安問題と防衛力の強化の問題についてお伺いをいたしたいのであります。有しくも完全独立を自認する国家として、大小の差こそあれ、軍備を持だない国家はないはずであります。我が国も或る程度の軍備を必要とすることは当然であり、いつまでも自国の防衛を他国の援助に委ねておられるものではございません。財政の許す範囲内において徐々に充実すると申しましても、国際情勢の変化と国家治安の如何によつては、いつ何時重大事件が突発せぬとも限らないのが今日の常識であろうと考えるのであります。ところが政府のなすところを見ますれば、この重大問題について何か受身の態度をとつておるのではないかとの懸念を抱かしめるものがあるのであります。如何に我が国がしやちこ立ちをいたしましても、この敗戰に打ちひしがれて、遠き将来においても独力で他国を脅威するがごとき軍備を保持し得られるようになると考える日本人は、恐らく一人もいないであろうと考えるのであります。而も我々は心の底から戰争を忌み嫌つておるのであります。ただ我々の独立と自由が脅かされるその危險に当面した場合においては、嚴然として国土を防衛するに足る最小限度の軍備を必要と考えるものであります。いやしくも軍備は、漫然と、金ができたからそれだけ兵を養うという考え方でできることではないことは、私から申げるまでもないのであります。一定の規模と年月を計画の中に織り込む必要がなくして、その目的を達することはできません。すでに共産主義国家群の前駆として我々の国内にその野望実現の機を虎視眈々として待つている者のあることは(「その通り」と呼ぶ者あり)御承知の通りであります。(笑声)表に平和や中立の仮面を被り、純真なる国民を迷わしている実情に鑑みまして、政府は一日も早く大体の計画を定め、これに必要な経費を計上し、若し国民負担の限度を超ゆるようなことがありますれば、むしろ腹蔵なくこれを米国政府と協議を遂げ、必要なる援助を懇請してこそ、独立国家の責任を果すものではないかと考えるものであります。(「それはおかしい」と呼ぶ者あり)決して矛盾しないのであります。それがためには、大胆率直に国民に事態の認識を求め、国民の湧き起る熱意によつてこの問題を解決しなければならないと思うのであります。(「奴隷的独立論」と呼ぶ者あり)それにつけましても、遺家族に対する国家補償については、全国遺家族会の要望に鑑み、抜本的な方途を講ぜられることに万遺憾なき措置をとつて頂きたいことを要望するものであります。(拍手)
 そこで総理並びに関係大臣にお伺いしたいことは、この日本の漸増する将来の防衛力の充実に関する年次計画を定められたかどうか、若しまだ定めてないとするならば、これを定めんとする用意があるかどうか、その大要を承わりたいと思うのであります。
 なお、この際に、私は最近に札幌に起つた事実について一言触れてみたいと思うのであります一新聞紙の報ずるところによれば、去る二十一日の夕方札幌の路上において警部補が射殺せられ、而もその私宅にはその射殺せられる以前に頻々として脅迫状が舞い込んでおり、その射殺の直後において、ここに私持つておりますいわゆる宣伝ビラ、「天誅下る」という、いわゆる日本共産党札幌委員会という名前においてこういうものが貼られておるのであります。(「けしからん」「怪文書」だと呼ぶ者あり)これは恐らく氷山の一角ではないかと考えるのであります。(「その怪文書を見せろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)この事件に関する今日までの調査の実情と対策を関係当局から御説明願いたいと思うのであります。
 以上を以ちまして私の質問演説を終ることにいたします。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 行政協定については、近くラスク氏一行も両三日中に到着せられるはずであります。これから本式の交渉に入るわけでありますが、今日まで当局間におきまして、問題の研究、話合いをずつと進めて参つておりますが、この間に現われる米国政府の意向といたしましても、日本に対して不当な圧迫を加えるとか、或いは日本の自主独立を害するというような言論、要求等は、毫もございません。即ち米国政府の意思は、我々の了解するところ、明らかに日本に対して対等な立場において機構をこしらえ上げるという気持で以て対しておりますし、又将来も対すると思いますから、御懸念のようなことは毛頭ないと私は確信いたします。
 次に外資導入でありますが、これは私の施政演説のうちにも申述べておきました通り、日本民族の過去における優秀性、勤勉、技術等に対して信頼を置き、又日本の政局安定等から、すでに各方面に外資は入りつつあるのであります。総額どのくらいかということは、政府においてもこれを知るだけの資料は未だありませんが、併しながら各方面に、少額なりといえども、多少にかかわらず入つておるということは事実であり、又諸君も御関係の方面において現にその事実を御覧になつておると考えますが、日本と米国政府との間の話合いは互いに経済協力という線にあるのであります。我がほうの具体案、或いは産業計画その他が明らかになりました場合には、必ず私は米国政府もこれに対して援助をいたす。少くともその考えで以て両国の間に話合いを進めておりますから、やがて外資導入というこの線も、もつと明瞭に現われて来ることが近くあると私は確信いたします。その他の問題については所管大臣からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(池田勇人君) お答えを申上げます。
 お話の通りに日本は資本蓄積が足りませんので、政府といたしましても、極力資本蓄積に対しまして万全の措置をとりたいと思います。今までも相当な手を打つたのでありますが、何と申しましても生産活動が殖えますので、それに応じて資本が殖えなければならないのが、生産活動の増加ほど殖えない。そこに悩みがあるのであります。従いまして、この税法関係におきましても、私は資本蓄積に役に立つように税法を変えて行きたい。私は昨年の財政演説で、徒らに租税理論にとらわれずにやるというので問題を起したのでありまするが、実際は租税というものは日本の国民経済がよくなつて行くところに目標をおかなければならないのであります。従いまして、先般も改正いたしましたし、今後も資本蓄積に役立つように税制をやつて行きたい。シヤウプ勧告によりまする税制につきましても、これは日本の国情に副わない点は今後も改めて行きたいと考えておるのであります。
 なお、御質問の、昨年一―三月に非常にたくさんの輸入をいたしまして、そうして、それが値下りのために、特に貿易商社、又それに繋がる生産者も損をいたしたのであります。これは政府にも責任がありますし、又銀行にもあるし、商社にもあるので、どこを責めるべきものでもないのであります。これは政府のほうも今まで窮屈だつた外貨予算を急に殖やした。輸入が必要だというので急に殖やした。その外貨予算の使い方についての指導の足りなかつた点もありましよう。又外貨予算が急に殖えたというので、思惑的に輸入した商社の至らないところもありましよう。その間に処しまして、金融家として当然注意しなきやならぬことを注意しなかつた金融家にも、今後考え直してもらわなきやならん点がある。三者が皆やはり慣れぬ、終戰後初めての貿易であつたので、そういう「へま」があつたのであります。而してその損失額はどれだけかという問題でありまするが、これはなかなか計算がむずかしうございます。商社によりまして非常な痛手をこうむつた商社もありますが、この商社の痛手をこうむつたのは、高い物を輸入したということばかりではございません。それもありましようが、普通の力以上の思惑の仕事をしたということも事実であるのであります。で、只今のところの問題は、商社は自分の資本金の大体七、八十倍から或いは百倍に相当する一月の商い高であります。一億円の商社が七、八十億から百億円の商いを毎月やつております。こういうことは実際に副わないので、私は今後貿易商社の増資を進めて行きたい。又合併による資本の増加をやつて行きたい。そうして又、この損をいたしましたのも、これは昔で申しますれば、外国に支店を置きまして、例えば大豆をトン百七十ドルで買えば、これを保險するためにすぐ売り繋いでヘツジしているのが普通であります。併し昨年の一―三月におきましては、そのヘツジする機会とか、支店その他の機関を持たなかつた。これが損失をこうむつた原因でありますので、独立後、貿易をどんどん殖やして行きます場合におきましては、これが羊毛のようにヘツジの世界的機関がないのはいたし方ございませんが、できるだけ貿易商社が外国において売り繋ぐ保險をやるというふうなことで、今後損をしないように指導して行きたいと考えております。而して損をした商社についてはどういう手を打つているか。こういう問題でございますが、これは昨年七、八月頃から、皮革、ゴムについて問題が起りまして、その際に適当な金融をつけております。年末に参りまして、その「しわ」がずつと年末金融と共に寄つて参りました。日本銀行並びに関係市中銀行協議の上、できるだけ破産をしないように指導し斡旋をいたしているのであります。いずれにいたしましても、その損失が非常に多くて見込のないものにつきましては、誠にお気の毒でございますが、破産を見た場合もあるのであります。年末ばかりではございません。今後にも或る程度の破産を見る商社があるかもわかりません。先ほど申しましたように、日本銀行並びに関係市中銀行が極力斡旋をいたしまして、破産の起る場合におきましても、できるだけ小範囲にとどめるように努力いたしている状況であるのであります。
   〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(大橋武夫君) 自衛力の強化に関しまして、一定の計画に基く漸増の措置を講ずべし、こういう御意見につきましては全く同感でございますが、今日の国際情勢から考えますると、侵略に対する自衛は一国の独力を以てすることは困難となりつつあるようでございまして、殊に我が国の自衛は安全保障條約によりまする駐留米軍の力と相待つてできることでございますから、将来行政協定によりまする米軍の駐留の細目等が明らかになりましたならば、これと照応いたしまして、当方といたしましても、できるだけ早く計画を立てるべきものと考える次第でございます。
 次に北海道におきまする警察官の射殺事件につきましては、目下鋭意捜査をいたしているのでございまするが、被害者が永年警備課長の職にあり、一部過激分子の取締に当つておりまして、その間各種の事件を通じまして約二百通の脅迫状を受けておつたという事実、並びに御指摘になりましたる事件発生後における日本共産党札幌委員会を以ていたします不穏ビラの頒布等の事実等につきまして、最近の一般治安情勢等も併せて考えますならば、本事件は或る種の革命的意図を以てする政治的暗殺行為とも推測をせられるのでございまして、(「独断だ」と呼ぶ者あり)御質問のごとく、過激分子の暗躍につきましては真に嚴戒を要するところと存じます。右のような国内治安情勢に対処いたしまして、政府といたしましては、治安立法の制定と共に治安関係機構の強化策を講じまして、将来の事態に備えて遺憾のない体制を整備いたし、国内治安の万全に挺身いたす所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。行政機構を簡素化して国民の負担を軽減しようという御議論、誠に御尤もであります。終戰以来、行政機構が甚だしく膨脹いたしまして、行政事務が繁雑化して、国民が誠に迷惑していることは、各位御存じの通りであります。私は、行政機構の簡素化、行政機構の能率化、行政機構のサービス化、責任の明確化、この四観点から考察いたしまして、只今鋭意行政機構の改革案を練つておる次第でございます。成案を見ましたら御審議をお願いしたいと考えております。(拍手)
#20
○議長(佐藤尚武君) 一松君から周東国務大臣並びに吉武労働大臣の答弁が要求されておりますが、両大臣からの御答弁はない趣きでございます。(「八百長だからどうでもいいわ」と呼ぶ者あり)
#21
○一松政二君 その点につきましては、私は質問を放棄いたしまして、私の質問の内容から私が省いたことを了解せられ、事務局に通告を怠つたことがそういう問題になつたと思いますが、私はそれで満足いたしておりますから、さよう御了承願いたいのであります。
#22
○議長(佐藤尚武君) 国務大臣の演説に対する質疑はなおございますが、これを明日に讓り、本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#23
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時一分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
ソース: 国立国会図書館
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