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1951/01/29 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第9号
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1951/01/29 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第9号

#1
第013回国会 本会議 第9号
昭和二十七年一月二十九日(火曜日)
   午前十時二十四分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第八号
  昭和二十七年一月二十九日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第五日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件。(第五日)
 昨日に引続き、これより順次質疑を許します。山下義信君。
   〔山下義信君登壇、拍手〕
#4
○山下義信君 私は日本社会党第二控室を代表して、政府に対し若干の質問を試みんとするものであります。
 我々は、いま日本の運命について重大なる立場にあることを深く反省するものであります。同時に、八千万国民も又国家の将来に対し心から心配いたしておると思うのであります。ただひとり、あなた方政府のほうが却つて真劍味を欠き、熱意に乏しいことを、前厚相橋本君と共に遺憾とするもので二ざいます。(拍手)国民は長い間の苦難に耐え、敗戰者としての隠忍を続けて参りました。それもただ一つ明日への希望を持てばこそであります。明日への希望とは新たなる日本の建設、これであります。このことによつて、平和にして明るい生活の生れることを期待したからであります。然るに事実は、新らしい日本にあらずして王政復古が行われんとし、明るい生活にあらずして暗澹たる耐乏が近付きつつあるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)人のよい日本人に、はかない夢を抱かせ、パンを與えずして石を與えんとする者は、そもそも何者でありましようか。政府の施政方針には新日本建設の気魄なく、その政策はあたかも砂のごとく蝋のごとく、全く国民をして失望せしめたのであります。総理は何が故に、独立後の日本の構想を明らかにし、民族の進む大道を明確にしなかつたのでありますか。(「できないからだ」と呼ぶ者あり)我が党は、四つの島の日本にあつては、友愛と正義、平和と勤労を基調とし、万人平等の福祉を理想とする社会連帯の精神に立ち、以て福祉国家の建設をなさんとするものでありますが、今廟堂にあつてその衝に当る吉田総理は、果して如何なる日本を構想し、何を以て施政の根本とするものでありましようか。(「何にもない」と呼ぶ者あり)防衛漸増が先であるか、民生安定が後であるか、はた又二者いずれを以て第一義諦とするお考えでありましようか。今日の国民は久しく窮乏のどん底に喘ぎ、殊に今どきの青年は貧乏以外の人生を知らないのであります。この国民を駆り、この貧乏にして不健康な青年を駆つて、何を生産し、何を防衛せしめんとするのでありましようか。総理は大砲をとらずと言いながら小銃をとらしめ、防衛漸増の仮名の下に段階的軍備を考えておるようであります。やがて米軍撤退のあとは、甘んじてアジアの番犬となるの肚でありましようか。若し断じて然らずと言うならば、その然らざるゆえんを承わりたいのであります。政府の国策極めてあいまい、従つて政策に生命なく、ただ当面彌縫の安易政治をなすの結果は、民主日本の後退、社会不安の増大を招き、遂には幾十万の漸増軍隊もその用をなさざるがごとき事態の招来を、国民と共に真に憂慮いたすものでございます。
 次に総理の政治責任についてお尋ねいたします。総理は組閣以来内閣を改造すること数次に及び、閣僚を更迭すること五十有余名に及ぶのであります。何のためにかような改造更迭をいたしたのでありますか。政策の転換か、失政の追及か、はた又單に大臣病患者の渇をいやしたのに過ぎないのでありまか。「そこだそこだ」と呼ぶ者あり)我々はその趣旨説明を聞かなければなりません。曾つて片山内閣の当時、一閣僚の罷免について、本院はその説明を求めた前例がございます。けだし閣僚の更迭は重要なる国務でありまして、決して吉田一家の私事ではないからであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)又総理は、治績挙らざれば責を閣僚に帰し、己れ知らざるもののごとくてありますが、憲法第六十六條第三項には、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と明記し、総理の任免権を以てするも、なお連帯責任を免かれ得るものでないことを明らかにいたしておるのであります。(拍手)総理は憲法の條文を如何に解し、何を以てみだりに閣僚を更迭したのであるか。お答え願いたい。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)総理のごとき態度を以てするならば、日本歴史始まつて以来専横極まりなき太政大臣であります。天皇以上であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)我々は敗戰革命において天皇制を廃し、却つてここに吉田天皇を見る。何たる皮肉でありましようか。ここに列する閣僚の面々、断じてパチンコ大臣であつてはならないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)たとえ、その逆鱗に触るるあつて、夕べ恩寵の喜び、忽ち斧鉞の悲しみに変りましても、毅然としてやつて頂きたいのであります。入軽ければ政治又軽く、政治に対する民衆の信頼が失墜することは、共産党以上に注意いたさねばなりません。(笑声)閣僚更迭と総理の責任について総理の御所見を伺いたいと思います。
 次は国民生活の確保についてでありますが、総理はその施政演説において、国民生活の確保について万全の考慮を拂い、国民生活を安定せしめると述べたのでありますが、その確保とは何を確保し、安定とは如何に安定せんとするのでありますか。総理は前国会において、現在の国民生活は行過ぎである、もつと耐乏生活をしなければならんと言われたのでありますが、今なおさようにお考えでありましようか。現在の生活水準を維持するか、今後その水準が低下するかは、重大なる問題でありまするから、特に総理の御所信を承わりたいと思うのであります。
 実は吉田内閣悪政の結果、貧富の懸隔いよいよ甚だしく、大衆の生活は想像以上に逼迫し、婦女子は相次いで泥沼に顛落し、遂には生存を絶望して一家心中のごとき惨劇が年々激増するという有様であります。生活保護法の一例を見ましても、二十四年五月の百五十四万六千人から、昨年八月には二百三万人と増加いたし、大蔵省当局は昨年度予算編成に当つて、逐月二・五%の増加率を見込まざるを得なかつたのであります。蔵相は予算演説において民生安定費の増加を説いておりますが、その実体は生活保護費の増加に過ぎません。何ら積極的民生安定ではないのであります。昨年一ヵ年におきまして、悲惨なる一家心中事件が一体何件あつたとお思いになりまするか、驚くなかれ実に百九十三件の多きに上つたのでございます。親子相抱いて死んだもの七十件、三人共に死んだもの五十五件、四人枕を並べて死んだもの四十八件、一家五人全部のもの十一件、又甚だしきは七人ことごとく死んだという哀れな家庭すらあつたのでございます。これを地方別に見ますると、東京の三十九件を筆頭に、新潟の十九件、大阪の十三件、これに次ぎ、各府県ことごとくこの悲惨事を見ざるはないのでございます。又これを職業別にいたしますと、農業三十二件、失業者二十九件、俸給生活者二十件、蔵相御案内の中小企業者十七件等でありまして、(笑声)意外にも農家が多数を占めておるということは注目すべき点であります。以上を見ましても、如何に全国民が生活難の脅威におののきつつあるかを明白に物語るものでございます。政府は、この最たる事実を以てしましても、なお且つ生活は安定せりなどと、うそぶくことができるでありましようか。たまたま口を開けば、餓死は当然などと放言し、その政治性格の冷酷なる、如何に與党の諸君といえども到底看過し能わざるところでありましよう。この際、政府は、如何に国民の生活を確保し、如何にその低下を防止せんとするのでありましようか。我我は、経済白書によつて八二%の消費水準を云々し、労働省の実質家計指数六八%を引用するまでもなく、それらの数字よりも、その数字のうちに隠されたる国民生活の不平等、国民福祉のアンバランスを以て重大問題なりとするものであります。これを是正し、その行過ぎを抑え、その足らざるところを補うてこそ、初めて政治ありと言うことができるのではありますまいか。勿論、貿易の振興、生産の増強は重要政策には相違ありませんが、そのことたる、本年を限つて成るというものではなく、道遠しと言わねばなりません。巨大資本先ず栄え、その間、大衆は永く疲弊し、他日余りあるに至らば僅かに残肴を振舞わんとするものでありまして、右の手にては労働生産性を弱め、左の手にて生産増強を夢みるなど、その愚や逐に済度の道を知らざるものでございます。政府は確たる分配政策を持たないようであります。社会保障政策の採用に極めて消極的であることは、これを立証して余りあると思うのであります。今日、世界のいずれを見ましても、社会保障制度に熱心ならざる国は一カ国もございません。米国においてすら、本年度の予算中それらの経費は社会保障費と軍人援護費を合せまして七十五億ドルに及び、実に内政費の百六十八億ドルに対しまして四割五分を占めておるのであります。老齢、失業等の国庫負担は別に二十八億ドルを計上し、意外に巨額を支出いたしておるのであります。我が国同様のドイツにおいてすら、七十五億マルクの内政費に対しまして、戰争犠牲者への年金三十億マルク、社会保険への補助七億マルク等、大半は社会保障費を以て占められておりましてへ我が国と比較いたしまして格段の相違を感ずるものでございます。費用の点はともかくもといたしまして、社会保障、民生安定に熱意のないことにつきましては、ただただ呆れるのほかはないのでございます。かの大磯の風景を御覧なさい。深夜寒風に坐して君の門を叩く、戯歌の声世人皆これに涙す。君冷々として犬を抱きて走り去る。これはこれ、いずくの宰相でありましようか。(拍手)我々は、社会保障の政策なくしては民主国家は片輪であり、国民一人々々の生活は断じて確保し得ないと信ずるものでありますが、総理の御方針、蔵相の見解、厚生大臣の推進プログラムについて承わりたいと思うのであります。
 続いて物価政策についてお尋ねいたします。国民生活と物価政策とは一心同体の関係にあることは申すまでもございません。すでに安本長官も物価政策を以て国民生活を確保する考えであると申されておりまするが、その物価政策について明確に承わりたいと思うのであります。我が国の物価は昨年の六月に比しまして、卸売物価において五六%、消費者物価において二五%騰貴したのでありますが、この物価水準をどの程度まで低落させるという御方針でありましようか。輸入品物価の見通しと輸出品物価の国際水準への鞘寄せ政策とが、一方においては財政膨脹の物価への撥ね返りとの関係において、如何に調整せられ、如何に総合して計画せられてありますか。具体的にお示しを願いたいと思います。又今後防衛体制の漸進に伴いまして、国内消費物資の生産状況が如何なる影響を受けるでありましようか。又国民所得計画の上に賃金政策は如何にお考えでありましようか。国民生活との関連性を中心に安本長官の御答弁を得たいと存じます。
 大蔵大臣は物価の前途は横這いと見ておられますが、その理由が承わりたい。又物価と金融は重大なる関係がございますが、物価政策に対する金融政策につきまして大蔵大臣の方針を承わりたいと存じます。
 次は生活の合理化の問題でございます。我々社会党本部派は、(笑声)單に国民生活の切下げに反対するばかりでなく、講和日本の成果として国民生活水準の向上を要望いたすものであります。これがためには、あらゆる施策を集中いたしまして生活の合理化を図り、近代的な明るい生活設計を推進すべきであると考えるものであります。耐乏生活よりは生活の合理化をなすべきであります。衣食住に亘つてこれを科学的に検討し、経済的に、能率的に、又栄養的にも一大改善を行いまして、生活を堅実化し、従つて又生活を倫理化し、この面からして国家再建の道を推進いたさねばなりません。如何なる程度の生活水準を與えるかは、必然的に如何なる生活様式を以てするかの問題とも相成るのであります。こういうことになりますと、内政にまずいと言われる吉田総理もなかなかの御蘊蓄であろうと存じますので、国民生活の改善に対する御所見をば承わつてみたいと存ずるのでございます。又安本長官はその演説において栄養改善を云云されましたが、何か具体的な政策がおありでございますか。一方では栄養士法などを廃止し、又は食品関係の行政圧縮などが伝えられておりますことは、甚だ遺憾とするところでございまして、国民栄養の問題につきまして厚生大臣からも御答弁願いたいと存じます。我々は法律を以て再統制を言わんとするものではございません。併し、現在のごとく、一部目に余るところの浪費頽廃の悪風潮をそのままといたし、非能率、不合理なる生活様式をそのままといたしておきましたのでは、生活水準の確保又は向上の問題も漠然と相成りまして、折角の努力も水泡に帰するわけでありまして、為政者の心すべき点ではないかと思うものでございます。
 私は天野文相に伺いますが、こういう世相におきまして道義興隆を図ることは誠に困難ではないかと思うのでありますが、何と言つても衣食足るを第一とし、社会の流行、風俗に透徹した観察を行い、政治の公平民主化とその文化性の高揚を強力に推進することは、当然の施策と考えるのでありますが、国民生活いよいよ低下して道義與隆の名案果して何かあるでありましようか。近時社会道義の状態は如何にこれをお考えになりましようか。又教育環境の問題として、男女共学制の再検討、兒童福祉の励行、特飲街の防止等につきまして、文相として何かお考えをお持ちでございましようか。又今日の学徒は徴兵制の施行を非常に危惧いたしておるのでありますが、防衛漸増の過程におきまして、将来徴兵制が考慮されるでありましようか。又先に戰争遺族の問題について、出動学徒、女子挺身隊等の犠牲者について文相の努力を期待申上げたのでありますが、如何相成りましたか。御答弁に預かりたいと存じます。
 さて、遺家族援護の問題につきまして大蔵大臣にお尋ねいたさねばなりません。我々は、この問題は金だけの問題ではなく、全く誠意如何の問題であると思います。今日までの経緯やその対策を見ますと、政府の態度に甚だ誠意の足らざる点を痛感いたすのでございます。大蔵大臣は早くから二百億前後を予定し、予算案提出の間際までその金額を抑え、非常に冷淡なる態度であつたと聞きますが、なぜさように冷淡なる態度をとられたのでありますか。この質疑応答は国民と共に承わりまするが、特に広島県第二区に配付いたすつもりでおります。(笑声)又閣議決定案を見ますと、国家補償でもなく、社会保障的でもない。これは如何なる理念に基く案でありましようか。一体お燈明料という考え方はどういう意味であつたのでありますか。又その金額の決定に当つても何を基準となされたのでありますか。誠に了解に苦しむものであります。(拍手)例えば両親に対する年金をなぜ一律にしないのであるか。又一千六百円を以てして戰争未亡人の生活が保障し得るとどうしてお考えになりましたか。その他、軍人恩給復活の場合との均衡、文官恩給とのこれ又均衡の問題、生活保護との比較の検討、又雇員、傭員の場合における旧共済組合年金との関係等を十分御検討の上、合理的な結論を出されたものでありましたかどうか。若しさようでないといたしますならば、いわゆるよい加減のお考えでありまして、それこそ誠意なき態度とのそしりを免れ得ないと思うのであります。いま一度考え直して見るとのことでありますが、政府は差当つて既定の方法を実施し、漸次改めようというのでありますか。それとも閣議決定は御破算にして、取りあえず一往十万円の弔慰金を支出し、明年度より本格的支給方法を考えようとなさるのでありましようか。蔵相及び厚相よりその基本的方針を承わりたいと思うのであります。又最も重大なる問題は、今回の支給対象の中には、内地軍属、徴用工、動員学徒等を無残にも除外いたしておる点であります。これは如何なる理由に基くのでありますか。かかる戰災援護は、殊に人命の損害補償につきましては、最も公平を期すべきでありまして、一つには厚く、一つには薄く、特に一局部に限るがごときは、人道上大いに慣しむべきものと考えるのでございます。(拍手)政府は、改めてこれを考慮し、或いは財源措置と睨み合せ、不公平なきを期するお考えはないのでありましようか。なお蔵相は前国会において、賠償費との関係があるということを言われたのでありますが、その関係について納得の行く御説明を望みます。又遺族の多くは生活の逼迫から交付公債の現金化を急ぎ、それがために売り叩きに会い、損失をこうむることのないよう、如何なる御用意をお拂いになるつもりでありましようか。又生活保護費の二十余億円が援護費に振替えられるようでありますが、生活保護費との併給はしないという考えでありましようか。なお本問題の実際処理には非常にたくさんの人手が要ると思うのでありますが、本省関係におきましては増員の必要はないのでありますか。厚生大臣に伺います。
 戰争遺家族の援護と共に、元傷痍軍人の援護も重大なる問題であります。政府の対策は、支給対象約五万、予算十九億円、その支給は七段階に分つとのことでありますが、一項症即ち両眼盲目に等しいもの又は両脚両腕切断のもので、一ヵ月僅かに四千五百円、二項症即ち食物を噛むことができないものや言語の機能を失つたものが、これ又僅かに一ヵ月四千円というのであります。これでは一ヵ月三千円の赤字となりまして、生活不能は言うまでもありません。特項症や一、二項症のものは附添を要する重症者でありますが、妻子ある者への考慮は如何なされるのでありましようか。これ以上支給額の再検討をするお考えがありますかどうか。又右対象者の中には、軍属、徴用工、動員学徒、女子挺身隊等を含むのでありましようか承わりたい。厚生大臣の御答弁をお願いいたします。
 未帰還者の問題につきましては、朝野なお心痛に堪えないところであります。その後、引揚促進について政府は如何に努力し、又留守家族に対し如何なる援護の用意がありますか。外務大臣及び厚生大臣から御答弁を得たいと存じます。ソ連政府は張る一月二十一日、米国政府に覚書を送り、戰犯以外は日本捕虜は全部送還したと通告いたしたのでありますが、日本外務省は昨年七月二十五日、なお生存する者七万七千と生死不明者二万八千とを確認する旨報告いたしましたことは周知のごとくであります。この報告に対しソ連は何らの回答をしないままで、本年初頭スターリン首相の対日声明があつたのであります。吉田総理はこのメッセージに対し、「先ず捕虜問題を解決せよ」と応酬したようでありますが、近時一部にスターリン圏との経済取引に関し種々の動きがあり、又世界経済会議の開催等が伝えられておりますが、この機会に、政府は未帰還者引揚促進、即ち先ず捕虜問題解決の要求との関係において、何らかの対策を進めるというお考えがあるのでありますか。場合によつては世界経済会議への参加を許さぬという考えでありましようか。又ジユネーヴにおける国連捕虜特別委員会参加の効果に対するお見通しについて、外務大臣に承わりたいと思うのであります。
 木村法務総裁にお尋ねいたします。戰犯として巣鴨或いは海外に抑留されている同胞の助命歎願について留守家族や宗教団体等から悲痛なる運動が行われておりますが、海外抑留者の内地服役の問題、死刑執行猶予助命の問題、服役年限短縮の問題等につきまして、当局の努力をお聞きいたしたいと思います。又死刑遺家族の援護につきまして、又戰犯留守家族の生活援護につきまして、何らか対策を講ずる考えがありますかどうか。関係閣僚の誠意ある御答弁を得たいと思うのであります。
 社会保険の確立につきまして厚生大臣に御質問いたします。最近の重要問題といたしまして、一点単価の値上げをいたしました。これが各種保険の医療費に及ぼします影響は総額どのくらいになるお見込でありますか。その保險経済に及ぼす結果が、保険料の引上げ、一部負担の加重となつて、被保険者の利益を著しく阻害する虞れは果してないというお考えでありましようか。而もこの値上げは暫定的であるということでありまするが、政府は今後再び値上げをするという考えがあるのかどうか。又この際、保険医制度の再検討、診療報酬制度の改善についてどういう方針をとる考えでありますか。特に医療給付に対する国費負担は、政府としてやる考えか、全くやらない考えであるかどうか。厚生大臣並びにこの点は大蔵大臣のお考えをも承わりたいと思うのであります。
 次は兒童福祉の諸問題についてお尋ねいたします。吉田総理は、先に兒童憲章の制定を承知し、何を思つてか、婦人兒童庁の設置を命じたとのことでありますが、政府の兒童政策は実にひどい有様であります。民生安定費の圧縮を遺憾とする我々を唖然とさせましたことは、僅かに五億の予算を今年は三億に削つたという一事であります。可憐なる兒童の養育費は平衡交付金中で横領されており、去年から値上げもなく、円滑に交付もされず、十五万の保護兒童は政府から非常に虐待されておるのであります。吉田総理のごとき近代の文化政治家が(笑声)子供をいじめて平気でおられるわけはないと思います。(笑声、拍手)厚生大臣と岡野国務相は平衡交付金問題で国会を欺くのでありますか。総理の面前でその責任を明らかにして頂きたいと思う。政府は当初の予算内示には補助金にしておつたと言いますが、岡野国務相、あなたが反対されたのでありますか。誰が反対したのでありますか。又兒堂福祉に関する地方行政もこれも縮小すると伝えられておりますが、果して事実でありますかどうか。御答弁をお願いいたします。兒童福祉の重要なるテーマといたしまして、施設における満年兒童の職業補導の問題がありますが、厚生大臣はどうするおつもりでありますか。保護受託制は消極的糊塗手段でありまして、單に徒弟制度を合法化したのみであります。是非とも根本且つ総合的対策が必要であります。パチンコをやめさせようとするならば職業補導をするに限るのであるが、青少年の不良化を防止するには職業に就かせるのが最良の手段である。これら少年兒童の職業補導施策につきまして、厚生大臣、文部大臣、労働大臣は何を協議し、如何なる成案を実行せんとするのでありますか。ここに明示されんことを望むものであります。
 関連して法務総裁に伺いたい。それは人身売買の問題であります。最近悪質なる人身売買が盛んに行われていることは御承知の通りであります。昨年一ヵ年におきまして、十八歳以下の少女六百七十四名が売買されたのでありました。従来は多く農家に売渡されたものが、近来はその五五%は特飲街に売られているのであります。福島県国警の報告を一例にすれば、昨年中に検挙した人買い屋は四十名に上り、前年の二倍に増加したとのことであります。又、今までは二十歳前後の婦人を狙つたものが、近頃は十四歳から十八歳未満の少女を狙つているとのことであります。婦人兒童の売買禁止に関する一九二一年の国際條約に復帰すべき日本として、この対策をどうするお考えでありましようか。又売春婦取締の問題は、占領政策の関係におきましてあのようになつてはおりますが、自主日本といたしまして放任しがたい問題と思われますが、法務総裁は売春婦取締法を提案する御意思がありますかどうか。又、厚生大臣は、これらの対策、即ち転落の防止、闇女の更生施策等について如何なる努力が携われてあるか、お示し願いたい。なお、法務総裁は、人口問題とも関連し、闇堕胎の弊に鑑み、刑法の堕胎罪を廃止するの御意思があるかどうか、伺いたいと思います。
 最後に吉田総理にお尋ねいたしたい。それは政権授受についてのあなたの御信念であります。あなたは、いつも政権授受のルールを明々白々にすることを以て民主政治の要締であると主張し、芦田内閣の出現に対し非難されたことがあると記憶いたしております。政権のたらい廻しは国家のためにとらざるところという御信念でありましよう。一体、今日の憲法におきましては、一旦衆議院において絶対多数を占むる以上、如何なる失政が堆積しても任期中は内閣更迭の必要はないというお考えでありましようか。民心なお内閣にあるか、すでに民心吉田内閣を去つて清新溌剌なる新政治を望みつつあるか、何によつてこれを察知することができましようか。あなたは衆議院において人心なお我々にありと豪語されましたが、これはあなたの独善ではありますまいか。衆議院に過半数を占むる内閣の進退は吉田内閣が最初でありますだけに、参議院はその任務において重大なる決意を持たなければなりません。内閣の進退、政権授受のルールにつきまして、総理の御所信を承わりたいと存じます。
 以上を以て私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(吉田毎君) お答えをいたします。
 日本建設の構想については私の施政方針演説の中に縷々申述べております。再び御覧を願いたいと思います。又内閣改造についてお尋ねでありますが、内閣の改造は総理大臣の責任においてなすことに新憲法はきまつております。その必要の際これをなすことは当然であるのみならず、独立を前にして内外の事情複雑なる今日においてその必要に応じて適材を適所に置くということは、これは総理大臣として当然いたすべきことであります。
 又未帰還者の問題につきましても私の施政方針の中において述べております。
 政権、政局についてのお尋ねでありますが、無論輿論によつて進退いたすべきでありますが、私は現内閣に対する民心未だ去らずと確信いたしております。解散はいたしません。(「何を以て言うか」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(池田勇人君) お答えを申上げます。
 社会保障制度につきましては政府は常に意を用いているのでございまして、財政の許す限り徐々に拡大強化を図るべく進んでいるのであります。明年度におきましても、生活保護費におきまして相当増額し、又社会保險費につきましても相当の金額増を見ているのであります。結核対策等、あらゆる方面で、できるだけの措置をいたしております。
 次に物価の見通しでございまするが、一昨年の六月に比べて卸売物価が六割上つておる、非常な上りではないかというお話でございます。併しこれは一昨年の六月は非常な滞貨その他で下つたときでございます。私が初めて予算を作りました昭和二十四年、即ち為替相場をきめましたときを一〇〇といたしますと、卸売物価、或いは消費者物価指数、こういうものは米英と日本は大体同じになつておるのであります。たまたま朝鮮事変のとき非常に下つておつたので急に上つたと思いまするが、今後は生産の増強、産業の合理化、金融の適正化によりまして、物価は大体横這いになると考えております。
 次に、戰死者遺家族、傷病者につきましての政府の態度、殊に私の態度につきまして非常に御非難のようでございますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)私は財政演説でも申上げましたように、誠に戰死者遺家族に対しましては同情の念を禁じ得ないのであります。(「口先だけだ」と呼ぶ者あり)我々は今日におきましてもできるだけのことはいたしたいと思いまするが、財政の現状並びに将来の国民の負担のことを考えますと、今の程度で我慢して頂いて、今後できるだけの措置をいたしたいということは、財政演説で申上げた通りであります。なお、この際に申上げておきますが、私はお燈明料と言つたことはございません。(「何と言つた」と呼ぶ者あり)私は弔慰金を出したいと言うのであります。あの八百八十億円並びに年金はお燈明料という考えでやつたのではない。弔慰金はできるだけ財政上負担して出そう、今はこういう状態でございますから今後考えますということは、財政演説で言つているのであります。(「どういうふうに考えるか」と呼ぶ者あり)
 次に医療費の問題でございますが、これは私の所管ではございません。併し一点単価の問題が起きたときに、これは医師の実態を聞き及びまするし、又保險料を拂う人の状況も見まして、一時的にお医者さんの所得税を軽減するとの一時的措置を講じました。今後一点単価の問題或いは点数の問題につきましては、十分調査をするように厚生省と話を進めておるのであります。
 なお、この機会に、昨日御質問のありました点で、私、予算委員会に出て欠席しておりましたから、この際御答弁申上げます。
    ―――――――――――――
 千葉さんの御質問の、電源開発の外資導入の見込なしとすれば、国内資金による事業送行によつてインフレを招来するのではないか、こういうあれでございます。電源開発資金につきましては、只今のところ昨日申上げましたように千億円余り要る予定をしております。できれば外資導入をしたいというのでその努力を只今いたしております。見通しはまだはつきりいたしませんが、我々としては外資導入資金も入れたい。而してこれによつてインフレが起るというふうなことは考えておりません。第二の御質問の、昭和二十七年度予算における不生産的支出、インぺントリーフアイナンスの減額等々、インアレの要因による国民生活水準低下の対策如何、こういうことでございますが、内政費におきましても、国際費におきましても、その間のバランスにつきましては特に留意いたしたのであります。而して予算は、一般会計、特別会計、政府機関を通じまして、絶対均衡主義で行つておりますので、私はインフレになる懸念はない。又いろいろな事情がありましてインフレの要因が出て来ますならば、その都度々々これは対策を考えて行きたいと思います。インベントリーフアイナンスの減額は輸出入が大体バランスするということから当然に出て来たのであります。
    ―――――――――――――
 次に須藤君の文教費の予算総額中に占める割合がソ連に比し低いのはどうか、こういう御質問でございますが、ソ連邦の予算の数字がはつきりいたしません。(「はつきりしている」と呼ぶ者あり)これは相当作為的なものがあるのであります。何もソ連の予算に日本の予算をくつ付ける必要はないのであります。ソ連はソ連、日本は日本でいいのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)文教費の予算につきましても三百五十二億円と、前年に比しまして成る程度の増額をいたしております。
    ―――――――――――――
 その次に山花さんの御質問に対しまして、公務員ベースにつき、今後人事院の勧告を尊重されるか。ベース改訂を物価上昇に鑑み是正を行う考えはあるか。――これは公務員ベースにつきまして、人事院の勧告は尊重いたしまするが、その通りにするとはきまつておりません。やはり財政の事情その他を考えてきめるべき問題だと思います。なお只今のところ、ベース改訂につきましては、物価が横這いの見通しでありますので、改訂をいたすつもりはございません。
    ―――――――――――――
 次に、高良さんの御質問の、防衛費の圧迫により、文教費、殊に六三制実施費、寒冷地室内体操場費、老朽校舎再建築費等は削減甚だしいが、所見如何。――この六三制の問題につきましては、昭和二十四年に決定いたしました〇・七坪の基準によりまして、来年度で完了することになつております。ただ二十四年の策定後、兒童数が増加いたしました。この分につきましては二十八年度において考える、一応当初の計画だけは二十七年度で完成しよう、こういう考え方で行つておりますので、三十五億円を計上したのであります。寒冷地の室内体操場につきましても従来通りの金額を計上いたしております。それから老朽校舎の再建築につきましては、私は老朽校舎の再建築費は国の予算で見ないという考えで進んで行きたいと思います。ただ地方公共団体におきまして、(「現実を見ろ」「百六十万坪あるよ」と呼ぶ者あり)そういう場合におきましては、地方債の引受等によりまして助成して行きたい。こういう考えでおります。(拍手)(国務大臣吉武惠市君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(吉武惠市君) 山下さんの御質問にお答をいたします。第一点の社会保障制度に関する御質問に対しては、只今大蔵大臣から御答弁いたしました通り、私どもとしては財政の許す限り充実を図つて行くつもりでございます。次に、遺家族の援護の問題でございますが、これも只今大蔵大臣からお答えいたしましたごとく、今回の予算措置は不満足ではございましようが、今氏の財政上止むを得なかつたのでございまして、今後財政の許す限り根本的な改善を加えるつもりでございます。(「ダレスの要求をはつきり言いなさい」と呼ぶ者あり)なお、未帰還者の給與の問題でございまするが、これも目下のところは従前通りでございまするが、これも財政が許せば、逐次改善を図つて行くつもりでございます。なお、医療費單価引上げに関する健康保険並びに国民健康保險に対する影響でございますが、成るほど單価を上げましただけ影響はございますけれども、健康保険につきましては標準報酬が引き上つて参りましたので、大体経営はとんとんでやつて行けるつもりでございます。なお国民健康保険につきましては、従前通り非常に困難な点もございます。従つて来年度の予算におきましては、再建整備に要する金として四億余り計上いたしますると共に、なお奨励金として四億余りを計上いたしているわけでございます。この点につきましては、財政が許せば医療費の負担をして行くつもりでございまするが、今日のところは止むを得ないと思います。なお、兒童福祉についてのお尋ねでございましたが、この補助金が特別に組めなくて平衡交付金に残りましたことは甚だ遺憾でございます。併しこれは将来地方税制の根本的な改革を考えておりまするので、その際、是非御趣旨のように努力いたすつもりでございます。
 なお、補導所の件等についての御質問がございましたが、私ども現在労働省で二百六十四ヵ所の補導所を持つておりますが、その過半は青少年の補導に努めているわけでありまして、今後とも兒童福祉につきましては鋭意努力を拂うつもりでございます。(拍手)
   〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手)
#8
○国務大臣(周東英雄君) お答えをいたします。国民生活の安定に関する施策についてのお尋ねでありましたが、これに対しましては、第一は、何と申しましても衣食住に関する数量の増加確保と質的政善がその対策の重点であります。その意味におきまして、二十一、二年頃までは、主食にいたしましても二合一句の程度の配給であり、その中には「とうもろこし」、「こうりやん」、「いも」等を含めて二合一勺でありましたが、二十四年以後におきましては、我が政府の施策といたしまして、これらの「いも」、「とうもろこし」、「こうりやん」等の配給をやめて、米麦等によつて二合七勺の配給を確保することにいたしましたことも、その現われであります。従つて今後におきましても、これらの施策を伸ばして行くために、国内におきましては、自給度の向上の意味において、農業増産対策を極力進めて参るつもりでありまして、たびたび申上げましたように、二十七年度は四百億円程度を出して、土地改良、開墾、これを進めますと同時に、食生活の改善として、澱粉質食糧にのみよらずに、畜産砂増強、水産の増強について特に意を用いて行くつもりであります。次の衣料関係でありますが、これも申上げたように、国民生活に必要な衣料の供給に対して、二十二三年頃までにには一人当り三ポンド及至四ポンド程度でありました。今日約七ポンド程度一人当り行くわけでありますが、本綿につきまして申しましても、国民に渡す綿織物の原料は一月三万梱以下が今日五万梱になつておりますのを見ましてもおわかりかと思います。今後におきましても、衣料の確保については、なお最善の努力をいたす考えであります。住につきましては、やや握れております。併し年々国の予算並びに住宅金融公庫等の金融によりまして、平均約八万戸程度の家を建てて、大体戰後減つておりました六百万戸近くのものが半分近く増加いたしておる状況であります。物価につきましては、当然これらのものが安定した価格で與えられることが必要であります。従つて食糧等につきましても、全体的の物価の標準は、国際経済に復帰した今日、国際価格より上廻らぬ程度においてこれを参考とし、一つの目安といたしおります。食糧等の供給につきましては、その意味において、輸入食糧等につきましては、特に国内に拂下げる場合において、輸入補給金等の供給をして価格の安定を図つておるわけであります。この施策は、今後におきましても、国内の増産と共に輸入食糧を減ずる行き方がありますが、必要な限りにおいて輸入補給金等の施策は継続しで参るつもりであります。(拍手)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(天野貞祐君) お答えいたします。
 道義の高揚ということにつきましては、お説のように非常にむずかしいことでございまして、ただ教育だけでできることではございませんが、教育の立場から言えば、やはり社会教育とか学績教育を通じて一般の教養水準を高めるということに結局帰着いたすと思います。殊に道徳観念を明確にするというようなことが私は教育の上からできることだと思つております。
 第二の男女共学のことにつきましては、これは小学校と大学は問題ございませんけれども、中学と高等学校では問題だと思います。併しこの現場にある人たちの意見を聞いてみても両説がありますので、研究を要すると思つております。第三番目に子供の福祉問題でございますが、これは紙芝居とか、映画とか、読物とか、そういうもので、できるだけよいもりを奨励して、子供の生活環境をよくするということに努めたいと思つております。それから飲食街の氾濫のことでございますが、これが教育に関係ある場合には、教育委員会などと連絡をいたしまして、又輿論をも喚起して、支教地区の設定等によつてこれを防止したい。観に防止した所もございます。それから、徴兵制のことは差当つて全然考えておりません。
 それから次の遺家族援護のことでございますが、私は初めからこの学徒動員による犠牲者は援護の対象になるべきものだという考えを以てこのことを(「どうして通らなかつた」と呼ぶ者あり)予算などの関係から、軍人等、恩給法の対象となる者の遺家族だけに限られることとなりましたので、それで(「なぜです」と呼ぶ者あり)遺憾ながら学徒動員はこれに入りませんが、今後これが入るように私は努力する考えでございます。以上を以てお答えといたします。(「どうして入らなかつた、ちつとも説明にならない」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(木村篤太郎君) 外地に現在服役中の戰犯者のかたがたの内地送還につきましては、政府におきまして最善の努力をして、その実現に努力しておるつもりであります。只今フィリピンと濠州のマヌス島に服役しておる人が多数おりまするが、このマヌス島に服役しておられるかたがたにつきましては濠州の好意ある取扱によりまして、恐らく近き将来において内地へ送還されることと思います。フィリピンのかたがたについても政府は一日も早く内地へ送還されるよう努力しておるところであります。さよう御了承をお願いいたしたい。それから人身売買につきましては、これは誠に憎むべき行為と考えております。憲法にきめられました基本的人権を害するも甚だしいものであります。で、従来も法親によりましてこれは取締つておるのでありまするが、なかなか容易にこれは絶滅することができませんので、政府といたしましては、総合的な努力を持つた法案を只今考慮中でありまして、近く国会に提出いたしまして各位の御審議をお願いする段取ということになることと思います。さよう御了承を願います。(「人身売買の政治上の責任は誰だ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣岡野清豪君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(岡野清豪君) 兒童福祉の問題についてお答えを申上げます。先刻厚生大臣がお答え申しました通りでございます。さよう御了承をお願いいたします。(「何だ」「答えなさいよと呼ぶ者あり、拍手)
#12
○山下義信君 議長、外務大臣の答弁ございませんか。外務大臣への質問をしていたのだ。
#13
○議長(佐藤尚武君) 総理大臣は外務大臣を兼ねておられますから、それで御答弁があつたものと存じます。紅露みつ君。
    ―――――――――――――
   〔紅露みつ君登壇、拍手〕
#14
○紅露みつ君 私は国民民主党を代表いたしまして、数点の問題について政府に質問申上げたいと存じます。私の質さんといたします第一の問題は、戰歿音遺族及び傷痍軍人対策についてであります。本問題につきましては、前質問者からも縷々御発言があつたのでございまするが、私はいささか異なつた角度からこれを扱いまして、できるだけ重複を避けまして、その根本問題に触れておきたいと考える次第でございます。先ずお尋ねいたしたい点は、本対策に関する政府の基本的な考え方であります。即ち遺族、傷痍者を、單に要援護者であると見て対策を立てるのであるか、或いは曾つて国の公務員として勤務、且つ又国の強権による公の職務に倒れた人の遺族として、又は公務のため傷ついた人として、施策を考えるのであるか、いずれかの点であります。若し後者の意味といたしまするならば、国は曾つての雇用員に対し当然補償をなすべき義務のありますることは申すまでもないところであります。私が特に強調いたしたい点もここにあるのであります。私は先般の全国遺族大会に列席いたしまして、親しくその声を聞いたのでありまするが、遺族のかたがたが切々として口々に訴えられまするその要請は、政府に対し国としての補償を行えという点に要約されるのであります。元来、本問題は、昭和二十一年二月占領軍の覚書に基いて遺族に対する扶助料の全部を停止し、傷痍恩給に大幅の制限を加えましたる勅令第六十八号公布以来の極めて古い問題であります。その後引続く幾多の努力にもかかわらず、覚書の趣旨は絶対に動かしがたいものがありましたので、国家補償以外の何らかの方法になりまして、これらのかたがたを援護いたそうという努力が、最近に至るまで続けられましたのでありまして、第五国会の両院本会議における遺族傷痍軍人に対し速やかに援護を行うべしとの決議も、その努力の一つの現われであつたのであります。併しながら、情勢は変り、今や前述の覚書が効力を失う時期も迫りましたので、この際、本来の筋道であるところの国家補償を行うべきだと確信いたすものでありますところが、他面、又社会保障制度の一環として本対策を樹立すべしという議論もあるのでありまするが、申すまでもなく社会保障は社会連帯的思想に基いて生活困難者に対してその生活を保障することを目的といたすものでありまするので、これを我が国の現状より見ますれば、無醵出年金のごとき保険の一種によらざるを得ないのでありまして、これは保險制度の高度に発達いたしました国家機構でなければ実現は困難であると思われるのであります。且つその性格から申しましても、国家の補償と社会保障とは全くその性質を異にするものであります。現に福祉国家として最も発達した社会保障制度を持つと言われておりまする英国においてさえも、社会保障とは全然別個に国家補償を実施いたしておるのであります。従いまして、社会保障を以て国家補償に代えよという議論は今日のところまだ当を得ざるものと信ずるものであります。若し又既得権たる恩給を受くる権利をすべて棚上げするといたしますれば、その停止するところの根拠を明瞭にする必要がありまするのみならず、(拍手、「そうそう」と呼ぶ者あり)憲法第十四條の平等の規定にも抵触し、更に現在の文官の恩給制度をも同時に社会保障制度に切替えなければ、甚だしい不均衡がそこに生ずる結果となりまして、事態の紛糾は免かれがたいところであります。よつて本問題は、援護でもなく、社会保障でもなく、当然国家補償であるべきはずであります。(拍手)而も覚書はやがて無効となる、従つて勅令第六十八号が効力を失う、そこで遺族、傷痍軍人は当然受くべかりし補償を再び国から與えられる、かようになることが最も自然な行き方ではないでしようか。然るに去る一月十六日の閣議で決定されたという遺族傷痍軍人対策、その後検討の結果、或いは変更の余儀なきに立ち至ることも予想されるこの案は、年所要額二百三十一億円を以て、遺族に対し公債を以てする一時金と年金とを支給すると共に、傷痍軍人に援護金を支給することをその骨幹といたしておるようでありまするが、その性格たるや全く不明確そのものであります。そこで先ず以て政府にお伺いいたしたいと存じますることは、一体、政府は遺族傷痍軍人に対し、国として当然與うべき補償を行う義務があるということを認めておられるでありましようか。それとも遺族傷痍軍人には生活の援護をすれば足れりと考えておられるのでありましようか。この根本観念はどうなのでありましようか。
 質疑の第二点は、遺族傷痍軍人対策に関する今後の決意如何という点であります。即ち政府が幾たびも答弁しておられまする通り、本年は、現在のような、援護でもない、補償でもないいわゆるお燈明料、これは先刻池田蔵相から御訂正がありまして、弔慰金という意味だそうでございまするが、いずれにいたしましても、この程度のもので満足せざるを得ないと今年はいたしましても、今後において、これをどうしようと企図されるのでありましようか。何人が見ましても、これは国家補償だと、納得の行く補償を近く行う決意ありや否やということを伺いたいのであります。(拍手)これに関連して更にお尋ねいたしたいのは、昭和二十一年勅令第六十八号の処理であります。新聞の報ずるところによりますると、政府は近く恩給特例審議会を置くということでありまするが、政府の意図されるところは、今回政府が行わんとするところの遺族傷痍軍人対策にはかかわりなく、恩給制度を復活せしめる意味を以て、勅令六十八号は暫らくそのままに存続せしめんとする意図であるか。且つ又、やがて当然に復活すべき恩給に関する一連の事項を挙げてその機関に付議せんとするものでありまするかどうか。これらの点について政府の明白なる御答弁を要求いたすものでございます。(拍手)
 次に引揚促進の問題でありますが、今回ジユネーヴにおける国連総会に日本代表を送り、海外抑留者の問題について発言の機会を得ましたことは、留守家族のかたがたにも一般国民にも心強い印象を與えておりますが、本問題に関しては、国連にのみ頼らずに、日本独自の努力においても能う限りの手段を盡さなければならないことは申すまでもないところでございます。然るに政府が著しくその努力を怠つているという意味の新聞記事が去る一月十八日附朝日新聞「声」の欄に掲載されております。而も筆者は本問題と因縁の浅からないと聞きまするところの日比協会設立準備委員長の神保信彦氏であります。先ずその記事を朗読いたします。
   日本兵を救え
  フィリピンに残つている元日本兵と比国警察隊とが交戰したという記事が各新聞に載つた。昨年秋ごろから、ミンドロ島やミンダナオ島にも、千か二千の敗残元日本軍人が行動していると聞く。
  出征将兵のうち十万ぐらいは生死不明であるが、しかし復員局の業務上やむを得ず戰死者として整理しているという事だ。フィリピンに生きている日本人は、かなりの数に上つているかも知れない。というのは、中国派遣軍や南方総軍には全面降伏復員命令が伝えられたけれども、最高司令官を失つたフィリピン派遣軍将兵は混乱して山中を放浪した。多くのものはそのまま帰順して捕虜あるいは戰犯として処理されたものだが、敗戰を信ぜずに、あるいは降伏の危険と恥辱を重大視して依然放浪生活を続けているものも相当数あろう。
 現在フィリピン政府が治安維持の為にフク団を捜索討伐している矢先、このように帰るに帰れぬ罪もない兵士が、生き残るためにゲリラに成り果てて治安工作の妨害になつているとすれば、賠償問題の解決よりもはるかにいそぐことである。それどころか何方という遺家族にとつて極めて重大な関心事ではあるまいか。
 今のところソ連抑留者問題のように国際紛糾にはなつていないが、敗残の日本兵が生きるために、または抗戰意識をもつて、フク団に合流するような事態が起れば、ひいては日比両国の友好を傷つけるようになるのではあるまいか。日本朝野が早く何らかの手を打つことを切望する。以上でありまするが、この記事が真なりといたしまするならば、黙過しがたい大問題であると思います。
   〔議長退席、副議長着席〕
 何はともあれ、これら南洋諸島にさまようというかたがたは、万難を排して救出しなければならないと考えまするが、政府はこの記事に対して調査されましたでしようか。そうして何らかの手を打たれたでありましようか。伺いたいと存じます。
 なお中共地区抑留者の問題でありまするが、彼の地はその特徴といたしまして婦女子が多いのでありまするが、これらの人々が人身売買によりまして転々として各地に苦難の生活を続けておられると聞くのでございまするが、竹のカーテン程度だということでございまするならば、絶対に調査の手が伸びぬということもなかろうと思われまするが、政府はそれに対して近頃どういうふうなことをしておられるのでありましようか。近況について御説明を願いたいと存じます。(「何にもやつたことはない」と呼ぶ者あり)
 次に婦人庁の問題について伺いたいと存じます。政府は今国会において行政機構の改革を断行するということを総理大臣の施政演説中に述べられておるのでありまするが、伝えられるところによりますると、労働省の婦人少年局、厚生省の兒童局、農林省の生活改善課、文部省の社会教育課等、婦人に関係を持つ機構を統合して、総理府内に婦人庁を設置するということでありまするが、事実でありましようか。先ずそれから伺いたいと存じます。昨年の秋、政府が婦人少年局廃止を企図されました際に、全国婦人の各層はこぞつてこれが阻止のため猛運動を展開いたしました。そのために漸く廃止は免かれたのでありまするが、その直後、同じ政府から、一見、婦人対策の強化と思われる婦人庁設置の提唱がなされておるのでありまして、私どもとしては、政府の真意が奈辺にありまするのか、実は判断に苦しんでおるのでございます。世間ではこれを評して政府與党の選挙対策であろうとしておりますが、政府はどういうお考えの下にこの計画をなされたのでありましようか。若し婦人の向上のために、その対策を強化されるとするならば誠に幸いでありまするが、それにいたしましても、その方策を誤まりまするならば、却つて婦人対策の弱体化を招来する懸念なしとしないのであります。(拍手)それで、この機会に、是非その構想を明確にして頂きたいと存じます。申すまでもなく、婦人少年局は労働行政の一環として、労働面における婦人と年少者に適当な職場を得せしめ、そうして、その保護と地位の向上を図ることを使命とし、兒童局は厚生行政面から兒童保護の建前によつて母子を保護するを目的といたしております。殊に生活改善課のごときは農業改良局内の一部門であり、農村の生活改善を目的としておるのでありまして、たまたまそこに婦人の占める分野が大きかつたというだけであると存じます。又社会教育課にいたしましても、これは成人教育の一環としての存在でありまして、共にそれだけを抜き出して考えるということは如何なものでありましようか。従いまして、これらの部局を單に寄せ集めて婦人庁を作つて見ましたところで、それは何らの意味を持たないのみならず、運営上に一貫性を欠いて、あたかも体から手足をもぎとつたような形になりまして、徒らに混乱を来たす結果とならざるを得ないと考えられるのであります。そこで、政府が真に婦人のためにその対策を強化されるというお考えであるならば、現在の機構はそのままにしておきまして、従来から必要性を痛感されておりまするこれらの総合研究所を設置すべきであるということを提唱いたしたいと存じまするが、(拍手)これに対して政府はどうお考えでございましようか。伺いたいと存じます。
 次に、この問題の最後にお尋ね申上げたいのは、これらの機関が各省予算面に占めるところの地位についてであります。例えば婦人少年局の労働省予算に占めるところの割台は僅かに〇・二六%、それでも昨年の〇・二二%よりは少々上廻つておるようでありまするが、又生活改善課の〇・三%、兒童局の全国あれほどの施設を引受けておりまするその予算が僅かに一%のごとき、又文部省社会教育課におきましても、これは大同小異で、極めて低い地位に置かれておると思うのでありまするが、これらはいずれも終戰後折角民主主義の根幹として生れ出た機関でありまするので、もつと予算を潤沢にして、十分に思い切つた活動をして欲しいと思いますが、これにつきましては、行政管理庁長官、総理大臣の御意見も伺いたいのでございますが、これらに併せて各所管大臣のこの面に対する御所見はどういうものでありましようか。併せて御説明頂きたいと思います。
 最後の問題といたしまして、憲法第九條の改正と、これに対する婦人層の動向についてでございます。政府は近く憲法第九條の改正をする計画で以て、その研究を始められたと申すごとでございまするが、事実でありましようか。先ず伺つておきたいと存じます。一国の憲法が怪々に改正さるべきものではないことは申すまでもないところであります。殊に我が国は戰争放棄の理想を世界に宣言し、いわゆる平和憲法を制定したのでありまして、これを進んで改正しようなどとは誰もが望んでおらないのであります。それのみならず、極力この平和憲法を守り、軍備などとは永久に絶縁して、戰争のない世界、戰争のない国家を建設して行こうとすることは、国民一致の熱願であります。併しながら、国際情勢の変化に伴い、独立国家としての自主性を確立するためならば、或いは憲法改正の必要も予想されるのでありまするが、この場合における全国婦人の動静が問題となつておるのであります。即ちその相当数がすでに反対の気勢を揚げつつあると聞くのであります。我が国人口の半数を占める婦人が憲法改正に当つてその決定権を持つことは極めて当然なことでありまして、(拍手)本問題における婦人の動向は、けだし重大だと言わなければならないと存じます。顧みまするに、今次の戰争において婦人は命にも代えがたい最愛の子供や夫を失い、その上、敗戰によつて家庭生活に余すところなき苦難を味い盡しました関係上、平和憲法を守り拔こうとする熱意は極めて深刻なものでありまして、(拍手)それは到底男子の比ではないと思われるのであります。(「いいところだ」と呼ぶ者あり、拍手)併しながら婦人は決して現実の情勢に目を蔽わんとするものではありません。憲法第九條の改正は、言われるがごとく自衛力の強化が戰争に繋がるものではなく、むしろ戰争を防ぐためにこそ必要であるといたしまするならば、政府は全力を盡して国民にその真相を告げ、協力を求めなければならないはずであると思うのでありまするが、(拍手)政府においてはそうした努力をせず、常に独断的な秘密外交に終始しているということは、どういうわけでありましようか(「そうそう」と呼ぶ者あり、拍手)誠に遺憾に堪えないところであります。このことは単に婦人のみの問題ではございません。例えば一月二十日発表のダレス氏宛吉田首相の国府選択に関する書簡のごときは、しばしば問題になつておりまする通り、国会開会中にもかかわらず何ら諮られることなく、国民の知らない間にかような重大な意思表示がなされておつたということは、これは著るしい秘密外交の例だと思います。これに対して総理大臣は、これは政府の責任において当然なし得る事柄であつて、これでよろしいと言うておられるのでありますが、それにいたしましても、このくらい重大な意味を持つ事柄につきましては、やはり何とかして国民との間に意思の疏通を図られるべきではなかつたのでありましようか。もとより吉田首相は外交の厖大家であり、このむずかしい国際関係に処して、その御労苦は多といたしますが、その独断と秘密主義は何としても容認しがたく、そのために国民の間に不安を與えるという場合が少くないのであります。殊に婦人暦において一層然りであります。自然、家庭に籠りがちな婦人に対しては、あらゆる機会を捉え、親切な外交の解明が何よりも肝要であると思います。然る後、国民の正しい判断を求めることこそが政府の責任ではないでしようか。具体的方法としては、国会を中心に、新聞やラジオは勿論のことでありまするが、私は大衆娯楽機関である映画館なども、もつと、こうした国際の情勢、その推移というものを知らせる、その報道をさせるのに絶好の機関ではないかと思うのでありまして、是非そうした面に遺憾なきを期すべきだと、かように存じますが、政府はこれにどういうようなお考えを持つておられますか。婦人の動静等につきましては御承知のないはずはないと思われますので、何か対策を持つておられるでありましようか。この点につきましては特に総理大臣から懇切に詳細に御所見の開陳を願いたいと存じます。
 以上で私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。
 いろいろな問題については主管大臣からお答えいたしまするが、先ず私からお答えいたしますることは、今日憲法改正は考えておりません。何となれば、再軍備は差当りいたさない考えでありますから、(「やつてるじやないか」と呼ぶ者あり)憲法改正の必要はない。(「口の先でごまかすな」と呼ぶ者あり、拍手)ごまかしはしない。
 それから次に吉田書簡についての問題については、しばしば私は今まで説明をいたしておるのであります。決して秘密外交というようなことはない。その理由についてはすでに私はしばしば申しておりますから再び繰返しません。(「徹頭徹尾秘密外交だ」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣吉武惠市君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(吉武惠市君) お答えをいたします。
 第一点は遺族に対する根本的な考え方についてのお尋ねでございます。御趣旨の点は御尤もと思いますが、今日のところでは差当り援護として考えなければならないと思います。併しながら根本的にはお説のように考えるべきであると思いまするので、近く審議会を設けまして、根本的な対策を考慮するつもりであります。従いまして第二の勅令第六十八号の処置につきましても、来年の三月までは現在のような処置にいたしておりまして、審議会の意見等も考慮して将来の問題は考え直したい。かように存じております。
 なお、次に南方に残留者がいるようだ、早く引揚を促進したらという御意見でございますが、私ども調査いたしましたところによりますと、戰犯で残つておられます若干のかたがた以外は大体帰還されております。ただ現在残つておられますかたは、引揚の際に本人の希望で残られているかたが多少おられるようでございます。(「ノーノー」「調査不十分」と呼ぶ者あり)併しながらこのかたがたに対しましても、留守家族のかたがた等とも相談をいたしまして、できる限り帰還をしてもらうような処置を講じつつあります。
 なお、婦人庁に関する御意見でございましたが、御意見の点は御尤もの点が多いように私ども考えられますので、目下これは検討中でございまするから、十分御意見の点を尊重いたしまして善処する考えでございます。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(木村篤太郎君) 婦人庁設置の問題でありまするが、婦人に関する行政を強力に推進して行きまするについては、従来のばらばらになつた機構を、これを総合的に調整いたしまして、十分その機能を発揮しなければならんと考えております。それで、政府といたしましては、行政機構の改革の一環として、婦人に関する行政機構について、どうして一番効力を発揮して行くかということについて目下研究中であります。御意見のあるところは私は十分考慮いたしたいと思つております。総合的な研究所につきましても、これをどうやつて行けばいいかということについても、只今成案がありませんが、目下十分研究中であると思つております。(「研究もいいな」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(天野貞祐君) 婦人少年庁のことでございますが、私はお説が御尤もな点が多いように思いますので、よく考慮いたしたい考えでございます。(拍手)
   〔国務大臣廣川弘禪君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(廣川弘禪君) 紅露さんが農林省の生活改葬課の問題について非常に御理解あるお考えを持つておられることに対して敬意を表する次第であります。(「狡い」と呼ぶ者あり)農村の生活改善の問題は農村の増産問題と非常に関係が深いのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)特に生活の改善をいたしまして、消費面も非常に我々のほうでは重大な問題として考えておるのであります。大事な資源である木材の節約等も、「かまど」の改善によつて非常にこれは節約できるのでありまして、我々といたしましては、千万石以上のこれを節約をいたす考えでおるのであります。たまたま生活改善課長が御婦人であられるから、これを婦人問題と取上げておやりになつたのじやないかと思いますが、これは農林省といたしましては非常に真剣に考えておるのであります。全国に現在九百人ほどの生活改善の委員がおりまして、来年度におきましてはこれを殖やしまして千二三百人の委員を挙げて、真剣にこれは取組んでおるのでありまして、單に画一的に他の省にまとめるというようなことについては、我々は絶対反対の意見を持つておるのであります。この問題を通して農村の生活を明朗化し、而も増産対策に十分資する考えでおるのであります。
    ―――――――――――――
#20
○副議長(三木治朗君) 岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇、拍手〕
#21
○岩間正男君 私は日本共産党を代表して、政府の外交並びに財政経済政策に対しまして若干の質問を試みんとするものであります。
 先ず第一に聞かんとすることは台湾政権承認の問題であります。吉田総理は、去る二十六日の本院におきまして「台湾と條約を結ぶことは、中国を代表して日本と平和條約に入るという意味ではない。台湾政府がその地域で統治の実権を握つているので、その地域と善隣関係を結ぶのである」と答えているのでありますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)一方、問題の吉田書簡によりますと、「この二国間の條約の條項は、中華民国国民政府の支配下に現にあり又は今後入るべきすべての領域に適用があるものであります」と述べて、暗に将来のことを匂わしているのであります。これは一体どういうことになるでしようか。この二者の間には明らかに食い違いがあると思うが、いずれが正しいか、先ず伺いたいと思うのであります。「今後入るべきすべての領域」という表現には台湾政府の本土侵入を期待するという下心が感じられて(「そうだ」と呼ぶ者あり)容易ならぬものがあると思いますが、果してこのような黙契がアメリカ並びに蒋介石政権と日本政府との間にすでにでき上つているのかどうか、伺いたいと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 伝え聞くところによれば、アメリカ側の意向としては、最も近い将来に、日本、台湾、韓国の連合軍を作り、太平洋軍事同盟の一翼たらしめんとしているとのことでありますが、これこそはアジア━━の野望に日本を利用せんとすることにほかならないのであります。而もこのような馬鹿げたことが現実に実現できると考えているのかどうか。それには、台湾における蒋政権の実体を如何ように考え、又如何ように評価しているかについて、政府の見解を質すことが先決問題であります。言うまでもなく蒋介石政権は中国の敗残政権であります。本土を追われて台湾にすがりついたが、そこには僅か数百万の人口に約百万の軍人が溢れていると言われるのであります。この蒋介石治下の台湾については、最近の東洋タイムズに左のように報じでいるのであります。「現在の台湾は、一言にしていえば、没落一歩手前にある。文字通りの暗黒政治が布かれ、たとえ中共の進攻がなくとも自壊するのではないかという印象を受けた」。「言論の自由は全くない。集会は五名以上は厳禁され、内地から携行した本はキングと婦人クラブを除いてみんな取上げられた。市街は軍隊の町である。台北は軍人で溢れ、小学校という小学校には兵隊が入つている。街に見る軍人は、奇妙なことに佐官級の人が多く、兵隊は数えるほどしかいない。而もみんな綿服を着て、うようよしている。兵隊より将校が多く、軍人より兵器の少いのが国府軍である。よれよれの綿服に混つて米軍並みの軍人が見られるが、これは国府軍の虎の子航空本部と機甲部隊である。」又「何しろ台湾の人口七百五十万のうち軍人が百万人というのだから、税金もたまらないが、生産に従事する人間の少いことで、台湾は経済的に参るのではないかと思われる。」
   〔副議長退席、議長着席〕
 これはほかならぬ昨年十一月、台北に開かれた日本商品展示会に出席した東商副会頭上野十蔵氏等日本財界の一行六十人のうちの某氏の帰朝談であります。こうした状態の中で住民の不満は目下全島に充満しており、その結果は日本の統治時代よりも遥かにひどい現状をはかなんで「狐が去つて、豚が来た」という言葉が、今や本島人の合言葉となつておるとのことであります。かかる台湾の現実について、吉田外務大臣はどのような情報をつかんでおるか伺いたいものであります。これは誠に重大なことである。国際協定と内外の輿論を踏みにじり、世界の五分の一以上の人口と広大な国土を持ち目下人民民主主義建設の道を隆々と歩いている中国を敵視し、経済的にもこれと遮断し、一孤島へ漂着した政権と結んで事をかまえようとすることが、日本の前途を約束するものであるかどうか。率直な意見が伺いたいと思うのであります。(拍手)経済的に見ても、バナナや砂糖だけでは、せいぜい日本人をますます甘くすることには効きめがあつても、日本の生産には関係がないのであります。
 私の第二に聞かんとすることは再軍備の問題である。今日、警察予備隊が軍隊であるかどうかという論議ほど、国民と国会を馬鹿にしたものはないと思うのであります。直接には二一%、間接には六〇%以上の国家予算が軍事費のために食われ、そのためのあらゆる破壊が国民の各層に起つているときに、この論議は一面悠長のそしりを免れないのであります。ところで、吉田総理は未だに馬鹿の一つ覚えのように、再軍備はしないと繰返している。これは主人公から與えられた当分の間の任務でありましようから、飽くまでそれを繰返しておられるのは自由でありましよう。なにせ世界そのものが一つの大きな詭弁であるような時代には、詭弁も又尤もらしく聞えるものであります。第七国会以来ここ二ヵ年、再軍備の問題が如何にこの詭弁の助けを借りて推し進められて来たかということは、国会の速記録を詳細に検討すれば明らかなことであります。(「明々白々だ」と呼ぶ者あり)曾つて大橋国務大臣は、予備隊には武器を持たせないと言明した。いよいよカービン銃を持たせねばならなくなつたとき、「それは関係方面からいつとなくキヤンプに運ばれたのである」と苦しい答弁をした。それが一年後にはどうなつたか。ロケット砲、追撃砲、戰車を持ち、戰闘訓練は予備隊の日常茶飯事となつたのであります。そして今は、この夏までに大砲、高射砲の重装備が必要であると、うそぶいて憚らないのであります。人員について見ても、定員の七万五千が十一万に増加され、やがて三十一万に増強されようとしている。殊に予算の面では、警察予備隊の昭和二十六年度当初予算百六十億に対しまして二十七年度五百七十億、これにいわゆる安全保障費五百六十億を加えるときは、実に七倍以上の膨脹であります。これでも予備隊は国内治安のためのもので軍隊ではないと言い切れるかどうか。国内のどこにそんな必要があるか。恐らく共産党の暴力云々と言いたいところでありましようが、どつこいそれは待つてもらいたいものである。事実は全く反対であります。三鷹事件や松川事件を思い起すがいい。(「下山事件」と呼ぶ者あり)これらの事件こそは、労働者を彈圧して首切りを強行するための政治的陰謀であつたことは、紛れもない事実であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)それと全く同じように、今日では共産党の暴力云々を言うことは、再軍備を国民の前に合理化するための宣伝手段であることは、疑いのない事実であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)目下松坂の放火事件や練馬の警察官殺害事件で失敗した謀略者どもは、札幌で事件をでつち上げようとしているのであります。若しそうでないと言うならば、木村法務総裁は、はつきりした証拠を挙げて答弁して頂きたいのである。すべては政治良心の問題であります。如何にその場逃れの答弁で、お茶を濁しても、事実は遂にごまかすことができないからであります。
 そこで私は次の事実を挙げて伺いたい。最近のテレ・プレス通信によりますと、アメリカ空軍参謀次長ローリングス中将は、その下院歳出委員会における日本軍備についての証言で、一九五三年までに、陸軍三十万、海軍五万、空軍十万の増設について語つているのであります。そのことは吉田総理は当然知つていられると思うが、どうでしようか。あたかもこれと符節を合せるように、大橋国務大臣は二十三日の記者会見で、「若し予備隊が三十一万に殖えることになると、現在の四管区隊は五倍の二十管区隊となり、その初年度経費だけでも二千億円になる」と語つたことをニュースは伝えておるのであります。又、「国際情勢によつて警察予備隊の海外出動の問題が出たときには、予備隊を軍隊化すると同時に、憲法改正問題も出て来る」と述べているのであります。これらは翌日の記者会見で取消されたようでありまするが、この上げたり下げたりの観測気球により、我々は反対に問題のありどころをますます明瞭にすることができるのであります。併しこれら予備隊の軍隊化は一体成功するであろうか。何よりもこれを現場の予備隊員に聞いて見るがよいのである。すでに政府答弁でも明らかなように、その退職者は予備隊創設以来一万人に近く、最近の募集難は又深刻を極めております。この事態を知つておればこそ、政府は応募制をやめて徴兵令を準備し、又市町村長の推薦制をとらんとしておるのである。これと呼応して、知事の公選をとりやめて、中央の支配権を強化せんと企らんでおるのであります。紛れもなくこれは東條時代の復活ではないか。戦争屋どもは、今や日本の愛する青少年に目を向けて来た。こうして十八歳から二十四歳までの徴兵が明日の予定に上つておるのであります。この陰謀を身を以て知つておればこそ、日本の愛国青年たちは、「再びわだつみのこゑの悲劇を繰返すな」のかけ声と共に、徴兵反対のため目下全国至る所で起ち上つておるのであります。この悲痛な声が一体吉田総理や閣僚諸君の耳に聞えないのであろうか。この再軍備に伴う体制をどうするか。吉田総理並びに大橋国務大臣のはつきりした答弁を要求するものであります。
 最後に、政府の財政経済政策について質したい多くのものを私は持つておるのでありますが、これは時間の関係から他の機会に譲ることにいたしまして、ここではただ一点、軍事費と均衡財政との関連について質問したいと思います。二十七年度の予算規模が八千五百億程度でおさまり、そのうち軍事費が二千億円内外で抑えられたことを、一応成功とみなす批評が一部で行われており、これに気をよくしたか、吉田総理のごときは昨日この演壇で「僅か二千億の支出がどうして悪い」と唆呵を切つておるほどであります。併し財政の枠が二十六年度に比べて僅か七・四%程度しか増加していないとするのは、補正予算を含めての計算であります。当初予算のみの比率についてこれを見ますれば、二十六年度の六千五百億に対して二十七年度の八千五百億は、実に三〇%以上の膨脹を示しているのであります。その原因は言うまでもなく軍事費の増大である。併し私のここで問題にしたいことは、このような水増し予算を以てしても、果して吉田総理や池田蔵相の言う通り、その枠が最後まで堅持されるかどうかということであります。講和関係費という暗箱の実相が今次の両院の論議によつても何ら明らかにされなかつたように、今度の予算は余りにも不確定な要素が多いのであります。賠償や行政協定に伴うところの問題につきましては、これは予算委員会に譲るといたしましても、決してここに見逃すことのできないのは再軍備費の問題であります。先に述べたローリングス中将の日本軍備案によりますると、この所要経費は約八千億円、そのうちここ二ヵ年間の日本側の負担が七千二三百億、そのうち昭和二十七年度だけで三千一百億と伝えられております。このようにしてアメリカからの再軍備要請が決定的な要因となつて補正予算の提出を余儀なくしている実情にあると思うが、これに対する吉田総理の答弁を求めるものであります。(「時間」と呼ぶ者あり)池田大蔵大臣はこの問題について、「今のところ補正予算を組む考えはない」と答えているのでありますが、問題はこの「今のところ」にあります。なぜならば、ここ三ヵ年間、吉田内閣の予算編成の跡を辿つて見るに、当初予算ではいつもこのような頬被り答弁が繰返されたにもかかわらず、結局は多額の補正を組まざるを得なかつたのがここ三ヵ年の実情であります。その結果は、重税、低賃金、首切り、企業倒壊となり、又、文教、厚生、社会保障費の削減となつて国民生活を圧迫したことは、生々しい事実であります。ウオール街の億万長者の命令には、いつも唯々諾々として従つて来た吉田内閣が、果してこうした情勢の中で、そのいわゆる健全財政を貫くことができるかどうか。若しできるとすれば、如何なる再軍備への要請も頑強にこれを拒否しなければ、室念仏に過ぎないと思うのですが、どうでしようか。すでに両條約によりその義務の履行を追られている吉田政府としては、このジレンマを如何に切抜けんとするのであるか。吉田総理並びに池田蔵相の確固たる御答弁が願いたいのであります。もはやここでは單に再軍備をしないなどというごまかし答弁では、絶対に国民は納得しないのである。こうして今や吉田内閣は再軍備と均衡予算の板挾みで進退が窮まつております。そうして、日本をここまで陷れたのは、全く自主性を喪失した無責任極まる政府の態度にあつたのであります。吉田内閣の存在が一日長ければ一日だけ、それほど日本民族の不利と不幸を招く結果になる。今や、吉田総理が国民に対してなすべきただ一つの途は、潔く閣僚の辞表を取りまとめて総退陣し、すべからく国会を解散して信を国民の総意に問うことにあると思いますがどうでしようか。責任ある総理の答弁を要求して、私の質問を終る次第であります。(拍手、「答弁の必要なし」「何言うか」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(吉田茂君) 私がこの国会において申した通り、台湾政府を実質上の統治者としてこれを認めて條約関係に入るということは、これは善隣外交の原則に従うのであります。これはしばしば私がここにおいて明示いたしたところであります。
 又現在の警察予備隊を以て再軍備なりとなすは、その規模、その予算において明瞭である通り、これを再軍備なりとなすのは、これは馬鹿の一つ覚えである。(拍手、笑声)
   〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(大橋武夫君) 只今警察予備隊は再軍備でないということにつきまして、総理から適切なお答えがございました。その通りでございます。(「ごまかすな」「吉田にふさわしい大臣だよ」「選挙区に帰れるのか」「大蔵大臣どうした」と呼ぶ者あり、笑声、拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(木村篤太郎君) 岩間君の要求によりまして札幌事件の取調べの経過を御報告いたします。
 本年(「でたらめ言うな」と呼ぶ者あり)一月二十一日午後七時三十分、札幌市警備課長の警部、白鳥一雄、満三十六年、この人が単身自転車で帰宅中に、同市内南六條西十七丁目附近の路上を進行中に、背後から自転車で接近して来た犯人に拳銃で狙撃された。左肺上部を撃たれて即死したのであります。
 この事件の発生直前の事情といたしまして、昨年十二月二十七日、自由労働者多数が札幌市市役所に押寄せまして、高田市長に面会を求めて、市長室の前廊下に座り込んで喧騒を極めた。同日午後三時頃、同市長の退去要求に応じなかつたために、うち十名が札幌市警の警察官に検挙された。それで札幌地検の取調べの結果、うち七名が建造物侵入罪によつて起訴された事実があるのであります。この事件後、白鳥警部等に対しまして、再三同警部の生命に危害を加えるような脅迫状が送付された事実があるのであります。
 又事件発生後、本年一月二十三日、札幌市内におきまして、日本共産党札幌委員会名義の同月二十二日付のビラが撒布された事実があります。(「怪文書だ」「確認したか」と呼ぶ者あり)このビラに、「見よ、天誅逐に下る、自由の凶敵白鳥警備課長の醜い末路こそ全フアツショ官吏の落ち行く運命だ、全官憲よ、第二の白鳥となるなかれ、他人事と思うな云々」の記事が煽情的に書かれてあつたのであります。(「それが確認されているか」と呼ぶ者あり)この事件の内容といたしまして、(「証拠はあるのか」と呼ぶ者あり)只今申しましたような前後の状況によりまして、この事件は極めて悪質な重大事件と私は考えております。
 只今関係当局を総動員いたしまして、何人がかような犯罪を犯したのか、背後関係はどうであるか、如何なる理由によつてかような犯罪が行われたかということを目下調査中であります。只今のところ、この詳細はわかりませんが、(「三鷹事件はどうした」と呼ぶ者あり)恐らく近い将来においてこの事実の真相が判明するであろうことをここに申上げる次第であります。(「第二の下山事件」と呼ぶ者あり)
#25
○議長(佐藤尚武君) 大蔵大臣は後刻出席の上答弁される趣きであります。中山福藏君。
    ―――――――――――――
   〔中山福藏君登壇、拍手〕
#26
○中山福藏君 吉田内閣総理大臣によりまして昭和二十七年度の政府の施策に関する総論的な方針が述べられたのでありましたが、池田大蔵並びに周東安本両氏によりまして、財政経済の各論的な裏付けがなされたようなわけであります。即ち以上三相によつて款項目の羅列がございましたが、その内容に至つては、未だ以てその奥を極むることができなかつた。これは誠に遺憾でありますが、恐らく各委員会において懇切丁寧なる御説明があることと考えます。本日私は政府対策の大綱について政府の所信を聞きたいと思うのであります。
 先ず第一に吉田内閣総理大臣に対してお尋ねをいたしまするが、台湾政府の承認を何故やつたかという各議員の質問に対しまして、それは一九五〇年の中ソ友好同盟條約、中ソ援助條約の現存、並びに三十余万の捕虜を帰還せしめず、且つ又一方には、中共、ソ連からの日本共産党に対する種々なる指令が我が国に対し非常なる脅威を與えるからして、当分の間、中共、ソ連との関係は、そのままにしておくというお答えであつたように思つております。(「そういう意味ですね」と呼ぶ者あり)
 ところで、この際重複を避けてその結論をお尋ねしたいと思うのでありますが、只今岩間君の質問のように、考えようによつては如何ようにもこの解釈は付くのでありますが、私は総理のお言葉を信じまして、万一、ソ連が、或いは中共が、二の友好同盟條約に示されております趣旨の敵対行動をとらず、又三十六万余の捕虜を日本に還し、或いは日本共産党に対する関係を清算するということになりますれば、中ソに対する日本の国交は回復するお見込を付けておられてこれに相当の手段を施される気かどうか。お聞きしたいのであります。
 第二には、本月の二十一日、二両日の米国上院の外交委員会における質疑応答によれば、アチソン長官及びダレス氏は共和党の上院議員のワイリー氏に答えまして、この対日平和條約が発効をすれば一九四五年二月十一日に締結されたヤルタ協定はその効力を失うと答えております。そういうことになりますれば、南樺太、千島諸島の帰属は一体どこに持つで行かれるのか。この問題に対して政府は如何なる見解を持つておられるか。私はこれをお尋ね申上げます。第三に、私は時間がありませんから簡単にお尋ねをしますが、池田蔵相は昨年度の予算七千九百三十七億万円を説明するに当り補正予算には減税をすると言い、先の国会において補正予算の説明をしたときには、昭和二十七年度は増税をしないと言われたが、昭和二十七年度予算は八千五百二十七億万円であるから五百九十億万円の増額になるのであります。かように補正予算を組んだ先の国会におきまして池田さんは、二十七年度予算は増額しないということを明言せられておる。然るに五百九十億万円の大きな開きが現実化して来たというのは、政治というものはすべてそのときの客観情勢によつて物事をきめなければならぬということを、言葉よりも事実を以て証明せられたということになつている。そこで私は池田蔵相にお尋ねしますが、このたびの平和回復に関する予算中、講和関係費二千七百七十七億円、安全保障諸費の五百六十億万円、防衛関係費の千八百三十六億万円という、こういう数字が現われ、並びに外債の返還、外国人戰災物資の補償に関する金高、或いは外国の援助資金の返還、こういう問題をいろいろと検討して会すると、相当の時期に追加予算を組まなければ、到底この瀬戸を乗り切れないのではないかという疑いが起るのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そこで、追加予算を絶対に組まないと大蔵大臣は衆議院の本会議において明らかに申されましたが、先ほども申しまする通りに政治はその時の動きでありますから、国民の前にそういうことを断言されて、若し昭和二十七会計年度中にそれと裏腹のことが現われたとしたら、蔵相は一体どうなさるのですか。こういうことに対して私は別に池田蔵相を責めようとは思いませんが、政治家はすべからく淡々たる態度を以て機に臨み変に応ずべきだと思いますが、如何でありますか。
 第四に周東安本長官に対して私はお伺いする。先般施政方針演説を聞いておりますと、中国の本土、即ち広大なる地域、四億の人口、この有望なマーケットを失つた代りに、東南アジア諸国、いわゆる東南アジア市場というものをもくろんでおるということをお述べになつたのでありますが、併しながらそう簡単にもくろみ通りに行くかどうか。大体今日私ども日本の政治家として見落してならないことは、三億の回教民族というのはどういうふうに動いておるのか、これを注視する必要があると思う。シリア、レバノン、トランスヨルダン、イエーメン、サウデイ・アラビア、エジプト或いはイラン、イラク、これに加えてインドネシア……インドネシアは民族は違つておりまするけれども、他の諸国は大概アラビア民族である。これが殆んど回教徒であるように私は考えております。そこで、これらの人々は多く英国に対じて反感を抱いておる。この反感を抱いておりまする結果、かねて英国と仲をよくしておりまする米国に対して相当の影響を及ぼして来るんじやないか。そういたしますると、坊主が憎けりや袈裟まで憎いということがありまするが、その上に総計邦貨七兆二億円、即ち合計二百億ドルの賠償を要求しておるフィリピン、インドネシア、ヴェトナムの国々が、この賠償費の問題が解決しない場合に、果して政府のもくろんでおられる東南アジア市場がここに発見することができるかどうか。これは大きな問題であります。故に、私はこの際、安本長官にお伺いしておきたいのは、若し日本の筋書通りにその効果が現われて来ないときには、その代替市場というものをどこに求められるか。私はこれは南米以外にはないと考えております。この南米に対して、東亜におけるこだわりというものを除虫して、ここに日本のマーケットを見出す以外に手はないと考えておるのでありますが、こういう問題についてどうお考えになつておるのでありましようか。(「救い舟を出したわけだね」と呼ぶ者あり)
 第五に、外資導入の問題についてもう一度大蔵大臣にお伺いしておくのでありまするが、大体池田さんのおつしやるところでは、八千万ドルというものを見込んでおると仰せられるのでありますが、御承知の通りにアメリカにおきましては軍拡が盛んであります結果、殆んど民間資本というものは枯渇しておるんじやないか……枯渇じやありませんが、非常に苦しくなつておるんじやないか。そうすると、アメリカの政府を相手にして借款を申込むのであるかどうか、又その外資導入の交渉はすでになされておるのであるかどうか、又これからやろうとするのであるかどうか、又或いは現在続行中であるかどうか、これは大きな問題だと思いまするから、重ねて大蔵大臣の御所見を承わつておきたいと考えるのであります。
 第六は移民問題であります。私どもは決してアメリカから世話になることを恥とも何とも或る一部の人のように考えておりません。お互いに世界は持ちつ持たれつ、お友だちだつたら助けてやるのが当然だと思いますから、私はお尋ねするのでありますが、大体日本に援助をするということと日本の移民を許すということは、日本に経済的な援助をするという結論を両方とも與えると私は思うのであります。先だつて御承知の通りにブラジルのヴアルガス大統領及びパラダワイの政府当局、こういうところから日本に移民というものを相当認めてもいいというような報道が入つておりまするが、私はこの際、政府は何とぞこの移民問題について深甚なる考慮を拂われまして、日本の人口と日本の食糧とのバランスが取れるようなところまで日本の人口というものを引下げて行つてもらいたい。これは狭い四つの国に八千四百万人がおるということは、一杯の御飯を四人で食べ、四人のものを更に八人で食べなければならんということになり、それから社会のいろいろな問題が起りまして、共産党などの温床となり、或いは宣伝の材料になると思います。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)でありますから、人口を減らして食糧と人口とのバランスをとるような処置を考えるといたしますれば、この移民問題に着目して何とか御解決を仰ぎたいと存じます。こういう点については如何ような思召でありましようか。お伺い申上げます。
 第七に木村法務総裁にお伺いしておく。先ほど、どなたでありましたか、戰犯問題についてのお尋ねがあり、いわゆる赦免、特赦或いは減刑、仮出獄というような問題は、平和條約の第十一條によりまして関係各国に日本が勧告して、そうしてこれらの人にできるだけの明るい人生を味わしめなければならんということになつておりまするが、この点については先ほどのお尋ねがありましたから、くどいことは申上げません。併しながら先だつて仏領インドシナにおきまして、十六人の死刑囚がフランス大統領の特別の取扱によつて無期になり、無期が懲役十五年に減らされております。今日フィリピンには未だ還らざる同胞にして死刑の宣告を受けた六十名の人々を除いてたくさんの人が残つておるのでありますから、何とぞ至急この問題については手配をきめて頂きまして、家族の人或いは本人が満足のできるような処置をとつて頂きたい。なお第八に私は木村法務総裁にお伺いしたいと思うことがあります。先だつてからの参議院本会議が始まりましてから、いろいろの御意見を承わつておりますると、安全保障費の五百六十億円をめぐつて、軍備か軍備でないかという議論ばかり闘わされおるように思う。一体全体、日本という祖国を愛するならば、国内の治安或いは社会の安寧秩序を乱す者に対しては断固たる処置をとらなければならん。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)それが軍隊であろうが、自衛権であろうが、名目の如何にかかわらないのであります。こういうことを、外国の環視のうちに開かれております議会において、この問題について憲法第九條の違反であるとか何とか子供らしい議論をするということは、いわゆる平和條約発効を養えて日本の今日叫ぶことではないと思います。(「フアツシヨだ」「何を言うのだ」と呼ぶ者あり)日本の治安を乱す者がありますれば断乎として取締る必要があると思うのであります。(「憲法を無視して何になる」と呼ぶ者あり)私は憲法第九十九條によつて、国務大臣、国会議員が共に憲法を遵守すべき義務があることを知つておる。(「余計なことを言うな」と呼ぶ者あり)併しながら今日世界の平和は武装したる平和である。ソ連、中国に武器がないか。(「あるさ」と呼ぶ者あり)あるだろう。あつて、反対者をすべて━━━━平和だと言つておる。いわゆる人間の生命を━━した平和である。(「見て来たのか」と呼ぶ者あり)こういうものは断乎として取締る必要がある。私は政府が、国内を乱すような問題については何ら恐れるところなく、断々乎としてその所信を貫かれんことをお願いするわけであります。(拍手)私は今日世界の正義観が時と所と人によつて異なつておるということを知つておる。ソ連の唱えるところの正義観と我々の唱えるところの正義観は違うのである。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)この正義観の違うところに、国内軍備の問題、国内平和の問題が論ぜられているが、その言葉尻を捕えて彼是と論ずるがごときは、これは言語道断、沙汰の限りであると私は考えておる。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)どうかこういう点について、木村法務総裁も、大橋国務大臣も、何ら恐れるところなく、その所信を断行せられる覚悟があるかどうか。私はこれを聞いておきます。(「おだてられたな」と呼ぶ者あり)
 そこで第九に村上運輸相にお尋ねしておきたいことがあります。アメリカの電源の開発された今日におきまして、ダムの施設に観光施設をやつて非常にたくさんの観光客を呼んでおります。例えばテネシー州の渓谷ダム、これは大体一年に六百万人ぐらいの見物人が参つておる。或いは世界第一のポールダーダムのごときは一ヵ年に約八百万人の見物人を呼んでおる。二十七年度の予算に組まれた観光予算は僅かに六千五百万円、又予期されておるお客さんの数は四万人だと聞いております。私は将来この貧乏国の日本がいわゆる国家財政を豊かにするためには、こういう面にも一応注意を拂つて、お客さんを外国からたくさん呼んで金を落してもらう方法を講ずる必要があると思うのであります。それには一千億円くらいの金をかけて電源開発事業をなされるということでありまするが、これに従つてこの電源地帶近郊の観光施設というものが非常に大事になつて来ると思われるのであります。かくのごとき観点に立つて、六千五百万円ぐらいの小さな金では、村上さんとしては手の施しようがなかろうと考えられます。又私が十五年前から叫んでおります津軽海峡、明石海峡をトンネルで繁いで頂きたい。大体小さい四つの島が陸続きで旋行ができぬというような貧乏たらしいことでは駄目だと私は考えておる。私はこういう点についても村上運輸大臣の御所見を伺いたい。又観光その他衛生上の問題から考えましても、石炭不足の今日、日本全国の鉄道を電化するということは誠に緊急の事柄であると思えるのでありますが、一体何年頃に日本全体の鉄道は電化するのでありますか。その見通しを伺つておきたいのであります。
 第十に私は厚生大臣にお尋ねしておくのでありますが、今度の政府予算のうちで百十億円というものは、賠償とか、それから外債の拂というような面に当てられておる。又平和関係費というものは二千七百七十七億円と覚えておりますが、このうちにいろいろ検討を加えてみますると、開拓義勇隊の遺家族に対する慰藉料が掲げられていない。又海外におりました多年営々として何代も続いて働いて貯めた財産を戰争のために没收せられて非常に困つておる人がたくさんある。こういう人々の問題については少しも触れていない。これはどういうわけでありますか。これを承わつておきたいのであります。
 第十一に文部大臣についてお尋ねしておくのでありますが、あなたは今日世界中の人情、風俗、道徳、法律、宗教というような問題について、文部省に研究室を設けて、日本の兒童に、日本人であると同時に世界市民たるの自覚を與える教育をするお考えはございませんか。これをやらなければ、日本の人間は時代遅れになつて、東條さんの二の舞をやるようなばかげた人間が現われぬとも限らない。どうかこういうことをお考え願いたい。法律は法律のない社会を目標としている。道徳は道徳のない社会を目標にしている。法律や道徳の要らない平和の社会を作り上げることに努力しておるか。なかなか前途は遠い。すべては口頭禪ではならんと私は考えております。心から人類を愛するいわゆる人類愛に目醒めなければ今後の政治は断じて行うことはできないと考えますが、この点をお伺いして、私は私の質問を終りたいと考えます。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。ソヴイエト関係についてお尋ねでありましたが、これは過日もここで私ははつきり申した通り、イデオロギーの問題はとにかくといたして、日本に対していろいろな過去において今日まで不愉快な事件があります。只今お話のあつた通り、ここに三十万の未帰還者同胞があり、又色丹等の島は事実上占領せられておる。又日本を條約上敵と考えて友好條約が存在しておるというような関係において、イデオロギーは暫らく問わないといたしましても、そういう関係にある国と條約関係に入るということは、国民の感情といたしても許せないことでありますが、若しそういう事実が一掃せられた場合には、我が国としては飽くまでも親善関係を打ち立て親善関係を打ち立てたいということの希望においては何ら変りはありませんから、今のような事実が解消されて国民の感情も融和した場合には、これは喜んでソヴイエトといえども平和関係、條約関係に入るということは辞さないのでありますが、不幸にしてこういう問題が存在する限り、国民の感情が融和せざる限りは、特に平和関係に入るということはいたしたくないと思います。
 その他の問題は主管大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#28
○国務大臣(池田勇人君) 補正予算を組まないと言つたが、将来組むようなことはないかという御質問と拜聽しております。補正予算は組まない考えでございます。併し将来の情勢によりまして絶対に組まないとは申されません。これは御承知の通り、昭和二十四年度でも、二十五年、二十六年でも、止むを得ず補正予算を組んだ、こういう事情でございます。その事情が昭和二十七年度は全然起らぬかということは今から申上げられませんが、大体組まなくて済むというように予算をとつております。
 次に外資導入につきまして、先だつて申上げました大体八千万ドルと申しましたのは、内訳を申しますと、株式投資が千六百万ドル弱、それから貸付金が二百万ドル程度でございます。合計千八百万ドル、そうして技術援助という外資導入に代るものがございます。それは技術援助の代価としまして大体昨年度六百五十万ドル程度排いました。これを元本に換算しますと六千万ドル余りになりますので、八千万ドル今入つて来ておるのであります。今後外資の導入につきましては、政府としては極力促進する考えております。今まで株式投資その他が来なかつたのは、入つて来ることは入つて来ますが、出る場合の途を開いてない。今国会におきましては、外資導入促進のために、株式等に投資されたものも出得る途を開き、そうして投資を誘発いたしたい。又株式投資のみならず、電源開発その他につきましても、極力政府は外資導入促進につきまして努力いたしたいと思います。何分にもやはり日本に投資したものが確実に返る、そうして日本の開発がよくなる、日本の経済が安定する、これが先決條件でございますので、経済の安定に努力いたしておる状況であります。
    ―――――――――――――
 岩間君にお答えいたしまするが、再軍備或いは再軍備等のために補正予算を組むことはいたしません。絶対均衡財政主義で参ります。(拍手)
   〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(周東英雄君) お答えをします。お尋ねは東南アジア等の開発ということを考えておるか、その地方は賠償その他の政治情勢によつてそういうことが民族的に受け容れられないのではないか、さような場合を考えて南米等に対しての市場確保に努むる意思はないかというお尋ねであります。前段については、いろいろお考え方、御心配の点、御尤でありまするが、併し私どもの入手しておる点、殊に一例を挙げますと、インド或いはインドシナ等におきましても、賠償という問題と離れて、むしろ積極的に未開発地域、後進国の開発について協力してくれるようにという申出も現にあるのでありまして、私どもはでき得る限り国の資金又は技術等で援助して開発を進め、相互共存の立場に立つて資源を開発し、市場を開いて行きたいと、かように考えております。後段の南米等に関する問題につきましては、東南アジア地区の問題がどうなろうとも、むしろ積極的にその方面に対して日本の市場関係を結んで行くことはよろしいと考えて、むしろ私どもは賛成であります。以上。(拍手)
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#30
○国務大臣(岡崎勝男君) 樺太、千島等についてお話がありましたが、これはポツダム宣言に基きまして、日本で平和條約の中で、権利、権原等を放棄したのであります。ヤルタ協定はこれらの地域に関する帰属を定めたものでありまするが、これは日本として関知しないところであります。
 移民についてのお話でありますが、移民だけで人口と食糧のバランスを考えるというわけには参りますまいが、日本とし、或いは政府としては、移民の実現については只今も将来もできるだけ努力をする考えでおります。(拍手、「関知しないというのはどういうことですか、関知しないというのは」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(木村篤太郎君) 戰犯者の釈放、減刑の問題でありまするが、これは関係諸国との間の問題でなかなか容易ではありませんが、政府といたしましては一日も早くその実現をするように努力いたしたいと思います。
 第二の点につきましては、私は目下日本の情勢におきましては、何としても治安の確保が一番の先決問題であろうと思います。しばしば繰返して申上げました通り、現在憲法を否定し、社会秩序を乱し、治安を撹乱せんとする一部過激分子の蠢動しておるということは明白な事実なのであります。これは何としても政府は国民諸君と手を携えてこれを抑制しなければならんと考えております。若しそれ外敵の侵入というような不幸なときに遭遇いたしますれば、これは一部分子を除くほか、日本八千万の国民は総獗起して祖国を防衛するであろうことを確信して疑いません。
   〔国務大臣村上義一君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(村上義一君) 電源の開発に当りまして、勝れた自然の環境を損傷しないように細心の留意を抑うということはもとより望ましいところであります。なお造成せられますダム等を利用し活用して、各種の観光施設をこれに施す、そうして新らしい観光地帯が生れ出るということになりますならば、国民保健上、又外客誘致上誠に望ましいことであるのでありまして、お説の通りだと思います。それぞれ実情に即して関係機関の計画もあることと信じます。これらの計画と相待つて育成を助長して行きたいと考えておる次第であります。なお、お話の鉄道の電化の問題でありまするが、石炭資源の節約と、エネルギーの合理的利用の見地から適切な施策と思つているのでありまして、従いまして、全体の計画を立てて逐次実施しておる次第であります。併し巨額の工事費を要するばかりでなく、戰後は電力不足という実情にも制せられまして、その工事の進捗は遺憾ながら遅々としておる次第であります。現在までに電化が完成して電気運転をしております区間は千六百六十キロに過ぎないのでありまして、総延長約二方キロに対しまして八%半、これが漸く今日電化を終えたというような次第であります。併し一面、超均衡予算に制せられまして、本年度は鉄道全体の工事費が三百七十億余りでありまして、明年度は四百十七億であります。併しながら鉄道全体の復興工事と睨み合せて電化工事も進めなければならない次第でありまして、お尋ねの、いつまでに全線を完成するかという御趣旨であつたと思いまするが、相当の年数を今後要することと思うのであります。
 なお、北海道、本州を連絡する海底隧道につきまして、又本州と四国とを連絡する鉄道について御意見がありましたが、北海道、本州を連絡する海底隧道につきましても、又明石附近から淡路島を経て四国に通ずるという鉄道につきましても、戰前において一応その調査研究をしたことがあります。例えば明石―岩屋間は海底隧道による、鳴門海峡は海底隧道若しくは大鉄橋によるということになるでありましようが、今までの調査は、ただ図上調査に過ぎないのでありまして、技術的に調査を未だしておらぬという実情にある次第であります。いずれにしましても、これらの施設は非常に厖大な建設費を必要とするのでありまして、現在の我が国情では所詮その着工は不能と言わなければならぬと思う次第であります。(拍手)
   〔国務大臣吉武惠市君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(吉武惠市君) お答えいたします。
 開拓義勇隊の留守家族及び遺族に対する対策というお尋ねでございますが、これは殆んど軍に召集をされておりましたので、未だ帰つて来られない留守家族については未帰還者給與法で措置しております。なお、亡くなられたかたにつきましては、今回の遺家族対策に含まれておりまするので、御了承頂きたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(天野貞祐君) 広い世界的な視野を以て生徒を教育しなければいけない、年少者を教育しなければいけないということは、私も全然同感でございます。いつも私は、よき日本人であるためにはよき世界人でなければならない、よき世界人であるためにはよき日本人でなければならないということを申して、そういう方針で教育を進めているつもりでございます。ただ研究所のことにつきましては、他に急を要することがたくさんありますから、差当つては考えておりません。お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手)
#35
○国務大臣(周東英雄君) この際、高良さんの御質問に対してお答えしておきます。失業青少年を訓練して、未開発地域の開発に使つてはどうかというお尋ねでございます。只今具体的に考えておりませんが、御趣旨を酌んでよく考究いたしたいと思います。(拍手)
#36
○議長(佐藤尚武君) 大橋国務大臣からは別段御答弁がない趣きであります。常岡一郎君。
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   〔常岡一郎君登壇、拍手〕
#37
○常岡一郎君 独立日本の歴史が書かれんとする第一頁に当りまして、この国会が持つ重大なる歴史的意義と、その政局担当者である吉田総理の役割の重大さを考えますときに、現在の問題だけでなくて、これは将来に重大な影響を持つものであると考えるのであります。従つていろいろな意味で論議は盡されて参りましたので、私はこの独立日本がよつて立つ根底となり基盤となるものがどこにあるか。これは将来の日本歴史の上にも相当の支配力、影響を持ちますので、この点において明確に御所見を承わりたいと思つて起つたのであります。
 吉田総理は、施政演説で基本は述べたと山下議員の質問に対して言つておられますが、私も再三施政方針演説の草案を読んでみましたが、その中に書いてありますのは、国際連合の原則によつて、平和條約を基調として進んで行くということだけであつたようであります。國際連合の方針に副うて、その世界平和の條約に基調を置くということでありますが、現在国際連合に加盟しておりますものは、ソ連もアメリカも共にその理想の下に入つております。而も両方とも世界平和のために必死の努力をしていると宣伝されております。国際連合の原則によつて、世界平和のために立つ二つの平和の陣営が集まつたならば、実に立派な世界平和ができていなければならないと思うのであります。然るに第三次世界大戰の危機来たれりとまで言われる世界の不安を考えますときに、その平和條約を基調とする途と、国際連合の原則とだけで、真に国家のゆるぎなき基本がきまるだろうかという疑問を、国民の多くが持つていると考えるのであります。どこからこの誤まりが出て来るのであるか、こう考えて参りますと、理想と現実の開きが根底をなすのではないかと考えられます。理想は親善外交であり、事実は戰争への歩みであるというようなものがありましたならば、どちらをその方針の根底に持つて独立日本を立てて行こうとするのであるかということをお尋ね申上げるのであります。世の中は二つの、この理想に生きるものと現実に即して行こうとするものとの、これは当然でありますが、この調和が欠けたところに多くの悲劇が生れているようであります。日本が占領せられた最初は、マッカーサー元帥によつて指導されていたのは、戰争放棄の憲法を中外に公布し、平和の日本建設の、実にキリスト教の右の頬を打たれたら左を出せと言われるような絶対無防備の方針で日本は育てられたようにも考えられます。然るに今日ダレス特使を中心として、今、日本が進んで行く道として考えられておりまする姿は、或いは再軍備ではないかとまで言われるような情勢があることを考えますときに、六年前に戰争放棄の憲法を定めた日本が、これを廃棄しなければならないかのごとき情勢になつて参りましたのも、その基盤が、その土台が、アメリカの、或いは国連の指導する土台が違つて来たのではないかと考えられます。先ほど共産党のお話もありましたが、スターリン平和賞を大山議員に渡されたときに、これに対しまして非常に平和の、又国民に対するメッセージも参りましたのを喜ぶ者もありますが、あのときにこういう声も聞くのであります。それは平和と言えば、当然握手のできる構え、手をひろげて話して初めて一切の結びが、平和の姿が出て来るのであるが、あの場合に、日本国民に対する平和のメッセージよりも、その前に、若しあれが樺太や千島や、そうしたものを全部放し、捕虜も全部還し、若し全部還したというならば、いつでも見にいらつしやいと、いつでも開放されてそうしてひろげて見せる、ひろげた姿があつたならば、それこそ真の世界平和のそのメッセージの意味が有難く思われるだろうという声が多かつたのであります。ここにも、品には立派に世界平和を常に唱えながら、手の放すことの、ひろげることのできない姿が現実にあるとするならば、理想と現実の間には非常な差があるのが世界の現状ではないかと考えるのであります。こういうような点につきまして、総理は国際連合の原則に則つて、平和條約を基調として今後国を建てて行くと言われましたが、その平和、国際連合の原則とする、理想とするものに向つて邁進するのか、現実の次第々々に戰争の危機のほうへ進んで行くというのか、こういうような問題を国民は心配して見守つておるようでありますから、これをお尋ねする次第であります。(「あなたはどちらですか」「あなたは安保條約北賛成されたでしよう」と呼ぶ者あり)安保條約に賛成いたしましたが、併し再軍備に賛成したわけではないのでありまして、若し狂人が、刃を揮つて来まするならば、当然それに備えなければならない今日の現状を私は無視するのではありません。今日の現状では安全保障は確かに必要であると信ずるが故に投票をしたのであります。
 そこで、私は、この点は時間が足りませんので、然らばこの現実と理想と結び付けて行くという点について、この磁石を持つて荒浪の海を越えて行く船人が、常にその目に見えない方向をはつきり知りますように、現実の世相を眺めながら、それと共に常に失つてならないのが理想の世界でないかと考えます。(「その通り」と呼ぶ者あり)その点から考えて参りまするならば、天地自然の教える教訓から考えるならば、それはすべて、二つのものが、二つの存在は認めながら、それが一つになつて行くというのが自然の方向ではないかと思います。陰陽二本の電線が一つとなつて電灯を生むように、夫婦男女二つが初めてその子孫の根底となるように、二つの目がありながら常に一つのものを見るように、二つの足がありながら常に一つの方向に歩くように、二つの入品と出品が朝晩助け合つておるように、常にすべてのものが陰陽対立するように見えた二つが、それが一つであるということによつて、宇宙構成の……宇宙が我々に教えた秩序の根底があるのではないかと考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)こうして考えて参りました場合に、この米ソ対立の激しき世界人類の非常な不幸なときに、現実のほうにのみ進むのか、それとも両方離れないようにするために、インドのネール首相がとつておりますような態度として、この積極的に中間のしつかりした勢力として、この相搏たんとする人類の悲劇を救うために、向うが立派になつたら出て行くなどというような消極の態度でなく、進んでこの調和に向つて、この日本建国の、日本独立の根底を立てるようなお考えはあるのかないのかということをお尋ね申上げるのであります。
 次に再軍備の問題については、諄いほど、しないのだと、こういつておられますので、満足しなければならない国民の声には、それでなお満足しておらないから、たびたびこの質問が出たんだと思います。この再軍備しないという意味は、金がないからしないというのか、金があればやがてするのだという意味でありますか。今はされないという意味でありますか。それとも絶対にしない、信念としてしないのだという意味でありますかということを、これを聞くことによつて国民がはつきりした考えになるだろうと思いますから、言えますならば言うて頂きたい(「その通り」と呼ぶ者あり)という意味であります。というのは、私は吉田首相が外交官として長い生活の体験を経ていらつしやいますから、非常に世界は一つだという考え方から、人類……一つの国にとらわれない非常な広い考え方から、日本軍部の当時の横暴に対しても断固としてそれに対抗されたものと、こう考えておりますが、人間の歴史が進んで行く方向を考えて参りますときに、世界は一つでなければならんという歩みを続けておるように思います。小さな社会からだんだん大きい社会に進んで行つておる。村から郡に、郡から藩に、藩から民族の国家に、更に世界一家の姿に進んで行こうとするのが人間歴史の歩いて来た方向ではないかと考えるのである。こういう点から、これをよく外交官生活をして見ていらつしやいました首相のその信念的なものから、この再軍備反対が出ておるのならば、非常に国民が又安心するものがあるのではないかとこうも考えますから、この点をお尋ね申上げておるのであります。
 たつた一つの太陽の下に、たつた一つの大室に抱えられ、たつた一つの月に守られて眠る。すべての人が一つの地球の上に住み、すべての人類が……それが土の上だけを分けて相争うということは、いつまでも許さるべきものでない。日本が六十余州に分れて、一つの自分の国を守るさむらいがあつた間は、日本国内に戰争は絶えなかつた。明治と共にその国を守るさむらいというものがなくなつて、一つの日本になつたときに、日本国内における戰争の根は切れた。世界平和の真の願いを持つ者であるならば、その人類歴史の道になお握れているところのこの国家対立の姿を超えて、人類の理想、人間の尊さを根底にした世界一家の理想の下に、堂々たる論陣を進め、歩武を進められる気魄がある上から、この再軍備反対と言われるのであろうかとも希望を持ちますので、お尋ね申上げます。(「どうもそうでないようです」と呼ぶ者あり)もつと私は、再軍備、予備隊問題などでお尋ね申上げたいと思う点がありましたけれども、時間がございませんので、ただ人類の歴史の進んで行く方向、それは、世界は一つにならなければならぬ歩みをどうせ続けて行くんだから、(「そうそう」と呼ぶ者あり)だから、もう軍備は要らない、一歩先を見て、それよりも積極的に真に世界平和のために、世界国家建設への歩みを提唱するような意気を以てお立ちになる意思はあるかないかということをお尋ね申上げて、私の質問を終ります。(拍手、「それは正反対だ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(吉田茂君) お答えをします。
 日本の独立のよつて立つべき基盤は如何ということで今縷々と御意見が出ましたが、私は、日本の進むべき途は、御指摘の通り国際連合の趣意原則に従つて條約を守つて行く、これが新日本として行くべき途であると確信いたします。お話のように、理想と現実は違うかも知れませんが、併しながら平和を守り自由を守るのが国際連合の趣意原則であります。この趣意原則によつて日本は立つて行く。これが日本として最も安全な途であります。そのために戰争云々ということがありますが、職事がないように国際連合を盛り立てて行く、これが世界人類の持つべき理想であるものと思います。その理想に近づいた世界が出現するように各国民州努力するということも、又、各国民としての義務であると心得ますから、今申した原則が日本の行くべき途と確信いたします。再軍備についていろいろお話がありましたが、無論、日本の独立安全は日本国みずから守るべきである。この原則は又疑いないところでありますが、現在においては再軍備する必要はない。将来は又将来のことであります。今日ここで大理想を申したところが或いは無益でありましようから、私は只今の言で一応のお答えといたします。(拍手)
#39
○議長(佐藤尚武君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。国務大臣の演説に対する質疑は終了したものと認めます。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時五分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第五日)
ソース: 国立国会図書館
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