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1951/04/17 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第31号
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1951/04/17 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第31号

#1
第013回国会 本会議 第31号
昭和二十七年四月十七日(木曜日)
   午前十時五十三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第三十号
  昭和二十七年四月十七日
   午前十時開議
 第一 住民登録法施行法案(衆議院提出)(委員長報告)
 第二 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
 第三 町村職員恩給組合法案(内閣提出)(委員長報告)
 第四 在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第五 千九百四十六年十二月十一日にレーク・サクセスで署名された議定書によつて改正された麻薬の製造制限及び分配取締に関する千九百三十一年七月十三日の條約の範囲外の薬品を国際統制の下におく議定書への加入について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
   〔木下源吾君発言の許可を求む〕
#4
○議長(佐藤尚武君) 木下源吾君。
#5
○木下源吾君 私はこの際、公務員の給與改訂及び人事院の機構改革に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#6
○相馬助治君 私は只今の木下君の動議に賛成いたします。
#7
○議長(佐藤尚武君) 木下君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。木下源吾君。
   〔木下源吾君登壇、拍手〕
#9
○木下源吾君 私は只今の件に関しまして我が党の代表質問をいたしたいと思います。
 給與の改訂に関しましては、すでに今日の公務員の生活の状態はもう非常な行き詰りになつておりまして、常識的にもどなたもこれは改訂すべきだというお考えだと考えます。これを内容を少し詳しく申上げますというと、先に人事院の勧告いたしました一万一千二百六十三円のベースは、昨年の五月における標準生計費、即ち成年男子の標準生計費、及び昨年三月の民間給與の調査を基礎として、これを同年五月に換算して、これによつて俸給表を作つたのであります。ところがこの勧告に対しまして政府は俸給表を一律に一割以上の削減をいたしました。従つて現行は給與平均一万六十二円、昨年十月より施行されることになつて今施行されておりますが、そのまま現在に至つている。然るにその後の情勢は、消費者物価指数について見れば、全都市の総合指数は、昨年の四―六月から見て、本年の一月で八%、二月でも七%の上昇を示しております。これに伴つて都市勤労者の平均の支出金額も昨年四―六月に比べて一一%の増加を示しているのであります。ここで注目をすべきことは、例年は一月や二月は季節的に物価も最も安い線を辿つておるのであります。従つて支出金額等も一年のうちでも最も少くて済むこれは時期であります。このことは、人事院が、常に我々の改訂要求のとき季節差というものを言うて主張しておる問題でありますが、ところが今申上げるように、このような季節変動の調節を一月、二月に加えれば、生活費に一〇%以上の影響を與えていることはもう明らかなんであります。で、一方、民間給與の推移を見れば、これらの生計費の上昇の影響を反映して、労働等の毎月勤労統計によれば、民間産業の現金給與額は昨年の五月に比べて本年一月においてはすでに二七%、これは実に三割に近い上昇を示しております。従つて勤労者家計の苦境をこれが雄弁に物語つているものであります。これを金額にして見ますというと約三千円の増額でありまして、又東京都の調査によれば、給料生活者において銀行会社員と官公吏との対照を見れば、昨年五月においては約三千円、六月、七月のボーナス時期においては実に八千円前後、本年一月においてもなお四千五百円という開きがあります。労働基本権を奪われた官公吏の給與が常に民間給料を下廻つている実情が示されているのであります。これらはいずれも政府の責任を有する統計によるものでありまして、人事院のいわゆる標準生計費もこれらの事実を反映するものであるならば、当然国家公務員法第二十八條のいわゆる情勢適応の原則に基いて勧告の義務が私は当然人事院に生じているものと考えます。これらの実情にもかかわらず人事院は、人事院の称するいわゆる理論生計費に未だ五%以上の影響なしと強弁するならば、我々は改めて人事院の調査方式を再検討しなければならんと考えます。先に述べましたように、例年ならば下る時の一月、二月も、なお物価は上昇して、生計費の支出もこれに伴つている実情は、公務員の保護に責任を負うところの人事院としては見逃すことは私は断じてできないと思うのであります。現行給與が昨年五月に基礎を置く勧告をさえ一割以上下廻るものであり、而もそれが漸く十月から施行された経過を考えれば、公務員の家計の窮状は全く察するに余りあるものである。国家公務員法の趣旨はいずこにありやと言わざるを得ないのであります。公務員から基本権を奪つた公務員法改正の際示されたマッカーサー書簡にも明らかに書いてありまするように、この際、政府並びに人事院は深く反省すべきであると考えます。従つて、私はこの際、財政関係においては大蔵大臣、又人事院に対しては勧告をいつ一体するのであるか、そうしてその内容、これを一つ承わりたいと思うのであります。勧告の内容、時期等について人事院の御答弁をお願いしたいと思います。
 次に、いわゆる行政機構改革の一環として、人事院においても今回いろいろ政府がその性格をも変えようとする意図があるように見受けております。聞き及んでおるのであります。私はこの点に対しては、政府に、極めて重大なことと考えまするので、総理からお伺いしたいのであります。
 そもそも人事院のできましたのは、一九四八年七月のマッカーサー元帥の書簡に基いて、首相は即ち国家公務員がいわゆる国民に奉仕するものであるという建前から、争議権、団体交渉権等を剥奪したのでありまして、その代償といたしまして、いわゆる人事院を設け、政府の勝手を許さない行政委員会を設けて、そうして人事院がこの保護のいわゆる手段を講じておつたわけであります。この書簡は、今更申上げるまでもなく、明らかに書簡の中には、「国家の公益を擁護するために政府職員に課せられた特別の制限があるという事実は、政府に対し、常に政府職員の福祉並びに利益のために十分な保護の手段を講じなければならぬ義務を負わしめておる。」これがいわゆるマツカーサー元帥の書簡であります。憲法以上のこの書簡、これに基いて国家公務員法が制定せられました。公企労法も制定されました。而もこの書簡の他の部分を見まするというと、こういうようなことが書いてあります。「国家公務員法は、本来、日本における民主的諸制度を成功させるには日本の官僚制度の根本的改革が不可欠であるとの事実の認識の下に考えられたものである。なぜならば、かかる民主的制度の強弱は、その政治的、経済的、社会的のいずれなるを問わず、必然的に直接公務員制度の能率如何にかかる」云々と書いてあります。この国家公務員法は民主的諸制度を成功させる最も重大な要素、それを含んだこれは制度であります。今伝えられるところによれば、政府の改革案というものは、これらの、これがためにできた、公務員法によつてできたところの人事院の独立的なその性格を多分に制限いたしまして、大幅に制限いたしまして、そうして政府の私的なつまり行政機構の中に入れようとしておる。これが私は重大な問題ではなかろうか。
 そこでお伺いしなければならんことは、政府は一口に言うならば、講和発効になるから、もうこの時期においては、マツカーサ上元帥の書簡であろうが、憲法であろうが、何であろうが、そういうものは我々は関知するところではない、こういう考え方なのか。具体的に言うならば、いわゆる旧来の惡弊ある官僚制度が根本的に改革せられたと考えられておるのかどうか。これは私が総理大臣にお尋ねしたいところであります。私はこの改革がなされておるとは考えられないし、又国家公務員法に基く人事院の仕事が今わずかにその緒についただけだというより考えられない。職階制であろうと或いは給與制であろうと、その他のいろいろのつまり公務員制度の改革はわずかに端緒についたに過ぎない。そこでこれを成功させるためには、いわゆる政府の勝手気ままに何でもやり得るという、政府が今やろうとするようなことでは達成できないのだ。成るほど政府は憲法の條章に従つて行政のことについては国会に責任を負うのである、国民に責任を負うという建前から、或いはそれらの改革を遂行しようとするかも知れませんけれども、なお、併しながら、私はこの際においては、これらの人事院を設け、日本民主化のためにやろうとしたことが目的を達したかどうかということが、根本的な問題であると考えるのでありまして、この点について政府から明快なる一つお考えを承わりたい。そうでないというと、日本の公務員諸君は今何を考えておるのかと言いますと、こういうように恐らく考えておると私は思うのである。一方に、争議権、団体交渉権というそういうものを剥奪された、公務員法によつて剥奪されたのだ。それを今公務員法の実体がなくなるような改革をするということであれば、当然、憲法の基本権であるところの団体交渉権、争議権は、やつてもいいということになるのでありまして(「その通り」と呼ぶ者あり)このことを十分に政府は認識せられて、人事院のいわゆる機構改革を進められておるのかどうか。(「フアツシヨ化だよ」と呼ぶ者あり)私はむしろ国家公務員が、その面からのみするならば、明らかに団体交渉権、ストライキの権利を、いわゆる基本権を獲得することが好ましいと、そういうふうに考えておりますが、そうではなく、そういう諸権利は剥奪しておきながら、他面においては公務員を保護する一切の責任を放棄する、こういうことであるならば、これは由々しき問題だと考えまするので、政府の只今御出席になつておりまするところのかたがたで責任を負える御答弁、並びに総理大臣のこの政治的の面における考えは総理大臣からお伺いしたい。
 時間がありませんからこの辺にしておきますが、機構改革に関する問題については、人事院総裁にも私はその所見を承わりたい。本日は人事院総裁が見えられておりませんから、この答弁は後日に一つ讓つてよろしいと思います。いずれにいたしましても、現内閣が行うところの最近の傾向を見ておりまするというと、何か破壞するものが勤労者である、共産党に名をかりて全労働者を共産党とみなすような態度でおるというのが、やがて上程されるであろうところの破防法である。私はそうではなく、現内閣は、これらのことを企図する前に、日本の民主化を達成するために築き上げられたいろいろのこれらの問題をみずから破壞しないように。みずからそれを破壞するならば、他を責める資格はございません。(「そうだ」と呼ぶ者あり)どうか内閣の諸公はこの点に十分に留意せられまして、独善的ではなく、資本家的で物を考えても、なお今日では、両立するところの、共存するところの余地があると考えますので、強引に無謀なるいろいろな政策を強行するということについては、十分に反省せられることが大切ではないかと考えます。この機会に、あえて一言を附加えまして、私の質問を終ることにいたします。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(池田勇人君) 公務員の給與に関しましては、政府は常に関心を持つておるのであります。最近の物価の動き等から、人事院のほうでも検討いたしておられると思いまするが、まだ給與に関する勧告は出ておりません。出ましたならば、それによりまして研究の上善処いたしたいと思います。(拍手)
   〔政府委員保利茂君登壇、拍手〕
#11
○政府委員(保利茂君) お答えします。人事院の機構の問題についてお尋ねでございますが、新らしい日本の民主主義を発展さして行かなければならない諸制度の推進につきましては、これは今後といえども政府は全力を挙げてこの推進を図つて行かなければならぬことは申すまでもないことであります。独立後の日本の行政機構につきましては、政府は年余に亘りまして、独立後の国力にふさわしい簡素能率的な行政機構を持ちたいということで、今日まで研究を重ねて参つております。
 人事院の制度につきましても検討を加えまして、近いうちに成案を御審議頂くような段階に立ち至ると思います。併しながらこれによりまして、政府は公務員の特に処遇につきましては、機構上におきましても万全の措置を講じて参りたいという気持を以て成案を急いでおるような次第でございます。いずれ提案いたしました上で十分の御審議をお願いいたします。(拍手)
   〔政府委員入江誠一郎君登壇、拍手〕
   〔「人事院の性格をどうするかはつきり答弁してもらいたい」と呼ぶ者あり〕
#12
○政府委員(入江誠一郎君) 只今御質問のございました給與ベースの勧告の時期及び内容に関しましては、人事院といたしましてもその勧告の基礎となるべき標準生計費その他につきまして目下極力具体的にその調査を進めております。その調査の結果によりまして時期と内容とを決定いたしたいと思つております。(「人事院の性格について述べよ」と呼ぶ者あり)
 人事院の機構につきましては、只今官房長官からお答えのございました通り、目下内閣におかれても研究中でございますが、人事院といたしましては、その結果に基きまして、極力人事院の本来の使命とする機能を発揮するように運営したいと思います。(「それで公務員法が守れますか」と呼ぶ者あり)
#13
○議長(佐藤尚武君) 内閣総理大臣の答弁は、他日出席の際される趣きでございます。
     ―――――・―――――
#14
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、住民登録法施行法案、(衆議院提出)、日程第二、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、(内閣提出)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。法務委員長小野義夫君。
   〔小野義夫君登壇、拍手〕
#16
○小野義夫君 只今上程の住民登録法施行法案につきまして、委員会における審議の経過及び結果を御報告いたします。
 住民登録法は、第十国会におきまして成立いたし、本年七月一日までの間において政令で定める日から施行せらるることになつておりますが、同法におきましては、その施行の際、市町村の住民について最初になされる登録に関しましては、規定が設けられてないのであります。これは最初の登録につきましては別に施行法を制定して、これによつて全国一齊に登録を実施する趣旨であつたからであります。本法案は右の趣旨に従つて立案されたものでありまして、住民登録法施行の際、現に市町村の区域内に住所を有する者につきましてなさるべき最初の登録に関し、登録の届出、住民票及び附票の作成等につき住民登録法の特例を定め、又国勢調査の例にならつて、市町村に臨時の調査員を置いて、住民票の記載の正確を期するため調査を行わせる等の規定を設けまして、全国一齊に登録を実施する上において万支障なき措置をとろうとするものであります。
 委員会におきましては、伊藤、羽仁両委員より適切なる質問が行われましたが、その詳細は速記録によつて御了承を願うことにいたします。討論におきましては別に発言なく、直ちに採決いたしましたところ、本法案は多数を以てこれを可決すべきものと決定いたしました。
 次に、只今上程の下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、委員会の審議の経過及び結果を御報告いたします。
 先ず本改正案の内容につきまして簡單に御説明をいたしますと、改正の要点はおよそ三点あるのでありまして、第一点は、土地の状況及び交通の便否等に鑑みまして、千葉県市川簡易裁判所ほか二十の簡易裁判所の管轄区域を変更することであります。第二点は、香川県土庄簡易裁判所ほか四簡易裁判所につきまして、その所在地又はその名称の変更により庁名を変更することであります。第三点は、市町村の合併、分離等によりまして、裁判所の管轄区域の基準となつた行政区画に変更等のあつたものにつきまして、この法律の別表を改正することであります。要するに、本改正案は事務的な事項を定めたものでありまして、その内容については別に問題はありません。
 委員会におきましては、特に質疑もなく、討論は省略いたしまして、採決いたしました結果、全会一致を以てこれを可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告を申上げます。(拍手)
#17
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
 先ず住民登録法施行法案全都を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#18
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#19
○議長(佐藤尚武君) 次に下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#20
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
     ―――――・―――――
#21
○議長(佐藤尚武君) 日程第三、町村職員恩給組合法案(内閣提出)を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。地方行政委員長西郷吉之助君。
   〔西郷吉之助君登壇、拍手〕
#22
○西郷吉之助君 只今議題となりました町村職員恩給組合法案につきまして、地方行政委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
 今回、内閣がこの法案を提出した理由は、地方公務員法第四十四條によれば、職員が相当年限忠実に勤務して退職し又は死亡した場合における退職年金及び退職一時金に関する制度を実施すべき旨の規定がありますので、国家公務員の制度との関連、一般社会保障制度との関連等をも考慮して、折角研究中でありまするが、町村の公務員に対する退職年金及び退職一時金の制度につきましては、昭和十八年以降、各都道府県ごとに町村の一部事務組合として町村吏員恩給組合が設けられてありますので、この際、現行制度の建前を維持しつつ、これを法制化することによつて、その機構を整備し、併せてその運営の改善を図ろうとするのでありまして、法案の内容はおよそ次のようなものであります。
 第一は、現在の町村吏員恩給組合は、一応、町村の任意加入となつておりますので、これを強制加入に改め、真に町村の公務員全体の福利の向上を確保しようとすることであります。第二点は、町村職員恩給組合の給付を受ける者の範囲、資格並びに給付の種類及び額については、組合の規約で定めなければならないこととすることであります。第三点は、町村職員恩給組合の経費を町村が負担すべきことを法律に明記し、組合の財政運営の基礎を明確ならしめる措置を講ずることであります。第四点は、町村職員恩給組合の財源の計算及び資産の管理は、健全な保險数理に基かなければならないという原則を、法律上の要件とすることであります。第五点は、各町村職員恩給組合の実際の運営が右の原則に従つて行われるごとか共同して確保する方途として、各町村職員恩給組合が連合会を組織し、これによつて、自主的にその目的を達成させることとするのであります。
 委員会におきましては、先ず岡野国務大臣から提案理由の説明を聞き、更に政府委員から法案の内容につきまして説明を聞いた後、質疑に入りましたが、その主なるものを述べますと、先ずこの法律の適用を受ける町村職員の範囲について、石村、若木、原の各委員から質疑が行われたのに対しまして、政府委員から、「町村職員の範囲は模範規約例で定めるが、現在においては町村長を含めるが、雇用人は入れてない」旨の答弁がありました。そこで、更に、各委員からの、「雇用人をも含ませるべきじやないか」という質疑に対しまして、岡野国務大臣より、「昭和二十七年度は予算措置がしてないので、できないが、将来財政状況に照らし合せて、雇用人をも含ませるように努力する」旨の言明がありました。更に、恩給の給付に要する費用の負担について各委員から質疑が行われたのに対しまして、政府委員から、「従来一般吏員については、職員納付金千分の二十、町村納付金千分の六十七、都道府県補助金千分の八十八、合計千分の百七十五であること、都道府県の補助金は今後なくなり、平衡交付金として町村の基準財政需要額のうちに昭和二十七年度二十三億円余を計上してあること、従来の補助未交付額八億四千万円は速かに清算するよう強力に勧告する」旨の説明があり、更に石村委員から、「国庫補助を考慮されたい」との発言がございました。又、原委員かちの、「現行制度を法制化するだけでは福祉の増進とならぬではないか」との質疑に対しまして、政府委員より、「組織運営の面において各地方同一となり、能率増進し、而も冗費を省き得る見込である」という説明がありました。最後に、高橋、岡本両委員より、町村職員が市又は県外町村に転じた場合に勤続年数が通算されない等の不備を指摘して、これが改善並びに人事の刷新を要望したのに対しまして、岡野国務大臣より、「人事の交流等についても、とくと研究する」旨の答弁がございました。なお、質疑応答の詳細は速記録によつて御覧を願いたいと存じます。
 以上を以て質疑は終了したので、討論に入りましたところ、岩沢委員より、「この法律は、昭和二十七年四月一日から施行する。」とあるのを、「公布の日から施行し、昭和二十七年四月一日から適用する」ことに修正し、その他は原案に賛成する旨の発議があり、原委員より、これに対する賛成の意見の開陳がありました。これにて討論は終局いたしましたので、採決に入りましたところ、全会一致、修正案に賛成し、この部分を除く原案も又全会一致賛成となつた次第であります。よつて内閣提出の町村職員恩給組合法案は全会一致を以て修正可決された次第であります。
 以上御報告いたします。(拍手)
#23
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#24
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て委員会修正通り議決されました。
     ―――――・―――――
#25
○議長(佐藤尚武君) 日程第四、在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案、(内閣提出、衆議院送付)日程第五、千九百四十六年十二月十一日にレーク・サクセスで署名された議定書によつて改正された麻薬の製造制限及び分配取締に関する千九百三十一年七月十三日の條約の範囲外の薬品を国際統制の下におく議定書への加入について承認を求めるの件、(衆議院送付)以上を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。外務委員長有馬英二君。
   〔有馬英二君登壇、拍手〕
#27
○有馬英二君 只今議題となりました在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案につき、外務委員会における審議の経過と結果を御報告申上げます。
 外務公務員は、大使及び公使は特別職、その他の者は一般職の公務員でありますが、外国に勤務するために必要な特殊な給與を定める必要があります。これがために、現在施行されております特別職の職員の給與に関する法律及び一般職の職員の給與に関する法律の特例並びに特別の給與を定めたものが本法律案で、ございまして、先に本院で可決されました外務公務員法第十三條に基き制定されたものでございます。
 次に簡單に主なる事項を御説明申上げます。大使及び公使の給與は、俸給、年末手当、在勤俸及び加俸、その他の職員の給與は、俸給、扶養手当、年末手当、在勤俸、加俸及び特殊語学手当に分類されております。在勤俸の額は、在米大使年額一万八千八百ドル等、各国別に別表に定められております。又在外公館所在地の物価変動等に伴う在勤俸の額の検討のために、公館長に調査報告書の提出を命じ、外務大臣はこれを外務人事審議会に提示して適法に改訂し得ること、その他給與の支拂方法、端数計算等の細かい規定がございますが、詳細はお手許の資料につき御承知願いたいと存じます。
 外務委員会は、四月四日、委員会において担当大臣の出席を求め審議を開始いたしました。次いで四月十四日から人事委員会と連合委員会を開催いたしまして、その際、在勤俸その他諸手当の性質、算出の基準について、又大使等の手当は敗戦下の国民経済から見て高額に過ぎはしないか、在勤俸改訂の権を外務人事審議会に與えているのは人事院の権限を侵すものではないか等の質問があり、これに対し、在勤俸は衣食住を充足するものであるが、在米大使の受ける額は戦前のそれに比し約半額で、而も物価は上つており、他国の在米使臣の手当よりも低額であつて、相当切詰めた額であること、在勤俸の改訂に当つて必要な資料の入手に都合のよい外務省が関與することは適当であると思う等の答弁がありました。
 次いで連合委員会を閉じ、外務委員会を開きましたが、その際、杉原委員より、第九條の解釈に疑点があることを指摘されまして質問がありました。即ち第九條は、国会閉会中に在勤俸の改訂又は設定を行う必要を生じた場合に「最近の国会においてこの法律が改訂されるまでの間」政令を以て臨時に在勤俸を改訂又は設定の措置をなすことができることを規定しておるのであります。然るにこの文面によれば、「最近の国会において」その政令に代る法律案が否決された場合に、その政令は無効になるのかどうか、又最近の国会に審議されなかつた場合、その政令の効力は継続するものかどうか等の点が明確を欠き、解釈上の疑点が多いことを指摘し、その他委員よりも政令と法律の関係について種々質疑が行われました。
 かくてこの第九條につきまして、法制意見局と参議院法制局との意見の打合せに基く統一解釈として次のような解釈がありました。即ち第一、第九條において「最近の国会」云々と規定する趣旨は、当該政令施行後最も近い機会に開かれる国会において法律的措置がなさるべきものである旨を要求しているものと解すべきである。第二、最近の国会においてこの法律が「改正されるまでの間」とは、最近の国会において当該政令に代る改正法律が制定せられ、その法律によつて規律し得るようになるまでの間暫定的にということであつて、改正法律案が衆議院又は参議院において否決され、法律とならなかつたような場合にも、なお効力を有するという趣意ではない。第三、右のごとく改正法律案が衆議院又は参議院において否決され、法律とならなかつたときは、それによつて国会の意思が改正を認めないことに決定したのであるから、その改正法律案と同一趣旨のこの政令もそのまま存続することを許されず、将来に向つて効力を失うものと解すべきである。第四、政令は、この法律が「最近の国会において改正されるまでの間」の臨時的の措置を規定しているにとどまるから、この法律がその国会において改正せられる機会を失つた場合、即ちその国会に改正法律案が提出されなかつた場合、及び改正法律案が提出された場合において当該改正法律案に対し国会が何らの意思決定をしないで会期を終了した場合には、改正法律案が否決された場合と同じく、政令は、当然に将来に向つてその効力を失うものと解すべきである。第五、ただその国会において、一院が当該法律案について閉会中もなお審査する旨を議決したときは、当該改正法律案は後会に継続し、当該改正法律案に関する限り最近の国会における審議が継続中であると言えるから、後会において改正法律が制定され、又は改正法律案が否決若しくは審議未了となるまでは、政令はなお効力を有するものと解する。
 かくて委員会は、十五、十六の両日に亘り愼重審議の上、この解釈を了承し、これを速記録にとどめ、修正は行わないことといたしました。なお第九條と同様の表現は公務員の旅費を定める法律等にも見られ、法文の解釈上疑点があるのでありまして、本委員会がこの点を検討いたしましたことは極めて有意義であつたと存ずるのであります。次いで討論を経て採決を行いましたところ、多数を以て原案通り可決いたした次第であります。右御報告申上げます。
 次いで只今議題となりました千九百四十六年十二月十一日にレーク・サクセスで署名された議定書によつて改正された麻薬の製造制限及び分配取締に関する千九百三十一年七月十三日の條約の範囲外の薬品を国際統制の下におく議定書への加入について承認を求めるの件につき、外務委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
 政府の説明によりますると、元来麻薬については、その製造の制限と分配の取締のために、一九三一年ジユネーヴで條約が結ばれており、我が国もこれに加入して当事国となり、これに協力して参つております。ところが最近薬理学及び化学の進歩の結果、前述の條約では取締ることができない種類の麻薬、例えばアミドン、デイメロール等のような中毒癖を起す合成薬品が製造されるに至りましたので、この種の麻薬を国際的統制と取締の下に置くために取上げられたのがこの議定書でございます。この議定書は一九四八年十月八日に国連総会で採択され、同年十一月十九日にパリで署名され、その加盟国は一九五一年六月末現在で三十三カ国に達しているのであります。我が国がこの議定書に加入すれば、これらの麻薬が国内に輸入され、又国内で製造され、その害毒が国内に流されることが防がれることになります。なお政府としては、昨年九月のサンフランシスコ平和條約中の宣言中にこの議定書への参加を宣言しておりますので、それを実行し、国際信用を高めることとしたいというのが本案の趣旨であります。
 本委員会は、三月六日予備審査において政府側の説明を聽取し、委員との間に十分なる質疑を行いました。次いで四月十六日討論を経て採決を行いましたところ、本件は全会一致を以て政府提案の通り承認を與うべきものと決定いたした次第であります。
 以上御報告申上げます。
#28
○議長(佐藤尚武君) 在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案に対し討論の通告がございます。発言を許します。千葉信君。
   〔千葉信君登壇〕
#29
○千葉信君 私は労農党を代表いたしまして、只今上程せられました在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案に対して反対いたします。
 先ず反対理由といたしまして、本法案の中心である給與額について検討を加えますならば、その額は極めて多額でありまして、而もその額決定の根拠も基準も見出すことができないのであります。現在公務員の給與は、物価の趨勢、民間賃金、標準生計費等の状態から、国民の納得の行く合理性を要求されているのであります。然るに本法案によりますると、在勤俸の額については政府側より何ら納得の行く説明もなされず、曾つての封建時代と同じように、腰だめ式つかみ取りの給與の感が深いのであります。更に大使及び公使等上級者に対する給與額が不当に高いということについては、一例を見れば、アメリカ駐在の大使は一万八千八百ドル、これに四割の配偶者加俸があり、別に俸給として月額六万四千円を支給される、これを円に換算すれば月額八十五万円になります。而も正式の交際費は別途支給されるのであります。その上、所得税も適用されない。これには一体どういう理論的な根拠があるのでありましようか。一般公務員との振合いも無視されておりまするし、幾らその任務の特殊性を云々いたしましても、これでは納税者の納得を得ることはむずかしいと考えられます。
 更に本法案に言う在勤加俸は、本俸と比較にならぬほど多額で、而も衣食住の経費に当てるということになつておりまするが、事実上の生活費が支給されるにかかわらず、これと別に本俸を支給するというのは重複支給の形態でありまして、理論上不可解であり、給與体系を乱すものであると言わなければなりません。又在勤俸の額の改訂については外務大臣に対して外務人事審議会が勧告することに相成つております。これは国家公務員法に定められた人事院の国会及び内閣に対する勧告の権限を侵害するものでありまして、運営の便宜に籍口して公務員法を無視する態度と言わなければなりません。
 次は兼勤加俸でありますが、国家公務員法第百一條には、職員はその職を兼ねる場合も重複して給與を受けてはならないと定められておるのに対して、これと明らかに抵触する兼勤加俸という制度を設け、在勤給の一〇%を支給することに相成つております。その他、館長代理加俸、特殊語学手当等、性格のあいまいな、而も他の一般の公務員には見られない制度が設けられておるのであります。
 これを要するに、かかる矛盾撞着に満ち、民主的な公務員制度の統一を破壞するやに考えられる法案を提出するに至つたことは、政府の追随外交、植民地外交の現われであることに、最も我々は不満を表明せざるを得ないのであります。多数講和の錯誤、そうしてこういう講和條約によつて果して政府の言う真の独立が可能かどうかということは、遺憾ながらこの法律の中にもその回答が出ております。
 第一は、在勤加俸の金額がドルで表示されておるということ、日本の官吏に拂う俸給で、而も日本の立法に何を苦しんでドルで表示しなければならないか。第二は、従来仮定の事実には答えられぬという政府の方針でございましたが、今度のこの立法におきましては、條約の最初の効力発生の日においては、そのとき同條約を批准しておる国に置かれる公館のみが取りあえず設置される。従つてその他の公館の設置は、まだ未定の、仮定の事実に立つて本法が作られ、而もこの法律にきめた相手国は、ことごとくアメリカの支配する国、アメリカに協力する国だけに限られたということは、何としても我々の承服し得ないところでございまする
 以上述べる理由によりまして、我々は本法案に対して反対いたします。(拍手)
#30
○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより採決をいたします。先ず在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#31
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#32
○議長(佐藤尚武君) 次に、千九百四十六年十二月十一日にレーク・サクセスで署名された議定書によつて改正された麻薬の製造制限及び分配取締に関する千九百三十一年七月十三日の條約の範囲外の薬品を国際統制の下におく議定書への加入について承認を求めるの件を問題に供します。委員長報告の通り本件に承認を與えることに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#33
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本件は承認を與えることに決しました。
 議事の都合により、これにて暫時休憩いたします。
   午前十一時五十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後四時十五分開議
#34
○議長(佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
 本日、内閣より、破壞活動防止法案、公安調査庁設置法案及び公安審査委員会設置法案が本院に予備審査のため送付せられました。三案につきましては、特に本会議において、政府よりその趣旨説明を聽取する必要がある旨の議院運営委員会の決定がございました。この際、三案につき法務総裁の説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。木村法務総裁。
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(木村篤太郎君) 破壞活動防止法案の趣旨を御説明申上げたいと思います。
 今や我が国は平和條約の発効を目前に控えまして、民主国家として世界の期待に副い得るよう全力を傾注する要のあることは申すまでもないことであります。政府におきましても、かねて国民の自由と人権の擁護に努めまして、これを基礎として民主主義の育成強化を図つて参りましたが、今後ともこの態度を堅持いたしましていよいよその健全な発達のため邁進する所存であります。(「嘘を言え」と呼ぶ者あり)然るに現下国内の治安状況を顧みまするに、御承知のごとく、或いは集団暴力により又或いはゲリラ戰法により、警察及び税務署等を襲撃して、放火、殺傷等の犯罪をあえてする暴力主義的破壞活動が頻々として各地に行われているのであります。而もこれらの破壞活動の背後には、憲法及びその下に成立した政府を武装暴動によつて顛覆することの正当性を主張し、又はその準備的訓練として暴力の行使を煽動する不穏な文書が組織的に配付されているのであります。かかる事実に徴しまするに、これら一連の事犯は広汎且つ秘密な団体組織によつて指導推進されている疑いを深めざるを得ないのであります。およそ世界いずれの民主国家におきましても、自由権を濫用し団体組織により国家社会の基本秩序を破壞せんとするがごとき行為は、最も惡質且つ危險なものとして、刑罰又は行政措置によつて、結社の禁止解散をなし得る等、所要の法的措置を講じている現状であります。然るに我が国におきましては、現行刑法その他の刑罰法令はいずれも個人の犯罪行為を対象とするものでありまして、破壞活動をあえてした団体に対しましては、たとえその団体自体が如何に危險なものであつても手を供いて傍観せざるを得ないので、治安確保の法令に警戒すべき空白状態が生じているのであります。かかる理由から、今日この種破壞活動の危險を防止するための最小限度の立法が当面喫緊の課題となるのであります。即ちこの法案は、この要請に応えまして、先ず暴力主義的破壞活動を行なつた団体に対しまして行政措置を以て所要の規制を行い得るものとしたのであります。これはこの種破壞活動の危險を防止するには、その活動がよつて行われる組織自体を規制することが何よりも必要且つ有効であるからであります。
 次に、この法案は暴力主義的破壞活動に関して若干の罰則を補整することとしたのであります。それは、かかる破壞活動のうち実害的行為はすべて刑法等によつて処罰されておりまするが、その予備、陰謀、教唆、煽動等の行為は、現下の事態に鑑みるときに、極めて危險な行為であるにもかかわらず、現行刑法の規定を以てしては決して十分ではないからであります。申すまでもなく、民主政治は国民の公正な論議の自由を基礎として成立するものでありますから、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)いやしくも集団暴力を手段として政治目的を貫徹せんとするがごときは民主政治の基礎を破壞し去るものでありまして、断じて許すべからざるところであると考えております。(拍手)従つて、かかる破壞活動の危險を防止することこそ即ち民主主義を擁護するゆえんでありまして、これがため必要最小限度の法的措置を講ずることは、誠に日本国憲法の精神に合致することと確信いたしておる次第であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 これを要するに、本法案の目的は專ら団体組織によつて国家社会の基本秩序を破壞する暴力活動の危険を防止することにありまして、およそ自由権の正常な行使や労働組合運動その他公正な団体活動が本法によつて取締の対象となるがごときは、到底想像し得ないところでありまして、むしろ却つてかかる暴力活動を排除することによつてその健全な発達に寄與するものと固く信ずるところであります。よつてこの法案におきましては、正常な自由権の行使を阻害しないよう、又規制が公正具つ民主的に行われることを方針といたしまして、調査及び規制処分の請求をなす機関とその審査決定をなす機関とを分離いたしまして、権力の集中を避け、後者に準司法的な独立性を付與してその判断の自由と公正を担保し、又当該団体に十分な意見、弁解を述べる機会を與える等、法案全体を通じまして常にその運用が本来の目的を実現し得るよう愼重な考慮を拂つたのであります。
 以上が本法案の趣旨であります。(拍手)
#37
○議長(佐藤尚武君) 只今の国務大臣の発言に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。山花秀雄君。
    ―――――――――――――
   〔山花秀雄君登壇、拍手〕
#38
○山花秀雄君 私は日本社会党第四控室を代表して、只今政府より提案理由の説明のありました破壞活動防止法案に対して質問をいたすものであります。総理大臣及び担当責任大臣の明快なる答弁を願うものであります。法務府は去る四月七日附の冊子を発行し、十二の目次を挙げて法案の概要の説明をいたしているのであります。只今の提案理由の説明のうちにもこれと同様の説明を繰返して行なつたのであります。この法案は暴力主義的破壞活動を行う団体を取締るもので、勤労者の正当なる団結権又は団体行動権を取締の対象にするものでない、又決して曾つての治安維持法の復活でないと陳弁されているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)併しながら私は政府の説明を額面通り納得して受取れないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私だけではありません。民主主義を理解しない一部のフアツシヨ的分子ならいざ知らず、絶対多数の国民諸君も、苦い経験を持つ曾つての政治警察や軍閥、軍国主義の復活を心よりおののき恐れてこの成否を見守つているのが、今日の我が国の表情であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)、思うだに恐るべき末期的現象ではありませんか。(「杞憂だ」と呼ぶ者あり)
 この法律案は六章四十四條より成るもので、法律案としては極めて簡單に成文化されておりますが、この條文の各所に織り込まれている反動的意図は、折角民主主義国家として再建出発せんとする我が国の前途に重大なる暗影を投げかけておるものであります。(その通り」と呼ぶ者あり)この法律の第三條一項一号に、内乱の予備、陰謀及び内乱の幇助に該当する行為と、その行為を教唆し、又はその「行為の実現を容易ならしめるため、その実現の正当性若しくは必要性を主張した文書若しくは図画を印刷し、頒布し、公然掲示し、若しくは頒布し若しくは公然掲示する目的をもつて所持すること」と規定されているのであります。一見したところ尤もらしく見られますが、これは運用と解釈次第でどうにも曲げられる恐るべき落し穴が潜んでいるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)例えば諸外国における革命内乱を報道し、その際発表された声明や宣言を記載した文書を印刷することや、又現地の実情を伝える写真等を掲載することが、日本での内乱の煽動教唆と見られたり、或いは内乱の正当性若しくは必要性を主張したものと見られないとも限らないのであります。そうなると、諸外国の政治情勢の事実を国民大衆に知らしめることすら一種の危險性を感じてできないことになるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)又これらの諸外国で起された政治思想に対する論議すら破壞活動と見られる廃れが十分に生じて来るのであります。同じく第三條一項二号に、「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため」騒擾、放火、殺人、強盗、爆発物使用、公務執行妨害などの行為を行うことだけでなく、その予備、陰謀、教唆又は煽動することを規定しているのであります。これらがこの法律で規定されている破壞活動の定義であり、その取締の対象となる暴力主義的破壞活動は、現実の暴力を指すのみでなく、刑法の全然認めていない言論、行動に及んでいる点は、政治団体だけでなく、労働組合やその他の経済団体、文化団体、婦人団体、おおよそ進歩的民主的団体にまで及ぶと思われる節があるのであります。その事由は、これらの団体の多くは、その団体の構成員に対し又外部の者に対し、啓蒙、教育、宣伝のために新聞雑誌を日常業務として発行しているのであります、そこで、これらの団体が発行する新聞雑誌に真実を伝えることは、もはやできないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)言論出版の自由が保障されている新憲法の下にかかる事実が許されるべきことでありましようか。政府の所信を聞きたいものであります。一項二号のごとき規定も一見して当然のようだが、予備、陰謀、教唆、煽動に至るまでも暴力主義的破壞活動と見るのでは、どのような言論がこれらに該当する犯罪的行為に当るのか全く予測することすらできない。例えば感情の走るままに、こんな反動政権はぶつ倒してしまえと言えば、民主的に選挙によつて成立した政権打倒を叫ぶのは憲法に対する反逆であるとか、或いは、国会なんか無用の長物だ、焼いてしまえと、団体の中の一部の者が激しい言辞でしやべつたとした場合、他の団体構成員がこの法律の適用を受けると迷惑千万な話であります。
 法案は、暴力主義的破壞活動の広汎な定義を設けておきながら、第二條では、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由、並びに勤労者の団結し及び団体行動をする権利、その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限するようなことがあつてはならないと規定しておるのでありますが、(「詭弁だ」と呼ぶ者あり)これは恐らく一種の逃げ口上と我々は理解する。なぜならば、団体に対する活動の制限は、嚴格な裁判上の手続によつて行われるのでなくして、第二章の各條各項各号に示されておるごとく、純行政的な処分によつて即時且つ強力に実行され得るよう規定されておる。時の権力者の一方的見解やその主観によつて、いやしくも憲法によつて保障されたる団結権を破壞するがごときは、明らかに憲法違反と思うが、政府はこれに対して如何に考えておられるや、明快なる答弁を望むものであります。
 いま少し詳しくお尋ねすると、第二章第四條以下には破壞的団体規制を示しておるのであります。即ち、公安審査委員が次のような職務を行うことを認めておる。六カ月以内の期間及び地域を定めて、それぞれ集団示威運動、集団行進又は公開の集会を禁じておる。六ヵ月以内の期間を定めて、当該機関紙類を印刷、頒布し、又は頒布する目的を以て所持することを禁じておる。六カ月以内の期間を定めて、当該団体の破壞活動に関與した特定の役職員又は構成員に団体の行為をさせることを禁止しておる。
 これらの禁止條項のうち、デモ、集会の禁止、機関紙類の停刊は、憲法第二十一條が禁止する検閲制度の復活の疑いが十分にあるのであります。もともと憲法が検閲を禁じたのは、(憲法第二十一條二項)行政官庁の主観や独断によつて或る人又は成る団体の将来の傾向を予測するようなことを防止するためであつた。人は自分で改めることができること、又自分の主張が正しいと信ずれば、仮に刑罰法規に触れることがあつたとしても、その危險を冒してその主張を繰返すことができるのであります。すべての憲法は、飽くまで個人の主張と良心を基にして、行政官庁のむやみに将来の予測をすることを禁じておるのであります。この立場をこの法案に当てはめれば、集会の禁止、機関紙類の停刊が、どんなに一見合理的に見えようが、それを合理的であると思うのは、旧日本憲法以来の伝統に強く根ざしておるものがあるからであります。旧憲法の下で、我々は、警官が新聞雑誌を発禁し、デモ、集会を禁止することは、まるで当り前のように思わされていたのであります。だが、今の憲法は、そのような考え方が如何に重大なる間違いであつたかを批判して、その誤まつた考え方を破り、すべての人に自由な表現の機会を保障しておるのであります。或る人の外に現われた行為が刑罰法規に触れるなら処罰されても仕方がないが、だが、外に現われない心情を対象として検閲にも似たことをすることは、これは明らかに憲法違反であります。
 又、団体役職員の追放は、思想の自由を侵害するものであります。暴力主義的破壞活動をしたとされた特定の役職員や構成員でも、だからといつて将来も同じことを繰返すと認定することは、他人の心理に対して推測することを含んでおる。他人の気持を的確に知ることは絶対にできないものであります。それをできるがごとく錯覚して行うというところに、この法案の全く危險な危險性を含んでいるのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)ところが、この法案では、公安審査委員会はまるで神様以上の万能者で、二月、三月或いは半年後の人間の心理を見抜き、その人間をその団体から取り除こうとするものであります。このような心理の予想が運用の上で濫用されるならば、およそ政府にとつて御都合の惡そうな人物はことごとく政治その他の活動から取り除かれ、政府にとつて最も都合のいい人たちだけで、政治、言論、労組その他文化団体や婦人団体の仕事もやるようになる。大政翼賛会や産業報国会や大日本婦人会は、すべての国民のもう懲り懲りしているところであります。(「フアツシヨだ」と呼ぶ者あり、拍手)それをあえてやろうとする意思がこの法案の中に随所に織り込まれていると考えるが、それは新らしい憲法で全然認めていないことは政府も百も承知であろうと思われますが、例えば先だつて澁谷駅前の広場で、政府の気に入らない再軍備反対の署名運動は彈圧して、逆に再軍備賛成の運動に対しては放任した実例が、この間の事情を最も端的に雄弁に物語つておるものであります。(「その事実は否定できん」と呼ぶ者あり、拍手)
 団体の解散に至つては、個人の将来の心理に対する予想だけでなぐ、多くの人たちが構成する団体心理の予想までも含んでおる。言い換えれば、公安審査委員会が数百数千或いは数万の各団体員の心理にまで立入つて、その団体を処分するのであります。憲法はこのような処分を結社の自由を保障するために将来に亘つて禁止しておるものであります。それにもかかわらず、この法案は、憲法に定められたる団結権を無視しているかのように団体の解散さえ認めるに至つては、沙汰の限りであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)暴力主義的破壞活動とは現実の暴力行為を指しているだけでなく、煽動や煽動と認められる行為まで含んでいるということは、すでに述べたところではありますが、団体の解散後その団体に所属する人たちが、処分の効力に対する訴訟やその団体の財産と事務の整理などという普通必要とされている行為のほかは何もできないとされている点は、明らかに結社権を侵すものであります。この規定を基として行けば、解散団体の構成員が解散に反対の運動をすることさえ当然違法となり、処罰されることとなり、つまり沈黙を強制されるだけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)而も団体の解散で実際に促進されるのは主に非合法の地下組織でありますが、現在の警察や特審局が、果して広い地下運動に対して、関係のない人に迷惑をかけないで適当な手段をとることができるだろうか。(「できんよ」と呼ぶ者あり)一団体の解散は恐らく政府を殆んどヒステリーのような興奮状態に置き、あらゆる人々を疑いの眼で見るようにするでありましよう。先日も東大で問題になつた警察手帳事件にたまたま現われたるものは、現在の日本の警察が思いもよらない特定の人を定めて身許調査を行なつていたということは、天下周知の事実となつておるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)恐ろしいことであります。こうしたことがこれからますますひどくなり、平気で人権を踏みにじることが、こうした状態の中から必然生れて来るのであります。
 更に法案の処分対象に機関紙類が含まれているが、戰争中に行われた中央公論の停刊のような事態が再び繰返されるでしよう。停刊を恐れる余り時の権力者に阿諛追従する言論が街の巷に汎濫したとするならば、日本の将来はどうなるでありましよう。先に述べたるごとく、政府はこの法律によつて思想、信教、結社などの自由を制限しないと保障しておりますが、この保障に応じた手続の上の規定はどこにもない。その後は專ら政治的手心の問題となるだけであります。法律問題として解決する余地に乏しいが、以上の見解を総合すれば弁解の余地のないほど明白な憲法違反の法律案と考えるが、重ねてこの点はつきりした答弁を願いたいものであります。
 次に、政府の説明によりますと、この法案は、一応結成された社会的集団はこれを尊重し、結成後の具体的活動によつてこれに所要の規制を行うものであると言つておるが、すると、現在結成されているすべての団体は、今後の法律に該当する行為あるまでは尊重されるべき団体と思うが、この点についても明快なる答弁を願いたいものであります。
 ここで今後の活動について特にはつきりお尋ね心たしたいことは、今月末講和條約も発効し、独立国として出発するに当り、一切の占領政策が解かれることとなるが、ポツダム宣言を受諾した日本国民は、一切の占領政策に服し、忠実に我々の義務を果して来たのであります。これからは独立国として再出発するに当り、自由な立場から国際情勢や国内問題を論議する場合、例えば朝鮮戦線の問題や国連警察軍の行動を我が国民に正しく知らしめるための報道は当然のことである。且つ又国内に駐留する外国軍隊の行為に対する日本国民としての批判はなし得ると思いますが、これらの行為行動は独立国家の国民の政治的理由として当然であると私どもは確信いたしますが、破壞活動防止法には何らの関連性がないと考えるが、政府のこれらの問題に関連する率直なる答弁を求めるものであります。(拍手)
 政府は、法案の概要説明書の第十一項目のところで、この法案は曾つての治安維持法の復活ではないと書き、「いわゆる治安立法という立場だけから見るならば、この法案も曾つての治安維持法等も同じ治安立法であると言えるが、併しこの法案の構造は治安維持法とは根本的に異なつている。治安維持法のごとき苦がき経験を反省することにより作業を進めたのである。従つてこの法案からは治安維持法が内包していた法的欠陷は十分に排除されているものである。治安維持法は、国体の変革、私有財産制度の否認を目的として結社を組織することを犯罪としていた。」この目的としての要件を極端な思想統制であると政府は今日では、けなしているのであります。よつてこの法案においては、客観的な暴力主義的破壞活動という犯罪行為を現に行なつた団体のみを規制の対象とし、これを行うことを目的として組織されたにとどまる団体は規制の対象に取入れていないと言明しているのであります。それならば放火、殺人、騒擾、内乱その他の犯罪は立派に取締る個々の刑法が存在しているのであります。何を好んで憲法違反の譲りを受けてまでこの法案を提案されるか。その真意にやはり復古主義の反動性をこの内閣に認めざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)政府はあらゆる場所で、この法案は治安維持法の復活ではない、決して労働組合の正常な活動を彈圧するものではないと、口がすつぱくなるほど声明しているのでありますが、我々は明らかに、正常なる労働組合運動は申すに及ばず、あらゆる進歩的な団体活動を抑圧するものであつて、明らかに国民大衆への挑戰であると思うが、(「そうだ」と呼ぶ者あり)この我々の見解をどう理解されるか、答弁を願いたいものであります。
 この法案をめぐつて、我が国の民主的労働組合では、総評を中心とする相当数の労働者が去る十二日広汎なストライキと抗議運動を行なつたことは、政府のよく知るところであります。然るに政府はなおこの反動的な法案を本日提案されたのでありますが、御承知のごとく、総評を中心とする我が国の民主的労働組合の全部と言つていいほど、全労働大衆が、国民の意思の先頭に立つて、明十八日には一齊にストライキをやろうとしておるのであります。我が国の産業経済は、これら民主的労働組合の協力なくしては決して安定するものではありません。産業経済の破壞を予測されるような事態が生れて来ようとしておるのであります。日本の労働階級が我が国産業経済にひびの入るようなストライキを行なつた場合、(「誰が先頭に立つた」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#39
○議長(佐藤尚武君) 靜粛に願います。
#40
○山花秀雄君(続) 政府はこの労組法の下にある罷業権の行使を暴力主義的……(発言する者多し)
#41
○議長(佐藤尚武君) 靜粛に願います。
#42
○山花秀雄君(続) 破壞活動と見るや否や、答弁を願いたいものであります。
 次にこの法案の我々の一番恐れることは拡張解釈であります。曾つて存在していた警察犯処罰令、暴力行為取締法、治安警察法、治安維持法等々、我々戰前より労働運動、政治運動を続けて来た者は、誰彼の漏れなく経験することであります。私は、昭和十二年七月七日突発した当時の日華事変には、我が国の将来を誤まるものとして反対をいたしました。この行為が同年十二月十五日治安維持法違反事件として検挙されたのであります。先に政府の説明のごとく、該法律は目的を持つて結社を組織することが法律違反であると言つておるのにもかかわらず、当時、この目的を持つて結社を組織しておる団体は、非合法組織である日本共産党のみでありました。治安維持法制定の国会の議事の審議過程を読んで参りましても、この点は、はつきり論議されておるのであります。然るに拡張解釈を行い、合法的組織であつても、共産党の思想に賛成する団体であるという認識の下に、その外郭団体は治安維持法の対象となりました。我々は共産主義にはくみせず、民主主義の立場に立つて、飽くまで合法団体として、終始一貫、健全なる労働運動や政治運動をなし来たつていたのにもかかわらず、戰争遂行の妨害になるという当時のフアツシヨ的意見に反対の立場である民主主義者としての私も容赦なく治安維持法で検挙され、拘禁生活を余儀なくされてしまつたのであります。そうして一切の労働組合や政党も強制的解消の運命を見たことは、議員諸君のよく知られるところであります。我々はこの法案に盛られている各所に散在するあいまいなる規定は将来の拡張解釈への抜け道であると理解するが、政府はこれ以上の拡張解釈は絶対になし得ないと明言されるや否や。お答えを願いたいものであります。
 かくのごとく、この法案は、最初から最後まで、民主国家として再出発せんとする我が国には本当に必要のない、無用の長物に等しい。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)後世の史家が談ずれば、吉田内閣が物笑いになるような時代離れのした法案であります。政府は従来の面目を一擲して速かに撤回する意思ありや否やをお尋ねしたいものであります。(拍手)思うに、この法案たるや、吉田内閣の施政の失敗から生じ、国民生活窮乏より来る大衆的な反抗運動を、民主主義の原則に則つて納得せしめんとする理論的根拠を失つて、徒らに権力によつて圧迫せんとする権力政治の復活であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
 この法案提出のよつて来るところの原因は、何と言つても、昨年九月、サンフランシスコにおいて行われた片面講和、この失敗から来たものであります。(「吉田内閣取締法案を作れ」と呼ぶ者あり)講和條約五條、六條の規定が日米安全保障條約となり、(「外国でやれ」と呼ぶ者あり)安全保障條約三條の規定が糸を引いて行政協定が行われ、そうして本年度の国家予算は、厖大なる軍事的性格を盛つた八千五百二十七億の予算となり、この二十七年度予算は、必ず補正の名目で追加予算の計上されることは火を見るよりも明もかであります。日米安全保障條約が特定国を仮想敵国として締結されたことは否めない事実であります。日米安全保障條約は、日米間の両国の安全を保障するというよりも、逆に戰争を誘発する可能性の強いことと私は認識しておるのであります。(「その通り」「そうだ」「ノーノーと呼ぶ者あり、拍手)警察予備隊、海上保安庁がやがて再軍備に切替えが行われようとしておるが、戰争を嫌う国民大衆は、戰争の準備として取上げられたる高税金、物価高、低賃金、低米価等々の政策には絶対に反対であります。国民の生活を苦しめ、戰争誘発政策を臆面もなく強行せんとして、民主主義政治を、再び日本を悲劇に追い込んだ権力政治への復活を策し、治安維持法に代る天下の彈圧法案、破壞活動防止法案を提案したる吉田内閣の退陣の一日も早からんことを望み、私の質問を終るものであります。(拍手)各質問に対して明快率直なる答弁を期待して、私の質問を終るものであります。(拍手)
   〔国務大臣吉武惠市君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(吉武惠市君) お答えをいたします。
 このたびの法律が労働組合の正当なる活動を制限又は介入しないと言うけれども、例えば政府打倒攻撃等の煽動がやはりこれに引つかかるようになりはしないかという意味の御質問のようでございますが、この中にありまする煽動とは、明らかに、内乱と騒擾、殺人、放火、汽車顛覆等の重大なる暴力が列挙されまして、その煽動がかかるのであります。従いまして今日の労働組合がかくのごとき殺人或いは放火の煽動をされるとは我々は考えないのであります。(拍手)従いましてさような御心配はないと私は存じます。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 この破壞活動防止法案は、要するに日本の民主主義政治を擁護せんがために提出されたものであります。(「民主主義を知つているのか」「笑わせるな」と呼ぶ者あり)申すまでもなく、民主主義政治というものは言論によつてこれを行われるものでなくてはならんのであります。いやしくも政治活動において暴力を伴うようなことがあつてはならん。暴力は民主主義の反対であります。我々民主主義を擁護せんとする者は、必ずやこの暴力を排除しなくちやならんのであります。然るに私がこの法案の趣旨に述べましたように、現時暴力を以ていろいろのことをやつておる実例があります。かようなことは、まさにこの民主政治国家においては排撃しなくてはならない。この法案の趣旨とするところは、要するに、内乱とか或いは騒擾とか、或いは放火とか殺人だとか汽車の顛覆とかいうような、そういう危険中の危險な行為を行なつた、或いは将来行わんとするところの団体を規制せんとするのであります。従つて、今労働大臣が言つたように、我々は労働組合がかような行為をするということは、いささかも思わない。決して思わない。(「思わなければ要らんじやないか」と呼ぶ者あり)かような危險な行為に出でた団体は、民主政治においては排撃しなくちやならんから、今後この法案においてこれを規制せんとするものであります。而して言論においても、無論我々は言論の自由を認めなくてはならん。出版の自由を認めなくてはならん。(「嘘を言え」と呼ぶ者あり)併しながら、いやしくも内乱を煽動したり、或いは騒擾を煽動したり、或いは殺人を煽動したりするような文書或いは言論は、これは放擲することは我々はできないと考えるのであります。これこそ民主政治に対する反対行動なんであります。それがこの法案の趣旨とするところであります。(「木村総裁何やつてるか」と呼ぶ者あり)従つて、さような行為に出ない団体をいささかも規制することは、この法案の趣旨は持つていないのであります。従つて、集会の自由も、言論の自由も、決してこの法案において抑制いたしておりません。(「嘘をつけ」と呼ぶ者あり)ただただ破壞的活動をした、又せんとする団体そのものを規制せんとするのであります。我々はさような団体を規制するの必要あることは繰返して申しません。民主政治の下においては許さるべからざるものであるのであります。先刻山花君の御議論によりますると、或いは朝鮮戰線においての事柄とか、或いは駐留軍の事柄についての批判についてはどうかというお説でありましたが、かようなことはこの法案の対象にはなりません。絶対にならぬことを確言いたします。さようなこと、即ち或る反動政府の顛覆とか、或いはこれに対する反対とかいうような言論、行動においても、この法案の対象でないのであります。併しながら、その政府を顛覆しようとするのに暴力を以て顛覆しようとするようなことにおいては、これは民主政治として許すことはできませんから、この法案の対象となることは勿論であります。従つて、この法案をよく吟味して下されば、我々の意のあるところは十分に了解し得られることと私は確信するものであります。(拍手)
#45
○議長(佐藤尚武君) 内閣総理大臣は他日出席の際答弁される趣きでございます。伊藤修君。
    ―――――――――――――
   〔伊藤修君登壇、拍手〕
#46
○伊藤修君 只今提案になりました本法案につきまして、法務総裁にいささか質問をいたしたいと存ずる次第であります。
 この種の法案の作成に当りましては非常に困難を伴うのであります。諸外国の例を以ちましても、すでにアメリカにおいてはムツトニクソン法を作成するに当りまして、非常な困難の下に成しとげておるのです。日本におきましても、現在のこの法案がすでに一カ年近く法務府において研究を重ねられておつて、その間幾多の反撃に会い、一枚脱ぎ、二枚脱ぎ、二転、三転、四転、五転して、今日の法案になつて現われて参つたのです。これほどこの法案に対するところの非難というものが包蔵されているということを、我々は先ず認識しなければならんと思うのです。さように修正された法案といえども、なお且つそこに残存するところのものは、即ち法務総裁が申されるところのいわゆる民主主義の擁護であるとか基本人権の保障という目的には合致しないのです。むしろこの法案自体がこれを破壞する傾向を持つておることは誠に遺憾に堪えないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は本法案につきまして委員会において幾多の質問をいたしたいと存じますが、本日は基本的な点十一点を挙げまして法務総裁に質さんとするものであります。
 現在行われつつあるところの、頻発しつつあるところの治安問題に対しまして、我々は飽くまで民主主義の擁護のために暴力は否定しなくてはならない。併しこの目前の暴力のよつて来たるところの原因というものを追究せずして、ただ眼前に現われたところの事実に目を奪われて、あたかも猟師が山を見ずのごとき行動をとられるということは、誠に遺憾に堪えないと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)政治の貧困、国民生活の安定、教育の向上普及徹底、こうした基本的な問題を先ず解決して、然る後に法的措置をとるべきが当然のあり方と私は考えるのであります。政府はこの挙に出ずして、ただ以て法律万能の考え方を以て国民の権利義務を拘束しようとする考え方は、旧憲法時代ならいざ知らず、少くとも新憲法の下におきましては誠に時代逆行の感なきにしもあらずです。(「そうだ」と呼ぶ者あり)曾つて日本が満州を統治しておつた際におきまして、満州人は日本人に対しまして法匪であると言うておつたそうです。それほど日本人は、法律を以てするならば何事をもなし得ると考えておる。併しながら法律の力を以てしても事実を征服することはできないことは、我々は曾つて経験しておることであります。旧憲法時代におきまして幾多の権力的強い法律が出されておつたにもかかわらず、なお且つその治安は保たれていない。却つて国家をして今日の悲境な地位に陷れておることは皆さん御承知の通りです。これは過去の歴史が証明して余りあることであります。
 然らば今日のかような頻発するところの治安対策といたしましても、現行法規で以て果してできないかどうか。現在におけるところの法律体系から考えましても、刑法には、内乱罪あり、又騒擾に関する罪あり、暴力行為等処罰に関する法律あり、これら集団犯罪に対するところの法律はすでに整備されておるのです。この法律のよき運用を以てするならば、十分その目的は達成されることと考えられるのです。
 殊に今日におけるところのいわゆる国家警察、自治体警察或いは海上保安庁、検察庁、これらの第一線機関がよくその運営のよろしきを得るならば、或いは今日の刑事訴訟法その他の法規において多少不備な点があるといたしますれば、これを改正いたしまして以てその運用のよろしきを得るならば、私は現行法規とこの運用と相待つて、今日のごとき治安対策は十分目的を達成し得るものと考えるのです。若し又これが非常の場合に遭遇するならば、それこそ政府が申されますがごとく、いわゆる警察予備隊の発動を以てしても十分その目的は達成し得るはずであります。然るに好んでかような国民非難の的だるいわゆる彈圧法規とも目せられるこの法案をあえて出されるということは、政府の私は意図が奈辺にあるか解するに苦しむ次第であります。
 或いは占領治下におきまして、いわゆる団規法というものによつて今日の団体生活が覊束されておつて、この法律をなお且つ温存しようとして、平和條約後における独立国家の日本の上に、日本の国民の上にこれをそのまま温存すると、こういう考え方から、これを改正いたしまして、本案のごときものをここに提出するに至つたかとも考えられるのです。若しかような考えであるとするならば、それこそ日本国民に対しまして独立という名前は與えても、その本質は占領下と同一の下に国民生活を営ましむるという大きな非難をこうむることであろうと思うのです。(「その通りだぞ」と呼ぶ者あり)私はかような点に対しまして、法務総裁がどういう見解の下にこの法律案を提案されましたか、先ずこの四点につきまして基本的なお考えをお伺いしてみたいと思うのです。
 次に立法論として三点お伺いいたしたい。
 本案は法務総裁の御説明によりますれば極く簡単に片付けられておりますが、第一章において、先ほど山花君が説明されておりますがごとく、いわゆる刑事の実体規定を定めております。そうして第二章において行政的実体規定を定めておるのです。第三章、四章において手続規定、行政的手続規定を定めておる。第五章は雑則であります。第六章において罰則を定めておるのです。かような法体制というものは稀に見るものであるのです。要するに、この法律を以て司法処分で賄い得ない部分を行政処分に委ねて、以て国民の権利を制約しようという意図に出たことは十分察知される。殊にこの二つの実体規定に対しまして、第三章及び四章によつて、手続規定において一つの審理規定を定めておるのであります。これは要するに、国民の権利義務を制約する場合におきましては、憲法は明らかに裁判の手続をやらなくてはならんと言つておる。然るにこの法律におきましては司法処分に委ねることなく、行政処分に委ねておるのです。かようなことは、日本国民が憲法に保障せられているところの裁判を受くるの権利をこの法律によつて剥奪せられるものと言わなくてはならんと思います。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)かような不合理は到底我々国民としては是認できないです。いやしくも私たちの基本人権が制約される場合におきましては、我々はこの基本人権を保障する殿堂たるところの裁判所の審理を受くべきが当然である。にもかかわらず、ここには易々として行政手続においてこれを定めようとしているのです。或いは法務総裁の御答弁によりますれば、「それは最終的においで裁判を申立てる権利が與えられているから差支えないじやないか。決して行政処分において国民の基本人権を制約するのじやない。行政処置として一応とつて、その後これを裁判所に自由に訴えて権利保護を求められ得る。従つて決して司法権の独立を侵していない。国民の裁判を受ける権利を剥奪していない」と、かように御答弁あるかも存じません。併し法文にそうあるといえども、本質的に、少くとも実体法規に対するところの認定の基本というものを行政機関に委ねている以上は、それ自体裁判でなくてはならんのです。いわゆる本質的に司法権の独立を私は侵しているものと言わなくてはならぬと断言して輝らないのです。併しこれに対しまして先ほど申すごとく裁判所の救済が受けられると、かように御答弁になつても、私はこの規定自体に、この規定自体を見ましても、出訴いたしまして、それに対しまして、すでになされた行政処分に対しまして停止命令がとれることになつておる。行政処分の執行を一時的に停止するところの規定が設けられておるのです。これあるが故に今私が申しますごとき危惧は毫末もあり得ないと、かように仰せになるかも存じませんが、行政事件訴訟特例法を御覧頂きますれば、明らかにかような場合において総理大臣はその停止をなすことを取消すことができることになつておるのです。行政事件訴訟特例法には、いわゆる司法権と行政権との限界、この点に大きな問題を残しておる。行政がこの点において司法権を制約するという大きな問題を残しておるこの法律が、その法律がこの場合に適用されることになるのです。してみますれば、現に侵されたところの、行政訴訟によつてその救済を求めようという国民は、裁判所の救済を求むる前にすでにそれが執行されてしまう。而もそれは、ここに法文に掲げられて規定されておるにもかかわらず、單に総理大臣の請求によつて裁判所はその停止をすることができない。こういう結果になるのです。してみますれば、ここに停止を取消すことによつて不当にその行政処分を国民は甘受しなければならんということは、この点において救済されておるということは、法律は保障していないことになる。それで、かようないわゆる抜け道のある法規を以て、国民に対しまして国民の権利を保障しておるという法務総裁の高言に対しましては、いささか反撃を加えざるを得ないのです。若し又裁判所がかようにその権利義務を保障すると申しましても、およそ国民が侵された権利というものは、いわゆる基本人権を毀損された場合におきまして、事後においてその権利を救済されましても、国民はその原状に回復することができないのです。(「その通りと呼ぶ者あり)日本の法律体制は御承知の通り大陸法規をまねているために、あらゆる場合に国家権力が自由に発動し、そうして国民の権利が侵された場合において、それを事後に救済するからいいではないかというのが今日までの法律体制なんです。かような観念は日本の今日の憲法においては御承知の通り拂拭されておるはずです。我々は、現に侵されておる基本人権を擁護する、救済する法律がなくてはならんのです。その意味におきまして当参議院は、現に侵されつつあるところの身体の自由拘束を守ろうというために人身保護法を参議院みずから作つたはずであるのです。あらゆる基本人権を保障するのには、現在侵されておる基本人権を直ちにこれを救済することによつてこそ、初めて基本人権の保障の全きを得るものと言わなくてはならんと思うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)にもかかわらず、事後における救済をしても、その救済も行政事件訴訟特例法によつてすぐにその救済を取消されてしまう。かような点に考え及ぼして、私はこの法律をお作りになつた法務総裁のお考え方についていささか私は腑に落ちない。この点に対しまとても十分御説明を承わつておきたいと思う。(「反動だ」と呼ぶ者あり)
 それから次に立法論としていま一つ指摘したいところは、一体、人の権利を制約する場合におきまして、皆様も十分御諒知のことと存じますが、徳川時代ならいざ知らず、今日の時代におきまして、検察と裁判とが同じ行政機関の中で設けられるというあり方は、全く復古的な考えもこれほど甚だしいものはないと思うのです。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)一行政長官の下にいわゆるこの法案にいうところの審理官がある。いわゆる裁判官がある。他面においては調査官、検察官がある。これを代表するものはいわゆる長官です。この長官が本法では検事の立場を持つておるのです。審理官は旧刑事訴訟法時代にあつたところの予審の立場をとつておるのです。調査官は司法警察官乃至は副検事の立場をとつておるのです。これがこの長官の下に全部隷属しておるのです。一方でつかまえて来て一方で判決する、さような不合理を新らしいこの時代において再び繰り返されるということは、法律立法の立場から行きまして、如何にも私はこれは法務府の考え方は時代逆行の考え方も甚だしいと言わなくてはならないと思うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)これをしも我々忍ばなければならぬのでしようか。かような若し考え方で行つたならば、私たちは、つかまえられた人に裁判を受ける、いわゆる徳川時代におけるところの大岡裁判をそのまま繰り返すことになるのです。而もその裁判の認定に当つて、第十三條においては何を規定しているか。証拠は十分出しなさい、弁護人は五人出せる、立会人は何人出せると、こうしておるのです。如何にも民主的に規定されておる。然るに同法の第十五條を御覧になりますれば、審理官はその提出したところの証拠をとらなくとも差支えないと言つておる。(笑声、「斬捨て御免だ」と呼ぶ者あり)それは、折角出した証拠は、自分の権利を主張してこれを擁護してもらおうと思つて出した立派な証拠でも、審理官の考え方によつてこれを少しも調べんでもよろしいと、こう言つているのです。(「そうだ」と呼ぶ者あり)かような(「呆れたものだ」と呼ぶ者あり)無茶な規定を今更我々が作るということは全く考えられないのです。(「木村さんにして初めてできますね」「その通り」と呼ぶ者あり)こういう点に対しましては、なぜ法務総裁は考慮を拂わなかつたのか。全く今日の憲法下において稀に見るところの私は惡法ではないかと思うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
 第三点は、一体、法務総裁は先ほど御説明の中で、事もなげに団体の犯罪行為能力というものをお認めになつたのです。一体、日本の刑法理念の中に団体の犯罪行為能力というものを認めているのでしようかどうか。学者はいずれも口を揃えて、個人責任の原理というものは今日の日本刑事法規の一貫した理念でなくてはならんと言うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)然るに本法に限つて初めてここに取入れられて、団体の犯罪行為能力というものを認定しようというのです。世界いずれの国においてかような無謀な学理に基いて法案を起草するものがあり得ようか。日本におきましても、成るほど団体において刑事責任を認めた場合があるのです。例えば外国為替管理法とか、或いは爆発物製造に関するところの法律とか、統制法規とか、乃至は法人税法とか、これらの法律に限つて団体にその犯罪行為能力を認めております。併しこれは団体の行為の責任を問うておるのでなくして、取締のため、取締規定として団体に連坐責任を負わしめただけであつて、団体それ自体がその犯罪行為を遂行したという理念の下にこの法規が定めてあるわけではないのです。若しその法人が脱税いたしますれば、法人を代表する取締役、監査役その他の職員がその行為に対する責任を負い、団体には連坐的に両罰主義で以て取締のために責任を負わしめておる。こういう便宜的な問題であつて、本来の原理に基いたところの理念ではあり得ないのです。今日、社会生活が集団生活を基幹としておることは御承知の通りです。でありますから、これに対しまして或る種の処置を講じなくてはならん。個人の行為に対する責任のみを以てしては、なお治安維持の目的は達成し得ないと、かような御説明のようにも考えられるのですけれども、然らば刑事政策の目的といたしまして、社会の防衛であるとか、或いは教育刑というものに対するところの目的遂行に対しまして、どういう説明をしようというのですか。私はこの刑法理念から申しましても、恐らく識者の反対は当然のことと存ずる次第であります。にもかかわらず本法におきましては、その基幹をなすいわゆる団体の犯罪行為能力を認めたその理念の上に立つてすべての法律が規定されておるのです。かような原理に反するところの法律構成というものはあり得ないのです。少くとも立法に携わる我々といたしましては、この点においても本法は根本的に審議の対象となり得ない理念を持つておると考えられる次第であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
 次に、本法案がいわゆる基本的人権を侵害すること甚だしい、こういう点に対しましては、すでに山花君においても縷々御質問がありましたが、これに対しまして労相は、さようなことは毫末もあり得ないと、こう仰せになつていらつしやるのですが、併しこれはこの法律を通覧いたしますれば容易に指摘し得るところです。(「その通り」と呼ぶ者あり)成るほど列記されましたところの各種の犯罪行為、これは刑法そのままであります。組合がさような行為を犯すようなことはあり得ないことは当然のことです。言うを待たない。言うを待たないこの点だけを示して、だから組合活動に対しまして何らの制約をしないと、こういう御説明でありますけれども、いわゆる第三條の二号のヌの規定、或いはリの規定若しくは第一号の口の規定、或いは第四條、第六條、これらの規定をそのまま運用して御覧なさいまし。恐らく団体活動というものは成り立ち得ないです。例えば第三條の二号のリの場合を想像して、いわゆる検察官、司法警察員、調査官、これらが活動する場合において、これに対しまして或いは阻止するとか、口論するとか、手を触れるとかいうようなことはあり得るのです。そういう場合においては、それ自体がこの法規によつていわゆる破壞活動となるのです。従来よく集会の場合におきまして衝突する場合があるのです。その衝突でたまたま警官に手が触れますれば、それだけで以てすでに破壞活動になつてしまう。いわゆる憲法に定めておるところの団体交渉権とかいうものは、その点において大きな制約を受けることは必然の理です。こういう点を考えてみるならば、この一條だけでも組合活動というものは大きな制約を受けるのです。組合活動ばかりじやないですよ。我々が演説会においても、或いは私たちのあらゆる集合においてすべてこれが適用されるのです。このようなことは、皆様において、今後恐らくこのリの規定が非常に拡張解釈されまして、又拡張解釈しなくてもそのまま適用される機会が多いことと存ずる次第です。曾つて暴力行為取締法を作る場合におきましても、御承知の通りいわゆる集団暴力に対しまして、この治安を保つためにこの法律を制定した。然るにその法律の実際の運用の結果というものは、その集団暴力に対することでなくして、却つて、一、二の人が団体を背景にして暴力したというような事案として皆取上げられておるのです。些々たることが全部この暴力行為に引かかつておるのです。それと同様に、本法の最も活用される部面は、このリの規定がことごとく活用されるのです。むしろ、ここに列挙されたところの各種の、放火であるとか、列車顛覆とか、内乱罪とか、そういうような規定は運用されずして、このリの規定がことごとく運用される。第四條が運用される。そしてこのヌの規定が運用される。この三点にあると言わなくちやならんのです。或いは「そういうことは本法において嚴に戒めておる。例えば第二條においてこれを戒めておる。而も労働組合の攻勢によつて第二條の二項を設けてなお注意を完全にした」と、こう仰せになるのです。先ほどの御説明もさようにあつたように信ずるのでありますが、併しこれは御承知の通り、第二條の書き方を御覧になりますれば、これは注意規定であります。訓示規定であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)若しこれに違反した場合においてそれをどうするかという規定がないじやないですか。職権濫用罪にはならないですよ。若し故意にこの行為をなした場合においては、これは刑法の正條によつて職権濫用罪を構成しますが、そうじやなくして、ただ職務遂行の上においてこの第二條を守らぬ場合において、それが犯罪にもならない。何にも制約されないのです。してみますれば、この二條というものは訓示規定に過ぎないのです。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)これによつてこの強力な権限行使というものが少しも制約されないというような不合理があるのです。してみますれば、基本人権の保障の部面におきまして、言論の自由であるとか、或いは集会の自由であるとか、労働権の行使の場合におきまして、あらゆる場合において何らの保障にもならないのですよ。だから、この意味から申しましても、私はこの法案が基本人権を侵害すること又甚だしいと言わざるを得ないのです。かように考えて参りますれば、本法が稀に見る惡法であることは、私がここに二、三摘示しただけでも十分御了承賜われることと存じます。法務総裁がこの法案が本当に信念を持つて合法的に適法ないわゆる憲法違反の法案でないということが言い切れるかどうか。私は法務総裁の親切な、殊に又詳細な一つ確信ある御答弁をお願いしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#47
○国務大臣(木村篤太郎君) 伊藤君にお答えいたします。
 伊藤君の御質問の先ず第一点は、かような法案を作らなくとも刑法で賄つて行けるんじやないかということであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)勿論個々の行為は刑法で賄い得るものもあります。併しながらこの法案の狙いは、私が先ほど申上げましたように、暴力行為的団体を規制しようというのであります。これが本法案の狙いであります。これは刑法でも賄つて行けない。要するに行政措置を以て行くよりほかにないのであります。これを放置していいのか。かような暴力的破壞活動をなす団体を放置していいのか。いいというならいざ知らない。併しどうしてもこの民主政治下において放置することができないということであれば、何らかの措置をとらなければならぬ。これが法案の狙いであります。然らばこういう行政措置をとつた国がほかにあるかと申しますと、たくさんあります。アメリカ然り。イギリスもそうであります。或いは南アフリカ連邦も然りであります。その他数個の国におきましても、いずれもかくのごとき行政措置をとつている国はあるのであります。必ずしも日本ばかりではありません。(「例を示せ」と呼ぶ者あり)そこで、こういう法案の立て方であるとすると、非常に国民の権利義務を阻害するのじやないか、こういう御議論でありまするが、私はさように考えておりません。この法案の立て方におきまして極めて私は民主的な方法をとつているのであります。
 先ず第一に申上げたいのは、これは伊藤君も仰せになりましたが、公安調査庁においての取締の方法であります。これは伊藤君もお述べになつた通り極めて民主的にやつたつもりであります。(笑声)つまり五人の立会人を求めて、その立会人及びそれに又関係するところの人々については弁護人も附いておる。意見の開陳は十分にさせる。そうして、そこで意見がまとまりますると、これは独立した委員会にそれを持つて行つて、そこで決定をする。その委員会の人員はどうかと申しますると、我々の構想におきましては、国会において御承認を得てこれを選びたい、こう考えているのであります。然らばこの委員になるのはどういう人がなるかと申しますると、或いは労働関係から、或いは法曹関係から、或いは実業関係から、或いは教育関係から或いは宗教家関係から、こういう方面の達識の人を選んで、そうして国会の承認を得て、その人たちによつてその決定をしてもらうという組立になつているのであります。そして、その決定に対してなお不服であれば、いわゆる民事裁判所へ行政訴訟として提起できる。そうして最終的の決定は裁判所に任せるということにしているのでありまして、この組み方においては私は極めて民主的にできていると確信して疑わないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)いろいろ御議論がありまするが、(「民主化が逆立ちしているよ」と呼ぶ者あり)私は繰返して申したいのは、決して個人の人権を無視するような法の立て方でなくして、ただただ破壞的暴力団体そのものを行政措置によつてこれを阻止して行こうというのに過ぎないのであります。そのような団体は私は民主政治下において許すことはできないということは勿論のことであつて、これは各位も十分御理解のできることであろうと思つております。従つて、刑法で賄い得るのでありますれば、これは賄うのでありますが、刑法で賄えないから、止むを得ず行政措置を以てかような手段をとることが妥当だと考えて、本法案を提出するに至つた次第であります。(拍手)詳細は委員会において大いに我々の意見を述べたいと思います。(「あとはどうした」「答弁しろ」「答弁の必要なし」「わからんのだよ」「それは雑音か」「答弁の必要ないとは何だ」「雑音出すな」と呼ぶ者あり)
    ―――――――――――――
#48
○議長(佐藤尚武君) 岩木哲夫君。
   〔岩木哲夫君登壇、拍手〕
#49
○岩木哲夫君 私は改進党を代表いたしまして、只今提案理由の説明がありました破防法に対しまする二三の質問をいたしたいと存じます。
 それより先に、私は政府のこの法案に対する態度について一二、言及いたしたいと思うのであります。それは、政府が、その與党勢力の絶対多数を国会に有しておりながら、なお、この法案の審議の上に一抹の不安があると考え、又その通過の見通しにつきましても信念が確定されないのか、どうであつたか、その心配の余り、この法案提出以前において、国権の最高機関である国会の存在を無視して、労組代表と会つて、押し迫るスト決行に屈して、そのストは非合法だと強調しつつも、結局それらの団体に屈服いたしまして、当初の閣議決定を覆しまして、ここに更に修正を約束して、そうして国会外で法案修正の直取引を行なつたということは、この法案が、ひとり労組関係に関連するばかりでない、国民全体に関連する重要法案でありまするその性格におきまして、当初、政府が、今日までとられました議会政治の本念を失して、政治的にその信念の欠けた無定見な行動をとつたことは、我々の嚴に戒めねばならぬ点と思うのであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 そこで、私は、かように政府がすでに自信の喪失いたしておるこういう態度でありますると、将来、この法案の意図なり、或いはこれが法制化せられた将来において、この法律が随時随所に散発的に、いろいろ御都合的に拡大解釈されましたり、又或る場合にはどういうように考え方を変更するかもわからんというような慮れがなしとしないと考えるのでありまして、或いは昔の治安維持法的な存在になる慮れがあつてはいかないと思いまするが故に、あえて、その基本的信念と申しますか、本法案の本来の趣旨、根本理念につきまして、特に私は吉田総理大臣の出席を求めてお尋ねいたしたいと存じたわけであります。
 それは第一に、我々は、独立後、左右の破壞活動、殊に共産主義の暴動的な破壞活動が頻発するであろうという予想については、政府と見解を同じくするものでありまするが故に、(「よろしい」と呼ぶ者あり、拍手)これらの暴力革命的破壞活動に対する適切なる措置を講ずべき法案の設定は、(「馬鹿だよ」と呼ぶ者あり)大いに賛意を表するところでありますが、併しただ問題は、(「自由党と同じじやないか」「しつかりしろよ」と呼ぶ者あり)政府が、この一部分子の過激団体等のこの破壞活動に対する措置に急なる余り、これらに対する適切な措置となるより、却つてそれと全く縁の薄い、或いは縁のない一般の言論文書活動や文化活動や、或いは政府の政治行動並びにその政策に対する反対党の批判の場合や、又條約の改正運動とか、或いは国連協力に関する諸般の見解を集団で披瀝する場合とか、又破壞活動に及ばざる程度の熱心な労働運動等に対するものにまで、これらを拡大の解釈を以てこれに重大なる制限弾圧を加えんとするがごとき場合が或いはなしとしないと思いまするが、この際、一体、政府はこうしたことについてどうした態度を、今私が列挙いたしましたようなものに対して基本的にどういう態度を、或いはどのようにこの法律を以つてこうしたものに臨まんとするのか。これらの今私が列挙いたしましたような範囲の一例に対しまして、この際、政府は明確に答えて頂くことが、世間のこれらに対するいろいろの疑惑を明瞭にする点であるのでありますが、大体、こうしたまぎらわしい、拡大解釈の生じやすい、或いは一方的都合解釈によつていろいろの問題の発生しやすいような、かような法律措置をとるよりは、むしろ政府は、この法律の本来の目的である過激な破壞活動に対する対処措置としては、別個に、こうした過激な分子、団体の行動に対することのみを單独に別個に法律を作つて行くということが、これらに関係のない各方面の活動、政策批判等に対しまして、何らの懸念の生じないことを與えるのではないかと思いまするが故に、この際、この法律案は二つに区分され、或いは明確に過激な破壞活動のみに限定する謙虚な法文に改正する必要があるのではないかと思うわけであります。こうした点につきまして、政府はすでに提出された今日の段階でありますが、将来、議会審議の上におきましては、これらに対しましてはどういう態度をとられまするかを先ずお尋ねいたしたいのであります。
 次にお尋ねいたしたいことは、破壞活動を調査する、これは只今伊藤議員も言及されましたが、成るべく重複を避けまして、特に重要であると考えまするから私も質問といたしたいと思いますることは、同じこの行政長官の下に、公安調査庁と、そうしてこれを審査決定する公安審査委員会が、いずれもその下部組織にあるという問題点であります。これは日本国憲法に保障する国民の自由と権利を不当に制限しないと政府は強調しておられますけれども、この法案の具体的條文内容を見ますると、現在国民各方面に非常な不安と危惧を持つておる。この状態に鑑みまして、この法案全体に流れる破壞活動防止の措置が余り急激單直でありますために、これに派生的に、先ほど来申上げました国民の正しい言論、出版、思想、或いは集会、政策の発表或いは政治行動等の自由をも巻き添えとして抑圧制限されんとすることが、直接間接を問わず、その拡大解釈によつて生ずる虞れが極めて濃厚でありまするのでありまするが故に、これらの国民の基本的人権と自由というものを規制或いは束縛するようなことを取扱うこの法案は、当然別個に裁判によるべき措置にこれを委讓すべきでありまして、そうでないと、同じこの行政長官の下に審査委員会と調査庁が並んでありますることは、只今伊藤議員も御指摘のあつたような工合に、例えば自分で三味線を彈いて自分が唄つておるという、この彈き語りの独善の調子に陷つて、往年の治安維持法の復活を思わしめる点が極めて濃厚であるからであります。尤もこの点におきましては、行政事件訴訟の途はありまするけれども、これは結局は政府の都合によつては総理大臣の拒否権によつて如何ようとも左右されることも認められておるということでありますと、結局何のことだか、わけがわからないようなことになるのでありまして、余りにも政府の行政措置権が一方的に強大過ぎる点が問題となるのでありまして、いわゆる三権分立の基本的日本民主化の制度を混迷に陷れる虞れが生ずるのであります。そこで私は、この際、政府はこの審査委員会のこういう処置規定と申しますか、審査委員会に対する関連せる法律案によらず、單独の法案として別個法制化されることが、こうした問題を生じない解決方法であると思いまするが、政府はこれらを別個の單独法律案としてこれを切り離して処置されるお考えがありまするかどうかをお伺いいたしたいのであります。
 次に、更に木村法務総裁にお尋ねいたしたいと思いますことは、それは第三條におきまする騒擾、即ちロ及びヌの騒擾とか或いは煽動なる字句の意義、その範囲、程度、或いはその場合等を、この際、事例を挙げて明確にして頂くことが、この法案審議の上に、又国民がこの法案に対するいろいろの危惧を解消する上において極めて適切であろうと思いまするから、この際、この問題を明確にして頂きたいと思うのであります。で、それは、この法案の根本趣旨に直接影響いたしませんが、或いは間接には遠い原因となり得るの解釈の場合にも適用するのであるかどうか。その使い分けの問題であります。即ち仮に、一般の言論及び政治活動とか、又は條約の改正運動とか、或いは直接暴力的破壞活動には及ばざるの範囲内における労働條件同上を念願する労働運動の熱意等が間接に一般民心をリードして、一部団体の使嗾する破壞活動に附和雷同する同調者が仮に現われて来た場合に、これらの間接煽動をも遠く遡つて或いは広く取締の対象とするのであるかどうかにあるのであります。この点は、ひとり労働団体のみならず、一般の輿論の極めて懸念し注目しておる問題でありまして、これを政府の独断によつて一方的に、一切合財そのときの都合や一部感情で弾圧取締るということになりますると、一方、問題の多い行政協定とか、或いはいろいろの将来生ずる又條約と相並んで、我が国民主化育成とその発展の上に重大なる暗影を投ずる問題と考えるからであります。(「大丈夫」と呼ぶ者あり)
 で、引続いて第二点にお尋ねいたしたいのは、同じく第三條の二にありまする「政治上の主義若しくは施策を推進し」、或いは「支持し、又はこれに反対するため」云々とありまするが、その末項のヌにありまするような「予備、陰謀、教唆又はせん動をなすこと」をもこの取締の対象としている点であります。本来、法務総裁は、刑法によることのできがたい場合もあるの理由によつて、この法案の取締事例を広範囲に作成されたと仰せられておりまするにかかわりませず、この場合は刑法と重複しておることでありまして、これによつて、必要以上にその取締方針や或いは態度が刑法とこの破防法とによつて軽重が相違する場合、又は具体的取扱方針の混乱が生ずる震れなしとはしないのでありまして、むしろ、これは刑法に讓るか、又はどちらかに調整一体化する必要があるのではないかと思うのでありますが、御所見を承わりたいのであります。
 次に第三点としてお聞きいたしたいことは、先の十二日の第一波ストに先立つて、全鉱、炭労の二労組は、十一日の吉武労相との会談において、政府は先の閣議決定の線より更に重要諸点を修正することの約束において、又この労組はその実現を信頼してストを中止したと聞いておるのであります。ところが今回政府は、これら労組に約束された修正点につきましては、なおその主要点と申すところが果しておらない。この結果、金鉱、炭労等は、第二波の、明十八日のストに突入するのではないかと我々は憂慮いたしておるのであります。元来、今回の各労組のスト行為は、それぞれの見解もあり、論議もあるとは存じまするが、我々は直感的に見て、当面するこの法案をめぐつての運動対象としてのスト行為であるとするならば、勢い政治ストになるという解釈を持たざるを得ないのでありまして、(拍手)我々は、健全なる労働運動のあり方としても、又我が国再建途上にある国民総力を結集すべき国民産業経済全般の観点から見ましても、現在のごとき方策によらざる、スト行為以外の方法で解決さるべき点を主張いたしておるのでありますが、不幸にしてこれらの穏健労組におきましてもストが余儀なくされるという場合、よつて生ずるその原因は、政府即ち吉武労相等の一部にその責任があると見なければならないのでありますが、その場合、このストが政府認定のごとく政治スト即ち非合法であるとした場合に、一体、政府はこのストに対してどのような態度で臨まんとするのでありますか。又その取締は非合法ストとして規制発動するのかどうか。或いはこの法案制定後遡及して適用するという考えかどうかをお尋ねしたいと共に、併せて、若しその場合の政治責任はどなたが負われると考えるのでありますか。明らかに承わりたいのであります。
 最後に吉武労働大臣に一点お尋ねいたしたいことは、去る十二日のスト第一波の前日、労組代表と会談されまして、重要個所を修正するの約束をされ、その実現を誓われたそうであります。このことは政府の無定見を暴露したものとも言えますけれども、我々は吉田内閣の労働運動に対する認識の一歩前進だと考えておるのでありますが、かくしてこの政府代表たる労相の言を信頼いたしまして、穏健なる思想に立つ全鉱及び炭労等の労組はこの十二日のストには参加しなかつたのでありまして、我々は我が国労働運動の健全なる動向に喜びと安心を持つたものであります。然るにその後政府の修正点を見まするに、この十一日の約束の主要点はまだ多数果されていないことであります。即ち当時労組代表に約束された主要点でありまする第三條のロの煽動云々の問題、或いはヌの項目の削除の問題、その他救済規定をはつきりしておくようなことに対しまするそれぞれの明確化が実現されておらないのであります。これらの諸点は、この法案の主要目的である破壞活動の基本的排除の法文に便乗の虞れがある、そのときの都合によりまする一方的拡大解釈に巻き込まれやすい問題点でありまするが、これらがことごとく修正されていないとなりますると、一体、先だつての政府側と労組側との会談は、政府においては、ストを一時中止させる手段としてごまかしを言つてその場塞ぎをして、約束の責任を果さなかつたとも言えるのであります。若しそうだとすると、この間の会談は嘘の会談であつたのか、嘘だとすると、労組代表のほうがだまされたのか、政府がだましたのであるか、この辺をお伺いいたしたいのであります。併し若しだましたのでないと言われるならば、その約束をされた責任を労相はどのようにしてとられんとするのか。(「やめればいい」と呼ぶ者あり)この際、明らかにしておきたいと思うのであります。若し辞職されない、責任をとらないということになりますと、結局政府が労組代表をだましたということにまると思うのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)又こうして多数の勤労者及びその代表に政府を代表する閣僚がかかる不信行為をしたということになりますと、我が国労働運動の前途に或いは水を浴びせかけたようなものでありまして、この反動によつて或いは十八日のストが如何ような場合に陷りましようとも、その責任の一半はこれ又政府にあると見なければならないのであります。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)一体、政府はこの明日に迫る十八日のストに対してどういう対策を持ち、又これに対してどういう責任をとられんとするのか。この際、吉武労働大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。
 以上を以ちまして私の質問といたします。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(木村篤太郎君) 岩木君の御質問にお答えいたします。
 岩木君はこの法案を解釈するに当つてみだりに拡張されるのじやないかというような御議論でありまするが、その点については、我々は十分な注意を拂つたのであります。つまり第三條において明確にこの破壞活動の意義を付けておるのであります。これによりまして、このきめられた範囲における行動をとつた団体を対象としておるのであります。拡張解釈するの余地は毛頭もないと確信いたしております。(拍手)
 それから、公安調査庁において審査をし、そうしてこの決定の請求をし、一方において審査委員会においてこれを決定する、これが法務府の外郭団体であるから不都合じやないかというような御議論でありますが、この公安審査委員なるものは、これは御審議願いまする公安審査委員会設置法三條において明確に規定しておるのであります。いわゆる独立してこの審査の決定をするということであります。その独立性を十分に持たせて、これは一つの準司法的の機関としておるのでありますから、今の御疑念の点は毛頭ないということを私は申上げたいのであります。それからこの法案の中の煽動とはどういうことであるかということでありまするが、この教唆、煽動……教唆の点はもうわかつておるのでありますが、煽動というのは決してこの法案において新たに設定した概念ではないのであります。すでに、各法令、例えば国税犯則取締法とか、公職選挙法にもある。公共企業体労働関係法その他にこの煽動という文字は十分用いられておるのでございまして、それらの例によりまして、この内容が極めて明確に規定されておりまするので、この点につきましての御疑念は十分ないと確信いたしております。
 それから労組の関係でありまするが、私は労組との会議で、いわゆる総評の会議でこの法案の説明をしてくれということで会つて、十分に我々の意見のあるところを開陳したことがあるのであります。その後、労組の人たちとは会合した関係は少しもないということをここに明言いたします。(拍手)
   〔国務大臣吉武惠市君登壇、拍手〕
#51
○国務大臣(吉武惠市君) 岩木さんにお答えいたします。
 私は労働組合の代表とは、四月五日の日と十一日の日に公式に会いました以外は会つた覚えはありません。(「夜どこで会つたか」と呼ぶ者あり)夜、会つた覚えはありません。四月五日は、この法案について誤解があるようだと思いまして、只今法務総裁がお述べになりましたごとく、私の部屋に総裁に来て頂きまして、詳細な説明をして頂いたのであります。ところが、それでもなお納得ができなかつたようでございまして、このままに放置いたしますと或いはストに入るかも知れない、そこで私は閣議に諮りまして、この法案について誤解を受ける点があれば、できるだけこれを除去したらどうかということを提案いたしまして、先般発表いたしましたごとく、三つの点について政府みずからこれを世間に声明したのであります。その第一は、この法律は労働組合の正当な行為を制限し、又はこれに介入するような、適用するがごときことがあつてはならないということを法文に明記しよう。なお、この法律の規制の対象についても不必要な危惧の点は與えないように検討しよう。第二は、この法律に基く行政処分の違法なるものに対しては救済規定について考慮しよう。第三は、この法律の公安審査委員会の委員は労働組合その他各界の代表で組織しよう。この三点を政府みずから決定して声明したのであります。そこで十一日に労働組合の代表を再び私の部屋に呼びまして、政府はこの三点について声明をして検討を加え、提案するつもりであるから、君たちはこのストについては自重するようにということを再度要望したのであります。私どもはこの声明いたしました三項目につきまして忠実に訂正しております。(「誠に立派だ」と呼ぶ者あり)
 第一は、第二條の第二項に、今読みましたそのままの規定を挿入しております。なお第一の二に、不必要な危惧の念を與えないようにしようという点から、この団体活動は団体活動として行動した場合である、その中の一フラクが活動したからといつて、その団体に責任を負わすようなことがあつてはならないと思いまして、この活動については「団体の活動として」という文字をすべてに挿入しております。なお、その他三條中に「行為の実現に資するため」、それではどんな範囲かわからないからと思いまして、「実現を容易ならしめるため」と訂正しておるのであります。その他、各所に、かくのごとく、文字の不明のために不要の心配をかける点は、これを一々明確に改めております。
 なお第二の、この法律に基く違法処分に対する救済規定でありますが、先ほど伊藤さんからもお話があつたようでありまして、今日の行政事件訴訟特例法における行政処分の救済については審査に日限が限られていないのであります。そうすると、処分を受けて、いつまでもだらだらとやられたんでは救済が遂げられない。それはいけないからと言つて、この公職選挙法に唯一の例がございまする百日以内に審査をしなきやならんという規定を、この法文に入れておるのであります。なお、組合あたりで心配いたしまするのはいわゆる間接調査権であります。必要があつて参考人として呼ばれ、或いは書類の提出を求められるということを、非常に心配しております。そこで、今回の提案いたしました條文からは、元の二十七條の間接調査権に基く規定は全部削除しておるのであります。
 なお第三に声明をいたしました公安審査委員会の委員に労働組合の代表も入れよう。これは政府が声明いたしましたごとく実施するつもりでおります。かくのごとく、私どもは世間に声明をいたしました事項につきましては、忠実に我々は訂正をして本日提案をしておるつもりでございます。決して私は組合に約束した事項を不履行にしたという不信を呼ばれる覚えはございません。
 只今御指摘になりました第三條における「せん動」の文字或いは救済の規定などを例示されましたが、かくのごとき具体的な問題について約束をした覚えは毛頭ございません。
 なお、この法案の訂正を、一度決定して議会に審議せずして事前に訂正をすることは如何かというお尋ねでございます。私ども決してそれは好ましいこととは存じません。併しながら、それが仮に政治ストにせよ、事前にこれを避けることができるならば、政府が提出の以前において改むることは、私は決して惡い態度とは存じません。ただ十八日に止むを得ずストに入るということでございますが、私としては、再三再四、最後まで、組合の自重を要望するつもりでございます。(拍手)
#52
○副議長(三木治朗君) 内閣総理大臣の答弁は他日に留保されました。羽仁五郎君。
    ―――――――――――――
   〔羽仁五郎君登壇、拍手〕
#53
○羽仁五郎君 最初に、只今上程されました三つの法律案について輿論がどういう態度をとつているかということを、その輿論の指摘している点について政府はどう考えておられるのか、その要点を指摘したいと思うのであります。
 これは、本月の六日に、すでに只今上程されたと同じ形をとつている。当時は特別保安法という名前でありましたが、それに対してニツポン・タイムスが社説を以て批判をしております。その中で特に指摘せられているのは、「法は常に明白にして的確であることを要し、広い解釈を許すべきでなく、官吏の判断によつて人民の自由を制限する武器となつてはならない。治安に名をかりていやしくも基本的人権を侵し、政治的活動の自由、又言論の自由などを脅かすことは許されない」と警告し、「何ら有害なる具体的行動はないのに、これを企てているといつてこれを取締ろうとすることは、個人の自由を圧迫する重大な虞れがあり、言論、集会の自由、又民主主義そのものに対する官憲の弾圧の発生する危險を含む」と指摘しております。それから首相又は法務総裁又労働大臣も必ずや注目せられただろうと思うのは、日本新聞協会が本法案に対してその意見を発表しておられます。で、日本新聞協会は「言論の自由にまで干渉する虞れのあるような立法に対しては、そのような立法を必要とする如何なる危險が差追つているかを信頼できる客観的事実によつて立証すべきであるが、政府は未だ曾つて一度として責任ある事実の立証を行わないで、本法律案の提案に至つている。機関紙の刊行停止はまさに一種の検閲制度を構成し、憲法第二十一條第二項の精神に背くものである。」これらの点を特に特筆し、法案の機関紙に関する定義すら掲げていないところから、正常の新聞雑誌の類までも取締官庁の認定によつて停刊その他の災厄を受ける虞れがある。現に特審局の官吏がこの点について、一般の雑誌或いは新聞というものも、場合によつてはこの法律案によつて規定されている機関紙と同じ取扱を受ける場合があるかも知れないということを言明しているという事実を挙げております。かような言論の取締に絶対に触れるものではないと政府が繰返し答弁されておることに対して、言論の責任ある地位にある日本新聞協会がこれらの点を特に横々指摘しておられる。今これを朗読することを省きますが、これらの点について政府は果してどれだけの誠意ある反省をなさつたのか。現在の政府は言論或いは新聞において苦労をされた経験を持つておられないでしよう。すべからく言論や新聞において多年苦労をされて来た人々の意見を十分に聞くべきであります。
 なお法務総裁が先日これらの法案の基本方針なるものを示された中に、「專ら団体組織により国家社会の基本的秩序を破壊する暴力主義的活動の取締に置くことを明確化する」というふうに述べておられる。この国家社会の基本的秩序というような言葉をここで法務総裁が用いておられることは、輿論に重大な不安を與えております。これらはこの法律案の中に記されておる言葉ではありませんが、この法律案を説明せられる法務総裁の言葉に対して世論が非常な危惧の念を抱いておるのであります。
 なお、これらについて、この法律案が恐らくは或いは最近アメリカなどにおいて行われておるような立法上の措置の影響の下になされた関係があるかも知れないのですが、これについては、御承知のように、最近、昨年の十一月に、諸君のよく知つておられるハートランド・ラッセル教授が、アメリカにおいて現在民主主義の原則が一つ一つ打ち崩されて、アメリカに警察国家が発生しつつあるという事実を指摘しております。これは、或いは現在の政府は、アメリカのなすことは即ち民主主義の本家のなすことだというように考えておられるかも知れないが、決してそうでないという点において特に反省される必要があるのだと思います。
 以上のような世論或いは学者の批判を参考にしながら、我々がこの法律案を読んで第一に感ずる点は、そしてこれは特に首相に対してその所見を質さなければならないと思うのでありますが、この破壊活動防止法案その他の三法案というものは、如何にも人を縛つて飯を食つて来た人間のこしらえた法律案であります。いわゆる、はつきりした言葉を使うならば、不浄役人のこしらえた法律案である。(「然り」「その通り」と呼ぶ者あり)もつと穏やかに言うとしても、要するに官僚が絶対的な権力を握ろうとする陰謀によつてできた法律案であります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)私は、吉田首相が、そして又自由党の諸君が、このような人を縛ることによつて飯を食つているような人間、不浄役人の手に成つたような法律案を、御自分の手で国会に提出し、そしてその通過を希望しておられるのかどうか。これを国民の前にはつきり答えて頂きたい。(「質問の要点を話して」「これが要点だよ」「昔の番太だ」と呼ぶ者あり)私は首相に対して質さなければならないのは、一体、首相は現在民主主義の制度の下において、或いは法務総裁は民主主義を擁護されると言うのだが、そもそも民主主義とは何ぞや。(「知らない」と呼ぶ者あり、笑声)民主主義とは主権在民ということであります。(「その通り」「然り」と呼ぶ者あり)従つて政府の役人は、上は総理大臣から下はおまわりさんに至るまで即ち人民の公僕である。従つて、これらの政府が不当なことをなしたる場合には、国民は当然これに反抗する権利がある。これが民主主義です。(「その通りだ」「命令する権利がある」と呼ぶ者あり)この民主主義の根本を本法律案は覆えそうとしているのであります。それとも首相や法務総裁は、政府の不当に対して国民が反抗する権利はないというふうに言われるのか。若し言われるならば、それはそもそも如何なる理論から民主主義的に立証されるのか。その点を我々は、はつきり伺つておかなければなりません。(「そこが手管だ」「そこを答えるべきだ」と呼ぶ者あり)まだ日本には、およそ抵抗といい反抗というと、悪いことのように思つている人がある。併し、政府が如何なる不当なことをやつても、更にそれに抵抗せず、これに反抗しないで、黙々として随いて来るという国民ほど恐るべき国民はありません。(「その通り」「国を滅ぼしたじやないか」と呼ぶ者あり)これは特審局にはそういう国民が健全なる国民と見えるかも知れない。又現在の労働大臣には、そういう労働組合が健全なる労働組合と見えるかも知れない。(「そうなんだ」と呼ぶ者あり)併し、これは先に同僚議員からも指摘せられたように、大政翼賛会或いは(「産報」と呼ぶ者あり)産報、それらのものがまさにそういうものであつたのです。首相や法務総裁は、日本国民が政府の如何なる不当な行為に対しても何ら抵抗せず、何ら反抗せず、奴隷のごとくに従つて来るということを希望しておられるのか。若し然りとするならば、国民の抵抗権というものを果して確認されているのか。若しそれを確認しておられるとするならば、かくのごとき法律案は本日只今直ちに撤回せられなければならない。(「そうだ」と呼ぶ者あり)去る十二日並びに明日行われようとしておるところの争議に対しても、政府は或いは、これは労働組合法の保障しておる正当なる経済的要求に基く争議ではない、いわゆる不当な意味における政治的ストライキだというようなことを言つておる。これは特に法務総裁及び労働大臣のはつきりした答弁を伺つておきたいのでありますが、そもそも労働組合が経済的要求を貫徹する手段としては一体何があるのでありますか。言うまでもなくそれは団結権ではありませんか。結社権ではありませんか。その経済的要求を貫徹する手段たる団結権を脅かし、結社権を脅かす法律案に対して行われる争議は、即ち経済的要求一般を擁護しようとする争議でなくて何でありますか。(「その通り」「生存権」と呼ぶ者あり)これをいわゆる労働法によつて保障されているところの正当なる争議権でないと断定するならば、団結権のないところに如何にして労働組合は経済的要求を貫徹し得るか。結社権を危くされてどうして経済的要求を貫徹し得るのか。その論理が成り立つならば(「憲法を忘れたのだ」と呼ぶ者あり)これは伺わなければならないと思うのであります。(「元も子もなくしてから何言つたつて駄目なんだ」と呼ぶ者あり)労働大臣或いは法務総裁は、労働組合が経済的要求を以て活動するための不可決の基礎たる、且つ前提たる団結権そのものを守るためにストライキを行うところの権利を否定することができると思つておられるのであるか。この点を伺つておきたいのであります。
 第二に伺つておきたいのは、すでに同僚伊藤議員から取上げられた問題でありますが、法務総裁は伊藤議員の質問に対してお答えになつていない。問題は、そもそも何故に現在の刑法によつては団体を取締り処罰することができないかということにあります。これは、今の刑法を作つた人たち、或いは国際刑法学者、或いは世界の刑法の立法者が、いずれもよほどの「まぬけ」であつたのでしようか。団体を取締るということは必要だということに気が付かなかつたのでありましようか。近代の法の観念では、犯罪というものの責任は個人にある、これが原則であります。法務総裁はそこに団体を取締ることのできない空白があるというように言われているのだが、それは断じて空白ではない。そこに立ち入るならば近代の民主主義の法の原則は覆えされてしまう。刑法を補うということが果して法務総裁の法律家として良心に訴えてかるがるしく言われることでありましようか。(「そんな良心はないよ」と呼ぶ者あり)御承知のように封建時代には、或いは連坐制、佐倉宗五郎が悪ければその女房や子供まで殺されるというようなこともあつた。又団体そのものが迫害されるということもあつた。併しながら、そうした封建的な観念から、我々の先輩従つて法務総裁の先輩もなみなみならない苦心をして、今日、刑法上において個人の責任という原則を確立して来たのである。それを今法務総裁は法律家としての良心に恥ずることなく覆えされようとしているのであるか。如何にもアメリカ或いはその他の国々において最近さような立法をなしているものがあります。併しながら、これに対してアメリカの最高裁判所が最近に行なつた判決において何と言つているか。すでに法廷はたび重ねて、犯罪を団体に負わせようとするあらゆる努力というものを退けて来たのである。そうして英米法の伝統においては、罪というものはパーソナル・マター、個人の問題であるということを繰返して明らかにして来たのである。「我々にとつて罪というものは、インデイヴイデュデル・アンド・パーソナル、個人的のものである。」こう最高裁判所は最近一九四六年の判決において明瞭に述べているのであります。而もその際マーフイ判事は、なかんずくこの点を明らかに指摘して、犯罪というものは個人的のものであるということは我々の法律学の根本的原則の一つであるということを言つています。そうして、これを取去ろう、これを覆えそうとすることは、近代の法及び自由の観念の本質そのものを覆えすものであると断言しておられる。(「世界に笑われないようにせいよ」「日本だけで御座なく候」と呼ぶ者あり)こういう点について法務総裁は、法律家としての良心に基いてどうお考えになつているか。(「知らんのだ」と呼ぶ者あり)如何にも、敗戦後いわゆる団体等規正令というものによつて団体に対して処置がとられたことがある。併しながらこれは決して常時の立法ではありません。法務総裁もよく御承知のように、これは特に非常な状態においてとられた措置である。この非常な状態においてとられた暫定的の処置に過ぎないものの観念が、今立派な平常な状態における立法の中に入つて来ることは、この国会が存続する限り断じて許さるべきものじやありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)この犯罪の責任が個人にあるということは意外に重大な意味を持つているのであつて、例えば先にニュールンベルグ及び東京で行われた国際軍事法廷においても、この平和に対する罪、戦争犯罪及び人道に対する罪というものは、窮極においてその個人の責任を問うているのであつて、決してその団体、即ちその国に対する措置をとつているのじやありません。併しながら、若し現在日本の政府が、団体そのものが取締乃至刑罰の対象となり得るのだという理論をここに確立されるならば、(「そう断言するよ」と呼ぶ者あり)次の戰争裁判においても、若しも万一……そういうことは決してないと思うけれども、併し現在の内閣などが或いは誤まつて日本を再び戦争犯罪に陷れた場合には、今政府が提案されておるこの理論に基いて、日本は再び侵略戦争を繰返した、従つてその個人の責任を追及するのみならず、日本の国家そのものを解散する、或いはその国家活動を六カ月間に限つて停止する、(「よせよ」と呼ぶ者あり)こういう措置をとられても、現在の法務総裁はこれに抗弁する余地がなかろうと思う。(「ないね」「そうだそうだ」「日本人解散か」と呼ぶ者あり)団体をつかまえて牢屋に入れるということはできないのですよ。おできになつたらやつて御覧になつたらいい。労働組合をつかまえて牢屋に入れるということはできない。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)牢屋に入れることができればおやりになるのじやないかと思う。さすがに今の絶対多数自由党内閣でも、団体をつかまえて牢屋に入れるということはできない。団体が犯罪行為をなすことはできないということは明瞭です。明々白々たる事実です。それを捕えて牢屋に入れることはできない。入れることができたら入れたいのでしよう。それを、牢屋に入れることができないからといつて、牢屋に入れるにひとしい解散、或いはその団体的な政治活動その他の機関紙の発行その他を剥奪するということは、これは、わかりやすく言えば、団体を牢屋に入れるということです。こういうことが法務総裁は果してあなたの法的良心に基いてできるとお考えになつているか。
 最後に、首相、法務総裁に伺つておかなければならないのは、治安維持法というものは、その濫用の虞れがあつたために濫用されたのじやないのです。必ず濫用せらるべき理由があつて濫用せられたのです。今日の破壊活動防止法案並びにその他の三法案というものは、政府は如何にも、これらが正当なる労働組合の活動を制限するとか、或いは言論、集会、結社の自由を制限するとか、或いはまさか政府は自己の政党である自由党の活動をも将来制限するものになるかということは露さら思つてないでしよう。併しながらここにあるのは濫用の虞れではない。必ず濫用されるという事実であります。何故にこれは然らば必ず濫用されるかと言えば、濫用を防ぐあらゆる法的な保障をみずから取去つているからであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)その第一のものは、言うまでもなく、同僚議員からも指摘せられた、その法の対象となる活動の明白にして的確なる規定がなければならない。その法が擁護すべき法益は一体何なのか、この法律案からは絶対に明確にはなりません。これがその第一点です。(「明白」と呼ぶ者あり)これが明白だと思つている人の頭脳がよほど怪しい。第二に、近代の法が飽くまでその濫用を防ぐ保障として打ち立てて来たところの保障は、あらゆる問題について危険が眼前に迫つておるというときにのみ法はこれに対して取締の活動をすることができる。危険が眼前に迫つているということが條件です。併しながら、一体どこに我々の眼前に、この法律を以て取締らなければならないような危険が眼前に迫つておるのでありますか。特審局長が自由党の秘密会において述べた情報なるものも、いわゆる情報屋の情報のごときものだと自由党の党員諸君からの批評があつたじやありませんか。現在、不幸にして日本には、依然として情報で飯を食つている人間があるのです。いわんやそれが公務員の中にさえあるのではないかと疑われる。この眼前に危険が迫つておるということがなければ、法の取締ということはできないというのが第二の保障である。これをも取つぱらつてしまつておる。そうして、最後に最も重大な点は、すでに同僚議員からも指摘せられたが、実に三権分立を取つぱらつてしもうということです。この三つの保障があつて初めて法は濫用されないことができるのです。この三つの保障を取つぱらつてしまえば、法は必ず濫用されるのです。公正なる活動と公正ならざる活動とを政府がみずから判断し、官吏がみずから判断するというような法律が、濫用されないということがあり得ましようか。(「その通り」と呼ぶ者あり)治安維持法もこのようにして濫用されたのであり、本法律案も、若し諸君がこれを国会を通過されるならば、必ず濫用されるのである。濫用の虞れがあるのではない、必ず濫用されるのだということを、私はここに断言しておくが、法務総裁はそうでないという反証を挙げ得るか。「挙げ得ない」と呼ぶ者あり)
 現在の政府は、現在の與党は、永久に政府與党たることはできないのです。諸君はこの法律が反対党の手に移つた場合に如何に作用するかを考えたことがありますか。
#54
○副議長(三木治朗君) 時間が大分過ぎておりますから……。
#55
○羽仁五郎君(続) 私は、法務総裁は單に眼前の問題にとらわるべきではありません。政府がやりたいことを法律にするという考えは不浄役人の考え方です。(「その通り」「その親玉だ」と呼ぶ者あり)民主主義においては人民主権である。このことを忘れて民主主義を語ることは許されない偽善であります。(「僣越だよ」と呼ぶ者あり)政府の人権擁護局の報告をお聞きになつても、法務総裁はよくおわかりのように、最近の一カ年間の経験をとつて、人権の蹂躪はおよそ千三百件、いいですか、千三百件ですよ。その中の千五十何件というものは公務員が人民の人権を蹂躪している事実です。(「その通り」と呼ぶ者あり)このような公務員、このような日本の不淨役人的官僚、この手の中にこの法律案を法務総裁は渡すことができるとお考えになつていますか。又自由党の内部においても、賢明なる諸君は、このような専制主義的な官僚の手の中にこうした法律案を渡すことは如何に危険であるかを反省せらるべきであります。
#56
○副議長(三木治朗君) 七分以上過ぎておりますから……。
#57
○羽仁五郎君(続) 政府は、特に総理大臣は、このような不浄役人の手に成るような法律案を国会に提出することなく、すでに同僚議員も指摘せられたように、暴力行動が発生するその根源を断つべきであります。即ち、政府は速かに社会保障を実現すべきである。働きたくても働く職場のないような人がないように努力すべきであります。これは、今年の三月十五日の東京新聞も、この点を痛烈に指摘している。(「結論を出して」と呼ぶ者あり)検閲制度を復活させ、警察国家を復活させる必然的な内容を持つ法律案を、政府は潔く撤回して、就業の機会を保障し、社会保障を実現して、国民が万策盡きて暴力行動に移るような原因を除去すべきであります。これこそ、堂々たる政党、堂々たる政治家のとるべき唯一の途である。これらの点について、総理及び法務総裁並びに労働大臣は、果して私の言うことが間違つておるということを如何なる点において立証なさることができるか。明確な答弁を伺いたいのであります。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#58
○国務大臣(木村篤太郎君) 羽仁君にお答えいたします。
 羽仁君は、この民主主義は主権在民ということを仰せになりましたが、誠に御尤もであります。私はその点は否定いたしません。併し、民主主義政治において最も必要なることはこれは暴力の否定であります。互いに納得ずくで、議論でこれをやることが、これが民主主義の政治において最も必要なことであろうと思います。この暴力を以て自己の政治的主張を貫徹しようとすることは、これは民主主義に違反するものであります。さようなものは断じて許すことはできないと私は考えております。而して、この法案に盛つたところによりますると、これは最も悪質な犯罪を明確に規定しておるのであります。内乱はこれはいいでしようか。騒擾がいいでしようか。殺人がいいでしようか。汽車の顛覆がいいのですか。かようなものを放置したならばどうでしようか。暴力的に団体行動としてかようなことを行うものは、いかんというのであります。それで、(「刑法があるよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)かようなことを目的とする団体規制するのが、この法の目的であります。そこで、そういうことを目的とする、或いはこれを行い、行わんとする団体を規制して行くのが本法案の趣旨であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは、そういうことを現実にやつた個人は無論刑法で罰せられます。併しながら、そういうことを行わしめることを目的とした団体は、これは刑法で処刑することはできません、かるが故にこれを行政措置を以て解散させるのであります。それが本法案の趣旨であります。(拍手)その行政措置をするについても、本法案については極めて民主的にこれを按排したということは、先ほど来申した通りであります。決して本法案は民主主義に反した法案でないと私は確信しておるのであります。而して羽仁君は、この法案の目的とする法益は何であるかと、こう仰せになります。これは公共の福祉であります。(「公共とは何だ」と呼ぶ者あり)国家の安全を守るということが本法案の趣旨であります。国家の安全を守ることが即ちこの法案の趣旨であつて、公共の福祉ということがこの法案の目的であります。(拍手)
   〔国務大臣吉武惠市君登壇、拍手〕
#59
○国務大臣(吉武惠市君) お答えいたします。
 今回のごときストは政治ストというが、これは合法であるかという意味のお尋ねでございましたが、御承知のごとく争議権は労働者の労働條件の維持向上のために許されておるのであります。(「そんなことは憲法に書いてないぞ」と呼ぶ者あり)法律や政府の施策に対して争議権を認めておる国はどこにもございません。(拍手、「労働大臣やめろ」と呼ぶ者あり)
#60
○副議長(三木治朗君) 総理大臣の答弁は保留されました。堀眞琴君。
    ―――――――――――――
   〔堀眞琴君登壇、拍手〕
#61
○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして、只今上程に相成つておりまするところの破壊活動防止法案につきまして、総理並びに木村法務総裁に所見を質したいと思うのであります。
 同僚議員諸君がこれまで縷々質問を展開されたのであります。併しながら、それに対する木村法務総裁並びに吉武労働大臣の答弁は極めて簡単、而もその内容を殆んど衝いておらないのであります。例えば伊藤君の質問に対しまして木村法務総裁は、刑法その他の法律によつてすでに破壊活動は十分に取締られておるはずである、何ら本法案のごとき法律を必要とする理由はないという質問に対しまして、暴力行為を取締るのである、団体をその面から規制するのであるというだけの答弁であります。只今の羽仁君の質問に対しましても同様であります。民主主義は暴力を否定する、併し羽仁君の一番聞かれた点は、国民の抵抗権というものが果して民主主義の上において否定されるかというところにあつたと思うのでありまするが、これに対しましては何ら答えておらない。(「言えないのだ」と呼ぶ者あり)御承知のように、ジョン・ロツクが初めて国民の抵抗権を民主主義を維持する第一の原則として掲げ、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)これが人権宣言の中に流れ、更にアメリカのヴァージニア憲法その他の州憲法に取入れられ、権利宣言となつて現われておることは、皆さんもすでに御承知だ。(「自由党は知らない」と呼ぶ者あり)民主主義を維持する第一の原則は、不当なる政府に対して、不当なる権力を行うものに対して国民が抵抗することである。諸君は、抵抗すると言えば暴力だ、今木村法務総裁は、汽車が顛覆することはいいことでありますか、或いは殺人はいいことでありますかというようなことを言つておる。木村法務総裁は、国民の抵抗権と、それから汽車が顛覆したり或いは又人を殺したりする、そういうことと同じように考えておる。認識不足も私は甚だしいと思う。(「十二才だ」と呼ぶ者あり)もう少し政治思想史の一頁を開いて勉強なさるがいいと思う。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)それから吉武労働大臣は帰られたようでありますが、今政治ストの話をされておる。経済的な條件の改善を行うことが労働者のストライキの法律上保護されておるゆえんである、若しそれを逸脱するならば、これは労働法上の保護をこれに対して與えることはできないのだということであります。羽仁君が質問したのはそういうことではない。労働條件を守るために法案に対して反対することは、同時にそれが労働者の労働條件の保護になるのではないかということなのであります。ところがこれに対して労働大臣は軍に政治ストだと言われる。皆さんはアメリカで、戰争後、タフト・ハートレー法に対して労働組合が立ち上つてストライキをやつたことを御存じだろうと思う。(「知らないだろう」と呼ぶ者あり)又海員組合が当時のトルーマン大統領の労働政策に対して反対して立ち上つたことも御存じだろうと思う。(「知らんのだよ」と呼ぶ者あり)諸君が若し知らないというならば、これ又諸君は労働政策に対して極めて怠慢であると申さなければならんと思う。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)我々はこのような不十分な答弁では到底納得することができないのであります。私は以下数点について政府に質問いたしたいと思う。
 先ず第一に、刑法その他暴力活動取締に関する諸法律等があるが、特に何のために本法案を提出したか。これは伊藤君によつて質問された問題であります。法務総裁の答弁では、「団体活動に関するところの規定がこれまでにない、つまり真空状態になつている。そのために団体の活動を規制する必要が起つて来る。これが本法案の必要とされる理由である。」こういう工合に説明されておる。
   〔副議長退席、議長着席〕
 併しながら、果して木村法務総裁の言うがごとくに、団体活動そのものを我々は犯罪責任者として問うことができるか。これは伊藤君によつて質問され、又羽仁君によつても質問されたのでありまするが、そういう点が第一の問題となり、更にそれに引続いて、すでに刑法において内乱罪、騒擾罪、その犯罪に対するところの教唆とか、予備とか、陰謀であるとかいうようなものについての十分な取締規定がある。その取締規定の上に果して特例法を設ける理由がどこにあるかということを、もう一度重ねてお尋ねしたいと思う。
 第二点は、これも伊藤君によつて若干触れられた問題でありまするが、本法案によりまするというと、行政機関によるところの行政処分を以て七年以下の禁錮の刑に処するという罰則を規定しておる。これは司法権の侵害ではないか。日本の憲法は三権分立の原則に立つております。立法は国会、行政は内閣総理大臣、そうして司法は裁判所がこれを行うということが、憲法の建前になつておる。(「委員会でやれ」と呼ぶ者あり)これは言うまでもなく、国民の基本的な権利、自由を保障するための制度的な保障であります。ところが、本法案によりまするというと、行政機関の行政処分によつて、而も七年以下の禁錮というような罰則をそこに設けることができることになつておる。これは本来ならば司法裁判所が行うべきところを、行政機関の都合で以て行政的な処分によつて犯罪を罰するということになるのでありまして、基本的人権を侵害するばかりでなくて、三権分立の原則を紊すものだと申さなければならん。(「結論々々」と呼ぶ者あり)この点について法務総裁並びに総理の明確な回答を求めたいと思う。
 各議員によつて、治安維持法の問題と比較して本法案についての御質問があつたのでありまするが、治安維持法も本法案も、刑法に対するところの特例法であるということにおいては共通したものである。特に治安維持法は、時の政治勢力に左右されまして、非常な我々が今日考えてもぞつとするような結果をもたらしていることは、皆さん御承知の通りであります。あの治安維持法の規定を見まするというと、初めは国体の変革又は私有財産制度の否認を目的としたところの結社を禁止するということになつており、而もその刑も十年以下の懲役ということになつておつたのでありまするすが、その後、昭和十三年、十六年と数度の改正を見まして、処罰の対象であるところの違法行為も次第に拡張されまして、果ては單に国体の変革や或いは私有財産制度の否認を目的とするところの結社並びにそれに対するところの教唆その他の諸行為ばかりでなく、もつと広い内容のものとなり、遂には自由主義思想を持つ者すらその対象として処罰される、その処罰の罰も遂には死刑となり、無期懲役となり、このような拡大された法律となりまして、我々国民の基本的な権利を頭から侵害してしまつたことは御承知の通りであります。而もその救済の方法を見まするというと、違反事件については控訴を認めておりません。単に二審制度であります。弁護人の数も制限をされております。又刑期満了後におきましても予防拘禁制度すら行われました。世界の刑事法上稀に見るところの弾圧法規だと言われておつたのであります。勿論その時の情勢と今日の情勢とは違うでありましよう。従つて治安維持法に盛られた法文の字句も、今日の破壊活動防止法案と比べまするならば、そこに若干の差異が認められるかも知れません。併しながら、何人が治安維持法が辿つた運命をこの破壊活動防止法案が辿らないと保障することができるでありましようか。(「そうだそうだ、それが一番危険なんだ」と呼ぶ者あり)この点について木村法務総裁の説明をお聞きしたいと思います。
 次に内容の問題につきまして一二の点をお伺いしたいのでありますが、破壊活動の定義、その範囲が極めて抽象的であり、明確を欠いております。而もすでに同僚各議員によつて質問されたように、その内容は拡大されて解釈されるところの危険を多分に含んでいるのであります。而も我々が見て驚くべきことは、例えば教唆、破壊活動について教唆ということが犯罪の対象となつて規定されている。従来は適例正犯がなければ成立しないところの教唆について、本法案では教唆そのものがすでに犯罪の対象となつて罰せられるということになつているのであります。煽動その他についても同様に我々は拡張解釈の危険を多分に見ることができるのでありまして、この点から申しましても、この定義、その範囲が極めて明確を欠くということは、我々の基本的人権を侵害する点において極めて重大なる結果を招くものと考えなければならんと思う。而もその認定機関、この問題についても同僚議員がすでに質問したところでありまする、木村法務総裁のさつきの答弁によりまするというと、「公安調査庁、つまり審査機関としての公安調査庁と、それが決定を行うところの公安審査委員会とが、それぞれ別個の機関であり、而もその決定に対して訴えを提起することは認めているのだからして、極めて民主主義的な方法であり、而も公安審査委員会の中には労働組合の代表者をも参加せしめることになつておるのだ、こんな民主主義的な機構はないではないか」という答弁なのであります。成るほど形は一応民主的のようでありましよう。併し伊藤君がすでに質問されたように、検察的な機能を持つところの公安調査庁、これに対して決定を與えるところの公安審査委員会というものが同一法務総裁の所管の下に立つているのであります。従つて、その人事は勿論のこと、その活動そのものについても政治的に極めて左右されるであろうということは想像にかたくないのであります。この点から申しまして、果して公正なる認定ができるかということが問題にならざるを得ないのであります。この点についての政府の答弁を求めるものであります。
 それから、この法案の濫用防止に対する保障がどこにあるか。第二條に「憲法の保障する」云々ということが規定されてある。或いは団体規制の條件を厳格に規定しているとか、或いはこれらの條件についてはすべて証拠を以て立証しなければならんとか、特に労働組合の活動についてはこれを制限したり或いは阻止するものではないというようなことを挙げて、政府のほうでは十分これによつて保障することができるということを答弁しております。併しながら、認定機関、判定機関が、すでに先に述べたように時の政府によつて自由に動かされるばかりでなく、而もなお我々の重要視しなければならんのは、行政訴訟によるところの救済が極めて形式的であり実効を持たないということであります。即ち行政処分の効力は公安審査委員会の決定が公示されたときから発生いたします。これに対しまして処分の取消を要求することができる。併し処分の取消を要求するといたしましても、裁判所におけるところの判決が確定するまではその処分の効力は少しも解除されないのであります。成るほど裁判所は「受理した日から百日以内にその裁判をするようにつとめなければならない」ということはこの法案の條文の中に謳つてあります。併しこれも伊藤議員によつて取上げられたのでありますが、行政事件訴訟特例法の規定によりますというと、行政訴訟は、内閣総理大臣が異議を申立てたとき、或いは裁判所が公共の利益に反すると認めたときは処分を停止しなくてもよい、又訴の請求を棄却してもよいということになつているのであります。そうしますというと、果して行政訴訟によつて救済を求めるということが可能であろうかということが問題になると思うのであります。この点に関して首相並びに木村法務総裁の御答弁を煩わしたいと思うのであります。
 なお、この法案は特定少数の破壊的な活動を取締るというために出されたものでありましようが、併し取締に急なるの余り、憲法に保障されたところの基本的人権、特に言論、集会、結社の自由、労働者の団結権、団体行動権を抑圧するものであるということは、以上の説明によつて十分我々はこれを見ることができると思う。曾つての治安維持法が辿つたと全く同じ運命を恐らく迫るものであろうと思う。言うまでもなく民主政治の基礎というものは、自由なるところの言論活動、政治活動、団体活動等によつて、初めてこれを達成することができるのであります。羽仁君は冒頭に、この法案に対する世論の反対が如何に厳しいかを引用されている。民主政治は又世論政治と言われる。世論の動向を政治の上に反映してこそ初めて民主政治の円満なる連行ができるのであります。ところが、この世論を無視して果して円満なるところの民主政治が行われるのでありましようか。明日に迫るところのストの第二波は、労働大衆の本法案に対するところの強烈な反対を表明したものにほかなりません。若しこれを抑圧するならば、これこそ民主政治の抑圧だと申さなければならんのであります。私はその意味におきまして本法案ほど反動的な反民主的な法案はないと考える。政府は、むしろこの際、これを進んで撤回すべきではないかということを申上げまして、私の質問演説を終ることにいたします。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#62
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。(「労働大臣どうした」と呼ぶ者あり)
 只今堀君の御質疑の要点は、国民のこのいわゆる抵抗権の抑圧じやないかというような御説のように承わつたのでありますが、一体、国民の抵抗権と申しましても、それには限度があるのであります。これは言論とか出版とかその他の方法を以て抵抗することは、これは私は望ましいことであろうと考えております。いやしくもその抵抗権の行使が暴力によつてやるということに立ち至つては、民主政治の私は破壊だと考えております。(「その通り」と呼ぶ者あり)そこで本法案においては、かようなことであつてはならん、暴力による抵抗は、これは民主政治においては許すべからざるものであるという建前からできているのであります。くれぐれもこの暴力の否定が、(「警官の暴力はいいのか」と呼ぶ者あり)いわゆる民主主義の政治に私はふさわしいものと考えているのであります。
 次にこの教唆煽動の点でありまするが、これは御承知の通り各種の法案においても、先ほども申しました通り、公職選挙法にもあるのであります、教唆煽動ということは……。本法案においてこの行為を取入れたというのは、要するに、内乱とか騒擾とか、そういうような重大な行為を教唆するとか煽動するということは、これは許すことができない、その立場から教唆煽動をこの法案に盛り上げたのであります。
 それから、次に堀君は、行政処分によつて刑罰を科することは不当ではないか、こういうことでありますが、行政処分によつて決して刑罰を科しておるのではありません、この法案は……。それは捜査その他の処置は行政官吏がやるのでありまするが、刑罰を行政処置によつてやるわけじやないのであります。これは堀君の思い違いだと考えております。(「自由を制限しておるじやないか」と呼ぶ者あり)
 それから公安審査委員会の制度でありまするが、これを法務総裁の管轄の下に置くのは不都合じやないか、こういう御議論でありますが、これは公安審査委員会設置法第三條によりまして、この公安審査委員なるものは独立してその職務を行うという建前をとつておるのであります。いわゆる法務総裁の意見なんかを徴することなく、独自の見解においてこれを決定する、こういう建前をとつておりまするから、極めて私は民主的だと考えております。(「その通り」と呼ぶ者あり)而もこの公安審査委員の選任につきましては、先刻来申上げました通り、国会においてその承認を求めて、各方面の有識者をこれに選任したいと、こう考えておりまするので、この法案の運用についていささかの私は危惧の念を抱くものではない、こう考えております。(拍手)
#63
○議長(佐藤尚武君) 内閣総理大臣の答弁は他日に留保されました。須藤五郎君。
    ―――――――――――――
   〔須藤五郎君登壇、拍手〕
#64
○須藤五郎君 私は日本共産党を代表して、本日政府より提案された砂壌活動防止法案並びに関係諸法案に対し若干政府の所信を質したいと思います。
 先にサンフランシスコにおいて吉田全権以下が、講和、安保両條約に調印してから後、先ず第一に日本国民に強制し、両條約の本質を余すところなくさらけ出したものは、日本の主権をアメリカに献上する日米行政協定でありました。(「何を言つておるか」と呼ぶ者あり)そうして講和條約の発効を目前に控えた今日、自由党政府が日本国民に與える、自由党のいわゆる独立の第一の贈物がこの破壊活動防止法案であります。本法案の内容を見れば、如何に吉田内閣が日本国民の言動におびえ、日本国民すべてを敵視し、猜疑の目を以て見ているかが明らかであります。(「共産党」と呼ぶ者あり)政府の言う独立が民族の独立であり、平和が本当の平和であり、日米関係が真に和解と信頼に満ちているならば、何故にかく日本国民の言動に恐れを抱くのであるか。それは、政府の政策がすべて国民の利益とは反対の方向に推し進められ、真の自由と独立と平和とは何らの関係もないことを企らんでいるからにほかならないと思うのであります。このことは両條約締結後の日本の現実を見れば明らかであります。日本の教育は、アメリカ資本主義を礼讃させ、日本の青年を再び戦争に駆り立てるために、再軍備、総動員の下準備として天野式教育勅語を押付けようとしておる。又六三制教育は厖大な軍事費の支出のために破壊に瀕しているのであります。国土は挙げてアメリカ軍隊及び予備隊の衣を着た日本軍隊に提供され、農漁民はその生活の基礎を一片の命令によつて奪われているのが現状であります。日本の産業はどうか。日米経済協力は日本の産業をアメリカの軍需下請に堕落させ、中国、ソ同盟との通商の遮断は、繊維産業の四割操短に見られるような平和産業の破壊と沈滞を起させているのであります。貿易の拡大による各国の繁栄と、社会主義、資本主義の二つの体制の平和的共存のために開催された国際経済会議には、世界で日本のみが旅券の交付を禁止して世界に恥をさらしたのであります。このように日本の教育と文化を破壊し、国土と産業を破壊し、労働者、農民その他あらゆる国民の生活を破壊しているのは、御主人に操を売つた自由党吉田内閣ではないか。更に言論、集会、結社、思想の自由を踏みにじり、基本的人権を破壊しているのは誰か。行政協定が最もよく現わしているように、日本の主権を売渡し、日本全土を軍事基地そのものにして、独立と平和を破壊した者は誰か。このようにして自由と独立と平和を破壊しているのは吉田内閣自身ではないか。我々は日本の国民を代表して、真の破壊は吉田内閣自身が行なつていることを指摘するものであります。この重大な破壊活動に反対して日本国民は今や闘いを開始し、この闘いは広汎な民族的運動に発展しつつあるのであります。文化の面においては、天野式教育を排除し、民主的な教育の確立のため、学者、教職員が一堂に集まり、活動を推し進めている。又軍国主義に反対する日本教職員組合は、良心的業者と共に戦争おもちやの排撃運動を開始している。学問の自由を破壊する特高的思想調査に対して、大学教授、学生が一体となつて團つている。又横須賀においては植民地的歌謡の見本のようなタマラン節に対して抗議運動が巻き起つております。不当な土地取上げ、漁場の取上げに対しては、農漁民は命を賭して闘つており、横浜、神戸、佐世保等の港湾の接収解除運動は全市民と共に市長をも立ち上らせている。中ソとの貿易が日本の繁栄の根本であることを知つているのは労働者のみではない。資本家の人たちも同様である。だからこそ、政府の不当な妨害にもかかわらず、緑風会の高良女史がモスクワに姿を現わしたゆえんではないか。現に心ある日本の財界人は、吉田内閣打倒が一日遅れることはそれだけ日本の損失だとし、いつ総選挙が行われるかに重大な関心を示している。(拍手)更に労働者は低賃金と労働強化に反対し、農民は不当な供出と税金に反対し、インテリゲンチアは民族文化の確立のために植民地文化に反対しているのであります。広汎な国民各層が、今やこれらすべてのことは、国際独占資本家がアジア征服のために日本を利用する戦争政策に原因し、支配者の日本に対する賞讃と笑顔は実は悪魔の笑い顔にほかならないことを知り始めておる。そうして、吉田内閣はその操り人形であり、御主人の言葉を翻訳し、日本国民を欺くために修正する代書人であり、この戦争政策、植民地化政策に反対する人民に噛みつく番犬であることを知り始めておる。だからこそ吉田内閣は今回破防法を提出したのであります。
 若しもこの法案が成立したならば、どのようなことになるか。例えば第三條によれば、一枚の新聞を持つていただけでも、一冊の本を持つていただけでも、ちよつとした集会をしただけでも逮捕されるのである。又労働組合の活動も、騒擾の名の下に弾圧することが自由であると思うがどうか。この第二條第二項にいわゆる「労働組合その他の団体の正当な活動」とはどういう活動を意味するのか。自由党の認定する正当な労働組合活動とは、曾つての産業報国会的活動を意味するものと思うが、今日の労働者はフアシズムの支配に甘んずるものではない。現に明十八日行われんとしておる労鬪傘下数百万の労働者の抗議ストライキ、抗議集会に対して、如何なる態度で臨もうとするのか。如何に政府がこれは暴力団体或いは共産党のみと言うとも、国民は過去の経験を通じてその真実を知つております。尊い犠牲を経て心の中に刻み込まれておる。かの戦争遂行のための治安維持法制定のときも同じことが時の政府から言われたのであります。日独伊の侵略政策は防共の名の下に行われたことも歴史が示しておる。このことを日本国民がよく知つているからこそ、政府の弾圧政策と卑劣な懐柔政策の二刀流にもかかわらず、労働者階級は、国家の独立と人権を守るため、総評、中立、産別系の別なく、国民の先頭に立つて実力行使に入つているのであります。これはひとり労働階級のみではありません。日本新聞協会も、弁護士会も、自由人権協会も、キリスト教婦人団体などの有力団体すべてが反対声明を発表し、抗議しております。学者、評論家は、再び東條時代を再現させないために身を賭して堂々と反対の論陣を張つているのであります。現に、自由党以外の政党は、すべてこれに対し反対乃至批判的態度をとつているし、自由党内部においてすら良心的な声が起り、ために法案の提出が遅れたと言われているのであります。
 言論、出版、結社、思想の自由を暴力によつて取締ることは不可能であることは、歴史の経験が明らかに示している通りであります。東條、ヒットラーの暴力が一体長続きしたでありましようか。而も歴史に逆行してあえてこの法案を提案した真意はいずこにあるか。吉田内閣のごとき日本国民を裏切る勢力が独立と平和と繁栄の敵であり、日本の愛国的勢力、平和的勢力の目標が正しい以上、必ず破防法を作る勢力が打倒されることは明らかであります。東條が犯した犯罪は大きいけれども、吉田内閣は二重の犯罪を犯しているが故に更に大きいのであります。それは、吉田内閣が、これを日本のためではなく、外国の御主人のために行い、民族を裏切つているからであります。(拍手)、「その通りだ」と呼ぶ者あり)
 日本共産党は、本法案が最初の一字から最後の一字まで全く許し得ざるものであるが故に、この法案の撤回を要求するものであります。(拍手、「答弁の必要なし」「答弁ができないか」「時間があるから再質問をやれ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#65
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今の御質問の要旨は、要するに本法案を政府において撤回する意思があるかどうかということであります。撤回する意思はないということを申上げます。(拍手、「その通りだ」「明日のストライキはどうなるんだ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣吉武惠市君登壇、拍手〕
   〔「まじめに答えなさい」と呼ぶ者あり〕
#66
○国務大臣(吉武惠市君) お答えいたします。
 正当なる組合活動とは、労働組合その他の法令によつて許された範囲の行動であります。今回のストは、しばしば申上げましたごとく違法の政治ストと考えております。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
#67
○議長(佐藤尚武君) 総理大臣の答弁は他日に留保されました。
   〔須藤五郎君発言の許可を求む〕
#68
○議長(佐藤尚武君) 須藤五郎君、何ですか。
#69
○須藤五郎君 再質問です。
#70
○議長(佐藤尚武君) 再質問、よろしうございます。
   〔須藤五郎君登壇〕
#71
○須藤五郎君 私は今、吉武労相に対して、あすの十八日のストライキについて違法であるかどうかということを伺つたのではありません。その行動に対して、政府はどういう行動を以て臨もうとするのか、その態度をはつきり明確にしろということを求めたのであります。それに対して吉武労相は何ら答弁をしていない。重大な問題であるから、明日のストライキに対してどういう態度で臨むか、ここに明確にしておいて頂きたいと思います。
   〔国務大臣吉武惠市君登壇〕
#72
○国務大臣(吉武惠市君) お答えいたします。明日のストライキは正常なる労働組合のなすべき措置ではないと存じまするので、再三再四、最後まで、その自重を要望するつもりであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
#73
○議長(佐藤尚武君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後七時十七分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、公務員の給與改訂及び人事院の機構改革に関する緊急質問
 一、日程第一 住民登録法施行法案
 一、日程第二 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案
 一、日程第三 町村職員恩給組合法案
 一、日程第四 在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案
 一、日程第五 千九百四十六年十二月十一日にレーク・サクセスで署名された議定書によつて改正された麻薬の製造制限及び分配取締に関する千九百三十一年七月十三日の條約の範囲外の薬品を国際統制の下におく議定書への加入について承認を求めるの件
 一、破壊活動防止法案、公安調査庁設置法案及び公安審査委員会設置法案の提案理由の説明
ソース: 国立国会図書館
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