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1951/05/12 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第38号
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1951/05/12 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第38号

#1
第013回国会 本会議 第38号
昭和二十七年五月十二日(月曜日)
   午前十一時四十一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第三十七号
  昭和二十七年五月十二日
   午前十時開議
 第一 図書館法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
 第二 麻薬取締法及び大麻取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
 第三 国民健康保險再建整備資金貸付法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第四 貴金属管理法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
 第五 国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
 この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。議席第四十二番、地方選出議員、静岡県選出、石黒忠篤君。
   〔石黒忠篤君起立、拍手〕
     ―――――・―――――
#4
○議長(佐藤尚武君) 議長は、本院規則第三十條により、石黒忠篤君を文部委員に指名いたします。
     ―――――・―――――
#5
○議長(佐藤尚武君) この際お諮りいたします。櫻内辰郎君から病気のため十五日間請暇の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#7
○議長(佐藤尚武君) この際お諮りいたします。法務委員長から、検察及び裁判の運営等に関する実地調査のため、愛知県に、伊藤修君、中山福藏君を本月十三日より三日間の日程を以て派遣いたしたい旨の要求書が提出されております。委員長要求の通りこれら両名の議員を派遣することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて委員長要求の通り議員を派遣することに決しました。
     ―――――・―――――
   〔成瀬幡治君発言の許可を求む〕
#9
○議長(佐藤尚武君) 成瀬幡治君。
#10
○成瀬幡治君 私はこの際、早大事件と最近における警察の実力行使に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#11
○中村正雄君 只今の成瀬君の動議に賛成いたします。
#12
○議長(佐藤尚武君) 成瀬君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。成瀬幡治君。
   〔成瀬幡治君登壇、拍手〕
#14
○成瀬幡治君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、警官が、如何なる理由があつたにせよ、靜粛に無抵抗であつた学生に向つて棍棒で殴る蹴るの暴行を加えて、天下に警官が暴徒であり日本民衆の敵であるかのごとき印象を與えた最大の不祥事たる早大事件について、木村法務総裁並びに天野文部大臣にお尋ねいたすものであります。
 実は私は事件が報道されました九日早朝現場に出かけまして調査いたしました。その事実に基いてお尋ねをいたすものでございます。八日の夕刻、私服二名が次官通牒を無視して早大構内に入り込み、学生に発見されるや、飴屋であると嘘を言つて身分を隠し、追及されて警官であると泥を吐き、純真な学生の憤激を買つたあげくに、学生代表十名、佐々木教育学部長、滝口学生厚生部長に、警察側、伊藤神楽坂署長、藤原警備主任、警視庁公安二課の岡村主任、山本巡査の計十六名が、三百二号教室で、問題を平穏裡に処理すべく話合いを進めた結果、「手続上に手違いがあつた」の一札を書く、書かせるとの伊藤神楽坂署長の約束によつて、事は円満に解決すると思われましたのに、正門前で午後九時頃から待機しておつた警視庁予備隊二個中隊を指揮している衞藤第四方面本部長が書く必要なしと拒否さしていることが判明しましたので、伊藤署長みずから衞藤本部長と直接話合いをすべく電話のある学生厚生部の部屋へ出かけた直後、即ち解決の寸前に、警視庁予備隊は何を血迷つたのか、靜かに校庭に坐つて折衝結果の発表を待つていた学生に向つて、何の予告もなく、照明彈を合図に一齊に飛びかかり、全く無抵抗の学生を棍棒で叩きつけ、靴で蹴り、重軽傷者数十名を出したのであります。予備隊は鬼のごとく荒れ狂うこと三十分間、血の海と化した校庭に、頭を割られ、気を失い、重傷にうめきつつ、屍のごとく横たわる学生たちを尻目にかけて「捻挫一人、他は異状なし」の人員点呼の報告を残して意気揚々と引揚げて行つたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)最初から最後まで学生は何一つ抵抗しなかつたのでありますが、木村法務総裁にお伺いしたい。
 第一点は、警官の実力行使は必要にして且つ最小限度に行われるべきものと考えますが、早大事件の場合は情勢判断を誤まつた行き過ぎの実力行使とは考えておらないのかどうか。
 第二点、この非常識極まる実力行使の直接命令を出した者は一体誰であるか。その官職と氏名が承わりたい。
 第三点、今回の事件は明らかに警察側の誤まつた行き過ぎの行為であるが、これに対して如何なる処罰を加えるつもりでおるのかどうか。
 第四点、今後、今回のごとき愚かさを繰返さないために、警察側に対して何か今日までに具体的な指示を與えたことがあるか。又今後何らかの指示を與えるつもりであるかどうか。
 第五点、山本、荻野両巡査のメーデー容疑者逮捕の方法は最も拙劣な方法であつたと思うが、総裁はどう考えるか。
 第六点、事件の解決の見通しがつき、空腹と疲労を訴えられた山本巡査を、伊藤署長など警察側の了解を得て、佐々木教育学部長の部屋へ連れて来て、山本巡査に警備主任一名が付き添い、佐々木教授、学生五角で弁当をとつたり看護などしたことは、あの状況下においては山本巡査に対して心ある親切な行いであり、軟禁ではないと考えておるが、どういうふうに考えておるか。
 第七点、戰前、警官の拔劔は重大問題であり、警官の拔劔も又少かつたのでありますが、戰後、警官の民主化のために装備がピストルに棍棒と変りました。最近この棍棒で頭を割られた者、ピストルで殺傷を受けた者が続出という状態でありますが、警官に棍棒とピストルは全く気違いに刃物といつたそのものであります。棍棒とピストルが人民の敵となつておるのでありますが、警察官に、棍棒、ピストルの使用方法について、嚴重なる指示を與える必要があると思うが、総裁はどう思うか。
 最後に、今回の事件は、人民のための警官が逆に人民の生命財産に暴行を加えたものであり、暴力団体の取締の必要を説かれております吉田内閣自身、警察自身が、日本における最大の暴力主義的団体であることを遺憾なく暴露したものと言わざるを得ないのであります、(「その通り」と呼ぶ者あり)これで一体いいのかどうか。今後警察官の民主化と人民のための警察行政について、根本的施策を如何にする考えでいるのかどうか。以上明確なる答弁を木村法務総裁にお願いいたします。
 次に天野文部大臣にお尋ねいたすのでありますが、最近学生と警官の対立が敏感になつておりますが、東大事件で明らかになつたことは、警官の手帳に自由主義者の教授についての調査事項が記入されてあつたり、一部学生の尾行が記入されていることであります。これは時代への逆行であり、明らかに基本的人権を侵す暗黒時代の再出現というほかはありませんが、学問の自由、研究の自由、思想の自由が侵されつつあると文相は考えていないのかどうか。文相はこの基本的人権が過去において如何なる形で圧迫されて行つたかということはよく御存じのはずだと思います。如何なる決意と方法によつて、学問、思想、研究の自由を守ろうとしているのかどうか。又次官通牒のみで、学園の自由、自治が守られると考えているのかどうか。
 第二点、早大或いは愛知大学などの事件の起きているところへ文部省は直接に出かけて行つて実情調査をやる考えがあるかどうか。第三点、実力行使の要請について警察側と大学側との間に大きな食い違いがありますが、島田総長は実力行使について要請はしなかつたと文相に報告していると思うが、その通りと考えていいかどうか。
 第四点、早大における学生の態度が全体としてよく自重していたことは、先日の衆議院の御答弁で認められているのでありますが、早大における最大の被害者は、実に最初から最後まで何一つ抵抗しなかつた学生であります。今後早大事件や、基本的人権を侵すような秘密調査をなくするために、閣議において或いは警察側に対して何か具体的な要望を出す考えがあるのかどうか。又文部省として独自の対策を立てるつもりであるかどうか。
 以上御答弁をお願いいたしまして私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 早稲田大学事件は誠に遺憾に存ずる次第でございます。私のこれまでの報告を受けた程度におきましては、連絡と情勢判断に遺憾な点があつたように考えられるのであります。只今折角検察庁においてこれらの点については調査中であります。実力行使につきましては、お説のごとくこれは必要最小限度にとどむべきであることは論を待たないところであります。私は常にさように間接に指示しております。御承知の通り今の警察法の建前として、私は直接に指揮監督権を持つておりません。従いまして、間接に実力行使については必要最小限度にとどまるべきことを常に指示しておるのであります。今後この種の事件についてどうするかということでありますが、これは警察官の指揮者とそうして現地に実際に働く人たちとの連絡を緊密にして、そうして現場に働く人たちの修練に常に心がくべきであると考えております。その点について将来遺憾のないようにしたいと私は考えておる次第であります。
 それから軟禁の点でありますが、お説の通り佐々木学部長らとの間における点につきましては、私はこれは軟禁とは認めておりません。併しながらその以前において学生が山本、荻野両巡査を軟禁した事実は明瞭になつておるのであります。この点においては学生のほうに行き過ぎがあることは十分であると私は認めております。
 而して警察官の棍棒、ピストルの使用につきましては、従来とも私は必要最小限度にとどむべきことを常に言つておるのでありまするが、今後とも十分この点については必要最小限度にとどむべきことを指示するつもりであります。(「嘘をつけ」と呼ぶ者あり)従いまして、現在の段階におきましては、警察官の行動その他について検察庁において今取調中であるということを申上げておきます。指揮者についてはまだわかりません。私に報告はありません。(「今わからないでどうする」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(天野貞祐君) 御答弁申上げます。第一の点につきましては、学問、研究、思想の自由が今侵されているか。この点につきましてはまだ侵されているということは認めません。(「認めないのか」と呼ぶ者あり)つ
 第二番目に、次官涌牒で、学園の自治、自由が守れるかということでありますが、それだけでは守れません。
 第三番目に、早大、愛大へ直接調査に人を派遣するかということでありますが、早大へはすでに派遣いたして詳しく調査もいたし、又総長もおいでになつてよく事情をお聞きしました。愛大のほうは今調べ中でございます。
 第四番目に、島田総長が実力行使の要請をしないと報告したかどうかということでありますが、島田総長は、必要の場合には実力行使も止むを得ないけれども、今度のことについては要請はしなかつたというお話でございます。第五番目に、早大、東大事件について閣議及び警察当局に対する希望がどうかということでありますが、これはよく学生というものを指導する事情を御説明して了解を求めたいと思つております。
 第六番目に、文部省独自の方法はどうかということでございますが、これは権力によつてはやれない、教育的にやるよりほかに方法がないので、よく学長諸君に相談をして、教育的な方法によつて学生をよく指導するという考えでございます。(拍手)
   〔成瀬幡治君発言の許可を求む〕
#17
○議長(佐藤尚武君) 成瀬君、何ですか。
#18
○成瀬幡治君 再質問をお許し願います。
#19
○議長(佐藤尚武君) 時間が残つていますから再質問を許します。成瀬幡治君。
   〔成瀬幡治君登壇、拍手〕
#20
○成瀬幡治君 木村法務総裁にお尋ねをするわけでございますが、大村法務総裁は全体の指揮を誰がしたかどうかということを調査報告を受けていないのか。調査をしないのか。若し調査しても指揮者がわからぬということになるならば、私が指摘したごとく、警官は、あの予備隊は暴徒と何ら変りないということになる。(「その通り」と呼ぶ者あり)この理由をもう一度重ねてはつきり私は御答弁を要求するものでございます。
 もう一つ天野文部大臣にお尋ねいたしますが、警察手帳に自由主義者の教授のいろいろのことが調査してある。一部学生の者が尾行されておつたということはあなたも御存じであろうと思う。それで以て、今、学問の自由、研究の自由、そういつたものが侵されておらないとお考えになつておるのかどうか。もう一度私はこの点について重ねて御答弁をお願いするものであります。
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。(「はつきり答弁なさい」と呼ぶ者あり)当時の実際の指揮者が誰であつたかということはまだわかりません。(「そんなことでどうなるんだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)検察庁において報告を受けておらないのであります。最高の指揮者は警視総監であることは事実であります。(「言えないのか」「最高の指揮者は総監ということはわかつている」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(天野貞祐君) 只今の成瀬さんのお尋ねのような点について、そういう警察手帳にあるとか、いろいろのことはあつても、それはまだ思想の侵される可能態であつて(笑声)それがまだ現実になつておらないという意味であります。(「その通り」「耄碌するな」と呼ぶ者あり)
   〔成瀬幡治君発言の許可を求む〕
   〔「時間あり、時間あり」と呼ぶ者あり〕
#23
○議長(佐藤尚武君) 成瀬君、何ですか。
#24
○成瀬幡治君 今の答弁に私は不満でございますから、時間があると思いますから、時間がありましたら一つ再質問をお許し願いたい。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
#25
○議長(佐藤尚武君) 最後の質問でありまするが、数分間許可いたします。成瀬幡治君。
   〔成瀬幡治君登壇、拍手〕
#26
○成瀬幡治君 私は、木村法務総裁の答弁は誠に下親切極まるものであつて、少くとも(「そうだ」と呼ぶ者あり)少くともです。あれだけの事件を起した責任者が誰であるか、指揮者が誰であるか、直接の責任者が誰であるかということは、私は調べる場合に第一番最初に問題になり、調べられる点だと思う。それをぼやかしておつて、或いはその点について報告を受けずにおるということは、私は職務の怠慢と申しますか、報告をせなかつた者が職務怠慢か、聞かなかつたあなたが職務怠慢だと思う。私は少くともあなたにはわかつておると思う。それをなぜここで隠さなければならないのか、その理由が私にはわからない。これでは天下の世人に対しまして、警官が本当に暴徒であるという印象を與えるのでございます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)私は何と言つてもここで誰が指揮をしたかという官職と氏名が是非承わりたいものでございます。(「その通り」と呼ぶ者あう)重ねて私は御答弁をお願いするものでございます。(「文部大臣に聞けよ」「言えなければ大臣やめろ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。実際において私はまだわかつておりません。今検察庁に本当に誰が指揮したか、折角調査中であります。(「誰の指揮を受けたのか」と呼ぶ者あり)
     ―――――・―――――
   〔相馬助治君発言の許可を求む〕
#28
○議長(佐藤尚武君) 相馬助治君。
#29
○相馬助治君 私はこの際、早大事件に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#30
○矢嶋三義君 私は只今の相馬君の動議に賛成いたします。
#31
○議長(佐藤尚武君) 相馬君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。相馬助治君。
   〔相馬助治君登壇、拍手〕
#33
○相馬助治君 世界に向つて民主国家であることを呼号しておりまする我が国であるにかかわりませず、先般の騒擾事件といい、今回の相次いで起きた大学における暴力沙汰といい、これらは誠に歎かわしいことでありますと同時に、つい先だつて私はこの場においてメーデー事件について質問をいたし、本日又会派を代表して同一種類に属する質問をせざるを得ないことを先ず極めて悲しく思うものでございます。何と申しましても、今回の事件のような性質のものは、その事態を正確に把握する必要があると存じまして、我が会派は直ちに実地調査をいたしますと同時に、警視総監を招いてその警察側の見解等をも聞いたのでございます。そういたしまして、私どもが感じたことは、勿論、法治国家である限りにおきまして、個人の人権が尊重せられるように、警察の権威も又尊重されなければならないことは論を待たぬところでありますが、その場合においては飽くまでも警察は法の執行においてみずからの良識を高らかに持つていなければならないとすることが前提であろうと存ずるのであります。然るに今回の事件というものは、即ち八日の早大事件なるものは、今まで頻発いたしました学園内の事件は、論者によりますと、学生側が悪い、或いは警官側が悪いと、その論が分れたのでありますが、本問題に関する限りにおきまして現われました現象そのものは、警察の一方的なる暴力の行使によりまして被害を受けました者はむしろ平和裡にこれを解決せんとした無抵抗の学生側にあつたということは、新聞報道その他が一致しておる見解でありますと同時に、私の又調査においてもこのことは確言し得ると思うのでありますが、(「そうだ」と呼ぶ者あり)勿論この問題は、メーデーの当日警官を傷けたいわゆる暴力学生を逮捕するために、その準備行動として巡査が学園内に入つた、学生がこれを吊し上げた、こいつも極左学生である、こういうふうに警官が心理的にとんがらがつたということは一応わかりますが、併しながら一連の行動を通じて見まするときに、如何なる理由があるにせよ、今日警察が冷靜な治安取締の責務を忘れ、その範囲を越えて、全く感情的な団体としての行動を行うならば、全く今の成瀬君の表現通りに、警官のこれは暴力化であり、暴徒化であると世人に指摘せらるることも又止むを得ないところではないかと思うのでありまして、政府は少くともこの問題については深く反省し、当事者に対しましても適当な処置を講じますると共に、将来に向つてもこの問題について適当なる措置を講じなければならないことを先ず私は要求するものであります。
 特に私は木村法務総裁にお伺いいたしたいのでありますが、その前に申上げたいことは、あなたは先般この場所において、例のメーデー騒擾事件のときに、その答弁のうちに、警察官の行動は、やり足らなかつた、もつと景気よくやつたほうがよろしいという意味の発言をなされたのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)併しながら本日は、こういう問題について愼重でなければならないということを申しております。(「嘘つき」と呼ぶ者あり)二つの問題に食い違いはありますけれども、少くとも一国の法務総裁としての木村氏の良識は、その本日の……(「煽動したのだ」と呼ぶ者あり)本日の言葉が正当なる見解であろうという前提に立つて、以下伺うのでございます。
 先ず、これまでに学園内におきまして相次いで起きた警察と学生との衝突事件というものは、その問題の原因として大なり小なり文部次官通達なるものが問題となつております。今回の問題は、警視総監よりの説明その他によりますれば、直接には文部次官通達と関連はないと申しておりますけれども、その問題を起す心理的背景の中には、明らかに文部次官通達の解釈というものが不備であり、或いは勝手気ままに解釈せられておるという問題、乃至はこれを無視しておる国家の権力というものが動いておるということを見逃し得ないのであります。曾つて私は三月四日の法務と文部の連合委員会におきまして、東大事件の問題に関しまして質問をいたし、かかる事件の発生に対し、将来これを防ぐために、現在次官通達については政府は如何なる手続をとつているか、又将来如何なることをなさんとするかという質問に対しまして、政府は、「次官通達解釈の点については、仰せのごとく大学と警察との間に食い違いがございますので、更に両者の間に話合いを進めてお互いに了解しなければならないと存じております。」と述べられておるのであります。次いで吉田法晴君の質問に対しまして、天野文部大臣は、「次官通達の解釈等にあいまいな点があつてはいけないと思いますので、ややあれを詳しく限定したものを現に警視総監のほうに差出して協議を始めております。」と答えたのであります。これは即ち三月十四日の法務委員会であります。それからたつことすでに二カ月、この次官通達について明快なる判断その他が試みられないうちに事件は相次いで起きたのでありまして、少くともこの吉田君の質問に対して文部大臣が答えた限りにおきましては、一体この問題は今日どうなつておるのであるか。
 この問題につきましては、先ず第一点、木村法務総裁並びに天野文部大臣に、今日までの経過並びにこれに対する若し措置が怠慢であつたとするならばその責任の所在、なお今日以後如何になさんとするものであるか、この点について、特に次官通達について改めて見解をこの際披瀝されることを私は要求するものであります。
 第二の問題は、今回の事件は警察の実力行使の可否の問題であります。勿論事件によつては警察は嚴粛にその実力を行使しなければならないことは何人も否定し得ないところでありまするが、今回の問題は、藤原公安主任並びに山本巡査の二人が日沒前に約八百名の学生に取り囲まれ、不法侵入だ、詫び状を書け、それが駄目なら警察手帳を寄越せ、こういう要求をされたと言われております。又事実もそのようであります。この限りにおきましては、成るほど学生の行為にも一部の行き過ぎを私どもは認めるのでありまするが、(「その通り」と呼ぶ者あり)問題は、その後において警察側が言うような、百十番教室において学校、学生、警察、この三者が協議を始めて、十二時を過ぎても解決がつかない。警察官も出て来ない。よつてこれは実力行使に値いするものと私は実力行使の命令が発せられたと思うのであります。で、この実力行使が真にそれに値いするものであるかどうかを私はお尋ねしたい。尤も今の成瀬君の再三の質問に対しましても、その責任者がわからない、こうおつしやつておるのでありまするが、私はその責任者をここで指摘することも実は可能なのでありまするが、それは筋の通つたものでもありませんし、当を得たものでもないので、指摘はいたしませんが、要するに、警察と学校とが話合いをしておる。而も又警視総監も不必要な摩擦を避けるように指令していたと伝えられておる。そうして現場における交渉が比較的円満に始まり、而も極めて円満にその最終的段階に至らんとした時に、予備隊が突然行動を起したというこの事実は、少くともこの予備隊に命令を発する者が命令を発したことだけは明らかなのであつて、これだけの第一段を私はあなたに教えておきまするが故に、その前提に立つて成瀬君のさつきの質問を満足せしめる結論を早く生む、そうしてこれを発表し、その責任を追及することが肝要であろうと存ずるのであります。要するに、この行為が実力行使に値いするかどうか、これを聞きますると同時に、今度の問題に関連いたしまして、警官の訓練、或いは新たに任用する者の教養、こういうものに対して法務総裁は如何なる所見を持たれるか。これらにつきましてとくとこの際明示されますると同時に、全般の警察側の行為は総括して法務総裁としては如何なる見解をとられるか。そうしてこれを政府としては如何に教訓的に学びとられて、今後如何なさんとするものであるか。これらにつきまして一つ明快なる答弁あらんことを要求するものであります。
 次に私は文部大臣に対してお伺いいたしたいと存じますることは、先ほど申しました先ず文部次官通牒に関しての答弁を願うことが第一点であり、第二点といたしましては、この問題の時に、大隈講堂前に並んでいた予備隊に向つて「ポリ公帰れ」とか、「おい、いぬ、くたばれ」とかいうような極めて不穏当な言葉が投げられた、従つてこれは学生側も悪いのだ、こういう見方が一部にありまするけれども、私はその現象だけをつかんで学生側を悪いとはし得ないと思うのです。併しながらこういう品位のない学生の言葉が発せられたることも又事実なのでございまして、今後文相は大学教育に対して根本的にはどう考えられるか。特に今後の学生の政治活動に対する見解並びに指導方針等について、この際、構想あらば承わりたいと存ずるのであります。
 なお最後にお聞きいたしたいと思いますることは、今日国会においても問題になつておりまするところの文部省の機構改革のうちに中央教育審議会なるものがあるようであります。これは文部大臣が任命するらしいのであるけれども、この種の審議会なるものは常に官僚独善に陷る可能性なしとしない。而も又この審議会が将来大学教育或いは学生の政治活動等についても基本的なる対策をきめると我々は聞かせられておるのでありまするが、これの性能、並びに、如何なる構成を以てこの審議会を設立し、同時に今後の日本の文教政策を如何なさんとするものであるかのうちに、特に大学教育に関し、なお学生の政治活動の限界、及びこれに対する対策等について承わりますると同時に、その審議会の構成の今の予定案等について是非とも承わつておきたいと思うのであります。
 要するに、民主国家であると言いながら、かかる暴力行為が相次いで起りますることは誠に悲しいことであり、この暴力行為を特に警察側が誘導するがごときことは言語道断でありまして、この点につきまして特に私は木村法務総裁の責任ある答弁を要求して私の質問を終るものであります。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#34
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 メーデー当日において警察官のとつた処置は、私は極めて消極的であつたということは、今でもその確信は動かない。(「馬鹿言うな」と呼ぶ者あり)あの当時の事情から考えまして、警察側は極めて自重しておつたのであります。申すまでもなく警察官は、或る部分については、丸ノ内警察署において待機したのは拳銃を持たせなかつたのであります。暴徒の武器に対して殆んど棍棒一つで以てこれに対抗したというような事情で、当時の警察官の措置としては極めて消極且つ極めて愼重な態度であつたということは、その確信において今も変つておりません。
 早大事件につきましては、私の先刻の答弁において明らかなるごとく、情勢判断を誤まつた疑いがあるので、只今折角検察庁において調査中であります。而してこの責任者については、(「逮捕状だ」「その警官を逮捕しろ」と呼ぶ者あり)御承知の通り数段階に分れておるのでありまするが、果して本当の責任者が誰であるか、只今のところわかつておりません。(「いつわかるのだ」「その警察官を捕えよ」と呼ぶ者あり)従つて只今検察庁において調査中であります。
 次官通牒につきましては、これは文部省と各大学とそれぞれ連絡をとつてその調整の誤まりなきことを期しておられると信じて疑わないのであります。(「それは政治が悪いのだよ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇〕
#35
○国務大臣(天野貞祐君) 第一のお尋ねの次官通牒のことでございまするが、次官通牒で以てまだ蔽い切れない部分について警視庁のほうとよく話合いをしようと思つて、私どものほうから一つの案を出して、それをお互いに相談いたしておる途中でございます。(「私服は自由に入つていいのか」と呼ぶ者あり)こうした大学の根本対策と申すことは、先ほど申しましたように、これは権力的には行かない。どうしても教育的にやるより仕方がない。それで学長を呼んでよく連絡をして、教育的に学生をよく指導して行こうと思つております。政治活動については、教育基本法の精神からいつて、学内ではこれを認めない。けれども、学外においては、選挙権の行使などは当然のことでございますが、併しその他の政治活動は、学生本来のあり方から言つて好ましくないと思つております。
 それから第三番目の中央教育審議会でございますが、中央教育審議会は、今後日本の教育をどうして行なつたらよいかということについて、世間一般の人たちが、このかたがたがきめたことならもう無理はないだろうというようなかたがたにお願いして、一党一派にとらわれることなく、全く公平な立場からきめたいというふうに考えております。(拍手)
   〔相馬助治君発言の許可を求む〕
#36
○議長(佐藤尚武君) 相馬助治君、何ですか。
#37
○相馬助治君 自席から再質問……。
#38
○議長(佐藤尚武君) どうぞ。
#39
○相馬助治君 木村法務総裁に私が質問した中に、警官の現在の教養を十分であると思うかどうか、十分でないとしたならば、その教育その他についての根本的なる構想を持つておるかどうか、こういう質問がございましたが、これに対する答弁を私は重ねて要求いたします。
#40
○国務大臣(木村篤太郎君) 自席からお答えいたします。(「いかんいかん」「誠意がないぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#41
○議長(佐藤尚武君) 木村法務総裁に申上げます。御登壇を願います。
 靜粛にお願いいたします。
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#42
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。警官の教育については、必ずしも十分であるとは考えておりません。今後あらゆる方面からこの警察官の訓練教養について努めたいと思います。殊に警察大学、警察学校等を利用いたしまして、訓練と教養に折角努力いたしたいと考えております。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔矢嶋三義君発言の許可を求む〕
#43
○議長(佐藤尚武君) 矢嶋三義君。
#44
○矢嶋三義君 私はこの際、最近続発しつつある学園事件、政治教育、学生運動等に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#45
○水橋藤作君 只今の矢嶋君の動議に賛成いたします。
#46
○議長(佐藤尚武君) 矢嶋君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#47
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。矢嶋三義君。
   〔矢嶋義君登壇、拍手〕
#48
○矢嶋三義君 私はこの際、最近続発しつつある学園事件、政治教育、学生運動等に関する緊急質問を、吉田首相、天野文部大臣並びに木村法務総裁になさんとするものであります。
 続発する学園事件の内容性格には若干の相違はあるが、近来、京都大学、北海道大学、東北大学、東京大学、教育大学、愛知大学、このたびの早稻田大学と、枚挙にいとまがないほどであります。これらの事件を通じて、警察に対する一般学生の感情は極めて過敏となり、微妙な状態にあるようであります。一部行き過ぎた学生の行動等に対しては、強力なる指導が今日ほど要請されるときはありますまい。成る特定の政党のみが学生運動に関心を持つのみでは事足らないのであつて、この際、各党派を超越して全国民がこの学生の指導に当るべき重大時期であると考えるものであります。(「大いにおやりなさい」と呼ぶ者あり)これらの事件を一部不穏分子の策動のみによるものと考え、権力により取締らんとするがごときは、事態を解決するものではなく、類似の問題は今後も続発するでありましよう。我々は先ずその根源を究めて対処しなければならないと考えるものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)現在の大学生の多くは、中学校の前半を太平洋戰争の末期に過ごし、勤労学徒として出動し、幼き身を戰争遂行に駆り立てられ、敗戰後、その劣悪な環境の下に、中学校、高等学校を経て今日に至つたものであり、学徒動員によつて戰争中苦汁を嘗め、戰後、新憲法の下に、民主主義、平和主義の教育を受けて来たもので、戰争を嫌い、平和を愛する情熱は極めて強く、新憲法の高き理想の具現に対しても、青年らしい強い信念と願望を持つているのでありまして、お互いの青年時代の感覚を以てしては測り知ることができないものがあるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 一方、我が国の諸情勢は、政府の政策のもたらすところ、憲法無視の事態は枚挙にいとまないほどであります。一例を学生に直接関係あるものにとつて申すならば、義務教育無償、教育の機会均等は掛声ばかりで空転し、勤労大衆の子弟はその学費に窮し、進学を断念する者もあり、向学心に燃え進学した者も、大多数はいわゆるアルバイトによつて苦難な学生生活を送つているのでありまして、内職收入に依存しなければならない学生は実に約五五%であり、就職できる者はその約二〇%に過ぎない状況でありまして、下宿、間借はパンパンに追い出しを喰う実情であります。勿論日本育英会の貸付金制度がありますが、適用を受ける者は大学学生にて学生総数の二〇%に過ぎず、その單価は、当初、学生の生計費、教科書、学用品を入れて全体の経費の三分の二を貸付けるものとして、單価月千九百円を決定したまま数年来据置きのままになつております。一方、授業料は、御承知のごとく本年度から実に六割六分の大幅引上げをなしたのであります。学童給食も、補助打切りによつて父兄の負担は約六割増となつたのであります。他方、再軍備はしないと首相は発言しながらも、警察予備隊五百四十億、海上警備隊七十三億、安全保障費五百六十億、防衛分担金六百五十億円等、合算すれば、一般会計歳出総額八千五百二十七億円の約二一%に上る巨額となつておるのでありまして、これに対しまして、七十一の国立大学、五十二の附属研究所並びに附属高中小学校等を合せまして、国立学校の予算総経費は僅かに二百五億、文部省所管の総経費は全予算額の僅か四%の三百五十二億にとどまつておるのであります。憲法第九條に関連する戰力問答には、学生諸君は実に割切れないものを持つておるのであります。更に政府は、破防法、集団デモ取締法、警察法改正、ゼネスト禁止法等の立法によつて、憲法に保障される思想及び良心の自由、集会、結社及び言論、出版の自由、団体行動権の自由を脅かさんとしておりますが、これら一連の施策は、理想にあこがれている学生諸君を納得させ得る説明が果してなされているでありましようか。
 そこで私は吉田首相にお伺いいたしますが、吉田総理の言われる自衛力の増強と憲法第九條との関係を、一般通念によつて納得のできるような説明と実践をなされるお考えはないか。更に文化国家らしく、文化的性格を持つ予算案の編成に努力する意思はないか。授業料引下げ、育英資金の大幅増額、学生厚生補導費の大幅増額を図るお考えはありませんか。更に競輪、競馬、ボートレース、ドツグレース、ハイアライ等、一連の賭博政策を放棄又は抑制するお考えはありませんか。お伺いいたしたいのであります。
 更に文部大臣にお伺いいたしますが、文部大臣は再軍備に賛成なのか、反対なのか。更に現代の警察予備隊等の政府のいう自衛力は、憲法第九條に規定する「その他の戰力」に該当するものと学生諸君の大多数は考えていますが、文相の所見は如何でございますか。学生諸君の納得のできるような説明をするなり、或いは十分説明できるように憲法を改正するなり、ともかく憲法の規制と政治並びに教育の実態とが合致するようにすることが学生指導上最も大切なことと考えるが、文相の所見を承わりたいのであります。
 次にお伺いいたしたい点は、この間の早稻田大学の事件については、いろいろと質問がなされましたが、現在学生と警察がこれほどに感情的に対立しているときに、もう少し愼重な態度はとられなかつたものであるか、これらの点について法務総裁はどういうふうにお考えになつておるか、承わりたいのでございます。
 法務総裁は、情況の判断と連絡の不十分があつたと認める、こういう答弁をなさつておりまするが、私の承わるところでは、確かに当時の山本巡査は瀕死の状態にあるという情勢判断の下に突撃をやつたと承わつておりまするが、誠に遺憾に存じます。私はメーデーの当日偶然にも皇居前においてあの状況を見たものでございまするが、あの当時も、警察官の情況判断、連絡不十分さには私は呆れたものでございます。
 更に実力行使の問題につきましても、早大の学長は了解を與えていないというのに対しまして、田中警視総監は、増井第一警備部長を通じて了解を得ておる、こういうふうに意見が食い違つておりまするが、これにつけても私は思い起すことは、先般の東大第一次事件のときに、前本富士警察署長は本院において宣誓の上においてでたらめを供述したことは、御承知の通りでございます。そうしてその後日において、その供述を翻して僞証問題を起しかけたことは御承知の通りでございまするが、こういう事実を知るところの国民といたしましては、この増井第一警備部長が了解を得たということを信ずることはできずに、早大の学長の言辞を信頼せざるを得ないのでありまするが、こういう警察官の僞証問題も国会において起さんとする警察官の行動について、法務総裁は如何にお考えになりますか、承わりたいのでございます。
 次に私は承わりたい点は、先ほどの相馬君の質問にもございましたが、この一連の問題を考えますと、第一次東大事件のときに問題を起した警察官諸君は、二十一歳並びに二十二歳の警察官諸君であり、更に第二次東大事件のときの星野巡査は弱冠十八歳の警察官であつて、逃げる学生をあとから発砲いたしております。更に北大事件或いは教育大学事件のごときは大学の学生大会の学長の許した掲示を写して問題を起しております。更に第一次東大事件におきましても、第二日目に大学に連絡をとることなく逮捕に警察官が向わなかつたならば、第一次東大事件というものはあんなに重大化しはしなかつたのでございます。更に今度の早大事件につきましても、情勢分析を的確にやつておりましたならば、かくのごとき無謀な実力行使によつての悲惨事を惹起することはなかつたのでございまして、こういう角度からも、警官の年齢、教養、これらにつきましては私は根本的な問題があると考えるものでありまするが、これに対して法務総裁は具体的な見解、対策を持つべきと考えまするが、その所見を承わりたいのでございます。なお、文部大臣にお伺いいたしまするが、これらの問題を通じまして、警官の教養というものを、文部大臣は教育者として、文教行政の責任者としてどういうふうにお考えになつているかも、この際承わりたいのでございます。
 最後にお伺いいたしたい点は政治教育の問題でございます。先ほどの相馬君の質問に対しまして、大臣は、学生の政治活動は教育基本法の第八條云々ということを申されておりますが、私はこの際にお伺いいたしたい。それは教育基本法の第八條の学校という、「法律に定める学校」の解釈でございます。この第八條の解釈につきましては、文部省は昭和二十四年六月十一日大臣官房総務課長の名義によりましてこの解釈を出しておりまするが、その解釈によりますと、「第二項の趣旨は、学校の政治的中立性を確保するところにあります。もとよりここに規定されているのは教育活動の主体としての学校の活動についてでありまして、学校を離れた一公民としての教員の行為についてではありません」と、こう書いてある。ましてや学生の政治活動を、学生の行動を、教育基本法の第八條の学校においては私は規定しているものではないと考えまするが、これに対する大臣の見解を承わりたいのでございます。なお昨日の十一日の朝日新聞を見ますと、現在文部省では、この第八條の「学校は、」の解釈を、学校当事者という意味でなく、教授、学生を含めた広い意味の学校と解釈している。かくのごとく、教育基本法の制定の当時とは雲泥の差のある拡大解釈をなしておりまするが、この意思があるのかないのか、若しあるとするならば、それでよろしいのかどうか、伺いたいのでございます。成年に達した学生諸君が現在の政治にあきたらずに政治活動をすることは、これは当然であつて、成年に達した学生の政治活動を禁止する前に、学生に理解させ納得させる政治が先行すべきものと考えまするが、大臣の所見を承わりたいのでございます。
 最後に、この点について法務総裁に承わりたい点は、法務総裁は先般の文部委員会に参りまして、「政治教育については教育基本法の第八條に規定がある、その規定によつて学生の政治活動というものは個人の活動もいけないのである」と文部委員会で答弁してお帰りになつていらつしやるのでございますが、如何なる根拠の下に教育基本法の第八條の政治教育の第二項をそういうふうに解釈されておられまするか。私はこの際明快なる答弁を要求するものでございます。(拍手)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕
#49
○国務大臣(天野貞祐君) 第一に憲法の問題につきましては、学生が憲法を守るということを考えることは当然でございますが、併し学生の政治活動には限界があるというふうに考えております。第二番目に、警官の教養ということについては、私はこれは非常に必要だと思つて、実は文部省に入りませんまでは、いつでも警察大学とか警察の学校に頼まれれば、私はどんな都合をしてでも行つて、警官の教養に従事いたしたように、これは非常に必要なことだと考えております。(「お似合いですね」「警察学校長のほうがいい」と呼ぶ者あり)
 それから三番目は、教育基本法第八條の解釈でございますが、これは法律的には文部省が前に申した通りでございますが、今学長諸君はその精神に則つて適当な指導を学生に対してなさつておられます。いろいろどうも矢嶋さんのお尋ねが私には以上のように解釈されましたので、その通りお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。警察官の実力行使については先般申上げた通りです。殊に愼重を期すべきであつて、その必要最小限度にとどめるべきは当然であるのであります。本件の場合におきましては、行き過ぎの点があつた疑いを私は持つておるのでありまするから、只今検察庁において調査中であります。(「いつ調査する」と呼ぶ者あり)又増井部長と島田学長との間の言葉の行き違い、これは確かにあるのであります。この点についても只今公正な第三者的立場においてこれを調査中であります。而してこの警察官の行き過ぎの点が万一法規に触れるような違法の点があれば、これは法規の命ずるところによつて処理すべきが当然であると考えております。
 次に学生の政治活動については、これは学生の本分乃至はその節度の面から当然規制を受くべきものであると私は考えております。(拍手)
#51
○議長(佐藤尚武君) 内閣総理大臣の答弁は他日に留保されました。
   〔矢嶋三義君発言の許可を求む〕
#52
○議長(佐藤尚武君) 矢嶋君、何ですか。
#53
○矢嶋三義君 再質問……。この席上でお許し願いたい。
#54
○議長(佐藤尚武君) ほんの僅かしか残つておりませんから、そのおつもりで……。
#55
○矢嶋三義君 文部大臣に重ねてお尋ねいたします。学生諸君は、現在の警察予備隊を憲法第九條の「その他の戰力」と大部分の学生は思つて、非常に国家に対して不信を持つているのであります。これらの学生行動は一連の関連性があると思います。文部大臣は警察予備隊を憲法第九條の戰力とどういうように考えていられるか。その答弁を伺いたい。
 もう一点、教育基本法の第八條の拡張解釈の意思があるのかないのか。その拡張解釈をしていいのかどうか。その点の御答弁を煩わしたい。
 法務総裁に伺いたいのは、先ほど私は警察官の教養に関してということについて申上げましたが、学生諸君の怪我をしている者を見ると、うしろから打たれている。東大の第二事件を見ても横合いからやつている。メーデーでも、うしろからやつている。今度の早大事件も逃げるところをうしろからやつている。それで、その九割の学生は後頭部に打撲傷又は裂傷を受けております。暴徒に対する正当防衞でなく、国民のうしろからやるというのが今度の警官の行動であります。これは警察法第一條の精神がよくわかつていないということと、それからその警察官の教養が非常に低いためであると私は考えますが、そういう国民の負傷した状況から大臣はどういうふうに考えておりますか。どういう態度をおとりになるか、御答弁を煩わしたいのであります。(「どういう責任をとるか」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕
#56
○国務大臣(天野貞祐君) 警察予備隊につきましては、私はこれが国内治安の維持ということについてレーゾン・デートルを持つておりますから、これを軍隊とは解釈いたしません。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 それから第二の基本法八條の問題につきましては、これは学長自身がその精神に則つて適当に学生を指導されることと考えております。(「何だかわけがわからんよ」「立法当時の速記録を見て下さい、勝手に拡張解釈されたら、たまつたものではない」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#57
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 警察官の教養の点については、先ほど申上げました通り、現在の程度においては必ずしも十分でないと認めておりますから、今後警察官の訓練教養については十分の力を盡したいと考えております。(「うしろからやるのはどうするか」「人権擁護の意思があるか」と呼ぶ者あり)
     ―――――・―――――
   〔堀眞琴君発言の許可を求む〕
#58
○議長(佐藤尚武君) 堀眞琴君。
#59
○堀眞琴君 私はこの際、人権擁護に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#60
○兼岩傳一君 堀君の動議に賛成いたします。
#61
○議長(佐藤尚武君) 堀君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#62
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。堀眞琴君。
   〔堀眞琴君登壇、拍手〕
#63
○堀眞琴君 私は、最近頻々として起つておりまするところの人権蹂躪に関しまして、人権擁護の立場から緊急質問をいたすものであります。
 御承知のように、憲法に保障されました基本的人権は人間の不可侵権でありまして、如何なる法律、如何なる権力によつても、これを侵すことができないものとされているのでありまして、憲法の第十一條、第九十七條に規定されたのはその意味なのであります。而もこの基本的な人権は人類多年の鬪争によつて獲得されたものでありまして、決して一朝一夕にして得られたものではないのであります。例の十七世紀のイギリスの革命、十八世紀のアメリカの独立、更にフランス革命を経てこれが確立を見、法制化されるに至つたものでありまして、このことも又我が憲法の九十七條に明確に規定しているところなのであります。従つてこの基本的人権に関しましては、国民の一人一人がこれを尊重しなければならんことは言うまでもありません。そうしてこれが蹂躪に対しましては、あらゆる力を以てこれに対抗しなければならんことも言うまでもないのであります。国家についても又同様であると申さねばなりません。ただ国家の場合におきましては、その持つところの政治性、或いは国家形態の如何によりましては、若干そこに違いがあることも認められます。即ち、まだ遅れた政治形態の国、例えば絶対主義的な形態をとつている、或いは專制主義的な形態をとつているというような場合におきましては、国家権力からの自由ということが重点となつて参るのであります。併しながらこれに対しまして、近代国家が完成され、民主政治が確立されている場合におきましては、国家がむしろ積極的に基本的人権を尊重する義務を負わなければならんと思うのであります。日本の場合について見まするならば、日本は民主国家としての経験が極めて浅いのであります。民主的な政治制度がまだ完全には確立されておらんのであります。その内実は、單に民主国家の形態を、それらしい形態を備えたというだけに過ぎないのであります。例えば官僚制度の一つをとつて見ましても、今日なお封建的な、天皇制的な官僚の残滓が依然として残つているというのが実情であります。従つて日本の場合につきましては、その面から国家権力からの自由ということが強調されなければなりません。それと同時に、日本が民主国家を完成するという観点から申しまするならば、国家が基本的人権の尊重に関して積極的な義務を負うものと考えなければならんのであります。この二つの要請が同時に日本において充たされるのでなければ、この基本的人権の保障は十分でないと申さなければならんのであります。この点に関しまして、私は、首相、法務総裁はどのような見解を持つておられるか。先ず第一にお尋ねいたしたいのであります。
 ところが、最近この国家権力からの自由も踏みにじられ、又国家の積極的義務も殆んど顧みられず、いわば憲法上に保障された基本的人権は空文に帰しようといたしておるのであります。先のメーデー騒擾事件後の容疑者の逮捕の問題などを見ましても、單なる聞き込みである、或いは推定であるというようなことによりましてどしどし逮捕をいたしております。勿論、現行犯乃至は客観的に十分認められるところの証拠によつてこれを逮捕するならば問題はないのでありますが、併し單に推定であるとか聞き込みであるとかということによつて、騒擾事件後の容疑者逮捕を行なつているというようなことが頻々として行われているということは、極めて残念なことだと申さねばなりません。又本日各議員に上つて質問されましたところの早稲田大学事件においても同様であります。事件の解決直前に武装警官が数百名学園に乱入し、警官に何ら抵抗しないところの学生に対しまして、或いは傷け、或いはなぐり、極めて遺憾な状態を現出いたしたのであります。そのほか、愛知大学の事件と言い、或いはその他の各所におけるところのいろいろな事件と言い、極めて遺憾な事件が続出いたしておるのであります。そうしてこれらの事件を通じて痛感されることは、警察官が国民、特に労働者、学生に対して感情的に反撥して、場合によつては警察官のほうからして挑発的な態度にさえ出ている節が見られるのであります。私は丁度メーデー騒擾事件の当時、あの広場におきまして、つぶさに警察官の行動を見たのであります。私が見ておりますときに、実は矢嶋君に私はあの広場の中でお目にかかつたのでありますが、私の見ている前で、いわゆる警察官の言うところの暴徒でない、一般の市民たちの集まつて見ておつた場所に、警察官が突撃を開始した。そして、例えば木の上に上つて見ておつた者を引ずり下ろすとか、或いは逃げ惑うところの市民たちに対しまして警棒を振うというような、極めて遺憾な状況を私はこの目で見ておるのであります。こういうような警官の人権蹂躪というものは、本来、警官が保護すべきところの人権を蹂躪するということは、私は人権蹂躪の中でも最も忌むべきところのものだと申さなければならんと思います。その根本は、要するに政府の権力政治、抑圧政治への逆行の一表現である。(「そうだ」と呼ぶ者あり)こう申さなければならんと思う。
   〔議長退席、副議長着席〕
 又、私がこの目で見た、何の罪もない、事件に関係のない市民たちに対しまして、警察官が暴力を振つたり、これを負傷せしめたというようなことに対しまして、一体、法務総裁としてはどのような責任をとられるのであるか。又早稻田大学の学生に対するところの警察官の行動に対しましてどのような責任をとられるのか。先ほど成瀬君の質問や相馬君の質問に対しまして、私は極めてその答弁が不まじめであつたということを感ずるのでありますが、この点について重ねて法務総裁の満足な答弁をお願いしたいと思う。又同時にこの問題に関しまして文相がどのように考えられているか。その点も併せてお尋ねいたしたいと思うのであります。
 基本的な権利を行使する、勿論それには義務を伴うものであります。自由が責任を伴うものであるということは、これは言うまでもないのであります。その意味において、国民はそれらの人権を濫用してはならないということも勿論であります。憲法第十二條にそれが明確に規定されておるのであります。併しながら法律を以てしても人権を奪うことができないというのは、権利自体、自由自体を奪い去ることができないということであります。つまり、このような法律を制定することはできないということを意味するのだと考えなければなりません。従つて、例えば言論の自由であるとか、或いは思想の自由であるとか、研究の自由であるとか、宗教の自由であるとか、集会結社の自由であるとか、これらの自由を奪うような、或いはこれを制限するような法律を作ることは、これは不当である。憲法違反である。従つて又、地方公共団体が数年来、例の公安條例を制定いたしておりまするが、これ又憲法上から申しまするというと不当なものと申さなければならんのであります。そのためにこそ憲法上の保障といたしまして、裁判所に違憲立法の審査権を認めておるのだと申さなければならんと思うのでございます。ところが、ここで問題になるのは、憲法十二條、十三條の言うところの公共の福祉についての考え方であります。なぜなら、憲法十三條の後段には、公共の福祉に反しない限り、個人の権利を尊重すべきであるということを規定いたしております。これを根拠といたしまして、人権のすべてに通じてかような制約が存在し、公共の福祉の見地からして、法律を以て人権そのものに対し制限を加えることができると考えられやすいからであります。ところが公共の福祉という観念は極めてその意味内容があいまいであります。どのようにでもこれを解釈することができるのでありまして、若しこのような観念を以て人権そのものを制約するということになりまするならば、これが非常に大きな憲法上の問題ではないかと思うのであります。最高裁判所が昭和二十三年三月十二日の判決で以て、この十三條の後段に対しまして次のような解釈を與えております。「公共の福祉という基本原則に反する場合には、生命に対する国民の権利といえども立法上制限乃至剥奪されることを当然予想していると言わなければならぬ。」こういう解釈を下しておるのであります。若しもこのように解釈するならば、基本的な人権を保障した憲法第十一條の、人権を以て不可侵永久の権利であると規定し、九十七條が現在及び将来の国民に対し侵すことのできない永久の権利として信託された旨を規定しておるのでありますが、この永久に侵すことができない権利として規定した憲法の條文と明らかに矛盾する結果とならざるを得ないのであります。もともと公共の福祉の観念を、人権に対して優れたもの、優位なもの、それを剥奪し得るところの原則として確立することは、法律上誤まりであります。なぜなら、法律は一般に公共の福祉のためのものであります。法律自体が公共の福祉と対立すると考えることは誤まりだからであります。ところが近代社会におきますところの利害の対立、特に階級の対立は、法体系に分裂を来たしたのであります。国民の大半を占めるところの勤労大衆の利益、これこそが公共の福祉の内容をなすものでありまするが、ところが公共の福祉を認定するところのものが、この勤労大衆の利益を無視して、いわゆる公共の福祉によつて一方的に法律を制定し或いは解釈しようといたしておるのであります。法務総裁は、この公共の福祉に関してどのような所見を持つていられるか、これを承わりたいのであります。
 更に最後に、最近破壊活動防止法案或いは警察法の改正法案、デモ行進等の取締法案、或いはゼネストの禁止法案であるとか労働法規の改正法案、一連の法律案が、一連の法律案が、いわゆる治安の目的という名目の下に上程され乃至は上程されようといたしております。もとより如何なる国家もその社会生活にとつて有害な行為につきましてはこれを禁止するのであります。又個人の権利行使につきましても、社会の他の成員に対し同一の権利の享有を保障するためにその濫用を禁じて来たのであります。併しながら、いつの時代でも、又如何なる国でも、その行われるところの禁止事項というものは、ほかならぬ君主のためである、官僚のためである、或いは軍閥、財閥、地主などの特権や利益を保護するためのものであつたということは、例外のない事実であります。国民の大半を占めるところの勤労大衆がこれに反対し、抗議をすれば、公共の福祉の名目の下にこれが彈圧を受ける、取締法規によつてこれを罰するというのが、今日までの実情であります。日本も又再びその道を取ろうとしておるのであります。
 御承知のように、ジヨン・ロツクに由来するところの抵抗権の主張というものは、国民の権利を擁護する最も重要な意義を持つものであります。アメリカの独立宣言が、「人間は神から一定不可讓の権利を與えられたものであるからして、如何なる形態の政府といえども、これらの目的を破壊するものとなるときは、いつでも人民はこれを改廃して、彼らの安全と幸福をもたらすものと認められるような、かかる原則を基礎とし、又かかる形態において権力を組織化せる新たな政府を創設するところの権利を有する。」こういうことを自明の理として宣言いたしております。
 又国連の世界人権宣言におきましても、「若し人間が虐政と圧制とに対して、最後の手段として反逆に訴えることを余儀なくされるべきでないならば、人権が法の支配によつて保護さるべきことが先ず何よりも不可欠である」ということを声明しております。各国が基本的人権の保障をその第一義とすべきことは言うまでもないのであります。ところで、これら一連の治安法案に対しまして、総評を中心とする労働組合は(「質問の要点」と呼ぶ者あり)第三次ストの準備をいたしております。これに対しまして法務総裁並びに労働大臣はどのような所見を持つていられるか、これを伺いたいのであります。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#64
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 国家が国民の基本的人権を尊重し、これを保護すべきは、近代国家として当然のことであります。(「やつてないじやないか」と呼ぶ者あり)併しながら、この個人の人権といえども無制限のものでは決してないのであります。憲法第二十二條において明白に規定しておる通り、公共の福祉のためには制限を受けるのはこれ又当然である。個人の人権を尊重する余り、多数の人の人権を無視することは到底あり得ないことであります。この面から見ましても、公共の福祉のために個人の人権が或る程度制限を受けるということは、これ又当然の事実でありまして、これ又最高裁判所の判決が明らかに判定を下しておるゆえんであります。メーデーの当日のことにつきましては、私は甚だこの暴徒に関して遺憾の点があるのであります。民衆は決してこれを支持しておりません。第三次ストに対しては、さような計画があるかどうかについては私は関知いたしませんが、賢明なる組合員諸君は、さようなことは私は恐らく(「何が賢明だ」と呼ぶ者あり)ないことを私は期待してやまないものであります。(「うまいことを言うな」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇〕
#65
○国務大臣(天野貞祐君) お尋ねの点につきましては、一方においては、学生によく次官通達の意味を徹底して、誤解ないようにしようと思つております。他方においても警察に学園の性質をよく理解してもらうように努めるように考えております。(「早くやりなさいよ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣吉武惠市君登壇、拍手〕
#66
○国務大臣(吉武惠市君) 堀さんのお尋ねにお答えをいたしますが、今回政府が提案をいたしました労働法の改正は、過日吉田法晴君にもお答えいたしましたごとく、第一の点は、国家の現業官庁の職員に対して、国鉄、專売と同じような団交権を付與しようというのが一点と、地方庁におられまするやはり現業職員、即ち市電とか或いは水道等にも同様な公労法のような取扱をしようというのが第二であります。第三に緊急調整がございますが、これも国民に重大なる損害或いは障害を與えるような場合に、争議に入らないで、労働委員会によつて解決をするような途を開こうというようなことでございまして、決して私ども基本的人権を制限するようなつもりではございません。これに対して総評は第三波のストを與えておるようなふうもございますが、この点につきましては今朝の幹部の者によく話しました点で、こういう法律に対して反対をするということは明らかに政治ストでございますから、この点は十分自重するように要望した次第であります。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔岩間正男君発言の許可を求む〕
#67
○副議長(三木治朗君) 岩間正男君。
#68
○岩間正男君 私はこの際警察の学園干渉に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#69
○菊川孝夫君 私は只今の岩間君の動議に賛成いたします。
#70
○副議長(三木治朗君) 岩間君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#71
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇、拍手〕
#72
○岩間正男君 五月一日人民広場でメーデー労働者に大暴圧を加え、多数の死傷者を出すに至つた警官隊は、その後、半気違いのようになつて、誰彼の見境いもなく検挙を続けているのでありますが、八日夜半、早稻田大学に不法乱入して大暴行を働き、遂に無抵抗の学生に大きな危害を加えるに至つたのであります。このことは誠に言語に絶する行為であり、人権擁護並びに学問の自由にとつて到底許すことのできない反逆行為であります。私はここに日本共産党を代表して、これら事件の真相を徹底的に糾明し、その責任の所在を明らかならしめんがために吉田首相並びに関係閣僚諸君に質問するものであります。
 先ず私の第一にお尋ねしたいことは、警官の早大侵入の動機並びにその方法等についてであります。この点に関し警察並びに政府側は、警官の早大立入りはメーデー事件の容疑者逮捕のためである、その公務執行に対し学生側は次官通牒を楯に取つてこれを妨害したと強調し、飽くまで自分の暴行を合理化せんとしているのであります。現に天野文相は一昨日の衆議院本会議において、学生側のかかる行動は非合法であると断じていることである。これは次官通牒の当の責任者である文部大臣の言としては甚だ軽卒極まるものであります。無責任な放言と言わなければならないと思うのであります。先ず当日早大に赴いた警官は私服であつて、学生たちに捕われるや、その一名は卑怯にも逃げ出している。而もそのつかまつた一人は、その職業を尋問されるや、飴屋であると僞わつているのであります。而もなお追及されるや、止むなくその正体を告白している有様であります。これが果して正々堂々たる警官の態度と言えるかどうか。若し内心何らやましいことがなかつたならば、制服を着用し、初めから堂々と用件を告げるべきではなかつたかと思うのであります。学生に対する警官の態度は全く欺瞞と不誠意に満ちている。これこそは依然として何ら変りない特高警察のやり方であり、岡つ引き、スパイ根性であります。若しこうしたスパイ活動が許されるなら、学園は今後果してどのような方法で次官通牒の線を守り拔けるか、はつきり伺いたいと思うのであります。木村法務総裁は、学園におけるかかるスパイ行動を依然として容認するのであるかどうか、この点は誰も触れておりませんが、これは、はつきり伺いたい。東大事件のときの反省は何一つ実行されていないじやないか。又かかる卑劣な行動は警察側の奨励或いは黙認の結果であると思うが、どうか。この点、答弁が願いたいと思うのであります。又天野文相はかかる特高警察の行為を是認しようとするのであるか。若し是認するのでなければ、その不当をなじる学生の行為を非合法と断ずることは不当に過ぎると思うがどうか、次官通牒とも併せてこの点確信ある答弁が伺いたいのであります。
 私の第二に質問したいことは、警官の実力行使の問題であります。今更言うまでもなく、政府の通達に基き、学園内に警官が立入るときは、あらかじめその学園当局の許可を受けることは常識であります。然るにこの交渉中押掛けた五百名以上の警官が、何ら島田学長の許可も得ず、更に学生と学園側に解散通告もせず、深夜突然照明彈を合図に突つ込めの号令を下し、野獸のように棍棒を振り上げて学生側に襲いかかつているのであります。この際、警察官側の或る者は、メーデーの仇討だ、殺してしまえ等、あるまじき暴言を吐いているのであります。こうして、学校側の誠意に期待し、事件の平和的解決を待つために、深夜屋外に腰を下して待機していた学生らを泥靴で踏みにじり、これをコンクリートの階下に突き落し、或いは手錠をかけた上更に棍棒でこれを毆打し、教室に逃げた者を又探し求めて毆打逮捕するなど暴虐の限りを盡したのであります。この暴行が如何なるものであつたかは、事件解決のために努力していた二名の教授や報道記者等にも負傷を負わせたこと、なおその教授一名を逮捕していることでも歴然としているのであります。多数の泥靴の下に踏み据えられた一学生は、息がつまつて死ぬかと思つたとこのときの経験を語つておるのであります。これはまさに恐怖以上の恐怖である。こうして学園は鮮血に色どられ、窓ガラスは破壊され、部長室のドアはぶち破られておるのであります。私も翌日直接あの現場を視察した者でありますが、あのコンクリートの路上をどす黒く染めておるところの血痕こそは、まさに残虐極まりないフアシズムの血痕であります。
 昨日の朝日新聞によりますと、吉田総理は事件の直後、たとえ警官の一部に行き過ぎがあつても警官の士気をくじくようなことをするなと自由党の某最高幹部に語つたと言われているが、一体この警官の士気とは何ものであるか。国民の血の出るような税金によつて賄われ元来主権者国民のために奉仕すべき公僕警官が、ここでは全くフアシストの権力によつて私兵化され、狂気のように主権者に襲いかかつている姿を何と解釈すればいいのか。国民は狂犬を飼つた覚えはない、狂犬は嚴重に法により処断されねばならないのであります。ところがこれを処断するどころか、ますますこれにけしかけて国民に咬みつかせ、その士気を鼓舞するために警察法の改正をさえたくらんでいる。これが吉田総理とその一味の諸君のやり方なんであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 今度の早大事件がメーデー事件に名を借りた政府の挑発によつて激化されていることは、過日の木村法務総裁の御答弁からもはつきり窺える。又六日、本院のメーデー事件の緊急質問の場合、社会党左派の重盛君の質問に答えて警官の行動についてあなたは何と答えておるか、私はむしろこれは行き過ぎどころじやない、もつとやつてよかつたのじやないかというくらいですと言つています。これがデモ隊を人民広場に誘いこみその七百名以上に重軽傷を負わせ、そのうち二名行方不明を合せて十名を直接その手で殺した政府の言い草である。やり足りないからもつとやれ、こうした煽動こそが又早大事件の発生したそもそもの原因であります。吉田首相並びに木村法務総裁はこうした政治的責任をどうして負わんとするか、はつきり答弁が願いたい。又警察側の責任者の名前さえもまだわかつていないと言つておるが、こういう者についてどのように一体処罰するのであるか、その見解を伺いたいところであります。従来の吉田内閣のやつておる方法を見ますと、あらゆる場合に警官の責任追及は非常に寛大にしている。(「そうだ」と呼ぶ者あり)国民の責任のみを苛酷に処断して来たが(「その通り」と呼ぶ者あり)全くこれは本末顛倒のやり方であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)まだ早大事件の指揮者の名前もわからないのに、一方ではメーデーの容疑者は聞き込みやその他のつまらない方法でどんどん逮捕しておるが、これが一体本末顛倒でなくて何だ。この点をはつきり答えてもらいたい。こんなことで一国の治安が保たれるかどうかということを私は心配する。この民主主義の危機に対して警官の與えた行動は余りにも重大であります。関係閣僚諸君は果してこの重大性を認識しておるかどうか伺いたいのであります。
 何よりもこの事件を通じて語られた関係者の意見をあなたたちは率直に聞いているかどうか。事実この事件の衝に当りその平和的解決に努力した早大の滝口学生厚生課長は、我々に対してこういうことを語つた。警官の政治的背景と武装力の過信によつて本事件が惹き起されたと言つておるのであります。又九日の早大学生大会に私も(「行つてやじつたろう」と呼ぶ者あり)行つてみたのでありますけれども、或る学生の一体験者は、こんなことを言つている。このような無抵抗でも数十名の負傷者を出した、一体何が何だかわからなくなつた、もうこれ以上無抵抗を続けても果して学園の自治を守れるかどうか、しつかり考え直さなければならないと言つて訴えておるのであります。このような体験談でも明らかなようにこのたびの事件は全く政府のフアツシヨ的挑発によつて惹き起されたものであります。国民も労働者も学生も本来は極めておとなしいものであります。併し新憲法下よもやと思う馬鹿げた暴虐が何回も到る所で繰返されている限り、国民は遂に目覚めざるを得ないのであります。事実主権者国民が独裁者により全くその意図に反してその生命の安全をさえ脅されるフアシズムの下では、国民は好むと好まざるとにかかわらず自衛の手段を講ぜざるを得ないのであります。メーデーに端を発した、かの人民広場の紛争もこうして惹き起されたものにほかならないのであります。ここには事件の本質的差異は少い。血に飢えた警官のテロリズムによる暴圧が続く限り、国民はその意思を統一して、これらの暴虐と圧政に対して反抗して闘わざるを得ないのであります。
 第三に私が質したいことは、この問題の善後措置の問題である。天野文相はメーデー事件直後、都下の学校長会議を開き、又本月下旬に全国の公立、私立大学長会議を開いてその善後措置を図るといつております。併し事件の本質を離れた末梢的な対策が一体何になるであろうか。天野文相は数十回となく巻き起されたこの種学園の紛争事件をいつも一部不穏分子の煽動によるものであるとかろがろしく片付け、学生はこれらの策動に乗せられることなくその本分たる勉学にいそしむべきであると訓示をされているのであります。ところで事実は果して文相の言う通りであろうかどうか。事件の皮相を見てその真相を見ないようなこういう解決策は、これは問題にならないと思います。学園の現実を見て御覧なさい。事実教育予算は大幅に削られている。大学の研究は名目のみで一向にその内容が充実せず、教授、学生の多くは講和後の今日もなお依然としてアルバイトを続けている現状である。而も再軍備は強行され軍事費の圧迫はますます教育の正常な運営をさえ困難ならしめているのであります。而もこれら基礎的な予算の獲得には殆んど無力にひとしいところの天野文相は、口を開けば金のかからない道義の高揚、国民実践要領、君が代と修身、漢文復活等々に憂身をやつして軍国調を奏でているのである。そうしてこうしたちんどん屋的政治が繰返されている間に、学園の前途には今大きな穴が待ちかまえているのである。それはほかならない再軍備、徴兵等一連の戦争政策であります。これが又青少年学徒たちをその渦中に巻き込まんとする戦争の恐怖は消そうとしても消すことのできない悪夢であります。青少年たちにとつては悪夢であります。これら最近の青少年の絶望にも似たる不安について、天野文相は親しく青少年の間に身を置きその心理に立ち入つて考えたことがあるかどうか私は伺いたい。殊に終戦直後七カ年、日本の若い学徒は戦争放棄と平和絶対維持の新憲法の精神をその綱領として教育されて来たのである。「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと注意した。」云々、これは言うまでもなく憲法の前文中の一部でありますが、学園の講堂で、教室でその教授たちが半ば熱をおびさえして繰返し語られたのであります。然るにイールズ旋風以来この情勢は急に右旋回しつつある。イールズ旋風こそはアメリカ帝国主義者の日本再武装並びにその不沈空母化を達成し、青少年をアメリカの弾よけにしてその祭壇に供せんとする精神的地均しにほかならなかつたのでありますが、こうした地均しを通じて今や学園の到る所に警察予備隊の幹部募集のビラは貼りめぐらされ、特高、スパイが勝手に学内に出入して憚らないのである。
 こうした矢先に二月四日に吉田総理はトルーマン並びにダレス氏に書簡を送り、サンフランシスコにおける日本再武装並びに太平洋軍事同盟参加への誓いを新たにし、その中で、併し現在日本国内の動向を観ずれば、いわゆる再軍備に反対する公然たる声が聞かれ、その他原爆基地の設定、海外出動等についての反対があり、女性並びに青年の間にこの叫びが強烈に挙つており、而もその動きに乗じた左翼共産分子の潜行的策謀は日に日に深刻性を加えている云々と述べ(「質問をしろ」と呼ぶ者あり)今はこれらのものを刺激することが得策でないので、情勢の変化を待つて憲法を改正し、その期待に応えたいと結んでおるのであります。従つて青少年、特に若い学徒に対する政府の弾圧が如何にこれらの策謀と深く結んでおるかを思うべきであります。青年、婦女子にむしろ沈黙を強いることなしに憲法改正をすることはできない、憲法改正なしには全き再軍備は覚束ない、こうした焦躁感にあせつた吉田総理とその一味があたかも狂気のごとく学園を弾圧し、ピストルと棍棒の雨を降らせているかは想像するにかたくないところであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)併しこれらの危機を本能的に感知すればこそ、外国の彈よけとして職場に赴くよりは牢獄をも辞せず、民族の独立と平和のために結集する、これが青年の愛国心の迸りであります。然るに政府はかかる愛国的青年の止むに止まれぬ行動を暴徒になぞらえ、その虐殺のためにあらゆる暴圧の手を振つて顧みないのであります。現に法政大学近藤巨士君のごときは致命傷でもなかつたのに、警察官がしばしば病院を襲つて強制訊問し、その結果病状が悪化して遂に死に至つておるのであります。メーデー事件と早大事件の本質はここにある。こうした本質を親心によつて十分に理解することなしに、天野文相の訓示は滑稽であると言わなければなりません。これでは如何に全国支部長会議を開いても、その内容は古ぼけた思想対策と精神総動員強化の策謀以外の何ものでもないというふうにならないとは言えないのであります。もはや口先だけの観念哲学だけではこれら青少年の行動を以てするこの立上りに対して、これを阻止することは私はできないと思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は天野文相にここでお聞きしたい。天野文相はかかる青年心理を具体的にどのようにしてつかんでおるか、又つかまんとしておるか。そうしてこういうような具体的な事実の上に立つてでなければ絶対にこれは教育の行政もできないし、又今度の早大事件のような問題も解決することは覚束ないということをはつきり申上げまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
#73
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
 最初山本巡査がその身分を明らかにしなかつたことは手落ちであります。併しながらその身分を明らかにしておつたにもかかわらず、文学部三百二号教室にこれを軟禁したということは、これは学生の行き過ぎであつて、これは島田総長も遺憾の意を表しておられるのであります。併しメーデーの事件とこの早大事件とは全くその本質を私は異にしておるものだと思います。メーデーの事件は私は一種の暴動だと考えております。早大事件につきましては、全く行き違いでありまして、(「警察官の暴動だぞ」と呼ぶ者あり)この実力の行使についての点、それは連絡及び発動の点についての遺憾の点が私はあると考えておるので、目下検察庁において調査中であるということを申上げたいのであります。(「都合の悪いことは皆調査中だ」「その他の政治責任は……、」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕
#74
○国務大臣(天野貞祐君) 学生はこの次官通達の意味を十分理解していなかつたためであろうか、初め学生のとつた点は私は不妥当だと思います。これは早稻田のほうでもお認めになつておる点でございます。
 第二に、私が大学学生の心理状態を知らないとおつしやいますが、私は多年大学におり、(「何年いたつて駄目だ」と呼ぶ者あり)現在もさまざまな一高の卒業生とたびたび会見して彼らの意見を聞いております。一方的な或る団体の意見だけを聞いておられるかたよりも広く聞いておる私のほうが学生心理を知つておると思います。(「そんなことはわかつておるのだ」と呼ぶ者あり、拍手)
     ―――――・―――――
#75
○副議長(三木治朗君) 日程第一、図書館法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。文部委員会理事木内キヤウ君。
   〔木内キヤウ君登壇、拍手〕
#76
○木内キヤウ君 只今上程されました図書館法の一部を改正する法律案についての文部委員会における審議並びにその結果を御報告申上げます。
 教育、教化の事業は学校教育と社会教育とを車の両輪のごとき観点に立つてこれを推進することが教育基本法の趣旨でありますが、社会教育の重要施策としての図書館の運営よろしきを得るためには、その重責に任ずべき教養ある司書を養成し、而してそれらの教養ある司書を充実することが現在急務の一つとなつておるので、この要請に応えるために本法案を提出したのであるということが政府の提案いたしました理由であります。
 本案の骨子といたします主なる点は、第一点に司書の資格を得させるための講習を開くことのできたのは、従来の学芸学部又は教育学部のある大学に制限されてありましたのを、図書館に関する科目を置いてある大学ならば、文部省の認定があれば司書養成の講習をしてもよろしい、従つて一定單位の受講を完了すれば司書の資格が與えられることとするということであります。
 第二点は、従来司書養成の講習を受けることのできる資格は、小学校、中学校、高等学校の教員の二級免許状を持つておる者以上でなければならなかつたのでありますが、これを改めまして、小学校、中学校、高等学校教員の仮免許状を持つておる者であれば受講資格があることにいたしましたのであります。
 委員会といたしましては、愼重審議を重ねたのでありますが、その間委員の質疑応答の主なるものを申上げますと、おおむね次のごとき諸点であります。
 図書館運営の現状如何との質疑に対して、図書館数は図書館法制定前に比較しますと少くなつておるが、これは図書館と称し得べき施設を持つておる基本的要件を具備したものに限つたためなのであつて、図書館の蔵書の数においても、利用者の数においても、最近一年間の増加は著しいものがあるとの政府の答弁であります。図書館の施設拡張、改善及び司書養成講習受講者に対する政府の助成の増額についての所見を質したのに対して、社会教育全般の予算が少額であることは誠に遺憾でありますが、その助成に格段の努力を拂う旨の政府の答弁がありました。司書の資格及びその養成講習についての受講資格を制限せず、文化的教養のある適当な人ならば、むしろ進んでこれらの人に資格を與え、又は受講させて、司書の資格を與えることが社会教育の官僚統制化を防止するゆえんではないかとの質疑に対し、司書の職責に鑑みて公に認められた資格に限定しなければ、その素質の向上を期することができないとの政府の答弁であります。
 かくて質疑を終り討論に入りました。岩間委員よりは、司書の資格を限定してある本法案は、民間有為の人材を図書館運営に参画することを妨げるものであるし、図書館運営に関する予算措置又不十分であるとして反対意見の開陳があり、その他の委員よりは図書館運営に関する予算の裏付が不十分であること、受講者に対する負担の軽減についての考慮が拂われていないことなどの点は極めて遺憾であるが、将来十分この点に関心を拂い善処するこの政府の答弁の誠意を了承し、この点に大きな期待と要望をし、他の点についてはおおむね改正案の趣旨目的を妥当なるものとして賛成の意見が述べられました。
 採決の結果多数を以て本案は可決すべきもの決定いたしました。なお、詳細は会議録を御参照をお願いいたします。
  以上を以て報告といたします。
#77
○副議長(三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#78
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#79
○副議長(三木治朗君) 日程第二、麻薬取締法及び大麻取締法の一部を改正する法律案、(内閣提出)日程第三、国民健康保険再建整備資金貸付法、(内閣提出、衆議院送付)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#80
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長梅津錦一君。
   〔梅津錦一君登壇、拍手〕
#81
○梅津錦一君 只今議題となりました麻薬取締法及び大麻取締法の一部を改正する法律案について、厚生委員会の審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 先ず政府の提案理由を申上げますと、改正の第一点は、現行の麻薬取締法におきましては、国民の医療上簡單に使用できる家庭麻薬の生産が一般麻薬の生産と全く同様の強い規制を受けておりますため、甚だしい不便をこうむつておる状況でありますので、新たに家庭麻薬専門の製剤業者及び卸売業者の業種を増加し、その販売手続をも簡略にし、国民の利益を図ることといたしたのであります。第二点は、近い将来麻薬保有量の不足等のため外国より輸入が予想せられるのでありますが、この麻薬の輸入の手続について詳細な規定を設けたことであります。第三点は、近時麻薬に関する違反事犯の増加しておる状況に鑑み、営利或いは常習の目的でなす事犯については、特に刑罰を加重いたしまして麻薬事犯の撲滅を図り、国際的信用を得ると同時に、取締面の完璧を期したことであります。
 次に大麻取締法につきましては、大麻の増産を図るため大麻取扱者の報告を緩和いたした点でございます。
 以上がこの法案の内容並びに提案理由の大要でありますが、本委員会におきましては、三月二十五日政府より提案理由の説明を聴取いたしました後、五月八日及び九日に委員会を開きまして政府に対する質疑を行い、愼重に審議を重ねて参つたのでありますが、その詳細は速記録により御覧を頂きたいと存じます。かくて質疑を打切り、討論を省略いたしまして、直ちに採決に入りましたところ、全会一致を以て本案は可決すべきものと決定いたしました次第でございます。
 以上御報告を終ります。
 次に、国民健康保険再建整備資金貸付法案につきまして厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 御承知の通り国民健康保険は、昭和十三年に実施されまして以来、次第にその重要性を認められて今日に至り、現在保險者数約五千余、被保険者数約二千四百万人を数えておりますが、併し多くの保険者には診療報酬の未拂があり、事業の運営は決して容易でない現状でありまして、今回この診療報酬の未拂を解消し、国民健康保險の再建整備を助成するため国庫から資金を貸付けることと相成りましたので、この法律案の提出を見た次第であります。
 この法律案の要点は、第一に昭和二十六年度末までの未拂診療報酬を解消するため、貸付の要件に該当する保險者に対し、昭和二十七年度から昭和二十九年度までの三カ年間に貸付金を貸付けることであります。
 第二点は、貸付の要件でありますが、保険料收納割合が百分の七十以上、一部負担割合が百分の五十以下等であり、且つ保險料收納割台が年度ごとに次第に向上することを要件としております。
 第三点は、貸付の條件であります。貸付期間は五年以内の据置期間を含め十年以内といたしまして、年利六分五厘の元利均等年賦の方法により償還することといたしておるのであります。
 以上がこの法律案の提案理由並びに要点でありますが、衆議院におきましては次の二点に関し修正の上議決されたのであります。即ち修正の第一点は、貸付金の据置期間は、政府原案では「五年以内とする」とあつたのを、「貸付を受けた年度における貸付の期間及び当該年度の次年度から三年間とし、据置期間中は、無利子とする。」としたこと。第二点は、附則におきましては、この法律は、「昭和二十七年四月一日」から施行するとあつたのを、「公布の日」から施行するとしたことであります。
 厚生委員会におきましては政府当局から本案の提案理由並びに法案の内容につきまして詳細なる説明を聴取した後、この法案の審議を終つてから、厚生委員会内に設置してある保險経済に関する小委員会に付託いたしたのでありますが、小委員会におきましては愼重審議の結果、次のような要望事項を附して、原案を承認することに決定いたした旨小委員長から報告を受けた次第であります。
 即ち要望事項といたしまして、一、貸付金の貸付要件を具備しない保險者についても、貸付金の貸付により、事業を再建することが可能であると認められるものに対しては、第三條の特別の事由の適用範囲を広く解釈して、貸付金の貸付を行うこと。二、診療報酬の未拂額に対して貸付金の予算額は極めて少額である。よつて本年度における補正予算又は次年度における予算において貸付金の予算額を増額すること。三、この貸付金の貸付は昭和二十六年度末までの診療報酬の未拂を解消することだけを目的としているが、昭和二十七度以降に生ずる診療報酬の未拂に対しても貸付を行うことを考慮すること。四、財政難に陷つている保險者に対する国の財政的援助としては、この貸付金だけでは極めて不十分であるから、是非とも給付費に対する国庫補助を早急に実現すること。五、国民健康保險の現状を徹底的に再検討し、実情に即応した適切なる根本策を確立すること。以上の通りでありまして、厚生委員会におきましては、全員異議なくこれを承認いたした次第であります。なお委員会並びに小委員会を通じまして、審議の過程において活溌な質疑応答が交わされたのでありますが、その詳細は速記録によりまして御承知願いたいと存ずるのであります。
 かくて討論省略の上、採決いたしました結果、全会一致を以ちまして衆議院送付案通り、可決すべきものと決定いたした次第であります。
 右御報告申上げます。(拍手)
#82
○副議長(三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
 先ず麻薬取締法及び大麻取締法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#83
○副議長(三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
     ―――――・―――――
#84
○副議長(三木治朗君) 次に国民健康保險再建整備資金貸付法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#85
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#86
○副議長(三木治朗君) 日程第四、貴金属管理法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長平沼彌太郎君。
   〔平沼彌太郎君登壇、拍手〕
#87
○平沼庸太郎君 只今上程されました貴金属管理法の一部を改正する法律案の大蔵委員会における審議の経過並びに結果を申上げます。
 本案は現行法に規定されている銀及び白金族地金に関する統制を撤廃すると共に産金の振興を図る見地より、金地金についても貨幣用以外の金は妥当な範囲でプレミアム付価格による売買を認めることといたすため、所要の改正を行おうとするものであります。
 次に改正点の主なるものを申上げますと、第一に法律の題名を「金管理法」に改めるほか、「貴金属」を「金」に改める等の字句改正を行い、銀及び白金族地金に関する政府買入及び売却の制度を廃止しようとするものであります。第二に、政府所有の金地金を直接需要者に売却する現在の制度を改め、需要者に体しては従来通り割当を行うと共に、その割合に見合う金地金は、政府に納入した金鉱業者等に対してそれぞれ納入量の割合に応じて売戻しを受けた後、政府の拂下価格を超えるプレミアム付価格で需要者に売却することを認めることとし、これに伴い、その取引の円滑化を図るため、新たに中間売買業者として、主務大臣の認可する加工用金売さばき業者を設けようとするものであります。第三に、金地金取引価格の国際的性格等に鑑み、主務大臣は金鉱業者等及び加工用金売さばき業者が金地金を売却する場合の最高価格を定めるほか、需給調整上必要あるときは、その所有する金地金の売却に関して所要の指示を行い得るよう規定しようとするものであります。
 本案につきましては、通商産業委員会と連合審査をいたします等、愼重に審議いたしたのでありますが、その詳細は速記録によつて御承知願います。
 かくて討論採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定した次第であります。
 右御報告申上げます。(拍手)
#88
○副議長(三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。一本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#89
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#90
○副議長(三木治朗君) 日程第五、国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。運輸委員会理事岡田信次君。
   〔岡田信次君登壇、拍手〕
#91
○岡田信次君 只今上程になりました国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 先ずこの法律案の要旨を申上げますと、第一は、現行の規定では、登録を受けたホテル及び旅館の営業用の固定資産に対する特例耐用年数の適用が、従来法人所有のものに限られておりましたのを、個人所有のものにもその適用範囲を拡大したことであります。第二は、昨年五月に実施されました所得税法取び法人税法関係令規の改正に伴いまして、一般のホテル及び旅館の営業用固定資産の耐用年数が大幅に改正になりました。そこでこれらとの均衡を図るために、本法の適用を受ける登録ホテル及び旅館についても特例耐用年数の改正を行なつたことであります。第三は、外客の宿泊施設として真に適当なるホテル及び旅館の資格を備えさせるために登録基準の引上げを行なつたことであります。以上の三点がその要点であります。
 次に運輸委員会における主なる質疑について申上げますと、先ずこの改正案により登録基準が引上げられました場合、現在の登録ホテル及び旅館のうち、失格する者の有無について質しました。その結果、ホテルにつきましては、殆んど全部が現状のままで適格條件に適つているが、旅館については、多少改造或いは客室の増設を必要とするものがあるが、基準に適合させる施設の改良については、本改正法施行後三カ年間の猶予期間が認められているから、その間に適格條件を取得するものと思うとの政府委員の答弁がございました。次に、耐用年数の改正についてなお短縮させる余地がなかつたかとの質問については、この法律施行当時すでに大幅な特例耐用年数を認めて来たので、今回改正しようとする程度の短縮はホテル、旅館の収益状態から見ても適当であると認めたとの政府委員の答弁でありました。その他若干の質疑がありましたが、これらについては速記録について御覧願いたいと存じます。
 質疑を終り続いて討論に入りましたところ、高田委員より、この改正法律案では助成の方法が甚だ微温的であるが現行法よりは一歩前進するもので、その意味において賛成する旨、並びに今後の情勢によつて一層の助成も希望する旨の意見の開陳がありました。これで討論を終り直ちに採決に入りましたところ、全会一致を以ちまして原案通り、可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申上げます。(拍手)
#92
○副議長(三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#93
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
 本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第、公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時五十一分散会
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した事件
 一、新議員の紹介
 一、常任委員の指名
 一、議員の請暇
 一、議員派遣の件
 一、早大事件と最近における警察の実力行使に関する緊急質問
 一、早大事件に関する緊急質問
 一、最近続発しつつある学園事件、政治教育、学生運動等に関する緊急質問
 一、人権擁護に関する緊急質問
 一、警察の学園干渉に関する緊急質問
 一、日程第一 図書館法の一部を改正する法律案
 一、日程第二 麻薬取締法及び大麻取締法の一部を改正する法律案
 一、日程第三 国民健康保險再建整備資金貸付法案
 一、日程第四 貴金属管理法の一部を改正する法律案
 一、日程第五 国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案
ソース: 国立国会図書館
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