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1951/07/01 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第59号
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1951/07/01 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第59号

#1
第013回国会 本会議 第59号
昭和二十七年七月一日(火曜日)
   午前十時四十四分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第六十号
  昭和二十七年七月一日
   午前十時開議
 第一 議長不信任決議案(棚橋小虎君外二十四名発議)(委員会審査省略要求事件)
 第二 破壊活動防止法案(内閣提出、衆議院送付)(前会の続)
 第三 公安調査庁設置法案(内閣提出、衆議院送付)(前会の続)
 第四 公安審査委員会設置法案(内閣提出、衆議院送付)(前会の続)
 第五 法廷等の秩序維持関する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第六 昭和二十三年六月三十日以前に給與事由の生じた恩給の特別措置に関する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第七 農林漁業組合再建整備法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第八 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約に基き駐留する合衆国軍隊に水面を使用させるための漁船の繰業制限等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第九 昭和二十六年産米穀の超過供出等についての奨励金に対する所得税の臨時特例に関する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第一〇 製塩施設法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一一 航空法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一二 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約に基く行政協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一三 農地法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一四 農地法施行法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一五 輸出取引法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一六 航空機製造法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一七 特定中小企業の安定に関する臨時措置法案(衆議院提出)(委員長報告)
 第一八 電源開発促進法案(衆議院提出)(委員長報告)
 第一九 中華民国との平和条約の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
 第二〇 北太平洋の公海漁業に関する国際条約及び北太平洋の公海漁業に関する国際条約附属譲定書の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
 第二一 インドとの平和条約の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
    ―――――――――――――
#2
○副議長(三木治朗君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○副議長(三木治朗君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議長不信任決議案(棚橋小虎君外二十四名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題といたします。
 草葉隆圓君から、賛成者を得て、本決議案の趣旨説明を十分以内、質疑及びそれに対する答弁はおのおの五分以内、(「反対」と呼ぶ者あり)討論は各五分以内とすることの動議が提出されております。(「委員会審査省略の決定を……」「議題とするかしないかをきめてからだ」と呼ぶ者あり)
 草葉隆圓君の動議の採決をいたします。表決は記名投票を以て行います。草葉君の動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔「おかしいぞ」と呼ぶ者あり〕
#4
○副議長(三木治朗君) 先ほどの発言を取消します。
 本決議案につきましては、棚橋小虎君外二十四名より委員会審査省略の要り求書が提出されております。発議者要求の通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案の審議に入ることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。
 草葉隆圓君から、賛成者を得て、本決議案の趣旨説明を十分以内、質疑及びそれに対する答弁は各五分以内、(「反対」と呼ぶ者あり)討論は各五分以内とすることの動議が提出されております。「ひどいじやないか」「常識がないぞ」と呼ぶ者あり)
 草葉隆圓君の動議の採決をいたします。表決は記名投票を以て行います。草葉君の動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。(「こんな記名投票の間に十五分たつじやないか」「そんなら記名投票をやめろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#6
○副議長(三木治朗君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#7
○副議長(三木治朗君) 投票の結果を報告いたします。
 投票総数百四十三票、
 白色票九十六票、
 青色票四十七票、
 よつて本決議案の趣旨説明は十分以内、質疑及びそれに対する答弁はおのおの五分以内、討論は各五分以内とすることに決しました。
     ―――――・―――――
   〔参照〕
賛成者(白色票)氏名  九十六名
   藤森 眞治君  藤野 繁雄君
   野田 俊作君  中山 福藏君
   徳川 宗敬君  田村 文吉君
   伊達源一郎君  館  哲二君
   竹下 豐次君  高橋龍太郎君
   高橋 道男君  高瀬荘太郎君
   高木 正夫君  杉山 昌作君
   新谷寅三郎君  西郷吉之助君
   小宮山常吉君  小林 政夫君
   楠見 義男君  河井 彌八君
   加藤 正人君  柏木 庫治君
   加賀  操君  小野  哲君
   岡本 愛祐君  梅原 眞隆君
   井上なつゑ君  石黒 忠篤君
   赤木 正雄君  山川 良一君
   村上 義一君  島津 忠彦君
   上原 正吉君  岡田 信次君
   青山 正一君  中川 幸平君
   九鬼紋十郎君  大矢半次郎君
   郡  祐一君  廣瀬與兵衞君
   加藤 武徳君  城  義臣君
   植竹 春彦君  山本 米治君
   古池 信三君  小杉 繁安君
   山縣 勝見君  石川 榮一君
   木村 守江君  大谷 瑩潤君
   深水 六郎君  草葉 隆圓君
   左藤 義詮君  大島 定吉君
   小林 英三君  中川 以良君
   川村 松助君  寺尾  豊君
   宮城タマヨ君  溝口 三郎君
   三浦 辰雄君  堀越 儀郎君
   小野 義夫君 大野木秀次郎君
   宮田 重文君  西川甚五郎君
   田方  進君  秋山俊一郎君
   鈴木 直人君  石村 幸作君
   長谷山行毅君  石原幹市郎君
   鈴木 恭一君  愛知 揆一君
   安井  謙君  平林 太一君
   長島 銀藏君  竹中 七郎君
   菊田 七平君  溝淵 春次君
   團  伊能君  瀧井治三郎君
  池田宇右衞門君 前之園喜一郎君
   油井賢太郎君  北村 一男君
   中山 壽彦君  白波瀬米吉君
   岩沢 忠恭君  西田 隆男君
   大屋 晋三君  黒川 武雄君
   横尾  龍君  境野 清雄君
   大隈 信幸君  谷口弥三郎君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名  四十七名
   千葉  信君  三輪 貞治君
   三橋八次郎君  若木 勝藏君
   小酒井義男君  栗山 良夫君
   三好  始君  荒木正三郎君
   内村 清次君  羽生 三七君
   高田なほ子君  吉田 法晴君
  深川榮左エ門君  岩木 哲夫君
   岩男 仁藏君  菊川 孝夫君
   河崎 ナツ君  一松 定吉君
   櫻内 辰郎君  堀木 鎌三君
   岡村文四郎君 小笠原二三男君
   須藤 五郎君  岩間 正男君
   兼岩 傳一君  鈴木 清一君
   岩崎正三郎君  大野 幸一君
   上條 愛一君  東   隆君
   田中  一君  矢嶋 三義君
   永井純一郎君  吉川末次郎君
   カニエ邦彦君  島   清君
   小林 亦治君  相馬 助治君
   山下 義信君  赤松 常子君
   伊藤  修君  棚橋 小虎君
   波多野 鼎君  原  虎一君
   曾祢  益君  下條 恭兵君
   片岡 文庫君
     ―――――・―――――
#8
○副議長(三木治朗君) よつてこれより発議者に対し趣旨説明の発言を許します。原虎一君。
   〔原虎一君登壇、拍手〕
#9
○原虎一君 只今上程になりました佐藤議長不信任決議案の趣旨弁明を、日本社会党第二控室を代表いたしまして、これより御説明を申上げます。
 先ず議長不信任決議案を朗読いたします。
  本院の議事を連日混乱に陷れ、そ
 の権威を失墜せしめた責任は、佐藤
 参議院議長の負うべきものである。
  右決議する。
 日本の民主主義は今危機にあります。民主主義を防衛し得るかどうかは、国会の権威が保たれるかどうかにかかつておるのであります。我々の責任は誠に重大であると言わなければなりません。この精神に鑑みまして本不信任案を上程いたした次第であります。説明に先だちまして先ず破壊活動防止法案に対する我々の態度を明確に表明いたします。天下の悪法と称せられる破防法案について、衆議院における審議不足を補うため、本院において愼重に審議し、悪法の本質を暴露いたしまして、合理的なるあらゆる手段によつてその成立を阻止せんとするものであります。(「合法的にやれ」と呼ぶ者あり)合法的は前提に申上げたはずであります。
 次に、佐藤議長不信任の理由と、事ここに至りました経過を申上げたいと思います。今回の不幸なる議場混乱の最大の原因、吉田総理の参議院軽視にあると断言するものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)吉田総理は、自党のために、緑風会工作には、夜半といえども一族郎党を引連れて緑風会控室を訪問することはたびたびでありますが、(拍手)法案審議のため、法に基く出席要求にもかかわらず、頑として応じないという傲慢なる態度をとり来たつたのであります。(「総理の資格なし」「ひがめ」と呼ぶ者あり)第二の理由、自由党の四役にして参議院自由党会長大屋晋三君が、佐藤議長提示の調停三條件を承認しておきながら、これを履行する信義と勇気と熱意に欠けたことであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)大屋君をして裏切らざるを得なくせしめたのは吉田総理にあると言わなければなりません。自由党の諸君は、左派社会党や共産党がめちやくちや過ぎるから、公約は御破算にしたと主張し、一昨夜のラジオ討論会においても、保利官房長官が得々として主張しているのを聞いて、私は唖然としたのであります。(「恥かしかつたろう」と呼ぶ者あり)私は自由党の諸君に強く反省を求めるものであります。議長提示の調停三條件は、第一に国会法第十三條の改正、第二に川村運営委員長の辞任の承認、第三に本院運営の正常化の三つであつたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)然るに諸君は国会法第十三條改正だけを御破算にし、諸君の同志川村松助君の運営委員長復帰をなぜ諮られないのであるか。諸君は三十六日の夜、議長職権による本会議において寺尾君を運営委員長に選任しました。(「諸君とは誰だ」と呼ぶ者あり)諸君は、公約の一つは御破算にし、一つは守つているとすれば、余りにも不可解ではありませんか。(「そうだ」「その通り」「ノーノー」と呼ぶ者あり)又議長室で各派代表懇談会のとき、国会法改正については、特に議長から念を押され、大屋、草葉両代表は我が会派は賛成であると言明したことは、同席の全員の認めるところであり、自由党はこの條件を検討するために我々野党や緑風会に二十八時間も待たしたではありませんか。(「冗談言うな」と呼ぶ者あり)緑風会代表として出席された高瀬、徳川の両君も、この事実は否定できないでありましよう。大屋、草葉の両君を初め国会法の改正が正しいと信じて同意したのでありますならば、他の理由で公約を御破算にしたとしても、赤木君の提案には当然賛成投票をするのが天下の公党としてとるべき態度であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)然るに、一度正しいと信じて公約をしたが、翌日吉田総理から強く反対を受けたのでこれを本院で否決しなければならない。(拍手)そのためには公約を御破算にするよりほかに途がなく、かかる不信行為をあえてやつたのであると非難されても、弁解はできないでありましよう。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 次に緑風会の諸君にお聞きいたしたい。紳士の集団と自負され、是々非々の立場を堅持すると称される諸君が、何故に前述のごとき自由党の不信行為に同調されたのでありますか。徳川会長は各派代表懇談会において明らかに賛意を表しておられる。然るに、左派社会党の態度に理由付けて自由党と同一に豹変されたことは、全く理解に苦しむところであります。(「当然だ」と呼ぶ者あり、拍手)緑風会の諸君は本日のこの不信任案には反対されるでありましよう。併し、去る二十八日の赤木君の提案に全員反対投票をされたことは、議案は異なるのでありまするが、明らかに議長不信任の意思表示と指摘されてもいたし方がありますまい。(拍手)又そうでなければ余りにも感情によつて意思を左右したというそしりは免れないのであります。かくのごとき態度をとられては、今日の緑風会は自由党の分家となりつつあるとの非難をされても止むを得ないでありましよう。佐藤議長はかくも自派に裏切られ、自由、緑風両派の不信行為によつて本院の運営はますます紛糾に陷り、一方、左派社会党は破防法案上程に極力反対しておりましたが、(「その通り」と呼ぶ者あり)去る二十七日議長職権による会議にみずから破防法案上程の音頭取りとなり、(「嘘を言うな」と呼ぶ者あり)自会派から糺弾されたばかりでなく、労働大衆より強く(「お前たちは何をしておつたか」と呼ぶ者あり)攻撃されたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そのためか、翌日の本会議には野党連合に一言のお断わりもなく突如として佐藤議長不信任案を提出して、(「何を言うか」と呼ぶ者あり)その後、合法、非合法、あらゆる議事妨害手段を強行するに至り、(発言する者多し、議場騒然)世論はいよいよ参議院に対して非難を浴びせるに至つたのであります。
 かくて一昨々日、左派の議事遷延手段である自由党議員に対する懲罰動議が提出されておるにもかかわらず、(「何を言うか」と呼ぶ者あり)佐藤議長は、自由党小林英三君の動議を事前に打合せておきながら、突如議場において採択したため、議場は大混乱に陷つたのであります。この議長のとつた処置は、明らかに国会法、参議院規則を無視するものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)議場を混乱に陷れた重大なる責任はまさに議長にありと断ずるものであります。(拍手)それであればこそ左派社会党の諸君は再び議長不信任案を提出したのではないか。議長は本院の紛糾混乱を収拾することができないばかりでなく、去る二十八日衆議院と四度の会期延長を決定するに当り、何ら本院の意思決定をすることができず、衆議院の意思のままに決定せしめたことは、我が参議院の権威を失墜するも甚だしいと断ぜざるを得ません。(拍手)昨夜本議場において議決されたる参議院審議権尊重に関する決議を議長は銘記されたいのであります。議長は、昨日に至り、左派社会党が議長不信任案と大屋晋三君の……。
#10
○副議長(三木治朗君) 原君、時間が参りました。
#11
○原虎一君(続) 懲罰動議を取下げることを申出で、議長斡施により(「嘘をつくな」と呼ぶ者あり)左派社会党、自由党、緑風会とが協定して、破防法案審議を僅か(発言する者多し、議場騒然)一日半で打切ることとなつたから承認されたいとの申入れが我が会派に示されたのであります。
#12
○副議長(三木治朗君) 原君、時間が大分過ぎました。
#13
○原虎一君(続) 我々は議長が何人と協議して……。
#14
○副議長(三木治朗君) 時間が大分過きましたから……。
#15
○原虎一君(続) 事をまとめようとも、何ら干渉するものではありません。併し、天下の注目の的である……。
#16
○副議長(三木治朗君) 簡潔に終つて頂きたい。時間が大分過ぎました。
#17
○原虎一君(続) 重要なる、而も議長の不信任案です……(「きまつたぞ」「やれやれ」「懲罰々々」と呼ぶ者あり)破防法案審議時間を、我々も又社会も納得できるものを、去る二十一日以来本院を紛糾に陷れ、秩序と品位を棄した者に対する(「時間無視」と呼ぶ者あり)條理にかなうけじめが立派に付けられなければならないことは理の当然であります。(「結論々々」と呼ぶ者あり)
#18
○副議長(三木治朗君) おやめにならないと……。
#19
○原虎一君(続) 議長、結論に入ります。
#20
○副議長(三木治朗君) 結論というのじや駄目です。もう時間が大分過ぎましたから。
#21
○原虎一君(続) 議長が急速にその適切なる処置をとらないために、遂に自由党から多数に亘り懲罰動議を提出するところとなり、重ね重ね本院の名誉を……。
#22
○副議長(三木治朗君) 発言を打ち切つて頂かないと困ります。
#23
○原虎一君(続) 汚すも甚だしいと言わなければなりません。私はあえて議長に質問いたします。議長は、本院の運営を誤まり、社会の激しい指弾を受けた重き責任を何を以て償わんとするのでありますか。
#24
○副議長(三木治朗君) 時間をお守り下さらないと発言を禁止しますよ。
#25
○原虎一君(続) 議長は、ただただ自己に突きつけられた左派社会党からの不信任案が取下げられ、破防法案が短時日に採決されれば事足れりとするのでありますか。議長の……。
#26
○副議長(三木治朗君) 発言を禁止します。(「やれやれ」「時間を守れ」と呼ぶ者あり)
#27
○原虎一君(続) あとの残りは速記に任ぜます。
 以上佐藤議長の不信任案の説明を終了いたします。(拍手)
#28
○副議長(三木治朗君) 質疑の通告がございます。順次発言を許します。矢嶋三義君。
   〔矢嶋三義君登壇、拍手〕、
#29
○矢嶋三義君 提案者に御質問をいたします。提案理由を承わつていますというと、議長を不信任するのには苛酷であるというような印象を受けたわけでございまして、若干御質問申上げたいと思います。
 このたびの混乱の理由と、いうものが、一つには自由党国会対策委員諸君の無能というものが挙げられると思うのでございます。と申しますのは、参議院の議運なり本会議の動向の見通しを誤まつて、国会の延長十日と決定して、これを衆議院に送り込んだ後に、而も本参議院本会がこれの意思決定をなし得なかつたというこの見通しの誤まり、更に、あの人格円満な、重厚な政治家であるところの小野法務委員長の懲罰動議がかかりましたが、あの場合も、小野法務委員長はその説明をしないことになつておつたのにもかかわらず、自由党の国会対策委員の諸君は、小野委員長をして無理やりに登壇せしめて、かくのごとき事態を招来したのも、これも自由党の国会対策委員諸君の無為無能のもたらすところでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 更に昨日、本会議は十日間の会期延長を決定いたしましたが、それに先立つて二十八日の議院運営委員会に諮り、その議運の決定を議長をして衆議院議長にこれを伝えさすべきであつたにもかかわらず、議運に諮ることなくして即ち我が参議院の議長をして衆議院議長に回答をさせることなく、一方的に衆議院が三十日を議決して我々に押し付けたというこの形は、又自由党の国会対策委員諸君の無為無能のもたらすところでございます。次に自由党幹部の政治的不信が考えられると思うのでございます。二十四日夜の代表者会議に対するところの申合せについて、少くとも参議院自由党はこれについて責任を持つというような発言を佐藤参議院議長の面前で明言しながら、而も本会議に入るに先立つて佐藤参議院議長に一言の弁明もすることなく、本会議場において青天の霹靂のごとくこれに青投票をいたして議場を混乱に陷れました。この政治的不信と、更にもう一点重大なのは、自由党の諸君が(「神経衰弱的」「何だそれは質問か」「やれやれ」と呼ぶ者あり)二十八日小林君の動議を、目に見えないところの暴力を以てなそうとした。その目に見えないところの暴力は目に見えるところの暴力を誘発した。そこに議長は休憩を宣せざるを得ない状況になつた。これらの自由党幹部の政治的不信、自由党国会対策委員諸君の無為無能と、多数を恃んだところの陰険な暴カというものが、かくのごとき国会の混乱を来たしたのでありまして、私はこれを佐藤参議院議長の一人の責任であるとするのは苛酷ではないかと考えるが、これに対して提案者は如何に考えておられるか、御質問申上げます。
 第二点といたしましては、この混乱の最も中心となつたのは国会法の問題でございますが、二十七日国会法の採決に当つて本議場は混乱の極みを呈したのでございまするが、これらに対しまして、以上私が申上げましたように、政治をあずかるところの大政党、大会派への警告と、その「責任者の政治的背信行為に対する懲罰との関連を如何お考えになつているかということが第二点の質問でございます。第三点といたしましては、二十八日議長不信任動議が出されましたが、その議長不信任動議が出ているにもかかわらず、議長は小野法務委員長の発言を許したということは、一つの議長に対する不信任の大きな要素となつていると考えまするが、私は提案者にお伺いしたい点は、議長が小野法務委員長に発言を許可する前に、社会党第四控室からの議長不信任動議というものは議長の手許に届いていたかどうかという点について御調査になつておられるか。この点を承わりたいと思うのでございます。
 最後にお伺いいたしたい点は、我々本議院に席を置く者の中で、本会議場におけるところの院内交渉係は、院内を、或いは壇上に上ることも自由かとも考えますが、一般の議員の方々は特別の許可なくしては議席を離れないというような、或いは申合せ、或いは参議院規則の改正を図ることによつて本議場の混乱を防止するというようなお考えは提案者にないかどうか。その点をお伺いいたしまして私の質問を終る次第でございます。(「答弁の要なし」「よくできるね、ああいう質問を」」同じことをぐるぐる廻しているじやないか」「無為無能な質問だ」「その通り」と呼ぶ者あり)
#30
○副議長(三木治朗君) 原虎一君。
   〔原虎一君登壇、拍手〕
#31
○原虎一君 矢嶋君の御質問にお答えをいたします。
 私は今日に至るまでの個々のいろいろな問題については、これは議員お互いに責任を感じなけりやならんところが多々あると考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従いまして、議院運営委員の不手際を、運営委員にあらざる我々が攻撃し、あえて批判することを好みません。(「その通り」と呼ぶ者あり)要するに私は、議長不信任案に対する最後の決定的な理由を申上げますれば御理解願えるものと存じますので、先ほど時間がなくて降りました残りを読み上げます。(笑声、拍手)
 私はあえて議長に質問いたします。議長は本院の運営を誤まり、社会の激しい指弾を受けた重き責任を何を以て償わんとするのでありましようか。ただただ自己に突きつけられた左派社会党からの不信任案が取下げられ、破防法案が短時日に採決されれば事足れりとする、大道商人的取引手段によつて本院の秩序が保持できるとのお考えでありますか。かくのごとき不明朗なる、條理を逸脱した処理こそは、本院の今後の運営に大なる支障を発生せしめるものであり、必ずや社会の指弾を受けるでありましよう。要するに議長は、本院の名誉を保持する良心と熱意を持つておられたのでありまするが、甚だしく政治的手腕に欠乏して認識を誤り、事態を収拾することを得ずして、ますます本院の威信を失墜せしめたものでありまして、我々は民主日本の前途を憂い、あえて議長の責任を追及いたすものであります。
 以上御答弁申上げます。(拍手)
#32
○副議長(三木治朗君) 岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇〕
#33
○岩間正男君 只今上程されました議長不信任案に対しまして提案説明者の原虎一君に対しまして私は次の諸点を質したいと思うのであります。
 その第一点は、曾つて左派社会党が議長不信任案を提出したことがございます。その際におきましては、この議長不信任案には反対だというので、わざわざ声明書まで発表したところの右派社会党の諸君が、今日に至りまして急遽このような不信任案を上程するに至つたということについて、これは当然心境の変化並びに政治的動機の変化というものが私は当然なければならない。この点が明らかにされなければ、我々公党の政治的責任を国民の前に明らかにすることにはならないと思うのでございまして、私は、この点、国民の前にこれらの経緯を明らかにされることが非常に重要と思う点からいたしまして、只今の心境の変化並びに政治的動機の変化の点について質したいと思うのであります。
 我々は現在社会党の諸君が、左派或いは右派、或いは社会民主主義或いは民主社会主義というような看板の違いはございますけれども、このイデオロギー的な相違は別といたしまして我々はこの内容については、つまびらかにしないのでありますから、これについては我々は触れないのでありますけれども、併し同じく階級政党、同じく勤労者の利益を代表する政党としまして、当然こういうような、敵が厖大なる我々に弾圧態勢を加えて来ておる中にありましては、当然小異を捨てて大同について、戦線を統一して、日本勤労階級並びに日本国民大衆の利益のために闘うのが、我々の最もなさなければならない階級的な一つの良心であろうと考えておるものであります。(拍手)然るにこれをなさずして若し左右相剋するようなことがあるとすれば、このために喜ぶのは、(「共産党だ」と呼ぶ者あり)案外この辺にたくさんおる。(笑声)私は先ほど見ておりますというと、左右の諸君がこの演壇と議長席におきましてやり取りをやつておりますと、満面相好を崩しまして自由党並びにそれに準ずる会派の諸君が大いなる喜びを以てこれを見ておるという事実は、これは日本の我々現在勤労階級、日本の国民大衆、民族の利益を真に憂え、このために鬪つておる立場に立つ者、而もこれは日本の大きな民族戰線の形成なしには、このような暴圧に対して、はつきり鬪えることができないと考えておる立場に立つ者にとつては、非常に憂えるべき事態だと思うのでございまして、こういう点から、小異を捨てて飽くまで大同について、そうして我々の頭にあるものは、自分の党の小さい党利党略、利益にあらずして、真に民族の利益、国民大衆の利益の点において先ず問題を考えるという、こういうような、いわゆる国民に直結したところの、その国民の利益を真に代表したところの政党心なければならない。
 こういう立場から、以上の諸点について私はあえてお伺いするのでございます。
#34
○副議長(三木治朗君) 原虎一君。
   〔原虎一君登壇〕
#35
○原虎一君 岩間君の御質問にお答えをいたします。
 第一の戦線統一問題は、議場で質疑応答すべき問題ではなかろうと考えますので、(「その通り」と呼ぶ者あり)議場から出まして、とつくり御答弁をいたしたいと存じます。(笑声、「ノーノー」「政治的なものはここでやつたほうがよろしい」と呼ぶ者あり)
 それから破防法に対しては、我々は合理的、合法的、あらゆる民主的手段によつてこれを阻止しようという方針を先ほど申上げました。私は岩間君に御反省を願いたい。(「その通り」と呼ぶ者あり)諸君がとは言わないけれども、(笑声)諸君の仲間と思われる多くの人々が、火焔びんを投げたり、(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)電車の暴走をやつたり、そのために我々は破防法阻止のためにどんなに苦労しているかということをお考え願いたい
 以上答弁申上げます。(拍手、「答弁になつておらん」と呼ぶ者あり)
#36
○副議長(三木治朗君) 岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇〕
#37
○岩間正男君 再質問をいたします。
 まさか原虎一君ほどの人が私の質問に答えられないとは思わないのであります。私のお伺いしているのは、なぜ曾つて議長不信任案に反対して反対声明まで出されたところの右派の諸君が、今日になつて、あれから四日しか経つておりませんが、四日後においてこのような不信任案を上程されるような気持になられたか、その心境的な変化並びに政治的動機というものを明らかにされるということは、これは天下の公党の当然なさなければならないところの任務である。従いましてこの点に対しまして、私は明確なるこれは御答弁があつて然るべきだと、こう思うのでございます。この点を明らかにされることを切望いたします。(拍手)
#38
○副議長(三木治朗君) 原虎一君。
   〔原虎一君登壇〕
#39
○原虎一君 少々疲れておりまし御答弁の一点を落しまして誠に申訳ありません。(「重要な点だ」と呼ぶ者あり)
 社会党左派の諸君が第一回に出されました議長不信任案は、私は、私どもは、真に議長の不信任をされるのか、時間延長を図るためにされるのか、(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)誠に疑いまして、(笑声、拍手)いろいろ木下源吾先輩の御説明を聞きました結果、これは時間延長のための不信任案と(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)判定いたしましたので反対いたした次第であります。(「名答弁」と呼ぶ者あり)
#40
○副議長(三木治朗君) 小笠原二三男君。
   〔小笠原二三男君登壇、拍手〕
#41
○小笠原二三男君 咽喉を痛めておりますので、簡單に御質問いたしたいと思うのでございまするが、(「水を飲んで」と呼ぶ者あり)一昨夜我が会派において議長不信任案を出しましたゆえんのものは、国会法、参議院規則に基きまして、我が会派からすでに通告してあります大屋晋三君に関する懲罰の動議が、衆議院と違つて、直ちにかけられなければならない規定があるにもかかわらず、本会議の議場における動議を取上げてその決定があり、この懲罰動議の上程が阻止され、その他一切の議場における動議が上程を否定せられるというような、参議院規則に根拠のない、異例な措置が議長職権において行われることに対しては、参議院の権威保持のために、参議院の運営のために悪例を将来に残すものであるとしてその責任を追及すべく議長不信任案を提出した次第であります。(「なぜ撤回した」と呼ぶ者あり)然るに昨日になりまして会期の延長等がきまり、又この事態において、参議院が議長不信任からこの混乱の中に破防法の審議がなされるということについて、我が会派で十分な論議の結果、又議長としても参議院の権威のために運営を正規に戻す努力をすべきであろうという決定を以ちまして、昨朝、会長以下副議長、事務総長立会の下に、参議院議長室において、正規のルートに参議院の運営を乗せるよう、各派の懇談会を開いて意見を発表し合い、調整し合う努力をすべきであるという申出をしたのであります。然る場合に、議長不信任案につきましても、かれこれ言われるでございましようが、私たちは、議長不信任案を引下げるということを言えば、他の会派等においては、それと取引に正規のルートに乗せる話合いを持つて来たのだという要らぬ誤解をさえ起すことであるから、これは別個の問題であり、我が会派の良心、良識によつ議長不信任案を処置するのであるということも、繰り返し繰り返し申上げて、この疑惑を一掃したつもりでございます。(「御弁明ですか」と呼ぶ者あり)然るにもかかわらず、昨夜、発議者の会派において、或る党と闇取引をしたとか、或いは懲罰動議云々と、議長不信任の動議の撤回を條件に話合いに持つて行こうとしたという声明等が行われましたが、私は議長不信任のこの議決討論は、真実の上に立つて事を論じなければ、(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)御迷惑なのは議長自体であり、又各党(笑声)であろうと考えるのでありまして、この点については副議長も立会つておられて、そういう事実がないということを再三副議長において申しておるのでございまするから、(「その通り」と呼ぶ者あり)どういう事実に基いて、どういう根拠があつて我が会派がかかる行為をしたのであるという点について、その事実を指摘して解明せられんことを望むのであります。私どもはこういう形で議長不信任案が出ることは、先ほどの発議者の意見に聞きますと、第一回の我々の議長不信任案は議事遷延のための策略であるから反対したということでありまするが、まさしく今回の議長不信任案は、或る会派において他党を誹謗せんがための議長不信任の動議として(拍手)戦略戦術に使つたものと断ぜざるを得ないのであります。(「事実を挙げろ」と呼ぶ者あり)この点につきましては我々各種の意見を持つておりまするが、対等に論議するさえ無用であるとさえ思い、にがにがしい限りと存じて傍観しておる次第でありまするが、ただ審議の過程において、真実に基いて論議がなさるべき(拍手)であるということを我々議員として考えますが故に、この懲罰動議と引換えつこに話合いが出たということ、議長不信任案撤回を條件としたということは、どこの事実を指して言うのか。この議場において解明せられたいと思うものであります。而も懲罰動議につきましては、我が会派は昨日夕刻になつて、それらの動きがあるということを初めて知つたのであり、而も議事部のほうにこれが通告になつたということにつきましては、昨夜の本会議後これを正規に知つたのでありまして、昨朝以来の我々の行動において何らそういうことについていろいろ画策する、こういう何らの意図も、何らの前提條件もなかつたのであります。この点について若しも事実が明らかでない場合には、事務総長、副議長等においてこの事態を明確にせられんことを望みます。
 又最後に、言い落しましたが、闇取引と申しますけれども、私たちは議長の手を通じて、議長によつてそれぞれの会派に斡旋をせよということを申出ておるのであり、直接各会派に対して我々は働きかけ、こう持つて行こうなどという下打合せなどはしておらんのでありまして、この点につきましても、皆さん、この発議者において誤解があると考えられます。誤解がないとしたならば、事実に照らしてこれを指摘せられんことを私は望みます。
 以上二点質問いたします。(拍手)
#42
○副議長(三木治朗君) 原虎一君。
   〔原虎一君登壇、拍手〕
#43
○原虎一君 曾つての同志、又将来も同志であつて欲しい小笠原君の御質問にお答えいたします。(「裏切者は誰だ」と呼ぶ者あり)第一回分議長不信任案提出の場合に、野党連合の中で、あなた方はどの会派にも御相談なく出されたことは事実を肯定されております。(「話を持つて行つたじやないか」「お前ら断わりに来たじやないか」「副議長を出しておるからと言つて」「嘘を言うな」「自由党が喜んでおるよ」と呼ぶ者あり)まあ待ちなさい。
 そこで次の第二の質問であります。事実によつて云々と言われましたが、事実は、各会派等から私が直接聞いた問題、(「何だ、それは」と呼ぶ者あり)そういう問題につきまして十分調査をいたしまして事実も明らかになつておるものであります。(「言つたらいい」と呼ぶ者あり)ところが、本日この議場で十分御納得の行くような説明をする資料を十分持ちまして、三十分の趣旨弁明時間を要求いたしましたところが、誠に残念でありますが、草葉君の提案によりまして時間が制限されております。(「苦しい」と呼ぶ者あり)いずれ諸君に対して十分納得の行きますところの事実をお示しいたしまするから、さよう御承知を願いたい。
#44
○副議長(三木治朗君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。
 本決議案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇〕
#45
○岩間正男君 私は日本共産党を代表しまして、只今の議長不信任決議案に対しまして賛成するものであります。
 賛成の要点を次に申上げます。先ず議長の、最近起りましたこの緊急事態と言われる参議院の態勢の中で議長職権を行使したこのやり方は、全く一方的である。政府、自由党、こういうものと共謀して、この神聖なるべきところの議長職権をまさに歪曲したという点を私ははつきり指摘せざるを得ないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)ノーノーという声がありまたが、こういうような次に挙げる例に対してノーノー言われるあなたたちは聞いて頂きたい。例えば小林英三君があの場合突如としまして、参議院では未だ無いような悪前例を引かれまして緊急動議を提出しました。これを受けて立つたところの議長のこれに対するところの動議の取上げ方でありますが、そのときすでに議長には原稿が用意されておる。その原稿を読み上げまして、突如としてこれは起つたどころの動議を取上げておる。つまりこの原稿が用意されておるという事実は何を物語るか。言うまでもなく、事前にはつきり議長と政府並びに與党の間に取引が行われて、お膳立ができておつたという何よりの証拠ではないか。これをなおノーノーと言うことのできる厚顔無恥なる態度を一体持続できるかどうかということを私はむしろお聞きしたいのであります。これが何よりの証拠である。政府與党とこのように共謀して、そうして、その圧力に屈し、そうして神聖中立なるべきところの議長職権を歪曲した。このようなことは、参議院におきまして、殊にその議長の職にある佐藤尚武君のこれは不徳の至すところであると思うのでありまして、このような議長を我々は信任することができない。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 第二点は参議院規則の無視であります。それは言うまでもなく、先ほどの小林英三君の動議の問題でありますが、これは言うまでもなく国会法並びに参議院規則を無視しまして、当然成規の手続し以て出されたところの動議、ここれは先に取上げるということは当然のことなのであります。然るにその規則を根底から覆えすような悪例を残し、その場の動議を突如採択した、これは参議院では全く前例のないことであります。成るほど衆議院では前例がしばしばあるというのでありますが、なぜ衆議院でこのような一体前例があるかというと、これは言うまでもなく、絶対多数を頼んだ暴力的なこの運営の仕方、そうして彼らの一方的な勝手な言い分を通すために作つたところの悪例なのであります。本来ならば、かかる悪例を阻止することこそ第二院としての参議院の任務であるにもかかわらず、却つてこのような暴力的な国会運営の方法を取入れて、参議院を衆議院の暴力の圧力の下に全くこれは屈服させたということ、このような責任は断じてこれは我々の了承することのできないところでありまして我々は大いに鼓を鳴らして佐藤尚武君のこの議長の不信任、この結果を責めざるを得ないのであります。これは恐らく歴史がはつきり証明することでございまして、今こういう対立の中で興奮しておられる皆さんはいろいろなことを言つておられるとしましても、これは明らかに歴史的な行為としまして、議長のやつたやり方がどんなものであるかということは、はつきり皆さん自身思い知らされるときが来るのでありまして、このような責任者佐藤尚武君に対しまして、我々は断固としてこの不信任案に対しまして賛成をし、そうして即時退任を要求するものであります。(拍手)
#46
○副議長(三木治朗君) 鈴木清一君。
   〔鈴木清一君登壇、拍手〕
#47
○鈴木清一君 私は労働者農民党を代表いたしまして、只今上程になつております議長不信任案に対しまして賛成の意を表するものであります。
 理由といたしましては、先ほど来、趣旨弁明の質疑応答の中で、いわば野党と言われた方々の中でさえ議会政治の中ではあの論議が繰り返されるのであります。ましてや議会政治の中で與党と野党とが画然と無くてはならないものであり、有るということが前提で、初めて議会政治は民主的に運営されるものであります。この中で、議長の職権が、この波瀾を含む議会政治の中をまるく、いわゆる円満に持つて行くためには、議長の職権は公平無私なることを前提といたしまして、その職責は、はつきり、万全たるべきものであらねばならんと思うのであります。にもかかわらず、御承知のように今回の議事の運営に当りまして議長は、はつきりと公平無私であるべき議長であるにもかかわらず、一つの前提を持つて調停に当つたということであります。各派懇談会の席上におきまして日にちは二十八日の夜だと思います。その席上におきまして、はつきり私は破防法をこの会期中に上げるのだということを前提としておられた。前提を持つて、円満にものを収めようとする人たちが、少くともすでに持つたそのことが、その人に対しては能力がないと断定せざるを得ないのであります。その結果からいたしまして今日の混乱を巻き起しておることは、はつきり議長が前提を持つたがためであると私は言、えるのであります。それにもかかわらず、各派の代表のかたも御存じでありましようが、あの晩に議長室におきまして調停をするつもりで最後に立つた議長に対しまする態度といたしまして、改進党以下野党の人たちは何とか円満に解決させたいために席に残つておりましたときにもかかわらず、自由党、緑風会の代表のかたはそのまま出て行つてしまつております。何ら議論に乗つておりません。そういたしますと、異常と言われるところの自由党、緑風会の代表のかたのその態度というものは、少くとも議長を信頼しておらないということなのです。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)信頼しておらなければこそあの態度が私は出たものと思う。従つてその根拠は、少くとも信頼しない、己れの会派から出した人に対してさえその態度ができ得るその根拠なるものは、議長の無能振りを十分知つたからこそその態度に出たものと思います。(「議長に対して冷めたいぞ」と呼ぶ者あり)そういたしますと、赤木さんが提案されました国会法第十三條に対しましての個々の表決に現われた緑風会のかたがたの態度が遺憾なくそのときも現われたと思いまして、誠に赤木さんや高橋さんにいたしましても、又議長にいたしましても、緑風会に席を置いたことを非常に不満に思つておられるのではなかろうかとさえ思うのであります。(笑声)このような無能振りを発揮し、手腕心ないのにかかわらず、今日まで続け来たつて、その自分の無能振りをカバーせんがために、與えられた職権を利用いたしまして、強制的な職権濫用となつたのでありますけれども、少くとも私は議長たるべきものは、職権を濫用しなければ収拾できないというその前に、おのずから身を決すべきものがあつたと思います。それにもかかわらず、それには何ら触れることでき得ずして、ただ與えられた職権を――無論相当圧力が加わつておると聞いております。その圧力に屈して事態の収拾を取り得ずして不信任案を提出されるところまで行きました議長に対しまして、而も二度目です。速かに、これの賛否は別といたしましてその前に、議長はむしろおのずから、自分みずから態度を決すべきではなかろうか。従つて私どもはこの決議案に対しまして、労農党といたしまして賛成の意を表する次第であります。
#48
○副議長(三木治朗君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより本決議案の採決をいたします。表決は記名投票を以て行います。本決議案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#49
○副議長(三木治朗君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#50
○副議長(三木治朗君) 設票の結果を報告いたします。
 投票総数百四十六票、
 白色票二十八票、
 青色票百十八票、
 よつて議長不信任決議案は否決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名  二十八名
   須藤 五郎君  岩間 正男君
   兼岩 傳一君  堀  眞琴君
   鈴木 清一君  岩崎正三郎君
   上條 愛一君  東   隆君
   田中  一君  大山 郁夫君
   西園寺公一君  矢嶋 三義君
   永井純一郎君  カニエ邦彦君
   島   清君  小林 亦治君
   松永 義雄君  相馬 助治君
   山下 義信君  赤松 常子君
   伊藤  修君  棚橋 小虎君
   波多野 鼎君  原  虎一君
   曾祢  益君  下條 恭兵君
   松浦 清一君  片岡 文重君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名  百十八名
   藤森 長治君  藤野 繁雄君
   早川 愼一君  野田 俊作君
   西田 天香君  中山 福藏君
   徳川 宗敬君  常岡 一郎君
   田村 文吉君  伊達源一郎君
   館  哲二君  竹下 豐次君
   高橋龍太郎君  高橋 道男君
   高瀬荘太郎君  高木 正夫君
   杉山 昌作君  新谷寅三郎君
   西郷吉之助君  小宮山常吉君
   小林 政夫君  楠見 義男君
   河井 彌八君  加藤 正人君
   柏木 庫治君  加賀  操君
   小野  哲君  奥 むめお君
   岡本 愛祐君  梅原 眞隆君
   井止なつゑ君  石黒 忠篤君
   赤木 正雄君  山川 良一君
   村上 義一君  森 八三一君
   島津 忠彦君  上原 正吉君
   岡田 信次君  青山 正一君
   中川 幸平君  九鬼紋十郎君
   大矢半次郎君  郡  祐一君
   廣瀬與兵衞君  岡崎 真一君
   楠瀬 常猪君  加藤 武徳君
   城  義臣君  植竹 春彦君
   山本 米治君  古池 信三君
   小杉 繁安君  山縣 勝見君
   石川 榮一君  木村 守江君
   大谷 瑩潤君  一松 政二君
   深水 六郎君  草葉 隆圓君
   徳川 頼貞君  左藤 義詮君
   大島 定吉君  黒田 英雄君
   小林 英三君  中川 以良君
   川村 松助君  寺尾  豊君
   宮城タマヨ君  溝口 三郎君
   三浦 辰雄君  堀越 儀郎君
   小野 義夫君  小串 清一君
   野田 卯一君  重宗 雄三君
   大野木秀次郎君  入交 太藏君
   宮田 重文君  西川甚五郎君
   平井 太郎君  田方  進君
   秋山俊一郎君  鈴木 直人君
   石村 幸作君  長谷山行毅君
   高橋進太郎君  石原幹市郎君
   堀  末治君  鈴木 恭一君
   愛知 揆一君  安井  謙君
   長島 銀藏君  平沼彌太郎君
   竹中 七郎君  菊田 七平君
   溝淵 春次君  團  伊能君
   瀧井治三郎君 池田宇右衞門君
   前之園喜一郎君  駒井 藤平君
   林屋亀次郎君  北村 一男君
   中山 壽彦君  白波瀬米吉君
   岩沢 忠恭君  栗栖 赳夫君
   西田 隆男君  大屋 晋三君
   泉山 三六君  黒川 武雄君
   横尾  龍君  大隈 信幸君
   木内キヤウ君  谷口弥三郎君
   稻垣平太郎君 池田七郎兵衞君
    ―――――――――――――
#51
○副議長(三木治朗君) 暫時休憩いたします。
   午前十一時五十七分休憩
     ―――――・―――――
   午後四時二十五分開議
#52
○議長(佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
 金子洋文君から、成規の賛成者を得て、議員大屋晋三君懲罰の動議が提出されております。よつて本件を議題といたします。
   〔安井謙君発言の許可を求む〕
#53
○議長(佐藤尚武君) 安井謙君。
#54
○安井謙君 只今議題となりました懲罰の動議の審議は、破壊活動防止法案外関係二法案の審議終了後、適当の時期まで延期するの動議を提出いたします。(「反対」「賛成」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#55
○長谷山行毅君 只今の安井君の動議北賛成いたします。(「反対」「賛成」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#56
○議長(佐藤尚武君) 安井君の動議の採決をいたします。表決は記名投票を以て行います。安井君の動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#57
○議長(佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#58
○議長(佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。
 投票総数百五十六票、
 白色票百八票、
 青色票四十八票、
 よつて安井君の動議は可決せられました。
     ―――――・―――――
   〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名   百八名
   藤森 眞治君  藤野 繁雄君
   早川 愼一君  野田 俊作君
   中山 福藏君  徳川 宗敬君
   田村 文吉君  伊達源一郎君
   館  哲二君  竹下 豐次君
   高橋 道男君  高瀬荘太郎君
   高田  寛君  杉山 昌作君
   新谷寅三郎君  西郷吉之助君
   小林 政夫君  木下 辰雄君
   河井 彌八君  加藤 正人君
   片柳 眞吉君  柏木 庫治君
   加賀  操君  小野  哲君
   岡本 愛祐君  梅原 眞隆君
   井上なつゑ君  石黒 忠篤君
   赤澤 與仁君  赤木 正雄君
   山川 良一君  森 八三一君
   上原 正吉君  岡田 信次君
   青山 正一君  中川 幸平君
   九鬼紋十郎君  大矢半次郎君
   郡  祐一君  廣瀬與兵衞君
   岡崎 真一君  楠瀬 常猪君
   加藤 武徳君  城  義臣君
   植竹 春彦君  山本 米治君
   古池 信三君  小杉 繁安君
   山縣 勝見君  木村 守江君
   西山 龜七君  大谷 瑩潤君
   一松 政二君  深水 六郎君
   草葉 隆圓君  徳川 頼貞君
   左藤 義詮君  大島 定吉君
   黒田 英雄君  小林 英三君
   中川 以良君  川村 松助君
   寺尾  豊君  溝口 三郎君
   三浦 辰雄君  堀越 儀郎君
   小野 義夫君  重宗 雄三君
   大野木秀次郎君  入交 太藏君
   宮田 重文君  宮本 邦彦君
   平井 太郎君  松本  昇君
   秋山俊一郎君  鈴木 直人君
   石村 幸作君  長谷山行毅君
   高橋進太郎君  石原幹市郎君
   鈴木 恭一君  愛知 揆一君
   安井  謙君  平林 太一君
   長島 銀藏君  平沼彌太郎君
   溝淵 春次君  團  伊能君
   瀧井治三郎君 池田宇右衞門君
   前之園喜一郎君  駒井 藤平君
   油井賢太郎君  北村 一男君
   中山 壽彦君  白波瀬米吉君
   岩沢 忠恭君  栗栖 赳夫君
   西田 隆男君  泉山 三六君
   黒川 武雄君  横尾  龍君
   石坂 豊一君  境野 清雄君
   大隈 信幸君  木内キヤウ君
   谷口弥三郎君  稻垣平太郎君
    ―――――――――――――
  反対者(青色票)氏名  四十八名
   成瀬 幡治君  門田 定藏君
   千葉  信君  三輪 貞治君
   小林 孝平君  三橋八次郎君
   若木 勝藏君  中田 吉雄君
   栗山 良夫君  梅津 錦一君
   有馬 英二君  内村 清次君
   羽生 三七君  紅露 みつ君
   石川 清一君  松浦 定義君
   松原 一彦君  森崎  隆君
   吉田 法晴君  山崎  恒君
   岩木 哲夫君  岩男 仁藏君
   菊川 孝夫君  岡田 宗司君
   一松 定吉君  櫻内 辰郎君
   堀木 鎌三君  岡村文四郎君
   小笠原二三男君  金子 洋文君
   江田 三郎君  堀  眞琴君
   鈴木 清一君  岩崎正三郎君
   山田 節男君  齋  武雄君
   大山 郁夫君  西園寺公一君
   矢嶋 三義君  永井純一郎君
   池田七郎兵衞君  松永 義雄君
   相馬 助治君  山下 義信君
   伊藤  修君  波多野 鼎君
   曾祢  益君  片岡 文重君
   曾祢  益君  片岡 文重君

#59
○議長(佐藤尚武君) 草葉隆圓君外六名から、成規の賛成者を得て、議員岩間正男君、兼岩傳一君、三輪貞治君、鈴木清一君、江田三郎君、岡田宗司君、栗山良夫君、中田吉雄君、水橋藤作君、河崎ナツ君、高田なほ子君、小笠原二三男君、木下源吾君、島清君、梅津錦一君、菊川孝夫君及び吉田法晴君懲罰の動議が提出されております。よつて本件を議題といたします。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
   〔安井謙君発言の許可を求む〕
#60
○議長(佐藤尚武君) 安井謙君。
#61
○安井謙君 只今議題となりました懲罰動議の審議は、破壊活動防止法案外関係二法案の審議終了後、適当の時期まで延期するの動議を提出いたします。(「反対々々」「すぐやれ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#62
○長谷山行毅君 只今の安井君の動議に賛成いたします。
#63
○議長(佐藤尚武君) 安井君の動議の採決をいたします。表決は記名投票を以て行います。(笑声)安井君の動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#64
○議長(佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#65
○議長(佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。
 投票総数百七十四票、
 白色票百十七票、
 青色票五十七票、
 よつて安井君の動議は可決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名  百十七名
   藤森 眞治君  藤野 繁雄君
   早川 愼一君  野田 俊作君
   中山 福藏君  徳川 宗敬君
   常岡 一郎君  田村 文吉君
   伊達源一郎君  館  哲二君
   竹下 豐次君  高橋 道男君
   高瀬荘太郎君  高田  寛君
   高木 正夫君  杉山 昌作君
   新谷寅三郎君  西郷吉之助君
   小林 政夫君  楠見 義男君
   木下 辰雄君  河井 彌八君
   加藤 正人君  片柳 眞吉君
   柏木 庫治君  加賀  操君
   小野  哲君  奥 むめお君
   岡本 愛祐君  梅原 眞隆君
   井上なつゑ君  石黒 忠篤君
   赤澤 與仁君  赤木 正雄君
   山川 良一君  森 八三一君
   島津 忠彦君  上原 正吉君
   岡田 信次君  青山 正一君
   中川 幸平君  九鬼紋十郎君
   大矢半次郎君  郡  祐一君
   廣瀬與兵衞君  岡崎 真一君
   楠瀬 常猪君  加藤 武徳君
   城  義臣君  植竹 春彦君
   山本 米治君  古池 信三君
   小杉 繁安君  山縣 勝見君
   木村 守江君  西山 龜七君
   大谷 瑩潤君  一松 政二君
   深水 六郎君  仁田 竹一君
   草葉 隆圓君  徳川 頼貞君
   左藤 義詮君  大島 定吉君
   黒田 英雄君  小林 英三君
   中川 以良君  川村 松助君
   寺尾  豊君  溝口 三郎君
   三浦 辰雄君  堀越 儀郎君
   小野 義夫君  重宗 雄三君
   大野木秀次郎君  入交 太藏君
   宮田 重文君  西川甚五郎君
   宮本 邦彦君  平井 太郎君
   杉原 荒太君  松本  昇君
   秋山俊一郎君  鈴木 直人君
   石村 幸作君  長谷山行毅君
   高橋進太郎君  石原幹市郎君
   鈴木 恭一君  愛知 揆一君
   安井  謙君  平林 太一君
   長島 銀藏君  平沼彌太郎君
   小川 久義君  溝淵 春次君
   團  伊能君  瀧井治三郎君
   池田宇右衞門君 前之園喜一郎君
   駒井 藤平君  油井賢太郎君
   北村 一男君  中山 壽彦君
   白波瀬米吉君  岩沢 忠恭君
   栗栖 赳夫君  西田 隆男君
   泉山 三六君  黒川 武雄君
   横尾  龍君  石坂 豊一君
   境野 清雄君  大隈 信幸君
   木内キヤウ君  谷口弥三郎君
   稻垣平太郎君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名  五十七名
   成瀬 幡治君  重盛 壽治君
   門田 定藏君  千葉  信君
   三輪 貞治君  小林 孝平君
   三橋八次郎君  若木 勝藏君
   中田 吉雄君  小酒井義男君
   栗山 良夫君  梅津 錦一君
   有馬 英二君  内村 清次君
   羽生 三七君  紅露 みつ君
   石川 清一君  松浦 定義君
   松原 一彦君  高田なほ子君
   森崎  隆君  吉田 法晴君
   山崎  恒君  岩木 哲夫君
   岩男 仁藏君  菊川 孝夫君
   岡田 宗司君  一松 定吉君
   櫻内 辰郎君  堀木 鎌三君
   岡村文四郎君 小笠原二三男君
   木下 源吾君  金子 洋文君
   須藤 五郎君  江田 三郎君
   堀  眞琴君  鈴木 清一君
   岩崎正三郎君  山田 節男君
   齋  武雄君  大山 郁夫君
   羽仁 五郎君  西園寺公一君
   矢嶋 三義君  村尾 重雄君
   永井純一郎君  カニエ邦彦君
   池田七郎兵衞君  松永 義雄君
   相馬 助治君  山下 義信君
   赤松 常子君  伊藤  修君
   波多野 鼎君  曾祢  益君
   片岡 文重君
     ―――――・―――――
#66
○議長(佐藤尚武君) 日程第二、破壞活動防止法案、
 日程第三、公安調査庁設置法案、
 日程第四、公安審査委員会設置法案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)(前会の続)
 以上三案を一括して議題といたします。
 議長は、三案の原案及び修正案に対する質疑及び討論の時間は、各派間の協定のありました通り、原案に対する質疑、修正案に対する質疑及び討論を合せて、日本社会党第四控室及び日本社会党第二控室所属議員についてはおのおの三時間四十五分以内、改進党所属議員については、一つ時間五十五分以内、第一クラブ及び労働者農民党所属議員についてはおのおの一時間二十分以内、日本共産党所属議員については一時間十分以内、自由党、緑風会及び民主クラブ所属議員についてはおのおの三十分以内に制限いたします。
     ―――――・―――――
 議長は、三案の原案及び修正案に対する質疑及び討論の時間は、各派間の協定のありました通り、原案に対する質疑、修正案に対する質疑及び討論を合せて、日本社会党第四控室及び日本社会党第二控室所属議員についてはおのおの三時間四十五分以内、改進党所属議員については、一つ時間五十五分以内、第一クラブ及び労働者農民党所属議員についてはおのおの一時間二十分以内、日本共産党所属議員については一時間十分以内、自由党、緑風会及び民主クラブ所属議員についてはおのおの三十分以内に制限いたします。
#67
○議長(佐藤尚武君) これより三案の原案に対する質疑に入ります。順次発言を許します。内村清次君。(「議事進行について」と呼ぶ者あり)内村君の発言を許します。(「動議々々」「議事進行について」と呼ぶ者あり)内村君。
#68
○内村清次君 議事進行に鑑みまして、私は吉田総理の出席を求めたいのでありまして、この吉田総理の出席に対しましては、これは委員会を通じて一貫して、私たちは法務委員として又本院の議員といたしまして要求いたしたのでございました。この原案につきまして吉田総理に対しては私たちはまだ質疑を残しておるのでありまして(「その通り」と呼ぶ者あり)質疑がまだされておらないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私はこの原案に対しまして質疑をする過程におきましては、どうしても吉田総理の本案に対する所見を伺わなくてはならんのであります。(「異議なし」と呼ぶ者あり)そういう段階でございまするから、議長におきまして吉田総理の出席を是非要求して頂きます。(「反対」「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり)
#69
○議長(佐藤尚武君) お答えいたします。吉田内閣総理大臣の出席は只今求めつつあります。(「来てからにしろ」「それまで休憩」と呼ぶ者あり)内村君の御発言を願います。
#70
○内村清次君 出席されてから発言をいたします。
   〔「それまで休憩」「何を言つているんだ、何を」「当り前のことじやないか」「登壇々々」「首相の出席まで休憩」「昨日の決議をどうするのだ」「出席しろ、総理は」「自由党ぼやぼやするなよ」「国会を破壊するな」「内閣総理大臣を呼んでるのだ」「議長は参議院の審議権の尊重の決議を総理大臣に伝えましたか」「決議はただ形式では駄目ですぞ」「総理はちつとも参議院の審議権を尊重しておらない」「暫時休憩をお願いします」「当然だ」「異議ない」「議長、休憩」「最終段階でしよう」「国民は絶対容認できない」「総理の出席は当然だ」と呼ぶ者あり〕
#71
○議長(佐藤尚武君) 暫時休憩いたします。
   午後四時五十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後五時二十七分開議
#72
○議長(佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。内村清次君。
   〔内村清次君登壇、拍手〕
#73
○内村清次君 曾つて大正十四年の二月に、天下の悪法と言われました治安維持法が、時の憲政会内閣、加藤高明総理大臣、若槻禮次郎内務大臣、小川平吉司法大臣のこの内閣によりまして審議せられ、且つ二カ月に亘る審査の結果、これが可決をされたのでありましたが、その後三回に亘つてこの治安維持法が改正せられた。我々は、この改正は決してよくなつたんでなくして、第三回の近衛公の内閣当時におきましては、当時第一條から第六條までの條項が、一條から六十五條までにこれが追加せられまして、遂に警察国家となり、遂に憲兵政治となり、いわゆる国民の言論を圧迫し、国民の自由を圧迫して、大東亜戰争に突入するこの悪法と化したことは、諸君御承知の通りであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)この悪法にまさる今回の政府提案になる破壊活動防止法案というものが天下の耳目を聳動して、これに対する反対の状況は、恐らくこれを、諸君におきまして強行して可決させようとする諸君といえども、この世論の動向は決して見失つてはおられないであろうと思います。このような法案の審議に当りまして、参議院は十日間に亘るところの、全く秩序は乱れてしまつておる。その原因は、誰が乱したか。(「誰が乱した」「君らが乱したのじやないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)その原因は、即ち政治道義を考えない、一方的にこの法案を通過させようとして、国会法を、これを即ち政治道義を破つて決するとか、或いは又お互いが作つたところの国会法及び参議院規則を無視して動議を強行するというような、こういう議長職権を(「院議によつてやつたのだ」と呼ぶ者あり)強行し、及びこれをさせたところの與党諸君の態度こそ、誠に私たちは後世に悪例を残したものと断ぜざるを得ないのであります。(「その通り」「紐をつけるのは誰だ」と呼ぶ者あり、拍手、笑声)この状態におきまして而も又この人民の国会であり国民の政治であるというような、この新憲法の下における国会の存立に対しましても、当然請願をする権利のあるところの国民が、棚の外において、而も衛視から制止をせられて、そうして当然なる権利を行使することができないというがごとき状態の下において私は政府に最後の質問をすることにつきまして、誠に悲しむものであります。(「すでに警察国家は始まつておる」「しつかりやれ」「本論をやれ」「余計なことを言うな」と呼ぶ者あり)
 総理は、この参議院の今回の混乱の動機の一つの重要な点といたしまして、総理はこの法案に対するところの熱意が欠けておる。所信を一回も述べておられない。(「熱意が溢れておる」と呼ぶ者あり)委員会にも出席をしない。本会議に漸くあの状態からして今回初めてここにおいでになつておる。このような状態で、ただお互い議員の言論を圧迫するばかりでなくして、国民の今後の言論を圧迫して行こうというような、この法案に対しまして、総理は一体どのようなお考えを持つておられるか。(「正しい言論は圧迫しない」と呼ぶ者あり)この点を私は先ず第一点としてお尋ねいたしたいのであります。第二点といたしましては、総理はこの法案を出されるところの動機におきまして、私の見るところ、総理の政治的晩節におきまして、三つの大きな過誤を残しておられます。これは恐らく後世の国民は、吉田総理の大きな三つの罪悪であろうと言うでありましよう。その三つの大きな政治的過誤と申しまするのは、この法案の拠点は、私は即ち総理が強行いたしました平和條約及び安全保障條約、又これに附随するところの行政協定の締結によつて、止むなく、我々国民の目を奪うような、或いは又我々国民の言論を奪うような取締を強行せずにはおられないような情勢に、現今の社会状態の不安を讓成せられたと、私は考えるものであります。(「その通り」「誰だ、そんなことをしたのは」と呼ぶ者あり、拍手)即ちダレス氏とのお約束は、これは当時の国際信義上におきまして、吉田総理との間に密約が交されたことは、すでに御承知の通りであります。この密約を、吉田総理の感情によつて、個性によつて、いわゆるこれを強行せられた。吉田総理とダレスさんとの間の信義はこれで済んだかも知れませんが、恐らく済まないのは日本の大多数の国民であります。今後悲運になつて行くところの大多数の国民であります。恐らく今回の條約の締結によりまして独立をかち得ましたとして、国民が、日本の繁栄を、日本の今後即ち伸びて行くところの新建設を、これで安心だ、これでその基礎が成つたとして、喜んでいるところの国民が何ほどあるでありましようか。(「大多数であるぞ」と呼ぶ者あり)それを喜んでいるは、吉田内閣及び自由党の諸君、これに同調したどころの諸君だけであると私たちは考えるのであります。(「扇動だ」と呼ぶ者あり)行政協定の結果、あの基地の周辺におけるところの森林田畑の接收に対して、国民はどう反撃をしたでありましようか。これには、恐らくその県にあるところの自由党の諸君でさえも、これだけは一つ超党派的に陳情をしてそうしてこの接收を、これを少からしむるか、或いは又これを無くするように努力しようじやないかとして、皆様方の間にも運動を展開されたことがあるでありましよう。この悲惨な事実、この悲惨な事実は何から起きて来ているでありましようか。又こればかりではないのであります。今日になつて参りますると、国民の状態というものは、これは條約締結以前におけるところの、即ち占領下において、お互いは全面的な平和を、この憲法の精神によつてこれを打ち立てて行こうと努力をしている。当時の連合国の占領下にあつては、連合国のこの考え方を、これをまとめて、そうして日本はここに安全なる、本当に真に安全なる平和を確保しようとして念願して来たのでありまするが、これを一方的に引摺つていたところの吉田総理の態度によりましてどうなつたでありましようか。即ちこの状態におきまして国民は国際的な即ち激突の状態が身近かに国民の身に迫つて来たではないですか。隣りの朝鮮のあの停戦が、いわゆるこれが停戰が完成をせずして、そうして、これが或いは会談が破裂しはしないか。国連軍が水豊爆撃をやつた。ダムの爆撃をやつた。こういうような一つ一つのことが、これが国民の身近かに迫つた大きな問題として不安を考えるような事態になつたではありませんか。このような事態、まあこのような事態が醸し出されて、そうしてメーデー事件が起つて来る。或いは朝鮮人の事件が起つて来る。社会不安が起つて来る。(「お前らが起したのじやないか」と呼ぶ者あり)その起つてくるところの導因というものは、(「社会党左派にあり」と呼ぶ者あり)決してこの條約によつてこの法制を考えたところの自由党の吉田さんのお考え方でなくしていわゆるこれによつて起つて来るところの国民の当然な不安の集結であつて、両條約の政治的な非常な失敗であつたということを私は断言せざるを得ないのであります。(「ノーノー」「その通り」と呼ぶ者あり)私たちは、この一つの政治的な大きな吉田総理の個性から発しました條約に対する考え方が、今日のような社会不安を醸成させたということが第一点であります。
 第二点、この條約を結んだために、どうですか、憲法に違反するような行動をせなくちやならない。それはいわゆる戦力の充実でありましよう。これは予算面から発しておる。今年の予算にも二一%の再軍備費を、これを計画している。これは当然なる帰結であります。このような憲法第九條のこの問題を、これを伏せておいてそうして予備隊を作つておる。これはまさしく吉田総理が憲法を蹂躪しているところの態度であると私たちは断言せざる得ないのであります。(「ノーノー」「その通り」と呼ぶ者あり)
 第三の点は、予算的な憲法蹂躪をやる、或いは憲法の條文を、これを実質的に蹂躪をいたしておりますると、更に第三の蹂躪をやらなくてはならない。この蹂躪が、これが即ち今回の破壊活動防止法案となつて、無事の良民に対して、関係のなき良民に対してさえも、いわゆる職権の濫用を許した、常に官憲に脅かされて、自分の思想を無理に統一させられる。或いは自分の言論を抑圧せられ、或いは憲法に規定せられたところの結社の自由を、これを剥奪をせられて行く。このような言論及び結社の自由、出版の自由を抑制するような基本的人権の削減を考えなくてはならないように追い込まれたところの大きな政治的過誤であります。
 私はこの三つの大きな過誤が、ただ日本の今回の講和後におけるところのあり方と比べて見ますると、すでに吉田総理もこの点は自覚しておられるであろうと思いまするが、アチソン長官が申しましたように、日本は今後アジアにおけるところの防衛基地であると、こう言つておる。この基地の役目を日本は背負わされておる。この事態に対しまして吉田総理は何と御返答なさるでありまりしようか。この点がこの三つの点の集約点であつて、私は今後の問題というものがいわゆる日華條約になり、日韓條約になり、或いは三国漁業協定になり、いろいろな派生的な問題がアジアの第一線の基地としての日本の任務という点に集約せられている。今後国民は本当に腹を据えてかかつてこの内閣の思想を、即ちこの内閣の考え方を、この内閣の実行を、これを批判して、民主的な方法によつて打倒するところの本拠とならなくてはならないと私は信ずるものであります。
 第四の点につきましては、今回のこの暴力に対しまして力で抵抗するというような法案の内容に対しましてはこの点は勿論、あのようなメーデーの事件におきましても、各所に起つておりまするところの暴力行為に対しましても、我々は暴力行為そのものに対しましては、これは絶対に否定するものでございまして、この点はいわゆる民主国家といたしまして生い立ちまする日本といたしましては、これは恪守いたして行かなくてはならん。厳守いたして行かなくてはなりません。併しながら、この暴力の行為自体がどの点から起きて来ているか。これは我々国民がひとしく暴力自体に対しまするところの原因と実相に対して、よくこれを批判して行かなくてはならない。この批判の事実については、言論は言論を以てこれは批判して行かなくてはならない。或いは輿論機関は輿論機関の性格を以てこれを批判して行かなくてはならない。(「批判だけでどうなるか」と呼ぶ者あり)そうしてその良識に従つて、このような計画をする人たちに対しましては、これはどこまでも民主的な方法によつて我々はこれを罰して行かなくてはなりません。而も又この行為自体の発生に対しましては、すでに憲法におきまして基本人権を認めながら、治安を確保するところの刑事立法があります。基本法があります。即ち刑法あり、民法あり、或いは又刑事訴訟法あり、このような基本的なる、即ち治安を乱す現実の行為に対しましては、この法律によつて我々はこれを罪を慎んで人を慎まない、罪はどこまでも社会治安を乱すものとしての見地に立つてこれを制裁して行かなければならない。
 こういうようなことで、私たちは、民主主義のルールというもの、民主主義の暢達というものを、これを守つて行かなくては相成らないのであります。そのようなことをしないと、丁度吉田総理は今この国会におきまして、吉田総理の身辺には、いわゆる委員会に御通行になり、或いは又本会議に御通行になるときにおいてあの衛視の警備は一体どうでありましよう。誰がああいうことを命じたのでありましよう。これは、そういうような三つの政治的な過誤の結果におきまして、自分の身が苦しくなつて来る。身が苦しくなつて来ますると、それを守つてもらおうというような欲望が起つて来る。欲望が起つて参りましても、決してこの心の咎めということは、決してこれは周辺に如何なる衛視があろうといえども、或いは周辺に如何なる強烈な武器を持つておるといえども、心のこの迷い、心のこの自由というものは決して剥奪することはできないのであります。このようなことが即ち今回の破防法におきまするところの暴力に対するに暴力を以てするというような政治理念による、即ち自由党一流の政治理念によるところの(「嘘つけ」と呼ぶ者あり)この法案に対しまして、総理は一体このような方法でこの治安対策というものが完全であるかということにつきまして、御答弁をお願いいたしたいのであります。
 我々の国民生活安定の具体的な考え方といたしましては、即ち先ほど申しましたように、いわゆる治安を乱すところのその行為に対しましては、刑法の規定がある、或いは又民法の規定がある。(「要点を言え」と呼ぶ者あり)このような基本的な法律で十分賄い得るものであるという見地に立つておるのであります。而もこのような社会的不安をこれをなくするということは、これはどうしても国民生活を安定させなくちやいかない。あのような憲法を蹂躪するような二千数億の再軍備費用を使わないで、そうしてこれをいわゆる国利民福の、社会福祉の方面に使つて行く、教育の予算におきましても、僅か全体に対する三%で、教育、この思想の健全なる発達を望むとするならば、どうしてこの教育の問題が解決するでありましようか。或いは又社会政策におきましても、厚生費用におきましても、僅か予算の一%三くらいの厚生費用で、一体どうして国民の社会不安をこれを是正し、これを解消することができるでありましようか。(「もう少し内容のあることを言え」と呼ぶ者あり)或いは又失業対策に至りましても、その通りであります。このようなことでどうして国民生活の安定というものができるでありましようか。このような社会不安の導因を投げ捨てて置いて、そうして力でこれを取締つて行こうというところに、この法案の狙いがあり、又この法案の大きな過誤があり、いわゆる治安維持法の化けて出たところの大きな悪法であると世の中の指弾を受けることを、私はここに申上げたいのであります。
 第四の点につきましては、これは司法権に対しまして行政権が最近圧迫いたしておる事態でありまして、今回の法案を見てみましても、すでに憲法におきましてもこれは明らかでありまするように、九十九條には、この憲法を尊重するところの大きな義務につきましては、国務大臣及び国会議員、裁判官その他公務員は、一切挙げてこの憲法の條項をこれを守つて行くところの義務を負わされているのであります。而も又七十六條におきましては、すべて司法権というものは、最高裁判所及び法律の定めるところによつて設置するところの下級裁判所に属するものでありまして、特別裁判所の設置や、或いは又最終的に行政機関を以て裁判をすることはできないという條項が明確に書いてあるのであります。このような憲法の條項を外して、そうして行政機関というものがいわゆる基本人権の最終的審判をやる、公安審査委員会というものが最終的な審判をやる、このような行政権での侵害をこれで認めておるのであります。而もこの公安審査委員の任命というものは、吉田総理自体がなされるのである。而もその構成は五名であります。而もこの会議の成立というものは三名で成立できるのである。同一政党の内閣からいたしまして、二人の委員だけはこれは出すことができるような規定になつておる。委員長と二名の委員、この三名で、できるようになつております。このような、政府の権力と通謀して、そうして自分の好まざるところの政党団体、これを次々とこの公安審査委員会にかけて、最終的に基本人権を剥奪するような、このような恐ろしい法案というものがどこにあるでありましようか。ここに私は、総理大臣が意図しておられますところの警察権の掌握におきましても、或いは又、即ち経済権の掌握にいたしましても、或いは今後発展するのでありましようところの再軍備によるところの保安庁設置によつての統帥権の掌握、すべて、三権どころではなくして、四つの権力を握つて行こうという底意がここに現われておるということを、私は、はつきりと申上げたいのであります。(「フアツシヨだよ」「見当違いのことばかり言うな」と呼ぶ者あり)このような行政権が司法権を侵害するところにおきまして正しい最高裁判所の憲法を守るところの裁判というものはできません。又は地方裁判所の基本人権を守るところの裁判というものは、だんだんと侵害されて行くのであります。この点につきまして吉田総理は一体どのようなお考えを持つておられるか。この点を私はお伺いしたい。
 次に公安審査委員の任命権につきましては、これは法案の第五條に明記されてありまするが、この問題につきまして先ほど私が説明いたした通りであります。衆議院の修正は、内閣総理大臣にその任命権を持たせて修正して参りましたが、吉田総理は一体この任命に当りまして、どのような構想を持つてこの委員を任命せられようと考えておるのであるか、この点を私はお尋ねいたしまして、又この点につきましては再質問をいたしたいと思います。即ち私は、この民主主義の確立の点につきましては、丁度今回皆様方がこの参議院の権威を最も低くするような多数の横暴をせられたことは(「ノーノー」と呼ぶ者あり)憲政史上におきまして誠に遺憾なことでございますが、私はここに一言皆様方に提言をしておかなければならない。(「自分で反省をしろ」と呼ぶ者あり)それは即ちアブラハム・リンカーンが申したことであります。「少数の人を永久に欺くことはできる。すべての人を一時だけ欺くことも又できる。併しすべての人を永久に欺くことは何人もなし得ないであろう」ということであります。(「よく聞いておけ」と呼ぶ者あり)「若し国民がその政府に倦いた場合は、彼らはその政府を改造する権利又はこれを廃止し或いは打倒するところの革命的権利を行使することができる」と、リンカーンは喝破いたしております。而も又「若し大多数の人間が、多数の威力を以て憲法に明記せられた権利を蹂躪して、少数者を無視するに至るときには、道義的見地から革命を肯定せざるを得ない。若しこの侵された権利が重要なものであるときには、恐らく革命に至るであろう」と警告を発して、而も又これを守つて自由の旗を守つて来ておるアブラハム・リンカーンのこの教えを、皆様方に私はそつくり警告を申上げておきます。而も又私は、この吉田総理の考え方が今度のこの破防法に現われておりまするところの基本人権の制限につきまして又特に政府が考えておりまする基本的な、扇動のこの條項につきまして、私たちは次のような提言を申上げておきたいのであります。即ち、チャールズ・ヒユース最高裁判所長官は、この扇動の問題についてこのような警告を発しております。「我々の制度を暴力によつて打ち倒そうというような扇動行為に対して、社会を保護する重要性が大きければ大きいほど、自由な政治的討議の機会を保持するために、自由な討論、自由な報道、自由な集会等、憲法上の権利を守り抜くことの必要は、ますます緊要のこととなる。こうした権利を守り抜くことによつてのみ政府は人民の意思に応えることができるのだし、又望ましいとあらば社会の変革も、平和的手段によつてなし遂げられるのである。我が共和国の安泰はそこにあり、立憲国家の基礎もここにある」と喝破いたしておるのであります。即ち、言論に対しては言論を以てする。思想に対しては思想を以てする。いわゆる共産党に対しては、即ち我々は、思想は思想を以て、而もこの共産党に対するところの大きな鬪争を展開しておる。諸君たちは思想で対抗せずしてそうして暴力で以て、権力で以て対抗して行こうとしておる。このようなことで、どうして思想の自由ということが確保されるでありましようか。どうしてこの、即ち民主主義の暢達というものが確保されるでありましようか。私たちはこの結果が戰争の悲惨な状況になつて来る。両極端の即ち激突というものが、これが相互いに摩擦を醸成させて行つて、遂に戰争というような事態に発火して行くことを私は恐れるものでありまして、その導火線はすでに吉田総理が作つておられることを私は最後に銘記したいのであります。
 第二におきまして私は委員長に質問をいたしたいのであります。法務委員会は、御承知の通り、委員長も報告なさいましたように、約一カ月に亘りまして、即ち五月の十五日から六月十九日までに委員会が審査をいたしました。二十七回に亘る審査をいたしました。その間におきまして委員長がとられましたところの態度に対しましては、理事会の決定を、或いは各委員の希望をよくお聞きになりまして、その熱心な点につきましては私たちは敬意を表します。併しながら、ただ、委員長も御不満でございましたでしよう。又委員も不満でありました。その点は吉田総理の出席のなかつたことであります。この重要な法案に対するところの吉田総理の所見を聞き得なかつたことであつたはずであります。このような委員会の審査というものがこの本会議に移されましたときにおきまして、委員長のこの法案に対するところの質疑の状態の経過報告が誠に簡單でありました。これは委員長自体も認めて、この報告の内容に書いてあります。而もこの内容は僅かに六点であります。六点の内容しかこれは報告してありません。而もこの報告の要点につきましては、これはあとで私も希望を申上げて委員長の御答弁を伺いたいのでございまするが、即ちこの委員会は、前例にないような、原案が否決せられて、両修正案が否決されまして今では誰か、政府原案とそれに付けた修正案が出て来ないと審議の対象にならない。委員長は否決報告をなさつております。而もこの内容の点につきましては、先ほどから申しましたように、天下の輿論というものがこの法案に対するところの疑惑を持つておる。反対の輿論を持つておる。このような情勢の上におきまして、委員長報告は、極めて政府と委員とが熱心に質疑を交わしました状態を、この骨子を委員長は御報告になる義務があるのであります。その骨子が僅かに六点では、どうしてもこれは、各議員の方々が如何に御賢明であられるといえども、私はこの内容の点、政府が考えておる点、この点の詳細なる構想はおわかりにならないであろうと、私はこの点は公平に申上げます。而も又委員会の速記録というものは、御承知のごとくこれは五月二十八日までの分が皆様方のお手許に配つてあるだけであります。これはここの能力の関係でございましよう。このような情勢におきまして、而も恐らく本会議の委員長の報告は、即ち喧騒のためにおいて皆様方は十分な内容の点についてのお話は御承知できなかつたかもわからないと私は思います。(「その道り」と呼ぶ者あり)このような状況で一体この法案の本会議を、即ち皆様がただけでこれを討論採決に持つて行くところの無謀な計画でよろしいのであるかどうか。私はこの点を皆様方にお訴えいたしたいのであります。そこで私は申上げます。委員長は是非この点だけは各委員の方々に報告してもらいたい。
 第一点は、即ち国民生活の安定のための具体的政策の実現と治安対策との関連性についてであります。これは吉田総理に今私が質問を発しておりますこの点で、若し詳細に私たちが納得するような具体的な政策の御発表があれば、これは委員長はそれでよろしいでございましよう。併しながら、若し具体的な御発表がないとすれば、代つてこれは極く簡単ではございまするが、私はこの法務総裁に、専門的な法務総裁に、政策の問題を質問する。これも質問をする或いは又この答弁を聞いて、満足するものではありません。併しながら、これは各委員から熱心に、即ち、治安対策においてはこれだけではいかない。一体、具体的な政策はどこにあるかということを尋ねておりまするからして、この点を先ず委員長はその質疑応答を、御説明して頂きたいのである。
 第二点は、民主主義の擁護とこれの立法精神の違憲性についてであります。この点についても先ほど私は一端を触れました。即ち憲法第十一條、第十二條、第十三條及び第十九條、思想及び良心の自由の侵害、第二十一條集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由の保障に対しましてこの人民の基本権に牴触するかどうかというような、この法案の即ち立法精神、この精神につきましても私たちは詳細なる質疑応答をやつておるのでありまするが、この構想につきましての政府の答弁の状態を御報告願いたい。
 第三点は、基本的人権の不侵害の原則と公共の福祉維持との優位性についてであります。即ち、新憲法の前文にありまするところの、国民主権の自然権、即ち基本権を制限するところの一切の憲法、法令及び詔勅を排除するという、この憲法の前提がなされておるのであります。これは常に政府のほうでは、公共の福祉の維持のためには、これは治安の対策におきましても、基本人権をこれを制限してもよろしいという観念に立つておる。私たちは、この憲法の即ち精神というものは、基本的人権を、これを尊重せなくてはならない。そのためにこうむるところの公共の福祉というものの優位性というものは、基本的人権の下位にあるものであるということを私たちは考えております。この点に対しまするところの政府の答弁につきましてこれは是非とも一つ委員長は報告して頂きたい。
 第四の点は、憲法第七十六條と行政裁判権の侵害の有無でありましてこの点も私は先ほど触れておきました。いわゆる本法公安審査委員会の権限と性格が司法権の侵害となつておる。本法第二十四條第二項の行政事件訴訟(特例)法第十條第二項但書の適用は、司法裁判権の制限を意味するものではないかということに対するところの政府の答弁でありまして、これは衆議院の即ち本案に対する修正の案に対しましてもこの点は触れておらないようでありまして、即ち行政事件訴訟特例法の第十條によりまして、内閣総理大臣がいわゆる異議の申立をして、裁判権に訴えたるところの公安審査委員会の決定権に対しまして、これも又一方的に行政の支配者であるところの総理が牴触するところの権利もまだ残つておるのであります。このようなことで、司法権の侵害、いわゆる行政権の拡張、或いは又行政権の濫用と即ち私たちは叫んでおるのでありまするが、これが叫ばざるを得ないような実態であるかというようなことにつきまして、委員長は是非とも一つ報告をしてもらいたい。第五の点は、本法第二條第一項、第二項の訓示的規定に対するところの保障規定、―救済規定の不備に対する政府の答弁であります。この点は、即ち、学者、文化人及び新聞関係、特に又労働組合におきまして最も痛烈にこの点に対しましては関心を寄せておる問題でありまして、即ち第二條におきましては、憲法の十一條、十二條のこの権利の剥奪はこれはしないというようなことは謳つておりまするけれども、これに対しまして何にも保障規定がない。ただ謳つておるだけであります。このようなことで、訓示的な、一方的な即ち規定で、本当に文化人たちのおびえておるところの、いわゆる出版の自由にいたしましても、或いは研究の自由にいたしましても、学者が求めておりますような学問の自由にいたしましても、言論の自由にいたしましても、労働組合が考えておりますような正常な労働運動の組織的な活動におきましても、組織的な正常な機関の即ち運営におきましても、この條項で本当に保障せらるるかどうかという点につきまして、委員長はこれを報告して頂きたい。
 第六点は、本法第三條、暴力主義的破壊活動の定義に対しまして、刑法適用範囲拡大の意義及び実例の例示につきまして、即ち刑法第七十七條内乱の罪、第七十八條内乱の予備、隠謀、又は第七十九條内乱等の幇助に規定する行為及びロ項の教唆又はせん動、ハ項の文書、図画の印刷、頒布、公然掲示又は頒布等、更に二号の「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため」の行為に対する適用及び罰則に対し、何故に範囲を拡張せねばならないかというような私たちの質問に対しまして、この重要なる問題に対する政府の答弁の報告をお願いしたい。
 第七点におきましては、特に第三條のロのせん動及び文書、図画に対する適用は思想統制の危険性が濃厚であるに対しての政府の見解であります。即ちこの思想統制の問題につきましては、これは先ほど私は一言触れましたが、問題は扇動の即ち実行行動に対する政府の認定であります。この点は一松委員からも特に重要な発言がありまして、いろいろな形におけるところの扇動の取扱方がこれは提示せられております。政府の見解は、時によればこの問題に対するところの誤まつた見解をも言つておりましたが、問題は、政府が考えておるところの扇動の実行行為に対するところの問題は一体どうなつて行くかということについて、政府の見解を、これを是非御答弁をお願いしたい。
 第八点は、第三條第一項二号リ、即ち検察若しくは警察の職務執行に対する刑法第九十五條公務執行妨害、職務強要の適用範囲の拡大と人権蹂躪との関連性に対して、更に適用の実例と職権濫用の制裁規定についての政府の答弁であります。即ちこれは、第三條の問題は、政党といたしましては重要な問題であります。主義政策を即ち持つたところの政治行動に対するこの認定権でありまして、これは治安維持法におきましては遂に反対党を倒すところの策謀に使われました。今回のこの第三條の問題というものが、将来におきまして反対党の即ち政策批判に対するこの道具に使用しないかというような、基本的政治団体としての問題でございますが、これに対するところの政府の答弁をお願いしたいのであります。
 第九は、組合活動の制限と労働運動の抑制について、委員長の報告は不十分であります。この点については、第五点といたしまして、委員長は、組合活動の正常な即ち運行に対しては、これは濫用しないというようなことを言つておられまするが、この問題に対しましてはフラク活動の状況というものがあります。この状況は重要でございます。現実のアフタ活動の状況に対して、この破防法というものが、どういうような即ち態度で臨むかという、この政府のこの問題、或いは第二組合結成の場合におけるところの第一と第二組合の運動の実行が異なつておる場合におけるところの本法適用の基礎、この問題に対しての重要なる政府の答弁があつておるはずでありますから、この点を委員長は一つ報告してもらいたい。
 次に、宗教団体、新聞、学校、文化団体、研究会、社交団体等、その活動と本法の適用の範囲についてであります。この範囲につきましても、これは重要でございますから、この点も一つ報告願いたい。
 第十一は、警察、特審局の非合法活動防止及び禁止の法的措置でありまして、即ち、スパイ活動や或いはおとり活動、おとり検挙、こういうような状況、或いは情報の提供を求め、情報を買うというようなこと、こういうような即ち警察、特審局の非合法な活動自体に対するところの委員の質問に対する政府の答弁を是非お願いをしたい。
 団体の規制及び団体の解散によつて暴力的破壊活動の根絶の徹底が期せられておるか否かという問題につきますところの政府の答弁でありますが、これは政府は常に質問をこの立法の本体に向けて参りますと、日共組織の問題を申して参ります。日共の現われておるところの現実の問題と地下に潜入しておるところの問題とを、これを論じております。地下に潜入しておるところの日共組織に対して、果してこの団体の解散、団体の規制というものが完全に適用して、そうして又こういう暴力主義的な団体を、これを芟除して行くというような基本的な考え方が出ておるかどうかという問題が大きな問題でございましようが、この問題に対してはこれは秘密会でも報告をしております。この状況を報告していらつしやらない。この状態についての政府の答弁を報告してもらいたい。
 十三点は、破壊的団体の規制に対する公安調査庁長官の最終的認定権の危険性及び審理官制度の可否でありまして、この点も総理の質問の中に一点加えておきましたけれども、問題は審理官のこの審理制度の確立でありましてこれは最も危険な問題であります。今回の法案中におきまして最も危険な問題でありまして調査員が、これが職権濫用で調査して行く、而もその書類は審理官がこれを審査して行く、審理官のこの審査したものを、これを認定によつて調査庁長官というものが認定をして公安調査委員会のほうに提出するのでありましてこの審理官制度の可否につきましては、これは各委員会は多くの質問を展開しておるのでありますから、これに対して是非一つ答弁をお願いしたいのであります。
 十四点は、本法第六章、罰則の適用が重罪であるということ、即ち刑罰の併科の危険性が非常に多いということ、即ち構成分子に対しても、団体そのものに対しましても刑法を適用して行く、こういうような二重刑罰の方式、併科の状態、これを明記されておるのでありまするが、このような、即ちこれに対するところの反対の答弁を是非報告してもらいたい。
 それから国家賠償法適用と本法との関係でありまして、即ちこの国家賠償法適用と本法との関係につきましては、即ち、そういうような職権の濫用を受けた者は、国家賠償法の規定によつて公務員に対するところの損害賠償の訴えができないのであります。この法律では……。これに対して政府はどのように考えておられるのであるか。
 まだ私は二十一点に対するところの質問が委員長にあるのでありまするが、この点に対しましては、第一の質問時間におきましてはこの点にとどめておきましてあと又再質問をすることにいたします。要するに、この委員会の審査というものが、これが各委員の熱心なる討議によりましてなされております関係上、これだけぐらいの骨子は、この本案を審議する上につきまして是非とも必要でございまするから、委員長は、最後の委員長の責務をお果しになる。歴史におきまして委員長の努力されましたところのこの跡を憲政史上に残されて行かれるという見地に立ちまして、是非委員長は各委員にその義務をお盡しにならんことを特にお願いを申上げたいのであります。
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#74
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。
 破防法案と治安維持法とがあたかも同一であるというがごときお話でありまするが、これは同一ではないのであります。破防法案の目的とするところは、破壊行為、暴力行為、これは禁止せんとする法律であります。決して言論を抑圧するためでもなければ、基本人権を侵害せんとすることを目的といたしておるのではないのであります。これをあたかも同一であるかのごとく言わるるのは、たまたまこの治安維持法が不評判であるがために、(「当り前だ」と呼ぶ者あり)破壊活動防止法案を以てあたかも治安維持法と同じようなものであるとなして、治安維持法に與えられた悪評を転嫁せんとする、誠に卑怯なお話であると私は考えるのであります。
 又破防法案を、平和條約及び安全保障條約から来る当然の帰結であると言われるのでありますが、これは当然の帰結ではないのであります。(「当然の帰結だ」と呼ぶ者あり)一体、破防法案なるものは、独立を維持し、又民主国家を擁護せんとするためであるのであります。これは、安全保障條約の結果若しくは平和條約の結果、政府として、国家として破防法案を制定いたさなければならない義務を負うておるのではないのであります。これを義務があるがごとく言われるのは、これ又一種の私は、それこそ危険な思想であると言わざるを得ないのであります。(拍手)国民に誤解を與えることは参議院の議員としてなすべきことではないと考えるのであります。(「事実が証明するよ」と呼ぶ者あり)
 又治安取締は法律ではできないのである。国民生活の安定こそ肝要である。――これは御同感であります。併しながら、暴力行為、若しくは破壊行為なるものは法律以上のものであります。法律を無視し法律を破壊せんとする行為であります。刑法を以て若しくはその他の法律を以て防ぐことのできない暴力破壊行為に対するのが破防法案であります。その点をお間違いにならぬように希望をいたすのであります。(「その通り」「舌を噛まぬようにして」と呼ぶ者あり、拍手)
 又アチソン氏が日本を以て、あたかも共産主義に対する基地である、防禦の基地であると言われたことは如何なる場合に言われたか私は知りませんが、思うに、安全保障條約なるものは、日本を守らんとする共同防衛の思想から出たものであります。即ち民主主義を守り、(「日本を戦争に入れるな」と呼ぶ者あり)共産主義に対抗せんとして、共同防衛の線に日本を持つて行こうという考えを他の言葉で言い現わしたのであろうと考えますが、如何なる場合に言われたのであるか私は知りませんから、これに対してはお答えをいたしません。
 その他の問題については主管大臣からお答えをいたします。
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#75
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今総理より答えられましたので、私から改めて答える必要はないと考えるのでありまするが、大体において内村君の御議論は、よほどこの破壊活動防止法案を誤解されてやるように思われるのであります。(「正解だよ」と呼ぶ者あり)
 先ず第一に治安維持法との関係でありますが、治安維持法は御承知の通り、思想の取締をして行こうというのでありますから、いわゆる結社への加入もこれを否定して行こうというのであります。本法案においては如何なる結社も自由であります。又如何なる結社に加入することも自由であります。ただただ破壊的の行動を現実に行わんとする、又行う団体を規制して行こうというのであります。それと同時に、それに伴うところの刑罰を補整して行こうというのであります。この点において治安維持法とは根本的にその性質を異にしておる。昔の治安維持法が濫用されたから本法案についても濫用されるのではないかということを言われるのでありますが、この法案におきましては、その目的をはつきりしておる。而もその規制すべき対象も極めて明確にしておる。これを濫用しようがないのであります。その点について内村君は大いに誤解されておろうと考えておるのであります。言論の抑圧――何の抑圧でありましようか。この法案において抑圧すべき言論がどこにありましようか。破壞すべき行動を規制して行こうというのであります。言論は毛頭抑圧しておりません。如何なる言論も自由であります。かような点について、これは本法案について十分の御審議を願いたいと考えるのであります。
 又この法案について世間では非常に反対しておる、反対が全部のように考えられておるのでありますが、決してそうじやありません。(「知つてる者は皆反対しているのだ、知らんのか」と呼ぶ者あり)六月九日の東京新聞の世論調査、これは東京都内においての世論調査であります、(「燈台下暗し」と呼ぶ者あり)この世論調査の結果はどうでありましようか。破壊活動防止法案について反対のほうは少い。賛成のほうが多いのであります。而も最近におきまして、福岡県の町村会におきまして、これは是非とも破壊活動防止法案を早急に制定せよというような要望の決議もしておるような次第でありまして、決して内村君の申されるように、国民全部がこの法案について反対をしておるものではありません。我々は、日本の治安維持のために一日も早くこの法案の通過を希望しておるのであります。
 更にこの法案について内村君は司法権に対する行政権の圧迫であるというようなことを申されましたが、決してそうじやないのであります。政府は国内の治安について最後的の責任を持つておるのであります。この責任において不法団体を規制して行こうというのであります。その規制処分に対しては異議があつたならば裁判所にこれは出訴できるのであります。最終的においては裁判所において、これが適法であるか違法であるかということの判断を下されるのであります。決して司法権に対する行政権の圧迫とは言えないのであります。この点についてもう少し御研究をお願いしたいとこう考えております。(拍手)
   〔小野義夫君登壇、拍手〕
#76
○小野義夫君 内村君にお答え申します。
 お尋ねの通り私の報告は随分行届かぬところが多々あると存ずるのであります。何分にも百九時間に亘るところの質問応答のあつた諸問題でございますし、且つ又二十七回の回数を重ねた。このことは内村君も御承知の通りであります。この間になされました質疑応答の内容は、誠に広汎、多岐多端に亘つておるのでございましてこれを一々この報告の中に織り込むということになりますならば、恐らく十数時間を費しても或いはその完璧を期することができないかと思う。従いまして、実は詳細に十数点の御質問に対して一々お答え申上げたいのでございますが、それは慣例によりましていつも本会議における報告は委員会の御同意を得まして委員長に御一任下さつたと私は了承いたしておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従いまして、今日は、昨日でございましたか、報告いたしました以上のことを今日御答弁できないことを甚だ遺憾に思う次第であります。
 右お答えを申上げます。(拍手)
   〔「そんな答弁はない進行」と呼ぶ者あり〕
#77
○議長(佐藤尚武君) 片岡文重君。(「あれでいいのか、委員長の答弁は」「進行々々」と呼ぶ者あり)片岡文重君に登壇を命じます。
   〔片岡文重君登壇〕
#78
○片岡文重君 国民世論のごうごうたる反対と本院の未曾有の混乱の中に、世紀の悪法とも考えられるこの破壊活動防止法案が多数の暴力によつて遂に上程のやむなきに至りましたことは、甚だ残念に存ずるのであります。與党たる自由党緑風会の諸君の中にも、この法案には強く反対をされておられるかたがたくさんおられると伺つております。(「嘘を言え」と呼ぶ者あり)小野委員長も又そのお一人であるやに伺つておるのでありますが、(拍手、「嘘を言うな」と呼ぶ者あり)党規に従つて懸命に本法案の通過に御努力をなされましたことについては、誠に同情に堪えないのでありますが、特に(「本論本論」と呼ぶ者あり)前後二十七回、百余時間に亘る委員会を主宰せられまして、そのあげくに、この混乱の中に突き込まれた委員長の御苦心、殊に御老体に鞭つての御審議に対しては、心から御同情申上げるのであり、敬意を捧げるにやぶさかではないのでありますが、(「その程度で打切り」と呼ぶ者あり)この法案の重要性を考え、この測り知れざる被害が善良な国民に及ぶことを考えまするならばこの法案の内容を少しでも多く国民に周知徹底せしめなければならないと考えるのであります。私どもは国民の選良の一人として、その義務と責任とにおいて、一昨日の小野委員長の御報告だけでは了承することはできないのであります。従つて、御老体誠に御苦労ではございまするが、どうか国民の土に思いをいたして御答弁を下さらんことをお願い申上げるのであります。
 今内村君からの質問に対して、一々答弁する限りではない、又そういうことはできないとおつしやられました。私も又あの百余時間に亘る御審議の内容を一つ一つつまびらかにして下さいとお願いを申上げるのでは決してございません。この法案審議の中に取上げられました最も重要なる問題であり、殊に賛否を決するに当つて是非判断の拠点としなければならないような問題については、どうしてもこれを明白にして頂かなければならない。このような考えからあえて御質問を申上げるのでありますから、是非この重要な点については、率直に、與党委員長ではなくして参議院議員としての立場かも御説明を賜わりたいとお願いをする次第であります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 先ず第一点は、この法案が持つところの内容は、政府みずから吉田総理はどうおつしやつておられるか、私は真相を伺つておりませんけれども、木村法務総裁はしばしば委員会において、この法案は運用に当つて深甚なる注意を要することを繰返して申しておられます。殊にその第二條においては多分に注意規定を設けて訓令規定を設けて、この法案の持つ危険性をみずから認めておるのであります。殊に人権蹂躪の虞れが多分にあるのであり、世上会心をして、殊に学者、ジャーナリスト等の文化人をして、恐怖、不安のどん底に陷れておるということも納得しておられるのであります。二回に亘る二十人からの公述人の意見を総合いたしてみましても、これ又この法案が極めて危険である。このような法案を必要とするという賛成意見を述べられたかたも、なお且つこの法案では危いということを述べられておるのであり、一公述人のごときは、国民に陰惨な感じを與えておるとまで断言いたしておるのであります。(「デマだ」と呼ぶ者あり)このような危険な法案を提出されて、二十七回に亘る委員会、百余時間の審議の間に、総理大臣はただの一遍といえども御出席なさらなかつた。而もこれに対して我が党伊藤修委員初め全委員から、與党の諸君も又総理の出席を強く要望いたしておつたはずであります。これに対して法務委員長はどのような措置をとつておられたのか。なぜ吉田総理は出席をしなかつたのか、(「そんな必要はもうない」と呼ぶ者あり)こういうことについて、いささかもお述べになつておらないようでありますけれども、法案の持つ内容を考えまするときに、この吉田総理の態度と與党諸君の――――的なそのような弁解の態度とは、諸君の政治的良心を物語るものであり、諸君らのその――――的な考えが吉田ワンマンをして日本の国政を専断させるものである。諸君は国会議員として、一人の総理のために――――的な役目を果してはならない。吉田総理大臣は日本の国の政治を行う最高の責任者であつてただ一個の自由党総裁たるの役目に甘んじておつてはならないのであります。こういう観点から、徒らに諸君は……(「自由党を侮辱するか」と呼ぶ者あり)侮辱するのではありません。諸君らのそのみずからを卑下するところの考え方を是正して頂きたいのであります。(「お前の考え方を直せ」と呼ぶ者あり)こういう考え方の上に立つならば、恐らくや公平無私なる小野委員長は、この間の措置について十分我々の納得の行く御説明をして頂けることと考えるのであります。(「そういう質問には答弁は要らん」「破防法の本質がわかつておらん」「今日は元気がいいね」と呼ぶ者あり)ここに私は委員会において質問を留保いたしておきました総理に対する質問をいたしたいと思うのであります。(「早くやれ」と呼ぶ者あり)この質問の内容につきましても、成るべく内村委員とは重複しないように、且つ要点を外れないようにして御質問いたしたいと存じます。
 この法律は、諸君はお読みになつておるかどうか存じませんが、(「失敬なことを言うな」と呼ぶ者あり)治安維持法には、御承知のように、国体を変革し、私有財産制度を否認し、と明らかに運動に対する嚴密な枠をはめてあります。この法律には、そのような枠をはめて、こういう法律を作つて規制をしなければならないほどに、今や日本の国には、個人ではなくして、団体を組織して暴力主義的破壞活動を行う団体が出て来たと言つておるのであります。このような危険な団体が、社会秩序を無視するような団体が、みずから主宰するところの政府の治政の下に続発して来る、頻発して来るということについては、政治のよし悪し、政治が果してよく行われておいるか否かについて、十分なる考慮が、反省がなされて然るべきであると考えるのでありますが、この点について総理は十分お考えになられたでありましようか。この点を先ず第一点お伺いいたしたいのであります。
 次に、このような法律をお作りにならなければならない事態であると仮に御認識なさつてこの法律をお作りになつても、この法律によつてこの種の暴力行為を行う団体の発生を将来防ぐことができるとお考えになられるかどうか。この点についてもお伺いをしたいのであります。若しこのような法律によつて再び暴力主義的な破壞活動を行う危險な団体の発生を阻止することができないとお考えになられるならば、今後に起つて来るところのこの種の危險を団体に対してどのような措置をとろうとお考えになられるのか。この点について一点伺いたいのであります。
 更に私どもが最も重大だと考えられまするのは、総理みずから機会あるごとにおつしやつておられるようでありますけれども、日本の民主化は未だ萠芽の途上にあります。今まさに育成されなければならない事態に置かれておると考えます。この民主化を一日も早く達成して行かなければならないと考えられる今日の情勢下において、若し良心と政治的責任を持つて政府最高の責任者としてのお立場から真実日本の民主化育成をお考えになるとするならば、あらゆる手段を以て民心の潤達なる興隆に十分な措置を拂うべきであると考えるのでありますが、言論や結社の自由を拘束する危險が多分にある、殊に学者文化人、ジャーナリスト等が、殆んど口を揃えて、危險な法律であり、運用に当つては政府が陣頭に立つて深甚なる考慮を拂わなければならないということを繰り返し述べておる公述人の速記を一度是非お読み下されば、この点は極めて明瞭でありますが、このようなこの種法案の制定に賛成をされて、なお且つこの原案では、危險であるというこの法律を今民主化育成の途上においてお出しになるということは、民主化を阻止することと、阻止することのマイナスと、民主化を育成しようとするプラスと、どちらが多いとお考えになるのか。民主化の育成を所念しても、民主化が多少阻まれることがあつても、なお且つこのような法案はお作りにならなければならないと考えられるのか。この点について私は、特に民主化を擁護しなければならないという強い念願から、詳細に御心境の披瀝をお願いいたしたいのであります。(「自明の理だよ、そんなことは」と呼ぶ者あり)
 次に私は、日本の国民として今日暴力を是認し、暴力を好むというような人はないと思うのであります(「幾らもあるよ」と呼ぶ者あり)現に頻発しつつある暴力は決してみずから好んで行うものではないと信じます。今日市井において強盗や殺人や破廉恥罪は連日の新聞を賑わしておりますけれども、生れながらにして殺人を犯すべく、生れながらにして強盗を働くべく出て来た者はございません。その環境により、その生活によつて、生きんがため止むを得ざるの措置に出たる者が大多数であります。(「大きな間違いだ」と呼ぶ者あり)今日の政府の政治のよろしきを得まするならば、何を好んでみずから牢獄の月を眺めることを欲するでありましよう。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)真にみずからの国民の生活が安定し、明日の米に、今宵の子供の足袋に困ることがなかつたならば何を好んで国民は暴力に加担し、何を好んで火炎びんを投げるでしよう。少くとも今日の状態では、民主主義に従つたおとなしい方法ではもはや我慢できないのだ。明日の暮しが成り立たないのだという土壇場に追いつめられた暴力であると私は思うのであります。このような情勢において皆様に特に考えて頂かなければならないのは、暴力を抑えるものは暴力ではありません、平和を愛好し、世界の平和を念願しておるところの国民であります。暴力を好んでありません。暴力を制止し、暴力をなくするためには、輿論の力でなければなりません。国民の輿論の力を以てしてこそ初めて暴力の続発をとめることができると私は考えるのであります。而もなお、暴力は輿論によつて反撃されることなく、輿論によつて制止されることなく、ますます頻発の傾向にあるということは、即ち世相がそ九だけ悪化しつつあるということを雄弁に物語るものであります。世相が悪化しつつあるということは、それ自体、政治の貧困、政府施策よろしきを得ないということを最も端的且つ雄弁に物語つておると考えるのであります。(拍手、「その通力」「言う資格があるか」「現実を見ろ」と呼ぶ者あり)現実を見て申上げております。現実、暴力が起りつつあるというこの現実は、吉田政府無能のいたすところであると申上げたいのであります。(拍手、「君に言う資格があるか」と呼ぶ者あり)この責任について、この暴力が頻発するの止むなきに至つた政治責任について、吉田総理大臣はどうお考えになつておられるかということをお伺いいたしたいのであります。
 更に一点お伺いしたいことは、この法案に対する反対の声はそう高いものではないかのごとくに、今木村法務総裁はおつしやいました。けれども、近来この法案が本院に上程せられましてから騒然たるこの近時の世情というものについて、皆様は強いて目を隠そうとおつしやるのでしようか。(「そんなしとはないよ」と呼ぶ者あり)私どもは、見たくないものも、好ましからざるものも、現実は現実として見て行かなければなりません。現実のあるがままの姿に対して、なぜこのような事態が起つたのか、どうしたならばこれをなくすることができるのかということについて考え、これに適切なる措置を與えることこそが、良心ある政治家の態度ではないでしようか。このように考えて参りますると、(「小学校に行つてやれ、そんなつまらないことは」と呼ぶ者あり)この法案に対する反対の声はまさに巷に満ちていることと私は考えます。而も暴力に反対する声は少い。先ほど来、私は縷々申上げております。この暴力に対して心の中では反対をしておりながら、なぜこれが輿論となつて大きく出て来ないのであるか。(「出ているじやないか」と呼ぶ者あり)この点について是非吉田総理の原因を追及せる所感を述べて頂きたいと思うのであります。
 更に最後に、本法律案に対しましては、先ほど来申上げておりまする通り、文化的な指導的立場にある人々が殆んど口を揃えて反対しているのでありまするが、国民の気持も、又殊に農民、労働者、中小企業者等は極めて陰惨な気持になつております。これに対して、日本は自主独立の機会を與えられて、我らのみずからの責任、みずからの意思に基いて日本を再建し、日本民族の繁栄を図らなければならないと考えられる時期に当つて、自由を謳歌する国民大衆の闊達なる気風を如何にして盛り上げて行こうとお考えになるか。抑えることではなくして、自由を謳歌する国民の気持をどうして盛り上げて行こうとお考えになられますか。この点についてお伺いをいたしたいのであります。以上が総理大臣に対する御質問であります。
 更に小野委員長について御質問を続けたいのでありますが、速記録を見よとおつしやられるならば何をか言わんやでありますが、この審議に当つて最も私どもが公正な判断の資料となるものは公述人の意見であろうと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)この公述人の意見を政府がどのように斟酌し、法案審議に当つてどのような関心を以て当られたか、この政府の考え方、並びに公述人の意見を取入れたか否かということについて、率直に公平におつしやつて頂きたいと思うのであります。殊に東京大学名誉教授牧野英一先生、京都大学法学部教授の滝川幸辰博士、弁護士塚崎直義先生、共同通信社の論説委員である牛島俊作先生、法政大学の大内兵衛先生等、極めて適切なる御意見であり、殊にこの法案に対してそれぞれ專門家の立場から老練達識の眼を以て仔細に検討され、我々法務委員に対して誠に肯綮に値する御意見をお聞かせ下さつたはずであります。これに対して政府がどのように考え、どのようにこれを加えて行つたかということについて、法務委員長から経過を御報告して頂きたいと思うのであります。更にこの法律が社会秩序の、治安の維持を目的として団体規制のために設けられた特別立法であるということによつて、関連する法規についての質問が政府になされておるはずであります。即ち社会秩序の維持については直接関係を持つところの警察法があり、刑法がある。殊に警察法の第一條には、「警察は、国民の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び公安の維持に当ることを以てその責務とする。」と述べております。而して破防法第一條の後段には、「かかる破壞活動に関する刑罰規定を補整し、もつて、公共の安全の確保に寄與することを目的とする。」と述べてあります。この三法、即ち警察法、刑法並びに破防法の関連性についての質疑が行われたはずでございます。これについてどういうふうに政府から答弁があり、如何に御処置なさつたかということをお尋ねしたいのであります。更に再質問を保留いたしておきます。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#79
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。最近の状態を考えまするに、暴力団体が横行いたしておると考えられるのであります。故に国民は暴力団体に対してこれを取締る法律の速かに制定せられんことを希望いたしておることは明らかであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)ただこれに対して反対せられるものは、暴力団体自身であり、若しくは暴力団体を扇動せんとし、若しくは教唆せんとする者がこれに反対をせらるるのであります。国民一般はこれを歓迎いたしておるのであります。これは法務総裁がすでに申された通りであります。又この法律によつて暴力団体或いは破壞行為が防禦ができるか、防止できるか。――これはできるためにこの法律を作つたのであります。この法律が制定いたされるならば、完全にこれを防止し得ると政府は考えるものであります。又民主化の途上において、民主政治がまさに成らんとするときに、かくのごとき法律を作ることは、民主化を破壞するものではないかということでありますが、これは民主政治、民主主義、民主国家を擁護するために作るのであります。(拍手)又暴力行為がどうして発生するか、暴力団体はどうして存在するか。――これは、これを教唆し、又は扇動する人或いは又暴力団体自身に、或る人、或る団体を構成しておる諸君が存在いたすからであります。これを防止するのが法律の目的とするところであります。(拍手)又この法律があるために社会を陰惨ならしむる。――陰惨ならしむると考えらるるのは、その暴力行為に賛成せらるる諸君において陰惨と考えるでありましようが、(拍手)日本国民の多くは、この法律によつて社会の状態が明朗化すると確信いたすのであります。(拍手)
#80
○副議長(三木治朗君) 小野法務委員長。
   〔小野義夫君登壇、拍手〕
#81
○小野義夫君 お答え申上げます。公述人の方々の御意見は、政府として聞いたのでなく、我々が審議の上の参考意見として拜聽いたしたのでありまするから、(「その通り」と呼ぶ者あり)これが即ち伊藤修正案となり、或いは中山修正案となつて現われておるのでありますから、これは皆様がよく修正案をお聞きになつて、いろいろ御検討下さればわかるのではないかと思います。(拍手)
#82
○副議長(三木治朗君) 片岡文重君。
   〔片岡文重君登壇、拍手〕
#83
○片岡文重君 吉田総理といい、小野委員長といい、御老体誠に御苦労でありますが、是非率直なことをお答えを頂きたい。先ず総理大臣はお忘れになつたかと思うのでありますが、なぜ発生するのかという、つまり、これだけ吉田さんの御良心では、御心中では、自分はこれだけ熱心に政治をやつておるのに、どうしてこういう暴力主義的な破壞活動が起つて来るのかと御不審を抱かれると思うのでありますが、つまり、なぜそういう政治をやつておるのにもかかわらず暴力主義的な団体が発行するのか、こういうことについてお考えなさつたことがあるかどうかということを一点(「扇動政治家があるからだよ」と呼ぶ者あり)お答え頂きたいのであります。
 それから小野委員長にお尋ねしたいのは、委員会においてあれだけ吉田さんの出席を要求し、この参議院が再び(「今日は出席しておる」と呼ぶ者あり)混乱と未曾有の秩序無視を行なつて、今日まで延々と審議を引延ばされ、而も三十日間に亘り会期の再々延長をするの止むなきに至つたのは、一に懸かつて吉田総理の怠慢によるものと我々は断ぜざるを得ないのであります。(拍手、「何を言う」と呼ぶ者あり)この重大な責任について我々は法務委員会においてきびしく追及し、小野委員長又同感の意を表され、極力吉田総理の出席を要請することに努力すると誓われたはずである。この経緯を御発表頂きたいのであります。この経緯を発表されるということは、即ち吉田政府の国政に対する誠意の如何を物語るのでありますから、十分心してお答えを頂きたいのであります。(「答弁の要なし」と呼ぶ者あり)更に、警察法、刑法並びに本法案との関連性についてなされた質疑の経過を御報告頂きたい、こう思うのであります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#84
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。第一の問題については、私は絶えずこれを懸念いたして、朝夕これを考えております。忘れて怠つたことはないのであります。又私の出席について云々と言いますが、私の出席がこの法律審議を、法案の審議を延ばしたのではなくて、諸君の引き延ばし行為がこれを延ばしたものであると言わざるを得ない。(拍手)
#85
○副議長(三木治朗君) 小野法務委員長。
   〔小野義夫君登壇〕
#86
○小野義夫君 刑法その他の既存法律で賄い得るのではないか、破防法を必要としないのではないかということについて、委員会の審議の経過結果はどうであるかというお尋ねでありますが、政府の答弁は、刑法及びその他の法律で賄い得ないものは、これは、破防法は団体を対象としてやるのでありまして、刑法その他の法律は個人を対象としてやるのが主なる差別であります。かようの政府の答弁でありました。(拍手)
 総理に対しては、委員会で皆様が御承知の通りお願い申上げましたのですが、いろいろ政務多端のこともあり、又いろいろの御所労のために出席ができなかつたこともあるのであります。この点につきましては委員各位もその事情は御了承のことと存じます。(拍手)
#87
○副議長(三木治朗君) 午後八時まで休憩いたします。
   午後七時一分休憩
     ―――――・―――――
   午後八時三十七分開議
#88
○議長(佐藤尚武君) 休憩前に引続きこれより会議を開きます。一松定吉君。
   〔一松定吉君登壇、拍手〕
#89
○一松定吉君 私は本法案に対しまして政府に少しく質問をいたしたいのであります。主として木村法務総裁の御答弁で結構です。但し総理大臣に二つ三つお答えを願わなければならん所がございまするから、その点は総理大臣から極く概括的でよろしうございますからお答えを願うことをあらかじめお願いしておきます。
 私は今日暴力主義的破壞活動という事実のあることはこれを認めます。而うしてこれを取締る必要のあることも認めます。併しながら、本法案はこれを取締るのには行き過ぎである、かような考えを持つておりまするから、その点について極く概略的に御質問を申上げてみたいのであります。
 本法案の目的は、いわゆる暴力主義的破壞活動を行うところの団体の行動を、これを規制する手続を定め、且つ暴力主義的破壞活動に関する刑罰の補整をこれによつて定める、そうして治安の維持をしたいというのが目的であるということでありまするから、それらの目的に対しましては私は何らの異論を持つておりません。併しながら本法については非常な行き過ぎが多いと考えまする。それがために今日輿論は沸騰して、この法案の阻止若しくは大修正ということに非常な熱意を持つたところの反対行動のあることは、これは何人も否むことはできますまい。そういうことはどういうところからさような反対の熾烈なる行動があるのかということは、私をして言わしむれば、この法案が行き過ぎであるということがその主なる原因であると考えるのであります。(拍手)然らばどういう点が行き過ぎであるかということを、これから一々具体的に申上げまして、政府の御答弁を頂戴いたしたいと同時に、本法を審査なさいまする皆様の御参考にも供して見たいのであります。
 一体本法はどういうことかというと、暴力主義的破壞活動を行うた団体の行動を規制すると言う。そうして、そういう行動をする者に対する刑罰の制裁規定を補整すると言う。そこで、どういうようなことの刑罰規定を補整するかと言いますると、第二條にその破壞活動の範囲をちやんと限定してある、どういうことが破壞活動か、それは第三條であります。それはいわゆる内乱及び放火、殺人、強盗、汽車、電車の顛覆、爆発物に関する行為、騒擾、公務執行妨害、こういうようなことを、暴力主義的破壞活動を目的としてかくのごとき行動をすることが、これが本法において取締られるんだということなんであります。然らば、今列挙したような犯罪の取締は刑法にちやんと規定してある。刑法に規定してあるから、それでよろしいではないかと言えば、いや、そうではない。刑法に規定してある点では足りないんだ。どういうところが足りないんだ。いわゆる刑罰規定の補整をしなければならない。その補整というのは、先ず第一に、予備陰謀を罰しなければならない。内乱、殺人、放火、それから汽車、電車の顛覆等、先刻列挙いたしました行動等に対する予備、陰謀までも罰しなければならないのだと言う。皆さん御承知の通り、現行刑法において予備、陰謀を罰する規定は、内乱及び外患に限られております。内乱と外患以外には、予備、陰謀を罰する規定はございません。それから、その次に予備だけを罰する規定はどういうことかと、いうと、殺人、放火、汽車、電車等の顛覆、それから家屋等の損壞、それから爆発物、こういうような犯罪に対しては予備を罰しております。本法において掲げておる数種の犯罪の中で、騒擾と公務執行妨害には予備も陰謀も罰しておりません。刑法で……。而して今私が挙げた以外の行動に対する刑法の規定の中には一つも予備、陰謀を罰した規定はございません。即ち予備、陰謀を罰したのは内乱、外患だけ。予備を罰したのは今私が申上げましたような殺人、放火、電車、汽車等の顛覆だけに限られておりまして、本件に挙げられておるところの騒擾や公務執行妨害は予備も陰謀も罰しておりません。然るに本法はそういうような予備だけ罰して陰謀を罰してないものも陰謀を罰すると言う。予備も陰謀も罰してないものを予備も陰謀も罰すると、こう言う。それがいわゆる暴力主義的行動に対する刑罰の補整をするという意味はそこにあると思うのであります。私は……。そういうようなことが行き過ぎではないかという思うのだ、私は……。現行刑法の予備、陰謀を罰する内乱、外患、予備だけを罰する殺人、放火、それから汽車顛覆、爆発物等に対することだけで十分であり、騒擾や、公務執行妨害には予備、陰謀がないのに、特に本法にそういうことを設けてやるということは、いわゆる一網打盡的である。これが世の中の輿論が反揆をしてそんなに広くやられてはたまらないということが一つの理由であると私は考えるのであるが、こういうように予備、陰謀まで罰しなければならんということについて是非その必要があるのだということことの御説明を、木村法務総裁の御説明を願いたい。
 その次には、いわゆる教唆、扇動ということであります。教唆ということは、すでに刑罰法令の刑法の総則の中に明らかに教唆を罰する規定がある。特に本法においてそういう教唆罪というものを独立罪としなくても、教唆というものは刑法の総則にあるにかかわらず、本法において教唆というものを独立罪にしたのはどういうわけか。而も刑法の教唆と本法の教唆とが重複した時分に、重きに従つて処断するというように、ただただ重くということを主眼にしておるということは、これは少しく行き過ぎではありませんかということが二つ。
 その次にはいわゆる扇動です。扇動ということは、我が刑法には扇動というものはございません。刑法の各條には扇動ということを罰する法規は一つもどこにもございません。然るに本法ではその扇動を罰すると、こう言う。然らば我が国の刑罰法令で今までの間に扇動を罰したことがあるかというと、ある。それはいわゆる皆様が御心配に相成つたところの治安維持法、新聞紙法、そういうようなものに扇動を罰しております。(「どうじや」と呼ぶ者あり)併しそういうような扇動は今では廃止せられておる。今新らしい法規について扇動というのを罰しておるのは二つ三つありますが、終戰後において扇動に代るべき文句としては「おだてる」「あおる」というような言葉を以て、扇動という文句と異なるところの文字を使つておる。これは一体どういうわけだ。扇動という文字がどうも疑いの多い、解釈に困るというようなことから「あおる」とか、或いは「おだてる」と、こういう文字を使つたのではあるまいか。こういう点について私は非常にこの扇動ということに疑問を持つておるのであるが、扇動に対する我が国の学説等はいろいろありますけれども、いわゆる大審院の判決がただ一つある。扇動というものに対する解釈、それは昭和四年の(れ)第一三二四号で、判決が昭和五年二月二十一日、第四刑事部で判決されておる。この中に「煽動」という文字が初めて判例として用いられておる。どういうことを言うのか。これを一つ読んで、皆様に申上げて、皆様の一つ御判定を請わなければならんのは、「煽動トハ不特定且多数人ニ対シテ目的実行ノ方法手段ヲ具体的且直接的ニ指摘シ其ノ結果相手方ノ意思ヲ刺激シ実行ノ決意ヲ生シタルコト」を言う。そういたしますると、いわゆる不特定多数の人に対してやることが一つ、それから、目的実行の手段方法を具体的且つ直接的に或る不特定多数の人に指摘して、その結果そのいわゆる不特定多数の人の意思を刺激して実行の決意をすることが扇動だと、こう言う。これではまだ十分にはわかりません。わからんので、判決はもつと例を挙げておる。即ち一定の事柄を單に公衆に告知伝達することは扇動じやないよと、こう言う。一定の事項を單に公衆に告知伝達することは扇動ではないよ。一定の事項を單に大衆に、公衆に演説すること、講義をすること、研究の結果を発表することは、これは扇動ではないよ。その研究の結果に基いて宣伝をやる、又はこれを世間に流布する、言い流す、こういうようなことはこれは扇動ではないよと、こう言う。こういうように、扇動でないことを明らかにするために、いわゆる告知、伝達、或いは演説、講義、研究の発表、宣伝、流布、それからビラ撒き、レポーターというようなことは扇動じやないと、こう言う。皆様、こういうようなことは扇動でないとすると、普通の人は、いわゆる或る研究の結果を、こういうことになつておるのだよというので、これを人に告知する、特定多数の人に告知する、或いはこういうようなことはこうなるのだよと言つて特定多数の人に告知する、或いはそれらの解明をする、或いは演説をする、講義をする、研究の発表をする、宣伝をする、流布するというようなことは扇動でないと、こう言うが、そのいわゆる演説であるかないかは誰がきめるのだと、こう言う。これは、本法においてはいわゆる公安調査官がそれをきめる。我々專門家でも、あのいわゆる国体を変革するとかというようなことについて、研究の結果こういうようになるのだよ、フランスの革命はこういうようなことから起つたのだよ、ロシアの革命はこういうようなことが原因でやつたのだよというように、研究の結果を発表するというようなことは、暴力主義的破壊活動を目的としての扇動ではないのだから、それは処罰すべきものではないと……、專門家はよくわかる。併し素人はそういうようなことをやはり扇動だと思つて、いわんや知識経験の乏しいところの公安調査官などは、そういう演説をしておるところを聞いてお前はどうも暴力主義的破壊活動をやつておるのだ、その宣伝をしておるのだというようなことで、これがいわゆる調べてみたり、或いは調査の目標になつてみたり、従つて新聞に出されたり、或いは警察に呼び出されたりしてその人の名誉、その人の身体、生命、財産等に及ぼす影響はどうでありましようかがそういうようなことを、木村法務総裁のような專門家でおありになれば、又我々のような、判例というものはこういうようなものだということを、これを承知しているものであればいいが、普通の人はこういうことは知りませんわ。いわんや公安調査官なんかいうものは、こんなことはわかりませんですからして、従つて、今、俺のやつていることはいわゆる宣伝になるのじやなかろうか、俺の今書いていることは宣伝になるのじやなかろうか、俺の今の発表は宣伝であるのじやなかろうかというようなことになりますと、もう自分の身を守るために、こういうようなことを発表したり、演説したり、宣伝するというようなことをしないようになつたときは、日本の文化の発展というものはどうなるのだろう。(拍手)国民はそういうことを肚の底に持つて、これを表に出さないようなときには、国民は、目で見、耳でお互いに話合わないで、ただ指で形をしてお互いが戒しめ合うというようなことになつたらば、もう世の中は暗闇です。(「そうだ」と呼ぶ者あり)そういうことになると、その結果、いわゆる革命というようなことになつて行きはしないだろうか。こういうことを私は非常に心配しておるのであります。そこで私は、木村総裁の、こういうような、いわゆる扇動というようなことについて明確な知識を国民全体に與えるということについては、あなたはどういうような手段方法をお用いたなるお考えであるかということが一つ。
 その次には、いわゆる大審院のこの判例によりまするとですよ、不特定且つ多数の人に対してそういうことをやるのが扇動だという。そうしてそれから先に、或る一つの目的の実行方法を具体的に且つ実際的に直接に指摘して、そうしてその人をして犯罪の決意をなさしむると、こう言うのだ。教唆と同じです、教唆と……。我々專門家のいわゆる教唆とどこも違いません。違うところは何だというと、ただ不特定多数の人に対してそういうことをするということだけが、諸君、違うのです。教唆は特定の人に対してするということが教唆であり、不特定多数の人に対して成る犯罪の実行を、これをしなさい、手段方法はこうするのでありますと言つて話して聞かせてその決意を生ぜしむることが扇動であるが、不特定多数でなくて特定の人にそれをやるならば、これは刑法上教唆、不特定多数の人にやると扇動になる。諸君、そこで問題がこういう問題になる。然らば不特定多数の人というのは何人であるか。何人が不特定多数の人であるか。二人以上で、一松の成る同志が成る研究団体で研究をする。その研究団体の人は十人ときまつておる。その十人が集まつておる所で私が成る話をする。それはいわゆる不特定多数の人であるか、特定の人であるか。或いは参議院議員というのは二百五十人ということがきまつておる。その参議院議員の二百五十人のすべての人の名前をちやんと一松は知つておる。その人の前において私が成る演説をする、或る宣伝をするというのは、それが不特定多数の人であるか、或いは特定の人であるか。そういう区別は誰がするのだ。ここです。このことについて私が委員会で吉河局長にそこを聞いた。ところが曰く、「それは普通は扇動だけれども、あなたの目の前に、例え掛何の何がしという自分の知つている人がおる。その人と目と目が出会つて話をしておるときに、一々その人が肯いた。あなたのその話に肯いておる。その人については教唆だ、大勢の一群からいえば扇動だ」と、こういうのだ。諸君、私のやる行為は一つの行為です。一つの行為が或る者に対して教唆となり、或る者に対して扇動になるとはおかしいじやないかと、私が局長に反問したところが、局長は明確なる答弁ができなかつた。こういうように、いわゆる扇動と教唆というものは非常に区別がむずかしいのです。牧野博士はいわゆる公聽会の席に出て、それは、わけがわからんじやないか、だから、こういうものはもうやめたほうがよろしいということを前に我々の法務委員会に出て言うたことは、政府当局も十分に御承知なんです。そういうように、扇動というものは、刑法学者、殊に牧野君は我が国における刑法の権威者であり大家である。その大家の牧野君が扇動ということについて疑いを持つて、こんなものは私はわかりませんというようなことを言うたのだ。諸君、刑法学者でない素人が、これが扇動で、これが教唆で、これは扇動であるけれども、これは扇動でないなんということがわかりましようか。諸君、(「緑風会の人はよく聞いておきなさい」と呼ぶ者あり)そういうようなわからぬような扇動を入れてやるというと、ここに私は濫用ということが起るのだと申上げたい。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)濫用ということが起るのだということを申上げたい。そこで私は、本件のいわゆる扇動というような文句は刑法の條文のどこにもない。ただ特別法に少しあるだけだ。然るに、本法において扇動というものを入れて、そういうわけのわからん、解釈のできないようなものを入れて而もこれを知識経験の乏しい、いわゆる公安調査官、こういうような人をしてこれを運用せしむるということにおいて濫用の虞れなきや否や。これが第二の質問です。この点について局長は、濫用の虞れがありますと委員会でこう言つた。濫用の虞れがあるならば、その濫用を防ぐ方法如何。それはこれから大いに研究して濫用しないようにいたしますと言つた。(笑声)本法の第二條に持つて行つてそういうことが書いてある。これは木村法務総裁が常に委員会に出て言われたことなんです。「この法律による規則及び規制のための調査は、前條に規定する目的を達成するために必要且つ相当な限度においてのみ行うべきであつて、思想、信教、集会結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあつてはならない。」それから、その「規制及び規制のための調査については、いやしくもこれを濫用し、労働組合その他の団体の正当な活動を制限し、又はこれに介入するようなことがあつてはならない。」実に注意周到です。この通りに行えば問題はないでしよう。この通り行えるかどうかということが、今私が例を挙げた扇動一つに対しても、これは濫用の虞れがあるのです。それで私どもは、こういうわけのわからないようなむずかしい大審院の判例、我々專門の弁護士が見ても、教唆と違うところは、ただ特定、不特定という所が違うだけで、あとは皆同じ、そういうようなことでこれを取締り、而も刑法において予備、陰謀を罰していないような点にまで、予備、陰謀を拡げ、刑法でいわゆる扇動というものを規定していないのに、扇動というものを拡げて、一網打盡的にこれを逮捕、尋問、処罰をしようということに、国民多数が心配をし、恐れおののいておる理由は、ここに存するということを、深く我々は考えなければならんのであります。(拍手)
 次には、然らばこの濫用ということについて、成るほどお前の言う通りであるだろう、それならば私はその濫用を成るだけ濫用させないような裏付けがこの規定になければならない。濫用させないような裏付けというものは、ただ私が今読み上げた二條にこういう規定があるだけです。それ以外に濫用した時分にはどうなるか、或る破壞活動を目的としない者が或る演説をした、或る宣伝をした、或る扇動をしたというとき、直ぐにこれを調べたりいろいろなことをして、そうしてこの手続に規定してあるようなことをやつたときに、皆様、そういうようなことでその人が調べの結果何もやつていなかつたのだということになつたときに、その人のこうむつた名誉、財産、身体、親族等に及ぼす影響等は、どうして国家はこれを賠償するのか。その裏付けがなければならん。本法においては、国家賠償法という法律の第一條に、官吏が職権を濫用して若しくは過失があつて人に迷惑を及ぼしたときは、それを損害賠償する。その損償賠償というものは、僅かに、こういうことをしたら僅かの金を以て賠償する。或いは民法の七百九條の、不法行為に対する制裁というものは極く僅かである。そうして彼らは、「お前はこういうことをしたじやないか、職権の濫用じやないか、或いは過失じやないか」と責められたときに、「私はこれは確かにこの人を破壞活動つをやつたものと確信をしてやりました」、こう言えば職権濫用になりませんよ、諸君。その時分には、過失ということになつても、大過失じやない、小過失ですよ。そういうようなものに対して国家が裏付けがないということであれば、濫用のしつぱなし、いわゆる徳川時代の切捨御免と同じになつて、誰がこれを救済するかということを考えなければならん。(拍手)そこで私は法務総裁にお伺いするのは、こういうようなことについて、何か職権濫用のときに、そういうことのないような裏付けについて、あなたは今この法案以外にお考えになつておりまするか。この点は法務総裁だけではない、総理大臣にもこの点だけはお伺いしてお答えを願わなければならん。こういうような点がなければ、我々は直ちにこれに賛成することはできないのであります。
 その次には、一体これが内乱まで罰するならば、外患はなぜ罰しないのだ。外患は、外国に向つてこういうようなことをする行動があれば、若し取締る必要があるならば、これを罰しなければならない。本法に外患に対する制裁がないのはどういうわけだ。
 それから私はこういうような行動の起るのには、先刻来幾多の意見を述べられたかたのお話にありましたように、先ず人を罰するよりもその根源を検討して、根源を正して再び三たびかくのごときことの起らないようにすることが、正しい政治家のやり方であると私は思うのであります。(拍手)然らば吉田総理並びに木村法務総裁はこういう点についてどういうような対策をお持ちになつておるか。その対策で一つお示し願いたい。(「お先眞暗」と呼ぶ者あり)そういうようなことがなかつたならば、なかなか我々は、ただ且の前にあるところの蠅を追うようなことをして、いくら蠅を追つてもいくら蠅を追つても、このいわゆる破壞活動、行動というものを根絶することはできないということになり、却つてこれがそういう犯罪を数多くならしめ、治安維持ができるどころではない治安紊乱の結を招来しり我が国をいわゆる革命の悲運に導くようなことがないかということを私は非常に心配しておるのであります。(拍手)
 その次には、この公安調査官並びに公安審査委員会を設けたことについて、私はこれはよくないことであると思うけれども、時間がないから余り細かいことは申しませんが(「どんどんやれ」「やれやれ」と呼ぶ者あり)一体こういうようなものは、こういうような調査をし、材料を集めるということに極く不慣れないわゆる公安調査官を命ずるよりも、慣れたところの警察官をしてこれをやらしめ、慣れたところの検察庁をしてこれをやらしめるということのほうが手取り早く、そうしてこれらに対して人権蹂躪のことのないように十分に調査してやらせれば、これのほうが人数が少くて間違いのないことができると思うが、なぜこれをこういう公安調査官というものをこしらえ、而も全国にただ一人、公安審査委員長は日本国にただ一人、公安審査委員は四人、五人の人が全国のこれを調査して、これに規制をやり、禁止、解散をやるというようなことでは、これはむしろ手ぬるいやり方ではありませんか。これはむしろ裁判所に持つて行つてやらしたほうがようございませんか。
 それからその次は、一体こういう我々国民の自由を制限するようなことは、いわゆる憲法の(「その通り」と呼ぶ者あり)三十三條によつて裁判所においてこれをやらせるほうがいいのである。然るにこれを行政官をしてやらせるということはどういうわけですか。そういうことは行政官をしてやらせて、後に司法裁判所に持つて行つて救済を頼むがよろしいということであるか。それは、いわゆるこういうようなひどい人権に関するようなことは、初めからこれは司法処分に任したほうがよろしくはないかというように私は思う。これが一つ。
 いま一つは、今日吉田内閣は非常に行政整理に夢中になつて、これで国民の税負担を軽減させるということに御盡力になつていることは、私どもは感謝いたします。然るに、本法を設けることによつて、諸君、この公安調査庁を設けることによつてこの七月頃から本年度において幾らの金が要るかというと、特審局の関次長のお答えでは、七億円のお金が要るのだ。それに対して今度いろいろな資材を殖やし、人物を殖やし、庁舎の新築をやるということになると、少くとも十数億円の金が要ると、こういうことです。そういうようなことをやるよりも、今日、日本にたくさんおる警察官を使つて、足らないところを少し補充してそうして人権蹂躪をさせないようにするということであるならば、いわゆるこれは吉田内閣の一大政策の一つにも数えることができるのであるが、そういうことをしたほうがよくはありませんか。その点に対しては木村法務総裁のお答えを頂くと同時に、吉田総理大臣からお答えを頂かねばならないと思うのでございます。
 いま一つは、もう時間は二分よりありませんから言いますが、こういうことを設けるためにですよ、このいわゆる公安審査委員会の決定した国家の意思と、それからそれに対する裁判を求めて裁判所で無罪になつたところの意思とが対立するのです。対立する。即ち委員会で裁決したこの或る団体に対して禁止行為若しくは解散をやらした。それがその団体に所属するところの団体員が裁判を受けて、お前はこうこうで破壞活動をしたというが、裁判を受けたところが、それは暴力主義的破壞活動ではなかつたという判決を受けたがために、いわゆるこの団体を解散させたり或いはこの団体の或る行為を禁止させて財産まで処分させたという後に、それはこつちが間違いであつたというときには、これを何らか調整して国家の意思が二つでないようにしなければならんが、その裏付けがこれにはできておりません。それはあなたはどうなさるつもりでありますか。それらの点について十分なるお答えをお願いいたしたいのであります。
 私は時間がありませんからこの程度に質問はとどめておきまして、詳細なることは御答弁を承わりましたのちに、討論のときに詳細私の意見を申上げたいのであります。有難うございました。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#90
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 一松君は、現在、破壞、暴行行為或いは団体の存在することを認められ、又破防法の目的とするところ、又その必要については、我々と同じ意見を持つておられるように伺いますが、併し、ただこの破防法なるものは行き過ぎである、行き過ぎであるがためにそれだけの反対の声が多い。こう(「その通りだ」と呼ぶ者あり)おつしやいますが、併し、これは先ほど私が申した通り、たとえ行き過ぎであつてもこの破防法の速かに制定せられんことを希望する国民の声が、あなたにはお聞えにならんかも知れませんが、(「何を言うか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)政府においては最もよく聞えておるのであります。又これがやがて革命を誘導するとか或いは行き過ぎた場合にはどうするかというお話でありますが……。
#91
○議長(佐藤尚武君) 静粛に願います。
#92
○国務大臣(吉田茂君) (続) これはこの法律執行の場合に当局者は十分注意をいたして、そういう御心配のような点がないようにいたします。その他は主管大臣がお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#93
○国務大臣(木村篤太郎君) 一松君にお答えいたします。
 本法案において最も重視いたしておるのは、大きな組織力を以てこの破壞的行為を行わんとすることであります。個々の或いは殺人だとか、騒擾だとか、或いは汽車の転覆だとか、放火とかいうことそれ自体を問題にしておるのではありません。いわゆる組織の力によつて、或いは内乱を起し、或いは騒擾を起し、或いは汽車の転覆を起し、放火をし、殺人をすると、そういうような行為を目的としておるのであります。ここを十分にお考えをお願いいたしたいのであります。而して、個々のさような行為については問題にせないと同時に、これがいやしくも政治上の主義主張或いは施策を推進し、これに反対するがためにかような破壞的活動をするということが、この民主主義国家において最も重大視しなければならん、これを防止しなければならんというところに主眼を置いておるのであります。従いまして、個々の今列挙いたしました犯罪行為の予備、陰謀、それらの行為を目的としておるのではないのであります。即ち、今申上げました通り、政治上の主義主張を推進し、或いはこれに反対せんがために、かような行為を組織によつてやろうという行為を処罰の目的にしておるということを申上げたいのであります。(「政治的とは何だ」と呼ぶ者あり)而してこの教唆と扇動の点につきましては、これは委員会において十分に御説明申上げた点でありまするから、この点については多くは述べません。併しながら、この扇動ということにつきましては、(「はつきりしろ」と呼ぶ者あわ)既存の法律におきまして一松君も御承知の通り、公職選挙法或いは(「ごまかすな」と呼ぶ者あり)税法、食糧管理法、或いは国家公務員法において嚴として規定されておるのであります。この扇動ほど私は恐ろしいものはないと確信して疑いません。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)殊にアメリカのスミス法におきましても、或いは又ソヴイエトの反革命法におきましても、或いは中国の反革命條例におきましても、ことごとく扇動という文句を使つておるのであります。いわゆる扇動、人をあおり而して中正の判断を失わしめて、そうして犯意を助長し、或いは犯意を決意せしめるという、その行為自体が一番この治安の問題に対して重視しなければならんのであります。教唆とはおよそ違うのであります。いわゆる教唆は、特定の者に対してこれこれをやれということを指示命令して、そして決意を起さしめるのであります。扇動は、今申上げました多数の者をして中正の判断を失わしめると同時に、すでに起つておる犯意をますます助長せしめ、又犯意を起そうかどうかというような中間的な問題においても、これを犯意を決意せしめるというような、危險な性格を帶びておるのであります。従いまして、いずれの国家におきましてもかような大きな事案についてことごとく扇動罪を規定しております。この扇動については私は委員会において詳細述べましたから、これ以上は述べませんが、くれぐれもこの扇動のことを十分に私は考慮をして頂きたいと考えます。扇動ほど恐ろしいものはない。中正な判断を誤まらしめて、そうして心なき者までも犯罪をなさしめたというようなことは、これは治安の確保の上において十分に考慮しなければならんと考えておるのであります。
 次に、何が故に警察官をして捜査の任に当らしめないかという御質問でありますが、私はこれは一松君とは大いにその考え方を異にしておるのであります。私はさような警察官をしてかくのごときことまでも行わしめるということは、いわゆる権力の集中であると私は考えておる。むしろ調査官をしてこれを調査せしめ、而もこの法案において最も重視しておるのは、強制調査権を持たせないことであります。そこにこの法案のいわゆる基本的人権を十分に尊重するということに意を注いだのはこれであります。警察官をしてこれを行わしめたらどうでありましよう。いわゆる直ちに警察力を以てこれをやるということになりますると、基本的人権を無視するような虞れがなきにしもあらずであります。(拍手)従いまして、調査官をして強制調査権を持たしめず、任意にこれを調査せしめ、そうして調査した結果は何が判断いたしまするかと言いますると、長官が判断じます。而してその長官が請求すべき理由ありとすれば、これを審査委員会に対して請求させるのであります。而うして審査委員会においてこれを決定いたしますると、その決定に対しての異議があれば、これは裁判所に持つて行く。最終的に裁判所においてこれを判断せしめる。これほど民主的なものはないのであります。(拍手)およそ行政処分は、これは行政官庁でやるのがこれが建前であります。その行政処分に対して(「手前勝手なることを言うな」と呼ぶ者あり)適法であるか、違法であるか、これについての最終判断は裁判所においてやる。これは三権分立の建前であります。いきなりこれを裁判所に持つて行かれてはどうでありますか。裁判所で判断したそのあとの始末は誰がするのでありますか。行政官がこれを一応の始末をしてそうしてそれに対して不服があれば更に裁判所で以て公正な判断をせしめる。これほど民主的なものはないのであります。この法案において特にその点について考慮をしておるのであります。
 而してこの法案において私が最もこれを重視しておるのは委員会の制度であります。この委員会は、我々の構想といたしましては、あらゆる階層から有能な人を国会において選挙してもらい、そうして、その人たちによつて、果して公安調査庁の長官の請求が不当であるかどうであるかということを判断せしめる。これほど私は民主的なやり方はないと考えておるのであります。
 およそ国家においてこの暴力主義的破壞活動ほど恐ろしいものはありません。而してこの根源は何であるかと申しますると、いろいろの種類はありまするが、これは国際的に或るイデオロギーを以て日本の治安を乱そうとするこの動きが恐ろしいのであります。(拍手)必ずしも日本の国民がかような動きに対して動かないとは私は限らないと思う。国際的のイデオロギーを以て日本の内地を撹乱するというこの動きに対しては、内地の治安を確保する以上において断固としてこれを排除しなければならん。これが我々の任務であります。(拍手)およそ思想的の背景を以て日本の内地を撹乱しようとするものほど恐ろしいものはないのであります。そのために、生活の不安とか、そういうものが来るとは我々は考えていない。大きな力を以て日本の国内を破壞せんとするその力であります。その力によつての暴力行為を、この法案において阻止せんとするのであります。そうして我々は民主主義平和国家を最後的に建設して行きたいというのがこの法案の狙いであります。(拍手、「李承晩」「戰争より大きい破壞があるか」と呼ぶ者あり)
   〔片岡文重君発言の許可を求む〕
#94
○議長(佐藤尚武君) 片岡文重君、何ですか、片岡君。
#95
○片岡文重君 私は……(発言する者多し)
#96
○議長(佐藤尚武君) 静粛に願います。靜粛に。
   〔「登壇々々」と呼ぶ者あり〕
#97
○片岡文重君 私は、先程の私の発言中不穏当なる言葉がありましたならば、この際、議長において適当に取扱われますことを希望いたします。
#98
○議長(佐藤尚武君) 議長において然るべく処置をいたします。羽仁五郎君。
   〔羽仁五郎君登壇〕
#99
○羽仁五郎君 総理大臣の所見を伺いたいと思いますが、本法案に対する世論の反対は我が国会史上空前の様相を現わしております。(「民主的だ」と呼ぶ者あり)日本の労働組合はすでにゼネストの一歩手前に立つて、三たびストライキを行なつて(「誰だ、扇動しているのは」と呼ぶ者あり)本法案の撤回を要求しています。日本学術会議、東京大学矢内原学長、そのほか全国の国立大学、新島裏の伝統に立つ同志社大学の田畑学長、そのほか京都、大阪、神戸、東京の私立諸大学、日本新聞協会、朝日、毎日、読売そのほかの各紙、日本弁護士連合会、日本文芸家協会、日本ペンクラブ、安井曾太郎画伯を会長とする日本美術家連盟、中村歌右衛門、尾上松緑、水谷八重子、山本安英、山田五十鈴、大谷友右衛門、千田是也、青山杉作、東山千栄子、吉田謙吉、岡倉士朗、秋田雨雀、滝沢修、岡田英次、今井正、亀井文夫、岩崎昶、山本薩夫、吉村公三郎など、近代映画協会、そのほか八映画団体など、更に或いは田辺秀雄、山根銀二、箕作秋吉、松平頼則、中山悌一、佐藤美子、これらの音楽家、更に宗教団体、婦人団体、そのほかの各文化団体など、我が知識人、有識階級は、挙げて本法案に反対を表明しているのであります。首相は今国民の大多数が本法案を要求していると言われましたが、これは明らかに事実に反します。(「その通り」と呼ぶ者あり)なかんずく日本の高いレベルの有識階級は本法案の撤回を要求しております。この点について総理大臣は、こうした日本の知識階級を敵として(「敵じやない」と呼ぶ者あり)本法案を成立させようとしておられるのか。(「その通り」と呼ぶ者あり)日本の知識階級の世論を無視するおつもりであるか。これを第一に伺いたいと思います。
 第二に伺いたいのは、吉田総理はこの法律によつて何を得るというふうにお考えになつているのであるか。この法律が何らの効果のないとついうことは、法務委員会において法務総裁みずから認めたところです。破壞活動をなすところの団体というものをこの法律によつて規制しようとしても、それらの団体がどうして規制できますか。諸君、現在特審局の実力を以てしていわゆる地下に潜行した人をどうともすることができないじやありませんか。(「そうだよ」と呼ぶ者あり)いわんや、政治上の信念を持つて行動するそうした団体を月給取りの官吏で取締るなんということはできないということは、法務総裁が衆議院でおつしやつた通りです。一方は命がけ、一方は月給取りです。どうしてこういう法律で破壞活動が防止できますか。首相はこの法律で何を得ようとしておいでになるのですか。
 第三に伺いたいのは、首相はこの法律によつて何を失うかを御存じですか。(「吉田内閣だ、はつきりしておる」と呼ぶ者あり)この法律によつて何ものをも得ない、そうして失うのは言論、集会、結社の自由であります。この法によつて失われるのは憲法であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この法律によつて失われるのは吉田首相自身属しておられる政党の自由であります。その自由は滅亡するのであります。政党以上に立つ権力がここにできるのです。(「羽仁五郎の学説だ」と呼ぶ者あり)この三点について、首相の明確な、そして責任のある、日本国民と歴史とに対する責任を負われる答弁をお願いしたいと思います。私は吉田首相自身は他の閣僚とは異なつてこれらの問題について深い見識を持つておられると信じます。自己の政治的信念のために牢獄に入つた経験を持つ吉田首相は、この法律案が、政治上の信念を持つて活動しておる団体を犯罪と結び付けて、これを打倒しようとしておる法律案であるということに気付かれないはずはないのです。
 従つて、以上三点について、第一に、首相は日本の有識階級の世論というものを踏みにじる結果になるがそれでよいのか、第二に、本法律案によつて首相は何を得ると考えているのか。治安を維持できる――治安は一片の法律などで維持できるものではない。治安の維持は国民生活の安定よりほかに決して得られるものじやありません。(「それは君の独断だ」と呼ぶ者あり)第三に、この法律案によつて首相は何を失うかを知つているのか。この三点についてどうかお答えを願いたい。その際に、どうか首相は、首相御自身得られた深刻な深い体験の上に立つていわゆる現在のアプレゲールの閣僚などとは違う答弁をお願いしたいのであります。(「答弁の必要なし」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#100
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 この破防法の制定、法律化することの必要は、すでに法務総裁その他から縷述いたしたところであります。この法案が世論殊に知識階級において反対するところが多いと言われますが、これは先ほど申しました通り、だんだんこういう法案の性質なり又目的なりが十分了解せらるると共に、世論は逆に賛成いたしつつあるということは、只今申した通りであります。知識階級といえども、いやしくも知識階級であるならば、この法案の目的とするところ、趣意とするところがわからないはずはないのであります。(「わかつているから反対するんだ」と呼ぶ者あり)いわゆる知識階級の反対を黙殺してこの法案が立案されたものではないのであります。又、この法案によつて、この法律によつて何を得るか――これによつて日本国の民主化が一層安定し又独立が安定せられるというところのものは非常に多く、失うところのものは何にもないと私は考えるのであります。(拍手、「日本の主権を失うのだ」「もう一つ忘れたか」と呼ぶ者あり)
#101
○羽仁五郎君 再質問をお許し願いたいと思います。
#102
○議長(佐藤尚武君) 羽仁五郎君。
   〔羽仁五郎君登壇、拍手〕
#103
○羽仁五郎君 総理大臣は現在日本の運命を託されているかたです。そのかたが国権の最高機関である国会においてなされる御答弁というものは、私は重大な責任があるものだと考えます。本法は決していわゆる正当なる言論、集会、結社の自由を抑圧するものではないというようにお答えになる、このこと自体に問題があるのです。言論、集会、結社が正当であるか正当でないかを官吏に判断をしてもらうというほど諸君の見識は低いのですか。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)この法律案は、正当なる言論、集会、結社の自由は侵さない、併しながら正当であるかないかは公安審査委員会がこれを決定するというのです。諸君が税金を出して役人を雇つて、その役人に自分が破壞的であるかどうかを検査をしてもらうほど諸君の政治的見識は低いのか。又、首相は日本国民の政治的識見というものはそれほど低いものだと……、首相の後に坐つておられるような官僚が日本のあらゆる政党や組合や新聞や文化団体を調べ上げて、一つ一つ調べて、それが破壞的であるかないかを決定してやることができると、あなたは本気でお考えですか。あなたが曾つてその罪に問われたところの法律も、決して初めからあなたのような政治家を罪に問うべく作られたものではなかつたのです。(拍手)併しながら、官吏が政党や組合や新聞や文化団体の上に立つ権力を握つた曉には、その官吏は何人といえどもこれを逮捕することができるのです。現に法務総裁、又当局、本法律によつて尾行、張込みが行われるということを答えております。吉田首相は、現在日本において尾行、張込み、昔の特高警察の復活が果して日本を明るくするとお考えになりますか。それとも暗くするとお考えになりますか。これらの点について、どうか首相は、もう少しこの際、国会を通じて、本法律案に対する深い所見を示されたいことを伏して願うものであります。(笑声)私の聞いたところに誤まりがないとするならば、首相が親交を結ばれておられた古島一雄氏が、この破壞活動防止法案というものは実に嫌な法律だ、吉田首相は安政の大獄をやろうとしておるのじやないかと言つて亡くなられたということを聞きます。いやしくも今日政治的に社会的に独自の見解を持つ人々で本法律案に反対しない人はないのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)政治的に社会的に独立の見解を持たない者のみが、官吏に追随して行くことのみを考えておる人たちが、本法律案に賛成しておるのであります。どうか首相は、この際、この法律案について、例えばこの法律案によつて基本的人権の蹂躪は絶対に許さない覚悟であるとか、そういう点についての首相としての識見をどうか示して頂きたい。この法律案が成立したならばお前たちは皆殺しにしてやるぞと言つて、警察官はすでに学生や労働者を脅かしているということは、(笑声)これは事実です。(「新聞ばかりではない」「何を言うのだ」と呼ぶ者あり)最初には学生や労働者です。最初には共産党や社会党でしよう。併し最後にはあらゆる政党の自由が蹂躪された経験を、諸君はまだ忘れるべきではありません。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#104
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 この破防法案が成立いたしたからといつて、これを濫用し若しくは行き過ぎをせしめないようにいたすということは、先ほど申した通りであります。又、官吏は如何にも非常識であり、又基本人権を侵すことを以て目的としておるかのごときお話でありますが、(「やつてるよ」と呼ぶ者あり)官吏といえども、日本の官吏、それは非常識というよりも、むしろ法律を守るにおいて、行うにおいて、私は決してその良識を疑わないものであります。この法案の実施された曉においてよくその成績を御覧になれば納得が行くであろうと思います。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)
#105
○議長(佐藤尚武君) 堀眞琴君。
   〔堀眞琴君登壇、拍手〕
#106
○堀眞琴君 私は、この破防法案につきまして、法律の限界なかんずく治安立法の限界はどこにあるかという問題、それから法律の濫用は何によつて起るかという問題、並びに国民の自由の限界というものと法律との関係、この三点につきまして吉田首相並びに木村法務総裁の御所見を伺いたいのであります。
 先ず第一に法律の限界なかんずく治安立法の限界であります。もともとこの法案の目的とするところの破壞活動が現実に存在する、そのことによつて生ずる危險と、並びにこれを取締るためにこの法案を出すことによつて生ずるところの危險、この二つの危險について体どのように根本的に考えておられるのか。政府の説明によりまするというと、現実の危險を強制的な権力で以てこれを解決しようというように窺われるのであります。併しながら、その危險の原因は、先ほど来、各議員、同僚の諸君によつて指摘されましたように、極めて深いところに根ざしておるものでありまして、国民生活の窮迫化、そこに主たる原因があることは言うまでもありません。これは言い換えるならば政策の貧困ということであります。而も、更にそれに加えまして。最近の政治の反動化、フアツシヨ化ということが挙げられましようし、より根本的には現在の資本主義制度の矛盾ということが挙げられるでありましよう。このように、現実の危險の原因というものは社会生活の根底に根ざしておるものでありまして、これを政府の考えのように強制的な権力で以て果して解決ができるかどうか。而もこの社会生活の根本に横たわる原因から生ずるいわゆる現実の危險に対して、この法案を出すことによつて個人の基本的な権利が侵害されるその危險、いずれがより大であるかということを、我々は考えてみなければならん。若し政府の言うように、権力の行使によつて飽くまでもこれを取締るということになれば、これ又各議員の指摘されましたように、我々の社会生活は窒息せざるを得ないのであります。従つて、権力の行使を認めるような法律が如何に制定されようとも、それによつて社会惡は芟除されるどころか、ますます社会生活を困難ならしめる。その惡を一層強化するということは、火を見るよりも明らかだと思うのであります。社会の福祉、社会の正義を決定するものは権力や法律ではありません。これを決定するものは飽くまでも自由な意思の表白によるところの理論の鬪争によつて得られるものだと見なければならんのであります。従つて法律の限界もおのずからそこになければなりません。我々はその意味におきまして、この現実のいわゆる危險、それを取締ることによつて生ずるところのより一層大なるところの危險、これをどのように吉田首相並びに木村法務総裁はお考えになつておるか。それを先ず第一にお尋ねしたいのであります。
 第二に、法律の濫用についてであります。只今吉田首相は、この破防法の濫用については十分注意をするという御答弁をなすつております。どの法律でも濫用の絶対にないという法律はありません。従つて、法律案の立案者は、常にその濫用に対しては十分これを警戒する旨答弁いたしておるのであります。早い話が、例の治安維持法の発案に当りましても、時の政府当局者まいずれもこれが濫用については十分に警戒する旨を述べておるのでありますが、羽仁君も指摘されましたように、治安維持法が、その濫用の極は、法の対象であるところの犯罪事実ばかりでなく、更にそれが拡張解釈されて濫用を来たしたことは、我々のまだ忘れることのできないところの事実であります。治安立法の場合におきましては、その治安立法の機能を徹底的に果そうとするならば、結局現在の秩序そのものを破壞するという結果になるということは、これは我々としても十分注意して見なければならんと思うのであります。いま治安維持法のお話を申上げましたが、治安維持法が濫用されたのは、その治安維持法の中に、濫用されることが治安維持法そのものの性格としてあつたがために、結局その法が無限に濫用され、社会に忌わしい事実を生じたものと言わなければならんのであります。今日の社会は極めて深刻な危機の中にあると思われます。このようなときに当りまして、若しも濫用を予想されるところのこのような治安立法が行われるとするならば、その危險は極めて大であり、恐らくは強い反揆に会うことも予想されないではありません。そうなりましたならば、却つて法律の濫用によつてその社会は破滅へと導かれて行くということも我々としては十分予想できるのであります。この意味におきまして、法律の濫用に対して、ただ單に十分にこれを戒めるというだけでは、この法律の濫用というものを防ぐことはできないのであります。果して具体的にこの法律の濫用に対して首相並びに木村法務総裁はどのように考えておられるか。これを承わりたいと思うのであります。
 最後に、国民の自由との関係であります。法律は言うまでもなく、何々せよとか、何々をしてはならんと、こういう命令、禁止として現われておるものであります。この何々せよという命令、何々をしてはならないという禁止の幅、その中間領域に国民の自由というものが設けられるのでありましてその幅が大きければ大きいほど国民の自由は大である。そり幅が狭ければ狹いほど国民の自由は少いという結果になる。近代国家が、例の夜警国家として、国民の行動に対しましてできるだけこの幅を大にせよということを主張したことは、皆さんもすでに御承知だろうと思います。更に、この命令、禁止、何々をせよ、何々をしてはならぬというこの命令なり禁止なりは、国民の同意と納得の下に作られていなければなりません。若しこの、してはならないという禁止、何々せよという命令というものが、国民の同意なり納得の下に作られておらないとするならば、これこそ我々の自由は何ら法律によつて保障されないのと同じ結果になると申さなければなりません。従つて我々としては、この法律におけるところの命令と禁止の幅、つまり国民の自由の程度、この程度について一体首相や法務総裁はどのように考えておられるか。特に禁止の法は禁止される対象ができる限り明確、規定されておらなければならぬのでありますが、ところが、この破防法案によりまするというと、その規定が極めて明確を欠いておるのであります。そうなりまするというと、これによつて生ずるところの刑罰に対するところの恐怖、禁止事項によつてそれ自身に及ぼされるところの恐怖というものは、全く恐ろしい結果を招くのではないか。この法案自身が国民の自由権の完全な抑圧としての役割しか果さないという結果にならざるを得ないと思うのであります。社会生活の秩序を維持するためには、治安立法は最小限度でなければなりません。ましてや、それが個人の基本的な権利を制限する場合におきましては、その対象となる活動が現実的であり、且つ危險の差迫つている場合に限られなければなりません。国民の自由をこのような法案によつて制限するということは、結局我々の基本的人権を全く抑圧するものであり、延いてはフアシズムヘの途を開くものである、こう申しても過言ではないと思うのであります。
 以上の三点について首相並びに法務総裁の御答弁を伺い、それについて重ねて再質問をいたすつもりであります。(拍手)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#107
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。現実の危險は、現在破壞暴力行為の現存しておることは、今日これまで申したところによつて明らかでありましようが、この危險を防止するために破防法なるものを制定せんといたすのであります。
 法律が濫用せられる、濫用せられると言わるるが、法律は濫用するためにできておるのではないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)行政官が若し濫用した場合には、先ほど申した通り、十分この法律の適用については、その主任官において、或いはその当該官憲において十分注意せしめるということを申しておるのであります。而もこれが濫用せられた場合には司法処分の救済もあるのであります。故に、この法律が直ちに濫用せられる、救済方法がないとお考えになるのは、これは間違いであります。(拍手)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#108
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。現在各所に行われておりまする破壞的暴力行為は、單なる生活不安から生じたものではありません。これは或る種の背景を持つた恐るべき私は暴力破壞行為であると考えておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これを防止することは、日本の民主国家を建設する土において最も必要欠くべからざるものであると考えております。本法案におきましては、この内地の治安を確保するために最小限度にとどめておるのであります。この法案をお読み下されば、その限度はおのずから明らかであろうと考えております。(「余り広過ぎるのだよ」と呼ぶ者あり、拍手)
   〔堀眞琴君発言の許可を求む〕
#109
○議長(佐藤尚武君) 堀眞琴君。
   〔堀眞琴君登壇〕
#110
○堀眞琴君 只今吉田首相は、現実にその危險があるのであるから、この法律を制定したのであるという御答弁であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私がお尋ねいたしておりまするのは、首相が考えるような現実の危險そのものが勿論問題ではありますが、そのいゆわる現実の危險と、これを取締るためにこの法案を作ることによつて基本的な権利が侵害される、その危險と、いずれを重大視しておられるのかということであります。吉田首相はこの点に関しましては只今の答弁では触れておらんのであります。
 それから又木村法務総裁は同じような答弁をやはり繰返しておられました。特に濫用について、濫用は飽くまでも戒めておるということを申しておるのであります。法律は、私どもに言わせるならば、どんな法律でも濫用の危險の伴わないものはありません。而も治安立法、取締法規において、その濫用は、他の法律に比べれば、より重大な影響を社会生活の上に及ぼすものであります。幾ら濫用をしないように注意をするとは申しましても、この法律を運用するものは人であります。先ほど羽仁君は、單なる官吏がこれを運用するのではないか、役人がこれを運用するのではないかと申しましたが、全くその通りであります。これを運用するのは一役人に過ぎません。法律的な知識も社会的な常識も十分に備えた役人であるならばいざ知らず、殆んど警察官とひとしいような、そういうような一属僚によつてこれが運用されるということになるならば、その害や思うべきであります。我々は、而も、それが治安立法である、我々の基本的な権利を飽くまでも抑圧するものであるということにおいて、その害や全く極まれりと言わざるを得ないのであります。この点についてもう一度重ねて吉田首相並びに法務総裁の御答弁を煩わしたいのであります。(「答弁の必要なし」「やれやれ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#111
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。私のお答えは前言を以て盡きていると考えますから、重ねて答弁いたしません。(「盡きていない、盡きていない」「党大会じやないぞ」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
#112
○国務大臣(木村篤太郎君) しばしば繰返して申しまする通り、この法案は日本の国内治安を確保するためであります。(「治安とは何だ」と呼ぶ者あり)国内治安の確保というものは、日本の建設について最も必要欠くべからざるものであります。これがためには必要最小限度のことをやらなくちやならん。この法案に織り込んだのは即ち確保のための必要最小限度のものであるということを御理解願いたいのであります。
#113
○議長(佐藤尚武君) 兼岩傳一君。
   〔兼岩傳一君登壇、拍手〕
   〔「とどめを刺せ」「しつかりやれ」と呼ぶ者あり、その他発言するもの多し〕
#114
○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表して、吉田総理に対し、先ず第一に破防法の本質について質し、これが日本国憲法の停止であり、而もアメリカの軍事的植民地としての憲法の停止であることを指摘したいのであります。(「その通り」「何を言つているのだ」「寝言を言うな」と呼ぶ者あり)而もこれは破防法が制定されてから始まるものではなくて、現に行われているということであります。(「その通り」「質問か」と呼ぶ者あり)例えば、去る五月一日のメーデーの日に、人民広場において、警察官は折敷けの姿勢で日本人民に向つてピストルの水平射撃を行い、これが写真に、映画に撮影され、全世界で公開されておるという事実は、日本警察の歴史においては勿論、世界の革命の歴史においても見ないところであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)若しかかる事柄が仮にアメリカやイギリス本国で行われたとしたら、米英の世論はどうだつたでしようか。政府は恐らく一溜りもなく潰れておつたに相違ありません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)然るに、日本では、冷然としてこれが行われているのみか、木村法務総裁はまだやり足らないと放言しておる始末であります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)私は吉田総理に尋ねたい。これがアメリカの軍事的植民地になつた祖国日本の悲惨な姿ではないか。そうして、破防法こそは、この現実の事態を合理化し、一層強化しようとする政府の魂胆であると断ぜざるを得ないが、総理の所見はどうであるか。第二に伺いたい点は、この破防法が、米駐留軍の軍機保護法ともいうべき刑事特別法と相待つて、アメリカ占領制度を継続し強化しようとするものである点であります。(「その通り」「討論か」と呼ぶ者あり)政府は、この法案の目的は「基本的秩序の破壞の防禦」であると言つておりますが、それでは総理にお尋ねしましよう。政府がこの法律によつて防禦しようとしているとこうの基本的秩序とは果して何でありましようか。(「ここは寄席じやないよ」と呼ぶ者あり)それはアメリカ軍事占領の秩序であり、日本国民を奴隷にすり秩序であり、売国奴を人民の反撃から擁護しようとする秩序であります。この秩序を破壞しないで日本の独立がどこにあると言うのでしようか。従つて、国を愛する大多数の国民が(「君は愛すのか」と呼ぶ者あり)この秩序に対する反撃のために立ち上ることは、当然憲法で保障された日本国民の権利であります。(「その通りだ」「でたらめなことを言うじない」と呼ぶ者あり)然るに、国を売つて賛を盡し、人民の反撃を戰々兢々として恐れておる臆病な吉田総理以下閣僚一握りの諸君は(笑声)これを彈圧するための法規(「よく聞いておけ」と呼ぶ者あり)破防法なしには、一夜といえども枕を高くして眠られなくなつて来た。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)そこで政府は、憲法も国会法も無視して、気に入らない人物をやつつけて来た。例えば我が参議院においても、十五万二千票の東京都第一位の高点な得票によつて公選された議員細川嘉六を逮捕し、追放し、議席剥奪の暴挙をあえてしておるが、これはまさに民主主義の虐殺であり、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)東條さえもやらなかつた国会破壞の暴挙であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)吉田総理に若し一片の政治的良心があり、若しも良心があつて答えられるものなら、ここで答えてもらいたいのであります。併し、恐らく答えることはできますまい。(「答える必要なし」と呼ぶ者あり)細川の例を挙げるまでもなく、このような暴挙は全国津々浦々に充ち満ちており、破防法こそは占領制度下のフアツシズム的な暴圧を強行せんとするものであり、これに対する国民の反撃は、今や労働者、農民、学生、市民を先頭として澎湃として起りつつあるのであります。(「うしろに共産党あり」と呼ぶ者あり)吉田総理は果してこの反撃の大勢力を一片の法律破防法で食いとめられると、心の底からさように信じておるかどうか、お答え願いたいのであります。(「つまらない質問はよせよ」「みつともないぞ」と呼ぶ者あり)
 第三にお尋ねしたいことは、以上のような事情にもかかわらず、政府はあらゆる謀略を以て破防法の参議院通過に狂奔して参つたのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)例えば、いわゆる参議院工作と呼ばれますところの緑風会、民主クラブの懐柔に始まつて、四回に亘る会期の延長、(「ふざけるな」と呼ぶ者あり)国会の門を真つ晝間から鎖して武裝警官で守り、(「あれは何だ」と呼ぶ者あり)傍聽券を制限して国民の輿論を封殺するのみか、佐藤参議院議長をおどし或いはすかしてこの惡法の通過を強行しでいるが、その原因はどこにあるのか。(「共産党にあり」と呼ぶ者あり)それは、例えば英濠軍の呉市における暴行問題と労働者のストライキ、アメリカ軍による富士山を占領しようとするところの(笑声)暴挙に対する国民的反抗、両條約と行政協定による政府の惡政が今や至る所で破綻し、窮乏から立ち上る国民の反撃が日一日と強化されて来るので、政府はアメリカ戰争屋の手先として、この窮乏した国民を彈圧しつつ、アメリカのもくろむ破滅的な戰争へ追い込まんがためでございます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
   〔議長退席、副議長着席〕
 一体、暴力的破壞と言うが、(「よく聞け」と呼ぶ者あり)米軍が一日にして六十万キロの水鳥発電所その他を破壞した例を引くまでもなく、暴力的破壞の最大なものは戰争であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)従つて若し政府が(「襟を正せ」と呼ぶ者あり)日本民族と国土を愛し、真に破壞を防止しようとするならば、政府は戰争防止のあらゆる努力をなすべきであります。然るに、事実は全く逆で、政府は、戰争に反対し民族の独立と自由を守る国民の基本的人権を奪うために、破防法を暴力を振つて通そうとしておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)私は、若し総理が、そうでない、自分こそが日本の独立と平和を守るものであると確信するならば、(「する」と呼ぶ者あり)ここで堂々と日本歴史に曾つて見ない国民の大反撃を食つておるところの破防法を撤回し、(「その通り」と呼ぶ者あり)国会を解散し、(「共産党を追放し」と呼ぶ者あり、笑声)民主的に国民の世論を聞くべきであると考えるがどうか。果して吉田総理にその勇気と確信がありや否や。これをお尋ねするものであります。
 いま一点は、これは小野法務総裁の明快な答弁を得たいのであります。(笑声、小野法務総裁はいないぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)去る六月十一日午後、国会職員その他を多数入れながら、一部の国会議員を強制的に閉め出して、法務委員会を秘密会の形で開催したことでありますが、この秘密会は、新聞報道によりますと、特審局の秘密予算の使用状況、調査活動の実態等が明らかにされ、一年に約一億五千万円の調査費が特審局に支出されておること、(「どこでスパイして来た」と呼ぶ者あり)その他を明らかにしております。日本国民をスパイしておる特審局の調査費、又そのうち情報提供者への月七百万円に上る報償金、スパイ費の内容については、これは報告していないのであります。(「君の言論はスパイか」と呼ぶ者あり)法務委員会の秘密会は議員を閉め出して行われましたが、これは極めて重大であります。憲法第四十三條によつても明らかなことく、国会議員は国民の代表であります。特審局の報告を、一部党派の議員を閉め出して行うことが許されるかどうか。このような権限を法務委員会は一体全体から與えられたものであるか。秘密会の全内容と議員を閉め出した理由をここで明快に御発表願いたいのであります。(「はつきりせい」「又やれよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#115
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。五月一日その他の暴動は多くは外国の共産主義国の指導によつて行われたものと政府は認めるのであります。(「実例を示せ」と呼ぶ者あり)この故に破防法を法律化することが必要と考えるのであります。(「それこそ扇動じやないか」と呼ぶ者あり)アメリカの植民地にはなつておりませんが、やがてどこか共産主義国の植民地にならんことを恐れて、政府は極力これを防止せんとしておるのであります。(「名答弁」と呼ぶ者あり、拍手)
 又細川嘉六君その他の逮捕について云々……国民はこれに対して非常な反撃と言いますが、むしろ共産党諸君の行為によつて国民は共産党が甚だ国家に害あることを認めて、破防法制定の一日も早からんことを希望しております。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
#116
○副議長(三木治朗君) 小野法務委員長。
   〔小野義夫君登壇、拍手〕
#117
○小野義夫君 お答えいたします。法務委員会におきましては、全員の御賛同の下に秘密会を開いたのでございます。(「速記録はあるか」と呼ぶ者あり)秘密会の内容につきまして、かかる公開の席では発表いたしかねます。お答えいたします。(「速記録があるか」と呼ぶ者あり、拍手)
#118
○兼岩傳一君 再質問いたしたいのであります。
#119
○副議長(三木治朗君) どうぞ。
   〔兼岩傳一君登壇、拍手〕
#120
○兼岩傳一君 只今の吉田総理の質問につきまして……(笑声)答弁につきましてはあとにいたしまして、法務委員長の御答弁は甚だ誠意を欠くのであります。私のお尋ねしておるのは、委員会が勝手に多数決できめれば何でもできるということでなくて、これは憲法並びに国会法を基礎としない限り、そういう多数決は何らの根拠を持たないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)私が指摘したのは憲法第四十一條、第四十三條によつて明らかに国会議員は国民の代表である。この国会議員を強制的に、多数決で一方において閉め出しておつて、他方において国民の代表でも何でもない国会の職員その他を入れておる。而もこの秘密会の内容が、ここに私は六月十二日の朝日新聞の切抜きを持つて来ておりますが、詳細に相当部分……これが全部であるかどうかは知りませんが、相当な部分がそのまま発表されている。こういう一方において憲法に違反した行為を委員会がとられておりながら、委員会の多数を以てこれをやつたのだというような、そういう御答弁では、民主的な国会では通用しないのであります。(「多数意見だよ、それ以外には方法ないじやないか」と呼ぶ者あり)多数決でやる以外に何もないというような程度の、頭の低い程度の(笑声)考えで委員会を運営されることは、小野委員長については僕はないと考えますので、再度この点の明確な御答弁をお願いします。(「全会一致でやつたのだ」と呼ぶ者あり)
 それから吉田総理大臣の御答弁は、いつもながら甚だ以て傲慢不遜であります。(「どちらが傲慢だ」「答弁の要なし」「お前のほうだ」と呼ぶ者あり)どちらが傲慢であるかどうかは、国民の前に、議員から尋ねられたことを誠意を以て答えるかどうかにあるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)私はもう一度三点を繰返しますが、一点と二点は、どうにか極めて曲げられた傲慢な形で答えておられますが、細川に対する政府の暴挙については全然答えてやない。又、破防法を撤回し、国会を解散し、民主的な国民の輿論を聞くべきであると考えるがどうかという点については、まだお答えになつていない。私はこのお答えを聞いて、もう一度、総理に対して質すべき点を持つているのであります。(「答弁の要なし」「何で無用だ」「答弁々々」と呼ぶ者あり)
   〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#121
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。破防法は撤回いたしません。国会は解散する必要を認めません。(笑声、「自由党の中で解散したがつてますよ」と呼ぶ者あり)
#122
○副議長(三木治朗君) 小野法務委員長。
   〔小野義夫君登壇、拍手〕
#123
○小野義夫君 お答えいたします。兼岩君は多数を以てとおつしやつたけれども、全員一致を以て秘密会をきめた次第であります。ただ日本共産党の諸君が一人もおられなかつたことは誠に遺憾であります。(笑声、拍手「何だそれは」と呼ぶ者あり)
#124
○兼岩傳一君 再質問したいと思います。
#125
○副議長(三木治朗君) 兼岩傳一君。
   〔兼岩傳一君登壇、拍手〕
#126
○兼岩傳一君 法務委員長の答弁は問題にするに足りませんので、(「よせよせ」と呼ぶ者あり)最後に私は破防法のもたらす惨禍について一言して、吉田総理の所信を質したいのであります。(「よく聞いておけ」と呼ぶ者あり)破防法が強制的に国会を通過いたしました将来、これが如何なる惨禍を日本国家に持ち来たらすであろうか、殷鑑遠からず、国連の報告を基礎として御報告申上げますが、韓国の破防法ともいうべき国家保安法が四年前に制定されておりますが、それから僅か七カ月の間に約十万の韓国人が投獄されており、その中には、多数の少年少女、小学生さえ入つており、最後には李承晩かいらい国会の(「違うよ日本は」と呼ぶ者あり)副議長金若水以下十六名の国会議員さえも逮捕投獄されておるのであります。(「日本国会と同じだ」と呼ぶ者あり)日本国民は民族的な体験と(「それが質問か」と呼ぶ者あり)本能によつてこの惨禍の来たることを感知しておればこそ、今や澎湃たる反撃が行われており、このことを口の先でごまかしておるのはまさに吉田総理そのものであります。(「朝鮮と日本は違う」と呼ぶ者あり)彼は、見えども見えず、聞けども聞えず、併しながら、ここにおいて総理が李承晩以上の敗北を避けるためにも、(「何を威張つているのだ」と呼ぶ者あり)ここで靜かに国民大衆の意見を聞いて、謙虚に考え直すべき重大な段階が参つておることは、疑う余地がないのであります。(「その通りだ」「共産党何を言う」と呼ぶ者あり)ここで吉田総理は、自分の足許、自由党を見るがよい。本日総理が強引に福永健司君を幹事長に指名したことによりて(笑声、「それが何だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)本日の総会に代るべき重大な(「黙れ黙れ」と呼ぶ者あり)両院議員総会は大混乱に陷り、林衆議院議長をして(発言する者多し)党内の事態は收拾不可能であると嘆かせております。これは林衆議院議長が新聞に発表しておる言葉である。與党の党内事情においても吉田総理は(「議長、注意」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)李承晩と瓜二つに似て来ておるのであります。
#127
○副議長(三木治朗君) 議題を逸脱しないようにお願いします。
#128
○兼岩傳一君(続) 国民大衆の意見のみならず、靜かに自己の党内をも反省され、聞くべきを聞き、決意すべきを決意すべき重大な段階であることを指摘し、恐らくこの質問に対しては答弁不能と思いますので、あえて私は(「答弁の要なし」と呼ぶ者あり)答弁を求めないのであります。(笑声)
#129
○副議長(三木治朗君) これにて原案に対する質疑は終局いたしました。
     ―――――・―――――
#130
○副議長(三木治朗君) 三案に対し、中山福藏君ほか一名より、成規の賛成者を得て修正案が提出されております。この際、修正案の趣旨説明を求めます。中山福藏君。
   〔「原案は揉みくちやだぞ、しつかりしろ」と呼ぶ者あり〕
   〔中山福藏君登壇、拍手〕
#131
○中山福藏君 私は只今上程中の破壞活動防止法案ほか二案の修正案提出者といたしまして、修正の重点及びその理由を概説したいと存じます。
 先ず第一に、本法は国民の基本的人権に重大なる関係を有するものでありまするから、公共の安全確保のため必要な最小限度においてのみこれを適用すべきは勿論でありまして、みだりに拡張解釈するがごときことは嚴にこれを戒めなければならんのであります。よつて第二條に、この法律の解釈適用の限度を定め、第三條中に、この法律による規制及び規制のための調査は、第一條に規定する目的を達成するために最小限度においてのみこれを行いいやしくも権限を逸脱して、憲法に保障せられたる思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限することのないよう、最大の関心をここに集中した次第であります。故に、この規定は重なる訓示規定ではなく、その違反に対しては裁判所に提訴し得るのみならず、その拡張解釈が故意に職権濫用として行われ、人をして義務なきことを行わしめたような場合には、修正案第四十五條によつて刑法第百九十三條の一般公務員の涜職罪に関する刑罰よりこれを重く処罰することとし、なお原案第三條に表示されたる暴力主義的破壞活動の行為に対する規定を第四條とし、進んで日本現下の特殊事情に鑑み、本法案の完備を期する意味において、外患に対する行為と、有線放送及び無線通信により刑法第七十七條、第八十一條又は第八十二條に規定する行為を実行させる目的を以てその実行の正当性又は必要性を主張する通信をなす行為を処罰の対象とし、内乱、外患に対する行為の予備、陰謀の扇動はこれを罰せないこととし、文書の所持は処罰の対象よりこれを除外したのであります。
 なお、この点に関する修正は最も重要な部分でありまするので、一応御参考のためその前段をかいつまんで朗読してみたいと思うのであります。
  第四條、この法律で「暴力主義的破壞活動」とは左に掲げる行為をいう。
 一イ 刑法第七十七條(内乱)、第七十八條(内乱の予備、陰謀)、第七十九條(内乱等の幇助)、第八十一條(外患誘致)、第八十二條(外患援助)、第八十七條(外患誘致及び外患援助の未遂)又は第八十八條(外患誘致及び外患援助の予備、陰謀)に規定する行為をなすこと。
  ロ この号イに規定する行為の教唆をなすこと。
  ハ 刑法第七十七條、第八十一條又は第八十二條に規定する行為を実行させる目的をもつて、その行為のせん動をなすこと。
  ニ 刑法第七十七條、第八十一條又は第八十二條に規定する行為を実行させる目的をもつて、その実行の正当性又は必要性を主張した文書又は図画を印刷し、頒布し、又は公然掲示すること。
  ホ 刑法第七十七條、第八十一條又は第八十二條に規定する行為を実行させる。目的をもつて、無線通信又は有線放送により、その実行の正当性又は必要性を主張する通信をなすこと。
 以上であります。
 原案第三條二を本修正案におきましては第四條二とし、原案に記載せられてあつた「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため」となつておつたのを「反対する目的をもつて」と改め、又原案第三條二中のヌを第四條の二のヌとし、これを「この号イからリまでに規定する行為の一の予備、陰謀若しくは教唆をつなし、又はこの号イからリまでに規定する行為の一を実行させる目的をもつてその行為のせん動をなすこと。」と改め、
 進んで本修正案第四條2中に新たに扇動の性格を明らかにし、この法律で「せん動」とは、特定の行為を実行させる目的をもつて、文書若しくは図画又は言動により、人に対し、その行為を実行する決意を生ぜしめ又は既に生じている決意を助長させるような勢のある刺激を與えることをいう。
 と規定いたしました。(笑声)
 この際、特に申添えたいことは、本修正案には、内乱及び外患の予備、陰謀の扇動の場合を除外したのでありますが、これは一に取締の行き過ぎと考えた結果でありまして学者、文化人を初め、一般大衆の要望を取入れた次第であります。
 叙上のごとく、原案第三條第一項第一号の暴力主義的破壞活動に、新たに外患罪及び有線放送、無線通信による内乱、外患等の実行の正当性又は必要性の主張の通信の場合を加えたゆえんのものは、外国に通謀して日本国に対し武力を行使するに至らしめ、又は日本国に対し外国より武力の行使ありたるとき、これに與してその軍務に服し、その他これに軍事上の利益を與えるがごとき非国民的事態に対応したものであります。
 原案第三條第一項第二号の「反対するため、」を「反対する目的をもつて」としたのは、單に「ため」というより「目的をもつて」としたほうが、行為の主観的な意欲が明らかに打ち出さるるからであります。
 又原案第三條第一項第二号ヌの規定において「せん動」の上に「実行させる目的をもつてその行為の」という言葉を挿入したのは、扇動をなす場合の主観的な意欲を明確にすることができるからであります。
 又修正案第三條第二項に扇動を定義し、以てその拡張濫用の弊を避け、一般の危惧を除去することにいたした次第であります。
 その他公安調査庁長官の指定にかかる公安調査庁の職員を「審理管」と呼ぶとあつたのを「受命職員」という名称に改めました。
 又原案第二十一條の記載事項を本修正案においては第二十二條に規定し、その中に新たに三項を設け、以下の通り追加いたしました。即ち
 2 公安審査委員会は、前項の取調をするため、左の各号に掲げる処分をすることができる。
  一 関係人若しくは参考人の任意の出頭を求めて取り調べ、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること。
  二 帳簿書類その他の物件の所有者、所持者若しくは保管者に対し、当該物件の任意の提出を求め、又は任意に提出した物件を留めて置くこと。
  三 看守者若しくは住居主文はこれらの者に代るべき者の承諾を得て、当該団体の事務所その他必要な場所に臨み、業務の状況又は帳簿書類その他の物件を検査すること。
  四 公務所又は公私の団体に対し、必要な報告又は資料の提出を求めること。
 3 公安審査委員会は、相当と認めるときは、公安審査委員会の委員又は職員に前項の処分をさせることができる。
 4 公安審査委員会の委員又は職員は、第二項の処分を行うに当つて、関係人から求められたときは、その身分を示す証票を呈示しなければならない。
 ということであります。
 更に罰則につきまして、他の犯罪行為のほかに、新たに外患並びに有線放送、無線通信等に関連する追加規定を設けましたので、これらの行為に対してはそれぞれ懲役及び禁錮刑を以て臨むこととし、公安調査官の涜職に関しては、冒頭に述べた通り、一般公務員に対する刑法第百九十三條の処罰規定より一段と重くこれを取扱い、人権蹂躪の根絶を図つたわけであります。
 本修正案と共に提出いたしました公安調査庁及び公安審査委員会設置法に関する修正案は、お手許に配付されておりますから、これによつて詳細を了知して頂きたいと存じます。(「手許にないよ」と呼ぶ者あり)
 思うに、現在我が国における全国民最大の苦悶は、この社会不安を如何に処理すべきかということでございましてこの苦悶解決のために、或る者は従来の国民性を喚起し、これと同時に日本独得の風俗習慣を堅持し、建武中與、王政復古時の態度をとるべきであると主張し、或る者は、世界第二次大戰における日本の敗因が、頑迷固陋なりし一部の軍閥、及び帝国憲法を踏みにじつて、大臣病に浮かされ、これに同調した成る種の欺瞞的政党政治家、並びに阿諛便佞至らざるなかつた御用学者等にあるが、これらを駆逐し、よつて以て明朗にして平和なる議会政治、民主政治を確立せしむべしと呼号し、又、或る者は、旧来の政治形態、経済組織を根柢より覆し、飽くまで全体主義の下に無條件圧制を断行せよと絶叫する一団があるのであります。(「威張れ威張れ」と呼ぶ者あり)この場合、我ら議会人は、判断を誤まらず、冷静公平に、犬牙錯綜、複雑、怪奇、文字通り多岐多端なる内外の情勢を洞察勘案して、国家国民のため百年の方針を樹立すべき大責任を痛感するのでありますが、(「誰が」と呼ぶ者あり)私どもは国民大多数の幸福のための政治という建前におきまして、左右いずれにも偏せざる、中正にして穏健、真に国家の基本秩序を保持することを目的とする政治方式を採択すべきは、理の当然であります。これによつてのみ日本国民の基本的人権は万代不易のものとなると確言して憚らないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり、拍手)
 諸君、近時、殺人、放火、強盗、汽車、電車の顛覆等、頻々たる社会惡の出現は、一体何を物語つておるか。(「政治の貧困だ」と呼ぶ者あり)我々はその根源が、或いは外来思想の影響により、或いは衣食住の欠乏により、或しは政治の貧困により、或いは旧来の階級制度に対する反撥により、或いは人間価値の自覚により、その他、幾多の原因によつて発生せることを知るものでありまするが、要は、我が国の政治家がこれらの現実的問題と取組んで、満腔の誠意を傾けて国家の動向を決定し、非凡なる識見と卓越したる手腕によつて、集団生活の秩序保持に懸命の努力を拂うべきものだと私は考えるものであります。(拍手)申すまでもなく、現在、世界は、イデオロギーの差異によつて米ソ両陣営に二分せられ、そのいずれに我が国が加担すべきかの問題も常識的には一応明確にせられておりますけれども、いやしくも我が日本が、新独立国家として、憲法第九條によつて、武器を放棄して、平和を熱願する以上は、すべからく全世界の国々に対して武裝を解き、矛を棄てて、全世界同胞体制の実現を提唱し、真に世界の平和と人類の福祉に寄與すべきだと思料するものであります。若しそれ、我が国にして、一度暴力主義的破壞活動の結果、全体主義の洗礼を受けんか、我が国民は挙げて奴隷生活に呻吟せざるを得ないでありましよう。(拍手)私どもは、ここに鑑みるところあり、国情安定に至るまで、この破防法を以て国家社会の安全弁たらしむる必要を認め、適切妥当なる修正を施し、その通過を念願する次第であります。(「羊頭狗肉だ」と呼ぶ者あり)
 そうでありますけれども、この法律は飽くまで過渡的暫定的措置法でありまするから、今日の社会不安が一掃せられたる際は、即時これを廃止すべきでありましよう。(「今廃止すればいい」と呼ぶ者あり)我が緑風会が政府原案中の扇動を搾り、これが全面的削除をなさなかつたのは、(「ついでになくしてしまえ」「謹聽」と呼ぶ者あり)目下陰に陽に国家機構を根柢より顛覆せよと扇動する不逞の集団を取締らんがためにほかならないのであります。(拍手)我が国民の一部に、(「大いにやりなさい」と呼ぶ者あり)曾つての治安維持法、国家総動員法を背景として、幾多の人権蹂躪をあえてした過去の官憲のあり方を想起し、今回も又この法によつて、言論、集会、結社、表現等の自由を彈圧せらるることを危惧し、この法案の撤回を要求する一大運動を展開せられたことは、誠に故なきにあらずと思うのでありますけれども、(拍手)幸いにして我が日本国憲法は、我が国民に対し、憲法第十一條に日本国民の基本的人権の享有を約束すると共に、主権在民の本旨に則り、国民は全公務員を選定罷免する権限を有するに至り、(「その通り」と呼ぶ者あり)万一、公務員にして不法行為の挙に出でんか、国家又は公共団体は、これに対して損害補償の責に任ずることになつておるのであります。(「十六世紀だ」「そり通りだ」と呼ぶ者あり)しかのみならず国民の代表機関たる国会は、断じてこの種の非違を看過しないでありましよう。かかる観点に立脚して私は、緑風会多数の意を体し、不動の信念に基き、世の非難を甘受し、忍びがたきを忍び、今日の非難は、必ずや時日の経過と共に賞讃の声に変るべき日の来ることを確信して、(笑声)この修正案を提出いたした次第であります。(拍手)
 何とぞ諸君は、(「戰争中の言葉だよ」と呼ぶ者あり)静かなる憂国の志士を以て自任せられて、(「何が志士だ」と呼ぶ者あり)慎重御審議の上、速かに御協賛を賜らんことをお願いして、降壇する次第であります。(拍手)
#132
○副議長(三木治朗君) 本修正案に対し質疑の通告がありますが、この質疑は明日に讓りまして、本日はこれにて延会いたします。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後十時三十五分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、日程第一 議長不信任決議案
 一、議員大屋晋三君懲罰の動議
 一、議員岩間正男君外十六名懲罰の動議
 一、日程第二 破壞活動防止法案(前会の続)
 一、日程第三 公安調査庁設置法案(前会の続)
 一、日程第四 公安審査委員会設置法案(前会の続)
ソース: 国立国会図書館
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